(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】圧延中の厚さの張力誘導変化の減少
(51)【国際特許分類】
B21B 37/20 20060101AFI20240122BHJP
B21B 37/72 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B21B37/20 120A
B21B37/20 110A
B21B37/72
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543045
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2022050608
(87)【国際公開番号】W WO2022152779
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ホラス
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・クルツ
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124AA07
4E124BB03
4E124BB04
4E124CC01
4E124CC02
4E124CC03
4E124CC05
4E124EE01
4E124EE13
4E124GG03
4E124GG07
4E124GG08
(57)【要約】
圧延される平らな金属材料(2)は、ロールスタンド(1)内で圧延される。ロールスタンド(1)のロール間隙を設定するアクチュエータ(5)の位置決めを制御するための位置コントローラ(6)は、アクチュエータ(5)の得られる位置目標値(s*)と位置実際値(s)の関数としてアクチュエータ(5)に対する作動変数(q)を決定し、それにしたがってアクチュエータ(5)を駆動する。得られる位置目標値(s*)は得られる基準目標値(s1*)の使用によって決定される。得られる基準目標値(s1*)は初期基準目標値(s0*)および追加の目標値(δs1*)の合計として決定される。追加の目標値(δs1*)は入口側実張力(ZE)および入口側基準張力(ZER)の使用により、および/または出口側実張力(ZA)および出口側基準張力(ZAR)の使用により、決定要素(13)によって決定される。実張力(ZE、ZA)の代わりに、対応する張力制御操作の対応する目標張力(ZE*、ZA*)を使用することもできる。しかし、どちらの場合も、基準張力(ZER、ZAR)は、目標張力(ZE*、ZA*)とは異なる変数である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平らな金属圧延材(2)を圧延するためのロールスタンド(1)の運転方法であって、
前記ロールスタンド(1)のロール間隙を設定するアクチュエータ(5)の位置決めを調整するための位置レギュレータ(6)が、前記アクチュエータ(5)の得られる位置目標値(s*)と位置実際値(s)の関数として前記アクチュエータ(5)に対する作動変数(q)を決定し、それにしたがって前記アクチュエータ(5)を作動させ、
前記得られる位置目標値(s*)は得られる基準目標値(s1*)を使用して決定され、
前記得られる基準目標値(s1*)は初期基準目標値(s0*)および追加の目標値(δs1*)の合計として決定され、
前記追加の目標値(δs1*)は入口側実張力(ZE)もしくは入口側張力調整システムの対応する目標張力(ZE*)および入口側基準張力(ZER)を使用することにより、ならびに/または出口側実張力(ZA)もしくは出口側張力調整システムの対応する目標張力(ZA*)および出口側基準張力(ZAR)を使用することにより、決定要素(13)によって決定され、
前記入口側基準張力(ZER)は前記入口側目標張力(ZE*)とは異なる変数である、および/または前記出口側基準張力(ZAR)は出口側目標張力(ZA*)とは異なる変数である、運転方法。
【請求項2】
前記ロールスタンド(1)は、前記ロール間隙を調整することによって操作されることを特徴とする、請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
前記入口側張力調整システムは、前記平らな圧延材(2)が前記ロールスタンド(1)内で圧延されるロール周面速度(vU)に、および/もしくは前記平らな圧延材(2)が前記ロールスタンド(1)から上流側に配置されたデバイス(3)から出る供給速度(vZ)に作用すること、ならびに/または前記出口側張力調整システムは、前記ロール周面速度(vU)に、および/もしくは前記平らな圧延材(2)が前記ロールスタンド(1)から下流側に配置されたデバイス(4)に入る排出速度(vA)に作用することを特徴とする、請求項1または2に記載の運転方法。
【請求項4】
前記追加の目標値(δs1*)は、入口側感度(SE)と、前記入口側実張力(ZE)もしくは前記対応する目標張力(ZE*)および前記入口側基準張力(ZER)の間の差との積に基づいて、ならびに/または前記出口側感度(SA)と、前記出口側実張力(ZA)もしくは前記対応する目標張力(ZA*)および前記出口側基準張力(ZAR)の間の差との積に基づいて、前記決定要素(13)によって決定されることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の運転方法。
【請求項5】
前記入口側感度(SE)および/または前記出口側感度(SA)は、高位制御デバイス(14)によって前記決定要素(13)に対して指定されることを特徴とする、請求項4に記載の運転方法。
【請求項6】
前記入口側感度(SE)および/または前記出口側感度(SA)は、数学的な物理方程式に基づいて、前記ロールスタンド(1)内の圧延手順を記載する圧延モデル(22)の分析により、パススケジュール計算の一部として前記高位制御デバイス(14)によって決定されることを特徴とする、請求項5に記載の運転方法。
【請求項7】
前記入口側基準張力(ZER)および/または前記出口側基準張力(ZAR)は、高位制御デバイス(14)によって前記決定要素(13)に対して指定されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項8】
前記高位制御デバイス(14)は、
前記平らな圧延材(2)が前記ロールスタンド(1)から出る目標厚さ(d*)ならびに前記入口側基準張力(ZER)および/または前記出口側基準張力(ZAR)に基づいて、前記初期基準目標値(s0*)ならびに前記入口側目標張力(ZE*)および/または前記出口側目標張力(ZA*)を決定し、
前記位置レギュレータ(6)および前記決定要素(13)を備えた調整ユニット(7)の前記初期基準目標値(s0*)を指定し、
前記入口側目標張力(ZE*)に前記入口側実張力(ZE)を調整する前張力レギュレータ(24)に対して前記入口側目標張力(ZE*)を指定する、および/または前記出口側目標張力(ZA*)に前記出口側実張力(ZA)を調整する後張力レギュレータ(25)に対して前記出口側目標張力(ZA*)を指定することを特徴とする、請求項7に記載の運転方法。
【請求項9】
前記得られる位置目標値(s*)は、実際の圧延力(F)の使用によって決定された修正値(δs2*)を使用することにより、少なくとも前記圧延材(2)の中心部の圧延中に決定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項10】
前記得られる基準目標値(s1*)は、前記実際の圧延力(F)に加えて前記修正値(δs2*)の決定の一部として考慮されることを特徴とする、請求項9に記載の運転方法。
【請求項11】
前記得られる位置目標値(s*)は、実際の圧延力(F)を使用することなく、少なくとも前記圧延材の先頭(20)および/または前記圧延材の尾部(21)の圧延中に決定されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項12】
前記得られる位置目標値(s*)は、目標厚さ(d*)から前記ロールスタンド(1)の前記出口側で測定された前記圧延材(2)の厚さ(d)の偏差を使用することによって決定されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項13】
運転中に、請求項1から12のいずれか一項に記載の運転方法を実施するように、ハードウェアブロックおよび/またはソフトウェアプログラムによって形成されている、平らな圧延材(2)を圧延するためのロールスタンド(1)の制御システム。
【請求項14】
平らな金属圧延材(2)を圧延するための圧延ユニットであって、前記平らな圧延材(2)を圧延するためのロールスタンド(1)と、請求項13に記載の制御システムを備えている、圧延ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平らな金属圧延材を圧延するためのロールスタンドの運転方法に基づき、ロールスタンドのロール間隙を設定するアクチュエータの位置決めを調整するための位置レギュレータは、アクチュエータの得られる位置目標値と位置実際値の関数としてアクチュエータに対する作動変数を決定し、それにしたがってアクチュエータを作動させ、得られる位置目標値は得られる基準目標値の使用によって決定され、得られる基準目標値は初期基準目標値および追加の目標値の合計として決定される。
【0002】
最も単純な場合では、得られる位置目標値は、得られる基準目標値と同一である。初期基準目標値は概して、入口側張力および出口側張力とは無関係である。
【0003】
本発明はさらに、平らな金属圧延材を圧延するためのロールスタンドの制御システムに基づき、制御システムは、動作中にこのような運転方法を実施するように、ハードウェアブロックおよび/またはソフトウェアプログラムによって形成される。
【0004】
本発明はさらに、平らな金属圧延材を圧延するための圧延ユニットに基づき、圧延ユニットは、平らな圧延材を圧延するためのロールスタンド、およびこのような制御システムを有する。
【背景技術】
【0005】
平らな金属圧延材を圧延する場合、圧延プロセスの基本的な要件の1つは、所定の目標厚さとできるだけよく一致する厚さを備えた平らな圧延材を製造することからなる。ロールスタンドから出る圧延材の厚さは、特にロール間隙を介して設定される。ロール間隙のサイズは次に、特定の位置へのアクチュエータの対応する設定によって設定される。
【0006】
ロール間隙のサイズ、したがって既存の圧延材の厚さは、しかし、アクチュエータの位置のみによって固定されない。代わりに、ロールスタンドの撓みは、摩耗、熱クラウニング、ロールの変位、おそらく他の影響にも加えて、考慮しなければならない。撓みは、ロールスタンドに作用する圧延力および別の力、例えば、屈曲力の結果である。
【0007】
多くの場合、ロールスタンドはロール間隙を調整することによって操作される。このような場合、圧延材がロールスタンド内で圧延される出口側厚さは最初、パススケジュールにおいて決定される。関連付けられた予測圧延力はさらに、圧延材のパラメータ(例えば、その幅、その入口側厚さ、その温度、および他の変数)を考慮して決定される。ロールスタンドの関連付けられた撓みは、ロールスタンドのばねモデルの使用によって決定される。アクチュエータに対する位置目標値はその後、ロールスタンドの撓み、および例えば、摩耗誘導および/または温度誘導クラウニングなど、他の変数を考慮して決定される。
【0008】
圧延材を圧延する場合、実際の圧延力は直接測定される、または測定された変数に基づいて決定される。修正値は、AGC(自動ゲージ制御)により決定される。修正値は、ロールスタンドのばねモデルを介してAGC内で決定される。
【0009】
平らな金属圧延材はしばしば、ロールスタンド内で圧延されている間に、圧延材が上流側デバイス内でロールスタンドから上流側で張力が加えられる、および/または下流側デバイス内でロールスタンドから下流側で張力が加えられるように圧延される。その結果、入口側張力はロールスタンドから上流側で圧延材に加えることができ、出口側張力はロールスタンドから下流側で圧延材に加えることができる。入口側および出口側張力をより良好に維持するために、それぞれのループリフタは、ロールスタンドから上流側および/または下流側に配置することができる。ロールスタンドがマルチスタンド圧延ラインの構成部であるが、圧延ラインの前ロールスタンドではない場合、上流側デバイスはさらに、マルチスタンド圧延ラインの別のロールスタンドである可能性がある。同様に、ロールスタンドがマルチスタンド圧延ラインの構成部であるが、圧延ラインの最後のロールスタンドではない場合、下流側デバイスはまた、マルチスタンド圧延ラインの別のロールスタンドである可能性がある。他の設計では、上流側および/または下流側デバイスはまた、例えばステッケルミルの場合、コイラーである可能性がある。他の実施形態も可能である。
【0010】
出口側張力、およびさらにより大きい範囲で、入口側張力は、圧延力への影響がある。特に、所要の圧延力は、張力が大きければ大きいほど低くなる。ロールスタンドは、より低い圧延力の場合に撓みが少ない。減少した撓みが考慮されない場合、張力はしたがって、圧延材がロールスタンド内で圧延される厚さに影響を与える。
【0011】
原則として、圧延力の変化が測定され、圧延力の変化によって影響を受けた撓みの変化が既に記載したAGCを介して修正されるので、これは問題を示さない。しかし、AGCは、ロールスタンドの撓みを修正するためにかなりの期間を必要とする。修正値はしたがって、遅延してのみ加えられる。さらに、そうでなければAGCによる位置決めを同時に修正するリスクがあり、張力調整システムにより張力を更新することにより振動および不安定性を生じさせる可能性があるので、AGCによる補償はしばしば、減衰した方法でのみ考慮される。最後に、AGCによって決定される修正値はしばしば、例えば、ロールスタンド内の摩擦硬化により、または不感帯により誤差が生じる。
【0012】
さらに、初期パスの後のみに、すなわち、遅延してAGCのスイッチを入れることは普通の慣例である。初期パス中、圧延材の先端がまだ、ロールスタンドと併せて圧延材に出口側張力を加えることができる下流側デバイスに到達していないので、出口側張力は0である。しかし、入口側張力は0以外の値を有する可能性が全体的にある。このような場合に入口側張力が変化する場合、これは圧延力、したがって、ロールスタンドの撓みに影響がある。しかし、AGCが初期パスの後のみにスイッチが入れられるので、ロールスタンドの変化した撓みによって生じる、圧延材がロールスタンド内で圧延される厚さの変化は、初期パス中に修正されない。
【0013】
同様に、初期パスの前に既に、すなわち、前もってAGCを凍結させる(すなわち、凍結の時に決定された修正値をもう更新しない)、または修正値が変化する時間を制限することは普通の慣例である。最終パスの間に、圧延材の尾部が、ロールスタンドと併せて圧延材に入口側張力を加えることができる上流側デバイスから既に出ているので、入口側張力は0である。しかし、出口側張力は0以外の値を有する可能性が全体的にある。このような場合に出口側張力が変化する場合、これは圧延力、したがって、ロールスタンドの撓みに影響がある。しかし、AGCが最終パスの前に既に凍結され、AGCによって決定される修正値が変化する時間が限られるので、ロールスタンドの変化した撓みによって生じる、圧延材がロールスタンド内で圧延される厚さの変化は、最終パス段階中に修正されない、または不十分なだけである。
【0014】
特許文献1は、初めに記載したタイプの運転方法を開示している。この運転方法では、実際の位置決め目標値に加えられる位置決め追加目標値は、入力側目標張力に入力側実張力を調整する張力レギュレータにより決定される。実際の位置決め目標値は、ロール間隙目標値である。
【0015】
特許文献2はまた、初めに記載したタイプの運転方法を開示している。この運転方法では、実際の位置決め目標値に加えられる位置決め追加目標値は、出力側目標張力に出力側実張力を調整する張力レギュレータにより決定される。実際の位置決め目標値は、ロール間隙目標値である。
【0016】
特許文献3はまた、平らな金属圧延材を圧延するためのロールスタンドの運転方法を開示している。この運転方法では、その一部で、ロールスタンドの位置決めシステムに作用する質量流量調整が行われる。ロールスタンドから出る圧延材の厚さは、結果として設定される。この運転方法では、入力側目標値に入力側実張力を調整する張力レギュレータは、ロールスタンドの位置決めシステムに作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】EP3231522A1
【特許文献2】特開2003-164906
【特許文献3】EP2620233A1
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】the Proceedings of the Royal Society of London, Vol. 326, 535から563頁(1972年)で出版された、J. M. Alexanderによる、「On the theory of rolling」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、ロールスタンドの出口側での圧延材の厚さのより良好な維持を補償することを可能にする選択肢を提供することからなる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、請求項1の特性を有する運転方法によって達成される。運転方法の有利な実施形態は、従属請求項2から12の主題である。
【0021】
本発明によると、初めに記載したタイプの運転方法は、追加の目標値が入口側張力調整システムの入口側実張力もしくは対応する目標張力、および入口側基準張力の使用により、ならびに/または出口側張力調整システムの出口側実張力もしくは対応する目標張力、および出口側基準張力の使用により決定要素によって決定され、入口側基準張力は入口側目標張力とは異なる変数である、および/または出口側基準張力が出口側目標張力とは異なる変数であるように構成されている。
【0022】
入口側実張力および/または出口側実張力は、測定技術を使用して測定される実際値である、または測定技術を使用して測定される値に基づいて決定される値であってもよい。張力調整システムは概して十分高い動力および品質を有し、したがって実際値および目標値は十分な範囲で一致するので、実際値または目標値のいずれかの使用が可能である。
【0023】
ロールスタンドは概して、ロール間隙を調整することによって操作される。さらに、入口側張力調整システムは概して、平らな圧延材がロールスタンド内で圧延されるロール周面速度に、および/または平らな圧延材がロールスタンドから上流側に配置されたデバイスから出る供給速度に作用する。同様に、出口側張力調整システムは概して、ロール周面速度に、および/または平らな圧延材がロールスタンドから下流側に配置されたデバイスに入る排出速度に作用する。張力調整システムは概して、各場合において、1つのデバイスのみ、すなわち、上流側デバイスもしくはロールスタンドのいずれか、またはロールスタンドもしくは下流側デバイスのいずれかに作用する。
【0024】
入口側張力状態(目標または実際)への追加の目標値の依存が存在するなら、追加の目標値は、好ましくは入口側感度および入口側実張力または対応する目標張力と入口側基準張力の間の差の積に基づいて、決定要素によって決定される。同様に、出口側張力状態への追加の目標値の依存があるなら、追加の目標値は、好ましくは出口側感度および出口側実張力または対応する目標張力と出口側基準張力の間の差の積に基づいて、決定要素によって決定される。追加の目標値、したがって得られる基礎目標値の決定はしたがって、特に単純に構成される。
【0025】
追加の目標値は、入口側感度および入口側実張力もしくは対応する目標張力と入口側基準張力の間の差の積に基づいて、ならびに/または出口側感度および出口側実張力もしくは対応する目標張力と出口側基準張力の間の差の積に基づいて、決定要素によって決定されることが好ましい。このように、追加の目標値は特に単純におよび確実に決定することができる。
【0026】
入口側感度および/または出口側感度は、高位制御デバイスによって決定要素に対して指定されることが好ましい。
【0027】
対応する感度は、例えば、表などの形で高位制御デバイス内に保存することができる。対応する感度は、圧延材の幾何形状および他の性状(例えば、その化学的組成およびその温度)によって、表内に保存することができる。しかしこれは、入口側感度および/または出口側感度が、圧延モデルの分析によりパススケジュール計算の一部として高位制御デバイスによって決定される場合に好ましい。圧延モデルは、ロールスタンド内の圧延手順を記載する数学的な物理方程式に基づく。したがって、入口側感度および/または出口側感度の極めて正確な決定が可能である。圧延モデルは必要に応じて、繰返し適合させることができる。
【0028】
圧延モデルの数学的な物理方程式は概して、微分方程式および/または代数方程式である。このようなモデルは当業者に幅広く知られている。単なる例として、非特許文献1を参照することができる。
【0029】
同様に、入口側基準張力および/または出口側基準張力はまた、高位制御デバイスによって決定要素に対して指定することができる。対応する基準張力は、パススケジュール計算の一部として高位制御デバイスによって決定または設定することができる。
【0030】
運転方法は、高位制御デバイスが、例えばパススケジュール計算の一部として、平らな圧延材がロールスタンドから出る目標厚さおよび入口側基準張力および/または出口側基準張力に基づいて、初期基準目標値および入口側目標張力および/または出口側目標張力を決定し、位置レギュレータおよび決定要素を備えた調整ユニットの初期基準目標値を指定し、入口側目標張力に入口側実張力を調整する前張力レギュレータに対して入口側目標張力を指定する、および/または出口側目標張力に出口側実張力を調整する後張力レギュレータに対して出口側目標張力を指定するように構成されていることが好ましい。
【0031】
得られる位置目標値は、実際の圧延力の使用によって決定された修正値の使用により、少なくとも圧延材の中心部の圧延中に決定されることが好ましい。そのため、AGCが実施される。したがって、本発明による運転方法をAGCと組み合わせることが可能である。
【0032】
得られる基準目標値は、実際の圧延力に加えて修正値の決定の一部として考慮されることが好ましい。動力は、修正値を決定する場合に、結果として改善させることができる。
【0033】
得られる位置目標値は、実際の圧延力を使用することなく、少なくとも圧延材の先頭および/または圧延材の尾部の圧延中に決定されることが好ましい。この場合、本発明により、AGCが作動していない場合にそれにより生じる張力変化および圧延力変化の補償も行われる。
【0034】
後者の手続は、特にAGCが圧延材の中心部の圧延中に作動している手続とも組み合わせることができる。この場合、AGCは別の方法では、圧延材の先頭の圧延から中心部の圧延への移行でスイッチを入れることができる。同様に、AGCは中心部の圧延から圧延材の尾部の圧延への移行でスイッチを切る(凍結させるまたはその変更を制限させる)ことができる。
【0035】
得られる位置目標値は、目標厚さからロールスタンドの出口側で測定された、圧延材の厚さの偏差の使用によって決定されることが好ましい。あらゆる残りの誤差を結果として修正することができる。
【0036】
目的はさらに、請求項13の特性を有する制御システムによって達成される。本発明によると、制御システムは、ハードウェアブロックおよび/またはソフトウェアプログラムを使用した操作中に、本発明による運転方法を実施する。
【0037】
目的はさらに、請求項14の特性を有する圧延ユニットによって達成される。本発明によると、制御システムは、初めに記載したタイプの圧延ユニットの場合に、本発明による制御システムとして設計されている。
【0038】
本発明の上記性状、特性および利点、およびこれらが達成される方法は、略図的に示した図面に関連して詳細に説明される例示的実施形態の以下の記載と併せてより明らかになり、より容易に理解可能になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】ロールスタンドおよびその制御システムを示す図である。
【
図2】第1の操作状態のロールアセンブリを示す図である。
【
図3】第2の操作状態の
図2からのロールアセンブリを示す図である。
【
図4】第3の操作状態の
図2からのロールアセンブリを示す図である。
【
図7】
図5からの調整ユニットへの追加を示す図である。
【
図8】
図7からの追加に対する変更形態を示す図である。
【
図10】
図5からの調整ユニットの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1では、圧延材2がロールスタンド1内で圧延される。ロールスタンド1の作動ローラのみが
図1に図示されている(他の図でも図示されている場合がある)。しかし、ロールスタンド1は概して、作動ローラ(4ハイスタンド)、場合によって作動ローラの間に配置された中間ローラに加えて、少なくともバックアップローラ、およびバックアップローラ(6ハイスタンド)に加えてバックアップローラを有する。圧延材2は、金属、しばしば鋼、多くの場合はアルミニウム、稀には例えば銅などの別の金属で作られている。圧延材2はさらに、平らな圧延材、すなわち、ストリップ(標準)または厚板(例外)である。
【0041】
ロールスタンド1は概して、ロール間隙を調整することによって操作される。さらに、圧延材2は、圧延周面速度vUでロールスタンド1内で圧延される。関連付けられたドライブおよびその動作は図示しない。
【0042】
図2および
図3の図示によると、圧延材2は、ロールスタンド1内で圧延を行いながら、ロールスタンド1から上流側でデバイス3内に保持することができる。この場合、圧延材2は供給速度vZで上流側デバイス3から出る。さらに、入口側実張力ZEはロールスタンド1の入口側で圧延材2に加えられる。ループリフタは、上流側デバイス3とロールスタンド1の間に配置することができる。ループリフタは図示されていない。上流側デバイス3は、特に別のロールスタンドとして、
図2および
図3の図にしたがって設計することができる。しかし、例えば、コイラーとして、または一式の駆動ローラとして異なる設計を有することができる。供給速度vZは、
図2では周面速度として図示されている。上流側デバイス3がロールスタンドである場合、前方スリップを追加で考慮しなければならない。
【0043】
入口側実張力ZEは概して、対応する張力調整システムにより対応する目標張力ZE*に調整される。この場合、入口側実張力ZEおよび入口側目標張力ZE*は、前張力レギュレータ24に供給される。前張力レギュレータ24は、入口側実張力ZEおよび入口側目標張力ZE*の使用により、普通は2つの前記張力ZE、ZE*の間の距離の使用により、入口側実張力ZEが入口側目標張力ZE*と同じまたは少なくとも近似されるようにアクチュエータに加えられた前作動変数δvEを決定する。前作動変数δvEは特に、ロール周面速度vUに作用する、または逆の表示では、供給速度vZに作用する速度追加目標値である可能性がある。
【0044】
同様に、圧延材2は、ロールスタンド1内で圧延を行いながら、ロールスタンド1から下流側のデバイス4内で、
図3および
図4の図にしたがって保持することができる。この場合、圧延材2は、排出速度vAで下流側デバイス4に入る。さらに、出口側実張力ZAは、ロールスタンド1の出口側で圧延材2に加えられる。ループリフタはまた、ロールスタンド1と下流側デバイス4の間に配置することができる。このループリフタも図示されていない。下流側デバイス4は、
図3から
図5の図にしたがって、特に別のロールスタンドとして設計することができる。しかし、例えばコイラーとして、または一式の駆動ローラとして異なる設計を有することができる。排出速度vAは、
図3および
図4では周面速度として図示されている。下流側デバイス4がロールスタンドである場合、後方スリップを追加で考慮しなければならない。
【0045】
出口側実張力ZAは概して、対応する張力調整システムにより対応する目標張力ZA*に調整される。この場合、出口側実張力ZAおよび出口側目標張力ZA*は、後張力レギュレータ25に供給される。後張力レギュレータ25は、出口側実張力ZAおよび出口側目標張力ZA*の使用により、普通は2つの前記張力ZA、ZA*の間の距離の使用により、出口側実張力ZAが出口側目標張力ZA*と同じまたは少なくとも近似されるようにアクチュエータに加えられた後作動変数δvAを決定する。後作動変数δvAは特に、ロール周面速度vUに作用する、または逆の表示では、排出速度vAに作用する速度追加目標値である可能性がある。
【0046】
ロールスタンド1は概して、圧延プロセスに影響を与える多数のアクチュエータを有する。このようなアクチュエータの例は、ロール屈曲を設定することが可能な屈曲システム、一対のロールを反対方向で軸方向に変位させることが可能な変位デバイス、ロール冷却システム、ロール間隙潤滑システム、および多くのその他のものである。本発明の範囲内で、これは基本的に、ロールスタンド1のロール間隙を設定するアクチュエータ5(
図5参照)である。したがって、より詳細はこのアクチュエータ5およびその作動のみに関して以下に与えられる。
【0047】
アクチュエータ5の位置決めを調整するために、位置目標値s*が、調整ユニット7の位置レギュレータ6に対して指定される。アクチュエータ5の実際値sはさらに、位置レギュレータ6に供給される。これらの2つの変数s*、sの関数として、位置レギュレータ6は、アクチュエータ5に対する作動変数qを決定し、これに応じてアクチュエータ5を制御する。調整ユニット7は、本発明による制御システムの基本的構成部である。
【0048】
アクチュエータ5は概して、油圧シリンダユニットとして、
図5の図にしたがって設計されている。この場合、作動変数qは、必要に応じて高い作動圧力pP(=ポンプ圧力)または低い作動圧力pT(=タンク圧力)を油圧シリンダユニットの作動チャンバ9、10に加える油圧システム8に作用する。作動変数qはこの場合、運ばれる油圧流である可能性がある。特に本実施形態では、位置レギュレータ6は、
図5の図にしたがって、比例レギュレータ(Pレギュレータ)として設計することができる。稀な場合では、別の方法ではまたは加えて、ねじに作用する電気ドライブによるロール間隙の調節も可能である。このような場合、位置レギュレータ6はしばしば、比例積分レギュレータ(PIレギュレータ)として設計されている。
【0049】
得られる位置目標値s*は、得られる基準目標値s1*の使用により決定される。
図5による実施形態では、得られる位置目標値s*は得られる基準目標値s1*と同一である。しかし、別の変数も得られる位置目標値s*内に含めることができる。これは、別の説明からより明らかになるであろう。得られる基準目標値s1*は、入口側実張力ZEおよび/または外側実張力ZAの使用により決定される。
【0050】
図5の図にしたがって、得られる基準目標値s1*は、初期基準目標値s0*および追加の目標値δs1*の合計としてノード点11内で決定される。初期基準目標値s0*は、少なくとも一般的には、入口側実張力ZEおよび出口側実張力ZAとは無関係である。これに対して、追加の目標値δs1*は、入口側実張力ZEおよび出口側実張力ZAに左右される。特に、追加の目標値δs1*は、入口側実張力ZEおよび入口側基準張力ZERの使用により決定要素13によって決定される。別の方法ではまたは加えて、追加の目標値δs1*は、出口側実張力ZAおよび出口側基準張力ZARの使用により決定要素13によって決定することができる。
【0051】
追加の目標値δs1*を決定するために、
図6の図にしたがって、入口側実張力ZEを、例えば、決定要素13の決定ブロック12に供給することができる。この場合、追加の目標値δs1*の入口側成分δs1E*は、入口側実張力ZEおよび入口側基準張力ZERの使用により決定ブロック12内で決定される。例えば、入口側成分δs1E*は、以下の式により、
図6の図にしたがって決定することができる。
δs1E*=SE・(ZE-ZER) (1)
式中、SEは入力側感度である。入力側基準張力ZERは任意選択では値0を有することができる。特定の場合、時間の経過とともにさらに可変である可能性がある。この場合、概して、対応する範囲に初期基準目標値を変更する必要もある。
【0052】
入力側感度SEおよび入力側基準張力ZERは、高位制御デバイス14によって、例えば
図1の図にしたがって、決定要素13に対して指定することができる。制御デバイス14は、存在する場合、制御システムの別の基本的構成部である。
【0053】
同様に、追加の目標値δs1*を決定するために、
図6の図にしたがって、出口側実張力ZAは、例えば、決定要素13の決定ブロック15に供給される。この場合、追加の目標値δs1*の出口側成分δs1A*は、出口側実張力ZAおよび出口側基準張力ZARの使用により決定ブロック15内で決定される。例えば、出口側成分δs1A*は、以下の式により、
図6の図にしたがって決定することができる。
δs1A*=SA・(ZA-ZAR) (2)
式中、SAは出力側感度である。出口側感度SAおよび出口側基準張力ZARは同様に、
図1の図にしたがって、高位制御デバイス14によって決定要素13に対して指定することができる。入力側基準張力ZARは任意選択では、値0を有することができる。特定の場合、時間の経過とともにさらに可変である可能性がある。入口側基準張力ZERを変更する同様の方法では、出口側基準張力ZARの一端部で、初期基準目標値s0*を対応する範囲で変更する必要があってもよい。
【0054】
2つの張力ZE、ZAの1つのみが使用されることも可能である。この場合、追加の目標値δs1*は対応する成分δs1E*、δs1A*と同一である。しかし、概して両方の張力ZE、ZAが使用される。直線化された決定の場合、決定要素13は追加の目標値δs1*が2つの成分δs1E*、δs1A*の合計として決定されるノード点16を有する。さらに、実際値ZE、ZAの代わりに、関連付けられた目標値ZE*、ZA*を使用することが可能である。
【0055】
関連付けられた張力レギュレータ24、25に供給され、したがって張力調整システムに有効である目標張力ZE*、ZA*、すなわち目標値ZE*、ZA*は、基準張力ZER、ZARと異なる変数である。このアプローチでは、基準張力ZER、ZARから目標張力ZE*、ZA*を導き出すことが可能であるが、その間には同一性はない。特定の値が一時的に同じである可能性があるが、体系的ではなく常に当てはまらない。
【0056】
したがって、例えば、目標張力ZE*、ZA*はオペレータ(図示せず)によって指定されるか、または平らな圧延材2の圧延中にオペレータによって変化させることができることが可能である。これに対して、基準張力ZER、ZARはオペレータによって変更することができない。さらに、基準張力ZER、ZARを維持しながら、目標張力ZE*、ZA*は技術的理由により高位制御デバイス14によって時間の経過とともに変化させることが可能である。これは、例の助けをかりて以下に詳細に説明される。この例では、上流側デバイス3および下流側デバイス4はロールスタンドであり、さらに、ロールスタンドはまた上流側デバイス3から上流側に配置され、ロールスタンドはまた下流側デバイス4から下流側に配置されている。
【0057】
圧延材2の先端20(
図2参照)は、時点t1でロールスタンド1、時点t2で下流側デバイス4、および時点t3で下流側デバイス4から下流側に配置されたロールスタンドに到達する。同様に、例えば、圧延材2の尾部21(
図4参照)が、例えば時点t4で上流側デバイス3から上流側に配置されたロールスタンド、時点t5で上流側デバイス3、および時点t6でロールスタンドに到達する。時点t4は概して、時点t3の後である。
【0058】
図2は、圧延材2が圧延されている場合の、時点t1での圧延プロセスを示している。入口側実張力ZEは、時点t1の後に加えることができる。これに対して、時点t1の前では可能ではない。入口側実張力ZEはしたがって、時点t1の前には必ず0である。圧延材2がまだロールスタンド1の出口側に置かれていなく、特に、圧延材2が下流側デバイス4に到達していないので、出口側実張力ZAは同様に0である。
【0059】
同様に、
図4は、圧延材2が圧延されている場合の時点t6での圧延プロセスを示している。時点t6まで、出口側実張力ZAをさらに加えることができるが、時点t6の後は可能ではない。実張力ZAはしたがって、時点t6の後は必ず0である。ロールスタンド1の入口側にある圧延材2がなくなる、特に、長い時間前に上流側デバイス3から出たので、入口側実張力ZEはまた0である。
【0060】
図3は、圧延材2が時点t1とt6の間、より正確には、時点t2とt5の間で圧延されている圧延プロセスを示している。それぞれの実張力ZE、ZAは、この期間中に、少なくとも一方側(すなわち、入口側または出口側)で、さらにこの期間の一部の間に両方側(すなわち、入口側および出口側)で圧延材2に加えられる。
【0061】
圧延材2が上記例のロールスタンド全てにおいて圧延されている静的状態では、目標張力ZE*、ZA*は、基準張力ZER、ZARに対応する、すなわち、同じ値を有することができる。張力レギュレータ24、25に対する目標値ZE*、ZA*の仕様に対するこの静的状態は、時点t3とt4の間に存在する。
【0062】
これに対して、後張力レギュレータ25は、例えば基本的に、時点t1と時点t2の間の期間に動いていない可能性がある。これは、出口側実張力ZAをロールスタンド1の出口側で圧延材2に加えることができないからである。これに対して、この期間中にも追加の目標値δs1*の出口側成分δs1A*を決定することが絶対的に可能である。さらに、前張力レギュレータ24はこの期間中に作動することができるが、対応する目標値ZE*=ZERは時点t1で(またはその直後に)前張力レギュレータ24に直ちに供給されず、代わりに、目標値ZE*は対応する基準張力ZERの値に0から斜面により上げられる可能性がある。
【0063】
同様に、後張力レギュレータ25が時点t2と時点t3の間の期間に作動するが、対応する目標値ZA*=ZARは時点t2で(またはその直後に)後張力レギュレータ25に直ちに供給されず、代わりに、目標値ZA*は対応する基準張力ZARの値に0から斜面により上げられる可能性がある。
【0064】
同様に、前張力レギュレータ24は時点t4と時点t5の間の期間中に作動するが、前張力レギュレータ24に供給される目標値ZE*は、前記期間の始めに存在する値ZE*=ZERから前記期間中に値0に傾斜により下げられる可能性がある。
【0065】
さらに、前張力レギュレータ24は、時点t5と時点t6の間の期間中に基本的に作動しない可能性がある。これは、入口側実張力ZEをロールスタンド1の入口側で圧延材2に加えることができないからである。これに対して、この期間中にも追加の目標値δs1*の入口側成分δs1E*を決定することが絶対的に可能である。さらに、後張力レギュレータ25はこの期間中に作動することができるが、後張力レギュレータ25に供給される目標値ZA*は、前記期間の始めに存在する値ZA*=ZARから値0に傾斜により前記期間中に下げられる可能性がある。
【0066】
入口側感度SEおよび/または出口側感度SA、ならびにおそらく基準張力ZERおよび/またはZARおよび/または初期基準目標値s0*などの別の値も、高位制御デバイス14によって提供することができる。
【0067】
レギュレータは、圧延材の圧延中にリアルタイム調整を行う。レギュレータは全体として、普通は専門家によってL1システムと呼ばれる。高位制御デバイス14はしたがって、専門家によって普通はL2システムと呼ばれるユニットとして働く。
図1の図によると、高位制御デバイス14は、特に、ロールスタンド1内の圧延手順がモデリングされる圧延モデル17を備えている。圧延モデル17は、圧延手順を記載する数学的な物理方程式に基づいている。高位制御デバイス14は、圧延モデル17を分析することによって、前記変数SEおよび/またはSAおよび/またはZERおよび/またはZARおよび/またはs0*、ならびにおそらく別の変数も決定する。
【0068】
例えば、高位制御デバイス14は、圧延材2がロールスタンド1内で圧延される前に、これら、および必要に応じて他の値が決定されるパススケジュール計算を行う。決定された値は、下位レギュレータに対して(例えば、調整ユニット7の位置レギュレータ6に対して)高位制御デバイス14によって利用可能にされる。特に、パススケジュール計算の一部として、高位制御デバイス14は、平らな圧延材2がロールスタンド1から出る目標厚さd*(
図1参照)、ならびに入口側基準張力ZERおよび/または出口側基準張力ZARに基づいて、初期基準目標値s0*ならびに入口側目標張力ZE*および/または出口側目標張力ZA*を決定する。目標厚さd*は別の方法では、高位制御デバイス14に対して指定することができる、または高位制御デバイス14によって独立して決定することができる。基準張力ZER、ZARは概して、高位制御デバイス14によって設定される。これらの値d*、ZER、ZARに基づいて、高位制御デバイス14は所要の圧延力および所要の位置決めを決定する。所要の圧延力は基準圧延力FRに対応し、所要の位置決めは初期基準目標値s0*に対応する。初期基準目標値s0*は、調整ユニット7の高位制御デバイス14によって指定される。また、高位制御デバイス14は、前張力レギュレータ24に対して入口側目標張力ZE*を、後張力レギュレータ25に対して出口側目標張力ZA*を指定する。
【0069】
高位制御デバイス14は、例えば、ロールスタンド1の意図した作動点、実際の圧延力Fへの入口側張力ZEにおける変化の影響、さらに、ロールスタンド1の撓みへの圧延力Fにおける変化の影響を決定することによって、入口側感度SEを決定することができる。2つの前記影響の積は、入口側感度SEを与える。同様に、高位制御デバイス14は、ロールスタンド1の意図した作動点、圧延力Fへの出口側張力ZAにおける変化の影響、さらに、ロールスタンド1の撓みへの圧延力Fにおける変化の影響を決定することによって、出口側感度SAを決定することができる。2つの前記影響の積は、出口側感度SAを与える。完全に等価の方法で、決定要素13に対する感度SE、SA用の基礎変数、すなわち、実際の圧延力Fへの入口側張力ZEにおける変化の影響、圧延力Fへの出口側張力ZAにおける変化の影響、およびロールスタンド1の撓みへの圧延力Fにおける変化の影響を指定することも可能である。この場合、決定要素13は、感度SE、SA自体を決定することができる。さらに、決定要素13はこの場合特に、張力ZE、ZAにおける変化に対応する予測された圧延力における変化δFを決定することも可能である。
【0070】
得られる位置目標値s*は概して、得られる基準目標値s1*と同一ではなく、代わりに、別の修正変数の使用によって決定される。
【0071】
したがって、
図7の図によると、例えば、得られる位置目標値s*は、圧延力Fの使用によって決定された修正値δs2*の使用によって決定される可能性がある。例えば、得られる位置目標値s*は、得られる基準目標値s1*と修正値δs2*の合計としてノード点18で決定することができる。修正値δs2*は、この場合、実際の圧延力Fの使用によって決定ブロック19内で決定される。決定ブロック19はしたがって、ロールスタンド1の追加の撓みが(少なくとも大きく)補償されるAGCを実施する。ロールスタンド1の追加の撓みは、基準圧延力FRから実際の圧延力Fの偏差によって生じる。整理するために、調整ユニット7の追加の部分だけが
図7に図示されていることに留意されたい。
図5および
図6は、調整ユニット7の基本的設計のために参考とするべきである。
【0072】
最も単純な場合、実際の圧延力Fおよび基準圧延力FRのみが、入力変数として決定ブロック19に供給される。
図1の図によると、基準圧延力FRは高位制御デバイス14によって提供される。しかし、多くの場合、実際の圧延力Fに加えて、値はまた、決定ブロック19によって決定される修正値δs2*とは別に、得られる位置目標値s*に既に対応する決定ブロック19に供給される。例えば、得られる基準目標値s1*は決定ブロック19に供給することができる。この場合、修正値δs2*の決定の一部として、決定ブロック19は加えて、得られる基準目標値s1*も考慮する。さらに、この場合、決定要素13はまた、追加の目標値δs1*に加えて、基準圧延力FRにおける関連付けられた予測変化δFを決定する。基準圧延力FRにおける予測変化δFは、修正値δs2*が決定される場合に、決定ブロック19によって考慮される。加えて、位置実際値sはまた、決定ブロック19に供給されてもよい。
【0073】
図7に関連して説明される手続は、ロールスタンド1内で圧延材2の圧延中に連続して行われる。この一部として、修正値δs2*は、圧延材2のこの部分が圧延されているかとは独立して決定および更新される。しかし、多くの場合、修正値δs2*は、圧延材2の中心部が圧延されている間に決定され、加えられる。これに対して、圧延材の先頭20および/または尾部21の圧延中に、得られる位置目標値s*はしばしば、実際の圧延力Fの使用によって決定される。これは、
図2から
図4を加えて参照して、
図8および
図9に関して以下に詳細に説明される。
【0074】
図8は、
図7からの調整ユニット7に基づいている。
図8では、作動信号Aおよびリセット信号Rを決定ブロック19に供給することができる。作動信号Aは
図9において値0または値1を有する。1の作動信号Aの値は、決定ブロック19の作動を生じる。この場合、決定ブロック19は、圧延力Fの使用によってそれぞれの有効修正値δs2*を決定する。その結果、得られる位置目標値s*はしたがって、圧延力Fの使用によって決定される。0の作動信号Aの値は、決定ブロック19の停止を生じる。この場合、決定ブロック19は最後に決定された修正値δs2*を出力するが、修正値δs2*をさらに更新はしない。その結果、得られる位置目標値s*はしたがって、圧延力Fを使用することなく決定される。リセット信号Rは、圧延材がロールスタンド1内で圧延されていない場合のみに、決定ブロック19に供給される。リセット信号Rを供給することにより、最後に決定された修正値δs2*を0にリセットさせる。
【0075】
作動信号Aは、時間tの関数として変化する。時点t1まで、作動信号Aはゼロ0を有する。作動信号Aはその後、一般的に急激に値1に上昇する。時点t6では、作動信号Aは、再び一般的に急激に値0まで落ちる。時点t7では、
図9の時点t6の後に、リセット信号Rが(短い期間)指定される。
【0076】
図10は、
図5からの調整ユニット7の別の実施形態を示している。
図10からの実施形態はしかし、
図7および
図8の調整ユニット7の実施形態にすぐに基づくことも可能である。
図10では、圧延材2の厚さd、すなわち、その実際の値は、対応する測定デバイス22によりロールスタンド1の出口側で測定される。厚さdは、決定ブロック23内で目標厚さd*と比較される。修正変数δs3*は、目標厚さd*からの圧延材2の厚さdの偏差に基づいて決定ブロック23内で決定される。修正変数δs3*は、ノード点18に供給される。得られる位置目標値s*はしたがってまた、修正変数δs3*の使用によって決定される。全てのタイプの残りの誤差をこの手続によって補償することができる。
【0077】
本発明は多くの利点を有する。AGCが作動している場合およびその限り、すなわち、特に圧延材2の中心部を圧延している場合、部分的補償が得られる位置目標値s*の張力依存決定によって、すなわち、張力ZE、ZAによる修正によってなんらかでもたらされるので、AGC、また厚さdの測定に基づくあらゆる厚さ調整システムは、圧延力Fにおける変化によって生じるロールスタンド1の位置決めの誤差全てを保証しなくてもよい。AGCが作動していない場合およびその限り、すなわち、特に初期パス段階中および最終パス段階中に、厚さ誤差の修正は、そうでなければ全く修正することができない得られる位置目標値s*の張力依存決定によって少なくとも部分的に達成することができる。その結果、圧延材2の初期部分および/または最終部分、目標厚さd*からの認められる許容範囲より多く逸脱した厚さdはその後、しばしば約半分だけ、かなり短くすることができる。さらに、初期パスの直後のループ調整システムの構造も改善されると考える十分な理由がある。
【0078】
本発明は好ましい例示的実施形態によって詳細に図示および記載されたが、本発明は開示した例に限るものではなく、他の変更形態を本発明の保護範囲を越えることなく、当業者によって導き出すことができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ロールスタンド
2 圧延材
3、4 上/下流側デバイス
5 アクチュエータ
6 位置レギュレータ
7 調整ユニット
8 油圧システム
9、10 作動チャンバ
11、16、18 ノード点
12、15、19、23 決定ブロック
13 決定要素
14 制御デバイス
17 圧延モデル
20 圧延材の先頭
21 圧延材の尾部
22 測定デバイス
24、25 張力レギュレータ
A 作動信号
d、d* 厚さ(実際および目標)
F 実際の圧延力
FR 基準圧延力
pP、pT 作動圧力
q 作動変数
R リセット信号
s 位置実際値
s* 得られる位置目標値
s0*、s1* 基準目標値
t 時間
t1からt7 時点
vA、vU、vZ 速度
ZA、ZE、ZA*、ZE* 張力(実際および目標)
ZAR、ZER 基準張力
δs1* 追加の目標値
δs1A*、δs1E* 成分
δs2* 修正値
δs3* 修正変数
δvA、δvE 作動変数
【手続補正書】
【提出日】2023-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平らな金属圧延材(2)を圧延するためのロールスタンド(1)の運転方法であって、
前記ロールスタンド(1)のロール間隙を設定するアクチュエータ(5)の位置決めを調整するための位置レギュレータ(6)が、前記アクチュエータ(5)の得られる位置目標値(s*)と位置実際値(s)の関数として前記アクチュエータ(5)に対する作動変数(q)を決定し、それにしたがって前記アクチュエータ(5)を作動させ、
前記得られる位置目標値(s*)は得られる基準目標値(s1*)を使用して決定され、
前記得られる基準目標値(s1*)は初期基準目標値(s0*)および追加の目標値(δs1*)の合計として決定され、
前記追加の目標値(δs1*)は入口側実張力(ZE)もしくは入口側張力調整システムの
入口側目標張力(ZE*)および入口側基準張力(ZER)を使用することにより、ならびに/または出口側実張力(ZA)もしくは出口側張力調整システムの
出口側目標張力(ZA*)および出口側基準張力(ZAR)を使用することにより、決定要素(13)によって決定され、
前記入口側基準張力(ZER)は前記入口側目標張力(ZE*)とは異なる変数である、および/または前記出口側基準張力(ZAR)は
前記出口側目標張力(ZA*)とは異なる変数である、運転方法。
【請求項2】
前記ロールスタンド(1)は、前記ロール間隙を調整することによって操作されることを特徴とする、請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
前記入口側張力調整システムは、前記平らな圧延材(2)が前記ロールスタンド(1)内で圧延されるロール周面速度(vU)に、および/もしくは前記平らな圧延材(2)が前記ロールスタンド(1)から上流側に配置されたデバイス(3)から出る供給速度(vZ)に作用すること、ならびに/または前記出口側張力調整システムは、前記ロール周面速度(vU)に、および/もしくは前記平らな圧延材(2)が前記ロールスタンド(1)から下流側に配置されたデバイス(4)に入る排出速度(vA)に作用することを特徴とする、請求項1または2に記載の運転方法。
【請求項4】
前記追加の目標値(δs1*)は、入口側感度(SE)と、前記入口側実張力(ZE)もしくは前記
入口側目標張力(ZE*)および前記入口側基準張力(ZER)の間の差との積に基づいて、ならびに/また
は出口側感度(SA)と、前記出口側実張力(ZA)もしくは前記
出口側目標張力(ZA*)および前記出口側基準張力(ZAR)の間の差との積に基づいて、前記決定要素(13)によって決定されることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の運転方法。
【請求項5】
前記入口側感度(SE)および/または前記出口側感度(SA)は、高位制御デバイス(14)によって前記決定要素(13)に対して指定されることを特徴とする、請求項4に記載の運転方法。
【請求項6】
前記入口側感度(SE)および/または前記出口側感度(SA)は、数学的な物理方程式に基づいて、前記ロールスタンド(1)内の圧延手順を記載する圧延モデル(22)の分析により、パススケジュール計算の一部として前記高位制御デバイス(14)によって決定されることを特徴とする、請求項5に記載の運転方法。
【請求項7】
前記入口側基準張力(ZER)および/または前記出口側基準張力(ZAR)は、高位制御デバイス(14)によって前記決定要素(13)に対して指定されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項8】
前記高位制御デバイス(14)は、
前記平らな圧延材(2)が前記ロールスタンド(1)から出る目標厚さ(d*)ならびに前記入口側基準張力(ZER)および/または前記出口側基準張力(ZAR)に基づいて、前記初期基準目標値(s0*)ならびに前記入口側目標張力(ZE*)および/または前記出口側目標張力(ZA*)を決定し、
前記位置レギュレータ(6)および前記決定要素(13)を備えた調整ユニット(7)の前記初期基準目標値(s0*)を指定し、
前記入口側目標張力(ZE*)に前記入口側実張力(ZE)を調整する前張力レギュレータ(24)に対して前記入口側目標張力(ZE*)を指定する、および/または前記出口側目標張力(ZA*)に前記出口側実張力(ZA)を調整する後張力レギュレータ(25)に対して前記出口側目標張力(ZA*)を指定することを特徴とする、請求項7に記載の運転方法。
【請求項9】
前記得られる位置目標値(s*)は、実際の圧延力(F)の使用によって決定された修正値(δs2*)を使用することにより、少なくとも前記圧延材(2)の中心部の圧延中に決定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項10】
前記得られる基準目標値(s1*)は、前記実際の圧延力(F)に加えて前記修正値(δs2*)の決定の一部として考慮されることを特徴とする、請求項9に記載の運転方法。
【請求項11】
前記得られる位置目標値(s*)は、実際の圧延力(F)を使用することなく、少なくとも前記圧延材の先頭(20)および/または前記圧延材の尾部(21)の圧延中に決定されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項12】
前記得られる位置目標値(s*)は、目標厚さ(d*)から前記ロールスタンド(1)
の出口側で測定された前記圧延材(2)の厚さ(d)の偏差を使用することによって決定されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項13】
運転中に、請求項1から12のいずれか一項に記載の運転方法を実施するように、ハードウェアブロックおよび/またはソフトウェアプログラムによって形成されている、平らな圧延材(2)を圧延するためのロールスタンド(1)の制御システム。
【請求項14】
平らな金属圧延材(2)を圧延するための圧延ユニットであって、前記平らな圧延材(2)を圧延するためのロールスタンド(1)と、請求項13に記載の制御システムを備えている、圧延ユニット。
【国際調査報告】