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特表2024-503871進入時の曲げ力の低下を最小限に抑えた圧延
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】進入時の曲げ力の低下を最小限に抑えた圧延
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/72 20060101AFI20240122BHJP
   B21B 37/68 20060101ALI20240122BHJP
   B21B 37/38 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B21B37/72
B21B37/68 Z
B21B37/38 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543046
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2022050610
(87)【国際公開番号】W WO2022152781
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】21152081.2
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ホラウス
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・クルツ
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124AA02
4E124AA06
4E124BB02
4E124BB07
4E124CC02
4E124CC05
4E124DD02
4E124EE01
4E124EE12
4E124EE13
4E124GG03
(57)【要約】
圧延機スタンド(1)内で、平坦な金属の圧延材(8)が圧延される。ワークロールチョック(5)は、曲げシステム(10)によって押し広げられる。曲げ制御器(14)には基本目標値(FBB)が供給され、曲げ制御器(14)は基本目標値(FBB)を考慮して、結果として得られる目標値(FB)を決定する。曲げ制御器(14)にはさらに、曲げ力の現在値(FB)が供給される。曲げ制御器(14)は、そこから、曲げシステム(10)の基本操作変数(SB)を決定し、これによって、曲げシステム(10)が基本操作変数(SB)で制御される場合、現在値(FB)は可能な限り、基本目標値(FBB)に近付けられる。進入時点(t2)よりも後の安定化時点(t3)以降、曲げ制御器(14)は、結果として得られる目標値(FB*)を、実際の圧延力(F)を付加的に考慮して決定する。実際の進入時点(t2)の前に開始し、遅くとも安定化時点には終了する進入期間において、曲げ制御器(14)には、曲げ制御器(14)が結果として得られる目標値(FB*)を決定する際に考慮する追加目標値(FBZ)が供給される。これによって、曲げ力の現在値(FB)は、基本目標値(FBB)よりも大きくなる。代替的又は付加的に、基本操作変数(SB)に追加操作変数(SZ)が適用されるか、又は、曲げシステム(10)に供給された操作変数(SR)が、最小操作変数(SM)によって下方に制限される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延材先端部(9)を有する平坦な金属の圧延材(8)を圧延するための圧延機スタンド(1)の運転方法であって、
-前記圧延機スタンド(1)は、少なくともワークロール(2)と支持ロール(3)とを有し、
-前記ワークロール(2)は、ワークロールチョック(5)に取り付けられており、前記ワークロールチョック(5)を押し広げる曲げシステム(10)が、前記ワークロールチョック(5)に作用し、
-前記圧延材先端部(9)は、実際の進入時点(t2)において前記圧延機スタンド(1)に到達し、
-基本目標値(FBB)が曲げ制御器(14)に供給され、前記曲げ制御器(14)は前記基本目標値(FBB)を考慮して、結果として得られる目標値(FB)を決定し、
-前記曲げ制御器(14)にはさらに、曲げ力の現在値(FB)が供給され、
-前記曲げ制御器(14)は、結果として得られる目標値(FB)と前記現在値(FB)とに基づいて、前記曲げシステム(10)の基本操作変数(SB)を決定し、これによって、前記曲げシステム(10)が前記基本操作変数(SB)で制御される場合、前記現在値(FB)は可能な限り、前記結果として得られる目標値(FB)に近付けられ、
-前記曲げ制御器(14)は、平坦な前記圧延材(8)の圧延の際に生じる実際の圧延力(F)を付加的に考慮して、進入時点(t2)よりも後の安定化時点(t3)以降、結果として得られる前記目標値(FB)を決定する運転方法において、
前記実際の進入時点(t2)の前に開始し、前記実際の進入時点(t2)の後に終了する進入期間において、
-前記基本目標値(FBB)に加えて、追加目標値(FBZ)が前記曲げ制御器(14)に供給され、これによって、前記曲げ制御器(14)は、前記進入期間において、前記結果として得られる目標値(FB)を、前記基本目標値(FBB)だけでなく前記追加目標値(FBZ)も考慮して決定し、これによって、前記実際の進入時点(t2)の直前において、曲げ力の前記現在値(FB)が前記基本目標値(FBB)よりも大きくなること、及び/又は、
-前記基本操作変数(SB)に追加操作変数(SZ)を適用することによって、結果として得られる操作変数(SR)が決定され、前記結果として得られる操作変数が前記曲げシステム(10)に供給され、これによって前記曲げシステム(10)は、前記結果として得られる操作変数(SR)が前記基本操作変数(SB)よりも大きくなるように制御されること、及び/又は、
-前記基本操作変数(SB)及び最小操作変数(SM)が選択要素(19)に供給され、前記選択要素(19)が、前記基本操作変数(SB)及び前記最小操作変数(SM)の最大値を前記曲げシステム(10)に供給すること、
を特徴とする運転方法。
【請求項2】
前記追加目標値(FBZ)及び/又は前記追加操作変数(SZ)及び/又は前記最小操作変数(SM)が、前記進入期間の開始(t5)以降、有限勾配で厳密に単調に0から最大値(FBZ0)まで引き上げられ、及び/又は、前記進入期間の終了(t6)に際して、有限勾配で厳密に単調に最大値(FBZ0)から0まで引き下げられることを特徴とする、請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
前記圧延材(8)の経路追跡を用いて、予測進入時点(t7)が決定されること、及び、前記進入期間の開始(t5)が、前記予測進入時点(t7)の前において、所定の期間(T1)の分だけ早くなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の運転方法。
【請求項4】
前記進入期間の終了(t6)が、前記実際の進入時点(t2)の後において、所定の期間(T2)の分だけ遅くなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項5】
前記追加目標値(FBZ)及び/又は前記追加操作変数(SZ)及び/又は前記最小操作変数(SM)の最大値は、前記圧延機スタンド(1)内での前記圧延材(8)の圧延前に、前記圧延材(8)の特性に応じて、及び/又は、予測圧延力(FE)に応じて決定されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項6】
前記追加目標値(FBZ)及び/又は前記追加操作変数(SZ)及び/又は前記最小操作変数(SM)の最大値が、前記結果として得られる操作変数(SR)が前記実際の進入時点(t2)において可能な最大値(MAX)をとるように決定されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項7】
前記追加目標値(FBZ)及び/又は前記追加操作変数(SZ)及び/又は前記最小操作変数(SM)が、曲げ力の前記現在値(FB)の低下が、前記追加目標値(FBZ)及び/又は前記追加操作変数(SZ)及び/又は前記最小操作変数(SM)がない場合に生じるであろう実際の進入時点において、少なくとも50%は補償されるように決定されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項8】
圧延材先端部(9)を有する平坦な金属の圧延材(8)を圧延するための圧延ユニットであって、
-圧延ユニットが圧延機スタンド(1)及び曲げ制御器(14)を有し、
-前記圧延機スタンド(1)が、少なくともワークロールチョック(5)に取り付けられたワークロール(2)及び支持ロール(3)を有し、
-前記圧延機スタンド(1)が、前記ワークロールチョック(5)を押し広げる曲げシステム(10)を有し、
-前記曲げ制御器(14)が前記曲げシステム(10)を制御する圧延ユニットにおいて、
-前記圧延機スタンド(1)と前記曲げ制御器(14)とが、請求項1から7のいずれか一項に記載の運転方法を実行するように、圧延ユニットの動作中に互いに協働することを特徴とする圧延ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延材先端部を有する平坦な金属の圧延材を圧延するための圧延機スタンドの運転方法に基づくものであり、
-圧延機スタンドは少なくともワークロールと支持ロールとを有し、
-ワークロールはワークロールチョックに取り付けられており、ワークロールチョックを押し広げる曲げシステムがワークロールチョックに作用し、
-圧延材先端部が、実際の進入時点において圧延機スタンドに到達し、
-基本目標値が曲げ制御器に供給され、曲げ制御器は基本目標値を考慮して、結果として得られる目標値を決定し、
-曲げ制御器にはさらに、曲げ力の現在値が供給され、
-曲げ制御器は、結果として得られる目標値と現在値とに基づいて、曲げシステムの基本操作変数を決定し、これによって、曲げシステムが基本操作変数で制御される場合、現在値は可能な限り、結果として得られる目標値に近づけられ、
-曲げ制御器は、平坦な圧延材の圧延の際に生じる実際の圧延力を付加的に考慮して、進入時点よりも後の安定化時点以降、結果として得られる目標値を決定する。
【0002】
本発明はさらに、圧延材先端部を有する平坦な金属の圧延材を圧延するための圧延ユニットに基づくものであり、
-圧延ユニットが圧延機スタンド及び曲げ制御器を有し、
-圧延機スタンドが、少なくともワークロールチョックに取り付けられたワークロール及び支持ロールを有し、
-圧延機スタンドが、ワークロールチョックを押し広げる曲げシステムを有し、
-曲げ制御器が曲げシステムを制御し、
-圧延機スタンドと曲げ制御器とが、このような運転方法を実行するように、圧延ユニットの動作中に互いに協働する。
【背景技術】
【0003】
平坦な圧延材を圧延するための圧延機スタンドは、四段圧延機スタンド(すなわち、ワークロール及び支持ロールを備えた圧延機スタンド)又は六段圧延機スタンド(すなわち、ワークロール、支持ロール、及び、ワークロールと支持ロールとの間に配置された中間ロールを備えた圧延機スタンド)として構成されることが多い。当該圧延機スタンド内では、金属ストリップが圧延されることが多く、厚板が圧延されることもある。
【0004】
各圧延材を圧延する前に、パススケジュールの計算が行われる。パススケジュールを計算する範囲内で、圧延機スタンドの個々のアクチュエータに関して、各圧延材の圧延に際してアクチュエータを動作させるための目標値が決定される。当該目標値には、少なくとも調整量又は圧延力が含まれる。多くの場合、当該目標値には、ワークロールチョック、ひいてはワークロールを押し広げる曲げ力に関する目標値(以下、基本目標値と呼ぶ)も含まれる。曲げ力を用いて、圧延材の輪郭、外形、平坦度に影響を与えることができる。
【0005】
輪郭、外形、平坦度に影響を与えるために、例えば、ワークロールの変位又は局所冷却等の他のアクチュエータが存在していてもよい。ステンレス鋼の圧延機スタンドの場合、外形にさらに影響を与えるために、ストリップエッジの潤滑を行うことも可能である。しかしながら、さらなるアクチュエータは、本発明の範囲内では重要ではない。
【0006】
パススケジュールの計算は、上位の制御装置によって行われ、当該制御装置は、当業者の間では一般的に、L2システムと呼ばれている。パススケジュールの計算の範囲内で決定された目標値は、制御装置から下位の制御器に転送され、当該制御器は、圧延材の圧延中にリアルタイム制御を実現する。制御器全体は、当業者の間では一般的に、L1システムと呼ばれている。目標値の設定は、圧延材が圧延機スタンドのワークロール間のロールギャップに到達する前、すなわち進入が行われる前に行われる。
【0007】
例えば、曲げ力に関する目標値、すなわち基本目標値は、曲げ制御器に予め設定されている。当該目標値は、平坦な圧延材の圧延中に様々な補正変数によって変更される。補正変数のうちの1つは追加目標値であり、追加目標値は、圧延力に応じて決定され、AGCと同様に、圧延力の変化によって生じるロールたわみの変化を補償すべきものである。しかしながら、当該追加目標値は、進入の際に生じる不安定性がL1システムの制御器によって再び修正された後にのみ適用される。
【0008】
したがって、曲げ制御器は、進入時点の前に開始し、進入時点の後で終了する進入期間において、曲げ力の基本目標値及び現在値を専ら用いて、曲げシステムの基本操作変数を決定し、決定した基本操作変数に従って曲げシステムを制御する。この決定は、曲げ力の現在値がつねに基本目標値に可能な限り近づくように行われる。
【0009】
進入の際、曲げ力(つまりその現在値)は低下する。曲げ制御器はこの低下を可能な限り早く補正しようと試みる。しかしながら、完全に補正されるまで、数100ミリ秒、場合によっては500ミリ秒の時間が経過する。
【0010】
曲げ力の低下は、一方では、圧延材の得られる輪郭及び付随する外形にも平坦度にも悪影響を及ぼす。しかしながら、これはしばしば甘受される。他方、曲げ力の低下は、短期的に不安定な状態をもたらし、不安定な状態がストリップ走行に与える影響は、つねには予測され得ない。特に、圧延機スタンドの出口側で圧延材にフックが形成されることがあり得る。場合によっては、フックは非常に大きく、圧延機スタンドの出口側においてサイドガイドに衝突する。これはサイドガイドの損傷につながり、個別のケースにおいては、圧延材先端部が引っかかることさえ生じ得る。この場合、圧延機スタンドは圧延材を送り続けるが、圧延材先端部はもはや搬送されない。これによって、圧延材は膨れ上がる(いわゆるバックル)。これによって、少なくとも圧延機スタンドの運転が予定外に長く中断され、さらに、圧延機スタンド又は下流の装置に大きな損傷を与えることさえある。
【0011】
特許文献1からは、平坦な金属の圧延材を圧延するための圧延機スタンドの運転方法が知られており、圧延機スタンドのワークロールには、圧延材先端部が圧延機スタンドに未だ到達していない期間に、曲げ力が加えられ、当該曲げ力は、上側ワークロールと上側支持ロールと(及び場合によっては、上側ワークロールと上側支持ロールとの間に配置されたさらなるロール)の釣り合い力と少なくとも同じ大きさである。圧延材先端部が圧延機スタンドに到達した時点以降、曲げ力は圧延プロセスの技術的要求に応じて決定される。得られる曲げ力は、最小の力より大きくても小さくてもよく、釣り合い力より大きくても小さくてもよい。
【0012】
特許文献2からは、平坦な金属の圧延材を圧延するための圧延機スタンドの運転方法が知られており、当該方法では、圧延材先端部が圧延機スタンドに到達する時点が予め計算される。当該時点以降、曲げシステムを用いて、圧延機スタンドのワークロールに曲げ力が加えられる。
【0013】
特許文献3からは、平坦な金属の圧延材を圧延するための圧延機スタンドの運転方法が知られており、当該方法では、圧延機スタンドの上流に配置したループリフタを用いて、圧延機スタンドの入口側において、圧延材が張力を受けているか否かが検出される。これによって、進入と抜出とが検出される。進入の際、圧延機スタンドのワークロールに作用する曲げ力は、圧延材の厚さが側縁部に向かって減少するように調整される。抜出の際、ループリフタの負荷の低下、したがって上流側の圧延機スタンドからの平坦な圧延材の排出が検出されると同時に、同様の方法で曲げ力が調整される。
【0014】
特許文献4からは、平坦な金属の圧延材を圧延するための圧延機スタンドの運転方法が知られており、当該方法では、ワークロールに、曲げシステムを用いて、異なる大きさの正負の曲げ力を加えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006059709号明細書
【特許文献2】特開昭57-050207号公報
【特許文献3】特開昭59-061512号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第4331261号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、不安定な状態を可能な限り回避する可能性を作り出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本課題は、請求項1の特徴を有する運転方法によって解決される。有利な態様は、従属請求項2から7の対象である。
【0018】
本発明によると、冒頭に述べた種類の運転方法は、実際の進入時点の前に開始し実際の進入時点の後に終了する進入期間において、
-基本目標値に加えて、追加目標値が曲げ制御器に供給され、これによって、曲げ制御器が、進入期間において、結果として得られる目標値を、基本目標値だけではなく追加目標値も考慮して決定し、これによって、実際の進入時点の直前において、曲げ力の現在値が基本目標値よりも大きくなること、及び/又は、
-基本操作変数に追加操作変数を適用することによって、結果として得られる操作変数が決定され、当該操作変数が曲げシステムに供給され、これによって曲げシステムは、結果として得られる操作変数が基本操作変数よりも大きくなるように制御されること、及び/又は、
-基本操作変数及び最小操作変数が選択要素に供給され、選択要素が、基本操作変数及び最小操作変数の最大値を曲げシステムに供給すること、
によって構成されている。
【0019】
曲げ力の現在値が、進入時点の直前において、基本目標値よりも大きい限りにおいて、曲げ力はより高いレベルで低下し始める。これによって、フックが形成される可能性及び範囲が減少する。結果として得られる操作変数が0より大きい場合、作動流体を曲げシステムに供給する際に用いられる油圧弁は、進入時点において少なくとも部分的に開いている。つまり、進入時点において開いている必要はない。従って、圧延材の進入は、曲げ力の低下をより小さくする。これはまた、フックが形成される可能性及び範囲を減少させる。結果として得られる0より大きい操作変数は、追加操作変数を予め適切に設定することによって保証され得る。例えば、追加操作変数は、可能な最大値の110%に設定することができる。曲げ制御器が基本操作変数として、可能な最小値を決定した場合でも、これによって、油圧弁は少なくとも-100%+110%=10%は開いている。
【0020】
追加操作変数を設定する代わりに、最小操作変数を直接供給することもできる。この場合、油圧弁が基本操作変数によってすでに開かれており、最小操作変数が基本操作変数よりも小さいのであれば、油圧弁は開弁位置を変更することなく開いたままである。しかしながら、基本操作変数の値に関係なく、油圧弁はつねに、少なくとも最小操作変数によって設定された範囲で開かれる。つまり、最小操作変数(すなわち0より大きい値)を適切に選択することによって、この場合にも、油圧弁が進入時点において少なくとも部分的に開いていることが保証され得る。
【0021】
追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数が、進入期間の開始と共に、その最大値に突然切り替えられることがあり得る。追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数が、進入期間の終了と共に、突然ゼロに引き下げられることもあり得る。しかしながら、好ましくは、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数は、進入期間の開始以降、有限勾配で、厳密に単調に、0からそれらの最大値まで引き上げられ、及び/又は、進入期間の終了と共に、有限勾配で、厳密に単調に、それらの最大値から0まで引き下げられる。これによって、特に曲げ制御器、油圧弁及び曲げシステムに加わる負荷がより少なくなる滑らかな移行が生じ、さらに、特に追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数を0に下げる場合に、より安定した移行がもたらされる。
【0022】
有限勾配で引き上げ及び引き下げを行う可能性は、当業者には一般的に知られており、習熟されている。例えば、ランピングを行うこと、又は、適切なフィルタリングによって、バイナリスイッチングプロセスを平滑化することが可能である。
【0023】
一般的に、予測進入時点は、圧延材の経路追跡を用いて決定される。この場合、進入期間の開始は、好ましくは予測進入時点よりも所定の期間の分だけ早くなる。
【0024】
所定の早い期間は、例えば、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数が、予測進入時点との間隔が、実際の進入時点と予測進入時点との間の許容誤差と少なくとも同じ大きさである時点において、その最大値に達するように設定される。当業者は、圧延材先端部の経路追跡の既知の不正確さに基づいて、許容誤差を容易に見積もることができる。典型的には、所定の期間は、0.5秒から2.0秒の範囲、特に0.8秒から1.5秒の範囲、例えば約1.0秒である。
【0025】
進入期間の終了は、予測進入時点の後、所定の期間の分だけ遅くてもよい。しかしながら、好ましくは、進入期間の終了は、実際の進入時点の後、所定の期間の分だけ遅くなる。実際の進入時点は、例えば、実際の圧延力の急激な増加、又は、ワークロールの駆動によって実際に加えられる圧延トルクの急激な増加に基づいて容易に検出され得る。
【0026】
いずれの場合も、所定の遅い期間は、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数が、予測進入時点又は実際の進入時点との間隔が所定の値を有する時点まで、その最大値を維持するように設定されている。当該時点以降、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数を0に引き下げることが可能である。上述の値、すなわち追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数が依然としてその最大値に保たれる期間は、曲げシステムの構造及び規模によって決定されている。通常、この値は0.1秒から1.0秒の範囲、特に0.2秒から0.6秒の範囲、例えば0.3秒又は0.4秒である。
【0027】
好ましくは、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数の最大値は、平坦な圧延材の圧延前に、圧延材の特性に応じて、及び/又は、予測圧延力に応じて決定される。これによって、対応する最大値を、実行されるべき具体的な圧延パスに最適に適合させることが可能である。代替的又は付加的に、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数の最大値を、結果として得られる操作変数が実際の進入時点の直前にその可能な最大値をとるように決定することが可能である。この手順は、特にマルチスタンド仕上げトレインの前側スタンド、又は、厚板を圧延するための圧延機スタンド(厚板圧延機)において有用であり得る。
【0028】
好ましくは、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数は、曲げ力の現在値の低下が、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数がない場合に生じるであろう実際の進入時点において、少なくとも50%は補償されるように決定される。つまり、基本目標値が値Xを有しており、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数がない場合に、進入に際して値Yに低下する場合、追加目標値及び/又は追加操作変数及び/又は最小操作変数は、好ましくは、曲げ力は最大でも(X+Y)/2の値まで、好ましくは(X+Y)/2より大きい値までしか低下しないように決定される。特に、曲げ力が最大でも基本目標値、すなわち値Xに低下することが特に好ましい。
【0029】
本課題はさらに、請求項8の特徴を有する圧延ユニットによって解決される。本発明によると、冒頭に挙げた種類の圧延ユニットにおいて、圧延機スタンドと曲げ制御器とは、本発明に係る運転方法を実行するように、圧延ユニットの動作中に互いに協働する。
【0030】
本発明の上述の特性、特徴及び利点、並びに、これらを得るための方法は、図面を用いて詳細に説明される以下の実施例の説明に関連して、より明確かつ容易に理解される。この際、以下が概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】圧延材を圧延する前の圧延機スタンドの側面図である。
図2】進入に際する、すなわち圧延材の圧延開始時点での図1の圧延材の側面図である。
図3】圧延材を圧延している間の図1の圧延機スタンドの側面図である。
図4図1から図3の圧延機スタンドの一部の正面図である。
図5図1から図4の圧延機スタンドの制御構造の一部を示す図である。
図6】先行技術に係る図1から図4の圧延機スタンドの運転方法に関するタイミング図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る図1から図4の圧延機スタンドの制御構造の一部を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る図1から図4の圧延機スタンドの運転方法に関するタイミング図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る図1から図4の圧延機スタンドの制御構造の一部を示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る図1から図4の圧延機スタンドの運転方法に関するタイミング図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る図1から図4の圧延機スタンドの制御構造の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1から図4によると、圧延機スタンド1は、ワークロール2と支持ロール3とを有している。これは、本発明の範囲内では、圧延機スタンド1の最小構成を表している。さらに、圧延機スタンド1は、中間ロールを有していてもよい。この場合、中間ロールは、ワークロール2と支持ロール3との間に配置される。図4の描写に対応して、ワークロール2は軸受ジャーナル4を有しており、軸受ジャーナル4によって、ワークロール2はワークロールチョック5に取り付けられている。同様に、支持ロール3は軸受ジャーナル6を有しており、軸受ジャーナル6によって、支持ロール3は支持ロールチョック7に取り付けられている。
【0033】
支持ロールチョック7、及び、結果として支持ロール3にも、圧延材8を圧延する際に圧延力Fが加えられる。圧延力Fは、支持ロール3を介してワークロール2に伝達される。このことは当業者には一般的に知られている。圧延材8自体は、例えば鋼又はアルミニウム等の金属から成る。圧延材8は平坦な圧延材、例えばストリップ又は厚板である。圧延材8は圧延材先端部9を有している。圧延材先端部9は、圧延機スタンド1で最初に圧延される圧延材8の領域である。したがって、図1から図3では、xは圧延材8の搬送方向を示している。
【0034】
圧延機スタンド1はさらに、曲げシステム10を有している。曲げシステム10は一般的に、少なくとも2つの油圧シリンダユニット11、12から構成されており、油圧シリンダユニット11、12は、駆動側及び操作側においてワークロールチョック5に作用し、これによって、ワークロールチョック5を押し広げる。曲げシステム10は、圧延材8の輪郭、外形、平坦度を調整するために用いられる。多くの場合、複数の油圧シリンダユニット11、12がワークロールチョック5にそれぞれ作用する。この場合、対応して、より多くの油圧シリンダユニット11、12が存在する。
【0035】
図5によると、圧延機スタンド1は制御構造によって制御される。当該制御構造は、一般的に、制御装置13と、いずれの場合においても曲げ制御器14とを含んでいる。
【0036】
制御装置13は、L2システムとして機能する上位の制御装置であり、すなわち、パススケジュールの計算の範囲内で、下位の制御器に関してその目標値を決定する。この点に関して、図5には、1つの制御器、すなわち曲げ制御器14のみが示されている。実際には、自明のことながら他の制御器も存在する。しかしながら、本発明の範囲内では、曲げ制御器14のみが重要である。したがって、曲げ制御器14のみが図示され、以下において曲げ制御器14のみが説明される。
【0037】
パススケジュールの計算は、圧延材8が圧延機スタンド1で圧延される前から、圧延材8に関して実施される(図1を参照)。パススケジュールの計算の範囲内で、制御装置13は、圧延機スタンド1の調整、必要に応じてロール変位等に関する目標値を決定する。特に、制御装置13は、パススケジュールの計算の範囲内で、圧延機スタンド1における圧延材8の圧延に関して、曲げ力の基本目標値FBBを決定する。基本目標値FBBは、単一値、特異値、時間的に一定な値であってよい。代替的に、圧延されるべきストリップの異なるセクションに対して、それぞれ固有の基本目標値FBBを決定することもできる。この場合、基本目標値FBBは経時的に変化する。
【0038】
基本目標値FBBは、時点t1以降、曲げ制御器14に供給される(図6参照)。以下において、時点t1はデフォルト時点t1と呼ばれる。デフォルト時点t1では、圧延材先端部9は圧延機スタンド1に未だ到達していない(図1参照)。基本目標値FBBの供給は、一般的に、制御装置13によって行われる。しかしながら、原理的には、基本目標値FBBを別の方法で曲げ制御器14に供給することも可能である。
【0039】
さらに、曲げ制御器14には、曲げ力の現在値FBが供給される。現在値FBを検出又は決定するための可能性は、当業者には一般的に知られている。例えば、曲げ力FBを決定するために、油圧シリンダユニット11、12の作業空間内の作動圧力pP、pTを、有効な作業面と関連して、計算によって互いに関連付けることができる。
【0040】
曲げ制御器14は、曲げシステム10を制御する。特に、曲げ制御器14は、結果として得られる目標値FB及び現在値FBに基づいて、曲げシステム10に関する基本操作変数SBを決定する。基本操作変数SBの決定は、曲げシステム10が基本操作変数SBを用いて制御される限りにおいて、現在値FBが結果として得られる目標値FBに可能な限り近付けられるように行われる。曲げ制御器14は、結果として得られる目標値FBを、少なくとも基本目標値FBBを用いて決定する。一時的に、結果として得られる目標値FBは、基本目標値FBBと同一であってもよい。しかしながら、少なくとも一時的には、他の変数も、結果として得られる目標値FBに含まれる。これは後に明らかになるであろう。曲げ制御器14は、基本操作変数値SBを用いて、結果として得られる操作変数SRを決定する。一時的に、結果として得られる操作変数SRは、基本操作変数SBと同一であってよい。通常運転において、すなわち平坦な圧延材8の圧延が安定している間、曲げ制御器14は、結果として得られる操作変数SRを曲げシステム10に出力し、これによって曲げシステム10を制御する。
【0041】
曲げ制御器14は、基本操作変数SBとして、また結果として得られる操作変数SRとしても、特に油圧弁15、16の開放状態を決定し、当該油圧弁を用いて、油圧シリンダユニット11、12の作業空間には、高い作動圧力pP(ポンプ圧力)と低い作動圧力pT(タンク圧力)とが加えられる。油圧弁15、16は通常、連続的に調整可能な弁、すなわち比例弁又はサーボ弁である。
【0042】
設定した基本目標値FBBに基づいて、曲げ制御器14は、デフォルト時点t1以降、比較的大きな基本操作変数SBを最初に決定し、場合によっては、基本操作変数SB(したがって、結果として得られる操作変数SRも)の可能な最大値MAXさえも決定する。しかしながら、曲げ制御器14は、曲げ力の現在値FBが基本目標値FBBに可能な限り合わせられると同時に、基本操作変数SBを再び0又はほぼ0に減少させる。この文脈において、本発明の範囲内では、基本操作変数SBの正の値は曲げ力の増加(技術的に可能な最大値まで)に対応し、負の値は曲げ力の減少に対応することが補足される。
【0043】
時点t2において、圧延材先端部9は圧延機スタンド1に到達する(図2参照)。この時点t2を、以下では実際の進入時点t2と呼ぶ。実際の進入時点t2は、例えば、圧延力F又はワークロール2の駆動部の圧延トルクの明確な増加を検出することによって、容易に検出され得る。進入の際、曲げ力FBは明らかに低下する。50%以上の低下も十分にあり得る。比較的短い時間内で、曲げ制御器14は、対応する基本操作変数SBを設定することによって油圧弁15、16を開き、これによって曲げ力は、その結果として得られる目標値FBに回復する。曲げ力の回復に要する時間は、通常明らかに1秒以下、例えば約500ミリ秒である。
【0044】
実際の進入時点t2の後、圧延材8の圧延が行われる(図3参照)。しかしながら、進入時点t2の直後、圧延機スタンド1は比較的不安定な状態にあり、この不安定な状態は、圧延機スタンド1に配設された様々な制御器(特に曲げ制御器14)によって再び補正される。安定化時間t3で再び安定した状態が得られる。安定化時点t3と進入時点t2との時間的間隔は、圧延機スタンドの構造及び寸法によって決定されている。一般的に、当該時間的間隔は、1秒以下の範囲、例えば500ミリ秒又はそれ以下である。
【0045】
安定化時点t3以降、補正値δFBが決定ユニット17を用いて決定される。補正値δFBは、基本目標値FBBに適用される。安定化時点t3以降、結果として得られる目標値FBは、基本目標値FBBと補正値δFBとの和として生じる。決定ユニット17における補正値δFBの決定は、(実際の)圧延力Fに応じて行われる。これによって、決定ユニット17は、いわゆるDPC(=「曲げAGC」)を実現する。
【0046】
必要な場合には、安定化時点t3以降、曲げ制御器14にさらなる補正変数を付加的に供給することも可能であり、例えば、平坦度の制御又は外形のフィードバック制御から供給することも可能である。熱影響変数に基づく補正も可能である。しかしながら、少なくとも圧延力に基づく影響の補償は行われる。
【0047】
時点t4において、圧延材8の圧延材後端部18(図1から図3参照)が圧延機スタンド1から離れる。実際の進入時点t2と同様に、実際の抜出時点t4も、特に圧延力F又はワークロール2の駆動の圧延モーメントの明確な低下を検出することによって容易に検出され得る。以下において、時点t4は、抜出時点と呼ばれる。一般的に、補正値δFBの基本目標値FBBへの適用は、抜出時点t4の少し前に凍結され、すなわち最後に決定された補正値δFBが保持される。しかしながら、これは本発明の範囲内では、副次的な意味を持つにすぎない。
【0048】
上記で説明した先行技術の手順の中核は維持されるが、本発明に従って変更及び補足される。以下に、1つの可能な変更及び補足を図7及び図8に関連して説明し、さらなる可能な変更及び補足を図9及び図10に関連して説明し、さらなる別の変更及び補足を図11に関連して説明する。
【0049】
図7及び図8に係る態様の範囲内で、曲げ制御器14には、進入期間の間、基本目標値FBBに加えて、追加目標値FBZが供給される。追加目標値FBZは、制御装置13によって曲げ制御器14に供給され得る。しかしながら、他の方法で、例えばオペレータ(図示せず)が設定することも可能である。
【0050】
進入期間は開始時点t5で開始し、終了時点t6で終了する。開始時点t5は、実際の進入時点t2の前に位置する。終了時点t6は、実際の進入時点t2の後に位置する。終了時点t6は、通常、安定化時点t3の前に位置する。終了時点t6が、安定化時点t3と一致することもあり得る。しかしながら、少なくとも一般的に、終了時点t6は安定化時点t3の後には位置しない方がよい。なぜなら、安定化時点t3以降、圧延機スタンド1を制御する意味及び目的は、もはや圧延の安定した開始を保証することにはないからである。むしろ、圧延機スタンド1を制御する意味及び目的は、圧延材8を目標の特性、特に目標の厚さ、目標の外形又は目標の輪郭に圧延することにある。したがって、安定化時点t3を越えて追加目標値FBZを設定することは不利であろう。
【0051】
追加目標値FBZは、基本目標値FBBに適用される。追加目標値FBZを曲げ制御器14に供給することによって、曲げ制御器14は、結果として得られる目標値FBとして、基本目標値FBBと追加目標値FBZとの和を決定する。つまり、基本操作変数SBは、曲げ力の現在値FBがこの和に可能な限り近付けられるように決定される。変更された目標値(FBBの代わりにFBB+FBZ)に基づいて、曲げ力の現在値FBは、進入時点t2の直前に、基本目標値FBBよりも大きくなる。
【0052】
図9及び図10に係る態様の範囲内で、進入期間の間、追加操作変数SZが基本操作変数SBに適用される。したがって、油圧弁15、16には、結果として得られる操作変数SRとして、基本操作変数SBと追加操作変数SZとの和が供給される。結果として得られる操作変数SRは、実際の進入時点t2の直前において、基本操作変数SBよりも大きくなる。追加操作変数SZは、制御装置13によって曲げ制御器14に供給され得る。しかしまた、他の方法で、例えばオペレータ(図示せず)によって設定することも可能である。
【0053】
図9に係る態様では、曲げ制御器14の出力側において、基本操作変数SBと追加操作変数SZとが加えられる。これに対して、図11に係る態様では、曲げ制御器14の出力側において、基本操作変数SBと最小操作変数SMとが、選択要素19に供給される。選択要素19は、選択要素19に供給された操作変数SB、SMのうちの大きい方を選択し、選択された操作変数を、結果として得られる操作変数SRとして曲げシステム10に供給する。当該態様では、一方では、追加目標値FBZを設定する必要はない。なぜなら、曲げ制御器14は、結果として得られる操作変数SRが最小操作変数SMよりも大きくなるようにすることができるからである。しかしながら、曲げ制御器14は、結果として得られる操作変数SRを最小操作変数SMよりも小さくすることはできない。つまり、最小操作変数は、曲げシステム10の最小の制御状態を定義する。
【0054】
一般的に、図7及び図8に示された手順、又は、図9及び図10に示された手順を用いれば十分である。しかしまた、原理的には、両方の手順を組み合わせることも可能である。例えば第一に、追加操作変数SZを適用することが可能であり、これによって、曲げ力の現在値FBが増大する。この場合、曲げ制御器14が、曲げ力の現在値FBと基本目標値FBBとの偏差に基づいて曲げ力の増加を打ち消さないように、対応して、追加目標値FBZを同時に更新することができる。しかしながら、追加目標値FBZの更新を行わずとも、結果として得られる操作変数SRが必ず正になるようにすることは可能である。そのためには、追加操作変数SZを十分な大きさで選択すればよい。一般的に、図11に係る態様は、図7から図10の態様のいずれかと組み合わせる必要はない。
【0055】
特に図8及び図10から、個々の事例では、図7及び図9からも、本発明の様々な有利な態様が認識可能である。同じことが図11の態様にも当てはまる。これらの態様は、本発明の基本原理の実現には必要ではないが、付加的な利点を提供する。以下において、当該態様を個別に詳細に説明する。当該態様は、互いから独立して実現可能であるが、必要に応じて互いに組み合わせることも可能である。さらに、当該態様は、以下において例外なく、図8及び部分的に図7に関連して、すなわち追加目標値FBZが設定された場合に関して説明される。しかしながら、有利な態様は、追加操作変数SZ又は最小操作変数SMが設定される場合にも、完全に類似の方法で実現され得る。
【0056】
1つのあり得る態様は、開始時点t5以降、追加目標値FBZを設定する方法に関する。特に、追加目標値FBZは、好ましくは、開始時点t5以降、厳密に単調に、有限の勾配で、0から最大値FBZ0まで引き上げられる。この引き上げが行われる期間は、特に数100ミリ秒の範囲内であってよい。この引き上げは、実際の進入時点t2より前に終了していた方がよい。漸増させるための対応する手順は、当業者には一般的に知られている。
【0057】
さらなるあり得る態様は、実際の進入時点t2の後に、追加目標値FBZを引き下げる方法に関する。特に、追加目標値FBZは、好ましくは、厳密に単調に、有限の勾配で、その最大値FBZ0から0まで引き下げられる。この引き下げが行われる期間は、特に同様に、数100ミリ秒の範囲であってよい。漸減させるための対応する手順は、当業者には一般的に知られている。しかしながら、0の値は、遅くとも安定化時点t3には到達していなければならない。
【0058】
さらなるあり得る態様は、開始時点t5の決定に関する。特に、圧延材先端部9の経路追跡の範囲内で(経路追跡の実装は、当業者には一般的に知られている)、予測進入時点t7が決定され得る。これによって、開始時点t5を、予測進入時点t7の前において所定の期間T1の分だけ早くなるように決定することが容易に可能である。
【0059】
実際の進入時点t2は、予測進入時点t7の前でも後でもよい。しかしながら、時間的なずれは、最大でも所定の許容誤差δtと同程度の大きさである。つまり、実際の進入時点t2は、区間[t7-δt;t7+δt]に位置している。
【0060】
所定の早い期間T1は、特に、実際の進入時点t2において、追加目標値FBZがすでに確実にその最大値FBZ0に達しているように設定されていてよい。当該態様は特に、曲げ力の現在値FBも、基本目標値FBBと追加目標値FBZとの和に可能な限り合わせられていることを保証し得る。しかしまた、代替的に、所定の早い期間t1は、追加目標値FBZが、実際の進入時点t2において、依然としてその最大値FBZ0に確実に達していないように設定してもよい。当該態様は、特に、結果として得られる操作変数SRが、実際の進入時点t2において正の値を有することを保証し得る。典型的には、所定の期間T1は、0.5秒から2.0秒の範囲、特に0.8秒から1.5秒の範囲、例えば約1.0秒である。
【0061】
早い期間T1を決定する特別な方法は、追加目標値FBZ(又はその最大値FBZ0)を決定する特別な方法と組み合わせることも可能である。特に、早い期間T1は、実際の進入時点t2において、「曲げ力FBが、基本目標値FBBと追加目標値FBZとの和にすでに可能な限り合わされている」ように決定され得る。同時に、追加目標値FBZ(又はその最大値FBZ0)は、曲げ力の現在値FBが基本目標値FBBと追加目標値FBZとの和に達し得ないように決定されていてよい(この理由から、上記の表現には引用符を用いた)。この手順の結果、結果として得られる操作変数SRは、必然的に正の値になり、しばしば最大値MAXにさえなり、実際に望ましい結果(FB=FBB+FBZ)は達成され得ないので、その値に留まる。
【0062】
さらなるあり得る態様は、終了時点t6が安定化時点t3の後には位置しないという条件で、終了時点t6の決定に関する。すでに述べたように、実際の進入時点t2は、容易に検出可能であるか、又は、検出された測定変数に基づいて決定され得る。したがって、終了時点t6を、実際の進入時点t2の後において所定の期間T2の分だけ遅くなるように決定することが問題なく可能である。
【0063】
好ましくは、所定の遅い期間T2は、追加目標値FBZが、実際の進入時点t2との間隔が所定の値を有する時点まで、その最大値FBZ0を維持するように設定されている。この値は、特に0.1秒と1.0秒との間の範囲に位置し得る。例えば、0.2秒と0.6秒との間に位置し得る。0.3秒と0.4秒との間の値が特に好ましい。最後に挙げた時点の後、追加目標値FBZは、その最大値FBZ0から0まで、場合によっては急激に、好ましくは徐々に引き下げられる。0の値への到達は、終了時点t6に対応する。追加目標値FBZの引き下げが行われる継続時間も既知であるので、終了時点t6は、実際の進入時点t2に基づいて容易に決定することができる。
【0064】
代替的に、予測進入時点t7に基づいて、所定の遅い期間T2を決定することも可能である。この場合、実際の進入時点t2ではなく、予測進入時点t7に基づいて決定が行われる。
【0065】
さらなるあり得る態様は、例えば制御装置13によって追加目標値FBZ(又はその最大値FBZ0)を決定する方法に関する。特に、圧延材8の特性が利用され得る。特性とは、一方では、圧延材8が圧延機スタンド1で圧延される前に有する、又は、有していると推定される、圧延材8の現在の変数又は予測される変数である。このような変数の例としては、圧延材8の幅、厚さ、温度、化学組成、場合によっては前処理が挙げられる。他方では、特性とは、圧延機スタンド1での圧延後に圧延材8が有すべき目標変数である。当該変数の例は、圧延材8の幅及び厚さである。さらに、圧延機スタンド1の機械的特性が知られており、例えば、スタンドの弾性係数、ワークロール2の直径、支持ロール3の直径等である。最終的に、例えば制御装置13によって、パススケジュールの計算の範囲内で、圧延材8を圧延するための圧延機スタンド1の動作変数の予測値が決定され、特に圧延力Fの予測値FEが決定される。好ましくは、追加目標値FBZ又はその最大値FBZ0は、圧延材8の特性及び/又は圧延力Fの予測値FEに応じて決定される。必要に応じて、圧延機スタンド1の機械的特性も付加的に考慮することが可能である。具体的な決定は、例えば、公式又は表を用いて行うことが可能である。公式又は表は、例えば制御装置13に記憶させることが可能である。
【0066】
さらなるあり得る態様は、同様に、追加目標値FBZ又はその最大値FBZ0を決定する方法にも関する。特に、追加目標値FBZは、結果として得られる操作変数SRが、実際の開始時点t2の直前に可能な最大値をとるように決定され得る。この追加目標値FBZの決定によって、油圧弁15、16は、実際の進入時点t2において完全に開かれており、これによって、油圧システム(アキュムレータを含む)の全作動圧力pPが進入を安定させる。この手順は、特に厚板圧延トレイン及びマルチスタンド仕上げトレインの前側圧延機スタンド(金属ストリップの場合)において有意義である。しかしながら、原理的には、この手順をマルチスタンド仕上げラインの後側圧延機スタンドに適用することも同様に可能である。
【0067】
最後のあり得る態様も、追加目標値FBZ又はその最大値FBZ0を決定する方法に関する。特に、追加目標値FBZは、追加目標値FBZを曲げ制御器14に供給しない場合に生じるであろう、実際の進入時点t2における曲げ力の現在値FBの低下が、少なくとも50%は補償されるように決定され得る。
【0068】
多くの場合、油圧弁15、16は完全にではなく、わずかに開いているだけで十分である。特にこのような場合には、最小操作変数SMを設定し、最小操作変数SMが比較的低い値、例えば油圧弁15、16の可能な最大制御の8%から20%の間の値を有する態様が有意義である。しかしながら、他の場合に関して、最小操作変数SMをより大きく設定することを排除すべきではない。
【0069】
本発明は多くの利点を有している。特に、進入が明らかに安定する。さらに、進入時点t2から曲げ力の現在値FBが再び基本目標値FBBに達するまでの経過時間が短縮される。最後に、ねじ切り工程と圧延工程が安定する。
【0070】
本発明は、好ましい実施形態例によって詳細に図示され、詳細に記載されているが、本発明は、開示された実施例によって限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の保護範囲から逸脱することなく、他の変型例を導き出すことが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 圧延機スタンド
2 ワークロール
3 支持ロール
4,6 軸受ジャーナル
5 ワークロールチョック
7 支持ロールチョック
8 圧延材
9 圧延材先端部
10 曲げシステム
11,12 油圧シリンダユニット
13 制御装置
14 曲げ制御器
15,16 油圧弁
17 決定ユニット
18 圧延材後端部
19 選択要素
F 圧延力
FE 予測値
FB 結果として得られる目標値
FBB 基本目標値
FBZ 追加目標値
FBZ0 最大値
FB 曲げ力の現在値
MAX 可能な最大値
pP、pT 作動圧力
SB 基本操作変数
SM 最小操作変数
SR 結果として得られる操作変数
SZ 追加操作変数
t1~t7 時点
T1、T2 期間
x 搬送方向
δFB 補正値
δt 許容誤差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】