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特表2024-503875抗菌ペプチド液体組成物およびその製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】抗菌ペプチド液体組成物およびその製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240122BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240122BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240122BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 31/02 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K38/10
A61P31/04
A61K47/10
A61K47/18
A61K9/12
A61K9/06
A61K9/10
A61P31/02
A61K9/107
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543109
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2021072665
(87)【国際公開番号】W WO2022155783
(87)【国際公開日】2022-07-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523269498
【氏名又は名称】江▲蘇▼普莱医▲藥▼生物技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU PROTELIGHT PHARMACEUTICAL & BIOTECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.1 Anquan Road, Jiangyin, Wuxi, Jiangsu Province 214429, China
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼育新
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼明侠
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼文学
(72)【発明者】
【氏名】黄▲曉▼雪
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA24
4C076BB22
4C076BB31
4C076CC32
4C076DD38Q
4C076DD43
4C076DD51Q
4C076FF65
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA18
4C084BA19
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA57
4C084MA63
4C084NA03
4C084ZB35
(57)【要約】
抗菌ペプチド、少なくとも1種類の安定剤、および緩衝系を含み、前記組成物における前記抗菌ペプチドの質量濃度は0.1‰~10‰であり、前記緩衝系はリン酸塩緩衝系または酢酸塩緩衝系であり、前記抗菌ペプチドのアミノ配列は:KWKSFLKTFaAbKTVLHTALKAISSである、抗菌ペプチド組成物を提供する。抗菌ペプチド組成物は局所外用広域スペクトル感染防止薬物であり、病原菌、特に耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染に適し、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患を含み、幅広い応用の将来性がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌ペプチド、少なくとも1種類の安定剤、および緩衝系を含み、前記組成物における前記抗菌ペプチドの質量濃度は0.1‰~10‰であり、前記緩衝系はリン酸塩緩衝系または酢酸塩緩衝系であり、
前記抗菌ペプチドは、下記一般式のポリペプチドである:
セグメント甲1A-n-セグメント乙、
Iは下記の任意のアミノ酸の残基から選択され:L-ロイシン、D-ロイシン、L-バリン、D-バリン、L-アラニン、D-アラニン、グリシン、L-セリン、D-セリン、L-リシンおよびD-リシン、
IIは下記の任意のアミノ酸の残基から選択され:L-ロイシン、D-ロイシン、L-バリン、D-バリン、L-アラニン、D-アラニン、グリシン、L-セリン、D-セリン、L-リシンおよびD-リシン、
セグメント甲は、SEQ ID No:1に示されるように、その配列は:KWKSFLKTFKであり、
セグメント乙は、SEQ ID No:2に示されるように、その配列は:KTVLHTALKAISSであり、
Aはアラニンの残基を表し、
前記一般式において、方向はN端からC端までである、抗菌ペプチド液体組成物。
【請求項2】
前記抗菌ペプチドの質量濃度は0.5‰~6‰であり、好ましくは1‰~4‰であり、より好ましくは1‰~2‰であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記緩衝系はリン酸水素二ナトリウム-クエン酸の緩衝系であり、ここで、前記組成物中の緩衝系のイオン濃度は0.01M~0.1Mであり、好ましくはイオン濃度は0.01M~0.02Mであり、より好ましくはイオン濃度は0.015Mであることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗菌ペプチドはNAまたはD-NAであり、
前記NAは、SEQ ID No:3の配列を有し、そのアミノ酸の配列は:KWKSFLKTFKSAAKTVLHTALKAISSであり、
前記D-NAは、SEQ ID No:4の配列を有し、そのアミノ酸の配列は:KWKSFLKTFKSAAKTVLHTALKAISSであり、且つ第13位のAがL構造である以外、すべてのアミノ酸はD-構造であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記安定剤は、ポリオール、アミノ酸、塩類、界面活性剤の少なくとも1種類から選択され、
好ましくは、前記安定剤はマンニトールであり、ここで、前記組成物においてマンニトールの質量濃度は0.5%~5%であり、好ましくはマンニトールの質量濃度は1%~2%であり、より好ましくはマンニトールの濃度は1%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物のpH値は3.5~5.5であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の製剤形態は、液体製剤であり、その剤形はスプレー剤、溶液剤、ゲル剤または乳剤、ゾル剤、点滴剤、シロップ剤、懸濁剤、経口液、洗浄剤、リニメント剤であり、好ましくはスプレー剤であることを特徴とする請求項1~6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物の局所外用広域スペクトル感染防止製品の製造における使用。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物の局所感染の治療および/または局所感染による疾患の治療における使用。
【請求項10】
前記製品は医薬品であり、前記の感染は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌エリスロマイシン耐性の菌株、化膿レンサ球菌エリスロマイシン敏感な菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株の中に少なくとも1種類の病原菌によって引き起こされ、
前記の感染は、耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患の中に少なくとも1種類を含む、ことを特徴とする請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
局所外用の広域スペクトル感染防止製品であって、その活性成分は請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を含む、局所外用の広域スペクトル感染防止製品。
【請求項12】
前記製品は薬品であり、
前記の感染は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌エリスロマイシン耐性の菌株、化膿レンサ球菌エリスロマイシン敏感な菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株の中に少なくとも1種類の病原菌によって引き起こされ、
前記の感染は、耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患の中に少なくとも1種類を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の製品。
【請求項13】
局所感染防止のために、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物、または請求項11または12に記載の製品を受容体動物に投与するステップを含む、局所感染防止の方法。
【請求項14】
局所感染による疾患を治療するために、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物、または請求項11または12に記載の製品を受容体動物に投与するステップを含む、局所感染による疾患を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物技術の分野に関し、具体的には、抗菌ペプチド液体組成物およびその製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌薬物には、主に抗生物質類および合成抗細菌薬物が含まれる。上世紀20、30年代以来、抗生物質の発見および応用は無数の人の命を救ってきた。抗生物質は、細菌またはその他の微生物が生活過程で生成した物質であり、細菌、スピロヘータ、マイコプラズマ、クラミジアなどの病原微生物を抑制や殺滅する作用がある。市販されている抗生物質は、主にβ-ラクタム類、マクロライド類、多糖類(バンコマイシン、テイコプラニン)、アミノグリコシド類、テトラサイクリン類、クロラムフェニコール類、リポペプチド類(ダプトマイシン)などを含む。
【0003】
かつて人類がその恩恵を受けていたとすれば、今や世界は抗生物質の乱用による結果である耐性菌の出現と拡散の解決に力を入れなければならない。スーパー細菌による抗生物質への不感受性現象と、「スーパー細菌」のほかにも「超スーパー細菌」があり、次々と「スーパー細菌」が発見されるにつれて、耐性菌のラインナップはますます強くなってきた。
【0004】
抗生物質の代替品の開発はすでに生物医薬分野のホットな話題となっている。その中で、抗菌ペプチドは、細菌に対して広域スペクトル且つ高効率的な殺菌活性を有し、しかも薬剤耐性を起こしにくいため、抗生物質の代替品の「希望の星」となっている。細胞膜は抗菌ペプチドの主なターゲットであり、抗菌ペプチド分子の細胞膜での凝集は細胞膜の透過性を増加させ、細胞膜のバリア機能を喪失させることが報告されている。微生物が抗菌ペプチドに対する薬剤耐性を産生するには、微生物の細胞膜の脂質成分を実質的に変化させる必要がある。
【0005】
抗菌ペプチドは、生物内で誘導されて産生された生物活性を有する小分子ポリペプチドであり、分子量は2000~7000程度であり、20~60個のアミノ酸の残基からなる。由来によって、抗菌ペプチドは、植物抗菌ペプチド、動物抗菌ペプチド、細菌抗菌ペプチド(バクテリオシンとも呼ばれ、陽イオンペプチドおよび中性ペプチドを含み、グラム陽性菌とグラム陰性菌はいずれも分泌することができる)およびヒト由来抗菌ペプチドなどに分けることができる。
【0006】
2013年11月、中国科学院昆明動物研究所の研究員である張雲の課題グループは、天然抗菌ペプチドには、選択的な免疫活性化および調節機能を有し、敗血症に対して良好な予防と治療作用があることを発見した。
【0007】
また他の文献には、ヒト由来抗菌ペプチドは広域スペクトルとなる抗菌作用を有し、創傷炎症を調節し、創傷部位の血管新生およびその上皮組織の再生を促進することができることを報告した。人体創傷癒合過程において、抗菌ペプチドは内生性免疫システムの重要なシグナル分子の一つであり、様々な細胞および各種の成長因子と相互作用し、バランス状態に達することを協調し、創傷修復を実現する。
【0008】
CN10111256Aは、抗菌ペプチドNAおよびD-NAのアミノ酸の配列Ac-Lys-Trp-Lys-Ser-Phe-Leu-Lys-Thr-Phe-Lys-Ser-Ala-Ala-Lys-Thr-Val-Leu-His-Thr-Ala-Leu-Lys-Ala-Ile-Ser-Ser-NHを開示する。この抗菌ペプチドは、抗微生物活性、望ましい溶血活性レベル、ならびにグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌ならびに他の脂質二重層となる細胞成分または構造成分を有する微生物に対する広域スペクトルとなる治療係数を有する。
【0009】
プロテイン類薬物製剤の主な問題は薬物安定性が悪いことである。プロテイン類薬物の安定性を改善するには、プロテイン類薬物を無菌凍結乾燥粉末に調製することにより、プロテイン類薬物の安定性を高めることが容易に考えられる。液体組成物に対しては、ポリオール(例えば、ソルビトール、マンニトール、グリセリンおよびプロピレングリコールなど)などの添加剤(安定剤)、糖類(例えば、ラクトース、コロイド、デキストリン、グルコースおよびトレハロースなど)、アミノ酸(例えば、グリシン、セリン、グルタミン酸およびリシンなど)、塩類(例えば、クエン酸塩、酢酸塩およびリン酸塩など)、界面活性剤などを添加することにより、安定性を高める。しかし、凍結乾燥製剤には処方、プロセスが複雑という欠点があるため、安定したプロテイン類液体製剤を提供できれば重要な意義がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、細菌などの日増しに深刻化する薬剤耐性の問題および頑固な感染に起因して多くの患者に与える苦痛を解決することを期待するために、抗菌ペプチド液体組成物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明が提供する抗菌ペプチド液体組成物は、抗菌ペプチド、少なくとも1種類の安定剤、および緩衝系を含み、前記組成物における前記抗菌ペプチドの質量濃度は0.1‰~10‰であり、前記安定剤の質量濃度は0.5%~5%であり、前記緩衝系はリン酸塩緩衝系または酢酸塩緩衝系である。
【0012】
前記抗菌ペプチドは、下記一般式のポリペプチドである:
セグメント甲-I-A-II-セグメント乙、
Iは下記の任意のアミノ酸の残基から選択され:L-ロイシン、D-ロイシン、L-バリン、D-バリン、L-アラニン、D-アラニン、グリシン、L-セリン、D-セリン、L-リシンおよびD-リシン(L-やD-は光学異性体の形態のL、A、S、VおよびK、ならびにG)、
IIは下記の任意のアミノ酸の残基から選択され:L-ロイシン、D-ロイシン、L-バリン、D-バリン、L-アラニン、D-アラニン、グリシン、L-セリン、D-セリン、L-リシンおよびD-リシン(L-やD-は光学異性体の形態のL、A、S、VおよびK、ならびにG)、
セグメント甲は、SEQ ID No:1に示されるように、その配列は:KWKSFLKTFKであり、
セグメント乙は、SEQ ID No:2に示されるように、その配列は:KTVLHTALKAISSであり、
Aはアラニンの残基を表し、
前記一般式において、方向はN端からC端までである。
【0013】
好ましくは、前記抗菌ペプチドはNAおよびD-NAである。
【0014】
前記NAは、SEQ ID No:3の配列を有し、その配列は:KWKSFLKTFKSAAKTVLHTALKAISSであり、
前記D-NAは、SEQ ID No:4の配列を有し、その配列は:KWKSFLKTFKSAAKTVLHTALKAISS(第13位のAがL構造であることを以外、すべてのアミノ酸はD-構造である)である。
【0015】
抗菌ペプチドの名称において、大文字のD-(非下付き)は、特別な部位を除いて、この抗菌ペプチドがすべてD-型アミノ酸からなることを表す(例えば、D-NAは、この抗菌ペプチドが非極性表面中心のL-アラニン置換を含む以外、すべてがD-型アミノ酸からなり、非極性表面は大文字Nで表される)。
【0016】
好ましくは、抗菌ペプチドの濃度は0.5‰~6‰であり、より好ましくは1‰~4‰であり、さらに好ましくは1‰~2‰であり、具体的には0.2‰、0.5‰、1‰、2‰であってもよい。
【0017】
好ましくは、前記緩衝系はリン酸水素二ナトリウム-クエン酸の緩衝系であり、その中、前記組成物中の緩衝系のイオン濃度は0.01M~0.1Mであり、好ましくはイオン濃度は0.01M~0.02Mであり、より好ましくはイオン濃度は0.015Mである。
【0018】
好ましくは、前記組成物のpH値は3.5~5.5であり、具体的には3.5、4.5または5.5である。
【0019】
本発明に記載された安定剤は、ポリオール(例えば、ソルビトール、マンニトール、グリセリンおよびプロピレングリコールなど)、糖類(例えば、ラクトース、コロイド、デキストリン、グルコースおよびトレハロースなど)、アミノ酸(例えば、グリシン、セリン、グルタミン酸およびリシンなど)、塩類(例えば、クエン酸塩、酢酸塩およびリン酸塩など)、界面活性剤などから少なくとも1種類を選択することができ、抗菌ペプチドを安定させるだけでなく、かつ抗菌ペプチドの抑菌能力を維持することができる。
【0020】
好ましくは、前記安定剤はマンニトールであり、その中、前記抗菌ペプチド液体組成物においてマンニトールの濃度は0.5%~5%であり、好ましくはマンニトールの濃度は1%~2%であり、より好ましくはマンニトールの濃度は1%であり、具体的には、例えば0.5%、1%、1.25%、1.5%または5%である。
【0021】
安定性試験により、本発明が提供する抗菌ペプチド組成物は少なくとも24ヶ月以内に安定であることを表明した(4℃条件)。
【0022】
本発明が提供する抗菌ペプチド組成物は、主に皮膚感染性疾患の治療に適している。スプレー剤用薬は、ゲル剤やクリーム剤などに比べて、皮膚創面との直接接触を効果的に避けることができ、病変部位に直接作用し、全身の毒性反応を減少させることができ、且つ安定性が良く、吸収しやすく、臨床薬の安全性と順応性を高め、臨床ニーズにより適している。
【0023】
したがって、本発明が提供する組成物の製剤形態は、液体製剤であり、その剤形はスプレー剤、溶液剤、ゲル剤、乳剤、ゾル剤、点滴剤、シロップ剤、懸濁剤、経口液、洗浄剤またはリニメント剤などであり、好ましくはスプレー剤である。
【0024】
本発明は、さらに、上記の抗菌ペプチド液体組成物の調製方法を提供する。
【0025】
さらに、本発明の外用組成物の調製方法は簡単であり、各組成物に必要な原料・補助剤を選択し、従来技術に開示されている各剤形の通常の調製方法に従って調製すればよい。
【0026】
本発明が提供する抗菌ペプチド液体組成物の調製方法は、以下のステップを含む:
1)70~90%の用量の注射用水を量り、それぞれに前記緩衝系を形成する物質を添加し、溶解するまで攪拌し、さらに、上記溶液に安定剤を加え、全部溶解するまで攪拌する。
2)抗菌ペプチドを秤量してステップ1)での溶液に加えて、攪拌して溶解し、注射用水で全量まで補充して得られる。
【0027】
前記方法は、さらに、上記抗菌ペプチド液体組成物を0.22ミクロンであるミクロ細孔のフィルタフィルムで濾過するステップを含む。
【0028】
本発明の一実施例によれば、上記方法を用いて抗菌ペプチド液体組成物を調製した後、5ml/ボトルでスプレーボトルに充填し、スプレーポンプをきつく締めて、抗菌ペプチドのスプレー剤を得る、スプレー製剤の具体的な調製方法を開示する。
【0029】
本発明で採用される抗菌ペプチドは、細菌の細胞膜を破壊することによって、殺菌効果を達成する新規広域スペクトル感染防止薬物であり、独特な薬理作用と強力な殺菌効果を有するため、それは従来の抗生物質と異なり、薬剤耐性が生じにくいとともに、従来の抗生物質とはほとんど交差的な薬剤耐性現象がなく、病菌の薬剤耐性の問題を解決する非常に効果的なルートと方法である。
【0030】
プロテイン類薬物製剤の主な問題は薬物安定性が悪いことである。プロテイン類薬物の安定性を改善するには、プロテイン類薬物を無菌凍結乾燥粉末に調製することにより、プロテイン類薬物の安定性を高めることが容易に考えられる。液体組成物に対しては、ポリオール(例えば、ソルビトール、マンニトール、グリセリンおよびプロピレングリコールなど)などの添加剤(安定剤)、糖類(例えば、ラクトース、コロイド、デキストリン、グルコースおよびトレハロースなど)、アミノ酸(例えば、グリシン、セリン、グルタミン酸およびリシンなど)、塩類(例えば、クエン酸塩、酢酸塩およびリン酸塩など)、界面活性剤などを添加することにより、安定性を高める。プロテイン類液体組成物の安定性は、凍結乾燥粉末の安定性よりも保証しにくいことは間違いない。本発明は、抗菌ペプチド液体組成物の安定性を重点的に解決する。
【0031】
本発明の研究チームは、他の安定剤(例えば、グリセリン、ラクトース、グリシン)と比べて、マンニトールは抗菌ペプチドの安定性を顕著に高めることができることを発見した。
【0032】
本発明の研究チームは、酸性pH緩衝系が、抗菌ペプチドをより安定させることができ、緩衝系がリン酸塩緩衝系(例えばリン酸水素二ナトリウム+クエン酸、或いはリン酸水素二ナトリウム+リン酸二水素ナトリウム、等)、酢酸塩緩衝系(例えば酢酸ナトリウム+リン酸、或いは酢酸ナトリウム+酢酸、等)、クエン酸緩衝系(例えばクエン酸ナトリウム+酢酸、或いはクエン酸ナトリウム+クエン酸、等)を考慮でき、抗菌ペプチドの安定性および抑菌試験を組み合わせることから、リン酸塩緩衝系と酢酸塩緩衝系(リン酸水素二ナトリウム、クエン酸、酢酸ナトリウム、氷酢酸を含む)が好ましく、リン酸水素二ナトリウムとクエン酸からなる緩衝系がより好ましいことを発見した。
【0033】
本発明の組成物において、緩衝系のイオン濃度は、抗菌ペプチドの安定性にも一定の影響を与え、発明者の研究により、緩衝系のイオン濃度は0.01M~0.1Mであり、好ましくはイオン濃度は0.01M~0.02Mであり、より好ましくはイオン濃度は0.015Mであることを発見した。
【0034】
本発明に係る抗菌ペプチドのスプレー剤は、良好な生物利用度および使用安全性を示し、皮膚および/または創面への刺激性を弱めることができ、高い安定性を有し、長期にわたって創面を被覆する過程において創面の微細環境を改善して細菌の成長を抑制することができ、創傷を迅速に修復し、癒合を促進し、傷口癒合時間を短縮することができ、臨床創傷看護の応用分野において幅広い将来性がある。
【0035】
本発明の抗菌ペプチド組成物は、局所外用広域スペクトル感染防止の薬物製剤の調製に用いることができ、さらに局所感染の治療に用いることもでき、あるいは局所感染による疾患の治療に用いることもできる。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、化膿性レンサ球菌エリスロマイシン耐性や感受性の菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株を含む病原菌に適し、特に、耐性菌による各種類の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患については、幅広い応用の将来性がある。
【0036】
本発明は、さらに、局所外用広域スペクトル感染防止製品を関し、その活性成分は本発明が提供する抗菌ペプチド組成物を含む。
【0037】
例示的には、前記製品は、薬物または薬物製剤であってもよい。
【0038】
本発明は、さらに、以下のステップを含む局所感染防止の方法を提供する。局所感染防止のために、本発明に記載された抗菌ペプチド組成物を受容体動物に投与する。
【0039】
本発明は、さらに、以下のステップを含む局所感染による疾患を治療する方法を提供する。局所感染による疾患を治療するために、本発明に記載された抗菌ペプチド組成物を受容体動物に投与する。
【0040】
本発明において、前記動物は哺乳類の動物であってもよく、例えば、ヒトであり、前記動物は、さらに、哺乳類の動物以外の前記感染した他の動物であってもよく、例えば、マウスである。
【0041】
上記の感染は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌、化膿性レンサ球菌エリスロマイシン耐性の菌株、化膿性レンサ球菌エリスロマイシン感受性菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株の中の少なくとも1種類の病原菌によって引き起こされ、上記の感染は、耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患の中の少なくとも1種類を含む。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明がさらに説明されるが、本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。前記の方法は、特に断りのない限り通常の方法である。前記の原材料は、特に断りのない限り、公開された商業的なルートから入手することができる。
【0043】
下記実施例で使用される抗菌ペプチドの配列(SEQ ID No:3の配列を有する)は、人工的に合成することができる。
【実施例
【0044】
実施例1、抗菌ペプチド組成物の安定剤のスクリーニング
抗菌ペプチドの安定剤として、マンニトール、グリセリン、ラクトース、およびグリシンなどを選択し、それぞれ抗菌ペプチド組成物の水溶液(抗菌ペプチド濃度は2‰)を調製し、抗菌ペプチド組成物の安定性を考察して、測定指標には性状、関連物質(最大単一不純物および総不純物)、含有量などを含む。
【0045】
関連物質の測定方法:
高速液体クロマトグラフィー法(中国薬典2015年版第二部付録V D)による試験に従って、オクタデシルシラン結合シリカゲルを充填剤とし、溶液20μLを採取して液体クロマトグラフィー装置に注入し、クロマトグラムを記録した。関連物質および限度:既知の不純物A、B、C、Dおよび未知の単一不純物、各不純物は1.0%を超えてはならず、最大単一不純物はすべての単一不純物の最大値でまとめて統計し、総不純物には、不純物A、B、C、D、および他の未知の単一不純物の合計が含まれ、総不純物は3.0%を超えてはならない。
【0046】
下表において:抗菌ペプチド(2‰)+マンニトール(1%)組成物、
抗菌ペプチド(2‰)+グリセリン(1%)組成物、
抗菌ペプチド(2‰)+ラクトース(1%)組成物、
抗菌ペプチド(2‰)+グリシン(1%)組成物。
【表1】
【表2】
【0047】
表1および表2の抗菌ペプチド組成物の安定性の考察結果から、マンニトール(1%)は抗菌ペプチドの安定剤として、抗菌ペプチド組成物溶液の36ヶ月(4℃条件)の抗菌ペプチドの含有量が依然として97%以上であることが保証されたことが分かる。
【0048】
異なる抗菌ペプチド濃度の異なるマンニトール系における安定性を考えて、さらに異なる抗菌ペプチド濃度(2‰と0.2‰)の異なるマンニトール(0.5%~5%)系における安定性を考察して、結果を表3に示す。
【表3】
【0049】
表3から、抗菌ペプチド濃度が2‰で、組成物系中のマンニトール濃度が0.5%であると、抗菌ペプチド組成物溶液の6ヶ月(25℃条件)における抗菌ペプチドの含有量は97.55%であり、組成物系中のマンニトール濃度が1%以上に達すると、抗菌ペプチド組成物溶液の6ヶ月(25℃条件)における抗菌ペプチドの含有量は98%以上を維持することができる。したがって、マンニトール濃度は1%であることが好ましい。
【0050】
実施例2 抗菌ペプチド組成物の緩衝系および緩衝系のモル濃度の考察
抗菌ペプチド組成物の緩衝系は、下表の組み合わせに従って考察して、下表の各抗菌ペプチド組成物の緩衝系において、抗菌ペプチドの質量濃度はいずれも4‰である。
【表4】
【表5】
【0051】
表5から、リン酸水素二ナトリウムとクエン酸の緩衝系を選択することにより、抗菌ペプチド組成物溶液の3ヶ月(25℃条件)の抗菌ペプチドの含有量が依然として98%以上であることを保証できる。したがって、リン酸水素二ナトリウムとクエン酸の緩衝系は好ましい緩衝系である。
【0052】
好ましいリン酸水素二ナトリウムとクエン酸緩衝系について、緩衝系イオン濃度(0.01M~0.1M)が抗菌ペプチドの安定性に与える影響を考察して、考察結果を表6に示す。
【表6】
【0053】
表6から、緩衝衝系イオン濃度による抗菌ペプチド組成物溶液の安定性に対する考察結果から、イオン濃度は約0.015Mであり、抗菌ペプチド組成物溶液の3ヶ月(25℃条件)の抗菌ペプチドの含有量が依然として98%であることを保証できることが分かる。
【0054】
実施例3、抗菌ペプチド組成物のpH値の考察
安定性としてマンニトール(1%)を選択し、リン酸水素二ナトリウムとクエン酸を緩衝系(0.015M)として、異なるpH値(3.0、3.5、4.5、5.5、6.5)の抗菌ペプチド(2‰)組成物溶液を調製し、異なるpH値条件下での抗菌ペプチド組成物の安定性を考察して、結果を表7に示す。
【0055】
同時に塩酸をpH調整剤として選択し、抗菌ペプチド水溶液のpH値を4.5に調節し、抗菌ペプチドの安定性を考察して、リン酸水素二ナトリウムとクエン酸を緩衝系とする抗菌ペプチド組成物溶液と比較し、結果を表8に示す。
【表7】
【表8】
【0056】
表7および表8から、抗菌ペプチド組成物はpH値が3.5~5.5の条件下で、抗菌ペプチド組成物溶液の3ヶ月(25℃条件下)の抗菌ペプチドの含有量が98%以上であることを保証できることが分かる。塩酸で調整された抗菌ペプチド水溶液のpH値が4.5である場合、3ヶ月(25℃条件)の抗菌ペプチド水溶液中の抗菌ペプチドの含有量は95%以下に低下した。
【0057】
実施例4 抗菌ペプチドのスプレー組成物
(1)処方
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0058】
(2)調製プロセス
(1)70~90%の処方量の注射用水を採取し、それぞれ処方量のリン酸水素二ナトリウムおよびクエン酸を添加し、溶解するまで15分間攪拌し、さらに処方量のマンニトールを上記溶液に加え、全部溶解するまで10分間攪拌する。
【0059】
(2)処方量の抗菌ペプチドを秤量して上記溶液に加え、攪拌して溶解し、注射用水を全量まで補充する。
【0060】
(3)0.22ミクロンであるミクロ細孔のフィルタフィルムで濾過し、サンプリングして中間体の性状、含有量、pH値などを測定する。
【0061】
5ml/ボトルでスプレーボトルに充填し、スプレーポンプをきつく締めて、抗菌ペプチドのスプレー剤を得る。
【0062】
充填した後に、適量の製品を取って、品質基準項目の各検査方法に従って検査を行う。
【0063】
(3)品質要求
1)関連物質:高速液体クロマトグラフィー法(中国薬典2015年版第二部付録V D)による試験に従って、オクタデシルシラン結合シリカゲルを充填剤とし、溶液20μLを採取して液体クロマトグラフィー装置に注入し、クロマトグラムを記録した。関連物質と限度:既知の不純物A、B、C、Dおよび未知の単一不純物、各不純物は1.0%を超えてはならず、総不純物には、不純物A、B、C、D、および他の未知の単一不純物の合計が含まれ、総不純物は3.0%を超えてはならない。
【0064】
2)pH:規定となるpH3.5~5.5に該当すべきである。
【0065】
3)含有量:高速液体クロマトグラフィー法(中国薬典2015年版四部通則0512)により測定し、本品の適量を精密に採取し、水で溶解し、定量して希釈して、1ml当たり0.25mgの溶液を作成し、被験物質の溶液とし、精密量の10μlを取って液体クロマトグラフィー装置を注入し、クロマトグラフィーを記録する、また抗菌ペプチド対照品の適量を採取し、同法で測定した。
【0066】
処方1および処方6による安定性の考察を行い、結果を表9に示す。
【表15】
【0067】
表9から、処方1と処方6は25℃の条件下で、6ヶ月内の抗菌ペプチドの含有量はいずれも98%以上を維持することができる。
【0068】
(4)体外抑菌および殺菌試験
抗菌ペプチド組成物(処方2と処方4)のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRSCNS)およびメトキシシリン感受性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MSSCNS)の臨床分離菌株に対する体外での抑菌作用と殺菌効果を試験する。対照薬はバンコマイシンである。結果を表10および表11に示す。
【0069】
試験菌株:
標準株:黄色ブドウ球菌ATCC29213(江蘇省人民病院臨床検査センターに由来し、南京皮膚研究所が保存している)。
臨床株:MRSA、MSSA、MRSCNS、およびMSSCNS株はすべて江蘇省人民病院臨床検査センターに由来し、南京皮膚研究所が保存している。
【表16】
【表17】
【0070】
(5)体内薬効試験
感染菌として、臨床的に局所皮膚細菌感染において最もよく見られる黄色ブドウ球菌と化膿性レンサ球菌、および臨床的に頑固性感染においてよく見られる緑膿菌を選択し、それぞれマウスの皮膚局所感染または軽度破損感染することによって、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、MSSA(メシチリン感受性黄色ブドウ球菌)、化膿性レンサ球菌エリスロマイシン耐性や感受性菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株による臨床株の局所皮膚感染モデル[1~3]を構築し、且つ0.5%オフロキサシンゲルを対照薬とし、溶媒グループ(1%のマンニトール、0.015Mのリン酸水素二ナトリウムとクエン酸の緩衝系、pH4.5)を陰性対照グループとし、上記菌株の局所皮膚感染に対する抗菌ペプチドのスプレー剤の薬効を定量的に評価する。結果は表12~表14に示す。
【0071】
試験菌株はすべて江蘇省人民病院臨床検査センターに由来し、南京皮膚研究所が保存し、菌株コードは南京皮膚研究所が作成した。
【0072】
1‰(処方1)、0.5‰(処方4)および0.2‰抗菌ペプチドのスプレー剤(処方6)は、黄色ブドウ球菌(MRSAおよびMSSA)、化膿性レンサ球菌(エリスロマイシン感受性と耐性株)によるマウスの局所皮膚感染に対して明らかな抑制作用がある。1‰抗菌ペプチドのスプレー剤は、緑膿菌(IPM-RとIPM-S)によるマウスの局所皮膚感染に対しても抑制作用がある(抗菌ペプチドのグループの抑制率の計算=[1-(投与グループのホモプラズマ中の菌液濃度/溶媒グループのホモプラズマ中の菌液濃度)]×100%、オフロキサシンゲルのグループの抑制率の計算=[1-(投与グループのホモジネート中の菌液濃度/モデルグループのホモジネート中の菌液濃度)]×100%)。治療後の抑菌率の統計的なまとめにより、同じ治療効果を達成した場合、抗菌ペプチドの投与量はオフロキサシンよりはるかに低いことが明らかになった。
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【0073】
参考文献:
1、単純性および複雑性皮膚感染抗菌薬の臨床研究ガイドライン、1998年7月米国FDA発表、2009年薬審中心組織翻訳
2、徐叔雲など。薬理試験方法学。人民衛生出版社、2006,11,第三版3、新薬(西洋薬)の臨床前研究指導原則のまとめ、中華人民共和国衛生部薬政局、1993.7
【0074】
産業上の利用可能性
本発明の抗菌ペプチド組成物は、局所外用広域スペクトル感染防止薬物製剤の調製に用いることができ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、化膿レンサ球菌エリスロマイシン耐性や感受性の菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株を含む病原菌に適し、特に、耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患については、幅広い応用の将来性がある。
【配列表】
2024503875000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌ペプチド、少なくとも1種類の安定剤、および緩衝系を含み、前記組成物における前記抗菌ペプチドの質量濃度は0.1‰~10‰であり、前記緩衝系はリン酸塩緩衝系または酢酸塩緩衝系であり、
前記抗菌ペプチドは、下記一般式のポリペプチドである:
セグメント甲1A-n-セグメント乙、
Iは下記の任意のアミノ酸の残基から選択され:L-ロイシン、D-ロイシン、L-バリン、D-バリン、L-アラニン、D-アラニン、グリシン、L-セリン、D-セリン、L-リシンおよびD-リシン、
IIは下記の任意のアミノ酸の残基から選択され:L-ロイシン、D-ロイシン、L-バリン、D-バリン、L-アラニン、D-アラニン、グリシン、L-セリン、D-セリン、L-リシンおよびD-リシン、
セグメント甲は、SEQ ID No:1に示されるように、その配列は:KWKSFLKTFKであり、
セグメント乙は、SEQ ID No:2に示されるように、その配列は:KTVLHTALKAISSであり、
Aはアラニンの残基を表し、
前記一般式において、方向はN端からC端までである、抗菌ペプチド液体組成物。
【請求項2】
前記抗菌ペプチドの質量濃度は0.5‰~6‰であり、好ましくは1‰~4‰であり、より好ましくは1‰~2‰であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記緩衝系はリン酸水素二ナトリウム-クエン酸の緩衝系であり、ここで、前記組成物中の緩衝系のイオン濃度は0.01M~0.1Mであり、好ましくはイオン濃度は0.01M~0.02Mであり、より好ましくはイオン濃度は0.015Mであることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗菌ペプチドはNAまたはD-NAであり、
前記NAは、SEQ ID No:3の配列を有し、そのアミノ酸の配列は:KWKSFLKTFKSAAKTVLHTALKAISSであり、
前記D-NAは、SEQ ID No:4の配列を有し、そのアミノ酸の配列は:KWKSFLKTFKSAAKTVLHTALKAISSであり、且つ第13位のAがL構造である以外、すべてのアミノ酸はD-構造であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記安定剤は、ポリオール、アミノ酸、塩類、界面活性剤の少なくとも1種類から選択され、
好ましくは、前記安定剤はマンニトールであり、ここで、前記組成物においてマンニトールの質量濃度は0.5%~5%であり、好ましくはマンニトールの質量濃度は1%~2%であり、より好ましくはマンニトールの濃度は1%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物のpH値は3.5~5.5であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の製剤形態は、液体製剤であり、その剤形はスプレー剤、溶液剤、ゲル剤または乳剤、ゾル剤、点滴剤、シロップ剤、懸濁剤、経口液、洗浄剤、リニメント剤であり、好ましくはスプレー剤であることを特徴とする請求項1~6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物の局所外用広域スペクトル感染防止製品の製造における使用。
【請求項9】
所感染の治療および/または局所感染による疾患の治療における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物
【請求項10】
前記製品は医薬品であり、前記の感染は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌エリスロマイシン耐性の菌株、化膿レンサ球菌エリスロマイシン敏感な菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株の中に少なくとも1種類の病原菌によって引き起こされ、
前記の感染は、耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患の中に少なくとも1種類を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の使用、または請求項9に記載の組成物
【請求項11】
局所外用の広域スペクトル感染防止製品であって、その活性成分は請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を含む、局所外用の広域スペクトル感染防止製品。
【請求項12】
前記製品は薬品であり、
前記の感染は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌エリスロマイシン耐性の菌株、化膿レンサ球菌エリスロマイシン敏感な菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株の中に少なくとも1種類の病原菌によって引き起こされ、
前記の感染は、耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患の中に少なくとも1種類を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の製品。
【請求項13】
局所感染防止のため、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物、または請求項11または12に記載の製品であって、受容体動物に投与されて、局所感染防止することを特徴とする、組成物または製品
【請求項14】
局所感染による疾患を治療するため、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物、または請求項11または12に記載の製品であって、受容体動物に投与されて、局所感染による疾患を治療することを特徴とする、組成物または製品
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
産業上の利用可能性
本発明の抗菌ペプチド組成物は、局所外用広域スペクトル感染防止薬物製剤の調製に用いることができ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、化膿レンサ球菌エリスロマイシン耐性や感受性の菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株を含む病原菌に適し、特に、耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患については、幅広い応用の将来性がある。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
抗菌ペプチド、少なくとも1種類の安定剤、および緩衝系を含み、前記組成物における前記抗菌ペプチドの質量濃度は0.1‰~10‰であり、前記緩衝系はリン酸塩緩衝系または酢酸塩緩衝系であり、
前記抗菌ペプチドは、下記一般式のポリペプチドである:
セグメント甲1A-n-セグメント乙、
Iは下記の任意のアミノ酸の残基から選択され:L-ロイシン、D-ロイシン、L-バリン、D-バリン、L-アラニン、D-アラニン、グリシン、L-セリン、D-セリン、L-リシンおよびD-リシン、
IIは下記の任意のアミノ酸の残基から選択され:L-ロイシン、D-ロイシン、L-バリン、D-バリン、L-アラニン、D-アラニン、グリシン、L-セリン、D-セリン、L-リシンおよびD-リシン、
セグメント甲は、SEQ ID No:1に示されるように、その配列は:KWKSFLKTFKであり、
セグメント乙は、SEQ ID No:2に示されるように、その配列は:KTVLHTALKAISSであり、
Aはアラニンの残基を表し、
前記一般式において、方向はN端からC端までである、抗菌ペプチド液体組成物。
(項目2)
前記抗菌ペプチドの質量濃度は0.5‰~6‰であり、好ましくは1‰~4‰であり、より好ましくは1‰~2‰であることを特徴とする項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記緩衝系はリン酸水素二ナトリウム-クエン酸の緩衝系であり、ここで、前記組成物中の緩衝系のイオン濃度は0.01M~0.1Mであり、好ましくはイオン濃度は0.01M~0.02Mであり、より好ましくはイオン濃度は0.015Mであることを特徴とする項目1または2に記載の組成物。
(項目4)
前記抗菌ペプチドはNA またはD-NAであり、
前記NA は、SEQ ID No:3の配列を有し、そのアミノ酸の配列は:KWKSFLKTFKSAAKTVLHTALKAISSであり、
前記D-NA は、SEQ ID No:4の配列を有し、そのアミノ酸の配列は:KWKSFLKTFKSAAKTVLHTALKAISSであり、且つ第13位のAがL構造である以外、すべてのアミノ酸はD-構造であることを特徴とする項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記安定剤は、ポリオール、アミノ酸、塩類、界面活性剤の少なくとも1種類から選択され、
好ましくは、前記安定剤はマンニトールであり、ここで、前記組成物においてマンニトールの質量濃度は0.5%~5%であり、好ましくはマンニトールの質量濃度は1%~2%であり、より好ましくはマンニトールの濃度は1%であることを特徴とする項目1~4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記組成物のpH値は3.5~5.5であることを特徴とする項目1~5のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記組成物の製剤形態は、液体製剤であり、その剤形はスプレー剤、溶液剤、ゲル剤または乳剤、ゾル剤、点滴剤、シロップ剤、懸濁剤、経口液、洗浄剤、リニメント剤であり、好ましくはスプレー剤であることを特徴とする項目1~6に記載の組成物。
(項目8)
項目1~7のいずれか一項に記載の組成物の局所外用広域スペクトル感染防止製品の製造における使用。
(項目9)
項目1~7のいずれか一項に記載の組成物の局所感染の治療および/または局所感染による疾患の治療における使用。
(項目10)
前記製品は医薬品であり、前記の感染は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌エリスロマイシン耐性の菌株、化膿レンサ球菌エリスロマイシン敏感な菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株の中に少なくとも1種類の病原菌によって引き起こされ、
前記の感染は、耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患の中に少なくとも1種類を含む、ことを特徴とする項目8または9に記載の使用。
(項目11)
局所外用の広域スペクトル感染防止製品であって、その活性成分は項目1~7のいずれか一項に記載の組成物を含む、局所外用の広域スペクトル感染防止製品。
(項目12)
前記製品は薬品であり、
前記の感染は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、メシチリン感受性黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌エリスロマイシン耐性の菌株、化膿レンサ球菌エリスロマイシン敏感な菌株、緑膿菌IPM-RおよびIPM-Sの菌株の中に少なくとも1種類の病原菌によって引き起こされ、
前記の感染は、耐性菌による各種の原発性皮膚感染、および湿疹合併感染、潰瘍合併感染などの続発性皮膚感染が含まれ、糖尿病足病変、火傷創面感染、褥瘡感染などの頑固な感染性疾患の中に少なくとも1種類を含む、ことを特徴とする項目11に記載の製品。
(項目13)
局所感染防止のために、項目1~7のいずれか一項に記載の組成物、または項目11または12に記載の製品を受容体動物に投与するステップを含む、局所感染防止の方法。
(項目14)
局所感染による疾患を治療するために、項目1~7のいずれか一項に記載の組成物、または項目11または12に記載の製品を受容体動物に投与するステップを含む、局所感染による疾患を治療する方法。
【国際調査報告】