(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】塩化水素酸化反応による塩素の高収率製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 7/04 20060101AFI20240122BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240122BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240122BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C01B7/04
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01J23/63 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543438
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2021019964
(87)【国際公開番号】W WO2022158741
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0008011
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ファン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ホ・ユン
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169CB81
4G169DA05
4G169EA01X
4G169EA02X
4G169EB14X
4G169FB13
4G169FB19
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
塩化水素酸化反応による塩素の高収率製造方法に関し、より具体的に、炭素酸化物を含む混合ガスで塩化水素の酸化反応を行うことにより、高収率で塩素を製造することに特徴がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化水素酸化反応工程用成形触媒を反応器に充填させる段階;および
前記反応器に塩化水素および混合ガスを投入して反応させる段階;
を含み、
前記混合ガスは、酸素および炭素酸化物を含むものである、塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項2】
前記塩化水素100重量部に対する前記混合ガスの含有量は、50重量部~150重量部である、請求項1に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項3】
前記混合ガス全体100重量部に対する前記炭素酸化物の含有量は、0.1重量部~10重量部である、請求項1に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項4】
前記炭素酸化物は、一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO
2)から選択される少なくとも一つ以上を含むものである、請求項1に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項5】
前記一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO
2)の重量比は、1:1~1:20である、請求項4に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項6】
前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒は、
担体;および
前記担体に担持されたルテニウム酸化物を含むものである、請求項1に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項7】
前記担体は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、およびこられの組み合わせからなる群から選択される担体を含むものである、請求項6に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項8】
前記成形触媒は、前記担体に担持された金属酸化物をさらに含むものであり、
前記金属酸化物は、下記化学式1で表される金属酸化物を含むものである、請求項6に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法:
[化学式1]
MO
2
前記化学式1中、Mは、Ti、CeまたはZrである。
【請求項9】
前記担体100重量部に対して、
前記ルテニウム酸化物の含有量は、1重量部~10重量部であり、
前記金属酸化物の含有量は、0.5重量部~10重量部である、請求項8に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項10】
前記成形触媒は、粉末、粒子、ペレット、およびこられの組み合わせからなる群から選択される形態からなるものである、請求項1に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項11】
前記成形触媒がペレット形態の場合、前記ペレットの直径は1mm~10mmである、請求項10に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項12】
前記塩化水素および混合ガスの反応は、280℃~380℃の温度で行われる、請求項1に記載の塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法であって、
担体に金属酸化物を担持させる段階;および
前記金属酸化物が担持された担体にルテニウム前駆体を担持させる段階;
を含む、塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法。
【請求項14】
前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法は、
前記ルテニウム前駆体を担持させる段階;その後、
前記担体を乾燥および焼成させる段階;をさらに含む、請求項13に記載の塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法。
【請求項15】
前記乾燥は、50℃~150℃の温度で3時間行われ、
前記焼成は、300℃~700℃の温度で2時間~6時間行われる、請求項14に記載の塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化水素酸化反応による塩素の高収率製造方法に関し、より具体的に、炭素酸化物を含む混合ガスで塩化水素の酸化反応を行うことにより、高収率で塩素を製造することに特徴がある。
【背景技術】
【0002】
1868年Henry Deaconによって開発された塩化水素の触媒的気相酸化反応であるディーコン法(Deacon process)は、ポリウレタンとポリカーボネートの生産過程で発生した副生成物である塩化水素を塩素に再生する、環境に優しくエネルギー効率の良い工程である。但し、ディーコン法(Deacon process)で使用されるCuO/CuCl2触媒は活性が非常に低く、400℃以上の反応温度で進行されなければならず、反応中活性物質である銅酸化物が揮発性の高い塩化銅系物質に転換された後、消失して触媒の耐久性が低い問題点があった。
【0003】
その後、1999年Sumitomo Chemicalは、ルチル形態のチタニア担体に活性物質であるルテニウム酸化物をエピタキシャル(epitaxial)な方向に担持した新しい種類のディーコン法(Deacon process)触媒を開発し、この触媒は300℃の低い反応温度でも塩素を生成する特徴を有している。但し、塩化水素酸化反応は発熱反応で反応管内部のHot-spotでは、局部的に反応温度より高い温度が形成され、これは活性物質であるルテニウム酸化物の分散度を減少させる焼結現象をもたらし、長期間の反応運転時に触媒の活性が持続的に減少する問題点があった。
【0004】
調べたように、ディーコン法(Deacon process)で触媒の耐久性と活性、寿命などを満たすことは非常に難しいことである。また、このような触媒の大部分は、反応器の形態や運転条件などが厳しく、使用に多くの制約がある。特に、粉末形態の場合、固定層反応器に使用時に触媒層の前段と後段に差押が発生して運転が不可能な問題が発生することもある。従って、前記のような様々な問題点を解決するために、様々な触媒に対する研究は現在進行中にある。
【0005】
例えば、韓国公開特許公報第10-2012-0040701号は、ルテニウムをベースにした担持された触媒を有する気相酸化によって塩素を生成する方法に関するものであり、触媒担体が50nm超の気孔直径を有する複数個の気孔を有し、触媒活性成分としてルテニウム、ルテニウム化合物を含有するナノ粒子を担持したことを開示している。
【0006】
韓国公開特許公報第10-2011-0107350号は、酸化アルミニウムを含む支持体上に一つ以上の活性金属を含み、機械的安定性が高い気相反応触媒に関するものであり、前記支持体の酸化アルミニウム成分は、実質的にアルファ-アルミニウムオキシドを含むことを開示している。特に、触媒の総重量を基準として、α-Al203で製造された支持体上にa)0.001~10重量%のルテニウム、銅および/または金、b)0.1~10重量%のニッケル、c)0~5重量%の一つ以上のアルカリ土類金属、d)0~5重量%の一つ以上のアルカリ金属、e)0~5重量%の一つ以上の希土類元素、f)パラジウム、白金、イリジウムおよびレニウムから選択されるものを含むことを特徴とし、前記触媒は、塩化水素の酸化(ディーコン反応)に使用されることに言及している。
【0007】
韓国公開特許公報第10-2013-0100282号は、触媒が支持体としてか焼された二酸化スズと少なくとも一つのハロゲン含有ルテニウム化合物を含む酸素を使用した塩化水素の触媒的気体相酸化による塩素の製造のための触媒、およびその用途に関することを開示している。
【0008】
最後に、非特許文献であるA CeO2/ZrO2-TiO2 Catalyst for the Selective Catalytic Reduction of NOx with NH3(Catalysts,pp.592.2018.08.)では、NH3によるNOxの選択的触媒還元のための触媒に関するものであり、酸化反応用触媒としてCe-Zr-Ti oxide catalystについて言及している。
【0009】
そこで、本発明者らは、前記のような塩化水素酸化反応について研究中、炭素酸化物を含む混合ガスで塩化水素の酸化反応を行う場合、酸素単独下で酸化反応を行う場合に比べて、塩化水素の酸化反応活性が改善され、高収率で塩素を製造する可能性があることを見出して本発明の完成に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2012-0040701号
【特許文献2】韓国公開特許公報第10-2011-0107350号
【特許文献3】韓国公開特許公報第10-2013-0100282号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A CeO2/ZrO2-TiO2 Catalyst for the Selective Catalytic Reduction of NOx with NH3(Catalysts,pp.592.2018.08.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、炭素酸化物を含む混合ガスで塩化水素の酸化反応を行うことにより、高収率の塩素が製造できる塩素の製造方法を提供することにその目的がある。
【0013】
また、塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の技術的課題を達成するための技術的手段として、本発明の一側面は、
塩化水素酸化反応工程用成形触媒を反応器に充填させる段階;および前記反応器に塩化水素および混合ガスを投入して反応させる段階;を含み、前記混合ガスは、酸素および炭素酸化物を含むものである、塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法を提供する。
【0015】
前記塩化水素100重量部に対する前記混合ガスの含有量は、50重量部~150重量部であってよい。
【0016】
前記混合ガス全体100重量部に対する前記炭素酸化物の含有量は、0.1重量部~10重量部であってよい。
【0017】
前記炭素酸化物は、一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)から選択される少なくとも一つ以上を含むものであってよい。
【0018】
前記一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)の重量比は、1:1~1:20であってよい。
【0019】
前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒は、担体;および前記担体に担持されたルテニウム酸化物を含むものであってよい。
【0020】
前記担体は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、およびこられの組み合わせからなる群から選択される担体を含むものであってよい。
【0021】
前記成形触媒は、前記担体に担持された金属酸化物をさらに含むものであり、前記金属酸化物は、下記化学式1で表される金属酸化物を含むものであってよい。
【0022】
[化学式1]
MO2
【0023】
前記化学式1中、Mは、Ti、CeまたはZrである。
【0024】
前記担体100重量部に対して、前記ルテニウム酸化物の含有量は1重量部~10重量部であり、前記金属酸化物の含有量は0.5重量部~10重量部であってよい。
【0025】
前記成形触媒は、粉末、粒子、ペレット、およびこられの組み合わせからなる群から選択される形態からなるものであってよい。
【0026】
前記成形触媒がペレット形態の場合、前記ペレットの直径は1mm~10mmであってよい。
【0027】
前記塩素の製造方法による塩素の収率は、下記数学式1で計算される空時収量(STY)が1.35以上であってよい。
【0028】
【0029】
前記数学式1中、反応時間は50時間(hr)である。
【0030】
前記成形触媒は、前記数学式1で計算される空時収量(STY)が1.45以上であるものであってよい。
【0031】
前記塩化水素および混合ガスの投入流量は、50mL/min~200mL/minであってよい。
【0032】
前記塩化水素および混合ガスの反応は、280℃~380℃の温度で行われてよい。
【0033】
また、本発明の他の一側面は、
前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法であって、担体に金属酸化物を担持させる段階;および前記金属酸化物が担持された担体にルテニウム前駆体を担持させる段階;を含む塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法を提供する。
【0034】
前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法は、前記ルテニウム前駆体を担持させる段階;その後、前記担体を乾燥および焼成させる段階;をさらに含んでよい。
【0035】
前記乾燥は、50℃~150℃の温度で3時間行われ、前記焼成は、300℃~700℃の温度で2時間~6時間行われてよい。
【発明の効果】
【0036】
以上のような本発明に係る塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法は、炭素酸化物を含む混合ガスで塩化水素の酸化反応を行うことにより、酸素単独下で酸化反応を行う場合に比べて、塩化水素の酸化反応活性が改善され、高収率で塩素の製造が可能となる。
【0037】
また、前記酸化反応に使用される触媒は、塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程で発生するルテニウム酸化物の焼結現象を解決し、長時間の触媒運転にもかかわらず、最初の触媒活性を維持することができる。
【0038】
さらに、前記触媒は、塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程でペレット形態の触媒として提供され、これらが工程過程で粉砕されないように高い機械的強度を提供することができる。
【0039】
最後に、前記触媒は、高い触媒活性および耐久性を提供し、反応器の形態、運転条件などに左右されず、使用に制約がなく、取り扱いにおいて容易さを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実施することができ、ここで説明する実施例によって本発明が限定されるものではなく、本発明は後述する特許請求の範囲によって定義されるだけである。
【0041】
加えて、本発明で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含む。本発明の明細書全体において、ある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0042】
本願の第1側面は、
塩化水素酸化反応工程用成形触媒を反応器に充填させる段階;および前記反応器に塩化水素および混合ガスを投入して反応させる段階;を含み、
前記混合ガスは、酸素および炭素酸化物を含むものである塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法を提供する。
【0043】
本発明に係る具体的な説明をする前に、前記炭素酸化物は一般的に触媒の被毒物質として、塩化水素酸化反応中feed内に存在できる不純物(impurity)の一つであり得る。即ち、塩化水素酸化反応において、一般的な触媒を使用する場合、前記炭素酸化物は、酸化反応を阻害する要素として作用するものであってよい。しかし、本発明に係る塩化水素酸化反応工程用成形触媒を使用すると、塩化水素酸化反応において不純物として作用できる炭素酸化物が、かえって塩素の収率を高めることができる添加剤として作用することができる。
【0044】
以下、本願の第1側面に係る塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法を段階別に詳細に説明する。
【0045】
まず、本願の一実現例において、前記塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法は、塩化水素酸化反応工程用成形触媒を反応器に充填させる段階;を含んでよい。
【0046】
本願の一実現例において、前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒は、担体;および前記担体に担持されたルテニウム酸化物を含むものであってよい。この時、前記担体は、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよびこられの組み合わせからなる群から選択される担体を含むものであってよく、好ましくはチタニアを含むものであってよい。
【0047】
本願の一実現例において、前記チタニア担体は、例えば、アナターゼ型チタニアまたはルチル型チタニア、非晶質チタニアまたはこられの混合物が使用可能である。また、チタニア担体は、アルミナ、ジルコニアまたは酸化ニオブなどの酸化物を含むことができる。好ましくはルチル型チタニアが提供され、例えばサカイ社のチタニアが提供されるが、これに制限されない。一方、前記チタニア担体の比表面積は、通常使用されるBET法によって測定することができ、比表面積は5~300m2/g、好ましくは5~50m2/gを提供することができる。比表面積が前記範囲を超えると、ルテニウム酸化物の熱安定性確保に困難があり、前記範囲未満では分散安定性の低下および触媒活性も低下する問題が発生し得る。
【0048】
また、前記アルミニウム担体は、好ましくはアルファ-アルミナが提供される。この時、前記アルファ-アルミナは、低いBET比表面積を有するため、他の不純物の吸収が起きにくいという点で好ましい。一方、前記アルミニウム担体の比表面積は、10~500m2/g、好ましくは20~350m2/gが提供される。
【0049】
さらに、前記ジルコニア担体は0.05~10μm範囲の細孔を有するものであり、比表面積は、前記と同様である。
【0050】
本願の一実現例において、前記成形触媒は、前記担体に担持された金属酸化物をさらに含むものであり、前記金属酸化物は、下記化学式1で表される金属酸化物を含むものであってよい。
【0051】
[化学式1]
MO2
【0052】
前記化学式1中、Mは、Ti、CeまたはZrでありうる。即ち、前記金属酸化物は、チタニア(TiO2)、セリア(CeO2)またはジルコニア(ZrO2)であってよく、こられの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含むものであってよい。
【0053】
本願の一実現例において、前記金属酸化物は、好ましくはセリアおよびジルコニアであってよく、前記セリアおよびジルコニアの重量含有量比は、1:0.5~1:1であってよく、好ましくは1:1であってよい。前記セリアおよびジルコニアの重量含有量比が、前記数値を満たす場合、これを含む塩化水素酸化反応工程用成形触媒が優秀な機械的強度および触媒の耐久性を有して長時間の触媒運転に適するものであり得る。
【0054】
本願の一実現例において、前記金属酸化物は、その前駆体の形態で提供されるものであってよい。例えば、セリウム前駆体の場合、錯塩の形態で存在が可能で、セリウム化合物、特に硝酸セリウム、酢酸セリウムまたは塩化セリウムなどの金属塩を含むものであってよい。好ましくは硝酸セリウムを含むものであってよく、前駆体形態で担体に含浸された後、乾燥および焼成段階を経て最終成形触媒として提供されるものであってよい。
【0055】
本願の一実現例において、前記担体100重量部に対して、前記ルテニウム酸化物の含有量は1重量部~10重量部であり、前記金属酸化物の含有量は0.5重量部~10重量部であってよい。
【0056】
本願の一実現例において、前記成形触媒は、粉末、粒子、ペレット、およびこられの組み合わせからなる群から選択される形態からなるものであってよく、好ましくはペレット形態からなるものであってよい。この時、前記成形触媒がペレット形態の場合、前記ペレットの直径は1mm~10mmであってよい。
【0057】
次に、本願の一実現例において、前記塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法は、前記反応器に塩化水素および混合ガスを投入して反応させる段階;を含んでよい。
【0058】
本願の一実現例において、前記炭素酸化物は、一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)から選択される少なくとも一つ以上を含むものであってよい。この時、好ましくは、前記炭素酸化物は、一酸化炭素(CO)を単独で使用するものであってよく、一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)を共に使用する場合、これらの重量比は1:1~1:20であってよい。一方、本発明の一実施例によると、前記一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)の重量比は、約1:6~1:7であってよい。
【0059】
本願の一実現例において、前記塩化水素100重量部に対する前記混合ガスの含有量は、50重量部~150重量部であってよく、本発明の一実施例によると、約100重量部であってよい。また、前記混合ガスは、酸素および炭素酸化物を含むものであってよく、前記混合ガス全体100重量部に対する前記炭素酸化物の含有量は、0.1重量部~10重量部であってよく、好ましくは0.1重量部~5重量部であり、本発明の実施例によると、1重量部~4重量部であってよい。前記炭素酸化物の含有量が、前記混合ガス全体100重量部に対して0.1重量部未満の場合、炭素酸化物の投入による本発明特有の高収率塩素の製造が不可能である場合もあり、10重量部超の場合、かえって炭素酸化物が不純物として作用して触媒性能を低下させることがある。
【0060】
本願の一実現例において、前記塩素の製造のための反応は、固定相方式または流動相方式、気相反応などが提供され、好ましくは気相反応が提供される。前記塩化水素酸化反応は、平衡反応であり、あまりにも高温で行われる場合、平衡転換率が低下するため、比較的低温で行うことが好ましい。この時、前記反応温度は通常100℃~500℃であり、好ましくは280℃~380℃である。また、反応圧力は通常0.1MPa~5MPa程度であってよい。
【0061】
また、塩化水素の供給速度は、触媒1L当たりのガス供給速度(L/h;0℃、1気圧換算)、即ちGHSVで表すことができ、通常10~20000h-1程度であり得る。但し、この時、投入される触媒の量は、主に温度、触媒の量および製造される塩素生成物の量によって若干の変更が可能である。好ましくは、前記塩化水素および混合ガスの投入流量は、50mL/min~200mL/minであり、本発明の一実施例によると、約100mL/minであってよい。
【0062】
本願の一実現例において、前記塩素の製造方法による塩素の収率は、下記の数学式1で計算される空時収量(STY)が1.35以上であってよく、好ましくは1.45以上である。
【0063】
【0064】
前記数学式1中、反応時間は50時間(hr)であってよい。即ち、前記塩素の製造方法は、炭素酸化物を含む混合ガス下で反応を行うため、空時収量(STY)が高い値を有し、これにより、製造される塩素が高収率で収得されることを確認することができる。
【0065】
本願の第2側面は、
前記本願の第1側面による塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法であって、担体に金属酸化物を担持させる段階;および前記金属酸化物が担持された担体にルテニウム前駆体を担持させる段階;を含む塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法を提供する。
【0066】
本願の第1側面と重複する部分については詳細な説明を省略したが、本願の第1側面について説明した内容は、第2側面でそれの説明が省略されたとしても同一に適用されることができる。
【0067】
以下、本願の第2側面に係る前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法を段階別に詳細に説明する。
【0068】
まず、本願の一実現例において、前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法は、金属酸化物の担持の前に前記担体を成形させる段階;を含んでよい。
【0069】
本願の一実現例において、前記担体は、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよびこられの組み合わせからなる群から選択される担体を含むものであってよく、好ましくはチタニアを含むものであってよい。
【0070】
本願の一実現例において、前記担体の成形は、担体に有機バインダー、無機バインダーおよび水を混合して成形させることによって行われてよい。前記のように成形された担体は、固定層反応器に適用可能であり、反応器の形態、運転条件などに左右されず、使用に制約がなく、取り扱いが容易なものになる。特に、固定層反応器に適用するにあたり、差押発生なしに使用が可能であり、触媒活性を高め、熱的安定性を強化して向上した耐久性および機械的強度を提供することができる。
【0071】
本願の一実現例において、前記有機バインダーは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、精製デンプン、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレングリコール、パラフィン、ワックスエマルジョン、微結晶ワックス、およびこられの組み合わせからなる群から選択される物質を含むものであってよく、前記有機バインダーを含むことにより、担体の成形性が向上することができる。
【0072】
本願の一実現例において、前記無機バインダーは、アルミナゾル(alumina sol)、シリカゾル(silica sol)、チタニアゾル(titania sol)、ジルコニアゾル(zirconia sol)、およびこられの組み合わせからなる群から選択される物質を含むものであってよく、前記無機バインダーを含むことにより、担体の機械的物性が向上することができる。
【0073】
次に、本願の一実現例において、前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法は、担体に金属酸化物を担持させる段階;を含んでよい。
【0074】
本願の一実現例において、前記金属酸化物は、下記化学式1で表される金属酸化物を含むものであってよい。
【0075】
[化学式1]
MO2
【0076】
前記化学式1中、Mは、Ti、CeまたはZrであり得る。即ち、前記金属酸化物は、チタニア(TiO2)、セリア(CeO2)またはジルコニア(ZrO2)であってよく、こられの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物を含むものであってよい。
【0077】
本願の一実現例において、前記金属酸化物は、その前駆体の形態で提供されるものであってよい。例えば、セリウム前駆体の場合、錯塩の形態で存在が可能であり、セリウム化合物、特に硝酸セリウム、酢酸セリウム、または塩化セリウムなどの金属塩を含むものであってよい。好ましくは硝酸セリウムを含むものであってよく、前駆体形態で担体に含浸された後、乾燥および焼成段階を経て最終成形触媒で提供されるものであってよい。
【0078】
次に、本願の一実現例において、前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法は、前記金属酸化物が担持された担体にルテニウム前駆体を担持させる段階;を含んでもよい。
【0079】
本願の一実現例において、前記ルテニウム前駆体は、好ましくはハロゲン化物で提供され、最も好ましくは塩化物を含む塩化ルテニウムで提供される。また、前記ルテニウム前駆体は、場合によっては、ルテニウム前駆体の水和物として提供されてよい。
【0080】
本願の一実現例において、前記ルテニウム前駆体は、粉末形態で溶媒中に混合することができ、溶媒には固体担体が懸濁されて沈殿体を形成して固体担体に沈積されて担持されるものであり得る。前記沈積時提供される温度は、0℃~100℃、好ましくは0℃~50℃であり、その圧力は通常適用される0.1MPa~1MPa、好ましくは大気圧で提供される。前記担持は、空気雰囲気下、または窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガス雰囲気下で行われてよく、この時、水蒸気を含むものであってよい。好ましくは不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0081】
本願の一実現例において、前記ルテニウム前駆体が溶解される溶媒は、水、アルコール、ニトリル、およびこられの組み合わせからなる群から選択される溶媒を含むものであってよい。この時、前記水は、蒸溜水、イオン交換数、または超純水(DIW)などの高純度水が使用されてよく、前記水に不純物が含まれる場合、不純物が触媒に付着して製造される触媒の活性を低下させることができる。前記アルコールの場合、有機溶媒はモノアルコールであってよく、C3以上の1次アルコールであってよい。好ましくはC3アルコール系有機溶媒が使用され、最も好ましくは1-プロパノールが使用される。前記溶媒は、高い濡れ性(wettability)と疎水性(hydrophobicity)を活用してヒドロキシ基(-OH)が存在するチタニア担体の外表面にだけルテニウム成分を担持することができ、チタニア成形担体または粉末担体表面に担持されるルテニウムの分散度を向上させる効果を提供するものであってよい。さらに、前記溶媒の含有量は、特に制限はないが、多過ぎる場合、乾燥時間が多くかかるので、当業者レベルで自由に調節できる。
【0082】
次に、本願の一実現例において、前記塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造方法は、前記担体を成形させる段階;前記金属酸化物を担持させる段階;および/または担体にルテニウム前駆体を担持させる段階;その後、それぞれ前記担体を乾燥および焼成させる段階;をさらに含んでもよい。
【0083】
本願の一実現例において、前記担体は、乾燥および焼成を行って最終成形担体で完成されるものであってよい。この時、前記乾燥および焼成は、必要に応じて択一的に行われ、その順序や回数が自由に調節可能である。
【0084】
本願の一実現例において、前記乾燥は、50℃~150℃の温度で3時間~5時間行われてよい。前記乾燥は、回転および攪拌を通じて行われてよく、具体的に乾燥容器を振動させたり、容器中に備えられた攪拌機を利用して行われてよい。一方、前記乾燥温度は、通常室温~100℃程度であってよく、圧力は通常適用される0.1~1MPa、好ましくは大気圧が提供される。
【0085】
本願の一実現例において、前記焼成は、300℃~700℃の温度で2時間~6時間行われ、以後室温で冷却させて進行する。また、前記焼成に提供される酸化性気体は、例えば酸素を含む気体であってよい。この時、酸素濃度は、通常適用される1~30容量%程度が提供されてよい。酸素源としては、一般的に空気や純粋な酸素が提供され、必要に応じて不活性ガスや水蒸気がさらに含まれてもよい。前記酸化性気体は、好ましくは空気が提供され、空気の流れ下の電気炉で約350℃の温度および3時間の焼成後、室温で冷却することができる。
【0086】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実施することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0087】
製造例.塩化水素酸化反応工程用成形触媒の製造
チタニア粉末(SAKAI社)20g、セルロース系有機バインダー(YUKEN社)0.4g、TiO2ゾール(SAKAI社)2.5gおよびDIW 9.0gを均一に混合して作った練りものを圧出した成形担体を100℃のオーブンで4時間乾燥した。乾燥された成形担体を2mm~3mm間隔で切った後、600℃の電気炉で3時間焼成してTiO2成形担体を完成した。
【0088】
その後、硝酸セリウム水和物(Kanto社)1.3gと塩化ジルコニウム水和物(Kanto社)1.3gをDIW 6.0gに同時に溶解した前駆体溶液を前記TiO2成形担体に含浸させた後、100℃のオーブンで4時間乾燥させた。乾燥された成形担体を600℃の電気炉で3時間焼成して、セリア含有量が2.5%、ジルコニア含有量が2.5%の成形担体を収得した。
【0089】
次に、塩化ルテニウム水和物(KOJIMA)0.8gをDIW 6.0gに溶解した前駆体溶液を前記収得した成形担体20gに含浸させた後、100℃のオーブンで4時間乾燥した。
【0090】
最終的に、乾燥された成形担体を350℃の電気炉で3時間焼成して、ルテニウム酸化物含有量が2.6%、セリア含有量が2.5%、ジルコニア含有量が2.5%の成形触媒を収得した。
【0091】
実施例1.塩化水素酸化反応による塩素の製造(1wt%CO/99wt%O2)
前記製造例で収得した成形触媒1.35gをニッケル反応管(外径1inchチューブ)に充填した。前記反応管に触媒層を300℃の温度に加熱し、常圧下で塩化水素50wt%および混合ガス(1wt%CO/99wt%O2)50wt%をそれぞれ100mL/minの速度で供給し、50時間反応を行って塩素を製造した。
【0092】
実施例2.塩化水素酸化反応による塩素の製造(2wt%CO/98wt%O2)
前記実施例1で混合ガスの構成を2wt%CO/98wt%O2にしたことを除いては、同じ方法を使用して塩素を製造した。
【0093】
実施例3.塩化水素酸化反応による塩素の製造
(0.4wt%CO/2.6wt%CO2/97wt%O2)
【0094】
前記実施例1で混合ガスの構成を0.4wt%CO/2.6wt%CO2/97wt%O2にしたことを除いては、同じ方法を使用して塩素を製造した。
【0095】
比較例.塩化水素酸化反応による塩素の製造(100wt%O2)
前記実施例1で混合ガスの構成を100wt%O2にしたことを除いては、同じ方法を使用して塩素を製造した。
【0096】
実験例.塩素の収率測定
前記実施例および比較例により製造される塩素の収率を測定するために、反応開始50時間後の時点で、反応管の出口の気体を15%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることにより、サンプリングを10分間行った。続いて、ヨウ素適正法で塩素の生成量を測定し、下記の数学式1により塩化水素の収率を計算した。また、その結果を下記の表1に示した。
【0097】
【0098】
【0099】
前記表1に示すように、本発明の実施例により混合ガスとして炭素酸化物を使用する場合、酸素単独で使用する比較例に比べて、塩素の収率が高くなることを確認することができた。
【0100】
従って、本発明により混合ガスの添加物としてCOおよび/またはCO2を使用する場合、同じ反応温度および空間速度で向上した塩素収率を示すことを確認することができた。
【0101】
以上、図面を参照して好ましい実施例と共に本発明について詳細に説明したが、これらのような図面と実施例で本発明の技術的思想の範囲が限定されるものではない。従って、本発明の技術的思想の範囲内で多様な変形例または均等な範囲の実施例が存在することができる。従って、本発明に係る技術的思想の権利範囲は、特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、これと同等または均等な範囲内の技術思想は、本発明の権利範囲に属するものと解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のような本発明に係る塩化水素の酸化反応による塩素の製造方法は、炭素酸化物を含む混合ガスで塩化水素の酸化反応を行うことにより、酸素単独下で酸化反応を行う場合に比べて、塩化水素の酸化反応活性が改善され、高収率で塩素の製造が可能になる。
【0103】
また、前記酸化反応に使用される触媒は、塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程で発生するルテニウム酸化物の焼結現象を解決し、長時間の触媒運転にもかかわらず、最初触媒活性を維持することができる。
【0104】
さらに、前記触媒は、塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程でペレット形態の触媒で提供され、これらが工程過程で粉砕されないように高い機械的強度を提供することができる。
【0105】
最後に、前記触媒は、高い触媒活性および耐久性を提供し、反応器の形態、運転条件などに左右されず、使用に制約がなく、取り扱いにおいて容易さを提供する。
【国際調査報告】