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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】人工歯根、人工骨及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20240122BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240122BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240122BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
B33Y70/00
B33Y80/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544272
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2022001190
(87)【国際公開番号】W WO2022164146
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0010770
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0009112
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523275581
【氏名又は名称】エイオン シーオー エルティディ
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン グック
(72)【発明者】
【氏名】キム、タック ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソウ、サン ミン
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA02
4C159AA26
4C159AA30
(57)【要約】
本明細書は、人工歯根及び人工歯根を3Dプリンティングで製作する方法を開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック成分を含み、
多数の流体チャネルが形成された、
人工歯根。
【請求項2】
前記人工歯根は内部体と外部体とから構成され、
前記流体チャネルは、内部体より外部体に多く形成された請求項1に記載の人工歯根。
【請求項3】
前記外部体は多数のレイヤから構成され、
前記内部体に接した第1外部体より前記人工歯根の表面を形成する最外郭外部体にさらに多くの流体チャネルが形成された請求項2に記載の人工歯根。
【請求項4】
前記セラミック成分は正方晶系ジルコニアを含み、
アルミナ、ヒドロキシアパタイト及びトリカルシウムホスフェートの少なくとも1つをさらに含む請求項1に記載の人工歯根。
【請求項5】
前記人工歯根は内部体と外部体とから構成され、
前記外部体はアルミナ、ヒドロキシアパタイト及びトリカルシウムホスフェートの少なくとも1つを前記内部体より多く含む請求項1に記載の人工歯根。
【請求項6】
セラミック成分を含み、
アルミナ、ヒドロキシアパタイト及びトリカルシウムホスフェートの少なくとも1つを含む人工歯根。
【請求項7】
前記人工歯根は内部体と外部体とから構成され、
前記外部体はアルミナ、ヒドロキシアパタイト及びトリカルシウムホスフェートの少なくとも1つを前記内部体より多く含む請求項6に記載の人工歯根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工歯根、人工骨及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック素材は、医療用インプラント、人工骨、人工歯などのバイオメディカル分野だけでなく、構造、環境及びエネルギーなどの多様な分野で広範囲に使われている高付加価値素材である。一般的に、セラミック粉末を液状(高分子など)と混合してセラミックスラリー(slurry)、ペースト(paste)、または生地(dough)の形態に製造し、これを多様な成形技術を利用して3次元的形状を有する部品素材として製造する。
【0003】
今日、セラミック素材を製造できる多様なセラミックベースの3Dプリンティング技術が開発されており、具体的には、熱で溶解される固体プラスチック素材を糸のように引き出して少しずつ溶解させながら積層するFDM(Fused Deposition Modeling)方式、光硬化樹脂にレーザー光を注射して注射された部分が硬化する原理を利用したSLA(Stereo Lithography Apparatus)方式、SLA方式において光硬化樹脂の代わりに機能性高分子または金属粉末を使用してレーザー光線を注射して焼結して成形する原理を利用したSLS(Selective Laser Sintering)方式、光硬化樹脂が保存された保存槽の下部に光を照射して部分的に硬化する原理を利用したDLP(Digital Light Processing)方式などがある。
【0004】
このうち、光硬化3Dプリンティング方式は、光硬化素材が含まれた複合物にUVまたは可視光線領域の光を選択的に照射して2次元面を積層する積層技術により複雑な形状を製造する方式であって、他の3Dプリンティング技術に比べて技術成熟度が相対的に低い。これは高品質のセラミック構造物を成形するためにセラミックの含量が高いながらも、3Dプリンティングに適した流動性(flowability)を有する高充填光硬化性セラミックスラリーを製造しにくいためであり、特に、セラミックの含量が高くなるにつれてスラリーの粘度が急激に高くなって流動性が低くなる問題が存在する。また、光硬化3Dプリンティング方式において、2次元面を積層する時に顔料の含量が多くなると、造形物のレイヤ(layer)間の層間接着が弱くなる恐れがあるため、造形物の形成が難しくなる可能性がある。
【0005】
また、歯科のインプラント治療は歯槽骨(歯茎の骨)にドリリングした後、ねじ状のチタン素材のフィクスチャーを外科的に植立するため、歯槽骨に炎症が発生する可能性があり、歯槽骨壊死が発生する恐れもある。
【0006】
また、チタン系合金を使用するため、低い審美性、低い生体適合性、チタン溶出及びチタンに対する過敏反応に関する問題点が発生する。このような問題点を解決するために、チタン系フィクスチャー分野では工程を通じて表面照度を制御するか、表面にセラミックをコーティングして低い生体適合性を改善し、骨生成を誘導している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、業界でのアプローチよりは、ネジ形状のフィクスチャー形態と、チタン素材が持っている根本的な問題に対する改善が必要である。本明細書においては、前述の問題を解決するために実形状のセラミック人工歯根を代案として提示する。
【0008】
また、本発明が解決しようとする技術的課題は以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は下記の記載から本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の問題を解決するための一実施例による人工歯根は、セラミック成分を含み、多数の流体チャネルが形成されることができる。前記人工歯根は内部体と外部体とから構成され、前記流体チャネルは内部体より外部体にさらに多く形成されてもよい。前記外部体は多数のレイヤで構成され、前記内部体に接した第1外部体より前記人工歯根の表面を形成する最外郭外部体にさらに多くの流体チャネルが形成されてもよい。前記セラミック成分は正方晶系ジルコニアを含み、アルミナ、ヒドロキシアパタイト及びトリカルシウムホスフェートのうち少なくとも1つをさらに含んでもよい。前記人工歯根は内部体と外部体とから構成され、前記外部体はアルミナ、ヒドロキシアパタイト及びトリカルシウムホスフェートの少なくとも1つを前記内部体より多く含んでもよい。
【0010】
また、他の実施例による人工歯根はセラミック成分を含み、アルミナ、ヒドロキシアパタイト及びトリカルシウムホスフェートの少なくとも1つを含んでもよい。前記人工歯根は内部体と外部体とから構成され、前記外部体はアルミナ、ヒドロキシアパタイト及びトリカルシウムホスフェートの少なくとも1つを前記内部体より多く含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示による人工歯根はセラミック素材からなる点から、チタン素材に比べて歯槽骨に対する優れた生体適合性を示し、チタン素材より優秀な審美性を示す。
【0012】
また、本開示による人工歯根は歯槽骨と自然結合ができるという点から、歯槽骨との結合のためのネジ線を表面に構成する必要もなく、単純に既存の歯根が除去された歯槽骨の内部の空洞に人工歯根を挿入するだけで良いという点から外科的侵襲を最小化できるという効果も有する。
【0013】
また、本開示は、前記のような効果を示す人工歯根を3Dプリンタで製作できる方法を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】人工歯根の個別実施例を説明する図である。
図2】人工歯根の個別実施例を説明する図である。
図3】人工歯根の個別実施例を説明する図である。
図4】人工歯根の個別実施例を説明する図である。
図5】人工歯根の個別実施例を説明する図である。
図6】人工歯根の個別実施例を説明する図である。
図7】人工歯根を製作するための3Dプリンティング方法の個別実施例を説明する図である。
図8】人工歯根を製作するための3Dプリンティング方法の個別実施例を説明する図である。
図9】人工歯根を製作するための3Dプリンティング方法の個別実施例を説明する図である。
図10】人工歯根を製作するための3Dプリンティング方法の個別実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」又は「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や段階、構成要素又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0016】
また、本発明において、各層又は要素が各層又は要素の「上に」又は「の上に」形成されると言及される場合は、各層又は要素が直接各層又は要素の上に形成されることを意味するか、他の層又は要素が各層間、対象体、機材上に追加的に形成できることを意味する。
【0017】
発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示し、下記で詳細に説明しようとする。しかしながら、これは発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0018】
本明細書は、人工歯根、人工骨に適用可能なセラミック素材とそれを利用して人工歯根、人工骨を生成する方法を開示する。例えば、本明細書で開示された内容から歯科インプラント治療のための人工歯根を製造することができる。以下、人工歯根を例にして説明するが、以下の説明は人工骨に対しても適用できる。
【0019】
一実施例において、人工歯根はセラミック素材で製造されてもよい。一実施例において、歯科インプラントの治療が必要な患者の実際の歯根から3D形状データを取得し、これを利用して3Dプリンティング方法で該当歯根に対するセラミック人工歯根をカスタマイズ製作することができる。
【0020】
また、実形状のセラミック人工歯根は複数のレイヤで構成されてもよい。例えば、外部応力に耐えられる 曲げ強度を有する内部体と、人の歯槽骨に植立された後、歯槽骨と接合されるために歯槽骨との接合性に優れ、骨形成に有利な気孔及び/又はチャネルを有する外部体とから構成される。ここで、気孔とチャネルは流体チャネルを形成することができる。内部体と外部体は素材を互いに異ならせるか、同じ素材で構成されても素材の密度や配合比を互いに異ならせてもよい。例えば、内部体が外部体よりさらに密になるように、人工歯根は傾斜構造で製造されてもよい。以下、実施例を挙げて本開示による人工歯根を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、一実施例による人工歯根の構成を示す図である。一実施例において、人工歯根は単一素材で緻密に構成されてもよい。例えば、人工歯根は正方晶系ジルコニア(ZrO2)(3Y-ZrO2)の単一素材からなってもよい。ここ及び以下の説明において参照される正方晶系ジルコニアには、イットリアが含まれてもよい。例えば、正方晶系ジルコニアは3mol%イットリアが含まれた部分安定化ZrO2(3Y-ZrO2)でありうる。
【0022】
または、人工歯根は、アルミナ(Al2O3)、ヒドロキシアパタイト(HAP)及び/又はトリカルシウムホスフェート(TCP)を少なくとも1つ含む正方晶系ジルコニア複合体で構成されてもよい。例えば、セラミック人工歯根は、正方晶系ジルコニア単独構成、または、正方晶系ジルコニア-アルミナ複合体、正方晶系ジルコニア-TCP複合体、正方晶系ジルコニア-HAP複合体、正方晶系ジルコニア-アルミナ-TCP複合体、正方晶系ジルコニア-アルミナ-HAP複合体、正方晶系ジルコニア-TCP-HAP、及び/又は正方晶系ジルコニア-アルミナ-TCP-HAP複合体などの正方晶系ジルコニア複合体から構成されてもよい。
【0023】
ジルコニア及びアルミナは機械的特性に優れ、体内に移植された時に異物反応がないか少なく、生体活性セラミック素材に比べて機械的特性に優れているため、荷重がかかる人工関節、補綴治療に使われており、安定性が確保された素材である。正方晶系ジルコニア-アルミナ複合体は正方晶系ジルコニアに比べて破壊靭性に優れ、比重が低い長所を有する。TCPとHAは生体活性バイオセラミックで、生体不活性バイオセラミックであるZrO2、Al2O3と複合化により、人工歯根が歯槽骨に植立された後、人工歯根が歯槽骨と接触して強い結合ができるようにする。
【0024】
人工歯根が単一素材からなる場合、人工歯根を構成する素材の相対密度最小値は97%になるよう制限されてもよい。または、人工歯根の曲げ強度は200MPaから1200MPaの間の値を有するように素材の相対密度が制限されてもよい。
【0025】
ここで、相対密度が97%以上であるとは、構成素材(様々な素材が構成されても関係ない)の相対密度を意味する。ここで、相対密度97%は理論密度と比較して測定された密度が3%低いことを意味する。セラミックにおいて密度が低いと機械的特性が低下するため、相対密度が高いことが外部応力に対する抵抗に有利である。ここで、相対密度は素材の測定された密度を素材の理論密度で割ることにより計算できる。ここで、理論密度は素材が有している理論的な密度(その素材が有している固有の特性)である。ここで、密度の測定対象は見かけ密度または体積密度であり得る。
【0026】
一方、人工歯根が多孔性構造を有するか、チャネル構造を有するように製作されてもよい。このような人工歯根表面の多孔性構造及び/又はチャネル構造に歯槽骨から流入する骨生成物質が流入して充填されることにより、多孔性構造及び/又はチャネル構造は歯槽骨に対する人工歯根の生体適合性及びその間の骨形成に役立つことになる。
【0027】
このために、例えば、歯槽骨と接する部分での骨形成と接合のために人工歯根の表面には多孔性構造が形成される。表面の多孔性構造は気孔の役割を果たす。そして、このような気孔が人工歯根表面から内側に連続的に形成されることにより、所定のチャネル構造を形成することができる。
例えば、人工歯根内に骨形成物質が流入できるように、多孔性構造は所定のチャネル構造を形成することができる。例えば、スキャフォールド構造またはジャイロイド構造のようなチャネル構造が人工歯根に形成される。この適用は、人工歯根3Dモデルをスキャフォールド構造やジャイロイド構造で3次元モデリングを行うことにより実現できる。単一素材、単一構造の場合、人工歯根に気孔/チャネルを実現するために、表面だけでなく、人工歯根の全体に同じ程度で多孔性構造が形成されることができる。
【実施例2】
【0028】
図2は、他の一実施例による人工歯根の構成を示す図である。人工歯根は複数のレイヤで構成されてもよい。例えば、外部応力に耐えられる曲げ強度を有する内部体と、人の歯槽骨に植立された後に歯槽骨と接合されるために歯槽骨との接合性に優れ、骨形成に有利な気孔及び/又はチャネルを有する外部体とから構成される。
【0029】
例えば、内部体には気孔やチャネルが形成されず、外部体には気孔やチャネルが形成されることができる。このために、外部体は同じ素材で構成されても素材の密度や配合比を互いに異ならせることができる。
例えば、内部体が外部体よりさらに密になるように、人工歯根は傾斜構造で製造されてもよい。例えば、内部体の相対密度最小値は97%になるように制限されてもよい。または、内部体の曲げ強度は200MPaから1200MPa間の値を有するように素材の相対密度が制限されてもよい。外部体の相対密度は内部体より低い値を有してもよい。または、外部体の曲げ強度は内部体より低くてもよい。例えば、内部体は実施例1での素材を使用するものの、高強度を示すために気孔率が0.1%以下であってもよい。そして、内部体に接した第1外部体は内部体と同じ素材を使用するものの、気孔率は5%であってもよい。そして、第1外部体に接した第2外部体は内部体と同じ素材を使用するものの、気孔率は10%であってもよい。
このような方式で内部から外表面に行くほど外部体の気孔率が5%ずつ漸進的に増加する。一実施例において、表面に接した最外郭外部体の気孔率は30%に制限されてもよい。ここで、漸進的増加率5%は一例に過ぎず、漸進的増加率は所定のパーセントが選択されて使用されてもよい。
【0030】
内部体の面積は、人工歯根の断面を基準に最小50%(例えば、外部体が比重が高い場合)から最大100%(例えば、外部体が存在しない場合)を占めることができる。内部体の面積が人工歯根の断面を基準に50%より少ない場合、咀嚼時に発生する応力によりクラックが発生する可能性がある。内部体の面積は人工歯根の断面を基準に50%である場合、外部体の多孔性構造は人工歯根の断面を基準に最大50%まで適用できる。
【実施例3】
【0031】
図3は、他の実施例による人工歯根を示す図である。一実施例による人工歯根は内部体と外部体の複数のレイヤで構成され、生体適合性を確保するために多孔性構造ではなく傾斜機能素材で構成されてもよい。
【0032】
例えば、内部体は正方晶系ジルコニア及び/又はジルコニア複合体(例えば、前述のアルミナ、HAP、TCPなどが含まれた複合体)で構成されてもよい。ただし、外部体は、HAPやTCPが含まれたジルコニア複合体で構成されてもよい。
【0033】
さらに、内部体は曲げ強度を達成するためにHAPやTCPの含量を所定の含量に制限されてもよい。そして、外部体は歯槽骨接合性のために所定の含量以上に制限されてもよい。
【0034】
一実施例において、内部体はHAPの含量が10wt%以下(または未満)になるように制限される。そして、外部体はHAPの含量が10wt%超過(または以上)になるように制限される。さらに、内部体に向き合う外部体の内側部分のHAP含量より人工歯根の表面を構成する外部体の外側部分のHAP含量をより高くして所定の傾斜機能を実現するように人工歯根が製作されてもよい。
図4を参照して説明すると、内部はZ(401)素材で形成され、内部に接する第1外部体はZA1(402)素材で形成され、第1外部体に接する第2外部体はZA2(403)素材で形成され、第2外部体に接して表面素材を成す第3外部体はZA3(404)素材で形成される。
【0035】
傾斜素材としてTCPが利用される場合、同じ方法で、内部体はZH1(405)素材で形成され、内部体に接する第1外部体はZH2(406)素材で形成され、第1外部体に接する第2外部体はZH3(407)素材で形成され、第2外部体に接して表面素材を成す第3外部体はZH4(408)素材で形成される。
【0036】
一方、図4に示すように、適正曲げ強度を224MPa以上に制限するためにHAP及び/又はTCPの最大含量は40wt%を超えないように制限されてもよい。例えば、表面部分での外部体のHAP及び/又はTCPの最大含量は40wt%を超えないように制限されてもよい。または、適正曲げ強度(例えば、折れ強度)を200MPa以上に制限するための含量にHAP及び/又はTCPの最大含量が制限されてもよい。
一実施例において、適正曲げ強度を200MPa以上に制限するためにHAP及び/又はTCPの最大含量は40wt%を超えないように制限されてもよい。他の一実施例において、適正曲げ強度を300MPa以上に制限するためにHAP及び/又はTCPの最大含量が制限されてもよい。他の一実施例において、適正曲げ強度を400MPa以上に制限するためにHAP及び/又はTCPの最大含量は30wt%を超えないように制限されてもよい。
【0037】
さらに、アルミナが使用される場合、内部体へのアルミナの含量は少なくとも0wt%であり、このような場合、内部体は正方晶系ジルコニアのみで構成される。そして、外部体の最大アルミナ含量は50wt%であり得る。さらに、外部体レイヤ間でのアルミナ含量は、表面に近い外部体(例えば、最外郭外部体)のレイヤに対して最も高い含量を有するように傾斜構造で形成されることもできる。
【0038】
アルミナと共に傾斜素材が使われる場合、アルミナと傾斜素材の含量は前述の説明に従って適用できる。例えば、正方晶系ジルコニア-アルミナ-HAP複合体の場合、アルミナは0~50wt%、HAPは0~30wt%の範囲で使用できる。例えば、内部体は正方晶系ジルコニア100wt%、アルミナ0wt%、HAP0wt%から構成される。そして、第1外部体は正方晶系ジルコニア80wt%、アルミナ10wt%、HAP10wt%で構成される。そして、最外郭外部体は正方晶系ジルコニア20wt%、アルミナ50wt%、HAP30wt%で構成されることもできる。
【0039】
他の例として、正方晶系ジルコニア-アルミナ-TCP複合体の場合、アルミナは0~50wt%、TCPは0~30wt%の範囲で使用できる。例えば、内部体は正方晶系ジルコニア100wt%、アルミナ0wt%、TCP0wt%で構成される。そして、第1外部体は正方晶系ジルコニア80wt%、アルミナ10wt%、TCP10wt%で構成される。そして、最外郭外部体は正方晶系ジルコニア20wt%、アルミナ50wt%、TCP30wt%で構成されることもできる。
【実施例4】
【0040】
図5は、他の実施例による人工歯根を示す図である。一実施例による人工歯根は内部体と外部体の複数のレイヤで構成され、外部体は生体適合性を確保するために多孔性構造を有する傾斜機能素材で構成される。
【0041】
例えば、前述の実施例3のように、内部体は正方晶系ジルコニア及び/又はジルコニア複合体(例えば、前述のアルミナ、HAP、TCPなどが含有された複合体)から構成されてもよい。ただし、外部体はHAPやTCPが含まれたジルコニア複合体で構成されてもよい。さらに、本実施例による人工歯根は、外部体に実施例2のように多孔性構造も含まれて製作されてもよい。
【0042】
これによる例示が図6に示されている。素材組成による人工歯根の傾斜構造が図6の(a)に示され、これは実施例3による人工歯根の一例を示す。そして、気孔率による人工歯根の傾斜構造が図6の(b)に示され、これは実施例2による人工歯根の一例を示す。一方、図6の(a)と図6の(b)の特性を全て示す人工歯根は、実施例4の一例としてHAPを傾斜構造に採択し、気孔率を傾斜構造に適用した人工歯根モデルでありうる。
【0043】
<製造方法>
前述したように、本開示による人工歯根は歯根内に所定の内部構造が存在する。このような点で、既存の金型や切削加工方式ではセラミック素材の実形状人工歯根を製作しにくい側面がある。
【0044】
従って、カスタマイズ実形状の人工歯根を製作するためにセラミック3Dプリンティング技術を適用することができる。このために、3Dモデリングにより人工歯根表面の形状及び構造を制御することができる。
【0045】
一実施例において、3Dプリンティング方法で実際の人の歯根形状と同一の人工歯根を製造することができる。セラミックスラリー素材に対する3Dプリンティングのための基本概念が図7ないし図9に示されている。図7は、光開始剤(Photoinitiator)によりモノマー(Monomer)とオリゴマー(Oligomer)との間に架橋が生じる原理を開示する。図8は、このような概念を利用してセラミック3Dプリンティングを行う3Dプリンタの動作概念図を示す。
【0046】
図8の3Dプリンタは、ステージ810、水槽820及び光照射部830から構成される。水槽820にはセラミックスラリーが収容されることができる。水槽820の底とステージ810の下面の間の空間が所定の空間(例えば、3Dプリンティング実行の1単位である1つのセラミックスライドを形成する空間)を形成するようにステージ810は下降し、前記所定の空間に残留したセラミックスラリーは光源831と反射部832を介して水槽820に照射される硬化光により硬化される。これにより、1単位のセラミックスライドが形成され、このような過程を数回繰り返して3Dプリンティングが行われる。
図8は、ステージの下面に3Dプリンティング物が下方に積層されていくボトムアップ式(bottom-up)3Dプリンターを示しているが、図9のようにステージにスライドが積層されながらステージが水槽に浸かるトップダウン式(top-down)3Dプリンターを適用することもできる。トップダウン式3Dプリンターが適用される場合、図10のように、既に成形された人工歯根に外部体を追加で付加できるという長所がある。
図10は、内部体1310の外部に外部体1320がトップダウン式で積層される例を示す。図10のように、ステージ1110の上部に既に生成された内部体1310が位置する。ステージ1110が水槽の下面に下降することにより、内部体1310の下面から水槽内スラリー1210に浸かることができる。内部体1310の下面から浸かりながら外部体1320に対応するスラリー表面1322に硬化光が照射されることにより、外部体1320に対するプリント実行の1単位である1つのセラミックスライドが生成される。ステージ1110の下降と外部体1320に対応するスラリー表面1322の硬化が繰り返されることにより、内部体1310に接する外部体1320が3Dプリンティング方法で生成されることができる。
【0047】
一方、前述した「スラリー(slurry)」は一般的に高濃度の懸濁物質を含む流動性の少ない液体状態を意味するもので、ペースト(paste)及び生地(dough)状態を含む意味として理解されなければならない。
【0048】
まず、本発明の実施例によるセラミックスラリー組成物は、セラミック粉末、光硬化性バインダー、分散剤及び光硬化開始剤の少なくとも1つを含んでもよい
【0049】
セラミック粉末は3Dプリンティングを利用して構造物を製作する時に主材となるもので、本発明の一実施例によるセラミックは、実施例1~4で前述したように、正方晶系ジルコニア及び/又はアルミナ(Al2O3)、ヒドロキシアパタイト(HAP)及び/又はトリカルシウムホスフェート(TCP)を少なくとも1つ以上含む正方晶系ジルコニア複合体でありうる。一方、本発明においてセラミック粉末はスラリー組成物全体重量を基準に60~90wt%で含まれてもよい。
【0050】
また、前記セラミック粉末は、セラミック粉末全体組成を基準に2ないし8mol%のイットリア(Y)で安定化させたもの、詳しくは、3ないし5mol%のイットリア(Y)で安定化させたものが使用される。前記mol%範囲のイットリアでセラミック粉末を安定化させる場合、ジルコニア粉末などを顆粒(granule)形態で製造できるようになり、このような顆粒形態の場合、粉末に比べてスラリー組成物内に相対的に多い量のセラミック成分を含有させることができるので、積層時に密度を高めることができる。ただし、安定化に使われるイットリア(Y)の量が増加するほど最終的に製造される出力物の曲げ強度が低下する問題がありうるので、前記mol%範囲内で安定化させることが好ましい。
【0051】
光硬化性バインダーは、前記セラミック粉末間の接着力を形成して成形体及び構造体形成を助ける役割を果たすもので、光硬化性モノマー及び光硬化性オリゴマーの混合物でありうる。
【0052】
具体的には、光硬化性バインダーとして低収縮性モノマーのみを含む場合、フィルム付着性が強い反面、金属付着性が弱いため、後述するSLA/DLP方式の3Dプリンティングを使用する時、硬化層生成後にプラットフォーム上昇と同時に硬化層とフィルムを分離する過程で硬化層がフィルムに残留する問題が発生する可能性がある。このため、脆性が弱くて成形後の後工程時に問題が発生するなど成形体及び構造体の製造過程上に問題が発生し、オリゴマーのみを使用する場合、オリゴマー自体の粘度により高含量のセラミック粉末を含有しにくいため、充填密度を高めることが難しいという問題がある。
【0053】
これにより、本発明の一実施例による光硬化性バインダーは、光硬化性モノマー8ないし25重量部対光硬化性オリゴマー2ないし15重量部比、詳しくは、光硬化性モノマー10ないし16重量部対光硬化性オリゴマー3ないし9重量部比で混合された混合物であってもよく、前記のような重量部比で混合された組成を有する場合、モノマーないしオリゴマー間の適正水準(level)の結合を有するようになり、SLA/DLP方式の3Dプリンティング工程時に硬化層生成後のプラットフォーム上昇にも硬化層がフィルムに残留する問題を防止すると同時に、高い水準の充填密度を確保できるようになる。
【0054】
また、本発明において光硬化性バインダーは官能基(functional group)を2つ以下に含むものであってもよい。具体的に、光硬化性バインダーを構成するモノマー及びオリゴマーにおいて官能基が1つである場合、隣接するモノマー及びオリゴマーの間で一般的に線形(linear)結合を形成し、官能基が2つである場合、一般的に分枝(branched)結合を形成する。一方、官能基が3ついし4つである場合は架橋(cross-linked)結合が形成され、官能基が5つ以上である場合は網状(network)結合を形成することになる。
【0055】
一例として、本発明のスラリー組成物において、光硬化性バインダーを構成するモノマー及びオリゴマーの官能基が3つ以上である場合、架橋結合ないし網状結合が形成されることによりモノマーないしオリゴマー間の結合密度が顕著に高くなり、特にUV照射時に硬化して固相化する場合、収縮が発生してレイヤ(layer)間の密着が低下する問題がある。
【0056】
これにより、本発明で使用される光硬化性バインダーは、光硬化性モノマー及び光硬化性オリゴマーの少なくとも1つを含んでもよい。この時、光硬化性モノマー及び光硬化性オリゴマーの少なくとも1つは官能基を2つ以下に含んでもよい。例えば、一実施例による光硬化性バインダーは、2官能モノマー及び2官能オリゴマーを含んで構成されるか、1官能モノマー及び2官能オリゴマーを含んで構成されるか、2官能モノマー及び1官能オリゴマーを含んで構成されてもよい。これにより、UV照射時の光硬化収縮率を最小化することにより、最終出力物に優れた曲げ強度(Flexural Strength)を発現させる一方、層間接着力を向上させ、最終的に製造される出力物の構造的安定性を確保することができる。
【0057】
より詳しくは、前記光硬化性モノマーは、1官能モノマー及び2官能モノマーのうち選択される1種以上であってもよい。
【0058】
一例として、1官能モノマーである場合、ステアリルアクリレート(Stearyl Acrylate)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tetrahydrofufuryl Acrylate)、ラウリルアクリレート(Lauryl Acrylate)、エトキシレート(n)ノニルフェノールアクリレート(Ethoxylate(n)Nonyl Phenol Acrylate)、イソデシルアクリレート(Isodecyl Acrylate)、シクロアリファティックアクリレート(Cycloaliphatic Acrylate)、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(Methoxy polyethylene glycol monoacrylate)、アルコキシレートフェノールアクリレート(Alkoxylated phenol Acrylate)、トリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート(Triethylene glycol ethyl ether Methacrylate)、カプロラクトンアクリレート(Carproprolactone Acrylate)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(Polypropylene glycol Monomethacrylate)、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート(Cyclic trimethylolpropane formal Acrylate)、フェノキシベンジルアクリレート(Phenoxy benzyl Acrylate)、3,3,5-トリメチルサイクロヘキシルアクリレート(3,3,5‐trimethyl cyclohexyl Acrylate)、イソボルニルアクリレート(Isobornyl Acrylate)、イソボニルメタクリレート(Isobornyl Metacrylate)、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(4‐ert‐butylcyclohexyl acrylate)、ベンジルアクリレート(Benzil Acrylate)、ビフェニルメチルアクリレート(Biphenylmethyl Acrylate)、フェノール(EO)nアクリレート(Phenol(EO)n Acrylate)、フェノキシエチルメタクリラート(Phenoxyethyl Methacrylate)、N,N-ジメチルアクリルアミド(N,N-Dimethyl acrylamide)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0059】
他の一例として、2官能モノマーである場合、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-Hexanediol diacrylate)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(1,6-Hexanediol dimethacrylate)、1,6-ヘキサンジオール(EO)nジアクリレート(1,6-Hexanediol(EO)n Diacrylate)、アルコキシレイテッドヘキサンジオールジメタクリレート(Alkoylated hexanediol diacrylate)、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(1,4-Butanediol Dimethacrylate)、ビスフェノールA(EO)nジアクリレート(Bisphenol A(EO)n Diacrylate)、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(Cyclohexane dimethanol diacrylate)、エトキシレートビスフェノールAジメタクリレート(Ethoxylated bisphenol A dimethacrylated)、ジエチレングリコールジアクリレート(Diethylene glycol diacrylate)、トリプロピレングリコールジアクリレート(Tripropylene glycol diacrylate)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(Neopentyl glycol diacrylate)、ジプロピレングリコールジアクリレート(Dipropylene glycol diacrylate)、プロポキシレート(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(Propoxylated(2)neopentyl glycol diacrylate)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Tricyclodecane dimethanol diacrylate)、1,3ブチレングリコールジメタクリレート(1,3 Butylene glycol dimethacrylate)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(Hydroxy pivalic acid neopentyl glycol Diacrylate)、ネオペンチルグリコール(PO)nジアクリレート(Neopentylglycol(PO)n Diacrylate)、エチレングリコールジメタクリレート(Ethylene glycol Dimethacrylate)、トリエチレングリコールジアクリレート(Triethylene glycol Diacrylate)及びトリエチレングリコールジメタクリレート(Triethylene glycol Dimethacrylate)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0060】
前記の光硬化性オリゴマーは、2つ以下の官能基を有するオリゴマーを含んでもよい。例えば、ウレタンオリゴマー(例えば、ウレタンアクリレート)、リン酸基を含むオリゴマー(例えば、リン酸変性アクリレート)、カルボン酸基を含むオリゴマー(例えば、カルボン酸変性アクリレート)、及びエポキシオリゴマー(例えば、エポキシアクリレート)からなる群から選択される1種以上のオリゴマーを含んでもよい。前記のようなオリゴマーは特にSLA/DLP方式が混在した3Dプリンティングにおいて金属(メタル)素材として使われるプラットフォーム(プリントベッド)に高い接着力を確保できるようにする。一方、光硬化性オリゴマーとしてウレタンオリゴマーのみを使用する場合、金属との接着性が低下して硬化層とフィルムを分離する過程で硬化層がフィルムが残留する問題が発生しうる。これにより、ウレタンオリゴマーを使用する場合、バインダーは金属接着性の高い酸性基を含むオリゴマーまたはエポキシオリゴマーをさらに含んでもよい。ここで、酸性基を含むオリゴマーは、リン酸基を含むオリゴマー(例えば、リン酸変性アクリルレート)またはカルボン酸基を含むオリゴマー(例えば、カルボン酸変性アクリルレート)であり得る。
【0061】
一方、本発明の一実施例において、前記光硬化性モノマー及び光硬化性オリゴマーを含む光硬化性バインダーは、組成物全体重量を基準に10~40wt%であってもよい。
【0062】
分散剤はセラミック粉末(フィラー)の分散及び再凝集を防止してセラミック粉末が製品に十分に含まれるようにする役割を果たし、当該技術分野において一般的な分散剤を選択して使用することができ、一例として、酸性グループを有する共重合体化合物及びリン酸基及びアミン基を有するポリエステル/ポリエーテル(polyester/polyether)系化合物からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。一方、本発明の実施例において、使用される分散剤は組成物全体重量を基準に1~5wt%であってもよい。
【0063】
光開始剤は紫外線やLED照射時に光を吸収してラジカル形態で発光させてモノマーとオリゴマー間の結合を可能にすることにより固体状のポリマーにする役割を果たすものであり、特に、3Dプリンタにおいて光源としてはLEDを使用できるため、波長範囲が370~420nmの光開始剤が使用されることもできる。
【0064】
一方、本発明において、スラリー組成物がレイヤ(layer)当たり15μm以下の厚さの薄膜を積層するためのものである場合(例えば、10ないし15μm)、光硬化開始剤は360nm未満の波長、一例として、250ないし360nm波長を有する短波長開始剤、中波長開始剤またはこれらの混合物から選択される1種以上を含んでもよい。
【0065】
本発明の一実施例による短波長開始剤又は中波長開始剤は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1-hydroxyclohexyl phenyl ketone)、ベンゾフェノン(Benzophenone)、4-メチルベンゾフェノン(4-Metylbenzophenone)、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド(4-Benzoyl-4'-Methyldiphenylsulfide)、メチルフェニルグリオキシレート(Methyl phenylglyoxylate)、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート(Methyl o-benzoylbenzoate)、ベンジルジメチルケタール(Benzil dimethyl ketal)、4-フェニルベンゾフェノン(4-phenylbenzophenone)、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート(2-Ethylhexyl-4-Dimethylaminobenzoate)、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート(Ethyl-4-Dimethylaminobenzoate)、ヒドロキシ-2-メチルフェニル-プロパン-1-オン(Hydroxy-2-methylphenyl‐propane‐1‐one)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(2-Benzyl-2-(dimethylamino)-1-[4-(morpholinyl)phenyl]-1-butanone)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モホリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン(2-Dimethylamino-2-(4-methyl-benzyl)-1-(4-morpholin-4-yl-phenyl)butan-1-one)、オリゴ[2―ヒドロキシ2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン](Oligo[2-hydroxy-2-methyl-1-[4-(1-methylvinyl)phenyl] propanone])、2―ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(2-hydroxy-2-methyl-1-phenyl propan-1-one)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0066】
一方、本発明において、スラリー組成物がレイヤ(layer)当たり15μm超過厚さの薄膜(厚膜)を積層するためのものである場合(例えば、20μm)、光硬化開始剤は360nm以上、詳しくは360ないし450nmの波長を有する長波長開始剤を含んでもよい。
【0067】
本発明の一実施例による長波長開始剤は、イソプロピルチオキサントン(Isopropylthioxanthone)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(4,4’-Bis(diethylamino)benzophenone)、2,4-ジエチルチオキサントン(2,4-diethylthioxanthone)、2,4,6-トリメチルベンゾフェニルホスフィンオキシド(2,4,6-Trimethylbenzoyl-diphenyl phosphine oxide)、ホスフィンオキシド(Phosphine oxide)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Bis(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phenylphosphineoxide)、ビス-(エタ5-2,4,-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル]チタン(Bis-(eta 5-2,4-cyclopentadien-1-yl)-Bis[2,6-difluoro-3-(1H-pyrrol-1-yl)-phenyl]titanium)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0068】
一方、前記のように薄膜(または厚膜)の厚さに応じて開始剤の種類を異ならせる場合、厚さに応じる硬化速度及び硬化能の調節が最適化されるので、優れた層間接着力を確保できるようにする効果がある。本発明の一実施例による光硬化開始剤は、組成物全体重量を基準に0.01ないし1wt%であってもよい。
【0069】
以上で説明した本発明によるセラミックスラリー組成物は、3Dプリンティング、特にSLA/DLP方式が混在した3Dプリンティングにおいてセラミック充填密度を高めると同時に、光硬化収縮率を最小化して200ないし1000MPa範囲の優れた曲げ強度(Flexural Strength)を発現させることができ、層間接着力を向上させ、構造的安定性を確保することができる。
【0070】
特に、本発明によるセラミックスラリー組成物は官能基(functional group)を2つ以下に含む光硬化性モノマー及びオリゴマーを使用するものの、その組成及び種類を最適化して光硬化性バインダーとして使用することにより、特に、SLA/DLP方式が混在した3Dプリンティング出力物において適切な流動性と高い層間密着、そして500MPa以上の高い曲げ強度(Flexural Strength)、優れた構造的安定性を発現させることが容易である。
【0071】
以下、発明の具体的な実施例により発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例として提示されたものであり、これにより発明の権利範囲がいかなる意味にも限定されるものではない。
【0072】
<製造例1ないし19>
以下の表1ないし4のような成分及び組成比でセラミックスラリー組成物を次のように製造した。具体的に、モノマーに光開始剤を混合した後、攪拌機において300rpm以上で2時間攪拌して光開始剤を完全に溶解させ、これにバインダー(オリゴマー及び/又は分散剤)を混合した後、200rpm以上で30分間攪拌した。最後に、これにセラミック粉末を混合し、ペーストミキサーを利用して1500rpmで10分間撹拌することにより、セラミックスラリー組成物を完成した。
【0073】
一方、前記セラミックスラリー組成物は、SLA/DLP方式が混在した3Dプリンティング方式で積層して3D構造体として製作された。一方、前記SLA/DLP方式は、図8に開示されたように、プリントベッド、前記プリントベッドの下端に位置する少なくとも1つの水槽を含む水槽部、前記水槽を移動させる水槽移動手段、前記水槽の下端に位置する光照射部、及び前記水槽移動手段を制御して前記水槽を移動させる制御部を含む3Dプリンタを利用して以下のような工程を経ることであってもよい(図8参照)。
【0074】
STEP1:水槽のフィルム上に浅いスラリー層を形成する。この時、プラットフォーム(プリントベッド)と水槽間の距離はスラリー層を作れるほど十分に離隔される。
STEP2:1つの積層物を硬化させるためにプラットフォームを下降させてプラットフォームとフィルムの間の間隔を1mm程度にし、プラットフォームとフィルムの間にはSTEP1でのスラリーが位置する。
STEP3:フィルムを透過するUVをフィルムの下端から照射してスラリーを硬化させることにより1つの硬化層を形成する。
STEP4:1つの硬化層を形成した後、プラットフォームを上に上昇させて硬化層とフィルムを分離する。
STEP5:前記STEP1ないし4を繰り返して実施する。
【0075】
【表1】
【0076】
前記表1の結果はセラミック種類を異ならせるか、セラミック含量を異ならせて製造した例であり、製造例4を除いた残りの製造例においては全て200MPa以上の曲げ強度を確保することが確認できた。
【0077】
【表2】
【0078】
前記表2の結果は、光開始剤の種類を異ならせるか、光開始剤含量を異ならせて製造した例であり、製造例10を除いた残りの製造例においては全てレイヤの厚さに関係なく十分な硬化度を確保し、また200MPa以上の曲げ強度を確保することが確認できた。
【0079】
【表3】
【0080】
前記表3の結果はモノマー官能基の個数が異なる素材を配合して製造した例で、製造例13及び14を除いた残りの製造例においては全て200MPa以上の曲げ強度を確保することが確認できた。
【0081】
【表4】
【0082】
前述の実施例1ないし19において、曲げ強度は、製作された製品をプラットフォームから分離して洗浄した後、焼結してから測定された屈曲強度である。洗浄はアルコールを使用して手動及び半自動方式で行われ、脱脂は500℃温度で2時間行い、以後、緻密化のために1500℃温度で2時間焼結して製造した。前記表4の結果は特殊オリゴマー使用有無による製造例であり、製造例19を除いた残りの製造例においては十分なプラットフォーム接着力を確保すると同時に、全て200MPa以上の曲げ強度を確保することが確認できた。特に、製造例19の場合、正常出力ができず積層結果物がプラットフォームに付着しておらず、水槽のフィルムに一部のみが付いているため、不良に該当することが確認できた。
【0083】
【表5】
前記表5の結果は、特殊オリゴマー使用量に応じる製造例であり、製造例22、23、25及び26のように酸性基を含むオリゴマーは液状バインダー(前述の光硬化性バインダーに相当する)中で8.5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは11.14%以上含まれている場合には十分なプラットフォーム接着力を確保するとともに、全て200MPa以上の曲げ強度を確保することが確認できた。そして、エポキシ基を含むオリゴマーは液状バインダーの中に14%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは16.7%以上含まれた場合に十分なプラットフォーム接着力を確保するとともに、全て200MPa以上の曲げ強度を確保することが確認できた。
例えば、表5の実施例において、液状バインダー中にリン酸変性アクリレートが8.4%含まれた製造例20においてはプラットフォーム接着力が不足しているが、液状バインダー中にリン酸変性アクリレートが11.14%含まれている製造例22においてはプラットフォーム接着力に優れていることが確認できる。液状バインダー中にエポキシアクリレートが13.9%含まれている製造例24においてはプラットフォーム接着力が不足しているが、液状バインダー中にエポキシアクリレートが16.7%含まれた製造例25においてはプラットフォーム接着力に優れていることが確認できる。液状バインダー中に特殊オリゴマーの配合比は下記の数式により計算できる。
【0084】
[数1]
液状バインダー中の特殊オリゴマーの配合比=特殊オリゴマー含量/液状バインダー含量
【0085】
前記数1においての液状バインダー含量は、下記の数式のように液状スラリーを製造するために使用されるバインダーの総和で計算できる。
【0086】
[数2]
液状バインダー含量=モノマー含量+オリゴマー含量
【0087】
表5の実施例の場合、前記数2においてモノマーはTHFAであってもよい。そして、オリゴマーはウレタンアクリレート、リン酸変性アクリレート、カルボン酸変性アクリレート及びエポキシアクリレートであってもよい。これにより、前記数2は以下のように使用できる。
【0088】
[数3]
液状バインダー含量=THFA含量+ウレタンアクリレート含量+リン酸変性アクリレート含量+カルボン酸変性アクリレート含量+エポキシアクリレート含量
【0089】
前記数式1における特殊オリゴマー含量は、酸性基を含むオリゴマーとエポキシを含むオリゴマーの含量で決定できる。例えば、表5の実施例の場合、特殊オリゴマー含量は下記の数式のように計算できる。
【0090】
[数4]
特殊オリゴマー含量=リン酸変性アクリレート含量+カルボン酸変性アクリレート含量+エポキシアクリレート含量
【0091】
本発明は、図面に示された実施例を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、本技術分野の通常の知識を有する者であればこれから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は添付の登録請求範囲の技術的思想により定められなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本明細書は、人工歯根を製作するための方法を開示する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】