(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響の低減方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
G01B11/00 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544410
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2021118791
(87)【国際公開番号】W WO2022156249
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202110084779.X
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511281796
【氏名又は名称】中国科学院微電子研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】李▲ジン▼
(72)【発明者】
【氏名】楊光華
(72)【発明者】
【氏名】丁敏侠
(72)【発明者】
【氏名】馮磊
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA07
2F065BB02
2F065BB28
2F065CC17
2F065DD03
2F065FF01
2F065FF04
2F065FF42
2F065FF48
2F065GG00
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL42
2F065MM02
2F065PP22
2F065QQ31
(57)【要約】
位相格子の設計値と加工精度に従って非対称性の変化範囲を決定し、次に非対称性格子構造を決定するステップと、非対称性格子シミュレーションモデルを確立するステップと、前記非対称性格子構造を前記非対称性格子シミュレーションモデルに入力し、非対称性変化の範囲内で各回折次数の位置誤差曲線をシミュレーションするステップと、得られた各回折次数の位置誤差の差異に従って、各回折次数の重みを決定し、非対称性変化の影響を低減するステップとを含む位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響を低減する方法である。本発明で提出された方法は、格子の形状を測定する必要はなく、加工精度に応じて格子の非対称性変化の範囲を決定するだけで、その範囲における非対称性変化による位置測定精度に対する影響を低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響を低減する方法であって、
位相格子の設計値と加工精度に従って、非対称性の変化範囲を決定し、非対称性格子構造を決定するステップと、
非対称性格子シミュレーションモデルを確立するステップと、
前記非対称性格子構造を前記非対称性格子シミュレーションモデルに入力し、非対称性の変化範囲内の各回折次数の位置誤差曲線をシミュレーションするステップと、
得られた各回折次数の位置誤差の差異に応じて、各回折次数の重みを決定し、非対称性変化の影響を低減するステップと、を含む
位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響の低減方法。
【請求項2】
前記非対称性格子シミュレーションモデルを確立するステップが、
位相格子位置測定原理に従って、測定精度に対する非対称性の影響の計算式を導出することと、
スカラー回折理論に従って、非対称性格子モデルを確立して非対称性格子の回折フィールドを取得し、位置測定精度に対する非対称性の影響を計算式に従って取得することと、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
補正された位置誤差曲線を検証し、重みが決定された非対称性範囲内で全て有効であると決定することを含む検証ステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記位相格子位置測定原理は、
波長λの入射ビームが位相格子に対して垂直に入射され、各次数の回折ビームを生成し、光学モデルで+m番目の回折次数と-m番目の回折次数とに干渉を発生させ、
位相格子を走査することで周期的な測定信号を生成し、
測定信号から位相格子の位置情報を取得することである
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記測定精度に対する非対称性の影響の計算式は、
【数23】
であり、
ここで、Vは信号コントラスト、A
mは+m番目の回折次数の振幅、A
-mは-m番目の回折次数の振幅であり、Δx
mは位置誤差であり、Δφ
mは格子回折された後の位相であり、dは格子周期である
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記非対称性格子の回折フィールドを取得することは、まずトップ部チルト格子の回折フィールドを分析し、次に任意の非対称性格子の回折フィールドを導出する必要がある
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記トップ部チルト格子の回折フィールドは、
【数24】
のように表され、
ここで、hは格子リッジの中心の高さ、Δhは非対称高さ、fはl/dとして定義されるデューティ、dは格子周期、lは格子リッジ幅である
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非対称性格子モデルは、トップ部、底部、側壁、およびトップアングルの対称性を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記非対称性格子モデルのリッジは、それぞれG1、G2、G3、G4の4つの部分に分割され、前記非対称性格子の回折フィールドは、
【数25】
のように表され、
ここで、E
m
G1、E
m
G2、E
m
G3、及びE
m
G4は、それぞれG1、G2、G3、およびG4で構成される位相格子の回折フィールドであり、
【数26】
h
1、h
2、h
3、およびh
4は、それぞれG1、G2、G3、G4の格子リッジの高さを表し、x
1、x
2、x
3、x
4はそれぞれ各部の中心位置を表し、f
1、f
2、f
3、f
4はそれぞれG1、G2、G3及びG4のデューティを表す
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
非対称性位置誤差を低減するために、回折次数の重みベクトル{w
m}が位置誤差ベクトル{Δx
m}と直交し、w
mの和が1であることを保証する必要がある
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、集積回路、および精密測定の技術分野に関し、特に、位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位相格子の位置測定技術は、測定精度が高く、環境への影響が少ないという特徴があり、集積回路、精密加工、精密測定の分野で広く利用されている。この技術は、空間的にコヒーレントな光を使用して位相格子を照射し、各次数の回折ビームを生成し、+m番目の回折次数と-m番目の回折次数を干渉させ、位相格子を走査して、正弦波状に変化する測定信号を生成し、最終的に測定信号をフィッティングすることによって格子の位置情報を取得する。適用分野の継続的な発展、特に集積回路分野におけるテクノロジーノードの継続的な縮小に伴い、格子位置センサーの測定精度に対してより高い要求が提出されている。しかしながら、加工プロセス中およびその後の処理プロセスにおいて、特にエッチング、蒸着、化学機械研磨、および温度変化中の影響により、位相格子の構造が変化する。位相格子の位置測定の原理によれば、格子構造の非対称的な変化により、測定誤差が生じる。したがって、格子の非対称性による測定精度に対する影響を分析して、その影響を低減する必要がある。
【0003】
格子の非対称性による位置測定精度に対する影響を分析する場合、通常、走査型電子顕微鏡などの手段を使用して格子の形状を正確に測定し、厳密結合波法(RCWA)や時間領域差分法(FDTD)などのマクスウェル方程式を厳密に解くことによって非対称性格子の回折フィールドを計算し、非対称性による位置測定精度に対する影響を取得し、非対称性による位置測定精度に対する影響を低減する。ただし、格子マークが異なれば非対称性も異なり、そして、同じ格子マークでもクランプなどの要因により非対称性の変化が異なる場合もある。同時に、走査型電子顕微鏡は環境に対する要求が厳しく、測定速度が遅く、破壊性があり、マクスウェル方程式を厳密に解く方法は精度が高いが時間がかかる。したがって、この方法は非常に時間がかかり、費用も高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに踏まえて、本発明の主な目的は、上記の技術的問題の少なくとも1つを部分的に解決するために、位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響を低減する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様として、
位相格子の設計値と加工精度に従って、非対称性の変化範囲を決定し、非対称性格子構造を決定するステップと、
非対称性格子シミュレーションモデルを確立するステップと、
前記非対称性格子構造を前記非対称性格子シミュレーションモデルに入力し、非対称性の変化範囲内の各回折次数の位置誤差曲線をシミュレーションするステップと、
得られた各回折次数の位置誤差の差異に応じて、各回折次数の重みを決定し、非対称性変化の影響を低減するステップと、を含む位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響の低減方法を提供した。
【0006】
ここで、前記非対称性格子シミュレーションモデルを確立するステップが、
位相格子位置測定の原理に従って、測定精度に対する非対称性の影響の計算式を導出することと、
スカラー回折理論に従って、非対称性格子モデルを確立して非対称性格子の回折フィールドを取得し、位置測定精度に対する非対称性の影響を計算式に従って取得することと、を含む。
【0007】
ここで、前記方法は、補正された位置誤差曲線を検証し、重みが決定された非対称性範囲内で全て有効であると決定することを含む検証ステップとをさらに含む。
【0008】
ここで、前記位相格子位置測定原理は、波長λの入射ビームが位相格子に対して垂直に入射され、各次数の回折ビームを生成し、光学モデルで+m番目の回折次数と-m番目の回折次数とに干渉を発生させ、位相格子を走査することで周期的な測定信号を生成し、測定信号から位相格子の位置情報を取得することである。
【0009】
ここで、前記測定精度に対する非対称性の影響の計算式は、
【数1】
であり、
ここで、Vは信号コントラスト、A
mは+m番目の回折次数の振幅、A
-mは-m番目の回折次数の振幅であり、Δx
mは位置誤差であり、Δφ
mは格子回折された後の位相であり、dは格子周期である。
【0010】
ここで、前記非対称性格子の回折フィールドを取得することは、まずトップ部チルト格子の回折フィールドを分析し、次に任意の非対称性格子の回折フィールドを導出する必要がある。
【0011】
ここで、前記トップ部チルト格子の回折フィールドは、
【数2】
のように表され、
ここで、hは格子リッジの中心の高さ、Δhは非対称高さ、fはl/dとして定義されるデューティ、dは格子周期、lは格子リッジ幅である。
【0012】
ここで、前記非対称性格子モデルは、トップ部、底部、側壁、およびトップアングルの対称性を含む。
【0013】
ここで、前記非対称性格子モデルのリッジは、それぞれG1、G2、G3、G4の4つの部分に分割され、前記非対称性格子の回折フィールドは、
【数3】
のように表され、
ここで、E
m
G1、E
m
G2、E
m
G3、及びE
m
G4は、それぞれG1、G2、G3、およびG4で構成される位相格子の回折フィールドであり、
【数4】
h
1、h
2、h
3、及びh
4は、それぞれG1、G2、G3、G4の格子リッジの高さを表し、x
1、x
2、x
3、x
4はそれぞれ各部の中心位置を表し、f
1、f
2、f
3、f
4はそれぞれG1、G2、G3及びG4のデューティを表す。
【0014】
ここで、非対称性位置誤差を低減するために、回折次数の重みベクトル{wm}が位置誤差ベクトル{Δxm}と直交し、wmの和が1であることを保証する必要がある。
【0015】
上記の技術案に基づいてわかるように、本発明の位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響を低減する方法は、従来技術と比較して、少なくとも以下の有益な効果の一部を有する。
【0016】
本発明が提案した方法は、格子の形状を測定する必要がなく、加工精度に応じて格子の非対称性変化の範囲を決定するだけで、その範囲における非対称性変化による位置測定精度に対する影響を低減することができる。
【0017】
本発明が提案した方法は、強力なプロセス適応性を有する。プロセスが異なると非対称性が異なるため、同じシリコンウェーハ上の異なる位置での非対称性も一致ではないので、この方法では、変化の範囲に応じてこの範囲での非対称性変化による位置測定精度に対する影響を低減できる。
【0018】
本発明が提案した方法は、低コストで強力なリアルタイム性能を有する。この方法は、テストを完了するためにハードウェアを増やす必要がないので、電子走査レンズ及びプロセステスト検証等の手段による非対称性の測定を回避し、コストを削減でき、また非対称性の変化範囲をプロセス及び加工精度に応じて事前に決定でき、さらに位置測定精度に対する非対称性の影響を低減するため、強力なリアルタイム性能を有する。
【0019】
本開示およびその利点をより完全に理解するために、以下に添付図面を参照して併せて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明における位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響を低減する方法の概略フローチャートである。
【
図2】
図2は、非対称性格子構造を決定する概略図である。
【
図3】
図3は、1周期におけるトップ部チルト格子の構造の模式図である。
【
図4】
図4は、任意の非対称格子構造の概略図である。
【
図5】
図5は、マーキング構造の分解の概略図である。
【
図6】
図6は、トップ部チルト非対称性が[-30nm、30nm]の範囲で変化した場合の各回折次数の位置誤差を示す。
【
図7】
図7は、異なる回折次数の測定位置に重みを設定した後、トップ部チルトの非対称性が[-30nm、30nm]の範囲で変化したときの位置誤差曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的、技術案および利点をより明確にするために、以下、添付の図面を参照しながら、具体的な実施例を組み合わせて本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明は、位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響を低減する方法を提案した。この方法では、まず位相格子の設計値と格子加工範囲に従って格子の大まかな形状を決定し、次にスカラー回折理論に従って格子分析モデルを確立し、加工範囲内での測定精度に対する非対称性変化の影響を取得し、非対称性の変化に対する各回折次数の感度の違いにより、異なる回折次数の測定位置に重みを設定して、位置測定精度に対する非対称性の影響を低減する。この方法では、回折格子の形状を測定する必要はなく、加工精度に応じて格子の非対称性変化の範囲を決定するだけで、この範囲内の非対称性変化による位置測定精度に対する影響を低減ことができる。
【0023】
図1に示すように、これは位置測定精度に対する位相格子の非対称性の影響を低減する方法の概略フローチャートであり、次のステップが含まれる。
【0024】
1.非対称性格子構造の変化範囲を決定する
位相格子の設計値と加工精度に応じて、
図2に示すように非対称性の変化範囲を決定する。例えば、格子の設計周期d=16μmであり、溝深さh=200nmであり、格子リッジ幅fd=8μmである。加工精度より、格子がトップ部チルトの非対称性のみを持つと仮定すれば、トップ部チルトの非対称性範囲Δh∈[-30nm,30nm]であると決定される。
【0025】
2.非対称性格子シミュレーションモデルを確立する
まず、位相格子位置測定の原理に従って、測定精度に対する非対称性の影響の計算式を導出し、次に、スカラー回折理論に従って、非対称性格子モデルを確立し、非対称性格子の回折フィールドを取得し、更に計算式に従って位置測定精度に対する非対称性の影響を取得する。
【0026】
1)測定精度に対する非対称性の影響
位相格子位置センサーの原理は、波長λの入射ビームが位相格子に垂直に入射し、各次数の回折ビームを生成し、光学モジュールによって+m番目の回折次数と-m番目の回折次数を干渉させる。位相格子を走査することにより、周期的な測定信号が生成される。測定信号から位相格子の位置情報が得られる。
【0027】
位相格子の位置がx
0であり、入射ビームが単位振幅の平行ビームであり、初期位相が0であると仮定すると、+m番目の回折次数の複素振幅は次のようになる。
【数5】
ここで、A
mは+m番目の回折次数の振幅であり、φ
mは格子回折後の位相であり、dは格子周期であり、xは走査運動位置である。
【0028】
-m番目の回折次数の複素振幅は次のとおりである。
【数6】
ここで、A
-mは-m番目の回折次数の振幅であり、φ
-mは格子回折後の位相である。この場合、干渉光の強度は次のようになる。
【数7】
測定された信号のコントラストは次のようになる。
【数8】
【数9】
とすれば、格子の位置は次のようになる。
【数10】
【0029】
位相格子が対称格子である場合、A
m=A
-m且つφ
m=φ
-mであれば、式(5)は次のように表される。
【数11】
このとき、測定信号のコントラストVは1となり、格子位置x
0を正確に求めることができる。
【0030】
位相格子が非対称性格子である場合、A
m≠A
-m且つφ
m≠φ
-mであり、結果として位置誤差は次のようになる。
【数12】
【0031】
したがって、位相格子が非対称性格子である場合には、測定信号のコントラストVが低下するだけでなく、測定位置誤差も生じる。
【0032】
2)非対称性格子モデル
測定精度に対する非対称性の影響を分析するために、非対称性格子の回折フィールドの形式を取得する必要がある。この方法はスカラー回折理論に基づいており、まずトップ部チルト格子の回折フィールドを分析し、次に任意の非対称性格子の回折フィールドを推定する。
【0033】
A.トップ部チルト非対称回折フィールド
トップ部チルト非対称回折格子構造を
図3に示す。ここで、dは格子周期、lは格子リッジ幅、fはl/dとして定義されるデューティ、hは格子リッジの中心高さ、Δhは非対称性高さである。回折格子がx軸に沿って無限の数の周期を持ち、紙面に対して無限に垂直に伸びると仮定する。
【0034】
図3に示すような座標系を確立すると、格子構造は次のように表現される。
【数13】
ここで、nは正の整数である。格子の反射関数は次のように表すことができる。
【数14】
ここで、λは入射波長、rは格子材料の反射係数である。スカラー回折理論によれば、入射ビームが単位振幅の平面波である場合、m番目の回折次数の回折フィールドは次のように表すことができる。
【数15】
【0035】
式(9)を式(10)に代入すると、次のようになる。
【数16】
ここで、m≠0である。
【0036】
B. 非対称性格子回折フィールド
図4に示すように、非対称性格子Gが底部、側壁、およびトップアングルが非対称性であると仮定する。リッジ全体をG1、G2、G3、G4の4つの部分に分割し、各部分の中心位置をそれぞれx
1、x
2、x
3、x
4、幅をそれぞれf
1d、f
2d、f
3d、f
4dとする。
【0037】
フーリエ定理によれば、格子Gの回折フィールドE
m
Gは次のように表すことができる。
【数17】
このうち、E
m
G1、E
m
G2、E
m
G3、及びE
m
G4は、
図5に示すように、それぞれG1、G2、G3、G4で構成される位相格子の回折フィールドである。
【0038】
E
m
G1、E
m
G2、E
m
G3、及びE
m
G4はトップ部チルトマーカーの回折フィールドE
mから計算することができる。フーリエ並進定理によれば、E
m
G1、E
m
G2、E
m
G3、及びE
m
G4は次のように表すことができる。
【数18】
【0039】
式(11)と式(13)を式(12)に代入することで格子Gの回折フィールドEm
Gを算出することができる。同じ方法を使用して、任意の非対称性格子回折フィールドを取得でき、さらに式(4)と(7)を使用して信号コントラストVと位置誤差Δxを算出することができる。
【0040】
3.各回折次数の位置誤差をシミュレーションする
ステップ2の式に従って、
図7に示すように、トップ部チルト非対称性が[-30nm,30nm]の範囲で変化した場合の各回折次数の位置誤差をシミュレーションで求めることができる。これから、非対称性が変化すると、各回折次数の位置誤差に差が生じることが分かる。回折次数が大きいほど、その非対称性によって生じる位置誤差Δxは小さくなり、非対称性が大きいほど、各回折次数の位置誤差は大きくなる。
【0041】
4.各回折次数の重みを取得する
測定精度を向上させるためには、非対称性による位置誤差を制御する必要がある。式(7)から、位置誤差Δxが回折次数mの関数であるため、mが異なればΔxも異なることが分かる。したがって、その差異性に応じて、非対称性によるΔxを小さくすることができる。
【0042】
位置測定センサーが1~n番目の回折次数の測定信号を収集でき、各回折次数mの位置誤差がΔx
mであり、格子の実際の位置がx
0であると仮定すると、m番目の回折次数の測定結果は、
【数19】
のようになる。
【0043】
格子位置測定結果xを
【数20】
にすると、式(14)を式(15)に代入すると、次のようになる。
【数21】
【0044】
したがって、位置誤差がない場合、つまりx=x
0である場合に、次のことが必要である。
【数22】
【0045】
したがって、非対称性位置誤差を低減するには、回折次数の重みベクトル{wm}が位置誤差ベクトル{Δxm}と直交する必要があり、wmの和が1であることを保証する必要がある。この方法によれば、{wm}={0,0.0817,-0.8872,0.5107,1.2947}であり、m=1,3,5,7,9であると決定することができる。
【0046】
5.検証
この重みを使用した場合、補正された位置誤差を
図6に示す。トップ部チルトの非対称性が[-30nm、30nm]の範囲で変化する場合、最大位置誤差は4×10
-8nm未満であり、無視できる。
【0047】
上述した特定の実施例は、本発明の目的、技術案、有益な効果をさらに詳細に説明したが、上記の説明は本発明の具体な実施例に過ぎず、本発明を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の精神および原理の範囲内で、いかなる修正、同等の置換、改良等も本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】