(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】創傷治癒手段,その製造方法,及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61L 15/28 20060101AFI20240122BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20240122BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20240122BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240122BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/085 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/5575 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/60 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20240122BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240122BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240122BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240122BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240122BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240122BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240122BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240122BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20240122BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240122BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240122BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240122BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A61L15/28 100
A61L15/44 100
A61L15/26 100
A61K9/70 401
A61K47/36
A61K47/10
A61K31/196
A61K31/085
A61K31/4425
A61K31/5575
A61K31/60
A61K31/192
A61K31/495
A61K31/352
A61K31/353
A61K31/12
A61K31/496
A61K8/02
A61K8/86
A61K8/73
A61Q19/00
A61P17/02
A61P31/04
A61P37/00
A61P31/10
A61P35/00
A61P29/00
A61P31/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544589
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 CZ2022050006
(87)【国際公開番号】W WO2022161557
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507211897
【氏名又は名称】コンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スクフロヴコヴァ,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】コツィアノヴァ,アデラ
(72)【発明者】
【氏名】クノトコヴァ,カテリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレブニー,ヴラディミル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE23A
4C076EE37A
4C076FF70
4C081AA03
4C081CA181
4C081CC06
4C081CD081
4C081CE01
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4C083AD041
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4C083AD332
4C083BB51
4C083CC02
4C083DD12
4C083EE13
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC17
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4C086DA02
4C086DA17
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
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4C086NA20
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4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB32
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4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA28
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4C206DA18
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4C206DA22
4C206DA24
4C206FA31
4C206KA01
4C206KA04
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA20
4C206ZB11
4C206ZB13
4C206ZB26
4C206ZB32
4C206ZB33
4C206ZB35
(57)【要約】
本発明は,組み合わせると水溶液中で安定な機械的耐性ナノファイバー構造を形成する2種類のヒアルロン酸誘導体,HAの光硬化性誘導体及びHAの疎水化誘導体,又はこれらの薬学的に許容可能な塩をベースとするナノファイバー状担体から成る創傷治癒手段に関する。本発明は更に,このような手段の製造方法及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸誘導体をベースとする創傷治癒のための手段であって,以下を含むナノファイバー:
‐ 一般式Iのヒアルロン酸の架橋光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩であって,
式中,
R
1は独立してH又はCOCHCHフリルであり,
R
2はH
+又は薬学的に許容可能な塩であり,
その重量平均分子量は82,000g/mol~110,000g/molの範囲であり,その置換度は4~20%の範囲であり,
前記ヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも2つのエステル基は,
一般式IIのシクロブタン環を形成し,
式中,
R
3はフリルであり,
R
4はヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩の主鎖である,ヒアルロン酸の架橋光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩;
‐ 一般式IIIのヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩であって,
式中,
R
5はH又は‐C(=)C
12H
23であり,
R
6はH
+又は薬学的に許容可能な塩であり,
その重量平均分子量は300,000g/mol~350,000g/molの範囲であり,その置換度は65%~95%である,ヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩;並びに
重量平均分子量が300,000g/mol~900,000g/molの範囲の酸化ポリエチレン
から成ることを特徴とする手段。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の置換度は好ましくは5~10%の範囲,より好ましくは5%であり,
前記疎水化ヒアルロン酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の置換度は好ましくは65%~80%の範囲,より好ましくは73%であり,
前記酸化ポリエチレンの重量平均分子量は好ましくは400,000g/mol~600,000g/mol,より好ましくは600,000g/molである
ことを特徴とする請求項1記載の手段。
【請求項3】
前記ナノファイバーは更に,抗生物質,抗アレルギー剤,抗真菌剤,抗悪性腫瘍剤,抗炎症剤,抗ウイルス剤,抗酸化剤,診断薬,又は防腐剤,又は天然ヒアルロン酸もしくはその薬学的に許容可能な塩を含む群から選択される診断薬及び/又は生物学的活性剤から成る少なくとも1種の活性剤を含み,好ましくは,前記生物学的活性剤は:ジクロフェナク,トリクロサン,オクテニジン,ラタノプロスト,サリチル酸,没食子酸,フェルラ酸,イブプロフェン,ナプロキセン,セチリジン,ケルセチン,エピカテキン,クリシン,ルテオリン,クルクミン,シプロフロキサシンを含む群から選択される
ことを特徴とする請求項1又は2記載の手段。
【請求項4】
前記ヒアルロン酸の架橋光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は,ナノファイバーの総重量に対して15重量%~75重量%,より好ましくは45重量%~75重量%,最も好ましくは48重量%であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の手段。
【請求項5】
前記ヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は,ナノファイバーの総重量に対して15重量%~75重量%,より好ましくは45重量%~75重量%,最も好ましくは48重量%であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の手段。
【請求項6】
前記酸化ポリエチレンの含有量は,ナノファイバーの総重量に対して3.5重量%~10重量%の範囲,より好ましくは4重量%~5重量%の範囲,最も好ましくは4重量%であることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の手段。
【請求項7】
前記生物学的活性剤の含有量は,ナノファイバーの総重量に対して0.01~10重量%,好ましくは0.1~5重量%の範囲であることを特徴とする請求項3~6いずれか1項記載の手段。
【請求項8】
前記ナノファイバーの直径は100nm~1000nm,好ましくは250nm~500nmの範囲であることを特徴とする請求項1~7いずれか1項記載の手段。
【請求項9】
乾燥層の形態であり,面重量は1~100g/m
2の範囲,好ましくは1~20g/m
2の範囲,より好ましくは10~15g/m
2の範囲であることを特徴とする請求項1~8いずれか1項記載の手段。
【請求項10】
水溶液に浸漬してから少なくとも1時間後に吸収能は1000~3500%,より好ましくは1500~2500%の範囲にあることを特徴とする請求項1~9いずれか1項記載の手段。
【請求項11】
空隙率は,水溶液に浸漬してから72時間維持されることを特徴とする請求項1~10いずれか1項記載の手段。
【請求項12】
請求項1~11いずれか1項記載の手段の製造方法であって,水及び水混和性極性溶媒の混合液,一般式Iのヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩,一般式IIIのヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩,及び酸化ポリエチレンを含む紡糸溶液を静電紡糸してナノファイバーを形成し,形成したナノファイバーをUV範囲の波長の照射で架橋することにより光硬化させることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記紡糸溶液中の水分含有量は30~50体積%の範囲,より好ましくは50体積%であり,前記水混和性極性溶媒は紡糸溶液の総体積に対して50~70体積%の範囲,より好ましくは50体積%であることを特徴とする請求項12記載の手段の製造方法。
【請求項14】
前記紡糸溶液は好ましくは蒸留水及びイソプロピルアルコールを含むことを特徴とする請求項13記載の手段の製造方法。
【請求項15】
前記紡糸溶液は更に,少なくとも1種の生物学的活性剤を含むことを特徴とする請求項12~14いずれか1項記載の手段の製造方法。
【請求項16】
前記紡糸溶液中の乾燥物の重量濃度は2~5重量%,好ましくは3重量%であり,前記乾燥物中の
‐ ヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の重量含有率は15重量%~75重量%,より好ましくは45重量%~75重量%,最も好ましくは48重量%であり,
‐ ヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の重量含有量は15重量%~75重量%,より好ましくは45重量%~75重量%,最も好ましくは48重量%であり,
‐ 酸化ポリエチレンの重量含有量は4重量%~10重量%の範囲,より好ましくは4重量%~5重量%の範囲,最も好ましくは4重量%である
ことを特徴とする請求項12~15いずれか1項記載の手段の製造方法。
【請求項17】
前記乾燥物中の生物学的活性化合物の重量割合は0.01~10重量%,好ましくは0.1~5重量%の範囲であることを特徴とする請求項15又は16記載の手段の製造方法。
【請求項18】
UV照射による架橋を50~90分,好ましくは60分実施することを特徴とする請求項12~17いずれか1項記載の手段の製造方法。
【請求項19】
化粧品,医薬,又は再生医療,好ましくは創傷ケアで,又は外用もしくは内用のためのパッチの一部として使用するための請求項1~11いずれか1項記載の手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,組み合わせると水溶液中で安定な機械的耐性ナノファイバー構造を形成する2種類のヒアルロン酸誘導体,すなわち光硬化性ヒアルロン酸誘導体及び疎水化ヒアルロン酸誘導体,又はこれらの薬学的に許容可能な塩をベースとするナノファイバー状材料から成る創傷治癒手段に関する。本発明は更に,このような手段の製造プロセス及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ポリマー及び天然ポリマーはナノファイバー材料を調製するための基本材料として使用されている。通常,薄層の形態のナノファイバーは,様々な合成及び天然ポリマーから電界紡糸により調製できる。この方法,すなわちポリマー溶液の紡糸は先行して特許文献,例えば米国特許第4,043,331号及び第5,522,879号に記載されている。今日では,これらの材料は生物医学において広く使用されており,その応用分野には,例えば組織工学(米国特許第10,653,635号),薬物分布(スペイン国特許第2690483号),及び創傷治癒(国際公開WO2016059611号)がある。
【0003】
ナノファイバー材料の使用は局所用途,すなわち皮膚や軟部組織の損傷治療において特に有利であり,ナノファイバー材料の構造は,細胞外マトリクス内に一般的に存在する天然由来のコラーゲンにより形成される繊維構造に類似している。これらの局所用途,すなわち創傷被覆材に利用できる材料には様々な形態(例えば,ガーゼ,フィルム,発泡体)があるが,常に一定の基準を満たしていなければならない。理想的な被覆材は創傷を清潔に保ち,十分に湿潤していながら,創傷から生じる余分な滲出液を排出及び吸収することが好ましい。被覆材は微生物や不要な粒子の浸透を防止することが好ましい。被覆材は同時にガス交換を可能にするために透過性でなければならない。最後に,被覆材の装着は簡単かつ無痛でなければならず,被覆材は形状を維持し,特に除去時に創傷の邪魔にならないことが好ましい(例えば,創傷に張り付いてはならない)。文献[1]では,現在入手可能な様々なタイプの吸収性創傷被覆材(ハイドロコロイド,アルギン酸塩,発泡体)の形態学的及び物理的特性が比較されている。これらの材料の孔径は約数百μmである。アルギン酸塩の被覆材だけが繊維構造を有していた。このタイプの被覆材は数時間後に分解し,繊維構造は消失し,圧縮ゲルが形成される。高多孔性繊維状アルギン酸塩被覆材が最も高い吸収能を示したことで(2000%膨潤/12時間),吸収能は細孔の数に依存することが分かったが,吸収能は分解時間により制限される。
【0004】
ハイドロコロイド被覆材の吸収能は低く(膨潤≦400%/12時間),滲出液の吸収は遅かった。組織浸軟を防止するためには,吸収能と脱水の程度との比率を適切にしなければならず,この比率は,滲出液の吸収が遅いこと,被覆材に水蒸気が十分に浸透すること,滲出液の蓄積を防止することにより促進される。ハイドロコロイドの被覆材では水蒸気の透過性が不十分であり,繊維状のアルギン酸塩被覆材で最良の結果が得られた。多くの研究から,ナノファイバー材料は創傷被覆材としての使用に適していることが示されている[2,3,4]。ナノファイバー材料の主な利点のひとつは,ナノファイバー層の構造が組織の細胞増殖及び再上皮化を促し,免疫応答カスケードを活性化して治癒過程を開始する最初のステップである非特異的タンパク質接着を向上させることである。従って,ナノファイバー創傷被覆材を使用することにより,特に慢性創傷の治療に不可欠な治癒時間が不本意に延長されることを防止できるようになる[5]。また,個々の繊維間の細孔は,微生物が創傷内に浸入して感染を引き起こすことを防止するために十分小さいが,材料を透過可能にするには十分大きい[6]。
【0005】
これらの用途では,基本的な ‐ 主に疎水性の ‐ 合成ポリマーはむしろ機械的な機能を発揮し(PV2014‐674),一方,添加した天然ポリマーは生物学的活性を示す。例として,皮膚欠損治癒のための製剤の調製に関するチェコ国特許出願第PV2018‐537号が挙げられる。ここでは,この製剤はポリエステル及びその共重合体(実施例によれば,ポリ乳酸,ポリヒドロキシブチレート,又はポリカプロラクトン)から成り,生物学的に活性な成分(ここでは血小板)が次の工程で組み込まれる。このようにして調製した製剤の欠点は,紡糸溶液の調製に有毒な溶媒を使用する必要があることと,2段階プロセスで調製する必要があることである。また,使用のポリマーは疎水性が高く,十分な滲出液除去ができない可能性がある。別の例としては,実用新案登録第31723号が挙げられ,その技術的解決策は急性又は慢性創傷の被覆材に関するものである。ここでは,ポリカプロラクトンとポリ乳酸との組み合わせを使用し,得られた被覆材が分解することにより創傷から除去する必要がないという利点を持つナノファイバー及びマイクロファイバー創傷被覆材を形成する。多孔質構造は十分なガス交換や創傷からの代謝物の除去を確実に行い,創傷で適切な雰囲気を維持することが好ましい(実用新案(UM)にはこれを確認するデータはない)。この解決策の欠点はやはり主に,両ポリマーが湿潤しないことであり,これでは十分な滲出液除去が達成されず,治癒のための十分な湿度環境が形成されない。上述のポリ乳酸,ポリカプロラクトン,及びポリカプロラクトン複合体から成るナノファイバー材料の接触角を測定した際にも同様の結果が得られ,その材料は疎水性が高く湿潤しにくいと評価されたが,親水性の天然ゼラチンを添加することで層吸収性が高まった[7]。別の欠点は,分解に何週間も掛かり,特に急性創傷の場合では必要ないことであり,このことは組み込まれた活性物質の放出に影響を与え,放出がかなり遅くなる可能性がある。
【0006】
重要な生物学的活性を持つ天然ポリマーの1つにヒアルロン酸(HA又はヒアルロナン)がある。これは,規則的に交互になったD‐グルクロン酸とN‐アセチル‐D‐グルコサミンとの単位から成る直鎖グリコサミノグリカンである。HAは組織の天然成分であり,水和や治癒などのプロセスにおいて重要な役割を担っている。その生体適合性,生分解性,及び無毒性により,HAは医療用途だけでなく多くの用途に用いられている。HAはナノファイバー材料の調製に用いられる。HAはゲル形成添加成分として添加するか(チェコ国特許第308285号参照),あるいはHA自体又はその修飾誘導体から直接ナノファイバーを調製することが可能である。純粋な天然HAから成るナノファイバーは,主に有機溶媒又は酸を用いて調製する。例えば中国特許第101775704号,又は文献[15],[16],及び[17]参照。中国特許第101775704号では,HA(重量平均分子量(Mw):400~2,000,000g/mol)のナノファイバーはギ酸とジメチルホルムアミドの溶媒系から,すなわち毒性の高い溶媒から静電紡糸により調製されている。電界紡糸プロセスは確実に溶媒を完全蒸発させることが理想であるが,プロセスが不安定なため蒸発が不十分となる可能性があり,その結果,調製した材料中に溶媒が存在することになる。従って,毒性の低い溶媒の使用は医療用途において有利である。このように調製したHAナノファイバーは水溶液中に即時に溶解する。別の例としては,ヒアルロン酸ナノファイバーをベースとする化粧品組成物に関するチェコ国特許第308492号が挙げられる。この場合,HAは,担体ポリマー(酸化ポリエチレン又はポリビニルアルコール)と呼ばれる合成親水性ポリマーと共に水から紡糸する。この担体ポリマーの含有量は15~99重量%である。ここでは,ナノファイバーは水溶液から調製し,担体ポリマーがなければ紡糸プロセスは実行不可能であり,合成ポリマーの割合が高い程,プロセス全体の収率が高くなる。化粧品製剤であれば更に活性物質を含有し,従って乾燥物中のHA含有量は2~90重量%である。
【0007】
このように調製したナノファイバー化粧品製剤も親水性が高く,従って水溶液に即時に溶解し,前記化粧品用途に望ましい。同様に,HA及び合成親水性ポリマーのナノファイバーは,例えば[8],[9],[10],又は[11]で調製されている。親水性が高いため,天然HA及びその天然HAから調製したナノファイバーは,効果を長時間持続させる必要がある用途,他に例えば創傷被覆材には適さない。しかしながら,天然ヒアルロン酸の強力な親水性,及びその構造中における水への結合能力により,天然ヒアルロン酸はいわゆる湿潤創傷治癒に非常に有望な材料となっている。また,天然HAは,運動時に自然に応力を受ける結合組織の成分ではあるが,ナノファイバー形態ではこの種の用途に必要な機械的強度は高くない。従って,天然HAを含有するナノファイバー材料を調製するために,水に完全には溶解しない合成疎水性ポリマーも使用する。これらの場合,HAは通常微量であり,水溶液と接触した後に洗い流し,得られたナノファイバー材料は洗浄後,選択した合成ポリマーにより定義したHA特性を有する(例えば[12],[13],[14],[25],[26])。しかし,最も流通している疎水性合成ポリマーは分解時間が長く,完全に溶解させるには有機溶媒が必要であり,有機溶媒は毒性があり,ヒアルロナン紡糸溶液を調製する際,厳密には望ましくない解重合を引き起こす可能性がある[27]。従って,主に修飾天然ポリマーをベースとするナノファイバー層の組成を,合成ポリマーと比較して相対的に大部分(少なくとも95重量%)を占めるように維持することが有利である。これはHAの共有結合架橋により達成できるが,ジビニルスルホン,グルタルアルデヒド,ブタン‐1,4‐ジオールジグリシジルエーテル(例えば[18],[19])などの有毒な架橋剤の使用,又はHA誘導体の形成が伴うことが多い。一方で,誘導体の種類により,その誘導体から調製される材料の最終的な特性が決まる。
【0008】
HA誘導体からのナノファイバー材料の調製は非常に独特である。その例としては文献[20]が挙げられ,ここではチオール化HA(T‐HA,HAのMw:1,500,000g/mol)を使用している。次にT‐HAを酸化ポリエチレン(PEO,Mw:900,000g/mol,ダルベッコ変法イーグル培地溶媒,T‐HA/PEO比4:1及び1:1)及び架橋剤と共に紡糸した。次いで,層を架橋した後にPEOを水で洗浄した。別の例としては文献[21]が挙げられ,ここでは著者らはアルギニン・グリシン・アスパラギン酸ペプチド(RGDペプチド)と共役した光硬化性メタクリル化HA(M‐HA)の使用に焦点を当てている。繊維混合物は,合成M‐HA,PEO(MW:900,000g/mol)及び光重合開始剤Irgacure2959から成り,これらを全て水に溶解した。水溶液中で安定した繊維構造が得られた。文献[22]では,著者らはフリルアクリロイルHA(F‐HA)と親水性PEO(F‐HA:80重量%,PEO:20重量%)との組み合わせからナノファイバー材料を調製することにわずかに焦点を当てている。
【0009】
調製したF‐HA/PEOナノファイバー材料を,UV照射により5分,10分,又は30分間架橋した。この文献では,水への浸漬後でも材料の多孔質構造が保持されていることが示されているが,材料の浸漬時間については言及していない。従って,調製した材料の水溶液中での長期安定性は不明であり,機械的特性も不明である。様々な光硬化性HA誘導体から調製したナノファイバー材料もチェコ国特許第304977号で扱われている。ここでは,HA誘導体は,最終構造中の比率が50~99重量%,好ましくは80重量%である担体ポリマー(ポリビニルアルコール,ポリアクリル酸,PEO,又はポリビニルピロリドン)と共に紡糸する。従って好ましい実施形態では,HA誘導体はわずか20重量%である。他の生体適合性合成疎水性ポリマー及びその共重合体(カルボキシメチルセルロース,ゼラチン,キトサン,ポリカプロラクトン,ポリ乳酸,ポリアミド,ポリウレタン,ポリ‐(ラクチド‐コ‐グリコール)酸)により安定性も達成される。この特許中のデータでは立証されていないが,機械的堅牢性は,調製した繊維の吸収性が低い(わずか約20%)ことにも起因している。湿潤後のナノファイバー構造の保持についてはここでは述べられず,繊維構造がかなり劣化したときの湿潤後の走査電子顕微鏡(SEM)画像のみが示されている。ナノファイバー材料を調製するためのHA誘導体の使用はチェコ国特許第307158号でも扱われており,ここでもHA,F‐HA,及び飽和又は不飽和C3‐C21鎖を含むHA誘導体が挙げられており,これらはその後の架橋を必要としない。しかし,この特許の主題は水溶性ナノファイバー材料(薬物担体,0.05~10秒で50~100%の溶解度)を形成することであり,水性環境での安定性,機械的特性,及びナノファイバー構造の保持はこの解決策の主題ではなかった。この場合でさえ,ナノファイバー材料はPEO又はポリビニルアルコールとの混合液中で紡糸した。ナノファイバー材料中のHA誘導体の含有量は5~90重量%の範囲である。
【0010】
水安定性ナノファイバー材料は他の天然ポリマーを用いても得られる。例えば文献[23]では,エチルセルロースとゼインとの混合物,すなわち必須の生物学的活性を示さないポリマーから成る高疎水性ナノファイバー材料が記載されている。この材料は活性物質の担体として開発された。合成ポリマーを使用することの欠点は環境負荷が大きいことでもあり,天然ポリマーを使用することで水に安定な完全分解性材料を調製できる。例としては文献[24]が挙げられ,ここではポリビニルアルコール,グルテン,及び大豆粉の混合物からナノファイバー材料を調製し,得られた材料を無毒性架橋剤で架橋し,疎水性及び耐性を高めている。この場合,ナノファイバー構造は維持されたが,水中で1日経過するとナノファイバー構造が溶け合い,多孔性が喪失した。他の例としては,天然ポリマーと合成ポリマーとを組み合わせた文献が挙げられる[28,29,30]。一般に,合成ポリマーと混合すると,天然ポリマーは湿潤性,ひいては創傷被覆材の重要な特性である吸収能を高める。
【0011】
上述したように,創傷治癒被覆材として好適な材料が満たすべき基準は数多くある。利用可能な解決策としては,主に合成ポリマーから調製され,吸収能が不十分で透過性が低いが,機械的安定性の要件を満たしている組成物か,又は天然ポリマーもしくは天然ポリマーと合成ポリマーとの組み合わせから調製され,十分な吸収能及び透過性を示すが,機械的パラメーターが不十分で,分解が速すぎる組成物のいずれかが挙げられる。製剤中で毒性溶媒を使用する必要があること,及び多段階プロセスを含む所与の組成物の生成が複雑になる頻度が高いことも問題となることが分かる。
【0012】
発明の概要
上記欠点はヒアルロン酸誘導体をベースとする創傷治癒のための手段により解消され,その本質は,以下を含むナノファイバー:
‐ 一般式Iのヒアルロン酸の架橋光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩であって,
式中,
R
1は独立してH又はCOCHCHフリルであり,
R
2はH
+又は薬学的に許容可能な塩であり,
その重量平均分子量は82,000g/mol~110,000g/molの範囲であり,その置換度は4~20%の範囲であり,
前記ヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の少なくとも2つのエステル基は,
一般式IIのシクロブタン環を形成し,
式中,
R
3はフリルであり,
R
4はヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩の主鎖である,ヒアルロン酸の架橋光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩;
‐ 一般式IIIのヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩であって,
式中,
R
5はH又は‐C(=)C
12H
23であり,
R
6はH
+又は薬学的に許容可能な塩であり,
その重量平均分子量は300,000g/mol~350,000g/molの範囲であり,その置換度は65%~95%である,ヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩;並びに
重量平均分子量が300,000g/mol~900,000g/molの範囲の酸化ポリエチレン
から成る。
【0013】
本発明の手段の一実施形態によると,前記ヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の置換度は好ましくは5~10%の範囲,より好ましくは5%である。本発明の手段の別の実施形態によると,前記疎水化ヒアルロン酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の置換度は好ましくは65%~80%の範囲,より好ましくは73%である。前記酸化ポリエチレンの重量平均分子量は好ましくは400,000g/mol~600,000g/mol,より好ましくは600,000g/molである。
【0014】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,前記ナノファイバーは更に,診断薬及び/又は生物学的活性剤から成る少なくとも1種の活性剤を含み,生物学的活性剤は抗生物質,抗アレルギー剤,抗真菌剤,抗悪性腫瘍剤,抗炎症剤,抗ウイルス剤,抗酸化剤,診断薬,防腐剤,又は天然ヒアルロン酸もしくはその薬学的に許容可能な塩を含む群から選択され,好ましくは,前記生物学的活性剤はジクロフェナク,トリクロサン,オクテニジン,ラタノプロスト,サリチル酸,没食子酸,フェルラ酸,イブプロフェン,ナプロキセン,セチリジン,ケルセチン,エピカテキン,クリシン,ルテオリン,クルクミン,シプロフロキサシンを含む群から選択される。診断薬は,好ましくは,ブリリアントグリーン,フルオレセインイソシアネート,クルクミン又はメチレンブルーを含む群から選択される。
【0015】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,前記ヒアルロン酸の架橋光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は,ナノファイバーの総重量に対して15重量%~75重量%,より好ましくは45重量%~75重量%,最も好ましくは48重量%である。それは3‐(2‐フリル)アクリル酸とヒアルロン酸の架橋エステル,又はその薬学的に許容される塩(F‐HA)である。
【0016】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,前記ヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は,ナノファイバーの総重量に対して15重量%~75重量%,より好ましくは45重量%~75重量%,最も好ましくは48重量%である。それはラウリン酸とヒアルロン酸のエステル,又はその薬学的に許容される塩(L‐HA)である。
【0017】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,前記酸化ポリエチレンの含有量は,ナノファイバーの総重量に対して3.5重量%~10重量%の範囲,より好ましくは4重量%~5重量%の範囲,最も好ましくは4重量%である。
【0018】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,前記活性剤の含有量は,ナノファイバーの総重量に対して0.01~10重量%,好ましくは0.1~5重量%の範囲である。
【0019】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,前記ナノファイバーの直径は100nm~1000nm,好ましくは250nm~500nmの範囲である。
【0020】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,乾燥層の形態であり,面重量は1~100g/m2の範囲,好ましくは1~20g/m2の範囲,より好ましくは10~15g/m2の範囲である。
【0021】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,水溶液に浸漬してから少なくとも1時間後に吸収能は1000~3500%,より好ましくは1500~2500%の範囲にある。
【0022】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,空隙率は,水溶液に浸漬してから72時間維持される。
【0023】
別の態様では,本発明の手段は,水及び水混和性極性溶媒の混合液,一般式Iのヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩,一般式IIIのヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩,及び酸化ポリエチレンを含む紡糸溶液を静電紡糸してナノファイバーを形成し,形成したナノファイバーをUV範囲の波長の照射で架橋することにより光硬化させる。水混和性極性溶媒は,好ましくはイソプロパノールである。
【0024】
本発明の手段の製造方法の別の好ましい実施形態によると,前記紡糸溶液中の水分含有量は30~50体積%の範囲,より好ましくは50体積%であり,水混和性極性溶媒は紡糸溶液の総体積に対して50~70体積%の範囲,より好ましくは50体積%である。
【0025】
本発明の手段の製造方法の別の好ましい実施形態によると,前記紡糸溶液は好ましくは蒸留水及びイソプロピルアルコールを含む。
【0026】
本発明の手段の製造方法の別の好ましい実施形態によると,前記紡糸溶液は更に,少なくとも1種の生物学的活性剤を含む。
【0027】
本発明の手段の製造方法の別の好ましい実施形態によると,前記紡糸溶液中の乾燥物の濃度は2~5重量%,好ましくは3重量%であり,前記乾燥物中の
‐ ヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の重量含有率は15重量%~75重量%,より好ましくは45重量%~75重量%,最も好ましくは48重量%であり,
‐ ヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の重量含有量は15重量%~75重量%,より好ましくは45重量%~75重量%,最も好ましくは48重量%であり,
‐ 酸化ポリエチレンの重量含有量は4重量%~10重量%の範囲,より好ましくは4重量%~5重量%の範囲,最も好ましくは4重量%である。
【0028】
本発明の手段の製造方法の別の好ましい実施形態によると,前記乾燥物中の生物学的活性化合物の重量割合は0.01~10重量%,好ましくは0.1~5重量%の範囲である。
【0029】
本発明の手段の製造方法の別の好ましい実施形態によると,UV照射による架橋を50~90分,好ましくは60分実施する。
【0030】
本発明の手段の別の好ましい実施形態によると,化粧品,医薬,又は再生医療,好ましくは創傷ケアで,又は外用もしくは内用のためのパッチの一部として使用する。
【0031】
誘導体自体から調製したナノファイバー材料は,所与の用途に適した特性を示さない ― 湿潤後に光硬化により架橋したHA誘導体(F‐HA)はナノファイバー構造を保持するが,好適な機械的特性を持たず(
図1a,
図4,
図5参照),疎水化したHA誘導体のみから成るナノファイバーは,湿潤のほぼ直後に融合し,細孔のない機械的に安定な圧縮フィルムになる(
図1b,
図4,
図5参照)。本発明に従った手段は,これら2種のヒアルロン酸誘導体を組み合わせるだけで達成している。本発明に従った手段は水溶液中での高い安定性に優れており,有利にも医療器具(例えば被覆材や創傷治癒具)の分野で使用できる。本発明に従った手段の安定化は開始剤又は活性化剤を必要としない。調製した材料により,その構造へ水溶液が吸収され,同時に構造的,形状的,及び機械的安定性がもたらされ,吸収後には,ゲル状構造のナノファイバー材料は湿潤治癒に適したものとなる。その水溶液は,生理食塩水,リン酸緩衝液(PBS),又はTRIS緩衝液を含む群から選択することが好ましい。水溶液のpHは創傷の自然環境の典型pHであり,通常6~8.5の範囲の中性~やや塩基性のpHである。本発明に従った手段は,このpH範囲で安定である。
【0032】
構造的安定性とは,本発明に従った手段のナノファイバー構造の保持を意味する。湿潤後でさえもナノファイバー構造がこのように保持されることにより,十分な多孔性,ひいては透過性が確保される。同時に,細孔の大きさは不純物,バクテリア,及びウイルスの浸透を防止する(
図2)。使用のヒアルロン酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩間の重量比は,調製した製剤の最終的な特性,特に吸収性及び透過性を規定し,これにより滲出液の量に応じて異なるタイプの創傷に対応する手段を調製することが可能となる。本発明の手段は有利にも,体液の吸収時にナノファイバー材料から放出される1種以上の活性剤を含有してもよい。これらの物質は,好ましくは親水性活性剤及び疎水性活性剤の群から選択可能である。何故なら,温和な反応条件下での調製も有利になるようにナノファイバー材料を好ましくは蒸留水とイソプロピルアルコールとの溶媒混合物中で調製するからである。
【0033】
本発明に従った上記の創傷治癒手段は,1つ以上のナノファイバー層の形態であり,先行技術の手段より有利な特性を示す。
1) 発明に従った手段は,水又は水溶液に浸漬した後に少なくとも1時間,その繊維構造を保持する。
2) 本発明に従った手段は,水又は水溶液に浸漬した後,少なくとも72時間多孔質構造を保持する。
3) 本発明に従った手段は,水又は水溶液に1時間浸漬した後,少なくとも1000%の吸収能を達成する,
4) 本発明に従った手段は,水又は水溶液に完全に浸漬した後,少なくとも72時間安定した形状を維持する。
【0034】
本発明に従ったナノファイバー手段は,電界紡糸法,すなわち1段階プロセスにより調製する。ここでは本発明に従ったヒアルロン酸誘導体,酸化ポリエチレン,及び任意の活性剤を単一溶媒系に溶解する。溶媒系は,含有量が30~50重量%,より好ましくは50重量%の蒸留水,及び含有量が50~70重量%,より好ましくは50重量%のイソプロピルアルコールから成る。
【0035】
電界紡糸溶液中の全乾燥物の濃度は2~5重量%,より好ましくは3重量%の範囲である。
【0036】
本発明に従ったナノファイバー手段は,乾燥状態及び湿潤状態の両方において,直径が200nm~1000nm,より好ましくは250nm~500nmのナノファイバーから成る。湿潤状態では,繊維構造は,湿潤後1時間,また,本発明に従った手段中のナノファイバーの総重量に対する光硬化により架橋されたHA誘導体(F‐HA)の相対重量割合によっては更に長く維持する。
【0037】
ナノファイバー構造は,SEM画像において個々の繊維を明確に区別できる場合,水溶液環境において保持され安定していると考えられる。これらの繊維の直径は,乾燥繊維より大きくできる。
【0038】
SEM画像において繊維がもはや区別できなくなり,なおかつ測定可能な細孔がまだ存在する場合に,多孔質構造は形成される。これらの細孔は,個々の繊維が徐々に膨潤することにより形成される。
【0039】
本発明に従ったナノファイバー手段は,化粧品,医薬,もしくは再生医療,好ましくは創傷ケア,又は外用もしくは内用使用のためのパッチ又は創傷被覆材の一部として使用することに適している。この製品の利点はまた,防腐剤を必要とせずに製品の長期安定性を保証する乾燥形態であることである。
【0040】
本発明に従ったナノファイバー手段は,ナノファイバー層が自己支持性を有するものの,直接装着は期待できない。本発明に従ったナノファイバー手段は支持布地又は箔上に紡糸することが好ましく,これにより,コーティングの場合に作用部位に塗布可能となり,吸収層を添加できる可能性がある。支持布地,フィルム,又は吸収層の材料は,ポリエステル,セルロース,ポリウレタン,ポリプロピレン,ポリエチレン,ビスコース,ポリアミド,綿,又はそれらの混合物を含む群から選択される。パッチの場合,支持布地又は箔は好ましくはベースパッドである。パッチは同時に吸収機能も有する。
【0041】
従って,本発明の好ましい実施形態は,本発明に従った手段の少なくとも1つのナノファイバー層を備える少なくとも1つの支持層から成る創傷治癒被覆材である。支持層は,布,箔,又はクッションである。支持層材料は,ポリエステル,セルロース,ポリウレタン,ポリプロピレン,ポリエチレン,ビスコース,ポリアミド,綿,又はこれらの混合物を含む群から選択される。本発明に従ったこのような被覆材の適用後,本発明に従ったナノファイバー層は創傷に付着する。
【0042】
パッチと創傷カバーの両方の場合,本発明に従ったナノファイバー手段を,繊維材料の標準的な接触不活性メッシュと,好ましくはビスコース又はポリプロピレン箔をベースとするパッドとの間に固定することは有利であり,創傷からの余分な液体の吸収及び排出が促進される。この手段を創傷に適用した後,接触不活性メッシュは完全に底部にあり,すなわち創傷と直接接触しており,ナノファイバー層を機械的損傷,創傷内の水分との接触後の断裂から保護する。
【0043】
従って,本発明の更に好ましい実施形態は,本発明に従ったナノファイバー層上に留まっているポリエステル又はポリエステルシルクをベースとする接触不活性メッシュを更に含む創傷治癒被覆材である。
【0044】
用語の定義
用語「水溶液」とは,pHが6~8.5の範囲,好ましくは7~8の範囲の水系溶液を意味する。
【0045】
用語「アルブミン塩溶液」とは,5.84gの塩化ナトリウム,3.36gの炭酸水素ナトリウム,0.29gの塩化カリウム,0.28gの塩化カルシウム,33.00gのウシアルブミン,及び1000mlの脱塩水を含む水溶液を意味する。
【0046】
用語「ナノファイバー材料」,「ナノファイバー層」とは,直径が1000nm以下の,統計的(statistically)に絡み合った(ナノ)ファイバーを含む連続層を意味する。
【0047】
用語「乾燥ナノファイバー層」とは,23~24℃の温度における実験室環境の相対湿度に対応する残留水分を有する,統計的に絡み合った(ナノ)ファイバーから成る自己支持性材料を意味する。
【0048】
用語「水溶液中での安定性」とは,ナノファイバー層が湿潤し,所定時間水性媒体中に留まった後のナノファイバー層の形状及び構造(繊維状)安定性を意味する。同時に,材料はその多孔質特性を保持する。
【0049】
用語「透過性」とは,損傷部位及び環境の両方で自然に発生する気体分子(酸素,二酸化炭素)及び水蒸気の両方向透過を意味する。
【0050】
「生物学的活性剤」とは,作用部位で薬理学的効果をもたらすか,又は治療/治癒過程に直接影響を及ぼす活性添加物又はその混合物を意味する。
【0051】
用語「ヒアルロン酸誘導体」とは,N‐アセチル‐D‐グルコサミン単位のC6炭素上のヒドロキシル基の水素原子を別の官能基で置換した結果生じる,ヒアルロン酸の基本骨格に由来する化合物を意味する。
【0052】
「ヒアルロン酸の薬学的に許容可能な塩」とは,高純度ヒアルロン酸の基本骨格からの誘導した化合物を意味する。この塩は,ヒアルロナンアニオンと,ナトリウム,カリウム,カルシウムを含む群から選択される特定のカチオンから成る。
【0053】
用語「創傷」とは,物理的,機械的,もしくは熱的損傷,あるいは病態生理学的障害,又は解剖学的もしくは生理学的機能の損傷による皮膚表皮の喪失又は破壊を意味する。好ましくは,創傷は慢性創傷である。
【0054】
用語「置換度」とは,ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩の100量体あたりの,HA誘導体(F‐HA又はL‐HA)中の置換基の比率(%)を意味する。
【0055】
用語「吸収能」とは,単位時間当たりに材料がその構造内に吸収する水溶液の定義体積を意味する。これは,水溶液環境における試料の重量増加と,乾燥状態における試料の重量との差として決定する。
【0056】
「多孔性」とは,区画した細孔を多数含む材料の特性を意味し,その細孔の体積は,材料の総体積における空隙の量に相当する。
【0057】
「分子量」とは,重量平均分子量(Mw)を意味し,これは1H NMR分光法により決定し,サイズ排除クロマトグラフィー(SEC/GPC)により確認した。
【0058】
「創傷治癒被覆材」とは,創傷被覆材やパッチなどの被覆材の装着形態を意味する。
【0059】
ナノファイバーの総重量は乾燥物の重量に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】a ‐ 水溶液に浸漬した後の光硬化により架橋したF‐HA誘導体由来のナノファイバー層の写真であり,試料は所望の機械的特性を達成していない;b ‐ 水溶液に浸した後の疎水化誘導体HA(L‐HA)のナノファイバー層の写真であり,試料は所望の機械的特性を達成しているが,透過性ではない。
【
図2】創傷に装着した後の本発明に従ったナノファイバー手段の使用を示すスキームである。
【
図3】式Iの光硬化性ヒアルロン酸エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(F‐HA),式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(L‐HA),及び酸化ポリエチレン(PEO)を様々な割合で含む紡糸溶液から紡糸した後の本発明の乾燥ナノファイバー手段を示すSEM画像である。_1)下記実施例1のように調製したナノファイバー;_2)下記実施例2のように調製したナノファイバー;_3)下記実施例3のように調製したナノファイバーを,PEOとの混合液中で一方の誘導体のみから常に調製するナノファイバー材料のSEM画像と共に示す。10重量%のPEOに対する各HA誘導体の割合は90重量%である。
【
図4】異なる時間間隔1,3,及び8時間でリン酸緩衝液へ浸漬した後に,式Iの光硬化性ヒアルロン酸エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(F‐HA),式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(L‐HA),及び酸化ポリエチレン(PEO)を様々な割合で含む紡糸溶液から紡糸した後の本発明に従ったナノファイバー手段の形態を示すSEM画像と;PEOとの混合液中で一方の誘導体のみから常に調製する浸漬ナノファイバー材料のSEM画像とを示す。10重量%のPEOに対する各誘導体の割合は90重量%である。
【
図5】異なる時間間隔24,48,及び72時間でリン酸緩衝液へ浸漬した後に,式Iのヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(F‐HA),式IIのヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(L‐HA),及び酸化ポリエチレン(PEO)を様々な割合で含む紡糸溶液から紡糸した後の本発明に従ったナノファイバー手段の形態を示すSEM画像と;PEOとの混合液中で一方のHA誘導体のみから常に調製する浸漬ナノファイバー材料のSEM画像とを示す。10重量%のPEOに対する各誘導体の割合は90重量%である。
【
図6】異なる時間間隔1,3,8,24,48,及び72時間でリン酸緩衝液へ浸漬した後に,式Iの光硬化性ヒアルロン酸エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(F‐HA),式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(L‐HA),及び酸化ポリエチレン(PEO)を様々な割合で含む紡糸溶液から調製した本発明に従ったナノファイバー手段(図に示すように,下記実施例1~3に従って調製)の吸収能と;各場合で,PEOとの混合液中で一方のHA誘導体のみ(F‐HA又はL‐HA)から調製したナノファイバー材料の吸収能とを示す。同時間間隔でPBS中に浸漬した,10重量%のPEOに対する各誘導体の割合は90重量%である。
【
図7】様々な時間間隔1,3,8,24,48,及び72時間でアルブミン含有塩溶液に浸漬した後の,式Iのヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(F‐HA,48重量%),式IIのヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(L‐HA,48重量%),及び酸化ポリエチレンを含む紡糸溶液から調製した本発明に従ったナノファイバー手段(図に示すように,下記実施例2に従って調製);並びに式Iのヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(F‐HA,45.5重量%),式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(L‐HA,45.5重量%),天然ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩(HA,5重量%),及び酸化ポリエチレン(PEO,4重量%)を含む紡糸溶液から調製した本発明に従ったナノファイバー手段の吸収能を示す。
【
図8】式Iのヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(F‐HA),式IIのヒアルロン酸の疎水化誘導体又はその薬学的に許容可能な塩(L‐HA),及び酸化ポリエチレンを含む紡糸溶液から調製した本発明に従ったナノファイバー手段の異なる濃度が3T3線維芽細胞の細胞生存率に及ぼす影響と;各場合で,PEOとの混合液中で一方のHA誘導体のみ(F‐HA又はL‐HA)から調製するナノファイバー材料の細胞生存率とを示す。10重量%のPEOに対する各誘導体の割合は90重量%である。
【
図9】細胞性正常ヒト皮膚NHDF線維芽細胞に対するナノファイバー材料の接着促進能を確認する蛍光共焦点顕微鏡画像である。スライドaは実施例3に従って調製した試料を示し,スライドbは実施例2に従って調製した試料を示す。
【0061】
実施例
以下に示すナノファイバー層の調製には,4SPIN LAB実験装置(コンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト)を用いたコンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト製ヒアルロン酸誘導体を使用した。
【0062】
実施例1
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,75重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw320,000g/mol,置換度(DS)73%)又はその薬学的に許容可能な塩,20重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%(相対湿度:RH)未満で,幅10cmの回転集電器上で無針ノズルにより静電紡糸した。この方法では,重量11.11±1.29g/m2,厚さ15.77±2.46μm,繊維径304±106nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1000%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能1500%に達する。ナノファイバー構造を1時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,72時間後にはわずかに細孔が保持されたフィルムが形成される。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的低い創傷に適している。
【0063】
実施例2
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,48重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw320,000g/mol,DS73%)又はその薬学的に許容可能な塩,48重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び4重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅10cmの回転集電器上で無針ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量7.29±0.43g/m2,厚さ11.75±0.89μm,繊維径479±230nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1500%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能2000%に達する。ナノファイバー構造を48時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,細孔が拡大する。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的高い創傷に適している。
【0064】
実施例3
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,20重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw320,000g/mol,DS73%)又はその薬学的に許容可能な塩,75重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅10cmの回転集電器上で無針ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量10.75±1.11g/m2,厚さ16.94±1.36μm,繊維径231±95nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。リン酸緩衝液に完全に浸漬した後では,このように調製したナノファイバー層の吸収能は2200%/時間であり,これは最大吸収能でもある。ナノファイバー構造を72時間以上維持し,繊維は散発的に融合する。このタイプの材料は特に,滲出性の非常に高い創傷に適している。
【0065】
実施例4
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,20重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,75重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量47.68±1.29g/m2,厚さ290±41μm,繊維径214±70nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1340%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能1000%に達する。ナノファイバー構造を72時間以上維持し,繊維は散発的に融合する。このタイプの材料は特に,滲出性の非常に高い創傷に特に適している。
【0066】
実施例5
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,48重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,48重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び4重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量43.31±1.19g/m2,厚さ361±73μm,繊維径275±84nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1300%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能1320%に達する。ナノファイバー構造を1時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,72時間後にはわずかに細孔が保持されたフィルムが形成される。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的低い創傷に適している。
【0067】
実施例6
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,75重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,20重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量47.68±3.34g/m2,厚さ290±33μm,繊維径235±61nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で150分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1080%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能1200%に達する。多孔室構造を72時間維持する。このタイプの材料は特に,滲出性の非常に低い創傷に適している。
【0068】
実施例7
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,45.5重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,45.5重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,5重量%の天然HA,及び4重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量8.60±1.89g/m2,厚さ12.08±0.51μm,繊維径516±138nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層は,湿潤させるとゆっくりと分解するゲルを形成する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1980%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能2730%に達する。ナノファイバー構造を48時間維持する。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的低い創傷又は瘢痕に適している。
【0069】
実施例8
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,70重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,20重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,5重量%の天然HA,及び5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量16.28±1.27g/m2,厚さ18.25±1.01μm,繊維径351±102nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層は,浸漬後にゆっくりと分解するゲルを形成する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1380%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能2040%に達する。ナノファイバー構造を48時間維持する。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的低い創傷又は瘢痕に適している。
【0070】
実施例9
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,20重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,70重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,5重量%の天然HA,及び5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧57kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量15.11±1.13g/m2,厚さ16.34±0.87μm,繊維径295±81nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層は,浸漬後に非常にゆっくりと分解するゲルを形成する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は2380%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能2420%に達する。ナノファイバー構造を48時間維持する。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的低い創傷又は瘢痕に適している。
【0071】
実施例10
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,47.9重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,47.9重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,4重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol),及び0.2重量%のオクテニジンを含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量6.67±0.38g/m2,厚さ8.29±0.28μm,繊維径283±106nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は2000%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能2440%に達する。ナノファイバー構造を72時間維持する。このタイプの材料は特に,滲出性のかなり(heavily)高い創傷に適している。
【0072】
実施例11
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,74.8重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,20重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol),及び0.2重量%のオクテニジンを含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に基づく相対割合である。この溶液を,電圧56kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量14.70±0.82g/m2,厚さ16.12±0.17μm,繊維径286±94nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1230%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能1350%に達する。ナノファイバー構造を48時間維持する。このタイプの材料は特に,若干(weakly)滲出性のある創傷に適している。
【0073】
実施例12
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,20重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,74.8重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol),及び0.2重量%のオクテニジンを含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧56kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量12.87±0.16g/m2,厚さ13.78±1.01μm,繊維径307±115nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は2040%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能2510%に達する。ナノファイバー構造を72時間以上維持する。このタイプの材料は特に,滲出性のかなり高い創傷に適している。
【0074】
実施例13
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,47重量%の式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,47重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,4重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol),及び2重量%のサリチル酸を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量6.02±0.34g/m2,厚さ7.38±0.39μm,繊維径402±150nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は2700%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に1時間完全に浸漬することにより最大吸収能に達する。ナノファイバー構造を1時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,3時間後には細孔がわずかに保持されたフィルムが形成される。このタイプの材料は特に,滲出性のかなり低い創傷に適している。
【0075】
実施例14
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,73重量%の式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,20重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol),及び2重量%のサリチル酸を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧56kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量12.54±0.18g/m2,厚さ14.07±0.93μm,繊維径304±112nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1603%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に1時間完全に浸漬することにより最大吸収能に達する。ナノファイバー構造を1時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,3時間後には細孔がわずかに保持されたフィルムが形成される。このタイプの材料は特に,滲出性のかなり低い創傷に適している。
【0076】
実施例15
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,20重量%の式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,73重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol),及び2重量%のサリチル酸を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧56kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量10.48±0.28g/m2,厚さ11.07±1.16μm,繊維径208±106nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は2540%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に1時間完全に浸漬することにより最大吸収能に達する。ナノファイバー構造を8時間維持した後,繊維は膨潤して部分的に融合する。このタイプの材料は特に,比較的滲出性の高い創傷に適している。
【0077】
実施例16
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,45.5重量%の式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,45.5重量%の式Iのヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,4重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol),及び5重量%のトリクロサンを含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に基づく相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量9.36±0.20g/m2,厚さ13.76±1.20μm,繊維径243±44nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1730%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能1830%に達する。ナノファイバー構造を48時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,72時間後には細孔が保持されたフィルムが形成される。このタイプの材料は特に,滲出性のかなり高い創傷に適している。
【0078】
実施例17
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,70重量%の式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,20重量%の式Iのヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol),及び5重量%のトリクロサンを含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量17.22±0.45g/m2,厚さ18.06±0.54μm,繊維径375±71nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1360%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能1650%に達する。ナノファイバー構造を48時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,72時間後には細孔が保持されたフィルムが形成される。このタイプの材料は特に,若干滲出性のある創傷に適している。
【0079】
実施例18
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,20重量%の式IIの疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw350,000g/mol,DS77%)又はその薬学的に許容可能な塩,70重量%の式Iのヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw96,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol),及び5重量%のトリクロサンを含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅25cmの回転集電器上で無針移動ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量14.72±0.48g/m2,厚さ16.89±0.77μm,繊維径235±105nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は2120%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能2308%に達する。ナノファイバー構造を72時間以上維持する。このタイプの材料は特に,滲出性のかなり高い創傷に適している。
【0080】
実施例19
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,75重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw320,000g/mol,DS73%)又はその薬学的に許容可能な塩,21.5重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び3.5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅10cmの回転集電器上で無針ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量8.12±0.21g/m2,厚さ11.03±1.16μm,繊維径351±102nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1230%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能1480%に達する。ナノファイバー構造を1時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,72時間後にはわずかに細孔が保持されたフィルムが形成される。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的低い創傷に適している。
【0081】
実施例20
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,48.5重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw320,000g/mol,DS73%)又はその薬学的に許容可能な塩,48重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び3.5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧55kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅10cmの回転集電器上で無針ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量9.29±0.43g/m2,厚さ12.05±0.19μm,繊維径460±103nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1200%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能2300%に達する。ナノファイバー構造を48時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,細孔が拡大する。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的高い創傷に適している。
【0082】
実施例21
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,21.5重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw320,000g/mol,DS73%)又はその薬学的に許容可能な塩,75重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び3.5重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧56kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅10cmの回転集電器上で無針ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量11.01±2.17g/m2,厚さ13.73±1.42μm,繊維径262±86nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は,リン酸緩衝液に完全に浸漬した後では2400%/時間であり,これは最大吸収能でもある。ナノファイバー構造を72時間以上維持し,繊維は散発的に融合する。このタイプの材料は特に,滲出性の非常に高い創傷に適している。
【0083】
実施例22
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,75重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw320,000g/mol,DS73%)又はその薬学的に許容可能な塩,15重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び10重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に基づく相対割合である。この溶液を,電圧54kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅10cmの回転集電器上で無針ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量9.20±1.37g/m2,厚さ12.96±2.13μm,繊維径334±95nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1250%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能1630%に達する。ナノファイバー構造を3時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,72時間後にはわずかに細孔が保持されたフィルムが形成される。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的低い創傷に適している。
【0084】
実施例23
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,45重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw320,000g/mol,DS73%)又はその薬学的に許容可能な塩,45重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び10重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧54kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅10cmの回転集電器上で無針ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量7.42±0.71g/m2,厚さ8.95±0.16μm,繊維径437±135nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は1540%/時間であり,リン酸緩衝液(37℃)に8時間完全に浸漬すると最大吸収能2200%に達する。ナノファイバー構造を48時間維持した後,繊維は膨潤して融合し,細孔が拡大する。このタイプの材料は特に,滲出性の比較的高い創傷に適している。
【0085】
実施例24
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの1:1混合液を用いて電界紡糸溶液を調製した。この溶液は更に,15重量%の疎水化ヒアルロン酸誘導体(L‐HA,Mw320,000g/mol,DS73%)又はその薬学的に許容可能な塩,75重量%のヒアルロン酸の光硬化性エステル誘導体(F‐HA,Mw98,000g/mol,DS5%)又はその薬学的に許容可能な塩,及び10重量%の酸化ポリエチレン(Mw=400,000g/mol)を含んでいた。溶液中の総乾燥物濃度は3重量%である。上記の個々の成分の重量%は,紡糸溶液中の乾燥物に対する相対割合である。この溶液を,電圧56kV,溶液投入速度350μL/分,電極間隔20cm,温度20~25℃,空気湿度20%RH未満で,幅10cmの回転集電器上で無針ノズルにより静電紡糸した。このプロセスでは,重量9.64±1.07g/m2,厚さ9.17±0.36μm,繊維径249±102nmのナノファイバー層を調製した。調製したナノファイバー層を波長302nmのUV照射下で60分間架橋する。このように調製したナノファイバー層の吸収能は,リン酸緩衝液に完全に浸漬した後では2280%/時間であり,これは最大吸収能でもある。ナノファイバー構造を72時間以上維持し,繊維は散発的に融合する。このタイプの材料は特に,滲出性の非常に高い創傷に適している。
【0086】
実施例25
ナノファイバー層を適用する基材として合成又は天然セルロースフリース又はポリエステルの吸収層を用い,実施例1~24に従ってナノファイバー層を調製した。
【0087】
実施例26
ナノファイバー層を適用する基材として防水多孔性ポリエチレンフィルムを用い,実施例1~24に従ってナノファイバー層を調製した。
【0088】
実施例27
実施例1,2,及び3に従ってナノファイバー層を調製し,50分間及び90分間光硬化させた。
【0089】
実施例28
溶媒系として水とイソプロピルアルコールとの2:3混合液を用い,実施例1~9に従ってナノファイバー層を調製した。
【0090】
【0091】
【国際調査報告】