(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】オイルセパレータから圧縮セクション内への直接オイル戻しを有するスクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240122BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20240122BHJP
F04B 39/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
F04C18/02 311Y
F04C18/02 311W
F04C29/02 351D
F04B39/04 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545261
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2022051608
(87)【国際公開番号】W WO2022161941
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】102021101627.4
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523282567
【氏名又は名称】サンデン インターナショナル (ヨーロッパ) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sanden International (Europe) GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Taubenbaum 35-37, 61231 Bad Nauheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー, マニュエル
【テーマコード(参考)】
3H003
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AC03
3H003BC01
3H003BD05
3H003BD13
3H003BH06
3H003CD03
3H003CD05
3H039AA02
3H039AA12
3H039BB04
3H039BB11
3H039BB15
3H039CC01
3H039CC27
3H039CC29
3H039CC42
3H129AA02
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB16
3H129BB44
3H129CC02
3H129CC22
3H129CC25
3H129CC33
3H129CC42
(57)【要約】
本発明は、流体を圧縮するためのスクロール圧縮機(1)であって、前記流体を吸入するための入口(11)と、圧縮された前記流体を吐出するための出口(12)と、固定スクロール(21)を有する固定ディスク(20)と、旋回スクロール(31)を有する旋回ディスク(30)と、を備える圧縮セクション(10)を含むものに関する。前記旋回ディスク(30)は、前記流体を前記入口(11)から前記出口(12)に輸送し、その際に圧縮するために、前記固定ディスク(20)に対して旋回可能である。前記スクロール圧縮機(1)は、圧縮された前記流体からオイルを分離するためのオイルセパレータ(45)と、オイルを前記オイルセパレータ(45)から前記圧縮セクション(10)内へ直接的に戻すための直接オイル戻し(50)と、含み、前記直接オイル戻し(50)は、少なくとも1つのオリフィス開口(59a,59b)を備える。効率的な作動を可能とするために、前記直接オイル戻し(50)は、更に、前記第1の流量弁(53)と前記オリフィス開口(59a,59b)との間に配置された脱ガスチャンバ(54)と、流体を前記脱ガスチャンバ(54)から前記圧縮セクション(10)内へ戻すための流体戻し(70)と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮するためのスクロール圧縮機(1)であって、
圧縮セクション(10)であって、
・前記流体を前記圧縮セクション(10)内へ吸入するための、前記圧縮セクション(10)の入口(11)、圧縮された前記流体を前記圧縮セクション(10)から吐出するための、前記圧縮セクション(10)の出口(12)、
・固定スクロール(21)を有する固定ディスク(21)、及び
・旋回スクロール(31)を有する旋回ディスクで(30)であって、前記流体を前記圧縮セクション(10)の前記入口(11)から前記圧縮セクション(10)の前記出口(12)に輸送し、その際に圧縮するために、圧縮方向(100)に沿って前記固定ディスク(20)に対して旋回可能である、旋回ディスク(30)、
を備える圧縮セクション(10)と、
圧縮された前記流体からオイルを分離するためのオイルセパレータ(45)と、
を含み、
前記スクロール圧縮機(1)は、更に、オイルを前記オイルセパレータ(45)から前記圧縮セクション(10)内へ直接的に戻すための直接オイル戻し(50)を備え、前記直接オイル戻し(50)は、少なくとも1つのオリフィス開口(59a,59b)を備え、
前記直接オイル戻し(50)は、第1の流量弁(53)を含み、
前記直接オイル戻し(50)は、前記第1の流量弁(53)と、前記直接オイル戻し(50)の前記オリフィス開口(59a,59b)との間に配置された脱ガスチャンバ(54)を含み、
前記スクロール圧縮機(1)は、流体を前記脱ガスチャンバ(54)から前記圧縮セクション(10)内へ戻すための流体戻し(70)を備えることを特徴とする、
スクロール圧縮機(1)。
【請求項2】
前記直接オイル戻し(50)の前記オリフィス開口(59a,59b)は、前記固定ディスク(20)に配置されている、請求項1に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項3】
前記固定ディスク(20)は固定スクロール(21)を備え、前記固定スクロール(21)は、前記固定ディスク(20)の固定ベース(22)上に配置されていると共に、前記固定ディスク(20)の螺旋状の圧縮機チャネル(26)を形成し、
前記直接オイル戻し(50)の前記オリフィス開口(59a,59b)は、作動中、少なくとも一時的に前記圧縮セクション(10)の前記入口(11)と直接的に流体連通する、前記圧縮機チャネル(26)の吸入領域に配置されている、及び/又は、前記圧縮機チャネル(26)の外部に配置されていることを特徴とする、
請求項2に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項4】
前記固定ディスク(20)は前記固定スクロール(21)を備え、前記固定スクロール(21)は、前記固定ディスク(20)の前記固定ベース(22)上に配置されていると共に、前記螺旋状の圧縮機チャネル(26)を形成し、
前記直接オイル戻し(50)の前記オリフィス開口(59a,59b)は、
γ - 30°~γ + 30°の範囲の位置角に配置されており、ここにγは前記圧縮機チャネル(26)の外側端部の位置角であり、かつ、前記固定ディスク(20)の中心から径方向距離R
M,1に配置されており、ここにR
M,1は(R
I(γ) - B
K)~R
I(γ)の範囲にあり、R
I(γ)は前記圧縮機チャネル(26)の外側端部における前記固定スクロール(21)の内面の径方向距離であり、B
Kは前記圧縮機チャネル(26)の外側端部における径方向に沿った前記圧縮機チャネル(26)の幅であるか、又は、
前記固定スクロール(21)の外側、かつ、θ - 30°~θ + 30°の範囲の位置角に、かつ、前記固定ディスク(20)の中心から径方向距離R
M,2に配置されており、ここにθ = γ + 180° であり、R
M,2はR
A(θ - 360°) ~R
A(θ - 360°) + B
Kの範囲にあり、R
A(θ - 360°)は位置角θ - 360°における前記固定スクロール(21)の外面の径方向距離である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項5】
圧縮作動中、前記旋回スクロール(31)と前記固定スクロール(21)との間には少なくとも1つの圧縮空間(14a,14b,14c)が形成され、前記少なくとも1つのオリフィス開口(59a,59b)は如何なる時点においても圧縮空間(14a,14b,14c)のいずれかによって走査されることはないことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項6】
前記直接オイル戻し(50)は、前記脱ガスチャンバ(54)の後方に配置された第2の流量弁(57)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項7】
圧縮作動中、前記脱ガスチャンバ(54)内の前記中間圧力が、前記圧縮セクション(10)の吸入圧力よりも0.2 bar~6 barだけ高い範囲にあるように調整されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項8】
吐出圧力チャンバ(40)を備え、前記オイルセパレータ(45)は、前記吐出圧力チャンバ(40)を介して前記圧縮セクション(10)の前記出口(12)と直接的に流体連通する、ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項9】
前記脱ガスチャンバ(54)は、径方向において前記吐出圧力チャンバ(40)の外側に形成されており、前記吐出圧力チャンバ(40)を取り囲むことを特徴とする、請求項5及び8に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項10】
圧縮作動中に接触圧が作用する接触圧チャンバ(80)であって、前記旋回ディスク(30)は前記接触圧によって前記固定ディスク(20)に対して押し付けられる、接触圧チャンバ(80)と、
オイルを前記オイルセパレータ(45)から前記接触圧チャンバ(80)内へ戻すための第2のオイル戻し(82)と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項11】
前記第2のオイル戻し(82)は、オイル不足の場合、前記直接オイル戻し(50)よりも優先されることを特徴とする、請求項10に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項12】
前記直接オイル戻し(50)は、前記オイルセパレータ(45)内へ開かれた第1のオイル入口(51)を備え、前記第2のオイル戻し(82)は、前記オイルセパレータ(45)内へ開かれた第2のオイル入口(81)を備え、前記第1のオイル入口(51)は前記第2のオイル入口(81)の上方に配置されていることを特徴とする、請求項10又は11に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項13】
前記圧縮セクション(10)内に配置された基準開口(86)と、作動中に前記基準開口(86)に作用する基準圧力に基いて前記接触圧に影響を及ぼすために前記接触圧チャンバ(80)と前記基準開口(86)との間の流体連通を形成する基準連通部(84)と、を備えることを特徴とする、請求項10~12のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項14】
前記脱ガスチャンバ(54)は30 cm
3~150 cm
3の体積を有することを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【請求項15】
前記流体戻し(70)のオリフィス開口(72a)は、前記固定ディスク(20)の前記圧縮機チャネル(26)の中央領域に配置されており、前記圧縮機チャネル(26)の前記中央領域は、前記圧縮セクション(10)の前記入口(11)とも前記圧縮セクション(10)の前記出口(12)とも直接的に流体連通し得ない、前記圧縮機チャネル(26)の全ての領域から構成されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮セクションにより流体を圧縮するためのスクロール圧縮機であって、圧縮セクション内へ流体を吸入するための圧縮セクションの入口と、圧縮された流体を圧縮セクションから吐出するための圧縮セクションの出口と、固定スクロールを有する固定ディスクと、旋回スクロールを有する旋回ディスクと、を備えるスクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、例えば、エアコン、特に原動機付き車両用のエアコンにおける圧縮機として使用される。更に、それらは、ヒートポンプとして使用される。それらは、他のタイプの圧縮機と比較して、特に一様で、低振動で、静かな作動を特徴とする。
【0003】
圧縮セクションは、スクロール圧縮機のコアを形成する。旋回ディスクが固定ディスクに対して旋回することにより、流体、特にガス又はガス混合物が圧縮される。このために、旋回スクロールと固定スクロールは、それらの間に流体のための圧縮空間を形成するように、互いに組み合わされた状態で配置されている。固定スクロールに関して、各圧縮空間は、その内部に封入された流体と共に、固定スクロールの外側の領域からその中心まで移動する。その際、流体が利用可能な空間は次第に小さくなり、流体は圧縮される。
【0004】
作動中、流体の最大圧力は、圧縮セクションの出口で達成される。流体は、吸入圧力で圧縮セクション内へ到達し、著しく高い吐出圧力でそこから吐出される。
【0005】
旋回ディスクと固定ディスクとの間で次第に圧縮される流体は、旋回ディスクと固定ディスクを互いに離れる方向に押す。したがって、旋回ディスクには引き離し力が作用する。引き離し力の強さは、特に、吸入圧力、吐出圧力及び圧縮セクションの幾何学的形状に依存する。典型的には、吐出圧力の変化は、吸入圧力の変化よりも、接触圧に対して顕著な影響を有する。
【0006】
高い圧縮を達成するために、固定ディスクと旋回ディスクとの噛み合いによって形成され、中心に向かって移動される圧縮空間は、十分に密閉されていなければならない。旋回ディスクが固定ディスクに対して強固にかつ気密に押し付けられ、流体が圧縮セクションから出ないよう、旋回ディスクは、固定ディスクの反対側の背面で接触圧を受ける。このために、旋回ディスクの背面には、接触圧チャンバが設けられている。接触圧は、固定ディスクの方向の接触力で旋回ディスクを押す。
【0007】
旋回スクロールの固定ディスクへの食い込み、及び、固定スクロールの旋回ディスクへの食い込みは、作動中に摩擦を生じさせる。電動スクロール圧縮機は、典型的には、500~12000 min-1の回転数範囲で作動する。その場合、高い摩擦は、悪化した効率を通じて検知可能である。
【0008】
接触圧チャンバ内には、旋回ディスクを潤滑するためにオイルが導かれる。更に、接触圧チャンバから旋回ディスクを通じてのオイル供給ラインが形成され得る。オイル供給ラインを通じて、オイルは、固定ディスクと旋回ディスクとの間の接触圧チャンバから流れることができる。
【0009】
スクロール圧縮機から吐出される流体に含まれるオイルは、可能な限り少なくあるべきである。吐出された流体内の過剰な量のオイルは、吐出された流体が更に流れる下流の構成要素の効率に影響を及ぼす可能性がある。例えば、冷媒回路の効率は、より多くのオイルが混合することによって低下する可能性がある。
【0010】
典型的には、スクロール圧縮機は、冷媒回路自体内の機械的に応力を受ける部品を潤滑するためにオイルを必要とする、冷媒回路内の唯一の構成要素である。通常、冷凍回路は、異なる作動状態で作動され得る。冷凍回路の効率は、その作動状態に大きく依存する。過剰な量のオイルにより、例えば熱交換器内部の表面がオイルで濡れる可能性がある。それにより、それぞれの熱交換器における熱伝達効率が低下する。したがって、蒸発器及び凝縮器の効率が低下する。その結果、冷媒回路は、要求される冷凍能力をもたらすために、全体としてより高い圧力比で作動されなければならない。したがって、過剰な量のオイルは、全体効率を低下させ、圧力比の増大に起因して、スクロール圧縮機内部の機械的な構成要素の応力を増大させる。
【0011】
したがって、圧縮された流体は、圧縮セクションの後、オイルセパレータを通じて導かれる。オイルセパレータは、圧縮された流体から少なくとも部分的にオイルを分離する。分離されたオイルは、(第2の)オイル戻しを介して接触圧チャンバ内へ戻される。
【0012】
スクロール圧縮機の運転中、接触圧チャンバ内のオイルは、接触圧を受ける。オイル供給ラインのオリフィス開口は、旋回ディスク上の旋回スクロールによって形成される旋回ディスクの圧縮機チャネルの中央領域に配置される。この位置決めと、高圧側から来るオイルと冷媒との混合物の連続的な質量流とに起因して、接触圧チャンバ内に中圧レベルの接触圧が生じる。接触圧は、固定ディスクの方向の接触力で旋回ディスクを押す。中央領域における位置決めは、所望の十分に大きな接触圧の発生に大きく寄与する。接触圧は可変であり、作動圧力に依存する。それにより、固定ディスクと旋回ディスクとの間のシールが全ての作動点で確保され、摩擦が可能な限り低く保たれる。
【0013】
しかしながら、オイル供給ラインのオリフィス開口のこの位置決めに起因して、固定ディスクと旋回ディスクとの間の径方向外側領域には、オイルが最適に供給されない。その結果、摩擦が増大し、効率が低下し、特定の状況下では、スクロール圧縮機の耐用年数も短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、より効率的な作動を可能にし、より高い信頼性を有するスクロール圧縮機を創造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、流体を圧縮するためのスクロール圧縮機によって解決される。
【0016】
流体を圧縮するためのスクロール圧縮機は、以下を含む:
圧縮セクションであって、以下を有する:
・圧縮セクション内へ流体を吸入するための圧縮セクションの入口、
・圧縮された流体を圧縮セクションから吐出するための圧縮セクションの出口、
・固定スクロールを有する固定ディスク、及び
・旋回スクロールを有する旋回ディスクであって、流体を圧縮セクションの入口から圧縮セクションの出口へ輸送し、その際に圧縮するために、圧縮方向に沿って固定ディスクに対して旋回可能である、旋回ディスク、及び
圧縮された流体からオイルを分離するためのオイルセパレータ
【0017】
スクロール圧縮機は、オイルセパレータから圧縮セクション内へオイルを直接的に戻すための直接オイル戻しを備え、直接オイル戻しは、少なくとも1つのオリフィス開口を備える。
【0018】
直接オイル戻しは、作動中、オイルセパレータから圧縮セクション内へオイルを連続的に戻す。これにより、圧縮セクションにおける摩擦が低減される。そのようにして、直接オイル戻しは、スクロール圧縮機のより効率的な作動を可能にする。更に、圧縮セクションにおける摩耗が低減される。これにより、スクロール圧縮機の信頼性及び耐用年数が増大する。
【0019】
作動中、オイルセパレータは(少なくとも実質的に)吐出圧力を受ける。本発明は、オイルセパレータからのオイルを直接的に且つ狙いを定めて圧縮セクション内へ戻すために、オイルセパレータ内の圧力とオリフィス開口における流体の圧力との間の差異を利用する。重要な利点は、オイルの流れが、吐出圧力の吸入圧力に対する圧力比による直接オイル戻しによって駆動されることにある。戻されるオイルの量は、実質的にこの圧力比に依存する。例えば、回転数600 min-1、3 barの吸気圧力及び15 barの吐出圧力において、この量は、3 barの吸気圧力及び15 barの吐出圧力、ただし回転数8500 min-1の場合と同じである。
【0020】
直接オイル戻しによって戻されるオイルの量は、(少なくとも実質的に)スクロール圧縮機の回転数とは無関係であり、(少なくとも実質的に)正確な吐出圧力とは無関係である。低い回転数においても、直接オイル戻しは、十分な量のオイルを圧縮セクション内へ戻す。直接オイル戻しは、したがって、スクロール圧縮機の多様な負荷状態において圧縮セクションを潤滑するのに適している。特に、それは、低い回転数における潤滑性を向上させる。
【0021】
更に、直接オイル戻しは、接触圧とは無関係に機能する。接触圧が低下しても、吐出圧力が十分に高いままである限り、直接オイル戻しは、圧縮セクションにオイルを更に戻す。
【0022】
更に、オイルは、スクロール圧縮機内により良好に保持される。入口領域には、もはや接触圧チャンバから圧縮セクション内へ浸出する、又は、冷媒回路の外側部分を通って圧縮ユニットの入口に導かれるオイルが、供給される必要はない。冷媒回路の外側部分は、スクロール圧縮機の外側にある冷媒回路の領域を意味する。オイルセパレータの背後の流体は、より少ないオイルを含む。より少ないオイルが冷媒回路の外側部分を通じて導かれる。典型的には、冷媒回路の外側部分における流体中のオイルの割合が高いほど、冷媒・オイル混合物の熱力学的特性が悪くなる。提案された直接オイル戻しは、冷媒回路のオイル循環率(Oil Circulation Ratio、略してOCR)を著しく低減する。直接オイル供給は、オイルを、圧縮ユニットの入口領域内へピンポイントでもたらす。それにより、冷媒回路の効率が向上する。
【0023】
特に、低い回転数では、従来のスクロール圧縮機においては、冷媒回路の外側部分を通る冷媒の質量流量が小さいため、オイルが冷媒回路の外側部分に意図せず留まる危険性が高くなる。
【0024】
逆に、作動中、スクロール圧縮機の内部で、特に圧縮セクションの内部で、潤滑に利用可能なオイルの割合は増加する。アクティブな直接オイル戻しは、スクロール圧縮機の作動に必要とされるオイルの総量を減少させる。これにより、コストが低減され、冷媒回路の重量が低減される。その結果、例えば、スクロール圧縮機を搭載した車両の効率が向上する。
【0025】
圧縮ユニットの出口は、少なくとも実質的に、固定ディスクの中心に配置されている。特に、圧縮ユニットの出口は、正確に固定ディスクの中心に配置され得る。
【0026】
固定スクロールは、固定スクロールの外側端部から固定スクロールの内側端部まで延びる、螺旋状の(固定ディスクの)圧縮機チャネルを形成する。固定スクロールの内側端部は、固定スクロールの中心にある。それは、固定ディスクの出口開口にある。圧縮セクションの出口は、この出口開口を含む。特に、この出口開口は、圧縮セクションの出口を形成し得る。
【0027】
固定スクロールは、固定ディスクの固定ベース上に配置され得る。固定スクロールは、固定ディスクの中心軸に対して平行に、固定ベースから当該固定ベースから離れるように延びる壁から形成され得る。好ましくは、この中心軸に沿って固定ベースから離れる方向を向く固定スクロールの端面は、平坦に且つ固定ベースに対して平行に、形成されている。
【0028】
出口開口は、固定ベースの孔を含み得る。特に、出口開口は、固定ベースの孔として設計され得る。
【0029】
同様に、旋回スクロールは、旋回スクロールの外側端部から旋回スクロールの内側端部まで延びる旋回ディスクの螺旋状の圧縮機チャネルを形成する。本開示及び特許請求の範囲において、更なる補足を伴わない用語「圧縮機チャネル」は、特に明記しない限り及び文脈から何か他のものが強制的に生じない限り、常に固定ディスクの圧縮機チャネルのみを指す。
【0030】
旋回スクロールは、旋回ディスクの旋回ベース上に配置され得る。旋回スクロールは、旋回ディスクの中心軸に対して平行に、旋回ベースから当該旋回ベースから離れるように延びる壁から形成され得る。好ましくは、この(旋回ディスクの)中心軸に沿って旋回ベースから離れる方向を向く旋回スクロールの端面は、平坦に且つ旋回ベースに対して平行に、形成されている。旋回ベースは、固定ベースに対して平行であり得る。
【0031】
固定スクロール及び旋回スクロールは、それぞれ正確に1つのスクロールアームを有し得る。
【0032】
スクロール圧縮機は、固定ディスクに対する旋回ディスクの旋回のための旋回機構を備える。旋回中、旋回ディスクは、固定ディスクに対して少なくとも実質的に円形の経路に沿って、偏心的に変位される。その際、好ましくは、旋回ディスクの中心軸は、固定ディスクの中心軸の周りを円形に移動する。固定ディスクの中心軸は、固定ベースに対して垂直であり得る。それは、固定ディスクの中心及び/又は固定スクロールの中心を通って延び得る。特に、固定スクロールの中心は固定ディスクの中心を形成することができ、逆もまた同様である。
【0033】
作動(圧縮機作動)中、旋回スクロールと固定スクロールとの間には、少なくとも1つの圧縮空間が形成される。吸入された流体は、圧縮空間内に閉じ込められ、圧縮空間内で圧縮され、固定ディスクの出口開口の方向に移動し、最終的にこの出口開口内へ押し込まれる。
【0034】
圧縮機チャネルの吸入領域は、旋回ディスクが固定ディスクに対して圧縮方向に沿って旋回するとき、圧縮セクションの入口と少なくとも一時的に直接的に流体連通する圧縮機チャネルの全ての領域から構成される。圧縮機チャネルの吐出領域は、旋回ディスクが固定ディスクに対して圧縮方向に沿って旋回するとき、圧縮セクションの出口と少なくとも一時的に直接的に流体連通する圧縮機チャネルの全ての領域から構成される。圧縮機チャネルの中央領域は、圧縮セクションの入口及び圧縮セクションの出口のいずれとも直接的に流体連通し得ない、圧縮機チャネルの全ての領域から構成される。これらの定義は、固定ディスクの圧縮機チャネルと旋回ディスクの圧縮機チャネルの両方に適用される。
【0035】
本願の意味において、それぞれのスクロールの最も内側の巻回又は最初の巻回は、その内側端部からその中心の周りに1回巻き付けられた点まで延びる、当該スクロールの領域を示す。
【0036】
固定スクロールの内側端部には、0°の位置角が割り当てられている。位置角は、固定スクロールの延長に沿って、固定スクロールの外側端部まで連続的に増加する。固定スクロールの螺旋角は、その外側端部によって与えられる。したがって、螺旋角は、固定スクロールの最大の位置角に対応する。
【0037】
これは、2つの巻回を有する固定スクロールについて例示的に説明される:固定スクロールの第1の巻回は、固定スクロールの内側端部で0°の位置角で始まり、360°の位置角で終わる。第2の且つ最も外側の巻回は、360°の位置角で始まり、固定スクロールの外側端部で720°の螺旋角で終わる。
【0038】
相応して、圧縮機チャネル内の位置角が定義される。螺旋状の圧縮機チャネルの外側端部は、固定スクロールの外側端部と固定スクロールの最も外側の巻回の内側の始点との間に形成された、圧縮機チャネルの入口開口によって確定されている。
【0039】
本願の意味において、それぞれのスクロールの領域の外側は、スクロールのこの領域の径方向においてスクロールの中心から離れる方向を向く側である。相応して、スクロールのこの領域の内側は、スクロールのこの領域の径方向においてスクロールの中心を向く側である。
【0040】
圧縮セクションは、内側に導かれる圧縮空間と、外側に導かれる圧縮空間とを形成し得る。内側に導かれる圧縮空間は、固定スクロールの外側で形成され、それに沿って導かれる。外側に導かれる圧縮空間は、固定スクロールの外側で形成され、それに沿って導かれる。
【0041】
この時点で、圧縮機チャネルに関する定義は、圧縮空間の定義とは無関係であることを強調しておく。特に、圧縮空間は、常に完全に固定ディスクの圧縮機チャネル内にある必要はない。例えば、圧縮空間は、旋回スクロールの外側端部が固定スクロールの最も外側の巻回の外面に接触することによって形成され得る。このシールによって、内側に導かれる圧縮空間は、閉鎖され密封される。新たに形成された内側に導かれる圧縮空間は、この時点で、依然として(部分的に)固定ディスクの圧縮機チャネルの外側にあり得る。一方、外側に導かれる圧縮空間は、旋回スクロールの外面が固定スクロールの外側端部に接触することによって、閉鎖される。新たに形成された外側に導かれる圧縮空間は、この時点で、既に完全に圧縮機チャネルの内側にある。それは、圧縮機チャネルの外面で案内される。換言すれば、圧縮機チャネルの外面は、固定スクロールの内面によって形成される。
【0042】
作動中、圧縮セクションの入口には吸入圧力が作用し、圧縮セクションの出口は吐出圧力に支配される。好ましくは、作動中の吸入圧力は1 bar~7 barの範囲である。代替的に又は付加的に、作動中の吐出圧力は8 bar~32 barの範囲である。正確な吸入圧力及び正確な吐出圧力は、使用される流体及び正確な作動状態によって相違し得る。
【0043】
吸入圧力及び吐出圧力は、作動中、スクロール圧縮機内で圧縮された流体が貫流するシステムによって決定され得る。このようなシステムは、例えば、空調システムの熱交換器であり得る。
【0044】
スクロール圧縮機の最大吐出圧力は、圧縮セクションの幾何学的形状及びそれぞれの吸入圧力から生じる。更に、固定ディスクの出口開口(出口ボア)のデッドボリュームは、最大吐出圧力に影響を及ぼし得る。吸入圧力が高いほど、最大吐出圧力は高くなる。所与の吸入圧力において、最大吐出圧力は、既知の流体方程式、例えば理想気体の方程式又はファンデルワールス方程式に基づいて、圧縮セクションにおいて幾何学的形状に起因して達成可能な流体の圧縮から生じる。(実際の)吐出圧力は、通常、最大吐出圧力よりも低い。
【0045】
圧縮セクションの入口は、複数の部分領域を含み得る。特に、入口は、径方向内側に導かれる圧縮空間に流体を供給する第1の入口部分領域と、径方向外側に導かれる圧縮空間に流体を供給する第2の入口部分領域と、を備え得る。部分領域は、例えば、圧縮セクションの径方向外側の領域において2つの対向する側で、空間的に互いに分離され得る。
【0046】
直接オイル戻しは、オイルセパレータから直接的に圧縮セクション内へのオイルの直接的な戻しに寄与する。直接オイル戻しは、オイルセパレータから直接的に圧縮セクションに延びる。
【0047】
作動中、オイルは、オイルセパレータ由来の圧力によって直接オイル戻しに押し込まれる。このオイルは、オイルの流れ方向に沿って直接オイル戻しを通って流れ、直接オイル戻しのオリフィス開口から圧縮セクション内へ流出する。そのようにして戻されたオイルは、圧縮セクションの潤滑に寄与する。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、(直接オイル戻しの)オリフィス開口は、圧縮セクションの入口領域に配置され、これは、作動中、少なくとも一時的に、圧縮セクションの入口と直接的に流体連通する。これにより、旋回スクロール及び固定スクロールの径方向外側領域においても、特に良好な潤滑が保障される。
【0049】
オリフィス開口の正確な位置決めに応じて、例えば、作動中、一時的にオリフィス開口が旋回スクロールによって走査され覆われることがあり得る。この時点で、オリフィス開口は、入口と直接的には流体連通していない。オリフィス開口が、旋回ディスクの完全な1回転の間に、第1の期間においては入口と直接的に流体連通し、第2の期間においては旋回スクロールによって走査され、第3の期間においては圧縮空間と連通し、第4の期間においては再び旋回スクロールによって走査されることもあり得る。
【0050】
特に好ましい実施形態では、オリフィス開口は、如何なる時点においても、圧縮空間(又は複数の圧縮空間のうちのいずれか)によって走査されない。
【0051】
代替的に又は付加的に、オリフィス開口は、旋回スクロールの完全な1回転の間に、特に好ましくは、ちょうど1回、旋回スクロールによって走査される。
【0052】
直接オイル戻しのオリフィス開口は、好ましくは、固定ディスクに配置されている。これにより複雑さが低減され、直接オイル戻しの製造が簡易化される。特に、オリフィス開口は、完全に固定ベース内に配置され得る。代替的に、オリフィス開口は、完全に又は部分的に、固定スクロールの内面又は外面に配置され得る。そのような変形例は、製造するのがより困難である。その代わりに、それにより、固定スクロールの内面又は外面の潤滑が、更に改善され得る。
【0053】
特に好ましい実施形態では、直接オイル戻しのオリフィス開口は、作動中、少なくとも一時的に圧縮セクションの入口と直接的に流体連通する(固定スクロールの)圧縮機チャネルの吸入領域に配置されており、及び/又は、圧縮機チャネルの外側に配置されている。オリフィス開口が圧縮機チャネルの外側端部に配置されている場合、オリフィス開口の第1の部分領域は圧縮機チャネル内に配置され、オリフィス開口の第2の部分領域は圧縮機チャネルの外側に配置され得る。
【0054】
別の態様によれば、直接オイル戻しのオリフィス開口は、好ましくは、γ - 30°~γ + 30°の範囲の位置角に配置されており、ここで、γは圧縮機チャネルの外側端部の位置角である。オリフィス開口は、この場合、更に、固定ディスクの中心から径方向距離RM,1に配置されることができ、RM,1は、(RI(γ) - BK)~RI(γ)の範囲にあり、RI(γ)は、圧縮機チャネルの外側端部(すなわち、固定スクロールの外側端部)における固定スクロールの内側の径方向距離であり、BKは、圧縮機チャネルの外側端部における圧縮機チャネルの径方向の幅である。したがって、この場合、オリフィス開口は、圧縮機チャネルの外側端部(上流側端部)の近傍に配置されている。オリフィス開口は、その場合、1回転の間に少なくとも1回、旋回スクロールの端面によって走査される。それにより、オリフィス開口から流出するオイルは、特に良好に分配される。特に、RM,1は、(RI(γ) - BK/2)~RRI(γ)の範囲にあり得る。このように具現されたオリフィス開口は、外側に導かれる圧縮空間の領域における潤滑に特に良好に寄与する。
【0055】
代替的に、直接オイル戻しのオリフィス開口は、好ましくは、固定スクロールの外側で、θ - 30°~θ + 30°の範囲の位置角に配置されており、ここでθ = γ + 180°である。オリフィス開口は、この場合、更に、固定ディスクの中心から径方向距離RM,2に配置されることもでき、RM,2は、RA(θ - 360°)~RA(θ - 360°) + BKの範囲にあり、RA(θ - 360°)は、位置角θ - 360°における固定スクロールの外側の径方向距離である。したがって、この実施形態では、オリフィス開口は、固定スクロールの外側で、固定スクロールの中心に対して圧縮機チャネルの外側端部に対向する位置に配置されている。それにより、オリフィス開口から流出するオイルは、特に良好に分配される。特に、RM,2は、RA(θ - 360°)~RA(θ - 360°) + BK/2の範囲にあり得る。このように具現されたオリフィス開口は、内側に導かれる圧縮空間の領域における潤滑に特に良好に寄与する。
【0056】
特に好ましくは、複数のオリフィス開口が形成されており、複数のオリフィス開口のうちの少なくとも1つは、最後から2つ目の態様による実施形態のうちの1つに従って形成され、複数のオリフィス開口のうちの少なくとも1つは、最後に説明された態様による実施形態のうちの1つに従って形成されている。利点が、それぞれに相応して適用される。
【0057】
本発明の有利な実施形態では、直接オイル戻しは、第1の流量弁を含む。第1の流量弁は、(直接オイル戻しにおけるオイルの流れ方向に沿って見て)好ましくは、直接オイル戻しの第1のオイル入口とオリフィス開口との間に配置されている。しかしながら、一般に、第1の流量弁は、第1のオイル入口又はオリフィス開口に直接的にも配置され得る。第1の流量弁は、特に、第1のオイル入口及び/又は第2のオリフィス開口自体によって形成され得る。第1の流量弁は、直接オイル戻しを通って戻されるオイル(場合によっては、その中に溶解された流体を伴う)の質量流量を減少させる。
【0058】
特に好ましくは、第1の流量弁は、絞り弁として具現されている。
【0059】
この出願では、絞り弁は、好ましくは、弁の入口と出口との間に圧力差を生成する要素として理解されるべきである。特に好ましくは、それは、調節されない絞り弁であり得る。それは、例えば、オリフィス又はノズルであり得る。これは、単純で、安価で、信頼性の高い実装を可能にする。
【0060】
第1の流量弁は、オイルセパレータからのオイル(場合によっては、その中に溶解された流体を伴う)の質量流量を低減するように調整されている。このようにして、第1の流量弁の下流の直接オイル戻しの圧力(例えば、以下で説明される中間圧力及び/又は以下で説明されるオリフィス圧力)は、簡単に影響を受け得る。
【0061】
特に好ましい実施形態では、直接オイル戻しは、第1の流量弁及び脱ガスチャンバを含み、当該脱ガスチャンバは、(直接オイル戻しにおけるオイルの意図された流れ方向に沿って見て)、第1の流量弁と直接オイル戻しのオリフィス開口との間に配置されている。換言すれば、脱ガスチャンバは、第1の流量弁の下流で且つオリフィス開口の上流に配置されている。
【0062】
直接オイル戻しは、作動中、連続的にオイルをオイルセパレータから取り出し、過剰なオイルを脱ガスチャンバ内に貯留する。脱ガスチャンバは、スクロール圧縮機内にある。オイルセパレータから、例えばオイルセパレータの底部又はその近傍でオイルを連続的に抜き取ること、及び、オイルを積極的に中間貯留することにより、分離プロセスの効率が最大化される。圧縮機から出て外部の冷媒回路に入るオイルの量は、最小限に低減される。
【0063】
前述したように、特に低い回転数においては、冷媒の質量流量が小さいため、スクロール圧縮機から冷媒回路の外側部分に排出されたオイルが、意図せず冷媒回路の外側部分に留まる危険性が高くなる。このような場合であっても、脱ガスチャンバからのオイルが、システムが再びバランスするまで、スクロール圧縮機のオイル供給を保障する。次いで、作動点が高負荷点に変更されると、冷媒回路の外側部分に予め捕捉されたオイルは、冷媒の高い質量流量により、再びスクロール圧縮機内へ戻され、再びスクロール圧縮機内で回収され中間貯留される。それにより、システムが自動的に調整される:必要に応じてオイルを収容又は放出する。
【0064】
作動中、オイルセパレータは(少なくとも実質的に)吐出圧力を受ける。それにより、オイルセパレータ内の液状のオイル中の流体の溶解度が高くなる。第1の流量弁は、オイルセパレータからのオイル(場合によっては、その中に溶解された流体を伴う)の質量流量を低減する。これは、脱ガスチャンバ内の中間圧力が吐出圧力よりも低い値に調整されるのを助ける。それにより、オイル中の流体の溶解度も低下する。第1の流量弁の下流では、オイルは流体によって過飽和となり得る。脱ガスチャンバ内では、オイル中にある流体の過飽和部分が(少なくとも部分的に)制御された態様でオイルから分離され得る。これは、脱ガスチャンバの下流において、オイル中の流体の気泡の、制御されない態様での強力な形成のリスクを低減する。流体の過飽和部分が完全にオイルから分離されている場合、最大で、所与の条件下で平衡状態においてオイル中に溶解可能な(オイル中の流体の飽和部分)量とちょうど同量の流体がオイル中に存在する。
【0065】
オイルセパレータから、直接オイル戻しの第1の流体連通部が、脱ガスチャンバに通じている。第1の流量弁は、この第1の流体連通部に配置され得る。脱ガスチャンバから、直接オイル戻しの第2の流体連通部が、オリフィス開口に通じている。
【0066】
好ましくは、スクロール圧縮機は、(作動中)脱ガスチャンバ内の中間圧力が(圧縮セクション又はスクロール圧縮機の)吸入圧力より0.2 bar~0.6 bar高い範囲、非常に好ましくは、吸入圧力より0.3 bar~5 bar高い範囲にあるように、調整されている。正確な中間圧力は、例えば、第1の絞り弁及び/又は以下で説明される流体戻しによって影響を受け得る。
【0067】
それにより、直接オイル戻しのオリフィス開口から十分なオイルが流出することが保障される。更に、直接オイル戻しにおけるオイルの流れ方向に対抗して、直接オイル戻しを通って流体が流れないことが保障されている。中間圧力と吸入圧力との間の圧力降下が高すぎると、脱ガスチャンバから圧縮セクション内へ流れるオイルが多すぎるということになる可能性がある。
【0068】
代替的に又は付加的に、スクロール圧縮機は、好ましくは、脱ガスチャンバ内の中間圧力が、作動中、吸入圧力の少なくとも106 %であるように調整されている。
【0069】
その際、吸入圧力の絶対値は、異なる作動状態に対して異なり得る。また、中間圧力の絶対値は、異なる作動状態に対して異なり得る。中間圧力と吸入圧力との間の比も、異なる作動状態に対して異なり得る。ただし、全ての(既定の)作動状態に対する比は、少なくとも1.06であるべきである。
【0070】
特に好ましくは、脱ガスチャンバは、30 cm3~150 cm3の範囲の、極めて好ましくは50 cm3~90 cm3の範囲の容積を有する。オイルは、それにより、平均して、流体の過飽和部分の少なくともかなりの部分が蒸発するのに十分なほどに長く、脱ガスチャンバ内に留まる。他方、中間チャンバは、空間をほとんど必要とせず、容易に一体化され得るほどに、コンパクトである。
【0071】
極めて好ましい発展形態では、直接オイル戻しは、(直接オイル戻しにおけるオイルの流れ方向に沿って見て)脱ガスチャンバの後方に配置された第2の流量弁を含む。特に、第2の流量弁は、第2の流体連通部内に、すなわち、直接オイル戻しの脱ガスチャンバの下流かつオリフィス開口の上流に配置され得る。特に、第2の流量弁は、絞り弁として設計され得る。既に前に定義したように、絞り弁は、例えばオリフィス又はノズルであり得る。第2の流量弁は、オリフィス開口及び/又は脱ガスチャンバの第2の流体連通部のオイル入口と共に一体に形成されることが可能である。第2の流量弁は、脱ガスチャンバからのオイルの質量流量を制限することに寄与する。それにより、オリフィス開口におけるオイルのオリフィス圧力は、簡単かつ確実に影響を受け得る。
【0072】
直接オイル戻しが複数のオリフィス開口を有する場合、直接オイル戻しは、(直接オイル戻しにおけるオイルの流れ方向に関して)好ましくは脱ガスチャンバの下流で分岐する。したがって、複数のオリフィス開口に対して1つの脱ガスチャンバのみが必要である。これは、スクロール圧縮機の構造及び製造を単純化し、そのコストを低減する。複数の第2の流体連通部が、脱ガスチャンバから直接的に出ることも可能である。
【0073】
直接オイル戻し(又は第2の流体連通部)が第2の流量弁の下流で分岐すると、極めて有利である。したがって、同じ直接オイル戻しの複数のオリフィス開口のために、1つの共通の第2の流量弁のみが必要である。これにより、構造及び製造コストが更に低減される。更に、複数のオリフィス開口には、(少なくとも実質的に)同じオリフィス圧力が作用する。
【0074】
代替的に、複数のオリフィス開口のうちの異なるオリフィス開口のために、異なる第2の流量弁を設けることができる。したがって、異なるオリフィス開口に対して、オリフィス開口圧力は異なるように調整され得る。
【0075】
特に好ましい実施形態では、スクロール圧縮機は、脱ガスチャンバから圧縮セクション内への流体の流体戻しを備える。このようにして、脱ガスチャンバ内でオイルから分離された流体は、流体回路内へ戻され得る。
【0076】
極めて好ましくは、流体戻しのオリフィス開口は、固定ディスクの圧縮機チャネル内に配置されている。オリフィス開口は、例えば、固定ベースの孔として形成され得る。流体戻しの少なくとも一部の領域は、固定ディスクに形成され得る。これは、複雑さ及び製造コストを低減する。
【0077】
極めて好ましくは、流体戻しのオリフィス開口は、(固定ディスクの)圧縮機チャネルの中間領域に配置されている。それにより、流体戻しのオリフィス開口からの流体が、上流で圧縮セクションの入口から流出し得ないことが保障されている。同時に、流体戻しのオリフィス開口が、固定スクロールの出口開口と直接的に流体連通しないことが、保障されている。これは、スクロール圧縮機の高い効率及び有効性を保証する。
【0078】
流体戻しは、逆止弁を備え得る。逆止弁は、流体が、流体戻しのオリフィス開口を走査する圧縮空間から脱ガスチャンバ内へ流れることを防止する。代替的に又は付加的に、流体戻しは流量弁を備え得る。これにより、脱ガスチャンバ内の中間圧力を、流体戻しのオリフィス開口における(圧縮機チャネル内の)流体の圧力の平均値よりも、狙いを定めて高く調整することが容易になる。
【0079】
他の実施形態では、流体は、脱ガスチャンバと第2の流体連通部のオリフィス開口との間を(少なくとも実質的に)自由に流れることができる。すなわち、第2の流体戻しは、逆止弁も流量弁も備えていない。その場合、吸入チャンバ内の中間圧力は、流体戻しのオリフィス開口における流体の時間平均値によって、特に直接的に影響を受ける。
【0080】
更なる態様によれば、流体戻しのオリフィス開口は、極めて好ましくは、作動中の圧縮機チャネル内の流体の圧力の時間平均値が、吸入圧力の104%~170%の範囲、発展形態においては105%~150%の範囲となる、圧縮機チャネル内の位置に配置されている。
【0081】
理想化された見方で、戻されたオイル及び流体の質量流を無視する場合、脱ガスチャンバ内の中間圧力は、正確に、流体戻しのオリフィス開口における流体の圧力の時間平均値である。実際に、作動中の中間圧力は、戻されたオイル及び流体の質量流量に起因して、流体戻しのオリフィス開口における流体の圧力の時間平均値を上回る。この圧力差により、流体は、脱ガスチャンバから流体戻しを通って圧縮セクション内へと流れる。圧力差は、オイルセパレータから脱ガスチャンバ内へ、新しいオイルを、その中に溶解された流体と共に供給することによって維持される。しかしながら、中間圧力は、流体戻しのオリフィス開口における流体の圧力の時間平均値によって、決定的に影響を受ける。
【0082】
流体戻しのオリフィス開口における流体の時間平均値と吸入圧力との間の比は、実質的に、圧縮セクションの幾何学的形状と、圧縮機チャネルにおける流体戻しのオリフィス開口の正確な位置とに依存する。また、それは、オリフィス開口の位置が所与である場合、異なる作動状態に対して実質的に一定のままである。他方、比は、オリフィス開口の位置をシフトすることによって、狙いを定めて制御することができる。したがって、上述した実施形態は、狙いを定めて中間圧力に影響を及ぼすための、特に簡易で、信頼性が高く、種々の作動状態に適したアプローチである。
【0083】
その際、吸入圧力の絶対値は、異なる作動状態に対して異なり得る。また、この時間平均値の絶対値は、異なる作動状態に対して異なり得る。吸入圧力と、流体戻しのオリフィス開口における流体の圧力の時間平均値との間の比も、異なる作動状態に対して異なり得る。ただし、全ての(既定の)作動状態に対する比は、上述した範囲内にあるべきである。
【0084】
上述した比の設定は、例えば、他の箇所に記載された有利な実施形態のうちの1つによる、脱ガスチャンバ内の有利な中間圧力をもたらす。中間圧力は、十分なオイルが、脱ガスチャンバから直接オイル戻しの(少なくとも1つの)オリフィス開口に流れ、そこから流出して、圧縮セクション内へ達するのに十分に高い。他方、中間圧力は、過度に多くのオイルが脱ガスチャンバから流出せず、脱ガスチャンバ内へ供給されるオイル中に溶解した流体の少なくともかなりの部分が、脱ガスチャンバ内でオイルから分離するのに十分に低い。
【0085】
オリフィス開口における(圧縮機チャネル内の)流体の圧力の時間平均値の吸入圧力に対する比の算出は、例えば、所与の吸入圧力において、オリフィス開口の位置における圧縮機チャネル内の流体の1回転に亘って平均化された圧力の計算及び/又は測定に基いて、行われ得る。算出は、流体戻しのオリフィス開口における圧縮機チャネル内の流体の1回転にわたって平均化された圧縮比の測定及び/又は計算に基づいて行うこともできる。
【0086】
流体戻しのオリフィス開口が旋回スクロールによって閉鎖されている時間範囲(又は回転角の範囲)は、流体戻しのオリフィス開口における流体の圧力の時間平均値の計算のためには、考慮せずにおくことができる。
【0087】
吸入圧力の絶対値は、異なる作動状態に対して異なり得る。流体戻しのオリフィス開口における流体の圧力のこの時間平均値の絶対値は、異なる作動状態に対して異なり得る。吸入圧力とこの時間平均値との間の比も、異なる作動状態に対して異なり得る。しかしながら、時間平均値は、全ての(既定の)作動状態について、それぞれの作動状態における吸入圧力の上述した104%~170%の範囲、発展形態においては105%~150%の範囲にあるべきである。
【0088】
極めて好ましくは、流体戻しのオリフィス開口は、圧縮機チャネルの出口領域の外側に配置されている。それにより、流体戻しのオリフィス開口が、如何なる時点においても流体によって吐出圧力を受けないことが、保障されている。一発展形態では、オリフィス開口は、如何なる時点においても、最終段の圧縮空間と直接的に流体連通しないように、圧縮機チャネル内に配置されている。さもなければ、望ましくない高い中間圧力が、脱ガスチャンバ内で発生する可能性がある。
【0089】
更なる態様によれば、流体戻しのオリフィス開口は、極めて好ましくは、圧縮機チャネル内の位置角εに配置されており、ここで、εはγ - 300°~γの範囲にあり、γは、圧縮機チャネルの外側端部の位置角である。
【0090】
非常に好ましくは、流体戻しのオリフィス開口は、圧縮機チャネル内の位置角ε1に配置されており、ここで、ε1はγ - 300°~γ - 180°の範囲にある。オリフィス開口は、外側に導かれる圧縮空間によってのみ走査され、旋回スクロールによって1回転につきちょうど1回閉鎖されるよう、配置され得る。例えば、この場合、この位置角における圧縮機チャネルの外側からのオリフィス開口の距離と、径方向におけるオリフィス開口の幅との和は、旋回スクロールの対応する位置角における径方向における旋回スクロールのスパイラルアームの幅よりも小さい可能性がある。
【0091】
代替的に、流体戻しのオリフィス開口は、非常に好ましくは、圧縮機チャネル内の位置角ε2に配置されており、ここで、 ε2はγ - 120°~γ の範囲にある。オリフィス開口は、内側に導かれる圧縮空間によってのみ走査され、旋回スクロールによって1回転につきちょうど1回閉鎖されるよう、配置され得る。例えば、この場合、この位置角での圧縮機チャネルの内面からのオリフィス開口の距離と、径方向におけるオリフィス開口の幅との和は、旋回スクロールの対応する位置角での径方向における旋回スクロールのスパイラルアームの幅よりも小さい可能性がある。
【0092】
特に好ましくは、流体戻しのオリフィス開口は、1回転につき最大で130°~360°の旋回ディスクの回転角について、圧縮セクションの入口(吸入圧力)と直接的に流体連通するように配置されている。代替的に又は付加的に、流体戻しのオリフィス開口は、1回転につき、特に好ましくは最大で130°~360°の旋回ディスクの回転角について、旋回スクロールによって閉鎖される。それにより、流体戻しのオリフィス開口における流体の時間的に平均化された圧力及び中間圧力は、脱ガスチャンバから圧縮セクション内へのオイルの良好な輸送のために十分に高くなる。
【0093】
更なる態様によれば、スクロール圧縮機は、極めて好ましくは、作動中、中間圧力が、流体戻しのオリフィス開口における(圧縮機チャネル内の)流体の圧力の時間平均値よりも少なくとも0.1 bar高いように調整されている。圧力差に起因して、脱ガスチャンバ内で解放された流体は、流体戻しを通って圧縮セクション内へ流れ戻る。
【0094】
代替的に又は付加的に、スクロール圧縮機は、極めて好ましくは、中間圧力が、作動中、流体戻しのオリフィス開口における(圧縮機チャネル内の)流体の圧力の時間平均値よりも少なくとも2 bar高いように調整されている。中間圧力が非常に高い場合、オイル中に溶解された流体のうち、より少ない流体が、脱ガスチャンバ内で気相に戻る。加えて、過剰に高い中間圧力は、脱ガスチャンバから直接オイル戻しのオリフィス開口への過剰なオイルの流れをもたらす可能性がある。中間圧力、及び、流体戻しのオリフィス開口における流体の圧力の時間平均値と中間圧力との差が、このオリフィス開口の正確な位置決めにより、容易に且つ狙いを定めて影響を受け得ることは、既に上述した。
【0095】
例えば、中間圧力は、作動中、流体戻しのオリフィス開口の位置における(圧縮機チャネル内の)流体の圧力の時間平均値よりも0.2 bar~1.5 bar高い範囲にあり得る。
【0096】
極めて好ましくは、流体戻しの入口は、脱ガスチャンバ内において、直接オイル戻しの第2の流体連通部のオイル入口の上方に配置されている。したがって、分離された流体のみが流体戻しに流入し、相応して、液状のオイルは、直接オイル戻しの第2の流体連通部に流入する。この関連において、「上方」は、スクロール圧縮機が重力の方向に対して所望の作動位置に位置付けられている場合に、流体戻しの入口が、重力の方向に沿って見て、直接オイル戻しの第2の流体連通部のオイル入口の前(すなわち上方)で、脱ガスチャンバ内へ開くことを意味する。特に、流体戻しの入口は、脱ガスチャンバの上端に配置されることができ、及び/又は、直接オイル戻しの第2の流体連通部の入口は、脱ガスチャンバの下端に配置されることができる。
【0097】
所望の作動位置は、例えば、固定スクロールの中心軸が、重力の方向に対して少なくとも実質的に垂直であることにより、定義され得る。
【0098】
好ましい実施形態では、スクロール圧縮機は、吐出圧力チャンバを備え、オイルセパレータは、吐出圧力チャンバを介して圧縮セクションの出口と直接的に流体連通している。吐出圧力チャンバは、圧縮セクションと直接的に流体連通している。オイルセパレータは、吐出圧力チャンバと直接的に流体連通し、したがって、吐出圧力チャンバを介して、圧縮セクションの出口と直接的に流体連通している。吐出圧力チャンバは、吐出された流体の緩衝チャンバとして機能する。それは、吐出圧力を平準化する。
【0099】
特に好ましい発展形態では、脱ガスチャンバは、径方向において吐出圧力チャンバの外側に形成されており、吐出圧力チャンバを取り囲む。脱ガスチャンバは、実質的に中空円筒状の基本形状を有し、吐出圧力チャンバは、脱ガスチャンバの中心に同軸に配置されている。これは、非常にコンパクトな構造を可能にする。
【0100】
好ましくは、スクロール圧縮機は、圧縮作動中に接触圧が作用する接触圧チャンバを含み、旋回ディスクは、作動中、接触圧によって固定ディスクに対して押し付けられる。
【0101】
接触圧チャンバは、直接オイル戻しの外側に配置されている。接触圧チャンバは、直接オイル戻しの一部ではない。直接オイル戻しを通じて戻されるオイルは、作動中に接触圧を受ける接触圧チャンバの内部空間を通っては導かれない。直接オイル戻しは、機能的な意味で、接触圧チャンバの内部空間を「バイパス」する。
【0102】
直接オイル戻しは、接触圧チャンバから空間的に分離された態様で、形成されている。それは、接触圧チャンバとは別個である。
【0103】
特に、脱ガスチャンバは、場合によっては接触圧チャンバに加えて、すなわち別個に、形成されている。例えば、接触圧チャンバは、中心軸に対して平行に見て、旋回ディスクのうち、旋回ディスクとは反対側に配置され得る。脱ガスチャンバは、それに反して、中心軸に対して平行に見て、固定ディスクのうち旋回ディスクとは反対側に配置され得る。
【0104】
特に好ましくは、スクロール圧縮機は、オイルをオイルセパレータから接触圧チャンバ内へ戻すための第2のオイル戻しを含む。
【0105】
第2のオイル戻しを用いて、接触圧チャンバにオイルが供給される。第2のオイル戻しは、接触圧チャンバに圧力を加えるために使用され得る。固定ディスクから離れる方を向く旋回ディスクの後面は、接触圧チャンバの境界の一部を形成し得る。好ましくは、第2のオイル戻しは、オイルセパレータから直接的に接触圧チャンバに通じている。これは、僅かな複雑さと、スクロール圧縮機が容易に且つ安価に製造され得ることと、をもたらす。
【0106】
本発明の極めて有利な実施形態では、第2のオイル戻しは流量弁を備える。流量弁は、第2のオイル戻しの作用に影響を及ぼす。特に、それは、第2のオイル戻しを通って接触圧チャンバ内に流入するオイルの量に影響を及ぼす。それにより、流量弁は、接触圧チャンバ内の正確な接触圧の調整及び設定を補助する。
【0107】
特に好ましくは、第2のオイル戻しの流量弁は、絞り弁として具現されている。そのようにして、接触圧の調整は、第2のオイル戻し(及び、場合によっては基準戻し連通部、下記参照)によって、はるかに容易になる。これは、第2のオイル戻しに絞り弁がない設計と比較して、スクロール圧縮機の効率を高める。
【0108】
第2のオイル戻しは、少なくとも部分的に、直接オイル戻し(第1のオイル戻し)とは別個に形成されている。第2のオイル戻し及び直接オイル戻しは、共通の開始領域を備え得る。この場合、直接オイル戻しは第2のオイル戻しから分岐し、分岐部は、第2のオイル戻しに沿って見て(オイルの流れ方向に見て)、接触圧チャンバの前にある。特に好ましくは、分岐部は、第2のオイル戻しに沿って見て(オイルの流れ方向に見て)第2のオイル戻しの流量弁の前にある。共通の開始領域は、オイルセパレータ内へ開口する共通のオイル入口で始まる。
【0109】
本発明の極めて好ましい実施形態では、直接オイル戻しは、オイルセパレータ内へ開口する第1のオイル入口を備え、第2のオイル戻しは、オイルセパレータ内へ開口する第2のオイル入口を備える。第2のオイル入口は、第1のオイル入口とは異なる。第2のオイル入口は、第1のオイル入口とは別個に形成されている。特に、第2のオイル入口は、第1のオイル入口から空間的に隔てて形成され得る。
【0110】
一発展形態では、第2のオイル戻しは、オイル不足の場合に、直接オイル戻しよりも優先される。オイルセパレータ内の液状のオイルの量が所定の値を下回る場合、直接オイル戻しを通るオイル流は、第2のオイル戻しを通るオイル流に対して低減され、及び/又は、直接オイル戻しを通るオイル流は完全に停止される。
【0111】
この状態では、直接オイル戻しを通って圧縮セクション内へ導入されるオイルは、ほとんど又は全くない。その結果、圧縮セクション内の摩擦が増大し、効率が低下する。しかしながら、接触圧チャンバには引き続きオイルが供給される。時間的に限定された潤滑不足は、脱ガスチャンバ内にあるオイルによって一時的に補償され得る。したがって、旋回ディスクは、少なくともその後側から更に潤滑される。更に、場合によっては、接触圧チャンバ内にある旋回機構の部分が、更に潤滑される。更に、接触圧チャンバ内の接触圧は、より容易に維持され得る。そのようにして、スクロール圧縮機は、少なくとも機能を果たす状態であり続ける。圧縮セクションのいくらかの潤滑は、例えば、接触圧チャンバから旋回ディスクを通過して圧縮セクション内へ進入するオイルによって、接触圧チャンバから以下に説明される基準連通部を通って圧縮セクションに流入するオイルによって、及び/又は、吸入された流体が同伴するオイルによって、保持され得る。
【0112】
非常に好ましい実施形態では、第1のオイル入口は、第2のオイル入口の上方に配置されている。この関連において、「上方」は、スクロール圧縮機が重力の方向に対して所望の作動位置に位置付けられている場合に、第1のオイル入口が、重力の方向に沿って見て、第2のオイル入口の前(すなわち上方)で、オイルセパレータ内へ開口することを意味する。換言すれば、第1のオイル入口は、オイルセパレータ内で、第2のオイル入口の上方に開口する。特に、第2のオイル入口は、オイルセパレータ内のオイルリザーバの下端に配置され得る。オイルセパレータの内部のオイルレベルが通常のレベルを起点として低下する場合、そのような配置においては、最初は第1のオイル入口のみが乾燥する。
【0113】
代替的に又は付加的に、スクロール圧縮機は、オイルセパレータ内の液状のオイルの量が所定の値を下回ると、直接オイル戻しを通るオイル貫流を自動的に減少又は停止させる弁機構を備え得る。弁機構は、1つ又は複数の弁を備え得る。第2のオイル戻し及び直接オイル戻しが、共通の開始領域を備える場合、例えば、第2のオイル戻しからの直接オイル戻しの分岐部に、分流弁が形成され得る。弁機構は、オイルセパレータ内の液状オイルの量が所定の値を下回るときを検出する、レベルセンサを備え得る。
【0114】
代替的に又は付加的に、直接オイル戻しは、極めて好ましくは、第2のオイル戻しとは完全に別個に形成されている。これは、直接オイル戻しが、如何なる部位においても、第2のオイル戻し内へ直接的に開かない(逆も同様)ことを意味する。特に、この場合、両者は共通の開始領域を備えない。第2のオイル戻し及び直接オイル戻しは、この意味で、直接的には流体連通していない。これは、もちろん、直接オイル戻しの第1のオイル入口と第2のオイル戻しの第2のオイル入口が、熱交換器の内部空間を介して互いに直接的に(しかし間接的に)流体連通することを排除しない。
【0115】
特に好ましくは、スクロール圧縮機は、圧縮セクションに配置された基準開口と、接触圧チャンバと基準開口との間の流体連通を形成する基準連通部と、を備える。基準連通部は、作動中に基準開口に作用する基準圧力に基いて接触圧に影響を及ぼすために設計され得る。
【0116】
基準開口は、旋回ディスクの圧縮機チャネル内の旋回ベースに、又は、固定ディスクの圧縮機チャネル内の固定ベースに、形成され得る。
【0117】
極めて好ましくは、基準開口は、旋回ディスクの圧縮機チャネル内の旋回ベースに形成されており、基準連通部は、旋回ディスクを通って延びる。したがって、基準連通部は、非常に簡易に且つ安価に実装することができる。
【0118】
接触圧は、直接的に基準圧力により影響を受ける。基準圧力は、圧縮機チャネル内の基準開口の所与の位置において、ここでも、吸入圧力及び場合によっては吐出圧力にも、強く依存する。その点では、接触圧と吸入圧力との間の差異は、おのずからスクロール圧縮機の作動状態に適合する。そのために、接触圧の、労力を要する、外部からの、故障し易い、高価な制御は必要とされない。特に、接触圧の設定及び制御のために、能動的に可変調整可能な圧力制御弁は必要とされない。基準戻し連通部と基準開口との相互作用により、接触圧チャンバ内に圧力平衡が確立される。基準戻し連通部及び基準開口の狙いを定めた設計及び調整、特に対応する圧縮機チャネルにおける基準開口の正確な位置決めによって、スクロール圧縮機の種々の作動状態のための、異なるそれぞれ所望の接触圧の自動的な設定が達成される。相応して、接触圧により旋回ディスクを固定ディスクに押し付ける接触力は、種々の作動状態に対して、それぞれの作動状態において旋回ディスクに作用する引き離し力に調整される。これは、スクロール圧縮機の効率及び信頼性を向上させる。
【0119】
基準連通部は、流量弁を含み得る。特に、流量弁は、調節されない絞り弁として設計され得る。これにより、接触圧に更に影響を与えることができる。流量弁はまた、旋回ディスクの1回転の間の圧力差が減衰せずに接触圧チャンバに作用しないことに役立ち得る。
【0120】
極めて好ましくは、基準連通部を通じて、オイルは、接触圧チャンバから、固定ディスクと旋回ディスクとの間へ導かれる。この場合、スクロール圧縮機は、直接オイル戻しに加えて、「間接オイル戻し」を備え、当該間接オイル戻しは、オイルを、オイルセパレータから、間接的にのみ接触圧チャンバの内部空間を介して、圧縮セクション内へ戻す。間接オイル戻しは、第2のオイル戻し及び基準連通部を含む。そのような間接オイル戻しは、もちろん、本開示の意味における直接オイル戻しではない。
【0121】
本発明の極めて好ましい実施形態では、スクロール圧縮機は2つの圧縮空間を備え、基準開口は、圧縮作動中、旋回ディスクの1回転の間に、回転に必要な時間のうちの第1の部分については最終段の圧縮空間と、回転に必要な時間のうちの第2の部分については最終段から2段目の圧縮空間と、それぞれ直接的に流体連通するよう、(固定ディスク又は旋回ディスクの)圧縮機チャネル内に配置されている。その際、第1の部分及び更なる部分の総計が、回転に必要な時間全体をもたらす必要はない。むしろ、更に他の部分があってもよい。
【0122】
基準開口のこの狙いを定めた位置決めにより、スクロール圧縮機の高圧領域も接触圧に影響を及ぼし、圧縮作動中の接触圧が全ての作動状態において常に十分に高く設定され続けることが保障され、その結果、旋回ディスクに作用する接触力は引き離し力よりも十分に大きい。旋回ディスクは、それにより、圧縮作動中、全ての作動状態において、気密に固定ディスクに押し付けられる。
【0123】
最後段の圧縮空間は、その中にある流体が、圧縮作動中、旋回ディスクのこの回転の間にも、少なくとも部分的に出口開口内へ導かれることを特徴とする。最後段から2段目の圧縮空間は、その中にある流体が、圧縮作動中、旋回ディスクの次の回転の間に、少なくとも部分的に出口開口内へ導かれることを特徴とする。
【0124】
基準戻し連通部及び基準開口に関する更なる説明、詳細及び設計オプション、特に固定ディスクの圧縮機チャネルの基準開口については、独国特許出願公開第102017125968号明細書及び国際公開第2019/092024号を参照されたい。その中に含まれる開示は、適切である限り、旋回ディスクの圧縮機チャネルの基準開口に相応して適用される。
【0125】
スクロール圧縮機は、圧縮セクションの入口と流体連通する吸入圧力チャンバを備え得る。特に、吸入圧力チャンバは、圧縮セクションの入口と直接的に流体連通し得る。吸入圧力チャンバには、作動中、吸入圧力が作用する。
【0126】
スクロール圧縮機は、吸入ポートを備え得る。吸入ポートは、吸入圧力チャンバを介して、圧縮セクションの入口と直接的に流体連通し得る。
【0127】
スクロール圧縮機は、吐出ポートを備え得る。吐出ポートは、オイルセパレータと流体連通し得る。好ましくは、吐出ポートと直接的に流体連通する、オイルセパレータ内の流体のためのオイルセパレータ出口開口は、直接オイル戻しの第1のオイル入口(及び、場合によっては、第2のオイル戻しの第2のオイル入口)の上方に配置されている。この関連において、「上方」は、スクロール圧縮機が重力の方向に対して所望の作動位置に位置付けられている場合に、オイルセパレータ内のオイルセパレータ出口開口が、重力の方向に沿って見て、第1のオイル入口の前(すなわち上方)に配置されていることを意味する。
【0128】
本発明の発展形態では、圧縮セクションの出口は、逆止装置を含む。それは、例えば、逆止フラップ及び/又は逆止弁を含み得る。逆止装置は、圧縮された流体が(所望の流れ方向とは逆に)圧縮セクションの出口を通って逆流することを防止する。さもなければ、吐出圧力チャンバ内の吐出圧力が固定スクロールの中心における圧力よりも高い場合、流体は、吐出圧力チャンバから、圧縮セクションの出口を通って、逆流する可能性がある。
【0129】
逆止装置は、(機能的及び/又は空間的に見て)圧縮セクションの(下流の)端部を形成し得る。
【0130】
逆止装置は圧縮セクションの出口の一部であるため、逆止装置が閉鎖されている場合でも、オイルセパレータは、圧縮セクションの出口と流体連通する。吐出圧力チャンバが圧縮セクションの出口とオイルセパレータとの間に形成されている場合、相応して、本願の意味における吐出圧力チャンバは、逆止装置が閉鎖されている場合でも、圧縮セクションの出口と直接的に流体連通する。
【0131】
特に好ましくは、吐出圧力チャンバ、接触圧チャンバ、旋回ディスク、固定ディスク、戻し連通部及び基準戻し連通部は、吸入圧力チャンバ内に配置されている。それにより、これらの構成要素の全ては、吸入圧力チャンバによって確実に取り囲まれている。この場合、吸入ポート及び吐出ポートは、吸入圧力チャンバに配置されることができ、吐出ポートは、耐圧の態様でオイルセパレータと流体連通する。
【0132】
本発明の発展形態では、固定スクロールは少なくとも1.25巻回を有する。これは、少なくとも450°の固定スクロールの螺旋角に対応する。それにより、通常の用途のために、スクロール圧縮機の十分な最大圧縮が保証される。
【0133】
代替的に及び/又は付加的に、固定スクロールは、好ましくは最大2.5巻回を有する。これは、最大900°の固定スクロールの螺旋角に対応する。その場合にも、スクロール圧縮機は、依然としてコンパクトで、軽量で、安価に製造し得る。
【0134】
特に好ましくは、固定スクロールは2巻回を有し、圧縮機チャネル内の(接触圧チャンバへの)基準開口は、固定スクロールの内側端部から、少なくとも315°、最大で435°、極めて好ましくは少なくとも345°、最大で405°の位置角に配置されている。この配置は、特に実用的であることが実証されている。
【0135】
第2の戻し連通部が複数のオリフィス開口を備え、及び/又は、複数の第2の戻し連通部のそれぞれに少なくとも1つのオリフィス開口が設けられている場合、個々のオリフィス開口は、互いに独立して、前述の実施形態及び変形例のうちの任意のものに従って、それぞれ具現され得る。利点が、相応して適用される。したがって、例えば、全てのオリフィス開口が同じように具現され、全てのオリフィス開口のうちの第1の部分が第1の実施形態に従って形成され、全てのオリフィス開口のうちの第2の部分が第2の実施形態に従って具現され、又は、全てのオリフィス開口が異なる態様で具現されることが、可能である。
【0136】
好ましくは、スクロール圧縮機は、旋回ディスクを駆動するための電気モータを備える。スクロール圧縮機への電気モータの組み込みにより、スクロール圧縮機の特に正確で効率的な作動が可能になる。電気モータの作動は、特定のスクロール圧縮機に対して正確に調整され得る。特に、スクロール圧縮機の駆動は、その場合、他の外部ユニットの作動状態に依存しない。極めて好ましくは、電気モータは、吸入チャンバの内部に配置されている。特に好ましい発展形態では、スクロール圧縮機は、インバータが一体化された電動スクロール圧縮機である。
【0137】
代替的に及び/又は付加的に、スクロール圧縮機は、外部駆動ユニットによる旋回ディスクの駆動のための、動力伝達装置を備えることもできる。外部駆動ユニットは、例えば、内燃機関であり得る。動力伝達装置は、(磁気クラッチのような)クラッチを備え得る。
【0138】
任意選択的に、スクロール圧縮機は、例えばヒートポンプシステムにおいても使用され得る。これは、電動車両及び/又はフルハイブリッド車両の空調にとって、特に興味深い。
【0139】
本発明は更に、本発明によるスクロール圧縮機を備えた空調システムに関する。特に、それは、原動機付き車両のための空調システムであり得る。
【0140】
スクロール圧縮機について説明した設計オプション及び利点は、相応してシステムに適用される。
【0141】
本発明が、以下において、実施例に基づき、図面を参照して説明される。その際、記載され及び/又は図示された全ての特徴は、単独で又は任意の組み合わせで、特許請求の範囲又はそれらの後方参照におけるそれらの要約とは関わりなく、本発明の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【
図1】本発明によるスクロール圧縮機の第1の実施形態の縦断面を示す。
【
図2】
図1のスクロール圧縮機の、圧縮セクション、オイルセパレータ、及び、オイルをオイルセパレータから圧縮セクション内へ直接的に戻すための直接オイル戻しを示す。
【
図3】
図1の圧縮セクションの横断面を、直接オイル戻しの2つのオリフィス開口、及び、冷媒を直接オイル戻しの脱ガスチャンバから戻すための流体戻しのオリフィス開口と共に示しており、これらのオリフィス開口の全ては圧縮セクションの固定スクロールの固定ディスクに配置されており、圧縮セクションの旋回ディスクからは旋回スクロールのみが視認可能である。
【
図4】直接オイル戻しのオリフィス開口の好ましい配置を正確に説明するための、
図3のスクロール圧縮機の固定ディスクの変形例の上面図を示す。
【
図5】本発明によるスクロール圧縮機の第2の実施形態による、圧縮セクション、吐出圧力チャンバ、オイルセパレータ、及び、オイルをオイルセパレータから圧縮セクションに直接的に戻すための直接オイル戻しの、縦断面を示す。
【
図7】流体戻しのオリフィス開口のための有利な位置を説明するための、
図3の固定ディスクの上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0143】
図1には、流体を圧縮するためのスクロール圧縮機1の本発明による第1の実施形態が、概略的に縦断面で示されている。流体は、例えば、冷媒回路の冷媒又は冷媒混合物である。
【0144】
スクロール圧縮機1は、入口11と、固定ディスク20と、旋回ディスク30と、出口12とを有する、圧縮セクション10を含む。出口12には、吐出圧力チャンバ40が直接的に接続している。この実施形態では、出口12は、圧縮された冷媒の、吐出圧力チャンバ40から圧縮セクション10内への逆流を阻止する、逆止装置13を含む。逆止装置13は、ここでは例示的に逆止弁として図示されており、圧縮セクション10の下流端を形成する。
【0145】
(作動中の)冷媒の流れ方向に沿って見て、吐出圧力チャンバ40には、直接的にオイルセパレータ45が接続している。したがって、オイルセパレータ45は、吐出圧力チャンバ40と直接的に流体連通し、(吐出圧力チャンバ40を介して)圧縮セクション10の出口12と直接的に流体連通している。
【0146】
スクロール圧縮機1は、吸入ポート91及び吐出ポート92を有するハウジング90を含む。
【0147】
吸入ポート91は、吸入圧力チャンバ93を介して、圧縮セクション10の入口11と直接的に流体連通している。作動中、吸入ポート91を介して、冷媒が、外部の冷媒回路から吸入される。
【0148】
吐出ポート92は、オイルセパレータ45のオイルセパレータ出口開口46と、直接的に流体連通している。作動中、吐出ポート92を介して、圧縮された冷媒が、外部の冷媒回路内へ吐出される。
【0149】
吸入圧力チャンバ93及び圧縮セクションの入口11には、作動中、吸入圧力が作用する。吸入圧力は、例えば、作動中、0.7 bar~9 barの範囲にあり得る。吐出圧力チャンバ40、オイルセパレータ45及び吐出ポート92内は、作動中、吸入圧力よりも大きい吐出圧力に支配される。吐出圧力は、例えば、6 bar~32 barの範囲にあり得る。吸入圧力及び吐出圧力は、とりわけ、使用される冷媒及び外部の冷媒回路の作動状態に依存する。
【0150】
吸入圧力チャンバ93は、
図1では概略的にのみ示されている。好ましくは、吸入圧力チャンバ93は、少なくとも接触圧チャンバ80を、ジャケット状に取り囲んでいる。すなわち、吸入圧力チャンバ93は、(中心軸に関して)周方向に沿って完全に、接触圧チャンバ80の周りを延びている。代替的に又は付加的に、吸入圧力チャンバ93は、圧縮セクション10の少なくとも一部を、ジャケット状に取り囲み得る。すなわち、吸入圧力チャンバ93は、(中心軸に関して)周方向に沿って完全に、上述した圧縮セクション10の部分の周りを延びている。圧縮セクション10の上述した部分は、特に、中心軸に沿って見て、接触圧チャンバ80と向かい合わせであり得る。
【0151】
吸入圧力チャンバ93は、例えば、少なくとも実質的に円筒ジャケット状に、接触圧チャンバ80、及び/又は、接触圧チャンバ80側の圧縮セクション10の少なくとも一部の周りに、形成され得る。
【0152】
固定ディスク20は吐出圧力チャンバ40に向かい合っており、旋回ディスク30は接触圧チャンバ80に向かい合っている。
【0153】
図3の切断面は、
図1又は
図2における旋回ディスク30と固定ディスク20との間にあり、固定ディスク20の固定ベース22に対して平行に延びている。固定ベース22上には、2.25巻回を有する固定スクロール21が配置されている。相応して、固定スクロール21の外側端部25は、固定スクロール21の内側端部24から810°の螺旋角に配置されている。
【0154】
図4は、固定ディスク20の上面図の簡略化された図示である。
【0155】
簡単にするために、旋回スクロール31は、
図4において、2巻回を有する変形例で示されている。相応して、固定スクロール21の外側端部25は、固定スクロール21の内側端部24から720°の螺旋角に配置されている。その他の点では、
図3及び
図4における固定ディスク20の構造及び機能は同一であり、同一の要素には同一の参照番号が使用される。
【0156】
図3に戻って、旋回ディスク30からは、横断面であるが故に、旋回ディスク30の旋回ベース32(
図3には示されていないが、
図5を参照)の上に配置された旋回スクロール31のみが見える。旋回スクロール31は、(
図3における固定スクロール21の実施形態と同様に)2.25巻回を有する。
【0157】
固定ディスク20と旋回ディスク30は、互いに組み合わせて配置されている。(圧縮)作動において、旋回ディスク30は、接触圧チャンバ80(
図1参照)内の接触圧によって、固定ディスク20に押し付けられる。それにより、一方では、旋回ベース32から離れる方を向く旋回スクロール31の端面は、固定ベース22に気密に密着し、他方では、固定ベース22から離れる方を向く固定スクロール21の端面は、旋回ベース32に気密に密着する。
【0158】
固定ベース22、固定スクロール21、旋回ベース32及び旋回スクロール31は、それにより、複数の圧縮空間14a、14b、14cを画定する。
【0159】
旋回ディスク30又は旋回スクロール31の
図3に示された位置では、固定スクロール21の巻回の間に形成された圧縮機チャネル26内に、最終段の圧縮空間14c及び最終段から2段目の圧縮空間14a、14bが画定されており、最終段の圧縮空間14cは、固定スクロール21と旋回スクロール31との間の狭いギャップ(
図3では見えない)を介して互いに流体連通する2つのサブエリアを含む。
【0160】
図3の左側にはベクトル図が示されており、これは、旋回ディスク30(したがって旋回スクロール31)の回転角103及びその回転方向又は圧縮方向100を示している。旋回ディスク30は、ベクトル図におけるその回転位置103がちょうど0°の回転角101にあるとき、新しい回転を開始する。次いで、旋回スクロール31の外面が、固定スクロール21の外側端部25にちょうど接触し、その際、外側に導かれる最終段から2段目の圧縮空間14bを閉鎖する。同時に、旋回スクロール31の外側端部34が、固定スクロール21の最も外側の巻回の外面に接触し、その際、内側に導かれる最終段から2段目の圧縮空間14aを閉鎖する。
図3では、旋回ディスク30は、0°の回転角101を起点として、圧縮方向100に沿って既に45°の回転位置103まで、更に移動している
図3を起点として、旋回ディスク30は、更に、固定スクロール21の中心の周りを圧縮方向100に沿って旋回する。
【0161】
旋回ディスク30が、
図3を起点として、固定ディスク20に対して圧縮方向100に沿って更に270°旋回すると、0°の回転位置に達し、その現下の回転は終了する。
図3において最終段14cの圧縮空間内にあった冷媒は、大部分が固定ベース22の出口開口28内へ、したがって圧縮セクション10の出口12へ、導かれた。出口開口28は、固定ディスク20又は固定スクロール21の中心に配置されている。
【0162】
スクロール圧縮機1は、オイルをオイルセパレータ45から圧縮セクション10内へ戻すための直接オイル戻し50を備える。
【0163】
より正確には、直接オイル戻し50は、オイルセパレータ45内の第1のオイル入口51から、固定ディスク20の固定ベース22の2つのオリフィス開口59a、59bまで延びる。作動中、直接オイル戻し50は、オイルセパレータ45からのオイルを、オリフィス開口59a、59bから、直接的に、固定ディスク20と旋回ディスク30との間へ注入する。
【0164】
図1に示された実施形態では、直接オイル戻し50は、オイルの流れ方向に沿って見て、第1のオイル入口51、第1の絞り弁53を有する第1の流体連通部52、脱ガスチャンバ54、第2の絞り弁57及び分岐部58を有する第2の流体連通部56、及び更に2つのオリフィス開口59a、59bを含む。
【0165】
作動中、オイルセパレータ45の内部空間は、吐出圧力に支配される。オイルセパレータ45内では冷媒が上昇し、液状のオイルはオイルセパレータ45の下半分に集まる。そのようにして、冷媒とオイルとが互いに分離される。液状のオイル中では、高い吐出圧力に起因して冷媒の溶解度が増大し、液状のオイルは、ある割合の溶解した冷媒を含む。
【0166】
第1のオイル入口51は、オイルセパレータ45の内部空間の下半分に配置され、オイルセパレータ出口開口は、オイルセパレータ45の内部空間の上端に配置されている。吐出圧力により、液状のオイルは、オイルセパレータ45から第1のオイル入口51を通って第1の流体連通部52内へ押し出される。
【0167】
直接オイル戻し50の第1の流体連通部52において、このオイルは、第1の絞り弁53を通って流れる。第1の絞り弁53は、調節されない絞り弁として設計され得る。例えば、第1の絞り弁53は、オリフィス開口又はノズルとして具現され得る。第1の絞り弁53は、オイルの質量流量を減少させる。次いで、オイルは、更に脱ガスチャンバ54内へ流れる。オイルの質量流量の影響により、脱ガスチャンバ54内の中間圧力は影響を受け得る。圧力降下に起因して、オイル中の冷媒の溶解度が低下する。オイルは、第1の絞り弁53の後方において、冷媒で過飽和であり得る。脱ガスチャンバ54内では、冷媒の過飽和部分が蒸発し得る。脱ガスチャンバ54の下部の領域には液状のオイルが集まり、脱ガスチャンバ54の上部の領域には冷媒が集まる。脱ガスチャンバ54は、言うならば、直接オイル戻し50及び流体戻し70の付加的なオイルセパレータとして作用する。
【0168】
脱ガスチャンバ54の下部の領域、例えば脱ガスチャンバ54の底部領域には、直接オイル戻し50の第2の流体連通部56のオイル入口55が配置されている。脱ガスチャンバ54内で支配的な中間圧力により、液状のオイルは、脱ガスチャンバ54からオイル入口55を通って第2の流体連通部56内へ押し出される。
【0169】
第2の流体連通部56は、脱ガスチャンバから出るオイルの質量流量を制限する第2の絞り弁57を備える。それにより、脱ガスチャンバ54内の中間圧力が不所望に強く低下することが、阻止され得る。第2の絞り弁57も、調節されない絞り弁として、例えばオリフィス開口又はノズルとして具現され得る。
【0170】
第2の絞り弁57の下流で、第2の流体連通部56は、分岐部58において2つの支流に分岐する。2つの支流は、少なくとも部分的に、固定ディスク20を貫通する。それらは、それぞれ、固定ベース22に配置されたオリフィス開口59a、59bのうちの1つにおいて終端する。
【0171】
その際、オリフィス開口59a、59bの各々は、圧縮セクション10の入口領域に配置され、これは、作動中、少なくとも部分的に、圧縮セクション10の入口11と直接的に流体連通する。それにより、オリフィス開口59a,59bから流出したオイルは、吸入された冷媒に同伴され、その後、冷媒と共に、新たに形成された圧縮空間内に封入される。オリフィス開口59a,59bがそれぞれ圧縮セクション10の入口領域に位置していることにより、固定スクロール21及び旋回スクロール31の径方向外側の係合領域も、良好に潤滑される。
【0172】
更に、全てのオリフィス開口59a、59bは、旋回ディスク30の各回転中にそれぞれ少なくとも1回、旋回スクロール31によって走査される。これにより、供給されたオイルの良好な分配がもたらされる。オリフィス開口59a、59bから流出するオイルは、旋回スクロール31に塗布される。
図4から、例えば、オリフィス開口59aが、各回転において、旋回スクロール31の外側端部34によって走査されることが分かる。
【0173】
オリフィス開口59a、59bの特に好ましい位置は、
図4を参照して以下でより詳細に説明される。
【0174】
固定ディスク20と旋回ディスク30との間の圧縮セクション10に形成される圧縮空間14a、14b、14c(
図3参照)において、冷媒は、固定スクロール21の中心に輸送され、その際、圧縮空間14a、14b、14cの容積の減少により、吐出圧力に達するまで圧縮される。続いて、この例では固定ディスク20の中心の出口開口28及び逆止装置13を含む出口12と、吐出圧力チャンバ40とを通って、オイルセパレータ45内へ輸送される。
【0175】
その際、冷媒と共にオイルも輸送され、最終的に再びオイルセパレータ45内に達する。そこで冷媒から分離され、直接オイル戻し50の新しいサイクルに利用され得る。オイルを除去され、圧縮され、吐出圧力となった冷媒は、オイルセパレータ出口開口46及び吐出ポート92を通ってスクロール圧縮機1から外へ導かれる。
【0176】
ここで、
図4に基づいて、直接オイル戻しのオリフィス開口59a、59bが、好ましくはどこに配置され得るかを説明する。
【0177】
0°の位置角は、固定スクロール21の内側端部24によって確定される。その際、内側端部24の終端ビード24aは、0°の位置角の決定には無関係であることに留意すべきである。
図4の固定スクロール21は2巻回を有するため、その外側端部25は、720°の位置角又は螺旋角に配置されている相応して、外側端部25と固定スクロール21の外側の巻回の開始点との間で360°の位置角で延びる圧縮機チャネル26の入口開口は、位置角720°にある。
【0178】
図4は、直接オイル戻し50のオリフィス開口の配置のための好ましい第1の領域A
M,1を示す。
【0179】
図4において、γは、固定スクロール21の外側端部25の位置角である。相応して、γは、圧縮機チャネル26の外側端部の位置角でもある。位置角γにおいて、固定スクロール21の内面は、径方向において、固定スクロール21の中心からの距離R
I(γ)を有する。同時に、固定ディスク20の圧縮機チャネル26の入口開口は、位置角において、径方向に幅B
Kを有する。ここで、幅B
Kは、B
K = R
I(γ) - R
A(γ - 360°)として得られる。ここで、R
A(γ - 360°)は、γ - 360°に対応する位置角における、固定スクロール21の外面の距離である。
【0180】
第1の領域AM,1は、位置角γ - 30°から位置角γ + 30°まで周方向に延び、RI(γ) - BK/2からRI(γ)まで径方向に延びている。これは、第1の領域AM,1が、圧縮機チャネル26の入口開口に、厳密には、この位置角範囲又はその仮想的な連続において、圧縮機チャネル26の径方向の外側半分に配置されていることを意味する。
【0181】
図4では、オリフィス開口59aは、第1の領域A
M,1に、厳密には位置角γ = 720° で、圧縮機チャネル26の外面の近傍に、すなわち例えば固定スクロール21の中心から径方向距離R
I(γ) - B
K/10で配置されている。オリフィス開口59aは、1回転につき1回だけ、旋回スクロール31によって閉鎖される。図示された実施形態では、オリフィス開口59aは、内側に導かれる圧縮空間14bと直接的には連通しない。オリフィス開口59aは、特に有利な方法で、外側の圧縮空間の潤滑を確実にする。
図3において、圧縮空間14aは外側に導かれている。
【0182】
図4は、更に、直接オイル戻し50のオリフィス開口の配置のための好ましい第2の領域A
M,2を示す。この例では、オリフィス開口59bは、第2の領域A
M,2内に配置されている。
【0183】
第2の領域M,2は、位置角θを中心として径方向において固定スクロール21の外側で延びており、θ = γ + 180°である。第2の領域AM,2は、位置角θ - 30°から位置角 θ + 30°まで周方向に延び、RA(θ - 360°) からRA(θ - 360°) + BK/2まで径方向に延びている。したがって、第2の領域AM,2は、固定ディスク20の圧縮機チャネル26の外側、より正確には圧縮機チャネル26の入口開口の反対側にある。その際、RA(θ - 360°)は、位置角θ - 360° = γ - 180°における固定スクロール21の外面の径方向距離である。
【0184】
図4では、オリフィス開口59bは、第2の領域A
M,2に、厳密には位置角γ = 900° で、固定スクロール21の最も外側の巻回の外面の近傍に、すなわち例えば固定スクロール21の中心から径方向距離R
A(θ) + B
K/10で配置されている。オリフィス開口59bは、特に有利な方法で、内側に導かれる圧縮空間の潤滑を確実にする。
図3において、圧縮空間14bは内側に導かれている。
【0185】
図3では、直接オイル戻し50のオリフィス開口59a、59bは、
図4を参照して説明したのと同様に配置されている。
【0186】
スクロール圧縮機1は、更に、冷媒を脱ガスチャンバ54から圧縮ユニット内へ戻すための流体戻し70を含む。流体戻し70の流体入口71は、脱ガスチャンバ54の上部の領域に配置されている。そのようにして、液状のオイルが、脱ガスチャンバ54から流体戻し70内へ流れることはない。
【0187】
流体戻し70は、固定ディスク20を通って延びている。流体戻し70のオリフィス開口72aは、固定ディスク20の圧縮機チャネル26内に配置されている(
図3及び
図5参照)。ここで、オリフィス開口72aは、圧縮機チャネル26の入口領域に配置されているが、一時的に閉鎖された圧縮空間によって走査されることもある。
図3では、最終段から2段目の圧縮空間14bが、ちょうどオリフィス開口72aを走査している。したがって、オリフィス開口72aにおける圧縮機チャネル26内の冷媒の圧力の時間平均値は、吸入圧力よりも高い。本実施形態では、通常作動時の脱ガスチャンバ54内の中間圧力は、オリフィス開口72aの位置における圧縮機チャネル26内の冷媒の圧力の時間平均値を上回り、厳密には、正確な作動状態に応じて、0.2 bar~1.5 barの範囲内にある。吐出圧力に対する圧力差は、液状のオイルを、脱ガスチャンバから第2の流体連通部56内へ、そして直接オイル戻し50のオリフィス開口59a、59bから、押し出す。
【0188】
脱ガスチャンバ54内の中間圧力は、特に以下により影響を受ける:
- 第1の流体連通部52を通って脱ガスチャンバ54内へ流れる、同伴冷媒を含むオイルの吐出圧力及び質量流量
- オリフィス開口59a及び59bにおける圧力と、第2の流体連通部56を通って脱ガスチャンバ54から出るオイルの対応する質量流量と、の時間平均値、並びに、
-オリフィス開口72aにおける圧縮機チャネル26内の冷媒の圧力と、流体戻し70を通って脱ガスチャンバ54を出る冷媒の対応する質量流量と、の時間平均値
【0189】
駆動力は、オイルセパレータ45内の吐出圧力である。
【0190】
中間圧力(又は、作動状態が変化しない場合の中間圧力の時間平均値)は、この実施形態では、作動中、吸入圧力よりも0.3 bar~5 bar高い範囲にある。吸入圧力が1 barの場合、作動中の中間圧力は、吸入圧力よりも最小で0.3 bar高く、すなわち絶対値で1.3 barであり、最大で0.9 bar高く、すなわち絶対値で1.9 barである。吸入圧力が7 barの場合、作動中の中間圧力は、吸入圧力よりも最大で4.2 bar高く、すなわち11.2 barである。もちろん、中間圧力は、この場合32 barである吐出圧力を明確に下回ったままである。吸入圧力が5 barの場合、作動中の中間圧力は、吸入圧力より0.6 bar~3.5 bar高い範囲にある。これらの値は例である。正確な中間圧力は、正確な作動状態、例えば吐出圧力にも依存する。正確な圧力比は、使用される冷媒にも依存し得る。
【0191】
換言すれば、作動中の中間圧力は、1.3 bar(最小中間圧力)及び11.2 bar(最大中間圧力)の範囲内にある。
【0192】
図7に基づいて、以下で、流体戻し70のオリフィス開口72a、72bの有利な位置を説明する。
【0193】
一般に、圧縮機チャネル26内の流体戻し70のオリフィス開口72a、72bは、好ましくは、εmin = γ - 300°及びεmax = γの範囲内にある(圧縮機チャネル26の)位置角に配置されており、ここで、γは圧縮機チャネルの外側端部の位置角である。
【0194】
図7は、圧縮機チャネル26内の流体戻し70のオリフィス開口72a、72bの配置のための、2つの特に好ましい領域A
M,3及びA
M,4を示す。
【0195】
オリフィス開口72aの配置のための一方の領域A
M,3は、そこに位置する流体戻し70のオリフィス開口72aが、ε
min = γ - 300° ~ε
max,1 = γ - 180° の範囲にある位置角ε
1に配置されることにより定義され、オリフィス開口72aは更に、外側に導かれる圧縮空間14bによってのみ走査され、1回転につきちょうど1回、旋回スクロール31によって走査されるように配置されている。例えば、
図3、
図4及び
図7の流体戻し70のオリフィス開口72aは、圧縮機チャネル26内で位置角ε
1 = γ - 248°に配置されている。オリフィス開口72aは更に、圧縮機チャネル26の外側でこの位置角に配置されている。それにより、オリフィス開口72aは、この実施形態では、外側に導かれる圧縮空間14bによってのみ走査される。オリフィス開口72aは、ここでは、如何なる時点においても、内側に導かれる圧縮空間14aのうちの1つと直接的に流体連通しない。
【0196】
より正確には、流体戻し70のオリフィス開口72aは、この実施形態では、0°~20°の回転角範囲において、旋回スクロール31によって閉鎖される。回転角が20°に達すると、外側に導かれる圧縮空間14bがオリフィス開口72aを走査し始める。20°~270° の回転角範囲では、オリフィス開口72aと、外側に導かれる圧縮空間14aとは、流体連通している。
図3に示された 90°の回転角の場合、流体戻し70のオリフィス開口72aは、例えばその全面積に亘って、外側に導かれる圧縮チャンバ14bと直接的に流体連通する。270°から360°の回転角範囲では、旋回スクロール31がオリフィス開口72aを再び閉鎖する。
【0197】
20°の回転角では、ちょうどオリフィス開口72aと流体連通した外側に導かれる圧縮空間14b内の冷媒の圧力は、既に吸入圧力より幾らか高い。これは、この圧縮空間14bが、既に直前に0° の回転角(参照符号101)において閉じられ、20°の回転角まで既に幾らか縮小されたことによる。
【0198】
以下の例では、吸入圧力を3 barと仮定する。その場合、この圧縮空間14b内の冷媒の圧力は、20°の回転角で例えば3.08 barである。270°の回転角まで、この圧縮空間14b内の冷媒の圧力は、この例では連続的に4.76 barまで上昇する。その場合、オリフィス開口72aにおける圧縮機チャネル26内の冷媒の圧力の時間平均値は3.76 barであり、すなわち、それは、3 barの吸入圧力よりも0.76 bar高い。これは、特定の作動状態についての非限定的な例である。
【0199】
したがって、
図3による実施形態において、流体戻し70のオリフィス開口72aの位置における圧縮機チャネル26内の冷媒の圧力の時間平均値は、例えば、
・1 barの吸入圧力において、この吸入圧力の126%、
・3 barの吸入圧力において、この吸入圧力の125%、
・5 barの吸入圧力において、この吸入圧力の124%、及び
・7 barの吸入圧力において、この吸入圧力の123%である。
【0200】
流体戻し70のオリフィス開口72aが、実施形態の図示されていない変形例において、領域AM,3でε1 = γ - 295°の位置角にシフトされる場合、流体戻し70のオリフィス開口72aの位置における圧縮機チャネル26内の冷媒の圧力の時間平均値は、作動状態に応じて、例えば、それぞれの吸入圧力の138%~142%の範囲にある。
【0201】
流体戻し70のオリフィス開口72aが、実施形態の図示されていない変形例において、領域AM,3でε1 = γ - 190°の位置角にシフトされる場合、流体戻し70のオリフィス開口72aの位置における圧縮機チャネル26内の冷媒の圧力の時間平均値は、作動状態に応じて、例えば、それぞれの吸入圧力の107%~109%の範囲にある。
【0202】
オリフィス開口72bの配置のための他の領域AM,4は、そこにある流体戻し70のオリフィス開口72bが、εmin,2 = γ - 120° ~εmax = γ の範囲にある位置角ε2 に配置されることにより定義され、オリフィス開口72bは更に、内側に導かれる圧縮空間14aのみによって走査され、1回転につきちょうど1回旋回スクロール31によって走査されるよう、配置されている。
【0203】
図7には、例示的に、位置角ε
2 = γ - 68°を有する領域A
M,4におけるオリフィス開口72bの位置が、記入されている。オリフィス開口72bは更に、圧縮機チャネル26の内側でこの位置角ε
2に配置されている。それにより、このオリフィス開口72bは、内側に導かれる圧縮空間14aのみによって走査される。したがって、オリフィス開口72bは、如何なる時点においても、外側に導かれる圧縮空間14bのうちの1つと直接的に流体連通しない。このオリフィス開口72bは、
図7に示された流体戻し70の他のオリフィス開口72aに代えて又はそれに加えて、形成され得る。
【0204】
圧縮チャンバ14a、14bの閉鎖時において、内側に導かれる圧縮チャンバ14bの位置角は、外側に導かれる圧縮チャンバ14aの位置角に対して、+180°だけシフトされている。オリフィス開口72bの位置角も、オリフィス開口72aの位置角に対して同様に+180°だけシフトされているので、オリフィス開口72bにおける圧力比は、回転中に、オリフィス開口72aにおける圧力比と同様に発生する。
【0205】
図示されていない実施形態では、流体戻し70のオリフィス開口は、例えば、εmax,1 ~ εmin,2の範囲の位置角に配置され得る。このようなオリフィス開口は、圧縮機チャネル26の中央の領域にこの位置角で配置されることができ、その結果、1回転毎に2回、旋回スクロール31によって完全に閉鎖され、内側に導かれる圧縮チャンバ14aと、外側に導かれる圧縮チャンバ14bとに、交互に流体連通する。それにより、このオリフィス開口における冷媒の平均圧力は、この位置角の圧縮機チャネル26の外側での外側に導かれる圧縮チャンバ14b内の冷媒の平均圧力と、この位置角の圧縮機チャネル26の内側での内側に導かれる圧縮チャンバ14a内の冷媒の平均圧力と、の間にある。既に他の箇所で述べたように、オリフィス開口が旋回スクロール31によって完全に閉鎖される期間は、オリフィス開口における冷媒の平均圧力の計算のために無視され得る。
【0206】
スクロール圧縮機1は、更に、第2のオイル戻し82を備える。第2のオイル戻し82は、オイルを、オイルセパレータ45から接触圧チャンバ80内へ戻す。第2のオイル戻し82は、オイルセパレータ45内の第2のオイル入口81と、第2のオイル戻し82における第2のオイル入口と接触圧チャンバ80との間に配置された絞り弁83と、を含む。
【0207】
作動中、オイルセパレータ45内を支配する吐出圧力により、オイルは、第2のオイル入口81を通って第2のオイル戻し82内へ押し込まれる。オイルの圧力は、絞り弁83によって低減される。絞り弁83における圧力降下は、接触圧に影響を及ぼす。
【0208】
接触圧チャンバ80内のオイルは、旋回ディスク30の潤滑に寄与する。更に、オイルのごく一部は、旋回ディスク30を通過して圧縮セクション10の内部へ進入し得る。
【0209】
図1に示されたスクロール圧縮機1は、更に、接触圧チャンバ80の内部空間と基準開口86との間の基準連通部84を含む。基準開口86は、旋回ディスク30の旋回ベース32に、厳密には旋回ディスク30の圧縮機チャネル内に、配置されている。基準連通部84は、スクロール圧縮機1の作動状態に応じて、接触圧チャンバ80内の接触圧に影響を及ぼす。基準連通部84は、接触圧チャンバ80から旋回ディスク30を通って旋回ベース32の基準開口部86に通じている。
【0210】
基準連通部84の基準開口86は、径方向に見て、直接オイル戻し50のオリフィス開口59a、59bよりも更に内側に配置されている。
図3には、旋回ディスク30の圧縮機チャネルの出口領域における基準連通部84の基準開口86の位置が示されている。したがって、基準連通部84は、固定スクロール21及び旋回スクロール31の径方向外側領域の潤滑には、ほとんど又は全く寄与し得ない。基準開口86は、旋回ディスク30の圧縮機チャネルの入口領域には配置されていない。したがって、スクロール圧縮機1の作動中、圧縮セクション10の入口11と基準開口86との間には、直接的な流体連通はもたらされない。
【0211】
任意選択的に、基準連通部84は絞り弁85を含む。絞り弁85は、接触圧の調節に寄与する。
【0212】
第2のオイル戻し82の第2のオイル入口81は、オイルセパレータ45の底部領域に配置されている。特に、それは、直接オイル戻し50の第1のオイル入口51の下方に配置されている。作動中、オイルセパレータ45内のオイルレベルが第1のオイル入口51より下方のレベルに低下すると、第1のオイル入口51は乾いた状態となり、もはやオイルが供給されなくなる。しかしながら、第2のオイル入口81には、引き続きオイルが供給される。それにより、第2のオイル戻しのオイル供給は、直接オイル戻し50のオイル供給よりも優先される。そのようにして、オイル不足の場合にも、接触圧が維持されることが保障されている。圧縮セクション10の一定の潤滑は、旋回ディスク30の外側を通過して進入するオイルにより、及び、外部の冷媒回路から圧縮セクション10の入口11内へ戻るオイルによって、保持される。更に、特に接触圧チャンバ内のオイルレベルが非常に高い場合、オイルは、接触圧チャンバ80から基準連通部84を通って圧縮セクション10内へ到達することができる。
【0213】
スクロール圧縮機1は、更に、電動モータと、電動モータ用のインバータ(図示せず)とを含む。スクロール圧縮機1は、車両の冷媒回路に一体化され得る。スクロール圧縮機1は、例えば、電動車両又はハイブリッド車両に組み込まれ得る。
【0214】
図5は、本発明によるスクロール圧縮機の第2の実施形態による、圧縮セクション10、吐出圧力チャンバ40、オイルセパレータ45、及び、オイルをオイルセパレータ45から圧縮セクション10内へ直接的に戻すための直接オイル戻し50の縦断面を示す。このスクロール圧縮機の残りの要素は図示されていない。スクロール圧縮機及びその部品は、特に明記しない限り、
図1のスクロール圧縮機1の構造及び機能に対応する。同一の要素には同一の参照符号が使用される。
【0215】
【0216】
図5及び
図6には、脱ガスチャンバ54が、径方向(固定ディスク20の中心軸に対して垂直)において吐出圧力チャンバ40の外側に形成されており、吐出圧力チャンバ40を取り囲んでいることが、示されている。脱ガスチャンバ54は、(少なくとも実質的に)中空円筒状の基本形状を有する。吐出圧力チャンバ40は、(少なくとも実質的に)円筒状の基本形状を有する。吐出圧力チャンバ40と脱ガスチャンバ54は、同軸に配置されている。吐出圧力チャンバ40の中空円筒状のジャケット壁41が、吐出圧力チャンバ40と脱ガスチャンバ45とを互いに分離している。このようにして、さもなければ使用されないジャケット壁41の周囲の空間が、有利な方法で使用される。
【0217】
吐出圧力チャンバ40は、開口42を介して、オイルセパレータ45と直接的に流体連通している。
図1と同様に、任意選択的に、圧縮ユニット10の出口11に逆止装置が形成され得る(図示せず)。
【0218】
直接オイル戻し50を有する上述した実施形態は、特に効率的な作動を可能にし、高い信頼性を有する。
【符号の説明】
【0219】
1 スクロール圧縮機
10 圧縮セクション
11 (圧縮セクションの)入口
12 (圧縮セクションの)出口
13 逆止装置
14a,14b,14c 圧縮空間
20 固定ディスク
21 固定スクロール
22 固定ベース
24 (固定スクロールの)内側端部
25 (固定スクロールの)外側端部
26 (固定ディスクの)圧縮機チャネル
28 (固定ディスクの)出口開口
30 旋回ディスク
31 旋回スクロール
32 旋回ベース
34 (旋回スクロールの)外側端部
40 吐出圧力チャンバ
41 ジャケット壁
42 開口
45 オイルセパレータ
46 オイルセパレータ出口開口
50 直接オイル戻し
51 第1のオイル入口
52 第1の流体連通部
53 第1の流量弁(絞り弁)
54 脱ガスチャンバ
55 オイル入口
56 第2の流体連通部
57 第2の流量弁(絞り弁)
58 分岐部
59a,59b (直接オイル戻しの)オリフィス開口
70 流体戻し
71 流体入口
72a,72b (流体戻しの)オリフィス開口
80 接触圧チャンバ
81 第2のオイル入口
83 流量弁(絞り弁)
84 基準連通部
84 流量弁(絞り弁)
86 基準開口
90 ハウジング
91 吸入ポート
92 吐出ポート
93 吸入圧力チャンバ
AM,1, AM,2, AM,3, AM,4 領域
ε1, ε2, εmin, εmax 位置角
ε1, ε2, εmin, εmax 位置角
γ 圧縮機チャネルの外側端部の位置角
θ 位置角
RI(γ) 圧縮機チャネルの外側端部における固定スクロールの内面の径方向距離
BK 圧縮機チャネルの外側端部での径方向における圧縮機チャネルの幅
RA(θ - 360°) 位置角θ - 360°における固定スクロールの外面の径方向距離
【国際調査報告】