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特表2024-503937呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品、および補強された織物部分、不織布部分またはそれらの組み合わせ部分の製造方法並びにフィルタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品、および補強された織物部分、不織布部分またはそれらの組み合わせ部分の製造方法並びにフィルタ
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/08 20060101AFI20240122BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A62B18/08 D
A41D13/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023563156
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021087535
(87)【国際公開番号】W WO2022144310
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】20217414.0
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523241298
【氏名又は名称】フォルサン スオヤインヴァルミスタス オイ
【氏名又は名称原語表記】FORSSAN SUOJAINVALMISTUS OY
【住所又は居所原語表記】Kassimaenkatu 2 30300 Forssa Finland
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポラネン タネリ
(72)【発明者】
【氏名】コティニエミ サミ
【テーマコード(参考)】
2E185
3B211
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA07
2E185CC32
3B211CA02
3B211CB06
3B211CD02
3B211CE02
3B211CE03
(57)【要約】
フェイスブランクは、フェイスブランク(5)のフィルタ開口部(2、3、4)に取り付けられた多数の交換可能なフィルタ(10)とともに使用され、各フィルタ(10)はフィルタ部(11)とフィルタ部(11)を取り囲むフレーム(12)を有し、このフレーム(12)では、外縁が溝(13)を構成するように実装されており、最も有利には、各フレーム(12)の外縁が溝(13)から構成されており、そのため、フィルタ(10)は、舌部と溝の接続接続によってフェイスブランク(5)のフィルタ開口部(2、3、4)に固定可能であり、この場合、舌部(7)と溝(13)は気密な舌部と溝の接続を形成する。さらに独立請求項は、フィルタおよび補強された織物部分、不織布部分、またはそれらの組み合わせ部分の製造方法を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品(1)であって、
再使用可能なフェイスブランク(5)と複数の交換可能なフィルタ(10)を有し、
フェイスブランク(5)は複数のフィルタ開口部(2、3、4)を画定するフェイスブランクの形状を有し、フェイスブランク(5)はさらにヘッドハーネス(6)またはヘッドハーネス(6)のための締結具を有し、フィルタ開口部(2、3、4)が舌部(7)を有するように実装されており、最も有利には、各開口部(2、3、4)の縁部は、舌部によって形成され、舌部がフェイスブランクのフィルタ開口部を全周にわたって取り囲むように、構成され、
複数の交換可能なフィルタ(10)はフェイスブランク(5)のフィルタ開口部(2、3、4)に適合され、フィルタ(10)の各々は、フィルタ部(11)とフィルタ部(11)を取り囲むフレーム(12)とを有し、フレーム(12)がフィルタ部(11)に直接成形され、フレーム(12)では、その外縁部が溝(13)を有するように実装されており、各フレーム(12)の外縁部は溝(13)によって構成されており、フィルタ(10)は、フィルタがフェイスブランク(5)のフィルタ開口部(2、3、4)に舌部と溝の接続によって締結可能であるように構成されて、舌部(7)と溝(13)とは気密の舌部と溝の接続を形成していることを特徴とする呼吸器保護装置。
【請求項2】
フェイスブランク(5)は、射出成形されてヘッドハーネス(6)を固定するための射出成形された締結機構または突起を有することを特徴とする請求項1に記載の呼吸用保護装置。
【請求項3】
突起は、ゴムバンドの締結のためのピンを有することを特徴とする請求項2に記載の呼吸用保護装置。
【請求項4】
ヘッドハーネス(6)は、交換可能なバンドで実装され、最も有利には請求項3に記載のフェイスブランク(5)のピンに特に有利に固定されているゴムバンドで実装されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の呼吸用保護装置。
【請求項5】
フェイスブランク(5)に均一な材料で実装された複数の鼻シール(31)をさらに有し、鼻シール(31)は互いに対向して配置された一体金型半体(50)によって型成形され、金型半体(50)における鼻シール(31)のための成形形状(58)は放電加工によって実装されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の呼吸用保護装置。
【請求項6】
少なくとも1つのフィルタ(10)は、織物および/または不織布を含むフィルタ部(11)と、それを取り囲むフレーム(12)とを有し、フレーム(12)は、その成形が開始されたときにフィルタ部(11)が伸張されるようにフィルタ部(11)に直接射出成形によって固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の呼吸用保護装置。
【請求項7】
開口(2、3、4)のうちの1つに適合され、周囲のフレーム(12)に接続された呼気弁をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の呼吸用保護装置。
【請求項8】
フィルタ(10)は、いくつかの層を含むことを特徴とする請求項6に記載の呼吸器保護装置。
【請求項9】
フィルタ(10)は、少なくとも1つのフィルタ層と、その片側または両側に配置されたフィルタ層を保護する複数のコーティング層とを含むことを特徴とする請求項8に記載の呼吸器保護装置。
【請求項10】
フィルタ層は、帯電したフィルタ材料を含み、これは最も有利にはポリプロピレンをベースとする材料またはポリプロピレンを含む材料、および/または機械的フィルタおよび/または活性炭を含むフィルタであることを特徴とする請求項9に記載の呼吸器保護装置。
【請求項11】
フィルタ部(11)は、フェイスマスク衛生製品(1)において、換言すれば、いわゆる普通の人用のマスクに用いられるフィルタ(10)を実現するために繊維のみからなることを特徴とする請求項8に記載の呼吸器保護装置。
【請求項12】
補強された織物部分、不織布部分またはそれらの組み合わせ部分(10)の製造方法であって、
織物、不織布またはこれら両方を含む補強される部分(11)は、延伸され延伸した状態で維持されつつ金型(100)内に配置され、同時に、補強される部分(11)を取り囲むフレーム(12)が金型(100)内に成形され、ここで、延伸は金型(100)を閉じる前に補強される部分(11)にプレテンションをかけて実行され、金型(100)を使用することによって金型(100)を閉じるときにプレテンションが確実に維持され、
補強される部分(11)は、成形前に型抜きによって、より大きなストリップから、すなわち、織物、不織布、または両方のウェブ(1200、205)から分離されるが、しかし、補強される部分(11)は、より大きなストリップとの材料接続状態が残り、つまり補強される部分の周囲または円周の一部が型抜きされないことを特徴とする方法。
【請求項13】
より大きなストリップ(1200、205)は、リール(202、203)から到来する織物または不織布か、または別個のリール(202、203)から来る複数の織物および/または不織布であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
材料接続状態の補強される部分(11)内の織物または不織布の残りの外部は、破断することなく、開いた金型(100)から送り方向に移送されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
織物、不織布またはこれらの両方を含む補強される部分は、いくつかの材料層を含み、材料層は、最も有利には、金型(100)内に配置されたピンまたは同様の手段によって、成形中に互いに押し付けられることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ピンまたは同様の手段は、フレーム(12)領域内に配置されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
補強される部分(10)は、並列に成形され、製造プロセスにおいて互いに材料接続状態となり、最も有利には、ウェブ(1200、205)の未切断部(1201)によって、すなわち互いに取り外されることなく移送されることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
成形は、射出成形として実行されることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
分離は、金型(100)に実装された切断部分によって行われることを特徴とする請求項12乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品(1)のためのフィルタ(10)を製造するために使用されることを特徴とする請求項12乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品(1)のフィルタ(10)であって、
フィルタ(10)は、繊維および/または不織布を含むフィルタ部(11)と、それを包囲するフレーム(12)とを有し、
フレーム(12)は、請求項12乃至20のいずれか1項に記載の方法により、フィルタ部(11)に直接成形されて固定されていることを特徴とするフィルタ。
【請求項22】
成形は、射出成形法を用いて実行されていることを特徴とする請求項21に記載のフィルタ。
【請求項23】
フィルタ部は、いくつかの層を含むことを特徴とする請求項21または22に記載のフィルタ。
【請求項24】
フィルタ部は、少なくとも3つのフィルタ材料層を含むことを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項25】
フレーム(12)では、各フレーム(12)の外縁が溝(13)から構成されるように外縁が実装されていることを特徴とする請求項21乃至24のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項26】
ポリプロピレンが、フィルタ生地としてフィルタ部(11)に用いられ、また、フィルタのフレーム(12)にも用いられていることを特徴とする請求項21乃至25のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項27】
フィルタ部(11)は、不織ポリプロピレンであり、フレーム(12)は、硬質プラスチックであるポリプロピレンで成形されていることを特徴とする請求項26に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方では呼吸器保護装置およびフェイスマスク衛生製品とそれらの製造に関し、他方では補強された織物部分、不織布部分またはそれらの組み合わせ部分の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
2020年2月から3月にかけて、新型コロナウイルス感染症の流行がパンデミックに変わったため、世界各地の多くの国が例外的に人の移動の自由に制限を課すことを決定した。一部の国では、特に公共の場所や公共交通機関において、呼吸器保護装置の使用が義務付けられている。
【0003】
工業的に製造された呼吸器保護装置が店頭で品切れになることもあったため、布地から布マスクを作る方法についての説明書がインターネット上で共有されている。実際に最も一般的に使用されているのは、不織布製の工業生産された呼吸器保護装置である。路上に蓄積した廃棄物を理由に、一部の人々は外科用フェイスマスクを使用することになっているが、これはおそらく、場所によっては呼吸器保護装置の供給が限られているためである。
【0004】
外科用フェイスマスクは、医療スタッフの呼気中に存在する病原体から患者を保護することを目的とした医療機器である。外科用フェイスマスクは、使用者を空気感染症から守ることはできない。
【0005】
欧州連合の地域における呼吸器保護装置は、個人防護具規制(EU)2016/425の要件を満たさなければならない。要件を満たしていることを示すものとして、呼吸器保護装置にはCEマーキングが付いている必要がある。呼吸器保護装置には、医療用フェイスマスクのほか、さまざまな目的を目的としたさまざまなタイプの呼吸器保護装置が含まれる。
【0006】
医療用フェイスマスクは、例えば、特に空気感染性疾患に罹患した患者を治療するときに使用される。この場合、通常、呼吸器保護装置が少なくとも5μmのサイズのエアロゾルをフィルタリングできれば十分である。医療用フェイスマスクに求められる特性は、欧州規格EN14683:2019+AC:2019で定義されている。
【0007】
呼吸器保護装置および粒子から保護するフィルタリングハーフマスクの技術要件は、欧州規格EN149:2009+Al:2009で提示されている。このような呼吸器保護装置またはハーフマスクのメインフィルタは、デバイスの切り離せない部分を構成する。このような呼吸器保護装置やハーフマスクのクラスとしては、例えば、FFP1、FFP2、FFP3などが挙げられる。
【0008】
交換可能なフィルタを備えた呼吸器保護装置と粒子をフィルタするクォーターハーフマスクの技術的要件は、欧州規格EN140:1998および同規格の修正AC:1999に示されている。
【0009】
一例として、フィンランド社会保健省の下で運営されている独立研究機関であるフィンランド保健福祉研究所は、そのウェブサイト(フィンランド語)で呼吸器保護装置の実際的な保護係数を述べている(https://thl.fi/fi/web/infektiotaudit-ja-rokotukset/taudit-ja-torjunta/infektioiden-ehkaisy-ja-torjuntaohjeita/hengityksensuojaimien-kaytto)。
【0010】
呼吸器保護装置の実際の保護係数とは、保護装置が適切に装着され、ユーザーが保護装置の使用を指示されている場合に、保護装置を使用した場合に95%の人の呼吸空気中のエアロゾル含有量が何倍減少するかを意味する。効率クラスがFFP1(EN149)であるフィルタリングハーフマスクの実際の保護係数は4である。効率クラスがFFP2(EN149)であるフィルタリングハーフマスクの実際の保護係数は10である。効率クラスがFFP3(EN149)であるフィルタリングハーフマスクの実際の保護係数は20である。
【0011】
同様に、P3フィルタ(EN140およびEN143)を備えたハーフマスクの実際の保護係数は20である。
【0012】
一方、バイオハザードに対して使用され、P3フィルタ(EN143)を備えた呼吸器保護装置(EN140)、例えばハーフマスクやクォーターマスクなどは、最大99.95%以上のフィルタ効率を達成できることが実際には知られている。(表A、3M社個人安全部門の出版物「バイオハザードへの空気感染暴露に対する呼吸器保護」、シリーズ技術データ速報第174号、リリース5、2020年6月、2020年10月1日にインターネットアドレス(https://multimedia.3m.com/mws/media/409903O/respiratory-protection-against-biohazards.pdf)からダウンロードしたものを参照)。
【0013】
たとえ有利な状況下であっても、欧州規格EN149:2009に準拠した呼吸器保護装置や粒子から保護するためのフィルタリングハーフマスクを使用した場合よりも、交換可能なフィルタを備えた呼吸器保護装置を使用した方が、かなり優れたフィルタリング結果を達成できる可能性があるが、交換可能なフィルタを備えた呼吸器保護装置は比較的複雑構造となり、購入価格も比較的高価である。
【0014】
米国特許出願公開第2020/0360645A1号は、図3に呼吸器保護装置を開示している。マスクに使用されるフィルタは、リムと、リムの内側に配置される微粒子エアフィルタで構成される。外側のシールド部分はエアフィルタ上に張られ、エアフィルタの周囲に密閉を形成する。
【0015】
米国特許第3,153,073号は、交換可能なフィルタパッドを備えたマスクを開示している。フィルタパッドには、フィルタパッドをしっかりと伸ばした状態に保ち、フィルタパッドとフレームとの間の相対的な変位を防ぐために、タブが挿入される複数の周囲に間隔を置いたスロットが設けられている。フレームは、フィルタパッドの周囲とマスクの内向きフランジ部分との間に防塵シールを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
(発明の目的)本発明の第1の態様による目的は、交換可能なフィルタを有した再使用可能な呼吸器保護装置の洗浄性を向上させることである。この目的は、請求項1に記載の呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品によって解決可能である。
【0017】
第1の目的に代わる、またはこれを補足する本発明の目的は、補強された織物部分、不織布部分、またはそれらの組み合わせ部分の製造を簡素化することである。この目的は、請求項12に記載の方法によって解決することができる。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、i)製造を簡素化し、ii)呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品のためのフィルタの快適性を改善することである。目的i)は、請求項21に記載のフィルタによって達成することができ、目的ii)は、請求項24に記載のフィルタによって達成することができる。
【0019】
従属請求項には、呼吸器保護装置/フェイスマスク衛生製品、フィルタ、および方法の好ましい実施形態が記載されている。
【0020】
本発明の品目の1つは、呼吸器保護装置およびそのフィルタ、あるいはフェイスマスク衛生製品およびそのフィルタである。呼吸器保護装置やフェイスマスク衛生製品も医療機器となる可能性がある。
【0021】
呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品は、ハーフマスクまたはクォーターマスクであることが最も有利であり、特に有利には、例えば、欧州規格EN140:1998に規定されているマスクである。あるいは、呼吸器保護装置は非補助フィルタリングデバイスであってもよい。ハーフマスクおよびクォーターマスクの部分の名前は欧州規格EN134:1998の項目3.1.2に示されており、非補助フィルタリングデバイスの部分の名前は同じ規格である欧州規格EN134:1998の項目3.2.1に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の利点)本発明の第1の態様による呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品は、再利用可能なフェイスブランクを有し、その形状は多数のフィルタ開口部を画定する。さらに、フェイスブランクは、ヘッドハーネスまたはヘッドハーネスのための締結具を有する。フィルタ開口部は舌部を有するように実装されており、最も有利には、各開口部の縁が舌部によって形成され、舌部がフェイスブランクのフィルタ開口部を全周に取り囲むようになっている。
【0023】
フェイスマスク衛生製品の呼吸器保護装置は、さらに、フェイスブランクのフィルタ開口部に適合された複数の交換可能なフィルタを含み、フィルタの各々は、フィルタ部と、フィルタ部を取り囲むフレームとを有する。フレームは、フィルタ部に直接型成形されている。フレームでは、外縁部が溝を有するように実装されており、最も有利には、各フレームの外縁部は、溝によって構成されており、フィルタは、フィルタがフェイスブランクのフィルタ開口部に舌部と溝の接続によって締結可能となるように構成されている。
【0024】
舌部と溝とは、気密な舌部と溝の接続(さね継ぎ接続)を形成している。
【0025】
舌部と溝の接続の実行方法の選択には重要な意味がある。フェイスブランクが再利用可能であり、フィルタが主に使い捨てである場合、簡単に掃除できるようにするには、フェイスブランクに汚れがたまる可能性のある凹みやスロットがないことが必要である。または、掃除や乾燥が困難な場合がある。容易な洗浄性および乾燥性は、舌部がフェイスブランクのフィルタ穴を全周で取り囲むため正確に達成され、この場合、内側に曲がった凹部またはスロットなしでフィルタ穴を実装することが可能である。
【0026】
さらに、これにより、呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品を簡単な構成で実装する機会が得られる。まず、フェイスブランクに個別の機器コネクタを実装する必要がなくなり、そして、フィルタハウジングもフェイスブランクから省略できるため、簡単な方法でフェイスブランクを技術的に実装することが可能となる。
【0027】
同様に、舌部と溝の接続の実行方法により、交換可能なフィルタの構造も単純に保つことができ、フィルタの交換可能性を簡単な方法で実現することができる。ただし、交換可能なフィルタとフェイスブランクの間の舌部と溝の接続は気密になる。
【0028】
有利な態様によれば、フェイスブランクは、ヘッドハーネスを締結固定するための均一な材料を有するように射出成形された締結機構または突起を有する。材質が均一であるため、構造上十分な強度が得られ、状況が悪化した場合でも呼吸器保護装置やフェイスマスク衛生製品のヘッドハーネスが呼吸器保護装置やフェイスマスク衛生製品に固定された状態を保つことができる。
【0029】
有利な態様によれば、突起部はバンドの締結のためのピンを有する。この場合、ヘッドハーネスはゴムバンドなどのバンドとして実現することができる。これにより、次にフェイスブランクを使用する人が異なる場合でも、フェイスブランクを衛生的に再利用することが可能になる。使用後のフェイスブランクは、例えば通常の洗濯機で洗浄することができることが最も有利である。洗浄前にヘッドハーネス(つまり古いバンド)を取り外して廃棄した場合と、洗浄乾燥後にヘッドハーネス(つまり新しいバンド)を締めた場合、ヘッドハーネス使用者の頭髪に当たる部分、より一般的には、後頭部に当たる部分の衛生を確保することができる。ヘッドハーネス(言い換えればバンド)のフェイスブランクへの固定は、ピンによって簡単に行うことができる。
【0030】
有利な態様によれば、ヘッドハーネスは、交換可能なバンド、最も有利にはゴムバンドであるか、またはゴムバンドを含むものを有して実装される。交換可能なバンドは、上述の方法でフェイスブランクのピンに特に有利に固定される。用語「ゴムバンド」は、以下では弾性バンドを指す。言い換えれば、弾性伸縮性は要件だが、ゴムバンドがゴムを含むことは要件ではない。一例として、医療用ゴムバンドにはゴムは含まれていない。
【0031】
1つの有利な態様によれば、フェイスブランクは、実質的に均一な方法でフェイスブランクに実装された多数の鼻シールを有する。2つの鼻シールがあることが最も有利であるが、フェイスブランクは1つの鼻シールでも簡単に実装することができる。1つ以上の鼻シールは、互いに対向して配置された一体金型半体によって型成形されることによって形成され、金型半体における鼻突起のための成形形状は放電加工によって実装される。これにより、いくつかのサイズの顔と鼻にフェイスブランクを実装して、よりフィットするように、換言すれば、よりきつくフィットさせることができる。さらに、本発明者らは、一以上の鼻シールが、フェイスブランクが顔面に及ぼす圧力を低減させることによって、フェイスブランクの使用快適性を向上させることを発見した。
【0032】
呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品は、フィルタ開口部の1つに適合され、周囲のフレームに接続された呼気弁をさらに有することができる。これにより、特にフィルタがある程度詰まっている場合、呼気中も呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品を顔にしっかりと密着させることができ、この場合、呼気によって生じる圧力差の結果、呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品が顔からさらに遠くに押しやられる可能性がある。一方で、作業方法によっては、弁が呼気を軽減することもできる。これは、例えば、肉体的に激しい作業において重要である。
【0033】
呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品のためのフィルタは、織物および/または不織布を含むフィルタ部と、それを取り囲むフレームで構成される。フレームは、本発明の第2の態様による方法を使用して、成形によって、最も有利には射出成形法を使用してフィルタ部に直接固定されている。
【0034】
有利な態様によれば、フィルタ部は、フレームの成形が開始される時点で引き伸ばされている。このようにして、吸入時および呼気時のフィルタ部のバタつきを軽減または回避することさえ可能である。フィルタ部のバタつきによるパタパタ音が煩わしいと感じる人もいる。
【0035】
フィルタは、いくつかの層を有することが最も有利である。このようにして、実行方法に応じて、フィルタリング効率を向上させたり、おそらく接触に敏感なフィルタ層を保護したりすることが可能であり、その結果、このようなより繊細なフィルタ層の動作信頼性を向上させることができる。特に、この理由により、フィルタは、少なくとも1つのフィルタ層と、その片側または両側に配置されたフィルタ層を保護する複数のコーティング層とを含むように実装することができる。これは、フィルタ層が帯電したフィルタ材料(最も有利にはポリプロピレンをベースとする材料またはポリプロピレンを含む材料)を含む場合に特に有利な動作モードである。帯電したフィルタ材料に加えてまたはその代わりに、活性炭を含む機械的フィルタおよび/またはフィルタを使用することができる。
【0036】
本発明者らは、フィルタ材料層が2層の場合には前段落で説明したバタつき音が発生し得るが、フィルタ材料層が3層以上の試験項目ではバタつき音が発生しなくなることを発見した。
【0037】
他の極端な動作モードでは、フィルタのフィルタ部は、フェイスマスク衛生製品(言い換えれば、いわゆる普通人用マスク)に使用されるフィルタを実装するために、織物のみで構成される。使用されるフィルタ材料は、例えば機械的フィルタ層および活性炭(または活性炭を含む材料)であってもよい。
【0038】
補強された織物部分、不織布部分またはそれらの組み合わせ部分の製造方法において、織物、不織布またはこれら両方を含む補強される部分は、延伸され延伸した状態で維持されつつ金型内に配置され、同時に当該部分を取り囲むフレームが、最も有利には射出成形によって金型内にて成形される。このようにして、当該部分に必要となる可能性のある補強構造を当該部分から省略することができる。
【0039】
延伸は、最も有利には、金型を閉じる前に補強される部分にプレテンション(予張力)を与え、そして、金型を閉じる際にプレテンションが確実に維持されるように金型を使用することによって実行される。例えば、射出成形では金型をしっかりと閉じる必要があるため、金型を使用して、射出成形では金型をしっかりと閉じる必要があるため、例えば、金型が閉じるときの金型による伸張またはプレテンションの維持は、金型を使用する最も簡単な方法で正確に確保できる。
【0040】
補強される部分は、成形前に型抜きによって、織物、不織布、またはその両方のより大きなストリップ(つまりウェブ)から分離されるが、最も有利には、金型に組み込まれた切断部分で行われる。しかし、補強される部分は、より大きなストリップとの材料接続状態に残る、言い換えれば、補強される部分の周囲または円周の一部は型抜きされない。
【0041】
より大きなストリップは、最も有利には、リールから到来する織物または不織布か、または別個のリールから来る複数の織物および/または不織布である。これにより、自動化がより有利に実現可能な製造ラインを実現することができる。
【0042】
最も有利には、材料接続状態の補強される部分内の織物または不織布の残りの外部は、破断することなく、開いた金型から送り方向に移送される。これにより、金型から外れた補強された部分を金型から容易に離間させることができ、作業の安全性を高めることができる。なぜなら、成形に使用される金型は典型的には高温であり、開閉型は危険であるためである。
【0043】
織物、不織布、またはこれらの両方を含む補強される部分は、いくつかの材料層を含むのが最も有利である。この方法の有利な実施形態では、材料層は、成形中に互いに押し付けられ、最も有利には、金型内に配置されたピンまたは同様の手段によって押し付けられる。このようにして、フレームの位置でも材料層をより高密度にパッケージ化することができ、これにより補強される部分の強度を高めることができる。材料層の間で、特に薄い層で圧搾される成形材料は、比較的小さな力でも個々の材料層がフレームから外れるような影響を与えられる可能性がある。
【0044】
ピンまたは同様の手段はフレーム領域に配置するのが最も有利である。このように、金型が開かれた後、金型から補強された部分を押し出すために、成形後もピンなどを使用することができる。
【0045】
この方法の有利な実施形態では、補強されるいくつかの部分が並行して成形され、製造プロセスにおいて互いに材料的に接続された状態で、換言すれば互いに分離されることなく製造中に移送される。これにより、連続生産能力の向上が可能になる。
【0046】
フェイスブランクは、単一部分成形で製造されるのが最も有利である(ヘッドハーネスの締結のように、この締結は、例えばフェイスブランクと締結具が同時に成形されるように、フェイスブランク内に実質的に均一な方法で実装されることが最も有利である)。ヘッドハーネスは、単一の材料から製造されることが最も有利である。フィルタにおいて、フィルタ部とフレームは同じ(最も好ましくは単一の)材料から製造されることが最も有利である。そうすることで、非常に簡単な方法で構成要素を相互に分離してリサイクルすることができる。
【0047】
例えば、フィルタ部(フィルタ生地として)やフィルタフレームにポリプロピレンを有利に使用することが可能であり、これにより、汚染の潜在的なリスクに対処した後、フィルタ自体をリサイクルすることが可能になる。この場合、燃焼によるエネルギー利用などにフィルタを活用することができる。フィルタ部は不織布(フレームは硬質プラスチック(ポリプロピレンなど)で成形されている。
【0048】
以下では、呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品、フェイスブランク、フィルタの実施、また一方で本発明による方法の実施について、添付の図面に示される実施形態を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】フェイスブランクを示す図である。
図2】フェイスブランクを示す図である。
図3】フェイスブランクを示す図である。
図4】フェイスブランクを示す図である。
図5】フィルタを示す図である。
図6図5のフィルタのフレームにおける断面VI-VIを示す断面図である。
図7】呼吸器保護装置すなわちフェイスマスク衛生製品を示す図である。
図8】金型の第1部分を示す図である。
図9】金型の第1部分を示す図である。
図10】金型の第2部分を示す図である。
図11】金型の第2部分を示す図である。
図12】金型を閉じた状態での切断および成形と、閉じた金型でのストリップとを示す図である。
図13】切断および成形後に開いた金型と、開いた金型内のストリップとを示す図である。
図14】切断および成形後に開いた金型と、開いた金型内のストリップとを示す図である。
図15】本方法を実施するために設計された装置を示す図である。
図16】金型内(より正確には、金型の切断部分内)で並行して製造された3つのフィルタを示す図である。
図17】3つのフィルタが並行して製造されたフィルタセットを示す図である。
図18】一緒に折り畳まれたフィルタセットを示す。
図19】フェイスブランクの有利な実施形態を示す図である。
図20】フェイスブランクの有利な実施形態を示す図である。
図21】フェイスブランクの鼻シールの成形形状を形成するための電極を示す図である。
図22】金型内の所定の位置にある図21に示される電極を示す図である。
図23】鼻シールを有したフェイスブランクの金型の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
I:フェイスブランク、フィルタおよび呼吸器保護装置/フェイスマスク衛生製品。
【0051】
すべての図において、同じ参照番号は同じ技術的特徴を指す。
【0052】
図1図4はフェイスブランク5を示す。フェイスブランク5の形状は、多数のフィルタ開口部2、3、4を画定し、最も有利には、右側開口部2、左側開口部3、および底部開口部4を有する。フェイスブランク5は、ヘッドハーネス6すなわちヘッドハーネスのための締結具6をさらに有し、フィルタ開口部2、3、4が舌部7を有するように実装されていることを特徴とし、最も有利には、各開口部2、3、4の縁が舌部で構成されている。
【0053】
図2は、ヘッドハーネスのための締結具6を示す。締結具6の自由端は、フェイスブランク5に向かって曲げられ、ノブまたは膨らみをスロットに入れることによって形状が制限された方法で締結される。この場合、締結具6はループまたはアイレットを形成する。ノブまたは膨らみは、締結具6によって顔に加えられる圧力を軽減し、ループまたはアイレットは片手だけで作成できるように実装することができる。フェイスブランク5は、バンド(特にゴムバンド)または類似物がループまたはアイレットに固定されるように、使用者の頭の所定の位置に固定され、そのバンドまたは類似物によってフェイスブランク5が使用者の頭部に対して締め付けられる。
【0054】
フェイスブランク5は、最も有利には均一な材料で成形される構造を有することができ、最も好ましくは均一な材料で成形される。フェイスブランク5が成形されたのと同じ成形方法(射出成形など)によって、例えばヘッドハーネス6を締結固定するための突起(バンド、特にゴムバンドなど)が形成される。
【0055】
フェイスブランク5は、交換可能なフィルタ10がその中に取り付けられるように、再利用可能となるように最も有利に製造される。
【0056】
フェイスブランク5は、いわゆるアボカドの半分の形状を有し、フェイスの形状を模倣したピースからなる。フェイスブランク5に使用される材料は、エラストマー(シリコーン、ポリウレタンなど)であることが最も有利であるが、非弾性材料も利用可能である。
【0057】
フィルタ開口部2、3、4は、舌部7を有するように実装されており、各開口部2、3、4の縁部が舌部7から構成されることが最も有利である。
【0058】
図5はフィルタ10を示す。各フィルタは、フィルタ部11と、フィルタ部11を取り囲むフレーム12とを有し、フレーム12の外縁は、溝13を有するように実装されている。最も有利には、各フレーム12の外縁が溝13からなる。フィルタ10は、舌部と溝の接続によってフェイスブランク5のフィルタ開口部2、3、4に固定可能であり、この場合、舌部7および溝13は気密な舌部と溝の接続を形成する。フィルタ10のフレーム12および溝の実装は、図6に示される断面VI?VIに示されている。
【0059】
図7は、呼吸器保護装置すなわちフェイスマスク衛生製品1を示しており、フェイスブランク5に位置するフィルタ開口部2、3、4内の所定の位置にフィルタ10が配置されている。呼吸器保護装置1またはフェイスマスク衛生製品1は、フィルタに加えて、または一部のフィルタ10の代わりに、フィルタ開口部2、3、4の1つに適合され、周囲のフレーム12に接続された呼気弁を有することができる。
【0060】
フィルタ開口部2、3、4の縁部、言い換えれば舌部7は、それらがフィルタ10のフレーム12の溝13内に気密的に設置され、一体化されたフレームを有したフィルタ10が交換可能で収まるように形状付けられる。
【0061】
交換可能な様々な成形部分を使用して、マーケティングまたはコミュニケーションに使用されるシンボル、ロゴ、またはエンブレムをフェイスブランク5に成形することが可能である。これの代わりに、またはこれに加えて、フェイスブランク5にシンボル、ロゴ、またはエンブレムを印刷、プレス、または固定することが可能である。
【0062】
フェイスブランク5の目標耐用年数は、少なくとも100回の使用(フィルタの交換回数)であることが最も有利であり、これにより、フェイスブランクの使用当たりの価格をより低くすることができる。
【0063】
フィルタ10のフレーム12は主に硬質プラスチックからなる。例えば、ポリプロピレンは、均一な組成によりフィルタ10のリサイクル可能性を保証する。
【0064】
フィルタ10は、異なるフィルタリングクラス、色、および追加の特性を有して製造することができる。フィルタ部11は、織物および/または不織布のいずれかである、1つまたは複数の類似または異なるフィルタ材料層10から構成される。ポリプロピレンベースの帯電したフィルタ材と、実際のフィルタ層を保護する表面層が最も有利に使用される。フィルタ特性を持たない単なる織物も、いわゆる普通人のためにフレーム12に使用することができる。
【0065】
フィルタ材料の代わりに、またはフィルタ材料に加えて、例えば建築産業では、呼気弁を1つまたは複数のフレーム12に接続することができる。
【0066】
フィルタ10には、フィルタリングクラス、製造日、有効期限、製造場所、および(欧州経済領域内での)CEマーキング、さらに場合によっては通知されたもの識別も、おそらくレーザー技術またはパッド印刷(ドイツ語でTampondruck)を使用して、最も有利に製造プロセスにおいて印刷される。この後、フィルタ10を気密包装される。
【0067】
呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品1は、EU規格EN140:1998(修正AC:1999を含む)に従ってCE認定の個人防護具として実装可能である。この場合、フィルタ10は着脱可能である。
【0068】
あるいは、呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品1は、必要に応じて、EU規格EN149:2009に準拠したCE認定の個人防護具としても実装可能である。この場合、フィルタ10は取り外し不可能となる。
【0069】
対象となるフィルタリングクラスには、(FFP1~FFP3 A1 NR)が含まれる。ここで、FFP1~FFP3はフィルタリングレベルまたはクラスを示し、A1は再利用可能なフレーム、NRは再利用不可能なフィルタを示す。さらに、マスクのフレームが防水性(主にエラストマーベース)の場合、フィルタにも飛沫耐性を追加できる。その場合、マスクの型式承認のために追加クラスタイプHRを求めることができる。タイプHRは手術状態での作業を可能にする分類であり、その製造には医療機器の製造許可が必要である。このため、呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品1は、「欧州医療機器指令(93/42/EEC)およびサージカルマスクとしての使用のためのEN14683:2005タイプHR」に従って実装することもできる。
【0070】
呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品1をさまざまな(作業)位置でさまざまな種類の顔に可能な限りぴったりと密着させる目的は、最大0~1%のバイパス流量を達成することである。バイパス流とは、息を吐き出したり吸い込んだりするときに、呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品と顔の間で制御されずに流れる/漏れる空気を指す。これは、最大のフィルタリング面積による圧力差のバランスによって直接影響を受ける可能性がある。フィルタ面積が小さいほど、呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品1の端と顔の間の圧力バランス(漏れ)の必要性が大きくなり、フィルタ1平方センチメートルあたりに移動する空気の量が少なくなる。
【0071】
最適解を求めた後、フィルタ材質の変更やフレーム材質の選択、フレームの剛性の選択などを行いる。必要に応じて、フェイスブランク5を使用してフィルタリングレベルを下げる効果を得ることができる。
【0072】
II:ピンまたは固定機構の実装の可能性について。
【0073】
呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品1の製造における目標は、作業段階をできるだけ少なくし、作業段階ごとの加工度をできるだけ高くすることである。これは主に射出成形技術を使用し、金型に機能を統合することによって実現される。
【0074】
成型工程におけるゴムバンドの締め付け機構の製造工程。
【0075】
第1実施形態の締め付け機構は、H字状の部分からなり、「文字Hの横線」はマスクのフレームと同じ材料であるが、「文字Hの縦線」は(硬質)プラスチックであることが最も有利である。
【0076】
ゴムバンドの摩擦や引っ張りによってエラストマーの復元能力が急激に失われないように、プラスチックが使用されている。締結方法として使用できるその他の代替案も検討する。これを書いているとき、最も有利な代替案は、フェイスブランク5が1つの部分からなるコンポーネントとして実装されることであるように思われる。
【0077】
主な目的は、呼吸器保護装置すなわちフェイスマスク衛生製品1を、例えば締め付け具合を調整できる2本のゴムバンドで頭の後ろに確実に締結固定することである。さらに、衛生上の理由から、ゴムバンドは再利用可能ではなく使い捨てであることが重要である。ゴムバンドはフィルタ10を交換するときに廃棄/リサイクルされ、常に新しいゴムバンドが呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品のためのフィルタ10のパッケージに入れて届けられる。
【0078】
製造プロセス:
1.金型100(フレーム金型)が開くと、2本のプラスチックラインが次の呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品(総量:4本)の両側のリールから所定の位置に押し込まれる(次の文字Hの垂直線)。
2.金型100が閉じると、金型100は文字Hの垂直線をその寸法に合わせて切断し、それらの端を金型に対してしっかりと押し付ける。
3.溶融したフレーム組成物は、密閉された金型100内に注入され、各呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品1のフェイスブランク5(フレーム)の締結機構に注入され、同時に文字Hの横線の締結機構にも注入される。
4.金型が開き、エジェクタが呼吸器保護装置またはフェイスマスク衛生製品1の完成したフェイスブランク5(フレーム)をさらにプロセスに落とす。
5.繰り返す。
【0079】
III:補強された織物部分、不織布部分またはそれらの複合部分の製造方法。
【0080】
ここで説明される方法は、フィルタ10の製造に有利に使用される。これに加えて、またはこれの代わりに、この方法は、他の補強された織物部分、不織布部分、またはそれらの組み合わせ部分の製造にも使用することができる。
【0081】
第1部分101と第2部分102を含む金型100は、この方法において最も有利に使用される。図12は、閉じた位置にある金型100を示す。図8および図9は、金型100の第1部分101を示し、図10および図11は、金型100の第2部分102を示す。図12はまた、金型100に供給されるウェブ1200を示しており、ここでフィルタ部11が最初に切断(型抜き)され、未切断部分1201によってウェブ1200に接合されたままとなり、その後、フレーム12が成形される。図12に示される矢印は、ウェブ1200が移動する方向を示す。換言すれば、フィルタ10は残りのフィルタに結合されたままである。ウェブ1200’にはフィルタ10が成形されている。したがって、残りのウェブ1200’を連続生産におけるコンベヤベルトとして、またはフィルタ10を前方に運ぶためのコンベヤベルトの一部として使用することが可能である。これは図14にも示されている。
【0082】
フィルタの製造工程10:
(切断)
1.所望のタイプのフィルタウェブ1200(ウェブは連続バンドを指す)。このフィルタウェブ1200は、最も好ましくは少なくとも1つの層からなるが、最も有利には複数の層からなり、連続フィルタ材料が金型100の半体101、102の間を走る。
【0083】
2.(開始時)金型100は空の状態で初めて閉じる。この場合の(a)、(b)。
【0084】
a.フィルタウェブ1200は、位置決めの際にフレーム12が要求する形状に切断され、例えば45°の角度をなす小さな未切断部分1201、すなわち「トリミング」によってフィルタウェブ1200に接合されたままとなる。度に達し、それとともに次のステージに進むことができる。換言すれば、フィルタ部11は、不完全な切断によって、最も有利には、型抜きプレス103を用いて型抜きプレスのカウンターピース104に押し付けることによって、フィルタウェブ1200から分離され、ウェブ1200のその部分が分離される。これは、打抜きプレスの中間部106に対応し、フィルタ部11はフィルタウェブ1200に接合されたままである一方、打抜きプレスの部分105は、型抜きプレスのカウンターピースの部分107と共同作用して切断される。フィルタウェブ1200とフィルタ部11の余分な部分をプレスする。「トリミング」は、型抜きプレスの部分の間に残る領域によって形成される。そのような領域が1つ以上存在する可能性がある。
【0085】
b.フィルタウェブ1200およびフィルタ部11から切り取られた余分な部分(換言すれば、廃棄部分)は、金型を通して吹き飛ばされるか吸引されて廃棄される。カッターの穴から空気を吹き込んだり吸引したりすることで、裁ち屑が金型内を飛んだり移動したりして廃棄される。
【0086】
3.金型100は、成形のために2度目に閉じる。この場合の(a)、(b)。
【0087】
a.カットされたフィルタウェブ1200は、成形点(項目2以降で説明される)に移動する。
【0088】
b.フィルタウェブ1200上の次の点は、位置決め時に同時に切断される(項目4以降で説明)。
【0089】
このプロセスは、図13の開いた金型100によって示されており、左側の図では金型100の第1部分101で行われる切断と、右側の図で転写後に行われる位置決めおよび成形を示している。位置決めと成形については、以下でさらに詳しく説明する。
【0090】
(位置決めと成形)
4.金型100が閉じる。この場合の(a)、(b)。
【0091】
a.ガイドピン120とガイド穴121はスライドを閉じ、所望の深さまで溝を形成する。ガイドピンに加えて、またはガイドピンの代わりに、シリンダなどの他の機械的閉鎖装置を使用することも可能である。切断され整列されたフィルタウェブ1200は、フレーム12の断面に関して所望の「深さ」で金型内の所定の位置に残る。
【0092】
b.フレーム12の溝13を使用すると、潜在的にスライドが閉じて、成形品のさね継ぎが形成される。
【0093】
5.プラスチックが金型に射出され、その場合、フレーム12がフィルタウェブ1200の周囲に形成される。
【0094】
これに加えて、またはこれに代えて、呼気弁がフィルタ10内に同時に成形され、フィルタ部11内に、またはフィルタ部11がそれに交換される。
【0095】
6.成形品が冷却されると、金型100が開かれ、エジェクタピンがフィルタ10を金型100から押し出し、フィルタ10をプロセスの前方に移送する。
【0096】
7.ウェブ1200は次のプロセス段階に進む。
【0097】
8.(項目4以降)を繰り返す。
【0098】
切断成形金型100において考慮されている限り、この方法で複数のフィルタ10を同時に成形することが可能である。図15は、ウェブ10に接合された1つの円形フィルタ100を示す。
【0099】
図16図18は、図15に示されるものと同様の対応する製造ラインで実施される、いくつかのフィルタ10の並行製造の実施形態を示す。この場合、フィルタ10はフィルタセット10’を形成し、フィルタ10は、例えば1つのフェイスブランク5の使用に必要なすべてのフィルタ10を含む使用セットとして互いに結合される。この場合、パッキングは可能な限り簡単であり、1つのフィルタセット10’は、プロセスの最初から最後まで、例えばマーキング(例えば、レーザーマーキングが可能であることは上で説明した)と包装まで、互に続く。
【0100】
図16は、フレーム12の成形前の金型内(より正確には、金型の切断部分)内で上から見たフィルタセット10’を示す。図16では、ウェブ1200の未切断部分1201、および他方、型抜きプレスの部分105にマークが付けられている。型抜きプレスの部分105は、未切断部分を取り囲み、一方、未切断部分1201が残るチャネルを形成する。フィルタセット10’では、フィルタ10を互いに結合した状態に保つために、個々のフィルタ10の間にそのようなチャネルを形成することができる。上述したように、これにより、フィルタ10の取り扱いおよび包装が容易になる。
【0101】
図17は、対応して完全なセット10’を示す。ウェブ1200または複数のウェブから形成されたフィルタ部11は、実線の線影で示されている。フレーム12の内側に残るウェブ1200の部分(フィルタ部11を構成しない部分)は、破線の線影で示されている。ウェブ1200のこの部分はフィルタ部11を構成しないが、上述したことに従ってフィルタ部11をフレーム12内に締め付ける必要がある。未切断部分11もウェブ1200から形成されている。しかしながら、それらはフィルタ10の機能部分を構成しないため、図17では線影を付けていない。前記部分は、例えばフィルタ10をフェイスブランク5に取り付ける前に引き剥がすことができる。
【0102】
ここで説明する動作モードにより、フィルタセット10’を便利な方法で折り畳むことが可能になる。
【0103】
フェイスブランクと交換可能なフィルタ
フィルタ10は、マスク1枚とセットで袋に詰められて出荷される。手の消毒用のハンドティッシュ(1つ以上)やマスクもバッグに同梱されている可能性がある。1つ目のハンドティッシュは手の消毒用であり、2つ目はマスクのフレームの消毒用である。
【0104】
使用済みのフィルタ10は、まずフェイスブランク5から飛び出すか、または押し出されて、リサイクル/廃棄される。この後、手を消毒し、次にフェイスブランクを消毒する。
【0105】
新しいフィルタ10を互いに切り離し、フェイスブランク5のフィルタ開口部2、3、4に1枚ずつ配置し、フェイスブランク5のフレームを少し引き伸ばしてフェイスブランク5の舌部7がフレーム12の溝13に落ち着くことができるようにする。
【0106】
洗浄性
フェイスブランク5のフレームは、容易に洗浄できるように形成されており、表面は滑らかである。
【0107】
フェイスブランク5の自然な形状により、例えば、マスクの上から洗浄水を流すことが可能になる。
【0108】
フェイスブランク5は、消毒剤または洗剤を使用して、この目的のために意図された洗浄ティッシュで洗浄することもできる。フェイスブランク5のフレームは、食器洗い機に耐えられるように設計されている。
【0109】
補強された織物部分、不織布部分またはそれらの複合部分の製造方法を適用した生産ライン例
図15は、考えられる生産ラインを示している。フィルタ10のフィルタ部11、またはより一般的には補強されるべき結合部分のその部分は、最も有利には、いくつかのリール202、203内に保管される。リールのいくつかは主リール202およびいくつかの補助リール203であり得る。リール202、203は、例えばリールブレーキ201によってブレーキ可能であることが最も有利である。ガイドロール204は、リール202、203から取り出された材料をガイドして、結合ウェブ205となり、これが金型100を含む射出成形機206内に導かれる。図15は、金型100の対応する部分、すなわち型の可動側207(金型の第1部分101)および型の非可動側208(金型の第2部分102)を示す。金型100の移動側は、押出スクリュー側の固体側に対して閉じ、押出スクリューは成形材料を金型100内に供給する。
【0110】
成形後、成形品210は結合ウェブ205内に接合される。成形品210は、例えばフィルタ10である。
【0111】
ピンチャーロール211はウェブを引っ張る。ターンロール212、213は、マーキングのためにウェブを例えばレーザーマーキング装置214に案内する。レーザーマーキングされた断片は、剥離装置216でウェブから剥離され、廃棄ウェブは除去装置217で除去される。コンベヤベルト218は、マークされたピースを包装装置219に運ぶ。包装後、包装された製品220はさらなる配送の準備が整う。
【0112】
生産ラインはクリーンルーム内に設置するのが最も有利である。生産ラインの上述の構成により、生産ラインは比較的短く、および/または小さいサイズで実現可能であり、より小さなクリーンルームの使用が可能になる。
【0113】
鼻シール付きフェイスブランク
フェイスブランク5は、多数の鼻シール31を含む場合、様々なサイズおよび形状の顔に対してより緊密になる。図19および図20は、鼻シール31を有したフェイスブランク5を示す。衛生のため、最も有利には、鼻シール31は、例えばフィン状の突起としてフェイスブランク5に一体化されるように実装される。実際には、フィン状の突起として実装された鼻シール31が使用者の顔に押し付けられる。発明者らは、鼻シール31が顔に向けられた圧力をより広い領域にわたって分散させるため、呼吸器保護装置/フェイスマスク衛生製品1によって顔にかかる圧力が軽減されることに気づいた。これにより、呼吸器保護装置/フェイスマスク衛生製品の使用感を向上させることができる。
【0114】
鼻シール31の形状は、金型内にてヒンターカット(アンダーカット)形態となる。金型が2つの部分に分かれて実装されている場合、これは問題にならない。しかし、この場合、金型の合わせ目の継ぎ目が残れば、顔の皮膚には神経が集中しているため、継ぎ目が不快に感じる場合がある。CNC機械を使用して単一部分金型内で鼻シール31をミーリング(フライス)加工などで機械加工することは、金型に要求される成形形状のため不可能である。なぜなら、フェイスブランク5のフレームが、鼻シール31に必要な凹部の形成を妨げるからである。
【0115】
このため、鼻シール31に要求される成形形状を放電加工(EDM)により実現することがより有利である。この目的のために、鼻シールの成形パターン41を含む電極40が、フェイスブランク5の金型の製造に使用される。図21に示された線Lは、成形パターン41のエッジを示す。CNC機械を用いて加工された金型(例えば、アルミニウム金型)は、最も有利には、加工後に、電極および例えば放電加工機を用いて成形パターン41に従った成形形状58を放電加工によって実施することによって修正される。
【0116】
図22は、鼻シールのための成形形状58を実装する前のフェイスブランク5の金型の半体50’を示しており、図21による電極がすでに所定の位置に配置されている。EDM装置は、図23に示すように、放電加工により金型50に成形形状58を形成する。
【0117】
図23は、鼻シール31を形成するために成形形状58が形成されたフェイスブランク5の完全な型半体50を示す。この金型50は、フェイスブランク5の内側用である。フェイスブランク5の外側には別の金型半体が必要であり、これは対応する方法で実装される。フェイスブランク5の成形では、金型半体は互いに対向して配置され、フェイスブランク5の成形に使用されるシリコーンなどの材料が金型内、換言すれば金型半体によって画定される中間空間内に射出成形される。
【0118】
本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものと理解すべきではなく、すべての法的等価物および提示された実施形態の組み合わせを含むものと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0119】
1 呼吸器保護装置/フェイスマスク衛生製品
2、3、4 フィルタ開口部
5 フェイスブランク
6 ヘッドハーネス、締結具
7 舌部
10 フィルタ(呼吸器保護装置/フェイスマスク衛生製品の実施形態)、結合部(方法の実施形態)
10’ フィルタセット
11 フィルタ部(呼吸器保護装置/フェイスマスク衛生製品の実施形態)、補強される部分(方法の実施形態)
12 フレーム
13 溝
14 貫通孔
31 鼻シール
40 電極
41 電極の鼻シールの成形パターン
50’ 鼻シールの成形形状を形成する前のフェイスブランク5の金型の内側部分
50 金鼻シールの成形形状の半分が実装されたフェイスブランク5の金型の内側部分
51、52、53 フィルタ開口部1、2、3のための成形形状
56 ヘッドハーネス6のための成形形状
57 さね継ぎのための成形形状
58 放電加工が最も有利な鼻シールのための成形形状
100 金型
101 金型、第1部分
102 金型、第2部分
103 型抜きプレス
104 型抜きプレスのカウンターピース
105 型抜きプレスの部分
106 中間部
107 型抜きプレスのカウンターピースの部分
108 型抜きプレスの部分間に残った領域
109 出口開口部
120 ガイドピン
121 ガイド穴
201 リールブレーキ
202 メインリール
203 バックアップリール
204 ガイドロール
205 結合ウェブ
206 射出成形機
207 金型の可動側
208 金型の非可動側
209 押出スクリュー
210 ウェブに接合された成形品
211 ピンチャーロール
212 ターンロール(例えば、45度)
213 ターンロール(例えば、90度)
214 物品の表面にマーキングを行うためのマーキング装置(例えば、レーザーマーキングまたはパッド印刷装置)
215 マークされた部分
216 剥離装置/ウェブからのピースの取り外し
217 除去装置/余分な空のウェブを除去
218 ベルトコンベヤ
219 包装装置
220 包装された製品
1200 ウェブ(つまり、連続バンド)
1200’ フィルタ10が成形されたウェブ
1201 未切断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】