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特表2024-503965人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置
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  • 特表-人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置 図1
  • 特表-人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置 図2
  • 特表-人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置 図3
  • 特表-人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置 図4
  • 特表-人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置 図5
  • 特表-人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置 図6a
  • 特表-人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置 図6b
  • 特表-人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置 図6c
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/205 20170101AFI20240123BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240123BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240123BHJP
【FI】
C01B32/205
H01M4/587
H01M4/133
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522555
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 CN2021141166
(87)【国際公開番号】W WO2023115530
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲連▼川
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲遠▼源
(72)【発明者】
【氏名】何 立兵
(72)【発明者】
【氏名】沈 睿
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AC02A
4G146AC19A
4G146AC22A
4G146BA27
4G146BB03
4G146BB04
4G146BB05
4G146BC36B
4G146CB09
4G146CB40
5H050AA07
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA06
5H050GA27
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA19
5H050HA20
(57)【要約】
本出願は、人造黒鉛及びその製造方法、及び前記人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置を提供する。
【解決手段】 前記人造黒鉛は、二次粒子を含み、且つA≧0.5を満たし、そのうち、前記Aは、前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度と、その体積分布粒径D1との比である。本出願による二次電池は、高いエネルギー密度を維持しながら、低いサイクル体積膨張を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人造黒鉛であって、
二次粒子を含み、且つA≧0.5を満たし、選択的に0.50≦A≦1.40を満たし、さらに選択的に0.70≦A≦1.30を満たし、
そのうち、前記Aは、前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度(単位:g/cm)と、前記人造黒鉛の体積分布粒径D1(単位:μm)との比である、人造黒鉛。
【請求項2】
前記人造黒鉛は、二次粒子である、請求項1に記載の人造黒鉛。
【請求項3】
前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度は、1.60g/cm-1.95g/cmであり、選択的に1.70g/cm-1.90g/cmである、請求項1又は2に記載の人造黒鉛。
【請求項4】
前記人造黒鉛の体積分布粒径D1は、1.5μm-3.5μmであり、選択的に1.8μm-3.2μmdであり、さらに選択的に2.0μm-3.2μmである、請求項1から3のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項5】
前記人造黒鉛の体積分布粒径D50は、10.0μm-20.0μmであり、選択的に12.0μm-18.0μmである、請求項1から4のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項6】
前記人造黒鉛のグラム容量は、350mAh/g以上であり、選択的に352mAh/g以上である、請求項1から5のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項7】
人造黒鉛の製造方法であって、
原料に対して破砕を行い、分級、整形処理を行い、前駆体を得るステップS1と、
ステップS1で得られた前駆体に対して造粒処理を行い、中間体1を得るステップS2と、
ステップS2で得られた中間体1に対して2700℃-3200℃の温度で黒鉛化処理を行い、中間体2を得るステップS3と、
ステップS3で得られた中間体2に対してメカノフュージョンで機械処理を行い、人造黒鉛を得るステップS4とを含み、
そのうち、前記人造黒鉛は、二次粒子を含み、且つA≧0.5を満たし、そのうち、前記Aは、前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度と、前記人造黒鉛の体積分布粒径D1との比である、人造黒鉛の製造方法。
【請求項8】
機械処理の時、前記メカノフュージョンの回転速度は、600rpm-1400rpmであり、選択的に800rpm-1200rpmである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記機械処理の処理時間は、5min-30minであり、選択的に5min-25minである、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記造粒処理において接着剤を添加し、且つ添加された接着剤の使用量は、ステップS2において造粒するための前駆体の重量の5%-15%であり、
選択的に、前記接着剤は、コールタールと、アスファルトと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂とのうちの一つ又は複数を含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記原料は、石油生コークスと、か焼石油コークスと、ニードル生コークスと、か焼ニードルコークスと、アスファルトコークスと、冶金コークスとのうちの一つ又は複数を含み、選択的に、前記原料は、石油生コークスと、ニードル生コークスと、か焼ニードルコークスとのうちの一つ又は複数を含む、請求項7から10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
二次電池であって、負極極板を含み、前記負極極板は、負極活物質を含み、前記負極活物質は、請求項1から6のいずれか1項に記載の人造黒鉛を含み、又は請求項7から11のいずれか1項に記載の方法で製造された人造黒鉛を含む、二次電池。
【請求項13】
請求項12に記載の二次電池を含む、電力消費装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、二次電池技術分野に関し、特に人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を含む二次電池と電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、エネルギー密度が高く、汚染がなく、耐用年数が長いなどの優れた特徴を有することから広く応用されている。
【0003】
しかしながら、二次電池では、持続的な充放電により負極活物質の体積がリチウムの吸蔵・離脱中に変化しており、例えばサイクルプロセスにおいて体積膨張が起こり、電池の内部応力が増大し、それによって電池の耐用年数と安全性能に影響を与える。近来、新エネルギー自動車の迅速な普及に伴い、市場は、動力型二次電池の耐用年数と安全性能に対する要求がますます高まっている。そのため、新エネルギー自動車の市場競争力を高めるために、二次電池の体積膨張を低減できる新たな技術を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低膨張性と高グラム容量を兼ね備えた人造黒鉛及びその製造方法、及びこの人造黒鉛を負極活物質として製造された負極極板を提供することを目的とする。さらに、本出願は、サイクルプロセスにおける体積膨張が低く、エネルギー密度が高い二次電池、この二次電池を含む電力消費装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本出願の第一の方面は、人造黒鉛を提供し、前記人造黒鉛は、二次粒子を含み、且つA≧0.5を満たし、そのうち、前記Aは、前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度(単位:g/cm)と、その体積分布粒径D1(単位:μm)との比である。
【0006】
いくつかの実施の形態において、前記人造黒鉛は、0.50≦A≦1.40を満たし、選択的に0.70≦A≦1.30を満たし、さらに選択的に0.70≦A≦1.00を満たす。
【0007】
いくつかの実施の形態において、前記人造黒鉛は、二次粒子であってもよい。
【0008】
いくつかの実施の形態において、前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度は、1.60g/cm-1.95g/cmであってもよく、選択的に1.70g/cm-1.90g/cmであってもよい。
【0009】
いくつかの実施の形態において、前記人造黒鉛の体積分布粒径D1は、1.5μm-3.5μmであってもよく、選択的に1.8μm-3.2μmであってもよく、さらに選択的に2.0μm-3.2μmであってもよい。
【0010】
いくつかの実施の形態において、前記人造黒鉛の体積分布粒径D50は、10.0μm-20.0μmであってもよく、選択的に12.0μm-18.0μmであってもよい。
【0011】
いくつかの実施の形態において、前記人造黒鉛のグラム容量は、350mAh/g以上であり、選択的に352mAh/g以上である。
【0012】
本発明の第二の方面は、人造黒鉛の製造方法を提供し、前記方法は、
原料に対して破砕を行い、分級、整形処理を行い、前駆体を得るステップS1と、
ステップS1で得られた前駆体に対して造粒処理を行い、中間体1を得るステップS2と、
ステップS2で得られた中間体1に対して2700℃-3200℃の温度で黒鉛化処理を行い、中間体2を得るステップS3と、
ステップS3で得られた中間体2に対してメカノフュージョンで機械処理を行い、人造黒鉛を得るステップS4とを含み、
そのうち、前記人造黒鉛は、二次粒子を含み、且つA≧0.5を満たし、そのうち、前記Aは、前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度と、前記人造黒鉛の体積分布粒径D1との比である。
【0013】
いくつかの実施の形態において、前記ステップS4の機械処理の時、前記メカノフュージョンの回転速度は、600rpm-1400rpmであってもよく、選択的に800rpm-1200rpmであってもよい。
【0014】
いくつかの実施の形態において、前記ステップS4の機械処理の処理時間は、5min-30minであってもよく、選択的に5min-25minであってもよい。
【0015】
いくつかの実施の形態において、前記ステップS2の造粒処理において接着剤を添加してもよく、且つ添加された接着剤の使用量は、ステップS2において造粒するための前駆体の重量の5%-15%であってもよく、選択的に、前記接着剤は、コールタールと、アスファルトと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂とのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施の形態において、前記ステップS1における原料は、石油生コークスと、か焼石油コークスと、ニードル生コークスと、か焼ニードルコークスと、アスファルトコークスと、冶金コークスとのうちの一つ又は複数を含んでもよい。選択的に、前記原料は、石油生コークスと、ニードル生コークスと、か焼ニードルコークスとのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0017】
本出願の第三の方面は、二次電池を提供し、前記二次電池は、負極極板を含み、前記負極極板は、負極活物質を含み、前記負極活物質は、本出願の第一の方面による人造黒鉛を含み、又は本出願の第二の方面による方法で製造された人造黒鉛を含む。
【0018】
本出願の第四の方面は、本出願の第三の方面の二次電池を含む電力消費装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本出願による二次電池において、負極活物質は、人造黒鉛を含み、この人造黒鉛は、二次粒子を含み、且つA≧0.5を満たし、そのうち、前記Aは、前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度と、前記人造黒鉛の体積分布粒径D1との比である。本出願による人造黒鉛粒子は、丸みを帯びており、粒子同士の結合力を著しく向上させることができる。二次電池のサイクルプロセスにおいて、負極活物質である人造黒鉛粒子同士の高い結合力は、粒子同士の接触を効果的に維持し、極板の厚さの増加を低減することができ、それによって極板の膨張を著しく低減することができ、さらにこの人造黒鉛を含有する二次電池のサイクルプロセスにおける体積膨張を著しく低減することができる。二次電池のサイクルプロセスにおける体積膨張が低く、高い体積エネルギー密度を維持するのに有利である。低い体積膨張は、さらに二次電池の電池コアの内部応力を低減し、内部応力の作用による電池コアの変形を低減し、二次電池の安全性能を効果的に改善させることもできる。そのため、本出願に係る人造黒鉛は、二次電池の安全性能とエネルギー密度を向上させることができる。なお、体積膨張の低い二次電池は、サイクルプロセスにおいて、電解液の浸潤に適した内部構造を維持することができ、電解液を電池コア内に十分に浸潤させ、リチウムイオンの伝送チャンネルを増加させ、それによって二次電池のサイクル性能を向上させることができる。同時に、極板の低い膨張は、電池コア短絡のリスクを回避するのにも有利であり、さらに二次電池の安全性能を向上させることができる。本出願の電力消費装置は、本出願による二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同じ優位性を持つ。
【0020】
本出願による人造黒鉛の製造方法において、黒鉛化ステップ後にメカノフュージョンを用いて黒鉛化粒子の機械処理を行うことにより、塊状粒子のエッジ角を除去し、最終的に得られた人造黒鉛粒子の表面にさらに丸みを帯びさせることができる。この人造黒鉛を二次電池の負極極板活物質として使用する時、粒子同士の結合力を著しく向上させることができ、さらに極板膨張を著しく低減することができ、それによってサイクルプロセスにおける体積膨張の低い二次電池、この二次電池を含む電力消費装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本出願の実施例の技術案をより明瞭に説明するために、以下は、本出願の実施例において使用される必要がある図面を簡単に紹介し、自明なことに、以下に記述された図面は、ただ本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本出願の実施例による二次電池の概略図である。
図2】本出願の実施例による電池モジュールの概略図である。
図3】本出願の実施例による電池パックの概略図である。
図4図3の分解図である。
図5】本出願の実施例による電力消費装置の概略図である。
図6a-6c】それぞれ本出願の実施例1、実施例2、実施例3による人造黒鉛のSEM(scanning electron microscope、走査電子顕微鏡)の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を適当に参照しながら、本出願の人造黒鉛及びその製造方法、二次電池と電力消費装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0023】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は特定の範囲の境界を限定した。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲がリストアップされている場合、60-110と80-120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4と5がリストアップされている場合、1-3、1-4、1-5、2-3、2-4と2-5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a-b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、そのうち、aとbはいずれも実数である。例えば、「0-5」という数値範囲は、本明細書において「0-5」の間のすべての実数がすでにリストアップされていることを表し、「0-5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表記すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0024】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施の形態及び選択的な実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0025】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0026】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0027】
特に説明しない場合、本出願に言及された「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0028】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0029】
本明細書の記述において、説明すべきこととして、特に断りのない限り、「以上」、「以下」は、その数を含み、「一つ又は複数」における「複数」は、二つ以上を意味している。
【0030】
電気エネルギーは、経済的で、実用的で、クリーンで、制御及び変換が容易なエネルギー形態として、各種の電力消費装置にますます多く応用されている。二次電池は、エネルギー密度が高く、携帯性に優れ、記憶効果がなく、環境にやさしい等の優位性を持つため、電力消費装置の電源として好ましい。しかしながら、二次電池は、サイクルプロセスにおいてその負極極板の膨張により体積膨張が発生するため、電池の内部応力の増大を引き起こし、ひいては二次電池の故障リスクを引き起こし、二次電池のエネルギー密度の向上も制限し、さらに電池の耐用年数と安全性能に影響を与える。そのため、二次電池のサイクルプロセスにおける体積膨張をどのように低減するかは、すでに二次電池技術分野の焦点となっている。
【0031】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、二次粒子を含む人造黒鉛は、人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度(単位:g/cm)とこの人造黒鉛の体積分布粒径D1(単位:μm)との比がA≧0.5であることを満たす時、負極極板活物質である人造黒鉛粒子同士の結合力を著しく向上させることができ、さらにこの人造黒鉛を含有する二次電池のサイクルプロセスにおける体積膨張を著しく低減することができるとともに、二次電池が高いエネルギー密度を維持するのに有利であり、さらに、二次電池、及びこの二次電池を含む電池モジュール、電池パックと電力消費装置の耐用年数と安全性能を改善することができることに気付いた。
【0032】
(人造黒鉛)
本出願の第一の方面は、人造黒鉛を提供する。前記人造黒鉛は、二次粒子を含み、且つA≧0.5を満たし、そのうち、前記Aは、前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度と、前記人造黒鉛の体積分布粒径D1との比である。
【0033】
本発明者は、人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度とこの人造黒鉛の体積分布粒径D1との比がA≧0.5である時、負極極板である人造黒鉛粒子同士の結合力を著しく向上させることができ、さらに負極極板のサイクル膨張を著しく低減することができ、それによってこの人造黒鉛を含有する二次電池のサイクルプロセスにおける体積膨張を著しく低減することができることを発見した。二次電池のサイクルプロセスにおける体積増加が小さく、高いエネルギー密度を維持するのに有利である。特に、サイクル膨張の低い二次電池は、サイクルプロセスにおいて、電解液の浸潤に適した内部構造を維持し、電解液を電池コア内に十分に浸潤させることができるため、それによって二次電池のサイクル寿命を向上させることができる。同時に、二次電池は、低いサイクル膨張を有し、さらに電池コアの内部応力を低減し、内部応力の作用による電池コアの変形を低減し、二次電池の安全性能も効果的に改善させることもできる。従って、この二次電池を採用する電池モジュール、電池パックと電力消費装置の安全性能と耐用年数を向上させることもできる。
【0034】
いくつかの実施例において、人造黒鉛は、0.50≦A≦1.40、例えば0.60≦A≦1.40、0.70≦A≦1.30、0.80≦A≦1.20、0.50≦A≦1.30、0.60≦A≦1.30、0.70≦A≦1.00などを満たしてもよい。
【0035】
いくつかの実施例において、人造黒鉛は、二次粒子であってもよい。
【0036】
いくつかの実施例において、人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度は、1.60g/cm-1.95g/cmであってもよく、選択的に1.70g/cm-1.95g/cm、1.75g/cm-1.90g/cm、例えば1.70g/cm、1.80g/cm、1.90g/cm、1.95g/cm、1.70g/cm-1.90g/cm、1.75g/cm-1.95g/cm、1.80g/cm-1.95g/cm、1.80g/cm-1.90g/cmなどであってもよい。人造黒鉛の粉体圧密密度を適切な範囲とすることにより、負極極板の圧密密度を向上させることができ、それによって二次電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0037】
いくつかの実施例において、人造黒鉛の体積分布粒径D1は、1.5μm-3.5μmであってもよく、選択的に1.8μm-3.2μmであってもよく、さらに選択的に2.0μm-3.2μm、例えば1.6μm-3.4μm、1.7μm-3.3μm、1.9μm-3.1μm、2.0μm-3.0μm、2.3μm-2.8μm、2.5μm-3.5μmなどであってもよい。人造黒鉛の適切なD1は、より丸みを帯びた表面にするのに適し、負極活物質とする時に粒子同士の結合力を著しく向上させるのに有利であり、さらに粒子同士の接触を効果的に維持し、極板の厚さの増加を低減し、極板のサイクル膨張を低減することができ、サイクル膨張における二次電池の体積膨張を低減するのに有利であるだけではく、二次電池のエネルギー密度を向上させるのにも有利である。
【0038】
いくつかの実施例において、人造黒鉛の体積分布粒径D50は、10.0μm-20.0μmであってもよく、選択的に12.0μm-18.0μm、例えば10.0μm-18.0μm、14.0μm-16.0μm、14.0μm-18.0μmなどであってもよい。人造黒鉛の適切なD50は、高い活性イオン及び電子伝送性能を有することに適するとともに、負極での電解液の副反応を減少することができる。適切なD50を有する人造黒鉛は、自身の粉体圧密密度を向上させるのにも有利であり、この人造黒鉛を採用することにより、極板の圧密密度を高くすることができ、それによって二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0039】
いくつかの実施例において、人造黒鉛のグラム容量は、350mAh/g以上であり、選択的に352mAh/g以上である。人造黒鉛のグラム容量が高いほど、それを含む二次電池のエネルギー密度が高くなる。本出願による人造黒鉛は、低いサイクル膨張を有しながら、高いグラム容量を有し、両者を併用することにより、本出願による二次電池は、低いサイクル膨張特性と高いエネルギー密度特性を兼ね備える。
【0040】
(人造黒鉛の製造方法)
本出願の第二の方面は、人造黒鉛の製造方法を提供し、この製造方法によって、上記いずれか一つの人造黒鉛を製造することができる。
【0041】
本出願の実施例において、人造黒鉛の製造方法を提供し、それは、
原料に対して破砕を行い、分級、整形処理を行い、前駆体を得るステップS1と、
ステップS1で得られた前駆体に対して造粒処理を行い、中間体1を得るステップS2と、
ステップS2で得られた中間体1に対して2700℃-3200℃の温度で黒鉛化処理を行い、中間体2を得るステップS3と、
ステップS3で得られた中間体2に対してメカノフュージョンで機械処理を行い、人造黒鉛を得るステップS4とを含み、
そのうち、前記人造黒鉛は、二次粒子を含み、且つA≧0.5を満たし、そのうち、前記Aは、前記人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度と、前記人造黒鉛の体積分布粒径D1との比である。
【0042】
いくつかの実施において、機械処理の時、前記メカノフュージョンの回転速度は、600rpm-1400rpmであってもよく、選択的に800rpm-1200rpm、例えば600rpm-1300rpm、600rpm-1200rpm、700rpm-1400rpm、800rpm-1400rpm、800rpm-1300rpm、900rpm-1200rpmなどであってもよい。ステップS3で得られた中間体2に対して機械処理を行う時、メカノフュージョンの適切な回転速度は、必要な体積分布粒径D1(1.5μm-3.5μmであってもよく、選択的に1.8μm-3.2μmであってもよく、さらに選択的に2.0μm-3.2μmであってもよい)を満たす人造黒鉛を得ることを確保することができ、それによって必要な丸みを帯びた表面を有する人造黒鉛を得る。
【0043】
いくつかの実施において、機械処理の処理時間は5min(分)-30minであってもよく、選択的に5min-25min、例えば10min-30min、5min-27min、5min-26min、10min-20min、5min-15minなどであってもよい。機械処理において、適切な機械処理時間は、必要な体積分布粒径D1(1.5μm-3.5μmであってもよく、選択的に1.8μm-3.2μmであってもよく、さらに選択的に2.0μm-3.2μmであってもよい)を満たす人造黒鉛を得ることを確保することができ、それによって必要な丸みを帯びた表面を有する人造黒鉛を得る。
【0044】
いくつかの実施において、原料は、石油生コークスと、か焼石油コークスと、ニードル生コークスと、か焼ニードルコークスと、アスファルトコークスと、冶金コークスとのうちの一つ又は複数を含んでもよい。選択的に、原料は、石油生コークスと、ニードル生コークスと、か焼ニードルコークスとのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0045】
いくつかの実施例において、ステップS1では、当分野において既知の機器と方法、例えば、ジェットミル、機械式ミル又はロールミルを採用して、原料を破砕してもよい。破砕プロセスにおいて、しばしば、過小粒子が多く発生し、場合によっては過大粒子が存在するため、破砕後に需要に応じて分級処理を行って、破砕後の粉体における過小粒子と過大粒子を除去することができる。分級処理後に、良好な粒径分布を有する粒子生成物を得ることができ、後続の整形及び/又は造粒プロセスを容易にするために、D50は8.0-13.5μmであってもよい。分級処理は、当分野において既知の機器と方法、例えば、分級篩、重力分級機、遠心分級機などを採用して行ってもよい。
【0046】
いくつかの実施例において、ステップS1では、当分野において既知の機器(例えば、整形機又は他の整形機器)と方法を採用して、分級処理後に得られた粒子生成物に対して整形処理を行い、例えば、分級処理によって得られた粒子生成物のエッジ角を研磨してもよく、このように、後続の操作を容易にし、整形処理後に得られた生成物に高い安定性を持たせる。
【0047】
いくつかの実施例において、ステップS1では、整形後に微粉を除去することがさらに含まれてもよい。当分野において既知の機器と方法、例えば、分級篩、重力分級機、遠心分級機などを用いて微粉を除去してもよい。
【0048】
いくつかの実施例において、ステップS2では、ステップS1で得られた前駆体に対して造粒を行うことで、独立して分散した一次粒子を凝集させて二次粒子を形成する。造粒プロセスにおいて、接着剤を用いてもよく、選択的に、前記接着剤の使用量は、ステップS2において造粒するための前駆体の重量の2%-15%、例えば2%-12%、4%-12%、5%-15%、6%-10%などであってもよく、選択的に、前記接着剤は、コールタールと、アスファルトと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂とのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0049】
ステップS2では、当分野において既知の機器、例えば、造粒機を採用して造粒を行ってもよい。造粒機は、通常、攪拌反応釜と、反応釜に対して温度制御を行うモジュールとを含む。さらに、造粒中の攪拌回転速度、昇温速度、造粒温度、降温速度などのプロセス条件を調節することで、造粒によって得られた生成物(即ち、中間体1)のD50を14.5-24.0μmに制御することができる。選択的に、本出願において、造粒時の攪拌回転速度は、800 r/min-1500 r/minであり、昇温速度は、8-15℃/分であり、造粒温度は、400℃-650℃であり、造粒時間は、6-10時間である。
【0050】
いくつかの実施例において、ステップS3では、ステップS2で得られた中間体1に対して黒鉛化処理を行い、中間体2を得る。いくつかの実施例において、ステップS3で黒鉛化処理を行う温度は、2700℃-3200℃、例えば2700℃-3100℃、3000℃-3200℃、2800℃-3100℃などであってもよい。
【0051】
いくつかの実施例において、ステップS4の機械処理時、メカノフュージョンの回転速度は、600rpm-1400rpmであってもよく、選択的に800rpm-1200rpm、例えば600rpm、700rpm、800rpm、900rpm、1100rpm、1400rpm、600rpm-1200rpm、700rpm-1200rpm、900rpm-1100rpmなどであってもよい。機械処理の処理時間は、5min-30minであってもよく、選択的に5min-25min、例えば5min、10min、15min、20min、25min、30min、5min-25min、5min-20min、5min-15min、10min-20minなどであってもよい。適切な範囲のメカノフュージョン回転速度と適切な範囲の機械処理時間は、塊状粒子のエッジ角を除去して、最終的に得られた人造黒鉛粒子にさらに丸みを帯びさせることができ、粒子同士の結合力を向上させることに寄与するだけではなく、得られた人造黒鉛の体積分布粒径D1を1.5μm-3.5μmの範囲にし、2t圧力での粉体圧密密度を1.60g/cm-1.95g/cmの範囲にすることができ、A≧0.5を満たす人造黒鉛(そのうち、Aは、人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度(単位:g/cm)と、人造黒鉛の体積分布粒径D1(単位:μm)との比である)を得ることに寄与し、さらにこの人造黒鉛を含む負極極板のサイクル膨張及びこの人造黒鉛を含有する二次電池のサイクルプロセスにおける体積膨張を著しく低減することができ、それによって高い体積エネルギー密度と低い体積サイクル膨張を兼ね備えた二次電池を得ることに寄与する。メカノフュージョンの回転速度と機械処理時間が上記範囲を上回る場合、高すぎる回転速度と長すぎる時間により、材料表面の欠陥が増加し、この人造黒鉛を含有する二次電池のサイクルプロセスにおいて容量が急激に減衰する。メカノフュージョンの回転速度と機械処理時間が上記範囲を下回る場合、低すぎる回転速度と短すぎる時間により、粒子エッジ角を除去する程度が十分ではなく、粒子同士の結合力を向上させることができず、膨張を低減する効果が明らかではない。
【0052】
人造黒鉛のD1、D50は、規格GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析器(例えばMalvern Master Size 3000)を用いて測定することができる。
【0053】
ここで、D1、D50の物理的定義は、以下のとおりである。
【0054】
1:全体積1%を占める粒子直径がこの値より小さい。
【0055】
50:全体積50%を占める粒子直径がこの値より大きく、全体積50%を占める粒子直径がこの値より小さいこともあり、D50は、粉体のメジアン粒度を表す。
【0056】
人造黒鉛の粉体圧密密度は、当分野において既知の方法を採用してテストしてもよい。例えば、規格GB/T 24533-2009を参照し、電子圧力試験機(例えばUTM7305)でテストしてもよい。一定の量の粉末を圧密専用金型に置き、異なる圧力を設定し、機器から、異なる圧力での粉末の厚さを読み出し、異なる圧力での圧密密度を算出することができる。
【0057】
(二次電池)
本出願は、二次電池を提供し、それは、本発明の第一の方面によるいずれか一つの人造黒鉛を含み、又は本発明の第二の方面による方法で製造されるいずれか一つの人造黒鉛を含む。
【0058】
一般的には、二次電池は、正極極板、負極極板、電解質とセパレータを含む。電池の充放電中においては、活性イオンは、正極極板と負極極板との間で往復して吸蔵と離脱をする。電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0059】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体及び負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される負極膜を含む。例として、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0060】
負極集電体は、良好な導電性及び機械強度を持つ材質を採用してもよく、導電と集電の役割を果たす。いくつかの実施例では、負極集電体は、銅箔を採用してもよい。
【0061】
負極膜は、負極活物質を含み、負極活物質は、本出願の第一の方面によるいずれか一つの人造黒鉛を含み、本出願の人造黒鉛を含む負極極板のサイクルプロセスにおける体積膨張を著しく低減することができる。低い体積膨張は、二次電池が高い体積エネルギー密度を維持することに有利であるだけでなく、二次電池の電池コアの内部応力を低減し、内部応力の作用による電池コアの変形を減小せることにも寄与し、二次電池の安全性能を効果的に改善させることもできる。
【0062】
いくつかの実施例では、本出願のいずれか一つ又は複数の人造黒鉛を採用して負極極板を製造するステップは、本出願のいずれか一つ又は複数の人造黒鉛を含む負極活物質、接着剤、及び選択的な増粘剤と導電剤を溶媒(溶媒は脱イオン水であってもよい)に分散させ、均一な負極スラリーを形成することと、負極スラリーを負極集電体上に塗覆し、乾燥、冷間などの工序を経た後、負極極板を得ることとを含んでもよい。
【0063】
いくつかの実施例では、負極極板は、さらに選択的に二次電池負極に使用可能な他の負極活物質を含む。他の負極活物質は、他の黒鉛材料(例えば他の人造黒鉛、天然黒鉛)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略す)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン系材料、スズ系材料のうちの一つ又は複数であってもよい。
【0064】
いくつかの実施例では、接着剤は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0065】
いくつかの実施例では、増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)であってもよい。
【0066】
いくつかの実施例では、負極極板に用いられる導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンとカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0067】
[正極極板]
正極極板は、正極集電体及び正極集電体の少なくとも一つの表面上に設置され且つ正極活物質を含む正極膜を含む。例として、正極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0068】
正極集電体は、良好な導電性及び機械強度を持つ材質を採用してもよい。いくつかの実施例では、正極集電体は、アルミニウム箔を採用してもよい。
【0069】
本出願は、正極活物質の具体的な種類に対して限定せず、当分野において既知の二次電池の正極に使用可能な材料を採用してもよく、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。
【0070】
いくつかの実施例では、二次電池は、リチウムイオン二次電池であってもよい。正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物及びその改質材料から選ばれてもよく、改質材料は、リチウム遷移金属酸化物に対してドーピング改質及び/又は被覆改質を行うものであってもよい。例えば、リチウム遷移金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びオリビン構造のリチウム含有リン酸塩のうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0071】
例として、二次電池の正極活物質は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、LiNi0.85Co0.15Al0.05、LiFePO(LFP)とLiMnPOのうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0072】
いくつかの実施例では、正極膜には、さらに選択的に接着剤が含まれる。接着剤の種類に対して限定せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極膜に用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0073】
いくつかの実施例では、正極膜には、さらに選択的に導電剤が含まれる。導電剤の種類に対して限定せず、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極膜に用いられる導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0074】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0075】
いくつかの実施例では、電解質として、電解液を採用する。電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0076】
いくつかの実施例では、電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム)、LiBOB(ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム)のうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0077】
いくつかの実施例では、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。
【0078】
いくつかの実施例では、電解液には、さらに選択的に添加剤が含まれる。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤を含んでもよく、正極膜形成添加剤を含んでもよく、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0079】
[セパレータ]
電解液を採用する二次電池、及び固体電解質を採用するいくつかの二次電池には、セパレータがさらに含まれる。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、隔離の役割を果たす。本出願は、セパレータの種類に対して特に限定せず、良好な化学安定性と機械安定性を持つ任意の公知の多孔質構造セパレータを選択して使用することができる。いくつかの実施例では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニリデンフルオロライドのうちの一つ又は複数から選ばれてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである時、各層の材料は同じであっても異なってもよい。
【0080】
[外装体]
いくつかの実施例では、二次電池は、正極極板、負極極板と電解質をパッケージングするための外装体を含んでもよい。一例として、正極極板、負極極板とセパレータは、積層又は捲回によって積層構造電池コア又は捲回構造電池コアを形成してもよく、電池コアは、外装体内にパッケージングされ、電解質として、電解液を採用してもよく、電解液は、電池コアに浸潤される。二次電池における電池コアの数は、一つ又は数個であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0081】
いくつかの実施例では、二次電池の外装体は、ソフトバッグ、例えばパウチ型ソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材質は、プラスチックであってもよく、例えばポリプロピレンPP、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリブチレンサクシネートPBSなどのうちの一つ又は複数を含んでもよい。二次電池の外装体は、硬質ケース、例えばアルミニウムケースなどであってもよい。
【0082】
いくつかの実施例では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造してもよい。
【0083】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円柱形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0084】
本発明による二次電池を電池モジュールに組み立ててもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの応用と容量に応じて調節されることができる。
【0085】
図2は、一例としての電池モジュール4である。図2を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、他の任意の方式で配列してもよい。さらに締め具によってこれらの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0086】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0087】
本発明では、二次電池により組み立てられた電池モジュールを電池パックに組み立ててもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの応用と容量に応じて調節されることができる。
【0088】
図3図4は、一例としての電池パック1である。図3図4を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと電池ボックスに設置される複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3に蓋設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに配列されてもよい。
【0089】
(電力消費装置)
本出願は、電力消費装置をさらに提供し、この電力消費装置は、本出願による二次電池を含み、前記二次電池は、前記電力消費装置に電源を提供する。前記電力消費装置は、移動体機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限らない。
【0090】
前記電力消費装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0091】
図5は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の二次電池の高パワーと高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0092】
別の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この電力消費装置は、一般的には薄型化が求められており、二次電池を電源として採用してもよい。
【実施例
【0093】
以下では、本出願の実施例を説明する。以下に記述されている実施例は、例示的なものであり、本出願を解釈することのみに用いられ、本出願を制限するものとして理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品説明書に従って実行する。使用する試薬又は機器について、製造メーカが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0094】
[性能テスト]
(1)人造黒鉛のグラム容量テスト
製造された人造黒鉛、導電剤Super P、増粘剤(CMC-Na)、接着剤(SBR)を94.5:1.5:1.5:2.5の質量比に従って溶媒である脱イオン水と均一に混合し、スラリーを製造し、製造されたスラリーを銅箔集電体に塗覆し、オーブンにおいて乾燥して使用に備え、リチウム金属シートを対極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレータとして採用し、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1に従って混合してから、LiPFを上記溶液に均一に溶解し、電解液を得て、そのうち、LiPFの濃度が1mol/Lであり、アルゴンガスで保護されたグローブボックス内において、上記各部分をCR2430型コイン電池に組み立てた。
【0095】
得られたコイン電池を12時間静置した後、0.05Cの電流で0.005Vに定電流放電し、10分間静置し、続いて50μAの電流でさらに0.005Vに定電流放電し、10分間静置し、続いて10μAの電流でさらに0.005Vに定電流放電し、そして0.1Cの電流で2Vに定電流充電し、充電容量を記録した。充電容量と人造黒鉛の質量との比は、製造された人造黒鉛のグラム容量である。
【0096】
(2)負極極板のサイクル膨張率テスト
冷間プレスした後の負極極板の厚さをH0と記した。冷間プレスした後の負極極板と正極極板、セパレータ、電解液によって二次電池を製造した。25℃で、二次電池に対して、Neware充放電機によって100% DOD(100%放電深度、即ち、満充電後に満放電)の1C/1Cサイクルを行った。初回サイクルの放電容量(即ち、初期容量)を100%と記し、サイクル容量維持率が初期容量の80%である場合、サイクルを停止した。そして、二次電池を100% SOC(State of Charge、荷電状態)に充電し、二次電池を解体させ、対応する負極極板の厚さをテストし、H1と記した。負極極板のサイクル膨張率は、(H1/H0-1)×100%である。
【0097】
(3)サイクル容量維持率
25℃で、リチウムイオン電池に対して充放電テストを行った。一つの充放電サイクルプロセスは、以下のとおりである。1Cの電流で4.3Vに定電流充電し、続いて、4.3Vで、電流0.05Cに定電圧充電し、5min静置し、続いて、1Cの電流で2.8Vに定電流放電し、この時の電池容量をC1として記録する。以上は、電池の一つの充放電サイクルである。上記プロセスに従って1200のサイクルを行い、この時の電池の容量C1200を記録した。サイクル容量維持率=C1200/C1×100%である。
【0098】
(4)負極極板の凝集力テスト
幅2cmのステンレス板の両面に両面テープを貼り付け、テストを必要とする極板を両面テープに均一に貼り付け、長さと幅を揃えた。銅箔テープを極板表面に均一に貼り付け(貼り付けた後の表面が滑らかで皺がないことを確保し)、銅箔テープを少し残して紙シートに貼り付けた(銅箔テープと紙シートとが一直線になる)。引張機のパラメータを設定し、極板を引張機のカードスロットの中央に垂直に置き、上下に垂直に置く。パソコンでテスト開始をクリックし、凝集力データを得た。
【0099】
実施例1
人造黒鉛の製造
S1:ニードル生コークス原料を振動フィーダーによってジョークラッシャに送って粗砕を行い、その後、合格した材料を機械式ミルに送って細砕を行い、分級と整形処理を行い、D50が11μmである前駆体を得る。
【0100】
S2:ステップS1で得られた前駆体を反応釜に添加し、造粒に用いられる前駆体の重量の10%の接着剤であるアスファルト(D50は5μm-8μmである)を添加して造粒を行い、攪拌回転速度を1200 r/minとし、室温で10℃/minの速率で560℃まで昇温し、さらに8時間保温し、D50が18μmとなるまで造粒し、中間体1を得る。
【0101】
S3:ステップS2で得られた中間体1を黒鉛化炉に添加し、3000℃まで昇温し、黒鉛化処理を行い、200メッシュのスクリーンで篩分け、中間体2を得る。
【0102】
S4:ステップS3で得られた中間体2をメカノフュージョンに置いて機械処理を行い、そのうち、メカノフュージョンの回転速度を900rpmとし、機械処理の時間を15minとし、D50が14μmであり、D1が2μmであり、2t圧力での粉体圧密密度が1.8g/cmである、グラム容量が357mAh/gである人造黒鉛を得、具体的な性能指標パラメータは、下表1に示す。この実施例1で製造された人造黒鉛のSEM画像は、図6aに示す。
【0103】
負極極板の製造
上記製造した人造黒鉛と、導電剤(Super P)と、接着剤(SBR)と、増粘剤(CMC-Na)とを96.2:0.8:1.8:1.2の質量比に従って、適量の脱イオン水に十分に攪拌して混合し、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体銅箔の表面に塗覆し、乾燥、冷間プレスを経た後、負極極板を得る。前記負極極板の圧密密度は1.65g/cmであり、面密度は11.4mg/cmであり、この負極極板の凝集力テスト結果、サイクル膨張率結果、二次電池のサイクル容量維持率結果は、下記表2に示す。
【0104】
正極極板の製造
正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)と、導電剤(Super P)と、接着剤PVDFとを96.2:2.7:1.1の重量比に従って、適量のNMPに十分に攪拌して混合し、均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体アルミニウム箔の表面に塗覆し、乾燥、冷間プレスを経た後、正極極板を得る。前記正極極板の圧密密度は3.45g/cmであり、面密度は18.8mg/cmである。
【0105】
電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1:1に従って混合してから、LiPFを上記溶液に均一に溶解して電解液を得、そのうち、LiPFの濃度は1 mol/Lである。
【0106】
セパレータ
ポリエチレン(PE)フィルムを採用する。
【0107】
二次電池の製造
正極極板、セパレータ、負極極板を順番に積層し、巻回を経て電池コアを得て、電池コアを外装体に入れ、上記電解液を加え、パッケージ、静置、化成、エージングなどの工程を経た後、二次電池を得る。前記外装体は、長さ*幅*高さ=148mm*28.5mm*97.5mmの硬質ケースを選択する。
【0108】
実施例2-14
実施例2-6は、実施例1の製造方法と類似しており、相違点は、人造黒鉛の製造原料を調整することにあり、各実施例のプロセスパラメータ及び製造した人造黒鉛の物理パラメータのテスト結果は、下記表1に示し、この人造黒鉛を含有する負極極板の凝集力テスト結果、サイクル膨張率結果、及びこの負極極板を含有する二次電池のサイクル容量維持率結果は、下記表2に示す。
【0109】
具体的に、実施例2における人造黒鉛の製造原料は、か焼石油コークスであり、実施例3における人造黒鉛の製造原料は、石油生コークス(そのうち接着剤を使用していない)であり、実施例4における人造黒鉛の製造原料は、か焼ニードルコークスであり、実施例5における人造黒鉛の製造原料は、アスファルトコークスであり、実施例6における人造黒鉛の製造原料は、冶金コークスである。図6bと図6cは、それぞれ実施例2と実施例3で製造された人造黒鉛のSEM画像である。
【0110】
実施例7-9は、実施例1の製造方法と類似しており、相違点は、人造黒鉛の製造における造粒プロセスで使用された接着剤の量を調整することにあり、各実施例のプロセスパラメータ及び製造した人造黒鉛の物理パラメータのテスト結果は、下記表1に示し、この人造黒鉛を含有する負極極板の凝集力テスト結果、サイクル膨張率結果、及びこの負極極板を含有する二次電池のサイクル容量維持率結果は、下記表2に示す。
【0111】
具体的に、実施例7における接着剤アスファルトの使用量は、ステップS2において造粒するための前駆体の重量の15%であり、実施例8における接着剤アスファルトの使用量は、ステップS2において造粒するための前駆体の重量の8%であり、実施例9における接着剤アスファルトの使用量は、ステップS2において造粒するための前駆体の重量の5%である。
【0112】
実施例10-11は、実施例1の製造方法と類似しており、相違点は、人造黒鉛を製造する黒鉛化温度を調整することにあり、各実施例のプロセスパラメータ及び製造した人造黒鉛の物理パラメータのテスト結果は、下記表1に示し、この人造黒鉛を含有する負極極板の凝集力テスト結果、サイクル膨張率結果、及びこの負極極板を含有する二次電池のサイクル容量維持率結果は、下記表2に示す。
【0113】
実施例12-14は、実施例1の製造方法と類似しており、相違点は、人造黒鉛の製造における機械融合処理の程度を調整することにあり、各実施例のプロセスパラメータ及び製造した人造黒鉛の物理パラメータのテスト結果は、下記表1に示し、この人造黒鉛を含有する負極極板の凝集力テスト結果、サイクル膨張率結果、及びこの負極極板を含有する二次電池のサイクル容量維持率結果は、下記表2に示す。
【0114】
比較例1-12
比較例1-6は、それぞれ実施例1-6の製造方法と類似しているが、相違点は、ステップS3の黒鉛化後に機械融合処理ステップがないことにある。各比較例のプロセスパラメータ及び製造した人造黒鉛の物理パラメータのテスト結果は、下記表1に示し、この人造黒鉛を含有する負極極板の凝集力テスト結果、サイクル膨張率結果、及びこの負極極板を含有する二次電池のサイクル容量維持率結果は、下記表2に示す。
【0115】
比較例7-10は、実施例1の製造方法と類似しており、相違点は、ステップS4における機械融合処理の程度を調整することにある。各比較例のプロセスパラメータ及び製造した人造黒鉛の物理パラメータのテスト結果は、下記表1に示し、この人造黒鉛を含有する負極極板の凝集力テスト結果、サイクル膨張率結果、及びこの負極極板を含有する二次電池のサイクル容量維持率結果は、下記表2に示す。
【0116】
比較例11-12は、実施例1の製造方法と類似しており、相違点は、ステップS4における機械処理の方式を調整することにある。具体的に、比較例11では、高速気流衝撃式造粒機(温度は600℃、処理時間は8hである)を用いて、ステップS3で得られた中間体2に対して機械破砕と球形化処理を行い、篩分けてD50が10μm-15μmである球形人造黒鉛粒子を得る。比較例12では、気流スクロール粉砕機(パワーは0.7MPaである)を用いて、ステップS3で得られた中間体2に対して機械破砕と球形化処理を行い、篩分けてD50が10μm-15μmである球形人造黒鉛粒子を得る。各比較例のプロセスパラメータ及び製造した人造黒鉛の物理パラメータのテスト結果は、下記表1に示し、この人造黒鉛を含有する負極極板の凝集力テスト結果、サイクル膨張率結果、及びこの負極極板を含有する二次電池のサイクル容量維持率結果は、下記表2に示す。
【0117】
表1:実施例1-14と比較例1-12のプロセスパラメータと物理パラメータのテスト結果
【表1】
【0118】
表2:実施例1-14と比較例1-12の性能テスト結果
【表2】
【0119】
上記表1と上記表2に示す実施例1-14と比較例1-12とを比較すると、黒鉛化処理後に中間体2に対して適切な機械融合処理をすると、製造で得られた人造黒鉛は、Aが0.5以上である(例えば0.50≦A≦1.40、選択的に0.70≦A≦1.30、さらに選択的に0.70≦A≦1.00であり、そのうち、Aは人造黒鉛の2t圧力での粉体圧密密度と、その体積分布粒径D1との比である)ことを満たすことができ、この人造黒鉛を含有する負極極板の凝集力を著しく向上させることができ、極板のサイクル膨張率を著しく低減するとともに、この人造黒鉛に高グラム容量を維持させ、これは、この人造黒鉛を含有する二次電池のサイクルプロセスにおける体積膨張を低減し、二次電池のエネルギー密度とサイクル容量維持率等を向上させることに明らかな効果があるため、二次電池の耐用年数と安全性能を効果的に向上させることができることが分かる。
【0120】
比較例1-6では、黒鉛化処理ステップの後に機械融合処理ステップがなく、これにより製造された負極極板のサイクル膨張率が高く、凝集力が低いため、これは、この負極極板を含有する二次電池のサイクルプロセスにおける体積膨張を低減するのに不利であり、二次電池のエネルギー密度を向上させるのに不利である。
【0121】
比較例7-8では、機械処理プロセスにおいて、機械融合処理の時間が長すぎ、又は短かすぎる。そのうち、比較例7では、処理時間が長すぎると、二次電池のサイクル容量維持率を低減し、比較例8では、短すぎる機械融合処理時間を採用し、これにより得られた負極極板と二次電池の各方面の性能は、比較例1-6で機械処理を行わずに得られた負極極板又は二次電池の各方面の性能に相当する。比較例9-10では、機械処理プロセスにおいて、メカノフュージョンの回転速度が低すぎ、又は高すぎる。そのうち、比較例9では、低すぎる回転速度を採用し、機械処理の目的を達成することができず、これにより得られた負極極板と二次電池の各方面の性能は、比較例1-6で機械処理を行わずに得られた負極極板又は二次電池の各方面の性能に相当する。比較例10では、高すぎる回転速度と短かすぎる機械処理時間を併用することにより、負極極板のサイクル膨張率をある程度低減することができるが、高すぎる回転速度は、二次電池サイクル容量維持率を向上させるのに不利である。
【0122】
比較例11-12では、それぞれ高速気流衝撃式造粒機と気流スクロール粉砕機を採用して、ステップS3で得られた中間体2に対して機械破砕と球形化処理を行い、いずれも球形化した人造黒鉛を得られたが、結果として、上記二種類の機械処理設備を用いることは、負極極板の凝集力を向上させるのに不利であり、負極極板のサイクル膨張率を低減する効果も明らかではなく、気流スクロール粉砕機の機械処理程度を把握することが困難であり、安定性が低いことが分かる。
【0123】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施の形態に限らない。上記実施の形態は例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施の形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到できる各種の変形を加え、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構筑された他の方式も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
ここで、符号の説明は、以下のとおりである。
1、電池パック、
2、上部筐体、
3、下部筐体、
4、電池モジュール、
5、二次電池。

図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
【国際調査報告】