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特表2024-503989粘弾性体送達のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】粘弾性体送達のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A61F9/007 170
A61F9/007 160
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537046
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2022011778
(87)【国際公開番号】W WO2022150684
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/136,148
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/236,598
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン エー.ノダ
(72)【発明者】
【氏名】オマール ハロウニー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ハイマン
(57)【要約】
患者の眼圧を下げるための方法及び装置。方法は房水の流出経路を開くために粘弾性材料をシュレム管に展開して投与することを含み得る。装置は本方法を実行するように適合されている。粘弾性材料は眼の中の眼圧を下げるように構成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用システムを用いて患者の眼を治療する方法であって、
前記眼用システムのカニューレの遠位端を前記眼の前眼房に挿入するステップと、
前記カニューレをシュレム管と流体連通するように配置するステップであって、導管が前記カニューレ内に配置されている、配置するステップと、
前記導管を前記カニューレからシュレム管内に前進させるために前記眼用システムの第1の制御部を作動するステップと、
前記導管を動かすことなく前記導管の粘弾性体送達ポートからシュレム管内に粘弾性材料を投与するために前記眼用システムの第2の制御部を作動するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記導管をシュレム管内で及び前記カニューレ内に後退させるために前記第1の制御部を作動するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粘弾性体モジュール内の粘弾性材料の体積を加圧するステップをさらに含み、前記第2の制御部を作動する前記ステップは、前記粘弾性体モジュールから前記導管内に粘弾性材料を投与するために前記眼用システムの前記第2の制御部を作動するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記眼用システムがハンドルを備え、前記カニューレ、前記第1の制御部、及び前記第2の制御部はそれぞれ前記ハンドルから延び、前記ハンドルによって支持され、前記粘弾性体モジュールは前記ハンドルの外側に配置される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
粘弾性材料の体積を加圧するステップが、前記粘弾性体モジュール内に配置された粘弾性体シリンジのプランジャにばねを適用するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
粘弾性材料の体積を加圧するステップが、前記粘弾性体モジュール内のリザーバを加圧するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記リザーバを加圧するステップが、前記リザーバの壁と係合したばねを圧縮するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ばねを圧縮するステップが、前記粘弾性体モジュールから延びるアクチュエータを操作するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
粘弾性体シリンジから粘弾性材料を前記リザーバに充填するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
粘弾性材料を前記粘弾性体シリンジから前記導管内に前進させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粘弾性体シリンジから粘弾性材料を前記リザーバに充填する前記ステップの前に、粘弾性材料を前記粘弾性体シリンジから前記導管内に前進させる前記ステップが実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の制御部を作動する間に触覚フィードバックを提供するステップをさらに含み、前記触覚フィードバックは、前記カニューレの中又は外に移動する前記導管の長さと相関している、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記粘弾性材料がシュレム管に投与される前に眼用インプラントをシュレム管内に前進させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記粘弾性材料がシュレム管に投与された後に眼用インプラントをシュレム管内に前進させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
眼用粘弾性体送達システムであって、
ハンドルと、
前記ハンドルから遠位カニューレ開口まで延びる通路を画定するカニューレであって、患者の眼の前眼房を通して前に進められ、前記遠位カニューレ開口を前記眼のシュレム管と流体連通した状態で配置するようにサイズ決めされ構成されたカニューレと、
前記カニューレ通路内に摺動可能に配置された導管であって、粘弾性体送達ポートを含み、前記導管の少なくとも遠位部分は、前記カニューレからシュレム管内に前に進められるようにサイズ決めされ構成されている、導管と、
前記導管及び前記粘弾性体送達ポートと流体連通している粘弾性体モジュールであって、前記ハンドルの外側に粘弾性材料の加圧された体積を含むように構成された粘弾性体モジュールと、
前記カニューレに対する前記導管及び前記粘弾性体送達ポートの位置を調整するように構成された第1の制御部と、
加圧された粘弾性材料を前記粘弾性体モジュールから前記導管及び前記粘弾性体送達ポートを通してシュレム管内へ放出するように構成された第2の制御部と
を含む眼用粘弾性体送達システム。
【請求項16】
前記粘弾性体モジュールが、
粘弾性体シリンジを受けるように構成されたクレードルと、
前記粘弾性体シリンジのプランジャに接触するように構成された力アセンブリであって、前記プランジャに対して一定の力を加えるようにさらに構成されている力アセンブリと
をさらに含む、請求項15に記載の送達システム。
【請求項17】
前記力アセンブリが、前記プランジャに対する前記力アセンブリの位置を調整するように構成された調整機構をさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記粘弾性体モジュールが、リザーバと、前記リザーバ内の粘弾性材料を加圧するように構成されたばねとを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記粘弾性体モジュールから延び、前記リザーバを加圧するために前記ばねを圧縮するように構成されたアクチュエータをさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記粘弾性体モジュールが、粘弾性体シリンジと係合するように適合された入口ポートをさらに含み、前記入口ポートは前記リザーバと流体連通可能である流体である、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記入口ポートと前記リザーバとの間に配置された逆止弁をさらに含み、前記逆止弁は、加圧された粘弾性材料が前記粘弾性体シリンジから前記入口ポートを通って前記リザーバに流れることを可能にするように開き、前記リザーバからの粘弾性材料が前記入口ポートから出るのを防ぐように閉じるように構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1の制御部及び前記第2の制御部が前記ハンドル上に配置される、請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の制御部の単一の作動が、前記導管を既知の距離だけ移動させる、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の制御部と係合し、前記第1の制御部の動きの触覚フィードバックを提供するように適合された片持ちばねをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項25】
前記第2の制御部の単一の作動が、前記導管及び前記粘弾性体送達ポートからシュレム管に既知の量の粘弾性材料を投与する、請求項15に記載のシステム。
【請求項26】
前記第2の制御部が、前記粘弾性体モジュールから前記導管内に粘弾性材料を送達するように弁を開くために第1の位置に移動されるように動作可能なトグルレバーを含み、前記第2の制御部は、前記弁を閉じるために第2の位置に前記トグルを移動するように動作可能なばねをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項27】
前記トグルレバーを前記第1の位置に保持するように構成されたトグルロックをさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記トグルロックが、前記ハンドルの外面上に取り外し可能に配置され、前記トグルレバーと係合する、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記粘弾性体モジュールから前記ハンドルまで延びるチューブをさらに含み、前記チューブは、前記粘弾性体モジュールの出口から前記ハンドル内の入口制御部まで延びる流体ルーメンを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項30】
前記チューブが3~4インチの長さを有する、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
眼用送達システムであって、
ハンドルと、
前記ハンドルの遠位端に配置され、前記ハンドルに対して回転可能であるように構成されたハブと、
前記ハブに結合され、前記ハブと共に回転するように構成されたカニューレであって、前記ハンドルから遠位カニューレ開口まで延びる通路を画定し、患者の眼の前眼房を通して前に進められ、前記遠位カニューレ開口を前記眼のシュレム管と流体連通した状態で配置するようにサイズ決めされ構成され、湾曲した遠位端を有するカニューレと、
前記ハブと共に回転可能であり、前記送達システムの外側から見えるカニューレ向きマーキングであって、前記カニューレ湾曲遠位端が延びる半径方向と整列しているカニューレ向きマーキングと、
前記ハンドルによって支持される固定マーキングであって、前記カニューレ向きマーキング及び前記固定マーキングは一緒に、前記ハンドルの向きに対する前記カニューレ湾曲遠位端の向きを示す、固定マーキングと
を含む眼用送達システム。
【請求項32】
前記カニューレ通路内に摺動可能に配置された導管であって、粘弾性体送達ポートを含み、前記導管の少なくとも遠位部分は、前記カニューレからシュレム管内に前に進められるようにサイズ決めされ構成されている導管と、粘弾性材料を前記導管内に送達するように適合されたリザーバとをさらに含む、請求項31に記載の眼用送達システム。
【請求項33】
前記カニューレに対する前記導管及び前記粘弾性体送達ポートの位置を調整するように構成された制御部をさらに含む、請求項32に記載の眼用送達システム。
【請求項34】
加圧された粘弾性材料を前記リザーバから前記導管及び前記粘弾性体送達ポートを通してシュレム管に放出するように構成された制御部をさらに含む、請求項32に記載の眼用送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月11日に提出された米国仮特許出願第63/136,148号明細書及び2021年8月24日に提出された米国仮特許出願第63/236,598号明細書の優先権の利益を主張し、それらのそれぞれは完全な形で参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本明細書で言及されるすべての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は概して、限定するものではないが、医療装置及び医療装置を製造するための方法に関する。本発明は概して、眼に挿入される装置及びシステムに関する。より詳細には、本発明は、眼の1つの領域内から眼の別の領域への流体の移動を容易にする装置に関する。さらに本開示は、シュレム管開放房水流出経路に粘弾性材料を注入するためのシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
米国国立衛生研究所(The United States National Institutes of Health(NIH))の国立眼科研究所(The National Eye Institute(NEI))による草案によれば、今や緑内障は世界で不可逆的失明の第1位の原因であり、世界中で白内障に続き失明の第2位の原因である。したがって、NEI草案は、「この病気の病態生理学及び取扱いを決定するために相当の注目と資金を充て続けることが重要である」と結論づけている。緑内障研究者は、高い眼内圧と緑内障との間に強い相関を見出している。このため、眼科治療専門家は、眼圧計として知られている装置を用いて眼内圧を測定することにより、患者を緑内障に関して常時検査する。多くの現代の眼圧計は、眼の外側表面に突然空気を吹き込むことによってこの測定を行う。
【0005】
眼は流体で満たされた球体として概念化することができる。眼の内部には2種類の液体がある。水晶体の後ろにある房は、硝子体液として知られる粘性流体で満たされている。水晶体の前にある房は、房水として知られる液体で満たされている。ヒトが物体を見るときは常に、硝子体液と房水の両方を通してその物体を見ている。
【0006】
ヒトが物体を見るときは常に、同じく角膜と眼の水晶体を通してその物体を見ている。透明であるために、角膜及び水晶体は血管を含むことができない。したがって、角膜及び水晶体に血液が流れて、これらの組織に栄養を与え、これらの組織から老廃物を除去することはない。代わりに、これらの機能は房水によって行われる。眼を通る房水の連続的な流れは、血管を有さない眼の部分(例えば、角膜及び水晶体)に栄養を与える。この房水の流れはまた、これらの組織から老廃物を除去する。
【0007】
房水は、毛様体として知られる器官によって産生される。毛様体は、房水を連続的に分泌する上皮細胞を含む。健康な眼では、新しい房水が毛様体の上皮細胞によって分泌されると、房水の流れは前眼房から流出し、小柱網を通ってシュレム管に流れる。この余分な房水は、シュレム管から静脈血流に入り、静脈血と共に運ばれ、眼を離れる。
【0008】
眼の自然排液機構が適切に機能しなくなると、眼の内側の圧力が上昇し始める。研究者らは、高い眼内圧に長時間さらされると、眼から脳へ感覚情報を伝達する視神経の損傷を引き起こすことを理論化した。視神経に対するこの損傷は、周辺視野の喪失につながる。緑内障が進行するにつれて、ますます多くの視野が失われ、後に患者は完全に失明する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、医療装置の設計、材料、及び使用方法を提供する。
【0010】
患者の眼圧を下げるための例示的な方法は、粘弾性材料を眼のシュレム管に投与して房水の流出経路を開くことを含み得る。いくつかの実施形態において、粘弾性体は、眼用インプラントをシュレム管に配備する前又は後に投与され得る。
【0011】
本発明の一態様は、眼用システムを用いて患者の眼を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、以下のステップを含む:眼用システムのカニューレの遠位端を眼の前眼房に挿入するステップ;カニューレをシュレム管と流体連通するように配置するステップであって、導管がカニューレ内に配置されている、配置するステップ;導管をカニューレからシュレム管内に前進させるために眼用システムの第1の制御部を作動するステップ;及び、導管を動かすことなく導管の粘弾性体送達ポートからシュレム管内に粘弾性材料を投与するために眼用システムの第2の制御部を作動するステップ。いくつかの実施形態において、本方法は、導管をシュレム管内で及びカニューレ内に後退させるために第1の制御部を作動するステップも含む。
【0012】
本方法は、いくつかの実施形態において、粘弾性体モジュール内の粘弾性材料の体積を加圧するステップを含み得、第2の制御部を作動するステップは、粘弾性体モジュールから導管内に粘弾性材料を投与するために眼用システムの第2の制御部を作動することを含む。いくつかのそのような実施形態において、眼用システムはハンドルを有し得、カニューレ、第1の制御部、及び第2の制御部はそれぞれハンドルから延び、ハンドルによって支持され、粘弾性体モジュールはハンドルの外側に配置される。いくつかの実施形態において、粘弾性材料の体積を加圧するステップは、粘弾性体モジュール内に配置された粘弾性体シリンジのプランジャにばねを適用する追加ステップを含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、粘弾性材料の体積を加圧するステップは、粘弾性体モジュール内のリザーバを加圧するステップを含む。いくつかのそのような実施形態において、リザーバを加圧するステップは、例えば、粘弾性体モジュールから延びるアクチュエータを操作するなどして、リザーバの壁と係合したばねを圧縮するステップを含む。
【0014】
いくつかの実施形態は、粘弾性体シリンジから粘弾性材料をリザーバに充填する追加のステップを含む。いくつかのそのような実施形態は、任意選択的に粘弾性体シリンジから粘弾性材料をリザーバに充填するステップの前に、粘弾性体シリンジから粘弾性材料を導管内に前進させる追加のステップを含む。
【0015】
いくつかの実施形態は、第1の制御部を作動する間に触覚フィードバックを提供する追加のステップを有し、触覚フィードバックは、カニューレの中又は外に移動する導管の長さと相関している。
【0016】
この方法のいくつかの実施形態は、粘弾性材料がシュレム管に投与される前に、眼用インプラントをシュレム管内に前進させるステップも含む。いくつかの実施形態は、粘弾性材料がシュレム管内に投与された後に、眼用インプラントをシュレム管内に前進させるステップも含み得る。
【0017】
本発明の別の態様は、ハンドル;ハンドルから遠位カニューレ開口まで延びる通路を画定するカニューレであって、患者の眼の前眼房を通して前に進められ、遠位カニューレ開口を眼のシュレム管と流体連通した状態で配置するようにサイズ決めされ構成されたカニューレ;カニューレ通路内に摺動可能に配置された導管であって、粘弾性体送達ポートを含み、導管の少なくとも遠位部分は、カニューレからシュレム管内に前に進められるようにサイズ決めされ構成されている、導管;導管及び粘弾性体送達ポートと流体連通している粘弾性体モジュールであって、ハンドルの外側に粘弾性材料の加圧された体積を含むように構成された粘弾性体モジュール;カニューレに対する導管及び粘弾性体送達ポートの位置を調整するように構成された第1の制御部;及び加圧された粘弾性材料を粘弾性体モジュールから導管及び粘弾性体送達ポートを通してシュレム管内へ放出するように構成された第2の制御部を有する眼用粘弾性体送達システムを提供する。
【0018】
送達システムのいくつかの実施形態において、粘弾性体モジュールはまた、粘弾性体シリンジを受けるように構成されたクレードルと、粘弾性体シリンジのプランジャに接触するように構成された力アセンブリとを含み、力アセンブリは、プランジャに対して一定の力を加えるようにさらに構成される。いくつかのそのような実施形態において、力アセンブリはまた、プランジャに対する力アセンブリの位置を調整するように構成された調整機構を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、粘弾性体モジュールの力アセンブリは、リザーバと、リザーバ内の粘弾性材料を加圧するように構成されたばねとを有する。いくつかのそのような実施形態はまた、粘弾性体モジュールから延び、リザーバを加圧するためにばねを圧縮するように構成されたアクチュエータを有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、粘弾性体モジュールは、粘弾性体シリンジと係合するように適合された入口ポートをさらに有し、入口ポートはリザーバと流体連通可能である。いくつかのそのような実施形態において、粘弾性体モジュールはまた、入口ポートとリザーバとの間に配置された逆止弁を有し、逆止弁は、加圧された粘弾性材料が粘弾性体シリンジから入口ポートを通ってリザーバに流れることを可能にするように開き、リザーバからの粘弾性材料が入口ポートから出るのを防ぐように閉じるように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1の制御部及び第2の制御部はハンドル上に配置される。いくつかの実施形態において、第1の制御部の単一の作動は、導管を既知の距離だけ移動させ、いくつかの実施形態において、第2の制御部の単一の作動は、導管及び粘弾性体送達ポートからシュレム管に既知の量の粘弾性材料を投与する。いくつかの実施形態は、第1の制御部と係合し、第1の制御部の動きの触覚フィードバックを提供するように適合された片持ちばねを提供する。
【0022】
いくつかの実施形態において、第2の制御部は、粘弾性体モジュールから導管内に粘弾性材料を送達するように弁を開くために第1の位置に移動されるように動作可能なトグルレバーを含み、第2の制御部は、弁を閉じるために第2の位置にトグルを移動するように動作可能なばねをさらに含む。いくつかのそのような実施形態はまた、トグルレバーを第1の位置に保持するように構成されたトグルロックを有する。トグルロックは、ハンドルの外面上に取り外し可能に配置され、トグルレバーと係合することができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、送達システムはまた、粘弾性体モジュールからハンドルに延びるチューブを備え、チューブは、粘弾性体モジュールの出口からハンドル内の入口制御部に延びる流体ルーメンを有する。チューブは、3~4インチの長さを有し得る。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、ハンドル;ハンドルの遠位端に配置され、ハンドルに対して回転可能であるように構成されたハブ;ハブに結合され、ハブと共に回転するように構成されたカニューレであって、ハンドルから遠位カニューレ開口まで延びる通路を画定し、患者の眼の前眼房を通して前に進められ、遠位カニューレ開口を眼のシュレム管と流体連通した状態で配置するようにサイズ決めされ構成され、湾曲した遠位端を有するカニューレ;ハブと共に回転可能であり、送達システムの外側から見えるカニューレ向きマーキングであって、カニューレ湾曲遠位端が延びる半径方向と整列しているカニューレ向きマーキング;及びハンドルによって支持される固定マーキングであって、カニューレ向きマーキング及び固定マーキングは一緒に、ハンドルの向きに対するカニューレ湾曲遠位端の向きを示す、固定マーキングを含む眼用送達システムを提供する。
【0025】
いくつかの実施形態において、システムはまた、カニューレ通路内に摺動可能に配置された導管であって、粘弾性体送達ポートを含み、導管の少なくとも遠位部分は、カニューレからシュレム管内に前に進められるようにサイズ決めされ構成されている導管と、粘弾性材料を導管内に送達するように適合されたリザーバとを有する。いくつかのそのような実施形態において、システムは、カニューレに対する導管及び粘弾性体送達ポートの位置を調整するように構成された制御部を有する。いくつかの実施形態において、システムは、加圧された粘弾性材料をリザーバから導管及び粘弾性体送達ポートを通してシュレム管に放出するように構成された制御部を有する。
【0026】
いくつかの例及び実施形態の上記概要は、本開示の各開示された実施形態又はすべての実施形態を記載することを意図するものではない。以下の図面の簡単な説明、及び詳細な記載は、これらの実施形態をより具体的に例示するものであるが、同じく例示的なものであって限定するものでない。
【0027】
本開示は、添付の図面に関連する様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することによって、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、ヒトの眼の一部とシュレム管内に配置された眼用インプラントの一部とを示す模式化された斜視図である。
図2図2は、本開示に従う医療処置の模式化された表現である。
図3図3は、送達システム及び患者の眼をさらに示す拡大斜視図図である。
図4図4は、導管及び粘弾性体送達ポートを含む送達システムのカニューレの1つの例を示す。
図5図5は、粘弾性体送達システムの一実施形態を図示する斜視図である。
図6図6は、開いた、加圧されていない構成における粘弾性体送達システムの粘弾性体モジュールを示す部分断面図及び部分側面図である。
図7図7は、閉じた、加圧された構成における図6の粘弾性体モジュールを示す部分断面図及び部分側面図である。
図8図8は、図6~7の粘弾性体モジュールに装填されるビスコシリンジを示す斜視図である。
図9図9は、図6~8の粘弾性体モジュールに装填されたビスコシリンジを示す斜視図である。
図10図10は、粘弾性体送達システムの別の実施形態を示す斜視図である。
図11図11は、図10の粘弾性体送達システムの粘弾性体モジュールの詳細を示す側断面図である。
図12図12は、粘弾性材料で完全に装填されたリザーバを示す、図11の粘弾性体モジュールの側断面図である。
図13図13は、部分的にシースルーのハウジング及び目盛りマーキングを有する粘弾性体モジュールの一実施形態を示す斜視図である。
図14図14は、モジュールを、例えば、ユーザの手首若しくは腕、又は柱に取り付けるためのクリップを有する図13の粘弾性体モジュールを示す斜視図である。
図15図15は、粘弾性体送達システムの粘弾性体モジュールのさらに別の実施形態の側面図である。
図16図16は、充填前構成における図15の粘弾性体モジュールの断面図である。
図17図17は、充填され加圧された構成における図15~16の粘弾性体モジュールの断面図である。
図18図18は、空の構成における図15~17の粘弾性体モジュールの断面図である。
図19図19は、図15~18の実施形態の変更点を示す部分断面図である。
図20図20は、粘弾性体送達システムの粘弾性体モジュールのさらに別の実施形態を示す断面図である。
図21図21は、図20の粘弾性体モジュールの詳細を示す断面図である。
図22図22は、ユーザの腕に取り付けられた粘弾性体モジュール(図14に示す粘弾性体モジュールなど)を示す粘弾性体送達システムの斜視図である。
図23図23は、IVスタンドに取り付けられた粘弾性体モジュール(図14に示された粘弾性体モジュールなど)を示す粘弾性体送達システムの斜視図である。
図24図24は、粘弾性材料の送達及びカニューレに対する導管の位置の調整を制御するように構成された第1及び第2の制御部を含む、本発明の実施形態による粘弾性体送達システムの斜視図である。
図25図25は、図24の送達システムの断面図である。
図26図26は、図24~25の送達システムの態様を示す断面図である。
図27図27は、図24~26の送達システムの態様を示す断面図である。
図28図28は、図24~27の送達システムの態様を示す断面図である。
図29図29は、図24~28の粘弾性体送達システムの一部であるが、本発明の実施形態による歪み除去要素の代替設計を有する断面図である。
図30図30は、図24~28の粘弾性体送達システムの一部であるが、本発明の実施形態による前進ホイールの代替設計を有する断面図である。
図31図31は、図24~28の粘弾性体送達システムの一部であるが、前進ホイールのさらに別の代替設計を有する断面図である。
図32図32は、本発明の代替実施形態による粘弾性体送達システムの態様を示す部分断面図である。
図33図33は、図32の粘弾性体送達システムのいくつかの構成要素の斜視図である。
図34図34は、図32~33の粘弾性体送達システムの外観の斜視図である。
図35図35は、図32~34の粘弾性体送達システムと共に使用するための代替のビスコ制御要素形状の部分断面図である。
図36図36は、本発明の粘弾性体送達システムと共に使用するためのトグルロックを示す斜視図である。
図37図37は、本発明の粘弾性体送達システムと共に使用するための代替トグルロックを示す斜視図である。
図38図38は、本発明の実施形態による粘弾性体送達システムから延びるカニューレの面取りされた遠位先端を示す斜視図である。
図39図39は、図38のカニューレの面取りされた遠位先端の立面図である。
図40図40は、粘弾性体送達システムのカニューレ回転特徴部を示す斜視図である。
図41図41は、図40のカニューレ回転特徴部の態様の斜視図である。
図42図42は、図40のカニューレ回転特徴部の態様の斜視図である。
図43図43は、図40のカニューレ回転特徴部の構成要素の斜視図である。
図44図44は、図40のカニューレ回転特徴部の別の構成要素の斜視図である。
図45図45は、患者の眼を治療する方法を記載するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は様々な修正形態及び代替形態に修正可能である一方で、その特定のものを例として図面に示し、これより詳細に記載する。しかしながら、本発明は、記載した特定の実施形態に本発明を制限しないことを理解されたい。反対に、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内にあるすべての修正物、等価物及び代替物を網羅する。
【0030】
以下の記載は、図面を参照して読まれるべきであり、図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、図面中、いくつかの図を通して同様の参照番号は同様の要素を示している。詳細な記載及び図面は、特許請求される発明を例示する事を意図するものであり、限定するものではない。当業者であれば、記載され及び/又は示される様々な要素は、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組合せ及び構成で構成されてもよいことを認識するであろう。詳細な記載及び図面は、特許請求される発明の例としての実施形態を示す。
【0031】
特定の用語の定義を以下に提示する。これらの定義は、異なる定義が特許請求の範囲で又は本明細書の他の箇所で与えられない限り適用される。
【0032】
すべての数値は、本明細書中、明示的に示されているかどうかにかかわらず、「約(about)」という用語で修正されていることが考えられる。「約」という用語は、一般に、当業者が、示されている値と等価である(すなわち、同じ又は実質的に同じ機能又は結果を有する)とみなし得る数字の範囲に言及する。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含んでもよい。「約」という用語の他の(すなわち、数値以外の文脈における)使用は、特に断りのない限り、本明細書の文脈から理解されるような、及びそれと矛盾しないような、それらの一般的且つ慣習的な定義を有すると考えられてもよい。
【0033】
終点による数値範囲の列挙は、その範囲内のすべての数値を含む(例えば、1~5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される際、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に断りのない限り、単数形及び複数形の対象を含むか、又は指す。本明細書及び特許請求の範囲で使用される際、「又は(or)」という用語は、特に断りのない限り、「及び/又は」を含むように一般的に用いられる。
【0035】
本明細書中の「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」等への言及は、記載された実施形態が、特定の特徴、構造、又は特性を含んでもよいが、すべての実施形態が、その特徴、構造又は特性を必ずしも含まなくてもよいことを示していることに注意されたい。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態に言及しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が、ある実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、それとは反対に明確に述べられていない限り、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造又は特性に影響を及ぼすことは、当業者の認識内にあるであろう。すなわち、以下に記載される様々な各要素は、特定の組合せで明示的に示されていないとしても、それにもかかわらず、当業者によって理解され得るように、他の追加的な実施形態を形成するために、又は記載された実施形態を実行及び/又は強化するために、組合せ可能である、又は互いに構成されることができることが考えられる。
【0036】
以下の詳細な記載は図面を参照して読むべきであり、異なる図面中の同様の要素は同じ参照番号で識別される。各図面は、必ずしも一定の縮尺ではないが、説明に役立つ実施形態を示し、本開示の範囲を限定するつもりはない。
【0037】
図1は、ヒトの眼20の一部を示す模式化された斜視図である。眼20は、2つの眼房を有する流体で満たされた球体として概念化されている。眼20の強膜22は、硝子体液として知られる粘性流体で満たされた後眼房24を取り囲む。眼20の角膜26は、房水として知られる流体で満たされた前眼房30を包み込む。角膜26は、眼20の縁28で強膜22と接する。眼20の水晶体32は、前眼房30と後眼房24の間に配置される。水晶体32は、複数の毛様小帯34によって適所に保持される。人間が物体を見るときは常に、角膜、房水、及び眼の水晶体を通して物体を見ている。透明であるために、角膜及び水晶体は血管を含まない。したがって、血液が角膜及び水晶体を通って流れ、これらの組織に栄養を与えること、及びこれらの組織から老廃物を除去することはない。代わりに、これらの機能は房水によって行われる。眼を通る房水の連続的な流れは、血管のない眼の部分(例えば角膜及び水晶体)に栄養を与える。この房水の流れはまた、これらの組織から老廃物を除去する。
【0038】
房水は、毛様体として知られる器官によって産生される。毛様体は、房水を連続的に分泌する上皮細胞を含む。健康な眼内では、房水の流れは、新しい房水が毛様体の上皮細胞によって分泌されるとき、眼から流れ出る。この余分な房水は血流に入り、眼を離れる静脈血によって運び去られる。
【0039】
健康な眼内において、房水は、小柱網36を通って前眼房30から流れ出て、虹彩42の外縁に位置するシュレム管38に入る。房水は、複数の出口40を通って流れることによって、シュレム管38を出る。シュレム管38を離れた後、房水は静脈血の流れに吸収される。
【0040】
図2は、この詳細な記載による医療処置の模式化された表現である。図2の処置では、医師が患者Pの眼400を治療している。図2の処置では、医師は、自分の右手RHに粘弾性送達システム450のハンドピースを保持している。医師の左手(図示せず)は、ゴニオレンズ402のハンドルHを保持するために使用されてもよい。或いは、医師の中には、左手に送達システムハンドピースを、右手RHにゴニオレンズハンドルHを保持することを好む人がいるかもしれない。
【0041】
図2に示す処置の間、医師は、ゴニオレンズ402及び顕微鏡404を使用して、前眼房の内部を見ることができる。図2の詳細Aは、医師が見た画像の定型化されたシミュレーションである。カニューレ452の遠位部分を詳細Aで見ることができる。影のような線は、前眼房を取り囲む様々な組織(例えば、小柱網)の下に横たわるシュレム管SCの位置を示す。カニューレ452の遠位開口454は、眼400のシュレム管SCの近くに配置される。
【0042】
この詳細な記載による方法は、カニューレ452の遠位部分が前眼房内に配置されるようにカニューレ452の遠位端を眼400の角膜を通して前進させるステップを含むことができる。次にカニューレ452は、例えばカニューレ452の遠位端でシュレム管の壁を貫通することによって、眼のシュレム管に進入するために使用されてもよい。カニューレ452の遠位開口454は、シュレム管によって画定された内腔と流体連通した状態に置かれてもよい。粘弾性材料は、カニューレからシュレム管内に、開放房水流出経路まで投与することができる。シュレム管内への粘弾性材料の送達は、前眼房からの房水の流れを促進し得る。
【0043】
図3は、前の図に示された粘弾性送達システム450及び眼400をさらに示す拡大斜視図である。図3では、粘弾性送達システム450のハンドル453から延びるカニューレ452は、眼400の角膜426を通って延在するように示されている。カニューレ452の遠位部分は、眼400の角膜426によって画定される前眼房の内部に配置される。図3の実施形態では、カニューレ452は、カニューレ452の遠位開口454をシュレム管と流体連通した状態に置くことができるように構成される。
【0044】
図3の実施形態では、粘弾性材料は、カニューレによってシュレム管に投与され得る。いくつかの実施形態において、導管又はマイクロカテーテルが、粘弾性送達システムのカニューレ内に配置され得る。導管は、カニューレからシュレム管内に前進されるように構成することができる。この実施形態では、粘弾性材料は、導管からシュレム管内に送達され得る。送達システム450は、カニューレ452の長さに沿って導管を前進及び後退させることができる機構を含む。遠位開口がシュレム管と流体連通している間に導管をカニューレ452の遠位開口を通して前進させることによって、粘弾性材料は眼400のシュレム管内に送達されてもよい。次に粘弾性材料を導管からシュレム管内に投与することができる。
【0045】
粘弾性材料は、眼用インプラントを患者の眼内に送達する前又は後に、眼のシュレム管に送達することができる。一実施形態において、送達システムは、送達システム450の本体又はハンドル453から離れたビスコモジュール460に接続することができる。ビスコモジュール460は、ルーメン又はチューブを介して粘弾性材料を送達システムのカニューレ内の導管に送達するように構成することができる。一実施態様において、送達システムは、粘弾性材料をビスコモジュール460から送達システムの導管内に放出するように構成されたハンドル453上のビスコトリガ462を含むことができる。
【0046】
送達システム450は、カニューレ内及びシュレム管内で導管を前進又は後退させるように構成された導管前進ホイール464をさらに含むことができる。例えば、導管前進ホイール464を遠位方向に(例えば、カニューレに向かって)前進させると、導管をカニューレの遠位先端に向かって前進させ、カニューレの遠位端がシュレム管と流体連通しているときにカニューレから患者の眼のシュレム管内に部分的に出すことができる。さらに、導管前進送達ホイールを近位方向に(例えば、ビスコトリガ462に向かって)動かすと、導管をカニューレ内で近位方向に動かし、シュレム管内及びシュレム管から引き抜くことができる。別個の導管前進ホイール464は、導管から粘弾性物質を投与することなく、導管をシュレム管内で移動させることを可能にする。同様に、ハンドル上のビスコトリガ462は、導管を移動させることなく、導管からシュレム管内に粘弾性材料を投与することを可能にする。
【0047】
図4は、図3の粘弾性送達システムのカニューレ452の遠位端の図である。図4において、導管453は、カニューレ452の遠位開口454から部分的に延びているのが示されている。上述のように、導管453は、カニューレ内に摺動可能に配置され得、そしてカニューレの遠位開口を越えて部分的に前進させられ得る(導管前進ホイール464を用いるなどして)。導管453は、例えば、Grilamid(登録商標)ポリアミド、Pebax(登録商標)エラストマー、ナイロン、又は任意の他の適切な材料で作られ得る。一実施形態において、導管は、カニューレの内部のサイズ及び断面形状に一致するサイズ(例えば、0.08インチOD及び0.06インチID)及び断面形状(例えば、円形断面、楕円形断面等)を有することができる。導管453は、カニューレ内に摺動可能に配置されることができる限り、任意の形状であり得ることを理解されたい。導管453は、16~18mmの長さを有することができ、シュレム管を半周してカニューレの遠位先端を越えて延びることが可能である。導管453は、遠位開口455を含むことができ、この開口は、粘弾性材料をシュレム管などの身体構造内に送達するように構成されることができる。導管453は、粘弾性材料の投与を容易にするために、粘弾性材料の供給源(ビスコモジュール460など)と流体的に連通するルーメンを含むことを理解されたい。説明に役立つ実施形態は遠位開口455のみを含むが、他の実施形態では、導管は、導管の側面に沿った開口などの追加の開口を含み得る。
【0048】
図5は、送達システム550と、送達システム500の外部にあるビスコモジュール560とを含む粘弾性送達システム500の図である。送達システム550は、ハンドル552と、ハンドル552の遠位端から伸びるカニューレ554とを有する。カニューレ554は、内部通路と、シュレム管と流体連通した状態に置かれるように構成された遠位開口とを有する。導管(図示せず)は、カニューレからシュレム管内に前進させ、カニューレ内に後退させることができるように、カニューレ554内に移動可能に配置される。
【0049】
ビスコモジュール560は、様々なビスコシリンジ566を受け取る、又は収容するように適合させることができる。ビスコシリンジ566は、ビスコシリンジの内部チャンバ内の粘弾性材料を送達システム550内の導管に流体結合するために、無菌技術を使用してチューブ568に(例えば、雌ルアーコネクタを介して)接続することができる。一実施形態において、ビスコモジュール560は、シリンジがモジュールに挿入されるとビスコシリンジ566の内部チャンバを自動的に加圧するように構成され得る。送達システム550のハンドル552の上のビスコトリガ562をトグルすると、粘弾性材料の加圧流がビスコシリンジ及びビスコモジュールから送達システム550内に流れ、送達システムの導管の1つ又は複数のポートから出てシュレム管に入ることができる。上述のように、送達システムは、送達システムのカニューレ内の導管を前進及び後退させ、それによってシュレム管内の導管を前進及び後退させるように構成された導管前進ホイール564を含むこともできる。別個の導管前進ホイール564は、導管から粘弾性物質を投与することなく、導管をシュレム管内で移動させることを可能にする。同様に、ハンドル上のビスコトリガ562は、導管を移動させることなく、導管からシュレム管内に粘弾性材料を投与することを可能にする。
【0050】
図6~7は、ビスコモジュール660の、それぞれ、開いた非加圧構成及び閉じた加圧構成の断面図を示している。この実施形態では、ビスコシリンジ666は、多種多様なビスコシリンジのサイズ及び形状を収容するように構成され得るクレードル670内に静止し得る。ばね組立体674(例えば、圧縮ばね又は定力ばね)は、シリンジ666のプランジャ672と接触するように配置することができる。いくつかの実施形態において、ばね組立体674は、ばね組立体の位置を調整してプランジャ672と接触させるように構成された外側アジャスタバレル676を含むことができる。外側アジャスタバレル676の回転は、内側アジャスタバレル678に対する外側アジャスタバレル676の相対位置を調整することができる。例えば、外側アジャスタバレルは、プランジャ672に対する外側アジャスタバレルの相対位置調整を容易にするために、内側アジャスタバレル678と相補的にねじ切りすることができる。
【0051】
図6~7のビスコモジュール660は、アーム682の一方の端部に結合されたピストン680と、アームのもう一方の端部に結合されたモジュールカバー684とをさらに含む。いくつかの実施形態において、これらの構成要素は、ピボット又はヒンジを用いて回転可能に一緒に結合され得る。ビスコモジュールが図6の開いた構成にあるとき、モジュールカバー684は、アーム682及びピストン680をばね組立体674から離れるように引っ張る。しかしながら、図7の閉じた構成では、モジュールカバー684を閉じると、アームとピストンがばね組立体の中に移動してばねを部分的に圧縮する。その後、ばね組立体は、シリンジ666のプランジャ672に一定の力を加え始め、シリンジを効果的に加圧することができる。オペレータは、次に、例えば、ビスコモジュールに接続された送達システム上のビスコトリガ(図5のビスコトリガ562など)を展開することによって、シリンジ666のリザーバから送達システムへの粘弾性材料の送達を制御し得る。
【0052】
図8~9は図6~7のビスコモジュールの追加図であり、ビスコモジュール660へのビスコシリンジ666の装填を示す。外側アジャスタバレル676及び内側アジャスタバレル678も図8~9に示され、シリンジのプランジャに対してばね組立体を位置付けるためにどのように微調整を行うことができるかを示す。
【0053】
図10~12は、送達システム750とビスコモジュール760とを含む粘弾性送達システム700の別の実施形態を示している。送達システム750は、ハンドル752と、ハンドル752の遠位端から延びるカニューレ754とを有する。カニューレ754は、内部通路と、シュレム管と流体連通した状態に置かれるように構成された遠位開口とを有する。導管(図示せず)は、カニューレからシュレム管内に前進させ、カニューレ内に後退させることができるように、カニューレ754内に移動可能に配置される。導管は、1つ又は複数の出口ポートを有する。送達システム750上のトグル式ビスコトリガ762は、粘弾性材料の加圧流がビスコモジュール760からチューブ768を通ってカニューレ754内の導管に流れ、導管出口ポートから出ることを可能にし得る。
【0054】
ビスコモジュール760は、患者を治療するためにシステムを使用する前に、ビスコシリンジから粘弾性材料を受け取るように適合されている。図11~12に示すように、ビスコシリンジの出口は、ビスコモジュール760の入口785でルアーフィッティング786と接続することができる。ビスコシリンジは、入口785及び一方向弁787を通して、ルアーコネクタに通じる通路789に粘弾性物質を注入し得る。コネクタ793に接続されたチューブ768は、送達システムへと延びる。システムは、図11に示すように、粘弾性物質が入口785から入り、通路789、チューブ768を通過して導管の出口ポートから出るまでビスコトリガ762を開くことによって、ビスコシリンジからの粘弾性物質の注入中にプライミングすることができる。ビスコトリガを放すと、導管を通る粘弾性材料の流れが停止する。その後、粘弾性材料がビスコシリンジから注入され続けると、流体圧力は、ばね792(プレート790を介してピストンロッド788に接続されている)の動作に抗してピストンロッド788を入口785から遠ざけ、図12に示すように、加圧された粘弾性材料はチャンバ766を充填する。充填が完了すると、ビスコシリンジが取り外され、一方向弁787は、粘弾性材料が入口785を通って逆流するのを防止する。Oリングシール791は、粘弾性物質がピストンロッド788の周囲に漏れるのを防止する。送達システム750のビスコトリガ762が再びトグルされて開かれると、ばね792がピストンロッド788を入口785の方へ戻すように動かす。一方向弁787は粘弾性材料が入口785を通過するのを防止するので、ピストンロッド788のこの動きは、粘弾性材料をチャンバ766から通路789、チューブ768、及びカニューレ754内の導管内に排出する。すべての粘弾性材料がチャンバ766からチューブ768を通して送達された後、ビスコモジュールは図11の構成に戻る。
【0055】
導管前進ホイール764は、送達システムのカニューレ754内の導管を前進及び後退させるように構成される。別個の導管前進ホイール764は、導管から粘弾性材料を投与することなく、導管をシュレム管内で移動させることを可能にする。同様に、ハンドル上のビスコトリガ762は、導管を移動させることなく、導管からシュレム管内に粘弾性材料を投与することを可能にする。
【0056】
図13は、部分的に透明又は半透明のビスコモジュール本体に目盛りマーキング794を追加して粘弾性チャンバゲージを形成するビスコモジュール760の一実施形態を示している。本体の一部795は、ばね792を隠すために不透明にすることができる。図14は、ビスコモジュールをIVポール995(図23に示すように)、ユーザの手首(図22に示すように)、又はユーザの衣類に取り付けるための一体型クリップ796を追加したビスコモジュール760の実施形態を示している。他の実施形態では、クリップ796を省略することができ、チューブ768は、モジュール760及びチューブがユーザの手首の上に垂れるように、モジュール760を送達システム750のハンドルに繋ぎ止める。実施形態では、チューブ768は、このドレープ機能を可能にするために3~4インチの長さにすることができる。様々な実施形態において、チューブ768は、高圧編組強化チューブから形成することができる。
【0057】
図15~18は、ビスコモジュール860の代替実施形態を示す。上述の実施形態と同様に、ビスコモジュールは、ビスコモジュール内の粘弾性材料の流れを加圧するためにプランジャに対して圧縮を提供するばね(例えば、圧縮ばね)を実装することができる。この実施形態では、ビスコモジュールは、図10~12の実施形態と同様に、ルアーフィッティング886と一方向逆止弁887を含むことができる。通路889は、ロッド802を通ってビスコリザーバ894まで延びている。ロッド802は、圧縮ノブ896、圧縮ノブ896に接続されたねじ部材804、圧縮ばね892、及びピストン889から延びる。ビスコリザーバ894からの出口895は、コネクタ893を介して、上述の送達システム750などの送達システム(図示せず)に通じるチューブ(図示せず)に接続するように適合される。リザーバ894は、図16に示す構成のビスコモジュールを用いて、ルアーフィッティング886にビスコシリンジを接続することなどにより、粘弾性材料で充填することができる。ビスコ送達システムがチューブを介してリザーバ894の出口に接続され、ビスコ送達システムのビスコ送達トリガを開位置に押すと、粘弾性材料がまずリザーバ894を充填し、次にチューブに流れ、送達システムを介して送達システムの導管出口ポートに流れてシステムをプライミングする。送達システムのビスコ送達トリガを閉位置にトグルした後、圧縮ノブ896を回して、ねじ部材804がハウジング806(これは対応するねじ山を有する)内に前進するように、ビスコモジュール860のビスコリザーバ894内の粘弾性材料を加圧することができる。ビスコ送達トリガが閉位置にある状態では、粘弾性材料はリザーバ894から流出することができず、ピストン889は、ねじ部材804が前進するとその引き出し位置に留まる。ねじ部材804の端部のフランジ808は、図17に示すように、ねじ部材の前進中にピストン889に対してばね892を圧縮し、リザーバ894を加圧する。次に、オペレータは、例えば、ビスコモジュールに接続された送達システム上のビスコトリガ(図10のビスコトリガ762など)を展開することによって、ビスコモジュール860から送達システムへの粘弾性材料の送達を制御することができる。粘弾性材料がリザーバ894から送達されると、図18に示すように、リザーバが枯渇するまで、ばね892がピストン889を出口895に向かって移動させる。いくつかの実施形態において、ハウジング806のリザーバ部分、又はハウジング806のすべては、それが含む粘弾性材料の量を見ることができるように、透明又は半透明であり得る。送達された粘弾性材料の量及び/又はハウジングに残っている量を定量化するのに役立つように、マーキングがハウジングに加えられてもよい。
【0058】
図19は、図15~18の実施形態の変更を示す。この実施形態では、ビスコ入口ルアーフィッティング886’と一方向逆止弁887’は、ビスコモジュール860’のハウジング806’の側にある。ロッド802’は、圧縮ノブ896’に接続されたねじ部材804’とピストン889’との間に延びる。圧縮ばね892’もまた、ねじ部材804’とピストン889’との間に延びる。ビスコリザーバ894’からの出口895’は、コネクタ893’を介して、上述の送達システム750などの送達システム(図示せず)に通じるチューブ(図示せず)に接続するように適合される。リザーバ894’は、図19に示す構成のビスコモジュールで、ルアーフィッティング886’にビスコシリンジを接続することなどにより、粘弾性材料で充填することができる。ビスコ送達システムがチューブを介してリザーバ894’の出口に接続され、ビスコ送達システムのビスコ送達トリガを開位置に押すと、粘弾性材料がまずリザーバ894’を充填し、次にチューブに流入して送達システムを通り、送達システムの導管出口ポートに流れてシステムをプライミングする。送達システムのビスコ送達トリガを閉位置にトグルした後、ビスコモジュール860’のビスコリザーバ894’内の粘弾性材料は、圧縮ノブ896’を回して、ねじ部材804’がハウジング806’(これは対応するねじ山を有する)内に前進するように加圧することができる。ビスコ送達トリガが閉位置にある状態で、粘弾性材料はリザーバ894’から流出することができず、ピストン889’は、ねじ部材804’が前進するとその引き出し位置に留まる。ねじ部材804’の端部のフランジは、ねじ部材の前進中にピストン889’に対してばね892’を圧縮して、リザーバ894’を加圧する。次に、オペレータは、例えば、ビスコモジュールに接続された送達システム上のビスコトリガ(図10のビスコトリガ762など)を展開することによって、ビスコモジュール860’から送達システムへの粘弾性材料の送達を制御することができる。粘弾性材料がリザーバ894’から送達されると、ばね892’は、リザーバが枯渇するまでピストン889’を出口895’に向かって移動させる。いくつかの実施形態において、ハウジング806’のリザーバ部分、又はハウジング806’のすべては、それが含む粘弾性材料の量を見ることができるように、透明又は半透明にすることができる。送達された粘弾性材料の量及び/又はハウジング内に残っている量を定量化するのに役立つように、マーキングがハウジングに追加されてもよい。
【0059】
図20~21は、例えば本明細書に記載の粘弾性送達システムと共に使用するためのビスコモジュール1200のさらに別の実施形態を示している。この実施形態では、ビスコ入口ルアーフィッティング1202と一方向逆止弁1204は、ビスコモジュール1200のハウジング1208の上部前側の入口1206に通じている。入口1206は、逆止弁1204から、リザーバ1210の円筒形リザーバ部分1214の端部に配置されたテーパ状リザーバ部分1212の上端部まで延びる。ロッド1216は、ピストン1222から、圧縮ノブ1220から延びる中空ロッド1219の内部チャネル1218まで延びる。圧縮ばね1224は、ロッド1219の一端とピストン1222との間に延びる。ビスコリザーバ1210のテーパ部分1212における出口1225は、コネクタ1226を介して、上述の送達システム750などの送達システム(図示せず)に通じるチューブ(図示せず)に接続するように適合される。Oリング1228は、ピストンをリザーバ1210の内壁に対してシールして、粘弾性材料がピストンの周囲に漏れるのを防止する。
【0060】
リザーバ1210を粘弾性材料で充填して(ビスコシリンジをルアーフィッティング1202に接続するなどによって)、リザーバ1210内のピストン1222を入口1204から離して図20に示す位置まで移動することができ、ここでピストン1222はストップチューブ1221の前縁に係合するが、ビスコモジュールのばね1224が圧縮されていない構成(図示せず)であり、圧縮ノブ1220がハウジング1208(これも図示せず)から離れて回転して、シリンジからの粘弾性材料の注入中に入口1204から離れるピストン移動を可能にする状態である。ビスコ送達システムがチューブを介してリザーバ1210の出口に接続され、ビスコ送達システムのビスコ送達トリガが開位置に押されると、粘弾性材料はまずリザーバのテーパ部分1212に流入し、次にコネクタ1226に接続されたチューブに入り、送達システムを介して送達システムの導管出口ポートに流入してシステムのプライミングを行う。その後、ピストンが押し戻されると、追加の粘弾性材料が残りのリザーバを充填する。リザーバの円筒部分1214のすぐ下の入口1206の位置は、ピストンが円筒部分1214の端部にあるとき(図21に示すように)、プライミングプロセスの開始時に粘弾性材料がピストン1222の底面1223にわたって流れることを引き起こし、それによってピストン面1223又はリザーバのテーパ部分1212に形成されて堆積し得るあらゆる気泡をパージする。
【0061】
送達システムのビスコ送達トリガを閉位置にトグルした後、ビスコモジュール1200のビスコリザーバ1210内の粘弾性材料は、中空ロッド1219がロッド1216を越えてハウジング1208(これは対応するねじ山を有する)内に進むように圧縮ノブ1220を回すことによって加圧され得る。ビスコ送達トリガが閉位置にある状態では、粘弾性材料はリザーバ1210から流れ出ることができず、ピストン1222はロッド1219が進むとその引き出し位置に留まり、それによって図20に示すように、ばね1224が圧縮されてリザーバ1210が加圧される。次に、オペレータは、例えば、ビスコモジュールに接続された送達システム上のビスコトリガ(図10のビスコトリガ762など)を展開することによって、ビスコモジュール1200から送達システムへの粘弾性材料の送達を制御することができる。粘弾性材料がリザーバ1200から送達されると、図21に示すように、ピストンがその可動範囲の終わりに達するまで、ばね1224がピストン1222を出口1225に向かって移動する。いくつかの実施形態において、ハウジング1208のリザーバ部分、又はハウジング1208のすべては、それが含む粘弾性材料の量を見ることができるように、透明又は半透明とすることができる。送達された粘弾性材料の量及び/又はハウジングに残っている量を定量化するのに役立つように、マーキングがハウジングに加えられてもよい。
【0062】
図24図28は、本明細書で考察するような粘弾性送達システム1050の様々な図を示す。上述したように、送達システムは、ハンドル1052によって支持されたビスコトリガ1062及び導管前進ホイール1064を含むことができる。カニューレ1054は、ハンドル1052の遠位端から延びる。カニューレ1054は、内部通路と、シュレム管と流体連通した状態に置かれるように構成された遠位開口とを有する。図25を参照すると、導管前進ホイール1064は、複数のノッチ1098を含むことができる。このホイールは、カニューレ1054内の導管1053の前進を制御するために、導管1053(例えば、Vestamid(登録商標)ML21ナイロン押出成形品から形成される)に結合されるラック及びピニオン機構1099に結合することができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、ラック及びピニオンシステムの歯車は、導管前進ホイール1064のノッチ1098ごとに設定距離だけ導管を前進させるように最適化することができる。例えば、一実施形態では、ノッチは、3mmだけ間隔を空けることができ、1つのノッチによる導管前進ホイールの前進が導管を3mm前進させるように、ラック及びピニオンシステムにおいて1:1歯車を使用することができる。代替の実施形態では、他の歯車比を使用することができる。例えば、2:1の歯車比は、ノッチ間に3mmの間隔がある場合に導管を6mm前進させるために使用することができる。
【0064】
図26~27に示すように、ワイヤから又は成形プラスチックバーとして形成された片持ちばね1065は、ノッチ付き導管前進ホイール1064の隆起部に沿って摺動して、ホイールが回転したときに導管がシュレム管内にどれだけ前進しているかを正確に知るための触覚フィードバックをユーザに与え、粘弾性材料がカニューレ先端に対してどこに注入されているかをユーザに知らしめることができる。図30は、代替の導管前進ホイール1064’と、触覚フィードバックを提供するためにホイール1064’の側面の窪み1067の内外に摺動する代替の片持ちばね1065’とを示す。図31は、窪み1067’’と、導管の前進の触覚フィードバックのための片持ちばね1065’’とを有するさらに別の代替の前進ホイール1064’’を示す。
【0065】
いくつかの実施形態において、ラック及びピニオン機構1099は、24mm移動するように構成される。完全に後退した構成において、導管1053の24mmがハンドル1052内に存在し、導管は、カニューレの遠位湾曲部分の近位にあるカニューレ1054の直線部分内に存在する。導管は、導管がカニューレの湾曲部分から湾曲したセットを取らないように、出荷及び/又は保管中にこの構成に維持することができる。最も延在した構成への24mmのラック移動は、20mmの導管をカニューレから延在させることになる。
【0066】
次に、図25~28を参照して、ビスコトリガ1062の動作について考察する。上述したように、ビスコトリガ1062は、オフ状態とオン状態とを交互に繰り返すことができる単純なトグルレバーを備えることができる。ビスコトリガがオフ状態にあるとき、送達システム1050は、カニューレ内の導管を通して粘弾性材料の流れを送達しない。対照的に、ビスコトリガがオン状態に動かされると、粘弾性材料の流れが、ビスコモジュール(上述)からトグル弁1001を通り、送達システムの導管/カニューレ内に流れるようにされる。したがって、送達システムから送達される粘弾性材料の量は、ビスコトリガがオン状態にある時間の長さと相関している。
【0067】
図26~28を参照すると、シャフト1003は、ビスコトリガ1062の回転軸1063からオフセットした位置に配置され、シャフト1003の遠位端は、ビスコトリガ1062の溝1061内に配置される。シャフト1003の遠位端1004は、トリガ1062の移動に伴って溝1061内を摺動する。シャフト1003の遠位端1004は、図28に示すように凸状であってもよいし、平坦であってもよい。トリガ1062の回転軸に対するシャフト1003のオフセット位置は、シャフト1003をその長手方向軸に沿って前後に移動させ、これにより、ばね1005を圧縮し、トグル弁1001内の1つ又は複数のOリング1007の位置を移動させる。Oリング1007の移動により弁が開き、粘弾性材料の加圧流が、ビスコモジュール(上述)からチューブ1010を通って弁入口1009に流れ、弁出口(図示せず)から導管1053に通じるチューブ1012に出ることができる。(図26は、明瞭化のために、チューブ1010とチューブ1012の大部分を省略している。同様に、図28は、明瞭化のためにチューブ1012が省略された弁出口1011を示す)。ユーザの作動力がビスコトリガから解放されると、ばね1005が減圧してシャフト1003及びOリング1007を所定の位置に戻し、ビスコトリガ1062をオフ状態に戻し、弁を閉じ、加圧された粘弾性材料の流れを効果的に停止させる。
【0068】
チューブ1012は、弁出口からトグル弁1001の側面の歪み除去要素1002を越えて延びている。チューブ1012は、図27に示すように、ラックとピニオンが最も後退した位置にあるときにハンドル1052内でループを形成し、導管の前進中にまっすぐに伸びる。図29は、代替の形状を有する歪み除去要素1002’を示す。
【0069】
図32~34は、図24~28の粘弾性送達システムのいくつかの構成要素の他の代替実施形態を示す。一実施形態において、送達システムのビスコトリガ1362は、変更された形状を有する。上述したように、ビスコトリガ1362は、単純なトグルレバーとすることができ、これは、オフ状態とオン状態で交互に切り替えることができる。ビスコトリガがオフ状態にあるとき、送達システム1050は、カニューレ内の導管を通して粘弾性材料の流れを送達しない。対照的に、作動力がビスコトリガに加えられると、ビスコトリガは後方に移動してオン状態になり(図32~34に示すように)、粘弾性材料の流れが、ビスコモジュール(上述)からトグル弁1301を通り、送達システムの導管/カニューレの中に流れるようになる。具体的には、ビスコトリガ1362の後方への移動は、シャフト1306をばね1304の作用に抗して動かし、ボール弁1305をOリング1303上のその座から離し(弁ハウジング1310が透視した状態で示される図32に示されるように)、それによって、加圧した粘弾性材料が弁ハウジング1310内に流れ、送達システムの導管(図示せず)につながるチューブ1012内に出ていくことを可能にする。作動力が取り除かれると、ビスコトリガ1362はオフ状態に戻り、ばね1304が減圧してボール弁1305をOリング1303上のその座に対して所定の位置に戻し、弁を閉じ、加圧された粘弾性材料の流れを効果的に停止させる。弁ハウジング1310の構成要素は、相互に接着されてもよい。接着剤注入を容易にするために開口1312を弁ハウジング1310に形成することができる。
【0070】
ビスコトリガは、図28のトグルレバー1062又は図32~34のトグルレバー1362などの単純なレバーであってもよく、或いは代替的に図35に示すトグルレバー1362’などの角度のある形状を有していてもよい。ビスコトリガ1062、ビスコトリガ1362、及びビスコトリガ1362’は、プラスチック(例えば、PEEK)、ステンレス鋼、又は任意の他の適切な材料から形成され得る。
【0071】
図36は、プライミング中にビスコトリガ1362をその後方(開)位置に維持するトグルロック1340を示す。トグルロック1340は、プライミング後、及びビスコカートリッジを加圧し(例えば、図20の実施形態の圧縮ノブ1220を回すことにより)、粘弾性送達システムを使用して患者を治療する前に、タブ1341を上方に引くことによりハンドル1052から取り外すことができる。図37は、ハンドル1052からのその取り外しを容易にするために、より大きなタブ1341’を有する代替トグルロック1340’を示す。
【0072】
図38及び39は、粘弾性送達システムのカニューレ1054の遠位端の詳細を示し、これは面取りされた先端1055を有する。先端1055は、カニューレ1054に出入りする際に導管1053(図38には示されていない)を穿刺又はせん断するほど鋭くはないが、治療中に小柱網組織を穿刺するのに十分鋭くなるように電解研磨することができる。図39に示すように、先端1055は、遠位端に、例えば、角度のついた表面1058を研削することによって形成された2つの平坦な表面1056及び1057を有する。
【0073】
図40~44は、ハンドル1052から延びる湾曲したカニューレ1054が、ハンドルに対して既知の量だけ回転され得る方法を示す。カニューレ1054は、ハンドル1052の遠位端から延びる回転可能なハブ1402に溶接され、カニューレの角度のついた先端がハブ1402の2つのノッチ1403のうちの1つに向けられる。バレル1404は、ハブ1402の周りに延びている。バレル1404は、近位開放端1409に、ハンドル上のOリング1410に対して静止する溝1408を有する。ロックプラグ1412は、バレル1404、ハブ1402及びカニューレ1054が一緒に回転するようにバレル1404をハブ1402に接続するために、その近位側を向く表面をバレル1404の遠位開口1406を囲む遠位側を向く表面1407に当てた状態で配置される。2つの脚部1414は、ノッチ1403を通してロックプラグ1412から近位に延びる。脚1414のタブ1416は、バレルをOリング1410に対して近位に押し付けるためにハブ1402の近位に面した表面に係合し、脚1414の隆起1418は、バレル1404の内側の対応する溝1420に係合する。カニューレ1054は、バレル1404の遠位開口1406を通って、ロックプラグ1412の開口1422を通って延びる。組み立てられたときに、バレル1404の外側の線1424は、1054の角度のついた先端が延びる半径方向とぴったりと合う。線1424をハンドル1052上の目盛り付き「時計時間」マーキング及び/又は数字1426を用いて方向付けることにより、ユーザは、例えばカニューレを患者の眼に挿入したときに、カニューレ自体を容易に見ることができないときでも、カニューレ1054の曲がった先端の向きを知ることができる。Oリング1410は、バレル/ハブ/カニューレ組立体をその回転位置に保持するために、バレル1404の自由な移動に抵抗する摩擦を提供する。バレル1404は、握りやすいように溝、隆起又は刻み目1405を有し得る。
【0074】
本明細書に記載されたシステムは、新規且つユニークな粘弾性送達システムを提供する。送達システム自体は、送達システムから眼の中に粘弾性材料を展開又は投与するための、及び粘弾性材料がそこから展開される位置を(導管を介して)制御するための、別々のトリガ又は機構を含む。また、使用方法も本明細書で提供することができる。
【0075】
図45を参照すると、眼用システムを用いて患者の眼を治療する方法を記載するフローチャートが提供される。本方法は以下のステップを含み得る:
【0076】
図45の操作1102において、本方法は、眼用システムのカニューレの遠位端を眼の前眼房に挿入することを含み得る。いくつかの実施形態において、カニューレは、眼の切開を通して前眼房に挿入され得る。他の実施形態では、カニューレは、その遠位先端で眼を突き刺して前眼房に入り得る。
【0077】
操作1104において、本方法は、カニューレが実質的に接線方向でシュレム管に入るように、カニューレの遠位端をシュレム管と流体連通するように配置することをさらに含み得る。
【0078】
操作1106において、本方法は、眼用システムの第1の制御部を作動して、導管をカニューレからシュレム管内に前進させることをさらに含み得る。第1の制御部はまた、シュレム管内で導管をさらに前進及び後退させることができ、導管をカニューレ内に完全に後退させることができる。上述のように、送達システムは、カニューレ内で送達システムの導管を移動させるように構成された粘弾性前進ホイールを含み得る。導管は、例えば、カニューレから遠位に移動させて、導管がカニューレの遠位開口を部分的に越えて延びるようにすることができる。或いは、導管は、カニューレの遠位端に対して近位に移動させることができる。カニューレに対する導管の位置を調整することは、導管の粘弾性体送達ポートの位置を調整するために使用することができる。一例において、粘弾性体送達ポートは、導管の遠位端に開口を含む。粘弾性体送達ポートは、粘弾性材料の流れを組織又は身体構造内に投与するように構成され得る。いくつかの実施態様において、第1の制御部は、眼用システムのハンドル上に配置された制御ホイール、レバー、スイッチ、ボタン等とすることができる。他の実施形態では、第1の制御部は、システムのハンドルから離れた場所にあることができる(例えば、フットスイッチ)。第1の制御部は、導管がどの程度前進又は後退したかについてユーザに触覚フィードバックを与えるために、デテント、ノッチ等などの物理的特徴を含むことができる。
【0079】
操作1108において、本方法は、粘弾性材料を導管内及びシュレム管内に投与するために眼用システムの第2の制御部を作動することをさらに含み得る。いくつかの実施態様において、第2の制御部は、眼用システムのハンドル上に配置された制御ホイール、レバー、スイッチ、ボタン等とすることができる。第1の制御部及び第2の制御部は、互いに隣接することができ、又は、ユーザが第1の制御部及び第2の制御部の両方を操作することができるようにハンドル上に位置決めすることができる。いくつかの実施形態において、第2の制御部は、ハンドルから離れた場所にある(例えば、粘弾性体モジュール上に位置決めされる)。
【0080】
第2の制御部は、オン/オフスイッチを備えることができ、オン位置では粘弾性材料が導管から流れ出、オフ位置では導管から流れ出ない。他の実施形態において、第2の制御部は、既知の体積の粘弾性物質をシュレム管に堆積させることができる。第2の制御部は、どの程度の量の粘弾性物質がシュレム管に送達されるかに関する制御をユーザに与える。いくつかの例において、粘弾性体送達ポートの位置が調整されるたびに、一貫したボーラス又は量の粘弾性材料がシュレム管に注入され得る。いくつかの実施形態において、所望のときに、より大量の粘弾性物質を投与することができる。導管の位置、ひいては粘弾性体送達ポートの位置は、粘弾性材料の投与とは別に、ユーザによって制御することができる(例えば、それぞれ第1及び第2の制御部を介して)。
【0081】
いくつかの実施形態において、粘弾性材料は、房水流出経路を開くために眼用インプラントの送達前に投与され得る。他の実施形態において、粘弾性材料は、眼用インプラントがシュレム管内に配置された後に投与することができる。
【0082】
様々な実施形態の多数の特徴が、様々な実施形態の構造及び機能の詳細と共に前述の記載に記載されているが、この詳細な記載は例示的なものに過ぎず、特に、様々な実施形態によって示される部分の構造及び配置に関して、添付の特許請求の範囲が表現されている用語の広範な一般的意味によって示される完全な範囲まで、細部に変更が行われてもよいことを理解されたい。
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【国際調査報告】