(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】行列計算用のバランス型フォトニック・アーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
G02F 3/00 20060101AFI20240123BHJP
G06E 3/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G02F3/00 501
G06E3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537068
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 US2021073003
(87)【国際公開番号】W WO2022133490
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325972
【氏名又は名称】セレッシャル エイアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Celestial AI Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Mathilda Pl. Suite 170 Sunnyvale California 94086 The United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100226263
【氏名又は名称】中田 未来生
(72)【発明者】
【氏名】ヤンジン マー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラオス プレロス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ラゾフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ジャモウジャニス
(72)【発明者】
【氏名】アポストロス ツアキリディス
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリナ トトヴィック
(72)【発明者】
【氏名】マルティノス ボス
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ウィンターボトム
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA20
2K102AA21
2K102AA28
2K102BA01
2K102BA31
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BC10
2K102DA04
2K102DB04
2K102DC07
2K102DC08
2K102DD03
2K102DD10
(57)【要約】
ベクトルと行列との乗算を、これらのベクトル及び行列の成分により光学的に振幅変調または位相変調された光をコヒーレントに結合することによって、フォトニック回路内で実現することができる。損失がバランスし遅延がバランスした複数の光路によって特徴付けられる種々の有益なフォトニック回路レイアウトを開示する。種々の実施形態では、光路全体にわたる損失のバランスを、全部の光路にわたる適切な光結合比、及び全部の光路にわたって(必要な場所にダミー交差部を用いて)導波路交差部の数をバランスさせることにより実現する。一部の実施形態では、幾何学的に遅延が一致した光路により遅延をバランスさせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントエンド光スプリッタと、
複数の第1光変調器セルと、
複数組の第2光変調器セルと、
複数の導波路構造と、
複数のバックエンド光コンバイナとを具えたフォトニック回路であって、
前記フロントエンド光スプリッタは、キャリア光を均一なパワー結合比で複数の光キャリア信号に分割するように構成され、
前記複数の第1光変調器セルは、前記複数の光キャリア信号を、第1ベクトルの成分により変調して、複数の第1変調光信号を発生するように構成され、
前記複数組の第2光変調器セルは、各組が複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトルに関連し、複数の第2光変調器セルを具え、該複数の第2光変調器セルは、前記複数の第1変調光信号を前記対応する第2ベクトルの成分により変調して、前記対応する第2ベクトルに関連する複数の第2変調光信号を発生するように構成され、
前記複数の導波路構造は、各々が、前記複数の第1変調光信号のうちの対応する第1変調光信号を、前記複数組の第2光変調器セルのうちの対応する第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成され、
前記複数のバックエンド光コンバイナは、各々が、前記複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトル、及び前記対応する第2光変調器セルの組に関連し、前記対応する第2ベクトルに関連する前記複数の第2変調光信号どうしを均一なパワー結合比でコヒーレントに結合して、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとのスカラー積を表す光出力信号にするように構成されているフォトニック回路。
【請求項2】
前記フロントエンド光スプリッタが、3dBカプラの対称なカスケード接続を具えている、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項3】
前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、3dBカプラの対称なカスケード接続を具えている、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項4】
前記複数のバックエンド光コンバイナと、前記第1変調光信号を前記第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成された前記複数の導波路構造とが、導波路交差部を形成し、前記フォトニック回路が、更にダミー導波路交差部を前記バックエンド光コンバイナ内に具え、前記第2光変調器セルの組毎に、前記導波路交差部と前記ダミー導波路交差部との合計数が、当該組の複数の第2光変調器セルから、当該組に関連する前記バックエンド光コンバイナの出力までの光路の全部にわたってバランスしている、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項5】
前記第1変調光信号を前記第2光変調セルの組へ経路設定するように構成された前記導波路構造内にダミー導波路交差部を具え、前記導波路交差部と前記ダミー導波路交差部との合計数が、更に、全部の前記バックエンド光コンバイナにわたってバランスしている、請求項4に記載のフォトニック回路。
【請求項6】
前記ダミー導波路交差部が空間的に一群になっている、請求項4に記載のフォトニック回路。
【請求項7】
前記複数の導波路構造の各々が、1つの導波路に沿って配列された一連の光カプラを具え、該光カプラは、対応する前記第1変調光信号のパワーを部分毎に、前記複数組の第2光変調器セルのうちの対応する第2光変調セルの組に順次に結合する、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項8】
前記一連の光カプラのパワー結合比が、前記第2光変調器セルの組の全部にわたって光入力パワーをバランスさせるように設定されている、請求項7に記載のフォトニック回路。
【請求項9】
前記複数組の第2光変調器セルが、行及び列の長方形アレイの形に配列され、前記第1変調光信号を前記第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成された前記導波路構造の導波路が、前記行に沿って配列され、前記複数組の各組の前記第2光変調器セルが、前記列のうちの対応する列に沿って配列されている、請求項7に記載のフォトニック回路。
【請求項10】
前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、前記複数の第2変調光信号どうしを、前記対応する列の最下部でコヒーレントに結合するように構成され、該最下部は、前記バックエンド光コンバイナと、前記第1変調光信号を経路設定するように構成された前記導波路構造との導波路交差部の全部に後続する、請求項9に記載のフォトニック回路。
【請求項11】
前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、当該バックエンド光コンバイナと前記導波路構造との導波路交差部の手前で、前記第1変調光信号を経路設定するように構成された前記導波路構造のうちの対応する導波路構造間において、前記第2変調光信号の対を結合するように構成されている、請求項9に記載のフォトニック回路。
【請求項12】
前記第2光変調器セルが光振幅変調器を具え、該光振幅変調器は、集合的に任意の正の実数値の行列を実現するように構成可能である、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項13】
前記第2変調器セルが光位相変調器を更に具え、該光位相変調器は、集合的に、前記光振幅変調器と合同で、任意の実数値または複素値の行列を実現するように構成可能である、請求項12に記載のフォトニック回路。
【請求項14】
前記複数のバックエンド光コンバイナの出力における合計の能動的挿入損失が、前記第1ベクトル及び前記第2ベクトルのサイズと共に直線的に大小変化する、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項15】
前記複数のバックエンド光コンバイナの出力に、光増幅器または光減衰器を更に具え、該光増幅器または光減衰器は、集合的に、前記フォトニック回路の忠実性を100%まで回復するように構成可能である、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項16】
前記複数のバックエンド光コンバイナのそれぞれの出力に、複数の受光器のそれぞれを更に具え、該複数の受光器のそれぞれが、前記光出力信号をそれぞれの電気出力信号に変換するように構成されている、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項17】
前記第1光変調器セルが、複数の波長の光を複数の前記第1ベクトルにより変調するように構成された波長分割多重光変調器セルであり、
前記複数の受光器が波長分割多重受光器であり、該複数の波長分割多重受光器の各々が、複数の電子出力信号を発生するように構成され、該複数の電子出力信号は、前記複数の第1ベクトルと、当該波長分割多重受光器に関連する前記第2ベクトルとのスカラー積を表す、請求項16に記載のフォトニック回路。
【請求項18】
波長分割多重光変調器セルである前記第1光変調器セルの各々が、デマルチプレクサとマルチプレクサとの間に囲まれた、前記複数の第1ベクトルに対応する第1変調器を具え、
前記波長分割多重受光器の各々がデマルチプレクサを具え、該デマルチプレクサに前記複数の受光器が後続し、前記複数の受光器は、前記複数の第1ベクトルのそれぞれとの積を表す電子出力信号を測定する、請求項17に記載のフォトニック回路。
【請求項19】
前記フロントエンド光スプリッタが、前記複数の光キャリア信号を、光入力から前記第1光変調器セルまで、第1の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って経路設定するように構成され、
前記複数の導波路構造が、前記第1変調光信号を、前記第1光変調器セルから前記第2光変調器セルまで、第2の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って経路設定するように構成され、
前記複数のバックエンド光コンバイナが、前記第2変調光信号を前記受光器へ、第3の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って経路設定するように構成されている、請求項16に記載のフォトニック回路。
【請求項20】
前記複数の導波路構造が対称な導波路ツリーとして構成され、該導波路ツリーは複数のカプラを有し、該カプラは、当該カプラの接合部において均一なパワー結合比を有する、請求項19に記載のフォトニック回路。
【請求項21】
前記第1光変調器セルが第1次元に沿って直線的に配列され、
前記複数組の第2光変調器セルにおける全組の前記第2光変調器セルが、前記第1次元に沿って直線的に、前記第1光変調器セルと平行に、当該第2光変調器セルに関連する前記第1変調光信号に基づく順序に配列されて空間的なグループを形成し、該グループの各々が、前記複数の第1変調光信号のうちの1つに関連する、請求項20に記載のフォトニック回路。
【請求項22】
前記複数の受光器が、前記第1次元に沿って直線的に、前記第1光変調器セル、及び前記複数組の第2光変調器セルにおける全組の前記第2光変調器セルと平行に配列され、
各々の前記グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器と同じ順序に配列され、これにより、前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、各々の前記グループ内の前記第2光変調器セルのうち、前記直線的に配列された複数の受光器のうちの関連する受光器の位置に対応する位置にある前記第2光変調器セルからの光を結合する、請求項21に記載のフォトニック回路。
【請求項23】
前記複数の受光器が、前記第1次元に直交する第2次元に沿って直線的に配列され、
前記第1次元に沿った前記グループのうち前半の各グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器と同じ順序に配列され、前記第1次元に沿った前記グループのうち後半の各グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器とは逆の順序に配列され、これにより、前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、前記前半のグループと前記後半のグループとの間で互いに鏡像の関係の位置にある前記第2光変調器からの光を結合する、請求項21に記載のフォトニック回路。
【請求項24】
前記複数の受光器が、前記第1次元に直交する第2次元に沿って配列され、
前記グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器と同じ順序に配列されている前記グループと、前記グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器とは逆の順序に配列されている前記グループとが交互し、これにより、前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、前記第1次元に沿って隣接する前記グループ間で互いに鏡像の関係の位置にある前記第2光変調器からの光を結合する、請求項21に記載のフォトニック回路。
【請求項25】
前記第1光変調器セルが第1次元に沿って直線的に配列され、
前記複数組の各組内の前記第2光変調器セルが、前記第1次元に沿って直線的に、前記第1光変調器セルと平行に配列され、
前記複数組は、前記第1次元に直交する第2次元に沿って直線的に配列されている、請求項20に記載のフォトニック回路。
【請求項26】
前記受光器の各々が光検出器を具えている、請求項16に記載のフォトニック回路。
【請求項27】
前記受光器が、1つ以上のコヒーレント受光器と、一対の光検出器と、光増幅器とを具え、前記コヒーレント受光器の各々が光ミキサを含み、該光ミキサは、それぞれの前記光出力信号を局部発信器信号と混合するように構成され、前記一対の光検出器は、前記光ミキサの光出力の強度を測定し、前記光増幅器は、前記一対の光検出器の電子出力信号どうしを結合する、請求項16に記載のフォトニック回路。
【請求項28】
前記バックエンド光コンバイナの各々が、光導波路逆ツリーの接合部に形成された3dBカプラのカスケード接続を具え、前記接合部の各々の手前に、当該接合部において結合された一対の導波路の各導波路内に位相シフタを具えている、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項29】
前記接合部のうちの1つにおいて結合された前記一対の導波路の各対において、一方の前記導波路内の前記位相シフタが被制御の位相シフタであり、他方の前記導波路内の前記位相シフタがダミー位相シフタである、請求項28に記載のフォトニック回路。
【請求項30】
前記第1光変調器セル及び前記第2光変調器セルの各々が光振幅変調器を具えている、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項31】
前記光振幅変調器が電子駆動型光デバイスを具え、当該電子駆動型光デバイスの出力の光振幅が、特定範囲の電圧値にわたる可変の駆動信号電圧の電圧値に単調依存する、請求項30に記載のフォトニック回路。
【請求項32】
前記電子駆動型光デバイスが、電界吸収変調器または電気光学リング変調器の少なくとも一方を具えている、請求項31に記載のフォトニック回路。
【請求項33】
前記光振幅変調器の少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を更に具え、該マッハツェンダー干渉計は、前記電子駆動型光デバイスのうちの1つを、当該マッハツェンダー干渉計の干渉計アームのうちの1つの干渉計アーム内に含み、前記マッハツェンダー干渉計の分割カプラ及び結合カプラの結合比が、当該マッハツェンダー干渉計の出力における光振幅が前記駆動信号電圧の電圧値の範囲の一端において0であるように設定されている、請求項31に記載のフォトニック回路。
【請求項34】
前記光振幅変調器の少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を更に具え、該マッハツェンダー干渉計は、前記電子駆動型光デバイスのうちの2つの電子駆動型光デバイスのそれぞれを、当該マッハツェンダー干渉計の2つの干渉計アームのそれぞれの干渉計アーム内に含み、前記2つの電子駆動型光デバイスが差動的に駆動される、請求項31に記載のフォトニック回路。
【請求項35】
前記光振幅変調器のうちの少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を具え、該マッハツェンダー干渉計は、電子駆動型光位相シフタを、当該マッハツェンダー干渉計の干渉計アームのうちの1つの干渉計アーム内に含み、前記光位相シフタに供給される可変駆動信号電圧の電圧値の特定範囲全体にわたって、前記マッハツェンダー干渉計の出力における光振幅が、前記可変駆動信号電圧の電圧値に単調依存する、請求項30に記載のフォトニック回路。
【請求項36】
前記光振幅変調器のうちの少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を具え、該マッハツェンダー干渉計は、2つの電子駆動型光位相シフタのそれぞれを、当該マッハツェンダー干渉計の2つの干渉計アームのそれぞれの干渉計アーム内に含み、前記2つの電子駆動型光位相シフタは差動的に駆動され、前記電子駆動型光位相シフタに供給される可変差動駆動信号電圧の電圧値の特定範囲全体にわたって、前記マッハツェンダー干渉計の出力における光振幅が、前記可変差動駆動信号電圧の電圧値に単調依存する、請求項30に記載のフォトニック回路。
【請求項37】
前記光振幅変調器が、アナログ入力から生成される駆動信号電圧によって電子的に駆動され、前記アナログ入力を前記駆動信号電圧に対応付ける伝達関数が、前記光振幅変調器の前記駆動信号電圧から、前記光振幅変調器が出力する光振幅への伝達関数に基づいて設定され、これにより、前記光振幅変調器の前記アナログ入力から、前記光振幅変調器が出力する光振幅への全体の伝達関数が実質的に線形である、請求項30に記載のフォトニック回路。
【請求項38】
光入力においてコヒーレント光を受光するステップと、
前記コヒーレント光を、均一な光結合比で複数の光キャリア信号に分割するステップと、
前記光キャリア信号を複数の第1光変調器セルへ経路設定するステップと、
前記第1光変調器セルを用いて、前記光キャリア信号を第1ベクトルの成分により変調して、複数の第1変調光信号を発生するステップと、
前記第1変調光信号の各々を、均一なパワー結合比で、複数組の第2光変調器セル間に分割するステップであって、前記複数組の各組が複数の第2ベクトルのそれぞれに関連するステップと、
前記第1変調光信号の各々を、前記複数組内の前記第2光変調器セルのうち、当該第1変調光信号に関連する前記第1ベクトルの成分に対応する前記第2ベクトルの成分に関連する前記第2光変調器セルへ経路設定するステップと、
前記複数組の各組内の前記第2光変調器セルを用いて、前記第1変調光信号を、当該組に関連する前記第2ベクトルの対応する成分により変調して、第2変調光信号を発生するステップと、
前記第2ベクトルの各々に関連する前記第2変調光信号どうしを等しいパワー結合比でコヒーレントに結合して、前記第2ベクトル及び前記経路設定に関連する光出力信号にするステップと、
前記複数の第2ベクトルのそれぞれに関連する前記光出力信号を、それぞれの電子出力信号に変換するステップと
を含む方法。
【請求項39】
前記光キャリア信号を、第1の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って、前記第1光変調器セルへ経路設定し、
前記第1変調光信号を、第2の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って前記第2変調器セルへ経路設定し、
前記第2変調光信号を、第3の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って受光器へ経路設定し、該受光器は前記光出力信号を電子出力信号に変換する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1光変調器セルの各々を用いて、前記光キャリア信号を複数の波長の光キャリア信号に分離し、該複数の波長の光キャリア信号を、対応する複数の第1振幅変調器で複数の第1ベクトルにより変調し、変調された複数の波長の光キャリア信号を多重化して前記第1変調光信号にし、
前記複数の第2ベクトルのそれぞれに関連する前記光出力信号を、それぞれの前記電子出力信号に変換するステップが、前記光出力信号を、複数の波長の光出力信号に分離するサブステップと、該複数の波長の光出力信号を、別個に、前記電子出力信号に変換するサブステップとを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記光入力から、前記光出力信号を前記電子出力信号に変換する受光器までの光路全部にわたって、光学的損失をバランスさせるステップを更に含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許仮出願第63/199296号、2020年12月17日出願、米国特許仮出願第63/199412号、2020年12月23日出願、及び米国特許仮出願第63/201155号、2021年4月15日出願による優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック(光子)計算は、以前はムーア(Moore)及びクーメイ(Koomey)の法則によって特徴付けられた従来のフォン・ノイマン(von Neumann)アーキテクチャの計算性能の伸びが減速するに連れて、計算の進歩を持続させるための有望な候補として浮上してきた。電子計算に比べて、フォトニクスは、速度増加及び省エネルギーの可能性を提供し;実際に、計算を電子領域から光学(または、同義語としてフォトニック)領域へ移す努力は、フォトニクスが遠隔通信及びデータ通信の分野に既にもたらした速度及びエネルギーの利益によって呼び起こされる小さからぬ部分である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Reck他、”Experimental realization of any discrete unitary operator”、Physics Review Letter 73, 58-61 (1994)
【非特許文献2】Clements他、”Optimal design for universal multiport interferometers”、Optica 3, 1460-1465 (2016)
【0004】
本明細書中には、有益な行列乗算用のフォトニック・アーキテクチャを、こうしたアーキテクチャにおいて利用されるフォトニック構成部品の実現、及びこうしたアーキテクチャを内蔵するフォトニック-電子計算システムの実現と共に記載する。種々の実施形態は添付した図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】種々の実施形態による、2つの2成分ベクトルのスカラー乗算用のフォトニック回路の一例を示す図であり、フォトニック計算の原理を示す。
【
図1B】種々の実施形態による、
図1Aのフォトニック回路の例を、フォトニック領域と電子領域との間の信号変換用の関連する電子回路と共に示す図であり、データフローの原理を示す。
【
図2】種々の実施形態による、2つの4成分ベクトルのスカラー乗算用のフォトニック回路の一例を示す図であり、使用されるフロントエンド光スプリッタ及びバックエンド光コンバイナを示す。
【
図3】種々の実施形態による、ベクトルを行列と乗算するためのクロスバー・フォトニック回路の一例を示す図であり、二次元(2D)マトリクス・レイアウトを特徴とする。
【
図4A】種々の実施形態による、
図3の回路のレイアウトを有するクロスバー・フォトニック回路の一例を示す図であり、パワー及び/または遅延バランス用のダミー導波路交差部により拡張されている。
【
図4B】4×4行列用の、
図4Aに示すダミー導波路交差部を有するクロスバー・フォトニック回路の一例を示す図である。
【
図5】種々の実施形態による、ベクトルを行列と乗算するためのクロスバー・フォトニック回路の一例を示す図であり、導波路交差部の数を低減した2Dマトリクス・レイアウトを特徴とする。
【
図6A】種々の実施形態による、
図5の回路のレイアウトを有するクロスバー・フォトニック回路の一例を示す図であり、パワー及び/または遅延バランス用のダミー導波路交差部により拡張されている。
【
図6B】8×5行列用の、
図6Aに示すダミー導波路交差部を有するクロスバー・フォトニック回路の一例を示す図である。
【
図7A】種々の実施形態による、ベクトルに行列を乗算するためのフォトニック回路の例を示す図であり、幾何学的に遅延が一致した光路を有する一次元(1D)マトリクス・レイアウトを特徴とする。
【
図7B】種々の実施形態による、ベクトルに行列を乗算するためのフォトニック回路の例を示す図であり、幾何学的に遅延が一致した光路を有する一次元(1D)マトリクス・レイアウトを特徴とする。
【
図7C】種々の実施形態による、ベクトルに行列を乗算するためのフォトニック回路の例を示す図であり、幾何学的に遅延が一致した光路を有する一次元(1D)マトリクス・レイアウトを特徴とする。
【
図7D】種々の実施形態による、
図7Aのフォトニック回路のサブユニットを示す図であり、より大きなベクトル及び行列向けに回路を拡大するために複製することができる。
【
図8A】種々の実施形態による、ベクトルに行列を乗算するためのフォトニック回路の一例を示す図であり、幾何学的に遅延が一致した光路を有する2Dマトリクス・レイアウトを特徴とする。
【
図8B】種々の実施形態による、
図8Aのフォトニック回路の副次的単位を示す図であり、複製して、より大きなベクトル及び行列に合わせて回路をスケーリングすることができる。
【
図9】種々の実施形態による、波長分割多重を用いて2つの行列を乗算するためのフォトニック回路の一例を示す。
【
図10】種々の実施形態による、電界吸収変調器(EAM)としての光振幅変調器の実現を示す図である。
【
図11】種々の実施形態による、電気光学リング変調器としての光振幅変調器の実現を示す図である。
【
図12】種々の実施形態による、電子制御振幅変調デバイスを含むマッハツェンダー変調器としての光振幅変調器の実現を示す図である。
【
図13】種々の実施形態による、電子制御位相変調デバイスを含むマッハツェンダー変調器としての光振幅変調器の実現を示す図である。
【
図14】
図14A~14Cは、種々の実施形態による、
図10~13の電子駆動型光振幅変調器と共に用いることができる種々のドライバを示す図である。
【
図15A】種々の実施形態による、差動駆動型光振幅変調デバイスを有するマッハツェンダー変調器としての光振幅変調器の実現を示す図である。
【
図15B】種々の実施形態による、符号付き乗算を実現するために使用することができる、差動駆動型光振幅変調デバイスを有する2つのマッハツェンダー変調器のカスケード接続を示す図である。
【
図16】
図15に示す差動駆動型光振幅変調デバイスを有するマッハツェンダー変調器の電気光学的応答を、
図10に示す単一駆動EAMの応答と比較するシミュレーション結果の例を示す図である。
【
図17】種々の実施形態による、差動駆動型光位相変調デバイスを有するマッハツェンダー変調器としての光振幅変調器の実現を示す図である。
【
図18】
図18A及び18Bは、種々の実施形態による、
図15及び17のマッハツェンダー変調器と共に用いることができる種々の差動駆動方式を示す図である。
【
図19】種々の実施形態による、光振幅変調器における、アナログ値から駆動電圧への、そして駆動電圧から光出力振幅へのデータフローを概念的に示す図である。
【
図20】
図20A~20Cは、種々の実施形態による、それぞれ、アナログ値と駆動電圧との間の、駆動電圧と光振幅との間の、及びアナログ値と光振幅との間の伝達関数を示す図であり、アナログ値と駆動電圧との対応関係が、駆動電圧と振幅との間の伝達関数の逆関数である場合について、及び比較のために、アナログ値と駆動電圧との直線的対応関係の場合について示す。
【
図21】種々の実施形態による、直接検出方式における光検出器としての受光器の実現を示す図である。
【
図22】
図22A及び22Bは、種々の実施形態によるコヒーレント受光器の実現を示す図である。
【
図23】種々の実施形態によるスカラー、ベクトル、及び行列の乗算を光学的に実行する方法の例のフローチャートである。
【
図24】
図24A及び24Bは、種々の実施形態によるフォトニック-電子混成の計算システムを示す、それぞれ概略側面図及び概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
本明細書中には、行列の乗算において発生する乗累算(MAC:multiply-accumulate)演算(積和演算)を実行するためのコヒーレント・フォトニック回路アーキテクチャを提示する。一般に、これらのアーキテクチャは、2段の電子制御光変調器セルを採用し、各段は光振幅変調器及び/または光位相シフタ(移相器)を含み、これらは、本明細書では「入力ベクトル」とも称する1つ以上の第1ベクトルの成分、及び本明細書では「重みベクトル」とも称する1つ以上の第2ベクトルの成分を、コヒーレント光キャリア(搬送波)信号の光場上へ順次に符号化し、これにより、これらのベクトル成分間の乗算演算を実現する。2回変調された光は、その後に、コヒーレントに結合されて、成分の積をベクトルの対毎に累算し、各々が2つのベクトルのスカラー積またはドット積(点乗積、内積)を表す結果的な光出力信号を、光出力信号を電子出力信号に変換する受光器によって測定する。
【0007】
それぞれが光変調器セルの第1段及び第2段によって実現される、単一の第1ベクトル及び第2ベクトルでは、フォトニック回路はこれら2つのベクトルのスカラー積、またはドット積を計算する。単一の第1ベクトル及び複数の第2ベクトルでは、後者は複数組の第2段の光変調器セルのそれぞれによって実現され、フォトニック回路は、第1ベクトルと行列との積を計算し、この行列は(行列をベクトルの左から乗算するか右から乗算するかに応じて)行または列が第2ベクトルであり;この積自体は、第1ベクトルと各第2ベクトルとのスカラー積を成分とするベクトルである。(例えば、第1段において、波長分割多重による複数の光変調器セルによって実現される)複数の第1ベクトル及び複数の第2ベクトルでは、フォトニック回路は、第1ベクトルで構成される第1行列と第2ベクトルで構成される第2行列との積を計算し、この積自体は行列である。光変調器セルの特定の実現次第では、フォトニック回路を、これらの光変調器セルを制御する電子駆動信号により設定して、任意の正の実数値の、または符号付き実数値の、あるいは複素値のベクトル及び行列を実現することができる。本明細書中に開示するベクトルと行列との積のフォトニック計算は、とりわけ、例えば、人工ニューラルネットワーク(神経回路網)、光ビームフォーミング(ビーム形成)ネットワーク、あるいは線形量子光プロセッサのフォトニック回路実現において用途を見出すことができる。
【0008】
説明するフォトニック回路では、フォトニック回路の単一の光入力で受光したコヒーレント・キャリア光を複数のキャリア信号に分割し、これらのキャリア信号は、再結合されて1つ以上の光出力信号になる前に、複数の光路に沿って進んでこれらの光路内で変調される。各光出力信号中に流入する、変調された光信号の適切なコヒーレント結合を保証するために、光入力から光出力までのそれぞれの光路は、光遅延を一致させて、光パワー(または等価的に光学的損失)をバランスさせる。開示する実施形態では、各光出力に関連する光路の全部にわたるパワーバランスを、フロントエンド光スプリッタ及びバックエンド光コンバイナ(光結合器)で実現し、フロントエンド光スプリッタは、入力されるキャリア光を、複数のベクトル成分に対応する光キャリア信号に均等に分割し、このことは全部の光キャリア信号の光パワーが等しいことを意味し、バックエンド光コンバイナは、(2回)変調された光信号を同様に均等に再結合し、これにより、結合された信号の光パワーに対する、変調された光信号の相対的な寄与分は、再結合される前の変調された光信号の相対的な光パワーに等しい(例えば、透過的に動作する光変調器の場合、光キャリア信号は等しいパワー比で再結合される)。こうした光スプリッタ及び光コンバイナは、本明細書では「均一なパワー結合比」で光を分割または再結合するとも記載する。一部の実施形態では、均一なパワー結合比を、導波路ツリー(本明細書ではバイナリ「ツリーカプラ」とも称する)の接合部に配置された双方向3dBカプラの対称なカスケード(多段)接続で実現し、このことは光をn段でN=2n個の光信号に分割すること、あるいはN=2n個の光信号をn段で再結合する事を可能にする。一部の実施形態では、単一のN方向カプラ、あるいはN方向の分割を集合的に実現する複数段の多方向カプラを使用する。
【0009】
種々の実施形態では、上記フォトニック回路が、光出力コンバイナ及び関連する光出力の全部にわたる、従って光入力から光出力までの光路の全部にわたるパワーバランスを実現し、光信号が数学演算を忠実に表現することを実現し、例えば、異なる光路内の変調光の光信号振幅が、それぞれのベクトル成分の大きさを適切に反映することを保証するように更に構成されている。均一なパワー結合比を特徴とするフロントエンド光スプリッタ及びバックエンド光コンバイナでは、異なる第2ベクトルに対応する異なるバックエンド光コンバイナの全部にわたるパワーバランスは、一般に、光変調器セルの第1段を出る変調光信号を分割することを含み、ここでは入力ベクトルを光路間で均等に分与して、第2段の光変調器セルの異なる組へ光を送り届ける。この目的で、第1段の光変調器セルから第2段の光変調器セルへ光を経路設定する導波路構造は、一部の実施形態では、フロントエンド光スプリッタと同様に、各々が、例えば3dBカプラの対称なカスケード接続を有するツリーカプラとして、その代わりに、他の対称な段のカプラまたはN方向カプラとして構成されている。他の実施形態では、第1段の光変調器セルから第2段の光変調器セルへ光を経路設定するための導波路構造は、各々が主導波路を含み、この導波路に沿って、一般に不均一なパワー結合比の一連の光カプラが存在し、これらの光カプラは、第1変調信号のパワーを部分毎に、順次に導波路外へ結合して、それぞれの第2光変調器セルへ送り届け、第2光変調器セルの異なる組どうしの間での所望の均等なパワー分割を実現するような比率で、パワーは部分毎に順次に増加する。
【0010】
種々の実施形態では、光入力と光出力との間のそれぞれの光路の遅延を、全長にわたって一致させるだけでなく、フロントエンド光スプリッタ内、第1段の光変調器セルと第2段の光変調器セルとの間の導波路構造内、及びバックエンド光コンバイナ内でも、個別に一致させる。即ち、上記フォトニック回路は、光入力からあらゆる第1光変調器セルまでの全部の光路(本明細書では「第1光路」とも称する)に沿った共通の光遅延、第1光変調器セルと第2光変調器セルとの間の全部の光路(本明細書では「第2光路」共称する)に沿った共通の光遅延、及びあらゆる第2光変調器セルと、それぞれの受光器との間の全部の光路(本明細書では「第3光路」共称する)に沿った共通の光遅延を特徴とする。こうしたセグメント毎の遅延の一致は、適切なコヒーレント結合を保証することを超えて、上記2段の各々における光変調器セルの同時のクロック動作も促進する。任意のフォトニック回路のレイアウトについて、異なる幾何学的長さに起因して光路間で異なるあらゆる光伝搬遅延を、適切な長さの光遅延線を光路のうちの1つ以上に挿入することによって補償することができる。本明細書中に開示する実施形態の一部では、伝搬遅延の一致を、その代わりに回路のレイアウト、特に導波路のレイアウトで実現し、ここでは遅延を一致させた光路の集合(例えば、上記に定義した第1光路、第2光路、及び第3光路)内の全部の光路が同じ幾何学的長さのものであり、本明細書では「幾何学的に遅延が一致した」とも称する。いずれの場合にも、あらゆる遅延の不一致を、遅延線が(例えば、波長のオーダーで)達成することができるよりも微細な尺度で補償するために、上記回路は専用の位相シフタを更に含んで、あるいは(例えば、光変調器セルの一部として)他の方法で回路内に含まれる位相シフタを利用して、遅延の微調整を実行することができる。
【0011】
開示する種々のフォトニック回路のレイアウトは、一般に、第1段の光変調器セルから第2段の光変調器セルへ光を経路設定する導波路構造とバックエンド光コンバイナとの、あるいは異なるバックエンド光コンバイナどうしの導波路交差部を含む。こうした導波路交差部は、受動的な光損失及び/または光遅延を誘発し得る。こうした有損失の導波路交差部があるにもかかわらず、全部の光路にわたって光損失、従って光出力パワーをバランスさせるために、上記フォトニック回路は、種々の実施形態では、「ダミー導波路交差部」を含んで、導波路交差部とダミー導波路交差部との合計を、全部の光路にわたってバランスさせる。同様に、種々の実施形態では、「ダミー位相シフタ」を含めて、回路内の他の位相シフタがもたらす損失及び遅延を、全部の光路にわたってバランスさせて合わせる。ダミー導波路交差部及びダミー位相シフタは、その機能的な相手方に関連する損失及び遅延を反映する以外の機能を有さない。
【0012】
以上の、開示する主題の種々の態様の限定的な要約は、以下のフォトニック回路アーキテクチャ及びフォトニック回路構成部品の実現例の説明より、一層明らかになる。添付した図面全体を通して、(例えば、光変調器セル内に用いられるような)光振幅変調器及び光位相シフタ、受光器、及び光カプラのようなフォトニックデバイスは、各々を同じ記号を用いて一貫して描画するが、これらの回路構成部品は一般に種々の方法で実現することができる。例えば、各振幅変調器は、例えばEAM(electro-absorptive modulator:電界吸収変調器)またはリング変調器のような単一の電子駆動型光デバイスとして実現することができ、あるいは、1つの振幅または位相変調器を一方の干渉計アーム内に含むか、異なるように駆動される一対の振幅または位相変調器を含むマッハツェンダー変調器のような複合デバイスとして実現することができる。一部の実施形態では、振幅変調器がベクトル成分の絶対値のみを与え、符号は(例えば、正に対しては0に、負に対してはπに設定することができる位相シフタによって)別個に符号化し;他の実施形態では、振幅変調器を、符号付きの値を直接符号化する複合デバイスとすることができる。受光器は、例えば単一の入力を有する光検出器(フォトディテクタ)として、あるいは複数の光検出器及び複数の入力ポートを有するコヒーレント受光器として実現することができる。3dBカプラは、1×2カプラ(例えば、単一のバイナリ導波路接合部)として、あるいはその代わりに、2×2マルチモード干渉計(MMI:multi-mode interferometer)のような2×2カプラとして実現することができる。光位相シフタは、熱的フェーズチューナー(位相調整器)または電気光学フェーズチューナーのような能動的チューニング(調整)デバイスとして実現することができ、あるいは一部の場合には、固定の位相シフトを実現する導波路または金属ストレスのような受動的設計によって実現することができる。各デバイスの有益な実現は、当業者が、構成部品のサイズ及び空間的制約、精度、パワーの要求、光損失、等を含む考慮に基づいて選択することができる。
【0013】
フォトニック回路アーキテクチャ
図1Aに、種々の実施形態による2つの2成分ベクトルのスカラー乗算用のフォトニック回路100の一例を示して、フォトニック計算の原理を説明する。入力では、入力振幅E
inを有するコヒーレント・キャリア(搬送波)光を、3dBカプラ102によって2つの光路104、106間に分割する。各光路104、106は、第1ベクトル、即ち入力ベクトル[X]
T=[x
1, x
2]の成分の絶対値(即ち、大きさ)を符号化する第1振幅変調器108、及び第2ベクトル、即ち重みベクトル[W]
T=[w
1, w
2]の対応する成分の絶対値を符号化する第2振幅変調器110を含む。(「対応する成分」とは、本明細書では、共通の添え字を共有する2つのベクトルの成分を参照する。例えば、光路104では、第1振幅変調器108が入力ベクトルの第1成分x
1の大きさを符号化し、第2振幅変調器110が重みベクトルの第1成分w
1の大きさを符号化する。図示する実施形態では、各光路104、106が位相シフタ112を更に含む。各光路内の位相シフタ112を用いて、0またはπの位相シフトによって、それぞれの入力と重みとを組み合わせた符号を符号化し、この符号化は、入力x
i及び重みw
i(i=1,2)が共に正であるか共に負であるかのいずれの場合にも正であり、そうでなければ負である。その代わりに、複素値の入力x
i及び重みw
iについては、各光路内の位相シフタ112を用いて、組合せの複素位相φ
iを符号化することができる。次に、2つの光路104、106内の変調光を、出力において3dBカプラ114によって結合する。フォトニック回路100は、光の双方向の分割及び再結合を実現し、このため、マッハツェンダー干渉計(MZI:Mach-Zehnder interferometer)を構成する。
【0014】
カプラ114による変調光信号の結合は、MZIの出力において、次式の光出力場を生じさせる(ここでは、エネルギー保存を満足するために係数1/2を含めた):
【数1】
位相シフタ112が、φ
1-φ
2=2πm、ここにmは整数であるように調整されている場合、出力場は次式のようになる:
【数2】
なお、ここでは相対的な位相シフトφ
1-φ
2のみが関係するので、原理的に、2つの位相シフタ112の一方を省略し、1つの位相シフタを一方のアーム内のみに残すことができる。
【0015】
式から分かるように、フォトニック回路100は演算x
1w
1+x
2w
2を実行し、この演算は2回の乗算及び1回の加算を含むMAC演算である。x
i及びw
iはアナログ数であるので、計算はフォトニック・アナログ計算である。従って、フォトニック回路100は単純なフォトニック計算装置を構成する。後に複数の入力及び/または複数の重みベクトルに一般化する目的で、上記のMAC演算は次の行列形式で書くこともできる:
【数3】
ここに、[X]
Tは一次元の入力行列(入力ベクトルと等価)であり、[W]は一次元の重み行列(重みベクトルと等価)であり、[Y]は0次元の出力行列(これら2つのベクトルのスカラー積に相当する)である。(「行列」とは、この関係では、数の二次元及び一次元アレイ、更には0次元アレイを参照すべく広い意味で用い、0次元アレイは単一の数である。)更に、一次元アレイをベクトルと称し、行列計算の演算子を「@」で表せば、上記のMAC計算は2×1ベクトル@ベクトルの演算として分類することができる、というのは、2つの入力及び1つの出力を有するからである。
【0016】
図1Bに、種々の実施形態による、
図1Aのフォトニック回路の例を、フォトニック領域と電子領域との間の信号変換用の関連する電子回路と共に示して、データフローの原理を説明する。光振幅変調器108、110、及び位相シフタ112の各々は、それぞれのデジタル-アナログ変換器(DAC:digital-to-analog converter)及び/またはドライバ(駆動回路)、集合的にDAC/ドライバ120が、DAC/ドライバ120に供給される対応するデジタル入力信号122から発生する駆動電圧(またはその代わりに駆動電流)によって制御される。光信号がフォトニック回路100を通過する間に、光信号は、これらの駆動電圧に応じて、従って入力信号122に応じて変調される。フォトニック回路100の出力では、例えば光検出器のような受光器124が光出力信号を電子出力信号126に変換し、この光出力信号の光場は、入力の加重総和(重み付き和)を符号化した、2回変調された信号のコヒーレント和であり、電子出力信号126は、例えばトランスインピーダンス増幅器(TIA:transimpedance amplifier)による任意の増幅後に、アナログ-デジタル変換器(ADC:analog-to-digital converter)130によってデジタル出力信号に復号化される。フォトニックデバイスに関連する電子回路(例えば、変調器及び光検出器)内での適切な対応関係と併せて、フォトニック回路100はアナログ計算を実行することを可能にする。
【0017】
図2に、種々の実施形態による、2つの4成分ベクトルのスカラー乗算用のフォトニック回路の一例を示して、使用されるフロントエンド光スプリッタ210及びバックエンド光コンバイナ220を説明する。4×1ベクトル@ベクトルの演算を促進するために、フロントエンド光スプリッタ210は、入力されるコヒーレント光を4つの光路230、232、234、236間で均等に分割するように構成されている。フォトニック回路100内の2つの光路と同様に、回路200内の4つの光路230、232、234、236の各々は、入力ベクトルのそれぞれの成分の大きさを光信号に与えるための第1振幅変調器108、及び重みベクトルの対応する成分の大きさを光信号に与えるための第2振幅変調器110、並びに組合せの符号または複素位相を符号化するための位相シフタ112を含む。変調光は、光コンバイナ220によって、4つの光路230、232、234、236の全部にわたってコヒーレントに結合される。
【0018】
光スプリッタ210及び光コンバイナ220における均一なパワー結合比は、本例では3dBカプラのカスケード接続により実現され、各3dBカプラは、入力光を2つの出力分岐間で50:50に分割し、あるいは2つの入力分岐の光を等量ずつ結合して1つの出力信号にする。(あらゆる現実世界の実現では、50:50の結合を行うように設計されたカプラは、45:55または52:48のようなわずかなアンバランスを伴うことがあり、こうしたカプラは、このアンバランスが特定用途にとって許容可能な限度内であれば、それでも「3dB」カプラであるものと考えられ、「3dB」カプラと称することを理解されたい。)光スプリッタ210では、入力されるキャリア光を、カスケード接続された2段の3dBカプラ240、242において2回連続して分割し:第1カプラ240は光を2つの光路間に分割し、第2カプラ242は、各光路内で、光を再び2つの光路間に分割し、合計4つの光路230、232、234、236内の光キャリア信号とする。光コンバイナでは、カスケード接続された2段の3dBカプラ254、256によって4つの変調信号を結合し:第1段では、2つのカプラ254が2つの光路の各々からの光を結合し、第2段のカプラ268が、結合されて第1段を出る光を更に結合する。光スプリッタ210は、2段のカプラ240、242を、これらを互いに接続し、かつ第1振幅変調器108に接続する導波路と共に含んで、対称なバイナリ導波路ツリー、または対称なバイナリ「ツリーカプラ」を形成する。同様に、光コンバイナは、2段のカプラ254、256を、これらを互いに接続し、かつ位相シフタ112の出力に接続する導波路と共に含んで、対称なバイナリ導波路逆ツリー(「逆」とは、光の伝搬方向では、ツリーの分枝が、カプラがあるノードで分岐するのではなく結合されることを反映する)または対称なバイナリ導波路逆ツリーカプラを形成する。なお、3dBカプラは、区別されるフォトニック構成部品240、242、254、256として表現しているが、一部の実施形態では、単に導波路ツリーのY字形接合部として表現している。
【0019】
通常の当業者が容易に理解するように、フロントエンド光スプリッタ210及びバックエンド光コンバイナ220は、追加的な結合段をスプリッタ210及びコンバイナ220内に追加することによって、あるいは異なる言い方をすれば、それぞれの導波路ツリーに追加的なレベルを追加することによって、(5つ以上の構成部品を含む)より高次元のベクトル用のベクトル乗算に直ちに拡張することができる。均一なパワー結合を実現するために、導波路は、各段において、分岐の各々が(分岐の単なる部分集合とは対照的に)2つに分かれる意味で対称である。こうした対称なカスケード接続されたバイナリ構造により、キャリア光が分割された光信号の数、あるいは再結合されて1つの出力になる光信号の数、従って入力及び重みベクトルの次元が、設計により一般に2のべき乗になる。即ち、n段の3dBカプラにより、光は2n個の光信号に分割され、これらの光信号上に2n次元のベクトルを符号化することができる。しかし、あらゆる不所望な成分の振幅を0にしてしまうことによって、任意数のベクトル成分を容易に実現することができる。(例えば、4番目の分岐236における振幅を0に設定して、回路200を用いて3成分のベクトルを乗算することができる。)
【0020】
更に、上述したように、フロントエンド光スプリッタ及びバックエンド光コンバイナは、m方向カプラを用いて実現することもでき、1つ以上の段においてm≠2である。例えば、第1段内の3方向カプラを第2段内の3つの双方向(3dB)カプラと組み合わせて、合計6つの光信号用にすることができる。結果的な光路の全部にわたるパワーバランスを実現するために、均一なパワー結合比を単独で提供するカプラを前提として、各段内に用いられるカプラの種類は、この段に入る全部の分岐について同じである。従って、光スプリッタ及び光コンバイナは、まだ(一般にバイナリではないが)対称な光導波路ツリーの形態をとる。更に、一部の実施形態では、フロントエンド光スプリッタ及びバックエンド光コンバイナを、可変のパワー結合比のカプラのカスケート接続で実現して、パワー分割をパラメータの整調とすることを可能にすることができる。可変のカプラは、例えばマッハツェンダー干渉計で実現することができ、これらのマッハツェンダー干渉計は、熱光学的または電気光学的に調整可能な位相シフタを当該マッハツェンダー干渉計の一方の干渉計アーム内に含む。
【0021】
ここで、ベクトル@ベクトル演算用のフォトニック回路からベクトル@行列演算用の回路に移り、集合的に重み行列を構成する複数の第2ベクトルまたは重みベクトルを符号化するための複数組の第2光変調器セルを含む種々のコヒーレントな干渉計回路アーキテクチャを以下に説明する。入力ベクトルと重み行列との乗算は、一般に、例えば人工ニューラルネットワーク層を実現するために用いられる。
【0022】
図3に、種々の実施形態による、ベクトルを行列と乗算するためのクロスバー・フォトニック回路300の一例を示し、クロスバー・フォトニック回路300は二次元(2D)マトリクス・レイアウトを特徴とする。クロスバー・レイアウトでは、第2光変調器セル302がN行M列の長方形アレイの形に配列されて、表現される重み行列[W]自体の行及び列を反映している。ここでは、Nが第2ベクトルの次元に相当し、Mはこの行列内の第2ベクトルの個数に相当する。従って、第2光変調器セル302の各組は、集合的に、M個の第2ベクトルのうちの1つを実現し、M個の列のうちの1つに沿って配列され、各行は、全M個の第2ベクトルにおける対応する成分の第2光変調器セル302を含む(例えば、第1行は第1成分のものを含む)。第1光変調器セルは、入力ベクトル[X]のN個の成分を与え、第2光変調器セルのアレイに先行する追加的な列304内に配列されている。なお、異なる次元に沿ったベクトル成分及び第2ベクトルのこうした配列では、「行」及び「列」の称号は任意であり、交換することができる。
【0023】
図示する例では、続けて記載する図面におけるように、各第1光変調器セルが光振幅変調器108を含み、光振幅変調器108は実数値の入力ベクトル成分(または複素値の入力ベクトル成分の大きさ)を与えることができ、各第2光変調器セル302は、光振幅変調器110及び関連する位相シフタ112を共に含み、これらは集合的に複素値または符号付きの重みを実現することができる(ここでは、複素位相または符号が、入力と重みとの組合せの位相または符号を実現することができる)。しかし、他の実施形態では、第1光変調器セルが同様に位相シフタを含んで、複素位相または符号を入力と重みについて別個に符号化することを可能にすることができる。逆に、一部の実施形態では、第2光変調器セル302が、位相シフタを省略して、与えられる重みを正の実数値に限定することができ、あるいは、特定の符号付き振幅変調器の実施形態では、符号付きの実数値に限定することができる。
【0024】
光変調器セルの列304は、その光キャリア信号をフロントエンド光スプリッタ306から受信し、光スプリッタ306は、図示するように、
図2に関して説明したような3dBカプラの段階的なカスケード接続を含む対称なバイナリ光導波路ツリーによって実現することができる。第1光変調器セル304が出力する第1変調光信号の各々を、次に、それぞれの行に沿って配列された水平導波路308によって、上記アレイ内の全M列における対応する第2光変調器セル302へ経路設定する。各水平導波路308内のM-1個の光カプラ310の列は、導波路308内で搬送される変調信号を部分毎に、順次に、結合比
(外1)
(i=1...(M-1))で第2光変調器セルに結合し、ここに
(外2)
及び
(外3)
は、それぞれ、導波路308を出て(重みを与える)第2光変調器セルの第i列に結合される光パワーの割合と、導波路308に沿って伝送される光パワーの割合とを表す。光カプラ310は、本明細書では「重みカプラ」とも称する。水平導波路308、その光路に沿った重みカプラ310、及びこの光カプラから第2光変調器セルの入力までの導波路部分が、集合的に、本明細書では「第1変調光信号を第2光変調器セルへ経路設定する導波路構造」とも称されるものを形成する。
【0025】
各列では、第2光変調器セル302が出力する第2変調光信号どうしを、それぞれのバックエンド光コンバイナ312によって(ベクトル成分に相当する)全行にわたって結合し、バックエンド光コンバイナ312は、図示するように、
図2に関して説明したような3dBカプラの段階的なカスケード接続を含む対称なバイナリ光導波路逆ツリーによって実現することができる。バックエンド光コンバイナ312の出力にある受光器124は、アレイの下方に別個の行を形成し、出力ベクトル[Y]の成分に相当する結合された光信号を測定する。一部の実施形態では、これらの受光器の直前に減衰器(アテネータ)または増幅器が置かれ、この減衰器または増幅器は、列間のあらゆるパワーアンバランスを補償して、フォトニック回路の忠実性を回復することができるように設定されている。
【0026】
図示するように、カスケード接続された3dBカプラは全部を配置することができ、これに応じて、第2変調光信号が、第1変調信号が進む水平導波路308と交差する垂直導波路(光コンバイナ312の一部を形成する)によって第2光変調器セル302からこれらのカプラへ経路設定された後に、第2変調光信号の全部を結合することができる。(例えば、交差状態操作スイッチまたは共通の交差部として実現することができる)これらの導波路交差部314を反映して、第2光変調器セルの、第1変調光信号を第2光変調器セルへ経路設定する導波路構造、及びバックエンド光コンバイナの図示する構成を、本明細書では集合的にフォトニック・クロスバーとも称する。
【0027】
フォトニック回路300によって光学的に実現される計算は、行列形式で(回路レイアウトに整合させるために行列を一般に右側から乗算する損失なしに)次式のように書くことができる:
【数4】
列毎に、受光器に入る光の振幅は次式のように書くことができる:
【数5】
【0028】
全部の受光器124にわたってパワーを列方向にバランスさせるために、水平導波路に沿ったカプラにおける結合比を、次式の関係が成り立つように選定することができる:
【数6】
ここに、EL
wは重みカプラ310(全部のカプラ310について同じであるものと仮定する)の各々に関連する過剰損失であり、即ち、重みベクトル成分を与えるために意図的にもたらされるあらゆる損失を超える、実際に通常は不可避な損失である。第1変調信号が水平導波路308に沿って進む間に、これらの第1変調信号は各列から次の列へ重みカプラ上を通過し、これにより損失EL
wは一般に累積する。しかし、遭遇する重みカプラ310の数は、光路に沿って最後の列までと最後から2番目の列までとで同じであることに留意されたい。更に、光パワーが各重みカプラ310によって(対応する第2光変調器セルに向かう、あるいは更に水平導波路308に沿った)2つの光路間に分割されるので、全てのj=1...Mについて
【数7】
であることを知る。この関係より、上記のパワーバランス条件と共に、最後の2列(#列(M-1)及び#列(M))について、)次式:
【数8】
を導出することができ、次に逆順で反復して次式
【数9】
jは[1, M-2]の範囲内
を得ることができる。
【0029】
上述したように、光がカプラ及び導波路交差部のような受動光学構成部品を通過すると、エネルギーが失われる。異なる光路に沿って異なる数のカプラまたは交差部が存在する場合、受光器におけるパワーが結果的に異なり得る。それに加えて、これらの受動構成部品は光遅延(光学的遅延)を導入し得る。フォトニック計算の精度を向上させるために、ダミー導波路交差部のようなダミー構成部品を適切な場所に配置することによって、受動的な損失及び遅延をバランスさせることができる。なお、ダミー交差部は一般にクロストークを導入せず、総損失及び総遅延を異なる光路間でバランスさせるための損失及び遅延を導入するに過ぎない。
【0030】
図4Aに、種々の実施形態による、
図3の回路のレイアウトを有するクロスバー・フォトニック回路400の一例を示す図であり、クロスバー・フォトニック回路400はパワー及び/または遅延バランス用のダミー導波路交差部により拡張されている。更に、
図4Bに、4×4行列用の、
図4Aに示すダミー導波路交差部を有するクロスバー・フォトニック回路の一例を示す。なお、
図4Bは個別のダミー導波路交差部402を示し、各々は種類が同様であり、従って、実際の導波路交差部314のいずれに生じる損失及び遅延も同様であり(2つの箇所では、表記「6x」または「3x」を用いて、それぞれ6つまたは3つのこうしたダミー導波路交差部が存在することを示す点を除く)、これに対し
図4Aは、各々が1つ以上のダミー導波路交差部を表すプレースホルダー(仮の記号)404を示す。
【0031】
図から分かるように、変調光信号が遭遇する実際の導波路交差部の数は、各列内では最上部から最下部へと増加し、列間では左から右へと増加する。例えば、フォトニック回路401の列1内では、第1行内の光変調器セル302の出力からの垂直導波路が3つの水平導波路308と交差し、第2行内の光変調器セル302の出力からの垂直導波路が2つの水平導波路308と交差し、第3行内の光変調器セル302の出力からの垂直導波路が1つの水平導波路308と交差し、第4の最終行内の光変調器セル302の出力からの垂直導波路は導波路と全く交差しない。従って、導波路交差部をこの列内の全部の光路にわたってバランスさせるために、1つのダミー交差部を第2行から来る垂直導波路に追加し、2つのダミー交差部を第3行から来る垂直導波路に追加し、3つのダミー交差部を第4行から来る垂直導波路に追加する。更に、第1光変調器セルから第2光変調器セルへ光を経路設定する複数の水平導波路308内の実際の導波路交差部を比較すれば、各列から次の列にかけて追加される導波路交差部に遭遇して、クロスバーの最下部に向けて数が増加する。従って、例えば、第4列に到着する変調光信号間では、第4行に沿って進む信号が9つの導波路交差部に遭遇するが、第1行に沿って進む信号は導波路交差部に遭遇していない。従って、9つのダミー交差部402を第1行に追加する。水平導波路308内、及び光コンバイナ312の垂直光路内に追加されたダミー導波路交差部402により、各光コンバイナ内の光路全部にわたってパワーがバランスするが、光コンバイナの全部にわたってはまだバランスしていない。従って、追加的なダミー交差部402を、受光器124の手前の光コンバイナ312の出力に追加し、このことは、実際の導波路交差部314とダミー導波路402との総数が全部の光路にわたって等しいことを実現する(図示する例では、光路当たり9つの導波路交差部がある)。一般に、第1光変調器セルと第2光変調器セルとの間の導波路に沿って、及び光コンバイナの導波路に沿ってダミー交差部402が配置される場所には、高度なフレキシビリティ(柔軟性)が存在する。種々の実施形態では、ダミー交差部402を可能な所で空間にグループ化して一緒にし、これにより製造を簡略化することができる。
【0032】
図4A(及びN=M=4について
図4B)中に示すダミー導波路交差部を有するフォトニック回路400の各列における光出力信号の光場振幅は、次式により計算することができる:
【数10】
ここに、a及びkは、それぞれ第1光変調器セル(入力変調器)及び第2光変調器セル(重み変調器)に関連する振幅損失であり、ξ
1は第1列内の重みカプラの結合比であり、EL
c、EL
w、及びEL
xは、それぞれ3dBカプラ、重みカプラ、及び導波路交差部の過剰損失である。結果的な挿入損失は次式のように書くことができる:
【数11】
【0033】
回路300、400、401は、全て、3dBカプラのカスケード接続で構成されるフロントエンド光スプリッタ及びバックエンド光コンバイナを利用するが、通常の当業者は容易に理解するように、説明するクロスバー・アーキテクチャを、均一なパワー結合比の他のスプリッタ及びコンバイナと共に用いることもでき、これらのスプリッタ及びコンバイナは、例えば、1つの1×N(またはN×1)カプラ、あるいは少なくとも1つが(集合的に3方向カプラを形成する)1×2(または2×1)カプラでない複数段のカプラを含む。このより一般的な場合についての出力信号の光場振幅は次式によって与えられる:
【数12】
ここに、EL
c,rowは、行方向の分割及び結合カプラの総損失を意味する。対応する挿入損失は次式の通りである:
【数13】
更に、フロントエンド光スプリッタ及びバックエンド光スプリッタ、並びに重みカプラ内のカプラは、調整可能なパワー結合比を有する可変カプラとすることができる。可変カプラによって提供されるフレキシビリティは、例えば疎(スパース)行列の実現、あるいは、より一般的には1つ以上の0に等しい重みを含む行列の実現にとって有益なことがある。静的な光カプラの固定の結合比では、こうした行列の実現に、大きな過剰挿入損失の可能性の問題がある、というのは、0の重みへ仕向けられるパワーの割合が、0のパワーを光出力信号に寄与させるからである、可変のカプラにより、結合比を調整して、その代わりに、入力信号の光パワーを0でない重みの間に分配する。
【0034】
図5に、種々の実施形態による、ベクトルを行列と乗算するためのクロスバー・フォトニック回路500の一例を示し、クロスバー・フォトニック回路500は、導波路交差部の数を低減した2Dマトリクス・レイアウトを特徴とする。回路500は、バックエンド光コンバイナ502において
図3~4Bの回路と異なるが、他の点は同様である。第2変調光信号をまず第2光変調器セル302からクロスバーの本当の最下部へ経路設定する代わりに、回路500は、光コンバイナと水平導波路308との間のあらゆる導波路交差部の手前で、それぞれの水平導波路308間で隣接する行の対における第2光信号を再結合する。次に、光コンバイナの3dBカプラの次段では、(部分的に)結合された信号を、隣接する対において再度結合して、(一般にはまだ部分的に)結合された信号を生じさせ、各信号は4つの第2変調光信号で構成され、列内の全行にわたって信号が結合されるまで、このプロセスを継続する。第2段、及び後続する各再結合段では、2つの行のうちの高い方から来る対の変調信号を、縦方向に水平導波路308を横切って低い方の行へ経路設定して、2つの信号を、低い方の行に関連する水平導波路308と交差する前に再結合する。このようにして、変調信号をクロスバーの最下部に向けて次第に統合していく。一旦、最後の行に達すると、各列内の全光路からの信号が結合されている。このレイアウトは、フォトニック回路500内の導波路交差部314の数、及び関連する受動損失を、
図3のフォトニック回路300に比べて低減することが有益である。
【0035】
図6Aに、種々の実施形態による、
図5の回路のレイアウトを有するクロスバー・フォトニック回路600の一例を示し、このクロスバー・フォトニック回路は、パワー及び/または遅延バランス用のダミー導波路交差部により拡張されている。更に、
図6Bに、8×5行列用の、
図6Aに示すダミー導波路交差部402(一部が、関連する2×(2倍)、4×(4倍)、等の乗算器を有する)を有するクロスバー・フォトニック回路の一例を示す図である。ダミー導波路交差部402は、水平導波路308内及び(最終の再結合段に後続し、かつ受光器124に先行するものを含む)光コンバイナ502内に含まれ、可能な所で一緒にグループ化して製造を簡略化することができる。
【0036】
図6A(及びN=8、M=5について
図6B)中に示すダミー導波路交差部を有するフォトニック回路600の各列における光出力信号の光場振幅は、次式により計算することができる:
【数14】
ここに、a及びkは、ここでも、それぞれ第1光変調器セル(入力変調器)及び第2光変調器セル(重み変調器)に関連する振幅損失であり、ξ
1は第1列内の重みカプラの結合比であり、EL
c、EL
w、及びEL
xは、それぞれ3dBカプラ、重みカプラ、及び導波路交差部の過剰損失である。結果的な挿入損失は次式のように書くことができる:
【数15】
光場振幅及び挿入損失は、導波路交差部に関連する損失項において、
図4A~4Bのフォトニック回路のものとは異なる。
【0037】
フロントエンド光スプリッタ及びバックエンド光コンバイナが、1×N(またはN×1)カプラ、あるいは少なくとも1つが1×2(または2×1)カプラでない複数段のカプラで構成される場合を含む一般的な実施形態については、出力信号の光場振幅及び挿入損失は次式によって与えられる:
【数16】
ここに、EL
c,rowは、行方向の分割及び結合カプラの総損失を意味する。なお、フロントエンド光スプリッタの種類はクロスバー・レイアウトに影響を与えないが、異なる種類のバックエンド光コンバイナは、導波路による経路設定に合わせた多少の調整を必要とする。例えば、3方向カプラを有する段では、3つの(元の2回目の変調をされた、あるいは既に部分的に結合された)光信号を同じ行へ経路設定して、そこで結合する。単一段の光コンバイナについては、全信号をクロスバーの最終行へ経路設定して、N×1カプラ内で再結合する。
【0038】
導波路交差部に関連する受動的損失EL
xを、行列の行及び列の数でスケーリング(規模拡大縮小)して、それぞれ
図4A及び6Aに示す、本明細書中では「クロスバー・タイプ1」及び「クロスバー・タイプ2」とも称する2種類のフォトニック・クロスバー回路400、600間で比較すると、次のことを見出す:
クロスバー・タイプ1(フォトニック回路400)については:IL∝(N-1)(M-1)EL
x,dB、及び
クロスバー・タイプ2(フォトニック回路600)については:IL∝((log
2(N)―1)(M―1)+(N-1))EL
x,dB、
ここに、EL
x,dB=-20log
10(EL
x)。N=Mについては、この式は単に次式のようになる:
クロスバー・タイプ1については:IL~O(N
2)、及び
クロスバー・タイプ2については:IL~O(log
2(N)N)。
これらから分かるように、導波路交差部は、タイプ2のフォトニック回路600ではタイプ1のフォトニック回路400よりもずっと低速の値をとり、従って、タイプ2の回路は一般により低い損失を有する。例えば、32×32の重み行列については、タイプ1のクロスバーでは961個の導波路交差部が存在するが、タイプ2のクロスバーでは160個しか存在しない。
【0039】
本明細書中に説明するフォトニック回路では、コヒーレント・キャリア光が、適切な光源から単一の光入力に結合され、光源から第1光変調器セルまでに時間遅延があり、この遅延は異なる光路全部にわたって一致することが望ましく、これにより全部の第1光変調器セルの電子ドライバを同期させることができる。同様に、第1光変調器セルを出る第1変調光信号は、第1光変調器セルから第2光変調器セルまでに時間遅延が生じる。これらの遅延も、好適には種々の変調器対の間で一致するべきであり、これにより全部の第2光変調器セルの電子ドライバを同期させることができる。遅延が一致していない場合、ドライバの同期に当たり時間差を導入して不一致を補償することによってシステムを正常に機能させることができ;但しこのやり方は大幅な制御の複雑性という代償を伴う。
【0040】
上述したパワーバランス型フォトニック回路では、光入力と受光器との間の異なる光路の全部にわたる遅延の一致を、光遅延線(図面中には図示せず)で実現することができる。ここで、説明を代案の実施形態に向け、この実施形態では、等しい幾何学的光路長により光路の遅延が本質的に一致して、遅延線の必要性をなくしている。
【0041】
図7A~7Cは、種々の実施形態による、ベクトルに行列を乗算するためのフォトニック回路の例700、702、704を示し、幾何学的に遅延が一致した光路を有する一次元(1D)マトリクス・レイアウトを特徴とする。図示する回路の例は全て4成分の第1及び第2ベクトル用に構成され、但しその設計原理はより高次元のベクトルに容易に拡張することができる。行列表記法では、回路700、702、704が、次式のような、4×4の重み行列(右側から乗算する場合、列に沿った4つの重みベクトルを含む)の、4成分の入力ベクトル[X]
Tとの乗算を実現して、4成分の出力ベクトル[Y]を生じさせる:
【数17】
【0042】
フォトニック回路700、702、704の各々は、フロントエンド光スプリッタ706を含み、フロントエンド光スプリッタ706は、入力されるキャリア光を最初は4つの光路間に分割し、これらの光路に沿って、結果的な光キャリア信号が4つの第1光変調器セルへ経路設定されて、入力x1、x2、x3、x4をこれら4つの光キャリア信号上に符号化する。図示するように、第1光変調器セルは、各々を単に第1振幅変調器108とすることができるが、一部の実施形態では、第1光変調器セルが位相シフタを含むこともできる。簡単のため、以下では、第1振幅変調器108をより一般的な第1光変調器セルに置き換えることができるという理解の下に、第1振幅変調器108を参照する。
【0043】
図示するように、このフロントエンド光スプリッタは、ツリーカプラ、例えば3dBカプラの対称なカスケード接続を有するバイナリ導波路ツリーとして実現することができるが、均一なパワー結合比を提供する他の単一段または複数段のスプリッタを代わりに用いることもできる。光スプリッタ706は、共通の光入力708から第1振幅変調器108までの光路(「第1光路」)の全部が等しい長さであり、このため幾何学的に遅延が一致するように構成されている。図示する回路では、フロントエンド光スプリッタ706におけるこうした遅延の一致が、単一の線に沿った第1振幅変調器の配列によって、ツリーカプラと共に実現され、このツリーカプラは、そのカプラ及び結合比の観点からだけではなく、その幾何学的レイアウトの観点からも対称である。
【0044】
各光路内では、それぞれの第1振幅変調器108を出る変調光が、更に4方向に分割されて、第1振幅変調器108からの変調光を、以下では第2光変調器セルのグループ710とも称する空間的にグループ化された4つの第2光変調器セルへ経路設定し、これらの第2光変調器セルは、集合的に、全4つの重みベクトルの対応する成分(即ち、互いに対応する成分、並びにそれぞれの光路上で符号化された入力ベクトルの成分に対応する成分)に対応する変調光を与える。例えば、第1振幅変調器が入力ベクトルの第1成分x1を符号化する光路内では、第2光変調器セル110のグループ710が、4つの重みベクトルのそれぞれの第1成分w11、w12、w13、w14を符号化する。各第2光変調器セルは、少なくとも第2振幅変調器110、及び任意で位相シフタ112を含む。図示する実施形態は、以下で明らかになる理由で、第2振幅変調器110が1つおきにしか位相シフタ112を有さない(他のものはダミー位相シフタを有するに過ぎない)ので、以下では第2振幅変調器110のみを参照し、位相シフタはバックエンド光コンバイナの一部と考える。しかし、第2振幅変調器110は一般に第2光変調器セルに置き換えることができる。
【0045】
全4つのグループ710の第2振幅変調器110は、回路700、702、704内で、第1振幅変調器108の配列に平行な単一の線に沿って(直線的に)配列され、本明細書ではこのことを「第1次元」としても表す。各々が、第1振幅変調器108のうちの1つと、第2振幅変調器110の関連するグループとの間で光信号を経路設定する導波路構造は、均一なパワー結合比を有する光スプリッタとして構成され、これらは、ちょうどフロントエンド光スプリッタ706のように、ツリーカプラ712、例えば図示する接合部にある3dBカプラを有するバイナリ導波路ツリー、あるいは他の何らかの単一段または多段のカプラの形態をとることができる。また、フロントエンド光スプリッタ706のように、ツリーカプラ712の導波路レイアウトは、高度に対称であり、第1振幅変調器108からそれぞれのグループ710の第2振幅変調器110までの光路(「第2光路」)の全部が等しい長さであること、即ち幾何学的に遅延が一致していることを本質的に保証する。第2振幅変調器が重みを与える第1変調光信号による、第2振幅変調器の空間的グループ化の結果として、カプラ712は、第2振幅変調器の下流の導波路との交差部のような、あらゆる導波路交差部を回避するように構成することもできる。即ち、回路700、702、704は、第2振幅変調器の上流に導波路交差部が全くない。
【0046】
回路700、702、704の各々では、第2振幅変調器110の出力が経路設定され、(集合的に714のラベルを付けるバックエンド光コンバイナを構成する)バイナリ逆ツリーカプラによって、全部のグループ710にわたって結合され、このバイナリ逆ツリーカプラは、接合部にあるカプラに関しては対称的であるが、例えば、図示する鏡面対称のフロントエンド光スプリッタ706のような種類の幾何学的対称性は示さない。上記の直線的配列内の第2振幅変調器110の順序、第2振幅変調器100と受光器124との間の逆ツリーカプラの導波路レイアウト、及び受光器124自体の配列は、回路700、702、704間で異なる。
【0047】
図7Aを参照すれば、回路の例700では、受光器124の全部が直線的に、第1振幅変調器108の配列及び第2振幅変調器110の配列と平行に配列されている。更に、受光器124は、第1振幅変調器108、及び第2振幅変調器110のそれぞれのグループ710と同様の方法で、当該受光器124が測定する出力ベクトル成分によって順序付けられ;例えば、図示するように、第1ベクトル成分に関連する変調器108、110、及び受光器124は(図内の位置を参照すれば)配列内の最上部とすることができ、第2ベクトル成分に関連するものがこれらに続く、等とすることができる。更に、各グループ710内では、第2振幅変調器110も、受光器124と同じ順序に配列することができ(従って、全グループ710にわたって、関連する重みベクトルの同じ列に対応させて、同じ順序に配列することができ、これらの第2振幅変調器は、関連する重みベクトルの成分を符号化する)。この順序付けの結果として、各逆ツリーカプラは、受光器124の直線的配列内の関連する受光器124の位置に対応する、グループ(または空間的グループ化)内の位置にある第2振幅変調器からの光を結合する。
【0048】
重みベクトル(第2ベクトル)毎に、対応する第2振幅変調器110の変調出力どうしを、逆ツリーカプラ、図示する例では3dBカプラをその接合部に有するバイナリ導波路逆ツリーによって、全グループ710にわたって結合する。
図7Aから分かるように、個別の導波路逆ツリーは、フロントエンド・スプリッタ706を特徴付けるのと同じ対称性を示さないが、それにもかかわらず、第2光変調器セル110から第1段のカプラ720まで、及びツリーカプラの第1段のカプラ720から第2段のカプラ722までの各々の光路の長さが等しいように(これにより、第2光変調器セルから受光器124までの各第3光路の全長どうしも等しい長さであるように)構成されている。更に、導波路逆ツリーは、全部が共通のレイアウトを共有し、第1次元に沿ってシフトされているだけである。
【0049】
これも図から分かるように、導波路逆ツリーは、第2振幅変調器110の複数のグループ710にわたって光を結合することの結果として、種々の点730で交差することが不可避である(図中では、不明瞭さを避けるために、一部の導波路交差部のみにラベルを付けてある)。これらの導波路交差部が種々の(第3)光路内の光遅延または光パワーに与えるあらゆる影響をバランスさせ切るために、追加的なダミー導波路交差部732を導波路ツリー内に含めて、実際の導波路交差部730+ダミー導波路交差部732の数が、対応する全部の光路セグメント間で一致するようにする。例えば、
図7Aの例では、第1段のバックエンド光コンバイナ内のカプラ720より手前の光路セグメントの各々が、合計3つの導波路交差部730、732を有する。同様に、第1段のカプラ720と第2段のカプラ722との間の光路セグメントの各々は、3つの導波路交差部730、732を有する。
【0050】
図示する回路700内でバックエンド光カプラとして機能するバイナリ導波路ツリーの結果として、受光器124毎に結合させた第2変調光信号どうしの間の相対的な位相シフト(または符号)を、各第2振幅変調器110の傍に含めなければならないことなしに符号化することができる。実際には、図示するように、バックエンド光コンバイナは、所定の段で結合すべき信号の対毎に、単一の位相シフタ112または740を、それぞれのカプラの手前に含んで、2つの信号間の相対的な位相を符号化することができる。従って、図示する回路では、1つおきの第2振幅変調器110のみが、位相シフタを、その直後に、かつ第1段のカプラ720の手前に有する。追加的な位相シフタ742を、第1段のカプラ720と第2段のカプラ722との間に含めて、第1段において出力される部分的に結合された2つの信号間の相対的な位相シフトを符号化する(あるいは、実数値の用途では、第1段の出力どうしを加算するか減算するかを制御する)。位相シフタ112、740は、追加的に、光路間のあらゆる位相の不一致を修正するように機能することができ、こうした位相の不一致は、幾何学的な遅延の整合のみでは完全に解消することはできない。
【0051】
位相シフタをバックエンド光コンバイナ内に配置することは、全信号間の相対的な位相シフトを符号化するために必要な動作する位相シフタの総数を、全部の第2光変調器セル内に位相シフタを用いることに比べて低減する点で、各段内の光カプラ720、722の各々の手前に1つの位相シフタが有益である。例えば、フォトニック回路720は、動作する位相シフタを16個ではなく12個しか含まない。しかし、位相シフタは過度の光遅延または光学的損失を生じさせ得る。従って、損失及び遅延を全光路にわたってバランスさせるために、ダミー位相シフタ742を回路内に配置する。図示するように、あらゆるカプラ720、722で結合すべき光路の対のうち、1つの光路が動作する位相シフタを含むことができるのに対し、他の光路はダミー位相シフタを含む。ダミー位相シフタは能動的に制御する必要がないので、この構成は、各第2光変調器セル内の位相シフタに対して、動作する位相シフタとダミー位相シフタとの総数がより大きいにもかかわらず、まだ有益である。
【0052】
ここで
図7Bを参照すれば、フォトニック回路702では、受光器124が上記第1次元に直交する方向(本明細書中では「第2次元」とも称する)に沿って直線的に配列されている点でレイアウトが異なり、第2次元に沿って、第1及び第2振幅変調器108、110の各々が配列されている。更に、第2振幅変調器110の順序は、これらに関連する重みベクトル及び受光器124の観点から、第2振幅変調器110の全グループにわたって、もはや同じではない。むしろ、第2振幅変調器110のグループは、グループ220の上半分及びグループ222の下半分に該当し、各グループ内の第2振幅変調器の順序が互いに鏡像の関係にある。例えば、図示するように、上方のグループ220では、第2振幅変調器110が、第1ベクトルから第4ベクトルまでの重みベクトルによって(例えば、第1ベクトル成分に関連する組については、w
11、w
12、w
13、w
14の順序で)、(図面内の相対位置を参照すれば)最上部から最下部へ順序付けられているのに対し、下方のグループ222では、第2振幅変調器110が、第4ベクトルから第1ベクトルまでの重みベクトルによって(例えば、第4ベクトル成分に関連する組については、w
44、w
43、w
42、w
41の順序で)、逆の順序、即ち最上部から最下部へ配列されている。こうした順序付けの結果、各逆ツリーカプラは、グループ220の前半とグループ222の後半との間で互いに鏡像の関係にある、グループ(または空間的グループ化)内の位置にある第2振幅変調器からの光を結合する。この構成は、逆ツリーカプラの導波路を、第1段のカプラ720と第2段のカプラ722との間で、例えば図示するようにネスト(入れ子)化された様式で経路設定して、第4~第1重みベクトルに関連する変調光どうしを、レイアウトの内側から外側への向きに結合することを可能にする。導波路のネスト化は、カプラ720、722間の導波路交差部を回避して、第2振幅変調器110と、バックエンド光コンバイナ(714)の第1段のカプラ720との間の導波路交差部のみを(ダミー交差部を含めて)残す。フォトニック回路702は、
図7Aの回路700と同様に、動作する位相シフタ及びダミー位相シフタを、バックエンド・コンバイナの各カプラの手前に含むことができる。
【0053】
図7Cのフォトニック回路704では、受光器124が、
図7Bの回路702におけるように、第1及び第2振幅変調器108、110が配列された方向に直交する第2次元に沿って配列されている。更に、第2振幅変調器110の順序は、種々のベクトル成分に関連する組どうしの間で異なる。具体的には、重みベクトルによる第2振幅変調器の順序は、隣接するグループ(空間的グループ化に対応する)間で交互し、これにより、これらのグループは2つの集合、即ちグループ750及びグループ752に該当し、これらのグループは、各グループ内の第2振幅変調器110の順序において互いに鏡像の関係にある。例えば、第1ベクトル成分に関連する第2振幅変調器110は(図面内の相対位置を参照すれば)w
11、w
12、w
13、w
14によって最上部から最下部へ順序付けられるのに対し、第2ベクトル成分に関連する第2振幅変調器110は、逆の順序に、即ちw
24、w
23、w
22、w
21によって最上部から最下部へ順序付けられている。この順序付けにより、第2振幅変調器110からバックエンド光コンバイナ(714)の第1段のカプラ720までの導波路による経路設定を、第1及び第2ベクトル成分に関連する一対のグループ750、752について、そして別個に、第3及び第4ベクトル成分に関連する一対のグループ750、752についてネスト化して、この第1コンバイナ段の導波路間の(実際の)導波路交差部を解消することができる。更に、第1段のカプラ720に続いて、第2段のカプラ722までの導波路は互いに平行であり、従って互いに交差しない。しかし、このレイアウトは、一部の逆ツリーの第1段の導波路と、他の逆ツリーの第2段の導波路との間に導波路交差部760を含む(その一部のみにラベルを付けている)。全体的に、レイアウトをバランスさせるためのダミー導波路交差部762の追加に続いて、第3光路毎の導波路交差部の数は、まさにフォトニック回路702におけるように3つである。
【0054】
図7A~7Cに見られるように、フォトニック回路の例700、702、704の例のレイアウト全体は、同一または同様の形態で回路全体にわたって繰り返される構造的サブユニット(副次的単位)を含んで、追加的なコピーを追加することによって回路をより高次元のベクトル及びより多数のベクトルへ拡張することを可能にする。
【0055】
図7Dに、種々の実施形態による、
図7Aのフォトニック回路700のサブユニットを示し、これらのサブユニットは、より大きなベクトル及び行列向けに回路を拡大するために複製することができる。第1レベルでは、特定のベクトル成分に関連する第2振幅変調器の各組、及び関連の動作する位相シフタまたはダミー位相シフタを、対応する第1振幅変調器108からの変調光信号を第2振幅変調器110に供給する導波路ツリーと共に、第1の種類のサブユニット770と考えることができる。第2レベルでは、2つのこうしたサブユニットを、第1コンバイナ段内の2つのサブユニット770にわたって光を結合する導波路ツリー構造と共に、第2の種類のサブユニット772と考えることができる。4成分のベクトルについては、
図7Aに示すように、回路が2つのこうした第2レベルのサブユニット772を含み;n個のサブユニット772は2n成分のベクトルの乗算を実現するように機能する。
【0056】
図8Aに、種々の実施形態による、ベクトルに行列を乗算するためのフォトニック回路の一例800を示し、フォトニック回路800は、幾何学的に遅延が一致した光路を有する2Dマトリクス・レイアウトを特徴とする。本例は、ここでも、4成分のベクトルについてであるが、設計原理はより高次元のベクトルに拡張することができる。回路700、702、704におけるように、入力にあるフロントエンド光スプリッタ、第1振幅変調器108と第2振幅変調器110とを接続する導波路構造、及びバックエンド光コンバイナは、トポロジー的にはバイナリツリーカプラ及びバイナリ逆ツリーカプラ(これらは、均一なパワー結合比を提供する限り、他の単一段または多段のスプリッタ及びコンバイナに置き換えることができる)によって実現することができるが、幾何学的レイアウトは以上の実施形態とは大幅に異なる。
【0057】
フォトニック回路800では、入力を符号化するための第1振幅変調器108、及び光出力を測定する受光器124は、各々が第1次元に沿って(図示するように、列を形成するように縦方向に)整列するが、重みを符号化するための第2振幅変調器110は、第1次元、及び第1次元に直交する第2(図示するように、水平の)次元に沿って定められる二次元アレイの形に配列されている。より具体的には、
図3~6Bのクロスバー・レイアウトにおけるように、4つのベクトル成分に関連する4つのグループが、
図7A~7Cの回路レイアウトにおけるように第1次元に沿って(図示するように、縦方向に)広がるが、各グループ内では、4つの第2振幅変調器110が第2次元に沿った行内に(水平方向に)配列されて、全グループにわたって整列して、列に沿って配列された4組の第2振幅変調器110を形成し、各組は重みベクトルのうちの1つに対応する。異なる言い方をすれば、第2振幅変調器のアレイ配列は、演算[X]
T[W]=[Y]における重み行列[W]内の重みの配列を反映している。
【0058】
各第1振幅変調器108を第2振幅変調器110の対応するそれぞれのグループに接続するバイナリ導波路ツリーの3dBカプラは、第1(縦の)次元には、第2振幅変調器のそれぞれの行の上方または下方に配列され、第2(水平の)次元には、第2及び第3重みベクトルに関連する振幅変調器の第2列と第3列との間に対称に配列されている。バックエンド光コンバイナの導波路逆ツリー内では、各列内の第2振幅変調器の対の変調光出力が、それぞれの行の間の中ほどに縦方向に配置された第1段の3dBカプラ720によって結合され、結合された出力は第2段の3dBカプラ722へ経路設定され、第2段の3dBカプラ722は、第1次元に沿って受光器124の直前に配列されている。図示する導波路レイアウトでは、各第3光路が3つの実際の導波路交差部またはダミー導波路交差部730、732を含み、これらは2つのカプラ段の各々の手前にある。更に、フォトニック回路800は、動作する位相シフタ及びダミー位相シフタ112、740、742を含むことができ、これらはバックエンド光コンバイナの各カプラ720、722の手前にある。
【0059】
図8Bに、種々の実施形態による、
図8Aのフォトニック回路のサブユニットを示し、これらを複製して、より大きなベクトル及び行列に合わせて回路をスケーリングすることができる。第1レベルでは、第2振幅変調器110の2つの行が、対応する第1振幅変調器108から受光した変調光を異なる列間に分割する、その手前の導波路ツリーと共に、更に第1段のコンバイナと共に、サブユニット850を構成する。4つの出力y
1~y
4に関連する4つの第2(重み)ベクトルに対応する4列の重みを明示的に示しているが、サブユニット850は、ドットで記号的に示すように、追加的出力用の追加的な重みの列を組み込むように直ちに拡張することができる。第2レベルでは、2つのこうしたサブユニット850が、第2コンバイナ段内の2つのサブユニット870にわたって光を結合する導波路ツリー構造と共に、サブユニット852を形成する。4成分のベクトルについては、
図8Aに示すように、回路がこうした第2レベルのサブユニット852のみを含む。フォトニック回路800のアーキテクチャは、追加的な重み用の第2振幅変調器の追加的な行に対応する追加的なサブユニット850を、追加的な第1振幅変調器の対及び追加的なカプラの段と共に、出力コンバイナ内に追加することによって、より高次元のベクトルに拡張することができる。フォトニック回路800を、より多数の第2(重み)ベクトルに拡張するために、追加的な列を、第1振幅変調器と第2振幅変調器との間のスプリッタ内のカプラの追加的な段と共に、各サブユニット850内の第2振幅変調器の行列型配列に追加することができる。ダミー導波路交差部を、必要に応じて第1レベル及び第2レベルに共に追加して、レイアウトをバランスさせることができる。なお、図示するダミー導波路交差部用の記号は、各々が1つ以上のダミー導波路交差部を表す。
【0060】
図3~8Bのフォトニック回路は、全部がベクトルと行列との乗算を実現する。この計算は、波長分割多重(WDM:wavelength division multiplexing)を用いて複数の入力ベクトルを同時に光キャリア信号上に与えて、複数の出力ベクトルのそれぞれを受光器において取り出すことによって、行列@行列の乗算に拡張することができる。
【0061】
図9に、種々の実施形態による、波長分割多重を用いて2つの行列を乗算するためのフォトニック回路の一例を示す。具体的に図示する回路レイアウトは、
図8Aのフォトニック回路800の回路レイアウトに従うが、回路800に対する変更は他の回路レイアウトのいずれにも同等に適用することができることは、通常の当業者にとって明白である。フォトニック回路900では、複数の第1(入力)ベクトルを、それぞれの波長上に符号化し、並列的に重み行列と乗算して、複数の出力ベクトルのそれぞれを生成する。図示する例は、(4つの4成分入力ベクトル及び4つの4成分出力ベクトルによる)(4×4)×(4×4)の行列@行列の演算を示す:
【数18】
追加的な入力ベクトルを追加的な波長で追加することができることは、容易に理解される。
【0062】
フォトニック回路900は、第1振幅変調器108及び受光器124のレベルにおける、回路800に対する変更を含む。具体的には、入力ベクトルの異なる成分に関連する第1振幅変調器は、各々が、デマルチプレクサ(多重分離器)904とマルチプレクサ(多重器)906との間に囲まれた第1光変調器セル902によって置き換えられ、第1光変調器セル902は、全部(4つ)の入力ベクトルのそれぞれの成分に関連する複数の(本例では4つの)第1振幅変調器を含む。種々の重みベクトルに関連する受光器(例えば、光検出器)124は、各々が受光器セル908によって置き換えられ、受光器セル908は、複数の入力ベクトルのそれぞれに関連する複数の受光器124(例えば、複数の光検出器)が後続するデマルチプレクサ910を含む。回路300、400、401,500、600、601、700、702、704のいずれにおいても、第1振幅変調器108及び受光器124のこうした置き換えを同様に行って、これらの回路を波長分割多重による行列@行列の演算に拡張することができる。
【0063】
回路900の詳細に戻れば、光入力で受光した、複数波長の成分を含むコヒーレント光を、前のように、例えばバイナリ導波路ツリーの形態で示すフロントエンド光スプリッタで、種々の光変調器セル902へ経路設定し、光変調器セル902の各々が、入力ベクトルの成分の1つに対応する(例えば、第1セルは第1成分x11、x21、x31、x41に対応する)。各セル902では、デマルチプレクサ904が種々の波長を分離し切り、各波長の光は、それぞれの第1振幅変調器108によって別個に変調されて、異なる入力ベクトルの適用可能な成分を与える。次に、マルチプレクサ906が変調光を再結合し、これにより第2振幅変調器110が全部の波長上に同時に重みを符号化する。第2振幅変調器110に続いて、導波路逆ツリーによって実現されるバックエンド光コンバイナの各々が、(列に沿って配列された)関連する組の第2振幅変調器の全部にわたって変調光を再結合して、結合した光をそれぞれの受光器セル908へ経路設定する。各受光器セル908に達する光は、関連する重みベクトルと、入力ベクトルの各々とのスカラー積を、複数の波長に符号化している。受光器セル908のデマルチプレクサ910は、これらの波長成分を分離して、各々が入力ベクトルのうちの1つと、セル908に関連する重みベクトルとのスカラー積を表す光信号を、個別の受光器124によって測定することを可能にする。
【0064】
説明した種々のコヒーレントな干渉法によるフォトニック回路アーキテクチャは、複数の利点をフォトニック計算にもたらす。例えば、振幅シフタ及び位相シフタを共に含む適切な光変調器セルを用いて、これらのコヒーレントなフォトニック回路は、あらゆる実数値または複素値のベクトル及び行列を実現することができる。更に、種々の実施形態では、あらゆる実数値または複素値の行列を実現するための全パラメータを、単一のステップで設定することができる。これとは対照的に、特異値分解(SVD:singular value decomposition)及び結果的なユニタリ行列のフォトニック実現(例えば、Reck他による”Experimental realization of any discrete unitary operator”、Phys. Rev. Lett. 73, 58-61 (1994)(非特許文献1)、及びClements他による”Optimal design for universal multiport interferometers”、Optica 3, 1460-1465 (2016)(非特許文献2)によって開示された2×2MZIのカスケード接続段を用いるアーキテクチャ)に頼る種々の従来の行列演算用のフォトニック・アーキテクチャは、N次元の行列のフォトニック実現用のパラメータを設定するためにN-1ステップを必要とする。
【0065】
また、SVDベースの回路とは異なり、開示するフォトニック回路アーキテクチャは、種々の実施形態では、当該アーキテクチャが実現する基になる数学演算に対する光学的計算の100%の忠実性を可能にする。一般に、アナログのベクトル及び行列の計算を現実世界のフォトニック回路で実行すると、有損失のフォトニックデバイスのような非理想的な回路構成部品が、性能劣化、及び実際に実現されるベクトル及び行列の要素の値と公称値との間の不一致を生じさせる。しかし、種々の実施形態では、例えば信号の光振幅を光変調器内で調整することによって、あるいは、異なる受光器に至る光路に沿った損失がアンバランスである場合には、光出力信号を増幅するか減衰させる回路構成部品を追加してアンバランスを是正することによって、こうした不一致を補償することができ、このようにして、忠実性の劣化が損失によって誘発される程度まで、忠実性を回復することができる。
【0066】
更に、開示するフォトニック回路アーキテクチャの様々なものにおける挿入損失は、個別のノードの損失と共に指数関数的ではなく直線的に増減し、SVDベースの対応するものについての場合と同様である。従って、開示するフォトニック回路は、特に次元が増加すると、SVDベースのアーキテクチャを凌ぐ可能性がある。比較的低い挿入損失は、次元、及び(変調器のような)能動デバイスの技術の選択における大幅な製造の多用途性を生じさせ、このことは、一般的回路レイアウトを特定の実際用途に適合させるために有益である。更に、種々の実施形態では、フォトニック回路が損失バランス型であり、このことは高度な耐損失性の挙動を可能にすることができる。
【0067】
上述したフォトニック回路の一部は、追加的な、あるいは異なる利益をもたらす。例えば、
図3~8Bを参照して説明したフォトニック回路アーキテクチャでは、幾何学的レイアウトにより光路の損失が本質的に一致し、これにより、光変調器ドライバと関連するデジタル-アナログ変換器(DAC)とを同期させることができる。更に、提案する幾何学的に遅延が一致したレイアウトは、入力を符号化する第1光変調器セルと重みを符号化する第2光変調器セルとの間で低いレイテンシを実現することができる。フロントエンド光スプリッタ及びバックエンド光コンバイナが50:50の光カプラのみを使用する実施形態は、これらのカプラが広帯域かつ小型であり、50:50の分割比は、他の分割比に比べて、設計、製造、及び保守を簡略化する点で有益なことがある。また、一部の実施形態では、回路レイアウトの全体が構造的に同一の複数のサブユニットで構成され、これらのサブユニットをグループ化しコピーして大いに再利用することができ、このことは製造コスト及び複雑性を低減する。
【0068】
フォトニック回路構成部品
上述したフォトニック回路は、振幅変調器、位相シフタ、及び受光器のようなフォトニック回路構成部品を含み、これらのフォトニック回路構成部品は、例えばサイズ及び性能の要求に応じて、並びに特定の用途(例えば、与えられる重みが符号なしであるか符号付きであるか)に応じて、種々の方法で実現することができる。受光器は、個別の光検出器によって、あるいは複数の光検出器を含むコヒーレント受光器として実現することができる。位相シフタ(例えば、112)は、電気光学または熱光学位相シフタとすることができ、これらは、それぞれ電圧または熱の印加によって、信号を搬送する導波路内で屈折率を変調する。熱光学位相シフタの場合、熱は、通常は1つ以上のオーム加熱フィラメントによって加えられ;従って、熱光学的位相シフタは、電気光学位相シフタのように電気信号により制御することができる。振幅変調器は、同様に、例えば、EAM(例えばゲルマニウム・シリコンEAM)、共振型光変調器(例えばリング光変調器)、または量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE:Quantum-Confined Stark Effect)EAMのような電気光学的または熱光学的構成部品によって実現することができる。EAMは導波路の屈折率並びに吸光特性に影響を与えるので、位相シフタをEAMで、例えば直列の3つのEAMで実現して、各個別のEAMによって生じる偶発的な振幅変調を互いに相殺しつつ、所望の位相シフトを与えることもできる。電子制御可能な位相シフタおよび振幅変調器を、そのようなものとして、あるいはより複雑な(例えば、干渉法の)変調器構造の一部として用いることができ、任意で差動駆動方式を用いる。更に、一部の実施形態では、振幅変調器(及び/または位相シフタ)、特に重みを与えるためのものの機能を、光相変化材料(O-PCM:optical phase-change material)によって実現される不揮発性光メモリによって提供することができる。種々のカルコゲニド合金(例えば、ゲルマニウム-アンチモン-テルリウム(GST:germanium-antimony-tellurium)合金)は、その結晶相と非晶(アモルファス)相との間の段階的変化を行うことができ、制御下で熱を加えることによって、結晶相と非晶相との間の相の連続に沿ったあらゆる物理相に設定することができる。異なる物理相は、関連する異なる電気特性及び/または光学特性を有する。従って、O-PCMは、例えば薄膜として導波路の最上部に配置されると、(例えば、あらゆる導波モードのエバネセント場とO-PCM膜とのオーバーラップによる)導波路自体の屈折率及び吸光性のような光学特性の変化を生じさせることができる。O-PCMベースの光メモリは、不揮発性であるが書き換え可能であることが有益である。O-PCMを用いて、固定の光振幅変調及び/または固定の位相シフトを、電子的駆動信号の必要性なしに回路内に直接記憶することができる。光振幅変調器及び関連するドライバ、並びに受光器の具体的実現を、
図10~22Bを参照しながら以下に説明する。
【0069】
図10に、種々の実施形態による、EAM1000としての光振幅変調器(例えば、108、110)の実現を示す。シリコンフォトニクス・プラットフォーム内に、EAMを、例えばSi-Ge構造の形で実現することができる。その代わりに、EAMは、III-V族材料の形でも実現することができ、例えば純粋なIII-V族材料のプラットフォームの形でもハイブリッド・シリコン/III-V族フォトニクス・プラットフォームの形でも実現することができる。
図10は、左側の振幅変調器の記号表現と共に、EAM1000の概略表現を、駆動電圧下でのその電気光学的応答と共に示す。
【0070】
図11に、種々の実施形態による、電気光学リング変調器としての光振幅変調器(例えば、108、110)の実現を示す。変調器1100は、導波路1104に結合された光リング共振器1102で構成される。リング共振器1102の屈折率は、印加された駆動電圧により制御可能であり、このことはリングの共振をシフトさせることを可能にする。
図11は、このリング変調器の電気光学的応答1106も示す。
【0071】
EAM1000及び光リング変調器1102は、共に可変の駆動電圧によって駆動され、この駆動電圧は、ピーク-ピーク振動電圧(Vpp)を直流(DC:direct current)バイアス電圧(VDC)に重畳して成る。バイアス電圧は、振動電圧の極値間の電圧値の範囲全体にわたって、光振幅が駆動電圧と共に単調に変化するように設定することができる。
【0072】
図12に、種々の実施形態による、電子制御振幅変調(AM:amplitude modulator)デバイス1202を含むマッハツェンダー変調器1200としての光振幅変調器の実現を示す。この構成は、光振幅の変動が振動電圧V
ppの一方の端で0に達することを可能にし、このことは一部の用途では望ましいことがある。光振幅の完全な消滅を実現するために、振幅変調デバイス1202をMZI1204の一方の干渉計アーム内に配置し、振幅変調デバイス1202は、例えば
図10及び11を参照して説明したEAMまたは光リング変調器とすることができる。マッハツェンダー変調器の電気光学的応答1206は、MZI1204の分割及び結合カプラの結合比に依存する。従って、MZI1204の分割及び結合カプラの結合比を適切に設定することによって、図示するように、MZI1204の出力で出力される光振幅を、電圧変動の一方の端で0にもっていくことができる。一部の実施形態では、位相シフタ(PS:phase shifter)1208をMZI内に用いて位相を適切に制御する。
【0073】
図13に、種々の実施形態による、電子制御位相変調(PM:phase modulator)デバイス1302を含むマッハツェンダー変調器1300としての光振幅変調器の実現を示す。位相変調デバイス1302は、MZI1304の一方のアーム内に含まれ、電子制御可能なあらゆる位相シフタ(例えば、熱光学または電気光学位相シフタ)とすることができる。PMデバイス1302は駆動電圧V=V
pp+V
DCによって制御され、このことは電圧に依存する位相φ
PM(V)を生じさせる。一部の実施形態では、MZI1302が、静的な位相φ
PSを与えるための追加的な位相シフタ(PS)も含む。MZIカプラが理想的な3dBカプラである際には、マッハツェンダー変調器1300の電気光学的応答1308は次式のようになる:
【数19】
MZIカプラが理想的な3dBカプラでない際には、上記の式はもはや成り立たないが、次式の比例関係は残る:
【数20】
一部のシナリオでは、
【数21】
のように設定することができ、ここにmは整数である。この設定は一般に直交バイアス点として知られている。一部のシナリオでは、
φ
PS=2mπ+π
のように設定することができ、ここにmは整数である。この設定は一般にヌル(null)バイアス点として知られている。
【0074】
図14A~14Cに、種々の実施形態による、
図10~13の電子駆動型光振幅変調器1000、1100、1200、1300と共に用いることができる種々のドライバ1400、1402、1404を示す。各ドライバ1400、1402、1404は、DAC1406、あるいはV
ppを更に増加させるための増幅器が後続するDACを含むことができる。
図14Aはシングルエンド・ドライバ1400を示し、ここではドライバの出力ポートの一方が接地(G)にピン留めされている。
図14Bは差動ドライバ1402を示し、ここでは両出力ポート(S+及びS-)が電圧変動を発生し、この電圧変動は互いの差分である。一部のシナリオでは、
図14Cに示すように、追加的なピンを用いてDCバイアスを変調器1404に加えることができる。
【0075】
図15Aに、種々の実施形態による、差動駆動型光AMデバイスを有するマッハツェンダー変調器1500としての光振幅変調器の実現を示す。差動駆動型光AMデバイス1502は、MZI1504の2つのアーム内に配置されている。こうした変調器を本明細書ではAM-MZM(AM-Mach-Zehnder modulator:振幅変調マッハツェンダー変調器)と称し、あるいは光AMデバイスがEAMである場合には、EAM-MZMと称する。図示するように、AM-MZM1500は、位相を適切に制御するための位相シフタ1506をMZI1504内に含むこともできる。AM-MZMの電気光学的応答1508の直線性は、個別のAMデバイス1000の電気光学的応答1002の直線性よりも良好にすることができる。AM-MZMにおける応答1508は次式のように表現することができる:
【数22】
ここに、α
t及びα
bは、MZI1504のそれぞれ上側アーム及び下側アームにおける振幅応答であり;V
t及びV
bは、AMデバイス1502に印加される差動駆動電圧V
t=V
s++V
DC及びV
b=V
s-+V
DCであり;φ
PSは位相シフタ1506によって与えられる静的な位相シフトである。1つのシナリオでは、一般性を失うことなしに、V
s+及びV
s-が純然たるAC(alternate current:交流)信号であり、V
s+=-V
s-であるものと仮定し、φ
PS=2mπ+πに設定し、ここにmは整数であり、AM-MZMにおける光振幅は次式のようになる:
【数23】
【0076】
この式から、並びに電気光学的応答曲線1508から分かるように、光振幅Eoutは負になり得る。詳述すれば、EAMを光AMデバイスとして使用することにより、αMAX=α(0)かつαMIN=α(Vmax)と仮定することができる。(αMAX、αMINは、それぞれαの最大値、最小値である。)EAMの光変調振幅(OMA:optical modulation amplitude)はΔα=αMAX-αMINである。従って、EAM-MZMの振幅範囲は[-Δα, Δα]である。この範囲は、明らかに正及び負の振幅を共に含む。符号付きの8ビットの数については、例えば、-128を-Δαに、127をΔαに対応付けることができる。
【0077】
図15Bに、種々の実施形態による、符号付き乗算を実現するために使用することができる、差動駆動型光振幅変調デバイスを有する2つのマッハツェンダー変調器1520、1522のカスケード接続を示す。第1のAM-MZMは符号付きの入力xを与えることができ、第2のAM-MZM1522は符号付きの重みwを与えることができ、光信号上に符号化された符号付きの積x・wをカスケード接続の出力に生じさせることができる。単一の光検出器で光を測定するのではなく、光信号を電気信号に変換する際に符号の特徴を保存するために、バランス型の光検出器を有して(
図22A及び22Bを参照して以下に説明する)コヒーレントな検出方式を実現する受光器1524を、AM-MZM1522の出力において用いることができる。受光器の出力電流は、次式のようにxとwとの積に比例する:
I
PD=∝(x
p-x
n)(w
p-w
n)
ここに、下付き文字pとnは差動対を示す。この演算の範囲は、変調器及びDAC(ドライバ)の設計が同一である場合に、Range(I
PD)∝[-Δα
2,Δα
2]である。
【0078】
図16に、差動駆動型光AMデバイス1502を有するマッハツェンダー変調器1500の電気光学的応答を、
図10に示す単一駆動(シングルドライブ)EAMの応答と比較するシミュレーション結果の例を示す。EAM-MZM1500の光場の振幅E
outは、単一駆動EAM1000よりも駆動電圧がずっと直線的であることが分かる。入力電圧と出力振幅との直線的関係は、アナログ計算にとって望ましいことがある。2つの振幅変調器の差動駆動は、MZMの出力の直線性を、単一駆動振幅変調器の直線性に比べて向上させることに役立つ。
【0079】
図17に、種々の実施形態による、差動駆動型光位相変調デバイスを有するマッハツェンダー変調器1700としての光振幅変調器の実現を示す。こうした変調器1700を本明細書ではPM-MZM(PM-Mach-Zehnder modulator:位相変調マッハツェンダー変調器)と称する。PM-MZM1700は、2つのPMデバイス1702をMZI1704の2つのアーム内に含み、更に位相シフタ1706をMZI1704内に含む。PM-MZMの電気光学的応答1708は次式のように表現することができる:
【数24】
ここに、φ
t及びφ
bは、MZI1704のそれぞれ上側アーム及び下側アームにおける位相応答であり;V
t及びV
bは、PMデバイス1702に印加される差動駆動電圧V
t=V
s++V
DC及びV
b=V
s-+V
DCであり;φ
PSは位相シフタ1706によって与えられる静的な位相シフトである。一部のシナリオでは、
【数25】
のように設定することができ、ここにmは整数である。一部のシナリオでは、
φ
PS=2mπ+π
のように設定することができ、ここにmは整数である。このMZM構造は、位相変調を振幅変調に置き換えることに役立つ。MZM内の2つのPMデバイス1702は、MZMの出力の直線性を、MZM内の単一駆動PMの直線性に比べて向上させることに役立つ。
【0080】
図18A及び18Bに、種々の実施形態による、
図15及び17のマッハツェンダー変調器1500、1700と共に用いることができる種々の差動駆動方式を示す。
図18Aは、完全差動方式のドライバを示すのに対し、
図18Bはプッシュプル方式のドライバを示す。一部のシナリオでは、DCバイアス(V
DC)を用いることができる。
【0081】
図19に、種々の実施形態による、光振幅変調器における、アナログ値(A)から駆動電圧(V)への、そして駆動電圧(V)から光出力振幅(O)へのデータフローを概念的に示す。対応関係は次式のように書くことができる:
O(A)=h(V)=h(f(A))
一部のシナリオでは、OとAとの間にO=kA+bなる直線的な対応関係があることが望ましく、ここにk及びbは定数係数である。一部の実施形態では、振幅変調器の電気光学的応答が駆動電圧に対して直線的であり:h(V)=k
2V+b
2である。この場合、VとAとの直線的な対応関係はV=f(A)=k
3A+b
3であり、OとAとの直線的な対応関係を次式のように与える:
O(A)=k
2(k
3A+b
3)+b
2=k
2k
3A+(k
2b
3+b
2)
一部の実施形態では、振幅変調器の電気光学的応答が駆動電圧に対して非直線的である。この場合、OとAとの直接敵な対応関係は、振幅変調器の応答の逆関数を生成するドライバ、DAC、またはDAC+ドライバで実現することができる。f(A)=h
-1(k’A+b)により、次式のようになる:
O(A)=h(V)=h(h
-1(k’A+b’))=k’A+b’
【0082】
図20A~20Cに、種々の実施形態による、それぞれ、アナログ値(A)と駆動電圧(V)との間の、駆動電圧(V)と光振幅(O)との間の、及びアナログ値(A)と光振幅(O)との間の伝達関数を、アナログ値と駆動電圧との対応関係が、駆動電圧と振幅(O)との間の伝達関数の逆関数である場合について(
図20A及び20C中の実線)、及び比較のために、アナログ値(A)と駆動電圧(V)との直線的対応関係の場合(
図20A及び20C中の破線)について示す。図から分かるように、振幅変調器の非直線的な電気光学的応答から生じるアナログ値(A)と光振幅(O)との非直線的対応関係(
図20B)が、アナログ値(A)と駆動電圧(V)との間の逆伝達関数を実現した後には直線的になる。
【0083】
図21に、種々の実施形態による、直接検出方式における光検出器2100としての受光器124の実現を示す。光検出器2100の応答性をηA/Wで表せば、光検出器2100は、次式により光信号を電流に変換する:
【数26】
本実施形態では、検出される光電流I
PDが光信号の強度、即ち光振幅の二乗|E
out|
2に比例する。
【0084】
図22A及び22Bに、種々の実施形態によるコヒーレント受光器2200、2202の実現を示す。コヒーレントな検出方式では、光出力信号(E
sig、E
outに相当する)を局部発信器信号(E
LO)と混合する。一部の実施形態では、光出力信号E
sigと局部発信器信号E
LOとが同じレーザーから来る;こうした検出方式をホモダイン検出と称する。他の実施形態では、光出力信号E
sigと局部発信器信号E
LOとが2つの異なるレーザーから来る;こうした検出方式をヘテロダイン検出と称する。上記の混合光信号を発生するために、光ミキサ2204を各コヒーレント受光器2200、2202内に用いる。一部の実施形態では、位相変調器2212を2×2光ミキサ2204の前段に用いる。
【0085】
2×2光ミキサの伝達関数は次式の通りである:
【数27】
ミキサ2204の上側及び下側出力における混合光信号は次式の通りである;
【数28】
これらの混合光信号は2つの光検出器2206のそれぞれによって測定され、上側及び下側の分岐について次式の光電流を生じさせ:
【数29】
ここに
【数30】
である。上側の光電流と下側の光電流との差は次式の通りである:
【数31】
上記から分かるように、検出される光電流の差はE
sigに比例し、E
sigはE
outである。光検出器2206に、例えばトランスインピーダンス増幅器(TIA:transimpedance amplifier)による増幅段2208、2210を後続させることができる。
図22Aに示すコヒーレント受光器2200では、上側の光電流と下側の光電流との差が、増幅前の光検出器の対において実現される。
図22B中に示すコヒーレント受光器2202では、2つの光検出器2206間の光電流の差を、増幅段において例えば差動TIA2210によって実現する。直接の検出に比べて、コヒーレント検出はより良好な感度を提供し、これにより受光器システム全体をより低い入力電力で動作させることができる。
【0086】
フォトニック計算方法
図23は、種々の実施形態によるスカラー、ベクトル、及び行列の乗算を光学的に実行する方法2300の例のフローチャートである。この方法2300では、コヒーレント光を均一なパワー結合比で均等に分割して、均一な光パワーの複数の光キャリア信号にし(2302)、次に複数の第1光変調器セルへ経路設定する(2304)。一部の実施形態では、光入力から複数の第1光変調器セルまでの光路が、幾何学的に遅延が一致している。各第1光変調器セルは、1つ以上の第1ベクトルの対応する成分に関連し(例えば、WDM方式を用いて複数の第1ベクトルのベクトル成分を与える)、各第1光変調器セルを用いて、対応する光キャリア信号を、当該ベクトル成分により変調する(2306)。次に、結果的な第1変調光信号を、第1光変調器セルから対応する第2光変調器セルへ、一部の実施形態では幾何学的に遅延が一致した第2光路に沿って経路設定する(2308)。第2光変調器セルは、1つ以上の第2ベクトル(集合的に行列を形成する複数の第2ベクトル)のそれぞれに関連する1組以上の第2光変調器セルを含み、各組内の第2光変調器セルを用いて、第1変調光信号を、関連する第2ベクトルの対応する成分により変調して、第2変調光信号を発生する(2310)。複数の第2ベクトルの場合、第1変調光信号が第1光変調器セルから第2光変調器セルへ経路設定される際に、第1変調光信号を、それぞれの第2ベクトルに関連する第2光変調器の異なる組どうしの間で均等に分割する。1つ以上の第2ベクトル毎に、当該第2ベクトルの全部のベクトル成分にわたって、関連する第2変調(または2回変調された)光信号を均等なパワー結合比で結合して、関連する光出力信号にする(2312)。次に、これら1つ以上の光出力信号を、受光器によって電子出力信号に変換し、各電子出力信号は、第1ベクトルと、第2ベクトルのうちの1つとのスカラー積を表す。一部の実施形態では、第2光変調器セルの出力から受光器までの光路の全部が、幾何学的に遅延が一致している。
【0087】
フォトニック-電子計算システム
機能する計算システムを形成するために、上述したフォトニック回路を、例えば光変調器セルの光振幅変調器及び位相シフタに関連するドライバに制御信号を供給し、受光器(例えば、光検出器)の出力を処理する電子回路と共に用いる。例えば、開示するフォトニック回路を用いて人工ニューラルネットワークを実現することができ、各ネットワーク層内のニューロンの重みは、第2光変調器セルによって実現し、第2光変調器セルは第1変調光信号をニューロン入力として取得する。受光器の出力は、ニューラルネットワーク層のニューロン出力に相当し、これを処理してニューラルネットワーク内の次の層用のニューロン入力を計算する。一部の実施形態では、こうした次の層を別個のフォトニック回路として実現する。他の実施形態では、ニューラルネットワークの複数の層を、単一のフォトニック回路を用いて、各サイクル中に、それぞれのネットワーク層のニューロン入力及びニューロンの重みを、光振幅変調器及び位相シフタに適用することによって、複数の計算サイクルの形で順次に実現し、ニューロン入力及びニューロンの重みは電子回路のメモリに記憶することができる。上記電子回路は、(例えば、非線形の活性化層、プーリング層、等を実現する)ニューラルネットワーク機能を提供することもでき、ニューラルネットワークへの入力の前処理及びニューラルネットワークが生成する出力の後処理を実行することもできる。一般に、上記電子回路は、アナログ回路、あるいはアナログ領域とデジタル領域との間の変換を行うADC及びDACを含む混合信号(アナログ-デジタル)回路とすることができる。デジタル回路の1つの利点は、混合精度演算をサポートする能力にある。
【0088】
図24A及び24Bは、種々の実施形態によるフォトニック-電子混成の計算システム2400を示す、それぞれ概略側面図及び概略上面図である。
図24Aに示すように、システム2300は、例えばシリコン上に実装されるフォトニック集積回路(PIC:photonic integrated circuit)2402及び電子集積回路(EIC:electronic integrated circuit)2404を含み、PIC2402は、ベクトルと行列との乗算を実行する(例えば、線形ニューラルネットワーク層を実現する)ための上述したフォトニック回路(例えば、300、400、401、500、600、601、700、702、704、800。900)のうちの1つ以上を含み、EIC2404は、PIC2402とインタフェース接続されて、PIC2404の機能を補完する。EIC2404は、アナログ及び/またはデジタル回路を含むことができ、ハードワイヤード(配線接続)、かつ特定用途向け(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit))またはプログラマブル(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array))にすることができる。システム2400は、これらに限定されないが、分散帰還型(DFB:distributed feedback)レーザー、または例えばIII-V族化合物半導体材料内に実装される他のレーザーダイオードのような1つ以上のレーザーを有する光エンジン2406を更に含んで、コヒーレント光を発生することができる。同じ波長で発光する複数のレーザーを用いて、複数のフォトニック回路用の光を1つ以上の波長で発生することができる。その代わりに、あるいはそれに加えて、光エンジン2406は、異なる波長で発光する複数のレーザー、並びに、例えばアレイ導波路回折格子として実現される波長マルチプレクサを含んで、異なる波長を組み合わせて単一の多重化された光キャリア信号にすることができる。
【0089】
PIC2402、EIC2404、及び光エンジン2406は、光インタポーザ2408を介して互いにインタフェース接続することができる。インタポーザ2408は、例えば、PIC2402上の光検出器と、光検出器のアナログ電子出力信号を処理するEIC2404内の関連する処理回路との電気接続部、並びにPIC2402内の変調器(即ち、振幅変調器及び位相シフタ)と、EIC2404内の関連するドライバ回路との電気接続部を含むことができる。それに加えて、インタポーザ2408は、EIC2404と光エンジン2406との電気接続部を含んで、例えば、EIC2404が光エンジン2406の動作を制御して監視することができる。PIC2404とEIC2404との間の電子インタフェースの電力消費量は、一部の実施形態では、光領域とデジタル電子領域との間で変換されるデータの1ビット当たり3pJ(ピコジュール)である。
【0090】
インタポーザ2408は、更に、当該インタポーザ2408内の導波路構造を通して光エンジン2406とPIC2402との間の光通信を促進することができ、インタポーザ2408は、(例えば、多重化された)レーザー出力を、PIC2606内の導波路(例えば、フォトニック・クロスバーの光スプリッタまで通じるキャリア光導波路)内に結合する。結合は、PIC2402及び/またはインタポーザ2408内の例えばエッジカプラ、逆テーパーカプラ、またはグレーティングカプラ(回折格子結合器)を用いて実現することができる。図示する実施形態では、PIC2402とEIC2404とが隣り合わせで、光インタポーザ2408にフリップチップ接続されている。しかし、EIC2404をPICに直接接続することもでき、このことは、EIC2404からPIC2402内の電気光学デバイスまでの電気接続部を大幅に低減するという利益をもたらすことができる。
【0091】
図24Bは、種々の実施形態によるEIC2404の構成部品についての寄り詳細を、概略ブロック形式の上面図で提供する。図示するEIC2404は混合信号回路であり、ADC及びDACを含んで電子信号をアナログ領域とデジタル領域との間で変換する。ADCは、PIC2402の光検出器から受信した電子出力信号を増幅するTIAの出力に設けられる。ニューラルネットワークの用途では、電子出力信号が、線形ネットワーク層が発生する活性化を構成し;TIA及びADCをまとめて2410のラベルを付ける。DACは、PIC2402の光変調器用の駆動信号を提供するドライバの入力に設けられ;ドライバとDACをまとめて2412のラベルを付ける。
【0092】
種々のニューラルネットワークの用途では、駆動信号が、フォトニック回路内の少なくとも第1光変調器セルに供給されて、ニューロン入力を電子形式で光線形ニューラルネットワーク層に提供する。入力信号のドライバは、例えば50GHzの高周波数で動作して、新たなニューロン入力を所定の変調器へ20ps毎に供給する。一部の実施形態では、駆動信号を更に第2光変調器セルに供給し、第2光変調器セルは、ニューロンの重みを、一般にずっと低い速度で、あるいは準静的に与える。一旦、入力の多数の異なる集合が処理されると、例えば推論用途については入力の100クロックサイクル毎に重みを更新して、他のニューラルネットワーク層を実現することができる。このようにして、単一のフォトニック回路(例えば、単一のクロスバー)が複数のニューラルネットワーク層を順次に実現することができる。例えば、フォトニック回路の光出力信号の形に符号化された、1つの層のニューロン出力を、電子領域への変換後に処理して、次の層用のニューロン入力を計算することができ、次に、このニューロン入力を同じフォトニック回路へフィードバックして、このフォトニック回路は、今度は新たなニューロンの重みの組に基づいて動作する。その代わりに、1つのフォトニック回路からの処理されたニューロン出力を、ニューロン入力として、PIC2402上に実装される他の物理的なフォトニック回路に供給することができる。任意で、第2フォトニック回路の、あるいは任意の追加的なフォトニック回路の処理された出力信号を、最終的に第1フォトニック回路内へフィードバックすることができる。フォトニック回路が回帰型(リカレント)ニューラルネットワーク層を実現することもでき、この場合、適用されるニューロンの重みは、回帰層のニューロン出力が入力としてこの層内へフィードバックされる際に、同じままである。
【0093】
図24Bを新たに参照すれば、EIC2404は、オンチップメモリ2414、例えばスタティック・ランダムアクセスメモリ(SRAM:static random access memory)または磁気抵抗RAM(MRAM:magnetoresistive RAM)、抵抗変化型メモリ(ReRAM:resistive RAM)、NOR(否定論理和)フラッシュメモリ、相変化メモリ(PCM:phase-change memory)、等のような組込み(埋込み、内蔵)不揮発性メモリを更に含むことができる。メモリ2414は、例えば、重み付けセル内の変調器に適用される重み、及び/または先行する層の出力から計算された計算(ニューラルネットワーク)層への(ニューロン)入力のような中間的データを記憶することができる。その代わりに、重みは、PIC2402内にO-PCM(optical PCM:光相変化メモリ)を用いて直接記憶することができる。
【0094】
EIC2404は、特に非乗累算(non-MAC)演算を含む、フォトニック回路では実現できないか、EICほど効率的に実現できない種々の演算を実行するように構成されている。EIC2404は、例えば、アナログまたはデジタル非線形活性化関数を、光学的に生成された線形ニューロン出力に適用することができるが、特定の活性化関数はPIC2402内で全光学的に実現することができる。他の例として、EIC2404は、単一命令複数データ(SIMD:single instruction multiple data)プロセッサ2416を含むことができ、SIMDプロセッサ2416は、例えばニューラルネットワークの光学的に実現される畳み込み層間におけるプーリング演算を効率的に実行することができる。一部の実施形態では、全結合ニューラルネットワーク層をEIC2404内で電子的に実現することも有益である。例えば、RESNET50モデルを用いた画像認識用途向けに構成されたフォトニック-電子ニューロモルフィック(神経形態学的)計算システム2400では、PIC2402が畳み込みニューラルネットワーク層を実現することができるのに対し、EIC2404は、このモデルのプーリング層及び全結合層を、PIC2402で実現可能であるよりも高いビット精度で処理することができる。
【0095】
特定のニューラルネットワーク演算は別として、EIC2404は、ニューラルネットワーク(または他の計算)モデル及び/またはその入力及び出力の前処理及び後処理を実行することもできる。一部の実施形態では、ニューラルネットワークモデル(または行列によって表現される他のモデル)を、不必要なネットワーク・パラメータ(または行列要素)を0に変換することによって精度を落とさずにスパースにすることができる。それに加えて、スパースな入力データは、オンチップメモリ2414により効率的に記憶するために前処理することができる。画像入力データを前処理して、例えば、ガウシアン(Gaussian)フィルタ、ウェーブレット(wavelet)フィルタ、平均化フィルタ、またはメジアン(median)フィルタ、ファジー・ヒストグラム双曲化、バイアス補正、または画像処理の分野において既知の他の技法のいずれかを用いて、不所望なひずみを抑制して、あるいは関連する特徴を強調して、ニューラルネットワークへのより良好な入力特徴を生成することができる。一部の実施形態では、EIC2404が、特定の(例えば、画像処理)演算を実行するためのグラフィックス・プロセシング・ユニット(GPU:graphics processing unit)を含む。デジタル信号を処理することは、混合精度の計算を有益にサポート(支援)して、フォトニック演算よりも高いビット精度(例えば、FP64(浮動小数点64ビット)、FP32(浮動小数点32ビット)、FP16(浮動小数点16ビット)、bfloat16、INT8(整数8ビット)、INTsparse、及びINT4の演算)を実現することができる。種々の実施形態では、PIC2402が、4ビットまたは8ビットの演算(または4ビットと8ビットを組み合わせた混合精度の演算)を実行することができる。
【0096】
種々の実施形態では、計算システム2400が、(例えば、オンチップメモリ2414に、あるいはPIC2404内のO-PCMに直接記憶されている)事前計算されたニューロンの重みによる学習ニューラルネットワークモデルを、特定の推論用途向けに実現する。ニューロンの重みを決定するための機械学習アルゴリズム(例えば、傾斜降下による誤差の逆伝播(バックプロパゲーション))を、例えば従来の計算ハードウェア(例えば、汎用プロセッサまたはGPU)を用いて実現して実行することができる。その代わりに、ニューロモルフィック計算システム2400を、ニューロン入力及び重みの調整値により用いて、ニューラルネットワークモデルをその場で学習させることができ、ニューロン入力は、例えば、PIC2402によって順伝播(フォワードプロパゲーション)段階で光学的に処理されており、重みの調整値は、EIC2404(この目的用に、アルゴリズムの逆伝播段階を実現するように構成されている)によって直接、あるいはEIC2404と通信する追加的な計算デバイスによって電子的に計算したニューロン出力に基づく。
【0097】
計算システム2400は、もちろん、ニューラルネットワークの実現以外の多数の用途において使用することができる。更に、説明した計算システム2400は、本明細書中に説明するフォトニック回路を電子回路と統合する非限定的な方法に過ぎず、通常の当業者は他の統合方法を想到することができる。
【0098】
以下に付番した例は、例示的な実施形態を提供する。
【0099】
例1はフォトニック回路であり、このフォトニック回路は:フロントエンド光スプリッタと;複数の第1光変調器セルと;複数組の第2光変調器セルと;複数の導波路構造と;複数のバックエンド光コンバイナとを具え、上記フロントエンド光スプリッタは、キャリア光を均一なパワー結合比で複数の光キャリア信号に分割するように構成され、上記複数の第1光変調器セルは、これら複数の光キャリア信号を、第1ベクトルの成分により変調して、複数の第1変調光信号を発生するように構成され、上記複数組の第2光変調器セルは、各組が複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトルに関連し、複数の第2光変調器セルを具え、これらの第2光変調器セルは、上記複数の第1変調光信号を上記対応する第2ベクトルの成分により変調して、上記対応する第2ベクトルに関連する複数の第2変調光信号を発生するように構成され、上記複数の導波路構造は、各々が、上記複数の第1変調光信号のうちの対応する第1変調光信号を、上記複数組の第2光変調器セルのうちの対応する第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成され、上記複数のバックエンド光コンバイナは、各々が、上記複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトル、及び上記対応する第2光変調器セルの組に関連し、上記対応する第2ベクトルに関連する上記複数の第2変調光信号どうしを均一なパワー結合比でコヒーレントに結合して、上記第1ベクトルと上記第2ベクトルとのスカラー積を表す光出力信号にするように構成されている。
【0100】
例2は、例1のフォトニック回路であり、ここでは、上記フロントエンド光スプリッタが3dBカプラの対称なカスケード接続を具えている。
【0101】
例3は、例1または例2のフォトニック回路であり、ここでは上記複数のバックエンド光コンバイナの各々が3dBカプラの対称なカスケード接続を具えている。
【0102】
例4は、例1~3のいずれかのフォトニック回路であり、ここでは、上記複数のバックエンド光コンバイナと、上記第1変調光信号を上記第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成された上記複数の導波路構造とが導波路交差部を形成し、上記フォトニック回路が、更にダミー導波路交差部を上記バックエンド光コンバイナ内に具え、上記第2光変調器セルの組毎に、上記導波路交差部と上記ダミー導波路交差部との合計数が、当該組の複数の第2光変調器セルから、当該組に関連する上記バックエンド光コンバイナの出力までの光路の全部にわたってバランスしている。
【0103】
例5は、例4のフォトニック回路であり、上記第1変調光信号を上記第2光変調セルの組へ経路設定するように構成された上記導波路構造内にダミー導波路交差部を具え、ここでは上記導波路交差部と上記ダミー導波路交差部との合計数が、更に、全部の上記バックエンド光コンバイナにわたってバランスしている。
【0104】
例6は、例4または例5のフォトニック回路であり、ここでは、上記ダミー導波路交差部が空間的に一群になっている。
【0105】
例7は、例1~6のいずれかのフォトニック回路であり、ここでは、上記複数の導波路構造の各々が、1つの導波路に沿って配列された一連の光カプラを具え、これらの光カプラは、対応する上記第1変調光信号のパワーを部分毎に、上記複数組の第2光変調器セルのうちの対応する第2光変調セルの組に順次に結合する。
【0106】
例8は、例7のフォトニック回路であり、ここでは、上記一連の光カプラのパワー結合比が、上記第2光変調器セルの組の全部にわたって光入力パワーをバランスさせるように設定されている。
【0107】
例9は、例7または例8のフォトニック回路であり、ここでは、上記複数組の第2光変調器セルが、行及び列の長方形アレイの形に配列され、上記第1変調光信号を上記第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成された上記導波路構造の導波路が、上記行に沿って配列され、上記複数組の各組の上記第2光変調器セルが、上記列のうちの対応する列に沿って配列されている。
【0108】
例10は、例9のフォトニック回路であり、ここでは、上記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、上記複数の第2変調光信号どうしを、上記対応する列の最下部でコヒーレントに結合するように構成され、この最下部は、上記バックエンド光コンバイナと、上記第1変調光信号を経路設定するように構成された上記導波路構造との導波路交差部の全部に後続する。
【0109】
例11は、例9のフォトニック回路であり、ここでは、上記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、当該バックエンド光コンバイナと上記導波路構造との導波路交差部の手前で、上記第1変調光信号を経路設定するように構成された上記導波路構造のうちの対応する導波路構造間において、上記第2変調光信号の対を結合するように構成されている。
【0110】
例12は、例1~11のいずれかのフォトニック回路であり、ここでは、上記第2光変調器セルが光振幅変調器を具え、これらの光振幅変調器は、集合的に任意の正の実数値の行列を実現するように構成可能である。
【0111】
例13は、例12のフォトニック回路であり、ここでは、上記第2変調器セルが光位相変調器を更に具え、これらの光位相変調器は、集合的に、上記光振幅変調器と合同で、任意の実数値または複素値の行列を実現するように構成可能である。
【0112】
例14は、例1~13のいずれかのフォトニック回路であり、ここでは、上記複数のバックエンド光コンバイナの出力における合計の能動的挿入損失が、上記第1ベクトル及び上記第2ベクトルのサイズと共に直線的に大小変化する。
【0113】
例15は、例1~14のいずれかのフォトニック回路であり、上記複数のバックエンド光コンバイナの出力に、光増幅器または光減衰器を更に具え、これらの光増幅器または光減衰器は、集合的に、上記フォトニック回路の忠実性を100%まで回復するように構成可能である。
【0114】
例16は、例1~15のいずれかのフォトニック回路であり、上記複数のバックエンド光コンバイナのそれぞれの出力に、複数の受光器のそれぞれを更に具え、これら複数の受光器のそれぞれが、上記光出力信号をそれぞれの電気出力信号に変換するように構成されている。
【0115】
例17は、例16のフォトニック回路であり、ここでは、上記第1光変調器セルが、複数の波長の光を複数の第1ベクトルにより変調するように構成された波長分割多重光変調器セルであり;上記複数の受光器が波長分割多重受光器であり、これらの波長分割多重受光器の各々が複数の電子出力信号を発生するように構成され、これら複数の電子出力信号は、上記複数の第1ベクトルと、当該受光器に関連する上記第2ベクトルとのスカラー積を表す。
【0116】
例18は、例17のフォトニック回路であり、ここでは:上記波長分割多重第1光変調器セルの各々が、デマルチプレクサとマルチプレクサとの間に囲まれた、上記複数の第1ベクトルに対応する第1変調器を具え;上記波長分割多重受光器の各々がデマルチプレクサを具え、このデマルチプレクサに複数の受光器が後続し、これらの受光器は、上記複数の第1ベクトルのそれぞれとの積を表す電子出力信号を測定する。
【0117】
例19は、例1~3または例12~18のいずれかのフォトニック回路であり、上記複数のバックエンド光コンバイナのそれぞれの出力に、複数の受光器のそれぞれを更に具え、これら複数の受光器のそれぞれが、上記光出力信号をそれぞれの電子出力信号に変換するように構成され、ここでは:上記フロントエンド光スプリッタが、上記複数の光キャリア信号を、光入力から上記第1光変調器セルまで、第1の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って経路設定するように構成され;上記複数の導波路構造が、上記第1変調光信号を、上記第1光変調器セルから上記第2光変調器セルまで、第2の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って経路設定するように構成され;上記複数のバックエンド光コンバイナが、上記第2変調光信号を上記受光器へ、第3の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って経路設定するように構成されている。
【0118】
例20は、例19のフォトニック回路であり、ここでは、上記複数の導波路構造が対称な導波路ツリーとして構成され、この導波路ツリーは複数のカプラを有し、これらのカプラは、当該カプラの接合部において均一なパワー結合比を有する。
【0119】
例21は、例20のフォトニック回路であり、ここでは:上記第1光変調器セルが第1次元に沿って直線的に配列され;上記第2光変調器セルの全組の上記第2光変調器セルが、上記第1次元に沿って直線的に、上記第1光変調器セルと平行に、当該第2光変調器セルに関連する上記第1変調光信号に基づく順序に配列されて空間的なグループを形成し、各グループが、上記複数の第1変調光信号のうちの1つに関連する。
【0120】
例22は、例21のフォトニック回路であり、ここでは:上記複数の受光器が、上記第1次元に沿って直線的に、上記第1光変調器セル、及び上記第2光変調器セルの全組の上記第2光変調器セルと平行に配列され;各々の上記グループ内の上記第2光変調器セルが、これらの第2光変調器セルに関連する上記複数の受光器と同じ順序に配列され、これにより、上記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、各々の上記グループ内の上記第2光変調器セルのうち、上記直線的に配列された複数の受光器のうちの関連する受光器の位置に対応する位置にある上記第2光変調器セルからの光を結合する。
【0121】
例23は、例22のフォトニック回路であり、ここでは:上記複数の受光器が、上記第1次元に直交する第2次元に沿って直線的に配列され;上記第1次元に沿った上記グループのうち前半の各グループ内の上記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する上記複数の受光器と同じ順序に配列され、上記第1次元に沿った上記グループのうち後半の各グループ内の上記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する上記複数の受光器とは逆の順序に配列され、これにより、上記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、上記前半のグループと上記後半のグループとの間で互いに鏡像の関係の位置にある上記第2光変調器からの光を結合する。
【0122】
例24は、例21のフォトニック回路であり、ここでは:上記複数の受光器が、上記第1次元に直交する第2次元に沿って配列され;上記グループ内の上記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する上記複数の受光器と同じ順序に配列されたグループと、上記グループ内の上記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する上記複数の受光器とは逆の順序に配列されたグループとが交互し、これにより、上記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、上記第1次元に沿って隣接する上記グループ間で互いに鏡像の関係の位置にある上記第2光変調器からの光を結合する。
【0123】
例25は、例20のフォトニック回路であり、ここでは:上記第1光変調器セルが第1次元に沿って直線的に配列され;上記複数組の各組内の上記第2光変調器セルが、上記第1次元に沿って直線的に、上記第1光変調器セルと平行に配列され;上記複数組は、上記第1次元に直交する第2次元に沿って直線的に配列されている。
【0124】
例26は、例1~25のいずれかのフォトニック回路であり、上記複数のバックエンド光コンバイナのそれぞれの出力に、複数の受光器のそれぞれを更に具え、これら複数の受光器は、それぞれの上記光出力信号を、それぞれの電子出力信号に変換するように構成され、上記受光器の各々が光検出器を具えている。
【0125】
例27は、例1~25のいずれかのフォトニック回路であり、上記複数のバックエンド光コンバイナのそれぞれの出力に、複数の受光器のそれぞれを更に具え、これら複数の受光器は、それぞれの上記光出力信号を、それぞれの電子出力信号に変換するように構成され、上記受光器が、1つ以上のコヒーレント受光器と、一対の光検出器と、光増幅器とを具え、上記コヒーレント受光器の各々は光ミキサを含み、この光ミキサは、それぞれの上記光出力信号を局部発信器信号と混合するように構成され、上記一対の光検出器は、上記光ミキサの光出力の強度を測定し、上記光増幅器は、上記一対の光検出器の電子出力信号どうしを結合する。
【0126】
例28は、例1~27のいずれかのフォトニック回路であり、ここでは、上記バックエンド光コンバイナの各々が、光導波路逆ツリーの接合部に形成された3dBカプラのカスケード接続を具え、これらの接合部の各々の手前に、当該接合部において結合された一対の導波路の各導波路内に位相シフタを具えている。
【0127】
例29は、例28のフォトニック回路であり、ここでは、上記接合部のうちの1つにおいて結合された上記一対の導波路の各対において、一方の導波路内の上記位相シフタが被制御の位相シフタであり、他方の導波路内の上記位相シフタがダミー位相シフタである。
【0128】
例30は、例1~29のいずれかのフォトニック回路であり、ここでは、上記第1光変調器セル及び上記第2光変調器セルの各々が光振幅変調器を具えている。
【0129】
例31は、例30のフォトニック回路であり、ここでは、上記光振幅変調器が電子駆動型光デバイスを具え、当該電子駆動型光デバイスの出力の光振幅が、特定範囲の電圧値にわたる可変の駆動信号電圧の電圧値に単調依存する。
【0130】
例32は、例31のフォトニック回路であり、ここでは、上記電子駆動型光デバイスが、電界吸収変調器または電気光学リング変調器の少なくとも一方を具えている。
【0131】
例33は、例31または例32のフォトニック回路であり、ここでは、上記光振幅変調器の少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を更に具え、このマッハツェンダー干渉計は、上記電子駆動型光デバイスのうちの1つを、当該マッハツェンダー干渉計の干渉計アームのうちの1つの干渉計アーム内に含み、このマッハツェンダー干渉計の分割カプラ及び結合カプラの結合比が、当該マッハツェンダー干渉計の出力における光振幅が上記駆動信号電圧の電圧値の範囲の一端において0であるように設定されている。
【0132】
例34は、例31のフォトニック回路であり、ここでは、上記光振幅変調器の少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を更に具え、このマッハツェンダー干渉計は、上記電子駆動型光デバイスのうちの2つのデバイスのそれぞれを、当該マッハツェンダー干渉計の2つの干渉計アームのそれぞれの干渉計アーム内に含み、上記2つの光デバイスが差動的に駆動される。
【0133】
例35は、例30のフォトニック回路であり、ここでは、上記光振幅変調器のうちの少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を具え、このマッハツェンダー干渉計は、電子駆動型光位相シフタを、当該マッハツェンダー干渉計の干渉計アームのうちの1つの干渉計アーム内に含み、上記光位相シフタに供給される可変駆動信号電圧の電圧値の特定範囲全体にわたって、上記マッハツェンダー干渉計の出力における光振幅が、上記可変駆動信号電圧の電圧値に単調依存する。
【0134】
例36は、例30のフォトニック回路であり、ここでは、上記光振幅変調器のうちの少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を具え、このマッハツェンダー干渉計は、2つの電子駆動型光位相シフタのそれぞれを、当該マッハツェンダー干渉計の2つの干渉計アームのそれぞれの干渉計アーム内に含み、これら2つの電子駆動型光位相シフタは差動的に駆動され、上記光位相シフタに供給される可変差動駆動信号電圧の電圧値の特定範囲全体にわたって、上記マッハツェンダー干渉計の出力における光振幅が、上記可変差動駆動信号電圧の電圧値に単調依存する。
【0135】
例37は、例30のフォトニック回路であり、ここでは、上記光振幅変調器が、アナログ入力から生成される駆動信号電圧によって電子的に駆動され、上記アナログ入力を上記駆動信号電圧に対応付ける伝達関数が、上記光振幅変調器の上記駆動信号電圧から、上記光振幅変調器が出力する光振幅への伝達関数に基づいて設定され、これにより、上記光振幅変調器の上記アナログ入力から、上記光振幅変調器が出力する光振幅への全体の伝達関数は実質的に線形である。
【0136】
例38は方法であり、この方法は:光入力においてコヒーレント光を受光するステップと;このコヒーレント光を、均一な光結合比で複数の光キャリア信号に分割するステップと;この光キャリア信号を複数の第1光変調器セルへ経路設定するステップと;これらの第1光変調器セルを用いて、上記光キャリア信号を第1ベクトルの成分により変調して、複数の第1変調光信号を発生するステップと;これらの第1変調光信号の各々を、均一なパワー結合比で、各組が複数の第2ベクトルのそれぞれに関連する複数組の第2光変調器セル間に分割するステップと;上記第1変調光信号の各々を、上記複数組内の上記第2光変調器セルのうち、当該第1変調光信号に関連する上記第1ベクトルの成分に対応する上記第2ベクトルの成分に関連する第2光変調器セルへ経路設定するステップと;上記複数組の各組内の上記第2光変調器セルを用いて、上記第1変調光信号を、当該組に関連する上記第2ベクトルの対応する成分により変調して、第2変調光信号を発生するステップと;上記第2ベクトルの各々に関連する上記第2変調光信号どうしを等しいパワー結合比でコヒーレントに結合して、上記第2ベクトル及び上記経路設定に関連する光出力信号にするステップと;上記複数の第2ベクトルのそれぞれに関連する上記光出力信号を、それぞれの電子出力信号に変換するステップとを含む。
【0137】
例39は、例38の方法であり、ここでは、上記光キャリア信号を、第1の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って、上記第1光変調器セルへ経路設定し;上記第1変調光信号を、第2の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って上記第2変調器セルへ経路設定し;上記第2変調光信号を、第3の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って受光器へ経路設定し、これらの受光器は上記光出力信号を電子出力信号に変換する。
【0138】
例40は、例38または例39の方法であり、ここでは:上記第1光変調器セルの各々を用いて、上記光キャリア信号を複数の波長の光キャリア信号に分離し、これらの複数の波長の光キャリア信号を、対応する複数の第1振幅変調器で複数の第1ベクトルにより変調し、変調された複数の波長の光キャリア信号を多重化して上記第1変調光信号にし;上記複数の第2ベクトルのそれぞれに関連する上記光出力信号を、それぞれの上記電子出力信号に変換するステップが、上記光出力信号を、複数の波長の光出力信号に分離するサブステップと、これらの複数の波長の光出力信号を、別個に、上記電子出力信号に変換するサブステップとを含む。
【0139】
例41は、例38~40のいずれかの方法であり、上記光入力から、上記光出力信号を上記電子出力信号に変換する受光器までの光路全部にわたって、光学的損失をバランスさせるステップを更に含む。
【0140】
本発明の主題を、特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、本発明の主題のより広い範囲から逸脱することなしに、種々の修正及び変更を加えることができることは自明である。従って、本明細書及び図面は、限定的意味ではなく例示的意味に考えるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントエンド光スプリッタと、
複数の第1光変調器セルと、
複数組の第2光変調器セルと、
複数の導波路構造と、
複数のバックエンド光コンバイナとを具えたフォトニック回路であって、
前記フロントエンド光スプリッタは、キャリア光を均一なパワー結合比で複数の光キャリア信号に分割するように構成され、
前記複数の第1光変調器セルは、前記複数の光キャリア信号を、第1ベクトルの成分により変調して、複数の第1変調光信号を発生するように構成され、
前記複数組の第2光変調器セルは、各組が複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトルに関連し、複数の第2光変調器セルを具え、該複数の第2光変調器セルは、前記複数の第1変調光信号を前記対応する第2ベクトルの成分により変調して、前記対応する第2ベクトルに関連する複数の第2変調光信号を発生するように構成され、
前記複数の導波路構造は、各々が、前記複数の第1変調光信号のうちの対応する第1変調光信号を、前記複数組の第2光変調器セルのうちの対応する第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成され、
前記複数のバックエンド光コンバイナは、各々が、前記複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトル、及び前記対応する第2光変調器セルの組に関連し、前記対応する第2ベクトルに関連する前記複数の第2変調光信号どうしを均一なパワー結合比でコヒーレントに結合して、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとのスカラー積を表す光出力信号にするように構成され
、
前記フロントエンド光スプリッタ、または前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、3dBカプラの対称なカスケード接続を具えているフォトニック回路。
【請求項2】
前記複数のバックエンド光コンバイナと、前記第1変調光信号を前記第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成された前記複数の導波路構造とが、導波路交差部を形成し、前記フォトニック回路が、更にダミー導波路交差部を前記バックエンド光コンバイナ内に具え、前記第2光変調器セルの組毎に、前記導波路交差部と前記ダミー導波路交差部との合計数が、当該組の複数の第2光変調器セルから、当該組に関連する前記バックエンド光コンバイナの出力までの光路の全部にわたってバランスしている、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項3】
前記第1変調光信号を前記第2光変調セルの組へ経路設定するように構成された前記導波路構造内にダミー導波路交差部を具え、前記導波路交差部と前記ダミー導波路交差部との合計数が、更に、全部の前記バックエンド光コンバイナにわたってバランスしている、請求項
2に記載のフォトニック回路。
【請求項4】
前記ダミー導波路交差部が空間的に一群になっている、請求項
2に記載のフォトニック回路。
【請求項5】
フロントエンド光スプリッタと、
複数の第1光変調器セルと、
複数組の第2光変調器セルと、
複数の導波路構造と、
複数のバックエンド光コンバイナとを具えたフォトニック回路であって、
前記フロントエンド光スプリッタは、キャリア光を均一なパワー結合比で複数の光キャリア信号に分割するように構成され、
前記複数の第1光変調器セルは、前記複数の光キャリア信号を、第1ベクトルの成分により変調して、複数の第1変調光信号を発生するように構成され、
前記複数組の第2光変調器セルは、各組が複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトルに関連し、複数の第2光変調器セルを具え、該複数の第2光変調器セルは、前記複数の第1変調光信号を前記対応する第2ベクトルの成分により変調して、前記対応する第2ベクトルに関連する複数の第2変調光信号を発生するように構成され、
前記複数の導波路構造は、各々が、前記複数の第1変調光信号のうちの対応する第1変調光信号を、前記複数組の第2光変調器セルのうちの対応する第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成され、
前記複数のバックエンド光コンバイナは、各々が、前記複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトル、及び前記対応する第2光変調器セルの組に関連し、前記対応する第2ベクトルに関連する前記複数の第2変調光信号どうしを均一なパワー結合比でコヒーレントに結合して、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとのスカラー積を表す光出力信号にするように構成され、
前記複数の導波路構造の各々が、1つの導波路に沿って配列された一連の光カプラを具え、該光カプラは、対応する前記第1変調光信号のパワーを部分毎に、前記複数組の第2光変調器セルのうちの対応する第2光変調セルの組に順次に結合するフォトニック回路。
【請求項6】
前記一連の光カプラのパワー結合比が、前記第2光変調器セルの組の全部にわたって光入力パワーをバランスさせるように設定されている、請求項
5に記載のフォトニック回路。
【請求項7】
前記複数組の第2光変調器セルが、行及び列の長方形アレイの形に配列され、前記第1変調光信号を前記第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成された前記導波路構造の導波路が、前記行に沿って配列され、前記複数組の各組の前記第2光変調器セルが、前記列のうちの対応する列に沿って配列されている、請求項
5に記載のフォトニック回路。
【請求項8】
前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、前記複数の第2変調光信号どうしを、前記対応する列の最下部でコヒーレントに結合するように構成され、該最下部は、前記バックエンド光コンバイナと、前記第1変調光信号を経路設定するように構成された前記導波路構造との導波路交差部の全部に後続する、請求項
7に記載のフォトニック回路。
【請求項9】
前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、当該バックエンド光コンバイナと前記導波路構造との導波路交差部の手前で、前記第1変調光信号を経路設定するように構成された前記導波路構造のうちの対応する導波路構造間において、前記第2変調光信号の対を結合するように構成されている、請求項
7に記載のフォトニック回路。
【請求項10】
前記第2光変調器セルが光振幅変調器を具え、該光振幅変調器は、集合的に任意の正の実数値の行列を実現するように構成可能である、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項11】
前記第2変調器セルが光位相変調器を更に具え、該光位相変調器は、集合的に、前記光振幅変調器と合同で、任意の実数値または複素値の行列を実現するように構成可能である、請求項1
0に記載のフォトニック回路。
【請求項12】
前記複数のバックエンド光コンバイナの出力における合計の能動的挿入損失が、前記第1ベクトル及び前記第2ベクトルのサイズと共に直線的に大小変化する、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項13】
前記複数のバックエンド光コンバイナの出力に、光増幅器または光減衰器を更に具え、該光増幅器または光減衰器は、集合的に、前記フォトニック回路の忠実性を100%まで回復するように構成可能である、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項14】
フロントエンド光スプリッタと、
複数の第1光変調器セルと、
複数組の第2光変調器セルと、
複数の導波路構造と、
複数のバックエンド光コンバイナとを具えたフォトニック回路であって、
前記フロントエンド光スプリッタは、キャリア光を均一なパワー結合比で複数の光キャリア信号に分割するように構成され、
前記複数の第1光変調器セルは、前記複数の光キャリア信号を、第1ベクトルの成分により変調して、複数の第1変調光信号を発生するように構成され、
前記複数組の第2光変調器セルは、各組が複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトルに関連し、複数の第2光変調器セルを具え、該複数の第2光変調器セルは、前記複数の第1変調光信号を前記対応する第2ベクトルの成分により変調して、前記対応する第2ベクトルに関連する複数の第2変調光信号を発生するように構成され、
前記複数の導波路構造は、各々が、前記複数の第1変調光信号のうちの対応する第1変調光信号を、前記複数組の第2光変調器セルのうちの対応する第2光変調器セルの組へ経路設定するように構成され、
前記複数のバックエンド光コンバイナは、各々が、前記複数の第2ベクトルのうちの対応する第2ベクトル、及び前記対応する第2光変調器セルの組に関連し、前記対応する第2ベクトルに関連する前記複数の第2変調光信号どうしを均一なパワー結合比でコヒーレントに結合して、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとのスカラー積を表す光出力信号にするように構成され、
前記複数のバックエンド光コンバイナのそれぞれの出力に、複数の受光器のそれぞれを更に具え、該複数の受光器のそれぞれが、前記光出力信号をそれぞれの電気出力信号に変換するように構成されているフォトニック回路。
【請求項15】
前記第1光変調器セルが、複数の波長の光を複数の前記第1ベクトルにより変調するように構成された波長分割多重光変調器セルであり、
前記複数の受光器が波長分割多重受光器であり、該複数の波長分割多重受光器の各々が、複数の電子出力信号を発生するように構成され、該複数の電子出力信号は、前記複数の第1ベクトルと、当該波長分割多重受光器に関連する前記第2ベクトルとのスカラー積を表す、請求項1
4に記載のフォトニック回路。
【請求項16】
波長分割多重光変調器セルである前記第1光変調器セルの各々が、デマルチプレクサとマルチプレクサとの間に囲まれた、前記複数の第1ベクトルに対応する第1変調器を具え、
前記波長分割多重受光器の各々がデマルチプレクサを具え、該デマルチプレクサに前記複数の受光器が後続し、前記複数の受光器は、前記複数の第1ベクトルのそれぞれとの積を表す電子出力信号を測定する、請求項1
5に記載のフォトニック回路。
【請求項17】
前記フロントエンド光スプリッタが、前記複数の光キャリア信号を、光入力から前記第1光変調器セルまで、第1の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って経路設定するように構成され、
前記複数の導波路構造が、前記第1変調光信号を、前記第1光変調器セルから前記第2光変調器セルまで、第2の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って経路設定するように構成され、
前記複数のバックエンド光コンバイナが、前記第2変調光信号を前記受光器へ、第3の幾何学的に遅延が一致した複数の光路に沿って経路設定するように構成されている、請求項1
4に記載のフォトニック回路。
【請求項18】
前記複数の導波路構造が対称な導波路ツリーとして構成され、該導波路ツリーは複数のカプラを有し、該カプラは、当該カプラの接合部において均一なパワー結合比を有する、請求項1
7に記載のフォトニック回路。
【請求項19】
前記第1光変調器セルが第1次元に沿って直線的に配列され、
前記複数組の第2光変調器セルにおける全組の前記第2光変調器セルが、前記第1次元に沿って直線的に、前記第1光変調器セルと平行に、当該第2光変調器セルに関連する前記第1変調光信号に基づく順序に配列されて空間的なグループを形成し、該グループの各々が、前記複数の第1変調光信号のうちの1つに関連する、請求項
18に記載のフォトニック回路。
【請求項20】
前記複数の受光器が、前記第1次元に沿って直線的に、前記第1光変調器セル、及び前記複数組の第2光変調器セルにおける全組の前記第2光変調器セルと平行に配列され、
各々の前記グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器と同じ順序に配列され、これにより、前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、各々の前記グループ内の前記第2光変調器セルのうち、前記直線的に配列された複数の受光器のうちの関連する受光器の位置に対応する位置にある前記第2光変調器セルからの光を結合する、請求項
19に記載のフォトニック回路。
【請求項21】
前記複数の受光器が、前記第1次元に直交する第2次元に沿って直線的に配列され、
前記第1次元に沿った前記グループのうち前半の各グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器と同じ順序に配列され、前記第1次元に沿った前記グループのうち後半の各グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器とは逆の順序に配列され、これにより、前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、前記前半のグループと前記後半のグループとの間で互いに鏡像の関係の位置にある前記第2光変調器からの光を結合する、請求項
19に記載のフォトニック回路。
【請求項22】
前記複数の受光器が、前記第1次元に直交する第2次元に沿って配列され、
前記グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器と同じ順序に配列されている前記グループと、前記グループ内の前記第2光変調器セルが、当該第2光変調器セルに関連する前記複数の受光器とは逆の順序に配列されている前記グループとが交互し、これにより、前記複数のバックエンド光コンバイナの各々が、前記第1次元に沿って隣接する前記グループ間で互いに鏡像の関係の位置にある前記第2光変調器からの光を結合する、請求項
19に記載のフォトニック回路。
【請求項23】
前記第1光変調器セルが第1次元に沿って直線的に配列され、
前記複数組の各組内の前記第2光変調器セルが、前記第1次元に沿って直線的に、前記第1光変調器セルと平行に配列され、
前記複数組は、前記第1次元に直交する第2次元に沿って直線的に配列されている、請求項
18に記載のフォトニック回路。
【請求項24】
前記受光器の各々が光検出器を具えている、請求項1
4に記載のフォトニック回路。
【請求項25】
前記受光器が、1つ以上のコヒーレント受光器と、一対の光検出器と、光増幅器とを具え、前記コヒーレント受光器の各々が光ミキサを含み、該光ミキサは、それぞれの前記光出力信号を局部発信器信号と混合するように構成され、前記一対の光検出器は、前記光ミキサの光出力の強度を測定し、前記光増幅器は、前記一対の光検出器の電子出力信号どうしを結合する、請求項1
4に記載のフォトニック回路。
【請求項26】
前記バックエンド光コンバイナの各々が、光導波路逆ツリーの接合部に形成された3dBカプラのカスケード接続を具え、前記接合部の各々の手前に、当該接合部において結合された一対の導波路の各導波路内に位相シフタを具えている、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項27】
前記接合部のうちの1つにおいて結合された前記一対の導波路の各対において、一方の前記導波路内の前記位相シフタが被制御の位相シフタであり、他方の前記導波路内の前記位相シフタがダミー位相シフタである、請求項2
6に記載のフォトニック回路。
【請求項28】
前記第1光変調器セル及び前記第2光変調器セルの各々が光振幅変調器を具えている、請求項1に記載のフォトニック回路。
【請求項29】
前記光振幅変調器が電子駆動型光デバイスを具え、当該電子駆動型光デバイスの出力の光振幅が、特定範囲の電圧値にわたる可変の駆動信号電圧の電圧値に単調依存する、請求項
28に記載のフォトニック回路。
【請求項30】
前記電子駆動型光デバイスが、電界吸収変調器または電気光学リング変調器の少なくとも一方を具えている、請求項
29に記載のフォトニック回路。
【請求項31】
前記光振幅変調器の少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を更に具え、該マッハツェンダー干渉計は、前記電子駆動型光デバイスのうちの1つを、当該マッハツェンダー干渉計の干渉計アームのうちの1つの干渉計アーム内に含み、前記マッハツェンダー干渉計の分割カプラ及び結合カプラの結合比が、当該マッハツェンダー干渉計の出力における光振幅が前記駆動信号電圧の電圧値の範囲の一端において0であるように設定されている、請求項
29に記載のフォトニック回路。
【請求項32】
前記光振幅変調器の少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を更に具え、該マッハツェンダー干渉計は、前記電子駆動型光デバイスのうちの2つの電子駆動型光デバイスのそれぞれを、当該マッハツェンダー干渉計の2つの干渉計アームのそれぞれの干渉計アーム内に含み、前記2つの電子駆動型光デバイスが差動的に駆動される、請求項
29に記載のフォトニック回路。
【請求項33】
前記光振幅変調器のうちの少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を具え、該マッハツェンダー干渉計は、電子駆動型光位相シフタを、当該マッハツェンダー干渉計の干渉計アームのうちの1つの干渉計アーム内に含み、前記光位相シフタに供給される可変駆動信号電圧の電圧値の特定範囲全体にわたって、前記マッハツェンダー干渉計の出力における光振幅が、前記可変駆動信号電圧の電圧値に単調依存する、請求項
28に記載のフォトニック回路。
【請求項34】
前記光振幅変調器のうちの少なくとも1つがマッハツェンダー干渉計を具え、該マッハツェンダー干渉計は、2つの電子駆動型光位相シフタのそれぞれを、当該マッハツェンダー干渉計の2つの干渉計アームのそれぞれの干渉計アーム内に含み、前記2つの電子駆動型光位相シフタは差動的に駆動され、前記電子駆動型光位相シフタに供給される可変差動駆動信号電圧の電圧値の特定範囲全体にわたって、前記マッハツェンダー干渉計の出力における光振幅が、前記可変差動駆動信号電圧の電圧値に単調依存する、請求項
28に記載のフォトニック回路。
【請求項35】
前記光振幅変調器が、アナログ入力から生成される駆動信号電圧によって電子的に駆動され、前記アナログ入力を前記駆動信号電圧に対応付ける伝達関数が、前記光振幅変調器の前記駆動信号電圧から、前記光振幅変調器が出力する光振幅への伝達関数に基づいて設定され、これにより、前記光振幅変調器の前記アナログ入力から、前記光振幅変調器が出力する光振幅への全体の伝達関数が実質的に線形である、請求項
28に記載のフォトニック回路。
【国際調査報告】