(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】溶融金属処理用回転デバイス
(51)【国際特許分類】
B22D 1/00 20060101AFI20240123BHJP
C21C 7/072 20060101ALI20240123BHJP
C21C 7/04 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B22D1/00 B
B22D1/00 E
B22D1/00 F
C21C7/072 A
C21C7/04 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537221
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086609
(87)【国際公開番号】W WO2022129584
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511239074
【氏名又は名称】フォセコ インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Foseco International Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Way,Central Park,Barlborough Links,Derbyshire S43 4XA,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハラビナ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,コリン
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013CA02
4K013CA16
4K013CB01
4K013EA03
4K013EA16
4K013EA25
4K013EA28
(57)【要約】
【解決手段】 溶融金属を処理するための回転デバイス及び方法、回転デバイスのための管状スリーブ、並びに、溶融金属の処理における回転デバイスの使用に関する。回転デバイスは、一端にローターヘッドを備える管状スリーブであって、ローターヘッドは、溶融金属中にガスを分散させるためのガス排出口を備える、管状スリーブと、中空シャフトの少なくとも一部が管状スリーブによって囲まれるように管状スリーブ内に延びる中空シャフトであって、中空シャフトは、ローターヘッドのガス排出口に流体連通する、中空シャフトと、を備えている管状スリーブは、耐腐食性及び耐熱衝撃性を有する耐熱材料から形成され、中空シャフトは、黒鉛を含む材料から形成される。第1の方法は、溶融金属の露出面に合成スラグ材料の層を付することと、溶融金属が合成スラグ材料の層を通過して流れるように、ローターヘッドを備える回転デバイスを用いて溶融金属を攪拌することとを含む。第2の方法は、溶融金属に金属処理剤を加えることと、ローターヘッドを備える回転デバイスを用いて溶融金属を攪拌することと、ローターヘッドを通して溶融金属中にガスを放出することとを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属をガスで処理するための回転デバイスにおいて、
一端にローターヘッドを備える管状スリーブであって、前記ローターヘッドは溶融金属中にガスを分散させるためのガス排出口を備えている、管状スリーブと、
前記管状スリーブ内に延びる中空シャフトであって、前記中空シャフトの少なくとも一部が前記管状スリーブで囲まれる、中空シャフトと、
を備えており、
前記中空シャフトは、前記ローターヘッドの前記ガス排出口に流体連通されており、
前記管状スリーブは、腐食及び熱衝撃に耐性のある耐熱材料で形成されており、
前記中空シャフトは、黒鉛を含む材料で形成されている、
回転デバイス。
【請求項2】
前記管状スリーブは、溶融シリカ;アルミナ;炭化ケイ素;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物;アイソプレスされた炭素結合アルミナ;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いは、それらの組合せを含む耐熱材料から形成されている、請求項1に記載の回転デバイス。
【請求項3】
前記ローターヘッドは前記管状スリーブと一体的に形成されている、又は、前記ローターヘッドが前記管状スリーブの端部に結合されている、請求項1又は請求項2に記載の回転デバイス。
【請求項4】
前記中空シャフトは第1の端部及び第2の端部を有しており、前記第1の端部は前記管状スリーブによって囲まれており、任意選択的に、前記中空シャフトの前記第2の端部は、前記回転デバイスを回転させるための装置に結合されるように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項5】
前記中空シャフトの前記第1の端部は、前記管状スリーブ内の相補的な受け部と係合するように構成されたロック部を備えており、任意選択的に、前記相補的な受け部は、前記ローターヘッドを備える前記管状スリーブの端部に配置される、請求項4に記載の回転デバイス。
【請求項6】
前記ロック部及び前記受け部は、多角形状の、又は弦が除去された円形の断面を有しており、任意選択的に、前記断面は、少なくとも3つ、4つ、5つ、又は6つの頂点を備える、請求項5に記載の回転デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスと共に使用するための管状スリーブ。
【請求項8】
溶融金属を処理する方法であって、
溶融金属の露出面に合成スラグ材料の層を付することと、
ローターヘッドを備える回転デバイスを使用して溶融金属を撹拌し、溶融金属が合成スラグ材料の層を通って流れるようにすることと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記ローターヘッドを通して溶融金属中にガスを分散させることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記合成スラグは酸化カルシウムを含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、金属処理添加剤を含むコアードワイヤを前記溶融金属中に供給することを更に含んでおり、任意選択的に、前記コアードワイヤは、高融点金属を含む外側シースと、金属処理添加剤を含む内側コアとを含んでおり、任意選択的に、金属処理添加剤は、マグネシウム、フェロシリコンマグネシウム、カルシウム、酸化カルシウム、炭化カルシウム、又はそれらの組合せを含む、請求項8乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、金属処理添加剤を、任意選択的に、固体金属処理添加剤を、前記ローターヘッドを通して放出することを含む、請求項8乃至11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
溶融金属の処理方法であって、
溶融金属に金属処理剤を加えることと、
ローターヘッドを備える回転デバイスを用いて溶融金属を攪拌することと、
前記ローターヘッドを通して溶融金属中にガスを放出することと、
を含む、方法。
【請求項14】
溶融金属は鋼又は鉄である、請求項8乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
溶融金属の処理における請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を処理するための回転デバイス及び方法に関する。特に、本発明は、硫黄、溶存ガス、固体含有物などの望ましくない不純物を溶融金属から除去して、金属処理添加剤を溶融金属に導入するための回転デバイス及び方法に関する。本発明はまた、回転デバイス用の管状スリーブと、溶融金属の処理における回転デバイスの使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属中の望ましくない不純物は、金属鋳造プロセスにおいて重大な問題を引き起こして、完成した鋳造品の品質に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、固体含有物(典型的にはアルミナやシリカのような固体酸化物)は、金属に欠陥や不連続面を生じさせ、鋳造に使用されるノズルを詰まらせる可能性があり、溶存ガス(水素ガスなど)は、望ましくない多孔性及び/又は脆性を引き起こす可能性がある。鉄系金属、特に鋼は、溶融プロセスで使用される原材料由来の残留硫黄を含むことがあり、これは鋳造物の脆性を増大させる。従って、完成した鋳造物の品質を向上させるためには、溶融金属からできるだけ多くの不純物を除去することが重要である。
【0003】
溶存ガス及び固体含有物は、通常、アルゴン、窒素及び/又は一酸化炭素のような金属に不溶であるガス又はガス混合物で溶融金属をパージすることによって除去される。パージガスの気泡は、溶融金属中を移動する間に遭遇する溶存水素や固形含有物を捕捉し、表面に持ち上げる。パージガスの気泡は、溶融金属を通って移動する間に遭遇する溶存水素及び固体含有物を捕捉して、それらを表面へと持ち上げる。従来、このようなパージは、溶融炉又は鋳造取鍋の底部に設けられた多孔性プラグによって行われており、この多孔質プラグは、金属中にパージガスを泡立たせる。アルミニウム(融点は約660℃であり、溶融時の密度は約2.4g/cm3である)などのより低温且つより低密度の溶融金属をパージする別の方法は、端部に取り付けられたローターを有する中空シャフトを通してガスを金属中に注入することによるものであり、シャフトが回転して、注入ガスを溶融金属中に分散させる。この方法は、注入された気泡が、回転するローターヘッドによって細かく砕かれることから、多孔質プラグを使用するよりも微細な気泡を生成し、これが撹拌効率を改善して、より微細な含有物を溶融金属から除去することを可能にする。この場合、このプロセスは「脱ガス(degassing)」と呼ばれることがある。
【0004】
脱ガスローターは従来、多くの理由から、鉄や鋼などのより高温且つより高密度の金属では使用されていない。鉄及び鋼は共に、融点が約1150~1550℃であって、溶融時に約7g/cm3の密度を有する。従来の耐熱性セラミック材料は、一般的にアルミ用ローターに使用されているが、溶融した鉄又は鋼に浸漬する前に徐々に昇温することを必要とする。そのようにしないと、それらは熱衝撃によって粉砕してしまうだろう。このようなプライミング(priming)は、面倒で時間のかかる手順である。また、溶融鉄/鋼の極端な温度及び密度は、ローターを作る材料に応じて、使用中にローターヘッドを急速に反らせて変形させることがあり、これは、ローターの撹拌及びパージ効率を低下させる。溶鋼は、特に金属表面のスラグ層だけでなくバルク金属自体も、一部の耐熱性セラミック材料を腐食させることができ、溶融アルミニウム用ローターの製造に使用される一部の耐熱材料(例えば黒鉛)は、溶鋼に溶解することがある。そのため、従来のローターの使用は困難であって、高温の鉄や鋼のような金属では寿命が非常に短くなる傾向があり、このような用途では、一般的に多孔質プラグの使用が好まれている。
【0005】
鉄系金属の脱硫は、幾つかの異なる方法で行うことができる。ある方法では、カンバラリアクター(Kanbara Reactor)内で溶融金属を脱硫添加剤で処理する。このリアクターは、非常に大きなベッセル(通常、少なくとも100トンの容量を有する)と、溶融金属を撹拌するための十字形のインペラとを備えている。脱硫添加剤(典型的には酸化カルシウム粉末)は、インペラの回転によって溶融金属中に混合し、そこで添加剤は金属中の硫黄と反応して固体生成物(例えば、硫化カルシウム)を形成する。固体生成物は最終的に金属の表面に浮遊してスラグの層を形成する。これはスキミングによって除去することができる。カンバラリアクターの脱硫では、上述したように、亀裂を回避するために、インペラは溶融金属に浸漬される前に徐々に昇温されなければならない。
【0006】
鉄系金属を脱硫するための別の方法では、スプールから金属に供給されるコアードワイヤの形態の脱硫添加剤で溶融金属を処理する。コアードワイヤは、高融点材料(例えば鋼)のシースで囲まれた脱硫添加剤(通常、カルシウム及び/又はマグネシウムを含む)のコアを含んでいる。シースは、溶融金属に接触して直ちに酸化しないように添加剤コアを保護し、また、ワイヤが金属に送り込まれるにつれて徐々に溶融又は溶解し、添加剤コアを表面下の所定の深さで解放して、溶融金属の上部を通って広がるようにする。溶融金属へのワイヤの供給速度は、添加剤が所望の深さで解放されることを確かにするために、外側シースの溶融/溶解速度とバランスが取られている。この方法は通常、多孔質プラグの使用と組み合わされ、多孔性プラグは、金属を通してガスを泡立たせ、添加剤を分散させるのを助ける。
【0007】
脱硫に加えて(又は脱硫の代わりに)、金属処理添加剤を用いて、パージ後に残る含有物の組成、形態、及び/又は分布が変更されてよい。例えば、カルシウム添加剤は、溶鋼中で固体酸化物含有物(アルミナやシリカなど)と反応して、低融点のカルシウムアルミネート又はシリケートを形成するために使用されてよい。低融点のカルシウムアルミネート又はシリケートは、鋼の融点で液体であるので鋳造ノズルを詰まらせない。添加剤はまた、鋳造金属中に亀裂を生じやすい断層線(fault-lines)を形成し得る樹枝状や板状の含有物の形態を変化させ、その結果、含有物は、より球状になることでそのような断層線を形成しない。例えば、カルシウム添加剤を鋼に使用して固体酸化物含有物の形態(morphology)を変えることができ、マグネシウム添加剤を鉄に使用して炭素含有物の形態を変えることができる。
【0008】
カルシウムとマグネシウムの沸点は夫々、鋼と鉄の融点以下であることから、カルシウム又はマグネシウムの元素を溶融鉄系金属に導入することは困難であり、且つ危険である。従って、元素Ca/Mgは、一度に添加される量が多すぎる場合に溶融鉄/鋼と接触すると爆発的に蒸発するか、又は急速に酸化し得る。その結果、添加剤は通常、元素形態ではなく、カルシウムシリコン(CaSi)、カルシウムシリコンバリウム(CaSiBa)などの安定化形態で添加される。
【0009】
本発明は、溶融金属を処理するための改良された装置及び方法を提供すること、又は、少なくとも有用な代替手段を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0010】
<回転デバイス>
本発明の第1の態様に従って、溶融金属をガスで処理するための回転デバイス(本明細書では「ローター」とも称する)が提供される。このデバイスは、一端にローターヘッドを有する管状スリーブと、中空シャフトとを備えており、中空シャフトの少なくとも一部が管状スリーブによって囲まれるように中空シャフトは管状スリーブ内に延びている。ローターヘッドは、溶融金属中にガスを放出するためのガス排出口を備えており、中空シャフトは、ローターヘッドのガス排出口に流体連通している。管状スリーブとローターヘッドは、腐食と熱衝撃に強い耐熱材料から形成される。中空シャフトは黒鉛を含む耐熱材料から形成される。
【0011】
本発明者らは、黒鉛を含む材料から作られた内側中空シャフトと、より耐性の高い耐熱材料から作られた外側管状スリーブ及びローターヘッドとを備える二部品ローターが、鋼のような高温溶融金属中で優れた耐久性及び寿命を有することを見出した。本発明の実施形態は、溶鋼中で繰り返し試験を行ってもほとんど変形しない一方で、優れた攪拌及びパージ効率を達成した。黒鉛を含む中空シャフトは、溶鋼の高温に適切な耐性を有しており、溶融又は粉砕することがない一方で、使用中に破損することなくモータに取り付けられるのに十分な程度の塑性を有することが見出された。理論に束縛されることを望むものではないが、金属から作られた内側シャフトは、溶融した鉄/鋼において経験する温度下で過度に軟化し、セラミック材料から作られた内側シャフトは、モータに取り付けるには脆すぎると考えられる。故に、本発明者らは、黒鉛が本発明の中空シャフトに使用するのに特に適していることを見出した。黒鉛は溶鋼中に溶解し得るので、通常、黒鉛は溶鋼中での使用に適しているとは考えられないが、本発明では、黒鉛を含む中空シャフトは外側管状スリーブによって保護される。
【0012】
実施形態では、管状スリーブは、溶融シリカ;炭化ケイ素;アルミナ;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含む等方圧加圧された(アイソプレスされた)耐熱混合物;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いは、それらの組合せを含む耐熱材料から形成される。ローターヘッドもまた、溶融シリカ;炭化ケイ素;アルミナ;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いは、それらの組合せを含む耐熱材料から形成されてよい。幾つかの実施形態では、管状スリーブとローターヘッドは共に同じ材料から作られる。別の実施形態では、管状スリーブとローターヘッドは異なる材料から作られる。
【0013】
溶融シリカ;炭化ケイ素;アルミナ;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いはそれらの組合せを含む高抵抗耐熱材料はまた、プライミングの必要なしに溶鋼中で使用されるのに十分な耐腐食性及び熱衝撃性を有する。しかしながら、これらの材料は非常に高価である。更に、これらの材料は比較的脆く、本発明の発明者らは、それらがモータに取り付けるのに必要な塑性を有していないことを知った。理論に拘束されることを望むものではないが、そのような高耐性材料から全体的に作られた単一部品ローターは、使用時の振動に対して脆弱であって、モータとの取付け点の近傍で亀裂が入り、ローターを不安定にし、最終的には完全に破壊する可能性があると考えられる。本発明の回転デバイスは、そのような材料から作られた外側スリーブのみを備えており、必要とされる高耐熱材料の量を低減することによって、そして、モータに取り付けられたときに亀裂の影響を受けにくいより塑性の高い耐熱材料(黒鉛を含む)から作られた内側シャフトを設けることによって、上記の問題の両方に対処する。
【0014】
実施形態では、管状スリーブ及び/又はローターヘッドは、アイソプレスされた炭素結合アルミナを含む耐熱材料、例えば、Vesuvius Plc.によって商品名Viso(商標)で製造されている耐熱材料から形成される。本発明の発明者らは、アイソプレスされた炭素結合アルミナを使用して作製されたローターが特に耐久性があり、スラグの蓄積がローターの更なる使用を妨げる前に、変形することなく最大18回の使用に耐えられることを見出した。
【0015】
実施形態では、ローターヘッドは、管状スリーブと一体的に形成される。他の実施形態では、ローターヘッドは、管状スリーブの端部に結合される別個の構成要素である。そのような実施形態では、ローターヘッドは、任意の適切な手段、例えばねじ結合、押し込み嵌めなどによって管状スリーブの端部に結合されてよい。
【0016】
実施形態では、中空シャフトは、第1の端部及び第2の端部を有しており、中空シャフトの第1の端部は、管状スリーブによって囲まれる。実施形態では、中空シャフトの第2の端部は、回転デバイスを回転させるための装置(例えば、モータ)に結合されるように構成される。例えば、中空シャフトの第2の端部は、Vベルトによってモータに接続されるように構成されたプーリを備えてよく、又は、中空シャフトの第2の部端は、モータシャフトに直接取り付けられるように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、中空シャフトの第2の端部は、Vベルト用プーリを備えるカラー、又は、(例えばボルト用開口を備えたフランジを設けることで)他の手段を用いてモータシャフトに結合されるように構成されたカラーを受け入れるように構成されてよい。
【0017】
中空シャフトの長さは、第1の端部と第2の端部の間で測定されてよい。実施形態では、中空シャフトの長さの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が管状スリーブによって囲まれている。実施形態では、中空シャフトは、管状スリーブによって実質的に完全に囲まれているが、そのような実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトの第2の端部の近傍で開口しており、中空シャフトの第2の端部は、依然として、回転デバイスを回転させるための装置に結合されてよいことは理解されるであろう。
【0018】
実施形態では、(管状スリーブによって囲まれる)中空シャフトの第1の端部は、管状スリーブ内で相補的な受け部と係合するように構成されたロック部を備えている。ロック部と受け部は、管状スリーブを中空シャフトにしっかりと固定するのに役立つだけでなく、中空シャフトと管状スリーブを相互に回転するようにロックし、使用中に中空シャフトが管状スリーブから独立して回転することを防止してよい。相補的な受け部は、ローターヘッドを備える管状スリーブの端部に配置されてよい。使用中、管状スリーブは軟化する可能性があり、内部の黒鉛中空シャフトによって支持されているが、ローターに幾らかのねじれが生じることがある。ローターヘッドを備える管状スリーブの端部に受け部を設けることによって、ローターヘッドから離れた端部から管状スリーブが駆動される場合よりも管状スリーブのねじれは少なくなる。受け部は必ずしも管状スリーブの最端にある必要はなく、最端から離間して配置されてよいことは理解されるであろう。
【0019】
実施形態では、ロック部と受け部は多角形状断面を有する。このような実施形態では、ロック部と受け部は、同じ多角形状断面を有しており、ロック部は、受け部の内側にぴったりと嵌合するように直径が僅かに小さいことは理解されるであろう。ロック部の縁部が受け部の縁部に当接することで、ロック部が受け部内で回転することが防止される。幾つかの実施形態では、多角形状断面は少なくとも3、4、5又は6個の頂点を備えている。好ましくは、多角形状断面は、12、11、又は10個以下の頂点を備えており、多角形の縁部の間に形成される角度が十分に鋭っていることを確実とすることで、ロック部の頂点が隣接する受け部の頂点間で摺動することを抑制する。他の実施形態では、ロック部と受け部は、弦を取り除いた円形断面を有する。
【0020】
管状スリーブの長さは、その長手方向軸に沿って測定されてよい。幾つかの実施形態では、中空シャフトは、管状スリーブの長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に沿って管状スリーブ内で延びる。そのため、中空シャフトは、ローターヘッド内に延びるのではなく、ローターヘッドを超えて終端してもよい。実施形態では、中空シャフトは、中空シャフトの第1の端部がローターヘッドに直に隣接するように、管状スリーブの実質的に全長に沿って管状スリーブ内に延びている。中空シャフトが管状スリーブの実質的に全長に沿って管状スリーブ内で延びておらず、中空シャフトの第1の端部がローターヘッドに直に隣接していない実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトをローターヘッドのガス排出口に流体接続する導路又はボアを含んでよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、中空シャフトの第2の端部は、クランプ手段によって管状スリーブに固定されてよい。
【0022】
ローターヘッドは、溶融金属を撹拌するための適切な任意の形状又は構成を有してよい。
【0023】
実施形態では、ローターヘッドは、管状スリーブの長手方向軸に垂直な方向に延びる平面(即ち、プレート)と、その平面から管状スリーブの長手方向軸に実質的に平行な方向に突出する複数のベーンとを備えている。このような実施形態では、ガス排出口は、平面にボアを備えてよい。実施形態では、ボアは平面の中心に配置される。幾つかの実施形態では、ローターヘッドは、第1の平面に対向して配置されており、複数のベーン又はピラーによってそれに接続された第2の平面(即ち、プレート)を備える。このような実施形態はまた、第2のプレートの基部から突出するベーンを備えてよい。プレートは、実質的に円形又は多角形、例えば四角形であってよい。実施形態では、プレートは、凹状縁部及び切頭隅部を有する平行な正方形プレートであってよい。
【0024】
単一プレート型ローターヘッドの設計は、二重プレート型設計よりもプレス技術(例えば、アイソプレス炭素結合アルミナなどの材料を使用)による製造が容易であることが分かっている。二重プレート型ローターヘッドの設計はプレス技術で製造できるが、完全な高密度化がローターヘッド全体にわたって常に達成されるわけではないことが分かった。単一プレート型ローターヘッドの設計では、ローターヘッドから離れる下向きの流れの量が増える可能性があり、二重プレート型ローターヘッドの設計では、ローターヘッドから離れる横向きの流れの量が増える可能性がある。
【0025】
中空シャフトと管状スリーブは、摩擦嵌合を介して結合されてよい。他のカップリング手段及び機構も使用されてよい。
【0026】
本発明の第2の態様では、第1の態様の回転デバイスと共に使用するための管状スリーブが提供される。
【0027】
管状スリーブは、溶融シリカ;炭化ケイ素;アルミナ;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いは、それらの組合せを含む耐熱材料から形成されてよい。
【0028】
幾つかの実施形態では、管状スリーブは、一端に一体的に形成されたローターヘッドを備えており、ローターヘッドはガス排出口を備える。他の実施形態では、管状スリーブは、一端に別個のローターヘッドに結合するための手段、例えばねじ結合手段を備えている。
【0029】
第2の態様の管状スリーブの長さは、その長手方向軸に沿って測定されてよい。実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトを受け入れるためのボアを含み、当該ボアは、管状スリーブの長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に沿って管状スリーブ内に延びる。実施形態では、中空シャフトを受け入れるためのボアは、管状スリーブの実質的に全長に沿って管状スリーブの内側に延びる。中空シャフトを受け入れるためのボアが管状スリーブの実質的に全長に沿って管状スリーブの内側に延びていない実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトを受け入れるためのボアをローターヘッドのガス排出口又はローターヘッドに結合するための手段に流体接続するための更なる導路又はボアを含んでよい。
【0030】
実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトの相補的なロック部と係合するように構成された受け部を含んでいる。幾つかの実施形態では、受け部は多角形状断面を有する。幾つかの実施形態では、多角形状断面は少なくとも3、4、5又は6個の頂点を備えている。幾つかの実施形態では、多角形状断面は12、11又は10個以下の頂点を備えている。他の実施形態では、ロック部及び受け部は、弦を取り除いた円形断面を有する。
【0031】
第1の態様に関連して説明された任意の特徴及び実施形態の何れもが、第2の態様に同様に適用されてよいことは理解されるであろう。
【0032】
<溶融金属の処理方法>
本発明の第3の態様によれば、溶融金属を処理する方法が提供される。この方法は、
溶融金属の露出面に合成スラグ材料の層を付することと、
ローターヘッドを備える回転デバイスを使用して溶融金属を撹拌し、溶融金属が面上の合成スラグ材料の層を通って流れるようにすること、
とを含む。
【0033】
実施形態では、溶融金属は、合成スラグ材料の層の少なくとも一部が攪拌中に面上に残るように攪拌される。
【0034】
実施形態では、本発明の方法は、ローターヘッドを通して溶融金属中にガスを放出することを更に含む。実施形態では、そのガスは、溶融金属に溶解しない1又は複数種のガスを含んでいる。実施形態では、ガスは、アルゴン、窒素、一酸化炭素、又はそれらの混合物を含んでいる。
【0035】
本発明の発明者らは、合成スラグ材料(フラックスとも呼ばれる)の層を金属に付すことと、回転デバイスで金属を攪拌して合成スラグの表面層を通すこととを組み合わせることが、溶融金属から硫黄を除去するのに非常に有効であることを見出した。理論に拘束されるものではないが、金属を撹拌するための回転デバイスの使用は、合成スラグの表面層を通って流れる金属の循環を改善し、より多くの硫黄が合成スラグによって捕捉されることを可能にすると考えられる。更に、ローターヘッドを通して溶融金属中にガスを放出することで、固体含有物と溶存ガスの除去が改善される。従って、本発明の方法は、含有物の除去と、脱ガスと、溶融金属の脱硫とを同時に行うための非常に効率的且つ効果的な方法を提供する。
【0036】
実施形態では、溶融金属は鉄系金属である。実施形態では、溶融金属は鉄又は鋼である。
【0037】
実施形態では、回転デバイスは、第1の態様に基づく回転デバイスであって、鉄や鋼のような、より高温で高密度の溶融金属を撹拌するのに特に適している。
【0038】
実施形態では、合成スラグ材料は、酸化カルシウム、アルミナ、シリカ、マグネシア、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄(III)、二酸化炭素及びフッ素のうちの1又は複数を含む。幾つかの実施形態では、合成スラグ材料は、50乃至90wt%の酸化カルシウムを含む。実施形態では、合成スラグ材料は、5乃至30wt%のアルミナを含む。実施形態では、合成スラグ材料は、最大5wt%のシリカ、マグネシア、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄(III)、二酸化炭素及び/又はフッ素を含む。
【0039】
実施形態では、本発明の方法は、金属処理添加剤を含むコアードワイヤを溶融金属中に供給することを更に含む。実施形態では、コアードワイヤは、鉄や鋼などの高融点金属を含む外側シースと、金属処理添加剤を含む内側コアとを備えている。実施形態では、金属処理添加剤は、脱硫添加剤、含有物改質添加剤、又はそれらの混合物を含んでいる。含有物改質添加剤は、前述したように、溶融金属中の固体含有物の組成、形態及び/又は分布を改質するための添加剤である。実施形態では、金属処理添加剤は、マグネシウム、フェロシリコンマグネシウム、カルシウム、酸化カルシウム、炭化カルシウム、バリウム、ストロンチウム、又はそれらの組合せを、元素又は化合物の形態で含む。
【0040】
使用中、外側シースは、コアの添加剤を即時の反応又は酸化から保護し、徐々に溶融又は溶解して、溶融金属の表面下の所定の深さで添加剤を放出する。コアードワイヤ及び合成スラグによる処理の組合せは、脱硫を、及び/又は、溶融金属中の含有物の処理・除去を更に改善することができる。
【0041】
実施形態では、本発明の方法は、ローターヘッドを通して又はそれに隣接して固体金属処理添加剤を放出することを含む。実施形態では、添加剤はワイヤ又は粉末の形態である。実施形態では、添加剤はコアードワイヤに含まれている。ローターヘッドを通して又はローターヘッドに隣接して添加剤を放出することにより、添加剤を溶融金属全体に迅速且つ効率的に分散させることができる。本発明の発明者らは、Ca/Mgが蒸発又は酸化する前に金属全体に迅速に分散されるので、この迅速な分散によって、元素状Ca/Mgを添加剤として使用することが可能になり、溶融金属中で元素状Ca/Mgを使用することに通常伴う危険が大幅に低減されることを見出した。その結果、溶融金属を効果的に処理するのに必要な添加剤の量が減少し、完成した鋳造物に脆性をもたらす過剰な添加剤の蓄積を抑えることもできる。
【0042】
ローターヘッドを通して添加剤を放出することは、特に、添加剤が回転デバイス内に収容されている間に添加剤が溶融金属に曝されることを防ぎ、そして、ローターヘッドの深さに対応する深さで添加剤が溶融金属中に放出されることを可能にするので、保護コーティングは必ずしも必要とされない。しかしながら、保護コーティングを含むコアードワイヤは、他の形態の金属処理添加剤が利用できない場合、又は、添加剤が溶融金属中に放出される前により低い深さに達する必要がある場合に、便宜上使用されてよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を攪拌するために、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200又は少なくとも300rpmの速度で回転する。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を攪拌するために、600rpm以下、500rpm以下、400rpm以下又は300rpm以下の速度で回転する。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、50乃至600rpm、100乃至300rpm、又は100乃至200rpm、例えば150rpmの速度で回転する。より高い回転速度は、ローターヘッドからの下向きの流れの全体的な流速及び量を増加させる(つまり、底部撹拌が増加する)が、溶融金属への空気同伴も増加させる。600rpmを超えて回転速度を上げると、渦が形成される可能性があり、この渦は空気を再び溶融物に引き込んで、有害な影響を及ぼす。幾つかの実施形態では、回転速度は、本発明の方法の間に変化する。幾つかの実施形態では、回転速度は、本発明の方法の間、より大きい開始回転速度から減少してよい。金属が冷たくなるにつれて溶融金属の密度が増加し、撹拌に必要な電力が増加するからである。例えば、回転デバイスの回転速度は200rpmで開始し、本発明の方法の間に120rpmまで低下してよい。
【0044】
第3の態様の方法は、コアレス誘導炉(CIF)又は取鍋炉(LF)を含む、任意の取鍋又は炉での使用に適している。本発明の方法が取鍋で使用される実施形態では、溶融金属は、電気アーク炉(EAF)又はCIFから取鍋に注湯(出湯)されてよい。第3の態様の方法は、溶鋼の処理に特に適しているが、脱硫及び/又は含有物除去を必要とする他の溶融金属、例えば鉄を処理するために使用されてもよい。
【0045】
本発明の第4の態様に基づいて、溶融金属を処理する方法が提供される。この方法は、
溶融金属に金属処理剤を加えることと、
ローターヘッドを備える回転デバイスを用いて溶融金属を攪拌することと、
前記ローターヘッドを通して前記溶融金属中にガスを放出することと、
を含む。
【0046】
実施形態では、溶融金属は鉄系金属である。幾つかの実施形態では、溶融金属は鉄又は鋼である。
【0047】
実施形態では、金属処理剤は、脱硫添加剤、含有物改質添加剤、又はそれらの混合物から選択される少なくとも一つの金属処理添加剤を含む。含有物改質添加剤は、前述したように、溶融金属中の固体含有物の組成、形態及び/又は分布を改質するための添加剤である。実施形態では、少なくとも一つの金属処理添加剤は、マグネシウム、フェロシリコンマグネシウム、カルシウム、酸化カルシウム、炭化カルシウム、バリウム、ストロンチウム、又はそれらの組合せを、元素又は化合物の形態で含む。
【0048】
実施形態では、金属処理剤は、溶融金属の表面に合成スラグ材料の形態で付される脱硫剤を含む。幾つかのそのような実施形態では、合成スラグ材料の少なくとも一部が攪拌中に表面上の層に留まり、溶融金属が表面上の合成スラグ材料の層を通って流れるように、溶融金属は回転デバイスで攪拌される。
【0049】
実施形態では、合成スラグ材料は、酸化カルシウム、アルミナ、シリカ、マグネシア、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄(III)、二酸化炭素、及びフッ素のうちの1又は複数を含む。幾つかの実施形態では、合成スラグ材料は、50乃至90wt%の酸化カルシウムを含む。実施形態では、合成スラグ材料は5乃至30wt%のアルミナを含む。実施形態では、合成スラグ材料は、最大5wt%のシリカ、マグネシア、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄(III)、二酸化炭素及び/又はフッ素を含む。
【0050】
実施形態では、金属処理剤は、粉末の形態で溶融金属の表面に付される。幾つかのこのような実施形態では、粉末が溶融金属中に引き込まれて分散するように、溶融金属を回転デバイスで攪拌する。
【0051】
実施形態では、金属処理剤は、溶融金属中に供給されるワイヤの形態で加えられる。実施形態では、ワイヤは、第3の形態に関連して上述したように、保護外側シースを備えるコアードワイヤである。実施形態では、ワイヤは回転デバイスと協働して溶融金属中に供給される。
【0052】
幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を攪拌するために、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200又は少なくとも300rpmの速度で回転する。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を攪拌するために、600rpm以下、500rpm以下、400rpm以下又は300rpm以下の速度で回転する。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、50乃至600rpm、100乃至300rpm、又は100乃至200rpm、例えば150rpmの速度で回転する。より高い回転速度は、ローターヘッドからの下向きの流れの全体的な流速及び量を増加させる(つまり、底部撹拌が増加する)が、溶融金属への空気同伴も増加させる。600rpmを超えて回転速度を上げると、渦が形成される可能性があり、この渦は空気を再び溶融物に引き込んで、有害な影響を及ぼす。幾つかの実施形態では、回転速度は、本発明の方法の間に変化する。幾つかの実施形態では、回転速度は、本発明の方法の間、より大きい開始回転速度から減少してよい。金属が冷たくなるにつれて溶融金属の密度が増加し、撹拌に必要な電力が増加するからである。例えば、回転デバイスの回転速度は200rpmで開始し、本発明の方法の間に120rpmまで低下してよい。
【0053】
第4の態様の方法は、コアレス誘導炉(CIF)又は取鍋炉(LF)を含む、任意の取鍋又は炉での使用に適している。本発明の方法が取鍋で使用される実施形態では、溶融金属は、電気アーク炉(EAF)又はCIFから取鍋に注湯(出湯)されてよい。第3の態様の方法は、溶鋼の処理に特に適しているが、脱硫及び/又は含有物除去を必要とする他の溶融金属、例えば鉄を処理するために使用されてもよい。
【0054】
実施形態では、回転デバイスは、第1の態様に基づく回転デバイスである。
【0055】
本発明の第5の態様に従って、溶融金属の処理において、本発明の第1の態様に基づく回転デバイスの使用が提供される。好ましくは、溶融金属は溶鋼である。
【0056】
第3の態様の方法に関連して説明された任意の特徴及び実施形態の何れもが、第4の態様の方法に同様に適用されてよいことは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
以下、本発明の実施形態について、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照して、単なる例として説明する。
【0058】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に基づく回転デバイスを示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に基づく回転デバイスに使用する中空シャフトを示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に基づく回転デバイスを示す。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に基づく回転デバイスの概略図であって、回転デバイスは、溶融金属の攪拌及び処理に使用する攪拌装置と組み合わされている。
【
図8】
図8は、(a)二重プレート型ローターヘッド設計と、(b)600rpmで回転する単一プレート型ローターヘッド設計と関する速度場シミュレーションデータを示す。
【
図9】
図9は、
図10に示される速度場シミュレーションデータに対応する、スケーリングされた流れパターンシミュレーションデータを示す。
【
図10】
図10は、(a)100rpm、(b)200rpm、(c)300rpmで回転する単一プレート型ローターヘッドの速度場とスケーリングされた流れパターンのシミュレーションデータである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に基づく回転デバイス100を示す。回転デバイス100は、管状スリーブ1と、管状スリーブ1の内側に延びる中空シャフト3とを備えている。
【0060】
管状スリーブ1の一端にローターヘッド5が一体的に形成されている。ローターヘッド5は、第1の平面(即ち、プレート)7と第2のプレート9とを備える標準的な二重プレート型設計であり、各々が管状スリーブ1の長手方向軸に対して垂直に延びている。第1のプレート7と第2のプレート9は、複数のピラー11によって互いに連結されている。ローターヘッド5には更に、溶融金属中にガスを放出するためのガス排出口13が、第1のプレート7を貫通して延びるボアの形態で設けられている。
【0061】
中空シャフト3は、第1の端部15と第2の端部17を備えており、第1の端部15は管状スリーブ1内に入っている。中空シャフト3は、(
図3に示すように)それを貫通して延びるボア19を更に備える。管状スリーブ1は、中空シャフト3のボア19をローターヘッド5のガス排出口13に流体的に接続する導路21を備えており、ガス及び/又は固体金属処理添加剤が中空シャフト3を通って流れて、使用する溶融金属にローターヘッド5を通って流出するようになっている。幾つかの実施形態(図示せず)では、中空シャフト3は、それを貫通して延びる複数のボアを含んでよく、これらボアにより、気体や固体の複数の金属処理添加剤を、中空シャフト3を通して別々に供給することができる。
【0062】
中空シャフト3の第1の端部15は、管状スリーブ1の相補的な受け部25と係合するロック部23を備えている。ロック部23は、6つの隣接する弦が除去された円形の断面形状であり、即ち、ロック部23は、略六角形の断面を有する。管状スリーブ1の受け部25は、対応する断面形状を有しており、ロック部23の縁部及び頂点が受け部25に突き当たり、管状スリーブ1内での中空シャフト3の独立した回転を防止するようになっている。
【0063】
中空シャフト3の第2の端部17は、管状スリーブ1から突出しており、回転デバイス100を回転させるための装置(例えば、
図7に示す)に結合されるように構成されている。図示されている実施形態では、中空シャフトの第2の端部17は、円周溝25を備えている。円周溝25は、Vベルトを介してモータに接続するためのプーリとして機能してもよい。或いは、円周溝25は、カラー(例えば、
図6に示す)と係合するように構成されてよく、このカラーは、Vベルトを介してモータに接続するためのプーリとして、又は、他の手段、例えば、ナット及びボルトによってモータシャフトに接続するためのフランジとして作用してよい。図示されている実施形態では、中空シャフト3の第2の端部17は、中空シャフト3を管状スリーブ1に固定するクランプ手段と係合するための窪み27を更に備える(例えば、
図7に示す)。
【0064】
管状スリーブ1は、管状スリーブ1の長手方向軸に沿って測定された長さLAを有する。中空シャフト3は、長手方向軸に沿って測定される長さLBを有する。管状スリーブ1は、最大直径DAからその長さ方向に沿って内向きにテーパー状になっており、管状スリーブの直径がローターヘッド5に向かって若干小さくなっている。中空シャフト3はまた、管状スリーブ1の内部寸法に対応して、第1の端部17における最大直径DBから第2の端部15における最小直径まで、中空シャフト3の長さに沿って内向きにテーパー状になっている。ローターヘッドは直径DCを有する。
【0065】
図5は、本発明の別の実施形態に基づく回転デバイス200を示す。回転デバイス200は、管状スリーブ31と中空シャフト33とを備えている。管状スリーブ31及び中空シャフト33は、
図1~4に示した管状スリーブ1及び中空シャフト3と概ね同じであるが、管状スリーブ1が単一プレート型設計を有するローターヘッド35を備える点で異なる。ローターヘッド35は、管状スリーブ31の長手方向軸Aに垂直に延びる平面(即ち、プレート)37を備えており、プレート37の基部からベーン39が突出している。プレート37は概ね正方形で、凹状縁部41と切頭隅部43とを有する。
【0066】
回転デバイス200は、管状スリーブ31を中空シャフト33に固定するためのクランプ手段45を備えている。回転デバイス200は、中空シャフト33の第2の端部の周囲に嵌まるカラー47を更に備える。カラーはフランジ49を提供しており、フランジ49は(例えば
図7に示すように)回転デバイス200を回転装置に結合するように構成されている。
【0067】
図6は、
図5に示した回転デバイス200の断面図である。中空シャフト33の第1の端部は、管状スリーブ31内に収められており、管状スリーブ31の相補的な受け部53と係合するロック部51を備えている。ボア55が中空シャフト33を貫通して延びており、導路59,61によってローターヘッド35のガス排出口57に流体連通している。
【0068】
中空シャフト33の第2の端部には、カラー47と係合する円周溝63が形成されている。クランプ手段45は、カラー47と協働して管状スリーブ31を中空シャフト33に固定する。
【0069】
図7は、本発明の実施形態による回転デバイス300を示しており、回転デバイス300は、回転デバイス300を回転させ、且つ、回転デバイス300を通して溶融金属にガス及び/又は金属処理添加剤を注入するための装置302と組み合わされている。使用時、回転デバイス300は取鍋304(又は炉)内に降ろされる。取鍋304には、回転デバイス300を下降させる前又は後の何れかに溶融金属が充填されてよい。その後、回転デバイス300が用いられて、例えば本発明に従った方法で溶融金属が処理される。
【0070】
<実施例1>
本発明の実施形態による回転デバイスが、黒鉛を含む中空シャフトと、溶融シリカを含む管状スリーブとを用いて作製された。管状スリーブは、一体的に形成されたローターヘッドを備えていた。長手方向軸に沿って測定した管状スリーブの長さは123cmであった(ローターヘッドを含まない)。黒鉛シャフトは、管状スリーブの長さの100cmに沿って管状スリーブ内に延びていた。黒鉛シャフトの最大直径は7.6cmであった。管状スリーブの最大直径は11.6cmであり、壁厚は1.6cmであった。
【0071】
ローターヘッドは、4つのピラーによって接続された、凹状縁部及び切頭隅部を有する2つの平行な正方形プレートを含む、標準的な二重プレート型設計を有していた。第1のプレートには、溶融金属中にガスを放出するためのボアが中央に配置されていた。プレートの直径は25cmであった。
【0072】
回転デバイスは、溶融金属を処理するために首尾よく使用された。繰り返し使用すると、最終的には、溶融シリカの僅かな軟化に起因してローターヘッドの若干の反りと歪みが生じ、これが撹拌効率を低下させた。
【0073】
<実施例2>
本発明の一実施形態による別の回転デバイスは、黒鉛を含む中空シャフトと、VISO(商標)等方圧加圧炭素結合アルミナを含む管状スリーブとで作られた。回転デバイスの寸法は、実施例1の回転デバイスと同じであった。
【0074】
実施例1の二重プレート型ローター設計は、ローターヘッド全体にわたって完全な高密度化が常に達成されるわけではないので、アイソプレス(isopressing)による製造において幾つかの困難をもたらすことが分かった。従って、実施例2の回転デバイスは、単一プレートとベーンとを備える改良型ローターヘッド設計を有していた。プレートは概ね正方形であり、凹状縁部及び切頭隅部を有しており、各隅部においてプレートの基部から延びる4つのベーンを有していた。このプレートには、溶融金属中にガスを放出するためのボアが中央に配置されていた。プレートの直径は25cmであった。
【0075】
実施例2の回転デバイスは、溶融金属を18回処理するのに首尾良く使用され、変形の兆候もなく、摩耗の兆候も最小限であった。しかしながら、回転デバイスにスラグが大量に堆積すると、撹拌効率が低下し始めた。黒鉛シャフトは破損の兆候を示さなかったので、黒鉛シャフトは交換用の外側スリーブと共に更に使用することが可能であった。黒鉛シャフトは、少なくとも50回は故障することなく使用できることが分かった。
【0076】
<流れパターンのシミュレーション>
OpenFoam(商標)ソフトウェアを使用して流れパターンシミュレーションを実行して、様々な異なる回転速度で、溶鋼中の単一プレート型及び二重プレート型ローター設計が示す流れの速度及び方向を比較した。それらの結果を
図8~10に示す。
【0077】
図8は、二重プレート型ローター(a)と単一プレート型ローター(b)を600rpmで15秒間回転させた後の速度場であり、
図9はスケーリングされた流れパターンである。両方の設計によって達成されたピーク流速は同様であった。しかしながら、流れの方向はわずかに異なっており、二重プレート型ローターからの出口流はほとんど水平であったのに対し、単一プレート型設計はより下向きの流れを示した。何れの設計のローターも溶鋼中で良好な撹拌シミュレーション性能を示したが、単一プレート型ローターは二重プレート型ローターより僅かに高いトルクを示した(単一プレート型ローターは271N.m、二重プレート型ローターは235N.m)。
【0078】
図10は、単一プレート型ローターを(a)100rpm、(b)200rpm、(c)300rpmで15秒間回転させた後の速度場とスケーリングされた流れパターンとを示している。撹拌性能は、回転速度の増加と共に増加することが示された。
【0079】
<含有物の除去と脱硫>
本発明の一実施形態による方法を、脱硫の標準的方法と比較して試験した。
【0080】
標準的方法(方法1)では、コアレス誘導炉(CIF)、電気アーク炉(EAF)、又は、それら両方から溶鋼を注入取鍋に出鋼した。両方の場合において、CIFからの金属は、EAFからの金属の前に出鋼された。アルミニウムを含むコアードワイヤとSiCaBaを含むコアードワイヤを溶鋼中に供給した。多孔質プラグを使ってアルゴンガスを溶鋼中に5~20分間フラッシュした。
【0081】
本発明の方法(方法2)では、方法1と同様にして溶鋼を注湯用取鍋に出鋼した。アルミニウムを含むコアードワイヤとSiCaを含むコアードワイヤを溶鋼中に供給した。実施例2の回転デバイスを用いてアルゴンを排出し、200~240rpmで5~15分間金属を攪拌した。
【0082】
方法1と方法2を、2.5トンから18トンまでの異なる量の溶鋼で複数回行った。各方法によって処理された溶鋼のサンプルを、Thermo Scientific(商標)ARL 4460分光計でSpark-DAT分析法を用いて、それらの含有物含有量について分析した。Spark-DAT分析法は、サンプル領域に一回のスパークを当てることを含む。スパークが当たった位置に固体含有物が存在する場合、分光計ピークが生成される。このプロセスをサンプル領域全体で繰り返す。その後、生成されたピークの数をカウントすることにより、サンプル領域内の含有物の数を決定することができる。方法1及び方法2についての平均含有率を、上記の複数回の反復手順から平均含有率を取ることによって計算した。結果を表1に示す。
【0083】
【0084】
方法2で処理された溶鋼は、平均して、方法1(標準的なパージプラグ処理)で処理された溶鋼よりも小さい含有物が14~30%少なく、大きな含有物が50~60%少なかった。
【0085】
方法2で処理された溶鋼は、方法1で処理された溶鋼よりも硫黄含有量が著しく少ないことも分かった。方法1を用いた場合、典型的な硫黄含有量はEAFで約100ppm、CIFで約70ppmであった。方法2を用いると、硫黄含有量は約20ppmまで減少した。
【0086】
方法2によって含有物除去が改善された結果として、溶融金属の注湯温度が標準的な方法に比べて20~30℃低下し、大幅なエネルギー節約が実現された。また、より低い金属温度は、耐熱材料の磨耗を減少させ(それにより耐熱材料の寿命が延びる)、鋳造物が凝固する際の液体の収縮を減少させ、金属表面の再酸化も減少させる。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
<回転デバイス>
本発明の第1の態様に従って、溶融鉄系金属をガスで処理するための回転デバイス(本明細書では「ローター」とも称する)が提供される。このデバイスは、一端にローターヘッドを有する管状スリーブと、中空シャフトとを備えており、中空シャフトの少なくとも一部が管状スリーブによって囲まれるように中空シャフトは管状スリーブ内に延びており、また、中空シャフトは管状スリーブ内の相補的な受け部と係合するように構成されたロック部を備えている。ローターヘッドは、溶融鉄系金属中にガスを放出するためのガス排出口を備えており、中空シャフトは、ローターヘッドのガス排出口に流体連通している。管状スリーブとローターヘッドは、腐食と熱衝撃に強い耐熱材料から形成される。中空シャフトは黒鉛から形成され、管状スリーブはより耐性の高い耐熱材料から形成される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明の第2の態様では、第1の態様の回転デバイスと共に使用するための管状スリーブが提供される。この管状スリーブは、内側に相補的な受け部を備えており、また、黒鉛よりも耐性の高い耐熱材料から形成されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属をガスで処理するための回転デバイス
(100,200)において、
一端にローターヘッド
(5,35)を備える管状スリーブ
(1,31)であって、前記ローターヘッド
(5,35)は溶融
鉄系金属中にガスを分散させるためのガス排出口
(13,57)を備えている、管状スリーブ
(1,31)と、
前記管状スリーブ
(1,31)内に延びる中空シャフト
(3,33)であって、前記中空シャフト
(3,33)の少なくとも一部が前記管状スリーブ
(1,31)で囲まれ
て、前記管状スリーブ(1,31)の相補的な受け部(25,53)と係合するように構成されたロック部(23,51)を備える、中空シャフト
(3,33)と、
を備えており、
前記中空シャフト
(3,33)は、前記ローターヘッド
(5,35)の前記ガス排出口
(13,57)に流体連通されており、
前記管状スリーブ
(1,31)は、腐食及び熱衝撃に耐性のある耐熱材料で形成されており、
前記中空シャフト
(3,33)は、黒鉛
から形成されて
おり、
前記管状スリーブ(1,31)は、耐性のある耐熱材料から形成されている、
回転デバイス。
【請求項2】
前記管状スリーブ
(1,31)は、溶融シリカ;アルミナ;炭化ケイ素;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物;アイソプレスされた炭素結合アルミナ;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いは、それらの組合せを含む耐熱材料から形成されている、請求項1に記載の回転デバイス。
【請求項3】
前記ローターヘッド
(5,35)は前記管状スリーブ
(1,31)と一体的に形成されている、又は、前記ローターヘッド
(5,35)が前記管状スリーブ
(1,31)の端部に結合されている、請求項1又は請求項2に記載の回転デバイス。
【請求項4】
前記中空シャフト
(3,33)は第1の端部及び第2の端部を有しており
、前記中空シャフト
(3,33)の前記第2の端部は、前記回転デバイスを回転させるための装置
(302)に結合されるように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項5】
前記相補的な受け部
(25,53)は、前記ローターヘッド
(5,35)を備える前記管状スリーブ
(1,31)の端部に配置される、請求項4に記載の回転デバイス。
【請求項6】
前記ロック部
(23,51)及び前記受け部
(25,53)は、多角形状の、又は弦が除去された円形の断面を有しており、任意選択的に、前記断面は、少なくとも3つ、4つ、5つ、又は6つの頂点を備える、請求項1
乃至5の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスと共に使用するための管状スリーブ
(1,31)であって、前記管状スリーブ(1,31)は、内部に相補的な受け部(25,53)を備えており、黒鉛よりも耐性のある耐熱材料から形成されている、管状スリーブ。
【請求項8】
溶融金属を処理する方法であって、
溶融金属の露出面に合成スラグ材料の層を付することと、
請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスを使用して溶融金属を撹拌し、溶融金属が合成スラグ材料の層を通って流れるようにすることと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記ローターヘッド
(5,35)を通して溶融金属中にガスを分散させることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記合成スラグは酸化カルシウムを含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、金属処理添加剤を含むコアードワイヤを前記溶融金属中に供給することを更に含んでおり、任意選択的に、前記コアードワイヤは、高融点金属を含む外側シースと、金属処理添加剤を含む内側コアとを含んでおり、任意選択的に、金属処理添加剤は、マグネシウム、フェロシリコンマグネシウム、カルシウム、酸化カルシウム、炭化カルシウム、又はそれらの組合せを含む、請求項8乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、金属処理添加剤を、任意選択的に、固体金属処理添加剤を、前記ローターヘッド
(5,35)を通して放出することを含む、請求項8乃至11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
溶融金属の処理方法であって、
溶融金属に金属処理剤を加えることと、
請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスを用いて溶融金属を攪拌することと、
前記ローターヘッド
(5,35)を通して溶融金属中にガスを放出することと、
を含む、方法。
【請求項14】
溶融金属は鋼又は鉄である、請求項8乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
溶融金属の処理における請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスの使用。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を処理するための回転デバイス及び方法に関する。特に、本発明は、硫黄、溶存ガス、固体含有物などの望ましくない不純物を溶融金属から除去して、金属処理添加剤を溶融金属に導入するための回転デバイス及び方法に関する。本発明はまた、回転デバイス用の管状スリーブと、溶融金属の処理における回転デバイスの使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属中の望ましくない不純物は、金属鋳造プロセスにおいて重大な問題を引き起こして、完成した鋳造品の品質に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、固体含有物(典型的にはアルミナやシリカのような固体酸化物)は、金属に欠陥や不連続面を生じさせ、鋳造に使用されるノズルを詰まらせる可能性があり、溶存ガス(水素ガスなど)は、望ましくない多孔性及び/又は脆性を引き起こす可能性がある。鉄系金属、特に鋼は、溶融プロセスで使用される原材料由来の残留硫黄を含むことがあり、これは鋳造物の脆性を増大させる。従って、完成した鋳造物の品質を向上させるためには、溶融金属からできるだけ多くの不純物を除去することが重要である。
【0003】
溶存ガス及び固体含有物は、通常、アルゴン、窒素及び/又は一酸化炭素のような金属に不溶であるガス又はガス混合物で溶融金属をパージすることによって除去される。パージガスの気泡は、溶融金属中を移動する間に遭遇する溶存水素や固形含有物を捕捉し、表面に持ち上げる。パージガスの気泡は、溶融金属を通って移動する間に遭遇する溶存水素及び固体含有物を捕捉して、それらを表面へと持ち上げる。従来、このようなパージは、溶融炉又は鋳造取鍋の底部に設けられた多孔性プラグによって行われており、この多孔質プラグは、金属中にパージガスを泡立たせる。アルミニウム(融点は約660℃であり、溶融時の密度は約2.4g/cm3である)などのより低温且つより低密度の溶融金属をパージする別の方法は、端部に取り付けられたローターを有する中空シャフトを通してガスを金属中に注入することによるものであり、シャフトが回転して、注入ガスを溶融金属中に分散させる。この方法は、注入された気泡が、回転するローターヘッドによって細かく砕かれることから、多孔質プラグを使用するよりも微細な気泡を生成し、これが撹拌効率を改善して、より微細な含有物を溶融金属から除去することを可能にする。この場合、このプロセスは「脱ガス(degassing)」と呼ばれることがある。
【0004】
脱ガスローターは従来、多くの理由から、鉄や鋼などのより高温且つより高密度の金属では使用されていない。鉄及び鋼は共に、融点が約1150~1550℃であって、溶融時に約7g/cm3の密度を有する。従来の耐熱性セラミック材料は、一般的にアルミ用ローターに使用されているが、溶融した鉄又は鋼に浸漬する前に徐々に昇温することを必要とする。そのようにしないと、それらは熱衝撃によって粉砕してしまうだろう。このようなプライミング(priming)は、面倒で時間のかかる手順である。また、溶融鉄/鋼の極端な温度及び密度は、ローターを作る材料に応じて、使用中にローターヘッドを急速に反らせて変形させることがあり、これは、ローターの撹拌及びパージ効率を低下させる。溶鋼は、特に金属表面のスラグ層だけでなくバルク金属自体も、一部の耐熱性セラミック材料を腐食させることができ、溶融アルミニウム用ローターの製造に使用される一部の耐熱材料(例えば黒鉛)は、溶鋼に溶解することがある。そのため、従来のローターの使用は困難であって、高温の鉄や鋼のような金属では寿命が非常に短くなる傾向があり、このような用途では、一般的に多孔質プラグの使用が好まれている。
【0005】
鉄系金属の脱硫は、幾つかの異なる方法で行うことができる。ある方法では、カンバラリアクター(Kanbara Reactor)内で溶融金属を脱硫添加剤で処理する。このリアクターは、非常に大きなベッセル(通常、少なくとも100トンの容量を有する)と、溶融金属を撹拌するための十字形のインペラとを備えている。脱硫添加剤(典型的には酸化カルシウム粉末)は、インペラの回転によって溶融金属中に混合し、そこで添加剤は金属中の硫黄と反応して固体生成物(例えば、硫化カルシウム)を形成する。固体生成物は最終的に金属の表面に浮遊してスラグの層を形成する。これはスキミングによって除去することができる。カンバラリアクターの脱硫では、上述したように、亀裂を回避するために、インペラは溶融金属に浸漬される前に徐々に昇温されなければならない。
【0006】
鉄系金属を脱硫するための別の方法では、スプールから金属に供給されるコアードワイヤの形態の脱硫添加剤で溶融金属を処理する。コアードワイヤは、高融点材料(例えば鋼)のシースで囲まれた脱硫添加剤(通常、カルシウム及び/又はマグネシウムを含む)のコアを含んでいる。シースは、溶融金属に接触して直ちに酸化しないように添加剤コアを保護し、また、ワイヤが金属に送り込まれるにつれて徐々に溶融又は溶解し、添加剤コアを表面下の所定の深さで解放して、溶融金属の上部を通って広がるようにする。溶融金属へのワイヤの供給速度は、添加剤が所望の深さで解放されることを確かにするために、外側シースの溶融/溶解速度とバランスが取られている。この方法は通常、多孔質プラグの使用と組み合わされ、多孔性プラグは、金属を通してガスを泡立たせ、添加剤を分散させるのを助ける。
【0007】
脱硫に加えて(又は脱硫の代わりに)、金属処理添加剤を用いて、パージ後に残る含有物の組成、形態、及び/又は分布が変更されてよい。例えば、カルシウム添加剤は、溶鋼中で固体酸化物含有物(アルミナやシリカなど)と反応して、低融点のカルシウムアルミネート又はシリケートを形成するために使用されてよい。低融点のカルシウムアルミネート又はシリケートは、鋼の融点で液体であるので鋳造ノズルを詰まらせない。添加剤はまた、鋳造金属中に亀裂を生じやすい断層線(fault-lines)を形成し得る樹枝状や板状の含有物の形態を変化させ、その結果、含有物は、より球状になることでそのような断層線を形成しない。例えば、カルシウム添加剤を鋼に使用して固体酸化物含有物の形態(morphology)を変えることができ、マグネシウム添加剤を鉄に使用して炭素含有物の形態を変えることができる。
【0008】
カルシウムとマグネシウムの沸点は夫々、鋼と鉄の融点以下であることから、カルシウム又はマグネシウムの元素を溶融鉄系金属に導入することは困難であり、且つ危険である。従って、元素Ca/Mgは、一度に添加される量が多すぎる場合に溶融鉄/鋼と接触すると爆発的に蒸発するか、又は急速に酸化し得る。その結果、添加剤は通常、元素形態ではなく、カルシウムシリコン(CaSi)、カルシウムシリコンバリウム(CaSiBa)などの安定化形態で添加される。
【0009】
CN106435216は、黒鉛からなるポンピングローターを開示している。CN210560564は、黒鉛成分を有するローターを開示している。JPS6245464とRU2247289は金属処理用ローターを開示している。EA016954は、アルミニウム処理用のローターを開示している。
【0010】
本発明は、溶融金属を処理するための改良された装置及び方法を提供すること、又は、少なくとも有用な代替手段を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0011】
<回転デバイス>
本発明の第1の態様に従って、溶融鉄系金属をガスで処理するための回転デバイス(本明細書では「ローター」とも称する)が提供される。このデバイスは、一端にローターヘッドを有する管状スリーブと、中空シャフトとを備えており、中空シャフトの少なくとも一部が管状スリーブによって囲まれるように中空シャフトは管状スリーブ内に延びており、また、中空シャフトは管状スリーブ内の相補的な受け部と係合するように構成されたロック部を備えている。ローターヘッドは、溶融鉄系金属中にガスを放出するためのガス排出口を備えており、中空シャフトは、ローターヘッドのガス排出口に流体連通している。管状スリーブとローターヘッドは、腐食と熱衝撃に強い耐熱材料から形成される。中空シャフトは黒鉛から形成され、管状スリーブはより耐性の高い耐熱材料から形成される。
【0012】
本発明者らは、黒鉛を含む材料から作られた内側中空シャフトと、より耐性の高い耐熱材料から作られた外側管状スリーブ及びローターヘッドとを備える二部品ローターが、鋼のような高温溶融金属中で優れた耐久性及び寿命を有することを見出した。本発明の実施形態は、溶鋼中で繰り返し試験を行ってもほとんど変形しない一方で、優れた攪拌及びパージ効率を達成した。黒鉛を含む中空シャフトは、溶鋼の高温に適切な耐性を有しており、溶融又は粉砕することがない一方で、使用中に破損することなくモータに取り付けられるのに十分な程度の塑性を有することが見出された。理論に束縛されることを望むものではないが、金属から作られた内側シャフトは、溶融した鉄/鋼において経験する温度下で過度に軟化し、セラミック材料から作られた内側シャフトは、モータに取り付けるには脆すぎると考えられる。故に、本発明者らは、黒鉛が本発明の中空シャフトに使用するのに特に適していることを見出した。黒鉛は溶鋼中に溶解し得るので、通常、黒鉛は溶鋼中での使用に適しているとは考えられないが、本発明では、黒鉛を含む中空シャフトは外側管状スリーブによって保護される。
【0013】
実施形態では、管状スリーブは、溶融シリカ;炭化ケイ素;アルミナ;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含む等方圧加圧された(アイソプレスされた)耐熱混合物;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いは、それらの組合せを含む耐熱材料から形成される。ローターヘッドもまた、溶融シリカ;炭化ケイ素;アルミナ;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いは、それらの組合せを含む耐熱材料から形成されてよい。幾つかの実施形態では、管状スリーブとローターヘッドは共に同じ材料から作られる。別の実施形態では、管状スリーブとローターヘッドは異なる材料から作られる。
【0014】
溶融シリカ;炭化ケイ素;アルミナ;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いはそれらの組合せを含む高抵抗耐熱材料はまた、プライミングの必要なしに溶鋼中で使用されるのに十分な耐腐食性及び熱衝撃性を有する。しかしながら、これらの材料は非常に高価である。更に、これらの材料は比較的脆く、本発明の発明者らは、それらがモータに取り付けるのに必要な塑性を有していないことを知った。理論に拘束されることを望むものではないが、そのような高耐性材料から全体的に作られた単一部品ローターは、使用時の振動に対して脆弱であって、モータとの取付け点の近傍で亀裂が入り、ローターを不安定にし、最終的には完全に破壊する可能性があると考えられる。本発明の回転デバイスは、そのような材料から作られた外側スリーブのみを備えており、必要とされる高耐熱材料の量を低減することによって、そして、モータに取り付けられたときに亀裂の影響を受けにくいより塑性の高い耐熱材料(黒鉛を含む)から作られた内側シャフトを設けることによって、上記の問題の両方に対処する。
【0015】
実施形態では、管状スリーブ及び/又はローターヘッドは、アイソプレスされた炭素結合アルミナを含む耐熱材料、例えば、Vesuvius Plc.によって商品名Viso(商標)で製造されている耐熱材料から形成される。本発明の発明者らは、アイソプレスされた炭素結合アルミナを使用して作製されたローターが特に耐久性があり、スラグの蓄積がローターの更なる使用を妨げる前に、変形することなく最大18回の使用に耐えられることを見出した。
【0016】
実施形態では、ローターヘッドは、管状スリーブと一体的に形成される。他の実施形態では、ローターヘッドは、管状スリーブの端部に結合される別個の構成要素である。そのような実施形態では、ローターヘッドは、任意の適切な手段、例えばねじ結合、押し込み嵌めなどによって管状スリーブの端部に結合されてよい。
【0017】
実施形態では、中空シャフトは、第1の端部及び第2の端部を有しており、中空シャフトの第1の端部は、管状スリーブによって囲まれる。実施形態では、中空シャフトの第2の端部は、回転デバイスを回転させるための装置(例えば、モータ)に結合されるように構成される。例えば、中空シャフトの第2の端部は、Vベルトによってモータに接続されるように構成されたプーリを備えてよく、又は、中空シャフトの第2の部端は、モータシャフトに直接取り付けられるように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、中空シャフトの第2の端部は、Vベルト用プーリを備えるカラー、又は、(例えばボルト用開口を備えたフランジを設けることで)他の手段を用いてモータシャフトに結合されるように構成されたカラーを受け入れるように構成されてよい。
【0018】
中空シャフトの長さは、第1の端部と第2の端部の間で測定されてよい。実施形態では、中空シャフトの長さの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が管状スリーブによって囲まれている。実施形態では、中空シャフトは、管状スリーブによって実質的に完全に囲まれているが、そのような実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトの第2の端部の近傍で開口しており、中空シャフトの第2の端部は、依然として、回転デバイスを回転させるための装置に結合されてよいことは理解されるであろう。
【0019】
実施形態では、(管状スリーブによって囲まれる)中空シャフトの第1の端部は、管状スリーブ内で相補的な受け部と係合するように構成されたロック部を備えている。ロック部と受け部は、管状スリーブを中空シャフトにしっかりと固定するのに役立つだけでなく、中空シャフトと管状スリーブを相互に回転するようにロックし、使用中に中空シャフトが管状スリーブから独立して回転することを防止してよい。相補的な受け部は、ローターヘッドを備える管状スリーブの端部に配置されてよい。使用中、管状スリーブは軟化する可能性があり、内部の黒鉛中空シャフトによって支持されているが、ローターに幾らかのねじれが生じることがある。ローターヘッドを備える管状スリーブの端部に受け部を設けることによって、ローターヘッドから離れた端部から管状スリーブが駆動される場合よりも管状スリーブのねじれは少なくなる。受け部は必ずしも管状スリーブの最端にある必要はなく、最端から離間して配置されてよいことは理解されるであろう。
【0020】
実施形態では、ロック部と受け部は多角形状断面を有する。このような実施形態では、ロック部と受け部は、同じ多角形状断面を有しており、ロック部は、受け部の内側にぴったりと嵌合するように直径が僅かに小さいことは理解されるであろう。ロック部の縁部が受け部の縁部に当接することで、ロック部が受け部内で回転することが防止される。幾つかの実施形態では、多角形状断面は少なくとも3、4、5又は6個の頂点を備えている。好ましくは、多角形状断面は、12、11、又は10個以下の頂点を備えており、多角形の縁部の間に形成される角度が十分に鋭っていることを確実とすることで、ロック部の頂点が隣接する受け部の頂点間で摺動することを抑制する。他の実施形態では、ロック部と受け部は、弦を取り除いた円形断面を有する。
【0021】
管状スリーブの長さは、その長手方向軸に沿って測定されてよい。幾つかの実施形態では、中空シャフトは、管状スリーブの長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に沿って管状スリーブ内で延びる。そのため、中空シャフトは、ローターヘッド内に延びるのではなく、ローターヘッドを超えて終端してもよい。実施形態では、中空シャフトは、中空シャフトの第1の端部がローターヘッドに直に隣接するように、管状スリーブの実質的に全長に沿って管状スリーブ内に延びている。中空シャフトが管状スリーブの実質的に全長に沿って管状スリーブ内で延びておらず、中空シャフトの第1の端部がローターヘッドに直に隣接していない実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトをローターヘッドのガス排出口に流体接続する導路又はボアを含んでよい。
【0022】
幾つかの実施形態では、中空シャフトの第2の端部は、クランプ手段によって管状スリーブに固定されてよい。
【0023】
ローターヘッドは、溶融金属を撹拌するための適切な任意の形状又は構成を有してよい。
【0024】
実施形態では、ローターヘッドは、管状スリーブの長手方向軸に垂直な方向に延びる平面(即ち、プレート)と、その平面から管状スリーブの長手方向軸に実質的に平行な方向に突出する複数のベーンとを備えている。このような実施形態では、ガス排出口は、平面にボアを備えてよい。実施形態では、ボアは平面の中心に配置される。幾つかの実施形態では、ローターヘッドは、第1の平面に対向して配置されており、複数のベーン又はピラーによってそれに接続された第2の平面(即ち、プレート)を備える。このような実施形態はまた、第2のプレートの基部から突出するベーンを備えてよい。プレートは、実質的に円形又は多角形、例えば四角形であってよい。実施形態では、プレートは、凹状縁部及び切頭隅部を有する平行な正方形プレートであってよい。
【0025】
単一プレート型ローターヘッドの設計は、二重プレート型設計よりもプレス技術(例えば、アイソプレス炭素結合アルミナなどの材料を使用)による製造が容易であることが分かっている。二重プレート型ローターヘッドの設計はプレス技術で製造できるが、完全な高密度化がローターヘッド全体にわたって常に達成されるわけではないことが分かった。単一プレート型ローターヘッドの設計では、ローターヘッドから離れる下向きの流れの量が増える可能性があり、二重プレート型ローターヘッドの設計では、ローターヘッドから離れる横向きの流れの量が増える可能性がある。
【0026】
中空シャフトと管状スリーブは、摩擦嵌合を介して結合されてよい。他のカップリング手段及び機構も使用されてよい。
【0027】
本発明の第2の態様では、第1の態様の回転デバイスと共に使用するための管状スリーブが提供される。この管状スリーブは、内側に相補的な受け部を備えており、また、黒鉛よりも耐性の高い耐熱材料から形成されている。
【0028】
管状スリーブは、溶融シリカ;炭化ケイ素;アルミナ;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いは、それらの組合せを含む耐熱材料から形成されてよい。
【0029】
幾つかの実施形態では、管状スリーブは、一端に一体的に形成されたローターヘッドを備えており、ローターヘッドはガス排出口を備える。他の実施形態では、管状スリーブは、一端に別個のローターヘッドに結合するための手段、例えばねじ結合手段を備えている。
【0030】
第2の態様の管状スリーブの長さは、その長手方向軸に沿って測定されてよい。実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトを受け入れるためのボアを含み、当該ボアは、管状スリーブの長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に沿って管状スリーブ内に延びる。実施形態では、中空シャフトを受け入れるためのボアは、管状スリーブの実質的に全長に沿って管状スリーブの内側に延びる。中空シャフトを受け入れるためのボアが管状スリーブの実質的に全長に沿って管状スリーブの内側に延びていない実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトを受け入れるためのボアをローターヘッドのガス排出口又はローターヘッドに結合するための手段に流体接続するための更なる導路又はボアを含んでよい。
【0031】
実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトの相補的なロック部と係合するように構成された受け部を含んでいる。幾つかの実施形態では、受け部は多角形状断面を有する。幾つかの実施形態では、多角形状断面は少なくとも3、4、5又は6個の頂点を備えている。幾つかの実施形態では、多角形状断面は12、11又は10個以下の頂点を備えている。他の実施形態では、ロック部及び受け部は、弦を取り除いた円形断面を有する。
【0032】
第1の態様に関連して説明された任意の特徴及び実施形態の何れもが、第2の態様に同様に適用されてよいことは理解されるであろう。
【0033】
<溶融金属の処理方法>
本発明の第3の態様によれば、溶融金属を処理する方法が提供される。この方法は、
溶融金属の露出面に合成スラグ材料の層を付することと、
ローターヘッドを備える回転デバイスを使用して溶融金属を撹拌し、溶融金属が面上の合成スラグ材料の層を通って流れるようにすること、
とを含む。
【0034】
実施形態では、溶融金属は、合成スラグ材料の層の少なくとも一部が攪拌中に面上に残るように攪拌される。
【0035】
実施形態では、本発明の方法は、ローターヘッドを通して溶融金属中にガスを放出することを更に含む。実施形態では、そのガスは、溶融金属に溶解しない1又は複数種のガスを含んでいる。実施形態では、ガスは、アルゴン、窒素、一酸化炭素、又はそれらの混合物を含んでいる。
【0036】
本発明の発明者らは、合成スラグ材料(フラックスとも呼ばれる)の層を金属に付すことと、回転デバイスで金属を攪拌して合成スラグの表面層を通すこととを組み合わせることが、溶融金属から硫黄を除去するのに非常に有効であることを見出した。理論に拘束されるものではないが、金属を撹拌するための回転デバイスの使用は、合成スラグの表面層を通って流れる金属の循環を改善し、より多くの硫黄が合成スラグによって捕捉されることを可能にすると考えられる。更に、ローターヘッドを通して溶融金属中にガスを放出することで、固体含有物と溶存ガスの除去が改善される。従って、本発明の方法は、含有物の除去と、脱ガスと、溶融金属の脱硫とを同時に行うための非常に効率的且つ効果的な方法を提供する。
【0037】
実施形態では、溶融金属は鉄系金属である。実施形態では、溶融金属は鉄又は鋼である。
【0038】
実施形態では、回転デバイスは、第1の態様に基づく回転デバイスであって、鉄や鋼のような、より高温で高密度の溶融金属を撹拌するのに特に適している。
【0039】
実施形態では、合成スラグ材料は、酸化カルシウム、アルミナ、シリカ、マグネシア、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄(III)、二酸化炭素及びフッ素のうちの1又は複数を含む。幾つかの実施形態では、合成スラグ材料は、50乃至90wt%の酸化カルシウムを含む。実施形態では、合成スラグ材料は、5乃至30wt%のアルミナを含む。実施形態では、合成スラグ材料は、最大5wt%のシリカ、マグネシア、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄(III)、二酸化炭素及び/又はフッ素を含む。
【0040】
実施形態では、本発明の方法は、金属処理添加剤を含むコアードワイヤを溶融金属中に供給することを更に含む。実施形態では、コアードワイヤは、鉄や鋼などの高融点金属を含む外側シースと、金属処理添加剤を含む内側コアとを備えている。実施形態では、金属処理添加剤は、脱硫添加剤、含有物改質添加剤、又はそれらの混合物を含んでいる。含有物改質添加剤は、前述したように、溶融金属中の固体含有物の組成、形態及び/又は分布を改質するための添加剤である。実施形態では、金属処理添加剤は、マグネシウム、フェロシリコンマグネシウム、カルシウム、酸化カルシウム、炭化カルシウム、バリウム、ストロンチウム、又はそれらの組合せを、元素又は化合物の形態で含む。
【0041】
使用中、外側シースは、コアの添加剤を即時の反応又は酸化から保護し、徐々に溶融又は溶解して、溶融金属の表面下の所定の深さで添加剤を放出する。コアードワイヤ及び合成スラグによる処理の組合せは、脱硫を、及び/又は、溶融金属中の含有物の処理・除去を更に改善することができる。
【0042】
実施形態では、本発明の方法は、ローターヘッドを通して又はそれに隣接して固体金属処理添加剤を放出することを含む。実施形態では、添加剤はワイヤ又は粉末の形態である。実施形態では、添加剤はコアードワイヤに含まれている。ローターヘッドを通して又はローターヘッドに隣接して添加剤を放出することにより、添加剤を溶融金属全体に迅速且つ効率的に分散させることができる。本発明の発明者らは、Ca/Mgが蒸発又は酸化する前に金属全体に迅速に分散されるので、この迅速な分散によって、元素状Ca/Mgを添加剤として使用することが可能になり、溶融金属中で元素状Ca/Mgを使用することに通常伴う危険が大幅に低減されることを見出した。その結果、溶融金属を効果的に処理するのに必要な添加剤の量が減少し、完成した鋳造物に脆性をもたらす過剰な添加剤の蓄積を抑えることもできる。
【0043】
ローターヘッドを通して添加剤を放出することは、特に、添加剤が回転デバイス内に収容されている間に添加剤が溶融金属に曝されることを防ぎ、そして、ローターヘッドの深さに対応する深さで添加剤が溶融金属中に放出されることを可能にするので、保護コーティングは必ずしも必要とされない。しかしながら、保護コーティングを含むコアードワイヤは、他の形態の金属処理添加剤が利用できない場合、又は、添加剤が溶融金属中に放出される前により低い深さに達する必要がある場合に、便宜上使用されてよい。
【0044】
幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を攪拌するために、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200又は少なくとも300rpmの速度で回転する。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を攪拌するために、600rpm以下、500rpm以下、400rpm以下又は300rpm以下の速度で回転する。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、50乃至600rpm、100乃至300rpm、又は100乃至200rpm、例えば150rpmの速度で回転する。より高い回転速度は、ローターヘッドからの下向きの流れの全体的な流速及び量を増加させる(つまり、底部撹拌が増加する)が、溶融金属への空気同伴も増加させる。600rpmを超えて回転速度を上げると、渦が形成される可能性があり、この渦は空気を再び溶融物に引き込んで、有害な影響を及ぼす。幾つかの実施形態では、回転速度は、本発明の方法の間に変化する。幾つかの実施形態では、回転速度は、本発明の方法の間、より大きい開始回転速度から減少してよい。金属が冷たくなるにつれて溶融金属の密度が増加し、撹拌に必要な電力が増加するからである。例えば、回転デバイスの回転速度は200rpmで開始し、本発明の方法の間に120rpmまで低下してよい。
【0045】
第3の態様の方法は、コアレス誘導炉(CIF)又は取鍋炉(LF)を含む、任意の取鍋又は炉での使用に適している。本発明の方法が取鍋で使用される実施形態では、溶融金属は、電気アーク炉(EAF)又はCIFから取鍋に注湯(出湯)されてよい。第3の態様の方法は、溶鋼の処理に特に適しているが、脱硫及び/又は含有物除去を必要とする他の溶融金属、例えば鉄を処理するために使用されてもよい。
【0046】
本発明の第4の態様に基づいて、溶融金属を処理する方法が提供される。この方法は、
溶融金属に金属処理剤を加えることと、
ローターヘッドを備える回転デバイスを用いて溶融金属を攪拌することと、
前記ローターヘッドを通して前記溶融金属中にガスを放出することと、
を含む。
【0047】
実施形態では、溶融金属は鉄系金属である。幾つかの実施形態では、溶融金属は鉄又は鋼である。
【0048】
実施形態では、金属処理剤は、脱硫添加剤、含有物改質添加剤、又はそれらの混合物から選択される少なくとも一つの金属処理添加剤を含む。含有物改質添加剤は、前述したように、溶融金属中の固体含有物の組成、形態及び/又は分布を改質するための添加剤である。実施形態では、少なくとも一つの金属処理添加剤は、マグネシウム、フェロシリコンマグネシウム、カルシウム、酸化カルシウム、炭化カルシウム、バリウム、ストロンチウム、又はそれらの組合せを、元素又は化合物の形態で含む。
【0049】
実施形態では、金属処理剤は、溶融金属の表面に合成スラグ材料の形態で付される脱硫剤を含む。幾つかのそのような実施形態では、合成スラグ材料の少なくとも一部が攪拌中に表面上の層に留まり、溶融金属が表面上の合成スラグ材料の層を通って流れるように、溶融金属は回転デバイスで攪拌される。
【0050】
実施形態では、合成スラグ材料は、酸化カルシウム、アルミナ、シリカ、マグネシア、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄(III)、二酸化炭素、及びフッ素のうちの1又は複数を含む。幾つかの実施形態では、合成スラグ材料は、50乃至90wt%の酸化カルシウムを含む。実施形態では、合成スラグ材料は5乃至30wt%のアルミナを含む。実施形態では、合成スラグ材料は、最大5wt%のシリカ、マグネシア、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄(III)、二酸化炭素及び/又はフッ素を含む。
【0051】
実施形態では、金属処理剤は、粉末の形態で溶融金属の表面に付される。幾つかのこのような実施形態では、粉末が溶融金属中に引き込まれて分散するように、溶融金属を回転デバイスで攪拌する。
【0052】
実施形態では、金属処理剤は、溶融金属中に供給されるワイヤの形態で加えられる。実施形態では、ワイヤは、第3の形態に関連して上述したように、保護外側シースを備えるコアードワイヤである。実施形態では、ワイヤは回転デバイスと協働して溶融金属中に供給される。
【0053】
幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を攪拌するために、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200又は少なくとも300rpmの速度で回転する。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を攪拌するために、600rpm以下、500rpm以下、400rpm以下又は300rpm以下の速度で回転する。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、50乃至600rpm、100乃至300rpm、又は100乃至200rpm、例えば150rpmの速度で回転する。より高い回転速度は、ローターヘッドからの下向きの流れの全体的な流速及び量を増加させる(つまり、底部撹拌が増加する)が、溶融金属への空気同伴も増加させる。600rpmを超えて回転速度を上げると、渦が形成される可能性があり、この渦は空気を再び溶融物に引き込んで、有害な影響を及ぼす。幾つかの実施形態では、回転速度は、本発明の方法の間に変化する。幾つかの実施形態では、回転速度は、本発明の方法の間、より大きい開始回転速度から減少してよい。金属が冷たくなるにつれて溶融金属の密度が増加し、撹拌に必要な電力が増加するからである。例えば、回転デバイスの回転速度は200rpmで開始し、本発明の方法の間に120rpmまで低下してよい。
【0054】
第4の態様の方法は、コアレス誘導炉(CIF)又は取鍋炉(LF)を含む、任意の取鍋又は炉での使用に適している。本発明の方法が取鍋で使用される実施形態では、溶融金属は、電気アーク炉(EAF)又はCIFから取鍋に注湯(出湯)されてよい。第3の態様の方法は、溶鋼の処理に特に適しているが、脱硫及び/又は含有物除去を必要とする他の溶融金属、例えば鉄を処理するために使用されてもよい。
【0055】
実施形態では、回転デバイスは、第1の態様に基づく回転デバイスである。
【0056】
本発明の第5の態様に従って、溶融金属の処理において、本発明の第1の態様に基づく回転デバイスの使用が提供される。好ましくは、溶融金属は溶鋼である。
【0057】
第3の態様の方法に関連して説明された任意の特徴及び実施形態の何れもが、第4の態様の方法に同様に適用されてよいことは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
以下、本発明の実施形態について、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照して、単なる例として説明する。
【0059】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に基づく回転デバイスを示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に基づく回転デバイスに使用する中空シャフトを示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に基づく回転デバイスを示す。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に基づく回転デバイスの概略図であって、回転デバイスは、溶融金属の攪拌及び処理に使用する攪拌装置と組み合わされている。
【
図8】
図8は、(a)二重プレート型ローターヘッド設計と、(b)600rpmで回転する単一プレート型ローターヘッド設計と関する速度場シミュレーションデータを示す。
【
図9】
図9は、
図10に示される速度場シミュレーションデータに対応する、スケーリングされた流れパターンシミュレーションデータを示す。
【
図10】
図10は、(a)100rpm、(b)200rpm、(c)300rpmで回転する単一プレート型ローターヘッドの速度場とスケーリングされた流れパターンのシミュレーションデータである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に基づく回転デバイス100を示す。回転デバイス100は、管状スリーブ1と、管状スリーブ1の内側に延びる中空シャフト3とを備えている。
【0061】
管状スリーブ1の一端にローターヘッド5が一体的に形成されている。ローターヘッド5は、第1の平面(即ち、プレート)7と第2のプレート9とを備える標準的な二重プレート型設計であり、各々が管状スリーブ1の長手方向軸に対して垂直に延びている。第1のプレート7と第2のプレート9は、複数のピラー11によって互いに連結されている。ローターヘッド5には更に、溶融金属中にガスを放出するためのガス排出口13が、第1のプレート7を貫通して延びるボアの形態で設けられている。
【0062】
中空シャフト3は、第1の端部15と第2の端部17を備えており、第1の端部15は管状スリーブ1内に入っている。中空シャフト3は、(
図3に示すように)それを貫通して延びるボア19を更に備える。管状スリーブ1は、中空シャフト3のボア19をローターヘッド5のガス排出口13に流体的に接続する導路21を備えており、ガス及び/又は固体金属処理添加剤が中空シャフト3を通って流れて、使用する溶融金属にローターヘッド5を通って流出するようになっている。幾つかの実施形態(図示せず)では、中空シャフト3は、それを貫通して延びる複数のボアを含んでよく、これらボアにより、気体や固体の複数の金属処理添加剤を、中空シャフト3を通して別々に供給することができる。
【0063】
中空シャフト3の第1の端部15は、管状スリーブ1の相補的な受け部25と係合するロック部23を備えている。ロック部23は、6つの隣接する弦が除去された円形の断面形状であり、即ち、ロック部23は、略六角形の断面を有する。管状スリーブ1の受け部25は、対応する断面形状を有しており、ロック部23の縁部及び頂点が受け部25に突き当たり、管状スリーブ1内での中空シャフト3の独立した回転を防止するようになっている。
【0064】
中空シャフト3の第2の端部17は、管状スリーブ1から突出しており、回転デバイス100を回転させるための装置(例えば、
図7に示す)に結合されるように構成されている。図示されている実施形態では、中空シャフトの第2の端部17は、円周溝25を備えている。円周溝25は、Vベルトを介してモータに接続するためのプーリとして機能してもよい。或いは、円周溝25は、カラー(例えば、
図6に示す)と係合するように構成されてよく、このカラーは、Vベルトを介してモータに接続するためのプーリとして、又は、他の手段、例えば、ナット及びボルトによってモータシャフトに接続するためのフランジとして作用してよい。図示されている実施形態では、中空シャフト3の第2の端部17は、中空シャフト3を管状スリーブ1に固定するクランプ手段と係合するための窪み27を更に備える(例えば、
図7に示す)。
【0065】
管状スリーブ1は、管状スリーブ1の長手方向軸に沿って測定された長さLAを有する。中空シャフト3は、長手方向軸に沿って測定される長さLBを有する。管状スリーブ1は、最大直径DAからその長さ方向に沿って内向きにテーパー状になっており、管状スリーブの直径がローターヘッド5に向かって若干小さくなっている。中空シャフト3はまた、管状スリーブ1の内部寸法に対応して、第1の端部17における最大直径DBから第2の端部15における最小直径まで、中空シャフト3の長さに沿って内向きにテーパー状になっている。ローターヘッドは直径DCを有する。
【0066】
図5は、本発明の別の実施形態に基づく回転デバイス200を示す。回転デバイス200は、管状スリーブ31と中空シャフト33とを備えている。管状スリーブ31及び中空シャフト33は、
図1~4に示した管状スリーブ1及び中空シャフト3と概ね同じであるが、管状スリーブ1が単一プレート型設計を有するローターヘッド35を備える点で異なる。ローターヘッド35は、管状スリーブ31の長手方向軸Aに垂直に延びる平面(即ち、プレート)37を備えており、プレート37の基部からベーン39が突出している。プレート37は概ね正方形で、凹状縁部41と切頭隅部43とを有する。
【0067】
回転デバイス200は、管状スリーブ31を中空シャフト33に固定するためのクランプ手段45を備えている。回転デバイス200は、中空シャフト33の第2の端部の周囲に嵌まるカラー47を更に備える。カラーはフランジ49を提供しており、フランジ49は(例えば
図7に示すように)回転デバイス200を回転装置に結合するように構成されている。
【0068】
図6は、
図5に示した回転デバイス200の断面図である。中空シャフト33の第1の端部は、管状スリーブ31内に収められており、管状スリーブ31の相補的な受け部53と係合するロック部51を備えている。ボア55が中空シャフト33を貫通して延びており、導路59,61によってローターヘッド35のガス排出口57に流体連通している。
【0069】
中空シャフト33の第2の端部には、カラー47と係合する円周溝63が形成されている。クランプ手段45は、カラー47と協働して管状スリーブ31を中空シャフト33に固定する。
【0070】
図7は、本発明の実施形態による回転デバイス300を示しており、回転デバイス300は、回転デバイス300を回転させ、且つ、回転デバイス300を通して溶融金属にガス及び/又は金属処理添加剤を注入するための装置302と組み合わされている。使用時、回転デバイス300は取鍋304(又は炉)内に降ろされる。取鍋304には、回転デバイス300を下降させる前又は後の何れかに溶融金属が充填されてよい。その後、回転デバイス300が用いられて、例えば本発明に従った方法で溶融金属が処理される。
【0071】
<実施例1>
本発明の実施形態による回転デバイスが、黒鉛を含む中空シャフトと、溶融シリカを含む管状スリーブとを用いて作製された。管状スリーブは、一体的に形成されたローターヘッドを備えていた。長手方向軸に沿って測定した管状スリーブの長さは123cmであった(ローターヘッドを含まない)。黒鉛シャフトは、管状スリーブの長さの100cmに沿って管状スリーブ内に延びていた。黒鉛シャフトの最大直径は7.6cmであった。管状スリーブの最大直径は11.6cmであり、壁厚は1.6cmであった。
【0072】
ローターヘッドは、4つのピラーによって接続された、凹状縁部及び切頭隅部を有する2つの平行な正方形プレートを含む、標準的な二重プレート型設計を有していた。第1のプレートには、溶融金属中にガスを放出するためのボアが中央に配置されていた。プレートの直径は25cmであった。
【0073】
回転デバイスは、溶融金属を処理するために首尾よく使用された。繰り返し使用すると、最終的には、溶融シリカの僅かな軟化に起因してローターヘッドの若干の反りと歪みが生じ、これが撹拌効率を低下させた。
【0074】
<実施例2>
本発明の一実施形態による別の回転デバイスは、黒鉛を含む中空シャフトと、VISO(商標)等方圧加圧炭素結合アルミナを含む管状スリーブとで作られた。回転デバイスの寸法は、実施例1の回転デバイスと同じであった。
【0075】
実施例1の二重プレート型ローター設計は、ローターヘッド全体にわたって完全な高密度化が常に達成されるわけではないので、アイソプレス(isopressing)による製造において幾つかの困難をもたらすことが分かった。従って、実施例2の回転デバイスは、単一プレートとベーンとを備える改良型ローターヘッド設計を有していた。プレートは概ね正方形であり、凹状縁部及び切頭隅部を有しており、各隅部においてプレートの基部から延びる4つのベーンを有していた。このプレートには、溶融金属中にガスを放出するためのボアが中央に配置されていた。プレートの直径は25cmであった。
【0076】
実施例2の回転デバイスは、溶融金属を18回処理するのに首尾良く使用され、変形の兆候もなく、摩耗の兆候も最小限であった。しかしながら、回転デバイスにスラグが大量に堆積すると、撹拌効率が低下し始めた。黒鉛シャフトは破損の兆候を示さなかったので、黒鉛シャフトは交換用の外側スリーブと共に更に使用することが可能であった。黒鉛シャフトは、少なくとも50回は故障することなく使用できることが分かった。
【0077】
<流れパターンのシミュレーション>
OpenFoam(商標)ソフトウェアを使用して流れパターンシミュレーションを実行して、様々な異なる回転速度で、溶鋼中の単一プレート型及び二重プレート型ローター設計が示す流れの速度及び方向を比較した。それらの結果を
図8~10に示す。
【0078】
図8は、二重プレート型ローター(a)と単一プレート型ローター(b)を600rpmで15秒間回転させた後の速度場であり、
図9はスケーリングされた流れパターンである。両方の設計によって達成されたピーク流速は同様であった。しかしながら、流れの方向はわずかに異なっており、二重プレート型ローターからの出口流はほとんど水平であったのに対し、単一プレート型設計はより下向きの流れを示した。何れの設計のローターも溶鋼中で良好な撹拌シミュレーション性能を示したが、単一プレート型ローターは二重プレート型ローターより僅かに高いトルクを示した(単一プレート型ローターは271N.m、二重プレート型ローターは235N.m)。
【0079】
図10は、単一プレート型ローターを(a)100rpm、(b)200rpm、(c)300rpmで15秒間回転させた後の速度場とスケーリングされた流れパターンとを示している。撹拌性能は、回転速度の増加と共に増加することが示された。
【0080】
<含有物の除去と脱硫>
本発明の一実施形態による方法を、脱硫の標準的方法と比較して試験した。
【0081】
標準的方法(方法1)では、コアレス誘導炉(CIF)、電気アーク炉(EAF)、又は、それら両方から溶鋼を注入取鍋に出鋼した。両方の場合において、CIFからの金属は、EAFからの金属の前に出鋼された。アルミニウムを含むコアードワイヤとSiCaBaを含むコアードワイヤを溶鋼中に供給した。多孔質プラグを使ってアルゴンガスを溶鋼中に5~20分間フラッシュした。
【0082】
本発明の方法(方法2)では、方法1と同様にして溶鋼を注湯用取鍋に出鋼した。アルミニウムを含むコアードワイヤとSiCaを含むコアードワイヤを溶鋼中に供給した。実施例2の回転デバイスを用いてアルゴンを排出し、200~240rpmで5~15分間金属を攪拌した。
【0083】
方法1と方法2を、2.5トンから18トンまでの異なる量の溶鋼で複数回行った。各方法によって処理された溶鋼のサンプルを、Thermo Scientific(商標)ARL 4460分光計でSpark-DAT分析法を用いて、それらの含有物含有量について分析した。Spark-DAT分析法は、サンプル領域に一回のスパークを当てることを含む。スパークが当たった位置に固体含有物が存在する場合、分光計ピークが生成される。このプロセスをサンプル領域全体で繰り返す。その後、生成されたピークの数をカウントすることにより、サンプル領域内の含有物の数を決定することができる。方法1及び方法2についての平均含有率を、上記の複数回の反復手順から平均含有率を取ることによって計算した。結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
方法2で処理された溶鋼は、平均して、方法1(標準的なパージプラグ処理)で処理された溶鋼よりも小さい含有物が14~30%少なく、大きな含有物が50~60%少なかった。
【0086】
方法2で処理された溶鋼は、方法1で処理された溶鋼よりも硫黄含有量が著しく少ないことも分かった。方法1を用いた場合、典型的な硫黄含有量はEAFで約100ppm、CIFで約70ppmであった。方法2を用いると、硫黄含有量は約20ppmまで減少した。
【0087】
方法2によって含有物除去が改善された結果として、溶融金属の注湯温度が標準的な方法に比べて20~30℃低下し、大幅なエネルギー節約が実現された。また、より低い金属温度は、耐熱材料の磨耗を減少させ(それにより耐熱材料の寿命が延びる)、鋳造物が凝固する際の液体の収縮を減少させ、金属表面の再酸化も減少させる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属をガスで処理するための回転デバイス(100,200)において、
一端にローターヘッド(5,35)を備える管状スリーブ(1,31)であって、前記ローターヘッド(5,35)は溶融鉄系金属中にガスを分散させるためのガス排出口(13,57)を備えている、管状スリーブ(1,31)と、
前記管状スリーブ(1,31)内に延びる中空シャフト(3,33)であって、前記中空シャフト(3,33)の
第1の端部が前記管状スリーブ(1,31)で囲まれて、前記管状スリーブ(1,31)の相補的な受け部(25,53)と係合するように構成されたロック部(23,51)を備える、中空シャフト(3,33)と、
を備えており、
前記中空シャフト(3,33)は、前記ローターヘッド(5,35)の前記ガス排出口(13,57)に流体連通されており、
前記管状スリーブ(1,31)は、腐食及び熱衝撃に耐性のある耐熱材料で形成されており、
前記中空シャフト(3,33)は、黒鉛から形成されており、前記管状スリーブ(1,31)は、
腐食及び熱衝撃に対してより耐性のある耐熱材料から形成されている、
回転デバイス。
【請求項2】
前記管状スリーブ(1,31)は、溶融シリカ;アルミナ;炭化ケイ素;炭素結合アルミナ;炭素結合セラミック;粘土黒鉛;窒化ケイ素アルミナ;金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物;アイソプレスされた炭素結合アルミナ;アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物でコーティングされた耐熱基材、或いは、それらの組合せを含む耐熱材料から形成されている、請求項1に記載の回転デバイス。
【請求項3】
前記ローターヘッド(5,35)は前記管状スリーブ(1,31)と一体的に形成されている、又は、前記ローターヘッド(5,35)が前記管状スリーブ(1,31)の端部に結合されている、請求項1又は請求項2に記載の回転デバイス。
【請求項4】
前記中空シャフト(3,33)は第1の端部及び第2の端部を有しており、前記中空シャフト(3,33)の前記第2の端部は、前記回転デバイスを回転させるための装置(302)に結合されるように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項5】
前記相補的な受け部(25,53)は、前記ローターヘッド(5,35)を備える前記管状スリーブ(1,31)の端部に配置される、請求項4に記載の回転デバイス。
【請求項6】
前記ロック部(23,51)及び前記受け部(25,53)は、多角形状の、又は弦が除去された円形の断面を有しており、任意選択的に、前記断面は、少なくとも3つ、4つ、5つ、又は6つの頂点を備える、請求項1乃至5の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスと共に使用するための管状スリーブ(1,31)であって、前記管状スリーブ(1,31)は、内部に相補的な受け部(25,53)を備えており、黒鉛よりも
腐食及び熱衝撃に対して耐性のある耐熱材料から形成されている、管状スリーブ。
【請求項8】
溶融金属を処理する方法であって、
溶融金属の露出面に合成スラグ材料の層を付することと、
請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスを使用して溶融金属を撹拌し、溶融金属が合成スラグ材料の層を通って流れるようにすることと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記ローターヘッド(5,35)を通して溶融金属中にガスを分散させることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記合成スラグは酸化カルシウムを含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、金属処理添加剤を含むコアードワイヤを前記溶融金属中に供給することを更に含んでおり、任意選択的に、前記コアードワイヤは、高融点金属を含む外側シースと、金属処理添加剤を含む内側コアとを含んでおり、任意選択的に、金属処理添加剤は、マグネシウム、フェロシリコンマグネシウム、カルシウム、酸化カルシウム、炭化カルシウム、又はそれらの組合せを含む、請求項8乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、金属処理添加剤を、任意選択的に、固体金属処理添加剤を、前記ローターヘッド(5,35)を通して放出することを含む、請求項8乃至11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
溶融金属の処理方法であって、
溶融金属に金属処理剤を加えることと、
請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスを用いて溶融金属を攪拌することと、
前記ローターヘッド(5,35)を通して溶融金属中にガスを放出することと、
を含む、方法。
【請求項14】
溶融金属は鋼又は鉄である、請求項8乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
溶融金属の処理における請求項1乃至6の何れかに記載の回転デバイスの使用。
【国際調査報告】