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特表2024-503996生体分子中のスクランブルジスルフィドを同定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】生体分子中のスクランブルジスルフィドを同定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240123BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240123BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 9/50 20060101ALN20240123BHJP
   C12N 9/64 20060101ALN20240123BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240123BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X ZNA
G01N30/26 A
G01N30/34 E
G01N30/06 E
G01N30/72 C
G01N30/86 G
G01N33/68
C12Q1/37
G01N30/88 J
C12N9/50
C12N9/64 Z
C12P21/08
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537251
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 US2021064116
(87)【国際公開番号】W WO2022133262
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/128,146
(32)【優先日】2020-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・クラインバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ユェン・マオ
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4B063
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA12
2G041GA09
2G041HA01
2G041JA02
2G041LA08
2G045BB11
2G045DA37
2G045FB06
4B063QA18
4B063QQ79
4B063QR16
4B063QR48
4B063QR90
4B063QS36
4B063QX01
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA13
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA50
(57)【要約】
生体分子(例えば、抗体)中の1つ以上の非天然ジスルフィド結合を同定するための方法が開示される。一例では、方法は、非還元条件下で生体分子の消化を実行して、複数の生体分子断片を含む試料を提供することと、試料を分離カラムに接触させることと、トリフルオロ酢酸(TFA)及び小分子添加剤を含む第1の移動相勾配を分離カラムに適用することと、アセトニトリル(ACN)中のTFA及び小分子添加剤を含む第2の移動相勾配を分離カラムに適用することと、溶出された試料に対して部分還元手順を実行することと、部分還元された溶出試料成分を質量分析計に適用することと、部分還元された溶出試料成分に対して質量分析を実行して、生体分子中の1つ以上の非天然ジスルフィド結合を同定することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子中の1つ以上の非天然ジスルフィド結合を同定するための方法であって、
非還元条件下で前記生体分子の消化を実行して、前記生体分子の複数の断片を含む試料を得ることと、
試料成分がカラム基質に結合することを可能にする条件下で、前記試料を分離カラムに接触させることと、
第1の移動相勾配であって、トリフルオロ酢酸(TFA)及び約1~2mMの濃度の小分子添加剤を含む、第1の移動相勾配を前記分離カラムに適用することと、
第2の移動相勾配であって、アセトニトリル(ACN)中のTFA及び前記約1~2mMの濃度の小分子添加剤を含む、第2の移動相勾配を前記分離カラムに適用することと、
溶出された試料成分を10~100μMの濃度のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で処理することによって、部分還元手順を実行することと、
部分還元された溶出試料成分を質量分析計に適用することと、
前記部分還元された溶出試料成分に対して質量分析を実行して、前記生体分子中の前記1つ以上の非天然ジスルフィド結合を同定することと、を含む、方法。
【請求項2】
第1の移動相中の前記小分子添加剤が、グリシン、アラニン、セリン、バリン、N-アセチルグリシン、メチオニン、β-アラニン、アスパラギン酸、又はN-メチルグリシンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小分子添加剤が、グリシンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2の移動相中の前記小分子添加剤が、グリシン、アラニン、セリン、バリン、N-アセチルグリシン、メチオニン、β-アラニン、アスパラギン酸、又はN-メチルグリシンから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記小分子添加剤が、グリシンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の移動相中のTFA濃度が、HO中約0.05%~0.1%TFAである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の移動相中のTFA濃度が、80%ACN及び20%HO中約0.05%TFA、又は80%ACN及び20%HO中約0.1%TFAを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記部分還元手順が、500ms~3sの持続時間にわたって行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生体分子の前記消化を実行することが、
変性及びアルキル化工程を実行して、変性アルキル化生体分子を得ることと、
前記変性アルキル化生体分子に対して予備消化工程を実行して、予備消化された変性アルキル化生体分子を得ることと、
前記予備消化工程の後に、前記予備消化された変性アルキル化生体分子に対して消化工程を実行して、前記分離カラムに接触させる前記試料を得ることと、を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記変性及びアルキル化工程が、約5.5~5.9のpHでアルキル化剤の存在下で7~9M尿素中で前記生体分子を変性することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記変性及びアルキル化工程を45~55℃で実行することを更に含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルキル化剤が、5~15mMの濃度のN-エチルマレイミド(NEM)である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルキル化剤が、約0.5~5mMの濃度のヨード-アセトアミド(IAM)である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記変性及びアルキル化工程を20~40分間実行することを更に含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記予備消化工程を実行することが、前記変性アルキル化生体分子を、組換えLys-Cプロテアーゼの存在下、5~5.6のpHでインキュベートすることを更に含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記予備消化工程を35~40℃で実行することを更に含む、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記予備消化工程を30分~90分間実行することを更に含む、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
組換えLys-Cプロテアーゼと前記変性アルキル化生体分子との比が、それぞれ1:5~1:20である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記消化工程を実行することが、前記予備消化された変性アルキル化生体分子を、組換えLys-Cプロテアーゼ及びトリプシンプロテアーゼの存在下、5~5.6のpHでインキュベートすることを更に含む、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記消化工程中の組換えLys-Cプロテアーゼと前記予備消化された変性アルキル化生体分子との比が、それぞれ約1:5~1:20である、請求項9~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
トリプシンプロテアーゼと前記予備消化された変性アルキル化生体分子との比が、それぞれ1:2~1:10である、請求項9~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記消化工程を35~40℃で実行することを更に含む、請求項9~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記消化工程を2~4時間実行することを更に含む、請求項9~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記部分還元された溶出試料成分が、1つ以上のジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上のジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドの各々が、同時に前記質量分析計に入る、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記質量分析計が、タンデム質量分析計であり、
前記質量分析を実行することが、MS1スペクトル及びMS2スペクトルを取得することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対応する還元パートナーペプチドを用いて並行反応モニタリング(PRM)包含リストを構築することを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
信頼度スコアリングシステムに基づく前記1つ以上のジスルフィドペプチドに対してジスルフィド同定信頼度スコアを割り当てることを更に含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記信頼度スコアリングシステムが、
ジスルフィドペプチドのMS1質量が、前記質量分析によって同定されているかどうかを表示することと、
前記ジスルフィドペプチドに対応する第1の還元パートナーペプチドのMS1質量が、前記質量分析によって同定されているかどうかを表示することと、
前記ジスルフィドペプチドに対応する第2の還元パートナーペプチドのMS1質量が、前記質量分析によって同定されているかどうかを表示することと、
前記第1の還元パートナーペプチドのMS2質量が、所定の閾値よりも大きいスコアで同定されているかどうかを表示することと、
前記第2の還元パートナーペプチドのMS2質量が、前記所定の閾値よりも大きいスコアで同定されているかどうかを表示することと、
前記信頼度スコアリングシステムの前記表示する工程の各々について、前記対応するペプチドが同定されている単一点を割り当て、前記対応するペプチドが同定されていない点を割り当てないことと、
前記単一点を合計することと、
前記合計することに基づいて前記ジスルフィド同定信頼度スコアを割り当てることであって、前記合計が大きいほど信頼性が高い、割り当てることと、を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記質量分析を実行することが、
前記生体分子中の前記1つ以上の非天然ジスルフィド結合の各々について、ジスルフィドスクランブリングパーセンテージを決定することを更に含み、
前記ジスルフィドスクランブリングパーセンテージが、非天然ジスルフィド結合を含むペプチドの平均ピーク面積の、前記非天然ジスルフィド結合を含む前記ペプチドの前記平均ピーク面積+前記非天然ジスルフィド結合に関与するシステイン残基に対応する天然ジスルフィド結合を含む2つのペプチドの別の平均ピーク面積の合計に対する比である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記TCEPの濃度が、20μM~80μMである、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記TCEPの濃度が、40μMである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記生体分子がモノクローナル抗体であり、
前記モノクローナル抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記モノクローナル抗体が、組換え産生される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
生体分子中の1つ以上のスクランブルジスルフィド結合を同定する方法であって、
非還元条件下及び酸性pHで前記生体分子の消化を実行して、1つ以上のジスルフィドペプチドを含む試料を得ることと、
前記試料を分離カラムに接触させて、前記試料の成分を分離することであって、前記成分の分離が1~2mMの濃度のグリシンの存在下で実行される、分離することと、
前記分離カラムによる分離後に溶出された試料成分を部分還元することと、
部分還元された溶出試料成分に対して、タンデム質量分析計を介して質量分析を実行することであって、第1の質量分析器を介して、前記1つ以上のジスルフィドペプチド及び/又は対応する還元パートナーペプチドの各々のMS1質量を同定すること、並びに前記対応する還元パートナーペプチドのみを標的とし、前記1つ以上のジスルフィドペプチドの各々を標的としないことによって、第2の質量分析器を介して、前記対応する還元パートナーペプチドのうちの1つ以上のMS2質量のみを同定することを含む、実行することと、を含む、方法。
【請求項36】
前記対応する還元パートナーペプチドのみを標的とし、前記1つ以上のジスルフィドペプチドの各々を標的としないことが、
前記対応する還元パートナーペプチドのみを用いて、並行反応モニタリング包含リストを構築することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上のジスルフィドペプチドの各々に対してジスルフィド同定信頼度スコアを割り当てることを更に含む、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記ジスルフィド同定信頼度スコアを割り当てることが、特定のジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドについて、同定可能な各MS1質量についての点及び所定の閾値検出レベルを超える各同定可能なMS2質量についての点を割り当てることと、
前記点を合計して、前記ジスルフィド同定信頼度スコアを取得することと、を含むジスルフィド信頼度スコアリングシステムに基づいており、最大スコアが、最も高い信頼度スコアに対応する5である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記質量分析を実行することが、
前記生体分子中の前記1つ以上のスクランブルジスルフィド結合の各々について、ジスルフィドスクランブリングパーセンテージを決定することを更に含み、
前記ジスルフィドスクランブリングパーセンテージが、スクランブルジスルフィド結合を含むペプチドの平均ピーク面積の、前記スクランブルジスルフィド結合を含む前記ペプチドの前記平均ピーク面積と前記スクランブルジスルフィド結合に関与するシステイン残基に対応する天然ジスルフィド結合を含む2つのペプチドの別の平均ピーク面積との合計に対する比である、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記分離カラムによる分離後に溶出された試料成分を部分還元することが、10~100μMの濃度のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)による溶出された試料成分の処理によるものである、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記TCEPの濃度が、20~80μMである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記TCEPの濃度が、40μMである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
溶出された試料成分を約1~3秒間にわたって部分還元することを更に含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
溶出された試料成分を部分還元することが、約1~3%の還元効率で行われる、請求項35~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記分離カラムが、逆相高速液体クロマトグラフィカラムである、請求項35~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記分離カラムが親水性相互作用液体クロマトグラフィ(HILIC)カラムである、請求項35~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記分離カラム上での前記成分の分離が、0.05~0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)の存在下及びNHOHの非存在下で実行される、請求項35~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記酸性pHが5~5.6である、請求項35~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記消化を実行することが、組換えLys-Cプロテアーゼ及びトリプシンプロテアーゼの存在下で前記生体分子をインキュベートすることを含む、請求項35~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記消化を実行する前に、5.5~5.9のpHで1つ以上のアルキル化剤の存在下で前記生体分子を変性させることを更に含む、請求項35~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記生体分子がモノクローナル抗体であり、前記モノクローナル抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である、請求項35~50のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、2021年12月17日に作成され、12,466バイトを含むファイル10870WO01-Sequenceとしてコンピュータ可読形式で提出された配列表を参照することにより組み込む。
【0002】
本明細書の実施形態は、質量スペクトル分析に関し、より具体的には、生体分子中の低存在量のスクランブルジスルフィドを同定するために質量スペクトル分析を使用する能力を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ジスルフィド結合は、真核生物プロテオーム中の多数のタンパク質(ほぼ3分の1)に存在する。ジスルフィド結合の形成は、2つのシステイン残基のスルフヒドリル(sulfhydryl、SH)側鎖間の反応を伴う。天然のジスルフィド結合形成は、タンパク質を安定化するように作用し、ジスルフィド結合は、有効なタンパク質機能性にとって重要である。
【0004】
治療用モノクローナル抗体は、細胞表面受容体又は他の生物学的標的上の特異的エピトープに結合することができ、そのような治療用抗体の有効性及び安定性は、天然ジスルフィド結合の適切な形成に依存する。あるいは、治療用モノクローナル抗体を含むがこれに限定されないタンパク質における非天然(例えば、スクランブル)ジスルフィド結合の形成は、不安定化、不適切な折り畳み、凝集体形成、及び特定のタンパク質が効果的に機能できないことをもたらし得る。したがって、タンパク質、例えば治療用抗体におけるスクランブルジスルフィドの存在の解明は重要である。タンパク質中のジスルフィドスクランブリングの存在を決定する現在の課題としては、存在量が少ないこと、したがって、質量スペクトル分析などの方法論に依存する場合にジスルフィドスクランブリングを検出することが困難であることが挙げられる。本明細書では、治療用モノクローナル抗体などの生体分子中の低存在量のスクランブルジスルフィドを同定するために質量スペクトル分析を使用する能力を改善するための方法が論じられる。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本発明は、生体分子中の1つ以上の非天然ジスルフィド結合を同定するための方法を提供する。本方法は、非還元条件下で生体分子の消化を実行して、生体分子の複数の断片を含む試料を得ることと、試料成分がカラム基質に結合することを可能にする条件下で、試料を分離カラムに接触させることと、第1の移動相勾配であって、トリフルオロ酢酸(TFA)及び約1~2mMの濃度の小分子添加剤を含む、第1の移動相勾配を分離カラムに適用することと、第2の移動相勾配であって、アセトニトリル(ACN)中のTFA及び約1~2mMの濃度の小分子添加剤を含む、第2の移動相勾配を分離カラムに適用することと、溶出された試料成分を10~100μMの濃度のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)で処理することによって、部分還元手順を実行することと、部分還元された溶出試料成分を質量分析計に適用することと、部分還元された溶出試料成分に対して質量分析を実行して、生体分子中の1つ以上の非天然ジスルフィド結合を同定することと、を含む。
【0006】
一部の実施形態では、第1の移動相中の小分子添加剤は、グリシンである。
【0007】
一部の実施形態では、第1の移動相中の小分子添加剤はグリシンであり、グリシン濃度は約1mMである。
【0008】
一部の実施形態では、第1の移動相中の小分子添加剤はグリシンであり、グリシン濃度は約2mMである。
【0009】
一部の実施形態では、第2の移動相中の小分子添加剤はグリシンであり、グリシン濃度は約1mMである。
【0010】
一部の実施形態では、第2の移動相中の小分子添加剤はグリシンであり、グリシン濃度は約2mMである。
【0011】
一部の実施形態では、第1の移動相及び第2の移動相のうちの1つ以上中の小分子添加剤は、アラニン、セリン、バリン、N-アセチルグリシン、メチオニン、β-アラニン、アスパラギン酸、又はN-メチルグリシンから選択される。
【0012】
一部の実施形態では、第1の移動相中のTFA濃度は、HO中約0.05%~0.1%TFAである。
【0013】
一部の実施形態では、第2の移動相中のTFA濃度は、80%ACN及び20%HO中約0.05%TFA、又は80%ACN及び20%HO中約0.1%TFAを含む。
【0014】
一部の実施形態では、生体分子は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である。
【0015】
一部の実施形態では、生体分子は組換え産生される。
【0016】
一部の実施形態では、部分還元手順は、500ms~3sの持続時間にわたって行われる。
【0017】
一部の実施形態では、生体分子の消化を実行することは、変性及びアルキル化工程を実行して、変性アルキル化生体分子を得ることと、変性アルキル化生体分子に対して予備消化工程を実行して、予備消化された変性アルキル化生体分子を得ることと、予備消化工程の後に、予備消化された変性アルキル化生体分子に対して消化工程を実行して、分離カラムに接触させる試料を得ることと、を含む。
【0018】
一部の実施形態では、変性及びアルキル化工程は、約5.5~5.9のpHでアルキル化剤の存在下で7~9M尿素中で生体分子を変性することを含む。場合によっては、変性及びアルキル化工程は、45~55℃の温度で行われる。場合によっては、アルキル化剤は、5~15mMの濃度のN-エチルマレイミド(N-ethyl maleimide、NEM)である。場合によっては、アルキル化剤は、約0.5~5mMの濃度のヨード-アセトアミド(iodo-acetamide、IAM)である。場合によっては、本方法は、変性及びアルキル化工程を20~40分間実行することを含む。
【0019】
一部の実施形態では、予備消化工程を実行することは、変性アルキル化生体分子を、組換えLys-Cプロテアーゼの存在下、5~5.6のpHでインキュベートすることを含む。場合によっては、予備消化工程は、35~40℃の温度で実行される。場合によっては、予備消化工程は、30分~90分の持続時間にわたって実行される。場合によっては、組換えLys-Cプロテアーゼと変性アルキル化生体分子との比は、それぞれ1:5~1:20である。
【0020】
一部の実施形態では、消化工程を実行することは、予備消化された変性アルキル化生体分子を、組換えLys-Cプロテアーゼ及びトリプシンプロテアーゼの存在下、5~5.6のpHでインキュベートすることを含む。場合によっては、消化工程中の組換えLys-Cプロテアーゼと予備消化された変性アルキル化生体分子との比は、それぞれ約1:5~1:20である。場合によっては、トリプシンプロテアーゼと予備消化された変性アルキル化生体分子との比は、それぞれ約1:2~約1:10である。場合によっては、消化工程は、35~40℃の温度で実行される。場合によっては、消化工程は、2~4時間実行される。
【0021】
一部の実施形態では、部分還元された溶出試料成分は、1つ以上のジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドを含む。場合によっては、1つ以上のジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドの各々は、同時に質量分析計に入る。場合によっては、質量分析計は、タンデム質量分析計であり、質量分析を実行することは、MS1スペクトル及びMS2スペクトルを取得することを含む。場合によっては、並行反応モニタリング(parallel reaction monitoring、PRM)包含リストが、対応する還元パートナーペプチドを用いて構築される。場合によっては、ジスルフィド同定信頼度スコアが、信頼度スコアリングシステムに基づく1つ以上のジスルフィドペプチドに対して割り当てられる。
【0022】
一部の実施形態では、信頼度スコアリングシステムは、ジスルフィドペプチドのMS1質量が、質量分析によって同定されているかどうかを表示する工程と、ジスルフィドペプチドに対応する第1の還元パートナーペプチドのMS1質量が、質量分析によって同定されているかどうかを表示する工程と、ジスルフィドペプチドに対応する第2の還元パートナーペプチドのMS1質量が、質量分析によって同定されているかどうかを表示する工程と、第1の還元パートナーペプチドのMS2質量が、所定の閾値よりも大きいスコアで同定されているかどうかを表示する工程、及び/又は第2の還元パートナーペプチドのMS2質量が、所定の閾値よりも大きいスコアで同定されているかどうかを表示する工程と、信頼度スコアリングシステムの表示する工程の各々について、対応するペプチドが同定されている単一点を割り当て、対応するペプチドが同定されていない点を割り当てない工程と、単一点を合計する工程と、合計することに基づいてジスルフィド同定信頼度スコアを割り当てることであって、合計が大きいほど信頼性が高い、割り当てる工程と、を含む。
【0023】
一部の実施形態では、質量分析を実行することは、生体分子中の1つ以上の非天然ジスルフィド結合の各々について、ジスルフィドスクランブリングパーセンテージを決定することを含む。例では、ジスルフィドスクランブリングパーセンテージは、非天然ジスルフィド結合を含むペプチドの平均ピーク面積の、非天然ジスルフィド結合を含むペプチドの平均ピーク面積+非天然ジスルフィド結合に関与するシステイン残基に対応する天然ジスルフィド結合を含む2つのペプチドの別の平均ピーク面積の合計に対する比である。
【0024】
一部の実施形態では、TCEPの濃度は、20μM~80μMである。
【0025】
一部の実施形態では、TCEPの濃度は、約40mMである。
【0026】
様々な実施形態では、上記又は本明細書で考察される実施形態の特徴又は構成要素のうちのいずれも組み合わされ得、かかる組み合わせは本開示の範囲内に包含される。上記又は本明細書で考察されるいずれの特定の値も、上記又は本明細書で考察される別の関連する値と組み合わされて、それらの値が範囲の上限及び下限を表す範囲を列挙することができ、かかる範囲及びかかる範囲内にある全ての値は本開示の範囲内に包含される。上記又は本明細書で考察される値のうちの各々は、1%、5%、10%、又は20%の変動で表され得る。例えば、10mMの濃度は、10mM±0.1mM(1%変動)、10mM±0.5mM(5%変動)、10mM±1mM(10%変動)、又は10mM±2mMとして表され得る(20%変動)。他の実施形態は、後述の発明を実施するための形態の精査から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
実施形態は、添付の図面及び添付の特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明によって容易に理解されるであろう。実施形態は、添付の図面の図において限定としてではなく例として示される。
図1A】生体分子(例えば、治療用モノクローナル抗体)中の天然ジスルフィド結合及び非天然ジスルフィド結合の実例を示す。
図1B】ジスルフィドスクランブリングが生体分子中でどのように起こるかの実例を示す。
図2】液体クロマトグラフィ質量分析(liquid chromatography mass spectrometry、LC-MS)によって分析した、GPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)から形成されたジスルフィドについての全イオン電流(total ion current、TIC)及び抽出イオンクロマトグラフ(extracted ion chromatograph、EIC)、並びにTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)ではなくGPSVFPLAPCSR(配列番号1)に対応するペプチド断片を検出する能力を示すタンデム質量分析を示す。
図3】様々な濃度のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で処理したトリプシン消化モノクローナル抗体(monoclonal antibody、mAb)の例示的なLC-MS分析を示す。50μl/分(0.02%TFA及び0.08%FA)の流速での高速液体クロマトグラフィ(high performance liquid chromatography、HPLC)による分離後に、ジスルフィド結合を維持するために非還元条件下でmAbをトリプシンで消化した。分離後、カラム溶出液を様々な濃度のTCEP(0mM、0.4mM、0.8mM、2mM及び4mM)及びNHOH(最終濃度0.12%)で処理した後、質量分析によって分析した。TCEP及びNHOHを、2μL/分の流速で混合T字管を使用して溶出液に添加した。データは、カウント対質量電荷比(m/z)として示される。様々なTCEP濃度でのジスルフィド及び対応する還元ペプチド(R1及びR2)が示されている。
図4】TCEP、NHOH及びグリシン濃度の関数としての、mAb1に対応するペプチド断片VVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号3)のMSシグナルを示すグラフである。対照(TCEPなし、NHOHなし、グリシンなし)、試料1(2mM TCEP、0.12%NHOH)、試料2(2mM TCEP、0.12%NHOH、2mMグリシン)、試料3(2mM TCEP、2mMグリシン、NHOHなし)、及び試料4(2mMグリシンのみ)を含む5つの条件が示されている。対照と比較して、0.12%NHOHの存在下での2mM TCEPは、MSシグナルの減少を引き起こす(試料1)。2mM TCEP及び0.12%NHOHを含有する試料に2mMグリシンを含めると、試料1の条件を上回るわずかな改善(試料2)が得られる。NHOHの非存在下での2mM TCEP及び2mMグリシン(試料3)は、同様に、試料1及び試料2の条件を上回るわずかな改善しかもたらさない。2mMグリシンのみを含有する試料(試料4)は、TCEP及びグリシンを含有する試料と比較して、およそ10倍のシグナル増強を示す。図4に示される試料の各々について、条件は、移動相中に0.05%TFAを有する0.1μgのローディング量のmAb1を含んだ。
図5A】TCEP濃度の関数としてのmAb1に対応する2つのペプチド断片VVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号3)(図5A)及びDTLMISR(配列番号4)(図5B)のMSシグナルを示す。試料条件は、0.1μgのローディング量のmAb1、0.05%TFA及び2mMグリシンを含み、様々な濃度のTCEP(0μM、20μM、40μM、80μM、200μM、400μM、800μM及び2000μM)で処理した。図示されるように、MSシグナルは、TCEPの濃度の増加と共に減少する。
図5B】TCEP濃度の関数としてのmAb1に対応する2つのペプチド断片VVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号3)(図5A)及びDTLMISR(配列番号4)(図5B)のMSシグナルを示す。試料条件は、0.1μgのローディング量のmAb1、0.05%TFA及び2mMグリシンを含み、様々な濃度のTCEP(0μM、20μM、40μM、80μM、200μM、400μM、800μM及び2000μM)で処理した。図示されるように、MSシグナルは、TCEPの濃度の増加と共に減少する。
図6A】様々な濃度のTCEPの存在下でmAb1のトリプシン消化から生成されたペプチド断片のMSシグナルを示す。図6Aは、ペプチドNQVSLTCLVK(配列番号5)及びWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQK(配列番号6)に対応するジスルフィドについてのMSシグナルを示し、図6Bは、対応する個々の還元ペプチドについてのMSシグナルを示す。試料条件は、1μgのローディング量のmAb1、0.05%TFA及び2mMグリシンを含み、示されたTCEP濃度で処理した。
図6B】様々な濃度のTCEPの存在下でmAb1のトリプシン消化から生成されたペプチド断片のMSシグナルを示す。図6Aは、ペプチドNQVSLTCLVK(配列番号5)及びWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQK(配列番号6)に対応するジスルフィドについてのMSシグナルを示し、図6Bは、対応する個々の還元ペプチドについてのMSシグナルを示す。試料条件は、1μgのローディング量のmAb1、0.05%TFA及び2mMグリシンを含み、示されたTCEP濃度で処理した。
図7A】TCEPによる還元を伴わないmAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量(図7A)、及び40μM TCEPによる部分還元後のmAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量(図7B)を示す。図7A図7Bの各々について、還元ペプチドは、GPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応し、これらは非還元形態でジスルフィドペプチドを含む。HPLC溶出液を40μM TCEPと混合してジスルフィドの部分還元を誘導し、それと共に2mMグリシンを添加して、グリシンを欠く試料と比較してMSシグナルを10~20倍増強した。溶出後の部分還元方法論は、ジスルフィドペプチドが、還元パートナーペプチドと同時に質量分析計に入ることをもたらす。
図7B】TCEPによる還元を伴わないmAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量(図7A)、及び40μM TCEPによる部分還元後のmAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量(図7B)を示す。図7A図7Bの各々について、還元ペプチドは、GPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応し、これらは非還元形態でジスルフィドペプチドを含む。HPLC溶出液を40μM TCEPと混合してジスルフィドの部分還元を誘導し、それと共に2mMグリシンを添加して、グリシンを欠く試料と比較してMSシグナルを10~20倍増強した。溶出後の部分還元方法論は、ジスルフィドペプチドが、還元パートナーペプチドと同時に質量分析計に入ることをもたらす。
図8A】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量を示し、移動相中の小分子添加剤(例えば、グリシン)及び/又はイオン対形成剤(例えば、TFA又はFA)の関数としての、ジスルフィドペプチド及び還元パートナーペプチドのMSシグナルを示す。図8A図8Eの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態でジスルフィドペプチドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)に対応する。図8F~8Gの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態においてジスルフィドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応する。図8A図8Gの各々についての試料条件は、以下の通りであった。5μgの消化mAb2及び40μM TCEPを含み、図8Aはグリシンを含まない0.05%TFAを含み、図8Bは2mMグリシン及び0.05%TFAを含み、図8Cはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Dはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Eは2mMグリシン及び0.1%FAを含み、図8Fはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Gは2mMグリシン及び0.1%FAを含む。
図8B】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量を示し、移動相中の小分子添加剤(例えば、グリシン)及び/又はイオン対形成剤(例えば、TFA又はFA)の関数としての、ジスルフィドペプチド及び還元パートナーペプチドのMSシグナルを示す。図8A図8Eの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態でジスルフィドペプチドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)に対応する。図8F~8Gの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態においてジスルフィドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応する。図8A図8Gの各々についての試料条件は、以下の通りであった。5μgの消化mAb2及び40μM TCEPを含み、図8Aはグリシンを含まない0.05%TFAを含み、図8Bは2mMグリシン及び0.05%TFAを含み、図8Cはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Dはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Eは2mMグリシン及び0.1%FAを含み、図8Fはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Gは2mMグリシン及び0.1%FAを含む。
図8C】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量を示し、移動相中の小分子添加剤(例えば、グリシン)及び/又はイオン対形成剤(例えば、TFA又はFA)の関数としての、ジスルフィドペプチド及び還元パートナーペプチドのMSシグナルを示す。図8A図8Eの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態でジスルフィドペプチドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)に対応する。図8F~8Gの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態においてジスルフィドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応する。図8A図8Gの各々についての試料条件は、以下の通りであった。5μgの消化mAb2及び40μM TCEPを含み、図8Aはグリシンを含まない0.05%TFAを含み、図8Bは2mMグリシン及び0.05%TFAを含み、図8Cはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Dはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Eは2mMグリシン及び0.1%FAを含み、図8Fはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Gは2mMグリシン及び0.1%FAを含む。
図8D】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量を示し、移動相中の小分子添加剤(例えば、グリシン)及び/又はイオン対形成剤(例えば、TFA又はFA)の関数としての、ジスルフィドペプチド及び還元パートナーペプチドのMSシグナルを示す。図8A図8Eの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態でジスルフィドペプチドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)に対応する。図8F~8Gの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態においてジスルフィドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応する。図8A図8Gの各々についての試料条件は、以下の通りであった。5μgの消化mAb2及び40μM TCEPを含み、図8Aはグリシンを含まない0.05%TFAを含み、図8Bは2mMグリシン及び0.05%TFAを含み、図8Cはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Dはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Eは2mMグリシン及び0.1%FAを含み、図8Fはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Gは2mMグリシン及び0.1%FAを含む。
図8E】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量を示し、移動相中の小分子添加剤(例えば、グリシン)及び/又はイオン対形成剤(例えば、TFA又はFA)の関数としての、ジスルフィドペプチド及び還元パートナーペプチドのMSシグナルを示す。図8A図8Eの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態でジスルフィドペプチドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)に対応する。図8F~8Gの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態においてジスルフィドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応する。図8A図8Gの各々についての試料条件は、以下の通りであった。5μgの消化mAb2及び40μM TCEPを含み、図8Aはグリシンを含まない0.05%TFAを含み、図8Bは2mMグリシン及び0.05%TFAを含み、図8Cはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Dはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Eは2mMグリシン及び0.1%FAを含み、図8Fはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Gは2mMグリシン及び0.1%FAを含む。
図8F】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量を示し、移動相中の小分子添加剤(例えば、グリシン)及び/又はイオン対形成剤(例えば、TFA又はFA)の関数としての、ジスルフィドペプチド及び還元パートナーペプチドのMSシグナルを示す。図8A図8Eの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態でジスルフィドペプチドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)に対応する。図8F~8Gの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態においてジスルフィドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応する。図8A図8Gの各々についての試料条件は、以下の通りであった。5μgの消化mAb2及び40μM TCEPを含み、図8Aはグリシンを含まない0.05%TFAを含み、図8Bは2mMグリシン及び0.05%TFAを含み、図8Cはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Dはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Eは2mMグリシン及び0.1%FAを含み、図8Fはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Gは2mMグリシン及び0.1%FAを含む。
図8G】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量を示し、移動相中の小分子添加剤(例えば、グリシン)及び/又はイオン対形成剤(例えば、TFA又はFA)の関数としての、ジスルフィドペプチド及び還元パートナーペプチドのMSシグナルを示す。図8A図8Eの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態でジスルフィドペプチドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)に対応する。図8F~8Gの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態においてジスルフィドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応する。図8A図8Gの各々についての試料条件は、以下の通りであった。5μgの消化mAb2及び40μM TCEPを含み、図8Aはグリシンを含まない0.05%TFAを含み、図8Bは2mMグリシン及び0.05%TFAを含み、図8Cはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Dはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Eは2mMグリシン及び0.1%FAを含み、図8Fはグリシンを含まない0.1%FAを含み、図8Gは2mMグリシン及び0.1%FAを含む。
図9A】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片のMSシグナルを示す。図9A図9Bには、非還元形態でジスルフィドペプチドを含む還元パートナーペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)が示されている。図9A図9Bの各々に示された状態は、以下を含む。40μM TCEP、2mMグリシン及び0.05%TFA;2000μM TCEP、0.12%NHOH及び0.05%TFA;並びに2000μM TCEP、0.12%NHOH及び0.1%FA。図9Bは、図9Aに示したものと同じデータを示すが、40μM TCEP及び2mMグリシンによるMSシグナルの改善を示すためにy軸をズームしている。図9A~9Bの各々についてのmAb2ローディング量は5μgであった。
図9B】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片のMSシグナルを示す。図9A図9Bには、非還元形態でジスルフィドペプチドを含む還元パートナーペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)が示されている。図9A図9Bの各々に示された状態は、以下を含む。40μM TCEP、2mMグリシン及び0.05%TFA;2000μM TCEP、0.12%NHOH及び0.05%TFA;並びに2000μM TCEP、0.12%NHOH及び0.1%FA。図9Bは、図9Aに示したものと同じデータを示すが、40μM TCEP及び2mMグリシンによるMSシグナルの改善を示すためにy軸をズームしている。図9A~9Bの各々についてのmAb2ローディング量は5μgであった。
図10A】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片のMSシグナルを示す。図10A図10Bには、還元パートナーペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号1)(R1と標識)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)(R2と標識)に対応するデータが示されており、これらは、示されるように非還元形態でジスルフィドペプチドを含む。図10Aは、ジスルフィド及び対応する還元パートナーペプチドの相対存在量を示す。図10Bは、質量分析の第2ステージ(MS2)についてのm/zを示し、第1ステージ(MS1)からのイオンが選択的に断片化されて、MS2スペクトルを生成する。図10A図10Bについて、試料条件は、5μgのローディング量のmAb2、40μM TCEP、2mMグリシン及び0.05%のTFAを含んだ。
図10B】mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片のMSシグナルを示す。図10A図10Bには、還元パートナーペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号1)(R1と標識)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)(R2と標識)に対応するデータが示されており、これらは、示されるように非還元形態でジスルフィドペプチドを含む。図10Aは、ジスルフィド及び対応する還元パートナーペプチドの相対存在量を示す。図10Bは、質量分析の第2ステージ(MS2)についてのm/zを示し、第1ステージ(MS1)からのイオンが選択的に断片化されて、MS2スペクトルを生成する。図10A図10Bについて、試料条件は、5μgのローディング量のmAb2、40μM TCEP、2mMグリシン及び0.05%のTFAを含んだ。
図10C】16個の固有のシステイン残基を含有する例示的なmAbを示す。
図11】ジスルフィド並びに対応する還元パートナーペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)のMS/MSスペクトルを示す。mAb2のトリプシン消化からペプチド断片を生成した。図11に示されるデータは、ジスルフィドのMS/MSスペクトルが、対応する還元パートナーペプチドと比較してかなりの程度の複雑性を含むこと、及び40μM TCEPを用いたポストカラム部分還元を実行することが、任意の検出可能なスクランブルジスルフィドのより単純な特徴付けを可能にすることを示す。
図12】mAb2のトリプシン消化から生成されたシステイン含有ペプチドを示す。参照のために、システイン残基番号、及びシステインがmAb2の重(H)鎖又は軽(L)鎖上に位置するかどうかの表示を示す。トリプシンペプチドは、以下を含む:LSCAGSGFTFR(配列番号8)、AEDTAVYYCAK(配列番号9)、GPSVFPLAPCSR(配列番号1)、STSESTAALGCLVK(配列番号7)、TYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)、TPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAK(配列番号10)、CK、NQVSLTCLVK(配列番号37)、WQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQK(配列番号11)、DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCR(配列番号12)、VEAEDVGFYYCMQALQTPYTFGQGTK(配列番号13)、SGTASVVCLLNNFYPR(配列番号14)、VYACEVTHQGLSSPVTK(配列番号15)、及びSFNRGEC(配列番号16)。
図13】ヒンジ領域ペプチドYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPK(配列番号46)を除いて、mAb2からの全ての可能なスクランブルジスルフィド結合を示す。ヒンジ領域ペプチドは、そのようなペプチドが2つ以上のシステイン(例えば、2つ)を含有し、したがって2つ以上のジスルフィド結合を形成し、したがって、このペプチドのスクランブルバージョンが非常に大きく複雑であると予想されるため、除外される。本明細書に開示される標的化MS2アプローチを使用するタンデム質量分析(MS/MS)を使用して、スクランブルジスルフィド結合を同定した。5μgのトリプシン消化mAb2を分離し、40μM TCEPを使用して部分還元した。2mMグリシンを使用して、MSシグナルを増強した。各ジスルフィド結合は、決定における信頼度レベル(検出されず、低信頼度、中程度の信頼度、高信頼度、超高信頼度)に従ってコード化される。全ての可能なスクランブルジスルフィド結合の71.6%が高信頼度又は超高信頼度で同定され、全ての可能なスクランブルジスルフィド結合の17%が中程度の信頼度で同定され、全ての可能なスクランブルジスルフィド結合の11.3%が低信頼度で同定された。
図14A】mAb2についてのジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドを含むペプチド断片を生成するために使用される様々なトリプシン消化プロトコルを示す。mAb2のための標準操作手順(standard operating procedure、SOP)(図14A)、mAb3のためのSOP(図14B)及び低pH消化キット(図14C)を含む3つの異なるプロトコルが示されている。mAb2のSOPを使用して、図13に示すデータを生成したことに留意されたい。
図14B】mAb2についてのジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドを含むペプチド断片を生成するために使用される様々なトリプシン消化プロトコルを示す。mAb2のための標準操作手順(standard operating procedure、SOP)(図14A)、mAb3のためのSOP(図14B)及び低pH消化キット(図14C)を含む3つの異なるプロトコルが示されている。mAb2のSOPを使用して、図13に示すデータを生成したことに留意されたい。
図14C】mAb2についてのジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドを含むペプチド断片を生成するために使用される様々なトリプシン消化プロトコルを示す。mAb2のための標準操作手順(standard operating procedure、SOP)(図14A)、mAb3のためのSOP(図14B)及び低pH消化キット(図14C)を含む3つの異なるプロトコルが示されている。mAb2のSOPを使用して、図13に示すデータを生成したことに留意されたい。
図15A】トリプシン消化の前に遊離システイン残基を標識するために図14に示される手順と共に使用されるアルキル化剤ヨード-アセトアミド(IAM)及びN-エチルマレイミド(NEM)を示す。
図15B】トリプシン消化の前に遊離システイン残基を標識するために図14に示される手順と共に使用されるアルキル化剤ヨード-アセトアミド(IAM)及びN-エチルマレイミド(NEM)を示す。
図16図14A図14Cに例示的に示される消化手順の各々、具体的にはmAb2 SOP、mAb3 SOP及び低pH消化キットを用いてトリプシン消化mAb2に対応するUVクロマトグラムのオーバーレイを示す。クロマトグラムを取得するために実行された試料は、2mMグリシンの存在下で5μgのトリプシン消化mAb2(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)を含んだ。
図17A図16に示されるUVクロマトグラムのオーバーレイに対応する選択時間窓を示す。図17Aは、約14分から30分までの時間窓を示し、図17Bは、約34分から49分までの時間窓を示す。
図17B図16に示されるUVクロマトグラムのオーバーレイに対応する選択時間窓を示す。図17Aは、約14分から30分までの時間窓を示し、図17Bは、約34分から49分までの時間窓を示す。
図18図14A図14Cに例示的に示される3つの異なる消化手順の各々によって得られた、mAb2に対応する様々な天然ジスルフィドについてのMSシグナルを表すグラフを示す。天然ジスルフィドとしては、C152H-C208H、C139H-C219L、C139H-C219L(欠損、誤切断を指す)、C22H-C96H、C372H-C430H、C266H-C326H、C139L-C199L、C23L-C93L、C231H-C231H及びC234H3-C234Hが挙げられる。各ジスルフィドについて、条件は、左から右にmAb2 SOP、mAb3 SOP及び低pH消化キット手順を含む。MSシグナルとして示されるデータは、全ての主要な荷電状態の全ての同位体ピークを含む。図18のデータを生成するために実行された試料は、2mMグリシンの存在下で5μgのトリプシン消化mAb2(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)を含む。
図19A】mAb2消化物の様々なmAbドメイン(例えば、VH/VL、CH1、CL、CH2、CH3)からのペプチドのピーク面積を示す。各ドメインについて、示されるペプチドは、mAb2 SOP、mAb3 SOP、又は低pH消化キットを用いて生成され、図14A図14Cに例示的に示される。図19AはVH/VLドメインを示し、図19BはCH1/CLドメインを示し、図19CはCH2ドメインを示し、図19DはCH3ドメインを示す。図19A(上)はペプチドDYAMTWVR(配列番号17)を含み、(下)はペプチドSGQSPQLLIYLGSNR(配列番号18)を含む。図19B(上)はペプチドDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTK(配列番号19)を含み、(下)はペプチドADYEK(配列番号20)を含む。図19C(上)はペプチドDTLMISR(配列番号39)を含み、(下)はVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号38)を含む。図19D(上)はペプチドGFYPSDIAVEWESNGQPENNYK(配列番号21)を含み、(下)はペプチドTTPPVLDSDGSFFLYSR(配列番号22)を含む。示される各ペプチド及び対応する消化プロトコルについて、試料条件は、5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図19B】mAb2消化物の様々なmAbドメイン(例えば、VH/VL、CH1、CL、CH2、CH3)からのペプチドのピーク面積を示す。各ドメインについて、示されるペプチドは、mAb2 SOP、mAb3 SOP、又は低pH消化キットを用いて生成され、図14A図14Cに例示的に示される。図19AはVH/VLドメインを示し、図19BはCH1/CLドメインを示し、図19CはCH2ドメインを示し、図19DはCH3ドメインを示す。図19A(上)はペプチドDYAMTWVR(配列番号17)を含み、(下)はペプチドSGQSPQLLIYLGSNR(配列番号18)を含む。図19B(上)はペプチドDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTK(配列番号19)を含み、(下)はペプチドADYEK(配列番号20)を含む。図19C(上)はペプチドDTLMISR(配列番号39)を含み、(下)はVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号38)を含む。図19D(上)はペプチドGFYPSDIAVEWESNGQPENNYK(配列番号21)を含み、(下)はペプチドTTPPVLDSDGSFFLYSR(配列番号22)を含む。示される各ペプチド及び対応する消化プロトコルについて、試料条件は、5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図19C】mAb2消化物の様々なmAbドメイン(例えば、VH/VL、CH1、CL、CH2、CH3)からのペプチドのピーク面積を示す。各ドメインについて、示されるペプチドは、mAb2 SOP、mAb3 SOP、又は低pH消化キットを用いて生成され、図14A図14Cに例示的に示される。図19AはVH/VLドメインを示し、図19BはCH1/CLドメインを示し、図19CはCH2ドメインを示し、図19DはCH3ドメインを示す。図19A(上)はペプチドDYAMTWVR(配列番号17)を含み、(下)はペプチドSGQSPQLLIYLGSNR(配列番号18)を含む。図19B(上)はペプチドDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTK(配列番号19)を含み、(下)はペプチドADYEK(配列番号20)を含む。図19C(上)はペプチドDTLMISR(配列番号39)を含み、(下)はVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号38)を含む。図19D(上)はペプチドGFYPSDIAVEWESNGQPENNYK(配列番号21)を含み、(下)はペプチドTTPPVLDSDGSFFLYSR(配列番号22)を含む。示される各ペプチド及び対応する消化プロトコルについて、試料条件は、5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図19D】mAb2消化物の様々なmAbドメイン(例えば、VH/VL、CH1、CL、CH2、CH3)からのペプチドのピーク面積を示す。各ドメインについて、示されるペプチドは、mAb2 SOP、mAb3 SOP、又は低pH消化キットを用いて生成され、図14A図14Cに例示的に示される。図19AはVH/VLドメインを示し、図19BはCH1/CLドメインを示し、図19CはCH2ドメインを示し、図19DはCH3ドメインを示す。図19A(上)はペプチドDYAMTWVR(配列番号17)を含み、(下)はペプチドSGQSPQLLIYLGSNR(配列番号18)を含む。図19B(上)はペプチドDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTK(配列番号19)を含み、(下)はペプチドADYEK(配列番号20)を含む。図19C(上)はペプチドDTLMISR(配列番号39)を含み、(下)はVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号38)を含む。図19D(上)はペプチドGFYPSDIAVEWESNGQPENNYK(配列番号21)を含み、(下)はペプチドTTPPVLDSDGSFFLYSR(配列番号22)を含む。示される各ペプチド及び対応する消化プロトコルについて、試料条件は、5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図20A】様々な消化プロトコルの関数として、mAb2消化物についてのジスルフィドスクランブリングパーセンテージを示す表を示す。具体的には、mAb2 SOP、mAb3 SOP及び低pH消化キットをmAb2について個別に試験して、ジスルフィドスクランブリングの割合が消化プロトコルに依存するかどうかを決定した。全ての可能なジスルフィドと、使用した消化プロトコルに依存する、対応するスクランブルパーセンテージとを示す。示されるデータは、全ての主要な荷電状態の全ての同位体ピークを含む。図20A図20Cに示される各消化プロトコルについて、試料条件は5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図20B】様々な消化プロトコルの関数として、mAb2消化物についてのジスルフィドスクランブリングパーセンテージを示す表を示す。具体的には、mAb2 SOP、mAb3 SOP及び低pH消化キットをmAb2について個別に試験して、ジスルフィドスクランブリングの割合が消化プロトコルに依存するかどうかを決定した。全ての可能なジスルフィドと、使用した消化プロトコルに依存する、対応するスクランブルパーセンテージとを示す。示されるデータは、全ての主要な荷電状態の全ての同位体ピークを含む。図20A図20Cに示される各消化プロトコルについて、試料条件は5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図20C】様々な消化プロトコルの関数として、mAb2消化物についてのジスルフィドスクランブリングパーセンテージを示す表を示す。具体的には、mAb2 SOP、mAb3 SOP及び低pH消化キットをmAb2について個別に試験して、ジスルフィドスクランブリングの割合が消化プロトコルに依存するかどうかを決定した。全ての可能なジスルフィドと、使用した消化プロトコルに依存する、対応するスクランブルパーセンテージとを示す。示されるデータは、全ての主要な荷電状態の全ての同位体ピークを含む。図20A図20Cに示される各消化プロトコルについて、試料条件は5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図20D図20A図20Cに要約された実験においてスクランブリングパーセンテージを決定するために使用される、ジスルフィドスクランブリングパーセンテージを決定するための式を示す。
図20E】上の図20Aの表に含まれるC208H-C93Lジスルフィドペプチドに対応する干渉の代表例を示す。
図21A図20A図20Cに示される定量により決定された、高存在量スクランブルジスルフィドの相対存在量を示す。特に、図21Aは、対応する還元パートナーペプチドSTSESTAALGCLVK(配列番号7)及びGPSVFPLAPCSR(配列番号1)のジスルフィドに対応するC152H-C139Hを示す。図21Bは、対応する還元パートナーペプチドDIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCR(配列番号12)及びLSCAGSGFTFR(配列番号8)のジスルフィドに対応するC23L-C22Hを示す。図21A図21Bの各々について、相対存在量を消化プロトコル(mAb2プロトコル、mAb3プロトコル、又は低pH消化プロトコル)の関数として示す。図21A図21Bの両方に示すように、mAb2プロトコル及びmAb3プロトコルを用いて消化を実行した場合、クロマトグラフは、高存在量ジスルフィドを容易に区別するが、スクランブルジスルフィドのクロマトグラフは、低pH消化条件ではベースラインノイズから区別できない。各条件について、試料は、5μgのトリプシン消化mAb2(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)及び2mMグリシンを含んだ。
図21B図20A図20Cに示される定量により決定された、高存在量スクランブルジスルフィドの相対存在量を示す。特に、図21Aは、対応する還元パートナーペプチドSTSESTAALGCLVK(配列番号7)及びGPSVFPLAPCSR(配列番号1)のジスルフィドに対応するC152H-C139Hを示す。図21Bは、対応する還元パートナーペプチドDIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCR(配列番号12)及びLSCAGSGFTFR(配列番号8)のジスルフィドに対応するC23L-C22Hを示す。図21A図21Bの各々について、相対存在量を消化プロトコル(mAb2プロトコル、mAb3プロトコル、又は低pH消化プロトコル)の関数として示す。図21A図21Bの両方に示すように、mAb2プロトコル及びmAb3プロトコルを用いて消化を実行した場合、クロマトグラフは、高存在量ジスルフィドを容易に区別するが、スクランブルジスルフィドのクロマトグラフは、低pH消化条件ではベースラインノイズから区別できない。各条件について、試料は、5μgのトリプシン消化mAb2(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)及び2mMグリシンを含んだ。
図22図14で上述した3つの異なる方法、すなわち、mAb2 SOP、mAb3 SOP及び低pH消化キット手順の各々を介して消化された高存在量スクランブルジスルフィド(C152H-C139H)のUVオーバーレイを示す。UVクロマトグラムオーバーレイは、還元パートナーペプチドSTSESTAALGCLVK(配列番号7)及びGPSVFPLAPCSR(配列番号1)に対応するC152H-C139Hジスルフィドが、mAb2及びmAb3消化プロトコルによって生成されるが、低pH消化プロトコルによっては生成されないことを示す。3つ全ての消化手順についての試料条件は、5μgのトリプシン消化mAb2(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)及び2mMグリシンを含んだ。
図23A】mAb 5についてのジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドを含む断片を生成するために使用される様々なトリプシン消化プロトコルを示す。mAb4プロトコル(図23A)、mAb5プロトコル(図23B)及び低pH消化キット(図23C)を含む3つの異なるプロトコルが示されている。
図23B】mAb 5についてのジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドを含む断片を生成するために使用される様々なトリプシン消化プロトコルを示す。mAb4プロトコル(図23A)、mAb5プロトコル(図23B)及び低pH消化キット(図23C)を含む3つの異なるプロトコルが示されている。
図23C】mAb 5についてのジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドを含む断片を生成するために使用される様々なトリプシン消化プロトコルを示す。mAb4プロトコル(図23A)、mAb5プロトコル(図23B)及び低pH消化キット(図23C)を含む3つの異なるプロトコルが示されている。
図24図23A図23Cに例示的に示される消化手順の各々、具体的にはmAb4プロトコル、mAb5プロトコル及び低pH消化キットを使用した、トリプシン消化mAb5に対応するUVクロマトグラムのオーバーレイを示す。クロマトグラムを取得するために実行された試料は、2mMグリシンの存在下で5μgのトリプシン消化mAb5(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)を含んだ。
図25A図24に示されるUVクロマトグラムのオーバーレイに対応する選択時間窓を示す。図25Aは、約15分から33分までの時間窓を示し、図25Bは、約35分から67分までの時間窓を示す。
図25B図24に示されるUVクロマトグラムのオーバーレイに対応する選択時間窓を示す。図25Aは、約15分から33分までの時間窓を示し、図25Bは、約35分から67分までの時間窓を示す。
図26図23A図23Cに例示的に示される3つの異なる消化手順の各々によって得られた、mAb5に対応する様々な天然ジスルフィドについてのMSシグナルを表すグラフを示す。天然ジスルフィドとしては、C22H-C96H、C145H-C201H、C221H-C213L、C221H-C213L(欠損、誤切断を指す)、C227H-C227H、C230H-C230H、C262H-C322H、C368H-C426H、C23L-C88L、及びC133L-C193Lが挙げられる。各ジスルフィドについて、条件は、左から右にmAb4プロトコル、mAb5プロトコル及び低pH消化キット手順を含む。MSシグナルとして示されるデータは、全ての主要な荷電状態の全ての同位体ピークを含む。図26のデータを生成するために実行された試料は、2mMグリシンの存在下で5μgのトリプシン消化mAb5(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)を含む。
図27A】mAb5消化物の様々なmAbドメイン(例えば、VH/VL、CH1、CL、CH2、CH3)からのペプチドのピーク面積を示す。各ドメインについて、示されるペプチドは、図23A図23Cに例示的に示されるように、mAb4プロトコル、mAb5プロトコル、又は低pH消化キットを用いて生成した。図27AはVH/VLドメインを示し、図27BはCH1/CLドメインを示し、図27CはCH2ドメインを示し、図27DはCH3ドメインを示す。図27A(上)はペプチドEVQLVESGGGLVQPGGSLR(配列番号23)を含み、(下)はペプチドDIQMTQSPSSLSASVGDR(配列番号24)を含む。図27B(上)はペプチドGPSVFPLAPSSK(配列番号25)を含み、(下)はADYEK(配列番号40)を含む。図27C(上)はペプチドFNWYVDGVEVHNAK(配列番号26)を含み、(下)はALPAPIEK(配列番号27)を含む。図27D(上)はペプチドDELTK(配列番号28)を含み、(下)はペプチドTTPPVLDSDGSFFLYSK(配列番号29)を含む。示される各ペプチド及び対応する消化プロトコルについて、試料条件は、5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図27B】mAb5消化物の様々なmAbドメイン(例えば、VH/VL、CH1、CL、CH2、CH3)からのペプチドのピーク面積を示す。各ドメインについて、示されるペプチドは、図23A図23Cに例示的に示されるように、mAb4プロトコル、mAb5プロトコル、又は低pH消化キットを用いて生成した。図27AはVH/VLドメインを示し、図27BはCH1/CLドメインを示し、図27CはCH2ドメインを示し、図27DはCH3ドメインを示す。図27A(上)はペプチドEVQLVESGGGLVQPGGSLR(配列番号23)を含み、(下)はペプチドDIQMTQSPSSLSASVGDR(配列番号24)を含む。図27B(上)はペプチドGPSVFPLAPSSK(配列番号25)を含み、(下)はADYEK(配列番号40)を含む。図27C(上)はペプチドFNWYVDGVEVHNAK(配列番号26)を含み、(下)はALPAPIEK(配列番号27)を含む。図27D(上)はペプチドDELTK(配列番号28)を含み、(下)はペプチドTTPPVLDSDGSFFLYSK(配列番号29)を含む。示される各ペプチド及び対応する消化プロトコルについて、試料条件は、5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図27C】mAb5消化物の様々なmAbドメイン(例えば、VH/VL、CH1、CL、CH2、CH3)からのペプチドのピーク面積を示す。各ドメインについて、示されるペプチドは、図23A図23Cに例示的に示されるように、mAb4プロトコル、mAb5プロトコル、又は低pH消化キットを用いて生成した。図27AはVH/VLドメインを示し、図27BはCH1/CLドメインを示し、図27CはCH2ドメインを示し、図27DはCH3ドメインを示す。図27A(上)はペプチドEVQLVESGGGLVQPGGSLR(配列番号23)を含み、(下)はペプチドDIQMTQSPSSLSASVGDR(配列番号24)を含む。図27B(上)はペプチドGPSVFPLAPSSK(配列番号25)を含み、(下)はADYEK(配列番号40)を含む。図27C(上)はペプチドFNWYVDGVEVHNAK(配列番号26)を含み、(下)はALPAPIEK(配列番号27)を含む。図27D(上)はペプチドDELTK(配列番号28)を含み、(下)はペプチドTTPPVLDSDGSFFLYSK(配列番号29)を含む。示される各ペプチド及び対応する消化プロトコルについて、試料条件は、5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図27D】mAb5消化物の様々なmAbドメイン(例えば、VH/VL、CH1、CL、CH2、CH3)からのペプチドのピーク面積を示す。各ドメインについて、示されるペプチドは、図23A図23Cに例示的に示されるように、mAb4プロトコル、mAb5プロトコル、又は低pH消化キットを用いて生成した。図27AはVH/VLドメインを示し、図27BはCH1/CLドメインを示し、図27CはCH2ドメインを示し、図27DはCH3ドメインを示す。図27A(上)はペプチドEVQLVESGGGLVQPGGSLR(配列番号23)を含み、(下)はペプチドDIQMTQSPSSLSASVGDR(配列番号24)を含む。図27B(上)はペプチドGPSVFPLAPSSK(配列番号25)を含み、(下)はADYEK(配列番号40)を含む。図27C(上)はペプチドFNWYVDGVEVHNAK(配列番号26)を含み、(下)はALPAPIEK(配列番号27)を含む。図27D(上)はペプチドDELTK(配列番号28)を含み、(下)はペプチドTTPPVLDSDGSFFLYSK(配列番号29)を含む。示される各ペプチド及び対応する消化プロトコルについて、試料条件は、5μgの消化mAb2及び2mMグリシンを含んだ。
図28】mAb5のトリプシン消化から生成されたシステイン含有ペプチドを示す。参照のために、システイン残基番号、及びシステインがmAb5の重(H)鎖又は軽(L)鎖上に位置するかどうかの表示を示す。トリプシンペプチドは、以下を含む:LSCAASGFTSSSYAMNWVR(配列番号30)、AEDTAVYYCAK(配列番号41)、STSGGTAALGCLVK(配列番号31)、DYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTK(配列番号32)、SCDK(配列番号33)、TPEVTCVVVDVSHEDPEVK(配列番号34)、NQVSLTCLVK(配列番号42)、WQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQK(配列番号43)、VTITCR(配列番号35)、FSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTLTFGQGTR(配列番号36)、SGTASVVCLLNNFYPR(配列番号44)、VYACEVTHQGLSSPVTK(配列番号45)、及びGEC/SFNRGEC。システインC213L(GEC/SFNRGEC)に関しては、GEC予想/予測されたトリプシンペプチドであるが、SFNRGECは、非常に一般的で豊富なトリプシン欠損切断を含む。特定のジスルフィド結合を扱う場合、GECペプチド及びSFNRGECペプチドの両方が同じシステイン残基を含有するので、一方の形態の存在が他方の形態の存在を確認する。したがって、C213L残基は、ここではGEC/SFNRGECとして表され、SFNRGECは配列番号16に対応する。
図29】ヒンジ領域ペプチドTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPK(配列番号47)を除いて、mAb5からの全ての可能なスクランブルジスルフィド結合を示す。本明細書で考察される標的化MS2アプローチを使用するタンデム質量分析(MS/MS)を使用して、スクランブルジスルフィド結合を同定した。5μgのトリプシン消化mAb5を分離し、40μM TCEPを使用して部分還元した。2mMグリシンを使用して、MSシグナルを増強した。消化手順は、mAb4プロトコルを含んだ(図23A参照)。各ジスルフィド結合は、決定における信頼度レベル(検出されず、低信頼度、中程度の信頼度、高信頼度、超高信頼度)に従ってコード化される。全ての可能なスクランブルジスルフィド結合の63.3%が高信頼度又は超高信頼度で同定され、全ての可能なスクランブルジスルフィド結合の20%が中程度の信頼度で同定され、全ての可能なスクランブルジスルフィド結合の16.7%が低信頼度で同定された。
図30A】様々な消化プロトコルの関数として、mAb5消化物についてのジスルフィドスクランブリングパーセンテージを示す表を示す。具体的には、mAb4プロトコル、mAb5プロトコル及び低pH消化キットをmAb5について個別に試験して、ジスルフィドスクランブリングの割合が消化プロトコルに依存するかどうかを決定した。全ての可能なジスルフィドと、使用した消化プロトコルに依存する、対応するスクランブルパーセンテージとを示す。示されるデータは、全ての主要な荷電状態の全ての同位体ピークを含む。図30A図30Cに要約された実験においてスクランブリングパーセンテージを決定するために使用された、ジスルフィドスクランブリングパーセンテージを決定するための式は、図20Dに示される式である。図30A図30Cに示される各消化プロトコルについて、試料条件は5μg消化mAb5及び2mMグリシンを含んだ。
図30B】様々な消化プロトコルの関数として、mAb5消化物についてのジスルフィドスクランブリングパーセンテージを示す表を示す。具体的には、mAb4プロトコル、mAb5プロトコル及び低pH消化キットをmAb5について個別に試験して、ジスルフィドスクランブリングの割合が消化プロトコルに依存するかどうかを決定した。全ての可能なジスルフィドと、使用した消化プロトコルに依存する、対応するスクランブルパーセンテージとを示す。示されるデータは、全ての主要な荷電状態の全ての同位体ピークを含む。図30A図30Cに要約された実験においてスクランブリングパーセンテージを決定するために使用された、ジスルフィドスクランブリングパーセンテージを決定するための式は、図20Dに示される式である。図30A図30Cに示される各消化プロトコルについて、試料条件は5μg消化mAb5及び2mMグリシンを含んだ。
図30C】様々な消化プロトコルの関数として、mAb5消化物についてのジスルフィドスクランブリングパーセンテージを示す表を示す。具体的には、mAb4プロトコル、mAb5プロトコル及び低pH消化キットをmAb5について個別に試験して、ジスルフィドスクランブリングの割合が消化プロトコルに依存するかどうかを決定した。全ての可能なジスルフィドと、使用した消化プロトコルに依存する、対応するスクランブルパーセンテージとを示す。示されるデータは、全ての主要な荷電状態の全ての同位体ピークを含む。図30A図30Cに要約された実験においてスクランブリングパーセンテージを決定するために使用された、ジスルフィドスクランブリングパーセンテージを決定するための式は、図20Dに示される式である。図30A図30Cに示される各消化プロトコルについて、試料条件は5μg消化mAb5及び2mMグリシンを含んだ。
図31】STSGGTAALGCLVK(配列番号31)の二量体ジスルフィドに対応する一連のm/z決定を示す。上のクロマトグラフはジスルフィドのみについてのm/zを示し、真ん中のクロマトグラフはジスルフィドペプチドに対応する完全に還元されたペプチドのみについてのm/zを示し、下のクロマトグラフはジスルフィドペプチドに対応する部分的に還元されたペプチドについてのm/zを示す。合わせて、データは、部分還元された試料における変化した同位体ピークパターンを示す。同位体ピークは、より高いMS1分解能で収集されたデータ(TCEPなし、したがって「ジスルフィドのみ」)に起因して、上部クロマトグラフにおいてよりシャープである。標的化MS2方法論を使用して、各還元ペプチドピークの頂点付近のシグナルを増加させるために収集されるMS2スキャンの数を最大化するために、ポストカラムTCEP還元を実行する場合、MS1分解能は減少した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明が記載される前に、記載される特定の方法及び実験条件が異なり得るため、本発明がかかる方法及び条件に限定されないことを、理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定するようには意図されていないことも、理解されたい。いずれの実施形態又は実施形態の特徴も、互いに組み合わせることができ、かかる組み合わせは、本発明の範囲内に明示的に包含される。以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、実施され得る例示的な実施形態として示される添付の図面を参照する。範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、構造的又は論理的変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0029】
様々な操作は、実施形態を理解するのに役立ち得るような様式で、複数の個別の操作として説明され得る。しかしながら、説明の順序は、これらの動作が順序に依存することを意味するものと解釈されるべきではない。
【0030】
説明は、上/下、後/前、及び上部/底部などの斜視図ベースの説明を使用し得る。そのような説明は、単に議論を容易にするために使用され、開示された実施形態の適用を制限することを意図しない。
【0031】
「結合された」及び「接続された」という用語は、それらの派生語と共に使用され得る。これらの用語は、互いに同義語として意図されていないことを理解されたい。むしろ、特定の実施形態では、「接続された」は、2つ以上の要素が互いに、物理的又は電気的に直接接触していることを示すために使用され得る。「結合された」は、2つ以上の要素が、物理的又は電気的に直接接触していることを意味し得る。しかしながら、「結合された」はまた、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、依然として協同するか、又は互いに相互作用することを意味し得る。
【0032】
説明のために、「A/B」という形式又は「A及び/又はB」という形式の句は、(A)、(B)、又は(A及びB)を意味する。説明のために、「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」という形式の句は、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B及びC)を意味する。説明のために、「(A)B」という形式の句は、(B)又は(AB)を意味し、すなわち、Aは任意選択的な要素である。
【0033】
説明は、「実施形態(embodiment)」又は「実施形態(embodiments)」という用語を使用することがあり、これらは各々、同じ又は異なる実施形態のうちの1つ以上を指すことがある。更に、実施形態に関して使用される場合、用語「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などは同義であり、一般に「オープン」用語として意図される(例えば、用語「含む(including)」は「含むがこれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「含むがこれに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきであるなど)。
【0034】
本明細書における任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形から単数形に、及び/又は単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の置換は、明確にするために本明細書に明示的に記載され得る。
【0035】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の列挙された数値に関して使用されるとき、その値が列挙された値から1%以下だけ変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、99及び101並びにそれらの間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0036】
本明細書に記載されるものと同様又は同等のいずれの方法及び材料も本発明の実施又は試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料をこれから説明する。本明細書において言及される全ての特許、出願及び非特許刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
本明細書で使用される略語
ACN:アセトニトリル
AU:吸光度単位
CH:定常重
CL:定常軽
Cys:システイン
DDA:データ依存的取得
EIC:抽出イオンクロマトグラフ
E/S:酵素/基質
FA:ギ酸
HILIC:親水性相互作用液体クロマトグラフィ
HPLC:高速液体クロマトグラフィ
IAM:ヨード-アセトアミド
IgG:免疫グロブリンG
LC:液体クロマトグラフィ
LC-MS:液体クロマトグラフィ-質量分析
mAb:モノクローナル抗体
MPA:移動相A
MPB:移動相B
MS:質量分析
MS/MS:タンデム質量分析
MS1:タンデム質量分析計の第1の質量分析計
MS2:タンデム質量分析計の第2の質量分析計
MW:分子量
NEM:N-エチルマレイミド
PRM:並行反応モニタリング
RPLC:逆相液体クロマトグラフィ
RPLC-MS/MS:逆相液体クロマトグラフィタンデム質量分析
TCEP:トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン
TFA:トリフルオロ酢酸
TIC:総イオン電流
UV:紫外線
VH:可変重
VL:可変軽
【0038】
定義
本明細書で使用される「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖(ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖)から構成される免疫グロブリン分子(すなわち、「完全抗体分子」)、並びにこれらの多量体(例えば、IgM)又はその抗原結合断片を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR、heavy chain variable region」又は「V」)及び重鎖定常領域(C1ドメイン、C2ドメイン、及びC3ドメインからなる)からなる。様々な実施形態では、重鎖は、IgGアイソタイプであり得る。場合によっては、重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4から選択される。一部の実施形態では、重鎖は、アイソタイプIgG1又はIgG4であり、任意選択的に、アイソタイプIgG1/IgG2又はIgG4/IgG2のキメラヒンジ領域を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR、light chain variable region又は「V」)及び軽鎖定常領域(C)からなる。V領域及びV領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)と称される、より保存された領域が点在する相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と称される超可変領域へと更に細分することができる。各V及びVは、3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端へ、以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプ又はサブクラスの、グリコシル化免疫グロブリン及び非グリコシル化免疫グロブリンの両方への言及を含む。「抗体」という用語は、抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体などの組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離された抗体分子を含む。抗体構造に関する概説については、Lefranc et al.,IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,27(1)Dev.Comp.Immunol.55-77(2003);及びM.Potter,Structural correlates of immunoglobulin diversity,2(1)Surv.Immunol.Res.27-42(1983)を参照されたい。
【0039】
抗体という用語はまた、2つ以上の異なるエピトープに結合することができるヘテロ四量体免疫グロブリンを含む「二重特異性抗体」を包含する。単一の重鎖及び単一の軽鎖及び6つのCDRを含む二重特異性抗体の半分は、1つの抗原又はエピトープに結合し、抗体の他の半分は、異なる抗原又はエピトープに結合する。場合によっては、二重特異性抗体は、同じ抗原に結合することができるが、異なるエピトープ又は非重複エピトープに結合することができる。場合によっては、二重特異性抗体の両方の半分は、二重特異性を保持しながら同一の軽鎖を有する。二重特異性抗体は、概して、米国特許出願公開第2010/0331527号(2010年12月30日)に記載されている。
【0040】
抗体(又は「抗体断片」)の「抗原結合部分」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片(VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片)、(ii)F(ab’)2断片(ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片)、(iii)Fd断片(VH及びCH1ドメインからなる)、(iv)Fv断片(抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなる)、(v)dAb断片(VHドメインからなる、Ward et al.(1989)Nature 241:544-546)、(vi)単離されたCDR、並びに(vii)scFv(単一のタンパク質鎖を形成するように合成リンカーによって連結され、VL領域及びVH領域の対が一価の分子を形成する、Fv断片の2つのドメイン(VL及びVH)からなる)が挙げられる。ダイアボディなどの他の形態の単鎖抗体もまた、「抗体」という用語に包含される(例えば、Holliger et at.(1993)90 PNAS U.S.A.6444-6448;及びPoljak et at.(1994)2 Structure 1121-1123を参照されたい)。
【0041】
更に、抗体及びその抗原結合断片は、当該技術分野で一般的に知られている標準的な組換えDNA技術を使用して、得ることができる(Sambrook et al.,1989を参照されたい)。トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成するための方法はまた、当該技術分野で知られている。例えば、モノクローナル抗体を生成するためにVELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、US6,596,541,Regeneron Pharmaceuticals,VELOCIMMUNE(登録商標)を参照されたい)又は任意の他の既知の方法を使用して、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する、所望の抗原に対する高親和性キメラ抗体がまず単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に対する応答においてヒト可変領域と、マウス定常領域と、を含む、抗体を生成するように、ヒト重鎖可変領域と、ヒト軽鎖可変領域と、を含む、ゲノムが内在性マウス定常領域座に動作可能に連結されたトランスジェニックマウスの生成を包含する。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖定常領域及びヒト軽鎖定常領域をコードするDNAに動作可能に連結する。次に、完全ヒト抗体を発現することができる細胞においてDNAを発現させる。
【0042】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒトmAbは、例えば、CDR、特にCDR3における、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異誘発によって又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトFR配列へと移植されたmAbを含むことは企図されない。この用語は、非ヒト哺乳類において、又は非ヒト哺乳類の細胞において組換え産生された抗体を含む。この用語は、ヒト対象から単離された、又はヒト対象において産生された抗体を含むことを意図するものではない。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ジスルフィド」という用語は、2つのチオール基に由来する共有結合を指すことが意図される。タンパク質、例えばモノクローナル抗体では、これらは2つのシステインアミノ酸のチオール基間から結合する。ジスルフィド結合は、タンパク質球状構造を安定化させ、タンパク質をそれぞれの立体構造に保持することに寄与し、したがって、タンパク質の折り畳み及び安定性において重要な役割を有する。本明細書において考察されるように、ジスルフィド又はジスルフィドペプチドは、各対応するペプチド上のシステイン残基を介して共有結合された2つのペプチドを包含し、還元形態の2つのペプチドの各々は、「還元パートナーペプチド」と呼ばれる。このようなジスルフィドペプチドは、ジスルフィド結合が無傷のままである非還元条件下でのプロテアーゼ消化(例えば、トリプシンプロテアーゼ消化及び/又は組換えLys-Cプロテアーゼ消化)により生成され得る。次いで、このようなジスルフィドペプチドは、還元剤(例えば、DTT、TCEPなど)を用いて、それらの対応する還元パートナーペプチドに還元され得る。本明細書で使用される場合、「スクランブルジスルフィド」又は「ジスルフィドスクランブリング」という用語は、モノクローナル抗体などの特定の生体分子に対して非天然であるジスルフィド結合を包含する。
【0044】
用語「親水性相互作用クロマトグラフィ」又はHILICは、親水性化合物が疎水性化合物より長く保持される、親水性固定相及び疎水性有機移動相を使用するプロセスを含むことが意図される。特定の実施形態では、本方法は、水混和性溶媒移動相を利用する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、少なくとも分析物分子(例えば、モノクローナル抗体から得られるようなジスルフィドペプチド及び/又は対応する還元パートナーペプチド)を含む分子の混合物を含み、これは、例えば、分離、分析、抽出、又は濃縮を含む、本発明の方法に従って操作される。
【0046】
「分析」又は「分析する」という用語は、本明細書で使用される場合、互換的に使用され、目的の分子(例えば、モノクローナル抗体、ジスルフィドペプチド及び/又は対応する還元パートナーペプチドを含むがこれらに限定されない生体分子)を分離する、検出する、単離する、精製する、可溶化する、及び/又は特徴付ける様々な方法のいずれかを指す。例としては、固相抽出、固相マイクロ抽出、電気泳動、質量分析(例えば、ESI-MS、タンデム質量分析(MS/MS)、又はMALDI-MS、液体クロマトグラフィ、例えば、高性能、例えば、逆相、順相、若しくはサイズ排除、イオン対液体クロマトグラフィ、液体-液体抽出、例えば、加速流体抽出、超臨界流体抽出、マイクロ波支援抽出、膜抽出、ソックスレー抽出、沈殿、清澄、電気化学的検出、染色、元素分析、Edmund分解、核磁気共鳴、赤外線分析、フローインジェクション分析、キャピラリー電気クロマトグラフィ、紫外線検出、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「エレクトロスプレーイオン化質量分析」又は「ESI-MS」は、エアロゾルを生成するために高電圧が液体に印加されるエレクトロスプレーを使用してイオンを生成するために質量分析において使用される技法である。例えば、エレクトロスプレーでは、溶液中のタンパク質/ペプチドからイオンが生成され、これにより、脆弱な分子を無傷でイオン化することができ、非共有結合相互作用を保存することができる。エレクトロスプレーイオン化は、液体クロマトグラフィを質量分析(LC-MS)と組み合わせるために選択されるイオン源である。分析は、LCカラムから溶出する液体をエレクトロスプレーに直接供給することによってオンラインで、又は古典的なナノエレクトロスプレー質量分析装置で後に分析される画分を収集することによってオフラインで実行することができる。LC-MSは、バイオマーカーの定量、配列変異体の分析、並びにジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドの同定及び定量を含む、タンパク質の特徴付けのために使用することができる。
【0048】
「タンデム質量分析」又は「MS/MS」又は「MS」は、タンパク質及びペプチドなどの生体分子の分析に使用される技法である。タンデム質量分析では、第1の質量分析器(MS1)は、イオン源を介して供給されるイオンから、1つの特定の質量電荷比(m/z)(又は質量電荷比の範囲)のイオン(例えば、ESI、MALDIなどを介してイオン化される試料)を選択する。イオンは断片化され、第2の質量分析器(MS2)が断片イオンの質量スペクトルを記録する。タンデム質量分析は、選択、断片化及び検出の3つの異なる工程を含む。これらの工程の分離は、空間的又は時間的に実現することができる。空間機器における典型的なタンデム質量分析には、QqQ(三連四重極)、QTOF(四重極飛行時間型)、ハイブリッドイオントラップ/FTMS(フーリエ変換質量分析)などが含まれる。時間的タンデムMS/MS機器には、イオントラップ及びFT-ICR MS(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析)が含まれる。断片化の工程は、一般に、衝突活性化(collisional activation、CA)又は衝突誘起解離(collision-induced dissociation、CID)と呼ばれるプロセスにおいて、選択されたイオンを中性ガスと衝突させることによって行われる。
【0049】
本明細書で論じられる「部分還元された」又は「部分還元」は、試料(例えば、生体分子又は生体分子の断片)を、試料内に存在するジスルフィド結合の一部をそれらの対応する還元対応物に還元するような濃度及び/又は時間で還元剤で処理することを包含するが、試料中に存在するジスルフィドの全てが還元されるわけではない。
【0050】
本明細書で論じられる「並行反応モニタリング」又は「PRM」は、同じ実験において複数のタンパク質/ペプチドを定量するために使用される標的化プロテオミクス技術を指す。PRMでは、選択された断片イオンのみではなく、全ての断片イオンが、選択された前駆体の断片化後に測定される。PRMは、典型的には、Orbitrap又は飛行時間型(Time of flight、ToF)分析器上で実行される。PRMは、標的遷移(生成物イオン)が事前選択される必要がないため、アッセイ開発時間を短縮することができる。PRMは、ほとんどの干渉を排除し、検出及び定量の精度及びアトモルレベル限界を改善する。
【0051】
本明細書で論じられる「データ依存的取得」又は「DDA」は、タンデム質量分析における取得モードを指す。DDAモードでは、質量分析計は、タンデム質量分析の第1段階において最も強いペプチドイオンを選択し、次いで、それらは、質量分析の第2段階において断片化され、分析される。
【0052】
一般的な説明
治療用抗体は、癌、感染症、及び他の状態などの疾患の治療においてますます使用されている。治療用抗体は、例えば、抗原(例えば、標的細胞上に存在する)に結合することによって機能しそれによって、疾患と戦う分子を誘引し、かつ/又は免疫系応答を介して細胞死を誘発し、かつ/又はそうでなければ感染及び/若しくは疾患をもたらすプロセス(例えば、細胞へのウイルス侵入又は受容体とリガンドとの相互作用)を遮断する。有効であるためには、治療用抗体は、安定であり、適切に折り畳まれている必要がある。不適切な折り畳み及び/又は安定性の低下は、このような分子の無効性に寄与し得る。不適切な折り畳み及び/又は安定性の低下の1つの理由には、治療用抗体開発のプロセスにおけるある時点で非天然(例えば、スクランブル)ジスルフィド結合が形成されることが含まれる。したがって、治療用抗体を含むがこれに限定されない治療用生体分子におけるスクランブルジスルフィド結合の決定を容易に可能にする方法が必要とされている。
【0053】
本明細書に開示されるのは、生体分子におけるスクランブルジスルフィド結合の質量分析に基づく特徴付けの新しい方法論である。開示される方法論は、モノクローナル抗体を含むがこれに限定されない生体分子中のスクランブルジスルフィド結合を確実に検出及び定量する能力を改善する。本明細書で論じられるように、驚くべきことに、液体クロマトグラフィ移動相溶液中に小分子添加剤(例えば、グリシン)を含めることによる質量スペクトルシグナルの改善は、液体クロマトグラフィ分離カラムから溶出された試料成分を部分還元するために使用される還元剤の濃度に特異的に依存することが見出された。また、驚くべきことに、質量スペクトルシグナルの改善及び生体分子のジスルフィドペプチド断片に対応する還元パートナーペプチドを検出するために質量スペクトル分析を使用する能力は、液体クロマトグラフィ分離の間に移動相に含まれるイオン対形成剤の選択に高度に依存することが見出された。更に、驚くべきことに、消化された試料成分が分離され、質量分析によって分析される前の生体分子消化条件が、特定の条件下で人工ジスルフィドスクランブリングを確実に誘導し得ること、及びこの人工ジスルフィドスクランブリングが、酸性pHで消化手順を実行することによって回避され得ることが見出された。上記の発見は、本明細書に開示されるように、タンデム質量分析(MS/MS)を使用して、生体分子中のスクランブルジスルフィド結合を高い信頼度で確実に検出及び定量する改善された能力を可能にする。したがって、開示される方法論は、ジスルフィドスクランブリングについて治療用生体分子(例えば、モノクローナル抗体)をスクリーニングする能力を可能にすることに関して、非常に広範囲の用途を有し、これは次に、そのような分子の使用に由来する治療薬の有効性を改善し得る。
【0054】
本明細書で論じられる、液体クロマトグラフィ法によるプロテアーゼ消化生体分子の分離は、使用される1つ以上の緩衝液の勾配を含むことができる。当該緩衝液のうちの1つ以上は、一部の例では、イオン対形成剤を含むことができ、イオン対形成剤としては、ギ酸塩、酢酸塩、TFA、及び塩が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、イオン対形成剤はTFAを含む。
【0055】
2つの緩衝液が使用される場合、第1の緩衝液の濃度は減少し得るが、第2の緩衝液の濃度又はパーセンテージは、クロマトグラフィ実行の過程にわたって増加する。例えば、第1の緩衝液のパーセンテージは、クロマトグラフィ実行の過程にわたって、約100%、約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約50%、約45%、又は約40%から約0%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%まで減少し得る。別の例として、第2の緩衝液のパーセンテージは、同実行の過程にわたって、約0%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%から、約100%、約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約50%、約45%、又は約40%まで増加し得る。任意選択的に、第1及び第2の緩衝液の濃度又はパーセンテージは、クロマトグラフィ実行の終了時にそれらの出発値に戻ることができる。一例として、第1の緩衝液のパーセンテージは、85%から63%へ、59%へ、10%へ、85%への5段階で変化することができる。同工程における第2の緩衝液のパーセンテージは、15%から37%へ、41%へ、90%へ、15%へと変化する。パーセンテージは、線形勾配として徐々に、又は非線形的(例えば、段階的)に変化することができる。例えば、勾配は、多相(例えば、二相、三相など)であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、イオン対形成剤を使用せずに移動相の極性の増加に対応するアセトニトリル緩衝液勾配の減少を使用する。
【0056】
一部の実施形態では、分離カラムに移動勾配を適用することは、第1の移動勾配緩衝液を分離カラムに適用することであって、第1の移動相緩衝液がTFA及び小分子添加剤(例えば、アミノ酸)を含む、適用することと、第2の移動勾配緩衝液を分離カラムに適用することであって、第2の移動相緩衝液がACN中のTFA及び小分子添加剤(例えば、アミノ酸)を含む、適用することと、を含む。
【0057】
様々な実施形態では、小分子添加剤は、グリシン、アラニン、セリン、バリン、N-アセチルグリシン、メチオニン、β-アラニン、アスパラギン酸、又はN-メチルグリシンから選択される。場合によっては、アミノ酸は、グリシン、アラニン、セリン又はバリンから選択される。一部の実施形態では、アミノ酸は、アラニンである。一部の実施形態では、アミノ酸は、セリンである。一部の実施形態では、アミノ酸は、バリンである。一部の実施形態では、第1の移動相緩衝液中のアミノ酸は、グリシンである。一部の実施形態では、第2の移動相緩衝液中のアミノ酸は、グリシンである。一部の実施形態では、第1及び第2の移動相緩衝液中のアミノ酸は、グリシンである。一部の実施形態では、第1及び/又は第2の移動相緩衝液中の小分子添加剤(例えば、アミノ酸)は、小分子(例えば、修飾アミノ酸)又は上記若しくは本明細書中で同定される他のアミノ酸のうちの1つである。
【0058】
移動相緩衝液中の小分子添加剤(例えば、アミノ酸)の濃度は、約0.5mM~約5mM、例えば、約0.5mM~約3mM、約1mM及び約2mMであり、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1.0mM、1.1mM、1.2mM、1.3mM、1.4mM、1.5mM、1.6mM、1.7mM、1.8mM、1.9mM、2.0mM、2.1mM、2.2mM、2.3mM、2.4mM、2.5mM、2.6mM、2.7mM、2.8mM、2.9mM、3.0mM、3.1mM、3.2mM、3.3mM、3.4mM、3.5mM、3.6mM、3.7mM、3.8mM、3.9mM、4.0mM、4.1mM、4.2mM、4.3mM、4.4mM、4.5mM、4.6mM、4.7mM、4.8mM、4.9mM、又は5.0mMを含む。一部の実施形態では、小分子添加剤(例えば、アミノ酸)は、5mM未満である。一部の実施形態では、小分子添加剤は、5mM未満の濃度のグリシンである。一部の実施形態では、第1の移動相緩衝液中のアミノ酸はグリシンであり、濃度は約1~約2mMグリシンである。一部の実施形態では、第2の移動相緩衝液中のアミノ酸はグリシンであり、濃度は約1~約2mMグリシンである。一部の実施形態では、第1の移動相緩衝液中のグリシン濃度は、約1mMである。一部の実施形態では、第1の移動相緩衝液中のグリシン濃度は、約2mMである。一部の実施形態では、第2の移動相緩衝液中のアミノ酸はグリシンであり、濃度は約1~約2mMグリシンである。一部の実施形態では、第2の移動相緩衝液中のグリシン濃度は、約1mMである。一部の実施形態では、第2の移動相緩衝液中のグリシン濃度は、約2mMである。一部の実施形態では、第1及び第2の移動相緩衝液中のアミノ酸はグリシンであり、濃度は約1~約2mMグリシンである。
【0059】
一部の実施形態では、第1の移動相中のTFA濃度は、HO中約0.03%~0.15%TFA、例えば、約0.03%~0.1%である。一部の実施形態では、TFA濃度は、HO中約0.05%~約0.1%TFAである。例えば、TFA濃度は、HO中約0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、又は0.1%である。一部の実施形態では、第2の移動相中のTFA濃度は、80%ACN及び20%HO中約0.05%TFA、又は80%ACN及び20%HO中約0.1%TFAを含む。一部の実施形態では、第2の移動相中のACNの濃度は、約60%~100%、例えば、80%~100%であり、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%を含む。
【0060】
一部の実施形態では、試料は、ペプチドを含む。一部の実施形態では、試料は、ジスルフィド結合連結を通じてシステイン残基を介して連結されたペプチドを含む。例えば、試料は、非還元条件下でのモノクローナル抗体又は他の生体分子のタンパク質分解消化によって得られるジスルフィドペプチドを含み得る。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である。
【0061】
一部の実施形態では、本方法は、試料成分が基質に結合することを可能にする条件下で試料を分離カラムに接触させる前に試料を調製することを含む。一部の実施形態では、試料調製は、試料の変性及びアルキル化を可能にする条件下で試料を変性/アルキル化溶液と接触させることを含む。例では、変性剤は尿素である。試料変性(例えば、タンパク質変性)を引き起こすのに十分な尿素の濃度は、7~9M尿素、例えば、8M尿素であり得る。例では、変性/アルキル化溶液はアルキル化剤を含む。一例では、アルキル化剤はヨード-アセトアミド(IAM)を含んでもよい。加えて、又は代わりに、アルキル化剤は、N-エチルマレイミド(NEM)を含んでもよい。例では、変性/アルキル化溶液中のアルキル化剤は、約0.5mM~約10mM、例えば、約1mM~約8mMの濃度である。一部の例では、変性/アルキル化溶液中のアルキル化剤はNEMであり、濃度は約6mM~約10mM、例えば8mMである。一部の例では、変性/アルキル化溶液中のアルキル化剤はIAMであり、濃度は約0.5mM~約5mM、例えば約1mM、又は約2mM、又は約3mM、又は約4mM、又は約5mM、例えば2.4mMである。一部の例では、変性/アルキル化溶液は、約10分~約60分、例えば、20分、又は30分、又は40分、又は50分の期間にわたって試料に接触させる。例では、変性/アルキル化溶液は、約40℃~約60℃、例えば、約50℃の温度のものである。例では、変性/アルキル化溶液のpHは酸性である。例えば、pHは、約5~約6.5、例えば約5.5~約6.0、例えば約5.7であってもよい。
【0062】
一部の例では、試料成分が基質に結合することを可能にする条件下で試料を分離カラムに接触させる前に試料を調製することは、試料を変性/アルキル化溶液と接触させた後に、試料を予備消化溶液と接触させることを含む。例では、予備消化溶液は、プロテアーゼ、例えばセリンプロテアーゼを含む。例では、プロテアーゼは、エンドプロテイナーゼLysCである。例では、プロテアーゼは、組換えプロテアーゼ、例えば組換えエンドプロテイナーゼLysCである。例では、予備消化溶液は、それぞれ約1:2~約1:20、例えば約1:5~約1:15、例えば約1:10の酵素/基質比でプロテアーゼを含む。例では、予備消化溶液を試料に約30分~2時間、例えば1時間接触させる。例では、予備消化溶液は、約35~40℃、例えば約37℃の温度のものである。例では、予備消化溶液は、酸性pH、例えば約5~約6、例えば約5.2~5.5、例えば約5.3のpHのものである。
【0063】
一部の例では、試料成分が基質に結合することを可能にする条件下で試料を分離カラムに接触させる前に試料を調製することは、試料を変性/アルキル化溶液と接触させ、試料を予備消化溶液と接触させた後に、試料を消化溶液と接触させることを含む。例では、消化溶液は、第1のプロテアーゼ、例えばセリンプロテアーゼを含む。例では、第1のプロテアーゼは、エンドプロテイナーゼLysCである。例では、第1のプロテアーゼは、組換えプロテアーゼ、例えば組換えエンドプロテイナーゼLysCである。例では、消化溶液は、それぞれ約1:2~約1:20、例えば約1:5~約1:15、例えば約1:10の酵素/基質比で第1のプロテアーゼを含む。例では、消化溶液は、第2のプロテアーゼ、例えばセリンプロテアーゼを含む。例では、第2のプロテアーゼは、トリプシンである。例では、消化溶液は、それぞれ約1:2~約1:10、例えば約1:5の酵素/基質比で第2のプロテアーゼを含む。例では、消化溶液を試料に約1時間~約4時間、例えば3時間接触させる。例では、消化溶液は、約35~40℃、例えば約37℃の温度のものである。例では、消化溶液は酸性pH、例えば約5~約6、例えば約5.2~5.5、例えば約5.3のpHのものである。
【0064】
本明細書で論じるように、液体クロマトグラフィカラムから溶出された試料成分に対して、それらを分離した後に部分還元手順が実行される。部分還元手順の前、試料成分は、非還元消化生体分子(複数可)(例えば、モノクローナル抗体)を含むことが理解され得る。部分還元手順は、溶出された試料成分を還元剤で処理することを含む。例では、還元剤はTCEPである。例では、溶出された試料成分を部分還元するために使用される還元剤の濃度は、約20μM~約100μM、例えば約30μM~約60μM、例えば約40μMである。以下の実施例1及び少なくとも図6A図6Bで考察されるように、驚くべきことに、還元パートナーペプチドのMSシグナルは、特定の範囲のTCEP濃度(約20μM~約100μM)に高度に依存し、減少したMSシグナルは、特定の範囲外の(例えば、より高い濃度及びより低い濃度の両方の)TCEP濃度に関連することが見出された。より高い濃度のTCEP(例えば、400μM~2mM以上)は、ジスルフィドペプチドに対応する還元パートナーペプチドの存在量の増加をもたらし、それによって、より高いTCEP濃度で対応する還元パートナーペプチドについてのMSシグナルの増加をもたらすことが予想されたので、この知見は特に驚くべきものであった。したがって、より低いTCEP濃度(例えば、20~100μM、例えば約40μM)が、対応する還元パートナーペプチドを検出する能力を低下させるのではなく改善するという知見は、予想外であった。例では、部分還元手順は、溶出された試料成分をNHOHで更に処理することを含む。例では、NHOHの最終パーセンテージは、約0.05%~約0.2%、例えば、約0.12%である。例では、部分還元手順は、約0.5秒~約5秒、例えば約1~3秒、例えば約2秒の持続時間の間、溶出された試料成分に対して実行される。例では、部分還元手順に対応する効率は、約1~3%である。
【0065】
一部の実施形態では、分離カラムは、液体クロマトグラフィ(liquid chromatography、LC)分離カラムである。HPLCを含む液体クロマトグラフィを使用して、ジスルフィドペプチドを含むペプチドなどの構造を分離することができる。これらの構造を分離するために、陰イオン交換クロマトグラフィ、逆相HPLC、サイズ排除クロマトグラフィ、高速陰イオン交換クロマトグラフィ、及び順相(normal phase、NP)クロマトグラフィ(NP-HPLCを含む)を含む様々な形態の液体クロマトグラフィを使用することができる(例えば、Alpert et al.,J.Chromatogr.A 676:191-202(1994)を参照されたい)。親水性相互作用クロマトグラフィ(hydrophilic interaction chromatography、HILIC)は、部分的に水性の移動相を用いて実行することができるNP-HPLCの変形であり、ペプチド、ジスルフィドペプチド、炭水化物、核酸、及び多くのタンパク質の順相分離を可能にする。HILICの溶出順序は、最も極性が低いものから最も極性が高いものであり、逆相HPLCにおけるものとは反対である。HPLCは、例えば、Waters(例えば、Waters 2695 Alliance HPLCシステム)、Agilent、Perkin Elmer、GilsonなどからのHPLCシステム上で実行することができる。
【0066】
NP-HPLC、好ましくはHILICは、一部の例では、本明細書に記載の方法において使用することができる。NP-HPLCは、分析物と固定相(例えば、基質)との極性相互作用に基づいて分析物を分離する。極性分析物は、極性固定相と会合し、極性固定相によって保持される。吸着強度は、分析物極性の増加と共に増加し、極性分析物と極性固定相との相互作用(移動相に対する)は、溶出時間を増加させる。移動相におけるより極性の溶媒の使用は、分析物の保持時間を減少させるが、より疎水性の溶媒は、保持時間を増加させる傾向がある。
【0067】
シリカ、アミノ、アミド、セルロース、シクロデキストリン及びポリスチレン基質を含む様々なタイプの基質をNP-HPLCと共に、例えば、カラムクロマトグラフィのために使用することができる。例えば、カラムクロマトグラフィにおいて使用することができる有用な基質の例としては、ポリスルホエチルアスパルタミド(例えば、PolyLC製)、スルホベタイン基質、例えば、ZIC(登録商標)-HILIC(例えば、SeQuant製)、POROS(登録商標)HS(例えば、Applied Biosystems製)、POROS(登録商標)S(例えば、Applied Biosystems製)、ポリヒドロエチルアルパルトアミド(例えば、PolyLC製)、Zorbax 300 SCX(例えば、Agilent製)、PolyGLYCOPLEX(登録商標)(例えば、PolyLC製)、アミド-80(例えば、Tosohaas製)、TSK GEL(登録商標)アミド-80(例えば、Tosohaas製)、ポリヒドロキシエチルA(例えば、PolyLC製)、Glyco-Sep-N(例えば、Oxford GlycoSciences製)、及びAtlantis HILIC(例えば、Waters製)が挙げられる。一部の実施形態では、開示される方法は、以下の官能基:カルバモイル基、スルホプロピル基、スルホエチル基(例えば、ポリ(2-スルホエチルアスパルタミド))、ヒドロキシエチル基(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルアスパルタミド))及び芳香族スルホン酸基のうちの1つ以上を利用するカラムを含む。
【0068】
一部の実施形態では、逆相HPLCを本明細書に記載の方法と共に使用することができる。逆相HPLCは、分析物と固定相(例えば、基質)との非極性相互作用に基づいて分析物を分離する。非極性分析物は、非極性固定相と会合し、非極性固定相によって保持される。吸着強度は、分析物の非極性と共に増加し、非極性分析物と非極性固定相(移動相に対して)との相互作用は、溶出時間を増加させる。移動相におけるより非極性の溶媒の使用は、分析物の保持時間を減少させるが、より極性の溶媒は、保持時間を増加させる傾向がある。
【0069】
カラム温度は、例えば市販のカラムヒーターを使用して、クロマトグラフィ実行全体を通して一定温度に維持することができる。一部の実施形態では、カラムは、約18℃~約70℃の温度で維持され、例えば、約30℃~約60℃、約40℃~約50℃、例えば、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、又は約70℃である。一部の実施形態では、カラム温度は、約40℃である。
【0070】
移動相の流速は、約0~約100mL/分であり得る。分析目的では、流速は典型的には0~10mL/分の範囲であり、分取HPLCでは、100mL/分を超える流速を使用することができる。例えば、流速は、約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、又は約5mL/分(又は分取HPLCについてはそれ以上)であり得る。同じ充填、同じ長さであるが、より小さい直径を有するカラムを置換することは、より広い直径のカラムで見られるのと同じ保持時間及びピークについての分解能を保持するために、流速の減少を必要とする。一部の実施形態では、4.6×100mm、5μmカラムにおいて約1mL/分に相当する流速が使用される。
【0071】
一部の実施形態では、実行時間は、約15~約240分、例えば、約20~約70分、約30~約60分、約40~約90分、約50分~約100分、約60~約120分、約50~約80分であり得る。
【0072】
例では、部分還元手順に続いて、部分還元された試料を質量分析によって分析する。例では、部分還元された試料は、ジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドを含む。例では、ジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドは、ほぼ同時に質量分析計に入る。
【0073】
例では、質量分析によって試料を分析することは、タンデム質量分析計構成への依存を介して、MS1スペクトル及びMS2スペクトルを取得することを含む。例では、MS2スペクトルを取得することは、標的化MS2アプローチを伴う。そのような標的化MS2アプローチは、システイン残基を含有するジスルフィドペプチドに対応するプロテアーゼ消化(例えば、トリプシン消化)還元パートナーペプチドのみを標的とすることを含み得る。例では、システインを含有する対応する還元パートナーペプチドのみを標的とすることは、ジスルフィドペプチドがそれらの対応する還元パートナーペプチドと比較して指数関数的により多くの可能な断片化を有することに起因して、ジスルフィドペプチドを標的とする試みにおいてMS/MSが使用されるアプローチと比較して、任意のスクランブルジスルフィドの劇的により単純な特徴付けを可能にする。モノクローナル抗体を例として使用すると、このようなモノクローナル抗体は、特定の数のシステイン残基(例えば、16個)を含有し得る。本明細書において考察される部分還元手順を用いることによって、システインを含有するわずか15個の還元されたトリプシンペプチド(15個のトリプシンペプチドから抗体のヒンジ領域を差し引いたもの)が、MS2段階において標的とされる必要がある。したがって、例では、質量分析によって試料を分析することは、システインを含有するプロテアーゼ生成断片のみを用いてPRM包含リストを構築することと、勾配全体にわたってスキャンすることと、を含み得る。例では、MS1解像度は、MS2スキャンの数が増えると低下され得る。
【0074】
例では、質量分析によって試料を分析することは、特定の生体分子における各可能なジスルフィドペプチドの可能性に対してジスルフィド同定信頼度スコアを割り当てることを含む。ジスルフィド同定信頼度スコアを割り当てることは、例では、生成されたMS/MSデータに関連するいくつかのクエリのうちの肯定で回答された各クエリに対して点を割り当てることを含む。例では、クエリは、ジスルフィドペプチドのMS1質量が同定されているかどうか、第1の対応する還元ペプチドのMS1質量が同定されているかどうか、第2の対応する還元ペプチドのMS1質量が同定されているかどうか、第1の対応する還元ペプチドのbyonic MS2同定が所定の閾値より大きいスコアで同定されているかどうか、及び第2の対応する還元ペプチドのbyonic MS2同定が別の所定の閾値より大きいスコアで同定されているかどうかを含み得るが、これらに限定されない。例では、所定の閾値は同じであるが、所定の閾値が異なることは本開示の範囲内である。例では、質量分析によって試料を分析することは、特定の生体分子(例えば、モノクローナル抗体)における各可能なジスルフィド結合に対してスクランブリングパーセンテージを割り当てることを含む。
【実施例
【0075】
以下の実施例は、本発明の方法をどのように作製及び使用するかに関する完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本発明とみなすことの範囲を限定することを企図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力はしてきたが、いくつかの実験上の誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段に示されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、室温は約25℃であり、圧力は大気圧又はそれに近い圧力である。
【0076】
実施例1:ジスルフィドの最適化されたポストカラム部分還元及びMSシグナル増強
抗体(例えば、モノクローナル抗体)及び他の生体分子は、安定性及び有効な機能性に寄与する天然のジスルフィド結合を有する。しかしながら、特定の条件(例えば、アルカリ条件)下では、非天然(本明細書においてスクランブルとも称される)ジスルフィド結合が生じ、それによって安定性及び機能的有効性を低下させることがある。図1Aは、複数の天然ジスルフィド結合を有するmAb(左)、及びいくつかのスクランブルジスルフィド結合を有する同じmAb(右)を示す。図1Bは、ジスルフィド結合が塩基性条件下でどのように再配列(例えば、スクランブル)され得るかを示す簡略化されたスキームを示す。本開示は、mAbに重点を置いて、生体分子中のスクランブルジスルフィド結合を検出することに関する。
【0077】
スクランブルジスルフィドを有する治療用mAb(又は他の治療用生体分子)は、低下した機能性を示す可能性があり、したがって、スクランブルジスルフィドを検出する能力は重要である。図2は、mAb中の低存在量のスクランブルジスルフィドを明確に同定することが困難であり得ることを示す。液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)(上パネル)及びタンデム質量分析(MS/MS)分析(下パネル)によって分析した、対応する還元パートナーペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)から形成されたジスルフィド(C133H-C202H、相対存在量0.2%)を図2に示す。EICはジスルフィドに対応するm/z比を示すが、MS/MS分析は、TYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)に対応する断片を同定するには複雑すぎる。
【0078】
MS/MS分析におけるジスルフィド対の断片化に関連する複雑さの問題は、質量スペクトル分析の前にジスルフィド対を少なくとも部分還元することによって低減され得る。図3を参照すると、増加するTCEP濃度(0mM、0.4mM、0.8mM、2mM、4mM)の関数として、ジスルフィド及び対応する還元パートナーペプチドのカウント対質量電荷(m/z)を示す一連のプロットが示されている。簡単に説明すると、ジスルフィド結合を維持するためにmAbを非還元条件下でトリプシン消化し、非還元消化物をHPLCによって分離した。分離後、図示した濃度のTCEPを、質量分析計に入れる前に、溶出したジスルフィドと1~3秒間反応させた(例えば、部分還元)。更に、ジスルフィド還元におけるTCEPの有効性を増加させるために、NHOH(最終濃度0.12%)をTCEPと共に添加した。この方法論を使用して、ジスルフィドは、全ての成分が正確に同じ保持時間を有するように、還元されたペプチドと共溶出する。実験手順のために、消化mAbを50μL/分(0.02%TFA、0.08%FA)でカラムに通し、TCEP及びNHOHを、シリンジ及び混合T字管を介して分離後の試料に添加した。実験は、2mM TCEPで還元パートナーペプチドについて最も高いシグナルを示す。
【0079】
低存在量のジスルフィドは、MSシグナルが低すぎる場合、検出、同定、及び定量することが困難であり得るため、TCEPを含有する移動相溶出液へのグリシンの添加がスクランブルジスルフィドのMSシグナルを改善し得るかどうかを決定するために実験を実行した。具体的には、2mM TCEPも含む試料においてグリシンがMSシグナルを改善することができるかどうかを決定するために実験を実行した。実験手順は、図4に示すような様々な条件下で、mAb1からのペプチド断片VVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号3)のMSシグナルを調べることを含んだ。結果は、2mM TCEPが、そうでなければグリシン(2mM)の添加によって観察されるMSシグナル増強を抑制することを示す。左から右に進むと、TCEP及びNHOHを含有する試料1は、TCEP、NHOH及びグリシンを欠く対照と比較してシグナルの減少を示した。TCEP及びNHOHを含有する試料への2mMグリシンの添加(試料2)は、わずかな改善しか示さず、TCEP及びグリシンの添加を維持しながらのNHOHの除去(試料3)は、試料3を上回るMSシグナルのわずかな改善しか示さなかった。試料4(TCEP及びNHOHの非存在下で2mMグリシン)のみが実質的なMSシグナル増強を示し、これは2mM TCEPが2mMグリシンの任意のMSシグナル増強効果を抑制することを示している(試料3を試料4と比較されたい)。
【0080】
グリシン誘導性MSシグナル増強に対するTCEPのこの抑制効果を、用量反応研究において更に調べた。図5Aは、0μM~2000μMのTCEP濃度の範囲にわたるmAb1からのペプチド断片VVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号3)のMSシグナルを示し、図5Bは、同じ範囲のTCEP濃度にわたる別のペプチドDTLMISR(配列番号4)のMSシグナルを示す。図5A及び図5Bの両方は、MSシグナルがTCEPの濃度の増加と共に減少することを示す。図5A図5Bの各々について、試料条件は、0.1μgの濃度のmAb1、0.05%TFA及び2mMグリシン、並びに示された濃度のTCEPを含んだ。
【0081】
図5A図5Bの結果は、より高いMSシグナルがより低いTCEP濃度に関連することを示した。より低い濃度のTCEPが、ジスルフィド連結ペプチド対に対応する還元パートナーペプチドを検出する能力を保持しながら、MSシグナルに対する抑制効果を少なくとも部分的に回避することができるかどうかを決定するために、更なる実験を行った。ペプチドNQVSLTCLVK(配列番号5)及びWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQK(配列番号6)に対応するジスルフィドについてのMSシグナルを図6Aに示し、対応する還元パートナーペプチドについてのMSシグナルを図6Bに示す。図6A図6Bの各々について、図5A~5Bについて上記で考察したものと同様に、0μM~2000μMの範囲の様々なTCEP濃度を試験した。図6A図6Bの試料条件は、1μgのローディング量のトリプシン消化mAb1、0.05%TFA及び2mMグリシン、並びに指定されたTCEP濃度を含んだ。データは、漸増濃度のTCEPがジスルフィドに対応するMSシグナルを抑制すること(図6A)、及びTCEPがジスルフィド連結ペプチド対を効果的に還元し、かつMSシグナルが望ましくなく抑制されない範囲(約20μM~約100μM)が存在することを示す。対応する還元パートナーペプチドのMSシグナルの増加(図6B)は、MS/MS同定に望ましい。最良のMSシグナルは、約40μM TCEPにおけるものであることが分かった。
【0082】
したがって、ジスルフィドを対応する還元パートナーペプチドに部分還元するために、40μM TCEPを用いて更なる実験を実行した。図7A図7Bを参照すると、TCEPによる処理を伴わない場合(図7A)及び40μM TCEPによる処理を介したジスルフィドの部分還元を伴う場合(図7B)の、GPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)から構成されるジスルフィド並びに対応する還元パートナーペプチドについての相対存在量が示されている。分析したペプチド断片は、HPLCに供する前にmAb2のトリプシン消化から生成した。ジスルフィドの部分還元が行われない場合、対応する還元パートナーペプチドについてシグナルは見られなかったが(図7A)、ジスルフィドペプチドが40μM TCEPによって部分還元された場合、対応する還元パートナーペプチドについて良好なシグナルが観察された(図7B)。
【0083】
図8A図8Bを参照すると、グリシンは、40μM TCEP及びTFA(0.05%)の存在下で、ジスルフィドペプチド及び対応する還元パートナーペプチドのMSシグナルを10倍超(例えば、10倍~20倍)改善することが観察された。図8C図8Gは、グリシンを含む又は含まないFAが、還元パートナーペプチドの検出を改善するために使用され得るかどうかを示すデータを示す。図8A図8Eの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態でジスルフィドペプチドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)に対応し、図8F図8Gの各々について、還元パートナーペプチドは、非還元形態でジスルフィドを含むGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)に対応する。図8A図8Gの各々は、40μMのポストカラム分離TCEPで処理した、mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片の相対存在量を示す。図示されるように、グリシン(例えば、2mM)は、イオン対形成剤がTFA(図8A図8Bを参照されたい)であっても、FA(図8C図8E及び図8F図8Gを参照されたい)であっても、対応する還元パートナーペプチドを検出するために必要とされる。
【0084】
図9A~9Bを参照すると、mAb2のトリプシン消化から生成されたペプチド断片のMSシグナルが示されている。ジスルフィドは、還元パートナーペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)のジスルフィドに対応する。図9A~9Bの両方には同じデータが示されており、図9B図9Aのy軸ズームを示している。データは、2mM TCEP、0.12%NHOH及び0.05%TFA、又は2mM TCEP、0.12%NHOH及び0.1%FAで処理した試料と比較して、40μM TCEPを用いて部分還元を実行し、かつ移動相が2mMグリシン及び0.05%TFAを含む条件下で、ジスルフィド及び対応する還元パートナーペプチドの両方について最大のMSシグナルが観察されたことを示している。移動相が2mM TCEP、0.12%NHOH、及び0.1%FAを含む条件下で得られたデータは、グリシンを含まないFAを使用して還元パートナーペプチドを検出することが可能であることを示す。しかしながら、これは、高濃度の他の成分(2mM TCEP及び0.12%NHOH)の条件を必要とするようであり、これは、上記で考察したように、改善されたMSシグナルを得るために回避することが望ましい。より穏やかな濃度(例えば、40μM TCEP、0%NHOH)では、還元されたペプチドの検出には、移動相中のTFAが必要である。
【0085】
実施例2:スクランブルジスルフィドのMS/MS検出の最適化
TCEP(例えば、20~100μM)を使用する、上記で考察した部分還元戦略は、そもそもスクランブルジスルフィドの存在量が低いことに加えて、典型的な1~3%の還元効率をもたらすと推測される。したがって、妥当なMS1シグナルであっても、MS2スキャンは、データ依存的取得(DDA)では存在しない可能性があり、及び/又はMS2スキャンがピークの最後に発生する場合には弱すぎる可能性があることが認識された。
【0086】
これらの問題を説明するために、5μgのトリプシン消化mAb2を、40μM TCEPを用いた部分還元後にタンデム質量分析に供した。移動相は、2mMグリシン及び0.05%TFAを含んだ。図10Aには、ジスルフィドペプチド並びに対応する還元パートナーペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号1)(R1と標識)及びTYTCNVDHKPSNTK(配列番号2)(R2と標識)の相対存在量(MS1)が示されている。図10Bは、MS/MS分析の第2段階(MS2)についてのm/zの関数として相対存在量を示す。示されるように、適切なMS1シグナルがあっても、MS2シグナルは弱いか、又は存在しない可能性がある。
【0087】
したがって、MS2スキャンが存在し、各ピークの頂点付近であることを確実にするために、全ての還元システイン含有ペプチドに対応する標的化MS2アプローチを開発した。具体的には、図10Cを参照すると、ヒンジを含む15個のトリプシン還元ペプチドに対応する、示されるような16個の固有のシステイン残基を含有するmAbの例示的な図が示されている。上記の部分還元戦略に依存することなく、全てのジスルフィドの組み合わせを別々に標的とすると、120個の固有のジスルフィドペプチドが得られ、そのうちの8個は天然である。したがって、部分還元を実行することによって、システインを含有する約15個の還元されたトリプシンペプチドを標的とすることのみが必要である。したがって、方法論は、約15個のペプチドを用いて並行反応モニタリング(PRM)包含リストを構築することと、勾配全体にわたってスキャンすることと、を含み得る。減少したペプチドの数(例えば、約15個)は、ヒンジペプチドの除外に起因して概算として記載されるが、使用者の好みに依存して含まれ得る他の誤切断されたペプチドも潜在的に存在し得る。更に、MS1解像度は、MS2スキャンの数が増えると低下され得る。
【0088】
図11は、ジスルフィド並びに対応する還元パートナーペプチドGPSVFPLAPCSR(配列番号1)及びSTSESTAALGCLVK(配列番号7)のMS/MSスペクトルを示す。mAb2のトリプシン消化からペプチド断片を生成した。図11に示されるデータは、ジスルフィドのMS/MSスペクトルが、対応する還元パートナーペプチドと比較してかなりの程度の複雑性を含むこと、及び40μM TCEPを用いたポストカラム部分還元を実行することが、任意の検出可能なスクランブルジスルフィドのより単純な特徴付けを可能にすることを示す。別の言い方をすれば、還元ペプチドは、ジスルフィドペプチドよりもはるかに単純なMS/MSスペクトルを有し、これは、ジスルフィドのMS/MSスペクトルが、単一ペプチドと比較して指数関数的により多くの可能な断片化を有することに起因して複雑さが増大しているためである。
【0089】
スクランブルジスルフィドのMS/MS検出を容易にするために、以下の信頼度スコアリングシステムを開発した。信頼度スコアリングシステムは、5つのイエス/ノークエリから構成される。第1のクエリは、特定のジスルフィドのMS1質量が同定されているかどうかを判断する。第2のクエリは、第1の還元パートナーペプチドのMS1質量が同定されているかどうかを判断する。第3のクエリは、第2の還元パートナーペプチドのMS1質量が同定されているかどうかを判断する。本開示に基づいて、第1の還元パートナーペプチド及び第2の還元パートナーペプチドは、システイン残基を介して連結される場合、第1のクエリにおいて言及されたジスルフィドを含むことが理解され得る。第4のクエリは、第1の還元パートナーペプチドのbyonic MS2 IDが所定の閾値(例えば、>200)より大きいスコアを有するかどうかを判断する。第5のクエリは、第2の還元パートナーペプチドのbyonic MS2 IDが別の所定の閾値(例えば、>200)より大きいスコアを有するかどうかを判断する。各クエリについて、「イエス」は1点となり、各「ノー」はなし又は0点となる。したがって、ジスルフィドID信頼度スコアは以下の通りである:0=検出されず、1=低信頼度、2=中程度の信頼度、3=高信頼度、及び4又は5=超高信頼度。信頼度決定における精度を改善するために、選択肢は、還元されたペプチドのピークが同じ保持時間で消失するかどうかを決定するために、部分還元を伴わずに(例えば、TCEPの非存在下で)追加の試料を実行することであり得る。そのような信頼度決定スキームを複雑にし得るいくつかの問題は、短い(例えば、2~3残基ペプチド)が検出可能でない場合があり、二量体ジスルフィドペプチドが、それらの対応する還元パートナーペプチドと同じm/zを有することである(図31に関して以下を参照されたい)。
【0090】
実施例3:mAb2ジスルフィドスクランブリングの定量
スクランブルジスルフィドを同定し、それに対して信頼度値を割り当てるための上記で設計した標的化MS2アプローチをmAb2に適用した。具体的には、mAb2を非還元条件下でトリプシン消化に供し、ペプチド断片をHPLCによって分離し、溶出成分を40μM TCEPによって部分還元した後、MS/MS分析を行った(例えば、標的化MS2)。2mMグリシンを使用して、MSシグナルを増強した。図12は、システイン残基を含有するmAb2のトリプシンペプチド、並びに残基番号及び残基が軽鎖(L)上にあるか重鎖(H)上にあるかについての指定を含む対応するシステイン標識を示す。
【0091】
結果を図13に示し、これは、信頼度レベルによってコード化された、mAb2からの全ての可能なスクランブルジスルフィド結合を示す。スクランブルジスルフィド結合の71.6%が高信頼度レベル又は超高信頼度レベルで同定され、17%が中程度の信頼度レベルで同定され、11.3%が低信頼度レベルで同定された。ヒンジに対応するスクランブルペプチドは分析から除外した。データは、全ての可能なスクランブルジスルフィドの大部分がある程度同定可能であることを示した。結果は、ジスルフィドスクランブリングがトリプシン消化に使用されたプロトコルによって人工的に引き起こされ得るかどうかという疑問を提起した。したがって、この問題を以下で考察するように調査した。
【0092】
図14A図14Cは、mAb2プロトコル(図14A図13に示されるデータを生成するために使用した)、mAb3プロトコル(図14B)及び低pH消化キット(図14C)(Promega,Madison,WI)に対応する異なる消化プロトコルを示す。図14A図14Cに示されるように、各プロトコルは、類似の工程(例えば、緩衝液交換、変性、アルキル化、消化)を含むが、示されるようにいくつかの違いがある。各プロトコルはアルキル化工程を含み、mAb2及びmAb3プロトコルではヨード-アセトアミド(IAM)によるアルキル化を含み、低pH消化キットではN-エチルマレイミド(NEM)を含む。IAM及びNEMの構造及びそれらがどのようにシステイン残基を標識するかを、それぞれ図15A及び図15Bに参考のために示す。プロトコル間の他の主な差異は、変性、アルキル化及び消化工程が実行されるpHに集中する。更に、低pH消化キット手順は、トリプシンを更に含む消化工程の前に、組換えLys-Cプロテアーゼによる追加の予備消化工程を含む。重要なことに、低pH消化キット手順のための変性/アルキル化工程はpH5.7で行われ、予備消化工程はpH5.3で行われ、消化工程はpH5.3で行われる。これは、より高いpH(例えば、7.5)で行われるmAb2及びmAb3プロトコルに対応する同様の工程とは対照的である。
【0093】
図16を参照すると、UVクロマトグラフが示されており、これは、低pHキット手順に関連する低pHにもかかわらず、低pHキット手順がmAb2及びmAb3手順の結果に匹敵する結果をもたらすことを示している。図16は、約9分~約72分のUVクロマトグラフを示す。図17Aは、約14分から約30分までの時間窓を強調するためのUVクロマトグラフの一部分を示し、図17Bは、約34分から約49分までの時間窓を強調するための図16のUVクロマトグラフの別の部分を示す。まとめると、図16図17Bは、より高いpHのトリプシン消化手順(例えば、mAb2及びmAb3手順)と比較して、同等のトリプシン消化が、低pHキット手順に関連するより低いpHを使用して達成され得ることを示す。図16図17Bに示されるUVクロマトグラフについて、個々の試料は、mAb2手順、mAb3手順及び低pH消化キット手順を介して消化された5μgのmAb2に対応する。
【0094】
同じ試料を使用して、使用される消化手順(例えば、mAb2手順、mAb3手順、又は低pH消化キット手順)に応じてMSシグナルに何らかの識別可能な差異が存在するかどうかを評価した。図18を参照すると、トリプシン消化mAb2(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)に対応するいくつかの異なる天然ジスルフィドペプチドについてのMSシグナルを示すグラフが示されている。図18に見られるように、ジスルフィドペプチド断片を生成するためにmAb2手順、mAb3手順又は低pH消化キット手順のいずれを使用したかに関係なく、各天然ジスルフィドについて同等のシグナル強度が観察された。
【0095】
図19A図19Dは、低pH消化が、塩基性消化手順(例えば、mAb2及びmAb3手順)と比較して、タンパク質全体にわたって同様の消化効率を有することを示す。図19A図19Dのバーは、mAbの様々な領域の全て(例えば、VH、VL、CH1、CH2、CH3、CL)内の非システイン含有ペプチドのMS1ピーク積分を表す。図19A図19Dのデータは、図18に示されるデータと組み合わせて、報告されたスクランブルジスルフィドレベル(図20A図20Cを参照されたい)が低pH消化条件に関して正確であることを裏付ける。データは、酸性条件下(例えば、低pH消化キット手順)で消化された試料における同等の消化及びMSシグナルレベルを示唆したので、最初に同定されたスクランブルジスルフィドの量(図13を参照されたい)が、消化手順の選択によって人工的に引き起こされたかどうかを評価した。図20A図20Cは各々、標的化MS2アプローチを含む上記で考察した手順を介して検出されたジスルフィドペプチドを示す表を示す。mAb2手順、mAb3手順及び低pH消化キット手順に対応する3つの異なる消化手順(図14A図14Cを参照されたい)の各々についてのスクランブルジスルフィドの定量された存在量に対応するヒートマップとして示される、mAb2からの全ての可能なスクランブルジスルフィド結合が図20A図20Cに示される。各可能なスクランブルジスルフィドについて、スクランブルパーセンテージを、特定の消化方法(例えば、mAb2手順、mAb3手順、又は低pHキット消化手順)の関数として計算した。スクランブルパーセンテージを計算するための式は、図20Dに示される。簡単に説明すると、スクランブルパーセンテージは、スクランブルジスルフィドのピーク面積を、両方の天然ジスルフィドの平均ピーク面積とスクランブルジスルフィドのピーク面積との合計で割ることによって決定した。図20A図20Cに見られるように、全てのスクランブルジスルフィドは、高pH消化手順(例えば、mAb2及びmAb3手順)を使用した場合に同定されたより高いパーセンテージと比較して、低pH消化手順を使用した場合に0.01%未満と定量された。ジスルフィドのいくつかについては干渉があり、図20Eは、そのような干渉の代表例を示す。
【0096】
図20Aは、図20C(C23L-C22H)と同様に、同定された特に高い存在量のスクランブルジスルフィド(C152H-C139H)を強調する楕円を含む。図21A~21Bに関して考察したように、これらを更に調べた。具体的には、図21A図21Bは、トリプシン消化手順がより高いpH(例えば、mAb2及びmAb3手順)又はより低いpH(低pH消化キット手順)で行われた場合の、高存在量スクランブルジスルフィドの相対存在量を示す。図21Aは、還元パートナーペプチドSTSESTAALGCLVK(配列番号7)及びGPSVFPLAPCSR(配列番号1)に対応するC152H-C139Hを示し、図21Bは、対応する還元パートナーペプチドDIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCR(配列番号12)及びLSCAGSGFTFR(配列番号8)のジスルフィドに対応するC23L-C22Hを示す。図21A図21Bの各々について、相対存在量を消化プロトコル(mAb2プロトコル、mAb3プロトコル、又は低pH消化プロトコル)の関数として示す。図21A図21Bの両方に示すように、EICは、mAb2プロトコル及びmAb3プロトコルを用いて消化を実行した場合、高存在量ジスルフィドをベースラインノイズから容易に区別するが、スクランブルジスルフィドのEICは、低pH消化条件ではベースラインノイズから区別できなかった。各条件について、試料は、5μgのトリプシン消化mAb2(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)及び2mMグリシンを含んだ。この観察は、mAb2又はmAb3消化プロトコルのいずれかを使用して試料を生成した場合に、高存在量のスクランブルジスルフィドを含むことが示されたC152H-C139Hスクランブルジスルフィド(還元パートナーペプチドSTSESTAALGCLVK(配列番号7)及びGPSVFPLAPCSR(配列番号1)に対応する)のUVクロマトグラフを示す、図22に示すデータと一致する。具体的には、図22は、試料がmAb2及びmAb3消化手順を介して調製された場合に見られる観察されたピークと比較して、低pH消化キット手順を介して調製された試料について対応するピークが存在しないことを示す。
【0097】
実施例4:mAb5ジスルフィドスクランブリングの定量
実施例3に関して上記で考察したものと同様の一連の実験を、本明細書においてmAb5と称する別のモノクローナル抗体に対して行った。図23A図23Cは、調べた異なる消化プロトコル、具体的には、mAb4手順、mAb5手順、及び上記で考察され、図14Cに示される同じ低pH消化キット手順を示す。各手順の詳細を図23A図23Cに示すが、主な違いは、mAb4及びmAb5消化手順と比較して、低pH消化キット手順に関連する変性/アルキル化工程(例えば、pH5.7)及び消化工程(例えば、pH5.3)のpHが低いことである。
【0098】
図24は、図23A図23Cに例示的に示される消化手順(例えば、mAb4手順、mAb5手順及び低pH消化キット手順)の各々を使用した、トリプシン消化mAb5(又は低pH消化プロトコルの場合は低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)に対応するUVクロマトグラムのオーバーレイを示す。mAb2抗体について上に示したもの(図16図17Bを参照されたい)と同様に、図24は、低pH消化キット手順に関連する低pHにもかかわらず、mAb4及びmAb5消化手順を使用する消化と比較して同等の消化が達成されたことを示す。図24に示すクロマトグラムを取得するために実行された試料は、2mMグリシンの存在下で5μgのトリプシン消化mAb5(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)を含んだ。図25A~25Bは、より高いpH消化条件(例えば、mAb4及びmAb5消化手順)又はより低いpH消化条件(例えば、低pH消化キット手順)が使用されたかどうかにかかわらず、mAb5の消化が類似していたという事実を強調するために、より良好な視覚的分解能のために、図24に示されるクロマトグラフ全体の一部を描写する。
【0099】
図24~25Bに関して論じた同じ試料を使用して、使用した消化手順(例えば、mAb4手順、mAb5手順又は低pH消化キット手順)に応じてMSシグナルに何らかの識別可能な差があったかどうかを評価した。図26を参照すると、トリプシン消化mAb5(又は低pH消化プロトコルの場合、低pH耐性組換えLysCと共にトリプシン)に対応するいくつかの異なる天然ジスルフィドペプチドについてのMSシグナル(例えば、ピーク面積)を示すグラフが示されている。図26に見られるように、ジスルフィドペプチド断片を生成するためにmAb4手順、mAb5手順又は低pH消化キット手順のいずれを使用したかに関係なく、各天然ジスルフィドについて同等のシグナル強度が観察された。
【0100】
図27A~Dは、低pH消化が、塩基性消化手順(例えば、mAb4及びmAb5手順)と比較して、タンパク質全体にわたって同様の消化効率を有することを示す。図27A図27Dのバーは、mAbの様々な領域の全て(例えば、VH、VL、CH1、CH2、CH3、CL)内の非システイン含有ペプチドのMS1ピーク積分を表す。図27A図27Dのデータは、図26に示されるデータと組み合わせて、報告されたスクランブルジスルフィドレベル(図30A図30Cを参照されたい)が低pH消化条件に関して正確であることを裏付ける。
【0101】
スクランブルジスルフィドを同定し、それに対して信頼度値を割り当てるための上記で考察した標的化MS2アプローチをmAb5に適用した。具体的には、mAb4消化手順を介して非還元条件下でmAb5をトリプシン消化に供し、ペプチド断片をHPLCによって分離し、溶出成分を40μM TCEPによって部分還元した後、MS/MS分析を行った(例えば、標的化MS2)。2mMグリシンを使用して、MSシグナルを増強した。図28は、システイン残基を含有するmAb5のトリプシンペプチド、並びに残基番号及び残基が軽鎖(L)上にあるか重鎖(H)上にあるかについての指定を含む対応するシステイン標識を示す。
【0102】
結果を図29に示し、これは、信頼度レベルによってコード化された、mAb2からの全ての可能なスクランブルジスルフィド結合を示す。スクランブルジスルフィド結合の63.3%が高信頼度レベル又は超高信頼度レベルで同定され、20%が中程度の信頼度レベルで同定され、16.7%が低信頼度レベルで同定された。ヒンジに対応するスクランブルペプチドは分析から除外した。データは、全ての可能なスクランブルジスルフィドの大部分がある程度同定可能であることを示した。再び、結果は、ジスルフィドスクランブリングがトリプシン消化に使用されたプロトコルによって人工的に引き起こされ得るかどうかという疑問を提起した。
【0103】
したがって、この問題を、mAb2抗体について上記で考察したものと同様の様式で調査した。具体的には、mAb5抗体について、同定されたスクランブルジスルフィドの量(図29を参照されたい)が消化手順(例えば、より高いpH消化手順)の選択によって人工的に引き起こされたかどうかを決定するために実験を実行した。図30A図30Cは各々、各同定されたジスルフィドペプチド断片に信頼度レベルを割り当てる信頼度スコアリングシステムと組み合わせた標的化MS2アプローチを含む上記で考察した手順を介して検出されたジスルフィドを示す表を示す。図30A図30Cに示されているのは、mAb4手順、mAb5手順及び低pH消化キット手順(図23A図23C参照)に対応する3つの異なる消化手順の各々について、図29について考察したのと同様に信頼度レベルによってコード化された、mAb5からの全ての可能なスクランブルジスルフィド結合である。各可能なスクランブルジスルフィドについて、スクランブルパーセンテージを、特定の消化方法(例えば、mAb4手順、mAb5手順、又は低pHキット消化手順)の関数として計算した。スクランブリングパーセンテージを計算するための式は、図20Dに示され、上記で考察された。図30A図30Cに見られるように、全てのスクランブルジスルフィドは、高pH消化手順(例えば、mAb2及びmAb3手順)を使用した場合に同定されたより高いパーセンテージと比較して、低pH消化手順を使用した場合に0.01%未満と定量される。一部のジスルフィドについては、上記で考察され、図20Eに例示的に示されるものと同様の干渉があった。
【0104】
まとめると、本明細書中で議論される方法論は、生体分子(例えば、モノクローナル抗体)中の低存在量のスクランブルジスルフィドを同定するために効果的に使用され得る。
【0105】
これらの例は、ポストカラムTCEP部分還元が、(無傷のジスルフィドペプチドのMS/MSスペクトルと比較して)より単純なMS/MSスペクトルの生成によってスクランブルジスルフィドペプチドを同定するための単純かつ有効な方法であり、全ての成分が正確に同じ保持時間を共有することを実証する。更に、実験は、より塩基性(例えば、pH7.5)条件下での消化条件が、人工的なジスルフィドスクランブリングを誘導し得ることを示す。したがって、人工スクランブルジスルフィドペプチドの存在量は消化プロトコルに依存する可能性があり、遊離チオールはジスルフィドスクランブルに寄与する可能性があるが、ジスルフィドスクランブリングに単独で関与しているわけではない。より酸性の条件下(例えば、pH5.7)で非還元消化を実行することにより、人工的なジスルフィドスクランブリングを防止することができる。最後に、本明細書で考察されるmAb(例えば、mAb2及びmAb5)は、無視できるレベルの実際のスクランブルジスルフィドを含有することが示された。
【0106】
本明細書では特定の実施形態を図示及び説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、図示及び説明した実施形態の代わりに、同じ目的を達成するように計算された多種多様な代替及び/又は同等の実施形態又は実装を用いてもよいことを理解するであろう。当業者は、実施形態が非常に多種多様な方法で実装され得ることを容易に理解するであろう。本出願は、本明細書で考察される実施形態の任意の適合又は変形を包含することが意図される。したがって、実施形態は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが明白に意図されている。
図1A-1】
図1A-2】
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18
図19A-1】
図19A-2】
図19B-1】
図19B-2】
図19C-1】
図19C-2】
図19D-1】
図19D-2】
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図23C
図24
図25A
図25B
図26
図27A
図27B
図27C
図27D
図28
図29-1】
図29-2】
図30A-1】
図30A-2】
図30B-1】
図30B-2】
図30C-1】
図30C-2】
図31
【配列表】
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【国際調査報告】