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特表2024-503997メタノールおよび炭化水素生成物を製造するための二酸化炭素と水の合成ガスへの変換
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  • 特表-メタノールおよび炭化水素生成物を製造するための二酸化炭素と水の合成ガスへの変換 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】メタノールおよび炭化水素生成物を製造するための二酸化炭素と水の合成ガスへの変換
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/151 20060101AFI20240123BHJP
   C07C 31/04 20060101ALI20240123BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20240123BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240123BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20240123BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20240123BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20240123BHJP
【FI】
C07C29/151
C07C31/04
C07C1/04
C07C9/04
C01B32/40
C25B1/042
C25B1/23
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537284
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2021086999
(87)【国際公開番号】W WO2022136374
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216617.9
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクス・クレスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ストゥマン・トローオルス・ダルゴー
【テーマコード(参考)】
4G146
4H006
4K021
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC01
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB44
4H006AB80
4H006AC41
4H006BC10
4H006BC31
4H006BD20
4H006BE20
4H006BE40
4H006FE11
4K021AA01
4K021AB25
4K021DB31
(57)【要約】
メタノールまたは炭化水素生成物、例えば、合成燃料を製造するための合成ガスを製造する方法およびシステムであって、二酸化炭素リッチ流を供給し、それをCOとCOを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、水供給原料を供給し、それをHを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、COおよびCOを含む前記供給流とHを含む前記供給流を組み合わせる工程、および前記合成ガスを前記メタノールまたは前記炭化水素生成物に変換する工程を含む、合成ガスを製造する方法およびシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-二酸化炭素リッチ流を供給し、それをCOとCOを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、
-水供給原料を供給し、それをHを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、
-COとCOを含む前記供給流とHを含む前記供給流とを組み合わせて合成ガスとするステップ、
-前記合成ガスをメタノールに変換するステップ
を含むメタノールの製造方法であって:
ここで、二酸化炭素リッチ流を供給し、それをCOとCOを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップが、固体酸化物電気分解セルユニットにおいてワンススルーの操作として行われ、
ここで、COとCOを含む供給流中または合成ガス中のモル比CO/COが、0.2~0.6の範囲である前記製造方法。
【請求項2】
COとCOを含む供給流中または合成ガス中のモル比CO/COが、0.25、0.30または0.35、0.40または0.45、0.50または0.55である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二酸化炭素リッチ流を供給し、それをCOとCOを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップと、水供給原料を供給し、それをHを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップとを別々に実施する、請求項1~2のいずれか一つに記載の方法。
【請求項4】
前記固体酸化物電気分解ユニットを通過させる前に、前記二酸化炭素リッチ流の一部を迂回させることを含む、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
COおよびCOを含む前記供給流とHを含む前記供給流とを組み合わせて生じる前記合成ガスを冷却すること、好適には800から400℃に冷却することを含む、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
COとCOを含む前記供給流とHを含む前記供給流とを組み合わせるステップが、両方の流れを圧縮した後に実施される、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
二酸化炭素リッチ流が、二酸化炭素の供給流を、不純物、例えば、Cl、イオウ、Si、Asを除去するためのCO-洗浄ユニットを通過させることによって製造される、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
を含む供給流を製造するための電気分解ユニットが、アルカリ/ポリマー電解質膜電気分解ユニット、すなわちアルカリおよび/またはPEM電気分解ユニットである、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
を含む供給流を製造するための電気分解ユニットが固体酸化物電気分解セルユニットである、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記水供給原料が、水蒸気を含む、例えば、該方法の他のプロセス、例えば、水蒸気発生または下流の蒸留から製造される水蒸気を含む、請求項1~7および9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記二酸化炭素リッチ流が、外部源から、例えば、バイオガスのアップグレードまたは化石燃料ベースの合成ガスプラントからの二酸化炭素を含む、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
二酸化炭素リッチ流または水供給原料の電気分解の段階で必要とされる電力が、少なくとも部分的には、再生可能な供給源、例えば、風力または太陽エネルギーによって供給される、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
合成ガスをメタノールに変換するステップが、粗製メタノール流を製造するための触媒の存在下で合成ガスをメタノール合成反応器に通すことを含み、前記ステップが、水流および少なくとも98質量%のメタノールを有する別個のメタノール流を製造するための粗製メタノール流の蒸留ステップを任意選択でさらに含む、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
-二酸化炭素リッチ流を供給し、それをCOとCOを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、
-水供給原料を供給し、それをHを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、
-COとCOを含む前記供給流とHを含む前記供給流とを組み合わせて合成ガスとするステップ、
-前記合成ガスを炭化水素生成物に変換するステップ、
を含む、炭化水素生成物、例えば、合成燃料を製造するための方法であって:
ここで、二酸化炭素リッチ流を供給し、それをCOとCOを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップが、固体酸化物電気分解セルユニットにおいてワンススルーの操作として行われ、
ここで、COとCOを含む供給流または合成ガスが0.8以上、例えば、0.9のモル比CO/COを有し、および
ここで、前記合成ガスを炭化水素生成物に変換するステップが、合成ガスをフィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)(FT)合成ユニットに通過させることを含む、
前記方法。
【請求項15】
以下を含む、メタノールまたは炭化水素生成物、例えば、合成燃料を製造するためのシステム:
-COとCOを含む供給流を製造するための二酸化炭素リッチ流を受け取るように配置され、かつ、COとCOを含む供給流を製造するように配置された、ワンススルー固体酸化物電気分解セルユニット、
-Hを含む供給流を製造するための水供給原料を受け取るように配置された電気分解ユニット、
-COとCOを含む供給流およびHを含む供給流を受け取るように配置された、前記流れを圧縮し組み合わせて合成ガスにするための圧縮器セクション、
-好ましくは少なくとも98%の濃度(すなわち純度)を有する前記メタノールを製造するための、前記合成ガスを受け取るように配置されたメタノール合成ユニット、但しこの場合、前記ワンススルー固体酸化物電気分解ユニットは0.2~0.6のCO/COモル比を有するCOとCOを含む供給流または合成ガスを製造するように配置される;
または
前記炭化水素生成物、例えば合成燃料を製造するための炭化水素生成物合成ユニット、好ましくはフィッシャー・トロプシュ(FT)合成ユニット、但しこの場合、前記ワンススルー固体酸化物電解ユニットは0.8以上、例えば、0.9のCO/COモル比を有するCOとCOを含む供給流または合成ガスを製造するように配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、二酸化炭素リッチ流と水の供給原料から合成ガスを製造する方法およびシステム(装置)に関し、ここで、合成ガスは、メタノール合成によるメタノールの製造またはFischer-Tropsch合成(FT)による炭化水素生成物、特に、合成燃料、例えば、ディーゼルの製造に使用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現在では、HやCO、例えば、合成ガスからメタノールやFT-炭化水素生成物の製造においては、しばしば効率が悪く問題になることが多い。ここで合成ガスは、HやCOに富み、通常は天然ガスのような炭化水素供給原料の水蒸気改質によって生成されるガスである。メタノール合成では、合成ガス中の対COのCOの比率が高くなると、メタノール転換反応器が大きくなり、下流の精製工程がより高価になる。FTについては、一部のCOを逆水ガスシフト反応(水ガスシフト反応、WGS:CO+HO=CO+H)を用いてCOに変換する必要がある。これは逆WGS反応を行うためのシフトコンバータの使用などを含む高価で複雑な解決法となる。
【0003】
メタノール製造には、水の電気分解を利用してHを生成した後、COと混合して合成ガスを形成することが知られている。FTについては、標準的な解決策がなく、これまで逆WGSの使用が最も実行可能な解決法であり、商業的には何も構築されていない。
【0004】
従って、メタノールを製造する公知の方法は、水供給原料を取り、それを電気分解によりHに変換し、次いで、別々のCOリッチ流と結合し、それによって約3のモル比H/COを有する合成ガスを製造することによってである。この合成ガスは、次いで、3H+CO=CHOH+HO、CO+2H=CHOHの反応に従って、メタノール合成反応器内でメタノール(CHOH)に変換することを含む従来のメタノールループに通す。次いで、得られた未加工メタノール流を、蒸留によって精製する(すなわち、メタノールに富む)ことにより、少なくとも98質量%のメタノールを有する生成物流ならびに別個の水流を製造する。
【0005】
出願人のWO20208008A1は、炭化水素プラントのようなプラントを開示しており、このプラントは、合成ガス製造のための自己熱改質を含む合成ガス(合成ガス)段階と、炭化水素生成物またはメタノールのような合成ガス由来の生成物を製造するために合成ガスが合成される合成段階を含む。このプラントでは、特にCOとHなど、さまざまな流れを効果的に利用している。このプラントは炭化水素の外部供給は行われない。
【0006】
US2007045125A1は、ナトリウム伝導性電気化学セルを用いて、大気または他の利用可能な二酸化炭素源から得られる二酸化炭素および水から合成ガスを合成する方法を開示する。合成ガスは、固体酸化物電気分解セル中の二酸化炭素と水蒸気の共電気分解によっても製造される。次に製造された合成ガスはさらに処理され、最終的には輸送または他の用途に適した液体燃料に変換することができる。この引用は、COをCOとCOの混合物に変換するための固体酸化物電気分解ユニットの使用に関して、少なくとも記載していない。
【0007】
US20090289227A1には、産業プロセスの出発物質に存在する二酸化炭素よりも多量の二酸化炭素を含む廃棄物流を製造する産業プロセスから二酸化炭素を回収することを含むCO廃棄物を利用する方法が開示されている。本方法はさらに、再生可能なエネルギー資源を用いて水素を製造すること、および製造された水素および回収された二酸化炭素を利用する炭化水素材料を製造することを含む。二酸化炭素は電気分解によりCOに、水は電気分解により水素に変換される。この引用は、COをCOとCOの混合物に変換するための固体酸化物電気分解ユニットの使用に関して、少なくとも記載していない。
【0008】
US20180127668A1には、再生可能な燃料製造システムとして、大気中の空気から二酸化炭素を抽出するための二酸化炭素ガス捕捉ユニット、二酸化炭素を一酸化炭素に変換するための二酸化炭素ガス電気分解槽、水を水素に変換するための水電気分解槽、二酸化炭素電気分解槽によって製造された一酸化炭素と水電気分解槽によって製造された水素を燃料に変換するための合成燃料製造システムが開示されている。生成される燃料は合成ガソリンおよび/または合成ディーゼルである。二酸化炭素はCOの電気化学的変換を介してCOに変換され、これは、どのような電気化学的過程においても、二酸化炭素、炭酸塩、重炭酸塩が別の化学物質に変換されることを意味する。それゆえ、この引用は、少なくとも、COをCOとCOの特定の混合物に変換するために、固体酸化物電気分解ユニットを使用することについては記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO20208008A1
【特許文献2】US2007045125A1
【特許文献3】US20090289227A1
【特許文献4】US20180127668A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
現在では、水供給とCO供給の両方に電気分解段階を組み合わせて使用することにより、その後のメタノール変換や合成燃料のような炭化水素生成物の製造のためのより反応性の高い合成ガスを形成することができ、その結果、反応器、例えば、メタノール変換器などの、反応器のサイズを小さくすることができ、水の形成が少なくなり、カーボン(炭素)フットプリントを大幅に削減できることが判明した。さらに、特にメタノール転換のための水素消費の観点からの節約も達成される。他の関連する利益は、以下の実施形態から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は
メタノールの製造方法であり、:
-二酸化炭素リッチ流を供給し、それをCOとCOを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、
-水供給原料を供給し、それをHを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、
-COとCOを含む前記供給流とHを含む前記供給流とを組み合わせて合成ガスとするステップ、
-前記合成ガスをメタノールに変換するステップを含み、
ここで、二酸化炭素リッチ流を供給し、それをCOとCOを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップが、固体酸化物電気分解セルユニット、すなわちSOEC-COにおいてワンススルーの操作(一過式操作)として行われ、
ここで、COとCOを含む供給流中のまたは合成ガス中のモル比CO/COが、0.2~0.6の範囲にあり、例えば、0.25または0.30または0.35または合成ガスが0.40または0.45、0.50または0.55である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中で使用される「それを通過させる」という用語は、電気分解プロセスが電気分解ユニットで生じており、それによって、例えば二酸化炭素の少なくとも一部が、電流の助けを借りてCOに変換されることを意味する。
【0013】
本発明においては、COおよびCOを含む供給流、または合成ガスは、0.2~0.6の範囲のモル比CO/COを有し、例えば、モル比、0.25または0.30または0.35、0.40または0.45、0.50または0.55で有する。この範囲のCO/COを有する合成ガス、特に0.55のモル比(すなわち、約65:35のCO:CO、約1.82のモル比CO/COに相当)は、純粋なCOに基づく合成ガスよりもはるかに反応性が高い。したがって、このように一部変換されたCO流を用いると、メタノールプラントの費用とエネルギー消費量は減少する。モル比CO/COを0.6超で操作すると、ガス中のCO含量が高いために炭素形成の危険性があり、モル比CO/COが0.2未満での操作は、換算したCO分子当たりの電気分解ユニットの所要費用が高すぎるため好ましく好ましくない。
【0014】
COとCOを含む供給流または合成ガスは、前述したように、モル比CO/COが0.2以上であるため、部分転換を行うことができる。それによって、より多くのCOが製造されるように、電気分解は意図的に行われ、COに対するCOのモル比が0.2または0.2超(0.2以上)、例えば0.3超または0.4超または0.5超であり、COに対するCOのモル比が0.2~0.6である場合、メタノールへのその後の転化のために以下に記載されるように、得られる合成ガス中のCO、COおよびHの相対含有量を適切なモジュールに容易に調整することが可能となり、または、またはCO対COのモル比が0.8またはそれを超える場合、例えば0.9である場合、以下に記載されるように、炭化水素生成物への転化のための適切なH/COモル比への、より容易な調整を可能にする。本実施形態においては、モル比CO/COが0.8以上、例えば0.9以上であれば、COに比べてできるだけ多くのCOを気体中に有することが望ましい合成ガスを下流において炭化水素生成物に変換するのに、はるかに適した合成ガスを得ることができる。例えば、水の供給原料の電気分解から形成される水素の量は、通常、モジュールまたはH/COモル比が所望の範囲内の値に達することを保証するには多すぎ、したがって、他の目的のために水素の一部を使用せざるを得ない。つまり、Hが多すぎると、H/CO比率が2よりも大幅に高くなるため、余分なHを処理する必要がある。本発明においては、合成ガスの製造において、製造された水素の総量を使用することが可能である。
【0015】
本発明の第1の態様による実施形態においては、二酸化炭素リッチ流を供給し、それを電気分解ユニットに通過させCOとCOを含む供給流を製造するステップと、水供給原料を供給し、それを電気分解ユニットに通過させ、Hを含む供給流を製造するステップとが別々に実施され、すなわち、各ステップはそれに対応する電気分解ユニットとともに行われる。
【0016】
合成ガスをメタノールに変換する際には、より高い効率が達成される。すなわち、共電気分解を行う際には、水素と一酸化炭素が反応するため、メタンがいくらか製造されるであろう。メタノール製造の場合、メタンは不活性であるため、メタン生成に伴う効率の低下がある。
【0017】
さらに、二酸化炭素の電気分解と水の電気分解を別々に行うことにより、対応する電気分解ユニットのSOECスタックと2つの異なる製造のためのプロセスを最適化することが容易になる。このことは、前に説明したように、COが完全に変換されないこと、すなわち、ワンススルーSOEC-CO中においてCOが部分的に変換された状態で操作することによって、炭素形成のリスクが軽減されることにもなる。
【0018】
COへのCOの電気分解は、通常、高純度CO、例えば99.9995%COを製造するために、5つのセクションで構成される、すなわち;供給システム、電気分解、圧縮、精製、例えば、リサイクル圧縮を含む圧力スイング吸着器(PSA)中での精製、研磨である
【0019】
COおよびHからメタノールを製造する場合、COからの反応はCOからの反応に比べて水を製造するので、これはH、CO、COを含む従来のメタノール供給ガスに比べてはるかに高コストである。すなわち、CO+3H=CHOH+HO、CO+2H=CHOHの反応の結果である。その結果生じる水分は、触媒の性能に負の影響を及ぼし、CO濃縮が高すぎる場合、例えば90%場合、触媒体積が100%超増大する。メタノールの精製には、すべての水が蒸留によって除去されるので、さらに多くのエネルギーが必要である。
【0020】
水を蒸発させるエネルギーが含めるとすれば、水と二酸化炭素の電気分解を行うエネルギーはほぼ同じである。したがって、エネルギー的な観点からは、水やCOからメタノールを製造することを目的とする場合、水または二酸化炭素のいずれかの電気分解を行うことは一般にあまり問題にならない。
【0021】
炭素の形成により電気分解によるCOの変換率を高くできないため、かつ、CO/COの分離が複雑であるため、通常、CO電気分解を行うプラントやシステムは、HO電気分解を行うプラントやシステムよりも複雑(かつ高価)である。従って、CO電気分解を行った後は、圧力スイング吸着(PSA)および/リサイクル圧縮器システムが必要である。PSAから、COリッチ流、通常、COが99%超える流れが取り出されるだけでなく、低圧で取り出され、圧縮され、CO電気分解にリサイクルされるCOリッチ流も取り出される。しかしながら、部分変換を行うことにより、例えば、CO/COを0.2、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.6とすることで、CO電気分解プラントは、変換された1分子当たりの価格が水電気分解プラントと同じ価格となる。従って、合成ガスを生産するためのより簡便で、より安価な方法とプラントが達成される。
【0022】
本発明により、COおよびCOからなる供給流を製造するための電気分解ユニットは、固体酸化物電気分解セルユニットであり、以下、SOEC-CO(SOECを介したCOの電気分解)は、ワンススルー操作(単流操作、一過式操作)として実施され、すなわち、電気分解はワンススルー電気分解ユニットである。「実施された」という用語は、「操作された」と同じ意味を持つことが理解されるであろう。「ワンススルー」とは、COの循環がなく、それにより少なくともリサイクル圧縮器の必要性がないことを意味する。CO電気分解を行うための従来のシステムと比較して、この実施形態は、リサイクル圧縮器の必要性を排除し、それによってパルブ、配管および制御システムの必要性も排除することをさらに可能にする。これにより、リサイクル圧縮器やその他の機器(弁、パイプなど)の保守管理だけでなく、圧縮器に必要な電気代などの付随する運転費用が節約される。さらに、PSAの必要性もなくなり、それによって、メタノールへの更なる変換のための合成ガスを製造するための方法およびプラントが大幅に簡素化される。
【0023】
本発明の第1の態様による実施形態においては、方法は、前記固体酸化物電気分解ユニットに通す前に、前記二酸化炭素リッチ流の一部を迂回(パイパス)させることを含む。これにより、COとCOを含む供給流におけるモル比CO/COの調整における柔軟性の向上が可能となり、同時にバイパスがない場合と比較して、より小さな固体酸化物電気分解セルユニットを可能にする。例えば、主にCOを含む二酸化炭素リッチ流(電気分解ユニットへの供給物)の迂回された部分は、COおよびCOを含む電気分解ユニットから出る流れと組み合わされ、それによって0.2~0.6のモル比CO/COを有するCOおよびCOを含む前記供給流を製造する。
【0024】
本発明の第1の態様による実施形態においては、合成ガスは、モジュールM=(H-CO)/(CO+CO)または、H/COモル比が1.8~2.1若しくは1.9~2.1、好ましくは2を有する。
【0025】
メタノール製造に用いられる合成ガスは、M=2のときにはメタノール反応のために合成ガスがバランスを保っているので、通常はモジュールMで表される。水蒸気改質によって製造される合成ガスのような、メタノール製造のための典型的な合成ガスにおいては、合成ガスにある程度過剰な水素が含まれるため、2をわずかに上回るモジュール、例えば2.05または2.1となる。
【0026】
炭化水素生成物、特にディーゼル、灯油(ケロシン)、ジェット燃料、ナフサのような合成炭化水素生成物への更なる変換のための合成ガスの製造においては、炭化水素供給ガス、任意に予め改質された炭化水素供給ガスの自動熱改質(ATR)によって合成ガスをまず製造するのが通常である。炭化水素供給ガスは、典型的には天然ガスである。合成ガスの製造のためのこのプロセススキームは、通常、独立型ATRと呼ばれる。ATRに酸素を含む流れを供給するために空気分離ユニット(ASU)も必要となる。このようにして製造された合成ガスは合成燃料合成ユニットを通過させ、そこから上記の炭化水素生成物およびテールガスが得られる。合成燃料合成ユニットは、典型的にはフィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)(FT)合成を含み、そこからテールガスが製造される。
【0027】
通常、FT合成にはH/COモル比が約2、例えば1.8~2.1の合成ガスが必要である。ATRへの炭化水素供給が天然ガスまたは前改質天然ガス、蒸気および酸素である場合、H/CO-比は、典型的には、より高くなり、例えば、2.2~2.4であり、運転条件および天然ガス組成などの多数の因子に依存する。上記のようにH/CO-比を約2の所望の値に調整するためには、FT合成で製造されるテールガスのATR部分にリサイクルすることが知られている。
【0028】
本発明は、上記の従来の方法とは対照的に、メタノール製造のためのモジュールMの所望の値、またはFTのためのH/COモル比の所望の値;両方の場合において約2の値にガスを調整することによって、より反応性の高い合成ガスを形成するための著しく簡便な方法を提供する。これにより、メタノール合成反応器(メタノール反応器)のサイズなど、対応する変換ユニットのサイズが大幅に縮小する。さらに、電気分解の電力消費の大幅な節約が達成される。
【0029】
本発明の方法は、合成ガスを製造するための天然ガスのような炭化水素供給ガスの水蒸気改質を行わないことが好ましい。水蒸気改質は、例えば、通常の水蒸気メタン改質(SMR)またはATRは、大規模でエネルギー集約的なプロセスであり、従って、合成ガスを製造するための水蒸気改質を用いない運転は、プラントサイズおよび運転コストの大幅な低減、ならびに大幅なエネルギー節約を可能にする。さらに、SMRと比較して、電気分解ユニットにおいては、より多くの電気分解ユニットを除去または追加することにより、生産能力を容易に変更することができる(サイズによるコストの線形スケーリング)。これは通常、SMRなどには当てはまらない。
【0030】
本発明の方法はまた、高価で複雑な解決策である逆水ガスシフトの使用を不要にする。従って、本発明は、例えばFT合成のための、より簡単な合成ガスの製造方法を可能にする。
【0031】
COおよびCOを含む供給流中の望ましくない炭素形成の危険性があり、これは、COのかなりの含有量を有する可能性があり、これは、この流れの冷却のためである。従って、本発明の第1の態様による実施形態においては、本方法は、COおよびCOを含む前記供給流とHを含む前記供給流とを組み合わせることによって生じる前記合成ガスを冷却することを含む。換言すれば、この流れ、すなわちCOおよびCOを含む流れ、ならびにHを含み、また、水を含み得る供給流は、例えば、25%までの水を組み合わせてから冷却される。好適には、前記冷却は800℃から400℃までである。これによって、圧縮または熱交換器などの他の下流装置に入る時に、COおよびCOを含む供給流中の潜在的な炭素形成の危険性が、減少するか、回避される。特に、金属がCOリッチガス環境に曝露されるときに生じる壊滅的な腐食形態である金属ダスティングが、低減または回避される。
【0032】
本発明の第1の態様による実施形態においては、COおよびCOを含む前記供給流とHを含む前記供給流とを組み合わせる工程は、両方の流を圧縮した後に実施される。特定の実施形態においては、こうして組み合わせられた流れからの合成ガスは、最終的な圧縮に供される。例えば、各々の流れは別々に圧縮され、その後、当分野で周知であるメタノールまたは炭化水素生成物へのその後の変換に関連する圧力を有する合成ガス流に組み合わせられる。一例として、Hを含む供給流は20barで作られ、それによってCOおよびCOを含む供給流は20barに圧縮され、次いで最終圧縮のために合成ガスに組み合わせられる。
【0033】
本発明において、二酸化炭素リッチ流の部分的な変換が、ワンススルーSOEC-COで行われることにより、下流のメタノール合成に先立ってCOを洗浄する必要がないという付随する利点もある。
【0034】
しかしながら、いくつかの例においては、電気分解の前に二酸化炭素リッチ流の洗浄が望ましいことがある。従って、本発明の第1の態様による実施形態においては、Cl(例えば、HCl)、イオウ(例えば、SO、HS、COS)、Si(例えば、シロキサン)、Asなどの不純物を除去するためのCO-洗浄ユニットを通過することによって、二酸化炭素リッチ流が製造される。これにより、下流ユニット、特にその後の電気分解の保護が確保される。例えば、COSは少量でも問題を引き起こす可能性がある。通常、工業用CO中のCOSの量は検出限界以下であるが、ある場合には、COSが10~20ppbの範囲で測定されており、これは電気分解ユニットに有害な影響を及ぼし、その結果、電気分解ユニットは急速に劣化する。
【0035】
本発明の第1の態様による実施形態においては、Hを含む供給流を製造するための電気分解ユニットは、アルカリ/ポリマー電解質膜電気分解ユニット、すなわちアルカリ/PEM電気分解ユニット(アルカリセルまたはポリマーセルユニット)である。
【0036】
本発明の目的のために、用語「アルカリ/PEM電気分解ユニット」は、アルカリ性および/またはPEM電気分解ユニットを意味する。
【0037】
SOECを介したCOの電気分解と、アルカリ/PEM電気分解を介した水の電気分解の併用は、さらに、COの電気分解を伴わないアルカリ/PEM電気分解を介した水の電気分解を用いた場合のみの従来技術と比較して、電気分解の電力の減少となる。
【0038】
さらに、HOのHへの電気分解が液体水(アルカリ性/PEMのようである)に基づいている場合、水の蒸発熱は節約される。
【0039】
SOEC-COおよびアルカリ/PEM電気分解ユニットは、当該技術分野、特にアルカリ/PEM電気分解は周知である。例えば、出願人のWO2013/131778はSOEC-COについて記載されている。SOEC-COとアルカリ/PEM電気分解の特定の組合せは、容易にアクセスでき、それによって、他の組合せの電気分解ユニットよりも安価である。
【0040】
特にSOEC-COにおいて、COは、燃料極、すなわちカソードでCOとCOの混合物に変換される。また、酸素は同時に酸素電極、すなわちアノードで形成され、しばしばフラッシングガスとして空気を用いる。このようにして、COおよびOが、電気分解セルの両側に形成される。
【0041】
本発明は、1モルのCOをCOに変換することを可能にし、それによって、メタノールを製造するための上記の反応に沿って、(ここに再度記載されるが:CO+2H=CHOH;CO+3H=CHOH+HO)メタノールへの変換のHの必要量を1モルまで減少させることができる。
【0042】
したがって、1モルのCOが1モルのCOに変換されるたびに、1モルのHが少なくなる(必要なくなる)。これにより、水素消費量の大幅な節減が実現する。
【0043】
本発明の第1の態様による実施形態においては、Hを含む供給流を製造するための電気分解ユニットは、固体酸化物電気分解セルユニットである。従って、両電気分解ユニットは固体酸化物電気分解セルユニット(SOECユニット)である。これらの電気分解ユニットのいずれかが、700~800℃の温度範囲で適切に作動し、それによって、その流れの冷却のための共通のシステムでの作動が可能になり、したがって、プロセスユニットの統合が可能となる。COの電気分解とHOの水蒸気をベースとしたHへの両方に電気分解にSOECを用いると、製造されたCHOHからHOを蒸留するためのエネルギーが節約される。
【0044】
このような高温(700~800℃)でのSOECユニットによる操作は、はるかに低い温度、すなわち60~160℃の範囲で作動するアルカリ/PEM電気分解よりも利点を提供する。このような利点には、例えば、CO電気分解に関連して、セル電圧が低いことによる運転コストの低下、ならびに電流密度が高いことによるキャピタルコストの低下が含まれる。
【0045】
本発明の第1の態様による実施形態においては、前記水供給原料は蒸気を含むか、または前記水供給原料は水蒸気であり、例えば、水蒸気発生または下流の蒸留などの本方法の他のプロセスから生成される水蒸気である。水供給原料という用語には、水(液体水)および/または水蒸気が含まれることが理解されるであろう。これによって、例えば、蒸気輸出を必要とするのではなく、例えば、下流のプロセス中に発生する任意の蒸気を再利用できるので、プロセス(方法)のエネルギー効率は増加する。また、例えば蒸留によるメタノールの濃縮または精製では、水も形成され、有利には、水原料の一部として再利用することができる。
【0046】
液体水はSOECを通過できず、水蒸気はアルカリ/PEMを通過できないことが理解される。
【0047】
また、水(水蒸気)中の水が余分にある場合には、Hを製造するための水(水蒸気)中のSOECを使用することで、総合的に節約できることも理解されよう。この蒸発エネルギーはSOECにおいて節約されるが、これは凝縮熱が失われる発電に余分な蒸気が使われる場合には当てはまらない。特に、最終製品が粗製メタノールである場合、例えば、出願人のUS452021に従い、メタノールからガソリンへの経路(TiGAS)により粗製メタノールからガソリンに変換する場合、または合成ガスを代替天然ガス(SNG)に使用する場合には、余分な蒸気が利用可能となる。
【0048】
本発明の第1の態様による実施形態においては、前記二酸化炭素リッチ流は、バイオガスのアップグレードまたは化石燃料ベースの合成ガス(合成ガス)プラントからの外部供給源からの二酸化炭素を含む。
【0049】
前述したように、外部供給源にはバイオガスのアップグレード(改良)が含まれる。バイオガスは、自然エネルギー源であり、暖房、電力、その他多くの業務に利用できる。バイオメタンになると、バイオガスを天然ガス基準まで洗浄、アップグレードすることができる。バイオガスは主にメタン(CH)と二酸化炭素(CO)であり、典型的には60~70体積%のメタンを含む。バイオガスの30%または40%までが二酸化炭素であろう。典型的には、この二酸化炭素は、バイオガスから除去され、大気中に排出され、さらなる処理のためのメタンリッチガスとしてさらなる処理に利用される、または天然ガスネットワークに供給される。本発明による方法では、除去されたCOは、より多くの合成ガスを製造するために利用される。
【0050】
化石燃料ベースの合成ガスプラントの例は、FT用またはガソリン製造用の天然ガスベースの合成ガスプラント(TiGAS)、すなわちガスから液体(GTL)プロセス、またはメタノール製造用であり、ここでは、COが廃熱セクションまたは焼成ヒーター排ガスから抽出され、本発明による方法でより多くの合成ガスを製造するために利用される。
【0051】
その他の外部発生源としては、熱・発電所、ごみ焼却場などがある。
【0052】
本発明の第1の態様による実施形態においては、二酸化炭素リッチ流または水供給原料の電気分解の段階で必要とされる電力は、少なくとも部分的には、風力および太陽エネルギーのような再生可能な供給源によって、または、例えば水力発電によっても供給される。これにより、電気分解に必要な発電に化石燃料を使用しないため、さらに持続可能な、すなわち「よりグリーンである」方法(プロセス)およびシステム(プラント)アプローチが達成可能である。
【0053】
本発明の第1の態様による実施形態においては、合成ガスをメタノールに変換するステップは、粗製メタノール流を製造するための触媒の存在下で合成ガスをメタノール合成反応器に通すことを含み、前記ステップは、水流および少なくとも98質量%のメタノールを有する別個のメタノール流を製造するための粗製メタノール流の蒸留ステップを任意選択でさらに含む。本発明による粗製メタノール流中のCHOH/HOのモル比は1.2以上、例えば1.3以上である。したがって、合成ガスは従来のメタノール合成または水電気分解のみを利用して水素を製造する場合よりも反応性が高い。従来のメタノール合成においては、いわゆるメタノールループから、モル比CHOH/HOがしばしば約1の粗製メタノール生成物が生成され、これは、下流で分離する必要がある相当量の水の製造を示す。従って、本発明は、さらに、従来のメタノール合成と比較して、製造された粗製メタノールがはるかに低い水の含有量、例えば、モルベースでの水の含量が、例えば、少なくとも20%または少なくとも30%少ない水を有することを可能にし、それによって、例えば配管のような設備サイズの縮小を伴う工程での水の運搬が少なくなり、さらに、例えば、メタノールの精製のためのはるかに簡便でコスト効率の良い蒸留を可能にすることによって、下流での水分離のコストを低減することを可能にする。さらに、メタノール合成反応器中の触媒性能も水に感受性であるため、触媒容量とそれによる反応器サイズがさらに減少する。
【0054】
メタノール合成反応器および/またはメタノール合成ループを含むメタノール技術は、当該技術分野において周知である。従って、当技術分野の一般的な慣用技術は、ワンススルーメタノール変換プロセスにおいてメタノール変換を実施すること;または、反応流出液から分離された変換されていない合成ガスをリサイクルし、新鮮な合成ガスをリサイクルガスで希釈することである。後者は、典型的には、一以上の反応器が直列または並列に接続された、いわゆるメタノール合成ループをとなる。例えば、メタノールの直列合成はUS5827901およびUS6433029に、並列合成はUS5631302およびEP2874738B1に開示されている。
【0055】
本発明の第2の態様において、合成燃料のような炭化水素生成物を製造するための方法が提供され、以下のステップを含む:
-二酸化炭素リッチ流を供給し、それをCOとCOを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、
-水供給原料を供給し、それをHを含む供給流を製造するための電気分解ユニットに通過させるステップ、
-COとCOを含む前記供給流とHを含む前記供給流とを組み合わせて合成ガスとするステップ、
-前記合成ガスを炭化水素生成物に変換するステップ、
ここで、二酸化炭素リッチ流を供給し、それを電気分解ユニットに通過させCOとCOを含む供給流を製造するステップが、固体酸化物電気分解セルユニット、すなわちSOEC-COにおいてワンススルーの操作として行われ、
ここで、ここで、COとCOを含む供給流または合成ガスが0.8以上、例えば、0.9のモル比CO/COを有し、
ここで、前記合成ガスを前記炭化水素生成物に変換するステップが、合成ガスをフィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)(FT)合成ユニットに通過させることを含む。
【0056】
一実施形態においては、テイルガス(FT-テイルガス)がFT合成ユニットから製造される。テールガスは、後述するように、前記二酸化炭素リッチ流を提供するために使用することができる。別の実施形態においては、合成燃料はディーゼル、灯油(ケロシン)、ジェット燃料、ナフサ、特にディーゼルのいずれかである。
【0057】
メタノール技術に関しては、FT技術は当技術分野でもよく知られており、特に、Steynberg A. and Dry M. “Fischer-Tropsch Technology”, Studies in Surface Sciences and Catalysts, vol. 152.において言及されている。
【0058】
一実施形態においては、前記二酸化炭素リッチ流は、合成ガスを前記炭化水素生成物に変換するステップで生成される前記テールガス、すなわちFTテールガスから製造される二酸化炭素を含む。通常COリッチのFT-テールガスのリサイクルは非常に有利である。なぜなら、FT-テールガスには通常メタンも含まれているが他の炭化水素はそれほど多くないと仮定すると、テールガスが燃料源として持ち出される必要があるからである。
【0059】
第3の態様において、本発明は、以下を含む、メタノールまたは炭化水素生成物、例えば、合成燃料を製造するためのシステム、すなわち、プラントまたはプロセスプラントも包含する:
-COとCOを含む供給流を製造するための二酸化炭素リッチ流を受け取るように、COとCOを含む供給流を製造するために配置された、ワンススルー固体酸化物電気分解セルユニット、
-Hを含む供給流を製造するための水供給原料を受け取るように配置された電気分解ユニット、
-COとCOを含む供給流およびHを含む供給流を受け取るように配置された、前記供給流を圧縮し合成ガスに組み合わせるための圧縮器セクション、
-好ましくは少なくとも98%の濃度(すなわち純度)を有するメタノールを製造するための、前記合成ガスを受け取るように配置されたメタノール合成ユニット、
ただしこの場合、ワンススルー固体酸化物電気分解ユニットが0.2~0.6のCO/COモル比を有するCOとCOを含む供給流または合成ガスを製造するように配置される;
または
前記炭化水素生成物、例えば合成燃料、例えばディーゼルを製造するための炭化水素生成物合成ユニット、好ましくはフィッシャー・トロプシュ(FT)合成ユニット、
ただしこの場合、前記ワンススルー固体酸化物電気分解ユニットが0.8以上、例えば、0.9のCO/COモル比を有するCOとCOを含む供給流または合成ガスを製造するように配置される。
【0060】
本発明の第1の態様に従う方法と同様に、より反応性の高い合成ガスが形成され、それによってメタノール合成反応器などの下流の反応器の小型化を可能にし、例えばメタノール合成ループにおける水の生成が少なくなり、それにより水の分離コストが低減され、装置の小型化が可能になる。水の生成が少なくなることにより、触媒の体積、ひいてはメタノール合成ユニットのサイズがさらに小さくなる。さらに、本発明の第1の態様による方法と同様に、本システムは、1モルのCOをCOに変換することを可能にし、それによって、生成されるメタノールのモル当たり1モルのHの必要量を減少させる。
【0061】
本発明の第1態様または第2態様の実施形態のいずれかと関連する利点は、本発明の第3態様の実施形態のいずれとも併用することができ、逆も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図面の簡単な説明
図1は、先行技術によるメタノールへの更なる変換のための合成ガスの製造のための概略的な方法およびシステム(プロセスおよびプラント)を示す。
【0063】
図2は、本発明の実施態様による合成ガスの製造およびメタノールへの更なる変換のための概略的な方法およびシステムを示す。
【0064】
図1(先行技術)を参照すると、不純物を除去し、それによってCOリッチ流2を製造するために、二酸化炭素供給流1をCO-洗浄ユニット20に通す。水供給原料3は、風力または太陽エネルギーのような持続可能な供給源によって動力源とするアルカリ/PEM電気分解ユニットのような電気分解ユニット30を通過し、それによってHを含む供給流4、すなわちHリッチ流を製造する。両方の流れ2および4は、圧縮器セクション40を通過し、そこで圧縮され、約3のモル比H/COを有する合成ガス流5に組み合わされる。先に定義されたモジュール「M」は、二酸化炭素および一酸化炭素および水素を含むあらゆるガス混合物において使用されるが、二酸化炭素に対する水素のモル比は、二酸化炭素および水素のガス混合物に対して使用することにのみ関連する。合成ガス5は、当該技術分野で周知のようにメタノールループ50に入り、それによって、合成ガス5は、約1のモル比CHOH/HOを有する粗製メタノール流6に変換される。次いで、粗製メタノール流6内の水が蒸留ユニット60内で除去され、次に粗製メタノール流6が精製されるか、メタノール中で濃縮される。次いで、水流8と同様に、少なくとも98質量%の濃度を有するメタノール生成物7が製造される。
【0065】
本発明の実施態様に従う図2を参照すると、二酸化炭素供給流1は、不純物を除去し、COリッチ流2を製造するためのCO-洗浄ユニット20に通され、次いで、電気分解ユニット70を通され、ここで、ワンススルーSOEC-COユニットは、風力または太陽エネルギーのような持続可能な供給源によって駆動され、それによってCOおよびCOを含み、0.2を超える、特に0.2~0.6であるモル比CO/COを有する供給流2’が製造される。これとは別に、水供給原料3もまた、電気分解ユニット30、例えば、持続可能な供給源によって駆動される、PEM-電気分解ユニットまたはSOECユニットに通され、それによってHを含む供給流4が製造される。両方の流れ2および4は、圧縮器セクション40を通過し、それによってそれらは圧縮され、顆粒のメタンへの変換に非常に適したモジュールM=(H-CO)/(CO+CO)を有する、より反応性のある合成ガス流5に組み合わされる。この合成ガス5は、当該技術分野で周知のメタノールループ50に入り、それによって、ここでは、モル比CHOH/HOが1.3以上、すなわち、従来技術と比較してモルベースで少なくとも30%少ない水分を有する粗製メタノール流6に変換される。次いで、粗製メタノール流6内の水が蒸留ユニット60内でより簡便に除去され、ここで、この流れは精製されるか、メタノール中で濃縮される。次いで、少なくとも98質量%の濃度を有するメタノール生成物7、および水供給原料3の一部として使用することができる水流8が生成される。
【実施例
【0066】

以下の表1の結果は、反応:3H+CO=CHOH+HOに従って、Hを製造するための水(水蒸気)電気分解(SOEC)のみを用いた、100kmol/hのCOでメタノールを製造するプラント(先行技術)に対応し;並びに、反応:CO+2H=CHOHに従って、Hを製造するための水(水蒸気)電気分解(SOEC)およびCOを製造するためのCO電気分解(SOEC-CO)を用いたもの(本発明)に対応する:
【0067】
【表1】
【0068】
このように、ガスの体積と密度の減少により、圧縮器の動力が19%節約され、蒸気発生の負荷が70%増加し、それに対応して冷却器の熱損失は50%減少する。このように、HO-電気分解とCO-電気分解の両方にSOECを使用するのと同じ効果があり、電気分解の電力を大幅に節約することはできない。しかしながら、本発明に従い、HO-電気分解およびCO-電気分解の両方についてSOECを操作することにより、両SOECユニットが約700~800℃の同じ温度域で作動し、従って、プロセスユニットのより良好な統合が得られるので、SOECは、その流れの冷却のための一般的なシステムで動作することを可能にする。また、SOECは水蒸気を利用するため、製造されたメタノールからHOを蒸留するためのエネルギーが節約される。
【0069】
以下の表2は、ここで、以下を比較する、以下の反応:3H+CO=CHOH+HOHに従い:H製造するための水(液体)電気分解(アルカリ/PEM電気分解)のみの従来技術;ならびに、以下の反応:CO+2H=CHOHに従い:H製造するための水(液体)電気分解(アルカリ/PEM電気分解)、およびCOを製造するためのCO電気分解(SOEC-CO)の本発明の実施形態:
【0070】
【表2】
【0071】
従って、本発明の実施形態に従い、HO-電気分解にアルカリ/PEMを、CO-電気分解にSOECを使用する場合、Hを製造するためにアルカリ/PEMのみを使用することに関して、7%の電力消費の減少(向上)がある。従って、本実施形態に係る本発明は、より反応性の高い合成ガスの形成だけでなく、電気分解の電力消費量の低減も可能とする。
図1
図2
【国際調査報告】