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特表2024-504015反応の時間的な推移を計測するコンピュータ実装方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】反応の時間的な推移を計測するコンピュータ実装方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240123BHJP
   G06F 3/0346 20130101ALI20240123BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240123BHJP
   A61B 5/389 20210101ALI20240123BHJP
   A63F 9/00 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G06F3/01 570
G06F3/0346 422
G06F3/0346 421
A61B5/11 120
A61B5/11 200
A61B5/389
A63F9/00 504D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539102
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021087330
(87)【国際公開番号】W WO2022144277
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】102020135038.4
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522053780
【氏名又は名称】サニヴァ・ダイアグノスティクス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ニサー・ジェニー
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
5B087
5E555
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB12
4C038VB31
4C127AA04
4C127LL08
5B087AA07
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA41
5E555CA44
5E555CB66
5E555DA08
5E555FA00
(57)【要約】
本発明の対象は、少なくとも一つのセンサーシステム又はセンサー配列を用いて、少なくとも一人の使用者が一つの刺激又は異なる刺激に対して反応する際の反応の時間的な推移を計測する、特に、感覚運動能力と刺激処理を検出する、コンピュータ実装方法である。仮想的な対象物を掴む直前、その最中及びその後の使用者のそれぞれ一方の手の動きが装置のセンサーによって検出される。この使用者の反応時間のセンサーによる検出が、現実の使用者に仮想的な環境を表示している間に実施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのセンサーシステムを用いて少なくとも一人の使用者の反応の時間的な推移を計測する、コンピュータ実装方法であって、
i.仮想空間において少なくとも一つの仮想的な物体を表示する工程と、
ii.空間において仮想的な物体の指示された動きを表示する工程であって、この動きが、使用者に対してデカルト座標系のx軸,y軸又はz軸に相当する軸に沿って進行する工程と、
iii.仮想的な物体の指示された動きの現実の時間的な推移と空間的な推移を計測又は計算する工程と、
iv.現実空間において使用者を検出する工程と、
v.現実空間において使用者の動き又は運動フローを検出する工程と、
vi.使用者の指示された動きの現実の時間的な推移と空間的な推移を計測又は計算する工程と、
vii.工程iv及びviの仮想的な運動フローと現実の運動フローを関連付ける工程と、
viii.工程iv及びviの運動フローに基づき反応の時間的な推移を計測する工程と、
を有するコンピュータ実装方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンピュータ実装方法において、
前記の仮想的な物体の指示された動きの時間的な推移及び空間的な推移と、少なくとも一人の使用者の動きの時間の推移及び空間的な推移とから、少なくとも一つの物体と使用者の少なくとも一つの開始点と少なくとも一つの衝突点が特定されることを特徴とするコンピュータ実装方法。
【請求項3】
請求項2に記載のコンピュータ実装方法において、
前記の特定された衝突点から使用者の反応時間が特定されることを特徴とするコンピュータ実装方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載のコンピュータ実装方法において、
前記の少なくとも一つのセンサーシステムが、測定データを非接触式に検出するように構成されていることを特徴とするコンピュータ実装方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載のコンピュータ実装方法において、
前記の少なくとも一つのセンサーシステムが、運動フローの検出に適した光学式センサーシステムであることを特徴とするコンピュータ実装方法。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか一つ又は請求項5に記載のコンピュータ実装方法において、
前記の少なくとも一つのセンサーシステムが、使用者の接触を検出することによって測定データを取得するのに適していることを特徴とするコンピュータ実装方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法に基づき仮想環境において現実の使用者の反応の時間的な推移を計測する装置であって、
少なくとも一つのデータ処理ユニットと、
少なくとも一つのセンサーシステムと、
仮想空間において仮想的な物体を表示するのに適した少なくとも一つの表示部品と、
特定されたセンサー情報を出力する、或いは転送するのに適した少なくとも一つの出力機器と、
特定されたセンサーデータを保存するとともに、比較するのに適したデータベース及び少なくとも一つのセンサーシステムに対する少なくとも一つのインタフェースと、
を備えた装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
前記の少なくとも一つのセンサーシステムが、光学式センサーシステム及び/又は加速度センサーであることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の装置において、
前記の運動データを検出するセンサーシステムが、追加の現実の測定器具の中又は所に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項7又は9に記載の装置において、
前記のセンサーシステムが、三次元空間における姿勢を計測するセンサーを有することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項7から10までのいずれか一つに記載の装置において、
前記のセンサーシステムが、手袋として構成されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項7,9又は10に記載の装置において、
前記の測定器具の形状が、仮想的な物体の表示される形状に倣って作られていることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、
前記の測定器具が、垂直方向を向いて、棒形状に構成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の装置において、
前記のセンサーが、平たい構造物に統合されて、この平たい構造物が、その後取り外し可能な形で棒形状の物体上に配置可能であるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項15】
反応の時間的な推移を測定するために請求項1から6までのいずれか一つに記載のコンピュータ実装方法並びに、反応の時間的な推移を測定するために請求項1から6までのいずれか一つに記載のコンピュータ実装方法を実施する請求項7から14までのいずれか一つに記載の装置を使用すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突然落下する測定物体を片手で掴むことなどの運動反応課題を検出する、コンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運動機能は、一連の運動試験によって定量化することができる。
【0003】
それに対して、異なる能力及び要件を結び付けるとの意味で複雑さが増す運動課題は、早期に運動限界を提示する。所謂落下棒試験で検査される通りの突然落下する棒を片手で掴むことが、それに数えられる。その場合、独立した巧妙な光学信号と速い刺激処理の要件に関して反応能力が検査され、日常に近い動きでは、目と手の協調及び特定の注意力の向け方が優先的に制限要因となる。
【0004】
特許文献1の対象は、仮想現実又は拡張現実に基づき反応時間を評価、測定するシステムである。そのシステムは、異なる実施形態における仮想現実(VR)又は拡張現実(AR)の環境での患者又は利用者の反応時間を判定及び測定する方法及びコンピュータプログラム製品に関する。そのVR/ARシステムは、VR/AR環境において患者/利用者に感覚刺激を提供し、多数の運動パラメータを計測し、時間スロット選定モデルを使用して、それらの多数の運動パラメータに基づき反応時間を計測している。
【0005】
特許文献2は、装着可能なディスプレイを介して利用者を訓練するための仮想現実環境を生成する方法を記載している。その方法は、
訓練の動作形式を選定する工程と、
装着可能なディスプレイに選定された動作形式に対応する仮想現実環境を表示する一方、利用者が、選定された動作形式に対応する仮想現実環境における訓練の所要工程を実施する工程と、
訓練のパラメータ化された結果を記録する工程であって、それらのパラメータが、判定基準である時間、距離、速度、精度の中の少なくとも一つとして測定される工程と、
訓練単位に関する利用者のフィードバックを入手する工程と、
訓練の記録された結果を分析する工程と、
分析結果と利用者のフィードバックに基づき、次の訓練に関する提案を提供する工程と、
を特徴とする。
【0006】
特許文献3は、従来のCAVE空間の主要部分の仮想3D環境を開示している。その仮想3D環境は、検査すべき物体の画像を仮想3D環境の少なくとも一つの表示部品の表面に投影する投影手段を有する。その仮想3D環境は、更に、仮想環境において画像を生成して、脳波画像法(EEG)を用いて脳機能を記録する少なくとも一つのコンピュータを有する。観察者が物体を見ている間に発生するEEG信号が興味の対象である。記録されたEEGデータから、観察している物体により引き起こされる脳反応が神経分析方法を用いて処理され、その脳反応から、観察者が試験の時点で経験した感情及び/又は認知の状態を検知することが可能である。そのシステムを用いて、刺激と神経反応の直接的な関連付けを実現することができる。
【0007】
しかし、それらの従来技術の解決策は遊びが多い性格を有し、運動パラメータを検出するとの意味において日常的な機能又は感知・運動能力を引き出していないとの問題が生じている。そのため、基本的な主要運動能力が標準化されて測定されておらず、運動能力と刺激処理における異常を早期に検知することが不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公開第20200129106号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第3621084号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第2997887号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】LaStayo, P., & Hartzel, J. (1999). Dynamic versus static grip strength: how grip strength changes when the wrist is moved, and why dynamic grip strength may be a more functional measurement. Journal of Hand Therapy, 12(3), 212-218
【非特許文献2】Chang, H., Chen, C. H., Huang, T. S., & Tai, C. Y. (2015). Development of an integrated digital hand grip dynamometer and norm of hand grip strength. Bio-Medical Materials and Engineering, 26, S611-S617. https://doi.org/10.3233/BME-151352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、従来技術の明らかになった欠点を克服して、反応課題において感知・運動能力を検出する役割を果たす運動試験を仮想的に利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。有利な実施形態は、それぞれ独立請求項を引用する従属請求項の対象である。
【0012】
例えば、突然落下する仮想的な対象物を片手で掴むなどの複雑な神経認知課題では、運動の測定データと運動力学的な測定データが、特に、時間的な推移として検出されて、評価される。この場合、例えば、仮想的な落下棒試験としての仮想的な運動試験が、純粋にソフトウェアに基づき、部分的に手動で操作可能な形で支援するハードウェアセンサー機構を用いて実施される。そのように、特に、片手で掴む際の手の動きを検出することができる。例えば、突然落下する対象物が仮想現実(VR)環境において出現し、利用者が、定義された姿勢から、この対象物を掴まなければならない。中心的な動機として対象物を掴むことを有する試験状況の最中に、運動の推移及びフローが、少なくとも一つのセンサーシステムによって検出される。コンピュータ実装方法を用いて、この試験環境が生成されて、評価及び/又は分類に関連する全てのデータが特定される。
【0013】
そのために、少なくとも一つのセンサーシステム又はセンサー配列を用いて少なくとも一人の使用者の反応の時間的な推移を計測する、コンピュータ実装方法は、次の工程を有する。
i.仮想空間において少なくとも一つの仮想的な物体を表示する工程、
ii.空間において仮想的な物体の指示された動きを表示する工程であって、この動きが、使用者に対してデカルト座標系のx、y又はz軸に対応する軸に沿って進行する工程、
iii.仮想的な物体の指示された動きの現実の時間的な推移と空間的な推移を計測又は計算する工程、
iv.現実空間において使用者の運動フローの動きを検出する工程、
v.現実空間において使用者を検出する工程、
vi.使用者の指示された動きの現実の時間的な推移と空間的な推移を計測又は計算する工程、
vii.工程ivとviの仮想的な運動フローと現実の運動フローを関連付ける工程、及び
viii.工程ivとviの運動フローに基づき反応の時間的な推移を計測する工程。
【0014】
本発明では、反応の時間的な推移を決定する、コンピュータ実装方法は、仮想環境において物体と協力して動作することに関する代行者として機能する。
【0015】
実施形態では、この反応の時間的な推移を計測する、コンピュータ実装方法は、仮想環境において、例えば、棒などの物体を片手で掴むことに関する代行者として機能する。
【0016】
有利には、本発明による方法を用いて、例えば、落下する物体を掴むなどの動く物体と協力して動作する使用者の反応時間が特定される。この場合、デカルト座標系の一つの軸(x軸、y軸又はz軸)に沿って動く仮想的な物体が使用者に示される。仮想的な物体と協力して動作する現実空間における使用者の動きが検出されて、この物体の仮想的な運動フローと関連付けられる。この衝突点の決定によって、物体と協力して動作するまでの使用者の反応時間を決定することができる。
【0017】
この場合、本発明では、使用者が、デカルト座標系に関する基準点としての役割を果たす。それによって、通常の場合、落下する物体に関する軸は、デカルト座標系のy軸に沿って重力方向に延びる。それ故、z軸は、使用者の前進方向又は後進方向に延び、x軸は、使用者の横方向に左右に延びる。
【0018】
使用者のそれぞれ片方の手の動きは、仮想的な対象物との協力した動作の直前、最中及び後に装置のセンサーによって検出される。
【0019】
この場合、仮想環境において現実の使用者の反応の時間的な推移を計測するセンサー装置は、
少なくとも一つのデータ処理ユニットと、
仮想空間において仮想的な物体を表示するのに適した少なくとも一つの表示部品と、
特定されたセンサー情報を出力又は転送するのに適した少なくとも一つの出力機器と、
を有する。
【0020】
本発明の実施形態では、このセンサー装置は、特定されたセンサーデータを保存及び比較するのに適したデータベースと少なくとも一つのセンサーシステムに対する少なくとも一つのインタフェースを有する。
【0021】
以下において、反応の時間的な推移とは、初期の鍵となる刺激を受けた後から、例えば、信号を、例えば、落下する物体などを検知した後から、反応の完了まで、例えば、対象物を確実に掴むまで実施される動的な動きであると理解する。この反応の時間的な推移は、開始時点と停止時点によって、使用者の反応時間を推定することを可能にする。開始時点と停止時点以外に、例えば、落下する対象物を掴むために必要な指示された動きを実行している間に使用者の個々の肢体の加速度や速度などの運動モーメント値も収集される。
【0022】
以下において、使用者とは、反応の時間的な推移を計測するための本来の測定を受ける被験者であると理解する。使用者は、本発明による装置との協力した動作によって、或いは本発明による方法を適用することから、反応能力の分類を可能にするデータ、場合によっては、例えば、神経症及び/又は神経変性症の患者の場合の不規則性を推定できるようにするデータを提供する。
【0023】
本発明の実施形態では、このコンピュータ実装方法は、仮想的な物体の指示された動きの時間的な推移及び空間的な推移と少なくとも一人の使用者の動きの時間的な推移及び空間的な推移とから、少なくとも一つの開始点と、少なくとも一つの仮想的な物体と使用者の少なくとも一つの衝突点とが特定されることを特徴とする。
【0024】
このことは、衝突点の情報によって、初期の鍵となる刺激に対する運動反応を終了させる検査可能な判定基準が実現されるので有利である。この衝突点は、仮想的な対象物と現実の使用者の協力した動作が実行された時点である。例えば、仮想環境において、落下する対象物が表示されて、実験で現実の使用者がそれを掴んだことを観察する場合に、使用者の手が落下する対象物に最初に触れた時に衝突点に到達したとされる。
【0025】
本発明の実施形態では、開始信号と特定された衝突点から、使用者の反応時間が決定される。このことは、そのために中核情報である反応時間が、従来の落下棒試験や従来技術で列挙された解決策(これらは衝突点の決定を完全に断念しているために)よりも測定の不確実度合いが小さい形で特定されるので、有利である。
【0026】
本発明の実施形態では、指示された動きが、デカルト座標系のy軸として構成された軸に沿って行われる。この場合、仮想環境における物体は、この軸に沿って動かされる。この場合、物体の動きは、上から下に落下する運動又は下から上に上昇する運動として構成することができる。この場合、使用者は、下に向かう動き又は上に向かう動きの間に物体を掴むように仮想環境における物体と協力して動作することができる。二つの運動形式を順番に実施することも考えられる。本発明の実施形態では、二つの物体が仮想環境に表示され、これらの物体が逆向きの動きを実施すると規定することができる。この場合、物体は、互いに近づくか、或いは互いに離れるように動くことができる。それによって、異なる運動形式により協力した動作を実施した後に、異なる情報を得ることができ、これらの情報を組み合わせて、使用者の反応能力に対する情報価値を改善することが可能になる。
【0027】
本発明の実施形態では、指示された動きが、デカルト座標系のx軸として構成された軸に沿って行われる。この場合、仮想環境における物体の動きは、物体が一つの側から別の側に動くように構成することができる。例えば、物体が、使用者の視野の左の縁から右の縁に、或いは使用者の視野の右の縁から左の縁に動くことができる。物体が使用者の視野の中央の位置から左側又は右側に動くことも考えられる。
【0028】
本発明の実施形態では、仮想環境における二つの物体の表示が行われ、その際、これら二つの物体が逆向きの動きを実行する。この場合、使用者の反応の時間的な推移が、二つの物体との協力した動作の際に計測され、そのように課題の複雑さが増大する。それによって、使用者の反応能力に関する追加情報を得ることができる。
【0029】
本発明の実施形態では、指示された動きが、デカルト座標系のz軸として構成された軸に沿って行われる。この場合、仮想環境における物体の指示された動きは、物体が背景から出てきて使用者に向かって動くように行われる。物体が使用者から遠ざかって背景の方に動くことも考えられる。物体のこの動きでは、使用者は、物体との協力した動作に関して使用者の手の届く範囲に依存して、如何なる時点で物体と協力して動作したいのかを決めなければならない。
【0030】
実施形態では、二つの物体の表示が仮想環境において行われ、その際、これら二つの物体が逆向きの動きを実行する。この場合、一つの物体が使用者から遠ざかって背景の方に動く一方、第二の物体が背景から使用者の方に動く。この場合、二つの物体と協力して動作する際の使用者の反応の時間的な推移が計測され、そのように課題の複雑さが増大する。それによって、使用者の反応能力に関する追加情報を得ることができる。
【0031】
それに代わって、本方法は、神経認知課題による可変反応試験として構成される。この場合、使用者は、仮想環境における物体との反応形式に関して決定する可能性を有する。この場合、使用者は、物体と協力して動作するのか、或いは物体を能動的に避けたいのかを決めることができる。この場合、課題は、異なる信号に対して異なる動きを実施することから構成される。この場合、これらの信号は、物体の動き(y軸での上から下と下から上、x軸での右から左と左から右)と物体の出現する形式(急に現れる、徐々に消失する、振動する/揺れる)に関して変えることができる。必要な動きは、右又は左の手による片手で掴む動き、両手で掴む、動かない、手を広げて能動的に避ける、中立の位置からの手の回内と回外、拳を閉じて掴む、摘まむ形で掴む、一本の指(例えば、人差し指の指先)で掴むことから構成することができる。
【0032】
本発明の実施形態では、少なくとも一つのセンサーシステムが、測定データを接触式又は非接触式に検出するように構成される。例えば、非接触式検出が超音波音響測深システムとして実現されるが、これに限定されない。この場合、使用者が留まっている範囲が超音波を浴びる。使用者の存在が超音波の場を乱し、その結果、非接触式に検出することが可能である。更に、そのように運動フローを非接触式に検出し、そのため超音波の散乱によって、反応の時間的な推移を記録することができる。
【0033】
本発明の実施形態では、この少なくとも一つの光学式センサーシステムが運動フローを検出するのに適している。例えば、この光学式検出がカメラによる光学式検出システムによって実現されるが、これに限定されない。この場合、少なくとも一つのカメラによって、有利には、二つ以上のカメラによって、使用者が少なくとも部分的に検出され、使用者の四肢が、少なくとも各使用者の光学式に検出される部分に属する。ここで、「把持する」モーメントがカメラにより光学式に検出される場合、試験進行の同期と関連して、少なくとも反応時間を計測することが可能である。この場合、試験進行の同期とは、試験フローの開始とそれと同時の使用者の監視の開始の間を関連付けることであると解釈する。
【0034】
この場合、有利には、使用者の監視が、有利には、デジタル化された動画記録の形で実行される。そのため、運動フローが直ちにデータ処理システムで入手可能となる。
【0035】
本発明の実施形態では、この少なくとも一つのセンサーシステムが、使用者の接触の検出によって測定データを取得するのに適している。このことは、そのようにしてセンサー機器により衝突点を検出できるので有利である。例えば、カメラシステムの作動ボタンが接触を検知するスイッチと連結されるが、これが唯一ではない。このスイッチは、大きさ及び外見において使用者に対して仮想的に表示される対象物に相当する棒形状の対象物に配置される。仮想的な試験プロトコルの最中に対象物に触れることによって、有利には、掴んだ瞬間に、カメラによる光学式システムが開始されるか、或いは動作状態に在るカメラシステムの撮影速度が上昇されて、そのように使用者の動きの進行のより詳細な記録が得られる。このことは、更に、そのように動作フローの主要なデータだけが検出されるので有利である。
【0036】
本発明の実施形態では、この運動データを検出するセンサーシステムは、現実の追加測定器具の中又は所に配置される。本発明の実施形態では、このセンサーシステムは、更に、三次元空間における姿勢を計測するセンサーを有する。それによって、これらのセンサーを用いて、三次元空間における使用者の姿勢を計測して、リアルタイムで仮想環境に表示することができる。それによって、使用者と仮想環境における仮想物体の協力した動作を現実に表示することを保証でき、このことは、特に、反応時間の計測の際に重要な意味を持つ。
【0037】
実施形態では、このセンサーシステムは、例えば、手袋を用いて手に固定されるか、或いはマジックテープ(登録商標)により使用者の腕に固定される。出力ユニット、例えば、VR眼鏡を用いて、仮想的な落下棒試験の試験環境が使用者に表示される。この場合、センサーシステムは、例えば、データ処理ユニットと連結されることにより、時間に依存する加速の瞬間的な応答を記録するように構成された加速度センサー(これに限定されない)を有する。このためには、それ自体がセンサーを備えた一種の手袋又は手に直接取り付けられた幾つかのセンサー、有利には、加速度センサーと三次元空間における姿勢を計測するセンサーが有用である。このことは、そのように加速の直接的な測定形態が利用可能になるので有利である。
【0038】
実施形態では、この手袋として構成されたセンサーシステムが、更に、仮想的な物体を掴んだ時に使用者に触覚によるフィードバックを伝える振動触覚部品又はフォースフィードバックシステムを有する。このことは、把持の行き過ぎを防止するために、使用者が何時仮想的な物体を掴んだのかを使用者に伝えるのに有利である。
【0039】
本発明の実施形態では、このセンサーにより検出する測定器具又は運動フローのパラメータを測定するセンサー機器の筐体の形状は、仮想的に表示される物体が表示される形状に倣って構成される。このことは、そのため試験環境の現実の測定尺の幻影が使用者に対して作り出されるので有利である。このことは、測定構造を無意識に受け入れる役割を果たし(これは所謂認識を成就させる作用を奏し)、そのため躊躇するなどの無意識の反応によるシステムエラーを低下させる。
【0040】
実施形態では、この測定器具は、垂直方向を向いて、棒形状に構成される。有利には、この測定器具は、使用者が本発明による反応の時間的な推移を測定する方法の最中に、この測定器具を確実に握ることができるように配置される。そのために、この測定器具の配置構成は、使用者に対して仮想空間において仮想的な物体として表示される。
【0041】
本発明の実施形態では、この測定器具は、更に、空間における自由な配置構成を可能にする配置機器を有する。それに対応する配置機器は、例えば、ロボットアーム、デルタロボット、多軸システム、六脚歩行機械又はそれらの組合せである。
【0042】
測定器具の相応の配置構成によって、使用者が正確に視覚的に正しい瞬間に仮想的な物体に触れて、正しく感じ取れる表面特性が衝突点の周りに丸く表示される、即ち、使用者及び仮想的な物体が互いに同期することが、衝突点の予想又は計測によって考慮される。使用者は、そのように全体的に認識して、ここで使用者に対して仮想的な物体が具現化されて、実際に存在するように見えるとともに、感じ取られるが、それに対応して配置された測定器具に現実に触れる。
【0043】
実施形態では、この測定器具は、センサーが平たい構造物に統合されて、次に、この平たい構造物が取り外し可能な形で棒形状の物体に配置可能に形成されているように構成される。
【0044】
本発明の実施形態では、この平たい構造物が圧力センサーを有する。それによって、有利には、反応の時間的な推移の本来の計測以外に、使用者の握る力に関する情報も取得することが可能である。それによって、等尺による手の力を、さもなければ動的な運動課題での手の力も特定して、使用者の年齢に相応しい標準値と比較することができ、このことは、考え得る臨床的な意味に対するヒントを与えることができる。そのため、反応の時間的な推移の結果と組み合わせて、使用者の状態に関する重要な早期の知見を得ることができる(LaStayo, P.&Hartzel, J.(1999);Chang, H.,et al(2015))。
【0045】
本発明の実施形態では、この平たい構造物がフォイル形状に、或いは織物の構造物として構成される。更に、棒形状の物体に取り外し可能な形で配置するための手段を有する。例えば、この取り外し可能な形で配置するための手段は、エプロン、ベルト、マジックテープ(登録商標)式結合体又はそれらと同等の物であるとすることができ、これらに限定されない。それによって、棒形状の物体に簡単に取り外し可能の形で配置することが可能である。
【0046】
本発明の実施形態では、このセンサーシステムは、更に、反応実行時における前腕内の筋肉活動を直に測定するように構成されたEMG(筋電図描画法)センサーを有する。これらの測定データは、無線接続又は有線接続により伝送することができる。本発明の実施形態では、これらのEMGセンサーは、無線接続により機能するか、或いはケーブルを介してダミーと接続することができる。
【0047】
本発明を実現するためには、前述した実施形態及び請求項の特徴を組み合わせることも本発明の目的に適っている。
【0048】
以下において、本発明を制限するものではない図及び実施例によって本発明の対象を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】コンピュータ実装方法の「変化形態1」と称される実施例に関するセンサーと被験者の考え得る配置構成の模式図
図2】反応の時間的な推移を特定するための試験環境の考え得る配置構成(これは、以下において、「変化形態2」として詳しく説明する)の実施例を図示した模式図
図3】使用する測定物体の形状が一種のジョイスティックである、反応の時間的な推移を特定する試験を実施するための別の考え得る配置構成(これは、以下において、「変化形態3」として詳しく説明する)を図示した模式図
図4】使用する測定物体の形状が一種のスラロームポールである、反応の時間的な推移を特定する試験を実施するための別の考え得る配置構成(これは、以下において、「変化形態3」として詳しく説明する)を図示した模式図
図5】反応の時間的な推移を特定するための試験環境の考え得る配置構成の実施例(これは、以下において、「変化形態4」として詳しく説明する)の模式図
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下において、第一の実施例を「変化形態1」と称する。変化形態1は、反応の時間的な推移を特定する試験のアプリケーションを有し、その際、複雑な神経認知課題における運動反応能力が検出される。この試験に必要な試験環境は、運動の測定データ又は運動力学的な測定データを特定するのに適したセンサーシステムを有する。この実施例では、この神経認知課題は、突然落下する対象物を片手で掴むことである。試験全体が、ほぼソフトウェアに基づき実現されている。この場合、突然落下する対象物は、仮想現実(VR)アプリケーションにおいて出現する。掴む際のその時、その直前及びその後の手の動きが、検査対象の人の手及び/又は腕の所の加速度センサーによって定量化される。
【0051】
この測定構成は、カメラと、VR眼鏡と、手袋と、場合によっては、腕輪とを有する。このカメラは、現実空間における手の位置と動きを検出する。この手の現実の画像がVRアプリケーションに、即ち、仮想空間に取り込まれて、ユーザーに表示される。反応課題の最中の手の動きを定量化するために、手袋が用いられる。この手袋は、それ自体別のセンサーを備えている。詳しくは、それは、三つの、有利には、直交する空間方向及び時間に関してその時々の測定量を検出する加速度センサーと圧力センサーである。三次元空間において上肢の動きと加速挙動を検出する別の部品は、従来の腕時計の計器を有する腕輪である。
【0052】
このカメラは、動きを記録するのに適した、Wifiインタフェースを備えた360°カメラである。具体的には、「Denver ACV-8305W 360°」モデルが使用される。このカメラは、任意のWLAN機能付き端末を用いて制御することができる。
【0053】
VR眼鏡として、製品「Oculus Quest」が使用される。Oculus Questは、PCが無くとも使用できる無線式VR眼鏡である。これは、眼鏡をかけた人への利用に適しており、レンズは、瞳孔間隔に合わせることができる。後者は、複数の異なる人への応用と非常に関連する。
【0054】
この手袋は、表材料を織物から構成され、センサー(例えば、加速度測定とグリップ力測定)が、この手袋に統合されている。各指と手の面には、センサー面が取り付けられている。
【0055】
使用する腕輪には、同じく加速度センサーとWifi通信ユニットが統合されている。このことは、運動測定中に得られたパラメータを評価ユニットに無線伝送することを可能にする。
【0056】
このソフトウェアは、インターネットサイトを介して任意のWLAN機能付き端末に呼び出すことが可能なVRアプリケーションである。このプログラムは、VRアプリケーションを制御して、この検査プログラムが開始される。
【0057】
被験者の反応能力を測定する完全な手順は、以下の通り進行する。
1)初期位置に着かせるための光学的な支援:このために、テーブルの形の物体が用いられ、それによって、肘の関節を90~100°にした腕の保持と関連して標準化された初期位置に使用者を着かせる。
2)初期位置の制御:それぞれ個別の検査の試験開始前に、初期位置を制御する。
3)静止した対象物のシミュレーション:仮想的な画像の上部に、対象物が、静止して、即ち、一種の吊り下げられた姿勢で画像化される。
4)(音響的又は巧妙な手法で視覚的に)指示信号の出力:ランダムに選定した時間スロットの開始直前に、専ら、使用者を先導する役割を果たす信号を出力する。この信号は、試験の開始を知らせるが、物体の実際の突然の落下とは明確には関連しない。この信号によって、使用者の視覚的な関心を対象物に向ける。この信号は、ブザー音によって音響的に出力するか、或いは巧妙な手法で視覚的に、即ち、光信号によってではなく、例えば、画像化された対象物を少し揺らすことによって出力することができる。
5)垂直に落下する対象物のシミュレーション:先導信号の後のランダムに選定された6秒の時間スロット内に、対象物の仮想的な画像が、突然床面に対して垂直に落下するようにシミュレーションされる。ユーザーは、対象物の突然の落下を専ら視覚的に感知する。この瞬間は、追加の信号によって支援されない。使用者の課題は、この時間スロット内に出来る限り速くシミュレーションされている対象物を掴むことである。運動力学的なパラメータが手袋を用いたセンサーに基づき検出される。
6)掴む動きのシミュレーションと対象物の落下する動きの制動:ユーザーの手とその動きは、画像においてリアルタイムに画像化される。対象物のそれに対応する動き、特に、掴む動きと対象物の制動がシミュレーションされる。そのように、ユーザーは、現実に出来る限り良く似た掴む動きの印象を得る。
7)試験結果の評価:得られたパラメータ(これによって、動きが定量化される)が収集されてクラウドに保存される。最終的に、様々な年齢の健康な人の測定と比較するための標準データベースと年齢特有の限界値を考慮して、絶対的な測定結果の評価が行われる。これらの結果が出力ページに出力される。
8)入力ページ:標準データベースと関連して試験結果を評価できるように、ユーザーの所定の基準量が検出される。これらは、入力プロトコル(入力ページ)に入力することができる。この入力は、次の二つの手法/モードで実行することができる。
a)入力が端末(外部制御部)を介して行われるか、或いは
b)入力がVRアプリケーション(自動制御部)を介して行われる。
9)出力ページ:それぞれ繰り返して測定された結果が検出されて、端末に出力されるとともに、短縮された形でユーザーの視野に出力される。更に、アプリケーション/試験を制御する手段が存在する。
a)試験が、端末(外部制御部)によって開始されて、保存される。
b)試験が、ユーザー自身によって開始されて、VRアプリケーション(自動制御部)を介して保存される。
10)保存とフィードバック:検査結果がクラウドに保存されるとともに、ローカルに端末に保存される。そのように、何時でも相応に割り当てることができる新たなアプリケーションを実行することができる。更に、複数の測定時点の間を比較した結果を表示することが可能である。これらの特有の限界値と標準値は、表示されたアプリケーションにおいて動的な比較量としての役割を果たす。治療を支援する試験機能の場合、フィードバック手段が組み込まれる。即ち、試験の終了後に医師によって検証された、定義された試験環境から特定されたデータが、標準データベースに提供される。この検証は、継続診断の形で患者の精神的な健康を継続して医学的に解明することから構成される。「健康」又は「リスクのある患者」の格付けは、医師によって実施されて、後でシステムに記入される。
【0058】
以下において「変化形態2」と称する別の実施例では、変化形態1と同様に、複雑な神経認知課題における運動反応能力が検出されるとともに、突然落下する対象物を片手で掴む際の運動の測定データ及び運動力学的な測定データが特定される。この実施例では、試験は、ほぼ完全にソフトウェアに基づき実施される。この突然落下する対象物は、仮想現実(AR)アプリケーションにおいて出現し、掴む際のその時点、その直前及びその後の手の動きが、検査される人の手及び/又は腕の所のセンサーによって定量化される。
【0059】
この測定構成は、カメラとVR眼鏡から構成される。このカメラは、測定フロー全体に渡って現実空間における手の位置と動きを検出する。この手の現実の画像が、VRアプリケーション、即ち、仮想空間に取り込まれて、ユーザーに表示される。基本的にカメラにより検出される異なるパラメータが、この運動課題において検出される。この場合、三次元空間における手の動きと手の加速挙動が、この観察の注目点である。
【0060】
このカメラは、動きの撮影に適している、Wifiインタフェースを備えた360°カメラである。具体的には、モデルDenver ACV-8305W 360°カメラが使用される。このカメラは、任意のWLAN機能付き端末を用いて制御することができる。
【0061】
VR眼鏡としては、製品Oculus Questが使用される。Oculus Questは、PCが無くとも使用できる無線式VR眼鏡である。これは、眼鏡をかけた人への利用に適しており、レンズは、瞳孔間隔に合わせることができる。後者は、複数の異なる人への利用と非常に関連する。
【0062】
このソフトウェアは、インターネットサイトを介して任意のWLAN機能付き端末に呼び出すことが可能なVRアプリケーションである。このプログラムは、VRアプリケーションを制御して、この検査プログラムが開始される。この場合、以下のことがシミュレーションされる。
1)初期位置に着かせるための光学的な支援:このために、テーブルの形の物体が用いられ、それによって、肘の関節を90~100°にした腕の保持と関連して標準化された初期位置に使用者を着かせる。
2)初期位置の制御:それぞれ個別の検査の試験開始前に、初期位置を制御する。
3)静止した対象物のシミュレーション:仮想的な画像の上部に、対象物が、静止して、即ち、一種の吊り下げられた姿勢で画像化される。
4)(音響的又は巧妙な手法で視覚的に)指示信号の出力:ランダムに選定した時間スロットの開始直前に、専ら、使用者を先導する役割を果たす信号を出力する。この信号は、試験の開始を知らせるが、物体の実際の突然の落下とは明確には関連しない。この信号によって、使用者の視覚的な関心を対象物に向ける。この信号は、ブザー音によって音響的に出力するか、或いは巧妙な手法で視覚的に、即ち、光信号によってではなく、例えば、画像化された対象物を少し揺らすことによって出力することができる。
5)垂直に落下する対象物のシミュレーション:先導信号の後のランダムに選定された6秒の時間スロット内に、対象物の仮想的な画像が、突然床面に対して垂直に落下するようにシミュレーションされる。ユーザーは、対象物の突然の落下を専ら視覚的に感知する。この瞬間は、追加の信号によって支援されない。使用者の課題は、この時間スロット内に出来る限り速くシミュレーションされている対象物を掴むことである。運動力学的なパラメータがカメラを用いたセンサーに基づき検出される。
6)掴む動きのシミュレーションと対象物の落下する動きの制動:ユーザーの手とその動きは、画像においてリアルタイムに画像化される。対象物のそれに対応する動き、特に、掴む動きと対象物の制動がシミュレーションされる。そのように、ユーザーは、現実に出来る限り良く似た掴む動きの印象を得る。
7)試験結果の評価:得られたパラメータ(これによって、動きが定量化される)が収集されてクラウドに保存される。最終的に、様々な年齢の健康な人の測定と比較するための標準データベースと年齢特有の限界値を考慮して、絶対的な測定結果の評価が行われる。これらの結果が出力ページに出力される。
8)入力ページ:標準データベースと関連して試験結果を評価できるように、ユーザーの所定の基準量が検出される。これらは、入力プロトコル(入力ページ)に入力することができる。この入力は、次の二つの手法/モードで実行することができる。
a)入力が端末(外部制御部)を介して行われるか、或いは
b)入力がVRアプリケーション(自動制御部)を介して行われる。
9)出力ページ:それぞれ繰り返して測定された結果が検出されて、端末に出力されるとともに、短縮された形でユーザーの視野に出力される。更に、アプリケーション/試験を制御する手段が存在する。
a)試験が、端末(外部制御部)によって開始されて、保存される。
b)試験が、ユーザー自身によって開始されて、VRアプリケーション(自動制御部)を介して保存される。
10)保存とフィードバック:検査結果がクラウドに保存されるとともに、ローカルに端末に保存される。そのように、何時でも相応に割り当てることができる新たなアプリケーションを実行することができる。更に、複数の測定時点の間を比較した結果を表示することが可能である。これらの特有の限界値と標準値は、表示されたアプリケーションにおいて動的な比較量としての役割を果たす。治療を支援する試験機能の場合、フィードバック手段が組み込まれる。即ち、試験の終了後に医師によって検証された、定義された試験環境から特定されたデータが、標準データベースに提供される。この検証は、継続診断の形で患者の精神的な健康を継続して医学的に解明することから構成される。「健康」又は「リスクのある患者」の格付けは、医師によって実施されて、後でシステムに記入される。
【0063】
以下において、別の実施例が「変化形態3」と称される。
【0064】
別の実施例では、アプリケーションが、反応の時間的な推移を特定する試験を有し、その際、複雑な神経認知課題における運動反応能力が検出される。この試験に必要な試験環境は、運動の測定データと運動力学的な測定データの特定に適したセンサーシステムを有する。この実施例において、この神経認知課題は、突然落下する対象物を片手で掴むことである。試験全体が、ほぼソフトウェアに基づき実施される。この場合、突然落下する対象物は、仮想現実(AR)アプリケーションにおいて出現する。掴む際のその時点、その直前及びその後の手の動きが、使用者の手及び/又は腕の所の加速度センサーによって定量化される。
【0065】
この変化形態3の測定構成は、カメラと、VR眼鏡と、場合によっては、高さ調節可能なテーブルと、測定物体としてのダミーとから構成される。
【0066】
このダミーは、例えば、丸い横断面(例えば、3cm)と、高さ調節可能なテーブル又は床面の上に設置される足台とを有する垂直方向を向いた棒である(図3と4)。このダミーの表面には、ダイナミックな動きにおける手の力を測定するための圧力センサーを備えたセンサー面が取り付けられている。
【0067】
このカメラは、現実空間における手の位置と動きを検出する。この手の現実の画像が、VRアプリケーション、即ち、仮想空間に取り込まれて、ユーザーに表示される。
【0068】
反応課題の最中の手の動きを定量化して、この動きの前、最中及び後の加速度挙動を検出するために、カメラ追跡手法が用いられる。この場合、手と腕の解剖学的に顕著な点がカメラにより検出され、その動きが検出されて記録される。これらの解剖学的な構造は、場合によっては、事前に手毎にマーキングされるか、カメラ単位で直に検出される。同じことは、従来の腕時計の計器を備えた腕輪を用いて実施することができる。この腕輪には、加速度センサーが組み込まれており、これらのセンサーを用いて、三次元空間における使用者の動きの前、最中及び後の加速挙動を時間的に同期して検出することができる。
【0069】
VR眼鏡のカメラによって、手の動きが検出されて、手の現実の画像がVRアプリケーション、即ち、仮想空間に取り込まれて、ユーザーに表示される。この運動課題では、異なるパラメータがダミーによって検出される。この場合、掴む瞬間の手の動きと手のダイナミックな力が観察の注目点である。
【0070】
同様に、反応動作時の前腕内の筋肉活動を直に測定するために、無線方式で動作する、或いはケーブルを介してダミーと接続されたEMGセンサーを統合することが考えられる。
【0071】
手と腕の追跡の代わりに、従来の腕時計の計器を備えた腕輪を用いることも考えられる。このカメラは、動きの撮影に適している、Wifiインタフェースを備えた360°カメラである。具体的には、Denver ACV-8305W 360°モデルが使用される。このカメラは、任意のWLAN機能付き端末を用いて制御することができる。
【0072】
VR眼鏡としては、製品Oculus Questが使用される。Oculus Questは、PCが無くとも使用できる無線式VR眼鏡である。これは、眼鏡をかけた人への利用に適しており、レンズは、瞳孔間隔に合わせることができる。後者は、複数の異なる人への利用と非常に関連する。
【0073】
同様に、使用する腕輪に加速度センサーとWifi通信ユニットを統合することができる。このことは、運動測定中に得られたパラメータを評価ユニットに無線で伝送することを可能にする。
【0074】
一つの形式では、使用する測定物体のダミーは、一種のジョイスティックと比較できる、丸い横断面を有する垂直方向を向いた棒である。別の形式では、一種のスラロームポールと比較できる、丸い横断面と重石を載せて傾かないようにした足台とを有する、より長い棒が使用される。このダミーは以下の構成である。
【0075】
「ジョイスティック」モデル(図3を参照)
長さ:15cm
横断面の直径:3cm
消毒可能な滑らかな表面
圧力センサーを備える
高さ調節可能なテーブルと共に使用される
【0076】
「スラロームポール」モデル(図4を参照)
長さ:140cm
横断面の直径:3cm
消毒可能な滑らかな表面
圧力センサーを備える
床面に直に設置される重石を載せて傾かないようにした足台
【0077】
このソフトウェアは、インターネットサイトを介して任意のWLAN機能付き端末に呼び出すことが可能なVRアプリケーションである。このプログラムは、VRアプリケーションを制御して、この検査プログラムが開始される。この場合、以下のことがシミュレーションされる。
【0078】
1)初期位置に着かせるための光学的な支援:このために、テーブルの形の物体が用いられ、それによって、肘の関節を90~100°にした腕の保持と関連して標準化された初期位置に使用者を着かせることが可能である。更に、高さ調節可能なテーブルが用いられ、このテーブルには、ジョイスティックが取り付けられている。このテーブルは、光学的な追加制御のために、ユーザーに対して仮想空間において画像化される。
2)初期位置の制御:1)項で述べた通り、現実のテーブルを用いた場合、初期位置の制御が省かれる。
3)静止した対象物のシミュレーション:測定物体/ダミーも存在する位置に、静止した対象物が、一種のデッキに吊り下げられた姿勢で画像化される。
4)(音響的又は巧妙な手法で視覚的に)指示信号の出力:ランダムに選定した時間スロットの開始直前に、専ら、使用者を先導する役割を果たす信号を出力する。この信号は、試験の開始を知らせるが、物体の実際の突然の落下とは明確には関連しない。この信号によって、使用者の視覚的な関心を対象物に向ける。この信号は、ブザー音によって音響的に出力するか、或いは巧妙な手法で視覚的に、即ち、光信号によってではなく、例えば、画像化された対象物を僅かに揺らすことによって出力することができる。
5)垂直に落下する対象物のシミュレーション:先導信号の後のランダムに選定された6秒の時間スロット内に、対象物の仮想的な画像が、突然床面に対して垂直に落下するようにシミュレーションされる。ユーザーは、対象物の突然の落下を専ら視覚的に感知する。この瞬間は、追加の信号によって支援されない。使用者の課題は、腕とテーブルの間の接触を解除すること無く、この時間スロット内に出来る限り速くシミュレーションされている対象物を掴むことである。反応動作とダイナミックな手の力が、ダミー/測定物体に組み込まれたセンサー(例えば、圧力センサー)によって検出されて、無線で伝送される。
6)掴む動きのシミュレーションと対象物の落下する動きの制動:ユーザーの手とその動きは、画像においてリアルタイムに画像化される。対象物のそれに対応する動き、特に、掴む動きと対象物の制動がシミュレーションされる。そのように、ユーザーは、現実に出来る限り良く似た掴む動きの印象を得る。
7)試験結果の評価:得られたパラメータ(これによって、動きが定量化される)が収集されてクラウドに保存される。最終的に、様々な年齢の健康な人の測定と比較するための標準データベースと年齢特有の限界値を考慮して、絶対的な測定結果の評価が行われる。これらの結果が出力ページに出力される。
8)入力ページ:標準データベースと関連して試験結果を評価できるように、ユーザーの所定の基準量が検出される。これらは、入力プロトコル(入力ページ)に入力することができる。この入力は、次の二つの手法/モードで実行することができる。
a)入力が端末(外部制御部)を介して行われるか、或いは
b)入力がVRアプリケーション(自動制御部)を介して行われる。
9)出力ページ:それぞれ繰り返して測定された結果が検出されて、端末に出力されるとともに、短縮された形でユーザーの視野に出力される。更に、アプリケーション/試験を制御する手段が存在する。
a)試験が、端末(外部制御部)によって開始されて、保存される。
b)試験が、ユーザー自身によって開始されて、VRアプリケーション(自動制御部)を介して保存される。
10)保存とフィードバック:検査結果がクラウドに保存されるとともに、ローカルに端末に保存される。そのように、何時でも相応に割り当てることができる新たなアプリケーションを実行することができる。更に、複数の測定時点の間を比較した結果を表示することが可能である。これらの特有の限界値と標準値は、表示されたアプリケーションにおいて動的な比較量としての役割を果たす。治療を支援する試験機能の場合、フィードバック手段が組み込まれる。即ち、試験の終了後に医師によって検証された、定義された試験環境から特定されたデータが、標準データベースに提供される。この検証は、継続診断の形で患者の精神的な健康を継続して医学的に解明することから構成される。「健康」又は「リスクのある患者」の格付けは、医師によって実施されて、後でシステムに記入される。
【0079】
本発明の別の実施例では、複雑な反応試験が仮想空間においてセンサーシステムの介入の下で実施される。この実施例は、以下において、「変化形態4」と称する。この変化形態の測定構成は、カメラ、VR眼鏡及びEMGセンサーから構成される。この構成を用いて、使用者の反応動作を定量化するために、異なる運動測定データと運動力学的な測定データが得られる。この反応試験は、初めの二つの実施例と比べて、実施すべき動きが落下する対象物を片手で掴むことに限定されないことによって区別される。更に、使用者が、異なる運動動作により異なる刺激又は信号に反応することによって複雑な反応課題が実現される。
【0080】
VR眼鏡として、製品「Oculus Quest」が使用される。Oculus Questは、PCが無くとも使用できる無線式VR眼鏡である。これは、眼鏡をかけた人への利用に適しており、レンズは、瞳孔間隔に合わせることができる。後者は、複数の異なる人への利用と非常に関連する。
【0081】
表面式EMG(筋電図描画法)センサーとして、Biometrics Ltd.社の有線式又は無線式のDataLITEモデルが使用される。これは、指が動いた時に反応する、前腕などの表面の筋肉組織の筋肉活動を検出するのに適している。これらの無線式センサーは、受信機から30メートルまでの到達範囲において筋肉活動の測定を可能にする。このことは、運動フロー又は反応の時間的な推移を計測する際の用途に関して非常に有利である。
【0082】
以下において、複雑な反応試験を詳しく説明する。
【0083】
使用者の課題は、異なる刺激に対して手又は上肢を用いた運動動作を実行することである。この場合、三次元空間において反応時間、筋肉活動、手及び腕の動きや加速挙動などの多数のパラメータが検出される。この運動試験は、ほぼソフトウェアに基づき実現される。この場合、異なる対象物が仮想現実(VR)アプリケーションにおいて出現する。
【0084】
この複雑な反応試験は、異なる反応課題の実行から構成される。この場合、それぞれ所定の動きを必要とする異なる物体形状を選定できる。信号/刺激は、物体の出現形態と物体の動きの形式に応じて変わる。物体の形状、物体の動き又は物体の出現形態の組合わせから、所定の運動動作の課題が得られ、これらの課題は、使用者によって出来る限り速く実施されるべきである。
【0085】
1.物体の形状:仮想的な物体の形状が林檎、棒、鉛筆、籠及び蝿の間で変わる。この形状の相違に応じて、手の異なる動きが必要である。
1)林檎(図5b)は、前腕を(肘関節を90~100°)折り曲げて、回外位置で手の中に掴まれる/握られる。林檎は、片手で掴まれる。
2)籠(図5e)は、回内位置で手の中に掴まれる/握られる。籠は、片手で掴まれる。
3)棒(図5a)は、中立の位置で手の中に掴まれる/握られる。棒は、片手で、両手で同時に、或いは両手で掴まれる。動きの始めに、手が開かれて、拳を完全に閉じることが実行される。
4)鉛筆(図5d)は、中立の位置で手の中に掴まれる/握られる。鉛筆は、片手で掴まれる。動きの始めに、手が開かれて、鉛筆は、親指と人差し指の間で摘まむ形で掴まれる。
5)蝿(図5c及び5f)は、手の平の間で掴まれる。動きの始めに、手が中立の位置で開かれて、腕が人体の前に広げられ、手の平が互いに向かい合わせにされる。蝿は、手の平を速く互いに叩くことによって掴まれる。
【0086】
2.物体の動きと出現:物体が出現する形態は、突然の出現から、徐々に消失、振動及び回転にまで及ぶ。更に、物体を三次元において異なる手法で(下から上に、上から下に、右から左に、左から右に)動かすことができる。物体のこれらの動きと出現形態から、異なる信号/刺激が得られ、その後、使用者は、それに合った運動活動により、これらに対して反応しなければならない。
【0087】
3.反応課題:この場合、果たすべき反応課題は、
1)突然動き出す物体を片手で、或いは両手で同時に掴むこと、
2)動いている物体を片手又は両手で避けること、
3)動く物体の周りに二つの手の平を合わせること(両手の中に叩いて包む)、
4)手を開いて広げた形で片手を、それに代わって右手と左手を、或いは同時に両手を目標面に接触させること、
から構成される。
【0088】
ここに挙げた運動形式の設定課題は、組み合わせた形でも作り出すことができる。これらの反応課題は、物体の動きを伴って、並びに物体の動きを伴うこと無く実施することができる。
【0089】
以下において、複雑な反応試験のフローの例を説明する。
【0090】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【符号の説明】
【0091】
1 カメラ
2 VR眼鏡
3 センサーを備えた手袋と腕輪
4 仮想的な画像としての使用者を初期位置に着かせるための支援器具
5 仮想的な画像としての把持装置
6 仮想的な画像としての測定対象物の吊り下げ器
7 横断面が丸い棒の形の測定物体の仮想的な画像
8 球の形の測定物体の仮想的な画像
9 現実の物体としての横断面が丸い棒の形のジョイスティック/測定物体
10 現実の物体としての使用者を初期位置に着かせるための支援器具
11 三次元空間における運動測定のための追跡点
12 三次元空間における運動測定のための腕輪
13 現実の物体としての横断面が丸い棒の形のスラロームポール/測定物体
14 筋電図描画法(EMG)センサー
15 林檎の形の物体の仮想的な画像
16 蝿の形の物体の仮想的な画像
17 鉛筆の形の物体の仮想的な画像
18 籠の形の物体の仮想的な画像
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】