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特表2024-504031コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体
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  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図1
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図2
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図3
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図4A
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図4B
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図5A
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図5B
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図6A
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図6B
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図7
  • 特表-コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】コロナウイルスまたは細菌による感染症の治療に使用するためのウスニン酸またはその包接複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/343 20060101AFI20240123BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240123BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240123BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K31/343
A61P31/14
A61P11/00
A61P31/04
A61P31/10
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/08
A61K9/48
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/06
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/38
A61K47/44
A61K47/20
A61K47/22
A61K9/72
A61K47/69
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540112
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 IB2021062486
(87)【国際公開番号】W WO2022144835
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】102020000032909
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522200410
【氏名又は名称】ヴェスタティス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VESTATIS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】チェラーナ,ジョルジョ ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ボス,ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】フランク,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ボナー,トーマス デトレフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076CC03
4C076DD41
4C076DD42
4C076DD55
4C076DD59
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE39
4C076EE43
4C076EE51
4C076FF51
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA05
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA21
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA27
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB33
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、(a)ウスニン酸、および/または(b)その関連の塩、および/または(c)包接化合物(ci)またはその混合物であって、包接化合物(ci)が、(i)前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩、および(ii)シクロデキストリン、好ましくはβ-シクロデキストリン、を含む、または、からなる、包接化合物(ci)またはその混合物、を含む、または、からなる、混合物Mであって、ウイルス感染症を治療する方法に使用するためのものであり、有利にはコロナウイルスのスパイクタンパク質を阻害することができる、混合物Mに関する。さらに、本発明は、本発明による治療方法に使用するための、好ましくは口腔または経鼻の使用のための組成物であって、混合物M、および、少なくとも1つの許容される医薬品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を含む、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコロナウイルスによって誘発または引き起こされるウイルス感染症を治療する方法に使用するための混合物Mであって、
(a)ウスニン酸、および/または、
(b)その関連の塩、または、
(c)包接化合物(ci)またはその混合物であって、包接化合物(ci)が、
(i)前記(a)ウスニン酸、および/または前記(b)その関連の塩、および、
(ii)少なくとも1つのシクロデキストリン、
を含む、または、からなる、包接化合物(ci)またはその混合物、
を含む、または、からなる、混合物M。
【請求項2】
混合物Mが、SARS-CoV-2ウイルスによって誘発または引き起こされる呼吸器系のウイルス感染症を治療する方法に使用するためのものであり、好ましくは、混合物Mは、少なくとも1つのSARS-CoV-2プロテアーゼおよび/または少なくとも1つのSARS-CoV-2スパイクタンパク質、好ましくは、SARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質、と結合し、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質を阻害することができる、請求項1に記載の混合物M。
【請求項3】
混合物Mが、前記(c)包接化合物(ci)を含むかまたはそれからなり、
包接化合物(ci)は、
(i)前記(a)ウスニン酸、および/または前記(b)その関連の塩、好ましくはウスニン酸ナトリウム塩、および、
(ii)少なくとも1つのβ-シクロデキストリン、
を含むかまたはそれらからなる、請求項1または2に記載の混合物M。
【請求項4】
包接化合物(ci)において、(ii)少なくとも1つのシクロデキストリン、好ましくは少なくとも1つのβ-シクロデキストリンと、(i)ウスニン酸および/またはその関連の塩との重量比[(ii):(i)]が、3:1~1:3、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは1.5:1~1:1.5、さらに好ましくは2:1または1:1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の混合物M。
【請求項5】
天然由来の前記(a)ウスニン酸が、右旋性の天然ウスニン酸D(+)と左旋性の天然ウスニン酸L(-)との組み合わせまたは会合体(C/A)であり;好ましくは、右旋性形態D(+)は、組み合わせまたは会合体(C/A)の総重量に対して、0.1重量%~99.9重量%含まれ、および/または、左旋性形態L(-)は、組み合わせまたは会合体の総重量に対して、99.9重量%~0.1重量%含まれ、好ましくは、天然由来の前記(a)ウスニン酸は、50%(+)および50%(-)のラセミ形態である、あるいは、実質的に100%の右旋性形態D(+)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の混合物M。
【請求項6】
天然由来の前記(b)ウスニン酸が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であり;好ましくは、天然由来のウスニン酸塩は、ウスニン酸ナトリウム塩D(+)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の混合物M。
【請求項7】
ウスニン酸が、本質的に、化合物:(+)-ウスニン酸、化学名2,6-ジアセチル-7,9-ジヒドロキシ-8,9b-ジメチルジベンゾ[b,d]フラン-1,3(2H,9bH)-ジオン;ウスネア由来の(+)-ウスニン酸;CAS番号:7562-61-0、EC:231-456-0、からなり;好ましくは、ウスニン酸ナトリウム塩が、本質的に、化合物:2,6-ジアセチル-7,9-ジヒドロキシ-8,9b-ジメチルジベンゾ-1,3(2H,9bH)-ジオンの一ナトリウム塩;CAS番号:34769-44-3、EC:252-204-6、からなり;好ましくは、前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)ウスニン酸塩の純度は、95%~99.9%、好ましくは96%~99.5%、より好ましくは97%~98%または99%(%重量/重量)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の混合物M。
【請求項8】
天然由来の前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩が、1ミクロン~100ミクロン、好ましくは5ミクロン~50ミクロン、より好ましくは10ミクロン~20ミクロンの平均粒径を有する、粉末固体形態である、請求項1~7のいずれか1項に記載の混合物M。
【請求項9】
前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩と、前記(ii)の少なくとも1つのシクロデキストリン、好ましくは少なくとも1つのβ-シクロデキストリンとの重量比[(a)および/または(b):(ii)]が、実質的に1:2または1:1である、請求項1~8のいずれか1項に記載の混合物M。
【請求項10】
前記包接化合物(ci)が、前記(a)ウスニン酸、好ましくは実質的に純粋なエナンチオマーとしてのD(+)-ウスニン酸、またはその関連の塩の、固体粒子を含み、該固体粒子は、0.01μm~50μm、好ましくは0.1μm~30μm、より好ましくは0.15μm~20μm、さらに好ましくは0.2μm~15μmの平均粒径分布を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の混合物M。
【請求項11】
グラム陽性菌および/またはグラム陰性菌によって誘発または引き起こされる細菌感染症を治療する方法に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の混合物Mであって、
(a)ウスニン酸、および/または、
(b)その関連の塩、および/または、
(c)包接化合物(ci)またはその混合物であって、包接化合物(ci)が、
(i)前記(a)ウスニン酸、および/または前記(b)その関連の塩、および、
(ii)少なくとも1つのシクロデキストリン、
を含む、または、からなる、包接化合物(ci)またはその混合物、
を含む、または、からなる、混合物M。
【請求項12】
混合物Mが、ヒトまたは獣医学の分野において、抗菌剤、抗増殖細菌剤、静菌剤、殺菌剤、抗カビ剤、抗酵母剤(例えばカンジダ)、抗真菌薬または抗真菌剤(例えばSaccharomycetes)として使用するためのものであり、好ましくはグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌に対するもの、例えば、科学的名称が、クレブシエラ、腸内細菌科細菌、エンテロバクター、シュードモナス、およびエシェリキアであるものに対するものである、請求項11に記載の混合物M。
【請求項13】
グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対する抗菌剤または静菌剤として使用される、請求項11または12に記載の混合物Mであって、細菌は、好ましくは、大腸菌、クレブシエラ、アシネトバクター・バウマニ、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、エンテロコッカス、バンコマイシン耐性エンテロコッカス種(VRE)、アクチノバクター(Actinobacter)、アクチノバクター種(Actinobacter spp.)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、およびそれらの組み合わせを含むかそれらからなる群から選択される、混合物M。
【請求項14】
医薬組成物、規則(UE)2017/745に従った医療機器組成物、特殊医療用食品(FSMP)用の組成物、規則(UE)2015/2283に従った新規食品用の組成物、または食品用の組成物であって、該組成物が、請求項1~13のいずれか1項に記載の混合物M、および少なくとも1つの許容される医薬品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を含み、内服用、外用、非経口、局所、皮膚科学的に使用するためのもの;または、組織、真皮、または粘膜に使用するためのもの;または、口、鼻、眼に使用するもの;または、外耳道、喉、気管、食道、目、鼻、または耳に使用するためのもの;または、口腔粘膜、鼻粘膜、鼻上皮、眼粘膜または外耳道に使用するためのもの;または、胃、腸、胃腸に使用するためのもの;または、膣または直腸で使用するためのもの、である、組成物。
【請求項15】
該組成物が、
錠剤、チュアブル錠、口内溶解錠、顆粒、粉末、フレーク、可溶性または水溶性の粉末または顆粒、口内溶解性の粉末または顆粒、カプセル、から選択される、固体形態;または、
溶液、懸濁液、分散液、エマルション、または、スプレーの形態で分配できる液体、喉スプレー、経口スプレーまたは鼻スプレー、エアロゾル、経口エアロゾルまたは鼻エアロゾル、シロップ、から選択される、液体形態;または、
ソフトゲル、ゲル、鼻用ゲル、経口用ゲル、軟膏、クリーム、局所用、経口用または鼻用のクリームまたはゲル、から選択される、半液体または半固体の形態、
である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、コラーゲン、コンドロイチン、ヒアルロン酸またはその塩、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、シリカ、セルロース、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポロキサマー、ファイバー、イヌリン、マルトデキストリン、脂肪、ワックス、油、動物油、植物油、ワセリン、炭酸塩、重炭酸塩、アンモニウム塩、塩化ナトリウム、クレー、カオリン、抗酸化剤、例えば、グルタチオン、ケルセチン、コエンザイムQ10、またはビタミン、特にグループCまたはEのビタミン、例えばトコフェロールおよびトコトリエノール、植物由来のトコトリエノール、例えば、米由来のトコトリエノールなど、保存剤、例えば、安息香酸ナトリウムおよび安息香酸カリウム、またはソルビン酸ナトリウムまたはソルビン酸カリウムなど、無機塩、塩化ナトリウム、および、pH緩衝剤、例えば、クエン酸およびその可溶性塩、例えばクエン酸一水和物など、から選択される、少なくとも1つの許容される医薬品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を使用して、製剤化されている、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
該組成物が、噴霧器、スプレー、またはスプレー缶を使用して投与される水溶液であり;好ましくは、該組成物は、食品または医薬品グレードの添加剤および/または賦形剤を使用して製剤化され、液体組成物が、例えば約20℃または5℃の室温で、例えば36℃~40℃の体温を有する対象に経鼻経路を通じて適用されると、液体水性組成物を室温にしてゲルの粘稠度にすることを可能にする、請求項14~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
該組成物が、(a)および/または(b)および(ii)シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびトコトリエノール、好ましくは米由来のトコトリエノールによって、霧化され、組み合わされ、または会合される、水性組成物で用いられ;好ましくは、米(Oryza sativa L.)由来のトコトリエノールは、例えば、トコトリエノール含量が、5重量%~75重量%、好ましくは15重量%~60重量%、例えば、25重量%、または30重量%、または40重量%、または50重量%である、水分散性粉末の形態であってもよい(商品名TheraPrimE(登録商標)-BGGの製品)、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
水分散性粉末が、トコトリエノールとともに、好ましくは、マルトデキストリン(9050-36-6)、デンプン、および二酸化ケイ素SiO(7631-86-9)を含んでもよく;好ましくは、水分散性粉末は、30%~60%の米ぬか油抽出物、25%~45%の加工デンプン、20%~40%のマルトデキストリン、および0.2%~1.5%のSiOを含んでもよく;より好ましくは、水分散性粉末は、トコトリエノールとトコフェロールの混合物を総量で15重量%~60重量%、例えば、25%、または30%、または40%、または50%含む水分散性粉末が用いられ;さらにより好ましくは、混合物中の総含量が25重量%の場合には、例えば、トコトリエノールの量が約10重量%であってトコフェロールの量が約15重量%(HPLCによって測定される量)であってよく、一方、混合物中の総含量が30重量%の場合には、トコトリエノールの量が約15重量%であってトコフェロールの量が約15重量%であってよく、100%における残りの部分は、デンプン、マルトデキストリン、SiOおよびその他であり得る、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
ウスニン酸D(+)が、好ましくは、190℃~210℃、好ましくは192℃~198℃の、融点(DSC);480°~540°、好ましくは490°~520°の、分子旋光度;PSD値:1ミクロン~15ミクロン、好ましくは2ミクロン~10ミクロン、例えば5ミクロンの、D50、を有してもよく;より好ましくは、ウスニン酸は、病原体に対する低濃度MIC、例えば、500ppm以下の黄色ブドウ球菌MICおよび1000ppm以下の大腸菌MIC、を有する、請求項14~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
該組成物が、下記の表:
【表1】
に記載されるものを含む、請求項14~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
該組成物が、水溶液の形態であり、
90重量%~99.5重量%、好ましくは94重量%~99重量%の、水、好ましくは脱塩水;
0.0001重量%~0.5重量%、好ましくは0.01~0.25重量%の、好ましくはD(+)の形態である、(a)ウスニン酸および/または(b)ウスニン酸塩および/または(c)包接化合物(ci)またはそれらの混合物;
0.25重量%~2.5重量%、好ましくは0.5重量%~1.5重量%の、セルロース、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポロキサマー、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPMC)、を含むかまたはそれらからなる群から選択される、ポリマー;
グルタチオン、ケルセチン、コエンザイムQ10、ビタミン、特にグループCまたはEのビタミン、例えばトコフェロールおよびトコトリエノール、好ましくは植物由来のトコトリエノール、例えば米由来のトコトリエノール、を含むかまたはそれらからなる群から選択される、抗酸化活性を有する化合物;
好ましくは、当産業で一般的に使用される、無機塩、保存剤、およびpH緩衝剤または安定剤、
を含む、または、からなる、請求項14~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
水溶液の形態の前記組成物が、好ましくは、20℃で約240±40の粘度値(mPa・s);約5±0.2のpH値;約1.01±0.1g/ccの密度値を有してよく、微生物学的負荷(総負荷、酵母、カビ、2つの病原体(黄色ブドウ球菌およびシュードモナス))において、総負荷が100CFU以下、酵母が100CFU以下、カビが10CFU以下、および病原体が存在しない、性状を有し得る、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
請求項14~23のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法であって、下記の工程:
1)粉末、好ましくは活性成分(a)および/または(b)および/または(c)包接化合物(ci)、およびポリマーCMC、またはHPC、またはHPMCを、好ましくは90℃~150℃、より好ましくは100℃~110℃の温度で、乾燥する工程;
2)工程1)により得た粉末を、予め50℃~90℃、好ましくは60℃~80℃±2℃の温度に加熱した適量の水、例えば100リットルの脱塩水に、加えて、溶液を得る工程;
3)工程2)により得た溶液を、好ましくはマグネティックミキサーを用いて、例えば30分~240分、好ましくは60分~120分の時間混合して、最終の水溶液を得る工程;および、任意に行われ得る
4)pH値を5±0.1~7±0.1、好ましくは5.5±0.1~6.5±0.1の値に制御および調整して、包装可能な最終の溶液を得る工程、
を含む、または、からなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)ウスニン酸、および/または(b)その関連の塩、および/または(c)包接化合物(ci)またはその混合物であって、包接化合物(ci)が、(i)前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩、および、(ii)シクロデキストリン、好ましくはβ-シクロデキストリンを含む、または、からなる、包接化合物(ci)またはその混合物、を含む、または、からなる混合物Mであって、医薬として使用するための混合物M、に関する。さらに、本発明は、組成物、好ましくは、口腔用または耳鼻咽喉科用(口、喉、鼻および耳)の組成物であって、前記混合物M、および、任意に少なくとも1種の許容される医薬品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を含み、医薬として使用するための組成物、に関する。最後に、本発明は、前記混合物Mおよび前記組成物であって、グラム陽性菌および/またはグラム陰性菌によって誘発または引き起こされる細菌感染症を治療する方法に使用するための、または、ウイルスによって誘発または引き起こされるウイルス感染を治療する方法に使用するための、前記混合物Mおよび前記組成物、および、コロナウイルス、好ましくはSARS-CoV-2ウイルスを含むまたはそれからなる群から選択されるウイルスのスパイクタンパク質を阻害することができる、前記混合物M、および前記混合物Mを含む前記組成物、に関する。コロナウイルス疾患(COVID-19)は、SARS-CoV-2ウイルス(SARS=重症急性呼吸器症候群)によって引き起こされる感染症である。
【0002】
本発明は、混合物Mおよび組成物であって、該組成物は該混合物Mを含み、抗ウイルス剤として、好ましくは口腔用または耳鼻咽喉科用(口、喉、鼻および耳)で使用する抗ウイルス剤として、好ましくは、呼吸器系のウイルス感染、および前記ウイルス感染に由来または関連する症状または障害、好ましくはSARSコロナウイルスによるウイルス感染(例えば、COVID-19疾患を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスによるウイルス感染)の治療に使用するための抗ウイルス剤としての、混合物Mおよび組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
気道のウイルス感染症は、その名前が示すとおり、上部および/または下部の呼吸器系の器官(鼻、口、喉、咽頭、喉頭、気管、気管支、および肺)に影響を及ぼすウイルスによって引き起こされる感染症である。好ましくは、本発明は、SARS-CoVと略称される重症急性呼吸器症候群コロナウイルス種の少なくとも1つのウイルスによって引き起こされるウイルス感染症に関する。SARS-CoV種のウイルスは、ベータコロナウイルス属に属するプラス鎖RNAウイルス(ボルチモア(Baltimore)分類のグループIV)である。重症急性呼吸器症候群コロナウイルスという種のウイルスは、2002年から2003年に中国でSARSの流行を引き起こしたウイルスであり、SARS-CoV株と称される。2002年11月に中国の広東省で初めて発見された。2002年11月1日から2003年8月31日までに、このウイルスは、約30か国で、8,096人に感染し、主に中国、香港、台湾および東南アジア全域で、774人が死亡した。2019年の年末にかけて、SARS-CoV-2株または2019-nCoVと称される重症急性呼吸器症候群コロナウイルス種の第2のウイルスが、中国および世界のその他の地域で、新たなSARSの流行を引き起こし、これは、一般的に、COVID-19(コロナウイルス疾患19、または、SARS-CoV-2急性呼吸器疾患またはコロナウイルス疾患2019、あるいはコロナウイルス症候群2019とも称される)として知られている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】Vero E6細胞株における、さまざまな濃度のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の存在下での、8時間後の細胞生存率のパーセンテージを示すヒストグラムである。
図2】Vero E6細胞株における、さまざまな濃度のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の存在下での、24時間後の細胞生存率のパーセンテージを示すヒストグラムである。
図3】Vero E6細胞株における、シュードウイルスの感染多重度(MOI)の変化に応じた発光値を示すヒストグラムである。
図4A】MOIが10のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスを、濃度0.01%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体と1時間プレインキュベートした後の、Vero E6細胞における発光量を示すヒストグラムであり、殺ウイルス複合体とのプレインキュベーションを行わなかったシュードウイルスから得られた結果(対照)と比較している。
図4B】MOIが10のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスを、濃度0.01%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体と1時間プレインキュベートした後の、Vero E6細胞へのシュードウイルス侵入を示すヒストグラムであり、殺ウイルス複合体とのプレインキュベーションを行わなかったシュードウイルスから得られた結果(対照)と比較している。
図5A】MOIが10のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスを、濃度0.03%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体と1時間プレインキュベートした後の、Vero E6細胞における発光量を示すヒストグラムであり、殺ウイルス複合体とのプレインキュベーションを行わなかったシュードウイルスから得られた結果(対照)と比較している。
図5B】MOIが10のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスを、濃度0.03%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体と1時間プレインキュベートした後の、Vero E6細胞へのシュードウイルス侵入を示すヒストグラムであり、殺ウイルス複合体とのプレインキュベーションを行わなかったシュードウイルスから得られた結果(対照)と比較している。
図6A】MOIが10のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスを、濃度0.05%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体と1時間プレインキュベートした後の、Vero E6細胞における発光量を示すヒストグラムであり、殺ウイルス複合体とのプレインキュベーションを行わなかったシュードウイルスから得られた結果(対照)と比較している。
図6B】MOIが10のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスを、濃度0.05%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体と1時間プレインキュベートした後の、Vero E6細胞へのシュードウイルス侵入を示すヒストグラムであり、殺ウイルス複合体とのプレインキュベーションを行わなかったシュードウイルスから得られた結果(対照)と比較している。
図7】可能な実施形態による、ウスニン酸の製造プロセスのフローチャートの例である。
図8】可能な実施形態による、ウスニン酸の固体粒子の平均分布を示す。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、本発明は、ウイルス感染症、好ましくは呼吸器のウイルス感染症、より好ましくはコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)によって引き起こされる(例えば呼吸器の)ウイルス感染症を治療する方法に使用するための、本発明で定義される、混合物M(または混合物Mおよび添加剤/賦形剤を含む組成物)に関する。
【0006】
第2の態様において、本発明は、ウイルス感染症、好ましくは呼吸器のウイルス感染症、より好ましくはコロナウイルス(例えばSARS-CoV-2)によって引き起こされる(例えば呼吸器の)ウイルス感染症を治療する方法であって、該治療方法は、本発明で定義される治療有効量の混合物M(または混合物Mおよび添加剤/賦形剤を含む組成物)を必要とする対象に投与することを提供する、ウイルス感染症の治療方法に関する。
【0007】
第3の態様において、本発明は、細菌感染症、好ましくは呼吸器の細菌感染症、より好ましくはグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌によって引き起こされる細菌感染症を治療する方法に使用するための、本発明で定義される混合物M(または混合物Mおよび添加剤/賦形剤を含む組成物)に関する。
【0008】
第4の態様において、本発明は、細菌感染症、好ましくは呼吸器の細菌感染症、より好ましくはグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌によって引き起こされる細菌感染症を治療する方法であって、該治療方法は、本発明で定義される治療有効量の混合物M(または混合物Mおよび添加剤/賦形剤を含む組成物)を必要とする対象に投与することを提供する、細菌感染症の治療方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
広範な研究開発活動を経て、出願人は、細菌感染症およびウイルス感染症、好ましくは呼吸器(上気道および下気道)のウイルス感染症、特に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス種(SARS-CoV、SARS-CoV-2/2019-nCoV株(その疾患はCOVID-19またはSARS-CoV-などとして知られる))の少なくとも1つのウイルスによって引き起こされる呼吸器のウイルス感染症の治療に関連する問題に取り組み、医薬として使用するための、好ましくは経口または経鼻用の、混合物M、および混合物Mを含む組成物を提供することにより、その問題を解決した。
【0010】
本発明の目的により、医薬として使用するための混合物Mであって、(a)ウスニン酸、および/または(b)その関連の塩、および/または(c)包接化合物(ci)またはその混合物であって、包接化合物(ci)が、(i)前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩、および(ii)シクロデキストリンを含む、または、からなる、包接化合物(ci)またはその混合物、を含む、または、からなる、混合物M、を提供する。
【0011】
本発明の目的により、医薬として使用するための組成物であって、混合物M、および、任意に、少なくとも1つの許容される医薬品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を含む、組成物、を提供する。
【0012】
混合物Mおよび混合物Mを含む組成物は、抗菌活性または静菌活性および抗ウイルス活性を有し、コロナウイルスを含むまたはコロナウイルスからなる群から選択されるウイルスの、好ましくはSARS-CoV-2の、スパイクタンパク質を阻害することができる。
【0013】
一実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、グラム陽性菌および/またはグラム陰性菌によって誘発または引き起こされる細菌感染症を治療する方法に使用するためのものである。
【0014】
別の実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、ウイルスによって誘発または引き起こされるウイルス感染症を治療する方法に使用するためのものである。好ましくは、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、コロナウイルスを含むまたはコロナウイルスからなる群から選択されるウイルスの、好ましくはSARS-CoV-2の、スパイクタンパク質を阻害することができる。
【0015】
ウスニン酸、好ましくは、天然由来の右旋性ウスニン酸D(+)と天然由来の左旋性ウスニン酸L(-)の50%-50%の組み合わせまたは会合体の、あるいは好ましくは、右旋性形態D(+)のみの、少なくとも1つのSARS-CoV-2プロテアーゼおよび/または少なくとも1つのSARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質に結合する能力/可能性を、観察および評価した。天然ウスニン酸、天然ウスニン酸ナトリウム塩、天然ウスニン酸と天然ウスニン酸ナトリウム塩、好ましくは右旋性形態D(+)のみのウスニン酸およびその塩は、重量比(ウスニン酸:ウスニン酸ナトリウム塩)が、1:10~10:1(例えば、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、または9:1)であって、好ましくは、1:5~5:1、例えば、1:3~3:1、1:2~2:1または1:1で、少なくとも1つの主要なSARS-CoV-2プロテアーゼおよび/または少なくとも1つのSARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質に対して、良好な結合親和性(例えば、6M0J)があるという、驚くべき肯定的な評価がなされた。
【0016】
向上した結合親和性に関する同様の傾向は、(i)前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩、および(ii)シクロデキストリン、好ましくはβ-シクロデキストリンを含むか、またはそれらからなる包接化合物(ci)においても観察された。またこの場合、ウスニン酸は、好ましくは、天然由来の右旋性ウスニン酸D(+)と天然由来の左旋性ウスニン酸L(-)の50%-50%の組み合わせまたは会合体であり、また、好ましくは、右旋性形態D(+)のみである。このウスニン酸は、少なくとも1つのSARS-CoV-2プロテアーゼ、および/または少なくとも1つのSARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質に結合することができる。天然ウスニン酸、天然ウスニン酸ナトリウム塩、天然ウスニン酸と天然ウスニン酸ナトリウム塩、好ましくは右旋性形態D(+)のみのウスニン酸およびその塩は、重量比(ウスニン酸:ウスニン酸ナトリウム塩)が、1:10~10:1(例えば、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、または9:1)であって、好ましくは、1:5~5:1、例えば、1:3~3:1、1:2~2:1または1:1で、少なくとも1つの主要なSARS-CoV-2プロテアーゼおよび/または少なくとも1つのSARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質に対して、良好な結合親和性(例えば、6M0J)があるという、肯定的な評価がなされた。
【0017】
少なくとも1つの主要なSARS-CoV-2プロテアーゼおよび/または少なくとも1つのSARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質に対する本発明の混合物Mまたは組成物の良好な結合親和性(例えば、6M0J)は、混合物Mが、前記(a)ウスニン酸および(ii)シクロデキストリン:α、βおよび/またはγ-シクロデキストリン、好ましくはβ-シクロデキストリン、を含むかまたはそれらからなる(ci)包接化合物であって、好ましくは、(a)ウスニン酸と(ii)シクロデキストリン(好ましくはβ-シクロデキストリン)との重量比[(a):(ii)](ウスニン酸:シクロデキストリン)が、1:5~5:1、好ましくは1:3~3:1、より好ましくは1:2~2:1、例えば約1:1または1:2である、(ci)包接化合物、を含むかまたはそれらからなる場合に、特に観察された。
【0018】
一実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、好ましくは50%(+)および50%(-)のラセミ形態であるか、または右旋性形態D(+)のみである、天然由来の、(a)ウスニン酸を含むかまたはそれらからなる。前記(b)は、好ましくは、天然由来のウスニン酸塩である。前記塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であり、好ましくは、天然由来のウスニン酸塩は、ウスニン酸ナトリウム塩である。
【0019】
一実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、天然由来の(a)ウスニン酸、を含むかまたはそれらからなり、好ましくは、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、ヒトおよび動物に影響を与える細菌感染症またはウイルス感染症を治療する方法における口腔用または耳鼻咽喉科用(口、喉、鼻および耳)での使用のためのものであり、好ましくは、ヒトおよび獣医学の分野での経口使用のためのものである。本発明の主題である混合物Mおよび混合物Mを含む組成物は、齲蝕の治療および齲蝕原性歯垢の予防的処置には使用されず、さらには齲蝕および齲蝕原性病変を引き起こす主な病原体の1つである細菌ストレプトコッカス・ミュータンス(グラム陽性菌)に対しても使用されない。
【0020】
別の実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、天然由来の(a)ウスニン酸を含むかまたはそれらからなり、好ましくは、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、呼吸器系のウイルス感染、およびウイルス感染に由来するかそれに関連する症状および/または障害の、好ましくは、上気道および/または下気道のウイルス感染症、を治療する方法に使用するためのものである。ウイルス感染症は、コロナウイルス科(Coronaviridae)、亜科(subfamily):コロナウイルス(Coronavirinae)、属(genus):ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)、種(species):重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus)、株(strains)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2または2019-nCoV)、および、COVID-19の原因、および、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス様(SARS-CoV様またはSL-CoV)、好ましくは、SARS-CoV-2、から選択されるものである、ウイルスによって誘発されるか、または引き起こされる。混合物Mは、少なくとも1つのSARS-CoV-2プロテアーゼおよび/または少なくとも1つのスパイクタンパク質、好ましくは、SARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質と結合することができる(例えば、6M0J)。
【0021】
一実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、症状および/または障害を治療する方法に使用するためのものであり、前記症状および/または障害(呼吸器系のウイルス感染に由来するかまたはそれに関連する)は、重症急性呼吸器症候群(SARS)、呼吸器合併症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、肺気腫、嚢胞性線維症、咳、百日咳、肺炎、胸膜炎、細気管支炎、風邪、副鼻腔炎、鼻炎、気管炎、咽頭炎、喉頭炎、急性喉頭気管気管支炎、喉頭蓋炎、気管支拡張症、呼吸困難、呼吸不全、息切れ、息苦しさ、発熱、倦怠感、筋肉痛、筋肉疲労、鼻づまり、鼻水、喉の痛み、胃腸症状、吐き気、下痢、腎不全、食欲不振、全身倦怠感、から選択される。
【0022】
一実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、右旋性の天然ウスニン酸D(+)および左旋性の天然ウスニン酸L(-)の組み合わせまたは会合体(C/A)として存在する、天然由来の(a)ウスニン酸を含むかまたはそれらからなり;好ましくは、右旋性形態D(+)は、組み合わせまたは会合体(C/A)の総重量に対して、0.1重量%~99.9重量%(例えば、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)で含まれ、および/または、左旋性形態L(-)は、組み合わせまたは会合体の総重量に対して、99.9重量%~0.1重量%(例えば、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%)で含まれる。好ましくは、天然由来の(a)ウスニン酸は、50%(+)および50%(-)のラセミ形態、または右旋性形態D(+)(100%)である。
【0023】
一実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩として存在する、天然由来の(b)ウスニン酸塩を含むかまたはそれらからなり、好ましくは、天然由来のウスニン酸塩は、ウスニン酸ナトリウム塩である。好ましくは、(b)天然ウスニン酸塩は、ラセミ形態または右旋性形態D(+)であり、好ましくは、前記塩は、右旋性形態D(+)が、組み合わせまたは会合体(C/A)の総重量に対して、0.1重量%~99.9重量%(例えば、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)の重量で存在し、および/または、左旋性形態L(-)が、組み合わせまたは会合体(C/A)の総重量に対して、99.9重量%~0.1重量%(例えば、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%)の重量で存在し得る。
【0024】
好ましくは、天然由来の前記(a)ウスニン酸および前記(b)その関連の塩は、1:10~10:1(例えば、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、または9:1)の重量比で、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:3~3:1、例えば1:1の重量比で、混合物M(または混合物Mを含む組成物)中に存在する。
【0025】
好ましくは、天然由来の前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩は、混合物M(または混合物Mを含む組成物)中に、混合物M(または混合物Mを含む組成物)の総重量(混合物Mの重量を10とする)に対して、1:10~9:10(例えば、1.5:10、2:10、2.5:10、3:10、3.5:10、4:10、4.5:10、5:10、5.5:10、6:10、6.5:10、7:10、7.5:10、8:10、または8.5:10)、好ましくは1:10~6:10、または4:10~8:10、の重量で、存在する。
【0026】
ウスニン酸(D(+)および/またはL(-))の化学名は、2,6-ジアセチル-7,9-ジヒドロキシ-8,9b-ジメチル-1,3(2H,9bH)-ジベンゾフランジオン、または、2,6-ジアセチル-7,9-ジヒドロキシ-8,9b-ジメチルジベンゾ[b,d]フラン-1,3(2H,9bH)-ジオン、である。
【0027】
好ましくは、本発明で使用され得るウスニン酸は、化合物:(+)-ウスニン酸、2,6-ジアセチル-7,9-ジヒドロキシ-8,9b-ジメチルジベンゾ[b,d]フラン-1,3(2H,9bH)-ジオン;ウスネア(Usnea)由来の(+)-ウスニン酸;例えば、CASが7562-61-0の(+)-ウスニン酸、ECが231-456-0の(+)-ウスニン酸、で表すことができ;好ましくは、本発明で使用され得るウスニン酸ナトリウム塩は、化合物:2,6-ジアセチル-7,9-ジヒドロキシ-8,9b-ジメチルジベンゾ-1,3(2H,9bH)-ジオンの一ナトリウム塩;CAS番号:34769-44-3、EC:252-204-6、で表すことができ;好ましくは、前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)ウスニン酸塩の純度は、95%~99.9%、好ましくは96%~99.5%、より好ましくは97%~98%または98%、例えば98%(%重量/重量)である。
【0028】
本発明の目的により、混合物M(または混合物Mを含む組成物)であって、(c)(i)前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩、および(ii)シクロデキストリン:α、βおよび/またはγ-シクロデキストリン、好ましくはβ-シクロデキストリン、を含むかまたはそれらかなる、包接化合物(ci)、を含むかまたはそれらかなる、混合物M(または混合物Mを含む組成物)、を提供し、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、医薬として使用されるものであり、好ましくは、グラム陽性菌および/またはグラム陰性菌によって誘発または引き起こされる細菌感染症を治療する方法に使用され、またはウイルスによって誘発または引き起こされるウイルス感染症を治療する方法に使用されるものである。好ましくは、包接化合物(ci)を含む混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、コロナウイルスを含むかまたはそれらからなる群から選択されるウイルスのスパイクタンパク質を阻害することができ、より好ましくは、包接化合物(ci)は、少なくとも1つのSARS-CoV-2プロテアーゼおよび/または少なくとも1つのSARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質に結合することができる(例えば6M0J)。
【0029】
本明細書の文脈において、「包接化合物」との表現は、化合物(ホスト)が、互いに同一または異なる特定の寸法の空洞(キャビティ)(例えば、1つまたは2つまたは3つの空洞、好ましくは1つ)を有し、その中にそれぞれの空洞の寸法と同様の寸法を有する分子(例えば、1つまたは2つまたは3つの分子、好ましくは1つ)の第2の化合物(ゲスト)を割り当てまたは配置または確立することができる、化学的複合体に類似したタイプの化学構造を示すために使用され、ここで、ホストとゲストは、一般的に、ファンデルワールス力などの分子間力、または反対の符号の電荷を帯びたホストとゲスト間の静電結合または相互作用によって、非共有結合的に結合する。
【0030】
「包接化合物」は、例えば、(a)および/または(b)と(ii)シクロデキストリンとを、所定の重量比で接触させ、好ましくは、粉末または顆粒またはフレークの形態で、例えば、ボールミルなどの機械的混合を行うことができる装置内で所定の時間、(a)および/または(b)と(ii)シクロデキストリンとを混合することにより、(ci)を生成することによって、得ることができる。シクロデキストリンは、6、7、または8個のD-(+)グルコピラノースモノマーがα,1-4グルコシド結合で結合し、互いに同一または異なる所定の寸法の空洞(例えば、1つまたは2つの空洞)を有する環で閉じることによって形成される、天然の環状オリゴ糖である。
【0031】
本発明の包接化合物(ci)において、シクロデキストリン(ii)は、例えば、ボールミルによって与えられる、機械的衝撃および/または混合力によって提供される、エネルギーによって、ウスニン酸(a)またはその塩(b)またはそれらの混合物などの前記(i)を収容可能な親油性の空洞を定める、分子ケージを形成する。
【0032】
好ましくは、包接化合物(ci)に使用されるシクロデキストリン(ii)は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群から選択される。より好ましくは、前記シクロデキストリン(ii)は、β-シクロデキストリンである。
【0033】
好ましくは、(a)および/または(b)とともに包接化合物(ci)に含まれる前記少なくとも1つのシクロデキストリン(ii)は、β-シクロデキストリンであり、好ましくは、それは、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンであり、少なくとも1つのシクロデキストリン(ii)は、前記(a)および/または前記(b)に対して(すなわち、[(ii):(a)]または[(ii):[(a)+(b)]])、重量比で、3:1~1:3で、好ましくは2:1~1:2で、より好ましくは1.5:1~1:1.5で、さらにより好ましくは1:1で、前記包接化合物(ci)中に存在する。本発明において使用され得る(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンの例は、約1350~1380から1460~1480の平均分子量を有する、および/またはCAS番号128446-35-5である、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンである。
【0034】
好ましい実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、前記(a)ウスニン酸(またはその塩)および(ii)β-シクロデキストリン、好ましくは、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、を含むかまたはそれらからなる、前記(c)包接化合物(ci)からなる。
【0035】
好ましい実施形態において、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、前記(a)ウスニン酸(またはその塩)および前記(ii)β-シクロデキストリン(好ましくは(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン)を含むかまたはそれらからなる前記(c)包接化合物(ci)からなり、前記(a)ウスニン酸および前記(ii)β-シクロデキストリンは、[(a):(ii)]の重量比において(ウスニン酸:シクロデキストリン)、1:5~5:1、好ましくは1:3~3:1、より好ましくは1:2~2:1、例えば約1:1または1:2で、存在する。
【0036】
包接化合物(ci)の例によれば、(a)ウスニン酸(またはその塩)および(ii)β-シクロデキストリン(好ましくは(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン)を、[(a):(ii)]の重量比において、約1:1または1:2で含むかまたはそれらからなり、好ましくは、前記(a)ウスニン酸は、実質的に純粋なエナンチオマーとしてのD(+)ウスニン酸であり、そして、前記(ii)β-シクロデキストリンは、β-シクロデキストリン = (2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンである。
【0037】
好ましくは、記載される実施形態のいずれか1つによる混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、固体または半固体の状態、分散または懸濁した形態、ゲルの形態、または液体状態であってもよく、好ましくは、混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、フレーク、顆粒、粉末、ペレットの形態であってもよく、あるいは、水溶液もしくは水アルコール溶液、あるいは有機溶媒中、例えば、水性スプレー溶液(噴霧することができる(スプレー可能))であってもよい。
【0038】
好ましくは、天然由来の前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩は、0.1または1ミクロンから100ミクロン(例えば、0.5μm、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、または90μm)、好ましくは5ミクロン~50ミクロン、より好ましくは10ミクロン~20ミクロン(ミクロン=μm、1μm=10-6m、細胞の寸法は約10μm~約50μmの大きさオーダーである)の平均粒径を有する粉末固体の形態である。
【0039】
一実施形態において、記載される実施形態のいずれか1つによる混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、ヒトまたは獣医学の分野において、抗菌剤、抗菌増殖剤、静菌剤、殺菌剤、抗カビ剤、抗酵母剤(例えばカンジダ)、抗真菌薬または抗真菌剤(例えばSaccharomycetes)として使用するためのものであり、好ましくは、グラム陽性菌および/またはグラム陽性菌に対して、例えば、科学的名称が、クレブシエラ(Klebsiella)、腸内細菌科細菌(Enterobatteriacee)、エンテロバクター(Enterobacter)、シュードモナス(Pseudonomas)、およびエシェリキア(Escherichia)に対して、使用するためのものである。
【0040】
記載された実施形態のいずれか1つによる混合物M(または混合物Mを含む組成物)は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対する抗菌剤または静菌剤としても使用され、ここで、細菌は、好ましくは、大腸菌(Escherichia Coli)、クレブシエラ(Klebsiella)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus)(MRSA)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス種(Vancomycin-resistant Enterococcus spp.)(VRE)、アクチノバクター(Actinobacter)、アクチノバクター種(Actinobacter spp.)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、およびそれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0041】
有利には、本発明において(例えば、包接化合物(ci)において)使用され得るウスニン酸および/またはその関連の塩は、地衣類(ライケン)(lichens)から抽出され、好ましくは、前記地衣類は、ウスネア(Usnea)、クラドニア(Cladonia)、ヒポトラキナ(Hypotrachyna)、レカノラ(Lecanora)、ラマリナ(Ramalina)、エバーニア(Evernia)、パーメリア(Parmelia)、アレクトリア(Alectoria)、およびそれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択され、より好ましくは、前記地衣類は、ウスネア(Usnea)(サルオガセ)から、より好ましくは、ウスネア・ロンギッシマ・アク(Usnea longissima Ach)(ナガサルオガセ)から選択される。
【0042】
本発明の包接化合物(ci)において、前記シクロデキストリン(ii)は、β-シクロデキストリンを含むかまたはβ-シクロデキストリンからなり、好ましくは、シクロデキストリン(ii)は、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンであり、より好ましくは、(ii):(i)の重量比が、約1:1に等しい。
【0043】
包接化合物(ci)は、前記(ii)シクロデキストリンと一緒に、前記(a)ウスニン酸、好ましくは純粋なエナンチオマー(または実質的に純粋なエナンチオマー)としてのD(+)-ウスニン酸、またはその関連の塩の、固体粒子を含み、前記固体粒子は、0.01μm~50μm(例えば、0.1μm、0.5μm、1μm、10μm、20μm、30μm、または40μm)、好ましくは0.1μm~30μm、より好ましくは0.15μm~20μm、さらに好ましくは0.2μm~15μmの、平均粒径分布を有する。
【0044】
(a)ウスニン酸の平均粒径分布は、例えば、GB/T 19077-2016規格に従って、例えば、Malvern Mastersizer 3000装置を使用するレーザー回折法を用いて、測定および決定することができる。前記規格は、本特許出願の実際に有効なバージョンを意味する。
【0045】
好ましくは、(a)ウスニン酸の固体粒子は、D10=0.236μm、D50=1.570μm、およびD90=31.800μmなどの平均粒径分布を有する。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記固体粒子は、図8のチャートに従った分布を有する。
【0047】
本発明の目的により、混合物Mを含み、および、任意に、少なくとも1つの許容される医薬品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を含んでもよい、組成物であって、医薬として使用するための組成物、を提供する。
【0048】
一実施形態において、前記組成物は、医薬組成物、規則(EU)2017/745に従った医療機器組成物、特殊医療用食品(FSMP)用の組成物、規則(EU)2015/2283に従った新規食品用の組成物、または食品(foodstuffs)用もしくは栄養補助食品用の組成物である。
【0049】
一実施形態において、前記組成物は、内服用、外用、非経口、局所、皮膚科学的に使用のためのものであり;または、組織、真皮、または粘膜に使用するためのものであり;または、口、鼻、眼に使用するためのものであり、または、外耳道、喉、気管、食道、目、鼻、または耳に使用するためのものであり;または、口腔粘膜、鼻粘膜、眼粘膜、または外耳道に使用するためのものであり;または、胃、腸、胃腸に使用するためのものであり;または、膣または直腸に使用するためのものであり、これらは、ヒトおよび動物のためにヒトと獣医学の両方の分野においてものである。
【0050】
好ましくは、前記組成物は、錠剤、チュアブル錠、口内溶解錠、顆粒、粉末、フレーク、可溶性または水溶性の粉末または顆粒、口内溶解性の粉末または顆粒、カプセルから選択される、固体形態であるか;または、溶液、懸濁液、分散液、エマルション、スプレーの形態で分配できる液体、経口スプレーまたは鼻スプレー、経口吸入用の乾燥粉末、エアロゾル、経口エアロゾルまたは鼻エアロゾル、シロップ、から選択される、液体形態であるか;または、ソフトゲル、ゲル、軟膏、クリーム、および、局所(皮膚)、経口、眼または鼻用のクリーム、から選択される、半液体または半固体の形態である。
【0051】
一実施形態において、本発明の組成物は、コラーゲン、コンドロイチン、ヒアルロン酸またはその塩、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、シリカ、セルロース、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポロキサマー、ファイバー、イヌリン、マルトデキストリン、脂肪、ワックス、油、動物油、植物油、ワセリン、炭酸塩、重炭酸塩、アンモニウム塩、塩化ナトリウム、クレー、カオリン、抗酸化剤、例えば、グルタチオン、ケルセチン、コエンザイムQ10、またはビタミン、特にグループCまたはEのビタミン、例えばトコフェロールおよびトコトリエノール、植物由来のトコトリエノール、例えば、米由来のトコトリエノールなど、保存剤、例えば、安息香酸ナトリウムおよび安息香酸カリウム、またはソルビン酸ナトリウムまたはソルビン酸カリウムなど、無機塩(mineral salts)、塩化ナトリウム、および、pH緩衝剤、例えば、クエン酸およびその可溶性塩、例えばクエン酸一水和物など、から選択される、少なくとも1つの許容される医薬品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を使用して、製剤化されている。
【0052】
本発明の主題である組成物の好ましい実施形態は、噴霧器またはスプレー缶を使用して投与される水性液体溶液を提供することを目的とする。前記組成物は、液体組成物が、例えば約20℃または5℃の室温で、例えば36℃から40℃の体温を有する対象に経鼻経路を通じて適用されると、液体水性組成物を室温にしてゲルの粘稠度にすることを可能にする、食品または医薬品グレードの添加剤および/または賦形剤を使用して、製剤化される。例えば、それらは、(a)および/または(b)および(ii)シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびトコトリエノール、好ましくは、米由来のトコトリエノールによって、霧化され、組み合わされ、または会合される、水性組成物で用いられ得る。好ましくは、米(Oryza sativa L.)由来のトコトリエノールは、例えば、トコトリエノール含有量が、5重量%~75重量%、好ましくは15重量%~60重量%、例えば、25重量%、または30重量%、または40重量%、または50重量%である、水分散性粉末の形態であってもよい(商品名TheraPrimE(登録商標)-BGGの製品)。水分散性粉末は、トコトリエノールとともに、好ましくは、マルトデキストリン(9050-36-6)、デンプンおよび二酸化ケイ素SiO(7631-86-9)を含んでもよい。好ましくは、水分散性粉末は、30%~60%の米ぬか油抽出物、25%~45%の加工デンプン、20%~40%のマルトデキストリン、および0.2%~1.5%のSiOを含んでもよい。好ましくは、トコトリエノールとトコフェロールの混合物を総量で15重量%~60重量%、例えば、25%、または30%、または40%、または50%含む、水分散性粉末を使用することができ、好ましくは、混合物中の総含量が25重量%の場合には、例えば、トコトリエノールの量が約10重量%であってトコフェロールの量が約15重量%(HPLCによって測定される量)であってよく、一方、混合物中の総含量が30重量%の場合には、トコトリエノールの量が約15重量%であってトコフェロールの量が約15重量%であってよく、100%における残りの部分は、デンプン、マルトデキストリン、SiOおよびその他であり得る。本発明のウスニン酸D(+)は、好ましくは、190℃~210℃、好ましくは192℃~198℃の、融点(DSC);480°~540°、好ましくは490°~520°の、分子旋光度;PSD値:1ミクロン~15ミクロン、好ましくは2ミクロン~10ミクロン、例えば5ミクロンの、D50、を有していてもよい。好ましくは、ウスニン酸は、病原体に対する低濃度MIC、例えば、500ppm以下の黄色ブドウ球菌MICおよび1000ppm以下の大腸菌MIC、を有する。
【0053】
本発明の主題である組成物の好ましい実施形態は、下記の表に示すような水性液体溶液を提供することを目的とする。
【表1】
【0054】
一実施形態において、本発明の組成物は、例えば上記の表に記載されているものと同様に、水溶液の形態であり、
90重量%~99.5重量%、好ましくは94重量%~99重量%の、水、好ましくは脱塩水;
0.0001重量%~0.5重量%、好ましくは0.01~0.25重量%の、好ましくはD(+)の形態である、(a)ウスニン酸および/または(b)ウスニン酸塩および/または(c)包接化合物(ci)またはそれらの混合物;
0.25重量%~2.5重量%、好ましくは0.5重量%~1.5重量%の、セルロース、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポロキサマー、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPMC)、を含むかまたはそれらからなる群から選択される、ポリマー;
グルタチオン、ケルセチン、コエンザイムQ10、ビタミン、特にグループCまたはEのビタミン、例えばトコフェロールおよびトコトリエノール、好ましくは植物由来のトコトリエノール、例えば米由来のトコトリエノール、を含むかまたはそれらからなる群から選択される、抗酸化活性を有する化合物;
好ましくは、当産業で一般的に使用される、無機塩、保存剤、およびpH緩衝剤または安定剤、
を含む、または、それらからなる。
【0055】
水溶液の形態の前記組成物は、好ましくは、20℃で約240±40の粘度値(mPa・s);約5±0.2のpH値;約1.01±0.1g/ccの密度値を有してよく、微生物学的負荷(総負荷、酵母、カビ、2つの病原体(黄色ブドウ球菌およびシュードモナス))において、総負荷が100CFU以下、酵母が100CFU以下、カビが10CFU以下、および病原菌が存在しない、性状を有していてよい。
【0056】
好ましくは、本発明の組成物(例えば、上記の表に記載されているものと同様)は、下記の工程:
1)粉末、好ましくは活性成分(a)および/または(b)および/または(c)包接化合物(ci)、およびポリマーCMC、またはHPC、またはHPMCを、好ましくは90℃~150℃、より好ましくは100℃~110℃の温度で、乾燥する工程;
2)工程1)により得た粉末を、予め50℃~90℃、好ましくは60℃~80℃±2℃の温度に加熱した適量の水、例えば100リットルの脱塩水に、加えて、溶液を得る工程;
3)工程2)により得た溶液を、好ましくはマグネティックミキサーを用いて、例えば30分~240分、好ましくは60分~120分の時間混合して、最終の水溶液を得る工程;および、任意に行われ得る
4)pH値を5±0.1~7±0.1、好ましくは5.5±0.1~6.5±0.1の値に制御および調整して、最終の溶液(本発明の主題)を得る工程、
を含む、または、からなる製造方法を用いて、製造することができる。
好ましくは、前記最終の溶液は、特に前記溶液が経鼻経路を通して適用される場合、対象の体温と接触するとゲルまたはクリームと同様の粘稠度となるスプレー溶液を得るために、例えばアトマイザー容器に包装するように準備される。
【0057】
添付の図7は、天然由来のウスニン酸、好ましくは、D(+)-ウスニン酸を得るプロセスの一実施形態のフローチャートを概略的に示している。この方法の実施形態によれば、乾燥形態のウスニン酸は、下記の工程:
(a.1)地衣類(lichens)、好ましくは、ウスネア(Usnea)、クラドニア(Cladonia)、ヒポトラキナ(Hypotrachyna)、レカノラ(Lecanora)、ラマリナ(Ramalina)、エバーニア(Evernia)、パーメリア(Parmelia)、アレクトリア(Alectoria)、およびそれらの組み合わせ、好ましくはウスネア、より好ましくはウスネア・ロンギッシマ・アク(Usnea longissima Ach)、を含むかそれらからなる群から選択される地衣類、から選択される植物材料から、有機溶媒、好ましくは、ベンゼン、ヘキサン、アセトン、クロロホルム、トリクロロエチレン、またはアルコール溶媒、より好ましくはエタノール、を含むかそれらからなる群から選択される溶媒を用いて、浸漬し、抽出して、抽出溶液を得て、そして、前記抽出溶液を濃縮して濃縮抽出溶液および残留溶媒を得る工程、
(a.2)工程(a.1)により得られた濃縮抽出溶液を結晶化および濾過し、結晶化および濾過された抽出生成物を得る工程;
(a.3)工程(a.2)により得られた、結晶化および濾過された抽出生成物を、溶解、濾過および濃縮して、濃縮抽出物および残留溶媒を得る工程;
(a.4)工程(a.3)により得られた濃縮抽出物を、結晶化、濾過し、続いて乾燥および粉砕して、好ましくは80%~99.9%、より好ましくは90%~99.5%、さらにより好ましくは95%~98%の(%重量/重量または%体積/体積)、力価を有する、ウスニン酸の乾燥粉砕抽出物を得る工程、
によって得られる。
【0058】
工程(a.1)の浸漬および抽出は、好ましくは、撹拌および加熱手段を備えた、好ましくはステンレス鋼製の抽出タンク内で行われる。好ましくは、工程(a.1)の浸漬および抽出において、[植物材料の重量]:[有機溶媒の体積]比は、10:1~1:50、好ましくは5:1~1:40、より好ましくは1:1~1:35で、使用される。工程(a.1)の浸漬および抽出は、好ましくは、周囲圧力、および10℃~80℃、好ましくは20℃~70℃、より好ましくは25℃~60℃の温度で、行われる。
【0059】
工程(a.1)において、ウスネア(Usnea Longissima Ach)の葉状体(thallus)(新芽(sprout)または若枝(scion))は、好ましくは酢酸エチル溶媒とともに、例えば植物部分350kgおよび溶媒2600リットルの量で、使用される。浸漬は、好ましくは、約25℃の温度および1気圧の圧力で、2時間~10時間、好ましくは4時間~8時間、例えば5時間~6時間の時間、実施される。浸漬は、液体を撹拌し、加熱し、再循環するための手段を備えた反応器内で実施することができる。例えば、浸漬は、植物部分上に蒸留物(溶媒)を連続的に再循環させることによって行われる。単一工程として行われる抽出は、好ましくは約25℃の温度および1気圧の圧力で行われる。植物部分から抽出されるウスニン酸を含む、使用された抽出溶媒の濃縮は、好ましくは、酢酸エチルの沸点である約77.1℃を考慮し、また抽出圧力の影響も考慮して、実施される。濃厚な濃縮液体と溶媒のほぼ完全な回収が得られる。
【0060】
工程(a.1)に続く工程(a.2)の結晶化および濾過において、結晶化および濾過された抽出生成物を得るために、ベンゼン、ヘキサン、アセトン、クロロホルム、トリクロロエチレン、またはアルコール溶媒、より好ましくはエタノール、を含むかまたはそれらからなる群から選択される、有機溶媒が、好ましく使用される。工程(a.2)の結晶化および濾過では、[濃縮抽出溶液]:[有機溶媒]は、体積比で、10:1~1:40、好ましくは5:1~1:30、より好ましくは1:1~1:20で、使用されることが好ましい。工程(a.2)の結晶化において、工程(a.1)から得られた濃縮抽出溶液は、結晶化を促進するために好ましくは冷却され、より好ましくは周囲圧力で1℃~20℃の温度、さらにより好ましくは周囲圧力で5℃~15℃の温度で、冷却される。工程(a.2)の終わりに、少なくとも80%、85%~90%の純度を有し、約350kgの植物部分から出発する場合には約20kgの量の結晶材料が得られる。
【0061】
工程(a.2)に続く工程(a.3)において、工程(a.2)から得られた結晶化および濾過された抽出生成物を、溶解し、濾過し、濃縮して、濃縮抽出物および残留溶媒を得る。工程(a.3)において、有機溶媒、好ましくは、ベンゼン、ヘキサン、アセトン、クロロホルム、トリクロロエチレン、またはアルコール溶媒、より好ましくはエタノール、を含むかまたはそれらからなる群から選択される、有機溶媒が、好ましく使用される。工程(a.3)の溶解では、[結晶化および濾過された抽出生成物の重量]:[有機溶媒の体積]の比が、10:1~1:40、好ましくは5:1~1:30、より好ましくは1:1~1:20で、使用されることが好ましい。工程(a.3)において、それらをクロロホルム2×20kgに溶解して、最低純度98%のウスニン酸20kgが得られる。
【0062】
工程(a.3)に続く工程(a.4)において、工程(a.3)から得られた濃縮抽出物を、結晶化し、濾過し、続いて乾燥および粉砕して、ウスニン酸の乾燥粉砕抽出物を得る。工程(a.4)の結晶化では、有機溶媒、好ましくは、ベンゼン、ヘキサン、アセトン、クロロホルム、トリクロロエチレン、またはアルコール溶媒、より好ましくはエタノール、を含むかまたはそれらからなる群から選択される、有機溶媒が、好ましく使用される。工程(a.4)の結晶化では、[濃縮抽出物の重量]:[有機溶媒の体積]の比が、10:1~1:40、好ましくは5:1~1:30、より好ましくは1:1~1:20で、使用されることが好ましい。工程(a.4)の結晶化において、工程(a.3)から得られた濃縮抽出物は、結晶化を促進するために好ましくは冷却され、より好ましくは周囲圧力で1℃~20℃の温度、さらに好ましくは周囲圧力で5℃~15℃の温度で、冷却される。工程(a.4)の乾燥は、残留溶媒含量が、ウスニン酸の乾燥抽出物の総重量に対して、0.5重量%~10重量%、好ましくは1重量%~5重量%、より好ましくは1.5重量%~3重量%になるまで行われることが好ましい。好ましくは、工程(a.4)の粉砕は、ミル、より好ましくはロータリーボールミルを用いて行われる。工程(a.4)から得られた濾過および結晶化された固体の乾燥は、例えば、残留溶媒含有量が、初期重量に対して約2重量%~5重量%となって残ったときに終了する。プレート乾燥機(減圧装置なし)を、好ましくは約95℃~99℃の温度で、空気を循環させながら使用する。粉砕された固体は、例えば、20メッシュから40メッシュの平均粒径分布を有し、98重量%のウスニン酸を含有する(シグマ・アルドリッチ法によるHPLC)。プロセスの開始時に2×350kgの植物部分(出発材料)から出発して、プロセスの終了時に、約3%~4%の収率で材料(乾燥固体)を得ることができ、これは、含有量が98重量%(13.72kg-27.44kg)のウスニン酸約14kg-28kgに相当する。得られたウスニン酸は、D(+)形態99.9%の純粋なウスニン酸、または、ラセミ体である。
【0063】
ウスニン酸の乾燥粉砕抽出物(工程(a.4))をラセミ混合物として得た後、前記乾燥抽出物を、シクロデキストリン、好ましくはβ-シクロデキストリンと選択的に複合体化し、前記の包接化合物(ci)を得る。好ましくは、前記選択的複合体は、ウスニン酸またはその塩あるいはそれらの混合物(i)と、シクロデキストリン(ii)を共沈(co-precipitation)させることによって得られる。包接化合物(ci)は、好ましくは、ウスニン酸(好ましくはD(+)-ウスニン酸)またはその塩あるいはそれらの混合物(i)と、シクロデキストリン(ii)、好ましくはβ-シクロデキストリンとを、共沈させることにより得られる。例えば、シクロデキストリン(ii)をまず、水または他の適切な水性溶媒に溶解し、続いてシクロデキストリン(ii)を含む水溶液を撹拌しながら、工程(a.4)のウスニン酸の乾燥粉砕抽出物を加える。溶液中の十分に高濃度のシクロデキストリン(ii)の存在下では、シクロデキストリン(ii)によるウスニン酸またはその塩あるいはそれらの混合物(i)の複合体形成反応が徐々に進行するにつれて、包接化合物(ci)の沈殿が始まる。好ましくは、包接化合物(ci)を含む溶液は、沈殿を開始させるために、好ましくは撹拌しながら、1℃~18℃の温度に冷却する必要があり得る。包接化合物(ci)は、デカンテーション、遠心分離、または濾過によって収集することができる。包接化合物(inclusion compound)(ci)は、好ましくは水溶性包接化合物(water-soluble clathrate)または水懸濁性包接化合物(water-suspendable clathrate)であり、前記ウスニン酸(純粋なエナンチオマーD(+)として、またはラセミ体として)またはその塩、またはそれらの混合物(i)は、該D-ウスニン酸またはその塩またはそれらの混合物(i)が前記シクロデキストリン(ii)と接触すると、前記包接化合物の空洞内(キャビティ)にホストされる。
【0064】
本発明の実施形態(FRn)を以下に報告する。
FR1.
少なくとも1つのウイルスによって誘発または引き起こされるウイルス感染症を治療する方法に使用するための混合物Mであって、
(a)ウスニン酸、および/または、
(b)その関連の塩、および/または、
(c)包接化合物(ci)またはその混合物であって、包接化合物(ci)が、
(i)前記(a)ウスニン酸、および/または前記(b)その関連の塩、および、
(ii)少なくとも1つのシクロデキストリン、
を含む、または、からなる包接化合物(ci)またはその混合物、
を含む、または、からなる、混合物M。
FR2.
混合物Mが、コロナウイルス、好ましくはSARS-CoV-2ウイルスによって誘発または引き起こされるウイルス感染症を治療する方法に使用するためのものであり、より好ましくは、混合物Mは、コロナウイルス、好ましくはSARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質を阻害することができる、FR1に記載の混合物M。
FR3.
混合物Mが、前記(c)包接化合物(ci)を含むかまたはそれからなり、
包接化合物(ci)は、
(i)前記(a)ウスニン酸、および/または前記(b)その関連の塩、および、
(ii)少なくとも1つのシクロデキストリン、
を含むかまたはそれらからなる、FR1またはFR2に記載の混合物M。
FR4.
前記(ii)少なくとも1つのシクロデキストリンが、少なくとも1つのβ-シクロデキストリンを含むかまたはそれからなる、FR1~FR3のいずれか1つに記載の混合物M。
FR5.
前記(ii)少なくとも1つのβ-シクロデキストリンが、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンを含むかまたはそれからなる、FR4に記載の混合物M。
FR6.
包接化合物(ci)において、(ii)少なくとも1つのシクロデキストリン、好ましくは少なくとも1つのβ-シクロデキストリンと、(i)ウスニン酸および/またはその関連の塩との重量比[(ii):(i)]が、3:1~1:3、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは1.5:1~1:1.5、さらにより好ましくは1:1である、FR1~FR5のいずれか1つに記載の混合物M。
FR7.
前記(a)ウスニン酸が天然由来であり;好ましくは、混合物Mは、ヒトおよび動物に影響を与えるウイルス感染症を治療する方法において経口で使用のためのものであり;より好ましくはヒトの分野での経口使用のものである、FR1~FR6のいずれか1つに記載の混合物M。
FR8.
呼吸器系のウイルス感染、および前記ウイルス感染に由来するかそれに関連する症状および/または障害を治療する方法に使用するための混合物Mであって、好ましくは、上気道および/または下気道のウイルス感染症のためのものである、FR1~FR7のいずれか1つに記載の混合物M
FR9.
前記ウイルス感染症が、コロナウイルス科、亜科:コロナウイルス科、属:ベータコロナウイルス、種:重症急性呼吸器症候群コロナウイルス、株:重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2または2019-nCoV)、およびCOVID-19疾患の原因となるウイルス、および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス様SARS-CoV様またはSL-CoV)、好ましくはSARS-CoV-2、から選択されるものである、ウイルスによって誘発または引き起こされる、FR8に記載の混合物M。
FR10.
混合物Mが、少なくとも1つのSARS-CoV-2プロテアーゼおよび/またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質と結合することができ;好ましくは、SARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質と結合することができる、FR8またはFR9に記載の混合物M。
【0065】
FR11.
呼吸器系のウイルス感染に由来するかまたはそれに関連する症状および/または障害が、重症急性呼吸器症候群(SARS)、呼吸器合併症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、肺気腫、嚢胞性線維症、咳、百日咳、肺炎、胸膜炎、細気管支炎、風邪、副鼻腔炎、鼻炎、気管炎、咽頭炎、喉頭炎、急性喉頭気管気管支炎、喉頭蓋炎、気管支拡張症、呼吸困難、呼吸不全、息切れ、息苦しさ、発熱、倦怠感、筋肉痛、筋肉疲労、鼻づまり、鼻水、喉の痛み、胃腸症状、吐き気、下痢、腎不全、食欲不振、全身倦怠感倦怠、から選択される、FR1~FR10のいずれか1つに記載の混合物M。
FR12.
天然由来の前記(a)ウスニン酸が、右旋性の天然ウスニン酸D(+)と左旋性の天然ウスニン酸L(-)との組み合わせまたは会合体(C/A)であり;好ましくは、右旋性形態D(+)は、組み合わせまたは会合体(C/A)の総重量に対して、0.1重量%~99.9重量%含まれ、および/または、左旋性形態L(-)は、組み合わせまたは会合体の総重量に対して、99.9重量%~0.1重量%含まれる、FR1~FR11のいずれか1つに記載の混合物M。
FR13.
天然由来の前記(a)ウスニン酸が、50%(+)および50%(-)のラセミ形である、または、実質的に100%の右旋性形態D(+)である、FR1~FR12のいずれか1つに記載の混合物M。
FR14.
天然由来の前記(b)ウスニン酸の塩が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であり;好ましくは、天然由来のウスニン酸塩は、ウスニン酸ナトリウム塩である、FR1~FR13のいずれか1項に記載の混合物M。
FR15.
(b)天然ウスニン酸塩が、ラセミ形、または、右旋性形D(+)であり;好ましくは、前記塩は、右旋性形態D(+)が、組み合わせまたは会合体(C/A)の総重量に対して、0.1重量%~99.9重量%の量で存在してよく、および/または、左旋性形態L(-)が、組み合わせまたは会合体(C/A)の総重量に対して、99.9重量%~0.1重量%の量で存在してよい、FR1~FR14のいずれか1つに記載の混合物M。
FR16.
天然由来の前記(a)ウスニン酸および前記(b)その関連の塩が、重量比[(a):(b)]において、1:10~10:1、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:3~3:1または1:1で存在する、FR1~FR15のいずれか1つに記載の混合物M。
FR17.
ウスニン酸が、化合物:(+)-ウスニン酸、化学名2,6-ジアセチル-7,9-ジヒドロキシ-8,9b-ジメチルジベンゾ[b,d]フラン-1,3(2H,9bH)-ジオン;ウスネア由来の(+)-ウスニン酸;CAS番号:7562-61-0、EC:231-456-0、からなり;好ましくは、ウスニン酸ナトリウム塩が、化合物:2,6-ジアセチル-7,9-ジヒドロキシ-8,9b-ジメチルジベンゾ-1,3(2H,9bH)-ジオンの一ナトリウム塩;CAS番号:34769-44-3、EC:252-204-6、からなり;好ましくは、前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)ウスニン酸塩の純度は、95%~99.9%、好ましくは96%~99.5%、より好ましくは97%~98%または98%(%重量/重量)である、FR1~FR16のいずれか1つに記載の混合物M。
FR18.
混合物Mが、固体または半固体の状態、分散または懸濁した形態、ゲルの形態、または液体状態であってよく;好ましくは、混合物Mは、フレーク、顆粒、粉末、ペレットの形態であってよく、あるいは、水溶液もしくは水アルコール溶液、あるいは有機溶媒中であってもよい、FR1~FR17のいずれか1項に記載の混合物M。
FR19.
天然由来の前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩が、1ミクロン~100ミクロン、好ましくは5ミクロン~50ミクロン、より好ましくは10ミクロン~20ミクロンの平均粒径を有する、粉末固体形態である、FR1~FR18のいずれか1つに記載の混合物M。
FR20.
前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩は、地衣類から抽出され、好ましくは、ウスネア、クラドニア、ヒポトラキナ、レカノラ、ラマリナ、エバーニア、パーメリア、アレクトリアおよびそれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択される地衣類、より好ましくはウスネア、さらにより好ましくはウスネア・ロンギッシマ・アク(Usnea longissima Ach)(ナガサルオガセ)から抽出され、そして、前記少なくとも1つのシクロデキストリン(ii)は、少なくとも1つのβ-シクロデキストリンを含むかまたはそれからなり、好ましくは、少なくとも1つのβ-シクロデキストリンは、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンである、FR1~FR19のいずれか1つに記載の混合物M。
【0066】
FR21.
前記(a)ウスニン酸および/または前記(b)その関連の塩と、前記(ii)少なくとも1つのシクロデキストリン、好ましくは少なくとも1つのβ-シクロデキストリンとの重量比[(a)および/または(b):(ii)]が、実質的に1:1である、FR20に記載の混合物M。
FR22.
前記包接化合物(ci)が、前記(a)ウスニン酸、好ましくは実質的に純粋なエナンチオマーとしてのD(+)-ウスニン酸、またはその関連の塩の固体粒子を含み、該固体粒子は、0.01μm~50μm、好ましくは0.1μm~30μm、より好ましくは0.15μm~30μm、さらにより好ましくは0.2μm~15μmの平均粒径分布を有する、FR1~FR21のいずれか1つに記載の混合物M。
FR23.
FR1~FR2およびFR8~FR11のいずれか1つに記載の使用のための組成物であって、FR1~22のいずれか1つに記載の混合物M、および、少なくとも1つの許容される医薬品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤、を含む、組成物。
FR24.
前記組成物が、医薬組成物、規則(EU)2017/745に従った医療機器組成物、特殊医療用食品(FSMP)用の組成物、規則(EU)2015/2283に従った新規食品用の組成物、または食品用の組成物である、FR23に記載の組成物。
FR25.
組成物が、内服用、外用、非経口、局所、皮膚科学的に使用するものである;または、組織、真皮、または粘膜に使用するためのものである;または、口、鼻、眼に使用するためのものである;または、耳道、喉、気管、食道、目、鼻、耳に使用するためのものである;または、口腔粘膜、鼻粘膜、眼粘膜、または耳道の粘膜に使用するためのものである;または、胃、腸、胃腸に使用するためのものである;または、膣または直腸で使用するためのものである、FR23~FR24のいずれか1つに記載の組成物。
FR26.
該組成物が、
錠剤、チュアブル錠、口内溶解錠、顆粒、粉末、フレーク、可溶性または水溶性の粉末または顆粒、口内溶解性の粉末または顆粒、カプセル、から選択される、固体形態;または、
溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、スプレーの形態で分配できる液体、経口スプレーまたは鼻スプレー、エアロゾル、経口エアロゾルまたは鼻エアロゾル、シロップ、から選択される、液体形態;または、
ソフトゲル、ゲル、軟膏、クリーム、局所用、経口用、または鼻用のクリームから選択される、半液体または半固体の形態、
である、FR23~FR25のいずれか1つに記載の組成物。
FR27.
前記少なくとも1つの許容される医薬品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤が、コラーゲン、コンドロイチン、ヒアルロン酸またはその塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム、ビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、シリカ、セルロース、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポロキサマー、ファイバー、イヌリン、マルトデキストリン、脂肪、ワックス、油、動物油、植物油、ワセリン、炭酸塩、重炭酸塩、アンモニウム塩、塩化ナトリウム、クレー、カオリン、を含むかまたはそれらからなる群から選択される、FR23~FR26のいずれか1つに記載の組成物。
【実施例
【0067】
実験パート(I)
1. 研究デザイン
本インビトロ研究の目的は、ウスニン酸およびβ-シクロデキストリンを含む複合体(本発明による包接複合体)のSARS-CoV-2コロナウイルスに対する抗ウイルス効果を評価することである。
この目的のために、Vero E6 CRL-1586(ATCC)アフリカミドリザル腎臓細胞株とともにインキュベートしたシュードウイルス(Pseudovirus)に対する本発明の前記複合体の阻害効果を試験した。国際レベルでは、シュードウイルスを含むコロナウイルスが細胞に侵入する際に経由するACE2受容体が豊富であるため、Vero E6細胞株が選ばれている。コロナウイルスおよびシュードウイルスは、スパイクと称されるウイルスの表面の糖タンパク質を介してACE2受容体に結合することが知られている。
試験された本発明の複合体は、ウスニン酸のβ-シクロデキストリンとの複合体(重量比1:1および1:2)である。
このVero E6細胞株は、主に、分析中の複合体の細胞毒性の可能性をテストするために使用された。
【0068】
2. Vero E6細胞株におけるウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の細胞毒性アッセイ
2.1. Vero E6細胞株の培養
Vero E6細胞株を、1%のL-グルタミン、10%のウシ胎児血清(FBS)、および1%のペニシリンおよびストレプトマイシン(%重量/重量または%重量/体積)を含むダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM)(Corning)で培養し、5%CO雰囲気のインキュベーター内において37℃でインキュベートした。
細胞の増殖は、細胞毒性アッセイに供される96ウェルプレートに接種するのに十分な数の細胞を得るために、10mlの細胞培養培地を含む75cmフラスコ中で行われる。
【0069】
2.2. ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の溶解性
細胞毒性アッセイを実施する前に、滅菌蒸留水とダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM、Corning)の両方で、ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の溶解度試験を実施した。
複合体の溶解度は、温度20℃で、脱塩水中で1%重量/重量に相当する。複合体の良好な分散を得るには、強力な混合、例えば、機械的混合が必要である。このようにして得られた溶液は、ゆっくりと沈殿を形成する可能性がある。より良好な可溶化のために、複合体の溶解性を高めるために、1%溶液を50℃の水に浸すことが推奨され、また、例えば、機械的ものなどの混合の補助も受ける。
滅菌蒸留水およびD-MEMにおけるウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の溶解度を検証するために、その後の細胞毒性アッセイでの使用のために、以下の濃度をテストした。
・10mg/mlの濃度に相当する、1%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体。
・5mg/mlの濃度に相当する、0.5%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体。
・1mg/mlの濃度に相当する、0.1%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体。
・500μg/mlの濃度に相当する、0.05%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体。
・100μg/mlの濃度に相当する、0.01%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体。
・50μg/mlの濃度に相当する、0.005%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体。
・10μg/mlの濃度に相当する、0.001%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体。
溶解度試験では、使用した蒸留水と培地の両方で溶解度の差が観察されないことが示された。その結果、細胞毒性アッセイに使用する複合体の溶解にはD-MEM細胞培養液を使用した。細胞はD-MEM細胞培養培地中で生存を維持するため、この手順が最適であることが確かめられた。
1%、0.5%、および0.1%の濃度の、D-MEMに溶解したウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の溶解は、試験した複合体の濃度に比例してゆっくりと沈殿の形成を示した。したがって、これらの濃度では上清のみを収集し、Vero E6細胞株とともにインキュベートした。より低い濃度、つまり0.05%、0.01%、0.005%、および0.001%では沈殿物の存在が示されなかったため、上清を収集する必要はなかった。
【0070】
2.3. 細胞毒性アッセイ(MTTアッセイ)
ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の非細胞毒性濃度を決定するために、この複合体の細胞毒性試験を、Vero E6細胞株に対して、異なる濃度および2つのインキュベーション時間で実施した。
チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミドまたはMTT(Sigma Aldrich)を使用して、さまざまな濃度でのウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の可能性のある細胞毒性活性をチェックした。MTTアッセイは、生細胞内のNAD(P)H依存性酸化還元酵素による、黄色テトラゾリウムブロミド化合物の、ホルマザンへの還元に基づく、比色アッセイであり、ホルマザンは生細胞内で不溶性の紫色の結晶の形で沈殿する。観察される紫色が強いほど、存在する生細胞の数が多くなる。
詳細には、75cmフラスコ(Corning)から事前に取り出した細胞を、最終濃度1×10細胞/ウェルで播種した96ウェルマルチウェルを、細胞毒性実験に使用した。続いて、細胞を含むマルチウェルを、5%CO雰囲気の加湿インキュベーター内において37℃で24時間、インキュベートした。24時間のインキュベーション後、培地を除去し、事前にD-MEMに溶解した(パラグラフ2.2.)、100μlのウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体を、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、および0.001%といった異なる濃度で添加した。そして、マルチウェルを、5%CO雰囲気の加湿インキュベーター内において、37℃で8時間および24時間インキュベートした。
8時間および24時間のインキュベーション後、異なる濃度のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体を含む培地をマルチウェルから除去し、100μl/ウェルのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄を行った。
この時点で、細胞毒性試験のためにMTTアッセイを実施した。
光源がない状態で、PBSに溶解した0.5mg/mlのMTT溶液を100μl/ウェルで加え、マルチウェルを、5%CO雰囲気の加湿インキュベーター中、暗所において、37℃で3時間インキュベートした。
3時間後、MTT溶液をマルチウェルから除去し、PBSで洗浄を行った後、100μl/ウェルのDMSOを加えた。マルチウェルを、暗所において、室温で15分間インキュベートした。次いで、分光光度計による読み取りを波長570nmで行った。
【0071】
2.4. 細胞毒性試験の結果。
細胞毒性試験から得られた結果について、ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体とVero E6細胞とのインキュベーションの、8時間および24時間の結果を、それぞれ、図1および図2に報告する。
図1および図2では、細胞生存率がパーセンテージで表されている。複合体の存在下での細胞生存率が約70%未満であれば、その濃度では複合体は細胞毒性があるものとして分類される。
図1および図2から分かるように、ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体は、1%、0.5%、および0.1%の濃度で、8時間のインキュベーション後と24時間のインキュベーション後の両方で、Vero E6細胞に対して細胞毒性を示す。
濃度0.05%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の細胞毒性に関しては、8時間のインキュベーション後は、細胞毒性なし(生存率71%)になるが(図1)、24時間のインキュベーション後は、細胞生存率は70%をわずかに下回る(図2)。
アッセイを行ったウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の他の濃度、つまり、0.01~0.001%に関しては、これらの濃度は、8時間のインキュベーション後および24時間のインキュベーション後の両方で、Vero E6細胞株に対して細胞毒性を示していない(図1および図2)。
したがって、複合体の抗ウイルス活性は、0.01%の濃度でテストされる。
【0072】
3. Vero E6細胞株において試験した、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスに対するウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の抗ウイルス活性
3.1. Vero E6細胞株の培養
SARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスに対するウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の抗ウイルス活性の可能性を、0.01%の濃度でテストした。
細胞毒性アッセイと同様に、アフリカミドリザル腎臓細胞株Vero E6 CRL-1586(ATCC)を抗ウイルス活性にも使用した。この細胞株を、1%のL-グルタミン、10%のウシ胎児血清(FBS)、および1%のペニシリンおよびストレプトマイシン(%重量/重量または%重量/体積)を含むダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM)(Corning)で培養し、5%CO雰囲気のインキュベーター内において37℃でインキュベートした。
細胞の増殖は、細胞をウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の抗ウイルス活性の試験に供する96ウェルプレートに接種するのに十分な数の細胞を得るために、10mlの細胞培養培地を含む75cmフラスコ中で行われる。
【0073】
3.2. ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の溶解
ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体は、100μg/mlに等しい濃度に相当する0.01%でD-MEM(細胞培養培地)に溶解した。
【0074】
3.3. シュードウイルス
本実験に使用したSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスストック(Creative Biogene、USA)には、10の形質導入単位(TU)/mlが含まれており、ここで、TUは、シュードウイルスの量を定義するために使用される測定単位である。この実験で使用したシュードウイルスには、細胞単層に感染したウイルス粒子が発する発光の定量を可能にするホタルルシフェラーゼ(firefly luciferase)酵素のレポーター遺伝子も含まれていることを観察する必要がある。
実施した実験では、感染多重度(MOI)10に相当する10TUの濃度を使用した。感染多重度は、ウェルあたりの所定の数の細胞(1×10)と接触するウイルス粒子の数を示す。したがって、本実験では、さまざまなMOIをテストした後、細胞あたり10個のシュードウイルス粒子(MOI 10)を接触させた(図3)。図3から分かるように、MOI 100で観測された過剰発光に適用されるのと同様に、より低い濃度が標準曲線の線形領域内に収まらないことを考慮すると、最適濃度はMOI 10で得られた濃度である。
【0075】
3.4. 抗ウイルス活性アッセイ
Vero E6は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の結合とその後のウイルスの細胞への侵入のためのACE2受容体を有しているため、ウイルス感染の研究に最適な細胞株である。詳細には、75cmフラスコ(Corning)から事前に取り出した細胞を、最終濃度1×10細胞/ウェルでD-MEMに播種した96ウェルマルチウェルを、抗ウイルス活性実験に使用した。続いて、細胞を含むマルチウェルを、5%CO雰囲気の加湿インキュベーター内において、37℃で24時間インキュベートした。
翌日、細胞計数を実施してその非複製を確認し、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスを、5%COの加湿インキュベーター内において、0.01%濃度のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体とともに、MOI 10で、37℃で1時間プレインキュベートした。プレインキュベートは1.5ml試験管中で実施した。
シュードウイルスと、ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体との接触時間が終了したあと、懸濁液全体を試験管から回収し、Vero E6細胞の細胞単層に加えた。単層を、5%CO雰囲気の加湿インキュベーター内において、37℃で8時間、インキュベートした。
8時間のインキュベートの後、シュードウイルスとともにウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体を含む培養培地をマルチウェルから除去し、細胞に浸透しなかったウイルスを除去するのに十分な100μl/ウェルのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄を行った。
続いて、新しいD-MEM培地を単層に加え、5%CO雰囲気の加湿インキュベーター内において、37℃で48時間、インキュベートした。
この時間が経過した後、ルシフェラーゼ細胞培養溶解試薬(Promega、イタリア)を使用して細胞単層を溶解した。次いで、ルシフェラーゼ試験(Promega、イタリア)を実施した。ルシフェラーゼ試験は、シュードウイルス内でクローン化されたホタルルシフェラーゼ酵素を使用した、ルシフェリンのオキシルシフェリンへの酸化に基づいている。この反応の生成物は電子遷移により光シグナルを発し、これはルミノメーター(Biontek)によって検出される。
その結果、放出される光の強度は、細胞単層に感染したシュードウイルス粒子の数に直接比例し、したがって、シュードウイルス(シュードウイルススパイク)に対する本発明の複合体の親和性に反比例する。
シュードウイルスを、ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体とともにプレインキュベートしたサンプルによって放出される発光の量を、ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の非存在下で37℃でインキュベートしたシュードウイルスを用いて得られる発光の量(対照)と比較した。
【0076】
3.5. 抗ウイルス活性アッセイの結果。
図4に、濃度0.01%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体について、MOI 10でシュードウイルスと1時間プレインキュベートし、その後、Vero E6細胞と8時間接触させた、抗ウイルス活性の試験により得られた結果を報告する。
シュードウイルスを、ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体とプレインキュベートしたサンプルの結果を、殺ウイルス性の複合体とプレインキュベートしなかったシュードウイルス(対照)から得られた結果と比較した。データは、放出される発光量(図4A)、および、細胞単層へのシュードウイルスの侵入率(図4B)の両方で報告される。
図4から分かるように、MOI 10のシュードウイルスを0.01%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体と接触させると、高度に強調された対照と比べて、発光が減少する(それぞれ、4195対28405)(図4A)。これは、シュードウイルスの侵入が減少し、対照と比較してウイルスの細胞への侵入が85.2%阻害されたことを示している(図4B)。
結論として、示された実験は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスに対して、0.01%に等しい非細胞毒性濃度で、ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体の殺ウイルス活性を示した。
【0077】
実験パート(II)
1. 実験の目的
実験パート(I)で報告した、Vero E6細胞株におけるウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体(1:1)の細胞毒性アッセイ、およびVero E6細胞株におけるSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスに対する前記複合体の抗ウイルス活性アッセイを、D-MEM細胞培養培地中、濃度0.03%(濃度300μg/mlに相当)、および濃度0.05%(濃度500μg/mlに相当)のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体(1:1)を用いて、繰り返して行った。
【0078】
2. 細胞毒性アッセイ(MTTアッセイ)
濃度0.03%および0.05%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体(1:1)(本発明による包接複合体)の細胞毒性アッセイを、実験パート(I)のパラグラフ2.1.~2.3で報告した条件下で正確に実施した。
濃度0.03%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体(1:1)とともに8時間インキュベートした後のVero E6細胞株の細胞生存率は、83%であることが分かった。
濃度0.05%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体(1:1)とともに8時間インキュベートした後のVero E6細胞株の細胞生存率は、1回目の試験で68%、2回目の試験で69%であることが分かった(非細胞毒性濃度を定義するための最小値として確立された70%生存率閾値で安定した値)。
上記を考慮すると、濃度0.03%および濃度0.05%の両方のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体(本発明による包接複合体)は、8時間のインキュベーション後にVero E6細胞株に対して細胞毒性がないことが確かめられた。
【0079】
3. 抗ウイルス活性アッセイ
濃度0.03%および0.05%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体(1:1)(本発明による包接複合体)の抗ウイルス活性アッセイを、実験パート(I)のパラグラフ3.1~3.4に報告された条件下で正確に実施した。
濃度0.03%および0.05%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体を、MOI 10のシュードウイルスとともに1時間プレインキュベートし、その後、Vero E6細胞と8時間接触させた、抗ウイルス活性の試験により得た結果を、図5および6に報告する。
シュードウイルスをウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体とプレインキュベートしたサンプルの結果を、殺ウイルス複合体とプレインキュベートしなかったシュードウイルス(対照)により得た結果と比較した。データは、放出される発光の量(図5Aおよび図6A)および細胞単層へのシュードウイルスの侵入率(図5Bおよび図6B)の両方で報告する。
図5から分かるように、MOI 10のシュードウイルスを0.03%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体と接触させると、強く強調された対照と比べて発光が減少する(それぞれ2558対25178)(図5A)。これは、シュードウイルスの侵入が減少し、対照に比べてウイルスの細胞への侵入が89.8%阻害されたことを示している(図5B)。
図6から分かるように、MOI 10のシュードウイルスを0.05%のウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体と接触させると、強く強調された対照と比べて発光が減少する(それぞれ398対1515)(図6A)。これは、シュードウイルスの侵入が減少し、対照に比べてウイルスの細胞への侵入が73.7%阻害されたことを示している(図6B)。
結論として、示された実験は、ウスニン酸とβ-シクロデキストリンの複合体は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むシュードウイルスに対して、0.03%および0.05%に相当する非細胞毒性濃度で、殺ウイルス活性を示した。
【0080】
以下の表に報告する組成物は、特に、細胞生存率、特に鼻細胞のもの、鼻上皮の保護およびミトコンドリアバランス、ならびに、Covid-19感染に関与する最初の障壁である鼻上皮へのSARS-CoV-2ウイルスの侵入を防ぐ組成物の能力の決定を評価するために、出願人によって試験された。
【表2】
上記の表で報告した製剤はすべて良好な結果を示した。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
【国際調査報告】