(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】レーザスキャナ装置を構成する及び動作させるための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20240123BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240123BHJP
G01S 7/487 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G01S7/497
G02B26/10 A
G01S7/487
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540144
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 US2022013493
(87)【国際公開番号】W WO2022164743
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】庄司 武
(72)【発明者】
【氏名】シュライファー,フレッド
【テーマコード(参考)】
2H045
5J084
【Fターム(参考)】
2H045CA85
2H045CA97
5J084AA04
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA36
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA32
5J084EA04
5J084EA19
(57)【要約】
レーザスキャナ装置(100)の1以上のタイプは、レーザパルス(114)を放射し、デジタル化された検出信号を特徴的な信号パルスを表す相関テンプレートと相関させて、対応する反射パルスを検出することによって物体検出を行う。相関テンプレートと高い相関を示すデジタル化された検出信号の領域は、放射されたレーザパルス(114)の後方散乱によって引き起こされる反射パルスに対応する。較正システム(10)及び対応する較正方法(400)は、高分解能の相関テンプレートを生成することによって、このようなレーザスキャナ装置による検出動作を改善する。システム及び方法に関連するいくつかの利点の中には、較正システム(10)及びレーザスキャナ装置(100)がそれぞれの検出信号をデジタル化するために使用するデジタイザ(24)の基本サンプリングレートの増加を必要とせずに、高分解能の相関テンプレートを生成する能力がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定義されたタイプのレーザスキャナ装置(100)のための較正システム(10)によって実行される方法(400)であって、
デジタイザ(24)のサンプリングレートの分数である位相増分によって開始位相に対して増分的にオフセットされる複数のサンプリング位相において、各サンプリング位相に前記較正システム(10)のデジタイザ(24)を設定するステップ(402)と、
各サンプリング位相に対して、前記デジタイザ(24)を介してサンプルセットを取得するステップ(404,406)であって、前記サンプルセットは、前記較正システム(10)の光検出器(22)によって出力される光検出器信号(56)における信号パルスのデジタルサンプルを含み、前記デジタルサンプルは、サンプリングレートに従って間隔を空けられ、前記信号パルスは、前記光検出器(22)に衝突する反射パルスの衝突に対応し、前記反射パルスは、前記較正システム(10)のレーザ送信器(20)によって出力されたレーザパルス(14)によって照らされた物体によって後方散乱される、ステップ(404,406)と、
サンプルセットの併合バージョンを、前記位相増分に従って間隔を空けられたデジタルサンプルを有する基準サンプルセットとして生成するステップ(408)と、
前記基準サンプルセットを相関テンプレートとして記憶するステップ(410)であって、前記定義されたタイプのレーザスキャナ装置(100)は、前記レーザスキャナ装置(100)の検出範囲に対応する間隔にわたって、レーザパルス(114)を放射し、前記レーザスキャナ装置(100)の光検出器信号を前記相関テンプレートに相関させて対応する反射パルスを検出することによって、物体を検出するステップ(410)と、
を含む、方法(400)。
【請求項2】
前記較正システム(10)の光学的及び電子的特性は、前記定義されたタイプのレーザスキャナ装置(100)の対応する光学的及び電子的特性に一致する、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項3】
前記較正システム(10)は、前記レーザ送信器(20)を備えるレーザ送信器サブアセンブリ(12)と、前記デジタイザ(24)及び前記光検出器(22)を備える反射パルス受信器サブアセンブリ(16)とを内蔵し、これらのサブアセンブリは、前記定義されたタイプのレーザスキャナ装置(100)によって使用されるサブアセンブリ(112,116)と同様に構成されている、請求項1又は2に記載の方法(400)。
【請求項4】
各サンプリング位相に対して前記サンプルセットを取得するステップ(404,406)は、前記サンプリング位相で取得された複数のサンプルセットを平均化することによって前記サンプルセットを取得することを含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法(400)。
【請求項5】
各サンプリング位相に対して前記サンプルセットを取得するステップ(404,406)は、前記デジタイザ(24)を計時するために使用されるクロック信号の位相を制御することによって、各サンプリング位相でデジタル化を実行するように前記デジタイザ(24)を調整することを含む、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法(400)。
【請求項6】
前記複数のサンプリング位相は、前記デジタイザ(24)のサンプリング時間をN個のサンプリング位相に分割したものであり、前記相関テンプレートが前記サンプリング時間のN倍の時間分解能を有し、Nは1より大きい整数である、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法(400)。
【請求項7】
前記定義されたタイプの1以上のレーザスキャナ装置(100)に記憶するために、前記較正システム(10)のシグナリングインターフェースを介して前記相関テンプレートを出力することを更に含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法(400)。
【請求項8】
定義されたタイプのレーザスキャナ装置(100)のための相関テンプレートを生成するように動作する較正システム(10)であって、
レーザ送信器(20)と、
光検出器(22)と、
デジタイザ(24)と、
処理回路(68)と、を備え、
前記処理回路(68)は、
前記デジタイザ(24)のサンプリングレートの分数である位相増分によって開始位相に対して増分的にオフセットされる複数のサンプリング位相において、各サンプリング位相に前記デジタイザ(24)を設定し、
各サンプリング位相に対して、前記デジタイザ(24)を介してサンプルセットを取得し、前記サンプルセットは、前記光検出器によって出力される光検出器信号における信号パルスのデジタルサンプルを含み、前記デジタルサンプルは、サンプリングレートに従って間隔を空けられ、前記信号パルスは、前記光検出器(22)に衝突する反射パルスの衝突に対応し、前記反射パルスは、前記レーザ送信器(20)によって出力されたレーザパルスによって照らされた物体によって後方散乱され、
サンプルセットの併合バージョンを、前記位相増分に従って間隔を空けられたデジタルサンプルを有する基準サンプルセットとして生成し、
前記基準サンプルセットを前記相関テンプレートとして記憶する、
ように構成され、
前記定義されたタイプのレーザスキャナ装置(100)は、前記レーザスキャナ装置(100)の検出範囲に対応する間隔にわたって、レーザパルス(114)を放射し、前記レーザスキャナ装置(100)の光検出器信号を相関テンプレートと相関させて対応する反射パルスを検出することによって、物体を検出する、
較正システム(10)。
【請求項9】
前記較正システム(10)の光学的及び電子的特性は、前記定義されたタイプのレーザスキャナ装置(100)の対応する光学的及び電子的特性に一致する、請求項8に記載の較正システム(10)。
【請求項10】
前記レーザ送信器(20)を備えるレーザ送信器サブアセンブリ(12)と、前記デジタイザ(24)及び前記光検出器(22)を備える反射パルス受信器サブアセンブリ(16)とを内蔵し、これらのサブアセンブリ(12,16)は、前記定義されたタイプのレーザスキャナ装置(100)によって使用されるサブアセンブリ(112,116)と同様に構成されている、請求項8又は9に記載の較正システム(10)。
【請求項11】
前記処理回路(68)は、前記サンプリング位相で取得された複数のサンプルセットを平均化することによって、各サンプリング位相に対して前記サンプルセットを取得するように構成されている、請求項8~10のいずれか1つに記載の較正システム(10)。
【請求項12】
前記処理回路(68)は、前記デジタイザ(24)を計時するのに使用されるクロック信号の位相を制御することによって、各サンプリング位相でデジタル化を実行するように前記デジタイザ(24)を調整することにより、各サンプリング位相に対して前記サンプルセットを取得するように構成される、請求項8~11のいずれか1つに記載の較正システム(10)。
【請求項13】
前記複数のサンプリング位相は、前記デジタイザ(24)のサンプリング時間をN個のサンプリング位相に分割したものであり、前記相関テンプレートが前記サンプリング時間のN倍の時間分解能を有し、Nは1より大きい整数である、請求項8~12のいずれか1つに記載の較正システム(10)。
【請求項14】
前記処理回路(68)は、前記定義されたタイプの1以上のレーザスキャナ装置(100)に記憶するために、前記較正システム(10)のシグナリングインターフェース(72)を介して前記相関テンプレートを出力するように構成されている、請求項8~13のいずれか1つに記載の較正システム(10)。
【請求項15】
レーザスキャナ装置(100)によって実行される方法(1000)であって、
前記レーザスキャナ装置(100)からレーザパルス(114)を送信するステップ(1002)と、
前記レーザパルス(114)の送信を基準とする間隔にわたって光検出器信号をデジタル化し、当該デジタル化に使用されるデジタイザ(24)のサンプリングレートによって確立される第1時間分解能を有する一連のデジタルサンプルを取得するステップ(1004)と、
前記一連のデジタルサンプル又は検出されたピークに対応する前記一連のデジタルサンプルにおけるサブセットをアップサンプリングして、アップサンプリングファクタによって第1時間分解能よりも高い第2時間分解能を有する1以上のアップサンプリングされた一連のデジタルサンプルを取得するステップ(1006)と、
送信された前記レーザパルス(114)に対応する反射パルスを受信するレーザスキャナ装置(100)を代表する前記1以上のアップサンプリングされた一連のデジタルサンプルにおける信号パルスを検索するステップ(1008)であって、前記検索は、1以上のアップサンプリングされた一連のデジタルサンプルを、第2分解能でサンプリングされた公称反射パルス形状を表すサンプルの基準セットを含む相関テンプレートと相関させることに基づく、ステップ(1008)と、
を含む、方法(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レーザスキャナ装置を構成するための装置及び方法の様々な実施形態が、レーザスキャナ装置及びその方法の対応する実施形態とともに、本明細書に開示される。
【背景技術】
【0002】
典型的なレーザスキャナ装置(単に「スキャナ」)は、周囲の物理的環境にレーザパルスを放射し、周囲環境内の1以上の物体から後方散乱された1以上の「戻り」又は「反射」パルスを検出するものである。例として、スキャナは、水平面内の定義された角度範囲(例えば180度)を「スイープ」することができる。或いは、スキャナは、定義された水平及び垂直範囲を通してスイープし、各角度ステップで1以上のパルスを放射し、それに応じて後方散乱光を監視することができる。放射された各レーザパルスに関する戻り反射の監視は、飛行時間(ToF)の原理に従い、スキャナの最小及び最大検出距離に対応する間隔(すなわち、作業「検出」範囲)に制限される。
【0003】
例示的なスキャナは、レーザパルスを放射するように動作する送信器設備と、対応する後方散乱光を検出するように動作する受信器設備とを備える。例えば、スキャナは、光検出器に衝突する後方散乱光に応じて変化する光検出器信号を出力する光検出器を備え、スキャナによって受信された「戻り」レーザパルス、すなわち放射されたレーザパルスに対応する反射パルスは、光検出器信号における信号パルスとして現れる。
【0004】
前記設備によれば、スキャナの走査範囲内の物体の検出は、レーザパルスを放射し、光検出器信号を監視して、戻り反射に代表される信号パルスを検出することを含む。このような信号パルスの時間的オフセット(出力されたレーザパルスの送信時間に対する時間的位置)を決定することにより、スキャナは、飛行時間(ToF)の計算に従って、物体の距離を推定することができる。
【0005】
課題は、レーザパルスのToFを決定する際に伴う本質的に高い測定速度だけでなく、良好なノイズ耐性及び正確なパルス弁別の必要性からも生じる。ここで、「パルス弁別(discrimination)」は、「パルス検出」又は「パルス識別(identification)」とも呼ばれ、光検出器信号において戻り反射を表す信号パルスを正確に検出するスキャナの能力をいう。
【発明の概要】
【0006】
レーザスキャナ装置の1以上のタイプは、レーザパルスを放射し、デジタル化された検出信号を特徴的な信号パルスを表す相関テンプレートと相関させて、対応する反射パルスを検出することによって、物体検出を行う。相関テンプレートと高い相関を示すデジタル化された検出信号の領域は、放射されたレーザパルスの後方散乱によって引き起こされる反射パルスに対応する。較正システム及び対応する較正方法は、高分解能の相関テンプレートを生成することによって、このようなレーザスキャナ装置による検出動作を改善する。システム及び方法に関連するいくつかの利点の中には、それぞれの検出信号をデジタル化するために較正システム及びレーザスキャナ装置によって使用されるデジタイザの基本サンプリングレートの増加を必要とせずに、高分解能の相関テンプレートを生成する能力がある。
【0007】
定義されたタイプのレーザスキャナ装置のための較正システムによって実行される方法は、例示的な実施形態において、デジタイザのサンプリングレートの分数である位相増分によって開始位相に対して増分的にオフセットされる複数のサンプリング位相において、各サンプリング位相に較正システムのデジタイザを設定するステップを含む。各サンプリング位相に対して、本方法は、デジタイザを介してサンプルセットを取得するステップを含み、サンプルセットは、較正システムの光検出器によって出力される光検出器信号における信号パルスのデジタルサンプルを含む。デジタルサンプルは、サンプリングレートに従って間隔を空けられ、信号パルスは、光検出器に衝突する反射パルスの衝突に対応し、反射パルスは、較正システムのレーザ送信器によって出力されたレーザパルスによって照らされた物体によって後方散乱される。
【0008】
本方法は更に、較正システムが、サンプルセットの併合バージョンを、位相増分に従って間隔を空けられたデジタルサンプルを有する基準サンプルセットとして生成するステップと、基準サンプルセットを相関テンプレートとして記憶するステップとを含む。定義されたタイプのレーザスキャナ装置は、レーザスキャナ装置の検出範囲に対応する間隔にわたって、レーザパルスを放射し、レーザスキャナ装置の光検出器信号を相関テンプレートと相関させて、対応する反射パルスを検出することによって、物体を検出する。相関テンプレートの分解能が、関係するデジタイザのサンプリングレートよりも高くなることで、レーザスキャナ装置は、光検出器信号における反射パルスを検出するためのより忠実な基準で動作し、較正システムによって使用される同じ基本サンプリングレートを有するデジタイザで動作することができるようになる。
【0009】
別の例示的な実施形態において、較正システムは、定義されたタイプのレーザスキャナ装置のための相関テンプレートを生成するように動作する。較正システムは、レーザ送信器と、光検出器と、デジタイザと、処理回路とを備える。処理回路は、デジタイザのサンプリングレートの分数である位相増分によって開始位相に対して増分的にオフセットされる複数のサンプリング位相において、各サンプリング位相にデジタイザを設定するように構成される。すなわち、複数のサンプリング位相は、サンプリングレートに関連する時間間隔を一様に細分化する。
【0010】
各サンプリング位相に対して、処理回路は、デジタイザを介してサンプルセットを取得するように構成され、サンプルセットは、光検出器によって出力される光検出器信号における信号パルスのデジタルサンプルを含む。デジタルサンプルは、サンプリングレートに従って間隔を空けられ、信号パルスは、光検出器に衝突する反射パルスの衝突に対応し、反射パルスは、レーザ送信器によって出力されたレーザパルスによって照らされた物体によって後方散乱される。物体は、例えば、相関テンプレートの生成のために、較正システムに対して一定の位置及び向きに設備される、特定のサイズ及び反射率のテスト物体である。
【0011】
較正システムの処理回路は、更に、サンプルセットの併合バージョンを、位相増分に従って間隔を空けられたデジタルサンプルを有する基準サンプルセットとして生成し、当該基準サンプルセットを相関テンプレートとして記憶するように構成される。これらの動作構成により、処理回路は、検出信号-すなわち較正システムの光検出器によって生成される光検出器信号をデジタル化するために使用されるデジタイザのサンプリングレートによって提供されるものよりも、高い時間分解能で相関テンプレートを生成するように動作する。これに対応して、定義されたタイプのレーザスキャナ装置は、レーザスキャナ装置の検出範囲に対応する間隔にわたって、レーザパルスを放射し、レーザスキャナ装置の光検出器信号を相関テンプレートと相関させて、対応する反射パルスを検出することによって、物体を検出する。
【0012】
レーザスキャナ装置によって実行される方法の一実施形態において、本方法は、レーザスキャナ装置からレーザパルスを送信するステップと、レーザパルスの送信を基準とする間隔にわたって光検出器信号をデジタル化し、当該デジタル化に使用されるデジタイザのサンプリングレートによって確立される第1時間分解能を有する一連のデジタルサンプルを取得するステップとを含む。更に、本方法は、レーザスキャナ装置が、一連のデジタルサンプル又は検出されたピークに対応する一連のデジタルサンプルにおけるサブセットをアップサンプリングして、アップサンプリングファクタ(factor)によって第1時間分解能よりも高い第2時間分解能を有する1以上のアップサンプリングされた一連のデジタルサンプルを取得するステップを含む。
【0013】
更に、例示的な方法は、レーザスキャナ装置が、送信されたレーザパルスに対応する反射パルスを受信するレーザスキャナ装置を代表する1以上のアップサンプリングされた一連のデジタルサンプルの信号パルスを検索するステップを含む。ここで、レーザスキャナ装置は、1以上のアップサンプリングされた一連のデジタルサンプルを、第2分解能でサンプリングされた公称反射パルス形状を表すサンプルの基準セットを含む相関テンプレートと相関させることによって、検索を実行する。
【0014】
もちろん、本発明は、上記特徴及び利点に限定されるものではない。当業者であれば、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を見ることによって、更なる特徴及び利点を認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る較正システムの一実施例のブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る較正システムの例示的な詳細ブロック図である。
【
図3】光検出器信号の一例のプロットであって、光検出器への反射レーザパルスの衝突に対応するパルス波形を示す図である。
【
図4】較正システムによって実行される方法の一実施例の論理フロー図である。
【
図5】
図4に示される方法に対応する例示的な詳細論理フロー図である。
【
図6】パルス波形をサンプリングするために使用される例示的なサンプリング位相のプロットを示す図である。
【
図7】異なるサンプリング位相で取られたデジタルサンプルの複数のセットを併合して、デジタルサンプルのより高い分解能のセットを形成する一実施例を示すブロック図である。
【
図8】較正システムによって実行される別の方法の1つの実施例の論理フロー図である。
【
図9】較正システムによって提供される較正データに従って動作するタイプのレーザスキャナ装置の一実施例のブロック図である。
【
図10】レーザスキャナ装置によって実行される方法の一実施例の論理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、「構成システム10」又は単に「システム10」とも呼ばれる例示的な較正システム10を示している。非限定的な例として、システム10は、定義されたタイプのレーザスキャナ装置によって使用するための特定の構成情報を生成して出力する。システム10は、例えば、製造環境で使用され、許可されたユーザが、例えばレーザスキャナ装置にロードするために構成情報を生成して保存することを可能にする。
【0017】
保存された構成情報は、例えば、定義されたタイプのレーザスキャナ装置によるパルス検出のための基準となる「相関テンプレート」を構成する。特に、定義されたタイプのレーザスキャナ装置は、レーザパルスを放射し、光検出器を介して対応する戻りパルスを検出することによって、その周囲の物理的環境における物体を検出する。相関テンプレートは、光検出器信号と相関するために、特徴的なパルス形状を有する高分解能パルスを定義するサンプルポイントを備える。このように、相関テンプレートは、光検出器信号内に現れる戻りパルスを検出して認識する際の信頼性及び精度を向上させる。
【0018】
上記文脈を念頭に置いて、システム10は、レーザビーム14(例えば、レーザパルス)をその周囲の物理的環境に送信するように構成されたレーザ送信器サブアセンブリ12を備える。放射されたレーザパルスが、十分な反射率及びサイズの物体に当たり、検出可能な距離限界内にあると仮定すると、光受信器サブアセンブリ16が後方散乱光の一部を受信する。受信部分は、後方散乱光18と表記される。
【0019】
例示的なレーザ送信器サブアセンブリ12は、レーザパルスを放射するように動作可能なレーザ送信器モジュール20を備える。例示的な光受信器サブアセンブリ16は、光検出器22と、デジタイザ24とを備える。光検出器22によって出力される光検出器信号は、光検出器22の活性表面上に向けられた後方散乱光18(又はその少なくとも一部)の関数として変化する。システム10は、デジタイザ24を介して光検出器信号をデジタル化することによって、レーザパルスの送信に関連する間隔にわたって光検出器信号を「捕捉」する能力を有する。間隔の長さ又は持続時間は、少なくとも、定義された最大物体検出距離に対応する(送信時間に対する)時間まで延びる。上述したように、光検出器信号は、光受信器サブアセンブリ16への反射パルスの受信に応答して信号パルスを明示又は表示する。
【0020】
1以上の実施例において、システム10は、更に、インターフェースサブアセンブリ26及び較正制御サブアセンブリ28を備える。少なくとも1つのそのような実施例において、較正制御サブアセンブリ28は、パーソナルコンピュータ(PC)ベースのテストシステムなどのコンピュータシステム又はテスト装置を備え、人間のオペレータがコマンド又は他の形式の入力を提供して較正動作を開始可能にする1以上のプログラムを実行する。そのような実施例において、インターフェースサブアセンブリ26は、較正制御サブアセンブリ28とシステム10のレーザスキャナ部30との間に設備される。一例として、較正制御サブアセンブリ28は、シリアル又はパラレルポート、USBポートなどの1以上のインターフェースポート及び関連回路を備え、レーザスキャナ部30は、適合ポート/回路を備える。
【0021】
一例として、システム10のレーザスキャナ部30は、較正テンプレートが生成されるタイプのレーザスキャナ装置の作業例である。作業例は、任意の所与のレーザスキャナ装置をシステム10のレーザスキャナ部30として使用できるように、取り外し可能に接続されてもよいし、専用ユニットであってもよいし、必ずしも完全に組み立てられた部分でなくてもよい。この設備の有利な側面は、システム10のレーザスキャナ部30の光電子性能及び挙動が、実際に、システム10がそのような装置によって使用される同じ光電子及び波形処理サブシステムを組み込んでいる場合に、定義されたタイプのレーザスキャナ装置の一般的特性と一致することが保証される点である。
【0022】
図2は、光受信器サブアセンブリ16内に全体的又は部分的に実装された光受信経路40の例示的な詳細を示している。例示的な構成は、光受信器サブアセンブリ16で受信された後方散乱光18を投影ビーム44として、開口部46に向かって投影するように構成された走査ミラー42を備える。投影ビーム44は、開口部46を完全に又は部分的に通過する。これに対応して、開口部46によって通過した後方散乱光48は、レンズ50に衝突し、集束光52として光検出器22に向かって集束される。少なくとも1つの実施例において、光検出器22は、
図2において「APD」と表記されるアバランシェフォトダイオードである。
【0023】
光検出器22から出力される光検出器信号56は、その活性表面領域に衝突する後方散乱光に応答する電気信号である。少なくとも1つの実施例において、光検出器信号56は、光検出器22の活性表面で受信された光パワーに比例して振幅が増加するアナログ電気信号である。後方散乱光18としてシステム10で受信される送信されたレーザビーム14の戻り反射は、光検出器22に衝突するピーク光パワーに対応するピーク振幅を有する信号パルスとして光検出器信号56に明示される。1つの送信されたレーザビーム14が複数の反射を生じ、光検出器信号56は、スプリアス運動及び他のノイズとともに、関心区間にわたって複数の信号パルスを示し得る。
【0024】
フィルタ回路60は、バッファ回路64に一時的に記憶するために、関心区間にわたる一連のデジタルサンプルを出力するアナログ/デジタル変換器(ADC)回路62に先立って、光検出器信号56のいくつかのノイズ除去及び帯域幅制限を行う。波形処理回路66は、バッファ回路64に保持された一連のデジタルサンプルを、例えば、ピーク検出及び対応するパルス識別のために評価する。集合的に、このような回路は、フィルタ回路60によって実行されるフィルタリング又はコンディショニングの後に、光検出器信号56をデジタル化することによって一連のデジタルサンプルを捕捉するように動作するデジタイザ24の一例として成り立つ。
【0025】
システム処理回路68は、レーザ送信器サブアセンブリ12の直接的又は間接的な制御を提供するとともに、ADC回路62の直接的又は間接的な「位相制御」を提供する。一例として、システム処理回路68は、デジタイザ24のサンプリングレートの分数である位相増分によって開始位相に対して増分的にオフセットされる複数のサンプリング位相において、各サンプリング位相にデジタイザ24を設定するように構成される。
【0026】
一例において、システム処理回路68によってデジタイザ24に提供される位相制御は、ADC回路62によってサンプリングを制御するクロック信号の位相を制御することを含む。従って、ADC回路62は、第1レーザパルスの送信に関して光検出器信号56をデジタル化するために、第1位相又は開始位相のサンプリングクロックで計時され、その後、第2レーザパルスの送信に関して光検出器信号56をデジタル化するために、第2位相のサンプリングクロックで計時される。一般的に、同じターゲット物体及びターゲットの位置/方向、及び距離は、全ての位相にわたってデジタルサンプルを取得するために使用され、光学セットアップは、一般的に、送信されたレーザパルスごとに1つの反射パルスを生成するように設備される。このような設備により、システム10は、定義されたサンプリング位相の各々において、光検出器信号56内の実質的に同一の信号パルスをデジタル化することができる。
【0027】
すなわち、各サンプリング位相に対して、システム処理回路68は、デジタイザ24を介してサンプルセットを得るように構成される。サンプルセットは、光検出器22によって出力されるような光検出器信号56における信号パルスのデジタルサンプルを含む。デジタルサンプルは、デジタイザ24のサンプリングレートに従って間隔を空けられており、信号パルスは、光検出器22に入射する反射パルスの入射に対応する。すなわち、反射パルスは、システム10のレーザ送信器(すなわちレーザ送信器モジュール20)によって出力されたレーザパルスによって照らされた物体によって後方散乱されたものである。
【0028】
システム処理回路68は、サンプルセットの併合バージョンを、位相増分に従って間隔を空けたデジタルサンプルを有する基準サンプルセットとして生成し、当該基準サンプルセットを相関テンプレートとして記憶するように更に構成されている。有利には、較正システム10に関連する定義されたタイプのレーザスキャナ装置は、レーザスキャナ装置の光検出器信号を相関テンプレートと相関させることに基づいて、レーザスキャナ装置の検出範囲に対応する間隔にわたって、レーザパルスを放射し、対応する反射パルスを検出することによって、物体を検出する。
【0029】
このように、システム10の光学的及び電子的特性は、定義されたタイプのレーザスキャナ装置の対応する光学的及び電子的特性に一致する。例えば、システム10は、レーザ送信器を備えるレーザ送信器サブアセンブリ12と、デジタイザ24及び光検出器22を備える反射パルス受信器サブアセンブリ(すなわち光受信器サブアセンブリ16)とを内蔵し、これらは、定義されたタイプのレーザスキャナ装置によって用いられるサブアセンブリと同様に構成されている。すなわち、レーザ送信器サブアセンブリ12及び光受信器アセンブリ16は、相関テンプレートが定義されたタイプのレーザスキャナ装置による使用に適切であるように、定義されたタイプのレーザスキャナ装置のものと同様の光電子性能及び動作を有する。
【0030】
各サンプリング位相のサンプルセットを取得するステップは、例えば、システム処理回路68が、サンプリング位相で得られた複数のサンプルセットを平均化するように構成されることに基づいている。サンプリング位相が位相1、位相2、位相3、...、位相nである例を考える。システム10は、複数のレーザパルス(レーザビームパルス)を放射して、各サンプリング位相に対して複数の対応するサンプルセットを取得し、そのサンプリング位相に対して得られた対応するサンプルセットを一緒に平均化することによって各サンプリング位相の「サンプルセット」を形成する。
【0031】
更に例示的な詳細として、各サンプリング位相のサンプルセットを取得するステップは、システム処理回路68が、1以上の実施形態において、デジタイザ24の計時に使用されるクロック信号の位相を制御して、各サンプリング位相で光検出器信号56のデジタル化を実行するようにデジタイザ24を制御するよう構成されることに基づいている。言い換えれば、デジタイザ24は、定義されたサンプリングレート(例えば、それに適用される又はその中で生成されるクロック信号のクロックレート)を有し、システム処理回路68は、サンプリングクロックの位相を直接的又は間接的に制御し、デジタイザ24に異なる位相でサンプルを取得させる。クロックは、システム処理回路68の内部にあってもよいし、システム処理回路68及びデジタイザ24の外部の専用クロックであってもよいし、ADC回路62の内部にあってもよい。その場合、システム処理回路68は、ADC回路62に制御信号を印加することによって、クロック位相を制御する。
【0032】
少なくとも1つの実施形態において、システム処理回路68は、デジタイザ24のサンプリング時間をN個のサンプリング位相に分割し、相関テンプレートがサンプリング時間のN倍の時間分解能を有するように構成され、Nは1より大きい整数である。サンプルクロック周波数が100MHzで、N=16であるものと仮定する。この場合、サンプリング時間/レートは、10ナノ秒、16個のサンプリング位相で、時間分解能が625ピコ秒まで増加する。言い換えれば、「位相増分」は、デジタイザ24の定義されたサンプリングレートで取られた2つのサンプル点間のサンプリング間隔の1/16である。もちろん、他の位相増分が使用されてもよく、より細かい位相増分は、より高い分解能をもたらす。
【0033】
その結果、相関テンプレートは、10ナノ秒の間隔でデジタルサンプルを有するのではなく、625ピコ秒の間隔でデジタルサンプルを有し、そのような各デジタルサンプルは、複数のサンプリング位相によるオーバーサンプリングによって達成される波形忠実度を提供しない補間又は他の「合成」技術とは異なり、光検出器信号56における信号パルスの1以上の実際にサンプリングした値に基づいている。
【0034】
1以上の実施形態において、システム処理回路68は、定義されたタイプの1以上のレーザスキャナ装置に記憶するために、システム10のシグナリングインターフェースを介して相関テンプレートを出力するように構成されている。例えば、システム処理回路68は、相関テンプレートを少なくとも一時的に構築及び保持するための、メモリ又は他のストレージ70を含むか又はアクセス権を有し、「シグナリングインターフェース」とも呼ばれる入力/出力(I/O)回路72を介して相関テンプレートを出力するよう構成されている。I/O回路72は、製造コンテキストにおける複数のレーザスキャナ装置へのその後の転送のために、外部メモリ又はファイルシステムストレージとのインターフェースとして構成されてもよく、あるいは、定義されたタイプのレーザスキャナ装置と直接通信するための通信プロトコル(定義されたシリアルリンクプロトコル)に従って構成されてもよい。
【0035】
システム処理回路68による動作の少なくともいくつかの態様は、人間のオペレータ(又は外部の制御システム)によって制御又は開始されてもよく、1以上の実施形態のシステム10は、入力/出力制御のための、インターフェース回路74を備える。この点で、システム処理回路68は、システム10のレーザスキャナ部30に含まれてもよい。例えば、一実施形態において、レーザスキャナ部30は、較正テンプレートを使用するタイプの作業用レーザスキャナ装置を備え、システム処理回路68は、レーザスキャナ装置内に実装されたデジタル処理回路上で特別な「較正」プログラムを実行することによって実装される処理回路である。他の実施形態において、システム処理回路68の少なくとも一部は、較正制御サブアセンブリ28に存在する(例えば、較正処理の少なくとも一部は、較正制御アセンブリを実装するために用いられるPC又は他の処理システムにおいて実行されてよい)。
【0036】
図3は、光検出器22の活性表面への反射パルスの衝突に応答して光検出器信号56に明示されるような、例示的な信号パルスを示している。ここで、時間t
0は反射パルスをもたらしたレーザパルスの送信時間を意味し、時間t
pulseは信号パルスのピークに相当する。一般的な命題として、定義されたテストターゲットの位置を固定し、レーザ送信器サブアセンブリ12によって出力される連続したレーザパルスで繰り返し照射することにより、同じパルス形状、振幅、及び時間t
pulseを安定して再現することができる。すなわち、相関テンプレートの作成のための、複数位相デジタル化のために、実質的に同一の信号パルスを得ることができる。
【0037】
図4は、例えば、
図1に示されたシステム10などの較正システムによる動作の方法400の一実施形態を示している。方法400を構成する動作は、他の動作の一部として、又は他の動作と組み合わせて実行されてもよく、特に断らない限り、示唆された順序以外の順序で実行されてもよい。更に、動作の1以上がループ又は反復されてもよい。
【0038】
方法400は、定義されたタイプのレーザスキャナ装置の較正システムによって実行される。図示された実施形態において、方法400は、デジタイザのサンプリングレートの分数である位相増分によって開始位相に対して増分的にオフセットされる複数のサンプリング位相において、各サンプリング位相に較正システムのデジタイザを設定するステップ(ブロック402)を含む。更に、方法400は、各サンプリング位相に対してデジタイザを介してサンプルセットを取得するステップ(ブロック404,406)を含む。サンプルセットは、較正システムの光検出器によって出力された光検出器信号における信号パルスのデジタルサンプルを含む。デジタルサンプルは、サンプリングレートに従って間隔を空けられている。信号パルスは、光検出器に衝突する反射パルスに対応する。反射パルスは、較正システムのレーザ送信器によって出力されたレーザパルスによって照らされた物体によって後方散乱する。
【0039】
更に、方法400は、サンプルセットの併合バージョンを、位相増分に従って間隔を空けられたデジタルサンプルを有する基準サンプルセットとして生成するステップ(ブロック408)と、相関テンプレートとして基準サンプルセットを少なくとも一時的に記憶するステップ(ブロック410)とを含む。前述したように、「定義されたタイプ」のレーザスキャナ装置は、当該レーザスキャナ装置の検出範囲に対応する間隔にわたって、レーザパルスを放射し、レーザスキャナ装置の光検出器信号を相関テンプレートと相関させることにより、対応する反射パルスを検出することによって、物体を検出するものである。
【0040】
方法400を実施するために使用される較正システムの光学的及び電子的特性は、定義されたタイプのレーザスキャナ装置の対応する光学的及び電子的特性に一致する。例えば、較正システムは、レーザ送信器を備えるレーザ送信器サブアセンブリと、デジタイザ及び光検出器を備える反射パルス受信器サブアセンブリとを内蔵し、これらのサブアセンブリは、定義されたタイプのレーザスキャナ装置によって使用されるサブアセンブリと同様に構成されている。
【0041】
各サンプリング位相のサンプルセットを得るステップは、方法400の1以上の実施形態において、サンプリング位相で得られた複数のサンプルセットを平均化することによってサンプルセットを得るステップ(ブロック404の動作)を含む。この方法で平均化することによって、例えば光検出器22の「暗電流」によって引き起こされるランダムノイズが補償される。
【0042】
更に詳細には、各サンプリング位相のサンプルセットを得るステップは、例えば、デジタイザを計時するために使用されるクロック信号の位相を制御することによって、各サンプリング位相でデジタル化を実行するようにデジタイザを調整することを含む。
【0043】
例えば、方法400は、デジタイザのサンプリング時間をN個(Nは1より大きい整数)のサンプリング位相に分割し、相関テンプレートがサンプリング時間のN倍の時間分解能を有することを含む。
【0044】
少なくとも1つの実施形態において、方法400は、定義されたタイプの1以上のレーザスキャナ装置に記憶するために、較正システムのシグナリングインターフェースを介して相関テンプレートを出力することを更に含む。例えば、較正システムは、そのメモリ又はストレージから、シグナリングインターフェースを介して較正テンプレートの記憶されたコピーを転送する。
【0045】
図5は、方法400のブロック(404の動作)を実施するための詳細なステップの一例を示し、ステップは、「現在のサンプリング位相」として、各サンプリング位相に対して繰り返されるという理解である。
【0046】
一連の詳細なステップは、取得インデックスiをi=0に設定するステップ(ブロック420)、サンプルセットを取得して保存するステップ(ブロック422)、iをインクリメント(例えばi=i+1)するステップ(ブロック424)、iが最大インデックスカウントよりも小さい場合、ブロック422にループバックするステップ(ブロック426からNO)を含む。従って、0から(MAX-1)までのiの各値について、較正システムは、現在のサンプリング位相に対して別のサンプルセットを取得し、それによって、同じサンプリング位相で採取された複数のサンプルセットを全て取得する。
【0047】
複数のサンプルセットが取得されると、処理は、ブロック428へ移行する(ブロック426からYES)。較正システムは、複数のサンプルセットを平均化し、現在のサンプリング位相に対応する最終的な又は全体的なサンプルセットを形成する。
【0048】
図6は、本明細書で意図される複数位相サンプリングに基づく高分解能基準サンプルセット(相関テンプレート)の構築を示す図である。N個のサンプリング位相の各々に対して、関心(interest)のある信号パルスを表す光検出器信号56からデジタルサンプルを含む一連のデジタルサンプルが取得される。再び、テスト物体が同じであり、その距離及び向きが複数のレーザパルスの放射にわたって固定されたままであると想定すると、各サンプリング位相でサンプリングされた信号パルスは、他の全てのサンプリング位相でサンプリングされた信号パルスと実質的に同一であり、これは、位相毎のサンプルセットをコヒーレント結合して高分解能基準サンプルセットを形成するために提供される。
【0049】
図7は、16個のサンプリング位相を使用する一実施形態における基準サンプルセットを形成するための「アセンブリ」処理を示す図である。用語F
SAMPは、サンプリングクロック周波数を表し、用語N_adj_maxは、サンプリングクロックによって定義される基本サンプリング間隔を細分化するために使用される16個のサンプリング位相を段階的に調整するために使用される増分位相調整を表す。
【0050】
単なる設備例として想定すると、16個のサンプリング位相の各々で取得されるサンプルセットは、この例の目的のために固定定数であるFSAMPによって定義されるサンプリング間隔に従って間隔を空けられた7つのサンプルを含む。従って、第1又は開始サンプリング位相(ゼロ位相オフセットであってもよい)において、前記処理において、7つのデジタルサンプル値d_0_1,d_0_2,d_0_3,...,d_0_7が生成される。ここで「d」はデジタルサンプルを示し、「0」はサンプリング位相(ここではゼロ番目の位相)を示し、末尾の数字は7つのサンプルのセット内の連続したサンプル番号を示している。
【0051】
このラベリング方式によれば、第2サンプリング位相で採取された7つのサンプルは、d_1_1,d_1_2,d_1_3,...,d_1_7であり、第3サンプリング位相で採取された7つのサンプルは、d_2_1,d_2_2,d_2_3,...、d_2_7であるというように、16番目のサンプリング位相で採取された7つのサンプルがd_15_1,d_15_2,d_15_3,...,d_15_7であることで終了する。基準サンプルセットは、図面の最も下の部分に現れ、「統合サンプルセット」と呼ばれ、高分解能相関テンプレートとして基準サンプルセットを形成するために使用される位相毎のサンプルセットのインターリーブが描かれている。
【0052】
図8は、7つのステップ又は動作のシーケンスを含む論理フロー図として、
図7のデータアセンブリ動作を示す図である。第1ステップは、構成又は決定ステップ、すなわち、相関テンプレートの所望の分解能、及び相関テンプレートを使用することを意図しているレーザスキャナ装置のライブ動作で使用するための分解能プラクティスなどの実用的な考慮事項によって運転される、使用するサンプリング位相の数を決定することを表す。
【0053】
ステップ2~6は、各サンプリング位相に対して実行される処理ステップを表している。これらのステップは、各サンプリング位相に対して実行され、N_adj_maxは、使用されるサンプリング位相の全体の数を表す。ステップ7は、全てのサンプリング位相に対して取得されたサンプルセットから基準サンプルセット(相関テンプレート)を取得するために使用されるデータインタリーブを表す。
【0054】
図9は、「ライブ」物体検出動作中における、本明細書に記載の相関テンプレートを使用するタイプの例示的なレーザスキャナ装置100を示す図である。レーザスキャナ装置100(「装置100」)は、較正システム10のレーザ送信器サブアセンブリ12と同じである、或いは、少なくとも較正システム10によって放射されるレーザパルス14に関して同等の特性を有するレーザパルス114を放射する、光送信器設備112を備える。
【0055】
装置100は、レーザパルス114の放射に対応して後方散乱光118として装置100によって受け取られた反射パルスを検出するように構成された光受信器設備116を更に備える。光受信器設備116は、少なくとも反射パルスの検出、サンプリングなどに関する光電子特性の点で、較正システム10の光受信器サブアセンブリ16と同じであってよい。
【0056】
例示的な設備における装置100は、ライブ動作中の検出性能の検証のための内部試験/較正設備120、処理回路122、I/O回路124、通信インターフェース回路126、及び電源128を備える。これらの少なくともいくつかは、較正システム10の一部として統合されたときに、装置100が異なるソフトウェアを実行するか又は特別なモードで実行することがあるが、較正システム10の少なくともいくつかの実施形態においては、較正システム10の一部として再利用されるか、使用されてもよい。
【0057】
動作の一例において、装置100は、例えばその筐体内の光学窓130を介してレーザパルス114を放射し、後方散乱光118に応答する光受信器設備116内で生成された光検出器信号を監視する。
図2を一時的に参照すると、装置100は、デジタイザ24と同一又は実質的に同様のデジタイザを備え、これは、波形処理のために光検出器信号のデジタルサンプルを取得することを意味する。デジタル化された光検出器信号における反射パルスの代表である信号パルスを検出するために、装置100は、デジタル化された光検出器信号のアップサンプルバージョンを、本明細書に記載の種類の相関テンプレートに相関させる。
【0058】
アップサンプリングは、レーザパルス送信の時間を基準として、関心のある時間間隔の光検出器信号から取得される一連のデジタルサンプルの全体に適用されてもよい。また、装置100は、信号ピークを示すデジタル化された光検出器信号のそれらの部分に対して、局所的にアップサンプリングを実行する。
【0059】
図10は、装置100のようなレーザスキャナ装置の動作の方法1000を示す図である。この方法は、レーザパルスを送信するステップ(ブロック1002)と、レーザパルスの送信を基準とする間隔にわたって光検出器信号をデジタル化し、光検出器信号をデジタル化するのに用いられるデジタイザのサンプリングレートによって確立される第1時間分解能を有する一連のデジタルサンプルを取得するステップ(ブロック1004)とを含む。
【0060】
方法1000は、検出されたピークに対応する一連のデジタルサンプル又は一連のデジタルサンプルにおけるサブセットをアップサンプリングして、アップサンプリングファクタによって第1時間分解能よりも高い第2時間分解能を有する1以上のアップサンプリングされた一連のデジタルサンプルを取得するステップ(ブロック1006)を更に含む。更に、方法1000は、送信されたレーザパルスに対応する反射パルスを受信するレーザスキャナ装置を代表する1以上のアップサンプリングされた一連のデジタルサンプルにおける信号パルスを検索するステップ(ブロック1008)を含む。具体的には、検索は、1以上のアップサンプリングされた一連のデジタルサンプルを、第2分解能でサンプリングされた公称反射パルス形状を表すサンプルの基準セットを含む相関テンプレートと相関させることに基づく。
【0061】
装置100の少なくとも1つの実施形態において、処理回路122は、テンプレート相関処理を含む、装置100について説明した波形処理の一部又は全部を実行する。これに対応して、処理回路122は、固定回路、プログラム的に構成された回路、又は、固定回路とプログラム的に構成された回路との組合せから構成される。処理回路122及び本明細書に記載される任意の他の「処理回路」の例は、1以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLDs)、特定用途向け集積回路(ASIC)、システムオンチップ(SoC)モジュール、デジタル信号プロセッサ(DSPs)、マイクロプロセッサ、又はマイクロコントローラの任意のもの、又は任意の組合せを含む。
【0062】
例えば、処理回路122は、コンピュータプログラム命令を記憶する1以上のタイプのコンピュータ可読媒体を含むか又はそれに付随する少なくとも1つのマイクロプロセッサを備える。マイクロプロセッサによる実行は、本明細書に記載された装置の動作の少なくとも一部を実施するように、例えば、レーザパルス114の放射と、後方散乱光118としてレーザスキャナ装置100に戻される対応する反射パルスの検出とを制御及び/又は監視するように、特に適合されている。
【0063】
注目すべきは、開示された発明の修正及び他の実施形態が、前述の説明及び関連する図面に示された教示の利益を有する当業者に思い浮かぶことである。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正及び他の実施形態が本開示の範囲内に含まれることが意図されていることが理解されるべきである。本明細書において特定の用語が使用されることがあるが、それらは一般的且つ説明的な意味でのみ使用され、限定を目的とするものではない。
【国際調査報告】