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特表2024-504043ホノキオールの結晶形および非晶質形、ならびにそれらの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ホノキオールの結晶形および非晶質形、ならびにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 39/21 20060101AFI20240123BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240123BHJP
   C07C 37/84 20060101ALI20240123BHJP
   C07C 37/82 20060101ALI20240123BHJP
   C07C 37/70 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C07C39/21 CSP
A61K31/05
A61P39/06
A61P31/04
A61P25/24
A61P25/22
A61P7/02
A61P35/00
A61P35/04
C07C37/84
C07C37/82
C07C37/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540813
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2021072853
(87)【国際公開番号】W WO2022141684
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011620565.1
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523250348
【氏名又は名称】成都金瑞基業生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】叶昊宇
(72)【発明者】
【氏名】朱天民
(72)【発明者】
【氏名】邱能
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206CA17
4C206KA01
4C206KA16
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA02
4C206NA03
4C206ZA02
4C206ZA12
4C206ZA54
4C206ZB26
4C206ZB35
4C206ZC21
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB28
4H006AD15
4H006AD17
4H006BB11
(57)【要約】
ホノキオールの結晶形A、結晶形B、結晶形Cおよび非晶質形、ならびにそれらの製造方法が提供される。前記製造方法は、ホノキオールをn-ヘプタンに溶解し、室温で一晩静置し(分離された結晶がホノキオールの結晶形Aである);ホノキオールの結晶形Aを加熱し、次いで室温に冷却し(得られた固体がホノキオールの結晶形Bである);ホノキオールの結晶形Aを溶融状態に加熱し、次いで溶融状態の結晶形を急冷温度に置き(分離された結晶がホノキオールの結晶形Cである);およびホノキオールの結晶形AにDMSO/HO系貧溶媒を添加することによって油状物(ホノキオールの非晶質形である)を得る、ことを含む。前記ホノキオールの結晶形A、結晶形B、結晶形Cは良好な溶解性、良好な安定性、低い吸湿性、長期保存性、良好な再現性を有し、薬剤開発に適している。前記ホノキオールの非晶質形は、良好な溶解性を有し、薬物製剤の開発に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホノキオール結晶形AのX線粉末回折パターンが、Cu-Kα放射線下で、6.79°±0.2°、9.10°±0.2°、13.97°±0.2°、14.97°±0.2°および17.54°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む、ホノキオール結晶形A。
【請求項2】
前記ホノキオール結晶形AのX線粉末回折パターンが、Cu-Kα放射線下で、6.79°±0.2°、9.10°±0.2°、13.97°±0.2°、14.97°±0.2°、17.54°±0.2°、20.61°±0.2°、22.08°±0.2°および24.01°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む、請求項1に記載のホノキオール結晶形A。
【請求項3】
以下を含む、請求項1または2に記載のホノキオール結晶形Aの製造方法:
方法I:再結晶によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを78℃~85℃で有機溶媒に溶解してホノキオール溶液を得、当該ホノキオール溶液を別の容器に急速に注ぎ、室温で一晩静置し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、n-ヘプタン、石油エーテル、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、DCM、DMSO、NMP、トリクロロメタン、メタノール/水、またはエタノール/水である;
方法II:気固浸透によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、次いで、別の容器に有機溶媒を加え、ホノキオールを含む開封容器を、有機溶媒を含む前記容器に入れ、密封して室温で静置し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルtert-ブチルエーテル、トリクロロメタン、N-メチルピロリドン、エタノールまたはアセトニトリルである;
方法III:気液浸透によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、溶媒に溶解し、ろ過して透明なホノキオール溶液を得、別の容器に貧溶媒を加え、透明なホノキオール溶液を含む開封容器を、貧溶媒を含む前記容器に入れ、密封して室温で静置し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記溶媒は、エタノール、テトラヒドロフラン、トリクロロメタン、酢酸エチルまたはイソプロパノールであり、かつ、前記貧溶媒は、n-ヘキサンまたは水である;
方法IV:室温での懸濁撹拌によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、有機溶媒を加えて懸濁液を得、得られた懸濁液を室温での磁気撹拌に供し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、メタノール/水、アセトニトリル/水、アセトン/水、またはジクロロメタン/n-ヘキサンである;
方法V:40~60℃での懸濁撹拌によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、有機溶媒を加えて懸濁液を得、得られた懸濁液を40~60℃での磁気撹拌に供し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、n-ヘプタン、Tween/n-ヘプタン、トリクロロメタン/n-ヘプタン、またはイソプロパノール/水である;
方法VI:温度サイクルでの撹拌によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、有機溶媒を加えて懸濁液を得、得られた懸濁液を温度サイクルでの磁気撹拌に供し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記温度サイクルは、60℃→5℃、0.1℃/min、および5℃→60℃、1.5℃/minの2サイクル、好ましくは50℃→5℃、0.1℃/min、および5℃→50℃、1.5℃/minの2サイクルを含み、
前記有機溶媒は、n-ヘプタン、エタノール/水、アセトン/水、テトラヒドロフラン/水、アセトニトリル/水、酢酸エチル/n-ヘプタン、メチルtert-ブチルエーテル/n-ヘキサン、またはメチルイソブチルケトン/n-ヘキサンである;
方法VII:緩やかな揮発によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、有機溶媒に溶解し、ろ過してろ液を採取し、前記ろ液を含む容器を密封膜を用いて密封し、前記密封膜上に小孔を開け、室温で静置して緩やかに揮発させ、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、トリクロロメタン、ジクロロメタン、メタノール、イソプロパノール、またはメチルイソブチルケトンである;および
方法VIII:貧溶媒の添加によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、溶媒に溶解し、磁気攪拌下で貧溶媒を滴下しながら添加し、静置し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記溶媒は、エタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、アセトニトリル、ジクロロメタン、またはトリクロロメタンであり、かつ、貧溶媒は、n-ヘプタンまたは水である。
【請求項4】
ホノキオール結晶形BのX線粉末回折パターンが、Cu-Kα放射線下で、6.15°±0.2°、6.76°±0.2°、8.96°±0.2°および15.90°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む、ホノキオール結晶形B。
【請求項5】
前記ホノキオール結晶形BのX線粉末回折パターンが、Cu-Kα放射線下で、6.15°±0.2°、6.76°±0.2°、8.96°±0.2°、15.90°±0.2°、17.49°±0.2°および18.55°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む、請求項4に記載のホノキオール結晶形B。
【請求項6】
請求項1または2に記載のホノキオール結晶形Aを80℃~82℃に加熱し、次いで室温に冷却することにより、固体をホノキオール結晶形Bとして得る工程を含む、請求項4または5に記載のホノキオール結晶形Bの製造方法。
【請求項7】
ホノキオール結晶形CのX線粉末回折パターンが、Cu-Kα放射線下で、14.04°±0.2°、15.84°±0.2°、17.42°±0.2°および19.48°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む、ホノキオール結晶形C。
【請求項8】
前記ホノキオール結晶形CのX線粉末回折パターンが、Cu-Kα放射線下で、14.04°±0.2°、15.84°±0.2°、17.42°±0.2°、19.48°±0.2°、21.26°±0.2°、23.10°±0.2°および24.06°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む、請求項7に記載のホノキオール結晶形C。
【請求項9】
以下の工程を含む、請求項7または8に記載のホノキオール結晶形Cの製造方法:
(1)請求項1または2に記載のホノキオール結晶形Aを83℃~100℃で溶融状態に加熱し、攪拌する工程;および
(2)工程(1)で得られた溶融物を-20℃~-196℃の急冷温度に直ちに置いて、結晶をホノキオール結晶形Cとして分離する工程。
【請求項10】
前記工程(2)における急冷温度が-80℃~-196℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ホノキオール非晶質形が、図19に示されるようなX線粉末回折パターンを有する、ホノキオール非晶質形。
【請求項12】
以下の工程を含む、請求項11に記載のホノキオール非晶質形の製造方法:
(1)請求項1または2に記載のホノキオール結晶形AをDMSOを用いて溶解させる工程;
(2)工程(1)で得られた溶液に貧溶媒の水を加え、撹拌する工程;および
(3)遠心分離し、上清を廃棄し、室温で静置して、油状物をホノキオール非晶質形として得る工程。
【請求項13】
治療有効量の請求項1もしくは2に記載のホノキオール結晶形A、請求項4もしくは5に記載のホノキオール結晶形B、請求項7もしくは8に記載のホノキオール結晶形C、または請求項11に記載のホノキオール非晶質形、および医薬賦形剤を含む、医薬組成物または医薬品。
【請求項14】
治療有効量の請求項1もしくは2に記載のホノキオール結晶形A、請求項4もしくは5に記載のホノキオール結晶形B、請求項7もしくは8に記載のホノキオール結晶形C、または請求項11に記載のホノキオール非晶質形を含む、ホノキオールナノリポソーム凍結乾燥粉末。
【請求項15】
ホノキオール結晶形A、ホノキオール結晶形B、ホノキオール結晶形Cもしくはホノキオール非晶質形、リン脂質、ホスファチジルエタノールアミンおよびコレステロールを無水エタノールに溶解し、完全に溶解した溶液を精製水に注入し、攪拌し、ロータリーエバポレーションに供してエタノールを除去し、凍結乾燥賦形剤を添加し、凍結乾燥してホノキオールナノリポソーム凍結乾燥粉末を得る工程を含む、請求項14に記載のホノキオールナノリポソーム凍結乾燥粉末の製造方法。
【請求項16】
腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項1もしくは2に記載のホノキオール結晶形A、請求項4もしくは5に記載のホノキオール結晶形B、請求項7もしくは8に記載のホノキオール結晶形C、または請求項11に記載のホノキオール非晶質形の使用。
【請求項17】
抗菌剤、抗酸化剤、抗不安剤、抗うつ剤または抗血栓剤の製造における、請求項1もしくは2に記載のホノキオール結晶形A、請求項4もしくは5に記載のホノキオール結晶形B、請求項7もしくは8に記載のホノキオール結晶形C、または請求項11に記載のホノキオール非晶質形の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は医療分野に関し、特にホノキオールの結晶形および非晶質形、ならびにそれらの製造方法に関する。
〔発明の背景〕
3’,5-ジアリル-[1,1’-ビフェニル]-2,4’-ジオールの化学名を有するホノキオールは、式(I)で示される下記の構造式を有する:
【0002】
【化1】
【0003】
Magnolia officinalis Rehd. et Wilsの樹皮から抽出されるホノキオールは広範な生物学的活性を有する小分子化合物であり、その主な生物学的活性は、抗菌活性、抗酸化活性、抗不安活性、抗うつ活性、および抗血栓活性を含む。近年、ますます多くの研究が、ホノキオールが良好な抗腫瘍活性を有することを示しており、その抗腫瘍効果は、複数の標的、複数の影響、ならびにより低減された毒性および副作用によって特徴づけられる。動物研究は、ホノキオールが多くの種類の急速に増殖する腫瘍に対して広範な抗腫瘍活性を有することを示している。それは、腫瘍細胞アポトーシスを誘導し、腫瘍細胞のマイグレーションおよび増殖を阻害し、腫瘍新生血管形成を阻害することによって抗腫瘍効果を発揮する。
【0004】
薬物結晶形の研究は、新薬の研究における重要なコンテンツの1つである。したがって、より良好な物理化学的性質およびバイオアベイラビリティを有するホノキオール相状態を開発することは非常に重要である。
〔要約〕
本発明の目的は、溶解性、安定性、吸湿性等に優れたホノキオール結晶形を提供することである。
【0005】
本発明の第1の態様では、以下ホノキオール結晶形Aと呼ばれるホノキオール結晶形が提供され、ここで、本発明に係るホノキオール結晶形AのX線粉末回折パターンは、Cu-Kα放射線下で、6.79°±0.2°、9.10°±0.2°、13.97°±0.2°、14.97°±0.2°および17.54°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む。
【0006】
さらに、本発明に係るホノキオール結晶形AのX線粉末回折パターンは、Cu-Kα放射線下で、6.79°±0.2°、9.10°±0.2°、13.97°±0.2°、14.97°±0.2°、17.54°±0.2°、20.61°±0.2°、22.08°±0.2°および24.01°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む。
【0007】
非限定的に、本発明に係るホノキオール結晶形Aは、図1図3図9に示されるようなX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。
【0008】
非限定的に、本発明に係るホノキオール結晶形Aは、図2に示されるような熱重量分析(TGA)/示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有する。
【0009】
本発明はまた、ホノキオール結晶形Aの製造方法を提供し、当該方法は以下を含む:
方法I:再結晶によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを78~85℃で有機溶媒に溶解してホノキオール溶液を得、当該ホノキオール溶液を別の容器に急速に注ぎ、室温で一晩静置し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、n-ヘプタン、石油エーテル、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、DCM、DMSO、NMP、クロロホルム、メタノール/水、またはエタノール/水である;
方法II:気固浸透によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、次いで、別の容器に有機溶媒を加え、ホノキオールを含む開封容器を、有機溶媒を含む容器に入れ、密封して(ホノキオールの表面がわずかに濡れるまで)室温で静置し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルtert-ブチルエーテル、トリクロロメタン、N-メチルピロリドン、エタノールまたはアセトニトリルである;
方法III:気液浸透によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、溶媒に溶解し、ろ過して透明なホノキオール溶液を得、別の容器に貧溶媒を加え、透明なホノキオール溶液を含む開封容器を、貧溶媒を含む前記容器に入れ、密封して室温で静置し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記溶媒は、エタノール、テトラヒドロフラン、トリクロロメタン、酢酸エチルまたはイソプロパノールであってもよく、かつ、前記貧溶媒は、n-ヘキサンまたは水であってもよい;
方法IV:室温での懸濁撹拌によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、有機溶媒を加えて懸濁液を得、得られた懸濁液を室温での磁気撹拌に供し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、メタノール/水(94:6、84:16、69:31、42:58)、アセトニトリル/水(1:9)、アセトン/水(1:9)、またはジクロロメタン/n-ヘキサン(1:9)であってもよい;
方法V:40~60℃での懸濁撹拌によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、有機溶媒を加えて懸濁液を得、得られた懸濁液を40~60℃での磁気撹拌に供し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、n-ヘプタン、Tween/n-ヘプタン(1:9)、トリクロロメタン/n-ヘプタン(1:9)、またはイソプロパノール/水(1:9)であってもよい;
方法VI:温度サイクルでの撹拌によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、有機溶媒を加えて懸濁液を得、得られた懸濁液を温度サイクルでの磁気撹拌に供し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記温度サイクルは、60℃→5℃、0.1℃/min、および5℃→60℃、1.5℃/minの2サイクル、好ましくは50℃→5℃、0.1℃/min、および5℃→50℃、1.5℃/minの2サイクルからなり、
前記有機溶媒は、n-ヘプタン、エタノール/水(1:9)、アセトン/水(1:9)、テトラヒドロフラン/水(1:9)、アセトニトリル/水(1:9)、酢酸エチル/n-ヘプタン(1:9)、メチルtert-ブチルエーテル/n-ヘキサン(1:9)、またはメチルイソブチルケトン/n-ヘキサン(1:9)であってもよい;
方法VII:緩やかな揮発によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、有機溶媒に溶解し、ろ過してろ液を採取し、前記ろ液を含む容器を密封膜を用いて密封し、前記密封膜上に小孔を開け、室温で静置して緩やかに揮発させ、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記有機溶媒は、トリクロロメタン、ジクロロメタン、メタノール、イソプロパノール、またはメチルイソブチルケトンであってもよく;および
方法VIII:貧溶媒の添加によるホノキオール結晶形Aの製造
ホノキオールを容器に入れ、溶媒に溶解し、磁気攪拌下で貧溶媒を滴下しながら添加し、静置し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収し、
前記溶媒は、エタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、アセトニトリル、ジクロロメタン、またはトリクロロメタンであってもよく、かつ、貧溶媒は、n-ヘプタンまたは水であってもよい。
【0010】
本発明の第2の態様では、以下ホノキオール結晶形Bと呼ばれるホノキオール結晶形が提供され、ここで、本発明に係るホノキオール結晶形BのX線粉末回折パターンは、Cu-Kα放射線下で、6.15°±0.2°、6.76°±0.2°、8.96°±0.2°および15.90°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む。
【0011】
さらに、本発明に係るホノキオール結晶形BのX線粉末回折パターンは、Cu-Kα放射線下で、6.15°±0.2°、6.76°±0.2°、8.96°±0.2°、15.90°±0.2°、17.49°±0.2°および18.55°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む。
【0012】
非限定的に、本発明に係るホノキオール結晶形Bは、図10図12図15に示されるようなX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。
【0013】
非限定的に、本発明に係るホノキオール結晶形Bは、図11に示されるような熱重量分析(TGA)/示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有する。
【0014】
本発明はさらに、ホノキオール結晶形Aを80℃~82℃に加熱し、次いで室温に冷却することにより、固体をホノキオール結晶形Bとして得る工程を含む、ホノキオール結晶形Bの製造方法を提供する。
【0015】
本発明の第3の態様では、以下ホノキオール結晶形Cと呼ばれるホノキオール結晶形が提供され、ここで、本発明に係るホノキオール結晶形CのX線粉末回折パターンは、Cu-Kα放射線下で、14.04°±0.2°、15.84°±0.2°、17.42°±0.2°および19.48°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む。
【0016】
さらに、本発明に係るホノキオール結晶形CのX線粉末回折パターンは、Cu-Kα放射線下で、14.04°±0.2°、15.84°±0.2°、17.42°±0.2°、19.48°±0.2°、21.26°±0.2°、23.10°±0.2°および24.06°±0.2°の2θ値に特徴的なピークを含む。
【0017】
非限定的に、本発明に係るホノキオール結晶形Cは、図16および図18に示されるようなX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。
【0018】
非限定的に、本発明に係るホノキオール結晶形Cは、図17に示されるような熱重量分析(TGA)/示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有する。
【0019】
本発明はさらに、以下の工程を含む、ホノキオール結晶形Cの製造方法を提供する:
(1)ホノキオール結晶形Aを83℃~100℃で溶融状態に加熱し、明らかな微粒子が存在しなくなるまで攪拌して完全に混合する工程;および
(2)工程(1)で得られた溶融物を-20℃~-196℃の急冷温度に直ちに置いて、結晶をホノキオール結晶形Cとして分離する工程。
【0020】
好ましくは、ホノキオール結晶形Cの製造方法において、工程(2)の急冷温度は-80℃~-196℃である。
【0021】
本発明の第4の態様では、ホノキオール非晶質形が提供され、ここで、本発明に係るホノキオール非晶質形は良好な溶解性を有し、薬物製剤の開発に適している。
【0022】
非限定的に、本発明に係るホノキオール非晶質形は、図19に示されるようなX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。
【0023】
本発明はさらに、以下の工程を含む、ホノキオール非晶質形の製造方法を提供する:
(1)ホノキオール結晶形AをDMSOを用いて溶解させる工程;
(2)工程(1)で得られた溶液に貧溶媒の水を加え、撹拌する工程;および
(3)遠心分離し、上清を廃棄し、室温で静置して、油状物をホノキオール非晶質形として得る工程。
【0024】
本発明の別の目的は、治療有効量のホノキオール結晶形A、ホノキオール結晶形B、ホノキオール結晶形C、またはホノキオール非晶質形、および医薬賦形剤を含む、医薬組成物または医薬品を提供することである。医薬組成物または医薬品は医薬分野において周知の方法で製造され、一般に、治療有効量のホノキオール結晶形A、ホノキオール結晶形B、ホノキオール結晶形C、またはホノキオール非晶質形を、1つ以上の医薬賦形剤と混合または接触させて、医薬組成物または医薬品を製造する。
【0025】
本発明のさらなる目的は、治療有効量のホノキオール結晶形A、ホノキオール結晶形B、ホノキオール結晶形C、またはホノキオール非晶質形を含む、ホノキオールナノリポソーム凍結乾燥粉末を提供することである。ホノキオールナノリポソーム凍結乾燥粉末は、以下の方法によって製造される:ホノキオール結晶形A、ホノキオール結晶形B、ホノキオール結晶形Cもしくはホノキオール非晶質形(1部)、リン脂質(0.1~100部)、ホスファチジルエタノールアミン(0.01~100部)およびコレステロール(0~100部)を無水エタノールに溶解し、精製水に完全に溶解した溶液を注入し、攪拌し、ロータリーエバポレーションに供してエタノールを除去し、凍結乾燥賦形剤(1~50部)を添加し、凍結乾燥してホノキオールナノリポソーム凍結乾燥粉末を得る。凍結乾燥粉末を再構成した後、ホノキオールナノリポソームの粒径は、レーザー粒径分析器によって測定して80~170nmである。
【0026】
リン脂質は、大豆リン脂質、卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロールおよびそのナトリウム塩、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、またはホスファチジルセリンのうちの1つ以上から選択され;ホスファチジルエタノールアミンは、培養ホスファチジルエタノールアミン、大豆ホスファチジルエタノールアミン、ジステアリルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、ステアロイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、ステアロイルイミジルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、ジラウリルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、ジデカノイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、ジオクタノイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000、またはジヘキサノイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール600-20000のうちの1つ以上から選択され;賦形剤は、グルコース、グリシン、マンニトール、イノシトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、ラクトース、ガラクトース、グルタミン酸、プロリン、リジンまたはアラニンのうちの1つ以上から選択される。
【0027】
本発明のさらなる目的は、腫瘍を治療するための医薬の製造における、ホノキオール結晶形A、ホノキオール結晶形B、ホノキオール結晶形C、またはホノキオール非晶質形の使用を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、抗菌剤、抗酸化剤、抗不安剤、抗うつ剤または抗血栓剤の製造における、ホノキオール結晶形A、ホノキオール結晶形B、ホノキオール結晶形C、またはホノキオール非晶質形の使用を提供することである。
【0029】
本発明のホノキオール結晶形A、BおよびCは、良好な溶解性、良好な安定性、低い吸湿性、長期保存性、および良好な再現性の利点を有し、薬剤開発に適している。本発明のホノキオール非晶質形は、良好な溶解性を有し、薬物製剤の開発に適している。
【0030】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例1におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
【0031】
図2は、実施例1におけるホノキオール結晶形AのTGA/DSCサーモグラムである。
【0032】
図3は、実施例2におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
【0033】
図4は、実施例3におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
【0034】
図5は、実施例4におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
【0035】
図6は、実施例5におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
【0036】
図7は、実施例6におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
【0037】
図8は、実施例7におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
【0038】
図9は、実施例8におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
【0039】
図10は、実施例9において、80℃に加熱した直後に室温まで冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
【0040】
図11は、実施例9において、80℃に加熱した直後に室温まで冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのTGA/DSCサーモグラムである。
【0041】
図12は、実施例10において、80℃に加熱して1時間保持し、次いで室温に冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
【0042】
図13は、実施例11において、80℃に加熱して4時間保持し、次いで室温に冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
【0043】
図14は、実施例12において、80℃に加熱して8時間保持し、次いで室温に冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
【0044】
図15は、実施例13において82℃に加熱した直後に室温に冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
【0045】
図16は、実施例14において-80℃で処理したホノキオール結晶形CのXRPDパターンである。
【0046】
図17は、実施例14において-80℃で処理したホノキオール結晶形CのTGA/DSCサーモグラムである。
【0047】
図18は、実施例15において-196℃で処理したホノキオール結晶形CのXRPDパターンである。
【0048】
図19は、実施例16において製造したホノキオール非晶質形のXRPDパターンである。
【0049】
図20は、日光に曝された後のホノキオール結晶形A、BおよびCの写真である。
【0050】
図21は、応力試験前のホノキオール結晶形AのHPLCパターンである。
【0051】
図22は、高温試験後のホノキオール結晶形AのHPLCパターンである。
【0052】
図23は、高湿度試験後のホノキオール結晶形AのHPLCパターンである。
【0053】
図24は、高光照射試験後のホノキオール結晶形AのHPLCパターンである。
【0054】
図25は、応力試験前のホノキオール結晶形BのHPLCパターンである。
【0055】
図26は、高温試験後のホノキオール結晶形BのHPLCパターンである。
【0056】
図27は、高湿度試験後のホノキオール結晶形BのHPLCパターンである。
【0057】
図28は、高光照射試験後のホノキオール結晶形BのHPLCパターンである。
【0058】
図29は、応力試験前のホノキオール結晶形CのHPLCパターンである。
【0059】
図30は、高温試験後のホノキオール結晶形CのHPLCパターンである。
【0060】
図31は、高湿度試験後のホノキオール結晶形CのHPLCパターンである。
【0061】
図32は、高光照射試験後のホノキオール結晶形CのHPLCパターンである。
【0062】
〔例示的な実施形態の説明〕
以下の実施形態は本発明をさらに説明するものであり、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
本発明の実施例において使用される試薬は、当該分野における従来の試薬である。以下、特に断りのない限り、本発明で使用される試薬は当該分野で周知であるが、本発明では試薬を可能な限り詳細に説明する。
【0064】
実施例で使用した原料およびホノキオール粉末の製造方法は、Journal ofChromatography A, 1142 (2007) 115-122に詳述されている。
【0065】
実施例1:n-ヘプタンを用いた再結晶によるホノキオール結晶形Aの製造
201.25mgのホノキオール粉末を、80℃でn-ヘプタンに完全に溶解し、次いで、溶液を別のビーカーに迅速に注ぎ、室温で一晩静置し、結晶をホノキオール結晶形Aとして得、そのXRPDパターンを図1に示し、TGA/DSCサーモグラムを図2に示した。
【0066】
本実施例におけるホノキオール結晶形Aの2θ値および強度の対応値を表1に示した:
【0067】
【表1】

【0068】
実施例2:気固浸透によるホノキオール結晶形Aの製造
約15mgのホノキオール粉末を3mLのバイアルに秤量し、約3mLのN-メチルピロリドンを別の20mLのバイアルに加え、3mLの開封バイアルを20mLのバイアルに入れ、当該20mLのバイアルを密封した。20mLのバイアルを、試料の表面がわずかに濡れるまで室温で静置し、試料を遠心分離して、固体をホノキオール結晶形Aとして回収した。得られた固体はXRPD試験によって確認したところホノキオール結晶形Aであり、そのXRPDパターンは図3に示され、TGA/DSCサーモグラムは、実施例1で製造したホノキオール結晶形AのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0069】
実施例3:気液浸透によるホノキオール結晶形Aの製造
約15mgのホノキオール粉末を3mLのバイアルに秤量し、0.5mLの溶媒イソプロパノールに溶解し、0.45μmのPTFE膜を通して濾過して透明な溶液を得た。別の20mLのバイアルに約3mLの貧溶媒の水を加え、透明な溶液を入れた3mLの開封バイアルを20mLのバイアルに入れ、次いで20mLのバイアルを密封し、室温で9日間静置した。試料を遠心分離して、固体をホノキオール結晶形Aとして回収した。得られた固体はXRPD試験によって確認したところホノキオール結晶形Aであり、そのXRPDパターンは図4に示され、TGA/DSCサーモグラムは、実施例1で製造されたホノキオール結晶形AのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0070】
実施例4:室温での懸濁撹拌によるホノキオール結晶形Aの製造
約15mgのホノキオール粉末を3mLのバイアルに秤量し、0.3~0.5mLのアセトニトリル/水(1:9)をバイアルに加えた。得られた懸濁液を4日間、室温での磁気撹拌に供した後、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収した。得られた固体はXRPD試験によって確認したところホノキオール結晶形Aであり、そのXRPDパターンは図5に示されており、TGA/DSCサーモグラムは実施例1で製造したホノキオール結晶形AのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0071】
実施例5:50℃での懸濁攪拌によるホノキオール結晶形Aの製造
約15mgのホノキオール粉末を3mLのバイアルに秤量し、0.5mLのトリクロロメタン/n-ヘプタン(1:9)をバイアルに加えた。得られた懸濁液を4日間、50℃、1,000rpmでの磁気撹拌に供し、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収した。得られた固体はXRPD試験によって確認したところホノキオール結晶形Aであり、そのXRPDパターンは図6に示されており、TGA/DSCサーモグラムは実施例1で製造したホノキオール結晶形AのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0072】
実施例6:温度サイクルでの撹拌によるホノキオール結晶形Aの製造
約15mgのホノキオール粉末を3mLのバイアルに秤量し、0.5mLのエタノール/水(1:9)をバイアルに加えた。得られた懸濁液を、温度サイクル(2サイクル:50℃→5℃、0.1℃/min、および5℃→50℃、1.5℃/min)および1,000rpmで16時間の磁気攪拌に供し、次いで、試料を遠心分離して、固体をホノキオール結晶形Aとして回収した。得られた固体はXRPD試験によって確認したところホノキオール結晶形Aであり、そのXRPDパターンは図7に示され、TGA/DSCサーモグラムは、実施例1で製造されたホノキオール結晶形AのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0073】
実施例7:緩やかな揮発によるホノキオール結晶形Aの製造
約15mgのホノキオール粉末を3mLのバイアルに秤量し、1.0mLのトリクロロメタンに溶解し、(孔径0.45μmのPTFE膜を用いて)濾過し、次いで濾液を採取した。透明な溶液を含有するバイアルを密封膜を用いて密封し、当該密封膜上にいくつかの小孔を開け、バイアルを室温で静置して緩やかに揮発させて固体を分離し、次いで、遠心分離によって固体をホノキオール結晶形Aとして回収した。得られた固体はXRPD試験によって確認したところホノキオール結晶形Aであり、そのXRPDパターンは図8に示され、TGA/DSCサーモグラムは、実施例1で製造されたホノキオール結晶形AのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0074】
実施例8:貧溶媒の添加によるホノキオール結晶形Aの製造
約15mgのホノキオール粉末を3mLのバイアルに秤量し、0.5~1.0mLのエタノールに溶解し、磁気撹拌下でn-ヘプタンを加え、当該系は滴下しながら撹拌され、一晩静置した後、遠心分離して固体をホノキオール結晶形Aとして回収した。得られた固体はXRPD試験によって確認したところホノキオール結晶形Aであり、そのXRPDパターンは図9に示され、TGA/DSCサーモグラムは、実施例1で製造されたホノキオール結晶形AのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0075】
実施例9:ホノキオール結晶形Bの製造
200.75mgのホノキオール結晶形Aを80℃に加熱した後、試料を直ちに室温に置いて固体をホノキオール結晶形Bとして得、そのXRPDスペクトルを図10に示し、TGA/DSCサーモグラムを図11に示した。
【0076】
本実施例におけるホノキオール結晶形Bの2θ値および強度の対応値を表2に示した:
【0077】
【表2】
【0078】
実施例10:ホノキオール結晶形Bの製造
200.65mgのホノキオール結晶形Aを80℃に加熱し、温度を1時間維持した後、試料を直ちに室温に置いて固体をホノキオール結晶形Bとして得、そのXRPDスペクトルを図12に示し、TGA/DSCサーモグラムは、実施例9で製造されたホノキオール結晶形BのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0079】
本実施例におけるホノキオール結晶形Bの2θ値および強度の対応値を表3に示した:
【0080】
【表3】
【0081】
実施例11:ホノキオール結晶形Bの製造
200.25mgのホノキオール結晶形Aを80℃に加熱し、温度を4時間維持した後、試料を直ちに室温に置いて固体をホノキオール結晶形Bとして得、そのXRPDスペクトルを図13に示し、TGA/DSCサーモグラムは、実施例9で製造したホノキオール結晶形BのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0082】
本実施例におけるホノキオール結晶形Bの2θ値および強度の対応値を表4に示した:
【0083】
【表4】

【0084】
実施例12:ホノキオール結晶形Bの製造
201.25mgのホノキオール結晶形Aを80℃に加熱し、温度を8時間維持した後、試料を直ちに室温に置いて固体をホノキオール結晶形Bとして得、そのXRPDスペクトルを図14に示し、TGA/DSCサーモグラムは、実施例9で製造したホノキオール結晶形BのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0085】
本実施例におけるホノキオール結晶形Bの2θ値および強度の対応値を表5に示した:
【0086】
【表5】
【0087】
実施例13:ホノキオール結晶形Bの製造
200.15mgのホノキオール結晶形Aを82℃に加熱した後、試料を直ちに室温に置いて、固体をホノキオール結晶形Bとして得、そのXRPDスペクトルを図15に示し、TGA/DSCサーモグラムは、実施例9で製造したホノキオール結晶形BのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0088】
本実施例におけるホノキオール結晶形Bの2θ値および強度の対応値を表6に示した:
【0089】
【表6】
【0090】
実施例14:ホノキオール結晶形Cの製造
1,002.5mgのホノキオール結晶形Aをるつぼ内で85℃で溶融状態に加熱し、次いで該るつぼを-80℃の冷蔵庫に素早く入れ、一晩静置して、固体をホノキオール結晶形Cとして得、そのXRPDスペクトルを図16に示し、TGA/DSCサーモグラムを図17に示した。
【0091】
本実施例におけるホノキオール結晶形Cの2θ値および強度の対応値を表7に示した:
【0092】
【表7】
【0093】
実施例15:ホノキオール結晶形Cの製造
998.3mgのホノキオール結晶形Aをるつぼ内で85℃で溶融状態に加熱し、次いで該るつぼを液体窒素(-196℃)中に素早く入れ、一晩静置して、固体をホノキオール結晶形Cとして得、そのXRPDスペクトルを図18に示し、TGA/DSCサーモグラムは、実施例14で製造したホノキオール結晶形CのTGA/DSCサーモグラムと一致していた。
【0094】
本実施例におけるホノキオール結晶形Cの2θ値および強度の対応値を表8に示した:
【0095】
【表8】
【0096】
実施例16:ホノキオール非晶質形の製造
約15mgのホノキオール結晶形Aを20mLのバイアル中に秤量し、0.5~1.0mLの溶媒DMSOに溶解し、磁気攪拌下で貧溶媒のHOを加え、滴下しながら攪拌した。得られた溶液を遠心分離し、上清を廃棄した後、残ったものを室温で放置し、油状物を非晶質形として得、そのXRPDパターンを図19に示した。
【0097】
実施例17:ホノキオール結晶形A、BおよびCについてのTGA/DSC試験
熱重量分析(TGA):器具製造業者:METTLER-TOLEDO;器具モデル:TGA/DSC2/1600;試験条件:30~350℃の窒素雰囲気下で適正量の試作試料を採取し、10℃/minの一定速度で温度を上昇させ、温度による物質の重量変化を測定し、重量-温度変化曲線-TGA曲線をプロットする;
示差走査熱量計(DSC):器具製造業者:METTLER-TOLEDO;器具モデル:DSC3+/500;試験条件:窒素雰囲気下、30~150℃で適正量の試作試料を採取し、10℃/minの一定速度で温度を上昇させ、試料のDSC曲線を決定する;および
ホノキオール結晶形A、BおよびCをそれぞれ室温から150℃に加熱する。
【0098】
ホノキオール結晶形AのTGA結果は1.0%の重量減少を示し、DSC結果は図2に示されるように、78.1℃および86.1℃(ピーク温度)で2つの吸熱シグナルを示す。
【0099】
ホノキオール結晶形BのTGA結果は1.3%の重量減少を示し、DSC結果は図11に示されるように、86.1℃(ピーク温度)で吸熱シグナルを示す。
【0100】
ホノキオール結晶形CのTGA結果は93.3%の重量減少を示し、DSC結果は図17に示されるように、86.3℃(ピーク温度)で吸熱シグナルを示す。
【0101】
実施例18:ホノキオール結晶形A、BおよびCについての溶解度試験
薬剤の溶解度(solubility)は医薬品の溶解度(dissolution)および経口バイオアベイラビリティに直接影響を及ぼすため、本発明者はホノキオール結晶形A、BおよびCのPBSへの溶解度を調べた。ホノキオール結晶形A、BおよびCのそれぞれの飽和溶液を調製し、37℃で4時間振盪し、遠心分離し、次いで上清を高速液体クロマトグラフに供給した。同時に、ホノキオール標準溶液(供給源:中国食品薬品検定研究所(China Institutes for Food and Drug Control)、バッチ番号:110730-201915、ID:EH2H-BMTW)および外部標準法を定量に用いた。その結果、ホノキオール結晶形Aの溶解度は41.35μg/mlであり、ホノキオール結晶形Bの溶解度は43.66μg/mlであり、ホノキオール結晶形Cの溶解度は48.12μg/mlであった。
【0102】
実施例19:ホノキオール結晶形A、BおよびCについての光安定性試験
ホノキオール結晶形A、B、およびCをそれぞれ、ホノキオール結晶形A、B、およびCのそれぞれの安定性を調べるために、日光中で小型ビーカー中に静置した。日光への曝露後のホノキオール結晶形A、B、およびCの写真を図20に示した。
【0103】
実施例20:ホノキオール結晶形A、BおよびCについての応力試験
ホノキオール結晶形A、BおよびCをそれぞれ高温(60°C)、高湿(相対湿度92.5%、25°C)および高光照射(照度45,001x±5,001x)下で処理し、メタノールで希釈し、HPLC試験により類縁物質の変化を調べた。
【0104】
ホノキオール結晶形Aの純度は、応力試験前は99.83%であり、高温試験後のホノキオール結晶形Aの純度は99.63%であり;高湿度試験後のホノキオール結晶形Aの純度は99.67%であり;高光照射試験後のホノキオール結晶形Aの純度は99.64%であった。応力試験前のホノキオール結晶形AのHPLCパターンを図21に、高温試験後のHPLCパターンを図22に、高湿度試験後のHPLCパターンを図23に、高光照射試験後のHPLCパターンを図24に示した。
【0105】
ホノキオール結晶形Bの純度は、応力試験前は99.88%であり、高温試験後のホノキオール結晶形Bの純度は99.70%であり;高湿度試験後のホノキオール結晶形Bの純度は99.70%であり;高光照射試験後のホノキオール結晶形Bの純度は99.60%であった。応力試験前のホノキオール結晶形BのHPLCパターンを図25に、高温試験後のHPLCパターンを図26に、高湿度試験後のHPLCパターンを図27に、高光照射試験後のHPLCパターンを図28に示した。
【0106】
ホノキオール結晶形Cの純度は、応力試験前は99.86%であり、高温試験後のホノキオール結晶形Cの純度は99.36%であり;高湿度試験後のホノキオール結晶形Cの純度は99.59%であり;高光照射試験後のホノキオール結晶形Cの純度は99.31%であった。応力試験前のホノキオール結晶形CのHPLCパターンを図29に、高温試験後のHPLCパターンを図30に、高湿度試験後のHPLCパターンを図31に、高光照射試験後のHPLCパターンを図32に示した。
【0107】
実施例21:ホノキオールナノリポソーム凍結乾燥粉末の製造
ホノキオール結晶形A、BおよびC、ならびに非晶質形の全てを用いて、同じ製造方法でホノキオールナノリポソーム凍結乾燥粉末を製造した。ホノキオール結晶形Bを例に挙げて、製造方法を以下に示した:
ホノキオール結晶形B50mg、大豆リン脂質500mg、コレステロール200mgおよび培養ホスファチジルエタノールアミン200mgを無水エタノール50mLに溶解し、完全に溶解した後、溶液を精製水300mLに注入し、攪拌し、ロータリーエバポレーションに供してエタノールを除去し、凍結乾燥賦形剤としてショ糖800mgを加え、凍結乾燥してホノキオールナノリポソーム凍結乾燥粉末を得る。凍結乾燥粉末を再構成した後、ホノキオールナノリポソームの粒径は、レーザー粒径分析器によって測定して114nmであった。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1図1は、実施例1におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
図2図2は、実施例1におけるホノキオール結晶形AのTGA/DSCサーモグラムである。
図3図3は、実施例2におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
図4図4は、実施例3におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
図5図5は、実施例4におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
図6図6は、実施例5におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
図7図7は、実施例6におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
図8図8は、実施例7におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
図9図9は、実施例8におけるホノキオール結晶形AのXRPDパターンである。
図10図10は、実施例9において、80℃に加熱した直後に室温まで冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
図11図11は、実施例9において、80℃に加熱した直後に室温まで冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのTGA/DSCサーモグラムである。
図12図12は、実施例10において、80℃に加熱して1時間保持し、次いで室温に冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
図13図13は、実施例11において、80℃に加熱して4時間保持し、次いで室温に冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
図14図14は、実施例12において、80℃に加熱して8時間保持し、次いで室温に冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
図15図15は、実施例13において82℃に加熱した直後に室温に冷却した後に処理したホノキオール結晶形BのXRPDパターンである。
図16図16は、実施例14において-80℃で処理したホノキオール結晶形CのXRPDパターンである。
図17図17は、実施例14において-80℃で処理したホノキオール結晶形CのTGA/DSCサーモグラムである。
図18図18は、実施例15において-196℃で処理したホノキオール結晶形CのXRPDパターンである。
図19図19は、実施例16において製造したホノキオール非晶質形のXRPDパターンである。
図20図20は、日光に曝された後のホノキオール結晶形A、BおよびCの写真である。
図21図21は、応力試験前のホノキオール結晶形AのHPLCパターンである。
図22図22は、高温試験後のホノキオール結晶形AのHPLCパターンである。
図23図23は、高湿度試験後のホノキオール結晶形AのHPLCパターンである。
図24図24は、高光照射試験後のホノキオール結晶形AのHPLCパターンである。
図25図25は、応力試験前のホノキオール結晶形BのHPLCパターンである。
図26図26は、高温試験後のホノキオール結晶形BのHPLCパターンである。
図27図27は、高湿度試験後のホノキオール結晶形BのHPLCパターンである。
図28図28は、高光照射試験後のホノキオール結晶形BのHPLCパターンである。
図29図29は、応力試験前のホノキオール結晶形CのHPLCパターンである。
図30図30は、高温試験後のホノキオール結晶形CのHPLCパターンである。
図31図31は、高湿度試験後のホノキオール結晶形CのHPLCパターンである。
図32図32は、高光照射試験後のホノキオール結晶形CのHPLCパターンである。
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【国際調査報告】