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特表2024-504051モジュール式の動態学的に制御された機能性RNA構築物、並びに関連する組成物、システム、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】モジュール式の動態学的に制御された機能性RNA構築物、並びに関連する組成物、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240123BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240123BHJP
   G16B 15/10 20190101ALI20240123BHJP
   G16B 30/00 20190101ALI20240123BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240123BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240123BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20240123BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
G16B15/10
G16B30/00
C12Q1/6806 Z
C12N15/09 110
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540966
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 US2022011191
(87)【国際公開番号】W WO2022150311
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/133,950
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャロザーズ,ジェイムズ・エム
(72)【発明者】
【氏名】ザラタン,ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】スパークマン-イェガー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】フォンタナ,ジェイソン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ52
4B063QR35
4B063QS34
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA45
(57)【要約】
動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物、並びに目的のリガンドを検出するのに有用な関連する核酸、ベクター、細胞、システム、及び方法を開示する。動態学的に制御されたバイオセンサー、ガイドRNA分子、及び/又は標的プロモーター配列を設計するためのコンピュータ実装方法、及びそれによって産生される構築物もまた開示される。例示的な実施形態は、CRISPRaの実施のための合成プロモーターを組み込んだscRNA及び発現カセットを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物であって、5’側から3’側に向かって、
目的のリガンドに特異的に結合するセンサードメインと、
活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに検出可能な出力シグナルを調節するように構成された出力ドメインと、を含み、
前記出力ドメインが、転写されたときに、前記センサードメインが前記目的のリガンドに結合しているとき、前記活性なコンフォメーションに折り畳まれ、前記出力ドメインが、転写されたときに、前記センサードメインが前記目的のリガンドに結合していないとき、不活性なコンフォメーションに折り畳まれる、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項2】
前記センサードメインが、5’側から3’側に向かって、
オーバーハング配列、
アプタマードメインであって、ステム配列、リンカー標的配列、アプタマー部分配列、及びステム標的配列を含む、アプタマードメイン、並びに
リンカー配列、のうちの少なくとも2つを含み、
前記出力ドメインが、5’側から3’側に向かって、
ステム標的配列、
オーバーハング標的配列、及び
出力部分配列、を含む、請求項1に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項3】
前記センサードメインの前記オーバーハング配列が、前記出力ドメインの前記オーバーハング標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であること、
前記センサードメインの前記ステム配列が、前記センサードメインの前記ステム標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であり、かつ、前記出力ドメインの前記ステム標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であること、及び/又は、
前記センサードメインの前記リンカー配列が、前記センサードメインのリンカー標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であること、
の任意の組み合わせである、請求項2に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項4】
前記リンカー標的配列が、前記アプタマー部分配列の一部分に対する逆相補体であり、任意選択的に、前記アプタマー部分配列の前記一部分が、不連続部分である、請求項3に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項5】
前記センサードメインが前記目的のリガンドに結合しているとき、前記センサードメインの前記ステム配列が、前記センサードメインの前記ステム標的配列にハイブリダイズし、それによって、前記出力ドメインの前記活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる、請求項3又は4に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項6】
前記センサードメインが前記目的のリガンドに結合していないとき、前記センサードメインの前記オーバーハング配列が、前記出力ドメインの前記オーバーハング標的配列の前記一部分にハイブリダイズし、前記センサードメインの前記ステム配列が、前記出力ドメインの前記ステム標的配列の前記一部分にハイブリダイズし、かつ/又は、前記センサードメインの前記リンカー標的配列が、前記センサードメインの前記リンカー配列の前記一部分にハイブリダイズし、それによって、前記出力ドメインの前記不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる、請求項3又は4に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項7】
前記センサードメインの前記オーバーハング配列、前記センサードメインの前記ステム配列、及び前記センサードメインの前記リンカー標的配列のうちの少なくとも2つが、それぞれ、前記出力ドメインの前記オーバーハング標的配列の少なくとも一部分、前記出力ドメインの前記ステム標的配列の一部分、及び前記センサードメインの一部分前記リンカー配列にハイブリダイズされたとき、連続的ならせんステム構造を形成し、それによって、前記出力ドメインの前記出力部分配列の前記不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる、請求項6に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項8】
前記オーバーハング配列が、0~約15ヌクレオチド長であり、
前記ステム配列が、0~約15ヌクレオチド長であり、かつ/又は
前記リンカー配列が、0~約15ヌクレオチド長である、請求項2~7のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項9】
前記センサードメインの前記アプタマードメインと前記リンカー配列との間に配置されたタイマードメインを更に含み、前記タイマードメインが、最大約150ヌクレオチド長の長さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項10】
前記タイマードメインが、ステム及びループ構造を形成するように構成されており、前記タイマードメインの各末端が前記ステム及びループ構造のステムの一部を形成する、請求項9に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項11】
前記タイマードメインが、少なくとも1つの転写停止配列を更に含む、請求項9又は10に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項12】
前記タイマードメインが、同じであるか、又は異なる複数の転写停止配列を含む、請求項11に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項13】
少なくとも1つの転写停止配列が、Escherichia coli由来のチアミンピロホスフェート(TPP)感知thiCリボスイッチに由来する、請求項11又は12に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項14】
前記出力ドメインが活性なコンフォメーションに折り畳まれるとき、前記出力ドメインが、機能性リボザイム、機能性ヌクレアーゼガイドRNA(gRNA)、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、又はRNAアプタマーであるか、又はそれを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項15】
前記出力ドメインが活性なコンフォメーションに折り畳まれるとき、前記出力ドメインが、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、前記機能性gRNAが、約40~約400ヌクレオチド長である、請求項14に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項16】
前記gRNAが、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法を使用して設計される、請求項15に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項17】
前記機能性gRNAが、Cas9、Cas12a、Cas13、その誘導体等から任意選択的に選択されるヌクレアーゼに会合する、請求項15又は16に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項18】
前記ヌクレアーゼが、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有する、請求項17に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項19】
前記ヌクレアーゼが、CRISPR活性化(CRISPRa)機能を付与する、請求項18に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項20】
前記ヌクレアーゼが、CRISPR阻害(CRISPRi)機能を付与する、請求項18に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項21】
前記ヌクレアーゼが、ヌクレアーゼ機能を有する、請求項17に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項22】
前記出力ドメインが、前記活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、前記検出可能な出力シグナルを誘導するように構成されている、請求項1に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項23】
前記出力ドメインが前記活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、前記検出可能な出力シグナルを低減するように構成されている、請求項1に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項24】
前記目的のリガンドが、化学物質、代謝物、タンパク質、ペプチド、小分子、任意選択的に薬物分子又は薬物前駆体分子等である、請求項1に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項25】
前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物が、
コンピューティングデバイスによって、1つ以上の候補の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列を決定することと、
前記1つ以上の候補の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列の各々について、
前記コンピューティングデバイスによって、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することと、
前記コンピューティングデバイスによって、予測された前記1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列に関する1つ以上のメトリックを決定することと、
前記コンピューティングデバイスによって、スコアに基づいて、合成のために提供される前記1つ以上の候補の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列のうちの1つ以上を選択することと、を含むコンピュータ実装方法を使用するよう設計されている、請求項1~24のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド分子。
【請求項27】
プロモーターに作動可能に連結された請求項26に記載のポリヌクレオチド分子を含む、ベクター。
【請求項28】
請求項26に記載のポリヌクレオチド分子、又は請求項27に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項29】
前記細胞が原核細胞である、請求項28に記載の細胞。
【請求項30】
前記細胞が真核生物である、請求項28に記載の細胞。
【請求項31】
前記細胞が、合成プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現構築物を更に含むように操作され、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の前記出力ドメインが、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、前記機能性gRNAが、前記合成プロモーターにハイブリダイズする、請求項28~30のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項32】
前記合成プロモーターが、転写開始部位の5’側の約40~約120塩基に位置するプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)を含む、請求項31に記載の細胞。
【請求項33】
前記細胞が、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼ及び転写因子を更に発現するように操作され、発現された前記ヌクレアーゼ及び転写因子が、前記機能性gRNAと会合し、前記gRNAが前記発現構築物の前記合成プロモーターとハイブリダイズするときに前記レポーター遺伝子の転写を促進するように構成されている、請求項31に記載の細胞。
【請求項34】
前記細胞が、前記リガンドの発現又は産生を修飾するように操作又は処理されている、請求項28~33のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項35】
請求項1~25のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物をコードする配列を含む第1の発現カセットと、
前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の合成を促進するのに十分なRNAポリメラーゼ及びNTPと、を含む、バイオセンサーシステム。
【請求項36】
任意の組み合わせで、リボソーム、tRNA、アミノアシル-tRNA合成酵素、開始因子、伸長因子、終結因子、アミノ酸、ATP、GTP、及び/又は翻訳補因子から選択されるタンパク質翻訳エレメントを更に含む、請求項35に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項37】
合成プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現構築物を更に含み、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の前記出力ドメインが、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、前記機能性gRNAが、前記合成プロモーターにハイブリダイズする、請求項36に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項38】
アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼと、
転写因子と、を更に含み、
前記ヌクレアーゼ及び転写因子が、前記機能性gRNAと会合し、会合した前記gRNAが、前記発現構築物の前記合成プロモーターとハイブリダイズするときに前記レポーター遺伝子の転写を促進するように構成されている、請求項37に記載のバイオセンサーシステム。
【請求項39】
目的のリガンドを検出する方法であって、
前記目的のリガンドを含有し得る環境において、請求項1~25のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物を合成することと、
出力シグナルを検出することと、を含み、
検出された出力シグナルが、前記目的のリガンドのセンサードメインへの結合を示す、方法。
【請求項40】
前記環境が、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の転写を促進することができるインビトロ環境である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記インビトロ環境が、請求項26に記載のRNAポリメラーゼ、NTP、及びテンプレートDNA分子を含んで、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の合成を促進する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記環境が、無細胞合成環境である、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項43】
前記無細胞合成環境が、任意の組み合わせで、リボソーム、tRNA、アミノアシル-tRNA合成酵素、開始因子、伸長因子、終結因子、アミノ酸、ATP、GTP、及び/又は翻訳補因子から選択されるタンパク質翻訳エレメントを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記環境が、細胞溶解物を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記環境が、細胞内にある、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞が、合成プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現構築物を更に含むように操作され、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の前記出力ドメインが、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、前記機能性gRNAが、前記合成プロモーターにハイブリダイズする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞が、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼ及び転写因子を更に発現するように操作され、前記発現されたヌクレアーゼ及び転写因子が、前記機能性gRNAと会合し、前記gRNAが前記発現構築物の前記合成プロモーターとハイブリダイズするときに前記レポーター遺伝子の転写を調節するように構成されている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有する前記ヌクレアーゼが、CRISPR活性化(CRISPRa)機能を付与し、前記レポーター遺伝子が、蛍光タンパク質、抗生物質耐性タンパク質、ベータ-ガラクトシダーゼ等をコードする、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有する前記ヌクレアーゼが、CRISPR阻害(CRISPRi)機能を付与し、前記レポーター遺伝子が、蛍光タンパク質、抗生物質耐性タンパク質、ベータ-ガラクトシダーゼ等、又は内因性遺伝子をコードする、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項50】
前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の前記出力ドメインが、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、前記機能性gRNAが、目的の標的配列にハイブリダイズし、前記細胞が、ヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼを更に発現するように操作されている、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞が、前記細胞における目的のリガンドの産生を修飾するように操作されている、請求項45~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞を、前記細胞における前記目的のリガンドの産生を修飾することが疑われる実験条件に供することを更に含む、請求項45~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記目的のリガンドが、前記細胞に接触する化合物又はその代謝物である、請求項45~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
動態学的に制御された機能性RNA分子を設計するためのコンピュータ実装方法であって、
コンピューティングデバイスによって、1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列を決定することと、
前記1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列の各々について、
前記コンピューティングデバイスによって、前記動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することと、
前記コンピューティングデバイスによって、予測された前記1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、前記動態学的に制御された機能性RNA配列に関する1つ以上のメトリックを決定することと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記メトリックに基づいて、合成のために提供される前記1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列のうちの1つ以上を選択することと、を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項55】
前記予測された1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、前記動態学的に制御された機能性RNA配列に関する前記1つ以上のメトリックを決定することが、
前記動態学的に制御された機能性RNA配列について、予測された折り畳まれた構造のエネルギーを決定すること、
前記動態学的に制御された機能性RNA配列についての予測された折り畳まれた構造のエネルギーを、前記動態学的に制御された機能性RNA配列についての他の予測された折り畳まれた構造のエネルギーと比較すること、及び
前記動態学的に制御された機能性RNA配列について予測された折り畳まれた構造を、標的の折り畳まれた構造に変換するための障壁エネルギーを決定すること、のうちの少なくとも1つを含む、請求項54に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項56】
前記動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することが、制約された折り畳み分析を実施することを含む、請求項54に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項57】
制約された折り畳み分析を実施することが、
前記動態学的に制御された機能性RNA配列の一部分についての所定の折り畳まれた構造を特定することと、
前記動態学的に制御された機能性RNA配列の前記一部分についての前記所定の折り畳まれた構造を与えられた、前記動態学的に制御された機能性RNA配列の全体的な折り畳まれた構造を予測することと、を含む、請求項56に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項58】
前記動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することが、
2つ以上の同時転写折り畳み経路を比較することを含む、請求項54に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項59】
2つ以上の同時転写折り畳み経路を比較することが、
転写中の前記動態学的に制御された機能性RNA配列の第1の不完全な部分の第1の構造を予測することと、
転写中の前記動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分の第2の構造を予測することであって、前記動態学的に制御された機能性RNA配列の前記第2の不完全な部分が、前記動態学的に制御された機能性RNA配列の前記第1の不完全な部分、及び前記動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドを含む、予測することと、
前記動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを含む、前記動態学的に制御された機能性RNA配列の第3の不完全な部分の後続の構造予測における使用のための、前記第1の構造又は前記第2の構造を選択することと、を含む、請求項58に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項60】
前記第1の構造又は前記第2の構造を選択することが、
前記第1の構造から前記第2の構造に変換するための障壁エネルギーを決定することと、
前記動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドの前記後続のセットを、前記動態学的に制御された機能性RNA配列の前記第2の不完全な部分に付加するための時間を決定することと、
1つ以上の追加のヌクレオチドの前記後続のセットを付加するための時間の間に、前記動態学的に制御された機能性RNA配列の前記第2の不完全な部分が前記第1の構造から前記第2の構造に遷移するには前記障壁エネルギーが高すぎると判定されたことに応答して、前記第1の構造を選択することと、
1つ以上の追加のヌクレオチドの前記後続のセットを付加するための時間の間に、前記動態学的に制御された機能性RNA配列の前記第2の不完全な部分が前記第1の構造から前記第2の構造に遷移するのに前記障壁エネルギーが高すぎないと判定されたことに応答して、前記第2の構造を選択することと、を含む、請求項59に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項61】
前記動態学的に制御された機能性RNAが、ガイドRNA(gRNA)分子であるか、又はgRNA分子を含む、請求項54~60のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項62】
前記動態学的に制御された機能性RNAが、動態学的に制御されたバイオセンサー分子であるか、又は動態学的に制御されたバイオセンサー分子を含む、請求項54~60のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項63】
コンピューティングデバイスの1つ以上のプロセッサによる実行に応答して、前記コンピューティングデバイスに、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法の動作を実行させる、記憶されたコンピュータ実行可能な命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項66】
請求項54~62のいずれか一項に記載の方法の動作を実行するように構成された、コンピューティングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月5日に出願された米国仮特許出願第63/133,950号の利益を主張するものであり、その開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府のライセンス権に関する陳述
本発明は、米国国立科学財団によって付与された許可番号CBET1844152、CBET-1844152-001、EF-1935087、及びMCB1817623のもと政府の支援を受けて開発された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表に関する陳述
本出願に関連する配列表は、書面コピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、3915-P1161WOUW_Seq_List_FINAL_20220104_ST25である。テキストファイルは13KBで、2022年1月4日に作成され、明細書の提出とともにEFS-Web経由で提出されている。
【背景技術】
【0004】
RNA生体分子は、センシング用途の分子スイッチとして使用することが提案されている。例えば、酵素、バイオ燃料、生体材料、生化学物質などの価値の高い工業用バイオ製品の開発により、数十億ドル規模の産業を構成している。しかしながら、操作された微生物の遺伝子改変体を合成及び組み立てて、所望のバイオ製品を生産するための、現在の技術では、改良された生産力価、速度及び収率を有するようなこれらの改変体をスクリーニングする能力が大幅に不足しており、その結果、生産開発及び最適化を妨げる主要なボトルネックが生じている。RNA生体分子スイッチは、理論的には、バイオセンサーとして使用して、バイオ製品又は必要な中間体の産生を感知し、合成経路における各ステップの効率をモニターすることができる。
【0005】
しかしながら、操作されたRNA生体分子スイッチは、これまで暗黙のうちに、入力状態から生じるシグナルの生成が、過剰な一過性の不明確な構造状態間の複雑な平衡から生じる熱力学的制御に依存するものであった。これにより、潜在的な標的リガンドの膨大な多様性に必要となるスケールでの、高感度生体分子センサーの信頼性及び合理性の高い生産が困難になる。コンピュータによる機能性RNA分子の設計の分野では、広く適用できる顕著な成功性が存在しない。更に、細胞内に存在する代謝物を低濃度で検出するために、既存のRNAセンサーの感度を最適化することは、困難であることが証明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生体分子センサーの技術の進歩にもかかわらず、感度の高いRNA生体分子スイッチを確実に生成するための系統的設計パイプラインが必要である。本開示は、これら及び関連する必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本概要は、発明を実施するための形態で以下に更に記載される概念の選択を、簡略化された形態で紹介するために提供される。本概要は、特許対象の主要な特徴を特定することを意図するものではなく、特許対象の範囲を判定する際の補助として使用されることも意図されていない。
【0008】
一実施形態では、本開示は、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物を提供する。構築物は、5’側から3’側に向かって、目的のリガンドに特異的に結合するセンサードメインと、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに検出可能な出力シグナルを調節するように構成された出力ドメインとを含む。出力ドメインは、転写されたときに、センサードメインが目的のリガンドに結合しているとき、活性なコンフォメーションに折り畳まれる。出力ドメインは、転写されたときに、センサードメインが目的のリガンドに結合していないとき、不活性なコンフォメーションに折り畳まれる。
【0009】
いくつかの実施形態では、センサードメインは、5’側から3’側に、オーバーハング配列、アプタマードメイン(アプタマードメインは、ステム配列、リンカー標的配列、アプタマー部分配列、及びステム標的配列を含む)、及びリンカー配列のうちの少なくとも2つを含む。更に、出力ドメインは、5’側から3’側に向かって、ステム標的配列、オーバーハング標的配列、及び出力部分配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、センサードメインのオーバーハング配列は、出力ドメインのオーバーハング標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であり、センサードメインのステム配列は、センサードメインのステム標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であり、かつ出力ドメインのステム標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であり、かつ/又は、センサードメインのリンカー配列は、センサードメインのリンカー標的配列の少なくとも一部分の逆相補体である(任意の組み合わせで)。いくつかの実施形態では、リンカー標的配列は、アプタマー部分配列の一部分に対する逆相補体であり、任意選択的に、アプタマー部分配列の一部分は、不連続部分である。いくつかの実施形態では、センサードメインが目的のリガンドに結合しているとき、センサードメインのステム配列は、センサードメインのステム標的配列にハイブリダイズし、それによって、出力ドメインの活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。
【0011】
いくつかの実施形態では、センサードメインが目的のリガンドに結合していないとき、センサードメインのオーバーハング配列は、出力ドメインのオーバーハング標的配列の一部分にハイブリダイズし、センサードメインのステム配列は、出力ドメインのステム標的配列の一部分にハイブリダイズし、かつ/又は、センサードメインのリンカー標的配列は、センサードメインのリンカー配列の一部分にハイブリダイズし、それによって、出力ドメインの不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。いくつかの実施形態では、センサードメインのオーバーハング配列、センサードメインのステム配列、及びセンサードメインのリンカー標的配列のうちの少なくとも2つは、それぞれ、出力ドメインのオーバーハング標的配列の少なくとも一部、出力ドメインのステム標的配列の一部分、及びセンサードメインのリンカー配列にハイブリダイズされたときに、連続的ならせんステム構造を形成し、それによって、出力ドメインの出力部分配列の不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。
【0012】
いくつかの実施形態では、オーバーハング配列は、0~約15ヌクレオチド長であり、ステム配列は、0~約15ヌクレオチド長であり、かつ/又は、リンカー配列は、0~約15ヌクレオチド長である。
【0013】
いくつかの実施形態では、構築物は、センサードメインのアプタマードメインとリンカー配列との間に配置されたタイマードメインを更に含み、タイマードメインは、最大約150ヌクレオチド長の長さを有する。いくつかの実施形態では、タイマードメインは、ステム及びループ構造を形成するように構成されており、タイマードメインの各末端がステム及びループ構造のステムの一部を形成する。いくつかの実施形態では、タイマードメインは、少なくとも1つの転写停止配列を更に含む。いくつかの実施形態では、タイマードメインは、同じであるか、又は異なる複数の転写停止配列を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの転写停止配列は、Escherichia coli由来のチアミンピロホスフェート(TPP)感知thiCリボスイッチに由来する。
【0014】
いくつかの実施形態では、出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれ、出力ドメインは、機能性リボザイム、機能性ヌクレアーゼガイドRNA(gRNA)、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、又はRNAアプタマーであるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、出力ドメインが活性なコンフォメーションに折り畳まれるとき、出力ドメインは、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、約40~約400ヌクレオチド長である。
【0015】
いくつかの実施形態では、gRNAは、本明細書に記載の方法を使用して設計される。いくつかの実施形態では、機能性gRNAは、Cas9、Cas12a、Cas13、その誘導体などから任意選択的に選択されるヌクレアーゼに会合する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR活性化(CRISPRa)機能を付与する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR阻害(CRISPRi)機能を付与する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ機能を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、検出可能な出力シグナルを誘導するように構成されている。いくつかの実施形態では、出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、検出可能な出力シグナルを低減するように構成されている。いくつかの実施形態では、目的のリガンドは、化学物質、代謝物、タンパク質、ペプチド、小分子、任意選択的に薬物分子又は薬物前駆体分子等である。
【0017】
いくつかの実施形態では、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物は、
コンピューティングデバイスによって、1つ以上の候補の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列を決定することと、
1つ以上の候補の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列の各々について、
コンピューティングデバイスによって、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することと、
コンピューティングデバイスによって、予測された1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列に関する1つ以上のメトリックを決定することと、
コンピューティングデバイスによって、スコアに基づいて、合成のために提供される1つ以上の候補の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー配列のうちの1つ以上を選択することと、を含むコンピュータ実装方法を使用するよう設計されている。
【0018】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0019】
別の態様では、本開示は、プロモーターに作動可能に連結された、本明細書に記載のポリヌクレオチド分子を含む、ベクターを提供する。
【0020】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチド分子、又はベクターを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、原核細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、真核細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、合成プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現構築物を更に含むように操作され、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、合成プロモーターにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、合成プロモーターは、転写開始部位の5’側の約40~約120塩基に位置するプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼ及び転写因子を更に発現するように操作され、発現されたヌクレアーゼ及び転写因子は、機能性gRNAと会合し、gRNAが発現構築物の合成プロモーターとハイブリダイズするときにレポーター遺伝子の転写を促進するように構成されている。いくつかの実施形態では、細胞は、リガンドの発現又は産生を修飾するように操作又は処理されている。
【0021】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物をコードする配列を含む、第1の発現カセットと、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の合成を促進するのに十分なRNAポリメラーゼ及びNTPと、を含む、バイオセンサーシステムを提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本システムは、任意の組み合わせで、リボソーム、tRNA、アミノアシル-tRNA合成酵素、開始因子、伸長因子、終結因子、アミノ酸、ATP、GTP、及び/又は翻訳補因子から選択されるタンパク質翻訳エレメントを更に含む。いくつかの実施形態では、本システムは、合成プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現構築物を更に含み、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、合成プロモーターにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、本システムは、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼと、転写因子とを更に含む。ヌクレアーゼ及び転写因子は、機能性gRNAと会合し、会合したgRNAが発現構築物の合成プロモーターとハイブリダイズするときにレポーター遺伝子の転写を促進するように構成されている。
【0023】
別の態様では、本開示は、目的のリガンドを検出する方法を提供する。本方法は、目的のリガンドを含有し得る環境において、本明細書に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物を合成することと、出力シグナルを検出することとを含む。検出された出力シグナルは、目的のリガンドのセンサードメインへの結合を示す。
【0024】
いくつかの実施形態では、環境は、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の転写を促進することができるインビトロ環境である。いくつかの実施形態では、インビトロ環境は、本明細書に記載のRNAポリメラーゼ、NTP、及びテンプレートDNA分子を含んで、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の合成を促進する。いくつかの実施形態では、環境は、無細胞合成環境である。いくつかの実施形態では、無細胞合成環境は、任意の組み合わせで、リボソーム、tRNA、アミノアシル-tRNA合成酵素、開始因子、伸長因子、終結因子、アミノ酸、ATP、GTP、及び/又は翻訳補因子から選択されるタンパク質翻訳エレメントを含む。いくつかの実施形態では、環境は、細胞溶解物を含む。いくつかの実施形態では、環境は、細胞内にある。いくつかの実施形態では、細胞は、合成プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現構築物を更に含むように操作され、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、合成プロモーターにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、細胞は、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼ及び転写因子を更に発現するように操作され、発現されたヌクレアーゼ及び転写因子は、機能性gRNAと会合し、gRNAが発現構築物の合成プロモーターとハイブリダイズするときにレポーター遺伝子の転写を調節するように構成されている。いくつかの実施形態では、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼは、CRISPR活性化(CRISPRa)機能を付与し、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、抗生物質耐性タンパク質、ベータ-ガラクトシダーゼなどをコードする。いくつかの実施形態では、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼは、CRISPR阻害(CRISPRi)機能を付与し、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、抗生物質耐性タンパク質、ベータ-ガラクトシダーゼなど、又は内因性遺伝子をコードする。いくつかの実施形態では、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、目的の標的配列にハイブリダイズし、細胞は、ヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼを更に発現するように操作されている。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞における目的のリガンドの産生を修飾するように操作されている。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞を、細胞における目的のリガンドの産生を修飾することが疑われる実験条件に供することを更に含む。いくつかの実施形態では、目的のリガンドは、細胞に接触する化合物又はその代謝物である。
【0025】
別の態様では、本開示は、動態学的に制御された機能性RNA分子を設計するためのコンピュータ実装方法を提供する。本方法は、
コンピューティングデバイスによって、1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列を決定することと、
1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列の各々について、
コンピューティングデバイスによって、動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することと、
コンピューティングデバイスによって、予測された1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、動態学的に制御された機能性RNA配列に関する1つ以上のメトリックを決定することと、
コンピューティングデバイスによって、メトリックに基づいて、合成のために提供される1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列のうちの1つ以上を選択することと、を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、予測された1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、動態学的に制御された機能性RNA配列に関する1つ以上のメトリックを決定することは、
動態学的に制御された機能性RNA配列について、予測された折り畳まれた構造のエネルギーを決定すること、
動態学的に制御された機能性RNA配列についての予測された折り畳まれた構造のエネルギーを、動態学的に制御された機能性RNA配列についての他の予測された折り畳まれた構造のエネルギーと比較すること、及び
動態学的に制御された機能性RNA配列について予測された折り畳まれた構造を、標的の折り畳まれた構造に変換するための障壁エネルギーを決定すること、のうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することは、制約された折り畳み分析を実施することを含む。いくつかの実施形態では、制約された折り畳み分析を実施することは、
動態学的に制御された機能性RNA配列の一部分についての所定の折り畳まれた構造を特定することと、
動態学的に制御された機能性RNA配列の一部分についての所定の折り畳まれた構造を与えられた、動態学的に制御された機能性RNA配列の全体的な折り畳まれた構造を予測することと、を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することは、2つ以上の同時転写折り畳み経路を比較することを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の同時転写折り畳み経路を比較することは、
転写中の動態学的に制御された機能性RNA配列の第1の不完全な部分の第1の構造を予測することと、
転写中の動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分の第2の構造を予測することであって、動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分が、動態学的に制御された機能性RNA配列の第1の不完全な部分、及び動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドを含む、予測することと、
動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを含む、動態学的に制御された機能性RNA配列の第3の不完全な部分の後続の構造予測における使用のための、第1の構造又は第2の構造を選択することと、を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1の構造又は第2の構造を選択することは、
第1の構造から第2の構造に変換するための障壁エネルギーを決定することと、
動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを、動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分に付加するための時間を決定することと、
1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを付加するための時間の間に、動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分が第1の構造から第2の構造に遷移するには障壁エネルギーが高すぎると判定されたことに応答して、第1の構造を選択することと、
1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを付加するための時間の間に、動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分が第1の構造から第2の構造に遷移するのに障壁エネルギーが高すぎないと判定されたことに応答して、第2の構造を選択することと、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、動態学的に制御された機能性RNAは、ガイドRNA(gRNA)分子であるか、又はgRNA分子を含む。いくつかの実施形態では、動態学的に制御された機能性RNAは、動態学的に制御されたバイオセンサー分子であるか、又は動態学的に制御されたバイオセンサー分子を含む。
【0031】
別の態様では、本開示は、コンピューティングデバイスの1つ以上のプロセッサによる実行に応答して、コンピューティングデバイスに、本明細書に記載の方法の動作を実行させる、記憶されたコンピュータ実行可能な命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。
【0032】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の方法の動作を実行するように構成された、コンピューティングデバイスを提供する。
【0033】
本発明の前述の態様及び付随する利点の多くは、添付の図面と併せて以下の発明を実施するための形態を参照することによって、よりよく理解されるようになり、より容易に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本開示の特定の実施形態に適用される新規の動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャと、アプタザイムを組み立てるための従来の戦略の比較を概略的に示す。ハイブリッドSTEM(通信モジュール)で構造遷移をコードする代わりに、動態学的に制御されたバイオセンサアーキテクチャは、遷移を中間配列にコードすることを可能にし、親部分の性能を維持し、リガンド結合及び切断活性を同時転写的にデカップリングする可能性を可能にする。
図2-1】本明細書に開示される動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の一実施形態の概略図である。RNAバイオセンサー構築物は、広義には、それ自体が標的リガンドと結合するためのアプタマードメイン配列を含むセンサードメイン(すなわち、入力ドメイン)と、出力ドメインの前に転写されるアプタマーへの標的リガンドのリガンド結合状態に応じて測定可能なシグナルをもたらす出力ドメインとを有する。Watson-Crick塩基対が維持される限り、閉鎖ステムの長さ及び順序は一般に変化させることができる。より複雑な構造及び活性を有する内部領域は、機能を維持するために一般に不変である。「実施例1」及び「実施例2」は、同じ入力ドメインを有するが、オーバーハング、ステム、及びリンカーの長さが異なる例示的なバイオセンサーを示す。「実施例1」及び「実施例2」の各々を、ON(検出可能な出力シグナルの調節のための活性なコンフォメーション)又はOFF(検出可能な出力シグナルの調節の欠如のための不活性なコンフォメーション)で示す。オーバーハング、ステム、及びリンカー配列をいずれも陰影付けし、そのように表示する一方、同じ陰影を有して表示のない領域はその領域の逆相補体である。
図2-2】本明細書に開示される動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の一実施形態の概略図である。RNAバイオセンサー構築物は、広義には、それ自体が標的リガンドと結合するためのアプタマードメイン配列を含むセンサードメイン(すなわち、入力ドメイン)と、出力ドメインの前に転写されるアプタマーへの標的リガンドのリガンド結合状態に応じて測定可能なシグナルをもたらす出力ドメインとを有する。Watson-Crick塩基対が維持される限り、閉鎖ステムの長さ及び順序は一般に変化させることができる。より複雑な構造及び活性を有する内部領域は、機能を維持するために一般に不変である。「実施例1」及び「実施例2」は、同じ入力ドメインを有するが、オーバーハング、ステム、及びリンカーの長さが異なる例示的なバイオセンサーを示す。「実施例1」及び「実施例2」の各々を、ON(検出可能な出力シグナルの調節のための活性なコンフォメーション)又はOFF(検出可能な出力シグナルの調節の欠如のための不活性なコンフォメーション)で示す。オーバーハング、ステム、及びリンカー配列をいずれも陰影付けし、そのように表示する一方、同じ陰影を有して表示のない領域はその領域の逆相補体である。
図2-3】本明細書に開示される動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の一実施形態の概略図である。RNAバイオセンサー構築物は、広義には、それ自体が標的リガンドと結合するためのアプタマードメイン配列を含むセンサードメイン(すなわち、入力ドメイン)と、出力ドメインの前に転写されるアプタマーへの標的リガンドのリガンド結合状態に応じて測定可能なシグナルをもたらす出力ドメインとを有する。Watson-Crick塩基対が維持される限り、閉鎖ステムの長さ及び順序は一般に変化させることができる。より複雑な構造及び活性を有する内部領域は、機能を維持するために一般に不変である。「実施例1」及び「実施例2」は、同じ入力ドメインを有するが、オーバーハング、ステム、及びリンカーの長さが異なる例示的なバイオセンサーを示す。「実施例1」及び「実施例2」の各々を、ON(検出可能な出力シグナルの調節のための活性なコンフォメーション)又はOFF(検出可能な出力シグナルの調節の欠如のための不活性なコンフォメーション)で示す。オーバーハング、ステム、及びリンカー配列をいずれも陰影付けし、そのように表示する一方、同じ陰影を有して表示のない領域はその領域の逆相補体である。
図3A】動態学的に制御された結合及びアクチュエーションを操作するためのバイオセンサーを概略的に示す。3A)動態学的に制御されたバイオセンサーは、標的リガンドを感知するためにRNAポリメラーゼ酵素の存在下で能動的に転写されたRNA生体分子である。更に、動態学的に制御されたバイオセンサーの運命は、同時転写によって決定される。動態学的アプタザイム(K-A)は、例示の目的のために提示される動態学的に制御バイオセンサーの1つの例示的な実施形態である。アプタマードメインが転写された後、リガンドが存在しない場合、トーホールドはリボザイムドメインの5’末端でその標的に結合し、動態学的に制御されたバイオセンサーは、急速な分子内トーホールド媒介性鎖置換を受けて不活性なコンフォメーションになる(B2)。リガンドの存在下で、アプタマーは安定化され、K-Aが触媒活性構造アンサンブル(B1)内に急速に折り畳まれることが可能となる。大きな予測されたB3障壁は、転写後にS6からS5状態への構造的相互変換を遅くするため、バックグラウンド切断が非常に低くなるはずである。3B)同時転写的に機能するスイッチを同定するために、まず、可変領域及び定常領域を定義する分子アーキテクチャを選択しなければならない。次に、熱力学的目的関数を使用して、候補配列を評価する。次いで、重要な動態トラップ(MFEpath)に落ちる配列を効率的に無視する新規のデッドエンド除去アルゴリズムを使用して、残存する配列を迅速な同時転写折り畳みのために分析する。任意選択的に、候補タイマードメインは、機能デバイスに導入され、熱力学的及び同時転写的目的関数を使用して再評価される。
図3B】動態学的に制御された結合及びアクチュエーションを操作するためのバイオセンサーを概略的に示す。3A)動態学的に制御されたバイオセンサーは、標的リガンドを感知するためにRNAポリメラーゼ酵素の存在下で能動的に転写されたRNA生体分子である。更に、動態学的に制御されたバイオセンサーの運命は、同時転写によって決定される。動態学的アプタザイム(K-A)は、例示の目的のために提示される動態学的に制御バイオセンサーの1つの例示的な実施形態である。アプタマードメインが転写された後、リガンドが存在しない場合、トーホールドはリボザイムドメインの5’末端でその標的に結合し、動態学的に制御されたバイオセンサーは、急速な分子内トーホールド媒介性鎖置換を受けて不活性なコンフォメーションになる(B2)。リガンドの存在下で、アプタマーは安定化され、K-Aが触媒活性構造アンサンブル(B1)内に急速に折り畳まれることが可能となる。大きな予測されたB3障壁は、転写後にS6からS5状態への構造的相互変換を遅くするため、バックグラウンド切断が非常に低くなるはずである。3B)同時転写的に機能するスイッチを同定するために、まず、可変領域及び定常領域を定義する分子アーキテクチャを選択しなければならない。次に、熱力学的目的関数を使用して、候補配列を評価する。次いで、重要な動態トラップ(MFEpath)に落ちる配列を効率的に無視する新規のデッドエンド除去アルゴリズムを使用して、残存する配列を迅速な同時転写折り畳みのために分析する。任意選択的に、候補タイマードメインは、機能デバイスに導入され、熱力学的及び同時転写的目的関数を使用して再評価される。
図4A】タイマードメインが、急速な二相性リガンド依存性機能を可能にすることを示す。4A~4D)0ntタイマーで設計されたテオフィリン応答性動態学的に制御されたバイオセンサーは、遅い単相性のリガンド依存性のインビトロ同時転写切断(Theo1-0nt)を示す。最小限の15ntタイマーの付加は、急速な二相性のリガンド依存性切断及び237のダイナミックレンジ(kobs+/kobs-)を示す、動態学的に制御されたバイオセンサーをもたらす。4E)低バックグラウンドを有する20個の動態学的に制御されたバイオセンサー(UBF<0.1、kavg-<0.01分-1)については、リガンド依存性バースト相切断にアクセスするためにタイマードメインが必要である。
図4B】タイマードメインが、急速な二相性リガンド依存性機能を可能にすることを示す。4A~4D)0ntタイマーで設計されたテオフィリン応答性動態学的に制御されたバイオセンサーは、遅い単相性のリガンド依存性のインビトロ同時転写切断(Theo1-0nt)を示す。最小限の15ntタイマーの付加は、急速な二相性のリガンド依存性切断及び237のダイナミックレンジ(kobs+/kobs-)を示す、動態学的に制御されたバイオセンサーをもたらす。4E)低バックグラウンドを有する20個の動態学的に制御されたバイオセンサー(UBF<0.1、kavg-<0.01分-1)については、リガンド依存性バースト相切断にアクセスするためにタイマードメインが必要である。
図4C】タイマードメインが、急速な二相性リガンド依存性機能を可能にすることを示す。4A~4D)0ntタイマーで設計されたテオフィリン応答性動態学的に制御されたバイオセンサーは、遅い単相性のリガンド依存性のインビトロ同時転写切断(Theo1-0nt)を示す。最小限の15ntタイマーの付加は、急速な二相性のリガンド依存性切断及び237のダイナミックレンジ(kobs+/kobs-)を示す、動態学的に制御されたバイオセンサーをもたらす。4E)低バックグラウンドを有する20個の動態学的に制御されたバイオセンサー(UBF<0.1、kavg-<0.01分-1)については、リガンド依存性バースト相切断にアクセスするためにタイマードメインが必要である。
図4D】タイマードメインが、急速な二相性リガンド依存性機能を可能にすることを示す。4A~4D)0ntタイマーで設計されたテオフィリン応答性動態学的に制御されたバイオセンサーは、遅い単相性のリガンド依存性のインビトロ同時転写切断(Theo1-0nt)を示す。最小限の15ntタイマーの付加は、急速な二相性のリガンド依存性切断及び237のダイナミックレンジ(kobs+/kobs-)を示す、動態学的に制御されたバイオセンサーをもたらす。4E)低バックグラウンドを有する20個の動態学的に制御されたバイオセンサー(UBF<0.1、kavg-<0.01分-1)については、リガンド依存性バースト相切断にアクセスするためにタイマードメインが必要である。
図4E】タイマードメインが、急速な二相性リガンド依存性機能を可能にすることを示す。4A~4D)0ntタイマーで設計されたテオフィリン応答性動態学的に制御されたバイオセンサーは、遅い単相性のリガンド依存性のインビトロ同時転写切断(Theo1-0nt)を示す。最小限の15ntタイマーの付加は、急速な二相性のリガンド依存性切断及び237のダイナミックレンジ(kobs+/kobs-)を示す、動態学的に制御されたバイオセンサーをもたらす。4E)低バックグラウンドを有する20個の動態学的に制御されたバイオセンサー(UBF<0.1、kavg-<0.01分-1)については、リガンド依存性バースト相切断にアクセスするためにタイマードメインが必要である。
図5A-1】動態学的に制御されたバイオセンサー操作が可能となる信頼性の高い多状態同時転写折り畳みの設計を示す。5A)粗粒度の折り畳み軌道を予測するために、MFEpathは、アレニウス様相互変換障壁から次の最小自由エネルギー(MFE)サブ構造に再配置する時間を予測する。再配置が次のヌクレオチドの付加よりも速いと予想される場合、構造的再配置が許容される。遅い場合、遷移は許容されず、次の塩基が付加されて、新しいサブ構造の分析が実行される。最終の塩基が付加された後、最後の障壁高さは、同時転写構造から転写後MFE構造に変換する動態学的に制御されたバイオセンサーに必要な時間を予測するために使用される。5B)選抜された動態学的に制御されたバイオセンサーは、最終出力障壁の重要性を実証する。リガンドの不存在下では、低い最終障壁は、オフ状態への同時転写相互変換を示し、結果として低いバックグラウンド切断をもたらす。高い障壁は、急速な切断及び潜在的なDRの喪失をもたらす。リガンドの存在下では、高い障壁は、切断速度が構造的相互変換によって制限されることを示す。低い障壁は、相互変換が切断よりも速い時間スケールで発生し、リボザイムの内在的切断速度が制限されることを示す。両方の障壁が低い場合、非常に大きなダイナミックレンジが可能となる。
図5A-2】動態学的に制御されたバイオセンサー操作が可能となる信頼性の高い多状態同時転写折り畳みの設計を示す。5A)粗粒度の折り畳み軌道を予測するために、MFEpathは、アレニウス様相互変換障壁から次の最小自由エネルギー(MFE)サブ構造に再配置する時間を予測する。再配置が次のヌクレオチドの付加よりも速いと予想される場合、構造的再配置が許容される。遅い場合、遷移は許容されず、次の塩基が付加されて、新しいサブ構造の分析が実行される。最終の塩基が付加された後、最後の障壁高さは、同時転写構造から転写後MFE構造に変換する動態学的に制御されたバイオセンサーに必要な時間を予測するために使用される。5B)選抜された動態学的に制御されたバイオセンサーは、最終出力障壁の重要性を実証する。リガンドの不存在下では、低い最終障壁は、オフ状態への同時転写相互変換を示し、結果として低いバックグラウンド切断をもたらす。高い障壁は、急速な切断及び潜在的なDRの喪失をもたらす。リガンドの存在下では、高い障壁は、切断速度が構造的相互変換によって制限されることを示す。低い障壁は、相互変換が切断よりも速い時間スケールで発生し、リボザイムの内在的切断速度が制限されることを示す。両方の障壁が低い場合、非常に大きなダイナミックレンジが可能となる。
図5A-3】動態学的に制御されたバイオセンサー操作が可能となる信頼性の高い多状態同時転写折り畳みの設計を示す。5A)粗粒度の折り畳み軌道を予測するために、MFEpathは、アレニウス様相互変換障壁から次の最小自由エネルギー(MFE)サブ構造に再配置する時間を予測する。再配置が次のヌクレオチドの付加よりも速いと予想される場合、構造的再配置が許容される。遅い場合、遷移は許容されず、次の塩基が付加されて、新しいサブ構造の分析が実行される。最終の塩基が付加された後、最後の障壁高さは、同時転写構造から転写後MFE構造に変換する動態学的に制御されたバイオセンサーに必要な時間を予測するために使用される。5B)選抜された動態学的に制御されたバイオセンサーは、最終出力障壁の重要性を実証する。リガンドの不存在下では、低い最終障壁は、オフ状態への同時転写相互変換を示し、結果として低いバックグラウンド切断をもたらす。高い障壁は、急速な切断及び潜在的なDRの喪失をもたらす。リガンドの存在下では、高い障壁は、切断速度が構造的相互変換によって制限されることを示す。低い障壁は、相互変換が切断よりも速い時間スケールで発生し、リボザイムの内在的切断速度が制限されることを示す。両方の障壁が低い場合、非常に大きなダイナミックレンジが可能となる。
図5B-1】動態学的に制御されたバイオセンサー操作が可能となる信頼性の高い多状態同時転写折り畳みの設計を示す。5A)粗粒度の折り畳み軌道を予測するために、MFEpathは、アレニウス様相互変換障壁から次の最小自由エネルギー(MFE)サブ構造に再配置する時間を予測する。再配置が次のヌクレオチドの付加よりも速いと予想される場合、構造的再配置が許容される。遅い場合、遷移は許容されず、次の塩基が付加されて、新しいサブ構造の分析が実行される。最終の塩基が付加された後、最後の障壁高さは、同時転写構造から転写後MFE構造に変換する動態学的に制御されたバイオセンサーに必要な時間を予測するために使用される。5B)選抜された動態学的に制御されたバイオセンサーは、最終出力障壁の重要性を実証する。リガンドの不存在下では、低い最終障壁は、オフ状態への同時転写相互変換を示し、結果として低いバックグラウンド切断をもたらす。高い障壁は、急速な切断及び潜在的なDRの喪失をもたらす。リガンドの存在下では、高い障壁は、切断速度が構造的相互変換によって制限されることを示す。低い障壁は、相互変換が切断よりも速い時間スケールで発生し、リボザイムの内在的切断速度が制限されることを示す。両方の障壁が低い場合、非常に大きなダイナミックレンジが可能となる。
図5B-2】動態学的に制御されたバイオセンサー操作が可能となる信頼性の高い多状態同時転写折り畳みの設計を示す。5A)粗粒度の折り畳み軌道を予測するために、MFEpathは、アレニウス様相互変換障壁から次の最小自由エネルギー(MFE)サブ構造に再配置する時間を予測する。再配置が次のヌクレオチドの付加よりも速いと予想される場合、構造的再配置が許容される。遅い場合、遷移は許容されず、次の塩基が付加されて、新しいサブ構造の分析が実行される。最終の塩基が付加された後、最後の障壁高さは、同時転写構造から転写後MFE構造に変換する動態学的に制御されたバイオセンサーに必要な時間を予測するために使用される。5B)選抜された動態学的に制御されたバイオセンサーは、最終出力障壁の重要性を実証する。リガンドの不存在下では、低い最終障壁は、オフ状態への同時転写相互変換を示し、結果として低いバックグラウンド切断をもたらす。高い障壁は、急速な切断及び潜在的なDRの喪失をもたらす。リガンドの存在下では、高い障壁は、切断速度が構造的相互変換によって制限されることを示す。低い障壁は、相互変換が切断よりも速い時間スケールで発生し、リボザイムの内在的切断速度が制限されることを示す。両方の障壁が低い場合、非常に大きなダイナミックレンジが可能となる。
図5B-3】動態学的に制御されたバイオセンサー操作が可能となる信頼性の高い多状態同時転写折り畳みの設計を示す。5A)粗粒度の折り畳み軌道を予測するために、MFEpathは、アレニウス様相互変換障壁から次の最小自由エネルギー(MFE)サブ構造に再配置する時間を予測する。再配置が次のヌクレオチドの付加よりも速いと予想される場合、構造的再配置が許容される。遅い場合、遷移は許容されず、次の塩基が付加されて、新しいサブ構造の分析が実行される。最終の塩基が付加された後、最後の障壁高さは、同時転写構造から転写後MFE構造に変換する動態学的に制御されたバイオセンサーに必要な時間を予測するために使用される。5B)選抜された動態学的に制御されたバイオセンサーは、最終出力障壁の重要性を実証する。リガンドの不存在下では、低い最終障壁は、オフ状態への同時転写相互変換を示し、結果として低いバックグラウンド切断をもたらす。高い障壁は、急速な切断及び潜在的なDRの喪失をもたらす。リガンドの存在下では、高い障壁は、切断速度が構造的相互変換によって制限されることを示す。低い障壁は、相互変換が切断よりも速い時間スケールで発生し、リボザイムの内在的切断速度が制限されることを示す。両方の障壁が低い場合、非常に大きなダイナミックレンジが可能となる。
図5B-4】動態学的に制御されたバイオセンサー操作が可能となる信頼性の高い多状態同時転写折り畳みの設計を示す。5A)粗粒度の折り畳み軌道を予測するために、MFEpathは、アレニウス様相互変換障壁から次の最小自由エネルギー(MFE)サブ構造に再配置する時間を予測する。再配置が次のヌクレオチドの付加よりも速いと予想される場合、構造的再配置が許容される。遅い場合、遷移は許容されず、次の塩基が付加されて、新しいサブ構造の分析が実行される。最終の塩基が付加された後、最後の障壁高さは、同時転写構造から転写後MFE構造に変換する動態学的に制御されたバイオセンサーに必要な時間を予測するために使用される。5B)選抜された動態学的に制御されたバイオセンサーは、最終出力障壁の重要性を実証する。リガンドの不存在下では、低い最終障壁は、オフ状態への同時転写相互変換を示し、結果として低いバックグラウンド切断をもたらす。高い障壁は、急速な切断及び潜在的なDRの喪失をもたらす。リガンドの存在下では、高い障壁は、切断速度が構造的相互変換によって制限されることを示す。低い障壁は、相互変換が切断よりも速い時間スケールで発生し、リボザイムの内在的切断速度が制限されることを示す。両方の障壁が低い場合、非常に大きなダイナミックレンジが可能となる。
図5B-5】動態学的に制御されたバイオセンサー操作が可能となる信頼性の高い多状態同時転写折り畳みの設計を示す。5A)粗粒度の折り畳み軌道を予測するために、MFEpathは、アレニウス様相互変換障壁から次の最小自由エネルギー(MFE)サブ構造に再配置する時間を予測する。再配置が次のヌクレオチドの付加よりも速いと予想される場合、構造的再配置が許容される。遅い場合、遷移は許容されず、次の塩基が付加されて、新しいサブ構造の分析が実行される。最終の塩基が付加された後、最後の障壁高さは、同時転写構造から転写後MFE構造に変換する動態学的に制御されたバイオセンサーに必要な時間を予測するために使用される。5B)選抜された動態学的に制御されたバイオセンサーは、最終出力障壁の重要性を実証する。リガンドの不存在下では、低い最終障壁は、オフ状態への同時転写相互変換を示し、結果として低いバックグラウンド切断をもたらす。高い障壁は、急速な切断及び潜在的なDRの喪失をもたらす。リガンドの存在下では、高い障壁は、切断速度が構造的相互変換によって制限されることを示す。低い障壁は、相互変換が切断よりも速い時間スケールで発生し、リボザイムの内在的切断速度が制限されることを示す。両方の障壁が低い場合、非常に大きなダイナミックレンジが可能となる。
図5B-6】動態学的に制御されたバイオセンサー操作が可能となる信頼性の高い多状態同時転写折り畳みの設計を示す。5A)粗粒度の折り畳み軌道を予測するために、MFEpathは、アレニウス様相互変換障壁から次の最小自由エネルギー(MFE)サブ構造に再配置する時間を予測する。再配置が次のヌクレオチドの付加よりも速いと予想される場合、構造的再配置が許容される。遅い場合、遷移は許容されず、次の塩基が付加されて、新しいサブ構造の分析が実行される。最終の塩基が付加された後、最後の障壁高さは、同時転写構造から転写後MFE構造に変換する動態学的に制御されたバイオセンサーに必要な時間を予測するために使用される。5B)選抜された動態学的に制御されたバイオセンサーは、最終出力障壁の重要性を実証する。リガンドの不存在下では、低い最終障壁は、オフ状態への同時転写相互変換を示し、結果として低いバックグラウンド切断をもたらす。高い障壁は、急速な切断及び潜在的なDRの喪失をもたらす。リガンドの存在下では、高い障壁は、切断速度が構造的相互変換によって制限されることを示す。低い障壁は、相互変換が切断よりも速い時間スケールで発生し、リボザイムの内在的切断速度が制限されることを示す。両方の障壁が低い場合、非常に大きなダイナミックレンジが可能となる。
図6A】構造的再配置のための閾値を示す。6A)性能の向上(閾値をパスしたデバイスの切断速度中央値(kavg+)と閾値をパスしなかったデバイスの中央値との比率)は、予測値の最大値であり、先験的に予測された障壁の高さ(11.1kcal/mol)は、動態学的に制御されたバイオセンサーのスクリーニングに理想的であることを意味する。垂直線は、ヌクレオチド付加速度の予測障壁を表す。6B)性能の向上は、誘導切断(kavg-)に関して、パートAの逆として定義された。最大値は、実装された伸び障壁の近くにある(6.4kcal/mol)が、わずかに下回っている。これは、推定値が良好であることを示唆するが、考慮すべき追加の要因がある可能性があることを示唆する。6C)アプタマー変形のB2*の予測値は、観察された非誘導バースト分率(UBF)を部分的に説明する。6D)タイマー及び低バックグラウンド(UBF<0.1、kavg-<0.01分-1)を有する動態学的に制御されたバイオセンサーは、B1が予測される閾値未満である場合にのみ、有意なバースト相動態を表示する。
図6B】構造的再配置のための閾値を示す。6A)性能の向上(閾値をパスしたデバイスの切断速度中央値(kavg+)と閾値をパスしなかったデバイスの中央値との比率)は、予測値の最大値であり、先験的に予測された障壁の高さ(11.1kcal/mol)は、動態学的に制御されたバイオセンサーのスクリーニングに理想的であることを意味する。垂直線は、ヌクレオチド付加速度の予測障壁を表す。6B)性能の向上は、誘導切断(kavg-)に関して、パートAの逆として定義された。最大値は、実装された伸び障壁の近くにある(6.4kcal/mol)が、わずかに下回っている。これは、推定値が良好であることを示唆するが、考慮すべき追加の要因がある可能性があることを示唆する。6C)アプタマー変形のB2*の予測値は、観察された非誘導バースト分率(UBF)を部分的に説明する。6D)タイマー及び低バックグラウンド(UBF<0.1、kavg-<0.01分-1)を有する動態学的に制御されたバイオセンサーは、B1が予測される閾値未満である場合にのみ、有意なバースト相動態を表示する。
図6C】構造的再配置のための閾値を示す。6A)性能の向上(閾値をパスしたデバイスの切断速度中央値(kavg+)と閾値をパスしなかったデバイスの中央値との比率)は、予測値の最大値であり、先験的に予測された障壁の高さ(11.1kcal/mol)は、動態学的に制御されたバイオセンサーのスクリーニングに理想的であることを意味する。垂直線は、ヌクレオチド付加速度の予測障壁を表す。6B)性能の向上は、誘導切断(kavg-)に関して、パートAの逆として定義された。最大値は、実装された伸び障壁の近くにある(6.4kcal/mol)が、わずかに下回っている。これは、推定値が良好であることを示唆するが、考慮すべき追加の要因がある可能性があることを示唆する。6C)アプタマー変形のB2*の予測値は、観察された非誘導バースト分率(UBF)を部分的に説明する。6D)タイマー及び低バックグラウンド(UBF<0.1、kavg-<0.01分-1)を有する動態学的に制御されたバイオセンサーは、B1が予測される閾値未満である場合にのみ、有意なバースト相動態を表示する。
図6D】構造的再配置のための閾値を示す。6A)性能の向上(閾値をパスしたデバイスの切断速度中央値(kavg+)と閾値をパスしなかったデバイスの中央値との比率)は、予測値の最大値であり、先験的に予測された障壁の高さ(11.1kcal/mol)は、動態学的に制御されたバイオセンサーのスクリーニングに理想的であることを意味する。垂直線は、ヌクレオチド付加速度の予測障壁を表す。6B)性能の向上は、誘導切断(kavg-)に関して、パートAの逆として定義された。最大値は、実装された伸び障壁の近くにある(6.4kcal/mol)が、わずかに下回っている。これは、推定値が良好であることを示唆するが、考慮すべき追加の要因がある可能性があることを示唆する。6C)アプタマー変形のB2*の予測値は、観察された非誘導バースト分率(UBF)を部分的に説明する。6D)タイマー及び低バックグラウンド(UBF<0.1、kavg-<0.01分-1)を有する動態学的に制御されたバイオセンサーは、B1が予測される閾値未満である場合にのみ、有意なバースト相動態を表示する。
図7A】分子内トーホールド媒介性鎖置換(TMSD)が漏出を低減することを示す。7A)分子内TMSDの機構を示すイラストである。7B)安定したトーホールド標的二本鎖を形成すると予測されるデバイスは、好ましい接触を形成すると予想されないデバイスと比較して(図示せず)、非誘導バースト画分(UBF)を有意に低減させることを表示する。7C)分岐点の後のオンからオフ経路への全ての可能な遷移の障壁高さを組み合わせたB2障壁は、0.1未満のUBFを有するデバイスの閾値を表示する。7D)異なる量の予測された構造を有するタイマードメインを含有する同一の動態学的に制御されたバイオセンサーのトー標的(toe-target)距離の代表的な三次元予測である。MFEpath二次構造から発生する構造及びRNAcomposerによって生成される三次元構造(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Purzycka,K.J.et al.Chapter One-Automated 3D RNA Structure Prediction Using the RNAComposer Method for Riboswitches.in Methods in Enzymology(eds.Chen,S.-J.& Burke-Aguero,D.H.)vol.553 3-34(Academic Press,2015)。7E)パートDの閾値を下回るデバイスの場合、予測されたトー標的距離が小さいデバイスは、予測された距離が大きいデバイスよりも低いUBFを表示する。PyMolを使用して生成された三次元画像。
図7B】分子内トーホールド媒介性鎖置換(TMSD)が漏出を低減することを示す。7A)分子内TMSDの機構を示すイラストである。7B)安定したトーホールド標的二本鎖を形成すると予測されるデバイスは、好ましい接触を形成すると予想されないデバイスと比較して(図示せず)、非誘導バースト画分(UBF)を有意に低減させることを表示する。7C)分岐点の後のオンからオフ経路への全ての可能な遷移の障壁高さを組み合わせたB2障壁は、0.1未満のUBFを有するデバイスの閾値を表示する。7D)異なる量の予測された構造を有するタイマードメインを含有する同一の動態学的に制御されたバイオセンサーのトー標的(toe-target)距離の代表的な三次元予測である。MFEpath二次構造から発生する構造及びRNAcomposerによって生成される三次元構造(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Purzycka,K.J.et al.Chapter One-Automated 3D RNA Structure Prediction Using the RNAComposer Method for Riboswitches.in Methods in Enzymology(eds.Chen,S.-J.& Burke-Aguero,D.H.)vol.553 3-34(Academic Press,2015)。7E)パートDの閾値を下回るデバイスの場合、予測されたトー標的距離が小さいデバイスは、予測された距離が大きいデバイスよりも低いUBFを表示する。PyMolを使用して生成された三次元画像。
図7C】分子内トーホールド媒介性鎖置換(TMSD)が漏出を低減することを示す。7A)分子内TMSDの機構を示すイラストである。7B)安定したトーホールド標的二本鎖を形成すると予測されるデバイスは、好ましい接触を形成すると予想されないデバイスと比較して(図示せず)、非誘導バースト画分(UBF)を有意に低減させることを表示する。7C)分岐点の後のオンからオフ経路への全ての可能な遷移の障壁高さを組み合わせたB2障壁は、0.1未満のUBFを有するデバイスの閾値を表示する。7D)異なる量の予測された構造を有するタイマードメインを含有する同一の動態学的に制御されたバイオセンサーのトー標的(toe-target)距離の代表的な三次元予測である。MFEpath二次構造から発生する構造及びRNAcomposerによって生成される三次元構造(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Purzycka,K.J.et al.Chapter One-Automated 3D RNA Structure Prediction Using the RNAComposer Method for Riboswitches.in Methods in Enzymology(eds.Chen,S.-J.& Burke-Aguero,D.H.)vol.553 3-34(Academic Press,2015)。7E)パートDの閾値を下回るデバイスの場合、予測されたトー標的距離が小さいデバイスは、予測された距離が大きいデバイスよりも低いUBFを表示する。PyMolを使用して生成された三次元画像。
図7D】分子内トーホールド媒介性鎖置換(TMSD)が漏出を低減することを示す。7A)分子内TMSDの機構を示すイラストである。7B)安定したトーホールド標的二本鎖を形成すると予測されるデバイスは、好ましい接触を形成すると予想されないデバイスと比較して(図示せず)、非誘導バースト画分(UBF)を有意に低減させることを表示する。7C)分岐点の後のオンからオフ経路への全ての可能な遷移の障壁高さを組み合わせたB2障壁は、0.1未満のUBFを有するデバイスの閾値を表示する。7D)異なる量の予測された構造を有するタイマードメインを含有する同一の動態学的に制御されたバイオセンサーのトー標的(toe-target)距離の代表的な三次元予測である。MFEpath二次構造から発生する構造及びRNAcomposerによって生成される三次元構造(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Purzycka,K.J.et al.Chapter One-Automated 3D RNA Structure Prediction Using the RNAComposer Method for Riboswitches.in Methods in Enzymology(eds.Chen,S.-J.& Burke-Aguero,D.H.)vol.553 3-34(Academic Press,2015)。7E)パートDの閾値を下回るデバイスの場合、予測されたトー標的距離が小さいデバイスは、予測された距離が大きいデバイスよりも低いUBFを表示する。PyMolを使用して生成された三次元画像。
図7E】分子内トーホールド媒介性鎖置換(TMSD)が漏出を低減することを示す。7A)分子内TMSDの機構を示すイラストである。7B)安定したトーホールド標的二本鎖を形成すると予測されるデバイスは、好ましい接触を形成すると予想されないデバイスと比較して(図示せず)、非誘導バースト画分(UBF)を有意に低減させることを表示する。7C)分岐点の後のオンからオフ経路への全ての可能な遷移の障壁高さを組み合わせたB2障壁は、0.1未満のUBFを有するデバイスの閾値を表示する。7D)異なる量の予測された構造を有するタイマードメインを含有する同一の動態学的に制御されたバイオセンサーのトー標的(toe-target)距離の代表的な三次元予測である。MFEpath二次構造から発生する構造及びRNAcomposerによって生成される三次元構造(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Purzycka,K.J.et al.Chapter One-Automated 3D RNA Structure Prediction Using the RNAComposer Method for Riboswitches.in Methods in Enzymology(eds.Chen,S.-J.& Burke-Aguero,D.H.)vol.553 3-34(Academic Press,2015)。7E)パートDの閾値を下回るデバイスの場合、予測されたトー標的距離が小さいデバイスは、予測された距離が大きいデバイスよりも低いUBFを表示する。PyMolを使用して生成された三次元画像。
図8】タイマードメインが、リガンド結合ウィンドウを増加させることを概略的に示す。タイマードメインの長さが増加するにつれて、動態学的に制御されたバイオセンサーの転写にかかる時間も増加する。これにより、結合ウィンドウが閉じたときに結合したアプタマーの割合がより大きくなり、したがって、標的分子に対する感度が増加する。
図9A】より長いタイマードメインが、動態学的に制御されたバイオセンサーのリガンド感度を増加させることを示す。9A)1つの親デバイス(pAF10-0nt)から5つの機能性(DR>9)の動態学的に制御されたバイオセンサーを設計し、タイマードメインの長さ及び配列のみを変化させた。9B)正規化された出力対リガンド濃度は、標準的な1:1結合曲線に当てはまる。垂直線で示されるEC50値は、タイマーの長さが長くなるにつれて減少する。9C)5つのデバイスの適合及び予測EC50値である。エラーバーは、9Bに示される適合の標準偏差を表す)。既知の比率定数及びタイマードメインの長さから導出された予測されたEC50値は、観測された値とよく一致する。
図9B】より長いタイマードメインが、動態学的に制御されたバイオセンサーのリガンド感度を増加させることを示す。9A)1つの親デバイス(pAF10-0nt)から5つの機能性(DR>9)の動態学的に制御されたバイオセンサーを設計し、タイマードメインの長さ及び配列のみを変化させた。9B)正規化された出力対リガンド濃度は、標準的な1:1結合曲線に当てはまる。垂直線で示されるEC50値は、タイマーの長さが長くなるにつれて減少する。9C)5つのデバイスの適合及び予測EC50値である。エラーバーは、9Bに示される適合の標準偏差を表す)。既知の比率定数及びタイマードメインの長さから導出された予測されたEC50値は、観測された値とよく一致する。
図9C】より長いタイマードメインが、動態学的に制御されたバイオセンサーのリガンド感度を増加させることを示す。9A)1つの親デバイス(pAF10-0nt)から5つの機能性(DR>9)の動態学的に制御されたバイオセンサーを設計し、タイマードメインの長さ及び配列のみを変化させた。9B)正規化された出力対リガンド濃度は、標準的な1:1結合曲線に当てはまる。垂直線で示されるEC50値は、タイマーの長さが長くなるにつれて減少する。9C)5つのデバイスの適合及び予測EC50値である。エラーバーは、9Bに示される適合の標準偏差を表す)。既知の比率定数及びタイマードメインの長さから導出された予測されたEC50値は、観測された値とよく一致する。
図10】コンピュータによるスクリーニングメトリックが、動態学的に制御されたバイオセンサー活性を予測することを図示する。10A)リガンド非依存性遅延速度は、予測されるB3高さが増加するにつれて減少する。エラーバーは、適合インビトロデータのブートストラップされた95%信頼区間を表す。10-3-1未満の比率定数は、統計的有意性を伴って決定することができず、極めて低い速度の予測を制限する。10B)得られた集団の性能における動態学的に制御されたバイオセンサーのスクリーニングステップの及ぼす影響。赤い線は、集団の中央値を表し、緑の円は平均を表す。全てのスクリーニングステップは、生存配列の平均ダイナミックレンジを改善するが、全てのスクリーニングステップが実装される場合を除き、全ての手段についてp値が0.05を超える(p=0.02)。
図11A】動態学的に制御されたバイオセンサー候補のスクリーニングにおいて分析された構造状態を概略的に示す。11A)動態学的に制御されたバイオセンサー(例えば、K-A)設計の、熱力学段階における分析である。部分配列を、同時転写折り畳みを模倣して、標的構造状態を安定的に形成するそれらの能力についてスクリーニングする。11B)選択的に不活性なMFE構造を作製するために設計プロセスで利用される相補的な配列の3つの領域(トーホールド、リンカー、及びステム)である。
図11B】動態学的に制御されたバイオセンサー候補のスクリーニングにおいて分析された構造状態を概略的に示す。11A)動態学的に制御されたバイオセンサー(例えば、K-A)設計の、熱力学段階における分析である。部分配列を、同時転写折り畳みを模倣して、標的構造状態を安定的に形成するそれらの能力についてスクリーニングする。11B)選択的に不活性なMFE構造を作製するために設計プロセスで利用される相補的な配列の3つの領域(トーホールド、リンカー、及びステム)である。
図12A】動態学的に制御されたバイオセンサーのAS-RBSリボスイッチを概略的に示す。12A)本発明の動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャ内での実施に好適なリボソーム結合部位RBS)を作製するために、RBSを5’アンチセンス配列と組み合わせる。12B)候補のAS-RBSリボスイッチに組み込まれると、標的分子が存在しない場合には高い翻訳が得られ、標的分子が結合した場合には低い翻訳が得られる。12C)転写停止をタイマードメインに組み込むことにより、結合ウィンドウの持続時間を劇的に増加させ、標的分子に対する感度を増加させる。
図12B】動態学的に制御されたバイオセンサーのAS-RBSリボスイッチを概略的に示す。12A)本発明の動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャ内での実施に好適なリボソーム結合部位RBS)を作製するために、RBSを5’アンチセンス配列と組み合わせる。12B)候補のAS-RBSリボスイッチに組み込まれると、標的分子が存在しない場合には高い翻訳が得られ、標的分子が結合した場合には低い翻訳が得られる。12C)転写停止をタイマードメインに組み込むことにより、結合ウィンドウの持続時間を劇的に増加させ、標的分子に対する感度を増加させる。
図12C】動態学的に制御されたバイオセンサーのAS-RBSリボスイッチを概略的に示す。12A)本発明の動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャ内での実施に好適なリボソーム結合部位RBS)を作製するために、RBSを5’アンチセンス配列と組み合わせる。12B)候補のAS-RBSリボスイッチに組み込まれると、標的分子が存在しない場合には高い翻訳が得られ、標的分子が結合した場合には低い翻訳が得られる。12C)転写停止をタイマードメインに組み込むことにより、結合ウィンドウの持続時間を劇的に増加させ、標的分子に対する感度を増加させる。
図13A】動態学的に制御されたバイオセンサーの高感度AS-RBSリボスイッチの特徴付けを図示する。13A)Theo-48 AS-RBSリボスイッチは、応答として著しい倍数変化を有し、これは、全ての転写されたバイオセンサーの少なくとも90%が標的分子に結合することができることを意味する。加えて、それは非常に低いEC50を有する。13B)Theo-48のEC50は、細菌中の他の全てのシス作用テオフィリン応答性リボスイッチよりも実質的に低い。EC50値は、Feng、Mishler、Ogawa、Suess、Wachsmuth、及びWielandとして同定されたリボスイッチについて明示的に提示されておらず、むしろ提示された滴定データから推定されたことに留意されたい。
図13B】動態学的に制御されたバイオセンサーの高感度AS-RBSリボスイッチの特徴付けを図示する。13A)Theo-48 AS-RBSリボスイッチは、応答として著しい倍数変化を有し、これは、全ての転写されたバイオセンサーの少なくとも90%が標的分子に結合することができることを意味する。加えて、それは非常に低いEC50を有する。13B)Theo-48のEC50は、細菌中の他の全てのシス作用テオフィリン応答性リボスイッチよりも実質的に低い。EC50値は、Feng、Mishler、Ogawa、Suess、Wachsmuth、及びWielandとして同定されたリボスイッチについて明示的に提示されておらず、むしろ提示された滴定データから推定されたことに留意されたい。
図14A】停止配列を図示し、そのコンテクストは停止部位の活性にとって重要である。14A)停止含有タイマードメインを修飾すると、標的分子に対する活性化比率及び感度が低減する。14B)全ての変異又は欠失について、EC50値が増加する。興味深いことに、これは特にThiC_Onlyに当てはまり、それには停止部位が含有されているが、隣接する配列は含有されていない。これは、折り畳みのコンテクストが効果的な転写の停止に重要であることを示唆している。
図14B】停止配列を図示し、そのコンテクストは停止部位の活性にとって重要である。14A)停止含有タイマードメインを修飾すると、標的分子に対する活性化比率及び感度が低減する。14B)全ての変異又は欠失について、EC50値が増加する。興味深いことに、これは特にThiC_Onlyに当てはまり、それには停止部位が含有されているが、隣接する配列は含有されていない。これは、折り畳みのコンテクストが効果的な転写の停止に重要であることを示唆している。
図15】ガイドRNA(gRNA)の適切な折り畳み対誤った折り畳みに基づく、CRISPR活性の機能性結果を概略的に示す。ガイドRNAの機能不全は、CRISPR活性を劇的に低減又は完全に妨害することができる。誤った折り畳みは、各ガイドに固有の約20塩基の標的配列とgRNA構築物の残りとの間の相互作用から生じる。
図16】発現したscRNA構築物の正確な折り畳み、したがって高い活性を予測し、かつ確実にするためのWayfinderアルゴリズムの適用を概略的に示す。
図17】所望の活性を有するgRNAの予測を生成するために、gRNA構造制約、CRISPR適用の考慮事項、及びスペーサ/活性目的関数を含む入力データを処理するためのWayfinderアルゴリズムの実装を概略的に示す。
図18A】折り畳み障壁が、CRISPRaに対するスペーサ配列の影響を予測することを示す。18A)折り畳み障壁が小さくなるにつれて、scRNAは、複雑な形成に関与できるCas9適合コンフォメーションに、より迅速に折り畳まれることができる。18B)20塩基のスペーサ配列を変化させた30のscRNAを試験した。コンピュータ的に予測された折り畳み障壁高さは、scRNA活性を正確に予測する。より小さな折り畳み障壁を有するscRNAを表すドットを選択して、後続して使用するための合成CRISPRaプロモーターを操作した。
図18B】折り畳み障壁が、CRISPRaに対するスペーサ配列の影響を予測することを示す。18A)折り畳み障壁が小さくなるにつれて、scRNAは、複雑な形成に関与できるCas9適合コンフォメーションに、より迅速に折り畳まれることができる。18B)20塩基のスペーサ配列を変化させた30のscRNAを試験した。コンピュータ的に予測された折り畳み障壁高さは、scRNA活性を正確に予測する。より小さな折り畳み障壁を有するscRNAを表すドットを選択して、後続して使用するための合成CRISPRaプロモーターを操作した。
図19】scRNA構築物を用いたgRNAの機能性を予測するWayfinderの能力を試験するためのアッセイを概略的かつ図示的に示す。アッセイ設計を使用して、図18A及び18Bに示されるデータを生成した。Wayfinder設計のgRNAは、ランダムなgRNA配列を有する構築物と比較して、有意かつ一貫して活性の上昇を示した。
図20】Wayfinderアルゴリズムが、切断されたscRNAの活性を予測することができることを図示する。スペーサ配列の5’末端の切断は、その標的DNAへのCRISPRa複合体の結合の安定性を低下させることによって、CRISPRaレベルの低下をもたらす(左パネルのイラストを参照)。Wayfinderアルゴリズムは、動態学的障壁を有する標的に結合するRNAの正味結合エネルギーを組み込むことによって、切断されたスペーサ配列を有するscRNAの活性を予測することができる。
図21-1】他の一般的なガイド予測ツールとのWayfinderアルゴリズムの比較を示す。Wayfinderは、CRISPRaデータセットに適用すると、他の一般的なガイドRNA活性予測ツールよりも大幅に優れている。他のほとんどのツールは、大規模な真核生物遺伝子編集データセットで訓練されている。
図21-2】他の一般的なガイド予測ツールとのWayfinderアルゴリズムの比較を示す。Wayfinderは、CRISPRaデータセットに適用すると、他の一般的なガイドRNA活性予測ツールよりも大幅に優れている。他のほとんどのツールは、大規模な真核生物遺伝子編集データセットで訓練されている。
図21-3】他の一般的なガイド予測ツールとのWayfinderアルゴリズムの比較を示す。Wayfinderは、CRISPRaデータセットに適用すると、他の一般的なガイドRNA活性予測ツールよりも大幅に優れている。他のほとんどのツールは、大規模な真核生物遺伝子編集データセットで訓練されている。
図22】より高い予測品質及び低減された検証実験に起因する、CRISPRアプリケーションの正確な実装をもたらす、Wayfinderに基づく予測によって提供される得られた効果を図示する。
図23】複雑な系のフォワードエンジニアリングが可能となる正確なモデル予測を示す。複数の新規scRNAが事前の検証なしに機能する必要がある複雑な系をフォワードエンジニアリングするためには、非常に正確な予測が必要となる。Wayfinderは、大幅に強化された予測能力を提供して、多重化された用途で必要な実験を大幅に削減する。
図24図19と同様に、正確なモデル予測が複雑な系のフォワードエンジニアリングを可能とすることを概略的かつ図示的に示す。ここで、Wayfinderアルゴリズムを使用して最適化されたscRNA、及びWayfinderによって最初にスクリーニング又は設計されたscRNAは、一貫して高いCRISPRa活性を示す。比較において、ランダムscRNAは、活性が70%の活性閾値を下回ることを頻繁に示す。
図25】scRNA構築物による標的化のために最適化されたプロモーターを有する遺伝子発現カセットを含む、CRISPRa標的の一実施形態の概略図である。scRNA構築物は、その3’末端にMS2アプタマーを付加することによって修飾されたgRNAである。CRISPRa複合体の結合時に、プロモーターが活性化され、この場合はレポーター遺伝子mRFP1の転写が開始される。
図26A】scRNA構築物中のガイドRNA及び標的発現カセットに操作された対応する配列が、遺伝子発現の高度に特異的な誘導をもたらすことを示す。26A)アッセイ設計の概略図である。26B)遺伝子発現の特異的誘導をもたらす、オンターゲットCRISPRa対オフターゲットCRISPRaのグラフ表示である。
図26B】scRNA構築物中のガイドRNA及び標的発現カセットに操作された対応する配列が、遺伝子発現の高度に特異的な誘導をもたらすことを示す。26A)アッセイ設計の概略図である。26B)遺伝子発現の特異的誘導をもたらす、オンターゲットCRISPRa対オフターゲットCRISPRaのグラフ表示である。
図27A】scRNA標的部位の配列を変更することによって、対応するscRNA構築物のみに応答するように、CRISPRaプロモーター領域を変化させること、すなわち、プログラムすることができることを示す。
図27B】scRNA標的部位の配列を変更することによって、対応するscRNA構築物のみに応答するように、CRISPRaプロモーター領域を変化させること、すなわち、プログラムすることができることを示す。
図28A】CRISPRaが、scRNA標的部位の正確な位置に対して感受性であることを示す。28A)CRISPRaは、転写開始部位(TSS)から-60~-100の間の10~11塩基ごとにピーク活性を有する周期的な位置依存性を表示する。レポーター遺伝子は、J1-J23117-mRFP1レポーターの-35領域の上流に0~12塩基を挿入することによって構築した。元のプロモーターの非テンプレート鎖上のTSSから-61、-71、-81、-91、-101位を有する5つのscRNA部位(J102、J104、J106、J108、J110)を標的にした。このようにして、完全な-61~-113の領域を単一の塩基分解能でカバーすることができる。カラーコーディング(陰影)は、12塩基のウィンドウを横切ってシフトされた同じ標的部位のデータを示す。28B)オフターゲットscRNAを使用した場合のシフト塩基を有するレポーターのベースライン発現(J206)である。灰色の領域は、レポーターシリーズのベースラインの範囲を表す。
図28B】CRISPRaが、scRNA標的部位の正確な位置に対して感受性であることを示す。28A)CRISPRaは、転写開始部位(TSS)から-60~-100の間の10~11塩基ごとにピーク活性を有する周期的な位置依存性を表示する。レポーター遺伝子は、J1-J23117-mRFP1レポーターの-35領域の上流に0~12塩基を挿入することによって構築した。元のプロモーターの非テンプレート鎖上のTSSから-61、-71、-81、-91、-101位を有する5つのscRNA部位(J102、J104、J106、J108、J110)を標的にした。このようにして、完全な-61~-113の領域を単一の塩基分解能でカバーすることができる。カラーコーディング(陰影)は、12塩基のウィンドウを横切ってシフトされた同じ標的部位のデータを示す。28B)オフターゲットscRNAを使用した場合のシフト塩基を有するレポーターのベースライン発現(J206)である。灰色の領域は、レポーターシリーズのベースラインの範囲を表す。
図29】CRISPRaがプロモーター強度に対して感受性であることを図示する。プロモーターは、非テンプレート鎖3上に、示されるJ231NN最小プロモーターのTSSから-81でのscRNA標的部位を含有する。示されるグラフは、オンターゲット又はオフターゲットscRNAを発現する株の蛍光/OD600を示す。
図30】CRISPRa活性が、scRNA標的と-35領域との間の様々な配列組成を有するプロモーター間で著しく異なることを図示する。ほとんどのバーは、個々のコロニーからの一晩培養の蛍光/OD600を表す。濃いバー(右矢印で示される)は、J306 scRNAを用いてCRISPRaによって活性化される、J3-J23117-sfGFPレポーターを発現する株の蛍光/OD600を表す。左矢印によって示されるバーは、オフターゲット部位(J206)を標的とするCRISPRaを有するJ3-J23117-sfGFPレポータープラスミドを発現する陰性対照を表す。
図31A】dxCas9(3.7)が、代替のPAMを認識することによって、標的化可能なscRNA標的部位の範囲を拡大することを示す。dxCas9(3.7)を有するCRISPRaは、AGA、AGC、AGT、CGA、CGC、CGT、GGA、GGC、GGT、TGA、TGC、TGT、GAA、GAT、CAA配列を有する非NGG PAM部位で活性を表示した。非NGG PAM部位でのdxCas9(3.7)を用いたCRISPRa活性は、一般に、AGG PAM部位(188倍の活性化)と比較して低かった(scRNAを含まない対照と比較して、6倍~89倍の活性化)。Sp-dCas9はまた、AGA、CGA、GGA、GGC、GGT、TGA配列を有する非NGG PAM部位において中程度のCRISPRa活性を表示した。レポータープラスミドは、J3-J23117-mRFP1レポーターにおけるJ306標的のAGG PAM部位を、ヒト細胞におけるdxCas9(3.7)によって認識されると以前に報告された代替のPAM配列に置き換えることによって構築した(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Hu,J.H.et al.Evolved Cas9 variants with broad PAM compatibility and high DNA specificity.Nature 556,57-63(2018))。(-)記号は、元のレポーターをAGG PAMで発現させ、CRISPRa成分をSp-dCas9で発現させ、活性化ドメインを発現させ、scRNAを発現させない対照を示す。
図31B】dxCas9(3.7)が、代替のPAMを認識することによって、標的化可能なscRNA標的部位の範囲を拡大することを示す。dxCas9(3.7)を有するCRISPRaは、AGA、AGC、AGT、CGA、CGC、CGT、GGA、GGC、GGT、TGA、TGC、TGT、GAA、GAT、CAA配列を有する非NGG PAM部位で活性を表示した。非NGG PAM部位でのdxCas9(3.7)を用いたCRISPRa活性は、一般に、AGG PAM部位(188倍の活性化)と比較して低かった(scRNAを含まない対照と比較して、6倍~89倍の活性化)。Sp-dCas9はまた、AGA、CGA、GGA、GGC、GGT、TGA配列を有する非NGG PAM部位において中程度のCRISPRa活性を表示した。レポータープラスミドは、J3-J23117-mRFP1レポーターにおけるJ306標的のAGG PAM部位を、ヒト細胞におけるdxCas9(3.7)によって認識されると以前に報告された代替のPAM配列に置き換えることによって構築した(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Hu,J.H.et al.Evolved Cas9 variants with broad PAM compatibility and high DNA specificity.Nature 556,57-63(2018))。(-)記号は、元のレポーターをAGG PAMで発現させ、CRISPRa成分をSp-dCas9で発現させ、活性化ドメインを発現させ、scRNAを発現させない対照を示す。
図32A】設計された標的部位を有する合成プロモーターを標的とするCRISPRaが、独立した特異的制御を示すことを示す。32A)アッセイ設計の概略図である。32B)特異的シグナルを示すグラフは、操作されたプロモーター標的配列に特異的なgRNAを有するscRNAに曝露された場合にのみ達成される。
図32B】設計された標的部位を有する合成プロモーターを標的とするCRISPRaが、独立した特異的制御を示すことを示す。32A)アッセイ設計の概略図である。32B)特異的シグナルを示すグラフは、操作されたプロモーター標的配列に特異的なgRNAを有するscRNAに曝露された場合にのみ達成される。
図33-1】5’末端からのマッチするscRNAの修飾によって、各プロモーターについて遺伝子発現が調整され得ることを概略的かつ図示的に示す。
図33-2】5’末端からのマッチするscRNAの修飾によって、各プロモーターについて遺伝子発現が調整され得ることを概略的かつ図示的に示す。
図34A】複数のCRISPRa標的レポーター遺伝子の遺伝子発現の独立した調整を示す。34A)3つの異なる標的レポーター遺伝子に対する4つの調整された発現レベルの全ての可能な組み合わせを有するライブラリscRNAの作製の概略図である。34B)34Aに示されるscRNAのライブラリを使用する、3つの異なるレポーター遺伝子の4つの調整された発現レベルの全ての可能な組み合わせからの特定のレポーター蛍光レベルを図示する。
図34B-1】複数のCRISPRa標的レポーター遺伝子の遺伝子発現の独立した調整を示す。34A)3つの異なる標的レポーター遺伝子に対する4つの調整された発現レベルの全ての可能な組み合わせを有するライブラリscRNAの作製の概略図である。34B)34Aに示されるscRNAのライブラリを使用する、3つの異なるレポーター遺伝子の4つの調整された発現レベルの全ての可能な組み合わせからの特定のレポーター蛍光レベルを図示する。
図34B-2】複数のCRISPRa標的レポーター遺伝子の遺伝子発現の独立した調整を示す。34A)3つの異なる標的レポーター遺伝子に対する4つの調整された発現レベルの全ての可能な組み合わせを有するライブラリscRNAの作製の概略図である。34B)34Aに示されるscRNAのライブラリを使用する、3つの異なるレポーター遺伝子の4つの調整された発現レベルの全ての可能な組み合わせからの特定のレポーター蛍光レベルを図示する。
図35A】選択される代謝物のバイオ産生を増強する細胞の発達のための、リガンド応答性バイオセンサー及び標的発現カセットの実装を概略的に示す。35A)所望のバイオ産物の産生が高い操作された細胞と、バイオ産物の産生が低い操作された細胞との間の差異を示す図。35B)所望のバイオ産物のための遺伝子をコードしたバイオセンサーを利用することによって、細胞の色などの容易に検出可能なシグナルに基づいて、最も生産的な生合成経路改変体を迅速に同定することが可能となる。
図35B】選択される代謝物のバイオ産生を増強する細胞の発達のための、リガンド応答性バイオセンサー及び標的発現カセットの実装を概略的に示す。35A)所望のバイオ産物の産生が高い操作された細胞と、バイオ産物の産生が低い操作された細胞との間の差異を示す図。35B)所望のバイオ産物のための遺伝子をコードしたバイオセンサーを利用することによって、細胞の色などの容易に検出可能なシグナルに基づいて、最も生産的な生合成経路改変体を迅速に同定することが可能となる。
図36A】細菌CRISPRaを調節するための動態学的に制御されたリガンド応答性scRNA(LR-scRNA)の操作を示す。36A)scRNA活性は、結合能のあるコンフォメーションを迅速に採用するscRNAの能力に依存する。36B)5’配列の不存在に対応するscRNAコンフォメーションは、構造ベースのスイッチスクリーニングの目的として使用される。36C)LR-scRNA候補は、標的分子の不存在下で、scRNAがCas9に結合することができないコンフォメーションを採用するように設計される。標的分子の存在下では、scRNA成分は、単離されているように折り畳まれることができる。
図36B】細菌CRISPRaを調節するための動態学的に制御されたリガンド応答性scRNA(LR-scRNA)の操作を示す。36A)scRNA活性は、結合能のあるコンフォメーションを迅速に採用するscRNAの能力に依存する。36B)5’配列の不存在に対応するscRNAコンフォメーションは、構造ベースのスイッチスクリーニングの目的として使用される。36C)LR-scRNA候補は、標的分子の不存在下で、scRNAがCas9に結合することができないコンフォメーションを採用するように設計される。標的分子の存在下では、scRNA成分は、単離されているように折り畳まれることができる。
図36C】細菌CRISPRaを調節するための動態学的に制御されたリガンド応答性scRNA(LR-scRNA)の操作を示す。36A)scRNA活性は、結合能のあるコンフォメーションを迅速に採用するscRNAの能力に依存する。36B)5’配列の不存在に対応するscRNAコンフォメーションは、構造ベースのスイッチスクリーニングの目的として使用される。36C)LR-scRNA候補は、標的分子の不存在下で、scRNAがCas9に結合することができないコンフォメーションを採用するように設計される。標的分子の存在下では、scRNA成分は、単離されているように折り畳まれることができる。
図37A】操作されたリガンド応答性scRNAが、テオフィリンに応答することができることを示す。37A)転写停止部位を含有するテオフィリン応答性LR-scRNAは、テオフィリンに対する様々な応答を示す。37B)Theo1 D5は、以前に操作されたAS-RBSリボスイッチ構築物と同じ低いEC50を表示する。
図37B】操作されたリガンド応答性scRNAが、テオフィリンに応答することができることを示す。37A)転写停止部位を含有するテオフィリン応答性LR-scRNAは、テオフィリンに対する様々な応答を示す。37B)Theo1 D5は、以前に操作されたAS-RBSリボスイッチ構築物と同じ低いEC50を表示する。
図38】リガンド応答性scRNAバイオセンサー内の停止部位の包含が、AS-RBSリボスイッチ構築物と同様に、得られるシグナルの感度を向上させることを図示する。
図39】本開示の様々な態様による、動態学的に制御された機能性RNA分子を設計するための方法の、非限定的な例示的な実施形態を示す。
図40】動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する、1つ以上の折り畳まれた構造を予測するための手順の、非限定的な例示的な実施形態を示す。手順4000では、制約された折り畳み分析が実施される。手順4000は、図39のサブルーチンブロック3906での使用に好適な手順の非限定的な例である。
図41】動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する、1つ以上の折り畳まれた構造を予測するための手順の、非限定的な例示的な実施形態を例示する。手順4100では、2つ以上の同時転写折り畳み経路が比較される。手順4100は、図39のサブルーチンブロック3906での使用に好適な手順の非限定的な例である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示は、本発明者らによる、分子感知用途にわたって有用な、膨大な配列の独自のバイオセンサーを製造するために実装され得る、モジュラー式、調整可能、及び動態学的に制御されたバイオセンサーのための設計プラットフォームの開発に基づく。本発明者らは、設計の一環として、レポーター機能のためのガイドRNA及び合成プロモーターを設計及び最適化するアプローチを実装したが、他のCRISPRアプリケーションでも実装することができる。
【0036】
動態学的に制御されたRNAバイオセンサーが、本明細書に開示される。本明細書で使用される場合、「動態学的に制御されたRNAバイオセンサー」という用語は、標的リガンドを感知できる(すなわち、検出を示すことができる)RNA分子を指す。動態学的に制御されたRNAバイオセンサーの機能性特徴は、活性転写プロセス中に作製される三次元折り畳みコンフォメーションによって付与される。そのコンフォメーション、及びそれによって付与される機能性は、標的リガンドの存在又は不存在によって影響される。したがって、「動態学的に制御された」という用語は、(例えば、コードされたテンプレート分子に作用するRNAポリメラーゼの関与を伴って)積極的に転写され、動的プロセスにおいて伸長されるRNA分子のエレメント、及びこのプロセス中に特異的に生じる折り畳みを指す。動態学的に制御されたRNAバイオセンサーは、多様なセンシング(アプタマー)及び出力ドメインのモジュラーカップリングを可能にし、無数の潜在的な標的分子の所望の濃度に応答してシグナルを生成する能力をもたらすため、有用である。更に、動態学的に制御されたRNAバイオセンサーの感度は、センシングドメイン(アプタマー)が転写中、並びに出力ドメインの転写及び折り畳み前に利用可能である時間の量によって判定される。したがって、動態学的に制御されたRNAバイオセンサーの感度は、設計された構築物の転写に必要な時間の操作によって定量的に調整され得る。これは、合理的な操作を困難にする過剰な一時的で定義されていない構造状態の間の複雑な平衡に依存する熱力学的に制御されたRNAバイオセンサーとは、明らかに対照的である。
【0037】
動態学的に制御されたRNAバイオセンサーの信頼性及び再現性のある設計を実装するためには、インビトロRNA分析における収束的な専門知識、RNA同時転写折り畳み軌道のインシリコ予測、及び細胞内の生体分子スイッチ機能のインビボ実装/分析が必要であった。以下でより詳細に記載されるように、本発明者らは、開示される生体分子スイッチが同時転写RNA折り畳みを利用することが可能となる新規の分子アーキテクチャを開発した。このアーキテクチャは、入力ドメインの重要な領域への配列相補性の使用と組み合わされ、ランダムな配列検索よりもはるかに高い機能性を有するという可能性を有する候補スイッチのインシリコライブラリを作成するための効率的でエレガントな戦略をもたらした。本発明者らはまた、基礎となる定量的動態学的パラメータへのアクセスを可能にし、モジュラーで調整可能な設計が可能となる方法で、同時転写折り畳みを予測するためのアルゴリズムを開発した。
【0038】
図2は、リガンドの存在に応じて、活性(「オン」)及び不活性(「オフ」)スイッチ状態のRNAバイオセンサー設計及び結果として生じるアーキテクチャの例示的な実施形態を概略的に示す。リガンド依存性活性を付与するためには、2つの異なる構造、すなわち、センサードメイン(アプタマードメインを含む)及び出力ドメインの両方が正しく折り畳まれ、それらが孤立しているように機能することができる「オン」状態と、いずれのドメインも正しく折り畳まれておらず、したがって、非機能性である「オフ」状態と、がコードされていなければならない。安定化エネルギーを「オフ」状態に提供する塩基対相互作用は、不変アプタマー配列に隣接するオーバーハング、ステム、及びリンカー配列を含むセンサードメイン内でコードされる。オーバーハング、ステム、及びリンカー配列は、可変長(例えば、0~約15塩基)を有することができる。オーバーハング、ステム、及びリンカー配列の異なる長さを有するバイオセンサーの実施形態を、「実施例1」及び「実施例2」に例示する。それらの配列は、アプタマー配列内のサブ領域、及び出力ドメインの部分配列とのハイブリダイゼーションを可能にし、その結果、それらは、オフ状態内で1つの連続的ならせんを形成する。例えば、命名された領域(オーバーハング、ステム、リンカー)の配列は、アプタマー配列内の対応するサブ領域の配列、及び出力ドメインの部分配列の逆相補体又はほぼ逆相補体とすることができる。例えば、オーバーハング及びステム配列は、出力ドメインの5’末端内の配列の逆相補とすることができ、これにより、ともに、それらは、出力ドメインの5’側のn塩基に結合し、ここで、nは、オーバーハング及びステムドメインの長さの合計である。リンカー配列は、アプタマードメインの不変領域(本明細書では、リンカー標的配列とも称される)の5’末端の逆相補体とすることができる。
【0039】
本明細書で提示される議論は、一般に、それぞれ、リガンドの存在下及び非存在下での折り畳みから生じる「オン」及び「オフ」状態のバイナリ状態のコンテクストで示されるが、構成を反転させることもできることが理解されるであろう。以下でより詳細に説明される特徴及び要素は、それぞれ、リガンドの非存在及び存在に基づいて「オン」及び「オフ」状態をもたらすように、又はスワップされて、リガンド結合又はリガンド結合の非存在に依存して、「オン」/「オン」、「オフ」/「オフ」、「オン」/「オフ」、及び「オフ」/「オン」の構成が可能となるように構成することができる。かかる反転の実施形態もまた、本開示に包含される。
【0040】
図1及び以下の実施例1の開示を参照すると、開示されるモジュラー分子構造は、同じルール及び定量的スクリーニングメトリックを使用して、様々な出力ドメイン(リボザイム、リボソーム結合部位、CRISPR gRNAなど)をRNAアプタマードメインの結合状態によって制御することが可能となる。オーバーハング、ステム、及びリンカー配列は、センサー及び出力ドメインの特定の部分を対象とする。それらの配列は、アプタマー及び出力ドメイン内の配列の逆相補であり得、標的分子(リガンド)による安定化の不存在下で、2つのドメインが協調的に誤って折り畳む熱力学的インセンティブを提供する。それらの長さは、熱力学的に2つのドメインの構造を結合するように体系的に変化させることができるが、依然として標的リガンドからのエネルギーが結合時に正しい構造を確保することが可能となる。これにより、スイッチングの熱力学的要件を満たすスイッチ候補の非常に効率的なコンピュータによる検索が可能となる(動態学的要件は後でスクリーニングされる)。
【0041】
2つの状態間の急速な相互変換に依存する熱力学的バイオセンサーとは異なり、開示される動態学的に制御されたセンサーは、短い同時転写結合ウィンドウ中にのみ標的リガンドを感知するように設計されている。RNAが5’末端から転写されるとき、まず、アプタマーは、標的リガンドが会合することが可能となることによって、結合ウィンドウを折り畳み、かつ開く。次いで、タイマードメイン(以下に記載)が転写され、誤った折り畳みに対する熱力学的インセンティブを提供することなく、結合ウィンドウの持続時間が増加する。次に、リンカー配列及び出力ドメインの一部分が転写される。一例示的な実施形態では、この時点で、RNA分子は、構造的に、アプタマーも出力ドメインも機能性のない不活性なコンフォメーションに再配置する。これは、上記の「オフ/オフ」構成である。しかしながら、標的リガンドが結合ウィンドウ中に結合している場合、それは、正しく折り畳まれたアプタマーを含有するコンフォメーションを熱力学的に安定化し、出力ドメインの残りの部分がその機能性コンフォメーションに折り畳まれることが可能となる。これは、上記の「オン/オン」構成である。上述のように、他の実施形態は、「オン/オフ」又は「オフ/オン」構成を提供するために、この構成を反転させる。例えば、転写されているときにアプタマー又はセンサードメインに結合するリガンドがない場合、出力ドメインは、転写されると折り畳まれ、活性又は機能性(すなわち、「オン」)出力ドメインをもたらす。これは、上記の「オフ/オン」構成である。リガンドが出力ドメインの転写前又は転写中にアプタマー又はセナードメインに結合する場合、非機能性な出力ドメインをもたらす構成に(誤って)折り畳む熱力学的インセンティブが存在する。これは、上記の「オン/オフ」構成である。これらの実施形態及びそれらの構成のいずれにおいても、結合ウィンドウを出力活性から時間的に分離すること、大きな活性化比、並びに標的リガンドに対する高い及び調整可能な感度が、アクセス可能になる。
【0042】
開示されるRNAバイオセンサーの動態学的特性は、アプタマーが正しく折り畳まれ、その標的リガンドに結合するために利用可能である有限のリガンド結合ウィンドウを定義する。結合ウィンドウの期間を延長することによって、より多くの標的リガンドが所与の濃度で結合する。結合ウィンドウの閉鎖時に標的リガンドに結合するスイッチの割合は、内在性リガンド-アプタマー会合速度、標的リガンドの濃度、及び結合ウィンドウの持続時間の産物によって決定されるため、結合ウィンドウの持続時間の増加は、標的リガンドの感度の比例した増加をもたらす。この結果、タイマードメインが長くなったときの動態学的に制御されたバイオセンサーの感度の定量的に予測可能な増加がもたらされる。タイマードメインの配列が長いほど、結合ウィンドウが長くなる。しかしながら、いかなる特定の理論にも拘束されることなく、タイマードメインが長くなるにつれて、折り畳みがより予測しにくくなる可能性がある。過度に長いタイマードメインの異常な折り畳みを回避するために、タイマードメインの配列長を顕著に増加させることなく結合ウィンドウを有意に増加させる他の戦略を実装することができる。例えば、新規のRNA操作の取り組みにおいて実装されたことがない転写停止部位は、タイマードメインの長さを制御可能なままに維持しながら、結合ウィンドウの持続時間を顕著に増加させるような追加の戦略を提供し得る。
【0043】
本発明は、リガンド結合アプタマードメインを入力として採用し、細胞内代謝物の濃度を検出するために使用され得る遺伝的RNAバイオセンサーを出力する、計算的及び実験的パイプラインを提供する。第1に、分子アーキテクチャにおける3つの可変領域(例えば、オーバーハング、ステム、及びリンカー配列)の組み合わせ改変は、RNA折り畳みシミュレーションを使用してスクリーニングすることができる候補配列の多様なインシリコプールを作製する。第2に、制約された折り畳みを利用して熱力学シミュレーションを実行し、適切なスイッチ状態が所望のエネルギーで確実に存在するようにすることができる。次に、所望の状態が関連する細胞タイムスケールでアクセス可能であることを確実にする同時転写折り畳みシミュレーションを実行することができる。最後に、転写停止部位の有無において、タイマードメインを挿入し、細胞内のデバイスを試験して応答を検証することができる。
【0044】
前述によれば、一態様では、本開示は、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物を提供する。5’側から3’側に記載される、バイオセンサー構築物は、目的のリガンドに特異的に結合するセンサードメイン、及び活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに検出可能な出力シグナルを調節するように構成された出力ドメインを含む。出力ドメインは、センサードメインが目的のリガンドに結合されているかどうかに応じて、機能性(「オン」)又は非機能性「オフ」)構成のいずれかに折り畳まれる。いくつかの実施形態では、出力ドメインは、センサードメインが目的のリガンドに結合されたときに活性なコンフォメーションに折り畳まれる(「オン/オン」構成)。対照的に、出力ドメインは、センサードメインが目的のリガンドに結合していないときに不活性なコンフォメーションに折り畳まれる(「オフ/オフ」構成)。他の実施形態では、構成は、センサードメインが目的のリガンドに結合されたときに出力ドメインが不活性なコンフォメーションに折り畳まれる(「オン/オフ」構成)、又は代替的に、センサードメインが目的のリガンドに結合されないときに出力ドメインが活性なコンフォメーションに折り畳まれる(「オフ/オン」構成)。
【0045】
いくつかの実施形態では、センサードメインは、5’側から3’側に向かって、オーバーハング配列、アプタマードメイン、及びリンカー配列のうちの少なくとも2つを含む。アプタマードメイン自体は、ステム配列、リンカー標的、アプタマー部分配列、及びステム標的配列を含む。出力ドメインは、5’側から3’側に向かって、ステム標的配列、オーバーハング標的配列、及び出力部分配列を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、センサードメインのオーバーハング配列は、出力ドメインのオーバーハング標的配列の少なくとも一部分の逆相補体である。いくつかの実施形態では、センサードメインのオーバーハング配列は、出力ドメインのオーバーハング標的配列の少なくとも実質的な部分(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%)の逆相補体である。追加又は代替の実施形態では、センサードメインのステム配列は、センサードメインのステム標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であり、かつ、出力ドメインのステム標的配列の少なくとも一部分の逆相補体である。いくつかの実施形態では、センサードメインのステム配列は、センサードメインのステム標的配列の少なくとも実質的な部分(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%)の逆相補体であり、かつ、出力ドメインのステム標的配列の少なくとも実質的な部分(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%)の逆相補体である。追加又は代替の実施形態では、リンカー標的配列は、アプタマー部分配列の少なくとも一部分の逆相補体であり、かつ、リンカー配列の少なくとも一部分の逆相補体でもある。いくつかの実施形態では、リンカー標的配列は、アプタマー部分配列の少なくとも実質的な部分(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は全て)の逆相補体であり、かつ、リンカー配列の少なくとも実質的な部分(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は全て)の逆相補体である。これらの実施形態は、センサードメインのオーバーハング配列が、オーバーハング標的配列の少なくとも一部分(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は全てなどの実質的な部分)の逆相補体であり、センサードメインのステム配列が、センサードメインのステム標的配列の少なくとも一部分(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は全てなどの実質的な部分)の逆相補体であり、かつ、出力ドメインのステム標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であり、リンカー標的配列が、少なくとも一部分(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は全てなどの実質的な部分)の逆相補体である更なる実施形態を含む任意の組み合わせで存在することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、リンカー標的配列の少なくとも一部分の逆相補体である、アプタマー部分配列の一部分は、アプタマー部分配列の不連続部分である。「オン」又は活性折り畳みコンフォメーションでは、例えば、目的のリガンドの結合に起因して、アプタマー部分配列の不連続部分は、アプタマー部分配列内のリガンド結合官能性に寄与するヘアピンドメインなどの二次構造を形成する中間配列を有する、リンカー標的配列の異なる部分に逆相補性を有する2つの配列を含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、センサードメインが目的のリガンドに結合しているとき、センサードメインのステム配列は、センサードメインのステム標的配列にハイブリダイズし、それによって、出力ドメインの活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。あるいは、又はそれに加えて、いくつかの実施形態では、リンカー標的配列は、アプタマー部分配列の部分にハイブリダイズし、それによって、出力ドメインの活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。
【0049】
いくつかの実施形態では、上記で示されるハイブリダイゼーション事象は、センサードメインの転写されるときのコンフォメーションによって促進され、それはセンサードメインにリガンドが結合するときに安定化される。これにより、活性な又は「オン」のコンフォメーションが得られ、出力ドメインの正しい折り畳みが得られる。リガンドが存在しない場合、細長い転写産物は異なるコンフォメーションを採用し、センサードメインのコンポーネントが代わりに出力ドメインとハイブリダイズすることを可能にし、不活性又は「オフ」コンフォメーションをもたらす。例えば、センサードメインが目的のリガンドに結合していないとき、いくつかの実施形態では、センサードメインのオーバーハング配列は、出力ドメインのオーバーハング標的配列にハイブリダイズし、それによって、出力ドメインの不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。追加的又は代替的に、センサードメインが目的のリガンドに結合していないとき、センサードメインのステム配列は、出力ドメインのステム標的配列にハイブリダイズし、それによって、出力ドメインの不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。追加的又は代替的に、センサードメインが目的のリガンドに結合していないとき、センサードメインのリンカー標的配列は、センサードメインのリンカー配列にハイブリダイズし、それによって、出力ドメインの不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。いくつかの実施形態では、センサードメインが目的のリガンドに結合していないとき、センサードメインのオーバーハング配列は、出力ドメインのオーバーハング標的配列にハイブリダイズし、センサードメインのステム配列は、出力ドメインのステム標的配列にハイブリダイズし、センサードメインのリンカー標的配列は、センサードメインのリンカー配列にハイブリダイズし、それによって、出力ドメインの不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。本開示は、広義には、「オン/オン」又は「オフ/オフ」構成を例示するために提示されるが、相対的な構成が、「オン/オフ」又は「オフ/オン」構成をもたらすようにバイオセンサーを反転させるように調整され得ることが理解されよう。この反転した実施形態では、センサードメインは、転写及び初期折り畳みの間にリガンドに結合することによって安定化される。この結合は、転写及び得られた折り畳み時に非機能性出力ドメインをもたらすような様式でコンフォメーションを安定化させる。あるいは、リガンドが存在しない場合、センサードメインは、転写時に出力ドメインが機能性コンフォメーションに折り畳まれるように熱力学的インセンティブを提供する別のコンフォメーションを採るであろう。
【0050】
いくつかの実施形態では、センサードメインのオーバーハング配列、センサードメインのステム配列、及びリンカー標的配列のうちの少なくとも2つは、それぞれ、出力ドメインのオーバーハング標的配列の少なくとも一部分、出力ドメインのステム標的配列の一部分、及びセンサードメインのリンカー配列の一部分にハイブリダイズされたとき、連続的ならせんステム構造を形成し、それによって、出力部分配列の不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる。
【0051】
いくつかの実施形態では、センサードメインのオーバーハング配列は、0~約15ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、センサードメインのステム配列は、0~約15ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、センサードメインのリンカー配列は、0~約15ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、センサードメインのオーバーハング配列、センサードメインのステム配列、及びセンサードメインのリンカー配列の各々は、全て1~約15ヌクレオチド長であり、例えば、各々は、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15ヌクレオチド長である。
【0052】
バイオセンサーは、センサードメインのアプタマードメインとリンカー配列との間に配置されたタイマードメインを更に含むことができる。タイマードメインは、センサードメインの転写と出力ドメインの転写との間の追加の時間をもたらすことができる。追加の時間により、目的のリガンドがセンサードメインに接触して結合することができるようになり、したがって、出力ドメインの活性又は「オン」確認を指示することができる、延長された時間ウィンドウを提供する。この追加の時間ウィンドウは、バイオセンサーの更なる感度向上を可能にし、したがって、目的のリガンドの予想濃度で最適に実行するように設計されたバイオセンサーの調節が可能となる。調節は、タイマードメインの相対的な長さを変更することによって実施される。いくつかの例示的な実施形態では、タイマードメインは、最大約150ヌクレオチド長(例えば、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、及び150ヌクレオチド長)を有する。例えば、タイマードメインは、1~約50ヌクレオチド、約25~75ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド、約75~125ヌクレオチド、及び約100~150ヌクレオチドの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、タイマードメインは、二次構造に折り畳むように構成されている。例えば、タイマードメインは、ステム及びループ構造を形成するように構成されることができ、それにより、タイマードメインの各末端(すなわち、5’末端及び3’末端の領域)がステム及びループ構造のステムの一部を形成する。ループ構造は、タイマードメインの中央セクションで構成される。
【0053】
タイマードメインは、少なくとも1つの転写停止配列を更に含むことができる。転写停止配列は、ポリメラーゼにその触媒活性を遅らせるか、又は転写中にその部位で一時的に停止させる特定の配列である。タイマードメインにおける1つ以上の停止部位の組み込みは、アプタマードメインの転写(及び折り畳み)と出力ドメインの転写(及び折り畳み)との間の追加の時間を提供する。機能的には、転写停止部位によって付与される転写の停止は、目的のリガンドがすでに転写されたアプタマードメインに結合する(例えば、アプタマードメインによって形成されるセンサードメインの一部に結合する)ための更なる時間を提供し、したがって、出力ドメインの活性(「オン」)対不活性(「オフ」)コンフォメーションへの折り畳みに影響を与える。この増加した時間は、リガンドに対する動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の感度を更に増加させ、低濃度でも検出が可能となる。したがって、転写停止配列は、様々なリガンド濃度における性能を最適化するために設計された動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物を「調整」するための更なるツールであり得る。本開示は、タイマードメイン全体にわたる複数の転写停止配列の実施形態を包含する。複数の転写停止配列は、同じであっても異なっていてもよい。転写停止配列の非限定的な例は、Escherichia coli由来のチアミンピロホスフェート(TPP)感知thiCリボスイッチに由来する配列である。他の転写停止配列は知られており、本開示によって包含される。例えば、各々その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Chauvier,A.,et al.,(2019)Role of a hairpin-stabilized pause in the Escherichia coli thiC riboswitch function,RNA Biology,16:8,1066-1073、及びKingston,R.E.,and Chamberlin,M.J.,(1981)Pausing and attenuation of in vitro transcription in the rrnB operon of E.coli,Cell,27:3,523-531を参照されたい。
【0054】
出力ドメインは、適切に折り畳まれたときに直接的又は間接的に検出可能なシグナルを調節するように構成され得る任意のRNAベースの構築物であり得る。調節は、検出可能なシグナルの誘導又は増加であり得る。代替の実施形態では、調節は、出力ドメインが活性なコンフォメーションに折り畳まれたときの検出可能な出力シグナルの低減であり得る。いずれかのアプローチでは、変化が検出され、目的のリガンドの存在及び/又は濃度を通知するために使用される。
【0055】
例えば、いくつかの実施形態では、出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれるとき、出力ドメインは、機能性リボザイム、機能性ヌクレアーゼガイドRNA(gRNA)、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、又はRNAアプタマーであるか、又はそれを含む。一つの例示的な実施形態では、出力ドメインが活性なコンフォメーションに折り畳まれるとき、出力ドメインは、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、約40~約400ヌクレオチド長である。gRNAは、gRNAとその同族標的配列との相互作用を増強する、以下でより詳細に記載される計算方法を使用して設計され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、機能性gRNAは、ヌクレアーゼ、例えば、Cas9、Cas12a、Cas13、その誘導体などから選択されるヌクレアーゼに会合する。これに関して、gRNAは、CRISPRベースのレポーティングシステムに統合することができる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR活性化(CRISPRa)機能を付与する(例えば、実施例4を参照)。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR阻害(CRISPRi)機能を付与する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ機能を有する。
【0057】
目的のリガンドは、RNAアプタマーと結合することができる任意の化合物又は部分であり得る。目的のリガンドの非限定的な例としては、化学物質、代謝物、タンパク質、ペプチド、小分子(例えば、薬物分子、薬物前駆体分子、薬物代謝物など)、細胞などが挙げられる。当業者は、本発明によって包含される他のリガンドを容易に同定することができる。
【0058】
動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物は、異なるドメイン(例えば、センサードメイン及び出力ドメイン)が独立して機能することを確実にする計算アプローチを使用して設計され得るが、センサードメインが出力ドメインの前に転写される単一の構築物に融合されたときに、バイナリ「スイッチ」様式で動作し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ガイドRNA設計のコンテクストで以下により詳細に記載されるコンピュータ実装設計方法は、全体的な動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の設計に構成され、適用される。当業者は、上記のように、機能RNAバイオセンサー構築物の設計及び出力を確実にするために、記載の方法に必要な調整を行うことができる。
【0059】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物をコードする配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。ポリヌクレオチドは、DNA又はRNAを含み得るか、又はそれからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNA分子であり、また、コード配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む。「プロモーター」という用語は、コードDNAの転写(発現)を活性化することができる調節ヌクレオチド配列を指す。プロモーターは、通常、コードDNAの上流に位置するが、コードDNAに近接する他の領域に位置し得る。プロモーターは、典型的には、RNAポリメラーゼの結合部位、及び転写複合体のアセンブリに関与する1つ以上の転写因子を含有する。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、プロモーターが細胞の転写機構によってコード核酸の転写を活性化することができるように、プロモーター及びコードDNAが互いに相対的に構成及び位置決めされることを示す。プロモーターは、構成的又は誘導性であり得る。構成的プロモーターは、標的細胞又は転写環境の特性、及びその中で利用可能な特定の転写因子に基づいて決定され得る。当業者は、様々なプロモーターが既知であり、当技術分野で一般的に使用されるため、意図された目的に基づいて適切なプロモーターを選択することができる。
【0060】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のDNA分子を含むベクターを提供する。ベクターは、標的細胞又は転写環境(例えば、無細胞環境)への核酸の送達及び/又は細胞若しくは環境内での核酸の発現を促進する任意の構築物であり得る。ベクターは、ウイルスベクター、環状核酸構築物(例えば、プラスミド)、又はナノ粒子であり得る。様々なウイルスベクターが当該技術分野で知られており、本開示によって包含される。例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Machida,C.A.(ed.),Viral Vectors for Gene Therapy:Methods and Protocols,Humana Press,Totowa,New Jersey(2003)、Muzyczka,N.,(ed.),Current Topics in Microbiology and Immunology:Viral Expression Vectors,Springer-Verlag,Berlin,Germany(2012)を参照。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである。AAVベクターの特定の実施形態は、AAV2.5血清型を含む。
【0061】
別の態様では、本開示は、上記の核酸又はベクターを含む細胞を提供する。細胞は、DNA分子から動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物を転写することができる。例えば、コードDNAに作動可能に連結されたプロモーターは、細胞のRNAポリメラーゼと、転写複合体の組み立てが可能となる1つ以上の転写因子との結合が可能となるように適切に構成され得る。
【0062】
本開示は、この態様のための任意のタイプの細胞を包含する。例えば、細胞は、限定されないが、原核細胞又は真核細胞であり得る。
【0063】
細胞は、プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現構築物を更に含み、プロモーターは、活性な(「オン」)コンフォメーションに折り畳まれたときに、出力ドメインによって標的化される。例えば、プロモーターは、機能性gRNAと結合されるように最適化された合成プロモーターとすることができる。いくつかの実施形態では、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、合成プロモーターにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、合成プロモーターは、転写開始部位の5’側の約40~約120塩基に位置するプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)を含む。CRISPR活性化(CRISPRa)における合成プロモーター設計及びその使用は、参照によって本明細書に組み込まれる、Fontana,J.,et al.,’’Effective CRISPRa-mediated control of gene expression in bacteria must overcome strict target site requirements,’’ Nature Communications(2020)11:1618により詳細に記載されている。いくつかの実施形態では、細胞は、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼ及び転写因子を更に発現するように操作され、発現されたヌクレアーゼ及び転写因子は、機能性gRNAと会合し、gRNAが発現構築物の合成プロモーターとハイブリダイズするときにレポーター遺伝子の転写を促進するように構成されている。例えば、各々その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Mali P,Esvelt KM,and Church GM.Cas9 as a versatile tool for engineering biology.Nat Methods.2013 Oct;10(10):957-63、及びDominguez AA,Lim WA,and Qi LS.Beyond editing:repurposing CRISPR-Cas9 for precision genome regulation and interrogation.Nat Rev Mol Cell Biol.2016 Jan;17(1):5-15を参照されたい。
【0064】
いくつかの実施形態では、細胞は、バイオセンサーが結合するリガンドの発現又は産生を修飾するように操作又は処理されている。例えば、細胞は、特定の代謝物又はバイオ産物の生合成を増加又は減少させるように操作され得る。動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の発現は、例えば、遺伝子操作の成功をスクリーニングするために、代謝物又はバイオ産物を生合成する細胞の同定を促進することができる。
【0065】
開示されるRNAバイオセンサーは、細胞内での使用に限定されない。したがって、別の態様では、本開示は、以下を含むバイオセンサーシステムを提供する:
本明細書に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物をコードする配列を含む第1のDNA発現カセット、並びに
動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の合成を促進するのに十分なRNAポリメラーゼ及びNTP。
【0066】
バイオセンサーシステムは、インビトロで無細胞転写(IVT)を実行するように構成され得る。更なる実施形態では、バイオセンサーは、転写されたRNAテンプレートからタンパク質の無細胞合成(CFS)を実行するように構成される。したがって、かかる実施形態では、バイオセンサーシステムは、任意の組み合わせで、リボソーム、tRNA、アミノアシル-tRNA合成酵素、開始因子、伸長因子、終結因子、アミノ酸、ATP、GTP、及び/又は翻訳補因子から選択されるタンパク質翻訳エレメントを更に含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、バイオセンサーシステムは、合成プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現構築物を更に含むように操作され、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、合成プロモーターにハイブリダイズする。
【0068】
いくつかの実施形態では、バイオセンサーシステムは、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼと、転写因子とを更に含む。ヌクレアーゼ及び転写因子は、機能性gRNAと会合し、会合したgRNAが発現構築物の合成プロモーターとハイブリダイズするときにレポーター遺伝子の転写を促進するように構成されている。
【0069】
別の態様では、本開示は、目的のリガンドを検出する方法を提供する。本方法は、目的のリガンドを含有し得る環境において、本明細書に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物を合成することと、出力シグナルを検出することとを含む。検出された出力シグナル又は出力シグナルの調節は、目的のリガンドのセンサードメインへの結合を示す。
【0070】
いくつかの実施形態では、環境は、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の転写を促進することができるインビトロ環境である。例えば、インビトロ環境は、本明細書に記載のRNAポリメラーゼ、NTP、及びテンプレートDNA分子を含んで、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の合成を促進することができる。更なる実施形態では、環境は、無細胞合成(CFS)環境である。例えば、CFS環境は、任意の組み合わせで、リボソーム、tRNA、アミノアシル-tRNA合成酵素、開始因子、伸長因子、終結因子、アミノ酸、ATP、GTP、及び/又は翻訳補因子から選択されるタンパク質翻訳エレメントを含み得る。いくつかの実施形態では、環境は、細胞溶解物を含む。
【0071】
他の実施形態では、環境は、細胞内にある。細胞は、上記のような方法で操作することができる。例えば、細胞は、合成プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現構築物を更に含むように操作することができ、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、合成プロモーターにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、細胞は、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼ及び転写因子を更に発現するように操作され、発現されたヌクレアーゼ及び転写因子は、機能性gRNAと会合し、gRNAが発現構築物の合成プロモーターとハイブリダイズするときにレポーター遺伝子の転写を調節するように構成されている。いくつかの実施形態では、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼは、CRISPR活性化(CRISPRa)機能を付与し、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、抗生物質耐性タンパク質、ベータ-ガラクトシダーゼなどをコードする。いくつかの実施形態では、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼは、CRISPR阻害(CRISPRi)機能を付与する。例えば、いくつかの実施形態では、アブレーションされたヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼは、CRISPR阻害(CRISPRi)機能を付与し、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、抗生物質耐性タンパク質、ベータ-ガラクトシダーゼなど、又は内因性遺伝子をコードする。変化は、バイオセンサー構築物へのリガンド結合の状態を示す、CRISPRi活性の結果として検出可能である。
【0072】
いくつかの実施形態では、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の出力ドメインは、活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに機能性gRNAであるか、又は機能性gRNAを含み、機能性gRNAは、目的の標的配列にハイブリダイズし、細胞は、ヌクレアーゼ機能を有するヌクレアーゼを更に発現するように操作されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、細胞は、上述したように、細胞における目的のリガンドの産生を修飾するように操作されている。他の実施形態では、本方法は、細胞を、細胞における目的のリガンドの産生を修飾することが疑われる実験条件に供することを更に含む。他の実施形態では、目的のリガンドは、細胞に接触する化合物又はその代謝物である。かかる実施形態では、本方法は、化合物が細胞内若しくは細胞外に輸送されるか、又は細胞によって代謝されて代謝物を生成するか、を検出する方法であり得る。
【0074】
別の態様では、本開示は、配列番号44~49のうちの1つに記載によってコードされるRNA配列を含むRNA分子を提供する。いくつかの実施形態では、RNA配列は、配列番号1~43のうちの1つに記載の配列によってコードされる。以下でより詳細に記載されるように、これらの配列は、参照ハンドル配列の少なくとも90%の機能性を保持する改変体Cas9結合ハンドルとして機能することができる。したがって、RNA分子は、gRNAドメインを含むガイドRNA(gRNA)又は足場RNA構築物であり得る。gRNA又はgRNAドメインは、開示された配列を含み、Cas9に結合し得る。
【0075】
別の態様では、本開示は、動態学的に制御された機能性RNA分子を設計するためのコンピュータ実装方法を提供する。本文脈で使用される場合、「動態学的に制御された機能性RNA」という用語は、活性転写中に想定される三次元コンフォメーションによって付与される機能性能力を有するRNA分子を指す。いくつかの場合では、機能性コンフォメーションは、同じRNA分子の後に仮定されたコンフォメーションとは別個である(例えば、長期保存後)。したがって、動態学的に制御されたは、転写プロセスで頂点に達する動態を指す。いくつかの実施形態では、動態学的に制御された機能性RNA分子は、ガイドRNA(gRNA)分子であるか、又はgRNA分子を含む。他の実施形態では、動態学的に制御された機能性RNA分子は、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー分子である。これらの実施形態の各々は、本明細書の他の場所でより詳細に説明されている。
【0076】
本態様の方法は、
コンピューティングデバイスによって、1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列を決定することと、
1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列の各々について、
コンピューティングデバイスによって、動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することと、
コンピューティングデバイスによって、予測された1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、動態学的に制御された機能性RNA配列に関する1つ以上のメトリックを決定することと、
コンピューティングデバイスによって、スコアに基づいて、合成のために提供される1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列のうちの1つ以上を選択することと、を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、予測された1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、動態学的に制御された機能性RNA配列に関する1つ以上のメトリックを決定するステップは、
動態学的に制御された機能性RNA配列について、予測された折り畳まれた構造のエネルギーを決定すること、
動態学的に制御された機能性RNA配列についての予測された折り畳まれた構造のエネルギーを、動態学的に制御された機能性RNA配列についての他の予測された折り畳まれた構造のエネルギーと比較すること、及び
動態学的に制御された機能性RNA配列について予測された折り畳まれた構造を、標的の折り畳まれた構造に変換するための障壁エネルギーを決定すること、のうちの少なくとも1つを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することは、制約された折り畳み分析を実施することを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、制約された折り畳み分析を実施することは、
動態学的に制御された機能性RNA配列の一部分についての所定の折り畳まれた構造を特定することと、
動態学的に制御された機能性RNA配列の一部分についての所定の折り畳まれた構造を与えられた、動態学的に制御された機能性RNA配列の全体的な折り畳まれた構造を予測することと、を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することは、
2つ以上の同時転写折り畳み経路を比較することを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、2つ以上の同時転写折り畳み経路を比較することは、
転写中の動態学的に制御された機能性RNA配列の第1の不完全な部分の第1の構造を予測することと、
転写中の動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分の第2の構造を予測することであって、動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分が、動態学的に制御された機能性RNA配列の第1の不完全な部分、及び動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドを含む、予測することと、
動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを含む、動態学的に制御された機能性RNA配列の第3の不完全な部分の後続の構造予測における使用のための、第1の構造又は第2の構造を選択することと、を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1の構造又は第2の構造を選択することは、
第1の構造から第2の構造に変換するための障壁エネルギーを決定することと、
動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを、動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分に付加するための時間を決定することと、
1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを付加するための時間の間に、動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分が第1の構造から第2の構造に遷移するには障壁エネルギーが高すぎると判定されたことに応答して、第1の構造を選択することと、
1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを付加するための時間の間に、動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分が第1の構造から第2の構造に遷移するのに障壁エネルギーが高すぎないと判定されたことに応答して、第2の構造を選択することと、を含む。
【0083】
図39は、本開示の様々な態様による、動態学的に制御された機能性RNA分子を設計するための方法の、非限定的な例示的な実施形態を図示する。
【0084】
開始ブロックから、方法3900は、ブロック3902に進み、ここで、コンピューティングデバイスは、1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列を決定する。方法3900は、次いで、フォーループ開始ブロック3904とフォーループ終了ブロック3910との間で定義されるフォーループに進み、ここで、候補の動態学的に制御された機能性RNA配列の各々は、予測される構造に基づいて、折り畳まれた構造を予測し、動態学的に制御された機能性RNA配列に関するメトリックを決定するように処理される。
【0085】
フォーループ開始ブロック3904から、方法3900は、サブルーチンブロック3906に進み、サブルーチンが実行され、ここで、コンピューティングデバイスは、動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測する。折り畳まれた構造を予測するための任意の適切な技術を使用してもよく、以下に記載の手順4000又は手順4100が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
ブロック3908において、コンピューティングデバイスは、予測される1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、動態学的に制御された機能性RNA配列に関する1つ以上のメトリックを決定する。動態学的に制御された機能性RNA配列についての予測された折り畳まれた構造のエネルギーを決定すること、動態学的に制御された機能性RNA配列についての予測された折り畳まれた構造のエネルギーを、動態学的に制御された機能性RNA配列についての他の予測された折り畳まれた構造のエネルギーと比較すること、及び動態学的に制御された機能性RNA配列についての予測された折り畳まれた構造を標的の折り畳まれた構造に変換するための障壁エネルギーを決定することのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない、任意の適切なメトリックを使用し得る。
【0087】
次いで、方法3900は、フォーループ終了ブロック3910に進む。更なる候補gRNA配列が処理されるべきままである場合、方法3900は、次の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列を処理するために、ループ開始ブロック3904に戻る。さもなければ、方法3900は、ブロック3912に進む。
【0088】
ブロック3912で、コンピューティングデバイスは、メトリックに基づいて合成のために提供される1つ以上の候補の動態学的に制御された機能性RNA配列のうちの1つ以上を選択する。次に、方法3900は、終了ブロックに進み、終了する。
【0089】
図40は、動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する、1つ以上の折り畳まれた構造を予測するための手順の、非限定的な例示的な実施形態を例示する。手順4000では、制約された折り畳み分析が実施される。手順4000は、図39のサブルーチンブロック3906での使用に好適な手順の非限定的な例である。
【0090】
開始ブロックから、手順4000はブロック4002に進み、ここでコンピューティングデバイスは、動態学的に制御された機能性RNA配列の一部分について所定の折り畳まれた構造を指定する。ブロック4004で、コンピューティングデバイスは、動態学的に制御された機能性RNA配列の一部分のための所定の折り畳まれた構造を与えられた動態学的に制御された機能性RNA配列のための全体的な折り畳まれた構造を予測する。これらの動作のそれぞれについての詳細は、上記の通りである。
【0091】
次に、手順4000は、終了ブロックに進み、終了する。
図41は、動態学的に制御された機能性RNA配列が時間経過とともに形成する、1つ以上の折り畳まれた構造を予測するための手順の、非限定的な例示的な実施形態を例示する。手順4100では、2つ以上の同時転写折り畳み経路が比較される。手順4100は、図39のサブルーチンブロック3906での使用に好適な手順の非限定的な例である。
【0092】
開始ブロックから、手順4100は、ブロック4102に進み、ここで、コンピューティングデバイスは、転写中の動態学的に制御された機能性RNA配列の第1の不完全な部分の第1の構造を予測する。
【0093】
ブロック4104で、コンピューティングデバイスは、転写中の動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分の第2の構造を予測し、動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分は、動態学的に制御された機能性RNA配列の第1の不完全な部分、及び動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドを含む。
【0094】
ブロック4106で、コンピューティングデバイスは、第1の構造から第2の構造に変換するための障壁エネルギーを決定する。
【0095】
ブロック4108で、コンピューティングデバイスは、動態学的に制御された機能性RNA配列の1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットをgRNA配列の第2の不完全な部分に付加するための時間を決定する。
【0096】
ブロック4110で、コンピューティングデバイスは、1つ以上の追加のヌクレオチドの後続のセットを付加するための時間の間に、第1の構造から第2の構造に遷移するために、障壁エネルギーが動態学的に制御された機能性RNA配列の第2の不完全な部分に対して高すぎるかどうかに基づいて、第1の構造又は第2の構造を選択する。
【0097】
ブロック4102~4110の各々の動作の更なる説明は、上記の通りである。
次に、手順4100は、終了ブロックに進み、終了する。
【0098】
上述のように、いくつかの実施形態では、この態様の動態学的に制御された機能性RNAは、ガイドRNA(gRNA)分子である。いくつかの実施形態では、本態様の動態学的に制御された機能性RNAは、動態学的に制御されたRNAバイオセンサーである。一部の特定の実施形態では、本態様の動態学的に制御された機能性RNAは、出力ドメインとしてガイドRNA(gRNA)分子を含む動態学的に制御されたRNAバイオセンサーである。他の実施形態では、出力ドメインは、gRNAではなく、代替的な動態学的に制御された機能性RNAドメインを含む。例えば、動態学的に制御されたRNAバイオセンサーは、本明細書に記載のように、リボスイッチドメインであるか、又はリボスイッチドメインを含む出力ドメインを有する。
【0099】
別の態様では、本開示は、コンピューティングデバイスの1つ以上のプロセッサによる実行に応答して、コンピューティングデバイスに、上記のようなコンピュータ実装方法の動作を実行させる、記憶されたコンピュータ実行可能命令を有する非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【0100】
別の態様では、本開示は、上記のようにコンピュータ実装方法の動作を実行するように構成されたコンピューティングデバイスを提供する。
【0101】
他の態様では、本開示は、上記のように、コンピュータ実装方法、非一時的コンピュータ可読媒体、及びコンピューティングデバイスを提供するが、また、上記のように、動態学的に制御されたRNAセンサー構築物の設計及び実装のために実装される。コンピュータ実装方法及び関連媒体及びデバイスの上記エレメントは、異なるドメイン(例えば、センサードメイン及び出力ドメイン)が独立して機能するが、出力ドメインの前に転写されるセンサードメインを有する単一の構築物に融合されたときにバイナリ「スイッチ」方式で動作することができることを確実にするために、開示された動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の設計に修飾及び実装することができる。したがって、簡潔さのために、上記のエレメントは、本開示の本態様によって包含され、繰り返さない。
【0102】
一般的定義
本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、本開示の当業者にとっての意味と同じ意味を有する。実施者は、Ausubel,F.M.,et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York(2010)、Coligan,J.E.,et al.(eds.),Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,New York(2010)、Mirzaei,H.and Carrasco,M.(eds.),Modern Proteomics-Sample Preparation,Analysis and Practical Applications in Advances in Experimental Medicine and Biology,Springer International Publishing,2016、Mali P,Esvelt KM,and Church GM.Cas9 as a versatile tool for engineering biology.Nat Methods.2013 Oct;10(10):957-63、及びDominguez AA,Lim WA,and Qi LS.Beyond editing:repurposing CRISPR-Cas9 for precision genome regulation and interrogation.Nat Rev Mol Cell Biol.2016 Jan;17(1):5-15に従い、本技術分野の定義及び用語に従う。
【0103】
便宜上、本開示で使用される特定の用語の定義をここに示す。本定義は、特定の実施形態を説明するのを助けるために提供され、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ制限されるため、特許請求の範囲の発明を限定することを意図するものではない。
【0104】
本開示は、代替物及び「及び/又は」のみを指す定義を支持するものであるが、「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示的に示されない限り、又は代替物が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用される。
【0105】
特許請求の範囲又は明細書において「a」及び「an」という単語が「含む(comprising)」という単語とともに使用されるとき、特に明記されていない限り、1つ又は複数を示す。
【0106】
文脈が別段のことを明確に必要としない限り、説明及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などの単語は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に包括的な意味で解釈されるべきであり、これは、「含むがこれらに限定されない」という意味で示すべきである。単数又は複数の数を使用する単語は、それぞれ複数及び単数の数も含む。追加的に、「本明細書」、「先の」及び「以下の」という単語、並びに同様の意味の単語は、本出願で使用される場合、本出願全体を指し、本出願の任意の特定の部分を指すものではない。「約」という単語は、記載された参照される数を上回る、又は下回る軽微な変動の範囲内の数を示す。例えば、いくつかの実施形態では、「約」という用語は、示される参照番号の上方及び/又は下方10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%の範囲内の数を指す。
【0107】
核酸は、モノマー単位又は「残基」のポリマーである。核酸のモノマーサブユニット又は残基はそれぞれ、窒素塩基(すなわち、核酸塩基)、5炭素糖、及びリン酸基を含む。各残基の同一性は、典型的には、各残基の核酸塩基(又は窒素塩基)構造の同一性を参照して本明細書に示される。正準核酸塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)(チミン(T)残基の代わりにRNA中)、及びシトシン(C)が含まれる。しかしながら、本開示の核酸は、当技術分野で周知のように、任意の修飾核酸塩基、核酸塩基類似体、及び/又は非正準核酸塩基を含み得る。核酸モノマー又は残基への修飾は、非正準サブユニット構造をもたらす核酸モノマー又は残基の構造における任意の化学変化を包含する。このような化学的変化は、例えば、エピジェネティック修飾(ゲノムDNA又はRNAなど)、又は放射線、化学的手段、又は他の手段から生じる損傷から生じ得る。修飾から生じ得る非正準サブユニットの例示的かつ非限定的な例としては、ウラシル(DNA用)、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ホルメチルシトシン、5-カルボキシシトシンb-グルコシル-5-ヒドロキシメチルシトシン、8-オキソグアニン、2-アミノ-アデノシン、2-アミノ-デオキシアデノシン、2-チオチミジン、ピロ-ピリミジン、2-チオシチジン、又は非塩基性の変化が挙げられる。非塩基性の変化は、デオキシリボース骨格に沿った位置であるが、塩基を欠いている。天然ヌクレオチドの既知の類似体は、ペプチド核酸(PNA)及びホスホロチオエートDNAなどの天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で核酸にハイブリダイズする。
【0108】
核酸塩基が結合する5炭素糖は、核酸のタイプに応じて変動し得る。例えば、糖はDNA中のデオキシリボースであり、RNA中のリボースである。本明細書のいくつかの事例では、核酸残基は、ヌクレオシド構造、例えば、アデノシン、グアノシン、5-メチルウリジン、ウリジン、及びシチジンに関しても言及され得る。更に、ヌクレオシドの代替命名法は、5炭素糖のタイプを推定するために、核酸塩基の前に「リボ」又は「デオキシリボ」接頭語を示すことも含む。例えば、本明細書で時折使用される「リボシトシン」は、その残基におけるRNA分子中のリボース糖の存在を示すため、シチジン残基と同等である。核酸ポリマーは、デオキシリボヌクレオチド(DNA)ポリマー、リボヌクレオチド(RNA)ポリマーであり得るか、又はそれを含むことができる。核酸はまた、PNAポリマー、又は本明細書に記載のポリマータイプのいずれかの組み合わせ(例えば、異なる糖を有する残基を含有する)であるか、又はそれを含むことができる。
【0109】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、モノマーがアミド結合を介して一緒に連結されたアミノ酸残基であるポリマーを指す。アミノ酸がアルファ-アミノ酸である場合、L-光学異性体又はD-光学異性体のいずれかを使用することができ、L-異性体が好ましい。本明細書で使用されるポリペプチド又はタンパク質という用語は、任意のアミノ酸配列を包含し、糖タンパク質などの修飾配列を含む。ポリペプチドという用語は、天然に存在するタンパク質、及び組換え又は合成的に産生されるタンパク質をカバーすることを具体的に意図している。
【0110】
「配列同一性パーセント」又は文法的同等物とは、特定の配列が、アライメントアルゴリズムを使用して、特定の参照配列内のものと同一の少なくとも一定の割合の核酸又はアミノ酸残基を有することを意味する。配列の類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの一例は、BLASTアルゴリズムであり、これは、Altschul,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)を参照されたい。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイトから公開されている。
【0111】
逆相補性は、ワトソン-クリック塩基対合規則に従って相互にハイブリダイズすることができる対応する配列の配列を指す。この用語は、5’側から3’側の方向性に関して逆方向にハイブリダイズする対応する配列(すなわち、センス及びアンチセンス)のそれぞれを指す。例えば、センス鎖は、アンチセンス鎖が3’から5’へアライメントされるとき、対応するアンチセンス鎖における配列の相補体である5’側から3’側への配列を有する。本明細書で使用される場合、参照配列の逆相補性であると示される配列は、完全な、すなわち、100%の相補性を有する必要はなく、対応する配列が依然として通常の操作条件下で相互にハイブリダイズする限り、相補性を有さないいくつかの残基を有することができると企図される。
【0112】
動態学的に制御RNAバイオセンサーは、RNAポリメラーゼ酵素によって積極的に転写されながら、標的リガンドを感知し、応答して出力RNAドメインの折り畳みを調節するRNA生体分子として定義される。上述のように、RNA分子は、活性転写プロセス中に三次元コンフォメーションに折り畳まれ、別個の機能を付与することができる。コンフォメーションは、後で折り畳むことが許される場合、完全に形成された(すなわち、完全に転写された)RNA分子で起こり得るコンフォメーションとは異なる場合がある。更に、転写中に発達するコンフォメーションは、環境中の分子、例えば、その転写中にRNA分子のドメインに特異的に結合し得る標的リガンドの存在又は不存在によって影響される。
【0113】
開示されるのは、開示される方法及び組成物に対して使用され得る、併用され得る、調製に使用され得る、又は開示される方法及び組成物の生成物である材料、組成物、及び構成要素である。これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、基等が開示される場合、これらの化合物の各々及び各々の単一の組み合わせ及び順列への具体的な言及は、明示的に開示されない場合があるが、様々な個別的及び集合的組み合わせの各々は、具体的に企図されることが理解される。この概念は、記載された方法のステップを含むが、これらに限定されない、本開示の全ての態様に適用される。したがって、前述の実施形態のいずれかの特定のエレメントは、他の実施形態のエレメントと組み合わせるか、又は置き換えることができる。例えば、実行可能な様々な追加のステップがある場合、これらの追加のステップのそれぞれは、開示された方法の任意の特定の方法ステップ又は方法ステップの組み合わせで実行され得、かかる組み合わせ又は組み合わせのサブセットは、具体的に企図され、開示されたとみなされるべきであると理解されたい。更に、本明細書に記載の実施形態は、本明細書の他の場所に記載のものなど、又は当技術分野で既知のものなどの任意の好適な材料を使用して実装することができると理解されたい。
【0114】
本明細書で引用されている刊行物及びそれらが引用されている主題は、それらの全体が参照によって本明細書に具体的に組み込まれる。
【実施例
【0115】
以下の実施例は、本開示の特定の特徴及び/又は実施形態を説明するために提供される。本実施例は、本発明を記載される特定の特徴又は実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
【0116】
実施例1
本実施例は、本開示のいくつかの実施形態による、代表的な、モジュラー的な、動態学的に制御されたアプタマーベースのバイオセンサーのインシリコ操作のための分子アーキテクチャ及び計算ワークフローの開発を開示する。インビトロ同時転写切断アッセイによって、機能性RNAスイッチの堅牢なインシリコ同定が可能となる一組のコンピュータによる設計パラメータを同定する。高性能スイッチ及び調整可能なリガンドの感度を実証する。バイオセンサーは、例えば、工業用バイオテクノロジー、医療用バイオテクノロジー、医薬品開発、診断などのスクリーニング用途に使用することができる。記載されたバイオセンサーは、動態学的に制御され、感度は、転写遅延及び停止の実施によって調節され、リガンド結合のために利用可能な時間ウィンドウを長くすることができる。モジュール設計により、様々な出力シグナルを使用して、関心のある任意のリガンドのバイオセンサーの実装と最適化が可能となる。
【0117】
イントロダクション
アプタザイムとは、リガンド結合アプタマードメインと自己触媒自己切断リボザイムドメインとを組み合わせた合成RNAスイッチのうちの1つの分類である。それらは、それらが機能するために他の生体分子に依存しないため、RNA骨格切断が様々な方法で宿主生化学によって利用され得る際の、多重宿主的な遺伝子制御物質としてのそれらの有用性のために魅力的である。アプタザイムは、細菌、酵母、哺乳動物細胞、及びウイルスにおける遺伝子発現レベルを動的に調節するために実施されてきた。他の生体分子からのアプタザイムの独立性の別の有益な結果としては、それらの動態特性が、尿素-PAGE変性によって特徴付けられるように、RNA分子の長さの変化を通じてインビトロで容易にアッセイされ得ることである。
【0118】
リボザイム切断速度及びRNAのバックグラウンド加水分解速度に基づいて、アプタザイムは、理論的には10倍超のダイナミックレンジを有し得る。しかしながら、多数の設計及び選抜方法にもかかわらず、生理学的緩衝条件内でこれまでに同定された最良のダイナミックレンジは、高いバックグラウンドでの切断、低い誘導切断、又はその両方に起因して、10倍未満である。従来設計された熱力学的アプタザイムのこの欠点の1つの潜在的な理由は、アプタザイムのダイナミックレンジとその濃度感度との間の根本的な競合である。これはすなわち、標的に敏感であるか、又は大きなダイナミックレンジを有するか、の熱力学的アプタザイムのみを生成することが可能であるが、両立させることが不可能であることを意味する。これは、顕著な作動に必要な濃度が溶解度(又は宿主生物に対する毒性)の限界を超える場合に、それらの同族アプタマーの低親和性を有するリガンドに応答するスイッチを設計しようとするときに特に問題になる。従来のアプタザイムの欠点のもう1つの潜在的な理由は、コンポーネント部分の修飾である。結合及び切断の機能を結合させるために、リボザイムドメインを可逆的に誤って折り畳ませることを期待して、リボザイムの相互作用ループのうちの1つの代わりにアプタマードメインが挿入される。これらのループは、リボザイム切断を劇的に加速することが知られている三次接触を形成するために重要であるため、最大切断速度、したがってアプタザイム性能は、標的リガンドが結合している場合でも分解される。更に、配列が重複しているため、2つのドメインの3D構造が互いに互換性があることを保証するものではなく、設計プロセスに未知の変数が追加される。
【0119】
現在までに、半合理的設計、熱力学的二次構造設計、インビトロ選抜、及びインビボスクリーニングを含む、多数の戦略が、アプタザイムを設計するために採用されている。これまでで最も成功した戦略は、インビボ選抜であり、何千もの改変体を含有するライブラリが、所望の遺伝的コンテクスト内でリガンド応答性遺伝子出力(通常は蛍光)を提供する能力についてスクリーニングされる。コンピュータによる設計はおそらく長期的には最大の有望性を有するが、コンピュータにより設計されたアプタザイムは予測可能性が低く、設計されたデバイスのほんの一部が機能性であることを証明し、ダイナミックレンジが小さいことを証明している。コンピュータによる設計戦略が採用されるとき、それらは一般化が可能であること又は体系的であることはめったになく、通常、単一のステムの配列組成を変化させることを伴う。遺伝子制御のためのアプタザイムの合理的/コンピュータ的設計に関する更なる問題は、新しいコンテクストへのそれらの統合である。優れたインビトロ性能を有するアプタザイムでさえ、周囲のRNA配列がアプタザイムと相互作用し、その機能を妨げる可能性があるため、遺伝的コンテクストに置かれるとしばしば機能しなくなる。単離されたアプタザイムと同様に、より大きなRNA分子内のアプタザイムにも適用される分子設計ルールを同定することは、RNA設計全体にとって大きな前進を意味する。従来のアプタザイムの最後の重要な制限は、アプタザイムが応答するリガンド濃度に対する制御の欠如である。ほぼ全ての用途で、アプタザイム感度と所望のリガンド濃度がミスマッチすると、アプタザイムは役に立たなくなる。したがって、性質が有効な範囲でリガンド応答性スイッチの有用性を完全に実現するためには、スイッチング能力を壊すことなく、アプタザイムのリガンド感度を合理的に調整する経路を発見する必要がある。
【0120】
RNA分子の細胞産生の重要な側面の1つは、同時転写折り畳みである。RNAポリメラーゼが細長い転写産物を産生するため、その転写産物はRNA分子全体が産生される前に折り畳み始めることができる。同時転写折り畳みは、天然に存在するRNAスイッチの不可欠な特徴であるにもかかわらず、結果として生じる動態学的トラップが、関連する生物学的タイムスケール上の熱力学的構造予測を無効にすることが多いため、合成RNA設計の障害として長い間見られてきた。動態学的トラップは、最小自由エネルギー(MFE)構造への遅い遷移速度のために、RNA分子がエネルギー的に最適以下のコンフォメーションで立ち往生するときに発生する。しかしながら、RNA設計に対するこのような認識された障害にもかかわらず、同時転写折り畳みにより、自由エネルギーランドスケープは、時間及び配列長の関数として進化し、プログラムされ、熱力学的アンサンブル挙動によってのみ指示されるものに加えて、調整可能な動的応答をもたらす。
【0121】
一般的な原理として、RNA分子の長さを増加させることは、その最小自由エネルギー(MFE)構造の安定性の増加、及びその様々な全体的な折り目の間の相互変換速度の低下を決定する。したがって、細長い転写産物は、転写の初期に小さい時間的に分解されたインプットを利用して、生物学的に関連する時間尺度上に存在するグローバルRNA構造の大きな変化を決定するためのユニークな機会を提供する。熱力学的RNA構造予測は、多数の種類の短い機能性RNAを設計するために成功裏に使用されているが、mRNA転写物などの長いRNA配列は、それらの配列が関連する時間スケールで平衡に到達することを防止する動態トラップを有することが知られている。したがって、遺伝的にコードされたRNAスイッチの機能を予測するためには、これらの分子が同時転写折り畳みによって決定される短期及び中間の時間スケールでどのような構造を採用するかを予測する必要がある。
【0122】
これまで、コンピュータによるアルゴリズムを利用して、RNA分子がその同時転写折り畳み軌道に沿って採用する二次構造を予測するための多数の努力が行われた。それぞれに独自の長所と短所があり、RNAスイッチ設計への応用が制限されていた。問題として、多くの公開されたアルゴリズムは、良好な予測を得るためにデータセット上で訓練され、個々の転写及び再折り畳みステップから抽出され得る動態情報を制限する。多くは実装が困難であり、更には自らの目的に合わせて修飾することが困難である。
【0123】
この目的のために、発明者らは、最小自由エネルギー(MFE)構造に転写中に急速に折り畳むことができる配列のための粗粒度(course-grained)スクリーニングのためのアルゴリズムであるMFEpathを開発した。
【0124】
方法
MFEpathアルゴリズム
アルゴリズム的には、MFEpathは、粗粒度の同時転写RNAを一連の二項演算に分解する。RNA分子の各5’配列について、前の構造は、MFE下位構造に遷移するか、又は次の塩基が添加され、構造は(急速な局所構造再配置を除いて)変化しないままであり得る。これらの2つの事象のうちのどれがより速く起こるかを決定するために、それらの速度(アレニウス様活性化エネルギーとして構造的再配置障壁を使用して近似される)は、一例では、ViennaRNAアルゴリズムFindpathと、これらの障壁と相互変換速度との間に以前に記載された関係を使用して計算される(Equation 2; Geis,M.et al.Folding Kinetics of Large RNAs.J.Mol.Biol.379,160-173(2008)、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。最終の塩基が追加されると、最後から2番目の構造と完全な配列のMFE構造との間の再配置障壁の高さが、所望の構造への折り畳みの速度を決定するために使用される。次いで、この速度を作動速度と比較して、デバイスが関連する時間スケールで機能することが予想されるかどうかを決定することができる。MFEpathは特定のアルゴリズムに依存しないため、新しい効率的なRNA構造/障壁予測アルゴリズムが利用可能になり、MFEpathが予測可能な将来にわたって関連性を維持できるようになる。
【0125】
MFEpathアルゴリズムの予備的な実装は、長い、動態学的に捕捉された配列の総評価時間に関して重大な制限を有していた。現在使用されている障壁高さ解析アルゴリズム(Findpath)は、配列長が増加するにつれて、及び評価された状態間の障壁が増加するにつれて、実行時間を劇的に増加させる(MFE構造に従わない配列の特徴)。同時転写RNA折り畳みは経路依存的なプロセスであるため、経路が所望の経路から逸脱するとすぐに終了するデッドエンドエリミネーションアルゴリズムは、重要な計算時間を節約するため、この用途に特に適している。したがって、MFEpathは、失敗した場合にシミュレーションを終了するいくつかのチェックポイント(いくつかは一般的な特性のためのものであり、いくつかは動態学的に制御されたバイオセンサー構造状態の正しい折り畳みに特有のものである)により実装される。
【0126】
コンピュータによる動態学的に制御されたバイオセンサーの設計
所望の同時転写構造を採用することが可能な配列を同定するために、集団を最初にスクリーニングして、所望の構造状態が存在し、適切な相対自由エネルギーを有することを確実にする(図11A及び11B)。まず、アプタマー(s2)を通る全ての5’を、MFE構造内のリガンドを結合するのに必要な適切なアプタマー折り畳みを形成する能力についてスクリーニングする。次に、タイマーの各ヌクレオチドを添加し(s3)、MFE中のアプタマー構造の存在をスクリーニングして、アプタマードメインが折り畳まれると、それが折り畳まれたままであることを確認する。次に、トーホールド標的(s4)を通る配列を考慮し、安定したトーホールド標的二本鎖を形成する能力についてスクリーニングする。次に、アプタマーが存在する場合にリボザイムも存在する(逆もまた同様である)ように、配列全体(s5)を考慮し、スクリーニングする。次いで、配列全体を再度考慮し(s6)、折り畳んで、アプタマー及びリボザイムドメイン活性構造がMFE内に存在しないことを確認する。これは、MFE中のリボザイムドメインの存在が、アプタマー結合状態にかかわらず、動態学的に制御されたバイオセンサーが活性であることを示し、MFE中のアプタマーの存在が、標的リガンドの結合がリボザイムを選択的に安定化しないことを示すため、重要である。最後に、アプタマー解離定数から計算されるリガンド結合安定化エネルギーを、s5及びs6状態の自由エネルギーの差と比較し、リガンドが結合する場合、リガンド安定化がs6の代わりにs5を最も安定な状態にするのに十分であることを確実にする。次に、MFEpathを使用して同時転写折り畳み分析を実行して、説明されたカットオフが通過することを確実にする。
【0127】
インビトロ同時転写切断分析
設計された動態学的に制御されたバイオセンサーの関連する動態学を特徴付けるために、細胞RNA産生を模倣するアッセイを開発する必要があった。細胞内産生の2つの重要なコンポーネントは、同時転写折り畳み及び低遊離マグネシウム濃度である。アッセイの詳細は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるSparkman-Yager,D.,et al.Chapter Sixteen-Kinetic Folding Design of Aptazyme-Regulated Expression Devices as Riboswitches for Metabolic Engineering.in Methods in Enzymology(ed.Burke-Aguero,D.H.)vol.550 321-340(Academic Press,2015)に記載されている。要するに、バクテリオファージT7RNAポリメラーゼの下流に動態学的に制御されたバイオセンサーを含有するDNAテンプレートを、T7RNAポリメラーゼとともに最大45分間インキュベートした。MgClの濃度をNTPの濃度と一致させることによって、Mg2+の遊離濃度は、自然界で観察されるものに匹敵する、0.5~1mMであると予想される。反応アリコートを、ホルムアミド-EDTA溶液と反応を混合することによって、4つの時点でクエンチした。反応時点を、8%変性7.5Mの尿素-PAGEゲル上で分析した。ImageJを使用して、半径50のローリングボールバックグラウンド減算を用いてゲルバンドを定量化した(Schneider,C.A.,et al.NIH Image to ImageJ:25 years of image analysis,Nature Methods 9.7(2012):671-675、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0128】
二相性切断フィッティング
2つの推定される反応経路の寄与を捕捉するために、二相性切断関数(数式7)を使用して同時転写切断データをフィットさせた。この3パラメータ関数は、急速に切断されるバースト画分(fburst)がkburstで切断され、遅い分画(fslow=1-fburst)がkslowで切断されると仮定している。全てのフィッティングは、PythonのScipyパッケージを使用して加重最小二乗回帰を使用して実行した。アッセイシグナル(及びしたがってfclvにおける確実性)が時間の関数として増加するにつれて、残差の重み付けには時点持続時間を使用した。急速な切断と遅い切断を区別するための適切な閾値を決定するために、F検定を実施して、50個のK-Aデバイス全てについての非リガンドアッセイ及び最大リガンドアッセイのそれぞれ(α=0.05)について単相モデル又は二相モデルのいずれかを選択した。二相性モデルが統計的に優れていた38個の条件(100個のうち)のそれぞれについて、kburst速度は>0.2分-1であり、kslow速度は<0.2分-1であった。このため、切断速度0.2min-1をkburstの下限カットオフ、及びkslowの上限カットオフとして、100のセット全体のその後の全てのフィッティング及び分析に使用した。
【0129】
非生理学的速度定数を戻すためのフィッティング/実験誤差を防止するために、全てのフィッティングを、1e-7-1(緩衝液中の自発的RNA切断の速度)の切断速度の下限、及び5分-1(ハンマーヘッドリボザイムの最大切断速度)の上限で行った。計算された変数の信頼区間を推定するために、パーセンタイルブートストラッピングを使用して、1000個の再サンプリングされたデータポイントから95%信頼区間を得た。実験誤差の推定は、別々の日にアッセイしたpAF10-100ntデバイスの0mM pAF条件の4つの時点を比較することによって、1.15%fclvの値を得た。
【0130】
【数1】
【0131】
結果及び考察
将来の用途に必要な調整可能なリガンド感度及び大ダイナミックレンジ(DR)を達成するために、天然リボスイッチで観察された動態学的に制御の実装を、アプタザイムの計算設計において求めた。そのためには、最初に、同時転写リガンド結合ウィンドウへの堅牢なアクセスを提供することができる分子アーキテクチャが必要であった。天然のリボスイッチに触発されて、アプタマードメインをリボザイムドメインの上流に配置した。そうすることで、リボザイムドメインが転写される前にリガンドに結合することが可能となり、リガンド結合及び切断が競合していない一時的なウィンドウを提供する。アプタマー及びリボザイムドメインをランダム化通信モジュールと組み合わせる従来のアプタザイムとは異なり、動態学的に制御されたバイオセンサーは、アプタマーの上流、及びアプタマーとリボザイムドメインの間の可変配列を利用して、所望の構造遷移をコードする(図1)。これにはいくつかの潜在的な利点がある。第1は、コンポーネント部分の三次構造の保存である。構造遷移をコードするために、アプタマー又はリボザイムのいずれの内部位置も変異しないため、部品は、アプタマーK及びリボザイム切断速度などの最適な親特性を維持する必要がある。これにより、2つのドメインの三次元構造が互換性がない場合を排除することにより、アプタザイムの設計の問題の解決策を特定する可能性が高まるはずである。
【0132】
正しく実施される場合、動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャは、所望の構造状態が同時転写的にアクセスされることを可能にし、活性及び不活性経路の相対的な集団は、同時転写リガンド結合ウィンドウ中に存在するリガンドの濃度によって決定される。リガンドの不存在下では、細長い動態学的に制御されたバイオセンサーは、正しく折り畳まれたアプタマー及びリボザイムドメインを欠く不活性状態に急速な構造再配置を受ける(図3A)。しかしながら、リガンドの存在下で、アプタマードメインは熱力学的に安定化され、動態学的に捕捉され、リボザイムドメインの迅速な折り畳み及び切断が可能となる。バックグラウンド切断速度が急速に平衡化するオン及びオフ状態の相対的安定性によって決定される従来のアプタザイムとは異なり、動態学的に制御されたバイオセンサー切断のバックグラウンド速度は、転写後にS6からS5状態への変換の遅い動態によって決定されるべきである。したがって、B3障壁の高さが大きく、無リガンド構造再配置(B2)の速度が転写と比較して速い場合、動態学的に制御されたバイオセンサーは、非常に低いバックグラウンド切断を達成することができるはずである。触媒リボザイムの急速な形成が可能となる小さなB1障壁と組み合わせると、大きなDRが達成可能でなければならない。
【0133】
スクリーニングに必要な多様性を生み出すために、動態学的に制御されたバイオセンサアーキテクチャは、可変ヌクレオチド位置を、機能性ドメインへの相補的配列を含む可変長の3つの領域に分割する(図示せず)。この相補的配列は、動態学的に制御されたバイオセンサーが、アプタマー及びリボザイムドメインの両方が誤って折り畳まれる、代替のより安定な構造に折り畳まれるように熱力学的インセンティブを提供する。3つのドメインのそれぞれが異なる領域を標的とし、それらのそれぞれの長さを調整することは、それらの標的と複合体化する熱力学的インセンティブを調節する。3つの領域の全ての可能な長さを組み合わせてスクリーニングすることにより、任意のアプタマー又はリボザイムドメインについてかかる溶液を含有するインシリコプールを生成することが可能である(図3B)。
【0134】
設計された動態学的に制御されたバイオセンサー候補が所望の軌道に沿って折り畳まれることを確実にするために、スクリーニングは、2つの段階、すなわち多状態熱力学スクリーニング、及び本発明者らの新規のMFEpathアルゴリズムを使用した動態学的同時転写スクリーニング、に分割される(本明細書で提供される方法でより詳細に説明される)。熱力学的アンサンブル内の複数の標的状態の存在と相対的安定性をスクリーニングすることによって、デバイスが主に平衡で不活性のままであり、リガンド結合によって提供される熱力学的安定性が、触媒活性折り畳みに向かってアンサンブルを偏向させることを確実にすることができる。その後、転写中に標的構造状態に迅速に到達する能力についてデバイスをスクリーニングすることによって、以前にスクリーニングされた一般的な熱力学的スイッチ特性が細長い転写物内でアクセス可能であることが保証される。
【0135】
最大90個の可変ヌクレオチド位置を含有する、動態学的に制御されたバイオセンサアーキテクチャは、各アプタマー/出力対について>1054個の配列を含有し、それは商業的に合成され得るRNAプールよりも劇的に高い(約1017)。10個の配列を含有する同様に設計されたプールからのアプタザイムの同定に成功したことに基づいて、動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャは、所望通りに機能する多くの配列を含有する可能性が高い。しかしながら、動態学的に制御されたバイオセンサー候補プールが、完全にランダムな配列とは対照的に、これらの半合理的な相補的配列で生成されるとき、サーチ空間は、より管理可能なサイズ(約10)に縮小される一方で、解を見つける可能性は劇的に増加する。アプタマー及びリボザイムドメインの単一の組み合わせについて、本発明者らは、本発明の熱力学的目的関数に対する溶液を同定するオッズが、相補的プールについての約6分の1とは対照的に、ランダムプール内の約57,000分の1であることを決定した。検索効率のこの約10,000倍の増加は、10個の配列の計算プールが、1010個の配列のランダムに生成されたプールと同じ数の溶液を潜在的に含むことを可能にし、これは、現在のインビボ法でスクリーニング可能であるものよりも著しく大きい。
【0136】
多様なアプタザイムを設計するための分子アーキテクチャの生存性を試験するために、2つの異なるアプタマードメイン、すなわち、メチル化キサンチン誘導体テオフィリンに結合する十分に研究されたテオフィリンアプタマー、及び官能化アミノ酸p-アミノフェニルアラニン(pAF)に結合するpAF4z1d3アプタマー(Zimmermann,G.R.,et al.Molecular interactions and metal binding in the theophylline-binding core of an RNA aptamer.RNA 6,659-667(2000)、Carothers,J.M.,et al.Selecting RNA aptamers for synthetic biology:investigating magnesium dependence and predicting binding affinity.Nucleic Acids Res.38,2736-2747(2010)、各々その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を利用した。3つの異なるリボザイム:S.mansoni、sTRSV1、及びPLMVdハンマーヘッドリボザイム(Carothers,J.M.,eta l.Model-Driven Engineering of RNA Devices to Quantitatively Program Gene Expression.Science 334,1716-1719(2011)、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)も使用した。細胞産生を模倣するように設計されたインビトロ同時転写切断アッセイを利用するデバイスを分析し、様々な濃度のリガンドでの切断動態を特徴付ける。様々なアプタマー及びリボザイムドメインの組み合わせを含有する50種の異なる動態学的に制御されたバイオセンサーを設計、構築、及び特徴付けた。そうすることで、ダイナミックレンジが29を超え、240を超える、5つのドメインのそれぞれを組み込んだデバイスを同定することができた。これは、動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャ(及び開示された自動計算設計アルゴリズム)が、多様な入力コンポーネントを利用して、機能性アプタザイムを堅牢に同定することができることを実証する。
【0137】
タイマードメインは「結合ウィンドウ」を作成する
動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャの1つの重要な特徴は、同時転写リガンド結合ウィンドウである。結合ウィンドウは、アプタマードメインの転写及び折り畳みの後、しかしながら、動態学的に制御されたバイオセンサーが運命の決定を下す前、の期間である。このウィンドウは、動態学的に制御されたバイオセンサーが、その標的リガンドと結合していない場合、その標的に結合することも切断することもできない状態に構造的に再配置されるときに閉じる(S6)。設計された動態学的に制御されたバイオセンサーが、アプタマードメインが適切に折り畳まれ、標的リガンドが会合する時間を有することを確実にするために、「タイマー」ドメインと呼ばれる追加の配列が組み込まれた。アプタマーとリボザイムとの間に配置されるタイマードメインは、設計状態の相対エネルギーに寄与しない直交配列要素であるように設計される。しかしながら、他の2つのドメイン間に追加の配列を提供することによって、それは、タイマーが転写されるのに要する時間の長さだけ結合ウィンドウを拡張する。
【0138】
リボザイムドメインが、内在性リボザイム切断速度よりも速い時間スケールで、転写中に活性なコンフォメーションを迅速に採用することができる限り、標的を同時転写的に結合する動態学的に制御されたバイオセンサーは、親リボザイムの速度で急速な切断を表示することが予想される。したがって、それらの標的リガンドに結合する動態学的に制御されたバイオセンサー分子は、急速な「バースト」速度で切断することができるが、そうでないバイオセンサー分子は、不活性S6状態への迅速な構造再配置を受け、転写後のS5への大規模な構造再配置によって制限される「遅い」速度でのみ切断することが期待される。2つの予想される反応経路の寄与を捉えるために、二相性切断関数を使用してインビトロ同時転写切断データをフィットさせ(詳細については下記を参照)、そこにおいて、バースト画分は、急速に切断するRNA分子の集団の相対的存在量を表す。
【0139】
タイマードメインを有するアプタマーとリボザイムとの間のドメイン間分離を増大させることは、同時転写リガンド結合を助けることが仮定され、これが当てはまることが観察された。実際、タイマードメインがリガンド誘導性バースト相切断を実証したのは、タイマードメインを含む動態学的に制御されたバイオセンサーのみであるため、タイマードメインは、迅速な同時転写作動を達成するために重要であると考えられる。例えば、タイマードメインを有しないTheo1-0ntの動態学的に制御されたバイオセンサーは、低バックグラウンド切断速度、バースト相動態学、及び中等度のDRを表示する(図4A~4C)。しかしながら、15ntのタイマードメインのみが添加された同一の配列であるTheo1-15ntの動態学的に制御されたバイオセンサーは、低バックグラウンド切断を維持しながらバースト相動態を表示し、結果として、237のDRが有意に増加した。DRは、数式1に従って、kavg+対kavg-の比として計算される(Long,D.M.& Uhlenbeck,O.C.Kinetic characterization of intramolecular and intermolecular hammerhead RNAs with stem II deletions.Proc.Natl.Acad.Sci.91,6977-6981(1994)、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。バックグラウンド切断が低い20個の動態学的に制御されたバイオセンサーに関しては、タイマードメインを含有するそれらの動態学的に制御されたバイオセンサーのみが、リガンドの存在下で有意なバースト画分を有していた(図4E)。アプタマーがリガンド能状態に折り畳むために追加の時間が必要である可能性があるか、又はアプタマードメインが構造的再配置の前に溶媒にアクセス可能であることが可能となるために最小限のドメイン間分離を必要とする細長いRNA分子に特定の幾何学的制約がある可能性があるが、なぜその違いがそれほど明白であるかは不明である。
【0140】
【数2】
【0141】
タイマードメイン単独の存在は、同時転写リガンド結合及びバースト相動態へのアクセスを得るのに十分ではないように見えることに留意することが重要である。タイマーを含むデバイスのうち3つは有意な誘導バーストを表示せず、リボザイムドメインの折り畳み速度などの他の要因が動態学的に制御されたバイオセンサー機能に役割を果たしている可能性が高いことを示唆している。例えば、s4とs5との間の長寿命の折り畳み中間体は、標的リガンドを同時転写的に結合するにもかかわらず、バースト切断のための閾値未満で動態学的に制御されたバイオセンサーの有効切断速度を遅延させ得る。
【0142】
RNA同時転写折り畳みをスクリーニングするためのMFEpath
インサイチュ又はインビボで産生されたときに機能することができるRNAアプタマーベースのスイッチを設計するためには、細長いRNA分子が同時転写的に採用する関連する三次元構造を予測することが可能である必要がある。高分子の三次元構造(秒スケール)の直接的な時間分解予測は現在コンピュータ的に不可能であるため、RNA三次元構造を迅速に計算可能な二次構造に抽象化する必要がある。RNAの階層的な折り畳みのために、RNA分子が採用する二次構造は、そのアクセス可能な三次元折り畳みを決定し、したがって、機能性な二次元構造の欠如は、機能性な三次元構造の形成を妨げる。これにより、二次元目的関数を使用して、機能性な三次元構造のスクリーニングを推進することができる。
【0143】
RNA分子の方向転写は構造予測を複雑にするが、一連の急速なヌクレオチド付加及び構造再配置ステップを介して動態学的に制御をコードする機会も提供する。これにより、リガンド結合及びアクチュエーション反応が独立して分離及び調整され得るというエキサイティングな工学的見通しが可能になる。RNA分子の同時転写折り畳み軌道を予測するために開発されたいくつかのアルゴリズムがあるが、それらは主に定量的に正確な折り畳み時間スケールを生成することができないか、長い配列に適用することができないか、又は本発明の設計-構築-試験-学習サイクルに望まれる定量分析のタイプが可能となる程の十分な透明性がない。このニーズを満たすために、機能性の多状態RNAデバイスの予測可能な設計のためのMFEpathアルゴリズムと計算フレームワークを作成した。MFEpathは、二次構造予測及びアレニウス様相互変換動態を使用して、急速な同時転写折り畳み軌道のためにRNA配列をスクリーニングすることによって機能する(図5A)。アレニウス数式は、反応の活性化エネルギーを反応速度の指数的変化に関連付け、以前はRNAの二次構造遷移の速度に適用されていた。RNA構造的再配置速度と障壁高さとの間の経験的関係が報告され、文献にも多数の障壁予測アルゴリズムが存在するが、これらの計算された速度定数を使用して動的に機能するRNAデバイスを設計するためのより広範な計算ツールに着目されたことはなかった。アンサンブル同時転写折り畳みの予測のためのよりアルゴリズム的に複雑なツールが存在するが、本明細書に記載のMFEpathは、計算効率と出力粒度の理想的なバランスが、急速に折り畳まれる動態RNAをスクリーニングするために最適であることが、観察から明らかとなった。
【0144】
【0145】
【0146】
【数3】
【0147】
【0148】
漏れを低減するためのトーホールド媒介性鎖置換
大型DRアプタザイムに対する最も重要な障害は、標的リガンドの不存在下での望ましくない切断である。より具体的には、急速で望ましくない切断は、機能性な動態学的に制御されたバイオセンサーと事実上互換性がない。上記のように、MFEpathの障壁高さ予測は、大きな非誘導バースト画分(UBF)を保有する可能性が低い動態学的に制御されたバイオセンサーの同定が可能となるが、それらだけでは、全ての場合においてUBFを明確に説明することはできない。これの1つの可能性の高い理由は、閾値が構造的再配置の合格不合格基準として使用されているにもかかわらず、閾値とほぼ同一の予測された障壁高さ(及びしたがって反応速度)がMFEpathアルゴリズム内でパスをもたらすが、構造的に再配置された分子と動態学的に捕捉された分子との間で約50/50の分割をもたらすことである。したがって、非常に低いUBF値を確保するためには、ヌクレオチド付加よりも著しく速い構造再配置がおそらく必要である。
【0149】
トーホールド媒介性鎖置換(TMSD)は、DNAナノテクノロジーの分野で周知の分子メカニズムであり、10倍までの分子間鎖交換の速度を加速することができる(Zhang,D.Y.& Seelig,G.Dynamic DNA nanotechnology using strand-displacement reactions.Nat.Chem.3,103(2011)、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。最近では、トランス作用遺伝子RNA「トーホールドスイッチ」の有効性を高めるために、それが成功裏に利用されている。状態s4から状態s6への分子内構造再配置を加速するためのTMSDメカニズムを実装することによって、極めて低いバックグラウンドシグナル、したがって前例のないダイナミックレンジを達成することが可能となり得る。P1アプタマーステムは初期の二本鎖に類似しており、リボザイムドメインの5’末端が侵入鎖として機能するため、動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャは、TMSDメカニズムを利用することができる(図7A)。したがって、動態学的に制御されたバイオセンサーの再配置トーホールドは、その標的への結合によって構造的再配置を開始する。
【0150】
従来の分子間TMSDの、以下の3つの定量的予測因子が存在する:1トーホールド-標的二本鎖の安定性2置換反応のステップの障壁高さ32つの種の濃度。同様に、本発明のシステムにおける構造的再配置の速度を高めるための分子内TMSDの有効性は、トーホールド-標的二本鎖の安定性、構造的再配置のための自由エネルギー障壁の高さ、及びトーホールドと標的とのドメインがサーチできる相対的体積から予測可能でなければならない。
【0151】
動態学的に制御されたバイオセンサーUBFが実際に類似のTMSDパラメータから予測され得るかどうかを調査するために、トーホールド標的二本鎖の予想される安定性を計算した(図7B)。そのために、ViennaRNA折り畳みパッケージのRNAevalアルゴリズムを使用して、トー標的二本鎖の安定性を評価した(Lorenz,R.et al.ViennaRNA Package 2.0.Algorithms Mol.Biol.6,26(2011)、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。トーホールドに内部に形成された苛立たしい構造を説明するために、二本鎖形成前に塩基対になると予測される任意の塩基は、トー標的二本鎖に寄与することができないと考えられた。トーホールド標的二本差安定性は、動態学的に制御されたバイオセンサーUBFとの有意な相関を表示する(Spearman rho=0.3p=0.05)が、予想されるように、全てのデータを十分に説明するものではない。
【0152】
次に、二本鎖形成後に生じる構造再配置のための障壁高さを特徴付ける。活性な折り畳み軌道から不活性な折り畳み軌道への構造的再配置は、2つ以上の転写ステップで起こり得るため、B2再配置障壁は、かかる可能性のある全ての障壁の組み合わせである。再配置障壁は、トーホールド及び標的が苛立たしい構造に係合されておらず、したがって、ゼロkcal/mol未満の二本鎖安定性を有するステップに対してのみ考慮される。数式3を利用して障壁を組み合わせた。この複合B2障壁は、観察されたUBFと非常に有意なランク相関を有し(Spearman rho=0.57、p=5E-5)、1.5kcal/molをわずかに上回る明白な閾値応答を表示する(図6C)。1.5kcal/mol未満のB2障壁を有する全ての動態学的に制御されたバイオセンサーは、0.1未満のUBF値を表示するが、いくつかの説明不能な変動が残る。
【0153】
【数4】
【0154】
動態学的に制御されたバイオセンサー構造の再配置がTMSDを介して進行している場合、その速度は、トーホールド及び標的ドメインの有効濃度に比例すると推測された。TMSD反応は分子内であるため、有効濃度は、2つのドメインがサーチすることができる三次元体積に反比例するべきである。一本鎖RNAが可撓性リンカーとして作用すると仮定すると、この体積は、トーホールドと標的との間の一本鎖RNAリンカーの長さの立方体に比例するはずである。この長さを予測するために、構造化RNA内の2つのヌクレオチド間の最大線形距離の粗粒度推定のための単純なアルゴリズムが実装された。実際には、このアルゴリズムは、2つの間の非構造化塩基の数をカウントし、任意の自己完結型のらせん要素をスキップする。小さなB2値を有する動態学的に制御されたバイオセンサーについて、UBF値の残りの変動は、この予測距離と相関した(Spearman rho=0.58p=0.006)(図7E)。例えば、Theo3-30nt K-A及びTheo3-30nt-v2 K-Aは、それらの30ntタイマードメインの配列及び構造を除いて同一である。Theo3-30ntは、そのタイマードメイン内にヘアピンを形成することが予想され、これにより、構造的再配置に先立って、トーホールド及びトーホールド標的が近接するようになる(図7D)。対照的に、Theo3-30nt-v2のタイマードメインは構造化されておらず、足場と標的が大量にサーチできるようになり、2つの種の有効濃度が低下すると予想されている。したがって、分子内TMSDは、構造的再配置を増強し、リガンド非依存性バースト相切断を低減するための実行可能で予測可能なメカニズムであると考えられる。
【0155】
予測可能なK-A設計
究極的には、アプタザイムを設計するための任意の計算方法論は、ダウンストリームアプリケーションに必要な大規模なDRを有するデバイスを一貫して製造するために依存することができる場合にのみ有用である。そのために、上記の様々な設計メトリックが高DRの動態学的に制御されたバイオセンサーの識別に及ぼす影響を調べた(図10B)。興味深いことに、リガンド依存性バースト相切断へのアクセスを提供するにもかかわらず、タイマードメインの追加は、当社のデータセット内のデバイスの全体的な成功にはほとんど役立たない。これは部分的には、しばしばタイマードメインに伴うトーホールド-標的距離の増加により、観察されたUBFが増加するためであり得る。予想されるように、足場安定性(<0kcal/mol)は、候補K-Aの機能を予測する上で非常に大きな役割を果たす。この効果は、B2(足場安定性を組み込む)をスクリーニング(B2<1.5kcal/mol)に利用すると更に顕著になる。興味深いことに、スクリーニングされた集団の平均を増加させるにもかかわらず、バースト相切断を増加させることによって、小さなB1障壁(<11.1kcal/mol)が観察されたDR中央値を減少させる。この結果は、大きなB1障壁を有するデバイスの多くが、非常に低いB2障壁を有し、測定されたUBFを有しないため、やや特異的である可能性がある。トーホールド標的の自然対数(線形距離)値が8.5(単位なし)未満の動態学的に制御されたバイオセンサーは、平均値及び中央値が改善されているが、K-Aが小さなB2障壁を有することを最初に保証しない限り、差は圧倒的ではない。全てのスクリーニングを同時に実装すると、集団の中央値DRは約10であり、非常に高い平均DRは約40である。これらは、基準の1つでさえも失敗するK-Asの集団に対する劇的な改善である(p=0.02)。これは、スクリーンが実際に相乗的であり、将来的に高DR K-Aの同定に役立つことを示唆しているようである。
【0156】
動態学的に制御されたバイオセンサーの挙動の予測が改善され得る主な領域は、B3障壁高さの説明である(図10A)。切断の上限は約5分-1であり、最速のK-Asの+リガンド切断よりわずかに速い値であるため、理論的限界に近づくDRにアクセスするための主な利用可能な方法は、リガンド非依存的切断速度を劇的に低下させることである。数式1に示されるように、kavgは、バースト及び遅延速度の加重平均に相対分数を乗じたものである。TMSDが非常に低いUBFを有する動態学的に制御されたバイオセンサーの設計を可能にしたように、kavg-を減少させるために残っている唯一の方法はkslow-を減少させることである。動態学的に制御されたバイオセンサーシステムの解釈内では、B3障壁の高さがこのkslow-速度定数を決定するはずである。実際、コンピュータ的に予測されたB3障壁高さとkslow-速度との間に統計学的に有意なランク相関があることが観察される。しかしながら、B3障壁の現在の計算が十分ではないことは明らかであり、予測されるB3高さが6kcal/mol変化する動態学的に制御されたバイオセンサーは、同じkslow-を表示する。
【0157】
B3予測の限界は、障壁高さアルゴリズムの限界と構造状態選択の難易度という2つの主な問題から生じる可能性が高い。MFEpathで実装されているアルゴリズムであるFindpathは、直接再折り畳み経路(初期構造又は最終構造のいずれかに塩基対のみを含むもの)のみを考慮しているため、通常は間接再折り畳みを受ける実際の経路の障壁高さを過大評価する可能性がある。また、初期のK-A設計では、リボザイムを含む最も熱力学的に安定な構造が同定されているが(s5)、正しいB3障壁高さは、s6からのものより安定性が低いが、より迅速にアクセスされるリボザイムも含む構造である可能性がある。更なる現在の制限は、インビトロ切断アッセイが、10-3min-1未満の切断速度を統計的に区別することができないことである。したがって、非常に低いkslow-値を検証するために、アッセイ自体の期間を延長する必要がある。しかしながら、DRが1000の動態学的に制御されたバイオセンサーを一貫して設計する能力は、ほとんどのバイオセンシング用途のための最先端技術の大幅な改善を表すであろう。
【0158】
動態学的に制御されたバイオセンサリガンドの感度調節
リガンド応答性スイッチの製造の1つの重要な側面は、リガンド応答性スイッチが後続の用途に関連する濃度で応答することを確実にすることである。細胞毒性のある、又は不溶性のリガンド濃度未満でスイッチング挙動を示すスイッチを設計することは、過去に問題があることが証明されており、より多くのアプタザイムが現在までに同定されていない主な理由である可能性がある。したがって、かかるスイッチの設計のための任意の方法論が、感度を合理的に調整することが可能となることが重要である。この目的を果たすために、天然リボスイッチ中のアプタマードメインと発現プラットフォームとの間で観察された可変長のヘアピンを存在させ得ることが示唆される。アプタマーが同時転写的に利用可能である時間の量を増加させることによって、ポリメラーゼがヘアピンの転写に費やす追加の時間を通して、リボスイッチのリガンドに対する感度を増加させ得る。
【0159】
タイマードメイン長の影響、したがって結合ウィンドウの持続時間を調べるために、pAF10-0ntデバイスに基づいて、4つの追加の動態学的に制御バイオセンサーを設計した(図9A)。動態学的に制御されたバイオセンサーは、それらのタイマードメインを除いて、pAF-10-0ntと同一の配列を含有し、それらのタイマードメインは、それらの長さ及び配列の両方で変化し、全てが9より大きいDR値を有する。異なる15nt長のタイマーを含む2つのデバイスと、異なる100nt長のタイマーを含む2つのデバイスを設計した。これらのタイマーがデバイスの感度に及ぼす影響を決定するために、本記載の同時転写切断アッセイを、各デバイスについて6つの異なる濃度のpAFで実施した。複数のデバイスのリガンド感度を評価するために、最大半量の有効濃度(EC50)をpAFに対して比較した。先験的なEC50値予測は、リガンド結合が、リガンド結合ウィンドウが閉じるときに停止する疑似ファーストオーダー不可逆プロセスであると仮定する数式4から計算された。数式4では、konは、独立してアプタマー-リガンド対について実験的に決定された会合速度定数であり、[L]は、リガンドの濃度であり、kpolは、37CでのT7RNAポリメラーゼのインビトロ伸長率の文献値であり、ntは、挿入されたタイマードメインのヌクレオチド長である。
【0160】
【数5】
【0161】
タイマードメインを有さず、したがって同時転写的に結合することが予想されない親デバイスを除いて、全ての動態学的に制御されたバイオセンサーは、11.1のカットオフをはるかに下回るB1障壁を有し、したがって、リガンド依存性バースト相動態学を表示することが予想される。全てのpAF10動態学的に制御されたバイオセンサーが、バースト相動態学を表示したわけではなく、非常に高いkburst値は、手動ピペット制限のために大きな誤差を有する可能性があるため、2パラメータ結合数式5に適合したときに各動態学的に制御されたバイオセンサーに対して最良のr値を提供したいずれかのパラメータ(kavg+、又はIBF)を非依存的に選択することを決定した。最大シグナルのフィット値を使用してデータを正規化し、その後、1パラメータ結合数式6にフィットさせた。
【0162】
【数6】
【0163】
【数7】
【0164】
挿入されるタイマーの長さが増加するにつれて、動態学的に制御されたバイオセンサーについて測定されたEC50も増加し、2桁を超えるfit EC50値(8.4mM~4.4M)をもたらしたことが観察された(図7B)。興味深いことに、pAF10-100nt及びpAF10-100nt-v2について観察された9.3mM及び8.4mMのEC50値は両方とも、3.3mMという本発明者らの先験的期待の3倍以内にある(図9C)。pAF10-15nt及びpAF10-15nt-v2について観察された40mM及び142mMのEC50値は、22mMの予測に近い。タイマードメインなしでは、単純なEC50推定法が存在しない転写後の熱力学的経路を介してpAFに結合することが予想されるため、pAF10-0ntの動態学的に制御されたバイオセンサーのEC50についての予測は行わなかった。
【0165】
バースト相動態学を表示する4つの動態学的に制御されたバイオセンサーについて観察されたよりも、先行的なEC50の予測が低かったことは、重要である。これは、以下の3つの主要な可能性のうちの1つを示唆している:1単離で測定された特徴付けられたアプタマー-リガンド会合速度は、K-A内よりも高い。これは、残りのヌクレオチドとの弱い一過性の相互作用が結合に対するアプタマーの可用性を低下させる可能性があるため、確かに可能性はある。2T7伸長速度の文献値は、実験における実際の伸長率よりも低い。これは可能性はあるが、利用された文献値はすでに報告された文献値の上限に達している。3結合ウィンドウは、タイマードメインの転写時間よりも短い。MFEpathは、アプタマードメインが適切に折り畳まれるまでに、タイマードメインがすでに部分的に転写されていると予測するため、これもまた非常に可能性が高い。
【0166】
「任意の分子で任意の遺伝子を制御する」というアイデアは、非常に野心的であり、達成不可能である可能性が高い目標であるが、これまでに行われた研究は、その目的に近づく上で潜在的なRNAスイッチが保持されていることを示していると考えられている。実施され提案された試験は、いくつかの重要な方法でRNA設計に重要な進歩をもたらすと考えられている。まず、RNAスイッチを設計するために広く適用可能なコンピュータ的な戦略は、高性能RNAデバイスを設計する能力だけでなく、エンドユーザーから必要とされる実験的専門知識の欠如にとっても大きな進歩である。研究者からより安価なコンピュータリソースに設計の労力を移すことによって、動態学的に制御されたバイオセンサーは、そうでなければ必要とされる細胞スクリーニング実験を実行するための技術的能力(又はリソース)を欠いている科学者に利用可能になる。更に、設計のルールは、他のタイプのRNAスイッチのコンピュータによる設計のための優れた出発点を提供する。分子内TMSD機構によって可能となる極めて低いバックグラウンド切断速度は、本記載のdCas9ベースのシステムのように、漏れのあるバックグラウンドシグナルを許容することができない用途を可能にするはずである。タイマードメインを利用して動態学的に制御されたバイオセンサーのEC50を調節する実証された能力は、スイッチ感度の先験的な定量的予測と、それらの用途に合わせてカスタマイズされたスイッチの合理的な調節の両方のためのフレームワークを提供するため、RNA設計の分野においてもう一つの重要な前進を提供する。
【0167】
E.coliで以前に実証されている遺伝子制御剤の1つのクラスは、アプタザイム制御発現デバイス(aRED)のクラスである(Carothers,J.M.,et al.Model-Driven Engineering of RNA Devices to Quantitatively Program Gene Expression.Science 334,1716-1719(2011)、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。aREDで利用されるメカニズムは、可変RNA分解速度のメカニズムである。リボザイム(又はアプタザイム)が細菌の5’-UTR内で切断されると、次いで、下流遺伝子は、5’-トリホスフェートの代わりに5’-ヒドロキシル基で終結する。これは、エキソヌクレアーゼが5’-三リン酸基を認識して除去するため、分解速度に影響を及ぼす。かかる基の不存在下では、mRNAは、代わりに核内分解経路を介して分解される。このより遅い分解は、RNAの半減期を最大6倍増加させ、したがって定常状態のタンパク質発現レベルをもたらす。動態学的に制御されたバイオセンサーをaREDに組み込むための予備的な努力は有望な結果を示したが、その後の分析では好ましくない矛盾した応答が得られた。1つの重要な交絡要因は、リボソーム結合部位へのアプタザイムの隣接性である。リボソーム結合部位の構造が原核生物の翻訳速度を決定する主要な要因の1つであることが知られているため、リボザイム切断又は構造再配置の結果として発生するリボソーム結合部位(RBS)構造の変化は、タンパク質発現レベルに更なる意図しない影響を与える可能性が高い。aREDに応答するタンパク質レベルの倍数変化が約6であり、RBS構造の変化に応答するタンパク質レベルの倍数変化が数桁であることを考慮すると、意図しない効果が意図した効果よりも大きな影響を与える可能性が非常に高い。
【0168】
アプタザイムが遺伝子制御に利用する理想的な生化学的メカニズムではないかもしれないという別の証拠は、自然界での驚くべき欠如である。遺伝子発現レベルを動的に調節するリボスイッチは、天然の細菌では普遍的であり、小分子を補因子として使用する天然リボザイムが特徴付けられているが、自己切断リボザイムの切断活性がRNAアプタマードメインの結合状態によって制御されるアプタザイムは、未だ見出されていない。なぜそれらがより一般的ではないかについてのいくつかの仮説があるが、自然界のシステムは、転写ターミネーター又はRBSの折り畳みを制御するリボスイッチなどの他のメカニズムが好ましいことを発見したようである。
【0169】
実施例2
本実施例では、小分子テオフィリンの存在がE.coliにおける蛍光タンパク質の発現を制御する、アンチセンスリボソーム結合部位(AS-RBS)リボスイッチの操作を説明する。自然界から借用して、転写停止部位がスイッチに組み込まれて、標的分子の前例のないレベルの感度が達成される。
【0170】
イントロダクション
細菌における遺伝子制御剤としてのアプタザイムの欠点を考慮して、本発明者らは、分子アーキテクチャ及びコンピュータによるスクリーニングワークフローを、E.coliの遺伝子発現レベルを調節するのに適した新しい出力ドメインに適用することにした。遺伝子発現レベルを制御するために天然リボスイッチによって用いられる最も一般的なメカニズムの1つは、入ってくるリボソームに対するリボソーム結合部位(RBS)のアクセス性を調節することである。RNAで構成される16Sリボソームサブユニットは、相補配列の塩基対形成によってRBSに結合する。結果として、mRNA分子内の競合塩基対によるRBSの閉塞は、RBSとリボソームがどのように効果的に会合することができるかに劇的な影響を及ぼすことが知られている。次に、これは、関連するmRNA分子がタンパク質に翻訳される速度、及び結果として生じる定常状態のタンパク質濃度を調節する。このメカニズムにより、翻訳開始速度が数桁変化し、高性能バイオセンサーにとって魅力的になる。
【0171】
RBSは、合成アプタマー調節のための魅力的な出力ドメインであるが、それらは、動態学的に制御されたRNAバイオセンサーの操作のための本記載の分子アーキテクチャとあまり互換性がない。分子アーキテクチャは、閉鎖ステムを有する構造化RNA出力ドメインの折り畳みを調節するように設計されているが、RBSは、最も活性な形態ではほとんど構造化されていない。これは、動態学的に制御されたバイオセンサーシステムで特定された以前に特徴付けられた目的関数及び定量的設計メトリックがもはや適用されなくなるため、重大な非互換性を表す。この問題に対処するために、野生型配列の逆相補体である5’伸長をRBSに付加することによって、RBS配列をアンチセンスRBS配列に変換した(図12A)。これにより、本発明者らの分子アーキテクチャでの使用に好適な閉鎖ステムを有するRNAドメインが作製され(図12B)、それにより、アプタマーがその標的に結合しないときに翻訳レベルが最大化され、その標的に結合するときに最小化される。
【0172】
熱力学的構造アンサンブルと再折り畳み・動態学の複雑な相互作用のために、熱力学的制御下で作用するRNAバイオセンサーの設計における特に困難な点は、スイッチが応答すると予想される濃度を予測することの困難さである。このため、多くの機能性RNAベースのバイオセンサーは、バイオセンサーの実際のEC50と、溶解性又は他の機械的不適合性に起因するか否かに応じて、バイオセンサーの性能を研究者がアッセイできる濃度と、の間のミスマッチのために機能しないとみなされている可能性がある。この応答予測可能性の欠如は、候補バイオセンサーが細胞内で発現されているときに悪化し、そこでは、細胞外に添加された分子の細胞内取り込み、及び該分子の細胞代謝が、新規バイオセンサーの設計戦略の検証をますます困難にする更なる交絡要因を生じさせる。このため、テオフィリンアプタマーは、新規な遺伝的にコードされたバイオセンサーの検証のための一般的な選択肢となっている。細胞外及び細胞内のテオフィリン濃度との間の定量的関係については不確実性があるが、テオフィリンが細胞に入ることができ、細菌の代謝によって容易に分解されないことが検証されている。しかしながら、これらの利点にもかかわらず、文献で報告されているバイオセンサーは、テオフィリンが毒性になる濃度をわずかに下回るだけのEC50値を有する。したがって、高性能バイオセンサーを特定するためには、テオフィリンに対する高い感受性を達成することが最優先事項である。
【0173】
開示された分子アーキテクチャのこの新しい適用を検証し、文献で報告されたものと比較して得られたバイオセンサーをベンチマークするために、テオフィリン応答性AS-RBSリボスイッチを操作した。動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャは、実験的に特徴付けられる前に、バイオセンサー感度について先験的に予測することが可能となるが、細胞内に存在するテオフィリンの濃度についての追加の洞察を与えるものではない。したがって、開示されたバイオセンサーに細胞内の潜在的に非常に低い濃度のテオフィリンを感知する最良の機会を与えるために、自然から教訓を得て、候補バイオセンサーのタイマードメイン内に転写停止部位を実装することを決定した。TPPリボスイッチファミリーは、EC50の値が1桁を超える範囲で、TPPに対する感度の範囲を有する。AS-RBSリボスイッチと同様に、E.coliのThiC遺伝子由来のTPPリボスイッチは、アプタマーがその標的に結合しないときに翻訳レベルが最大化され、その標的に結合するときに最小化されるように、RBSアクセシビリティを調節する。興味深いことに、アプタマーとRBSとの間で、動態学的に制御されたバイオセンサーのタイマードメインに類似した領域で、リボスイッチは、mRNAの残りの部分を転写し続ける前に、RNAポリメラーゼを半減期ほぼ1分で失速させる転写停止部位として検証されたヘアピンを含有する。動態学的に制御されたバイオセンサーから予想されるように、この転写停止活性は、その標的分子に対するバイオセンサーの感度を増加させることが実証されている。正しい折り畳みコンテクストでは、このThiC転写停止部位をAS-RBSリボスイッチのタイマードメインに組み込んで、テオフィリンに対する感度を有意に増加させ、全体的な性能を向上させることができると推論された(図12C)。
【0174】
動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャは、E.coli内で機能する翻訳制御AS-RBSリボスイッチ構築物の設計にも適用され得ることが、ここで実証される。更に、E.coliからの天然の転写停止部位をAS-RBSリボスイッチのタイマードメインに組み込むことができ、テオフィリンに対する前例のない感度をもたらすことが実証されている。次いで、バイオセンサーの高感度及びリガンド活性化比は、タイマードメインの特定の配列に依存することが実証された。最後に、出力遺伝子の5’末端の同義コドン改変体をスクリーニングすることによって、バイオセンサーのリガンド活性化比に影響を与えることなく、発現レベルの増加が達成されたことが示されている。
【0175】
方法
AS-RBSスイッチの設計
まず、BglBrickベクターに由来する従来のRBSを、その逆相補性付加5’と組み合わせて、翻訳開始速度を劇的に低下させることが期待されるヘアピンを作製した。シリコプールの多様性を増加させ、スイッチの5’末端がRBS配列自体と同一であることを防止し、翻訳開始のための別の部位をもたらすために、AS-RBS自体が完全なヘアピンではないように、変異オペレータを適用した。RBS計算装置を使用して、AS-RBS配列の予測される翻訳開始速度が、アンチセンス配列が付加されていないRBSよりもはるかに低いことを確認した(Salis,H.M.Chapter two-The Ribosome Binding Site Calculator.in Methods in Enzymology(ed.Voigt,C.)vol.498 19-42(Academic Press,2011)、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。T7と比較したE.coli RNAポリメラーゼヌクレオチド付加の減少率に対応する、B1障壁高さ<=7.8kcal/molのスクリーニングを実施した。B1と同じ障壁高さの増加に対応する、B2障壁高さ<=2.9kcal/molのスクリーニングを実施した。トー-標的距離は、以前のK-Aと同様に、値<=8.5の任意単位についてスクリーニングした。経路収束>=0.7のスクリーニングを実施した。
【0176】
インビボでのタイマープールのスクリーニング
多様なタイマードメインを含有するプラスミドのプールを生成するために、2つの外向きのSapI制限部位を、タイマードメインが存在する場所にコンピュータ的に設計されたスイッチ候補に配置した、デスティネーションベクターを構築した。ゴールデンゲートプラスミドアセンブリを使用して、プライマー伸長PCRによって生成される短い二本鎖DNA断片のプールを挿入した。タイマードメインプールには、可変位置に隣接するThiC転写停止部位を含ませた。
【0177】
プラスミドのプールで、E.coli株DH10B細胞を形質転換させ、関連する抗生物質を含有するプレート上にプレーティングし、37℃で16~24時間増殖させた。その時点で、最も明るい緑色のコロニーを採取し、適切な抗生物質を含有するMOPS EZ-Richの合成培地中で、24時間にわたって増殖させた。次いで、液体培養物を、0mM又は1mMのテオフィリンを含有する400uLの新鮮培地で1:1000に希釈した。更に16~24時間後、150uLの培養物を、ゲイン35を有するSynergy HTXプレートリーダー(BioTek)中で96ウェルプレートフォーマットで読み取った。
【0178】
修飾された停止含有タイマーの滴定
少なくとも2つの生物学的複製物を、適切な抗生物質を含有する400ulのMOPS EZ-Richの合成培地中で、24時間にわたって増殖させた。次いで、液体培養物を、2.5mMで開始するテオフィリンの2倍希釈シリーズを含有する400uLの新鮮培地に1:1000に希釈した。培養物を更に24時間増殖させ、次いで150uLの培養物を96ウェルプレートフォーマットで、ゲイン35を有するSynergy HTXプレートリーダー(BioTek)で読み取った。
【0179】
同義コドンプールのスクリーニング
外向きのSapI制限酵素部位を含む目的ベクターを、標準的な分子クローニング技術を用いて組み立てた。sfGFP遺伝子の最初の11個のコドンを含有するDNAを含有する、内部に面するSapI制限酵素部位に隣接する短い断片のプールを組み立て、sfGFPの同じ11個のN末端アミノ酸をコードする同義コドンを同定することができるように位置を変化させた(図示せず)。部分ドーピングを用い、プールを可能な限り多くの同義のコドン置換に維持した。組み立てを行うためのドープオリゴをIDTから購入し、プライマー伸長を使用して二本鎖断片に組み立てた。組み立てたプールを、テオフィリンを含まないLB寒天プレートに形質転換した。最も明るい緑色のコロニーのうち48個を採取し、適切な抗生物質を含有する400μLのMOPS EZ-Richの合成培地中で、24時間にわたって増殖させた。次いで、液体培養物を、0mM又は1mMのテオフィリンを含有する400μLの新鮮培地で1:1000に希釈した。更に16~24時間後、150μLの培養物を、ゲイン35を有するSynergy HTXプレートリーダー(BioTek)中で96ウェルプレートフォーマットで読み取った。
【0180】
結果及び考察
テオフィリン応答性AS-RBSリボスイッチの同定及び特徴付け
実施例1に概説される計算アプローチを利用して、テオフィリンに応答するように操作された候補AS-RBSリボスイッチを生成した。主な違いは、スクリーニングに使用される障壁高さが、実施例1で使用されるT7RNAポリメラーゼと比較してE.coli RNAポリメラーゼの伸長速度が遅いことに対応して増加したことであった。細菌細胞内の候補AS-RBSリボスイッチ構築物の感度を高めるために、E.coli由来の天然の転写停止部位をAS-RBSリボスイッチのタイマードメインに組み込んだ。細菌の転写停止部位は、rho非依存性転写ターミネーターに類似し、ヘアピンの後に3’ポリT伸長部が続く。しかしながら、転写ターミネーターとは異なり、このポリT伸長部は連続的ではなく、他の塩基によって中断される。転写ターミネーターは、それらが機能することが可能となる非常に迅速で特異的な同時転写折り畳み軌道を有することが知られているため、転写停止部位も同様であり、したがって、非常に特異的な折り畳みコンテクストの下でのみ機能すると推論された。これらの正確な折り畳みコンテクストがどのようなものかを明らかにすることなく、インシリコではなくインビボで、機能性なスイッチをスクリーニングすることを決定した。将来的には、機能スイッチ改変体の折り畳み分析により、純粋にコンピュータ的に停止部位機能を予測するための折り畳みルールの決定が可能となると考えている。
【0181】
インビボスクリーニングを実施するために、新しいゴールデンゲートプラスミドアセンブリを使用して、E.coliのThiC遺伝子からの転写停止部位に隣接するタイマードメイン内に可変配列を含有するプラスミドのプールを生成させた。個々のコロニーを液体培地中に採取し、テオフィリンの存在下及び非存在下で増殖させた。次いで、正規化GFP蛍光において最大の倍数変化を示したコロニーを単離し、配列決定した。興味深いことに、少なくとも1つの改変体は、意図された作用様式に反して、テオフィリンに応答して蛍光を増加させる能力を実証さえした。テオフィリンに応答して最大の折り畳み変化を表示する単離された配列を、Theo_48と名付けた。Theo_48の感度を特徴付けるために、その応答を、いくつかの異なるテオフィリン濃度で特徴付けた。驚くべきことに、それは非常に低い濃度で応答し、47μMのEC50を表示した(図2A)。特に、このEC50は、以前に細菌におけるテオフィリン応答性リボスイッチから観察されたものより4倍低い(図13B)。実際、これは、同様のバイオセンサーから測定された平均EC50よりも10倍以上低く、動態学的挙動を示すことが知られている唯一の他の操作されたリボスイッチよりも10倍以上低い。これは、停止部位が実際に所望の影響を有しており、その結果、同時転写リガンド結合ウィンドウが拡張され、操作されたバイオセンサーの前例のない感度を可能にしていることを示唆している。
【0182】
Theo_48スイッチの前例のない感度及び高い活性化比を達成する上で転写停止部位が果たした役割を検証するために、転写停止の持続時間を短縮するか、又は排除するように設計された一連のタイマードメイン改変体を作成した(図14A及び14B)。ThiC停止部位を転写ターミネーターのように見えにくくするように設計された点変異を、停止部位内のヘアピンのポリ-T伸長部3’を変異させることによって導入し、又は、タイマードメイン若しくは停止部位の部分を削除した。ポリT伸長部内に2つの点変異を導入することは、スイッチ性能に本質的に影響を及ぼさなかったが、6つの点変異を導入することは、スイッチのリガンド活性化比を維持しながら、EC50をより高い値にシフトさせ始めた。これは、休止持続時間が、点変異の数が増加するにつれて減少し、他の方法でスイッチ機能に影響を及ぼすことなく、リガンド結合ウィンドウが短くなる可能性があることを示唆しているように思われる。欠失の場合、修飾された全てのタイマードメインは、リガンド活性化比を低下させ、EC50値を大幅に増加させた。これは、停止部位の一部又は全てが削除されているTimer_Only及びPolyT_Onlyの場合に主に予想される(図示せず)。しかし、非常に興味深いことに、ThiC_Only構築物は、ThiC停止部位全体が保持され、停止部位の上流の可変配列のみが除去されるが、全ての試験された構築物の中で最も感度が低い。これは、停止部位だけでは、転写停止には不十分であることを示唆している。重要な転写停止を引き起こすために、ThiC停止部位は、それが正しく折り畳むことが可能となる適切な配列構築物によって囲まれなければならない。
【0183】
同義のN末端コドンのスクリーニングによるAS_RBSシグナルの増加
Theo_48構築物の優れた感度及びリガンド活性化比は、動態学的に制御されたバイオセンサー設計パイプラインを別の出力ドメインに適用するための重要な達成を表したが、Theo_48構築物の最大シグナルは、同じRBS配列及びプロモーターを使用して陽性対照から観察された最大シグナルよりも実質的に低かった。実際、pAFに応答するように設計された別の候補AS-RBSリボスイッチは、はるかに高い最大発現レベルを示し、アーキテクチャによって課される遺伝子発現に基本的な制限がないことを示唆している。テオフィリン及びpAF応答性バイオセンサー候補のコンピュータ的に予測された構造は、テオフィリン構築物中のRBSが、標的分子が不存在であっても、より大きな程度の残留構造を維持し、この残留構造のいくつかが出力sfGFP遺伝子の5’末端を有することを示唆した。Theo_48構築物の最大発現レベルを増加させるために、RBSとsfGFPの5’末端との間の構造の程度を低下させることが求められた。希少なコドンが細菌遺伝子の5’末端で濃縮され、隣接するRBSで意図しない構造を低減する可能性が高いという観察に触発され、同様の戦略を使用した(Goodman,D.B.,et al.Causes and Effects of N-Terminal Codon Bias in Bacterial Genes.Science 342,475-479(2013)、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。Theo_48バイオセンサー自体のいかなる部分も変更することなく、sfGFPの最初の11個のアミノ酸位置についての同義コドンを含有するプラスミドのプールを作製した(図示せず)。異なるRNA構造を有するにもかかわらず、それらの発散配列に起因して、プール改変体は、同じアミノ酸配列を有し、翻訳されたときにsfGFPへの修飾をもたらさないものとすべきである。次いで、LB寒天プレート上で増殖させたときに明るい緑色を示すコロニーを選抜した。選抜された全てのコロニーは、実際には、液体培養物中で増殖させたときに、GFPレベルの増加を表示した(図示せず)。興味深いことに、改変体の各々は異なるレベルの蛍光を表示したが、テオフィリンに応答する活性化比は、全ての単離株においてほぼ同一のままであった(図示せず)。これは、設計されたスイッチが、同時転写リガンド結合ウィンドウが閉じられると、スイッチの配列3’の挙動及び同一性がスイッチ状態に影響を与えない同時転写的、動的な方法で動作しているという追加の証拠として機能する。
【0184】
実施例3
本実施例は、CRISPR活性化のための高活性gRNA配列を設計し、生成するためのコンピュータアルゴリズムであるWayfinderを開示する。Wayfinderアルゴリズムは、本明細書に記載の計算ツールを利用して、CRISPR活性化を達成するために本発明者によって使用される修飾gRNAである全長及び切断された足場RNA(scRNA)の活性を予測するために開発された。その後、Wayfinderアルゴリズムは、gRNA活性予測ツールのための最先端技術と比較する。最後に、Cas9結合ハンドルの配列及び構造保存を決定し、リガンド応答性scRNAの操作を可能にした。得られたscRNAは、例示的な出力シグナル生成戦略として本明細書に記載されるCRISPR活性化(CRISPRa)用途を含む高度なCRISPRベースの用途を含む、広範な用途に有用である。
【0185】
イントロダクション
CRISPRaは、細菌における細胞代謝の容易な再構成のための強力な新しいツールとして浮上している。同じ細胞内の複数の異種遺伝子の独立した遺伝子発現レベルを同時に調節する能力は、複雑な代謝経路の組み合わせ実装のための途方もない機会を提供する。合成CRISPRaプロモーター内に挿入されたスペーサ配列を一意に規定する能力は、gRNA媒介性転写活性化の高度に直交した性質と組み合わされ、このシステムを理論的に使用して、直交転写因子の任意に大きなネットワークを生成することができることを意味する。
【0186】
CRISPRa活性を制御するルールの多くはすでに導出されているが、それらのスペーサ配列のみに基づいてCRISPRa用途のgRNAの活性を予測するための堅牢なツールは存在しない。CRISPRの高性能な用途を確保するためには、gRNA活性が最適であることを保証することが重要である。gRNAの可変スペーサ配列とgRNA配列の定常部分との間の相互作用は、しばしば、gRNAの非最適な活性の原因として提案されている。例示すると、図15は、正しく折り畳まれたgRNAと誤って折り畳まれたgRNAとの違い、及び結果として生じるCRISPR活性に対する影響を概略的に示す。しかしながら、真核生物遺伝子編集データセットで主に訓練された既存のgRNA設計ツールは、細菌CRISPRa活性のスペーサ特異的改変に対する予測力が極めて低い。このため、発明者らは、RNA折り畳みの教訓を適用して、CRISPRa活性レベルが、gRNA折り畳みの折り畳みを支配する基礎となる生物物理学的関係の結果であるかどうかを判定した。
【0187】
異なるスペーサ配列にわたる活性レベルを予測するために、上記のコンピュータによるRNA予測ツールを適用して、CRISPRa活性と相関する共通の一組の生物物理学的パラメータを同定する。CRISPRaに対する異なるスペーサ配列の効果を分析することに加えて、発明者らはまた、スペーサ切断によるgRNA活性への影響を説明するために、彼らの計算ツールを適用した。スペーサ切断は、CRISPR適用のために変化した活性レベルを有するgRNAを生成するための便利な戦略を提供する。変更された活性を有するこれらのgRNAは、組み合わせライブラリの生成に理想的な、複数の標的遺伝子での異なるCRISPRa活性の実施が可能となるために同時に送達され得る。理論的には、スペーサ切断は、gRNA活性を減少させるための最も単純な解決策を表す。しかしながら、切断はしばしば、所与の切断長さで非単調な振る舞いと多様な活性を表示し、それらの活性のコンピュータによる予測を興味深いものとする。
【0188】
スペーサ配列のみからCRISPRa活性のレベルを予測する能力は、CRISPRaベースのシステムのフォワードエンジニアリングのための重要な前進を表すであろうが、非スペーサ要素が変化するときに、gRNA活性の予測が非常に有用であろう多くの用途が存在する。例えば、同時に発現するscRNAの数が増加すると、遺伝子の不安定性も増加する。多数のDNA成分の再利用は、相同組換えの可能性を増加させ、したがって、所望の系挙動の喪失を増加させる。これに対処するために、gRNA内の定常領域の修飾配列改変体を、活性を保持しつつ作成することを高い優先度で行った。更に、機能性Cas9結合ハンドル配列のコンピュータによる生成のための一連のルールを開発することは、本発明者らの動態学的に制御されたバイオセンサー設計パイプラインを、動的CRISPRaのためのリガンド応答性scRNAの生成に適用することを可能とするであろう。
【0189】
本実施例では、scRNAの活性をそのヌクレオチド配列のみからコンピュータ的に予測するためのWayfinderアルゴリズムを提示する。図16を参照されたい。scRNAは、3’側で追加のms2ヘアピンを添加したgRNAであり、MCPタンパク質に結合することにより、転写活性化因子をCRISPRa複合体に動員する。図25も参照されたい。Wayfinderはまた、scRNA切断の活性を予測することができ、予備のインビボ検証なしに、広範な発現レベルを達成することができることが実証されている。これにより、中間のCRISPRaレベルを容易にアッセイできない複雑な系のフォワードエンジニアリングが可能になる。次に、Wayfinderアルゴリズムを他のガイドアクティビティ予測ツールと比較し、システムの残りの部分を劇的に上回ることを実証する。これは、Wayfinderアルゴリズムが、他のモデルにはないガイド活性への生物物理学的洞察を提供し、より広範なガイドRNA設計努力に重要な価値を提供することを示唆している。最後に、リガンド応答性scRNAの操作を可能とするために、Cas9結合ハンドルの配列及び構造保存ルールを決定する。
【0190】
方法
プラスミドアセンブリ
プラスミドを標準の分子生物学プロトコルを使用してクローニングした。CRISPRa成分(dCas9、活性化ドメイン、及び1つ以上のscRNA)を発現するプラスミドを、p15Aベクターを使用して構築した。S.pyogenesのdCas9(Sp-dCas9)を、内因性Sp.pCas9プロモーターを使用して発現させた。変異型SoxSを含有するMCP-SoxS活性化ドメインを、BBa_J23107プロモーター(parts.igem.org)を使用して発現させた。scRNAは、MS2の上流の内因性tracrターミネーターヘアピンが除去された、b2設計を使用した(Dong,C.,et al.Synthetic CRISPR-Cas gene activators for transcriptional reprogramming in bacteria.Nat.Commun.9,2489(2018)、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。LR-scRNAを含むscRNAを、BBa_J23105プロモーターを使用して発現させた。CRISPRaの標的遺伝子を発現するプラスミドを、低コピーpSC101**ベクターを使用して構築した。mRFP1及び代謝経路遺伝子を、CRISPRa標的部位を含有する合成DNA配列が先行する弱いBBa_J23117最小プロモーター(parts.igem.org)から発現させた。
【0191】
スペーサ活性の予測のためのWayfinderアルゴリズム
多様な配列及び構造特性を含むスペーサのセットを生成させた。唯一の一貫したルールは、構築物の3’末端におけるms2アプタマーが正しく折り畳まれると予測されたことであった。これは、2つの理由で行った。1つの理由は、scRNAが、MCP-SoxS活性化因子に容易に結合することが可能となる方法に折り畳まれず、これにより、scRNAが、活性化因子が存在せずに標的DNAを占有することを可能にし、予測不可能な結果をもたらす可能性を生じさせる、交絡事例を排除することである。他の理由は、ms2ヘアピンが、ポリT伸長部のすぐ5’のヘアピンであるため、転写ターミネーターに類似していることである。一時的な誤った折り畳みに起因するリードスルーにより、可変長の3’テールを有するscRNA配列が得られ、結果を再び混乱させる可能性があるため、これは、scRNAの転写後の転写終結に潜在的に役立つであろう。
【0192】
scRNAは、強いBBa_J23119プロモーターから発現させた。scRNA含有プラスミドで、対応するレポーター遺伝子を有する第2のプラスミドを含有するE.coli株MG1655を形質転換させた。二重形質転換ごとに3つのコロニーを、適切な抗生物質を含有する400μLのMOPS EZ-Richの合成培地(Teknova)中で24時間にわたって増殖させた。培養物を、37℃で急速に振とうする96個のディープウェルプレート中で増殖させた。24時間の増殖後、200μLの各培養物を、ゲイン35を有するSynergy HTXプレートリーダー(BioTek)中の96ウェルプレートフォーマットで測定した。
【0193】
上記の同時転写折り畳みのためのMFEpathアルゴリズム(実施例1;図17を参照されたい)又はViennaRNA折り畳みパッケージバージョン2.3.5からの様々なアルゴリズムの組み合わせを使用して、Wayfinder予測を生成させた。mfthresholdパラメータが7.8kcal/molであるMFEpathを使用して、scRNAが転写中に採用する構造、並びにscRNAがそれらのMFE構造に移行するのに要する時間の推定を予測した。mfthresholdパラメータは、リボヌクレオチドが成長中のRNA鎖に添加される個々の伸長ステップよりも、構造的再配置がより迅速に生じるための障壁高さカットオフを指す。動態学的障壁は、Findpathアルゴリズムを使用して、MFE構造から、又は急速に形成された同時転写構造から、Cas9結合ハンドルが正しく折り畳まれ、スペーサが非構造化される構造への直接再折り畳み経路の障壁高さを予測することによって計算した。Wayfinderメトリックは、動態学的障壁とネット結合エネルギーの線形組み合わせとして計算した。正味結合エネルギーは、ウィーン(Vienna)のRNA二本鎖を使用して、その逆相補配列に結合するスペーサ配列のRNA-RNA自由エネルギーを計算することによって計算した。
【0194】
ハンドルの配列及び構造の保存
Cas9結合ハンドル内にランダム化塩基を含有するプールを、レポーター遺伝子を含有する第2のプラスミドとともにE.coli株DH10Bに形質転換した。プレート上の最も赤いコロニーを採取し、14mLの培養チューブ中で、24時間にわたってLB中で増殖させた。24時間後、200μLの各培養物を、ゲイン35を有するSynergy HTXプレートリーダー(BioTek)中の96ウェルプレートフォーマットで測定した。野生型ハンドル配列のRFU/OD600値の90%を超えるRFU/OD600値を有する全ての培養物を、続いて配列決定のために供した。
【0195】
配列及び構造の保存の分析のために、所与のサブプール内で可変であった位置のみを考慮した。閉鎖G-U(又はU-G)塩基を除いて、全配列の10%を超える塩基のみを許容塩基とみなした。構造の保存については、野生型配列のMFE構造の対応する位置で、ペアリングステータス(塩基対又は非塩基対)がコンピュータ的に予測されたペアリングステータスと一致する位置のみを考慮した。全配列の10%超で表された塩基対型(G-C、A-T、又はG-U)のみが、塩基対型として許可されたものとした。
【0196】
上記の配列及び構造の保存ルールを使用して、新規のハンドルを生成し、J306スペーサ配列との共通のscRNAコンテクストに挿入した。scRNAは、中~強度のBBa_J23105プロモーター、又は強力なBBa_J23119プロモーターのいずれかから発現させた。scRNA含有プラスミドを、レポーター遺伝子を含有する第2のプラスミドを含有するE.coli株DH10Bに形質転換させた。二重形質転換ごとに3つのコロニーを、適切な抗生物質を含有する400μLのMOPS EZ-Richの合成培地(Teknova)中で24時間にわたって増殖させた。培養物を、37℃で急速に振とうする96個のディープウェルプレート中で増殖させた。24時間の増殖後、150μLの各培養物を、ゲイン35を有するSynergy HTXプレートリーダー(BioTek)中の96ウェルプレートフォーマットで測定した。
【0197】
結果及び考察
スペーサ活性の予測のためのWayfinderアルゴリズム
細菌CRISPRa系の予測可能性を高めるために、最初のステップでは、RNA折り畳みの動態が、異なるスペーサ配列を有するscRNA間の改変の重要な原因であるかどうかを決定することとした。ランダムに選抜されたスペーサ配列を有するscRNAは、細菌における基本的なCRISPRa活性の既知のルールの全てを満たすにもかかわらず、CRISPRa活性の広範な変動を表示したことが観察された。コンピュータによるRNA折り畳み予測を使用してscRNA活性を定量的に予測できるかどうかを決定するために、20塩基スペーサ配列及び対応する20塩基標的DNA配列の配列のみで変化する39のscRNA構築物を構築し、RFP発現を駆動する合成CRISPRaプロモーター内で試験した。予想通り、試験したscRNAは、レポーター蛍光において、ほぼ50倍の差異を示した。Wayfinderアルゴリズムを適用して、MFE構造(スペーサ配列がそれ自体、残りのscRNA、又はその両方との塩基対を形成しても形成しなくてもよい)から、ハンドルが正しく折り畳まれ、MS2ヘアピンが正しく折りたまれ、スペーサが非構造化されている構造への変換のための、障壁高さ(動態学的障壁)を予測した(図18A)。驚くべきことに、動態学的障壁パラメータのみが、試験したscRNAの間で観察された改変の大部分を説明した(図18B)。障壁値を更に低下させることがより高い活性化をもたらすかどうかを調査するために、ほとんど又は全く望ましくない構造を含む追加の5つのscRNAを設計した(図24)。5つ全てのscRNAは、高い活性化レベルを表示した(図24)。動態学的障壁と活性化レベルとの間の関係のシグモイド形状は、反応が10kcal/molよりも小さい運動障壁高さで飽和するように見えるため、増加の欠如のいくつかを説明し得る。最終的に、Wayfinderアルゴリズムは、gRNA活性を正確に予測し、高活性のgRNA又はscRNAを設計するのに有用であった。例えば、図19及び24を参照されたい。
【0198】
次に、scRNA活性を予測するWayfinderアルゴリズムの能力を、文献からの最も一般的に使用されるガイドRNA活性予測ツールと比較した(Moreno-Mateos,M.A.et al.CRISPRscan:designing highly efficient sgRNAs for CRISPR-Cas9 targeting in vivo.Nat.Methods 12,982-988(2015)、Haeussler,M.et al.Evaluation of off-target and on-target scoring algorithms and integration into the guide RNA selection tool CRISPOR.Genome Biol.17,148(2016)、Doench,J.G.et al.Optimized sgRNA design to maximize activity and minimize off-target effects of CRISPR-Cas9.Nat.Biotechnol.34,184-191(2016)、各々その全体が本明細書に組み込まれる)。興味深いことに、他のツールは、ここで作成されたデータセットとの相関性が非常に低いことを示した(図21)。Azimuth モデルは、0.25の値で最高のSpearmanランク相関を表示したが、これはWayfinderアルゴリズムからの0.8の値よりはるかに小さい。図22は、Wayfinderアルゴリズムが、利用可能なモデリングアプローチと比較して、gRNAを設計するのに必要な実験を著しく低減し、機能性CRISPR活性化を達成するための標的部位を選択することを示す。Wayfinderは、効果的なgRNAの同定における成功率を著しく改善した。この効率の向上は、標的の多様性、したがって、操作されたgRNA配列の多様性を有する複数の複合体を用いたCRISPR実験を多重化する場合に特に影響を与える(図23)。
【0199】
標的プロモーターで異なるレベルの転写活性化を実施するために、標的プロモーターのDNA配列を変化させることなく、様々な程度のスペーサ切断を有するscRNAを容易に実施することができる。しかしながら、スペーサを切断することは、一般に、CRISPRa活性の低減をもたらすが、奏効は、多くの場合非単調である。スペーサ配列単独の長さは、切断されたスペーサ配列を有するscRNAについてのCRISPRa活性の不十分な予測因子である(R:0.66)。予測を改善するために、スペーサ切断による結合のエネルギー的好ましさの低下を捕捉するために、Wayfinderアルゴリズムを適用し、ネット結合エネルギーと運動障壁メトリックを組み合わせ、良好な予測精度を有する統一メトリック(Wayfinderメトリック、上記で定義される)をもたらした(図20)。考慮すべき1つの領域は、転写開始部位の可変性である。細菌シグマ70プロモーターは、G又はAからの転写を開始することを好むことが知られている。T又はCが+1位置に存在するとき、転写は、代わりに-1又は+2位置から開始することができ、所与のプロモーター配列の総転写収率に更なる影響を与える。G又はC以外の塩基への切断は、転写されている実際の配列に不確実性をもたらす可能性があり、その結果、それらの活性を正確に予測する能力に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。転写開始部位及び速度を標準化するために一定の5’配列エレメントを添加することにより、切断されたスペーサを用いたscRNAの活性のより正確な予測が可能となるであろう。
【0200】
ハンドルの配列及び構造の保存
gRNAが動態学的に制御されたバイオセンサー設計パイプラインと適合するためには、dCas9に効果的に結合するために必要な保存された配列又は構造、要素のいずれにも干渉することなく、gRNA自体内のdCas9結合ハンドルの配列を変化させることができることが重要である。そのために、dCas9結合ハンドル内の位置の同一性をランダム化し、得られたプールを、野生型ハンドルの活性を保持することができる特定の配列についてスクリーニングした。配列単離物を収集することにより、本発明者は、高度に機能性な代替ハンドルを新たに生成するために必要な配列及び構造保存ルールの再構築を開始した。野生型ハンドルに存在する塩基対を回収する確率が低いため、所与の位置が任意の塩基であることが許可される場合、いくつかのより小さなプールをスクリーニングに使用した。より小さいプールのそれぞれは、機能を回復するオッズが1:1000を超えることを確認するために、位置のサブセットを変化させただけであり、したがってプレートベースのスクリーニングに適している。野生型活性、塩基型の保存、及び塩基対型のうちの少なくとも90%を有する43個の分離株を各位置で収集した後、分離株の10%超に存在するエレメントのみを受け入れることによって決定した(表1を参照)。このスクリーニングアプローチにより、以前の反復的半合理的設計とは異なり、同一ではないが類似の配列保存のルールが同定された。
【0201】
保存ルールを特定した後、ルールが機能性なハンドルをどの程度うまく予測できるかを調査した。11個の新規なハンドルを試験した。1つを除く全ての操作されたハンドルは、顕著なCRISPRa活性を示したが、いくつかは、ほぼ野生型レベルを保持した。最小限の活性を有する1つのハンドルは、ハンドル配列以外の折り畳み問題によって引き起こされたようであるが、異なるスペーサ配列で試験すると、活性が大幅に増加した(図示せず)。高強度プロモーター(119)下でハンドル構築物を試験することに加えて、最も高性能なscRNAがCRISPRa応答を飽和させていることが疑われたため、これらを、より弱いプロモーター(105)から発現させた場合も試験した。予想通り、野生型配列との性能の差は、ほぼ全てのハンドルで悪化した(図示せず)。
【0202】
【表1-1】
【0203】
【表1-2】
【0204】
【表1-3】
【0205】
実施例4:
本実施例は、ガイドRNAとの相互作用のために最適化された合成プロモーターを設計するための例示的なアプローチを開示する。実施例3で考察されるWayfinderアルゴリズムを使用し、gRNA構築物の精度及び信頼性を高めるためのgRNA標的配列を設計する。このアプローチは、レポーター遺伝子の合成プロモーター領域の設計に更に組み込む。この試験の要素は、Fontana et al.,Effective CRISPRa-mediated control of gene expression in bacteria must overcome strict target site requirements,Nature Comm.11(1):1-11(2020)において公表されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。それぞれ異なる操作されたプロモーター標的を有するいくつかの発現カセットは、多重実験においても選択的に制御することができる。更に、scRNAは、スペーサ長を操作することによって誘導される発現レベルに合わせて調整することができ、個々に、又は多重化された反応のコンテクスト内でさえ、発現の更に微妙な制御を提供することが示されている。
【0206】
結果及び考察
CRISPRaは、指向性遺伝子発現のための興味深い機会を提供し、操作された代謝経路及びバイオ産生など、多くの用途がある。Wayfinderアルゴリズムは、例えば、バイオセンサー又はCRISPRa scRNAでの使用のための、高活性CRISPRガイドRNAの設計に適用可能であるだけでなく、CRISPRガイドRNAの標的にも適用可能である。図25は、合成遺伝子発現カセットが、scRNA構築物による結合のために最適化されたプロモーター領域を含有するように操作されているスキームを示す。結合すると、標的遺伝子、この場合はレポーター遺伝子、の転写が活性化される。このデザインは無数の特徴を提供する。本設計は、独立した標的化及びプログラム可能性を可能にし、各別個の発現カセット標的は、単に、結合のための独自の標的部位(例えば、約20塩基)を必要とする。例示されるように、PAM部位は、非テンプレート鎖上のプロモーター上の転写開始部位の上流の位置(例えば、-83~-79又は-73~-69)に位置することができる。PAM部位は、dCas9を標的化するために必要なNGGトリヌクレオチドである。PAMサイトは、同様のスキームに従ってテンプレート鎖上に配置することもできる。弱いプロモーターを使用して、必要に応じて低バックグラウンド活性を確保することができる。最後に、各プロモーターは、エレメントの繰り返しを避けるために、標的部位とプロモーターとの間の一意の配列を使用する。
【0207】
このスキームを使用して、様々なアッセイを実装して、概念実証を行った。図26に示すように、scRNA標的部位(J306)を組み込んだ合成発現カセットを設計し、標的部位に結合できない無関係のオフターゲットgRNA配列を有するJ306 scRNA又はscRNAに曝露した。図26Bに示されるように、プロモーター活性は、検出可能なRFPシグナルによって実証され、プロモーターの上流のJ306標的部位へのscRNAの結合は、オフターゲット配列よりも50倍多くの発現をもたらした。
【0208】
このCRISPRaアプローチのプログラム可能性を例示し、プロモーター設計がCRISPRaの性能を最適化することができることを実証するために、scRNAスペーサ及び同族標的部位に様々な変更を加えた(図27A)。改変体scRNA構築物及び操作された標的(レポーター)発現カセットの組み合わせを組み合わせ、発現活性について評価した。図27Bに示すように、標的遺伝子の発現レベルは、プロモーター内のgRNA標的部位の配列を変更し、一致するscRNAを発現することによって単に変更することができる。したがって、標的配列は、マッチするscRNAが存在し(例えば、同じ細胞内で発現され)、合成プロモーターからの遺伝子発現を調整した場合にのみ活性化される独自のプロモーター配列を含有するように修飾され得る。これは、代謝産生などの細胞内の複雑な発現経路を導くための様々な正確な調節及び制御メカニズムにつながる可能性がある。
【0209】
次に、プロモーター配列の設計パラメータ及びCRISPRa活性に対するそれらの効果を特徴付けるために、一連のアッセイを実施した。
【0210】
CRISPRaが標的遺伝子のプロモーターの強度に感受性であると判定された。プロモーターの強度がCRISPRaに影響するかどうかを評価するために、ベース発現レベル(parts.igem.org)で200倍の範囲に及ぶ最小のプロモーターを有する一組の蛍光レポーター遺伝子上で活性化を試験した(図29)。最も効果的な遺伝子活性化は、適度に弱いJ23117プロモーターであることが観察された。最も弱いプロモーターでは、J23117プロモーターよりもベース発現レベルが2倍弱であったにもかかわらず、活性化は検出されなかった。より強いプロモーターを用いて、徐々により小さいCRISPRa媒介性の遺伝子発現の活性化が観察され、ベース発現レベルは増加したが、最大のCRISPRa誘導発現はほぼ一定のままであった。したがって、所与の遺伝子上で達成することができるCRISPRa活性のレベルは、そのプロモーターの発現の基礎レベルに依存し得る。
【0211】
CRISPRaは、標的部位と標的遺伝子のプロモーターとの間の介在配列の組成に感受性であると判定された。標的部位と標的遺伝子のプロモーターの-35部位との間の配列組成が、CRISPRaに影響を及ぼすかどうかを決定するために、プロモーターライブラリを、この介在領域のランダム化された配列で構築した。このライブラリからの単一コロニーを分析し、27倍の範囲にわたる広範な分布で遺伝子活性化を観察した(図30)。ほとんどの改変体配列は依然としてCRISPRaで活性化され得るが(2倍超)、各レポーター遺伝子が同一の最小プロモーターによって駆動され、同一のscRNA標的部位を含有していたため、活性の大きな変動は予想外であった。より効果的なCRISPRaを与える介入配列は、よりGCリッチである傾向があることが見出された(rs=0.42、p=0.02)。それにもかかわらず、これらの実験は、CRISPR-Cas複合体と最小プロモーターとの間の介在配列の組成が、CRISPRaのレベルを決定する重要な因子であることを示す。
【0212】
CRISPRaはまた、標的部位の位置に感受性であることが確認された。アッセイは、CRISPRaが標的部位の単一の塩基シフトに大きく依存することを実証した。当初の仮説では、最適な標的部位は、TSSの上流の-60~-100塩基に位置することが、10塩基ごとに間隔を置いたscRNA部位を用いた実験に基づいていた。この仮説を更に検証するために、CRISPRa複合体を、単一塩基分解能で-61~-113のウィンドウに標的化した。TSSに対して-61、-71、-81、-91、及び-101に位置する5つのscRNA部位を有するレポーター遺伝子を使用し、-35部位の上流に1~12塩基を挿入して、CRISPRa複合体が最適な標的化ウィンドウ内のあらゆる可能な距離を標的にすることが可能となる一組のレポーター遺伝子を生成させた。このレポーター遺伝子セットを使用して、標的部位を1~3塩基シフトすると、活性化が有意に低下することがわかった(図28A及び28B)。標的部位を更に4~9塩基移動させると、発現は、バックグラウンドとほぼ区別不可能なレベルまで減少した。10~11塩基シフトで、DNAヘリックスの1回転に対応して、遺伝子発現が再び増加した。このCRISPRaの周期的な位置依存性は-60~-100ウィンドウ全体にわたって拡張され、最も強いピークは-81と-91を中心とし、より小さいピークは-102と-70を中心とした。-101の部位が-60~-100のウィンドウの外側の-111に移動したときの活性の回復はなかった。この強い周期的関係は、有効な標的部位の基準が非常に厳格であり、TSSに対する距離と相対的な周期性の両方が重要な要因であることを示唆している。
【0213】
注目すべきは、TSSまでの距離が、CRISPRa媒介発現レベルの唯一の決定要因ではなかったことである。同じ距離で重複した部位、例えば元の-81部位及び-71部位が10ずれた部位は、同じ遺伝子発現の出力を得なかった(図28A及び28B)。これらの不一致は、異なる20個の塩基スペーサを有する各部位を標的とするgRNAの活性の違い(図18B)、又はscRNA標的部位と最小プロモーターとの間の異なる介在配列組成の効果から生じ得る(図29及び30)。
【0214】
配列組成がCRISPRaに予期しない影響を及ぼす可能性があることが実証されたため(例えば、図29及び30を参照)、CRISPRaの周期性が異なる配列コンテクストでも類似しているかどうかを試験した。異なるヌクレオチド配列を使用してscRNA標的部位をシフトさせ、塩基をプロモーター内の異なる位置に挿入したとき(図示せず)、かなりの周期相依存性が得られた。同様の結果は、異なる5’側上流配列を有するレポーターを用いて、又は最小BBa_J23117プロモーターが内因性aroKプロモーター(図示せず)に置き換えられたレポーターを用いて、塩基シフト実験を行った場合にも得られた(図示せず)。更に、レポーターのテンプレート又は非テンプレート鎖を標的にするときに、強い位置依存性が観察された(図示せず)。最後に、塩基が挿入されるとレポーター遺伝子のベース発現レベルが変化し、CRISPRaの有効性に影響を及ぼす可能性がある場合、1つの可能性のある交絡効果が生じる可能性がある(図29)。しかしながら、元のレポーター及び+5塩基のシフトされたレポーターからのベース発現は、区別不可能であることが観察された(図示せず)。まとめると、これらの実験は、細菌CRISPRaが複数の異なる配列コンテクストにおける周期性に感受性であることを確認するものである。
【0215】
CRISPRaがDNAらせんと同じ~10塩基周期性を表示するという所見は、最小プロモーターと比較したCRISPRa複合体の角相が、効果的な活性化のために重要であることを示唆している。開示される細菌CRISPRa系は、SoxS活性化ドメインとRNAポリメラーゼとの間の直接相互作用を必要とし、この相互作用は、最小プロモーターに対する標的部位の距離及び相対位相の両方に非常に感受性であると考えられる。CRISPRaの強い位相依存性は、E.coliにおける転写調節の一般的な特徴であり得る。天然のSoxSタンパク質及びCAP及びLacIなどの他の転写因子は、DNAの周期性に対応する制限的な位置決め要件を有し、この結果は、内因性SoxSレポーターで確認された(図示せず)。実際には、この周期的な挙動は、有効な標的部位が、最適な距離範囲内の、活性化の狭いピークの1つに位置しなければならないことを意味する。これらの厳しい要件は、内因性遺伝子を標的にすることが非常に困難であることを示唆している。E.coli(図示せず)の内因性プロモーターの上流の領域には、約10塩基ごとに1PAM部位が存在し、PAM部位が10塩基のウィンドウ内の適切な位相に位置する可能性は低い。
【0216】
dCas9改変体が標的部位の範囲を拡大することが実証された。プロモーターの上流の最適な位置に適切なNGG PAM部位を有する限られた数の遺伝子が存在することを考慮して、CRISPRaの標的化可能なPAM部位の範囲を拡大することを試みた。NGN、GAA、GAT、及びCAA6を含む様々な非NGG PAM部位における活性を改善した、最近特徴付けられたdCas9改変体、dxCas9(3.7)を使用した。レポータープラスミドは、AGG PAM部位を代替PAM配列に置き換えることによって作製し、これらのレポーターを標的化するためにdxCas9(3.7)を有するCRISPRaシステムを送達した。dxCas9(3.7)は、AGG PAMを標的化する能力を維持し、dCas9と比較して代替PAM部位での活性化レベルの有意な増加を示した(図31)。活性化レベルは、異なるPAM部位によって変化し、ヒト細胞で以前に報告されたdxCas9(3.7)活性とよく相関した(図示せず)。dxCas9(3.7)は、dCas9(図示せず)と同様の距離及び位相依存性の標的部位の好みを示したが、その拡大したPAM範囲は、任意の遺伝子が有効な位置で標的化可能なPAM部位を有する可能性を高める。E.coliにおける転写単位間の配列のバイオインフォマティクス分析は、NGG PAM部位よりも平均6.4倍多くのdxCas9(3.7)適合PAM部位が存在することを明らかにした(図示せず)。dCas9が非NGG部位6においていくつかの活性を有するという事実を考慮すると(図31)、依然として、dCas9適合PAM部位よりも平均して約2.2倍多くのdxCas9(3.7)適合PAM部位が存在する(図示せず)。
【0217】
これらのデータは、合成プロモーター配列を使用して、所望の遺伝子のCRISPRaの特定の実装をプログラムすることができることを示す。CRISPRaは、標的遺伝子開始部位及びプロモーターに関して標的部位の位置に非常に感受性であることが実証されている。最小限のプロモーターは、プロモーターの発現レベルを設定するように修飾することができ、比較的弱いプロモーターは、最大のダイナミックレンジを提供する。高レベルのCRISPRa誘導発現を促進するために、独自の配列を、標的部位とプロモーターとの間に配置することができる。最後に、非正準PAM部位を、Cas9以外のエンドヌクレアーゼの使用を促進するプロモーターに組み込むことができる。
【0218】
操作された代謝又はシグナル伝達経路は、独自に最適化されたプロモーター、及び対応するscRNAを含む複数の異なる操作されたCRISPRa標的の操作に依存して、標的の特異的かつ制御された発現を誘導し得る。したがって、次のステップは、活性化の選択性及び調節可能性を維持することによって、CRISPRaが多重化され得ることを実証することとした。図32Aに例示される1つの概念実証アッセイでは、それぞれ、独自の標的部位を有する3つのCRISPRa標的発現カセットを開発し、各標的部位に特異的な異なるscRNAに曝露させた。CRISPRaを介した遺伝子発現の活性化は、一致するscRNAでのみ起こることが示された。図32Bを参照されたい。
【0219】
また、実施例3に記載されるのと同じアプローチを利用して、5’末端からマッチするscRNAを切断することによって、各プロモーターで誘導される発現を調整することができることが実証された。図33を参照されたい。簡潔には、図32A及び32Bで使用された発現カセットを、今回は徐々に短いスペーサ長を有する一連の対応するscRNA構築物で再度標的化した。図32に示されるように、遺伝子発現レベルを表すRFPレポーターシグナルは、スペーサの長さが19塩基から減少するにつれて減少した。更に、多重シナリオでは、複数の独自のプロモーターのそれぞれの遺伝子発現が、独自かつ独立して調整され得ることが示された。このアプローチを使用して、プロモーターを独自の標的部位と組み合わせ、適切に切断されたscRNAを使用することによって、複数の遺伝子の発現の組み合わせ改変を迅速に実装することができる(図34A)。図示されるように、異なる程度に切断されたscRNAの代表的なライブラリを、3つの異なる標的レポーター遺伝子に対する4つの調整された発現レベルの全ての可能な組み合わせで作成した。様々なライブラリメンバーの全ての可能な組み合わせを、操作された標的プロモーター配列を組み込んだ標的レポーター構築物に曝露させたところ、対応するレポーター遺伝子の適切なレベルの高、中、低、又は無発現をもたらした(図34B)。これは、scRNA/操作されたプロモーター標的配列が、多重化されたコンテクストで実装された場合でも、遺伝子発現の強度について独立して調節され得ることを実証する。
【0220】
実施例5
本実施例では、所望の代謝物を使用してCRISPRa発現のリガンド依存性制御を実施するために、増強された発現構築物及びscRNAを使用する応用を説明する。この目標を達成するための例示的なワークフローを示す。まず、インビトロ選抜を行い、目的の代謝物に結合する新規のRNAアプタマーを同定する。次に、CRISPRa制御代謝経路を、培養細胞、例えば、E.coliにおける代謝物の生合成のために操作する。最後に、新規のアプタマーを使用して、動態学的に制御されたリガンド応答性scRNA(LR-scRNA)を操作して、操作された代謝経路からの標的代謝物の産生を感知することができるようにする。図35A及び図35Bを参照されたい。
【0221】
イントロダクション
実施例2は、AS-RBSリボスイッチの操作による、E.coliにおける遺伝子発現の調節への、開示されたコンピュータによるバイオセンサー設計パイプラインの適用可能性を開示する。本実施例は、同じ細胞内で合成される標的分子の産生に応答することができる遺伝的にコードされたバイオセンサーの操作に対処するものである。多様な代謝経路改変体の操作及びスクリーニングのための堅牢なシステムを開発するために、動態学的に制御されたRNAバイオセンサーの操作について学んだ教訓を、単一のアプリケーションでCRISPRaのscRNAを最適化することについて学んだ教訓と組み合わせた。その結果、リガンド応答性scRNA(LR-scRNA)として知られる動態学的に制御されたRNAバイオセンサーのクラスを開発した。これらのLR-scRNAは、scRNAのCas9結合ハンドルを、本発明者らの動態学的に制御されたバイオセンサー分子アーキテクチャの出力ドメインとして利用する。ハンドルは、scRNA-dCas9複合体の形成にとって重要であるため、ハンドルの選択的変形は、CRISPRa複合体、したがって、リガンド応答性CRISPRa活性の選択的形成をもたらすことが仮定された。
【0222】
AS-RBSリボスイッチの代替としてのLR-scRNAの1つの重要な利点は、応答の方向である。代謝経路が多量の厄介な酵素を発現するため、細胞の適合性はそれらの産生によって劇的に影響を受けることがあり、しばしば遺伝的不安定性及び異種遺伝子の発現レベルの抑制をもたらす。次に、多くの代謝経路改変体は、経路からの過剰な負荷に応答して、レポータータンパク質の発現レベルが顕著に低い。AS-RBSリボスイッチの場合、この結果は、レポーター遺伝子の発現レベルのバイオセンサーの調節による還元シグナルとして誤って解釈される可能性がある。AS-RBSリボスイッチは、標的分子の検出時に翻訳レベルを低下させるが、LR-scRNAは、応答して転写レベルを上昇させる。したがって、出力遺伝子発現のいずれの増加も自発的に発生する可能性は非常に低く、更に、遺伝子発現に必要な基礎遺伝子が無傷のままであることを示す。加えて、アプタマー制御scRNAは、細胞内代謝物濃度の細胞外定量のための蛍光タンパク質の調節が可能となるだけでなく、それらの代謝物レベルに応答して複雑な遺伝子ネットワークの実装が可能となる。例えば、最近の取り組みは、非コヒーレントフィードフォワードネットワークモチーフが、CRISPRa及びCRISPRi成分を使用して実現され得ることを実証している。
【0223】
生合成産物のインビボ産生に応答することができるLR-scRNAの工学に分子アーキテクチャが当てはまるかどうかを決定するために、まず、標的分子の細胞外付加が可能となる十分に研究されたアプタマーを使用してバイオセンサーを検証することを決定した。そのために、テオフィリン応答性LR-scRNAを操作した。高感度のAS-RBSリボスイッチをもたらした細菌転写停止部位(実施例2)を実装して、全く異なる作用様式にもかかわらず、同じ感度を達成することができるかどうかを判定した。最終的に、CRISPRa活性を高感度かつ用量依存的な様式で調節することができるテオフィリン応答性scRNAの産生が実証された。
【0224】
方法
リガンド応答性scRNAスイッチ候補のコンピュータによるスクリーニング
候補LR-scRNAを、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー及びAS-RBSリボスイッチを用いて確立された計算方法を使用してスクリーニングした。7.8kcal/molの伸長障壁高さを、E.coli RNAポリメラーゼ伸長率に対応する、同時転写折り畳みのMFEpath予測に使用した。B1障壁高さ<=7.8kcal/molのスクリーニングを実施した。B2障壁高さ<=2.9kcal/molのスクリーニングを実施した。ln(線形距離3)として計算されたトー-標的距離を、値<=10.5の任意単位についてスクリーニングした。経路収束>=0.7のスクリーニングを実施した。scRNAのCas9結合ハンドルを、分子アーキテクチャ内のオーバーハング及びステム配列を定義するために、出力ドメインとして処理した。満足のゆくコンピュータによる解決手段を見つけるのに十分な多様性を生成するために、Cas9結合ハンドルを、実施例3の配列及び構造保存ルールを使用して変化させた。同時に良好なスイッチである配列と高性能のscRNAとを同定する可能性を最適化するために、リンカー配列をスペーサの3’末端に置くことが考えられた。その後、スペーサの残りの5’塩基は、タイマードメインの一部であると考えられ、スイッチ全体(完全な20塩基スペーサを含む)を、同じスクリーニングメトリックを使用して再スクリーニングした。
【0225】
実施例1に概説される従来のスイッチスクリーニングメトリックに加えて、標的分子がアプタマードメインに結合されるときに、高機能のscRNAとして作用するそれらの能力についても、候補スイッチをスクリーニングした。そのために、アプタマードメインを制約し、高機能scRNAスペーサについて以前に確立された計算閾値を使用して候補LR-scRNAをスクリーニングした。以下のスクリーニング閾値を適用した:正味結合エネルギー<=-25.0kcal/mol、ハンドル分画>=0.5、折り畳み障壁<=10.0kcal/mol、及び折り畳み障壁>=20.0kcal/mol(アプタマードメインを制約することなく評価した場合)。
【0226】
計算解を同定した後、ThiC転写停止部位を含有するタイマープールをスペーサ配列の5’に挿入し、その後、性能についてスクリーニングした。標的分子を欠くLB-寒天プレート上にプレーティングしたときに赤色に着色されないものに対応する低リークのコロニーを、適切な抗生物質を含有する400μLのMOPS EZ-Richの合成培地(Teknova)中で24時間にわたって増殖させた。培養物を、37℃で急速に振とうする96個のディープウェルプレート中で増殖させた。24時間の増殖後、培養物を1:100で新鮮な培地に希釈した。培地には様々な濃度のテオフィリンを含ませた。24時間の増殖後、150μLの各培養物を、ゲイン35を有するSynergy HTXプレートリーダー(BioTek)中の96ウェルプレートフォーマットで測定した。
【0227】
結果及び考察
テオフィリン応答性scRNAの開発
生合成産物の濃度を測定するために分子アーキテクチャを使用することができることを実証するために、最初のステップでは、細胞培養培地に添加された膜透過性小分子に応答してCRISPRa活性が調節され得ることを検証することとした。そのために、scRNAを、テオフィリンアプタマーの結合状態によって制御されるようにコンピュータ的に設計した。テオフィリンの存在下では、scRNAは正しく折り畳まれ、CRISPRa活性の増加をもたらす(図36A~36C)。
【0228】
AS-RBSリボスイッチ(実施例2)の場合と同様に、候補スイッチを最初にインシリコで設計し、その後、ThiC転写停止部位を含むタイマープールを挿入した。後続のプラスミドプールを、前述のプレートベースの方法を使用してスクリーニングした。コンピュータによるスクリーニングにより、高いリガンド活性化比と、停止部位を含むAS-RBSリボスイッチで観察された特徴的な高感度と相まって、大きな最大シグナルと、を生成すると予想される2つの初期候補スイッチ、Theo-1及びTheo-2が得られた。初期スクリーニングにおいて、両方のスイッチは、テオフィリンを培地に添加したときに、少なくとも2倍のRFPレベルの増加をもたらした(図37A)。興味深いことに、Theo1由来の配列D5は、他の単離されたスイッチとは異なり、ミリモル以下のテオフィリンレベルでRFPレベルの顕著な増加を示した。より低いテオフィリン濃度で特徴付けられたとき、Theo1 D5は42μMのEC50を有し、これは、Theo-48 AS-RBSリボスイッチで観察された47μM EC50と本質的に同じであることが判定された(図37B)。細菌宿主におけるテオフィリンに対する前例のない感度、並びに共有された転写停止配列を考慮すると、この結果は、ThiC転写停止部位が、同時転写リガンド結合ウィンドウの増加を通じて、動態学的に制御されたバイオセンサーが増加した感度にアクセスすることを可能にしているという仮説を裏付けている。テオフィリン応答性単離物における全活性化比はやや低いままであったが、この実証は、分子アーキテクチャが、低濃度の標的分子でのscRNA活性の調節に適用され得ることを確認するのに十分であった。
【0229】
最後に、LR-scRNAバイオセンサーのタイマードメインに転写停止部位を導入することで、対応するリガンドに対するバイオセンサーの感度が高まることが確認される。図38を参照されたい。AS-RBSリボスイッチと同様に、停止部位の使用は、LR-scRNAバイオセンサーの転写時間を増加させ、リガンド結合のためのより多くの時間の確保が可能となる。この追加の時間は、単により長いタイマードメインを実装することによって生じるであろうものより著しく大きい、>10秒の結合ウィンドウが可能となる。したがって、リガンドが結合し、バイオセンサーの状態を「活性」状態に変化させる機会がより多く存在する。
【0230】
E.coli内で細胞外に付加されたテオフィリンを感知することができるテオフィリン応答性LR-scRNAの開発及び検証は、細胞内で産生された代謝産物を感知することの実現可能性を実証する。これは、テオフィリンなどの細胞に入る分子、及び細胞内で生成される分子が、遺伝的にコードされたLR-scRNAと区別不可能であるべきであるためである。転写に作用するLR-scRNAと翻訳に作用するAS-RBSリボスイッチを組み合わせることで、代謝経路内の複数の標的代謝物の濃度に対する複雑な論理的応答をプログラムする機会が開かれる。
【0231】
例示的な実施形態を例示及び記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がその中で行われ得ることを理解されたい。
【0232】
排他的所有権又は特権が主張される本発明の実施形態は、以下のように定義される。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A-1】
図5A-2】
図5A-3】
図5B-1】
図5B-2】
図5B-3】
図5B-4】
図5B-5】
図5B-6】
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21-1】
図21-2】
図21-3】
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図29
図30
図31A
図31B
図32A
図32B
図33-1】
図33-2】
図34A
図34B-1】
図34B-2】
図35A
図35B
図36A
図36B
図36C
図37A
図37B
図38
図39
図40
図41
【配列表】
2024504051000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物であって、5’側から3’側に向かって、
目的のリガンドに特異的に結合するセンサードメインと、
活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに検出可能な出力シグナルを調節するように構成された出力ドメインと、を含み、
前記出力ドメインが、転写されたときに、前記センサードメインが前記目的のリガンドに結合しているとき、前記活性なコンフォメーションに折り畳まれ、前記出力ドメインが、転写されたときに、前記センサードメインが前記目的のリガンドに結合していないとき、不活性なコンフォメーションに折り畳まれる、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物であって、
ここにおいてセンサードメインは、
アプタマードメインであって、5’側から3’側に向かって、ステム配列、リンカー標的配列、アプタマー部分配列、及びステム標的配列を含む、アプタマードメインと、
アプタマードメインの5’側のオーバーハング配列、および/または、アプタマードメインの3’側のリンカー配列とを含み、
ここにおいて出力ドメインは、5’側から3’側に向かって、
ステム標的配列、
オーバーハング標的配列、及び
出力配列、を含む、動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項2】
前記センサードメインが、オーバーハング配列およびリンカー配列を含む、請求項1に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項3】
前記センサードメインの前記オーバーハング配列が、前記出力ドメインの前記オーバーハング標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であること、
前記センサードメインの前記ステム配列が、前記センサードメインの前記ステム標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であり、かつ、前記出力ドメインの前記ステム標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であること、及び/又は、
前記センサードメインの前記リンカー配列が、前記センサードメインのリンカー標的配列の少なくとも一部分の逆相補体であること、
の任意の組み合わせである、請求項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項4】
前記リンカー標的配列が、前記アプタマー部分配列の一部分に対する逆相補体であり、任意選択的に、前記アプタマー部分配列の前記一部分が、不連続部分である、請求項3に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項5】
前記センサードメインが前記目的のリガンドに結合しているとき、前記センサードメインの前記ステム配列が、前記センサードメインの前記ステム標的配列にハイブリダイズし、それによって、前記出力ドメインの前記活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる、請求項3又は4に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項6】
前記センサードメインが前記目的のリガンドに結合していないとき、前記センサードメインの前記オーバーハング配列が、前記出力ドメインの前記オーバーハング標的配列の前記一部分にハイブリダイズし、前記センサードメインの前記ステム配列が、前記出力ドメインの前記ステム標的配列の前記一部分にハイブリダイズし、かつ/又は、前記センサードメインの前記リンカー標的配列が、前記センサードメインの前記リンカー配列の前記一部分にハイブリダイズし、それによって、前記出力ドメインの前記不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる、請求項3又は4に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項7】
前記センサードメインの前記オーバーハング配列、前記センサードメインの前記ステム配列、及び前記センサードメインの前記リンカー標的配列のうちの少なくとも2つが、それぞれ、前記出力ドメインの前記オーバーハング標的配列の少なくとも一部分、前記出力ドメインの前記ステム標的配列の一部分、及び前記センサードメインの一部分前記リンカー配列にハイブリダイズされたとき、連続的ならせんステム構造を形成し、それによって、前記出力ドメインの前記出力部分配列の前記不活性なコンフォメーションへの折り畳みが可能となる、請求項6に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項8】
前記オーバーハング配列が、0~約15ヌクレオチド長であり、
前記ステム配列が、0~約15ヌクレオチド長であり、かつ/又は
前記リンカー配列が、0~約15ヌクレオチド長である、請求項のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項9】
前記センサードメインの前記アプタマードメインと前記リンカー配列との間に配置されたタイマードメインを更に含み、前記タイマードメインが、最大約150ヌクレオチド長の長さを有し、
任意に、タイマードメインは少なくとも1つの転写停止配列を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項10】
前記出力ドメインが活性なコンフォメーションに折り畳まれるとき、前記出力ドメインが、機能性リボザイム、機能性ヌクレアーゼガイドRNA(gRNA)、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、又はRNAアプタマーであるか、又はそれを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項11】
前記出力ドメインが、前記活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、前記検出可能な出力シグナルを誘導するように構成されている、請求項1に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項12】
前記出力ドメインが前記活性なコンフォメーションに折り畳まれたときに、前記検出可能な出力シグナルを低減するように構成されている、請求項1に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項13】
前記目的のリガンドが、化学物質、代謝物、タンパク質、ペプチド、小分子、任意選択的に薬物分子又は薬物前駆体分子等である、請求項1に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物。
【請求項14】
請求項1~4、11~13のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド分子。
【請求項15】
プロモーターに作動可能に連結された請求項14に記載のポリヌクレオチド分子を含む、ベクター。
【請求項16】
請求項14に記載のポリヌクレオチド分子、又は請求項15に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項17】
請求項1~4、11~13のいずれか一項に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物をコードする配列を含む第1の発現カセットと、
前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の合成を促進するのに十分なRNAポリメラーゼ及びNTPと、を含む、バイオセンサーシステム。
【請求項18】
動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物を設計するためのコンピュータ実装方法であって、
コンピューティングデバイスによって、1つ以上の候補の請求項1に記載の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物を決定することと、
前記1つ以上の候補の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物の各々について、
前記コンピューティングデバイスによって、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することと、
前記コンピューティングデバイスによって、予測された前記1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物に関する1つ以上のメトリックを決定することと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記メトリックに基づいて、合成のために提供される前記1つ以上の候補の動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物のうちの1つ以上を選択することと、を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項19】
前記予測された1つ以上の折り畳まれた構造に基づいて、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物に関する前記1つ以上のメトリックを決定することが、
前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物について、予測された折り畳まれた構造のエネルギーを決定すること、
前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物についての予測された折り畳まれた構造のエネルギーを、前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物についての他の予測された折り畳まれた構造のエネルギーと比較すること、及び
前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物について予測された折り畳まれた構造を、標的の折り畳まれた構造に変換するための障壁エネルギーを決定すること、のうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項20】
前記動態学的に制御されたRNAバイオセンサー構築物が時間経過とともに形成する1つ以上の折り畳まれた構造を予測することが、制約された折り畳み分析を実施することを含む、請求項18に記載のコンピュータ実装方法。
【国際調査報告】