(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】神経障害および神経障害症状を低減させ、癌を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20240123BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240123BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240123BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240123BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240123BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20240123BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240123BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240123BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240123BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240123BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240123BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240123BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20240123BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240123BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20240123BHJP
C12Q 1/06 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P25/00 ZNA
A61K47/24
A61K9/10
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/282
A61K39/395 N
A61K39/395 M
A61K31/513
A61P25/04
G01N33/68
G01N33/50 P
C07K14/47
C07K16/24
C07K16/28
C12Q1/68
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541518
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 US2022011731
(87)【国際公開番号】W WO2022150666
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520363328
【氏名又は名称】ベキシオン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】タキギク レイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ ダーレン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ヌーナン アン マリー
(72)【発明者】
【氏名】ウェソロウスキー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】カリー ザ サード リチャード チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ガズダ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】クルーズ ザ サード チャールズ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】トポルスキー ギレス ウーグ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA26
2G045DA14
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA18
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4B063QQ53
4B063QR48
4C076AA16
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4C076BB01
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4C076BB13
4C076BB14
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4C076BB25
4C076CC01
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4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA30
4H045BA55
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
サポシンC-リン脂質組成物を使用して、神経障害および神経障害症状を低減させ、かつ/または神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生を促進する方法が、本明細書に開示される。サポシンC-リン脂質ナノ小胞製剤と1つまたは複数の抗腫瘍剤または免疫チェックポイント阻害剤とを投与することによって癌を処置する方法、および(a)サポシンC-リン脂質薬学的組成物と(b)抗腫瘍剤を含有する薬学的組成物または免疫チェックポイント阻害剤を含有する薬学的組成物とを別々の容器に含む、癌を処置するためのキットも、開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害症状に罹患しているヒト対象を特定する工程;
(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤を前記対象へ投与する工程;および
前記対象の神経障害症状が低減することを確認する工程
を含む、ヒト対象において神経障害症状を低減させる方法。
【請求項2】
それを必要とするヒト対象において、神経障害症状の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるか、または神経障害症状の発症を遅延させる方法であって、
神経障害症状を経験するリスクがあるヒト対象を特定する工程;および
(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤によって前記対象を処置する工程
を含み、
前記処置が、前記対象において、神経障害症状の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるか、または神経障害症状の発症を遅延させるために有効である、方法。
【請求項3】
神経障害症状副作用に関連した化学療法剤による処置を必要とするヒト対象において、神経障害症状の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるか、または神経障害症状の発症を遅延させる方法であって、
化学療法剤のある用量を前記対象へ投与する工程;および
化学療法剤の該用量と同時に、または化学療法剤の該用量の投与の直前もしくは直後に、(i)0~4個のアミノ酸挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤の少なくとも1用量を、前記対象へ投与する工程
を含む、方法。
【請求項4】
癌を処置する方法であって、
神経障害症状副作用に関連した化学療法剤;および
(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤
を、それを必要とするヒト対象へ同時投与する工程を含み、
ナノ小胞製剤が、化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるか、または化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発症を遅延させる量で投与される、方法。
【請求項5】
それを必要とするヒト対象において、神経障害症状を低減させる方法であって、
神経障害症状を経験している対象を特定する工程;および
前記対象の神経障害症状を低減させるために有効な量のナノ小胞製剤によって前記対象を処置する工程
を含み、
ナノ小胞製剤が(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含む、方法。
【請求項6】
(a)1つまたは複数の抗腫瘍剤を含む化学療法レジメン、および
(b)(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤
を対象へ投与する工程を含む、対象において胃腸癌を処置する方法。
【請求項7】
サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列が、1個もしくは2個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO:1を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO:1からなる、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
リン脂質がホスファチジルセリンを含む、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
リン脂質がジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)またはその塩を含む、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
リン脂質がDOPSのナトリウム塩を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
リン脂質がホスホグリセリドを含む、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
リン脂質がジヘキサノイルホスファチジルセリン脂質、ジオクタノイルホスファチジルセリン脂質、ジデカノイルホスファチジルセリン脂質、ジラウロイルホスファチジルセリン脂質、ジミリストイルホスファチジルセリン脂質、ジパルミトイルホスファチジルセリン脂質、パルミトイル-オレオイルホスファチジルセリン脂質、1-ステアロイル-2-オレオイルホスファチジルセリン脂質、またはジフィタノイルホスファチジルセリン脂質のうちの1つまたは複数を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
ホスホグリセリドがホスファチジン酸を含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比が8:1~20:1の範囲である、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比が11:1~13:1の範囲である、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比が12:1である、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記対象が癌を有する、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記対象が胃腸癌、膵臓癌、結腸直腸癌、骨癌、脳癌、肉腫、神経芽細胞腫、乳癌、または扁平上皮癌を有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記対象が末梢神経障害を有するか、または有するリスクがある、請求項1、2、および5のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記対象が末梢神経障害を有するか、または有するリスクがある、請求項3または4記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、1つもしくは複数の化学療法剤によって誘発される化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を有するか、または有するリスクがある、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
化学療法剤が、白金系薬剤、タキサン、エポチロン、植物アルカロイド、免疫調節剤、およびプロテアソーム阻害剤からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
化学療法剤がオキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、イクサベピロン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンカミノール、ビネリジン、ビンブルニン、エトポシド、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イクサゾミブ、エリブリン、またはスラミンである、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記対象がオキサリプラチン誘発性急性疼痛症候群を有するか、または有するリスクがある、請求項21または22記載の方法。
【請求項27】
前記対象が以下の状態のうちの1つもしくは複数に関連した神経障害を有するか、または有するリスクがある、請求項1、2、および5のいずれか一項記載の方法:
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ポリオ後症候群、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー、筋ジストロフィー、末梢神経損傷、脱髄、急性播種性白質脳炎、進行性多巣性白質脳炎(PML)、副腎白質ジストロフィー、視神経炎、腎疾患、肝障害、横断性脊髄炎、パーキンソン病、脳卒中、アルツハイマー病、ライム病、手根管症候群、リンパ腫、神経腫、多発性骨髄腫、ビタミンB12欠乏症、帯状疱疹後神経痛、ハンセン病、シャルコー・マリー・トゥース病、ファブリー病、重症疾患多発ニューロパチー、ベル麻痺、尺骨神経麻痺、および腓骨神経麻痺。
【請求項28】
前記対象が糖尿病もしくはウイルス感染に関連した神経障害を有するか、または有するリスクがある、請求項1、2、および5のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
ナノ小胞製剤が静脈内に、動脈内に、皮内に、筋肉内に、心臓内に、頭蓋内に、皮下に、腹腔内に、吸入で、経鼻で、経口で、または舌下に投与される、請求項1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記対象へ投与されるナノ小胞製剤の各用量が0.4mg/kg~7mg/kgのサポシンCポリペプチドを含有する、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
ナノ小胞製剤が静脈内投与される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
ナノ小胞製剤が、少なくとも1日1回、2日に1回、週3回、およそ1週間(7(+/-3)日)に1回、またはおよそ2週間(14(+/-3)日)に1回投与される、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
ナノ小胞製剤の複数用量が少なくとも8週間にわたって投与される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
National Cancer Institute-共通毒性基準(Common Toxicity Criteria)(NCI-CTC)、数値評価スケール(NRS)、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)、European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)生活の質(QLQ)-CIPN20、QLC-C30、Functional Assessment of Cancer Therapy/Gynecologic Oncology Group-Neurotoxicity(FACT/GOG-Ntx)、トータル・ニューロパチー・スコア(Total Neuropathy Score)(TNS)質問票、化学療法誘発性末梢神経障害アセスメント・ツール(Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy Assessment Tool)(CIPNAT)、およびオキサリプラチン後症状調査(Post-Oxiplatin Symptom Survey)からなる群より選択される1つまたは複数のアセスメント・ツールを使用して測定することで、神経障害または神経障害症状が低減することが確認される、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
神経障害または神経障害症状の低減が、神経障害の発生率の低減、神経障害の強度の低減、神経障害の期間の低減、神経障害エピソードの期間の低減、神経障害エピソードの頻度の低減、および神経障害の発症の遅延より選択される少なくとも1つのパラメータの変化を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
神経障害の低減が神経障害症状の低減を含む、請求項1記載の方法。
【請求項37】
神経障害の発生率、強度、および/もしくは期間の低減、または神経障害の発症の遅延が、神経障害症状の発生率、強度、および/もしくは期間の低減、または神経障害症状の発症の遅延を含む、請求項2または3記載の方法。
【請求項38】
(a)~(d)のうちの少なくとも1つにおいて有効である、請求項2記載の方法:
(a)ナノ小胞製剤が投与される前の前記対象における神経障害症状のエピソードの強度および/または期間と比較した、ナノ小胞製剤を投与した後の前記対象における神経障害症状のエピソードの強度および/または期間の低減;
(b)対照集団における神経障害症状の強度および/または期間と比較した、前記対象における神経障害症状の強度および/または期間の低減;
(c)対照集団における神経障害の発生率と比較した、前記対象における神経障害の発生率の低減;ならびに
(d)類似事象後の対照集団における神経障害の発症までの期間と比較した、引き金となる事象後の前記対象における神経障害の発症の遅延。
【請求項39】
ナノ小胞製剤の1つまたは複数のさらなる用量、および化学療法剤の1つまたは複数のさらなる用量が前記対象へ投与される、請求項3記載の方法。
【請求項40】
ナノ小胞製剤が化学療法剤を含有しない、請求項3または4記載の方法。
【請求項41】
神経障害症状が、以下に関連している、請求項5記載の方法:
(a)以下の状態のうちの1つもしくは複数:糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ポリオ後症候群、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー、筋ジストロフィー、末梢神経損傷、脱髄、急性播種性白質脳炎、進行性多巣性白質脳炎(PML)、副腎白質ジストロフィー、視神経炎、腎疾患、肝障害、横断性脊髄炎、パーキンソン病、脳卒中、アルツハイマー病、ライム病、ウイルス感染、手根管症候群、リンパ腫、神経腫、多発性骨髄腫、ビタミンB12欠乏症、帯状疱疹後神経痛、ハンセン病、シャルコー・マリー・トゥース病、ファブリー病、重症疾患多発ニューロパチー、ベル麻痺、尺骨神経麻痺、もしくは腓骨神経麻痺;または
(b)オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、イクサベピロン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンカミノール、ビネリジン、ビンブルニン、エトポシド、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イクサゾミブ、エリブリン、およびスラミンからなる群より選択される化学療法剤による処置。
【請求項42】
神経障害症状が以下のうちの1つまたは複数である、請求項4、5、35、および36のいずれか一項記載の方法:
疼痛;痛覚過敏;異痛症;痛覚喪失;温覚、冷覚、もしくは身体的傷害の感覚の喪失;痺れ;触覚過敏;協調および固有感覚の喪失;筋力低下;筋消耗;筋攣縮;筋痙攣;または筋麻痺。
【請求項43】
神経障害症状が疼痛である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記対象の神経障害症状をモニタリングする工程をさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記対象の神経障害症状が低減することを確認する工程をさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項46】
経皮的電気神経刺激(TENS)、治療的血漿交換(TPE)、静脈内免疫グロブリン(IVIG)治療、理学療法、鎮痛剤、抗てんかん剤、局所処置、および抗うつ剤からなる群より選択される1つまたは複数の付加的な抗神経障害処置を前記対象へ投与する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
イブプロフェン、ガバペンチン、プレガバリン、カプサイシンクリーム、リドカインパッチ、アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、デュロキセチン、またはベンラファキシンを前記対象へ投与する工程をさらに含む、請求項1~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
対象において神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生を促進する方法であって、
対象が、神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生のうちの1つまたは複数を必要とすると特定する工程;ならびに
前記対象において神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生を促進するために十分な量のナノ小胞製剤を前記対象へ投与する工程
を含み、
ナノ小胞製剤が(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質とを含む、方法。
【請求項49】
前記対象が以下の状態のうちの1つまたは複数を有する、請求項48記載の方法:
神経変性障害、脳傷害、脳損傷、脊髄損傷、末梢神経傷害、多発性硬化症、または播種性硬化症。
【請求項50】
前記対象がパーキンソン病、アルツハイマー病、または筋萎縮性側索硬化症を有する、請求項48記載の方法。
【請求項51】
前記対象が抗癌化学療法を受ける直前である、請求項48記載の方法。
【請求項52】
ワインスタイン増強感覚試験(Weinstein Enhanced Sensory Test)(WEST)、セメス・ワインスタイン・モノフィラメント試験(Semmes-Weinstein Monofilament Test)(SWMT)、形状テクスチャ同定(shape-texture identification)(STI)、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、表皮内神経線維密度(IENFD)、および神経伝導速度より選択される1つまたは複数の試験を使用して、前記対象における神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生をモニタリングする工程をさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項53】
前記対象が前記製剤の投与後に神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生を経験したことを確認する工程をさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項54】
サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列が、1個または2個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含む、請求項48記載の方法。
【請求項55】
サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO:1を含む、請求項48記載の方法。
【請求項56】
サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO:1からなる、請求項48記載の方法。
【請求項57】
リン脂質がホスファチジルセリンを含む、請求項48~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
リン脂質がジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)またはその塩を含む、請求項48~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
リン脂質がDOPSのナトリウム塩を含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
リン脂質がホスホグリセリドを含む、請求項48~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
リン脂質がジヘキサノイルホスファチジルセリン脂質、ジオクタノイルホスファチジルセリン脂質、ジデカノイルホスファチジルセリン脂質、ジラウロイルホスファチジルセリン脂質、ジミリストイルホスファチジルセリン脂質、ジパルミトイルホスファチジルセリン脂質、パルミトイル-オレオイルホスファチジルセリン脂質、1-ステアロイル-2-オレオイルホスファチジルセリン脂質、またはジフィタノイルホスファチジルセリン脂質のうちの1つまたは複数を含む、請求項57記載の方法。
【請求項62】
ホスホグリセリドがホスファチジン酸を含む、請求項60記載の方法。
【請求項63】
ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比が8:1~20:1の範囲である、請求項48記載の方法。
【請求項64】
ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比が11:1~13:1の範囲である、請求項48記載の方法。
【請求項65】
ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比が12:1である、請求項48記載の方法。
【請求項66】
ナノ小胞製剤が静脈内に、動脈内に、皮内に、筋肉内に、心臓内に、頭蓋内に、皮下に、腹腔内に、吸入で、経鼻で、経口で、または舌下に投与される、請求項48~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記対象へ投与されるナノ小胞製剤の各用量が0.4mg/kg~7mg/kgのサポシンCポリペプチドを含有する、請求項48~66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
ナノ小胞製剤が静脈内投与される、請求項67記載の方法。
【請求項69】
ナノ小胞製剤が、少なくとも1日1回、2日に1回、週3回、およそ1週間(7(+/-3)日)に1回、またはおよそ2週間(14(+/-3)日)に1回、投与される、請求項67または68記載の方法。
【請求項70】
ナノ小胞製剤の複数用量が少なくとも8週間にわたって投与される、請求項68記載の方法。
【請求項71】
化学療法レジメンが改変FOLFOX7(mFOLFOX7)を含む、請求項6記載の方法。
【請求項72】
抗腫瘍剤がオキサリプラチンを含む、請求項6記載の方法。
【請求項73】
ナノ小胞製剤が、化学療法レジメンと同時に、または化学療法レジメンの投与の開始の前もしくは後48時間以内に投与される、請求項6記載の方法。
【請求項74】
ナノ小胞製剤が静脈内投与される、請求項6記載の方法。
【請求項75】
化学療法レジメンが静脈内投与される、請求項6記載の方法。
【請求項76】
胃腸癌が食道癌、胃癌、肛門癌、結腸直腸癌、腸癌、胆嚢癌、膵臓癌、肝臓癌、膵島細胞癌、直腸癌、小腸癌、消化管カルチノイド腫瘍、または消化管間質腫瘍である、請求項6記載の方法。
【請求項77】
胃腸癌に対する生物学的処置を前記対象へ投与する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項78】
抗血管内皮増殖因子(VEGF)モノクローナル抗体を前記対象へ投与する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項79】
抗上皮増殖因子受容体(EGFR)抗体を前記対象へ投与する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項80】
ベバシズマブ、セツキシマブ、またはパニツムマブを前記対象へ投与する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項81】
(a)処置の第1週の1日目に約45分~約120分かけて2.4mg/kgのナノ小胞製剤を投与する工程、ならびに
(b)工程(a)の完了後に、以下のステップで化学療法レジメンを逐次投与する工程:
(i)処置の第1週の1日目に約2時間かけて200mg/m
2ロイコボリンカルシウムと共に注入される85mg/m
2オキサリプラチン;および
(ii)処置の第1週の1日目と2日目における約46時間かけての2400mg/m
2 5-フルオロウラシル(5-FU)
を含む、請求項6記載の方法。
【請求項82】
(a)処置の第1週の1日目に約45分~約120分かけて2.4mg/kgのナノ小胞製剤を投与する工程;
(b)工程(a)の完了後に、以下のステップで化学療法レジメンを逐次投与する工程:
(i)処置の第1週の1日目に約2時間かけて200mg/m
2ロイコボリンカルシウムと共に注入される85mg/m
2オキサリプラチン;および
(ii)処置の第1週の1日目と2日目における約46時間かけての2400mg/m
2 5-FU;ならびに
(c)処置の第1週の1日目に約30~約90分かけて約5mg/kg~約15mg/kgのベバシズマブを投与する工程
を含む、請求項6記載の方法。
【請求項83】
処置の第2週に週3回、ナノ小胞製剤の追加の用量を投与する工程をさらに含む、請求項81または82記載の方法。
【請求項84】
処置の第3週および第4週に1週間(7(+/-3)日)に1回、ナノ小胞製剤の追加の用量を投与する工程をさらに含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
処置の第5~23週の間、14(+/-3)日毎に、ナノ小胞製剤の追加の用量を投与する工程をさらに含む、請求項84記載の方法。
【請求項86】
ナノ小胞製剤の複数用量が少なくとも8週間にわたって投与される、請求項85記載の方法。
【請求項87】
処置の最初の4週間に少なくとも週1回、ナノ小胞製剤が投与される、請求項6記載の方法。
【請求項88】
処置の最初の2週間に少なくとも週3回、ナノ小胞製剤が投与される、請求項87記載の方法。
【請求項89】
処置の最初の4週間の後、少なくとも14(+/-3)日に1回、ナノ小胞製剤が投与される、請求項87または88記載の方法。
【請求項90】
第5~24週に少なくとも14(+/-3)日に1回、ナノ小胞製剤が投与される、請求項88記載の方法。
【請求項91】
処置の最初の24週間の後、少なくとも28(+/-3)日に1回、ナノ小胞製剤が投与される、請求項89または90記載の方法。
【請求項92】
ナノ小胞製剤が以下のように前記対象へ繰り返し投与される、請求項81または82記載の方法:
第1週:1~5日目の各日に1用量;
第2週:隔日で1用量、計3用量;
第3週および第4週:1週間(7(+/-3)日)に1用量;ならびに
第5~24週:14日(+/-3日)に1用量。
【請求項93】
化学療法レジメンの追加の用量を、第3週において、および第5~24週に14日(+/-3日)に1回、投与する工程をさらに含む、請求項92記載の方法。
【請求項94】
ベバシズマブの追加の用量を、第3週において、および第5~24週に14日(+/-3日)に1回、投与する工程をさらに含む、請求項82記載の方法。
【請求項95】
ナノ小胞製剤が前記対象へ投与される時に、ナノ小胞製剤が化学療法レジメンのいかなる抗腫瘍剤とも組み合わせられない、請求項6記載の方法。
【請求項96】
ナノ小胞製剤が静脈内に、動脈内に、皮内に、筋肉内に、心臓内に、頭蓋内に、皮下に、腹腔内に、吸入で、経鼻で、経口で、直腸内に、または舌下に投与される、請求項71~95のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
前記対象へ投与されるナノ小胞製剤の各用量が0.4mg/kg~7mg/kgのサポシンCポリペプチドを含有する、請求項6記載の方法。
【請求項98】
化学療法レジメンによって処置され、かつナノ小胞製剤によって処置されていない対照集団と比べて、前記処置が前記対象における以下のパラメータのうちの少なくとも1つを増加させる、請求項97記載の方法:
(a)客観的奏効率(ORR);
(b)全生存期間(OS);
(c)無増悪生存期間(PFS);および
(d)奏効期間(DoR)。
【請求項99】
(a)少なくとも1つの抗腫瘍剤を含む第1の薬学的組成物;および
(b)(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含む第2の薬学的組成物
を別々の容器に含む、癌の処置のためのキット。
【請求項100】
抗腫瘍剤がオキサリプラチンである、請求項99記載のキット。
【請求項101】
それを必要とする対象において癌を処置する方法であって、
(a)(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤;および
(b)免疫チェックポイント阻害剤
を、前記対象へ投与する工程を含む、方法。
【請求項102】
サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列が1個または2個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含む、請求項101記載の方法。
【請求項103】
サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO:1を含む、請求項101記載の方法。
【請求項104】
サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO:1からなる、請求項101記載の方法。
【請求項105】
リン脂質がホスファチジルセリンを含む、請求項101~104のいずれか一項記載の方法。
【請求項106】
リン脂質がジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)またはその塩を含む、請求項101~104のいずれか一項記載の方法。
【請求項107】
リン脂質がDOPSのナトリウム塩を含む、請求項6記載の方法。
【請求項108】
リン脂質がホスホグリセリドを含む、請求項101~104のいずれか一項記載の方法。
【請求項109】
ホスホグリセリドがホスファチジン酸を含む、請求項108記載の方法。
【請求項110】
リン脂質がジヘキサノイルホスファチジルセリン脂質、ジオクタノイルホスファチジルセリン脂質、ジデカノイルホスファチジルセリン脂質、ジラウロイルホスファチジルセリン脂質、ジミリストイルホスファチジルセリン脂質、ジパルミトイルホスファチジルセリン脂質、パルミトイル-オレオイルホスファチジルセリン脂質、1-ステアロイル-2-オレオイルホスファチジルセリン脂質、もしくはジフィタノイルホスファチジルセリン脂質のうちの1つもしくは複数、または上記のいずれかの塩を含む、請求項101~107のいずれか一項記載の方法。
【請求項111】
免疫チェックポイント阻害剤が抗CTLA-4抗体である、請求項101~110のいずれか一項記載の方法。
【請求項112】
抗CTLA抗体がイピリムマブ、トレメリムマブ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項111記載の方法。
【請求項113】
免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体である、請求項101~110のいずれか一項記載の方法。
【請求項114】
抗PD-1抗体がニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、MEDI0680、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項113記載の方法。
【請求項115】
免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-L1抗体である、請求項101~110のいずれか一項記載の方法。
【請求項116】
抗PD-L1抗体がアテゾリズマブ、BMS-936559、MEDI4736、MSB0010718C、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項115記載の方法。
【請求項117】
前記癌がB細胞リンパ腫、基底細胞癌、膀胱癌、芽細胞腫、脳転移、乳癌、バーキットリンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、胃癌、食道胃接合部癌、胃腸癌、神経膠芽腫、神経膠腫、頭頸部癌、肝転移、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ芽球性リンパ腫、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、転移性脳腫瘍、転移性癌、骨髄腫、神経芽細胞腫、眼黒色腫、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、軟部肉腫、固形腫瘍、扁平上皮癌、滑膜肉腫、精巣癌、甲状腺癌、移行上皮癌、ブドウ膜黒色腫、疣状癌、外陰癌、およびワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症より選択される、請求項101~116のいずれか一項記載の方法。
【請求項118】
前記癌が胃腸癌である、請求項101~117のいずれか一項記載の方法。
【請求項119】
前記癌の1つまたは複数の細胞が、参照試料と比較して上昇したレベルでPD-L1を発現する、請求項101~118のいずれか一項記載の方法。
【請求項120】
前記癌の1つまたは複数の細胞が、参照試料と比較して上昇したレベルでCTLA-4を発現する、請求項101~118のいずれか一項記載の方法。
【請求項121】
参照試料が(a)前記対象に由来する非癌性試料;または(b)異なる対象に由来する非癌性試料より選択される、請求項119または120記載の方法。
【請求項122】
前記癌の1つまたは複数の細胞が参照試料の細胞と同じ細胞型である、請求項121記載の方法。
【請求項123】
ナノ小胞製剤および免疫チェックポイント阻害剤による前記処置が、前記対象の腫瘍に対する免疫応答を、前記処置前の免疫応答と比較して増加させたか否かを決定するためのアッセイを実施する工程をさらに含む、請求項101~122のいずれか一項記載の方法。
【請求項124】
アッセイが前記対象における血漿中の1つまたは複数のサイトカインのレベルを測定する、請求項123記載の方法。
【請求項125】
アッセイが前記対象における1つまたは複数のサイトカインをコードするmRNAのレベルを測定する、請求項123記載の方法。
【請求項126】
アッセイが前記対象における腫瘍関連M1またはM2マクロファージのレベルを測定する、請求項123記載の方法。
【請求項127】
アッセイが前記対象におけるマクロファージの表面上のPD-L1の提示を検出する、請求項123記載の方法。
【請求項128】
アッセイが前記対象における活性化細胞傷害性T細胞のレベルを測定する、請求項123記載の方法。
【請求項129】
ナノ小胞製剤が免疫チェックポイント阻害剤を含まない、請求項101~128のいずれか一項記載の方法。
【請求項130】
ナノ小胞製剤が静脈内に、動脈内に、皮内に、筋肉内に、心臓内に、頭蓋内に、皮下に、腹腔内に、吸入で、経鼻で、経口で、直腸内に、または舌下に投与される、請求項101~129のいずれか一項記載の方法。
【請求項131】
(a)少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を含む第1の薬学的組成物;および
(b)(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含む第2の薬学的組成物
を別々の容器に含む、癌の処置のためのキット。
【請求項132】
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤が抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、または抗PD-L1抗体である、請求項131記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年1月9日出願の米国仮出願第63/135,579号、2021年1月9日出願の米国仮出願第63/135,585号、および2021年3月11日出願の米国仮出願第63/159,809号の恩典を主張するものである。
【0002】
配列表
本願は、「SequenceListing.txt」という名前のASCIIテキストファイルとして電子的に提出された配列表を含有する。2022年1月5日に作成されたこのASCIIテキストファイルのサイズは、1.10KBである。このASCIIテキストファイル内のデータは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
技術分野
本開示は、神経障害または神経障害症状の低減;神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生の促進;ならびに癌の処置に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
神経障害は、世界人口の約2~7%に影響している、成人および小児の末梢神経系の一般的な障害である(Callaghan et al.(2015)JAMA.314:2172-2181(非特許文献1))。それは、多くの症状の中でもとりわけ、急性疼痛、慢性疼痛、または幻肢痛、痺れ、および筋力低下に関連している。神経障害は、様々な病因を有し、それらには、根底にある状態、例えば、自己免疫疾患、腫瘍、外傷、感染、代謝問題、遺伝性の原因、ならびに毒素および薬、例えば、化学療法(Hakim et al.(2019),J.Clin & Exp Pharmacol.;9(4):262(非特許文献2))または多くの一般的な栄養補助食品(例えば、ビタミンB6、ピリドキシン)の高用量への曝露が含まれる。
【0005】
神経障害の有病率は、脆弱コホート、例えば、化学療法を受けている癌患者においては、さらに高いと考えられている。例えば、複数の薬剤によって処置された患者における化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の全発生率は、およそ38%と推定されている(Hershman(2014)J Clin Oncol,;32:1941-1967(非特許文献3))。CIPNは、癌の処置において使用される最先端の薬剤のうちの多くの投与を制限し、その有効性を制限する可能性のある、重大な副作用である。
【0006】
神経障害は、しばしば、神経損傷に関連している。末梢神経損傷の病態生理および自然再生に関与する機序は理解され始めているが、神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または損傷後の神経再生を有意に改善する処置の発見は、達成困難な目標であった。さらに、神経障害の広範な有病率にも関わらず、この状態の処置オプションは、一般に、根底にある原因を処置するのではなく、症状軽減のみを提供する。従って、神経障害に対する付加的な処置オプションが大いに必要とされている。多くの神経毒性の薬剤および処置が、多くの種類の癌の処置のために不可欠であり、癌自体も末梢神経系にわずかに損傷を与える(Housley SN,et al.Cancer Res.2020 Jul 1;80(13):2940-2955(非特許文献4))。
【0007】
癌の処置には、しばしば、放射線治療、ステロイド、および化学療法が含まれるが、これらは、しばしば、患者による耐容性が良くない。免疫系は、様々な種類の癌において役割を果たしており、癌免疫治療は、患者の免疫系による癌細胞の攻撃を含む。しばしば、耐容性が良くない処置の代替法として行われる、免疫治療には、例えば、プログラム死リガンド1(PDL1)などの特定のタンパク質を発現する癌細胞を標的とする免疫チェックポイント阻害剤による処置が含まれる。さらに、免疫治療は、ある特定の癌を有する対象において成功裏に使用されているが、最小限の副作用および最大の有効性を有する安全かつ有効な処置オプションを開発するため、免疫治療を微調整することが、大いに必要とされている。
【0008】
胃腸(GI)癌、例えば、結腸直腸癌、胃癌、食道癌、および膵臓癌は、悪性疾患および死亡の顕著な世界的な原因である。胃癌は5番目に多く診断される癌であり、世界で3番目に多い癌による死亡の原因である(Leiting,J.L.,& Grotz,T.E.(2019).World J.of Gastrointest.Oncol.11(9),652-664(非特許文献5))。さらに、結腸直腸癌は、米国において2番目に多い癌による死亡の原因である(American Cancer Society,Colorectal Cancer Facts & Figures 2020-2022.Atlanta,Ga(非特許文献6))。
【0009】
転移性結腸直腸癌(mCRC)などのGI癌は予後不良であり、5年生存率はおよそ14%である(Siegel RL,et al (2020).CA Cancer J Clin.70(3):145-64(非特許文献7))。手術、放射線治療、および化学療法が、結腸直腸癌治療の重要な構成要素である。再発性疾患および転移性疾患を有する患者の一部は、手術によって救助され得るが、化学療法は、進行結腸直腸癌に対する治療の中心であり続ける。mCRCに対する主なファーストラインおよびセカンドラインのレジメンは、5-フルオロウラシル(5-FU)/カペシタビンベースの組み合わせ治療、例えば、FOLFOX(5-FU、オキサリプラチン、およびフォリン酸)、FOLFIRI(5-FU、フォリン酸、およびイリノテカン)、ならびにCAPOX(カペシタビンおよびオキサリプラチン)である(Sonbol MB,et al(2019).JAMA Oncol;e194489(非特許文献8))。FOLFOXのオキサリプラチンは、重度のCIPNを引き起こし、患者の生活の質に干渉するため、腫瘍科医はオキサリプラチンの用量を減少させるか、または中止することを余儀なくされることが多く、それは、疾患コントロールおよび無増悪生存期間に負の影響を及ぼし得る。Selvy M,et al.J Clin Med.2020;9(8):2400(非特許文献9)。抗上皮増殖因子受容体(EGFR)処置、セツキシマブおよびパニツムマブなどの標的型生物学的処置も、RAS野生型mCRCのファーストライン処置のために推奨されている(Fornasier G,et al.,(2018)Adv Ther.35(10):1497-509(非特許文献10)。EGFR阻害剤(セツキシマブ/パニツムマブ)、ベバシズマブ、レゴラフェニブ、およびトリフルリジン/チピラシルを含む、いくつかの可能性のあるポストセカンドライン(postsecond-line)薬剤が存在する(Vogel A,et al.Cancer Treat Rev.2017;59:54-60(非特許文献11))。mCRCの処置において使用される薬剤は、各々、重度の副作用プロファイルを有し、良好な臨床アウトカムの希望をわずかにしか提供しない。
【0010】
従って、処置有効性を最大化しながら、CIPNなどの副作用を最小限に有する、結腸直腸癌を含む胃腸癌に対する安全かつ有効な処置オプションが、大いに必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Callaghan et al.(2015)JAMA.314:2172-2181
【非特許文献2】Hakim et al.(2019),J.Clin & Exp Pharmacol.;9(4):262
【非特許文献3】Hershman(2014)J Clin Oncol,;32:1941-1967
【非特許文献4】Housley SN,et al.Cancer Res.2020 Jul 1;80(13):2940-2955
【非特許文献5】Leiting,J.L.,& Grotz,T.E.(2019).World J.of Gastrointest.Oncol.11(9),652-664
【非特許文献6】American Cancer Society,Colorectal Cancer Facts & Figures 2020-2022.Atlanta,Ga
【非特許文献7】Siegel RL,et al (2020).CA Cancer J Clin.70(3):145-64
【非特許文献8】Sonbol MB,et al(2019).JAMA Oncol;e194489
【非特許文献9】Selvy M,et al.J Clin Med.2020;9(8):2400
【非特許文献10】Fornasier G,et al.,(2018)Adv Ther.35(10):1497-509
【非特許文献11】Vogel A,et al.Cancer Treat Rev.2017;59:54-60
【発明の概要】
【0012】
概要
本開示は、少なくとも以下の驚くべき発見に、少なくとも部分的に、基づく。
【0013】
(1)サポシンC-リン脂質含有ナノ小胞組成物は、例えば、ヒト対象において、神経障害の症状を緩和することができる。従って、本開示は、神経障害または神経障害症状の低減のための新規の治療を提供する。
【0014】
(2)ナノ小胞組成物は、胃腸癌に対する標準的な化学療法レジメンの2つの構成要素、オキサリプラチンおよび5-フルオロウラシル(5-FU)の抗癌効果を強化する。ナノ小胞組成物は、動物におけるCIPNの症状も低減させた。従って、本開示は、結腸直腸癌などの胃腸癌の処置のための新規の組み合わせ治療を提供する。
【0015】
(3)ナノ小胞組成物は、免疫チェックポイント阻害剤の抗癌効果を強化する。従って、本開示は、癌、例えば、免疫チェックポイント阻害剤による処置に対して感受性の癌の処置のための、さらにもう1つの新規の組み合わせ治療を提供する。
【0016】
第1の局面において、本開示は、ヒト対象における神経障害症状を低減させる方法を特徴とし、ここで、方法は、神経障害症状に罹患しているヒト対象を特定する工程;(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤を対象へ投与する工程;および対象の神経障害症状が低減することを確認する工程を含む。
【0017】
第2の局面において、本開示は、それを必要とするヒト対象において、神経障害症状の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるか、または神経障害症状の発症を遅延させる方法を特徴とし、ここで、方法は、神経障害症状を経験するリスクがあるヒト対象を特定する工程;および(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤によって対象を処置する工程を含み、処置は、神経障害症状の発生率、強度、および/もしくは期間の低減、または対象における神経障害症状の発症の遅延において有効である。
【0018】
第3の局面において、本開示は、神経障害症状副作用に関連した化学療法剤による処置を必要とするヒト対象において、神経障害症状の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるか、または神経障害症状の発症を遅延させる方法を特徴とし、ここで、方法は、化学療法剤のある用量を対象へ投与する工程;および化学療法剤の該用量と同時に、または化学療法剤の該用量の投与の直前もしくは直後に、(i)0~4個のアミノ酸挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤の少なくとも1用量を、対象へ投与する工程を含む。
【0019】
第4の局面において、本開示は、癌を処置する方法を特徴とし、ここで、方法は、神経障害症状副作用に関連した化学療法剤;および(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤を、それを必要とするヒト対象へ同時投与する工程を含み、ナノ小胞製剤は、化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるか、または化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発症を遅延させる量で投与される。
【0020】
第5の局面において、本開示は、それを必要とするヒト対象において、神経障害症状を低減させる方法を特徴とし、ここで、方法は、神経障害症状を経験している対象を特定する工程;および対象の神経障害症状を低減させるために有効な量のナノ小胞製剤によって対象を処置する工程を含み、ナノ小胞製剤は(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含む。
【0021】
第6の局面において、本開示は、対象における神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生の促進を特徴とし、ここで、方法は、神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生のうちの1つまたは複数を必要とする対象を特定する工程;ならびに対象において神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生を促進するために十分な量のナノ小胞製剤を対象へ投与する工程を含み、ナノ小胞製剤は、(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質とを含む。いくつかの態様において、対象は、以下の状態のうちの1つまたは複数を有する:神経変性障害、脳傷害、脳損傷、脊髄損傷、末梢神経傷害、多発性硬化症、または播種性硬化症。いくつかの態様において、対象は、パーキンソン病、アルツハイマー病、または筋萎縮性側索硬化症を有する。いくつかの態様において、対象は、抗癌化学療法を受ける直前である。いくつかの態様において、本方法は、ワインスタイン増強感覚試験(Weinstein Enhanced Sensory Test)(WEST)、セメス・ワインスタイン・モノフィラメント試験(Semmes-Weinstein Monofilament Test)(SWMT)、形状テクスチャ同定(shape-texture identification)(STI)、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、表皮内神経線維密度(IENFD)、および神経伝導速度より選択される1つまたは複数の試験を使用して、対象における神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生をモニタリングする工程をさらに含む。いくつかの態様において、方法は、前記製剤の投与後に、対象が神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生を経験したことを確認する工程をさらに含む。
【0022】
上記の方法のいくつかの態様において、対象は、末梢神経障害を有するか、または有するリスクがある。いくつかの態様において、対象は、末梢神経障害を有するか、または有するリスクがある。いくつかの態様において、対象は、1つもしくは複数の化学療法剤によって誘発される化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を有するか、または有するリスクがある。いくつかの態様において、化学療法剤は、白金系薬剤、タキサン系、エポチロン系、植物アルカロイド、免疫調節剤、およびプロテアソーム阻害剤からなる群より選択される。いくつかの態様において、化学療法剤は、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、イクサベピロン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンカミノール、ビネリジン、ビンブルニン、エトポシド、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イクサゾミブ、エリブリン、またはスラミンである。いくつかの態様において、対象は、オキサリプラチン誘発性急性疼痛症候群を有するか、または有するリスクがある。
【0023】
第1、第2、または第5の局面のいくつかの態様において、対象は、以下の状態のうちの1つもしくは複数に関連した神経障害を有するか、または有するリスクがある:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ポリオ後症候群、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー、筋ジストロフィー、末梢神経損傷、脱髄、急性播種性白質脳炎、進行性多巣性白質脳炎(PML)、副腎白質ジストロフィー、視神経炎、腎疾患、肝障害、横断性脊髄炎、パーキンソン病、脳卒中、アルツハイマー病、ライム病、手根管症候群、リンパ腫、神経腫、多発性骨髄腫、ビタミンB12欠乏症、帯状疱疹後神経痛、ハンセン病、シャルコー・マリー・トゥース病、ファブリー病、重症疾患多発ニューロパチー、ベル麻痺、尺骨神経麻痺、および腓骨神経麻痺。いくつかの態様において、対象は、糖尿病もしくはウイルス感染に関連した神経障害を有するか、または有するリスクがある。
【0024】
上記の局面のうちのいくつかの、いくつかの態様において、神経障害または神経障害症状の低減には、神経障害の発生率の低減、神経障害の強度の低減、神経障害の期間の低減、神経障害エピソードの期間の低減、神経障害エピソードの頻度の低減、および神経障害の発症の遅延より選択される、少なくとも1つのパラメータの変化が含まれる。
【0025】
上記の局面のうちのいくつかの、いくつかの態様において、神経障害の低減には、神経障害症状の低減が含まれる。いくつかの態様において、神経障害の発生率、強度、および/もしくは期間の低減、または神経障害の発症の遅延には、神経障害症状の発生率、強度、および/もしくは期間の低減、または神経障害症状の発症の遅延が含まれる。
【0026】
第2の局面のいくつかの態様において、方法は、(a)~(d)のうちの少なくとも1つにおいて有効である:(a)製剤が投与される前の対象における神経障害症状のエピソードの強度および/または期間と比較した、ナノ小胞製剤を投与した後の対象における神経障害症状のエピソードの強度および/または期間の低減;(b)対照集団における神経障害症状の強度および/または期間と比較した、対象における神経障害症状の強度および/もしくは期間の低減;(c)対照集団における神経障害の発生率と比較した、対象における神経障害の発生率の低減;ならびに(d)類似事象後の対照集団における神経障害の発症までの期間と比較した、引き金となる事象後の対象における神経障害の発症の遅延。
【0027】
上記の局面のうちのいくつかの、いくつかの態様において、ナノ小胞製剤の1つまたは複数のさらなる用量、および、化学療法剤の1つまたは複数のさらなる用量が、対象に投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は化学療法剤を含有しない。
【0028】
第5の局面のいくつかの態様において、神経障害症状は、(a)以下の状態のうちの1つまたは複数:糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ポリオ後症候群、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー、筋ジストロフィー、末梢神経損傷、脱髄、急性播種性白質脳炎、進行性多巣性白質脳炎(PML)、副腎白質ジストロフィー、視神経炎、腎疾患、肝障害、横断性脊髄炎、パーキンソン病、脳卒中、アルツハイマー病、ライム病、ウイルス感染、手根管症候群、リンパ腫、神経腫、多発性骨髄腫、ビタミンB12欠乏症、帯状疱疹後神経痛、ハンセン病、シャルコー・マリー・トゥース病、ファブリー病、重症疾患多発ニューロパチー、ベル麻痺、尺骨神経麻痺、もしくは腓骨神経麻痺;または(b)オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、イクサベピロン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンカミノール、ビネリジン、ビンブルニン、エトポシド、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イクサゾミブ、エリブリン、およびスラミンからなる群より選択される化学療法剤による処置に関連している。いくつかの態様において、神経障害症状は疼痛である。いくつかの態様において、方法は、対象の神経障害症状をモニタリングする工程をさらに含む。いくつかの態様において、方法は、対象の神経障害症状が低減することを確認する工程をさらに含む。いくつかの態様において、神経障害症状は、以下のうちの1つまたは複数である:疼痛;痛覚過敏;異痛症;痛覚喪失;温覚、冷覚、もしくは身体的傷害の感覚の喪失;痺れ;触覚過敏;協調および固有感覚の喪失;筋力低下;筋消耗;筋攣縮;筋痙攣;または筋麻痺。
【0029】
いくつかの態様において、上記の方法のうちのいくつかは、経皮的電気神経刺激(TENS)、治療的血漿交換(TPE)、静脈内免疫グロブリン(IVIG)治療、理学療法、鎮痛剤、抗てんかん剤、局所処置、および抗うつ剤からなる群より選択される1つまたは複数の付加的な抗神経障害処置を対象へ投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、上記の方法のうちのいくつかは、イブプロフェン、ガバペンチン、プレガバリン、カプサイシンクリーム、リドカインパッチ、アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、デュロキセチン、またはベンラファキシンを対象へ投与する工程をさらに含む。
【0030】
上記の局面のうちのいくつかの、いくつかの態様において、National Cancer Institute-共通毒性基準(Common Toxicity Criteria)(NCI-CTC)、数値評価スケール(NRS)、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)、European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)生活の質(QLQ)-CIPN20、QLC-C30、Functional Assessment of Cancer Therapy/Gynecologic Oncology Group-Neurotoxicity(FACT/GOG-Ntx)、トータル・ニューロパチー・スコア(Total Neuropathy Score)(TNS)質問票、化学療法誘発性末梢神経障害アセスメント・ツール(Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy Assessment Tool)(CIPNAT)、およびオキサリプラチン後症状調査(Post-Oxiplatin Symptom Survey)からなる群より選択される1つまたは複数のアセスメント・ツールを使用して測定することで、神経障害または神経障害症状が低減することが確認される。
【0031】
第7の局面において、本開示は、対象における胃腸癌を処置する方法を特徴とし、ここで、方法は、(a)1つまたは複数の抗腫瘍剤を含む化学療法レジメン、および(b)(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤を対象へ投与する工程を含む。
【0032】
第7の局面のいくつかの態様において、化学療法レジメンは、改変FOLFOX7(mFOLFOX7)を含む。いくつかの態様において、抗腫瘍剤はオキサリプラチンを含む。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、化学療法レジメンと同時に、または化学療法レジメンの投与開始の前もしくは後48時間以内に投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は静脈内投与される。いくつかの態様において、化学療法レジメンは静脈内投与される。いくつかの態様において、胃腸癌は、食道癌、胃癌、肛門癌、結腸直腸癌、腸癌、胆嚢癌、膵臓癌、肝臓癌、膵島細胞癌、直腸癌、小腸癌、胃腸カルチノイド腫瘍、または消化管間質腫瘍である。いくつかの態様において、方法は、胃腸癌に対する生物学的処置を対象へ投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、方法は、抗血管内皮増殖因子(VEGF)モノクローナル抗体を対象へ投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、方法は、抗上皮増殖因子受容体(EGFR)抗体を対象へ投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、方法は、ベバシズマブ、セツキシマブ、またはパニツムマブを対象へ投与する工程をさらに含む。
【0033】
第7の局面のいくつかの態様において、方法は、(a)処置の第1週の1日目に約45分~約120分かけて2.4mg/kgのナノ小胞製剤を投与する工程、ならびに(b)工程(a)の完了後に、(i)処置の第1週の1日目に約2時間かけて200mg/m2ロイコボリンカルシウムと共に注入される85mg/m2オキサリプラチン;および(ii)処置の第1週の1日目と2日目における約46時間かけての2400mg/m2 5-フルオロウラシル(5-FU)というステップで化学療法レジメンを逐次投与する工程を含む。第7の局面のいくつかの態様において、方法は、(a)処置の第1週の1日目に約45分~約120分かけて2.4mg/kgのナノ小胞製剤を投与する工程;(b)工程(a)の完了後に、(i)処置の第1週の1日目に約2時間かけて200mg/m2ロイコボリンカルシウムと共に注入される85mg/m2オキサリプラチン、および(ii)処置の第1週の1日目と2日目における約46時間かけての2400mg/m2 5-FUというステップで化学療法レジメンを逐次投与する工程;ならびに(c)処置の第1週の1日目に約30~約90分かけて約5mg/kg~約15mg/kgのベバシズマブを投与する工程を含む。
【0034】
第7の局面のいくつかの態様において、方法は、処置の第2週に、週3回、ナノ小胞製剤の追加の用量を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、方法は、処置の第3週および第4週に、1週間(7(+/-3)日)に1回、ナノ小胞製剤の追加の用量を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、方法は、処置の第5~23週の間、14(+/-3)日に1回、ナノ小胞製剤の追加の用量を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤の複数用量は、少なくとも8週間にわたって投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、処置の最初の4週間に、少なくとも週1回、投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、処置の最初の2週間に、少なくとも週3回、投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、処置の最初の4週間の後、少なくとも14(+/-3)日に1回、投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、第5~24週に、少なくとも14(+/-3)日に1回、投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、処置の最初の24週間の後、少なくとも28(+/-3)日に1回、投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、以下のように対象へ繰り返し投与される:第1週:1~5日目の各日に1用量;第2週:隔日で1用量、合計3用量;第3週および第4週:1週間(7(+/-3)日)に1用量;第5~24週:14日(+/-3日)に1用量。第7の局面のいくつかの態様において、方法は、化学療法レジメンの追加の用量を、第3週において、および第5~24週に14日(+/-3日)に1回、投与する工程をさらに含む。第7の局面のいくつかの態様において、方法は、ベバシズマブの追加の用量を、第3週において、および第5~24週に14日(+/-3日)に1回、投与する工程をさらに含む。
【0035】
第7の局面のいくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、ナノ小胞製剤が対象へ投与される時に、化学療法レジメンのいかなる抗腫瘍剤とも組み合わせられない。
【0036】
第7の局面のいくつかの態様において、処置は、化学療法レジメンによって処置され、かつナノ小胞製剤によっては処置されない対照集団と比べて、対象において、以下のパラメータのうちの少なくとも1つを増加させる:(a)客観的奏効率(ORR);(b)全生存期間(OS);(c)無増悪生存期間(PFS);および(d)奏効期間(DoR)。
【0037】
第8の局面において、本開示は、それを必要とする対象において癌を処置する方法を特徴とし、ここで、方法は、(a)(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤;および(b)免疫チェックポイント阻害剤を、対象へ投与する工程を含む。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体である。いくつかの態様において、抗CTLA抗体は、イピリムマブ、トレメリムマブ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体である。いくつかの態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、MEDI0680、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-L1抗体である。いくつかの態様において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、BMS-936559、MEDI4736、MSB0010718C、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0038】
いくつかの態様において、癌は、B細胞リンパ腫、基底細胞癌、膀胱癌、芽細胞腫、脳転移、乳癌、バーキットリンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、胃癌、食道胃接合部癌、胃腸癌、神経膠芽腫、神経膠腫、頭頸部癌、肝転移、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ芽球性リンパ腫、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、転移性脳腫瘍、転移性癌、骨髄腫、神経芽細胞腫、眼黒色腫、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、軟部肉腫、固形腫瘍、扁平上皮癌、滑膜肉腫、精巣癌、甲状腺癌、移行上皮癌、ブドウ膜黒色腫、疣状癌、外陰癌、およびワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症より選択される。
【0039】
いくつかの態様において、癌は胃腸癌である。いくつかの態様において、癌の1つまたは複数の細胞は、参照試料と比較して上昇したレベルでPD-L1を発現する。いくつかの態様において、癌の1つまたは複数の細胞は、参照試料と比較して上昇したレベルでCTLA-4を発現する。いくつかの態様において、参照試料は、(a)対象由来の非癌性試料;または(b)異なる対象に由来する非癌性試料より選択される。いくつかの態様において、癌の1つまたは複数の細胞は、参照試料の細胞と同じ細胞型である。いくつかの態様において、方法は、ナノ小胞製剤および免疫チェックポイント阻害剤による処置が、対象の腫瘍に対する免疫応答を、処置前の免疫応答と比較して増加させたか否かを決定するためのアッセイを実施する工程をさらに含む。いくつかの態様において、アッセイは、対象の血漿中の1つまたは複数のサイトカインのレベルを測定する。いくつかの態様において、アッセイは、対象における1つまたは複数のサイトカインをコードするmRNAのレベルを測定する。いくつかの態様において、アッセイは、対象の腫瘍関連M1またはM2マクロファージのレベルを測定する。いくつかの態様において、アッセイは、対象のマクロファージの表面上のPD-L1の提示を検出する。いくつかの態様において、アッセイは、対象の活性化細胞傷害性T細胞のレベルを測定する。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、免疫チェックポイント阻害剤を含まない。
【0040】
上記の局面のうちの任意のもののいくつかの態様において、サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列は、1個または2個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含む。いくつかの態様において、サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1を含む。いくつかの態様において、サポシンCポリペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1からなる。
【0041】
上記の局面のうちの任意のもののいくつかの態様において、リン脂質は、ホスファチジルセリンを含む。いくつかの態様において、リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)またはその塩を含む。いくつかの態様において、リン脂質は、DOPSのナトリウム塩を含む。いくつかの態様において、リン脂質は、ホスホグリセリドを含む。いくつかの態様において、リン脂質は、ジヘキサノイルホスファチジルセリン脂質、ジオクタノイルホスファチジルセリン脂質、ジデカノイルホスファチジルセリン脂質、ジラウロイルホスファチジルセリン脂質、ジミリストイルホスファチジルセリン脂質、ジパルミトイルホスファチジルセリン脂質、パルミトイル-オレオイルホスファチジルセリン脂質、1-ステアロイル-2-オレオイルホスファチジルセリン脂質、またはジフィタノイルホスファチジルセリン脂質のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様において、ホスホグリセリドは、ホスファチジン酸を含む。
【0042】
上記の局面のいくつかの態様において、ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比は、8:1~20:1の範囲である。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比は、11:1~13:1の範囲である。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比は、12:1である。
【0043】
上記の方法のいくつかの態様において、対象は癌を有する。いくつかのケースにおいて、対象は、胃腸癌、膵臓癌、結腸直腸癌、骨癌、脳癌、肉腫、神経芽細胞腫、乳癌、または扁平上皮癌を有する。
【0044】
上記の局面のうちの任意のもののいくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、静脈内に、動脈内に、皮内に、筋肉内に、心臓内に、頭蓋内に、皮下に、腹腔内に、吸入で、経鼻で、経口で、または舌下に投与される。いくつかの態様において、対象へ投与されるナノ小胞製剤の各用量は、0.4mg/kg~7mg/kgのサポシンCポリペプチドを含有する。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、静脈内投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、少なくとも1日1回、2日に1回、週3回、およそ1週間(7(+/-3)日)に1回、またはおよそ2週間(14(+/-3)日)に1回、投与される。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤の複数用量は、少なくとも8週間にわたって投与される。
【0045】
第9の局面において、上記の開示は、癌の処置のためのキットを特徴とし、ここで、キットは、(a)少なくとも1つの抗腫瘍剤を含む第1の薬学的組成物;および(b)(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含む第2の薬学的組成物を、別々の容器に含む。いくつかの態様において、キット内の抗腫瘍剤は、オキサリプラチンである。
【0046】
第10の局面において、上記の開示は、癌の処置のためのキットを特徴とし、ここで、キットは、(a)少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を含む第1の薬学的組成物;および(b)(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含む第2の薬学的組成物を、別々の容器に含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、または抗PD-L1抗体である。
【0047】
いくつかの局面において、本開示は、上記の処置の方法のうちの任意のものにおける、(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤の使用を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、神経障害症状に罹患しているヒト対象における神経障害症状を低減させるためのナノ小胞製剤の使用を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、神経障害症状を経験するリスクがあるヒト対象における、神経障害症状を防止するため、またはその発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるため、または神経障害症状の発症を遅延させるためのナノ小胞製剤の使用を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、ヒト対象における、化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるため、または化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発症を遅延させるためのナノ小胞製剤の使用を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、神経障害症状副作用に関連した化学療法剤を投与されたヒト対象における、癌を処置するためのナノ小胞製剤の使用を特徴とし、ここで、ナノ小胞製剤は、化学療法剤に関連した神経障害症状副作用を防止するか、またはその発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるか、または化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発症を遅延させる量で投与される。いくつかの態様において、本開示は、神経障害症状を経験していることが特定されたヒト対象における、神経障害症状を防止するか、または低減させるためのナノ小胞製剤の使用を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、対象における神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生を促進するためのナノ小胞製剤の使用を特徴とする。
【0048】
いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数の抗腫瘍剤を含む化学療法レジメンを同時投与される対象における、胃腸癌を処置するための、上記のナノ小胞製剤の使用を特徴とする。いくつかの態様において、使用は、(a)処置の第1週の1日目に約45分~約120分かけて2.4mg/kgのナノ小胞製剤を対象へ投与する工程;(b)工程(a)の完了後に、(i)処置の第1週の1日目に約2時間かけて200mg/m2ロイコボリンカルシウムと共に注入される85mg/m2オキサリプラチン、および(ii)処置の第1週の1日目と2日目における約46時間かけての2400mg/m2 5-FUというステップで化学療法レジメンを逐次投与する工程;ならびに(c)処置の第1週の1日目または2日目に約30~約90分の範囲の時間をかけて約5mg/kgのベバシズマブを投与する工程を含む。いくつかの態様において、使用は、以下のようにナノ小胞製剤を対象へ投与する工程を含む:第1週:1~5日目の各日に1用量;第2週:隔日で1用量、合計3用量;第3週および第4週:1週間(7(+/-3日)に1用量;第5~24週:14日(+/-3日)に1用量。いくつかの態様において、使用は、化学療法レジメンの追加の用量を、第3週において、および第5~24週に14日(+/-3日)に1回、投与する工程を含む。いくつかの態様において、使用は、ベバシズマブの追加の用量を、第3週において、および第5~24週に14日(+/-3日)に1回、投与する工程を含む。
【0049】
いくつかの態様において、本開示は、免疫チェックポイント阻害剤を同時投与される対象における癌を処置するための上記のナノ小胞製剤の使用を特徴とする。
【0050】
いくつかの局面において、本開示は、上記の処置の方法のうちの任意のものにおいて使用するための、(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHで正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、神経障害症状に罹患しているヒト対象における神経障害症状の低減において使用するためのナノ小胞製剤を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、神経障害症状を経験するリスクがあるヒト対象における、神経障害症状の防止、またはその発生率、強度、および/もしくは期間の低減、または神経障害症状の発症の遅延において使用するためのナノ小胞製剤を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、ヒト対象における、化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発生率、強度、および/もしくは期間の低減、または化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発症の遅延において使用するためのナノ小胞製剤を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、神経障害症状副作用に関連した化学療法剤を投与されるヒト対象における、癌の処置において使用するためのナノ小胞製剤を特徴とし、ここで、ナノ小胞製剤は、化学療法剤に関連した神経障害症状副作用を防止するか、またはその発生率、強度、および/もしくは期間を低減させるか、または化学療法剤に関連した神経障害症状副作用の発症を遅延させる量で投与される。いくつかの態様において、本開示は、神経障害症状を経験していることが特定されたヒト対象における、神経障害症状の防止または低減において使用するためのナノ小胞製剤を特徴とする。いくつかの態様において、本開示は、対象における神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生の促進において使用するためのナノ小胞製剤を特徴とする。
【0051】
いくつかの態様において、本開示は、1つまたは複数の抗腫瘍剤を含む化学療法レジメンを同時投与される対象における、胃腸癌の処置において使用するための、上記のナノ小胞製剤を特徴とする。いくつかの態様において、使用は、(a)処置の第1週の1日目に約45分から約120分かけて2.4mg/kgのナノ小胞製剤を対象へ投与する工程;(b)工程(a)の完了後に、(i)処置の第1週の1日目に約2時間かけて200mg/m2ロイコボリンカルシウムと共に注入される85mg/m2オキサリプラチン、および(ii)処置の第1週の1日目と2日目における約46時間かけての2400mg/m2 5-FUというステップで化学療法レジメンを逐次投与する工程;ならびに(c)処置の第1週の1日目または2日目に約30~約90分の範囲の時間をかけて約5mg/kgのベバシズマブを投与する工程を含む。いくつかの態様において、使用は、以下のようにナノ小胞製剤を対象へ投与する工程を含む:第1週:1~5日目の各日に1用量;第2週:隔日で1用量、合計3用量;第3週および第4週:1週間(7(+/-3日)に1用量;第5~24週:14日(+/-3日)に1用量。いくつかの態様において、使用は、化学療法レジメンの追加の用量を、第3週において、および第5~24週に14日(+/-3日)に1回、投与する工程を含む。いくつかの態様において、使用は、ベバシズマブの追加の用量を、第3週において、および第5~24週に14日(+/-3日)に1回、投与する工程を含む。
【0052】
いくつかの態様において、本開示は、免疫チェックポイント阻害剤を同時投与される対象における、癌の処置において使用するための、上記のナノ小胞製剤を特徴とする。
【0053】
上記の態様のうちの任意のものにおいて、サポシンCポリペプチドは、SEQ ID NO:1を含むか、もしくはSEQ ID NO:1からなるポリペプチドであってもよいし、または1個もしくは2個のアミノ酸変化のみを有するSEQ ID NO:1を含んでいてもよい。上記の態様のうちの任意のものにおいて、リン脂質には、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)またはその塩が含まれ得る。リン脂質には、DOPSのナトリウム塩が含まれ得る。上記の態様のうちの任意のものにおいて、ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比は、8:1~20:1の範囲であり得る。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比は、11:1~13:1の範囲であり得る。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤においてリン脂質とサポシンCポリペプチドとのモル比は、12:1であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、2つの個々の研究1および2における、オキサリプラチン化学療法マウス疼痛モデルにおけるマウスへの様々な処置の投与のタイムラインを示す図である。
図1Aにおいては、研究1の群A~Eの雄マウスに、0日目に10mg/kgのオキサリプラチンまたは媒体を腹腔内投与し、以下のように被験物質を投与した:-3日目、-2日目、-1日目、および1~9日目に10 mL/kg媒体もしくは20mg/kg BXQ-350、または3日目、5日目、7日目、および9日目に30mg/kgプレガバリン。各群n=12マウス。vF:フォンフライ;CP:コールドプレート。
図1Bにおいては、研究2の群A~Eの雄マウスに、0日目に10mg/kgのオキサリプラチンまたは媒体を腹腔内投与し、以下のように被験物質を投与した:-3日目、-2日目、-1日目、および1~9日目に10mL/kg媒体、2mg/kg BXQ-350(群C)、もしくは10mg/kg BXQ-350(群D)、または3日目、5日目、7日目、および9日目に30mg/kgプレガバリン。各群n=12マウス。
【
図2】
図2は、ベースライン(BL)、3日目、5日目、7日目、および9日目(D3、D5、D7、およびD9)の、研究1における研究群の各々について、フォンフライフィラメントを使用した肢引っ込め閾値50%(g)を介して、機械的過敏を示す棒グラフである。*、**、***、および****は、同一時点でOxal/媒体群と比較した時の、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。Oxal:オキサリプラチン;BXQ:BXQ-350。
【
図3】
図3は、0日目、3日目、5日目、7日目、および9日目の、研究1の群A~Dの各々について、フォンフライフィラメントを使用した肢引っ込め閾値50%(g)のパーセント変化としての機能保存を示す折れ線グラフである。研究群A~Dについては表2を参照すること。*および**は、同一時点でオキサリプラチン群と比較した時の、それぞれ、p<0.05およびp<0.01の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。
【
図4】
図4は、ベースライン(BL)、3日目、5日目、7日目、および9日目(D3、D5、D7、およびD9)の、研究1における研究群の各々について、コールドプレート試験における引っ込め行動までの潜時を示す棒グラフである。*、**、***、および****は、同一時点でOxal/媒体群と比較した時の、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。Oxal:オキサリプラチン;BXQ:BXQ-350。
【
図5】
図5は、0日目、3日目、5日目、7日目、9日目の、研究1の群A~Dの各々について、コールドプレート試験における引っ込め行動までの潜時のパーセント変化としての機能保存を示す折れ線グラフである。研究群A~Dについては表2を参照すること。**および***は、同一時点でオキサリプラチン群と比較した時の、それぞれ、p<0.01およびp<0.001の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。
【
図6】
図6は、ベースライン(BL)、ならびに3日目、5日目、7日目、および9日目(D3、D5、D7、およびD9)の、研究2における研究群の各々について、フォンフライフィラメントを使用した肢引っ込め閾値50%(g)を介して、機械的過敏を示す棒グラフである。バーは、各時点について、左から右へ、研究2の群A~Eをさす。研究群A~Eについては表8を参照すること。*、**、***、および****は、同一時点でVeh/Oxal群と比較した時の、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。Veh:媒体;Oxal:オキサリプラチン;BXQ 2:10mg/kg媒体、2mg/kg BXQ-350;BXQ 10:10mg/kg媒体、10mg/kg BXQ-350;PGB:30mg/kgプレガバリン。
【
図7】
図7は、0日目、3日目、5日目、7日目、および9日目の、研究2の群A~Dについて、フォンフライフィラメントを使用した肢引っ込め閾値50%(g)のパーセント変化としての機能保存を示す折れ線グラフである。**および***は、同一時点でオキサリプラチン群と比較した時の、それぞれ、p<0.01およびp<0.001の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。研究群A~Dについては表8を参照すること。
【
図8】
図8は、ベースライン(BL)、3日目、5日目、7日目、および9日目(D3、D5、D7、およびD9)の、研究2における研究群の各々について、コールドプレート試験における引っ込め行動までの潜時を示す棒グラフである。バーは、各時点について、左から右へ、研究2の群A~Eをさす。研究群A~Eについては表8を参照すること。*、**、***、および****は、同一時点でVeh/Oxal群と比較した時の、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。Veh:媒体;Oxal:オキサリプラチン;BXN 2:10mg/kg媒体、2mg/kg BXQ-350;BXQ 10:10mg/kg媒体、10mg/kg BXQ-350:BXQ-350;PGB:30mg/kgプレガバリン。
【
図9】
図9は、0日目、3日目、5日目、7日目、および9日目の、研究2の群A~Dについて、コールドプレート試験における引っ込め行動までの潜時のパーセント変化としての機能保存を示す折れ線グラフである。*および**は、同一時点でオキサリプラチン群と比較した時の、それぞれ、p<0.05およびp<0.01の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。研究群A~Dについては表8を参照すること。
【
図10】
図10A~10Dは、NS20Y細胞またはPC-12細胞による神経突起伸長の画像(倍率20倍)である。NS20Y細胞は、神経突起伸長アッセイにおいて、50nM BXQ-350によって処理されたか(
図10A)、または未処理であった(
図10B)。PC-12細胞は、神経突起伸長アッセイにおいて、50nM BXQ-350によって処理されたか(
図10C)、または未処理であった(
図10D)。
【
図11】
図11A~
図11Dは、PC-12細胞における神経突起伸長の4対の画像である。各対の左画像は倍率4倍であり;各対の右画像は倍率20倍である。BXQ-350は50nMで投与され;オキサリプラチンは2μMで投与された。処理は、BXQ-350単独(
図11A)、BXQ-350とオキサリプラチン(
図11B)、オキサリプラチン単独(
図11C)、および未処理細胞(
図11D)からなっていた。
【
図12】
図12は、様々な条件での、即ち、未処理時、またはBXQ-350(50nM)、オキサリプラチン(2μM)、もしくはBXQ-350とオキサリプラチンとの組み合わせによる処理後の、神経突起伸長を有するPC-12細胞の百分率を示す棒グラフである。オキサリプラチン単独は、1%未満の細胞生存率をもたらし、従って、神経突起生成を判定し得なかった。
【
図13】
図13は、様々な条件での、即ち、未処理時、またはBXQ-350(50nM)、オキサリプラチン(2μM)、もしくはBXQ-350とオキサリプラチンとの組み合わせによる処理後の、未処理対照における生細胞の総数(100%)と比較した、生PC-12細胞の百分率を示す棒グラフである。オキサリプラチン単独は、無視し得る程度の細胞生存率をもたした。
【
図14】
図14Aおよび
図14Bは、未処理対照における生細胞の総数と比較した(100%として示される未処理対照についての結果に対してノーマライズされた)、50nM BXQ-350処理による生PC-12細胞(
図14A)およびNS20Y細胞(
図14B)の百分率を示す棒グラフである。
図14Cおよび
図14Dは、PC-12細胞(
図14C)およびNS20Y細胞(
図14D)における神経突起伸長の2対の20倍拡大画像である。各対の左画像は、未処理対照細胞を示し;各対の右画像は、BXQ-350によって処理された細胞を示す。値は平均値±SEMとして示される。*および**は、それぞれ、p<0.05およびp<0.001の統計学的有意差を示す。
【
図15】
図15Aは、2μMオキサリプラチン、50nM BXQ-350、それらの2つの組み合わせによって72時間処理された、または未処理の生PC-12細胞における神経突起伸長の百分率を示す棒グラフである。細胞が神経突起伸長についてスコア化され;結果は、伸長を有することが見出された細胞の百分率として、図中に報告される。
図15Bは、2μMオキサリプラチン、50nM BXQ-350、もしくはそれらの2つの組み合わせによる処理の72時間後、または未処理の、(100%として示される未処理対照についての結果に対してノーマライズされた)生存PC-12細胞数を示す棒グラフである。各試料は3回反復で実行された。値は平均値±SEMとして示される。**および****は、それぞれ、p<0.01およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。
図15Cは、各処理群についてのPC-12細胞における細胞および神経突起伸長の4つの画像を示す。画像は倍率20倍である。画像は、左から右へ、未処理細胞、オキサリプラチンによって処理された細胞、BXQ-350によって処理された細胞、およびBXQ-350+オキサリプラチンによって処理された細胞に相当する。
【
図16】
図16Aは、2μMオキサリプラチン、50nM BXQ-350、それらの2つの組み合わせによって72時間処理された、または未処理の生NS20Y細胞における神経突起伸長の百分率を示す棒グラフである。細胞が神経突起伸長についてスコア化され;結果は、伸長を有することが見出された細胞の百分率として図中に報告される。
図16Bは、2μMオキサリプラチン、50nM BXQ-350、もしくはそれらの2つの組み合わせによる処理の72時間後、または未処理の、(100%として示される未処理対照についての結果に対してノーマライズされた)生存NS20Y細胞数を示す棒グラフである。各試料は3回反復で実行された。値は平均値±SEMとして示される。**、***、および****は、それぞれ、p<0.01、p<0.001、およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。
図16Cは、各処理群についてのNS20Y細胞における細胞および神経突起伸長の4つの画像を示す。画像は倍率20倍である。画像は、左から右へ、未処理細胞、オキサリプラチンによって処理された細胞、BXQ-350によって処理された細胞、およびBXQ-350+オキサリプラチンによって処理された細胞に相当する。
【
図17】
図17Aは、10μMビンクリスチン、50nM BXQ-350、それらの2つの組み合わせによって72時間処理された、または未処理の生PC-12細胞における神経突起伸長の百分率を示す棒グラフである。細胞が神経突起伸長についてスコア化され;結果は、伸長を有することが見出された細胞の百分率として図中に報告される。
図17Bは、10μMビンクリスチン、50nM BXQ-350、もしくはそれらの2つの組み合わせによる処理の72時間後、または未処理の、(100%として示される未処理対照についての結果に対してノーマライズされた)生存PC-12細胞数を示す棒グラフである。各試料は3回反復で実行された。値は平均値±SEMとして示される。***および****は、それぞれ、p<0.001およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。
図17Cは、各処理群についてのPC-12細胞における細胞および神経突起伸長の4つの画像を示す。画像は倍率20倍である。画像は、左から右へ、未処理細胞、ビンクリスチンによって処理された細胞、BXQ-350によって処理された細胞、およびBXQ-350+ビンクリスチンによって処理された細胞に相当する。
【
図18】
図18Aは、10μMビンクリスチン、50nM BXQ-350、それらの2つの組み合わせによって72時間処理された、または未処理の生NS20Y細胞における神経突起伸長の百分率を示す棒グラフである。細胞が神経突起伸長についてスコア化され:結果は、伸長を有することが見出された細胞の百分率として図中に報告される。
図18Bは、10μMビンクリスチン、50nM BXQ-350、もしくはそれらの2つの組み合わせによる処理の72時間後、または未処理の、(100%として示される未処理対照についての結果に対してノーマライズされた)生存NS20Y細胞数を示す棒グラフである。各試料は3回反復で実行された。値は平均値±SEMとして示される。**および****は、それぞれ、p<0.01およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。
図18Cは、各処理群についてのPC-12細胞における細胞および神経突起伸長の4つの画像を示す。画像は倍率20倍である。画像は、左から右へ、未処理細胞、ビンクリスチンによって処理された細胞、BXQ-350によって処理された細胞、およびBXQ-350+ビンクリスチンによって処理された細胞に相当する。
【
図19】
図19Aは、3μMパクリタキセル、50nM BXQ-350、それらの2つの組み合わせによって72時間処理された、または未処理の生PC-12細胞における神経突起伸長の百分率を示す棒グラフである。細胞が神経突起伸長についてスコア化され;結果は、伸長を有することが見出された細胞の百分率として図中に報告される。
図19Bは、3μMパクリタキセル、50nM BXQ-350、もしくはそれらの2つの組み合わせによる処理の72時間後、または未処理の、(100%として示される未処理対照についての結果に対してノーマライズされた)生存PC-12細胞数を示す棒グラフである。各試料は3回反復で実行された。値は平均値±SEMとして示される。***および****は、それぞれ、p<0.001およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。
図19Cは、各処理群についてのPC-12細胞における細胞および神経突起伸長の4つの画像を示す。画像は倍率20倍である。画像は、左から右へ、未処理細胞、パクリタキセルによって処理された細胞、BXQ-350によって処理された細胞、およびBXQ-350+パクリタキセルによって処理された細胞に相当する。
【
図20】
図20Aは、3μMパクリタキセル、50nM BXQ-350、それらの2つの組み合わせによって72時間処理された、または未処理の生NS20Y細胞における神経突起伸長の百分率を示す棒グラフである。細胞が神経突起伸長についてスコア化され;結果は、伸長を有することが見出された細胞の百分率として図中に報告される。
図20Bは、3μMパクリタキセル、50nM BXQ-350、もしくはそれらの2つの組み合わせによる処理の72時間後、または未処理の、(100%として示される未処理対照についての結果に対してノーマライズされた)生存NS20Y細胞数を示す棒グラフである。各試料は3回反復で実行された。値は平均値±SEMとして示される。***および****は、それぞれ、p<0.001およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。
図20Cは、各処理群のNS20Y細胞における細胞および神経突起伸長の4つの画像を示す。画像は倍率20倍である。画像は、左から右へ、未処理細胞、パクリタキセルによって処理された細胞、BXQ-350によって処理された細胞、およびBXQ-350+パクリタキセルによって処理された細胞に相当する。
【
図21】
図21Aおよび
図21Bは、未処理の、または50nM BXQ-350によって72時間前処理されたNS20Y細胞(
図21A)およびPC-12細胞(
図21B)のパーセント細胞生存率を示す棒グラフである。次いで、両方の群が、200μM H
2O
2を含有する培地によって24時間処理された。値は平均値±SEMとして示される。*および***は、それぞれ、p<0.05およびp<0.001の統計学的有意差を示す。
【
図22】
図22は、オキサリプラチン/5-FU+BXQ-350(SapC-DOPS)による処理に応答してのヒトHT-29結腸直腸癌細胞の、未処理細胞と比べたパーセント細胞生存率を示す棒グラフである。BXQ-350+オキサリプラチン/5-FUによる組み合わせ処理は、培養ヒトHT-29細胞の著しい相乗的な細胞死を誘発する。細胞を、BXQ-350単独(12μM);BXQ-350+オキサリプラチン(0.3μM);BXQ-350+5-FU(12μM);オキサリプラチン(0.3μM)+5-FU(12μM);またはBXQ-350+オキサリプラチン+5-FUによって72時間処理した。各群n=3。値は平均値±SEMとして示される。
【
図23】
図23Aは、SapC-DOPSを投与された6つの結腸直腸癌細胞株についての毒性曲線(%生存細胞)を示すグラフである。SW480細胞およびSW620細胞には、3μM、6μM、9μM、12μM、15μM、20μM、25μM、30μM SapC-DOPSを投与した。HT29細胞、HTC116細胞、LoVo細胞、およびSW48細胞には、5μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μMを投与した。
図23Bは、FOLFOX(10μMオキサリプラチンと10μM 5-FU)を投与された6つの結腸直腸癌細胞株についての、未処理細胞と比較した細胞の百分率を示す棒グラフである。
【
図24】
図24は、15μM SapC-DOPS単独、10μM FOLFOX単独、または10μM FOLFOXと15μM SapC-DOPSとの組み合わせ(3剤組み合わせ)を投与された6つの結腸直腸癌細胞株についての、未処理細胞と比較した細胞の百分率を示す棒グラフである。値は平均値±SEMとして示される。
【
図25】
図25Aおよび
図25Bは、BXQ-350(SapC-DOPS)によるインビトロ処理に応答しての、2人の健常対象(それぞれ、
図25Aおよび
図25B)に由来するヒトCD14+マクロファージのTNF-α濃度(左Y軸、濃い陰影線(2))およびパーセント細胞生存率(右Y軸、薄い陰影線(1))を示す折れ線グラフである。細胞を、2.5μM~9nMの範囲の濃度のBXQ-350によって処理し、その1時間後に、リポ多糖によって処理した。72時間後、細胞を固定し、TNF-α濃度およびパーセント細胞生存率について分析した。値は平均値±SEMとして示される。
【
図26】
図26は、細胞傷害性T細胞を促進するよう刺激されたPMBCの存在下での三次元A549腫瘍スフェロイドの蛍光強度(Incucyte(登録商標)分析装置)を、時間の関数として示す一連の折れ線グラフである。線(12):対照(PMBC活性化なし);線(11):抗CD3+IL-2による活性化;線(13):抗CD3+IL-2による活性化およびペムブロリズマブによる処理;その他の全ての線(線(1)~(10)):1.27nM~25μMの範囲の濃度のBXQ-350および抗CD3+IL-2による活性化についての腫瘍死滅曲線。
【
図27】
図27は、
図26の一連の折れ線グラフからのデータに基づく、様々なBXQ-350濃度におけるAUCを示す折れ線グラフである。
図26からの蛍光強度が積分されている;細胞が死滅すると、蛍光が変化し、全積分蛍光も変化し、異なるAUC値がもたらされる。AUC:曲線下面積。IC50:BXQ-350を使用して細胞死を刺激するために必要な最大濃度の半分。
【
図28】
図28は、確立されたCT-26腫瘍を保持する雌BALB/cマウスに、無菌PBS(線(1))、m-SapC-DOPS(線(2))、m-抗PD-1(線(3))、またはm-SapC-DOPSおよびm-抗PD-1の両方(線(4))を投与した後の、異なる処置群の腫瘍体積を経時的に示す折れ線グラフである。腫瘍体積が3000mm
3を超えた時に動物を屠殺した。IV:静脈内注射;IP:腹腔内注射;m-SapC-DOPS:マウスSapC-DOPS;D#:日数;mpk:mg/kg;BIW:週2回。
【
図29】
図29は、確立されたCT-26腫瘍を保持する雌BALB/cマウスに、無菌PBS(線(1))、m-SapC-DOPS(線(2))、m-抗PD-1(線(3))、またはm-SapC-DOPSおよびm-抗PD-1の両方(線(4))を投与した後の、異なる処置群の体重を経時的に示す折れ線グラフである。
【
図30】
図30は、確立されたCT-26腫瘍を保持する雌BALB/cマウスに、m-抗PD-1(丸、濃い陰影線)またはm-SapC-DOPSおよびm-抗PD-1の両方(ひし形、薄い陰影線)を投与した後の、異なる処置群の個々の動物の腫瘍体積を経時的に示す折れ線グラフである。
【
図31-1】
図31A~31Hは、様々な棒グラフを示す。
図31Aは、BXQ-350濃度の関数としての、健常ドナー由来の培養骨髄系由来サプレッサー細胞の培養培地中のIFN-γ濃度の増加を示す棒グラフである。「T」:刺激なしのT細胞;「T+ビーズ」:バイオマーカー(ここではインターフェロンγ)を発現するよう刺激されたT細胞。
図31Bおよび
図31Cは、それぞれ、BXQ-350濃度の関数としての、増殖したCD4+細胞およびCD8+細胞の百分率を示す棒グラフである。
【
図31-2】
図31A~31Hは、様々な棒グラフを示す。
図31Dは、BXQ-350濃度の関数としての、健常ドナー由来の培養骨髄系由来サプレッサー細胞に由来する培地中のIL-10の濃度を示す棒グラフである。
図31E~31Hは、それぞれ、BXQ-350濃度の関数としての、健常ドナー由来の培養骨髄系由来サプレッサー細胞におけるHLA-DR、CD86、CD11b、およびCD80の発現を示す棒グラフである。
【
図31-3】
図31A~31Hは、様々な棒グラフを示す。
図31E~31Hは、それぞれ、BXQ-350濃度の関数としての、健常ドナー由来の培養骨髄系由来サプレッサー細胞におけるHLA-DR、CD86、CD11b、およびCD80の発現を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
詳細な説明
本開示は、神経障害または神経障害症状を低減させる方法、ならびに神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生を促進する方法に関する。本開示は、癌を処置する方法にも関する。いくつかの態様において、本開示は、胃腸癌を処置する方法に関する。これらの方法において使用される組成物は、サポシンポリペプチド、例えば、サポシンC(SapC)と、リン脂質、例えば、ホスファチジルセリン、例えば、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)とを含む。これらのサポシンベースの製剤、ならびにそれらの構成要素および調製技術は、米国特許第10,682,411号に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。癌、例えば、胃腸癌を処置するために使用される時、サポシンC/リン脂質組成物は、1つまたは複数の抗腫瘍剤、例えば、化学療法剤または免疫チェックポイント阻害剤と共に投与される。
【0056】
「欠失」という用語は、本明細書において使用されるように、1つまたは複数のアミノ酸残基またはヌクレオチドの欠如をもたらす、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の変化をさす。
【0057】
「挿入」または「付加」という単語は、本明細書において使用されるように、それぞれ、天然に存在する分子に見出される配列への1つまたは複数のアミノ酸残基またはヌクレオチドの付加をもたらす、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の変化をさす。
【0058】
サポシンC-DOPS
サポシンC(「SapC」)とリン脂質ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)とを含むナノ小胞は、インビトロおよびインビボで、ホスファチジルセリンリッチな膜に対して高い親和性を有し、標的細胞においてアポトーシスおよび/または壊死を誘導することができる(Qi et al.(2009),Clin Cancer Res.,15:5840-5851)。SapC-DOPSナノ小胞がアポトーシスを誘導する機序は、カスパーゼの活性化をもたらす、βグルコシダーゼおよび酸性スフィンゴミエリナーゼの活性化(ならびに、それぞれ、その後のグルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリンの分解)によるセラミド上昇を介したものであると提唱されている。ナノ小胞調製物は、インビトロおよび同所性マウス腫瘍モデルにおいて、極めて多様な腫瘍型に対して有効であることが見出された(Qi X,et al.(2009)Clin Cancer Res.,15(18):5840-51;Wojton et al.(2013),Mol Ther,21:1517-1525;Abu-Baker et al.(2012),J Cancer Ther,3:321-326;Chu et al.(2013),PLoS One;8:e75507;米国特許第7,834,147号)。
【0059】
活性薬剤
本発明の方法において使用される「活性薬剤」は、水性溶液中に懸濁した時に、(「リポソーム」または「ナノ小胞」とも呼ばれる)脂質小胞を共に形成する、サポシンC(「SapC」)ポリペプチドとリン脂質との組み合わせである。そのような懸濁物は、「ナノ小胞製剤」とも呼ばれる。天然に存在するヒトSapCのアミノ酸配列は、
である。本発明の方法において使用されるSapCポリペプチドは、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列からなるか、またはSEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むか、または1~4個のアミノ酸改変(合わせて4個以下の挿入、置換、欠失、もしくはそれらの組み合わせ):例えば、SEQ ID NO:1への1~4個のアミノ酸残基の挿入;もしくはSEQ ID NO:1における1個、2個、3個、もしくは4個の残基の置換;SEQ ID NO:1のアミノ末端からの、もしくはカルボキシ末端からの、もしくは内部部位における1個、2個、3個、もしくは4個の残基の欠失を有するSEQ ID NO:1を含む。SEQ ID NO:1は、参照によりその全体が組み入れられる発行済みの米国特許第10,682,411号に、SEQ ID NO:1として開示された。
【0060】
活性薬剤に組み込まれ得るリン脂質には、中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質、例えば、ホスホグリセリド、例えば、ホスファチジン酸(ジアシルグリセロール3-リン酸)およびホスファチジルセリンが含まれる。ホスホグリセリド骨格に付着している2つの脂肪酸は、同じであってもよいし、異なっていてもよく;例えば、各炭素鎖内に0個、1個、または2個の炭素-炭素二重結合を有していてよく;C6~C20の炭素鎖、例えば、オレイン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、およびフィタン酸、ならびにこれらの任意の2つの組み合わせを有していてよい。従って、リン脂質がホスファチジルセリンである場合、以下のものが代表例である:ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジヘキサノイルホスファチジルセリン脂質、ジオクタノイルホスファチジルセリン脂質、ジデカノイルホスファチジルセリン脂質、ジラウロイルホスファチジルセリン脂質、ジミリストイルホスファチジルセリン脂質、ジパルミトイルホスファチジルセリン脂質、パルミトイル-オレオイルホスファチジルセリン脂質、1-ステアロイル-2-オレオイルホスファチジルセリン脂質、およびジフィタノイルホスファチジルセリン脂質。活性薬剤は、任意の2つ以上(例えば、2つまたは3つ)の異なるリン脂質、例えば、2つまたは3つの異なるホスファチジルセリン脂質の組み合わせを含むことができる。(「ホスファチジルセリン」および「ホスファチジルセリン脂質」という用語は、交換可能に使用される。)
【0061】
本開示によると、活性薬剤は、SapC(SEQ ID NO:1)とDOPSとを含み得る。あるいは、陰イオン性リン脂質または全体的な負電荷を有するリン脂質が、DOPSの代わりに使用されてもよい。SapC-DOPSは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,834,147号に記載されている。SapCとDOPSとの組み合わせは、ナノ小胞を形成し得る。ナノ小胞は、10nm~800nm、例えば、40nm~200nmであり得る。活性薬剤を含む製剤は、5~8、例えば、7~7.4のpHを有し得る。
【0062】
中性pHの水性組成物において、リン脂質は、典型的には、カチオンとの塩の形態で存在し、従って、本発明の組成物において使用されるDOPSおよびその他のリン脂質への言及は、リン脂質の塩形態および非塩形態の両方を含むものとする。適当なカチオンには、リン脂質と共に塩を形成する任意の薬学的に許容されるカチオン、例えば、以下のうちの任意のものが含まれる:アンモニウムイオン;L-アルギニンイオン;ベンザチンイオン;デアノールイオン;ジエタノールアミン(2,2'-イミノジエタノール)イオン;ヒドラバミンイオン;リジンイオン;カリウムイオン;ナトリウムイオン;トリエタノールアミン(2,2',2''-ニトリロトリ(エタン-1-オール))イオン;およびトロメタミン(2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)イオン。ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が典型的である。
【0063】
本発明の組成物中のSapCポリペプチドとリン脂質とのモル比は、1:2~1:50、例えば、1:5~1:30、または1:8~1:20、または1:11~1:13の範囲であり得る。適当なモル比には、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、および1:15が含まれるが、これらに限定されるわけではない。ポリペプチドとホスファチジルセリン脂質との質量比は、約1:0.11~1:4.8、または約1:0.18~約1:4.5、または約1:0.45~約1:2.7、または約1:0.72~約1:1.81、または約1:1~約1:1.2の範囲である。
【0064】
活性薬剤は、薬学的に許容される緩衝液およびその他の不活性成分と共に、またはそれなしに、固体(例えば、凍結乾燥粉末)の形態で供給され得る。固体は、典型的には、投与前に滅菌水または生理食塩水で再構成され、水性溶液中のリポソームの懸濁物を形成する。
【0065】
活性薬剤が水性溶液中に懸濁したリポソームの形態である時、その溶液は、薬学的に許容される緩衝液およびその他の不活性成分も含有し得る。適当な製剤(およびそれらを調製する方法)には、参照によりその全体が組み入れられる米国特許第10,682,411号に記載されるものが含まれる。水性溶液中の活性薬剤のそのような懸濁物の一例は、「BXQ-350」と名付けられている。それは、SEQ ID NO:1からなるサポシンCポリペプチドと、DOPSのナトリウム塩からなるリン脂質とを、およそ1:12(即ち、1:11~1:13の範囲)のモル比(SapC対DOPS)で含有する。
【0066】
活性薬剤の投与は、典型的には、懸濁物の注射(例えば、注入)を介してなされ、任意の適当な注射可能な経路、例えば、静脈内、動脈内、皮内、筋肉内、心臓内、頭蓋内、経皮、皮下、眼内、または腹腔内によってなされ得る。適切な状況において、活性薬剤の乾燥粒子もしくは活性薬剤を含有する溶液が、エアロゾル化もしくは噴霧され、鼻もしくは口からの吸入を介して送達されてもよいし、または溶液が、液体、例えば、点眼剤、点鼻剤、もしくはスプレーとして送達されてもよい。例えば、マウスウォッシュもしくは含嗽剤もしくは舌下製剤としての経口送達、または液体、カプセル、もしくは錠剤として嚥下される経口送達も企図される。液体は洗浄液または浣腸として送達されてもよい。投与経路に関するさらなる詳細は、例えば、米国特許第7,834,147号に見出され得る。
【0067】
投与は、数日間連続で、例えば、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、もしくはそれ以上連続で、少なくとも1日1回、施行されてもよいし、または、例えば、隔日、もしくは週3回、もしくは7±3日に1回、もしくは14±3日に1回、もしくは28±3日に1回であってもよい。投与のタイミングは、これらのスケジュールのうちの1つで開始され、適当な処置期間の後に、より高頻度またはより低頻度の他のスケジュールに変更されてもよい。処置の期間全体は、例えば、8週間または12週間または16週間または最大6ヶ月で完了してもよいが、患者が処置から利益を得ていると考えられる限り、継続されてもよい。
【0068】
本発明の方法において使用するためのSapC-DOPS製剤は、凍結乾燥形態で供給され、次いで、使用前に水で再構成されてよい。方法において使用するための製剤の一例を表1に示す。表1の製剤におけるDOPSとSapCとのモル比は12:1である。目標pHは7.2±0.4である。
【0069】
【0070】
開示された方法において使用するための製剤には、米国特許第10,682,411号に開示された組成物が含まれ得、その教示は参照によりその全体が組み入れられる。
【0071】
SapCおよびそれに由来するポリペプチドは、任意の有用な方法によって、例えば、化学的に、酵素的に、または組換えによって作製され得る。ポリペプチドおよびその断片を作製する方法は、当技術分野において公知であり、化学的ペプチド合成、インビトロ翻訳系、ならびに組換え宿主生物における発現(および精製)を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0072】
有用な背景情報および技術的詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,834,147号および第9,271,932号に見出され得る。
【0073】
「脂質小胞」、「リポソーム」、および「ナノ小胞」は、一般的には球状であり、典型的には、1つまたは複数の同心層、例えば、二重層の形態である、両親媒性脂質のクラスターまたは凝集物をさすために、交換可能に使用される。
【0074】
本明細書において使用されるように、「SapC-DOPS」という用語は、SapCとDOPSとの組み合わせをさす。
【0075】
本明細書において、SapC-DOPSの投与量が報告される時、その投与量はSapCの用量をさす。例えば、2.4mg/kgというSapC-DOPSの投与量は、2.4mg/kgのSapCをさす。
【0076】
「患者」、「対象」、または「個体」とは、動物、例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒト、サル、チンパンジー、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、またはウサギをさす。
【0077】
神経障害の処置に関して、活性薬剤の「治療的に有効な用量」または「治療的に有効な量」とは、患者の神経障害を処置するために有用な量である。一般に、本発明の組成物の治療的に有効な1回用量は、約0.01~30mg/kg体重、好ましくは、約0.05~20mg/kg体重、より好ましくは、約0.1~15mg/kg体重、さらに好ましくは、約0.5~10mg/kgの範囲の量のSapC(またはその誘導体)を含有するであろう。例えば、静脈内の1回用量におけるSapCの量は、約0.4mg/kg、0.7mg/kg、1.1mg/kg、1.4mg/kg、1.8mg/kg、2.4mg/kg、2.8mg/kg、3.0mg/kg、3.2mg/kg、3.6mg/kg、7mg/kg、またはそれ以上であり得る。所定の患者は、1つまたは複数の初期投与について、所定の用量レベルを受容し、さらなる投与については、異なる(より低い、またはより高い)レベルを受容してもよい。
【0078】
神経障害
「末梢神経障害」は、末梢神経系(PNS)に影響する種々の臨床的症候、自然経過、および病理の集まりである。PNSは、中枢神経系(CNS)に刺激を伝える、刺激受容器から走る感覚ニューロンと、脊髄から、作用を起こす効果器まで走る運動ニューロンとからなる。「神経障害」という用語には、末梢対称性神経障害、自律神経障害、近位神経障害、限局性神経障害、および単神経障害が含まれる。
【0079】
末梢神経障害を有する患者は、運動機能不全(衰弱)、感覚異常(痺れ、麻痺、痛覚過敏/異痛症、疼痛)、自律神経症状、または全ての組み合わせを呈し、これらは、しばしば、具体的な疾患に依る(Cashman,C.R.,& Hoke,A.(2015)Neuroscience letters,596,33-50)。大部分の神経障害は、慢性的であり、緩徐進行性の状態であるが、より急性に発症し、緩徐に回復する神経障害もある(Kuwabara S,Yuki N.(2013)Lancet Neurol.2013;12:1180-1188;Winer JB.(2014)Autoimmune Dis.;2014:1-6;Yuki N,and Hartung H-P.(2012)N.Engl.J.Med.2012;366:2294-2304)。孤立性に存在する神経障害は少なく、しばしば、他の全身性疾患、例えば、糖尿病、ならびにヒト免疫不全ウイルスおよびC型肝炎ウイルスなどの感染による二次性のものである。さらに、末梢神経障害は、抗レトロウイルスレジメンまたは化学療法レジメンの一部として与えられた薬物の毒性から生じる医原性のものであり得る。化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)において、抗癌薬は、感覚機能および運動機能の両方に損傷を与え得る。
【0080】
神経障害の症状(「神経障害症状」)には、疼痛、痛覚過敏、異痛症、痛覚喪失、温覚、冷覚、または身体的傷害の感覚の喪失、触覚過敏、協調および固有感覚の喪失、筋力低下、筋消耗、筋攣縮、筋麻痺、指または手の刺痛、足趾または足の刺痛、指または手の痺れ、足趾または足の痺れ、指または手の電撃痛または灼熱痛、足趾または足の電撃痛または灼熱痛、手および/または足の筋痙攣、足底の接地感覚困難による立位または歩行の問題、温水と冷水とを区別することの困難、ペンの保持の問題および書字困難、指で小物を取り扱うこと(例えば、小さいボタンを留めること)の困難、手の衰弱によるジャーまたはボトルを開けることの困難、下に落ちる感覚による歩行困難、脚の衰弱による階段を上ることまたは椅子から立ち上がることの困難、座位または横臥位から立ち上がる時の眩暈、霧視、聴覚困難、車のペダルを使用することの困難、ならびに勃起またはその維持の困難が含まれるが、これらに限定されるわけではない。「神経障害症状副作用」とは、化学療法剤、抗ウイルス薬、毒性薬剤、例えば、農薬等の使用の副作用として発生する(即ち、それらに関連した)神経障害症状である。
【0081】
神経障害は、3ヶ月以上持続する疼痛である慢性疼痛の主な原因である。人口の10%が神経障害性疼痛を有すると推定されている。「神経障害性疼痛」は、International Association For The Study Of Pain(IASP)によって、「神経系における原発性の病変もしくは機能障害によって開始する、または引き起こされる疼痛」と定義されている(IASP,Classification of chronic pain,2nd Edition,IASP Press(2002),p.210)。本開示の方法のいくつかの態様において、神経障害性疼痛は、化学療法に起因する、即ち、化学療法における化学療法剤の投与によって引き起こされる。化学療法剤は、神経毒性、特に、末梢神経障害をもたらす末梢神経毒性を引き起こし得る。異痛症(通常は疼痛を誘発しない刺激による疼痛)および痛覚過敏または過敏(通常はより低い程度の疼痛を誘発する刺激による増加した疼痛)は、感覚異常(実際、それ自体有痛性ではない不快な感覚)および知覚異常(異常な感覚、例えば、ピンおよび針、または灼熱感)と共に、神経障害性疼痛を有する患者における顕著な症状である(Jensen TS,The Lancet(2014);13(9),P924-935)。
【0082】
末梢神経障害は、以下のものを含むが、それらに限定されるわけではない、様々な状態に関連している:糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ポリオ後症候群、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー、筋ジストロフィー(PML)、副腎白質ジストロフィー、視神経炎、腎疾患、肝障害、横断性脊髄炎、パーキンソン病、脳卒中、アルツハイマー病、ライム病、ウイルス感染(例えば、水痘帯状疱疹ウイルス、ウエストナイルウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはヒト免疫不全ウイルスによる感染)、手根管症候群、末梢神経損傷、脱髄、急性播種性白質脳炎、進行性多巣性白質脳炎リンパ腫、神経腫、多発性骨髄腫、ビタミンB12欠乏症、帯状疱疹後神経痛、ハンセン病、シャルコー・マリー・トゥース病、ファブリー病、重症疾患多発ニューロパチー、ベル麻痺、尺骨神経麻痺、および腓骨神経麻痺。
【0083】
末梢神経障害は、(例えば、本願の他の箇所に詳細に記載される)化学療法剤、生物学的薬物(例えば、エファリズマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、およびアダリムマブ)、抗アルコール薬(例えば、ジスルフィラム)、抗痙攣薬(例えば、フェニトイン)、心臓または血圧の薬(例えば、アミオダロン)、抗生物質(例えば、メトロニダゾールおよびフルオロキノロン系(例えば、レボフロキサシンおよびシプロフロキサシン))、皮膚の薬(例えば、ダプソン)、ならびに放射線を含むが、これらに限定されるわけではない広範囲の薬剤によっても誘発され得る。
【0084】
本開示に関して、「神経障害の低減」という用語は、神経障害性疼痛、痛覚過敏、および/または異痛症を含むが、これらに限定されるわけではない、神経障害(例えば、末梢神経障害)に関連した1つまたは複数の症状を緩和し、寛解させ、または排除することを意味する。神経障害症状の低減は、本開示のSapC-リン脂質ナノ小胞製剤を患者へ投与することによって達成され得る。
【0085】
神経障害を処置するための投与プロトコルは、対象が経験している神経障害の種類、および処置時に症状がどの程度迅速に消散するかによって変動し得る。いくつかの態様において、慢性神経障害を有する対象を処置するためには、比較的長期間の投与プロトコルが必要となるであろう。従って、いくつかの態様において、神経障害を低減させ、かつ/または神経障害に関連した症状を処置するか、もしくは低減させるため、必要に応じて、ナノ小胞製剤は、本願の他の箇所に開示される任意の許容される経路によって少なくとも24時間にわたり投与されるか、または、ナノ小胞製剤の個別の用量は、例えば、数日、数週間、または数ヶ月~数年にわたって定期的に投与される。
【0086】
いくつかの態様において、開示されたSapC-リン脂質ナノ小胞製剤による処置は、対照集団(即ち、SapC-リン脂質処置を受容していない対象の群)における神経障害症状の発生率または発生と比較して、対象において神経障害症状の発生率または発生を低減させる。
【0087】
神経障害症状は、単一の不変の事象として、または一連の個別の発生もしくはエピソードとして、患者によって経験され得る。例えば、いくつかの態様において、神経障害副作用に関連した化学療法剤を受容した対象は、化学療法剤による処置の途中または後に、1つまたは複数の神経障害エピソードの発症を経験し得る。
【0088】
SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、対象が経験する神経障害症状の頻度、期間、および/もしくは強度を低減させ、かつ/または対象における神経障害の発症を遅延させることができる。
【0089】
いくつかの態様において、開示されたSapC-リン脂質ナノ小胞製剤による処置は、処置前に対象が経験した神経障害症状の強度と比較して、対象における神経障害症状の強度を低減させることができる。神経障害症状の強度は、当業者に公知の1つまたは複数のアセスメント・ツール(例えば、CIPN20質問票による患者自己報告)を使用して主観的または客観的に測定され得る。一例において、神経障害症状(例えば、CIPNの症状または症状群)の強度の変化は、その症状の強度をスコアとして定量化する患者調査において、1つまたは複数の個々の質問(例えば、EORTC QLQ-CIPN20質問票の痺れ、刺痛、および疼痛に関する1つまたは複数の質問)から得られた総合神経障害「スコア」を連続的に測定することによって決定される。得られた総合神経障害スコアは、次いで、0~100のスケールに変換される。次いで、神経障害スコアの変化(例えば、スコアの改善または悪化)が、処置の経過中の様々な時点(例えば、SapC-リン脂質製剤による処置の前、途中、または後)で得られたスコアを比較することによって決定され得る。質問の表現に依って、神経障害症状の強度の低減(即ち、改善)は、スコアの増加または減少のいずれかとして反映され得る。神経障害スコアの改善を評価する他の方法は、当技術分野において公知であり、本願の他の箇所に記載されている。いくつかの態様において、SapC-リン脂質製剤による処置は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%、神経障害症状スコアを改善し得る(例えば、神経障害症状のエピソードの強度を低減させ得る)。
【0090】
いくつかの態様において、開示されたSapC-リン脂質ナノ小胞製剤による処置は、適切な対照集団において経験される神経障害症状の期間と比較して、対象における神経障害症状の期間を低減させることができる。例えば、化学療法剤(即ち、神経障害症状副作用に関連した薬剤)と同時にSapC-リン脂質製剤を投与された患者は、対照集団(即ち、化学療法剤を投与されたが、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤を投与されなかった患者の集団)において経験される神経障害症状の平均期間と比較した時、化学療法処置を開始した後、より短い期間、神経障害症状を経験し得る。
【0091】
いくつかの態様において、開示されたSapC-リン脂質ナノ小胞製剤による処置は、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤による処置を開始する前に対象が経験した類似の神経障害エピソードの期間または頻度と比較して、対象における神経障害エピソードの期間または頻度を低減させることができる。例えば、処置の前に、患者は、各々数週間続く神経障害性疼痛のエピソードを定期的に経験し得る。処置後、患者が経験する各エピソードの期間は、1週間以下に低減し得、またはエピソードの頻度が減少し、エピソード間の無症状期間が長くなり得る。
【0092】
いくつかの態様において、SapC-リン脂質製剤による処置は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%、または少なくとも約99%、本開示の他の箇所に記載される患者自己報告によって判定される神経障害症状のエピソードの期間および/または頻度を低減させることができる。
【0093】
いくつかの態様において、SapC-リン脂質製剤による処置は、NCI-CTCツール(Kaplow,R(2017)Nursing:47(2)-p67-68)における神経障害(例えば、CIPN)の強度を、1以下の毒性グレードに低減させる。
【0094】
癌
「癌」という用語は、典型的には、制御されない細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的状態をさし、哺乳動物(例えば、ヒト)において見出される全ての種類の癌、新生物、または悪性腫瘍、例えば、白血病(例えば、急性もしくは慢性の白血病)、細胞腫、および肉腫を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載された方法において処置可能である癌には、例えば、任意の固形腫瘍または神経学的癌、例えば、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、腎細胞癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、精巣癌、上衣腫、脳癌、例えば、高悪性度神経膠腫(HGG)、例えば、多形性神経膠芽腫(GBM)、神経芽細胞腫、ならびに胃腸(GI)癌、例えば、虫垂癌および結腸直腸癌が含まれる。組成物は、原発性腫瘍の種類またはそれが転移する器官に関係なく、転移性腫瘍の化学療法処置に関連した神経障害を処置するために有用である。転移性腫瘍は、前立腺、結腸、肺、乳房、骨、および肝臓を起源とするものを含むが、これらに限定されるわけではない、多数の原発腫瘍の種類から発生し得る。「癌」には、様々な器官系の悪性疾患、例えば、肺、乳房、甲状腺、リンパ系、胃腸、または泌尿生殖器に影響する癌が含まれ、大部分の結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌、および/または精巣腫瘍、非小細胞肺癌、小腸癌、および食道癌などの悪性疾患を含む腺癌も含まれる。処置され得る癌の他の例には、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、横紋肉腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、ならびに多発性骨髄腫が含まれる。「細胞腫」という用語は、当技術分野において認識されており、上皮組織または内分泌組織の悪性疾患、例えば、呼吸器系癌、胃腸系癌、泌尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、扁平上皮癌、および黒色腫をさす。例示的な細胞腫には、子宮頸部、肺、前立腺、乳房、頭頸部、結腸、および卵巣の組織から形成されるものが含まれる。この用語には、癌性組織および肉腫性組織から構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫も含まれる。「腺癌」とは、腺組織に由来する細胞腫、または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する細胞腫をさす。さらなる詳細は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,834,147号に見出され得る。
【0095】
いくつかの態様において、「癌」という用語は、対象の胃腸系において見出される全ての種類の癌、新生物、または悪性腫瘍を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載された方法(例えば、サポシンC-DOPSナノ小胞製剤および1つまたは複数の抗腫瘍剤の化学療法レジメン)において処置可能である癌には、例えば、食道癌、胃癌、肛門癌、結腸直腸癌、腸癌、胆嚢癌、膵臓癌、肝臓癌、膵島細胞癌、直腸癌、小腸癌、胃腸カルチノイド腫瘍、または消化管間質腫瘍を含むが、これらに限定されるわけではない任意の胃腸癌が含まれる。組成物は、原発腫瘍の種類またはそれが転移する器官に関係なく、転移性腫瘍を処置するために有用である。転移性胃腸腫瘍は、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢、および膵臓に由来するものを含むが、これらに限定されるわけではない、多数の原発腫瘍の種類から発生し得る。
【0096】
他の態様において、本明細書に記載された方法(例えば、サポシンC-DOPSナノ小胞製剤および1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤)において処置可能である癌には、例えば、B細胞リンパ腫(例えば、B細胞慢性リンパ性白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫、皮膚B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PBMCL))、基底細胞癌、膀胱癌、芽細胞腫、脳転移、乳癌、バーキットリンパ腫、細胞腫(例えば、(例えば、食道胃接合部の)腺癌)、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌(結腸癌および直腸癌;高頻度マイクロサテライト不安定性癌(MSI-H))、子宮内膜癌、食道癌(例えば、食道扁平上皮癌(ESCC))、ユーイング肉腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、胃癌、食道胃接合部癌、胃腸癌、神経膠芽腫(例えば、多形性神経膠芽腫)、神経膠腫、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌(SCCHNまたはHNSSC))、ホジキンリンパ腫(古典的ホジキンリンパ腫(cHL))、非ホジキンリンパ腫、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC)およびウィルムス腫瘍)、喉頭癌、白血病(例えば、慢性骨髄球性白血病、有毛細胞白血病)、肝臓癌(例えば、肝癌または肝細胞癌(HCC);肝細胞腫)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、中皮腫(悪性胸膜中皮腫)、リンパ芽球性リンパ腫、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、転移性脳腫瘍、転移性癌、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、神経芽細胞腫、眼黒色腫、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌(例えば、膵管腺癌)、前立腺癌(例えば、ホルモン不応性(例えば、去勢抵抗性)、転移性、転移性ホルモン不応性(例えば、去勢抵抗性、アンドロゲン非依存性))、唾液腺癌、肉腫(例えば、横紋筋肉腫)、皮膚癌(例えば、黒色腫(例えば、転移性黒色腫);メルケル細胞癌(MCC))、軟部肉腫、扁平上皮癌、滑膜肉腫、精巣癌、甲状腺癌、移行上皮癌(尿路上皮細胞癌;尿路上皮癌)、ブドウ膜黒色腫(例えば、転移性)、疣状癌、外陰癌、ならびにワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症が含まれる。いくつかの場合において、癌には、食道癌、胃癌、肛門癌、結腸直腸癌、腸癌、胆嚢癌、膵臓癌、肝臓癌、膵島細胞癌、直腸癌、小腸癌、胃腸カルチノイド腫瘍、または消化管間質腫瘍を含むが、これらに限定されるわけではない胃腸癌が含まれる。組成物は、原発腫瘍の種類またはそれが転移する器官に関係なく、転移性腫瘍を処置するために有用である。転移性胃腸腫瘍は、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢、および膵臓に由来するものを含むが、これらに限定されるわけではない、多数の原発腫瘍の種類から発生し得る。いくつかの場合において、癌は、1つまたは複数の免疫チェックポイントバイオマーカー、例えば、PD-L1およびCTLA-4を発現する細胞を含む。いくつかの場合において、付加的なバイオマーカー(例えば、EGFRまたはALK)におけるゲノム腫瘍異常の存在量が細胞において決定される。いくつかの場合において、免疫チェックポイントバイオマーカーまたはゲノム腫瘍異常の検出は、FDAによって認可された試験を使用して実施される。
【0097】
本明細書において使用されるように、「処置する」、「処置すること」、「処置」という用語およびそれらの変形は、対象が罹患している疾患または状態(例えば、胃腸癌、頭頸部癌、または黒色腫)の部分的なまたは完全な緩和、阻害、寛解、または軽減をさす。「癌を処置すること」とは、本明細書に記載された処置方法を使用して、腫瘍の増殖の速度、腫瘍のサイズ、局所もしくは遠隔の腫瘍転移の速度、対象における全腫瘍量の部分的なもしくは完全な減少、および/または腫瘍生存率の減少を引き起こすことを意味する。ある特定の態様において、「処置する」およびその変形は、未処置の対照と比べて、癌(例えば、胃腸癌)の進行を遅延させるか、または進行を逆転させることをさす。開示された方法を使用した処置に対する応答は、当技術分野において公知の下記の多数のパラメータによって評価される。
【0098】
(1)「客観的奏効率」または「ORR」とは、腫瘍学における処置の有効性を証明するための重要なパラメータである(Aykan NF,Ozatli T.(2020)World J Clin Oncol.Feb 24;11(2):53-73)。それは、最小期間で予定された量の腫瘍サイズ縮小を有する患者の割合を決定することによって、固形腫瘍を有する患者において所定の処置後の腫瘍量(TB)を判定する。腫瘍は、主に細胞傷害性化学療法のために開発された解剖学的奏効基準であり、解剖学的画像法に基づく、World Health Organization(WHO)基準およびResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)を使用して評価される。ORRは、最良総合効果(best overall response)(BOR)が完全奏効(CR)または部分奏効(PR)のいずれかである対象の総数を、関心対象の母集団の対象の総数で割ったものとして測定される。
【0099】
(2)「全生存期間」または「OS」とは、疾患を有すると診断された患者の、疾患、例えば、癌の診断日または処置開始日からの生存期間である。本開示に関して、それは、無作為化の日(臨床試験の対象を特定の処置群に割り付ける日)から、何らかの原因による死亡の日までの時間として定義される。
【0100】
(3)「無増悪生存期間」または「PFS」とは、疾患、例えば、癌の処置の途中および後の、患者が疾患を有するが、増悪なしに生存する時間の長さである。本開示に関して、それは、無作為化の日(臨床試験の対象を特定の処置群に割り付ける日)から、疾患進行または死亡の日までの時間として定義される。
【0101】
(4)「奏効期間」または「DoR」とは、癌が増殖または蔓延することなく、腫瘍が処置に応答し続ける時間の長さである。本開示に関して、それは、患者の処置に対する陽性応答の実証から疾患進行までの時間として定義される。
【0102】
(5)疾患コントロール率(DCR)とは、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、または安定(stable disease)(SD)を達成した、癌を有する患者の百分率である。本開示に関して、それは、(例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられるEisenhauer et al.,Eur J Cancer,(2009)45(2):228-47に記載されている)RECIST v1.1またはRECISTのその後の更新バージョンに従って、最良総合効果(BOR)が完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、および安定(SD)であった参加者の割合として定義される。
【0103】
従って、いくつかの態様において、開示された方法による処置は、対照集団と比べて、対象において以下のパラメータのうちの少なくとも1つの増加をもたらす:(a)客観的奏効率(ORR);(b)全生存期間(OS);(c)無増悪生存期間(PFS);および(d)奏効期間(DoR)。例えば、開示された方法による処置は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%、ORR、OS、PFR、および/またはDoRのうちの1つまたは複数を増加させ得る。さらに、開示された方法による処置は、対照集団と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%、処置された集団(即ち、開示された方法によって処置された対象の群)において、DCRを増加させ得る。
【0104】
化学療法誘発性末梢神経障害
化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は、化学療法剤によって引き起こされる末梢神経系(PNS)または自律神経系(ANS)の傷害に起因する、身体または自律神経の徴候または症状として定義される(Cooper C;Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy,in Cooper's Fundamentals of Hand Therapy,2020)。CIPNにおいて、化学療法剤(抗癌剤)は、感覚機能および運動機能の両方を損なう可能性がある。CIPNは、化学療法の用量低下または早期中止をもたらし、それによって、癌処置の有効性を低減させ得る、癌処置の一般的かつ重大な副作用である。それは、衰弱性の症状を引き起こし得、患者の生活の質にも重大な影響を与える。化学療法によって処置された癌患者の約30~40パーセントが、CIPNを経験する。
【0105】
白金系抗癌剤は、肺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、および泌尿生殖器癌を処置するために一般的に使用されている。しかしながら、主に、後根神経節(DRG)ニューロンに影響する末梢神経障害は、その化学療法の一般的な副作用である。末梢神経障害の根底にある機序は、完全には解明されていない。
【0106】
白金系化学療法薬であるオキサリプラチンは、様々な種類の癌の処置のために一般的に使用されている。オキサリプラチンは、2つの異なる型の神経障害を誘発する:一過性であり、オキサリプラチンへの曝露の途中または直後に出現する極めて一般的な急性疼痛症候群、および累積的な性質のものであり、他の種類の化学療法関連神経毒性、例えば、シスプラチンおよびパクリタキセルによって引き起こされるものの特徴に類似している用量制限慢性感覚神経毒性。CIPNは、十分に記載されている臨床問題である(Grothey A,et al(2011)Journal of Clinical Oncology.29(4):421-7;Loprinzi CL,et al(2014)J Clin Oncol.32(10):997-1005;Pachman DR,et al(2015).Journal of Clinical Oncology 33(30):3416-22;およびPachman DR,et al(2016)Supportive Care in Cancer.24(12):5059-68)。
【0107】
神経障害を誘発することが公知である化学療法剤には、白金系薬剤(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン系(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル)、エポチロン系(例えば、イクサベピロン)、植物アルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンカミノール、ビネリジン、ビンブルニン、エトポシド)、免疫調節剤(例えば、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イクサゾミブ)、エリブリン、およびスラミンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0108】
CIPNを有する患者は、一般的には、手および/または足から始まり、腕および脚に徐々に移動する、対称的な症状をしばしば経験する。患者は、さらに、または、あるいは、疼痛(電撃痛、鋭痛、穿刺痛、および/または灼熱痛)、痺れ、温度に対する感受性、歩行困難、書字、ボタンの留め外し、小物の梱包等の微細運動技能の困難などの症状を経験し得る。CIPN症状には、難聴、霧視、および味覚変化も含まれ得る。さらに、運動ニューロン機能不全が、筋痙攣、歩行障害、麻痺、筋痙攣、振戦、および衰弱として顕在化することがある。CIPNは、感覚異常、知覚異常、関節および振動の感覚の喪失、ならびに深部腱反射の喪失を特徴とすることがある。症候性CIPNの発症は、一般的に、化学療法剤の用量の低下および/または治療の中断をもたらし、癌関連アウトカムに悪影響を与え得る。
【0109】
いくつかの態様において、開示された方法において利用されるナノ小胞製剤は、神経障害症状副作用に関連した化学療法剤による処置と同時に(その開始と同時に、または開始の前もしくは後48時間以内に)投与され、それによって、神経障害の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させ、または神経障害の発症を遅延させる。いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、化学療法剤の該用量を投与する直前または直後に投与され、従って、これらの薬剤のうちの一方の投与の終了から、他方の投与の開始までの期間は、2時間以下である。例えば、その期間は、90分以下、80分以下、70分以下、1時間以下、50分以下、40分以下、30分以下、20分以下、10分以下、5分以下、または1分以内であり得る。さらに、ナノ小胞製剤の1つまたは複数の追加の用量は、患者が化学療法を受容し続ける数週間、数ヶ月、または数年にわたって投与され得る。ナノ小胞製剤の1つまたは複数の追加の用量の投与は、各々、一部もしくは全部の化学療法の用量の投与と同時であってもよいし、または異なるスケジュールで投与されてもよい。
【0110】
他の態様において、開示された方法において利用されるナノ小胞製剤は、神経障害症状副作用に関連した化学療法剤による処置の前および/または後に投与され、それによって、神経障害の発生率、強度、および/もしくは期間を低減させ、または神経障害の発症を遅延させる。さらに、ナノ小胞製剤は、化学療法剤の投与の前、途中、および後に投与され得る。
【0111】
神経障害判定ツール
神経障害症状は、当技術分野において公知のいくつかの方法によって評価される。これらには、身体検査(感覚(例えば、誘発された疼痛)、運動機能、および自律神経変化の評価)、様々な刺激(例えば、接触、穿刺、温度、振動)に対する感覚欠陥を決定するための感覚検査、血液試験、画像研究、電気診断試験、神経機能の臨床的試験(例えば、筋電図検査(EMG))、神経伝導速度試験(神経伝導研究)、自律神経反射スクリーニング、ならびに患者自己報告が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0112】
末梢神経障害の様々な臨床的構成要素を区別し、疼痛、痺れ、および刺痛を分離し、それらを0~10のスケールで測定する方法が開発されている。National Cancer Instituteの共通毒性基準スコアは、末梢神経障害の評価のためのプロトコルのうちの1つである。ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)スコアは、患者の症状、徴候、能力面、および電気生理学の完全な判定を提供する。神経伝導研究および針筋電図検査は、神経構造、軸索変性、または脱髄、および軸索傷害の重症度を特定し、末梢神経障害の診断を確認するために役立つ。ニューロフィラメント軽鎖(NFL)は、信頼性があり、容易にアクセス可能な、CIPNの進行および重症度のバイオマーカーである。化学療法中のニューロフィラメントレベル(例えば、血清ニューロフィラメント軽鎖(sNFL)レベル)のモニタリングは、進行中の神経軸索損傷およびCIPNの重症度を示すことができる(Kim,SH.,et al.(2020) Sci Rep 10,7995)。他のバイオマーカーには、NGF、BDNF、セラミド等が含まれる(Meregalli C,et al Neurosci Lett.2021 Apr 1;749:135739)。European Organization for Research and Treatment of Cancerは、患者自己評価によって神経障害の重症度を判定するための質問票を開発した。
【0113】
神経障害症状の主観的な性質のため、これらの症状の測定は、部分的には、患者自己報告に依存する。いくつかの場合において、神経障害症状(例えば、CIPNの神経障害副作用)は、判定のためのツールおよびインベントリ、例えば、患者自己報告質問票(例えば、European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)の生活の質質問票を補完するCIPN20(Postma TJ,et al.(2005).Eur J Cancer.2005 May;41(8):1135-9;Beijers AJ,et al.(2016).Support Care Cancer.2016 Jun;24(6):2411-20)に基づき、評価され得る。その他の判定ツールには、化学療法誘発性末梢神経障害アセスメント・ツール (CIPNAT)、オキサリプラチン後症状調査、National Cancer Institute-共通毒性基準 (NCI-CTC)、数値評価スケール (NRS)、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)、Functional Assessment of Cancer Therapy/Gynecologic Oncology Group-Neurotoxicity(FACT/GOG-Ntx)、トータル・ニューロパチー・スコア(TNS)質問票、患者報告アウトカム測定情報系(Patient-Reported Outcome Measurement Information System)(PROMIS)、寒冷過敏症調査(Cold Hypersensitivity Survey)、熱感受性試験(Thermal Sensitivity Test)(Tofthagen CS,et al.(2011)Cancer Nurs.2011 Jul-Aug;34(4):E10-20;Leonard,G.D.,et al.(2005)BMC Cancer 5,116;Dy SM,et al.(2017)Agency for Healthcare Research and Quality(US);Mar.(Comparative Effectiveness Reviews,No.187.)Table 3;Calhoun EA,et al.(2003)Int J Gynecol Cancer.Nov-Dec;13(6):741-8;Cheng,H.L.,et al.(2020)Health Qual Life Outcomes 18,246;Cavaletti G,et al.(2007)J Peripher Nerv Syst.Sep;12(3):210-5;Askew,R.L.,et al.(2016).Value Health,19(5),623-630、Bae,K.H.,et al.(2018).Integrative medicine research,7(1),61-67;Ceynowa M.et al,(2015)BioMed Research International,Article ID 528356)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0114】
これらの判定は、患者の応答に基づき、患者の疼痛経験の包括的な判定を捉えることを目的とした、短縮型調査、カスタマイズされた文書調査または電子調査、コンピューター適応型試験等を通じて施行される。質問票には、対象が経験している神経障害のレベルをさらに特徴付けるためのスコア化系(Yang Z,et al.(2018)Cochrane Database Syst Rev.2018 Jul 30;2018(7):CD010974)が含まれ得る。そのようなスコア化系には、臨床神経学的調査(Clinical Neurological Examination)(CNE)、ミシガン神経障害スクリーニング・インストルメント(Michigan Neuropathy Screening Instrument)(MNSI)、神経障害ディサビリティ・スコア(Neuropathy Disability Score)(NDS)、神経障害インペアメント・スコア(Neuropathy Impairment Score)(NIS)、下肢神経障害インペアメント・スコア(Neuropathy Impairment Score in the Lower Limbs)(NIS-LL)、神経障害症状プロファイル(Neuropathy Symptom Profile)(NSP)、神経障害症状スコア(Neuropathy Symptom Score)(NSS)、トロント臨床スコア化系(Toronto Clinical Scoring System)(TCSS)、神経障害総合症状スコア(Neuropathy Total Symptom Score)-6(NTSS-6)、神経障害症状変化スコア(Neuropathy Symptom Change Score)(NSC)、総合神経障害スコア(Total Neuropathy Score)(TNS)、および総合症状スコア(Total Symptom Score)(TSS)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。糖尿病性神経障害のスコア化系には、糖尿病性神経障害調査(Diabetic Neuropathy Examination)(DNE)および糖尿病性神経障害症状スコア(Diabetic Neuropathy Symptom Score)(DNSS)が含まれる。
【0115】
いくつかの場合において、神経障害性疼痛は、処置に対する応答をモニタリングするために開発された、神経障害疼痛スケール(neuropathy pain scale)(NPS)における疼痛強度に関する質問に対する患者の回答に基づくスコアとして測定され得る(May S,Serpell M.(2009).F1000 Med Rep.2009 Oct 14;1:76)。このスケールにおいて、0は、疼痛がないことを示し、10は、想像し得る最も強い疼痛を示す。
【0116】
対象が経験する神経障害性疼痛を特定し、評価するためのスクリーニング・ツールには、Leeds Assessment of Neuropathic Symptoms and Signs(LANSS)、神経障害性疼痛診断質問票(Neuropathic Pain Diagnostic Questionnaire)(DN4)、神経障害性疼痛スケール(Neuropathic Pain Scale)(NPS)、神経障害性疼痛症状インベントリ(Neuropathic Pain Symptom Inventory)(NPSI)、および神経障害性疼痛質問票(Neuropathic Pain Questionnaire)(NPQ)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0117】
他の場合において、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の神経障害症状は、典型的には、臨床的パラメータおよび準臨床的パラメータの組み合わせを使用し、医師および/または看護師の判断に依存する、毒性等級付け系を使用して特徴付けられ得る(Postma TJ,et al.(2005) Eur J Cancer.May;41(8):1135-9)。
【0118】
末梢神経障害のいくつかの前臨床動物モデルが、処置の有効性を評価するため、当技術分野において使用されている(例えば、Gadgil S et al,2019を参照すること)。これらのモデルには、例えば、パクリタキセル、シスプラチン、およびオキサリプラチンによって誘発されるげっ歯類神経障害性疼痛モデルが含まれる。そのようなモデルは、提唱された神経障害処置の有効性を評価するために使用され得る。
【0119】
神経発生、神経再生、神経突起生成、および神経保護
神経発生とは、神経前駆(pre-neuronal)細胞の生成である。神経再生とは、神経系の傷害および/または変性を引き起こす損傷後の、新しいニューロン、軸索、および/またはシナプスの生成による神経組織の再成長または修復である。神経保護とは、ニューロンの構造および/または機能の保存、ニューロンの喪失の防止をさす。神経突起生成とは、神経栄養因子、例えば、神経増殖因子を介した、神経細胞体からの神経突起の伸長である。いくつかの態様において、本開示は、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)のニューロンにおける神経発生、神経突起伸長、神経保護(例えば、ニューロン喪失の防止)、および神経再生(例えば、軸索再生)を促進する方法を提供する。
【0120】
神経変性は、多くの急性および慢性の神経障害の特徴である。ウォーラー変性(WD)と呼ばれる軸索変性の1つのモードは、損傷から遠位の軸索の部分が死滅する、高度に破壊的な過程である。最初の異常は、損傷後数時間で早くも見られ、より明確なWDが、1日後または2日後に明らかになる(Ballin R H and Thomas P K(1969)Acta Neuropathol(Berl)14:237)。例えば、ミエリン鞘が崩壊し、スカベンジャー細胞に貪食される(Leonhard et al.(2002)Eur.J.Neurosci.16:1654)。
【0121】
開示された方法は、急性もしくは慢性の神経損傷を防止するため、もしくは処置するため、または急性もしくは慢性の神経損傷に関連した症状を低減させるため、使用され得る。急性であるか慢性であるかに関わらず、神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生を必要とする状態は、例えば、WO2007/044928およびその中で引用された参考文献に開示されている。末梢神経に対する急性外傷には、鈍的外傷だけでなく、貫通型ミサイル、例えば、銃弾またはその他の物体からの外傷も含まれる。神経のクリーンな断裂をもたらす針刺創または異物(例えば、ガラス、板金)による損傷が公知であり、骨折および骨折脱臼に起因する神経損傷、例えば、尺骨神経ニューラプラキシーならびに橈骨神経の病変および麻痺も公知である。一般に、急性神経損傷は、しばしば、異痛症として顕在化する長期にわたる神経障害性疼痛、疼痛閾値の減少、および過形成、ならびに侵害刺激に応答しての疼痛の増加を生じる。Colohan A R,et al.(1996)Injury to the peripheral nerves.In:Feliciano D V,Moore E E,Mattox K L.Trauma.3rd ed.Stamford,Conn.:Appleton & Lange;1996:853を参照すること。本開示の範囲内の他の種類の急性神経損傷には、外傷性脳損傷(TBI)ならびに脊髄および末梢/感覚神経に対する急性損傷、例えば、神経傷害を伴うスポーツ損傷が含まれる。
【0122】
いくつかの態様において、急性神経損傷に応答してのナノ小胞製剤の投与は、可能な限り早く、例えば、傷害後約24時間以内(例えば、傷害後12時間以内、6時間以内、3時間以内、2時間以内、または1時間以内)に製剤が投与される時、神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生を促進する。さらに、ナノ小胞製剤は、神経傷害のリスクに関連した医学的介入(例えば、手術)の前に、予防的に(予防措置として)投与され得る。これは、有利な神経再生の増強および回復時間の短縮を可能にする。
【0123】
いくつかの態様において、ナノ小胞製剤は、神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生を促進することによって、神経系の慢性損傷に関連した状態の症状を処置し、防止し、または低減させる。そのような状態には、神経変性障害(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、または筋萎縮性側索硬化症)、脳損傷、末梢神経傷害、多発性硬化症、播種性硬化症、慢性脱髄性神経障害(CMT1型)、HMSN(CMT)疾患1A型および1B型、遺伝性圧脆弱性神経障害(HNPP)およびその他の圧迫性麻痺、ベスレムミオパチー、肢帯型筋ジストロフィー、三好ミオパチー、根性点状軟骨異形成症、HMSN-Lom、PXE(弾性線維性仮性黄色腫)、CCFDN(先天性白内障・顔異形および神経障害)、ハンチントン病、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン・バレー症候群(GBS)、白質ジストロフィー、運動ニューロン疾患、糖尿病性神経障害、遠位軸索障害、例えば、代謝性または毒性のニューロン攪乱に起因するもの(例えば、糖尿病、腎不全、薬物もしくは毒素(例えば、抗癌剤)への曝露、栄養失調、またはアルコール依存症に関連したもの)、単神経障害、(例えば、第VII脳神経;顔面神経の)神経根症、ハンセン病(ライ病)、神経叢障害、例えば、腕神経炎、ならびに局所性絞扼性神経障害(例えば、手根管症候群)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0124】
治療の目標が慢性神経傷害を処置することである態様においては、比較的長期の投与プロトコルが、一般に、好ましいであろう。従って、1つの態様において、神経発生、神経突起生成、神経保護、および/または神経再生を促進するため、かつ/または特定の適応症に関連した症状を処置し、もしくは低減させるため、必要に応じて、ナノ小胞製剤は、本願の他の箇所に開示される任意の許容される経路によって少なくとも24時間投与されるか、または、ナノ小胞製剤の個別の用量は、数日、数週間、または数ヶ月~数年にわたって定期的に投与される。
【0125】
神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生の判定
神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生の改善をモニタリングする方法は、記載されており、一般に、ヒト患者において実施され得る様々な機能試験を含む。そのような試験は、典型的には、感覚機能および/または運動機能の回復をモニタリングする。例には、ワインスタイン増強感覚試験(WEST)、セムス・ワインスタイン・モノフィラメント試験(SWMT)等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生を検出し、モニタリングする方法、ならびに様々なニューロン傷害を分類する方法については、WO2008/044928、Ristic S,et al.(2000)Clin Orthop Relat Res.370:138、Sierra,A.,et al(2011).Frontiers in neuroscience,5,47;およびその中に引用された参考文献を参照すること。ニューロン再生およびニューロン保護を判定するさらなる方法には、細胞ベース、培養物ベース、および組織ベースのアッセイ;神経突起伸長アッセイ;神経突起収縮アッセイ;ストライプアッセイ;スポットアッセイ;スクラッチアッセイ;放射(radial)アッセイ;ニューロン外植片;ならびに脳および脊髄のスライス培養が含まれるが、これらに限定されるわけではない。例えば、Al-Ali H,et al.,Exp Neurol.2017;287(Pt 3):423-434)における、これらのアッセイのさらなる説明を参照すること。
【0126】
神経再生および神経保護を評価する他の方法には、形状テクスチャ同定(STI)が含まれる。磁気共鳴画像法(MRI)、MRI分光法、PET画像法、およびコンピュータ断層撮影(CT)などの画像技術が、神経発生、神経突起生成、神経保護、および神経再生を評価するために使用されてもよい。さらに、神経発生および神経保護は、当技術分野において公知の技術、例えば、(例えば、手術を介して)組織を取得し、それを免疫組織化学を使用して適切な神経マーカーで染色すること、または単一細胞RNA配列決定のために組織を使用することによって評価され得る。
【0127】
一例において、ナノ小胞製剤の適切な用量は、皮膚生検を使用した表皮内神経線維密度(IENFD)(例えば、Myers,M.I.,& Peltier,A.C.(2013).Current neurology and neuroscience reports,13(1),323;およびCollongues N,et al.,(2018).PLoS One.Jan 25;13(1):e0191614参照)ならびに/または断面神経線維(cross-section nerve fibers)を取得し、様々な種類の神経(小無髄、中、大、大有髄)を計数することによって測定することで、神経再生およびニューロン保存を促進することが示され得るものである。Chattopadhyay M,et al(2004)Brain.Apr;127(Pt 4):929-39も参照すること。適切な投与は、当技術分野において公知の方法によって決定され得る。
【0128】
癌を処置する方法
以下のセクションA~Eは、開示された癌処置方法に関する。
【0129】
A.抗腫瘍剤
開示された方法の化学療法レジメンの活性薬剤は、抗腫瘍剤である。「抗腫瘍剤」という用語は、新生物(腫瘍)の発達を防止し、阻害し、または遅延させ、胃腸癌の処置において使用される薬をさす。抗腫瘍剤は、抗癌剤、化学療法剤、化学療法薬、または細胞傷害性薬剤とも呼ばれ得る。本開示の抗腫瘍剤には、アルキル化剤、代謝拮抗薬、植物アルカロイド、およびその他の種々の薬剤、ならびにチェックポイント阻害剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。アルキル化剤には、白金含有化合物(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン等)、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファンとメルファラン、およびカルムスチンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。代謝拮抗薬には、メトトレキサート、5-フルオロウロシル、カペシタビン、およびシトシンアラビノシドが含まれるが、これらに限定されるわけではない。植物アルカロイドには、ビンカアルカロイド系(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、エピポドフィロトキシン系(例えば、エトポシドおよびテニポシド)、タキサン系(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。その他の種々の薬剤には、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン)が含まれるが、これに限定されるわけではない。チェックポイント阻害剤には、抗PD1薬および抗PDL1薬が含まれるが、これらに限定されるわけではない。大部分の抗腫瘍剤は静脈内送達されるが、多数の薬剤が経口投与され得る(例えば、メルファラン、ブスルファン、カペシタビン)。いくつかの態様において、開示された方法には、抗腫瘍剤、オキサリプラチンおよび5-フルオロウラシルの使用が含まれる。本開示および特許請求の範囲に関して、SapCポリペプチドおよびリン脂質の両方を含有する上記の製剤は、「化学療法薬」、「化学療法」、および「抗腫瘍剤」という用語に包含されない。
【0130】
化学療法レジメンとサポシンCポリペプチド/リン脂質製剤(例えば、BXQ-350)との組み合わせは、対象の抗腫瘍応答を増強し、または延長し得る。さらに、サポシンCポリペプチド/リン脂質製剤(例えば、BXQ-350)と化学療法レジメンとの投与は、化学療法レジメンの治療効果を増強し、もしくは延長し、そうでなければ、応答しないか、もしくは同等には応答しないであろう対象が、化学療法レジメンに応答することを可能にし、化学療法レジメンの毒性を低減させ、または患者において所望の治療効果を達成するために必要な化学療法レジメンの用量の低減を可能にし得る。
【0131】
いくつかの態様において、本開示の化学療法レジメンとサポシンCポリペプチド/リン脂質製剤との組み合わせは、生物学的処置、例えば、抗体、例えば、以下に限定されるわけではないが、ベバシズマブ、セツキシマブ、およびパニツムマブと組み合わせて使用され得る。ベバシズマブは、抗血管内皮増殖因子(VEGF)モノクローナル抗体である。ベバシズマブは、5-FUベースの化学療法と組み合わせたmCRCのファーストライン処置のため、FDAによって認可されている(Strickler JH,Hurwitz HI.Oncologist.2012;17(4):513-524)。セツキシマブは、抗上皮増殖因子受容体(EGFR)キメラ抗体であり、パニツムマブは、抗上皮増殖因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体である。セツキシマブおよびパニツムマブは、両方とも、化学療法不応性の野生型KRASエクソン2 mCRCを有する患者において臨床的有効性を示している(Taniguchi H,et al.Cancers(Basel).2020;12(7):1715)。
【0132】
B.免疫チェックポイント阻害剤
本開示は、癌を処置するため、サポシンCポリペプチド/リン脂質製剤(例えば、BXQ-350)と組み合わせて免疫チェックポイント阻害剤を使用する方法も提供する。本明細書において使用されるように、「免疫チェックポイント阻害剤」とは、免疫細胞、例えば、T細胞、およびいくつかの癌細胞において、チェックポイントタンパク質機能を阻止する分子(例えば、タンパク質、低分子、またはタンパク質を含む分子)である。本明細書に開示される阻害剤を使用してチェックポイントが阻止された時、T細胞は、癌細胞をより効果的に死滅させることができる。T細胞または癌細胞に見出されるチェックポイントタンパク質の例には、PD-1/PD-L1およびCTLA-4/B7-1/B7-2が含まれる。いくつかの場合において、免疫チェックポイント阻害剤は、(i)0~4個のアミノ酸の挿入、置換、欠失、またはそれらの組み合わせを有するSEQ ID NO:1を含むサポシンCポリペプチドと(ii)中性pHにおいて正味の負電荷を有するリン脂質とを含むナノ小胞製剤を含まない。
【0133】
免疫チェックポイント阻害剤とサポシンCポリペプチド/リン脂質製剤(例えば、BXQ-350)との組み合わせは、対象の抗腫瘍応答を増強し、または延長することができる。さらに、サポシンCポリペプチド/リン脂質製剤(例えば、BXQ-350)と免疫チェックポイント阻害剤との投与は、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を増強し、もしくは延長し、そうでなければ、応答しないか、もしくは同等には応答しないであろう対象が、免疫チェックポイント阻害剤に応答することを可能にし、免疫チェックポイント阻害剤の毒性を低減させ、または患者において所望の治療効果を達成するために必要な免疫チェックポイント阻害剤の用量の低減を可能にし得る。
【0134】
いくつかの場合において、免疫チェックポイント阻害剤は、生物学的治療薬または低分子である。いくつかの場合において、免疫チェックポイント阻害剤は、モノクローナ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、一本鎖Fv(scFv)、融合タンパク質、またはそれらの組み合わせである。いくつかの場合において、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム死受容体-1(PD-1)の阻害剤である。PD-1阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、MEDI0680、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。いくつかの場合において、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤である。PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブ、BMS-936559、MEDI4736、MSB0010718C、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。いくつかの場合において、免疫チェックポイント阻害剤は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)の阻害剤である。CTLA-4阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0135】
いくつかの場合において、患者は、切除不能および/または転移性の腫瘍または癌を有する。他の場合において、組み合わせ処置は、完全なまたは部分的な切除の後に実施され、ステロイドと組み合わせて実施されてもよい。いくつかの場合において、本明細書に記載される組み合わせ処置は、ファーストライン処置、セカンドライン処置、またはサードライン処置である。組み合わせ処置は、ある特定のゲノム腫瘍異常、例えば、EGFRもしくはALKのゲノム腫瘍異常の検出後に、またはそれらの非存在下で、与えられ得る。処置を受容する対象は、FDAによって認可された試験によって決定されるような1%以上の腫瘍PD-L1陽性率(Tumor Proportion Score)(TPS)または10以上の全PD-L1陽性率(Combined Positive Score)(CPS)を有し得る。
【0136】
C.化学療法レジメン
「化学療法レジメン」という用語は、1つまたは複数の抗腫瘍剤を使用する癌処置のための標準化された計画またはプロトコルをさす。現在の化学療法レジメンは、周期的に薬物処置を適用するが、処置の頻度および期間は、毒性によって制限される。FOLFOXと呼ばれる一般的に使用されている組み合わせ化学療法レジメンは、結腸直腸癌を処置するために使用されている。それは、ロイコボリンカルシウム(フォリン酸)ならびに抗腫瘍剤、5-フルオロウラシル(5FU)およびオキサリプラチンという構成要素を含む。FOLFOX-4、FOLFOX-6、改変FOLFOX-6(mFOLFOX-6)、FOLFOX-7、および改変FOLFOX-7(mFOLFOX-7)を含む、いくつかの異なるFOLFOXレジメンが存在する。それらのFOLFOXレジメンは、3つの薬物が与えられる用量および方式が異なる。胃腸癌(例えば、結腸直腸癌)の処置において使用される化学療法レジメンの例には、5-フルオロウラシル(5-FU)/カペシタビンベースの組み合わせ治療、例えば、FOLFOX、FOLFIRI(5-FUとフォリン酸とイリノテカン)、およびCAPOX(カペシタビンとオキサリプラチン)が含まれるが、これらに限定されるわけではない(Sonbol MB,et al (2019).JAMA Oncol;e194489)。これらの化学療法レジメンのうちの任意のものが、本開示の方法において使用され得る。いくつかの態様において、本開示の方法は、化学療法レジメンmFOLFOX7を投与する工程を含む。mFOLFOX7レジメンは、(i)処置の初日における約2時間かけての約200mg/m2ロイコボリンカルシウムと共に注入される85mg/m2オキサリプラチン;および(ii)処置の第1週の1日目と2日目における約46~48時間かけての2400mg/m2 5-フルオロウラシル(5-FU)を逐次投与することを含む。
【0137】
C.1. オキサリプラチン
本開示の化学療法レジメンの抗腫瘍剤は、有意な抗腫瘍作用を有する周知の化学療法薬、オキサリプラチンを含み得る。それは、Eloxatin(登録商標)という商品名で販売されており、結腸直腸癌を処置するために使用されている抗癌薬である。オキサリプラチンは、主にDNA傷害によって細胞傷害効果を発揮する白金系抗腫瘍薬である(Alcindor T,et al(2011).Curr Oncol.2011;18(1):18-25)。癌細胞のアポトーシスは、DNA損傷の形成、DNA合成の停止、RNA合成の阻害、および免疫反応の誘発によって引き起こされ得る。オキサリプラチンは、C8H14N2O4Ptという化学式、およびcis-[(1 R,2 R)-1,2-シクロヘキサンジアミン-N,N'][オキサレート(2)-O,O']白金という化学名を有する。それは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,169,846号に記載されている。
【0138】
C.2. 5-フルオロウラシル
本開示の化学療法レジメンの抗腫瘍剤には、抗腫瘍活性を有する、ヌクレオシドピリミジンのフルオロピリミジン類似体である代謝拮抗薬、5-フルオロウラシル(5-FU)が含まれ得る。それは、Adrucil(登録商標)、Carac(登録商標)、Efudex(登録商標)、Efudix(登録商標)等の商品名で販売されており、いくつかの癌、例えば、肛門癌、結腸直腸癌、結腸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、および子宮頸癌を処置するために使用されている抗癌薬である。それは、チミジル酸合成酵素(TS)の阻害、ならびにその代謝物のRNAおよびDNAへの取り込みによって、細胞傷害効果を発揮する(Longley,D.,et al.(2003)Nat Rev Cancer 3,330-338)。5-FUは、C4H3FN2O2という化学式を有し、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第US4336381A号に記載されている。
【0139】
C.3. ロイコボリン
(フォリン酸、Wellcovorin(登録商標)とも呼ばれる)ロイコボリンまたはロイコボリンカルシウムは、化学療法薬ではないが、化学療法と併用して与えられる。それは、プリンおよびピリミジンの合成における1炭素転移反応の生化学的補因子として作用する。ロイコボリンは、テトラヒドロ葉酸への変換のために、酵素、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を必要としない。メトトレキサートおよびその他のDHFRアンタゴニストの効果は、ロイコボリンによって阻害される。ロイコボリンは、フッ化ピリミジン(即ち、フルオロウラシルおよびフロクスウリジン)の細胞傷害効果を強化することができる。5-FUは、細胞内で活性化された後、葉酸補因子を伴い、酵素チミジル酸合成酵素を阻害し、従って、ピリミジン合成を阻害する。ロイコボリンは、葉酸プールを増加させ、それによって、葉酸補因子および活性5-FUのチミジル酸合成酵素との結合を増加させる。ロイコボリンは、C20H23N7O7という化学式を有し、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,500,711A号に記載されている。
【0140】
いくつかの態様において、本開示の方法は、ベバシズマブと組み合わせて、化学療法レジメンmFOLFOX7を投与する工程を含む。ベバシズマブ、セツキシマブ、およびパニツムマブは、癌を処置するためのFOLFOXと組み合わせたファーストライン治療に関するNational Comprehensive Cancer Networkガイドラインに含まれている(NCCN.org[インターネット]。Guidelines for Patients(登録商標)- Colon Cancer.Plymouth Meeting,PA:National Comprehensive Cancer Network;July 28,2021)。ベバシズマブの各用量は、約30~約90分、例えば、45分または60分かけて投与される。
【0141】
D.処置サイクル
本開示のSapC-リン脂質ナノ小胞製剤および化学療法レジメンは、対象において複数の処置サイクル(例えば、1、2、3、4、5、または6サイクル)にわたって投与され得る。「サイクル」という用語は、規則的なスケジュールで繰り返される、処置期間とそれ続く休薬(処置なし)期間をさす。
【0142】
「処置の第1週の1日目」という用語は、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤による処置が対象において開始される最初の日をさす。
【0143】
一例において、処置のサイクル1は、処置の最初の4週間を含む。SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、処置の第1週に5日間連続で1日1回、第2週に2日に1回(または週3回)、第3週および第4週におよそ1週間(即ち、7(+/-3)日)に1回、投与される。サイクル2~6は、処置の第5~24週を含む。サイクル2~6において、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、14(+/-3)日に1回、投与れる。一方で、化学療法レジメンは、全てのサイクル(1~6)において、第1週の1日目から開始して、14(+/-3)日に1回、投与される。従って、6サイクルの処置の経過中、全部で12回の化学療法レジメンの注入が、癌を有する対象へ投与される。
【0144】
もう1つの例において、処置のサイクル1は、処置の最初の4週間を含む。SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、処置の第1週に5日間連続で、1日1回、第2週に2日に1回(または週3回)、第3週および第4週におよそ1週間(即ち、7(+/-3)日)に1回、投与される。サイクル2~6は、処置の第5~24週を含む。サイクル2~6において、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、14(+/-3)日に1回、投与される。一方で、化学療法レジメンおよびベバシズマブは、全てのサイクル(1~6)において、第1週の1日目から開始して、14(+/-3)日に1回、投与される。従って、6サイクルの処置の経過中、全部で12回の化学療法レジメンの注入が、癌を有する対象へ投与される。
【0145】
いくつかの態様において、ある期間にわたって処置を延長することができる。サイクル1~6の完了後、対象は、追加処置を受けることができる。サイクル7~26は、処置の第25~104週を含む。サイクル7~26において、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、28(+/-3)日に1回、投与される。一方で、化学療法レジメンおよび/またはベバシズマブ処置は、主治医の裁量および/または標準治療に従って、維持治療として継続される。
【0146】
本明細書において使用されるように、「同時投与」という用語は、第1の処置の投与、例えば、第1の薬学的組成物(例えば、SapC-リン脂質を含むナノ小胞製剤)の投与、第2の処置の投与、例えば、第2の薬学的組成物(例えば、化学療法レジメンの抗腫瘍剤または免疫チェックポイント阻害剤)の投与、および第3の処置の投与、例えば、第3の薬学的組成物(例えば、生物製剤、例えば、ベバシズマブ)の投与であって、第1、第2、および第3の処置が、別々であり、ほぼ同時に投与される、即ち、第1、第2、および第3の薬学的組成物が、相互に48時間以内に投与される、投与をさす。
【0147】
一例において、第2の薬学的組成物(即ち、化学療法レジメンの少なくとも1つの抗腫瘍剤または少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤)は、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤が投与された直後に投与され、例えば、mFOLFOX7化学療法レジメンにおけるオキサリプラチンの投与または免疫チェックポイント阻害剤の投与は、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤の投与の完了の少なくとも1時間後に開始され得る。もう1つの例において、化学療法レジメンの抗腫瘍剤(例えば、オキサリプラチン)のある用量または免疫チェックポイント阻害剤の投与は、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤のある用量の投与の完了後、48時間以内(例えば、24時間以内または12時間以内または6時間以内または2時間以内または1時間以内)に開始される。もう1つの例において、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤のある用量の投与は、抗腫瘍剤または免疫チェックポイント阻害剤のある用量の投与の完了後、48時間以内(例えば、24時間以内または12時間以内または6時間以内または2時間以内または1時間以内)に開始される。
【0148】
いくつかのケースにおいて、第2の薬学的組成物(即ち、化学療法レジメンの少なくとも1つの抗腫瘍剤)および第3の薬学的組成物(例えば、ベバシズマブ)は、それらの投与が重複するよう、同時に投与される。一例において、少なくとも1つの抗腫瘍剤(例えば、5-FU)は、数分間かけて静脈内投与され、この投与が、46~48時間にわたり5-FUを連続的に送達するポンプ(例えば、携帯型注入ポンプ)を介して継続される。5-FU注入の過程の途中に、ベバシズマブが、30~90分かけて投与される。あるいは、ベバシズマブは、5-FU注入が開始される前(例えば、1時間前)または5-FU注入が完了した後(例えば、1時間後)に投与される。
【0149】
さらにもう1つの例において、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、最初に、ある期間の複数の連続した日に(例えば、第1週に3日間、4日間、5日間、または6日間連続で、1日1回)与えられた用量で投与される。その後、第2~4週に、SapC-リン脂質製剤を投与する頻度は低減させられる(例えば、週3回または週1回)。第5週から6ヶ月まで、SapC-リン脂質製剤は、14日(+/-3)日に1回、投与される。6ヶ月から2年まで、SapC-リン脂質製剤は、28(+/-3)日に1回、投与される。一方で、化学療法レジメンまたは免疫チェックポイント阻害剤、およびオプションのベバシズマブは、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤の連続した用量の最後の投与の完了後、48時間以内(例えば、24時間以内または12時間以内または6時間以内または2時間以内または1時間以内)に開始して、例えば、14(+/-3)日に1回、標準的なプロトコルに従って投与され、6ヶ月まで継続される。化学療法レジメンまたは免疫チェックポイント阻害剤、およびオプションのベバシズマブ治療は、主治医の裁量または標準治療に従って、維持治療として最大2年間継続され得る。さらなる例において、化学療法レジメンまたは免疫チェックポイント阻害剤レジメン、およびオプションのベバシズマブ処置は、SapC-リン脂質レジメンの開始の長時間後、例えば、第2週、第3週、第4週、第5週、または第6週に開始され得る。
【0150】
一例として、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、処置の第1週に5日間連続で1日1回、第2週に2日に1回(または週3回)、第3週および第4週におよそ1週間(即ち、7(+/-3)日)に1回、投与される。その後、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、14(+/-3)日に1回、あるいは7(+/-3日)に1回、あるいは21(+/-3日)に1回、あるいは28(+/-3日)に1回、投与される。化学療法レジメンまたは免疫チェックポイント阻害剤レジメンは、14(+/-3)日に1回、投与される。ベバシズマブは、14(+/-3)日に1回、または21(+/-3)日に1回、投与される。
【0151】
別の例において、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤は、(オプションで、生物製剤、例えば、ベバシズマブを含む)標準的な化学療法レジメンまたは免疫チェックポイント阻害剤レジメンを完了した後に、上記の例のように投与される。さらにもう1つの例において、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤投与は、(オプションで、生物製剤(例えば、ベバシズマブ)投与を含む)化学療法レジメンまたは免疫チェックポイント阻害剤レジメンの途中に開始される。
【0152】
SapC-リン脂質ナノ小胞製剤の各用量は、各回、約45分~約120分(例えば、約45分、約60分、または約90分)かけて投与される。
【0153】
第1、第2、および第3の薬学的組成物(即ち、SapC-リン脂質を含むナノ小胞製剤、化学療法レジメンの1つもしくは複数の抗腫瘍剤、または1つもしくは複数の免疫チェックポイント阻害剤、および/または生物製剤)の活性成分は、典型的には、同じ組成物中には存在しない。
【0154】
もう1つの例において、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤および免疫チェックポイント阻害剤による処置は、他の処置、例えば、ステロイド、放射線治療、または化学療法に応答しなかった対象に対して必要が示される。いくつかの場合において、処置は、免疫チェックポイント阻害剤による処置の前に、SapC-リン脂質ナノ小胞製剤を前負荷(front-loading)することを含む。
【0155】
E.癌を処置するための治療的に有効な用量
上記のように、本明細書において提供される癌(例えば、胃腸癌)を処置する方法は、活性薬剤としてSapC-DOPSを有するナノ小胞製剤と、1つまたは複数の抗腫瘍剤を有する化学療法レジメンとを、それを必要とする対象へ投与する工程を含む。各薬剤は、所望の結果を達成するために必要な量(即ち、「治療的に有効な量」)およびそのような時間で投与される。
【0156】
癌の処置に関して、ナノ小胞製剤または抗腫瘍剤の「治療的に有効な量」または「治療的に有効な用量」とは、患者の癌を処置するために有用な量、即ち、癌、腫瘍、もしくは腫瘍性疾患の症状もしくは状態を調節し、または寛解させ、例えば、癌細胞の生存を防止し、または低減させる薬剤の量である。それは、単一の処置または一連の処置を含み得る。
【0157】
本開示の組成物(即ち、SapC-リン脂質を含むナノ小胞製剤および/または化学療法レジメンの抗腫瘍剤)の治療的用量は、正当な医学的な判断および経験の範囲内で主治医によって決定され得る。活性薬剤について、治療的に有効な用量は、最初に、細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、もしくはサルにおいて推定され得る。動物モデルが、望ましい濃度および全投与範囲および投与経路を達成し、または決定するために使用され得、それが、ヒトへの投与のために有用な投与量範囲および投与経路を決定するために使用され得る。さらに、臨床試験および個々の患者の応答が、推奨される治療的用量を決定し得る。
【0158】
一般に、ナノ小胞製剤の治療的に有効な1回用量は、約0.01~30mg/kg体重、好ましくは、約0.05~20mg/kg体重、より好ましくは、約0.1~15mg/kg体重、さらにより好ましくは、約0.5~10mg/kgの範囲の量のSapC(またはその誘導体)を含有するであろう。例えば、静脈内の1回用量におけるSapCの量は、約0.4mg/kg、0.7mg/kg、1.1mg/kg、1.4mg/kg、1.8mg/kg、2.4mg/kg、2.8mg/kg、3.0mg/kg、3.2mg/kg、3.6mg/kg、7mg/kg、またはそれ以上であり得る。所定の患者は、1つまたは複数の初期投与について、所定の用量レベルを受容し、さらなる投与については、異なる(より低い、またはより高い)レベルを受容してもよい。
【0159】
抗腫瘍剤オキサリプラチンの治療的用量は、50~150mg/m2の範囲、例えば、85mg/m2である。抗腫瘍剤5-フルオロウラシルの治療的用量は、500~2400mg/m2の範囲、例えば、2400mg/m2である。抗腫瘍剤パクリタキセルの治療的用量は、90mg/m2~250mg/m2、例えば、125mg/m2~175mg/m2の範囲である。ベバシズマブの治療的用量は、5~15mg/kgの範囲、例えば、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、または15mg/kgである。5mg/kg、7.5mg/kg、および10mg/kgの用量は、一般に、2週間毎に投与される。15mg/kgの用量は、一般に、3週間毎に投与される。
【0160】
本開示の方法による処置の結果は、当業者に公知の任意の方法、例えば、以下に限定されるわけではないが、画像法、超音波、身体検査、または血液試験によって評価され、または決定され得る。
【0161】
本明細書において使用されるように、「薬学的組成物」とは、対象へ適切に投与された時に治療効果を誘導することができる任意の化学的または生物学的な組成物、材料、薬剤等、例えば、不活性形態の組成物、材料、薬剤等、およびインビボで形成され得る、その活性代謝物をさす。
【0162】
本開示の方法による処置の結果は、当業者に公知の任意の方法、例えば、以下に限定されるわけではないが、画像法、超音波、身体検査、血液試験、およびラジオイムノアッセイによって評価され、または決定され得る。
【0163】
キット
本明細書に記載される薬学的組成物は、任意で、そのような薬学的組成物の投与のための説明書と共に、キット、パック、またはディスペンサーに含まれ得、それらは、本明細書において、集合的に「キット」と呼ばれる。いくつかの態様において、キットは、サポシンC-リン脂質製剤(例えば、固体の形態、例えば、凍結乾燥粉末の形態)を含む第1の薬学的組成物と、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、もしくはMEDI0680より選択されるPD-1阻害剤;アテゾリズマブ、BMS-936559、MEDI4736、もしくはMSB0010718Cより選択されるPD-L1阻害剤;またはイピリムマブもしくはトレメリムマブより選択されるCTLA-4阻害剤)を含む第2の薬学的組成物とを含み得る。
【0164】
いくつかの態様において、キットは、第1の薬学的組成物、即ち、SapC-リン脂質を含むナノ小胞製剤と、少なくとも1つの抗腫瘍剤(例えば、オキサリプラチンまたは5-FU)を含む第2の薬学的組成物とを、別々の容器内に含んでいてよく、さらに、例えば、もう1つの抗腫瘍剤、例えば、オキサリプラチンまたは5-FUであり得る第3の組成物を含む第3の容器を含んでいてもよい。キットは、生物製剤、例えば、ベバシズマブを含む組成物を含む容器も含み得る。
【0165】
任意で、付加的な薬学的組成物がキットに含まれてもよい。キットは、キットに含まれる各薬学的組成物を再構成し、または希釈するために適当な、薬学的に許容される担体(例えば、滅菌水または生理食塩水)の1つまたは複数の容器も含み得る。組成物および担体は、バイアルまたはその他の適当な容器、例えば、シリンジに収容されていてよい。典型的には、第1および第2の薬学的組成物は、キット内の別々の容器にあるであろう。各組成物は、乾燥粉末、液体、液体中の懸濁物、凍結物の形態、またはその他の任意の適当な形態であり得る。
【0166】
開示された方法および組成物は、反対のことが明示的に指定される場合を除き、様々な代替的な変動および工程の順序を想定し得ることが理解されるべきである。さらに、実施例、またはそうでないことが指示された場合を除き、全ての数値、例えば、値、量、百分率、範囲、部分範囲、および画分を表すものは、「約」という用語が明示されていなくても、「約」という単語が前に付いているものとして読み取られ得る。従って、反対のことが示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数的パラメータは、開示された方法によって得られることが望まれる結果に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、均等論の特許請求の範囲の範囲への適用を限定する試みとしてではなく、各数的パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。クローズエンドまたはオープンエンドの数的範囲が本明細書に記載される場合、その数的範囲内の、またはその数的範囲に包含される、全ての数、値、量、百分率、部分範囲、および画分は、これらの数、値、量、百分率、部分範囲、および画分が完全に明示的に書き出されているかのごとく、本願の最初の開示に具体的に含まれ、属していると見なされるべきである。
【0167】
本発明の広い範囲を示す数的な範囲およびパラメータは近似値であるにも関わらず、具体的な例において示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それぞれの試験的測定において見出される標準的な変動に必然的に起因するある程度の誤差を本質的に含有する。
【0168】
本明細書において使用されるように、他のことが示されない限り、複数形の用語はそれに対応する単数形を包含し得、その逆も同様である。例えば、本明細書において、組成物("a" composition)が言及されるが、これらの構成要素の組み合わせ(即ち、複数のこれらの構成要素)が使用され得る。さらに、本願において、「または」の使用は、特記されない限り、「および/または」を意味するが、ある特定の場合においては、明示的に「および/または」が使用され得る。
【0169】
本明細書において使用されるように、「含む(including)」、「含有する(containing)」等の用語は、本願に関して、「含む(comprising)」と同義であることが理解され、従って、オープンエンドであり、付加的な、記載されていない、かつ/または列挙されていない要素、材料、成分、および/または方法の工程の存在を除外するものではない。
【0170】
本明細書において使用されるように、「からなる」とは、本願に関して、任意の不特定の要素、成分、および/または方法の工程の存在を除外するものと理解される。
【0171】
本明細書において使用されるように、「から本質的になる」とは、本願に関して、特定の要素、材料、成分、および/または方法の工程を含み、記載されたものの「基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しない」不特定のその他のものも含むものと理解される。
【0172】
組成物および方法は、以下の実施例において提供される情報によってさらに支持される。実施例に記載される態様は、例示的なものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本開示の範囲を限定するためのものではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0173】
実施例1.SapC-DOPS(BXQ-350)は癌および/または糖尿病を有すると診断された対象における神経障害を改善する
BXQ-350の抗癌有効性を決定するための第1相研究を、以前に化学療法剤によって処置されたことがある進行固形腫瘍を有する成人患者において実施した(Clinical Trials.gov Identifier NCT02859857)。各参加者は、2.4mg/kgの用量レベルでBXQ-350の複数用量を受容した。予想外に、研究の一部の患者は、進行中の神経障害症状の軽減を経験した。これらの患者について以下に説明する。
【0174】
患者1:この患者は、転移性膵臓癌の病歴を有する70歳女性である。患者は、FOLFIRINOX(フォリン酸/フルオロウラシル/イリノテカン/オキサリプラチン)の5サイクルを完了し、応答は良好であった。オキサリプラチンは、グレード2末梢感覚神経障害のため、中止された。FOLFIRIの付加的なサイクルを1回完了し、その後、ゲムシタビンおよび放射線治療を3週間受けた。2年後、患者は、既知の原発性膵臓癌から肺への転移を発症した。患者は対症的なゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルによってさらに約2年間(22ヶ月)処置され、持続性のグレード1末梢感覚神経障害を有した後、疾患が進行した。患者はBXQ-350臨床試験に登録された。2.4mg/kgのBXQ-350の静脈内投与の2サイクルの後、患者は、5年前にオキサリプラチンによって処置されて以来存在していたグレード1末梢感覚神経障害が、神経障害性疼痛を伴い発赤していた足の赤色と共に、完全に消散したことを報告した。患者の神経障害は、疾患の進行後にFOLFOXを再開し得る程度にまで改善した。
【0175】
患者2:長年の過去の処置に関連した持続性神経障害を有する転移性結腸直腸癌患者は、2.4mg/kgのBXQ-350の静脈内投与によって処置されている間、神経障害症状の消散を報告した。
【0176】
患者3:シスプラチン/ナベルビンおよびパクリタキセルによる過去の処置による手および足の持続性の残存末梢感覚神経障害を有し、ガバペンチンによって現在処置されている転移性耳下腺/唾液腺癌患者は、2.4mg/kgのBXQ-350の静脈内投与による処置の後、手の痺れおよび刺痛の消散を認め、痺れが持続した足においても、いくらかの改善を認めた。
【0177】
患者4:食道癌および両足末梢神経障害の病歴を有する患者は、2.4mg/kgのBXQ-350の静脈内投与によって処置された。患者は、CIPN質問票で軽度の改善を報告した:つま先/足の刺痛は、1~4のスケールで、3から、BXQ-350処置の開始から113日目には2に改善され(1は刺痛がないことを示し、4は重度の刺痛を示す);つま先/足の痺れは、1日目の3から、残りの来院時には2に改善され;足底の接地感覚困難は、1日目の2から、残りの来院時には1に改善され;足の落下による歩行困難は、1日目の3から、57日目および85日目には2に、113日目には1に改善された。
【0178】
患者5:持続性グレード1白金誘発性末梢神経障害を有する膵臓癌患者は、BXQ-350による処置中に改善を認めた。
【0179】
患者6:FOLFOX処置(2018年11月に最後の用量)に起因する神経障害を有する膵臓癌患者は、2019年3月にBXQ-350による処置を開始した後、神経障害の改善を認めた。
【0180】
患者7:FOLFOXによる過去の処置(処置は2018年10月に終了)に関連したグレード1末梢神経障害を有する転移性結腸癌患者は、2019年2月18日にBXQ-350による処置を開始した。患者は、BXQ-350を受容している間、神経障害症状の改善を主観的に認めた。
【0181】
化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)症状を有し、神経障害症状に関する質問および評価を受けた試験中の患者10人のうち:長期末梢神経障害を有する4人の患者(患者1~4)は、症状の消散または改善を認め;3人の患者(患者5~7)は、症状の消散を認めたが、化学療法による処置とBXQ-350による処置との間のタイミングのため、これが化学療法の中止、例えば休薬によるものか、またはBXQ-350の有益な効果によるものかが不明であり;3人の患者は、BXQ-350によって処置されている間、既存の神経障害症状に変化がないことを報告した。持続性CIPNは、典型的には、数年後には改善されないため、患者10人中4人が、化学療法終了の数年後に持続性末梢神経障害の消散/改善を明確に報告したことは、驚くべきことであり、予想外であった。
【0182】
さらに、試験には、消化管間質腫瘍(GIST)を有する患者がいた。彼は、長期糖尿病性神経障害も有していた。2.4mg/kgのBXQ-350の静脈内投与を開始した後、患者は、指の断続的な刺痛の症状が主観的にはるかに低頻度になったことを認めた。
【0183】
実施例2.SapC-DOPS(BXQ-350)は化学療法(オキサリプラチン)誘発性末梢神経障害(CIPN)のマウスモデルにおける神経障害症状を防止する
BXQ-350を、化学療法誘発性神経障害のマウスオキサリプラチンモデルにおいて試験した。全ての実験が、International Association for the Study of Painの倫理ガイドライン(Zimmerman,1983)に従って実施された。全ての行動試験が、United Kingdom Home Office Animals (Scientific Procedures) Act 1986によって認可された。
【0184】
背景
化学療法誘発性神経障害(CIN)は、様々な化学療法薬の重大な副作用である。白金系化学療法薬であるオキサリプラチンは、様々な種類の癌の処置のために一般的に使用されており、げっ歯類において急性および慢性の末梢神経障害を引き起こすことが公知である(Ling et al.,2007)。オキサリプラチン誘発性神経障害の特徴と考えられている寒冷過敏は、手足に局在する異常な寒冷誘発感覚として特徴付けられ得る(Attal et al.,2009)。この寒冷過敏は、オキサリプラチンの単回腹腔内注射後にげっ歯類においても見られ得る(例えば、Ling et al.,2007、Zhao et al.,2012)。
【0185】
研究1
動物
6~7週齢成体雄C57/BL6マウス(Charles River)60匹を、一定の温度および湿度(温度:21±1℃、明:暗サイクル12:12時間)のコントロールされた環境で、Perspexケージに5匹の群に分けて収容し、飼料および水を自由に摂取させた。実験を開始する前に少なくとも1週間、動物を輸送から回復させた。マウスを表2に示される様々な群に割り付けた。
【0186】
【0187】
実験設計
表2に示されるように、群A~Eのマウス(各群n=12)に、0日目に10mg/kgのオキサリプラチンまたは媒体を腹腔内投与し、以下のように被験物質を投与した:-3日目、-2日目、-1日目、および1~9日目に10mg/kg媒体または20mg/kg BXQ-350;または3日目、5日目、7日目、および9日目に30mg/kgプレガバリン。
図1Aは、群A~Eのマウスへの様々な処置の投与のタイムラインを示す。
【0188】
研究1の装置および評価
静的機械的触覚異痛症:左後肢の足底表面に適用された、較正された(力;g)フォンフライモノフィラメント(Touch-Test Sensory Evaluator;Scientific Marketing Associates)を使用した引っ込め閾値の測定によって、静的機械的(触覚)異痛症を判定した。動物を、馴化のため、個々のPerspexボックスにおいて、上昇した金属メッシュの上に30~40分間置いた後、試験を行った。一連の累進的なフォンフライヘア(0.07g、0.16g、0.4g、0.6g、および1g)を、1秒オン1秒オフを10回繰り返すプロトコルで順番に適用した。各ヘアを、わずかに曲がるまで、肢の腹側表面の中心に垂直に適用した。10回のトライアルのうち5回、応答を誘導するため、動物の後肢に適用された力を、肢引っ込め閾値(PWT)50%として記録した。研究の結果は、表3(生データ)、表4(要約)、
図2、および
図3に示される。
【0189】
(表3)個々の肢引っ込め閾値50%(フォンフライフィラメント)値(g)
表3:個々の肢引っ込め閾値50%(フォンフライフィラメント)値(g)。ID番号はマウスIDを示す。BL:ベースライン;D3、D5、D7、およびD9は、それぞれ、3日目、5日目、7日目、および9日目をさす。
【0190】
(表4)結果の要約:機械的異痛症
表4:左後肢の肢引っ込め閾値50%(g)。二元配置の分散分析は、時間の主効果(F(3.931,211.3)=5.518;p<0.001)、処置の主効果(F(4,54)=5.518;p<0.0001)、および時間要因と処置要因との間の有意な交互作用(F(16,2.2926)=2.926)を示した。*、**、***、および****は、同一時点でオキサリプラチン/媒体群(群B)と比較した時の、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。
【0191】
熱過敏:15℃の固定温度に設定された動的コールドプレート(Bioseb,France)を使用して、熱過敏を判定した。この方法は、反射行動、例えば、テールイマージョン(tail immersion)試験より統合された行動の分析を可能にする。動物研究において、熱感受性は、主として、与えられた熱嫌悪刺激に応答しての侵害受容反応の潜時に基づき評価される。この古典的な試験において、プレートの温度は、固定され、一定のままである:最初に肢を舐めるか、跳び上がるか、または引っ込めるまでの潜時が、侵害受容閾値の指標として得られる。正常動物は、典型的には、およそ5℃で逃避行動を示すが、オキサリプラチンによって処置された動物は、より高い温度(およそ15℃)で同じ逃避行動を示す。研究の結果は、以下の表5(生データ)、以下の表6(要約)、
図4、および
図5に示される。
【0192】
(表5)コールドプレート試験において引っ込め行動を示すまでの個々の潜時
表5:秒(s)で測定されたコールドプレート試験において引っ込め行動を示すまでの個々の潜時。ID番号はマウスIDを示す。BL:ベースライン;D3、D5、D7、およびD9は、それぞれ、3日目、5日目、7日目、9日目をさす。
【0193】
(表6)結果の要約:熱感受性
表6:秒(s)で測定されたコールドプレート試験(15℃)における引っ込め行動までの潜時。個々の群および時点からのデータの要約。値は平均値±SEMとして示される。
【0194】
化学療法誘発性神経障害(CIN)のオキサリプラチンモデルにおいて、医原性の効果は証明されなかった。にも関わらず、フォンフライ機械的異痛症を常に最初に試験し、その後、コールドプレート熱異痛症を試験した。
【0195】
体重:処置の1日前から9日目まで毎日、マウスを計量した。個々の体重は下記表7に示される。
【0196】
【0197】
BQX-350およびプレガバリン製剤
BQX-350の温かいバイアルを室温にし、シリンジを介して注射するため、4mLの水で再構成した。バイアルを、15~20秒間、静かに攪拌し、かつ/またはボルテックスし、室温で5分間放置した。再水和溶液は、2.2mg/mL SapC(1バイアル当たり8.8mg SapC)を含有していた。各マウスに、20mg/kgの目標用量を達成するため、約10mlの製剤を注射した。プレガバリンは水で再構成され、30mg/kgの目標用量が達成されるよう、各マウスに注射された。
【0198】
統計分析
(GraphPad Prism version 9.0 for Windows、GraphPad Software、San Diego California USAを使用して)「処置」を対象間効果とし、「日」を対象内効果とした二元配置の反復測定分散分析、およびその後のダネットの多重比較検定を使用した。データは平均値±SEMとして提示される。
【0199】
研究1の結果
オキサリプラチンの投与は、オキサリプラチン投与後3日目から行動判定の最終日である9日目まで測定されたような、一貫した持続的な機械的異痛応答および熱(寒冷)感受性の増加を誘発した。
【0200】
オキサリプラチンによって処置された動物において、行動判定の2時間前の30mg/kgの用量のプレガバリンの投与は、機械的異痛症を低減させ、熱感受性を低減させた。プレガバリンは、アッセイの標準的な陽性対照として使用された。
【0201】
BXQ-350は、オキサリプラチンによって処置された動物において、コールドプレート試験においては統計学的に有意な保護効果を示したが、機械的異痛症判定においてはそうでなかった。BXQ-350単独の投与は、機械的異痛症の増加傾向をもたらした。この傾向は、寒冷過敏試験においては明らかでなかった。
【0202】
研究2
動物
6~7週齢成体雄C57/BL6マウス(Charles River)60匹を、一定の温度および湿度(温度:21±1℃、明:暗サイクル12:12時間)のコントロールされた環境で、Perspexケージに5匹の群に分けて収容し、飼料および水を自由に摂取させた。実験を開始する前に少なくとも1週間、動物を輸送から回復させた。マウスを、表8に示される様々な群に割り付けた。
【0203】
【0204】
実験設計
表8に示されるように、群A~Eのマウス(各群n=12)に、0日目に10mg/kgオキサリプラチンまたは媒体を腹腔内投与し、以下のように被験物質を投与した:-3日目、-2日目、-1日目、および1~9日目に10mg/kg媒体、2mg/kg BXQ-350、もしくは10mg/kg BXQ-350;または3日目、5日目、7日目、および9日目に30mg/kgプレガバリン。
図1Bは、群A~Eのマウスへの様々な処置の投与のタイムラインを示す。
【0205】
研究2の装置および評価
静的機械的触覚異痛症:研究1と同じ装置およびプロトコルを使用した。研究2の結果は、表9(生データ)、表10(要約)、
図6、および
図7に示される。
【0206】
(表9)個々の肢引っ込め閾値50%(フォンフライフィラメント)値(g)
表9:個々の肢引っ込め閾値50%(フォンフライフィラメント)値(g)。ID番号はマウスIDを示す。BL:ベースライン;D3、D5、D7、およびD9は、それぞれ、3日目、5日目、7日目、および9日目をさす。
【0207】
(表10)結果の要約:機械的異痛症
表10:左後肢の肢引っ込め閾値50%(g)。二元配置分散分析は、時間の主効果(F(4.834,265.9)=4.829;p<0.001)、処置の主効果(F(4,55)=17.50;p<0.0001)、および時間要因と処置要因との間の有意な交互作用(F(24,330)=6.502を示した。*、**、***、および****は、同一時点でオキサリプラチン/媒体群と比較した時の、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、およびp<0.0001の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。
【0208】
熱過敏:研究1と同じ装置およびプロトコルを使用した。研究2の結果は、表11(生データ)、表12(要約)、
図8、および
図9に示される。
【0209】
(表11)コールドプレート試験における引っ込め行動を示すまでの個々の潜時(s)
表11:秒(s)で測定されたコールドプレート試験における引っ込め行動を示すまでの個々の潜時。ID番号はマウスIDを示す。BL:ベースライン;D3、D5、D7、およびD9は、それぞれ、3日目、5日目、7日目、9日目をさす。
【0210】
(表12)結果の要約:熱感受性
表12:コールドプレート試験(15℃)における引っ込め行動までの潜時。二元配置分散分析は、時間の主効果(F(6,330)=8.849;p<0.0001)、処置の主効果(F(4,55)=2.775;p=0.0358)、および時間要因と処置要因との間の有意な交互作用(F(24,330)=8.849を示した。*、**、および***は、同一時点でオキサリプラチン/媒体群と比較した時の、それぞれ、p<0.05、p<0.01、およびp<0.001の統計学的有意差を示す。値は平均値±SEMとして示される。
【0211】
体重:処置の1日前から9日目まで毎日、マウスを計量した。個々の体重は、以下の表13に示される。
【0212】
【0213】
研究2の結果
オキサリプラチンの投与は、判定された日における一貫した持続的な機械的異痛応答を誘発した。BXQ-350による処置は、PWT(肢引っ込め閾値レベル)の低減を用量依存的に有意に防止した。判定された全ての日において、BXQ-350によって処置された群は、Veh/Oxal群と比較して有意に高いPWTレベルを示したが、2mg/kgの用量のBXQ-350によって処置された群は、3日目および9日目に、Veh/Oxal群と有意差がなかった。
【0214】
BXQ-350は、コールドプレート試験において、オキサリプラチンによって処置された動物における保護効果に関して一貫した傾向を示した。7日目および10日目に、群内変動がより低くなり、いくらかの統計学的有意差が現れた。7日目に、BXQ-350 10mg/kgによって処置された群は、Veh/Oxal群と有意差があった。
【0215】
結論
これらの結果は、BXQ-350が、機械的異痛症のマウスモデルにおいて、オキサリプラチン誘発性神経障害性疼痛からも、オキサリプラチン誘発性寒冷過敏からも、マウスを保護し得ることを示している。
【0216】
実施例3.オキサリプラチン誘発性感覚神経毒性を減少させ、新たに診断された転移性結腸直腸癌を処置するためのBXQ-350(SapC-DOPS)の有効性および安全性
(a)転移性結腸直腸癌(mCRC)を有する患者の処置におけるBXQ-350+mFOLFOX7(改変FOLFOX7:5-フルオロウラシル(5-FU)/ロイコボリン(LV)/オキサリプラチン)およびベバシズマブ(Avastin)の有効性;ならびに(b)BXQ-350が、mFOLFOX7を受容しているmCRCを有する対象においてオキサリプラチン誘発性感覚神経毒性の発症、強度、および/もしくは期間を減少させるか否かを決定するためのプラセボ対照二重盲検第2相有効性および安全性は、以下のように構成され得る。ロイコボリンカルシウム(200mg/m2)と共に注入されるオキサリプラチン(85mg/メートル[m]2)を1日目に2時間かけて患者へ投与し、続いて、1日目および2日目に5-フルオロウラシル(5FU)を46時間かけて注入し(2400グラム[g]/m2)、2週間毎に6ヶ月間、全部で12回注入する化学療法レジメンmFOLFOX7。適格対象を、mFOLFOX7と同時に静脈内投与される2.4ミリグラム(mg)/キログラム(kg)のBXQ-350またはプラセボのいずれか(サイクル1においては、1~5日目、8日目、10日目、12日目、15日目、および22日目;サイクル2~6においては、29日目から14日毎)を受容するよう、1:1の比率で無作為化する。適格対象は、18歳以上であり、新たに診断された転移性結腸/直腸腺癌を有し、mFOLFOX7を受容しており、0または1のEastern Cooperative Oncology Group (ECOG) Performance Statusを有し、かつ3ヶ月を超える平均余命を有する者である。
【0217】
対象は、表14の投与スケジュールに従って、mFOLFOX7およびベバシズマブ治療と同時にBXQ-350またはプラセボのいずれかを受容する。
【0218】
(表14)BXQ-350/プラセボは以下のスケジュールに従って60分±5分かけてIV注入によって投与される
* 2日間mFOLFOX7レジメン:1日目にロイコボリンカルシウム(200mg/m
2)と共にオキサリプラチン(85mg/メートル[m]
2)を2時間かけて注入し、その後、5-FUを46時間かけて注入し(2400ミリグラム[mg]/m
2)、2週間毎に6ヶ月間注入する(全部で12回の注入)。mFOLFOX7=施設の方針および手法に従って注入される。ベバシズマブ=5mg/kg IV。施設の方針および手法に従って注入される。
【0219】
研究期間:mFOLFOX7およびベバシズマブと組み合わせられたBXQ-350またはプラセボによる処置は、6サイクルのトライアルエントリー(一次処置期間)後に開始され得る。6サイクルを越えた後(延長処置期間)に、進行またはその他の中止基準のない全ての参加者が、主治医の裁量に従って、維持mFOLFOX7および/またはベバシズマブを継続し得る。BXQ-350/プラセボ処置は、6サイクルを越えた後、28日に1回の投与スケジュールに移行し、疾患の進行またはその他の中止規則が満たされるまで、研究1日目から最大720日間(約26サイクル)継続され、BXQ-350治療の中止の2週間後に処置終了来院が行われる。参加者は、神経障害判定のため、研究1日目から548日目まで、28日毎に追跡され、生存については、研究1日目から1,825日目、死亡、同意の撤回、または試験の完了のうち最も早い時点まで、12週間毎に追跡される。
【0220】
研究の目的:
mCRCの処置
1つの目的には、客観的奏効率(ORR)によって測定される、mCRCを有する患者におけるBXQ-350+改変FOLFOX7(mFOLFOX7)処置およびベバシズマブの有効性の判定が含まれ得る。ORRは、主治医の判定によって、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)v1.1に従って決定される。
【0221】
二次的な目的には、RECISTv1.1に従って、
(a)無作為化の日から任意の原因による死亡の日までの時間として定義される全生存期間(OS);
(b)無作為化の日から疾患進行または死亡の日までの時間として定義される無増悪生存期間(PFS);
(c)疾患奏効の実証から疾患進行までの時間として定義される奏効期間(DoR);ならびに
(d)最良総合奏効(BOR)が完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、および安定(SD)であった参加者の割合として定義される疾患コントロール率(DCR)
によって測定される、mCRCを有する患者におけるBXQ-350+改変FOLFOX7(mFOLFOX7)処置およびベバシズマブの有効性の判定が含まれ得る。
【0222】
さらに、mFOLFOX7およびベバシズマブと組み合わせられたBXQ-350の薬物動態(PK)を特徴決定することができる。さらに、全ての参加者において、mFOLFOX7およびベバシズマブと組み合わせられたBXQ-350の全体的な安全性および耐容性を、単独のmFOLFOX7およびベバシズマブと比較して判定することができる。この目的のための有害事象は、Common Terminology Criteria for Adverse Events[CTCAE]v5によって等級付けられる。さらに、臨床化学、血液学、凝固および尿検査、バイタルサイン、身体検査、ならびに体重が決定される。さらに、12誘導心電図(ECG)が実施され、Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG) Performance Statusが決定される。
【0223】
神経障害の処置
1つの目的には、BXQ-350が、改変FOLFOX7(mFOLFOX7)を受容している対象において、慢性オキサリプラチン誘発性感覚神経毒性の発症、強度、および/または期間を減少させるか否かを決定することが含まれ得る。この目的は、European Organization for Research and Treatment of Cancer (EORTC) 生活の質(QLQ)質問票(QLC-C30およびCIPN 20)を利用して測定される。
【0224】
その他の目的には、
(a)mFOLFOX7と共に投与されたBXQ-350が、受容されるサイクル数および投与される総用量に関して、オキサリプラチンへのより大きい曝露をもたらすか否かを判定すること;
(b)有害事象に関して、mFOLFOX7による処置を受容しているmCRCを有すると診断された対象におけるBXQ-350の全体的な安全性および耐容性を判定すること;ならびに
(c)mFOLFOX7を受容している対象において、BXQ-350がオキサリプラチン関連急性疼痛症候群の症状を減少させるか否かを判定すること
が含まれ得る。
【0225】
二次的な目的は、例えば、CIPNアセスメント・ツール(Tofthagen CS,et al.(2011)Cancer Nurs.2011 Jul-Aug;34(4):E10-20)およびオキサリプラチン後症状質問票(Pachman DR,et al(2016)Supportive Care in Cancer.24(12):5059-68)を使用して測定され得る。
【0226】
神経障害に対する有効性判定:このパイロット研究の1つの有効性アウトカムは、指(または手)および足趾(または足)の痺れ、刺痛、および疼痛を定量化する6つの個々のEORTC QLQ-CIPN20質問から得られた連続的に測定された総合感覚神経障害スコアであってよく;総合感覚神経障害スコアは、0~100のスケールに変換される(数が大きいほど良好である)。一例において、参加者は、以下の表15に従って、質問票を受容する。
【0227】
【0228】
エンドポイント目的において使用される質問票には、以下に示されるような、EORTC質問票(表16)、CIPNアセスメント・ツール質問票(表17)、およびオキサリプラチン後症状質問票(表18)が含まれ得る。表17の質問票は、Dr.Cindy Tofthagen(Cancer Nursing,Vol.00,No.0,2011)の許可の下で開発され、使用された。表18は、Dr.Charles Loprinziの許可の下で開発され、使用された。
【0229】
(表16)EORTC QLQ - CIPN20質問票
【0230】
(表17)CIPNアセスメント・ツール質問票(定量的項目)
この1週間に何らかの神経障害症状(例えば、手および/または足の痺れ、刺痛、または疼痛)があった場合、これらの症状は以下のことをどの程度妨げましたか:
【0231】
【0232】
実施例4
.SapC-DOPS(BXQ-350)はニューロンをオキサリプラチンから保護し、神経突起の形成を促進する
SapC-リン脂質製剤(BXQ-350)の神経刺激性、神経保護性、および神経栄養性を、2つの細胞株、即ち、PC-12細胞(ラット副腎髄質の褐色細胞腫由来)およびNS20Y細胞(マウス神経芽細胞腫に由来するコリン作動性細胞株)においてインビトロで試験した。単独のBXQ-350、およびオキサリプラチンと組み合わせられたBXQ-350を細胞へ投与した。
【0233】
PC-12細胞(ATCC、カタログ番号CRL-1721)およびNS20Y細胞(Millipore Sigma、カタログ番号08062517)を、10%FBSおよびPenStrepが添加された1mLのDMEM(Gibco、カタログ番号11965-092)で、1ウェル当たり1×104細胞を含有する24穴プレートに一晩播種した。試験された各薬剤は、4mMグルタミン、1mMグルコン酸カルシウム、およびPenStrepが添加された高グルコース、グルタミン不含、カルシウム不含のDMEM(Gibco、カタログ番号21068-028)からなる投与培地で、適切な濃度の溶液にされた。BXQ-350は、5nM~1μMのSapC濃度で試験され、オキサリプラチンは、100nM~4μMの濃度で試験された。播種培地を細胞から完全に除去した後、被験薬剤を含有する投与培地を加えた。
【0234】
神経刺激:BXQ-350は、試験された両方の細胞株において神経発生活性および神経栄養活性の両方を有する。50nM BXQ-350によって処理されたNS20Y細胞(
図10A)およびPC-12細胞(
図10C)は、対照培地において増殖したNS20Y細胞およびPC-12細胞と比較して、より多くの細胞、およびニューロン形態を有する細胞のより高い百分率を生じた(それぞれ、
図10Bおよび10D)。
【0235】
神経保護:BXQ-350は、神経障害効果を有する公知の細胞傷害性薬物であるオキサリプラチンによってチャレンジされた時、PC-12細胞において神経保護活性を有する。2μM用量のオキサリプラチンは、細胞生存率を大幅に低減させ(
図13)、神経突起伸長を阻害し得るが(
図11C)、残存する生存細胞が少な過ぎるため、神経突起を有する細胞の百分率を正確に計算することができない。2μMオキサリプラチンと50nM BXQ-350との組み合わせに曝された細胞は、単独のオキサリプラチンによって処理された細胞(
図13および
図11C)と比較して、細胞生存率の保存(
図13)および神経突起伸長または神経突起生成の増加(
図11B)の両方を示した。
図11の各対の左側の画像は倍率4倍であり、
図11の各対の右側の画像は倍率20倍である。
【0236】
神経突起生成:BXQ-350は、PC-12細胞において神経突起伸長を刺激することが示された。細胞の画像はBiotek Cytation(商標)5で得られた。Biotek Gen5(ver.3.05)ソフトウェアを使用して、細胞体の直径より少なくとも1mm長い神経突起成長を有する細胞の百分率を決定することによって、神経突起伸長について倍率4倍の画像を分析した。細胞神経突起伸長のこの分析(
図12)は、オキサリプラチン/BXQ-350の組み合わせによって処理された細胞が、未処理の対照細胞より有意に高い、神経突起伸長を有する細胞の百分率を有することを示している。実際、オキサリプラチン/BXQ-350によって処理された細胞(
図11B)における神経突起伸長を有する細胞の百分率は、未処理細胞(
図11D)における神経突起伸長を有する百分率より、BXQ-350単独によって処理された細胞(
図11A)における神経突起伸長を有する百分率に近かった。
【0237】
総合すると、これらの結果は、BXQ-350が、神経発生効果および神経栄養効果の両方を有し、例えば、化学療法による神経障害性ストレス下で、ニューロン保護および神経突起成長刺激の両方をニューロン細胞に提供し得るという証拠を提供する。
【0238】
実施例5.SapC-DOPS(BXQ-350)は、ニューロンを細胞傷害性薬剤から保護し、神経刺激特性、神経栄養特性、および神経保護特性を有する
SapC-リン脂質製剤(BXQ-350)の神経刺激性、神経保護性、および神経栄養性を、2つのPC-12細胞およびNS20Y細胞においてインビトロでさらに試験した。単独のBXQ-350、およびオキサリプラチン、ビンクリスチン、パクリタキセル、または過酸化水素(H2O2)と組み合わせられたBXQ-350を、細胞へ投与した。
【0239】
PC-12細胞(ATCC、カタログ番号CRL-1721)およびNS20Y細胞(Millipore Sigma、カタログ番号08062517)を、10%FBSおよびPenStrepが添加された1 mLのDMEM(Gibco、カタログ番号11965-092)で、1ウェル当たり1×104細胞を含有する24穴プレートに一晩播種した。試験された各薬剤は、4mMグルタミン、1mMグルコン酸カルシウム、およびPenStrepが添加された高グルコース、グルタミン不含、カルシウム不含のDMEM(Gibco、カタログ番号21068-028)からなる投与培地で、適切な濃度の溶液にされた。BXQ-350は、5nM~1μMのSapC濃度の濃度で試験された。播種培地を細胞から完全に除去した後、被験薬剤を含有する投与培地を加えた。
【0240】
PC-12細胞およびNS20Y細胞に、単独のBXQ-350、またはオキサリプラチン、ビンクリスチン、もしくはパクリタキセルと組み合わせられたBXQ-350を投与した。オキサリプラチンは、100nM~4μMの濃度で試験され;ビンクリスチンは、100nM~100μMで試験され;パクリタキセルは、100nM~20μMで試験された。組み合わせ試験については、50nM BXQ-350と、100nM~4μMオキサリプラチンまたは100nM~10μMビンクリスチンまたは1μM~10μMパクリタキセルとを72時間同時投与した。画像は、化合物への完全な曝露の後、Biotek Cytation(商標)5細胞イメージング系で得られた。細胞体より1mm超長い巻髭状のもの(tendril)の成長として定義された神経突起成長を決定するため、Biotek Gen5(ver.3.05)ソフトウェアを使用した。未処理細胞をベースラインとして、これらの画像から細胞数を決定した。
【0241】
PC-12細胞およびNS20Y細胞に、72時間、50nM BXQ-350単独を投与するか、または未処理のままとした。72時間後、細胞を氷冷PBSで洗浄し、200μMのH2O2を24時間投与した。画像は、化合物への完全な曝露の後、Biotek Cytation(商標)5細胞イメージング系で得られた。細胞体より1mm超長い巻髭状のものの成長として定義された神経突起成長を決定するため、Biotek Gen5(ver.3.05)ソフトウェアを使用した。未処理細胞をベースラインとして、これらの画像から細胞数を決定した。
【0242】
単剤処理としてのBXQ-350は、神経栄養特性を示し、神経発生、神経突起生成を誘導し、神経保護的であった。
【0243】
神経刺激:BXQ-350は、試験された両方の細胞株において神経発生活性および神経栄養活性の両方を有する。50nMのBXQ-350によって処理されたNS20Y細胞(
図14B)およびPC-12細胞(
図14A)は、未処理の対照よりおよそ60%多い細胞を生じた。さらに、BXQ-350は、NS20Yニューロン前駆細胞(
図14D)およびPC-12細胞(
図14C)において著しく多い神経突起伸長をもたらし、このことから、BXQ-350はニューロン前駆細胞株の分裂および分化の両方を刺激することが示された。
【0244】
神経保護:BXQ-350は、神経障害効果を有する公知の細胞傷害性薬物であるオキサリプラチン、ビンクリスチン、またはパクリタキセルによってチャレンジされた時、PC-12細胞において神経保護活性を有する。PC-12細胞およびNS20Y細胞に、50nM BXQ-350と、2μMオキサリプラチン、10μMビンクリスチン、または3μMパクリタキセルのいずれかとを72時間同時投与した。未処理の細胞、ならびに50nM BXQ-350、2μMオキサリプラチン、10μMビンクリスチン、および3μMパクリタキセルの単剤処理を投与された細胞が含まれていた。単独のオキサリプラチン(
図15Bおよび16B)、ビンクリスチン(
図17Bおよび18B)、およびパクリタキセル(
図19Bおよび20B)を投与された細胞においては、大量の細胞傷害が観察され、生存率は、10%をはるかに下回り、ゼロに近かった。BXQ-350を細胞傷害性薬物に追加した時、細胞生存率は大幅に増加した。細胞傷害性薬物+BXQ-350組み合わせ群の生存率は、BXQ-350単独群の約50%であった。
【0245】
神経突起生成:BXQ-350は、PC-12細胞およびNS20Y細胞における神経突起伸長を刺激することが示された。細胞の画像は、Biotek Cytation(商標)5細胞イメージング系で得られた。Biotek Gen5(ver.3.05)ソフトウェアを使用して、細胞体より少なくとも1mm長い神経突起の成長を有する細胞の百分率を決定することによって、倍率4倍の画像を神経突起伸長について分析した。細胞神経突起伸長のこの分析によって、オキサリプラチン/BXQ-350(
図15Aおよび16A)、ビンクリスチン/BXQ-350(
図17Aおよび18A)、パクリタキセル/BXQ-350(
図19Aおよび20A)の組み合わせによって処理された細胞は、対照細胞より有意に高い、神経突起伸長を有する細胞の百分率を有していた。BXQ-350単独を投与された細胞の75~80%が、神経突起伸長を有し、未処理細胞の35~50%、細胞傷害性薬剤-BXQ-350の組み合わせによって処理された細胞の35~60%が、神経突起を有していた。オキサリプラチン、ビンクリスチン、およびパクリタキセルの単独群は、許容される試料サイズが得られない程度に細胞傷害が高度であったため、神経突起伸長について分析され得なかった。
【0246】
次に、BXQ-350を、神経毒性薬剤、過酸化水素(H
2O
2)と組み合わせて投与した。PC-12細胞およびNS20Y細胞を、72時間、50nM BXQ-350で前処理するか、または未処理のままにした。次いで、(薬物を含有する、または含有しない)培地を除去し、24時間で、200μM H
2O
2を含有する培地を全ての群に加えた。PC-12細胞について、未処理群においては、約35%の細胞しか生存していなかったが、BXQ-350によって前処理された群は、約74%の生存率を有していた(
図21B)。NS20Y細胞については、約40%の細胞が生存していたが、BXQ-350によって前処理された細胞は、約81%が生存していた(
図21A)。
【0247】
総合すると、これらのデータは、化学療法剤に曝された時に、BXQ-350が、同時に、神経発生細胞分裂を刺激し、神経突起伸長を促進し、かつ神経保護を示し得ることを示唆している。さらに、これらのデータは、BXQ-350が、多様な神経毒性薬剤に対して保護する可能性を有することを示している。これらのデータは、BXQ-350が、インビトロで、ニューロンの成長および神経突起発達を促進する能力を有することも証明している。さらに、一般的なまたは化学療法的な神経毒性薬剤と組み合わせられた時、BXQ-350は、有意な神経栄養活性を示すことができる。
【0248】
実施例6.SapC-DOPSは、HT-29結腸直腸癌細胞株におけるオキサリプラチンおよび5-フルオラシルの細胞傷害効果を増強する
FOLFOXの標準治療薬であるオキサリプラチンおよび5-フルオロウラシル(5-FU)の細胞傷害効果を増強するSapC-リン脂質製剤(BXQ-350)の能力を、インビトロ癌細胞株において試験した。
【0249】
10%FBSおよびPenStrepが添加された100μLのDMEM(Gibco、カタログ番号11965-092)で、1ウェル当たり1×105細胞のHT-29細胞を96穴プレートに一晩播種した。DMEMのみを含有するブランクウェルが含まれていた。翌日、BXQ-350凍結乾燥粉末を、10%FBS、4mMグルタミン、1mMグルコン酸カルシウム、およびPenStrepが添加された高グルコース、グルタミン不含、カルシウム不含のDMEM(Gibco、カタログ番号21068-028)からなる特別投与培地に再懸濁させた。オキサリプラチンおよび5-FUを、pHがコントロールされた溶液にした。単剤投与または組み合わせ投与のいずれかの所望の試験濃度を、ストック溶液のアリコートを投与培地で希釈することによって作製した。
【0250】
増殖培地を培養プレートから除去し、細胞を以下のうちの1つによって処理した:単剤;BXQ-350とオキサリプラチンとの組み合わせ、BXQ-350と5-FUとの組み合わせ、または5-FUとオキサリプラチンとの組み合わせ;および3つ全ての薬剤の組み合わせ。
【0251】
IC50を決定するため、BXQ-350を8μM~40μMで投与したところ、最適なBXQ-350は12μM~16μMであった。オキサリプラチンは0.2μM~1μMで投与され、5-FUは12μM~24μMで投与された。各プレートは、処理された細胞と比較するための対照として未処理の細胞を含有していた。プレートを37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。72時間後、10μLのMTT塩溶液を各ウェルに加え、プレートをインキュベーターに2時間戻した。次いで、培地を各ウェルから除去し、100μLのDMSOと交換した。次いで、プレートを上記のように一晩インキュベートした。データ分析のため、570nmの吸光度を測定するため、プレートをBioTek Synergyプレートリーダーで読み取った。細胞生存率を、まず全てのウェルからブランクOD570値を差し引き、次いで、投与された細胞のOD570値を未処理細胞のOD570値で割り、100を掛けることによって決定した。これは、未処理対照を100%生存率のベースラインとして使用した、処理された試料の中の生存細胞のパーセントを提供する。単剤としてのBXQ-350は、16μMで、致死的であったが、驚くべきことに、72時間の12μM BXQ-350という、より低い致死量以下の濃度は、オキサリプラチンおよび/または5-FUの細胞傷害効果を増強した。
【0252】
最適化された投与およびMTT細胞生存率アッセイ(Roche)を使用して、処理されたHT29細胞および未処理のHT29細胞におけるパーセント細胞生存率を決定した。BXQ-350、5-FU、およびオキサリプラチンを、それぞれ、12μM、12μM、および0.3μMの濃度で使用した。全ての組み合わせを72時間同時に処理し、一方で、BXQ-350を単独で72時間投与した。全ての処理が3回反復で行われた。
【0253】
3つの処理の組み合わせ(BXQ-350+オキサリプラチン+5-FU)は、2剤組み合わせのいずれと比較しても有意に高い細胞傷害(%細胞生存率の減少)を示す(
図22)。BXQ-350とオキサリプラチンは、極めて良好な致死性を示す3剤組み合わせと比較して、細胞傷害をほとんど示さない。3剤組み合わせにおいては、標準治療のオキサリプラチンと5-FU、またはBXQ-350と5-FUと比べて、細胞傷害の倍増が見られる。
【0254】
結論
これらの結果は、BXQ-350が、癌細胞株におけるオキサリプラチンおよび/または5-FUの細胞傷害効果を有意に増強し得ることを示している。
【0255】
実施例7.SapC-DOPSおよびFOLFOXは様々な結腸直腸癌細胞株において差次的に細胞傷害性である
インビトロ癌細胞株の細胞傷害に対する、SapC-DOPSと5-フルオロウラシル(5-FU)またはオキサリプラチンまたはFOLFOX(5-FU+オキサリプラチン)との組み合わせ効果を試験した。SW480(カタログ番号:CCL-228)、SW620(カタログ番号:CCL-227)、HT29(カタログ番号:HTB-38)、HCT116(カタログ番号:CCL-247)、LoVo(カタログ番号:CCL229)、およびSW48(カタログ番号:CCL231)を含むヒト結腸直腸腺癌細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)から入手された。HT29細胞、HCT116細胞、LoVo細胞、およびSW48細胞は、9%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン-ストレプトマイシンが添加された高グルコースDMEM(Thermofisher-Gibco、カタログ番号:11965-092)において培養された。SW480細胞およびSW620細胞は、9%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン-ストレプトマイシンが添加されたL-15(ATCC、カタログ番号:30-2008)またはLeibovitz L-15(Alphabioregen、カタログ番号:PG058)のいずれかにおいて培養された。細胞は5%CO2を含有する雰囲気で37℃で培養された。およそ80~90%のコンフルエンシーで、アッセイに使用するため、または継代するため、トリプシン(Thermofisher-Gibco、カタログ番号:25200-072)を使用して細胞を剥離した。
【0256】
MTT生存率アッセイ:
1日目に、1ウェル当たり1.5×104細胞のMTTアッセイ細胞を、高グルコースDMEM培地で、96穴吸光プレート(Falcon、カタログ番号:353072)に播種し、接着させるため、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。
【0257】
2日目に、SapC-DOPS凍結乾燥粉末(ロット番号:130061)を、低カルシウム培地(9%FBS、1%Pen-Strep、4mM L-グルタミン、および0.6mM塩化カルシウムが添加されたカルシウム不含DMEM(Gibco、カタログ番号:21068-028))に再懸濁させ、希釈した。研究の前に、オキサリプラチン凍結乾燥物を、WIFI(Gibco、ロット番号:2085277)に懸濁させ、1回分のアリコートとして凍結させた。5-FU凍結乾燥物を、水酸化アンモニウム(NH4OH;Sigma、ロット番号:BCCF1716)に懸濁させ、1回分のアリコートとして凍結させた。再構成された5-FUおよびオキサリプラチンを、さらなる使用のため、低カルシウム培地で500μMに希釈した。最終濃度および希釈体積は、以下の表19に示される。
【0258】
【0259】
一晩培養物から培地を除去し、上記の化合物の単独、2剤組み合わせ、またはSapC-DOPS+FOLFOX(ロイコボリンなし)としての3剤組み合わせによって同時にプレートを処理した。全てのプレートを37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。
【0260】
4日目に、10uLのMTT標識試薬(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(Sigma-Aldrich、カタログ番号:11465007001)を各ウェルに加えた。プレートを37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。インキュベーション後、各ウェル内の100μLの溶液を除去し、100μL DMSOに交換した。プレートを室温で1時間インキュベートし、各ウェルの吸光度をBiotek Synergy(商標)H1ハイブリッドマイクロプレートリーダーを使用して570nmで測定した。
【0261】
データ処理:
パーセント細胞生存率は、ブランクを差し引いた(blanked)、未処理ウェルからの吸光度に対する、ブランクを差し引いた、処理されたウェルからの吸光度として計算される。
【0262】
DMSO MTT実験:
50μMまでのSapC-DOPSおよび50μMまでのFOLFOXを、DMSO Stop MTTによって、全ての結腸直腸癌(CRC)細胞株における細胞傷害について個々に調べた(
図23Aおよび23B)。50μM FOLFOXは、50μM 5-FUおよび50μMオキサリプラチンと等価である。
【0263】
図23Aは、SapC-DOPSを投与された時の6つのCRC細胞株の各々についての毒性曲線を示す。SW480細胞およびSW620細胞には、3μM、6μM、9μM、12μM、15μM、20μM、25μM、30μM SapC-DOPSを投与した。HT29細胞、HTC116細胞、LoVo細胞、およびSW48細胞には、5μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM SapC-DOPSを投与した。細胞株によって広範囲の応答が見られた。SW480細胞株およびSW620細胞株は、以前に試験された細胞株と比較して増加した、SapC-DOPSに対する感受性を示す。15~20μMのIC50が、黒色腫、膵臓癌、および脳/CNS癌の細胞株を含む他の細胞株において観察された。対照的に、SW480およびSW620は、9~11μMのIC50を有していた(データは示されていない)。LoVoおよびSW48は、SapC-DOPSに対して、弱い感受性を有し、HT29およびHTC116は、少なくとも部分的な抵抗性を有するようであった。
【0264】
図23Bは、1回のFOLFOX処理(10μMオキサリプラチンと10μM 5-FU)に対する各細胞株の細胞傷害応答を示す。各細胞株は、FOLFOXのこの濃度で異なる応答を示し、2つの細胞株(LoVoおよびSW48)は、試験された他の株よりFOLFOX処理に対して比較的感受性が高かった。6つの細胞株のうち4つは、10μM FOLFOXで50~70%の生存細胞を有するため、この濃度を、SapC-DOPSとの相乗性を試験するための出発点として選んだ。
【0265】
SapC-DOPSをFOLFOX処理と組み合わせて試験した。25μM SapC-DOPSおよび15μM FOLFOXの最大投与濃度で、いくつかの組み合わせおよび投与方法を調べた。
図24は、同時に投与された10μM FOLFOXと15μM SAPC-DOPSとの1つの組み合わせに対する細胞株の応答を示す。逐次投与も実施したが(データは示されていない)、同時投与と比較して、差は観察されなかった。全ての細胞株において、SapC-DOPSとFOLFOXとの組み合わせは、SapC-DOPS単独またはFOLFOX単独より低い細胞生存率をもたらした。
【0266】
SapC-DOPSおよびFOLFOXは相互に補完的に機能するようであり、このことは臨床的に関連がある。FOLFOXに対してより高い耐性を示したSW480細胞株およびSW620細胞株は、SapC-DOPSに対して極度に感受性であった(
図23Aおよび23Bを参照すること)。SapC-DOPSに対して弱い細胞傷害を示したLoVo細胞株およびSW48細胞株は、FOLFOX処理に対して極めて感受性であった(
図23Aおよび23Bを参照すること)。これは、いずれかの薬剤単独より広い範囲のCRC腫瘍を成功裏に処置するため、SapC-DOPSとFOLFOXとの組み合わせが使用され得ることを示唆している。さらに、FOLFOXおよびSapC-DOPSの単剤処理に対して比較的高い抵抗性を示したHT29細胞およびHCT116細胞は、組み合わせによって処理された時、より低い細胞生存率を有した(
図23A、23B、および24を参照すること)。このような場合において、SapC-DOPSのプロニューロトロピック(pro-neurotropic)な能力は、腫瘍応答が達成され得るまで、より長く、患者がFOLFOX治療に耐えることを可能にし得る。総合すると、これらのデータは、SapC-DOPSとFOLFOXとの組み合わせがFOLFOX単独より有益であることを示している。
【0267】
実施例8.マクロファージのM1表現型への再分極
SapC-リン脂質製剤(BXQ-350)の、M2マクロファージをM1表現型へ再分極させる能力を、M2表現型のマーカーとしてTNF-αを使用して、エクスビボ免疫細胞モデルにおいて検討した。
【0268】
末梢単核血液細胞およびマクロファージを、2人の健常ヒトドナー(「ドナーA」および「ドナーB」)から収集した。CD14+マクロファージを、末梢単核血液細胞から分離し、純度および生存率についてチェックした。次いで、0日目に、CD14+マクロファージを384穴プレートに5,000細胞/ウェルの密度で播種培地によって播種した。5日目に、増殖培地を培養プレートから除去し、2.5μMから出発する2倍段階希釈の2.5μM~9nMの範囲のBXQ-350によって細胞を処理した。2つの参照化合物、プレドニゾロンおよびデキサメタゾンを、別々のウェルにおいて陽性対照として使用した。10μMプレドニゾロンおよび10μMデキサメタゾンのアリコートを、各ウェルにおいて、化合物を8回段階希釈することによって作製した。BXQ-350または陽性対照化合物を加えてから1時間後、10ng/mlの濃度のリポ多糖(LPS)を細胞に加えた。陰性対照として、LPSのみおよびLPS+0.1%DMSOを別々のウェルに加えた。8日目に、細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、CD80染色+DAPI対比染色を使用して細胞を計数し、TNF-αレベルを定量化した。
【0269】
図25Aおよび
図25Bは、2.5μM~9nMの範囲のBXQ-350の添加が、ドナーA(
図25A)およびドナーB(
図25B)から得られたマクロファージにおけるTNF-α濃度の濃度依存的減少を生じることを示す。BXQ-350の添加によって生存細胞の数は変化しないか、または増加さえし、このことは、BXQ-350が細胞傷害性ではないことを示している。M1表現型への再分極のためのBXQ-350 IC
50は、それぞれ、ドナーAおよびドナーBに由来する細胞について、0.77μMおよび0.75μMであった。
【0270】
結論
これらの結果は、BXQ-350が、エクスビボで、マクロファージをM1抗腫瘍表現型へ効果的に再分極させることを示している。
【0271】
実施例9.T細胞の活性化およびそれに関連した死滅効果
実施例1において証明されたように、BXQ-350は、M2マクロファージをM1表現型へ再分極させるように機能する。BXQ-350がT細胞媒介抗腫瘍免疫応答も助長するか否かを、エクスビボ3D腫瘍スフェロイドモデルにおいて検討した。
【0272】
レンチウイルスによってトランスフェクトされたA549ヒト肺癌細胞を、96穴超低接着プレートに750細胞/ウェルの濃度で播種した。次いで、細胞の凝集およびスフェロイドの形成を促進するため、プレートを1200rpmで2分間遠心分離した。次いで、プレートを37℃で3日間インキュベートした。3日後、新鮮に単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を10,000PBMC/ウェルの濃度でスフェロイドに加えた。様々なウェルに、以下のうちの1つまたは複数を加えた:最終濃度1ng/mlの抗CD3抗体および最終濃度10ng/mlのIL-12を含有する活性化カクテル;BXQ-350の25μM~1.27nMの段階希釈物;50μg/mlのペムブロリズマブという陽性対照。陰性対照群は、スフェロイドおよびPBMCへの添加を有しなかった。次いで、各ウェルの最終体積を、1ウェル当たり200μLに調整した。
【0273】
次いで、プレートをさらに30分間インキュベートした後、Incucyte(登録商標)生細胞分析装置に置き;蛍光を4時間毎に6日間分析した。次いで、IC50を決定するため、Incucyte(登録商標)ソフトウェアを使用して画像を分析した。A549腫瘍細胞スフェロイド内の蛍光強度の増加は、スフェロイド内の生Luc-A549細胞の数の増加と相関し、蛍光の欠如は、細胞死を意味する。
【0274】
6日間にわたって測定されたウェルの各群の蛍光強度の結果は、
図26に示される。
図26に示される活性化なし対照群(線(12))は、6日間の研究において、経時的に、細胞数の増加と相関する強度の増加を示した。同様に、8.33μMおよび25μM BXQ-350によって処理されたスフェロイド(線(1)および(2))も、蛍光強度の増加を示し、このことから、これらの実験条件では、T細胞によって媒介される抗腫瘍免疫応答が観察されなかったことが示唆された。一方、ペムブロリズマブ(線(13))または1.3nM~2.8μMの濃度のBXQ-350(線(3)~(10))による処理は、6日目までに細胞死の増加を示し、このことから、BXQ-350が、単独のT細胞によって媒介される死滅効果より、このエクスビボ3D腫瘍スフェロイド細胞傷害性T細胞モデルにおいて、癌細胞を死滅させる効果が高かったことが証明された。最後に、
図26のデータを使用して、T細胞刺激および細胞傷害効果の増強のために必要なBXQ-350の濃度を決定するため、曲線下面積を計算した。
図27に示されるように、T細胞刺激のために必要なBXQ-350の濃度は、0.104μMである。
【0275】
結論
これらの結果は、BXQ-350が、活性化された細胞傷害性T細胞と組み合わせられた時に、T細胞死滅効果を効果的に刺激することを証明している。
【0276】
実施例10.同系マウス腫瘍モデルにおけるBXQ-350のインビボ活性
免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD1抗体、抗CTLA4抗体、または抗PD-L1抗体に十分に応答しない抵抗性モデルとして分類されるマウス結腸直腸癌モデル、同系CT26モデルにおいて、BXQ-350の活性を検討した。
【0277】
この研究のため、7~9週齢雌BALB/cマウスを使用した。研究プロトコルは、サイトの動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)によって認可された。動物は、動物福祉ガイドラインによって要求される収容条件で個々のケージにおいて維持された。食事も動物福祉ガイドラインに準拠していた。表20に示されるように、この研究には、以下の表に示されるように、(1)媒体対照;(2)マウスSapC-DOPS(m-SapC-DOPS);(3)マウス抗PD1抗体(m-抗PD-1)(n=10);および(4)m-SapC-DOPS+m-抗PD1抗体(n=10)によって処置された4つの動物群が含まれた。m-抗PD-1抗体はBioXcell(ロット番号780120J2)から購入された。m-SapC-DOPSは、ヒトSapCをマウスSapCに置換する手法を開示しているQi et al.,J Biol Chem,(1996)22;271(12):6874-80に記載された手法を使用して調製された。
【0278】
【0279】
CT26細胞を、空気中5%CO2の雰囲気で、37℃で、10%ウシ胎仔血清、1%抗生物質抗真菌薬溶液が添加されたRPMI-1640培地において培養した。指数増殖期の増殖中の細胞を採集し、腫瘍接種のために計数した。腫瘍発達のため、CT26腫瘍細胞(0.3×106/マウス)を含む0.1mLの無血清RPMI-1640を、各マウスの右下側腹部に皮下接種した。腫瘍が最小で60mm3の体積に達した後、腫瘍体積に基づき層化無作為抽出を実行するExcelベースの無作為抽出ソフトウェアを使用して、動物を4つの群に無作為に割り付けた。皮内(ID)または筋肉内(IM)で増殖中の腫瘍を有する動物は、研究から除外された。
【0280】
正常な行動、例えば、運動、飼料および水の消費、体重の増減(体重は週3回測定された)、目/毛のマッティング(matting)に対する腫瘍増殖および処置の効果、ならびにプロトコルに記されたその他の異常な効果について、動物を毎日チェックした。死亡および観察された臨床徴候を記録した。
【0281】
ノギスを使用して2次元で週3回、腫瘍サイズを測定し、体積を、式:V=0.5a×b2(aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)を使用してmm3で表した。次いで、腫瘍サイズをT/C値およびTGI値の計算のために使用した。TおよびCは、それぞれ、所定の日における処置群および対照群の平均体積である。T/C値(パーセント)は、抗腫瘍有効性の指標である。TGIは、式:TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100を使用して各群について計算された(Tiは、所定の日における処置群の平均腫瘍体積、T0は、処置初日における処置群の平均腫瘍体積、Viは、Tiと同じ日における媒体対照群の平均腫瘍体積、V0は、処置初日における媒体群の平均腫瘍体積である)。
【0282】
表21ならびに
図28および29に示されるように、mSapC-DOPSとm-抗PD1との組み合わせ(
図28および29の線(4))は、m-抗PD1単独(
図28および29の線(3))またはm-SapC-DOPS単独(
図28および29の線(2))を与えられた群において観察されたものより、大きい腫瘍増殖阻害をもたらし、有意に小さい平均値の標準誤差(SEM)をもたらす。組み合わせ処置において観察された、より低いSEMは、単独処置群より多くの腫瘍が、組み合わせ処置群において応答したことを示す。
図30に示される個々の動物の腫瘍増殖阻害プロットを見ることによっても、これらの結果およびm-SapC-DOPSとm-抗PD1とを組み合わせることの利点をさらに見ることができる。これらのプロットにおいて、腫瘍増殖の阻害は、m-抗PD1のみによって処置された群(濃い陰影線)より、組み合わせ群(薄い陰影線)において、際立って良好であることが分かる。さらに、表22に示される結果は、17日目に、組み合わせアームにおいては、1600mm
3より大きい腫瘍は存在せず;対照的に、2つの単剤処置アームは、両方とも、17日目に1600mm
3より大きい腫瘍を有し:即ち、m-SapC-DOPSアームにおいて、9つの腫瘍のうち3つ、m-抗PD1アームにおいて、10の腫瘍のうち2つが、1600mm
3より大きかったことを示している。
【0283】
(表21)処置群における17日目の腫瘍サイズ
a.平均値±SEM
b.T/C%=T
17/C
17×100%(T:処置群;C:対照群)。T
17は17日目の平均腫瘍体積である。
c.TGI(%)=[1-(T
17-T
0)/(C
17-C
0)]×100
注:群1の1匹および群2の1匹は、14日目に屠殺されたため、それらの2匹からのデータは、腫瘍サイズ、T/C、またはTGI値の計算に含まれなかった。
【0284】
【0285】
これらの結果は、サポシンC/リン脂質製剤SapC-DOPS+免疫チェックポイント阻害剤が、腫瘍増殖の低減において、いずれかの薬剤単独より効果的であることを示している。
【0286】
実施例11:骨髄系由来サプレッサー細胞に対するSapC-DOPSの効果
骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)は、癌の進行中に増大する細胞の不均一な集団である。MDSCは、T細胞応答を抑制し、それによって、患者の癌に対する免疫応答を最小化する顕著な能力を有する。従って、MDSCの増大を阻害し、その抑制機能を阻害することができれば、それは、有望な治療アプローチとなる。
【0287】
MDSCに対するSapC-DOPSの効果を決定するため、0日目に、健常ドナーに由来する凍結PBMCを37℃の水浴中で解凍し、MACS緩衝液で1回洗浄した。CD14マイクロビーズを使用して、PBMCの調製物からCD14陽性単球を単離した。次いで、CD14陽性細胞をRPMI1640培養培地で200万細胞/mlに希釈し、50ul/ウェル(10万細胞/ウェル)を平底96穴プレートに置いた。異なる濃度のBXQ-350の溶液を細胞に加え、次いで、単球分化を刺激するため、rhGM-CSFおよびrhIL-6を混合物に加えた。次いで、37℃、5%CO2で7日間、プレートをインキュベートした。
【0288】
3日目に、培地を、rhGM-CSF、rhIL-6+IL-2、1640培地、およびBXQ-350の新鮮な溶液に交換した。
【0289】
7日目に、約150μLの上清をウェルから取り、ELISAによってIL-10について分析した。また、7日目に、プレートを350gで5分間遠心分離し、培地をピペットで除去し、細胞を100μLの培地で1回洗浄し、試験化合物の溶液をウェルに加えた。全T細胞単離キットを使用して、解凍したPBMCから単離されたT細胞を、セルトレース(cell trace)バイオレット色素で標識し、200万/mlに希釈し、50ul/ウェル(10万T細胞/ウェル)でウェルに加えた。CD3/28 Dynabead(商標)磁気ビーズを、製造業者の指示に従って調製した。次いで、37℃、5%CO2で4日間、プレートをインキュベートした。
【0290】
11日目に、細胞をMDSC抑制アッセイのために処理した。プレートを300gで5分間遠心分離し、ELISAによるインターフェロンガンマ(IFN-γ)レベルの決定のため、各ウェルから約150μLの上清を収集した。次いで、100μLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)をプレートの各ウェルに加え、複数回の静かなピペッティングによって混合物をよく混合し、細胞/ビーズ懸濁物を新しい96穴V底プレートに移した。T細胞/ビーズ懸濁物を含有するプレートをマグネットプレート上に2分間置き、その後、T細胞懸濁物をそのプレートから除去し、新しい96穴プレートに加えた。次いで、後者のプレートのT細胞を、細胞生存率を決定するため、DPBSで1:1000希釈されたLive/Dead(商標)近赤外(IR)染料を使用して、20分間、100μL/ウェルで染色した。混合物を染色緩衝液で1回洗浄した。次いで、異なるウェルの細胞を、CD4+T細胞、CD8+T細胞、IL-10、HLA-DR、CD86、CD80、またはCD11bに対する抗体によって標識し、製造業者の説明に従って、ELISA(例えば、IL-10)またはBD FortessaX20(商標)セルアナライザーを使用したFACS分析を介して検出した。
【0291】
図31Aに示されるように、0.3~1.5μMの濃度のBXQ-350は、このアッセイにおいてIFN-γの発現を促進した。
図31B~31Cは、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方の増殖が、BXQ-350の存在下で、用量依存的に増加したことを示す。さらに、BXQ-350は、IL-10(
図31D)、HLA-DR(
図31E)、CD86(
図31F)、およびCD80(
図31H)の発現を有意に低減させ、CD11b(
図31G)の発現を中程度に減少させる。
【0292】
結論
全体として、データは、BXQ-350が、比較的低い濃度で、T細胞に対するMDSCの抑制的性質を逆転させる能力を有することを示している。
【0293】
実施例12:癌を有する対象における全身サイトカイン濃度に対するBXQ-350の影響
サイトカインは、免疫系の特定の細胞によって分泌され、(1)免疫系の細胞を含む他の細胞、(2)免疫細胞上の分化複合体(complexes of differentiation)の発現、(3)特異的免疫応答の誘導、ならびに(4)種々の疾患における全体的な免疫応答の活性化および協調に対する効果を有する。参照によりその全体が組み入れられるDranoff,Nat Rev Cancer,(2004)4(1):11-22を参照すること。特定のサイトカインの濃度の全身モニタリングは、特定のサイトカインの経時的な相対変化を理解するために必要であり、これらの相対変化は免疫系の応答の指標となる。
【0294】
治療的介入(例えば、薬学的化合物;例えば、BXQ-350の投与)後の癌患者における特定のサイトカインの濃度の経時的なモニタリングは、癌の進行を阻害し、さらには癌の退縮を支持するであろう免疫応答に向けての、これらの患者の免疫系の刺激の指標となり得る。さらに、癌の退縮または進行のマーカーとして、(全身発現による)サイトカインは、抗癌効果または癌進行効果を有するものとして特定され得る。例えば、抗癌効果の指標となる全身性サイトカインには、インターフェロンガンマ(IFN-γ)(Ikeda,H.et al.,Cytokine Growth Factor Rev,(2002)13(2):95-109を参照すること);腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)(van Horssen,R.et al.,Oncologist(2006);11(4):397-408を参照すること);インターロイキン2(IL-2)(Wrangle,J.M.et al.,J Interferon Cytokine Res,(2018)38(2):45-68);インターロイキン12(IL-12);およびインターロイキン15(IL-15)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。癌進行効果の指標となる全身性サイトカインには、インターロイキン1(IL-1);インターロイキン6(IL-6)(Kumari,N.et al.,Tumour Biol(2016)37(9):11553-11572);インターロイキン8(IL-8)(Waugh D.et al.Clin Cancer Res(2008)14(21):6735-41);およびインターロイキン10(IL-10)(Wang X.et al.Cold Spring Harb Perspect Biol.(2019)11(2):a028548)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。この段落で引用された参考文献は、各々、参照によりその全体が組み入れられる。
【0295】
BXQ-350の抗癌有効性を決定するための第1相試験を、以前に化学療法剤によって処置されたことがある進行性固形腫瘍を有する成人患者において実施した(Clinical Trials.gov Identifier:NCT02859857)。7人の登録された患者(患者A~G)の血漿試料を、BXQ-350投与の投与前(1日目)および29日後に経時的に収集した。表23~25は、抗癌進行特性に関連したサイトカイン(即ち、患者A~DにおけるIFN-γ;患者A、C、E、F、およびGにおけるTNF-α;患者B、D、およびFにおけるIL-2)の濃度が、BXQ-350の投与後に増加したことを示している。表26~28は、癌進行に関連したサイトカイン(即ち、患者A、B、D、およびGにおけるIL-6;患者A、B、C、D、およびGにおけるIL-8;患者A、B、E、およびGにおけるIL-10)の濃度が、BXQ-350の投与後に減少したことを示している。これらの結果は、BXQ-350が、免疫系に正の影響を与え、抗腫瘍状態に向けて免疫系のバランスを取り直すことを示している。
【0296】
さらに、表29に示されるように、患者AおよびBの1日目と29日目との間の様々なサイトカイン濃度の変化は、免疫系が抗癌状態に切り替わっていることを示している。抗癌状態は、臨床的利益と相関し:多形神経膠芽腫患者である患者Aは、BXQ-350処置開始後5年を超えて生存し、虫垂癌患者である患者Bは、BXQ-350処置開始後2年を超えて生存した。
【0297】
結論
これらの結果は、BXQ-350が、免疫系に正の影響を与え、抗腫瘍状態に向けて免疫系のバランスを取り直すことを示している。
【0298】
(表23)1日目および29日目のインターフェロンγ発現
*=1日目または29日目のIFN-γの濃度(pg/ml)
BLQ:定量化限界未満
N/A:ベースライン発現がBLQであったため、変化が未計算
【0299】
(表24)1日目および29日目のTNF-α発現
*=1日目または29日目のTNF-αの濃度(pg/ml)
BLQ:定量化限界未満
N/A:ベースライン発現がBLQであったため、変化が未計算
【0300】
(表25)1日目および29日目のIL-2発現
*=1日目または29日目のIL-2の濃度(pg/ml)
BLQ:定量化限界未満
N/A:ベースライン発現がBLQであったため、変化が未計算
【0301】
(表26)1日目および29日目のIL-6発現
*=1日目または29日目のIL-6の濃度(pg/ml)
【0302】
(表27)1日目および29日目のIL-8発現
*=1日目または29日目のIL-8の濃度(pg/ml)
【0303】
(表28)1日目および29日目のIL-10発現
*=1日目または29日目のIL-10の濃度(pg/ml)
【0304】
(表29)1日目から29日目までのサイトカイン発現のパーセント変化
【0305】
以上、本発明の具体的な特徴を例示目的のために記載したが、本明細書に開示された方法の詳細の多数の変動が、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなくなされ得ることは、当業者には明らかであろう。
【0306】
【配列表】
【国際調査報告】