(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】微小血管閉塞症を決定および/または治療するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A61B5/026 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541590
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 IB2022050152
(87)【国際公開番号】W WO2022149106
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518234405
【氏名又は名称】コルフロウ セラピューティクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ, ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】ロスマン, マーティン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】セギン, ジャック
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB04
4C017AC03
4C017BC11
(57)【要約】
体積流率および対応する圧力の均衡値が、決定され得、これが、ひいては、リアルタイムまたはほぼリアルタイムでのMVO、絶対流体力学的抵抗、血流予備比、冠血流予備比、および他の生理学的パラメータの計算を可能にするように、固有の順行性流動を阻止する、または逆転させるために注入システムを使用して、血管の中に体積流動を注入することによる、微小血管閉塞症(MVO)等の微小血管機能障害の診断および/または治療のための方法およびシステムが、提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に関する1つまたはそれを上回る血管生理学的パラメータを決定する方法であって、前記方法は、
管腔を有するカテーテルを前記患者の動脈血管の中に前進させることであって、前記動脈血管は、順行性血流を有し、前記管腔は、遠位端を有する、ことと、
前記管腔の遠位端の近位の場所において基準動脈圧を測定することと、
前記管腔を通して前記動脈血管の中に第1の体積流率において流体を送達することと、
前記動脈血管内の第1の動脈圧を測定することであって、前記第1の動脈圧は、前記第1の体積流率に対応する、ことと、
前記管腔を通して前記動脈血管の中に第2の体積流率において前記流体を送達することと、
前記動脈血管内の第2の動脈圧を測定することであって、前記第2の動脈圧は、前記第2の体積流率に対応する、ことと、
前記第1の体積流率、前記第1の動脈圧、前記第2の体積流率、および前記第2の動脈圧に基づいて、前記管腔の遠位端に近接する前記圧力が、前記基準動脈圧に対応する前記流体の均衡体積流率を決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記基準動脈圧および前記均衡体積流率に基づいて、微小血管系抵抗を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の動脈圧は、第1のピーク収縮期圧力、第1のピーク拡張期圧力、第1のRMS圧力、または第1の平均圧力のうちの1つに対応し、前記第2の動脈圧は、第2のピーク収縮期圧力、第2のピーク拡張期圧力、第2のRMS圧力、または第2の平均圧力のうちの1つに対応する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記流体は、遊離酸素を殆どまたは全く含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
均衡体積流率は、回帰分析を使用して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
狭窄が、前記動脈血管内に配置され、
前記管腔を通して前記動脈血管の中に前記均衡体積流率において前記流体を送達することと、
前記狭窄の近位の第3の動脈圧を測定することと、
前記狭窄の遠位の第4の動脈圧を測定することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第3の動脈圧および前記第4の動脈圧に基づいて、前記狭窄を特性評価することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第3の動脈圧、前記第4の動脈圧、および前記均衡体積流率に基づいて、狭窄抵抗を決定することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第4の動脈圧対前記第3の動脈圧の比に基づいて、血流予備比を決定することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記流体は、前記カテーテルから、前記カテーテルの遠位端における出口ポートを通して、前記動脈血管の中に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
流体は、前記カテーテルから、前記カテーテルの遠位端において配置される複数の孔を介して、前記動脈血管の中に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記カテーテルは、バルーンレスである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基準動脈圧は、前記カテーテルの近位区分上の圧力である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記基準動脈圧は、大動脈圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
血管狭窄および/または機能障害を患う患者を査定するための装置であって、前記装置は、
動脈血管の中に前進されるように定寸および成形される遠位領域を有するカテーテルであって、前記カテーテルは、流体を前記動脈血管の中に送達するための管腔を備える、カテーテルと、
圧力を測定するために、前記カテーテルの遠位領域に配置される圧力センサと、
前記遠位領域の近位の場所において基準圧力を測定するように構成される基準圧力センサと、
前記基準圧力センサおよび前記圧力センサに動作的に結合されるコントローラであって、前記コントローラは、
前記管腔を通して前記動脈血管の中に第1の体積流率において前記流体を送達させることと、
前記流体が前記第1の体積流率において送達される間、前記動脈血管内の第1の動脈圧を測定することと、
前記管腔を通して前記動脈血管の中に第2の体積流率において前記流体を送達させることと、
前記流体が前記第2の体積流率において送達される間、前記動脈血管内の第2の動脈圧を測定することと、
前記圧力が前記基準圧力に対応する均衡体積流率を決定することと
を行うように構成される、コントローラと
を備える、装置。
【請求項16】
前記コントローラはさらに、前記基準圧力を前記均衡体積流率で除算することによって、微小血管系抵抗を算出するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記流体は、利用可能な酸素を殆どまたは全く含有しない、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記圧力センサは、前記カテーテル上に配置される、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記圧力センサは、前記カテーテルに結合されるガイドワイヤ上に配置される、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記カテーテルは、バルーンレスである、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
前記コントローラはさらに、回帰分析を使用して前記均衡体積流率を決定するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項22】
前記コントローラはさらに、前記均衡体積流率において前記流体を送達させるように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項23】
前記圧力センサは、狭窄の近位側から前記狭窄の遠位側に前進されるように構成される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
第2の圧力センサをさらに備え、前記圧力センサおよび第2の圧力センサは、狭窄の反対側上に配置されるように構成される、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記カテーテルは、前記遠位領域に配置される出口ポートを通して前記流体を送達するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項26】
前記カテーテルは、前記遠位領域に配置される複数の孔を通して前記流体を送達するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項27】
前記基準圧力センサは、前記遠位領域の近位の場所において前記カテーテル上に配置される、請求項15に記載の装置。
【請求項28】
前記基準圧力センサは、前記患者の大動脈内に配置されるように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項29】
第3の動脈圧および第4の動脈圧を測定するようにさらに構成され、前記第3の動脈圧は、前記動脈血管内の狭窄の近位の点において測定され、前記第4の動脈圧は、前記狭窄の遠位の点において測定される、請求項22に記載の装置。
【請求項30】
前記コントローラはさらに、前記第3の動脈圧および前記第4の動脈圧に基づいて、前記狭窄を特性評価するように構成される、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記コントローラはさらに、前記第3の動脈圧、前記第4の動脈圧、および前記均衡体積流率に基づいて、狭窄抵抗を決定するように構成される、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記コントローラはさらに、前記第4の動脈圧対前記第3の動脈圧の比に基づいて、血流予備比を決定するように構成される、請求項29に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、2021年1月11日に出願された、米国仮特許出願第63/136,174号の優先権を主張する。
【0002】
微小血管機能および機能障害(MVD)、および心臓を含む、器官の微小血管系の他の疾患の診断および/または治療のための方法およびデバイスが、提供される。
【背景技術】
【0003】
心臓発作または急性ECG ST区画上昇心筋梗塞(「STEMI」)は、心外膜冠動脈の突然の閉塞によって、典型的には、関連付けられる塞栓性プラークおよび破片とともに、フィブリンおよび血小板に富む血栓によって引き起こされる。急性貫壁性心筋梗塞(心臓発作)の心電図上の兆候は、複数の解剖学的ECGリードを横断して現れるST区画上昇である。ST区画上昇は、重度の冠動脈閉塞または狭化の特徴であり、これは、虚血性心筋傷害および細胞死を引き起こす。大血管の閉塞は、多くの場合、小さい血管の重度の狭窄または閉塞(微小血管閉塞症またはMVOと称される)、血行動態的圧潰、塞栓性破片を伴う血栓、および血液供給を低減させる他の効果と関連付けられる。MVOは、死亡および心不全を含む、後期有害事象の独立した予測因子であり、いかなる成功したMVO療法も、現在まで識別されていない。
【0004】
介入心臓学は、心臓カテーテル法検査室においてカテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、およびステントを使用して重度に狭化または閉塞された心外膜冠動脈を開通することに長けている。しかしながら、微小血管閉塞症は、カテーテル法検査室において診断または治療されることができない。また、MVOは、典型的には、これが正確に診断されるときであっても、効果的に治療されることができない。
【0005】
心筋救出(すなわち、虚血によって引き起こされる壊死から筋肉を保全すること)は、STEMIを患う患者において良好な長期転帰を確実にするための重要な関心事である。肯定的な長期転帰を達成する重要な構成要素は、冠動脈閉塞の発症(自宅または病院外において)とカテーテル法検査室における閉塞された動脈の再開通との間の間隔を最小限にすることを要求する。介入心臓医は、合理化された効率的な救急医療システムを実装することによって、動脈閉塞時間の持続時間を短縮することができる。そのような手技の目標は、STEMI患者を可能な限り早くカテーテル法検査室に運び、それによって、長期のSTEMI合併症を回避することである。STEMIおよびMVOからもたらされる合併症は、収縮期および拡張期心不全、不整脈、動脈瘤、心室破裂、および複数の他の深刻な合併症を含む。これらの合併症は、著しく寿命を縮める、および/または生活の質に対する厳しい制限を課し得る。
【0006】
急性心筋梗塞に関する現代の介入療法は、目覚ましい臨床結果を伴って時間とともに成熟してきている。近年では、事象の30日後の心臓発作/STEMI死亡率は、30%を上回るものから5%未満に低下した。本改善は、冠動脈閉塞後に可能な限り早く血液で心臓を再灌流することによって達成され、これは、ひいては、心臓発作の発症後に可能な限り迅速にカテーテル法検査室において冠動脈を開通するように臨床処置システムを合理化することによってもたらされた。ステント留置およびバルーン血管形成術を含む、緊急手技が、急性心臓発作療法の早期および後期臨床結果を向上させたことは間違いない。
【0007】
しかしながら、STEMI患者を治療し、長期合併症を低減させるための実質的な課題が、残っている。これらの問題は、心不全(不良な心筋機能および心拡大)、心臓/心室破裂、持続的虚血性胸痛/狭心症、左心室動脈瘤および血栓、および悪性不整脈を含む。
【0008】
後期心不全は、STEMI症例の25~50%を悪化させ、不良な左心室機能および損傷した心筋から成る。心不全は、典型的には、心臓が形状およびサイズにおいてリモデリングされる際に悪化し、関連付けられる機能的損失を伴う。75歳以下の患者における全ての新しい心不全のほぼ半分が、STEMIに関連している。
【0009】
長年にわたるSTEMI療法の調査は、心外膜/大冠動脈を開通することが、心筋を完全に救い、長期の患者転帰を改善するために不十分であることを示している。心臓発作後の不良な後期結果の非常に一般的な理由は、微小血管閉塞症(MVO)である。MVOは、小さい内部心臓微小血管における閉塞または重度の流動限定である。これらの微小血管は、非常に小さく、到達不可能であるため、微小血管のサイズおよび数に起因して、ステント留置する、または従来の薬物/血栓溶解療法を用いて治療されることができない。したがって、広く開存する心外膜冠動脈にもかかわらず、残留するMVOは、心筋への血流を妨害し、虚血および組織壊死および重度の長期心筋損傷をもたらす。
【0010】
MVOは、したがって、心臓学における重要な未開拓領域のままである。心臓微小血管は、STEMIの間に細胞、血栓、および破片(血小板、フィブリン、および塞栓性プラーク物質)で頻繁に圧潰および充填される、小動脈、細動脈、毛細血管、および細静脈を備える。非常に多くの場合、妨害された微小血管(MVO)は、ステント設置後であっても分解せず、深刻な長期の否定的な予後の暗示を提示する。
【0011】
MVOは、ステント留置およびバルーン血管形成術が大心外膜冠動脈を開通させることに成功しても、STEMI患者において非常に一般的である。MVOは、心外膜動脈の開通および新しく設置されたステントを通して良好な血流を伴っても、全てのSTEMI患者の半分以上に生じる。
【0012】
MVO範囲は、心筋損傷の重症度および患者転帰にとって重要である。MVOは、MVO場所、範囲、および重症度を識別する、心臓MRI撮像を介してのみ正確に検出および測定され得る。しかしながら、MRIは、これが患者が別個の撮像面積内に位置することを要求し、完了までに最大1時間を要求し得、別個の高価な手技であるため、緊急時に、または心臓カテーテル法手技の間に、実施されることができない。
【0013】
MVOの重要な特徴が、以下によって要約され得る。
【0014】
1.STEMIにおけるMVOおよび微小血管機能障害は、心臓発作後の早期および後期の重大な合併症の主要な原因である。
【0015】
2.血管造影の「再流動なし」または「少ない再流動」は、MVO、すなわち、心筋内の妨害された微小血管によって引き起こされる。重度の症例におけるMVOは、カテーテル法検査室における冠動脈治療の間に可視化されるように、心外膜冠動脈内の非常に遅いX線撮影造影剤充填および流動によって血管造影的に特性評価される。しかしながら、X線撮影造影剤充填は、重度の再流動のない症例を診断することのみが可能であり、したがって、患者の大部分においてMVOを検出することが可能ではない。
【0016】
3.MVOは、長期の虚血、不良な血流、およびグルコース等の重要な代謝栄養素の補充ができないことから、心筋細胞傷害および死滅を引き起こす。MVO顕微鏡分析は、妨害された心筋内毛細血管に沿って、赤血球、フィブリン血栓を引き起こす血小板、死滅した心筋細胞、炎症細胞、筋細胞死、および死滅を伴う内皮細胞膨潤を伴う圧潰された微小血管を示す。
【0017】
4.急性MVOは、血小板およびフィブリンに富む塞栓、血小板-好中球凝集塊、死滅している血球および塞栓性破片によって完全に閉塞された心臓細動脈および毛細血管および近位血管閉塞によって引き起こされる非常に低い管腔内圧力に起因する小血管圧潰として現れる。
【0018】
5.MVOが、急性STEMI/心筋梗塞を悪化させるとき、はるかに大きい心臓/心筋損傷が、生じ、不良な心室機能が、早期に生じる。
【0019】
6.MVOは、非常に一般的である。これは、a.心外膜流動にかかわらず、全てのSTEMIおよび非ST区画上昇心筋梗塞(NSTEMI)の約53%、b.大貫壁性STEMIの90%、c.TIMI III(正常)X線可視化流動を伴うMIの40%において生じ、d.MVOは、心筋梗塞サイズの制御後の事象の単一の最も有効な予後マーカである。
【0020】
7.微小血管閉塞症を患う患者は、MVOを患わない患者よりも多い後期の主要な有害心血管事象(MACE)を有する(45%対9%)。
【0021】
8.MVOは、急性および慢性心血管有害転帰の最良の予測因子である。
【0022】
9.MVOは、急激に後期線維性瘢痕になり、不良な心臓機能を引き起こす。
【0023】
MVOは、従来のカテーテル法検査室において効果的に診断および測定されることができない。また、いかなる効果的な従来の療法も、現在商業的に利用可能ではない。以前に提案された療法は全て、本質的に効果的ではなく、ある場合には、危険であることが判明している。
【0024】
心筋梗塞は、定義上、細胞死であり、心筋虚血を頻繁に伴う。心筋梗塞は、可逆的である、短いが重大な虚血(「気絶心筋」)、心筋細胞が生きているが、正常に収縮するために十分な酸素または栄養素を伴わないときに生じる慢性虚血(「冬眠心筋」)、または長期の虚血を介した壊死および梗塞を引き起こし得る。梗塞は、典型的には、心内膜において始まり、心筋壁を横断して心外膜まで広がる、波として広がる。これらの事象はそれぞれ、原子核、エコー、およびPET方法等の非侵襲性撮像および試験によって特性評価されることができる。非常に良好な試験が、ガドリニウム造影剤が微小血管閉塞症を可視化するために使用され得る、心臓MRIによって提供される。
【0025】
微小血管閉塞症(MVO)をもたらす心筋梗塞(MI)は、重大な臨床的影響を及ぼす。心外膜冠動脈閉塞が、周知であるが、微小血管系の塞栓血小板およびフィブリンによる微視的/微小血管閉栓もまた生じるという仮説が立てられている。現在まで、異所性血小板凝集塊もまた、生じている。
【0026】
病理組織学的研究は、ヒト症例および動物モデルの両方において、フィブリンおよび血小板凝集塊を伴う内皮細胞浮腫を示している。微小血管閉栓はまた、赤血球、白血球、およびフィブリン-血小板凝集塊に起因して生じ、多くの場合、光学顕微鏡には可視ではなく、免疫染色およびEM/SEM/TEMを介して見られることができる。
【0027】
MVOは、微小血管機能障害のより大きい分類の下のいくつかの障害のうちの1つにすぎない。微小血管機能障害はまた、心外膜動脈閉塞を伴わない患者において生じ、急性冠動脈閉塞(STEMI)患者群よりもはるかに大きい患者集団を包含する。心外膜動脈(2mmよりも大きい血管)閉塞を伴わない患者における直径200ミクロン未満の血管の閉塞の効果は、長年の研究および多くの失敗した治療方略にもかかわらず、十分に理解されていない。
【0028】
したがって、より大きいMVD患者集団における微小血管機能および機能障害を査定し得る装置および方法の必要性が、当技術分野において存在する。そのような装置および方法は、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで査定を提供することによって患者の利益になり得る。また、微小血管閉塞症および組織壊死/梗塞を含む、微小血管機能障害を診断、定量化、および治療し得る装置および方法の必要性が、当技術分野において存在する。なおもさらに、リアルタイムまたはほぼリアルタイムでの問題の査定、診断、および/または治療を可能にする、治療決定を可能にする、および/または微小血管傷害および進行中の治療効能のリアルタイム推定を可能にする装置および方法の必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0029】
リアルタイムまたはほぼリアルタイムでの微小血管機能障害の査定、診断、および/または治療のための方法および装置が、提供される。種々の実施形態では、微小血管機能障害は、STEMI/NSTEMI、微小血管閉塞症、再流動なし、微小血管痙攣心原性ショック、および微小血管系の他の機能障害性疾患等の臨床症候群を含んでもよい。本発明の原理は、心臓、脳、腎臓、およびいくつかの他の器官を含む、多くの器官の診断および/または治療に適用可能である。より具体的には、非限定的実施形態は、微小血管機能障害を伴う血管および器官において、正常に診断する、開存性を回復させる、流動を再開通および保全する、および/または再灌流傷害を限定するためのデバイスおよび方法を含む。用途は、限定ではないが、心臓(急性心筋梗塞-一次経皮的冠動脈介入(PPCI))、脳(脳卒中(CVA))、腸虚血/梗塞、肺塞栓/梗塞、重症四肢虚血/梗塞、腎臓/腎虚血/梗塞、肝臓、末梢血管、神経血管、およびその他を含む、器官系のための療法を含む。
【0030】
本発明の一側面によると、診断および/または治療剤を送達するための特殊化注入および感知カテーテルと、制御コンソールとを含む、システムが、提供される。制御コンソールは、微小血管閉塞症、心筋梗塞、および心筋虚血等の生理学的事象を予測するために使用され得る生理学的パラメータを決定することによって、微小血管機能障害を診断および/または治療するために使用され得る特殊化アルゴリズムを用いてプログラムされる。MVO等の微小血管機能障害を診断および/または治療するための本発明のシステムを動作させる方法もまた、提供される。
【0031】
リアルタイムまたはほぼリアルタイムで微小血管機能査定を実施するように構成される、システムおよび装置が、含まれる。本発明のシステムおよび装置はまた、微小血管閉塞症(MVO)等の微小血管機能障害を診断および治療するために使用されてもよい。本発明の一側面によると、本システムおよび装置は、生理学的事象の正確な予測を行うことが可能な制御された冠動脈流動注入(CoFI)技法を採用する、侵襲性のカテーテル法を使用して、リアルタイムの診断および治療を可能にする。
【0032】
いくつかの側面によると、患者に関する1つまたはそれを上回る血管生理学的パラメータを決定するための方法が、提供される。本方法は、管腔を有するカテーテルを患者の動脈血管の中に前進させるステップであって、動脈血管は、順行性血流を有し、管腔は、遠位端を有する、ステップ、管腔の遠位端の近位の場所において基準動脈圧を測定するステップ、管腔を通して動脈血管の中に第1の体積流率において流体を送達するステップ、動脈血管内の第1の動脈圧を測定するステップであって、第1の動脈圧は、第1の体積流率に対応する、ステップ、管腔を通して動脈血管の中に第2の体積流率において流体を送達するステップ、動脈血管内の第2の動脈圧を測定するステップであって、第2の動脈圧は、第2の体積流率に対応する、ステップ、および/または第1の体積流率、第1の動脈圧、第2の体積流率、および第2の動脈圧に基づいて、管腔の遠位端に近接する圧力が、基準動脈圧に対応する、流体の均衡体積流率を決定するステップを含んでもよい。
【0033】
微小血管系抵抗が、基準動脈圧および均衡体積流率に基づいて決定されてもよい。第1の動脈圧は、第1のピーク収縮期圧力、第1のピーク拡張期圧力、第1のRMS圧力、または第1の平均圧力のうちの1つに対応してもよい。第2の動脈圧は、第2のピーク収縮期圧力、第2のピーク拡張期圧力、第2のRMS圧力、または第2の平均圧力のうちの1つに対応してもよい。流体は、遊離酸素を殆どまたは全く含有しない場合がある。体積流率は、回帰分析を使用して決定されてもよい。
【0034】
いくつかの側面によると、狭窄が、動脈血管内に配置され、本方法/システムは、狭窄を特性評価するために使用されてもよい。例えば、本システム/方法は、管腔を通して動脈血管の中に均衡体積流率において流体を送達するステップと、狭窄の近位の第3の動脈圧を測定するステップと、狭窄の遠位の第4の動脈圧を測定するステップとを含んでもよい。狭窄は、第3の動脈圧および第4の動脈圧に基づいて特性評価されてもよい。狭窄抵抗が、第3の動脈圧、第4の動脈圧、および均衡体積流率に基づいて決定されてもよい。血流予備比が、第4の動脈圧対第3の動脈圧の比に基づいて決定されてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、流体は、カテーテルから、カテーテルの遠位端における出口ポートを通して、動脈血管の中に送達される。流体は、カテーテルから、カテーテルの遠位端において配置される複数の孔を介して、動脈血管の中に送達されてもよい。カテーテルは、バルーンレスであってもよい。例えば、カテーテルは、バルーンまたは他の拡張要素を含まない場合がある。
【0036】
基準動脈圧は、カテーテルの近位区分上の圧力であってもよい。例えば、基準動脈圧は、大動脈圧であってもよい。
【0037】
いくつかの側面によると、血管狭窄および/または機能障害を患う患者を査定するための装置が、提供される。例えば、本装置は、カテーテル、圧力センサ、基準圧力センサ、および/またはコントローラを含んでもよい。カテーテルは、動脈血管の中に前進されるように定寸および成形される、遠位領域を有してもよい。カテーテルは、流体を動脈血管の中に送達するための管腔を含んでもよい。圧力センサは、圧力を測定するために、カテーテルの遠位領域に配置されてもよい。基準圧力センサは、遠位領域の近位の場所において基準圧力を測定するように構成されてもよい。コントローラは、基準圧力センサおよび圧力センサに動作的に結合されてもよい。コントローラは、管腔を通して動脈血管の中に第1の体積流率において流体を送達させる、流体が第1の体積流率において送達される間、動脈血管内の第1の動脈圧を測定する、管腔を通して動脈血管の中に第2の体積流率において流体を送達させる、流体が第2の体積流率において送達される間、動脈血管内の第2の動脈圧を測定する、および/または圧力が基準圧力に対応する、均衡体積流率を決定するように構成されてもよい。
【0038】
コントローラはさらに、基準圧力を均衡体積流率で除算することによって、微小血管系抵抗を算出するように構成されてもよい。流体は、利用可能な酸素を殆どまたは全く含有しない場合がある。圧力センサは、カテーテル上に配置されてもよい。圧力センサは、カテーテルに結合されるガイドワイヤ上に配置されてもよい。カテーテルは、バルーンレスであってもよい。例えば、カテーテルは、バルーンまたは他の拡張要素を含まない場合がある。
【0039】
コントローラはさらに、回帰分析を使用して均衡体積流率を決定するように構成されてもよい。コントローラはさらに、均衡体積流率において流体を送達させるように構成されてもよい。圧力センサは、狭窄の近位側から狭窄の遠位側に前進されるように構成されてもよい。本装置は、第2の圧力センサ等の付加的圧力センサを含んでもよい。圧力センサおよび第2の圧力センサは、狭窄の反対側上に配置されるように構成されてもよい。カテーテルは、遠位領域に配置される出口ポートを通して流体を送達してもよい。カテーテルは、遠位領域に配置される複数の孔を通して流体を送達してもよい。基準圧力センサは、遠位領域の近位の場所においてカテーテル上に配置されてもよい。基準圧力センサは、患者の大動脈内に配置されてもよい。コントローラは、(例えば、圧力センサからの信号に応答して)第3の動脈圧および第4の動脈圧を測定してもよい。第3の動脈圧は、動脈血管内の狭窄の近位の点において測定されてもよく、第4の動脈圧は、狭窄の遠位の点において測定されてもよい。コントローラは、第3の動脈圧および第4の動脈圧に基づいて、狭窄を特性評価してもよい。コントローラは、第3の動脈圧、第4の動脈圧、および均衡体積流率に基づいて、狭窄抵抗を決定してもよい。コントローラは、第4の動脈圧対第3の動脈圧の比に基づいて、血流予備比を決定してもよい。
【0040】
患者の微小血管動脈生理学的パラメータを決定するための方法が、提供される。これらの方法は、既知の流動送達率において患者の血管の中に流体を送達するステップと、既知の送達率と関連付けられる結果として生じる動脈圧を決定するステップと、均衡条件を決定するステップと、微小血管系抵抗を決定するステップとを含んでもよい。いくつかの実施形態では、これらの方法は、患者の動脈血管の中にカテーテルを前進させるステップと、動脈血管の中に第1の体積流率において流体を送達するステップと、動脈血管内の第1の動脈圧を測定するステップとを含む。続けて、流体が、第2の体積流率において動脈血管の中に送達されてもよく、第2の動脈圧が、測定される。血管を通した順行性血流の中断に対応する、均衡動脈圧および体積流率が、次いで、算出される。本計算された均衡点において、固有の駆動圧は、投与された流動によって誘発される遠位血管圧に等しく、結果は、近位血管区画におけるゼロ圧力勾配となり、したがって、ゼロ流動となる。次に、微小血管系抵抗が、均衡動脈圧を対応する注入された体積流率で除算することによって算出される。いくつかの実施形態では、均衡動脈圧および対応する動脈体積流率および結果として生じる圧力は、略線形関係を呈する。抵抗は、したがって、流動-圧力パラメータの線形回帰分析を使用して計算されてもよい。線形回帰分析が、内挿および外挿を含み得ることを理解されたい。
【0041】
患者のより大きい血管(心外膜冠動脈等)の動脈生理学的パラメータを決定するための方法もまた、提供される。
【0042】
本発明のシステムは、圧力センサを有するカテーテルと、カテーテルを通して流体を送達するように構成される、コントローラであって、コントローラは、少なくとも2つの流体流率および圧力に基づいて、均衡圧力値を計算するように構成される、コントローラとを含む、患者の微小血管機能障害を査定するための装置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本装置は、遠位端を有する、カテーテルと、血流を有する血管の中に流体を送達するための管腔と、カテーテルの遠位端の近傍に配置される、圧力センサと、複数の流率においてカテーテルに流体を送達するようにプログラムされる、コントローラとを含んでもよい。コントローラは、注入された流体流率および結果として生じる圧力に基づいて、均衡体積流体流率および圧力を計算し、心臓MRI MVO測定値に合致する値を計算するようにプログラムされる。カテーテルは、必要ではないが、閉塞バルーンを含んでもよい。本発明の一側面によると、算出されたMVOは、これがMRIによって決定されるものに匹敵するMVO値をもたらすため、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本明細書に記載される本開示の前述および他の目的、特徴、および利点は、付随の図面に図示されるように、それらの発明的概念の特定の実施形態の以下の説明から明白となるであろう。図面が、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、発明的概念の原理を図示することに重点が置かれていることに留意されたい。また、図面では、同様の参照文字は、異なる図全体を通して同一の部分または類似する部分を指し得る。本明細書に開示される実施形態および図が、限定的ではなく、例証的であると見なされるものであることを意図している。
【0044】
【
図1】
図1は、本発明の原理による、MVDの査定のための例示的モジュール式システムの斜視図である。
【0045】
【
図2A】
図2A-2Cは、本発明に従って構築される、注入カテーテルの代替実施形態の遠位端の斜視図である。
【
図2B】
図2A-2Cは、本発明に従って構築される、注入カテーテルの代替実施形態の遠位端の斜視図である。
【
図2C】
図2A-2Cは、本発明に従って構築される、注入カテーテルの代替実施形態の遠位端の斜視図である。
【0046】
【
図3A】
図3Aは、
図2A-2Dに描写される遠位端との併用のために好適な注入カテーテルの中心部分の斜視図である。
【0047】
【
図3B】
図3Bおよび3Cは、それぞれ、圧力チャンバを有する注入カテーテルの遠位部分の代替実施形態の側面断面図および斜視図である。
【
図3C】
図3Bおよび3Cは、それぞれ、圧力チャンバを有する注入カテーテルの遠位部分の代替実施形態の側面断面図および斜視図である。
【0048】
【
図4】
図4は、1つまたはそれを上回る圧力センサ/トランスデューサを有する、カテーテルの好ましい実施形態の遠位端の側面図である。
【0049】
【
図5】
図5は、本発明の原理に従って構築される、システムの概略図である。
【0050】
【
図6A】
図6Aは、注入液送達部位における注入液ポンプ流動と結果として生じる圧力との間の例示的関係を描写する、グラフである。
【0051】
【
図6B】
図6Bは、本発明による、均衡流率および圧力を実証するために使用され得る、固有の流率と注入液流率との間の例示的関係を描写する、グラフである。
【0052】
【
図7】
図7は、本発明の原理による、MVDを計算するための方法論のアルゴリズムにおいて具現化される、生理学的コンポーネントの抵抗を描写する、例示的電気回路モデルである。
【0053】
【
図8】
図8は、MVOを算出する際に採用される、生理学的パラメータの推定値を発生させるためのフローチャートである。
【0054】
【
図9】
図9は、本発明の原理による、冠血流予備比(CFR)を決定するためのフローチャートである。
【0055】
【
図10】
図10は、本発明の実施形態による、狭窄を伴う血管内に位置付けられる、注入カテーテルの遠位端の側面図である。
【0056】
【
図11】
図11は、本発明の原理による、大心外膜動脈における狭窄抵抗、血流予備比(FFR)、および他の生理学的水力学的血管パラメータおよび機能を算出するためのフローチャートである。
【0057】
【
図12】
図12は、本発明のシステムにおいて利用され得る、コンポーネントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な説明
本発明は、生理学的事象を予測するためのパラメータを決定するための技法を実装するためのデバイス、システム、および方法を対象とし、心臓を含む、多くの器官の診断および/または治療に適用可能である。より具体的には、本発明のシステムおよび方法は、微小血管閉塞症、心筋梗塞、および心筋虚血等の生理学的事象の正常な予測を可能にする。本発明のシステムおよび方法の用途は、心臓(急性心筋梗塞-一次経皮的冠動脈介入(PPCI))、脳(脳卒中(CVA))、腸虚血/梗塞、肺塞栓/梗塞、重症四肢虚血/梗塞、腎虚血/梗塞、肝臓、末梢血管、神経血管、および他の閉塞症(MVO)および組織壊死/梗塞の診断および治療を含む。
【0059】
図1を参照すると、冠動脈および他のヒト/動物血管系および器官のための例示的モジュール式コンピュータ化診断および注入システム100が、説明される。注入システム100は、例証として可動性コンソールとしてパッケージ化され、冠動脈圧および流動のリアルタイムまたはほぼリアルタイムの測定、圧力/流動時間パラメータ、冠血流予備比(CFR)測定値等の冠動脈生理学測度、血流予備比(FFR)測定値、自己調整機能、血行動態抵抗決定、均衡流動決定、および/または均衡圧力決定を含む、生理学的システムおよび事象の特性評価を可能にするようにプログラムされる。注入システム100は、コントローラ101と、ディスプレイ102と、注入ポンプ103と、圧力測定システム104とを含み、全てが可動性プラットフォーム105上に搭載される。
【0060】
ここで
図2Aを参照すると、例示的注入カテーテル200の遠位端が、説明される。注入カテーテル200は、カテーテルの近位から延在し、注入ポンプ103に結合する、注入管腔212と流体連通する注入ポート202を含む。ガイドワイヤ管腔204は、カテーテル200を通して延在し、注入カテーテルが、ガイドワイヤに沿って、患者の血管系内の所望の位置まで前進されることを可能にする。カテーテル200は、拡大された直径区分206を漸広させている場合があり、これは、診断目的のために流体力学的抵抗を増加させる役割を果たす。米国特許出願公開第2021/0361170号として公開され、CorFlow Therapeutics AGに譲渡された、米国特許出願第17/327,433号(その全内容は、参照することによって組み込まれる)に解説されるように、流体流動に暴露されると、区分206は、身体管腔内に静水圧的圧力勾配を生成する。圧力センサ208が、カテーテル200の本体内に位置し、圧力測定システム204に結合され、患者の血管系内の流体流動の圧力を決定してもよい。
【0061】
図2Bに関して、注入カテーテルの代替実施形態、すなわち、カテーテル210の遠位端が、説明される。0.014インチ圧力測定ガイドワイヤであり得る、ガイドワイヤ201は、ガイドワイヤ201の遠位端がガイドワイヤ管腔204の退出口から延在するように、迅速交換(RX)様式でカテーテル210を通して挿入されてもよい。注入ポート202は、ガイドワイヤ管腔204の退出口に隣接するカテーテル201の遠位端上に位置し、点線で示される、注入管腔212を介して流体を送達する。
【0062】
図2Cでは、別の代替実施形態の遠位端が、説明され、注入カテーテル230が、閉塞バルーン236と、放射線不透過性マーカ238および240とを有する。注入出口ポート232は、点線で示される、注入管腔242と流体連通して配置される。ガイドワイヤ管腔234もまた、提供され、オーバーザワイヤまたは迅速交換使用のいずれかのために配列されてもよい。Schwartzへの米国特許第10,315,016号またはHoemへの米国特許出願公開第2018/0280172号(そのそれぞれの全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるもの等の注入カテーテルの付加的実施形態が、本明細書に使用されてもよい。
【0063】
ここで
図3Aを参照すると、本発明の原理に従って構築される、注入カテーテルの中心部分が、説明される。カテーテル310の中心部分は、ガイドワイヤ管腔311を例証として同軸に包囲する、注入管腔312を含む。代替実施形態では、注入管腔312は、ガイドワイヤ管腔311に対して横並びまたは別様に配列されてもよい。好ましい実施形態では、カテーテル310の直径は、小さく、それによって、カテーテルが、診断および療法のためにより小さい血管の中に導入されることを可能にする。ガイドワイヤ管腔311は、好ましくは、圧力感知を提供するガイドワイヤを受け取るために十分な直径を有する。
【0064】
図3Bおよび3Cでは、ガイドワイヤ301上に配置される圧力チャンバ306を有する、例示的注入カテーテルの遠位部分が、説明される。圧力チャンバ306は、遠位動脈区画における安定した圧力測定の領域を提供するように設計され、カテーテル先端の近傍または遠位と異なる場所における圧力測定を可能にする。
図3Cに示されるように、カテーテルの外面は、カテーテルの遠位端における注入液のより良好な分散、およびまた、より精密な圧力測定を提供するために、細孔、スリット、またはスロット323を含んでもよい。細孔、スリット、またはスロット323はまた、特定のタイプの診断または療法に関して所望され得るように、注入液流動パターンを指向するように配列される。流動を均一に分配し、血管内の順行性および/または逆行性方向に優先的に注入された流動を指向するために、血管内のカテーテルの遠位端を心合するための機構を含む、血管の中に流体を注入するための付加的カテーテル構成が、2019年9月20日に出願され、米国特許出願公開第US2020/0093991 A1号として公開された、同時係属中の同一出願人による米国特許出願第16/577,962号(参照することによって本明細書に組み込まれる)の
図5A-7Eに関して説明されている。
【0065】
ここで
図4および5を参照すると、本発明に従って構築される、注入システムの例示的実施形態が、説明され、これは、1つまたはそれを上回る圧力センサを含む。
図4は、遠位圧力センサ/トランスデューサ402および404を含む、カテーテルの好ましい実施形態の遠位端400を描写する。圧力センサ/トランスデューサ402および404は、好ましくは、縦方向に1cmを上回って離れた距離に搭載され、より好ましくは、センサが典型的な狭窄の両側上に位置することを可能にするための距離に離間される。ガイドワイヤ406は、ガイドワイヤ管腔408内に配置される。カテーテル本体412の遠位端410は、それを通して注入液が制御可能に放出され得る、注入管腔と連通する複数の孔416を含有する、キャップ414を含む。
図4に示される圧力センサ構成は、軸方向血管内(縦方向)圧力勾配の測定を可能にする。縦方向に測定された圧力勾配は、血管/動脈吸入サイズと流動との間の関係を理解するために使用され、したがって、カテーテルが位置する大血管の抵抗の査定を可能にし得る。
【0066】
例えば、血流予備比(FFR)は、冠動脈狭窄の血行動態有意性の査定を可能にするパラメータであり、典型的には、最大血管拡張時に決定される。
図4の2圧力センサ/トランスデューサ構成は、最大血管拡張の必要性を伴わずに、本測定を促進する。注入ポンプおよび圧力測定を使用する冠動脈流動注入はまた、単純かつ直接的な絶対的な狭窄および血行動態/水力学的定量化を可能にする。冠血流予備比(CFR)および下記に説明されるような微小血管抵抗を含む、他の重要な生理学的パラメータも、同様に測定されてもよい。電解質溶液等の酸素含有量を伴わない流体注入は、アデノシン等の静脈内または動脈血管拡張剤を使用して最大血管拡張を薬理学的に誘発する必要性を回避する。これは、後続の生理学的血管拡張を伴う誘発された酸素不足状態に起因する。加えて、
図4に示される本センサ構成は、絶対的な流体力学的抵抗が定量化されることを可能にし、これは、ひいては、数学的変換方法を使用した血流予備比計算を可能にする。
【0067】
図5に関して、
図1に描写されるモジュール式可動性システムにおいて具現化され得るような、本発明の原理に従って構築される、システム500が、説明される。システム500は、隆起504および遠位端506を形成する、局所的または全般的な直径増加を有する、カテーテル502を含む。カテーテル502は、圧力感知ガイドワイヤ508にわたって患者の血管内の所望の場所に前進されてもよい。カテーテル502は、オーバーザワイヤまたは迅速交換モダリティにおいてガイドワイヤ508を受け取るための内部管腔とともに構築されてもよい。圧力センサ510および注入孔512は、遠位端506の近傍に配置される。リザーバ514内に位置する注入液は、注入液管腔を介してカテーテル502を通して選択的に圧送され、ポンプ516によって注入孔512を通して退出する。プロセッサと、プログラムされたアルゴリズムとを含み得る、コントローラ518は、圧力センサ510および圧力ガイドワイヤ508と通信し、それらのデバイスから圧力読取値を受信するように構成される。
【0068】
コントローラ518はまた、ポンプ516と通信し、ポンプ516を介して注入される注入液の流率を制御するように構成される。下記に説明されるような均衡流率の計算からのフィードバックが、ポンプ、バルーン圧力(実施形態では、存在するバルーンを有する)、または他のシステムコンポーネントの動作を調節し、システム機能における所望の変更を行い、診断または治療システム機能を改良するために使用されてもよい。コントローラはさらに、RAM、ROM、ディスクドライブ、または他の公知の記憶媒体を含み得る、記憶媒体520を含む。いくつかの実施形態では、記憶媒体520は、本願に開示されるアルゴリズムおよび数学的計算を記憶してもよい。いくつかの実施形態では、記憶媒体520は、圧力センサ510および圧力ガイドワイヤ508から受信されるデータを記憶し、および均衡圧力および体積流動値、FFR、および他の計算された値を記憶するために使用される。いくつかの実施形態では、記憶媒体520は、流率を制御し、測定を実施し、結果を計算する、機械学習アルゴリズムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ518は、インターネット522等の外部広域ネットワークおよび/またはコンピューティングデバイス524と通信し、記憶媒体520内のアルゴリズムを精緻化するために使用され得るデータを通信してもよい。コントローラ518はまた、本発明の流動分析方法を使用して算出されたMVO値に相関され得る微小血管閉塞症機能障害を査定するために使用される、MRI画像およびそれらの画像から導出されるパラメータのデータベースにアクセスするようにプログラムされてもよい。
【0069】
好ましい実施形態では、近位動脈基準圧力であり、いくつかの実施形態では、大動脈圧であり得る、患者の血管系内の基準圧力を有することが、望ましい。基準圧力(および本明細書および図に参照される他の圧力)は、ピーク収縮期圧力、ピーク拡張期圧力、平均圧力、二乗平均平方根(RMS)方法を使用して決定される圧力、他のタイプの既知の圧力測定値、またはこれらのタイプの圧力測定値のうちのいずれかの組み合わせに対応してもよい。システム500は、随意に、さらに、遠位端506からの近位距離に位置する、圧力センサ526を含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態では、圧力センサ526は、圧力センサ526を用いてとられた読取値が、近位動脈基準圧力を表し得るように、遠位端506の十分に近位に位置する。そのような実施形態では、遠位端506からの注入液流動は、圧力センサ526によってとられた圧力測定値に対して、あるとしても、無視できる効果を有する。代替として、または圧力センサ526に加えて、システム500は、第2のカテーテル、ガイドワイヤ、または他の送達デバイスに取り付けられる、圧力センサ528または圧力センサ530を含んでもよい。いくつかの実施形態では、圧力センサ528は、カテーテル502と異なる場所に配置されるように構成され、基準圧力を決定するために使用される。なおも他の実施形態では、システム500は、基準圧力を決定するために使用される、1つまたはそれを上回る遠隔圧力センサと通信してもよい。近位動脈基準圧力はまた、米国特許出願公開第2021/0361170号として公開され、CorFlow Therapeutics AGに譲渡された、米国特許出願第17/327,433号(その全内容は、参照することによって組み込まれる)に解説されるもの等の他の方法を使用して取得されてもよい。
【0070】
好ましい実施形態では、
図2-5に示されるような注入カテーテルは、ポンプが既知の流率または複数の流率において注入液管腔を介して注入液を提供するように、ポンプを制御するように構成されるコントローラと通信してもよい。コントローラはまた、ガイドワイヤ上またはカテーテル上の別の場所に位置し得る、1つまたはそれを上回る圧力センサと通信する。下記により詳細に議論されるように、コントローラは、順行性血流が止まる、均衡動脈圧および均衡体積流率を決定するように構成される。当業者は、開示される発明が、注入液の制御された放出を通して順行性血流を低減または停止させるための装置および方法を提供するであろうことを理解するであろう。
【0071】
1つの好ましい実施形態では、システム500は、
図4に関して説明されるような注入カテーテルを採用する一方、他の実施形態では、
図2または3に描写される、または上記に組み込まれる米国特許出願公開第US2020/0093991 A1号に説明されるような注入カテーテルが、採用されてもよい。システム500はまた、米国特許出願第17/327,433号(参照することによって組み込まれる)に説明されるような注入カテーテルを採用してもよい。好ましくは、システム500との併用のために好適な注入カテーテルは、6Fガイドシースと適合し、0.014インチ圧力ガイドワイヤを受け取るガイドワイヤを含み、5~50ml/分の範囲内の体積流率を注入することが可能である。随意に、注入カテーテルは、応従性または半応従性閉塞バルーンを含んでもよい。
【0072】
本発明の原理によると、注入カテーテルは、血管の遠位または近傍の心筋血管がMVO等の微小血管機能障害として現れる、および/または心筋梗塞または虚血に関与する機能障害性血管を含み得るかどうかを査定するために、患者の心筋に血液を供給する心外膜血管の中に挿入される。体積流動が、順次増加される流率においてカテーテルの注入孔を通して導入され、心外膜または心筋内血管内で全体的または部分的に順行性血流を遮断する。
【0073】
近位動脈基準圧力が、ここで、
図6Aを参照して議論され、近位動脈基準圧力は、大動脈圧P
AOとして表される。近位動脈基準圧力は、患者の大動脈と通信して配置されるセンサを使用して大動脈圧を取得することによって等、当業者によって公知の様々な方法で決定されてもよい。加えて、近位動脈基準圧力は、圧力センサ526を使用して決定されてもよい。近位動脈基準圧力はまた、カテーテル502が治療部位に前進されている際に生じ得るように、センサを遠位に前進させる前に、圧力センサ510等の遠位圧力センサを用いて読取値をとることによって決定され得る。後者の方法は、いったんこれが治療部位に前進されると、カテーテルからの増加される抵抗を考慮し得ないため、これらの2つの方法が、近位動脈基準圧力の同じ決定をもたらさない場合があることを理解されたい。
【0074】
いったん本発明によるカテーテルが、治療部位に、またはその近傍に設置されると、遠位圧力測定値が、注入液が1つまたはそれを上回る流率において提供される際に取得され得る。例えば、システム500を参照すると、カテーテル502が、治療部位に前進されてもよい。臨床医は、システム500に、第1の流率において注入液を送達させてもよい。注入液が、患者に送達されている際、1つまたはそれを上回る圧力測定値が、圧力センサ510を用いてとられ、近位動脈基準圧力を表すセンサ526を用いてとられた1つまたはそれを上回る圧力測定値と比較されてもよい。実施例を継続すると、第1の流率において、圧力センサ510を使用して決定された圧力は、圧力P
1であると決定されてもよく、圧力センサ526を使用して決定された近位動脈基準圧力は、P
AOであると決定されてもよく、そのそれぞれは、
図6Aのチャート上に描写され、P
1は、P
AOよりも低い値を有するように示される。オペレータまたは自動化制御システムは、次いで、注入液の流率を第2の流率まで増加させ、
図6Aに圧力P
2として図示される、圧力センサ510における圧力の決定を行ってもよい。注入された流率が、増加し続け得、オペレータまたは自動化制御システムが、圧力センサ510を使用して関連付けられる圧力を決定し得、そのような圧力決定が、圧力P
3、P
4、P
5、およびP
6として
図6Aに図示され得ることを理解されたい。本発明の好ましい実施形態は、1つの圧力の決定から次の圧力の決定までの流率における増加(必要ではないが、固定された量において段階的であり得る)を伴うが、実施形態が、より高い流率における事前の圧力を決定した後、後続圧力を決定するために、流率を低下させ得ることを理解されたい。
【0075】
近位動脈基準圧力(大動脈圧であり得る)と同一である、またはそれに十分に近接する注入液送達部位における圧力をもたらす注入液の流率を決定することが、所望される。
図6Aに示される実施例では、流率Q
MVRにおいて、対応する圧力P
5は、近位動脈基準圧力P
AOと同一である。流率Q
MVRが、微小血管系を通した流動または狭窄を通した流動を表すことが仮定され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、オペレータまたはシステムは、圧力センサ510を用いてとられる圧力測定値が、近位動脈基準圧力に十分に近接するまで、注入液流率をより高くまたはより低く調節してもよい。
図6Aの実施例では、本システムは、近位動脈基準圧力P
AOと同一である、圧力P
5をもたらす流率を識別する前に、圧力P
1と圧力P
6との間の圧力をもたらす異なる流率における複数の測定値をとっている場合がある。そのような決定は、単に、治療部位において決定された圧力と近位動脈基準圧力との間の比較に応じて行われてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、試行錯誤プロセスにおいて異なる流率に対応する圧力を決定することに頼る必要性を伴わずに、近位動脈基準圧力P
AOに対応する圧力P
5を決定することが、望ましい。この点で、本発明者らは、線形関係が、注入液流率と注入液が送達されている部位において決定された圧力との間に存在することを見出した。本線形関係に照らして、臨床医は、第1の流率における圧力を決定し、次いで、第2の流率における圧力を決定し、次いで、これらの圧力を使用し、線形回帰を使用して、数学的に近位動脈基準圧力に対応する流率を決定し得る。例えば、
図6Aを参照すると、臨床医は、圧力P
4が1つの流率において生じ、圧力P
6が別の流率において生じることを決定し得る。線形回帰を使用して、臨床医は、圧力P
5(近位動脈基準圧力P
AOに対応する)が流率Q
MVRにおいて生じることを決定し得る。したがって、所望の流率が、2つのみの異なる流率における圧力決定を行った後に見出され得る。
【0078】
臨床医は、近位動脈基準圧力を超える送達部位における圧力をもたらす率において、またはそれを上回って注入液を送達することを回避することを所望し得る。線形回帰を利用して、好ましい実施形態における臨床医は、2つの異なる注入液流率に関する注入液送達部位における結果として生じる圧力を決定し得、そのそれぞれは、近位動脈基準圧力よりも低い圧力をもたらす。例えば、再び
図6Aを参照すると、注入液は、2つの比較的に低い注入液流率において送達され、注入液送達部位において圧力P
1および圧力P
2をもたらす。線形回帰が、注入流率Q
MVRに対応する、点P
5に到達するために、
図6Aの点の間に線を外挿するために使用され得る。ここで
図6Bを参照すると、微小血管抵抗、大血管の血管または狭窄抵抗、FFR、およびCFRを算出するために使用され得る、均衡体積流率および対応する動脈圧を決定するための方法が、説明される。特に、
図6Bは、制御された流動注入(「CoFI」)流動と結果として生じる固有の血管流動との間の関係を図示する。注入液流動は、本発明の装置および方法によって提供される。
図6Bでは、遠位心筋の中への注入液流動が、固有の駆動圧に等しい圧力を生成するとき、均衡流動に到達する。この時点で、正味の駆動圧勾配は、ゼロであり、したがって、固有の近位流動は、ゼロである。いくつかの実施形態では、段階的様式であり得る、システム500によって提供される注入液体積流率が、増加されるにつれて、注入液流動からもたらされる増加された動脈圧は、固有の順行性血液流率における対応する減少を引き起こす。例えば、点Cにおいて、注入液体積流率が、4ml/分の値を有するとき、固有の体積流率は、約0.5ml/分の値まで低下する。注入された体積流率が、さらに増加するにつれて、固有の順行性血流は、停止し、次いで、遠位圧力が、勾配を反転させるほど十分に大きくなる場合、逆行性(逆転された)方向となる。
図6Bのチャートに描写される固有の流率の負の値は、逆行性流動と関連付けられる。順行性流動が止まる注入液体積流率は、本明細書では、「均衡」条件と称され、
図6Bでは、本均衡条件は、注入液体積流率が約4.5ml/分であるときに生じる。
【0079】
本出願人は、注入液体積流率と固有の体積流率との間の関係が、略逆線形関係を有することを発見した。
図6Bに描写される実施例では、試験される具体的動脈血管系に関して、固有の体積流率と注入液流率との間の相関は、方程式y=(-0.88)x+4によって近似されると決定され、yは、ミリリットル/分単位における固有の体積流率の値であり、xは、注入液体積流率の値である。
【0080】
本発明の側面によると、体積注入液流率と測定された血管圧力との間の関係は、均衡条件を決定するために使用されてもよい。動物およびヒトの両方におけるそれらの体積流率と圧力との間の測定された略線形関係に基づいて、均衡条件は、わずか2つのデータ点および線形回帰分析を使用して決定され得る。例えば、
図6Aのチャートの点P
1-P
6のうちの任意の2つおよび線に関する方程式(y=mx+b)を使用して、方程式は、ゼロ駆動圧勾配、したがって、近位血管区画におけるゼロの固有の体積流率をもたらす基準圧力に対応する注入液体積流率を求めるように解かれ得る。血流予備比(FFR)、絶対心筋抵抗、微小血管抵抗、および他のパラメータを決定する方法が、上記に組み込まれる米国特許出願第16/577,962号に説明されている。例えば、その出願に説明されるように、MVOに関連する遠位微小血管抵抗が、均衡圧力を均衡体積流率で除算することによって算出され、MVOが、したがって、推定され得る。
【0081】
図7は、大心外膜動脈における狭窄を査定するために使用され得る、本発明のいくつかの実施形態による、モデルを説明する、概略図である。具体的には、
図7は、本明細書に説明される現象が狭窄を査定することに関連する、電気的アナログを使用する血行動態モデルを描写する。モデルは、圧力がP
distalとして識別される、狭窄の遠位の点までのカテーテルおよび狭窄を過ぎる固有の流体流動、および側副の固有の流体流動を描写する。モデルはまた、カテーテルに起因する固有の流動抵抗(カテーテル-R)、狭窄に起因する固有の流動抵抗(狭窄-R)、および側副チャネルに沿った固有の流動抵抗(側副-R)を示す。
【0082】
モデルは、非限定的実施例としてシステム500を参照して解説される。いくつかの実施形態では、遠位端506が、狭窄の近位端の近傍に配置される。上記に説明されるモデルを使用して、注入液が、1つまたはそれを上回る流体流率において送達され、圧力ガイドワイヤ508によって測定される圧力(
図7にP
cofiとして表される)が圧力センサ526によって測定される圧力と同一であるとき等、流体送達部位における圧力が近位動脈基準圧力(均衡流率に対応する)にある、またはそれに十分に近接することが決定される流率の決定を可能にする。狭窄を通した流率は、流率Q
pump,eとして表され得、圧力ガイドワイヤ508が狭窄の遠位端に前進される際に維持され得る。いったん圧力ガイドワイヤ508が、狭窄の遠位端に来ると、圧力P
distalが、注入液が流率Q
pump,eにおいて送達され続ける際に圧力ガイドワイヤ508によって測定され得る。狭窄の抵抗が、次いで、(P
cofi-P
distal)/Q
pump,eを使用して計算され得る。
【0083】
図10を参照して描写される構成等の他の実施形態では、圧力P
cofiおよび圧力P
distalは、注入液が流率Q
pump,eにおいて送達されている際、圧力センサ802および圧力センサ804によって同時に決定されてもよい。
【0084】
図8では、本発明による、システム500の使用を説明するフローチャートが、説明される。システム500は、既知である、または患者において測定される、近位動脈基準圧力に対応する注入液率を決定するために使用されてもよい。方法1100は、ステップ1102において始まり、システム500の注入カテーテルが、患者に注入液を送達するために血管の中に挿入される。ステップ1104において、初期注入液流率が、選択され、これは、ポンプ516が注入カテーテル502を通して注入液を送達する、体積流率を設定するために、コントローラ518を使用して遂行されてもよい。ステップ1106において、1つまたはそれを上回る読取値が、治療部位における流動の圧力を決定するために、カテーテルまたはガイドワイヤ上に位置する圧力センサまたはトランスデューサを用いて等、患者の血管の内側でとられる。ステップ1108において、付加的データ点が所望されるかどうかの決定が、行われる。線形回帰分析に関して、少なくとも2つの注入液体積流率に関するデータが、要求されるが、付加的流率に関するデータが、冗長性または安全性目的のために、またはすでに収集されたデータが相互に近接近している場合に所望され得る。付加的データが、所望される場合、プロセスは、経路1110に沿ってステップ1112に進み、そこで、注入液流動性質が、例えば、より高い体積流率を選択することによって修正される。本プロセスは、ステップ1102-1106に進み、そこで、注入液が、付加的流率において患者に送達され、圧力値が、測定される。前述のプロセスは、ステップ1108において十分なデータ点が存在することが決定されるまで継続し、その後、流動-圧力関係が、上記に議論されるように、ステップ1116および1118において、線形回帰分析を使用することによって等、均衡流率の算出を可能にするために決定される。近位動脈基準圧力に対応する注入液流率が、したがって、決定され得る。
【0085】
本明細書に説明される装置および方法が、有利なこととして、血流予備比(FFR)を決定するために使用され得ることが、当業者によって理解されるであろう。FFRは、具体的体積流率における、狭窄等の血行動態抵抗を横断する血管内の圧力の瞬間的比率として算出され得る。有利なこととして、本値は、患者毎に変動する、または充血性流動の変化が生じる場合に、経時的に同一の患者内で変動性を呈し得る、非常に恣意的な値である、「最大充血」に対応する単一のFFR値を取得する従来的なFFR方法と異なり、微小血管流動に依存する、瞬間的かつ絶対的な値である。
【0086】
冠血流予備比(CFR)は、全アデノシン最大微小血管拡張時の冠動脈流動と比較したベースライン条件における安静時冠動脈血管流動の比率である。CFRは、注入液流動が開始される時間においてデータを捕捉することによって取得され得る。進行性の遠位低酸素症が、注入液流体が酸素含有量を殆どまたは全く有していないときに生じ、これは、続けて、患者における自然な虚血性血管拡張応答を引き出す。故に、本反応は、現在使用されており、CFRを決定するための従来の技法に不可欠である、アデノシンまたはその他等の血管拡張剤の必要性を伴わずに、
図8に説明されるプロセスが繰り返し実施されることを可能にする。
【0087】
本発明のまた別の側面によると、CFRは、
図9に説明されるように決定されてもよい。CFRを決定するための方法1200は、ステップ1202において、動脈または他の管腔内等、患者の血管または器官内の所望の場所にシステム500の注入カテーテルを設置するステップを伴う。ステップ1204において、治療の前または治療の開始時に、患者の管腔内の圧力測定値を取得すること等、1つまたはそれを上回る初期条件が、取得されてもよい。好ましくは、ステップ1204は、注入液がポンプ516によって患者に送達されることに先立って、またはその直後に行われる。ステップ1206において、注入液が、注入カテーテルを通して患者に送達され、注入液は、好ましくは、虚血を誘発するために、酸素含有量を殆どまたは全く有していない。概して、遊離酸素を殆どまたは全く有していない流体を用いて灌流されると、結果として生じる虚血が、典型的には、3~7秒以内に血管に血管拡張を受けさせるであろうことが明確に理解されている。ステップ1208において、血管内の圧力は、圧力が漸近的低値に到達するときを決定するために監視される。流率が、次いで、増加され、圧力が、測定されてもよく、これらのステップは、
図8に関して説明されるように、圧力のいかなるさらなる変化も検出されず、均衡流率が確立されるまで、繰り返される。本条件は、7~10秒で生じることが示されている。均衡流率が、決定されると、これは、ステップ1210において、最大充血時の流率に対応するであろう。ステップ1212において、CFRは、次いで、ステップ1204において決定された初期圧力対最大充血時の均衡注入流率において測定された圧力の比として決定されてもよい。
【0088】
当業者は、方法1200が、閉塞バルーンの有無を問わずに実施され得ることを認識するであろう。有利なこととして、いかなる閉塞バルーンも伴わない装置が、方法1200のために利用される場合、施術者は、より狭い直径を有する身体管腔にアクセスし、したがって、それらがバルーン利用のために小さすぎるため、以前に利用不可能であった小さい空間内での診断を可能にし得る。加えて、閉塞バルーンを伴わずにパラメータを査定することは、切開、引裂、または血管閉塞を誘発し得る、いかなるバルーン-動脈接触も存在しないため、より安全な手技である。
【0089】
本発明の原理による、大心外膜動脈における狭窄抵抗またはFFRの決定が、
図10および
図11のフローチャートに関して説明される。狭窄抵抗またはFFRを決定するための方法1300は、ステップ1302において、動脈または他の管腔内等、患者内の所望の場所に注入カテーテルを設置するステップを伴う。好ましくは、注入カテーテルは、1つまたはそれを上回る圧力センサが、治療部位の近位および遠位に位置するように設置される。実施例として、
図10では、遠位圧力センサ802が、狭窄の近位に配置され、遠位圧力センサ804が、狭窄の遠位に配置されるように、狭窄を横断して配置される注入カテーテルの遠位端800を示す。再び
図11を参照すると、ステップ1304において、センサ802および804によって取得される狭窄の遠位および近位の圧力等、1つまたはそれを上回る初期条件が、取得されてもよい。好ましくは、ステップ1304は、注入液が患者に送達され始めることに先立って、またはその直後に行われる。代替として、圧力感知ワイヤが、記録しながら狭窄に順行性の位置まで抜去されてもよく、すなわち、狭窄を横断する血行動態圧力勾配が、既知の注入された流率において査定されることを可能にするプロセスである。
【0090】
ステップ1306において、好ましくは、酸素含有量を殆どまたは全く有していない、注入液が、患者に送達される。例えば、10ml/分の初期流動値が、選択されてもよい。血管内の圧力が、次いで、ステップ1308において測定される。ステップ1320において、圧力と注入液流率との間の線形関係を決定するために十分なデータが存在するかどうかの決定が、行われる。不十分なデータが、存在する場合、本方法は、ステップ1312に進み、注入される流体の流率が、調節される。調節された流率に対応する血管内の圧力が、ステップ1308において測定される。本方法は、次いで、ステップ1310に戻るように進み、ステップ1310において決定されるように、十分なデータが取得されており、付加的圧力測定値のいかなる必要性も他の流率において必要とされないという決定が行われるまで、サイクルは、継続してもよい。流動および圧力の蓄積されたデータ値の回帰が、ステップ1314において実施されてもよく、均衡流率が、ステップ1316において決定されてもよい。ステップ1318において、付加的注入が、均衡流率において実施されてもよく、FFRが、狭窄の各端部において測定された圧力の比率として計算されてもよく、狭窄抵抗が、均衡流率によって除算された狭窄を横断する圧力勾配の比率として計算されてもよい。
【0091】
好ましい実施形態では、流率は、パラメータの範囲を横断して段階的方式で、例えば、10ml/分の増分ステップにおいて0~40ml/分またはそれを上回るものにおいて進行してもよいが、ステップが、必要ではないが、同一の率において増加され得、実際に、恣意的に調節され得ることを理解されたい。前述で示されるように、注入された流動-結果として生じる圧力関係の線形性は、わずか2つの注入レベルを用いて均衡値を計算するために使用されることができる。
【0092】
当業者は、方法1300が、閉塞バルーンの有無を問わずに実施され得ることを認識するであろう。方法1300を介して取得されたデータが、正確度を改良するために、複数の患者または複数の手技を横断して集約または共有され得ることをさらに理解されたい。
【0093】
ここで
図12を参照すると、本発明に従って構築される、システムのブロック図が、説明される。例えば、システム1500は、本明細書の
図1のシステム100内に組み込まれ得る、コンポーネントを含む。システム1500は、メモリ1504を有する、コントローラを含む。コントローラは、コンピュータであってもよく、メモリは、ディスクドライブまたはフラッシュメモリであってもよい。コントローラ1502は、ポンプ1506、操向可能ガイドワイヤ1508、1つまたはそれを上回る圧力センサ1510、および随意に、温度センサ等の他のセンサ1512と電気通信する。コントローラ1502はまた、注入物リザーバ1514と、存在する場合、1つまたはそれを上回るバルーンを膨張させるために使用され得る、膨張源1516と通信する。ポンプ1506、ガイドワイヤ1508、圧力センサ1510、随意の他のセンサ1512、注入物リザーバ、および膨張源1516は、患者の中に挿入される注入カテーテルに動作的に結合される。
【0094】
コントローラ1502はまた、ユーザインターフェース1520、通信ユニット1522、および電力供給源1524と通信する。コントローラ1502は、上記に説明されるように、均衡注入率を算出するために、蓄積されたデータに対して回帰分析を実施するようにプログラムされる、プロセッサを含む。ユーザインターフェース1520は、キーボード、マウスデバイス、ディスプレイ画面、タッチスクリーン、または他のユーザインターフェースデバイスを含んでもよい。通信ユニット1522は、アラーム、WiFi、インターネット、クラウド記憶装置、および電気通信デバイスを含んでもよい。電力供給源1524は、交流電力または直流電力を含んでもよい、またはそれらの間で切替可能であってもよい。本発明の方法および/またはアルゴリズムが、コントローラ1502のプロセッサにアクセス可能である、プログラムされた命令として、または非一過性コンピュータ可読媒体として記憶され、それによって、上記に説明されるような本発明のプログラムされた方法が、コンピュータ制御システム内で実施されることを可能にし得ることを理解されたい。
【0095】
本明細書に説明される実装が、例証的であり、本発明の範囲が、それらの具体的実施形態に限定されず、多くの変形例、修正、追加、および改良が、可能性として考えられることを理解されたい。例えば、機能性は、本開示の種々の実施形態において異なるようにブロック単位で分離される、または組み合わせられる、または異なる専門用語で説明されてもよい。これらおよび他の変形例、修正、追加、および改良は、続く請求項に定義されるような本開示の範囲内に該当し得る。
【国際調査報告】