IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュランの特許一覧

<>
  • 特表-デバイス 図1
  • 特表-デバイス 図2
  • 特表-デバイス 図3
  • 特表-デバイス 図4
  • 特表-デバイス 図5
  • 特表-デバイス 図6
  • 特表-デバイス 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】デバイス
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/18 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
B60C23/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541599
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2022050241
(87)【国際公開番号】W WO2022148830
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/000452
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】テタス ピエール-アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】グランデマンジュ マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ブアール レミ
(57)【要約】
本発明は、回転組立体の内部圧力の過度の上昇を防止するためのデバイスを提供し、回転組立体は、回転軸を有し、ホイール及びタイヤを備え、タイヤは、ホイールに取り付けられて、ホイール内面及びタイヤ内面によって囲まれた内側キャビティを形成し、デバイスは、内側キャビティに充填されたガスに含まれる蒸気を凝縮させるために回転組立体の内側キャビティ内に配置されたコールドスポットを備え、デバイスは、凝縮蒸気を捕捉して保持するための格納手段を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転組立体(2)の内部圧力の過度の上昇を防止するデバイス(1)であって、前記回転組立体(2)は、回転軸を有し、ホイール(3)とタイヤ(4)とを備え、前記タイヤ(4)が、前記ホイール(3)に取り付けられ、ホイール内面(39)及びタイヤ内面(49)により囲まれた内側キャビティ(5)を形成し、前記デバイス(1)が、前記内側キャビティ(5)に充填されたガスに含まれる蒸気を凝縮させるために前記回転組立体(2)の前記内側キャビティ(5)に配置されたコールドスポット(6)を備えるデバイス(1)において、
前記デバイス(1)は、凝縮蒸気を捕捉及び保持するための格納手段(61)を備える、
ことを特徴とするデバイス(1)。
【請求項2】
前記格納手段(61)が、前記格納手段(61)に少なくとも部分的に充填された少なくとも1つの格納層(62)を有する、
請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの格納層(62)は、細孔性材料、水反応性材料、吸水性ポリマー又はこれらの混合物からなる群から選択された材料で作られている、
請求項2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記デバイス(1)が、前記ホイール(3)及び/又は前記タイヤ(4)を介して、前記回転組立体(2)の外部の空気に部分的に晒されている、
請求項1~3の何れか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記デバイス(1)が、前記コールドスポット(6)に取り付けられた熱交換手段(7)を更に備えている、
請求項1~4の何れか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記コールドスポット(6)が、前記コールドスポット(6)への電源(8)を備えた熱電クーラーである、
請求項5に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記熱交換手段(7)が、複数のフィン(71)を有する、
請求項5又は6に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記デバイス(1)は、前記タイヤ内面(49)に取り付けられる、
請求項1~7の何れか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記デバイス(1)が、前記ホイール内面(39)に取り付けられる、
請求項1~7の何れか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
前記ホイール(3)は、断熱部(38)によって囲まれた熱伝導部(37)を含み、前記デバイス(1)は、前記熱伝導部(37)に対応する前記ホイール内面(39)に取り付けられる、
請求項9に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
前記回転組立体(2)が、前記ホイール(3)上に取り付けられ、圧縮ガスを介して充填されたタンク(9)を更に備え、前記タンク(9)が、前記デバイス(1)が取り付けられる前記ホイール内面(39)上の位置に対応する前記ホイール(3)の部分に前記圧縮ガスを吹き付ける手段を含む、
請求項9又は10に記載のデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転組立体の使用中に使用されるデバイスに関し、詳細には、回転組立体の内部圧力の過度の上昇を防止するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
内部圧力は、空気入りタイヤの耐久性、グリップ、ハンドリング等に関する性能、特に競技用として重要な要素であり、空気入りタイヤの競技力において、「高温」での使用状況における内部圧力を予測することが重要である。物理的には、空気入りタイヤの内側キャビティに充填されたガスの内部圧力は、ボイル=シャルルの法則(combined gas law)(PV/T=定数、Pは圧力、Vは体積、Tは温度)に従って、所与の体積に対して温度と共に上昇し、線形であることが予想される。
【0003】
実際の使用状況においては、温度に対して内部圧力が直線的に上昇しない他のメカニズムが介在しており、内側キャビティに充填されたガスに含まれる湿気の存在は、過圧を引き起こすこのようなメカニズムの1つであり、使用中のタイヤ性能の劣化につながる。タイヤクルーは、多くの場合、乾燥ガスを使用して回転組立体を準備しているが、内側キャビティ内の湿気を完全に除去することは困難であり、また、内側キャビティに充填されたガスに含まれる湿気の量は、「高温」使用時に比べて少量であるので、湿気を低減する効果及び効率は満足できるものではない。
【0004】
使用時の内部圧力を制御するためには、内部圧力を調整できるデバイスの導入が有効であることが知られている。使用時の内部圧力を制御するために、様々な解決策が提案されている。
【0005】
国際特許第2005/084967号では、第1の圧力まで流体が充填されるように適合されたタンクと関連付けられたリムと、上記リムに取り付けられ、作動圧力まで膨張された内部容積を有するタイヤであって、作動圧力が第1の圧力を下回る、タイヤと、タンクとタイヤの内部容積との間の連通を調節するように適合された少なくとも1つのバルブであって、タンクをタイヤと連通させるためにバルブのポートを開閉するように設計された閉鎖部材と作動可能に関連付けられた少なくとも1つの弾性要素を含むバルブと、を備えた、制御及び補正圧力を有するホイールを開示している。
【0006】
国際特許第2007/105427号では、トレッド幅方向に沿った複数の空気チャンバと、四輪自動車が左方向又は右方向に旋回していることをコントローラに指示するためのセンサユニットを含み且つコントローラがセンサユニットからの指示に従って複数の空気チャンバの内部圧力を差圧する、空気タイヤ内圧制御デバイスと、を有するタイヤを開示している。
【0007】
しかしながら、これらの文献に開示された解決策では、回転組立体、ホイール及び/又はタイヤは、解決策に適合しなければならず、従来の回転組立体を軽微な適合で使用すること、又は回転組立体を適合させずに使用することは困難である。更に、これらの文献に開示された解決策では、内側キャビティに充填されたガスに含まれる湿気に関して全く言及されていない。従って、内部キャビティに充填されたガスに含まれる湿気に関する問題を、従来の回転組立体に対して軽微な適合で又は適合なしで解決することができるデバイスが望まれている。
【0008】
従って、使用中の内部圧力の過度の上昇に対して、従来の回転組立体への軽微な適合で又は適合なしに改善を提供するデバイスが必要とされている。
【0009】
(定義)
「熱電クーラー」とは、電気エネルギーを消費して一方から他方へ熱を移動させる固体能動ヒートポンプ機器である。「熱電クーラー」は、ペルチェデバイス、ペルチェヒートポンプ、ペルチェクーラー/ヒーター、固体冷蔵庫、又は熱電ヒートポンプとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許第2005/084967号
【特許文献2】国際特許第2007/105427号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、従来の回転組立体に対して軽微な改変で又は何ら改変することなく、使用中の内部圧力の過度の上昇に対する改善を提供するデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、回転組立体の内部圧力の過度の上昇を防止するためのデバイスを提供し、回転組立体は、回転軸を有し、ホイール及びタイヤを備え、タイヤは、ホイールに取り付けられて、ホイール内面及びタイヤ内面に囲まれた内側キャビティを形成し、デバイスは、内側キャビティ内に充填されたガスに含まれる蒸気を凝縮させるために回転組立体の内側キャビティに配置されたコールドスポットを備え、デバイスは、凝縮蒸気を捕捉して保持するための格納手段を備える。
【0013】
この構成は、従来の回転組立体に対して僅かな改変で又は改変することなく使用中内部圧力の過度の上昇に対する改善策を提供する。
【0014】
デバイスは、回転組立体の内側キャビティに配置されたコールドスポットを備えるので、コールドスポットは、内側キャビティに充填されたガスに含まれる蒸気を凝縮させて液体形態にすることにより、回転組立体の内側キャビティに蒸気の形態で水が存在することを防止することができる。従って、内部圧力の過度の上昇を防止することができる。
【0015】
回転組立体の内側キャビティに配置されるコールドスポットを備えるデバイスは、単純且つ小型であるので、デバイスの設置は、回転組立体への適合が不要であるか、又は僅かである。従って、従来の回転組立体に対して僅かな適合で又は全く適合することなくデバイスを設置することが可能である。
【0016】
デバイスは、凝縮蒸気を捕捉及び保持するための格納手段を備えているので、凝縮蒸気が内側キャビティに戻り再び蒸気に変換されることを防止する遠心分離又はその他の機構を介して、凝縮蒸気が格納手段に回収される。従って、内部圧力の過度の上昇をより一層防止することができる。
【0017】
別の好ましい実施形態では、格納手段は、格納手段内に少なくとも部分的に充填された少なくとも1つの格納層を有する。
【0018】
この構成によれば、少なくとも1つの格納層が格納手段内に凝縮蒸気を効果的に保持するので、内部圧力の過度の上昇を更に防止することができる。
【0019】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの格納層は、細孔性材料、水反応性材料、吸水性ポリマー又はこれらの混合物からなる群から選択される材料で作られている。
【0020】
この構成によれば、これらの材料は、その性質又はその構造により、凝縮蒸気を効果的及び効率的に保持するので、内部圧力の過度の上昇を防止することが更に可能となる。
【0021】
別の好ましい実施形態では、デバイスの一部は、ホイール及び/又はタイヤを通して回転組立体の外部の空気に晒されている。
【0022】
この構成によれば、回転組立体の外部の空気に晒される部分が、回転組立体の内部のキャビティに充填されたガスに含まれる蒸気の凝縮の際に吸収された熱エネルギーを放出することができるので、回転組立体の内部のキャビティに充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に長時間凝縮させることができる。
【0023】
別の好ましい実施形態では、デバイスは、コールドスポットに取り付けられた熱交換手段を更に備える。
【0024】
この構成によれば、コールドスポットに取り付けられた熱交換手段が、回転組立体の内側キャビティに充填されたガスに含まれる蒸気の凝縮中に吸収された熱エネルギーを放出することができるので、回転組立体の内側キャビティに充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に長時間凝縮させることができる。
【0025】
別の好ましい実施形態では、コールドスポットは、コールドスポットへの電力供給を備えた熱電クーラーである。
【0026】
この構成によれば、熱電クーラーに電力が流れると、ペルチェ効果を介して熱電クーラーの一方の側から他方の側へ熱流束が生じるので、回転組立体の内側キャビティに充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に長時間凝縮させることが更に可能となる。
【0027】
別の好ましい実施形態では、熱交換手段は複数のフィンを有する。
【0028】
この構成によれば、複数のフィンが、回転組立体の内側キャビティに充填されたガスに含まれる蒸気の凝縮の際にコールドスポットを介して吸収された熱エネルギーを伝達するための熱交換手段の表面積を増加させるので、回転組立体の内側キャビティに充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に凝縮させることが更に可能となる。
【0029】
別の好ましい実施形態では、デバイスはタイヤ内面に取り付けられる。
【0030】
この構成によれば、ホイールに適合させる必要がなく、デバイスを回転組立体に容易に取り付けることができる。
【0031】
別の好ましい実施形態では、デバイスはホイール内面に取り付けられる。
【0032】
この構成によれば、ホイール内面が、タイヤに適合させる必要なしで回転中心に近い硬い固体面であるため、デバイスを回転組立体へ容易に及び確実に取り付けることが可能であり、デバイスを回転中心に近い硬い固体面に設置することにより、回転組立体のバランスをとることも容易になる。
【0033】
別の好ましい実施形態では、ホイールは、断熱部によって囲まれた熱伝導部を含み、デバイスは、熱伝導部に対応するホイール内面に取り付けられる。
【0034】
この構成によれば、更に、デバイスの性能の劣化を防止する熱伝導部を取り囲む断熱部のおかげで、断熱部によって囲まれる熱伝導部が、例えばブレーキシステムから、排気システムから、又は回転組立体の高温部分からさえも、使用中に発生する熱の影響を受けないので、回転組立体の内側キャビティに充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に凝縮させることができる。
【0035】
別の好ましい実施形態では、回転組立体は、ホイールに取り付けられ圧縮ガスを介して充填されたタンクを更に備え、タンクは、デバイスが取り付けられるホイール内面上の位置に対応するホイールの部分に圧縮ガスを吹き付ける手段を備える。
【0036】
この構成によれば、ホイール内面のデバイスが取り付けられる位置に対応するホイールに吹き付けられた圧縮ガスが、ホイールを含む周囲の熱を奪いながら膨張するので、回転組立体の内側キャビティに充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に凝縮させることが更に可能となる。
【発明の効果】
【0037】
以上のような構成によれば、従来の回転組立体に対して軽微な適合で又は適合なしで、使用時における内部圧力の過度の上昇に対する改善を提供することができる。
【0038】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の実施形態を非限定的な例として示す添付図面を参照して以下に行う説明から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第1の実施形態によるデバイスを備える回転組立体の概略断面図である。
図2図1においてIIとして示される部分を示す拡大概略図である。
図3】第1の実施形態の変形例による図1のIIとして示される部分に対応する部分を示す拡大概略図である。
図4】本発明の第2の実施形態による図1中のIIとして示される部分に対応する部分を示す拡大概略図である。
図5】本発明の第3の実施形態によるデバイスを備える回転組立体の概略断面図である。
図6】本発明の第4の実施形態によるデバイスを備える回転組立体の概略断面図である。
図7図6においてVIIとして示される部分を示す拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0041】
本発明の第1の実施形態によるデバイス1を図1図2及び図3を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態によるデバイスが備える回転組立体の概略断面図である。図2は、図1においてIIとして示される部分を示す拡大概略図である。図3は、第1の実施形態の変形例による図1中のIIとして示される部分に対応する部分を示す拡大概略図である。
【0042】
デバイス1は、回転組立体2の内部圧力の過度の上昇を防止するためのデバイスである。回転組立体2は、回転軸X-X’を有し、ホイール3及びタイヤ4を備え、タイヤ4は、ホイール3に取り付けられて、ホイール内面39及びタイヤ内面49に囲まれた内側キャビティ5を形成する。デバイス1は、内側キャビティ5内に充填されたガスに含まれる蒸気を凝縮させるために、回転組立体2の内側キャビティ5内に配置されたコールドスポット6を備える。
【0043】
図1に示すように、回転組立体2は2つのデバイス1を備え、1つはタイヤ内面49に取り付けられ、もう1つはホイール内面39に取り付けられる。
【0044】
図1及び図2に示すように、2つのデバイス1は各々、コールドスポット6からなり、コールドスポット6を覆うように格納手段61を備え、2つのデバイス1自体は、何れも回転組立体2の外部の空気と直接連通することはなく、タイヤ4の最冷点とされるサイドウォール部及びホイール3の最冷点とされるリム部に取り付けられ、タイヤ4及び/又はホイール3を介して内側キャビティ5と回転組立体2の外部の空気との間で熱交換可能である。
【0045】
コールドスポット6は、デバイス1の一部であり、チャネル63を通じて回転組立体2の外部の空気と回転組立体2の内側キャビティ5との間で熱交換を行うことができる。この熱交換により、内側キャビティ5に充填されたガスに含まれる水を、温度によって内側キャビティ5の内部圧力が上昇する蒸気の形態から回転組立体2の内部圧力が低下する液体の形態に凝縮させることができる。凝縮蒸気は、遠心分離又は他の機構を介して格納手段61に集められ、凝縮蒸気が内側キャビティ5に戻り、再び蒸気に変換されるのを防止する。
【0046】
変形例として図3に示すように、デバイス1は、ホイール3及び/又はタイヤ4を通して一部が回転組立体2の外部の空気に晒されている。本実施形態では、ホイール3に取り付けられたデバイス1は、内側キャビティ5内に充填されたガスの漏れを防止するための2つのシール11を備え、一部が回転組立体2の外部の空気に露出している。
【0047】
デバイス1は、回転組立体2の内側キャビティ5内に配置されたコールドスポット6を備えるので、コールドスポット6は、内側キャビティ5内に充填されたガスに含まれる蒸気を凝縮させて液体の形態にすることにより、回転組立体2の内側キャビティ5内に水分が蒸気の形態で存在することを防止することができる。従って、内部圧力の過度の上昇を防止することができる。
【0048】
回転組立体2の内側キャビティ5内にコールドスポット6を備えるデバイス1は、単純且つ小型であるので、デバイス1の設置には回転組立体2への適合が不要であるか、又は僅かな適合を必要とする。従って、従来の回転組立体2に対して軽微な適合で、又は全く適合することなく、デバイス1を設置することが可能である。
【0049】
デバイス1はタイヤ内面49に取り付けられるので、ホイール3への適合を必要とせず、デバイス1を容易に回転組立体2に取り付けることができる。
【0050】
ホイール内面39にデバイス1が取り付けられるので、ホイール内面39が回転中心に近い硬い固体面であり、タイヤ4への適応が不要であるため、デバイス1を回転組立体2に簡単及び確実に取り付けることができ、回転中心に近い硬い固体面にデバイス1を取り付けることで、回転組立体2のバランス調整も容易になる。
【0051】
デバイス1の一部がホイール3及び/又はタイヤ4を介して回転組立体2の外部の空気に晒されるため、回転組立体2の外部の空気に晒される部分が、回転組立体2の内側キャビティ5に充填されたガスに含まれる蒸気の凝縮時に吸収された熱エネルギーを放出することができ、効果的及び効率的に、長時間にわたって、回転組立体2の内側キャビティ5に充填されたガスに含まれる蒸気を凝縮させることができる。
【0052】
また、デバイス1が凝縮蒸気を捕捉して保持するための格納手段61を備えているので、遠心分離又はその他の機構により、凝縮蒸気が格納手段61に回収される際に内部圧力が過度に上昇するのを防止することができ、凝縮蒸気が再び内側キャビティ5に戻り蒸気に変換されるのを防止することができる。
【0053】
回転組立体2は、ホイール3又はタイヤ4に取り付けられた1つの単一のデバイス1を備えることができる。回転組立体2は、複数のデバイス1を備えていてもよい。
【0054】
デバイス1は、当業者に公知の任意の手段;例えば、接着剤、糊、蜜蝋、ねじ、両面テープ、面ファスナー等を介して、ホイール内面39又はタイヤ内面49に取り付けることができる。デバイス1が取り付けられるホイール3又はタイヤ4の一部は、回転組立体2の外部の空気と回転組立体2の内側キャビティ5との間の熱交換を効率的に行うために、ホイール3又はタイヤ4の他の部分よりも薄い厚さを有することができる。
【0055】
コールドスポット6は、ホイール3を構成する材料よりも高い熱伝導率を有する材料であればよく、例えば、金、銅、銀、アルミニウム、(人工)ダイヤモンド又はこれらの合金、カーボンナノチューブ、ベリリア等のセラミックス、炭化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0056】
デバイス1は、例えば乗用車用、トラック用、二輪用等、空気入りタイヤを備えるあらゆるタイプの回転組立体に対して適用することができる。
【0057】
本発明の第2の実施形態によるデバイス21を、図4を参照して説明する。図4は、本発明の第2の実施形態による図1においてIIで示される部分に対応する部分を示す拡大概略図である。この第2の実施形態の構成は、図4に示す配置以外は第1の実施形態と同様であるので、図4を参照して説明する。
【0058】
図4に示すように、デバイス21は、コールドスポット26を覆うように格納手段261が設けられ、ホイール23及びホイール23に取り付けられたタイヤ(図示せず)からなる回転組立体(図示せず)の内側キャビティ25内に配置され、タイヤ内面(図示せず)及びホイール内面239によって囲まれた内側キャビティ25を形成している。格納手段261は、格納手段261内に少なくとも部分的に充填された少なくとも1つの格納層62を有するように設けられている。コールドスポット26及び内側キャビティ25は、チャネル263を介して接続されている。この実施形態では、少なくとも1つの格納層62は、1層の親水性発泡細孔性材料から構成されている。
【0059】
図4に示すように、デバイス21は、コールドスポット26に取り付けられた熱交換手段7を更に備え、熱交換手段7は、複数のフィン71を有する。本実施形態において、コールドスポット26は、コールドスポット26への電源8を備える熱電クーラーである。コールドスポット26への電源8は、例えばコイン電池、十分に小さいリチウム(ポリマー)電池など、あらゆるタイプの電池とすることができる。
【0060】
図4に示すように、ホイール23は、断熱部38によって囲まれた熱伝導部37を含み、デバイス21は、熱伝導部37に埋め込まれるように、熱伝導部37に対応するホイール内面239に取り付けられる。デバイス21の一部としての熱交換手段7、複数のフィン71及び電源8は、ホイール23の熱伝導部37を介して回転組立体外の空気に晒される。
【0061】
デバイス21は、コールドスポット26に取り付けられた熱交換手段7を更に備えるので、コールドスポット26に取り付けられた熱交換手段7が、回転組立体の内側キャビティ25に充填されたガスに含まれる蒸気の凝縮の際に吸収された熱エネルギーを放出することができ、回転組立体の内側キャビティ25に充填されたガスに含まれる蒸気を長時間にわたって効果的及び効率的に凝縮させることができる。
【0062】
熱交換手段7が複数のフィン71を有するので、複数のフィン71が、回転組立体の内側キャビティ25に充填されたガスに含まれる蒸気の凝縮時にコールドスポット26を介して吸収された熱エネルギーを伝達するための熱交換手段7の表面積を増加させ、回転組立体の内側キャビティ25に充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に凝縮させることが更に可能となる。
【0063】
コールドスポット26は、コールドスポット26に電力供給部8を備えた熱電クーラーであるので、熱電クーラーに電力が流れるとペルチェ効果により熱電クーラーの一方から他方へ熱流束が生じ、回転組立体の内側キャビティ25に充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に長時間凝縮させることが更に可能となる。
【0064】
ホイール23が断熱部38で囲まれた熱伝導部37を含み、デバイス21が熱伝導部37に対応するホイール内面239に取り付けられているので、熱伝導部37を取り囲む断熱部38がデバイス21の性能劣化を防止するおかげで、断熱部38によって囲まれた熱伝導部37は、例えばブレーキシステムから、排気システムから、又は回転組立体の高温部分から発生する使用中の熱の影響を受けず、回転組立体の内側キャビティ25に充填されたガスに含まれる蒸気を効果的且つ効率的に凝縮させることが更に可能となる、
【0065】
デバイス21は、凝縮蒸気を捕捉し且つ保持するための格納手段261を備えるので、遠心分離又は他の機構により、凝縮蒸気が格納手段261に集められ、凝縮蒸気が内側キャビティ25に戻り再び蒸気に変換されるのを防止することにより、内部圧力の過度の上昇を防止することが更に可能である。
【0066】
格納手段261は、少なくとも一部が格納手段261内に充填された少なくとも1つの格納層62を有するので、少なくとも1つの格納層62が格納手段261内に凝縮蒸気を効果的に保持するため、内部圧力の過度の上昇を更に防止することができる。
【0067】
熱伝導部37を構成する材料は、ホイール23を構成する材料と同じ材料であってもよく、又は蒸気で例示されたホイール23を構成する材料よりも熱伝導率の高い異なる材料であってもよい。熱伝導部38を構成する材料は、例えば、チタン、鉄、鋼、鉛、ビスマス又はこれらの合金であるなど、ホイール23を構成する材料よりも熱伝導率が下回る材料とすることができる。
【0068】
少なくとも1つの格納層62を構成する材料は、細孔性材料、水反応性材料、吸水性ポリマー又はこれらの混合物からなる群から選択される材料であることが好ましく、これらの材料は、その性質又は構造により、凝縮蒸気を効果的且つ効率的に保持するので、内部圧力の過度の上昇をより一層防止することができる。
【0069】
細孔性材料の例としては、親水性発泡体又は親水性ポリウレタンとすることができ、架橋されているか否かは問わない。水反応性材料の例としては、五酸化リンのような何れかの乾燥剤又は脱水剤とすることができる。吸水性ポリマーの例としては、ポリアクリル酸ナトリウム又はポリアクリル酸カリウムのような何れかのタイプの高吸水性ポリマーとすることができる。
【0070】
本発明の第3の実施形態に係るデバイス31について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第3の実施形態によるデバイスが備える回転組立体の概略断面図である。この第3の実施形態の構造は、図5に示す配置以外は第1及び第2の実施形態と同様であるので、図5を参照して説明する。
【0071】
図5に示すように、デバイス31は、コールドスポット36を備え、コールドスポット36には、コールドスポット36を覆うように回転組立体32の内側キャビティ35内に配置された格納手段361が設けられ、回転組立体32は、ホイール33とホイール33に取り付けられたタイヤ34とを備え、タイヤ内面349及びホイール内面339によって囲まれた内側キャビティ35を形成する。デバイス31は、回転組立体32のホイール内面339に取り付けられる。コールドスポット36及び内側キャビティ35は、チャネル363を介して接続されている。
【0072】
図5に示すように、回転組立体32は、ホイール33上に取り付けられ圧縮ガスを介して充填されたタンク9を更に備え、タンク9は、タンク出口91を通じてデバイス31が取り付けられているホイール内面339上の位置に対応するホイール33の部分に圧縮ガス(図示せず)を吹き付ける手段を備える。
【0073】
デバイス31は、凝縮蒸気を捕捉して保持するための格納手段361を備えるので、遠心分離又は他の機構を介して、凝縮蒸気が格納手段361に回収され、凝縮蒸気が内側キャビティ35に戻り、再び蒸気に変換されることを防止することで、内部圧力の過度の上昇を防止することが更に可能である。
【0074】
回転組立体32は、ホイール33上に取り付けられ圧縮ガスを介して充填されたタンク9を更に備え、タンク9は、デバイス31が取り付けられているホイール内面339の位置に対応するホイール33の部分に圧縮ガスを吹き付ける手段(図示せず)を備えているので、デバイス31が取り付けられているホイール内面339の位置に対応するホイール33の部分に圧縮ガスを吹き付けることができ、デバイス31が取り付けられるホイール内面339の位置に対応するホイール33に吹き付けられた圧縮ガスが、ホイールを含む周囲の熱を奪いながら膨張することにより、回転組立体32の内側キャビティ35に充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に凝縮させることが更に可能となる。
【0075】
タンク9からタンク出口91を通じて圧縮ガスを吹き出す手段は、遠隔的に又は遠心力を利用して開くバルブとすることができる。タンク9は、タンク9を熱から遮断する手段により覆うこともできる。タンク9はホイール33に一体化されていてもよい。
【0076】
ホイール33は、熱伝導部と断熱部を備えることができ、デバイス31は、上記で例示されたように熱伝導部に対応するホイール内面339に取り付けることができ、圧縮ガスを熱伝導部に吹き付けることができる。
【0077】
本発明の第4の実施形態に係るデバイス41について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、本発明の第4の実施形態によるデバイスを備える回転組立体の概略断面図である。図7は、図6においてVIIとして示される部分を示す拡大概略図である。この第4の実施形態の構造は、図6及び図7に示す配置以外は、第1、第2及び第3の実施形態と同様であるので、図6及び図7を参照して説明する。
【0078】
図6に示すように、デバイス41は、複数のコールドスポット46を備えることができ、これらコールドスポット46の各々は、ホイール43及びホイール43上に取り付けられたタイヤ44を備える回転組立体42の内側キャビティ45に配置されたコールドスポット46の各々を覆うように格納手段461を備え、タイヤ内面449及びホイール内面439によって囲まれた内側キャビティ45を形成する。デバイス41は、固定手段12を介して回転組立体42のタイヤ内面449に固定される。
【0079】
図6及び図7に示すように、デバイス41は、各コールドスポット46に取り付けられた熱交換手段47を更に備え、各熱交換手段47は、複数のフィン471を有する。
【0080】
図7に示すように、格納手段461は両方とも、格納手段461内に少なくとも部分的に充填された少なくとも1つの格納層462を有するように設けられている。この実施形態では、少なくとも1つの格納層462は、水反応性材料としての五酸化リンの1層から構成される。
【0081】
デバイス41は、コールドスポット46に取り付けられた熱交換手段47を更に備えるので、コールドスポット46に取り付けられた熱交換手段47が、回転組立体42の内側キャビティ45に充填されたガスに含まれる蒸気の凝縮の際に吸収された熱エネルギーを放出することができ、回転組立体42の内側キャビティ45に充填されたガスに含まれる蒸気を長時間にわたって効果的及び効率的に凝縮させることができる。
【0082】
熱交換手段47が複数のフィン471を有するので、複数のフィン471が、回転組立体42の内側キャビティ45に充填されたガスに含まれる蒸気の凝縮時にコールドスポット46を介して吸収された熱エネルギーを伝達するための熱交換手段47の表面積を増加させ、回転組立体42の内側キャビティ45に充填されたガスに含まれる蒸気を効果的及び効率的に凝縮させることが更に可能となる。
【0083】
デバイス41はタイヤ内面449に取り付けられるので、ホイール43に適合させる必要がなく、デバイス41を容易に回転組立体42に取り付けることができる。
【0084】
デバイス41が、凝縮蒸気を捕捉して保持するための格納手段461を構成しているので、遠心分離又は他の機構を介して、凝縮蒸気が格納手段461に回収され、凝縮蒸気が内側キャビティ45に戻り、再び蒸気に変換されるのを防止して、内部圧力の過度の上昇を防止することが更に可能である。
【0085】
また、格納手段461は、少なくとも一部が格納手段461内に充填された少なくとも1つの格納層462を有するので、少なくとも1つの格納層462が格納手段461内に凝縮蒸気を効果的に保持するため、内部圧力の過度の上昇を更に防止することができる。
【0086】
デバイス41は、格納層462の有無にかかわらず、複数のコールドスポット46の全てを覆うように1つの単一の格納手段461を備えることができる。格納層462は、複数のコールドスポット46に対応する場所にのみ設けられてもよく、又は格納手段461全体を覆うように設けられてもよい。
【0087】
固定手段12は、例えば国際特許第2005/035277号に開示されているような、当業者に公知の回転組立体内にセンサを設置することを可能にする任意の手段であってよい。固定手段12は、先に説明した手段を介してタイヤ内面449に取り付けることができる。
【0088】
本発明は、記載され表示された実施例に限定されるものではなく、その枠組みを離れることなく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1、21、31、41 デバイス
11 シール
12 固定手段
2,32,42 回転組立体
3,23,33,43 ホイール
39,239,339,439 ホイール内面
37 熱伝導部
38 断熱部
4、34、44 タイヤ
49、349、449 タイヤ内面
5,25,35,45 内側キャビティ
6,26,36,46 コールドスポット
61,261,361,461 格納手段
62,462 格納層
63,263,363 チャネル
7,47 熱交換手段
71,471 フィン
8 電源
9 タンク
91 タンク出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】