(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】溶融金属浴の温度値を決定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20240123BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20240123BHJP
G01J 5/0821 20220101ALI20240123BHJP
【FI】
G01J5/00 101D
F27D21/00 G
F27D21/00 N
G01J5/0821
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541675
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022052857
(87)【国際公開番号】W WO2022171562
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598083577
【氏名又は名称】ヘレーウス エレクトロ-ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro-Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B-3530 Houthalen,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン フリールベルヘ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ジャンセン,ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ネーエンス,ギドー
【テーマコード(参考)】
2G066
4K056
【Fターム(参考)】
2G066AC01
2G066AC11
2G066BA38
2G066BC15
4K056AA05
4K056BA06
4K056BB08
4K056CA02
4K056FA12
4K056FA17
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、溶融金属浴の温度値を決定するための方法及びシステムに関する。本発明による方法は、金属製造プロセス中に絶えず動かされる冶金容器の設備に特に適していることが証明された。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて炉内の溶融金属浴の温度を測定するための方法であって、前記炉は炉傾斜を有し、前記方法は、
(a)炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(b)時点t(n)での炉傾斜値FI(n)を決定する工程と、
(c)前記炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付ける前記提供されたデータセットから、前記炉傾斜値FI(n)に対応する測定プロファイルMP(n)を選択する工程と、
(d)前記測定プロファイルMP(n)を時点t(n)で適用して、測定温度値を取得する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
測定プロファイルMPが、前記溶融金属浴の前記表面の上方の第1の位置p1に前記光学コアワイヤの前記前端を提供する少なくとも1つの工程を定義する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
測定プロファイルMPが、第1の位置p1から前記溶融金属浴に向かって第2の位置p2に前記光学コアワイヤの前記前端を送る少なくとも1つの工程を定義する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の位置p2は、前記溶融金属浴の前記表面の下方の浸漬深さi1にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付ける前記データセットは、測定プロファイルMPの少なくとも1つの工程における少なくとも1つのパラメータの定義を炉傾斜値FIに関連付ける、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定プロファイルMP(n)における前記第1の位置p1と前記第2の位置p2との間の距離が前記炉傾斜値FI(n)に関連する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の位置p1と前記第2の位置p2との間の前記距離は、所定の初期位置から第1の方向及び第2の方向への前記炉の傾斜度ごとに同じ長さだけ適合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の位置p1と前記第2の位置p2との間の前記距離は、所定の初期位置から第1の方向への前記炉の傾斜度ごとに第1の長さだけ適合され、第2の方向への前記炉の傾斜度ごとに第2の長さだけ適合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の位置p1と前記第2の位置p2との間の前記距離は、所定の初期位置から前記炉の傾斜度ごとに2cm~20cm、好ましくは5cm~15cm、最も好ましくは8cm~12cmほど適合される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記測定プロファイルMPは、2つの時点t0及びt2内の静止時間中の少なくとも1つの工程を定義し、その間、前記光学コアワイヤの前記前端の前記送りは一時停止されるか、又は前記光学コアワイヤの前記前端は低速で送られる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記測定プロファイルMPは、2つの時点t0及びt2内の測定時間中に温度情報を取得する少なくとも1つの工程を定義する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記測定プロファイルMPは、前記光学コアワイヤの前記前端が第1の位置p1から前記溶融金属浴に向かって第2の位置p2に送られる少なくとも1つの送り速度v
fedを定義する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)で提供される前記データセットは、前記溶融金属浴の前記表面のレベルを前記測定プロファイルMPに更に関連付ける、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)で提供される前記データセットは、前記光学コアワイヤの前記前端の位置を前記測定プロファイルMPに更に関連付ける、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
炉内の溶融金属浴の温度値を決定するためのシステムであって、前記炉は炉傾斜を有し、前記システムは、装置及びモジュールを備え、前記モジュールは、前記装置と相互作用するように適合され、前記装置は、光学コアワイヤ及び検出器を含み、
前記モジュールは、記憶ユニットSと、処理ユニットPと、制御ユニットCと、を含み、前記記憶ユニットSは、
-炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供するための記憶要素S1
を含み、
前記処理ユニットPは、
-炉傾斜値FIを決定するための処理要素P1と、
-炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付ける前記提供されたデータセットから、炉傾斜FI(n)に対応する測定プロファイルMP(n)を選択するための処理要素P2と、
を含み、
前記制御ユニットCは、
-前記測定プロファイルMP(n)を適用して測定温度値を取得するための制御要素C1
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属浴の温度値を決定するための方法及びシステムに関する。
【0002】
冶金容器内の溶融金属浴の温度は、金属製造プロセス中の重要なパラメータであり、得られる製品の品質を決定する。溶融金属浴、特に電気アーク炉(EAF)の融解環境における鉄又は鋼の温度を測定するための可能な手段は、金属管によって囲まれた光ファイバを溶融金属中に浸漬する工程を含む。金属管によって囲まれた光ファイバは、しばしば、光学コアワイヤとも呼ばれる。
【0003】
溶融金属浴の温度を測定するために、光学コアワイヤを冶金容器内に送ることができる。光学コアワイヤの前端は溶融金属浴内に浸漬され、その途中で最初に高温雰囲気に遭遇し、続いてスラグ層に遭遇し、次に溶融金属浴に遭遇する。光学コアワイヤの一部分が溶融金属浴の表面の下方に浸漬されると、光ファイバは、溶融金属から受け取った熱放射を検出器、例えばパイロメータに伝達することができる。溶融金属浴の温度を求めるために、適切な計器を検出器と関連付けることができる。この測定中、光学コアワイヤの浸漬された部分は、溶融金属浴によって部分的に又は完全に消耗され得る。温度測定が終了すると、光学コアワイヤの先端を溶融金属浴から後退させることができる。後退された光学コアワイヤの先端は、次の温度測定のための新しい前端となる。
【0004】
このような装置は、一連の浸漬サイクルの形態のオンデマンド温度測定及び半連続温度測定に適している。操作者は、冶金容器に近接した過酷な環境に直接介入することなく、温度測定値を取得することができる。
【0005】
正確な測定値を提供するためには、測定値が取得されている間、光ファイバの浸漬された前端付近で黒体状態が確保されなければならない。-一方では、ファイバは、金属浴表面の下方の十分な深さまで、かつ液体金属浴の温度を代表する容器内の位置に浸漬されなければならない。一方、深い浸漬は、光学コアワイヤにかかる浮力を増加させ、測定シーケンス中の消耗を増加させる。
【0006】
典型的には、温度測定のための光学コアワイヤを含む装置は、溶融金属を収容する容器の上部に固定設置され、例えば側壁又は屋根の一部に配置される。システムの電極の中心位置のために、測定機器は通常、溶融金属浴の上方の中心には設置されない。典型的な冶金プロセスでは、金属溶融物の均質化を助けるために、プロセス中に容器が動かされる。この一定の動きは、一般に「炉内揺動」と呼ばれる。当業者が理解するように、容器は炉の一部である。この傾動、摺動又は回転運動は、溶融金属浴の表面から光学コアワイヤの設備までの距離を変化させ、プロセスの全段階にわたって光学コアワイヤの一定の浸漬深さまでの浸漬を妨げる。
【0007】
米国特許出願公開第2003004602号明細書は、それぞれのプロセスの収率を最適化するために、冶金プロセスのプロセスパラメータに応じて炉の傾動を制御する方法を開示している。傾動の重要性はプロセス自体については認識されているが、プロセスに付随する測定への影響は対処されていない。
【0008】
いくつかの先行技術文献は、温度測定のデータ品質を改善するための光学コアワイヤの送り方法を開示している。例えば、米国特許出願公開第2018180484号明細書は、2つの送り速度とそれに続く静止時間とを有する供給方式を含み、その後、温度測定が行われる溶融金属浴の温度測定方法を開示している。この方法は、以前から知られた問題のいくつかを解決するが、金属製造プロセス中の絶えず変化する条件に対処していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術に鑑みて、金属製造プロセスの付随する状況を考慮する測定方法及びシステム、並びにそのような方法及びシステムの効率的な利用方法が必要とされている。
【0010】
したがって、本発明の目的は、上述した問題の少なくとも1つを解決する、光学コアワイヤを用いて溶融金属浴の温度値を決定するための改善された方法を提供することである。特に、目的の1つは、絶えず動いている冶金容器内の温度値をより確実に決定するための改善された方法を提供することである。更に、溶融金属浴の表面の下方の光学コアワイヤの特定の浸漬深さでの温度値の取得方法を提供することを目的とする。本発明の目的の更なる態様は、消耗性の光学コアワイヤの効率的な使用を可能にする方法を提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、本発明の方法を実行するための改良されたシステムを提供することである。
【0012】
これらの目的は、独立請求項において定義される主題によって達成される。
【0013】
本発明は、光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて炉内の溶融金属浴の温度値を決定するための方法であって、炉は炉傾斜を有し、方法は、
(a)炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(b)時点t(n)での炉傾斜値FI(n)を決定する工程と、
(c)炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、炉傾斜値FI(n)に対応する測定プロファイルMP(n)を選択する工程と、
(d)測定プロファイルMP(n)を時点t(n)で適用して、測定温度値を取得する工程と、
を含む方法を提供する。
【0014】
更に、本発明は、炉内の溶融金属浴の温度値を決定するためのシステムであって、炉は炉傾斜を有し、システムは、装置及びモジュールを備え、モジュールは、装置と相互作用するように適合され、装置は、光学コアワイヤ及び検出器を含み、モジュールは、記憶ユニットSと、処理ユニットPと、制御ユニットCと、を含み、記憶ユニットSは、
-炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供するための記憶要素S1
を含み、
処理ユニットPは、
-炉傾斜FIを測定するための処理要素P1と、
-炉傾斜値を対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、炉傾斜FI(n)に対応する測定プロファイルMP(n)を選択するための処理要素P2と、
を含み、
制御ユニットCは、
-測定プロファイルMP(n)を適用して測定温度値を取得するための制御要素C1
を含む、システムを提供する。
【0015】
より好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。好ましい実施形態は、個別に実現されても任意の可能な組み合わせで実現されてもよい。
【0016】
本発明による方法は、金属製造プロセス中に絶えず動かすことができる冶金炉の設備に特に適していることが証明されている。驚くべきことに、測定のデータ品質は、測定値を取得するために適用される測定プロファイルに依存することが分かった。特に、溶融金属浴内への光学コアワイヤの送りは、得られるデータの信頼性に大きく影響する要因として特定された。本発明の方法は、溶融金属浴を収容する冶金容器の様々に異なる構成に適合する測定プロトコルを用いて温度値を決定することを可能にする。特に、光学コアワイヤの前端の一定の浸漬深さが、得られる測定品質にとって重要なパラメータであることが分かった。この文脈における「品質」とは、固定設置された標準的な熱電対を使用して取得されたデータと比較した、得られた測定精度を指す。加えて、本発明の方法は、溶融金属浴の表面の下方の一定の深さへの光学コアワイヤ及びその前端の位置決めを可能にすることで、光学コアワイヤの消耗を最小限に抑えて正確な温度値を取得することを更に可能にする。本明細書で使用される「消耗」という用語は、例えば、溶融金属浴による、及び溶融金属浴への、光学コアワイヤの融解及び溶解、光学コアワイヤ全体又はその異なる部分の分解又は燃焼などの光学コアワイヤの損壊を指す。
【0017】
本発明は、溶融金属浴の温度値を決定するための方法を提供する。
【0018】
「温度値を決定すること」は、本明細書では、温度を測定することの同義語として使用され得る。好ましい実施形態によれば、温度値は、単一点測定で決定されても、又は多点測定で決定されてもよい。
【0019】
本出願を通して、温度又は温度値に関する変数は、大文字のTで言及され、一方、一般的な時点、時間の長さ又は時間に関する変数は、小文字のtで言及される。
【0020】
一般的な変数を定義する際には、指定された添え字、すなわち(n)などを有さない変数が使用される。特定の文脈でこの変数を指す際には、指定された添え字を有する変数が使用される。例えば、FIは炉傾斜値の一般的な定義を指し、FI(n)は特定の炉傾斜値を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「溶融金属浴」という用語は、炉、特に容器内の溶融物を説明するために使用される。当業者に知られている「溶融金属浴」の代替用語は、「金属溶融物」である。溶融金属浴の溶融金属は特に限定されない。好ましい実施形態によれば、溶融金属は溶鋼である。溶融金属浴という用語は、例えばそれぞれの金属の非溶融部分を含む任意の固体部分又は気体部分の存在を除外しない。溶融金属浴はスラグ層で覆われていてもよい。「スラグ」という用語は、製鋼炉でしばしば生成され、典型的には溶融金属の上に浮く溶融材料として存在する非鋼副生成物を指す。スラグは、金属酸化物、金属硫化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、マグネサイト、ドロマイト、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マンガン、シリカ、硫黄、リン、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0022】
金属溶融物の温度は異なり、通常、金属の組成及び融解プロセスの段階に依存する。好ましい実施形態によれば、溶融金属浴の温度は1500~1800℃の範囲内であり、より好ましくは1500~1700℃の範囲内である。
【0023】
本発明の方法によって温度が測定される溶融金属浴は、炉内に配置される。
【0024】
好ましくは、炉は、溶融金属浴を収容する容器と、容器上又は容器に固定設置された設備とを備える冶金プラントである。そのような設備は、例えば、電極としての加熱手段、及び光学コアワイヤを含む設備としての測定手段であり得る。
【0025】
溶融金属浴は、光学コアワイヤを送るのに適した入り口を含む容器内に収容されてもよい。そのような入り口は、側壁パネル、容器を覆う屋根、又は例えば偏心ボトムタッピング(EBT)炉に見られるようなプラットフォームなどの、容器の上方に設置されたプラットフォームに配置されてもよい。好ましくは、入り口はEBT炉プラットフォームに配置される。
【0026】
本明細書で使用される場合、「炉傾斜」という用語は、炉、特に溶融金属浴を収容する容器が傾動する程度を指す。好ましくは、傾動は枢動軸APに対して規定される。好ましくは、枢動軸APは初期位置を規定する。当業者が理解するように、炉傾斜は、冶金プロセス中に一般的に用いられる炉の揺動の直接的な結果である。好ましくは、溶融金属浴を収容する容器の底部が平坦である場合、初期位置を規定する枢動軸APは、底部に対して垂直に配向される。底部が丸みを帯びているか、又は他の形状である場合、初期位置を規定する枢動軸APは、好ましくは、容器の外輪郭によって画定される投影面に対して垂直に配向される。枢動軸APは、容器の中心に配置されてはならない、すなわち、容器の幅の半分の位置に配置されてはならないことが理解されよう。特に、容器が対称に構築されていない場合、枢動軸APの位置は、容器の幅によって規定される中心に対して一方の側にずれていてもよい。
【0027】
好ましい実施形態では、炉傾斜は、水平面と炉の本体の底部に接する基準面との間の角度によって規定され、炉がその初期位置、すなわち中立位置にある時、基準面は、水平面及び/又は溶融金属浴の表面に実質的に平行である。
【0028】
炉傾斜値は、好ましくは度で表される。炉傾斜値は、初期位置を規定する枢動軸APに対して容器が傾動する方向に応じて、正又は負の値をとることができる。定義上は、初期位置は0°の炉傾斜値を指す。換言すれば、炉傾斜の正の値は、初期位置を規定する枢動軸APに対する一方向の傾動を指し、負の値は、反対方向の傾動を指すことが可能である。典型的には、初期位置を規定する枢動軸APに対する容器の傾動は、+5°~-5°の範囲である。
【0029】
好ましくは、炉の傾動は、溶融金属浴の動きをもたらす。当業者は、傾動が、溶融金属浴の表面と、例えば容器を覆う蓋のような内部を取り囲む容器の部分との相対的な位置決め及び距離に影響を及ぼすことを理解するであろう。溶融金属浴の体積は、供給された全ての固体材料が融解した後は一定であるので、溶融金属浴の表面のレベルの位置は、一方では炉の傾動によって、他方では容器の内胴の幾何学的形状によって影響を受ける。
【0030】
本発明に関して、「炉の傾動」は、一次元における動き、すなわち、一方の側から他方の側、又は前方から後方への動きと呼ばれることを理解されたい。
【0031】
炉は、傾動装置を使用してある角度範囲にわたって傾動させることができる。好ましくは、傾動装置は、モータ、ギア、チェーンドライブ、油圧、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される手段を含む。
【0032】
好ましい実施形態では、炉の傾動は、傾動装置を手動で操作するオペレータによって実行される。更に好ましい実施形態では、炉の傾動はコンピュータ制御される。例えば、炉の傾動は、プロセッサ又はプログラマブルロジックコントローラによって制御される。そのような実施形態では、プロセッサ又はプログラマブルロジックコントローラは、一連の小さい(等しいか又は等しくない)角度運動又は連続的な角度運動を実行するように傾動装置に命令することができる。
【0033】
好ましくは、容器は、光学コアワイヤが送られ始める位置を含む。好ましい実施形態では、この位置は炉の開口部、すなわち、光学コアワイヤがそこを通って容器内に送られる入り口にある。
【0034】
好ましくは、光学コアワイヤが送られ始める位置は、枢動軸AP上ではない。換言すれば、光学コアワイヤが送られ始める位置は、容器内の中心ではない。ここで、「容器の中心」という位置は、容器の直径の半分の幅に位置する容器内の点として理解されるべきである。好ましくは、光学コアワイヤが送られ始める位置は、容器の側壁に隣接している。
【0035】
当業者が理解するように、光学コアワイヤが送られ始める位置と溶融金属浴の表面との間の距離の結果として生じる差は、この位置が容器内の中心位置から離れているほど大きくなる。換言すれば、その点が容器の側壁に近いほど、炉の傾動運動の影響がより顕著になる。
【0036】
代表的な容器構成では、溶融金属浴の表面から光学コアワイヤが送られ始める位置までの距離の差は、傾動角度1度当たり最大10cmであり得る。すなわち、+3°から-3°までの傾動は、溶融金属浴の表面から光学コアワイヤが送られ始める位置までの距離に最大60cmの差をもたらす。
【0037】
本発明は、光学コアワイヤを備える装置を用いて温度値を決定するための方法を提供する。好ましくは、光学コアワイヤは、金属管によって側方から取り囲まれた光ファイバである。好ましくは、光ファイバは、柔軟で透明なファイバである。光ファイバは、ファイバの2つの端部の間で、特にIR波長範囲内の光を伝送する手段として使用されることが最も多い。好ましくは、光ファイバは、ガラス又はプラスチック、より好ましくは石英ガラスから形成される。好ましくは、光ファイバは、グレーデッドインデックスファイバ及びシングルモードステップインデックスファイバからなる群から選択される。
【0038】
光ファイバを取り囲む金属管は、光ファイバを完全に取り囲んでもよいが、ケーシングが光ファイバを完全に取り囲まないように少なくとも部分的に開いてもよい。
【0039】
好ましくは、光ファイバを取り囲む金属管の金属は、鉄又は鋼、好ましくはステンレス鋼である。
【0040】
好ましい実施形態では、光学コアワイヤの線密度は、25~80g/mの範囲内、より好ましくは35~70g/mの範囲内である。線密度は、単位長さ当たりの質量によって定義される。
【0041】
好ましくは、光学コアワイヤは、少なくとも1つの追加の金属管によって側方から取り囲まれており、すなわち、少なくとも2つの金属管が光ファイバを側方から取り囲んでいる。好ましくは、光学コアワイヤは、少なくとも1つの追加の金属管の中心に配置される。
【0042】
好ましくは、少なくとも1つの追加の金属管は、光学コアワイヤと接触していない。より好ましくは、これらの少なくとも2つの金属管の間の空隙は、気体材料もしくは固体材料又はそれらの組み合わせからなる群から選択される材料で少なくとも部分的に充填される。固体材料は、好ましくは、無機材料、天然ポリマー、合成ポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。気体材料は、好ましくはガス又はガスの混合物である。より好ましくは、ガスは空気又は不活性ガスである。
【0043】
好ましい実施形態によれば、光学コアワイヤは、少なくとも1つの金属管内に配置された複数の分離要素を備え、これらの分離要素は、分離要素間に少なくとも1つの区画を形成する。ここで、「区画」という用語は、管内の異なる分離要素間の容積に関する。「分離要素」という用語は、管内に配置された、管内の容積を細分する部分に関する。好ましくは、分離要素は、管の内側に配置される円板状要素であり、円板状要素は開口部を備え、開口部を通って光学コアワイヤが延在し、開口部は光学コアワイヤを少なくとも部分的に支持することができる。分離要素の材料は、シリコーン、好ましくは二成分シリコーン、ゴム、革、コルク、金属及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0044】
好ましくは、光学コアワイヤを取り囲む金属管は、更なる層によって取り囲まれている。特定の好ましい要素によれば、更なる層は、少なくとも1つの更なる金属管層であるか、又は少なくとも複数の部分、好ましくはファイバを含む層である。
【0045】
更に好ましい実施形態では、少なくとも1つの追加の層の材料は、織布構造、網構造、織物構造又は編物構造の形態を有する。
【0046】
好ましくは、少なくとも1つの追加の層は、非金属材料、最も好ましくは有機材料を含む。
【0047】
光学コアワイヤは、上述の構成の任意の組み合わせを含み得ることを理解されたい。特定の好ましい実施形態によれば、光学コアワイヤは、更なる層及び第2の金属管によって側方から取り囲まれている。
【0048】
本発明による方法を適用するために使用される装置は、検出器を更に含む。検出器は、光学コアワイヤの一端に結合され、光ファイバによって伝送される、特にIR波長範囲内の光信号を受信する。好ましくは、本発明の文脈における検出器は、パイロメータである。
【0049】
光学コアワイヤは、浸漬端及び反対端を有する。光学コアワイヤの前端は、光学コアワイヤの浸漬端の先端である。好ましくは、本発明による方法が適用されると、光学コアワイヤは浸漬端から反対端に向かう方向に消耗され、各測定シーケンスの後、光学コアワイヤの別の部分が浸漬端になる。すなわち、各測定シーケンスの後に、前端が新たに生成される。反対端は検出器に接続され、測定中に消耗されない。
【0050】
本発明による方法の工程(a)では、炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットが提供される。
【0051】
好ましくは、データセットは、ある種類のデータの1つの特定の値が別の種類のデータの特定の値に割り当てられるデータ対を含む。より好ましくは、データセットは、ある種類のデータの1つの特定の値がモデルやいくつかの工程のシーケンスなどに割り当てられるデータ対を含んでもよい。
【0052】
測定プロファイルMPは、目的の値を取得するために実施される一連の工程として理解されるべきである。本発明の文脈では、目的の値は、溶融金属浴の温度である。
【0053】
好ましい実施形態では、測定プロファイルMPは、溶融金属浴の表面の上方の第1の位置p1に光学コアワイヤの前端を提供する少なくとも1つの工程を定義する。
【0054】
第1の位置p1は、溶融金属浴を収容する容器の上方であっても、又は容器内であってもよい。第1の位置p1における前端は、任意に存在するスラグ層と接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0055】
好ましくは、第1の位置p1は、枢動軸AP上ではなく、すなわち、第1の位置p1は、溶融金属浴の上方の中心ではない。好ましくは、第1の位置p1は、容器の側壁に隣接している。
【0056】
好ましい実施形態では、測定プロファイルMPは、第1の位置p1から溶融金属浴に向かって第2の位置p2に光学コアワイヤの前端を送る少なくとも1つの工程を定義する。
【0057】
当業者であれば、「前端を供給すること」及び「前端を送ること」は、光学コアワイヤを供給すること及び送ること、すなわち、前端を有する光学コアワイヤを供給すること、及び光学コアワイヤをその前端と共に移動させることを必然的に含むことを理解するであろう。
【0058】
第2の位置p2は、好ましくは、溶融金属浴の表面の上方の点から溶融金属浴の表面のレベルの点に向かって規定される方向において、第1の位置p1の下方に位置する。
【0059】
好ましくは、測定プロファイルMPは、2つの時点t0及びt2内の時間の間に溶融金属浴に向かう第1の位置p1から第2の位置p2への送りを定義する。t2はt0より後であることを理解されたい。
【0060】
好ましくは、測定プロファイルMPは、光学コアワイヤの前端が第1の位置p1から溶融金属浴に向かって第2の位置p2に送られる少なくとも1つの送り速度vfedを定義する。
【0061】
送り速度vfedは、前端を溶融金属浴の表面に向かって、及びその下方に送る間の平均速度を指すことを理解されたい。
【0062】
好ましくは、送り速度vfedは、第1の位置p1と第2の位置p2との間の所定の距離に応じて定義される。第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離に応じて送り速度vfedを定義することにより、好ましくは、光学コアワイヤの前端が冶金容器内の過酷な環境にさらされる時間が、前端が第1の位置p1から第2の位置p2まで送られなければならない距離とは無関係に一定となる。好ましくは、送り速度vfedは、第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離が長いほど速く定義される。
【0063】
好ましい実施形態では、送りは、少なくとも2つの送り速度vfed1及びvfed2で行われる。なお、送り速度vfed1及びvfed2は、光学コアワイヤの前端が送られる平均速度を指すことを理解されたい。
【0064】
好ましくは、光学コアワイヤの前端は、第3の位置p3で溶融金属浴の表面を通過する。第3の位置p3は、第1の位置p1の下方かつ第2の位置p2の上方に位置することが好ましい。
【0065】
溶融金属浴の表面は、容器の雰囲気に面する表面であってもよく、又は、スラグ層が存在する場合には、スラグ層に面する表面であってもよい。
【0066】
好ましくは、第2の位置p2は、溶融金属浴の表面の下方の浸漬深さi1にある。本発明における浸漬深さは、溶融金属浴の表面からの前端の距離として理解されるべきであり、表面に垂直な軸に沿って測定される。すなわち、浸漬深さi1は、第3の位置p3と第2の位置p2との間の距離である。
【0067】
好ましくは、光学コアワイヤの前端は、2つの時点t1及びt2内の時間の間、溶融金属浴の表面の下方に位置する。2つの時点t1及びt2は時点t0よりも後であり、時点t2は時点t1よりも後であることを理解されたい。時点t1は、前端が溶融金属浴に入る時点、すなわち、前端が溶融金属浴の表面の下方に浸漬される時点である。換言すれば、t1は、前端が第3の位置p3を通過する時点である。
【0068】
好ましくは、測定プロファイルMPは、時点t0及びt1内の時間の間に前端が送られる第1の送り速度vfed1と、時点t1及びt2内の時間の間に前端が送られる第2の送り速度vfed2とを定義する。
【0069】
好ましい実施形態では、第2の送り速度vfed2は、2つ以上の送り速度を含む。
【0070】
浸漬角度が45~90°の範囲内、好ましくは60~90°の範囲内、最も好ましくは浸漬角度が90°であることが有利であり得る。この角度は、溶融金属浴の表面と、光学コアワイヤに沿った最適直線状の軸との間の角度として定義される。90°は、溶融金属浴の表面に垂直な光学コアワイヤの浸漬として理解され得る。
【0071】
好ましい実施形態では、測定プロファイルMPは、時点t0及びt2内の測定時間中に温度情報を取得する少なくとも1つの工程を定義する。好ましくは、測定プロファイルMPは、時点t1及びt2内の測定時間中に温度情報を取得する工程を定義する。
【0072】
温度情報を取得するために、特にIR波長範囲内で溶融金属浴によって放出され、光学コアワイヤによって検出器に搬送される放射線が記録される。放射線の強度及び/又はスペクトル情報は、検出器に接続された処理ユニットによって処理されてもよい。光学コアワイヤの前端は、好ましくは、温度が取得される時点で又は測定時間中に、溶融金属浴の表面の下方に浸漬される。
【0073】
好ましくは、温度情報は、測定温度値の決定をもたらす工程において取得される。好ましい実施形態によれば、温度値は、単一点測定で決定されても、又は多点測定で決定されてもよい。
【0074】
好ましくは、測定温度値は、一連のデータ点の平均値である。より好ましくは、測定温度値は、一連のデータ点を処理するアルゴリズムの適用に基づいて導出される。
【0075】
好ましい実施形態によれば、測定プロファイルMPは、時点t0及びt2内の静止時間中の工程を定義し、その間、光学コアワイヤの前端の送りは一時停止されるか、又は光学コアワイヤの前端は低速で送られる。好ましくは、測定プロファイルMPは、時点t1及びt2内の静止時間を定義する。本明細書で使用される「前端の送りを一時停止させる」とは、前端を能動的に動かさないことを意味する。送りの一時停止又は低速での送りのいずれの代替形態においても、溶融金属浴の表面に向かう前端の位置の移動が消耗に起因してもたらされる。それにもかかわらず、前端は依然として溶融金属浴の表面の下方に浸漬されている。
【0076】
低速とは、好ましくは0,2m/秒未満の速度、より好ましくは0,1m/秒未満の速度である。
【0077】
好ましい実施形態では、測定プロファイルMPは、速度vretで光学コアワイヤの前端を溶融金属浴の上方の位置まで後退させる少なくとも1つの工程を定義する。速度vretは、送り速度vfedよりも遅くてもよく、同じでもよく、又は速くてもよい。
【0078】
当業者であれば、光学コアワイヤの前端を後退させることは、溶融金属浴から溶融金属浴の上方の位置への方向の移動であることを理解するであろう。
【0079】
好ましくは、時点t2の後に、光学コアワイヤの前端を溶融金属浴の表面の上方の位置に向かって後退させる。
【0080】
好ましくは、光学コアワイヤの前端を、第1の位置p1に向かって後退させる。光学コアワイヤの前端は、測定プロファイルMPで定義される測定シーケンスの間に消耗されて絶えず再構築されるので、前端と第1の位置p1との間の距離は、送りが一時停止されている時でも、前端が溶融金属浴の表面の下方に浸漬されている間に短くなる。したがって、再構築された光学コアワイヤの前端を後退させる距離は、光学コアワイヤの最初の前端が第1の位置p1から第2の位置p2まで送られた距離よりも短いことが好ましい。
【0081】
好ましくは、光学コアワイヤの前端を、第4の位置p4まで後退させる。好ましくは、第4の位置p4は、第1の位置p1と同じである。
【0082】
好ましくは、測定プロファイルMPは、
(i)光学コアワイヤを、その前端が溶融金属浴の表面の上方の第1の位置p1にある状態で提供する工程と、
(ii)溶融金属浴に向けられた前端を、第1の位置p1から溶融金属浴の表面の下方の浸漬深さi1の第2の位置p2まで、時点t0及びt2内の時間にわたって少なくとも1つの送り速度vfedで送る工程であって、光学コアワイヤの前端は、時点t1及びt2内の時間の間は溶融金属浴の表面の下方にある、工程と、
(iii)時点t1及びt2内の測定時間中に温度情報を取得する工程と、
(iv)光学コアワイヤを速度vretで溶融金属浴の上方の位置まで後退させる工程と、
のうちの少なくとも1つを定義する。
【0083】
好ましくは、工程(i)、(ii)及び(iv)は連続した順序で実施される。
【0084】
好ましくは、工程(iii)は、少なくとも部分的に工程(ii)中に実施される。
【0085】
好ましくは、炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットは、測定プロファイルMPの少なくとも1つの工程における少なくとも1つのパラメータの定義を炉傾斜値FIに関連付ける。
【0086】
この文脈におけるパラメータは、測定プロファイルMPで定義されるような少なくとも1つの工程で定義される位置、速度、及び時点として理解されるべきである。
【0087】
好ましくは、測定プロファイルMPにおける第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離は、炉傾斜値FIに基づいて定義される。
【0088】
好ましくは、第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離は、所定の初期位置からの炉の傾斜度ごとに2cm~20cm、好ましくは5cm~15cm、最も好ましくは8cm~12cmほど適合される。「所定の初期位置」という用語は、定義上は0°の炉傾斜値を有する位置、すなわち中立位置を規定する位置を指す。
【0089】
好ましい実施形態では、第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離は、所定の初期位置から第1の方向及び第2の方向への炉の傾斜度ごとに同じ長さだけ適合される。この実施形態は、溶融金属浴を収容する容器が対称に構築されている場合に好ましくてもよい。
【0090】
更に好ましい実施形態では、第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離は、所定の初期位置から第1の方向への炉の傾斜度ごとに第1の長さだけ適合され、第2の方向への炉の傾斜度ごとに第2の長さだけ適合される。この実施形態は、容器が非対称に構築されている場合、又は枢動軸APが中心に位置していない場合に好ましくてもよい。
【0091】
好ましくは、第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離は、所定の初期位置から第1の方向への炉の傾斜度ごとに2cm~20cm、好ましくは5cm~15cm、最も好ましくは8cm~12cm延長される。
【0092】
好ましくは、第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離は、所定の初期位置から第2の方向への炉の傾斜度ごとに2cm~20cm、好ましくは5cm~15cm、最も好ましくは8cm~12cm短縮される。
【0093】
好ましくは、測定プロファイルMPにおける第2の位置p2と第4の位置p4との間の距離は、炉傾斜値FIに基づいて定義される。
【0094】
好ましくは、第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離は、炉の傾斜度ごとに第2の位置p2と第4の位置p4との間の距離と同じ長さだけ適合される。
【0095】
好ましくは、第2の位置p2と第4の位置p4との間の距離は、所定の初期位置からの炉の傾斜度ごとに2cm~20cm、好ましくは5cm~15cm、最も好ましくは8cm~12cmほど適合される。
【0096】
好ましい実施形態では、第2の位置p2と第4の位置p4との間の距離は、所定の初期位置から第1の方向及び第2の方向への炉の傾斜度ごとに同じ長さだけ適合される。この実施形態は、溶融金属浴を収容する容器が対称に構築されている場合に好ましくてもよい。
【0097】
更に好ましい実施形態では、第2の位置p2と第4の位置p4との間の距離は、所定の初期位置から第1の方向への炉の傾斜度ごとに第1の長さだけ適合され、第2の方向への炉の傾斜度ごとに第2の長さだけ適合される。この実施形態は、容器が非対称に構築されている場合、又は枢動軸APが中心に位置していない場合に好ましくてもよい。
【0098】
好ましくは、第2の位置p2と第4の位置p4との間の距離は、所定の初期位置から第1の方向への炉の傾斜度ごとに2cm~20cm、好ましくは5cm~15cm、最も好ましくは8cm~12cm延長される。
【0099】
好ましくは、第2の位置p2と第4の位置p4との間の距離は、所定の初期位置から第2の方向への炉の傾斜度ごとに2cm~20cm、好ましくは5cm~15cm、最も好ましくは8cm~12cm短縮される。
【0100】
好ましくは、炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットは、測定プロファイルを光学コアワイヤの特性に更に関連付ける。
【0101】
好ましくは、光学コアワイヤの特性は、その線密度である。線密度は、単位長さ当たりの質量によって定義される。
【0102】
好ましくは、測定プロファイルMPのt0及びt2内の時間の長さは、光学コアワイヤの線密度が高いほど長く定義される。
【0103】
好ましくは、測定プロファイルMPの送り速度vfedは、光学コアワイヤの線密度が高いほど低く定義される。
【0104】
本発明による方法の工程(b)では、時点t(n)の炉傾斜値FI(n)が決定される。
【0105】
好ましくは、炉傾斜値FI(n)は、時点t(n)における炉傾斜の値を指す。
【0106】
炉傾斜値FIを決定するために利用可能な可能性の範囲がある。好ましい実施形態では、炉傾斜値FIは、冶金容器内、冶金容器上、又は冶金容器に実装された検出システムに基づく直接測定、炉傾斜のプロセス制御機構のデータに基づく入力、又は金属製造プロセスの既知の時点に基づく入力によって決定される。検出システムは、回転可変静電容量センサ、誘導センサ、及びDCサーボモータセンサを含んでもよいが、それらに限定されない。
【0107】
本発明による方法の工程(c)では、炉傾斜値を対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、炉傾斜値FI(n)に対応する測定プロファイルMP(n)が選択される。
【0108】
本発明による方法の工程(d)では、測定温度値を取得するために、測定プロファイルMP(n)が時点t(n)で適用される。
【0109】
測定プロファイルMP(n)を適用することにより、時点t(n)での溶融金属浴の測定温度値が決定される。
【0110】
好ましくは、温度情報は、所定の浸漬深さi1で取得される。
【0111】
所定の浸漬深さで温度情報を取得することで、最も正確で再現性のある測定結果が得られる。
【0112】
好ましくは、浸漬深さi1は一定である。すなわち、浸漬深さi1は炉傾斜値FIとは無関係である。換言すれば、工程(c)で選択される測定プロファイルMP(n)は、光学コアワイヤの前端の送りが前端の特定の浸漬深さi1への浸漬をもたらすような炉傾斜値FI(n)との関係で選択される。当業者が理解するように、浸漬深さi1は、測定プロファイルMPで定義される第1の位置p1と第2の位置p2との間の距離によって制御されてもよい。
【0113】
好ましくは、工程(b)~(d)は連続した順序で実施される。
【0114】
好ましくは、工程(a)は工程(c)~(d)の前に行われる。
【0115】
より好ましくは、本方法は、以下の順序:
(a)-(b)-(c)-(d)又は
(b)-(a)-(c)-(d)で行われる。
【0116】
好ましい実施形態では、工程(a)で提供されるデータセットは、溶融金属浴の表面のレベルを測定プロファイルMPに更に関連付ける。
【0117】
好ましくは、本方法は、溶融金属浴の表面のレベルを決定することを含む。
【0118】
溶融金属浴のレベルを決定するための多種多様な方法が当業者に知られている。そのような方法は、溶融材料の既知の密度及び容器の設計又は測定装置の適用と併せた原材料の装入質量の決定を含むが、これらに限定されない。そのような測定装置は、浸漬ランスとしての接触式センサ、又はレーダ、マイクロ波、赤外線、電磁気、誘導信号検出もしくは光信号検出に基づくことができる非接触式センサ、並びに容器内の圧力の測定のような間接的な方法を利用するセンサであってもよい。好ましくは、センサは、センサと溶融金属の表面との間の距離を示すデータを捕捉するように、容器内の溶融金属浴の上方に配置される。
【0119】
好ましくは、溶融金属浴のレベルは、初期位置、すなわち、0°の炉傾斜値FIで決定される。
【0120】
好ましい実施形態では、工程(a)で提供されるデータセットは、光学コアワイヤの前端の位置を測定プロファイルMPに更に関連付ける。
【0121】
好ましくは、本方法は、光学コアワイヤの前端の位置を決定することを含む。
【0122】
好ましくは、光学コアワイヤの前端の位置は、センサによって決定される。そのようなセンサは、空気圧センサ、誘導センサ及び光学センサからなる群から選択されてもよい。
【0123】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書に記載の手順は繰り返し実行される。
【0124】
本発明は更に、炉内の溶融金属浴の温度値を決定するためのシステムであって、炉は炉傾斜を有するシステムを提供する。システムは、装置及びモジュールを備え、モジュールは、装置と相互作用するように適合される。
【0125】
好ましくは、システムは、本発明による方法であって、
(a)炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(b)時点t(n)での炉傾斜値FI(n)を決定する工程と、
(c)炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから、炉傾斜値FI(n)に対応する測定プロファイルMP(n)を選択する工程と、
(d)測定プロファイルMP(n)を時点t(n)で適用して、測定温度値を取得する工程と、
を含む方法を実行するよう構成されたを提供する。
【0126】
本発明の方法に関する好ましい実施形態については、上記の好ましい実施形態を参照されたい。
【0127】
本発明によるシステムは、装置を備え、装置は、光学コアワイヤ及び検出器を含む。光学コアワイヤ及び検出器に関する好ましい実施形態については、本発明の方法について上述した好ましい実施形態を参照されたい。
【0128】
本発明によるシステムは、モジュールを含み、モジュールは、記憶ユニットSと、処理ユニットPと、制御ユニットCと、を含む。
【0129】
好ましくは、記憶ユニットS、処理ユニットP、及び制御ユニットCは、相互作用するように構成されている。
【0130】
本発明によれば、モジュールの記憶ユニットSは、炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付けるデータセットを提供するための記憶要素S1を含む。
【0131】
本発明によれば、モジュールの処理ユニットPは、炉傾斜値FIを決定するための処理要素P1と、炉傾斜値FIを対応する測定プロファイルMPに関連付ける提供されたデータセットから炉傾斜FI(n)に対応する測定プロファイルMP(n)を選択するための処理要素P2とを含む。
【0132】
好ましい実施形態では、処理ユニットPは、記憶ユニットSに記憶された情報を処理するように構成されている。
【0133】
本発明によれば、モジュールの制御ユニットCは、測定プロファイルMP(n)を適用して測定温度値を取得するための制御要素C1を含む。制御要素C1は、プロセッサ又はプログラマブルロジックであることが好ましい。
【0134】
好ましい実施形態では、制御ユニットCは、装置を制御するように構成されている。
【0135】
好ましい実施形態では、システムは送り手段を備える。本発明の文脈では、送り手段は、溶融金属浴内への光学コアワイヤの送りを可能にする手段として理解され得る。このような手段は、フィーダ、送り制御装置、ストレートナー、ガイド管及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0136】
好ましい実施形態によれば、システムは、光学コアワイヤの長さに対応するコイルを更に備える。
【0137】
好ましい実施形態によれば、システムは、傾動装置を更に備える。好ましくは、傾動装置は、モータ、ギア、チェーンドライブ、油圧、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つの手段を含む。
【0138】
好ましい実施形態によれば、モジュールの制御ユニットは、傾動装置を制御するための制御要素C2を含む。制御要素C2は、プロセッサ又はプログラマブルロジックであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0139】
本発明の根底にある概念は、図面に示された実施形態に関してより詳細に後述される。しかしながら、本発明は、示される正確な構成及び手段に限定されないことが理解されるべきである。ここで、
【
図1】
図1は、光学コアワイヤの様々な設計の概略断面図である。
【
図2】
図2は、温度が決定される溶融金属浴を有する例示的な設備の概略図である。
【
図3】
図3は、温度を決定するための典型的な設備を有する電気アーク炉(EAF)の詳細な概略図である。
【
図5】
図5は、枢動軸A
Pに対する更なる例示的な容器形状を示す。
【
図6】
図6は、代表的な測定プロファイルの適用中の光学コアワイヤの前端の浸漬を示す位置-時間グラフである。
【
図7】
図7は、別の代表的な測定プロファイルの適用中の光学コアワイヤの前端の浸漬を示す位置-時間グラフである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態によるモジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0140】
図1は、本発明の例示的な実施形態による光学コアワイヤの様々な設計の概略断面図である。
図1Aは、金属管3’によって取り囲まれた光ファイバ2’を含む光学コアワイヤ1’を示す。
【0141】
図1Bは、金属管3’’によって取り囲まれた光ファイバ2’’を含む光学コアワイヤ1’’を示す。第2の金属管4’’が、金属管3’’を更に取り囲んでいる。2つの金属管の間の空隙5’’は固体材料で充填されていない。すなわち、空隙はガス又はガス混合物を含んでもよい。
【0142】
図1Cは、金属管3’’’及び第2の金属管4’’’によって取り囲まれた光ファイバ2’’’を含む光学コアワイヤ1’’’を示す。2つの金属管の間の空隙5’’’は、充填材料、例えば有機材料又はEガラスからのファイバで充填されている。
【0143】
図2は、温度が決定される溶融金属浴7を有する例示的な設備6の概略図である。
【0144】
設備6は、コイル8上に少なくとも部分的に設置されて、測定を行うためにコイル8から少なくとも部分的に巻き出される光学コアワイヤ1を備える。光学コアワイヤ9の一端は、検出器10に接続されており、検出器10は、光学コアワイヤ1及び検出器10で取得されたデータを処理するためにコンピュータシステム(図示せず)に接続されることができる。
【0145】
溶融金属浴7は、電気アーク炉(EAF)、又は溶融金属処理の当業者に知られている任意の転炉の一部であり得る容器11内に収容されている。光学コアワイヤ1は、移動手段12によって、入り口14を有する容器11内のガイド管13を通って導かれる。移動手段12は、光学コアワイヤ1を移動させるためのローラを含み、ローラの少なくとも1つを駆動するためのサーボモータを含んでもよい。図示の構成は一例として使用されており、それぞれの入り口14を有する蓋22は本発明の前提条件ではない。
【0146】
図示の構成は、前端15が溶融金属浴MBSの表面の下方に浸漬された状態の光学コアワイヤ1の例示的な測定位置p2を示している。本実施形態では、溶融金属浴MBSの表面に対する光学コアワイヤ1の浸漬角度は90°である。しかしながら、この角度は、冶金設備の構造の詳細に応じて可変である。
【0147】
コイル8から容器の入り口14まで延在する光学コアワイヤ1の一部の温度は低いと考えることができ、室温から100°Cまでの範囲の温度であり得る。入り口14を溶融金属浴7の方向に通過すると、最初に最高1700℃又はそれ以上の高温雰囲気に遭遇し、次にスラグ層17に遭遇し、次に溶融金属浴7に遭遇する。容器への入り口14には、ガイド管13内への金属及びスラグの侵入を防止するために吹き込みランス18を設けることができる。
【0148】
溶融金属浴MBSの最適レベルは、各冶金容器について、その設計及び動作モードによっておおよそ知ることができる。
【0149】
温度測定値を取得するために、光学コアワイヤ1は、浸漬端15にその前端が、溶融金属浴7に向かって位置p2の必要な浸漬深さまで送られる。信頼できる温度測定値を取得するために、溶融金属浴中のほぼ一定の浸漬深さで測定することが望ましい場合がある。適切な送りシステム12は、光学コアワイヤ1の送り速度を正確に制御する。
【0150】
測定シーケンスの後、溶融金属浴に浸漬された光学コアワイヤの部分19は溶融され、したがって、消耗される。この部分の長さはLCで示されている。長さLcは、光学コアワイヤが到達する浸漬深さに相関することを理解されたい。測定が行われた後、高温雰囲気内に位置し、スラグ層を通って延びている光学コアワイヤの部分20は、コイル8の方向に送り戻され、次の測定のために再使用されてもよい。長さLDは、容器内に配置されているが測定中に消耗されていない光学コアワイヤの長さに相関する。冶金容器内に送り込まれた光学コアワイヤの全長LTは、消耗された長さLcと容器内に配置された光学コアワイヤの長さLDとの和である。
【0151】
図3は、温度測定用の光学コアワイヤ1を備える典型的な設備を有する炉110、特にEAFの詳細な概略図である。製鋼に使用されるEAFは、通常、溶融金属浴7を収容する容器11と、1つ以上の電極23がそれを貫通して炉に入ることができる取り外し可能な蓋22と、容器11の側部に配置されたプラットフォーム24とを備える。EAFの図に示すように、溶融金属浴7を収容する本体は、必ずしも中心軸A
Pに対して対称である必要はなく、非対称に設計することもできる。金属を加熱するために使用される電極23は、典型的には容器11の上方に配置される。
【0152】
光学コアワイヤ1がそれを通って容器11に入る入り口14は、プラットフォーム24上に配置されている。移動手段12を含む浸漬装置もプラットフォーム24上に配置されている(明確にするために図示されていない)。図示の構成は、代表的な中立位置にある、すなわち、傾動していない容器11を示している。
【0153】
動作中のこのようなEAF構成、すなわち、溶融金属浴に溶融された金属が装入された状態では、溶融金属浴の深さは1mの範囲内であり、入り口14から溶融金属浴の表面までの距離は1~1.5mの範囲内である。このような容器の典型的な内径は6m~7mであるが、最大9mの内径を有するより大きな設備も一般的である。EAFの中心からプラットフォーム上に設置された入り口14までの距離は、3m~3.5mの範囲内である。数字は、全ての図が縮尺通りに描かれているのではなく、本発明につながる状況を明確にするために項目がサイズ比で示されていることを強調している。
【0154】
図4は、様々な炉傾斜度の冶金容器11’を有する例示的な炉110’の概略図である。要素及びそれらの互いに対する比率は、縮尺通りに描かれているのではなく、本発明を更に詳細に説明するために描かれていることが理解されよう。典型的には、容器の傾動は+3°~-3°の範囲内であり、図に示されるように10°の傾動がより明確にするために選択された。
【0155】
光学コアワイヤ1は、容器の側壁の近くに位置する入り口14を通って容器11’内に案内される。入り口14はまた、第1の位置p1と同じ位置にあってもよく、例示的な測定プロファイルでは、そこから光学コアワイヤが送られ始める。光学コアワイヤの前端が到達する位置は、
図4Aではp2でマークされているが、より明確にするために、
図4B及び
図4Cではマークは省略されている。
【0156】
図4A~
図4Cは、溶融金属浴MB
Sの表面と、炉傾斜値が示されている中心枢動軸A
P及び傾動軸A
Tと、容器11’の様々に異なる構成における炉傾斜値を定義するためにも使用され得る水平面P
Hとの間の関係を示している。更に、溶融金属浴MB
Sの表面の下方に浸漬された光学コアワイヤの長さL
cと、容器11’に入っているが溶融金属浴MB
Sの表面の下方に浸漬されていない光学コアワイヤの長さL
Dとの合計として定義される、容器11’に入っている光学コアワイヤの全長L
Tが、これら様々な炉構成について示されている。
【0157】
図4Aは、代表的な中立位置にある容器11’を図示しており、0°の炉傾斜値が示されている。枢動軸A
Pは、容器11’の底部に垂直に構成され、傾動軸A
Tと一致している。両方の軸は、容器11’の底と一致する水平面P
Hに垂直である。
【0158】
図4Bは、一方の側に10°傾動した位置にある容器11’を示している。炉傾斜値は、枢動軸A
Pと傾動軸A
Tとの間の角度によって規定される。あるいは、炉傾斜値は、水平面P
Hと容器11’の底部との間の角度によって規定されてもよい。
【0159】
図4Cは、他方の側に10°傾動した位置にある容器11’を示しており、定義上は、炉傾斜値は負の符号を有する。
【0160】
図4A~Cは、容器11’に入っている光学コアワイヤL
Tの全長が一定である構成を示す。炉の傾動は、溶融金属浴MB
Sの表面の下方に浸漬された光学コアワイヤの長さL
cによって表される、光学コアワイヤ1の前端の浸漬深さに影響を及ぼす。本発明の目的は、温度測定を行う際に、動いている炉110’によるこの変化する浸漬深さを考慮に入れることであった。
【0161】
図5は、枢動軸A
Pに対する更なる例示的な冶金炉容器形状を示す。明確にするために、追加の部分は示されていない。
図5Aは、枢動軸A
Pが中立位置の中心に配置された丸底容器11’’を有する炉110’’を示す。
図5Bには、非対称容器11’’’を有する炉110’’’が示されている。容器11’’’が枢動軸A
Pから傾けられると、溶融金属浴MB
Sのレベルは、一方の側又は他方の側に傾けられたときに入り口14に対して異なる範囲に移動する。
【0162】
図6は、例示的な測定プロファイルの適用中の光学コアワイヤの前端の浸漬を示す位置-時間グラフである。x軸は時間を示し、y軸は前端の位置を示す。溶融金属浴MB
Sの表面の位置が方向付けのために示されている。測定の開始に先立って、すなわち、t0の前に、前端が第1の位置p1と呼ばれる開始点に配置される。これは、冶金容器の内側であってもよく、入り口、すなわち、光学コアワイヤが容器に入る点の近くに近接していてもよい。光学コアワイヤは、t0からt2までの時間にわたって、溶融金属浴に向かって及び溶融金属内に第2の位置p2まで送り速度で送られる。この時間の長さは、典型的には数秒の範囲内である。光学コアワイヤの前端は、時点t1で溶融金属浴に入り、すなわち、t1は、前端が溶融金属浴の表面の下方に浸漬される時点である。図示のグラフでは、単一の送り速度が適用されているが、送りは、送り速度の異なるいくつかの段階を含んでもよい。送りを行わない段階、すなわち、静止段階を、別の好ましい実施形態を表す
図7に示すグラフに示されているように、測定の実施中に含めることができる。温度測定値は、t1からt2までの測定時間中に取得される。信頼できる測定値を取得するためには、前端を溶融金属浴の表面の下方に浸漬しなければならない。この点で一定の浸漬深さで前端を提供することにより、最も正確な結果が得られることが分かった。送りの初期段階で取得された温度値は、溶融金属浴のバルク温度を表さないことが多い。t2の後に、光学コアワイヤを溶融金属浴から後退させて、表面の上方の位置に戻す。理想的には、溶融金属浴L
Cの表面下に浸漬された光学コアワイヤの部分は、t2までに消耗される。
【0163】
所与の理由から、送り方式のパラメータは、溶融金属浴の表面レベルと、測定シーケンスが開始される光学コアワイヤの前端の位置及び、測定値を取得するための光学コアワイヤの前端の到達位置との間の関係に影響を及ぼす冶金容器の物理的構成に合わせて調整されることが有利である。
【0164】
本発明による方法を適用することにより、光学コアワイヤが溶融金属浴の表面の下方に浸漬され、したがって消耗される量が最小限になるように浸漬深さを選択することができるので、測定シーケンス中に消耗される光学コアワイヤの量は更に最小限に抑えられる。
【0165】
測定プロファイルの適用中に温度値を取得するために適用される様々なパラメータが様々な測定品質をもたらすことが観察されている。測定プロファイルの測定品質は、固定設置された標準熱電対を使用して取得された測定値と比較して異なる測定精度を指す。本発明の根底にある考え方は、測定が行われる時点での冶金容器内に存在する状況に対する特定の測定プロファイルの適合である。
【0166】
図8は、本発明の一実施形態によるシステム30の概略図である。システム30は、本発明による方法を実行するように構成されている。特に、炉傾斜に関するデータを、炉のそれぞれの構成に最適な測定品質をもたらす測定プロファイルに関連付けるデータセットを提供するように構成されている。システム30は更に、炉の構成、すなわち傾斜値を決定するように構成されている。加えて、システム30は、提供されたデータセットから測定プロファイルを選択するように構成されている。更に、システム30は、この測定プロファイルを適用して温度を取得するように構成されている。
【0167】
システムは装置40を備え、装置40は、光学コアワイヤ及び検出器を含む。更に、システムはモジュール50を備える。装置40及びモジュール50は、互いに相互作用するように適合されている。すなわち、モジュールは、装置40を用いて本発明による方法を実行するように構成され、溶融金属浴の温度値の測定をもたらす。
【0168】
図9は、モジュール50の概略図をより詳細に示す。モジュール50は、記憶ユニットSと、処理ユニットPと、制御ユニットCと、を含む。
【符号の説明】
【0169】
1、1‘、1‘‘、1‘‘‘ 光学コアワイヤ
2‘、2‘‘、2‘‘‘ 光ファイバ
3‘、3‘‘、3‘‘‘ 金属管
4‘‘、4‘‘‘ 第2金属管
5‘‘、5‘‘‘ 金属管間の空隙
6 設備
7 溶融金属浴
8 コイル
9 反対端(検出器に接続されたコアワイヤの端)
10 検出器
110、110’、110’’、110’’’ 炉
11、11’、11’’ 容器;冶金容器
12 移動手段
13 ガイド管
14 入り口
15 光学コアワイヤの前端
MBS 溶融金属浴の表面
17 スラグ層
18 吹き込みランス
19 溶融金属浴に浸漬されたコアワイヤの部分
20 高温雰囲気及びスラグにさらされたコアワイヤの部分
22 取り外し可能な蓋
23 電極
24 プラットフォーム
30 システム
40 装置
50 モジュール
S 記憶ユニット
P 処理ユニット
C 制御ユニット
LC 溶融金属浴に浸漬された光学コアワイヤの長さ
LD 容器内に位置する光学コアワイヤの長さ
LT 容器内に送り込まれた光学コアワイヤの全長
p1 光学コアワイヤの前端の初期位置
p2 光学コアワイヤの前端が溶融金属浴の表面の下方に送り込まれる到達位置
AP 枢動軸
AT 傾動軸
PH 水平面
【国際調査報告】