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特表2024-504091マイクロ波プラズマ処理を用いたLiイオンカソード物質の再生利用のための方法及びシステム
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  • 特表-マイクロ波プラズマ処理を用いたLiイオンカソード物質の再生利用のための方法及びシステム 図1
  • 特表-マイクロ波プラズマ処理を用いたLiイオンカソード物質の再生利用のための方法及びシステム 図2
  • 特表-マイクロ波プラズマ処理を用いたLiイオンカソード物質の再生利用のための方法及びシステム 図3A
  • 特表-マイクロ波プラズマ処理を用いたLiイオンカソード物質の再生利用のための方法及びシステム 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】マイクロ波プラズマ処理を用いたLiイオンカソード物質の再生利用のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20240123BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240123BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240123BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541842
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022070066
(87)【国際公開番号】W WO2022150828
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/135,948
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515084719
【氏名又は名称】シックスケー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルマン,リチャード ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ロベル,グレゴリー エム.
【テーマコード(参考)】
4G048
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE02
5H031RR01
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
(57)【要約】
リチウム粉末を含有する使用済み固体フィードストックを、リチウムイオン電池で用いるために再利用するためのシステム及び方法の実施形態が本明細書で開示される。使用済み固体フィードストックは、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)物質であってよい。いくつかの実施形態では、使用済み固体フィードストックは、化学物質量が増加され物理的性質が改善された新たに使用可能なリチウム補充固体前駆体を製造するために、マイクロ波プラズマプロセスを受け得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波プラズマ装置で酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)粉末を製造する方法であって、
前記マイクロ波プラズマ装置に、平均ニッケル対コバルト比が5:2以下である寿命末期のNMC粉末を含むフィードストックを供給する工程と、
前記フィードストックを前記マイクロ波プラズマ装置のマイクロ波生成プラズマ中に導入して、平均ニッケル対コバルト比が5:2超であるNMC粉末を合成する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記マイクロ波生成プラズマ中に前記フィードストックを導入するのと同時に、ニッケル含有物質、マンガン含有物質、又はコバルト含有物質を前記マイクロ波生成プラズマ中に導入する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記寿命末期のNMC粉末のマイクロ構造が、1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けを有し、前記マイクロ波生成プラズマ中に前記フィードストックを導入する工程により、前記寿命末期のNMC粉末を溶融する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記合成されたNMC粉末のマイクロ構造が、前記1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けを有しない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロ波生成プラズマ中に前記フィードストックを導入するのと同時に、リチウム(Li)含有物質を前記マイクロ波生成プラズマ中に導入する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記寿命末期のNMC粉末が、NMC-532又はNMC-111を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロ波生成プラズマ中に前記フィードストックを導入する前に、リチウム(Li)含有物質を前記フィードストックに添加する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記寿命末期のNMC粉末が、使用済みリチウムイオン電池から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
マイクロ波プラズマ装置で酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)粉末を製造する方法であって、
前記マイクロ波プラズマ装置に、平均ニッケル対コバルト比が5:2以下である寿命末期のNMC粉末を含むフィードストックを供給する工程と、
前記マイクロ波プラズマ装置のマイクロ波生成プラズマ中に前記寿命末期のNMC粉末を導入してNMC粉末を合成する工程と、
を含み、前記寿命末期のNMC粉末は、前記寿命末期のNMC粉末を前記マイクロ波生成プラズマ中に導入する前に、構成元素に還元されない、方法。
【請求項10】
前記マイクロ波生成プラズマ中に前記フィードストックを導入するのと同時に、ニッケル含有物質を前記マイクロ波生成プラズマ中に導入する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記寿命末期のNMC粉末のマイクロ構造が、1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けを有し、前記マイクロ波生成プラズマ中に前記フィードストックを導入する工程により、前記
寿命末期のNMC粉末を溶融する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記合成されたNMC粉末のマイクロ構造が、前記1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けを有しない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロ波生成プラズマ中に前記フィードストックを導入するのと同時に、リチウム(Li)含有物質を前記マイクロ波生成プラズマ中に導入する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記寿命末期のNMC粉末が、NMC-532又はNMC-111を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記マイクロ波生成プラズマ中に前記フィードストックを導入する前に、リチウム(Li)含有物質を前記フィードストックに添加する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記寿命末期のNMC粉末が、使用済みリチウムイオン電池から得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)粉末であって、
マイクロ波プラズマ装置に、平均ニッケル対コバルト比が5:2以下である寿命末期のNMC粉末を含むフィードストックを供給する工程と、
前記フィードストックを前記マイクロ波プラズマ装置のマイクロ波生成プラズマ中に導入して、平均ニッケル対コバルト比が5:2超であるNMC粉末又はNMC前駆体を合成する工程と、
を含む方法によって製造される、NMC粉末。
【請求項18】
前記寿命末期のNMC粉末が、NMC-111、NMC-442、又はNMC-532を含む、請求項17に記載のNMC粉末。
【請求項19】
前記NMC粉末又は前記NMC前駆体が、NMC-611、NMC-811、又はNMC-9.5.5を含む、請求項17に記載のNMC粉末。
【請求項20】
前記NMC粉末又は前記NMC前駆体の平均ニッケル対コバルト比が、5:2、6:1、8:1、又は18:1である、請求項17に記載のNMC粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願の参照による援用
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2021年1月11日に出願された米国仮特許出願第63/135,948号の優先権の利益を主張するものであり、その全開示内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
背景
分野
本開示のいくつかの実施形態は、マイクロ波プラズマ処理を用いて、使用済みカソード物質を再生利用するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
説明
リチウムイオン電池(LIB)は、エネルギー密度(150~200Wh/kg、デバイス質量で標準化)、電力出力(>300W/kg)、及びサイクル安定性(~2000サイクル)という無類の組み合わせに、世界的な生産能力の向上に起因したコストの低下も加わって、二次エネルギー貯蔵市場を支配してきた。電動車両(EV)の人気によって主に牽引されている移動手段電動化の世界的なトレンドは、LIBの生産に対する需要を著しく増加させてきた。このため、今後の数十年間だけでも、何百万メートルトンものLIB廃棄物が、EV電池パックから発生することになる。さらに、LIB技術は、高い電力出力を必要とする定置型エネルギー貯蔵システムにおいて重要な役割を担うことが期待されており、これによって、断続的な天然源からのエネルギーハーベスティングが可能となる。LIBの再利用は、長期的な経済的負担、並びに埋め立て及び原材料抽出の両方に関連する環境問題に対する懸念に直接対処するものである。しかし、LIB再利用のインフラは、広く採用されてはおらず、現行の施設のほとんどは、カソード物質の再使用と言うよりは経済的な利益のために、Co回収に集中している。
【0004】
混合金属LIBカソード中及び異なる化学物質を含む混ざり合ったスクラップ中の金属を回収又は再使用するための再利用プロセスが求められている。これらのプロセスは、低い環境フットプリント及び低いエネルギー消費であることが必要である。いくつかの既存のプロセスでは、カソード物質を他の電池コンポーネントから分離するために前処理が用いられる場合があり、続いて還元性酸浸出を用いて活物質を完全に溶解する。集電体及び電池ケーシングからカソード金属(Li+、Ni2+、Mn2+、及びCo2+)並びに不純物(Fe3+、Al3+、及びCu2+)を含む複雑な浸出液が発生し、これを、一連の選択的析出及び/又は溶媒抽出の工程を用いて、分離、精製することができる。別の選択肢として、浸出液からカソードを直接再合成することもできる。他の既存の方法では、電池物質は、高温溶融抽出又は溶錬プロセスを受ける。これらの操作は、エネルギー集約的で高コストであり、溶錬プロセスによって発生する有害な排出物を処理するための洗練された装置を作動させることが必要である。高いコストにもかかわらず、これらのプロセスでは、高価値である電池物質のすべてを回収することはできない。
【0005】
再利用インフラは、特にEV市場に牽引されるLIBカソード化学物質に対する市場トレンドを考慮すると、利益を最大化するためには、Co回収を第一の焦点とすることができないことは明らかである。現時点でさえ、LiNi1/3Mn1/3Co1/3(NMC-111)などのカソード物質は、さらにより少ない量のCoを含むLiNi0.6Mn0.2Co0.2(NMC-622)やLiNi0.8Mn0.1Co0.1
(NMC-811)に置き換えられつつある。したがって、再利用プロセスは、多様な混合タイプのカソード及び様々なカソード化学物質を含有する混ざり合ったスクラップを、高い効率で取り扱う必要がある。加えて、LIBカソード物質に対する需要の高まりを考慮すると、再利用プロセスは、Coなどの金属を単に別個に回収するのではなく、リチウムの補充によってLIBに使用可能なカソード物質を製造することができるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本概要では、本発明のある特定の態様、利点、及び新規な特徴についてここに記載する。そのような利点のすべてが、必ずしも本発明のいずれかの特定の実施形態に従って実現され得るわけではないことは理解されたい。したがって、例えば、当業者であれば、本明細書で教示される1つの利点又は一群の利点を実現するものであるが、本明細書で教示又は示唆され得る他の利点を必ずしも実現しない方法で本発明が具体化又は実施され得ることは理解される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、マイクロ波プラズマ装置による酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)粉末の合成方法に関し、この方法は、マイクロ波プラズマ装置に、平均ニッケル対コバルト比が5:2以下である寿命末期のNMC粉末を含むフィードストックを供給する工程と、フィードストックをマイクロ波プラズマ装置のマイクロ波生成プラズマ中に導入して、平均ニッケル対コバルト比が5:2超であるNMC粉末を合成する工程と、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、マイクロ波生成プラズマ中にフィードストックを導入するのと同時に、ニッケル含有物質、マンガン含有物質、又はコバルト含有物質をマイクロ波生成プラズマ中に導入する工程を含む。いくつかの実施形態では、寿命末期のNMC粉末のマイクロ構造は、1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けを有し、マイクロ波生成プラズマ中にフィードストックを導入する工程により、寿命末期のNMC粉末を溶融する。いくつかの実施形態では、合成されたNMC粉末のマイクロ構造は、1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けを有しない。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、マイクロ波生成プラズマ中にフィードストックを導入するのと同時に、リチウム(Li)含有物質をマイクロ波生成プラズマ中に導入する工程を含む。いくつかの実施形態では、寿命末期のNMC粉末は、NMC-532又はNMC-111を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、マイクロ波生成プラズマ中にフィードストックを導入する前に、リチウム(Li)含有物質をフィードストックに添加する工程を含む。いくつかの実施形態では、寿命末期のNMC粉末は、使用済みリチウムイオン電池から得られる。
【0010】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、マイクロ波プラズマ装置による酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)粉末の合成方法に関し、この方法は、マイクロ波プラズマ装置に、平均ニッケル対コバルト比が5:2以下である寿命末期のNMC粉末を含むフィードストックを供給する工程と、寿命末期のNMC粉末をマイクロ波プラズマ装置のマイクロ波生成プラズマ中に導入して、平均ニッケル対コバルト比が5:2超であるNMC粉末を合成する工程と、を含み、寿命末期のNMC粉末は、寿命末期のNMC粉末をマイクロ波生成プラズマ中に導入する前に、その構成元素に還元されない。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、マイクロ波生成プラズマ中にフィードストックを導入するのと同時に、ニッケル含有物質をマイクロ波生成プラズマ中に導入する工程
を含む。いくつかの実施形態では、寿命末期のNMC粉末のマイクロ構造は、1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けを有し、マイクロ波生成プラズマ中にフィードストックを導入する工程により、寿命末期のNMC粉末を溶融する。いくつかの実施形態では、合成されたNMC粉末のマイクロ構造は、1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けを有しない。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、マイクロ波生成プラズマ中にフィードストックを導入するのと同時に、リチウム(Li)含有物質をマイクロ波生成プラズマ中に導入する工程を含む。いくつかの実施形態では、寿命末期のNMC粉末は、NMC-532又はNMC-111を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、マイクロ波生成プラズマ中にフィードストックを導入する前に、リチウム(Li)含有物質をフィードストックに添加する工程を含む。いくつかの実施形態では、寿命末期のNMC粉末は、使用済みリチウムイオン電池から得られる。
【0013】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)粉末であって、マイクロ波プラズマ装置に、平均ニッケル対コバルト比が5:2以下である寿命末期のNMC粉末を含むフィードストックを供給する工程と、フィードストックをマイクロ波プラズマ装置のマイクロ波生成プラズマ中に導入して、平均ニッケル対コバルト比が5:2超であるNMC粉末又はNMC前駆体を合成する工程と、を含む方法によって製造される、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)粉末に関する。
【0014】
いくつかの実施形態では、寿命末期のNMC粉末は、NMC-111、NMC-442、又はNMC-532を含む。いくつかの実施形態では、NMC粉末又はNMC前駆体は、NMC-611、NMC-811、又はNMC-9.5.5を含む。いくつかの実施形態では、NMC粉末又はNMC前駆体の平均ニッケル対コバルト比は、5:2、6:1、8:1、又は18:1である。
【0015】
例としての実施形態を例示するために図面を提供するが、図面は、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書で述べるシステム及び方法のより良好な理解は、添付の図面と合わせて以下の記述を参照することで認識される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の実施形態に従う、マイクロ波プラズマプロセスを用いて使用済み固体フィードストックを再利用するための方法の例のフローチャートを示す。
図2図2は、本開示の実施形態に従う、再利用固体LIB前駆体の製造に用いることができる上部フィード式(top feeding)マイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。
図3A図3Aは、本開示の側部フィードホッパーの実施形態に従う、再利用固体LIB前駆体の製造に用いることができるマイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。
図3B図3Bは、本開示の側部フィードホッパーの実施形態に従う、再利用固体LIB前駆体の製造に用いることができるマイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ある特定の好ましい実施形態及び例を以下で開示するが、本発明の主題は、具体的に開示される実施形態を超えて、他の別の選択肢としての実施形態及び/又は使用に、並びにその改変及び均等物にまで拡張される。したがって、本明細書に添付の請求項の範囲は、以下で述べる特定の実施形態のいずれによっても限定されない。例えば、本明細書で開示されるいずれの方法又はプロセスにおいても、方法又はプロセスの処置又は操作は、適切ないかなる順序で行われてもよく、開示されるいかなる特定の順序にも必ずしも限定されない。様々な操作が、ある特定の実施形態を理解する手助けとなり得るように、複数の個別の操作として順に記載される場合があるが、記載の順番は、これらの操作が順番に依存
することを示唆するものと解釈されるべきではない。加えて、本明細書で述べる構造、システム、及び/又はデバイスは、一体化されたコンポーネントとして、又は別々のコンポーネントとして具体化され得る。様々な実施形態を比較する目的で、これらの実施形態のある特定の態様及び利点について述べる。そのような態様又は利点のすべてが、必ずしもいずれかの特定の実施形態によって実現されるわけではない。したがって、例えば、本明細書で教示される1つの利点又は一群の利点を実現又は最適化するものであるが、本明細書でやはり教示又は示唆され得る他の態様又は利点を必ずしも実現しない方法で、様々な実施形態が実施され得る。
【0018】
次に、本明細書で開示されるデバイス及び方法の構造、機能、製造、並びに使用の原理の全体としての理解を提供するために、ある特定の例示的実施形態について述べる。これらの実施形態の1又は複数の例を、添付の図面に示す。当業者であれば、本明細書で具体的に記載され、添付の図面に示されるデバイス及び方法が、限定されない例示的な実施形態であること、及び本発明の範囲が請求項によってのみ定められることは理解される。1つの例示的な実施形態と合わせて示される又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされてもよい。そのような改変及び変動は、本発明の技術の範囲内に含まれることを意図している。
【0019】
リチウム粉末を含有する使用済み固体フィードストックを、LIB及び電池セルで用いるために再利用するためのシステム並びに方法の実施形態が本明細書で開示される。粉末は、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)物質であってよい。いくつかの実施形態では、使用済み固体フィードストックは、新たに使用可能なリチウム補充固体前駆体を製造するために、マイクロ波プラズマプロセスを受け得る。
【0020】
具体的には、使用済み固体フィードストックから再利用リチウム含有粒子及びLiイオン電池物質を製造するための方法、システム、及び装置が本明細書で開示される。Liイオン電池のためのカソード物質は、リチウム含有遷移金属酸化物を含んでよく、例えば、LiNiMnCo又はLiNiCoAlなどであり、式中、x+y+zは1に等しい(又は約1である)。これらの物質は、リチウム原子の層が遷移金属酸化物多面体の層の間に位置する層状結晶構造を有し得る。しかし、スピネル型結晶構造などの別の選択肢としての結晶構造が形成される場合もある。結晶構造からのLiイオンのデインターカレーションが発生すると、遷移金属の価電子状態の増加によって電荷の中性が維持される。LiNiMnCo又はLiNiCoAlは、比較的高いエネルギー密度(mAh/g)、高いサイクル性(充電/放電サイクルあたりの劣化率%)、及び熱安定性(≦100℃)などの望ましい特性を持つ。
【0021】
いくつかの実施形態では、使用済み固体フィードストックは、使用済みLIB又は他の入手源からの寿命末期のNMC又は他の使用済みカソード物質を含み得る。いくつかの実施形態では、使用済み固体フィードストックは、LiCoO(LCO)、LiFePO(LFP)、LiMn(LMO)、LiNi1/3Mn1/3Co1/3(NMC-111)、LiNi0.5Mn0.3Co0.2(NMC-532)、LiNi0.6Mn0.2Co0.2(NMC-622)、又はLiNi0.8Mn0.1Co0.1(NMC-811)、又はLiNi0.8Co0.15Al0.05(NCA)が挙げられるがこれらに限定されないカソード組成物を含み得る。最も好ましくは、使用済み固体フィードストックは、NMCの形態を含む。いくつかの実施形態では、NMCは、NMC-532、又は平均ニッケル対コバルト比が5:2以下のNMCを含む。出発物質である使用済み固体カソード前駆体物質は限定されない。
【0022】
多孔度、粒径、粒径分布、相の組成及び純度、マイクロ構造など、最終新規形成固体前駆体リチウム含有粒子の様々な特性は、様々なプロセスパラメータ及び投入物質を微細に
調整することによって、目的に合うように調整し、制御することができる。いくつかの実施形態では、これらには、前駆体溶液の化学、プラズマガス流量、プラズマプロセスガスの選択、使用済み前駆体のプラズマ内での滞留時間、急冷速度、プラズマの電力密度などが含まれ得る。これらのプロセスパラメータは、いくつかの実施形態では、目的に合うように調整された表面積、特定の多孔度レベル、低抵抗Liイオン拡散経路、約2未満のスパン(スパン+d90-d10/d50)を有し、マイクロ又はナノ結晶粒のマイクロ構造を含有するミクロン及び/又はサブミクロンスケールの粒子を製造するために、目的に合うように調整され得る。例えば、望ましいNMC物質の性質としては、粒径分布(PSD)d50が約8~13μmであり、一次結晶粒径が約0.5~1μmであり、表面積が約0.3m/g未満であり、タップ密度が約2.4g/cm超である層状α-NaFeO型結晶構造が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、粉末フィードストックを用いる場合、粒径分布は、投入物質のPSDに依存し得る。
【0023】
図1は、本開示の実施形態に従う、マイクロ波プラズマプロセスを用いて使用済み固体フィードストックを再利用するための方法の例のフローチャートを示す。
【0024】
いくつかの実施形態では、使用済み固体フィードストックは、使用済み固体フィードストックをマイクロ波プラズマ装置に導入する前に、前処理工程を受け得る。いくつかの実施形態では、この前処理は、リチウム置換及び/又は使用済み固体フィードストックの化学に対するさらなる変化を含み得る。例えば、使用済み固体フィードストックの組成の変化は、ニッケル含有粉末、マンガン含有粉末、又はコバルト含有粉末などの成分粉末を、マイクロ波処理の前に使用済み固体フィードストックに添加することによって行われ得る。このように、使用済み固体フィードストックのニッケル含有量は、本明細書で述べる方法で増加され得る。いくつかの実施形態では、前処理は、残留電解質、炭素、及び/又は汚染物を除去するためのさらなる洗浄も含み得る。前処理は、フィードストック粒子を一次結晶粒に分解するための粉砕も含んでよく、続いてスラリーを形成し、顆粒を噴霧乾燥して、プラズマ中に供給すべき固体乾燥粉末を形成する。他の前処理には、解離したリチウムを層状結晶構造中に再導入するための熱処理が含まれ得る。また、前処理は、粒径の分級も含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、好ましくは前処理されてよい使用済み固体フィードストックは、マイクロ波プラズマ装置のマイクロ波プラズマ環境へ導入される。いくつかの実施形態では、マイクロ波プラズマ環境は、マイクロ波プラズマ装置の排気管又はトーチを含み得る。いくつかの実施形態では、使用済み固体フィードストックのマイクロ構造は、使用済み固体フィードストックのLIB中における使用/電力サイクルに起因して、1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けを有し得る。いくつかの実施形態では、使用済み固体フィードストックをマイクロ波プラズマ環境中に導入することにより、使用済み固体フィードストックを溶融し得る。いくつかの実施形態では、溶融の結果として、プロセス中にある程度のリチウムが喪失し得る。しかし、リチウムは、このリチウム喪失を埋め合わせるために、最終製品に補充することができる。いくつかの実施形態では、マイクロ波プラズマ処理及びそれに続く冷却の過程で、使用済み固体フィードストックは、所望される化学及び所望される結晶学的構造を有する電気活性物質に改質され得る。さらに、新規形成固体前駆体は、1又は複数の欠陥、割れ、又は裂けのうちの一部又はすべてが取り除かれたマイクロ構造を含み得る。理論に束縛されるものではないが、いくつかの実施形態では、使用済み固体フィードストックがマイクロ波プラズマ環境中で溶融され、続いて所望される化学を伴って改質される際に、マイクロ構造が変化し、いずれの割れもシールされ得る、又はそれ以外で取り除かれ得る。
【0026】
使用済み前駆体物質が、液体であれ固体であれ、処理のためにプラズマ中に導入されてよい。米国特許出願公開第2018/0297122号、米国特許第8748785(B
2)号、及び米国特許第9932673(B2)号には、本開示のプロセスにおいて、特にマイクロ波プラズマ処理において用いることができるいくつかの処理技術が開示されている。したがって、米国特許出願公開第2018/0297122号、米国特許第8748785(B2)号、及び米国特許第9932673(B2)号は、その全内容が参照により援用され、その技術的記載は、本明細書で述べる使用済み前駆体フィードストックに適用可能であると見なされるべきである。プラズマは、例えば、軸対称マイクロ波生成プラズマ及び実質的に均一な温度プロファイルを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、喪失したリチウムを置き換えることによる使用済み固体フィードストックの前処理を行う代わりに、使用済み固体フィードストックと同時にマイクロ波プラズマ中にリチウムが導入されてもよい。いくつかの実施形態では、使用済み固体フィードストックと同時にリチウムを導入することで、新規形成固体前駆体の形成時に、使用済み固体フィードストックの喪失したいずれのリチウムも置き換えられ得る。
【0028】
本明細書のシステム及び方法の1つの利点は、使用済み固体フィードストックを、その個々の構成元素に分解することが回避されることである。いくつかの実施形態では、むしろ、使用済み固体フィードストックは、物質をその構成元素に還元することなく、直接再利用されるカソード物質を含む。NMCの場合、使用済みNMCは、元素ニッケル、コバルト、及びマンガンに還元されなくてよい。その代わりに、いくつかの実施形態では、NMCは、新規形成固体NMC前駆体を形成するためにマイクロ波プラズマ装置に直接導入されるべき使用済み固体フィードストックを含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、新規形成固体前駆体(例:NMC)は、使用済み固体フィードストックと異なる化学を有し得る。例えば、新規形成固体前駆体は、使用済み固体フィードストックよりも高いニッケル含有量を有し得る。具体的には、いくつかの実施形態では、使用済みフィードストックは、NMC-532、NMC-111、又はニッケル対コバルト比が5:2以下であるNMC粉末の混合物を含んでよく、新規形成固体前駆体は、NMC-622、NMC-811、NMC-9.5.5、又はニッケル対コバルト比が5:2超である別のNMC粉末を含み得る。これは、既存のプロセスと比較した場合に利点であり、なぜなら、通常の加熱プロセスでは、粒子同士が坩堝又は炉中で望ましくない焼結を起こし、NMC粉末の化学を変化させる能力に限界があるからである。このため、これまでのプロセスでは、NMCは、その構成元素に還元されて、その後、所望される化学を伴って再合成される必要がある。しかし、マイクロ波プラズマ処理を用いると、マイクロ波プラズマ環境中における極めて高い温度及び粒子相互作用のために、NMCの化学を直接再利用で(すなわち、構成元素への還元を行うことなく)変化させることができる。リチウムの置き換えと同様に、使用済み固体フィードストックの化学は、元素金属粉末(例:ニッケル粉末)、金属塩、及び/又は金属酸化物(例:NiO)を、使用済み固体フィードストックと同時に、マイクロ波プラズマ装置中に同時に導入することによって変化させることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、プラズマ処理に続いて、層状NMC結晶構造体又はNMC粒子などの最終新規形成固体前駆体が形成される。したがって、か焼などの後処理の必要がなく、このことにより、層状NMC結晶構造体などのNMCの製造時間を大きく削減することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書で述べる方法は、LiNiMnCo(x≧0、y≧0、z≧0、及びx+y+z=1)などの新規形成固体前駆体リチウム含有物質の製造に用いることができる。例えば、LiNi0.5Mn0.3Co0.2(NMC-532)、LiNi0.6Mn0.2Co0.2(NMC-622)、又はLiNi0.8Mn0.1Co0.1(NMC-811)を、使用済み固体フィードス
トックに異なる割合のリチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルトを補充することによって製造することができる。
【0032】
開示される実施形態のいくつかの利点としては、固体前駆体の化学及び最終粒子の形態を目的に合うように調整する能力が挙げられる。プラズマシステムを使用することで、従来の再利用操作では直接用いることが実用的でない又は不可能である前駆体物質(すなわち、NMC粉末)を、物質を構成元素まで分解することなく使用することもできる。プロセスはまた、使用済み固体フィードストック中に、さらなるLi含有量をナノ、マイクロ、又は分子スケール(いくつかの実施形態では、2つ以上)で組み込むことも可能とする。
【0033】
例えば、本開示の実施形態から形成される新規形成NMCは、従来の方法で作製されるNMCでは見られない新規な形態的特性を呈し得る。これらの形態的特性としては、最大エネルギー密度のための稠密/非多孔質粒子、高電力用途のための液相中での速いイオン輸送を可能とするためのネットワーク多孔度(network porosity)、並びに単一の処理工程又は追加のか焼によって生成される設計された粒径及び表面が挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態では、NMCのネットワーク多孔度は、0~50%(又は約0から約50%)の範囲内であってよく、ネットワーク多孔度がゼロであることが最も望ましい。粒径は、例えば、1~50ミクロン(又は、約1~約50ミクロン)であってよい。加えて、NMCの表面組成は、主要構成成分(Ni、Mn、及びCo)の比率に関して異なるようにされてよい、又は完全に異なる物質であってもよい。例えば、アルミニウムが、表面の不動態化に用いられてもよい。
【0035】
開示される方法の実施形態はまた、粒径及び粒径分布に対する精密な制御も可能とし、これを用いて、エネルギー密度改善のために粒子充填を最大化することができる。設計された相互接続した内部多孔性を、使用済み固体フィードストック及びプロセス条件を適切に選択することで作り出すことができ、これにより電解質の内部へのアクセスが可能となり、したがって、最大固体拡散距離が縮まってレート能力(rate capability)が向上する。
【0036】
さらに、本開示の実施形態によって形成されるNMCは、産業界で二次結晶粒径として知られる粒径について、1~150ミクロン(又は約1~約150ミクロン)±10%(又は±約10%)の範囲内の良好に制御された粒径及び粒径分布も呈し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、新規形成固体前駆体の粒径分布は、5~15μm(又は約5~約15μm)のd50であり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、2μm(又は約2μm)のd10及び25μm(又は約25μm)のd90を有し得る。しかし、特定の用途においては、他の分布が有利である場合もある。例えば、依然として<50μmのd50(又は<約50μm)の範囲内であるがより大きい粒子は、非常に低い電力エネルギー貯蔵用途において有利であり得る。さらに、2~5μmのd50(又は約2~約5μm)又は0.5~5μmのd50(又は約0.5~約5μm)などのより小さい粒子は、非常に高い電力の用途において有利であり得る。
【0038】
加えて、NMCの一次結晶粒径は、10nm~10ミクロン(又は約10nm~約10ミクロン)となるように改変され得る。いくつかの実施形態では、一次結晶粒径は、100nm~10ミクロン(又は約100nm~約10ミクロン)であり得る。いくつかの実施形態では、一次結晶粒径は、50nm~500nm(又は約50nm~約500nm)であり得る。いくつかの実施形態では、一次結晶粒径は、100nm~500nm(又は
約100nm~約500nm)であり得る。
【0039】
新規形成固体前駆体物質の表面積は、物質の多孔度及び粒径分布の両方によって制御することができる。例えば、粒径分布が同一であると仮定すると、表面多孔度又はネットワーク多孔度のいずれかの増加が、表面積の増加に繋がる。同様に、多孔度のレベルを同一に維持した場合、より小さい粒子の方が、より高い表面積を有することになる。新規形成固体前駆体物質の表面積は、0.01~15m/g(又は約0.1~約15m/g)の範囲内に調整され得る。いくつかの実施形態では、新規形成固体前駆体物質の表面積は、0.01~15m/g(又は約0.01~約15m/g)の範囲内に調整され得る。さらに、最終粒径は、およそ、5~15μmのd50、1~2μmのd10、25~40μmのd90であり得る。いくつかの実施形態では、d50は、2~5ミクロン(又は約2ミクロン~約5ミクロン)であり得る。いくつかの実施形態では、d50は、0.5~5ミクロン(又は約0.5ミクロン~約5ミクロン)であり得る。表面積を所望される範囲内に目的に合うように調整するために、多孔度が改変されてもよい。いくつかの実施形態では、NMC物質の場合、低表面積が所望される。このため、いくつかの実施形態では、小表面積NMC物質を実現するために、プロセス条件が変更され得る。
【0040】
マイクロ波プラズマ装置
図2は、本開示の実施形態に従う、再利用固体LIB前駆体の製造に用いることができる上部フィード式マイクロ波プラズマトーチ2の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、フィード物質9、10が、マイクロ波生成プラズマ11を維持しているマイクロ波プラズマトーチ3に導入され得る。1つの例としての実施形態では、同伴ガス流及びシース流、渦流、又は作動直線流(work linear flow)(下向き矢印)が、入口部5から注入されて、マイクロ波放射線源1を介してプラズマ11の点火の前に、プラズマトーチ内の流動条件を作り出す。フィード物質9は、軸方向に沿ってマイクロ波プラズマトーチ2に導入され、そこで、物質をホットゾーン6及びプラズマ11へ向かって指向するガス流によって同伴されて運ばれる。ガス流は、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの周期律表の希ガスの列から成ってよい。
【0041】
マイクロ波生成プラズマ内において、フィード物質は、物質中にあるいずれの割れ、裂け、又は欠陥も修復する目的で、溶融される。入口部5を用いて、粒子9、10を軸線12に沿ってプラズマ11に向かって同伴し、加速するためのプロセスガスが導入され得る。まず、粒子9は、プラズマトーチ内の環状ギャップを通して作り出されるコア層流(core laminar)又は乱流のガス流(上側の矢印のセット)を用いた同伴によって加速される。誘電体トーチ3の内壁に層流のシースを提供してプラズマ11からの熱放射に起因する溶融からそれを保護するために、第二の層流(下側の矢印のセット)が、第二の環状ギャップを通して作り出されてもよい。例示的な実施形態では、層流は、粒子9、10を、軸線12にできる限り近い経路に沿ってプラズマ11に向かって指向し、プラズマ内の温度に粒子を曝露する。いくつかの実施形態では、プラズマ接着(plasma
attachment)が発生し得るプラズマトーチ3の内壁に粒子10が到達することを防止するのに適する流動条件が存在する。粒子9、10は、ガス流によってマイクロ波プラズマ11に向かって誘導され、そこで各々が熱処理を受ける。
【0042】
粒子パラメータだけでなく、マイクロ波生成プラズマの様々なパラメータも、所望される結果を実現するために調節され得る。これらのパラメータとしては、マイクロ波電力、フィード物質粒径、フィード物質挿入速度、ガス流量、プラズマ温度、滞留時間、プラズマガス組成、及び冷却速度が挙げられ得る。上記で考察したように、この特定の実施形態では、ガス流は、層流であるが、別の選択肢としての実施形態では、フィード物質をプラズマに向かって指向するために、渦流又は乱流が用いられてもよい。
【0043】
図3A図3Bは、本開示の側部フィードホッパーの実施形態に従う、再利用固体LIB前駆体の製造に用いることができるマイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。したがって、この実行においては、フィードストックは、マイクロ波プラズマトーチの「プルーム」又は「排出ガス」中で処理するために、マイクロ波プラズマトーチアプリケータの後に注入される。したがって、マイクロ波プラズマトーチのプラズマは、プラズマトーチの出口端部で作動して、フィードストックの下流でのフィードを可能としており、これは、図2に関して考察した上部フィード(又は上流フィード)とは反対である。この下流フィードは、ホットゾーンが、ホットゾーンライナーの壁上に物質が堆積することから無期限に保護されることから、トーチの寿命を有利には延長することができる。さらに、温度レベル及び滞留時間の精密な標的化により、プラズマプルームの下流を粉末の最適な溶融に適する温度に作動させることもできる。例えば、マイクロ波電力、ガス流、トーチタイプ、プラズマガス組成、及びプラズマプルームを含有する急冷容器中の圧力を用いて、プルームの長さを調整可能である。
【0044】
一般に、下流処理法は、2つの主要なハードウェア構成を用いて安定なプラズマプルームを確立することができ、それらは、米国特許出願公開第2018/0297122号に記載のものなどの環状流型トーチ(annular torch)、又は米国特許第8748785(B2)号及び米国特許第9932673(B2)号に記載の渦流型トーチ(swirl torches)であり、これらの文献の全内容は参照により本明細書に援用される。図3A及び図3Bはいずれも、環状流型トーチ又は渦流型トーチのいずれかで実行可能である方法の実施形態を示す。プラズマトーチの出口部でプラズマプルームと密接結合したフィードシステムを用いて、プロセスの均質性を保持するために粉末を軸対称に供給する。他のフィード構成としては、プラズマプルームを取り囲む1又は複数の個別のフィードノズルが挙げられ得る。
【0045】
フィード物質314は、マイクロ波プラズマトーチ302の中に導入され得る。ホッパー306は、フィード物質314をマイクロ波プラズマトーチ302、プルーム、又は排出ガス中に供給するまでフィード物質314を保存するために用いられ得る。別の選択肢としての実施形態では、フィードストックは、プラズマトーチの長さ方向軸線に沿って注入され得る。マイクロ波放射線は、導波管304を通してプラズマトーチに送られ得る。フィード物質314は、プラズマチャンバ310に供給され、プラズマトーチ302によって生成されたプラズマと接触する。プラズマ、プラズマプルーム、又はプラズマ排出ガスと接触すると、フィード物質は溶融する、又はそうでなければ物理的若しくは化学的に変化する。依然としてプラズマチャンバ310に存在する間に、フィード物質314は、冷却され、固化されて、その後容器312に回収される。別の選択肢として、フィード物質314は、依然として溶融相にある間にプラズマチャンバ310から排出されて、プラズマチャンバの外で冷却、固化されてもよい。いくつかの実施形態では、急冷チャンバが用いられてもよく、それは、陽圧を用いても又は用いなくてもよい。図2とは別に記載したが、図3A図3Bの実施形態は、図2の実施形態に類似の特徴及び条件を用いることは理解される。
【0046】
追加の実施形態
上記明細書において、本発明を、その具体的実施形態を参照しながら記載してきた。しかし、本発明のより広い趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更がそれに成されてもよいことは明らかであろう。本明細書及び図面は、したがって、限定的な意味ではなく説明的な意味であると見なされるべきである。
【0047】
実際、本発明を、ある特定の実施形態及び例の文脈で開示してきたが、当業者であれば、本発明が、具体的に開示される実施形態を超えて、本発明の他の別の選択肢としての実施形態及び/又は使用、並びにその明らかな改変及び均等物にまで拡張されることは理解
される。加えて、本発明の実施形態のいくつかの変型例を示し、詳細に記載してきたが、本発明の範囲内である他の改変は、本開示に基づいて、当業者には容易に明らかであろう。実施形態の具体的な特徴及び態様の様々な組み合わせ又はサブ組み合わせが成されてよく、依然として本発明の範囲内に含まれることも企図される。開示される実施形態の様々な特徴及び態様が、開示される本発明の実施形態の様々なモードを形成するために、互いに組み合わされてよく又は置き換えられてもよいことは理解されたい。本明細書で開示されるいずれの方法も、記載される順番で行われる必要はない。したがって、本明細書で開示される本発明の範囲は、上記で述べた特定の実施形態によって限定されるべきではないことを意図している。
【0048】
本開示のシステム及び方法が、各々、いくつかの革新的態様を有し、それらのいずれの1つも、単独で、本明細書で開示される望ましい属性の原因である又はそのために必要とされるというものではないことは理解される。上記で述べる様々な特徴及びプロセスは、互いに対して独立して用いられてよく、又は様々に組み合わされてもよい。すべての考え得る組み合わせ及びサブ組み合わせは、本開示の範囲内に含まれることを意図している。
【0049】
本明細書において別個の実施形態の文脈で記載されるある特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて実行されてもよい。反対に、単一の実施形態の文脈で記載される様々な特徴はまた、複数の実施形態において別々に又は適切ないずれかのサブ組み合わせで実行されてもよい。さらに、特徴は、ある特定の組み合わせで作用するとして上記で記載される場合があり、そのように最初に請求されることさえあり得るが、請求される組み合わせからの1又は複数の特徴は、場合によっては、その組み合わせから削除されてもよく、請求される組み合わせは、サブ組み合わせ又はサブ組み合わせの変型例に関し得る。いかなる単一の特徴又は一群の特徴も、あらゆる実施形態に対して必須でも不可欠でもない。
【0050】
数ある中でも「可能である(can)」、「あり得る(could)」、「あり得る(might)」、「あり得る(may)」、「例えば」など、本明細書で用いられる条件語は、特に断りのない限り又は用いられる文脈内においてそれ以外で理解されない限り、ある特定の実施形態がある特定の特徴、要素、及び/又は工程を含む一方、他の実施形態はそれらを含まないということを伝えることを一般に意図するものであることも理解される。したがって、そのような条件語は、一般に、特徴、要素、及び/若しくは工程が1若しくは複数の実施形態において何らかの方法で必要とされること、又は、1若しくは複数の実施形態が、著者の考え若しくは暗示あり又はなしで、これらの特徴、要素、及び/若しくは工程が、いずれかの特定の実施形態において含まれる又は実施されるべきであるかどうかを決定するためのロジックを必然的に含むこと、を示唆することを意図するものではない。「含んでいる(comprising)」、「含んでいる(including)」、「有している(having)」などの用語は、同義であり、包括的で非限定的に用いられ、追加の要素、特徴、処置、操作などを除外しない。加えて、「又は」の用語は、包括的な意味で用いられ(排他的な意味ではなく)、そのため、例えば要素のリストを接続するために用いられる場合、用語「又は」は、そのリスト中の要素の1つ、一部、又はすべてを意味する。加えて、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、本出願及び添付の請求項で用いられる場合、特に断りのない限り、「1又は複数の」又は「少なくとも1つの」を意味するものと解釈されたい。同様に、操作が特定の順番で図面中に示され得るが、望ましい結果を実現するために、そのような操作は、示される特定の順番で又は逐次的順番で実施される必要はないこと、又は図示されるすべての操作が実施される必要もないことは認識されたい。さらに、図面は、フローチャートの形態で、1つ以上の例としてのプロセスを模式的に示し得る。しかし、示されていない他の操作が、模式的に示されている例としての方法及びプロセスに組み込まれてもよい。例えば、1又は複数の追加の操作は、示される操作のいずれかに対してその前に、その
後に、同時に、又はその間に行われてよい。加えて、操作は、他の実施形態において再配列又は並べ替えが成されてもよい。ある特定の状況では、マルチタスキング及び並列処理が有利であり得る。さらに、上記で述べる実施形態における様々なシステムコンポーネントの分離は、すべての実施形態においてそのような分離を必要とするとして理解されるべきではなく、記載したプログラムコンポーネント及びシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品に一緒に一体化されてよく、又は複数のソフトウェア製品にパッケージ化されてもよいことは理解されるべきである。加えて、他の実施形態は、以下の請求項の範囲内である。いくつかの場合では、請求項に記載の手段は、異なる順番で実施されてよく、それでも望ましい結果が実現され得る。
【0051】
さらに、本明細書で述べる方法及びデバイスは、様々な改変及び別の選択肢としての形態が可能であり得るが、その具体例は、図面に示されており、本明細書において詳細に記載される。しかし、本発明は、開示される特定の形態又は方法に限定されるべきではなく、逆に、本発明は、記載した様々な実行及び添付の請求項の趣旨並びに範囲に含まれるすべての改変、均等物、及び代替物を包含するべきであることは理解されたい。さらに、ある実行又は実施形態と合わせたいずれの特定の特徴、態様、方法、性質、特性、品質、属性、要素などの本明細書における開示内容も、本明細書で示される他のすべての実行又は実施形態で用いられ得る。本明細書で開示されるいずれの方法も、記載される順番で行われる必要はない。本明細書で開示される方法は、実行者によって取られるある特定の手段を含み得るが、方法はまた、明示的又は暗示的のいずれかによる、これらの手段の何らかの第三者の指示も含み得る。本明細書で開示される範囲はまた、あらゆる重なり合い、サブ範囲、及びこれらの組み合わせを包含する。「以下の」、「少なくとも」、「超の」、「未満の」、「間の」などの言語は、記載の数値を含む。「約」又は「およそ」などの用語が前に付与された数値は、記載の数値を含み、状況に基づいて解釈されるべきである(例:状況下で合理的にできる限り正確に、例えば、±5%、±10%、±15%など)。例えば、「約3.5mm」は、「3.5mm」を含む。「実質的に」などの用語が前に付与された句は、記載の句を含み、状況に基づいて解釈されるべきである(例:状況下でできる限り合理的に)。例えば、「実質的に一定」は、「一定」を含む。他の記載がない限り、すべての測定は、温度及び圧力を含む標準条件である。
【0052】
本明細書で用いられる場合、項目のリストのうちの「少なくとも1つ」に言及する句は、単一のメンバーを含むこれらの項目のいずれの組み合わせも意味する。例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」は、A、B、C、AとB、AとC、BとC、及びAとBとCを包含することを意図している。「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」の句などの接続的言語は、特に断りのない限り、項目、用語などがX、Y、又はZのうちの少なくとも1つであってよいことを伝えるために一般に用いられる文脈で理解される。したがって、そのような接続的言語は、一般的には、ある特定の実施形態が、少なくとも1つのX、少なくとも1つのY、及び少なくとも1つのZの各々が存在することを必要とすることを示唆することを意図するものではない。本明細書で提供される見出しは、存在する場合、単なる便宜上のものであり、本明細書で開示されるデバイス及び方法の範囲又は意味に必ずしも影響を与えない。
【0053】
したがって、請求項は、本明細書で示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本開示と一致する、本明細書で開示される原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】