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特表2024-504103キラルトリオールの調製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】キラルトリオールの調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/145 20060101AFI20240123BHJP
   C07C 29/149 20060101ALI20240123BHJP
   C07C 33/26 20060101ALI20240123BHJP
   C07C 29/17 20060101ALI20240123BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20240123BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
C07C29/145
C07C29/149
C07C33/26
C07C29/17
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542540
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2022050575
(87)【国際公開番号】W WO2022152769
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】21151758.6
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】グラス,アンナ-レナ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,アレン・ユー
(72)【発明者】
【氏名】プエンテナー,クルト
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169AA11
4G169BA27A
4G169BC74A
4G169BC74B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD11A
4G169BD11B
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE02A
4G169BE02B
4G169BE13A
4G169BE13B
4G169BE23B
4G169BE26A
4G169BE26B
4G169CB02
4G169CB57
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC81
4H006BA22
4H006BA46
4H006BA48
4H006BA61
4H006BA69
4H006BB11
4H006BB14
4H006BB15
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC34
4H006BE20
4H006FC52
4H006FE11
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
本発明は、式I

(式中、Rは、水素またはハロゲンである)
のキラルトリオールの調製のための方法であって、
式IIa

(式中、Rは、水素またはハロゲンであり、Rは、C1~6-アルキルである)
のケトン化合物の、イリジウムスピロ-ピリジルアミドホスフィン触媒(Ir-SpiroPAP触媒)の存在下での、水素による不斉水素化による、方法を含む。式Iのキラルトリオールは、例えばスタチンなどの様々な薬学的に活性な原薬の調製のための多用途な構成単位である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化24】

(式中、
は、水素またはハロゲンであり、
【化25】

は、破線の結合(a)またはくさび形の結合(b)
【化26】

のいずれかを表す)
のキラルトリオールの調製のための方法であって、
式IIa
【化27】

(式中、
は、水素またはハロゲンであり、
は、C1~6アルキルである)
のケトン化合物の、
式IIIaもしくはIIIb
【化28】

(式中、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、互いに独立に、水素またはC1~6-アルキルであり;
点線の環は、Qが窒素であり、Qが炭素である芳香環を意味し、点線の環は、QおよびQが硫黄であるシクロアルカン環を意味し;
は、ハロゲン、C1~6-アルコキシ、テトラハロゲノボラート、ヘキサハロゲノボラート、テトラキス(3,5-ビス(トリハロゲノ-C1~6-アルキル)フェニル)ボラート、アセチルアセトナート、ヘキサハロゲノホスファート、p-トリルスルホナート(OTs)またはトリハロゲノメタンスルホナートから選択される配位した配位子または対アニオンのいずれかであり、
Zは、C1~8-アルキル、C1~8-ハロゲンアルキルまたはフェニルから選択される1つまたは複数の基によって任意に置換されたフェニル;1つまたは複数のC1~8-アルキル基またはジ-C1~8-アルキルホスフィニルによって任意に置換されたC3~8-シクロアルキルである)
のイリジウムスピロ-ピリジルアミドホスフィン触媒(Ir-SpiroPAP触媒)、またはこれらの鏡像異性体の存在下での、水素による不斉水素化を含む、方法。
【請求項2】
前記Ir-SpiroPAP触媒が、
4a、R4b、R4cおよびR4dが、互いに独立に、水素またはC1~4-アルキルであり;
前記点線の環が、Qが窒素であり、Qが炭素である芳香環を意味し、前記点線の環が、QおよびQが硫黄であるシクロアルカン環を意味し;
が、ハロゲン、メトキシ、テトラフルオロボラート(BF4)、ヘキサフルオロボラート(BF6)、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート(barf)、アセチルアセトナート(acac)、ヘキサフルオロホスファート(PF6)、p-トリルスルホナート(OTs)またはトリフルオロメタンスルホナート(OTf)から選択される配位された配位子または対アニオンのいずれかであり;
Zが、C1~6-アルキル、C1~4-ハロゲンアルキルもしくはフェニルから選択される1つもしくは複数の基によって任意に置換されたフェニルであるか、またはC4~7-シクロアルキルである、前記化合物IIIaもしくはIIIbまたはこれらの鏡像異性体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Ir-SpiroPAP触媒が、
4a、R4b、R4cおよびR4dが、互いに独立に、水素またはC1~4-アルキルであり;
前記点線の環が、Qが窒素であり、Qが炭素である芳香環を意味し、前記点線の環が、QおよびQが硫黄であるシクロアルカン環を意味し;
が、ハロゲンであり;
Zが、C1~6-アルキル、C1~4-ハロゲンアルキルもしくはフェニルから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されたフェニルであるか、またはシクロペンチルもしくはシクロヘキシルである、前記化合物IIIaもしくはIIIbまたはこれらの鏡像異性体から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記Ir-SpiroPAP触媒が、化合物
【化29】

(式中、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、互いに独立に、水素またはC1~4-アルキルであり;
は、ハロゲンであり;
Zは、C1~6-アルキル、C1~4-ハロゲンアルキルもしくはフェニルから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されたフェニルであるか、またはシクロペンチルもしくはシクロヘキシルである)
から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不斉水素化が、有機溶媒および塩基の存在下で、5bar~100barの水素圧力および10℃~90℃の反応温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、脂肪族アルコール、ハロゲン置換されたアルコール、エーテルもしくは芳香族溶媒であるか、またはこれらの混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基が、アルカリもしくはアルカリ土類炭酸塩もしくは炭酸水素塩もしくはリン酸塩もしくはリン酸水素塩もしくはリン酸二水素塩もしくは酢酸塩もしくはギ酸塩から選択される無機塩基、またはアミン、アルカリアルコラートもしくはアミジンから選択される有機塩基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
基質対触媒比が100~10’000の範囲で選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記式IIIaまたはIIIbのIr-SpiroPAP触媒が、イリジウム前触媒錯体を、式
【化30】

(式中、R4a、R4b、R4cおよびR4d、QおよびQ ならびにZは、上で概説したとおりの意味を有する)
のスピロ-ピリジルアミドホスフィン配位子と一緒にすることによって、前記不斉水素化反応の過程で、インサイチュで調製される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記イリジウム前触媒錯体が、[Ir(cod)]BF、[IrCl(COD)]、[Ir(acac)(COD)]、[Ir(OMe)(COD)]、[Ir(cod)]BARF、[Ir(cod)]PF6から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1の工程における前記式IIaのケトンの前記不斉水素化が、式IVaもしくはIVb
【化31】

(式中、
は、アルキル基が1つもしくは複数のハロゲン原子;7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル基またはフェニルスルホニルで任意に置換されているC1~6-アルキルスルホニルであり、前記フェニル基は、1つまたは複数のC1~6アルキル基によって任意に置換されており、
は、1つもしくは複数のハロゲン原子で任意に置換されているC1~6-アルキルスルホニルオキシ基;ハロゲン、C1~6-アルコキシ、テトラハロゲノボラート、ヘキサハロゲノボラート、テトラキス(3,5-ビス(トリハロゲノ-C1~6-アルキル)フェニル)ボラート、アセチルアセトナート、ヘキサハロゲノホスフィン、p-トリルスルホナート(OTs)またはトリハロゲノメタンスルホナートから選択される配位した配位子または対アニオンのいずれかである)
のIr-PEN触媒、またはこれらの鏡像異性体の存在下で行われて、
式IIb
【化32】

(式中、RおよびRは、上記のとおりである)
のケトンを形成し、
その後の工程において、前記式IIbのケトンは、前記式IIIaもしくは前記式IIIbのIr-SpiroPAP触媒またはこれらの鏡像異性体の存在下で不斉水素化にさらに供されて、前記式Iのキラルトリオールを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
が、メチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル;トリルスルホニルまたは1,3,5-トリ-i-プロピルフェニルスルホニルであり;
が、1つもしくは複数のフルオロ原子で任意に置換されているメチルスルホニルオキシ基;ハロゲン、メトキシ、テトラフルオロボラート(BF4)、ヘキサフルオロボラート(BF6)、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート(barf)、アセチルアセトナート(acac)、ヘキサフルオロホスフィン(PF6)、p-トリルスルホナート(OTs)またはトリフルオロメタンスルホナート(OTf)から選択される配位された配位子または対アニオンのいずれかである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イリジウム-フェニレンジアミン触媒(Ir-PEN触媒)が、
が、メチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル;トリルスルホニルもしくは1,3,5-トリ-i-プロピルフェニルスルホニルであり;
が、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基である、前記式IVaもしくはその鏡像異性体のものであるか;または
が、メチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル;トリルスルホニルもしくは1,3,5-トリ-i-プロピルフェニルスルホニルである、前記式IVbもしくはその鏡像異性体のものである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記式IIaのケトンの前記不斉水素化が、有機溶媒の存在下で、5bar~100barの水素圧力および10℃~90℃の反応温度で行われる、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記有機溶媒が、脂肪族アルコール、ハロゲン置換されたアルコール、エーテルもしくは芳香族溶媒であるか、またはこれらの混合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
基質対触媒比が100~1000の範囲で選択される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記式IIaのケトンの前記不斉水素化が、前記式IIIaもしくはIIIbの、またはこれらの鏡像異性体のIr-SpiroPAP触媒と、前記式IVaもしくはIVbの、またはこれらの鏡像異性体のIr-PEN触媒との混合物の存在下で行われる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応が、有機溶媒および塩基の存在下で、5bar~100barの水素圧力および10℃~90℃の反応温度で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記有機溶媒が、脂肪族アルコール、ハロゲン置換されたアルコール、エーテルもしくは芳香族溶媒であるか、またはこれらの混合物である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記塩基が、アルカリもしくはアルカリ土類炭酸塩もしくは炭酸水素塩もしくはリン酸塩もしくはリン酸水素塩もしくはリン酸二水素塩もしくは酢酸塩もしくはギ酸塩(formiate)から選択される無機塩基、またはアミン、アルカリアルコラートもしくはアミジンから選択される有機塩基である、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
基質対Ir-PEN触媒比が、100~10,000の範囲、好ましくは500~1000の範囲で選択され、基質対Ir-SpiroPAP触媒比が、100~10,000の範囲、好ましくは2500~7500の範囲で選択される、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記式Iのキラルトリオールへの前記式IIaのケトンの前記不斉水素化における、式
【化33】

(式中、RおよびRは、上記のとおりである)
の中間体が、個別に単離され、前記式IIIaまたはIIIbのIr-SpiroPAP触媒の存在下での不斉水素化に個別に供される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記キラルトリオールが、式Ia
【化34】

(Rは、水素またはハロゲンである)
を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
がハロゲンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記キラルトリオールが、式Ib
【化35】

を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I
【化1】

(式中、
は、水素またはハロゲンであり、
【化2】

は、破線の結合(a)またはくさび形の結合(b)
【化3】

のいずれかを表す)
のキラルトリオールの調製のための方法に関する。
【0002】
キラルトリオールは、例えばスタチン薬物などの様々な薬学的に活性な原薬の調製のための多用な構成単位である(A.Lenhart,W.D.Chey“Adv.Nutr.2017,8(4),587-596)。
【0003】
本発明の目的は、高い鏡像異性体純度および収率を有し、拡大可能な様式でのキラルトリオールの調製を可能にする方法を提供することであった。
【0004】
この目的は、式I
【化4】

(式中、
は、水素またはハロゲンであり、
【化5】

は、破線の結合(a)またはくさび形の結合(b)
【化6】

のいずれかを表す)
のキラルトリオールの調製のための方法であって、
式IIa
【化7】

(式中、
は、水素またはハロゲンであり、
は、C1~6-アルキルである)
のケトン化合物の、
式IIIaもしくはIIIb
【化8】

(式中、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、互いに独立に、水素またはC1~6-アルキルであり;
前記点線の環は、Qが窒素であり、Qが炭素である芳香環を意味し、点線の環は、QおよびQが硫黄であるシクロアルカン環を意味し;
は、ハロゲン、C1~6-アルコキシ、テトラハロゲノボラート、ヘキサハロゲノボラート、テトラキス(3,5-ビス(トリハロゲノ-C1~6-アルキル)フェニル)ボラート、アセチルアセトナート、ヘキサハロゲノホスファート、p-トリルスルホナート(OTs)またはトリハロゲノメタンスルホナートから選択される配位した配位子または対アニオンのいずれかであり、
Zは、C1~8-アルキル、C1~8-ハロゲンアルキルまたはフェニルから選択される1つまたは複数の基によって任意に置換されたフェニル;1つまたは複数のC1~8-アルキル基またはジ-C1~8-アルキルホスフィニルによって任意に置換されたC3~8-シクロアルキルである)
のイリジウムスピロ-ピリジルアミドホスフィン触媒(Ir-SpiroPAP触媒)またはこれらの鏡像異性体の存在下での、水素による不斉水素化を含む、方法によって達成することができる。
【0005】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと類似または同等の方法および材料が、発明の実施または試験において使用できるが、適切な方法および材料を以下に記載する。
【0006】
「キラル」という用語は、その鏡像と重ね合わせることができない能力を示し、一方、「アキラル」という用語は、その鏡像と重ね合わせることが可能な実施形態を指す。キラル分子は、光学的に活性である、すなわち、キラル分子は、面偏光の面を回転させる能力を有する。化学構造中にキラル中心が存在する場合はいつでも、そのキラル中心に関連した全ての立体異性体が、本発明によって包含されることが意図される。
【0007】
「キラル」という用語は、その分子が、光学的に純粋な鏡像異性体、鏡像異性体の混合物、光学的に純粋なジアステレオ異性体またはジアステレオ異性体混合物の形態で存在し得ることを意味する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、「キラル」という用語は、光学的に純粋な鏡像異性体または光学的に純粋なジアステレオ異性体を示す。
【0009】
「立体異性体」という用語は、同一の分子結合および結合多様性を有するが、その原子の空間内での配置が異なる化合物を示す。
【0010】
「ジアステレオマー」という用語は、2つ以上のキラリティーの中心を有し、かつそれらの分子が互いに鏡像ではない立体異性体を表す。ジアステレオマーは、異なる物理特性、例えば、融点、沸点、スペクトル特性および反応性を有し得る。
【0011】
「鏡像異性体」という用語は、互いに重ね合わせることができない鏡像体である、ある化合物の2つの立体異性体を示す。
【0012】
本明細書で示される構造式において、破線の結合(a)は、置換基が紙面より下にあることを示し、くさび形の結合(b)は、置換基が紙面より上にあることを示す。
【化9】
【0013】
らせん形の結合(c)は、両方の選択肢(すなわち、破線の結合(a)またはくさび形の結合(b)のいずれか)を示す。
【化10】
【0014】
「C-1~8-アルキル」という用語は、1~8個の炭素原子の一価の直鎖または分枝飽和炭化水素基を表す。C1~8-アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、またはペンチル、ヘキシル、ヘプチルもしくはオクチルがその異性体とともに挙げられる。好ましくは、この用語はC-1~6-アルキル基を表す。
【0015】
「C3~8-シクロアルキル」という用語は、3~8個の炭素原子の飽和炭素環を表す。C3~8-シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルがその異性体とともに挙げられる。好ましくは、この用語は、C4~7-シクロアルキル、より好ましくはシクロペンチル(cyclpentyl)およびシクロヘキシルを包含する。
【0016】
「C-1~6-アルコキシ」という用語は、酸素原子に結合した1~6個の炭素原子の一価の直鎖または分枝飽和炭化水素基を表す。C1~6-アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、またはペントキシもしくはヘキソキシが、その異性体とともに挙げられる。好ましくは、この用語は、C-1~4-アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基を表す。
【0017】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを表す。
【0018】
「C-1~8-ハロゲンアルキル」という用語は、1つまたは複数のハロゲン原子によって置換された、1~8個の炭素原子の一価の直鎖または分枝飽和炭化水素基を表す。好ましくは、この用語は、C-1~4-ハロゲンアルキル、より好ましくはトリフルオロメチルなどの、1つまたは複数のハロゲン原子で置換されたメチル基を表す。
【0019】
式IIaのケトンは、以下のスキームに概説されるメソメリー構造で存在し得る。明確にするために、本明細書全体を通して式IIaが一貫して使用される。
【化11】
【0020】
本発明の方法は、以下のスキーム1
スキーム1:
【化12】

を用いて例示することができ、式Iのキラルトリオールを調製するための以下の様々な主要な実施形態を含む。
【0021】
a)Ir-SpiroPAP触媒のみの存在下での式IIaのケトンの不斉水素化。
【0022】
b)インサイチュで形成されたIr-SpiroPAP触媒の存在下での式IIaのケトンの不斉水素化。
【0023】
c)Ir-PEN触媒のみの存在下での式IIaのケトンの不斉水素化による式IIbのケトンの形成およびIr-SpiroPAP触媒の存在下での式Iのキラルトリオールへのその後の不斉水素化。
【0024】
d)Ir-SpiroPAP触媒とIr-PEN触媒の混合物の存在下での式IIaのケトンの不斉水素化。
【0025】
e)Ir-SpiroPAP触媒の存在下での中間体IIb、IIcまたはIIdのいずれかの不斉水素化。
【0026】
実施形態a)~d)が好ましく、実施形態a)、b)およびd)がより好ましく、実施形態d)が最も好ましい。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、キラルトリオールは、式Ia
【化13】

(式中、Rは上記のとおりであるが、好ましくはハロゲンを表し、より好ましくは塩素を表す)
を有する。
【0028】
は、フェニル環のオルト位、メタ位またはパラ位に存在し得るが、好ましくは、Rはフェニル環のパラ位に存在する。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態において、キラルトリオールは、式Ib
【化14】

を有する。
【0030】
スキーム2は、本発明の好ましい実施形態を示す。
スキーム2:
【化15】
【0031】
a)Ir-SpiroPAP触媒のみの存在下での式IIaのケトンの不斉水素化
イリジウムスピロ-ピリジルアミドホスフィン触媒(Ir-SpiroPAP触媒)は、式IIIaもしくはIIIb
【化16】

(式中、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、互いに独立に、水素またはC1~6-アルキルであり;
点線の環は、Qが窒素であり、Qが炭素である芳香環を意味し、点線の環は、QおよびQが硫黄であるシクロアルカン環を意味し;
は、ハロゲン、C1~6-アルコキシ、テトラハロゲノボラート、ヘキサハロゲノボラート、テトラキス(3,5-ビス(トリハロゲノ-C1~6-アルキル)フェニル)ボラート、アセチルアセトナート、ヘキサハロゲノホスファート、p-トリルスルホナート(OTs)またはトリハロゲノメタンスルホナートから選択される配位した配位子または対アニオンのいずれかであり、
Zは、C1~8-アルキル、C1~8-ハロゲンアルキルまたはフェニルから選択される1つまたは複数の基によって任意に置換されたフェニル;1つまたは複数のC1~8-アルキル基またはジ-C1~8-アルキルホスフィニルによって任意に置換されたC3~8-シクロアルキルである)
またはこれらの鏡像異性体のものである。
【0032】
好ましい実施形態では、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、互いに独立に、水素またはC1~4-アルキルであり;
前記点線の環は、Qが窒素であり、Qが炭素である芳香環を意味し、前記点線の環が、QおよびQが硫黄であるシクロアルカン環を意味し;
は、ハロゲン、メトキシ、テトラフルオロボラート(BF4)、ヘキサフルオロボラート(BF6)、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート(barf)、アセチルアセトナート(acac)、ヘキサフルオロホスファート(PF6)、p-トリルスルホナート(OTs)またはトリフルオロメタンスルホナート(OTf)から選択される配位した配位子または対アニオンのいずれかであり;
Zは、C1~6-アルキル、C1~4-ハロゲンアルキルもしくはフェニルから選択される1つもしくは複数の基によって任意に置換されたフェニルであるか、またはC4~7-シクロアルキルである。
【0033】
さらに好ましい実施形態では、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、互いに独立に、水素またはC1~4-アルキルであり;
前記点線の環は、Qが窒素であり、Qが炭素である芳香環を意味し、前記点線の環が、QおよびQが硫黄であるシクロアルカン環を意味し;
は、ハロゲンであり;
Zは、C1~6-アルキル、C1~4-ハロゲンアルキルもしくはフェニルから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されたフェニルであるか、またはシクロペンチルもしくはシクロヘキシルである。
【0034】
さらに好ましい実施形態では、イリジウムスピロ-ピリジルアミドホスフィン触媒(Ir-SpiroPAP触媒)は、化合物
【化17】

(式中、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、互いに独立に、水素またはC1~4-アルキルであり;
は、ハロゲンであり;
Zは、C1~6-アルキル、C1~4-ハロゲンアルキルもしくはフェニルから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されたフェニルであるか、またはシクロペンチルもしくはシクロヘキシルである)
から選択される。
【0035】
さらに好ましい実施形態では、イリジウムスピロ-ピリジルアミドホスフィン触媒(Ir-SpiroPAP触媒)は、化合物
【化18】

(式中、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、互いに独立に、水素またはC1~4-アルキルであり;
は、ハロゲンから選択される配位子であり;
Zは、C1~6-アルキル、C1~4-ハロゲンアルキルもしくはフェニルから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されたフェニルであるか、またはシクロペンチルもしくはシクロヘキシルであり、
より好ましくは、
4a、R4b、R4cは水素であり、R4dはメチルであり;
は塩素であり、
Zは、フェニル、3,5-ジメチルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル、3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル、3,5-ジフェニルフェニル、4-フェニルフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニル、シクロヘキシルまたはシクロペンチルである)
から選択される。
【0036】
適切な触媒は、典型的には、例えば、中国のJiuzhou Pharmaから市販されている。
【0037】
不斉水素化は、適切な有機溶媒および塩基の存在下、5bar~100bar、好ましくは30bar~70barの水素圧力および10℃~90℃、好ましくは20℃~40℃の反応温度で行われ得る。
【0038】
有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-アミルアルコール、トリフルオロエタノールのようなハロゲン置換されたアルコール、ジクロロメタンのようなハロアルカン、テトラヒドロフランもしくはジオキサンのようなエーテルまたはトルエンのような芳香族溶媒またはこれらの混合物から選択される脂肪族アルコールから選択され得る。メタノールまたはエタノールなどの脂肪族アルコールの、水またはジオキサンとの混合物も適している。好ましい溶媒はメタノールまたはエタノールであり、さらにより好ましいのはエタノールである。
【0039】
適切な塩基は、アルカリもしくはアルカリ土類炭酸塩もしくは炭酸水素塩もしくはリン酸塩もしくはリン酸水素塩もしくはリン酸二水素塩もしくは酢酸塩もしくはギ酸塩から選択される無機塩基、またはアミン、アルカリアルコラートもしくはアミジンから選択される有機塩基である。有機塩基が通常好ましい。有機塩基の典型的な代表例は、カリウムtert-ブチラートまたは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(DABCO)および7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デク-5-エン(MTBD)であり、最も好ましいのはDBUである。
【0040】
基質対触媒比は、100~10`000の範囲、好ましくは1000~5000の範囲で好都合に選択され得る。
【0041】
式Iのキラルトリオールは、溶媒の蒸発によって反応混合物から分離され得る。適切な溶媒、典型的にはメチルイソブチルケトンのようなケトンまたは酢酸イソプロピルのようなエステル中でのその後の結晶化は、式Iのキラルトリオールを良好な収率、高い純度および高い鏡像体過剰率で与える。
【0042】
b)インサイチュで形成されたIr-SpiroPAP触媒の存在下での式IIaのケトンの不斉水素化。
別の実施形態では、式IIIaまたはIIIbのイリジウムスピロ-ピリジルアミドホスフィン触媒(Ir-SpiroPAP触媒)は、適切なイリジウム前触媒錯体を式
【化19】

(式中、
4a、R4b、R4cおよびR4d、QおよびQ、ならびにZは、上で概説したとおりの意味を有する)
のスピロ-ピリジルアミドホスフィン配位子と一緒にすることによって、不斉水素化反応の過程で、インサイチュで調製され得る。適切なイリジウム前触媒錯体化合物は、例えばSigma Aldrichから市販されており、例えば[Ir(cod)]BF、[IrCl(COD)]、[Ir(acac)(COD)]、[Ir(OMe)(COD)]2、[Ir(cod)]BARF、[Ir(cod)]PF6から選択することができ、codまたはCODは、シクロオクタジエンの意味、acacはアセチルアセトナートの意味、BARFはテトラキス(3,5-ビス((トリフルオロメチル)フェニル)ボラートの意味、OMeはメトキシの意味を有する。
【0043】
好ましいイリジウム前触媒錯体化合物は[IrCl(COD)]2である。
【0044】
通常、イリジウム前触媒錯体化合物およびスピロ-ピリジルアミドホスフィン配位子は、典型的には、実施形態a)で挙げた有機溶媒および塩基の存在下で混合される。
【0045】
基質対イリジウム比は、原則として、100~10,000、好ましくは1000~5000で調整される。基質対配位子の比は、原則として、0.5~1.5、好ましくは0.9~1.1で調整される。
【0046】
式Iのキラルトリオールの不斉水素化条件および単離は、実施形態a)の方法と違って選択され得る。実施形態a)において概説された好ましい実施形態も同様に適用される。
【0047】
c)Ir-PEN触媒のみの存在下での、式IIbのケトンへの、式IIaのケトンの不斉水素化およびIr-SpiroPAP触媒の存在下での式Iのキラルトリオールへのその後の不斉水素化。
イリジウム-フェニレンジアミン触媒(Ir-PEN触媒)は、式IVaもしくはIVb
【化20】

(式中、
は、アルキル基が1つもしくは複数のハロゲン原子;7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル基またはフェニルスルホニルで任意に置換されているC1~6-アルキルスルホニルであり、前記フェニル基は、1つまたは複数のC1~6-アルキル基によって任意に置換されており、
は、1つもしくは複数のハロゲン原子で任意に置換されているC1~6-アルキルスルホニルオキシ基;ハロゲン、C1~6-アルコキシ、テトラハロゲノボラート、ヘキサハロゲノボラート、テトラキス(3,5-ビス(トリハロゲノ-C1~6-アルキル)フェニル)ボラート、アセチルアセトナート、ヘキサハロゲノホスフィン、p-トリルスルホナート(OTs)またはトリハロゲノメタンスルホナートから選択される配位した配位子または対アニオンのいずれかである)
またはこれらの鏡像異性体のものである。
【0048】
好ましい実施形態では、イリジウム-フェニレンジアミン触媒(Ir-PEN触媒)は、Rが、メチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル;トリルスルホニルまたは1,3,5-トリ-i-プロピルフェニルスルホニルであり;
が、1つもしくは複数のフルオロ原子で任意に置換されているメチルスルホニルオキシ基;ハロゲン、メトキシ、テトラフルオロボラート(BF4)、ヘキサフルオロボラート(BF6)、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート(barf)、アセチルアセトナート(acac)、ヘキサフルオロホスファート(PF6)、p-トリルスルホナート(OTs)またはトリフルオロメタンスルホナート(OTf)から選択される配位した配位子または対アニオンのいずれかである、式IVaもしくはIVbまたはこれらの鏡像異性体のものである。
【0049】
さらなる好ましい実施形態において、イリジウム-フェニレンジアミン触媒(Ir-PEN触媒)は、
が、メチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル;トリルスルホニルまたは1,3,5-トリ-i-プロピルフェニルスルホニルであり;
が、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基である、式IVaまたはその鏡像異性体のものである。
【0050】
さらなる好ましい実施形態において、イリジウム-フェニレンジアミン触媒(Ir-PEN触媒)は、
が、メチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル;トリルスルホニルもしくは1,3,5-トリ-i-プロピルフェニルスルホニルである、式IVbまたはその鏡像異性体のものである。
【0051】
さらなる好ましい実施形態において、イリジウム-フェニレンジアミン触媒(Ir-PEN触媒)は、式IVcおよびIVd
【化21】

の化合物から選択される。
【0052】
式IIbのケトンを形成するための不斉水素化は、適切な有機溶媒の存在下、5bar~100bar、好ましくは30bar~70barの水素圧力および10℃~90℃、好ましくは20℃~40℃の反応温度で行われ得る。
【0053】
有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-アミルアルコール、トリフルオロエタノールのようなハロゲン置換されたアルコール、ジクロロメタンのようなハロアルカン、テトラヒドロフランもしくはジオキサンのようなエーテルまたはトルエンのような芳香族溶媒またはこれらの混合物から選択される脂肪族アルコールから選択され得る。メタノールまたはエタノールなどの脂肪族アルコールの、水またはジオキサンとの混合物も適している。好ましい溶媒はメタノールまたはエタノールであり、さらにより好ましいのはエタノールである。
【0054】
反応は、塩基の存在なしに行われ得る。
【0055】
しかしながら、塩基は許容される。適切な塩基は、アルカリもしくはアルカリ土類炭酸塩もしくは炭酸水素塩もしくはリン酸塩もしくはリン酸水素塩もしくはリン酸二水素塩もしくは酢酸塩もしくはギ酸塩から選択される無機塩基、またはアミン、アルカリアルコラートもしくはアミジンから選択される有機塩基である。有機塩基が通常好ましい。有機塩基の典型的な代表例は、カリウムtert-ブチラートまたは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(DABCO)および7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デク-5-エン(MTBD)であり、最も好ましいのはDBUである。
【0056】
基質対触媒比は、100~10000の範囲、好ましくは500~1000の範囲で好都合に選択され得る。
【0057】
式IIbのケトンは、溶媒の蒸発によって反応混合物から分離され得る。適切な溶媒中、典型的にはi-プロパノールのような脂肪族アルコール中でのその後の結晶化は、式IIbのケトンを良好な収率、高い純度および高い鏡像体過剰率にする。あるいは、式IIbのケトンは単離されず、Ir-SpiroPAP触媒の存在下で式Iのキラルトリオールにさらに水素化される。
【0058】
その後の不斉水素化は、実施形態a)において記載したのと同様に行うことができる。
【0059】
d)Ir-SpiroPAP触媒とIr-PEN触媒の混合物の存在下での式IIaのケトンの不斉水素化。
本実施形態では、不斉水素化は、Ir-SpiroPAP触媒とIr-PEN触媒の混合物の存在下で行われる。
【0060】
典型的には、Ir-PEN触媒は、Ir-SpiroPAP触媒より速くかつ高いキラル選択性で、反応の第1の工程、すなわち式IIbのケトンへの変換を触媒する。
【0061】
したがって、2つの触媒の触媒濃度に関しては、より高いIr-PEN触媒濃度が原則として適用される。
【0062】
したがって、基質対Ir-PEN触媒比は、100~10000の範囲、好ましくは500~1000の範囲で好都合に選択され得る。
【0063】
基質対Ir-Spiro-PAP触媒比は、100~10000の範囲、好ましくは2500~7500の範囲で好都合に選択され得る。
【0064】
不斉水素化は、適切な有機溶媒および塩基の存在下、5bar~100bar、好ましくは30bar~70barの水素圧力および10℃~90℃、好ましくは20℃~40℃の反応温度で行われ得る。
【0065】
有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-アミルアルコール、トリフルオロエタノールのようなハロゲン置換されたアルコール、ジクロロメタンのようなハロアルカン、テトラヒドロフランもしくはジオキサンのようなエーテルまたはトルエンのような芳香族溶媒またはこれらの混合物から選択される脂肪族アルコールから選択され得る。メタノールまたはエタノールなどの脂肪族アルコールの、水またはジオキサンとの混合物も適している。好ましい溶媒はメタノールまたはエタノールであり、さらにより好ましいのはエタノールである。
【0066】
適切な塩基は、アルカリもしくはアルカリ土類炭酸塩もしくは炭酸水素塩もしくはリン酸塩もしくはリン酸水素塩もしくはリン酸二水素塩もしくは酢酸塩もしくはギ酸塩から選択される無機塩基、またはアミン、アルカリアルコラートもしくはアミジンから選択される有機塩基である。有機塩基が通常好ましい。有機塩基の典型的な代表例は、カリウムtert-ブチラートまたは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(DABCO)および7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デク-5-エン(MTBD)であり、最も好ましいのはDBUである。
【0067】
式Iのキラルトリオールは、溶媒の蒸発によって反応混合物から分離され得る。適切な溶媒、典型的にはメチルイソブチルケトンのようなケトンまたは酢酸イソプロピルのようなエステル中でのその後の結晶化は、式Iのキラルトリオールを良好な収率、高い純度および高い鏡像体過剰率で与える。
【0068】
e)Ir-SpiroPAP触媒のみの存在下での中間体IIb、IIcまたはIIdの不斉水素化。
中間体IIb、IIcまたはIIdは、典型的には単離される必要はなく、式Iの所望のキラルトリオールに直接変換することができる。
【0069】
中間体IIbは、実施形態c)に従って調製および単離され得る。
【0070】
また、中間体IIcまたはIIdは、原則として、適切な段階で水素化を中断することによって単離され得、Ir-Spiro PAP触媒単独またはIr-SpiroPAP触媒とIr-PEN触媒の混合物の存在下のいずれかで個別に不斉水素化に供され得る。先の実施形態で記載した反応条件も同様に適用することができる。
【0071】
上に概説されているように、実施形態a)~d)が好ましく、実施形態a)、b)およびd)がより好ましく、実施形態d)が最も好ましい。
【実施例
【0072】
実施例
略語:
【表1】

【表2】
【0073】
スキーム3a
【化22】
【0074】
スキーム3b
【化23】
【0075】
前触媒、触媒および配位子:
627~630および6051~6056は、T.Ohjuma et al.Organic Letters,2007,9,2565に従って調製された。他の全ての(前)触媒および配位子は、例えばStrem、Sigma Aldrich、Jiuzhou Pharmaから市販されていた。
【表3】



【0076】
分析方法
a)1、3ならびに4-6のシスおよびトランス異性体の変換および純度を決定するためのアキラルLC法
【表4】
【0077】
b)3の鏡像異性純度を決定するためのキラルLC法
【表5】
【0078】
c)3、4、5および6の鏡像異性純度を決定するためのキラルLC法
【表6】
【0079】
1.1の不斉水素化を介した(R)-3の調製
実施例1.1
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、380mLのオートクレーブに、1(20.0g、78.5mmol)、630(60.2mg、78.3×10-6mol、S/C1`000)およびEtOH(200mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。1時間後(50%変換)および2時間後(>99.9%変換)に反応試料を採取して反応の進行を追跡した。2.5時間の総反応時間後、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(20mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから500mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、96.7面積%の純度および94.3%の鏡像体過剰率を有する未精製(R)-3(19.9g)が得られた。0.9%のトランス-4が主要な不純物として検出された(注:トランス-4は、限られた安定性を有し、取り扱いおよび保存中に徐々にトランス-5に変換されることが実証された)。
【0080】
次に、未精製の(R)-3(5.00g)を60℃でiPrO(25mL)に溶解した。透明な溶液を6時間以内に0℃に冷却し、この温度でさらに1.5時間撹拌した。形成された白色結晶をフィルタにかけ、9mLの氷冷したiPrOで洗浄し、真空(10mbar)下、40℃で1時間乾燥させて、99.9の面積%の純度および99.6%鏡像体過剰率を有する純粋な(R)-3(4.15g、収率82%)を得た。
【0081】
3の分析データ
LC-MS ESI(m/z):256.0[M+]
H-NMR(CDCl、600MHz):δppm7.89(d,J=8.8Hz,2H)、7.41-7.50(m,3H)、4.65(td,J=5.8,3.8Hz,1H)、4.28(q,J=7.2Hz,2H)、3.46-3.53(m,1H)、3.38-3.45(m,1H)、3.27(d,J=5.6Hz,1H)、1.29(t,J=7.1Hz,3H)
【0082】
トランス-4の分析データ
GC-MS ESI(m/z):258.0[M+]
1H NMR(DMSO-D6、600MHz):δppm7.35-7.38(m,2H)、7.32-7.35(m,2H)、5.44(br s,2H)、4.73(br d,J=9.6Hz、1H)、4.25(br d,J=8.6Hz,1H)、4.06(q,J=7.1Hz,2H)、1.53-1.78(m,1H)、1.45-1.99(m,1H)、1.17(t,J=7.1Hz,3H)
【0083】
実施例1.2:
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、380mLのオートクレーブに、1(20.0g、78.5mmol)、629(48.4mg、78.3×10-6mol、S/C1`000)およびEtOH(200mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。3.5時間後(98%変換)に反応試料を採取して反応の進行を追跡した。4時間の総反応時間後、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(20mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから500mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、94面積%の純度および94.5%の鏡像体過剰率を有する未精製(R)-3(20.0g)が得られた。1.3%のトランス-4が主要な不純物として検出された。次に、未精製の(R)-3(20.0g)を40℃でiPrO(200mL)に溶解した。次いで、透明な溶液を6時間以内に0℃に冷却し、この温度でさらに1.5時間撹拌した。形成された白色結晶をフィルタにかけ、45mLの氷冷したiPrOで洗浄し、真空(10mbar)下、40℃で1時間乾燥させて、99.2面積%の純度および99.8%鏡像体過剰率を有する15.62gの純粋な(R)-3(15.62g、収率78%)を得た。
【0084】
実施例1.3~1.6
実施例1.1と同様に、EtOH(5mL)中および表1に列挙した触媒の存在下で、30℃および70barのHの初期水素圧で、1(0.5g、1.96mmol)を20時間水素化した。
【表7】
【0085】
実施例1.7~1.10
実施例1.1と同様に、EtOH(5mL)中および表2に列挙した触媒の存在下で、30℃および70barのHの初期水素圧で、1(0.25g、0.98mmol)を2時間水素化した。
【表8】
【0086】
実施例1.11~1.14
実施例1.1と同様に、表3に列挙されている触媒(S/C1`000)および初期水素圧の存在下で、30℃でEtOH(5mL)中において、1(0.25g、0.98mmol)を2時間水素化した。
【表9】
【0087】
実施例1.15~1.20
実施例1.1と同様に、表4に列挙されている様々な量の触媒および塩基としてのDBUの存在下で、30℃のEtOH(5mL)および70barの初期水素圧中で、1(0.25g、0.98mmol)を2時間水素化した。
【表10】
【0088】
2.1の不斉水素化を介した(R,R)-6の調製
実施例2.1
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、380mLのオートクレーブに、1(10.0g、39.3mmol)、680(38.4mg、39.3×10-6mol、S/C1`000)、DBU(597.8mg、3.93mmol、S/B10)およびEtOH(200mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。20時間の総反応時間後(>99.9%変換)、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(20mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから500mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、98.4面積%の純度(DBUは組み込まれず)および7.7のトランス/シス比を有する未精製の6(9.0g)が得られた。98.8%の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
【0089】
シス-5の分析データ
GC-MS ESI(m/z):212.0[M+]
H-NMR(DMSO-D6,600MHz):δ7.47-7.51(m,2H),7.42(d,J=8.3Hz,2H),6.02(br s,1H),5.40(dd,J=10.8,5.4Hz,1H),4.62(dd,J=10.7,8.6Hz,1H),2.89(ddd,J=12.2,8.2,5.4Hz,1H),1.93(dt,J=12.1,11.0Hz,1H)
【0090】
トランス-5の分析データ
GC-MS ESI(m/z):212.0[M+]
1H-NMR(DMSO-D6,600MHz):δ7.47(d,J=8.7Hz,2H),7.40-7.42(m,2H),6.18(br d,J=5.2Hz,1H),5.68(t,J=6.7Hz,1H),4.38(dt,J=7.0,4.9Hz,1H),2.44-2.48(m,1H),2.36-2.42(m,1H)
【0091】
トランス-6の分析データ
GC-MS ESI(m/z):216.0[M+]
H NMR(400MHz,DMSO)δ7.40-7.31(m,4H),5.23(d,J=4.9Hz,1H),4.75(dd,J=9.9,4.8Hz,1H),4.50(dd,J=6.5,5.5Hz,2H),3.68-3.67(m,1H),3.30-3.24(m,2H),1.67-1.61(m,1H),1.44-1.39(m,1H)。
13C MR(101MHz,DMSO)δ146.6,131.3,128.4,127.9,68.7,68.6,66.8,44.3。
シス-6の分析データ
GC-MS ESI(m/z):216.0[M+]
H-NMR(CDCl,600MHz):δppm7.31-7.34(m,2H),7.32(s,2H),4.98(dd,J=9.9,2.5Hz,1H),4.04(br d,J=2.4Hz,1H),3.45-3.70(m,2H),2.76(s,1H),1.65-1.95(m,2H),1.08(s,2H)。
13C-NMR(CDCl,151MHz)δ142.7,133.3,128.7,127.1,73.82,72.3,66.7,41.6。
【0092】
実施例2.2
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、380mLのオートクレーブに、1(10.0g、39.3mmol)、601(29.4mg、19.6×10-6mol、S/Ir1`000)、1508(13.2mg、39.3×10-6mol、S/L1`000)、DBU(597.8mg、3.93mmol、S/B10)およびEtOH(200mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。20時間の総反応時間後(>99.9%変換)、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(20mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから500mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、96.5面積%の純度(DBUは組み込まれず)および8.3のトランス/シス比を有する未精製の6(9.1g)が得られた。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:トランス-5(0.8%)
【0093】
実施例2.3
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、380mLのオートクレーブに、1(10.0g、39.3mmol)、601、29.4mg、19.6×10-6mol、S/Ir1`000)、1508(13.2mg、39.3×10-6mol、S/L1`000)、KOtBu(437.6mg、3.93mmol、S/B10)およびEtOH(200mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。42時間の総反応時間後(>99.9%変換)、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(20mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから500mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、84.2面積%の純度および8.0のトランス/シス比を有する未精製の6(9.0g)が得られた。98.6%の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:トランス-5(0.9%)
【0094】
実施例2.4~2.8
実施例2.1と同様に、KOtBu(4.9×10-5mol、S/B20)および表5に列挙されている触媒(S/C1`000)の存在下で、30℃のEtOH(5mL)および70barの初期水素圧中で、1(0.25g、0.98mmol)を20時間水素化した。
【表11】
【0095】
実施例2.9~2.16
実施例2.2と同様に、1508(0.98×10-6mol、S/L1`000)の存在下、DBU(0.98×10-4mol、S/B10)の存在下または非存在下、および表6に列挙されている前触媒(S/Ir1`000)の存在下で、30℃のEtOH(5mL)および70barの初期水素圧中で、1(0.25g、0.98mmol)を20時間水素化した。
【表12】
【0096】
実施例2.17~2.29
実施例2.1と同様に、680(9.8×10-7mol、S/C1`000)の存在下、表7に列挙されている塩基(S/B10)の存在下で、30℃のEtOH(それぞれ、0.10gスケールの実験については2mL、0.25g実験については4mL)および70barの初期水素圧中で、1(0.10g、0.39mmolまたは0.25g、0.98mmol)を20時間水素化した。
【表13】
【0097】
実施例2.30~2.42
実施例2.1と同様に、680(0.98×10-6mol、S/C1`000または0.20×10ー6mol、S/C5`000のいずれか)の存在下、KOtBu(0.98mmol、S/B10)および表8に列挙されている溶媒または溶媒混合物(5mL)の存在下で、30℃および70barの初期水素圧で、1(0.25g、0.98mmol)を20時間水素化した。
【表14】
【0098】
実施例2.43~2.51
実施例2.1と同様に、EtOH(5mL)中、680(0.79×10-6mol、S/C1`000または0.16×10ー6mol、S/C5`000のいずれか)の存在下、様々な量のKOtBu、全て表9に列挙されている異なる温度および初期水素圧の存在下で、1(0.20g、0.79mmol)を20時間水素化した。
【表15】
【0099】
実施例2.52
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、180mLのオートクレーブに、1(1.00g、3.93mmol)、629(1.21mg、1.96×10-6mol、S/C2`000)、680(1.92mg、1.96×10-6mol、S/C2`000)、DBU(59.8mg、3.93×10-4mol、S/B10)およびEtOH(20mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表10参照)。
【表16】
【0100】
実施例2.53
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、180mLのオートクレーブに、1(1.00g、3.93mmol)、629(2.42mg、3.93×10-6mol、S/C1`000)、680(0.77mg、0.79×10-6mol、S/C5`000)、DBU(30.0mg、1.97×10-4mol、S/B20)およびEtOH(20mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表11参照)。
【表17】
【0101】
実施例2.54
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、180mLのオートクレーブに、1(1.00g、3.93mmol)、629(2.42mg、3.93×10-6mol、S/C1`000)、680(0.77mg、0.79×10-6mol、S/C5`000)、DBU(5.98mg、3.93×10-5mol、S/B100)およびEtOH(20mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表12参照)。
【表18】
【0102】
実施例2.55
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、180mLのオートクレーブに、1(1.00g、3.93mmol)、630(3.00mg、3.93×10-6mol、S/C1`000)およびEtOH(20mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで30barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、30barの一定の水素圧力で4時間、水素化を実行した。その後、1~2barに圧力を解放し、オートクレーブをグローブボックスに戻し、そこでアルゴン雰囲気下にてオートクレーブを開き、680(0.77mg、0.79×10-6mol、S/C5`000)、DBU(30.0mg、1.97×10-4mol、S/B20)を投入した。オートクレーブを再度密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。反応を70barで18時間継続し、30℃に加熱した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表13参照)。
【表19】
【0103】
実施例2.56
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、180mLのオートクレーブに、1(1.00g、3.93mmol)、630(3.00mg、3.93×10-6mol、S/C1`000)、680(0.77mg、0.79×10-6mol、S/C5`000)、DBU(12.0mg、7.86×10-5mmol、S/B50)およびEtOH(20mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで30barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、30barの一定の水素圧力で4時間、水素化を実行した。その後、圧力を70バールに増加し、反応をさらに19時間行った。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表14参照)。
【表20】
【0104】
実施例2.57
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、180mLのオートクレーブに、1(1.00g、3.93mmol)、630(3.00mg、3.93×10-6mol、S/C1`000)、680(0.77mg、0.79×10-6mol、S/C5`000)、DBU(12.0mg、7.86×10-5mmol、S/B50)およびEtOH(20mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で23時間、水素化を実行した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表15参照)。
【表21】
【0105】
実施例2.58
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、180mLのオートクレーブに、1(1.00g、3.93mmol)、630(3.00mg、3.93×10-6mol、S/C1`000)、680(0.77mg、0.79×10-6mol、S/C5`000)、DBU(30.0mg、1.97×10-4mol、S/B20)およびEtOH(20mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で23時間、水素化を実行した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表16参照)。
【表22】
【0106】
実施例2.59
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、380mLのオートクレーブに、1(15.0g、59mmol)、630(45.1mg、5.9×10-5mol、S/C1`000)、680(11.5mg、1.2×10-5mol、S/C5`000)、DBU(179.3mg、1.2mmol、S/B50)およびEtOH(300mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表17参照)。48時間の総反応時間後(>99.9%変換)、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(200mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから500mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、99.4面積%の純度および15のトランス/シス比を有する未精製の6(12.1g-IPCサンプリングを省略すると、より高い収率が達成可能であろう)が得られた。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(6.1%)、トランス-4(0.2%)、トランス-5(0.1%)
【0107】
次に、未精製の(R,R)-6(12.1g)をiPrOAc(100mL)中に懸濁し、スラリーを50℃で2時間撹拌した。懸濁液を0℃に冷却し、この温度で1時間撹拌し、フィルタにかけ、3つに分けた氷冷iPrOAc(60ml)で濾過ケークを洗浄して、乾燥後(25℃、10mbar)に99.5面積%の純度および104のトランス/シス比を有する純粋な6(9.8g、収率77%)を得た。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(0.95%)
【0108】
その後、上からの(R,R)-6(9.8g)をiPrOAc(78ml)に90℃で溶解した。無色溶液を2時間以内に25℃に冷却し、それによって生成物が結晶化し始めた。形成された懸濁液を25℃で2時間保持し、30分以内に0℃に冷却した。結晶をフィルタにかけ、2つに分けた氷冷iPrOAc(30ml)で洗浄して、乾燥後(25℃、10mbar)に、99.9面積%を超える純度および713のトランス/シス比を有する灰白色の結晶性6(9.0g、収率71%-水素化操作中にIPCサンプリングを省略すると、より高い収率が達成可能であろう)を得た。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(0.14%)
【表23】
【0109】
実施例2.60
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、380mLのオートクレーブに、1(15.0g、59mmol)、630(45.1mg、5.9×10-5mol、S/C1`000)、680(11.5mg、1.2×10-5mol、S/C5`000)、DBU(179.3mg、1.2mmol、S/B50)およびEtOH(300mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表18参照)。23時間の総反応時間後(>99.9%変換)、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(200mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから500mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、98.7面積%の純度および14のトランス/シス比を有する未精製の6(12.4g-IPCサンプリングを省略すると、より高い収率が達成可能であろう)が得られた。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(6.5%)、トランス-4(0.2%)、トランス-5(0.4%)
【0110】
次に、未精製の(R,R)-6(12.4g)をDCM(100mL)中に懸濁し、スラリーを50℃で2時間撹拌した。懸濁液を0℃に冷却し、この温度で1時間撹拌し、フィルタにかけ、3つに分けた氷冷DCM(60ml)で濾過ケークを洗浄して、乾燥後(25℃、10mbar)に99.8面積%の純度および65のトランス/シス比を有する純粋な6(11.0g、収率91%)を得た。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(1.52%)
【0111】
その後、上からの(R,R)-6(11.0g)をiPrOAc(88ml)に90℃で溶解した。無色溶液を2時間以内に25℃に冷却し、それによって生成物が結晶化し始めた。形成された懸濁液を25℃で2時間保持し、30分以内に0℃に冷却した。結晶をフィルタにかけ、2つに分けた氷冷iPrOAc(30ml)で洗浄して、乾燥後(25℃、10mbar)に、99.9面積%を超える純度および713のトランス/シス比を有する灰白色の結晶性6(9.0g、収率75%-水素化操作中にIPCサンプリングを省略すると、より高い収率が達成可能であろう)を得た。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(0.14%)
【表24】
【0112】
実施例2.61
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、380mLのオートクレーブに、1(15.0g、59mmol)、630(45.1mg、5.9×10-5mol、S/C1`000)、680(11.5mg、1.2×10-5mol、S/C5`000)、DBU(179.3mg、1.2mmol、S/B50)およびEtOH(300mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。23時間の総反応時間後(>99.9%変換)、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(200mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから500mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、99.4面積%の純度および18のトランス/シス比を有する未精製の6(13.2g)が得られた。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(5.1%)、トランス-5(0.3%)
【0113】
次に、未精製の(R,R)-6(13.2g)をiPrOAc(106mL)中に懸濁し、スラリーを50℃で2時間撹拌した。懸濁液を0℃に冷却し、この温度で1時間撹拌し、フィルタにかけ、3つに分けた氷冷iPrOAc(60ml)で濾過ケークを洗浄して、乾燥後(25℃、10mbar)に99.8面積%の純度および91のトランス/シス比を有する純粋な6(10.6g、収率83%)を得た。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(1.1%)
【0114】
その後、上からの(R,R)-6(10.6g)をiPrOAc(85ml)に90℃で溶解した。無色溶液を2時間以内に25℃に冷却し、それによって生成物が結晶化し始めた。形成された懸濁液を25℃で2時間保持し、30分以内に0℃に冷却した。結晶をフィルタにかけ、2つに分けた氷冷iPrOAc(30ml)で洗浄して、乾燥後(25℃、10mbar)に、99.9面積%を超える純度および249のトランス/シス比を有する灰白色の結晶性6(9.8g、収率77%)を得た。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(0.41%)
【0115】
トランス-6の分析データ
GC-MS ESI(m/z):216.0[M+]
NMR(400MHz,DMSO)δ7.27-7.42(m,4H),5.21(d,J=4.8Hz,1H),4.69-4.82(m,1H),4.48(br d,J=4.6Hz,2H),3.62-3.75(m,1H),3.20-3.31(m,2H),1.59-1.73(m,1H),1.42(ddd,J=13.9,9.5,2.2Hz,1H)。
【0116】
3.(R)-3の不斉水素化を介した(R,R)-6の調製
実施例3.1
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、185mLのオートクレーブに、(R)-3(1.00g、3.91mmol、品質:99.9%の鏡像体過剰率、99.8面積%の純度)、680(3.83mg、3.91×10-6mol、S/C1`000)およびDBU(59.5mg、3.91×10-4mol、S/B10)およびEtOH(20mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表19参照)。
【表25】
【0117】
実施例3.2~3.3
実施例3.1と同様に、30℃のEtOH(4mL)中で23時間、680(0.19mg、0.20×10-6mol、S/C5`000)の存在下および表20に列挙されている量の塩基としてのDBUの存在下で、3(0.25g、0.98mmol)を水素化した。
【表26】
【0118】
実施例3.4
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、185mLのオートクレーブに、(R)-3(6.0g、23.0mmol、品質:99.9%の鏡像体過剰率、99.8面積%の純度)、680(22.9mg、2.3×10-5mol、S/C1`000)およびDBU(71.2mg、4.7×10-4mol、S/B50)およびEtOH(120mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。23時間の総反応時間後(99.9%変換)、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(20mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから250mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、98.7面積%の純度および28のトランス/シス比を有する未精製の(R,R)-6(5.2g)が得られた。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(3.40%)、3(0.10%)
【0119】
次に、未精製の(R,R)-6(5.2g)をiPrOAc(52mL)中に懸濁し、スラリーを50℃で2時間撹拌した。懸濁液を0℃に冷却し、この温度で1時間撹拌し、フィルタにかけ、3つに分けた氷冷iPrOAc(30ml)で濾過ケークを洗浄して、乾燥後(25℃、10mbar)に99.5面積%の純度および125のトランス/シス比を有する純粋な6(4.1g、収率81%)を得た。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(0.79%)
【0120】
その後、上からの(R,R)-6(4.1g)をiPrOAc(34ml)に90℃で溶解した。無色溶液を2時間以内に25℃に冷却し、それによって生成物が結晶化し始めた。形成された懸濁液を25℃で2時間保持し、30分以内に0℃に冷却した。結晶をフィルタにかけ、2つに分けた氷冷iPrOAc(14ml)で洗浄して、乾燥後(25℃、10mbar)に、99.9面積%を超える純度および586のトランス/シス比を有する灰白色の結晶性6(3.7g、収率73%)を得た。99.9%超の鏡像体過剰率で、(R,R)-6が得られた。
規格設定不純物:シス-6(0.17%)
【0121】
4.(R,R)-5の不斉水素化を介した(R,R)-6の調製
実施例4.1
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、185mLのオートクレーブに、(R,R)-5(1.00g、4.71mmol、品質:99.9%の鏡像体過剰率、99.9面積%の純度)、680(4.62mg、4.71×10-6mol、S/C1`000)、DBU(71.7mg、4.71×10-4mol、S/B10)およびEtOH(20mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。反応の進行を追跡するために、異なる時点で反応試料を採取した(表21参照)。
【表27】
【0122】
実施例4.2
実施例4.1と同様に、680(0.23mg、2.36×10-7mol、S/C5`000)およびDBU(9.0mg、0.59×10-4mol、S/B20)の存在下、EtOH(5mL)中で、(R,R)-5(0.25g、1.18mmol;品質:99.9%鏡像体過剰率、99.9面積%の純度)を水素化して、30℃および70barの初期水素圧で20時間後に、96.7%の純度および99.9%超の鏡像体変換率(99%変換;トランス/シス比>100)を有する未精製の(R,R)-6を得た。
【0123】
5.7の不斉水素化を介した(R,R)-8の調製
実施例5.1
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、35mLのオートクレーブに、7(250mg、1.1mmol)、680(1.1mg、1.1×10-6mol、S/C1`000)、KOtBu(12.1mg、1.1×10-4mol、S/B10)およびEtOH(5mL)を投入した。オートクレーブを密封し、グローブボックスから取り出し、水素ラインに接続し、水素ガスで70barに加圧し、30℃に加熱した。撹拌下で、70barの一定の水素圧力で水素化を実行した。20時間の総反応時間後、オートクレーブを排気し、室温に冷却した。EtOH(5mL)を用いて、反応混合物をオートクレーブから50mL丸底フラスコに移し、橙色の反応溶液を一定重量まで40℃/10mbarで回転蒸発させると、95%超のLC/MS純度を有する未精製のトランス-8(推定される主要な鏡像異性体:(R,R)-8、245mg)が得られた。
【0124】
トランス-8の分析データ
GC-MS ESI(m/z):182.1[M+]
H-NMR(CDCl,600MHz):δppm7.30-7.42(m,1H),7.28-7.42(m,3H),5.03(br d,J=3.8Hz,1H),3.98(br s,1H),3.44-3.64(m,2H),3.03-3.44(m,2H),2.38-2.86(m,1H),1.72-2.03(m,3H)
13C-NMR(CDCl,151MHz):δppm144.2,128.5,127.5,125.5,71.4,69.4,66.8,41.0ppm
【国際調査報告】