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特表2024-504112高純度L-乳酸マグネシウムの結晶化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】高純度L-乳酸マグネシウムの結晶化
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/43 20060101AFI20240123BHJP
   C07C 59/08 20060101ALI20240123BHJP
   C07B 57/00 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240123BHJP
   C12P 7/56 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C07C51/43
C07C59/08
C07B57/00 346
C12N1/14 B
C12N1/16 A
C12N1/20 A
C12P7/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542680
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 IL2022050081
(87)【国際公開番号】W WO2022157768
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】63/139,894
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/280,150
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522327348
【氏名又は名称】トリプルダブリュー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】グリーナー,ツヴィカ
(72)【発明者】
【氏名】パポ,ニサン
(72)【発明者】
【氏名】ハーノイ,アッサフ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H006
【Fターム(参考)】
4B064AD33
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CC07
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BC02
4B065BD15
4B065BD18
4B065BD50
4B065CA44
4B065CA46
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC83
4H006AD15
4H006BN10
4H006BS10
(57)【要約】
均質および異質性の分解有機廃棄物からの高純度L-乳酸マグネシウム結晶の形成のためのプロセスが提供される。プロセスは、新規ポリ乳酸の生成での再利用に特に適している、改善されたエナンチオマー純度および全体的な純度を有するL-乳酸マグネシウム結晶を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解有機廃棄物からの高純度L-乳酸マグネシウム結晶の形成のためのプロセスであって;
a.約50~約110g/Lの濃度で乳酸塩を含む分解有機廃棄物の清澄化分散体を提供するステップ;
b.場合によっては、ステップ(a)の前記清澄化分散体を約100~約150g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮するステップ;
c.ステップ(a)の前記清澄化分散体またはステップ(b)の前記濃縮清澄化分散体を混合して、シードであるL-乳酸マグネシウム結晶を含む懸濁液を得るステップ;
d.約70%~約90%の水をステップ(c)の前記懸濁液から除去し、L-乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
e.ステップ(d)で得られた前記L-乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含み、
ステップ(b)から(d)が、約50℃~約90℃の範囲内の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される、プロセス。
【請求項2】
分解有機廃棄物の前記清澄化分散体が、濾過、遠心分離、浮選、沈降、凝固、凝結、およびデカンテーションの少なくとも1つを使用して不純物が除去されている分解有機廃棄物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
分解有機廃棄物の前記清澄化分散体が、濾過および/または遠心分離を使用して不純物が除去されている分解有機廃棄物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機廃棄物が、食品廃棄物、自治体の食品廃棄物、家庭用食品廃棄物、農業廃棄物、食品加工施設からの産業食品廃棄物、商業的食品廃棄物、およびそれらの混合物または組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(b)が、約100~約130g/Lの乳酸塩濃度まで実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(c)の前記混合が、毎分約50~約300回転(RPM)の速度で実行される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(c)の前記混合が、少なくとも1時間実行される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(b)から(d)が、約50℃~約80℃の範囲内の高温で実行される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(b)から(d)が、約150~約250mbarの圧力まで真空を適用して実行される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(d)が、毎時約2~約5wt%の蒸発速度で実行される、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(e)が、濾過および/または遠心分離を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップ(e)が、室温で実行される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
さらに、前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶を洗浄するステップ(f)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶の洗浄が、水、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチル、およびそれらの混合物または組み合わせから選択される溶媒中で実行される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
さらに、前記L-乳酸マグネシウム結晶を、約10%~約20%の乾燥減量(LOD)%まで乾燥させるステップ(g)を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
乾燥が、約50℃~約120℃の高温で実行される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が可溶化され、ステップ(c)~(e)を何度も繰り返すことにより再結晶化される、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
L-乳酸マグネシウム結晶の前記回収率が、少なくとも90%である、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が、75μmよりも小さいメジアン径により特徴づけられる、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が、75μmよりも大きいメジアン径により特徴づけられる、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が、約100~約300μmの範囲内のメジアン径を含む粒度分布により特徴づけられる、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が、3%未満のD-乳酸マグネシウム、好ましくは2%未満のD-乳酸マグネシウム、より好ましくは1.5%未満のD-乳酸マグネシウム、最も好ましくは1%未満のD-乳酸マグネシウムを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載のプロセスにより得ることが可能である、複数のL-乳酸マグネシウム結晶。
【請求項24】
発酵ブロスからの高純度L-乳酸マグネシウム結晶の形成のためのプロセスであって:
a.約50~約110g/Lの濃度で乳酸塩を含む清澄化発酵ブロスを提供するステップ;
b.場合によっては、ステップ(a)の前記清澄化発酵ブロスを約100~約150g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮するステップ;
c.ステップ(a)の前記清澄化発酵ブロスまたはステップ(b)の前記濃縮発酵ブロスを混合して、シードであるL-乳酸マグネシウム結晶を含む懸濁液を得るステップ;
d.約70%~約90%の水をステップ(c)の前記懸濁液から除去し、L-乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
e.ステップ(d)で得られた前記L-乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含み、
ステップ(b)から(d)が、約50℃~約90℃の範囲内の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される、プロセス。
【請求項25】
前記清澄化発酵ブロスが、濾過、遠心分離、浮選、沈降、凝固、凝結、およびデカンテーションの少なくとも1つを使用して不純物が除去されている発酵ブロスを含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記清澄化発酵ブロスが、濾過および/または遠心分離を使用して不純物が除去されている発酵ブロスを含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項27】
前記清澄化発酵ブロスが、炭水化物源の発酵プロセスから得られる、請求項24~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記清澄化発酵ブロスが、有機廃棄物供給原料の発酵プロセスから得られる、請求項24~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記有機廃棄物が、食品廃棄物、自治体の食品廃棄物、家庭用食品廃棄物、農業廃棄物、食品加工施設からの産業食品廃棄物、商業的食品廃棄物、およびそれらの混合物または組み合わせから選択される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
ステップ(b)が、約100~約130g/Lの乳酸塩濃度まで実行される、請求項24~29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
ステップ(c)の前記混合が、毎分約50~約300回転(RPM)の速度で実行される、請求項24~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
ステップ(c)の前記混合が、少なくとも1時間実行される、請求項24~31のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項33】
ステップ(b)から(d)が、約50℃~約80℃の範囲内の高温で実行される、請求項24~32のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
ステップ(b)から(d)が、約150~約250mbarの圧力まで真空を適用して実行される、請求項24~33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
ステップ(d)が、毎時約2~約5wt%の蒸発速度で実行される、請求項24~34のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項36】
ステップ(e)が、濾過および/または遠心分離を含む、請求項24~35のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項37】
ステップ(e)が、室温で実行される、請求項24~36のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項38】
さらに、前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶を洗浄するステップ(f)を含む、請求項24~37のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶の洗浄が、水、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチル、およびそれらの混合物または組み合わせから選択される溶媒中で実行される、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
さらに、前記L-乳酸マグネシウム結晶を、約10%~約20%の乾燥減量(LOD)%まで乾燥させるステップ(g)を含む、請求項24~39のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項41】
乾燥が、約50℃~約120℃の高温で実行される、請求項40に記載のプロセス。
【請求項42】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が可溶化され、ステップ(c)~(e)を何度も繰り返すことにより再結晶化される、請求項24~41のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項43】
L-乳酸マグネシウム結晶の前記回収率が、少なくとも90%である、請求項24~42のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項44】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が、75μmよりも小さいメジアン径により特徴づけられる、請求項24~43のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項45】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が、75μmよりも大きいメジアン径により特徴づけられる、請求項24~43のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項46】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が、約100~約300μmの範囲内のメジアン径を含む粒度分布により特徴づけられる、請求項45に記載のプロセス。
【請求項47】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が、3%未満のD-乳酸マグネシウム、好ましくは2%未満のD-乳酸マグネシウム、より好ましくは1.5%未満のD-乳酸マグネシウム、最も好ましくは1%未満のD-乳酸マグネシウムを含む、請求項24~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項48】
請求項24~47のいずれか一項に記載のプロセスにより得ることが可能である、複数のL-乳酸マグネシウム結晶。
【請求項49】
分解有機廃棄物由来のエナンチオマー混合物からのL-乳酸塩エナンチオマーを富化するためのプロセスであって:
a.D-およびL-乳酸塩のエナンチオマー混合物を含む乳酸塩を約50~約110g/Lの濃度で含む分解有機廃棄物の清澄化分散体を提供するステップ;
b.場合によっては、ステップ(a)の前記清澄化分散体を約100~約150g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮するステップ;
c.ステップ(a)の前記清澄化分散体またはステップ(b)の前記濃縮清澄化分散体を混合して、シードである乳酸マグネシウム結晶を含む懸濁液を得るステップ;
d.約70%~約90%の水をステップ(c)の前記懸濁液から除去し、富化されたエナンチオマー純度を有するL-乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
e.ステップ(d)で得られた前記L-乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含み、
ステップ(b)から(d)が、約50℃~約90℃の範囲内の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される、プロセス。
【請求項50】
前記得られたL-乳酸マグネシウム結晶が、1%未満のD-乳酸マグネシウムを含む、請求項49に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解有機廃棄物からの高純度L-乳酸マグネシウムの結晶化のためのプロセ
スに関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸は、食品、化学、医薬、および化粧品産業において応用される、最も広く存在するヒドロキシカルボン酸である。この天然に存在する有機酸は、化学合成または微生物発酵により生成することができる。微生物発酵により生成される場合、微生物の生産性を維持するために、乳酸の発酵に起因する内因性のpHの減少を回避するように注意が必要である。5~7の範囲内のpHが好ましく、乳酸を中和し、それによって乳酸塩を生成する、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムなどの塩基の添加により得ることができる。乳酸塩を乳酸に変換するために、例えば硫酸を使用する再酸性化ステップを実行することができる。
【0003】
乳酸の生産コストのおおよそ60~80%は、発酵ブロスからの乳酸/乳酸塩の精製、濃縮、および分離を含む、下流のプロセスに起因する可能性がある。さらに、副産物(乳酸塩以外の塩など)の生成を低減または排除することが望ましい。
【0004】
種々の方法は、発酵ブロスから乳酸および/または乳酸塩を回収および精製するために以前提案されている。例えば、結晶化に基づく乳酸マグネシウム精製のためのプロセスについては、Wang Yong,et al.,「Efficient magnesium lactate production with in situ product removal by crystallization」,Bioresource technology 198(2015):658-663に記載されている。結晶化は、結晶シードの添加なしで、42℃で実行された。発酵装置で使用される発酵培地には、酵母抽出物、グルコース、NaCl、酢酸ナトリウム、クエン酸三アンモニウム、KHPO、MgSO・7HO、およびMnSO・7HOが含まれていた。原位置生成物除去(ISPR)を伴う生成物の濃度、生産性および発酵の収率は、それぞれ143g L-1、2.41g L-1-1および94.3%に到達した。
【0005】
米国特許第9,689,007号明細書には、発酵性糖質を含む少なくとも25wt.%の植物抽出物を含む発酵培地を提供すること、および苛性マグネシウム塩の存在下で乳酸産生微生物により発酵培地を発酵させて、発酵終了時に最大9.5wt.%の乳酸マグネシウムを含む発酵ブロスを提供することを含む、発酵を介して「低糖」植物抽出物から乳酸塩または乳酸を生成するための方法が記載されており、乳酸マグネシウムは、発酵中および発酵終了時には可溶形である。発酵の終了時に最大9.5wt.%である発酵ブロス中の乳酸マグネシウム濃度を達成するため、植物抽出物を含む発酵培地は、最大9.5wt.%の濃度で発酵性糖質を含むことが好ましい。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0012041号明細書には、ギ酸塩を含む水性乳酸塩溶液を前記乳酸塩に対して7.0重量%以上の量で結晶化に供すること、前記乳酸塩を回収することを含む、乳酸塩を生成する方法が記載されている。前記水性乳酸塩溶液中の乳酸塩濃度は、10.0~30.0重量%である。
【0007】
米国特許出願公開第2017/0218408号明細書には、乳酸を含む発酵生成物を調製するための方法が記載されており、その方法は:a)水の存在下、微粒子状であり、平均粒径が0.1~250mmであるリグノセルロース物質を、苛性マグネシウム塩で処理して、処理済み水性リグノセルロース物質を提供すること;b)加水分解酵素の存在下、処理済み水性リグノセルロース物質を糖化して、発酵性糖質および固形リグノセルロース画分を含む糖化水性リグノセルロース物質を提供すること;c)ステップb)と同時に、乳酸形成微生物および苛性マグネシウム塩の両方の存在下、糖化水性リグノセルロース物質を発酵させて、乳酸マグネシウムおよび固形リグノセルロース画分を含む水性発酵ブロスを提供すること;d)ブロスから乳酸マグネシウムを回収することを含み、糖化および発酵は、同時に実行される。米国特許出願公開第2017/0218408号明細書のプロセスのための供給原料はリグノセルロース物質であり、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含む物質を含み、例えば植物バイオマスに由来する可能性がある。好ましいリグノセルロース物質は:麦わら、サトウキビバガス、トウモロコシ茎葉、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0008】
国際公開第2017/178426号には:
-発酵性炭素源を含む発酵培地を発酵反応器に提供するステップ、
-アルカリ性マグネシウム塩の存在下、乳酸産生微生物により発酵培地を発酵させて、乳酸マグネシウムを含む発酵ブロスを提供するステップ、ならびに
-乳酸マグネシウム含有発酵ブロスから固形乳酸マグネシウムを回収するステップであって、発酵プロセスの操作時間の少なくとも40%の間、発酵ブロス中の固形乳酸マグネシウム濃度が、発酵ブロスの合計に対する固形乳酸マグネシウム結晶として算出される5~40vol.%の範囲内に維持されるステップ
を含む、炭素源から乳酸マグネシウムを生成するための発酵プロセスが記載されている。発酵性炭素源の例は、C糖、C糖、そのオリゴマー(例えば二量体型C12糖)および/またはそれらのポリマーである。
【0009】
国際公開第2017/207501号には、固形発酵生成物からバイオマスを分離するための方法が記載されており、バイオマスおよび固形発酵生成物を含むスラリーは、バイオマスセパレータユニットの頂部に提供され、水性培地は、バイオマスセパレータユニットの底部に提供され、一方で、固形発酵生成物を含む生成物流は、バイオマスセパレータユニットの底部から引き出され、バイオマスを含む廃棄物流は、バイオマスセパレータユニットの頂部から引き出される。固形発酵生成物は、その飽和濃度を超える濃度で水性培地中に存在する発酵生成物であり、結晶生成物または非晶質生成物であり得る。
【0010】
上述した精製および結晶化方法は、可溶性および不溶性の不純物の含有量が低い、実質的に均質なバイオマスベースの供給物流由来の発酵ブロス用にデザインされる。しかし、発酵のためにより入手しやすく、高価ではない非均質の供給原料、例えば自治体、産業および商業的起源からの混合食品廃棄物を利用する必要性がある。これらの非均質の供給原料は、塩、脂質、タンパク質、色成分、および不活性物質などの不純物を含む。前記非均質の供給原料由来の発酵ブロスは、高純度L-乳酸マグネシウム生成物を費用効果のある方法で得るために現在利用可能な方法により効果的に処理することができない。
【0011】
国際公開第2020/110108号には:
(a)発酵プロセスの結果である可溶性の形状の乳酸マグネシウムを含む、不溶性の不純物が除去されている清澄化発酵ブロスを提供するステップであって、発酵ブロスが約45℃~約75℃の温度である、ステップ;
(b)ステップ(a)からの清澄化ブロスを、約150g/L~約220g/Lの乳酸塩の濃度まで濃縮するステップ;
(c)ステップ(b)からの濃縮清澄化ブロスの少なくとも1つの冷却結晶化を実行して、乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
(d)得られた乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含む、発酵ブロスからの乳酸マグネシウムの分離および精製のためのプロセスが記載されている。
【0012】
分解有機廃棄物からの高純度L-乳酸マグネシウム塩の結晶化のための高い回収の収率を有する単純で、費用効果のある方法のための満たされていない必要性が残っている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、乳酸および/または乳酸塩を含む発酵ブロスまたは他の有機廃棄物分解生成物からの高純度L-乳酸マグネシウムを調製するためのプロセスを提供する。本発明のプロセスは、多様な起源からの発酵ブロスまたは他の有機廃棄物分解生成物を利用し、それによってプロセスを経済的にも環境的にも有益にすることができる蒸発結晶化を含む。本明細書に開示されるプロセスは、乳酸再利用設備における流加回分生産および連続生産に適している。
【0014】
本発明は、一部、高純度L-乳酸マグネシウム結晶が、発酵中および/または発酵後のD-乳酸の除去の必要なしで、乳酸発酵ブロスなどの分解有機廃棄物の分散体から得ることができるという予期しない発見に基づいている。プロセスは、分解廃棄物中にかなりの量の不純物が存在するにも関わらず1回の通過後すでに高純度L-乳酸マグネシウム結晶を生じる特定の条件下での蒸発結晶化の使用を含む。驚いたことに、本発明のプロセスは、10wt.%以下の内因性D-乳酸を含む分解有機廃棄物を使用する場合であっても、結果として改善されたエナンチオマー分離となった。そのため、本発明のプロセスは、自治体、産業および商業的起源からの高濃度の可溶性および不溶性の不純物を含む非均質の供給原料が使用される場合であっても、高純度L-乳酸マグネシウム結晶を簡単で経済的に提供する。
【0015】
第1の態様によれば、本発明は、分解有機廃棄物からの高純度L-乳酸マグネシウム結晶の形成のためのプロセスを提供し、そのプロセスは:
a.約50~約110g/Lの濃度で乳酸塩を含む分解有機廃棄物の清澄化分散体を提供するステップ;
b.場合によっては、ステップ(a)の清澄化分散体を約100~約150g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮するステップ;
c.ステップ(a)の清澄化分散体またはステップ(b)の濃縮清澄化分散体を混合して、シードであるL-乳酸マグネシウム結晶を含む懸濁液を得るステップ;
d.約70%~約90%の水をステップ(c)の懸濁液から除去し、L-乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
e.ステップ(d)で得られたL-乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含み、
ステップ(b)から(d)は、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約90℃の範囲内の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される。
【0016】
一実施形態によれば、分解有機廃棄物は、乳酸発酵プロセスから得られる。別の実施形態によれば、分解有機廃棄物は、乳酸含有廃棄物から得られる。さらに別の実施形態によれば、分解有機廃棄物は、ポリ乳酸ポリマーの加水分解から得られる。
【0017】
第2の態様によれば、本発明は、発酵ブロスからの高純度L-乳酸マグネシウム結晶の形成のためのプロセスを提供し、このプロセスは:
a.約50~約110g/Lの濃度で乳酸塩を含む清澄化発酵ブロスを提供するステップ;
b.場合によっては、ステップ(a)の清澄化ブロスを約100~約150g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮するステップ;
c.ステップ(a)の清澄化発酵ブロスまたはステップ(b)の濃縮発酵ブロスを混合して、シードであるL-乳酸マグネシウム結晶を含む懸濁液を得るステップ;
d.約70%~約90%の水をステップ(c)の懸濁液から除去し、L-乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
e.ステップ(d)で得られたL-乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含み、
ステップ(b)から(d)は、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約90℃の範囲内の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される。
【0018】
第3の態様によれば、本発明は、分解有機廃棄物からの高純度L-乳酸マグネシウム結晶の形成のためのプロセスを提供し、そのプロセスは:
a.約50~約110g/Lの濃度で乳酸塩を含む分解有機廃棄物の清澄化分散体を提供するステップ;
b.場合によっては、ステップ(a)の清澄化分散体を約100~約150g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮するステップ;
c.ステップ(a)の清澄化分散体またはステップ(b)の濃縮清澄化分散体を混合して、シードであるL-乳酸マグネシウム結晶を含む懸濁液を得るステップ;
d.約70%~約90%の水をステップ(c)の懸濁液から除去し、L-乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
e.ステップ(d)で得られたL-乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含み、
ステップ(b)から(d)は、真空なしで約100℃の温度で実行される。
【0019】
いくらかの実施形態によれば、清澄化分散体または清澄化ブロスは、濾過、遠心分離、浮選、沈降、凝固、凝結、およびデカンテーションの少なくとも1つを使用して不純物が除去されている分解有機廃棄物または発酵ブロスを含む。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。追加の実施形態によれば、清澄化分散体または清澄化ブロスは、濾過および/または遠心分離を使用して不純物が除去されている分解有機廃棄物または発酵ブロスを含む。
【0020】
他の実施形態によれば、有機廃棄物は、炭水化物源を含む。さらなる実施形態によれば、有機廃棄物は、食品廃棄物、自治体の食品廃棄物、家庭用食品廃棄物、農業廃棄物、食品加工施設からの産業食品廃棄物、商業的食品廃棄物(病院、レストラン、ショッピングセンター、空港などからの)、およびそれらの混合物または組み合わせから選択される。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0021】
特定の実施形態によれば、分解有機廃棄物は、内因性D-乳酸を含む。具体的な実施形態によれば、分解有機廃棄物は、10wt.%以下の内因性D-乳酸を含む。
【0022】
いくらかの実施形態によれば、ステップ(b)は、指定された範囲内の各値を含む、約100~約130g/Lの乳酸塩濃度まで実行される。
【0023】
種々の実施形態によれば、ステップ(c)における混合は、指定された範囲内の各値を含む、毎分約50~約300回転(RPM)の速度で実行される。
【0024】
ある特定の実施形態によれば、ステップ(c)における混合は、少なくとも1時間実行される。他の実施形態によれば、ステップ(c)における混合は、指定された範囲内の各値を含む、約1時間~約6時間実行される。
【0025】
さらなる実施形態によれば、ステップ(b)から(d)は、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約80℃の範囲内の高温で実行される。他の実施形態によれば、ステップ(b)から(d)は、指定された範囲内の各値を含む、約150~約250mbarの圧力まで真空を適用して実行される。さらなる実施形態によれば、ステップ(b)から(d)は、指定された範囲内の各値を含む、約250~約350mbarの圧力まで真空を適用して実行される。
【0026】
特定の実施形態によれば、ステップ(d)における懸濁液からの約70%~約90%の水の除去は、指定された範囲内の各値を含む、毎時約2~約5wt%の蒸発速度で実行される。
【0027】
種々の実施形態によれば、ステップ(e)は、濾過および/または遠心分離を含む。具体的な実施形態によれば、ステップ(e)は、室温で実行される。
【0028】
ある特定の実施形態によれば、プロセスは、得られたL-乳酸マグネシウム結晶を洗浄するステップ(f)をさらに含む。特定の実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶の洗浄は、水、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチル、およびそれらの混合物または組み合わせから選択される溶媒中で実行される。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0029】
他の実施形態によれば、プロセスは、L-乳酸マグネシウム結晶を、指定された範囲内の各値を含む、約10%~約20%の乾燥減量(LOD)%まで乾燥させるステップ(g)をさらに含む。特定の実施形態によれば、ステップ(g)は、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約120℃の高温で実行される。
【0030】
追加の実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶を可溶化し、ステップ(c)~(e)を何度も繰り返すことにより再結晶化する。これらの実施形態によれば、ステップ(c)~(e)は、例えば、指定された範囲内の各値を含む、2~6サイクルの間のサイクルで実行される。
【0031】
さらなる実施形態によれば、L-乳酸マグネシウム結晶の回収率は、少なくとも90%である。
【0032】
他の実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、75μmより小さいメジアン径により特徴づけられる。ある特定の実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、指定された範囲内の各値を含む、約20~約100μmの範囲内のメジアン径を含む粒度分布により特徴づけられる。さらに別の実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、75μmより大きいメジアン径により特徴づけられる。追加の実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、指定された範囲内の各値を含む、約100~約300μmの範囲内のメジアン径を含む粒度分布により特徴づけられる。
【0033】
いくらかの実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、3%未満のD-乳酸マグネシウムを含む。ある特定の実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、2%未満のD-乳酸マグネシウムを含む。他の実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、1.5%未満のD-乳酸マグネシウムを含む。さらに他の実施形態によれば、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、1%未満のD-乳酸マグネシウムを含む。
【0034】
追加の実施形態によれば、本発明は、本明細書に開示されているプロセスにより得ることが可能な高純度L-乳酸マグネシウム結晶をさらに提供する。
【0035】
さらなる実施形態によれば、本発明は、分解有機廃棄物由来のエナンチオマー混合物からL-乳酸塩エナンチオマーを富化するためのプロセスを提供し、そのプロセスは:
a.D-およびL-乳酸塩のエナンチオマー混合物を含む乳酸塩を約50~約110g/Lの濃度で含む分解有機廃棄物の清澄化分散体を提供するステップ;
b.場合によっては、ステップ(a)の清澄化分散体を約100~約150g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮するステップ;
c.ステップ(a)の清澄化分散体またはステップ(b)の濃縮清澄化分散体を混合して、シードである乳酸マグネシウム結晶を含む懸濁液を得るステップ;
d.約70%~約90%の水をステップ(c)の懸濁液から除去し、富化されたエナンチオマー純度を有するL-乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
e.ステップ(d)で得られたL-乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含み、
ステップ(b)から(d)は、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約90℃の範囲内の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される。
【0036】
一実施形態において、プロセスは、1%またはそれ以上までのL-乳酸塩エナンチオマーの富化を提供する。別の実施形態において、プロセスは、5%またはそれ以上までのL-乳酸塩エナンチオマーの富化を提供する。さらに別の実施形態において、プロセスは、10%またはそれ以上までのL-乳酸塩エナンチオマーの富化を提供する。特定の実施形態において、プロセスは、15%以下のL-乳酸塩エナンチオマーの富化を提供する。他の実施形態において、プロセスは、20%以下のL-乳酸塩エナンチオマーの富化を提供する。さらに他の実施形態において、プロセスは、25%以下のL-乳酸塩エナンチオマーの富化を提供する。
【0037】
本明細書に開示されている各態様および実施形態の任意の組み合わせが、本発明の開示に明確に包含されていることが理解されるべきである。
【0038】
本発明のさらなる実施形態および適用可能な全範囲は、この後に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の精神および範囲内での種々の変更および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および具体的な実施例が、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、例証のためにのみ与えられていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の粒度分布を示す。
図2図2A図2Fは、カットオフサイズ710μm(2A)、500μm(2B)、300μm(2C)、100μm(2D)、および75μm(2E)を有する篩の上に残った、本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の光学顕微鏡画像を示す。図2Fは、75μm篩を通過したL-乳酸マグネシウム結晶の光学顕微鏡画像を示す。
図3図3は、冷却結晶化を使用して得られたL-乳酸マグネシウム結晶の粒度分布を示す。
図4図4A図4Fは、カットオフサイズ710μm(4A)、500μm(4B)、300μm(4C)、100μm(4D)、および75μm(4E)を有する篩の上に残った、冷却結晶化を使用して得られたL-乳酸マグネシウム結晶の光学顕微鏡画像を示す。図4Fは、75μm篩を通過したL-乳酸マグネシウム結晶の光学顕微鏡画像を示す。
図5図5は、再結晶化に続いて本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の粒度分布を示す。
図6図6は、異なる蒸発速度を使用して得られたL-乳酸マグネシウム結晶の粒度分布を示す。
図7図7は、流加回分一定容積結晶化から本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の粒度分布を示す。
図8図8は、流加回分一定容積結晶化から本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の光学顕微鏡画像を示す。
図9図9は、流加回分一定濃度結晶化から本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の粒度分布を示す。
図10図10は、流加回分一定濃度結晶化から本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の光学顕微鏡画像を示す。
図11図11は、水酸化ナトリウムを用いる分解PLA 4032Dから得られた乳酸マグネシウムの再結晶化および対イオン置換に続いて本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の粒度分布を示す。
図12図12は、水酸化ナトリウムを用いる分解PLA 4032Dから得られた乳酸マグネシウムの再結晶化および対イオン置換に続いて本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の光学顕微鏡画像を示す。
図13図13は、水酸化ナトリウムを用いる分解PLAから得られた乳酸マグネシウムの再結晶化および対イオン置換に続いて本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の粒度分布を示す。
図14図14は、水酸化ナトリウムを用いる分解PLAから得られた乳酸マグネシウムの再結晶化および対イオン置換に続いて本発明のいくらかの実施形態にしたがって得られたL-乳酸マグネシウム結晶の光学顕微鏡画像を示す。
図15図15は、30℃でのL-乳酸マグネシウムの結晶化から得られたL-乳酸マグネシウム結晶の粒度分布を示す。
図16図16は、30℃でのL-乳酸マグネシウムの結晶化から得られたL-乳酸マグネシウム結晶の光学顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、発酵ブロス、または自治体、産業および商業的起源からの高濃度の可溶性および不溶性の不純物を含む供給原料から得ることが可能な他の有機廃棄物分解生成物からのL-乳酸マグネシウム結晶の形成のためのプロセスを提供する。本明細書で初めて開示されたプロセスは、高い全体的な純度、高いエナンチオマー純度を発揮するL-乳酸塩結晶を提供し、所望の濾過性および粒度分布により容易に操作することができ、後に続くポリ乳酸形成に使用するのに特に有利である。
【0041】
いくらかの態様および実施形態によれば、分解有機廃棄物または発酵ブロスの清澄化分散体が得られ、清澄化分散体またはブロスは、指定された範囲内の各値を含む、約50~約110g/Lの濃度で乳酸イオンを含む。代表的な乳酸塩濃度には、約50g/L、約55g/L、約60g/L、約65g/L、約70g/L、約75g/L、約80g/L、約85g/L、約90g/L、約95g/L、約100g/L、約105g/L、または約110g/Lが含まれるがこれらに限定されない。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0042】
ある特定の実施形態によれば、分散体は、加水分解に供されたポリ乳酸ポリマーなどであるがこれらに限定されない任意の乳酸含有廃棄物の分解生成物である。他の実施形態によれば、有機廃棄物供給原料由来の発酵ブロスが使用される。本発明の範囲内の有機廃棄物供給原料は、食品廃棄物、自治体の食品廃棄物、家庭用食品廃棄物、農業廃棄物、食品加工施設からの産業食品廃棄物、商業的食品廃棄物(病院、レストラン、ショッピングセンター、空港などからの)、およびそれらの混合物または組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の廃棄物源から得ることができる。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。有機廃棄物はさらに、動物およびヒトの排泄物、野菜および果物の残渣、植物、調理済み食品、タンパク質残渣、屠殺廃棄物、およびそれらの組み合わせの範囲の残渣からも発生する可能性がある。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。産業有機食品廃棄物には、副産物、工場不合格品、市場戻り品または食用に適さない食品部分の屑(皮膚、脂肪、クラストおよび皮など)などの工場廃棄物が含まれ得る。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。商業的有機食品廃棄物には、ショッピングモール、レストラン、スーパーマーケットなどからの廃棄物が含まれ得る。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0043】
種々の態様および実施形態によれば、分解有機廃棄物の分散体は、炭水化物源の発酵プロセスから得られた発酵ブロスである。非均質の供給原料を使用する場合、分解有機廃棄物または発酵ブロスの分散体は、典型的に、微生物(例えば酵母、細菌および真菌を含む、例えば乳酸産生微生物)、脂肪および油、脂質、凝集タンパク質、骨片、毛髪、沈殿塩、細胞屑、繊維(例えば果物および/または野菜の皮)、および残留未処理廃棄物(例えば食品の殻、種子、食品不溶性粒子および屑など)などであるがこれらに限定されない不溶性有機物ベースの不純物を含む。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。不溶性無機物ベースの不純物の非限定例には、プラスチック、ガラス、食品包装容器からの残留物、砂、およびそれらの組み合わせが含まれる。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0044】
可溶性の不純物の非限定例には、水、溶媒、多糖、でんぷん、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、種子破片、塩、色成分(例えばタンニン、フラボノイドおよびカロチノイド)、およびそれらの組み合わせが含まれる。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。典型的に、分散体またはブロスの可溶性および不溶性の不純物含有量は、有機廃棄物供給原料の可溶性および不溶性の不純物含有量と同一である。いくらかの実施形態において、分散体またはブロスの可溶性および不溶性の不純物含有量は、有機廃棄物供給原料の可溶性および不溶性の不純物含有量と比較して少なくとも約1wt%低い。さらなる実施形態において、分散体またはブロスの可溶性および不溶性の不純物含有量は、有機廃棄物供給原料の可溶性および不溶性の不純物含有量と比較して、少なくとも約5wt%、約10wt%、約15wt%、約20wt%、約30wt%、約40wt%、または約50wt%低い。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0045】
本発明の原理によれば、分解廃棄物の清澄化分散体または発酵ブロスを得るため、不溶性の不純物は除去される。不純物は、廃棄物の分解または発酵の前および/または後で除去され、清澄化液体を生成する可能性がある。ある特定の実施形態によれば、不溶性の不純物の分離は、分解または発酵の前に実行される。例えば、いくらかの実施形態において、複合有機廃棄物は、熱処理され、続いて酵素処置される場合があり、続いて遠心分離、例えばデカンター型遠心分離により不溶性の不純物の大部分が除去される。乳酸生成のために、上清(依然としていくらかの不純物を有する)を容器または発酵装置にポンプで注入する。
【0046】
種々の実施形態によれば、不溶性の不純物の大部分の分離は、分解または発酵の後に実行される。清澄化は、濾過、遠心分離、浮選、沈降、凝固、凝結、およびデカンテーションの少なくとも1つを介して達成することができる。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。典型的には、清澄化分散体またはブロスは、濾過(例えば精密濾過)および/または遠心分離を使用して不溶性の不純物が除去されている分解有機廃棄物の分散体または発酵ブロスを含む。
【0047】
本発明の原理にしたがって清澄化分散体またはブロスを得るために必要ではないが、不純物の追加の除去を採用することができる。これには、例えば限外濾過、溶媒抽出、塩沈殿、および反発抽出を使用して、塩およびタンパク質などの所望の乳酸生成物とは実質的に異なる抽出成分を回収または分離するために、例えば、生成物分離または一次回収が含まれる。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。さらなる精製は、結晶化、蒸留、蒸発、ナノ濾過、逆浸透(RO)濾過、溶媒抽出、電気透析、および多様な種類のクロマトグラフィ(吸着またはイオン交換など)を使用して、類似の物理的および化学的特性を有する汚染物質を除去するために実行される可能性がある。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0048】
当技術分野で既知の精製方法は、典型的に、比較的低含有量の固形不純物を有する実質的に均質なバイオマスベースの供給物流由来の発酵ブロスについてデザインされ、前記方法のいくらかは、発酵ステップ中の結晶化および/または粒子状で乳酸塩を維持することを利用する。さらに、既知の方法のいくらかは、発酵プロセスの開始時に供給原料流中の特定量の炭水化物を使用し、結果として、発酵プロセスの終了時に特定量の乳酸マグネシウム生成物を使用するようにデザインされる。例えば、米国特許第9,689,007号明細書には、発酵培地がプロセスの開始時に少なくとも25wt.%の、発酵性糖質を含む植物抽出物を含むべきであること、および発酵の終了時の発酵ブロスが、最大9.5wt.%の乳酸マグネシウムを含むべきであることが規定されている。
【0049】
本発明が、均質なバイオマスベースの供給物流からの高純度L-乳酸マグネシウムの生成を可能にするが、また、有利には、高含有量の可溶性および不溶性の不純物を含む、自治体、産業、および商業的起源からの非均質な混合食品廃棄物など、より複雑な供給原料からの高純度L-乳酸マグネシウムの生成を可能にする。さらに、既知の方法は、広範囲の可能な初期発酵性糖類濃度を有し、結果として、広範囲の乳酸塩濃度を有する発酵ブロスとなる複雑な供給原料由来の発酵ブロスには適していない。驚いたことに、本発明者らは、広範囲の初期発酵性糖類濃度を含む複雑な供給原料から得られた非均質な発酵ブロス由来であり得る高純度のL-乳酸マグネシウム結晶を得るための単純で経済的なプロセスを見出した。そのため、本プロセスは、初期の有機物供給原料の起源により、または初期有機物供給原料中の発酵性糖類の量により限定または制限されない。
【0050】
本発明は、有利には、高い収率およびエナンチオマー分離で、異質性の供給原料からの高純度L-乳酸マグネシウム結晶の生成を可能にする。驚いたことに、今回初めて、高純度L-乳酸マグネシウム結晶が、内因性D-乳酸を含む分解有機廃棄物から得ることができることが開示されている。典型的に、有機廃棄物は、例えば乳製品中で、例えば天然発酵プロセスに由来する内因性D-乳酸、L-乳酸またはL-およびD-乳酸の両方を含む。本発明は、有利には、10wt.%以下の内因性D-乳酸を含む分解有機廃棄物からの高純度L-乳酸マグネシウム結晶の生成を可能にする。
【0051】
本発明の原理によれば、不溶性の不純物が除去されている分解有機廃棄物または発酵ブロスの清澄化分散体を得た後、乳酸イオンの濃度は、場合によっては、指定された範囲内の各値を含む、約100~約150g/Lの範囲まで高められる。好ましくは、乳酸イオンは、指定された範囲内の各値を含む、約100~約130g/Lの濃度まで濃縮される。濃縮後の乳酸塩の代表的な濃度には、約100g/L、約105g/L、約110g/L、約115g/L、約120g/L、約125g/L、約130g/L、約135g/L、約140g/L、約145g/L、または約150g/Lが含まれるがこれらに限定されない。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。有利には、本発明は、結晶化前の初期濃度として約100~約150g/Lのはるかに低い乳酸塩濃度を利用することができ、それによってコストを削減し、有効性を高めることができることを開示する。乳酸塩濃縮のプロセスは、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約90℃の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される。
【0052】
その後、清澄化または濃縮分散体またはブロスを、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約90℃の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して混合することによる、シードであるL-乳酸マグネシウム結晶の形成が実行される。典型的に、分散体またはブロスは、ミキサまたはホモジナイザを使用して、指定された範囲内の各値を含む、毎分約50~約300回転(RPM)の範囲の速度で混合される。代表的な混合速度には、約50RPM、約75RPM、約100RPM、約125RPM、約150RPM、約175RPM、約200RPM、約225RPM、約250RPM、約275RPM、または約300RPMが含まれるがこれらに限定されない。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。ある特定の実施形態によれば、混合は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、またはそれ以上の間、実行される。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。本明細書に開示されているプロセスが、結晶化プロセスを容易にするために外因性L-乳酸マグネシウムのシードの添加をさらに含む可能性があることが考えられる。
【0053】
シードであるL-乳酸マグネシウム結晶の形成に続いて、懸濁液からの約70%~約90%の水の除去は、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約90℃の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される。典型的には、少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、または約90%の水が、この段階で除去される。
【0054】
これらのステップの全体を通じて、温度は、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、または90℃である。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。真空の適用は、約80mbar、約85mbar、約90mbar、約95mbar、約100mbar、約105mbar、約110mbar、約115mbar、約120mbar、約125mbar、約130mbar、約135mbar、約140mbar、約145mbar、約150mbar、約155mbar、約160mbar、約165mbar、約170mbar、約175mbar、約180mbar、約185mbar、約190mbar、約195mbar、約200mbar、約205mbar、約210mbar、約215mbar、約220mbar、約225mbar、約230mbar、約235mbar、約240mbar、約245mbar、約250mbar、約255mbar、約260mbar、約265mbar、約270mbar、約275mbar、約280mbar、約285mbar、約290mbar、約295mbar、約300mbar、約305mbar、約310mbar、約315mbar、約320mbar、約325mbar、約330mbar、約335mbar、約340mbar、約345mbar、または約350mbarの圧力まで、例えばロータリーエバポレータを使用して、当技術分野で既知であるように実行することができる。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。代わりに、これらのステップの全体を通じて、温度は、約100℃であり、真空は適用されない。
【0055】
ある特定の態様および実施形態によれば、蒸発の速度は、指定された範囲内の各値を含む、毎時約2~約5重量%の範囲内の喪失である。どのような理論または作用機序にも縛られることなく、この蒸発速度で、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、最良の濾過性、全体的な純度およびエナンチオマー純度を発揮する。
【0056】
得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、その後回収され、残留母液から分離される。本明細書で使用されるように、用語「L-乳酸マグネシウム」は、式Mg(LA)を有するヒドロキシカルボン酸(CHCH(OH)COH)のマグネシウム塩を指す。用語「L-乳酸マグネシウム」は、Mg(LA)二水和物を含むがこれらに限定されないMg(LA)の任意の溶媒和物および/または多形体を指す。本明細書で使用されるような用語「母液」は、L-乳酸マグネシウム結晶の結晶化後に残る液体を指す。いくらかの実施形態において、得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、精密濾過、ナノ濾過、遠心分離、または当技術分野で既知の別の方法から選択される方法により残りの液体から分離される。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。いくらかの実施形態において、本発明のプロセスは、得られたL-乳酸マグネシウム結晶を洗浄および/または精製することを含む、洗浄および/または精製のステップをさらに含む。洗浄は、有機溶媒または水性溶液を使用して実行することができる。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。いくらかの実施形態において、有機溶媒は、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチルおよびそれらの組み合わせのうち1つまた複数を含む。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。水性溶液は、水を含む。水を用いるL-乳酸マグネシウム結晶の洗浄が、エナンチオマー純度をさらに改善することが今回初めて開示されている。どのような理論または作用機序にも縛られることなく、D-乳酸マグネシウム結晶がL-乳酸マグネシウム結晶の表面に付着し、それによって水により洗浄され、良好なエナンチオマー純度を生じることが考えられる。したがって、本発明は、L-乳酸マグネシウム結晶のエナンチオマー純度を高める方法をさらに提供し、その方法は、水性溶液を用いて高温および減圧でL-乳酸マグネシウムの結晶化から得られたL-乳酸マグネシウム結晶を洗浄することを含む。いくらかの実施形態において、方法は、L-乳酸マグネシウム結晶中のD-乳酸マグネシウムの割合を少なくとも50%(w/w)まで低減することを含む。好ましくは、洗浄は、室温、例えば約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、または約30℃で実行される。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0057】
いくらかの実施形態において、洗浄および/または精製のステップは、研磨ステップ、抽出、精密濾過、ナノ濾過、活性炭処理、蒸留、および粉砕のうち少なくとも1つをさらに含む。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。さらなる実施形態において、本発明のプロセスは、所望の%乾燥減量に達成するために乾燥のステップをさらに含む。代表的なLOD値には、指定された範囲内の各値を含む、約10%~約20%が含まれるがこれらに限定されない。
【0058】
本発明の原理によれば、本明細書に開示されているプロセスは、回収したL-乳酸マグネシウム結晶を適切な溶媒中で可溶化し、上で詳述したように、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約90℃の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用してそれらを再結晶化することをさらに含む可能性がある。この可溶化および再結晶化は、必要とされる結晶の純度を得るために必要に応じて追加のサイクル、例えば少なくとも1回の追加のサイクル、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、または少なくとも10回の追加のサイクルで実行することができる。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。しかし、得られたL-乳酸マグネシウム結晶の改善された純度のため、本明細書に開示されるように1回のサイクルで十分であることが理解されるべきである。
【0059】
得られるL-乳酸マグネシウム結晶の回収率は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%またはそれ以上である。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。本明細書に開示されるようにプロセスにより得られたL-乳酸マグネシウム結晶は、後に続く再利用のために乳酸までさらに酸性化される可能性がある。
【0060】
いくらかの実施形態において、得られるL-乳酸マグネシウム結晶は、少なくとも約85wt%、約90%、約92%、約94wt%、約95wt%、約96wt%、約97wt%、約98wt%、または約99wt%の高純度を発揮する。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。これらの実施形態によれば、L-乳酸マグネシウム結晶は、約15wt%未満、例えば約10wt%、約9wt%、約8wt%、約7wt%、約6wt%、約5wt%、約4wt%、約3wt%、約2wt%、約1wt%またはそれより少ない不純物を含む。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0061】
さらなる実施形態において、得られるL-乳酸マグネシウム結晶は、3%未満、例えば約2.9%、約2.8%、約2.7%、約2.6%、約2.5%、約2.4%、約2.3%、約2.2%、約2.1%、約2.0%、約1.9%、約1.8%、約1.7%、約1.6%、約1.5%、約1.4%、約1.3%、約1.2%、約1.1%、約1%またはそれより少ないD-乳酸塩マグネシウムを含む。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。したがって、本発明のプロセスはまた、D-およびL-乳酸塩モノマーのエナンチオマー混合物からL-乳酸塩エナンチオマーを富化するためのエナンチオマー富化も提供する。この富化は、乳酸の再利用に特に有益である。本発明のプロセスによるL-乳酸塩エナンチオマーの富化は、初期L-乳酸塩含有量の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%またはさらにそれ以上である。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。例えば、90%のL-乳酸塩および10%のD-乳酸塩を含む初期エナンチオマー混合物にとって、10%の富化は、結果として99%のL-乳酸塩および1%のD-乳酸塩を含む乳酸マグネシウム塩となる。本発明の範囲内は、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはさらには100%の初期D-乳酸塩含有量までの、本明細書に開示されているプロセスによるD-乳酸塩含有量における低減である。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。例えば、90%のL-乳酸塩および10%のD-乳酸塩を含む初期エナンチオマー混合物にとって、D-乳酸塩含有量における50%の低減は、結果として95%のL-乳酸塩および5%のD-乳酸塩を含む乳酸マグネシウム塩となる。
【0062】
種々の実施形態において、得られるL-乳酸マグネシウム結晶は、75μm未満のメジアン粒径により特徴づけられる。他の実施形態において、得られるL-乳酸マグネシウム結晶は、75μmより大きいメジアン粒径により特徴づけられる。本明細書で使用されるような用語「粒径」は、その最も短い寸法での粒子(すなわち結晶)の長さを指す。粒子は、球状、非球状、長方形状、フレーク状、小平板状、海綿状、およびそれらの組み合わせから選択される形状を有する。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。好ましくは、得られるL-乳酸マグネシウム結晶は、指定された範囲内の各値を含む、約20~100μm、または約100~約300μmの範囲内のメジアン粒径を有する一峰性粒度分布、二峰性粒度分布または三峰性粒度分布であり得る粒度分布により特徴づけられる。本明細書で使用されるような用語「メジアン」または交換可能な「d50」は、体積ベースの累積分布割合が50%に達する粒径を指す。換言すると、メジアン粒径は、粒子の半分がこの値より小さい直径を有し、粒子の半分がこの値より大きい直径を有する値を表す。したがって、得られるL-乳酸マグネシウム結晶のメジアン粒径は、典型的に約25μm、約50μm、約75μm、約100μm、約125μm、約150μm、約175μm、約200μm、約225μm、約250μm、約275μm、または約300μmである。それぞれの可能性は、別個の実施形態を表している。
【0063】
本明細書に開示されているプロセスが、高純度L-乳酸マグネシウム結晶を生成するために主に考えられているが、同じプロセスは、同様に高純度D-乳酸マグネシウム結晶を生成するために使用される可能性がある。
【0064】
したがって、ある特定の態様および実施形態によれば、本発明は、分解有機廃棄物からの高純度D-乳酸マグネシウム結晶の形成のためのプロセスを提供し、そのプロセスは:
a.約50~約110g/Lの濃度で乳酸塩を含む分解有機廃棄物の清澄化分散体を提供するステップ;
b.場合によっては、ステップ(a)の清澄化分散体を約100~約150g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮するステップ;
c.ステップ(a)の清澄化分散体またはステップ(b)の濃縮清澄化分散体を混合して、シードであるD-乳酸マグネシウム結晶を含む懸濁液を得るステップ;
d.約70%~約90%の水をステップ(c)の懸濁液から除去し、D-乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
e.ステップ(d)で得られたD-乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含み、
ステップ(b)から(d)は、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約90℃の範囲内の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される。
【0065】
他の態様および実施形態によれば、本発明は、分解有機廃棄物由来のエナンチオマー混合物からのD-乳酸塩エナンチオマーを富化するためのプロセスを提供し、そのプロセスは:
a.D-およびL-乳酸のエナンチオマー混合物を含む乳酸塩を約50~約110g/Lの濃度で含む分解有機廃棄物の清澄化分散体を提供するステップ;
b.場合によっては、ステップ(a)の清澄化分散体を約100~約150g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮するステップ;
c.ステップ(a)の清澄化分散体またはステップ(b)の濃縮清澄化分散体を混合して、シードである乳酸マグネシウム結晶を含む懸濁液を得るステップ;
d.約70%~約90%の水をステップ(c)の懸濁液から除去し、富化されたエナンチオマー純度を有するD-乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
e.ステップ(d)で得られたD-乳酸マグネシウム結晶を回収するステップ
を含み、
ステップ(b)から(d)は、指定された範囲内の各値を含む、約50℃~約90℃の範囲内の高温で、約80~約300mbarの圧力まで真空を適用して実行される。
【0066】
本明細書で使用されるような用語「約」は、指定の値の±10%を指す。
【0067】
明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、単語「含む」および「含有する」およびその単語のバリエーション、例えば「含んでいる」および「含む」は、「含むが限定されない」を意味し、他の部分、添加物、構成成分、整数またはステップを排除することを意図しない(また排除しない)。
【0068】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないと判断される場合を除いて、複数形を含む。このため、例えば、「溶媒」への言及は、当技術分野で既知であるような溶媒の組み合わせを含む。
【0069】
本明細書で使用されるように、用語「および」または用語「または」は、文脈上明らかにそうでないと判断される場合を除いて、「および/または」を含む。
【0070】
以下の実施例は、本発明のいくらかの実施形態をより完全に例証するために表される。しかし、それらは、本発明の幅広い範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示されている原理の多くのバリエーションおよび改変を容易に考案することができる。
【0071】
実施例
実施例1.
混合食品廃棄物供給原料の発酵は、pHを5~7の範囲内に維持するために添加されたアルカリ化剤として水酸化マグネシウムを使用して実行された。乳酸塩含有発酵ブロスを遠心分離し、濾過して75g/Lの乳酸塩濃度を有する透明な上清を生成した。上清は、120g/Lの乳酸塩濃度まで、60℃および180mbarの真空で維持された。濃縮上清を200RPMで4時間、同じ条件下で撹拌して、シード結晶形成を可能にし、その後、再度濃縮して、80%の水を除去した。濃縮物を25℃まで冷却し、ワットマン3濾紙を装填したブフナー漏斗を使用して濾過した。得られた結晶をアセトンで洗浄し、80℃で乾燥させた。生成収率は70%w/wであり、アッセイは97.4%であった。上清のD/L-乳酸塩比が初期には3.7%/96.3%であったが、母液のD/L-乳酸塩比は、8.6%/91.4%であり、乳酸マグネシウム結晶において得られたD/L-乳酸塩比は、1.2%/98.8%であった。驚いたことに、水を用いる乳酸マグネシウム結晶の洗浄は、エナンチオマー純度をさらに改善させた。どのような理論または作用機序にも縛られることなく、D-乳酸塩結晶がL-乳酸塩結晶の表面に付着し、それによって水により洗浄され、より良好なエナンチオマー純度が得られると考えられる。
【0072】
実施例2.
実施例1に記載されたように生成されたL-乳酸マグネシウム結晶を、以下のサイズカットオフ:75μm、100μm、300μm、および710μmを有する一連の篩を使用して、それらの粒度分布について評価した。得られた粒度分布プロファイルを、図1および表1に表す。
【0073】
【表1】
【0074】
光学顕微鏡で結晶を観察した。図2A図2Fは、結晶が、特徴的な結晶面を有する比較的均一な形状を提示したことを示す。
【0075】
実施例3.
実施例1に記載されたように生成され、実施例2に記載されたように特徴づけられた結晶を、98g/Lの乳酸塩濃度を有する清澄化発酵ブロスが60℃で215g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮されたプロセスにより得られた結晶と比較した。濃縮物を20℃まで2℃/分の速度で冷却し、結晶を濾過して冷水(5℃)で洗浄した。本実施例に記載のプロセスにより得られた結晶の粒度分布を、図3および表2に表し、結晶の光学顕微鏡画像を図4A図4Fに示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例4.
混合食品廃棄物供給原料の発酵は、pHを5~7の範囲内に維持するために添加されたアルカリ化剤として水酸化マグネシウムを使用して実行された。乳酸塩含有発酵ブロスを遠心分離し、濾過して78g/Lの乳酸塩濃度を有する透明な上清を生成した。上清は、122g/Lの乳酸塩濃度まで、60℃および200mbarの真空で維持された。濃縮上清を200RPMで4時間、同じ条件下で撹拌して、シード結晶形成を可能にし、その後、再度濃縮して、80%の水を除去した。濃縮物を25℃まで冷却し、ワットマン3濾紙を装填したブフナー漏斗を使用して濾過した。得られた結晶をアセトンおよび水で洗浄し、80℃で乾燥させた。生成収率は74%w/wであり、アッセイは96.0%であった。上清のD/L-乳酸塩比が初期には3.1%/96.9%であったが、母液のD/L-乳酸塩比は、8.3%/91.7%であり、乳酸マグネシウム結晶において得られたD/L-乳酸塩比は、1.6%/98.4%であった。得られた乳酸マグネシウム結晶を110g/Lの最終濃度まで再度溶解し、溶液を活性炭で処理して、着色した不純物を除去し、濾過した。透明溶液を200RPMで6時間、60℃で撹拌してシード結晶形成を可能にし、その後再度濃縮して、水の80%を除去した。濃縮物を30℃まで冷却し、ワットマン3濾紙を装填したブフナー漏斗を使用して濾過した。得られた結晶をアセトンおよび水で洗浄し、70℃で乾燥した。生成収率は66%w/wであり、アッセイは98.4%であった。再結晶化溶液のD/L-乳酸塩比が初期には1.6%/98.4%であったが、母液のD/L-乳酸塩比は、5.3%/94.7%であり、乳酸マグネシウム結晶において得られたD/L-乳酸塩比は、0.8%/99.2%であった。
【0078】
実施例5.
実施例4に記載されたように生成されたL-乳酸マグネシウム結晶を、実施例2に記載されたようにそれらの粒度分布について評価した。得られた粒度分布プロファイルを、図5および表3に表す。
【0079】
【表3】
【0080】
これらの結果から明らかなように、実施例1および4に記載されたように本発明のプロセスにより得られた結晶は、実施例3に記載されたような冷却結晶化プロセスにより得られたものよりもはるかに大きかった。具体的に、本発明のプロセスにより得られた結晶の大部分が100ミクロンよりも大きかったが、冷却結晶化プロセスにより得られたものは、75ミクロンよりも小さかった。また、冷却結晶化プロセスにより得られた結晶は、特徴的な結晶面がほとんど見られず、ほとんどが凝集体の形状であった。
【0081】
実施例6.
得られた乳酸マグネシウム結晶の属性に対する蒸発速度の影響を調べるため、「低速」、「中間」、および「高速」と名付けられた3つの結晶化実験を、表4に詳述したような異なる結晶化条件で実行した。実験を、実施例1および4に記載されたような乳酸発酵実験由来の清澄化ブロスに対して実行した。
【0082】
【表4】
【0083】
4つの異なるパラメータを、以下のように評価した:a)ケーキ水分-初期濾過の後および水性洗浄前に測定した。ケーキ水分は、濾過性を示し、値が低いほど、より多くの母液が濾過で除去されたことを示唆する;b)結晶純度-HPLCを使用して測定した;c)収率-(結晶純度にしたがって補正した);ならびにd)D-乳酸塩-HPLCを使用して測定した。結果を表5に表す。
【0084】
【表5】
【0085】
中間の蒸発速度は、低速または高速の蒸発速度よりも4~5%水が少なく、濾過性の点で最良の結果を示した。この速度はまた、最も高い純度で最も低い%D-乳酸塩の結晶をもたらした。速い蒸発速度での結晶化の総収率において低下の傾向が検出された。
【0086】
実験から得られた結晶はまた、誘導結合プラズマ(ICP)元素分析により評価された。結果を表6に表す。
【0087】
【表6】
【0088】
これらの結果から、中間の蒸発速度の結晶化が結晶化の間の元素不純物の除去の点で優れていたことが示唆された。特に、塩素、カリウム、ナトリウムおよびリンの濃度と同様にカルシウムは、低速または高速の蒸発速度での結晶化と比較して中間速度の結晶化により有意に低減された。得られた結晶の粒度分布はまた、異なるカットオフを有する篩を使用して評価された。結果から、中間速度の結晶化が、100μmよりも大きい結晶が>75%である最も大きい結晶を形成したことが示唆された。結果を図6に示す。しかし、篩分けに基づく粒度分布が、クラスターを形成する結晶の傾向のために正確性が低いことに留意する。
【0089】
まとめると、これらの結果は、中間速度の結晶化が最も高い品質の乳酸マグネシウム結晶を生成することを示す。
【0090】
実施例7.
乳酸発酵ブロスを遠心分離し、濾過して7%の乳酸塩を有する透明な上清1kgを生成した。ロータリーエバポレータを使用して上清を12%の乳酸塩まで濃縮し、42wt%を除去した。得られる濃縮物を、70℃まで予熱した0.5Lの反応器に移し、300RPMで撹拌した。上清を、真空(315mbar、280mbarまたは250mbar)中、それぞれ7.65g/時または135g/時の速度で減少させた。80wt%の除去後、結晶を回収し、焼結ガラス漏斗を使用して濾過した。得られた結晶を冷水で洗浄し、70℃で乾燥させた。実施例6で例示されたように、蒸発速度が毎時2.4~4.8wt%で8~16時間の間に蒸発が生じる中間の結晶化速度が最良の結果を与えた。
【0091】
実施例8.
恒量での流加回分結晶化を実行した。乳酸発酵ブロスを遠心分離し、濾過して7%の乳酸を有する透明な上清2kgを生成した。上清の20%(0.4kg)を、85℃まで予熱した0.5Lの反応器に添加し、300RPMで撹拌した。残りの80%(1.6kg)を、60℃まで加熱して蠕動ポンプを有する反応器に接続した分離容器に添加した。上清を、真空(280mbar)中、80g/時の速度で減少させた。蒸発中、上清を同じ速度で添加した。結晶化中の内部温度を70℃で維持した。20時間後、すべての上清を添加してから、結晶を回収し、焼結ガラス漏斗を使用して濾過した。得られた結晶を冷水で洗浄し、70℃で乾燥させた。収率:57%、アッセイ:98.6%、D-乳酸塩:3.8%、元の%D-乳酸塩:7.0%。篩分けを通じてそれらの粒度分布について結晶を特徴づけた。結果を図7に示す。結晶を光学顕微鏡で観察した。図8は、50μm篩の上部に残っている結晶の画像を示す。
【0092】
実施例9.
一定濃度での流加回分結晶化を実行した。乳酸発酵ブロスを遠心分離し、濾過して70g/Lの乳酸濃度を有する透明な上清2kgを生成した。ロータリーエバポレータを使用して50%の上清(1kg)を、120g/Lの乳酸塩濃度まで濃縮した。得られる濃縮物を、80℃まで予熱した0.5Lの反応器に移し、300RPMで撹拌した。残りの50%の上清(1kg)を、60℃まで加熱してあり、蠕動ポンプを有する反応器に接続した分離容器に添加した。全濃縮係数が80%(200g)に到達するまで、濃縮物を真空(180mbar)中、100g/時の速度で減少させた。結晶化中の内部温度を58℃で維持した。その後、上清を80g/Lの速度で添加し、その間、80%蒸発比を維持した。12.5時間後、全上清を添加した。その後、反応器を、60℃、大気圧で7時間撹拌したままにした。結晶を回収し、焼結ガラス漏斗を使用して濾過した。得られた結晶を冷水で洗浄し、70℃で乾燥させた。収率:43%、アッセイ:96.3%。篩分けを通じてそれらの粒度分布について結晶を特徴づけた。結果を図9に示す。結晶を光学顕微鏡で観察した。図10は、25μm篩の上部に残っている結晶の画像を示す。
【0093】
実施例10.
乳酸マグネシウム二水和物を、水酸化ナトリウムを使用してポリ乳酸(PLA 4032D)の分解物から得、乳酸ナトリウムスラリーを得た。国際公開第2021/165964号に記載されるように、硫酸マグネシウムを添加することにより、ナトリウムイオンをマグネシウムイオンで置換した。その後、乳酸マグネシウム二水和物を、濃縮器を備えた3首丸底フラスコに添加し、DWに100℃で溶解した。未溶解の不純物はいずれも、焼結ガラス漏斗を使用して濾過された。得られる580gの透明な溶液(10.7%の乳酸)を、100℃まで予熱した0.5Lの反応器に移した。溶液を沸騰させ、20時間、水を蒸発し、全体で320gを除去した。その後、結晶を回収し、焼結ガラス漏斗を使用して濾過した。得られた結晶を70℃で乾燥させた。収率:57.5%、アッセイ:97.0%、%D-乳酸塩:0.5%、元の結晶アッセイ:86.4%;元のD-乳酸塩:1.5%。篩分けを通じてそれらの粒度分布について結晶を特徴づけた。結果を図11に示す。結晶を光学顕微鏡で観察した。図12は、200μm篩の上部に残っている結晶の画像を示す。
【0094】
実施例11.
乳酸マグネシウム二水和物を、水酸化ナトリウムを使用してポリ乳酸(食卓廃棄物)の分解物から得、乳酸ナトリウムスラリーを得た。国際公開第2021/165964号に記載されるように、硫酸マグネシウムを添加することにより、ナトリウムイオンをマグネシウムイオンで置換した。乳酸マグネシウム二水和物を、濃縮器を備えた3首丸底フラスコに添加し、DWに100℃で溶解した。未溶解の不純物はいずれも、焼結ガラス漏斗を使用して濾過された。得られる500gの透明な溶液(8.8%のLA)を、100℃まで予熱した0.5Lの反応器に移した。溶液を沸騰させ、29時間、水を蒸発し、全体で336gを除去した。その後、結晶を回収し、焼結ガラス漏斗を使用して濾過した。得られた結晶を冷水で洗浄し、70℃で乾燥させた。収率:70.7%、アッセイ:98.0%、%D-乳酸塩:0.6%、元の結晶アッセイ:82.1%;元のD-乳酸塩:3.8%。篩分けを通じてそれらの粒度分布について結晶を特徴づけた。結果を図13に示す。結晶を光学顕微鏡で観察した。図14は、300μm篩の上部に残っている結晶の画像を示す。
【0095】
比較例
30℃での蒸発結晶化を使用して、乳酸マグネシウム二水和物を乳酸発酵ブロスから得た。特に、乳酸(LA)発酵ブロスを遠心分離し、濾過して7%のLAを有する透明な上清1kgを生成した。12%の乳酸塩濃度に到達するまで、30~40mbarで真空を適用して、上清を30℃で維持した。濃縮上清を、30℃まで予熱した0.5Lの反応器に移し、300RPMで撹拌し、その後真空(35~40mbar)で再度濃縮し、水の77%を除去した。その後、結晶を回収し、焼結ガラス漏斗を使用して濾過した。元の%D-乳酸塩:6.8%、母液中の%D-乳酸塩:6.0%、収率:88%、アッセイ:84.6%。得られた結晶を冷水で洗浄し、70℃で乾燥させた。収率は54%まで低下し、アッセイは、99.8%まで増加した。したがって、本発明の実施形態による約50~100℃の範囲内の温度でのL-乳酸マグネシウムの結晶化とは逆に、30℃での結晶化は、結果として初期値と比べて母液中のD-乳酸塩含有量の増加とはならなかった。母液中のD-乳酸塩含有量はむしろ減少し、結果として元の濾過済みブロスと、D-乳酸塩のL-乳酸塩に対する同じ比を有する結晶となった。また、得られた結晶は非常に小さく、新規PLA生成にあまり適していないと考えられる(図15図16)。
【0096】
具体的な実施形態の前の説明により、他のものが、現在の知識を適用することにより、過度な実験を行うことなく、また一般的な概念から逸脱することなく、そのような具体的な実施形態を種々の用途に容易に改変および/または適合させることができ、そのため、そのような適合および改変が、開示された実施形態の意味および等価物の範囲内で理解されるべきであり、またそうであることが意図されるという、本発明の一般的な性質が十分に明らかになるであろう。本明細書で使用される表現法または用語法が、説明の目的のためであり、限定されないことを理解するべきである。種々の開示された機能を実行するための手段、物質、およびステップは、本発明から逸脱することなく、多種多様の代替形態をとることが可能である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】