(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】検知アセンブリ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240123BHJP
G01N 27/02 20060101ALI20240123BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20240123BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G01N27/416 336G
G01N27/02 D
G01N27/22 C
G01N27/327 357
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544377
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2022051379
(87)【国際公開番号】W WO2022157328
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519383544
【氏名又は名称】アナログ・ディヴァイシス・インターナショナル・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン・バーニー
(72)【発明者】
【氏名】ユーリ・ポノマレフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス・ウー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060AE20
2G060AF06
2G060AF10
2G060AG03
2G060AG10
2G060FA06
2G060GA04
2G060JA07
2G060KA10
(57)【要約】
本開示は、分析物を検知するための検知アセンブリ(100)を提供する。検知アセンブリは、分析物に応答して複数の独立した測定値からの信号を提供するように構成された複数の試験電極(102)を備える。代替的又は追加的に、複数の試験電極は、分析物の所与の濃度に応答して異なる過渡応答を生成するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物を検知するための検知アセンブリであって、前記検知アセンブリが、
複数の試験電極を備える試験電極装置であって、前記試験電極の各々が、前記分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を備え、前記分析物相互作用部分が前記分析物で飽和される飽和限界が、前記試験電極の各々に対して定義され、それぞれの前記飽和限界が、前記試験電極の間で変動する、試験電極装置と、
一組のコントロール電極領域を提供する一組のコントロール電極であって、各コントロール電極領域が、前記分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成され、各コントロール電極領域が、前記試験電極の1つに対して提供される、一組のコントロール電極と、
を備える、検知アセンブリ。
【請求項2】
前記コントロール電極領域が、相互に相対的に変動する、請求項1に記載の検知アセンブリ。
【請求項3】
前記コントロール電極領域の変動によって、サイズを増加させて前記コントロール電極領域を順序付けることが可能になり、前記飽和限界の変動によって、飽和限界を上昇させて前記試験電極の更なる順序付けが可能になり、最小のコントロール電極領域が最小の飽和限界を有する前記試験電極と対になり、最大のコントロール電極領域が最大の飽和限界を有する前記試験電極と対になるように、一連の試験電極-コントロール電極領域の対が、順序付け及び更なる順序付けに従って定義される、請求項2に記載の検知アセンブリ。
【請求項4】
前記一連の連続した試験電極-コントロール電極領域の対に対して、前記コントロール電極領域の増分変化が、前記試験電極の前記飽和限界の更なる増分変化に対応する、請求項3に記載の検知アセンブリ。
【請求項5】
各分析物相互作用部分が、それぞれの前記試験電極の表面に隣接して提供される捕捉種によって定義され、前記捕捉種が、前記分析物と選択的に相互作用するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の検知アセンブリ。
【請求項6】
前記捕捉種が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、及び核酸から選択される少なくとも1つを含み、任意選択的に、前記タンパク質が酵素である、請求項5に記載の検知アセンブリ。
【請求項7】
前記捕捉種が、アプタマーを含む、請求項5又は6に記載の検知アセンブリ。
【請求項8】
前記表面が、前記捕捉種で官能化される、請求項5~7のいずれか一項に記載の検知アセンブリ。
【請求項9】
前記捕捉種が、膜によって前記表面に隣接して保持される、請求項5~7のいずれか一項に記載の検知アセンブリ。
【請求項10】
前記試験電極の各々に対する前記捕捉種の量に関連するパラメータが、それぞれの前記試験電極の前記飽和限界を少なくとも部分的に決定する、請求項5~9のいずれか一項に記載の検知アセンブリ。
【請求項11】
前記パラメータが、前記捕捉種で官能化された前記表面の面積及び前記表面上の前記捕捉種の密度のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のような請求項10に記載の検知アセンブリ。
【請求項12】
各コントロール電極領域が、前記捕捉種で官能化された前記試験電極のうちの1つの前記表面の前記面積に対応する、請求項11に記載の検知アセンブリ。
【請求項13】
前記パラメータが、前記膜と前記表面との間に提供される溶液中の前記捕捉種の濃度を含む、請求項10に記載の検知アセンブリ。
【請求項14】
前記一組のコントロール電極の各々が、個々にアドレス指定可能な複数の部分を備え、前記一組のコントロール電極領域の各々が、前記複数の部分のうちの1つ以上にアドレス指定することによって定義される、請求項1~13のいずれか一項に記載の検知アセンブリ。
【請求項15】
前記試験電極装置が、複数のユニットを備え、各ユニットが、前記試験電極のうちの1つを定義し、かつ、複数の試験電極サブユニットを備え、各ユニット内の前記試験電極サブユニットの数が、それぞれの前記試験電極の前記飽和限界を少なくとも部分的に決定する、請求項1~14のいずれか一項に記載の検知アセンブリ。
【請求項16】
前記試験電極装置及び前記一組のコントロール電極が、前記分析物を含有するのに適した試料マトリックスを受容するように配置されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の検知アセンブリ。
【請求項17】
前記コントロール電極領域が、前記試料マトリックスとの非選択的相互作用のために構成されている、請求項16に記載の検知アセンブリ。
【請求項18】
前記コントロール電極領域が、前記試料マトリックスに含まれる非分析物と選択的に相互作用するように構成されている、請求項16に記載の検知アセンブリ。
【請求項19】
作動電極アセンブリ及び対電極を含む電気化学セルを備え、前記作動電極アセンブリが、前記試験電極装置を備え、前記試験電極装置が、前記分析物との選択的相互作用に関連付けられた電流の変化を判定するように構成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の検知アセンブリ。
【請求項20】
前記作動電極アセンブリが、前記一組のコントロール電極を備え、前記一組のコントロール電極が、前記コントロール電極領域に接触する前記試料マトリックスに関連付けられた電流の変化を判定するように構成されている、請求項16~18のいずれか一項に記載のような請求項19に記載の検知アセンブリ。
【請求項21】
前記電気化学セルが、基準電極を更に備える、請求項19又は20に記載の検知アセンブリ。
【請求項22】
前記試験電極装置を備える静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリを備える、請求項1~21のいずれか一項に記載の検知アセンブリ。
【請求項23】
前記静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリが、更なる電極装置を備え、前記試験電極装置の前記試験電極の少なくともいくつかは、前記試験電極装置の少なくともいくつかと前記更なる電極装置との間の静電容量及び/又はインピーダンスを判定することができるように前記更なる電極装置から離間されている、請求項22に記載の検知アセンブリ。
【請求項24】
前記静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリが、前記一組のコントロール電極を更に備え、前記一組のコントロール電極が、前記一組のコントロール電極と前記更なる電極装置との間の静電容量及び/又はインピーダンスを判定することができるように前記更なる電極装置から離間されている、請求項23に記載の検知アセンブリ。
【請求項25】
相互に異なる複数の分析物を検知するための検知アセンブリであって、前記検知アセンブリが、
複数の第1の試験電極を備える第1の試験電極装置であって、前記第1の試験電極の各々が、第1の分析物と選択的に相互作用するように構成された第1の分析物相互作用部分を備え、前記第1の分析物相互作用部分が前記第1の分析物で飽和される第1の飽和限界が、前記第1の試験電極の各々に対して定義され、それぞれの前記第1の飽和限界が、前記第1の試験電極の間で変動する、第1の試験電極と、
複数の第2の試験電極を備える第2の試験電極装置であって、前記第2の試験電極の各々が、前記第1の分析物とは異なる第2の分析物と選択的に相互作用するように構成された第2の分析物相互作用部分を備え、前記第2の分析物相互作用部分が前記第2の分析物で飽和される第2の飽和限界が、前記第2の試験電極の各々に対して定義され、それぞれの前記第2の飽和限界が前記第2の試験電極の間で変動する、第2の試験電極と、
一組のコントロール電極領域を提供する少なくとも一組のコントロール電極であって、各コントロール電極領域が、前記分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成され、各コントロール電極領域が、前記第1の試験電極及び/又は前記第2の試験電極のうちの1つに対して提供される、一組のコントロール電極と、
を備える、検知アセンブリ。
【請求項26】
試料マトリックス中の分析物の濃度を判定するためのシステムであって、
前記分析物を検知するための検知アセンブリであって、前記検知アセンブリが、
複数の試験電極を備える試験電極装置であって、前記試験電極の各々が、前記分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を備え、前記分析物相互作用部分が前記分析物で飽和される飽和限界が前記試験電極の各々に対して定義され、それぞれの前記飽和限界が、前記試験電極の間で変動する、試験電極装置と、
一組のコントロール電極領域を提供する一組のコントロール電極であって、各コントロール電極領域が、前記分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成され、各コントロール電極領域が、前記試験電極の1つに対して提供される、一組のコントロール電極と、を備える、検知アセンブリと、
信号処理ユニットであって、
前記複数の試験電極から受信した信号を処理するように、かつ、
前記一組のコントロール電極領域から受信した信号を処理するように構成された、信号処理ユニットと、
前記複数の試験電極から処理された前記信号及び前記一組のコントロール電極領域から処理された前記信号に基づいて、前記試料マトリックス内の前記分析物の前記濃度を判定するように構成された濃度判定ユニットと、
を備える、システム。
【請求項27】
前記濃度判定ユニットが、前記複数の試験電極から処理された前記信号と、前記一組のコントロール電極領域から処理された前記信号との間の1つ以上の差動信号に基づいて、前記濃度を判定するように構成されている、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記濃度判定ユニットが、前記試験電極及び前記一組のコントロール電極領域からの前記処理された信号の絶対変化量と、前記複数の試験電極から処理された前記信号の変化の速度と、に基づいて、前記濃度を判定するように構成されている、請求項26又は27に記載のシステム。
【請求項29】
試料マトリックス中の分析物の濃度を判定するための方法であって、
複数の試験電極から受信した信号を処理することであって、前記試験電極の各々が、前記分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を備え、前記分析物相互作用部分が前記分析物で飽和される飽和限界が、前記試験電極の各々に対して定義され、それぞれの前記飽和限界が前記試験電極の間で変動する、処理することと、
一組のコントロール電極から受信された信号を処理することであって、前記一組のコントロール電極が、一組のコントロール電極領域を提供し、各コントロール電極領域が、前記分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成されており、各コントロール電極領域が、前記試験電極のうちの1つに対して提供される、処理することと、
前記複数の試験電極から処理された前記信号と、前記一組のコントロール電極領域から処理された前記信号と、に基づいて、前記試料マトリックス内の前記分析物の前記濃度を判定することと、
を含む、方法。
【請求項30】
前記分析物の前記濃度を判定することが、前記複数の試験電極から処理された前記信号及び前記一組のコントロール電極領域から処理された前記信号から1つ以上の差動信号を判定することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記分析物の前記濃度を判定することが、前記試験電極及び前記一組のコントロール電極領域からの前記処理された信号の絶対変化量と、前記複数の試験電極から処理された前記信号の変化の速度と、に基づいている、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
コンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、1つ以上の物理コンピューティングデバイス上で実行されるとき、前記1つ以上の物理コンピューティングデバイスに請求項29~31のいずれか一項に記載の方法を実装させるように構成されている、コンピュータプログラム。
【請求項33】
コンピュータプログラムが格納された1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータプログラムが、コンピュータプログラムコードを含み、前記コンピュータプログラムが、1つ以上の物理コンピューティングデバイス上で実行されると、前記1つ以上の物理コンピューティングデバイスに請求項29~31のいずれか一項に記載の方法を実装させるように構成されている、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析物を検知するための検知アセンブリ、例えば、バイオセンサ又は化学アッセイ、相互に異なる複数の分析物を検知するための検知アセンブリ、並びに試料マトリックス内の分析物の濃度を判定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析物を検知するための様々なバイオセンサ及び化学アッセイの設計が知られている。分析物は、例えば、患者のモニタリング及び/又は診断を支援するために確立されたホルモンなどのバイオマーカーを含み得る。
【0003】
例えば、ペプチド、タンパク質、抗体、ホルモンなどの分析物の定量に用いられる標準的な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)では、目的の分析物と選択的に相互作用、例えば、結合するための認識要素が好適な支持体に固定される。例えば、抗原が支持体上に固定され、次いで、酵素に連結される抗体と複合体化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ELISAなどのバイオセンサ及びアッセイでは、広範囲の濃度にわたっての分析物の定量測定は困難であることが判明している。典型的には、感度と検出することができる濃度の範囲との間にトレードオフが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、分析物を検知するための検知アセンブリを提供する。検知アセンブリは、分析物に応答して複数の独立した測定値からの信号を提供するように構成された複数の試験電極を備える。代替的又は追加的に、複数の試験電極は、分析物の所与の濃度に応答して異なる過渡応答を生成するように構成されている。
【0006】
ある特定の実施形態では、試験電極装置を備える検知アセンブリが提供される。試験電極装置は、複数の試験電極を含む。試験電極の各々は、分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を有する。分析物相互作用部分が分析物で飽和される飽和限界が試験電極の各々に対して定義される。それぞれの飽和限界は、試験電極間で変動する。検知アセンブリは、一組のコントロール電極領域を提供する一組のコントロール電極を更に備え、各コントロール電極領域が分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成されている。各コントロール電極領域は、試験電極のうちの1つに対して提供される。
【0007】
ある特定の実施形態では、検知アセンブリは、相互に異なる複数の分析物を検知するために提供される。検知アセンブリは、第1の試験電極装置を備える。第1の試験電極装置は、複数の第1の試験電極を備える。第1の試験電極の各々は、第1の分析物と選択的に相互作用するように構成された第1の分析物相互作用部分を備える。第1の分析物相互作用部分が第1の分析物で飽和される第1の飽和限界は、第1の試験電極の各々について定義されている。それぞれの第1の飽和限界は、第1の試験電極間で変動する。検知アセンブリは、第2の試験電極装置と、第2の組のコントロール電極と、を更に備える。第2の試験電極装置は、複数の第2の試験電極を備える。第2の試験電極の各々は、第1の分析物とは異なる第2の分析物と選択的に相互作用するように構成された第2の分析物相互作用部分を備える。第2の分析物相互作用部分が第2の分析物で飽和される第2の飽和限界が、第2の試験電極の各々に対して定義されている。それぞれの第2の飽和限界は、第2の試験電極間で変動する。検知アセンブリは、一組のコントロール電極領域を提供する少なくとも一組のコントロール電極を更に備え、各コントロール電極領域は、分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成されている。各コントロール電極は、第1の試験電極のうちの1つ及び/又は第2の試験電極のうちの1つに対して提供される。
【0008】
ある特定の実施形態では、試料マトリックス中の分析物の濃度を判定するためのシステムが提供される。そのシステムは、分析物を検知するための検知アセンブリを備える。検知アセンブリは、試験電極装置を備える。試験電極装置は、複数の試験電極を備える。試験電極の各々は、分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を有する。分析物相互作用部分が分析物で飽和される飽和限界が、試験電極の各々に対して定義されている。それぞれの飽和限界は、試験電極間で変動する。検知アセンブリは、一組のコントロール電極領域を提供する一組のコントロール電極を更に備え、各コントロール電極領域は、分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成されている。各コントロール電極領域は、試験電極のうちの1つに対して提供される。本システムは、信号処理ユニットと、濃度判定ユニットと、を備える。信号処理ユニットは、複数の試験電極から受信した信号を処理し、一組のコントロール電極領域から受信した信号を処理するように構成されている。濃度判定ユニットは、複数の試験電極から処理された信号及び一組のコントロール電極領域から処理された信号に基づいて、試料マトリックス内の分析物の濃度を判定するように構成されている。
【0009】
ある特定の実施形態では、試料マトリックス中の分析物の濃度を判定するための方法が提供される。本方法は、複数の試験電極から受信した信号を処理することを含む。試験電極の各々は、分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を備える。分析物相互作用部分が分析物で飽和される飽和限界が、試験電極の各々に対して定義され、それぞれの飽和限界は試験電極間で変動する。本方法は、一組のコントロール電極から受信される信号を処理することを含む。一組のコントロール電極は、一組のコントロール電極領域を提供し、各コントロール電極領域は、分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成されている。各コントロール電極領域は、試験電極のうちの1つに対して提供される。本方法は、複数の試験電極から処理された信号及び一組のコントロール電極領域から処理された信号に基づいて、試料マトリックス中の分析物の濃度を判定することを更に含む。
【0010】
ここで、本発明は、限定することを意図しない、添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例に従った検知アセンブリの概略平面図を提供する。
【
図2】
図2は、
図1に示された検知アセンブリのセンサ信号対時間のグラフを提供する。
【
図3】
図3は、変動する面積の電極の概略平面図、及び電極上の捕捉種の固定化の概略図を提供する。
【
図4】
図4は、試料マトリックス中の分析物濃度が相対的に高い場合の、別の実施例に従った検知アセンブリを使用した分析物検知を概略的に示す。
【
図5】
図5は、
図4に示される検知アセンブリ及び試料マトリックスに対するセンサ信号対時間のグラフを提供する。
【
図6】
図6は、試料マトリックス中の分析物濃度が相対的に低い場合の、
図4に示す検知アセンブリを使用した分析物検知を概略的に示す。
【
図7】
図7は、
図6に示される検知アセンブリ及び試料マトリックスに対するセンサ信号対時間のグラフを提供する。
【
図8】
図8は、より高い分析物濃度(左のグラフ)及びより低い分析物濃度(右のグラフ)に対するセンサ信号対時間の単純化されたグラフを提供する。
【
図9】
図9は、実施例に従った一組のコントロール電極の概略平面図を提供する。
【
図11】
図11は、相互に異なる複数の分析物を検知するための例示的な検知アセンブリを概略的に示す。
【
図12】
図12は、実施例に従ったシステムのブロック図を提供する。
【
図13】
図13は、実施例に従った方法のフローチャートを示す。
【
図14】
図14は、試験電極ユニット及びサブユニットを有する例示的な試験電極装置の図を提供する。
【
図15】
図15は、別の実施例に従った試験電極ユニット及びサブユニットの概略平面図、及び試験電極サブユニット上の捕捉種の固定化の概略図を提供する。
【
図16】更なる実施例に従った検知アセンブリの図を提供する。
【
図17】更なる実施例に従った検知アセンブリの図を提供する。
【
図18】更なる実施例に従った検知アセンブリの図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
分析物結合技術を利用する様々な分析物検知技術が既知である。特定の分析物に対して特異性を有する捕捉種、換言すると、リガンドを分析物に結び付けるために使用することができる。このような結び付きは、比色分析、蛍光、又は電気化学などの様々な方法で検出することができる。
【0013】
広範囲の濃度にわたる分析物の定量測定が課題となっている。典型的には、感度と検出することができる濃度の範囲との間にトレードオフの関係が存在する。
【0014】
本開示のある特定の実施形態は、分析物を検知するための検知アセンブリを提供する。このような検知アセンブリは、複数の試験電極を有する試験電極装置を含み得、試験電極の各々は、分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を有する。
【0015】
複数の試験電極は、分析物に応答して複数の独立した測定値からの信号を提供するように構成され得る。代替的又は追加的に、複数の試験電極は、分析物の所与の濃度に応答して異なる過渡応答を生成するように構成され得る。
【0016】
例えば、平衡データ又はエンドポイントデータのみに依拠するのではなく、複数の信号入力を使用して、分析物濃度を判定し得る。
【0017】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、少なくともいくつかの実施形態において、より広いダイナミックレンジ、換言すると、検知アセンブリによって確実に検知され得る分析物の最低濃度から最高濃度までのより広い範囲を検知アセンブリに提供することをこのような複数の試験電極が支援し得る。代替的又は追加的に、いくつかの実施形態では、複数の測定信号、例えば、複数の独立した測定信号を複数の試験電極が提供することにより、分析物濃度の判定におけるより高い精度の提供を支援することができる。
【0018】
本開示のある特定の実施形態では、それぞれの飽和限界は、試験電極間で変動する。それぞれの試験電極の分析物相互作用部分が分析物で飽和される飽和限界が、試料マトリックス中の分析物濃度によって定義されている。これは、その他の点では同一の条件下で、飽和限界を定義する分析物濃度よりも高い分析物濃度と接触しても、それぞれの試験電極の信号がそれ以上変化しないことによって示され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、飽和限界は、それぞれの試験電極の分析物へ結び付く能力と見なされ得る。飽和限界は、換言すると、分析物相互作用部分の利用可能な全ての部位が分析物と相互作用、例えば、結合するときに到達し得る。
【0020】
本明細書で使用される「分析物濃度」又は「分析物の濃度」という用語は、特定の実施形態では、分析物の活性を指し得る。分析物の活性により、試料マトリックス中の分析物の有効濃度の測定値が提供され得る。活性は、例えば、試料マトリックス中の分析物-分析物間の相互作用を考慮するのに役立ち、分析物濃度が高いほど関連性が高くなり得る。それにもかかわらず、上記の特定された「濃度」という用語が、便宜上本明細書で使用される。
【0021】
より高い飽和限界を有する試験電極を含む試験電極装置により、検知アセンブリの上限濃度が拡張され得る。更に、信号の変化の速度は分析物濃度にも依存し得る。所与の分析物濃度に対する異なる過渡応答は、より高い飽和限界試験電極と比較して、より低い飽和限界試験電極から観察され得る。
【0022】
少なくともいくつかのバイオセンサ/アッセイ構成では、いわゆる「フック効果」が、飽和限界を超える分析物濃度で観察されることに留意されたい。測定又は観察された濃度は、実際には、このような高い分析物濃度レジームで減少し始め得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、より高い飽和限界を有する試験電極を検知アセンブリに含めることで、このようなフック効果が観察される高分析物濃度レジームのより高い分析物濃度への移行を支援し得る。
【0024】
分析物は、例えば、分子種、金属イオン、ウイルス、及び微生物から選択され得る。サイトカイン又はホルモンなどのバイオマーカーは、患者のモニタリング及び診断検査の文脈で関連性を有するため、特に言及される。分析物は、例えば、エイコサノイド、ステロイド、アミノ酸、アミン、ペプチド、又はタンパク質から選択されるホルモンであり得る。
【0025】
非限定的な実施例において、分析物相互作用部分は、それぞれの試験電極の表面に隣接して提供される捕捉種によって定義される。このような実施例では、分析物と選択的に相互作用するように捕捉種が構成されている。
【0026】
この目的のために、検知アセンブリによって検知されることが意図されている分析物に従って、任意の好適な捕捉種が選択され得る。例えば、特定の抗原に対して特異性を有する抗体を捕捉種が含み得る。このような実施例において、分析物が抗原の形態を取ることができる。
【0027】
より一般的には、いくつかの実施形態では、捕捉種は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、及び核酸から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0028】
タンパク質は酵素、例えば、分析物に対して特異性を有する酵素であり得る。他の非限定的な実施例では、タンパク質は抗体である。後者の場合、分析物は、抗体が選択的に結び付く抗原であり得る。
【0029】
捕捉種は、例えば、抗原を含むか、又は抗原によって定義され得る。この場合、分析物は、抗原捕捉種によって選択的に結合される抗体などの種であり得る。抗原は、例えば、タンパク質、ペプチド、多糖類又は糖鎖などの炭水化物であり得るか、又はそれを含み得る。
【0030】
一実施形態において、捕捉種はアプタマーを含む。アプタマーは、分析物に結び付くように構成されたオリゴヌクレオチド又はペプチドとして定義され得る。このようなアプタマーは、例えば、小分子、例えば、アミノ酸又はアミン、タンパク質、金属イオン、及び微生物などの様々な分析物の種類と相互作用、例えば、結合するように構成され得る。
【0031】
いくつかの非限定的な実施例では、アプタマーは電気活性部分、例えば、酸化還元活性部分で官能化されており、分析物と選択的に相互作用、例えば、結合する際のアプタマーの立体構造の変化が、それぞれの試験電極の表面に対する電気活性部分の近接性に変化を引き起こすように構成されている。
【0032】
特に、試験電極が分析物との選択的相互作用に関連付けられた電流の変化を判定するように構成されている実施例では、それぞれの試験電極の表面に対する電気活性部分のこのような近接の変化が、判定された電流変化を引き起こすか、又は少なくともそれに寄与し得る。したがって、このような電気活性部分で官能化されているアプタマーは、分析物の電流測定検知を支援することができる。
【0033】
アプタマーが分析物と相互作用、例えば、結合して生じる近接性の変化は、例えば、アプタマーが分析物と相互作用していないときよりも電気活性部分がそれぞれの試験電極の表面により近接する結果となり得る。このような実施例では、分析物とアプタマーとの間の相互作用に応じて、それぞれの試験電極内の電流の増加に寄与するように、電気活性部分とそれぞれの試験電極との間の電子移動が速くなり得る。
【0034】
代替的な非限定的な実施例では、アプタマーが、分析物と相互作用、例えば、結合することから生じる近接性の変化は、アプタマーが、分析物と相互作用していないときよりも、電気活性部分が、それぞれの試験電極の表面からより遠くに移動する結果となり得る。
【0035】
このような実施例では、アプタマーは、電気活性部分、例えば、酸化還元活性部分が試験電極表面に近接するか、又はそれと接触するように、分析物の不在下で立体構造的に構成され、それによってベースライン信号を提供すると見なされ得る。
【0036】
このような場合、分析物とアプタマーとの間の相互作用に応じて、それぞれの試験電極の電流の減少が観察され得る。したがって、分析物の濃度が高いほど、電流の減少が大きい。これの具体的な非限定的な実施例は、
図4~
図8を参照して以下に説明される。
【0037】
この目的のために、任意の好適な電気活性部分が、メチレンブルーなどのアプタマーに含まれ得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、各試験電極表面が捕捉種で官能化される。このような官能化は、捕捉種を表面に共有結合又は非共有結合で固定することなどによって、任意の好適な方法で達成することができる。
【0039】
例えば、チオール末端アプタマーなどのチオール末端捕捉種は、貴金属、例えば、金の電極の表面に固定化、例えば、グラフト化され得る。
【0040】
ある特定の実施形態において、試験電極の各々についての捕捉種の量に関するパラメータは、それぞれの試験電極の飽和限界を決定する。したがって、例えば、各試験電極上に固定された、異なる量の捕捉種が提供される。
【0041】
例えば、試験電極表面が捕捉種で官能化されるとき、パラメータは、捕捉種で官能化される表面の領域を含み得る。
【0042】
捕捉種で官能化された表面の面積のこのような変動は、任意の好適な方法で達成され得る。非限定的な実施例において、試験電極の導電性領域は、試験電極装置において変動する。このようにして、試験電極の飽和限界は、(少なくとも)捕捉種で官能化された導電性領域の変動に起因して変動する。
【0043】
このような実施例では、捕捉種で官能化された表面の面積は、それぞれの試験電極の導電性領域に対応し得る。
【0044】
異なる領域を有する試験電極は、例えば、アレイ内に配置され得、例えば、試験電極は、領域を増加する順にアレイ内に配置され得る。このようなアレイは、例えば、分析物滴定プラットフォームと見なされ得る。
【0045】
例えば、検知アセンブリの所望のダイナミックレンジに従って、試験電極の飽和限界の任意の好適な変動が考慮され得る。例えば、試験電極は、例えば、濃度の対数でスケーリングされた範囲にわたって分析物濃度検知を可能にするように構成され得る。
【0046】
非限定的な実施例では、捕捉種での導電性領域の各々の官能化は、試験電極の各々について均一であり得る。これにより、試験電極を官能化するための同一プロトコル、例えば、同一試薬滴下サイズ、試薬、洗浄などを使用して、試験電極装置の試験電極の各々に対して使用することが可能になり得る。したがって、それは、試験電極の変動する飽和限界を決定する異なるサイズの導電性領域であり得る。
【0047】
相対的に高い分析物濃度は、より小さい面積の試験電極を飽和させ得るが、より大きい面積の試験電極は飽和しない場合がある。信号の変化の速度は、前述のように、濃度にも依存し得る。したがって、生成されたデータ、例えば、より小さい領域からより大きい領域の電極への信号変化、及び信号の変化の速度は、分析物を定量化するために使用され得る。
【0048】
捕捉種がアプタマーを含み、そのアプタマーが分析物と相互作用、例えば、結合することによって生じる近接性変化によって、アプタマーの電気活性部分がそれぞれの試験電極の表面から離れて移動する実施例では、分析物がアプタマーと相互作用しないときに試験電極に電流が発生し得る。
【0049】
試験電極の面積が大きいほど、より多くの捕捉分子がその表面に固定化される場合があり、分析物がアプタマーと相互作用していないバージン状態の試験電極の開始電流が大きくなる。
【0050】
他の非限定的な実施例では、捕捉種で官能化された表面の面積は、それぞれの試験電極の導電性領域内にあり得、したがって、導電性領域に対応しない場合がある。このような実施例では、分析物相互作用部分は、境界で終了し得る。その境界は、好適な技術、例えば、原子力顕微鏡を使用して識別することができる。次いで、このように識別された境界によって区切られた分析物相互作用部分の面積を判定することができる。
【0051】
捕捉種で官能化された表面の面積を含むパラメータに対して代替的又は追加的に、パラメータは、試験電極表面上の捕捉種の密度を含み得る。表面上の捕捉種のより高い密度は、それぞれの試験電極のより大きい飽和限界を提供するのに役立ち得る。
【0052】
試験電極表面上の捕捉種の密度を変動させることは、捕捉種、例えば、アプタマー、表面を官能化するために使用される溶液の濃度を変動させることなどによって、任意の好適な方法で実施され得る。より濃縮された溶液は、それぞれの試験電極の表面上の捕捉種のより高い密度、例えば、パッキング密度を提供し得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、捕捉種は、膜によって表面に隣接して保持され得る。膜は、分析物がそれを通過することを可能にし、それによって、分析物が試験電極表面と膜との間に配置された捕捉種によって捕捉され得る。これの非限定的な実施例は、
図10を参照して以下に説明される。
【0054】
捕捉種がそれぞれの試験電極表面とこのような膜との間に配置されているこのような非限定的な実施例では、パラメータは、膜と表面との間に提供される溶液中の捕捉種の濃度を含み得る。したがって、試験電極の各々について捕捉種の濃度を変動させることによって、試験電極の飽和限界が変動され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、試験電極装置は、複数のユニットを備え、各ユニットが試験電極のうちの1つを定義し、いくつかの試験電極サブユニットを備える。このような実施形態では、各ユニット内の試験電極サブユニットの数は、少なくとも部分的に、それぞれの試験電極の飽和限界を決定する。
【0056】
試験電極サブユニットの各々についての捕捉種の量に関する試験電極サブユニットパラメータは、それぞれの試験電極の飽和限界の決定に更に寄与し得ることに留意されたい。したがって、試験電極の各々についての捕捉種の量に関するパラメータに関して上に提供されたより一般的な説明は、試験電極サブユニットに適用可能である。試験電極サブユニットパラメータは、例えば、捕捉種で官能化されたそれぞれの試験電極サブユニットの表面の領域、及びそれぞれの試験電極サブユニットの表面上の捕捉種の密度のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0057】
試験電極サブユニットのうちの少なくともいくつか、及びいくつかの実施例ではその各々が、相互に同一面積を有し得る。これにより、例えば、これらの試験電極サブユニットの各々に対して同一の試薬滴下サイズ、試薬、洗浄などを使用することが可能になり得る。それにもかかわらず、飽和限界は、各ユニットに含まれる試験電極サブユニットの数が異なるため、ユニット間で(少なくとも)変動し得る。このような試験電極装置の非限定的な実施例は、
図14及び
図15を参照して以下に説明される。
【0058】
いくつかの非限定的な実施例では、各ユニット、及び場合によっては、ユニット内の1つ以上の試験電極サブユニットは、個々にアドレス指定可能であり得る。これは、試験電極装置に対する構成可能性を向上させるのに役立ち得る。
【0059】
より一般的には、試験電極は、貴金属、例えば、金若しくは白金、又は窒化チタンなどの、検知アセンブリでの使用に好適な任意の導電性材料を含み得るか、又はそれから形成され得る。
【0060】
より一般的には、本開示の実施形態のうちの少なくともいくつかの重要事項は、例えば、捕捉種で官能化された異なる領域を有することによって、異なる飽和限界を有する複数の部位が、より広い範囲の濃度を判定することを可能にし得ることである。
【0061】
本開示の少なくともいくつかの実施形態では、検知アセンブリは、一組のコントロール電極領域を提供する一組のコントロール電極を更に備え、各コントロール電極領域が分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成されている。このような実施形態では、各コントロール電極領域は、試験電極のうちの1つに対して提供される。
【0062】
例えば、コントロール電極領域のいずれも、分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を含み得る。このようにして、コントロール電極領域の各々によって、分析物とは独立しており、かつ、特に、分析物の濃度とは独立しているコントロール測定を行うことが可能になり得る。
【0063】
一組のコントロール電極は、アレイの形態などの任意の好適な様式で配置され得る。試験電極もアレイで配置されている実施例では、試験電極アレイ及びコントロール電極アレイは、例えば、相互に平行に延在し得る。
【0064】
ある特定の実施形態では、コントロール電極領域は、相互に相対的に変動する。コントロール電極領域のこのような変動が、一組のコントロール電極が試験電極の各々に対してコントロール装置を提供することを支援し得る。
【0065】
より一般的には、試験電極装置及び一組のコントロール電極が、試料マトリックスを受容するように配置される。試料マトリックス、例えば、血液、尿、汗、涙などは、分析物を(潜在的に)含有し得る。
【0066】
いくつかの非限定的な実施例では、試験電極装置及び一組のコントロール電極は、共通の基板、例えば、シリコンウェハなどの共通の半導体基板に装着される。これの一例は、
図1を参照して以下で説明される。
【0067】
代替的な実施例では、試験電極装置は、例えば、第1の半導体基板などの第1の基板上に装着され、一組のコントロール電極は、例えば、(第2の)シリコンウェハなどの第2の半導体基板である、第2の基板上に装着される。
【0068】
試験電極装置及び一組のコントロール電極は、例えば、好適な容器又は流体工学システム、例えば、マイクロ流体工学システム内に配置され得る。試料マトリックスは、容器又は流体工学システムに受容され、したがって、試料マトリックスは、試験電極装置及び一組のコントロール電極と接触され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、コントロール電極領域は、試料マトリックスとの非選択的相互作用のために構成されている。このような実施形態では、一組のコントロール電極が、陰性コントロール測定値を提供するものと見なされ得る。このような陰性コントロール測定値は、例えば、試料マトリックスとコントロール電極領域との非選択的相互作用、例えば、非特異的結合と関連付けられた1つ以上の信号を判定し得る。
【0070】
非限定的な実施例において、コントロール電極領域は、分析物と相互作用しないように構成されたコントロールアプタマーで官能化される。例えば、このようなコントロールアプタマーは、電気活性部分、例えば、酸化還元活性部分を含み得る。
【0071】
例えば、コントロールアプタマーの電気活性部分は、それぞれのコントロール電極領域の表面の近位にあり得、コントロールアプタマーが分析物と相互作用しないため、コントロール電極領域に関連付けられた信号、例えば、電流信号は、分析物の存在下で一定、又は少なくとも実質的に一定のままであり得る。したがって、この非限定的な実施例における各コントロール電極領域は、分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成され得る。この文脈における「実質的に一定」という用語は、試料マトリックスがコントロール電極領域に接触することから生じる相対的に小さい信号変化を考慮するものである。
【0072】
このようなコントロールアプタマー官能化コントロール電極領域の挙動、例えば、電流測定挙動は、例えば、上述のアプタマー官能化試験電極の挙動とは対照的である。分析物とアプタマーとの相互作用によって、電気活性部分がそれぞれの試験電極の表面に向かって移動させられる実施例では、電流が分析物の存在下で増加し得る。アプタマーとの分析物の相互作用によって、電気活性部分がそれぞれの試験電極の表面から離れるように移動させられる代替的な実施例では、電流が分析物の存在下で減少し得る。本明細書では、
図4~
図8を参照して、試験電極及びコントロール電極領域の異なる電流測定挙動を例示的により詳細に説明する。
【0073】
任意の好適な電気活性部分が、メチレンブルーなどのコントロールアプタマーに含まれ得ることに留意されたい。
【0074】
ある特定の実施形態では、コントロール電極領域は、試料マトリックスに含まれる非分析物種と選択的に相互作用するように構成されている。このような実施形態では、一組のコントロール電極は、陽性コントロール測定値を提供するものと見なされ得る。このような陽性コントロール測定値は、例えば、試料マトリックスが血液を含む又は血液である場合のヘモグロビン、サンプルマトリックスが尿を含む又は尿である場合の尿素など、試料マトリックス中の共通/ユビキタス種、例えば、分子との相互作用に基づき得る。
【0075】
より一般的には、コントロール電極領域の変動により、サイズを増加させてコントロール電極領域の順序付けが可能となり得、飽和限界の変動により、飽和限界を増加させて試験電極の更なる順序付けが可能になり得る。
【0076】
したがって、最小のコントロール電極領域が最小の飽和限界を有する試験電極と対になり、最大のコントロール電極領域が最大の飽和限界を有する試験電極と対になるように、一連の試験電極-コントロール電極領域の対が、順序付け及び更なる順序付けに従って定義され得る。
【0077】
このような一連の試験電極-コントロール電極領域対は、任意の好適な様式で配置され得る。例えば、一連が、例えば、共通半導体基板などの共通基板の表面上で直線的に延在し得る。
【0078】
実施形態において、一連の連続する試験電極-コントロール電極領域対に対して、コントロール電極領域の増分変化は、試験電極の飽和限界の更なる増分変化に対応する。試験電極の飽和限界の変動に対応するコントロール電極領域の変動は、例えば、試験電極の飽和限界の変動と同じであるか、又は比例しているため、各試験電極-コントロール電極対の試験電極信号とコントロール電極信号の間で行われる有意な比較を支援し得る。
【0079】
このようにして、試験電極の分析物相互作用部分及び分析物の選択的相互作用から生じる信号への寄与が、単に試料マトリックスに関連付けられ得るこのような信号への寄与と適切に区別され得る。
【0080】
実施形態において、各コントロール電極領域は、捕捉種で官能化された試験電極のうちの1つの表面の面積に対応する。
【0081】
捕捉種で官能化された試験電極の面積が変動する非限定的な実施例では、コントロール電極領域、例えば、試験電極のうちの1つの捕捉種で官能化された面積と同一であり得る。
【0082】
特定の非限定的な実施例では、検知アセンブリは、一連、例えば、一組の試験‐コントロール電極領域対を含み、試験電極が、捕捉種、例えば、アプタマーで官能化された様々な領域を有する。各対に対して、コントロール電極領域は、例えば、試験電極の捕捉種で官能化された領域と同一であり得る。
【0083】
この領域は、例えば、10μm~100μmなどの、1μm~500μmの範囲に及ぶ直径を有し得る。
【0084】
領域は生成された絶対信号を判定し得る。これは、試料マトリックス中の単一の分析物濃度が、例えば、より小さい面積の試験電極‐コントロール電極領域対からより大きい面積の試験電極‐コントロール電極領域対への信号の絶対変化量、及び信号の変化の速度の、複数の信号入力を生成することができ、これを逆重畳積分して、特定の濃度の分析物を得ることができることを意味し得る。
【0085】
より一般的には、一組のコントロール電極は、貴金属、例えば、金若しくは白金、又は窒化チタンなどの任意の好適な導電性材料を含むか、又はそれから形成され得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、一組のコントロール電極は、それぞれ個々にアドレス指定可能である複数の部分、例えば、導電性部分を含む。このような実施形態では、一組のコントロール電極領域は、複数の部分のうちの1つ以上をアドレス指定することによって各々定義され得る。
【0087】
したがって、例えば、好適なスイッチ装置を介して、それらの部分の1つ又はある特定の組み合わせにアドレス指定する/作動させることにより、各コントロール電極領域の選択が可能になり得る。コントロール電極領域は、前述のように、試験電極のうちの1つの飽和限界に従って選択され得る。
【0088】
複数の部分は、
図9に示される非限定的な実施例のように、同心円状、楕円状、又は弓形部分の形態などの任意の好適な様式で、及び/又は複数の交叉部分として配置され得る。このような配置は、例えば、一組のコントロール電極が配置されている基板上の空間の節約を支援し得る。
【0089】
分析物検知アセンブリは、例えば、電気化学検知、原理などの任意の好適な検知と互換性があり得る。いくつかの実施形態では、作動電極アセンブリと、対電極と、を含む電気化学セルを分析物検知アセンブリが備える。このような実施形態では、作動電極アセンブリは、試験電極装置を含み得る。
【0090】
したがって、試験電極装置は、分析物との当該選択的相互作用に関連する電流の変化を判定するように構成され得る。このような電流測定分析物の検知は、上述した非限定的な実施例のいくつかの文脈において言及されている。
【0091】
作動電極アセンブリはまた、一組のコントロール電極も備え得る。したがって、一組のコントロール電極は、コントロール電極領域に接触する試料マトリックスに関連付けられた電流の変化を判定するように構成され得る。
【0092】
対電極は、例えば、試験電極装置及び一組のコントロール電極など、作動電極アセンブリに対する正極又は負極として作用し得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、基準電極を更に備える。基準電極は、既知の酸化還元電位を有する既知の化学反応の部位を構成し得る。飽和カロメル、銀/塩化銀、又は銅/硫酸銅基準電極などの任意の好適な基準電極が用いられ得る。
【0094】
基準電極の固定された酸化還元電位は、作動電極アセンブリの酸化還元電位に対して基準点を提供し得る。電気化学セル内で生成された電位は、作動電極アセンブリから導き出され、電流は、基準電極の固定電位に対して設定された作動電極アセンブリの電位を介して測定され得る。例えば、分析物と試験電極の分析物相互作用部分との相互作用及び/又は試料マトリックスとコントロール電極領域との相互作用から生じる信号/信号変化は、この電位差から電気化学セルの外部回路内に生成され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、検知電極アセンブリは、例えば、上記の電気化学セルの代替として、又はそれに加えて、静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリを備え得る。したがって、本開示の原理は、例えば、容量性及び/又はインピーダンス検知アレイの形態で実装され得る。
【0096】
このような静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリは、更なる電極装置を含み、試験電極装置の試験電極のうちの少なくともいくつかが、試験電極のうちの当該少なくともいくつかと更なる電極装置との間の静電容量及び/又はインピーダンスの判定を可能にするように、更なる電極装置から離間され得る。
【0097】
更なる電極装置は、任意の好適な形態を取ることができる。いくつかの非限定的な実施例では、更なる電極装置自体は、静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリの空間的に分離された「プレート」の各々が分析物相互作用部分を含むように、試験電極のうちの1つ以上を含む。これの実施例は、
図16~
図18を参照して以下に説明される。他の非限定的な実施例では、更なる電極装置は、このような分析物相互作用部分を含まず、例えば、非官能化電極によって定義され得る。
【0098】
静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリは、一組のコントロール電極を更に備え、一組のコントロール電極と更なる電極装置との間の静電容量及び/又はインピーダンスの判定を可能にするように、一組のコントロール電極が更なる電極装置から離間され得る。
【0099】
ある特定の実施形態では、試料マトリックス中の分析物の濃度を判定するためのシステムは、本明細書に記載の実施形態及び実施例のいずれかによる検知アセンブリと、複数の試験電極から受信した信号を処理し、一組のコントロール電極領域から受信した信号を処理するように構成された信号処理ユニットと、を備える。そのシステムは、複数の試験電極から処理された信号と、一組のコントロール電極領域から処理された信号と、に基づいて、試料マトリックス内の分析物の濃度を判定するように構成された濃度判定ユニットを更に含む。
【0100】
少なくともいくつかの実施形態では、システムの濃度判定ユニットは、複数の試験電極から処理された信号と、一組のコントロール電極領域から処理された信号と、の間の1つ以上の差動信号に基づいて、分析物の濃度を判定するように構成されている。
【0101】
ある特定の実施形態では、濃度判定ユニットは、(少なくとも)試験電極-コントロール電極対における信号の絶対変化量と、信号の変化の速度と、に基づいて濃度を判定するように構成され得る。
【0102】
信号処理ユニット及び濃度判定ユニットは、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、任意の好適な方法で実装され得る。ユニットの一方又は双方は、例えば、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされた1つ以上のマイクロプロセッサを用いて、必要な機能を実行し得る。本開示の様々な実施形態で用いられ得るプロセッサ構成要素の実施例は、限定されるものではないが、従来のマイクロプロセッサと、特定用途向け集積回路(ASIC)と、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)と、を含む。
【0103】
様々な実装では、信号処理ユニット及び濃度判定ユニットの一方又は双方は、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROMなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの1つ以上の非一時的記憶媒体に関連付けられ得る。非一時的記憶媒体は、1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要な機能を実行する1つ以上のプログラムで符号化され得る。様々な記憶媒体は、プロセッサ若しくはコントローラ内に固定され得るか、又はその記憶媒体に格納された1つ以上のプログラムが信号処理ユニット及び/若しくは濃度判定ユニットにロードされ得るように、搬送可能であり得る。
【0104】
いくつかの非限定的な実施例では、本システムは、濃度判定ユニットによって判定された分析物濃度を通信するためのディスプレイなどのユーザインターフェースを含む。
【0105】
代替的又は追加的に、本システムは、濃度判定ユニットによって判定された分析物濃度を、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン、リモートサーバなどの外部デバイスに送信するように構成された、無線送信機などの通信インターフェースデバイスを含み得る。
【0106】
ある特定の実施形態では、検知アセンブリは、相互に異なる複数の分析物を検知するように構成されている。このような実施形態では、検知アセンブリは、第1の試験電極装置を備える。第1の試験電極装置は、複数の第1の試験電極を備える。第1の試験電極の各々は、第1の分析物と選択的に相互作用するように構成された第1の分析物相互作用部分を備える。第1の分析物相互作用部分が第1の分析物で飽和される第1の飽和限界が、第1の試験電極の各々について定義されている。それぞれの第1の飽和限界は、第1の試験電極間で変動する。
【0107】
このような実施形態では、検知アセンブリは、第2の試験電極装置を更に備える。第2の試験電極装置は、複数の第2の試験電極を備える。第2の試験電極の各々は、第1の分析物とは異なる第2の分析物と選択的に相互作用するように構成された第2の分析物相互作用部分を備える。第2の分析物相互作用部分が第2の分析物で飽和される第2の飽和限界が第2の試験電極の各々に対して定義されている。それぞれの第2の飽和限界が、第2の試験電極間で変動する。
【0108】
検知アセンブリは、一組のコントロール電極領域を提供する少なくとも一組のコントロール電極を更に備え、各コントロール電極領域が、分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成されている。各コントロール電極領域は、第1の試験電極のうちの1つ及び/又は第2の試験電極のうちの1つに対して提供される。
【0109】
非限定的な実施例では、少なくとも一組のコントロール電極が、一組の第1のコントロール電極と、一組の第2のコントロール電極と、を備える。このような実施例では、第1の組のコントロール電極が、一組の第1のコントロール電極領域を提供し、各第1のコントロール電極領域が、第1の試験電極のうちの1つに対して提供され、第2の組のコントロール電極が、第2の組のコントロール電極領域を提供し、各第2のコントロール電極領域が、第2の試験電極のうちの1つに対して提供される。
【0110】
検知アセンブリは、相互に異なる2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上などの複数の分析物を検知するように構成され得る。この目的のために、検知アセンブリは、第2の、第3の、第4の、第5の、第6の、又は第nの試験電極装置、及び第2の、第3の、第4の、第5の、第6の、又は第nの組のコントロール電極を備え得る。
【0111】
非限定的な実施例では、第1の試験電極、第2の試験電極などの試験電極及び第1のコントロール電極、第2のコントロール電極などの組のコントロール電極が、例えば、単一の半導体基板上などの単一の基板上に提供され得る。例えば、第1の試験電極、第2の試験電極などの試験電極及び第1のコントロール電極、第2のコントロール電極などの組のコントロール電極が、共通のスライド、チップ、又はストリップ上に提供され得る。この実施例は、
図11を参照して、本明細書において以下で説明される。
【0112】
実施形態において、複数の分析物の各々は、分子種、金属イオン、ウイルス、及び微生物から独立して選択される。
【0113】
非限定的な実施例では、複数の分析物のうちの1つ以上は、患者のモニタリング及び診断検査の文脈で関連性があるため、サイトカイン又はホルモンなどのバイオマーカーである。
【0114】
複数の分析物のうちの1つ以上、例えば、各々は、例えば、エイコサノイド、ステロイド、アミノ酸、アミン、ペプチド、又はタンパク質から選択されるホルモンであり得る。
【0115】
非限定的な実施例では、第1の分析物、第2の分析物などの分析物は、エストラジオール(E-2)、黄体形成ホルモン(LH)、プロゲステロン、及び卵胞刺激ホルモン(FSH)のうちの2つ以上などのホルモンであり得る。
【0116】
異なる分析物を検知するように構成されている以外に、第1の試験電極装置及び第2の試験電極は、試験電極装置に関連して上述した通りであり得る。同様に、第1及び第2の組のコントロール電極は、一組のコントロール電極に関して上述した通りであり得る。
【0117】
図1は、実施例に従った検知アセンブリ100の概略平面図を提供する。検知アセンブリ100は、複数の、この場合は2つの、試験電極102と、対応する数の、この場合は2つの、コントロール電極領域104と、を備える。
【0118】
図1に示す非限定的な実施例では、試験電極102及びコントロール電極領域104は、例えば、半導体リソグラフィ技術を用いて形成された共通基板106、例えば、シリコン基板106上に設けられる。
【0119】
図1に示される検知アセンブリ100は、一連の、例えば、一組の試験電極-コントロール電極領域対108A、108Bを備え、試験電極102が、例えば、分析物と相互作用、例えば、結合するように構成された捕捉種で官能化された、変動する領域を有する。この場合、捕捉種は、アプタマーを含む。各対108A、108Bに対して、この非限定的な実施例では、コントロール電極領域104は、試験電極102の捕捉種で官能化された領域と同一である。
【0120】
図1に示すように、コントロール電極領域104は、番号1及び3が付与されており、試験電極102は、番号2及び4が付与されている。
図2は、様々な分析物濃度を有する試料マトリックスを検知するときの、
図1に示す検知アセンブリ100のセンサ信号対時間のグラフを提供する。
【0121】
この非限定的な実施例では、電気活性部分は、各コントロール電極領域104の表面を官能化するコントロールアプタマー(
図1には見えない)に含まれる。電気活性部分、例えば、メチレンブルーは、それぞれのコントロール電極領域の表面の近位に配置される。
【0122】
分析物を含む試料マトリックスを、
図2のポイント110において導入させる。分析物は、コントロール電極領域104のいずれとも相互作用、例えば、結合しないために、図示されるように、番号1及び3のコントロール電極領域に対する信号は、分析物の添加時には実質的に変化しない。それにもかかわらず、番号3のコントロール電極領域は番号1のコントロール電極領域よりもコントロールアプタマーで官能化される領域が広いため、番号3のコントロール電極領域の絶対信号が大きくなる。
【0123】
図2は、3つの試料マトリックスのプロットを提供し、各々が他の試料マトリックスとは異なる分析物濃度を有する。矢印112によって示されるように、それぞれの試料マトリックス中の分析物の濃度が増加するにつれて、番号4の試験電極に対する信号が低下する。これは、アプタマーが、前述のように、分析物とアプタマーとの相互作用によって、それぞれの試験電極102の表面から離れて移動される電気活性部分を備えるためである。プロット114A、114B、及び114Cに示されるように、信号が試料マトリックス中の分析物濃度の増加とともに変化し、より多くの表面アプタマーが分析物に結び付いている。
【0124】
また、矢印116で示されるように、それぞれの試料マトリックス中の分析物の濃度が上昇するにつれて、番号2の試験電極に対する信号も低下する。プロット118Aの試料マトリックスは、プロット114Aの試料マトリックスと同一である。同様に、プロット118B及び118Cに対する試料マトリックスは、プロット114B及び114Cに対する試料マトリックスとそれぞれ同一である。
【0125】
プロット118Aは、分析物濃度が、利用可能なアプタマーの一部のみが分析物に結び付くようなものであることを指す。プロット118B及び118Cは、プロット118Cに対する試料マトリックスがより高い分析物濃度を有するにもかかわらず、全体の信号変化が同一であることから、番号2の試験電極が分析物で飽和していることを指す。
【0126】
図2の丸で円形範囲120及び122から、所与の分析物濃度に対する異なる過渡応答が、番号4のより高い飽和限界試験電極と比較して番号2のより低い飽和限界試験電極から観察され得ることが明らかである。特に、円形範囲122を参照すると、信号の全体的な変化はプロット118B及び118Cに対して同一であるが、プロット118Bにおける信号の変化の速度は、プロット118Cにおける信号の変化の速度とは明らかに異なると思われる。変化の速度は、分析物の濃度がより高いプロット118Cにおいて顕著に速い。
【0127】
したがって、試料マトリックス中の単一の分析物濃度は、複数の信号入力、すなわち、より小さい領域からより大きい領域への試験電極-コントロール電極領域対108A、108Bの電流の絶対変化量、及び電流の変化の異なる速度を生成することができる。このような複数の信号入力は、分析物の特定の濃度を得るために逆重畳積分され得る。この手法は、単一の信号入力から導き出される濃度と比較して、濃度判定の精度を向上させ得る。
【0128】
より一般的には、例えば、電流信号は、信号変化の速度の判定を可能にするために、時間ドメイン内で監視され得る。
【0129】
信号変化の速度、及び信号の絶対値、及びいくつかの実施例では、更なる信号入力が分析物濃度を判定するために使用され得る。
【0130】
図3は、上部ペインに、アレイ試験電極102A、102B、102Cの概略平面図を提供する。各試験電極102A、102B、102Cの各々の導電性領域は、図示されるように、他とは異なる。これにより、各試験電極を官能化させるために同一のプロトコルを使用することが可能になり得る。この点において、
図3の下部ペインは、試験電極装置において、試験電極102A、102B、102Cの各々に対して使用されている同一の試薬滴下サイズ124を示す。同様に、試験電極102A、102B、102Cの各々に対して同一の試薬、洗浄液などを使用し得る。これによって、変動する飽和限界を有する試験電極102A、102B、102Cを実現する便利な方法が提供され得る。
【0131】
例えば、電極領域が設けられた基板の表面と平行な平面上の各滴の最大直径に対応する滴下サイズ124は、例えば、100μmなど、50μm~150μmなどの10μm~150μmとし得る。電極領域は、例えば、10μm~100μmなどの1μm~100μmの範囲の直径を有し得る。
【0132】
捕捉種の固定化には、同一のサイズ、例えば、100μmの滴下を利用し得るが、捕捉/官能化領域は、この実施例では、電極の導電性領域に基づいている。
【0133】
コントロール電極領域104が、例えば、コントロールアプタマーで表面官能化される実施例において、異なるサイズのコントロール電極領域104が、同一の試薬滴下サイズ、試薬、洗浄などを使用して、同様の方法で実現され得ることに留意されたい。
【0134】
図4は、別の実施例による、検知アセンブリ100を使用した分析物検知を概略的に示す。検知アセンブリ100は、複数の、この場合は4つの、試験電極102と、対応する数の、この場合は4つの、コントロール電極領域104と、を備える。
【0135】
より一般的には、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又はそれ以上などの任意の数の試験電極102(及びコントロール電極領域104)が、例えば、検知アセンブリ100のための所望のダイナミックレンジに従って、企図され得ることに留意されたい。
【0136】
図4に示される検知アセンブリ100は、一連の、例えば、一組の、試験電極-コントロール電極領域対108A、108B、108C、108Dを備え、試験電極102は、分析物126と相互作用、例えば、結合するように構成された捕捉種で官能化された変動領域を有する。この場合、捕捉種はアプタマー128を含む。この非限定的な実施例における各対108A、108B、108C、108Dに対して、コントロール電極領域104は、試験電極102の捕捉種で官能化された領域と同一である。
【0137】
この非限定的な実施例では、各コントロール電極領域104の表面を官能化するコントロールアプタマー132に電気活性部分130が含まれる。電気活性部分130、例えば、メチレンブルーは、それぞれのコントロール電極領域104の表面に近接して配置される。
【0138】
図4に概略的に示されるように、アプタマー128が分析物126と相互作用、例えば、結合することによって引き起こされる立体構造変化の結果、アプタマー128に含まれる電気活性部分134、例えば、メチレンブルーは、アプタマー128が分析物126と相互作用しないときよりもそれぞれの試験電極102の表面から遠くに移動する。
図5に示すように、分析物126とアプタマー128との相互作用に伴うそれぞれの試験電極102の電流の減少が、それに対応して観察される。
【0139】
図4に示すように、コントロール電極領域104は、1、3、5、及び7の番号が付与され、試験電極102は、2、4、6、及び8の番号が付与されている。
図5は、試料マトリックス中の分析物126の濃度が相対的に高い、
図4に示される検知アセンブリ及び試料マトリックスに対するセンサ信号対時間のグラフを提供する。
【0140】
この相対的に高い分析物126の濃度の結果、
図4で番号2、4、及び6の試験電極が飽和する。
図5に示すように、この特定の実施例では、番号2、4、及び6の各試験電極の電流が減少し、約ゼロ電流に近づく。この試験電極の表面上の全てのアプタマー128が分析物126と相互作用しているわけではないため、番号8の試験電極は飽和していない。したがって、この場合、番号8の試験電極内の電流は、約ゼロ電流まで減少しない。
【0141】
コントロールアプタマー132が分析物126に結び付かないため、コントロール電極領域104内の電流に実質的に変化はないが、それでも、試料マトリックスとの相互作用に関連する相対的に小さい信号が、コントロール電極領域104の各々に対して観察される。
図5に示すように、
図1及び
図2に関して前述した通りに、コントロール電極領域が増加するにつれて絶対信号が増加し、その結果、最大の絶対信号が番号7のコントロール電極領域で観察される。
【0142】
図6は、
図4に示される検知アセンブリ100を使用した分析物検知を概略的に示すが、試料マトリックス中の分析物126濃度が相対的に低い場合を示す。
図7は、
図6に示される検知アセンブリ100及び試料マトリックスに対するセンサ信号対時間のグラフを提供する。この場合、
図4及び
図5の相対的に高濃度のシナリオと比較して、試験電極102のうち、より少数の電極で電流が約ゼロ電流に近づく。特に、
図6の番号2及び4が付与された試験電極のみが、電流が約ゼロになるように飽和する。番号6及び8が付与された試験電極は、このより低い分析物126濃度で飽和しておらず、したがって、番号2及び4の試験電極のように電流が約ゼロ電流まで減少しない。
【0143】
図8は、
図4及び
図5のより高い分析物126の濃度シナリオ(左のグラフ)、及び
図6及び
図7のより低い分析対象物126の濃度シナリオ(右のグラフ)に対するセンサ信号対時間の単純化されたグラフを提供する。
【0144】
図8から明らかなように、分析物濃度が高いと、信号の変化が加速し、かつ、電流が約ゼロ電流に減少する試験電極102の数が増加する効果がある。逆に、分析物濃度が低いと、信号の変化が減速し、かつ、電流が約ゼロ電流に減少する試験電極102が少なくなる。
【0145】
言い換えれば、電流の絶対的な減少は、分析物濃度及び試験電極102の飽和限界、例えば、試験電極102の官能化領域/固定化された捕捉種の数に依存し得る。電流の変化速度は、濃度にも依存し得る。
【0146】
したがって、これらの実施例は、より小さい面積から大きい面積への試験電極-コントロール電極領域対108A、108B内の電流の絶対変化量、及び、例えば、前述のように、このような複数の信号入力の逆重畳積分によって、分析物126の濃度の判定を可能にする電流の異なる変化速度を指摘している。
【0147】
一組のコントロール電極は、
図1、
図4及び
図6にコントロール電極領域104のアレイ、特に線形アレイとして示されているが、これは限定を意図するものではない。
図9は、代替的な実施例による、一組のコントロール電極の概略平面図を提供する。この場合の一組のコントロール電極は、各々が個々にアドレス指定可能である複数の部分、例えば、導電部分138A、138B、138Cを備える。一組のコントロール電極領域104の各々は、複数の部分138A、138B、138Cのうちの1つ以上をアドレス指定することによって定義され得る。
【0148】
したがって、例えば、好適なスイッチ装置(
図9には見えない)を介して、それらの部分のうちの1つ、又はある特定の組み合わせにアドレス指定する/作動させることにより、各コントロール電極領域の選択を可能にし得る。例えば、最大のコントロール電極領域は、3つの部分138A、138B、138C全てを選択することによって提供され、最小のコントロール電極面積は、最小の部分138Aのみを選択することによって選択され得る。より一般的には、前述のように、コントロール電極領域は試験電極102のうちの1つの飽和限界に従って選択され得る。
【0149】
図9に示すように、部分138A、138B、138Cは、同心円又は楕円部分138A、138B、138Cの形態で配置され得る。他の非限定的な実施例では、部分138A、138B、138Cは、部分138A、138B、138Cの交差装置を形成するような他の構成で配置され得る。このような配置は、例えば、一組のコントロール電極が配置されている基板上の空間を節約するのに役立ち得る。
【0150】
図9は3つの部分138A、138B、138Cを示しているが、これは限定を意図するものではない。2つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又はそれ以上などの任意の数の部分138A、138B、138Cが考慮されている。部分138A、138B、138Cの数及びサイズは、試験電極102の、例えば、官能化領域の数及び飽和限界に従って選択され得る。
【0151】
図10は、捕捉種が膜140によって試験電極102の表面に隣接して保持される実施例に従った試験電極102を概略的に示す。膜140は、分析物がそこを通過することを可能とし、それによって試験電極102の表面と膜140との間に配置された捕捉種によって捕捉され得る。
【0152】
このような非限定的な実施例では、それぞれの試験電極102の捕捉種の量に関連するパラメータが、膜140と試験電極102の表面との間に設けられた溶液142中の捕捉種の濃度を含み得る。試験電極102の各々に対して、溶液142中の捕捉種の濃度を変動させることによって、試験電極102の飽和限界を変動させることができる。
【0153】
特定の非限定的な実施例では、捕捉種はグルコースオキシダーゼを含むか、又はグルコースオキシダーゼによって定義され、分析物はグルコースである。グルコース、及びこの場合の酸素は、膜140を通過、例えば、拡散し、膜140と試験電極102の間に閉じ込められた溶液に到達すると、グルコースはグルコースオキシダーゼによって酸化されるとともに、酸素は過酸化水素に還元され得る。過酸化水素は、グルコース濃度が対応して判定され得るように、試験電極102の表面における酸素及び水素カチオンへの還元を介して電気化学的に定量され得る。
【0154】
図11は、相互に異なる複数の分析物を検知するための例示的な検知アセンブリ100を概略的に示す。
図11に示されるように、検知アセンブリ100は、第1の分析物試験部分152と、第2の分析物試験部分154と、第3の分析物試験部分156と、第4の分析物試験部分158と、を備える。
【0155】
図11に示される非限定的な実施例では、第1~第4の分析物試験部分152~158は、共通の基板、例えば、共通のスライド/チップ/ストリップ上に好都合に設けられる。他の実施例では、分析物試験部分152~158は、別々の基板上に設けられ得る。
【0156】
第1の分析物試験部分152は、複数の第1の試験電極102を備える第1の試験電極装置を備える。第1の試験電極102の各々は、第1の分析物、この特定の場合には黄体形成ホルモン(LH)と選択的に相互作用するように構成された第1の分析物相互作用部分を備える。第1の分析物相互作用部分が第1の分析物で飽和される第1の飽和限界は、第1の試験電極102の各々について定義されている。それぞれの第1の飽和限界は、第1の試験電極102の間で変動する。
【0157】
第1の分析物試験部分152は、第1の組のコントロール電極領域104を提供する第1の組のコントロール電極を更に備え、各第1のコントロール電極領域104が、分析物の各々とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成されている。各コントロール電極領域104は、第1の試験電極102のうちの1つに対して提供される。
【0158】
第2の分析物試験部分154は、変動する飽和限界を有し、かつ第2の分析物、この特定の場合はエストラジオール(E-2)と選択的に相互作用するように構成された複数の第2の試験電極202を備える第2の試験電極装置を備える。また、第2の分析物試験部分154は、第2の組のコントロール電極領域204を提供する第2の組のコントロール電極も備え、各第2のコントロール電極領域204が、第2の試験電極202のうちの1つに対して提供される。
【0159】
第3の分析物試験部分156は、変動する飽和限界を有し、かつ第3の分析物、この特定の場合は、プロゲステロンと選択的に相互作用するように構成された複数の第3の試験電極302を備える第3の試験電極装置を備える。また、第3の分析物試験部分156は、第3の組のコントロール電極領域304を提供する第3の組のコントロール電極も備え、各第3のコントロール電極領域304が、第3の試験電極302の1つに対して提供される。
【0160】
第4の分析物試験部分158は、変動する飽和限界を有し、かつ第4の分析物、この特定の場合、卵胞刺激ホルモン(FSH)と選択的に相互作用するように構成された複数の第4の試験電極402を備える第4の試験電極装置を備える。また、第4の分析物試験部分158は、第4の組のコントロール電極領域404を提供する第4の組のコントロール電極も備え、各第4のコントロール電極領域404が、第4の試験電極402の1つに対して提供される。
【0161】
表1は、
図11に示される非限定的な実施例に従った検知アセンブリ100によって検知することができる第1~第4の分析物の濃度範囲を提供する。
【0162】
【0163】
第1から第4の分析物の各々について生成された複数の信号は、例えば、試験電極-コントロール電極対における信号の絶対変化量、及び信号の変化の速度を考慮した好適なアルゴリズムを使用して、前述したように、その濃度を判定するために使用することができる。
【0164】
このような検知アセンブリ100によって、例えば、複数の分析物の濃度を定期的に、例えば、毎日測定することが可能になり得る。次いで、このような濃度は、追跡され得、かつ、いくつかの実施例では、アップロードされ得、アップロードされた濃度に基づいて個々のユーザプロファイルが生成され得る。このようにして、検知アセンブリ100を介して得られた濃度は、例えば、用量及び/又は用量の投与のタイミングに関する臨床的決定のために使用され得る。
【0165】
図12は、実施例に従ったシステム500のブロック図を提供する。システム500は、試料マトリックス中の分析物の濃度を判定するためのものである。システム500は、分析物を検知するための検知アセンブリ100を備える。検知アセンブリ100は、試験電極装置502を備える。試験電極装置502は、複数の試験電極102を備える。試験電極102の各々は、分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を有する。その分析物相互作用部分が分析物で飽和される飽和限界が試験電極102の各々に対して定義されている。それぞれの飽和限界は、試験電極102間で変動する。検知アセンブリ100は、一組のコントロール電極領域104を提供する一組のコントロール電極504を更に備え、各コントロール電極領域104が、試験電極102のうちの1つに対して提供される。
【0166】
したがって、システム500に含まれる検知アセンブリ100は、本明細書で説明される実施例及び実施形態のいずれかに従い得る。
【0167】
また、システム500は、信号処理ユニット506と、濃度判定ユニット508と、を備える。信号処理ユニット506は、複数の試験電極102から受信した信号を処理し、一組のコントロール電極領域104から受信した信号を処理するように構成されている。濃度判定ユニット508は、複数の試験電極102から処理された信号と、一組のコントロール電極領域104から処理された信号と、に基づいて、試料マトリックス中の分析物の濃度を判定するように構成されている。
【0168】
少なくともいくつかの実施形態では、濃度判定ユニット508は、複数の試験電極102から処理された信号からの1つ以上の差動信号と、一組のコントロール電極領域104から処理された信号と、に基づいて濃度を判定するように構成されている。
【0169】
非限定的な実施例では、濃度判定ユニット508は、試験電極-コントロール電極対108A、108B、108C、108Dにおける信号の絶対変化量及び信号の変化の速度に基づいて濃度を判定するように構成されている。
【0170】
図12には見えないが、濃度判定ユニット508によって判定された分析物濃度を通信するためのディスプレイなどのユーザインターフェースが、システム500に含まれ得る。代替的又は追加的に、システム500は、濃度判定ユニット508によって判定された分析物濃度を、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン、リモートサーバなどの外部デバイスに送信するように構成された、無線送信機などの送信機(
図12でも見えない)を含み得る。
【0171】
図13は、実施例に従った方法600のフローチャートを示す。方法600は、試料マトリックス中の分析物の濃度を判定するためのものである。本方法は、ブロック602において、複数の試験電極から受信された信号を処理することを含む。試験電極の各々は、分析物と選択的に相互作用するように構成された分析物相互作用部分を備える。分析物相互作用部分が分析物で飽和される飽和限界が、試験電極の各々に対して定義され、それぞれの飽和限界が試験電極間で変動する。
【0172】
また、方法600は、ブロック604において、一組のコントロール電極から受信された信号を処理することも含む。一組のコントロール電極は、一組のコントロール電極領域を提供し、各コントロール電極領域が分析物とは独立しているコントロール測定値を提供するように構成され、各コントロール電極領域が試験電極のうちの1つに対して提供される。
【0173】
ブロック606において、試料マトリックス中の分析物の濃度は、複数の試験電極から処理された信号と、一組のコントロール電極から処理された信号と、に基づいて判定される。
【0174】
いくつかの実施形態では、分析物の濃度を判定すること(606)は、複数の試験電極から処理された信号及び一組のコントロール電極から処理された信号からの1つ以上の差動信号を判定することを含む。
【0175】
非限定的な実施例では、判定606は、試験電極コントロール電極対における信号の絶対変化量及び信号の変化の速度に基づく。
【0176】
方法600は、例えば、本明細書に記載の実施形態及び実施例のいずれかに従って、検知アセンブリ100及び/又はシステム500を採用し得る。
【0177】
特に、方法600は、本開示のシステム500の信号処理ユニット506及び濃度判定ユニット508を使用して実装され得る。
【0178】
ある特定の実施形態では、コンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムは、そのプログラムがコンピュータ上で実行されると、本明細書で説明される実施例及び実施形態のいずれかによる方法600を実装するように適合されている。このようなコンピュータは、例えば、本開示のシステム500の信号処理ユニット506及び濃度判定ユニット508に含まれ得るか、又は定義し得る。コンピュータプログラムは、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体に格納され得る。コンピュータプログラムは、1つ以上のプロセッサなどの1つ以上の物理コンピューティングデバイスによって実行される、1つ以上のプロセッサに本明細書に記載の1つ以上の方法を実装させ、実行させ、かつ/又は行わせることができる命令を含み得る。
【0179】
より一般的には、検知アセンブリ100に関して本明細書で説明される実施例及び実施形態は、システム500、方法600及び/又はコンピュータプログラムに適用可能であり得る。同様に、システム500、方法600、及び/又はコンピュータプログラムに関して本明細書に記載の実施例及び実施形態は、検知アセンブリ100に適用可能であり得る。
【0180】
図14は、非限定的な実施例に従った試験電極装置502の図を提供する。描写される試験電極装置502は、複数のユニット702A、702B、702Cを備え、各ユニット702A、702B、702Cは、試験電極のうちの1つを定義し、複数の試験電極サブユニット703を備える。各ユニット702A、702B、702Cにおける試験電極サブユニット703の数は、少なくとも部分的に、それぞれの試験電極の飽和限界を判定する。
【0181】
それぞれのユニット702B、702Cが2つ以上の試験電極サブユニット703を含む場合、
図14に示されるように、それぞれのユニット702B、702Cの試験電極サブユニット703は、相互に接続され得る。
【0182】
図14に示す実施例のユニット702A、702B、702Cは、共通基板106上に設けられている。それにもかかわらず、他の実施例では、ユニット702A、702B、702Cのうちの少なくともいくつかが、他のユニット702A、702B、702Cとは異なる基板上に設けられ得ることに留意されたい。
【0183】
図14に示す実施例では、試験電極サブユニット703は、各ユニット702A、702B、702Cに対して線形に配置されている。例えば、試薬が試験電極サブユニット703のうちの2つ以上に同時に滴下されたときに、この空間配置によって試験電極サブユニット703は容易に官能化され得る。それにもかかわらず、例えば、基板106上の空間を節約するために、試験電極サブユニット703の代替的な空間配置が考えられる。
【0184】
図14に示すように、ユニット702Aは単一の試験電極サブユニット703を有し、ユニット702Bは2つの試験電極サブユニット703を有し、ユニット702Cは4つの試験電極サブユニット703を有する。より一般的には、各ユニット702A、702B、702Cを作製するために使用される異なる機能化プロトコル/試薬を必ずしも必要とせずにユニット702A、702B、702Cの飽和限界の変動を可能にするために、ユニット702A、702B、702Cごとに任意の数の試験電極サブユニット703が企図され得る。
【0185】
図14に示す非限定的な実施例では、各試験電極サブユニット703は、相互に同一の面積を有する。これにより、例えば、これらの試験電極サブユニット703の各々に対して同一の試薬滴下サイズ、試薬、洗浄などを使用することが可能になり得る。
【0186】
この点において、
図15は、試験電極サブユニット703の各々に対して同一の試薬滴下サイズ124が使用される例示的な官能化処理を概略的に示す。これは、変動する飽和限界を有するユニット702A、702B、702Cを実現する好都合な方法を提供し得る。
【0187】
滴下サイズ124、例えば、基板106の表面と平行な平面内の各滴下の最大直径は、例えば、100μmなど、50μm~150μmなどの10μm~150μmであり得る。試験電極サブユニット703の各々の面積は、例えば、10μm~100μmなどの1μm~100μmの範囲であり得る。
【0188】
より一般的には、ユニット702A、702B、702Cのうちの少なくともいくつかは、それぞれのユニット702A、702B、702Cが、変動する過渡応答を有する単一のより大きい試験電極として機能し得るように、重複する分析物枯渇拡散/物質輸送領域を有するように設計されたサブユニット703を有し得る。
【0189】
代替的又は追加的に、ユニット702A、702B、702Cのうちの少なくともいくつかは、重複する分析物枯渇拡散/物質輸送領域を有しないように、それぞれのユニット702A、702B、702C内で相互に物理的に離間しているサブユニット703を有し得る。このようなユニット702A、702B、702Cの各々は、相対的に一定の過渡応答を有するより大きい領域電極として作用し得る。
【0190】
図16~
図18は、各々が静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリを含む例示的な検知アセンブリ100の図を概略的に示す。
【0191】
このような静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリは、更なる電極装置802Aを備え得、試験電極装置の試験電極802Bのうちの少なくともいくつかが、試験電極802Bのうちの当該少なくともいくつかと、更なる電極装置802Aとの間の静電容量及び/又はインピーダンスを判定することができるように、更なる電極装置から離間され得る。試験電極は、前述のように、変動する飽和限界を有する。
【0192】
更なる電極装置802A及び試験電極802Bのうちの当該少なくともいくつかは、
図16に概略的に示される交差配置を使用するなど、任意の好適な方法で相互に相対的に配置され得る。
【0193】
図16に示されるように、更なる電極装置802Aは、第1の接点803Aから延在し得、試験電極802Bのうちの当該少なくともいくつかは、第2の接点803Bから延在し得る。この非限定的な実施例では、第1及び第2の接点803A、803B、及び電極装置802A、802Bは、共通半導体基板などの共通基板106上に配置されている。
【0194】
図16に示される非限定的な実施例では、更なる電極装置802A自体が、試験電極のうちの1つ以上を備え、その結果、空間的に分離された静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリの交差させた「プレート」の各々が、例えば、上記の捕捉種で官能化された表面の形態で、分析物相互作用部分を備える。
【0195】
静電容量及び/又はインピーダンス判定アセンブリの一部の断面を示す
図17に示される実施例では、電極装置802A、802Bの双方が基板106の表面から盛り上がっている。したがって、基板106の表面の上に電界が設けられ、電極装置802A、802Bの間に設けられた隙間の上方に電界線805が延在する。
【0196】
図18に示す代替的な非限定的な実施例では、電極装置802A、802Bの間にトレンチ807が設けられている。この実施例では、電極装置802A、802B、例えば、相互嵌合電極装置802A、802Bは、図示されるように、基板106内に設定され得る。
【0197】
装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示す一方で、詳細な説明及び具体的な実施例は、例示のみを目的とし、範囲を限定することを意図しないことを理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解され得る。図面は単なる概略図であり、縮尺通りに描画されていないことを理解されたい。また、同一の又は類似した部分を示すために、図を通して同一の参照番号が使用されることも理解されたい。
【0198】
本開示の実施形態の他の変形例は、当業者が、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、本開示を実施することによって理解し、実施することができる。特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という語は、他の要素又はステップを除外せず、「a」又は「an」という不定冠詞は、複数を除外しない。ある特定の尺度が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの尺度の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲のどの引用符号も、範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】