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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ポリAタグ付き生成物の精製
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240123BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C12N15/10 112Z
C07K1/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545355
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022051787
(87)【国際公開番号】W WO2022162018
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】2101114.3
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・ルンドバック
(72)【発明者】
【氏名】ロニー・パルムグレーン
(72)【発明者】
【氏名】オラ・リンド
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・ノルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン・チーク
(72)【発明者】
【氏名】スサナ・ブリトー・ドス・サントス
(72)【発明者】
【氏名】ペル・デンカー
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、合成的又は生物学的組成物からmRNA等のポリタグ付き生成物を精製するための方法に関する。本方法は、対流ベースのクロマトグラフィー材料を含むオリゴd(T)官能化クロマトグラフィー媒体と組成物を接触させる工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリAタグ付き生成物を前記生成物を含む組成物から回収するための方法であって、オリゴ(dT)-リガンドで官能化された対流ベースのクロマトグラフィー材料を含むクロマトグラフィー材料と組成物を接触させる工程を含み、オリゴ(dT)-リガンドが、(d)T10~50リガンド、好ましくは(d)T12~30リガンドである、方法。
【請求項2】
ポリAタグ付き生成物が、mRNA又はアミノ酸配列への翻訳のために遺伝情報をリボソームに輸送する任意のポリマー、すなわち、ペプチド若しくはタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロマトグラフィー材料上のオリゴ(dT)-リガンドの密度が10~20μmole/gである、請求項1に又は2に記載の方法。
【請求項4】
オリゴ(dT)-リガンドが、リンカー、例えば、C3~C12リンカーを介してクロマトグラフィー材料に結合している、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
オリゴ(dT)-リガンドが、チオール化又はアミノ化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
クロマトグラフィー材料が、1つ又は複数の不織布ポリマーナノファイバー、好ましくはセルロースナノファイバーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
クロマトグラフィー材料が1つ又は複数の膜又はシートの形態である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
クロマトグラフィー材料が膜又はシートの形態であり、組成物が、1つ又は複数の前記膜又はシート、及び任意選択で1つ又は複数のフリット又は他のスペーサー材料を含むホルダー又はカラムを通過する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
加熱可能な金属構造体が膜又はシートの間に設置される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
組成物が、1分以下、例えば、10秒に至るまでの間、官能化クロマトグラフィー材料と接触している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(i)官能化クロマトグラフィー材料と組成物を接触させる工程;
(ii)任意選択で、官能化クロマトグラフィー材料を低イオン濃度の液相で洗浄する工程;並びに
(iii)低/超低イオン強度の液相と官能化クロマトグラフィー媒体を接触させることによって、ポリAタグ付き生成物及び生成物関連不純物を選択的に溶出する工程
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(i)官能化クロマトグラフィー材料と組成物を含む溶液とを接触させる工程;及び
(ii)工程(i)で官能化クロマトグラフィー材料と接触した溶液を収集する工程であって、溶液がポリAタグ付き生成物を含む工程
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
定置洗浄(CIP)なしで少なくとも10回繰り返される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
オリゴd(T)-リガンドで官能化された対流ベースのクロマトグラフィー材料を含むクロマトグラフィー材料であって、ポリマーナノファイバーを含み、1つ又は複数の膜又はシートの形態であり、オリゴ(dT)-リガンドが、(d)T10~50リガンド、好ましくは(d)T12~30リガンドである、クロマトグラフィー材料。
【請求項15】
リガンドと対流ベースの材料の間にC3~C12リンカーを含む、請求項13に規定のクロマトグラフィー媒体。
【請求項16】
リンカーがC12リンカーであり、オリゴ(dT)リガンドがオリゴd(T)20リガンドである、請求項15に記載のクロマトグラフィー媒体。
【請求項17】
少なくとも2つの膜又はシートが提供され、少なくとも1つの加熱可能な金属構造体が2つの膜又はシートの間に提供される、請求項14、15又は16に記載のクロマトグラフィー媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成的又は生物学的組成物からmRNA等のポリタグ付き生成物を精製するための方法に関する。本方法は、対流ベースのクロマトグラフィー材料を含むオリゴd(T)官能化クロマトグラフィー媒体と組成物を接触させる工程を含む。
【背景技術】
【0002】
メッセンジャーRNA(mRNA)は、分子生物学のセントラルドグマにおける重要なメディエーターである。一本鎖mRNAは、遺伝子のDNA鎖のうちの1つから転写され、遺伝子のDNA鎖のうちの1つに相補的であり、そのタンパク質コード領域が、タンパク質のアミノ酸配列を特定する。タンパク質をコードする鋳型としてのその役割より前に、mRNAは、転写後にか又はDNA遺伝子鋳型からの転写と同時にかのいずれかで核で主に生じる一連のイベントを介して、処理される。これらの重大な意味を持つイベントには、5'キャップ形成、イントロンのスプライシング、3'末端のポリアデニル化(ポリA)、及び核から細胞質への折り返し輸送が含まれる。これらすべての特色は、それ自体の目的にかない、且つ全体的なmRNA安定性及び翻訳効率のモジュレーションにとって重大な意味を持つ。5'キャップ及びポリAテールは両方とも、mRNAのユニークな特色である。
【0003】
合成mRNA分野の技術進歩は合成mRNAに脚光を浴びさせ、現在、様々な疾患について、いくつかの前臨床及び臨床研究で評価されている。
【0004】
インビトロ転写(IVT)による合成mRNAの生成は、重要な成分1)DNA鋳型、2)リボヌクレオチド及び3)RNAポリメラーゼを必要とする。UTR配列及びタンパク質コード配列は、DNA鋳型によって定義される。3'ポリAテールは、DNA鋳型中に設計されていても、いなくてもよい。DNA鋳型中に含まれる場合は、ポリAテールの長さは制御可能であるが、DNA鋳型中に設計されていない場合は、ポリAポリメラーゼを用いた、IVT後のポリAテール付加を使用することができる。同時転写アプローチと転写後アプローチの両方で、いくつかの異なる5'キャップ形成ストラテジーが存在する。
【0005】
オリゴ(dT)製品は、磁性粒子又はスピンカラム等の「オープン精製システム」で一般に使用される。ハイブリダイゼーション(結合フェーズ)中に、mRNAのポリAテールは、高塩緩衝液中でオリゴ(dT)リガンドにハイブリダイズする。高伝導率によって、ポリA及びオリゴ(dT)リガンドの負に荷電した骨格の静電反発力が制限される。この後に、洗浄、及びTA対を不安定化し、溶出を可能にする低伝導率緩衝液又は水を使用した穏やかな溶出が続く。タンパク質、未反応のリボヌクレオチド、DNA、CAP類似体及びポリA部分を欠く部分的な転写産物等の望まれない夾雑物は、ハイブリダイゼーション又は洗浄フェーズ中に、固体支持体に保持されない。
【0006】
磁気製品のためオリゴ(dT)リガンドの長さは、通常14~30ヌクレオチドの範囲である。小さな粒径によって、mLあたりの大きな粒子表面積がもたらされ、粒子のサイズは、一般に1~5μmの範囲である。小規模のmRNA精製のためのプロトコールの長さは、通常1時間未満である。注目すべきことに、これらの製品は、細胞可溶化物からのmRNAプールの精製のために設計され、通常、該精製のために使用されており、IVT反応からのmRNAの精製を目的としていない。更に、既知の製品は、微量遠心管で操作するように設計されており、その小さなサイズ、したがって、低い磁性を考慮すれば、これらの製品のうちのいずれも大きな試料量の処理に対して拡張性がある可能性は極めて低い。更に、クロマトグラフィー媒体として充填されるそのような小さな粒子は、より従来型のクロマトグラフィー樹脂と比較して、流動特性が著しく損なわれているであろう。
【0007】
更に、クロマトグラフィーによるmRNA分離のために既知の吸着材料を使用する場合は、いくつかの欠点がある。
【0008】
膜及びモノリスを必要とする分離は、多孔性ビーズベースのシステムよりもはるかに速い流速で実施することができ、典型的な滞留時間は0.2~0.5分程度である。しかし、動的流動下における、モノリス及び膜の標的の10%破過での典型的な結合能は、多孔性ビーズより低い。(多孔性ビーズベースの材料と比較して)モノリス及び膜材料の劣った結合能は、より速い流速を利用することによってある程度相殺することができる。(膜)吸着クロマトグラフィーでは、ゲル浸透クロマトグラフィーと対照的に、拡散による細孔中の輸送の必要なく、流体と接触している固体の表面への流体の成分、例えば、個々の分子、付随物又は粒子の結合があり、固相の活性表面は、対流輸送によって分子が近づきやすい。充填されたクロマトグラフィーカラムと比較した膜吸着材の利点は、はるかに速い流速で実施されることへのその適合性である。
【0009】
これは、対流ベースのクロマトグラフィーとも呼ばれる。対流ベースのクロマトグラフィーマトリックスとしては、マトリックスの流入と流出の間の水圧差の適用が、マトリックスの灌流を強制的に引き起こし、マトリックス中への又はマトリックス外への物質の対流輸送(これは、高流速で非常に急速にもたらされる)を実質的に達成する任意のマトリックスが挙げられる。
【0010】
対流ベースのクロマトグラフィー及び膜吸着材は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、US20140296464A1、US20160288089A1、US2019308169A1及びUS2019234914A1に記載されている。
【0011】
治療用製品を工業規模で回収することを可能にするために、インビトロ転写(IVT)反応物からmRNAを分離することができるクロマトグラフィー材料の必要性がある。クロマトグラフィー材料はまた、多孔性ビーズベースの材料が所望の分子を有する高い結合能とモノリス/膜材料を用いて達成可能であるより速い流速とを共に有するべきである。クロマトグラフィー材料はまた、結合領域が大きなmRNAに近づきやすいように、且つ適切に高流速を達成することができるように、十分に多孔性でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US20140296464A1
【特許文献2】US20160288089A1
【特許文献3】US2019308169A1
【特許文献4】US2019234914A1
【特許文献5】WO-A-2015/052460
【特許文献6】WO-A-2015/052465
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、対流ベースのクロマトグラフィー材料をオリゴd(T)リガンドで官能化することができ、これをmRNA等のポリAタグ付き生成物を望まれない材料から分離するために使用することができることを発見した。本発明者らは、そのような材料は、10秒に至るまでの滞留時間で高いmRNA収容能力を有することを発見した。本発明で使用される材料は、ポリAタグ付き生成物に対して高い結合能を与える、最適な細孔サイズ分布を提供する。多孔性は十分に大きいので、最大結合能を得るのに拡散は関係しない。滞留時間にとって決定的なことは、オリゴdTとポリAタグ付き生成物の間の相互作用である。
【0014】
一実施形態では、本発明は、インビトロ転写(IVT)反応物からの合成mRNAの精製のための方法に関する。本方法は、本発明による官能化クロマトグラフィー材料と試料を接触させる工程を含む。
【0015】
第一の態様では、本発明は、ポリAタグ付き生成物を前記生成物を含む組成物から回収するための方法であって、オリゴ(dT)-リガンドで官能化された対流ベースのクロマトグラフィー材料を含むクロマトグラフィー材料と組成物を接触させる工程を含む方法に関する。
【0016】
オリゴ(dT)-リガンドは、好ましくは(d)T10~50リガンド、より好ましくは(d)T12~30リガンドである。
【0017】
本発明によれば、クロマトグラフィー材料上のオリゴ(dT)-リガンドの密度は10~20μmole/gである。好ましくは、オリゴ(dT)-リガンドは、C3~C12リンカー、例えば、C6又はC12リンカーを介してクロマトグラフィー材料に結合している。
【0018】
クロマトグラフィー材料は、1つ又は複数の不織布ポリマーナノファイバー、好ましくはセルロースナノファイバーを含むことができる。或いは、クロマトグラフィー材料は、3D印刷された材料を含む。さらなる例は、下記の本発明の詳細なセクションに見出すことができる。
【0019】
好ましくは、クロマトグラフィー材料は1つ又は複数の膜又はシートの形態であり、組成物は、1つ又は複数の前記膜又はシート及び任意選択で、1つ又は複数のフリット又は他のスペーサー材料を含むホルダーを通過する。
【0020】
任意選択で、加熱可能な金属構造体が膜又はシートの間に設置され、これは、デバイスが加熱される場合に、ポリAタグ付き生成物の溶出を容易にする。
【0021】
本発明によれば、組成物は、10~15秒の間、官能化クロマトグラフィー媒体と接触している。
【0022】
デバイスを使用するための方法は、以下の工程を含む:
(i)官能化クロマトグラフィー媒体と組成物を接触させる工程;
(ii)任意選択で、官能化クロマトグラフィー媒体を低イオン濃度の液相で洗浄する工程;並びに
(iii)低/超低イオン強度の液相と官能化クロマトグラフィー媒体を接触させることによって、ポリAタグ付き生成物及び生成物関連不純物を選択的に溶出する工程。
【0023】
一実施形態では、方法は以下の工程を含む:
(i)官能化クロマトグラフィー材料と組成物を含む溶液とを接触させる工程;及び
(ii)工程(i)で官能化クロマトグラフィー材料と接触した溶液を収集する工程であって、溶液がポリAタグ付き生成物を含む工程。
【0024】
方法は、定置洗浄(cleaning in place)(CIP)なしで少なくとも10回繰り返すことができる。
【0025】
第二の態様では、本発明は、オリゴd(T)-リガンドで官能化された対流ベースのクロマトグラフィー材料を含むクロマトグラフィー材料に関する。
【0026】
クロマトグラフィー材料は、例えば、ポリマーナノファイバー又は3D印刷された構造体を含む。
【0027】
クロマトグラフィー材料は、好ましくは1つ又は複数の膜又はシートの形態である。少なくとも2つの膜又はシートが提供される場合、少なくとも1つの加熱可能な金属構造体、例えば、金属メッシュが、任意選択で、2つの膜又はシートの間に提供され得る。この構造体は、ポリAタグ付き生成物の溶出中に加熱され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】オリゴd(T)リガンド(Fibro)で官能化された本発明のクロマトグラフィー材料における、様々な長さ(Length)のmRNAに対する動的結合能(DBC)を示すグラフである。
図1B】様々なmRNAの長さ並びにそれらの様々な特性及び実施パラメーターを示す表である。
図2A図1A図1Bのものと同じ材料に対する、10%動的結合能(DBC)での流速の影響を示すグラフである
図2B図2Aに示す様々な滞留時間についての結果を示す表である。
図3】2つの異なるリガンド長、(dT)30及びdT(20)それぞれについて、動的結合能及びリガンド密度を示すグラフである。
図4図3のものと同じリガンド長を使用した場合の、2つの異なるリンカー、C12及びC6の動的結合能に対する影響を示すグラフである。
図5】実施例セクションに記載されている、定置洗浄(CIP)なしの10回の連続サイクルにわたる圧力プロファイルを示すグラフである。
図6A】実施例セクションに記載されている実施1の伝導率及び吸光度の結果を示すクロマトグラムである。
図6B】実施例セクションに記載されている実施2の伝導率及び吸光度の結果を示すクロマトグラムである。
図7】実施例セクションに記載される動的結合能(DBC)を計算するための破過曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
いくつかの非限定例及び添付の図面に関連して、これから本発明をより詳細に記載する。
【0030】
本発明によるクロマトグラフィー材料は、対流ベースのクロマトグラフィー材料を含む。対流ベースのクロマトグラフィー材料は、例えば、吸着性膜であってもよく、そのような材料を通る流動は、拡散ではなく対流である。吸着性膜は、例えば、ポリマーナノファイバー膜、例えば、吸着剤として使用するために処理されている、セルロース、酢酸セルロース及びセルロースファイバー等であってもよい。吸着性膜は、代わりに、モノリシック材料又は乳化によって作られる従来の膜であってもよい。別の代替物は3D印刷された材料である。
【0031】
任意選択で、吸着性膜はポリマーナノファイバーを含む。典型的には、ポリマーナノファイバー(nanofibre)は、1つ又は複数の不織布シートの形態であり、各シートは、1つ又は複数の前記ポリマーナノファイバーを含む。1つ又は複数のポリマーナノファイバーを含む不織布シートは、前記1つ又は複数のポリマーナノファイバーのマットであり、各ファイバーは本質的にランダムに方向づけられており、すなわち、これは、1つ又は複数のファイバー(fibre or fibres)が特定のパターンを採るようには製造されていない。ポリマーナノファイバーを含む不織布シートは、典型的には、既知の方法によって提供される。不織布シートは、ある特定の状況では、単一のポリマーナノファイバーからなり得る。或いは、不織布シートは、2個以上のポリマーナノファイバー、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のポリマーナノファイバーを含むことができる。
【0032】
ポリマーナノファイバーは、エレクトロスピニングされた(electrospun)ポリマーナノファイバーであってもよい。そのようなエレクトロスピニングされたポリマーナノファイバーは当業者に周知である。ポリマーナノファイバーを生成するための代替方法、例えば、延伸(drawing)を使用することもできる。
【0033】
本発明で使用するためのポリマーナノファイバーは、典型的には、10nm~1000nmの平均径を有する。いくつかの適用については、200nm~800nmの平均径を有するポリマーナノファイバーが適している。200nm~400nmの平均径を有するポリマーナノファイバーは、ある特定の適用に適している可能性がある。
【0034】
本発明で使用するためのポリマーナノファイバーの長さは、特に制限されない。したがって、従来の方法、例えば、エレクトロスピニングによって、何百メートル又はさらには何百キロメートルもの長さのポリマーナノファイバーを生成することができる。典型的には、1つ又は複数のポリマーナノファイバーは最大で10kmまでの長さを有するが、好ましくは10m~10kmである。
【0035】
不織布シートは、典型的には、1~40g/m2、好ましくは、5~25g/m2、いくつかの状況では、1~20g/m2又は5~15g/m2の面密度を有する。
【0036】
不織布シートは、典型的には、5~120μm、好ましくは、10~100μm、いくつかの状況では、50~90μm、他の状況では、5~40μm、10~30μm又は15~25μmの厚さを有する。
【0037】
本発明の方法で使用されるナノファイバーを生成するために使用されるポリマーは、ポリマーがクロマトグラフィー適用での使用に適するという条件で、特に制限されない。したがって、典型的には、ポリマーは、クロマトグラフィー方法において、クロマトグラフィー媒体、すなわち、吸着剤として使用するのに適したポリマーである。適切なポリマーとしては、ポリアミド、例えばナイロン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリスルホン、例えばポリエーテルスルホン(PES)、ポリカプロラクトン、コラーゲン、キトサン、ポリエチレンオキシド、アガロース、酢酸アガロース、セルロース、酢酸セルロース及びこれらの組み合わせが挙げられる。ポリエーテルスルホン(PES)、セルロース及び酢酸セルロースが好ましい。いくつかの場合では、セルロース及び酢酸セルロースが好ましい。
【0038】
典型的には、官能化クロマトグラフィー材料は官能化セルロースクロマトグラフィー材料である。好ましくは、官能化クロマトグラフィー材料は、それぞれ1つ又は複数のセルロース又は酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ又は複数の不織布シートから形成される。酢酸セルロースは、例えば、エレクトロスピニングによって、ナノファイバーに容易に形成され、エレクトロスピニング後にセルロースに容易に変換され得る。
【0039】
特に好ましい実施形態では、官能化クロマトグラフィー材料は1つ又は複数のポリマーナノファイバーを含むが、代替の態様では、官能化クロマトグラフィー材料は、任意のタイプのポリマーファイバーの1つ又は複数を含むことができる。そのようなポリマーファイバーは、上記のナノファイバーと同じ特性のいずれか又はすべてを有し得る。典型的には、そのようなポリマーファイバーは、10nm~1000μm、好ましくは10nm~750μm、より好ましくは10nm~500μm、更により好ましくは10nm~400μm、更により好ましくは10nm~300μm、更により好ましくは10nm~200μm、更により好ましくは10nm~100μm、更により好ましくは10nm~75μm、更により好ましくは10nm~50μm、更により好ましくは10nm~40μm、更により好ましくは10nm~30μm、更により好ましくは10nm~20μm、更により好ましくは10nm~10μm、更により好ましくは10nm~5μm、更により好ましくは10nm~4μm、更により好ましくは10nm~3μm、更により好ましくは10nm~2μm、更により好ましくは10nm~1μm(1000nm)の平均径を有し得る。
【0040】
ナノファイバーは、(d)T10~50リガンド、好ましくは(d)T12~30等のオリゴ(dT)-リガンドで官能化される。
【0041】
ポリマーナノファイバーの複数の不織布シートの使用によって、吸着性能力がより大きい、より厚い材料を調製することが可能になる。したがって、官能化クロマトグラフィー媒体は、典型的には、1つをもう1つの上部に積み重ねた2つ以上の不織布シート(前記シートのそれぞれは、1つ又は複数のポリマーナノファイバーを含む)を提供し、同時に、シートの積み重なったものを加熱及び圧縮して、隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融着させることによって形成される。
【0042】
ポリマーナノファイバー/不織布シートを圧縮及び加熱するための好ましい処理条件は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO-A-2015/052460及びWO-A-2015/052465に見出すことができる。
【0043】
官能化クロマトグラフィー材料は、mRNAのサイズに依存する動的結合能(DBC)を有し、特定例を以下の例に示す。10%破過に対するDBCは、標準的な手段に従って、例えば、AKTA Pureシステム又は同等のFPLCシステムを使用して、決定され得る。
【0044】
10%破過に対するDBCは、典型的には、以下のアッセイ方法に従って、決定される:
1)装填材料をAKTA Pureシステム(Cytiva社)のホルダー内に含まれる官能化材料を通過させる;
2)ホルダー出口後の濃度が、UVフローセルによって決定した場合に、装填濃度の10%を超えるまで、決定された膜体積/分の流速(mV/分)下で材料を装填する;
3)システム及びホルダーデバイス中のデッドボリュームを考慮して、Unicornソフトウェア(Cytiva社)でのクロマトグラムの分析によって、10%破過においてディスク上に装填されるタンパク質の総量を決定した。
【0045】
官能化クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカートリッジ又はホルダー中に収容することができる。カートリッジは、典型的には、本発明の1つ又は複数の官能化クロマトグラフィー媒体を含む。カートリッジは、典型的には円筒形である。
【0046】
典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、典型的には円筒形ホルダーの内部に積み重ねられた又は巻かれた、本発明の1つ又は複数の官能化クロマトグラフィー媒体を含む。クロマトグラフィーカートリッジは、軸流又は半径流下で作動するように設計することができる。
【0047】
本発明の方法は、高流速で操作することができる。したがって、典型的には、本発明のクロマトグラフィーの方法では、組成物は、1分以下、好ましくは10秒に至るまでの間、官能化クロマトグラフィー材料と接触している。
【0048】
mRNA精製では、循環精製方法のために配置された、本発明で使用される官能化クロマトグラフィー材料等のカラム捕獲クロマトグラフィーシステム中に試料を導入して、標的生成物を抽出する。循環方法は、ユニット上に供給材料を装填する工程、ユニットを洗浄する工程、標的生成物を溶出する工程、及びその後に、ユニットを浄化してから、ユニットに新しい供給材料を装填する工程を含む。ユニットの浄化が必要になる前に、ユニットを数サイクル運転することができることが望ましい。
【0049】
典型的には、本発明の方法は以下の工程を含む:
(i)本明細書で定義される官能化クロマトグラフィー材料と本明細書で定義される組成物を接触させる工程;
(ii)高イオン強度で装填し、任意選択で、装填と同じ緩衝液及び/又はより低いイオン強度で官能化クロマトグラフィー材料を洗浄する工程;並びに
(iii)水等の低/超低イオン強度の液相と官能化クロマトグラフィー材料を接触させる工程によって、mRNA生成物及び生成物関連不純物を選択的に溶出する工程。
【0050】
溶出工程の後、方法は、官能化クロマトグラフィー材料を再生する工程を更に含むことができる。典型的には、これは、mRNA生成物及び/又は生成物関連不純物が溶出された官能化クロマトグラフィー材料を緩衝液と接触させる工程によって行われる。これは、そのようなクロマトグラフィー方法の再生フェーズについて知られている従来の方法に従って行うことができる。
【0051】
典型的には、本発明に従ってmRNA生成物を回収する方法は、単一の結合-溶出工程又は単一のフロースルー工程を含む。或いは、本発明による方法は、連続した1つを超える結合-溶出工程、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の結合-溶出工程を含むことができる。或いは、本発明による方法は、連続した1つを超えるフロースルー工程、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のフロースルー工程を含むことができる。或いは、本発明による方法は、連続した結合-溶出工程とフロースルー工程の組み合わせ、例えば、合計で2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の工程を含むことができる。
【実施例
【0052】
材料及び方法
本発明で生成及び提示されたデータは、対流ベースのクロマトグラフィー材料に固定化されたオリゴ(dT)30リガンド又はオリゴ(dT)20リガンドを有するプロトタイプデバイスで行った。プロトタイプAは、Fibro VS(ビニルスルホン)膜上に固定化されたアミノ化されたC6リンカーを有するオリゴ(dT)20リガンドであった。
【0053】
オリゴ-dTリガンドの合成
すべてのオリゴ-dTリガンドは、自動固相合成機(AKTA oligopilot plus 100)上の5G UnyLinkerポリスチレン支持体及びβ-シアノエチルホスホラミダイトモノマーを使用して、酸触媒脱トリチル化(3%、v/v、トルエン中のジクロロ酢酸)、カップリング(活性化剤としての5-(ベンジルメルカプト)-1H-テトラゾール(BMT)、アセトニトリル中に0.3M)、キャップ形成(キャップ形成のために、Cap A、20%、v/v、N-メチルイミダゾール/アセトニトリルとCap Bとしての等量のB1(40%、v/v、アセトニトリル中の無水酢酸)及びB2(60%、v/v、アセトニトリル中のルチジン)とをインサイチュで混合した)並びにヨウ素ベースの酸化(10%v/vの水を含むピリジン中の0.05Mヨウ素)の標準的なサイクルを使用して、合成した。ホスホラミダイトモノマーは、無水アセトニトリルに溶解して0.150Mの濃度にし、モレキュラーシーブ(1.6mmの0.3nmロッド)の存在下で使用した。未修飾のホスホラミダイトに使用されるリサイクル時間は(1.8モル当量で)3分であり、アミンスペーサーホスホラミダイトは(2.5モル当量で)5分であった。段階的カップリング効率は、>99.0%であることが分かった。オリゴリガンドの合成後、25%NH3水溶液で12~16時間55℃で樹脂を処理することによって、固体支持体からの切断及び保護基の脱保護を行った。更に、上清溶液を収集し、支持体を水及び50%EtOH水溶液で洗浄した。集めた画分をロータリーエバポレーターで蒸発させた。粗製のリガンドペレットを水に溶解し、UV-VIS分光光度計において、260nmで濃度を測定した。ランニングバッファーとしてtris及び過塩素酸ナトリウムを用いて、リガンドの純度をIEX-UPLCで分析した。
【0054】
好ましくは、固定化のためのリガンドの調製が理由で、アミノ化されたリガンドをチオール化されたリガンドの代わりに使用するが、どちらも使用することができる。チオール化されたリガンドは、二量体としてリンカーとともに提供され、これは、次いで、ファイバーと反応させる前に、還元及び脱塩工程を必要とする。アミノ化されたリガンドは、いかなる前反応も必要とすることなくファイバーと反応することができる末端アミン基とともに提供される。チオール又はアミダイトのモル当量が異なること(5~10)、リサイクル時間(10~40分)、酸化のためのヨウ素濃度(20~50mM)、酸化時間(2~4分)等、両方のリガンドの合成にわずかな違いがある。
【0055】
グリシドールビニルスルホンセルロース膜(Fibro-VS)の調製
50枚の酢酸セルロースディスクを蒸留水(4×600ml)で洗浄した。洗浄液を除去し、350mlの0.5M KOH溶液と置き換えた。撹拌しながら、ディスクをKOH溶液で10分間処理してから、100mlのグリシドールを添加した。反応媒体をディスク上で2時間激しく撹拌した。この後、上清液を除去し、ディスクを蒸留水(4×600ml)で洗浄して、きれいな中間体を得て、これを更に修飾することなく次の工程に使用した。
【0056】
その後、25枚のディスクをグリシドール工程から得て、37.5gのNa2CO3及び150mlのMeCNを含む500mlのH2Oにこれを懸濁させた。60分にわたって100mlのジビニルスルホンを滴加しながら、混合物を激しく撹拌した。次いで、反応混合物を16時間激しく撹拌した。この後、上清液をデカントし、ディスクを3回600mlのアセトン:H2O(1:1)で、及び蒸留H2O(1×600ml)で洗浄した。きれいな中間体を更に修飾することなく次の工程に使用した。
【0057】
チオール化されたオリゴdT-リガンドによるFibro VS膜の官能化
チオール化されたオリゴdT溶液を、50mLの脱塩カラムを有するAKTA pureで150mM NaClに脱塩した。25mM DTT、0.1M NaHCO3、0.01M Na2CO3を使用して、得られた溶液を1時間還元し、続いて、更に前述のように脱塩した。20mLのVivaSpinカラムMWCO 5kDaを使用して、得られた溶液を濃縮した。次いで、溶液を5.9mg/mLに希釈し、これを密閉可能な容器中のFibro VSシートに添加してから、硫酸ナトリウム(約3g)を添加した。容器を密閉し、旋回シェーカー上に16時間置いた。この後、上清を捨て、DI水(50mL)を各トレイに添加した。これを合計で5回繰り返してから、任意のさらなる工程を行った。
【0058】
アミノ化されたオリゴdT-リガンドによるFibro VS膜の官能化
アミノ化されたオリゴdT試料を150mM NaCl緩衝液(50mL)に溶解した。オリゴdT溶液(7mL)にDI水(43mL)を添加することによって、6.2mg/mLの濃度及び50mLの体積に溶液を希釈した。硫酸ナトリウム(7.1g)を添加し、pHを測定した。この溶液を密閉可能な容器中のFibro VSのT1シートに添加し、これを旋回シェーカー上に16時間置いた。この後、上清を捨て、DI水(50mL)をトレイに添加してから、旋回シェーカーに戻した。この方法を4回繰り返してから、任意のさらなる工程を行った。
【0059】
ジビニルスルホン反応基のブロッキング
オリゴdTで官能化されたFibro VS上の任意の残存ビニルスルホン基をブロックするために、撹拌しながら、二塩基性リン酸ナトリウム十二水和物(3.58g)及び二ナトリウムEDTA二水和物(37mg)を水(95mL)に溶解することによって、チオグリセロールのリン酸緩衝化溶液(2.5v/v%チオグリセロール、pH8.3)を調製した。チオグリセロール(2.5mL)を添加し、得られた溶液を、飽和NaOH溶液を使用してpH8.3に塩基性化し、100mLに希釈した。
【0060】
官能化材料のシートを密閉可能な容器に入れ、25mLの緩衝化チオグリセロール溶液中に沈めてから、旋回シェーカー上に最低でも16時間置いた。この後、チオグリセロール溶液を捨てて、DI水(50mL)をシートに添加してから、旋回シェーカーに最低でも15分間戻した。この洗浄方法を更に3回繰り返した。最後の洗浄をグリセロール:エタノール:水(50mL、20:20:60v/v%)と置き換え、1時間浸漬し、次いで、取り出し、所望のユニットに湿式オーバーモールドした。
【0061】
FibroオリゴdT20プロトタイプAの結合能分析
材料
mRNA:キャップのないFlucV01(100ntのポリAテールを含む2000nt)をインビトロ転写によって生成し、LiCl沈殿によってこれを精製して、94%以上の純度にした。mRNAをおよそ2mg/mlの濃度で水に再懸濁し、クロマトグラフィー実験で使用するまで-20度で保存する。
クロマトグラフィーカラム:FibroオリゴdT20(プロトタイプA)を1層の膜を有するPEEKデバイス中に充填し、最終的なカラム体積を0.2mlとする。
溶液:
RNaseフリー水中で調製した、NaCl 5M
EDTA 500mM、pH8.0(RNaseフリー)
Tris 1M、pH7.5(RNaseフリー)
結合緩衝液(入口A1):NaCl 300mM、Tris 10mM、EDTA 1mM pH7.5
溶出緩衝液(入口B1):RNaseフリー水
定置洗浄緩衝液(入口B2):NaOH 0.1M
【0062】
方法:
実施1
第1の実施については、RNaseフリー水でストックmRNAを希釈することによって、0.6mg/mLのFlucV01 mRNAを5ml調製し、次いで、ストック溶液を使用してmRNA試料がNaCl 300mM、Tris 10mM、EDTA 1mM pH7.5を含むように、NaCl、Tris及びEDTAの濃度を調整する。試料をSuperloopに装填し、バイパスを通して最初に注入して、UV 260nmをモニターすることによってAmax(又は100%破過)を測定する。動的結合能(DBC)を測定するために、260nmのUV、伝導率、プレカラム圧(PreColumnPressure)及び他の因子を連続的にモニターしながら、0.2mlのFibroオリゴdT20(プロトタイプA)を含むPEEKデバイスにmRNA試料を注入する。30秒の滞留時間を達成するように0.4ml/分に流速を設定した試料投入(sample application)中を除いたすべてのフェーズで、2ml/分の流速を使用した。溶出後、mRNAを含む画分をプールして、回収パーセンテージを計算した。
【0063】
以下のフェーズを使用して、mRNAを結合及び溶出させた。
- 平衡化:入口A1からの8mlの結合緩衝液
- 試料投入:Amaxの50%で、又はsuperloopの枯渇まで試料投入を中断
- 未結合物の洗浄:入口A1からの2mlの結合緩衝液
- 溶出:入口B1からの8mlのRNaseフリー水
【0064】
以下のフェーズを使用して、カラムを洗浄し、次の実験のためにそれを調製した。
- カラムの水洗浄:入口B1からの8mlのRNaseフリー水
- CIP:入口B2からの8mlのNaOH 0.1M
- 平衡化:入口A1からの8mlの結合緩衝液
【0065】
以下の式によって、DBCを計算する:
図7は、DBCを計算するための破過曲線を示す。
DBC=結合したmRNAの量(mg)/カラム体積(ml)=C×(VBT-Vdelay)/カラム体積(ml)
式中、C=供給材料中のmRNAの濃度(mg/ml)
VBT=所望の破過(例、本実験では50%)に対する体積
Vdelay=システム及びカラム空隙体積=伝導率がランニングバッファーと試料投入量の間の中点に等しい体積(注入後)。
【0066】
実施2
実施2については、RNaseフリー水でストックmRNAを希釈することによって、0.29mg/mLのFlucV01 mRNAを14ml調製し、次いで、ストック溶液を使用してmRNA試料がNaCl 300mM、Tris 10mM、EDTA 1mM pH7.5を含むように、NaCl、Tris及びEDTAの濃度を調整する。試料をSuperloopに装填し、バイパスを通して最初に注入して、UV 260nmをモニターすることによってAmax(又は100%破過)を測定する。動的結合能(DBC)を測定するために、260nmのUV、伝導率、プレカラム圧及び他の因子を連続的にモニターしながら、0.2mlのFibroオリゴdT20(バッチ番号4HC008)を含むPEEKデバイスにmRNA試料を注入する。30秒の滞留時間を達成するように0.4ml/分に流速を設定した試料投入中を除いたすべてのフェーズで、2ml/分の流速を使用した。溶出後、mRNAを含む画分をプールして、回収パーセンテージを計算した。
【0067】
以下のフェーズを使用して、mRNAを結合及び溶出させた。
- 平衡化:入口A1からの12mlの結合緩衝液
- 試料投入:Amaxの50%で、又はsuperloopの枯渇まで試料投入を中断
- 未結合物の洗浄:入口A1からの4mlの結合緩衝液
- 溶出:入口B1からの12mlのRNaseフリー水
【0068】
以下のフェーズを使用して、カラムを洗浄し、次の実験のためにそれを調製した。
- カラムの水洗浄:入口B1からの12mlのRNaseフリー水
- CIP:入口B2からの12mlのNaOH 0.1M
- 平衡化:入口A1からの12mlの結合緩衝液
【0069】
Table 1(表1)は、実施1及び実施2の実施条件の概要を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
結果
図1A図1Bは、本発明の官能化クロマトグラフィー媒体を用いて、様々な長さのmRNAを首尾よく精製することができることを示す。プロトタイプAは、Fibro VS膜上に固定化されたアミノ化されたC6リンカーを有するオリゴ(dT)20リガンドであった。図1Bの表に見られるように、mRNAの長さは、約400nt~4100ntの間であった。
【0072】
図2Aは、様々な滞留時間(RT)での動的結合能に対する流速の影響の効果を示す。グラフの左から右に、曲線は、それぞれ、以下の滞留時間を示す:7.5秒、15秒、30秒、60秒、2分、4分、8分及び20分。溶出データ、10%DBC(mg/ml)、静的結合能及び圧力を図2Bに示す。
【0073】
図3は、動的結合能及びリガンド密度に対するオリゴ(dT)リガンドの長さの効果を示す。動的結合能は、10%破過(24秒の滞留時間)まで、結合緩衝液に希釈したポリ(dA)30オリゴヌクレオチド(mRNAの代用物)を装填することによって、決定した。結合緩衝液は、10mM Tris、400mM NaCl、1mM EDTA、pH7.4から構成される。リガンド密度は、Phosphor ICP-SFMSによって決定した。
【0074】
図4は、動的結合能に対するリガンドリンカーの効果を示す。動的結合能は、図3について記載するように決定した。
【0075】
図5は、CIPなしの10回の連続サイクルにわたる一貫した圧力プロファイルを示す。これらの実施は、図3に記載されているようにmRNAの代用物としてポリ(dA)30オリゴヌクレオチドを使用して行った。
【0076】
プロトタイプの優れた流動特性は、好ましくは、より大きなデバイスで利用される。50mLのデバイスは、許容可能な能力を提供する可能性があり、0.4mLのデバイスの2500分と比較して、1Lの供給材料の短縮された装填時間は20分に相当する。
【0077】
動的結合能(DBC)実験
2つの独立の実験において、社内で生成したmRNAを使用して、FibroオリゴdT20(プロトタイプA)の動的結合能をAKTA pureクロマトグラフィーシステムで試験した。
【0078】
実施1
図6Aは、実施1についてのクロマトグラムを示す。
この実施については、試料が枯渇するまで破過が検出されなかったので、DBCは、現在の結合量のDBC*よりも大きいと推定できるだけである。
DBC>DBC*=結合したmRNAの量(mg)/カラム体積(ml)=0.6mg/ml*5ml/0.2ml=15mg/ml。
【0079】
実施2
図6Bは、実施2についてのクロマトグラムを示す。
実施2の間に、より多くのmRNAが装填されるが、破過は、試料が枯渇するまで、依然として検出されず、DBCは、現在の結合量のDBC*よりも大きいと推定できるだけである。
DBC>DBC*=結合したmRNAの量(mg)/カラム体積(ml)=0.29mg/ml*14ml/0.2ml=20.3mg/ml
【0080】
これら2つの実験は、市場で入手可能な他のオリゴdT型式と比較して、FibroオリゴdTの優れた特性を示す。DBCは、2000bpのm-RNAに対して15~20mg/mlの範囲であり、1分未満の滞留時間及び85%を超える収率を有し、これらの結果をTable 2(表2)に概説する。
【0081】
使用したリンカーはC6アミノ化されており、C12アミノ化されたリンカーが使用される場合、DBCは更に向上する可能性があり、図7のデータがそのことを示す。
【0082】
【表2】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
【国際調査報告】