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特表2024-504206抗菌性及び抗ウイルス性ナノコンポジットシート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】抗菌性及び抗ウイルス性ナノコンポジットシート
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/44 20060101AFI20240123BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20240123BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240123BHJP
   A41D 31/30 20190101ALI20240123BHJP
【FI】
D06M11/44
A41D13/11 M
A41D31/00 502A
A41D31/00 502J
A41D31/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560236
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2021062766
(87)【国際公開番号】W WO2022125868
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/123,814
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523220754
【氏名又は名称】クラロス テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アッバス、アブデヌール
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス、アンドリュー エリアス
(72)【発明者】
【氏名】ブロックグレイテンズ、ジョン ウィルフリッド
(72)【発明者】
【氏名】ベランカ、ミッシェル マリー
【テーマコード(参考)】
3B211
4L031
【Fターム(参考)】
3B211CC03
3B211CE01
3B211CE02
3B211CE03
4L031AB32
4L031AB33
4L031BA09
4L031DA12
(57)【要約】
抗菌性テキスタイル、さらに、テキスタイルを含むシート基材及びナノ粒子がシート基材の表面上及び内部にナノコンポジットとして存在する、金属酸化物ナノ粒子を含む抗菌性テキスタイルを作製する方法である。前記テキスタイルは、フェイスマスクなどの個人用保護具などの装着可能なアイテムに使用され得る。該テキスタイルを作製する方法は、金属塩溶液をテキスタイルに適用して、金属塩をテキスタイル中に拡散させること、及びテキスタイルを乾燥させて、例えばテキスタイルを熱で乾燥させて、金属ナノ粒子又はナノ構造体のナノコンポジットをその場で形成することによって金属塩をテキスタイルの表面及び内部繊維に結合させること、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む抗菌性テキスタイル:
テキスタイルを含むシート基材;
金属酸化物ナノ粒子;
ただし、前記ナノ粒子は、前記シート基材の表面上及び内部に、ナノコンポジットとして存在している。
【請求項2】
ユーザの身体に装着されるように構成されている、請求項1に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項3】
個人用保護具である、請求項2に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項4】
個人用保護具が多層フェイスマスクを含み、シート基材が前記フェイスマスクの1つの層を含む、請求項3に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項5】
個人用保護具が衣料を含む、請求項3に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項6】
接着手段層をさらに含む、請求項2に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項7】
個人用保護具が包帯を含む、請求項6に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項8】
女性用衛生製品を含む、請求項1に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項9】
金属酸化物が酸化亜鉛を含む、請求項1に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項10】
家具内装材を含む、請求項1に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項11】
表面洗浄製品を含む、請求項1に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項12】
表面洗浄製品が、モップ、スポンジ、ラグ又はタオルを含む、請求項11に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項13】
抗菌性又は抗ウイルス性テキスタイルが、寝具の物品を含む、請求項1に記載の抗菌性テキスタイル。
【請求項14】
以下を含む抗菌性フェイスマスク:
多層シート部分、ただし該多層シート部分は、ユーザの鼻及び口を覆うように構成され、前記シートの1つ又は2つ以上が金属酸化物テキスタイルナノコンポジットを含む;及び
前記マスクをユーザの頭部に取り付けるように構成された2つ以上のストラップ。
【請求項15】
金属酸化物が酸化亜鉛を含む、請求項14に記載の抗菌性フェイスマスク。
【請求項16】
ナノコンポジットシートを含む抗菌性テキスタイルを作製する方法、ただし、前記ナノコンポジットシートは以下の方法により製造される:
金属塩溶液をテキスタイルに適用して、前記金属塩を前記テキスタイルに拡散させること、ただし、前記テキスタイルは表面繊維及び内部繊維を含む;
前記適用された金属塩溶液を有する前記テキスタイルを乾燥させて、金属ナノ粒子又はナノ構造体のナノコンポジットをその場で形成することによって、前記金属塩を前記テキスタイルの前記表面及び前記内部繊維に結合させること。
【請求項17】
テキスタイルを乾燥させることが、シートを加熱することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
金属塩が酸化亜鉛を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ナノコンポジットシートを装着可能な物品に組み込むことをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
装着可能な物品が、個人用保護具の物品を含む、請求項19に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗菌性組成物は、感染の広がりを防ぐために広く使用されている。抗菌性組成物は、カウンタートップなどの頻繁に接触する表面に適用されるか、又はその中に組み込まれ得る。場合によっては、材料に抗菌特性を与えるために、他の組成物で材料を機能化することが望ましい場合がある。テキスタイル(textile、織物、繊維製品)は、抗菌機能化のための一般的な材料である。
【0002】
抗菌性テキスタイルは、テキスタイルを抗菌剤でコーティングすることによって作ることができる。そのような方法は、布地に浸透し得ない表面抗菌表面を生成し得る。さらに、テキスタイルの抗菌特性は、洗濯サイクルの繰り返しで持続しない場合がある。場合によっては、化学添加剤を洗濯洗浄サイクルに添加して、汚損に対する耐性又は細菌耐性などのテキスタイル品質を与えることができる。しかしながら、これらの添加剤は、洗濯サイクルの終わりに水流に放出され得、環境に悪影響を及ぼし得る。さらに、そのような抗菌機能化は、テキスタイルの外観又は品質を変化させず、洗濯、保管、及び使用中及び使用後に耐久性があることがしばしば好ましい。テキスタイルが皮膚と接触している場合、刺激又は有害反応を引き起こさないことも好ましい。
【0003】
場合によっては、空中微生物は、表面微生物よりも管理が困難な場合がある。空中微生物は、空気流及び空気濾過機構によって制御されることが多い。例えば、手術室及び特定の病室は、空気流を制御するために二重ドアシステム及び負圧を有し得る。エアフィルタを使用してもよく、医療スタッフは、微生物が装着者によって吸入されたり環境内に吐き出されたりするのを濾過するための物理的バリアとして鼻及び口の上にマスクを装着してよい。微生物は、空気がマスクを通って流れるときにマスク内に閉じ込められ、その結果、望ましくは、医療スタッフは感染せず、他の人に感染させない。しかしながら、そのようなマスクには限界がある。それらの多孔度に応じて、マスクは依然として、いくつかの微生物が通過することを可能にし得る。さらに、マスクは、空中粒子を収集するにつれて飽和する可能性があり、有用性及び有用な貯蔵寿命が低下し、より頻繁な交換が必要になる。また、マスクは、空中微生物を捕捉することで機能するため、マスク自体が感染を広げる恐れがある。COVID-19などの一部の微生物は長期間安定したままであり、その結果、マスク自体が医療スタッフ及び他の患者を汚染する危険性がある。したがって、これらのマスクは感染の広がりを減少させるように機能するが、依然として限界があり、さらなる改善が必要である。
【0004】
したがって、抗菌特性を提供するためにテキスタイルなどの材料を機能化することが望ましいが、そのようなテキスタイルの大規模製造を可能にし、その特性を改善し、性能を改善し、プロセスの環境への影響を低減し、抗菌製品における抗菌機能化材料のより広範な使用を可能にして、特に患者ケア環境における感染の広がりを低減するために、機能化の改善された方法が必要である。
【0005】
本明細書は、本開示の様々な態様を形成すると見なされる主題を特に指摘し、明確に請求する特許請求の範囲で終了するが、本開示は、添付の図面と併せて以下の説明からよりよく理解されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】様々な態様による抗菌接着性ナノコンポジットフィルムの例である。
【0007】
図2】様々な態様による抗菌性フェイスマスクの一例である。
【0008】
図3】様々な態様による抗菌性タンポンの一例である。
【0009】
図4】様々な態様による抗菌性生理用ナプキンの一例である。
【0010】
図5】様々な態様による抗菌性創傷ケアパッドの一例である。
【0011】
図6】様々な方法による市販の乾燥機の一例である。
【0012】
図7】様々な方法による市販の乾燥機の別の例である。
【0013】
図8】様々な方法による市販の乾燥機の別の例である。
【0014】
図9A】未処理テキスタイルの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図9B】未処理テキスタイルの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0015】
図10A】様々な態様による処理済みテキスタイルのSEM写真である。
図10B】様々な態様による処理済みテキスタイルのSEM写真である。
【0016】
図11】シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)を使用して試験したナノコンポジットテキスタイルの抗菌試験の実験結果の写真である。
【0017】
図12】スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を使用して試験したナノコンポジットテキスタイルの抗菌試験の実験結果の写真である。
【0018】
図13】シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を使用して試験したナノコンポジットテキスタイルの抗菌試験の実験結果の写真である。
【0019】
図14】対照に対する様々な態様による、亜鉛-ポリウレタンナノコンポジットフィルム(A)及び亜鉛-ナイロンコンポジットフィルム(b)のSEM写真のセットである。
【0020】
図15】様々な態様による、亜鉛-アラミドナノコンポジットテキスタイル(a)、銀-ポリエステルナノコンポジットテキスタイル(b)及び鉄-ポリウレタンナノコンポジットテキスタイル(c)のSEM写真のセットである。
【0021】
図16】様々な態様による、ナノコンポジットテキスタイルから得られたTiO2ナノ粒子(a)及びZnOナノ粒子のX線回折スペクトルである。
【0022】
図17】様々な態様による、アラミド繊維(a)の表面、アラミド繊維(b)の内部及び絹繊維(c)上のセラミックナノ粒子のEDS-SEMデータである。
【0023】
図18】ナノコンポジットテキスタイルの反復する洗浄及び乾燥サイクル後の細菌の減少パーセントのグラフである。
【0024】
図19A】例6によるテキスタイルのフェイスマスクである。
図19B】例6によるテキスタイルのSEM画像である。
図19C】例6によるテキスタイルのSEM画像である。
図19D】例6によるテキスタイルのSEM画像である。
【0025】
図20】例6の処理済み及び未処理のナイロン-綿テキスタイル標本から回収されたTGEV(伝染性胃腸炎ウイルス)粒子の棒グラフである。
【0026】
図21】例6のナイロン-綿テキスタイルにおける感染力価及びウイルスゲノムコピーの対数減少の棒グラフである。
【0027】
図22】例6の処理済み及び未処理のフェイスマスクテキスタイル標本から回収されたTGEV(伝染性胃腸炎ウイルス)粒子の棒グラフである。
【0028】
図23】例6のフェイスマスクテキスタイルにおける感染力価及びウイルスゲノムコピーの対数減少の棒グラフである。
【0029】
図24】例11のテキスタイルの抗菌性能の棒グラフである。
【発明の概要】
【0030】
様々な態様は、抗菌性テキスタイルを含む。いくつかの態様では、抗菌性テキスタイルは、テキスタイルを含むシート基材と、ナノ粒子がシート基材の表面上及び内部(例えばテキスタイルの繊維内部)にナノコンポジットとして存在する金属酸化物ナノ粒子とを含んでよい。様々な抗菌性テキスタイルに含まれる金属酸化物は、例えば、酸化亜鉛を含んでよい。抗菌性テキスタイルは、抗菌性テキスタイルがフェイスマスクの少なくとも1つの層を形成する多層フェイスマスクのような個人用保護具のピースなどのユーザの身体に装着されるように構成されてよい。いくつかの態様では、個人用保護具は衣料であってよい。
【0031】
抗菌性テキスタイルは、様々な用途に使用され得るか、又は含まれ得る。例えば、いくつかの態様では、抗菌性テキスタイルはまた、個人用保護具が包帯を含む場合などに、接着手段層を含んでよい。いくつかの態様では、抗菌性テキスタイルは、女性用衛生製品に含まれてよい。抗菌性テキスタイルは、家具内装材として使用され得る。いくつかの態様では、抗菌性テキスタイルは表面洗浄製品であり得る。いくつかのそのような態様では、表面洗浄製品は、例えばモップ、スポンジ、ラグ又はタオルであってよい。抗菌性テキスタイルはまた、寝具の物品であってよい。
【0032】
特定の態様は、ユーザの鼻及び口を覆うように構成された多層シート部分であって、シートの1つ又は複数が金属酸化物テキスタイルナノコンポジットを含む、多層シート部分と、マスクをユーザの頭部に取り付けるように構成されたストラップと、を含む、抗菌性フェイスマスクを含む。いくつかの態様では、金属酸化物は酸化亜鉛であり得る。
【0033】
他の態様は、抗菌性テキスタイルを作製する方法を含む。本方法は、金属塩溶液をテキスタイルに適用して、金属塩を、表面及び内部繊維を含むテキスタイルに拡散させること、及び、適用された金属塩溶液を有するテキスタイルを乾燥させて、金属ナノ粒子又はナノ構造体のナノコンポジットをそのまま移動させることなく(in situ)形成することによって金属塩をテキスタイルの表面及び内部繊維に結合させること、を含んでよい。テキスタイルを乾燥させる工程は、シートを加熱することを含んでよい。金属塩は、酸化亜鉛を含んでいてよい。次いで、得られた抗菌性テキスタイルは、鼻及び口の上に装着されるフェイスマスクのような個人用保護具の物品などの装着可能な物品に組み込まれてよい。
【発明を実施するための形態】
【0034】
様々な態様は、ナノコンポジットフィルムなどの抗菌ナノコンポジット及びその作製方法を含む。抗菌ナノコンポジットは、例えば、細菌、ウイルス、真菌、カビ、白カビ及び/又は寄生虫を死滅及び/又は減少させるために、抗菌性、抗ウイルス性、抗真菌性、抗カビ性、抗白カビ性、及び/又は抗寄生虫性であり得る。特に明記しない限り、本明細書で使用される「抗菌ナノコンポジット」という用語の使用には、細菌、ウイルス、真菌、カビ、白カビ及び/又は寄生虫を死滅させる及び/又は減少させるための抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗カビ剤、抗カビ剤、抗白カビ剤、及び/又は抗寄生虫剤が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、抗菌ナノコンポジットは、個人用保護具の表面上又は個人用保護具を通る、SARS-CoV-2(COVID-19の病原体)又は他の感染性ウイルス及び細菌を死滅させ、不活性化し、及び/又は存在を減少させ、及び/又は伝染を減少させ得る。抗菌ナノコンポジットは、テキスタイル及びポリマーのような機能化材料を含むフィルムなどのシート状層として提供されてよい。そのような材料は、フェイスマスク及び他の個人用保護具、並びに医療用衣服及び包帯などの材料に抗菌品質を提供するために使用され得る。抗菌ナノ粒子は、金属又は非金属イオン塩に浸漬するなどして材料に適用されてもよく、次いで、浸漬された材料は、市販の乾燥機などで乾燥されて、ナノ粒子又はナノ構造が形成され得る。このようにして、ナノ粒子が形成され、材料の表面及び内部で材料に結合して、ナノコンポジットを形成する。このプロセスは、本明細書ではクレスコート又はクレスコート技術と呼ばれることがある。この方法は、環境に有害な化学物質を使用することなく、また安定化剤又はキャッピング剤を使用することなく、官能化材料を作るために使用され得る。
【0035】
本明細書に記載の様々な抗菌ナノコンポジットは、医療及び他の患者ケア、食品の製造及び調製又は密接な接触環境で使用され得る。医療環境での使用は、院内感染のリスクを低減するのに役立ち得る。例えば、抗菌ナノコンポジットを含み得る個人用保護具としては、フェイスマスク、スクラブ、手術用キャップ、ラボコート及び靴カバーが挙げられる。抗菌ナノコンポジットを含み得るさらなる医療製品としては、患者のガウン、シート、包帯及び創傷ケア被覆材、並びに衛生製品が挙げられる。食品の製造及び調製は、食品表面を含み得る。
【0036】
抗菌ナノコンポジットの他の用途としては、シーツ及びブランケットなどの寝具が挙げられる。特に、そのような寝具は、病院及び診療所などの医療現場において、並びに集団介護現場(生活支援環境など)において有用であり得る。抗菌ナノコンポジットは、靴下、スリッパ及び靴の裏地を含む履物、下着、シャツ及びパンツのような一般消費者衣料、並びにレストラン又はフライトアテンダントの制服のような工業衣料、及び食品加工工場労働者のような工場労働者用の制服などの医療環境以外の衣料品に使用され得る。ナノコンポジットは、家具及び他の家庭用品、特に空港及び他の交通ハブ、学校及びホテルなどの交通量の多い場所の家具を覆う内装材としてさらに使用することができる。さらに他の例では、ナノコンポジットは、モップ、スポンジ、ラグ及びタオルのロープ又はスポンジヘッドなどの表面を洗浄するための材料に使用されてよい。
【0037】
本明細書に記載の方法を使用して、様々な材料を機能化することができる。例えば、いくつかの態様では、材料は多孔質であってよい。それは、合成、半合成、又は天然の織布若しくは不織布テキスタイル、繊維、又はマイクロファイバを含む合成又は天然テキスタイルであってよい。使用され得るテキスタイルの例としては、綿、ポリエステル、ナイロン、スパンデックス、レーヨン、リネン、カシミヤ、絹及び羊毛、アクリル、モダクリル、オレフィン、アセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、リヨセル、ラテックス、アラミド、並びにこれら又は他の材料又は繊維の1つ又は複数のブレンド又は組み合わせが挙げられる。したがって、テキスタイルは、絹、羊毛、綿、セルロース、亜麻、ジュート又は竹などの天然であってもよく、ナイロン、ポリエステル、アクリル、スパンデックス、レーヨンなどの合成、又はポリプロピレン、ポリウレタンなどのポリマーであってよい。いくつかの態様では、テキスタイルは、ガラス繊維などの鉱物であってよい。あるいは、テキスタイルは、上に列挙したものを含む異なる材料のブレンドであってよい。
【0038】
いくつかの態様では、材料は、プラスチックフィルムなどのフィルム、硬質プラスチックなどの硬質材料、発泡体、又は半硬質プラスチックなどの半硬質材料であってよい。
【0039】
いくつかの態様では、材料は、メルトブローイングプロセスによって作製された材料などの不織材料であってよい。例えば、材料は、ポリプロピレン等のメルトブローンポリマーであってよい。そのような材料は、抗菌ナノ粒子で機能化され、抗菌効果と濾過効果の両方を提供するために、3層フェイスマスクなどの多層フェイスマスクの層として使用され得る。いくつかの態様では、他の機能化材料が、微粒子を捕捉するために典型的に使用され、本明細書に記載のように機能化されてもされなくてよいメルトブローンポリマー層、及び内側及び/又は外側ライナーなどの1つ又は複数の追加の層と共に、ナノコンポジット層としてフェイスマスクに使用される。特に明記しない限り、本明細書で使用される「材料」又は「テキスタイル」という用語は、一般に、上記の段落に記載された材料のすべてを含むがこれに限定されない、機能化され得る本明細書に記載された材料のすべてを指す。
【0040】
材料を機能化するために、様々なタイプの組成物が使用され得る。有用な組成物には、遷移金属又は遷移後金属などの金属、半金属、非金属、希土類金属、及びアルカリ土類金属が含まれる。組成物は、例えば、それらのイオン、元素及び/又はナノ構造形態であり得る。そのようなナノ構造は、ナノ粒子、ナノフィルム、又は他の形態であり得る。
【0041】
いくつかの態様では、組成物は、銅、ヨウ素、銀、スズ、亜鉛、チタン、セレン、ニッケル、鉄、セリウム、ジルコニウム、マグネシウム、マンガン、又はこれら若しくは他のナノ粒子の1つよりも多くの組み合わせ、又は金属酸化物などのそれらの合金で作られた無機ナノ粒子である。様々な態様で使用され得る金属及び金属酸化物の例としては、銀、酸化銅、二酸化チタン、及び酸化亜鉛が挙げられる。金属及び金属酸化物並びに他の組成物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0042】
組成物がナノ粒子などのナノ構造を含む態様では、ナノ粒子は、例えば、約1nm~1000nm、又は約100nm~700nmなどのナノスケール範囲のサイズを有し得る。いくつかの態様では、ナノ粒子は、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銅及び二酸化ケイ素などの1つ又は複数の金属酸化物であり得る。他の態様では、ナノ粒子は、セレンなどの非金属であってよい。
【0043】
いくつかの態様では、ナノ粒子は、シート状材料などの多孔性支持材料とナノコンポジットを形成し得る。多孔性支持材料は、綿、セルロース、ビスコース、絹、アラミド、ナイロン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、又はこれら若しくは他の材料のうちの2つ以上の組み合わせであってよい。ナノコンポジットは、材料の表面上及び内部(テキスタイル又は他の多孔性支持材料全体の繊維など)に金属又は非金属ナノ粒子などのナノ粒子を含む二相材料であってよい。
【0044】
いくつかの態様では、ナノコンポジットシートは、製品又は製品のコンポーネントとして使用され得る。他の態様では、ナノコンポジットシートは、製品の製造中又は後に消費者によってナノコンポジットシートを別の製品又は材料の表面に接着するために使用され得る接着手段(adhesive)と共に使用され得る。ナノコンポジットシートは、1枚、2枚、3枚、又はそれよりも多くの枚数のシートなどの層として存在してよい。ナノコンポジットシートは、疎水性、親水性、静電性、又はそれらの組み合わせであってよい。
【0045】
接着性ナノコンポジットシートの一例を図1に示す。シート10は、第1の表面14及び対向する第2の表面16を有するナノコンポジットシート12を含む。それは、ナノコンポジットシート12の第2の表面16に隣接する接着手段層18をさらに含む。接着手段層18は、図示のように第2の表面16を完全に覆っていてもよく、又は一連の接着手段ドット若しくは他のパターンなどの不連続な方法で存在していてよい。接着手段層18は、糊、ペースト、静電表面、又はシート10の表面への可逆的又は恒久的な接着を可能にする任意の他の材料などの接着手段であってよい。シート10は、タッチスクリーン及び他の対話型表面など、ユーザによってタッチされるアイテムに適用されてよい。使用に応じて、シート10は、ユーザがシート10を通してアイテムの表面を見ることができるように透明であってよい。例えば、電話機、現金自動預け払い機、支払いポータルなどのアイテムのタッチスクリーンに適用又は提供されてよい。携帯電話の他の部分(側面及び背面)、ハンドバッグなどのような高い接触面にさらに提供されてよい。
【0046】
他の態様では、ナノコンポジットシートは、フェイスマスクなどの個人用保護具の1つ又は複数の層を形成してよい。そのような態様の一例を図2に示す。この例では、マスク20は、ユーザの頭部に取り付けるためのストラップ22を含み、これは弾性であってもよく、この例のようにユーザの耳の周り、又は他の構成のようにユーザの頭部の周りにループするように、又はユーザの頭部の後ろに結合するように構成されてよい。マスク20は、任意に、縁部24と、図示のように折り畳まれてもよく、又は平坦であってよいフィルタ部分26とを含んでよい。マスク20は、ユーザの鼻梁を横切るマスクを成形するための屈曲可能な部材などの、縁部24内の可撓性及び/又は再成形可能なステーをさらに含むことができる。フィルタ部分26は、ユーザの鼻及び口を横切って延在し、覆うシートであってもよく、それ自体が、1つ又は複数の抗菌ナノコンポジットシートを含む複数の層を含んでよい。
【0047】
個人用保護具内の抗菌ナノコンポジットシートは、細菌及び/又はウイルスなどの微生物、例えばCOVID-19又は他の微生物が接触すると死滅及び/又は不活性化することを可能にし得る。抗菌ナノコンポジットシートは、微生物濾過シートなどの追加の層の有無にかかわらず個人用保護具に使用されてもよく、又は濾過シートとして追加的に機能してよい。接触した微生物を不活性化することにより、抗菌ナノコンポジットシートは、濾過の代替として又はそれに加えて使用され得る空気中の微生物の拡散を防止する異なる方法を提供するだけでなく、個人用保護具の表面の汚染及び接触による拡散のリスクも低減する。さらに、ナノコンポジットは、10回以上の洗浄後などの洗浄後であっても抗菌効果を維持するので、抗菌ナノコンポジットから作製されたマスクなどの個人用保護具は、従来の濾過材料と比較して長寿命である。
【0048】
図2に示す例では、フィルタ部分26は、第1の層27、第2の層28、及び第3の層29を含む。第1の層27及び第2の層28の両方とも、疎水性であり得る抗菌ナノコンポジットシートであり得る。第3の層29は、マスクが使用されているときにユーザの顔と接触するときにさらなるユーザの快適さを提供するために異なる材料であってよい。例えば、第3の層は、柔軟な低アレルギー性材料であってもよく、疎水性であってよいライナーであってよい。
【0049】
他の例では、抗菌ナノコンポジットシートは、経血を吸収するタンポン又は生理用パッドなどの女性用衛生製品のコンポーネントとして使用されてよい。そのような態様では、抗菌ナノコンポジットによって提供される抗菌特性は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)群の過剰増殖に起因する毒性ショック症候群又はスタフィロコッカス細菌(Streptococcus bacteria)群に起因する毒性ショック様症候群などのユーザにおける感染のリスクを低減するのに役立ち得る。例えば、抗菌ナノコンポジットは、女性用衛生製品中のそのような細菌を死滅させ、不活性化し、防止し、減少させ、及び/又は増殖阻害し得る。
【0050】
様々な態様によるタンポンの一例が図3に示されており、タンポンは長手方向及び軸方向の断面で示されている。タンポン30は、本体32と、使用後に取り外すために一端にしっかりと取り付けられた紐39とを含んでよい。本体32は、外側皮膚接触層34、高吸収層36、及び抗菌ナノコンポジット層38を含んでよい。抗菌ナノコンポジット層38は、この態様ではタンポン本体32のコアを形成するが、複数の高吸収層36及び/又は複数の抗菌ナノコンポジット層38、並びに他の材料の1つ又は複数の層を含む他の配置及び構成を使用してよい。
【0051】
様々な態様による衛生パッドの一例が、図4の断面図に示されている。衛生パッド40は、皮膚接触層44、高吸収層46、及び抗菌ナノコンポジット層48を含む。さらに、ユーザが衛生パッド40を下着に接着するための接着手段49を含む。衛生パッド40の層は、代替的に、様々な構成であってもよく、水分不透過性層などの追加の層を含んでよい複数の高吸収層46及び/又は複数の抗菌ナノコンポジット層48を含んでよい。タンポン及び衛生パッドの代替の態様では、抗菌ナノコンポジット層は、他の吸収剤層が必要とされないか、又は他の吸収剤層がより少なく必要とされるように、それ自体が吸収性である材料で構築されてよい。
【0052】
さらに他の例では、感染のリスクを減らすために、抗菌ナノコンポジットシートを創傷の被覆材に使用することができる。そのような被覆材は、例えば、一般的な切り傷及び擦り傷、術後切開、又は事故若しくは軍事衝突中に受けた創傷の分野で使用することができる。抗菌ナノコンポジットシートを含む被覆材は、創傷に適用され、ラップなどの圧縮によって保持され得るガーゼパッドなどの吸収性パッドであってもよく、又は例えば接着性包帯であってよい。他の態様では、抗菌ナノコンポジットシートは、必要に応じて人工肛門バッグ及び被覆材、栄養チューブ、並びに人工呼吸器チューブと共にストーマを洗浄及びケア及び維持するための被覆材又は他の材料に使用してもよく、ナノコンポジット材料はウイルス又は細菌汚染のリスクを低減し得る。
【0053】
抗菌創傷ケアパッドの一例を図5に示す。パッド50は、接着手段層52(図示のように連続的であってもよく、又は不連続的であってよい)及び抗菌ナノコンポジット層54を含む。パッド50は、様々な構成で提供され得る吸収性層及び非透湿性層などの他の層をさらに含んでよい。いくつかの態様では、抗菌ナノコンポジット層54は、他の吸収剤層が必要とされないように、それ自体が吸収性である材料で構築される。
【0054】
テキスタイルシート若しくは他のシートなどの様々な材料又は多孔質材料を抗菌ナノコンポジットシートに使用してもよく、抗菌ナノコンポジットシートは機能化プロセスによって作ってよい。あるいは、テキスタイル糸、繊維又はフィラメントは、本明細書に記載のプロセスに従って機能化されてもよく、機能化された糸、繊維又はフィラメントは、続いてテキスタイルシートに織られるか、それ以外の方法で形成されてよい。
【0055】
機能化プロセスは、ナノ粒子組成物などの抗菌性組成物を材料に適用して、組成物を材料に含浸させることから開始し得る。金属塩の材料への含浸は、例えば、浸漬又は噴霧によって行うことができる。いくつかの態様では、組成物は、水性懸濁液又は水溶液などの懸濁液又は溶液中にある。組成物は多くの態様において水性であるが、代替的に、非水性、例えばアセトン、エタノール又はイソプロパノールなどの有機溶媒の希釈溶液(50%未満又は25%未満など)であってよい。組成物を材料に適用することは、例えば、材料を組成物に浸すことによって、又は組成物を支持材料に噴霧することによって、支持材料を組成物で飽和させることを含んでよい。
【0056】
組成物が材料に適用されると、組成物は、乾燥によって、及び/又は乾燥機の使用などの熱の適用によって材料に結合され得る。熱は、溶液の蒸発を引き起こして、布地の繊維の表面上へのナノ粒子の熱還元及び結晶化を開始し得る。これは、商業用乾燥機又は工業用乾燥機などの大型乾燥機を使用して大規模に行うことができる。そのような商業用又は工業用乾燥機は、大量のテキスタイルなどの大量の材料を乾燥させることが可能であり得、1日を通して連続的になど、より長期間動作され得る。例えば、そのような市販の乾燥機は、より大きな乾燥シリンダサイズ、より高い空気流、及びより高いBTU定格を有していてもよく、これは乾燥時間を短縮し、乾燥効率を高めるのに役立ち得る。例えば、市販の乾燥機は、7立方フィート以上、又は30ポンド以上の容量を有し得る。工業用乾燥機は、30ポンド以上、50ポンド以上、又はさらにそれ以上の容量を有し得る。いくつかの態様では、乾燥機は材料に熱を加えることができる。いくつかの態様では、乾燥機は、加熱された空気を材料に向けて吹き付けてもよく、及び/又はコンベヤ上で、又は乾燥機内でのタンブリングなどによって、乾燥中に材料を移動させてよい。
【0057】
様々な態様で使用され得る乾燥機システムの例を図6~8に示す。乾燥機60の図が図6に示されている。乾燥機60は乾燥機チャンバ62を含み、処理済み材料64は乾燥機チャンバ62の内部にある。乾燥機60は、回転する乾燥機チャンバ62内でタンブリングされる間に高温空気などの熱66を材料64に加える。
【0058】
乾燥機70の他の例を図7に示す。この乾燥機70は、コンベヤシステム72を含む。処理済み材料74がコンベヤ72上の乾燥機70を通過するとき、乾燥機は高温空気などの熱76を加える。材料74は、乾燥機70を連続的に通過してもよく、又はコンベヤ72は、材料74の通過中に1回又は複数回一時停止してよい。熱は、上方から加えられるように示されているが、代替的に又は追加的に、材料74を乾燥させるために任意の方向から加えられる。熱源はまた、例えば、オーブン、乾燥機、熱ジェット、又は赤外線光源であってよい。
【0059】
さらに別の例では、図8に示す乾燥機80は、処理済み材料84を吊り下げるためのフック又はクリップなどの1つ又は複数のハンガー82を含む。浸漬された材料84は、単一のフック又は複数のフックから吊り下げられ、それを広げて折り畳みを最小化又は排除することができる。乾燥機は、材料84に熱86を加える。高温空気などの熱86は、2つの対向する側面から材料84に加えられるように示されているが、代替的に又は追加的に、任意の又はすべての方向から加えられてよい。いくつかの態様では、乾燥機80は、材料84を熱86を通して運ぶためのコンベヤシステムを含むことができる。例えば、ハンガー82は、処理済み材料84を乾燥機80を通して運んでよい。
【0060】
処理済み材料に熱を加えると、組成物が材料に結合する。例えば、ナノ材料が使用される場合、ナノ材料は、支持材料繊維の内部で成長されてもよく、周囲の材料によって物理的に適所に保持されてよい。熱などのエネルギーの使用は、結晶化を促進し得る。
【0061】
熱処理後、組成物は、長期間材料に結合したままであり得る。例えば、組成物は、1回又は複数回のその後の使用及び/又は洗濯サイクルなどの洗浄中に材料に結合したままであり得る。
【0062】
いくつかの態様では、組成物は、洗濯プロセス中にテキスタイル材料に添加されてよい。例えば、洗濯機の洗浄サイクル中など、テキスタイルが洗浄されている間に、組成物がテキスタイルに添加され得る。組成物は、洗濯用洗剤への添加剤として提供されてもよく、又は洗浄サイクル中に別々に添加されてよい。添加剤は、例えば、金属塩又は非金属塩の水溶液であってよい。洗浄サイクルが完了すると、通常の洗濯プロセスに従って、テキスタイルは洗濯乾燥機で乾燥され得る。このようにして、テキスタイルは、日常的な洗濯プロセス中に機能化され得る。これは、寝具(シート、ブランケット、枕カバー、枕、マットレスカバー)及び/又は医療従事者が着用するスクラブなどの衣料、又はガウン又は患者が着用する他の衣料などの材料に抗菌品質を提供するために、ホテル、病院、養護施設、及び他の施設などの産業目的に特に有用であり得る。
【0063】
実施例
例1
ナノコンポジットテキスタイルを、テキスタイルを亜鉛塩溶液に浸漬することによって調製した。テキスタイルは、綿、ポリエステル、ナイロン及びスパンデックスの混合物であった。次いで、テキスタイルを市販の乾燥機で約65℃の温度で乾燥させた。乾燥が完了した後、酸化亜鉛ナノコンポジットテキスタイルを洗浄し、走査型電子顕微鏡(SEM)下で検査した。比較のために、図9A及び図9Bは、それぞれ1000倍及び5000倍での未処理テキスタイルのSEM写真を示す。図10A及び図10Bは、酸化亜鉛ナノコンポジットを形成するための処理後の同じテキスタイルの1000倍及び5000倍でのSEM写真を示す。比較は、テキスタイルの実質的なコーティングが生じ、これが洗浄後も維持されたことを示している。
【0064】
上記のように調製された酸化亜鉛ナノコンポジットテキスタイルを、American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC)Test Method 100-2004を用いて抗菌特性について試験した。処理済みテキスタイルと未処理テキスタイルの両方を使用して、実験を3回繰り返した。2つの細菌種:グラム陰性細菌であるシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)及びグラム陽性細菌であるスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を試験に使用した。いずれの場合も、テキスタイルにブロス中の細菌を接種し、一方で対照は、同じ方法であるがブロスのみで処理した。テキスタイルを24時間インキュベートした。次いで、テキスタイルを中和ブロスに溶出し、希釈し、ペトリ皿にプレーティングすることによって、テキスタイル上の微生物濃度を決定した。ペトリ皿上で得られた細菌増殖を図11及び図12に示す。
【0065】
図11は、P.aeruginosaによる試験から得られたペトリ皿の写真であり、図12は、S.aureusによる試験から得られたペトリ皿の写真である。いずれの場合も、上行のペトリ皿は、中央のペトリ皿を対照(細菌なし)とした未処理テキスタイルの結果であり、下行のペトリ皿は、処理済みテキスタイルの結果である。両方の細菌について、処理済みテキスタイルについてのペトリ皿の下行は細菌増殖を有さなかったが、未処理テキスタイルについてのペトリ皿の上行は多数の細菌コロニーを有した。酸化亜鉛ナノコンポジットテキスタイルは、完全な細菌制御を示した。これらの結果は、本明細書に記載のテキスタイルを調製するプロセスが、洗浄後も持続する抗菌特性のためにテキスタイルを機能化するのに有効であったことを示している。
【0066】
例2
ポリエステル、アラミド、羊毛、絹、及びナイロン/綿をZnOナノ粒子で機能化した。テキスタイルを、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、及び塩化亜鉛を含む亜鉛塩の水溶液に0.1~0.75Mの理想的な濃度範囲で30分間浸漬し、続いて従来のオーブンで100℃又は60℃の乾燥機で乾燥するまで加熱することによって機能化した。得られた機能化テキスタイルは、1~3%w/wのナノ粒子負荷を有していた。次いで、例1で上述したように、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)(グラム陰性)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)(グラム陽性)を使用して、AATCC Test Method 100-2004に従って、ナノコンポジット機能化テキスタイルの抗菌活性を3連で試験した。亜鉛ナノコンポジットテキスタイルの抗菌特性を、洗浄前並びに1、5及び10回の洗浄サイクルを行った後に試験した。
【0067】
洗浄前の抗菌試験:AATCCプロトコルに従って、サンプルを0時間に処理し(即時溶出)、次いで24時間放置した。収集した細菌をペトリ皿に播種して、細菌増殖の減少を計算した。結果を%減少で報告し、式1によって計算する:
【0068】
R=100(B-A)/B (Eq.1)、
式中、Rは減少(%)であり、A及びBは、所望の接触期間「A」にわたるインキュベーション後、又は「0」接触時間)「B」での接種直後のいずれかに回収されたジャー内の接種された処理済み試験標本の見本から得られた細菌の数である。同じ式を24時間の溶出に使用した。
【0069】
すべての実験について、式2を使用して、細菌源が有効であるかどうか、すなわち使用される細菌の初期濃度が抗菌試験を実施するのに十分であるかどうかを評価した。式2:
E=Log(B)-Log(A) (Eq.2)、
式中、Eは有効濃度、A及びBはそれぞれ接種直後及び24時間のインキュベーション後に接種された未処理対照テキスタイルから回収された細菌の数である。Eは、有効と見なされるためには1.5より大きくなければならない。
【0070】
すべての実験において、Log(B)-Log(A)の値は3~5の範囲であり、有効な細菌濃度を確認した。抗菌試験について得られたペトリ皿プレートの一部の画像を図13に示す。結果は、未処理のテキスタイルと比較して、ナノコンポジットテキスタイルについて優れた抗菌特性を示す。
【0071】
Table1は、ZnOナノコンポジットテキスタイルとの0時間(即時溶出)及び24時間のインキュベーション後の両方での細菌の減少率に対する抗菌試験の結果を示す。即時溶出データは、異なるテキスタイルについて55%~75%の減少を示し、これは、細菌がテキスタイルに数秒間しか曝露されなかったため、予想外の肯定的な結果である。データは、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)に対するいくつかの可変的な効果を示す。いくつかのサンプルでは、陰性値が観察され、対照よりも多くの細菌が回収されたことを示している。これは、テキスタイルの可変吸着特性又は細菌濃度の不適切な調製に起因する可能性がある。より長い溶出について、Table1は、ナノコンポジットテキスタイルが、24時間曝露された細菌の100%を死滅させたことを示す。
【0072】
【表1】
【0073】
抗菌性テキスタイルの耐久性を評価するために、AATTCによって認可された洗浄乾燥機を使用して亜鉛ナノコンポジットテキスタイルを1、5及び10回洗浄した。次いで、同じプロトコルに従って、上記と同じ式を使用して抗菌特性を試験した。Table2は、即時溶出(0時間)後の抗菌特性に対する洗浄サイクルの効果をまとめたものである。Table2は、ジンクナノコンポジットテキスタイルとの0時間のインキュベーション後のシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)の細菌減少(%)に対する洗浄サイクルの効果を示す。データは、ナノコンポジットテキスタイルが少なくとも10回の洗浄サイクルにわたって優れた抗菌特性を保持したことを示しており、ナノコンポジットテキスタイルの高い安定性を示している。
【0074】
【表2】
【0075】
例3
例2の実験を繰り返したが、ナノコンポジットテキスタイルの合成中の初期塩濃度を増加させて、テキスタイルのナノ粒子負荷、具体的には0.75~1.5Mの理想的な濃度範囲での硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、及び塩化亜鉛を2倍にした。得られたテキスタイルは、3~6%w/wのナノ粒子負荷を有していた。結果を例2の結果と比較して、テキスタイルの抗菌特性に対するナノ粒子の濃度の効果を評価した。以下のTable3は、例2のテキスタイルの洗浄前の試験結果と比較した、この例のテキスタイルの洗浄前の試験結果を示す。Table3は、即時溶出(0時間のインキュベーション)後のシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)の抗菌特性に対するナノ粒子負荷の効果を示す。これらの結果は、ナノコンポジットテキスタイルにおいて3~6%の最終ナノ粒子負荷を得るための合成プロセス中の初期塩濃度を増加させることによって、テキスタイルが即時溶出(0時間の接触時間)であっても100%の抗菌効率を示すことができることを示している。これは、テキスタイルとの接触数秒以内に細菌又はウイルスを迅速に不活性化し、医療用マスク、ガウン、スクラブ、及びラボコートなどの個人用保護具(PPE)における用途のための新しい道を開くために極めて有用であり得る顕著な性能である。
【0076】
【表3】
【0077】
例2と同様に、この実験のナノコンポジットテキスタイルを1、5、及び10回の洗浄サイクルで洗浄して、同じ病原体を使用したナノコンポジットテキスタイルの抗菌特性に対する洗浄の効果を試験した。結果を以下のtable4に示し、亜鉛ナノコンポジットテキスタイルとの24時間のインキュベーション後のシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(PA)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(SA)の細菌減少率に対する洗浄サイクルの効果を1、5及び10回の洗浄サイクルについて示す。結果は、ほとんどのテキスタイルについて10回の洗浄サイクル後でも抗菌特性が保持されたことを実証している。10回の洗浄サイクルで、ナノコンポジットテキスタイルは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)について90%を超える細菌減少を示した。抗菌活性は、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)では羊毛及び絹でそれぞれ20%及び40%低下した。本発明者らは以前に、セレン/ポリウレタンナノコンポジットに対して同様の挙動を観察した。これは、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)などのグラム陰性菌が、通常、細胞壁の外側の余分な多糖層のために抗菌剤に対してより耐性であるという事実によって説明することができた。したがって、羊毛、絹及びセレン/ポリウレタンなどのいくつかのテキスタイルについて、テキスタイルを10回以上など、数回洗浄した後、本明細書に記載のプロセスなどによって、ナノコーティング機能化を繰り返してよい。これは、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)などのグラム陰性菌に対する使用に適切であり得る。
【0078】
【表4】
【0079】
例4
本明細書に記載されるように製造されたナノコンポジットテキスタイルのサンプルは、ミネソタ大学特性評価施設によって特性評価された。
繊維の構造的完全性、ナノ粒子のサイズ、形状、及び分布の均一性、並びにナノ粒子と繊維との間の界面の分析を含む、ナノコンポジットテキスタイルの形態学的分析を行った。これらの特性の評価は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して行った。図14及び図15は、本明細書に記載のように製造されたナノコンポジット材料について得られたSEM画像のいくつかの例を示す。
【0080】
図14において、行Aは、25倍、500倍及び20,000倍での亜鉛-ポリウレタンナノコンポジットフィルム対20,000倍でのナノコンポジットを含まない同じポリウレタンの対照のSEM画像を示す。矢印は2つのナノコンポジット薄膜を示す。フィルム断面での画像増幅は、フィルム内部の亜鉛ナノ粒子の存在を示す。図14の行BのSEM画像は、50倍、500倍及び30,000倍での亜鉛ナイロンナノコンポジット対30,000倍での同じナイロンの対照である。亜鉛ナノ粒子は、ナイロン繊維内に埋め込まれているのが分かる。
【0081】
図15において、テキスタイル繊維の断面のSEM画像は、繊維のバルク内部のナノ粒子の形成を示す。図15において、行Aは、2,500倍及び15,000倍での亜鉛-アラミドナノコンポジットのSEM画像である。図15の行Bは、1200倍及び25,000倍での銀-ポリエステル/綿ナノコンポジットのSEM画像であり、図15の行Cは、1200倍及び4500倍での鉄-ポリウレタンナノコンポジットのSEM画像である。
【0082】
ナノ粒子の化学構造及び結晶構造も評価した。ナノ粒子の結晶相は、その機能性に大きな影響を及ぼす。ナノ粒子を、粉砕によって綿/ポリエステルテキスタイルから回収した。粉末は、エネルギー分散型分光法(EDS)及びX線回折(XRD)を使用して分析した。酸化亜鉛、ナノチタン(TiO)及びナノセラミックを、その後の機能性試験のために分析した。
【0083】
XRDの結果を図16に示し、これはTiOナノ粒子(a)及びZnOナノ粒子(b)のX線回折スペクトルを示す。これらの結果から、ZnO及びTiOナノ粒子の存在が確認され、ZnOナノ粒子は、大部分がジンカイトと呼ばれる結晶相に存在し、TiOナノ粒子はアナターゼと呼ばれる結晶相に存在することが明らかとなった。
【0084】
アラミド及び絹に対するセラミックナノ粒子の特性評価を、SEM及びEDSを使用して行い、これらの結果を図17に示す。図17は、アラミド繊維(a)の表面、アラミド繊維(b)の内部及び絹繊維上のセラミックナノ粒子のEDS-SEMデータを示す。EDSは、セラミックナノ粒子がホウ素、ケイ素、及びアルミニウムから構成され、繊維の表面上及びバルク材料中の両方に存在することを示した。
【0085】
例5
0.1~0.75Mの理想的な濃度範囲の硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、及び塩化亜鉛の水溶液にテキスタイルを浸漬することによって、ナノコンポジットテキスタイルを調製した。テキスタイルは、綿ポリエステルブレンドのNIKE靴下であった。次いで、テキスタイルを市販の乾燥機で約60℃の温度で乾燥させた。テキスタイルを100回の洗浄及び乾燥サイクルに供した。上記のように調製した酸化亜鉛ナノコンポジットテキスタイルを、洗浄及び乾燥サイクルの前、50回の洗浄及び乾燥サイクルの後、並びに100回の洗浄及び乾燥サイクルの終了時に、AATCC Test Method 100-2004を使用して抗菌特性について試験した。グラム陽性菌であるスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を試験に使用した。テキスタイルにブロス中の細菌を接種し、一方で対照は、同じ方法であるがブロスのみで処理した。テキスタイルを24時間インキュベートした。次いで、テキスタイルを中和ブロスに溶出し、希釈し、ペトリ皿にプレーティングすることによって、テキスタイル上の微生物濃度を決定した。ナノコンポジット靴下の抗菌効果を比較するために、未処理対照の靴下を試験した。結果を図18に示すグラフに示す。洗浄及び乾燥前、50回の洗浄及び乾燥サイクル後、並びに100回の洗浄及び乾燥サイクル後のナノコンポジットテキスタイルの抗菌特性は安定していた。
【0086】
例6
記載された本発明に従って調製したテキスタイルサンプルを試験して、Gonzalez,Andrew,et al.「Durable Nanocomposite Face Masks with High Particulate Filtration and Rapid Inactivation of Coronaviruses.」(2021).DOI:10.21203/rs.3.rs-821052/v1に記載されているように、SARS-CoV-2の代用[(伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)]に対するテキスタイルの殺ウイルス効果を評価した。
【0087】
この例では、2種類のテキスタイル、ナイロン-綿テキスタイル及びフェイスマスクに使用される種類のメルトブローンポリプロピレン材料を使用した。この例で使用したテキスタイルは、テキスタイルを硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、及び塩化亜鉛に0.1~0.75Mの理想的な濃度範囲で浸漬し、市販のオーブンで100℃で乾燥させて水を蒸発させ、酸化亜鉛ナノ粒子の核生成及び成長を開始させることによって調製した。得られたナノ粒子又はナノ構造体は、材料の内部及び表面上にランダムに分布し、形状及びサイズが5~500nmで変化した。図19に示すSEM画像は、表面だけでなく材料のバルク内でのナノ粒子の成長を示している。図19Aは、フェイスマスクの一例を示す。図19Bは、未処理ポリプロピレンテキスタイルのSEM画像であり、図19Cは、「ペタル」形状の亜鉛粒子を有する亜鉛-ポリプロピレンナノコンポジットテキスタイルのSEM画像である。図19Dは、様々な倍率レベルでの処理後のポリエステル-綿テキスタイルのSEM画像を示す。画像は内部ナノ粒子成長を示す。成長前後の質量測定により、最終コンポジットの3~6質量%のナノ粒子負荷が明らかになった。
【0088】
乾燥後、標準的なAATCC LP1:Machine Washプロトコルに従って、市販の洗浄/乾燥ユニットでフェイスマスクを十分に洗浄した。試験では、各布地について、60個の処理済みサンプルを60個の未処理対照サンプルと比較した。
【0089】
ブタにおいて胃腸感染症を引き起こすアルファコロナウイルスであるTGEV(伝染性胃腸炎ウイルス)を、SARS-CoV-2の代用として使用した。TGEVを増殖させ、ST(ブタ精巣)細胞で滴定した。細胞を、抗生物質及びウシ胎児血清を補充したイーグルのMEM培地中で増殖させた。
【0090】
ウイルス回収培地(4% FBSを含むMEM培地)のアリコート(1mL)を27本の丸底13mLプラスチック遠心管(Falcon)に分配した。27本のウイルス回収チューブをそれぞれ9本ずつ3つのグループに分けた。群1を対照としてマークし、群2を処理としてマークし、群3を浸出粒子対照(処理済み対照)としてマークした。各群において、3つの異なる時点(10分、30分、60分)でのウイルス回収のために3つのチューブを割り当てた。
【0091】
2つの正方形ペトリ皿を対照及び処理としてマークした。パラフィルム正方形(2×2cm)を切断し、各ペトリ皿に9つのパラフィルム正方形を配置した。4アリコート(75μL)のTGEV懸濁液(初期力価=約6.5 Log TCID50/mL)を各パラフィルム正方形の中心に置いた。9つの未処理(対照)及び9つの処理済みナイロン/綿標本を、それぞれ対照マーク及び処理マークのペトリ皿の各パラフィルムスクエアの表面上に置き、ウイルス液滴を試験したテキスタイルとパラフィルムスクエアとの間に挟んだ。ウイルス液滴は親水性であるため、テキスタイル標本によって直ちに吸収された。
【0092】
各接触時点(10分、30分、60分)の後、3つのサンプルのセット(3連)を対照及び処理ペトリ皿から取り出し、各サンプルセット(吸収されたウイルス及びパラフィルムスクエアを有する試験された標本)を群1及び2の対応するウイルス回収チューブに移した。生存しているウイルス粒子を回収するために、すべてのウイルス回収チューブを、サンプルセットをそれぞれに移した直後に2分間ボルテックスした。
【0093】
ウイルス回収群3では、処理済みテキスタイル標本を最初に各チューブに移し、2分間ボルテックスした後、ウイルスの75μLアリコートを(布地と直接接触させずに)各チューブに直接添加した。これは、ウイルス粒子の画分が、布地からのウイルスの回収後にウイルス回収溶液中に浸出した可能性があるテキスタイル有効成分との接触によって不活性化されたかどうかを知るために行われた。
【0094】
回収培地に回収した生存ウイルスの力価は、50%組織培養感染用量(TCID50)法により行った。各サンプルの回収培地から連続10倍希釈液を調製した。これらの希釈物を、希釈物あたり3ウェルを使用して96ウェルマイクロタイタープレートで調製したST細胞の80%コンフルエントな単層に接種した(各サンプル希釈物100μL/ウェル)。
【0095】
感染細胞を、5% COインキュベーターにおいて37℃で最大5日間インキュベートし、細胞変性効果(CPE)の出現について倒立顕微鏡下で毎日試験した。感染細胞の50%でCPEを産生したウイルスの最も高い希釈をエンドポイントと見なした。次いで、各サンプル中の生存ウイルスの力価をKarber法(Karber,G.(1931).50% end point calculation.Archiv fur Experimentelle Pathologie und Pharmakologie,162,480-483)で計算し、log10 TCID50/サンプルとして表した。
【0096】
実験全体を別の日にもう1回繰り返した。両方の実験は、各接触時間について3連のサンプルを使用し、したがって結果は、6連の平均として示されている。
【0097】
ウイルス不活化に対する作用様式に関するいくらかの洞察を得るために、対照サンプル及び処理済みサンプルからのウイルス回収後の溶出緩衝液中のウイルスゲノムコピー数を定量した。ウイルスRNAを、QIAamp DSP Viral RNA Mini Kit(Qiagen、ドイツ)を製造者の説明書に従って使用して140μLのサンプルから抽出した。RNAを100μLの溶出緩衝液で溶出し、ウイルスゲノム定量に使用するまで-80℃で保存した。RT-qPCRのために、本発明者らは、Table5に示すPCRプライマーセット及びプローブを使用した。RT-qPCRプライマーは、保存された146bp領域[(TGEV-GenBankアクセション番号:KX900410.1の配列に関して)に関してTGEV S遺伝子のヌクレオチド370と515との間の領域に対応する]を標的とするように設計した。プライマー及びプローブは、Integrated DNA Technologies(IDT,Coralville,IA)によって製造された。AgPath-ID One-Step RT-PCRキット(Applied Biosystems by Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を用いて反応を行った。
【0098】
反応混合物(25μL)は、5μLの鋳型RNA、12.5μLの2XRT-PCR緩衝液、1μLの25XRT-PCR酵素ミックス、0.50μLの10μMフォワードプライマー(最終濃度200 nM)、0.50μLの10μMリバースプライマー溶液(最終濃度200nM)、0.30μLの10μMプローブ(最終濃度120nM)及び5.20μLのヌクレアーゼフリー水からなった。RT-qPCRをQuantStudio(商標)5 PCRサーモサイクラーシステム(Thermo Fisher Scientific,Applied Biosys(商標)、カタログ番号:A28140)で行った。逆転写を45℃で10分間行った。Taqポリメラーゼ活性化を95℃で15分間行い、続いて95℃/15秒の変性工程及び58℃で45秒間のアニーリング/伸長工程を用いて45回の増幅サイクルを行った。各サイクルのアニーリング工程の終了時に蛍光を測定した。RT-qPCRの各実行において、標準曲線サンプル及び鋳型なし対照をそれぞれ陽性対照及び陰性対照として使用した。
【0099】
ウイルスゲノムコピー数の絶対定量のためにTGEV標準/検量線を構築し、本発明者らは、TGEV S遺伝子の557bp RT-PCR精製アンプリコン(RT-qPCRプライム/プローブセットの146bp標的配列を含む)の連続10倍希釈物を使用した。557bpのTGEV S遺伝子断片は、Table5に示す自社開発のプライマーセットを用いてRT-PCR反応により生成された。結果をサイクル閾値(Ct)値として表した。Ct値及び標準曲線を使用して、TGEVの絶対ゲノムコピー数を計算し、ゲノムコピー/サンプルとして表した。
【0100】
以下のTable5は、この例の各PCR反応に使用したTaqManベースのTGEV RT-qPCRのオリゴヌクレオチドを示す。+極性はウイルスセンスを示し、-極性はアンチ-ウイルスセンスを示す。位置は、参照としてのTGEVゲノム(GenBankアクセション番号:KX900410.1)の対応するヌクレオチド位置である。
【0101】
【表5】
【0102】
ここに示す結果は、6連の幾何平均である。一元配置ANOVAを実施し、平均間の差の有意性を、有意性=0.05でのテューキー検定を用いた対比較によって実施した。以下のTable6は、10分、30分及び60分の接触時間後にナイロン/綿テキスタイル標本から回収された生存TGEV力価及びTGEVゲノムコピー数の要約である。
【0103】
【表6】
【0104】
10分、30分及び60分の接触時間後にナイロン-綿テキスタイル標本から回収された感染性TGEV粒子の力価を、図20として示される棒グラフに示す。列は6連の幾何平均である。エラーバーは、±1の幾何標準偏差を表す。散乱した緑色の線が検出の限界である。各列ベースの同じ文字は、各接触時間p≧0.05で互いに有意に異ならない幾何学的手段を示す。各時点において、1つ目の棒は未処理であり、2つ目の棒は処理済み対照であり、3つめの棒は処理済みテキスタイルサンプルである。
【0105】
ナイロン-綿テキスタイル標本との10、30、及び60分の接触時間後の感染力価(それぞれ1つ目の棒)及びウイルスゲノムコピー(それぞれ2つ目の棒)の対数減少数を、図21として示される棒グラフに示す。列は算術平均であり、エラーバーは±1標準偏差を表す。各列ベースの同じ文字は、各接触時間p≧0.05で互いに有意に異ならない幾何学的手段を示す。PTR=ウイルス力価低下のパーセンテージ。
【0106】
10分、30分及び60分の接触時間後にフェイスマスクテキスタイル標本から回収された生存TGEV力価及びTGEVゲノムコピー数の要約を以下のTable7に示す。TCID50は、50%組織培養感染用量である。
【0107】
【表7】
【0108】
10分、30分及び60分の接触時間後にフェイスマスクテキスタイル標本から回収された感染性TGEV粒子の力価を、図22に示す。各時点において、1つ目の棒は未処理サンプルであり、2つ目の棒は処理済み対サンプル照であり、3つめの棒は処理済みサンプルである。列は6連の幾何平均である。エラーバーは、±1の幾何標準偏差を表す。散乱した緑色の線が検出の限界である。各列ベースの同じ文字は、各接触時間p≧0.05で互いに有意に異ならない幾何学的手段を示す。
【0109】
図23は、ナイロン-綿テキスタイル標本との10、30及び60分の接触時間後の感染力価(1つ目の棒)及びウイルスゲノムコピー(2つ目の棒)のLog10減少のグラフである。列は算術平均であり、エラーバーは±1標準偏差を表す。各列ベースの同じ文字は、各接触時間p≧0.05で互いに有意に異ならない幾何学的手段を示す。PTR=ウイルス力価低下のパーセンテージ。
【0110】
結果は、処理済みテキスタイル(ナイロン-綿及びフェイスマスク材料)の両方が、有機負荷(ウイルス懸濁液中のFBSの形態)の存在下、湿潤条件下で接触10分以内に3桁を超える感染性TGEV(≧99.9%)を中和することができたことを示している。TGEVゲノムコピー数のより低い減少は、ウイルスエンベロープ及び/又はカプシドタンパク質に対するテキスタイル活性成分の影響によって、中和されたウイルス粒子の大部分が不活性化されたことを示している。減少したウイルスゲノムの割合が小さいことは、ウイルスカプシドの崩壊が、処理済みテキスタイルとの10分間の接触中にウイルス粒子の約90%以上で起こったことを示している。高いタンパク質有機負荷の存在にもかかわらず、ナノコンポジット材料の強力な殺ウイルス効力は、この効力が、Covid-19などのウイルスが排出されるヒトの痰の液滴の高いタンパク質含有量によって影響されないことを示す。
【0111】
例7
ポリエステル、絹及びナイロン/綿テキスタイルを使用して、テキスタイルを硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛及び塩化亜鉛に0.1~0.75Mの理想的な濃度範囲で30分間浸漬し、続いて乾燥するまで従来のオーブンで100℃に加熱することによってナノコンポジット材料を作製した。次いで、ナノコンポジット材料を、AATCC 30の方法によりカンジダ・アルビカンス(Candida Albicans)の真菌株に曝露した。カンジダ・アルビカンス(Candida Albicans)のレベルを、ナノコンポジットテキスタイル並びに同等の未処理テキスタイルの両方への曝露直後(時間0)及び曝露の24時間後に測定した。結果を以下のTable8~10に示す。時間0及び24時間における各サンプルの最小値、最大値及び平均値を含む。未処理のテキスタイルのすべてにおいて、24時間後に真菌の量の増加があった。処理済みテキスタイルのすべてにおいて、時間0で真菌の量の有意な即時減少があり、続いて24時間で真菌が完全に除去された。
【0112】
【表8】
【0113】
【表9】
【0114】
【表10】
【0115】
例8
別の例では、ナノコンポジット材料を米国の工業用テキスタイル工場で製造した。ポリエステル/綿ブレンド布地材料を、イオン性前駆体溶液並びに他の仕上げ剤で満たされた処理浴に浸漬した。具体的には、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、及び塩化亜鉛を0.1~0.75M溶液の理想濃度範囲で、布地柔軟剤、蛍光増白剤、及び汚れ除去剤を含む溶液と組み合わせて使用した。次いで、布地を工業用加熱システムに通し、150℃で約3分間加熱した。次いで、最終布地を巻き取り、抗ウイルス及び抗菌効果試験のためにサンプルをVartest Laboratories LLCに送った。スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus Aureus)及びクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella Pneumoniae)を使用して、AATCC 100プロトコルに従って抗菌効果の試験を行った。結果を図24に示すグラフに示す。抗ウイルス効果を、ヒトコロナウイルスOC43を利用するISO 18184試験プロトコルを使用して試験した。
【0116】
有効性試験は、受け取ったままのナノコンポジット材料に対して行い、標準化された洗浄方法であるAATCC TM96仕様VIcに従って50回洗浄した後に行った。結果を以下のTable11に示し、パーセントは、対照と比較してコロニー形成単位/ミリリットルで測定された細菌減少率を示す。
【0117】
【表11】
【0118】
本明細書で使用される場合、「実質的に」又は「一般に」という用語は、動作、特徴、特性、状態、構造、アイテム、又は結果の完全又はほぼ完全な程度又は度合を指す。例えば、「実質的に」又は「一般的に」囲まれている物体は、物体が完全に囲まれているか、又はほぼ完全に囲まれていることを意味する。絶対的完全性からの正確な許容可能な逸脱度は、場合によっては、特定の状況に依存し得る。しかし、その完成の近さは、絶対的かつ全体的な完成が得られた場合と一般に同じ全体的な結果をもたらすだろう。「実質的に」又は「一般的に」の使用は、動作、特徴、特性、状態、構造、アイテム、又は結果の完全又はほぼ完全な欠如を指す否定的な意味合いで使用される場合にも等しく適用可能である。例えば、元素を「実質的に含まない」又は「一般に含まない」元素、組み合わせ、態様又は組成物は、その有意な効果がない限り、そのような元素を実際に含有し得る。
【0119】
上記の説明では、例示及び説明の目的で本発明の様々な態様が提示されている。それらは網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして、明らかな修正又は変形が可能である。態様は、本発明の原理及びその実際の用途の例示を提供し、当業者が本発明を様々な態様で、企図される特定の用途に適した様々な修正を加えて利用することを可能にするために選択及び説明された。すべてのそのような修正及び変形は、それらが公正に、法的に、及び公平に権利を与えられる幅に従って解釈される場合、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】