(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】近IR分光法を使用してニワトリ卵の性質及び/又は卵の内側のニワトリ胚の性質を決定する非侵襲的方法、それぞれのシステム、及びその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 21/359 20140101AFI20240123BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20240123BHJP
A01K 43/00 20060101ALI20240123BHJP
G01N 33/08 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
G01N21/359
G01N21/59 Z
A01K43/00
G01N33/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561914
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086509
(87)【国際公開番号】W WO2022129537
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523231288
【氏名又は名称】アグリ アドバンスト テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】フルリン イェルク
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB11
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH01
2G059JJ01
2G059JJ05
(57)【要約】
【課題】鳥卵、特にニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の1又は2以上の性質を決定する便利で迅速かつ確実な方法を提供する。
【解決手段】 近IR分光法を使用して鳥卵、特にニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の1又は2以上の性質を決定する非侵襲的方法を説明する。より具体的には、鳥胚内の鳥胚、特にニワトリ胚の性別を決定する非侵襲的方法を本明細書に説明する。更に、鳥卵、特にニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の1又は2以上の性質を非侵襲的に決定するためのシステム、並びに本明細書に説明するシステム及び/又は方法でのマルチチャネル分光計、小型回折格子分光計、及びモノリシック小型分光計から選択される分光計及び特にそのためのコンピュータプログラムの使用を本明細書に説明する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は該卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を決定する非侵襲的方法であって、
少なくとも以下の段階:
M1)鳥卵を取得する段階、
M2)段階M1)で取得された前記卵を光源からの少なくとも≧700nmから≦900nmの波長の範囲にわたって延びるスペクトルを有する光で検卵照射する段階、
M3)前記卵を透過した光を取り込む段階であって、該取り込まれた透過光が、段階M2)で該卵を検卵照射するのに使用された前記光の一部分である前記取り込む段階、
M4)各場合に段階M2)で定めるような≧700nmから≦900nmの前記波長の範囲の予め定められた波長部分範囲である1又は2以上の特異波長範囲に基づいて、段階M3)で取り込まれた前記透過光の透過スペクトルを取得する段階、及び
M6)段階M4)で取得された前記透過スペクトルに基づいて前記鳥卵の前記1又は2以上の性質及び/又は該卵の内側の前記鳥胚の前記1又は2以上の性質を決定する段階、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記鳥卵の前記1つの性質又は前記より多くの性質のうちの1つが、該卵の受精状態及び該卵の胚芽負荷から構成される群から選択され、及び/又は
前記卵の内側の前記鳥胚の前記1つの性質又は前記より多くの性質のうちの1つが、該鳥胚の発育状態、該鳥胚の活力、及び該鳥胚の性別から構成される群から選択され、及び/又は
追加の段階M5)として以下の段階:
M5)段階M4)で取得された前記1又は2以上の特異波長範囲内の前記透過光の前記透過スペクトル又は該透過スペクトルに基づく吸光スペクトルをそれぞれ同じ1又は2以上の特異波長範囲内の予め定められたデータベースからの対応する透過スペクトル又は対応する吸光スペクトルと比較する段階であって、特に該特異波長範囲内の該対応する透過スペクトル又は該対応する吸光スペクトルが、前記鳥卵、好ましくはニワトリ卵の前記1又は2以上の性質の及び/又は該卵の内側の前記鳥胚、好ましくはニワトリ胚の前記1又は2以上の性質の既知の値を定める前記比較する段階、
を備え、及び/又は
段階M6)として以下の段階:
M6)前記鳥卵、好ましくは前記ニワトリ卵の前記1又は2以上の性質及び/又は該卵の内側の前記鳥胚、好ましくは前記ニワトリ胚の前記1又は2以上の性質を段階M4)で取得された前記透過スペクトルに基づいて、及び/又は段階M4)で取得された前記1又は2以上の定められた特異波長範囲内の前記透過光の該透過スペクトル又は該透過スペクトルに基づく前記吸光スペクトルを段階M5)で定めるような前記それぞれ同じ1又は2以上の特異波長範囲内の予め定められたデータベースからの前記対応する透過スペクトルと又は前記対応する吸光スペクトルと比較した結果に基づいて決定する段階、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法が、前記卵の内側のニワトリ胚の性別を決定する非侵襲的方法であり、
好ましくは、
段階M1)として以下の段階:
M1)ニワトリの性別に基づいて該ニワトリの羽毛色の分化を生成する品種のニワトリから卵を取得する段階、及び/又は
追加の段階M5)として以下の段階:
M5)段階M4)で取得された前記1又は2以上の特異波長範囲内の前記透過光の前記透過スペクトル又は該透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを該それぞれ同じ1又は2以上の特異波長範囲内の予め定められたデータベースからのそれらの卵の内側のニワトリ胚の既知の性別を定める対応する透過スペクトル又は対応する吸光スペクトルと比較する段階、及び/又は
段階M6)として以下の段階:
M6)前記卵の内側の前記ニワトリ胚の前記性別を段階M4)で取得された前記透過スペクトルに基づいて、及び/又は段階M4)で取得された前記1又は2以上の定められた特異波長範囲内の前記透過光の該透過スペクトル又は該透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを段階M5)で定めるような前記それぞれ同じ1又は2以上の特異波長範囲内の予め定められたデータベースからの対応する透過スペクトルと又は対応する吸光スペクトルと比較した結果に基づいて決定する段階、
を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
段階M1)で取得される前記卵は、
一方の性別に対して褐色又は褐色系の羽毛及び反対の性別に対して白色又は黄色系の羽毛を生成する品種のニワトリから取得され、及び/又は
好ましくはハイラインブラウン種のニワトリ、ローマンブラウン種のニワトリ、及びISAブラウン種のニワトリから構成される群から選択された褐色卵産卵種のニワトリであるニワトリの品種から取得され、及び/又は
有精卵である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階M1)で取得される前記卵は、産卵後≧9日から≦15日の範囲、好ましくは≧12日から≦14日の範囲、より好ましくは≧13から≦14日の範囲の期間にわたって温置されたものであり、及び/又は
段階M2)で前記卵を検卵照射するのに使用される前記光は、少なくとも≧720nmから≦870nm、好ましくは>750nm又は≧750nmから≦870nmの波長範囲にわたって延びるスペクトルを有する光である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記卵を透過する前記光は、該卵の面上の定められた測定スポット内で段階M3)で取り込まれ、
前記測定スポットは、
≧0.5から≦2.5cm、好ましくは≧1から≦2.3cmの範囲内の直径を有し、及び/又は
前記卵の面上の≧0.2から≦5cm
2、好ましくは≧0.8から≦4cm
2の範囲内の面積にわたって延びる、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
段階M1)が、
複数の区画を有するキャリア、好ましくはキャリアラックを与える段階であって、各区画が、鳥卵、好ましくはニワトリ卵を受け入れるように各々が構成され、区画が、散乱光の量を低減するための仕切り壁によって互いから分離され、好ましくは該キャリア、好ましくは該キャリアラックが、区画に置かれた鳥卵、好ましくはニワトリ卵を光源を用いて検卵照射することを可能にするようにかつ該卵を透過した光を取り込むことを可能にするように構成される前記与える段階、及び
前記キャリア、好ましくは前記キャリアラックの区画に前記鳥卵、好ましくは前記ニワトリ卵を置く段階、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
段階M2)で前記卵を検卵照射するための前記光源は、ハロゲンランプ、好ましくはタングステンハロゲンランプであり、
前記ハロゲンランプは、
≧35W、好ましくは≧40W、より好ましくは≧50W、かつ好ましくは≦75Wの電力、及び/又は
≧1000cd、好ましくは≧1100cd、より好ましくは≧1200cd、更に好ましくは≧1300cdの光度、
を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
段階M4)の前記1又は2以上の特異波長範囲は、
≧720nmから≦760nmの波長範囲、
≧730nmから≦830nmの波長範囲、
≧750nmから≦870nm、好ましくは>750nm又は≧750nmから≦830nmの波長範囲、及び
≧800nmから≦870nmの波長範囲、
から構成される群から選択され、及び/又は
方法が、段階M5)として以下の段階:
M5)≧720nmから≦760nmの波長範囲、
≧730nmから≦830nmの波長範囲、
≧750nmから≦870nm、好ましくは>750nm又は≧750nmから≦830nmの波長範囲、及び
≧800nmから≦870nmの波長範囲、
から構成される波長範囲の群から選択される前記1又は2以上の特異波長範囲内で、段階M4)で取得された前記透過光の前記透過スペクトル又は該透過スペクトルに基づく吸光スペクトルをそれぞれ同じ該1又は2以上の特異波長範囲内の予め定められたデータベースからのそれらの卵の内側のニワトリ胚の既知の性別を定める対応する透過スペクトル又は対応する吸光スペクトルと比較する段階、
を備え、及び/又は
方法が、段階M6)として以下の段階:
M6)段階M5)で定めるような前記1又は2以上の定められた特異波長範囲内で段階M4)で取得された前記透過光の前記透過スペクトル又は該1又は2以上の定められた特異波長範囲内の該透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを段階M5)で定めるようなそれぞれ同じ該1又は2以上の特異波長範囲内でそれらの卵の内側のニワトリ胚の既知の性別を定める対応する透過スペクトルと又は対応する吸光スペクトルと比較した結果に基づいて、該卵の内側の前記鳥胚、好ましくは該ニワトリ胚の該性別を決定する段階、
を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
方法が、段階M5)を備え、段階M6)では、前記鳥胚の性別、好ましくは前記ニワトリ胚の性別を決定する段階が、段階M4)で取得された前記透過スペクトルに基づいて決定された吸光スペクトルと、段階M2)で前記卵を検卵照射するのに使用された前記光の測定スペクトルである較正スペクトルとに基づくものであり、
好ましくは、前記吸光スペクトルがそれに基づいて決定された前記透過スペクトルは、暗電流スペクトルに基づいて補正され、該暗電流スペクトルは、光が前記卵を透過しないことを除いて、段階M4)の該透過スペクトルと等しい状況下で取得されたスペクトルに対応する、
ことを特徴とする請求項2から請求項9のいずれか1項、好ましくは請求項3から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
段階M6)では、前記鳥胚、好ましくは前記ニワトリ胚の前記性別は、組合せ値が予め決められた閾値よりも上又は下にあるか否かを決定することによって決定され、前記組合せ値は、異なる波長でのスペクトル吸収関数の値の組合せを意味し、該スペクトル吸収関数は、前記吸光スペクトルの導関数を取ることによって及び/又は該吸光度スペクトルを平滑化することによって該吸光スペクトルに基づいて決定され、
好ましくは、前記組合せ値は、異なる波長での前記スペクトル吸収関数の値の線形組合せを意味し、該線形組合せの係数が、それらの卵の内側のニワトリ胚の統計集団に関して決定されたスペクトル吸収関数に対して実行された主成分分析からもたらされる1又は2以上の主成分の係数から決定され、好ましくは、前記予め決められた閾値はゼロであり、及び/又は
段階M6)では、前記鳥胚、好ましくは前記ニワトリ胚の前記性別は、組合せ値に基づいて決定され、該組合せ値は、異なる波長での前記スペクトル吸収関数の値の組合せを意味し、
好ましくは、前記組合せ値は、前記スペクトル吸収関数の1又は2以上の主成分から決定され、該1又は2以上の主成分は、それらの卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の統計集団に関して決定されたスペクトル吸収関数に対して実行された主成分分析を意味する、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
主成分分析からもたらされる1又は2以上の主成分が、前記組合せ値を決定する段階に関わっており、該1又は2以上の主成分のうちの少なくとも1つが、第1の主成分及び第3の主成分から構成される群から選択され、
好ましくは、
前記1又は2以上の主成分は、前記第1の主成分及び前記第3の主成分であり、及び/又は
前記1又は2以上の主成分は、第2の主成分を備えない、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は該卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を非侵襲的に決定するための好ましくは該卵の内側のニワトリ胚の性別を非侵襲的に決定するためのシステムであって、
少なくとも以下の要素:、
S1)少なくとも≧700nmから≦900nmの波長範囲にわたって延びるスペクトルを有する光で前記卵を検卵照射するための光源、
S2)透過光を取り込むための光取り込み手段であって、該取り込まれた透過光が、要素S1)に定めるようなスペクトルを有する前記卵を検卵照射するための前記光の一部分であり、該部分が該卵を透過する前記光取り込み手段、
S3)要素S2)に定めるような前記取り込まれた透過光の透過スペクトルを取得するための分光計であって、該透過スペクトルが、1又は2以上の特異波長範囲に基づくものであり、該1又は2以上の特異波長範囲が、各場合に≧700nmから≦900nmの該波長範囲のうちの予め定められた波長部分範囲である前記分光計、及び
S4)前記透過スペクトルに基づいて、前記鳥卵、好ましくは前記ニワトリ卵の前記1又は2以上の性質及び/又は該卵の内側の前記鳥胚、好ましくは該卵の内側の前記ニワトリ胚の前記1又は2以上の性質を決定するためのより好ましくは該卵の内側の該ニワトリ胚の前記性別を決定するための決定ユニット、
を備え、
好ましくは、前記分光計S3)は、マルチチャネル分光計、小型回折格子分光計、及びモノリシック小型分光計から構成される群から選択される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は該卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の性質を非侵襲的に決定するための好ましくは該卵の内側の鳥胚の性別を非侵襲的に決定するためのシステムでの及び/又は方法でのマルチチャネル分光計、小型回折格子分光計、モノリシック小型分光計、及びその組合せから構成される群から選択された分光計の使用であって、
好ましくは、前記卵は、前記ニワトリの前記性別に基づいて、該ニワトリの羽毛色の分化を生成するニワトリの品種から取得されたニワトリ卵である、
ことを特徴とする使用。
【請求項15】
請求項1から請求項12のいずれか1項に定めるような方法の段階M1)からM4)に従って取得された透過スペクトルに基づいて鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は該卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を決定するためのコンピュータプログラムであって、
プログラムがコンピュータによって実行された場合に請求項1から請求項12のいずれか1項に定めるような前記方法の段階M5)及び/又はM6)を該コンピュータに実行させる命令、
を備えることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近IR分光法を使用して鳥卵、特にニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の1又は2以上の性質を決定する非侵襲的方法に関する。より具体的には、本発明は、卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の性別を決定する非侵襲的方法に関する。本発明は、更に、鳥卵、特にニワトリ卵の1又は2以上の性質、及び/又は卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の1又は2以上の性質を非侵襲的に決定するためのシステムに関連し、並びに本発明のシステムでの及び/又は方法でのマルチチャネル分光計、小型回折格子分光計、及びモノリシック小型分光計から選択される分光計の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人間食物消費又はニワトリ繁殖のための鳥卵、特にニワトリ卵(用語「鶏卵」に対して本明細書で同義に使用される)の生産は、今日では、多くの場合に産業ベースで実施される。生産される大量の卵に起因して、卵の及び卵の内側の胚の品質及び性質を制御するための迅速かつ確実な方法が必要である。制御された品質の鳥卵、特にニワトリ卵を必要とする別の産業分野は、ワクチン、特にインフルエンザワクチンの生産である。不活化ワクチン、並びに弱毒生ワクチンを生成するのに、現時点でいわゆる「卵由ベースのワクチン製造工程」が使用される。
【0003】
従って、卵生産、ニワトリ繁殖、及び卵由ベースのワクチン製造工程では、卵の性質、例えば、卵の受精状態(受精又は未受精)又は卵の(内部)胚芽負荷に関する迅速かつ確実な情報を取得することに非常に重大な関心がある。主としてニワトリ卵生産及びニワトリ繁殖では、卵の内側のニワトリ胚の性質、例えば、ニワトリ胚の発育状態、ニワトリ胚の活力、及びニワトリ胚の性別にもより特殊な関心がある。ニワトリ卵又はその内側のニワトリ胚の性質が決定された状態で、望ましい性質を有するニワトリ胚を備える卵を識別し、更に使用することができる。
【0004】
例えば、卵生産に向けて繁殖される採卵鶏の繁殖は、通常は経済性及び製品品質の理由から肉生産にはそれほど適さない。従って、これらの産卵繁殖の雄雛は、殆どの場合に飼育されず、現状では多くの場合に孵化後に屠殺される。この既存方式は、経済性の観点から不十分であるばかりではなく、倫理的観点からも非常に望ましくないので、孵化後の雄雛を殺処分することを回避するための努力が暫くの間行われている。
【0005】
いくつかの文献は、鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を決定する段階を含む鳥卵を孵化させる方法を既に扱っており、取りわけ以下のものが挙げられる:
文献US 5,575,237は、鳥卵を孵化させる方法を開示している。
文献WO 2010/150265 A2は、卵の受精及び性別のハイパースペクトル識別に関するものである。
文献WO 2014/033544 A2は、ニワトリ胚羽毛色の分光光度分析を扱っている。
文献WO 2019/174661 A1は、有精卵を検査するためのデバイスを説明している。
D.Gohler他は、Poultry Science(2017年)96(1):1~4ページで性別独特の綿羽色を有する産卵鶏に関する非破壊的な方法であるハイパースペクトル画像(VIS/NIRスペクトル)でのパターン解析による日齢14のニワトリ胚の卵内性別鑑別を報じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 5,575,237
【特許文献2】WO 2010/150265 A2
【特許文献3】WO 2014/033544 A2
【特許文献4】WO 2019/174661 A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】D.Gohler他、Poultry Science(2017年)96(1):1~4ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存従来技術に鑑みて、鳥卵、特にニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の1又は2以上の性質を決定する便利で迅速かつ確実な方法に対する必要性が依然として存在する。
【0009】
相応に、鳥卵、特にニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の1又は2以上の性質を決定する便利で迅速かつ確実な方法を提供することが本発明の主目的である。本発明のより具体的な目的は、卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の性別を決定する非侵襲的方法に関するものである。
【0010】
本発明の別の目的は、鳥卵、特にニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の1又は2以上の性質を非侵襲的に決定するための簡易かつ廉価なシステムを提供することである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、ある一定のタイプの分光計の適用分野を拡張することに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の主目的及び他の目的は、少なくとも以下の段階:
M1)鳥卵、好ましくはニワトリ(採卵鶏)からの卵を取得する段階、
M2)段階M1)で取得された卵を光源からの少なくとも≧700nmから≦900nmの波長範囲に及ぶスペクトルを有する光で検卵照射する段階、
M3)段階M2)で卵を検卵照射するのに使用された光の一部分である卵を透過した光を取り込む段階、
M4)段階M3)で取り込まれた透過光の透過スペクトルを各場合に段階M2)で定めた≧700nmから≦900nmの波長範囲の予め定められた波長部分範囲である1又は2以上の特異波長範囲に基づいて取得する段階、及び
M6)段階M4)で取得された透過スペクトルに基づいて、好ましくはこの透過スペクトルの1又は2以上の特異波長範囲だけに基づいて、鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の性質を決定する段階、
を備える鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の性質を決定する非侵襲的方法によって達成することができることが現時点で見出されている。
【0013】
本発明及びその好ましい変形及びパラメータと性質と要素との好ましい組合せを特許請求の範囲内で定める。更に、本発明の好ましい態様、詳細、修正を以下の説明及び以下に示す例で定義及び説明する。
【0014】
本発明の非侵襲的方法は、未孵化の鳥(好ましくはニワトリ)卵の受精状態(受精又は未受精)、未孵化の鳥(好ましくはニワトリ)卵の(内部)胚芽負荷、卵の内側の未孵化の鳥(好ましくはニワトリ)胚の活力、未孵化の鳥(好ましくはニワトリ)胚の発育状態(卵の内側の)、及び未孵化の鳥(好ましくはニワトリ)胚の性別を検出又は決定するのに非常に適切であることが自験で見出されている。
【0015】
本発明による非侵襲的方法の段階M1)では、鳥卵が取得される。好ましい鳥卵は、ニワトリからの卵(すなわち、採卵鶏の卵)である。本発明の方法の好ましい変形では、下記でより詳細に説明するように、卵は、性別の一方で褐色又は褐色系の羽毛を生成し、性別の反対の方で白色又は黄色系の羽毛を生成する品種のニワトリから取得される。
【0016】
本発明による非侵襲的方法の段階M2)では、卵は、光源からの少なくとも≧700nmから≦900nmの波長範囲に及ぶスペクトルを有する光で検卵照射される。好ましくは、卵は、下方から検卵照射される。光源からの光を卵の長軸又は短軸に沿って卵に透過させることが好ましい。
【0017】
本発明による非侵襲的方法の段階M3)では、卵を透過した光は、好ましくは、下記で説明する光取り込み手段によって取り込まれる。取り込まれた透過光は、段階M2)で卵を検卵照射するのに使用された光の一部分であり、好ましくは、残余光(取り込まれない)又は少なくともその大部分は、卵又はその中身によって吸収される。この場合に、卵は、検卵照射に使用される光源から卵に光が直接入射するように検卵照射することができると考えられる。しかし、他の場合に、検卵照射に使用される光源は、そこからの光が卵に直接入射しないように卵までの非ゼロ距離に配置することができると考えられる。より一般的には、特に、光が直接に卵の面上で取り込まれない場合、及び/又は卵を検卵照射するのに使用される光が、それを取り込む場所にフォーカスされる及び/又は方向付けされた光ビームではない場合に、光の一部は、卵に入射した後に取り込まれることなく再び卵を射出する可能性があると考えられる。従って、上記で言及した残余光、すなわち、取り込まれない光が、卵又はその中身によって吸収された光と、卵に入射しなかったか又は卵に入射したが取り込まれることなく卵を射出した光とを備えることを好ましいこととすることができる。
【0018】
本発明による非侵襲的方法の段階M4)では、段階M3)で取り込まれた透過光の透過スペクトルが取得される。好ましくは、透過スペクトルは、下記でより詳細に説明するように、透過光が好ましくは適切な導光手段によって誘導される適切な分光計によって取得される。段階M3)で取り込まれた透過光の透過スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲に基づいて取得することは、一例では取得スペクトルが特異波長範囲のみを備えることを意味することができる。より一般的には、透過スペクトルは、特異波長範囲では取得透過スペクトル内のいずれの他の場所よりも高い精度で取得することができ、精度は、例えば、透過光に関して決定される損失の不在又は透過光の実際又は真のスペクトルに対する取得スペクトルの忠実度を意味することができる。実際に、段階M3)で取り込まれた透過光の透過スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲に基づいて取得することは、取得透過スペクトルが好ましくは十分な精度及び/又は忠実度で少なくとも特異波長範囲を備えることを意味することもある。いずれの場合にも、透過スペクトルがどのように取得されるか、従って、取得される透過スペクトルは、一般的に、透過スペクトルを取得するのに使用される技術手段、好ましくは、分光計の仕様に依存することになるが、例えば、導光手段にも依存することになる。従って、これらの技術手段、すなわち、特に分光計及び/又は例えば導光手段は、特異波長範囲に基づく透過スペクトルの取得を可能にすることに適応させることができると考えられる。
【0019】
本発明による非侵襲的方法の段階M6)では、鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の性質が決定される。好ましくは、本明細書で議論するように、段階M6)(段階M6)の好ましい変形を含む)でこれらの性質を決定するのに決定ユニット(下記でより詳細に説明する)が使用される。好ましくは、決定ユニットは、この目的に適応させたデータ処理ユニットを備える。好ましくは、データ処理ユニットは、本発明による目的に適切であるソフトウエアを更に備える。
【0020】
好ましいものは、
鳥卵、好ましくはニワトリ卵の性質のうちの1又は2以上が、卵の受精状態及び卵の(内部)胚芽負荷から構成される群から選択され、及び/又は
卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性質のうちの1又は2以上が、鳥胚、好ましくはニワトリ胚の発育状態、鳥胚、好ましくはニワトリ胚の活力、及び鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別から構成される群から選択され、及び/又は
以下の追加の段階M5):
M5)段階M4)で取得された透過光の透過スペクトル又はそれに基づく吸光スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲(好ましくは、1又は2以上の定められた特異波長範囲のみ)にある対応する透過スペクトル又は対応する吸光スペクトルであって、鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の性質の既知の値を特に1又は2以上の特異波長範囲で定める対応する透過スペクトル又は対応する上記吸光スペクトルと比較する段階、
を備え、及び/又は
以下の段階M6):
M6)鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の性質を段階M4)で取得された透過スペクトルに基づいて決定し、及び/又は段階M4)で取得された透過光の透過スペクトル又はそれに基づく吸光スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で(好ましくは、1又は2以上の特異波長範囲に限って)、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にある段階M5)で定めた対応する透過スペクトル又は対応する吸光スペクトルと比較した結果に基づいて決定する段階、
を備える本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法)である。
【0021】
本発明による非侵襲的方法の段階M5)では、段階M4)で取得された透過光の透過スペクトル又はそれに基づく吸光度スペクトルは、1又は2以上の特異波長範囲で、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にある対応する透過スペクトル又は対応する吸光スペクトルであって、決定される1又は2以上の性質(上述した又は下記で説明する)の既知の値を定める対応する透過スペクトル又は対応する上記吸光スペクトルと比較される。好ましくは、段階M5)(本明細書に説明する段階M5)の好ましい変形を備える)では、スペクトルを比較するのに(上述した又は下記で説明するように)、決定ユニット(下記でより詳細に説明する)が使用される。好ましくは、決定ユニットは、この目的に適応させたデータ処理ユニットを備える。好ましくは、データ処理ユニットは、本発明による目的に適切であるソフトウエアを更に備える。
【0022】
段階M5)による比較は、全スペクトルの代わりにその一部しか比較せず、従って、より少ないデータしか処理する必要はないので、当該の1又は2以上の性質の効率的な決定を可能にする。好ましくは、特異波長範囲は、決定される性質のタイプに基づいて、すなわち、卵及び/又は鳥類のタイプにも基づいて、更にトレーニングデータを形成するものと見なすことができると考えられる予め定められたデータベースからの取得透過スペクトルに基づいて予め決定される。決定される性質が既知であり(一般的に、決定される性質が卵の内側の胚の性別である場合に、孵化後の雛の従来の性別決定のようなスペクトル分析以外の手段を使用することにより)、この知識がトレーニングデータの一部である卵に関して取得されたスペクトルを備えるトレーニングデータの分析により、スペクトル内のある一定の波長範囲が、決定される性質を特定的に示すことを明らかにすることができ、次に、これらの波長範囲を特異波長範囲として選択することができる。この分析は、人間又は人工知能を実行することができる。例えば、段階M1)からM4)までに定めた取得スペクトル(上述した又は下記で説明する)を入力として受け入れ、それぞれの卵及び/又はその内側の胚に関して決定される1又は2以上の性質を出力として提供するように機械学習アーキテクチャを定められたスペクトルデータベース上でトレーニングすることができる。しかし、段階M5)で上述したように比較する段階は、多くの他の手法でもたらすことができる。一般的に、比較段階は、例えば、段階M1)からM4)までに定めたように取得され(上述した又は下記で説明するように)、特にデータベース内にもないスペクトルと、データベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にある対応するスペクトルの間の類似度を決定する段階と理解することができると考えられる。類似度が所与の閾値を超えた場合に、データベースからの各々のスペクトルによって定められる1又は2以上の性質の値が、取得スペクトルに対しても適用されると仮定することができると考えられる。類似度を測定するのに、2つの(個別)関数の間の基本的にあらゆる類似尺度を使用することができる。
【0023】
本発明による非侵襲的方法は、ニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側のニワトリ胚の1又は2以上の性質を決定するのに特に好ましい。
【0024】
本発明の方法により、上記で定めた段階M5)では、段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲(好ましくは、1又は2以上の定められた特異波長範囲のみ)にある対応する吸光スペクトルであって、鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の性質の既知の値を定める対応する上記吸光スペクトルと比較することが好ましい。
【0025】
本発明の方法により、上記で定めた段階M6)では、段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で(好ましくは、1又は2以上の特異波長範囲に限って)、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にある段階M5)で定めた対応する吸光スペクトルと比較した結果に基づいて鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の性質を決定することが好ましい。
【0026】
本発明の方法により、本明細書で定める「吸光スペクトル」は、好ましくは、段階M4)で取得された透過スペクトルと、段階M2)で卵を検卵照射するのに使用された光の測定スペクトルである較正スペクトルとに基づいて決定され、好ましくは、吸光スペクトルを決定するのに基づく透過スペクトルは、光が卵を透過しないことを除いて段階M4)の透過スペクトルと等しい状況下で取得されたスペクトルに対応する暗電流スペクトルに基づいて補正される。一例では、I0が較正スペクトルを指し、Itrが取得透過スペクトルを指し、Idarkが暗電流スペクトルを指す時に、吸光スペクトルIabをIab=I0-(Itr-Idark)として計算することができると考えられる。しかし、吸光スペクトルは、別様に定義又は計算することができると考えられる。透過スペクトルが、いずれの周囲光も存在することのない状態で取得される場合に、暗電流スペクトルを測定し、それを使用して吸光スペクトルを計算する必要はない可能性があると考えられる。本明細書に使用する「吸光スペクトル」という用語は、実際には吸光度、すなわち、吸光度スペクトルを意味することができると考えられる。一例では、I0が較正スペクトルを指し、Itrが取得透過スペクトルを指し、Idarkが暗電流スペクトルを指す時に、吸光度スペクトルを透過スペクトルからIab=log10[I0/(Itr-Idark)]として計算することができる。
【0027】
本発明の非侵襲的方法は、特に本明細書で定めるその具体的な又はより具体的な変形では、更に特定的には本方法では、性別の一方で1つの色の羽毛を生成し、性別の反対の方では別の色の羽毛を生成する鳥類からの卵が使用される時に、卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の性別を決定するのに非常に適切であることが自験で見出されている。そのような鳥類の好ましい例は、性別の一方で1つの色の羽毛を生成し、性別の反対の方では別の色の羽毛を生成する品種のニワトリ、特に、性別の一方で褐色又は褐色系の羽毛を生成し、性別の反対の方では白色又は黄色系の羽毛を生成する品種のニワトリである。そのような品種のニワトリは、当業技術で公知であり、例えば、「ハイラインブラウン」、「ローマンブラウン」(ドイツのLohmann Tierzucht GmbH)、又は「ISAブラウン」として公知の褐色卵産卵種のニワトリである。「ISAブラウン」は、性別に関する配色を有する異種交配種のニワトリである。「ISA」は、1978年にこの異種交配種を開発した企業である「Institut de Selection Animale」の頭文字である。
【0028】
従って、具体的な変形では、好ましくはニワトリ胚の性別を決定する非侵襲的方法であって、
段階M1)として
M1)性別に基づいて羽毛色の分化を生成する品種のニワトリからの卵を取得する段階、
を備え、及び/又は
追加の段階M5)として
M5)段階M4)で取得された透過光の透過スペクトル又はそれに基づく吸収スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にあり、好ましくは、1又は2以上の特異波長範囲だけにある対応する透過スペクトル又は対応する吸収スペクトルであって、ニワトリ胚の既知の性別を定める対応する透過スペクトル又は対応する吸収スペクトルと比較する段階、
を備え、及び/又は
段階M6)として
M6)ニワトリ胚の性別を段階M4)で取得された透過スペクトルに基づいて決定し、及び/又は段階M4)で取得された透過光の透過スペクトル又はそれに基づく吸収スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で、好ましくは、1又は2以上の定められた特異波長範囲のみで、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にある段階M5)で定めた対応する透過スペクトル又は対応する吸収スペクトルと比較した結果に基づいて決定する段階、
を備える、
本発明による上記方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法)が好ましい。
【0029】
本発明の方法により、上記で定めた段階M5)では、段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にあり、好ましくは、1又は2以上の定められた特異波長範囲だけにある対応する吸光スペクトルであって、ニワトリ胚の既知の性別を定める対応する吸光スペクトルと比較することが好ましい。
【0030】
本発明の方法により、上記で定めた段階M6)では、段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で、好ましくは、1又は2以上の定められた特異波長範囲のみで、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にある段階M5)で定めた対応する吸光スペクトルと比較した結果に基づいてニワトリ胚の性別を決定することが好ましい。
【0031】
更に具体的な変形では、ニワトリ胚の性別を決定する非侵襲的方法であって、
M1)性別に基づいて羽毛色の分化を生成する品種のニワトリからの卵を取得する段階、
M2)段階M1)で取得された卵を少なくとも≧700nmから≦900nmの波長範囲に及ぶスペクトルを有する光で検卵照射する段階、
M3)段階M2)で卵を検卵照射するのに使用された光の一部分である卵を透過した光を取り込む段階、
M4)段階M3)で取り込まれた透過光の透過スペクトルを各場合に段階M2)で定めた≧700nmから≦900nmの波長範囲の予め定められた波長部分範囲である1又は2以上の特異波長範囲に基づいて取得する段階、
M5)段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲、好ましくは、1又は2以上の定められた特異波長範囲だけにある対応する吸光スペクトルであって、ニワトリ胚の既知の性別を定める対応する吸光スペクトル(すなわち、対応する吸光スペクトルは基準スペクトルとして働きをする)と比較する段階、及び
M6)段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲で、好ましくは、1又は2以上の定められた特異波長範囲のみで、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にある段階M5)で定めた対応する吸光スペクトルと比較した結果に基づいてニワトリ胚の性別を決定する段階、
を備える本発明による上記方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法)が好ましい。
【0032】
同じく好ましい方法は、卵の内側のニワトリ胚の性別を決定する非侵襲的方法であって、段階M1)で取得される卵が、
性別の一方で褐色又は褐色系の羽毛、好ましくは、褐色又は褐色系の綿羽をもたらし、性別の反対の方では白色又は黄色系の羽毛、好ましくは、白色又は黄色系の綿羽をもたらす品種のニワトリから取得され、及び/又は
好ましくは、ハイラインブラウン種のニワトリ、ローマンブラウン種のニワトリ、及びISAブラウン種のニワトリから構成される群から選択される褐色卵産卵種のニワトリから取得され、及び/又は
有精卵である、
本発明による上記方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法)である。
【0033】
本発明による方法を使用することにより、卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の性別を決定する精度に関して鳥胚、特にニワトリ胚の羽毛色が、本方法を適用する時点で本方法での羽毛色の検出を十分な精度で可能にする程度まで発現されている時に特に良好な結果が取得されることが見出されている。多くの場合に、鳥胚、特にニワトリ胚、より具体的には本発明の方法で好ましくは使用される(上述のように)ニワトリ品種のニワトリ胚の羽毛色は、産卵後≧9日から≦15日の範囲、好ましくは、≧12日から≦14日の範囲、より好ましくは、≧13日から≦14日の範囲の期間にわたって温置された時に十分な程度まで発現されている。より一般的には、本発明の方法を適用する(上述した又は下記で説明するように)前に鳥卵が温置される期間は、卵の内側の鳥胚が、決定される性質を示す特徴を発現させて1又は2以上の特異波長範囲の胚及び/又は卵の光学特性、特に透過特性に影響を及ぼす時間に依存して選択することができると考えられる。鳥胚、特にニワトリ胚の綿羽は、その色が胚の性別に依存することができるので、そのような特徴の例とすることができる。
【0034】
更に、(好ましくは、性別の一方で1つの色の羽毛を生成し、性別の反対の方では別の色の羽毛を生成する鳥類、特にニワトリ品種からの卵が使用される場合に卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の性別を決定することに関する本発明の変形では)≧700nmから≦900nmの波長範囲又はその好ましい部分範囲、特に本明細書に説明する定められた特異的波長(部分)範囲から最も有意なスペクトル情報が取得されることが自験で見出されている。これらの発見は、特に、本発明の方法では使用される卵が、性別の一方で褐色又は褐色系の綿羽をもたらし、性別の反対の方では白色又は黄色系の綿羽をもたらす品種のニワトリから取得される時に適用される。
【0035】
その結果、
段階M1)で取得される卵(好ましくはニワトリ卵)が、産卵後≧9から≦15日の範囲、好ましくは、≧12日から≦14日の範囲、より好ましくは、≧13から≦14日の範囲の期間にわたって温置されたものであり、及び/又は
段階M2)で卵を検卵照射するのに使用される光が、少なくとも、≧720nmから≦870nm、好ましくは、>750nm又は≧750nmから≦870nmの波長範囲に及ぶスペクトルを有する光である、
本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法)が好ましい。
【0036】
本発明の方法の段階M3)での卵を透過した光の取り込みに関して卵の面上の測定スポットの直径を時折発生するキャリア又はキャリアラック区画(下記で説明する)内への卵の不正確な配置が、実施で有意であると考えられる程度まで測定結果に悪影響を及ぼすことができないように十分に大きく選ばなければならないことを自験が明らかにしている。測定スポットは、卵を透過した光が取り込まれる卵の面上の領域として定めることができる。
【0037】
従って、同じく好ましい方法(本明細書に説明する本発明の方法の全ての変形に関する)は、
段階M3)で卵の面上で、
≧0.5cmから≦2.5cmまで、好ましくは、≧1cmから≦2.3cmの範囲の直径を有し、及び/又は
卵の面上で≧0.2cm2から≦5cm2まで、好ましくは、≧0.8cm2から≦4cm2の範囲の面積に及ぶ、
定められた測定スポット内で卵を透過した光が取り込まれる本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法)である。
【0038】
特に、大量の卵を処理される時、又は他に潜在的に測定と干渉する可能性がある散乱光の量を低減するために、本発明の方法では使用される卵をキャリア、特にキャリアラックの別個の区画に配置する場合が好ましいことが自験の途中に見出されている。好ましくは、散乱光の量を更に低減するために、仕切り壁、すなわち、区画の仕切り壁が黒色に彩色される。好ましくは、キャリア又はキャリアラックは、本発明による非侵襲的処理の段階M2)で好ましくは下方からの光源を用いた卵の検卵照射を可能にし、更に段階M3)では、卵を透過した光を好ましくは、光源が配置された側の反対側から(好ましくは、上方から)取り込むことを可能にするように構成される。
【0039】
好ましい方法は、(本明細書に説明する本発明の方法の全ての変形に関して)段階M1)が、
鳥卵、好ましくはニワトリ卵を受け入れるのに適切であるように各々が構成され、散乱光の量を低減するための仕切り壁によって互いから分離された複数の区画を有するキャリア、好ましくは、キャリアラックを与える段階であって、
好ましくは、キャリア、好ましくは、キャリアラックが、一区画に置かれた鳥卵、好ましくはニワトリ卵を光源によって検卵照射することを可能にし、更に卵を透過した光を取り込むことを可能にする(好ましくは、卵への光源の光遮蔽結合を可能にする段階を備える)に適切であるように構成される、
上記段階と、
キャリア、好ましくは、キャリアラックの一区画内に鳥卵、好ましくはニワトリ卵を置く段階と、
を更に備える本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法)である。
【0040】
本発明による方法のより具体的な変形では、公開文献WO 2019/174661 A1に開示され、より詳細に説明されている(「Trager(3)」として)キャリア、好ましくは、キャリアラックを使用することができる。
【0041】
本発明による非侵襲的方法の段階M1)で取得された卵を段階M2)で検卵照射するのに適切である光源は、その放出電磁放射スペクトルでは少なくとも≧700nmから≦900nmの波長範囲に及ぶスペクトル、好ましくは、少なくとも≧700nmから≦900nmの波長範囲に及ぶ連続スペクトルを有する光を備える。この意味では適切な光源は、白熱光電球及びハロゲンランプ、特にタングステンハロゲンランプを備える。通常、35Wの電力及び/又は1100dcの光度を有する光源が、本発明の方法の目的に適している。特に、卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別を決定する本発明の方法の変形では、より高い電力及び/又はより高い光度を有する光源を有利とすることができる。特に≧35W、好ましくは、≧40W、より好ましくは、≧50W、好ましくは、≦75Wのより高い光度を有するより高電力のランプが、より短い積分時間を可能にし、その結果、より高い処理速度を可能にする。
【0042】
従って、好ましい方法は、段階M2)で卵を検卵照射するための光源が、
≧35W、好ましくは、≧40W、より好ましくは、≧50W、好ましくは、≦75Wの電力、及び/又は
≧1000cd、好ましくは、≧1100cd、より好ましくは、≧1200cd、更に好ましくは、≧1300cdの光度、
を有するハロゲンランプ、好ましくは、タングステンハロゲンランプである本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法)である。
【0043】
性別の一方である一定の色の羽毛を生成し、性別の反対の方では別の(異なる)色の羽毛を生成する鳥類、好ましくはニワトリ品種からの卵が使用され、段階M3)で取り込まれ、段階M4)で取得される透過光の透過スペクトルが1又は2以上の特異波長範囲に基づいて、段階M4)の1又は2以上の特異波長範囲が、下記でより詳細に明記するように≧720nmから≦760nm、≧730nmから≦830nm、≧750nmから≦870nm、及び/又は≧800nmから≦870nmの波長範囲を備える本発明の好ましい変形では、卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別を決定することに関して特に良好な結果を達成することが自験で見出されている。
【0044】
更に、卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別を決定することに関する本発明の方法のこれらの好ましい変形での特に良好な結果は、段階M5)を備え、この段階M5)が、段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルを≧720nmから≦760nm、≧730nmから≦830nm、≧750nmから≦870nm、及び≧800nmから≦870nmの波長範囲から選択される1又は2以上の特異波長範囲で、ニワトリ胚の既知の性別をそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲で定める対応する透過スペクトルと比較する段階を備える本発明のより好ましい変形で取得される。これらの発見は、本発明の方法では使用される卵が、性別の一方で褐色又は褐色系の綿羽をもたらし、性別の反対の方では白色又は黄色系の綿羽をもたらす品種のニワトリからのものである時に特に適用される。
【0045】
従って、好ましい方法は、好ましくはニワトリ胚の性別を決定する非侵襲的方法であって、
段階M4)の1又は2以上の特異波長範囲が、
≧720nmから≦760nmの波長範囲、
≧730nmから≦830nmの波長範囲、
≧750nmから≦870nm、好ましくは、>750nm又は≧750nmから≦830nmの波長範囲、及び
≧800nmから≦870nmの波長範囲、
から構成される群から選択され、
好ましくは、段階M4)の1又は2以上の特異波長範囲が、
≧750nmから≦870nm、好ましくは、>750nm又は≧750nmから≦830nmの波長範囲、及び
≧800nmから≦870nmの波長範囲、
から構成される群から選択され、及び/又は
段階M5)として
M5)段階M4)で取得された透過光の透過スペクトル又はそれに基づく吸光スペクトルが、
≧720nmから≦760nmの波長範囲、
≧730nmから≦830nmの波長範囲、
≧750nmから≦870nm、好ましくは、>750nm又は≧750nmから≦830nmの波長範囲、及び
≧800nmから≦870nmの波長範囲、
から構成される群から選択され、好ましくは
≧750nmから≦870nm、好ましくは、>750nm又は≧750nmから≦830nmの波長範囲、及び
≧800nmから≦870nmの波長範囲、
から構成される群から選択される段階M4)の1又は2以上の特異波長範囲で、好ましくは、1又は2以上の特異波長範囲のみで、
予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にある対応する透過スペクトル又は対応する吸光スペクトルであって、ニワトリ胚の既知の性別を定める対応する透過スペクトル又は対応する上記吸光スペクトルと比較する段階、
を備え、及び/又は
段階M6)として
M6)卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別を好ましくは、
段階M4)で取得された透過光の透過スペクトル又はそれに基づく吸光スペクトルを段階M5)で定めた1又は2以上の定められた特異波長範囲で、
それぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲でニワトリ胚の既知の性別を定める、段階M5)で定めた対応する透過スペクトル又は対応する吸光スペクトルと、
比較した、好ましくは、これらのスペクトルのみを比較した結果に基づいて決定する段階、
を備える
本発明による上記方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法)である。
【0046】
本発明の方法により、上記で定めた段階M5)では、段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを1又は2以上の特異波長範囲(上記で定めた)内で、好ましくは、1又は2以上の特異波長範囲のみで、予め定められたデータベースからのそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲にある対応する吸光スペクトルであって、ニワトリ胚の既知の性別を定める対応する吸光スペクトルと比較することが好ましい。
【0047】
本発明の方法により、上記で定めた段階M6)では、段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルに基づく吸光スペクトルを段階M5)で定めた1又は2以上の定められた特異波長範囲で、ニワトリ胚の既知の性別をそれぞれの同じ1又は2以上の特異波長範囲で定める、段階M5)で定めた対応する吸光スペクトルと比較した、好ましくは、これらのスペクトルのみを比較した結果に基づいてニワトリ胚の性別を決定することが好ましい。
【0048】
例えば、上記で定めた本発明の方法の好ましい変形では、段階M6)で卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別を決定するために、段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルは、≧800nmから≦870nmの波長範囲で、ニワトリ胚の既知の性別を≧800nmから≦870nmの同じ波長範囲で定める対応する透過スペクトルと比較される。
【0049】
本発明による方法の結果を更に改善するために、較正スペクトル及び/又は暗電流スペクトルを取得することが好ましい。
【0050】
好ましい方法は、段階M5)を備え、段階M6)で鳥胚の性別、好ましくはニワトリ胚の性別を決定する段階が、段階M4)で取得された透過スペクトルに基づいて決定された吸光スペクトルと、段階M2)で卵を検卵照射するのに使用された光の測定スペクトルである較正スペクトルとに基づいて決定され、
好ましくは、吸光度スペクトルを決定するのに基づく透過スペクトルが、光が卵を透過しないことを除いて段階M4)の透過スペクトルと等しい状況下で取得されたスペクトルに対応する暗電流スペクトルに基づいて補正される、
本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法、好ましくはニワトリ胚の性別を決定する方法)である。
【0051】
同じく好ましい方法は、段階M6)を備え、段階M6)でニワトリ胚の性別を決定する段階が、吸光スペクトル(段階M4で取得された透過スペクトルに基づいて決定された)と、上記で定めたように段階M2)で卵を検卵照射するのに使用された光の測定スペクトルである較正スペクトルとに基づいて吸光スペクトルを処理すること、好ましくは、吸光スペクトルの導関数を取ること及び/又は吸光スペクトルを平滑化することによって決定されたスペクトル吸収関数に基づいている本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法、好ましくはニワトリ胚の性別を決定する方法)である。
【0052】
本発明による非侵襲的方法では、卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別を決定することに関して性別の一方である一定の色の羽毛を生成し、性別の反対の方では別の(異なる)色の羽毛を生成する品種の鳥類、好ましくはニワトリ(本明細書で定めるか又は本明細書で好ましいものとして定める)からの卵を用い、下記でより詳細に概説するようにスペクトル吸収関数に対して主成分分析を実施した場合に優れた結果が取得された。
【0053】
従って、好ましい方法は、段階M6)を備え、段階M6)で異なる波長でのスペクトル吸収関数の値の組合せに関する組合せ値が、予め決められた閾値よりも大きいか又は下回るかのいずれであるかを決定することによって鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別が決定され、
好ましくは、組合せ値が、異なる波長でのスペクトル吸収関数の値の線形組合せに関して、線形組合せの係数が、ニワトリ胚の統計集団に関して実施された主成分分析からもたらされる1又は2以上の主成分の係数から決定され、好ましくは、予め決められた閾値がゼロである、
本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法、好ましくはニワトリ胚の性別を決定する方法)である。
【0054】
卵に関して測定されたスペクトル透過率及び/又は吸光スペクトルをトレーニングデータセットから導出されたこれらのスペクトルの主成分を使用して分析することにより、特に効率的であるが、依然として確実な卵の性質の決定を可能にすることが見出されている。このようにして、主成分分析を使用することは、所与の測定スペクトル又はそこから導出されたいずれかの(個別)関数(本明細書で言及するスペクトル吸収関数のような)を異なる波長での測定(光)強度(又はそこから導出された関数の各々の導出値)に対応する一価のランダム変数のセット又はリスト{Iλ}として捉えることに対応する。ランダム変数のセット又はリストは、同等的に単一多価のすなわちベクトル様のランダム変数と捉えることができる。根底にある統計集団は、決定される性質を有する卵の所与のセットであり、それぞれのスペクトルを測定することによって各卵にある一定のスペクトルを従って複数の一価ランダム変数の対応する値(又は同等的に多価ランダム変数の単一「多価」)を関連付けることができる。一部の卵を他のものから区別する性質は、卵の光学的性質、特にその透過特性に対する効果を有する限り、統計集団のスペクトルの差をもたらし、従って、スペクトルに対応するそれぞれの(一価)ランダム変数の値の差をもたらすことになる。これらの差は、ランダム変数{Iλ}の共分散行列を使用して取り込むことができる。全体的な性質は、通常はスペクトルの様々な部分の差によって反映されることになるが、その各々は、比較的小さく、従って、それ自体は、決定される性質に関する指標としては不適切な可能性があると考えられ、決定される性質を所与のスペクトルから確実に推定することを可能にする指標を見つけることが望ましい。好ましくは、そのような指標は、それぞれの性質では異なるスペクトル間で可能な限り大きく異なる量になる。主成分分析は、ランダム変数{Iλ}の線形組合せを統計集団内のランダム変数の変化に従って並べ換えることを可能にするので、指標に基づいてそれぞれの卵の性質を決定するために効率的な指標の選択をスペクトルから導出することを可能にする。
【0055】
好ましくは、上記で定めた(又は下記で定める)「異なる波長でのスペクトル吸収関数の値の組合せ」の「異なる波長」は、
≧720nmから≦760nmの波長範囲、
≧730nmから≦830nmの波長範囲、
≧750nmから≦870nm、好ましくは、>750nm又は≧750nmから≦830nmの波長範囲、及び
≧800nmから≦870nmの波長範囲、
から構成される波長範囲の群から選択される。
【0056】
更に、好ましい方法は、段階M6)を備え、段階M6)では鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別が、スペクトル吸収関数の異なる波長での値の組合せに関する組合せ値に基づいて決定され、
好ましくは、組合せ値が、卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の統計集団に関して決定されたスペクトル吸収関数に対して実施された主成分分析に関するスペクトル吸収関数の1又は2以上の主成分から決定される、
本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法、好ましくはニワトリ胚の性別を決定する方法)である。
【0057】
同様に、好ましい方法は、主成分分析からもたらされる1又は2以上の主成分が、組合せ値を決定する段階に含まれ、1又は2以上の主成分のうちの少なくとも1つが、第1の主成分と第3の主成分とで構成される群から選択され、好ましくは、
1又は2以上の主成分が、第1の主成分及び第3の主成分であり、及び/又は
1又は2以上の主成分が、第2の主成分を備えない、
本発明による方法(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明による方法、好ましくはニワトリ胚の性別を決定する方法)である。
【0058】
同様に、本発明は、鳥卵(好ましくはニワトリ卵)の1又は2以上の特性、及び/又は卵の内側の鳥胚(好ましくはニワトリ胚)の1又は2以上の特性を非侵襲的に決定するために、好ましくはニワトリ胚の性別を非侵襲的に決定するためのシステムであって、少なくとも
要素S1)少なくとも≧700nmから≦900nmの波長範囲に及ぶスペクトルを有する光で卵を検卵照射するための光源、
要素S2)要素S1)で定めたスペクトルを有する、卵を検卵照射するための光のうちで卵を透過した部分である透過光を取り込むための光取り込み手段(好ましくは、1又は2以上の光取り込み手段)、
要素S3)各々≧700nmから≦900nmの波長範囲のうちの予め定められた波長部分範囲である1又は2以上の特異波長範囲に基づく、要素S2)で定めた取り込み透過光の透過スペクトルを取得するための分光計、及び
要素S4)決定ユニットであって、
鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の性質、
より好ましくはニワトリ胚の性別を透過スペクトルに基づいて決定するための上記決定ユニット、
を備える上記システムに関する。
【0059】
一般的に、鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を決定する非侵襲的方法の状況では本明細書で議論する本発明の全ての態様は、上記で定めた鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を非侵襲的に決定するためのシステムに必要な変更を加えた上で適用される。
【0060】
好ましくは、本発明によるシステムの決定ユニット(要素S4))は、分光計(要素S3))に接続され、好ましくは、光源(要素(S1))に接続されたデータ処理ユニットであるか又はそれを備える。好ましくは、データ処理ユニットは、少なくとも、本発明の非侵襲的方法の段階M4)で取得された透過光の透過スペクトルを比較する段階M5)と、鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を段階M4)で取得された透過スペクトルに基づいて決定する段階M6)とを本明細書に開示する本発明の非侵襲的方法の段階M5)及びM6)の全ての変形及び好ましい変形を含めて実施することに適応される。好ましくは、データ処理ユニットは、本発明による目的に適切であるソフトウエアを備える。
【0061】
好ましいシステムは、
光取り込み手段S2)が、卵の面上で、好ましくは
≧0.5cmから≦2.5cmまで、好ましくは、≧1cmから≦2.3cmの範囲の直径を有し、及び/又は
卵の面上で≧0.2cm2から≦5cm2まで、好ましくは、≧0.8cm2から≦4cm2の範囲の面積に及ぶ、
定められた測定スポット内で(好ましくは、この範囲のみで)透過光を取り込むように適応され、及び/又は
分光計S3)が、
透過光をその発生源に関係なく検出するように適応され、及び/又は
透過光を空間的に分解することなく検出するように適応され、及び/又は
電荷結合デバイス検出器及びフォトダイオードアレイ検出器から構成される群から選択される、
検出器を備える、
本発明によるシステム(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明によるシステム)である。
【0062】
本発明によるシステムの分光計(S3))が、透過光をその発生源に関係なく検出するように適応された検出器を備える場合に、この透過光は、好ましくは、卵を検卵照射するための光のうちで卵を透過した部分(要素S2)に関して上記で定めた)であり、光源に関して定めたスペクトル(要素S1)を参照されたい)を有する。
【0063】
好ましくは、本発明によるシステムの光取り込み手段(要素S2)を参照されたい)は、取り込み光を導光手段(下記で説明する)又は分光計にフォーカスさせるか又は方向付けするためのレンズ、好ましくは、光学レンズを備える。
【0064】
同じく好ましいシステムは、1又は複数の更に別の要素として
S5)取り込み透過光を光取り込み手段S2)から分光計S3)に誘導するための導光手段(好ましくは、1又は2以上の導光手段)であって、
好ましくは、≧700nmから≦900nm、好ましくは、≧720nmから≦870nm、より好ましくは、≧750nmから≦870nm、更に好ましくは、750nm又は≧750nmから≦870nmの範囲の波長の光を伝達することに適応又は最適化された1又は2以上の光ファイバを備える、
上記導光手段、及び/又は
S6)鳥卵、好ましくはニワトリ卵を受け入れるように各々が構成され、散乱光の量を低減するための仕切り壁によって互いから分離された複数の区画を有するキャリア、好ましくは、キャリアラックであって、
好ましくは、一区画に置かれた卵(好ましくはニワトリ卵)を検卵照射すること、及び卵を透過した光を光取り込み手段によって取り込むことを可能にするのに適切であるように構成され、
より好ましくは、卵(好ましくはニワトリ卵)への光源又は導光手段の光遮蔽結合を可能にすることに適切であるように構成された、
上記キャリア(又は上記キャリアラック)、
を備える本発明によるシステム(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明によるシステム)である。
【0065】
更に、好ましいシステムは、光源(要素S1))が、
≧35W、好ましくは、≧40W、より好ましくは、≧50W、好ましくは、≦75Wの電力、及び/又は
≧1000cd、好ましくは、≧1100cd、より好ましくは、≧1200cd、更に好ましくは、≧1300cdの光度、
を有するハロゲンランプ、好ましくは、タングステンハロゲンランプを備える又はそれである、
本発明によるシステム(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明によるシステム)である。
【0066】
同じく好ましいシステムは、分光計S3)が、マルチチャネル分光計、小型回折格子分光計、及びモノリシック小型分光計から構成される群から選択されることを特徴とする本発明によるシステム(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明によるシステム)である。より一般的には、入射光を空間的にではなくスペクトル的にのみ分解する分光計を分光計S3)として使用することを好ましいとすることができると考えられる。言い換えれば、分光計S3)は、入射光に基づいて画像、特にスペクトル画像を供給するのに適切である必要が必ずしもない。好ましくは、光取り込み手段、導光手段、及び/又は分光計は、本明細書で言及する特異波長範囲に適応される。
【0067】
当業者には、本発明に使用されるそのような比較的単純な分光計(すなわち、マルチチャネル分光計、モノリシック小型分光計、又は小型回折格子分光計)を使用してニワトリ卵(この場合のニワトリ卵は、性別に基づいて羽毛色分化を生成する品種のニワトリからのものである)内のニワトリ胚の性別を予想する非常に高い精度をもたらすことができると考えられることは特に驚くべきことであった。従来技術で公知の類似の方法は、それぞれの目的に合わせて比較的複雑なハイパースペクトルカメラが必要であると大抵は教示している。
【0068】
高スループットを目指す工業用途では、十分な光感度を有する分光計が有利である。自験では、マルチチャネル分光計(MCS)又は小型回折格子分光計(CGS)がそれぞれの要件を非常に良好に満足することが見出されている。産業上の利用可能性を更に高めるために、本発明者は、電荷結合デバイスセンサが装備された分光計及び/又は≧2個のチャネル、好ましくは、≧5個のチャネル、より好ましくは、≧5個かつ≦12個のチャネル、更に好ましくは、10個のチャネルを有する分光計又は分光計システムを使用することが有利であることを見出した。
【0069】
従って、好ましいものは、
分光計(要素S3))が、
マルチチャネル分光計及び小型回折格子分光計から構成される群から選択される分光計、又は
マルチチャネル分光計及び小型回折格子分光計から構成される群から選択される1又は2以上の分光計を備える分光計システム、
であり又はそれを備え、
好ましくは、
分光計及び/又は分光計システムが、≧2個のチャネル、好ましくは、≧5個のチャネル、より好ましくは、≧5個かつ≦12個のチャネル、更に好ましくは、10個のチャネルを備え、
分光計又は分光計システムの1つ又は少なくとも1又は2以上の分光計が、1又は2以上(好ましくは、1つ)の電荷結合デバイスセンサを備える
本発明によるシステム(又は本明細書で好ましいものと説明する本発明によるシステム)である。
【0070】
例えば、本発明の1つの好ましい変形では、本発明によるシステムは、分光計(要素S3))として1又は2以上の10個のチャネルを有し、1又は2以上の電荷結合デバイスセンサが装備されたマルチチャネル分光計を備える。例えば、本発明の更に好ましい変形では、本発明によるシステムは、分光計(要素S3))として10個のチャネルを有し、いくつかの小型回折格子分光計を備え、その全てに電荷結合デバイスセンサが装備された分光計システムを備える。
【0071】
本発明によるシステムが、分光計として2又は3以上のチャネルを備える分光計又は分光計システムを備える場合に、好ましくは、これら2又は3以上のチャネルを処理するために電子多重化が適用される。
【0072】
本発明のシステムの1つの好ましい変形では、本発明のシステム(又は本明細書で好ましいものとして説明する本発明によるシステム)は、文献WO 2019/174661 A1に開示されている有精卵を検査するためのデバイスと組み合わされるか又はその要素を備える。例えば、本発明のシステムのキャリアは、そのような変形では文献WO 2019/174661 A1に開示されているキャリア(3)のように設計することができ、本発明によるシステムは、文献WO 2019/174661 A1に開示されている卵搬送ユニット(12)のように設計された卵搬送ユニットを備えることができる。そのような卵搬送ユニットは、鳥卵(好ましくはニワトリ卵)の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚(好ましくはニワトリ胚)の1又は2以上の性質を決定するために、及びこれら1又は2以上の性質を決定した結果に従って卵を選別するためのデバイス又はシステムを形成するために本発明のシステムの決定ユニット(要素S4))に接続することができる。
【0073】
本発明はまた、鳥卵、好ましくはニワトリ卵の1又は2以上の特性及び/又は卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の1又は2以上の特性を非侵襲的に決定するための、好ましくは、卵の内側の鳥胚、好ましくはニワトリ胚の性別を非侵襲的に決定するためのシステム及び/又は方法でのマルチチャネル分光計、小型回折格子分光計、モノリシック小型分光計、及びその組合せから構成される群から選択される分光計の使用であって、
好ましくは、卵は、性別に基づいて羽毛色の分化を生成する品種のニワトリから取得されたニワトリ卵である、
上記使用に関する。
【0074】
一般的に、鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を決定する非侵襲的方法の状況、並びに本発明によるシステムの状況で本明細書では議論する本発明の全ての態様は、上記で定めた分光計の使用に必要な変更を加えた上で適用される。
【0075】
本発明はまた、上記で定めた方法の段階M1)からM4)まで、特にその各々の具体的な実施のうちのいずれかに従って取得された透過スペクトルに基づいて鳥卵の1又は2以上の特性、及び/又は卵の内側の鳥胚の1又は2以上の特性を決定するためのコンピュータプログラムであって、上記で定めた方法の段階M5)及び/又はM6)、特にその各々の具体的な実施のうちのいずれかをコンピュータに実施させる命令を備える上記コンピュータプログラムに関する。コンピュータプログラムを実行する「コンピュータ」はまた、1又は2以上のデータ処理ユニットに対応することができる。例えば、コンピュータプログラムは、上記で定めたシステムの決定ユニットS4)を実行することができ、この場合に、決定ユニットは、1又は2以上のデータ処理ユニットを備えることができる。
【0076】
コンピュータプログラムは、時に他のハードウエアと共に又はその一部として供給される光ストレージ媒体又は固体媒体のような適切な媒体上に格納する/分散させることができるが、インターネット又は他の有線又は無線の遠距離通信システムなどを通して他の形態で分散させることもできる。
【0077】
本明細書では、パラメータ範囲、特に波長範囲の下限及び上限をそれぞれ指定し、指定範囲にそれぞれの限界値が含まれることを示すために≧及び≦という記号を用い、それに対して>及び<という記号は、それぞれの限界値が含まれないことを示すことに注意されたい。
【0078】
本発明を下記で簡単に説明する添付図面によって更に説明及び例示する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】本発明による鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を決定する非侵襲的方法を実施するための測定機器の一部を示す図である。本発明による鳥卵の1又は2以上の性質及び/又は卵の内側の鳥胚の1又は2以上の性質を非侵襲的に決定するためのシステムの要素、すなわち、各々がニワトリ卵を受け入れることに適切であるように構成され、散乱光の量を低減するための仕切り壁によって互いから分離された複数の区画を有するキャリアラック(要素S6))が示されている。更に、取り込み透過光を光取り込み手段から、
図1には示していない分光計(要素S3)に誘導するための光取り込み手段(キャリアラックの上方にある2つの検出器ヘッド、要素S2))が示されている。
【
図2】褐色卵産卵鶏(ローマンブラウン)からの2つのニワトリ卵がキャリアラック(要素S6))の2つの異なる区画に置かれた、
図1の詳細を示す図である。キャリアラックは、区画に置かれたニワトリ卵を検卵照射することを可能にするように構成される(光源の装着を可能にするために区画の底部にある開口部を参照されたい)。区画内の卵の上方には、卵を透過した光を取り込むための2つの検出器ヘッド(光取り込み手段、要素S2))が示されている。
【
図3】
図1に示す測定機器の詳細を示す図である。キャリアラックの下方に位置付けられ、
図3には示していない決定ユニット(要素S4)に接続された3つのハロゲンランプ(35W)(光源、要素S1))を示すことを可能にするために、
図3にはキャリアラック(要素S2))が存在しない。ハロゲンランプは、回転シャッターによって遮断することができる。ハロゲンランプの上方には、2つの検出器ヘッド(光取り込み手段、要素S2))を見ることができる。
【
図4】
図1から
図3までに示す測定機器を使用して取得した2つの例示的透過スペクトルを示す図である。透過スペクトル401は、内部に雄胚を有するニワトリ卵に関して取得したものであり、透過スペクトル402は、内部に雌胚を有するニワトリ卵に関して取得したものである。
【
図5】吸光度スペクトル501が透過スペクトル401から計算したものであり、吸光度スペクトル502が透過スペクトル402から計算したものである
図4に示す透過スペクトルから計算した例示的吸光度スペクトルを示す図である。
【
図6】ニワトリ卵の全(トレーニング)統計集団に関して取得した透過スペクトルから計算した例示的吸光度スペクトルを示す図である。2つのスペクトル帯域601、602を大まかに識別することができるが、これらは明確には分離されていない。スペクトル帯域601は、雄のニワトリ胚を備える卵に関して計算した吸光度スペクトルを備え、スペクトル帯域602は、雌のニワトリ胚を備える卵に関して計算した吸光度スペクトルから構成される。
【
図7】
図6の吸光度スペクトルに平滑化及び1次導関数の形成を備える処理を加えたものに対応するスペクトル吸収関数を示す図である。スペクトル帯域701は、帯域601内の吸光度スペクトルを処理することによって形成したものであり、スペクトル帯域702は、帯域602内の吸光度スペクトルを処理することによって形成したものである。
図7を
図6と比較することにより、これらのスペクトル帯域の可分性が、図示の波長範囲の少なくとも大部分にわたって処理することによって改善したことを見ることができる。
【
図8】スペクトル吸収関数、すなわち、
図7に示す処理された吸光度スペクトルから決定した第1の主成分(「PC-1」)の負荷量を例示的に示す図である。
【
図9】スペクトル吸収関数、すなわち、
図7に示す処理された吸光度スペクトルから決定した第3の主成分(「PC-3」)の負荷量を例示的に示す図である。
【
図10】第1の主成分及び第3の主成分に関して表したスペクトル吸収関数、すなわち、処理された吸光度スペクトルに各点が対応する点群を示す図である。丸(「f」)ドット及び三角形(「m」)ドットは、
図7に示す吸光度スペクトル帯域702及び701にそれぞれ属する。これらの吸光度スペクトルは、トレーニングのためのすなわち、主成分分析を実施することによって主成分の負荷量を決定するための基礎を形成するが、正方形ドット(「0」)は、トレーニングに使用される帯域701、702内の吸光度スペクトルの場合と同じく決定したスペクトル吸収関数、すなわち、処理された吸光度スペクトルに対応するが、根底にある透過スペクトルは、中に含まれるニワトリ胚の性別が既知ではなかった卵を使用して取得し、それによって対照群、又は試験群を形成するものである。
図10に示す線1001は、丸(「f」)ドットを三角形(「m」)ドットから最も明確に分離し、従って、好ましくは、正方形(「0」)ドットを「雌ドット」と「雄ドット」とに同じく明確に分割するように選択したものである。
【
図11】様々な期間にわたって温置したニワトリ卵に関して取得した例示的透過スペクトル1101、1102、1103を示し、胚が卵内で発育する時への卵を透過する全体の光の有意な低下を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
実施例
以下の実施例は、本発明をその範囲を限定することなく更に説明及び例示するものとする。
【0081】
褐色ニワトリ卵をLohmann Tierzucht GmbHから取得し、これらの例での全ての実験に用いた。全ての卵は、雌の初生雛では褐色又は褐色系の綿羽をもたらし、雄の初生雛では白色又は黄色系の綿羽をもたらした品種のニワトリ(褐色卵産卵鶏)からのものであった。従って、(同じく)雛の性別は、孵化後の羽毛色に基づいて決定又は確認することができた。
【0082】
この節の実施例の実験では、以下の測定システムを用いた。
測定システム1:
分光計:CCD(「電荷結合デバイス」)センサを有するマルチチャネル分光計(「MCS」、例えば、Carl Zeiss製MCS FLEX CCD)
波長範囲:190~980nm
2チャネル、積分時間:チャネル1:500ms、チャネル2:1500ms
導光手段:近IR単心600μm光ファイバケーブル
測定システム2:
分光計:PDA(「フォトダイオードアレイ」)センサを有するモノリシック小型分光計(MMS、例えば、Carl Zeiss製のもの)
波長範囲:300~1100nm
2チャネル、積分時間:チャネル1:10000ms、1×
導光手段:近IR単心600μm光ファイバケーブル
冷光反射鏡(Osram)を有する35Wの標準ハロゲンランプを全ての実験では用いた。
【実施例1】
【0083】
実施例1:実験パラメータの最適化(「トレーニング実行」を含む)
A.実験設定:
これらの実施例での実験で用いた測定機器は、仕切り壁によって互いから分離された卵配置のための複数の区画を有するキャリアラックを備えるものであった。これらの区画内に卵を配置し、光源(上記で明記したもの)を使用して下方から検卵照射した。卵の上方には、卵を透過した光を取り込むための検出器ヘッドを配置した。検出器ヘッドによって許容される卵面上の測定スポットの直径は約2cmであった。測定スポットのこの比較的大きい直径が、キャリアラック区画内への卵の不正確な配置し(時折発生する)に対する測定の感受性を低減することが見出されている。取り込み透過光の透過スペクトルを取得するために検出器ヘッドを分光計(上記で指定した測定システム1)に導光手段(上記で指定した)を通して接続した。分光計及び光源をデータ処理ユニットに接続された。
【0084】
計測品質を改善するために、実際の測定を行う前に較正スペクトルを取得し、暗電流測定を実施した。測定される卵の吸光度スペクトルに対する基準として較正スペクトルを取得した。この目的に対して、光源のスペクトルをサンプル(卵)なしで測定し、サンプル(卵)のスペクトルと比較してサンプルの吸光度を決定した。較正スペクトルの測定では、光強度を分光計に対して処理可能な強度まで中性ガラスフィルタ(Schott製NG4及びSchott製NG9)を使用することによって低減した。
【0085】
B.スペクトルの測定:
13日から14日の期間にわたって温置した1191個のニワトリ卵を恒温器から取り出し、キャリアラックの区画に配置した(キャリアラック毎に40個の卵)。これらの卵を光源によって下方から検卵照射し、卵面上の定められた測定スポット(約2cmの直径の測定スポット)内で卵を透過した光を取り込み、導光手段(光ファイバケーブル)を通して分光計(測定システム1)に伝達して記録した。このようにして、受け入れた透過スペクトルを下記で説明するように更に分析した。
【0086】
C.孵化後のニワトリの性別の確認
測定が行われた(上述の項目B.の下に説明されているように)後に、雛が孵化するまで卵を更に温置し、孵化後にニワトリの性別を当業技術で公知の制御の方法によって決定した。
以下の結果が見出されている。
このようにして、取得した情報を受信スペクトルを更に分析するために用いた。
【0087】
D.スペクトル(上述の項目B.の下に説明された方法に従って取得された)の分析
【0088】
D.1 測定した透過スペクトルをスペクトルファイルとしてASCIIフォーマットで取得した。分析に向けて、これらのファイルをデータ分析ソフトウエア(Camo Analytics製「Unscrambler」)の中にインポートした。次に、雄卵の内側の雄胚及び雌卵の内側の雌胚それぞれの既知の透過スペクトルを使用して基準データセットを更に追加した。上述のようにして受け入れた生スペクトルでは、620nmと約980nmの間のスペクトル範囲の透過に着目したが、180nmと620nmの間のスペクトル範囲には着目しなかった。雄胚を備える卵から取得した生スペクトルが、雌胚を備える卵から取得したスペクトルよりも高い光透過率の傾向を示すことが見出されている。
【0089】
D.2 次に、群1及び2(上記を参照されたい)の組合せデータからトレーニングデータセットを生成し、それぞれの吸光度スペクトル(生透過スペクトル及び較正スペクトル、上記を参照されたい)を計算した。吸光度スペクトルに関しては、2つの群の間に明確な分離はなかったが、雌胚を備える卵では雄胚を備える卵と比較して高い光吸収の傾向が認識されている。2つの例示的な生透過スペクトルを
図4に示しており、この図では、スペクトル401は、雄ニワトリ胚を備える卵を指し、スペクトル402は、雌ニワトリ胚を備える卵を指す。
図5は、
図4に示す透過スペクトルから、実質的に透過が観察された狭小波長範囲内で計算した吸光度スペクトルを例示している。吸光度スペクトル501は、透過スペクトル401から計算したものであり、すなわち、雄ニワトリ胚を備える卵に対応し、吸光度スペクトル502は、透過スペクトル402から計算したものであり、すなわち、雌ニワトリ胚を備える卵に対応する。
【0090】
D.2.1 次に、サビツキー・ゴーレイに従って吸光度スペクトルを平滑化し、そこから1次微分を形成した。この例示的な分析では、より厳密には、最初に吸光度スペクトルをサビツキー・ゴーレイに従って平滑化し、次に、それぞれの平滑化されたスペクトルの1次微分を形成した。これは、トレーニングデータセットに対応する吸光度スペクトルを示す
図6と、平滑化された吸光度スペクトルの1次導関数、すなわち、一般的に、スペクトル吸収関数と呼ばれる場合が考えられる処理された吸光度スペクトルを示す
図7とを比較することによって見ることができるように雌胚を備える卵に関して受け入れたデータ点と雄胚を備える卵に関して受け入れたデータ点とのかなり改善された分離がもたらされる。
図6では、雄ニワトリ胚を備える卵に対応するスペクトルのスペクトル帯域601は、雌ニワトリ胚を備える卵に対応するスペクトルのスペクトル帯域602と実質的に重なるが、
図7では、雄ニワトリ胚を備える卵に対応する処理されたスペクトルのスペクトル帯域701は、雌ニワトリ胚を備える卵に対応する処理されたスペクトルのスペクトル帯域702と約775nm前後の比較的狭い中間波長範囲でしか実質的に重ならない。
【0091】
類似の結果は、測定システム2(上記で定めた)を用いたそれぞれの実験で受け入れられた。
【0092】
D.2.2 更に別の分析に対して、スペクトル範囲をスペクトルの特徴(スペクトル帯域の位置)に従って定め、それらに基づいて卵の内側のニワトリ胚の性別決定の品質に関して試験した。第1の分析では、≧620nmから≦980nm、≧810nmから≦850nm、≧800nmから≦870nm、及び≧820nmから≦840nm内にあるスペクトル範囲を含めた。その後に、≧620nmから≦980nm、≧810nmから≦850nm、≧800nmから≦870nm、及び≧820nmから≦840nm内に関して主成分分析を実施した。1次近似では、雌胚を備える卵群と雄胚を備える卵群の間の最も明確な差が、既に
図7から明らかになっている、スペクトル帯域701と702の間の分離が特に明確な≧800nmから≦870nmのスペクトル範囲で見られた。この場合に、性別間の差は第1の主成分上にあり、これは、トレーニングデータセットが基とした群1及び2内の卵の間の光学的性質の最も大きい変化が、卵内に含まれるニワトリ胚の性別に起因したことを例示している。
【0093】
従って、この場合に、第1の主成分をそれぞれの卵の内側のニワトリ胚の性別に関する適切な指標と見なすことができるが、更に別の主成分が、それぞれの卵の内側のニワトリ胚の性別を決定することができ、又はそれぞれの卵に関する他の性質を決定することに対する適切性を有する可能性もある。例えば、それぞれのスペクトル強度からの第7の主成分の負荷量、すなわち、第7の主成分を形成する線形組合せの係数を依然として無視することができず、この係数は、特に、例えば、815nm前後でピークを構成する。従って、815nm前後の波長での卵の透過特性及び/又は吸収特性に影響を及ぼすいずれかの性質に関する指標として第7の主成分を尚を使用することもできると考えられる。実際に、群1及び2に関して取得した透過スペクトルは、
図4では例示的に見ることができるようにこの波長の近くに主ピークを有し、従って、ニワトリ胚の性別を決定するのに第1の主成分と第7の主成分との組合せも考察した。
【0094】
決定される卵又はその内側のニワトリ胚の性質を示す主成分を使用することにより、対応する(単一)値は、この性質を決定することを目的としてそれぞれのスペクトルに対する代表値として使用することができる。従って、当該の性質を示す主成分の負荷量がトレーニングデータセットから決定されると、関係する1つ又はいくつかの(一価の)主成分のみの分析に重点を置いて全スペクトルの分析を回避することができ、それによって高い計算効率を可能にする。
【0095】
ニワトリ胚の性別を決定するために、例えば、それぞれのスペクトルの第1の主成分にのみ着目する場合があると考えられ、この成分が予め決められた閾値よりも大きいか又は下回るかのいずれであるかに依存して性別を決定することができると考えられる。卵の全体的な統計集団に関しては、卵の内側のニワトリ胚の性別がほぼ均等に分布していると仮定することができると考えられ、従って、予め決められた閾値をゼロとすることができる。より一般的には、例えば、ニワトリ胚の性別を決定するために、それぞれのスペクトルの第1及び第7の主成分に当該のことができると考えられ、第1の主成分と第7の主成分との組合せ、例えば、線形組合せが、第1の主成分と第7の主成分とによって張られる平面内でトレーニングデータに基づいて配置された直線よりも大きいか又は下回るかのいずれであるかに依存して性別を決定することができると考えられる。この決定は、多くの場合に、一方が予め時に適切にずれている第1の主成分と第7の主成分との比が予め決められた閾値よりも大きいか又は下回るかのいずれであるかを決定することに等しいと捉えることができる。
【0096】
この分析中に、第2の主成分がニワトリ胚の性別に関する的確な指標ではない可能性があると考えられることが見出され、代わりに、第2の主成分が、この場合は各々が異なるスペクトルセンサに関する様々な測定チャネルに起因する透過スペクトルの変化を示すことが予想される。実際に、決定される性質を示さず、時に適用測定手順の既知の特性を示す取得透過スペクトルの変化に関することが既知の波長部分範囲又は主成分に基づかずに1又は2以上の性質を決定することを一般的に好ましいこととすることができると考えられる。
【0097】
D.2.3 この項目D.2の下での方法によるスペクトル分析からの結果を使用して、群1及び2に関して卵の内側のニワトリ胚の性別に関する高確率の予想精度の予備推定を第1の主成分からの情報に基づいて行った。この予備推定に従って適正な分類に関する以下の精度を予想した。
雄胚:428個のうちの420個が雄として正しく分類され、8個が雌として間違って分類され、これらの個数は、約98%が雄として正しく分類されたことに対応する。
雌胚:447個のうちの422個が雌として正しく分類され、25個が雄として間違って分類され、これらの個数は、約94%が雌として正しく分類されたことに対応する。
【0098】
D.3 更に最適化されたスペクトル分析に向けて、更に別のトレーニングデータセットを群1及び2からの卵に関して上記で項目D.2の下に説明されているように生成、計算、平滑化し、それぞれの吸光度スペクトルを計算し、その1次微分をサビツキー・ゴーレイに従って形成した。
【0099】
D.3.1 次に、スペクトル範囲を上記で項目D.2.2の下に説明されているように定め、それに基づく性別決定の品質に関して試験し、この実験に含まれるスペクトル範囲は、(i)≧720nmから≦760nm、及び(ii)≧800nmから≦870nmであった。従って、雌胚を備える卵に関して受け入れたデータ点と雄胚を備える卵に関して受け入れたデータ点との有意に改善された分離が見出されている。≧730nmから≦830nmのスペクトル範囲及び≧750nmから≦870nm、好ましくは、>750nm又は≧750nmから≦830nmのスペクトル範囲、特に750nmの波長前後のスペクトル領域(すなわち、例えば、約±15nm、±10nm、又は±5nm)が、ニワトリ胚の性別に関する特に有意な情報を備えるものであった。これらの情報は、
図4に例証している透過スペクトルでの特徴的なピーク付近の全吸収、特にこれらのピーク間の落ち込みの原因である吸収に対応する。
【0100】
D.3.2 項目D.3.1及びD.3.2の更に最適化されたスペクトル分析のスペクトル範囲に関して主成分分析を実施した。第1及び第3の主成分に関して見出された取得される負荷量をそれぞれ
図8及び
図9に示している。それぞれの負荷量の大きさは、第1の主成分を≧730nmから≦830nmの間であり、特に
図4に例示的に見られる透過スペクトルのこの領域内の2つの特徴的なピークの前後に出現した性別独特の全吸収と実質的に関連付けることができること、及び第3の主成分を2つの特徴的なピークの間であり、750nmの波長の周りにある落ち込みと実質的に関連付けることができることを例示している。この最適化分析では、性別独特の情報を主成分1と3との組合せを使用して特に的確に表すことができること、すなわち、上記で項目D.2の下に説明された実験からの結果に優る更に別の改善が見出されている。主成分1は、この分析では雄胚を備える卵と比較してほぼ高い雌胚を備える卵の吸収を表すことが見出されたが、主成分3は、この分析では雌胚を備える卵を雄胚を備える卵から区別する更に別の吸収特性を表すことが見出されている。
【0101】
主成分を組み合わせて決定される性質に関する指標に辿り着く時に、主成分のこの組合せが予め決められた閾値よりも大きいか又は下回るかのいずれであるかに基づいて当該性質を決定することができる。一般的に、主成分は、適切な指標を形成するいずれかの手法で組み合わせることができる。例えば、性質は、主成分間の線形組合せに基づいて決定することができる。
【0102】
最適化分析の結果としてニワトリ胚の性別を決定するために、それぞれのスペクトルの第1及び第3の主成分を考慮することができ、第1の主成分と第7の主成分との組合せ、例えば、線形組合せが、第1の主成分と第3の主成分とによって張られる平面内でトレーニングデータに基づいて配置された直線よりも大きいか又は下回るかのいずれであるかに依存して性別を決定することができると考えられることが見出されている。この決定は、多くの場合に、一方が予め潜在的に適切にシフトしている第1の主成分と第3の主成分との比が予め決められた閾値よりも大きいか又は下回るかのいずれであるかを決定することに等しいと捉えることができる。
【0103】
D.3.3 この項目D.3の下での方法によるスペクトル分析からの結果を使用して、群1及び2に関して
図10を参照して下記で更に詳述するように第1及び第3の主成分(すなわち、上述の主成分1及び3)からの情報を備える卵の内側のニワトリ胚の性別に関する高確率の予想精度の最適化推定が行われた。この最適化推定により、適正な分類に関する以下の精度を予想した。
雄胚:428個のうちの415個が雄として正しく分類され、13個が雌として間違って分類され、これらの個数は、約97%が雄として正しく分類されたことに対応する。
雌胚:447個のうちの425個が雌として正しく分類され、22個が雄として間違って分類され、これらの個数は、約95%が雌として正しく分類されたことに対応する。
全体:875個のうちの840個が雄又は雌として正しく分類され、この個数は、約96%の正しく分類された卵に対応する。
【実施例2】
【0104】
実施例2:本発明の方法による対照群の卵の内側のニワトリ胚の性別の予想(「検証実行」)
図10を参照して下記で更に詳述するように、群5(対照群)の卵の内側のニワトリ胚の性別を上記で項目D.3の下に説明された方法に従って予想した。次に、予想結果を孵化後に確認した雛の性別と比較した。この予想に従って以下のニワトリの性別の分類精度が見出されている。
雄胚:103個のうちの96個が雄として正しく分類され、7個が雌として間違って分類され、これらの個数は、約93%が雄として正しく分類されたことに対応する。
雌胚:105個のうちの101個が雌として正しく分類され、4個が雄として間違って分類され、これらの個数は、約96%が雌として正しく分類されたことに対応する。
全体:208個のうちの197個が雄又は雌として正しく分類され、この個数は、約99%の正しく分類された卵に対応する。
【0105】
図10は、対応するスペクトル吸収関数、すなわち、処理された吸光度スペクトルの各々に関してトレーニングデータセットに対して実施された主成分分析からもたらされた第1の主成分と第2の主成分とを互いに対比してプロットした状態に示している。三角形ドットは、群1(すなわち、雄胚を内部に有する卵に属する)からのトレーニングデータに関して計算したスペクトルに対応し、丸ドットは、2群(すなわち、雌胚を内部に有する卵に属する)からのトレーニングデータに関して計算したスペクトルに対応する一方、
図10内のプロットは、更に群5(すなわち、内部に雄胚又は雌胚のいずれを有するか不明な卵に属する)に関して測定したデータから計算したスペクトル吸収関数、すなわち、処理された吸光度スペクトルに対応する正方形ドットを備える。試験スペクトル又は対照スペクトルと見なすことができると考えられるこれらの処理された吸光度スペクトルに関する主成分は、トレーニングデータに関して実施した主成分分析から知り得た負荷量を使用して計算したものである。
図10に示す分割線1001は、三角形ドットを丸ドットから最も明確に分離する直線を表し、最も明確な分離は、一般的に、それぞれのドットから直線までの絶対距離又は距離の二乗の和を意味することができる。線が傾斜していることは、第1の主成分と第3の主成分の両方が、三角形ドットと丸ドットの間の最適な分離、従って、雄胚を備える卵と雌胚を備える卵の間の最適な区別に必要とされることを例示している。原点からの線のオフセットは、主として卵の群1と2とのサイズが等しくない状況を反映する。
図10に正方形ドットで表す群5(対照群)の卵の内側の胚の性別は、それぞれの正方形ドットが位置する線の側に基づいて予想することができる。一般的に、点が位置する線の側を決定することは、言い換えれば、回転させた座標系内でこの線によって与えられる定められた閾値よりも大きいか又は下回るかのいずれであるかを決定することと捉えることができる。
図10に示すこの特定の場合に、線の右下側に位置する正方形ドットが内部に雄胚を有する卵に対応し、線の左上側に位置する正方形ドットが内部に雌胚を有する卵に対応すると予想することができると考えられる。従って、原点からのオフセットと線1001の傾きとが、卵の内側の胚の性別に関する指標として選択される第1の主成分と第3の主成分との線形組合せを示している。
【0106】
実施例1及び実施例2の結果から、ニワトリ卵が、性別の一方で褐色又は褐色系の羽毛を生成し、性別の反対の方では白色又は黄色系の羽毛を生成する品種のニワトリから取得され、段階M3)で透過スペクトルを取得するのにマルチチャネル分光計(好ましくは、CCDセンサを有する)又はモノリシック小型分光計(好ましくは、PDAセンサを有する)が使用される場合に、卵の内側のニワトリ胚の性別の予想に関する優れた結果を利用可能であることを見ることができる。段階M3)で透過スペクトルを取得するのに小型回折格子分光計(好ましくは、CCDセンサを有する)が使用される、本発明者が実施した予備実験に従って類似の結果を予想することができる。
【0107】
卵の内側のニワトリ胚の性別を予想する精度が、これらの実験に用いた比較的簡単な分光計(すなわち、マルチチャネル分光計、モノリシック小型分光計、又は小型回折格子分光計)によってこれらの実験で本発明者が明らかにしたほど高く達成することができることを当業者は仮定していなかったと考えられるので、この結果は驚くべきものである。先行して実施した類似の実験では、それぞれの目的で比較的複雑なハイパースペクトルカメラを用いた。
【0108】
実験1及び2の結果から、実施例1の項目D.3に従って最適化した方法が、例えば、実施例1の項目D.2による予備方法よりも正確な卵の内側のニワトリ胚の性別の予想を可能にすることも見ることができる。従って、特に、それぞれ取得したスペクトルの第1の主成分と第3の主成分との組合せを卵の内側のニワトリ胚の性別を予想するために用いて主成分の負荷量を好ましくはトレーニングデータに関して取得した対応するスペクトルから決定することができることを好ましいとすることができると考えられる。
【実施例3】
【0109】
実施例3:本発明の方法による卵の内側の未成熟ニワトリ胚の識別
様々なタイプの未成熟ニワトリ胚を有するニワトリ卵を以下の通りに取得した。第1の卵群を本発明の非侵襲的方法による測定を実行する時にこれらの卵の内側のニワトリ胚が殆ど未発育状態であるように1日弱にわたってのみ温置した。第2の卵群は、本発明の非侵襲的方法による測定を実行した時に約9日から10日の温置に等しい発育状況を有するニワトリ胚を備えるものであった。
【0110】
次に、上記で実施例1の項目A及びBで上述のように両方の群の卵の透過スペクトルを記録した。
【0111】
第1の卵群(上記を参照されたい)では、非常に高い光透過率に起因して分光計が飽和状態になった。この状態は、スペクトル内の水平線によって認識することができる。1日弱のみ温置した卵の代わりに未受精卵を用いた時も非常に似通った結果が見られた。
【0112】
第2の卵群では、発育状況が約9日から10日の温置に等しいニワトリ胚を備える卵に関して観察された光透過率は、発育状況が約13日から14日の温置に等しいニワトリ胚を備える卵に関して観察された光透過率よりもかなり高かった。その一方で発育状況が約9日から10日の温置に等しいニワトリ胚を備える卵に関して観察された光透過率は、1日弱しか温置しなかった卵又は未受精卵に関するものよりもかなり低かった。
【0113】
従って、第1の卵群と、第2の卵群と、発育状況が約13日から14日の温置に等しいニワトリ胚を備える卵とは、これらの卵が許す光透過率によって互いに区別することができると考えられる。光透過率は、胚が発育する時に低下する。光透過率は、それぞれの卵に関して取得された透過スペクトルの定められた特性、例えば、最大透過率、平均透過率、又は全透過率、及び/又は透過スペクトルが水平線を備えるか否かに関して測定することができる。例えば、最大透過率は、それぞれの透過スペクトル内のピーク高さに対応することができる。スペクトル内でピークの代わりに存在する可能性があると考えられる透過スペクトル内の水平線は、卵を通る大きい透過量に起因して分光計が飽和することを示し、卵が群1に属すること(又は卵が未受精卵であること)を示すことができる。
図11は、スペクトル1101が群1及び/又は未受精卵からの卵に対応し、スペクトル1102が群2からの卵に対応し、スペクトル1103が発育状況が約13日から14日に等しいニワトリ胚を備える卵に対応する例示的な透過スペクトルを例示している。
【0114】
従って、この実施例3の実験の結果から、未成熟ニワトリ胚を備える卵を本発明の方法によって容易にかつ高精度で識別することができることを見ることができる。従って、本発明の方法は、卵の受精状態(受精又は未受精)、卵の内側のニワトリ胚の活力、及び未孵化ニワトリ胚の発育状態(卵の内側の)を検出又は決定するのに非常に適している。
【0115】
更に、本発明による方法を使用して卵の内側の鳥胚、特にニワトリ胚の発育状態を決定することができる。例えば、この目的で、ニワトリ胚の透過スペクトルは、例えば産卵後の様々な温置日数に関して異なる発育状態にある類似のニワトリ胚の基準スペクトルと比較することができる。
【国際調査報告】