(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(54)【発明の名称】希土類永久磁石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20240123BHJP
H01F 1/053 20060101ALI20240123BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20240123BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20240123BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20240123BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240123BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20240123BHJP
B22F 3/04 20060101ALI20240123BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20240123BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20240123BHJP
H01F 1/057 20060101ALI20240123BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
H01F41/02 G
H01F1/053 160
B22F9/04 D
B22F3/00 F
B22F3/02 R
B22F1/00 Y
B22F1/10
B22F3/04 B
B22F3/24 K
B22F1/14 500
H01F1/057 170
C22C38/00 303D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563147
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2021142528
(87)【国際公開番号】W WO2022143780
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011628718.7
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522310502
【氏名又は名称】烟台正海磁性材料股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523247027
【氏名又は名称】江華正海五礦新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李志強
(72)【発明者】
【氏名】王聰
(72)【発明者】
【氏名】王鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】魏蕊
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB01
4K017BB05
4K017BB06
4K017BB09
4K017BB12
4K017BB13
4K017BB18
4K017CA07
4K017DA04
4K017EA03
4K017EA09
4K017EA11
4K018AA27
4K018BA18
4K018BB04
4K018BC12
4K018CA04
4K018CA07
4K018CA23
4K018DA32
4K018DA33
4K018FA11
4K018KA45
5E040AA04
5E040BD01
5E040CA01
5E040HB05
5E040NN06
5E040NN12
5E040NN13
5E062CD04
5E062CE04
5E062CF03
5E062CG01
(57)【要約】
本発明は、希土類永久磁石及びその製造方法を開示する。本発明が提供する希土類永久磁石M及びその制造方法は、磁石の粒界異方性を効果的に改善し、重希土類拡散源のために磁石内部に進入する拡散チャネルを更に多く提供し、重希土類拡散源を更に効果的に磁石内部に拡散進入させ、磁石の固有保磁力を更に大幅向上させ、固有保磁力の高い磁石Nを得ることができる。従来技術と比べて、重希土類拡散源の使用量が同じである場合でも、本発明は、固有保磁力の上げ幅がより大きい磁石Nを得ることができ、磁石の製造コストが削減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類永久磁石であって、前記希土類永久磁石を希土類永久磁石Mと記され、前記希土類永久磁石Mは、磁場における配向プレス成形、焼結によって得られ、
磁石がプレス方向と磁場配向方向と共に垂直する方向のサイズは、プレス後にa1と記され、焼結後にa2と記され、
磁石のプレス方向のサイズは、プレス後にb1と記され、焼結後にb2と記され、
磁石の磁場配向方向のサイズは、プレス後にc1と記され、焼結後にc2と記され、
前記希土類永久磁石Mの各サイズは、下記の式を満たす:
c2/c1≦1.25×b2/b1+1.1×a2/a1-1.26 (1)、
及び/又は、
前記希土類永久磁石Nの組織異方性係数をA=(105×c2/c1)/(a2/a1+b2/b1)と定義し、下記の式を満たす:
A≦44.5 (2)、
ということを特徴とする、希土類永久磁石。
【請求項2】
c2/c1≦0.75、
好ましくは、b2/b1の値の範囲は0.80~0.95であり、
好ましくは、a2/a1のデータ範囲は0.75~0.90であり、
好ましくは、前記希土類永久磁石M内部における酸素含有量は1500 ppm以下である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の希土類永久磁石。
【請求項3】
希土類永久磁石であって、前記希土類永久磁石を希土類永久磁石Nと記され、前記希土類永久磁石Nは、磁石表面から磁場配向方向に沿って磁石内部へ0.08~0.12 mmの箇所での重希土類の平均含有量がxと記され、磁石表面から磁場配向方向に沿って磁石内部へ0.98~1.02 mmの箇所での重希土類の平均含有量がyと記され、希土類永久磁石Nの全厚さはzと記され、
z≦6の場合、
x-y≦1.3^(z+0.5)+0.3 (3)
z>6の場合、
x-y≦5.5+z/13 (4)、
ということを特徴とする、希土類永久磁石。
【請求項4】
前記希土類永久磁石Nは、請求項1又は2に記載の希土類永久磁石Mを重希土類拡散源により処理して得られ、
好ましくは、z≦6の場合、x-y≦6、
好ましくは、z>6の場合、x-y≦8、
好ましくは、前記希土類永久磁石N内部における酸素含有量は1500 ppm以下である、
ことを特徴とする、請求項3に記載の希土類永久磁石。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の希土類永久磁石Mの製造方法であって、
(1)希土類永久磁石Mを製造する原料を含む合金融液を急冷ロールに供給し、前記合金融液を凝固させて合金シートを得るステップと、
そのうち、前記急冷ロール外周面の表面粗さRaとRzはそれぞれ、Raの範囲0.5~15 μm、Rzの範囲0.5~45 μmを満たし、
(2)ステップ(1)で得られた合金シートを製粉し、配向プレス成形し、焼結して、希土類永久磁石Mを得るステップと、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項6】
ステップ(1)において、ショットブラスト、ショットピーニング、サンドブラスト又はサンドペーパー研磨の処理方法により急冷ロールの表面を処理し、
好ましくは、ステップ(1)において、前記急冷ロール外周面の表面粗さRaの範囲は1~12 μmであり、
好ましくは、ステップ(1)において、前記急冷ロール外周面の表面粗さRzの範囲は3~30 μmであり、
好ましくは、ステップ(1)において、前記合金シートの平均厚さは0.15~0.5 μmである、
ことを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)は、前記合金シートに対して水素吸蔵処理を行って粗粉末を得ることと、更に前記粗粉末に酸化防止剤と潤滑剤を添加し、混合粉末を製造して得ることと、前記混合粉末を配向プレス成形して圧粉体を得ることと、前記圧粉体を焼結して前記希土類永久磁石Mを得ることと、を含み、
好ましくは、前記配向プレスのプロセスにおいて、磁場強度≧1.5 Tであり、
好ましくは、前記配向プレス成形は静水圧プレス成形であり、
好ましくは、前記焼結は真空焼結であり、好ましくは、真空熱処理炉において行われ、好ましくは、加熱焼結前に、炉内真空度が10
-2 Paに達し、且つ酸素含有量が100 ppm未満である、
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
固有保磁力の上げ幅の大きい希土類永久磁石の製造における、請求項1又は2に記載の希土類永久磁石Mの応用であって、
好ましくは、前記固有保磁力の上げ幅の大きい希土類永久磁石は、請求項3又は4に記載の希土類永久磁石Nであり、
好ましくは、前記固有保磁力の上げ幅は少なくとも10 kOeであり、
好ましくは、前記固有保磁力の上げ幅は少なくとも12 kOeである、
応用。
【請求項9】
請求項3又は4に記載の希土類永久磁石Nの製造方法であって、
(a)重希土類拡散源を前記希土類永久磁石Mの表面に配置するステップと、
(b)ステップ(a)の完了後、表面に重希土類がある前記磁石を熱処理して前記希土類永久磁石Nを得るステップと、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項10】
ステップ(a)において、前記重希土類拡散源は、純金属Tb、Dy、及びTb及び/又はDyと他の金属との合金のうちの少なくとも1種を含み、好ましくはTb及び/又はDyであり、
好ましくは、ステップ(a)において、溶射、蒸着、コーティング、マグネトロンスパッタリング又は埋め込み方法により、前記重希土類拡散源を希土類永久磁石Mの表面に配置し、
好ましくは、ステップ(b)において、前記熱処理は2段階の熱処理プロセスを含む
ことを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、出願人が2020年12月30日に中国国家知識産権局に提出された特許出願番号が202011628718.7で、発明名称が「希土類永久磁石及びその製造方法」である先行出願の優先権を主張する。上記先行出願は全体として引用により本願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、希土類永久磁石の製造技術分野に属し、希土類永久磁石及びその製造方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
現在、ネオジム鉄ボロン系焼結希土類永久磁石は、新エネルギー分野での利用が絶えず拡大し続け、利用範囲も消費量も年々増加している。しかし、ネオジム鉄ボロン磁石は、高温で固有保磁力Hcjが高温で著しく低くなり、更に不可逆的な熱消磁を引き起こすことを考えると、磁石の高温での使用要件が満たされるように、ネオジム鉄ボロン磁石の固有保磁力レベルを高めなければならない。これに対して、重希土類粒界拡散プロセスは近年、広く使用されてきた。このプロセスは、一定の温度、時間での熱処理プロセスによって、磁石外部に被覆された重希土類拡散源を高温で液体粒界相に沿って磁石内部に拡散進入させ、また、重希土類元素は主に粒界又は主相結晶粒の外殻層に沿って分布し、且つ主相結晶粒のコア部に明らかに進入していないため、磁石の残留磁気をほとんど低下させずに、磁石の保磁力を顕著に向上させる効果を達成することができる。
【0004】
希土類永久磁石は、重希土類拡散プロセス後の保磁力の上げ幅が、製錬配合への同じ比率の重希土類元素の添加による保磁力の向上と比べて明らかに大きいので、拡散保磁力の上げ幅をより効果的に向上させる方法を見つけることは、磁石性能の効果的な向上、製品コストの削減に極めて重要な意味がある。
【0005】
特許文献1(CN104159685A)は、急冷ロールの外周へのサンドブラストによる方法を開示しており、当該方法は、冷却ロール外周面の付着物を除去し、冷却速度の低下を抑制し、結晶組織の偏差を減少させ、結晶組織の均一性を向上させることができる。
【0006】
特許文献2(CN105261473A)は、銅ロール表面に対するサンドブラスト研磨により、銅ロール表面の損傷面積が減少され、使用寿命が延長されると共に、サンドブラスト研磨をした銅ロールの冷却により得られたストリップが均一に冷却され、内部の柱状結晶とネオジムリッチ相が更に均一に分布されることを開示している。
【0007】
特許文献3(CN1306527C)は、粒界における希土類リッチ相の分布の均一性を向上させる方法を開示しており、そのうち、十点平均粗さ(Rz)で表される急冷ロール表面の粗さを5~100ミクロンの範囲に調整することにより、合金シートの微細希土類リッチ相の区域の体積比率を低減し、フレークの希土類リッチ相の均一性を向上させることを含む。
【0008】
特許文献4(JP09001296A)は、急冷ロール表面の耐摩耗性金属層の粗さを調整する方法を開示しており、急冷ロールの耐摩耗性金属層で構成されたロール外周面における中央部の表面粗さRa1が両側部の表面粗さRa2より大きくなるように調整することで、結晶組織の均一性を向上させ、磁石の残留磁気及び固有保磁力を高めることができる。
【0009】
非特許文献5(Acta Materialia、2016、112:59~66)は、拡散プロセスの異方性を研究しており、重希土類が富化したシェル層構造は、主相結晶粒[001]方向(c軸方向)に平行な界面において更に容易に形成される。
【0010】
上記の特許文献1~4は何れも、急冷ロール表面の状態を調整することで、焼結磁石の組織の均一性の向上を達成させ、焼結磁石の性能を高める目的を実現するものである。しかし、どのような方法で製造して得られた焼結希土類永久磁石の粒界異方性分布が重希土類粒界の拡散に更に適し、保磁力が更に大きく増加されるか、及び如何にして拡散後の磁石における重希土類の含有量分布を更に合理的にするかについては、何れも触れていない。
【0011】
非特許文献5は、Re2Fe14B主相格子の異方性による拡散異方性の違いを研究しているが、粒界異方性による拡散への影響については、同様に触れていない。
【0012】
粒界組織の分布特性が異なる磁石において、重希土類元素の拡散速度が明らかに相異していることを考えるため、従来のプロセス方法では、粒界組織が均一性において顕著に改善されたとはいえ、粒界異方性の分布が悪く、更に、当該磁石が重希土類拡散プロセスを経ると、重希土類元素は依然として磁石内部に効果的に進入しにくく、その保磁力が上げられるものの、その上げ幅が小さいことが多い。
【0013】
粒界組織分布の異方性を効果的に最適化し、拡散プロセスにおいて磁石の保磁力の上げ幅を高め、磁石の重希土類含有量を減らし、磁石の製造コストを削減することができれば、解決すべき技術問題となっている。
【0014】
〔発明の概要〕
本発明は、希土類永久磁石を提供し、それを希土類永久磁石Mと記され、上記希土類永久磁石Mは、磁場における配向プレス成形、焼結によって得られ、
磁石がプレス方向と磁場配向方向と共に垂直する方向のサイズは、プレス後にa1と記され、焼結後にa2と記され、
磁石のプレス方向のサイズは、プレス後にb1と記され、焼結後にb2と記され、
磁石の磁場配向方向のサイズは、プレス後にc1と記され、焼結後にc2と記され、
上記希土類永久磁石Mの各サイズは、式(1)を満たす:
c2/c1≦1.25×b2/b1+1.1×a2/a1-1.26 (1)、
及び/又は、
上記希土類永久磁石Mの組織異方性係数をA=(105×c2/c1)/(a2/a1+b2/b1)と定義し、式(2)を満たす:
A≦44.5 (2)。
【0015】
本発明の実施形態によれば、c2/c1≦0.75、例えばc2/c1≦0.74、好ましくは0.65<c2/c1≦0.73、例示的にはc2/c1=0.697、0.699、0.701、0.706、0.712、0.724である。
【0016】
本発明の実施形態によれば、b2/b1のデータ範囲は0.80~0.95、例えば0.83~0.92、例示的には0.86、0.862、0.863、0.864、0.87、0.88、0.888である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、a2/a1のデータ範囲は0.75~0.90、例えば0.805~0.84、例示的には0.807、0.808、0.811、0.813、0.815、0.82、0.83、0.839である。
【0018】
本発明の実施形態によれば、Aのデータ範囲は40≦A≦44.2であってもよく、例えばAのデータ範囲は43、43.5、43.59、43.82、43.94、44.02、44.1である。
【0019】
本発明の実施形態によれば、上記希土類永久磁石M内部における酸素含有量は1500 ppm以下、例えば1000 ppm以下、より好ましくは800 ppm以下である。希土類永久磁石Mにとって、低い酸素含有量は、粒界三重点区域に富化した希土類リッチ酸化物の生成量が少ないことを意味し、重希土類拡散源の粒界相における拡散速度を高め、拡散磁石(即ち、後述する希土類永久磁石N)の性能を改善することに役立つ。
【0020】
本発明の実施形態によれば、配向プレス成形プロセスにおいて、磁石のプレス成形プロセスにおける磁場配向プロセスが飽和状態に確保されるように、磁場強度≧1.5Tであり、この場合、粒界相は主相粒子と共に偏向し、配向に平行な平面内に集中分布し、重希土類の磁石内部への拡散進入に更に役立つ。
【0021】
式(1)及び/又は式(2)の条件を満たす希土類永久磁石Mは、その粒界相の磁石内部における分布が更に明らかな異方性特性を有し、つまり、更に多くの粒界相が重希土類拡散プロセスにおける拡散チャネルとして配向方向に平行な平面内に分布しているため、重希土類拡散源は、同じ使用量で、拡散チャネルに沿って磁石内部に更に多く拡散できることで、拡散前後の磁石の保磁力の上げ幅が効果的に向上し、拡散後の磁石(即ち、後述する希土類永久磁石N)の固有保磁力が上げられる。
【0022】
本発明は、希土類永久磁石を更に提供し、それを希土類永久磁石Nと記され、上記希土類永久磁石Nは、磁石表面から磁場配向方向に沿って磁石内部へ0.08~0.12 mm(好ましくは0.1 mm)の箇所での重希土類の平均含有量がx(wt%)と記され、磁石表面から磁場配向方向に沿って磁石内部へ0.98~1.02 mm(好ましくは1 mm)の箇所での重希土類の平均含有量がy(wt%)と記され、希土類永久磁石Nの全厚さはzと記され、
z≦6の場合、
x-y≦1.3^(z+0.5)+0.3 (3)
z>6の場合、
x-y≦5.5+z/13 (4)。
【0023】
そのうち、上記全厚さは、磁場配向方向に沿った磁石の厚さを指す。
【0024】
好ましくは、上記希土類永久磁石Nは、上記希土類永久磁石Mが重希土類拡散源により拡散された後に得られる。
【0025】
本発明の実施形態によれば、z≦6の場合、x-y≦6、例示的には、x-y=0.3、1.4、2.5又は3.4である。
【0026】
本発明の実施形態によれば、z>6の場合、x-y≦8、例示的には、x-y=2.4、4.5又は6.2である。
【0027】
上記の式を満たす希土類永久磁石Mの粒界組織構造は、重希土類拡散源の拡散プロセスにおける磁石内部への進入に更に役立ち、同じ重量の拡散源を使用する場合、磁石表面に存在する重希土類の含有量が減少されるが、磁石内部に進入する重希土類の含有量が増加されるため、磁石表面から磁場配向方向に沿って磁石内部へ0.1 mmと1 mmの箇所での重希土類の含有量の差分が更に小さくなり、これにより、拡散前後の磁石の保磁力の上げ幅と一致性が効果的に向上し、拡散磁石(即ち、希土類永久磁石N)の固有保磁力が上げられる。
【0028】
本発明の実施形態によれば、上記希土類永久磁石N内部における酸素含有量は1500 ppm以下、例えば1000 ppm以下、より好ましくは800 ppm以下である。酸素含有量の低い希土類永久磁石Mの表面の重希土類拡散源が磁石内部に更に多く進入し、磁石内外の重希土類の濃度差が更に減少され、磁石に拡散プロセスを行って得られた希土類永久磁石Nの固有保磁力の上げ幅が大きくなる。
【0029】
本発明は、
(1)希土類永久磁石Mを製造する原料を含む合金融液を急冷ロールに供給し、上記合金融液を凝固させて合金シートを得て、
上記急冷ロール外周面の表面粗さRaとRzはそれぞれ、Raの範囲0.5~15 μm、Rzの範囲0.5~45 μmを満たすステップと、
(2)ステップ(1)で得られた合金シートを製粉し、配向プレス成形し、焼結して、希土類永久磁石Mを得るステップと、
を含む、上記希土類永久磁石Mの製造方法を提供する。
【0030】
本発明の実施形態によれば、上記の希土類永久磁石Mを製造する原料は、当該分野で知られている原料である。
【0031】
例えば、上記の希土類永久磁石Mを製造する原料は元素R、Fe及びBを含み、そのうち、RはNd、Pr、Ce、Ho、Dy又はTbのうちの1種、2種又はそれ以上であり、原料におけるRの重量比は25~35%であり、原料におけるBの重量比は0.8~1.5%であり、上記原料は、Co、Ti、Ga、Cu、Al及びZrのうちの1種、2種又はそれ以上の添加元素を更に含み、原料における上記添加元素の重量比は0.5~5%であり、残部はFeである。
【0032】
好ましくは、重量百分率で、上記の希土類永久磁石Mを製造する原料において、PrNdの含有量は19~35%、Dyの含有量は0~6%、Coの含有量は0.3~4%、Cuの含有量は0.01~0.4%、Gaの含有量は0.01~0.5%、Alの含有量は0.01~1.2%、Zrの含有量は0.01~0.2%、Tiの含有量は0.01~0.3%、Bの含有量は0.8~1.2%であり、残りはFeであり、
Co、Cu、Ga、Al、Zr及びTiの合計含有量は、上記原料質量の0.5~5%範囲内にある。
【0033】
例示的には、重量百分率で、上記の希土類永久磁石Mを製造する原料において、PrNdの含有量は27%、Dyの含有量は4%、Coの含有量は2%、Cuの含有量は0.1%、Gaの含有量は0.1%、Alの含有量は0.4%、Zrの含有量は0.1%、Bの含有量は1%であり、残りはFeである。
【0034】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)において、急冷ロール外周面の表面粗さRaとRzが上記要件を満たすように、ショットブラスト、ショットピーニング、サンドブラスト、サンドペーパー研磨などの処理方法により急冷ロール表面を処理することができる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)において、上記急冷ロール外周面の表面粗さRaの範囲は1~12 μm、例えば3 μm、4 μm、4.5 μm、5 μm、10 μmである。
【0036】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)において、上記急冷ロール外周面の表面粗さRzの範囲は3~30 μm、また例えば、Rzの範囲は3~25 μm、例えば7 μm、7.3 μm、7.9 μm、8 μm、10 μm、10.6 μm、12 μm、13 μm、15 μm、20 μm、25 μmである。
【0037】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)において、上記合金シートの平均厚さは0.15~0.5 μm、例えば0.2~0.4 μm、例示的には0.15 μm、0.2 μm、0.3 μm、0.4 μm、0.5 μmである。
【0038】
本発明の実施形態によれば、ステップ(2)は、上記合金シートに対して水素吸蔵処理を行って粗粉末を得ることと、更に上記粗粉末に酸化防止剤と潤滑剤を添加し、混合粉末を製造して得ることと、上記混合粉末を配向プレス成形して圧粉体を得ることと、上記圧粉体を焼結して上記希土類永久磁石Mを得ることと、を含む。
【0039】
そのうち、上記酸化防止剤と潤滑剤は、当該分野で知られている試薬から選択されてもよい。更に、上記酸化防止剤と潤滑剤の総量は、上記の希土類永久磁石Mを製造する原料の3~6 wt%、例えば4~5.5 wt%、例示的には5 wt%又は5.5 wt%である。
【0040】
そのうち、上記水素吸蔵処理の圧力は0.1~0.4 MPa、例えば0.15~0.3 MPa、例示的には0.2 MPaである。
【0041】
そのうち、上記水素吸蔵処理の時間は3~6 h、例えば4~5 h、例示的には3 h、4 h、4.5 h、5 h又は6 hである。
【0042】
そのうち、上記水素吸蔵処理の温度は500~660℃、例えば530~600℃、例示的には550℃である。
【0043】
そのうち、上記粗粉末は、ジェットミリングにより製造して得ることができる。例えば、上記粗粉末の表面平均直径(SMD、ザウター平均直径とも呼ばれる)は2~4 μm、例えば2.5~3.5 μm、例示的には2.8 μmである。
【0044】
そのうち、上記配向プレスのプロセスにおいて、磁場強度≧1.5 T、例えば磁場強度≧2 T、例示的には2 Tである。磁場強度は、磁石のプレス成形プロセスにおける磁場配向プロセスを飽和状態に確保することができ、この場合、粒界相は主相粒子と共に偏向し、配向方向に平行な平面内に集中分布し、重希土類拡散の磁石内部への進入に更に役立つ。
【0045】
そのうち、当業者は必要に応じて、プレスの形式を選択することができ、例えば、静水圧プレス方式を選択する。更に、上記静水圧プレスの圧力は160~180 MPa、例えば165~175 MPa、例示的には170 MPaである。
【0046】
そのうち、上記焼結は真空焼結であり、例えば真空熱処理炉において行われる。好ましくは、加熱焼結前に、炉内真空度が10-2 Paに達し、且つ酸素含有量が100 ppm未満である。
【0047】
そのうち、上記焼結は真空焼結時効である。好ましくは、焼結の温度は1000~1150℃、例えば1030~1100℃、例示的には1070℃である。好ましくは、一次時効の温度は800~950℃、例えば850~930℃、例示的には900℃である。好ましくは、二次時効の温度は470~550℃、例えば500~540℃、例示的には520℃である。
【0048】
本発明は、固有保磁力の上げ幅の大きい希土類永久磁石の製造における上記希土類永久磁石Mの応用を更に提供する。
【0049】
好ましくは、上記固有保磁力の上げ幅の大きい希土類永久磁石は上記希土類永久磁石Nである。
【0050】
好ましくは、上記固有保磁力の上げ幅は少なくとも10 kOeであり、例えば上げ幅は10.2~15 kOeである。
【0051】
本発明は、
(a)重希土類拡散源を上記希土類永久磁石Mの表面に配置するステップと、
(b)ステップ(a)の完了後、表面に重希土類がある上記磁石を熱処理して上記希土類永久磁石Nを得るステップと、
を含む、上記希土類永久磁石Nの製造方法を更に提供する。
【0052】
本発明の実施形態によれば、ステップ(a)において、上記重希土類拡散源は、純金属Tb、Dy、及びTb及び/又はDyと他の金属との合金のうちの少なくとも1種を含み、好ましくはTb及び/又はDyである。
【0053】
本発明の実施形態によれば、ステップ(a)において、溶射、蒸着、コーティング、マグネトロンスパッタリング、埋め込み、浸漬など、当該分野で知られている方法により、上記重希土類拡散源を希土類永久磁石Mの表面に配置することができる。
【0054】
本発明の実施形態によれば、ステップ(b)において、上記熱処理は2段階の熱処理プロセスを含んでもよい。例えば、一次熱処理の温度は800~1000℃、例えば850~950℃、例示的には900℃である。例えば、一次熱処理の保温時間は少なくとも3 h、例えば3~35 h、好ましくは5~30 h、例示的には10 h、20 h、30 hである。例えば、二次熱処理の温度は400~650℃、例えば450~600℃、例示的には400℃、500℃、600℃である。例えば、二次熱処理の保温時間は1~10 h、例えば2~8 h、例示的には3 h、5 h、7 hである。
【0055】
本発明の有益な効果:
発明者は、上記問題を解決するために、大量の研究を深く行ったところ、本発明に記載される磁石Mの特性を有する希土類永久磁石は、その重希土類拡散後の保磁力の上げ幅が一般的な永久磁石よりも明らかに大きいことを見出した。また、磁石Mの製造プロセスにおいて急冷ロールの処理方法により合金シートを製造する場合、拡散後の固有保磁力の上げ幅の増加が達成されるように、急冷ロール外周面の表面粗さRaの範囲を0.5~15 μmの間、表面粗さRzの範囲を0.5 μm~45 μmの間に制御しなければならない。
【0056】
本発明が提供する希土類永久磁石M及びその制造方法は、磁石の粒界異方性を効果的に改善し、重希土類拡散源のために磁石内部に進入する拡散チャネルを更に多く提供し、重希土類拡散源を更に効果的に磁石内部に拡散進入させ、磁石の固有保磁力を更に大幅向上させ、固有保磁力の高い磁石Nを得ることができる。
【0057】
従来技術と比べて、重希土類拡散源の使用量が同じである場合、本発明は、固有保磁力の上げ幅がより大きい磁石Nを得ることができ、磁石の製造コストが削減される。
【0058】
〔発明を実施するための形態〕
R-T-B系焼結磁石は、典型的な異方性特性を有し、磁気特性に加え、その電気抵抗率、熱膨張係数にもこの特性がある。しかし、発明者は、実験を通じて、磁石は方向によって、重希土類拡散プロセスにおいて、固有保磁力の上げ幅が明らかに異なっており、粒界相の最も富化したc軸方向に沿って、磁石の拡散後の固有保磁力の上げ幅が最も高く、即ち、重希土類拡散源の拡散プロセスにも明らかな異方性特性があることを見出した。従って、本発明は、拡散異方性で最適な方向を着目することで、内部に更に多くの拡散チャネルがある磁石(即ち、希土類永久磁石M)を提供し、更に多くの重希土類拡散源を更に多くの拡散チャネルを通じて磁石内部に進入させ、磁石の表面層と表面下層の重希土類の濃度差を減少させ、重希土類拡散物の保磁力の上げ幅を更に向上させることができる。
【0059】
粒界組織の異方性については、特定のパラメータを直接測定することで特徴付けることが難しく、本発明では、主に、磁石の各方向における磁場配向プレス後のサイズから焼結完了後のサイズへの変化率c2/c1を粒界異方性分布の測定基準とする。粒界組織の異方性は、磁石の焼結時の配向方向、プレス方向、及び配向方向とプレス方向に垂直な第3方向におけるサイズ収縮に直接影響を与え、その主な理由としては、粒界相は製錬後のストリップキャスティング合金フレークにおいてc軸に平行な柱状結晶間に集中分布し、水素破砕・水素吸蔵プロセスにおいて、柱状結晶構造はc軸方向に沿って複数の多面体に破壊され、c軸に平行な平面は、製錬中の柱状結晶間の粒界相が残っているため、比較的多くの粒界相分布を有するが、c軸に垂直な断面は、粒界相を有することが非常に少なく、このような粒界相の異方性分布特性は配向プレスのプロセスにおいて強化され、その結果、配向方向、プレス方向、及び配向方向とプレス方向に垂直な第3方向の焼結プロセスにおける収縮は明らかな異方性を有することになる。
【0060】
また、本発明者は、大量の実験を通じて、磁石Mの製造プロセスにおいて急冷ロールの処理方法により合金シートを製造する場合、急冷ロール外周面の表面粗さRaの範囲を0.5~15 μmの間、表面粗さRzの範囲を0.5~45 μmの間に制御する必要があり、合金フレークの粒界相の組織異方性を効果的に向上させることができ、配向方向に平行な平面での粒界相の数が増加されるが、配向方向に垂直な方向の平面での粒界相の数が減少されることを見出した。組織の遺伝性により、このような粒界分布異方性の向上が焼結磁石に伝達され、最終的に拡散磁石(即ち、磁石N)の拡散保磁力の上げ幅が顕著に大きくなる。
【0061】
このような組織での異方性は、実際に焼結磁石(即ち、磁石M)において、その磁気特性が顕著に向上しておらず、それは、おそらく、粒界相の総量が増加していないためであり、配向方向に平行な平面における増加した粒界相は、実際に配向方向に垂直な方向の平面における粒界相に由来し、平行平面における結晶粒子間の磁気分離作用の強化と垂直平面における磁気分離作用の弱化が互いに重なり合った結果、焼結磁石の保磁力レベルを効果的に向上させることができなくなる。しかし、意外なことに、このような粒界異方性分布の強い磁石は、重希土類拡散プロセスにおいて明らかな利点があり、重希土類拡散源は配向方向に沿って磁石内部へ更に容易に拡散され、磁石の表面層と表面下層との重希土類含有量の差分が減少され、重希土類拡散プロセスで取得した磁石の保磁力の上げ幅が向上する。
【0062】
本発明で製造された永久磁石Mは、その配向方向における焼結後のサイズとプレス後のサイズとの比率がc2/c1≧1.25×b2/b1+1.1×a2/a1-1.26を満たす。c2/c1が大きすぎると、磁石は、配向に平行な平面において粒界相が減少され、拡散保磁力の向上効果に影響を与える。永久磁石Mの異方性係数A=(105×c2/c1)/(a2/a1+b2/b1)で、A≦44.5を満たし、Aが大きすぎると、粒界は、結晶粒子の周囲に等方的に分布する傾向が更に大きくなり、重希土類拡散源の拡散速度が減少される。
【0063】
本発明で製造された永久磁石Nは、その磁石表面から磁場配向方向に沿って磁石内部へ0.08~0.12 mmの箇所での重希土類の含有量がx(wt%)、磁石表面から磁場配向方向に沿って磁石内部へ0.98~1.02 mmの箇所での重希土類の含有量がy(wt%)であり、希土類永久磁石Nの全厚さとは以下の関係がある:
z≦6の場合、
x-y≦1.3^(z+0.5)+0.3
z>6の場合、
x-y≦5.5+z/13。
【0064】
x-yが大きすぎると、重希土類は磁石表面に過度に集中分布され、中央の重希土類拡散量が不十分になり、磁石の固有保磁力に影響を与える。
【0065】
拡散後の磁石加工標準サンプル10×10 mmのテストでは、NIM-62000デバイスで磁気特性をテストし、そして蛍光X線分析装置(XRF)により、上記永久磁石における磁石表面から磁場配向方向に沿って磁石内部へ0.08~0.12 mmの箇所での重希土類の含有量であるx(4隅+中央、合計5つの測定ポイントを取り、この5つの位置での重希土類含有量の平均値を取る)、磁石表面から磁場配向方向に沿って磁石内部へ0.98~1.02 mmの箇所での重希土類の含有量であるy(4隅+中央、合計5つの測定ポイントを取り、この5つの位置での重希土類含有量の平均値を取る)を測定する。
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0066】
特に説明のない限り、下記の実施例に使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0067】
実施例1
以下の重量百分率でのネオジム鉄ボロン系焼結永久磁石の原材料を準備した:PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Alが0.4%、Zrが0.1%、Bが1%であり、残部がFeである。上記原材料を、急速凝固ストリップキャスティングにより合金フレークに製造し、そのうち、サンドブラストによりストリップキャスティング炉内の急冷ロール表面を処理し、急冷ロール外周面の表面粗さRaを5 μm、表面粗さRzを13 μmに制御した。
【0068】
得られた急速凝固合金フレークに対して水素吸蔵処理を行い、水素吸蔵圧力が0.2 MPa、脱水素温度が550℃であり、次いでジェットミリングを行い、SMD=2.8 μmの粉末を得て、原材料の0.05 wt%を占める潤滑剤を添加した後、ミキサーにおいて1 h混合し、ジェットミリングで製粉した。得られた粉末に合計で原材料の0.5 wt%を占める潤滑剤と酸化防止剤を更に添加した後、3 h混合し続けた。
【0069】
均一に混合した合金微細粉末を磁場において配向プレスし、配向磁場強度を2 Tに制御し、次に170 MPaの静水圧プレスを行った。
【0070】
圧粉体を真空熱処理炉に置いて、炉内真空度が20 Pa以下に達し、且つ酸素含有量が300 ppm未満、焼結温度が1065℃、一次焼戻し温度が900℃、二次焼戻し温度が520℃になるように制御した。
【0071】
焼結済みの素地を、機械加工により10-10-2 mmに加工し、そのうち、磁場配向方向に沿ったサイズが2 mmであり、希土類永久磁石M1と記した。
【0072】
マグネトロンスパッタリングにより、重希土類テルビウム(Tb)を磁石M1の表面に配置し、次に熱処理を行い、熱処理プロセスは、900℃の拡散温度で30 h保温する一次熱処理と、その後の、500℃で10 h保温する二次熱処理と、を含む。希土類永久磁石N1を得た。磁石N1の特性を検出した。
【0073】
実施例2
以下の重量百分率でのネオジム鉄ボロン系焼結永久磁石の原材料を準備した:PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Alが0.4%である。Zrが0.1%である。Bが1%であり、残部がFeである。上記原材料を、急速凝固ストリップキャスティングにより合金フレークに製造し、そのうち、ショットピーニングによりストリップキャスティング炉内の急冷ロール表面を処理し、急冷ロール外周面の表面粗さRaを4.5 μm、表面粗さRzを10.6 μmに制御した。
【0074】
得られた急速凝固合金フレークに対して水素吸蔵処理を行い、水素吸蔵圧力が0.2 MPa、脱水素温度が550℃であり、次いでジェットミリングを行い、SMD=2.8 μmの粉末を得て、原材料の0.05 wt%を占める潤滑剤を添加した後、ミキサーにおいて1 h混合し、ジェットミリングで製粉した。得られた粉末に合計で原材料の0.5 wt%を占める潤滑剤と酸化防止剤を更に添加した後、3 h混合し続けた。
【0075】
均一に混合した合金微細粉末を磁場において配向プレスし、配向磁場強度を2 Tに制御し、次に170 MPaの静水圧プレスを行った。
【0076】
圧粉体を真空熱処理炉に置いて、炉内真空度が20 Pa以下に達し、且つ酸素含有量が300 ppm未満、焼結温度が1065℃、一次焼戻し温度が900℃、二次焼戻し温度が520℃になるように制御した。
【0077】
焼結済みの素地を、機械加工により10-10-2 mmに加工し、そのうち、配向方向のサイズが2 mmであり、希土類永久磁石M2と記した。
【0078】
蒸着により、重希土類テルビウム(Tb)を磁石M2の表面に配置し、次に熱処理を行い、熱処理プロセスは、900℃の拡散温度で30 h保温する一次熱処理と、その後の、500℃で10 h保温する二次熱処理と、を含む。希土類永久磁石N2を得た。磁石N2の特性を検出した。
【0079】
実施例3
重量百分率でのネオジム鉄ボロン系焼結永久磁石の原材料を準備した:PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Alが0.4%、Zrが0.1%、Bが1%であり、残部がFeである。上記原材料を、急速凝固ストリップキャスティングにより合金フレークに製造し、そのうち、ショットブラストによりストリップキャスティング炉内の急冷ロール表面を処理し、急冷ロール外周面の表面粗さRaを3 μm、表面粗さRzを7.3 μmに制御した。
【0080】
得られた急速凝固合金フレークに対して水素吸蔵処理を行い、水素吸蔵圧力が0.2 MPa、脱水素温度が550℃であり、次いでジェットミリングを行い、SMD=2.8 μmの粉末を得て、原材料の0.05 wt%を占める潤滑剤を添加した後、ミキサーにおいて1 h混合し、ジェットミリングで製粉した。得られた粉末に合計で原材料の0.5 wt%を占める潤滑剤と酸化防止剤を更に添加した後、3 h混合し続けた。
【0081】
均一に混合した合金微細粉末を磁場において配向プレスし、配向磁場強度を2 Tに制御し、次に170 MPaの静水圧プレスを行った。
【0082】
圧粉体を真空熱処理炉に置いて、炉内真空度が20 Pa以下に達し、且つ酸素含有量が300 ppm未満、焼結温度が1065℃、一次焼戻し温度が900℃、二次焼戻し温度が520℃になるように制御した。
【0083】
焼結済みの素地を、機械加工により10-10-6 mmに加工し、そのうち、配向方向のサイズが6 mmであり、希土類永久磁石M3と記した。
【0084】
コーティングにより、重希土類テルビウム(Tb)を磁石M3の表面に配置し、次に熱処理を行い、熱処理プロセスは、900℃の拡散温度で30 h保温する一次熱処理と、その後の、500℃で10 h保温する二次熱処理と、を含む。希土類永久磁石N3を得た。磁石N3の特性を検出した。
【0085】
実施例4
以下の重量百分率でのネオジム鉄ボロン系焼結永久磁石の原材料を準備した:PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Alが0.4%、Zrが0.1%、Bが1%であり、残部がFeである。上記原材料を、急速凝固ストリップキャスティングにより合金フレークに製造し、そのうち、ショットピーニングによりストリップキャスティング炉内の急冷ロール表面を処理し、急冷ロール外周面の表面粗さRaを3 μm、表面粗さRzを7.9 μmに制御した。
【0086】
得られた急速凝固合金フレークに対して水素吸蔵処理を行い、水素吸蔵圧力が0.2 MPa、脱水素温度が550℃であり、次いでジェットミリングを行い、SMD=2.8 μmの粉末を得て、原材料の0.05 wt%を占める潤滑剤を添加した後、ミキサーにおいて1 h混合し、ジェットミリングで製粉した。得られた粉末に合計で原材料の0.5 wt%を占める潤滑剤と酸化防止剤を更に添加した後、3 h混合し続けた。
【0087】
均一に混合した合金微細粉末を磁場において配向プレスし、配向磁場強度を2 Tに制御し、次に170 MPaの静水圧プレスを行った。
【0088】
圧粉体を真空熱処理炉に置いて、炉内真空度が20 Pa以下に達し、且つ酸素含有量が300 ppm未満、焼結温度が1065℃、一次焼戻し温度が900℃、二次焼戻し温度が520℃になるように制御した。
【0089】
焼結済みの圧粉体を、機械加工により10-10-6 mmに加工し、そのうち、配向方向のサイズが6 mmであり、希土類永久磁石M4と記した。
【0090】
溶射により、重希土類テルビウム(Tb)を磁石M4の表面に配置し、次に熱処理を行い、熱処理プロセスは、900℃の拡散温度で30 h保温する一次熱処理と、その後の、500℃で10 h保温する二次熱処理と、を含む。希土類永久磁石N4を得た。磁石N4の特性を検出した。
【0091】
比較例1
本比較例において、急冷ロール外周面の表面粗さRaを5 μm、表面粗さRzを16 μmに制御した。
他の製造ステップは実施例1と同じである。
【0092】
比較例2
本比較例において、急冷ロール外周面の表面粗さRaを12 μm、表面粗さRzを54 μmに制御した。
他の製造ステップは実施例1と同じである。
【0093】
比較例3
本比較例において、急冷ロール外周面の表面粗さRaを17 μm、表面粗さRzを63 μmに制御し、拡散プロセスに使用された拡散材重希土類の比率は実施例での半分である。
他の製造ステップは実施例2と同じである。
【0094】
表1は、実施例及び比較例で得られた磁石Mの急冷ロールの粗さ、素地の3方向プレス後のサイズと焼結後のサイズ及び異方性係数Aである。
【0095】
【0096】
表2は、実施例1~4、比較例1~3で得られた磁石Nの拡散方向に沿った表面層と表面下層の重希土類濃度が、式(1)の評価を満たすか、式(2)の評価を満たすか、式(3)の評価を満たすか、拡散後のBr、拡散後のHcj、拡散プロセスにおけるHcjの上げ幅である。
【0097】
【0098】
以上、表1と表2から分かるように、急冷ロール外周面の表面粗さRaとRzを制御することで、粒界異方性の分布特性の更に高い磁石が得られるが、それは、配向c方向における収縮比c2/c1が低いほど、その粒界異方性の分布特性が高くなることを意味しない。例えば、実施例4において、そのc2/c1比率は各例で最も高いが、a、b方向の収縮比a2/a1、b2/b1より低いため、粒界異方性の分布特性がより高い磁石を製造することもでき、その拡散後の保磁力の上げ幅も同じ利点の特性を有する。
【0099】
急冷ロール外周面の表面粗さRaと表面粗さRzの範囲を制御することで、比較例1と比較例2の検出データの比較から分かるように、関係式(1)を満たす場合、粒界異方性の向上が達成され、重希土類が粒界に沿って磁石内部に更に効果的に進入可能となり、拡散前後の磁石の保磁力の上げ幅が向上する。
【0100】
実施例1と比較例1の検出データから、プレス前後の磁石サイズの変化が関係式(1)を満たすと共に、異方性係数Aが関係式(2)を満たす場合、粒界相が最も富化したc軸方向に沿って、更に多くの重希土類拡散源を更に多くの拡散チャネルを通じて磁石内部に進入させ、磁石の表面層と表面下層との重希土類の濃度差を減少し、重希土類拡散物の保磁力の上げ幅を更に向上させることができるため、希土類永久磁石の△Hcjは、関係式(1)と関係式(2)を満たさない磁石よりも大きく向上していることが分かる。
【0101】
比較例2と比較例3の検出データから、拡散プロセスに使用された拡散材重希土類の比率を減少させることで、表面層と表面下層の重希土類の濃度差を効果的に低減することができ、関係式(3)の関係を満たすことができるが、拡散前後の保磁力の上げ幅が正常レベルより遥かに小さくなるため、実用化の効果がより悪いことが分かる。上述したように、本発明で製造される希土類永久磁石は、配向方向における収縮が他の2つの方向よりも大きく、粒界異方性の特性が更に明らかになり、拡散後に更に多くの重希土類拡散源が磁石内部に進入するため、固有保磁力の上げ幅が顕著に向上している。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神及び原則を逸脱しない範囲で行われた何れの修正、同等の取替え、改良なども、本発明の請求範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】