(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】相乗的に有効な疎水化剤の組み合わせを含む無機結合剤に基づく建設材料
(51)【国際特許分類】
C04B 28/14 20060101AFI20240124BHJP
C04B 24/42 20060101ALI20240124BHJP
C04B 24/08 20060101ALI20240124BHJP
C04B 28/04 20060101ALI20240124BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20240124BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C04B28/14
C04B24/42 A
C04B24/08
C04B28/04
C04B22/06 Z
E04F13/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530933
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2020000202
(87)【国際公開番号】W WO2022111783
(87)【国際公開日】2022-06-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510094539
【氏名又は名称】クナウフ ギプス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガジュスキー,ヤクブ
(72)【発明者】
【氏名】ボゴボーウィッチ,アグニエシュカ
(72)【発明者】
【氏名】フォルティンスカ,カタルジナ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112PB03
4G112PB18
(57)【要約】
本発明は、相乗的に有効な疎水化混合物を含む無機結合剤に基づく建設材料に関する。本発明はまた、そのような建設材料を加工するための方法、及び無機結合剤に基づく建設材料の疎水化のための相乗的に有効な混合物の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機結合剤と、ケイ素系疎水化剤と脂肪酸塩系疎水化剤又は脂肪酸塩系疎水化剤の前駆体との相乗的に有効な混合物と、を含む、無機結合剤に基づく建設材料。
【請求項2】
無機結合剤と、水酸化物を提供する塩又は化合物とケイ素系疎水化剤との2:1~20:1の比の相乗的に有効な混合物と、を含む、無機結合剤に基づく建設材料。
【請求項3】
脂肪酸塩系疎水化剤又は脂肪酸塩系疎水化剤の前駆体を更に含む、請求項2に記載の建設材料。
【請求項4】
前記水酸化物を提供する塩又は化合物が、水酸化カルシウム、反応性酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムである、請求項2又は3に記載の建設材料。
【請求項5】
前記ケイ素系疎水化剤が、シラン、シロキサン及び/又はシリコーンから選択される、請求項1又は2に記載の建設材料。
【請求項6】
前記脂肪酸塩系疎水化剤中の脂肪酸が、C
4~C
30脂肪酸、好ましくはC
8~C
24脂肪酸、より好ましくはC
12~C
22脂肪酸、又はそのような酸の混合物である、請求項1又は3~4のいずれか一項に記載の建設材料。
【請求項7】
前記脂肪酸塩系疎水化剤が、一価、二価又は三価カチオンを含み、好ましくは前記カチオンは、Na
+、NH
+、Ca
2+、Mg
2+、Zn
2+、Fe
2+、Fe
3+及び/又はAl
3+から選択される、請求項1又は3~6のいずれか一項に記載の建設材料。
【請求項8】
前記脂肪酸塩系疎水化剤の前記前駆体が、カチオンを提供する塩又は化合物のカチオンと結合し、好ましくは前記カチオンを提供する塩又は化合物は、一価、二価又は三価カチオンを含み、より好ましくは前記カチオンを提供する塩又は化合物は、Na
+、NH
+、Ca
2+、Mg
2+、Zn
2+、Fe
2+、Fe
3+及び/又はAl
3+を含む、請求項1又は3~7のいずれか一項に記載の建設材料。
【請求項9】
前記脂肪酸塩系疎水化剤の前記前駆体が、カチオンを提供する塩又は化合物のカチオンと化合し、好ましくは前記カチオンを提供する塩又は化合物は、アルカリ土類金属酸化物若しくは水酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄又はポルトランドセメントを含む、請求項1又は3~8のいずれか一項に記載の建設材料。
【請求項10】
前記ケイ素系及び前記脂肪酸塩系疎水化剤の合計重量を基準にして、2:1~20:1、好ましくは5:1~16:1の比で、水酸化物を提供する塩又は化合物を更に含み、好ましくは、前記水酸化物を提供する塩又は化合物は、アルカリ土類金属酸化物若しくはアルカリ土類金属水酸化物、又は水酸化アルミニウム、水和ホウ酸塩、水和リン酸塩、水和ケイ酸塩、水和アルミノケイ酸塩、ポルトランドセメント又は沈降シリカである、請求項1又は3~9のいずれか一項に記載の建設材料。
【請求項11】
前記建設材料の乾燥重量に基づいて、全ての疎水化剤を総含有量0.02~5重量%、好ましくは0.04~1重量%で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の建設材料。
【請求項12】
前記無機結合剤が、水硬性結合剤であり、好ましくは、前記水硬性結合剤は、硫酸カルシウム系結合剤及び/又はセメント結合剤を含み、最も好ましくは、前記硫酸カルシウム系結合剤は、前記無機結合剤の総重量に基づいて60重量%超の硫酸カルシウムを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の建設材料。
【請求項13】
無機結合剤に基づく建設材料の製造方法であって、
(i)水を、無機結合剤と、ケイ素系疎水化剤と脂肪酸塩系疎水化剤又は脂肪酸塩系疎水化剤の前駆体との相乗的に有効な混合物と、任意選択的な追加の添加剤と混合するステップと、
(ii)前記建設材料を成形するステップと、
(iii)前記建設材料を硬化させるステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
無機結合剤に基づく建設材料の製造方法であって、
(i)水を、無機結合剤と、水酸化物を提供する塩又は化合物とケイ素系疎水化剤との2:1~20:1の比の相乗的に有効な混合物と、任意選択的な追加の添加剤と混合するステップと、
(ii)前記建設材料を成形するステップと、
(iii)前記建設材料を硬化させるステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
ステップ(i)における前記相乗的に有効な混合物が、脂肪酸塩系疎水化剤又は脂肪酸塩系疎水化剤の前駆体を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
無機結合剤に基づく建設材料の疎水化における、EN520:2004,5.9.2に従って測定した場合に10%以下、好ましくは4%以下の平均総吸収率を達成するための、ケイ素系疎水化剤と、水酸化物を提供する塩又は化合物との相乗的に有効な混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相乗的に有効な疎水化混合物を含む無機結合剤に基づく建設材料に関する。本発明はまた、そのような建設材料を加工するための方法、及び無機結合剤に基づく建設材料の疎水化のための相乗的に有効な混合物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
無機結合剤に基づく建設材料、例えば、粘土、セメント及びプラスターから作製される無機結合剤に基づく建設材料は、全世界で極めて一般的である。石膏、特にα-及びβ-半水和物などの水硬性硫酸カルシウムの形態、又は無水石膏I、II若しくはIIIの形態の石膏は、非常に一般的な建築原材料であり、複数の異なる配合で、異なる用途のために、例えば、乾式壁設置における石膏プラスターボード(gypsum plasterboard)、屋内使用のための漆喰塗り、タイル接着、フローリング領域、並びに便利屋又は日曜大工のセグメントで適用される。
【0003】
無機結合剤に基づく多くの建設材料は、水及び他の液体を容易に吸収するという点で流体に対して非常に敏感である。特に、硫酸カルシウム(すなわち、石膏)建築材料は、水に対して非常に敏感であり、このことが、屋外用途における、又は湿潤ユニット若しくは浴室などの増加した大気水分を有する水分の多い部屋での用途におけるそれらの頻繁な使用を妨げてきた。この問題を克服するために、無機結合剤に基づく建設材料を、製品がより疎水性となり又は疎水性コーティングが施され、それによって吸水性の低減及び/又は耐水性の増加が得られるように配合するための多くの努力がなされてきた。
【0004】
これらの未解決の要求を満たすために、増加した耐水性を得るために疎水化成分として、例えば、シラン、シロキサン、アルコキシシラン及び/又はオルガノシランなどの液体ケイ素系化合物を使用する様々な技術が記載されており、そこでは、触媒を使用することができ、及び/又は酸性若しくはアルカリ性pHで処理することができる。
【0005】
例えば、欧州特許出願公開第1698602(A1)号には、改善された機械的特性及び疎水性特性を有する石膏混合物が記載されており、この石膏混合物は、少なくとも1つのアルコキシシラン及び/又はアルコキシ官能化ポリシランと、鉱酸及び第IIIB~VIII亜族、第IB亜族又は第IIB亜族の金属の少なくとも1つの塩とからなる均一に分散された添加剤を含有し、この場合、金属塩はシラノール縮合を殆ど触媒しない。石膏混合物の調製のために、シラン成分及び金属塩を最初に水と混合し、続いて、市販の建築用石膏を水性混合物に導入することによって石膏ペーストを調製する。
【0006】
したがって、シリコーン添加剤は、所望の疎水化効果を提供するが、それらの使用の欠点の一つは、所望の程度の疎水化を提供するために必要とされるシリコーン添加剤含有量が比較的高いことである。価格が比較的高く、かつ建築材料には比較的多くの量が必要とされるために、これは顕著なコスト要因である。
【0007】
石膏含有建設材料と共に頻繁に使用される別のクラスの疎水化剤は、脂肪酸の塩であり、その撥水効果は、その両親媒性分子特性に基づく。この化合物は、疎水性の非極性炭化水素部分と親水性の極性末端基(金属カチオン)とから構成されている。このような疎水化剤が水中に分散されると、分子の極性親水性頭部は、無機物の荷電表面に引き付けられ、それ自体をそこに吸着させ、一方、分子の非極性疎水性尾部は外側に突出し、水をはじく。これにより、密着性及び撥水性に優れた保護層が形成される。
【0008】
脂肪酸は、より豊富でより安価な疎水化材料であるが、ケイ素系疎水化剤と比較して、石膏組成物中の同等の含有量で同じ疎水化を提供せず、脂肪酸疎水化剤のより高い含有量は、得られる石膏組成物の加工性及び/又は機械的特性に好ましくない影響を及ぼし得るという懸念がある。
【0009】
石膏組成物のために提案されている他の疎水化剤としては、ピート製品(例えば、Misnikov O.「The hydrophobic modification of gypsum binder by peat products:physico-chemical and technological basis」Mires and Peat,Volume 21(2018),pp.1-14を参照されたい)、並びに独国特許出願公開第19506398(A1)号に記載されているような水再分散性分散粉末とチキソトロープ剤との混合物が挙げられる。
【0010】
この技術水準に基づいて、無機結合剤に基づく建設材料の改良に特に適していて、製品の機械的特性の変化を回避するために比較的低い添加剤濃度で使用することができるが、一方で低コストで高い疎水化効果を提供する疎水化剤が必要とされている。本出願は、これらのニーズに対処する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
驚くべきことに、本発明の基礎となる研究において、ケイ素系疎水化剤と脂肪酸塩系疎水化剤との組み合わせによって、2つの疎水化剤の相乗的相互作用が提供されることが見出された。また、ケイ素系疎水化剤と、水酸化物を提供する塩又は化合物との組み合わせも、相乗的な疎水化相互作用を提供する。無機結合剤に基づく建設材料は、ケイ素系疎水化剤の一部が脂肪酸塩系疎水化剤によって置き換えられると、水の取り込みが著しく減少する。同様に、これらの建設材料は、水酸化物を提供する塩又は化合物が建設材料中に存在すると、水の取り込みが著しく減少する。特に、これらの建設材料の表面の水の取り込みが減少する。疎水化剤と、無機結合剤と、任意の添加剤との混合物は、主に又は完全に固体成分から形成することができることから、例えば、下塗り又はプラスターを固体形態で建築現場に提供することが可能であり、材料は、疎水化剤を複雑に投入することなく、必要量の水を添加するだけで処理することができる。同様に、疎水化剤と、無機結合剤と、任意の添加剤と、水との混合物を、例えばスラリーへとブレンドし、続いて、建築板へと成形することができる。
【0012】
したがって、第1の態様では、本発明は、無機結合剤と、ケイ素系疎水化剤と脂肪酸塩系疎水化剤又は脂肪酸塩系疎水化剤の対応する前駆体との相乗的に有効な混合物と、を含む、無機結合剤に基づく建設材料を提供する。
【0013】
本発明による無機結合剤は、乾燥/粉末形態の無機結合剤が、流体と、例えば、水と混合されるときに物理的に又は好ましくは化学的に硬化することができる全粒子状建築材料を含む。化学的硬化は、化学反応(例えば、水和)を含み、物理的硬化は、例えば、乾燥であり得る。無機結合剤は、硫酸カルシウム含有結合剤、例えば、石膏、及びその部分的に脱水された形態、すなわちα-若しくはβ-半水和物(スタッコ)又は無水石膏であり得る。無機結合剤はまた、石灰、粘土又はセメント結合剤(例えば、ポルトランドセメント、ポルトランドセメントブレンド、他のキルンセメント、アルミン酸カルシウム若しくはスルホアルミン酸カルシウム、マグネシアセメント、マグネシウムオキシクロリドセメント、ビーライトセメント)、並びにこれらの組み合わせであり得る、又はこれらを含み得る。無機結合剤は、水硬性結合剤(例えば、セメント、ポゾラン、水硬性石灰、硫酸カルシウム半水和物若しくは無水石膏、ケイ酸カルシウム、クリンカー、フライアッシュ)、又は非水硬性結合剤(例えば、粘土、非水硬性石灰、水ガラス)であり得る。水硬性結合剤は、水和によって硬化するが、非水硬性結合剤は、硬化のために、例えば、二酸化炭素への曝露が必要である。無機結合剤に基づく建設材料は、当業者に知られている様々な添加剤、例えば、充填剤、促進剤、遅延剤、レオロジー調整剤、疎水化剤、耐火材料などを更に含むことができる。硬化とは別に、無機結合剤に基づく建設材料の製造方法は、乾燥ステップを更に含み得る。
【0014】
無機結合剤としての硫酸カルシウムの場合、脱水された形態(α-及びβ-半水和物及び無水石膏)は、水の存在下で再水和される。この硬化プロセスにおいて、硫酸カルシウム二水和物(すなわち、石膏)が形成される。硫酸カルシウム二水和物結晶は、連結され、したがって強度を提供するが、過剰な水は、材料の完全な硬化のために更に蒸発させる必要がある。
【0015】
本発明における「無機結合剤に基づく建設材料」という用語は、無機結合剤を含む加工可能/成形可能な混合物、並びに無機結合剤を含む硬化/固化した混合物を包含する。硬化/固化した混合物は、建築板(例えば、プラスターボード又はセメント板)、レンガ、設置された下塗り(例えば、設置されたプラスター)、設置されたモルタル、設置された充填剤、設置された目地材(installed joint compound)又は設置されたスクリードなどの成形された物体を包含する。加工可能/成形可能な混合物は、まだ成形されていない物体(すなわち、粉末混合物)、例えば、下塗り(例えば、プラスター)、モルタル、充填剤、目地材又はスクリードを包含する。
【0016】
この建設材料において、「相乗的に有効な混合物」という用語は、その混合物が、いずれかの成分のみのそれぞれの性能に基づいて(建設材料の組成は、相乗的に有効な混合物の成分を除いて同一である)、その混合物について予想されるよりも良好な疎水化性能(例えば、EN 520:2004 5.9.2に従って測定した場合の、水に対するより低い平均総吸収率)を提供することを示すことを意図している。すなわち、例えば、疎水化剤の相乗的に有効な混合物の場合、建設材料の重量に基づいて0.5重量%の濃度のケイ素系疎水化剤は、組成物中で5%の平均総吸収率を提供し、0.5重量%の濃度の脂肪酸塩系疎水化剤は、この組成物中で15%の平均総吸収率を提供し、1:1混合物における2つの組み合わせ(合計0.5重量%の疎水化剤)は、10%の平均総吸収率を提供すると予想される。相乗的に有効な混合物の平均総吸収率は、10%未満であろう。
【0017】
無機結合剤に基づく建設材料は、一般に、材料の混合物を包含し、したがって、化学的に多様な表面、並びに化学的に多様な空隙(例えば、毛管細孔又はより大きい非毛管細孔)を有することができる。疎水化剤に対して異なる親和性を有し得る、異なるタイプの官能基、イオン又は欠陥が存在し得る。理論に束縛されるものではないが、相乗的に有効な混合物は、上記の異なる親和性に対処するものであることから、建設材料の不均一な化学構造、特にその空隙の不均一な化学構造を利用すると考えられる。
【0018】
典型的には、本発明による疎水化剤は、粉末又は微粒子組成物である。脂肪酸塩系疎水化剤の前駆体、すなわち、脂肪酸又はそのエステルは、脂肪、遊離脂肪酸又は一方若しくは両方の形態のエマルジョンの形態であることができる。
【0019】
「脂肪酸塩系疎水化剤又は脂肪酸塩系疎水化剤の前駆体」という用語は、この疎水化剤が、脂肪酸塩又は脂肪酸若しくはそのエステルのいずれかであることを意味することを意図している。脂肪酸又はそのエステルは、一価、二価又は三価カチオン、及び/又はそれぞれのカチオンを提供するアルカリ塩若しくは化合物の存在下において、脂肪酸塩として沈殿し得る。カチオンを提供する塩又は化合物は、建設材料混合物中に既に存在していてよく、又はこの目的のためだけに添加されてもよい。脂肪酸又はそのエステルと塩を形成するのに必要であるカチオンは、溶液中又は無機相表面に存在し得る。好適なカチオンは、好ましくは、Na+、NH+、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+及び/又はAl3+から選択することができ、好適な塩又は化合物は、好ましくはNa+、NH+、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+及び/又はAl3+から選択されるカチオンを含むことができる。
【0020】
塩のカチオンに関する一価、二価又は三価とは、それぞれ1、2又は3個の正電荷を有するカチオンを意味することを意図しており、カチオンは、その原子がそれに結合している原子よりも低い電気陰性度を有する場合に「荷電している」とみなされる。
【0021】
ケイ素系疎水化剤に関して、本発明は、いかなる関連する制限も受けず、すなわち、ケイ素系疎水化剤は、非有機的無機結合剤を含む構造に関連してケイ素系疎水化剤について先行技術において既に記載されている任意の形態であり得る。特に好適なケイ素系疎水化剤としては、シラン、シルセスキオキサンを含むシロキサン、及び/又はシリコーンが挙げられる。
【0022】
シランのうち、アルコキシシランが好ましい。疎水化剤として使用するのに特に有効なシランは、一般構造R1Si(OR2)3及び/又は(R1)2Si(OR2)2,R1[式中、各R1及びR2は、同じでも異なっていてもよい]を有するシランであり得、その中ではR1Si(OR2)3が好ましい。更により好ましくは、R1は、C1~C6、最も好ましくはC1~C4-アルキルであり、R2は、互いに独立して、1つ以上のヒドロキシル基を任意選択的に含むC1~C3アルキル、又はその縮合生成物である。この点に関して、このタイプのシランについては、R1としてのより短い炭素鎖が、より長い鎖と比較して、より良好な疎水化効果を提供することが観察されており、したがって、プロピル(n-及びイソ)、エチル及びメチルなどのアルキルがR1として特に好ましく、最も好ましくはメチルであることに留意されたい。
【0023】
疎水化効果を提供する過程において、OR2基はSiOHへと加水分解されることから、R2基は、疎水化剤としてのシランの性能にあまり重要ではない。しかしながら、加水分解アルコール(HOR2)の水中での良好な安定性を提供するために、アルコールは十分に親水性であるべきである。特に好適な残基R2は、メチル、エチル、及びグリコールから誘導される部分、例えば、ヒドロキシエチル、2-又は3-ヒドロキシプロピル及び2,3-ジヒドロキシプロピルである。
【0024】
シランに基づく特に好ましい疎水化剤は、プロピルトリメトキシシランである。シランに基づく別の特に好ましい疎水化剤は、OR2がエチレングリコールであるメチルシランであり、エチレングリコールは、OCH2CH2OHとして存在してもよく、又は2つのSi原子間に(Si-OCH2CH2O-Siとして)架橋を形成してもよい。
【0025】
当業者には明らかなように、上記シランの部分縮合生成物は、シロキサン(すなわち、酸素架橋を有する、すなわちSi-O-Si架橋、好ましくは1、2、3又は4つの酸素架橋を有する、ケイ素を含む化合物)であり得る。ケイ素系疎水化剤の特に好適な群は、アルキルシロキサン、特にメチルシロキサン又は対応するシルセスキオキサンである。
【0026】
別のタイプの好適なケイ素系疎水化剤はシリコーンであり、本発明の文脈では、アルキル基を有するシリコーンと、シリコーンに結合した水素を有するシリコーンの両方を含む。結合した水素を有する特に好適なシリコーンは、末端トリメチルシロキシ基を有することが好ましいポリメチルハイドロジェンシロキサンである。
【0027】
ケイ素系疎水化剤は、ケイ素化合物のみを含み得るが、乾燥形態で使用される場合、担体材料上にコーティングされ、分散助剤と共に配合され得るケイ素化合物も含み得る。疎水化剤の重量を本発明の目的のために計算する際には、例えば、疎水化剤の分散液の溶媒は考慮されないことに留意されたい。
【0028】
本発明のために、市販のケイ素系疎水化剤、例えば、Wacker Chemie AGによるSilresシリーズのもの、特にSilres Powder Eが特に好ましい。他の好ましい市販のケイ素系疎水化剤は、Dow Chemicalによる、特にDOWSIL(商標)GP SHP 50を含むDOWSIL(商標)シリーズのものである。
【0029】
ケイ素系疎水化剤の含有量は、建設材料の乾燥重量に基づいて、通常0.01~4.99重量%の範囲、好ましくは0.02~0.98重量%の範囲、最も好ましくは0.1~0.7重量%の範囲である。
【0030】
脂肪酸塩系疎水化剤は、いかなる顕著な制限も受けない。脂肪酸塩系疎水化剤を形成するそれぞれの脂肪酸は、飽和又は不飽和であってよい。好ましくは、脂肪酸塩疎水化剤中の脂肪酸は、C4~C30脂肪酸、より好ましくはC8~C24脂肪酸、更により好ましくはC12~C22脂肪酸、又はそのような酸の混合物である。
【0031】
例示的な好適な不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸、バクセン酸、イコセン酸、セトレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びオレイン酸が挙げられ、オレイン酸が特に好ましい。例示的な好適な飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸及びステアリン酸が挙げられ、ステアリン酸が特に好ましい。
【0032】
上記したように、脂肪酸塩系疎水化剤は、必ずしも脂肪酸として直接使用されず、一価、二価又は三価カチオンとの塩として使用されてもよい。脂肪酸塩系疎水化剤のための特に好適な一価、二価又は三価カチオンは、Na+、NH+、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+及び/又はAl3+を含む。本発明の特に好ましい実施形態では、脂肪酸塩系疎水化剤(すなわち、石鹸)の一価又は二価カチオンは、Na+及び/又はCa2+である。脂肪酸塩系疎水化剤は、不飽和脂肪酸の塩、例えば、リノール酸塩、リノレン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、及び/又は飽和脂肪酸の塩、例えばラウリン酸塩、ミリスチン酸塩(myrestate)、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、及び/又はナフテン酸塩、樹脂酸塩又はトール油酸塩を含み得る。本発明の特に好ましい実施形態において、脂肪酸塩系疎水化剤は、オレイン酸ナトリウム及び/又はステアリン酸カルシウムを含む。
【0033】
1つの好ましい実施形態において、本発明の建設材料は、不飽和脂肪酸塩系疎水化剤、飽和脂肪酸塩系疎水化剤及びケイ素系疎水化剤を含む。好ましくは、このような建設材料において、不飽和脂肪酸対飽和脂肪酸の比は、約3:1~1:3、より好ましくは約2:1~1:2、更により好ましくは約1:1である。
【0034】
上記したように、本発明の建設材料は、脂肪酸塩の部分的又は完全な代替物として脂肪酸塩系疎水化剤の前駆体を含むことができる。好ましい実施形態において、この疎水化剤の前駆体は、脂肪酸又はそのエステルを含む。これらの前駆体は、カチオンを提供する塩又は化合物と化合して、in situで脂肪酸系疎水化剤を形成することができる。また、脂肪酸塩系疎水化剤は、そのカチオンを交換することができる。したがって、それも、カチオンを提供する塩又は化合物と化合することができる。カチオンを提供する塩又は化合物は、一価、二価又は三価カチオンを含み得る。特に好適な一価、二価又は三価カチオンは、Na+、NH+、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+及び/又はAl3+を含む。あるいは、又はそれに加えて、脂肪酸又はそのエステルのためのカチオンを供給するのに好適であり得る塩又は化合物は、アルカリ土類金属塩又は化合物、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄又はポルトランドセメントであることができる。上記したように、これらのカチオンを提供する塩又は化合物は、既に存在するカチオンと交換して、脂肪酸塩系疎水化剤と化合することもできる。好ましいアルカリ土類金属塩又は化合物は、アルカリ土類金属酸化物(例えば、酸化カルシウム)及び/又はアルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム)である。脂肪酸塩疎水化剤の前駆体にカチオンを供給するための特に好ましいアルカリ土類金属水酸化物は、水酸化カルシウムである。脂肪酸は、一般に、多価カチオンに対してより高い親和性を有する。存在する場合、カルシウムカチオンが特に好ましい。これはまた、一価カチオンを有する脂肪酸塩系疎水化剤が、その一価カチオンを、例えばカルシウムカチオンと、in situで容易に交換することも意味している。
【0035】
脂肪酸塩系疎水化剤の含有量は、建設材料の乾燥重量に基づいて、通常0.01~4.99重量%の範囲、好ましくは0.02~0.98重量%の範囲、最も好ましくは0.1~0.7重量%の範囲である。あるいは、又はそれに加えて、ケイ素系疎水化剤及び脂肪酸塩系疎水化剤は、0.5~5:1、好ましくは0.5~2:1の重量比で組み込むことができる。
【0036】
加えて、本発明の建設材料中の全ての疎水化剤の総含有量は、建設材料の乾燥重量に基づいて、0.02~5重量%、好ましくは0.04~1重量%、より好ましくは0.2~0.8重量%であり得る。全ての疎水化剤の総含有量とは、ケイ素系疎水化剤及び脂肪酸塩系疎水化剤の合計含有量か、又は脂肪酸塩系疎水化剤が存在しない場合にはケイ素系疎水化剤のみを指すことができる。
【0037】
本発明の基礎となる研究において、好ましくは一価、二価又は三価カチオンを含む水酸化物を提供する塩又は化合物を、ケイ素系及び脂肪酸塩系疎水化剤の合計重量を基準として2:1~20:1、好ましくは5:1~16:1の重量比で存在するような量で組み込むと、疎水化効果を高めることができること見出した。より好ましくは、この塩又は化合物は、アルカリ土類金属酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、水酸化アルミニウム、水和ホウ酸塩、水和リン酸塩、水和ケイ酸塩、水和アルミノケイ酸塩、ポルトランドセメント又は沈降シリカである。水酸化物を提供する塩又は化合物が、アルカリ土類金属酸化物又は水酸化物である場合、それは、(反応性)脂肪酸塩又はその前駆体をそれぞれのアルカリ土類金属脂肪酸塩に完全に変換するのに必要な量を超えて過剰に存在することが一般に好ましい。最も好ましくは、アルカリ土類金属酸化物又は水酸化物は、活性酸化カルシウム、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムから選択される。酸化物は、水溶液中で水酸化物へと反応することができるため、水酸化物アニオンを提供することができる。特に好ましい実施形態において、水酸化物を提供する塩は、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)である。
【0038】
あるいは、無機結合剤に基づく建設材料は、無機結合剤と、水酸化物を提供する塩又は化合物とケイ素系疎水化剤との2:1~20:1、好ましくは5:1~16:1の重量比の相乗的に有効な混合物と、を含む。驚くべきことに、水酸化物を提供する塩又は化合物と、ケイ素系疎水化剤との組み合わせは、ケイ素系疎水化剤単独で予想される疎水化性能よりも良好な疎水化性能(例えば、EN 520:2004 5.9.2に従って測定した場合の水に対するより低い平均総吸収率)を提供する。好ましくは、この建設材料は、脂肪酸塩系疎水化剤又は脂肪酸塩系疎水化剤の前駆体を更に含むことができる。あるいは、又はそれに加えて、上記の実施形態における水酸化物を提供する塩又は化合物は、アルカリ土類金属酸化物又は水酸化物、水酸化アルミニウム、水和ホウ酸塩、水和リン酸塩、水和ケイ酸塩、水和アルミノケイ酸塩、ポルトランドセメント又は沈降シリカであってよい。好ましくは、アルカリ土類金属酸化物又は水酸化物は、水酸化カルシウム、反応性酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムであってよい。より好ましくは、水酸化物を提供する塩は、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)である。任意の適用可能な組み合わせ、並びに前述の好ましい実施形態は、この代替形態について記載しているものとみなされる。
【0039】
本発明の建設材料の基礎を形成する無機結合剤に関して、本発明は、顕著な制限は受けず、当業者に知られている任意の従来の結合剤を使用することが可能である。本発明で使用するのに好ましい無機結合剤は、水硬性結合剤である。好ましくは、水硬性結合剤は、硫酸カルシウム系結合剤及び/又はセメント結合剤を含み、最も好ましくは、硫酸カルシウム系結合剤は、無機結合剤の総重量に基づいて、60重量%超、好ましくは80重量%超、より好ましくは95重量%超の硫酸カルシウムを含む。無機結合剤が硫酸カルシウムに基づく場合、加工可能/成形可能な混合物は、α-及び/若しくはβ-半水和物及び/又は無水石膏を含み、一方、硬化/固化混合物は、硫酸カルシウムの総量に基づいて、>90%の硫酸カルシウム二水和物(すなわち、石膏)を含む。
【0040】
組成に応じて、建設材料は、建設材料の総重量の10~98重量%などの比較的広い範囲の含有量で無機結合剤を含み得る。一実施形態では、建設材料中の無機結合剤の含有量は、10~50重量%、特に15~40重量%の範囲である。別の実施形態では、建設材料中の無機結合剤の含有量は、60~98重量%、特に70~95重量%の範囲である。
【0041】
上記の必須配合成分に加えて、本発明の建設材料は、その1つ以上の機械的特性又は加工特性を調整又は最適化するために、更なる添加剤を含んでよい。そのような添加剤としては、保持調整剤、レオロジー調整剤、充填剤、硬化調整剤、顔料、染料、フラックス剤、繊維(例えば、セルロース又は合成材料又は無機繊維から作製された)、分散粉末、接着促進添加剤、チキソトロープ剤、酸化防止剤、樹脂、加工剤又は弾性付与添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
可能な充填剤としては、例えば、岩粉又は鉱物粉、例えば、石灰石充填剤、砂、例えば、珪砂、特に<2mmのサイズを有するもの、スプリット、硫酸カルシウム二水和物粉、パーライト、バーミキュライト及びゼオライトが挙げられる。他の配合成分の含有量及び意図される用途に応じて、充填剤は、組成物の最大約90重量%(すなわち、最大88.98重量%)の含有量で使用することができる。
【0043】
可能な保水性調整剤又はレオロジー調整剤としては、エーテル化多糖類、例えば、メチルセルロース又はメチル2-ヒドロキシエチルセルロース、ポリグリコール、ポリアクリルアミド、天然粘土及び化学修飾粘土が挙げられる。そのような薬剤は、通常、建設材料の合計最大1重量%、好ましくは最大0.5重量%の量で使用される。
【0044】
可能な硬化時間調整剤としては、例えば、無機酸若しくはそれらの塩、リン酸塩、アミノ酸、分解ポリアミド、例えば、カルシウムで塩化されたもの、糖、例えば、糖酸塩、例えば、グルコン酸ナトリウム、Na、K、アンモニウム及びAlの硫酸塩、又は微粉化硫酸カルシウム二水和物が挙げられる。硬化時間調整剤は、通常、建設材料の乾燥重量に基づいて、合計で最大1重量%、好ましくは最大0.5重量%の量で使用される。
【0045】
無機結合剤として硫酸カルシウムを含む本発明の建設材料のための典型的な組成(全ての配合成分含有量は、建設材料の総乾燥重量に基づく乾燥基準で与えられる)は、以下の通りであり得る:
- 10~98重量%、好ましくは20~80重量%の硫酸カルシウム結合剤、すなわち、硫酸カルシウム無水石膏及び/又はアルファ/ベータ硫酸カルシウム半水和物;
- 1~15重量%、好ましくは2~10重量%の水酸化カルシウム(又は、例えば、反応性酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水和ホウ酸塩、水和リン酸塩、水和ケイ酸塩、水和アルミノケイ酸塩、ポルトランドセメント若しくは沈降シリカ);
- 0.01~4.99重量%、好ましくは0.02~0.98重量%の脂肪酸塩系疎水化剤、及び0.01~4.99重量%、より好ましくは0.02~0.98重量%のケイ素系疎水化剤(疎水化剤の総量は0.02~5重量%の範囲である);
- 最大1重量%の保水性調整剤又はレオロジー調整剤(例えば、エーテル化多糖類、ポリグリコール、ポリアクリルアミド、天然粘土、化学修飾粘土);
- 最大88.98重量%までの無機充填剤(例えば、石英又は石灰石砂、石英又は石灰石粉、石膏粉、パーライト、バーミキュライト、ゼオライト);
- 最大1重量%の硬化調整剤(すなわち、遅延剤及び促進剤、例えば、有機酸又はそれらの塩、リン酸塩、アミノ酸、糖、Na+/K+/NH4
+/Al3+硫酸塩、微粉化硫酸カルシウム二水和物)。
【0046】
本発明の建設材料は、製造することができ、
(i)水を、無機結合剤と、ケイ素系疎水化剤と脂肪酸塩系疎水化剤又はその対応する前駆体との相乗的に有効な混合物と、任意選択的な追加の添加剤と混合するステップと、
(ii)その建設材料を成形するステップと、
(iii)その建設材料を硬化させるステップと、
を含む。
【0047】
あるいは、本発明の建設材料は、製造することができ、
(i)水を、無機結合剤と、水酸化物を提供する塩又は化合物とケイ素系疎水化剤との2:1~20:1の比の相乗的に有効な混合物と、任意選択的な追加の添加剤と混合するステップと
(ii)その建設材料を成形するステップと、
(iii)その建設材料を硬化させるステップと、
を含む。
【0048】
上記の方法において、ステップ(i)における相乗的に有効な混合物は、脂肪酸塩系疎水化剤又は脂肪酸塩系疎水化剤の前駆体を更に含み得る。
【0049】
記載された方法に従って製造される建設材料は、板又は下塗り又はスクリードであり得る。
【0050】
なお更なる態様では、本発明の建設材料は、EN520:2004,5.9.2に従って測定した場合に10%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3.5%以下の平均総吸収率を有することができる。
【0051】
なお更なる態様では、本発明は、無機結合剤に基づく建設材料の疎水化において、EN520:2004,5.9.2に従って測定した場合に10%以下、好ましくは4%以下の平均総吸収率を達成するための、ケイ素系疎水化剤と、脂肪酸塩系疎水化剤の脂肪酸塩系疎水化剤前駆体との相乗的に有効な混合物の使用に関する。
【0052】
あるいは、本発明は、無機結合剤に基づく建設材料の疎水化において、EN520:2004,5.9.2に従って測定した場合に10%以下、好ましくは4%以下の平均総吸収率を達成するための、ケイ素系疎水化剤と、水酸化物を提供する塩又は化合物との相乗的に有効な混合物の使用に関する。
【0053】
任意の上記の実施形態及び代替形態は、組み合わせが明示的に言及されていなくても、代替形態又は実施形態が互いに明確に矛盾しない限り、それらの組み合わせでも記載されているとみなされる。
【0054】
以下では、本発明を実施例によって更に例示するが、それらを、本発明を限定するいかなる意味を有するものとしても解釈してはならない。
【実施例】
【0055】
プラスター組成物は、必要とされる流動性を提供するために適切な量の水を添加することによって、無機結合剤としての硫酸カルシウム半水和物、レオロジー調整剤、硬化調整剤及び充填剤から配合した。試料6に対する例示的な組成を表1に示す。
【0056】
【0057】
疎水化剤及び水酸化カルシウムを除いて、全ての他の試料は、表1に示される試料6の組成と同一の組成を有する。この同一の組成物は、表2の第1の列に「プラスター組成物」としてまとめて示す。唯一の他の例外は、プラスター組成物の総量が異なる試料1及び8である。両方の試料において、プラスター組成物の量の差は、硫酸カルシウム半水和物の量の差のみに起因している。表2は、変化させた成分、すなわち、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、ケイ素系疎水化剤及び脂肪酸塩系疎水化剤に焦点を当てている。より具体的には、Baerophob ECO(Baerlocher GmbHによるオレイン酸ナトリウムとステアリン酸カルシウムとの1:1混合物)及びSilres Powder E(Wacker Chemie AGによるシラン系疎水化剤)を使用した。全ての量は、1000当たりのそれぞれの重量部で示されている。無機結合剤を含むプラスター組成物の量は、乾燥基準で示されている。
【0058】
【0059】
このようにして調製された試料を成形し(すなわち、キャスト又はモールドで)、硬化させ、恒量になるまで乾燥させた。続いて、平均総吸収率、及び試料8の場合には試料の毛管吸収率も測定した。
【0060】
平均総吸収率を測定するために、硬化組成物の4×4×16cmの角柱を、EN 520:2004,5.9.2に記載されているように分析した。
【0061】
毛管吸収率の測定のために、試料をEN 1015-18:2002に従って評価した。
【0062】
これらの試験の結果を以下の表3に示す。
【0063】
【0064】
表3から明らかなように、疎水化剤のうちの1つのみを含む試料(試料2を除く)は、建設材料の乾燥重量に基づいて約0.5重量%のそれぞれの薬剤含有量で中程度の疎水化のみを提供する。興味深いことに、水酸化カルシウム及びケイ素系疎水化剤の両方を含む試料(試料2)は、ケイ素系疎水化剤のみを有する試料3よりもはるかに低い吸収率を提供した。
【0065】
試料5~7の性能は、試料2にほぼ匹敵するか又は試料2よりもわずかに良好であり、疎水化剤のうちの1つのみを含む試料3及び4の性能よりも顕著に良好である。合計の疎水化剤含有量が、0.5から0.6重量%にわずかに増加した試料8では、平均吸収率は、もっと更に減少した。
【国際調査報告】