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特表2024-504244グラフェン複合材料およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】グラフェン複合材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/21 20060101AFI20240124BHJP
   C08C 19/00 20060101ALI20240124BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C08J3/21 CEQ
C08C19/00
C09C3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535358
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2021061536
(87)【国際公開番号】W WO2022123499
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/123,058
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.TRITON
3.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522145524
【氏名又は名称】ユニバーサル マター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チーヨン
(72)【発明者】
【氏名】マンチェフスキ、ウラジミール
【テーマコード(参考)】
4F070
4J037
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA05
4F070AC04
4F070AC05
4F070AC12
4F070AC14
4F070AC40
4F070AC50
4F070AC52
4F070AD01
4F070AD04
4F070AE01
4F070AE03
4F070AE08
4F070AE14
4F070AE28
4F070FA05
4F070FA14
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC03
4F070FC09
4J037AA01
4J037CC06
4J037DD05
4J037DD10
4J037DD24
4J100HA53
4J100HB06
4J100HC69
4J100HC72
4J100HE32
4J100HG31
4J100JA03
4J100JA29
(57)【要約】
【解決手段】 複合材料、および複合材料の製造方法が提供される。複合材料の製造方法は、乱層グラフェンを含む第1の材料を用意するステップと、ゴムを含む第2の材料を用意するステップと、第1の材料と第2の材料とを混合するステップと、乱層グラフェンゴム複合材料を製造するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱層グラフェンを含む第1の材料を用意するステップと、
ゴムを含む第2の材料を用意するステップと、
前記第1の材料と前記第2の材料とを混合するステップと、
乱層グラフェンゴム複合材料を製造するステップと、
を含む複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記乱層グラフェンゴム複合材料を硬化させるステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬化させる前に前記乱層グラフェンゴム複合材料と別の材料とを混合するステップをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
硬化プロセスを架橋剤、促進剤、または熱のいずれかを加えることによって促進する請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋剤が硫黄を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記乱層グラフェンゴム複合材料が未硬化である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記乱層グラフェンが分散しているか、または粉末形態である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ゴムが固形である請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ゴムが液体ゴム材料である請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記液体ゴム材料が有機溶媒または溶媒混合物に分散している請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒を抽出して、固形の乱層ゴム複合材料を製造するステップをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体ゴム材料が水に乳化されている請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記乱層グラフェンが1~10層を含む請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記乱層グラフェンが10~100層を含む請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記乱層グラフェンが100層超を含む請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記乱層グラフェンが、フレークまたはシート状グラフェンおよび多面体グラフェンを含む請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記乱層グラフェンがフレークまたはシート状グラフェンを含む請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記乱層グラフェンが横方向サイズ2nm~100μmを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記乱層グラフェンが多面体グラフェンを含む請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記多面体グラフェンが直径3nm~200nmを有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記多面体グラフェンが複数の壁を含み、前記複数の壁のそれぞれは2~100層を含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ゴムと乱層グラフェン含有媒体とを混合するステップをさらに含み、前記乱層グラフェン含有媒体は、油、有機溶媒、水、または溶媒の混合物のいずれか1つ以上を含む請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
界面活性剤および/または分散剤を添加して、前記乱層グラフェン含有媒体への前記乱層グラフェンの分散を向上させるステップをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
乱層グラフェンラテックス混合物に無乳化剤を添加するステップと、
混合物をさらに処理して、固形の乱層グラフェンゴム複合材料を得るステップと、をさらに含む請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
水で洗浄し、オーブンで乾燥することによって処理を中和するステップをさらに含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
架橋剤を添加するステップと、
未硬化混合物を金型に入れるかまたは注入するステップ、
混合物を熱硬化させるステップと、をさらに含む請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
硬化させる前に架橋剤、促進剤、酸化防止剤、充填剤、および界面官能化剤のいずれか1つ以上を乱層グラフェンゴム複合材料に供給するステップをさらに含む請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記乱層グラフェンゴム複合材料がゴム100質量部当たり前記乱層グラフェンを0.01~50質量部含む請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記乱層グラフェンゴム複合材料がゴム100質量部当たり前記乱層グラフェンを1.25質量部含む請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の材料と前記第2の材料とを混合する前記ステップが機械的攪拌、超音波処理または高せん断混合を含む請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記乱層グラフェンが乱層グラフェンの機械的性能を向上させるヘテロ原子を含む請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ヘテロ原子が、乱層グラフェン表面にわたる不均一な電荷分布を誘導してグラフェン-充填剤およびグラフェン-ポリマー相互作用を増強するか、または促進剤もしくは酸化防止剤として機能する請求項31に記載の方法。
【請求項33】
機械的ミリング、熱水またはソルボサーマル(solvethermal)処理、化学的または電気化学的処理のいずれか1つ以上によって前記乱層グラフェンを官能化して、前記乱層グラフェンの極性を調整するステップをさらに含む請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記乱層グラフェンを官能化して、ゴム複合材料中の他の充填剤との相互作用を向上させる請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記乱層グラフェンを官能化して、重合反応を開始するか、またはゴム複合材料を促進もしくは酸化防止する請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記ゴムが、天然ゴム、天然ゴム、合成ゴム、ゴムラテックス、ゴム溶液、固体ゴム質または固体溶液のいずれか1つ以上を含む請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ゴムが非架橋ポリマーである請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記乱層グラフェンが非グラファイト材料で作られたものである請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記乱層グラフェンを、炭素源のジュール加熱によって製造する請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記乱層グラフェンゴム複合材料が、自動車タイヤ、自動車タイヤ用複合材料、自動車タイヤの一部、他の車両用タイヤ、Oリング、シーリング材料、洗浄機、膜、ベルト、発泡体ゴム、床材、屋根ふき材、スポーツ材料、履物、接着剤、ガスケット、ホース、およびグローブを含む群の少なくとも1つに使用される請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記乱層グラフェンゴム複合材料がタイヤコンパウンドである請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記乱層グラフェンゴム複合材料がタイヤトレッド用ゴム組成物である請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記乱層グラフェンが酸化グラフェンとして部分的に酸化されている請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
充填剤、促進剤、酸化防止剤/オゾン劣化防止剤、または加工添加物のいずれか1つ以上を前記乱層グラフェンゴム複合材料に添加して、前記乱層グラフェンゴム複合材料の材料特性を最適化し、前記充填剤は、カーボンブラック、ZnO、およびSiO2のいずれか1つ以上を含み、前記促進剤は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MB)、N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルホンアミド(TBBS)、およびジフェニルグアニジン(DPG)のいずれか1つ以上を含み、前記酸化防止剤および前記オゾン劣化防止剤は、4010NA、Nochek4729A、6PPD、TMQ、およびステアリン酸のいずれか1つ以上を含む請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
界面活性剤/分散剤を採用して、前記ゴム中の前記乱層グラフェンの分散性を向上させる請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記乱層グラフェンを官能基で修飾して、前記乱層グラフェンとゴムマトリックスとの間の界面相互作用を向上させ、前記官能基は、酸素、水酸化、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、不飽和炭素、シラン、塩素、臭素、およびフッ素のいずれか1つ以上を含む請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記乱層グラフェンの表面をポリマー鎖、アルケン、またはアルキンでグラフト化して、前記乱層グラフェンを前記ゴムで架橋する請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
未硬化複合材料を、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン、イソプレン/イソブチレンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、エチレン/プロピレンゴム(EPM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、およびスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ゴムのいずれか1つ以上を含む適したゴムと混合する請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
未硬化複合材料を、バンバリーミキサーを含む密閉式ミキサー、または2ロールミルを含む開放式ミキサーで混合する請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記乱層グラフェンを、高粘度の油に予め分散して、前記ゴム中の前記乱層グラフェンの分散を向上させる請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
請求項1~50のいずれか1項に記載の方法に従って、乱層グラフェンを含む第1の材料と、ゴムを含む第2の材料とを含む乱層グラフェンゴム複合材料。
【請求項52】
多面体グラフェンを含む第1の材料を用意するステップと、
第2の材料を用意するステップと、
前記第1の材料と前記第2の材料とを混合するステップと、
多面体グラフェン複合材料を製造するステップと、を含む複合材料の製造方法。
【請求項53】
前記第2の材料が、ゴム、セメント、コンクリート、エポキシ、コーティング、アスファルト、プラスチック、ポリマー、ポリウレタンフォーム、ガラスセラミック、タイヤ材料、タイヤトレッド構造物、タイヤトレッド材料、または木質複合材料のいずれか1つ以上を含む請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記多面体グラフェン複合材料を硬化させるステップをさらに含む請求項52に記載の方法。
【請求項55】
硬化させる前に前記多面体グラフェン複合材料を別の材料と混合するステップをさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項56】
硬化プロセスを架橋剤、促進剤、または熱のいずれかを加えることによって促進する請求項54または55のいずれか1項に記載に記載の方法。
【請求項57】
前記架橋剤が硫黄を含む請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記多面体グラフェン複合材料が未硬化である請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記多面体グラフェンが分散しているか、または粉末形態である請求項52~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記第2の材料が固形である請求項52~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記第2の材料が液体ゴム材料である請求項52~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記液体ゴム材料が有機溶媒または溶媒混合物に分散している請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記有機溶媒を抽出して、固形の多面体グラフェン複合材料を製造するステップをさらに含む請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記液体ゴム材料が水に乳化されている請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記多面体グラフェンが1~10層を含む請求項52~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記多面体グラフェンが10~100層を含む請求項52~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記多面体グラフェンが100層超を含む請求項52~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記多面体グラフェンが直径3nm~200nmを有する請求項52~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記多面体グラフェンが複数の壁を含み、前記複数の壁のそれぞれは2~100層を含む請求項52~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記ゴムを多面体グラフェン含有媒体と混合するステップをさらに含み、前記多面体グラフェン含有媒体は、油、有機溶媒、水、または溶媒の混合物のいずれか1つ以上を含む請求項52~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
界面活性剤および/または分散剤を添加して、前記多面体グラフェン含有媒体への前記多面体グラフェンの分散を向上させるステップをさらに含む請求項70に記載の方法。
【請求項72】
無乳化剤を多面体グラフェンラテックス混合物に添加するステップと、
前記多面体グラフェンラテックス混合物をさらに処理して、固形の多面体グラフェン複合材料を得るステップと、をさらに含む請求項52~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
水で洗浄し、オーブンで乾燥することによって処理を中和するステップをさらに含む請求項72に記載の方法。
【請求項74】
架橋剤を添加するステップと、
未硬化混合物を金型に入れるかまたは注入するステップと、
前記未硬化混合物を熱硬化させるステップと、をさらに含む請求項52~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
硬化させる前に、架橋剤、促進剤、酸化防止剤、充填剤、および界面官能化剤のいずれか1つ以上を前記多面体グラフェン複合材料に供給するステップをさらに含む請求項52~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
多面体グラフェンゴム複合材料が、ゴム100質量部当たり前記多面体グラフェンを0.01~50質量部含む請求項52~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記多面体グラフェン複合材料が、ゴム100質量部当たり前記多面体グラフェンを1.25質量部含む請求項52~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記第1の材料と前記第2の材料とを混合するステップが機械的攪拌、超音波処理または高せん断混合を含む請求項52~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記多面体グラフェンが、多面体グラフェンの機械的性能を改善するヘテロ原子を含む請求項52~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記ヘテロ原子が、多面体グラフェン表面にわたる不均一な電荷分布を誘導して、グラフェン-充填剤およびグラフェン-ポリマー相互作用を増強するか、または促進剤もしくは酸化防止剤として機能する請求項79に記載の方法。
【請求項81】
機械的ミリング、熱水またはソルボサーマル(solvethermal)処理、化学的または電気化学的処理のいずれか1つ以上によって、前記多面体グラフェンを官能化して、前記多面体グラフェンの極性を調整するステップをさらに含む請求項52~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記多面体グラフェンを官能化して、ゴム複合材料中の他の充填剤との相互作用を向上させる請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記多面体グラフェンを官能化して、重合反応を開始するか、または複合材料を促進もしくは酸化防止する請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記第2の材料が、天然ゴム、天然ゴム、合成ゴム、ゴムラテックス、ゴム溶液、固体ゴム質または固体溶液のいずれか1つ以上を含むゴムである請求項52~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記ゴムが非架橋ポリマーである請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記多面体グラフェンが非グラファイト材料で作られたものである請求項52~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記多面体グラフェンを、炭素源のジュール加熱によって製造する請求項52~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記多面体グラフェン複合材料が、自動車タイヤ、自動車タイヤ用複合材料、自動車タイヤの一部、他の車両用タイヤ、Oリング、シーリング材料、洗浄機、膜、ベルト、発泡体ゴム、床材、屋根ふき材、スポーツ材料、履物、接着剤、ガスケット、ホース、およびグローブを含む群の少なくとも1つに使用される請求項52~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記多面体グラフェン複合材料がタイヤコンパウンドである請求項52~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記多面体グラフェン複合材料がタイヤトレッド用ゴム組成物である請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記多面体グラフェンが酸化グラフェンとして部分的に酸化されている請求項52~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
充填剤、促進剤、酸化防止剤/オゾン劣化防止剤、または加工添加物のいずれか1つ以上を前記多面体グラフェン複合材料に添加して、前記多面体グラフェン複合材料の材料特性を最適化し、前記充填剤は、カーボンブラック、ZnO、およびSiO2のいずれか1つ以上を含み、前記促進剤は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MB)、N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルホンアミド(TBBS)、およびジフェニルグアニジン(DPG)のいずれか1つ以上を含み、前記酸化防止剤および前記オゾン劣化防止剤は、4010NA、Nochek4729A、6PPD、TMQ、およびステアリン酸のいずれか1つ以上を含む請求項52~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
界面活性剤/分散剤を採用して、前記第2の材料への前記多面体グラフェンの分散性を向上させる請求項52~92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記多面体グラフェンを官能基で修飾して、前記多面体グラフェンと前記第2の材料との間の界面相互作用を向上させ、前記官能基は、酸素、水酸化、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、不飽和炭素、シラン、塩素、臭素、およびフッ素のいずれか1つ以上を含む請求項52~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記多面体グラフェンの表面をポリマー鎖、アルケン、またはアルキンでグラフト化して、前記多面体グラフェンを前記第2の材料と架橋させる請求項52~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
未硬化複合材料を、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン、イソプレン/イソブチレンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、エチレン/プロピレンゴム(EPM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、およびスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ゴムのいずれか1つ以上を含む適したゴムと混合する請求項52~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
未硬化複合材料を、バンバリーミキサーを含む密閉式ミキサー、または2ロールミルを含む開放式ミキサーで混合する請求項52~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記多面体グラフェンを、高粘度の油に予め分散させて、前記第2の材料への前記多面体グラフェンの分散を向上させる請求項52~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
乱層グラフェンを含む第1の材料を用意するステップと、
ゴムモノマー材料を含む第2の材料を用意するステップと、
前記第1の材料と前記第2の材料とを混合するステップと、
前記ゴムモノマー材料を重合するステップと、
前記ゴムモノマー材料をゴムポリマーに転換して、乱層グラフェンゴム複合材料を製造するステップと、を含み、
前記ゴムポリマーは前記乱層グラフェンと物理的または化学的に相互作用する複合材料の製造方法。
【請求項100】
前記乱層グラフェン表面上にまたは前記乱層グラフェン上で前記ゴムポリマーを合成するステップをさらに含む請求項99に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される実施形態は、複合材料、特に組成物およびグラフェン複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム複合材料は、様々な用途に使用することができる。ゴムの特性は、グラフェンなどの追加材料をポリマーに組み込むことによって向上させることができる。グラフェンまたはグラフェン酸化物の物理的または化学的処理を用いて、有利な特性を有するグラフェン/ゴム複合材料を製造することができる。グラフェンを製造する物理的方法としては、グラファイトの剥離、研削、粉砕、およびグラファイトを適切な溶媒中で超音波処理することが挙げられ得る。グラフェンを製造する化学的方法としては、グラファイトの化学的酸化/インターカレーション、超音波処理による酸化グラファイトの剥離、および剥離した酸化グラフェンの化学的還元による還元された酸化グラフェンへの変換が挙げられ得る。また、化学的手段による剥離や還元は、マイクロ波、炉、熱浴、レーザーを用いた急速加熱処理によって実施することもできる。その他のグラフェンの製造方法としては、化学的/物理的気相成長法、カーボンナノチューブ開口法などがある。
【0003】
一般に、化学的/物理的方法により処理されたグラフェンおよび酸化グラフェンは、15~30以上のベルナル積層した層、低い2D/G比(例えば、一般に0.3未満)、および90~95%の炭素含有量を有するグラフェンをもたらす。グラフェンのベルナル積層は、剥離が困難な層をもたらす。
【0004】
このようなグラフェンがグラフェンゴム複合材料などの複合材料に含まれる場合、層の数が比較的多い(15~30)ため、内側の層は複合材料の質量に寄与するが、ポリマーなどの複合材料内の他の成分と容易に結合しない場合があり、したがって、グラフェンベースの複合材料の材料性能に大きく寄与しない。この性能低下に対抗するため、有用なグラフェン複合材料を製造するためには、このような複合材料においてより高い濃度のグラフェンが必要となり、結果として経済的でない材料となる。さらに、グラフェンの純度が低いということは、グラフェンと他の材料との相互作用(グラフェン-ポリマー相互作用など)がさらに損なわれる可能性があるということである。
【0005】
したがって、これらの欠点を克服する、グラフェンゴム複合材料またはグラフェンを含む他の複合材料などの新規グラフェン複合材料を製造する新規方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
複合材料の製造方法が提供され、該方法は、乱層グラフェンを含む第1の材料を用意するステップと、ゴムを含む第2の材料を用意するステップと、第1の材料と第2の材料とを混合するステップと、乱層グラフェンゴム複合材料を製造するステップと、を含む。
【0007】
乱層グラフェンを含む第1の材料と、ゴムを含む第2の材料とを含む乱層グラフェンゴム複合材料が提供される。
【0008】
複合材料の製造方法が提供され、該方法は、多面体グラフェンを含む第1の材料を用意するステップと、第2の材料を用意するステップと、第1の材料と第2の材料とを混合するステップと、多面体グラフェン複合材料を製造するステップと、を含む。
【0009】
第2の材料として、ゴム、セメント、コンクリート、エポキシ、コーティング、アスファルト、プラスチック、ポリマー、ポリウレタンフォーム、ガラスセラミック、タイヤ材料、タイヤトレッド構造物、タイヤトレッド材料、または木質複合材料のいずれか1つ以上が挙げられ得る。
【0010】
複合材料の製造方法が提供され、該方法は、乱層グラフェンを含む第1の材料を用意するステップと、ゴムモノマー材料を含む第2の材料を用意するステップと、第1の材料と第2の材料とを混合するステップと、ゴムモノマー材料を重合するステップと、ゴムモノマー材料をゴムポリマーに転換して、乱層グラフェンゴム複合材料を製造するステップと、を含み、ゴムポリマーは乱層グラフェンと物理的または化学的に相互作用する。
【0011】
該方法は、グラフェン表面上にまたは乱層グラフェン上でゴムポリマーを合成するステップをさらに含み得る。
【0012】
該方法は、乱層グラフェンゴム複合材料を硬化させるステップをさらに含み得る。
【0013】
該方法は、硬化させる前に乱層グラフェンゴム複合材料と別の材料とを混合するステップをさらに含み得る。
【0014】
硬化処理は、架橋剤、促進剤、または熱のいずれかを加えることによって促進し得る。
【0015】
架橋剤として、硫黄が挙げられ得る。
【0016】
乱層グラフェンゴム複合材料は未硬化であり得る。
【0017】
乱層グラフェンは、分散体または粉末形態であり得る。
【0018】
ゴムは、固形であり得る。
【0019】
ゴムは液体ゴム材料であり得る。液体ゴム材料は有機溶媒または溶媒混合物に分散され得る。
【0020】
該方法は、有機溶媒を抽出して、固形の乱層ゴム複合材料を製造するステップをさらに含み得る。
【0021】
液体ゴム材料は水に乳化され得る。
【0022】
乱層グラフェンは1~10層を含み得る。
【0023】
乱層グラフェンは10~100層を含み得る。
【0024】
乱層グラフェンは100層超を含み得る。
【0025】
乱層グラフェンはフレークまたはシート状グラフェンおよび多面体グラフェンを含み得る。
【0026】
乱層グラフェンはフレークまたはシート状グラフェンを含み得る。
【0027】
乱層グラフェンは横方向サイズ2nm~100μmを有し得る。
【0028】
乱層グラフェンは多面体グラフェンを含み得る。
【0029】
多面体グラフェンは直径3nm~200nmを有し得る。
【0030】
多面体グラフェンは複数の壁を含み得、複数の壁のそれぞれは2~100層を含む。
【0031】
該方法は、ゴムと乱層グラフェン含有媒体とを混合するステップをさらに含み得、乱層グラフェン含有媒体は、油、有機溶媒、水、または溶媒の混合物のいずれか1つ以上を含む。
【0032】
該方法は、界面活性剤および/または分散剤を添加して、乱層グラフェン含有媒体への乱層グラフェンの分散を向上させるステップをさらに含み得る。
【0033】
該方法は、乱層グラフェンラテックス混合物に無乳化剤を添加するステップと、混合物をさらに処理して、固形の乱層グラフェンゴム複合材料を得るステップとをさらに含み得る。
【0034】
該方法は、水で洗浄し、オーブンで乾燥することによって処理を中和するステップをさらに含み得る。
【0035】
該方法は、架橋剤を添加するステップと、未硬化混合物を金型に入れるかまたは注入するステップと、および混合物を熱硬化させるステップとをさらに含み得る。
【0036】
該方法は、硬化させる前に架橋剤、促進剤、酸化防止剤、充填剤、および界面官能化剤のいずれか1つ以上を乱層グラフェンゴム複合材料に提供するステップをさらに含み得る。
【0037】
乱層グラフェンゴム複合材料は、ゴム100質量部当たり乱層グラフェンを0.01~50質量部含み得る。
【0038】
乱層グラフェンゴム複合材料は、ゴム100質量部当たり乱層グラフェンを1.25質量部含み得る。
【0039】
第1の材料と第2の材料とを混合するステップは、機械的攪拌、超音波処理または高せん断混合を含み得る。
【0040】
乱層グラフェンは、乱層グラフェンの機械的性能を改善するヘテロ原子を含み得る。
【0041】
ヘテロ原子が、乱層グラフェン表面にわたる不均一な電荷分布を誘導してグラフェン-充填剤およびグラフェン-ポリマー相互作用を増強するか、または促進剤もしくは酸化防止剤として機能し得る。
【0042】
請求項1~32のいずれか1項に記載の方法であって、該方法は、機械的ミリング、熱水またはソルボサーマル(solvethermal)処理、化学的または電気化学的処理のいずれか1つ以上によって乱層グラフェンを官能化して、乱層グラフェンの極性を調整するステップをさらに含み得る。
【0043】
乱層グラフェンは官能化して、ゴム複合材料中の他の充填剤との相互作用を向上し得る。
【0044】
乱層グラフェンは官能化して、重合反応を開始するか、またはゴム複合材料を促進もしくは酸化防止し得る。
【0045】
ゴムは、天然ゴム、天然ゴム、合成ゴム、ゴムラテックス、ゴム溶液、固体ゴム質または固体溶液のいずれか1つ以上を含み得る。
【0046】
ゴムは、非架橋ポリマーであり得る。
【0047】
乱層グラフェンは非グラファイト材料から製造し得る。
【0048】
乱層グラフェンは炭素源のジュール加熱によって製造し得る。
【0049】
グラフェンゴム複合材料は、自動車タイヤ、自動車タイヤ用複合材料、自動車タイヤの一部、他の車両用タイヤ、Oリング、シーリング材料、洗浄機、膜、ベルト、発泡体ゴム、床材、屋根ふき材、スポーツ材料、履物、接着剤、ガスケット、ホース、およびグローブを含む群の少なくとも1つに使用され得る。
【0050】
乱層グラフェンゴム複合材料はタイヤコンパウンドであり得る。
【0051】
乱層グラフェンゴム複合材料はタイヤトレッド用ゴム組成物であり得る。
【0052】
乱層グラフェンは酸化グラフェンとして部分的に酸化され得る。
【0053】
充填剤、促進剤、酸化防止剤/オゾン劣化防止剤、または加工添加物のいずれか1つ以上を乱層グラフェンゴム複合材料に添加して、乱層グラフェンゴム複合材料の材料特性を最適化し得、充填剤は、カーボンブラック、ZnO、およびSiOのいずれか1つ以上を含み、促進剤は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MB)、N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルホンアミド(TBBS)、およびジフェニルグアニジン(DPG)のいずれか1つ以上を含み、酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤は、4010NA、Nochek 4729A、6PPD、TMQ、およびステアリン酸のいずれか1つ以上を含む。
【0054】
界面活性剤/分散剤を用いて、ゴム中の乱層グラフェンの分散性を向上させ得る。
【0055】
乱層グラフェンを官能基で修飾して、乱層グラフェンとゴムマトリックスとの間の界面相互作用を向上させ得、官能基は、酸素、水酸化、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、不飽和炭素、シラン、塩素、臭素、およびフッ素のいずれか1つ以上を含む。
【0056】
乱層グラフェンの表面をポリマー鎖、アルケン、またはアルキンでグラフト化して、乱層グラフェンをゴムで架橋し得る。
【0057】
未硬化複合材料を、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン、イソプレン/イソブチレンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、エチレン/プロピレンゴム(EPM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、およびスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ゴムのいずれか1つ以上を含む適したゴムと混合し得る。
【0058】
未硬化複合材料を、バンバリーミキサーを含む密閉式ミキサー、または2ロールミルを含む開放式ミキサーで混合し得る。
【0059】
乱層グラフェンを高粘度の油に予め分散して、ゴム中のグラフェンの分散を向上させ得る。
【0060】
他の態様および特徴は、いくつかの例示の実施形態の以下の説明により当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
添付の図面は、本明細書の物品、方法、および装置の様々な例を説明するためのものである。
図1】一実施形態に従う乱層グラフェンゴム複合材料の製造方法を説明するフローチャートである。
図2A】ジュール加熱処理によって製造した木材系バイオ炭由来の数層の乱層グラフェンのTEM画像である。
図2B】ジュール加熱処理によって製造した木材系バイオ炭由来の3層の乱層グラフェンのTEMおよびSEAD画像である。
図2C】一実施形態に従う、冶金コークスのジュール加熱で製造した典型的な化学的機械的に後処理した乱層グラフェンのTEM画像である。
図3】一実施形態に従う、再生したタイヤカーボンブラック由来の閉鎖および開放多面体形態グラフェンの一対の高倍率のTEM画像である。
図4】一実施形態に従う、再生したタイヤカーボンブラック由来の焼結した多面体グラフェン粒子を含む3次元構造のSTEM画像である。
図5】一実施形態に従う、再生したタイヤカーボンブラック由来の多面体グラフェンの追加のTEM画像である。
図6】一実施形態に従う、乱層性質の証拠を示す再生したタイヤカーボンブラック由来の多面体グラフェンのTEMおよびSAED画像である。
図7】一実施形態に従う、高品質カーボンブラック由来の多面体グラフェンのTEM画像である。
図8】一実施形態に従う、冶金コークス乱層グラフェン天然ゴムラテックス分散体の安定性を示す画像である。
図9】一実施形態に従う、対照天然ゴム並びに1.5phr(ゴム100質量部当たりの質量部)マスターバッチの希釈から製造した未硬化0.75phr冶金コークス乱層グラフェン天然ゴム複合材料の画像である。
図10】一実施形態に従う、天然ゴム、従来型グラフェン含有天然ゴム(XG)、および冶金コークス由来乱層グラフェン(TG)含有天然ゴムの機械的特性を比較する棒グラフである。
図11】一実施形態に従う、天然ゴム(NR)、従来型グラフェン含有天然ゴム(XG)、および冶金コークス由来乱層グラフェン(TG)含有天然ゴムの熱伝導性を比較する棒グラフである。
図12】一実施形態に従う、冶金コークス乱層グラフェンの油への分散を示す画像である。
図13】一実施形態に従う、典型的なタイヤトレッド処方の対照(グラフェンなし)に対する3種類の乱層グラフェンの硬化曲線を示す図である。
図14】一実施形態に従う、典型的なタイヤトレッド処方の対照ゴム(グラフェンなし)に対する3種類の乱層グラフェンゴム複合材料のムーニー粘度を示す図である。
図15】一実施形態に従う、典型的なタイヤトレッド処方の対照ゴム(グラフェンなし)に対する3種類の乱層グラフェンゴム複合材料の硬度を比較する棒グラフである。
図16】一実施形態に従う、典型的なタイヤトレッド処方の対照ゴム(グラフェンなし)に対する3種類の乱層グラフェンゴム複合材料の引張強度を比較する棒グラフである。
図17】一実施形態に従う、典型的なタイヤトレッド処方の対照ゴム(グラフェンなし)に対する3種類の乱層グラフェンゴム複合材料の弾性率を比較する棒グラフである。
図18A】一実施形態に従う、乱層グラフェンゴム複合材料の製造方法を説明するフローチャートである。
図18B】一実施形態に従う、乱層グラフェンゴム複合材料の製造方法を説明するフローチャートである。
図19】一実施形態に従う、多面体グラフェン複合材料の製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
様々な装置またはプロセスが、請求の範囲に記載の実施形態の例を提供するために、以下に説明される。以下に説明される実施形態は、請求の範囲に記載の実施形態を限定するものではなく、請求の範囲に記載の実施形態は、以下に説明されるものとは異なるプロセスまたは装置を対象とし得る。請求の範囲に記載の実施形態は、以下に説明される任意の1つの装置またはプロセスのすべての特徴を有する装置またはプロセス、または以下に説明される複数の装置またはすべての装置に共通する特徴に限定されることはない。
【0063】
「グラフェン」は、ハニカム結晶格子に高密度に充填されたsp結合した炭素原子の1原子厚さの平面のシートであり、さらに、少なくとも内部シートの大半にわたる炭素原子および芳香族結合の無傷の環構造を含有し、炭素原子の大きな酸化修飾を欠く材料を指す。OH、COOHおよびエポキシドなどの酸素含有基をより少なく有するという点で、グラフェンは酸化グラフェンと区別できる。「グラフェン単層」は、単一層のグラフェンであるグラフェンを指す。「数層グラフェン」は、2~10層のグラフェンであるグラフェンを指す。「多層グラフェン」は、10~100層のグラフェンであるグラフェンを指す。「グラフェンナノプレートレット」は、100層超のグラフェンを指す。
【0064】
「乱層グラフェン」は、グラフェン層の間の秩序がほとんどないグラフェンを指す。使用され得る他の用語としては、誤配向(misoriented)、ツイスト、回転、回転欠陥、および弱結合が挙げられる。乱層グラフェンの回転積層が中間層結合を緩和するのを助け、c軸に沿う面間間隔を増加させ、それによって、同様の質量ベースで比較した場合に、競合するグラフェン構造に対して優れた物理的特性を生じる。隣接した層の積層方向のわずかな違いが、製品性能の重要な違いに表れる。乱層グラフェンの重要な性能の利点は、多層グラフェン構造が少数の個別のグラフェン層に分離しやすく、グラフェン層が再結合しない傾向があることである。グラフェンの乱層性質は、ラマン分光法、透過電子顕微鏡(TEM)、選択領域電子回折(SAED)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、およびX線回折(XRD)分析によって観察および確認し得る。
【0065】
乱層グラフェンはシート状またはフレーク状グラフェンであり得る。シート状またはフレーク状乱層グラフェンは、数層(10層未満)、または多層(10~100層)、またはナノプレートレット(100層超)であり得る。シート状またはフレーク状グラフェンの横方向サイズは、2nm~最大100μmであり得る。グラフェンシートは、単一の粒子または多数の粒子を含み得る。
【0066】
ゴム-グラフェン複合材料、ゴム以外の材料を有するグラフェン複合材料、並びにグラフェン、具体的には乱層グラフェンおよび多面体乱層グラフェンを含有する複合材料およびゴム複合材料の製造方法が提供される。乱層ゴム複合材料などの複合材料に乱層グラフェンを使用することで、同等の非複合材料、またはベルナル積層グラフェンなどの非乱層もしくは従来型グラフェンを含む複合材料より好ましい機械的、電気、熱および化学的材料特性を有する複合材料をもたらし得る。
【0067】
図1を参照すると、乱層グラフェンゴム複合材料を製造する方法100を説明するフローチャートが記載されている。方法100は、ステップ102、104、106および108を含み得る。
【0068】
ステップ102では、乱層グラフェンを含む第1の材料が提供される。
【0069】
ステップ102で提供される乱層グラフェンは、上記の通り本開示において定義され得る。
【0070】
乱層グラフェンは、炭素源の抵抗(オーム)ジュール加熱などの方法によって製造し得る。「炭素源」は、一般に、グラフェン材料、好ましくは乱層グラフェンに転換され得るいずれの炭素系材料も指す。炭素源は、粉末形態、または圧縮したピル形状を含むいずれの形態でもあり得る。炭素源としては、天然原料、処理した天然原料、合成炭素、炭素含有廃棄物、再生または第2世代の材料が挙げられ得る。さらに、炭素源としては、炭、コークス、石油コークス、再生タイヤ、再生プラスチック、バイオ炭、タイヤカーボンブラック、カーボンブラック、冶金コークス、プラスチック灰、プラスチック粉末、バイオマス/バイオマス廃棄物物、食品廃棄物、引いたコーヒー、無煙炭、炭、コーンスターチ、松樹皮、ポリエチレンマイクロワックス(microwax)、ワックス、chemplex 690、セルロース、ナフテン(naptenic)油、アスファルテン、ギルソナイト、およびカーボンナノチューブが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0071】
フラッシュジュール加熱合成方法およびその構成は、国際公開第2020/051000号(Tourら、国際公開日2020年3月12日)に記載されており、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0072】
カーボンピルのジュール加熱によるグラフェン合成方法およびその構成は、国際出願番号PCT/CA2020/051368(Mancevski、国際出願日2020年10月13日)に記載されており、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0073】
図2Aを参照すると、本発明の乱層グラフェンとして使用され得る、ジュール加熱処理によって製造した乱層グラフェンの一例が示されている。図2Aは、木材系バイオ炭から製造した数層のフレーク状乱層グラフェンのTEM画像2002および2004を示す。
【0074】
図2Bを参照すると、木材系バイオ炭からジュール加熱処理によって製造した3層の乱層グラフェンのTEM画像2102およびSEAD画像2104が示されている。
【0075】
ジュール加熱によって製造した乱層グラフェンを後処理して、横方向サイズを減少させ得、グラフェンをより少数または数層のグラフェンに剥離し得る。後処理としては、機械的ミリング、熱水もしくはソルボサーマル(solvethermal)処理、化学的なもしくは電気化学的処理、化学的機械的処理またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得る。機械的ミリング処理は、ボールミル、ピンミル、クラシファイアーミル、ジェットミル、ロッドミル、アトリションミル、媒体ミル、または同種のもので実施し得る。機械的ミリング処理は、乾燥粉末の存在下または湿潤媒体を用いて実施し得る。媒体は、溶媒、例えば、水、アルコール、NMP、DMSO、または同種のものであり得る。熱水またはソルボサーマル(solvethermal)処理は、水または他の有機溶媒を用いてオートクレーブにて実施される。オートクレーブの圧力は、温度および溶媒を調整することによって、1~6MPaに通常制御される。このオートクレーブ圧力は、工業規模またはグレードの機器を採用する場合より高いものであり得る。化学的な処理は、化学物質を使用して、グラフェンを酸化する(例えば、ハマーズ方法)か、またはインターカラントを用いてグラフェンを剥離する。典型的なインターカラントとしては、DMSO、DMF、ヒドラジン、ヒドロキノン、ピレン、アントラキノン、ベンゾキノン、または類似の化合物が挙げられる。電気化学的処理は、電気化学的酸化処理を使用して、グラフェンを剥離する。化学的機械的処理は、1つもしくは複数の化学的なインターカラントまたは1つもしくは複数の剥離剤(exfoliatant)を機械的処理に追加する。そのような処理は、上記の機械的ミル工具のいずれかの選択と、上記の化学的な処理のいずれかの化学的な選択とを組み合わせる。
【0076】
図2Cを参照すると、ジュール加熱処理によって冶金コークスから製造した典型的な化学的機械的に後処理した乱層グラフェンのTEM画像1502、1504が図示されている。画像1502、1504のグラフェンを製造するのに使用した化学的機械的処理は、ピレン剥離剤を用いる乱層グラフェンのボールミリングを含む。画像1502、1504に表されているように、乱層グラフェンはフレーク状形態を含む。画像1502、1504の乱層グラフェンは、横方向サイズが数百nmであり、厚さがグラフェン10層より少ない。
【0077】
ステップ102で提供される乱層グラフェンの量は、乱層グラフェン濃度がゴム100質量部当たり0.01質量部(phr)~50phr変動するように変動し得る。
【0078】
ステップ102で提供される乱層グラフェンは、限定されないが、粉末形態グラフェン、固形グラフェン、または流体形態グラフェンを含み得、グラフェンは流体媒体に分散または溶解している。
【0079】
方法100の一部の例では、ステップ102で提供される乱層グラフェンは多面体グラフェンを含み得る。多面体グラフェンは、多面体形態の乱層グラフェンと定義され得る。多面体グラフェンは、乱層グラフェンの壁および中空の中心で集められている。乱層グラフェンの壁は2~3層、最大数百層の範囲内である。多面体グラフェンの全径は3~200nmである。
【0080】
本発明の前に、多面体状グラフェンは、グラフェンゴム複合材料または他のグラフェン系複合材料を製造するのに使用されていなかった。
【0081】
多面体グラフェンを使用すると、一部の例では材料特性が向上した乱層グラフェンゴム複合材料および他のグラフェン系複合材料をもたらし得る。
【0082】
図3を参照すると、再生したタイヤカーボンブラック由来の多面体乱層グラフェンのTEM画像1602、1604が示されている。試料の個々の粒子が不連続性を示し、いくつかの開放部分が粒子内側に見られる。粒子全体は、側面が20~50nmであるいくつかの焼結または相互接続した壁からそれぞれ構成される。これらの壁分離されていないが、互いに相互接続されている。壁は、数層の積層グラフェン(>10層)から構成されている。この試料の電子回折測定は、乱層結晶性ドメインを示す。
【0083】
いくつかの多面体乱層グラフェン形態において、少なくとも2つの乱層グラフェン多面体構造(閉じたものまたは開いたもの)が1つの構造として融合され、融合した構造が、主要な長さが100nm~数ミクロンである鎖状構造を形成する。これらの相互接続した多面体フレームワークは、3次元構造を構築する。図4の画像1702、1704に示されるこれらの構造は、非平坦なマイクロメーターの長さの構造である。構造は非連続であり、構造は、直径が20~50nm、数層のグラフェン(例えば、10層超)をそれぞれ示す相互接続した多面体グラフェンから構成される。
【0084】
図5を参照すると、再生したタイヤカーボンブラック由来の多面体乱層グラフェンの追加のTEM画像1302、1304が図示されている。この多面体グラフェンの直径は5~50nmであり、壁は5~100層の乱層グラフェンを含む。
【0085】
図6を参照すると、TEM画像1902およびSAED測定1904が示されている。グラフェンシート間の乱層構造の証拠を検出するために、再生したタイヤカーボンブラックから製造した一例の多面体グラフェンを分析した。グラフェン試料の形態(20~50nmの相互接続した中空の炭素粒子)のために、試料の平坦な部分に対応する電子回折を検出するのは困難である。以下のSAED測定は、平坦な部分が曝された試料の一部分で測定されたものである。SAED測定によって、ランダム方向の平坦な領域の小さい結晶性ドメインの存在を示す多層の円形および高コントラストの領域が明らかとなり、これは、シート間の乱層構造を示す。
【0086】
図7を参照すると、高品質カーボンブラック由来の多面体乱層グラフェンのTEM画像1402、1404が図示されている。この多面体グラフェンの直径は10~50nmであり、壁は10~30層の乱層グラフェンを含む。
【0087】
一部の実施形態では乱層グラフェン形態は、フレークまたはシート状グラフェン構造および多面体グラフェン構造を含む。この構造は、混合した供給物のジュール加熱によって得ることができる。該供給物は、少なくとも2つの形態を含み、第1の形態はシート状グラフェンを主に製造し、第2の形態は、多面体状グラフェン主に製造する。シート状グラフェンを主に製造する原料の例は、炭、コークス、石油コークスであり、多面体状グラフェンを主に製造する原料の例は、再生したタイヤカーボンブラック、カーボンブラック、プラスチック灰である。
【0088】
一部の実施形態では、多面体グラフェンの油吸収係数(OAN)を制御して、特定のゴム複合材料用途に一致させ得る。供給物カーボンブラックのOANが、そのような原料から製造したゴム複合材料の性能に影響を与えることは既知である。グラフェンのOANは、グラフェンゴム複合材料の性能に同じ影響を与え得る。多面体グラフェン構造のOANを制御する1つの方法は、望ましいOAN数の供給物を使用し、それのグラフェンへの変換にフラッシュジュール加熱を使用することである。別の制御方法は、供給物のジュールフラッシュ加熱のエネルギー線量を増加させて、グラフェンの構造複雑性(例えばOAN)を増加させることである。
【0089】
一部の例では、乱層グラフェンは、酸化グラフェンとして部分的に酸化され得る。これらのグラフェン酸化物は、数層(10層未満)、多層(10~100層)、またはさらにより多くの層(100層超)を含み得る。これらのグラフェン酸化物は、一部の例ではグラフェン酸化物を減少させるために減少し得る。
【0090】
一部の例では、乱層グラフェンはヘテロ原子を含み得る。これらのヘテロ原子としては、Fe、CO、Ni、Cu、Zn、Al、PD、Pt、Ag、Au、Rh、または1つもしくは複数の他の遷移金属または1つもしくは複数の主族金属が挙げられ得る。また、ヘテロ原子としては、B、N、F、Si、P、S、Clまたは1つもしくは複数の他の主族元素も挙げられ得る。1つもしくは複数のヘテロ原子は、単原子、クラスター、またはナノ粒子であり得る。1つもしくは複数のヘテロ原子は、乱層グラフェンの機械的性能を向上させ得る。また、1つもしくは複数のヘテロ原子は、乱層グラフェン表面にわたる不均一な電荷分布(グラフェン-充填剤およびグラフェン-ポリマー相互作用を増強する)も誘導し得るか、または促進剤または酸化防止剤として機能し得る。
【0091】
一部の例では、乱層グラフェンは官能化して、乱層グラフェンの極性を調整し得る。官能化としては、機械的ミリング、熱水またはソルボサーマル(solvethermal)処理、化学的または電気化学的処理、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得る。
【0092】
一部の例では、乱層グラフェンを官能化して、ゴム複合材料中の充填剤との、またはゴムポリマーとの、または両方との乱層グラフェンの相互作用を向上させ得る。官能化としては、機械的ミリング、熱水またはソルボサーマル(solvethermal)処理、化学的または電気化学的処理、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得る。
【0093】
一部の例では、重合反応を開始する開始剤として機能するように、乱層グラフェンを官能化し得る。
【0094】
一部の例では、ゴム複合材料用の促進剤または酸化防止剤として機能するように、乱層グラフェンを官能化し得る。
【0095】
再び図1を参照すると、ステップ104で、ゴムを含む第2の材料が提供される。
【0096】
ゴム材料は、天然ゴムラテックスなどのゴムラテックス、合成ゴム、ゴムタイプポリマー、またはいずれの他の類似の材料を含み得る。
【0097】
一部の実施形態では、いずれのゴムラテックスも使用し得る。ゴムラテックスとしては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン、イソプレン/イソブチレンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、エチレン/プロピレンゴム(EPM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ゴム、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0098】
一部の実施形態では、ゴム材料は、固体ゴム、ゴムまたは固体溶液であり得る。一部の実施形態では、ゴム材料は、液体ゴム材料であり得る。一部の実施形態では、液体ゴム材料は、有機溶媒または有機溶媒の混合物に分散し得る。一部の実施形態では、液体ゴム材料は水または別の流体に乳化され得る。
【0099】
ステップ106で、乱層グラフェンを含む第1の材料を、ゴムを含む第2の材料と混合する。一部の実施形態では、いずれの適した方法によって乱層グラフェンを混合し得、該方法としては、限定されないが、高せん断混合、機械的攪拌または超音波処理が挙げられる。
【0100】
ステップ108で、乱層グラフェンゴム複合材料を製造する。
【0101】
乱層グラフェンゴム複合材料は、多数の用途での乱層グラフェンゴム複合材料の使用を可能にするいくつかの利点をもたらす。乱層グラフェンゴム複合材料の機械的特性、電気特性、熱特性および化学的特性はゴム材料単独よりも好ましいものであり得る。
【0102】
従来型グラフェンゴム複合材料と比較して、乱層グラフェンゴム複合材料は、より好ましい材料特性を遊離得る。従来のグラフェン(ベルナル積層)は、剥離するのに硬く、15層、最大100層超を含み、0.3未満のラマンピーク率2d/gを有する。乱層グラフェンはより容易に剥離されて、グラフェンのより大きい部分を数層グラフェンに剥離し得、それ故に、ゴム複合材料に適用した場合により多くの利点をもたらす。乱層グラフェンは、極薄のグラフェンシート(1~10層)への容易な剥離、高純度(>99%)、高いラマンピーク率2d/g(0.3~1.1)、および広範囲の調節可能な横方向サイズ(5nm~2μm)などの特性をさらに含み、該特性は望ましい材料特性の乱層グラフェンゴム複合材料に寄与する。さらに、乱層グラフェンの弱められた中間層相互作用によって、乱層グラフェンが溶液に容易に分散できるようになり、グラフェンゴム複合材料を製造する場合にゴムマトリックスにより均一に混合できるようになり、分散困難な厚い層のベルナル積層従来型グラフェンと比較した場合に、はるかに低いグラフェン濃度で同じ性能増強を達成することが可能となる。低い欠陥率およびヘテロ原子(特に酸素)によって、乱層グラフェンが、高熱伝導性および高電気伝導性などの化学的蒸着のグラフェン状特性を示すことができるようになり、乱層グラフェンを用いて製造したグラフェンゴム複合材料の熱伝導度または電気伝導度を増加させ得る。
【0103】
乱層グラフェンの欠陥が少なく、ヘテロ原子含量が少ないことによって、比較的非極性のグラフェン表面が生じ、乱層グラフェンが、界面エネルギーが低い大部分のゴムとよく適合できるようになる。また、乱層グラフェンの極薄の性質および良好な分散性および混合性によって、透明なゴム複合材料の製造が可能となる。乱層グラフェンの低い欠陥率および大きい横方向サイズ(最大2μm)によって、乱層グラフェンゴム複合材料のガスおよび溶媒バリヤ性能が向上する。
【0104】
ここで説明した乱層グラフェンゴム複合材料は、限定されないが、自動車タイヤ、自動車タイヤ用複合材料、自動車タイヤの一部、他の車両用タイヤ、Oリング、シーリング材料、洗浄機、膜、ベルト、発泡体ゴム、床材、屋根ふき材、スポーツ材料、履物、接着剤、ガスケット、ホース、グローブ、またはそれらのいずれの組み合わせを含む群のいずれかに使用され得る。
【0105】
方法100の一部の例では、乱層グラフェンは、様々な種類のエラストマーを用いてゴム複合材料を製造する充填剤として使用され得る。そのような例で、グラフェンまたは乱層グラフェンをポリマーマトリックスに添加する場合、乱層グラフェンシートの大きいアスペクト比はポリマーネットワークとの豊富な界面を生じ、強度、靱性、硬度、剛性および弾性率などの複合材料の機械的特性を増強する。また、乱層グラフェンの高い熱伝導度および電気伝導度は、乱層グラフェンを含む複合材料の熱および電気特性を向上させる。極薄2D乱層グラフェンシートが複合材料において追加のガスバリヤを形成し、バルク複合材料の気体透過を低下させる。
【0106】
できるだけ層数が少なく、高品質で(ラマン分光法で測定した2D/G比が高いことで表される)、欠陥が少なく、炭素純度が高い乱層グラフェンを適用することで、乱層グラフェンゴム複合材料の特性の特性をさらに向上させ得る。
【0107】
方法100の一例の実施形態では、ラテックス-凝集によって、グラフェン系天然ゴム複合材料を製造する。冶金コークスから乱層グラフェンを粒径数μm~数mmの粉末の形態で製造する。冶金コークスをジュール加熱して、炭素内容物を乱層グラフェンへ変換する。乱層グラフェンは、粉末へのボールミリングによってさらに減少し得る。0.2gの乱層グラフェン(1.25phr)を、200mlのHO中26.7gの天然ゴムラテックスおよび0.44gの硫黄(2.8phr)と混合する。均一に混合されるまで、高せん断ミキサーを用いて混合物を攪拌する。攪拌の間、酢酸無乳化剤を滴下することによって混合物を徐々に酸性にして、乱層グラフェン、硫黄、および天然ゴムが凝集できるようにする。得られた材料を水で洗浄することによって中和し、シートに加工し、真空オーブン内にて80℃で一晩硬化させる。
【0108】
一部の実施形態では、HOの量は、使用する場合、混合物の粘度に従って調整し得る。
【0109】
一部の実施形態では、より多くのゴムラテックスと混合してより低い濃度を得るために、高濃度乱層グラフェンラテックス混合物をマスターバッチとして使用できる。
【0110】
図8を参照すると、一実施形態に従う、遠心分離あり、および遠心分離なしの乱層グラフェン天然ゴムラテックス分散体の安定性を示す画像602、604、および606が図示されている。画像602に示すように、得られたグラフェン/天然ゴムラテックス分散体は非常に安定している。さらに、他の画像で見られるように、31RCF、5分間(画像604)および277RCF、5分間(画像606)での遠心分離後、沈殿することなく分散体は安定している。
【0111】
一部の実施形態では、充填剤を乱層グラフェン-ゴム複合材料に添加して、複合材料の材料特性を最適化し得る。充填剤としては、カーボンブラック、ZnO、SiO、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。また、促進剤、酸化防止剤/オゾン劣化防止剤、または加工添加物などの他の化学物質も添加して、加硫プロセスを最適化し得る。促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)および2-メルカプトベンゾチアゾール(MB)、N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルホンアミド(TBBS)、ジフェニルグアニジン(DPG)またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤としては、4010NA、Nochek4729A、6PPD、TMQ、ステアリン酸、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0112】
一部の実施形態では、界面活性剤/分散剤を採用して、ゴムへの乱層グラフェンの分散性を向上させ得る。界面活性剤/分散剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、ドデシル硫酸リチウム(LDS)、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、タウロデオキシコール酸ナトリウム(TDOC)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)、Pluronic F87、ポリビニルピロリドン(PVP),ポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテル(CO-890)、Triton X-100、Tween20、Tween80、ポリカルボキシレート(Polycarboylate)(H14N)、コール酸ナトリウム、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ピリジニウムトリブロミド、N,N’-ジメチル-2,9-ジアザペロピレニウムジカチオン、N,N’-ジメチル-2,7-ジアザピレン、四ナトリウム1,3,6,8-ピレンテトラスルホネート、1-ピレンメチルアミン塩酸塩、1,3,6,8-ピレンテトラスルホン酸四ナトリウム塩水和物、1-ピレンカルボン酸、1-アミノピレン、1-アミノメチルピレン、1-ピレンカルボン酸、1-ピレン酪酸、1-ピレンブタノール、1-ピレンスルホン酸水和物、1-ピレンスルホン酸ナトリウム塩、1,3,6,8-ピレンテトラスルホンテトラ酸四ナトリウム塩、6,8-ジヒドロキシ-1,3-ピレンジスルホン酸二ナトリウム塩、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩、ペリレンビスイミド双頭型両親媒性化合物、テトラブチルアンモニウム水酸化(TBA)、9-アントラセンカルボン酸、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0113】
一部の実施形態では、乱層グラフェンの表面を官能基で修飾して、乱層グラフェンとゴムマトリックスとの間の界面相互作用を向上させる。官能基としては、酸素、水酸化、カルボニル、カルボン酸、ケトン、エーテル、不飽和炭素、シラン、塩素、臭素、フッ素、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0114】
一部の実施形態では、乱層グラフェンの表面をポリマー鎖、アルケン、またはアルキンでグラフト化して、乱層グラフェンをゴムマトリックスで架橋し得る
【0115】
一部の実施形態では、乱層グラフェンは、ゴムポリマーの架橋、ポリマー酸化阻害、またはグラフェンとゴムマトリックスとの間の界面相互作用を促進するヘテロ原子を含み得る。
【0116】
一部の実施形態では、いずれの適した無乳化剤も、酢酸の代わりに使用し得る。適した無乳化剤としては、有機酸、無機酸、有機溶媒、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。有機酸としては、ギ酸、シュウ酸、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。無機酸としては、HClが挙げられ得る。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得る。
【0117】
方法100の一例の実施形態では、乱層グラフェン系天然ゴム複合材料は、未硬化乱層グラフェンゴム複合材料を製造するために、Sを添加せずに製造し得る。一例の実施形態は、200mlのHO中、0.2gの乱層グラフェン(ゴム100質量部当たり1.25質量部または1.25phr)を26.7gの天然ゴムラテックスと混合することを含む。均一に分散するまで、高せん断ミキサーを用いて混合物を攪拌する。攪拌下、酢酸無乳化剤を滴下することによって、分散体は徐々に酸性にされ、固形での乱層グラフェンおよび天然ゴムの凝集が可能となる。得られた材料を水で洗浄することによって中和し、その後、真空オーブン内にて40℃で一晩乾燥して、固形の乱層グラフェンゴム複合材料混合物を得る。乾燥した乱層グラフェン/天然ゴム複合材料は、架橋ポリマーマトリックスを有さず、未硬化複合材料である。未硬化複合材料は、グラフェン濃度0.1~50phrで調製しうる。一部の実施形態では、いずれのラテックスゴムも、天然ゴムの代わりに使用し得る。一部の実施形態では、界面活性剤/分散剤を使用して、グラフェンの分散を向上させ得る。一部の実施形態では、グラフェン表面官能化を用いて、グラフェン-天然ゴム界面相互作用を向上させることができる。
【0118】
一部の実施形態では、未硬化乱層グラフェンゴム複合材料はマスターバッチとして機能し得、バンバリーミキサーなどの密閉式ミキサー、または2ロールミルなどの開放式ミキサーでより多くの天然ゴムと混合して、乱層グラフェン濃度がより低い未硬化乱層グラフェン/ゴム複合材料を製造し得る。
【0119】
図9を参照すると、3つの例の材料を示す画像502、504、および506が図示されている。506には、一実施形態に従う、1.5phrのマスターバッチの希釈から製造した未硬化の0.75phr乱層グラフェン天然ゴム複合材料が示されている。504には、グラフェン濃度が1.5phrである乱層グラフェン-天然ゴム複合材料が示されている。502には、グラフェンが添加されていない天然ゴム対照が示されている。画像506の0.75phr乱層グラフェン天然ゴム複合材料は、等量の天然ゴムと1.5phr乱層グラフェン天然ゴム複合材料マスターバッチとを混合して、乱層グラフェン含量が0.75phrである乱層グラフェン天然ゴム複合材料シートを作製することによって製造される。
【0120】
一部の実施形態では、ゴム材料は、ゴムモノマー材料を含み得る。一部の実施形態では、方法100は、ゴムモノマー材料をゴムポリマーに変換する重合プロセスさらに含み得、ゴムポリマーは乱層グラフェンをカプセル化する。
【0121】
一部の実施形態では、未硬化複合材料を、限定されないが、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン、イソプレン/イソブチレンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、エチレン/プロピレンゴム(EPM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ゴム、またはそれらのいずれの組み合わせなどのいずれの他の適したゴムと混合し得る。未硬化複合材料をバンバリーミキサーなどの密閉式ミキサー、または2ロールミルなどの開放式ミキサーで混合して、対応する未硬化グラフェン/混合したゴム複合材料を作製し得る。
【0122】
一部の実施形態では、方法100は、限定されないが、カーボンブラック、ZnO、SiO、またはそれらのいずれの組み合わせなどの他の充填剤と、未硬化乱層グラフェンゴム複合材料とを混合することを含み得る。また、未硬化乱層グラフェンゴム複合材料を、架橋剤(S)、シラン(SI-69)、加工添加剤(Struktol ZB49)、促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)および2-メルカプトベンゾチアゾール(MB)、N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルホンアミド(TBBS)、ジフェニルグアニジン(DPG))、酸化防止剤(4010NA、Nochek4729A、6PPD、TMQ、ステアリン酸)、またはそれらのいずれの組み合わせなどの他の化学物質と混合し得る。未硬化複合材料を、バンバリーミキサーなどの密閉式ミキサー、または2ロールミルなどの開放式ミキサーで混合し得る。混合した複合材料を望ましい温度への加熱によって硬化し得る。
【0123】
一部の実施形態では、マスターバッチ乱層グラフェンゴムラテックス分散体を製造し得る。該方法は、高せん断ミキサーによって、5gの天然ゴムラテックスおよび5gのHOと、0.3gの乱層グラフェンとを混合するステップを含む。乱層グラフェン天然ゴムラテックスの安定性は、水含量を減らすことによって向上させ得る。水含量の低下は、混合段階中により少ない水を用いることによって、または真空オーブンを用いて、混合後に水含量の一部を除去することによって達成し得る。一部の実施形態では、他のゴムのラテックスを天然ゴムの代わりに使用できる。一部の実施形態では、界面活性剤/分散剤を使用して、グラフェンの分散を向上させ得る。一部の実施形態では、グラフェン表面官能化を用いて、グラフェン-天然ゴム界面相互作用を向上させ得る。
【0124】
方法100の一例の実施形態では、乱層グラフェン系天然ゴム複合材料は、キャスティング方法を用いて製造し得る。一例の実施形態は、10gの天然ゴムラテックスおよび1.7gのHOと0.09gの乱層グラフェンを混合するステップを含む。均一なグラフェン分散が達成されるまで、超音波処理によって混合物を超音波処理する。混合物を望ましい形状の金型に入れ、真空オーブンで乾燥して、未硬化乱層グラフェン天然ゴム複合材料を得る。乱層グラフェンの量は、一例の実施形態では、0.1~10phrに調整し得る。
【0125】
一部の実施形態では、いずれの適したラテックスゴムも、天然ゴムの代わりに使用し得る。一部の実施形態では、界面活性剤/分散剤を使用して、グラフェンの分散を向上させ得る。一部の実施形態では、グラフェン表面官能化を用いて、グラフェン-天然ゴム界面相互作用を向上させ得る。
【0126】
一部の実施形態では、市販のEnvironmental Technology 787 Casting’Craft Mold Builder、および天然ラテックスゴムを方法100で用い得る。一部の実施形態では、Mold Builderに、水に分散した60wt%の固体材料を入れ得る。
【0127】
一部の実施形態では、グラフェンゴム複合材料は、限定されないが、カーボンブラック、ZnO、SiOなどの他の充填剤を含み得る。グラフェンゴム複合材料は、他の化学物質を含み得、該化学物質は、超音波処理ステップ前に添加し得る。これらの他の化学物質としては、架橋剤(S)、シラン(SI-69)、加工添加剤(Struktol ZB49)、促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)および2-メルカプトベンゾチアゾール(MB)、N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルホンアミド(TBBS)、ジフェニルグアニジン(DPG))、酸化防止剤(4010NA、Nochek 4729A、6PPD、TMQ、ステアリン酸)、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。他のゴム組成物のラテックスは、天然ゴムの代わりに使用して、乱層グラフェンゴム複合材料を調製し得る。また、充填剤および化学物質も、後に、バンバリーミキサーなどの密閉式ミキサー、または2ロールミルなどの開放式ミキサーを用いて、未硬化複合材料に添加し得る。未硬化乱層グラフェンゴム複合材料もマスターバッチとして使用して、バンバリーミキサーなどの密閉式ミキサー、または2ロールミルなどの開放式ミキサーを用いて、他のゴムと混合し得る。混合した複合材料を、複合材料を望ましい硬化温度に加熱することによって硬化し得る。
【0128】
方法100の一例の実施形態では、グラフェン系天然ゴム複合材料は、浸漬方法で製造し得る。該方法は、10gの天然ゴムラテックスおよび1.7gのHOと0.09gの乱層グラフェンを混合するステップを含む。均一なグラフェン分散が達成されるまで、混合物を超音波処理装置で超音波処理する。望ましい形状の金型を混合物中に浸漬した後取り出し、真空オーブンで乾燥して、成型された未硬化乱層グラフェン天然ゴム複合材料を得る。乱層グラフェンの量を0.1~50phrに調整し得る。いずれの他の適したラテックスゴムも、天然ゴムの代わりに使用し得る。いずれの他の適した界面活性剤/分散剤も使用して、グラフェンの分散を向上させ得る。グラフェン表面官能化を用いて、グラフェン-天然ゴム界面相互作用を向上させ得る。充填剤(限定されないが、カーボンブラック、ZnO、SiO、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられる)を混合物に添加し得る。また、超音波処理ステップの前に、化学物質を混合物に添加し得る。該化学物質としては、架橋剤(S)、シラン(SI-69)、加工添加剤(Struktol ZB49)、促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)および2-メルカプトベンゾチアゾール(MB)、N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルホンアミド(TBBS)、ジフェニルグアニジン(DPG))、酸化防止剤(4010NA、Nochek4729A、6PPD、TMQ、ステアリン酸)、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。混合した複合材料を望ましい温度への加熱によって硬化し得る。
【0129】
方法100の一例の実施形態では、乱層グラフェン系ゴム複合材料は、溶液懸濁混合方法で製造し得る。該方法は、ゴムを溶媒に溶解するステップを含む。ゴムとしては、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレン、イソプレン/イソブチレンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、エチレン/プロピレンゴム(EPM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ゴム、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。溶媒は、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、アセトン、またはそれらのいずれの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。該方法は、混合方法(限定されないが、超音波処理、機械的攪拌、または高せん断混合が挙げられる)を用いて、乱層グラフェンをゴム溶液と混合するステップを含む。その後、未硬化複合材料を、乱層グラフェン-ゴム溶液混合物に含まれる溶媒を真空オーブンにて蒸発させることによって製造する。界面活性剤/分散剤を使用して、グラフェンの分散を向上させ得る。グラフェン表面官能化を用いて、グラフェン-天然ゴム界面相互作用を向上させ得る。充填剤を混合物に添加し得、充填剤としては、カーボンブラック、ZnO、SiO、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。化学物質は、乱層グラフェンとの混合ステップ中に混合物に混合してもよいし、バンバリーミキサーなどの密閉式ミキサー、または2ロールミルなどの開放式ミキサーを用いてその後複合材料にブレンドしてもよい。化学物質としては、架橋剤(S)、シラン(SI-69)、加工添加剤(Struktol ZB49)、促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)および2-メルカプトベンゾチアゾール(MB)、N-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルホンアミド(TBBS)、ジフェニルグアニジン(DPG))、酸化防止剤(4010NA、Nochek 4729A、6PPD、TMQ、ステアリン酸)、またはそれらのいずれの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。また、未硬化乱層グラフェンゴム複合材料は、マスターバッチとして使用して、バンバリーミキサーなどの密閉式ミキサー、または2ロールミルなどの開放式ミキサーを用いて、他のゴムと混合し得る。混合した複合材料を望ましい温度への加熱によって硬化し得る。
【0130】
方法100の一例の実施形態では、乱層グラフェン系ゴム複合材料を直接処理で製造する。直接処理は、乱層グラフェンを直接添加することと、バンバリーミキサーなどの密閉式ミキサーにてゴムを溶融することとを含む。ミキサーは、グラフェンを溶融したゴム全体にわたって分散させ得る。混合処理中に充填剤も添加し得る。該方法は、均一な混合を可能にするように、処理した複合材料を双ロールミルに数回通すステップを含む。また、Sなどの架橋剤も、双ロールミリング処理に添加して、複合材料を硬化可能にする。
【0131】
一部の実施形態では、乱層グラフェン表面上または乱層グラフェン上で、ゴムポリマーを合成することによって、乱層グラフェンゴム複合材料の製造を達成し得る。
【0132】
一部の実施形態では、ゴムをグラフェン含有媒体と混合することによって、乱層グラフェンゴム複合材料を調製する。媒体は、油、有機溶媒、または水であり得る。より多くの媒体と混合することによってより低い濃度に希釈するために、媒体中の高濃度乱層分散体をマスターバッチとして使用できる。
【0133】
一部の実施形態では、該方法は、ゴムを溶媒に溶解するステップを含み得る。
【0134】
一部の実施形態では、該方法は、未硬化混合物を硬化させるステップを含み得る。
【0135】
一部の実施形態では、未硬化混合物を硬化させるステップは、混合物を望ましい温度に加熱するステップを含む。
【0136】
一部の実施形態では、該方法は、未硬化乱層グラフェン-ゴム混合物を金型に注入するステップを含み得る。
【0137】
図10を参照すると、一実施形態に従う、天然ゴム(NR)、天然ゴム含有従来型グラフェン(XG/NR)、および方法100によって製造し得る材料などの天然ゴム含有乱層グラフェン(TG/NR)の機械的特性を比較する棒グラフ400が図示される。従来型グラフェンは、乱層グラフェンがAB積層ではなく5層未満のグラフェンを含有すると言う点で乱層グラフェンと異なる。ゴム100質量部当たり1.25質量部(phr)および5phrの乱層グラフェンおよび従来型グラフェンの濃度が示されている。ゴム複合材料を100%伸張および200%伸張まで伸ばすMPaで求められる応力が示されている。グラフェンを全く含まない天然ゴムは、100%および200%伸張まで伸張させるのに最も少ない応力を要する。従来型グラフェン天然ゴム複合材料は、グラフェンなしの天然ゴムより大きい応力を伸張に要する。天然ゴムでの従来型グラフェンの容積を1.25phrから5phrまで増加させると、100%伸張および200%伸張まで伸張させるのに必要な応力が天然ゴム単独と比較して増加する。乱層グラフェン天然ゴム複合材料は、両方天然ゴム単独および従来型グラフェン天然ゴム複合材料の両方を超える向上した特性を示す。1.25phrおよび5phrの両方で、乱層グラフェン天然ゴム複合材料は、100%伸張および200%伸張まで伸張させるまで、天然ゴムおよび従来型グラフェン天然ゴム複合材料より大きい応力を要する。
【0138】
図11を参照すると、一実施形態に従う、天然ゴム(NR)、従来型グラフェン含有天然ゴム(XG)、および方法100によって製造し得る材料などの天然ゴム含有乱層グラフェン(TG)の熱伝導性を比較する棒グラフ500が図示される。図11の例での乱層グラフェン含有材料および従来型グラフェン含有材料の両方とも、グラフェンゴム複合材料においてゴム100質量部当たり1.25質量部(phr)のグラフェン濃度を有する。従来型グラフェン天然ゴム複合材料では、天然ゴム単独に対して熱伝導が減少している。これに対して、乱層グラフェン天然ゴム複合材料は、天然ゴム単独および従来型グラフェン天然ゴム複合材料に対して熱伝導が増加している。
【0139】
図12を参照すると、一実施形態に従う、油中の乱層グラフェンの分散の画像702、並びにHyPrene2000への均一なグラフェン分散を示す拡大された光学像704が図示される。
【0140】
ゴムマトリックスへのグラフェンの分散を向上させるために、乱層グラフェンを高粘度の油に予め分散し得る。そのような油は、HyPrene100、HyPrene200、HyPreneL2000、またはいずれの他の適した鉱油またはバイオオイルであり得る。超音波処理、または機械的攪拌、または高せん断混合によって、分散を達成し得る。油に分散した乱層グラフェンの濃度は、0.1wt%~50wt%で変動し得る。HyPrene油100、500、および2000への典型的な乱層グラフェンの分散が図12の画像702に示されている。典型的な拡大された光学像704は、乱層グラフェン濃度が5wt%であるHyPrene2000中の均一なグラフェン分散を示す。乱層グラフェン分散体中の高濃度のグラフェンを追加のオイルと混合して、希釈した分散体を得ることができる。上記で説明した密閉式ミキサーを用いて、望ましい濃度の乱層グラフェン油分散体を溶融したゴムにブレンドし得る。望ましい濃度の乱層グラフェン油分散体を、タイヤ複合材料製造方法においてゴムおよび他の添加剤とブレンドし得る。グラフェン表面官能化を用いて、グラフェン-天然ゴム界面相互作用を向上させ得る。また、有機ケイ素(シラン)などのカップリング剤を添加して、グラフェンとゴムマトリックスとの間の相互作用を向上させ得る。
【表1】
【0141】
上記の表1を参照すると、添加する乱層グラフェンの添加による性能改善を評価できるように、様々なタイプの添加した乱層グラフェンを用いた典型的なタイヤトレッド処方の詳細が示されている。3種類の乱層グラフェンは、化学的機械的に剥離したフレーク状冶金コークス由来乱層グラフェン(TG1)、再生したタイヤカーボンブラック由来の多面体グラフェン(TG2)、および高品質カーボンブラック由来の別の多面体グラフェン(TG3)である。機械的ミリング方法によって、剥離剤としてピレンを用いて、TG1を最初に減少させ、剥離した。まず、グラフェンをHyprene L2000オイルに20wt%で分散させた。その後、25phrのこの油分散体を処方において混合して、ゴム複合材料中5phrのグラフェンを達成した。添加した乱層グラフェンを用いる処方は、添加した乱層グラフェンを含まない対照処方を超える性能増加を示す。
【0142】
図13を参照すると、ASTM D5289(Standard Test Method for Rubber Property-Vulcanization Using Rotorless Cure Meters)標準(その内容全体を参照により本明細書に援用する)に準拠して、ムービングダイレオメータを用いて測定した、対照802(乱層グラフェン添加なし)、および3つの乱層グラフェン添加したゴム複合材料:TG1 804、TG2 806およびTG3 808の硬化挙動を比較する折れ線グラフ800が図示される。3つの乱層グラフェンのすべてが、ゴムに添加した際に硬化プロセスを促進した。ポリマーの架橋開始を示すスコーチ時間は、TG1 804では1.97分、TG2 806では1.88分、TG3 808では1.82分であり、これらは対照試料での2.17分より速い。硬化プロセスの終了と考えられるT90は、TG1 804では5.67分、TG2 806では5.29分、TG3 808では5.2分であり、これらも対照802での6.48分より速い。一方で、対照試料と比較して、TG1 804、TG2 806、およびTG3 808の最大トルクがそれぞれ6%、9%、および8%向上し、乱層グラフェンの添加によって、乱層グラフェンゴム複合材料の剛性および硬度が対照に対して増加することを示す。
【0143】
図14を参照すると、ASTM D1646(Standard Test Method for Rubber-Viscosity、Stress Relaxation、and Pre-Vulcanization Characteristics(Mooney Viscometer))(その内容全体を参照により本明細書に援用する)に準拠し、ムーニー粘度計を用いて測定した、対照902(乱層グラフェンなし)、および3つのグラフェン添加ゴム複合材料:TG1 904、TG2 906およびTG3 908のレオロジー特性を比較する折れ線グラフ900が図示される。試料を1分間加熱後に初期粘度を測定した。TG1 904での粘度は89.82MU、TG2 906での粘度は104.11MU、TG3 908での粘度は98.44MUであり、それぞれ、対照(82.79MU)より8%、26%、および19%高い。TG1 904、TG2 906、およびTG3 908でのML1+4(4分後)は、それぞれ57.15MU、63.16MU、および62.11MUであり、依然として対照(50.19MU)よりそれぞれ14%、26%、および24%より高い。それ故に、ゴム複合材料にグラフェンを添加すると、充填剤ネットワークを効果的に増強し得、充填剤-充填剤相互作用を向上させ得、複合材料の剛性を向上させ得る。フレーク状TG1 904と比較して、多面体TG2 906およびTG3 908は、より効率的なネットワークを与えることができ、より高い剛性を生じ得る。
【0144】
図15を参照すると、対照(乱層グラフェンなし)、および3つのグラフェン添加したゴム複合材料の硬化後の硬度を比較する棒チャート1000が図示される。ASTM D2240(Standard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness)(その内容全体を参照により本明細書に援用する)に準拠し、硬度計を用いて試験を行った。フレーク状TG1は、対照と比較して3%の硬度の向上を示す。また、多面体TG2は6%の硬度の向上を示し、多面体グラフェンがより効率的なネットワークを与えることを再度示す。
【0145】
図16を参照すると、対照1202(乱層グラフェンなし)、および3つのグラフェン添加したゴム複合材料の硬化後の破断時引張を比較する棒チャート1100が図示される。ASTM D412(Standard Test Methods for Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers-Tension)(その内容全体を参照により本明細書に援用する)に準拠して、試験を行った。フレーク状TG1は、対照に対して9%の向上を示す一方で、多面体TG3も6%の向上を示す。
【0146】
図17を参照すると、対照1202(乱層グラフェンなし)、および3つのグラフェン添加したゴム複合材料、TG1 1204TG2 1206およびTG3 1208の硬化後の弾性率を比較する棒チャート1200が図示される。可能な場合50%、100%、200%および300%の伸張時において弾性率を測定した。ASTM D412(Standard Test Methods for Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers-Tension)(その内容全体を参照により本明細書に援用する)に準拠して、試験を実施した。TG試料は、弾性率の少なくとも7%の向上を示し、TG2 1206では100%伸張時に最大24%の向上を示す。
【0147】
図18Aおよび図18Bを参照すると、乱層グラフェンゴム複合材料の製造方法200を説明するフローチャートが示されている。方法200は、方法100のすべてステップを含み、さらに、ステップ202、204、206、208、210、212、214、216、または218のいずれかまたはすべてを含み得る。方法200のステップは、いずれの順番であってもよい。方法100および乱層グラフェンゴム複合材料を参照した上記の説明は方法200にも適用し得る。
【0148】
ステップ202で、ゴム材料を重合する。ステップ202を含む方法200の例では、ゴム材料は、ゴムモノマーを含み得る。
【0149】
ステップ204で、界面活性剤および/または分散剤を添加する。
【0150】
ステップ206で、無乳化剤をラテックス混合物に添加する。
【0151】
ステップ208で、硬化させる前に乱層グラフェンゴム複合材料を別の材料と混合する。
【0152】
ステップ210で、乱層グラフェンゴム複合材料を硬化させる。
【0153】
ステップ212で、乱層グラフェンを官能化する。
【0154】
ステップ214で、架橋剤、促進剤、酸化防止剤、充填剤、または界面官能化剤を乱層グラフェンゴム複合材料に供給する。
【0155】
ステップ216で、未硬化混合物を金型に入れるか、または注入する。
【0156】
ステップ218で、ゴムラテックスに架橋剤を添加することを含め、未硬化混合物を硬化させる。
【0157】
図19を参照すると、多面体グラフェン複合材料を製造する方法300を説明するフローチャートが表されている。方法300は、ステップ302、304、306および308を含み得る。方法100および200、並びに乱層グラフェンゴム複合材料を参照した上記の説明は、方法300に適用し得る。
【0158】
ステップ302で、第1の材料を含む多面体グラフェンが提供される。多面体グラフェンは、上述したいずれのグラフェンであり得る。
【0159】
ステップ304で、第2の材料が提供される。第2の材料は、別の材料を容易に混合または分散し得る材料を含み得る。第2の材料は、コンクリート、セメント、エポキシ、コーティング、アスファルト、プラスチック、ポリマー、ポリウレタンフォーム、ゴム、ガラスセラミック、タイヤ材料、タイヤトレッド処方、タイヤトレッド材料、または木質複合材料が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0160】
ステップ306で、第1の材料を第2の材料と混合する。限定されないが、高せん断混合の代わりに機械的攪拌または超音波処理を含むいずれの適した方法によって、多面体グラフェンを混合し得る。
【0161】
ステップ308で、多面体グラフェン複合材料を製造する。多面体グラフェン複合材料は、一部の実施形態および構造での第1の材料単独より好ましい機械的特性、電気特性、熱特性および化学的特性を含み得る。
【0162】
上記の説明は、1つまたは複数の装置、方法、またはシステムの例を提供するが、他の装置、方法、またはシステムが、当業者によって解釈される特許請求の範囲に含まれ得ることが理解されるであろう。例えば、例示的な実施形態の組み合わせは、当業者によって解釈される特許請求の範囲内にあり得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
【国際調査報告】