(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】角膜硝子化を生じることなく視力を改善し回復させる新規性のある網膜放射照度分布修正のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20240124BHJP
A61F 9/01 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61F2/16
A61F9/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535559
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 US2020064620
(87)【国際公開番号】W WO2022125116
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520223789
【氏名又は名称】アパーチャー・イン・モーション・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オリビア・エヌ・セルデアビッチ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097BB06
4C097SA01
4C097SA10
(57)【要約】
視野内からの視覚情報の神経統合および知覚を増強するために眼の固視の偏心視域から遠ざかる方向で視覚探索、サンプリング、および刺激の修正を伴う眼の視覚系のリブートを引き起こすことによって視力を改善するかまたは回復させる方法および装置が本明細書において説明されている。いくつかの実施形態は、眼の固視の偏心視域から遠ざかる方向で固視の偏心視域ではない複数の網膜配置への環境光の一時的、反転可能、または繰り返し可能な方向転換を引き起こす。いくつかの実施形態は、決定可能なレートで決定可能な間隔に対して眼の固視の偏心視域における環境光の曝露を低減する。いくつかの実施形態は、視覚障害または視覚喪失のある眼における固視の偏心視域での環境光の焦点ぼかしを引き起こす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視力を改善するか、または回復させるための装置であって、
眼の網膜の前方に位置決めされた1つまたは複数の透明コンポーネントと、
前記1つまたは複数の透明コンポーネントの表面上に、あるいはその中に配設された1つまたは複数の変形可能コンポーネントと、
導電性コンポーネントを介して前記1つまたは複数の変形可能コンポーネントに結合されたコントローラであって、制御信号を生成して前記1つまたは複数の変形可能コンポーネントにルーティングするように構成されているコントローラと、
を備え、
前記制御信号を受信した後、前記1つまたは複数の変形可能コンポーネントは、最高50キロヘルツまでの決定可能レートで前記眼の視野内からの環境光を前記網膜に導く少なくとも1つのパターンを再編成し、
前記少なくとも1つのパターンは、前記眼の固視の偏心視域において焦点ぼかしを引き起こし、前記少なくとも1つのパターンは開口を生成しない、装置。
【請求項2】
環境光を前記網膜に導く前記少なくとも1つのパターンは、固視の前記偏心視域ではない複数の非連続の網膜配置における焦点合わせを引き起こす、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つのレンズをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記1つまたは複数の変形可能コンポーネントは、等方的特性または等方的挙動のうちの少なくとも一方を有する少なくとも1つのコンポーネントを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記網膜に環境光を導く前記パターンは、少なくとも等方性の修正によって再編成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記網膜に環境光を導く前記パターンは、1つまたは複数の光学機械的コンポーネントの少なくとも変形によって再編成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
装置であって、
眼の網膜の前方に位置決めされた少なくとも1つまたは複数の変形可能コンポーネントと、
導電性コンポーネントを介して前記1つまたは複数の変形可能コンポーネントに結合されたコントローラであって、制御信号を生成して前記1つまたは複数の変形可能コンポーネントにルーティングするように構成されているコントローラと、
を備え、
前記制御信号を受信した後、前記装置は前記眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こして前記眼の前記視野内から前記眼の中心の偏心視域への環境光の曝露を決定可能な間隔に対して少なくとも10%だけ低減し、
前記視野内の前記環境光は、最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで前記網膜に曝露される、装置。
【請求項8】
視力を改善するか、または回復させるための装置であって、
光源からの光を少なくとも複数の非連続の角膜部分に導く1つまたは複数のコンポーネントであって、前記光源はレーザーまたは非レーザー光源のうちの少なくとも一方を含む、コンポーネントを備え、
前記非連続の角膜部分は、中心光学ゾーンの外側に配置され、少なくとも年齢相応の正常な角膜の無細胞層を含み、
前記光源は、角膜硝子化を生じさせず、
前記装置は、前記中心光学ゾーンの外側で角膜等方性の少なくとも1つの修正を引き起こす、装置。
【請求項9】
前記装置は、機械的特性および機械的挙動のうちの少なくとも一方を少なくとも1つの方向で修正する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、光学的特性および光学的挙動のうちの少なくとも一方を少なくとも1つの方向で修正する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記光源は、紫外線および赤外線のうちの少なくとも一方を放射する、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
眼の固視の偏心視域における前記眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしおよび固視の前記偏心視域ではない複数の非連続の網膜配置における焦点合わせのうちの少なくとも一方を引き起こすように構成されている1つまたは複数のコンポーネントをさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
眼の固視の前記偏心視域における前記眼の前記視野内からの環境光の前記焦点ぼかしおよび固視の前記偏心視域ではない前記複数の非連続の網膜配置における焦点合わせは、前記非連続の網膜配置における光学誤差の測定を必要としない、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
角膜表面パターニングを引き起こすように構成されている1つまたは複数のコンポーネントをさらに備え、前記角膜表面パターニングは、光調整可能なものおよびおおよそ反転可能なもののうちの少なくとも一方である、請求項8に記載の装置。
【請求項15】
前記光源からの光の導光先である前記複数の非連続の部分の機械的補強を引き起こすように構成されている1つまたは複数のコンポーネントをさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項16】
機械的補強剤を放出するように構成されている1つまたは複数のコンポーネントをさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項17】
眼の網膜の前方に位置決めされた装置を使用して、決定可能な間隔に対して前記眼の中心の偏心視域への曝露を少なくとも10%だけ低減するように前記眼の視野内からの環境光の曝露に重み付けするステップを含み、前記視野内からの前記環境光は、最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで前記網膜に曝露される、方法。
【請求項18】
中心視力の障害を有する眼の視力を改善するための方法であって、装置を使用して、前記眼の固視の偏心視域における前記眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こすステップを含む、方法。
【請求項19】
前記装置を使用して、網膜の遺伝子改変部分、前記網膜の後成的改変部分、および前記網膜の神経再生的改変部分のうちの少なくとも1つの中において環境光の焦点合わせを引き起こすステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記装置を使用して、網膜移植、移植網膜細胞、移植幹細胞、または植え込みプロテーゼのうちの少なくとも1つを含む網膜の複数の部分内の環境光の焦点合わせを引き起こすステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記装置を使用して、中心光学ゾーンの外側の角膜の少なくとも複数の角膜部分を修正するステップをさらに含み、前記角膜の前記複数の角膜部分は、前記角膜の機械的活性を有する部分を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記装置を使用して、網膜の前方に位置決めされた構造物の中心光学ゾーンの外側の複数の部分における光学的特性または挙動を修正するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記装置を使用して、網膜の前方に位置決めされた構造物の中心光学ゾーンの外側の複数の部分における機械的特性または挙動を修正するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月31日に出願した米国出願第15/693,208号の分割出願であってその優先権の利益を主張する、2019年10月4日に出願した米国出願第16/593,269号(現在は、米国特許第10,835,417号)の継続出願であって優先権の利益を主張する、2020年10月15日に出願した米国出願第17/071,106号の一部継続出願である。これらの出願のうちの各出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示された例示的な実施形態は、視力を改善し、安定化し、または回復させるための新規性のある網膜放射照度分布修正(retinal irradiance distribution modification)(IDM)のためのデバイスおよび方法に関する。開示されている例示的な実施形態は、損傷したおよび/または機能不全のおよび/または感覚を奪われた網膜細胞に伴って生じる疾病、損傷、および疾患による視力喪失を低減するためのデバイスおよび方法にも関係する。本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法の適用は、限定はしないが、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、および緑内障の治療を含む。本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法の1つまたは複数によって提供される療法は、限定はしないが、薬理学的療法、網膜レーザー療法、遺伝子療法、および幹細胞療法を含む他の療法と組み合わせて使用することもできる。
【背景技術】
【0003】
従来のデバイスおよび方法は、損傷したおよび/または機能不全のおよび/または感覚を奪われた網膜細胞に伴って生じる疾病、損傷、および疾患による視力喪失を低減する、視力を改善しかつ/または回復させるための次善最適な解決方法を提供する。視力喪失は、限定はしないが、加齢性黄斑変性症(AMD)、スターガルト病、ベスト卵黄状黄斑ジストロフィー(Best vitelliform macular dystrophy)、光誘発網膜損傷(light-induced retinal injury)、錐体ジストロフィー、逆性網膜色素変性症、近視性黄斑変性症、黄斑瘢痕、糖尿病性網膜症(DR)、黄斑浮腫、黄斑円孔、黄斑剥離、黄斑パッカー、網膜血管障害(限定はしないが、網膜静脈閉塞症およびコート病を含む)、網膜色素変性症、緑内障または他の神経網膜もしくは神経節細胞疾患および弱視(屈折異常、内側混濁もしくは閉塞、眼球運動状態、またはこれらの組合せによって引き起こされる)を含む疾病、損傷、および疾患によって引き起こされる。AMD、DR、ならびに他の網膜疾病および疾患は、失明を含む世界的な視力障害の主要な原因となっている。網膜の問題によって引き起こされる視力喪失に苦しむ患者に、有意義な視力および視力に関係する生活の質の改善を提供する解決方法に対する大きな満たされていないニーズがある。従来のデバイスおよび方法は、そのような疾病、損傷、および疾患による視力喪失のいくつかの症状の次善最適な改善または補償しか提供しない。
【0004】
望遠鏡(手持ち式、電子デバイス内、眼鏡内、コンタクトレンズ内、眼内レンズ内、もしくは角膜内の)または環状多焦点角膜レーザー治療(annular multifocal corneal laser treatment)などの、視力喪失の症状を改善するか、または補償するための従来のデバイスおよび方法は、視野の小さな領域内の画像を拡大するだけである。プリズムもしくはプリズム効果(眼鏡内、コンタクトレンズ内、もしくは眼内レンズ内)を使用する視力喪失の症状の改善、または補償のためのデバイスもしくは方法は、視野内の対象からの像を網膜の小領域上へある角度でずらすだけである。手持ち式および電子式望遠鏡は、患者を静止させる必要があり、これらの望遠鏡は患者の視野のごく小さな範囲を拡大する。眼鏡、コンタクトレンズ、および眼内デバイスの望遠鏡は、数週間から数ヶ月にわたる視覚訓練を必要とし、視野狭窄を生じ、両眼視を妨げ、その結果移動視が低下する。眼内デバイスの望遠鏡またはプリズムは、手術を伴い、重篤な術中および術後合併症ならびに有害事象が発生するリスクがある。偏心固視のための眼球運動訓練は、数週間から数ヶ月にわたる訓練期間を要し、時間の経過とともに効果が減少し、頭部位置決めが異常になり、読書速度の改善は最小であり、視力の改善は最小であるか、まったくない。眼鏡、コンタクトレンズ、または眼内レンズにおけるプリズムは耐久性が低く、複視を引き起こすことがある。眼鏡またはコンタクトレンズのすべての光学デバイスは、眼球が移動するときに一定のその瞬間その瞬間における視力矯正を維持することができず、神経適応の完全な効果が生じるのを妨げる。患者の網膜内または網膜上に眼内移植された微小電極アレイにワイヤレス方式で伝送するメガネ型カメラなどの人工網膜は、高解像度視覚を提供することができず、漠然とした動き検出および形状識別しか提供できない。望遠鏡、プリズム、または微小電極アレイを用いた眼内移植は、死亡、目の喪失、および完全失明を含む、重篤な術中および術後合併症ならびに有害事象のリスクがある手術を伴う。
【0005】
従来の視覚補助具は、視力喪失の症状の改善または補償を提供するが、限定はしないが、損傷した網膜細胞の修復または網膜細胞の機能の改善を含む回復の有益な効果をもたらさない。
【0006】
限定はしないが、新生血管AMD、糖尿病性黄斑浮腫、および他の新生血管網膜疾患のための抗血管内皮細胞増殖因子(抗VEGF)剤、ならびに緑内障のためのプロスタグランジン類似体を含む、従来の薬物療法は、視力喪失のさらなる進行を防止するが、大半の患者に対して有意な視力回復を提供しない。限定はしないが、網膜レーザー光凝固術、光線力学レーザー療法、放射線療法、フォトバイオモジュレーション、閾値下マイクロパルスレーザー療法、緑内障レーザー療法、およびシャント植え込みを伴うまたは伴わない緑内障手術を含む、従来のデバイス療法は、視力を有意に改善しない。ドルーゼン形成および最終的な網膜萎縮を伴う網膜機能障害を特徴とする乾燥AMDを患っている患者には、生活様式の改善、視野全体にわたって紫外線もしくは青色光を遮断する眼鏡の使用、ビタミンおよび他のサプリメントの使用以外に有効な治療法はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Williams DRおよびColetta NJ、「Cone spacing and the visual resolution limit」、J Am Opt Soc A (1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いくつかの例において、IDMデバイスおよび方法は、網膜固視領域から少なくとも2つの他の空間的に分離された網膜領域への同時光方向転換を用いて、網膜固視領域を含む、少なくとも3つの網膜領域内で永久的に、一時的に、または時間の経過とともに修正を変化させつつ、眼球視野からの環境光の空間的、時間的、時空的、有色の、無色の、およびコントラスト情報分布を光学的に修正し得る(以下、「IDMデバイスおよび方法」と称する)。本明細書において説明されているデバイスおよび方法は、視力を改善するための新規性のある網膜放射照度分布修正(IDM)を生成する。本明細書において説明されている例示的なIDMデバイスおよび方法の1つまたは複数は、また、限定はしないが、損傷したおよび/または機能不全のおよび/または感覚を奪われた網膜細胞を有する眼を含む、疾病、損傷、および疾患による視覚症状を有する、または視覚喪失を患っている患者に、視力改善、視力安定化、および/または視力回復の有益な効果をもたらす。本明細書において説明されている例示的なIDMデバイスおよび方法のうちの1つまたは複数は、また、限定はしないが、視力改善および/または視力回復を行って視力喪失を克服するための網膜IDMデバイスおよび方法も含み、この視力喪失は、限定はしないが、加齢性黄斑変性症(AMD)、スターガルト病、ベスト卵黄状黄斑ジストロフィー、光誘発網膜損傷、錐体ジストロフィー、逆性網膜色素変性症、近視性黄斑変性症、黄斑瘢痕、糖尿病性網膜症(DR)、黄斑浮腫、黄斑円孔、黄斑剥離、黄斑パッカー、網膜血管障害(限定はしないが、網膜静脈閉塞症およびコート病を含む)、網膜色素変性症、栄養網膜疾患、緑内障または他の神経網膜もしくは神経節細胞疾患および弱視(屈折異常、内側混濁もしくは閉塞、眼球運動状態、またはこれらの組合せによって引き起こされる)を含む疾病、損傷、および疾患によって引き起こされる。従来のデバイスおよび方法とは対照的に、本明細書において説明されているIDMデバイスおよび方法は、また、眼球運動または知覚訓練を必要とすることなく、網膜IDMで治療される患者に、より良好な視力および/または生活の質の転帰、より少ないあまり重篤でない合併症または有害影響、ならびにより大きな患者利便性および快適性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において説明されている網膜IDMデバイスの例示的な実施形態は、限定はしないが、光剥離、光破壊、光電離、光化学的および/または光熱的角膜形成を生じさせるが、角膜硝子化を生じさせない網膜IDMレーザーおよび他の発光源、網膜IDM角膜架橋デバイス、網膜IDM高周波伝送デバイス、網膜IDMコンタクトレンズ、網膜IDM眼鏡、網膜IDM角膜インレー、および網膜IDM眼内レンズを含み、これらはすべて、限定はしないが、網膜細胞修復および/または網膜再生を含む視力回復の有益な効果を有するまたは有しない視力改善のために網膜IDMを行うように構成される。
【0010】
いくつかの例において、網膜IDMデバイスおよび方法は、限定はしないが、血管内皮細胞増殖因子拮抗薬、網膜レーザー、電離放射線、フォトバイオモジュレーション、幹細胞、遺伝子、エピジェネティックおよびオプトジェネティック療法を含む、限定はしないが、薬理学的薬剤を含む、非網膜IDM療法と組み合わされる。
【0011】
本明細書における説明では、様々な実施形態に適用されるような新規性のある特徴を示し、説明し、指摘しているが、例示されているデバイスまたは方法の形態および詳細における様々な省略、置換、および変更は、本開示の精神から逸脱することなく行えることは理解されるであろう。これからわかるように、本明細書において説明されている例示的な実施形態のうちのいくつかの実施形態は、いくつかの特徴が他のものとは別に使用されるか、または実施され得るので、本明細書において述べられている特徴および利点のすべてを備えるとは限らない形態のうちに具現化され得る。請求項の同等性の意味および範囲内にある変更はすべて、本発明の範囲に包含されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】網膜の構造および寸法を示す斑の付近の眼球の図面である。
【
図5】中心窩(右円)、視神経乳頭(左円)、および網膜血管(視神経乳頭まで延びる波線)を示す概略網膜図である。
【
図6】ゼロ偏心基準として中心小窩中心を使用する視力対網膜偏心のグラフである。
【
図7】2条の光線が点1と点2で中心傍角膜に入射する眼球概略図である。
【
図8】中心機能不全網膜領域Bを有する中心窩Aを示す網膜概略図である。
【
図9】中心領域から、IからIVの象限への4象限網膜放射照度分布を示す概略網膜図である。
【
図10】非中心機能不全網膜領域B、C、およびDと、網膜IDMが放射照度をB、C、およびDから遠ざかる方向に向けることによって網膜放射照度を増大させることができる候補機能的網膜領域Eとを有する中心窩Aを示す概略網膜図である。
【
図11A】IDM治療後の局所的曲率半径を示す角膜マップである。
【
図12】網膜IDMに対する角膜前面曲率半径(ROC)プロファイルを示す概略図である。
【
図13】概略的な網膜放射照度分布を通る断面を示す図である。
【
図14】網膜IDMに対する角膜前面曲率半径(ROC)変化を生じさせるフェムト秒レーザー治療後の角膜の断面を示す図である。
【
図15】中心傍領域内に修正が加えられているIDM眼内レンズの図面である。
【
図16】2つのプリズムセクタを有するIDM眼内レンズの図面である。
【
図17】中心傍急勾配領域を有するIDMコンタクトレンズの概略断面図である。
【
図18】角膜内に植え込まれたIDM角膜インレーの概略断面図である。
【
図19】いくつかの例示的な実施形態による、視力を改善するか、または回復されるための例示的な装置の図である。
【
図20】いくつかの例示的な実施形態による、視力を改善するか、または回復されるための例示的な装置の図である。
【
図21】無細胞層およびコラーゲン層を示す角膜の断面図である。
【
図22】0は等方性に対応し、値>2は高異方性に対応する、角膜の異方性マップである。
【
図23】いくつかの例示的な実施形態による、視力を改善するか、または回復されるための例示的な装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において説明されている例示的な網膜放射照度分布修正(IDM)デバイスおよび方法は、網膜固視領域から少なくとも2つの他の空間的に分離された網膜領域への同時光方向転換を用いて、網膜固視領域を含む、少なくとも3つの網膜領域内で永久的に、一時的に、または時間の経過とともに修正を変化させつつ、眼球視野からの環境光の空間的、時間的、時空的、有色の、無色の、およびコントラスト情報分布を光学的に修正する網膜IDMデバイスおよび方法を含む。網膜IDMデバイスおよび方法は、視力改善もしくは安定化ならびに/または視力回復ならびに/または、限定はしないが、損傷および/もしくは機能不全および/もしくは感覚を奪われた網膜細胞に伴う疾病、損傷、および疾患に起因する視覚喪失を有する眼を含む、眼の状態、疾病、損傷、および疾患による視覚症状の改善および/もしくは補償のための用途を有する。IDMデバイスおよび方法は、限定はしないが、加齢性黄斑変性症(AMD)、スターガルト病、ベスト卵黄状黄斑ジストロフィー、光誘発網膜損傷、錐体ジストロフィー、逆性網膜色素変性症、近視性黄斑変性症、黄斑瘢痕、糖尿病性網膜症(DR)、黄斑浮腫、黄斑円孔、黄斑剥離、黄斑パッカー、網膜血管障害(限定はしないが、網膜静脈閉塞症およびコート病を含む)、網膜色素変性症、栄養網膜疾患、緑内障または他の神経網膜もしくは神経節細胞疾患および弱視(屈折異常、内側混濁もしくは閉塞、眼球運動状態、またはこれらの組合せによって引き起こされる)を含む疾病、損傷、および疾患によって引き起こされる視力喪失を軽減する。
【0014】
視覚処理は、ニューロン、受容体、および他の特異性細胞のネットワークを介した両眼と脳との間の相互作用を伴う。この感覚プロセスの第1のステップは、網膜内の光受容体の刺激、光刺激の神経信号への変換、多くの種類の網膜介在ニューロンを通してのこれらの神経信号の処理、各眼から脳への空間的、時間的、時空的、および有色視覚情報を含む電気信号の伝達を含む。網膜介在ニューロンによる処理は、光受容体から双極細胞、神経節細胞へのフィードフォワード伝達経路を含む網膜細胞タイプ間で送られる化学的および電気的メッセージを、これらの細胞タイプと水平細胞やアマクリン細胞との間の相互作用とともに、伴う。この情報は脳内でさらに処理される。脳が網膜情報を空間、時間、サッカードにわたって統合するときに結果として機能的視覚が生じる。
【0015】
網膜放射照度は、網膜に入射する単位面積当たりの光パワーの量である。放射照度はW/m2の単位で測定され、Wはワット単位の光パワーであり、mはメートル単位の長さである。網膜疾患のある眼では、網膜領域の光放射照度に対する網膜感受性が様々な程度で低下し得る。網膜感受性の低下は、限定はしないが、マイクロペリメトリーを含む、診断検査によって実証され得る。網膜感受性の低下した網膜領域の環境視野内で、光線の不正確なおよび/または偏らない視覚処理がある。本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法の1つまたは複数による網膜IDM治療の後に、眼の環境視野内の視覚情報の分布は、より良好な網膜感受性を有する領域を含む、複数の網膜領域上へ、光線を複数回、空間的に分離して向け直すことによって修正される。したがって、網膜IDMは、網膜全体への全放射照射度の修正とは区別され、網膜全体への全放射照射度の修正を含んでも含まなくてもよい。網膜分光放射照度は、網膜に入射する単位波長当たりの単位面積当たりの光パワーの量である。網膜による光の検出は、光の異なる波長、ならびに明所視、薄明視、および暗所視の照明条件に対して異なる。IDMデバイスおよび方法は、限定はしないが、昼間視および暗視の照明条件を含むすべての照明条件において有用である。本出願において特に断りのない限り、網膜放射照度は、限定はしないが、太陽光または太陽光に類似する演色評価数(CRI)を有する光(すなわち、CRI≧80、最大値は100であり、これは太陽光に対する分光分布の完全な一致である)を含む分光分布を有する可視光、および限定はしないが、昼光を含むが明所視照明条件について常に考慮される。
【0016】
網膜放射照度および網膜放射照度分布は、限定はしないが、フォトダイオードアレイ、電荷結合素子(CCD)センサー、および相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサーを含む、当業者に知られている光度測定機器を使用することによって、モデルおよび生体外の両方の眼に対して測定され得ることは理解される。また、網膜放射照度および網膜放射照度分布は、モデル眼を用いたレイトレーシング計算を使用して予測できることも当業者には理解される。
【0017】
網膜放射照度分布は、その時空間、有色、無色、およびコントラスト情報とともに、様々な空間および時間スケールで指定され得る。空間スケールは、限定はしないが、A)限定はしないが、個別の光受容体ほどの小さい空間スケールを含む、また各細胞の受容野の中心およびその周辺の両方を含む、網膜細胞の領域の受容野、B)中心窩全体、C)黄斑全体、D)約20°の偏心度まで広がる中心視野全体、E)視野全体を含む。中心小窩の中心に関する網膜上の配置は、極座標r,θまたはr’,θに関して指定されるものとしてよく、rはmm単位の距離であるか、またはr’は度単位の網膜偏心度に関する距離であり、θは角座標である。
【0018】
時間スケールは、限定はしないが、A)10ミリ秒ほどの短さであり得るその瞬間その瞬間の時間スケールであって、その時間の間に放射照度およびコントラストはi)視覚空間内の対象の放射輝度の変化から、ii)(視覚空間内の異なる対象からの)光を網膜の空間領域に照射させる固視運動およびサッカードの両方を含む、眼球の動きから、またはiii)上のiおよびiiの任意の組合せから修正され得るその瞬間その瞬間の時間スケール、B)網膜順応のプロセスが生じる、数分の持続時間に及ぶ、中間時間スケール、C)網膜の空間領域上の全体的な放射照度が網膜細胞の健康に影響を及ぼし得る、数日から数年の持続時間の範囲内にある長い時間スケール、およびD)神経適応のプロセスが生じる、数日から数年の持続時間の範囲内にある第2の長い時間スケールを含む。
【0019】
コントラストとは、上で説明されている空間および時間スケールにわたる放射照度の変化を指す。コントラストは、また、網膜細胞における光反応の動力学に一致する時間スケールでの放射照度の変化を指すこともある。コントラストは、また、網膜内の動き感受性細胞の動力学に一致する時空スケールでの放射照度の変化を指すこともある。コントラストは、また、網膜細胞の色感受性に一致するスペクトル放射照度の変化を指すこともある。
【0020】
眼の網膜は、
図1に示されている眼の切断図に例示されている。主要眼球構造は、角膜、虹彩(瞳孔の開口を画成する)、水晶体、ならびに中心窩、黄斑、視神経乳頭、および血管を含む網膜である。黄斑の付近の網膜の領域は、
図2に示されており、中心窩と他の網膜領域がその寸法とともに明記されている。網膜概略微細構造および視覚変換図が
図3に示されており、そこではIDMデバイスおよび方法によって発生される光が網膜に照射され、光受容体(錐体および桿体)細胞から電気信号を生成し、これらの電気信号は、特殊な網膜(水平、双極、アマクリン、神経節)細胞によって前処理され、網膜神経節細胞から発せられる軸索(神経線維)を通って視神経内を伝搬する(最終的には視覚皮質へ)活動電位(電気的「スパイク」)を引き起こす。脈絡膜は、網膜細胞に栄養を供給し、網膜から老廃物を運搬する毛細血管を含む。
【0021】
図4は、視覚情報の皮質処理のための簡略化された概略経路図を示している。網膜神経節細胞軸索は、外側膝状体核(LGN)さらには、限定はしないが、図示されていない上丘を含む、他の皮質下構造に接続する。LGN中継細胞は、一次視覚皮質(領域VI)に接続している。一次視覚皮質はさらに、情報を処理して、限定はしないが、空間視覚、運動知覚、奥行知覚、形態知覚、および色覚を含む、視覚転帰を提供する複数の皮質視覚野(限定はしないが、腹側視覚路および背側視覚路を含む)に接続する。視覚皮質は再帰ループを介して視床と相互作用し、統合された視覚を生み出す。視覚皮質領域は、また、限定はしないが、大脳基底核、視床、小脳、上丘、および脳幹を含む皮質下構造とも相互作用し、眼球運動を制御する。皮質下視覚処理は、限定はしないが、眼球および頭部の動き、瞳孔のサイズ、およびサーカディアンリズムを含む。限定はしないが、神経適応を含む視覚改善は、視覚伝導路の全段階に間にわたる神経処理の複雑な相互作用を伴うことは理解される。
【0022】
概略網膜図が
図5に示されている。中心窩は、
図5において右側に円として示されており、0°~180°(側頭-鼻)および90°~270°(上-下)の子午線が網膜領域を4つの象限、すなわち、I(上-側頭)、II(上-鼻)、III(下-鼻)、およびIV(下-側頭)に分割している。中心窩極座標r,θは、中心小窩中心「X」を基準とする網膜上の位置を指定する。中心窩は、半径約0.75mm(偏心度2.5°)であり、これは視覚の最高空間分解能に対して光受容体(錐体)の最も高い密度を含む。視神経乳頭は、
図3において左側に円として示されており、網膜血管は波線で表されている。
【0023】
図6は、視力(logMARとスネレン単位の両方による)の変化を網膜偏心度の関数として示している。
図6は、Williams DRおよびColetta NJ、「Cone spacing and the visual resolution limit」、J Am Opt Soc A (1987)の
図3から再描画されている。測定値は、2人の被験者(円および正方形の記号)に対する測定値であり、平均値である0.907logMAR(20/162スネレン)も網膜偏心度20°で測定された。測定値に対する2次関数フィットが図示されている。網膜偏心度からの換算:1°の網膜偏心度=約0.3mm。中心窩は約2.5°の網膜偏心度まで広がる。最大視力は、完全に機能する網膜の中心窩中心に集光される光について取得される。ピンぼけおよび完全網膜機能性の欠如の両方が視力を低下させ得る。限定はしないが、メガネおよびコンタクトレンズを含む、従来の視覚補助具は、ピントを改善することはできるが、網膜機能性を改善することはできない。役立つ視力は、中心窩の外側(すなわち、約2.5°の網膜偏心度を外れる)の網膜の大きな領域を使用することに基づく--
図6を参照--ものとしてよく、中心窩からのより高い空間分解能の視覚情報が視覚皮質において優先的に重み付けされる場合に、中心窩の外側のこれらの領域は十分に利用され得ない。
【0024】
本明細書において説明されている例示的な網膜放射照度分布修正(IDM)デバイスおよび方法は、中心窩または別の網膜固視領域から少なくとも2つの他の空間的に分離された網膜領域への光方向転換を用いて、中心窩または別の網膜固視領域を含む、少なくとも3つの網膜領域内で永久的に、一時的に、または時間の経過とともに修正を変化させつつ、眼球視野からの環境光の空間的、時間的、時空的、有色の、無色の、およびコントラスト情報分布を光学的に修正する網膜IDMデバイスおよび方法を含む。網膜領域は、極座標の範囲によって定義され、空間的に分離された網膜領域は、非重複領域、部分的に重複する領域、または非重複領域と部分的に重複する領域との任意の組合せであり、網膜IDMの量および配置は、所定の時間分布を伴う、または伴わない所定の空間分布に対するものである。網膜放射照度分布修正は、限定はしないが、空間、時間、時空、有色、無色、およびコントラスト情報またはそれらの任意の組合せを含む情報を含む。
【0025】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法は、本明細書において説明されているように罹患眼の視力改善および視力回復の両方に対する用途を有し、A--視力および生活の質の改善ならびにB--限定はしないが、網膜細胞修復および/または網膜再生を含む視力回復の有益な効果である。いくつかの実施形態において、視力改善は、網膜のいくつかの領域が網膜IDM治療後も、部分的もしくは完全に機能不全のままであり得るか、または時間が経過するにつれて機能性が低下することすらあり得るという点で、視力回復の有益な効果を得ることなく、本明細書において説明されている網膜IDMデバイスおよび方法を使用する網膜IDM治療によって得られ得ることは理解される。他のいくつかの実施形態では、網膜IDM治療前に部分的にまたは完全に機能不全であった網膜のいくつかの領域の高められた機能性を含む、視力改善および有益な視力回復の両方の効果が、網膜IDM治療に起因して取得され得ることも理解される。
【0026】
視力改善を目的とする本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMデバイスおよび方法は、1つまたは複数の部分的にまたは完全に機能不全になっている網膜領域からの光を光学的に方向転換し、その光を全体としてまたは一部だけ、1つまたは複数の機能的網膜領域を含む2つまたはそれ以上の網膜領域上に方向転換するように構成され、機能不全網膜領域は、限定はしないが、機能不全中心窩光受容体の領域、機能不全中心窩光受容体の複数の領域、機能不全偏心視域(PRL)、複数の機能不全PRL、光受容体の複数の空間的に分離された機能不全網膜領域、またはこれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含み、機能的網膜領域は、限定はしないが、機能的光受容体の網膜領域、機能的光受容体の複数の網膜領域、および光受容体の複数の空間的に分離された機能的網膜領域のうちの少なくとも1つを含み、光受容体のすべての機能的網膜領域は機能的神経節細胞への機能的シグナリングを有する。
【0027】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、機能的網膜領域は、限定はしないが、a.少なくとも2つの異なる象限における少なくとも2つの空間的に分離された領域(
図5参照)、およびb.4つの網膜象限の各々における少なくとも1つの空間的に分離された領域(
図5参照)を含む。
【0028】
網膜領域は、極座標の範囲によって定義され、空間的に分離された網膜領域は、非重複領域、部分的に重複する領域、または非重複領域と部分的に重複する領域との任意の組合せであり、網膜IDMの量および配置は、所定の時間分布を伴う、または伴わない所定の空間分布に対するものであり、網膜放射照度分布修正は、限定はしないが、空間、時間、時空、有色、無色、およびコントラスト情報またはそれらの任意の組合せを含む情報を含む。
【0029】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、空間的に分離された網膜領域は、光をa.多くの機能不全領域を有する眼の1つまたは複数の機能的領域上に、b.異なる視覚的作業に使用されるべき複数の機能的領域上に、およびc.網膜疾病が進行した場合または進行するにつれて使用され得る複数の機能的領域上に方向転換する可能性を高めるために、4つの網膜象限の各々の中に複数の領域を含む。
【0030】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜IDMは、縁および対象から来る光放射照度のその瞬間その瞬間のパターンを変更して、付近の光受容体上の相対的な放射照度差を増大させる(すなわち、コントラストを高める)。
【0031】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜放射照度分布修正(IDM)のパターンは、(i)黄斑および周辺網膜細胞--限定はしないが、光受容体、双極細胞、アマクリン細胞、水平細胞、ミュラーグリア細胞、神経節細胞、もしくは網膜細胞の任意の組合せを含む--からの追加のおよび/もしくはより正しくコード化された網膜情報を統合して神経計算を改善し、より完全な刺激パターンの処理を可能にし、かつ/または(ii)光受容体、神経節細胞、アマクリン細胞、双極細胞、水平細胞、およびミュラー細胞、もしくはそれらの任意の組合せを伴う視覚処理における接続性機能を含む、網膜回路の機能を改善し、かつ/または(iii)限定はしないが、a.網膜の周辺領域によってエンコードされた視覚情報を、通常、注視中心の対象をエンコードする役割を担う受容野を有する視覚皮質の高次レベルでニューロンへ再ルーティングして、それらの周辺領域内の臨界間隔の減少を伴うクラウディング特性の有益な変更を可能にし、かつ/もしくは、b.サッカード眼球運動(本明細書では「固視」と称される)の目標を新しい網膜位置に変更し、かつ/もしくはc.固視内の眼球運動の振幅および/もしくは速度を有利に変更し、かつ/もしくは、d.サッカード随伴発射回路と視覚皮質の残りの部分との相互作用を有利に変化させ、かつ/もしくはe.限定はしないが、情景のより広い領域から情報を収集し、それと同時に、改善された視覚情報に対してより多くの機能的網膜細胞を使用するために眼球運動戦略における運動学習を自発的に生じさせることを含む探索機構によってより多くのより正しい視覚情報のより効果的な統合を達成するためにより効果的で自発的な探索を生じさせることを含む、限定はしないが、網膜および脳内の代替的、潜在的、および/もしくは新しい視覚伝導路の使用を含む、神経適応のプロセスをトリガーする。
【0032】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜IDMは、中心視覚情報(典型的には、限定はしないが、注視中心の情報)を代替的レチナール経路を通じて再ルーティングし、それによって、視覚空間のこれらの領域から脳の残りの部分--限定はしないが、大脳皮質、大脳基底核、視床、上丘、および他の脳幹核を含む--への高分解能空間情報の伝達を回復し、それによって、限定はしないが、a.輪郭情報のグローバルプーリングを増強すること、および/もしくはb.形状弁別を改善すること、および/もしくはc.運動処理を改善すること、および/もしくはd.色彩処理を改善すること、および/もしくはe.視覚誘導行動を改善すること、またはこれらの任意の組合せを含む大域的視覚処理機構を増強する。
【0033】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜IDMは、中枢脳回路(限定はしないが、視覚皮質および/もしくは視覚視床および/もしくは上丘またはこれらの任意の組合せを含む)における神経適応のプロセスをトリガーし、これは、限定はしないが、構造およびシナプス可塑性を含み、これらは、限定はしないが、a.これらの以前には暗点であった領域を覆う空間的受容野を中枢脳回路内のニューロンに発生させることによって治療前にはほとんどもしくはまったく視覚がなかった(すなわち、暗点であった)網膜の損傷領域に対応する視覚空間の領域に視覚を回復させること、ならびに/またはb.暗点の周りの視覚空間の領域内の視野の歪みを、これらの新しい空間的受容野を局所的空間マップ内に組み込むことによって、またそれらを視覚空間の連続する歪みのないマップに再編成する(すなわち、不正確なフィリングインを是正する)ことによって、低減しかつ/もしくは排除することを含む。
【0034】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、視覚の網膜IDM改善は、治療前には暗点内にあった視覚空間の領域に関する高忠実度情報をエンコードする網膜の機能的領域からの新しい視覚伝導路の形成によって生じる。たとえば、黄斑変性症患者によって知覚される視野の歪みは、中枢脳内のニューロンの空間的受容野の不正な再マッピングの結果生じ得る。この再マッピングでは、網膜の機能不全領域を覆うニューロンの受容野が拡大し、網膜の機能的領域に対応する視覚空間の領域を含むようにシフトする。これは、ニューロンを遠く離し同じ方式で再マッピングすることを行わせ、これは同様に続く。総合すると、これらのプロセスは、受容野マップ内の大域的歪みを誘発し、文字、電柱、および標識などの直線状の物体が波打つ、変視症とも呼ばれる、臨床症状が出現する。本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態による治療の後、治療前には暗点内にあった視覚空間の領域を覆う新しく形成された受容野は、各視覚野内の空間マップ内に組み込まれるようになる。この組み込みは、黄斑変性症によって引き起こされる歪みを反転し、それによって各視覚野内の視覚空間の連続する歪みのないマップを回復する再編成のプロセスを誘発する。波打った文字、電柱、および標識は再び真っ直ぐになる。
【0035】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜IDMは、網膜周辺部における臨界間隔がより小さい変更されたクラウディング特性を含む、有利な皮質再編成を可能にし、網膜IDMは、新しい偏心視域または他の網膜視野に注意を向ける。変更されたクラウディング特性は、限定はしないが、クラウディングゾーンの半径接線異方性の喪失を含む。網膜IDMは、新しい1つの偏心視域(「PRL」)および/もしくは複数のPRLならびに/または網膜視野を自発的に繰り返し使用した後、皮質可塑性により、新しい1つのPRLもしくは複数のPRLまたは網膜視野の周りのクラウディングゾーンのサイズの減少を可能にする。この可塑性により、1つのPRL/複数のPRL/網膜視野における空間特性が中心窩により似たものとなる。クラウディングの大きさおよび広がりの両方が、中心窩の周りで通常見られる量まで減らされる。長軸に沿ったクラウディングの広がりの低減は、1つのPRL/複数のPRL/網膜視領域におけるクラウディングゾーンの楕円性の低い形状に寄与し、これはクラウディングの有害な影響を低下させ、視力および視覚機能を改善する。
【0036】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態は、従来のデバイスおよび方法とは異なり、眼球運動または知覚訓練を必要とすることなく、残存する機能的視覚伝導路を覚醒することによって視力を改善し、それによって患者がすぐに、または数日以内に、または数週間以内に、その結果得られる視力を発見し使用することを可能にし、その数カ月にわたってさらに改善する。
【0037】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、視力改善は、眼球が視覚内で自然に動くにつれてその瞬間その瞬間の時間にわたって安定した網膜IDMのパターンを有することによって大幅に増強される。
【0038】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態は、知覚または眼球運動訓練を必要とすることなく、治療被験者に視野狭窄、多視または両眼複視を引き起こすことなく1つまたは複数の代替的機能的視覚伝導路の治療被験者における自然な認識を生み出し、自然な感覚運動学習をもたらす。
【0039】
本明細書において説明されている網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの例示的な実施形態は、網膜細胞損傷、網膜細胞機能不全、網膜細胞感覚遮断もしくはこれらの任意の組合せを伴う疾病、損傷、もしくは疾患による視力喪失の後に視力を安定化し、かつ/または未治療の対照群と比較して、視力喪失率を下げ、かつ/もしくは視力を改善する。視力改善は、限定はしないが、視力(遠方視力、中間視力、および近方視力に対して未矯正視力および最良眼鏡矯正視力の両方を含む)、過視力、立体視力、副尺視力、コントラスト感度、焦点深度、色覚、周辺視力、暗視、顔認識、明順応、暗順応、視力関係の生活の質、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0040】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜IDMは、持続的および/または一過性注意を可能にする。空間潜在的注意が標的配置に向けられたときに、持続的注意はコントラスト利得を介して厳密に感度を高めるが、一過性注意はコントラスト利得および応答利得の両方の混合を伴う。
【0041】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜IDMは、限定はしないが、神経節細胞、アマクリン細胞、双極細胞、ミュラー細胞、またはこれらの任意の組合せを含む、限定はしないが、網膜三次網目細胞の視覚処理における接続性機能を含む、視覚機能を改善する。
【0042】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜IDMは、ペリメトリー検査および/もしくはマイクロペリメトリー検査および/もしくは優先的超鋭敏性ペリメトリーにおける視野欠損を改善し、かつ/または網膜電図(ERG)振幅および/もしくは視覚誘発電位を回復させる。
【0043】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態は、継続的に、および異なる両眼視覚作業に対して、1つまたは複数のより機能的な配置への1つまたは複数の偏心視域の再配置を可能にする。
【0044】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態は、従来のデバイスおよび方法とは異なり、(i)網膜細胞を損傷し、かつ/もしくは網膜細胞の機能を低下させ、かつ/もしくは網膜細胞から感覚を奪う疾患による視覚喪失の患者の片側もしくは両側治療を可能にし、かつ/または(ii)知覚もしくは眼球運動制御訓練を必要とすることなく追加的な感覚および/もしくは眼球運動神経適応により数カ月および数年にわたって継続する急速視力改善を提供する。
【0045】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態は、生命を脅かすまたは視力を失わせる合併症もしくは有害事象を伴う従来のデバイスおよび方法とは異なり、限定はしないが、眼圧、中心角膜厚さ、角膜内皮細胞密度の臨床的に有意な変化を含む合併症もしくは有害事象を伴わない網膜疾患、角膜代償不全、角膜上皮細胞喪失、感染、または限定はしないが、最良遠方矯正視力、最良近方矯正視力、コントラスト感度、および立体視を含む視覚機能の喪失による視覚喪失の後の視力改善を提供する。
【0046】
限定はしないが、網膜細胞修復および/または網膜再生を含む視力回復効果を意図される本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜IDMデバイスおよび方法は、a.部分的にまたは完全に機能不全に陥った網膜領域を含む、空間的に分離された網膜領域上の視野からの網膜放射照度を少なくとも0.1%だけ減少させ、減少が定義された長い時間スケールにわたって継続し、より機能的な網膜領域を含む、空間的に分離された(a.におけるものとは異なる)網膜領域上の視野からの網膜放射照度を少なくとも0.1%だけ増大させ、増大は定義された長い時間スケールにわたって継続する、ように構成され、網膜放射照度および網膜放射照度分布は、限定はしないが、フォトダイオードアレイ、電荷結合素子(CCD)センサー、および相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサーを含む、当業者に知られている光度測定機器を使用することによって、モデルおよび生体外の両方の眼に対して測定され得ることは理解される。
【0047】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態は、網膜細胞を損傷するかつ/または網膜細胞の機能を低下させるかつ/または網膜細胞から感覚を奪う疾患による喪失の後に視力を、快適であり痛みを伴わず、治療後に投薬療法を必要としない、また再治療を必要としない単一の迅速な治療で改善する。比較により、従来のデバイスおよび方法は、多数の欠点および治療負担を有しており、これは、限定はしないが、患者にとって不便であること、使用のために患者が静止したままであることを必要とすること、片眼のみまたは一度に片眼のみの使用に制限されること、片眼のみの治療に制限されること(または、この方法が両眼で実施され得る場合には順次的治療のみ)、長いおよび/または痛みを伴う手技が必要であること、術後投薬が必要であること、常に不快であるまたは困難な挿入を行う必要があること、網膜炎症の誘発、ならびに複数回/反復的手技が必要であることのうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態は、神経計算の迅速な改善および有益な神経適応が長期的に(すなわち、処置後数日から数年に及ぶ期間にわたって)継続する視力の著しい改善に加えて網膜細胞を修復しかつ/もしくは回復させ、かつ/または網膜細胞の機能を高め、かつ/または網膜細胞に対する進行性損傷を低減する。
【0049】
本明細書において説明されている網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの例示的な実施形態は、網膜細胞の修復の有無にかかわらず、光受容体もしくは他の網膜細胞の損傷によって引き起こされる網膜の劣化を補償し、ならびに/または限定はしないが、栄養素および生物学的修復プロセスの有益な変調を含む、視覚の修復プロセスをトリガーする。生物学的修復プロセスは、限定はしないが、光受容体、網膜色素上皮細胞、および/またはブルッフ膜が罹患している被験者における光受容体外側部の再生、ミュラー細胞の再プログラミング、網膜細胞の再生、およびドルーゼン量の減少を含む。
【0050】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態は、有害影響を少なくし、患者の利便性を高めつつ、網膜細胞を修復しかつ/もしくは回復させ、かつ/または網膜細胞の機能を高める。本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のうちの1つまたは複数は、新規性のある網膜IDMを用いて異なる機構を標的とすることによって網膜細胞を修復するか、または網膜細胞機能を高めるか、または進行性網膜細胞損傷を減らす従来のデバイスおよび方法を含む、従来技術の欠点および不備を克服し、全身および眼への有害影響を少なくしつつより快適でより都合よくより優れた治療転帰をもたらす。本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、神経計算および神経適応を変化させることによって視力を改善するだけでなく、網膜細胞を修復しかつ/または回復させることによっても視力を改善する。本明細書において説明されているいくつかの実施形態では、網膜IDMは、また、限定はしないが、光受容体外側部の再生、ミュラー細胞の再プログラミング、網膜細胞の再生、およびドルーゼン量の低減を含む、生物学的修復プロセスを含む、視覚系修復プロセスをトリガーし、網膜IDMは、a.少なくとも0.1%だけ、中心窩領域、別のPRL、複数のPRL、非PRL網膜領域、複数の非PRL網膜領域、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1つの中の空間的に分離された網膜領域の視野からの網膜放射照度を減少させ、減少は以前に定義された長い時間スケールにわたって継続し、低減された網膜放射照度は、限定はしないが、生存網膜細胞内の光酸化ストレス、代謝ストレス、またはこれらの組合せを含む有害プロセスを減少させ、そのような有害プロセスの低減は、限定はしないが、光受容体を温存すること、光受容体喪失の進行を遅らせること、ドルーゼン量を減少させること、またはこれらの組合せを含み、b.少なくとも0.1%だけ、生存網膜細胞を有する領域を含む、網膜領域(a.におけるもの以外)上の視野からの網膜放射照度を増大させ、増大は以前に定義された長い時間スケールにわたって継続し、増大した網膜放射照度は、損傷網膜細胞または非機能的細胞を有する網膜領域のうちの少なくとも1つの中での細胞修復、細胞再生、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つの生存細胞による活性化を高め、c.網膜の1つまたは複数の機能不全領域から1つまたは複数の機能的領域へ放射照度分布に含まれる空間、時間、時空間、有色、無色、およびコントラスト情報をリダイレクトする。
【0051】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、網膜感受性を改善し、改善された網膜感受性は、限定はしないが、生存可能な錐体光受容体、生存可能な桿体光受容体、生存可能な神経節細胞、アマクリン細胞、生存可能な双極細胞、および/または部分的もしくは完全に再生された網膜細胞の改善された感度を含む。網膜感受性は、限定はしないが、マイクロペリメトリー機器を含む診断機器を使用することによって当業者によって測定され得ることは理解される。本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、限定はしないが、黄斑変性を含む網膜疾患を有する治療済み眼において、数ヶ月または数年の期間にわたって、a.網膜領域内の網膜感受性の増大、b.未治療の対照群と比較した網膜感受性の損失率の減少、c.未治療の対照群と比較した光受容体損失率の減少、d.光受容体損失面積の減少、e.ドルーゼン量の減少、f.網膜細胞の再生、またはg.これらの任意の組合せ、のうちの少なくとも1つを発生する。
【0052】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、いくつかの網膜領域における光子の網膜吸収を高め、視力および網膜画質のための視覚処理を改善する一方で、限定はしないが、中心窩領域、他の固視領域、他の黄斑領域、周辺領域、ならびに累積光吸収および光損傷が低減されるべき網膜領域の任意の組合せを含む他の網膜領域における累積光吸収および光損傷を減少させる。
【0053】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、限定はしないが、中心窩、他の固視領域(偏心視域)、他の黄斑領域、周辺網膜領域、および網膜領域の任意の組合せを含む領域上で光放射照度を選択的に減少させ、限定はしないが、中心窩、他の固視領域(偏心視域)、他の黄斑領域、周辺網膜領域、または網膜領域の任意の組合せを含む領域内で酸化的ストレスおよび/または光毒性を減少させることによって、限定はしないが、光受容体、網膜色素上皮細胞、ブルッフ膜および脈絡毛細管枝を含む網膜構造への酸化的ストレスおよび/もしくは光毒性を選択的に減少させ、かつ/または累積光損傷を選択的に減少させる。
【0054】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、限定はしないが、光受容体喪失の選択的予防、光受容体喪失の進行速度の選択的低下、ならびに限定はしないが、アポトーシスおよび/またはネクローシスおよび/またはパイロトーシスおよび/またはオートファジーを含む光受容体喪失の減少を含む有益な効果を提供する。
【0055】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、網膜領域内の光誘起酸化的ストレスおよび反応酸素種を選択的に低減し、そこでは放射照度が下げられ、限定はしないが、光受容体DNAの保護、DNA修復の促進、病態生理学的自然炎症の減少、インフラマソーム活性化の減少、限定はしないが、シャペロン介在性オートファジー(別名、ミクロオートファジー)を含む有害オートファジーの減少、アポトーシスを介した網膜細胞死の減少、炎症促進および血管新生促進経路の活性化の減少、酸化ストレスおよびその結果生じる過剰な活性酸素種に関連する他の有害なプロセスの減少を含む有益な効果をもたらす。
【0056】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、光受容体外側部におけるレチノイドA2Eの光酸化を選択的に減少させる。本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、A2E形成を低減する現在の試験研究中の薬剤の夜盲症、色弱、かすみ目、羞明などの遅延される暗順応に関係する眼球有害事象を伴うことなく、光受容体外側部におけるA2E形成を選択的に減少させ、かつ/またはA2E低減を促進する。
【0057】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜領域の網膜放射照度および/または累積網膜放射照度を選択的に減少させて網膜領域の酸化的リン酸化を減少させ、活性酸素種を減少させて、それによってミトコンドリア機能不全を予防し、かつ/またはミトコンドリア機能不全を逆転させる。本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、いくつかの網膜領域において、限定はしないが、網膜細胞(限定はしないが、光受容体、網膜色素細胞、ミュラーグリア細胞、および神経節細胞を含む)およびブルッフ膜を含む網膜構造の代謝および/または酸化的ストレスおよび/または代謝不安定性を低減し、限定はしないが、いくつかの網膜領域における網膜細胞(限定はしないが、光受容体、網膜色素細胞、ミュラーグリア細胞、および神経節細胞を含む)およびブルッフ膜を含む、損傷網膜構造の、限定はしないが、損傷の低減および/または修復および/または再生を含む有益な効果をもたらす。
【0058】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、いくつかの網膜領域における網膜放射照度および/もしくは累積網膜放射照度を選択的に減少させ、かつ/または酸化的ストレスを低下させ、限定はしないが、光受容体細胞保護および/もしくは再生のためにミュラーグリア細胞を利用すること、ならびに/またはミュラーグリア細胞の分化転換を増大させること、ならびに/またはミュラーグリア細胞グリオーシスを減少させること、ならびに/または有害な網膜リモデリングを防止すること、ならびに/またはミュラー細胞におけるグルタミン合成酵素発現を維持すること、ならびに/またはミュラー細胞の周りの網膜微小環境が錐体機能をサポートすることを可能にすることを含む有益な効果をもたらす。
【0059】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、いくつかの網膜領域において網膜放射照度および/または累積網膜放射照度を選択的に減少させ、それによって、ドルーゼン量(すなわち、ドルーゼンの数および/またはサイズ)の低減を引き起こす。
【0060】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、いくつかの網膜領域における網膜放射照度および/または累積網膜放射照度を選択的に減少させ、限定はしないが、栄養素の有益な変調、ならびに限定はしないが、網膜細胞(限定はしないが、光受容体、網膜色素上皮細胞、ミュラーグリア細胞、および神経節細胞を含む)ならびにブルッフ膜および外境界膜を含む網膜構造の再生および/または救済を含む有益な効果をもたらす。
【0061】
本明細書において説明されている例示的な実施形態は、網膜の多くの領域においてまたは網膜全体を通して網膜IDMに対する設計、材料、および光学系を利用して網膜照度分布パターンを生成し、損傷および/または機能不全および/または感覚遮断網膜細胞を伴う疾患による視力喪失後に未治療の対照群と比較して視力を安定させ、視力を改善し、視力を回復させ、または視力喪失率を低下させるように構成されている、光源(限定はしないが、角膜光破壊、水晶体内光破壊、角膜光電離、角膜光解離、角膜光剥離、熱角膜形成術、光溶接を含む、限定はしないが、連続波およびパルスレーザーを含む)、角膜架橋システム、角膜高周波発信器、眼鏡、コンタクトレンズ、角膜インレー、有水晶体眼、無水晶体眼または偽水晶体眼に挿入するための眼内レンズ、およびそれらの組合せに基づく網膜IDMデバイスおよび方法を含み、網膜IDMデバイスおよび方法は、中心窩または別の網膜固視領域から少なくとも2つの他の空間的に分離された網膜領域への同時光方向転換を用いて、中心窩または別の網膜固視領域を含む、少なくとも3つの網膜領域内で永久的に、一時的に、または時間の経過とともに修正を変化させつつ、眼球視野からの環境光の空間的、時間的、時空的、有色の、無色の、およびコントラスト情報分布を光学的に修正するように構成され、網膜領域は、極座標の範囲によって定義され、空間的に分離された網膜領域は、非重複領域、部分的に重複する領域、または非重複領域と部分的に重複する領域との任意の組合せであり、網膜IDMの量および配置は、所定の時間分布を伴う、または伴わない所定の空間分布に対するものであり、網膜放射照度分布修正は、限定はしないが、空間、時間、時空、有色、無色、およびコントラスト情報またはそれらの任意の組合せを含む情報を含む。本明細書において説明されている網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜デバイスは、部分的または完全に機能不全に陥った網膜領域からの光を同時に光学的に方向転換し、その光を、全部または一部だけ、1つまたは複数の機能的網膜領域上へ方向転換する網膜IDMを生成し、網膜放射照度分布修正は、限定はしないが、空間、時間、時空、有色、無色、およびコントラスト情報またはそれらの任意の組合せを含む情報を含む。本明細書において説明されている網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの例示的な実施形態では、網膜デバイスは網膜IDMを生成し、網膜IDMの量および配置は、非重複領域、部分的に重複する領域、または非重複領域と部分的に重複する領域との任意の組合せである、空間的に分離された網膜領域に対するものであり、そのような網膜IDMの量および配置は、所定の時間分布を伴う、または伴わない所定の空間分布に対するものであり、網膜IDMの量および配置は、限定はしないが、i)網膜上の視野全体の単一の平行移動を引き起こす眼球運動、ii)網膜上の視野全体の焦点の変化を引き起こす水晶体調節、iii)網膜上の視野全体の急速な明暗を引き起こす瞳孔拡張/収縮を含む自己生成像修正によって引き起こされるものとは異なるパターンおよび対称性を有し、これは中枢脳が網膜IDMの効果を補償し、したがって部分的に相殺することができることを妨げ、網膜IDMは、眼球運動および/または知覚訓練を必要とすることなく、固視に使用される少なくとも1つの視覚伝導路を阻害し、眼球内の固視に対する少なくとも1つの代替的機能的視覚伝導路を興奮させ、網膜IDMは、眼球運動および/または知覚訓練を必要とすることなく、治療被験者に少なくとも1つまたは複数の代替的機能的視覚伝導路の認識を生じさせ、網膜IDMは、また、限定はしないが、いくつかの網膜領域内の網膜細胞(限定はしないが、光受容体、網膜色素細胞、ミュラーグリア細胞、神経節細胞を含む)およびブルッフ膜を含む、損傷網膜構造の、限定はしないが、損傷の軽減および/または修復および/または再生を含む有益な効果を生じさせるものとしてよく、網膜IDMは、網膜細胞損傷、網膜細胞機能不全、網膜細胞感覚遮断、またはこれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数を含む疾病、損傷、または疾患のうちの1つまたは複数による視力喪失後の視力を改善し、視力改善は、限定はしないが、視力(遠方視力、中間視力、および近方視力に対して未矯正視力および最良眼鏡矯正視力の両方を含む)、過視力、焦点深度、色覚、周辺視力、コントラスト感度、立体視力、副尺視力、明順応、暗順応、視力関係の生活の質、またはこれらの任意の組合せを含む視力関係転帰の改善を結果としてもたらすように構成される。
【0062】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のうちのいくつかは、眼の角膜を変える。いくつかの角膜実施形態では、レーザー網膜IDMデバイスは、
図7に概略として示されているように角膜の曲率半径(ROC)を修正するために使用される。未修正角膜では、
図7に実線で示されているように、点1および点2に入射した光線は中心窩上に集光される。点1および点2におけるROCを減少させることで(
図7には図示せず)、光線の方向を変化させ、中心窩の外側にある配置L1およびL2を照射する。
図7では、点2における修正ROCは、点1における修正ROCと比較してより大きく減少しており、両方とも未修正曲率半径に関して減少し、この場合、点2における曲率半径の減少が大きければ大きいほど、配置L1を照射する光線に比べて中心窩から大きい距離だけ隔てられている配置L2を照射する光線の方向転換がより大きくなる。角膜上の任意の点における光線の再配置は、限定はしないが、角膜曲率半径、角膜屈折率、角膜回折、角膜散乱の修正、およびこれらの角膜修正の任意の組合せを含む角膜修正によって生じ得る。
図7に示されているサンプル光線は、物体空間から網膜上の像空間にマッピングされる光線のセット全体を代表するだけであることは理解される。本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、限定はしないが、角膜上の360°の全角度範囲内で急勾配と平坦とを交互に繰り返すセクタを有する7mm以上の光学ゾーンまで延在する中心セクタから中心傍セクタまでを含む2つまたはそれ以上の角膜領域内の角膜修正によってもたらされる光線再配置を含む。
【0063】
図8は、中心機能不全領域Bを有する中心窩Aを示す網膜概略図である。この場合、限定はしないが、角膜を修正するデバイスを含む、網膜IDMデバイスは、時空間、コントラスト、有色、および無色情報を有する光線を、中心機能不全領域Bから離れる方向に、限定はしないが、領域Bの外側の中心窩の機能的領域を含む機能的網膜領域に方向転換するように設計されるべきである。
図9は、中心機能不全網膜領域から4つの機能的網膜領域への網膜IDMに対する網膜IDMデバイスを使用することによって生成され得る4象限網膜IDMを例示する概略網膜図である。
【0064】
図10は、網膜上の様々な形状および配置を有する機能不全および機能的網膜領域を示している。任意の網膜IDMデバイスが、機能不全網膜領域(
図10の例ではB、C、およびD)から離れる方向に、機能的網膜領域上へ網膜IDMを生成するように構成されるべきであることは、当業者によって理解され、
図10の場合、機能的網膜領域Eは、視力および視覚機能改善に網膜IDMが使用され得る候補領域である。
【0065】
網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態は、
図11Aに示されている角膜曲率半径(ROC)の治療パターン、および
図11Bに示されている
図11Aの拡大部分を生成する。
図11Bは、曲率半径において0.1mmずつ増分する境界を示しているが、実際のROCは1つの増分境界から別の境界まで連続的に変化する。
図12は、
図11Aに示されている治療パターンの30°~210°の子午線に沿ってROCプロファイルを近似する連続的なROCプロファイルを示している。ROCは、
図12に示されているように対称的であり得るか、または形状が可変である非対称であり得る。最小ROCの配置は、瞳孔重心(または別の中心基準)に関して中心に置かれるか、または中心から外れるものとしてよい。一例として、未治療の角膜が中心光学ゾーン(直径3mmの中)において約7.6mmのROCを有する場合、治療済み角膜は同じゾーン内で7.2~7.8mmの範囲内のROCを有する可能性がある。IDM治療のいくつかの実施形態は、また、角膜全体を通して有意なROC変化も引き起こし、7mmの光学ゾーンでは周辺角膜にまで延在する。その結果得られるIDM治療の変化は、
図11Aに示されているように、約5から7mmの光学ゾーンの間の中心傍角膜内の平坦な領域の4つのセットによって囲まれている中心(直径3mm)光学ゾーン内で急勾配/平坦を交互に繰り返すセクタの4つのセットとして近似的に記述できる。ROCの変化は、
図9に例示されているものに類似する機能的網膜領域上への網膜放射照度の方向転換を行う4つの非球面伸長「小型レンズ」からの光線の方向転換、さらには角膜の他の領域からの光線の方向転換も引き起こす。
図11Aおよび
図11Bに示されているROCパターンは、網膜IDMデバイスが
図11A上の小さな白色円として示されている表面治療領域の下に配置されている角膜間質組織の4つの小体積のIDM治療を引き起こすことによって生成される。角膜の生体力学特性に起因して、角膜間質組織の4つの小体積内の高度に局在化された治療は、各治療体積から角膜中心に向かって延在し、治療済み体積と角膜中心との間のおおよそ中ほどにピーク効果がある、非局所的効果を生み出す。IDM治療のいくつかの実施形態は、角膜中心から少なくとも7mmの光学ゾーンまで延在する角膜全体にわたって非局所的ROC変化を生じる。
【0066】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMに対するデバイスは、限定はしないが、4つの円形非中心体積治療を含む様々なパターンを使用し、角膜全体を通して、限定はしないが、角膜曲率半径、角膜屈折率、角膜回折、角膜散乱の修正、およびこれらの角膜修飾の任意の組合せを含む角膜修正を生じる。角膜曲率半径修正において、IDM治療は、角膜前面の主要な窪みおよび/または隆起の様々な非中心配置および大きさを誘発し、その結果、角膜全体を通して前面角膜曲率半径が増大および/または減少する。
【0067】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、網膜の4象限すべてにおける放射照度分布を変化させる曲率半径の変化を生じさせ、網膜IDMは、網膜領域および/または微小領域内の放射照度および/またはコントラストの減少または増大を引き起こし、視界にある物体の明暗端の変化した比率は、放射照度コントラストを変化させる。いくつかの実施形態において、網膜IDMに対する例示的なパターンは、瞳孔重心(PC)または角膜頂点(CV)または同軸視聴角膜光反射(CSCLR)を中心とする。いくつかの実施形態において、網膜IDMに対するパターンは、PC、CV、またはCSCLRに関して中心から外される。
【0068】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、限定はしないが、網膜炎症および網膜創傷治癒を含む有害な網膜効果を生じない。網膜レーザー療法(限定はしないが、レーザー網膜光凝固術、レーザー網膜光線力学療法、および閾値下マイクロパルスダイオードレーザー療法を含む)およびフォトバイオモジュレーション療法の従来のデバイスおよび方法とは対照的に、IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態は、網膜に照射するレーザー光または発光ダイオード(LED)光を使用せず、いくつかのIDM実施形態では、網膜に照射を行うために自然環境光のみを使用し、したがって網膜がレーザー光および他の自然ではない非環境光に曝露されることに関連する有害な網膜効果がない。IDM治療fのいくつかの実施形態では、角膜を照射するために「眼に安全な」光のみが使用され、「眼に安全な」光は、角膜および他の網膜前眼球構造によって完全に吸収され、それによって網膜の直接照射を防ぐ。
【0069】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、治療後数ヶ月から数年にわたり、基礎疾患プロセスからの網膜細胞の進行中の損傷または機能低下を補償し続ける。いくつかの実施形態において、基礎疾患プロセスによる網膜細胞の進行中の損傷または機能低下に対する進行中の神経補償は、本明細書において説明されている例示的な方法のうちの1つまたは複数によって生成される網膜IDMの進行中の変化によって円滑にされ、たとえば、数日、数週間、数ヶ月、または数年にわたる角膜前面の窪みおよび/または隆起の変化を可能にする。角膜前の曲率の一部は角膜全体を通して網膜細胞の進行中の損傷または機能低下を補償し続けるために数日、数週間、数ヶ月、または数年にわたって徐々に変化する。
【0070】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、IDM治療による角膜ROC変化の振幅は、時間の経過とともに減少する。本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、IDM治療は、角膜ROCのIDMの変化を様々な期間にわたって一時的なものにするために角膜に送達される治療パターンおよび/または治療エネルギー密度を変更することによって修正され得る。一時的IDM誘発ROC変化は、子供、青年、および若年成人の弱視の治療に特に有用である。弱視の被験者の両眼のIDM治療は、単眼剥奪による従来の弱視治療によって引き起こされる視力障害を防ぐことができる。弱視の被験者の両眼のIDM治療は、従来の単眼方法とは対照的に、通常日常機能における両眼視を改善することができる。両眼視は、弱視に対する単眼剥奪治療によって阻害され、従来の両眼視覚訓練がビデオゲームありまたはなしで実施されたときに、通常日常機能において改善されない。被験者の両眼のIDM治療は、両眼の周辺視力の使用を妨げない。弱視の被験者の周辺視力は、通常、正常であり、閉塞療法によって障害されることがあり、IDM治療後に弱視眼の中心視力の改善に寄与し得る。
【0071】
網膜IDMデバイスのいくつかの実施形態の応用では、
図11Aに類似する治療パターンを使用する加齢黄斑変性症(AMD)の眼に対するIDM治療は、平均最良眼鏡矯正遠方視力および近方視力(CDVAおよびCNVA)、コントラスト感度および他の視覚機能、ならびに視力関係の生活の質において著しい網膜IDM視力改善をもたらす。ETDRS視力表の遠方版と近方版が、それぞれ、遠方視力および近方視力を測定するために利用可能である。ETDRS測定値は、スネレン値、logMAR値、10進数値、および/または正しく読めた文字の数(スネレン値20/1000に対して0個の文字から始まる)に関するいくつかの方法で報告される。視力の改善は、多くの場合に、ETDRS視力表で獲得された文字数および/または獲得された行数に関して報告され、視力表には1行に5文字が並んでいる。
【0072】
個別のカスタマイズされた網膜IDM治療が、本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法の1つまたは複数によって実施できることは当業者によって理解され得る。これらの個々のカスタマイズされた網膜IDM治療は、限定はしないが、個別の光干渉断層法、マイクロペリメトリー、高精細度ペリメトリー、および眼底自己蛍光検査を含む診断情報に基づき行うことができる。
【0073】
本明細書において説明されているいくつかの実施形態では、網膜IDM治療パターンは、緑内障患者の視力を改善するために黄斑損傷および視野欠損の程度に基づき構成され得る。黄斑に対する緑内障性損傷は、疾病プロセスの初期に生じ、局所および深部の弓状欠陥が固視付近に現れ得る上方視野においてより一般的である。初期緑内障性損傷は、両眼コントラスト感度スコアおよび奥行知覚の著しい低下を引き起こし、これは両側網膜IDMによって改善され得る。
【0074】
図13は、中央機能不全網膜領域(灰色陰影)の効果を概略で例示する未修正網膜照度分布と修正済み網膜照度分布とを示している。未修正網膜放射照度分布(上のグラフ)では、光のわずかな部分(4.3%)だけが機能不全網膜領域の外側にある機能的網膜領域を照射する。IMT植え込みによって引き起こされるような2×拡大による従来の修正(左下のグラフ)では、有用な網膜放射照度を30%にまで高め、これは機能不全網膜領域の外側および機能的網膜領域の内側にある。本明細書において説明されている最適化された修正(右下のグラフ)は、
図7に示されているものに類似する網膜IDMを生成し、有用な網膜放射照度を83%まで高めるが、これは機能不全網膜領域の外側およびしたがって機能的網膜領域の内側にある。IMTおよび類似の眼内望遠鏡デバイスの基本である、拡大による従来の修正は、中心視力喪失の眼の視力を改善する上で有効性が常に限定される。それに加えて、IMTデバイスは、望遠鏡光学系の視野の制限に起因して「視野狭窄」を引き起こす。本明細書において説明されている、例示的な実施形態のうちのいくつかによる角膜治療は、中心視力喪失の眼の視力を改善する上でかなり効果的であり、また「視野狭窄」を引き起こすのではなくむしろ周辺視力を改善する。
【0075】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態は、網膜IDMに対する中心窩または別の網膜固視領域から少なくとも2つの他の網膜領域への光方向転換のために、限定はしないが、角膜曲率半径の修正、角膜屈折率の修正、角膜回折、角膜散乱、およびこれらの角膜修正の任意の組合せを含む角膜修正を生成するように構成されているIDMデバイスおよび方法を伴う。これらの実施形態は、限定はしないが、角膜光破壊、角膜光電離、角膜解離、角膜光剥離、光熱角膜形成術(LTK)、角膜光溶接、角膜架橋(CXL)、伝導性角膜形成術(CK)、および角膜インレーのための角膜デバイスおよび方法を含み、これらはすべて網膜IDMに対して構成される。最適な網膜IDMのためには、曲率半径および/または屈折率の変化は、機能不全網膜領域の外側および機能的網膜領域の内側に可能な限り多くの網膜IDMを生じさせるべきである。IDM治療デバイスおよび方法は、限定はしないが、網膜IDMに対する角膜前面ROC変化について、
図11および
図12に示されているものを含む、角膜曲率半径(ROC)変化を生じさせるように構成され得る。IDM治療およびデバイスは、限定はしないが、光破壊のためのフェムト秒レーザーを含む、デバイスを使用して網膜IDMに対する天然水晶体の水晶体曲率半径または屈折率修正を生じさせるように構成され得る。角膜修正は、最初に(第1の修正)および後の時点で(その後の修正)行われ得ることは理解される。
【0076】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、フェムト秒(FS)レーザーまたはナノ秒レーザーが、角膜修正を用いて網膜IDMに対する間質内光破壊もしくは光電離もしくは光解離またはこれらの任意の組合せを生じさせるために使用され得る。
図14は、網膜IDMを生成するように構成されているフェムト秒(FS)レーザー治療(Tx)パターンを受けた角膜を通る概略断面図を例示している。図示されている例では、間質内FSレーザー照射は、窪み(
図14では深さが誇張されている)をもたらす間質内角膜体積を除去するように構成され、したがって、曲率半径(ROC)は角膜前面において変化し、代替的に、FSレーザー照射は、限定はしないが、網膜IDMに対する間質内屈折率修正、間質内回折修正、間質内散乱修正を含む他の角膜修正を生成するように構成され得る。角膜修正変化の任意の組合せは、網膜IDMに使用され得る。角膜組織除去または屈折率の変化に対するFSレーザーパターンは、
図14に示されているように球形であり得るか、または任意の体積形状を有することができる。FS治療体積は、角膜間質内の任意の深さのところに配置され得る。2つまたはそれ以上のFS治療体積は、中心(3mmの光学ゾーン内)、中心傍(3から6mmの光学ゾーン内)、または周辺(>6mmの光学ゾーン)に生成されるものとしてよく、治療パターンは瞳孔重心または別の中心基準に関して中心に置かれるか、中心から外される。治療体積は、カスタム効果を生み出すために、形状および/または深さに関して等しいかまたは不等であり得る。老眼矯正などの他の用途のために以前に使用されたFS環状間質内治療とは異なり、FSレーザー修正は、360度の環状体積ではなく、したがって、角膜拡張を誘発しない。
【0077】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMに有用な角膜修正を生成するために、限定はしないが、レーザー光破壊、光電離もしくは光解離、ならびに/またはレーザー光剥離デバイスおよび方法[限定はしないが、小切開レンチキュール摘出(SMILE)、レーザー原位置角膜切開反転術(LASIK)およびレーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)デバイスおよび方法を含む]を含むレーザー組織除去手技が使用され得る。
図12は、網膜IDMに有用なものとなるように構成されている前面ROCプロファイルを有する角膜の断面を示す。レーザー組織除去手技(限定はしないが、SMILE治療用の角膜レンチキュールを形成するためのフェムト秒レーザー治療、LASIK治療用およびPRK治療用の間質床のレーザー光剥離を含む)は、網膜IDMを提供するのに十分な角膜修正を引き起こすように構成されるべきである。
【0078】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、角膜架橋(CXL)手技のための、限定はしないが、紫外線A(UVA)発光デバイス、LTKデバイス、および限定はしないが、リボフラビンを含む光感作物質と組み合わされ得る他のデバイス、または限定はしないが、グリセルアルデヒド、グルタルアルデヒド、ゲニピン、ニトロアルコールもしくはホルムアルデヒド放出剤を含む光活性化剤を有する他の光活性化システムを含む角膜架橋デバイスは、架橋(FCXL)の焦点領域を生成するように構成される。FCXL IDM手技のいくつかの実施形態において、治療されない角膜領域は、網膜IDMを施すために角膜の2つまたはそれ以上の空間的に分離された治療領域内でUVA光もしくは他の光または光活性化剤からマスクされる。FCXLは、角膜間質への光感作物質の浸透を高めるために、角膜上皮を全部または一部を除去して、または除去せずに実施され得るが、これは限定はしないが、角膜に光感作物質(限定はしないが、リボフラビンを含む)を投与してその後UVA光またはその他の光照射を行うことを含む。FXCLは、また、限定はしないが、360から460nmの波長領域内で動作するGaNダイオードレーザーおよびダイオード励起固体(DPSS)レーザーを含む、高放射照度(10W/cm
2以上の放射照度)の可視光またはUVA光源によって活性化される、限定はしないが、リボフラビンを含む、光感作物質を使用するレーザー熱角膜形成術+CXLを併用することによって作製することもできる。FXCL IDMデバイスおよび方法は、限定はしないが、中心窩から離れる方向で2つの他の網膜領域に光を方向転換するために角膜修正の様々な配置および振幅を誘発する2つまたはそれ以上の非中心治療を含む、様々な治療パターンを使用して、
図11および
図12に示されている、限定はしないが、角膜曲率半径修正を含む角膜修正を生成するように構成される。各治療パターン内で、FCXLは、直径が少なくとも0.1mmであり、中心傍(3から6mmの光学ゾーン内)または周辺(>6mmの光学ゾーン)に配置される治療体積を生成するように構成され、治療パターンは瞳孔重心または別の中心基準に関して中心に置かれるか、または中心から外される。
【0079】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、限定はしないが、導電性角膜形成術(CK)を含む従来の角膜形状変更手技およびデバイス、ならびに限定はしないが、高周波放射デバイスを含むデバイスは、網膜IDMに対して角膜の2つまたはそれ以上の空間的に分離された治療領域において角膜修正を生成するように構成される。CK生成角膜修正には、限定はしないが、ROC修正の様々な配置および振幅を誘発する2つまたはそれ以上の非中心治療を含む、限定はしないが、様々な治療パターンを使用する
図11および
図12に示されている角膜曲率半径修正を含む。各治療パターン内で、CKは、直径が少なくとも0.1mmであり、中心傍(3から6mmの光学ゾーン内)または周辺(>6mmの光学ゾーン)に配置される治療体積を生成するように構成され、治療パターンは瞳孔重心または別の中心基準に関して中心に置かれるか、または中心から外される。
【0080】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMは、網膜IDMを修正するように構成されている眼内レンズ(IOL)および/または眼内レンズアクセサリデバイス(IOLAD)の挿入によって生成される。IOLADは、限定はしないが、屈折構造、回折構造、または網膜IDMを修正するためにIOLと組み合わせて動作するそれらの任意の組合せを含む、限定はしないが、光ステアリング構造を含む。有水晶体眼、無水晶体眼、または偽水晶体眼用のIOLおよびIOLADは、限定はしないが、溝または水晶体内に位置決めされたIOLおよびIOLAD、前房IOLおよびIOLAD、虹彩固定IOLおよびIOLAD、ならびに経強膜縫合IOLおよびIOLADを含む。
図15は、IOLの他の領域と比較して、限定はしないが、IOL曲率半径、IOL屈折率、IOL回折、IOL散乱の修正、およびそれらのIOL修正の任意の組合せを含むIOL修正を有する4つの中心傍領域を含む、網膜IDMに適したIOL修正を例示している。IOL回折修正の場合、本明細書において説明されている例示的な修正は、回折多焦点IOLで使用される環状(IOLレンズ中心を中心とするリング状パターン)修正とは異なり、
図15は、4つの別々の中心傍領域を例示しており、そのうちの1つまたは複数はIOL回折の修正を組み込んでいる。追加のIOL修正は、限定はしないが、IOLの少なくとも1つの中心傍領域内に光ステアリング構造(限定はしないが、1つまたは複数の反射体、1つまたは複数の光ファイバー、1つまたは複数のプリズム、または光ステアリング構造の任意の組合せを含む)を含めることを含む。空間的に分離された2つ、3つまたはそれ以上の中心、中心傍、または周辺領域は、領域の重なりがある場合またはない場合に、中心窩または別の網膜固視領域から遠ざかる方向で2つまたはそれ以上の網膜領域へ光を方向転換することに対して領域のいずれかまたはすべてにおいてIOL修正を生成するために使用され得ることは理解される。IOLおよびIOLAD修正は、IOLおよびIOLAD挿入の前および/または後にIOLおよびIOLAD内で構成できることも理解され、挿入後、FSレーザー、別の光源、および/または電子的手段が、IOLおよびIOLAD修正を原位置で生成するために使用されるものとしてよく、それにより、IOLおよびIOLAD曲率半径、IOLおよびIOLAD屈折率、IOLおよびIOLAD光ステアリング構造、IOLおよびIOLAD回折、IOLおよびIOLAD散乱の調整、ならびにそれらの調整の任意の組合せ調整を生成することができる。
【0081】
図16は、網膜の機能的領域上に放射照度を向ける2つまたはそれ以上のプリズムを含む網膜IDMに適しているIOL修正を例示している。それに加えて、IOLは、領域のいずれかまたはすべてにおいて曲率半径および/または屈折率を修正するために領域の重なりありもしくはなしで空間的に分離された少なくとも2つの中心、中心傍、または周辺領域の組合せを含むように構成されるものとしてよく、2つまたはそれ以上のプリズムは、網膜IDMに使用され得る。機能不全網膜領域を有する眼における最適な網膜IDMのために、曲率半径の変化、屈折率の変化、プリズム効果、またはそれらの任意の組合せで、機能不全網膜領域の外側および機能的網膜領域の内側に可能な限り多くの網膜IDMを生成するべきである。
【0082】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態は、中心窩または別の網膜固視領域から離れる方向で、網膜IDMを生成するように構成されている少なくとも2つの他の網膜領域に光方向転換を行うための限定はしないが、曲率半径、屈折率、回折、散乱の修正、およびそれらの修正の任意の組合せを含む修正とともに、眼鏡、コンタクトレンズ、またはそれらの任意の組合せによって生成される網膜IDMを伴う。
図17は、網膜放射照度を機能不全網膜領域から機能的網膜領域へ方向転換するように設計されている中心傍急勾配領域を含む修正済みコンタクトレンズ(CL、寸法:直径8mm、厚さ0.2mm、前方および後方の曲率半径7.8mm)の断面図を示している。CL寸法は、より小さいまたはより大きい直径、厚さ、および曲率半径を含むように示されているものとは異なり得る。眼鏡レンズも網膜IDM用に設計され得る。眼鏡レンズ(SL)およびCLは、単一の材料または複数の材料から加工され得る。CLは、角膜、強膜、またはこれらの組合せであってよい。修正済みSLおよびCL領域は、異なるもしくは同じ曲率半径、異なるもしくは同じ屈折率、異なるもしくは同じ回折、異なるもしくは同じ散乱、またはこれらの任意の組合せを有するものとしてよい。追加の眼鏡修正は、一方または両方の眼鏡レンズ内に、限定はしないが、少なくとも1つの反射体および少なくとも1つの光ファイバーアレイを含む光ステアリング構造を、限定はしないが、入れることを含む。CL直径内および/またはSL形状内の中心、中心傍、または周辺に配置される修正領域は、1つ、2つ、または3つ以上あってもよい。SLおよびCLは、片眼、両眼、または任意のSLとCLの組合せで使用され得る。すべてのSLおよびCLの特性、寸法、および修正は、患者網膜IDM要件に対して最適な網膜放射照度分布に光線を導くように設計される。SLおよびCLは静的または能動的に構成することができ、静的構成は視覚系内に組み込む前に完了されており、能動的構成は、限定はしないが、角膜曲率半径変化、屈折率変化、回折変化、散乱変化、およびそれらの変化の任意の組合せに対する電子的および/またはフォトニック調整を含む調整を用いて、視覚系内に組み込んだ後に、1回または複数回達成される。
【0083】
本明細書において説明されているいくつかのさらなる例示的な実施形態は、スクリーニングおよび/またはカスタマイズの目的のために、「トライアル」眼鏡レンズ(SL)、「トライアル」コンタクトレンズ(CL)、またはこれらの任意の組合せを使用することを伴う。スクリーニング用途では、「トライアル」レンズは、患者の眼が網膜IDMデバイスおよび方法によって視力および視覚機能改善を達成することができるかどうかを決定するのに役立ち得る。カスタマイズ用途では、「トライアル」レンズは、最適な網膜IDM構成を決定するために特性を変化させられ得る。スクリーニング用途およびカスタマイズ用途の両方において、神経適応の有益な効果を得るために、患者が「トライアル」レンズを数日または数週間の長い期間にわたって使用することが望ましい場合がある。
【0084】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態は、角膜インレー(CI)によって生成される網膜IDMを伴う。
図18は、角膜内に植え込まれる角膜インレー(CI)を示しており、示されている角膜セグメントは、長さ約1.8mm、中央の厚さ0.55mmであるが、角膜セグメントは約11mmまで延在する長さを有することができる。2つのレンズがインレー上に示されており、これらのレンズは、限定はしないが、曲率半径、屈折率、回折、散乱の修正、およびこれらの修正の任意の組合せを含む同じまたは異なる修正を有することができる。CIの形状は円形でも非円形でもよい。CIの寸法は、限定はしないが、長さ1から8mm、幅1から8mm、直径3から8mm、および0.01から0.5mmの範囲内の均一もしくは可変の厚さを含む。1つ、2つ、またはそれ以上のインレーがあってよく、各々0枚、1枚、2枚、またはそれ以上の枚数のレンズを有することができる。インレーは、
図18に示されているように中央に配置され得るか、または偏心配置され得る。インレーは、角膜前面から、限定はしないが、0.05から0.5mmの深さを含む深さのところに植え込まれ得る。各角膜インレー上のレンズは、各インレー上の任意の位置に配置することができる。CIは、ヒドロゲル、生体適合性材料、および当業者に知られている他の材料を含む材料から構成される。角膜インレーは静的または能動的に構成することができ、静的構成は角膜内に植え込む前に完了されており、能動的構成は、限定はしないが、角膜曲率半径変化、屈折率変化、回折変化、散乱変化、およびそれらの変化の任意の組合せに対する電子的および/またはフォトニック調整を含む調整を用いて、角膜内に植え込んだ後に、1回または複数回達成される。
【0085】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDMデバイスおよび方法は、黄斑変性症および/もしくは糖尿病性網膜症および/もしくは緑内障ならびに/または他の新生血管および/もしくは萎縮症および/もしくは炎症性および/もしくは遺伝性および/もしくは栄養および/もしくは加齢に関連する網膜疾病(以下、「網膜疾病」)の治療を改善するために、薬理学的および/または網膜レーザーおよび/または放射線および/または幹細胞移植および/またはエピジェネティックおよび/または遺伝的および/または他の療法(以下、他の療法)を含む、先行技術の網膜治療と網膜IDM教示とを組み合わせたものである。本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法は、網膜疾病に関連する視力および/または網膜病変および/または修復プロセスの異なる機構を導入することによって従来技術の欠点および不備を克服する。本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法は、従来技術の欠陥および不備を、それらを他の療法とともに網膜IDMと相乗的に組み合わせることによって克服し、視覚および/または解剖学的転帰を改善し、また、従来技術の療法に対する患者順守も改善する。併用療法は、同じ患者診察時に、または異なる時期に順次、投与され得る。併用療法のいくつかの実施形態では、網膜IDM治療は、1回に、非網膜IDM療法の前または非網膜IDM療法の開始後のある時期のいずれかに、行われる。併用療法のいくつかの実施形態では、複数の網膜IDM治療は、別々の時期に、他の療法の前または非網膜IDM療法の開始後の可変の時期のいずれかに、行われる。
【0086】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDM治療は、限定はしないが、フォトバイオモジュレーション、レーザー光凝固術、レーザー光線力学療法、閾値下マイクロパルスレーザー療法、緑内障レーザー療法(限定はしないが、レーザー線維柱帯形成術および毛様体光凝固術を含む)、緑内障濾過手術(限定はしないが、線維柱帯切除術、マイクロトラベクレクトミー、内部または外部チューブシャント移植、脈絡膜上シャント移植を含む)、幹細胞移植、および放射線療法(限定はしないが、焦点眼内ストロンチウム90ベータ放射線を含む)を含む、限定はしないが、網膜レーザー療法を含む、網膜疾病に対する他の療法と組み合わされる。
【0087】
本明細書において説明されている例示的な網膜IDMデバイスおよび方法のいくつかの実施形態では、網膜IDM治療は、限定はしないが、遺伝子、エピジェネティック、および光遺伝子療法を含む網膜疾病のための他の治療と組み合わされる。
【0088】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDM治療は、経口投与、角膜への局所投与、結膜下注射を介した投与、硝子体内注射を介した投与、網膜内投与、インプラントを介した投与、およびイオントフォレシスを介した投与で与えられる、栄養剤を含む、薬理学的薬剤を含む、網膜疾病の薬理学的治療と組み合わされる。
【0089】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態では、網膜IDM治療は、抗血管形成薬物療法と組み合わされる。
【0090】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、限定はしないが、網膜IDMによる治療を含む被験者の黄斑変性症、脈絡膜血管新生、または糖尿病性網膜症を含む眼球疾患を改善する、または治療する、限定はしないが、ラニビズマブ、ベバシズマブ、ブロルシズマブ、およびアフリベルセプトを含む、治療有効量の任意の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)拮抗薬を投与することと併用する、限定はしないが、ボロシキシマブおよびP200を含む治療有効量の任意のPDGF拮抗薬を投与することと併用する、または上記の薬物の任意の組合せと併用する、方法を提供する。本明細書において使用されているように、「改善する」または「治療する」または「補償する」という用語は、眼疾患(たとえば、黄斑変性症)に関連する臨床的徴候および/または症状が、実行される作用の結果として軽減されることを意味する。モニタリングされるべき徴候または症状は、眼疾患に特徴的であり、徴候、症状、および状態をモニタリングするための方法と同様に、当業者である医師によく知られている。
【0091】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の黄斑変性症、脈絡膜血管新生、または糖尿病性網膜症を含む眼疾患を改善する、または治療する、治療有効量のベタラニブまたはパゾパニブまたは任意の他のチロシンキナーゼ阻害剤またはVEGFおよびPDGF受容体のリン酸化の任意の他の阻害剤の投与と併用する、方法を提供する。
【0092】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の眼疾患を治療する、治療有効量のVEGF活性阻害剤の投与と併用する、方法を提供する。
【0093】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量のα5βインテグリン活性阻害剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0094】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、血管新生眼疾患および/または滲出型黄斑変性症、および/または糖尿病性網膜症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量のPDGF活性阻害剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0095】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、血管新生眼疾患および/または滲出型黄斑変性症、および/または糖尿病性網膜症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量のチロシンキナーゼ活性阻害剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0096】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、血管新生眼疾患および/または滲出型黄斑変性症、および/または糖尿病性網膜症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量のmTOR阻害剤(シロリムス)を投与することと併用する、方法を提供する。
【0097】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、血管新生眼疾患および/または滲出型黄斑変性症、および/または糖尿病性網膜症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量のフルオシノロンアセトニドまたは任意の他の抗炎症剤を投与することと併用する、方法を提供し、抗炎症剤は、硝子体内注射によって送達されるか、または眼内インプラントによって送達される。
【0098】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、限定はしないが、補体3または5を含む、補体の治療有効量の活性阻害剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0099】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量のアバシンカプタドペゴル、LEG316、POT¬4、エクリズマブ、JPE-1375、ARC1905、または任意の他の補体阻害剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0100】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量のドキシサイクリンを投与することと併用する、方法を提供する。
【0101】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量の酢酸グラチラマーまたは他のTヘルパー2誘導剤もしくは免疫調節剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0102】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量の治療有効量のOT551、またはタンパク質複合体核因子(NF)¬Bもしくは他の抗酸化剤の過剰発現の他のダウンレギュレーター、または限定はしないが、たとえば、加齢関連眼疾患研究(AREDS)およびAREDS 2研究のようなビタミンC、ビタミンE、β-カロチンもしくはルテインおよびゼアキサンチン、およびオメガ-3脂肪酸の組合せを含む、抗酸化剤の組合せを投与することと併用する、方法を提供する。
【0103】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、限定はしないが、ニコチンアミドリボシドまたはニコチンアミドモノヌクレオチドを含む、治療有効量のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)またはNADの任意の前駆体を投与することと併用する、方法を提供する。
【0104】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、限定はしないが、色素上皮由来因子(PEDF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、および水晶体上皮由来増殖因子(LEDGF)を含む、治療有効量の栄養素を投与することと併用する、方法を提供する。
【0105】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量の毛様体神経栄養因子(CNTF)もしくは任意の他の神経栄養因子または光受容体アポトーシスの任意の他の阻害剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0106】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、限定はしないが、ブリモジニンを含む、治療有効量の神経保護剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0107】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、治療有効量のFas阻害剤または細胞死から網膜細胞を保護するように設計された他の薬剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0108】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、地理的萎縮および/または乾性黄斑変性症および/または血管新生黄斑変性症および/または緑内障を含む、眼疾患を治療する、または改善する、限定はしないが、アトルバスチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、またはシンバスタチンを含む、治療有効量のスタチンを投与することと併用する、方法を提供する。
【0109】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、緑内障または高眼圧症を含む、眼疾患を治療する、または改善する、限定はしないが、縮瞳薬、αまたはα/βアドレナリン作動薬、β遮断薬、Ca2+チャネル遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン作動薬、プロスタグランジン、プロスタミド、カンナビノイド、およびこれらの組合せを含む、治療有効量の眼内圧(IOP)低下剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0110】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、緑内障を含む、眼疾患を治療する、または改善する、虚血または興奮毒性に関係する、網膜神経節細胞機能不全および/または病変を減少させる治療有効量の薬理学的薬剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0111】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、緑内障を含む、眼疾患を治療する、または改善する、限定はしないが、グルタミン酸拮抗薬および/またはグルタミン酸拮抗薬と少なくとも1つのlOL低下薬との任意の組合せを含む、過剰な興奮性アミノ酸(EAA)刺激(EAAは、双極細胞およびアマクリン細胞が神経節細胞と通信することを可能にする)を減少させる治療有効量の薬理学的薬剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0112】
本明細書において説明されているいくつかの例示的な実施形態において、網膜IDMは、網膜IDMによる治療を含む被験者の、限定はしないが、緑内障を含む、眼疾患を治療する、または改善する、限定はしないが、Rho-キナーゼ(ROCK)阻害剤またはアデノシン受容体作動薬を含む、網膜神経節細胞の神経保護および/または神経再生を提供する治療有効量の薬理学的薬剤を投与することと併用する、方法を提供する。
【0113】
視覚標的上に固視を試みるために眼によって使用される網膜配置は、固視の偏心視域として知られる(たとえば、「PRL」)。眼のPRLは、固視、たとえば眼が光を固視することによって決定され得る。PRLは、ペリメトリーまたはマイクロペリメトリーによっても決定され得る。たとえば、PRLはマイクロペリメトリーにおける固視点の集団の共通重心に対応し得る。いくつかの事例において、PRLの網膜配置は、眼の中心小窩の中心に関して、または中心小窩の推定中心に関して記述されるものとしてよく、極座標r,θまたはr’,θに関して指定されるものとしてよく、rはmm単位の距離であるか、またはr’は度単位の網膜偏心度に関する距離であり、θは角座標である。
【0114】
正常に見える眼におけるPRLは中心窩内に配置されるが、必ずしも中心窩中心とは限らない。さらに、正常に見える眼では通常、PRLは中心小窩領域内に配置される。中心小窩は、視野の0.1%未満に対応する、約1°の視角のみを覆う。いくつかの事例において、PRLは、正常に見える眼において平均約10分の角度だけ最高中心窩円錐の配置から変位され得る。さらに、いくつかの事例において、PRLからのオフセットの大きさと、限定はしないが、ピット容積、FAZ面積、およびピーク錐体密度を含む対応する中心窩特殊化測定値との間に相関が存在しない場合がある。
【0115】
PRLは、中心網膜損傷または欠損がある眼では、中心窩内に配置するか、中心窩に対して偏心して配置される。視覚系は、
図3および
図4に例示されているように、視覚情報を捕捉し処理する眼および脳の要素を含む。視覚系内の神経処理の空間的および時間的特性は、固視の偏心視域の配置に影響を及ぼす要因である。さらに、最小固視眼球運動は、約0.01°から約0.1°の間の振幅を有することが知られている。
【0116】
本明細書において説明されているいくつかの例では、方法および装置は、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の方向転換を引き起こし得る。これらの例示的な方法および装置の1つまたは複数は、眼の視野内からの環境光の、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置に向かう安全で効果的な方向転換を引き起こし得る。いくつかの事例において、これらの例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、たとえばマイクロペリメトリーによって測定されるように、眼の固視点の集団の共通重心を少なくとも0.01°だけシフトする方向転換を引き起こし得る。いくつかの事例において、これらの例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、たとえばマイクロペリメトリーによって測定されるように、眼の固視点の集団の共通重心を少なくとも0.1°だけシフトする方向転換を引き起こし得る。
【0117】
さらに、いくつかの事例において、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への光の方向転換を引き起こし、視野内の視覚情報の神経統合および知覚を強化し、進行中の神経適応を促進するために、たとえば眼および脳を含む視覚系を「リブート」するために、網膜および脳細胞の視覚探索、網膜サンプリング、および刺激を修正し得る。
【0118】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、視覚系をリブートして、安全、効果的に視覚を改善し、かつ/または回復させ得る。視力は、限定はしないが、空間的細部の識別、視力(遠方視力、中間視力および/または近方視力に対する未矯正および/または最良眼鏡矯正視力を含む)、過視力、立体視力、副尺視力、コントラスト感度、焦点深度、色覚、周辺視力、暗視、顔認識、明順応、暗順応、視野および/もしくは視力に関係する生活の質、またはそれらの任意の組合せを含み得る。
【0119】
さらに、例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、視覚系をリブートし得る。視覚系のリブートは、限定はしないが、(i)黄斑および周辺網膜細胞--限定はしないが、光受容体、双極細胞、アマクリン細胞、水平細胞、ミュラーグリア細胞、神経節細胞、もしくは網膜細胞の任意の組合せを含む--からの追加のおよび/もしくはより正しくコード化された網膜情報を統合して神経計算を改善し、より完全な刺激パターンの処理を可能にすること、(ii)光受容体、神経節細胞、アマクリン細胞、双極細胞、水平細胞、およびミュラー細胞、もしくはそれらの任意の組合せを伴う視覚処理における接続性機能を含む、網膜回路の機能を改善すること、ならびに/または(iii)限定はしないが、網膜および脳における代替的、潜在的、および/もしくは新たな視覚伝導路の使用を含む、神経適応のプロセスをトリガーすることであって、限定はしないが、網膜の周辺領域によってエンコードされた視覚情報を、注視中心にある対象をエンコードする役割を通常担う受容野を有する視覚皮質の高次レベルにあるニューロンへ再ルーティングし、それらの周辺領域内の臨界間隔を狭めたクラウディング特性の有益な変更を可能にすること、固視眼球運動の目標を変更すること、眼球運動の振幅および/もしくは速度を有利に変更すること、サッカード随伴発射回路と視覚皮質の残りの部分との相互作用を有利に変化させること、および/もしくは限定はしないが、視野のより広い領域から情報を収集し、それと同時に視野の視覚認知のためにより多くの網膜細胞を使用するために眼球運動戦略における運動学習を自発的に生じさせることを含む探索機構によってより多くのより正しい視覚情報のより効果的な統合を達成するためにより効果的で自発的な探索を生じさせることを含む、トリガーすることのうちのいずれか、または任意の組合せを含み得る。それに加えて、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への光の方向転換を引き起こす、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、細胞シグナル伝達および視覚機能を促進する有益な恒常性可塑性維持機構を強化する。
【0120】
いくつかの事例において、本明細書で説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、眼の視野内からPRLへの環境光の曝露を低減することによって眼の視覚系のリブートを引き起こし得る。本明細書で説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、眼の視野内からPRLへの環境光の曝露を少なくとも10%だけ、すなわち、10%以上の任意の量もしくは累積量だけ低減することによって眼の視覚系のリブートを引き起こし得る。眼および脳を含む、視覚系に、PRL以外の網膜配置から生じる代替的、潜在的、および/または新しい視覚伝導路を見つけて使用することを強制するためにPRLにおいて環境光の曝露が低減され得る。
【0121】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、決定可能な間隔に対して眼のPRLへの曝露を少なくとも10%だけ減少させるように眼の視野内からの環境光の曝露に重みを付けることによって眼の視覚系のリブートを引き起こし得る。間隔は、ミリ秒、秒、分、時、日、週、月、および/または年単位で定義されてよく、初期利用の前または後の任意の時点で決定され得る。決定可能な間隔は、限定はしないが、個別の患者反応、眼の疾病もしくは疾患の種類、眼の疾病もしくは疾患の進行もしくは退行、治療前視覚データ、および/または治療後視覚データを含む要因によって決定され得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、決定可能な間隔に対して眼のPRLへの曝露を少なくとも10%だけ減少させるように眼の視野内からの環境光の曝露に重みを付けることを引き起こし得る。いくつかの事例において、視野内の環境光は、最大50キロヘルツまでの決定可能なレートで網膜に曝露され、これは眼の視野内からの環境光の処理のリブートを引き起こし得る。
【0122】
いくつかの事例において、50キロヘルツ以下の任意のレートであってよい、決定可能なレートは、限定はしないが、個別の患者反応、眼の疾病もしくは疾患の種類、眼の疾病もしくは疾患の進行もしくは退行、治療前視覚データ、および/または治療後視覚データを含む要因によって決定され得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、最高50キロヘルツまでの任意のレートの曝露レートを可能にし、網膜光受容体による全視野内からの光捕捉の変調を可能にし、知覚の前に眼および脳内での変化した時間的神経統合を引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、眼および脳内の変化した時間的神経統合を引き起こし、決定可能な間隔に対して視野内から眼のPRLへの環境光の曝露を少なくとも10%減少させながら神経処理後の安定した継ぎ目のない知覚を可能にし得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こし、決定可能な間隔に対して眼のPRLへの曝露を少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、または任意の量だけ減少させ、眼の視野内からの環境光の処理のリブートを引き起こし得る。いくつかの例示的な実施形態は、眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こし、決定可能な間隔に対して眼のPRLへの曝露を少なくとも10%だけ減少させ視力の改善または視力の回復を引き起こす。
【0123】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こし、決定可能な間隔に対して眼の中心の偏心視域ではない複数の網膜配置への曝露を少なくとも10%だけ増やし、視力の改善または視力の回復を引き起こすように構成され得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、また、眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こし、決定可能な間隔に対してPRLではない複数の網膜配置への曝露をPRLのところに比べて少なくとも10%を超えて増やし、視力の改善または視力の回復を引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、最高50キロヘルツまでの任意のレートの曝露レートを可能にし、網膜光受容体による全視野内からの光捕捉の変調を可能にし、決定可能な間隔に対して視野内から眼のPRLへの環境光の曝露がPRLではない複数の網膜配置に対してPRLのところに比べて少なくとも10%を超えて増やされるようにしながら神経処理の後に安定した継ぎ目のない知覚を可能にし得る。
【0124】
さらに、本明細書で説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、眼のPRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こすことによって眼の視覚系のリブートを引き起こし得る。眼の視野内からの環境光は、眼および脳を含む、視覚系に、PRL以外の網膜配置から生じる代替的、潜在的、および/または新しい視覚伝導路を見つけて使用することを強制するためにPRLにおいて焦点をぼかされ得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼のPRLではない多数の、非連続の網膜配置に焦点を合わせることを引き起こすことによって、眼および脳を含む、視覚系のリブートを引き起こし得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、また、眼のPRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかし、および/または眼のPRLではない複数の非連続の網膜配置における焦点合わせを引き起こすことによって眼の視覚系のリブートを引き起こし、中心および/または周辺視力の障害および/または喪失を有する眼の視力の改善および/または視力の回復を引き起こし得る。
【0125】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、PRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点を決定可能な距離に対してぼかすことによって中心視力の障害または喪失を有する眼の視力を改善し得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、PRLにおいて、眼から一定の距離または様々な距離のところで眼の視野内に配置される対象の像の焦点をぼかし得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、PRLにおける光学誤差または画質の決定を必要とすることなくPRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、PRLではない多数の非連続の網膜配置に、眼から一定の距離または様々な距離のところで眼の視野内に配置される対象の像の焦点を合わせ得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、PRLでない非連続の網膜配置における光学誤差または画質の決定を必要とすることなく眼のPRLでない多数の非連続の網膜配置に焦点を合わせることを引き起こすことによって眼の視覚系のリブートを引き起こし得る。
【0126】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、また、眼のPRLではない多数の、非連続の網膜配置に焦点を合わせることを引き起こすことによって眼の視覚系のリブートを引き起こし得る。たとえば、これらの例示的な方法および装置は、光学的および/または機械的パラメータの範囲を修正することによって多数の、非連続の網膜配置に対してランダムまたは非ランダムな焦点合わせを達成し得る。
【0127】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLでない複数の網膜配置への光の方向転換を引き起こし、光の方向転換の後すぐに視覚系をリブートし得る。そのような即時のリブートに対して、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、有効性および安全性を高めるために、光の一時的方向転換および/または方向転換の回数の低減および/または方向転換の大きさの低減を経時的に引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、変形可能なコンポーネントを含み、かつ/または眼球もしくは眼球内に挿入された構造物に変形可能な変化を引き起こして、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置に光を方向転換させる安全性および有効性を高め得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、環境光の方向転換先の網膜部分における方向転換の回数の増減ならびに/または方向転換および/もしくは変化の大きさの増減を引き起こして、初回利用および/または繰り返し利用のために任意の決定可能な時間間隔に対して光の方向転換後に視覚系を連続的にまたは間欠的にまたは繰り返してリブートすることを改善し得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLでない複数の、非連続の網膜配置への光の方向転換を即座におよび/または連続的におよび/または間欠的におよび/または繰り返して引き起こし、初回利用および/または繰り返し利用のために任意の決定可能な間隔に対して光の方向転換後に視覚系を即座におよび/または連続的におよび/または間欠的におよび/または繰り返してリブートし得る。初回利用および/または繰り返し利用のための決定可能な間隔は、限定はしないが、個別の患者反応、眼の疾病もしくは疾患の種類、眼の疾病もしくは疾患の進行もしくは退行、治療前視覚データ、および/または治療後視覚データを含む要因によって決定され得る。本明細書において説明されている例示的な方法のうちのいくつかは、反転可能であり、それにより安全性および/もしくは有効性を改善し、かつ/または決定可能な間隔で別の方向転換を可能にし、かつ/または他の療法を円滑にし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、光の反転可能な方向転換および/または眼組織への反転可能な改変および/または装置の少なくとも1つのコンポーネントの反転可能な改変を引き起こし得る。
【0128】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼球のPRLから遠ざかる方向で、網膜の正常部分、網膜の損傷部分、網膜の罹患部分、網膜の遺伝子改変部分、網膜の後成的改変部分、網膜の神経再生的改変部分、または網膜移植、移植網膜細胞(限定はしないが、網膜上皮細胞、光受容体、神経節細胞、網膜前駆細胞を含む)、移植幹細胞、もしくは植え込みプロテーゼのうちの少なくとも1つを含む網膜の部分内に配設される複数の網膜配置への光の方向転換を引き起こし得る。
【0129】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、決定可能な間隔に対して眼のPRLへの曝露を少なくとも10%だけ減少させるように眼の視野内からの環境光の曝露に重みを付けることを引き起こし得る。いくつかの事例において、視野内の環境光は、最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで網膜に曝露されるものとしてよく、視野内の環境光は、網膜の遺伝子改変部分、網膜の後成的改変部分、網膜の神経再生的改変部分、または網膜移植、移植網膜細胞、移植幹細胞、もしくは植え込みプロテーゼに曝露され得る。
【0130】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、中心視力の障害を有する眼の視力を改善し、眼のPRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしおよび網膜の遺伝子改変部分、網膜の後成的改変部分、または網膜の神経再生的改変部分のうちの少なくとも1つの中の環境光の焦点合わせを引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼のPRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかし、および網膜移植、移植網膜細胞、移植幹細胞、または植え込みプロテーゼのうちの少なくとも1つを含む網膜の複数の部分内の環境光の焦点合わせを引き起こし得る。
【0131】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、変形可能なコンポーネントを含み得るか、または眼球構造もしくは眼球内に留置された構造物の変形可能な修正を引き起こして、進行性網膜疾病もしくは変性を有する眼においてPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の一時的もしくは反転可能もしくは繰り返し可能な方向転換を引き起こすように構成され得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、また、変形可能なコンポーネントを含み得るか、または眼球構造もしくは眼球内に留置され構造物の変形可能な修正を引き起こして、眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こし、進行性網膜疾病もしくは変性を有する眼において決定可能な間隔に対して眼のPRLへの曝露を少なくとも10%だけ減少させるように構成され得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、また、変形可能なコンポーネントを含み得るか、または眼球構造もしくは眼球内に留置され構造物の変形可能な修正を引き起こして、眼のPRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかし、および/もしくは進行性網膜疾病もしくは変性を有する眼のPRLではない複数の非連続の網膜配置における焦点合わせを引き起こすように構成され得る。これらの例示的な装置および方法のうちのいくつかは、光受容体、神経節細胞、または他の網膜組織の進行性損傷の後に、視覚系の繰り返しリブートを可能にし得る。これらの例示的な装置および方法のうちのいくつかは、視覚系の安全で効果的なリブートを可能にして、視力を改善し、かつ/または網膜修復および/もしくは髄鞘形成を増強し得る。
【0132】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、複数の網膜細胞における活性の安全で効果的な増大を円滑にし、かつ/または生存網膜細胞における代謝プロセスおよび/もしくは修復機構を刺激するものとしてよい。さらに、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、網膜のいくつかの部分内の個々の網膜細胞における累積焦点光曝露もしくは累積酸化的ストレスの安全で効果的な低減を円滑にし、かつ/または遺伝性および後天性の疾病および疾患における黄斑および/もしくは周辺網膜変性の進行を遅延させ得る。たとえば、網膜細胞を損傷し、かつ/もしくは過剰刺激し、かつ/または有害量の補体活性化を引き起こし、かつ/または早期網膜萎縮を引き起こす可能性のある、選択的熱分解、フォトバイオモジュレーション、または硝子体内光起電刺激などの、現在提案され、研究されているが、まだ承認されていない、黄斑変性症の進行を遅延させるための治療法とは異なり、本明細書において説明されているいくつかの例示的な方法および装置は、過剰刺激および/または網膜組織の損傷を伴わずに黄斑および/または周辺変性を遅延させる。
【0133】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、変形可能なコンポーネントを含み得るか、または眼球構造もしくは眼球内に留置された構造物の変形可能な改変を引き起こして、遺伝子もしくは後成的改変部分においてPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の一時的もしくは反転可能な方向転換を引き起こすように構成され得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、網膜の遺伝子改変部分または網膜の後成的改変部分において眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちの1つまたは複数は、PRLから遠ざかる方向で遺伝子改変部分内の複数の他の網膜配置への環境光の方向転換によって、または環境光の曝露の重み付けによって、または遺伝子改変部分に焦点を合わせながらPRLでの焦点合わせを減少させ適切な組織変換およびトランス遺伝子発現を達成し、神経統合および知覚に寄与することができる網膜配置の数を増やすことによって、眼の視覚系の繰り返しリブートを可能にし得る。
【0134】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、変形可能なコンポーネントを含み得るか、または眼球構造もしくは眼球内に留置された構造物の変形可能な修正を引き起こして、網膜移植、移植網膜細胞、移植幹細胞、もしくは植え込みプロテーゼを含む網膜においてPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の一時的もしくは反転可能もしくは繰り返し可能な方向転換を引き起こすように構成され得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、網膜移植、移植網膜細胞、移植幹細胞、または植え込みプロテーゼを含む網膜の一部に対して眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こし得る。現在の診断技術は、個々の網膜細胞もしくは領域および/または補綴物の視覚機能の信頼可能な評価を提供できないことが多い。本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちのあるものは、網膜移植、移植網膜細胞、移植幹細胞、または植え込みプロテーゼを含む網膜において安全にまた効果的に視覚系の繰り返し可能なリブートを可能にし、環境光が集束されるかまたは光が重み付けを伴って方向転換されるかもしくは曝露されたより多くの網膜領域が神経統合および知覚に寄与することを可能にし得る。
【0135】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、自然視覚処理と併せて視覚系を安全に効果的にリブートし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、知覚または眼球運動訓練を必要とすることなく視覚系をリブートし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、また、網膜アーキテクチャまたは自然視覚処理機構に損傷を与えることなく視覚装置をリブートし得る。これらの利点の一例として、また、網膜アーキテクチャおよび自然視覚処理を不可逆的に破壊する網膜補綴移植などの、視覚喪失に対するいくつかの現在調査されている(が、まだ承認されていない)戦略とは異なり、本明細書において説明されているいくつかの例示的な方法および装置は、いかなる眼組織も損傷または置換せず、自然視覚処理を破壊しない。いくつかの利点の別の例として、また、視野からの現実の視覚情報を視野の中心傍領域内のシミュレートされ歪んだ情報で置き換え、視野内のすべての像を伝達しない電子網膜再マッピングなどの、中心視覚喪失に対するいくつかの現在調査されている(が、まだ承認されていない)戦略とは異なり、本明細書において説明されているいくつかの例示的な方法およびデバイスは、実際の完全な視野を伝達するものとしてよく、視野内の視覚情報を歪ませない。
【0136】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、光学的、機械的、または光学的と機械的の両方により、眼球のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の方向転換を円滑にし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、決定可能な間隔に対して眼のPRLへの曝露を少なくとも10%だけ減少させるように眼の視野内からの環境光の曝露の容易な、安全な、効果的な、効率的な、および/またはタイミング良く光学的な、機械的な、もしくは光学機械的な重み付けを円滑にし得る。いくつかの事例において、視野内の環境光は、最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで網膜に曝露されるものとしてよく、決定可能な間隔は、ミリ秒、秒、分、時、日、週、または年を含むものとしてよく、本明細書において説明されている例示的な方法および装置は、使用者の視覚反応、装置構成、眼疾病/疾患、ならびに/または視覚障害、視覚喪失、および/もしくは眼疾病/疾患の進行に基づき決定可能な間隔を決定し得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光学的コンポーネントおよび/または機械的コンポーネントを含み得る。
【0137】
本明細書において説明されている例示的な方法のうちのいくつかは、装置によって実装され得るか、または装置を利用するものとしてよく、PRLにおいて眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こし、網膜の前方に位置決めされている構造物の光学ゾーンの外側の複数の部分における光学的特性または挙動を変更し得る。本明細書において説明されている例示的な方法のうちのいくつかは、装置によって実装され得るか、または装置を利用するものとしてよく、眼のPRLにおいて眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こし、網膜の前方に位置決めされている構造物の光学ゾーンの外側の複数の部分における機械的特性または挙動を変更し得る。これらの例示的な方法のうちのいくつかは、中心および/または周辺視力の障害および/または喪失を有する眼の視力を改善し、かつ/または回復させ得る。
【0138】
本明細書において説明されている例示的な方法のうちのいくつかは、眼の網膜の前方に位置決めされた装置によって実装され得るか、または装置を利用し得る。いくつかの事例では、「網膜の前方」に装置を位置決めすることは、眼球外に装置を位置決めすること、眼球の表面上に装置を位置決めすること、角膜内に装置を位置決めすること、および/または眼球内に装置を位置決めすることを含み得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、眼鏡および他の眼装着可能デバイス、コンタクトレンズ、角膜インレー、眼内レンズ(IOL)、および他の眼内デバイスを含み得る。
【0139】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光のプログラム可能な一時的、反転可能、および/または繰り返し可能な方向転換を生じさせるように構成され得る。いくつかの事例では、例示的な装置は、電気エネルギー源(たとえば、電源)に結合された制御ユニット(たとえば、コントローラ)を備えるものとしてよく、制御ユニットは、ソフトウェア命令(たとえば、有形の非一時的メモリ内に制御ユニットもしくは装置によってローカルで記憶されるか、または受信信号内に含まれる)の実行時に、例示的な装置に環境光のプログラム可能な一時的、反転可能、および/または繰り返し可能な方向転換を生じさせる1つまたは複数のプロセッサを備え得る。
【0140】
さらに、本明細書において説明されている例示的な方法または装置のうちのいくつかは、光をPRLから遠ざかる方向で複数の網膜配置に機械的に、電気機械的に、光学的に、または光学機械的に誘導することによって眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の一時的、反転可能、および/または繰り返し可能な方向転換を引き起こし得る。それに加えて、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、環境光を眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜領域に方向転換するように構成されるものとしてよく、眼の網膜の前方に配設され、コントローラに結合された1つまたは複数の透明コンポーネントを備え得る。本明細書において説明されているように、コントローラは、電源に結合されるものとしてよく、コントローラは、(たとえば、1つまたは複数のプロセッサなどによって実行されるソフトウェア命令に基づき)制御信号を生成して透明コンポーネントにルーティングするように構成され、これは透明コンポーネントが環境光を眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置に方向転換させることを引き起こし得る。
【0141】
いくつかの例において、これらの例示的な装置のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の透明コンポーネントと、1つまたは複数の透明コンポーネントの表面上に、あるいはその中に配設された1つまたは複数の光学機械的コンポーネントと、導電層を介して1つまたは複数の光学機械的コンポーネントに電気的に結合されたコントローラとを含み得る。本明細書において説明されているように、コントローラは、(たとえば、1つまたは複数のプロセッサなどによって実行されるソフトウェア命令に基づき)制御信号を生成して1つまたは複数の光学機械的コンポーネントにルーティングするように構成され、制御信号を受信した後、1つまたは複数の光学機械的コンポーネントは、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の方向転換を引き起こし得る。
【0142】
眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置に環境光を方向転換させるように構成され得る、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、眼球の網膜の前方に配設された1つまたは複数の透明コンポーネントと、導電性コンポーネントを介して1つまたは複数の透明コンポーネントに結合されたコントローラとを含み得る。コントローラは、本明細書において説明されている例示的な動作のいずれかを実行して、導電性コンポーネントを介して制御信号を生成し、透明コンポーネントにルーティングするものとしてよい。たとえば、例示的な装置は、1つまたは複数の透明コンポーネントの表面上に、あるいはその中に配設された1つまたは複数のコンポーネントを含み得、制御信号を受信した後、1つまたは複数のコンポーネントは、PRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の方向転換を引き起こす。1つまたは複数のコンポーネントは、いくつかの例において、屈折コンポーネント、回折コンポーネント、または回折コンポーネントと屈折コンポーネントとの組合せを含み、制御信号は、屈折コンポーネント、回折コンポーネント、または回折コンポーネントと屈折コンポーネントとの組合せの修正を引き起こして、環境光を眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置に方向転換させることを引き起こし得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、また、眼の屈折誤差を補正するための少なくとも1つのレンズを備え得る。
【0143】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、少なくとも1つの制御ユニット(たとえば、コントローラ)を含み、眼の視野内からの環境光の曝露のプログラム可能な重み付けを生成して、決定可能な間隔に対して眼のPRLへの曝露を少なくとも10%だけ低減するように(たとえば、コントローラによって生成される制御信号に基づき)構成され得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、少なくとも1つの制御ユニット(たとえば、コントローラ)を含み、眼の視野内からの環境光の曝露のプログラム可能な重み付けを生成して、0から50キロヘルツの決定可能なレートで決定可能な間隔に対して、PRLへの曝露を少なくとも10%だけ低減するか、またはPRLではない網膜配置への曝露をPRLのところに比べて10%より大きく増やすように(たとえば、コントローラによって生成される制御信号に基づき)構成され得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、光をPRLから遠ざかる方向で複数の網膜配置に機械的に、電気機械的に、光学的に、および/または光学機械的に導くことによって眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の一時的、反転可能、および/または繰り返し可能な方向転換を引き起こし得る。さらに、例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを生成する機械的、電気機械的、光学的、および/または光学機械的動作を含むか、または実行し、それにより、0から50キロヘルツの決定可能なレートで決定可能な間隔に対して、PRLへの曝露を少なくとも10%だけ低減するか、またはPRLではない複数の網膜配置への曝露をPRLのところに比べて10%より大きく増やし得る。
【0144】
図19は、視力を改善するか、または回復させるための例示的な装置1900を例示している。いくつかの例では、装置1900は、眼1901(中心窩1901Bおよび視神経1901Cも含む)の網膜1901Aの前方に位置決めされた1つまたは複数の透明コンポーネント1902と、透明コンポーネント1902のうちの1つまたは複数のコンポーネントの表面上に、あるいはその中に配設された1つまたは複数の変形可能コンポーネント1904と、導電性コンポーネント1908を介して変形可能コンポーネント1904に結合されたコントローラ1906とを備え得る。さらに、コントローラ1906は、電源1910などの電気エネルギー源に結合されてもよく、(たとえば、電源1910から受ける電気エネルギーに基づき)制御信号1912を生成し、変形可能コンポーネント1904にルーティングするように構成され得る。
【0145】
図19に例示されているように、コントローラ1906は、入力データ1905の1つまたは複数の要素を受信し、入力データ1905の受信された要素を処理し、制御信号1912を生成し、変形可能コンポーネント1904にルーティングするように構成され得る。いくつかの例では、入力データ1905の要素は、限定はしないが、眼1901のPRL1918の配置、PRL1918における環境光の決定可能な距離に対して焦点ぼかしを引き起こすように環境光を導くコンポーネント変形のパターンを特徴付ける情報、および決定可能なレート(たとえば、0から50kHzの範囲)を含み得る。いくつかの例では、コントローラ1906は、ソフトウェア命令(たとえば、有形の非一時的メモリ内にコントローラによってローカルで記憶されるか、または受信信号内に含まれる)の実行時に、コントローラに制御信号1912を生成させ、変形可能コンポーネント1904に伝送させる、1つまたは複数のプロセッサを含み得る。
【0146】
いくつかの例では、制御信号1912を受信すると、変形可能コンポーネント1904のうちの1つまたは複数は、網膜1901Aに環境光1914を導く少なくとも1つのパターンを、最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで再編成し得る。環境光を導く少なくとも1つのパターンは、眼1901の視覚系による環境光1914の処理のリブートを引き起こし得る。少なくとも1つのパターンは、たとえば、眼1901のPRL(たとえば、
図19のPRL1918)における焦点ぼかしおよび/または配置1920などの、PRLではない多数の非連続の網膜配置における焦点合わせを引き起こし得る。さらに、いくつかの例では、少なくとも1つのパターンは開口を生成しない。
【0147】
いくつかの例では、環境光の焦点合わせまたは焦点ぼかしを引き起こすパターンを生成するための信号は、視覚系による環境光1914の処理のリブートを引き起こす、かつ/または維持する、かつ/または繰り返すために数ミリ秒、数秒、数分、数時間、数日、数ヶ月、または数年にわたって(たとえば、本明細書において説明されている例示的なプロセスのいずれかを使用するコントローラ1906によって)継続され得る。さらに、
図19には例示されていないけれども、装置1900などの本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、限定はしないが、少なくとも1つの屈折誤差の補正のための少なくとも1つのレンズなどの、少なくとも1つのレンズを含み得る。
【0148】
いくつかの事例において、変形可能コンポーネント1904は、光学活性コンポーネント、光学機械的コンポーネント、電気機械的コンポーネント、または投影コンポーネントのうちの少なくとも1つを含み得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、また、等方的特性および等方的挙動のうちの少なくとも1つを有する少なくとも1つのコンポーネントを含み得る。たとえば、変形可能コンポーネント1904のうちの少なくとも1つは、等方的特性および等方的挙動のうちの少なくとも1つを有する変形可能コンポーネントを含み得る。いくつかの事例では、制御信号1912に応答して、変形可能コンポーネント1904は、網膜1901Aに環境光1914を導く少なくとも1つのパターンを、最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで再編成し得る。たとえば、変形可能コンポーネント1904は、網膜1901Aに環境光1914を導くパターンを、少なくとも等方性の修正によって再編成し得る。
【0149】
さらに、たとえば、変形可能コンポーネント1904は、光学的等方性液晶などの、等方的特性または挙動を有する1つまたは複数の変形可能コンポーネントを含み得る。いくつかの事例において、光学的等方性液晶は、制御信号1912に応答して、異方性液晶よりも速いスイッチング時間および広い視野角を提供し得る。たとえば、水平電界を発生させる面内スイッチング電極により、液晶は、電圧オフで光学的に等方的に見え、その結果暗状態になり、電圧オンで屈折率プロファイルは異方的になり、その結果透過が生じ得る。
【0150】
図19には例示されていない、いくつかの例において、変形可能コンポーネント1904は、固定焦点単焦点レンズと組み合わされ得る。たとえば、変形可能コンポーネント1904は、硝子またはプラスチックまたは曲面を有する任意の決定可能な材料のレンズと組み合わされ得る。さらに、変形可能コンポーネント1904は、おおよそ等方的な挙動を生じるパターンで配置構成され得る。たとえば、変形可能コンポーネント1904は、第1の表面上に逆レンズ形状を有する光学的等方性ポリマー層と、いくつかの実施形態において光学的等方性ポリマー層の表面が液晶ポリマーで充填されるレンズ部分とを含み得る。変形可能コンポーネント1904は、また、限定はしないが、液晶およびポリマーゲルを含む電気光学的コンポーネントを含み得る。
【0151】
それに加えて、
図19には例示されていないが、装置1900は、限定はしないが、周期的なサブ波長誘電体または金属構造物から構成されるレンズおよび液晶レンズなどの、極薄平面レンズを備え得る。いくつかの事例において、装置1900は、また、PRL軸の外側にシフトする空間的に分離された焦点を有するパンチャラトナム・ベリー位相レンズを含み得る。さらに、いくつかの事例において、装置1900の変形可能コンポーネント1904は、限定はしないが、回折率レンズ、屈折率レンズ、および屈折率分布型レンズなどの、電気的に調整可能な液晶レンズを含み得る。たとえば、装置1900は、ピクセル配置構成および/または屈折率および/または光軸配向を変形し得る。さらに、制御信号1912に応答して、変形可能コンポーネント1904のうちの1つまたは複数は、PRL1918ではない多数の非連続の網膜配置からなる空間点における生成済み集束光路の長さを制御し得る。さらに、例示的な装置1900は、光配向コンポーネントおよび/または光パターニングコンポーネントも含み得る。
【0152】
いくつかの事例において、コントローラ1906によって生成され、変形可能コンポーネント1904に供給される制御信号1912に基づき、装置1900は、限定はしないが、光偏光回転、電圧制御可能回折、またはLC屈折率の高速スイッチングを含む例示的なプロセスを実行し得る。さらに、いくつかの事例において、装置1900は、たとえば、電気光学的コンポーネントの活性領域内の任意の所与の配置における局所的屈折率として、電気光学的技術を組み込むか、または利用するものとしてよく、この局所的屈折率はその配置において電気光学的コンポーネント上に印加され、電極に結合された回路により再編成パターンに対して制御される電圧波形によって決定される。変形可能コンポーネントの屈折率、電圧、および電気活性材料に関係する設計特徴は、装置の配置、製造業者のニーズおよび使用者のニーズに基づき決定可能である。
【0153】
いくつかの例では、
図19には例示されていないけれども、装置1900は、(たとえば、コントローラ1906によって生成された制御信号に基づき)マイクロミラーなどの光学機械的変形可能コンポーネント1904のうちの対応するものの位置を独立して制御するように構成されている作動コンポーネントを備え得る。マイクロミラーの各々の独立した制御は、たとえば、レンズの焦点距離および/または光軸を修正して、PRL1918における焦点ぼかしと配置1920などの、PRLではない多数の非連続の網膜配置における焦点合わせとを引き起こし得る。いくつかの事例では、焦点距離の1つまたは複数の修正は、マイクロミラーのうちの対応するものの平行移動および/または回転によって制御され得る。さらに、焦点距離は、PRL1918において、および/または配置1920などの、PRLではない非連続の網膜配置において光学誤差または画質の決定を必要とすることなく装置1900によって修正され得る。
【0154】
本明細書において説明されている例示的な方法のうちのいくつかは、装置または眼の少なくとも1つの中における1つまたは複数の屈折または回折コンポーネントの屈折率、曲率半径、および/または回折を一時的に、反転可能に、または繰り返し変形して、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の安全で効果的な方向転換を引き起こし得る。いくつかの事例において、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、装置または眼の中の屈折率および/または曲率半径および/または回折の一時的な、反転可能な、および/または繰り返し可能な変化を生じさせるように(たとえば、対応するコントローラによって生成される制御信号を介して)構成される1つまたは複数の変形可能コンポーネントを含み得る。さらに、本明細書において説明されているいくつかの例示的な装置は、1つまたは複数のレンズおよび/または調整可能なレンズを含み得る。
【0155】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、眼の網膜の前方に位置決めされた1つまたは複数の変形可能コンポーネントと、導電性コンポーネントを介して1つまたは複数の変形可能コンポーネントに結合されたコントローラとを備え得る。いくつかの事例において、コントローラは、(たとえば、実行されたソフトウェア命令などに基づき)制御信号を生成し、1つまたは複数の変形可能コンポーネントにルーティングするように構成され得る。1つまたは複数の変形可能コンポーネントによる制御信号の受信に基づき、装置は、眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こすように構成されてよく、これは眼の視野内から眼のPRLへの環境光の曝露を、決定可能な間隔に対して少なくとも10%低減させ得る。いくつかの例では、視野内の環境光は、最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで網膜に曝露されるものとしてよい。
【0156】
さらに、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼科デバイスおよび眼の少なくとも1つの中の1つまたは複数の屈折または回折コンポーネントの屈折率、曲率半径、および/または回折を一時的に、反転可能に、繰り返し、または連続的に変形して、眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こし、PRLへの曝露を0から50キロヘルツの決定可能なレートで決定可能な間隔に対して少なくとも10%だけ低減させ得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、対応するコントローラによって生成された制御信号を受信したことに応答して、PRLへの曝露を0から50キロヘルツの決定可能なレートで決定可能な時間間隔に対して少なくとも10%低減するように眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こす、装置または眼球内の屈折率、曲率半径、および/または回折の一時的な、反転可能な、および/または繰り返し可能な変化を生じさせ得る、1つまたは複数の変形可能コンポーネントを含み得る。いくつかの事例において、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、変形可能コンポーネントを含み得る。たとえば、これらの変形可能コンポーネントは、限定はしないが、液晶およびポリマーゲルなどの電気光学的コンポーネント、ならびに/または光学機械的コンポーネントを含み得るが、これに限定されない。追加的な、または代替的な例において、変形可能コンポーネントは、限定はしないが、光配向コンポーネントおよび/または光パターニングコンポーネントを含み得る。変形可能コンポーネントを利用する、本明細書において説明されている例示的な方法のうちのいくつかは、限定はしないが、光偏光回転プロセス、電圧制御可能回折プロセス、および/またはLC屈折率の高速スイッチングのためのプロセスを含み得る。
【0157】
いくつかの事例において、電源および回路に結合されているコントローラは、励起電極に印加される電圧を制御してレンズの光軸をシフトするように構成され得る(たとえば、本明細書において説明されているように、1つまたは複数のプロセスによるソフトウェア命令の実行などに基づき)。本明細書で説明されているいくつかの例示的な方法において、コントローラは、限定はしないが、眼のPRL配置および/または軸を含む入力データを受信し得る。コントローラは、入力データを処理し、処理された入力データに基づき、制御電圧を生成して励起電極に印加し、光軸の初期シフトの寸法および/または配置を制御するために本明細書において説明されている例示的なプロセスのいずれかを実行し得る。光軸の初期シフトの寸法および/または配置を制御することによって、本明細書において説明されている例示的な方法のあるものは、PRLでの焦点ぼかし、PRLでない非連続の配置での焦点合わせ、および/または0から50キロヘルツの決定可能なレートで決定可能な時間間隔に対してPRLへの曝露を少なくとも10%減少させるための眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けによって、視覚系のリブートを引き起こし得る。マイクロペリメトリーのような、診断方法はPRLの配置を決定し得るが、臨床的に利用可能なマイクロペリメトリー検査は、罹患または損傷網膜における網膜感受性の低下または亢進のすべての領域を正確に検出することはまだできない。さらに、臨床的に利用可能な診断検査では、最もよく機能する神経節細胞に接続された最もよく機能する光受容体がどの網膜の配置にあるかを正確に予測することはまだできず、機能している網膜細胞の複数の領域の積分および総和の潜在的可能性もまだ測定しない。初期リブート後に視力改善の量が満足のいくものでない場合、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのあるものは、本明細書において説明されている例示的な操作のいずれかを使用してリブートを繰り返すためにPRLにおける初期光焦点ぼかし、非PRLの場所における初期光焦点合わせ、および/またはPRLにおける曝露低減の初期重み付けを修正し得る。
【0158】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、装置および眼のうちの少なくとも1つの中における1つまたは複数の屈折または回折コンポーネントの屈折率、曲率半径、および/または回折を一時的に、反転可能に、または繰り返し変形して、環境光の安全で効果的な方向転換を引き起こし得る。いくつかの事例において、本明細書において説明されている例示的な方法または装置のうちの1つまたは複数は、装置または眼球内の1つまたは複数の屈折または回折要素の屈折率、曲率半径、または回折の修正を引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な方法または装置のうちのいくつかは、装置または眼球内の1つまたは複数の屈折または回折要素の屈折率、曲率半径、または回折の修正を引き起こし、修正は時間経過とともに変わり得る。本明細書に記載される例示的な方法または装置のうちのいくつかは、装置、医療提供者、または装置の使用者によって、リブート前、リブート中、またはリブート後のいつでも制御され得る、装置または眼球内の1つまたは複数の屈折要素または回折要素の屈折率、曲率半径、または回折の修正を引き起こし得る。
【0159】
いくつかの事例において、本明細書で説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、装置の使用または挿入前にPRL配置および/または軸を決定し得る。他の事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、PRL配置を決定し、かつ/または軸は装置の使用中もしくは挿入後に決定され得る。さらに、いくつかの事例において、PRL配置および/または軸は、限定はしないが、固視またはマイクロペリメトリーを含む、既存の臨床的手技を使用して、医療提供者または使用者によって決定され得る。
【0160】
本明細書において説明されているように、本明細書で説明される例示的な装置のうちのいくつかは、対応する導電性コンポーネントを介してコントローラに結合された1つまたは複数の変形可能コンポーネントを備え得る。1つまたは複数の変形可能コンポーネントには、たとえば、液晶(LC)、超ねじれ液晶、強誘電性液晶、表面安定化強誘電性液晶(SSFLF)、双安定液晶、ポリマー発光ダイオード(PLED)、双安定液晶、透明色調整可能有機発光ダイオード(OLED)、または任意の他の好適な材料を含む。1つまたは複数の変形可能コンポーネントは、平坦なもしくは湾曲した、硝子、プラスチック、ポリマー、または限定はしないが、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、および/もしくは他の熱可塑性材料などの、任意の他の適切な材料のから構成されている、1つまたは複数の透明コンポーネントの表面上に、あるいはその中に配設され得る。
【0161】
本明細書において説明されているように、例示的な方法のうちの1つまたは複数は、回折を組み込んでもよく、限定はしないが、レンズ、回折格子、電気活性材料、変形可能材料、変形可能ポリマー、アクチュエータ、および任意の決定可能な回折コンポーネントのうちの少なくとも1つを含むコンポーネントを有する装置を利用し得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、限定はしないが、偏光子、デジタルマイクロミラーデバイス、マイクロミラーアレイ、変形可能ミラー、および/またはレンズなどの、光学機械的コンポーネントも含み得る。
【0162】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、少なくとも1つの制御ユニット(たとえば、コントローラ)を含み、眼の視野内からの環境光の曝露のプログラム可能な重み付けを生成して、0から50キロヘルツの決定可能なレートで決定可能な間隔に対して、PRLへの曝露を少なくとも10%だけ低減するか、またはPRLではない網膜配置への曝露をPRLのところに比べて10%より大きく増やすように(たとえば、コントローラによって生成される制御信号に基づき)構成され得る。いくつかの例において、これらの例示的な装置のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の透明コンポーネントと、1つまたは複数の透明コンポーネントの表面上に、あるいはその中に配設された1つまたは複数の変形可能コンポーネントと、導電層を介して1つまたは複数の変形可能コンポーネントに電気的に結合されたコントローラとを含み得る。本明細書において説明されているように、コントローラは、(たとえば、1つまたは複数のプロセッサなどによって実行されたソフトウェア命令に基づき)制御信号を生成し、1つまたは複数の変形可能コンポーネントにルーティングするように構成されるものとしてよく、制御信号を受信した後に、1つまたは複数の変形可能コンポーネントは、眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こし得る。いくつかの事例では、
図20の装置2000などの、視力を改善しかつ/または回復させるための例示的な装置は、眼2001(中心窩2001Bおよび視神経2001Cも含む)の網膜2001Aの前方に位置決めされた1つまたは複数の透明コンポーネント2002と、透明コンポーネント2002の表面上に、またはその中に配設された1つまたは複数の変形可能コンポーネント2004と、導電性コンポーネント2008を介して1つまたは複数の変形可能コンポーネント2004に結合されたコントローラ2006とを備え得る。さらに、コントローラ2006は、電源2010などの電気エネルギー源に結合されてもよく、(たとえば、電源2010から受ける電気エネルギーに基づき)制御信号2012を生成し、変形可能コンポーネント2004にルーティングするように構成され得る。
【0163】
コントローラ2006は、ソフトウェア命令(たとえば、有形の非一時的メモリ内にコントローラによってローカルで記憶されるか、または受信信号内に含まれる)の実行時に、コントローラに制御信号2012を生成させ、変形可能コンポーネント2004に伝送させる、1つまたは複数のプロセッサを含み得る。
図20に例示されているように、コントローラ2006は、入力データ2005の1つまたは複数の要素を受信し、入力データ2005の受信された要素を処理し、制御信号2012を生成し、変形可能コンポーネント2004にルーティングするように構成され得る。いくつかの例では、入力データ2005の要素は、限定はしないが、眼2001のPRL2018の配置、PRL2018における環境光の曝露を低減するコンポーネント変形のパターンを特徴付ける情報、重み付け間隔、および決定可能なレート(たとえば、0から50kHzの範囲)を含み得る。
【0164】
いくつかの例では、制御信号2012を受信すると、1つまたは複数の変形可能コンポーネント2004は、決定可能な間隔に対して最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで眼2001の視野内から網膜2001Aへの非PRL配置2020における環境光の曝露の少なくとも1つのパターンを再編成し得る。さらに、いくつかの例では、少なくとも1つのパターンは開口を含まない。さらに、いくつかの例では、ミリ秒、秒、分、時、日、週、月、および/または年の単位の決定可能な間隔は、連続的であるか、または間欠的であってよい。
【0165】
さらに、たとえば、パターン再編成は、0から50キロヘルツの範囲内の、決定可能なレートで決定可能な間隔に対してPRL2018への曝露を少なくとも10%だけ低減するように環境光の曝露の重み付けを引き起こし得る。PRL2018への曝露を低減するための環境光の曝露の重み付けは、眼2001の視覚系による環境光2014の処理のリブートを引き起こし得る。
図20には例示されていないけれども、装置2002は、また、少なくとも1つのレンズを備え得る。さらに、いくつかの例では、例示的な装置2000は、本明細書において説明されている動作のいずれかを実行して、装置2000の光学機械的コンポーネントの少なくとも1つの変形に基づき網膜2001Aへの環境光2014の曝露の少なくとも1つのパターンを再編成し得る。光学機械的コンポーネントは、限定はしないが、偏光子、デジタルマイクロミラーデバイス、マイクロミラーアレイ、変形可能ミラー、および/またはレンズを含み得る。
【0166】
いくつかの事例において、変形可能コンポーネント2004は、1つまたは複数のマイクロミラーまたはレンズを含み得る。たとえば、変形可能コンポーネント2004内の1つまたは複数のマイクロミラーは、決定可能な形状の決定可能なアレイに配置構成され、変形可能コンポーネント2004内の1つまたは複数のレンズは、決定可能な形状、サイズ、および位置のものとしてよい。さらに、
図20には例示されていないけれども、装置2000は、変形可能コンポーネント2004のうちの1つまたは複数(たとえば、マイクロミラーまたはレンズのうちの1つまたは複数)を、マイクロ電子回路および/または対応するマイクロミラー技術と一体化し得る。たとえば、
図20には例示されていないけれども、装置2000は、(たとえば、コントローラ2006によって生成された制御信号に基づき)マイクロミラーのうちの対応するものの位置を独立して制御するように構成されている作動コンポーネントを備え得る。
【0167】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼(たとえば、
図19の眼1901または
図20の眼2001)の視覚系のリブートを引き起こすものとしてよく、PRL(たとえば、
図19のPRL1918または
図20のPRL2018)ではない多数の、非連続の網膜配置での焦点合わせを引き起こし得る。いくつかの事例において、焦点合わせは、異なる網膜配置における焦点距離および/または光軸の範囲を修正することによってランダムにまたは非ランダムに達成され得る。追加の事例において、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、PRLの光軸を決定し、レンズの光軸を修正することによって、眼のPRL(たとえば、
図19の眼1901のPRL1918、
図20の眼2001のPRL2018など)における焦点ぼかしを引き起こし得る。
【0168】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、1つまたは複数の投影方法の実行を通して眼における視力を改善するか、または回復させるために視覚系のリブートを引き起こし得る。たとえば、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、コントローラに機能的に結合されているプロジェクタなどの、1つまたは複数の投影コンポーネントを含み得る。コントローラは、ソフトウェア命令(たとえば、有形の非一時的メモリ内にコントローラによってローカルで記憶されるか、または受信信号内に含まれる)の実行後に、コントローラに制御信号を生成させ、プロジェクタに伝送させる、1つまたは複数のプロセッサを備え得る。受信された制御信号に基づき、プロジェクタは、環境光を、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置に選択的に方向転換させ得る。受信された制御信号に基づき、プロジェクタは、PRLにおける曝露を少なくとも10%だけ減少させるように環境光の曝露に重み付けし得る。いくつかの事例において、例示的な装置は、投影コンポーネントおよび導波路を含むものとしてよく、例示的な装置は、投影コンポーネントおよび導波路を利用して、環境光を、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置に方向転換するように、またはPRLにおいて曝露を少なくとも10%だけ低減するように環境光の曝露に重み付けするように、構成され得る。
【0169】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、適切な数の網膜象限において眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない適切な数の網膜配置への環境光の方向転換を引き起こすことによって視力を改善し得る。眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の方向転換を引き起こす、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼球内で使用するか、または挿入する前にPRLの配置および/または軸の決定を必要とし得る。PRL配置および/または軸は、限定はしないが、固視またはマイクロペリメトリーを含む方法によって決定され得る。視力の低い眼では、環境光をPRLから遠ざかる方向で複数の配置へ方向転換する、本明細書において説明されている例示的なプロセスのうちのあるものは、視覚系をリブートし、他の非PRL網膜配置による視覚的注意を可能にし得る。
【0170】
マイクロペリメトリーのような、診断方法はPRLの配置を決定し得るが、マイクロペリメトリーを含む、臨床的に利用可能な検査は、罹患または損傷網膜における網膜感受性の低下または亢進のすべての領域を正確に検出することはできない。さらに、臨床的に利用可能な診断検査では、積分、総和、および知覚に対する視覚情報を最も効果的に処理することができる光受容体および神経節細胞をどの網膜配置が含むかを予測することはまだできない。したがって、現在の臨床的手技は、視力を改善するために特定の網膜配置を正確に標的とすることはできない。眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜位置への環境光の方向転換を引き起こし、視力を改善するために複数の方向転換を可能にするように反転可能でありおよび/または安全に繰り返し可能である、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のあるものは、反転可能性および/または繰り返し可能性を欠く現在の臨床的手技に加えて、またはその代替として実装され得る。
【0171】
いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、眼の網膜の前方に位置決めされる1つまたは複数の導光コンポーネントを含み得る。さらに、導光コンポーネントに加えて、これらの例示的な装置のうちの1つまたは複数は、網膜の前方に位置決めされた光源も含み得る。光源は、角膜硝子化を生じさせない。たとえば、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源(たとえば、レーザー光源および非レーザー光源のうちの少なくとも一方)から網膜の前方にある少なくとも1つの構造物の複数の非連続の部分に光を導き、PRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の方向転換、もしくは指定された間隔の間のPRLにおける環境光の曝露の低減、もしくはPRLにおける環境光の焦点ぼかし、および複数の非連続の非PRL網膜配置における光の焦点合わせ、またはこれらの任意の組合せを引き起こすことによって視覚系による環境光の処理のリブートを引き起こす1つまたは複数のコンポーネントを備え得る。
【0172】
レーザー光源または非レーザー光源からの導光先の構造は、限定はしないが、網膜の前方の眼球内の細胞とともにまたは細胞なしで無細胞構造および/またはコラーゲン構造を含む。本明細書において定義されている「眼球内(または眼の中)」という語句は、限定はしないが、眼球の角膜内(たとえば、
図21に例示されるように)、眼球の前房内、眼球の水晶体内、および眼球の後房内を含むものとしてよい。さらに、本明細書において定義されているような、眼球内の無細胞構造物は、眼球本来の構造物および眼球内または眼球上に留置された眼球本来のものでない構造物を含み得る。眼球本来のものではないが眼球内にある無細胞構造物の例は、限定はしないが、眼内レンズ、ドナー無細胞角膜レンチキュラーレンズ、および生合成コラーゲンインレーを含む。さらに、眼球本来の無細胞構造物の例は、限定はしないが、細胞を有しない角膜層、水晶体の無細胞部分を含む。
【0173】
いくつかの事例において、光源から光を、眼球内の細胞構造物ではなく、無細胞またはおおよそ無細胞の構造物に導く、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちの1つまたは複数は、細胞構造物を標的とすることによって引き起こされる潜在的創傷治癒効果、潜在的有害効果、または潜在的低有効性を減少させることによって安全性および有効性を改善し得る。コラーゲン構造物は、コラーゲンを含む構造物であり、限定はしないが、生合成コラーゲン、角膜間質、強膜の一部、および水晶体の一部を含む、限定はしないが、細胞を有する構造物などの、眼球本来の構造物および眼球内もしくは眼球上に挿入された構造物を含む。
【0174】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、構造物の生体力学的および光学的挙動を変化させ得るコラーゲン原線維の絡み合いおよびコラーゲン原線維の分散に基づきレーザーおよび非レーザー光治療のための構造物を標的とする。いくつかの事例において、コラーゲン原線維の絡み合いおよびコラーゲン原線維の分散が増やされた構造物または構造物の一部を標的にすることで、眼球のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の配置への環境光の方向転換を引き起こす手技の有効性および効率を高め得る。たとえば、角膜では、個々のコラーゲン原線維は上皮と間質との間の前無細胞層内で最も密に絡み合っている。高密度の相互接続は、角膜部分をより硬くし、より機械的活性の高いものにする。原子間力顕微鏡法では、前無細胞層が角膜内で最大の弾性率を有していることを実証しており、これは、たとえば、前部間質(深さ20μm以下)の弾性率の約3倍大きい。それに加えて、第二高調波イメージング共焦点顕微鏡を使用して実証され得るように、前部間質原線維の多くは前部無細胞層内に挿入される。前部無細胞層の下では、前部間質内の原線維も絡み合っているが、前部無細胞層よりも密度は低い。角膜前部から後部にかけて、原線維の枝分かれの密度および原線維の傾斜は、深さとともに指数関数的に減少し、平均コラーゲン傾斜は、大部分すべての深さで組織表面に対して平行である。しかしながら、中心角膜では、傾斜角の広がりは最前部間質で最も大きく(この領域では層状組織の絡み合いの増大を反映している)、組織の深さとともに減少する。間質の最前部(前部無細胞層から20μm未満)は、間質内で弾性率が最も高いことを特徴とし得る。たとえば、剛性は、間質の後3分の1よりも間質の前3分の1の方が3倍大きい。
【0175】
第二高調波発生イメージングに加えて、原線維分散はX線回折および散乱調査によって測定され得る。原線維は、下にある間質よりも前部無細胞層に多く分散している。コラーゲン原線維は、角膜の後3分の2で比例して分散が少なく、より整列されているが、中心および中心傍角膜の前3分の1(および特に、前部無細胞層に最も近い最大分散を有する前6分の1)では、コラーゲン原線維は多方向に配置構成されている。それに加えて、原線維分散は、角膜表面上で空間変化を示し、原線維は鼻-側頭部および上-下子午線に沿って強く整列され、角膜表面の4つの象限領域内の遷移ゾーン内ではより分散しており、原線維分散は各象限内の中心セクションで最大である。遷移ゾーン内のコラーゲン線維の分散量は、個々の角膜によって異なり得る。さらに、X線回折によって、異なる健康ヒト角膜間で、鼻-側頭部および上-下子午線の45°セクタ内に配向された原線維の割合にばらつきがあることも示されている。
【0176】
原線維分散の空間分布も、健常角膜と罹患角膜とで異なり得る。原線維が最も完全に分散されている領域は、おおよそ等方的(すなわち、すべての方向に配置構成されている)であり、原線維がほとんど完全に分散されているおおよそ等方的な部分は、おおよそ等方的な生体力学的および/または光学的特性または挙動(すなわち、すべての方向においておおよそ等価な等方的生体力学的および/または光学的特性または挙動)を示す。弾性率または他の特性などの角膜特性は、角膜の1つの半径方向子午線に沿って検査した後、値が異なる子午線に沿って得られた値と異なるときに異方的である。たとえば、ブリルアン顕微鏡は、生体内と生体外の両方で角膜異方性を測定し、en-faceブリルアン角膜マッピングによる臨床測定は、最大等方性の領域を決定するために使用され得る。
【0177】
いくつかの事例において、原線維分散の程度が大きいので、鼻-側頭部および上-下セクションに比べて、角膜の各象限内の中心セクション内に、より大きい量の表面変形、角膜機械的挙動が生じ得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、原線維分散を有する角膜部分を修正し、および/または角膜部分内の原線維分散を修正する。たとえば、角膜の部分が柔軟であればあるほど、容易に変形する。絡み合ったコラーゲン線維の領域の一部分を修正することも、前部間質の剛性を変える、角膜曲率を変える、光屈折を変える、眼の視力を変える、またはそれらの任意の組合せを行い得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、絡み合った原線維/線維を有する角膜部分を修正し、かつ/または角膜部分内の原線維/線維の絡み合いを修正する。角膜層または部分の柔軟性の測定は、たとえば、角膜圧入、シャインプルーフ撮像による流体充填球殻モデルに基づくヤング率の推定、および超音波表面波エラストグラフィによって行うことができる。
【0178】
角膜生体力学的応答を測定するための臨床技術は15年ほど前に利用できるようになったけれども、これらの臨床技術は最近まで局所的な生化学的挙動を測定することができなかった。角膜表面の生体外分析は数十年前から存在しているが、角膜生体力学を生体内で研究する方法が開発されたのはごく最近のことである。さらに、角膜生体力学的応答の臨床的測定は、緑内障、円錐角膜、および他の角膜拡張疾患の診断に使用されてきたけれども、局所的生体力学的基準は、拡張を有する異常な角膜とは無関係の眼科手技を計画する際には今日まで使用されていない。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、
図22の角膜異方性マップに例示されているように、角膜柔軟性からの入力、および/または局所的角膜柔軟性マッピングからの入力、および/または角膜異方性/等方性マッピングからの入力を受信し、処理し、利用し得る。たとえば、
図22において、0は等方的な角膜部分に対応し、値>2は高度に異方的な角膜部分に対応する。
【0179】
いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼球内の構造物のおおよそ等方的な部分の変形を通じて、おおよそ等方的な構造物ならびに/またはすべての方向に少なくとも1つの特性および/もしくは挙動を示す構造物内への眼球上のまたは眼球内の構造物の少なくとも1つの部分の変形を通じて、眼球上のまたは眼球内の構造物の少なくとも1つの部分の等方性の変形を通じて、あるいは少なくとも1つの部分の等方性または異方性に基づき眼球上のまたは眼球内の構造物の少なくとも1つの部分の変形を通じて、眼球本来のまたは眼球本来のものではない、眼球上にまたは眼球内に位置決めされた構造物の特性または挙動を変形することによって眼の視覚系を安全に効果的にリブートし得る。
【0180】
さらに、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼球内の構造物の機械的特性の変形を通じて眼の視覚系を安全に効果的にリブートし得る。たとえば、機械的特性は、眼球上または眼球内の決定可能な配置においてわずかな決定可能な量の機械的活性構造物または構造物の一部を除去し、かつ/または機械的に補強することによって効率的に安全に変形され得る。それに加えて、いくつかの事例において、機械的特性は、眼球上または眼球内の決定可能な配置においてわずかな決定可能な量のおおよそ機械的に等方的な構造物または構造物の一部を除去し、かつ/または機械的に補強することによって効率的に安全に変形され得る。
【0181】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼球上または眼球内の構造物の光学的特性の変形を通じて眼の視覚系を安全に効果的にリブートし得る。いくつかの事例では、屈折特性は、わずかな決定可能な量の異方的なおよび/またはおおよそ等方的な構造物または構造の部分を修正することによって効率的に安全に変形され得る。たとえば、パラメータκ(ρ,θ)は、眼の角膜全体にわたるコラーゲン原線維の連続分布を表し、原線維が優先的配向に沿って完全に整列されているゼロの最小値と、原線維が完全に分散され角膜がほぼ等方的に挙動する1/3の最大値とを示す。(i)角膜の原線維は至るところ等方的に配向されているわけではなく、正確な配置では、(ii)原線維の約60%は均一に分散されており、したがって等方的挙動を示し、(iii)原線維の約40%は異なる量の異方性で配向されている(
図22に例示されているように)ので、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、角膜の一部分にレーザー光または非レーザー光を、これらの部分の等方的もしくは異方的挙動または特性に基づき当てることによって、および/または角膜の一部分の等方性を修正することによって視覚系を効果的に、効率的に、および安全にリブートし得る。
【0182】
視覚系をリブートし、かつ/または視力を改善しもしくは回復させるための本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、光源、および光源からの光を眼の角膜の少なくとも複数の非連続の部分に導く1つまたは複数のコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み得る。追加のまたは代替的な事例では、視覚系をリブートし、かつ/または視力を改善しもしくは回復させる、本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、光源からの光を、前部無細胞層の下にある角膜部分の等方性または異方性の程度に基づき選択され得る前部角膜部分の上にある少なくとも1つの前部無細胞層の少なくとも複数の非連続の部分に導く1つまたは複数のコンポーネントも含み得る。たとえば、光源からの光は、角膜のおおよそ等方的な部分へ導かれ得る。光源は、レーザーまたは非レーザー光源のうちの少なくとも一方を含み得る。
【0183】
たとえば、
図23に例示されているように、視力を改善するか、または回復させるための例示的な装置2300は、光源2302、および光源2302からの光2306を眼2308の角膜2308Aの少なくとも複数の非連続の部分に導く導光コンポーネント2304のうちの少なくとも一方を含み、これは一般的に非連続の部分2310Aおよび2310Bとして図示されている。いくつかの事例において、角膜は年齢相応の正常な角膜であってもよい。光源2302は、レーザーまたは非レーザー光源のうちの少なくとも一方を含むものとしてよく、光源2302は、角膜硝子化を生じさせない。さらに、非連続の部分2310Aおよび2310Bを含む、非連続の部分は、中心光学ゾーンの外側に配置されてもよく、角膜2308Aなどの、角膜の少なくとも無細胞層を含んでもよい。いくつかの事例において、および光源2302から角膜2308Aの少なくとも複数の非連続の部分への光2306の方向転換を通じて、装置2300は、中心光学ゾーンの外側の角膜等方性を修正し得る。
【0184】
図23に例示されているように、装置2300は、電源2314などの電気エネルギー源、光源2302、および光源2302と角膜2308Bとの間に配設された導光コンポーネント2304などの1つまたは複数のコンポーネントに電気的に結合されたコントローラ2312も備え得る。電源2314から受けた電気エネルギーに基づき、コントローラ2312は、光源制御信号2316を生成して光源2302にルーティングし、コンポーネント制御信号2318を生成して導光コンポーネント2304にルーティングするように構成され得る。たとえば、コントローラ2312は、ソフトウェア命令(たとえば、有形の非一時的メモリ内にコントローラによってローカルで記憶されるか、または受信信号内に含まれる)の実行後に、コントローラ2312に、光源制御信号2316を生成して光源2302に伝送することを行わせて、コンポーネント制御信号2318を生成して導光コンポーネント2304にルーティングすることを行わせる、1つまたは複数のプロセッサを備え得る。いくつかの事例において、光源制御信号2316を受信した後に光源2302は光2306を生成するように構成され、これは点灯して、導光コンポーネント2304に入射し得る。さらに、コンポーネント制御信号2318に応答して、導光コンポーネント2304は、角膜2308Aの少なくとも複数の非連続の部分に光2306を導くために本明細書において説明されている例示的なプロセスのどれかを実行し得る。
【0185】
いくつかの例では、装置2300の光源2302は、193nmの紫外線(たとえば、レーザー光)を放出するArFエキシマレーザーなどのレーザー光源を含み、コントローラ2312は、入力データ2320に基づきレーザー光を角膜の少なくとも前部無細胞層の複数の非連続の部分に導くように構成されるものとしてよく、これは、他にもあるがとりわけ、眼2308のPRLの配置、角膜2308Aの中心光学ゾーン(OZ)の決定可能な直径、ならびに非連続の角膜部分の決定可能な配置、深さ、および表面積を含み、これはそれらの部分の等方的挙動または特性に基づき得る。たとえば、コントローラ2312は、角膜の間質を覆っている少なくとも前部無細胞層を含み、1mmの直径を有する4つの円形角膜部分の切除を、20ミクロン(上皮が部分にわたって手動で除去される場合)または80ミクロン(経上皮切除の場合)の深さまで制御するように(たとえば、実行されるソフトウェア命令によって)構成され得る。いくつかの事例において、4つの円形角膜部分の各々は、PRL上を中心とする6mmのOZを中心とし(光に対する患者固視によって)、1時30分、4時30分、7時30分および10時30分の位置で最も等方的な角膜部分(
図22に例示され、本明細書で説明されているように)に上に載るものとしてよい。
【0186】
いくつかの例では、本明細書において説明されている例示的なプロセスのうちの1つまたは複数は、レーザー光源と、レーザー光源および1つまたは複数のレーザーコンポーネントに電気的に結合されたコントローラとを備える第1の装置を、レーザー光源と角膜との間に配設された別個の第2の装置と併せて利用し、第1の装置によって送達されるレーザー光を角膜の少なくとも前部無細胞層の複数の非連続の部分に導き得る。中心光学ゾーンは、たとえば、少なくとも直径2mmの角膜の円形領域を含み得る。いくつかの事例では、中心光学ゾーンは少なくとも直径3mmであり、他の事例では、中心光学ゾーンは少なくとも直径4mmである。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、光源および光源から光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、視力の改善または視力の回復を引き起こすために本明細書において説明されている操作のいずれかを実行し得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、光源および光源から光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、角膜等方性を修正するために本明細書において説明されている操作のいずれかを実行し得る。いくつかの事例では、角膜光学ゾーンの外側の角膜等方性に対する修正は、角膜もしくは角膜の一部分の機械的特性または機械的挙動のうちの少なくとも一方の、少なくとも一方向の修正を含み得る。追加の、または代替的な事例では、角膜光学ゾーンの外側の角膜等方性に対する修正は、角膜または角膜の一部分の光学的特性または光学的挙動のうちの少なくとも一方の、少なくとも一方向の修正を含み得る。
【0187】
いくつかの例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、光源(たとえば、
図23の装置2300の光源2302)を備え、光源は、レーザー光源および非レーザー光源のうちの少なくとも1つを含み得る。光源は、たとえば、紫外線または赤外線のうちの少なくとも一方を放射し得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、角膜表面パターニングを引き起こし得る。角膜表面のパターニングは、たとえば、光調整可能なものおよびおおよそ反転可能なのもののうちの少なくとも一方であり得る。それに加えて、いくつかの例では、本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、光源からの光の導光先である複数の非連続の角膜部分の機械的補強も引き起こし得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、等方性/異方性基準に基づき複数の部分の機械的補強を引き起こし得る。さらなる例では、本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、機械的補強剤も放出し得る。
【0188】
本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、PRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしおよび/またはPRLではない多数の非連続の網膜配置における焦点合わせを引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、眼のPRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかし、およびPRLではない複数の非連続の網膜配置における焦点合わせを引き起こすものとしてよく、非連続の網膜配置またはPRLにおける光学誤差を装置によって測定するまたは装置に入力することを必要としない。
【0189】
本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、PRLにおいて視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こすことによって中心および/または周辺視力の障害および/または喪失を有する眼の視力を改善し、かつ/または回復させ得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、中心光学ゾーンの外側の角膜の少なくとも複数の部分を修正することによってPRLにおける視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こし得る。たとえば、角膜の複数の部分は、角膜の機械的活性を有する部分を含み得る。本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、PRLにおける視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こし、網膜の前方に位置決めされた構造物の中心光学ゾーンの外側の複数の部分における光学的特性もしくは挙動および/または機械的特性もしくは挙動を修正し得る。角膜の機械的活性を有する部分は、他の角膜部分と比較して機械的活性の量に基づき選択され得る。
【0190】
本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み眼の視覚系のリブートを引き起こし、眼球上または眼球内に位置決めされた任意の構造物の表面パターニングを引き起こし得る。いくつかの事例において、角膜表面のパターニングは、光調整可能なものおよびおおよそ反転可能なのもののうちの少なくとも一方であり得る。本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、光源からの光の導光先である眼球上にまたは眼球内に位置決めされた任意の構造物の複数の非連続の部分の機械的補強を引き起こし得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、光源からの光の導光先である眼球上にまたは眼球内に位置決めされた任意の構造物の複数の部分の機械的補強を引き起こすものとしてよく、この補強は等方性または異方性基準に基づき得る。本明細書において説明されている例示的な方法および本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源および光源からの光を導くコンポーネントのうちの少なくとも1つを含み、眼球上にまたは眼球内に位置決めされた任意の構造物を補強するための機械的補強剤を放出し得る。
【0191】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつか、またはこれらの装置内の例示的なコンポーネントは、光源からの光を導くものとしてよく、眼の網膜の前方の眼球内、角膜内、または眼球外に位置決めされ、レーザー光源および非レーザー光源のうちの少なくとも1つを含む光源から、網膜の前方の少なくとも1つの構造物の複数の非連続の部分への透過を可能にするように構成され得る。網膜の前方にある少なくとも1つの構造物は、眼球内、角膜内、または眼球外に配置され、限定はしないが、眼の角膜または水晶体内の構造物などの、眼球本来の非細胞構造物、またはコンタクトレンズ、角膜内インレー、眼内レンズ、もしくはドナー角膜無細胞構造物などの、眼球本来のものではない無細胞構造物、または角膜間質、ドナー角膜間質、もしくは生合成コラーゲンなどの、眼球本来のまたは眼球本来のものではないコラーゲン構造物などの、別の眼球内、角膜内、もしくは眼球外構造物を含み得る。
【0192】
中心視力の障害を有する眼の視力を改善する、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、PRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしおよび/またはPRLではない多数の非連続の網膜配置における焦点合わせを引き起こし、光源からの光を網膜の前方にある少なくとも1つの構造物の複数の非連続の部分に導き得る。網膜の前方にある少なくとも1つの構造物は、眼球内、角膜内、または眼球外に配置されてよく、限定はしないが、コンタクトレンズ、角膜内インレー、眼内レンズ、または別の眼球内、角膜内もしくは眼球外無細胞もしくはコラーゲン構造物などの無細胞構造物を含み得る。いくつかの例示的な装置は、光源からの光を導くコンポーネントを備え、このコンポーネントは眼の網膜の前方に留置され得る。いくつかの事例では、これらの例示的な装置のうちの1つまたは複数は、光源からの光が網膜の前方にある少なくとも1つの構造物の少なくとも1つの部分を透過するのを防ぐものとしてよく、光源は、レーザー光源および非レーザー光源のうちの少なくとも1つを含み、少なくとも1つの構造物は、眼球内、角膜内、または眼球外で網膜の前方に配置される。
【0193】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、PRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしおよび/またはPRLではない多数の非連続の網膜配置における焦点合わせを引き起こすことによって中心視力の障害を有する眼の視力を改善し、光源からの光を導くものとしてよく、眼の網膜の前方に位置決めされ、光源(レーザー光源および非レーザー光源の少なくとも一方を含む)から網膜の前方にある少なくとも無細胞および/またはコラーゲン構造物の複数の非連続の部分への透過を可能にするように構成され得る。いくつかの事例において、網膜の前方にある少なくとも1つの無細胞および/またはコラーゲン構造物は、眼の角膜または水晶体内に配設され得る。さらに、光源からの光を導く、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、眼の網膜の前方に位置決めされ、光源から網膜の前方にある少なくとも1つの無細胞またはコラーゲン構造物の一部分またはいくつかの部分への透過を防ぎ得る。光源は、たとえば、レーザー光源および非レーザー光源のうちの少なくとも一方を含み、網膜の前方にある少なくとも1つの無細胞および/またはコラーゲン構造物は、眼の角膜または水晶体内に配設され得る。
【0194】
いくつかの事例において、本明細書において説明されている例示的な方法のうちの1つまたは複数は、光源からの光を導き、角膜の少なくとも1つの無細胞構造物(たとえば層)の複数の非連続の体積部にレーザー治療を制限するために、レーザー装置、またはレーザーに付属する装置を利用することを含み得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源からの光を導き、角膜の少なくとも1つの構造物(たとえば層もしくは部分)の複数の非連続の体積部にレーザー治療を制限するように構成されている、レーザー装置、またはレーザーに付属する装置を含み得る。それに加えて、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつか、またはこれらの例示的な装置の1つもしくは複数のコンポーネントは、レーザー光源からのレーザー光を導き、角膜の経上皮レーザー治療に使用され得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつか、またはこれらの例示的な装置の1つもしくは複数のコンポーネントは、スパチュラ、ダイヤモンドバリ、もしくは任意の他の器具を用いて手動で、また角膜上皮除去のための任意の決定可能な方法によって、実行され得る、角膜上皮の非レーザー除去の後に使用され得る。
【0195】
さらに、いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つもしくは複数、またはこれらの例示的な装置の1つもしくは複数のコンポーネントは、光源からの光を導き、限定はしないが、角膜の少なくとも無細胞層および/または角膜のコラーゲン層の複数の非連続の体積部のレーザー治療のためのレーザー光透過可能開口を有する1つまたは複数の追加のコンポーネントを含み得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつか、またはこれらの例示的な装置の1つもしくは複数のコンポーネントは、光源からの光を導き、限定はしないが、1つまたは複数のコンポーネントの非連続の領域内に配置されるレーザー光吸収性物質を含まない複数の領域を取り囲むレーザー光吸収性物質を含む1つまたは複数のさらなるコンポーネントを含み得る。さらなる1つまたは複数のコンポーネントは、たとえば、角膜の少なくとも1つの無細胞層または角膜のコラーゲン層の複数の非連続の体積部に対するレーザー治療を制限し得る。レーザー光吸収性物質は、たとえば、193nmのレーザー光に対するポリメチルメタクリレートを含み得る。いくつかの例では、レーザー光吸収性物質を有する1つまたは複数のさらなるコンポーネントの部分は、除去されるべき複数の非連続の体積部に対応する領域を取り囲むものとしてよく、たとえば石英などの、レーザー光透過性物質を有するさらなる1つまたは複数のコンポーネントの下にある部分に取り付けられ得る。
【0196】
本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、光源からの光を、無細胞構造物およびコラーゲン構造物のうちの少なくとも一方の複数の非連続の部分に導くことによって、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の一時的なおよび/または安全な繰り返し可能な方向転換を引き起こし得る。たとえば、構造物は網膜の前方に配置され、光源は非レーザー光源およびレーザー光源のうちの少なくとも一方を含み得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、光源と、無細胞構造物およびコラーゲン構造物のうちの少なくとも一方を含む眼球内または眼球上の体積部である複数の非連続の部分を治療し、光源からの光をPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置に方向転換するように構成されているコンポーネントとを備え得る。さらに、いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な方法のうちの1つまたは複数は、光源およびコンポーネントを備える装置を利用して、無細胞眼球構造物およびコラーゲン眼球構造物のうちの少なくとも一方を含む眼球内の体積部である複数の非連続の部分を治療し、光源からの光をPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置に方向転換するものとしてよい。光源は、非レーザー光源またはレーザー光源のうちの少なくとも一方を含み得る。
【0197】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、角膜の少なくとも無細胞層を切除するように構成されている角膜切除用のレーザーおよびコンポーネントを備え得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、角膜上皮および/または角膜間質を切除するように構成されている角膜切除用のレーザーおよびコンポーネントを備え得る。切除用レーザーの例は、限定はしないが、193ナノメートルを含む波長の遠紫外線を放射するフッ化アルゴンエキシマーレーザー、および固体レーザーを含む。本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、限定はしないが、光剥離を生じる赤外線または紫外線光を放出するレーザー光源を含む、レーザー光源からの光を導き得る。
【0198】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、レーザー光源、1つまたは複数のレーザーコンポーネントに電気的に結合されたコントローラ、および角膜の一部を切除するように構成されている少なくとも1つのコンポーネントを備え得る。少なくとも1つのコンポーネントは、たとえば、レーザー光源と、切除されるべき複数の非連続の部分の表面との間に配設され、少なくとも1つのコンポーネントは、レーザー導光コンポーネント、レーザー導光制御、レーザー光オクルーダー、プログラム可能閉塞マイクロアレイ、および/またはレーザー光閉塞制御を含み得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、レーザー光源、および角膜切除のためのコンポーネントを備え、コンポーネントの例は、限定はしないが、センサー、プロセッサ、コントローラ、ビデオカメラ、アイトラッカー、ディスプレイ、レンズ、レーザービーム整形コンポーネント、レーザービーム照準コンポーネント、レーザー走査コンポーネント、および/または送達光学系を含む。
【0199】
いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちの1つまたは複数は、無細胞層および/またはコラーゲン層の少なくとも一部を含む、角膜組織の任意の所望の体積形状の、微小体積部の切除を生じさせ得る。微小体積部は、たとえば、角膜上皮および/または角膜間質組織を含み得るが、他の例では、微小体積部は角膜間質組織のみを含み得る。さらに、いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちの1つまたは複数は、剛体前部層および/または前部無細胞層の少なくとも一部を含む、角膜組織の、任意の決定可能な体積形状の、微小体積部の切除を生じさせ得る。たとえば、切除された微小体積部は、前表面遷移ゾーンありまたはなしで200ミクロンより深くない任意の決定可能な深さの深さによって特徴付けられ、0.05mm以上の最小直径および5mm以下の最大直径を有する表面領域によって特徴付けられ得る。表面領域は、円形、六角形、楕円(elliptical)形、楕円(oval)形、正方形、長方形、または任意の決定可能な形状であってよい。
【0200】
それに加えて、いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちの1つまたは複数は、切除可能な材料を含むコンタクトレンズ、切除可能な材料を含む眼内レンズ、または切除可能な材料を含む眼内レンズデバイスの任意の決定可能な体積形状の、微小体積部の切除を生じさせ得る。切除された微小体積部は、たとえば、前表面遷移ゾーンありまたはなしで200ミクロンより深くない任意の深さの深さによって特徴とし、0.05mm以上の最小直径および5mm以下の最大直径を有する表面領域によって特徴とし得る。表面領域は、円形、六角形、楕円(elliptical)形、楕円(oval)形、正方形、長方形、または任意の決定可能な形状であってよい。
【0201】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、2mmを超える直径を有する中心光学ゾーンの外側の角膜領域内の複数の非連続の微小体積部を切除するように構成されている角膜切除用のレーザー光源およびコンポーネントを含み得る。切除中心化方法の例は、限定はしないが、同軸視聴角膜光反射、同軸視聴、角膜光反射、および入射瞳中心を含む。
【0202】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、角膜の一部を切除するように構成されたレーザーを含み、切除は、被験者が光標的を固視している間に間に実行され、それによってPRL軸を決定し得る。
【0203】
角膜の一部分を切除するように構成されている、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、たとえば、4mm以上の中心光学ゾーンの外側にある複数の非連続の部分の切除の間など、切除前または切除中にPRLの配置または軸を決定する必要はない。
【0204】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、フェムト秒持続時間、ナノ秒持続時間、またはピコ秒持続時間のうちの少なくとも1つのパルスで角膜または水晶体の複数の非連続の部分にレーザー光を導くように構成されている少なくとも1つまたは複数のコンポーネントを含み、PRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への光の方向転換を引き起こすことによって、ならびに/または眼の視野内からPRLへの環境光の焦点ぼかしおよび/もしくはPRLではない複数の非連続の網膜配置への焦点合わせを引き起こすことによって眼の視覚系のリブートを引き起こし得る。さらに、いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、フェムト秒持続時間、ナノ秒持続時間、またはピコ秒持続時間のうちの少なくとも1つのパルスで角膜上皮、角膜無細胞層、または角膜間質のうちの少なくとも1つにレーザー光を導くように構成されている1つまたは複数のコンポーネントを備え得る。それに加えて、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、限定はしないが、光剥離、光破壊、光電離、光解離、光化学効果、またはこれらの任意の組合せを生じさせるレーザーシステムを含み得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数のレーザー光源を含み、これらのレーザー光源の例は、限定はしないが、赤外線光、可視光、または紫外線光を放射するレーザー光源を含む。本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、限定はしないが、赤外線光、可視光、または紫外線光を放射するレーザー光源を含む、レーザー光源からの光を導き得る。
【0205】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、フェムト秒持続時間、ナノ秒持続時間、またはピコ秒持続時間のうちの少なくとも1つのパルスで角膜の無細胞層、角膜上皮、または角膜間質のうちの少なくとも1つにレーザー光を導くように構成されている1つまたは複数のコンポーネントを備え得る。たとえば、1つまたは複数のコンポーネントは、レーザー導光コンポーネント、レーザー導光制御、圧平オクルーダー、接触液体オクルーダー、油浸レンズ、プログラム可能閉塞マイクロアレイ、レーザー光閉塞制御、レンズ、レーザービーム整形要素、またはレーザービーム照準要素のうちの少なくとも1つを含み得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な装置の1つまたは複数は、任意の決定可能なスポットサイズを生じさせ得る。いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、任意の決定可能なパルスエネルギー、パルス周波数、および/またはレーザーパターン(たとえば、螺旋もしくはラスターなど)を生じさせるコンポーネントを含み、任意の決定可能な接触界面(たとえば、湾曲もしくは平坦などの)または中心化技術(機械的またはコンピュータ)を利用し得る。たとえば、約100Wまでの任意の決定可能な平均電力、テラワットレベルまでのピーク電力、100メガヘルツまでの繰り返し率、パルス持続時間、偏光、および/または極紫外線から中赤外線までの波長が、超高速レーザー物質間相互作用を含むレーザー物質間相互作用に使用され得る。それに加えて、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、フェムト秒からアト秒までの任意のパルス持続時間を含む、任意の超高速レーザー物質間相互作用を生じさせ得る。
【0206】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、眼のPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への環境光の一時的な繰り返し可能な方向転換を引き起こすように構成され、フェムト秒持続時間、ナノ秒持続時間、またはピコ秒持続時間のうちの少なくとも1つのパルスで角膜の無細胞層、角膜上皮、または角膜間質のうちの少なくとも1つにレーザー光を導き、複数の非連続の微小体積部を修正しかつ/または除去するように構成されている少なくとも1つのコンポーネントを含み得る。
【0207】
いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちの1つまたは複数は、角膜組織の任意の決定可能な体積形状の微小体積部を修正しかつ/または除去し得る。本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちのいくつかは、また、角膜組織の任意の決定可能な体積形状の微小体積部を修正しかつ/または除去し得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちのいくつかは、角膜の機械的活性を有する部分内の任意の決定可能な体積形状の微小体積部を修正しかつ/または除去し得る。いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、200ミクロンより深くない任意の深さを有し、0.05mm以上の最小直径および5mm以下の最大直径を有する表面領域を有する微小体積部に光を導き得る。表面領域は、円形、六角形、楕円(elliptical)形、楕円(oval)形、正方形、長方形、任意の決定可能な形状であってよい。
【0208】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、フェムト秒持続時間、ナノ秒持続時間、またはピコ秒持続時間のうちの少なくとも1つのパルスで、角膜、天然水晶体、コンタクトレンズ、角膜内インレー、眼内レンズ、眼内デバイス、または眼の網膜の前方に位置決めされた任意の他の構造物のうちの少なくとも1つにレーザー光を導くように構成されている少なくとも1つのコンポーネントを含み得る。PRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしおよび/またはPRLではない多数の非連続の網膜配置での焦点合わせを引き起こすことによって、中心視力の障害を有する眼の視力を改善する、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、レーザー光を、角膜、天然水晶体、コンタクトレンズ、角膜内インレー、眼内レンズ、眼内デバイス、または眼の網膜の前方に位置決めされた任意の他の構造物のうちの少なくとも1つに、フェムト秒持続時間、ナノ秒持続時間、またはピコ秒持続時間のうちの少なくとも1つのパルスで導き得る。いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、任意の決定可能な体積形状の微小体積部を修正し得る。微小体積部は、たとえば、200ミクロンより深くない決定可能な深さを特徴とし、0.05mm以上の最小直径および5mm以下の最大直径を有する表面領域を特徴とし得る。表面領域は、円形、六角形、楕円(elliptical)形、楕円(oval)形、正方形、長方形、または任意の形状であってよい。さらに、いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちの1つまたは複数は、屈折率または曲率半径を修正し得る。
【0209】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、少なくとも角膜の無細胞層または眼の網膜の前方に位置決めされた任意の他の無細胞もしくはコラーゲン構造物の複数の非連続の体積部を修正するために、レーザー熱角膜形成を生じるが、角膜光硝子化を生じないレーザーを含み得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、限定はしないが、ホルミウムおよびツリウムレーザーなどのレーザーを含み、これはレーザー熱角膜形成を生じるが、角膜光硝子化を生じず、PRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への光の方向転換を引き起こすことによって、ならびに/または眼の視野内からPRLへの環境光の焦点ぼかしおよび/もしくはPRLではない複数の非連続の網膜配置への焦点合わせを引き起こすことによって少なくとも角膜の無細胞層または眼の網膜の前方に位置決めされた任意の他の無細胞もしくはコラーゲン構造物の複数の非連続の体積部を修正して眼の視覚系のリブートを引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、角膜間質および角膜上皮のうちの少なくとも一方の複数の非連続の体積部を修正するためのレーザー熱角膜形成を生じるレーザーを含み得る。
【0210】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、高周波電流(350~400kHz)を送達し、少なくとも角膜の無細胞層または眼の網膜の前方に位置決めされた任意の他の無細胞もしくはコラーゲン構造物の複数の非連続の体積部を修正するように構成され得る。さらに、いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、高周波電流(350~400kHz)を送達し、PRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置への光を方向転換することによって、ならびに/または眼の視野内からPRLへの環境光の焦点ぼかしおよび/もしくはPRLではない複数の非連続の網膜配置への焦点合わせを引き起こすことによって少なくとも角膜の無細胞層または眼の網膜の前方に位置決めされた任意の他の無細胞もしくはコラーゲン構造物の複数の非連続の体積部を修正して眼の視覚系をリブートし得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、伝導性角膜形成を行うように構成され、またそれに加えて、高周波電流(350~400kHz)を送達し、角膜間質および角膜上皮または眼の網膜の前方に位置決めされた任意の他の無細胞もしくはコラーゲン構造物の複数の非連続の体積部を修正して光をPRLから遠ざかる方向でPRLではない複数の網膜配置へ方向転換するように構成され得る。
【0211】
中心視力の障害を有する眼の視力を改善する、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、網膜の前方に位置決めされた構造物の中心光学ゾーンの外側の複数の部分における機械的特性または挙動を修正することによって眼の固視の偏心視域における眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こし得る。さらに、中心視力の障害を有する眼の視力を改善する、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、網膜の中心光学ゾーンの外側の複数の部分における機械的特性または挙動を修正することによって眼のPRLにおける眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こし得る。本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、また、中心光学ゾーンの外側の角膜の複数の部分における機械的挙動または特性を修正し得る。角膜の複数の部分は、たとえば、限定はしないが、前無細胞層などの、角膜の機械的活性を有する部分を含み得る。
【0212】
いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、中心光学ゾーンの外側の角膜の複数の部分を機械的に補強し得る。たとえば、中心光学ゾーンは、少なくとも2mmの直径を特徴とし得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、眼の網膜の前方に位置決めされた角膜の少なくとも無細胞層もしくはコラーゲン層または任意の他の無細胞もしくはコラーゲン構造物の機械的補強および/または等方性の修正によって眼の視覚系のリブートを引き起こすものとしてよく、導光コンポーネント、オクルーダー、プログラム可能閉塞マイクロアレイ、光送達要素、レーザービーム整形要素、レーザービーム脈動要素、レーザービーム照準要素、化学剤容器、化学剤放出コンポーネント、または化学剤送達要素のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのコンポーネントを備え得る。本明細書において説明されている例示的な方法および装置のうちのいくつかは、限定はしないが、角膜コラーゲン内の結合を増大させること(たとえば、本明細書において説明されている例示的な装置の1つまたは複数のコンポーネントを使用する)を含む角膜コラーゲンを機械的に補強する操作を実行し得る。
【0213】
本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、限定はしないが、角膜コラーゲンの光化学的、光力学的、または光電離修正のために化学物質および/もしくは気体を収容しかつ/もしくは放出するためのコンポーネントならびに/または光源からの光を導くためのコンポーネントを含むコンポーネントを含み得る。いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置および方法のうちの1つまたは複数は、直径2mmを超える中心光学ゾーンの外側の複数の角膜微小体積部を機械的に補強し得る。各微小体積部は、たとえば、角膜組織の任意の決定可能な体積形状のものであってよい。さらに、微小体積部はまた、200ミクロンより深くない任意の決定可能な深さの深さを特徴とし、0.05mm以上の最小直径および5mm以下の最大直径を有する領域を特徴とし得る。表面領域は、円形、六角形、楕円(elliptical)形、楕円(oval)形、正方形、長方形、または任意の決定可能な形状であってよい。
【0214】
さらに、いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な方法のうちの1つまたは複数は、紫外線光源と、紫外線光源に電気的に結合されたコントローラと、紫外線光源と角膜との間に配設され、紫外線光を角膜の少なくとも前無細胞層の複数の非連続の部分に導くか、またはそこに化学剤を放出する、コンポーネントまたは別個の装置とを含む装置を利用するものとしてよく、これは中心光学ゾーン(OZ)の決定可能な直径、ならびに基準は他にもあるがとりわけ、これらの部分の等方的挙動または特性の基準に基づく非連続部分の角膜部分の決定可能な配置および体積部に基づく。たとえば、眼の視覚系をリブートする、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、閉塞コンポーネントを用いて、中心OZの外側で経上皮的に、少なくとも前無細胞層の決定可能な深さの非連続の角膜部分に、(i)角膜の他の部分への浸透を最小限に抑えて機械的に補強するためにこれらの部分に感光性を与える決定可能な時間にわたる決定可能な濃度の市販のリボフラビン製剤、および(ii)前方角膜の決定可能な深さの活性化のための決定可能な放射照度の決定可能な時間にわたる紫外線A(UV-A)放射線のうちの1つまたは複数を導くように構成され得る。
【0215】
いくつかの事例では、本明細書において説明されている例示的な装置のうちの1つまたは複数は、本明細書において説明されているプロセスのうちの1つまたは複数の手動制御を円滑にするコンポーネントを含み得る。さらに、本明細書において説明されている例示的な装置のうちのいくつかは、活性化光を少なくとも前無細胞層の非連続の角膜部分に導き、および/またはリボフラビンなどの光感作物質を含み放出するためのプログラム可能なマイクロアレイと、少なくとも1つの前無細胞層を含み、上皮の下に約30ミクロンの深さを有する、たとえば4つの直径1mmの円形角膜部分の制御された経上皮機械的補強を引き起こすようにプログラムされたコントローラとを備え得る。たとえば、この4つの部分は、PRLを中心とする6mmのOZを中心とし(光に対する患者固視による)、12時、3時、6時、および9時の位置で最前角膜のおおよそ等方的な角膜部分(
図22に示されているような)の上に載るものとしてよい。
【0216】
実装例は、次の番号付けされた条項において説明される。
1.視力を改善するか、または回復させるための装置であって、
眼の網膜の前方に位置決めされた1つまたは複数の透明コンポーネントと、
1つまたは複数の透明コンポーネントの表面上に、あるいはその中に配設された1つまたは複数の変形可能コンポーネントと、
導電性コンポーネントを介して1つまたは複数の変形可能コンポーネントに結合されたコントローラであって、制御信号を生成して1つまたは複数の変形可能コンポーネントにルーティングするように構成されているコントローラと、を備え、
制御信号を受信した後、1つまたは複数の変形可能コンポーネントは、最高50キロヘルツまでの決定可能レートで眼の視野内からの環境光を網膜に導く少なくとも1つのパターンを再編成し、
少なくとも1つのパターンは、眼の固視の偏心視域において焦点ぼかしを引き起こし、少なくとも1つのパターンは開口を生成しない、装置。
2.環境光を網膜に導く少なくとも1つのパターンは、固視の偏心視域ではない複数の非連続の網膜配置における焦点合わせを引き起こす、条項1に記載の装置。
3.少なくとも1つのレンズをさらに備える、条項1に記載の装置。
4.1つまたは複数の変形可能コンポーネントは、等方的特性または等方的挙動のうちの少なくとも一方を有する少なくとも1つのコンポーネントを含む、条項1に記載の装置。
5.網膜に環境光を導くパターンは、少なくとも等方性の修正によって再編成される、条項1に記載の装置。
6.網膜に環境光を導くパターンは、1つまたは複数の光学機械的コンポーネントの少なくとも変形によって再編成される、条項1に記載の装置。
7.装置であって、
眼の網膜の前方に位置決めされた少なくとも1つまたは複数の変形可能コンポーネントと、
導電性コンポーネントを介して1つまたは複数の変形可能コンポーネントに結合されたコントローラであって、制御信号を生成して1つまたは複数の変形可能コンポーネントにルーティングするように構成されているコントローラと、を備え、
制御信号を受信した後、装置は眼の視野内からの環境光の曝露の重み付けを引き起こして眼の視野内から眼の中心の偏心視域への環境光の曝露を決定可能な間隔に対して少なくとも10%だけ低減し、
視野内の環境光は、最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで網膜に曝露される、装置。
8.視力を改善するか、または回復させるための装置であって、
光源からの光を少なくとも複数の非連続の角膜部分に導く1つまたは複数のコンポーネントであって、光源はレーザーまたは非レーザー光源のうちの少なくとも一方を含む、コンポーネントを備え、
非連続の角膜部分は、中心光学ゾーンの外側に配置され、少なくとも年齢相応の正常な角膜の無細胞層を含み、
光源は、角膜硝子化を生じさせず、
装置は、中心光学ゾーンの外側で角膜等方性の少なくとも1つの修正を引き起こす、装置。
9.装置は、機械的特性および機械的挙動のうちの少なくとも一方を少なくとも1つの方向で修正する、条項8に記載の装置。
10.装置は、光学的特性および光学的挙動のうちの少なくとも一方を少なくとも1つの方向で修正する、条項8に記載の装置。
11.光源は、紫外線および赤外線のうちの少なくとも一方を放射する、条項8に記載の装置。
12.眼の固視の偏心視域における眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしおよび固視の偏心視域ではない複数の非連続の網膜配置における焦点合わせのうちの少なくとも一方を引き起こすように構成されている1つまたは複数のコンポーネントをさらに備える、条項8に記載の装置。
13.眼の固視の偏心視域における眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしおよび固視の偏心視域ではない複数の非連続の網膜配置における焦点合わせは、非連続の網膜配置における光学誤差の測定を必要としない、条項12に記載の装置。
14.角膜表面パターニングを引き起こすように構成されている1つまたは複数のコンポーネントをさらに備え、角膜表面パターニングは、光調整可能なものおよびおおよそ反転可能なもののうちの少なくとも一方である、条項8に記載の装置。
15.光源からの光の導光先である複数の非連続の部分の機械的補強を引き起こすように構成されている1つまたは複数のコンポーネントをさらに備える、条項8に記載の装置。
16.機械的補強剤を放出するように構成されている1つまたは複数のコンポーネントをさらに備える、条項8に記載の装置。
17.眼の網膜の前方に位置決めされた装置を使用して、決定可能な間隔に対して眼の中心の偏心視域への曝露を少なくとも10%だけ低減するように眼の視野内からの環境光の曝露に重み付けすることを含み、視野内からの環境光は、最高50キロヘルツまでの決定可能なレートで網膜に曝露される、方法。
18.中心視力の障害を有する眼の視力を改善するための方法であって、装置を使用して眼の固視の偏心視域における眼の視野内からの環境光の焦点ぼかしを引き起こすことを含む、方法。
19.装置を使用して、網膜の遺伝子改変部分、網膜の後成的改変部分、および網膜の神経再生的改変部分のうちの少なくとも1つの中において環境光の焦点合わせを引き起こすことをさらに含む、条項18に記載の方法。
20.装置を使用して、網膜移植、移植網膜細胞、移植幹細胞、または植え込みプロテーゼのうちの少なくとも1つを含む網膜の複数の部分内の環境光の焦点合わせを引き起こすことをさらに含む、条項18に記載の方法。
21.装置を使用して、中心光学ゾーンの外側の角膜の少なくとも複数の角膜部分を修正することをさらに含み、角膜の複数の角膜部分は、角膜の機械的活性を有する部分を含む、条項18に記載の方法。
22.装置を使用して、網膜の前方に位置決めされた構造物の中心光学ゾーンの外側の複数の部分における光学的特性または挙動を修正することをさらに含む、条項18に記載の方法。
23.装置を使用して、網膜の前方に位置決めされた構造物の中心光学ゾーンの外側の複数の部分における機械的特性または挙動を修正することをさらに含む、条項18に記載の方法。
【符号の説明】
【0217】
A 中心窩
B 中心機能不全網膜領域
1900 装置
1901 眼
1901A 網膜
1901B 中心窩
1901C 視神経
1902 透明コンポーネント
1904 変形可能コンポーネント
1905 入力データ
1906 コントローラ
1908 導電性コンポーネント
1910 電源
1912 制御信号
1914 環境光
1918 PRL
1920 配置
2000 装置
2001 眼
2001A 網膜
2001B 中心窩
2001C 視神経
2002 透明コンポーネント
2004 変形可能コンポーネント
2005 入力データ
2006 コントローラ
2008 導電性コンポーネント
2010 電源
2012 制御信号
2014 環境光
2018 PRL
2020 非PRL配置
2300 装置
2302 光源
2304 導光コンポーネント
2306 光
2308 眼
2308A 角膜
2308B 角膜
2310Aおよび2310B 非連続の部分
2312 コントローラ
2314 電源
2316 光源制御信号
2318 コンポーネント制御信号
【国際調査報告】