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特表2024-504246物理量の統計分布の圧縮測定のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】物理量の統計分布の圧縮測定のための方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 7/30 20060101AFI20240124BHJP
   G01S 7/4865 20200101ALI20240124BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H03M7/30 B
G01S7/4865
G01T1/161 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023535569
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 FR2021052284
(87)【国際公開番号】W WO2022123189
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2013100
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ギケロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン・ポアソン
【テーマコード(参考)】
4C188
5J064
5J084
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF07
4C188GG19
4C188KK24
5J064BA13
5J064BB03
5J064BB13
5J064BC05
5J064BC16
5J064BC28
5J084AA05
5J084AA13
5J084AD01
5J084BA36
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA32
5J084EA04
(57)【要約】
本発明は、センサによって物理量の統計分布を測定するための方法およびデバイスに関する。物理量の観測ごとに、センサは、この量の量子化値をバイナリベクトルの形式で提供(310)する。その後、このバイナリベクトルは、量子化値を表すベクトルを提供するために、量子化レベルの数よりも小さい次数を有する測定空間上に射影(320)される。ヒストグラムの測定ベクトルは、量子化値を表すベクトルをそこに追加することによって、オンザフライで更新(330)される。その後、この測定ベクトルは、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測(350)するために事前に訓練されたニューラルネットワークの入力変数として使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
統計分布の測定ベクトルを提供するための、物理量の前記分布の圧縮測定のための方法であって、
(a)センサによって提供された前記物理量の量子化値を観測するステップ(310)であって、前記量子化値が、1つの単一要素が非ゼロであり、かつ1に等しい、サイズ2のバイナリベクトルによって表され、前記要素の位置が、基数2の量子化セット内の前記量子化値を表す、観測するステップ(310)と、
(b)前記量子化値から、b<K<2である次数Kの測定空間における前記量子化値を表すベクトルを、量子化値のセットから前記測定空間への単射関数を用いて生成するステップ(320)と、
(c)前のステップで取得した前記量子化値を表す前記ベクトルから前記測定ベクトルをオンザフライで更新するステップ(330)であって、前記測定ベクトルの要素が、代表ベクトルの対応要素が第1のバイナリ値をとる場合にインクリメントされ、前記代表ベクトルの前記対応要素が前記第1のバイナリ値とは逆の第2のバイナリ値をとる場合にデクリメントされる、更新するステップ(330)と、
を含む、反復ループを含むことを特徴とする、物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項2】
前記量子化値を表す前記ベクトルが、複数のK個のベクトル上に前記バイナリベクトルを射影することによって得られ、前記ベクトルのそれぞれの前記要素が、疑似乱数列から導出されるバイナリ値であることを特徴とする、請求項1に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項3】
前記単射関数が、サイズ2の前記バイナリベクトルの、前記バイナリベクトルの前記非ゼロ要素の前記位置を符号化するサイズbの重み付きバイナリワードへの変換(511、611)、前記重み付きバイナリワードのビットをランダム化して第1のランダム化バイナリワードを提供するステップ、続いて、サイズKの第2のランダム化バイナリワードを取得するための前記第1のランダム化バイナリワードのビットに対するコンビネータ論理ステップ、を含み、前記第2のランダム化バイナリワードの各ビットが、前記第1のバイナリ値または前記第2のバイナリ値に等しいかどうかに応じてカウンタを1増分ずつインクリメントまたはデクリメントすることを特徴とする、請求項1に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項4】
前記第1のランダム化バイナリワードが、前記重み付きバイナリワードの前記ビットを複製およびシャッフルすることによって取得されることを特徴とする、請求項3に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項5】
前記増分が、前記物理量の前記量子化値とは無関係であることを特徴とする、請求項3または4に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項6】
前記増分が、前記物理量の前記量子化値に依存し、前記物理量の前記量子化値の発生確率が低いときに、前記増分の絶対値がさらに大きくなるように選択されることを特徴とする、請求項3または4に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項7】
物理量の統計分布に応じて目標変数を予測する方法であって、前記統計分布が請求項1から6のいずれか一項に記載の圧縮測定方法を用いて測定されること、および事前に訓練された人工ニューラルネットワークを用いて、前記目標変数が前記測定ベクトルから予測されることを特徴とする、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測する方法。
【請求項8】
統計分布の測定ベクトルを提供するために、物理量の前記分布を測定するデバイスであって、
(a)前記物理量の量子化値を提供するセンサであって、前記量子化値が、1つの単一要素が非ゼロであり、かつ1に等しい、サイズ2のバイナリベクトルによって表され、前記要素の位置が、基数2の量子化値のセット内の前記量子化値を表す、センサと、
(b)b<K<2である次数Kの測定空間に対する複数のK個のベクトル上に前記バイナリベクトルを射影することによって前記量子化値を表すベクトルを取得する射影モジュール(410)と、
(c)前のステップで取得した前記量子化値を表す前記ベクトルから前記測定ベクトルをオンザフライで更新するための再帰的総和モジュール(420)であって、前記測定ベクトルの要素が、代表ベクトルの対応要素が第1のバイナリ値をとる場合にインクリメントされ、前記代表ベクトルの前記対応要素が前記第1のバイナリ値とは逆の第2のバイナリ値をとる場合にデクリメントされる、再帰的総和モジュール(420)と、
を備えることを特徴とする、物理量の統計分布を測定するデバイス。
【請求項9】
前記量子化値を表す前記ベクトルが、複数のK個のベクトル上に前記バイナリベクトルを射影することによって得られ、前記ベクトルのそれぞれの前記要素が、疑似乱数列から導出されるバイナリ値であることを特徴とする、請求項8に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項10】
前記射影モジュール(510、610)が、サイズ2の前記バイナリベクトルをサイズbの重み付きバイナリワードに変換するための符号化器(511、611)を含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項11】
前記射影モジュールが、第1のランダム化バイナリワードを提供するために前記重み付きバイナリワードのビットを複製およびシャッフルするように適合された第1の層(513、613)と、前記第1のランダム化バイナリワードのビットに対してコンビネータ論理演算を実行してサイズKの第2のランダム化バイナリワードを、前記量子化値を表すベクトルとして提供するように適合された第2の層(515、615)と、を含むランダム化回路(513、515;613、615)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項12】
前記再帰的総和モジュール(520、620)が、K個のカウンタのバンクを含み、各カウンタが、前記第2のランダム化バイナリワードのビットを受信し、前記ビットが、前記第1のバイナリ値または前記第2のバイナリ値に等しいかどうかに応じて前記カウンタを1増分ずつインクリメントまたはデクリメントすることを特徴とする、請求項10または11に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項13】
前記増分が、前記物理量の離散値とは無関係であることを特徴とする、請求項12に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項14】
前記増分が、前記物理量の離散値に依存し、前記物理量の前記量子化値の発生確率が低いときに、前記増分の絶対値がさらに大きくなることを特徴とする、請求項12に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項15】
前記センサ上に信号が存在しないときに得られる第1の測定ベクトル(y”)を記憶し、前記センサ上に信号が存在するときに得られる第2の測定ベクトル(y’)から前記第1の測定ベクトルを減算するための減算モジュール(925)を、前記再帰的総和モジュールの前記出力において備えることを特徴とする、請求項8から14のいずれか一項に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項16】
物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイスであって、請求項8から14のいずれか一項に記載の前記統計分布の圧縮測定のためのデバイスと、前記測定ベクトル(y)を入力変数として受信し、前記目標変数の予測
【数1】
を出力として提供する、事前に訓練された人工ニューラルネットワーク(430)と、を備えることを特徴とする、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイス。
【請求項17】
物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイスであって、請求項8から14のいずれか一項に記載の前記物理量の圧縮測定のための複数(Q)のデバイスを備え、各圧縮測定デバイスが、別個の基本センサに関連付けられ、各圧縮測定デバイスが、射影モジュール(1010)および再帰的総和モジュール(1020)を含み、前記予測デバイスが、前記圧縮測定デバイスによってそれぞれ提供された前記測定ベクトルを入力変数として受信し、前記目標変数の予測
【数2】
を出力として提供する、事前に訓練された人工ニューラルネットワーク(1030)をさらに含むことを特徴とする、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイス。
【請求項18】
物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイスであって、請求項15に記載の前記統計分布の圧縮測定のためのデバイスと、前記第1の測定ベクトルと前記第2の測定ベクトルとの差を入力変数として受信し、前記目標変数の予測
【数3】
を出力として提供する、事前に訓練された人工ニューラルネットワーク(930)と、を備えることを特徴とする、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイス。
【請求項19】
前記目標変数の前記予測が、回帰演算または分類演算であることを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載の物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、圧縮形式の情報の処理に関する。特に、それは、単一光子検出デバイスまたはSPAD(単一光子アバランシェダイオード)における、特にそのようなセンサを用いた撮像のための用途を見つける。
【背景技術】
【0002】
単一光子検出デバイス(SPAD)は、特に、医用撮像、飛行時間型撮像、LIDAR撮像、陽電子放出断層撮影などの、広範囲の分野において使用されている。
【0003】
これらの撮像システムの大半の基礎となる原理は、取得システムと同期したソースによって放射される電磁パルスの飛行時間(ToF)を測定することにある。特に、SPADセンサは、撮像される物体によって反射される、光源により放射されたパルスの往復飛行時間を測定することを可能にする。
【0004】
SPADセンサは近年、消費、時間分解能、またはダイナミクスの観点において大幅に改善されているが、これらのセンサの性能は、いくつかの制約に直面している。
【0005】
まず第1に、概して有用な情報を表す飛行時間情報は、センサ上の光子の到着時間の統計分布によって搬送される。場合によっては、有用な信号が、信号全体の最大で98%かつそれ以上を表し得る雑音にかき消される。ゆえに、許容できる信号対雑音比を得るためには、撮像対象物体の多数の連続取得を行うことが必要である。
【0006】
その後で、SPADセンサは撮像システムの進化に従うべきであり、したがって高いダイナミクス(または等価的には飛行時間型撮像の場合、距離の高分解能)、および高い空間分解能を実現すべきである。その結果、撮像素子の1つの画素の取得それぞれが、相当な数のビットを記憶および処理する能力を想定し、可能な限り最小の表面積にわたってそれが行われる。
【0007】
最後に、現在の撮像素子の空間分解能の要件が、画素数およびしたがってフォトサイト数の相関的な増加につながる。
【0008】
最終的には、1つの百万画素の範囲内の行列について、10Hzの範囲のフレームレート、10ビットで符号化された飛行時間、および画素あたり1000回の取得で、撮像素子の出力において100Gb/sに既に到達している。
【0009】
画素ごとに生成されたデータ量を減少させるために、異なるヒストグラム圧縮技術が先行技術において提案されている。
【0010】
第1の技術は、「区画されたフレーム間ヒストグラム」即ちPIfHと呼ばれ、飛行時間型分布のダイナミクスをいくつかの間隔に分割することにあり、これらの間隔に関連するヒストグラムが順次得られる。この技術によって、画素ごとのメモリフットプリントを減少させるが各画素によって生成されたデータ量を減少させないことが可能となる。
【0011】
第2の技術は、「折り畳まれたフレーム間ヒストグラム」即ちFifHと呼ばれ、ズームによって進行する。第1の分析は、飛行時間型ダイナミクスを粗く分割して実行され、次いで、より精細な第2の分析が、第1の分析で検出されたピークの周囲で実行される。概して、第2のヒストグラムの飛行時間型ダイナミクスは、粗い分析に使用される基本間隔(ビン)の幅に等しく選択される。この第2の技術は、センサの取得頻度を減少させる利点を有する。それでもなお、特に多数の取得が対信号雑音比を向上させる必要があるときには、画素ごとに生成されるデータ量は、依然として大きい。
【0012】
物理量のヒストグラムの取得は、この量の分布に応じた目標変数の推定の前のステップであってもよい。例えば、上述した場合に、SPADセンサによって検出されたイベントの時間にわたるヒストグラムは、物体での反射後の光パルスの到着時間または往復伝搬時間を推測することを可能にする。
【0013】
ヒストグラムは、時間型である代わりに空間型のものであってもよい。したがって、物体から放射または反射され、SPADセンサのアレイによって受信された光子のヒストグラムは、この物体の特性を予測すること、または複数の可能なクラスの間でこの物体を分類することを可能にし得る。
【0014】
時間および/または空間のヒストグラムのタイプに関わらず、特に、物理量のダイナミクスが高いとき、および/または高い分解能が必要であるときに、処理されるデータ量が法外である場合がある。場合によっては、延期された処理を(オフラインで)実行するためにリストアされる前に、考慮されたデータがメモリ内に圧縮され、記憶される。それでもなお、予測がリアルタイムで実行されなければならないときには、この解決策は適用できず、その結果相当な計算リソースをセンサの回路に統合することが困難であるために、ヒストグラムがオンラインで(オンライン)構築されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、メモリフットプリントの著しい減少を可能にする、物理量の統計分布を測定するためのデバイスを提供することである。本発明の補足的な目的は、大量の計算リソースを結集しなくても、これらの値が取得されるときにオンラインで動作し得る、物理量がとる値の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイスを提供することである。予測は、分類演算または回帰演算から構成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、請求項1に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のための方法によって定義される。有利な実施形態が、従属請求項2から7において明示されている。
【0017】
本発明は、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測する方法であって、前記統計分布がこの圧縮測定方法を用いて測定される、方法にも関する。
【0018】
本発明は、独立請求項8に定義されるような物理量の統計分布を測定するためのデバイスにも関する。有利な実施形態が、従属請求項9から15において明示されている。
【0019】
本発明は、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイスにも関し、この統計分布の圧縮測定のためのそのようなデバイスを含む。
【0020】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して説明される本発明の実施形態を読めば明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】物理量および結果として得られるヒストグラムの取得の連続パスの例を表す。
図1B】理想的な場合の物理量および結果として得られるヒストグラムの取得の連続パスの例を表す。
図2】先行技術から既知の物理量の離散値のヒストグラムを構築するためのデバイスを概略的に表す。
図3】本発明の実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のための方法のフローチャートを概略的に表す。
図4】本発明の第1の実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイスの構造を概略的に表す。
図5図4のデバイス内の符号化モジュールの第1の例示的実施態様を詳細に示す。
図6図4のデバイス内の符号化モジュールの第2の例示的実施態様を詳細に示す。
図7】本発明の第2の実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイスの構造を概略的に表す。
図8図7のデバイス内の再帰的総和モジュールの例示的実施態様を詳細に示す。
図9】本発明の第3の実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイスの構造を概略的に表す。
図10】本発明の第4の実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイスの構造を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、物理量の統計分布の測定について考察する。この分布の測定は、この物理量がとる値のヒストグラムによって表される。
【0023】
例えば、この物理量がとる値は、イベント発生中の物理信号の観測に対応する。例示のため、かつ普遍性を損なうことなく、いくつかの実施形態では、この物理量が、SPADセンサ上の光子の到着時間またはSPADセンサのアレイ上の光子の衝突点の座標であると仮定する。
【0024】
場合によっては、このヒストグラムは、考慮された統計分布に応じて目標変数を予測することを可能にし得る。
【0025】
したがって、前述した第1の例では、光子の到着時間のヒストグラムから、物体で反射された光パルスの往復伝搬時間を予測することが可能となり、この伝搬時間は、センサによって受信された光子の時間分布に依存する。
【0026】
前述した第2の例では、例えば、放射性マーカの入射後に、陽電子放出型断層撮影装置によって取得された器官の画像が属するクラスを予測することが可能となる。この器官によって放射された陽電子は、電子と共にその消滅中に光子を生成し、これらの光子は、基本SPADセンサのアレイによって検出される。画像(または器官それ自体)が属するクラスは、基本センサのアレイによって受信された光子の空間分布に依存する。
【0027】
図1Aは、光パルスが物体に向かって送信され、物体により反射されるときの、SPADセンサによって受信された光子の到着時間(または飛行時間)の取得の複数の連続パスP、P、...、Pを表す。
【0028】
連続取得パスPiの間に検出された光子が、矢印110で示され、それぞれの検出された光子は、飛行時間(ToF)値に対応する。飛行時間の範囲は、0から
【0029】
【数1】
【0030】
の範囲の2-1の基本間隔(または「ビン」)に量子化され(または等価的には離散化され)、τは、基本間隔の持続時間である。
【0031】
光子が取得パスの間に基本間隔に入ると、この間隔のスコアが1ずつインクリメントされる。
【0032】
図面の下部分に、Mの取得パス後の異なる間隔のスコアに対応するヒストグラムが表されている。このヒストグラムは、パスの数Mが十分大きい場合に、飛行時間の統計分布の良好な近似を提供する。
【0033】
図示される例では、SPADセンサの出力における飛行時間統計分布の典型で、統計分布は、雑音に起因する第1の成分および有用な信号に起因する第2の成分を含む。
【0034】
図1Bは、理想的な、即ちノイズのないSPADセンサによって受信された光子の飛行時間の取得の複数の連続パスP、P、...、Pを表す。物体によって反射されたパルスの往復伝搬時間に対応するものを除いて、異なる基本間隔のスコアの全てが負(LSBに対応する値
【0035】
【数2】
【0036】
未満)であることに留意すべきである。
【0037】
光子の到着時間(物理量)の量子化値のヒストグラムから始まって、往復飛行時間または物体までの距離(予測される目標変数)を判断することが可能である。
【0038】
従来通り、このヒストグラムは、図2に表された基本間隔のそれぞれのスコアのインクリメントによって取得され得る。
【0039】
各イベント時に、即ち光子がSPADセンサで検出されるたびに、イベントが発生する基本間隔のスコアが、1ずつインクリメントされる。より具体的には、物理量(飛行時間)のダイナミクスがbビットにわたって量子化(離散化)される場合、言い換えると、このダイナミクスが2個の基本間隔に分割される場合、サイズ2のバイナリベクトル
【0040】
【数3】
【0041】
によってパスiの間に発生するイベントを表すことが可能であり、各要素は、基本間隔に対応する。
【0042】
【数4】
【0043】
の要素の全てが、1に等しい1つを除いて0であり、必要に応じてイベントが発生する間隔に対応する。バイナリベクトル
【0044】
【数5】
【0045】
は、長さ2を有する位置のコードワードと考えられてもよく、考えられたワードのビット「1」の位置が、物理量の量子化値を提供する。
【0046】
物理量のヒストグラムは、次元2の量子化空間内でベクトルhによって表されてもよく、即ち、
【0047】
【数6】
【0048】
であり、Nは、ヒストグラムで考慮されるイベントの数である。hの要素は
【0049】
【数7】
【0050】
ビットワードである。
【0051】
本発明の基礎となる第1のアイデアは、ヒストグラムが、減少した数のパラメータ(または潜在変数)によって表され得ること、およびこれからはヒストグラムの圧縮測定が、圧縮取得行列Ψを用いた測定空間と呼ばれる、減少した次数の空間において実行され得ることを通知することである。測定空間の次数が
【0052】
【数8】
【0053】
であると仮定すると、圧縮取得行列は、量子化空間および測定空間の標準基底においてサイズ
【0054】
【数9】
【0055】
を有する。
【0056】
測定ベクトルは、そのとき以下の形式、
【0057】
【数10】
【0058】
で表され得る。圧縮取得行列Ψは、次数2の空間から次数Kの空間への射影行列と考えられ得る。各バイナリベクトル
【0059】
【数11】
【0060】
は、位置
【0061】
【数12】
【0062】
に位置する、1に等しい単一の非ゼロ要素を含むため、射影の結果は、単に、異なる位置
【0063】
【数13】
【0064】
の行列Ψの列ベクトル
【0065】
【数14】
【0066】
の総和である。
【0067】
有利なこととして、行列Ψの要素は、Ψの行ベクトルが
【0068】
【数15】
【0069】
の標準基底と一致しないように、疑似ランダム(決定論的)プロセスから導出される。
【0070】
本発明の基礎となる第2のアイデアは、イベントが発生すると、測定ベクトルyをオンザフライで構築することである。実際には、測定ベクトルは、バイナリベクトル
【0071】
【数16】
【0072】
を提供するそれぞれの新たなイベントにおいて再帰的方式で構築され得る。
【0073】
【数17】
【0074】
その後、測定ベクトルyは、目標変数を予測するために、事前に訓練されたニューラルネットワークの入力変数として使用され得る。予測は、回帰または分類であってもよい。
【0075】
この目標変数(ここではスカラー)がzと示される場合、後者は、
【0076】
【数18】
【0077】
を用いて予測され得る。
【0078】
【数19】
【0079】
は、測定ベクトルを表し、
【0080】
【数20】
【0081】
は、ニューラルネットワークの代表的関数であり、
【0082】
【数21】
【0083】
は、目標変数の予測された値である。1つの変形によれば、この目標変数は、(ベクトルzで表される)多項式であってもよく、それは、ニューラルネットワーク
【0084】
【数22】
【0085】
によって類似の方式で予測され得る。普遍性を損なうことなく、以下ではスカラーの目標変数に限定する。
【0086】
場合によっては、物理量の値の発生確率に従って、異なるベクトル
【0087】
【数23】
【0088】
に重みを付与することが適切である場合がある。したがって、この場合、これらの重みが
【0089】
【数24】
【0090】
で示されると、ヒストグラムは、
【0091】
【数25】
【0092】
による再帰的方式で取得される。目標変数の予測は、
【0093】
【数26】
【0094】
によって取得される。
【0095】
例えば、物理量の値の発生確率が、この値が高いときにさらに低くなる場合、重み
【0096】
【数27】
【0097】
は、低い発生確率での測定値を優先するように、
【0098】
【数28】
【0099】
の増加関数から取得され得る。この増加関数は、選択された線形
【0100】
【数29】
【0101】
であってもよく、a、bは、正の整数である。
【0102】
図3は、本発明の汎用的実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のための方法のフローチャートを概略的に表す。
【0103】
この測定方法は、反復型であり、各反復は以下を含む。
【0104】
- 第1のステップ310、第1のステップ310において、各イベント時に、物理量(実数)の新たな量子化値が観測される。この量子化値は、例えば、時間範囲の基本間隔へのタイリングまたはセンサの基本センサへの空間タイリングの、第1の空間の基本タイルへのタイリングを用いた物理量の量子化から生じる。物理量の量子化値は、サイズ2のバイナリベクトルとして表されてもよく、2は、量子化セットの基数、即ち、前記物理量の可能な量子化値の数(例えば、物理量の変化の範囲における量子化タイルまたはステップの数)である。このベクトルは、量子化値を表す位置において1に等しい、単一の非ゼロ要素を有する。
【0105】
- 第2のステップ320、第2のステップ320において、量子化値に基づいて、次数Kの測定空間内のこの値を表すベクトルが生成され、前記代表ベクトルは、量子化値のセットから測定空間への単射関数を用いて量子化値から取得される。次数Kは、b<K<2であるようになる。
【0106】
この代表ベクトルは、行列Ψの行ベクトルによって生成される次数Kの
【0107】
【数30】
【0108】
の部分空間上への量子化された物理量のバイナリベクトルの射影によって得られ得る。
【0109】
上記で示されたように、バイナリベクトル
【0110】
【数31】
【0111】
のこの部分空間上への射影は、列ベクトル
【0112】
【数32】
【0113】
に他ならない。
【0114】
列ベクトル
【0115】
【数33】
【0116】
の要素は、
【0117】
【数34】
【0118】
のビットのサブセットの順列、複写、連結(位置
【0119】
【数35】
【0120】
のバイナリ表現)の演算を用いて、かつこれらの演算から生じるビットに対するコンビネータ論理演算によって、生成され得る。
【0121】
列ベクトルのバイナリ要素は、符号付きバイナリ値に関連付けられてもよく、第1の符号付きバイナリ値(例えば、符号付きバイナリ値+1)がビット「1」に関連付けられ、第2の符号付きバイナリ値(例えば、符号付きバイナリ値-1)が第1の符号付きバイナリ値とは反対に、ビット「0」に関連付けられる。
【0122】
- 第3のステップ330、第3のステップ330において、測定ベクトルは、前記代表ベクトル、即ちバイナリベクトルの測定空間への射影を用いてオンザフライで更新される。この更新は、測定ベクトルのエレメントごとに、代表ベクトルの対応要素が「1」に等しい場合はこの要素をインクリメントすることによって、代表ベクトルの対応要素が「0」に等しい場合はそれをデクリメントすることによって、行われる。
【0123】
所定回数Mの反復後に、異なる変形が考えられ得る。
【0124】
まず第1に、測定ベクトルyから始まって、制約付き正則化アルゴリズムを用いて量子化空間内でヒストグラムを再構築することが可能である。例えば、疑似逆行列
【0125】
【数36】
【0126】
を用いてヒストグラムを再構築することが可能である。
【0127】
有利な適用によれば、事前に訓練されたニューラルネットワークを用いて、物理量の統計分布に応じて目標変数(スカラーまたはマルチモーダル)を予測することが可能である。ニューラルネットワークは、量子化空間の次数よりも実質的に小さい次数を有する測定ベクトルyを入力変数として使用する。
【0128】
この変形は、図3に任意選択的に表されている。反復の所定回数に到達するとき、またはより汎用的には、ステップ340において停止基準を満たしたときに、350において、事前に訓練されたニューラルネットワークを用いて、ヒストグラムの測定ベクトルyから目標変数を予測することが可能である。
【0129】
図4は、本発明の第1の実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイスの構造を概略的に表す。
【0130】
デバイスは、新たなイベントまたは観測ごとに、物理量の量子化値、例えば光子の到着時間を表すサイズ2のバイナリベクトル
【0131】
【数37】
【0132】
を入力として受信する。このバイナリベクトルは、量子化空間内の物理量の量子化値を示す位置のコードワードと考えられ得る。
【0133】
バイナリベクトル
【0134】
【数38】
【0135】
は、射影モジュール410に提供され、射影モジュール410は、それを次数Kの測定空間上、より具体的には行列Ψの行ベクトル上に射影する。
【0136】
射影の結果は、サイズKのベクトル
【0137】
【数39】
【0138】
である。
【0139】
【数40】
【0140】
の要素は、(符号付きバイナリ値+1または-1に関連付けられた)バイナリ要素である。
【0141】
モジュール420は、再帰的方式で第2の空間において総和を実行する。
【0142】
【数41】
【0143】
の各要素は、式(3)に従ってyの対応要素に加えられる。
【0144】
総和モジュールの出力ベクトルは、サイズKの測定ベクトルyであり、その要素は、サイズ
【0145】
【数42】
【0146】
の符号付きバイナリワードである。このベクトルは、第2の空間におけるヒストグラムの射影を表す。
【0147】
前に示した通り、測定ベクトルyは、人工ニューラルネットワーク430に対する入力変数の役割をし得る。
【0148】
ニューラルネットワーク430は、入力変数yから目標変数zの予測を実行する。この予測
【0149】
【数43】
【0150】
は、スカラー値(例えば、前の例での光パルスの到着時間)またはクラス(離散化スペクトルが観測されるオブジェクトのクラス)またはベクトル(マルチモーダル目標値)であってもよい。
【0151】
図5は、図4のデバイス内の射影モジュールの第1の例示的実施態様を詳細に示す。
【0152】
この例示的実施態様では、b=8と考えている。
【0153】
任意選択で、射影モジュール510は、バイナリベクトル
【0154】
【数44】
【0155】
をバイナリワード(重み付き)に符号化するためのトランスコーダ511を含み、
【0156】
【数45】
【0157】
が物理量の量子化値をbビットにわたって符号化する。このトランスコーダは、考えられたバイナリワードをセンサが直接出力する場合には存在しない。
【0158】
バイナリワード
【0159】
【数46】
【0160】
は、ランダム化回路に提供される。この回路は、第1の層513を含み、第1の層において、ビット複製およびシャッフル演算が、順列、複写、連結演算を用いて実行される。図示された例では、第1の層が、8ビットバイナリワード
【0161】
【数47】
【0162】
【0163】
【数48】
【0164】
がMSBである)を第1のランダム化17ビットバイナリワード
【0165】
【数49】
【0166】
に変換する。第2の層515は、第1のランダム化バイナリワードに対するコンビネータ論理演算、ここではこのバイナリワードの連続ビット間の排他的OR演算を実行する。第2の層は、第2のランダム化バイナリワードを提供し、第2のランダム化バイナリワードのビットが、カウント回路520の16個のカウンタのインクリメント(ビット値が1に等しい)およびデクリメント(ビット値が0に等しい)をそれぞれ制御する。カウント回路は、式(3)に従って再帰的総和を実行する。
【0167】
カウント回路の出力における結果は、測定空間内に射影されたヒストグラムを表すサイズK=16のベクトルyである。ヒストグラムは、ここでは16(2/K)の倍率で圧縮される。
【0168】
図6は、図4のデバイス内の射影モジュールの第2の例示的実施態様を詳細に示す。
【0169】
この例示的実施態様では、b=10と考えている。第1の例と同様に、射影モジュール610は、バイナリベクトル
【0170】
【数50】
【0171】
を重み付きバイナリワード
【0172】
【数51】
【0173】
に変換する任意選択のトランスコーダ611、およびランダム化回路を含む。
【0174】
ランダム化回路は、10ビットバイナリワード
【0175】
【数52】
【0176】
を第1のランダム化された21ビットバイナリワード
【0177】
【数53】
【0178】
に変換するビットを複製およびシャッフルするための、第1の層613を含む。第2の層615は、第1のランダム化されたバイナリワードのビットに対してコンビネータ論理演算を実行して、そのビットがカウント回路620の16個のカウンタのインクリメント(ビット値が1に等しい)およびデクリメント(ビット値が0に等しい)をそれぞれ制御する、第2のランダム化された20ビットバイナリワードをもたらす。この例では、ランダム化回路の第2の層が、ORゲートで構成された第1の副層およびANDゲートで構成された第2の副層を含む。
【0179】
カウント回路の出力における結果は、サイズK=20のベクトルyである。ヒストグラムは、ここでは51(2/K)の倍率で圧縮される。
【0180】
当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、ランダム化回路の異なる例を使用して他の射影モジュールを設計することが可能である。
【0181】
図7は、本発明の第2の実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイスの構造を概略的に表す。
【0182】
この実施形態は、第1の実施形態と同様に、射影モジュール710、再帰的総和モジュール720を含む。やはり第1の実施形態とは異なり、再帰的総和モジュール720は、現在のベクトルyにベクトルを合計する前に、射影モジュールの出力においてベクトル
【0183】
【数54】
【0184】
の各成分に重み
【0185】
【数55】
【0186】
で重みを付与する。重み
【0187】
【数56】
【0188】
は、ヒストグラムにおいて発生確率が低い測定の寄与を優先するように選択され得る。
【0189】
測定ベクトルyは、前と同様のスカラーまたはベクトル(多項式)の、目標変数の予測のためのニューラルネットワーク730への入力変数の役割をし得る。
【0190】
図8は、図7のデバイス内の再帰的総和モジュールの例示的実施態様を詳細に示す。
【0191】
図8に表された射影モジュール810は、ここでは図5の射影モジュールと同一である。一方、再帰的総和モジュールは、16個のカウンタを含むカウント回路820によって実施され、各カウンタは、射影モジュールの出力における対応ビットが0(または1)に等しいときに、値
【0192】
【数57】
【0193】
(正の整数)ずつデクリメント(またはインクリメント)される。
【0194】
測定ベクトルyは、前と同様に、スカラーまたはベクトルの、目標変数の予測のためのニューラルネットワーク830への入力変数の役割をし得る。
【0195】
図9は、本発明の第3の実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイスの構造を概略的に表す。
【0196】
本実施形態は、測定空間における雑音のある信号の量子化値のヒストグラムを表すベクトルy’から、この同一空間における雑音のみの量子化値のヒストグラムを表す同一次元のベクトルy”を減算することを可能にする、雑音減算モジュール925を出力において含む点で、前の実施形態とは異なる。
【0197】
本実施形態は、例えばパルス化信号との同期検出を用いて信号源またはその他をカットオフすることによって、有用な信号から雑音測定を行うことが可能であると推定する。
【0198】
いずれにせよ、同一デバイスを用いて、ただし時間多重化方式で、信号および雑音それぞれの同一の測定空間における(言い換えると、Ψの行ベクトル上への)射影が、射影モジュール910および再帰的合計モジュール920によって実行される。測定空間における雑音のみの量子化値のヒストグラムを表すベクトルy”は、同一空間における雑音のある信号の量子化値のヒストグラムを表すベクトルy’から減算モジュール925において減算される前に、この同一モジュールに局所的に記憶され得る。
【0199】
代替的に、再帰的総和モジュールは、カウンタの2つのバンクを含んでもよく、第1のバンクは、(測定空間に射影される)雑音ヒストグラム専用であり、第2のバンクは、(同一空間に射影される)雑音のある信号のヒストグラム専用である。雑音測定および雑音のある信号の測定は、雑音の放出に従うようにインターレースされ得る。
【0200】
いずれにせよ、測定空間における量子化された雑音のある値のヒストグラムと、同一空間におけるノイズのみの離散化値のヒストグラムとの間の差を表す差y=y’-y”は、目標変数(スカラーまたはベクトル)を予測するために、事前に訓練された人工ニューラルネットワーク930への入力変数の役割をし得る。
【0201】
代替的に、ニューラルネットワークは、第1の入力変数y’を受信する第1の分岐および第2の入力変数y”を受信する第2の分岐によって形成された差異入力を含んでもよい。
【0202】
図10は、本発明の第4の実施形態による、物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイスの構造を概略的に表す。
【0203】
本実施形態は、並列で動作する複数のQ個のヒストグラム測定チェーンを含み、各チェーンが、射影モジュール1010および再帰的総和モジュール1020を含む点で、前の実施形態とは異なる。
【0204】
例えば、これらのヒストグラム測定チェーンはそれぞれ、センサのアレイのQ個のSPADセンサに関連付けられる。
【0205】
異なるセンサから導出された物理量の量子化値が、
【0206】
【数58】
【0207】
と示される。
【0208】
同一測定空間に射影される、異なるセンサから導出された量子化値のそれぞれのヒストグラムを表すベクトル
【0209】
【数59】
【0210】
は、目標変数(スカラーまたは多項式)を予測するために事前に訓練されたグローバルニューラルネットワークに、連結形態で供給され得る。
【0211】
例えば、ニューラルネットワークは、この場合、近隣画素間の相互作用を考慮に入れるために畳み込み型のものであってもよい。
【0212】
ニューラルネットワークは、オンライン画像認識などの高水準予測を提供するように適合された深層ネットワークであってもよい。
【0213】
必要に応じて、異なる測定チェーンが、目標変数の予測におけるセンサの関連性に応じて、特に異なる量子化ステップおよび/または異なる圧縮係数2/Kを提供することによって、異なる処理を実行してもよい。
【0214】
さらに、第4の実施形態は、第3の実施形態と結合されて、ベクトル
【0215】
【数60】
【0216】
から、異なるセンサに関連付けられた雑音ヒストグラムを表すベクトル
【0217】
【数61】
【0218】
を測定空間においてそれぞれ減算し得る。1つの変形によれば、取得チェーンの1つ、およびその結果センサの1つが雑音ヒストグラムの取得に特化されてもよく、その際他のセンサの全てに関連すると推定されて、取得されたベクトル
【0219】
【数62】
【0220】
は、ニューラルネットワークの入力において、q=1、...、Q、
【0221】
【数63】
【0222】
であるベクトル
【0223】
【数64】
【0224】
から減算され得る。
【0225】
目標変数(スカラーまたは多項式)を予測するためのデバイスの実施形態の全てにおいて、ニューラルネットワークは、当業者に既知の方式で、目標変数(例えば、回帰用の数値および分類用のクラス識別子)の値によってラベリングされたヒストグラムから前段階において事前に訓練されている。
【符号の説明】
【0226】
410、510、610、710、810、910、1010 射影モジュール
511、611 トランスコーダ、符号化器
513、613 第1の層
515、615 第2の層
430、730、830、930、1030 ニューラルネットワーク
520、620、820 カウント回路
420、720、920、1020 再帰的総和モジュール
925 減算モジュール
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
統計分布の測定ベクトルを提供するための、物理量の前記分布の圧縮測定のための方法であって、前記方法が、
(a)センサによって提供された前記物理量の量子化値を観測するステップ(310)であって、前記量子化値が、1つの単一要素が非ゼロであり、かつ1に等しい、サイズ2のバイナリベクトルによって表され、前記要素の位置が、基数2の量子化セット内の前記量子化値を表す、観測するステップ(310)と、
(b)前記量子化値から、b<K<2である次数Kの測定空間における前記量子化値を表すベクトルを、量子化値のセットから前記測定空間への単射関数を用いて生成するステップ(320)と、
前のステップで取得した前記量子化値を表す前記ベクトルから前記測定ベクトルをオンザフライで更新するステップ(330)であって、前記測定ベクトルの要素が、代表ベクトルの対応要素が第1のバイナリ値をとる場合にインクリメントされ、前記代表ベクトルの前記対応要素が前記第1のバイナリ値とは逆の第2のバイナリ値をとる場合にデクリメントされる、更新するステップ(330)と、
を含む、反復ループを含み、
(c)前記量子化値を表す前記ベクトルが、複数のK個のベクトル上に前記バイナリベクトルを射影することによって得られ、前記ベクトルのそれぞれの前記要素が、疑似乱数列から導出されるバイナリ値であり、
前記単射関数が、サイズ2 の前記バイナリベクトルの、前記バイナリベクトルの前記非ゼロ要素の前記位置を符号化するサイズbの重み付きバイナリワードへの変換(511、611)、前記重み付きバイナリワードのビットをランダム化して第1のランダム化バイナリワードを提供するステップ、続いて、サイズKの第2のランダム化バイナリワードを取得するための前記第1のランダム化バイナリワードのビットに対するコンビネータ論理ステップ、を含み、前記第2のランダム化バイナリワードの各ビットが、前記第1のバイナリ値または前記第2のバイナリ値に等しいかどうかに応じてカウンタを1増分ずつインクリメントまたはデクリメントすることを特徴とする、物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項2】
前記第1のランダム化バイナリワードが、前記重み付きバイナリワードの前記ビットを複製およびシャッフルすることによって取得されることを特徴とする、請求項に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項3】
前記増分が、前記物理量の前記量子化値とは無関係であることを特徴とする、請求項1または2に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項4】
前記増分が、前記物理量の前記量子化値に依存し、前記物理量の前記量子化値の発生確率が低いときに、前記増分の絶対値がさらに大きくなるように選択されることを特徴とする、請求項またはに記載の物理量の統計分布の圧縮測定のための方法。
【請求項5】
物理量の統計分布に応じて目標変数を予測する方法であって、前記統計分布が請求項1からのいずれか一項に記載の圧縮測定方法を用いて測定されること、および事前に訓練された人工ニューラルネットワークを用いて、前記目標変数が前記測定ベクトルから予測されることを特徴とする、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測する方法。
【請求項6】
統計分布の測定ベクトルを提供するために、物理量の前記分布を測定するデバイスであって、前記デバイスが、
(a)前記物理量の量子化値を提供するセンサであって、前記量子化値が、1つの単一要素が非ゼロであり、かつ1に等しい、サイズ2のバイナリベクトルによって表され、前記要素の位置が、基数2の量子化値のセット内の前記量子化値を表す、センサと、
(b)b<K<2である次数Kの測定空間に対する複数のK個のベクトル上に前記バイナリベクトルを射影することによって前記量子化値を表すベクトルを取得する射影モジュール(410)と、
前のステップで取得した前記量子化値を表す前記ベクトルから前記測定ベクトルをオンザフライで更新するための再帰的総和モジュール(420)であって、前記測定ベクトルの要素が、代表ベクトルの対応要素が第1のバイナリ値をとる場合にインクリメントされ、前記代表ベクトルの前記対応要素が前記第1のバイナリ値とは逆の第2のバイナリ値をとる場合にデクリメントされる、再帰的総和モジュール(420)と、
を備え、
(c)前記量子化値を表す前記ベクトルが、複数のK個のベクトル上に前記バイナリベクトルを射影することによって得られ、前記ベクトルのそれぞれの前記要素が、疑似乱数列から導出されるバイナリ値であり、
前記射影モジュール(510、610)が、サイズ2 の前記バイナリベクトルをサイズbの重み付きバイナリワードに変換するための符号化器(511、611)を含むことを特徴とする、物理量の統計分布を測定するデバイス。
【請求項7】
前記射影モジュールが、第1のランダム化バイナリワードを提供するために前記重み付きバイナリワードのビットを複製およびシャッフルするように適合された第1の層(513、613)と、前記第1のランダム化バイナリワードのビットに対してコンビネータ論理演算を実行してサイズKの第2のランダム化バイナリワードを、前記量子化値を表すベクトルとして提供するように適合された第2の層(515、615)と、を含むランダム化回路(513、515;613、615)を含むことを特徴とする、請求項に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項8】
前記再帰的総和モジュール(520、620)が、K個のカウンタのバンクを含み、各カウンタが、前記第2のランダム化バイナリワードのビットを受信し、前記ビットが、前記第1のバイナリ値または前記第2のバイナリ値に等しいかどうかに応じて前記カウンタを1増分ずつインクリメントまたはデクリメントすることを特徴とする、請求項またはに記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項9】
前記増分が、前記物理量の離散値とは無関係であることを特徴とする、請求項に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項10】
前記増分が、前記物理量の離散値に依存し、前記物理量の前記量子化値の発生確率が低いときに、前記増分の絶対値がさらに大きくなることを特徴とする、請求項に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項11】
前記センサ上に信号が存在しないときに得られる第1の測定ベクトル(y”)を記憶し、前記センサ上に信号が存在するときに得られる第2の測定ベクトル(y’)から前記第1の測定ベクトルを減算するための減算モジュール(925)を、前記再帰的総和モジュールの前記出力において備えることを特徴とする、請求項から10のいずれか一項に記載の物理量の統計分布の圧縮測定のためのデバイス。
【請求項12】
物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイスであって、請求項から10のいずれか一項に記載の前記統計分布の圧縮測定のためのデバイスと、前記測定ベクトル(y)を入力変数として受信し、前記目標変数の予測
【数1】
を出力として提供する、事前に訓練された人工ニューラルネットワーク(430)と、を備えることを特徴とする、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイス。
【請求項13】
物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイスであって、請求項から10のいずれか一項に記載の前記物理量の圧縮測定のための複数(Q)のデバイスを備え、各圧縮測定デバイスが、別個の基本センサに関連付けられ、各圧縮測定デバイスが、射影モジュール(1010)および再帰的総和モジュール(1020)を含み、前記予測デバイスが、前記圧縮測定デバイスによってそれぞれ提供された前記測定ベクトルを入力変数として受信し、前記目標変数の予測
【数2】
を出力として提供する、事前に訓練された人工ニューラルネットワーク(1030)をさらに含むことを特徴とする、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイス。
【請求項14】
物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイスであって、請求項11に記載の前記統計分布の圧縮測定のためのデバイスと、前記第1の測定ベクトルと前記第2の測定ベクトルとの差を入力変数として受信し、前記目標変数の予測
【数3】
を出力として提供する、事前に訓練された人工ニューラルネットワーク(930)と、を備えることを特徴とする、物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイス。
【請求項15】
前記目標変数の前記予測が、回帰演算または分類演算であることを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載の物理量の統計分布に応じて目標変数を予測するためのデバイス。
【国際調査報告】