(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】画像処理のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240124BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240124BHJP
G06T 7/194 20170101ALI20240124BHJP
【FI】
G06T7/00 630
C12Q1/68
G06T7/194
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535782
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 US2021062225
(87)【国際公開番号】W WO2022125558
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523293518
【氏名又は名称】エニュメラ・モレキュラー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Enumera Molecular, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ボルマン,ブラディスラブ
【テーマコード(参考)】
4B063
5L096
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QS39
4B063QX02
5L096FA02
5L096FA32
5L096FA52
5L096GA51
(57)【要約】
画像を処理してサンプルを解析するための方法、システム、コンピュータプログラム、及び命令を含むコンピュータ可読媒体が記載され、処理は、例えば、蛍光信号、発光信号、及び/又は比色信号などの1つ以上の信号に関連する画像の領域を同定するためにスペクトル分離を実行することを含む。本発明は、例えば、分子、分子複合体、細胞、細胞内構造、微生物などを検出及び/又は定量する目的などのための、標識されたサンプルの解析との関連で用途を見出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む画像データを受信するステップと、
各単一チャネル画像の画像セグメント化を個別に実行して、対象物を形成するピクセルのセットを同定するステップと、
前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルについて少なくともピクセル分離を実行して、前記分離ピクセルのそれぞれにおいて、それぞれのチャネルにおける信号の推定存在量を決定するステップと、
前記同定された対象物のそれぞれについて、
前記それぞれの対象物における前記ピクセルの前記推定存在量に基づいて、前記複数のチャネルのうちの1つとして候補チャネルを同定するステップと、
1つ以上の条件が満たされる場合に、前記画像セグメント化のステップの結果から前記対象物を除去するステップであって、前記1つ以上の条件が、前記候補チャネルが前記対象物が同定された前記チャネルとは異なることを含み、それにより、更新された画像セグメント化の結果を取得する、ステップと、
を含む、画像を処理する方法。
【請求項2】
前記1つ以上の条件は、前記候補チャネルに関連付けられた信号のソースが、前記対象物が同定された前記チャネル内で信号を生成することが知られているソースであることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ピクセル分離は、前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルに関してのみ実行される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
候補チャネルを前記複数のチャネルのうちの1つとして同定する前記ステップは、単一のチャネルを前記対象物の各ピクセルに割り当てるステップであって、分離ピクセルごとに、前記単一のチャネルが前記ピクセルの前記推定存在量に基づいて割り当てられる、ステップと、前記対象物における最高数のピクセルに関連付けられる単一のチャネルを前記対象物における候補チャネルとして割り当てるステップとを含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
単一のチャネルを前記対象物における各分離ピクセルに割り当てる前記ステップは、前記それぞれの分離ピクセルの最大推定存在量に関連付けられる単一のチャネルを割り当てるステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対象物における候補チャネルを同定する前記ステップは、前記対象物のピクセルにおける前記推定存在量に基づいて、前記対象物における要約された推定存在量のセットを決定するステップを含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のチャネルのうちの1つとして候補チャネルを同定する前記ステップは、最も高い要約された推定存在量に関連付けられる単一のチャネルを前記対象物における前記候補チャネルとして割り当てるステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対象物における要約された推定存在量のセットは、前記対象物における前記ピクセルの前記推定存在量のチャネルごとの平均など、前記対象物における前記ピクセルの前記推定存在量の中心性の指標として取得される、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の条件は、前記候補チャネルに属する前記対象物と前記対象物が同定された前記チャネルとの相対尤度が所定の閾値を上回ることを含み、任意選択的に、前記相対尤度がオッズ比である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
対象チャネルに属する前記対象物の前記尤度は、前記対象物における前記ピクセルに関連付けられた前記対象チャネルにおける前記推定存在量に基づいて決定された、前記対象チャネル(
)における、前記対象物に関する要約推定存在量を使用して決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象チャネルに属する前記対象物の前記尤度が
として決定され、
は、前記対象チャネルにおける、前記対象物に関する前記要約された推定存在量である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
画像セグメント化を実行する前記ステップは、前記単一チャネル画像のそれぞれにおける前景ピクセルを同定するステップを含み、対象物が前景ピクセルのみを含む、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
背景ピクセルを所定の値に設定するステップを更に含み、前記所定の値が全ての前景ピクセルの強度よりも低い、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
対象単一チャネル画像内の前景ピクセルを同定する前記ステップは、
1つ以上の対応する陰性対照画像を使用して、ピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差に関する閾値を定義するステップと、
前記対象画像内の前記ピクセルに前記閾値を適用するステップであって、前記ピクセルの前記強度と対応する近傍ピクセル強度との間の前記差が前記閾値以上である場合に、ピクセルが前景として同定される、ステップと、
を含む請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差に関する閾値を定義する前記ステップは、前記1つ以上の陰性対照画像におけるピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差の分布を取得するステップと、前記閾値を前記分布におけるパーセンタイル値として同定するステップとを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記画像セグメント化の前記ステップの結果は、対象物内のピクセルが対象物内にないピクセルとは異なるように標識されるセグメント化マップを含み、前記画像セグメント化の前記ステップの結果から対象物を除去する前記ステップは、対象物内にないピクセルの前記標識と一致するように、前記セグメント化マップの内で、前記対象物を形成する前記ピクセルを再標識化するステップを含む、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ユーザインタフェースを使用して、前記単一チャネル画像の少なくとも1つにおける前記更新された画像セグメント化結果をユーザに出力するステップを更に含み、任意選択的に、出力する前記ステップは、1つ以上の対応する単一チャネル画像にオーバーレイされた前記更新された画像セグメント化結果を表示するステップを含む、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記単一チャネル画像が顕微鏡画像であり、任意選択的に、前記単一チャネル画像が蛍光顕微鏡画像であり、及び/又は前記サンプルが複数の蛍光標識を含むサンプルであり、各蛍光標識が前記複数のチャネルのうちの1つと関連付けられる、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記更新された画像セグメント化結果を使用して、前記単一チャネル内の前記対象物に関連付けられた信号の存在及び/又は存在量を同定するステップを更に含む、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
サンプルを解析するための方法において、
前記サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む画像データを受信するステップと、
各単一チャネル画像の画像セグメント化を個別に実行して、対象物を形成するピクセルのセットを同定するステップと、
前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルについて少なくともピクセル分離を実行して、前記分離ピクセルのそれぞれにおいて、それぞれのチャネルにおける信号の推定存在量を決定するステップと、
前記同定された対象物のそれぞれについて、
前記それぞれの対象物における前記ピクセルの前記推定存在量に基づいて、前記複数のチャネルのうちの1つとして候補チャネルを同定するステップと、
1つ以上の条件が満たされる場合に、前記画像セグメント化ステップの結果から前記対象物を除去するステップであって、前記1つ以上の条件が、前記候補チャネルが前記対象物が同定された前記チャネルとは異なることを含み、それにより、更新された画像セグメント化結果を取得する、ステップと、
を含む方法。
【請求項21】
請求項1から請求項18に記載の特徴のいずれかを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む画像データを取得するステップ、及び/又は
1つ以上の蛍光標識、発光標識又は比色標識を使用して前記サンプルを標識するステップであって、各標識が前記複数のチャネルのうちの1つと関連付けられる、ステップ、
を更に含む、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプルは、核酸サンプル、DNAサンプル、ゲノムDNAサンプル又は無細胞DNAサンプルである、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含む少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備える、顕微鏡画像を処理するためのシステム。
【請求項25】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含む1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2020年12月11日に出願された米国仮出願第63/124,525号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、画像を解析するための、特に画像内のスペクトルクロストークを処理するための方法に関する。これらの技術は、例えば、別個の構造をこれらの構造に関連する信号ソース間のクロストークの存在下で解決することが望ましい任意のサンプル解析で用途を見出す。そのような状況は、一般に、蛍光顕微鏡法で起こる。したがって、本技術は、蛍光標識された生物学的サンプル、特に複数の蛍光色素で標識されたサンプルの解析との関連で特定の用途を見出す。これは、例えば、技術が特に有利であってもよい分子計数(例えば、遺伝子解析との関連で)、細菌計数などにおいて当てはまってもよい。
【背景技術】
【0003】
蛍光撮像は、生物学的サンプルを解析するための強力な技術であり、分子(例えば、分子計数との関連で)から細胞及び細胞内構造に及ぶ蛍光色素で標識された構造の検出及び空間的局在化を可能にする。多くの用途では、複数の蛍光色素を同時に撮像することが望ましい。例えば、分子計数との関連で、異なるタイプの対象分子を専用のフルオロフォアでタグ付けしてもよく、異なるサンプルを異なるフルオロフォアでタグ付けして一緒に撮像するなどしてもよい。細胞計数との関連で、異なるタイプの細胞を異なるフルオロフォア又はフルオロフォアの組み合わせで(例えば、異なるタイプの細菌、組織サンプル中の異なるタイプの細胞などを計数する目的で)標識することができる。別の例として、対象の生物学的機構を調査し、病理学的評価などを行うために、複数の細胞型又は細胞内構造を異なるように標識することができる。したがって、異なるタグ付けされた構造が多重化されることが一般的であり、そのような異なるタグ付けされた構造が顕微鏡画像において区別可能であることが望ましい。
【0004】
撮像によって検出可能な多くの異なるタイプの標識が現在利用可能であるが、実際には、蛍光顕微鏡画像において区別可能な異なる標識の数は、「スペクトルクロストーク」の現象によって厳しく制限される(「ブリードスルー」と呼ばれることもある)。スペクトルクロストークは、撮像される周波数の範囲内での重複放射に起因して、異なる標識に関連付けられた信号の検出において生じる干渉を指す。例えば、これは、2つのフルオロフォアが蛍光チャネルに関連付けられたバンドパスフィルタによって選択される周波数の範囲で発光しているときに発生し、それにより、このチャネル内の信号の強度は、フルオロフォアの一方又は両方の存在を示すことができる。スペクトルクロストークは、信号が少なくとも部分的に共局在化し、及び/又は信号の正確な定量が望ましい場合に特に問題となる。
【0005】
スペクトルクロストークの問題に対処するための様々な手法が既に提案されており、これらはまとめて「スペクトル分離」法と呼ばれる。一般的に使用される手法は「線形分離」であり、画像内の各ピクセルの各蛍光チャネルの信号は、全てのフルオロフォアの基準スペクトルの線形結合としてモデル化される。ピクセルごとに、線形分離は、各個々のスペクトルの重み(「推定存在量」とも呼ばれる)を抽出し、重みはフルオロフォアの濃度を表すと仮定される。この方法は、蛍光顕微鏡法を超える広範囲の撮像モダリティに適用されている。しかしながら、この手法は、信号の組み合わせにおける線形性、並びにピクセル間の完全な独立性を仮定する。これらの仮定に起因して、非線形効果(例えば、急冷、光退色及び2光子吸収)の存在に対処することはできず、線形分離を有する構造への正しい標識の割り当ての信頼性は、データ内の信号対雑音比に強く依存する。これらの制限は、方法の精度に影響を及ぼす。これらの制限の幾つかに対処するために、より複雑な方法が提案されてきた。
【0006】
例えば、Valmら(PLOS One,2016)は、標識標本に関する先験的な知識及び分離溶液に対する二値標識制約を利用するスペクトル画像解析アルゴリズムについて記載しており、蛍光in situハイブリダイゼーションによって標識された微生物の同定におけるその使用を実証している。この手法は、(i)複数の励起画像の連結(各ピクセルで蛍光体存在量を割り当てる際に励起スペクトルと発光スペクトルの両方から利用可能な情報を効果的に使用する)、(ii)分離前の生スペクトル画像内のセグメント化された対象物の全てのピクセルにわたるピクセル強度の平均化(各対象物に対して1回の線形分離を効果的に解決する)、及び(iii)最小二乗解に対する二値標識制約による線形分離(各対象物が正確に2つの蛍光体で標識されていると仮定する)の3つのステップを含む。ステップ(ii)及び(iii)は、生スペクトル画像のレベルで対象物を同定し、次いで、そのような各対象物に蛍光体の単一の組み合わせを割り当てる。別の例として、McRaeら(PLOS One,2019)は、教師なし機械学習クラスタリングを使用して混合画像から個々のフルオロフォアのスペクトルシグネチャを学習し、チャネルを盲目的に分離するスペクトル分離方法を記載し、異なる核、アクチン及びミトコンドリア色素で染色された細胞の分離画像におけるその使用を実証している。この手法は、(i)メディアンフィルタを生画像に適用すること、(ii)k=フルオロフォアの数+1(背景用)でk平均クラスタリングを適用してピクセルをクラスタリングすること、及び(iii)生データのチャネル全体でピクセルの最高強度として選択されたkチャネル(クラスタごとに1つ)及びピクセル強度を有する新しい出力画像を作成することを含む。ステップ(ii)及び(iii)は、各ピクセルが単一のフルオロフォアの信号のみを示し、最も強いチャネル内の信号の全てをそのフルオロフォアに帰属させることを効果的に仮定する。両方の手法は、少なくとも異なるフルオロフォアに関連する構造間に重複がないことを含む強力な仮定を行い、潜在的に貴重な情報を破棄する。
【0007】
本発明は、スペクトル分離のための従来技術の方法に関連する問題の幾つかを軽減することを試みる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Valmら、PLOS One,2016
【非特許文献2】McRaeら、PLOS One,2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、画像の解析におけるスペクトルクロストークに対処するための方法、システム、コンピュータプログラムプロダクト、及び画像の解析におけるスペクトルクロストークに対処するための命令を記憶するコンピュータ可読媒体を提供する。
【0010】
この技術は、例えば、蛍光画像の解析において、例えば、分子計数、細胞生物学、細菌計数、病理学などを含む多くの状況において、蛍光標識されたサンプルを解析するための用途を見出す。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様によれば、画像を処理する方法が提供され、該方法は、サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む画像データを受信するステップと、各単一チャネル画像の画像セグメント化を個別に実行して、対象物を形成するピクセルのセットを同定するステップと、前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルについて少なくともピクセル分離を実行して、前記分離ピクセルのそれぞれにおける前記それぞれのチャネル内の信号の推定存在量を決定するステップとを含む。方法は、前記同定された対象物のそれぞれについて、それぞれの対象物におけるピクセルの推定存在量に基づいて、複数のチャネルのうちの1つとして候補チャネルを同定するステップと、1つ以上の条件が満たされる場合、画像セグメント化ステップの結果から対象物を除去するステップであって、1つ以上の条件が、候補チャネルが、対象物が同定されたチャネルとは異なることを含み、それにより、更新された画像セグメント化結果を取得する、ステップとを更に含む。
【0012】
本発明者らは、ピクセル単位で次にチャネル固有の対象物単位で分離を実行することにより、利用可能な画像解像度で対象物に関連付けられた信号の物理ソース間に部分的な重複が存在する場合でも、チャネル内の真の信号に関連付けられた対象物を除去することなく、スペクトルクロストークから生じる対象物を除去することが可能であることを確認した。
【0013】
方法は、以下の特徴のうちの任意の1つ以上を有してもよい。
【0014】
1つ以上の条件は、候補チャネルに関連付けられた信号のソースが、対象物が同定されたチャネルで信号を生成することが知られているソースであることを更に含んでもよい。この基準が検証されることを更に要求することによって、方法は、撮像されるサンプルの既知の又は仮定された特性がクロストークの存在をサポートする場合にのみ、想定されたクロストークに起因して対象物が除去されることを保証する。結果として、スペクトルクロストークの証拠を示す対象物を依然として効率的に除去しながら、除去される真の対象物の数が低減される。
【0015】
ピクセル分離は、前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルに対してのみ実行されてもよい。前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルに対してピクセルの分離を実行すると、チャネル間で共有される全てのピクセルの推定存在量が得られる。ピクセル分離ステップは、本明細書に記載の対象物分離プロセスの性能に影響を与えることなく、ピクセル分離の計算負荷を低減するために、そのような共有ピクセルに対してのみ実行されてもよい。或いは、ピクセル分離は、少なくとも1つの同定された対象物の一部を形成する全てのピクセルに対して実行されてもよい。これはまた、対象物分離プロセスの性能に影響を与えることなく、ピクセルの分離の計算負荷を低減することができる。したがって、この方法は、前記同定された対象物のうちの少なくとも1つの一部を形成するピクセルについてのみピクセル分離を実行することを含んでもよい。これは、それぞれの画像において同定されたピクセルの相互参照を必要としない。
【0016】
候補チャネルを複数のチャネルのうちの1つとして同定するステップは、対象物内の各ピクセルに単一のチャネルを割り当てるステップを含んでもよい。分離ピクセルごとに、ピクセルの推定存在量に基づいて単一のチャネルを割り当ててもよい。候補チャネルを複数のチャネルのうちの1つとして同定するステップは、対象物内の最高数のピクセルに関連付けられた単一のチャネルを対象物の候補チャネルとして割り当てるステップを更に含んでもよい。対象物内の各分離ピクセルに単一のチャネルを割り当てるステップは、それぞれの分離ピクセルの最大推定存在量に関連付けられた単一のチャネルを割り当てるステップを含んでもよい。
【0017】
対象物の候補チャネルを同定するステップは、対象物のピクセルの推定存在量に基づいて、対象物の要約された推定存在量のセットを決定するステップを含んでもよい。各対象物の要約された存在量のセットを決定するステップは、分離されなかった対象物内の全てのピクセル/単一の対象物に属するピクセルの推定存在量を関連付けるステップを含んでもよい。例えば、分離されなかったピクセルについての推定存在量は、そのピクセルが属する対象物が同定されたチャネルについての推定存在量に所定の高い値を設定し、他の全てのチャネルについての推定存在量に所定の低い値を設定することによって得ることができる。
【0018】
候補チャネルを複数のチャネルのうちの1つとして同定するステップは、最も高い要約された推定存在量に関連付けられた単一のチャネルを対象物の候補チャネルとして割り当てるステップを含んでもよい。
【0019】
対象物の要約された推定存在量のセットは、対象物内のピクセルの推定存在量のチャネルごとの平均など、対象物内のピクセルの推定存在量の中心性の指標として取得されてもよい。
【0020】
1つ以上の条件は、候補チャネルに属する対象物と、対象物が同定されたチャネルとの相対尤度が所定の閾値を上回ることを含んでもよく、任意選択で、相対尤度はオッズ比である。対象チャネルに属する対象物の尤度は、対象物のピクセルに関連付けられた対象チャネルの推定存在量に基づいて決定された、対象チャネル(
)における対象物の要約された推定存在量を使用して決定されてもよい。対象チャネルに属する対象物の尤度は
として決定され、この場合、
は、対象チャネル内の、対象物の要約された推定存在量である。
【0021】
画像セグメント化を実行するステップは、単一チャネル画像のそれぞれにおける前景ピクセルを同定するステップを含んでもよく、対象物は前景ピクセルのみを含む。前景ピクセルを同定するステップは、前景ピクセルではない画像内の任意のピクセルとして背景ピクセルを同定するステップを含んでもよい。方法は、背景ピクセルを所定の値に設定するステップを更に含んでもよく、所定の値は、全ての前景ピクセルの強度よりも低い。
【0022】
対象単一チャネル画像内の前景ピクセルを同定するステップは、1つ以上の対応する陰性対照画像を使用して、ピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差に関する閾値を定義するステップと、対象画像内のピクセルに閾値を適用するステップであって、前記ピクセルの強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差が閾値以上である場合に、ピクセルが前景として同定される、ステップとを含んでもよい。ピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差に関する閾値を定義するステップは、1つ以上の陰性対照画像におけるピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差の分布を取得するステップと、閾値を前記分布におけるパーセンタイル値として同定するステップとを含んでもよい。
【0023】
画像セグメント化ステップの結果は、対象物内のピクセルが対象物内にないピクセルとは異なるように標識されたセグメント化マップを含んでもよい。画像セグメント化ステップの結果から対象物を除去するステップは、対象物内にないピクセルの標識と一致するように、セグメント化マップ内の対象物を形成するピクセルに再標識付けするステップを含んでもよい。
【0024】
画像セグメント化ステップは、画像内の全ての対象物が処理された後に、全体的に又は部分的に再実行されてもよい。これは、下方処理ステップにおける一貫性にとって有利であってもよい。
【0025】
方法は、ユーザインタフェースを使用して、単一チャネル画像のうちの少なくとも1つの更新された画像セグメント化結果をユーザに出力するステップを更に含んでもよい。出力は、1つ以上の対応する単一チャネル画像にオーバーレイされた更新された画像セグメント化結果を表示することを含んでもよい。ユーザインタフェースは、ディスプレイ、又は視覚情報をユーザに伝達する任意の他の手段を含んでもよい。
【0026】
当業者が理解するように、本態様に係る方法は、精神的に実行することができないほど複雑である。したがって、本明細書に記載の方法は、典型的にはコンピュータ実装される。
【0027】
単一チャネル画像は顕微鏡画像であってもよい。単一チャネル画像は、蛍光顕微鏡画像であってもよい。サンプルは、複数の蛍光標識を含むサンプルであってもよく、各蛍光標識は、複数のチャネルのうちの1つに関連付けられている。
【0028】
方法は、更新された画像セグメント化結果を使用して、単一チャネル内の対象物に関連する信号の存在及び/又は存在量を同定するステップを更に含んでもよい。
【0029】
サンプルは、核酸サンプル、DNAサンプル、ゲノムDNAサンプル又は無細胞DNAサンプルであってもよい。この方法を使用して、1つ以上の標識核酸の存在及び/又は存在量を同定することができ、標識核酸は、更新された画像セグメント化結果の対象物に対応する。したがって、本明細書に記載の方法は、特定の核酸の存在及び/又は存在量を検出するために使用されてもよい。これは、例えば、胎児DNA(例えば、無細胞DNAサンプル)を含む母体サンプルを解析することによって、例えば胎児異数性などの異数性を検出するために使用されてもよい。
【0030】
第2の態様によれば、顕微鏡画像を処理するためのシステムが提供され、該システムは、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、少なくとも1つのプロセッサに、第1の態様の任意の実施形態の方法を実行させる命令を含む少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体とを備える。
【0031】
システムは、ユーザインタフェースを更に備えてもよい。システムは、画像取得手段を更に備えてもよい。画像取得手段は、顕微鏡を含んでもよい。顕微鏡は、蛍光顕微鏡であってもよい。システムの要素は、命令、データ(例えば、撮像データ、セグメント化結果など)などの情報を交換することができるように通信可能に結合される。
【0032】
第3の態様によれば、命令を含む1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体が提供され、命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、少なくとも1つのプロセッサに、第1の態様の実施形態の方法を実行させる。
【0033】
第4の態様によれば、コードを含むコンピュータプログラムが提供され、コードは、該コードがコンピュータ上で実行されるときに、コンピュータに第1の態様の任意の実施形態の方法を実行させる。
【0034】
第5の態様によれば、サンプルを解析するための方法が提供され、該方法は、サンプルのある領域の画像データを受信するステップであって、画像データが複数の単一チャネル画像を含む、ステップと、各単一チャネル画像の画像セグメント化を個別に実行して、対象物を形成するピクセルのセットを同定するステップと、前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルについて少なくともピクセル分離を実行して、前記分離ピクセルのそれぞれにおいて、それぞれのチャネルにおける信号の推定存在量を決定するステップと、前記同定された対象物のそれぞれについて、それぞれの対象物におけるピクセルの推定存在量に基づいて、複数のチャネルのうちの1つとして候補チャネルを同定するステップと、1つ以上の条件が満たされる場合に、画像セグメント化ステップの結果から対象物を除去するステップであって、1つ以上の条件が、候補チャネルが対象物が同定されたチャネルとは異なることを含み、それにより、更新された画像セグメント化結果を取得する、ステップとを含む。サンプルのある領域の画像データを取得するステップは、サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む画像データを受信するステップを含んでもよい。サンプルのある領域の画像データを取得するステップは、サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む画像データを取得するステップを含んでもよい。
【0035】
方法は、サンプルを得るステップ、及び/又はサンプルを1つ以上の電磁信号ソースで標識するステップを含んでもよい。1つ以上の電磁信号ソースは、蛍光標識、発光標識、及び比色標識から選択されてもよい。例えば、1つ以上の電磁信号ソースは蛍光色素であってもよい。
【0036】
方法は、第1の態様に関連して説明された特徴のいずれかを有してもよい。
【0037】
第6の態様によれば、サンプルの画像内の対象物を同定する方法が提供され、各対象物は、電磁信号の特定のソース又はソースの組み合わせに関連付けられ、方法は、サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む画像データを受信するステップと、各単一チャネル画像の画像セグメント化を個別に実行して、対象物を形成するピクセルのセットを同定するステップと、前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルについて少なくともピクセル分離を実行して、前記分離ピクセルのそれぞれにおいて、それぞれのチャネルにおける信号の推定存在量を決定するステップと、前記同定された対象物のそれぞれについて、それぞれの対象物におけるピクセルの推定存在量に基づいて、複数のチャネルのうちの1つとして候補チャネルを同定するステップと、1つ以上の条件が満たされる場合に、画像セグメント化ステップの結果から対象物を除去するステップであって、1つ以上の条件が、候補チャネルが対象物が同定されたチャネルとは異なることを含み、それにより、更新された画像セグメント化結果を取得する、ステップとを含む。
【0038】
サンプルは、標識されたサンプルであってもよく、電磁信号ソースは、単一の標識(例えば、蛍光色素)又は標識の組み合わせ(例えば、蛍光色素)であってもよい。
【0039】
方法は、第1の態様に関連して説明された特徴のいずれかを有してもよい。
【0040】
更なる態様によれば、サンプル中の標識構造を計数する方法が提供され、該方法は、サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む画像データを受信するステップであって、標識構造が、チャネルの少なくとも1つの電磁信号に関連付けられる、ステップと、各単一チャネル画像の画像セグメント化を個別に実行して、対象物を形成するピクセルのセットを同定するステップと、前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルについて少なくともピクセル分離を実行して、前記分離ピクセルのそれぞれにおいて、それぞれのチャネルにおける信号の推定存在量を決定するステップと、前記同定された対象物のそれぞれについて、それぞれの対象物内のピクセルの推定存在量に基づいて、複数のチャネルのうちの1つとして候補チャネルを同定するステップと、1つ以上の条件が満たされる場合、画像セグメント化ステップの結果から対象物を除去するステップであって、1つ以上の条件が、候補チャネルが、対象物が同定されたチャネルとは異なることを含み、それにより、更新された画像セグメント化結果を取得する、ステップと、更新された画像セグメント化結果において、標識構造が電磁信号に関連付けられている少なくとも1つのチャネル内の対象物の数を計数するステップであって、少なくとも1つのチャネル内の対象物の数が、サンプルの領域内の標識構造の数を表す、ステップとを含む。対象物は、各チャネルで別々に計数されてもよい。
【0041】
標識構造は、単一の標識(例えば、蛍光色素)又は標識の組み合わせ(例えば、蛍光色素)であってもよい1つ以上の電磁信号ソースに関連付けられてもよい。
【0042】
方法は、前述の態様に関連して説明された特徴のいずれかを有してもよい。
【0043】
定義
本発明の理解を容易にするために、幾つかの用語及び語句を以下に定義する。
【0044】
本明細書で使用される場合、スペクトルクロストーク(本明細書では単に「クロストーク」とも呼ばれる)は、撮像された周波数(チャネル)の範囲内での重複放射により、異なる電磁信号ソース(例えば、蛍光標識などの標識)に関連する信号の検出で発生する干渉を指す。例えば、スペクトルクロストークは、第1の波長又は波長範囲に関連すると想定される信号が、第2の(異なる)波長又は波長範囲の信号を記録するチャネルで検出されるときに発生する。第1の波長又は波長範囲に関連すると仮定される信号は、第1の電磁信号ソースに関連してもよい(すなわち、第1の電磁信号ソースによって生成されてもよい)。電磁信号の第2のソースは、第2の波長又は波長範囲に関連すると仮定してもよい。したがって、第2の波長又は波長範囲の信号を記録するチャネルは、第2の電磁信号ソースに関連すると仮定することができるが、記録される信号はまた、第1の電磁信号ソースの存在によって影響を受ける可能性がある。チャネルに記録された波長が、複数の電磁信号ソースの中で、前記電磁信号ソースが前記波長において最も高い相対放射を有するように選択される場合、チャネルは、単一の電磁信号ソースと関連付けられると仮定されてもよい。概念は、原則として、電磁信号及びチャネルの任意の数のソースに限定されない。また、複数のチャネルが使用される場合、1つ以上のチャネルがクロストークの対象とされ、1つ以上の(他の)チャネルがクロストークの対象とされなくてもよい。例えば、電磁信号の第1のセットのソース(1つ以上のソースを含む第1のセットのソース)はそれぞれ、第1のセットのチャネル(1つ以上のチャネルを含む第1のセットのチャネル)内のそれぞれのチャネルに関連付けられてもよく、第1のセットのチャネルはクロストークを受けず、電磁信号の第2のセットのソース(1つ以上のソースを含む第2のセットのソース)は、第2のセットのチャネル(1つ以上のチャネルを含む第2のセットのチャネル)内のそれぞれのチャネルに関連付けられてもよく、第2のセットの各チャネルは、第1のセット又は第2のセットのチャネル内の1つ以上のチャネルからクロストークを受ける。
【0045】
本明細書で使用される場合、「チャネル」(又は「撮像チャネル」)という用語は、記録された波長の全てにわたる信号が合成信号として出力されるように電磁信号が記録される波長(又は対応する周波数)の範囲を指す(例えば、単一チャネル画像であり、全てのピクセルの強度が記録された波長の信号の合成強度を反映する)。実際には、波長の範囲は、単一の波長であってもよく、又は複数の波長を含むか又は包含してもよい。複数の波長は、連続的又は不連続的であってもよい範囲に含まれてもよい。チャネルからの信号は、単色画像(本明細書では「単一チャネル画像」とも呼ばれる)として与えられてもよく、多色画像の一部を形成してもよい。単一のカラー画像は、ピクセル強度が波長範囲にわたる信号強度を表すグレースケール画像であってもよい。多色画像は、複数のチャネル(「一次色」と呼ばれることもある)のそれぞれに沿った各ピクセルの強度を含んでもよい。これらのチャネルのそれぞれに沿った強度は、多色画像を構成する原色のうちの単一の1つに対するピクセル強度を取り込むグレースケール画像として個別に記憶されてもよい。
【0046】
本明細書で使用される場合、「スペクトル分離」(本明細書では単に「分離」又は「スペクトル逆多重化」とも呼ばれる)という用語は、重なり合うスペクトルを有する電磁信号の複数のソース間の干渉を解決するプロセスを指す。特に、電磁信号の物理的に異なるソースは、複数のチャネル内の信号に関連付けられ、電磁信号のソースの位置及び/又は存在量の誤認につながる可能性がある。例えば、複数の電磁信号ソースは、色素、蛍光タンパク質などの蛍光標識、例えば光を生成する反応を触媒する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)などの発光標識(例えば、生物発光標識)、比色標識(例えば、着色生成物を生成する反応を触媒する酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、子ウシ腸アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼなど)、又は当業者に公知の任意の他の電磁信号ソースであってもよい。例えば、サンプルを多重化する目的、又は異なる標識構造を同時に検出する目的で、複数の標識(例えば、蛍光標識、発光標識、比色標識など)を使用してもよい。複数の標識(例えば、複数の蛍光色素)が使用される場合、標識の一部は、少なくとも部分的に重複する発光スペクトルを有してもよい。
【0047】
更に、複数の撮像チャネルのそれぞれにおいて特定の波長範囲が捕捉されてもよい。そのような各撮像チャネルは、複数の標識のうちの1つに関連付けられていると仮定することができる。この仮定は、チャネル内で捕捉される波長範囲内で1つの標識のみが放射する場合に妥当である。そのような場合、信号の強度は、撮像位置における標識の存在量を表す。しかしながら、チャネル内で捕捉された波長の範囲が、複数の標識が非ゼロ放射を有する範囲を含み、画像の解像度が、複数の種類の標識が同じピクセル内に位置する信号を放射し得るような解像度である場合、前記チャネル内の信号は、実際には、このチャネル内で放射する標識の存在量の組み合わせを表してもよい。これはクロストークと呼ばれる。スペクトル分離とは、そのようなクロストークの存在下で、観測された信号を複数の異なる電磁信号ソース(例えば、蛍光色素)のうちの1つ以上に帰属させるプロセスを指す。好ましい実施形態では、スペクトル分離は、1つ以上のピクセルにおける複数の異なる電磁信号ソースの相対的存在量の推定値を生成する方法を使用して実行される。「ピクセル分離」という用語は、ピクセル単位で適用される場合のスペクトル分離のプロセスを指す。好ましくは、ピクセル分離は、各分離ピクセル内の複数の異なる電磁信号ソースの相対的存在量を推定することを含む方法を使用して実行される。
【0048】
用語「盲目スペクトル分離」は、電磁信号(例えば、フルオロフォア)の異なるソースの数又はそれらの励起/発光スペクトルの事前知識のないチャネルの分離を指す。対照的に、「非盲目分離」は、分離されるべき電磁信号(例えば、フルオロフォア)の異なるソース、並びにそれらのそれぞれのスペクトルに関する事前知識を利用するスペクトル分離手法を指す。この知識は、通常、スペクトル分離行列(「スペクトル重複行列」とも呼ばれる)の形態であり、これは、画像データに表される複数のチャネルのそれぞれにおける電磁信号の異なるソースの相対発光を記録する。
【0049】
スペクトル分離行列は、典型的には、サイズn×nの行列であり、ここでnは、電磁信号(例えば、蛍光標識、発光標識、比色標識)及び対応するチャネルの異なるソースの数であり、要素aijは、チャネルi(例えば、チャネルiに記録された特定の波長で)におけるソースj(例えば、色素/標識j)の相対発光を捕捉する。電磁信号の各ソースは、チャネルに記録された波長が、電磁信号の特定のソースが検出されている複数の電磁信号のソースの中で最も高い相対放射を有する波長を含むように選択されるという意味で、チャネルに関連付けられてもよい。例えば、各チャネルは、複数の電磁信号ソースのうちの1つのピーク放射波長に対応する波長で信号を記録することができる。蛍光標識(例えば、色素、蛍光分子など)を含む複数の電磁信号ソースの特定の例では、各蛍光標識は、それぞれのピーク発光波長でそれぞれのピーク発光と関連付けられてもよく、各チャネルは、それぞれのピーク発光波長で、又はそれぞれのピーク発光波長を含む(好ましくは狭い)範囲で信号を記録してもよい。スペクトル分離行列は、特定の撮像プロセスで使用されるそれぞれの撮像チャネルのそれぞれにおける様々な電磁信号ソースの相対放射を取り込む。これらは、電磁信号ソース自体(例えば、蛍光標識の場合の励起及び発光スペクトル)、並びに使用される撮像システムに関連する複数の要因(例えば、チャネルの選択、励起源の種類、励起源のスペクトル/スペクトル、使用されるダイクロイックミラー、使用される発光フィルタ、露光時間、異なる波長における検出器の効率など)によって影響されてもよい。言い換えれば、スペクトル分離行列は、混合プロセスに影響を及ぼす1つ以上の要因を捕捉することができる係数を含む。単純な事例では、複数の蛍光標識の既知の(仮定された、実験的に決定された、又は他の方法で知られている)励起及び発光スペクトルを使用して、発光チャネルに関連する複数の蛍光標識のそれぞれのピーク発光波長での複数の蛍光標識のそれぞれの相対発光を決定することによって、スペクトル分離行列を得ることができる。したがって、励起及び/又は発光スペクトルは、電磁信号(例えば、蛍光標識)の特定の供給源の理論的/参照スペクトル、又は前記供給源に関連する信号を検出するために使用される特定の撮像システムの特徴も捕捉する有効スペクトルであってもよい。
【0050】
本明細書で使用される場合、特定の電磁信号ソースの放射スペクトルは、電磁信号ソースが電磁放射線を放射する複数の波長の放射電力を定量化する。相対発光スペクトルは、スペクトルにおける各波長での発光パワーをピーク発光波長での発光パワーで割ることにより(言い換えれば、スペクトル内の各波長における発光パワーをスペクトル内の最大発光パワーで割ることによって)、スペクトルにおける発光パワーが0から1の間(又は0から100%の間)の範囲となるように正規化された発光スペクトルである。
【0051】
非盲目分離は、線形又は非線形であってもよい。線形分離は、次の形式の式を各ピクセルについて解く:C=AP+E、式中、Cは、n個のチャネルのそれぞれについてピクセルで測定された正規化強度(すなわち、正規化によって1に加算する:
)のベクトル[c
1,...c
n,1]であり、Aは、スペクトル分離行列と1に設定された係数の追加の行とを含む行列であり、Pは、n個のチャネルのそれぞれについての推定存在量p
iのベクトル(
及び
に拘束される)であり、Eは、n個のチャネルのそれぞれについてのノイズ項e
iのベクトルである。ピクセルごとに別々の線形方程式が解かれるので、線形ピクセル分離は、ピクセルが独立しており、光飽和効果がないと仮定する。線形分離は、これらの制限と計算効率との間のトレードオフを表す。対照的に、非線形分離はこれらの仮定を行わない。多くの異なる非線形分離手法が存在する。多くの分離手法は、分離ピクセル又はピクセルの集合において、電磁信号ソースのそれぞれに起因する可能性のある真の相対強度(存在量とも呼ばれる)を同定することを目的とする。各ピクセルに単一の電磁信号ソースが存在すると予想できる場合、推定存在量は、複数の電磁信号ソースのそれぞれを含むピクセルの尤度として解釈することができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「閾値処理」は、画像内のピクセルを前景又は背景として割り当てるための閾値の使用を指す。その最も単純な形態では、閾値化は、ピクセル強度が所定の閾値以上である場合にはピクセルを前景として同定し、そうでない場合には背景として同定する。当技術分野で公知の任意の閾値化方法を使用してもよい。閾値処理は、ローカル又はグローバルであってもよい。ローカル閾値処理は、「適応閾値処理」と呼ばれることもある。ローカル閾値処理は、(「近傍」とも呼ばれる)対象ピクセルの周りのピクセルのセット内の画像の特性に少なくとも部分的に基づいて、ピクセルが背景ピクセルの前景であるかどうかを決定することを含んでもよい。これは通常、各近傍に特定の閾値を適用することによって実行され、対象ピクセルの閾値は、対象ピクセルの近傍のピクセル強度に少なくとも部分的に基づいて定義される。これに代えて、又はこれに加えて、ピクセル及びその近傍(例えば、対象ピクセル強度と近傍のピクセルのピクセル強度との差)を特徴付ける値に閾値を適用することができる。グローバル閾値処理は、画像内の全てのピクセルに対して共通閾値を使用することを含んでもよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、「画像セグメント化」(本明細書では単に「セグメント化」とも呼ばれる)は、画像内の対象物を同定するプロセスを指す。実際には、セグメント化は、一緒に「対象物」を形成するピクセルのセットを同定する。多くのセグメント化方法が当技術分野で知られている。本開示との関連で、画像セグメント化は、方法が対象物を形成するピクセルのセットを同定する限り、当技術分野で知られている任意の方法を使用して実行することができる。例えば、セグメント化は、ウォーターシェッドアルゴリズムを使用して実行されてもよい。例えば、「フラッディングによるウォーターシェッド」手法を使用してもよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPreim&Botha(2014)に概説されているように、任意の他のWatershed法を使用してもよい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「陰性対照画像」という用語は、少なくとも陰性対照画像が陰性対照として使用されるチャネルにおいて、意図的な信号ソースがない状態で取得される画像を指す。陰性対照画像が使用されるチャネルは、1つ以上の「対象画像」に関連付けられた「対象チャネル」と呼ばれてもよく、対象チャネル内に意図的な信号ソースがない場合に同じチャネルで取得された陰性対照画像は、「対応する陰性対照画像」と呼ばれてもよい。例えば、対応する陰性対照画像は、対象画像と同じチャネルについて取得された陰性対照サンプルの画像であってもよい。陰性対照サンプルは、例えば、1つ以上の蛍光色素など、画像で検出される電磁信号の供給源を含まないサンプルであってもよい。幾つかの場合、陰性対照サンプルは、1つ以上の蛍光色素で標識されていないサンプルであってもよい。
【0055】
本明細書で使用される場合、「ピクセル近傍」(本明細書では単に「近傍」とも呼ばれる)という用語は、対象ピクセルの周りの所定の領域に位置するピクセルのセットを指す。例えば、近傍は、対象ピクセルを中心とする正方形領域内に位置するピクセルのセットとして定義されてもよい。正方形領域は、n×nピクセルの領域として定義することができ、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、15、20、1と30との間、1と20との間、5と15との間などから選択されてもよい整数である。本発明者らは、11×11ピクセル付近のピクセルが適切であることを見出した。当業者が理解するように、近傍の適切なサイズ及び形状は、例えば、画像の解像度、信号の予想密度など、処理されている画像の特性に依存してもよい。本発明はこれに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ピクセル近傍強度オフセット」という用語は、ピクセルの強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差を指す。ピクセル近傍強度オフセットの概念は、閾値処理との関連で使用されてもよい。対象ピクセルのピクセル近傍強度オフセットは、それぞれが対象ピクセルの強度と対象ピクセルの近傍のピクセルの強度との間の差に対応する値のセットを含んでもよい。対象ピクセルのピクセル近傍強度オフセットは、単一の値を含んでもよく、これは、例えば値のセットの中心性の指標として値のセットから導出されてもよく、又は対象ピクセルの強度と対象ピクセルの近傍のピクセルの強度の要約された指標(例えば、平均、中央値、最頻値などの中心性の指標である)との間の差として取得されてもよい。更に、ピクセル近傍強度オフセットは、ピクセル近傍強度オフセット上の閾値を定義する目的で値のセットとして、及び前景ピクセルを同定する目的で単一の値として定義されてもよい。例えば、ピクセル近傍強度オフセット閾値は、各ピクセルとそれぞれのピクセル近傍のピクセルのそれぞれとの間の差の分布を決定し、前記分布におけるパーセンタイル値を選択することによって、1つ以上の陰性対照画像を使用して定義することができる。次いで、閾値は、各ピクセルについて、ピクセル強度とその近傍の中央強度(又は強度の他の任意の要約された指標)との間の差を、以前に定義された閾値と比較することによって、1つ以上の対象画像に適用されてもよい。
【0057】
本明細書で使用される場合、「コンピュータシステム」という用語は、システムを具現化するため、又は前述の実施形態による方法を実行するためのハードウェア、ソフトウェア、及びデータ記憶装置を含む。例えば、コンピュータシステムは、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、及びデータ記憶装置を備えることができ、これらは1つ以上の接続されたコンピューティングデバイスとして具現化することができる。好ましくは、コンピュータシステムは、ディスプレイを有するか、又は(例えば、ビジネスプロセスの設計において)視覚的出力ディスプレイを提供するディスプレイを有するコンピューティングデバイスを備える。データ記憶装置は、RAM、ディスクドライブ、又は他のコンピュータ可読媒体を含んでもよい。コンピュータシステムは、ネットワークによって接続され、そのネットワークを介して互いに通信することができる複数のコンピューティングデバイスを含んでもよい。
【0058】
本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読媒体」という用語は、限定はしないが、コンピュータ又はコンピュータシステムによって直接読み取られアクセスされてもよい任意の非一時的媒体を含む。媒体は、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、及び磁気テープなどの磁気記憶媒体;光ディスク、CD-ROM等の光記憶媒体;RAM、ROM、及びフラッシュメモリを含むメモリなどの電気的記憶媒体;磁気/光記憶媒体などの上記のハイブリッド及び組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、植物、微生物及び動物(例えば、イヌ、ネコ、家畜、及びヒトなどの哺乳動物)を含む任意の生物を指す。
【0060】
本明細書及び特許請求の範囲における「サンプル」という用語は、その最も広い意味で使用される。一方では、サンプルは、検体又は培養物(例えば、微生物培養物)を含むことを意味する。他方では、サンプルは、生物学的サンプル及び環境サンプルの両方を含むことを意味する。サンプルは、合成起源のサンプルを含んでもよい。生物学的サンプルは、ヒト、体液、固体(例えば、便)又は組織、並びに液状及び固体の食品及び飼料製品並びに乳製品、野菜、肉及び肉の副生成物及び廃棄物などの成分を含む動物であってもよい。生物学的サンプルは、家畜動物の様々な科の全て、並びにこれらに限定されないが、イヌ、ネコ、有蹄動物、クマ、魚、ウサギ目動物、げっ歯類、有袋動物などの動物を含む野生動物又は野生動物から得ることができる。
【0061】
環境サンプルには、表面物質、土壌、水及び工業サンプルなどの環境物質、並びに食品及び乳製品の加工機器、装置、機器、器具、使い捨て及び非使い捨て物品から得られたサンプルが含まれる。これらの実施例は、本発明に適用可能なサンプルタイプを限定するものと解釈されるべきではない。
【0062】
本明細書で使用される「標的」という用語は、評価、測定、又は他の特性評価のためにサンプルの他の構造又は構成要素の中で検出されることが求められる構造を指す。例えば、標的核酸は、例えばプローブ結合、増幅、単離、捕捉などによって、サンプル中の他の核酸から選別されてもよい。ハイブリダイズに基づく検出、例えばポリメラーゼ連鎖反応に関して使用される場合、「標的」は、ポリメラーゼ連鎖反応に使用されるプライマーによって結合された核酸の領域を指すが、標的DNAが増幅されないアッセイ、例えば分子反転プローブ(MIPS)による捕捉で使用される場合、標的は、MIPの標的特異的アームのハイブリダイゼーションによって結合された部位を含み、その結果、MIPをライゲーションすることができ、標的核酸の存在を検出することができる。
【0063】
「プライマー」という用語は、例えばヌクレオチド及び適切な核酸ポリメラーゼの存在下で、プライマー伸長が開始される条件下に置かれた場合に合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチド「プライマー」は、天然に存在してもよく、分子生物学的方法、例えば制限消化物の精製を用いて作製されてもよく、又は合成的に生成されてもよい。DNAから作製された又はDNAを含むプライマーが一般的に使用される。
【0064】
本明細書で使用される「標識」という用語は、電磁信号を生成することができ、したがって検出可能な(好ましくは定量可能な)効果を提供するために使用してもよい任意の原子又は分子を指す。標識は、標的構造に取り付けられるか、又は標的構造の一部を形成することができる。標識には、色素、発光性、発色性、リン光性又は蛍光性部分;及び単独の又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって発光スペクトルを抑制(「クエンチ」)もしくはシフトさせることができる部分と組み合わせた蛍光色素が含まれるが、これに限定されない。FRETは、光子の放出なしにドナー分子からアクセプター分子に励起が移動する、2つの分子(例えば、2つの色素分子、又は色素分子及び非蛍光クエンチャー分子)の電子励起状態間の距離依存性相互作用である。(Stryerら、1978、Ann.改訂Biochem.,47:819;Selvin,1995,Methods Enzymol.、246:300に記載されている)。本明細書で使用される場合、「ドナー」という用語は、第1の波長で吸収し、第2のより長い波長で発光するフルオロフォアを指す。「アクセプター」という用語は、ドナーの発光スペクトルと重複する吸収スペクトルを有し、ドナーがドナー基の近く(典型的には1~100nm)にあるときにドナーからの放出エネルギーの一部又は大部分を吸収することができるフルオロフォア、発色団、又はクエンチャーなどの部分を指す。アクセプターがフルオロフォアである場合、それは一般に、更に長い第3の波長で再発光する。それが発色団又はクエンチャーである場合、光子を放出することなくドナーから吸収されたエネルギーを放出する。幾つかの実施形態において、ドナー色素(例えば、アクセプター部分が近く又は遠くにある場合)からの検出可能な発光の変化が検出される。幾つかの実施形態では、アクセプター色素からの検出可能な発光の変化が検出される。好ましい実施形態では、アクセプター色素の発光スペクトルは、色素からの発光を互いに区別(例えば、スペクトル分解)することができるように、ドナー色素の発光スペクトルとは異なる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「固体支持体」又は「支持体」という用語は、別の材料を取り付けることができる基板構造を提供する任意の材料を指す。支持体又は基材は、固体であってもよいが、固体である必要はない。支持材料は、滑らかな固体支持体(例えば、平滑な金属、ガラス、石英、プラスチック、シリコン、ウエハ、炭素(例えば、ダイヤモンド)、及びセラミック表面など)、並びにテクスチャ及び多孔質材料を含む。固体支持体は平坦である必要はない。支持体は、球形(例えば、ビーズ)を含む任意のタイプの形状を含む。支持体材料には、ゲル、ヒドロゲル、エアロゲル、ゴム、ポリマー、並びに他の多孔質及び/又は非剛性材料も含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ビーズ」及び「粒子」という用語は互換的に使用され、溶液中にあるときに動き回ることができる小さな支持体、典型的には固体支持体を指す(例えば、溶液が存在するエンクロージャ又は容器の寸法よりも小さい寸法を有する)。幾つかの実施形態では、溶液が混合されない場合(例えば、振盪、熱混合、ボルテックスによって)、ビーズは溶液から沈降してもよいが、他の実施形態では、ビーズはコロイド様式で溶液中に懸濁されてもよい。幾つかの実施形態では、ビーズは、完全に又は部分的に球形又は円筒形である。しかしながら、ビーズは、特定の三次元形状に限定されない。幾つかの実施形態では、ビーズ又は粒子は常磁性であってもよい。例えば、幾つかの実施形態では、ビーズ及び粒子は、磁性材料、例えば酸化鉄を含む。ビーズ又は粒子は、いかなる特定のサイズにも限定されず、複数の粒子を含む調製物では、粒子は本質的に均一なサイズ(例えば、直径)であってもよく、又は異なるサイズの混合物であってもよい。幾つかの実施形態では、ビーズは、ナノ粒子、例えば直径が約1000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、10nm、5nm、又は1nm未満の粒子を含むか、又はそれらからなる。幾つかの実施形態では、ナノ粒子ビーズは、平均直径5nm~20nmの間である。
【0067】
固体支持体に取り付けられる材料は、固体支持体の任意の部分に取り付けられてもよい(例えば、多孔質固体支持材料の内部部分に、又は外部部分に、又は平坦でない支持体上の平坦部分に、又はその逆に取り付けられてもよい)。本技術の好ましい実施形態では、核酸又はタンパク質分子などの生物学的分子が固体支持体に結合している。生物学的材料は、化学的又は物理的相互作用を介して固体支持体に固定される場合、固体支持体に「付着」する。幾つかの実施形態では、結合は共有結合を介する。しかしながら、結合は共有結合性である必要はなく、永久的である必要はない。幾つかの実施形態では、結合は、条件の変化、例えば温度、イオン変化、キレート剤の添加もしくは除去、又は表面及び結合分子がさらされる溶液条件の他の変化によって解除又は解離されてもよい。材料は、第1の支持体に取り付けられ、第2の支持体の表面に局在化されてもよい。例えば、鉄又は磁性粒子を含む材料では、スライド又はウェルの平坦な表面などの表面又は表面の領域に磁気的に局在化することができる。
【0068】
例えばコーティング用又は分子の付着用の支持体又は基材に関して本明細書で使用される場合、「表面」という用語は、目的のためにアクセス可能な支持体又は基材の一部を広く指す。例えば、コーティングされ、官能化され、部分、例えばオリゴヌクレオチド又は他の高分子に結合され、又は他の方法で処理されるのにアクセス可能なビーズ又は容器又はプレートの一部は、表面がビーズ又は容器の内部にある場合でも(例えば、細孔内、焼結行列内、ウェル内など)、ビーズ又はプレートの「表面」と見なされてもよい。同様に、可撓性及び/又は多孔性(例えば、ヒドロゲル、エアロゲル、メッシュ)であり、目的のために、例えば、コーティング、官能化、部分への結合、誘導体化などのためにアクセス可能な行列の一部は、行列の表面と見なされてもよい。特定の実施形態では、支持体は、例えばコーティング又は改質層の非存在下で、構造支持材料の表面である、第1の表面と呼ばれることもある支持表面を含んでもよく、支持表面が、例えばポリマー又は他のコーティングによるコーティングによって改質された後の目的のためにアクセス可能な表面である、第2の表面と呼ばれることもある基材表面を更に含んでもよい。幾つかの実施形態では、基板表面は、基板表面官能基との錯体形成に適した反応性基又は結合基を含むオリゴヌクレオチド又はポリペプチドなどの、1つ以上の解析物と共有結合的又は非共有結合的に錯体形成することができる官能基を含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、例えば支持体又は表面上の構造に関して使用される「分散された」及び「分散した」という用語は、表面上又は表面の周りに分布又は散乱している軌跡又は部位の集合体を指す。軌跡の少なくとも幾つかは、好ましくは、例えば顕微鏡などの検出器によって、それらが個々に検出可能又は分解可能であるように他の構造から十分に分離されている。
【0070】
本明細書で使用される場合、例えば固体支持体又は表面上の構造の分散又は分布に関して使用される「不規則な」又は「分散した」という用語は、非配列様式で表面上又は表面内の構造の分布を指す。例えば、分子は、表面上の分子間に所望のおおよその平均距離を提供する特定の濃度の溶液を塗布することによって表面上に不規則に分散されてもよいが、表面上の任意のパターンによって、又は溶液を塗布する手段によって(例えば、インクジェット印刷)事前に定義されていないか、又はアドレス指定可能でない部位に分散されてもよい。そのような実施形態では、表面の解析は、信号が出現してもよい場合はいつでも(例えば、表面全体を走査して、表面上のどこかで蛍光を検出する)、信号の検出によって分子の軌跡を見つけることを含んでもよい。これは、グリッド内の各軌跡にどの程度の(又はどのタイプの)信号が現れるかを決定するために、表面又は血管を所定の軌跡(例えば、グリッドアレイ内の点)のみで解析することによって信号を特定することとは対照的である。
【0071】
本明細書で使用される場合、信号に関して「別個の」又は「異なる」という用語は、例えば蛍光発光波長、色、吸光度、質量、サイズ、蛍光偏光特性、電荷などのスペクトル特性によって、又は化学試薬、酵素、抗体などとのような別の部分との相互作用の能力によって互いに区別することができる信号を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「プローブ」又は「ハイブリダイゼーションプローブ」という用語は、精製された制限消化物のように天然に存在するか、又は合成的、組換え的もしくはPCR増幅によって産生されたかにかかわらず、少なくとも部分的に対象の別のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。プローブは、一本鎖又は二本鎖であってもよい。プローブは、特定の配列の検出、同定及び単離に有用である。幾つかの好ましい実施形態では、本発明で使用されるプローブは、酵素(例えば、ELISA、並びに酵素ベースの組織化学的アッセイ)、蛍光、放射性、及び発光系を含むがこれらに限定されない任意の検出系で検出可能であるように、「レポーター分子」で標識される。本発明がいかなる特定の検出システム又は標識にも限定されることは意図されていない。
【0073】
本明細書で使用される「MIP」という用語は、分子反転プローブ(又は円形捕捉プローブ)を指す。分子反転プローブ(又は環状捕捉プローブ)は、標的核酸にハイブリダイズしてニック又はギャップを形成する一対の固有なポリヌクレオチドアームと、ポリヌクレオチドリンカー(例えば、ユニバーサル骨格リンカー)とを含む核酸分子である。幾つかの実施形態では、固有なポリヌクレオチドアームは、互いに直接隣接する標的鎖にハイブリダイズして、ライゲーション可能なニック(一般に「パドロックプローブ」と呼ばれる)を形成するが、幾つかの実施形態では、ハイブリダイズしたMIPの1つを更に改変して(例えば、ポリメラーゼ伸長、塩基切除及び/又はフラップ切断によって)、ライゲーション可能なニックを形成してもよい。環状核酸を形成するためのMIPプローブのライゲーションは、典型的には、相補的標的鎖の存在を示す。幾つかの実施形態では、MIPは、1つ以上の固有分子タグ(又は固有分子同定子)を含む。
【0074】
本明細書で使用される場合、例えばプローブ核酸に関して使用される「環状核酸」及び「環状化核酸」という用語は、例えばライゲーションによって末端で連結されて核酸の連続環状鎖を形成する核酸鎖を指す。
【0075】
固有分子タグは、検出可能であり、核酸(例えば、ポリヌクレオチド)に組み込まれてもよいか又は付着されてもよく、タグを含む核酸の検出及び/又は同定を可能にする任意のタグであってもよい。幾つかの実施形態では、タグは、配列決定中に核酸に組み込まれるか又は核酸に付着される(例えば、ポリメラーゼによって)。タグの非限定的な例としては、核酸タグ、核酸インデックス又はバーコード、放射性標識(例えば、同位体)、金属標識、蛍光標識、化学発光標識、リン光標識、蛍光消光剤、色素、タンパク質(例えば、酵素、抗体又はその一部、リンカー、結合対のメンバー)など又はそれらの組み合わせが挙げられる。幾つかの態様、特に配列決定態様では、タグ(例えば、分子タグ)は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体(例えば、核酸類似体、糖及び1~3個のリン酸基を含むヌクレオチド)の固有の既知の及び/又は特定可能な配列である。幾つかの態様において、タグは6個以上の連続したヌクレオチドである。多数のフルオロフォアベースのタグが、様々な異なる励起及び発光スペクトルで利用可能である。任意の適切な種類及び/又は数のフルオロフォアをタグとして使用してもよい。幾つかの実施形態では、1又はそれを超える、2又はそれを超える、3又はそれを超える、4又はそれを超える、5又はそれを超える、6又はそれを超える、7又はそれを超える、8又はそれを超える、9又はそれを超える、10又はそれを超える、20又はそれを超える、30又はそれを超える、50又はそれを超える、100又はそれを超える、500又はそれを超える、1000又はそれを超える、1万又はそれを超える、10万又はそれを超える異なるタグが、本明細書に記載の方法(例えば、核酸検出及び/又は配列決定方法)で利用される。幾つかの実施形態では、1つ又は2つ以上のタイプのタグ(例えば、異なる蛍光標識)が、ライブラリ内の各核酸に連結される。幾つかの実施形態では、染色体特異的タグを使用して、染色体計数をより速く又はより効率的にする。
【0076】
幾つかの実施形態では、MIPは、核酸サンプル(例えば、ゲノムDNA)上に位置する標的配列又は部位(又は対照配列又は部位)の捕捉を実施するために、試験対象(又は参照対象)に由来する核酸断片に導入される。幾つかの実施形態において、断片化は、分子反転プローブによる標的核酸の捕捉を補助する。幾つかの実施形態では、例えば、核酸サンプルが無細胞核酸で構成される場合、分子反転プローブによる標的核酸の捕捉を改善するために断片化は必要でない場合がある。例えば、幾つかのタイプのサンプルでは、更なる断片化が必要でなく、標的核酸の有害な捕捉でさえあってもよいように、無細胞核酸がサンプル中で断片化される。対象の標的配列(例えば、軌跡)の捕捉後、捕捉された標的は、標的配列のコピーが環状構造に組み込まれるように、酵素的ギャップ充填及びライゲーションステップに供されてもよい。幾つかの実施形態では、例えば下流の検出、精製、又は他の処理ステップで使用するために、例えば標識、ハプテンなどを含む核酸類似体を充填部分に組み込むことができる。MIP技術は、複雑な混合物中の特定の核酸配列を検出又は増幅するために使用されてもよい。MIP技術を使用する利点の1つは、数千のMIPを含む単一反応で数千の標的配列を捕捉することを可能にする高度な多重化の能力にある。
【0077】
本明細書で使用される「捕捉(capture)」又は「捕捉(capturing)」という用語は、分子反転プローブとその対応する標的化部位との間の結合又はハイブリダイゼーション反応を指す。幾つかの実施形態では、捕捉すると、環状レプリコン又はMIPレプリコンが生成又は形成される。
【0078】
本明細書で使用される「MIPレプリコン」又は「環状レプリコン」という用語は、捕捉反応(例えば、MIPとその標的配列との間の結合又はハイブリダイゼーション反応)を介して生成された環状核酸分子を指す。MIPレプリコンは、ローリングサークル増幅、すなわちRCAにおいて特定の用途を見出す。RCAは、DNAポリメラーゼが環状鋳型にアニールされたプライマーに単一ヌクレオチドを連続的に付加する等温核酸増幅技術であり、これにより、数十から数百から数千のタンデムリピート(環状鋳型に相補的)を含む一本鎖DNAの長いコンカテマーが得られる。例えば、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれるM.Aliらを参照されたい。あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2015/083002号も参照されたい。
【0079】
本明細書で使用される「アンプリコン」という用語は、増幅反応(例えば、PCR反応)を介して生成された核酸を指す。アンプリコンは、一本鎖核酸分子又は二本鎖核酸分子であってもよい。標的化MIPレプリコンは、従来の技術を使用して増幅されて、二本鎖ヌクレオチド分子である複数の標的化MIPアンプリコンを産生してもよい。対照MIPレプリコンは、従来の技術を使用して増幅されて、二本鎖ヌクレオチド分子である複数の対照MIPアンプリコンを産生してもよい。
【0080】
本明細書で使用される「信号」という用語は、標識によって、又はアッセイ反応における成分もしくは生成物の作用もしくは蓄積によって引き起こされる又は提供されるなどの任意の検出可能な効果を指す。
【0081】
本明細書で使用される「検出」という用語は、例えばサンプル内の解析種(例えば、DNA、RNA又はタンパク質)を定量的又は定性的に同定することを指す。本明細書で使用される「検出アッセイ」という用語は、サンプル内の解析物を検出する目的で行われるキット、試験、又は手順を指す。検出アッセイは、標的解析物の存在下で行われると、検出可能な信号又は効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
本開示の実施形態を、添付の図面を参照して例として説明する。
【0083】
【
図1】画像を処理する一般的な方法を示すフローチャートを与える。
【
図2】硬質対象物分離ステップを含む画像処理方法を示すフローチャートを与える。
【
図3】軟質対象物分離ステップを含む画像処理方法を示すフローチャートを与える。
【
図4】画像を処理する方法を実施するのに適したシステムの概略図を与える。
【
図5】色素Alexa488、Alexa546、Alexa594、Alexa647、Alexa700、及びAlexa750の相対発光スペクトル(本明細書では「正規化発光スペクトル」とも呼ばれる)を示す。縦線は、左から右に向かって、Alexa488、Alexa546、Alexa594、Alexa647、Alexa700、Alexa750のそれぞれのピーク発光波長を示す。破線の括弧は、左から右へ、(i)Alexa546のピーク放射付近:Alexa488がAlexa546チャネルに交差する放射、(ii)Alexa594のピーク放射付近:Alexa546がAlexa594チャネルに交差する放射、Alexa488がAlexa594チャネルに交差する放射、(iii)Alexa647のピーク放射付近:Alexa594がAlexa647チャネルに交差する放射、Alexa546がAlexa647チャネルに交差する放射、(iv)Alexa700のピーク放射付近:Alexa647がAlexa700チャネルに交差する放射、Alexa594がAlexa700チャネルに交差する放射、及び(v)Alexa750のピーク放射付近:Alexa700がAlexa750チャネルに交差する放射、及びAlexa647チャネルがAlexa700チャネルに交差する放射を示す。
【
図6】in silico模擬蛍光顕微鏡画像に異なる分離プロセスを適用したシミュレーション実験の結果を示す。画像ごとに異なるレベルの割り当てられた対象物で、6つの色素の多重をシミュレートした。画像のスペクトル混合は本文に記載されているように行った。行は、異なる分離プロセス(上から下へ:未混合、混合-未分離、混合-ピクセル分離、混合-硬質対象物が分離された分離対象物、混合-軟質対象物が分離された分離対象物)に対応する。列は、異なるチャネル(左から右:Alexa488、Alexa546、Alexa596、Alexa645、Alexa700、Alexa750)に対応する。対象物(真及び交差)はグレースケールブロブとして現れる。赤色の輪郭は、画像セグメント化によって検出された対象物をマークする。画像セグメント化のための閾値は、陰性対照画像に基づいて導出され、これは、シミュレートされた対象物を堆積するための背景としても機能した。
【
図6A】in silico模擬蛍光顕微鏡画像に異なる分離プロセスを適用したシミュレーション実験の結果を示す。画像ごとに異なるレベルの割り当てられた対象物で、6つの色素の多重をシミュレートした。画像のスペクトル混合は本文に記載されているように行った。行は、異なる分離プロセス(上から下へ:未混合、混合-未分離、混合-ピクセル分離、混合-硬質対象物が分離された分離対象物、混合-軟質対象物が分離された分離対象物)に対応する。列は、異なるチャネル(左から右:Alexa488、Alexa546、Alexa596、Alexa645、Alexa700、Alexa750)に対応する。対象物(真及び交差)はグレースケールブロブとして現れる。赤色の輪郭は、画像セグメント化によって検出された対象物をマークする。画像セグメント化のための閾値は、陰性対照画像に基づいて導出され、これは、シミュレートされた対象物を堆積するための背景としても機能した。
【
図7】シミュレーション画像内の様々な数の対象物に対する対象物呼び出しプロセスの精度に関して、in silicoシミュレーション蛍光顕微鏡画像に異なる分離プロセスを適用したシミュレーション実験の結果を示す。精度は、陽性予測値(PPV)、すなわち、(真及び交差の両方;真陽性及び偽陽性呼び出し)と呼ばれる対象物の総数に対する、真の対象物であった(真の陽性呼び出し)と呼ばれる対象物の数の比(%)を指す。本文に記載されているように、in silico混合画像を生成した。各データ系列は、異なる分離プロセス(混合-未分離、混合-ピクセル分離、混合-対象物分離1(硬質対象物分離)、混合-対象物分離2(軟質対象物分離))に対応する。
【
図8】シミュレーション画像内の様々な数の対象物に対する対象物呼び出しプロセスのリコールに関して、in silicoシミュレーション蛍光顕微鏡画像に異なる分離プロセスを適用したシミュレーション実験の結果を示す。リコールは、感度、すなわち、真の対象物(真の陽性呼び出し及び偽の陰性呼び出し)の総数に対する、真の対象物(真の陽性呼び出し)であったと呼ばれる対象物の数の比率(%)を指す。本文に記載されているように、in silico混合画像を生成した。各データ系列は、異なる分離プロセス(混合-未分離、混合-ピクセル分離、混合-対象物分離1(硬質対象物分離)、混合-対象物分離2(軟質対象物分離))に対応する。
【
図9】対象物分離を使用しているがピクセル分離を使用していない、正しく同定された対象物(in silicoのシミュレートされた画像内)の例を示している。対象物がチャネルAlexa647に割り当てられ、その対応する「交差」対象物がチャネルAlexa700に割り当てられ、1ピクセルの空間ジッタがあった。対象物分離(柔質対象物と硬質対象物の分離)は、Alexa700内の対象物をAlexa647からの交差として正しく同定した。他方、ピクセル分離は、対象物のピクセルを分離することができたが、交差する対象物全体を「ホスト」チャネルから除去することはできなかった(Alexa700)。
【
図10】(in silico疑似画像における)空間的に隣接する2つの対象物の分離の例を示す。対象物をチャネルAlexa647及びAlexa700に割り当て、Alexa647からの「交差」対象物を、1ピクセルの空間ジッタでAlexa700の画像に追加した。全てのスペクトル分離プロセス(ピクセル分離、対象物分離バージョン1(硬質対象物分離)及び2(軟質対象物分離))は、Alexa700の「真の」対象物を正しく同定し、Alexa647から「交差する」対象物を排除した。
【
図11】特異染色手法を使用した本明細書に記載のスペクトル分離プロセスの実験的検証の結果を示す。示されている画像は、異なる色素フィルタ(左から右へ:Alexa488、Alexa546、Alexa596、Alexa647、Alexa700、Alexa750)を使用して、同じ軌跡について捕捉された。行は、異なるシナリオ(上から下へ:未分離、ピクセル分離、対象物分離1(硬質対象物分離)、対象物分離2(軟質対象物分離))に対応する。対象物はグレースケールブロブとして現れる。赤色の輪郭は、画像セグメント化の結果を示す。
【
図11A】特異染色手法を使用した本明細書に記載のスペクトル分離プロセスの実験的検証の結果を示す。示されている画像は、異なる色素フィルタ(左から右へ:Alexa488、Alexa546、Alexa596、Alexa647、Alexa700、Alexa750)を使用して、同じ軌跡について捕捉された。行は、異なるシナリオ(上から下へ:未分離、ピクセル分離、対象物分離1(硬質対象物分離)、対象物分離2(軟質対象物分離))に対応する。対象物はグレースケールブロブとして現れる。赤色の輪郭は、画像セグメント化の結果を示す。
【
図12】
図10の実験からの画像の拡大図を示す。画像は、スペクトル的に隣接する2つのチャネル間のスペクトルクロストークを示す。これらの画像に示されるウェルは、Alexa647フルオロフォアのみを含有していた。左:Alexa647フィルタによる撮像。右:Alexa700フィルタによる撮像。赤色の輪郭は、画像セグメント化の結果を示す。
【
図13】特異性に関して、本明細書に記載のスペクトル分離プロセスの実験的検証の結果を示す。グラフは、異なる分離プロセスの特異性を示し、チャネルiの場合、分離特異性は、100・(1-N
j/N
i)として定義された。ここで、N
iは、撮像されたチャネルに対応するフルオロフォアを含む撮像ウェルの場合に検出された対象物の数であり、N
jは、撮像されたチャネルに対応しないフルオロフォアを含む撮像ウェルの場合に検出された対象物の数である。考慮される分離手法が発光スペクトルに作用するので、チャネルAlexa488はクロストークを受けなかったことから、このチャネルに対する特異性は完全であり(100%)、示されていないことに留意されたい。
【
図14】本明細書中に記載されるスペクトル分離プロセスの実験的検証の結果を未分離の場合と比較して呼び出される対象物の数の相対的変化に関して示す。チャネルiの場合、呼び出された対象物の数の相対的な変化は、100・(N
alg-N
0)/N
0と定義され、ここで、N
0は未分離の場合に報告される画像ごとの対象物の数であり、N
algは特定の分離プロセス(ピクセル分離、対象物分離1(硬質閾値)、又は対象物分離2(軟質閾値))によって報告される画像ごとの対象物の数である。
【0084】
本明細書に記載の図面が本発明の実施形態を例示する場合、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。適切な場合には、図示された実施形態の同じ構造的特徴に関連するように、異なる図において同様の参照番号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明は、蛍光撮像システム(例えば、蛍光顕微鏡画像)からの画像又は光学撮像システム(例えば、光学顕微鏡画像)からの画像などのサンプルの画像の解析におけるスペクトルクロストークを処理する問題に対する解決策を提供する。本発明は、スペクトルクロストークの存在にもかかわらず、また画像の解像度が異なる電磁信号ソースに関連する構造がピクセル内で物理的に同じ場所に位置するようなものである場合でも、異なる電磁信号ソースに関連する対象物が高精度で同定されるセグメント化画像を生成する。
【0086】
図1は、画像を処理する一般的な方法を示すフローチャートである。任意選択のステップ100において、画像データは、本明細書に記載の方法を実施するように構成されたコンピューティングデバイスによって受信又は取得される。画像データは、サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含んでもよい。本明細書で使用される場合、サンプルの同じ領域の画像は、複数の画像間で共通の少なくとも1つの領域を示す画像のセットを指す。そのような画像は、例えば、複数の波長(本明細書では「カラー」又は「チャネル」とも呼ばれる)設定(例えば、同じ焦点を維持するが、カラーフィルタ設定を変更する)でサンプルの同じ領域を撮像することによって取得されていてもよい。当業者が理解するように、画像のセットは、別個の対応する単色画像(本明細書では単一チャネル画像とも呼ばれる)の形態、又は1つ以上の多色画像の形態であってもよく、そのような多色画像の各色はチャネルに対応する。
【0087】
ステップ110において、対象物を形成するピクセルのセットは、各単一チャネル画像内で個別に同定される(セグメント化)。対象物は各画像内で独立して同定されるので、対象物が単一のチャネルに関連する情報に基づいて定義されるという事実を反映するために、それらは「チャネル固有対象物」とも呼ばれてもよい。ステップ110において、当技術分野で知られている任意のセグメント化方法を使用してもよい。各セグメント化された対象物に固有の標識が割り当てられたマップ(典型的には、各要素がセグメント化された画像内のピクセルに対応する行列)を含むデータを出力するセグメント化方法を使用することが特に便利である。セグメント化された対象物にデフォルトで固有の標識が割り当てられていない場合、本方法は、各セグメント化された対象物に固有の標識を割り当てるステップを含んでもよい。更に、ステップ110は、本発明の方法を開始する前に実行されていてもよい。したがって、ステップ110は任意選択であってもよく、画像を受信するステップ(ステップ100)は、以前にセグメント化された画像を受信することを含んでもよい。
【0088】
ステップ110の前に、前景ピクセルが各チャネルにおいて個別に又は集合的に同定される任意選択のステップ105があってもよい。通常、ステップ110は各チャネルに対して個別に実行される。これは、例えば、ノイズのレベル(すなわち、背景信号)がチャネルに応じて変化する場合に有利であってもよい。実施形態では、前景ピクセルは、セグメント化プロセスの一部として同定される(ステップ110)。好適には、画像セグメント化は、対象物が前景ピクセルのみを含むように、前景ピクセルを使用して実行されてもよい。前景ピクセルを同定するステップは、各単一チャネル画像に対して個別に実行されてもよい。或いは、前景ピクセルを同定するステップは、例えば、同じチャネルに関連付けられた複数の単一チャネル画像などの複数の単一チャネル画像に対して一括して実行されてもよい。例えば、同じサンプルに関連付けられた複数の単一チャネル画像をまとめて解析して、前景ピクセルを同定することができる。前景ピクセルを同定するステップは、閾値処理によって実行されてもよい。当技術分野で公知の任意の閾値化方法を使用してもよい。本発明者らは、局所的な(適応的な)閾値処理が本開示との関連で特に有利であることを見出した。前景ピクセルを同定するステップは、背景ピクセルを所定の値に設定することを含んでもよい。所定の値は、適切には、全ての前景ピクセルの強度よりも低い。例えば、背景ピクセル強度は、0(これらのピクセルが後続のステップから無視されることを効果的に保証する)、又は背景ピクセル内の信号の平均、中央値、最頻値、もしくは所定のパーセンタイル値などの、背景信号を表す所定の値に設定されてもよい。
【0089】
ステップ105で対象単一チャネル画像内の前景ピクセルを同定するステップは、1つ以上の対応する陰性対照画像を使用して、ピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差に対して閾値を定義することを含んでもよい。次いで、ピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との差が閾値以上である場合、ピクセルを前景として同定することによって、閾値を対象画像内のピクセルに適用してもよい。ピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差に適用される閾値を定義するステップは、1つ以上の陰性対照画像におけるピクセル強度と対応する近傍ピクセル強度との間の差の分布を取得することと、閾値を前記分布におけるパーセンタイル値として同定することとを含んでもよい。例えば、閾値は、ピクセル近傍強度オフセットの分布のxパーセンタイルに設定されてもよく、xは、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、99.999%などであってもよい。本発明者らは、99.999%パーセンタイル閾値が簡便であることを見出した。当業者が理解するように、閾値の選択は、例えば陰性対照画像及び被験体画像における背景信号の量、閾値処理プロセスの所望のストリンジェンシーなど、処理されている画像の特性に依存してもよい。したがって、本発明はこれに限定されない。
【0090】
ステップ120において、ピクセル分離が実行される。全てのチャネルからのデータを用いてピクセル分離を行う。任意選択で、ピクセル分離は、各ピクセルにおける信号の正規化後に実行される。例えば、分離される各ピクセルについて、複数のチャネルの信号強度は、それらが合計して1になるように正規化されてもよい。これは、各チャネルiのピクセルの正規化された強度を
のように取得することによって実行することができ、[c
1,...c
n]は、n個のチャネルのそれぞれのピクセルで測定された強度のベクトルである。ピクセル分離は、ピクセル(すなわち、画像内の全てのピクセル)ごとに行われてもよい。或いは、ピクセルの分離は、前景ピクセルごとに、又は同定された対象物の一部を形成するピクセルごとにのみ実行されてもよい(2つのオプションは、使用されるセグメント化方法が各前景ピクセルを対象物に割り当てる特定の実施形態では同等である)。或いは、ピクセル分離は、少なくとも2つの同定された対象物の一部を形成する各ピクセルに対して、又は同じチャネル内で同定されなかった少なくとも2つの同定された対象物の一部を形成する各ピクセルに対してのみ実行されてもよい。これらの2つのオプションは、使用されるセグメント化方法が単一のチャネル画像内の各ピクセルをただ1つの対象物(すなわち、単一のチャネル画像内に重複する対象物がない)に割り当てる実施形態では同等であってもよい。ピクセル分離は、ピクセルごとに個別に(すなわち、独立して)行うことが好ましい。ピクセル分離は、当該技術分野で知られている任意の方法を使用して実行されてもよく、ただし、この方法は、前記分離ピクセルのそれぞれにおいて、それぞれのチャネルにおける信号の推定存在量の決定をもたらす。特に、ピクセル分離は、当技術分野で知られている任意の非盲目スペクトル分離方法を使用して実行してもよい。本発明者らは、線形分離が特に適していることを見出した。しかしながら、非線形分離も使用されてもよい。
【0091】
ステップ130において、それぞれの対象物内のピクセルの推定存在量に基づいて、各対象物について候補チャネルが同定される。候補チャネルは、データ内の複数のチャネルのうちの1つである。候補チャネルを複数のチャネルのうちの1つとして同定するステップは、任意選択的に、単一のチャネルを対象物内の各ピクセルに割り当てること(ステップ126)と、対象物内のピクセルに割り当てられた候補チャネルに基づいて単一のチャネルを対象物に割り当てるステップ(ステップ132)とを含んでもよい。分離ピクセルごとに、ステップ126で割り当てられた単一のチャネルは、ピクセルの推定存在量に基づいてもよい。例えば、対象物内の各分離ピクセルに単一のチャネルを割り当てるステップは、それぞれの分離ピクセルの最大推定存在量に関連付けられた単一のチャネルを割り当てることを含んでもよい。分離ピクセルに加えて、対象物は、分離されなかったピクセルを含んでもよい。例えば、前記同定された対象物のうちの1つの一部のみを形成するピクセルは、分離されなかった可能性がある。これらは、対象物が同定された(唯一の)チャネルである単一のチャネルに関連付けられてもよい。分離されなかったピクセルはまた、推定存在量のセットに関連付けられてもよい(すなわち、代わりに又は代替的に)。例えば、対象物が特定されたチャネルの推定存在量を所定の高い値(例えば、1、又は他の全てのチャネルの値よりも高い任意の値、例えば、そのピクセルにおけるチャネル内の信号に比例する値)に設定し、他の全てのチャネルの推定存在量を所定の低い値(例えば、0、又は、例えば、それぞれのチャネルにおける背景信号に比例する値など、対象物が同定されたチャネルに対して設定された値よりも低い任意の他の値)に設定してもよい。したがって、ステップ126で割り当てられた単一チャネルは、分離されたピクセル及び分離されなかったピクセルの推定存在量に基づいてもよい。ステップ132で対象物に割り当てられた単一のチャネルは、対象物内の最高数のピクセルに関連付けられたチャネルであってもよい。ステップ126の単一チャネルに基づいて、ステップ132で単一チャネルを割り当てるために任意の他の投票方式を使用してもよい。
【0092】
或いは、候補チャネルを複数のチャネルのうちの1つとして同定するステップは、任意選択的に、対象物の要約された推定存在量のセットを決定するステップ(ステップ133)と、要約された推定存在量に基づいて単一のチャネルを対象物に割り当てるステップ(ステップ135)とを含んでもよい。対象物の要約された推定存在量は、対象物内のピクセルの推定存在量に基づくことができる。ステップ133は、各対象物に対して、少なくとも1つの分離ピクセルを含む各対象物に対して、又は推定存在量に関連付けられた少なくとも1つのピクセルを含む各対象物に対して実行されてもよい。対象物の要約された存在量のセットを決定するステップは、分離されなかった全てのピクセルの推定存在量を関連付けることを含んでもよい。例えば、分離されなかったピクセルについての推定存在量は、ピクセルが属する対象物が同定されたチャネルについての推定存在量を高い値に設定し、他の全てのチャネルについての推定存在量を所定の低い値に設定することによって、上記で説明したように取得してもよい。対象物の要約された推定存在量のセットは、対象物内のピクセルの推定存在量の中心性の指標として取得してもよい。中心性の適切な指標は、チャネルごとの平均(本明細書では「重心」、COMとも呼ばれる。)、チャネルごとの中央値、チャネルごとのトリミングされた平均、チャネルごとのフィルタリングされた平均、及びチャネルごとのモードから選択されてもよい。本発明者らは、良好に機能する対象物内のピクセルの推定存在量のチャネルごとの平均を見出した。ステップ135は、最も高い要約された推定存在量に関連付けられた単一のチャネルを対象物の候補チャネルとして割り当てることを含んでもよい。
【0093】
ステップ140において、画像セグメント化ステップの結果から対象物を除去する(又は除去しない)決定がなされる。この決定は、候補チャネルが対象物が同定されたチャネルと異なるかどうかに少なくとも部分的に基づいて行われる。対象物を検討し、それらを除去するかどうかを決定するプロセスは、更新された画像セグメント化結果をもたらす。これらの更新された画像セグメント化結果は、任意の意図された下流解析に使用してもよい。例えば、各チャネル内の対象物を計数し、更に解析し、表示するなどすることができる。更に、更新された画像セグメント化結果を使用して、除去された対象物が例えば背景値に設定された新しい画像を生成することができる。言い換えれば、更新されたセグメント化結果は、更新されたセグメント化結果内の対象物の一部であるピクセルのみが信号を含むように見えるように画像データを表示するためのマスクとして使用されてもよい。特に、ステップ140において、1つ以上の条件が満たされた場合、画像セグメント化ステップの結果から対象物が除去され、1つ以上の条件は、(i)候補チャネルが対象物が同定されたチャネルとは異なること、(ii)候補チャネルに関連付けられた信号のソースが、対象物が同定されたチャネルで信号を生成することが知られているソースであること、及び(iii)候補チャネルに属する対象物と対象物が同定されたチャネルとが所定の閾値を上回る相対尤度を含む。したがって、ステップ140は、(i)候補チャネルが対象物が同定されたチャネルと異なるかどうかを決定するステップ(ステップ134)、(ii)候補チャネルから現在のチャネル(対象物が同定されたチャネル)への交差が予期されるかどうかを決定するステップ(ステップ136)、及び(iii)候補チャネルが現在のチャネルよりも有意に可能性が高いかどうかを決定するステップ(ステップ137)の任意選択のステップのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0094】
候補チャネルが現在のチャネルよりもはるかに可能性が高いかどうかを決定するステップは、候補チャネルに属する対象物の尤度を決定することと、対象物が同定されたチャネルに属する対象物の尤度を決定することとを含んでもよい。これらは、候補チャネル及び対象物が同定されたチャネルに属する対象物の相対尤度を決定するために使用されてもよく、これはオッズ比の形式で取得されてもよい。オッズ比の適切な所定の閾値は、状況、例えば対象物除去プロセスの所望のストリンジェンシーに応じて選択されてもよい。例えば、1のオッズ比閾値は、候補チャネルが現在のチャネルよりも可能性が高いことを示す。1を超えるオッズ比閾値は、対象物が除去されてもよい前に候補色素に有利なより強い証拠が必要であることを示す(すなわち、交差する対象物として同定される。)。例えば、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、又は2.5の所定の閾値を使用してもよい。候補チャネルが現在のチャネルよりもはるかに可能性が高いかどうかの決定は、相対尤度を所定の閾値と比較することによって実行されてもよい。候補チャネルに属する対象物の尤度は、対象物内のピクセルに対する候補チャネルの推定存在量に基づいて決定されてもよい。例えば、候補チャネルに属する対象物の尤度は、候補チャネルにおいて、対象物の要約された推定存在量を使用して決定されてもよく、対象物の要約された推定存在量は、対象物内のピクセルの推定存在量に基づく。対象物が同定されたチャネルに対象物が属する可能性は、対象物内のピクセルについて、対象物が同定されたチャネルの推定存在量に基づいて同様に決定されてもよい。例えば、対象物が同定されたチャネルに属する対象物の尤度は、対象物が同定されたチャネルにおいて、対象物についての要約された推定存在量を使用して決定されてもよく、対象物についての要約された推定存在量は、対象物内のピクセルについての推定存在量に基づく。特に、対象物がチャネル(例えば、対象物が同定されたチャネル又は候補チャネル)に属する尤度は、以下のように計算することができる。(1-それぞれのチャネルにおける、対象物についての要約された推定存在量)/(それぞれのチャネルにおける対象物の要約された推定存在量)。これは
として表すことができ、ここで、
は、対象チャネルにおける、対象物の要約された推定存在量である。
【0095】
信号ソースは、特定のチャネルに関連する波長の発光スペクトルを有する場合、特定のチャネルで信号を生成することが知られている場合がある。したがって、候補チャネルから現在のチャネル(対象物が同定されたチャネル)への交差が予期されるかどうかを決定するステップ(ステップ136)は、候補チャネルから現在のチャネルへの交差が可能であるかどうかを決定するために、それぞれのソースの発光スペクトル、及び対象物が同定されたチャネルに関連する波長の事前知識を使用することを含んでもよい。スペクトル分離行列が利用可能である場合、この行列は、対象物が同定されたチャネルに関連する波長(複数可)における、それぞれのソースの発光スペクトルの事前知識を捕捉する係数を含んでもよい。したがって、スペクトル分離行列のみを使用して、この条件を検証することができる。したがって、ピクセル分離ステップで使用されるスペクトル分離行列が、候補チャネルと対象物が同定されたチャネルとの間の交差に対応する非ゼロ係数を有する場合、特定のチャネルで信号を生成する信号ソースが知られてもよい(すなわち、チャネルiに関連するソースjの非ゼロ係数aijであり、ソースjは、対象物が同定されたチャネルiに関連付けられたソースiとは異なる)。
【0096】
更に、上記のステップ140のサブステップ/条件(ii)及び(iii)はそれぞれ、候補チャネルが、対象物が同定されたチャネルと異なるかどうかの決定を暗黙的に含んでもよい。例えば、検証条件(iii)は、候補チャネルが対象物が同定されたチャネルと異なるかどうかも暗黙的に決定してもよい。実際、候補チャネルが対象物が同定されたチャネルと同じである場合、相対尤度で比較される2つの尤度は同一であるべきである。したがって、1の所定の閾値を適用することは、候補チャネルが対象物が同定されたチャネルと同じである場合に対象物が除去されるのを効果的に防止する。したがって、ステップ134は、実際には、ステップ136及び/又は137とは独立して実行されなくてもよい。サブステップ/条件(iii)(ステップ137)を利用する実施形態は、本明細書では「軟質対象物分離」と呼ばれる。これは、これらの実施形態が、対象物を除去する前に、スペクトル交差の証拠に一定レベルの信頼性を(例えば、候補チャネル及び現在のチャネルの相対尤度に適用される閾値に応じて)必要とするためである。以下、このような実施形態の一例について、
図3を参照して説明する。対照的に、サブステップ/条件(iii)(ステップ137)を利用しない実施形態は、本明細書では「硬質対象物分離」と呼ばれる。以下、このような実施形態の一例について、
図2を参照して説明する。
【0097】
実施形態では、画像セグメント化ステップの結果は、対象物内のピクセルが対象物内にないピクセルとは異なるように標識されたセグメント化マップを含む。そのような実施形態では、画像セグメント化ステップの結果から対象物を除去するステップは、セグメント化マップにおいて、除去される対象物を形成するピクセルに再標識付けすることを含んでもよい。例えば、除去されるべき対象物のピクセルには、対象物内にないピクセルに使用される標識と一致する標識が割り当てられてもよい。例えば、対象物内のピクセルは非ゼロ値で標識されてもよく、対象物内にないピクセルは0で標識されてもよい。セグメント化マップはバイナリマップであってもよく、対象物内のピクセルは「1」で標識され、対象物内にないピクセルは「0」で標識される。対象物が前景ピクセルのみを含むように閾値処理が実行される場合、セグメント化マップの結果から対象物を除去することは、対象物のピクセルを背景として標識付けすることと等価である。同様に、画像セグメント化ステップの結果から対象物を除去するステップは、元の画像に対応する画像を生成することを含んでもよいが、除去される対象物のピクセルは、背景ピクセルに関連付けられた所定の値に設定される。
【0098】
実施形態では、本方法は、画像内の全ての対象物が処理された後に画像セグメント化ステップを再実行する任意選択のステップを更に含む。セグメント化ステップは、全体的又は部分的に再実行されてもよい。例えば、残りの対象物には、単に新しい固有の標識が割り当てられてもよい。或いは、セグメント化は、閾値処理ステップを繰り返すことなく再実行されてもよく、前景及び背景へのピクセルの更新された割り当てを用いる(除去された対象物からのピクセルは、最初は前景として標識されており、背景として再標識されている)。これは、下方処理ステップにおける一貫性にとって有利であってもよい。実施形態では、本方法は、ユーザインタフェースを使用して、単一チャネル画像のうちの少なくとも1つの更新された画像セグメント化結果をユーザに出力するステップを更に含む。出力は、対応する単一チャネル画像にオーバーレイされた更新された画像セグメント化結果を表示することを含んでもよい。出力は、代替的に、更新されたセグメント化結果を使用して生成された少なくとも1つの新しい画像を表示することを含んでもよい。例えば、対応する更新されたセグメント化結果内の対象物内にない全てのピクセル強度を背景値(例えば、0又は低い値)に設定することによって、新しい画像を取得してもよい。
【0099】
図2は、硬質対象物分離ステップを含む画像処理方法の一例を示すフローチャートを与え、
図3は、硬質対象物分離ステップを含む画像処理方法の一例を示すフローチャートを与える。
図2及び
図3の方法は両方とも、所与の軌跡(すなわち、サンプルの領域)について全ての色色素のセグメント化画像(すなわち、以下で「色素チャネル」とも呼ばれる1つ以上のチャネルの場合、例えば蛍光/発光/色標識などの複数の電磁信号ソースのそれぞれは、チャネルの少なくとも1つに関連付けることができ、逆に、各チャネルは、好ましくは電磁信号ソースの1つに関連付けられる)をロードするステップ(ステップ215,315)から始まる。両方の方法は、ピクセル分離を実行するステップ(ステップ220,320)に進み、これは、これらの実施形態では、共有ピクセルを同定するステップ(ステップ222,322)と、所与の(既知の)色素スペクトルを使用して全ての共有ピクセルに対して線形分離を実行する(すなわち、所与の色素スペクトルを使用して「古典的」線形分離を行う)ステップ(ステップ224,324)とを含む。共有ピクセルは、2つ以上の色素チャネルにおいて前景として同定されるピクセルである。
図2の方法では、次に、ステップ226において、線形分離の結果を使用して、候補チャネルが各共有ピクセルに割り当てられる。以上で、この方法におけるピクセル分離処理は終了する。このステップの終わりに、全てのピクセルが分離され、全ての共有ピクセルに候補チャネルが割り当てられ、他の全ての前景ピクセルには既に単一チャネルが割り当てられている。
図3の方法では、ステップ326において、線形分離ステップから生じる各色素の推定された(分数)寄与(推定存在量)が記録される。これらの値は正規化され(1に加算され)、各分離ピクセルのベクトルとして格納されてもよい。以上で、この方法におけるピクセル分離処理は終了する。このステップの終わりに、全てのピクセルが分離され、全ての共有ピクセルは、色素の推定された分数寄与のベクトル(1になるように正規化される)に関連付けられており、他の全ての前景ピクセルは、単一のチャネルに関連付けられている(そのチャネルについては1、他の全てについては0の分数寄与を有する)。
【0100】
次いで、両方の方法は対象物分離ステップ230,330に進み、そこで各色素チャネル内の各対象物が個々に評価されて、対象物が除去されるべきかどうかが同定される。
図2の実施形態では、対象物分離は、多数決を使用して、評価中の対象物に候補色素を割り当てることによってステップ232で開始する。その結果、対象物において最も存在が強い色素が「真の色素」であると考えられる。ステップ234において、候補色素が現在の色素とは異なるようにするためにチェックが実行され、これは同定されるべき「交差」対象物の前提条件である。ステップ236において、候補及び現在の色素の発光スペクトルが重複する(すなわち、候補チャネルに関連する色素は、現在のチャネルで発光すると予想される)ようにするために、更なるチェックが実行される。これは、同定される「交差」対象物の更なる前提条件である。両方のチェック(ステップ234,236)が満たされた場合(すなわち、ステップ234及び236でチェックされた条件は両方とも成立する)、ステップ238で対象物が現在のチャネルから除去される。これにより、対象物分離ステップが終了する(好ましくは、全ての対象物が記載のように評価された場合)。
【0101】
図3の実施形態では、対象物分離は、評価中の対象物内の全てのピクセルについて色素の分数寄与の「質量中心」ベクトル(ステップ324で取得され、ステップ326で格納される)を計算することによってステップ333で開始する。これは、対象物についての「色素の分数寄与の要約されたベクトル」を表す。これは、全ての対象ピクセルにわたって分数ベクトルを平均することによって得られる。ステップ335において、候補色素が、色素の分数寄与の要約されたベクトルにおいて最も強い存在率を有する色素として、評価中の対象物に割り当てられる。これはまた、「真の色素」であると考えられる対象物中で最も強い存在を有する色素をもたらす。したがって、ステップ226,232の代わりにステップ326,333及び335を
図2の方法で使用してもよい。ステップ337aにおいて、候補色素の寄与と現在の色素の寄与とを比較するオッズ比が計算される。ステップ337bにおいて、オッズ比を所定の閾値と比較することによって、候補色素が現在の色素よりも「真の色素」である可能性が高いことを確実にするためのチェックが行われる。閾値は1として選択することができ、これは、候補色素が現在の色素(すなわち、候補色素が元の色素よりも強い存在を有する可能性が高い)よりも「真の色素」である可能性が高いことを示す。ステップ336において、候補及び現在の色素の発光スペクトルが重複する(すなわち、候補チャネルに関連する色素は、現在のチャネルで発光すると予想される)ようにするために、更なるチェックが実行される。両方のチェック(ステップ336、337b)が満たされた場合(すなわち、ステップ337b及び336でチェックされた条件は両方とも成立する)、ステップ338で対象物が現在のチャネルから除去される。これにより、対象物分離ステップが終了する(好ましくは、全ての対象物が記載のように評価された場合)。チェック337b~336、334~336の順序は無関係であり、いずれかのチェックが最初に実行されてもよいことに留意されたい。
図2及び
図3に示す実施形態では、対象物分離ステップ230/330の後に、画像セグメント化を再実行する任意選択のステップが続く(ステップ250,350)。
【0102】
システム
図4は、本開示による画像を処理するためのシステムの一実施形態を示す。システムは、プロセッサ11及びコンピュータ可読メモリ12を備えるコンピューティングデバイス1を備える。図示の実施形態では、コンピューティングデバイス1はまた、画面として示されているが、例えば可聴信号又は視覚信号などによってユーザに情報を伝達する任意の他の手段を含んでもよいユーザインタフェース13を備える。コンピューティングデバイス1は、例えばネットワークを介して、顕微鏡などの画像取得手段3、及び/又は画像データを記憶する1つ以上のデータベース2に通信可能に接続される。画像取得手段は、好ましくは、例えば複数の色素フィルタを備えた顕微鏡、カラーカメラなどのマルチチャネル画像取得手段である。画像取得の特定の構成は、撮像されるサンプル及び検出される電磁信号のソースに少なくとも部分的に依存してもよい。コンピューティングデバイスは、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、又は他のコンピューティングデバイスであってもよい。コンピューティングデバイスは、本明細書で説明するように、画像を処理するための方法を実施するように構成される。代替の実施形態では、コンピューティングデバイス1は、本明細書で説明するように、画像を処理する方法を実施するようにそれ自体構成されたリモートコンピューティングデバイス(図示せず)と通信するように構成される。そのような場合、リモートコンピューティングデバイスはまた、画像を処理する方法の結果をコンピューティングデバイスに送信するように構成されてもよい。コンピューティングデバイス1とリモートコンピューティングデバイスとの間の通信は、有線又は無線接続を介してもよく、例えば公衆インターネットなどのローカル又は公衆ネットワークを介して行われてもよい。画像取得手段は、コンピューティングデバイス1と有線接続されてもよく、又は図示のように、例えばWiFiなどの無線接続を介して通信することが可能であってもよい。コンピューティングデバイス1と画像取得手段3との間の接続は、直接的又は間接的(例えばリモートコンピュータを介して)であってもよい。画像取得手段3は、サンプルの画像データを取得するように構成され、例えば、サンプル中の標識構造を検出するための画像データを取得するように構成され、標識構造は表面に配置されてもよい。使用される特定の画像取得手段において標識構造を検出するのに適した任意の表面が想定される。例えば、分子計数との関連で、検出は、表面、例えばガラス、金、又は炭素(例えば、ダイヤモンド)表面で行うことができる。幾つかの実施形態では、信号検出は、電磁放射線(例えば、光)を検出するための任意の方法によって行われる。幾つかの実施形態では、信号検出は、遠距離場光学顕微鏡、近接場走査光学顕微鏡、落射蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、2光子顕微鏡、光学顕微鏡、及び全内部反射顕微鏡から選択される方法を使用して行われ、標的構造(例えば標的分子など)は電磁放射線エミッタで標識される。したがって、画像取得手段は、遠視野光学顕微鏡、近接場走査光学顕微鏡、落射蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、2光子顕微鏡、光学顕微鏡、又は全内部反射顕微鏡を含んでもよい。好都合な実施形態において、画像取得手段は共焦点顕微鏡を含む。特に、画像取得手段は、蛍光画像を取得するように構成されてもよい。顕微鏡法に依存しない電磁放射線(特に可視域、紫外域又は赤外域の放射線を含む)を検出する方法のように、他の顕微鏡法も適切である。幾つかの実施形態では、標的を能動的に標識付けする必要はない場合がある。例えば、標的は、電磁放射線源(すなわち、標識)を含んでもよい。或いは、選択された画像取得システムによって検出されてもよい標識を使用して、標的に能動的に標識付けすることができる。幾つかの実施形態では、画像データ取得は、ImageXpress撮像システム(Molecular Devices、カリフォルニア州サンノゼ)及び同様のシステムなどの撮像システムを使用して蛍光クラスタを検出することによる表面読み取りを含む。
【0103】
用途
本方法は、2つ以上の異なる電磁信号ソースが2つの異なるピクセル(すなわち、2つの異なる電磁信号ソースを2つの別個の対象物として同定することにおいて)に対応する2つの異なる物理空間を占有しているかどうかを決定することが望ましい任意の状況で使用してもよい。更に、本方法は、2つ以上の異なる電磁信号ソースが同じピクセルを占有しており、したがって共局在しているかどうかを決定することが望ましい任意の状況で使用してもよい。本方法は、特に蛍光顕微鏡画像などの顕微鏡画像との関連で例示されているが、本方法は、前述の特性を有する任意の他の種類の画像を解析することとの関連でも適用可能である。言い換えれば、本方法は、これらの画像がスペクトル混合に関連する信号を含んでもよい限り、解析されている特定の撮像システム又は画像の種類に関して限定されない。特に、本方法は、顕微鏡画像又は蛍光顕微鏡画像に限定されないが、この文脈において特に有益であってもよい。
【0104】
本明細書に記載の方法は、異なる電磁信号の複数のソースが同じ物理空間を(完全に)占有することが予想されない状況において特に有利である。言い換えれば、本明細書に記載の方法は、複数の構造が解析される場合に特に有利であり、構造は、異なる又は部分的に重なり合う物理空間を占有し、構造の少なくとも幾つかは、異なる電磁信号に関連付けられる。そのような場合、本方法は、それぞれの構造に関連する信号間にクロストークが存在し、画像内のピクセルの一部が複数の前記構造からの信号を含んでもよいような撮像解像度である場合でも、前記構造に対応する対象物を同定するために使用してもよい。
【0105】
本明細書に記載の方法はまた、異なる電磁信号の複数のソースが同じ物理空間を占有すると予想される状況で使用されてもよい。言い換えれば、本明細書に記載の方法は、複数の構造が解析される場合に使用することができ、構造の少なくとも幾つかは、異なる電磁信号に関連付けられ、同じ物理空間を占有する。実際、そのような状況では、本明細書に記載の方法は、それぞれの構造に関連する信号間のクロストークが存在する場合であっても、構造(したがって画像内の構造に関連する対象物)がほとんど又は完全に重複する場合であっても、前記構造に対応する対象物を同定するために使用してもよい。これは、特に、(i)撮像チャネルのうちの1つのみがクロストーク(例えば、第1の構造は、第1のチャネル内の信号に関連付けられ、第1の構造と共局在化する1つ以上の更なる構造は、それぞれの更なるチャネル内の、及び任意選択で第1のチャネル内の信号にそれぞれ関連付けられる)を受け、(ii)対象物についての第1のチャネルにおける信号の真の強度(すなわち、分離からの推定存在量)が他のチャネルにおける信号の真の強度よりも高い場合である。実際、そのような場合、第1のチャネルで同定された対象物は真の対象物(すなわち、除去されない)として正しく標識され、更なるチャネル内の対象物も真の対象物(すなわち、除去されない)として標識される。これは、第1の構造から更なるチャネルへのクロストークがないためである(したがって、更なるチャネル内の対象物は、これらのチャネル内の信号が第1のチャネル内よりも低いにもかかわらず除去されない)。
【0106】
一例として、構造は、第1のチャネルで発光するが、第2のチャネルでは発光しない第1の蛍光色素に関連付けられてもよい。別の構造は、第1のチャネルと同様に第2のチャネルで発光する第2の蛍光色素に関連してもよい。構造が共局在化する場合、第1のチャネルの単一チャネル画像は、第1の構造と第2の構造の両方の存在を反映する強度を有するピクセルを含む対象物を示す。第2のチャネルの単一のチャネルはまた、同じピクセルを含む対象物を示し、強度は第2の構造の存在のみを反映する。ピクセル分離後、各ピクセルは、各チャネル内の推定存在量に関連付けられる。次いで、第1のチャネル内の対象物は、対象物内のピクセルにわたる推定存在量が第1のチャネルによって支配されている場合に第1のチャネルとなる候補チャネルと関連付けられる。したがって、第1のチャネル内の対象物は除去されない。次いで、第2のチャネル内の対象物は、第1のチャネルでもある候補チャネルにも関連付けられる。しかしながら、第1のチャネルと第2のチャネルとの間のクロストークが予期されるかどうか(すなわち、第1のフルオロフォアが第2のチャネルでも放出すると予期されるかどうか)をチェックすることによって、本方法の実施形態は、第2のチャネル内の対象物が除去されるべきでないこと(換言すれば、第2のチャネル内の任意の信号が、第1のフルオロフォアからのクロストークではなく、第2のフルオロフォアの存在を示すこと)を正しく同定する。
【0107】
第1のチャネルを「右」チャネルとして、第2のチャネルを「左」チャネルとして参照し(ここで、「左」及び「右」は、チャネルによって捕捉された波長範囲の相対位置を指すことができ、「左」は「右」よりも低い波長を指す)、対象物が左チャネルから右チャネルに交差すると仮定すると、本方法は、(「左」チャネルからのスペクトルが交差する)「右」チャネル内の対象物の真の強度が「左」チャネル内の対象物の真の強度よりも高い対象物を共局在化するのに特に有用であってもよい。これは、「左」チャネル内の強い強度の対象物と潜在的に共局在する「右」チャネル内の弱い強度の対象物は、本方法によって「交差」としてマークされてもよいが(その推定強度存在量は、「左」チャネル内の対象物の推定強度存在量よりも低いため)、「左」チャネル内の低い強度の対象物と潜在的に共局在する「右」チャネル内の高い強度の対象物は、本方法によって「交差」としてマークされないと述べることに相当する。
【0108】
異なる電磁信号(例えば、異なる蛍光色素)に関連する共局在化又は非共局在化対象物を定義する上記のタスクは、細胞構造の検出、標識微生物(例えば細菌)又は細胞の検出及び/又は計数、標識分子又は分子複合体の検出及び/又は計数との関連で、又は一般に、例えば蛍光標識、発光標識、比色標識などの電磁信号ソースを含むか又はそれでタグ付けされることなどによって、検出可能な電磁信号に関連してもよい任意の構造(顕微鏡法との関連において、特にマイクロ又はナノ構造体)の検出との関連で望ましい場合がある。更に、共局在化構造を同定する能力は、共局在化タンパク質又は他の細胞もしくは分子構造などを同定することとの関連で特に有用であってもよい(例えば、Am J Physiol Cell Physiol.2011 Apr;300(4):C723-C742.Published online 2011 Jan 5.doi:10.1152/ajpcell.00462.2010参照)。
【0109】
したがって、本開示は、サンプル中の標識構造を同定する及び/又は計数する方法に関し、該方法は、サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む画像データを受信するステップであって、標識構造が、チャネルの少なくとも1つの電磁信号に関連付けられる、ステップと、各単一チャネル画像の画像セグメント化を個別に実行して、対象物を形成するピクセルのセットを同定するステップと、前記同定された対象物のうちの少なくとも2つの一部を形成するピクセルについて少なくともピクセル分離を実行して、前記分離ピクセルのそれぞれにおいて、それぞれのチャネルにおける信号の推定存在量を決定するステップと、前記同定された対象物のそれぞれについて、それぞれの対象物内のピクセルの推定存在量に基づいて、複数のチャネルのうちの1つとして候補チャネルを同定するステップと、1つ以上の条件が満たされる場合、画像セグメント化ステップの結果から対象物を除去するステップであって、1つ以上の条件が、候補チャネルが、対象物が同定されたチャネルとは異なることを含み、それにより、更新された画像セグメント化結果を取得する、ステップと、任意選択的に、更新された画像セグメント化結果において、標識構造が電磁信号に関連付けられている少なくとも1つのチャネル内の対象物の数を計数するステップであって、少なくとも1つのチャネル内の対象物の数が、サンプルの領域内の標識構造の数を表す、ステップとを含む。
【0110】
標識構造は、異なる標識構造の複数のセットを含んでもよく、異なる標識構造の各セットは、チャネルのそれぞれの少なくとも1つの電磁信号に関連付けられている。対象物の数を計数するステップは、更新された画像セグメント化結果において、標識構造のセットが電磁信号に関連付けられているそれぞれの少なくとも1つのチャネル内の対象物の数を個別に計数することを含んでもよく、それぞれの少なくとも1つのチャネル内の対象物の数は、サンプルの領域内のそれぞれのセット内の標識構造の数を表す。
【0111】
この方法は、サンプルのある領域の画像データを得るステップを更に含んでもよく、画像データは、サンプルのある領域の複数の単一チャネル画像を含む。本方法は、サンプルの異なる領域で本方法を繰り返すステップを更に含んでもよい。この方法は、蛍光色素などの1つ以上の色素でサンプル中の構造を標識することによってサンプルを得ることを更に含んでもよい。標識された構造は、分子又は分子群であってもよい。例えば、標識構造は、ローリングサークル増幅(RCA)生成物であってもよい。標識された構造体は、標識された微生物又は細胞であってもよい。例えば、標識構造は細菌であってもよい。例えば、複数の異なる種類の細菌をそれぞれの色素で標識することができる。これは、例えば、サンプル中に存在してもよい異なる種類の細菌を同定し、場合により定量するために有用であってもよい。別の例として、複数の異なる種類の細胞をそれぞれの色素で標識することができる。これは、例えば、サンプル中に存在してもよい異なる種類の細胞を同定し、場合により定量するために有用であってもよい。標識された構造は、例えば細胞小器官細胞内小胞、分子複合体などの標識された細胞内構造であってもよい。更に、構造は生物学的又は生化学的である必要はなく、例えば非有機性であってもよい。
【0112】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される技術を使用して、配列決定ステップ(例えば、デジタル又は「次世代」シーケンシングステップ)を使用せずに、サンプル又はサンプルの一部中の特定の核酸又はタンパク質のコピー数をデジタル方式で、すなわち分子の個々のコピーを検出することによって計数することができる。そのような技術は、例えば、診断スクリーニングのために対象から採取されたサンプルを含むがこれらに限定されない任意の種類のサンプル中の核酸分子などの標的分子を測定するための用途を見出す。本明細書で提供される技術の実施形態は、例えば、非侵襲的出生前検査(NIPT)及び他の遺伝子解析において使用される。そのような状況では、検出は、核酸抽出、MIPプローブ設計、MIP増幅/複製、及び/又は環状化MIPからの信号を測定するための方法の1つ以上のステップを含んでもよい。好ましい実施形態では、本技術は、表面上にMIPを固定化し、固定化MIPを検出するための方法を提供する。好ましい実施形態では、固定化MIPはローリングサークル増幅を使用して検出される。
【0113】
本明細書に記載の方法は、標的核酸、例えば患者DNAのサンプルと別の核酸分子、例えば合成プローブとのハイブリダイゼーションを含む標的検出事象などの標的認識事象の検出に関連して使用されてもよい。標的認識事象は、代表的な産物(例えば、伸長、ライゲーション及び/又は切断されたプローブオリゴヌクレオチド)が産生される条件を作り出すことができ、産物は、標的が反応中に存在し、プローブがそれにハイブリダイズしたことを示す。標的核酸の検出は、突然変異、挿入、欠失、一塩基多型(SNP)、及びメチル化のエピジェネティック変異(例えば、非メチル化シトシンをウラシルに変換する試薬で処理し、それによって標的DNAのシトシンメチル化変異を反映する検出可能な配列変異を作り出すDNAの解析による特定のCpGジヌクレオチドのメチル化の変異)を検出及び計数するのに有用であってもよい。
【0114】
分子反転プローブは、検出される標的核酸上の隣接又は近位領域に相補的な第1及び第2の標的化ポリヌクレオチドアームを含んでもよく、ポリヌクレオチドリンカー又は「骨格」は2つのアームを連結する。相補的標的核酸の存在下で、MIPを環状化して、検出に適したMIPレプリコンを形成することができる。幾つかの実施形態では、MIPは、ニック修復酵素、例えばT4 DNAリガーゼ、AMPLIGASE熱安定性DNAリガーゼなどを使用して単純にライゲーションされるが、幾つかの実施形態では、円を形成するためのプローブの閉鎖は、ライゲーション可能なニックを作成するためのプローブの更なる改質、例えば、末端間の重複の切断、核酸ポリメラーゼを使用した末端間のギャップの充填などを含む。本明細書で使用される標的部位又は配列は、他の配列を有するサンプル中の他の核酸から選別しようとする核酸配列の一部又は領域を指し、これは遺伝的障害又は状態の有無(例えば、突然変異、多型、欠失、挿入、異数性などの有無)を決定するのに有益である。対照部位又は配列は、本明細書で使用される場合、特定の対照遺伝子の既知又は正常なコピー数を有する部位を指す。幾つかの実施形態では、標的化MIPは、以下の成分、すなわち、第1の標的化ポリヌクレオチドアーム-第1の固有の標的化分子タグ-ポリヌクレオチドリンカー-第2の固有の標的化分子タグ-第2の標的化ポリヌクレオチドアームを順に含む。幾つかの実施形態では、標的化MIPの標的集団が本開示の方法で使用される。標的集団では、各標的化MIP中の第1及び第2の標的化ポリヌクレオチドアームの対は、同一であり、それぞれ標的部位に隣接する核酸中の第1及び第2の領域と実質的に相補的である。これについては、例えば、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/020023号パンフレット及び国際公開第2017/020024号パンフレットを参照されたい。標的化MIPレプリコンは、i)第1及び第2の標的化ポリヌクレオチドアームが、共に連続標的部位を形成する核酸中の第1及び第2の領域にそれぞれハイブリダイズすることによって、及びii)ハイブリダイゼーション後、ライゲーション反応混合物を使用して、2つの標的化ポリヌクレオチドアーム間のニック領域をライゲーションし、一本鎖環状核酸分子を形成することによってもたらされてもよい。他の実施形態では、標的化MIPレプリコンは、i)第1及び第2の標的化ポリヌクレオチドアームが、それぞれ、標的部位に隣接する核酸中の第1及び第2の領域にハイブリダイズすることによって、及びii)ハイブリダイゼーション後、ライゲーション/伸長混合物を使用して、2つの標的化ポリヌクレオチドアーム間のギャップ領域を伸長及びライゲーションして、一本鎖環状核酸分子を形成することによってもたらされてもよい。
【0115】
ライゲーションされたMIPなどの環状DNA分子は、ローリングサークル増幅(RCA)を使用する増幅に適した基質である。RCAの特定の実施形態では、ローリングサークル複製プライマーは、環状核酸分子、例えばライゲーションされたMIP又は環状化されたcfDNAにハイブリダイズする。鎖置換DNAポリメラーゼ(例えば、大腸菌Pol I DNAポリメラーゼのφ29(Phi29)、Bst Large Fragment、及びKlenow fragment)を用いたプライマーの伸長は、MIP環状分子に相補的な核酸配列のリピートを含有する長い一本鎖DNA分子をもたらす。MIPを表面(例えば、ビーズ又はガラス表面)に固定化する方法は複数ある。例えば、これは、結合可能な部分を含む改質オリゴヌクレオチドでローリングサークル増幅をプライミングすることによって達成されてもよい。プライミングオリゴヌクレオチドの改質に有用な基は、改質オリゴヌクレオチドを適切な反応を用いて固定化することができるように、例えば、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMeyerら(2014)に概説されているように、チオール、アミノ、アジド、アルキン及びビオチンを含むが、これらに限定されない。
【0116】
本発明との関連で使用するための標識又は色素は、いかなる特定の種類にも限定されない。例えば、標識は、例えば、蛍光色素、量子ドット、又は他の蛍光粒子を含んでもよい。多くの異なる蛍光標識システムが、本技術の実施形態に適用される。幾つかの実施形態では、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、TAMRA、Cy3、Cy5)を使用することができ、例えば、オリゴヌクレオチド又は伸長産物に組み込まれたヌクレオチド類似体に結合させることができる。幾つかの実施形態では、蛍光粒子、例えばナノ粒子、ナノ結晶、量子ドット、シリカ(例えば、メソポーラスシリカナノ粒子)ポリマービーズ(例えば、ラテックス)を使用してもよい。実施形態では、当技術分野で公知のように、標識抗体(一次標識抗体又は対象の標的に対する一次抗体と組み合わせた二次標識抗体にかかわらず)などの親和性試薬を使用して構造を標識することができる。更に、蛍光共鳴エネルギー移動のために構成されたクエンチャー及び色素又は標識を利用する検出システムを使用してもよい。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)用に構成されたプローブ対を使用することができ、これはDNAの鎖にハイブリダイズすると、例えばRCAからの産物の検出に使用するための信号を生成する。別の例として、例えばRCAからの産物の検出に使用するために、DNAの鎖にハイブリダイズしたときに、例えば制限酵素などの二重鎖特異的ヌクレアーゼを使用して切断されるように構成された、色素及びクエンチャーを含むプローブを使用してもよい。
【0117】
したがって、1つの特定の例において、本開示は、環状化された核酸プローブを計数するための方法も提供し、該方法は、支持体上の分散した軌跡において標識されたRCA産物を得るステップと、支持体の領域の複数の単一チャネル画像を含む顕微鏡画像データを得るステップと、本明細書に記載のプロセスを使用して画像データ内の対象物として標識RCA産物を計数するステップとを含む。環状化された核酸プローブの計数は、異数性(例えば、母体血液サンプルにおいて検出される胎児異数性)を検出するステップ、又は対象の血液サンプル中の癌を検出するステップなど、診断目的のために行われてもよい。異数性を検出するステップは、母体DNA及び胎児DNAを含むcfDNA分子などの、母体血液サンプルからの無細胞DNA(cfDNA)分子を検出又は計数することを含んでもよい。母体DNA及び胎児DNAは、単一の反応混合物中の同じプローブ(例えば分子反転プローブ)によって検出されてもよい。癌を検出するステップは、癌を有すると疑われる対象からの血液サンプルからcfDNA分子を検出又は計数することを含んでもよい。
【0118】
支持体上の分散した軌跡で標識RCA産物を得るステップは、a)環状化核酸プローブ及び線状核酸を含むライゲーション混合物を用意するステップと、b)ライゲーション混合物を少なくとも1つのエキソヌクレアーゼで処理するステップであって、環状化核酸プローブが少なくとも1つのエキソヌクレアーゼの基質ではない、ステップと、c)複数の複合体を形成するステップであって、各複合体が、処理されたライゲーション混合物からの環状化された核酸プローブにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプライマーを含むステップと、d)i)複合体中のプライマーをローリングサークル増幅(RCA)反応で伸長させてプライマー部分を含むRCA産物を形成すること、及びii)前記RCA産物に標識プローブをハイブリダイズさせることを含むプロセスにおいて複数の複合体の形成を検出するステップであって、ハイブリダイズした標識プローブを有するRCA産物が分散した軌跡で支持体に局在しており、分散した軌跡に局在しているRCA産物の少なくとも一部が、ハイブリダイズした標識プローブの検出によって個別に検出可能である、ステップとを含んでもよい。
【0119】
プライマーは、伸長前に分散した軌跡に局在してもよい。或いは、RCA産物のプライマー部分は、伸長後に分散した軌跡に局在する。プライマー又はプライマー部分は、1つ以上の表面に結合していてもよく、例えば1つ以上の表面に共有結合していてもよい。プライマー又はプライマー部分は、捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、捕捉オリゴヌクレオチドは、1つ以上の表面に結合し、好ましくは1つ以上の表面に共有結合している。プライマーは、伸長の前に、1つ以上の表面に結合してもよく、例えば1つ以上の表面に共有結合していてもよく、又は1つ以上の表面に結合したオリゴヌクレオチドを捕捉するためにハイブリダイズしていてもよく、例えば1つ以上の表面に共有結合してもよい。支持体は、アッセイプレート、例えばマルチウェルアッセイプレート、例えばガラス底アッセイプレートの一部;スライドの一部;及び1つ以上の粒子、例えばナノ粒子から選択される1つ以上の表面を含んでもよく、この場合、粒子は常磁性粒子、例えば強磁性ナノ粒子、例えば酸化鉄ナノ粒子であってもよい。プライマーは、粒子上の表面に結合させることができ、そのような粒子上の表面に共有結合させることができ、ハイブリダイズした標識プローブを有するRCA産物は、磁石、遠心分離、及び濾過のうちの1つ以上によって分散した軌跡に局在化させることができる。分散した軌跡は、典型的には不規則な分散状態にある。ハイブリダイズした標識プローブは、典型的には、蛍光標識を含むオリゴヌクレオチドを含む。ハイブリダイズした標識プローブは、クエンチャー部分を含むオリゴヌクレオチドを含んでもよい。複数のRCA産物を、全て同じ標識、例えば同じ蛍光標識を含む標識プローブにハイブリダイズさせることができる。本明細書に記載の方法は、複数のRCA産物を、2、3、4、5、6、7又はそれ以上の異なる標識、例えば2、3、4、5、6、7又はそれ以上の異なる蛍光標識を含む標識プローブにハイブリダイズさせる場合に特に有利であってもよい。
【0120】
RCA産物を形成することは、少なくとも2から10%(w:v)、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも16%、又は少なくとも18%から20%のPEGなどのポリエチレングリコール(PEG)を含む反応混合物中で複合体中のプライマーを伸長させることを含んでもよい。PEGは、200~8000、200~1000、400~800、又は約600の平均分子量を有してもよい。RCA産物を形成することは、反応混合物を開始及び終了を有するインキュベーション期間にわたってインキュベートすることを含んでもよく、反応混合物は、インキュベーション期間の開始とインキュベーション期間の終了との間に1回又は複数回混合することによって処理される。混合は、ボルテックス混合、突沸混合、揺動混合、傾斜混合及び超音波混合のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0121】
環状化核酸プローブ及び線状核酸を含むライゲーション混合物を用意するステップは、サンプル由来の標的核酸、例えばサンプル由来の標的DNAなどの標的核酸の存在下で、パドロックプローブなどのMIPプローブをライゲーションして環状化核酸プローブを形成することを含んでもよい。少なくとも1つのエキソヌクレアーゼは、Rec Jf、Exo VII、Exo T及びThermolabile Exo Iから選択される少なくとも1つのエキソヌクレアーゼを含んでもよい。ライゲーション混合物を少なくとも1つのエキソヌクレアーゼで処理するステップは、複数の複合体を形成する前に、少なくとも1つのエキソヌクレアーゼを熱不活性化するなど、少なくとも1つのエキソヌクレアーゼを不活性化することを含んでもよい。RCA産物の形成は、標識プローブを含む反応混合物中で複合体中のプライマーを伸長させることを含んでもよい。RCA産物は、標識プローブをRCA産物にハイブリダイズさせる前に、分散した軌跡に局在してもよい。ハイブリダイズした標識プローブを有するRCA産物は、分散した軌跡でRCA産物を計数する前に酸化グラフェンで処理することができる。ハイブリダイズした標識プローブを有するRCA産物は、分散した軌跡でRCA産物を計数する前に、1つ以上の界面活性剤、例えばアニオン性薬剤、好ましくはドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム;ラウリル硫酸アンモニウム;カチオン剤、例えば塩化ベンザルコニウム;セチルトリメチルアンモニウムブロミド;直鎖アルキルベンゼンスルホネート、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;非イオン性薬剤、好ましくはポリオキシエチレン(20)ソルビタン-モノラウレート、-モノパルミテート、モノステアリン酸、又はモノオレエートから選択されるTWEEN(登録商標)界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル、並びにステロイド及びステロイドグリコシド、好ましくはサポニン又はジギトニンから選択されるTRITON(登録商標)洗剤;及び双性イオン剤、例えば3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS);及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びC12~C15アルコールエーテル硫酸ナトリウムを含む洗剤剤、例えばTEEPOL(登録商標)洗剤の混合物から選択される薬剤を含む1つ以上の界面活性剤で処理することができる。支持体は、コーティングを含んでもよく、コーティングは、好ましくは、表面改質モノマーから重合されたポリマーコーティングを含み、表面改質モノマーは、ドーパミン、タンニン酸、カフェイン酸、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、及び没食子酸モノマー、好ましくはドーパミン及びタンニン酸の1つ以上を含んでもよい。ポリマーコーティングは、ホモポリマーであってもよい。RCA産物を分散した軌跡に局在化させる前に、プライマー、プライマー部分又は捕捉オリゴヌクレオチドは、好ましくは反応性アミン、反応性チオール基、ビオチン及びハプテンから選択される1つ以上の固定化部分を含んでもよく、固定化部分は、表面と相互作用してプライマー、プライマー部分又は捕捉オリゴヌクレオチドを表面に結合させる条件下で表面に露出している。RCA産物を分散した軌跡に局在化させる前に、表面は、アクリル基;チオール含有基;反応性アミン基;カルボキシル基;ストレプトアビジン、抗体、ハプテン、炭水化物及びレクチンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0122】
支持体上の分散した軌跡で標識RCA産物を得るステップは、a)環状化核酸プローブ及び線状核酸を含むライゲーション混合物を用意するステップと、b)複数の複合体を形成するステップであって、各複合体が、ライゲーション混合物からの環状化核酸プローブにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプライマーを含み、プライマーがナノ粒子、好ましくは常磁性ナノ粒子に結合している、ステップと、c)(i)複合体中のプライマーをローリングサークル増幅(RCA)反応で伸長させて、ナノ粒子に結合したRCA産物を形成するステップであって、ナノ粒子上の前記RCA産物の少なくとも一部が個々に検出可能である、ステップと、(ii)分散した軌跡で支持体にRCA産物を局在化させるステップであって、分散した軌跡に局在化したRCA産物の少なくとも一部が、ハイブリダイズした標識プローブの検出によって個々に検出可能である、ステップとを含むプロセスで複数の複合体の形成を検出するステップとを含んでもよく、標識RCA産物を計数するステップは、ナノ粒子上のRCA産物を計数することを含む。ハイブリダイズした標識プローブを有するRCA産物は、磁石、遠心分離、及び濾過の1つ以上によって分散した軌跡に局在化されてもよい。この方法は、標識プローブをRCA産物にハイブリダイズさせることを更に含んでもよく、ここで、RCA産物の少なくとも一部は、ハイブリダイズした標識プローブの検出によって個別に検出可能である。ハイブリダイズした標識プローブは、蛍光標識を含むオリゴヌクレオチドを含んでもよい。ハイブリダイズした標識プローブは、クエンチャー部分を含むオリゴヌクレオチドを含んでもよい。複数のRCA産物を、全て同じ標識、好ましくは同じ蛍光標識を含む標識プローブにハイブリダイズさせることができる。複数のRCA産物を、2、3、4、5、6、7又はそれ以上の異なる標識、好ましくは2、3、4、5、6、7又はそれ以上の異なる蛍光標識を含む標識プローブにハイブリダイズさせることができる。ナノ粒子は、酸化鉄ナノ粒子などの常磁性ナノ粒子であってもよい。
【0123】
ナノ粒子は、直径が約1000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、10nm、5nm、又は1nm未満の平均直径であってもよい。ナノ粒子は、1から50nm、例えば5から20nmの平均直径であってもよい。ナノ粒子は、2.5から55nmの直径の無機コアと、好ましくは3から5nmの全厚を有する有機コーティングとを含んでもよい。プライマーを結合する前に、ナノ粒子は、反応性基を含む表面を有してもよく、反応性基は、好ましくは、アクリル基、チオール含有基、反応性アミン基、カルボキシル基のうちの少なくとも1つを含み、プライマーは、ナノ粒子の表面上の反応性基と共有結合を形成するのに適した反応性基を含み、プライマーが前記ナノ粒子に共有結合している条件下でプライマーとナノ粒子とが一緒に処理される。
【0124】
環状化核酸プローブにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプライマーは、その3’末端に捕捉部分、例えば少なくとも1つのビオチン部分を含んでもよく、3’OH基を欠く末端ヌクレオチドを更に含んでもよい。プライマーの3’末端のヌクレオチドは、2’、3’ジデオキシヌクレオチド、並びに3’リン酸、3’ヘキサンジオール、3’O-メチル、3’O-アシル、3’O-アリル、3’O-エーテル、3’O-メトキシメチル、3’O-ニトロベンジル、3’O-アジドメチレン、及び3’-アミノ改質剤を含むヌクレオチドからなるグループから選択されてもよい。
【実施例】
【0125】
実験例
ここで、画像を取得及び解析する例示的な方法を説明する。
【0126】
実施例1
この実施例は、本明細書に記載のスペクトル分離プロセスの検証のための実験プロトコルを提供する。
【0127】
分子反転プローブの捕捉及び環状化
分子反転プローブ(MIP)を使用して人工線状DNA配列を捕捉し、DNAリガーゼで連結してローリングサークル増幅(RCA)用の環状化DNA分子を作成した。RCAアッセイで使用される各蛍光色素について、固有のMIP配列を使用した。異なる色素の配列を同時に連結した。
精製した合成DNAに以下の反応でMIPを添加した。
○2μlのアンプリガーゼバッファー(10×)、5μlの100μM MIP、7.5μlの200μM人工線状DNA配列、及び1μlのAMPligase(80単位)。体積をヌクレアーゼフリー水で20μlにした。
○反応物を98℃で2分間インキュベートし、45℃に達するまで1度/分で冷却し、その後、反応物を45℃で2時間維持した。
【0128】
RCAアッセイのためのガラス官能化
ガラス底板を官能化して、ガラス表面に結合したポリマーに共有結合したDNAオリゴヌクレオチドを導入した。これを行うための適切なプロトコルは当技術分野で公知である。例えば、表面官能化支持体を調製することは、a)第1の表面(又は基板;又は第1の表面を有する基板)を用意すること、b)前記第1の表面を1つ以上の表面改質剤(SMA)で改質すること、c)それによって、第2の表面(又はコーティング)を含む支持体を用意することを含んでもよい。第2の表面は、第1の表面の少なくとも一部を被覆してもよく、1つ以上の解析物と錯体を形成することができる官能基を含んでもよい。1つ以上の解析物と錯体形成することができる官能基は、アミン基(例えば、一級、二級、三級又は四級アミン)、カルボキシレートもしくはカルボン酸基、又はそれらの組み合わせであってもよい。1つ以上のSMAによる第1の表面の改質は、担体、1つ以上のSMA、及び(場合により)1つ以上の開始剤、例えば1つ以上の重合開始剤を含む混合物と第1の表面を接触させることを含んでもよい。SMAは、ビニルモノマー又はフェノールモノマーであってもよい。ビニルモノマーは、アクリレートモノマーを含んでもよい。アクリレートモノマーは、カルボン酸、アミン、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、アクリレートモノマーは、アクリル酸、メタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。幾つかの例では、アクリレートモノマーは、2-アミノエチルメタクリレート(AEMA)、アクリル酸(AA)、又はそれらの組み合わせを含む。フェノールモノマーは、2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を含んでもよい。例えば、フェノールモノマーは、ガロイル基、カテコール基、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。開始剤は、例えばラジカル重合を介して、モノマーの単独重合又は共重合などの重合を開始することができる。開始剤は、酸化剤、塩基、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。開始剤は、ハロゲン、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。実施形態では、開始剤は、過硫酸アンモニウム(APS)、N,N,N’、N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。開始剤は、周囲条件下又はそれらの組み合わせで熱的に重合を開始してもよい。或いは、SMAはフォトポリマーを含んでもよく、重合は、例えばハロゲン、アルゴン、キセノン又はLED光源からの光によって開始される。したがって、開始剤は光開始剤であってもよい。適切な組み合わせには、ドーパミン又はタンニン酸である第1のSMA、AEMA又はアクリル酸である第2のSMA、及び過硫酸アンモニウム、TEMED、又はそれらの組み合わせから選択される開始剤が含まれる。第1の表面(又は基板)は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン又は3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートで処理された表面などのシラン化表面であってもよい。例えば、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sekedatらによる国際公開第2019/195346号パンフレット、Methods,Systems,and Compositions for Counting Nucleic Acids(2019)を参照されたい。
【0129】
RCAアッセイ
RCAを、ローリングサークル産物と蛍光標識オリゴヌクレオチドとの結合から得られる蛍光信号結合配列の線形増幅に使用した。以下のプロトコルを使用した:
氷上でRCA溶液を調製する
100μLのRCA溶液の場合:
MIP調製物全体を約20μL正確にするか、又は段階希釈を行い、より少ない投入材料を得る(円形化MIPの理論的投入量は200ng/μlである)。
1倍の最終濃度になるように10μLの10×Phi29緩衝液をピペットで取る。
最終溶液中の0.4mMに対して4μLの10mM dNTPを正確に測定する。
分子グレード水中のPEG分子量600から30%ポリエチレングリコール(PEG)溶液を調製し、0.2μm孔径フィルタで濾過する。
50μLの濾過した30%PEGをピペットで取る。
最終溶液中の80単位について4μLのPhi29を正確にする(使用しないときはPhi29を氷上に保つ)。
分子グレードの水12μLをピペットで取る。
溶液をボルテックスし、処理されたガラス表面上にピペットで移し、次いでプレートをシールする。
サーモミキサーの平底ヒートブロック上にプレートを45℃で90分間置く。
ウェル内容物を除去し、100μLの1×TBSで3回洗浄する。
5μLの10×PHI29緩衝液、0.01%Teepol洗剤及び2.5μM蛍光標識オリゴを添加することによって、蛍光オリゴを添加してローリングサークル生成物を染色する。
○蛍光色素を37℃で30分間インキュベートする。
○ウェル内容物を除去し、100μLの1×TBSで4回洗浄する。
○最後の洗浄を維持し、顕微鏡で撮像する。
【0130】
撮像
蛍光RCA産物を撮像するために、落射蛍光顕微鏡(IXM4、分子デバイス)を使用した。自動顕微鏡法は、ハイスループットアッセイのために好適には使用されてもよい。画像を捕捉するために20倍対物レンズを使用した。プレートをIXM4顕微鏡に入れ、以下のように撮像した。
プレートを自動露出させて、蛍光強度値の広いダイナミックレンジ(16ビット画像などの使用されるカメラの最大範囲)を確保した。
撮像のために、プレートの各ウェルを合計100枚の画像の10×10のグリッドに細分した。このうち、ウェルの中央部をカバーする45枚の画像を解析した。各画像は2048×2048ピクセルを有し、カバー面積は0.6×0.6mm2であった。個々のピクセルの捕捉面積は約0.3×0.3μm2であった。
各画像(ウェル軌跡)について、実験設定によって指定された全ての色素チャネルで取得を行った。
【0131】
色素
この実験では、染色フルオロフォアとしてAlexa色素を使用した:Alexa488、Alexa546、Alexa594、Alexa647、Alexa700、Alexa750。これらの色素の発光スペクトルはベンダー(Integrated DNA Technologies)から入手した。
【0132】
実施例2
この例は、画像処理手法の性能を評価するために使用してもよいシミュレートされた画像の生成のためのプロセスを説明する。
【0133】
グラウンドトゥルース情報(すなわち、画像のどの領域がそれぞれのチャネル内のそれぞれの対象物の一部として同定されるべきかを同定することを可能にする最終的な情報である)は利用できないことが多いため、in silico画像を取得して画像処理方法の性能を評価することができる。そのようなin silicoで生成された画像内の対象物は、ユーザによって意図的に配置されるので、画像は、前記対象物を回復するための方法の性能の評価に使用してもよいグラウンドトゥルースに設計によって関連付けられる。
【0134】
現実の(すなわち、実験)陰性対照画像を背景として使用した。そのような各画像及びチャネルについて、実施例3に記載されるように、閾値を最初に決定した。次に、選択ピクセルにおいてピクセル強度を指定された(閾値を超える)値に設定することによって、「対象物」(各対象物は1つのピクセルを含む)を作成した。スペクトルクロストークをモデル化するために、「交差」対象物の強度は、ベンダー(Integrated DNA Technologies)から得られた、シミュレートされた(この場合、Alexa488、Alexa546、Alexa594、Alexa647、Alexa700、Alexa750-
図5を参照されたい)色素の発光スペクトルに基づいて構築されたスペクトル分離行列(実施例3を参照)からの対応する値によってスケーリングされた。
【0135】
交差する対象物の割り当てられた位置は、チャネル固有の変動をモデル化するために、わずかなジッタ(対象物座標を1ピクセルだけランダムにシフトさせる)を受けた。最後に、得られた画像を対称ガウシアンフィルタで畳み込み、撮像のぼかし効果を模倣した。
【0136】
実施例3
本実施例では、実施例1、2で説明した撮像データに適用した画像処理ステップについて説明する。
【0137】
使用されるスペクトル分離アルゴリズムにかかわらず、以下に記載されるように、全ての取得された画像は、最初に閾値処理によって処理され、続いてセグメント化された。次いで、以下に記載するように、様々な分離ステップを単独で又は組み合わせて適用した。
【0138】
閾値
各撮像軌跡について、以下のようにして閾値マップを得た。まず、各チャネルについて、正方形のフットプリント(対象ピクセルの周りの11×11ピクセル)を用いた適応閾値処理を使用して、陰性対照画像を使用して閾値を推測した。チャネル固有の閾値は、(正方形のフットプリントのサイズによって定義されるように)ピクセル近傍に対するピクセル強度オフセットの分布の99.999%パーセンタイルとして推定された。次に、これらのチャネル固有の閾値を軌跡チャネル画像に適用し、ここでも閾値推定ステップと同じ平方フットプリントで適応閾値処理を使用した。ピクセルは、その強度とその近傍の強度の中央値(正方形のフットプリントによって定義される)との差が対応するチャネル閾値を超えた場合、前景として標識された。
【0139】
セグメント化
閾値処理後、各画像をセグメント化した。セグメント化とは、個々の対象物を形成する前景ピクセルのグループを同定するプロセスを指す。多くのセグメント化アルゴリズムが当技術分野で知られている。それぞれが固有の標識に関連付けられた対象物の位置を同定するのに十分な情報を出力するセグメント化アルゴリズムが有利である。これは、例えば、行列の各要素が画像のピクセルにマッピングされる行列の形態であってもよく、異なるセグメント化された対象物には、行列に記録された固有の標識が割り当てられる。
本実施例では、ウォーターシェッドアルゴリズムを用いて画像セグメント化を行った。ウォーターシェッドアルゴリズムは、画像強度マップを(反転された)トポグラフィックマップとして表し、ピクセル強度は、ベイスンの深さに対応する(高強度のピクセルは「底部」に近い)。その後、画像セグメント化は、「皿を埋め」、同じ「皿」に属するピクセルを記録することによって実行される。その結果、同じ対象物に属すると考えられるピクセルが同じ番号でインデックスされたマップが得られる。
【0140】
スペクトル分離行列の構築
スペクトル分離プロセスに影響を及ぼす撮像システム及び/又は信号ソース(例えば、色素)に関する任意の情報を使用して、スペクトル分離行列を構築することができる。単純な例では、使用される色素の発光スペクトルを使用してスペクトル分離行列を構築することができる。発光スペクトルは、理論スペクトル/参照スペクトル、又は特定の撮像システムの特徴も捕捉する有効スペクトルであってもよい。この場合、スペクトル分離行列は以下のように構成された。
【0141】
ステップ1:各色素について、発光スペクトルを正規化する:この場合、各色素の正規化された発光スペクトルは、各波長での発光を色素のピーク発光(すなわち、最大排出)で割ることによって得られ、色素Alexa488、Alexa546、Alexa594、Alexa647、Alexa700、及びAlexa750について
図5に示すように、0から1又は0から100(すなわち、正規化された発光スペクトルをそれぞれのピーク発光の%で表す)の範囲の発光を有するスペクトルが得られた。これらのスペクトルは、相対発光スペクトルと呼ばれることがある。
【0142】
ステップ2:各(正規化)スペクトルについて、ピーク発光(例えば、相対発光スペクトルがピーク発光の%で表される場合、100)が得られる波長を決定する。これらは、
図5に縦線で示されている。
図5から分かるように、多くの場合、これは色素名に現れる数字に単純に依存することができず、すなわち、Alexa488の場合、発光ピークは実際には488nmにはない。
【0143】
ステップ3:係数a
ijを有する行列Aとして分離行列を構築し、ここで、エントリーa
ijは、(ステップ2からの)色素iのピーク発光波長での(ステップ1からの-通常、%値としてではなく0~1の値として表される)色素jのスペクトルの(正規化された)発光である。言い換えれば、「真の」色素がピーク発光を示す波長を考えると、この波長で他の色素の発光を引き出し、行列行を満たす。これらは、
図5に破線の括弧で示されている。得られた分離行列は、対角線(「真の」色素)に「1」を有し、2つの色素の発光スペクトルが全く重複しない場合に「0」を有し、そうでない場合には非ゼロ値(0~1の範囲)を有する。例えば、
図5を参照すると、Alexa488のピーク発光についての行は、「Alexa488」列に「1」を有し、他の全ての列に「0」を有する。Alexa546のピーク発光についての行は、「Alexa546」列に「1」を有し、「Alexa488」列に
図5に示す四角括弧(Alexa546のピーク発光を示す縦線の左)に対応する非ゼロ係数を有し、他の全ての列に「0」を有する。Alexa594のピーク発光についての行は、「Alexa594」列に「1」を有し、「Alexa594」列に
図5に示す左の四角括弧(Alexa594のピーク発光を示す縦線の左)に対応する非ゼロ係数を有し、「Alexa488」列に
図5に示す右の四角括弧(Alexa594のピーク発光を示す縦線の右)に対応する非ゼロ係数を有し、他の全ての列に「0」を有する。他の行は、同じ原理に従って取得してもよい。
【0144】
基本(ピクセル)分離
例えば分子計数用途を含む多くの用途では、各高解像度画像は通常、約4×106ピクセルを含む。したがって、画像内の全てのピクセルを分離することは、計算的に非常に集中的であり、実験システムが1つのセッションで数千の画像を生成する場合には非現実的になる。この計算上のボトルネックを克服するために、分離は、少なくとも2つのチャネルにおいて画像によって共有されるピクセルとして決定される、分離される必要があるピクセルにのみ適用される。
【0145】
上記の閾値処理ステップの結果として、各画像内の各チャネルcは、ijが単一のピクセルの座標である要素
を有するバイナリ画像行列
(本明細書ではチャネル固有の前景行列と呼ばれる)に関連付けられ、行列
内の対応する要素は、ピクセルが(それぞれのチャネル内の)前景ピクセルとして同定された場合に「1」に設定され、そうでない場合に「0」に設定される。当業者が理解するように、個々の単色画像は、それぞれx、y座標及び強度値に関連付けられたピクセルの2次元配列として容易に見ることができるので、(2次元)行列及び座標ijへの参照は理解を容易にするために使用される。しかしながら、そのような各行列は、代わりに、ベクトル(例えば、連結によって)として、又は多次元配列(例えば、各チャネルは、第3の次元に沿った2次元行列として表される。)の一部として、又は個々のピクセルの同一性を維持する任意の他の表現として表すことができる。
【0146】
チャネル固有の前景行列を使用して、共有前景行列Tを次のように計算した。
共有前景行列Tは、少なくとも2つのチャネルで前景として見えるピクセルに「1」を含み、他の全てのピクセルに「0」を含む。
【0147】
各共有前景ピクセルij(すなわち、Tの対応する要素が「1」を含む各ピクセル)について、観測されたチャネル強度のベクトルを以下のように構築することができる。
ここで、
は、チャネルn内のピクセルijの強度であり、これは、
として、チャネルnの生画像行列内のピクセルijの強度として表すこともできる。次いで、各ピクセルベクトルは、例えば、以下を計算することによって正規化することができる。
【0148】
ピクセル分離のタスクは、そのようなピクセルベクトルごとに、予想される存在量の対応するベクトルを推測することである。予想存在量は、ピクセル内の「真の」チャネル強度、すなわち各チャネルに真に関連する信号の量を表す。全てのピクセルが単一の色素に関連付けられると予想される特定の場合、存在量は、ピクセルが各色素(各色素は特定のチャネルに対応する)に関連付けられる可能性を捕捉する。
【0149】
線形ピクセル分離は、各混合ピクセルが、ピクセルによって捕捉された領域内の要素の相対的存在量によって重み付けされた、信号を生成した要素のスペクトルの線形結合であると仮定する。線形ピクセル分離は、以下の制約付き線形最適化問題を解くことによって達成することができる。
ここで、
Uはスペクトル分離行列(「スペクトル重複行列」とも呼ばれる)であり、
は
(正規化された生のピクセル強度ベクトル)に対応する予想存在量のベクトルであり、要素
はそれぞれのチャネルcに対応する。ベクトル
は、ピクセルにおける撮像チャネルijの予想される存在量を表す。例えば、蛍光画像を見る場合、スペクトル分離行列Uは、各チャネルで撮像された波長で、撮像されている様々な色素の(理論的又は有効な)発光スペクトルを表すことができる。有効発光スペクトルは、特定の色素の発光に関連する効果、並びに使用されている撮像システム(例えば、特定の色素の「有効な」記録された発光に影響を及ぼす特定のフィルタを含んでもよい特定の検出器を含む)に関連する効果を捕捉することができる。最も単純な例では、スペクトル分離行列Uは、各チャネルで撮像された波長で、撮像されている様々な色素の既知の発光スペクトルを表す。行列Uは、方法のパラメータとして設定され、既知又は仮定される。多くの蛍光色素は、よく特徴付けられた発光スペクトルを有する。各分離ピクセルについてベクトル
を特定すると、ピクセル分離ステップが完了する。ベクトル
は、ピクセルijにおける様々な色素からのそれぞれの信号の「真の」存在量を含む。
【0150】
ピクセル分離ステップは、各ピクセルに対して分離強度値をもたらすが、各ピクセルに単一のチャネル、又はピクセルが属する対象物に単一の同定情報を割り当てない。これは、以下に記載されるような1つ以上の分離手法を使用して行われる。
【0151】
ピクセルベースの分離
各分離ピクセルベクトル
について、真のチャネルは、予想される存在量が最大であるチャネルとして決定される。
ここで、
は、ピクセルijの最も高い予想存在量に関連付けられたチャネルに対応する単一の値である。この段階では、画像内の全てのピクセルに固有のチャネル標識が割り当てられており、画像は分離と見なされる。分割は、ピクセル分離画像に対して再び実行することができ、その結果、元の対象物のサブセットであるピクセルを含む対象物の新しいセットが得られる。
【0152】
対象物ベースの分離(硬質閾値)
各分離ピクセルベクトル
について、真のチャネルは、式(7)のように、期待される存在量が最大であるチャネルとして最初に決定される。
【0153】
各チャネルc及び各対象物
について、候補チャネルは、次いで、対象物内で最も高い存在を有するチャネルとして決定される。
ここで、
は、対象物
の一部であるピクセルijの
値の中で最も表されるチャネルに対応する単一の値である(対象物は、チャネルc=nの対象物に属するピクセルijのセットがチャネルc=mの対象物に属するピクセルijのセットと重複するようにチャネルごとの方法でセグメント化することによって定義される)。このステップの結果として、各対象物
は候補チャネル
に関連付けられる。
【0154】
各対象物
について、対象物が同定されたチャネル(真の対象物)に本当に属するかどうか、又は対象物が別のチャネルから交差しているかどうかに関する決定が行われる。特に、条件(9)及び(10)の両方が成立する場合、対象物
はチャネルの閾値行列cであるT
cから削除される。
ここで、式(9)は、前のステップで同定された候補チャネルが対象物
が同定されたチャネルと同じではないという条件を表し、式(10)は、候補チャネルと対象物
が同定されたチャネルとの間のスペクトルクロストークがスペクトル分離行列によってサポートされるという条件を表す。換言すれば、これらの条件は、(a)対象物を構成する個々に分離ピクセルが別のチャネルがより可能性が高いことを示す場合、対象物は交差対象物である可能性が高く、(b)それぞれのチャネルに関連付けられた色素の既知のスペクトルに従って、現在のチャネルにおける「他のチャネル」の信号の交差が可能である(及び予想される)という仮定を捕捉する。
【0155】
対象物ベースの分離(軟質閾値)
各チャネルc及び各対象物
について、ピクセル存在量の質量中心(COM)をまず決定する。
【0156】
次に、候補チャネルは、予想されるCOM存在量が最大であるチャネルとして決定される。
【0157】
このとき、条件(9)と条件(10)の両方が成立する場合には、対象物
をT
cからチャネル
の閾値行列から削除することで、前述したように候補チャネルを受け付けて対象物分離決定ステップに進むことができる。
【0158】
任意選択で、オッズ比を計算し、条件(9)及び(10)に対する更なる条件として評価することができる。オッズ比を計算することは、例えば、現在のチャネルと候補チャネルとがほぼ同じ存在量を有するタイ様の状況において有用であってもよい。現在のチャネルの予想COM存在量を
で表すと、現在のチャネルに対する候補チャネルのオッズ比は、以下のように定義することができる。
ここで、
は候補チャネルの予想COM存在量である。次いで、対象物が別のチャネルから交差している(かつ現在のチャネルから除去されるべきである)かどうかを決定するために、決定閾値をオッズ比に適用することができる。例えば、条件(9)及び(10)が成立する場合、チャネル
の閾値行列であるT
cから対象物
を削除することができ、
ここで、
は選択されたオッズ比閾値である。
【0159】
実施例4
本実施例では、実施例3で説明した画像処理方法を、実施例1及び2で説明したデータに適用することについて説明する。
【0160】
異なるスペクトル分離手法の性能を以下に記載されるように定量化した。一部には、実験的検証のためのグラウンドトゥルースが知られていなかったため、in silico及び実験的検証に異なる定量化メトリックが使用されたことに留意されたい。
【0161】
in silico混合/分離性能の定量化
リコールメトリック(対象物呼び出し感度)は、分離システムについて検出された対象物の数に対する(それらのチャネル同定情報の意味で)正しく呼び出された対象物の数の割合として定義された。精度メトリック(陽性予測値)は、非分離システムについて検出された対象物の数に対する、(それらのチャネル同定情報の意味で)正しく呼ばれる対象物の数の割合として定義された。
【0162】
全ての場合の検出は、閾値処理及びセグメント化ステップのために同じ画像処理アルゴリズムを使用して実行されたことに留意されたい。これらの解析の結果が
図6、
図7、
図8、
図9及び
図10に示される。
【0163】
図6は、in silico模擬蛍光顕微鏡画像に異なる分離プロセスを適用したシミュレーション実験の結果を示す。実施例2で説明したように、スペクトル混合を用いて、画像ごとに異なるレベルの割り当てられた対象物で、6つの色素の多重(Alexa488、Alexa546、Alexa596、Alexa645、Alexa700、Alexa750)をシミュレートした。
図6の一番上の行は、混合前のシミュレートされたデータ(すなわち、スペクトルクロストークのないシミュレートされたデータ)を示している。この行は、「グラウンドトゥルース」データを表しており、各チャネル内の真の対象物の位置を示している。
図6の2行目は、混合後のシミュレーションデータ(すなわち、実施例2に記載されているようなスペクトル分離行列に基づいてスペクトルクロストークが適用されたシミュレートされたデータである)を示している。一番上の行と2番目の行を比較すると、各チャネル内の交差する対象物(2番目の行には存在するが一番上の行には存在しない対象物)である対象物が示されている。Alexa488チャネル(左端の列)は、他の色素のいずれもそのチャネル内で放出しないので、交差する対象物を含まない。しかしながら、Alexa546チャネル(左から2番目の列)は、Alexa488チャネルからの交差対象物を含む(そのうちの幾つかは、Alexa546画像内で灰色の矢印で示されており、Alexa488チャネル内の対応する真の対象物は、Alexa488画像上で白色の矢印で示されている)。同様に、Alexa596、Alexa645、Alexa700、及びAlexa750チャネルの第2の列には、交差する対象物が見られる。第3~第5の行は、異なる対象物分離手法に対応する。
【0164】
3つの手法全てにおいて、実施例3において基本(ピクセル)分離として記載されたステップを適用した。これらに続いて、ピクセル/対象物の分離のための3つの異なるプロセスが行われた。「ピクセル分離」と標識された行は、実施例3で説明したピクセルベースの分離方法を使用して処理された画像を示す。この手法は、各チャネル内の各ピクセルに単一のチャネルを割り当てるが、対象物ごとの決定は行わない。「分離対象物(硬質)」と標識された行は、例3で説明した対象物ベースの分離(硬質閾値)方法を使用して処理された画像を示している。「分離対象物(軟質)」と標識された行は、例3で説明した対象物ベースの分離(軟質閾値)方法を使用して処理された画像を示し、OR閾値は1である。Alexa546チャネルに見られるように、両方の対象物分離手法は、チャネル内の真の対象物の大部分を維持しながら、灰色の矢印で示された交差する対象物を首尾よく除去した(下の2列の画像を上の列の画像と比較する)。対照的に、ピクセルの分離のみを使用すると、画像内に多くの交差する対象物が存在することになった。Alexa546チャネルの下の2つの列を比較すると、軟質対象物分離手法が、真の対象物の不必要な除去を回避したことが更に示されている(最後から2番目の列の対象物としてもはや輪郭が描かれていないが、依然として(正確に)下の列の対象物として含まれる灰色領域)。他の全てのチャネルでも同様の観察を行うことができる。
【0165】
図7及び
図8は、in silico模擬蛍光顕微鏡画像に異なる分離プロセスを適用したシミュレーション実験の結果を、
図7の(上記で説明したように計算された)対象物呼び出しプロセスの精度に関して、及び
図8の対象物呼び出しプロセスのリコールに関して示す。in silico混合画像は、チャネルごとに異なる数の対象物を用いて上記のように生成された。各データ系列は、異なる分離プロセス、すなわち、未分離、ピクセル分離のみ(実施例3のピクセルベースの分離で説明したように)、硬質閾値を有する対象物分離(例3の対象物ベースの分離(硬質閾値)に記載されているように、「obj分離、方法1」と標識される)、及び軟質閾値を有する対象物分離(例3の対象物ベースの分離(軟質閾値)に記載されているように、「obj分離、方法2」と標識される)に対応する。精度は、陽性予測値(PPV)、すなわち、(真及び交差の両方;真陽性及び偽陽性呼び出し)と呼ばれる対象物の総数に対する、真の対象物であった(真の陽性呼び出し)と呼ばれる対象物の数の比(%)を指す。リコールは、感度、すなわち、真の対象物(真の陽性呼び出し及び偽の陰性呼び出し)の総数に対する、真の対象物(真の陽性呼び出し)であったと呼ばれる対象物の数の比率(%)を指す。
【0166】
図7のデータは、分離がない場合、交差する対象物(すなわち、Alexa488以外の全てのチャネル)を有するチャネル内の多くの対象物が誤って同定される(60%前後又はそれ未満のPPVであり、同定された対象物の約40%が真の対象物ではないことを示す)ことを示している。ピクセル分離を使用すると、この状況はわずかに改善されるが、Alexa750チャネルを除いてPPVは80%未満のままである。対照的に、対象物分離手法のいずれも、全てのチャネルについて90%を超えるPPV値をもたらす。
図8のデータは、予想通り、PPVの増加がリコールのわずかな減少を伴うことを示している。実際、典型的には、陽性対象物(この手法がより厳密であるほど、予想PPVがより高くなる)を呼び出す際の手法のストリンジェンシーと、手法が幾つかの真の陽性対象物(この手法が厳密であるほど、予想されるリコールは低くなる)を見逃す可能性との間にはトレードオフがある。しかしながら、
図8は、対象物分離手法に関連するリコールのドロップが比較的小さい(
図7と比較した
図8の異なるスケールに留意されたい)ことを示している。実際、両方の対象物分離手法は、全てのチャネル及び全ての対象物密度について90%を超えるリコール値を維持する。
【0167】
図9及び
図10は、シミュレートされたデータからの例示的な対象物の拡大図を示す。実施例2に記載されているように、対象物をチャネルAlexa647及びAlexa700に割り当て、Alexa647からの「交差」対象物を1ピクセルの空間ジッタでAlexa700の画像に追加した。
図10は、全ての分離手法を使用して正しく同定された2つの空間的に隣接する対象物を有する例を示している(全てのスペクトル分離プロセスは、Alexa700の「真の」対象物を正しく同定し、Alexa647から「交差する」対象物を排除した)。対照的に、
図9は、ピクセル分離を使用せずに対象物分離を使用して正しく同定される対象物の例を示す。
図9は、対象物の分離(柔質対象物と硬質対象物の分離)が、Alexa700内の対象物をAlexa647からの横断として正しく同定したことを示している(したがって、対象物輪郭の除去によって示されるように、チャネルAlexa700から対象物を除去した)。他方、ピクセルの分離は、対象物のピクセルを分離することはできるが、交差する対象物を「ホスト」チャネルから完全に除去することはできなかった(Alexa700-まだ存在する対象物の輪郭によって示される)。
【0168】
実験的な分離性能の定量化
偽陽性率(FPR)は、撮像されたチャネルに対応するフルオロフォアによって標識されたMIPを有するウェルで検出された対象物の数に対する、交差する対象物(撮像されたチャネルとスペクトル的に重複するフルオロフォアによって標識されたMIPを有するウェルで検出された対象物)の数の割合として定義された。これに基づいて、対象物呼び出し特異性を1-FPRと定義した。
【0169】
ウェル表面上のRCA産物の実際の数は知られていなかったので、これらの実験では対象物呼び出し感度を定量することは不可能であった。したがって、代わりに、特定の分離アルゴリズムによる対象物呼び出し感度の相対的変化を定量化した。(感度変化が評価された)ベースラインケースは、未分離ケースに対応した。
【0170】
これらの解析結果を
図11、
図12、
図13、
図14に示す。
図11は、使用される単一色素としてAlexa647を用いて実施例1に記載されているように、特異染色手法を使用して本明細書に記載されるスペクトル分離プロセスの実験的検証の結果を示す。示されている画像は、異なる色素フィルタ(左から右へ:Alexa488、Alexa546、Alexa596、Alexa647、Alexa700、Alexa750)を使用して、同じ軌跡について捕捉された。行は、異なるシナリオ(上から下へ:未分離、ピクセル分離、対象物分離1(硬質対象物分離)、対象物分離2(軟質対象物分離))に対応する。対象物はグレースケールブロブとして現れる。赤色の輪郭は、画像セグメント化の結果を示す。Alexa647が使用された唯一の色素であったので、セグメント化された対象物のほとんどはAlexa647チャネルに現れる。これらは全て真の対象物であることが期待される。幾つかの対象物は、分離の前にAlexa700チャネルでも検出され(一番上の行を参照)、それらは全て交差対象物であると予想される。第2行を第3行及び第4行と比較すると、ピクセルの分離がAlexa700チャネル内の交差する対象物の全てをうまく除去できなかったことを示している。対照的に、両方の対象物分離手法は、Alexa700チャネル内の真の対象物のいずれも失うことなく、Alexa647チャネル内の全ての交差する対象物を首尾よく除去した。
図12は、
図11の実験からの画像の拡大図を示す。画像は、スペクトル的に隣接する2つのチャネル間のスペクトルクロストークを示す。単一色素として言及された他の色素(すなわち、Alexa488、Alexa546、Alexa596、Alexa700、Alexa750)のそれぞれを使用して、同じ実験検証を行った。
【0171】
図13及び
図14は、本明細書に記載のスペクトル分離プロセス(単一色素手法、すなわち、各ウェルに単一色素を使用し、各ウェルを全てのチャネルで撮像した)の実験的検証の結果を、特異性(
図13)及び未分離の場合(
図14)と比較した呼び出される対象物の数の相対的変化に関して示す。
図13のグラフは、異なる分離プロセスの特異性を示しており、チャネル
について、分離特異性は
として定義された。ここで、
は、撮像されたチャネルに対応するフルオロフォアを含む撮像ウェルの場合に検出された対象物の数であり、
は、撮像されたチャネルに対応しないフルオロフォアを含む撮像ウェルの場合に検出された対象物の数である。分離手法が発光スペクトルに作用するので、チャネルAlexa488はクロストークを受けず、したがってこのチャネルに対する特異性は完全であった(100%)。
図13のデータは、両方の対象物分離手法が、ピクセル分離及び未分離の両方と比較して、より良好な分離特異性に関連することを示している。チャネル
の場合、呼び出し対象物の数の相対的な変化(
図14)は
として定義され、ここで、
は「真の」チャネルの未分離の場合に報告される画像ごとの対象物の数であり、
は特定の分離プロセスによって報告される画像ごとの対象物の数である。データは「単一色素」手法を使用して得られたので、使用された色素(
)に対応するチャネルで分離を伴うことなく決定された対象物の数は、真の対象物の数を表すはずである。この数を数
(分離が適用されるときに「真のチャネル」で呼び出される対象物の数)と比較することにより、分離プロセスによって誤って除去又は追加された対象物の数を評価することができる。実際に画像内に色素が1つしか存在しない特定の場合(
図13~
図14のデータの場合と同様に、)、完全なプロセスは各チャネル内の幾つかの対象物
を呼び出し、
図14の値は0になる。
図14のデータは、両方の対象物分離手法が、試験された色素のそれぞれについて、誤って対象物と呼ばれることはほとんどない(0.5%未満)ことを示す。対象物分離手法について
図14に示す誤って呼び出された対象物の割合は、ピクセル分離手法で得られたものに匹敵するが、改善された特異性も有する(
図13参照)。したがって、
図13~
図14は、対象物分離のあらゆる潜在的な「悪影響」がピクセル分離(
図14)で得られるものと同様である一方で、特異性の改善(
図13参照)に関する「肯定的な影響」は、ピクセル分離手法よりもいずれかの対象物分離手法の方が高いことを示している。
【0172】
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7.Selvin,P R(1995)、「Fluorescence resonance energy transfer」、Methods Enzymol.,246:300.DOI:10.1016/0076-6879(95)46015-2.
8.M.Aliら(2014)、「Rolling circle amplification:a versatile tool for chemical biology,materials science and medicine」、Chemical Society Reviews.43(10):3324-3341.DOI:10.1039/c3cs60439j
9.国際公開第2015/083002号、「Multiplex Detection Of Nucleic Acids」.
10.Meyerら等(2014)、「Advances in DNA-directed immobilization」、Current Opinions in Chemical Biology,18:8:8-15.DOI:10.1016/j.cbpa.2013.10.023
11.国際公開第2019/195346号「Methods,Systems,and Compositions for Counting Nucleic Acids」.
【0173】
上記の書誌に記載された刊行物を含み、特許、特許出願、論文、書籍、論文、及びインターネットウェブページを含むがこれらに限定されない、本出願で引用された全ての文献及び同様の資料は、任意の目的のためにその全体が参照により明示的に組み込まれる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本明細書に記載の様々な実施形態が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。組み込まれた引用文献中の用語の定義が本教示で提供される定義と異なるように見える場合、本教示で提供される定義が優先されるものとする。
【0174】
本明細書に記載の任意の実施形態の方法は、コンピュータプログラムとして、又はコンピュータ上で実行されると前述の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムを搬送するコンピュータプログラムプロダクトもしくはコンピュータ可読媒体として提供されてもよい。
【0175】
文脈上別段の指示がない限り、上記の特徴の説明及び定義は、本発明の特定の態様又は実施形態に限定されず、記載されている全ての態様及び実施形態に等しく適用される。
【0176】
明細書及び特許請求の範囲を通して、以下の用語は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、本明細書に明示的に関連する意味をとる。本明細書で使用される「一実施形態では」という語句は、同じ実施形態を指す場合もあるが、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。更に、本明細書で使用される「他の実施形態では」という語句は、必ずしも異なる実施形態を指すとは限らないが、そうであってもよい。したがって、以下に記載されるように、本発明の範囲又は思想から逸脱することなく、本発明の様々な実施形態を容易に組み合わせることができる。
【0177】
更に、本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、包括的な「又は」操作子であり、文脈上他に明確に指示されない限り、「及び/又は」という用語と同等である。「~に基づく」という用語は排他的ではなく、文脈上他に明確に指示されない限り、記載されていない追加の要因に基づくことを可能にする。「中(in)」の意味は、「中(in)」及び「上(on)」を含む。
【0178】
「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、他のものの有無にかかわらず、2つの指定された特徴又は構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、(i)A、(ii)B並びに(iii)A及びBのそれぞれの具体的な開示として、あたかもそれぞれが本明細書に個別に記載されているかのように解釈されるべきである。
【0179】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現されてもよい。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関する「約」という用語は任意選択であり、例えば+/-10%を意味する。
【0180】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈上別段の要求がない限り、「備える(comprise)」及び「含む(include)」という単語、並びに「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、及び「含む(including)」などの変形は、記載された整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群を含むが、任意の他の整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群を除外しないことを意味すると理解される。
【0181】
本発明の他の態様及び実施形態は、文脈が特に指示しない限り、「備える(comprising)」という用語が「から成る(consisting of)」又は「から本質的に成る(consisting essentially of)」という用語に置き換えられた上記の態様及び実施形態を提供する。
【0182】
本出願の特許請求の範囲で使用される「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、特許請求の範囲を、In re Herz,537 F.2d 549,551-52,190 USPQ 461,463(CCPA1976)で論じられているように、特許請求の範囲に記載された発明の特定の材料又はステップ「並びに基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。例えば、列挙された要素「から本質的に成る」組成物は、存在するが、汚染物質が純粋な組成物、すなわち列挙された成分「から成る」組成物と比較して列挙された組成物の機能を変化させないようなレベルで、列挙されていない汚染物質を含有してもよい。
【0183】
前述の説明、又は以下の特許請求の範囲、又は添付の図面に開示された特徴は、それらの特定の形態で、又は開示された機能を実行するための手段、又は開示された結果を取得するための方法もしくはプロセスに関して表現され、必要に応じて、別個に、又はそのような特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。
【0184】
誤解を避けるために、本明細書で提供される任意の理論的説明は、読者の理解を改善する目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望まない。
【0185】
本明細書で使用される節の見出しは、構成上の目的のためだけであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0186】
記載された技術の範囲及び思想から逸脱することなく、本技術の記載された組成物、方法及び使用の様々な改変及び変形が当業者には明らかとなる。本技術を特定の例示的な実施形態に関連して説明したが、特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際、分子生物学、分子診断学、核酸構造、生化学、医学、又は関連分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された態様の様々な改変は、特許請求の範囲内であることが意図される。
【国際調査報告】