(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株及び/又はそれを含む組成物の化粧品、栄養補助食品又は皮膚科での使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/99 20170101AFI20240124BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240124BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240124BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240124BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240124BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240124BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61K8/99
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K35/747
A61P17/16
A23L33/135
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535848
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 FR2021052325
(87)【国際公開番号】W WO2022129775
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500226948
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】BASF Beauty Care Solutions France S.A.S.
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean de Dieu, F-69007 Lyon, France
(71)【出願人】
【識別番号】500586141
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】エイブラハム,ニース
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】デル ベーネ,ニコラス ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ガーレット,アリソン
(72)【発明者】
【氏名】ゴル,マノン
(72)【発明者】
【氏名】レオティ-オコンビ,サブリナ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD36
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF06
4B065AA30X
4B065AC14
4B065AC15
4B065BD01
4B065BD16
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA50
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC232
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC482
4C083AC662
4C083AC782
4C083AC812
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD222
4C083AD352
4C083AD572
4C083CC01
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4C083DD23
4C083DD27
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4C083FF01
4C087AA01
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4C087BC56
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4C087MA05
4C087MA17
4C087MA22
4C087MA52
4C087MA57
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
本発明は、皮膚及び/又は粘膜の細胞外マトリックスの分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、特に健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、優先的には健常皮膚及び/又は健常粘膜の硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度を維持し、且つ/又は増加させるための、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株及び/又はそれを含む組成物の化粧品、栄養補助食品及び/又は医薬品、特に皮膚科での使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
健常皮膚及び/又は健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるための、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株、優先的にはCNCM I-5579の名称で寄託された種であるラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の化粧品及び/又は栄養補助食品での使用。
【請求項2】
前記健常皮膚及び/又は健常粘膜の細胞外マトリックス分子は、健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン線維並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
I型、III型、IV型、V型、VI型、VII型、XII型、XIII型、XIV型、XVI型、XVII型、XXIV型及び/又はXXIX型コラーゲン、優先的にはI型、III型、IV型、V型及び/又はXIV型、優先的にはI型、IV型及び/又はV型コラーゲン線維、より優先的にはI型コラーゲン線維の発現を維持し、且つ/又は増加させるためのものである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、優先的には健常皮膚及び/又は健常粘膜の硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度、より優先的には健常皮膚及び/又は健常粘膜の硬度及び/又は弾性を維持し、且つ/又は増加させるためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記株は、完全形態、特に生存、及び/若しくは不活性化、特に死滅、及び/若しくはライセートの形態、並びに/又はその画分の1つ若しくは複数の形態、並びに/又はその代謝産物の1つ若しくは複数、優先的にはそのセクレトームの形態で使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記株は、生存する完全形態及び/若しくはライセート形態で使用され、且つ/又は使用される前記株は、CNCM I-5579の名称で寄託されたラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株は、その発酵及び/又は培養培地と組み合わされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株は、健常皮膚及び/又は健常粘膜に局所的に適用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の前記株は、化粧品組成物中において、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤も含む前記組成物の総重量に対して1×10
-4重量%~10重量%、優先的には1×10
-4重量%~5重量%、より有利には1×10
-3重量%~0.5重量%の濃度で存在するようなものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
健常皮膚及び/又は健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、好ましくは健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、並びに/或いは健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、特に硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度、好ましくは硬度を維持し、且つ/又は増加させるために、請求項5~7のいずれか一項に記載のラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又は請求項9に記載の化粧品組成物を健常皮膚及び/又は健常粘膜の少なくとも1つの領域に局所的に適用することを含むことを特徴とする化粧品ケアプロセス。
【請求項11】
請求項5~7のいずれか一項に記載のラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又は請求項9に記載の化粧品組成物の前記局所適用は、身体、及び/又は顔、及び/又は頭皮の全部又は一部、優先的には下肢、大腿、腕、胃、ネックライン、首、腋窩又は唇、より優先的には顔の全部又は一部、優先的には頬、額、顎、唇又は眼の輪郭で実施される、請求項10に記載の化粧品ケアプロセス。
【請求項12】
前記化粧品組成物は、請求項5~7のいずれか一項に記載のラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株を、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤も含む前記組成物の総重量に対して1×10
-4重量%~10重量%、優先的には1×10
-4重量%~5重量%、より有利には1×10
-3重量%~0.5重量%の濃度で含む、請求項10又は11に記載の化粧品ケアプロセス。
【請求項13】
ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又は有利には局所経路を介したその使用のためにそれを含む皮膚科組成物であって、皮膚及び/若しくは粘膜の細胞外マトリックス分子の量及び/若しくは発現の減少、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜のコラーゲン及び/若しくは弾性線維の量及び/若しくは発現の減少、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の生体力学的特性の減少、特に皮膚及び/若しくは粘膜の硬度の減少、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の弾性の減少、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の密度の減少を伴う皮膚及び/又は粘膜の病理を治療及び/又は予防するためのものであり、
前記株は、完全形態、特に生存、及び/若しくは不活性化、特に死滅、及び/又はライセートの形態、並びに/又はその画分の1つ若しくは複数の形態、並びに/又はその代謝産物の1つ若しくは複数、優先的にはそのセクレトームの形態で使用され、及び/又は
前記株は、その発酵及び/又は培養培地と組み合わされる、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又はそれを含む皮膚科組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの皮膚科的に許容される賦形剤を含む皮膚科組成物の形態であることを特徴とする、請求項13に記載のその使用のためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株。
【請求項15】
前記医薬組成物、優先的には皮膚科組成物中において、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤も含む前記組成物の総重量に対して1×10
-4重量%~10重量%、優先的には1×10
-4重量%~5重量%、より有利には1×10
-3重量%~0.5重量%の濃度で存在することを特徴とする、請求項13又は14に記載のその使用のためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株。
【請求項16】
請求項5~7のいずれか一項に定義される通りのものであることを特徴とする、請求項13~15のいずれか一項に記載のその使用のためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚及び/又は粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、特に健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、優先的には健常皮膚及び/又は健常粘膜の硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度、さらにより優先的には健常皮膚及び/又は健常粘膜の硬度及び/又は弾性を維持し、且つ/又は増加させるための、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株及び/又はそれを含む組成物の化粧品、栄養補助食品及び/又は医薬品、特に皮膚科での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の構造及び特性は、複雑な生物学的、物理的及び生体力学的プロセスの結果として変化し、特に細胞外マトリックスの分子における変化の結果として真皮の弾性、硬度及び密度の減少を引き起こす。
【0003】
ECMとして知られる皮膚及び粘膜の細胞外マトリックスは、分子の以下の3つのタイプの組み合わせからなる:
- 線維:コラーゲン及びエラスチン、
- 糖タンパク質:フィブロネクチン及びラミニンなどの線維と比べてさほど大量でないが、細胞接着においてより重要な役割を有する、
- マトリックスを充填するゲルを構成する高度に水和した多糖:このマトリックスは、皮膚の構造及び特性、特に真皮の弾性、硬度及び密度を維持することに主要な役割を果たす。
【0004】
これらのECM分子が特に線維芽細胞及びケラチノサイトによって合成されることから、前記細胞の再生は、皮膚の生体力学的特性を維持するのに不可欠である。
【0005】
エラスチンは、フィブリリン及びMAGP(マイクロフィブリル関連糖タンパク質)などの他の分子と組み合わせることによる弾性線維の成分のタンパク質である。
【0006】
エラスチンは、リジルオキシダーゼ(LOX)及びミクロフィブリル上へのその沈着を通したその分子内及び分子間架橋後、その物理化学的特性(不溶性、弾性)を獲得する可溶性トロポエラスチンの形態で合成される。
【0007】
皮膚において、機能的弾性線維は、皮膚線維芽細胞によって形成されるが、弾性線維を生成するのに必要ないくつかの成分は、表皮細胞内でも見出されている。
【0008】
弾性線維のターンオーバー速度は、成人期では非常に低いが、皮膚の総エラスチン含量は、増加し得る。新生児では、ミクロフィブリルは、全てがエラスチンで完全に覆われるわけでなく、そうなるのは思春期頃である。40歳から、女性においてより頻繁に線維上における封入体、その後、弾性線維の断片化及びそれらの消失が真皮表皮接合部(DEJ)下で認められる。DEJ下でのこの断片化及び/又は消失は、皮膚弾性の減少及びしわの形成によって示される。非機能的な弾性線維の合成が光老化中に認められるが、この増加は、DEJ下での弾性線維の減少促進を伴う。
【0009】
コラーゲンは、脊椎動物組織内に大量に存在する細胞外マトリックス(ECM)の成分タンパク質である。それは、29の異なるタイプを含む大きいファミリーである。
【0010】
様々なタイプのコラーゲンの中でも、特に、I型コラーゲンは、腱、靱帯、角膜及び皮膚などの多数のヒト組織内に存在し、より正確には真皮内に位置する。I型コラーゲンは、皮膚の主要なコラーゲンである。
【0011】
線維性コラーゲンは、プロコラーゲン線維から形成され、次いでネットワーク内で構築され、架橋によって安定化される。それは、組織にそれらの機械的強度を付与し、結果としてそれらの硬度維持を補助するコラーゲンである。
【0012】
皮膚の老化中、合成コラーゲンの速度は、全体的に減少し、その分解が増加し、それは、硬度の減少を引き起こす。この現象は、皮膚が特にUV光を受けるときにさらにより明白である。これは、光生物学的な老化と称される。
【0013】
そのため、細胞外マトリックスの分子は、皮膚の生体力学的特性の維持に向けた化粧品活性成分の開発及び改善のための、化粧品の分野における多数の試験及び技術革新の対象である。
【0014】
近年、高度なゲノム配列決定技術は、数百万の微生物(細菌、ウイルス、真菌)が皮膚上に生存し、皮膚細菌叢としても知られる皮膚微生物叢を形成することを明らかにしている。これらの微生物(この微生物叢)の大部分は、共生生物であり、皮膚に有利である。それらは、皮膚細胞と共生及び相互作用し、一部は、皮膚との共生を生じさせている。それらは、皮膚防御分子を合成するか又はその合成を刺激することによって皮膚を防御することに関与する。それらは、損傷及び炎症への対処の場合に皮膚を修復することに関与する。これらの有利な共生微生物は、皮膚の恒常性及び平衡に関与する分子及び代謝産物を分泌する。
【0015】
皮膚の微生物叢の組成及び品質は、老化とともに変化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
意外にも、本出願人は、年齢とともに特定の細菌が皮膚上であまり存在しなくなり、量が減少することを示している。これは、特に細菌ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の場合である。
【0017】
市場で認められる解決策の大部分は、老化の目に見える結果に対処し、皮膚微生物叢を考慮しないが、その数種は、皮膚細胞と共生状態で生存し、その平衡及び外観に関与する。
【0018】
本発明は、老化皮膚の細菌叢を、経時的に減少する皮膚細菌叢の細菌でそれを補うことによってリバランスするという意味でより完全であるという利点を有する。これらの細菌は、次いで、年齢とともに減少する生物学的過程を再活性化することにより、外部攻撃に対する皮膚の若返り及び持続的保護に寄与する。
【0019】
プロバイオティクス細菌及びその誘導体は、皮膚老化の問題を処置するために既に使用されているが、ほとんどの場合、使用される細菌は、皮膚に由来しない。本発明に従う細菌は、若い皮膚上に天然に存在するという利点を有する。
【0020】
特許出願国際公開第2009/031106号パンフレットは、皮膚のバリア機能の減少を予防するか又はそれを強化するための、ヘスペリジンとプロバイオティクスとの組み合わせの使用について開示している。前記適用は、皮膚及び/又は粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株の使用について開示していない。
【0021】
特許出願国際公開第2019/111189号パンフレットは、UV照射で誘導される損傷を予防するための、乳酸桿菌(Lactobacillus属)のプロバイオティクスを含む使用について開示している。前記適用は、皮膚及び/又は粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株の使用について開示していない。
【0022】
したがって、本出願人の知識として、皮膚及び/又は粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、或いは皮膚及び/又は粘膜の生体力学的特性を維持し、且つ/又は増加させるため、或いは皮膚及び/若しくは粘膜のコラーゲン並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の弾性線維の発現を維持し、且つ/又は増加させるための、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株及び/又はそれを含む組成物の化粧品、栄養補助食品及び/又は医薬品での使用、特に皮膚科での使用について開示又は示唆する先行技術は認められない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の主題は、健常皮膚及び/又は健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるための、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の化粧品及び/又は栄養補助食品での使用である。
【0024】
本発明の主題は、健常皮膚及び/又は健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、好ましくは健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、並びに/或いは健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、特に硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度、好ましくは硬度を維持し、且つ/又は増加させるため、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又はそれを含む化粧品組成物を健常皮膚及び/又は健常粘膜の少なくとも1つの領域に局所的に適用することを含むことを特徴とする化粧品ケアプロセスでもある。
【0025】
本発明の主題は、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又はそれを含む皮膚科組成物であって、皮膚及び/又は粘膜の細胞外マトリックス分子の量及び/又は発現の減少、特に皮膚及び/若しくは粘膜のコラーゲン及び/又は皮膚及び/若しくは粘膜の弾性線維の量及び/又は発現の減少並びに/或いは皮膚及び/又は粘膜の生体力学的特性の減少、特に皮膚及び/又は粘膜の硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度の減少を伴う皮膚及び/又は粘膜の病理を治療及び/又は予防するためのものである、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又はそれを含む皮膚科組成物でもある。
【0026】
本発明は、健常皮膚及び/又は健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、特に健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、並びに/或いは健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、特に硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度、優先的には硬度を維持し、且つ/又は増加させるための、2020年9月9日にパスツール研究所(28 rue du Docteur Roux,F-75024 Paris cedex 15)において、ブダペスト条約の下、CNCM I-5579の名称で寄託されたラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又はそれを含む化粧品組成物にも関する。
【0027】
最後に、本発明は、皮膚及び/若しくは粘膜の細胞外マトリックス分子の量及び/若しくは発現の減少、特に皮膚及び/若しくは粘膜のコラーゲン及び/若しくは弾性線維の量及び/若しくは発現の減少並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の量及び/若しくは生体力学的特性の減少、特に皮膚及び/若しくは粘膜の硬度の減少、及び/又は皮膚及び/若しくは粘膜の弾性の減少、及び/又は皮膚及び/若しくは粘膜の密度の減少を伴う皮膚及び/又は粘膜の病理を治療及び/又は予防するための、2020年9月9日にパスツール研究所(28 rue du Docteur Roux,F-75024 Paris cedex 15)において、ブダペスト条約の下、CNCM I-5579の名称で寄託されたラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又はそれを含む皮膚科組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的では、「化粧品使用及び/又は組成物」という用語は、非薬学的使用及び/又は組成物、即ち治療使用が意図されておらず、また身体の「健常」部分、特に皮膚及び/又は粘膜の「健常」領域に適用されるものを意味する。
【0029】
本発明の目的では、「栄養補助食品での使用及び/又は栄養補助食品組成物」という表現は、非薬学的な経口投与のための使用及び/又は組成物、即ち治療的処置を必要としないものを意味する。
【0030】
本発明の目的では、「健常皮膚」又は「健常粘膜」という用語は、本発明に従う株が適用される皮膚又は粘膜の領域であって、皮膚科医により、「非病理学的」である、即ち感染がない、瘢痕化、カンジダ症、膿痂疹、乾癬、湿疹、座瘡若しくは皮膚炎などの疾患若しくは皮膚障害又は創傷若しくは損傷と言われる領域を意味する。
【0031】
本発明によると、「粘膜」は、眼粘膜、鼻粘膜、耳介粘膜、泌尿生殖器粘膜及び/又は口腔粘膜、特に口内、口唇及び/又は歯肉粘膜、優先的には眼及び/又は口腔粘膜及びより優先的には口唇及び/又は眼粘膜を意味する。
【0032】
有利には、前記用語は、膣粘膜を含まない。
【0033】
本発明の目的では、「細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させる」という用語は、本発明に従う株で処置された、健常皮膚及び/又は健常粘膜の細胞外マトリックス分子の遺伝子発現、即ちmRNA(メッセンジャーRNA)及び/又はタンパク質合成のレベルについて、本発明に従う株の不在下で検出される遺伝子発現及び/又はタンパク質合成のレベルに対して減少を阻止し、且つ/又は増加させることを意味する。優先的には、それは、細胞外マトリックス分子のタンパク質発現を維持し、且つ/又は増加させることである。
【0034】
本発明によると、「ECM分子」という用語は、ヒト又は動物起源の、細胞外マトリックスを構成し、且つ/又はその中に含まれ、また細胞によって合成される有機分子を意味する。
【0035】
これらは、特に、
- ECMコラーゲンのファミリー、
- ECM弾性線維のファミリー:エラスチン、トロポエラスチン、エラスチン関連タンパク質、特にフィブリリン1、リジルオキシダーゼ、特にLOX及びLOXL、EBP(エラスチン結合タンパク質)、フィビュリン3及び5、エミリン1及び2
から選択される、特にECMの成分タンパク質である。
【0036】
これらは、特に、ECMのプロテオグリカン成分、特にパールカン、バーシカン、ロイシンリッチプロテオグリカン(SLRP)、特にデコリン、バイグリカン及びルミカンから選択される分泌プロテオグリカンである。
【0037】
それは、ECMの糖タンパク質成分、特にフィブロネクチン、ラミニン、SPARC(システインリッチ分泌タンパク質)及びテネイシンも含む。
【0038】
それは、ECMを構成するグリコサミノグリカン(GAG)、特にヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸及びコンドロイチン硫酸も含む。
【0039】
それは、ECM中に含有されるタンパク質であるECM成長因子、特にVEGF、PDGF、HGF及びFGF、特にFGF2及びFGF7も含む。
【0040】
「ECM分子」という用語は、場合により前駆体の形態における、培地中のECM又は他の区画、特に細胞内及び細胞外区画中の分子を指す。
【0041】
本発明によると、「ECM分子前駆体」という用語は、ECMを構成するか又はその中に含有される前に細胞によって合成されたECM分子の天然及び/又は中間形態を意味する。これらの形態は、ECM中に存在する前に成熟現象を経ることから、接頭辞「Pro-」又は「Tropo-」によって名付けられることが多い。それらは、例えば、プロコラーゲン、トロポコラーゲン、プロエラスチン及びトロポエラスチンである。
【0042】
優先的には、細胞外マトリックス分子は、健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維から選択される。
【0043】
本発明の目的では、「健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維の発現を維持し、且つ/又は増加させる」という用語は、本発明に従う株で処置された、健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維の遺伝子発現、即ちmRNA(メッセンジャーRNA)の発現及び/又はタンパク質合成のレベルについて、本発明に従う株の不在下で測定される遺伝子発現及び/又はタンパク質合成に対して減少を阻止し、且つ/又は増加させることを意味する。
【0044】
特に、それは、コラーゲン及び/又は弾性線維の遺伝子発現及び/又はタンパク質合成のレベルにおける、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の不在下で測定されるコラーゲン及び/又は弾性線維の遺伝子及び/又はタンパク質発現のレベルに対する少なくとも20%、優先的には少なくとも40%及びさらにより優先的には少なくとも50%の増加である。
【0045】
本発明の優先的な態様では、それは、例えば、実施例3に記載された通り、フィビュリン-5及び/又はエミリン-1のタンパク質発現のレベルを、株の不在下においてインビトロで培養された皮膚線維芽細胞内で測定されたタンパク質発現のレベルに対して少なくとも20%、優先的には少なくとも40%及びさらにより優先的には少なくとも50%だけ増加させることである。
【0046】
有利には、フィビュリン-5及び/又はエミリン-1のタンパク質発現の増加の測定は、優先的には、例えば実施例3に提示される方法に従い、キャピラリー電気泳動による分析後、インビトロ測定によって実施される。
【0047】
本発明の目的では、「キャピラリー電気泳動による分析」という用語は、化学発光シグナルを測定することによってタンパク質を検出することを目的とした、ペルオキシダーゼ及び化学発光基質にコンジュゲートされた前記タンパク質への、試験タンパク質のフィビュリン-5及び/又はエミリン-1に特異的な抗体の結合を含む技術を意味する。
【0048】
本発明の目的では、「コラーゲン」という用語は、健常皮膚及び/又は健常粘膜に存在するI型、III型、IV型、V型、VI型、VII型、XII型、XIII型、XIV型、XVI型、XVII型、XXIV型、XXIX型のコラーゲンタンパク質を意味する。有利な態様によると、コラーゲンは、I型、III型、IV型、V型及び/又はXIV型コラーゲン、優先的にはI型、IV型及び/又はV型コラーゲン、より優先的にはI型コラーゲンから選択される。
【0049】
本発明の目的では、「I型コラーゲンタンパク質」という用語は、皮膚、角膜、腱、靱帯及び骨、より優先的には皮膚に存在するコラーゲンタンパク質を意味する。したがって、本発明の優先的な態様では、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株は、そのため、健常皮膚及び/又は健常粘膜におけるI型コラーゲンのタンパク質発現を維持し、且つ/又は増加させるために使用される。
【0050】
本発明の有利な態様によると、これは、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の不在下において、インビトロで培養された皮膚線維芽細胞で測定されたコラーゲンの遺伝子及び/又はタンパク質発現のレベルに対する増加である。
【0051】
本発明の優先的な態様では、これは、例えば、実施例2に記載のようなプロトコルに従い、I型コラーゲンのタンパク質発現のレベルにおける、株の不在下においてインビトロで培養された皮膚線維芽細胞で測定されたタンパク質発現のレベルに対する少なくとも10%、優先的には少なくとも50%及びさらにより優先的には少なくとも20%の増加である。
【0052】
有利には、タンパク質発現の増加の測定は、優先的には、例えば実施例2に提示されるような方法に従う、酵素結合免疫吸着測定又はELISA後のインビトロ測定によって実施される。
【0053】
本発明の目的では、「酵素免疫測定」という用語は、蛍光測定による顕色を目的として、所与のコラーゲンタンパク質、優先的にはI型コラーゲンタンパク質に特異的な抗体を前記タンパク質上に固定することを含む技術を意味する。有利には、顕色は、蛍光によってなされる。
【0054】
別の有利な態様によると、遺伝子発現の増加の測定は、優先的には、RT-qPCR後、インビトロ測定によって実施される。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明に従う株は、健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、優先的には健常皮膚及び/又は健常粘膜の硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度、より優先的には健常皮膚及び/又は粘膜、特に健常真皮の硬度並びに/又は健常皮膚及び/若しくは粘膜、特に健常真皮の弾性を維持し、且つ/又は増加させるために使用される。
【0056】
本発明の目的では、「健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性」という用語は、健常皮膚及び/又は健常粘膜の硬度、及び/若しくは弾性、及び/若しくは密度並びに/又は圧縮に対する抵抗性、及び/若しくは伸展に対する抵抗性、及び/若しくは柔軟性、及び/若しくは伸展性、及び/若しくは変形に抵抗する能力を意味する。優先的には、それは、健常皮膚及び/又は健常粘膜、特に健常真皮の硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度であり、さらにより優先的には、それは、健常皮膚及び/又は健常粘膜、特に健常真皮の硬度並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜、特に健常真皮の弾性である。
【0057】
健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性は、当業者に公知の測定技術、特にプリング、ねじれ、吸引、圧入、レバトメトリー、バリストメトリー、高分解能超音波イメージング又はエラストグラフィー、優先的には圧入又は高分解能超音波イメージングによって試験され得る。
【0058】
本発明の目的では、「健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性を維持し、且つ/又は増加させる」という用語は、本発明に従う株で処置された、健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の生体力学的特性、優先的には健常皮膚及び/若しくは健常粘膜、特に健常真皮の硬度、並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜、特に健常真皮の弾性、並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜、特に健常真皮の密度について、本発明に従う株の不在下で測定される健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性の減少を阻止し、且つ/又はそれを増加させることを意味する。
【0059】
優先的には、それは、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株で処置された健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性の、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の不在下で測定される健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性に対する少なくとも5%、優先的には10%の増加である。
【0060】
本発明の目的では、美容的観点から、「健常皮膚及び/又は健常粘膜、特に健常真皮の硬度を維持し、且つ/又は増加させる」という用語は、美容的目的のため、健常皮膚及び/又は健常粘膜、特に内因子の結果として硬度を著しく失っているものの硬度の減少を阻止し、且つ/又は硬度を増加させることを意味する。内因子は、皮膚及び/又は粘膜の組織老化、即ち例えば「成熟」皮膚、即ち40歳を超える者の皮膚で見出され得る、経時的に誘導される老化であり得る。それは、細胞ストレス、食事の変化などの非病理学的な生理学的変化又は特に思春期、妊娠期、閉経期及び/若しくは男性更年期におけるホルモンの変動に起因し得る。硬度におけるこの減少は、攻撃的な環境因子、例えば汚染、煙、タバコ、毒素又は気候性及び/若しくは機械的攻撃因子などの外因子の結果としても生じ得る。
【0061】
優先的な態様によると、硬度の減少は、UV照射誘導性でない。
【0062】
優先的には、それは、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の存在下での健常皮膚及び/又は健常粘膜、特に健常真皮の硬度の少なくとも1%、優先的には少なくとも3%、より有利には少なくとも5%の増加である。本発明の1つの有利な実施形態では、それは、優先的には、ヒト顔皮膚上においてインビボで測定される増加である。
【0063】
本発明の目的では、美容的観点から、「健常皮膚及び/又は健常粘膜、特に健常真皮の弾性を維持し、且つ/又は増加させる」という用語は、美容的目的のため、特に皮膚及び/又は粘膜の組織老化、即ち例えば「成熟」皮膚、即ち40歳を超える、特に50歳を超える者の皮膚で見出される、経時的に誘導される老化、細胞ストレス、食事の変化などの非病理学的な生理学的変化又は特に思春期、妊娠期、閉経期及び/若しくは男性更年期におけるホルモンの変動など、内因子の結果として弾性を著しく失っている健常皮膚及び/又は健常粘膜の弾性の減少を阻止し、且つ/又は弾性を増加させることを意味する。弾性におけるこの減少は、攻撃的な環境因子、例えば汚染、煙、タバコ、毒素又は気候性及び/若しくは機械的攻撃因子などの外因子の結果としても生じ得る。
【0064】
優先的な態様によると、弾性の減少は、UV照射誘導性でない。
【0065】
さらに、皮膚及び/又は粘膜の「弾性を増加させる」という用語は、本発明に従う株の存在下でのインビボで測定される弾性の、株の不在下で検出される弾性に対する少なくとも2%、有利には少なくとも4%、より有利には少なくとも6%の増加を意味する。本発明の優先的な実施形態では、この測定は、ヒト顔皮膚上で取られる。優先的な態様では、この増加は、本発明に従う株の存在下で少なくとも10日、優先的には28日、より優先的には30日及び有利には少なくとも56日の処置後に評価される。
【0066】
より有利には、弾性は、特に実施例4に記載の通り、その様々な弾性成分、特に正味の弾性、弾性回復及び/又は全弾性を測定することによって評価される。
【0067】
本発明の目的では、美容的観点から、「健常皮膚及び/又は健常粘膜、特に健常真皮の密度を維持し、且つ/又は増加させる」という用語は、美容的目的のため、健常皮膚及び/又は健常粘膜、特に内因子の結果として密度を著しく失っているものの密度の減少を阻止し、且つ/又は密度を増加させることを意味する。内因子は、皮膚及び/又は粘膜の組織老化、即ち例えば「成熟」皮膚、即ち40歳を超える者の皮膚で見出され得る、経時的に誘導される老化であり得る。それは、細胞ストレス、食事の変化などの非病理学的な生理学的変化又は特に思春期、妊娠期、閉経期及び/若しくは男性更年期におけるホルモンの変動に起因し得る。密度におけるこの減少は、攻撃的な環境因子、例えば汚染、煙、タバコ、毒素又は気候性及び/若しくは機械的攻撃因子などの外因子の結果としても生じ得る。
【0068】
優先的な態様によると、密度の減少は、UV照射誘導性でない。
【0069】
優先的には、それは、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の存在下での健常皮膚及び/又は健常粘膜、特に健常真皮の密度の少なくとも1%、優先的には少なくとも3%、より有利には少なくとも5%の増加である。本発明の有利な実施形態では、これは、優先的には、ヒト顔皮膚上においてインビボで測定される増加である。
【0070】
硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度のインビボ測定は、当業者に公知の従来の方法に従い、特にキュートメーター、Tonoderm(商標)、超音波スキャナー又はdermaTOPを伴うDynaSKIN(登録商標)を使用する測定によって実施され得る。
【0071】
本発明によると、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株は、完全形態、特に生存及び/若しくは不活性化、特に死滅、及び/又はライセートの形態において、且つ/又はその画分の1つ若しくは複数の形態において、且つ/又はその代謝産物の1つ若しくは複数、優先的にはそのセクレトームの形態において使用され得る。
【0072】
その形態のそれぞれにおいて、本発明に従う株は、単離されるか又はその発酵及び/若しくは培地と組み合わされ得る。
【0073】
優先的には、本発明に従う株は、その発酵及び/又は培養培地と組み合わされる。
【0074】
本発明の目的では、「単離された」という用語は、1つ又は複数の化合物とその発酵及び/又は増殖培地で会合され得る1つ又は複数の化合物と混合されないことを意味する。
【0075】
本発明の目的では、「完全形態」という用語は、その天然形態であって、細菌エンベロープが溶解形態と異なり、インタクトである形態を意味する。それが完全形態で使用される場合、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株は、生存、及び/又は不活性、及び/又は死滅であり得る。
【0076】
本発明の目的では、「生存」という用語は、培養下でコロニーを形成する能力がある、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株を指す。
【0077】
ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の生存する完全形態での産生は、従来から当業者に公知の任意の方法に従って実施され得る。有利には、それは、例えば、実施例1.a又は1.fに記載のようなプロトコルに従って実施される。
【0078】
本発明の目的では、「不活性化された」という用語は、培養下で一時的に又は最終的にもはやコロニーを形成する能力がない、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株を指す。
【0079】
ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の不活性化は、従来から当業者に公知の任意の方法を介して実施され得る。それは、特に、照射、熱処理又は特定の条件下における凍結乾燥、高圧処理若しくは放出によって不活性化され得る。有利には、それは、熱処理により、より有利には例えば実施例1.bに記載のようなプロトコルに従って実施される。
【0080】
熱不活性化は、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株を有利には約60℃~150℃の温度で所与の期間、約10秒~90分、優先的には約15分~1時間にわたりインキュベートすることによって実施され得る。優先的には、それは、約80℃で約30分間にわたりインキュベートされる。
【0081】
本発明の目的では、「死滅」という用語は、培養下において最終的にもはやコロニーを形成する能力がない、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株を指す。
【0082】
本発明の目的では、「ライセート」という用語は、細胞溶解であって、それにより検討中の微生物の細胞内に天然に含有される細胞内生物学的成分、また細胞膜成分の断片の放出を引き起こすものとして知られる現象を用いて、生体細胞の破壊又は溶解後に得られる材料を意味する。そのため、使用されるライセートは、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株の全ての細胞内生物学的成分並びに細胞壁及び膜の成分から形成される。
【0083】
ライセートは、従来から当業者に既知の任意の方法を介して得ることができる。それは、特に、浸透圧ショック、熱ショック、超音波、酵素溶解、チンダリゼーションにより、又は遠心分離タイプの機械的ストレス下において、又は圧力を増加させることにより、又はこれらの様々な技術の組み合わせにより得ることができる。
【0084】
優先的には、ライセートは、機械的作用及び圧力増加の組み合わせによって得られる。より優先的には、ライセートは、例えば、実施例1.bに記載のようなプロトコルに従って得られる。
【0085】
本発明の優先的な実施形態では、ライセートは、細菌培養物及び/又は発酵培地と組み合わされる。
【0086】
本発明の目的では、「画分」という用語は、健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/若しくは増加させる場合並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の生体力学的特性を維持し、且つ/若しくは増加させるために効率的である、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株の断片を意味する。この画分は、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株の溶解によって得られる細胞内生物学的成分並びに細胞壁及び膜成分の非全体的な部分に対応する。
【0087】
本発明の特定の実施形態によると、画分は、細菌細胞質であり得る。
【0088】
本発明の優先的な実施形態では、画分は、細菌培養物及び/又は発酵培地と組み合わされる。
【0089】
本発明の目的では、「代謝産物」という用語は、本発明に従い、また健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/若しくは増加させ、且つ/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の生体力学的特性を維持し、且つ/若しくは増加させるのに効率的である、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株の代謝から得られる1つ又は複数の有機及び/又は無機分子を意味する。優先的には、これは、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株のセクレトームである。
【0090】
本発明の特定の実施形態では、代謝産物は、細菌培養物及び/又は発酵培地と組み合わされる。
【0091】
本発明の目的では、「セクレトーム」という用語は、健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/若しくは増加させ、並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の生体力学的特性を維持し、且つ/若しくは増加させるのに効率的である、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株によって分泌される有機及び/又は無機分子の全てを意味する。
【0092】
セクレトームは、従来から当業者に既知の任意の方法を介して得ることができる。有利には、それは、例えば、実施例1.d又は1eに記載のようなプロトコルに従って得られる。
【0093】
本発明の優先的な実施形態では、セクレトームは、細菌培養物及び/又は発酵培地と組み合わされる。
【0094】
本発明の優先的な実施形態によると、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株は、生存する完全形態及び/又はライセート形態で使用される。
【0095】
本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株は、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の任意の既知の種に由来し得る。優先的には、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株は、2020年9月9日にパスツール研究所(28 rue du Docteur Roux,F-75024 Paris cedex 15)において、ブダペスト条約の下、CNCM I-5579の名称で寄託された種である。
【0096】
ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)のこの特定株の利点は、それが健常皮膚上で天然に見出された最初のラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)種であることである。
【0097】
本発明によると、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株は、優先的には、局所及び/又は経口適用、より優先的には局所適用を意図して、単独で、活性成分の形態において且つ/又は化粧品、及び/若しくは栄養補助食品、及び/若しくは医薬組成物、特に皮膚科組成物において使用され得る。
【0098】
それが本発明に従う生きた完全形態で使用される場合及びそれが単独で活性成分の形態で使用される場合、本発明に従う株は、乾燥形態、即ち粉末形態、有利にはマルトデキストリンにおいて、好ましくは粉末の総重量に対して株の重量で10~80%(w/w)、優先的には株の重量で30%~70%(w/w)、より有利には40%~60%(w/w)の含量の株であり得る。
【0099】
代わりに、本発明に従う生きた完全形態は、溶解性に使用され、且つ/又は溶媒で希釈され得る。優先的には、この溶媒は、水の体積で20%(v/v)未満、より優先的には水の体積で5%(v/v)未満を含有し;より優先的には、溶媒は、水を全く含有しない。非常に優先的には、この溶媒は、化粧品的に許容される油である。
【0100】
それがその全体的な不活性化、特に死滅形態、及び/若しくはライセートの形態において、且つ/又はその画分の1つ若しくは複数の形態において、且つ/又はその代謝産物の1つ若しくは複数、特にそのセクレトームの形態において使用される場合、またそれが単独で活性成分の形態で使用される場合、本発明に従う株は、優先的には、粉末の総重量に対して株の重量で5%~80%(w/w)、優先的には株の重量で10%~70%(w/w)、非常に優先的には株の重量で約20%~50%(w/w)、より有利には粉末の総重量に対して株の重量で10%~50%(w/w)の株含量で乾燥形態、即ち有利にはマルトデキストリンの粉末形態であり得る。
【0101】
代わりに、本発明によると、全体的な不活性化、特に死滅形態、及び/又はライセート、及び/又は画分、及び/又は代謝産物、特にセクレトームは、溶解性に使用され、且つ/或いは溶媒、特に極性溶媒、例えば水、アルコール、ポリオール、ペンチレングリコール及び/若しくはヘキシレングリコール及び/若しくはカプリリルグリコールなどのグリコール又はそれらの混合物、優先的には水-グリコール又は水性アルコール混合物、より優先的にはヘキシレングリコール、カプリリルグリコール及びこれらの混合物から選択されるグリコールを含むもので希釈され得る。
【0102】
別の実施形態では、本発明に従う株は、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤及び/又は栄養補助食品的に許容される賦形剤を含む化粧品及び/又は栄養補助食品組成物に組み込まれ得る。優先的には、それは、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤を含む化粧品組成物に組み込まれる。
【0103】
本発明の目的では、「化粧品的に許容される賦形剤」という用語は、局所的に許容される化合物及び/又は溶媒、即ちヒト頭皮を含む皮膚及び/又は粘膜との接触状態でアレルギー応答を誘導することなく、非毒性であり、且つ化学的に不安定でないものを意味する。
【0104】
本発明の優先的な実施形態では、本発明に従う株は、化粧品及び/又は皮膚科組成物中において、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤も含む組成物の総体積に対して体積で1×10-4%~10%(v/v)、優先的には体積で1×10-4%~5%(v/v)、より有利には体積で1×10-3%~3%(v/v)、より優先的には体積で0.1%~2%(v/v)の含量で存在する。
【0105】
有利には、本発明に従う株は、化粧品及び/又は皮膚科組成物中において、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤も含む組成物の総重量に対して1×10-4重量%~10重量%、優先的には1×10-4重量%~5重量%及びより有利には1×10-3重量%~0.5重量%の濃度で存在する。
【0106】
特に有利な様式では、本発明に従う株がその代謝産物の1つ又は複数、特にそのセクレトームの形態で使用される場合、それは、化粧品及び/又は皮膚科組成物中において、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤も含む組成物の総重量に対して0.05重量%~0.5重量%の濃度、より優先的には約0.1重量%の濃度で存在する。
【0107】
特に有利には、本発明に従う株が、生存する完全形態で使用される場合、それは、化粧品及び/又は皮膚科組成物中において、少なくとも1つの化粧品的に許容される賦形剤も含む組成物の総重量に対して0.01重量%~0.1重量%の濃度、より優先的には約0.025重量%の濃度で存在する。
【0108】
本発明の化粧品及び/又は皮膚科組成物は、水性又は油性溶液、クリーム又は水性ゲル若しくは油性ゲル、特にシャワーゲル、シャンプー;ミルク;エマルジョン、マイクロエマルジョン又はナノエマルジョン、特に水中油若しくは油中水又は多重若しくはシリコンベースエマルジョン;マスク;血清;ローション;液体石鹸;皮膚科的バー;軟膏剤;バーム;バター;ムース;パッチ;好ましくは、液体、パスティ又は固体、例えばメーキャップ粉末、ワンド若しくはスティックの形態、特にリップスティックの形態である無水製品から選択され得る。
【0109】
それは、メーキャップ製品又はメーキャップ除去製品でもあり得る。
【0110】
有利には、本発明のラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又は組成物は、身体、及び/又は顔、及び/又は頭皮の全部又は一部、好ましくは下肢、大腿、腕、胃、ネックライン、首、腋窩又は唇、より優先的には顔の全部又は一部及び優先的には頬、額、顎、唇又は眼の輪郭に適用されることが意図される。
【0111】
有利には、株及び/又はそれを含む組成物は、サギングを示す健常皮膚の領域、及び/又は健常皮膚の崩壊領域、及び/又は緊張状態が低下している健常皮膚の領域に適用されることが意図される。
【0112】
したがって、有利には、化粧品組成物は、健常皮膚及び/又は健常粘膜への局所適用が意図される。
【0113】
優先的には、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株は、特に皮脂腺、特に頭皮及び/又は粘膜を含む皮膚を重視した中性及びマイルド組成物の製剤化に適する。
【0114】
代わりに、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株は、従来から経口適用に使用される任意の提示形態、特に栄養補助食品活性成分及び/又は栄養補助食品組成物の形態であり得る。
【0115】
本発明に従う組成物は、任意の好適な溶媒、及び/又は任意の好適な媒体、及び/又は任意の好適な賦形剤を任意選択的に目的の他の化合物と組み合わせて含有し得る。
【0116】
結果として、これらの組成物のため、賦形剤は、例えば、保護剤、軟化剤、乳化剤、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、コンディショナー、マット化剤、安定剤、抗酸化剤、テクスチャリング剤、光沢剤、膜形成剤、可溶化剤、色素、着色剤、芳香剤及び日焼け止めを含む群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する。これらの賦形剤は、好ましくは、アミノ酸及びその誘導体、ポリグリセリン、エステル、セルロースポリマー及び誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、スクロースベースの安定剤、ビタミンE及びその誘導体、天然及び合成ワックス、植物油、トリグリセリド、不鹸化物、植物ステロール、植物エステル、シリコーン及びその誘導体、タンパク質加水分解物、ホホバ油及びその誘導体、脂溶性/水溶性エステル、ベタイン、アミン酸化物、植物抽出物、スクロースエステル、二酸化チタン、グリシン及びパラベンからなる群、またより好ましくはブチレングリコール、ステアレス-2、ステアレス-21、グリコール-15ステアリルエーテル、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、天然トコフェロール、グリセロール、ジヒドロキシセチルリン酸ナトリウム、イソプロピルヒドロキシセチルエーテル、グリコールステアリン酸塩、トリイソノナノイン、ヤシ脂肪酸オクチル、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス-7、カルボマー、プロピレングリコール、グリセロール、ビサボロール、ジメチコン、水酸化ナトリウム、PEG-30ジポリヒドロキシステアリン酸、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、セテアリルオクタン酸、ジブチルアジピン酸、グレープシードオイル、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコン、キサンタンガム、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、鉱物蝋及び鉱物油、イソステアリン酸イソステアリル、プロピレングリコールジペラルゴナート、イソステアリン酸プロピレングリコール、PEG8、蜜蝋、水素化パームカーネル油からのグリセリド、水素化パーム油からのグリセリド、ラノリン油、ゴマ油、乳酸セチル、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、ラクトース、スクロース、低密度ポリエチレン、等張食塩水液及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0117】
皮膚(頭皮を含む)及び/又は粘膜の健康及び/又は物理的外観を改善するため、多数の化粧品活性成分が当業者に公知である。当業者は、最良の効果を得るために、化粧品、栄養補助食品又は皮膚科組成物を製剤化する方法について理解している。さらに、これらの化合物は、互いに組み合わされるとき、相乗効果を有し得る。これらの組み合わせも本発明によって包含される。CTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition(1992)は、化粧品及び製薬業界において一般に使用される、特に局所使用に適する様々な化粧品及び医薬品成分について記載している。成分のこれらのクラスの例は、それらに限定されることなく、以下の化合物:研磨材、吸収剤、美容目的のための化合物、例えば芳香剤、色素(pigment)、色素(dye)、精油、収斂薬など(例えば、チョウジ油、メントール、カンフル、ユーカリ油、オイゲノール、乳酸メンチル、マンサク留出液)、抗にきび剤、抗凝集剤、消泡剤、抗菌剤(例えば、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピル)、抗酸化剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、膨潤剤、キレート剤、添加剤、殺生物剤、変性剤、増粘剤及びビタミン並びにそれらの誘導体又は均等物、膜形成材料、ポリマー、乳白剤、pH調整剤、還元剤、脱色素剤又は美白剤(例えば、ヒドロキノン、コウジ酸、アスコルビン酸、リン酸マグネシウムアスコルビル、アスコルビルグルコサミン)、コンディショニング剤(例えば、保湿剤)を含む。
【0118】
化粧品組成物は、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株と同じ特性を有し、且つそれとの相乗又は非相乗効果を誘導する他の化粧品及び/若しくは栄養補助食品剤又は相補効果を有する化粧剤をさらに含み得る。
【0119】
これらは、例えば、抗しわ成分、線維芽細胞の活性又は増殖を刺激する薬剤、細胞外マトリックスの分子を刺激する薬剤であり得る。
【0120】
それらは、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株との相乗効果のため、さらに抗老化活性成分及び/又はテンショニング剤であり得る。有利には、それらは、コラーゲン又はレチノール、ビタミンC、BASF Beauty Care SolutionsによってCollguard(商標)の名称で販売されたダビラ・ルゴサ(Davilla rugosa)の抽出物、Linefactor(商標)の名称で販売されたトロロアオイモドキ(Hibiscus abelmoschus)種子抽出物、本出願人によってDermican(商標)の名称で販売されたペプチド、若しくはSederma社によってMatrixyl(商標)、Matrixyl3000(商標)及びRegestril(商標)、若しくはCodif社によってNeuroguard、若しくはSilab社によってEternaline(商標)の名称で販売された製品など、コラーゲンの分解を阻止する活性成分の遺伝子及び/若しくはタンパク質発現を増加させる活性成分である。
【0121】
本発明で使用され得るテンショニング剤は、ポリウレタンラテックス又はアクリルラテックス、天然起源のポリマー、特にデンプンの形態又はカラギーナンの形態でのポリホロシド、アルギン酸塩、寒天、ゲラン、セルロースベースのポリマー及びペクチン;植物タンパク質及びタンパク質加水分解物;混合ケイ酸塩;ワックス微小粒子;例えば、シリカ、シリカ-アルミナ複合体から選択される無機充填剤のコロイド粒子;及びこれらの混合物などの合成高分子から選択され得る。
【0122】
最後に、それらは、化粧品成分、例えば抗菌剤、フリーラジカル捕捉剤、無痛化剤、鎮静剤又は弛緩剤、顔貌、特に顔の輝きを改善するための微小循環に対して作用する薬剤、治癒剤又はスリミング剤であり得る。有利には、本発明の化粧品及び/又は皮膚科組成物は、1つ若しくは複数のテンショニング剤、及び/又は1つ若しくは複数の抗菌剤、及び/又は1つ若しくは複数のフリーラジカル捕捉剤、及び/又は1つ若しくは複数の無痛化剤、及び/又は1つ若しくは複数のスリミング剤、及び/又は微小循環に対して作用する1つ若しくは複数の薬剤も含有する。
【0123】
本発明の優先的な態様におけるラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株と組み合わせた抗菌剤の中でも、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(又はトリクロサン)、3,4,4’-トリクロロバニリド、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシイソプロパノール、イセチオン酸ヘキサミジン、メトロニダゾール及びその塩、ミコナゾール及びその塩、イトラコナゾール、テルコナゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、サパーコナゾール、フルコナゾール、クロトリマゾール、ブトコナゾール、オキシコナゾール、スルファコナゾール、スルコナゾール、テルビナフィン、ウンデシレン酸及びその塩、過酸化ベンゾイル、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フィチン酸、N-アセチル-L-システイン、リポ酸、アゼライン酸及びその塩、アラキドン酸、レソルシノール、オクトキシグリセロール、オクタノイルグリシン、カプリリルグリコール、10-ヒドロキシ-2-デカン酸、ファルネソール、フィトスフィンゴシン及びこれらの混合物に言及され得る。
【0124】
フリーラジカル捕捉剤は、ビタミンC及びその誘導体、例えばアスコルビルグルコシド、フェノール及びポリフェノール、特にタンニン、エラグ酸及びタンニン酸;エピガロカテキン及びそれを含有する天然抽出物、特に緑茶抽出物;アントシアニン;フェノール酸、スチルベン;単環式又は多環式芳香族化合物捕捉剤、タンニン、例えばエラグ酸及びインドール誘導体及び/又は重金属捕捉剤、例えばEDTA、フリーラジカル捕捉剤、例えばビタミンE及びその誘導体、例えば酢酸トコフェロール;ビオフラボノイド類;コエンザイムQ10又はユビキノンであり得る。
【0125】
本発明の組成物中に含まれる鎮静剤として、五員環トリテルペン、ウルソール酸及びその塩、オレアノール酸及びその塩、ベツリン酸及びその塩、サリチル酸の塩及び特にサリチル酸亜鉛、ビサボロール、アラントイン、オメガ-3不飽和油、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、インドメタシン及びベタメタゾン、抗炎症活性剤及び特に仏国特許第2847267号明細書に記載のもの、特に本出願人によってInhipase(商標)の名称で販売されたプエラリア・ロバタ(Pueraria lobata)の根抽出物及びテオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)の抽出物が使用され得る。
【0126】
微小循環、血管保護剤又は血管拡張剤に対して作用する活性成分は、フラボノイド、ルスコゲニン、ニコチン酸及び精油から選択され得る。
【0127】
スリミング活性剤は、特に、リポタンパク質リパーゼ阻害剤、例えば米国特許出願公開第2003/086949号明細書(Coletica)に記載のもの及び特にネコの爪抽出物(キャッツクロー(Uncaria tomentosa));排出活性成分、特にラウリン酸ヘスペリチン(Flavagrum(商標))又はカプリル酸ケルシチン(Flavenger(商標));ホスホジエステラーゼ酵素阻害剤、アデニル酸シクラーゼアクチベーター、cAMP並びに/又はスペルミン及び/若しくはスペルミジンを除去する能力がある活性薬剤から選択され得る。コレウス・フォルスコリ(Coleus forskohlii)根の抽出物、セクロピア・オブツサ(Cecropia obtusa)、オオバアオサ(Uva lactuca)の抽出物、カフェイン、フォルスコリン、テオフィリン、テオブロミン及び/若しくはその誘導体、本出願人によって販売されたSlimexcess(商標)の名称の加水分解されたκカラギーナン製品並びに/又はこれらの混合物に言及され得る。
【0128】
本発明の主題は、健常皮膚及び/又は健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、好ましくは健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、並びに/或いは健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、特に硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度、好ましくは硬度を維持し、且つ/又は増加させるための、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又はそれを含む化粧品組成物の、健常皮膚及び/又は健常粘膜の少なくとも1つの領域への局所適用を含む化粧品ケアプロセスでもある。
【0129】
有利には、優先的には本発明に従う化粧品組成物の形態の本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株は、規則的な局所適用及び優先的には1日に少なくとも1回、有利には1日に2回で少なくとも10日間、優先的には20日間及びより優先的には少なくとも28日間にわたり使用される。
【0130】
有利には、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株又はそれを含む化粧品組成物の局所適用は、身体、及び/又は顔、及び/又は頭皮の全部又は一部、優先的には脚、大腿、腕、胃、ネックライン、首、腋窩又は唇、より優先的には顔の全部又は一部及び優先的には頬、額、顎、唇又は眼の輪郭で実施される。
【0131】
健常皮膚及び/又は健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、優先的には健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維の発現を維持し、且つ/又は増加させるため、並びに/或いは健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、特に硬度、及び/又は弾性、及び/又は密度、優先的には硬度を維持し、且つ/又は増加させるための、本発明に従う化粧品ケアプロセスは、有利には、以下のステップ:
- 健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/若しくは増加させ、優先的には健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維の発現を維持し、且つ/若しくは増加させ、並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の生体力学的特性、特に硬度、及び/若しくは弾性、及び/若しくは密度、優先的には硬度を維持し、且つ/若しくは増加させることが所望される場合の、健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の領域の個々に対する同定、及び
- 本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株を含む化粧品組成物の、健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の細胞外マトリックス分子の発現を維持し、且つ/若しくは増加させ、優先的には健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のコラーゲン並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の弾性線維の発現を維持し、且つ/若しくは増加させ、並びに/又は健常皮膚及び/若しくは健常粘膜の生体力学的特性、特に硬度、及び/若しくは弾性、及び/若しくは密度、優先的には硬度を維持し、且つ/若しくは増加させるのに有効な量、即ち、
- 組成物の総体積に対して体積で1×10-4%~10%(v/v)、優先的には体積で1×10-4%~5%(v/v)、より有利には体積で1×10-3%~3%(v/v)、より優先的には体積で0.1%~2%(v/v)、及び/又は
- 組成物の総重量に対して重量で1×10-4%~10%(w/w)、優先的には重量で1×10-4%~5%(w/w)、より有利には重量で1×10-3%~0.5%(w/w)
のラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株の含量での健常皮膚及び/若しくは健常粘膜のこの領域への局所適用
を含む。
【0132】
本発明の目的では、「局所経路」という用語は、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株又はその組成物の、健常皮膚及び/又は健常粘膜の領域の表面上への直接的な局所投与及び/又は噴霧を意味する。
【0133】
本発明の目的では、「局所的及び/又は経口的に許容される」という用語は、頭皮を含む皮膚に対して非毒性で非刺激性であり、アレルギー応答を誘導せず、且つ化学的に不安定でない、局所及び/又は経口適用にそれぞれ適する成分を意味する。
【0134】
本発明の主題は、皮膚及び/若しくは粘膜の細胞外マトリックス分子の量及び/若しくは発現の減少、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜のコラーゲン及び/若しくは弾性線維の量及び/若しくは発現の減少、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の量及び/若しくは生体力学的特性の減少、特に皮膚及び/若しくは粘膜の硬度の減少、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の弾性の減少、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の密度の減少を伴う皮膚及び/又は粘膜の病理を治療及び/又は予防するための、単独での又は有利には局所経路を介したその使用のためにそれを含む皮膚科組成物中における、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株である。
【0135】
本発明の目的では、皮膚科的観点から、「皮膚及び/又は粘膜の硬度の減少を伴う皮膚及び/又は粘膜の病理を治療及び/又は予防する」という用語は、治療目的における、皮膚及び/又は粘膜の病理、例えば酒さ又は毛細血管拡張症の結果として硬度を失っている皮膚及び/又は粘膜の硬度の増加を意味する。
【0136】
本発明の目的では、皮膚科的観点から、「皮膚及び/又は粘膜の弾性の減少を伴う皮膚及び/又は粘膜の病理を治療及び/又は予防する」という用語は、治療目的における、皮膚及び/又は粘膜の病理、例えば日光弾力線維症及び/又は皮膚弛緩症病理の結果としてその弾性を失っている皮膚及び/又は粘膜の弾性の増加を意味する。
【0137】
本発明の目的では、皮膚科的観点から、「皮膚及び/又は粘膜の密度の減少を伴う皮膚及び/又は粘膜の疾患を治療及び/又は予防する」という用語は、治療目的における、エーラス・ダンロス症候群及び/又は皮膚粗鬆症などの皮膚及び/又は粘膜の疾患の結果としてその密度を失っている皮膚及び/又は粘膜の密度の増加を意味する。
【0138】
本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株は、少なくとも1つの薬学的及び/又は皮膚科的に許容される賦形剤を含む医薬組成物、優先的には皮膚科組成物の形態であり得る。本発明の一実施形態では、前記組成物は、局所的及び/又は経口的、優先的には局所的に適用される。
【0139】
有利には、それは、医薬組成物、優先的には皮膚科組成物中において、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤も含む組成物の総重量に対して1×10-4重量%~10重量%、優先的には1×10-4重量%~5重量%、より有利には1×10-3重量%~0.5重量%の濃度で存在する。
【0140】
有利には、本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株は、医薬組成物、優先的には皮膚科組成物中において、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤も含む組成物の総体積に対して体積で1×10-4%~10%(v/v)、優先的には体積で1×10-4%~5%(v/v)、より有利には体積で1×10-3%~0.5%(v/v)、より優先的には体積で0.1%~2%(v/v)の濃度で存在する。
【0141】
本発明は、以下の図及び実施例の説明を読むことでより詳細に理解されるであろう。
【0142】
本発明の説明を参照する実施例が以下に提示される。これらの実施例は、例示を目的として与えられ、本発明の範囲を決して限定しないものとする。実施例のそれぞれは、一般的範囲を有する。
【0143】
実施例は、本発明の不可欠な部分を形成し、実施例を含む、その全体的になされる説明から、いかなる先行技術に対しても新規であることが認められる任意の特徴は、本発明の不可欠な部分を形成する。
【0144】
さらに、実施例中の全ての百分率は、別段の指示がない限り、重量ベースで与えられ、温度は、別段の指示がない限り、セルシウス度で表され、また圧力は、別段の指示がない限り、気圧である。
【実施例】
【0145】
実施例1.ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の異なる形態の調製
実施例1.a:L.クリスパタス(L.crispatus)の生存する完全形態の産生
単離したL.クリスパタス(L.crispatus)細菌(CNCM I-5579)をMRS培地に播種し、嫌気的に37℃でインキュベートした。pHをpH=6の値で維持し、培地を24時間インキュベートした。インキュベーションの終了時、培地を遠心分離し、細胞濃縮物を発酵培地に再懸濁し、成分の総重量に対する70重量%(w/w)の最終マルトデキストリン量のマルトデキストリンの存在下で凍結乾燥した。
【0146】
実施例1.b:L.クリスパタス(L.crispatus)の不活性化された完全形態の産生
単離したL.クリスパタス(L.crispatus)細菌(CNCM I-5579)をMRS培地に播種し、嫌気的に37℃でインキュベートした。pHをpH=6の値で維持し、培地を24時間インキュベートした。インキュベーションの終了時、培地を遠心分離し、細胞濃縮物を80℃で30分間にわたり加熱することによって不活性化した。次に、細胞濃縮物をグリセロールに再懸濁した。
【0147】
実施例1.c:L.クリスパタス(L.crispatus)細菌ライセートの産生
単離したL.クリスパタス(L.crispatus)細菌(CNCM I-5579)をMRS培地に播種し、嫌気的に37℃でインキュベートした。pHをpH=6の値で維持し、培地を24時間インキュベートした。インキュベーションの終了時、全体を高圧ホモジナイザーで処理した。次に、ライセートをグリセロールに再懸濁した。
【0148】
実施例1.d:L.クリスパタス(L.crispatus)細菌セクレトームの産生
単離したL.クリスパタス(L.crispatus)細菌(CNCM I-5579)をMRS培地に播種し、嫌気的に37℃でインキュベートした。pHをpH=6の値で維持し、培地を24時間インキュベートした。インキュベーションの終了時、培地を濾過し、細菌セクレトームを回収した。次に、セクレトームをグリセロールに再懸濁した。
【0149】
実施例1.e:粉末形態のL.クリスパタス(L.crispatus)細菌セクレトームの産生
単離したL.クリスパタス(L.crispatus)細菌(CNCM I-5579)をMRS培地に播種し、嫌気的に37℃でインキュベートした。pHをpH=6の値で維持し、培地を24時間インキュベートした。インキュベーションの終了時、培地を濾過し、細菌セクレトームを回収した。次に、セクレトームを成分の総重量に対して90%(w/w)の最終マルトデキストリン量のマルトデキストリンで噴霧した。
【0150】
実施例1.f:L.クリスパタス(L.crispatus)の生存する完全形態の産生
単離したL.クリスパタス(L.crispatus)細菌(CNCM I-5579)をMRS培地に播種し、嫌気的に37℃でインキュベートした。pHをpH=6の値で維持し、培地を24時間インキュベートした。インキュベーションの終了時、培地を遠心分離し、細胞濃縮物を発酵培地に再懸濁し、成分の総重量に対して50重量%(w/w)の最終マルトデキストリン量のマルトデキストリンの存在下で凍結乾燥した。
【0151】
実施例2:本発明に従うL.クリスパタス(L.crispatus)株の存在下での線維芽細胞によるI型コラーゲンの発現の増加
健常な34歳ドナーから得られた「正常な」ヒト線維芽細胞、即ち病理のないものを24ウェルプレートに播種し、次にDMEM培地でコンフルエントになるまで培養した。
【0152】
インキュベーションを、106CFU/mLの濃度になるまでPBSで希釈したMRS培地中の培養ウェル上のゴンドラに播種した、実施例1.aに従うL.クリスパタス(L.crispatus)細菌の存在下で48時間継続した。本発明に従う株の添加を伴わない同じ培地を対照(Control)として使用した。
【0153】
インキュベーションの終了時、細菌を除去し、細胞を水酸化アンモニウム緩衝液で溶解した。次に、緩衝液を除去し、ウェルをPBS/BSA(リン酸緩衝食塩水/ウシ血清アルブミン)の混合物で飽和させた。
【0154】
飽和後、抗I型コラーゲン一次抗体(Interchim/Acris,Montlucon,France,LH0284/R1038)、次いでユーロピウムコンジュゲート二次抗体(Perkin Elmer)を数分間インキュベートしたうえで、次に蛍光を、EnVision(登録商標)多重標識プレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて(λexc.340nm/λem.615nm)で測定する。
【0155】
蛍光結果は、本発明に従うL.クリスパタス(L.crispatus)株の不在下(対照)の同じ細胞培地で得られた蛍光に対して正規化し、各条件下で得られたDNAの量に関連づけた。提示された結果は、6つのアッセイの平均に対応する(n=6)。
【0156】
結果
【0157】
【0158】
本発明の産物である、実施例1.aに従うL.クリスパタス(L.crispatus)株は、インビトロで培養されたヒト皮膚線維芽細胞によるI型コラーゲンの有意な刺激を示した。したがって、それを用いて、健常皮膚及び/又は健常粘膜の硬度を増加させることができる。
【0159】
実施例3:本発明に従うL.クリスパタス(L.crispatus)の株の存在下での線維芽細胞による弾性線維の形成に関与するタンパク質フィビュリン-5及びエミリン-1の発現の増加
健常な19歳ドナーから得られた「正常な」ヒト線維芽細胞、即ち病理のないものをFGM(線維芽細胞増殖培地)で培養した。培養されると、インキュベーションを、培地及びセクレトームの総重量に対して0.1%(w/w)の濃度での、実施例1.eに従って得られたL.クリスパタス(L.crispatus)細菌セクレトームの存在下で48時間にわたり継続した。本発明に従う株の添加を伴わない同じ培地を対照(Control)として使用した。
【0160】
インキュベーションの終了時、培地を除去し、細胞を溶解緩衝液で溶解した。
【0161】
フィビュリン-5及びエミリン-1を、キャピラリー電気泳動に基づくタンパク質分析システムを用いて同定及び定量化した。細胞ライセートから得られたタンパク質の量、即ちフィビュリン-5におけるライセートの0.2mg/mL及びエミリン-1におけるライセート上清の0.2mg/mLをキャピラリー中で沈殿させ、それに一次抗フィビュリン-5又は抗エミリン-1抗体を添加し、その後、二次抗体を西洋わさびペルオキシダーゼ及び化学発光基質にコンジュゲートした。全体を30分間インキュベートし、次にフィビュリン-5タンパク質の検出から得られた化学発光シグナルを、好適なソフトウェアを用いてキャピラリー電気泳動によって定量化した。
【0162】
結果は、100%に正規化された未処理対照に対する、百分率として表される実施されたアッセイの平均±標準偏差である。結果の統計分析は、一元配置分散分析検定を用いて未処理対照に対して実施した。有意水準は、5%に設定した。
【0163】
結果
【0164】
【0165】
本発明の実施例1.eに従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株のセクレトームは、インビトロで培養されたヒト皮膚線維芽細胞によるフィビュリン-5のタンパク質発現において有意な50%の増加を示した。したがって、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株及び特にそのセクレトームを用いて、健常皮膚及び/又は健常粘膜の弾性を増加させることができる。
【0166】
【0167】
本発明の実施例1.eに従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株のセクレトームは、インビトロで培養されたヒト皮膚線維芽細胞によるエミリン-1のタンパク質発現において有意な53%の増加を示した。したがって、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株及び特にそのセクレトームを用いて、健常皮膚及び/又は健常粘膜の弾性を増加させることができる。
【0168】
実施例4:本発明に従うL.クリスパタス(L.crispatus)の株の存在下での皮膚弾性の増加のインビボ測定
顔上で皮膚弾性の減少を示す40~50歳の女性30名の集団に、クリームを、クリームの総重量に対して1%(w/w)の最終重量濃度の、実施例1.eに従うL.クリスパタス(L.crispatus)株のセクレトームを含む、実施例7b)に記載のようなエマルジョンの形態又は同じ「プラセボ」エマルジョンであって、前記セクレトームを水と交換したものの形態において、1日あたり2回適用の割合で2か月間にわたり顔の片方に適用した。
【0169】
皮膚の生体力学的特性の評価を、キュートメーター(登録商標)を用いて実施した。この臨床評価機器は、3つの異なるパラメータ、即ち皮膚の全弾性、即時弾性及び弾性回復(それらの全ては、皮膚の弾性を示す)を測定する能力を有する。これらの測定から、皮膚の弾性の状態を示す異なるパラメータを推定した。
【0170】
皮膚の全弾性及び即時弾性とともに弾性回復を、キュートメーター(登録商標)を用いて、試験開始時(D0)、適用の1か月後(D28)及び最終的に適用の2か月後(D56)に測定した。
【0171】
実施例1.eに従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株のセクレトームの有効性を、プラセボエマルジョンで得られたものと比較した。
【0172】
結果
【0173】
【0174】
2か月の使用後、実施例1.eに従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株のセクレトームを含有する製剤は、全ての弾性パラメータにおいて有意な増加を誘導した。この増加は、D0での試験開始に対してだけでなく、プラセボに対しても有意である。
【0175】
これらの結果は、健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、特に健常皮膚及び/又は健常粘膜の弾性をインビボで維持し、且つ/又は増加させるための、製剤化されたラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株、特にそのセクレトームの有益な効果を示す。
【0176】
実施例5:本発明に従うL.クリスパタス(L.crispatus)の株の存在下での皮膚密度の増加のインビボ測定
額上のしわ及び顔上で皮膚の生体力学的特性の減少を示す45~65歳の女性31名の集団に、クリームを、クリームの総重量に対して0.05%(w/w)の最終重量濃度の、実施例1.fに従って得られたL.クリスパタス(L.crispatus)株を含む、実施例7.cに提示される製剤に記載のようなエマルジョンの形態又は同じ「プラセボ」エマルジョンであって、前記株を水と交換したものの形態において、1日あたり2回適用の割合で2か月間にわたり顔の片方に適用した。
【0177】
皮膚密度の評価を、超音波プローブを備えたスキャナーを用いて実施した。スキャナーは、細胞外マトリックス化合物の合成を示す皮膚密度の可視化を可能にする。
【0178】
皮膚密度及び厚みの改善を試験開始時(D0)、適用の1か月後(D28)及び最終的に適用の2か月後(D56)に測定した。
【0179】
実施例1.fに従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株の有効性をプラセボエマルジョンの場合と比較した。
【0180】
結果
【0181】
【0182】
使用の2か月後、実施例1.fに従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株の製剤は、皮膚密度の有意な増加を誘導した。この増加は、D0での試験開始に対してだけでなく、プラセボに対しても有意である。
【0183】
これらの結果は、健常皮膚及び/又は健常粘膜の生体力学的特性、特に健常皮膚及び/又は健常粘膜の密度をインビボで維持し、且つ/又は増加させるための、製剤化されたラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株の有益な効果を示す。
【0184】
実施例6:本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株を含む化粧品成分の例
【0185】
【0186】
実施例7:本発明に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株を含む化粧品組成物の例
実施例7.a:実施例1.cに従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株を含む化粧品組成物の例
当業者に公知の方法を用いて、以下の様々なA相、B相、C相及びD相と一緒に混合し、本発明に従う組成物を調製する。比率を百分率として表し、大文字の名称は、成分のINCI名に対応する。
A相
ステアリン酸グリセリル及びPEG-100ステアリン酸塩 4.00
ジステアリン酸ペンタエリスリチル 1.50
イソノナン酸セテアリル 3.00
カプリル酸プロピルヘプチル 5.00
カプリル酸ココイル 2.00
炭酸ジカプリリル 3.00
ジメチコン 1.00
B相
水 64.43
プロピレングリコール、フェノキシエタノール、クロルフェネシン、メチルパラベン 1.00
グリセロール 1.57
キサンタンガム 0.20
ブチレングリコール 2.00
水酸化ナトリウム、水 0.15
C相
カルボマー 0.15
水 10
D相
実施例1c)に従って得られたラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の抽出物 1.00
【0187】
実施例7.b:実施例1.eに従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株を含む化粧品組成物の例
比率を百分率として表し、大文字の名称は、成分のINCI名に対応する。
A相
グリセリン 5.00
ブチレングリコール 10.00
キサンタンガム 2.00
B相
水 58.95
安息香酸ナトリウム 0.25
グリセリン、水、レブリン酸ナトリウム、アニス酸ナトリウム 1.00
C相
ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2 1.00
炭酸ジプロピルヘプチル 3.00
炭酸ジカプリリル 3.00
カプリル酸/カプリン酸カプリリル 10.00
ラウレス-7クエン酸 0.50
D相
クエン酸 0.30
E相
実施例1eに従って得られたラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の抽出物 1.00
水 4.00
【0188】
当業者に公知の方法を用いて、室温で撹拌しながらBをAに添加し、続いてCをABに添加することにより、様々なA相、B相及びC相と一緒に混合する。pHをDにより4.9に調整する。次に、E相を添加する。最終的に、Ultra-Turraxブレンダーを用いて均質化を実施し、本発明に従う組成物を調製する。
【0189】
実施例7.c:実施例1.fに従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株を含む化粧品組成物の例
実施例1.fに従って得られたラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株を、表8に従って下に定義される通りの製剤での皮膚への適用直前に製剤の総重量に対する0.05%(w/w)の最終濃度で添加する。
【0190】
【0191】
実施例8:皮膚科組成物の例
実施例8a):本発明に従うL.クリスパタス(L.crispatus)の生存する全株を含有する軟膏剤
下の組成物は、特に、一緒に混合されるべき様々な相に関して、当業者に公知の方法に従って調製する。
【0192】
表示される量は、組成物の総重量に対する重量百分率に準じる。
【0193】
【0194】
実施例8b):実施例1c)に従うラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の株を含有するクリーム
【0195】
【0196】
A相及びB相を75℃まで加熱し、次に撹拌しながら混合する。混合物が室温に戻ると、C相及びD相を撹拌しながら添加する。
【国際調査報告】