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特表2024-504251電流を取集するための収集装置及びこの種の収集装置を備える機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】電流を取集するための収集装置及びこの種の収集装置を備える機器
(51)【国際特許分類】
   H01R 39/00 20060101AFI20240124BHJP
   H02K 11/40 20160101ALI20240124BHJP
【FI】
H01R39/00 K
H02K11/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536418
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2020087799
(87)【国際公開番号】W WO2022135715
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516193830
【氏名又は名称】シュンク カーボン テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マタイ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】エッツェルストーファー マルコ
(72)【発明者】
【氏名】クルツ ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】フーバー フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】カイン ルートヴィヒ
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611UA04
(57)【要約】
機器のシャフト(2)を有するロータ部から電流を放電するための放電装置(1,1’,1’’)に関する発明であって、放電装置(1,1’,1’’)は、ガイド装置(6)に少なくとも部分的に収容される軸方向に移動可能な接触要素(3)を備え、接触要素(3)は、摺動接触を形成するために設けられた接触要素(3)の摺動接触面(4)とシャフト(2)のシャフト接触面(5)との間に導電性の摺動接触を形成し、接触要素(3)は、機器(100)のガイド装置(6)及び/又は保持要素(7)に導電接続され、接触要素(3)は、バネ要素(9)によってシャフト接触面(5)に向かって付勢されており、接触要素(3)は、少なくとも部分的に、特に少なくとも摺動接触面(4)の領域が、油性流体(20)により濡れている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器のシャフト(2)を有するロータ部から電流を放電するための放電装置(1,1’,1’’)であって、
前記放電装置(1,1’,1’’)は、ガイド装置(6)に少なくとも部分的に収容される移動可能な接触要素(3)を備え、
移動可能な前記接触要素(3)は、摺動接触を形成するために設けられた前記接触要素(3)の摺動接触面(4)と前記シャフト(2)のシャフト接触面(5)との間に導電性の摺動接触を形成し、
前記接触要素(3)は、前記機器(100)の前記ガイド装置(6)及び/又は保持要素(7)に導電接続され、
前記接触要素(3)は、バネ要素(9)によって前記シャフト接触面(5)に向かって付勢されており、
前記接触要素(3)は、少なくとも部分的に、特に少なくとも前記摺動接触面(4)の領域が、油性流体(20)により濡れていることを特徴とする、放電装置。
【請求項2】
前記油性流体は、モータオイル(20)及び/又はギアオイルであることを特徴とする、請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記ガイド装置(6)は、前記機器の固定子部に導電接続され得ることを特徴とする、請求項1-2のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項4】
前記接触要素(3)は、好ましくは低抵抗の撚り線(8)によって、前記機器(100)の前記ガイド装置(6)又は前記保持要素(7)に導電接続され、
前記撚り線(8)は、一端において前記接触要素(3)に、好ましくは圧入され、又は押し付けられており、他端において前記ガイド装置(6)に、好ましくは溶接、半田付け又は圧着されていることを特徴とする、請求項1-3のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項5】
前記ガイド装置(6)は、低抵抗材料、特に金属、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び/又は真鍮を、少なくとも部分的に用いて形成されていることを特徴とする、請求項1-4のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項6】
前記接触要素(3)は、実質的に、炭素-金属混合物、特にグラファイトと金属との混合物を用いて形成され、
前記接触要素(3)の前記金属の総体積分率は、好ましくは少なくとも30体積%であり、
前記接触要素(3)の少なくとも前方領域(16,21)は前記摺動接触面(4)を有しており、前記前方領域(16,21)には前記金属として好ましくは銀が設けられ、
前記接触要素(3)の後方領域(22)には、前記金属として好ましくは銅が設けられ、
前記接触要素は、前記摺動接触面の領域内には、好ましくは銅を含まないことを特徴とする、請求項1-5のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項7】
前記接触要素(3)は、前記摺動接触面(4)の領域において、凹部、特に開口又はスリットを有し、
前記接触要素は、前記摺動接触面の領域において、好ましくは細孔が開けられていることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項8】
前記接触要素は、ピン形状又はボルト形状のブラシ(3)であり、
前記摺動接触面(4)は、好ましくは長方形又は円形であることを特徴とする、請求項1-7のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項9】
前記バネ要素は圧縮コイルバネ(9)であり、
前記圧縮コイルバネ(9)の一端は、好ましくは前記接触要素(3)の前記摺動接触面(4)とは反対側に位置する端面に接していることを特徴とする、請求項1-8のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項10】
シャフト(2)を有するロータ部と請求項1-9のいずれか1項に記載の放電装置(1,1’,1’’)とを有する、特に電気駆動モータ又は変速機である、機器(100,100’,100’’)であって、
前記放電装置(1,1’,1’’)の前記接触要素(3)は、摺動接触を形成するために、前記シャフト(2)に前記摺動接触面(4)を接触させる機器。
【請求項11】
少なくとも前記シャフト(2)と前記ガイド装置(6)との間の空間(14)において、
前記空間(14)は、前記接触要素(3)によって架橋され、
前記空間(14)には、油性流体、特にモータオイル又はギアオイル(20)が設けられていることを特徴とする、請求項10に記載の機器。
【請求項12】
前記放電装置(1)は、流体ガイド(13,15)の中に、少なくとも部分的に配置され、
前記油性流体(20)は、好ましくは最初に、前記シャフト(2)と前記ガイド装置(6)との間の前記空間(14)に流入し、
前記油性流体(20)は、その後、特に前記シャフト(2)を介して排出されることを特徴とする、請求項10-11のいずれか1項に記載の機器。
【請求項13】
前記油性流体(20)のための導管(19)は、前記ガイド装置(6)の中に設けられ、
前記導管(19)は、好ましくは、前記シャフト(2)と前記ガイド装置(6)との間の前記空間(14)に開口していることを特徴とする、請求項10-12のいずれか1項に記載の機器。
【請求項14】
前記接触要素(3)は、前記バネ要素(9)によって、少なくとも10N/cmの力により、常に前記シャフト(2)に押し付けられていることを特徴とする、請求項10-13のいずれか1項に記載の機器。
【請求項15】
前記シャフト(2)は、少なくとも前記接触要素(3)が接する領域において、実質的に銅を含まないことを特徴とする、請求項10-14のいずれか1項に記載の機器。
【請求項16】
前記接触要素(3)は、前記シャフト(2)の端面(10)と接し、
前記接触要素(3)は、好ましくは前記シャフト(2)と実質的に同軸に配置されていることを特徴とする、請求項10-15のいずれか1項に記載の機器。
【請求項17】
前記接触要素(3)は、前記シャフト(2)の円周面(17)と接することを特徴とする、請求項10-15のいずれか1項に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
機器のシャフトを有するロータ部から電流を放電するための本発明に係る放電装置であって、放電装置は、ガイド装置に少なくとも部分的に収容され、特に軸方向に移動可能な接触要素を備え、移動可能な接触要素は、摺動接触を形成するために設けられた接触要素の摺動接触面とシャフトのシャフト接触面との間に導電性の摺動接触を形成し、接触要素は、機器のガイド装置及び/又は保持要素に導電接続され、接触要素は、バネ要素によってシャフト接触面に向かって付勢される。
【背景技術】
【0002】
このような放電装置が、先行技術とは異なる実施形態として知られる。特に、低周波電流の放電のためにカーボンブラシを用いることが知られており、カーボンブラシはシャフトの軸方向又は径方向に分布して配置され、撚り線による接続を介して固定子に接続される。これらの電気抵抗が低いため、保持装置又はブラシホルダー内に収容されたカーボンブラシは電流の直接的な放電を可能にし、よって、シャフトの軸受点を介する望ましくない電流伝導を避け得る。この望ましくない電流伝導は、軸受本体又は軸受リングの表面の、スポット溶接による損傷に繋がり得る。
【0003】
「シャフト」という用語は、ここでは「ロータ部」又は「軸」という用語の同義語として使用される。よって、「シャフト」という用語は、機器の固定された固定子又は機器部分に電流が放電され得る全ての回転機器部を指す。
【0004】
放電装置は、通常、鉄道技術においても使用されており、鉄道技術では交流電流又は動作電流が車軸を介して流れ得る。この種の放電装置は、例えば、DE 10 2010 039 847 A1に記述される。
【0005】
電流を放電する方法は、一般的な電気機器、例えば自動車両にも必要とされる。ドライブシャフト又はギアシャフト、前記ドライブシャフトに接続される他の機能的要素において、常に変動するAC電圧又はAC電流、及び高周波電流パルスが発生し得て、ロータシャフト又はギアシャフトの軸受点を損傷する可能性もあるため、ここには通常、放電装置が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
記述されたこの放電装置、及びこのような放電装置を有する機器の1つの問題は、電気的及び機械的損失により生成される高熱であり、この高熱は、放電装置及び機器(例えば、モータ、変速機)の両方に高い熱負荷をもたらす。この問題をある程度制御するために、生成された熱は、これまで、特に換気装置を介して除去されてきた。しかしながら、このような換気装置では、要素の熱負荷を、部分的にしか最小限に抑えることができない。このような換気装置のもう1つの欠点は、考慮される機械の中にこのような換気装置を組み込むために必要とされる設置空間が、大幅に増大することである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上述の先行技術から知られる欠点を克服することにある。特に、本発明の目的は、寄生電流を放電するときの要素の熱負荷を最小限にしながら、必要とされる設置空間を可能な限り小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、上述の放電装置によって解決され、放電装置は、接触要素が、少なくとも部分的に、特に少なくとも摺動接触面の領域が、油性流体により濡れていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る放電装置によれば、容量結合された高周波電圧(いわゆる、寄生交流電圧)の理想的な放電を可能にし、この高周波電圧は、使用されるパワーエレクトロニクス(パルス幅変調)の為の電気駆動によって生成されており、同時に、油性流体を使用することによって、この工程で生成された熱を、封じ込める又は放散する。特に、本発明は、熱負荷を最小限に抑制するために、換気装置のような特別な冷却装置を必要としない。よって、電気モータのような機器の構造はより単純になり得て、ひいては費用対効果がより向上し、そして、この電気モータの冷却が、既知のシステムに比べてより効果的になり得る。例えば、ラジアルシャフトシールによる摩擦損失も避けられる。加えて、既に上述したように、機械全体の寸法が小さくなり得る(回転部品の慣性モーメントが小さくなる)。
【0010】
一般に、油性流体はモータオイル及び/又はギアオイルであり、通常、モータオイル及び/又はギアオイルは、本発明に係る放電装置が設けられたモータ又はギアの中に既に存在する。
【0011】
特に、本発明に係る放電装置の好ましい実施形態において、ガイド装置は、機械の固定子部に電気的に接続され得る。この機械の固定子部は、例えば、放電装置の保持要素として使用され得る。電流が放電されたときには、電流は、対応するシャフトから放電装置の接触要素及びガイド装置に放電される。その後、記述された実施形態において、放電電流が、機械の前述の固定子に流れる。
【0012】
有利には、接触要素は、好ましくは低抵抗の撚り線によって、ガイド装置に導電接続され、撚り線は、一端において接触要素に、好ましくは圧入され、又は押し付けられており、他端においてガイド装置に、好ましくは溶接、半田付け又は圧着される。ガイド装置は、低抵抗材料、特に金属、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び/又は真鍮を、好ましくは少なくとも部分的に用いて形成される。
【0013】
本発明に係る放電装置の特に好ましい実施形態において、接触要素は、実質的に、炭素-金属混合物、特にグラファイトと高い導電性を持つ金属との混合物を用いて形成され、少なくとも接触要素の摺動接触面の領域には、金属として好ましくは銀が設けられ、接触要素の後方領域には、金属として好ましくは銅が設けられ、接触要素は摺動接触面の領域内には、好ましくは銅を含まない。接触要素に含まれる金属の割合は、好ましくは少なくとも30体積%である。接触要素は、接触要素の表面の領域において銅を含まないことが好ましく、なぜなら、この金属は、電流が流れたときに油性流体中において触媒変化を生じ得て、その結果、この流体の物理特性に悪影響が生じ得るためである。この理由のため、以下に詳細に記述される本発明に係る機器のシャフトも、少なくともシャフトが接触要素に接する領域内には、銅を含まない。
【0014】
全ての動作条件下において可能な限りシステムの抵抗を低く保つためには、本発明に係る放電装置の抵抗も低くなるように選択されることが望ましい。低抵抗材料と金属-炭素混合物から形成された接触要素とを用いる上述の実施形態によって、装置全体の抵抗が低く保たれ得る。一方で、システムの抵抗は、シャフト表面と接触要素の摺動接触面との間の電圧降下によって、主に影響を受ける。これはシステム全体の中における最大の割合を占める。よって、これも低く保つことが望ましい。継続的な注油の実施を確実にするために、シャフト上における接触要素の比接触圧力が高いと有利である。この値は、少なくとも10N/cmあることが望ましい。一方、摺動接触面の領域において、接触要素上の油性流体との接触による電気化学反応が発生しないことが望ましい。これは、耐用年数全体にわたって摩耗する接触要素の領域に、銀-グラファイト材料を用いることによって確保される。
【0015】
有利には、接触要素は、摺動接触面の領域において、凹部、特に開口又はスリットを有する。よって、その接触が油膜から浮くことが防止され得る。有利には、接触要素は、摺動接触面の領域において、細孔が開けられる。これは、シャフトと接触要素との間の電気的な接触不良の抑制、及び油膜上での接触要素の浮きを最小限に抑制することに貢献する。
【0016】
一般に、接触要素は、ピン形状又はボルト形状のブラシである。このブラシは、通常、圧縮成形と、その後の熱処理とによって形成される。
【0017】
有利には、バネ要素は圧縮コイルバネであり、圧縮コイルバネの一端は、好ましくは接触要素の摺動接触面とは反対側に位置する端面に接する。この種の圧縮コイルバネによって、常に特定の所望の接触圧力により、接触要素をシャフトに押し付けることが簡単にできる。
【0018】
本発明は、シャフトを有するロータ部と請求項1-9のいずれか1項に記載の放電装置とを有する、特に電気駆動モータ又は変速機である機器にも関し、放電装置の接触要素は、摺動接触を形成するために、シャフトに摺動接触面を接触させる。本発明に係るこの機器は、設置スペースを小さく保ち、簡単な設計でありながら、熱応力を大幅に低減する上述の利点を有する。
【0019】
本発明に係る機器において、放電装置は、油性流体、特にモータオイル又はギアオイルの中に完全に配置され得る。好ましくは、この油性流体は、特にシャフトとガイド装置との間の、接触要素に架橋された空間に設けられる。この実施形態において、特に最も高い熱が生成される場所、つまりシャフトと接触要素との間の領域が、油性流体によって冷却される。
【0020】
この放電装置は、流体ガイド、特にオイルガイドの中に、少なくとも部分的に配置され得て、油性流体は、好ましくは最初に、シャフトとガイド装置との間の空間に流入し、その後、シャフトを介して排出される。この実施形態において、シャフトと接触要素との間の接触領域において生成された熱は、流体ガイド内の油性流体の流れによって、即座に除去され得る。
【0021】
さらに、油性流体が、放電装置、特に放電装置の接触要素の上に、霧状にしてスプレーされ、滴下され、又は塗布されることが考えられる。
【0022】
本発明に係る機器又は本発明に係る放電装置の他の実施形態において、油性流体のための導管は、放電装置のガイド装置の中に設けられ、導管は、好ましくは、シャフトとガイド装置との間の空間に開口する。
【0023】
有利には、接触要素は、バネ要素によって、少なくとも10N/cmの力により、常にシャフトに押し付けられる。これにより、シャフト表面と接触要素の摺動接触面との間の電圧降下の最小化が達成される。
【0024】
上述のように、シャフトは、少なくとも接触要素が接する領域において、好ましくは、実質的に銅を含まない。
【0025】
本発明に係る機器の好ましい実施形態において、接触要素はシャフトの端面に接しており、接触要素は、好ましくはシャフトと実質的に同軸に配置される。この種のシャフトの接地は、回転するシャフトの軸ぶれが通常は小さいため、接触不良を避けるために好ましい。シャフトの回転点の近傍に接触要素を配置することによって、周速度が最小化され、ひいては接触要素の耐用年数にわたる実際の走行距離も、大幅に抑制される。これは接触要素の摩耗に直接影響を与えており、一般に、接触要素の摩耗は走行距離と比例関係にある。走行距離を最小化することによって、接触要素の摩耗を少なく保ち、その結果として、接触要素の全摩耗長さにわたるバネ要素の力の損失も最小になる。このことは、例えば、上述のように、より費用対効果の高い圧縮コイルバネを用いることを可能にする。加えて、シャフトの回転軸の近くの周速度が低いために、継続的に絶縁性の潤滑膜を形成するリスクが抑制され、それによって、接触圧力が、周速度が高い場合に要求される接触圧力よりも低く保たれ得る。シャフトの回転軸に近い端面での接触による他の利点は、回転点からの半径方向の距離が短いため、摩擦モーメントが最小化することである。非常に大きい摩擦力を伴ってさえ、摩擦力×走行半径の積である摩擦モーメントが小さく抑えられる。したがって、角速度(速度に相当)に関しても、摩擦力が小さく抑えられ、システムは損失が小さくなる。
【0026】
本発明に係る機器のさらなる実施形態において、接触要素はシャフトの円周面と接する。この実施形態において、接触要素の断面形状が、シャフトと接触要素との間が浮くことによって生じる電気的な接触不良の抑制を達成するために、接するシャフトの好ましい回転方向に対して、幾何学的にテーパー状であることが好ましい。
【0027】
一般に、この放電装置は、機器の、主に動作温度が50℃を超える区画内に配置される。
【0028】
本発明のさらなる特徴は、図面及び従属請求項に関する以下の図面の説明から明らかにされ得る。個々の機能は、単独で、又はそれぞれの組み合わせとして実装され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、長手方向接触要素とシャフトとの間の接触領域における本発明に係る機器の回転軸を含む面での断面を示し、接触要素はシャフトと同軸に配置されている。
図2図2は、接触要素とシャフトとの間の接触領域の本発明に係る機器の他の実施形態の回転軸方向に沿った断面を示し、接触要素はシャフトに対し半径方向に配置されている。
図3図3は、本発明に係る放電装置の実施形態を示す。
図4図4は、図3の放電装置の回転軸を含む面での断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下において、同一の要素又は要素の有する同一の機能には、同一の参照番号が付されている。
【0031】
図1は、本発明に係る機器100の回転軸を含む面での断面図を示す。この場合、機器100は、シャフト2を有するロータ部を有する電動モータである。電流を放電するための放電装置1は、シャフト2の端面10に配置される。この放電装置1は、摺動接触を形成するために設けられたカーボンブラシ3の摺動接触面4とシャフト2のシャフト接触面5との間に、導電性の摺動接触を形成するためのカーボンブラシ3の形態である接触要素を備える。カーボンブラシ3は、ガイド装置6の中に、軸方向に移動可能なように収容される。ガイド装置6は、円筒形状のハウジングであり、機器100の保持要素7の中において同様に円筒形状の凹部の中に配置される。カーボンブラシ3は、撚り線8によって、保持要素7に導電接続される。
【0032】
カーボンブラシ3は、圧縮コイルバネ9によって、シャフト接触面5に向かって付勢される。よって、摺動接触を形成するために設けられたカーボンブラシ3の摺動接触面4とシャフト2の軸方向のシャフト接触面5との間の電気的な摺動接触を形成するために、カーボンブラシ3はバネ9によって接触力の作用を受ける。ガイド装置6のシャフト2に面する側において、カーボンブラシ3は、ガイド装置6から僅かに突出して端面10においてシャフト2と接する。この場合、カーボンブラシ3は、実質的にシャフト2の端面10に対して中央に位置するように配置され、よってシャフトと同軸に配置される。すでに上述したように、この配置はカーボンブラシ3の摩耗を可能な限り小さくできるため、特に有利である。
【0033】
ガイド装置6の他端において、ガイド装置6は蓋11を有し、蓋11は撚り線8を挿通する中央凹部12を有する。バネ9は、蓋11とカーボンブラシ3との間に配置され、シャフト2の方向に沿ってカーボンブラシ3を付勢する。
【0034】
機器100の保持要素7には、2つのオイル流路13が設けられる。これらオイル流路13は、シャフト2の上方と下方とに配置され、最初はシャフト2に向かって斜めに延びる。モータオイルは、図1に図示されている矢印に示されるように、シャフト2の方向に沿って流れ、オイル流路13を介してシャフト2とガイド装置6との間の空間14に流入し、この空間14がカーボンブラシ3の先方端部16によって架橋される。よって、カーボンブラシ3は、この領域においてオイルで濡れている。この工程において、摺動接触面4とシャフト接触面5との上にもオイルが付着する。このカーボンブラシ3及びシャフト2の「注油」は、この領域の理想的な冷却を可能にする。加熱されたオイルが、空間14から、シャフト2の中に配置された2つのチャンネル15へさらに流れ、チャンネル15はシャフトの長手方向軸に平行に配置される。よって、この熱は、チャンネル15を介してカーボンブラシ3から実質的に除かれる。
【0035】
カーボンブラシ3を濡らすことが、異なった方法でも達成され得ることは明らかである。例えば、カーボンブラシに、特にシャフトと接する領域に、オイルが噴霧されたり、オイル蒸気が曝されたりすることがあり得る。機器全体が、特にシャフト2とカーボンブラシ3との間の接触領域が、完全にオイルに浸漬させられることが考えられる。
【0036】
ガイド装置6及び保持要素7は、ガイド装置6と保持要素7とが導電接続されるように、導電性材料で形成される。この例示的な実施形態において、ガイド装置6はアルミニウム製である。
【0037】
撚り線8も、低抵抗材料により形成される。撚り線8は、一端においてカーボンブラシ3に圧入され、他端において圧着手段によって保持要素7に接続される。
【0038】
カーボンブラシ3は、二層構造を有する。摺動接触面4の領域において、カーボンブラシ3は、グラファイトと銀との混合物により形成される。これは、空間14を架橋するカーボンブラシ3のセクション16に、特に影響する。この部分における銀含有量は、約3体積%である。カーボンブラシ3の残りの部分は、グラファイトと銅との混合物により形成される。しかしながら、カーボンブラシ3のセクション16及びシャフト2は、オイルの望ましくない反応を避けるため、実質的に銅を含まない。
【0039】
カーボンブラシ3は、円筒形状のピンである。この例示的な実施形態において、カーボンブラシ3は、約10N/cmの力によりシャフト2に押し付けられる。
【0040】
図2は、本発明に係る機器100’の他の実施形態の回転軸方向に沿った断面図を示す。この場合における図1の機器100との主な違いは、カーボンブラシ3がシャフト2の円周面17と接するように、放電装置1’がシャフト2の径方向に配置されることである。加えて、撚り線8は、この場合には撚り線8がカーボンブラシ3とガイド装置6との間の電線として機能するように、ガイド装置6に接続される。この実施形態において、放電装置1’も、機器100’の保持要素7の中に配置される。ここで、放電装置1’はオイルガイドの一部の空間18の中に配置される。よって、放電装置1’は常にオイルに接する。したがって、本実施形態においても、シャフト2やカーボンブラシ3のような個々の要素にかかる熱応力が低く抑えられ得る。ここでも、結果的に生じる熱は、放電の過程の間にオイルに伝達される。
【0041】
図3は、本発明に係る放電装置1’’の他の実施形態を示し、図4は、本発明に係る機器100’’の他の実施形態における前記放電装置1’’を示している。機器100’’及び放電装置1’’は、特にオイル導管19がガイド装置6の中に配置されるという点において、図1及び図2に図示された実施形態と異なり、オイル導管19は、蓋11からガイド装置6とシャフト2との間の空間14まで、軸方向に沿って延び、前記空間14に開放的に接続されている。図4に示すように、オイル20は、蓋11の領域から空間14に向かって流れ、空間14に注ぎ出される。それにより、カーボンブラシ3の架橋セクション16がオイルに浸される。図4において、カーボンブラシ3の二層構造が明確に示され得る。前方領域21において、カーボンブラシ3はグラファイトと銀の混合物を用いて形成される。後方領域22において、カーボンブラシ3はグラファイトと銅の混合物を用いて形成される。この場合、撚り線8は、カーボンブラシ3の後方領域22及びガイド装置6に接続され、これらの要素を導電接続する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】