(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】セリンおよびグリシンの制限の調節およびそれらの制限に対する感受性化のための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240124BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240124BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20240124BHJP
A61K 31/4245 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/404
A61K31/407
A61K31/4245 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537587
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 US2021063639
(87)【国際公開番号】W WO2022132981
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523227959
【氏名又は名称】フェイス セラピューティクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】511085460
【氏名又は名称】キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】マドックス オリバー ディー. ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ボーデン カレン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086BC71
4C086CB03
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
細胞をアミノ酸などの栄養素に飢えさせるための製剤および前記製剤を投与する方法が、本明細書において開示される。本発明の製剤は、1つまたは複数のアミノ酸を実質的に欠くことができる。本発明の製剤は、アミノ酸生合成阻害物質または放射線療法と組み合わせて投与することができる。本明細書において開示される方法は、細胞をセリンおよび/またはグリシンの枯渇に対して感受性にすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、その必要がある対象においてがんを処置する方法:
a)薬学的組成物の治療的有効量を、前記対象に投与する工程であって、前記薬学的組成物が、少なくとも2つのアミノ酸を実質的に欠いている、前記工程;および
b)治療的有効量の免疫療法を実施する工程であって、前記免疫療法が、1日当たり少なくとも2回実施される、前記工程。
【請求項2】
前記がんが膵臓がんである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記がんが結腸がんである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記がんが乳がんである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記がんが子宮頸がんである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記がんが肺がんである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記免疫療法がIDO1阻害物質である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記IDO1阻害物質がインドキシモドである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記IDO1阻害物質がナボキシモドである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記IDO1阻害物質がエパカドスタットである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つのアミノ酸がセリンおよびグリシンである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記薬学的組成物が、3つのアミノ酸を実質的に欠いている、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記3つのアミノ酸がセリン、グリシン、およびプロリンである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記3つのアミノ酸がセリン、グリシン、およびシステインである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記免疫療法の治療的有効量が約25 mg~約500 mgである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記免疫療法の治療的有効量が約25 mgである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記免疫療法の治療的有効量が約50 mgである、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記免疫療法の治療的有効量が約100 mgである、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記免疫療法の治療的有効量が約300 mgである、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記免疫療法が1日当たり2回実施される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記免疫療法が1日当たり3回実施される、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年12月16日に出願された米国特許仮出願第63/126,294号;2021年3月31日に出願された米国特許仮出願第63/168,414号;および2021年4月5日に出願された米国特許仮出願第63/170,805号の恩典を主張し、これらは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの腫瘍細胞は、外因性セリンに対する依存性を示し、食事性セリンおよびグリシンの飢餓は、これらのがんの増殖を阻害し、生存を延長することができる。しかし、セリンの利用可能性の増大(例えば、セリン合成/セリン再利用)またはセリンもしくはグリシンを消費する経路の下方制御を促進するものを含む、数多くの直接的および間接的な機構が、この治療的アプローチに対する耐性を促進する。
【0003】
参照による組み入れ
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み入れられるように具体的にかつ個別に示されるのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み入れられる。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの態様において、本発明は、以下を含む、その必要がある対象においてがんを処置する方法を提供する:a)薬学的組成物の治療的有効量を、第1の時間にわたって対象に投与する工程であって、薬学的組成物が、少なくとも2つのアミノ酸を実質的に欠いている、工程;b)第2の時間にわたる、放射線治療;ならびにc)第1の時間および第2の時間の後に、第3の時間待機する工程であって、対象が、第3の時間中に、薬学的組成物を投与されることも放射線療法を実施されることもない、工程。
【0005】
いくつかの態様において、本発明は、以下を含む、その必要がある対象においてがんを処置する方法を提供する:a)薬学的組成物の治療的有効量を、対象に投与する工程であって、薬学的組成物が、少なくとも2つのアミノ酸を実質的に欠いている、工程;およびb)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害物質。
【0006】
いくつかの態様において、本発明は、以下を含む、その必要がある対象においてがんを処置する方法を提供する:a)薬学的組成物の治療的有効量を、対象に投与する工程であって、薬学的組成物が、少なくとも2つのアミノ酸を実質的に欠いている、工程;およびb)エパカドスタットの治療的有効量。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】完全培地(CM)またはセリンおよびグリシンを欠いている(-SG)当量の培地中で増殖させ、かつ10 μM PH755で処理したまたはそれで処理しなかった、結腸がん細胞株の増殖曲線を図示する。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、少なくとも2つの独立した実験を代表する(
*p<0.05、
** p<0.01、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による二元配置ANOVA)。
【
図3】完全培地(CM)またはセリンおよびグリシンを欠いている(-SG)当量の培地中で増殖させ、かつ10 μM PH755で処理したまたはそれで処理しなかった、表示した細胞株の増殖曲線を図示する。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、少なくとも2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による二元配置ANOVA)。
【
図4】CMまたは-SG培地 +/- 10μM PH755中で48時間成長させ、続いて10 μM BrdUと共に5時間インキュベーションしたHCT116およびDLD-1細胞におけるBrdU陽性細胞のパーセンテージを示す。データは、3つの独立した実験の平均値±SEMである(
* p<0.05、
** p<0.01、
*** p<0.001、Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図5】CM中で増殖させかつ10μM BrdUと共に30分間インキュベートした たHCT116およびDLD-1細胞を例として、BrdU陽性細胞のパーセンテージ(左パネル)および細胞周期のさまざまな期にある細胞のパーセンテージ(右パネル)を決定するためのゲーティング戦略を示す。
【
図6】LC-MSによって測定された、CMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755中で増殖させたHT-29、HCT116、DLD-1、およびMDA-MB-468細胞における細胞内セリンおよびグリシンのレベルを示す。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、3つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図7】CMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755中で48時間増殖させたHCT116およびDLD-1細胞におけるSubG1細胞のパーセンテージを示す。データは、5つの独立した実験の平均値±SEMである(
** p<0.01、
*** p<0.001、Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図8】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で2日(HCT116)または3日(DLD-1)にわたって増殖させた細胞を示す。ウエスタンブロットは、切断型カスパーゼ3およびカスパーゼ3の発現を示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した。データは、3つの独立した実験を代表する。
【
図9】LC-MSによって測定された、U-[
13C]-グルコースを含有するCMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755中で増殖させたHT-29、HCT116、DLD-1、およびMDA-MB-468細胞における細胞内セリンレベルを示す。代謝物パーセンテージは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、3つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図10】LC-MSによって測定された、U-[
13C]-グルコースを含有するCMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755中で増殖させたHT-29、HCT116、DLD-1、およびMDA-MB-468細胞における細胞内グリシンレベルを示す。代謝物パーセンテージは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、3つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図11】Cas9/PHGDHシングルガイドRNA(sgRNA)を感染させたHT-29およびDLD-1細胞をCMまたは-SG培地中で24時間培養した。ウエスタンブロットは、これらの細胞における効率的なPHGDH除去を示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した。
【
図12】CMまたは-SG培地中で増殖させたCas9/PHGDH sgRNA(PHGDH)を感染させたHT-29およびDLD-1細胞の増殖曲線を示す。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、3つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による二元配置ANOVA)。
【
図13】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で増殖させたVil1-creER;Apcfl/fl(Apc)およびVil1-creER;Apcfl/fl;KrasG12D/+(Apc Kras)に由来する腸腫瘍オルガノイドを示す。左パネル:培地変更前(0日目)および培地変更2日後のオルガノイドの代表的な写真を示す。右パネル:培地変更の2日後(Apc)または4日後(Apc Kras)のオルガノイド直径の定量化。データは、平均値±SEMとして提示され(n=測定されるオルガノイドの数/条件;Apc:CM:n=113、CM+PH755:n=200、-SG:n=190、-SG+PH755:n=158;Apc Kras:CM:n=149、CM+PH755:n=134、-SG:n=134、-SG+PH755:n=78)、少なくとも2つの独立した実験を代表する(
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。スケールバーは200 μmである。
【
図14】10 μM PH755を補充したまたは補充していない、セリンおよびグリシンを有する(CM)または有さない(-SG)腫瘍オルガノイド培地中で4日間成長させたApc短縮型(Apc5)を有するかまたはVillin-CreER;Apcfl/fl;KrasG12D/+マウス(Apc Kras 2)に由来する腸オルガノイドを示す。培地変更前(0日目)、培地変更の2日後および4日後の、少なくとも2つの独立した実験からのオルガノイドの代表的写真を示す。スケールバーは200 μmである。
【
図15】10 μM PH755を補充したまたは補充していない、セリンおよびグリシンを有する(CM)または有さない(-SG)正常オルガノイド培地(Wnt-3aを含有する)中で成長させたVillin-CreERT2マウスからの健常な小腸の近位部に由来する正常オルガノイドを示す。培地変更3日後の3つの独立した実験からのオルガノイドの代表的写真を示す。スケールバーは200 μmである。
【
図16】10 μM PH755を補充したまたは補充していない、セリンおよびグリシンを有する(CM)または有さない(-SG)ヒトオルガノイド培地中で成長させた4名の患者由来の結腸直腸オルガノイドを示す。培地変更の10~12日後の少なくとも2つの独立した実験からのオルガノイドの代表的写真を示す。スケールバーは200 μmである。
【
図17】プリンおよびグルタチオン合成内での均一に炭素標識したグルコース(m+6)の運命を表すスキームを図示する。グルコースは、ペントースリン酸経路を通じて、五炭糖(m+5)であるリボース-5-リン酸に変換され、プリン塩基に付加されてプリンヌクレオシドを形成する。プリン環はまた、どちらもセリン代謝から生じ得る、2つの一炭素単位およびインタクトなグリシンも含有する。セリンは、均一に標識されたグルコースからm+3同位体異性体を生じる、解糖中間体3-PGから合成される。セリン(m+3)は、標識グリシン(m+2)および標識一炭素単位(m+1)を生じることができる。したがって、標識リボースリン酸、グリシン、および一炭素単位の組み合わせは、m+5以上の標識プリンを生じることができる。m+5標識プリンは、グルコースのリボース合成のみでの寄与を表し、m+6~9標識プリンは、デノボ合成したセリンからの寄与を表す可能性がある。グルタチオンは、グリシン、グルタミン酸(どちらもグルコースからm+2標識され得る)、およびシステインから作られる。グルタチオンの主な同位体異性体(m+2)は、m+2グリシンに由来する可能性があり、m+4標識はm+2グリシンおよびm+2グルタミン酸の取り込みを反映する。
【
図18】LCMSによって測定された、U-[
13C]-グルコースを含有するCMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755中で増殖させたHT-29、HCT116、DLD-1、およびMDA-MB-468細胞における細胞内ATPレベルを示す。代謝物パーセンテージは、三つ組の培養の平均値±SEMとして表され、3つの独立した実験を代表する。統計は、ATPおよびGTPでは代謝物プールのm+6~9の%の合計およびGSHでは代謝物プールのm+2~4の%の合計を実験群間で比較して、実施されている(
* p<0.05、
** p<0.01、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図19】LC-MSによって測定された、U-[
13C]-グルコースを含有するCMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755中で増殖させた細胞における細胞内グルタミン酸レベルを示す。代謝物パーセンテージは、三つ組のウェルの平均値±SEMとして表され、3つの独立した実験を代表する。
【
図20】LCMSによって測定された、U-[
13C]-グルコースを含有するCMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755中で増殖させたHT-29、HCT116、DLD-1、およびMDA-MB-468細胞における細胞内GSHおよびGTPレベルを示す。代謝物パーセンテージは、三つ組の培養の平均値±SEMとして表され、3つの独立した実験を代表する。統計は、ATPおよびGTPでは代謝物プールのm+6~9の%の合計およびGSHでは代謝物プールのm+2~4の%の合計を実験群間で比較して、実施されている(
* p<0.05、
** p<0.01、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図21】LC-MSによって測定された、U-[13C]-グルコースを含有するCMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755中で3時間または6時間にわたって増殖させたHT-29、HCT116、およびDLD-1細胞における細胞内ATP、GTP、およびGSHレベルを示す。代謝物パーセンテージは、三つ組の培養の平均値±SEMとして表され、2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
***p< 0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図22】LC-MSによって測定された、CMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755中で増殖させた細胞におけるATP、GTPおよびGSHの合計レベルを示す。データは、三つ組の培養の平均値±SEMと提示され、3つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図23】1 mMギ酸ナトリウム(For)、0.4 mMグリシン(Gly)、または両方(For/Gly)を補充したまたは補充していない-SG培地または-SG培地+10 μM PH755中で増殖させたHT-29およびHCT116細胞の増殖アッセイを図示する。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、3つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01;Tukeyの事後検定による二元配置ANOVA)。
【
図24】U-[
13C]-グルコースの存在下で1 mMギ酸ナトリウム(For)、0.4 mMグリシン(Gly)、または両方(For/Gly)を補充したまたは補充していない-SG培地または-SG培地+10 μM PH755中で増殖させたHCT116細胞を示す。ATPおよびGTPレベルをLC-MSによって測定した。代謝物パーセンテージは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する。セリンレベルをLC-MSによって測定した。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図25】U-[
13C]-グルコースの存在下で1 mMギ酸ナトリウム(For)、0.4 mMグリシン(Gly)、または両方(For/Gly)を補充したまたは補充していない-SG培地または-SG培地+10 μM PH755中で増殖させたHCT116細胞を示す。ATPおよびGTPレベルをLC-MSによって測定した。代謝物パーセンテージは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する。セリンレベルをLC-MSによって測定した。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図26】1 mMギ酸ナトリウムおよび0.4 mMグリシンを補充した-SG培地+10 μM PH755中で24時間、最後の1時間は
13C
2
15N
1-グリシンの存在下で、増殖させたHT-29、HCT116、およびDLD-1細胞を示す。
13C
2
15N
1-セリン細胞内レベルを、代謝物抽出の1分前に細胞外培地中に未標識1 mMセリンの刺激(pulse)を添加した後(+セリン刺激)にまたは添加せずに(-セリン刺激)、LC-MSによって測定した。データは、三つ組のウェルの平均値±SEMとして提示され、3つの独立した実験を代表する。
【
図27】U-[
13C]-グルコースの存在下でCMまたは-SG培地中で増殖させた、Cas9/PHGDH sgRNA(PHGDH)を感染させたHT-29およびDLD-1細胞を示す。セリン、ATP、GTP、およびGSHレベルをLC-MSによって測定した。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
*** p<0.001、
**** p<0.0001;(a)対応のない両側スチューデントのt検定、(b-c)Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図28】U-[
13C]-グルコースの存在下でCMまたは-SG培地中で増殖させた、Cas9/PHGDH sgRNA(PHGDH)を感染させたHT-29およびDLD-1細胞を示す。セリン、ATP、GTP、およびGSHレベルをLC-MSによって測定した。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
*** p<0.001、
**** p<0.0001;(a)対応のない両側スチューデントのt検定、(b-c)Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図29】U-[
13C]-グルコースの存在下でCMまたは-SG培地中で増殖させた、Cas9/PHGDH sgRNA(PHGDH)を感染させたHT-29およびDLD-1細胞を示す。セリン、ATP、GTP、およびGSHレベルをLC-MSによって測定した。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
*** p<0.001、
**** p<0.0001;(a)対応のない両側スチューデントのt検定、(b-c)Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図30】低分子干渉RNA(siRNA)を用いてATF-4を一過性に枯渇させかつ-SG培地中で4日間培養したHT-29、HCT116、およびDLD-1細胞の増殖曲線を示す。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
**** p<0.0001;Sidakの事後検定による二元配置ANOVA)。
【
図31】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で24時間増殖させた細胞を示す。ウエスタンブロットは、3種類のSSP酵素のPHGDH、PSAT、およびPSPHの発現(ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した)またはATF-4標的ASNSの発現(ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した)を示す。データは、少なくとも2つの独立した実験を代表する。
【
図32】CMまたは-SG培地中で24時間培養した、Cas9/PHGDHシングルガイドRNA(sgRNA)を感染させたHT-29およびDLD-1細胞を示す。ウエスタンブロットは、これらの細胞におけるPHGDH、PSATおよびPSPHの発現(ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した)またはATF-4およびASNSの発現(ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した)を示す。データは、3つの独立した実験を代表する。
【
図33】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で4時間、8時間、12時間、16時間、および24時間増殖させたHT-29およびHCT116細胞を示す。ウエスタンブロットは、これらの細胞におけるSSP酵素の発現を示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、各膜を再検出した。データは、2つの独立した実験を代表する。
【
図34】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で24時間増殖させたHCT116およびDLD-1細胞を示す。ウエスタンブロットは、ホスホGCN2(Thr899)、GCN2、ホスホeIF2α(Ser51)、およびeIF2αを示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した。データ2つの独立した実験を代表する。
【
図35】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で24時間増殖させたHCT116およびDLD-1細胞を示す。指示された場合、細胞を回収する6時間前に、10 μM MG-132、プロテアソーム阻害物質で細胞を処理した。ウエスタンブロットは、ATF-4ならびにその標的ASNSおよびPSATの発現を示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した。データは、3つの独立した実験を代表する。
【
図36】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で6時間または24時間増殖させたHT-29、HCT116、およびDLD-1細胞を示す。ATF4およびPHGDHの相対的遺伝子発現をqPCRによって測定し、CM中で6時間増殖させた細胞に対して正規化した。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図37】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で6時間または24時間増殖させたHT-29、HCT116、およびDLD-1細胞を示す。ASNS、PSAT1およびPSPHの相対的遺伝子発現をqPCRによって測定し、CM中で6時間増殖させた細胞に対して正規化した。データは、三つ組の培養の平均値±SEMとして提示され、2つの独立した実験を代表する(
* p<0.05、
** p<0.01、
***p<0.001、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図38】1 mMギ酸ナトリウム+0.4 mMグリシン(For/Gly)を補充したまたは補充していないCM、-SG培地または-SG培地+10 μM PH755中で増殖させたHT-29、HCT116、およびDLD-1細胞を示す。ウエスタンブロットは、これらの培地中での24時間インキュベーション後の、3種類のSSP酵素のPHGDH、PSAT、およびPSPHの発現またはATF-4およびその正準標的ASNSの発現を示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した。データは、2つの独立した実験を代表する。
【
図39】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で24時間増殖させたHCT116およびDLD-1細胞を示す。細胞を収集する10分前に、培養培地中にピューロマイシン(90 μM)を加えた。指示された場合、細胞を収集する5時間前に、10μg/mLシクロヘキシミド(CHX)、周知のタンパク質合成阻害物質で細胞を処理した。ウエスタンブロットは、ピューロマイシン処理された(puromycylated)ペプチドを示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した。データは、2つの独立した実験を代表する。
【
図40】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で24時間増殖させたHCT116およびDLD-1細胞を示す。指示された場合、細胞を収集する6時間前に、10 μM MG-132、プロテアソーム阻害物質で細胞を処理した。ウエスタンブロットは、c-MYC、HIF1a、およびp53の発現を示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した。データは、3つの独立した実験を代表する。
【
図41】10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地中で24時間増殖させたDLD-1およびHT-29細胞を示す。ウエスタンブロットは、ホスホp70S6K(Thr389)およびp70S6Kを示す。ローディング対照としてアクチンを用いて、膜を再検出した。データは、3つの独立した実験を代表する。
【
図42】CM中で24時間増殖させたHT-29、HCT116、およびDLD-1細胞を示す。指示された場合、ERストレス誘導物質、ツニカマイシン(5 μg/mL)または10 μM PH755で細胞を処理した。ウエスタンブロットは、ATF-4の標的ASNS、PHGDH、PSAT、およびPSPHの発現を示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した。データは、2つの独立した実験を代表する。
【
図43】1 mMギ酸ナトリウム+0.4 mMグリシン(For/Gly)を補充したまたは補充していないCM、-SG培地、または-SG培地+10 μM PH755中で増殖させたHT-29、HCT116、およびDLD-1細胞を示す。ウエスタンブロットは、これらの培地中での24時間インキュベーション後の、3種類のSSP酵素のPHGDH、PSAT、およびPSPHの発現またはATF-4およびその正準標的ASNSの発現を示す。ローディング対照としてビンキュリンを用いて、膜を再検出した。データは、2つの独立した実験を代表する。
【
図44】一定間隔で記録した、対照食餌(CTR)または当量のセリンおよびグリシンを欠いている食餌(-SG)を与え、かつビヒクル(Veh)またはPH755で処置したC57BL/6Jマウスの体重を示す。体重のパーセンテージを、食餌変更日に量った初回体重から算出した。矢印は、表示した処置の開始日を示す。データは平均値±SEMとして提示される(n=10匹のマウス/群)。(
** p<0.01、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による二元配置ANOVA)。
【
図45】対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与えかつビヒクル(Veh)またはPH755で処置したC57BL/6Jマウス(n=5匹のマウス/群)からの尾側間脳および吻側中脳のレベルで得られた横断切片の低出力拡大図を示す。ヘマトキシリンおよびエオシン染色切片上に変性または軟化の証拠は存在しない。各実験群のマウスでの脳重量を、平均値±SEM(n=5匹のマウス/群)として示す。
【
図46】対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与えかつビヒクル(Veh)またはPH755で処置したC57BL/6Jマウス(n=5匹のマウス/群)からの大脳皮質のレベルで得られた横断切片の高出力拡大図を示す。神経および神経網は形態学的に特に変化はなかった。スケールバーは50 μmである。
【
図47】対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与えかつビヒクル(Veh)またはPH755で20日間に処置したC57BL/6Jから屠殺時に採取した血漿を示す。血漿中のASTおよびALTの活性を市販のキットで測定した。データは、平均値±SEM(n=10匹のマウス/群)として提示される。
【
図48】対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与えかつビヒクル(Veh)またはPH755で20日間処置したC57BL/6Jマウスから屠殺時に採取した血漿を示す。LC-MS分析を実施して、尿素およびクレアチニン含有量を評価した。データは、平均値±SEM(n=10匹のマウス/群)として提示される。
【
図49】対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与えかつビヒクル(Veh)またはPH755で20日間処置したC57BL/6Jマウスからの絨毛の長さの定量化を示す。データは、平均値±SEM(n=10匹のマウス/群)として提示される。(
* p<0.05、
**** p<0.0001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。
【
図50】対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与えかつビヒクル(Veh)またはPH755で20日間処置したC57BL/6JマウスからのKi67染色空腸の代表的な画像を示す(n=5匹のマウス/群)。
【
図51】一定間隔で記録された、DLD-1およびHCT116異種移植試験におけるマウスの体重を示す。体重のパーセンテージを、食餌変更日に量った初回体重から算出した。矢印は表示した処置の開始日を指す。データは平均値±SEMとして提示される。(ns:有意差なし、
*p<0.05;
***p<0.001;二元配置ANOVA+Tukeyの事後検定)(a)CTR+Veh:n=10;CTR+PH755 n=10;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=9。(b)CTR+Veh:n=8;CTR+PH755 n=7;-SG+Veh:n=8;-SG+PH755 n=7(n=マウスの数)。
【
図52】一定間隔で記録された、DLD-1およびHCT116異種移植試験におけるマウスの体重を示す。体重のパーセンテージを、食餌変更日に量った初回体重から算出した。矢印は表示した処置の開始日を指す。データは平均値±SEMとして提示される。(ns:有意差なし、
*p<0.05;
***p<0.001;二元配置ANOVA+Tukeyの事後検定)(a)CTR+Veh:n=10;CTR+PH755 n=10;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=9。(b)CTR+Veh:n=8;CTR+PH755 n=7;-SG+Veh:n=8;-SG+PH755 n=7(n=マウスの数)。
【
図53】DLD-1細胞を皮下に注射し、対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与え、かつビヒクル(Veh)またはPH755で処置したマウスから屠殺時に採取した血漿を示す。LC-MS分析を実施し、血漿中のセリンおよびグリシンの絶対値レベルを測定した。CTR+Veh:n=10;CTR+PH755 n=10;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=9(n=マウスの数)。データは平均値±SEMとして提示される。(
** p<0.01、
**** p<0.0001、対応のない両側スチューデントのt検定)。
【
図54】HCT116細胞を皮下に注射し、対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与え、かつビヒクル(Veh)またはPH755で処置したマウスから屠殺時に採取した血漿を示す。LC-MS分析を実施して、セリンおよびグリシン含有量を評価した。データは平均値±SEM(n=8匹のマウス/群)として提示される。(
* p<0.05;対応のない両側スチューデントのt検定)。
【
図55】DLD-1細胞を皮下に注射し、かつ腫瘍細胞注射の2日後にセリンおよびグリシンを含む(CTR)または含まない(-SG)食餌を与えたCD-1ヌードマウスを示す。食餌変更の2日後、マウスにビヒクル(Veh)またはPH755を1日1回20日間経口投与した。PH755の開始投与量は100 mg/kg(7日間)であり、その後50 mg/kg(6日間)に低下させ、再度75 mg/kg(7日間)に増加させた。ノギス測定により腫瘍体積を週に3回測定した。データは平均値±SEMとして提示される。CTR+Veh:n=10;CTR+PH755 n=10;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=9(n=マウスの数)。(ns:有意差なし、
**P<0.01;二元配置ANOVA+Tukeyの事後検定)。
【
図56】HCT116細胞を皮下に注射しかつ腫瘍細胞注射の10日後にセリンおよびグリシンを含む(CTR)または含まない(-SG)食餌を与えたCD-1ヌードマウスを示す。食餌変更の4日後、マウスにビヒクル(Veh)またはPH755を1日1回11日間経口投与した。PH755の開始投与量は100 mg/kg(3日間)であり、その後50 mg/kg(8日間)に低下させた。ノギス測定により腫瘍体積を週に3回測定した。データは平均値±SEMとして提示される。CTR+Veh:n=8;CTR+PH755 n=7;-SG+Veh:n=8;-SG+PH755 n=7(n=マウスの数)。(ns:有意差なし、
*P<0.05;二元配置ANOVA+Tukeyの事後検定)。
【
図57】対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与えかつビヒクル(Veh)またはPH755で処置したマウスからエンドポイントで収集したDLD-1腫瘍における活性カスパーゼ3陽性細胞の代表的な免疫組織化学的写真および定量化をもたらす。CTR+Veh:n=9;CTR+PH755 n=9;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=8(n=マウスの数)。データは平均値±SEMとして提示される。(
*P<0.05;Welchの補正による対応のない両側スチューデントのt検定)。スケールバーは50 μmである。
【
図58】DLD-1細胞を皮下に注射した動物から終了時に収集された腫瘍溶解物においてLC-MSによって測定されたセリン、グリシン、SAM、およびSAHレベルを示す。ピーク面積を全イオン強度(total ion count)(TIC)に対して正規化した。(e)CTR+Veh:n=10;CTR+PH755 n=10;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=9。(f)CTR+Veh:n=9;CTR+PH755 n=9;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=8(n=マウスの数)(
* p<0.05、
** p<0.01; 対応のない両側スチューデントのt検定、必要であればWelchの補正が適用される)。
【
図59】HCT116細胞を皮下に注射した動物から終了時に収集された腫瘍溶解物におけるLC-MSによって測定されたセリンおよびグリシンレベルを示す。ピーク面積を全イオン強度(TIC)に対して正規化した。CTR+Veh:n=8;CTR+PH755 n=6;-SG+Veh:n=8;-SG+PH755 n=8(n=マウスの数)。データは平均値±SEMとして提示される。(
* p<0.05、
** p<0.01;対応のない両側スチューデントのt検定)。
【
図60】DLD-1細胞を皮下に注射した動物から終了時に収集された腫瘍溶解物におけるLC-MSによって測定されたATPおよびGTPレベルを示す。ピーク面積を全イオン強度(TIC)に対して正規化した。CTR+Veh:n=10;CTR+PH755 n=10;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=9(n=マウスの数)。データは平均値±SEMとして提示される。(ns:有意差なし;対応のない両側スチューデントのt検定)。
【
図61】DLD-1細胞を皮下に注射した動物から終了時に収集された腫瘍溶解物においてLC-MSによって測定されたセリン、グリシン、SAM、およびSAHレベルを示す。ピーク面積を全イオン強度(TIC)に対して正規化した。(e)CTR+Veh:n=10;CTR+PH755 n=10;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=9。(f)CTR+Veh:n=9;CTR+PH755 n=9;-SG+Veh:n=10;-SG+PH755 n=8(n=マウスの数)(
* p<0.05、
** p<0.01; 対応のない両側スチューデントのt検定、必要であればWelchの補正が適用される)。
【
図62】対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与えかつビヒクル(Veh)またはPH755で処置したマウスから終了時に収集したDLD-1腫瘍におけるPHGDH染色およびPSAT染色の代表的な免疫組織化学的写真および定量化を示す。CTR+Veh:n=9;CTR+PH755 n=9;-SG+Veh:n=9;-SG+PH755 n=7(n=マウスの数)。データは平均値±SEMとして提示される。(
* p<0.05、
***p<0.001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。スケールバーは50 μmである。
【
図63】対照食餌(CTR)またはセリンおよびグリシンを欠いている当量の食餌(-SG)を与えかつビヒクル(Veh)またはPH755で処置したマウスから終了時に収集したDLD-1腫瘍におけるPHGDH染色およびPSAT染色の代表的な免疫組織化学的写真および定量化を示す。CTR+Veh:n=9;CTR+PH755 n=9;-SG+Veh:n=9;-SG+PH755 n=7(n=マウスの数)。データは平均値±SEMとして提示される。(
* p<0.05、
***p<0.001;Tukeyの事後検定による一元配置ANOVA)。スケールバーは50 μmである。
【
図64】パネルA~パネルEは、セリンおよびグリシンの食餌性制限とPHGDH阻害との組み合わせが協同して、腸がんの遺伝子モデルにおいて腫瘍量を低下させかつ生存を改善する方法を示す。
【
図65】パネルA~パネルDは、インビトロでの膵臓および結腸直腸がん細胞に対する放射線照射のメタボロミクスへの影響を示す。
【
図66】パネルA~パネルEは、インビボでの標的放射線療法に応答しての食餌性アミノ酸制限の作用を示す。
【
図67】インビボでのIDO1発現を示す。パネルAは、膵管腺癌(PDAC)の遺伝子改変マウスモデル(GEMM)におけるIDO1発現を分析するために用いられる方法を詳述する模式図である。パネルBは、免疫ブロッティングによる分析後の表示されたタンパク質を示す。パネルCは、総タンパク質(負荷対照)と比べたIDO1の定量化を示す(健常な膵臓 n=5、Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
fl/+腫瘍 n=6、Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+腫瘍 n=5、対応のないt検定、p値を示す、エラーバーは標準偏差である)。パネルDは、マウス IFNγ(1ng/ml)で24時間で処置されたか、またはCD1ヌードマウスの側腹部に皮下注射され腫瘍を形成する、混合背景Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+マウスの腫瘍から単離された株である、KPC A細胞を示す。パネルEは、純粋C567Bl6/J背景Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+マウスから単離され、かつマウス IFNγ(1 ng/mL)で培養中で24時間処置されるか、またはC567Bl6/Jマウスの側腹部に皮下注入されて腫瘍を形成する、KPC細胞を示す。パネルFは、ヒトIFNγ(1ng/ml)で24時間処置された表示された細胞株および表示されたタンパク質についてブロットされた細胞溶解物を示す。
【
図68】マイクロアレイからのIDO1 mRNAの相対量を示すMERAVデータベースから抽出したデータを示す。
【
図69】IDO発現が、細胞の超低接着組織培養プレート(3D)増殖およびタンパク質およびJAK/STATシグナル伝達を介するIFNγによって上方制御されたことを示す。パネルAは、トリプトファンが代謝されるキヌレニン経路を詳述する模式図を示す。パネルBは、正常酸素(20% O
2)または低酸素(1% O
2)条件下で培養したタンパク質の発現を示す。パネルCは、ロテノン(1μM)またはビヒクルのみの対照で処置したタンパク質の発現を示す。パネルDは、グルコース(Glc)(10 mM)またはガラクトース(Gal)(10 mM)のいずれかを含有する培地中で培養したタンパク質の発現を示す。パネルEは、2Dまたは3D条件で培養したタンパク質を示す。パネルFは、定量化した2Dおよび3D条件でのCFPAC-1でのIDO1/アクチンの蛍光強度を示す(n=4、対応のあるt検定、p値を示す、エラーバーはS.E.M.である)。パネルGは、2Dまたは3D条件で24時間培養し、かつ培地キヌレニンをLCMSによって分析する前にエパカドスタット(1μM)またはビヒクルのみの対照で16時間処置した、CFPAC-1細胞の結果を示す(1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。パネルHは、2Dまたは3D条件のいずれかで24時間培養し、次いでJAKi(1μM)またはビヒクルのみの対照(veh.)および/またはヒトIFNγ(1ng/ml)で16時間処置した、CFPAC-1またはHPAF-II細胞を示す。次いで、細胞を溶解し、表示したタンパク質を免疫ブロッティングによって分析した。
【
図70】正常組織培養プレート(2D)または超低接着組織培養プレート(3D)で24時間増殖させるか、または2Dで培養しかつ1 ng/ml IFNγで処理したCFPAC-1またはHPAF-II細胞を示す。溶解物を、(パネルA)表示したタンパク質についてブロットし、(パネルB)アクチン(負荷対照)に対するIDO1の蛍光強度を定量化した(n=4、対応のあるt検定、p値を示す、エラーバーはS.E.M.である)。CFPAC-1およびHPAF-II細胞を正常組織培養プレート(2D)または超低接着組織培養プレート(3D)のいずれかで24時間増殖させ、MG132(20 μM)またはビヒクルのみの対照による16時間の処置後(パネルC);バフィロマイシンA1(100 nM)またはビヒクルのみの対照による表示時点での処置後(パネルD);またはJAKi(表示した濃度で)、ビヒクルのみの対照、またはIFNγ(1 ng/ml)による16時間の処置後(パネルE)に、細胞溶解物を表示したタンパク質について免疫ブロットした。
【
図71】トリプトファン由来の一炭素単位が、膵臓がん細胞においてセリンおよびヌクレオチドに組み込まれることを示す。
【
図72】2Dまたは3Dで24時間培養し、次いで未標識(
12C)または
13C
11トリプトファンいずれかの存在下でエパカドスタット(1μM)またはビヒクルのみの対照で24時間処理したCFPAC-1細胞を示し、表示したヌクレオチドの細胞内含量をLCMSによって分析した(1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。
【
図73】トリプトファン由来の一炭素単位が、インビボでPDAC腫瘍におけるセリンおよびヌクレオチド合成のために利用されることを示す。
【
図74】IDO1または空ベクター対照(EV)を発現する純粋C57BL/J Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+マウスからのKPC細胞のデータを示す。KPC細胞をC57BL/Jマウスの側腹部に皮下注射し;腫瘍が形成されたら、マウスに800μLの120mM
13C
11トリプトファンを腹腔内注射によって与え、3時間そのままにした。
【
図75】がん細胞がトリプトファン由来のギ酸を遊離し、これは、膵星細胞によって消費され、ヌクレオチド内に組み込まれたことを示す。CFPAC-1(パネルA)またはHPAF-II(パネルB)細胞を3Dで4日間培養し、次いで、未標識(
12C)、
13C
11トリプトファン、または
13C
3
15N
1セリンいずれかの存在下でIFNγ(1ng/ml)またはビヒクルのみの対照で24時間処理した。ギ酸の培地含量を誘導体化およびGC-MSによって分析した(1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。パネルCは、パネルD~パネルKで用いられる実験アプローチの模式図を示す。CFPAC-1細胞を、未標識(
12C)または
13C
11トリプトファンの存在下でビヒクルのみの対照またはヒトIFNγ(1ng/ml)およびエパカドスタット(epac.、1μM)またはビヒクルのみの対照で処理した。条件培地を24時間後に取集し、ImPSCをこの培地または非条件処理適合培地中で培養した。24時間後、セリン(パネルD)、ATP(パネルE)、ADP(パネルF)、およびAMP(パネルG)の細胞内含量をLCMSによって分析した(合計と比しての主要アイソトポログ(isotopologue)の画分を示す、1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。ImPSC-GFP細胞を、単培養として2DでまたはCFPAC-1細胞との同時培養で、24時間培養した。次いで、細胞を、
13C
11トリプトファンの存在下でビヒクルのみの対照またはヒトIFNγ(1ng/ml)およびエパカドスタット(1μM)またはビヒクルのみの対照で24時間処理した。次いで、細胞をトリプシン処理し、GFP陽性細胞についてFACSを用いて選別し、セリン(パネルH)、ATP(パネルI)、ADP(パネルJ)、およびAMP(パネルK)の細胞内含量をLCMSによって分析した(合計と比しての主要アイソトポログの画分を示す、1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。パネルLは、膵管腺癌(PDAC)細胞および膵星細胞におけるトリプトファン由来のギ酸の使用の提唱されるモデルを示す。
【
図76】ImPSC #1、ImPSC #2、およびImPSC #3細胞におけるATP、DP、AMP、およびGTPでの
13C
1ギ酸の細胞内取り込みを示す。ImPSC #1、ImPSC #2、およびImPSC #3細胞を
13C
1ギ酸の存在下で24時間培養し、ギ酸由来の一炭素の全ての可能性のある行き先であるATP(パネルA)、ADP(パネルB)、AMP(パネルC)、およびGTP(パネルD)の細胞内含量をLCMSによって分析した(1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。CFPAC-1細胞を、未標識(
12C)または
13C
11トリプトファンの存在下でIFNγ(1ng/ml)および/もしくはエパカドスタット(1μM)および/またはビヒクルのみの対照で処理した。条件培地を24時間後に収集し、ImPSC#2細胞をこの培地または非条件処理適合培地中で培養した。24時間後、ATP(パネルE)、ADP(パネルF)、およびセリン(パネルG)の細胞内含量をLCMSによって分析した(合計と比しての主要アイソトポログの画分を示す、1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。
【
図77】左パネルは、1)対照+ビヒクル;2)-セリン+ビヒクル;3)対照+エパカドスタット(1 μM);または4)-セリン+エパカドスタット(1 μM)で処理した細胞における5日にわたる細胞増殖を示す。右パネルは、1)対照+ビヒクル;2)-セリン+ビヒクル;3)対照+エパカドスタット(1 μM);または4)-セリン+エパカドスタット(1 μM)で処理した細胞における0日目と比較した5日目での細胞数の倍率変化を示す。
【
図78】1)対照+ビヒクル;2)-セリン+ビヒクル;3)対照+エパカドスタット(1 μM);または4)-セリン+エパカドスタット(1 μM)で処理した細胞におけるAMP、ADP、ATP、GDP、およびGMPの細胞中の炭素13に由来する標識画分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
セリンおよび/またはグリシンの利用可能性を低減させる治療的アプローチに対する耐性を促進する直接的な機構には、例えば、その発現がまたある特定の発癌性変異によっても促進され得る、新規セリン合成経路(SSP)酵素の発現の増強を介した(腫瘍または全身レベルでの)セリン生合成によって、セリンの利用可能性の増大を促進するものが含まれる。セリンの利用可能性を増大させるための別の経路は、例えば、自食作用などの機構による、セリン再利用の促進である。間接的な耐性の機構は、セリン合成に直接関与する代謝経路以外の代謝適応、例えば、セリンを消費する経路(ヌクレオチド合成など)を下方制御することに依存し得る。これらの直接的または間接的な耐性の機構を標的とする他の治療剤との組み合わせは、例えば、腫瘍成長、腫瘍初発、または転移を阻害する、セリンおよびグリシンの飢餓の能力を改善することができる。さらに、セリンおよび/またはグリシンに対するがん細胞または腫瘍の要求を増大させる治療剤または介入との組み合わせもまた、がん細胞または腫瘍をセリンおよび/またはグリシンの飢餓に対して感受性にすることができる。
【0009】
セリンおよび/またはグリシンを欠いている組成物と組み合わせた、SSPにおける第1段階であるホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)の阻害のための組成物および方法が、本明細書に記載される。PHGDHは、セリンおよびグリシンの飢餓と協働して、一炭素代謝およびがんの増殖を阻害する。インビトロで、セリン飢餓と組み合わせたPHGDHの阻害は、全体的なタンパク質合成の欠損をもたらすことができ、これが、ATF-4応答の活性化を遮断することができ、アミノ酸枯渇に対する防護的ストレス応答に、より広く影響を及ぼす。インビボで、食事療法と阻害物質との組み合わせは、一炭素の利用可能性の低減と共に、食事療法または薬物単独に耐性である腫瘍に対して治療効力を示すことができる。PHGDHの阻害は、セリン枯渇食の治療効力を強化することができる。
【0010】
また、セリンおよびグリシン枯渇療法を放射線療法と組み合わせて実施する方法が、本明細書に記載される。
【0011】
がん細胞は、増殖および生存を支援するためにその代謝を適応させることができ、治療の標的とされ得る様々な依存性および脆弱性をもたらす。これらの代謝の変化は、腫瘍における遺伝的変化、および腫瘍の環境または起源の組織を含む、数多くの要因によって方向付けられ得るが、がん細胞増殖の支援におけるセリン代謝もまた、これらの観察される代謝の変化にとって重要であり得る。セリンおよびグリシン(SHMT1/2反応によってセリンから産生される)は、タンパク質、ヌクレオチド、および脂質の合成、グルタチオンおよびNADPH合成を通した抗酸化防御の生成、ならびに葉酸サイクルおよびメチル化反応のための一炭素単位の提供を含む、多数の重要なプロセスに寄与する。
【0012】
セリンは、非必須アミノ酸として、細胞外環境から取り込まれるか、またはセリン合成経路(SSP)を用いて細胞によって新規合成されることができる。がん細胞は、セリンを貪欲に消費し、最適な増殖のためにはセリンの外因性供給源に依存し得る。いくつかのがん細胞は、SSPを通した流れを活性化することによって、セリン飢餓に適応することができる。セリンは、解糖における最終段階であるPKM2の活性化因子であり、セリン枯渇条件下でのPKM2活性の減少は、解糖中間体のSSP中への転換を可能にすることができる。この応答は、ATF-4およびヒストンメチルトランスフェラーゼG9Aに依存したSSPの3つの酵素の活性化と協調しており、これにより、ほとんどのがん細胞が、セリン飢餓後に生存し、増殖し続けることが可能になり得る。がん細胞が、外因性セリンの喪失に適応することができる効力は、いくつかの要因に依存する。いくつかのがんは、SSPにおける第1段階であるPHGDHの増幅または過剰発現を獲得し、これらの細胞は、セリン飢餓によってあまり影響を受けない傾向がある。同様に、KRAS、MYC、MDM2、およびNRF210などの発癌遺伝子の活性化は、SSP酵素発現の増大をもたらし、また細胞が外因性セリンの枯渇に対して耐性になることを可能にすることができる。逆に、p53腫瘍抑制タンパク質は、PHGDH発現を阻害することができるが、p53の喪失はまた、細胞を、新規セリン合成への切り替えに付随するROSの増大に対してより脆弱にし、セリンを含まない培地における生存の減少を結果としてもたらす。
【0013】
アミノ酸
本明細書に開示される組成物は、セリンを欠くことができる。本明細書に開示される組成物は、グリシンを欠くことができる。本明細書に開示される組成物は、セリンおよびグリシンを欠くことができる。本明細書に開示される組成物は、PHGDH阻害物質、PSAT1阻害物質、またはPSPH阻害物質と組み合わせて投与することができる。
【0014】
本開示の組成物は、少なくとも10個のアミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19個のアミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、10個のアミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、14個のアミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、18個のアミノ酸またはその塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、セリンおよびグリシンを欠いている。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、セリンを欠いている。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、グリシンを欠いている。
【0015】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、7、8、または9個の必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、8個の必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、9個の必須アミノ酸またはその塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、セリンおよびグリシンを欠いている。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、セリンを欠いている。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、グリシンを欠いている。
【0016】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、7、8、9、10、または11個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、7個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、8個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、9個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、セリンおよびグリシンを欠いている。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、セリンを欠いている。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、グリシンを欠いている。
【0017】
本開示の組成物は、必須アミノ酸またはその塩、および非必須アミノ酸またはその塩を含むことができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の必須アミノ酸またはその塩、および1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、7、8、または9個の必須アミノ酸またはその塩、および6、7、8、または9個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、8または9個の必須アミノ酸またはその塩、および8または9個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、9個の必須アミノ酸またはその塩、および7個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、9個の必須アミノ酸またはその塩、および8個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、9個の必須アミノ酸またはその塩、および9個の非必須アミノ酸またはその塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、セリンおよびグリシンを欠いている。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、セリンを欠いている。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、グリシンを欠いている。
【0018】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、グルタミン、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、またはプロリンを含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-システイン、L-フェニルアラニン、L-チロシン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-バリン、L-アルギニン、L-グルタミン、L-アラニン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン、L-グルタミン酸、またはL-プロリンを含む。
【0019】
いくつかの態様において、組成物は、ヒスチジンまたはその塩、例えば、L-ヒスチジンまたはL-ヒスチジン塩酸塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、イソロイシンまたはその塩、例えば、L-イソロイシン、L-イソロイシンメチルエステル塩酸塩、またはL-イソロイシンエチルエステル塩酸塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、ロイシンまたはその塩、例えば、L-ロイシン、L-ロイシンメチルエステル塩酸塩、またはL-ロイシンエチルエステル塩酸塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、リジンまたはその塩、例えば、L-リジン、L-リジン塩酸塩、またはL-リジン二塩酸塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、メチオニンまたはその塩、例えば、L-メチオニン、L-メチオニンメチルエステル塩酸塩、またはL-メチオニン塩酸塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。
【0020】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、システインまたはその塩、例えば、L-システイン、L-システイン塩酸塩、L-システインメチルエステル塩酸塩、またはL-システインエチルエステル塩酸塩を含む。いくつかの態様において、組成物は、シスチンまたはその塩、例えば、L-シスチンを開示する。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、フェニルアラニンまたはその塩、例えば、L-フェニルアラニン、DL-フェニルアラニン、またはL-フェニルアラニンメチルエステル塩酸塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、チロシンまたはその塩、例えば、L-チロシンまたはL-チロシン塩酸塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、スレオニンまたはその塩、例えば、L-スレオニンまたはL-スレオニンメチルエステル塩酸塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、L-トリプトファンを含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、バリンまたはその塩、例えば、L-バリン、L-バリンメチルエステル塩酸塩、またはL-バリンエチルエステル塩酸塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。
【0021】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、アルギニンまたはその塩、例えば、L-アルギニンまたはL-アルギニン塩酸塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、グルタミンまたはその塩、例えば、L-グルタミンまたはL-グルタミン塩酸塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、アラニンまたはその塩、例えば、L-アラニンまたはβ-アラニンを含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、アスパラギン酸またはその塩、例えば、L-アスパラギン酸、D-アスパラギン酸、L-もしくはD-アスパラギン酸カリウム塩、L-もしくはD-アスパラギン酸塩酸塩;L-もしくはD-アスパラギン酸マグネシウム塩、またはL-もしくはD-アスパラギン酸カルシウム塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、L-アスパラギンを含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、グルタミン酸またはその塩、例えば、L-グルタミン酸またはL-グルタミン酸塩酸塩を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、プロリンまたはその塩、例えば、L-プロリン、L-プロリン塩酸塩、L-プロリンメチルエステル塩酸塩、またはL-プロリンエチルエステル塩酸塩を含む。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。
【0022】
薬学的賦形剤
本開示の組成物は、少なくとも1つの薬学的賦形剤、例えば、抗付着剤、結合剤、コーティング、着色剤、崩壊剤、香味剤、保存剤、吸着剤、甘味剤、またはビヒクルを含むことができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、着色剤および香味剤を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、着色剤、香味剤、および甘味剤を含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、香味剤、甘味剤、および保存剤を含む。
【0023】
製剤
本発明の組成物は、例えば、即時放出形態または制御放出製剤であることができる。即時放出製剤は、化合物が迅速に作用するのを可能にするように製剤化することができる。即時放出製剤の非限定的な例には、容易に溶解可能な製剤が含まれる。制御放出製剤は、活性剤の放出速度および放出プロファイルが、生理学的および時間療法的(chronotherapeutic)要件に合致することができるように適合させたか、または代替的に、プログラムされた速度での活性剤の放出をもたらすように製剤化された、薬学的製剤であることができる。制御放出製剤の非限定的な例には、顆粒、遅延放出顆粒、(例えば、合成または天然起源の)ヒドロゲル、他のゲル化剤(例えば、ゲル形成食物繊維)、マトリックスベースの製剤(例えば、少なくとも1つの活性成分を分散させたポリマー材料を含む製剤)、マトリックス内の顆粒、ポリマー混合物、および顆粒塊が含まれる。
【0024】
いくつかの態様において、制御放出製剤は、遅延放出形態である。遅延放出形態は、化合物の作用を長期間遅延させるように製剤化することができる。遅延放出形態は、例えば、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間、または約24時間、1つまたは複数の化合物の有効用量の放出を遅延させるように製剤化することができる。
【0025】
制御放出製剤は、持続放出形態であることができる。持続放出形態は、例えば、化合物の作用を長期間にわたって持続させるように製剤化することができる。持続放出形態は、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間、または約24時間にわたって、本明細書に記載される任意の化合物の有効用量を提供する(例えば、生理学的に有効な血液プロファイルを提供する)ように製剤化することができる。
【0026】
薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975;Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins1999)において見出すことができ、これらの各々は、その全体が参照により組み入れられる。
【0027】
投薬
本明細書に記載される組成物は、対象によって消費される食事を補足するように与えることができる。本明細書に記載される組成物は、食事の代替物として与えることができる。本明細書に記載される組成物は、食事の直前または直後に与えることができる。本明細書に記載される組成物は、食事の前または後、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約40分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、または約6時間以内に与えることができる。
【0028】
本明細書に記載される組成物は、正確な投与量の単回投与に適している単位剤形にあることができる。単位剤形において、製剤は、適切な量の組成物を含有する単位用量に分割される。いくつかの態様において、単位投与量は、別個の量の製剤を含有するパッケージの形態にあることができる。いくつかの態様において、本開示の製剤は、1回分の小袋における単位剤形で提示することができる。いくつかの態様において、本開示の製剤は、単一用量の再密封不可能な容器に提示することができる。いくつかの態様において、本開示の製剤を、再密封可能な容器に提示することができ、対象は、単一用量1回分を分配するように設計されたスコップまたはスプーンを用いて、単一用量1回分の製剤を得ることができる。いくつかの態様において、本開示の製剤を、再密封可能な容器に提示することができ、対象は、半用量1回分を分配するように設計されたスコップまたはスプーン(すなわち、2つのスコップが1回分を分配する)を用いて、単一用量1回分の製剤を得ることができる。
【0029】
本明細書に記載される組成物は、約1 g~約2 g、約2 g~約3 g、約3 g~約4 g、約4 g~約5 g、約5 g~約6 g、約6 g~約7 g、約7 g~約8 g、約8 g~約9 g、約9 g~約10 g、約10 g~約11 g、約11 g~約12 g、約12 g~約13 g、約13 g~約14 g、約14 g~約15 g、約15 g~約16 g、約16 g~約17 g、約17 g~約18 g、約18 g~約19 g、約19 g~約20 g、約20 g~約21 g、約21 g~約22 g、約22 g~約23 g、約23 g~約24 g、または約24 g~約25 gの範囲で、単位用量1回分に存在することができる。
【0030】
本明細書に記載される組成物は、約1 g、約2 g、約3 g、約4 g、約5 g、約6 g、約7 g、約8 g、約9 g、約10 g、約11 g、約12 g、約13 g、約14 g、約15 g、約16 g、約17 g、約18 g、約19 g、約20 g、約21 g、約22 g、約23 g、約24 g、または約25 gの量で、単位用量1回分に存在することができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、約10 g、12 g、15 g、20 g、または24 gの量で、単位用量1回分に存在する。
【0031】
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、約12 gの量で、単位用量1回分に存在する。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、約12 gの量で、小袋中の単位用量1回分に存在する。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、約15 gの量で、単位用量1回分に存在する。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、約15 gの量で、小袋中の単位用量1回分に存在する。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、約24 gの量で、単位用量1回分に存在する。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、約24 gの量で、小袋中の単位用量1回分に存在する。
【0032】
いくつかの態様において、本開示の組成物の用量は、対象の質量で割った薬物の量、例えば、対象の体重1キログラム当たりの薬物のミリグラムに換算して表すことができる。いくつかの態様において、組成物は、約100 mg/kg~約150 mg/kg、約150 mg/kg~約200 mg/kg、約200 mg/kg~約250 mg/kg、約250 mg/kg~約300 mg/kg、または約300 mg/kg~約350 mg/kgの範囲の量で提供される。いくつかの態様において、組成物は、約100 mg/kg、約150 mg/kg、約200 mg/kg、約250 mg/kg、約300 mg/kg、または約350 mg/kgの量で提供される。
【0033】
本明細書に記載される組成物は、対象の体重当たりのタンパクの量を達成するように、対象に提供されることができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、約0.2 gタンパク質/kg対象の体重~約0.4 gタンパク質/kg対象の体重、約0.4 gタンパク質/kg対象の体重~約0.6 gタンパク質/kg対象の体重、約0.6 gタンパク質/kg対象の体重~約0.8 gタンパク質/kg対象の体重、または約0.8 gタンパク質/kg対象の体重~約1 gタンパク質/kg対象の体重の範囲を達成するように、対象に提供されることができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、約0.6 gタンパク質/kg対象の体重~約0.8 gタンパク質/kg対象の体重の範囲を達成するように、対象に提供されることができる。
【0034】
本明細書に記載される組成物は、1日当たり1回分または複数回分で、対象に提供されることができる。いくつかの態様において、1回分、2回分、3回分、4回分、5回分、6回分、7回分、8回分、9回分、10回分、11回分、または12回分の本明細書に記載される組成物が、1日で対象に提供される。いくつかの態様において、3回分の本明細書に記載される組成物が、1日で対象に提供される。いくつかの態様において、6回分の本明細書に記載される組成物が、1日で対象に提供される。いくつかの態様において、9回分の本明細書に記載される組成物が、1日で対象に提供される。
【0035】
投与の方法
本開示の組成物を、対象に投与することができ、投与は、少なくとも1つのアミノ酸が少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴うことができる。いくつかの態様において、本開示の組成物の投与は、1つのアミノ酸が少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴う。いくつかの態様において、本開示の組成物の投与は、セリンが少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴う。いくつかの態様において、本開示の組成物の投与は、グリシンが少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴う。いくつかの態様において、本開示の組成物の投与は、2つのアミノ酸またはその塩が少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴う。いくつかの態様において、本開示の組成物の投与は、セリンおよびグリシンが少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴う。いくつかの態様において、本開示の組成物の投与は、3つのアミノ酸またはその塩が少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴う。いくつかの態様において、本開示の組成物の投与は、セリン、グリシン、およびプロリンが少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴う。いくつかの態様において、本開示の組成物の投与は、セリン、グリシン、およびシステインが少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴う。いくつかの態様において、本開示の組成物の投与は、4つのアミノ酸またはその塩が少ないか、またはそれを実質的に欠いている、食品ベースの食事療法を伴う。本明細書に開示されるアミノ酸の塩は、薬学的に許容される塩であることができる。
【0036】
本開示の組成物は、食事療法中である対象に投与することができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象に投与され、対象は、タンパク質が少ない食事をとっている。いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象に投与され、対象は、低糖質食をとっている。いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象に投与され、対象は、高脂肪かつ低糖質(例えば、ケトジェニック型食事)をとっている。いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象に投与され、対象は、菜食をとっている。いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象に投与され、対象は、ビーガン食をとっている。
【0037】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、少なくとも1つの非必須アミノ酸が少ないように設計された低タンパク質食をとっている対象に投与される。いくつかの態様において、本開示の組成物は、セリンおよびグリシンが少ないように設計された低タンパク質食をとっている対象に投与される。いくつかの態様において、本開示の組成物は、約2 g/日、約1.75 g/日、約1.5 g/日、約1.25 g/日、約1 g/日、約0.75 g/日、または約0.5 g/日未満の低タンパク質食をとっている対象に投与される。いくつかの態様において、本開示の組成物は、約500 mg/日、約450 mg/日、約400 mg/日、約350 mg/日、約300 mg/日、約250 mg/日、約200 mg/日、約150 mg/日、約100 mg/日、または約50 mg/日未満の低タンパク質食をとっている対象に投与される。
【0038】
複数の治療剤を、任意の順序で、または同時に投与することができる。いくつかの態様において、本発明の組成物は、別の治療剤での処置と組み合わせて、その前に、またはその後に投与される。同時である場合には、複数の治療剤を、単一の統一された形態で、または複数の形態で、例えば、複数の別々の丸剤として提供することができる。剤は、一緒にまたは別々に、単一のパッケージまたは複数のパッケージで包装することができる。治療剤の1つまたはすべてを、複数用量において与えることができる。同時ではない場合には、複数用量の間のタイミングは、約1ヶ月まで変動することができる。
【0039】
本明細書に記載される治療剤を、疾患または状態の発生前、発生中、または発生後に投与することができ、治療剤を含有する組成物を投与するタイミングは、変動することができる。例えば、組成物を、予防薬として使用することができ、疾患または状態の発生の可能性を少なくするために、状態または疾患の傾向を有する対象に連続的に投与することができる。組成物は、症状の発症中にまたは発症後可能な限り早くに、対象に投与することができる。
【0040】
本明細書に開示される組成物は、疾患または状態の発症が検出されたかまたは疑われた後、実際的な限り早くに、かつ疾患の処置に必要な時間の長さにわたって、投与することができる。いくつかの態様において、疾患の処置に必要な時間の長さは、約12時間、約24時間、約36時間、または約48時間である。いくつかの態様において、疾患の処置に必要な時間の長さは、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、または約15日である。いくつかの態様において、疾患の処置に必要な時間の長さは、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、または約20週間である。いくつかの態様において、疾患の処置に必要な時間の長さは、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約13ヶ月、約14ヶ月、約15ヶ月、約16ヶ月、約17ヶ月、約18ヶ月、約19ヶ月、約20ヶ月、約21ヶ月、約22ヶ月、約23ヶ月、または約24ヶ月である。
【0041】
いくつかの態様において、化合物を投与することができる時間の長さは、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約2ヶ月、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約3ヶ月、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約4ヶ月、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約5ヶ月、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約1年、約13ヶ月、約14ヶ月、約15ヶ月、約16ヶ月、約17ヶ月、約18ヶ月、約19ヶ月、約20ヶ月、約21ヶ月、約22ヶ月、約23ヶ月、約2年、約2. 5年、約3年、約3.5年、約4年、約4.5年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、または約10年であることができる。処置の長さは、各対象について変動することができる。
【0042】
本明細書に記載される組成物は、正確な投与量の単回投与に適している単位剤形にあることができる。単位剤形において、製剤は、適切な量の1つまたは複数の化合物を含有する単位用量に分割される。単位投与量は、別個の量の製剤を含有するパッケージの形態にあることができる。水性懸濁組成物は、単一用量の再密封不可能な容器に包装することができる。複数用量の再密封可能な容器を、例えば、保存剤と組み合わせて、または保存剤なしで用いることができる。
【0043】
いくつかの態様において、組成物は、1日を通して対象に投与される。いくつかの態様において、組成物は、食事と共に対象に投与される。いくつかの態様において、組成物は、間食と共に対象に投与される。いくつかの態様において、組成物は、食事を伴わずに対象に投与される。いくつかの態様において、組成物は、等間隔で1日を通して対象に投与される。いくつかの態様において、第1の1回分は朝食前に投与され、第2の1回分は朝食と共に投与され、第3の1回分は昼食と共に投与され、第4および第5の1回分は夕食と共に投与され、および第6の1回分は就寝前に投与される。
【0044】
本明細書で提供される組成物は、他の治療法、例えば、化学療法、放射線、手術、抗炎症剤、免疫療法、生物学的製剤、および選択されたビタミンと組み合わせて投与することができる。他の剤を、薬学的組成物の前、その後、またはそれと同時に投与することができる。
【0045】
本明細書に開示される組成物の使用方法
本開示は、対象を処置するための方法を提供する。本明細書に開示される組成物は、任意の疾患の処置において使用することができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、その必要がある対象においてがんを処置するために使用される。対象の食事および栄養素を変更することは、望ましい健康上の利益を得ることができ、疾患の処置において効果的であり得る。
【0046】
患者の特定の疾患および/または必要性に基づいて、本開示は、対象についての一般化された処置推奨のための方法、および対象特異的な処置推奨のための方法を提供する。処置のための方法は、以下の工程のうちの1つを含むことができる:対象における栄養素のレベルを決定する工程;決定に基づいて対象における疾患の有無を検出する工程;および疾患の症状を改善するために少なくとも1つの一般化された処置または対象特異的な処置を対象に推奨する工程。
【0047】
いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、食事介入によって疾患または状態を管理するために使用することができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、特定の疾患または状態のための処置計画の一部として使用することができる。
【0048】
いくつかの態様において、対象はがんを有する。がんは、新生物細胞の制御不可能な増殖によって引き起こされ、隣接組織および遠方組織の浸潤をもたらし、結果として死をもたらす。がん細胞は、多くの場合、ゲノムのコード領域および制御領域の両方に影響を及ぼす、根底にある遺伝子異常またはエピジェネティック異常を有する。がん細胞における遺伝子異常は、タンパク質の構造、動的レベル、および発現レベルを変化させる場合があり、これが次に、がん細胞の細胞代謝を変更する。細胞周期の変化は、がん細胞を、正常細胞よりもはるかに速いスピードで増殖させることができる。代謝速度および増殖の増大と共に、がん組織は、正常組織と比較してはるかに高い栄養素要求量を有する。
【0049】
がん細胞は、栄養素要求性を有し、正常細胞と比較してはるかに高い栄養素要求量を有する。増大した栄養要求量を満たすための適応として、がん細胞は、細胞膜上のグルコースおよびアミノ酸輸送体を上方制御して、循環からより多くの栄養素を得ることができる。がん細胞はまた、解糖およびグルタミノリシスを増強することによって、代謝経路を再配線して、より高い割合のATP産生またはエネルギー供給を持続することができる。グルコースおよびアミノ酸は、がん細胞において非常に要求される栄養素である。いくつかのがん細胞タイプおよび腫瘍組織は、特定のアミノ酸に対して栄養要求性であることが公知である。様々なアミノ酸に対するがんの栄養要求性により、そのがんタイプがアミノ酸飢餓処置に対して脆弱になる場合がある。
【0050】
哺乳動物細胞がアミノ酸飢餓を経験する場合、細胞は、アミノ酸不足に対する恒常性応答を起こす。アミノ酸欠乏は、細胞の資源およびエネルギーを、アミノ酸恒常性のための膜輸送体、成長ホルモン、および代謝酵素の発現にシフトすることを含む、一般的なアミノ酸制御経路を誘発することができる。膜輸送体の上方制御は、アミノ酸の取り込みを促進することができ、代謝酵素の上方制御は、アミノ酸合成を増強することができる。細胞はまた、自食作用によってタンパク質およびオルガネラを再利用して、非必須アミノ酸を再生することができる。一般的なアミノ酸制御経路および自食作用によって、細胞は、アミノ酸恒常性を維持しようとする。腫瘍組織はまた、より多くの栄養素供給を得るために血管新生を増強することによって、アミノ酸飢餓を克服することができる。
【0051】
重度のアミノ酸飢餓時に恒常性が達成できない場合に、がん細胞は、タンパク質合成を阻害するか、増殖を抑制するか、またはプログラム細胞死を起こすことができる。アミノ酸飢餓の細胞死機構は、カスパーゼ依存性アポトーシス、自食作用性細胞死、またはフェロトーシス性細胞死であることができる。アミノ酸輸送体、代謝酵素、自食作用関連タンパク質、およびアミノ酸飢餓を用いて、がんの増殖を制御することができる。
【0052】
本明細書に開示される方法は、対象による栄養素消費をモニターすることができる。栄養素消費は、対象から生物学的試料を採取することによって測定することができる。生物学的試料は、例えば、全血、血清、血漿、粘膜、唾液、頬スワブ、尿、便、細胞、組織、体液、汗、息、リンパ液、CNS液、および病変滲出液であることができる。生物学的試料の組み合わせを、本開示の方法で用いることができる。
【0053】
本開示の組成物の方法は、がん細胞株の増殖を遅くするか、またはがん細胞を殺傷することができる。本発明の化合物によって処置することができるがんの非限定的な例には、以下が含まれる:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、例えば小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫、乳がん、気管支腺腫、バーキットリンパ腫、原発不明の癌腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍、胆嚢がん、胃がん(gastric cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、神経膠腫、毛様細胞白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、脂肪肉腫、肝臓がん、非小細胞肺がんおよび小細胞肺がんなどの肺がん、リンパ腫、白血病、マクログロブリン血症、骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、潜在性原発を有する転移性扁平上皮頸部がん、口腔がん(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、鼻腔および副鼻腔がん、上咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん(oral cancer)、中咽頭がん、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓がん、膵臓がん島細胞、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚芽腫、下垂体腺腫、胸膜肺芽腫、形質細胞新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞癌、腎盂尿管移行細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、皮膚がん、皮膚癌メルケル細胞、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃がん(stomach cancer)、T細胞リンパ腫、咽喉がん、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺がん、絨毛性腫瘍(妊娠性)、原発部位不明のがん、尿道がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍。
【0054】
キット
本発明の組成物は、キットとして包装することができる。いくつかの態様において、キットは、組成物の投与/使用に関する書面の説明書を含む。書面の資料は、例えば、ラベルであることができる。書面の資料は、投与の条件方法を示唆することができる。説明書は、治療法の実施から最適な臨床転帰を達成するための最良の手引きを、対象および監督医師に提供する。書面の資料は、ラベルであることができる。いくつかの態様において、ラベルは、規制機関、例えば、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、または他の規制機関によって承認されることができる。
【0055】
放射線治療
放射線治療、または放射線療法は、悪性細胞を制御または殺傷するために、がん処置の一部として電離放射線を用いる治療法であり、通常、線形加速器によって送達される。電離放射線は、がん性組織のDNAに損傷を与え、結果として細胞死をもたらす。放射線治療は、身体の1つの区域に局在する場合には、多数のタイプのがんにおいて治癒的であることができる。いくつかの態様において、本開示の方法は、第2の治療法、例えば、放射線療法と組み合わせて実施すること、および本開示の組成物は、第2の治療法、例えば、放射線療法と組み合わせて投与することができる。いくつかの態様において、放射線療法は、細胞増殖を制御することができるため、本開示の方法または組成物と共に使用することができる。
【0056】
いくつかの態様において、放射線療法は、原発性悪性腫瘍を除去する手術後に腫瘍再発の可能性を阻止または低減させるために、本開示の方法または組成物と組み合わせて使用することができる。いくつかの態様において、放射線療法および化学療法を、本開示の方法または組成物と組み合わせて使用することができる。いくつかの態様において、本開示の方法は、がんを処置するために、放射線療法と組み合わせて実施すること、および本開示の組成物は、がんを処置するために、放射線療法と組み合わせて投与することができる。いくつかの態様において、本開示の方法は、がんの症状を低減させるために、放射線療法と組み合わせて実施すること、および本開示の組成物は、がんの症状を低減させるために、放射線療法と組み合わせて投与することができる。いくつかの態様において、本開示の方法は、がんの増殖を遅くするために、放射線療法と組み合わせて実施すること、および本開示の組成物は、がんの増殖を遅くするために、放射線療法と組み合わせて投与することができる。
【0057】
いくつかの態様において、放射線療法は、外部ビーム放射線治療である。外部ビーム放射線治療は、放射線をがんに局所的に照射する機械を用いる。いくつかの態様において、放射線療法は、内部ビーム放射線治療である。いくつかの態様において、外部ビーム放射線は、腫瘍を縮小させて、疼痛、呼吸困難、または腸もしくは膀胱の制御の喪失を処置するために、用いることができる。いくつかの態様において、外部ビーム放射線治療は、三次元原体放射線治療(3D-CRT)である。いくつかの態様において、外部ビーム放射線治療は、強度変調放射線治療(IMRT)である。いくつかの態様において、外部ビーム放射線治療は、陽子線治療である。いくつかの態様において、外部ビーム放射線治療は、画像誘導放射線治療(IGRT)である。いくつかの態様において、外部ビーム放射線治療は、定位放射線治療(SRT)である。
【0058】
内部放射線治療は、放射線源を対象の身体中に配置する処置である。いくつかの態様において、放射線源は液体である。いくつかの態様において、放射線源は固体である。いくつかの態様において、内部放射線療法は、永久インプラントを用いる。いくつかの態様において、内部放射線療法は、一時的な内部放射線療法、例えば、針、チューブ、またはアプリケーターである。いくつかの態様において、固体放射線源は、近接照射療法において用いられる。いくつかの態様において、放射線源を含有するシード、リボン、またはカプセルが、対象の身体中に配置される。いくつかの態様において、放射線療法は近接照射療法であり、放射性線源は、処置を必要とする区域の内部または隣に配置される。いくつかの態様において、放射線療法は、骨髄移植の準備における全身照射(TBI)である。
【0059】
いくつかの態様において、放射線療法は、術中放射線治療(IORT)である。いくつかの態様において、放射線療法は、全身放射線治療である。いくつかの態様において、放射線療法は、放射免疫療法である。いくつかの態様において、放射線療法は、放射線増感剤または放射線防護剤を用いる。
【0060】
いくつかの態様において、近接照射療法は、頭、首、乳房、子宮頸部、前立腺、または眼のがんを処置するために用いられる。いくつかの態様において、放射性ヨウ素、すなわちI-131などの全身放射線治療を、甲状腺がんを処置するために用いることができる。いくつかの態様において、標的化放射性核種治療を、進行性前立腺がんまたは胃腸膵神経内分泌腫瘍(GEP-NET)を処置するために用いることができる。
【0061】
いくつかの態様において、成形された放射線ビームを、正常組織を温存しながら腫瘍に交差するように、いくつかの照射角度から照射することができる。いくつかの態様において、腫瘍は、周囲の健常組織よりもはるかに大量の放射線を吸収する。
【0062】
いくつかの態様において、対象または腫瘍を、約0.5グレイ(Gy)、約1 Gy、約1.5 Gy、約2 Gy、約2.5 Gy、約3 Gy、約3.5 Gy、約4 Gy、約4.5 Gy、約5 Gy、約5.5 Gy、約6 Gy、約6.5 Gy、約7 Gy、約7.5 Gy、約8 Gy、約8.5 Gy、約9 Gy、約9.5 Gy、または約10 Gyで処置することができる。いくつかの態様において、対象または腫瘍を、約5 Gy、約10 Gy、約15 Gy、約20 Gy、約25 Gy、約30 Gy、約35 Gy、約40 Gy、約45 Gy、約50 Gy、約55 Gy、約60 Gy、約65 Gy、約70 Gy、約75 Gy、約80 Gy、約85 Gy、約90 Gy、約95 Gy、または約100 Gyの放射線治療で処置することができる。いくつかの態様において、対象または腫瘍を、約5 Gyの放射線治療で処置することができる。いくつかの態様において、対象または腫瘍を、約10 Gyの放射線治療で処置することができる。いくつかの態様において、対象または腫瘍を、約20 Gyの放射線治療で処置することができる。
【0063】
いくつかの態様において、対象または腫瘍を、約5 Gy~約10 Gy;約10 Gy~約15 Gy;約15 Gy~約20 Gy;約20 Gy~約25 Gy;約25 Gy~約30 Gy;約30 Gy~約35 Gy;約35 Gy~約40 Gy;約40 Gy~約45 Gy;約45 Gy~約50 Gy;約50 Gy~約55 Gy;約55 Gy~約60 Gy;約60 Gy~約65 Gy;約65 Gy~約70 Gy;約70 Gy~約75 Gy;または約75 Gy~約80 Gyで処置することができる。いくつかの態様において、対象または腫瘍を、約5 Gy~約10 Gyで処置することができる。いくつかの態様において、対象または腫瘍を、約20 Gy~約40 Gyで処置することができる。いくつかの態様において、対象または腫瘍を、約40 Gy~約60 Gyで処置することができる。
【0064】
いくつかの態様において、放射線治療の1サイクルは、対象または腫瘍が数日にわたって放射線で処置されることを含むことができる。いくつかの態様において、放射線は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日にわたって行うことができる。いくつかの態様において、放射線治療の1サイクルは、対象または腫瘍が4日にわたって放射線で処置されることを含むことができる。いくつかの態様において、放射線治療の1サイクルは、対象または腫瘍が5日にわたって放射線で処置されることを含むことができる。
【0065】
いくつかの態様において、放射線の1サイクルは、5日にわたって10 Gy、例えば、1日に2 Gyを5日間投与することを含むことができる。いくつかの態様において、放射線の1サイクルは、5日にわたって15 Gy、例えば、1日に3 Gyを5日間投与することを含むことができる。いくつかの態様において、放射線の1サイクルは、5日にわたって20 Gy、例えば、1日に4 Gyを5日間投与することを含むことができる。いくつかの態様において、放射線の1サイクルは、5日にわたって25 Gy、例えば、1日に5 Gyを5日間投与することを含むことができる。
【0066】
いくつかの態様において、放射線治療の1サイクルは、ある期間にわたって繰り返すことができる。いくつかの態様において、放射線治療の1サイクルは、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、または16週間繰り返すことができる。
【0067】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、放射線療法の実施と同時に投与することができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、または21日間、放射線療法と同時に投与することができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、5日間、放射線療法の実施と同時に投与することができる。いくつかの態様において、本開示の組成物は、7日間、放射線療法の実施と同時に投与することができる。
【0068】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象が放射線療法で処置される、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日前に投与される。いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象が放射線療法で処置される1日前に投与される。いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象が放射線療法で処置される2日前に投与される。いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象が放射線療法で処置される3日前に投与される。いくつかの態様において、本開示の組成物は、対象が放射線療法で処置される4日前に投与される。
【0069】
いくつかの態様において、対象は、本開示の組成物および放射線療法で処置し、次いで、組成物および放射線療法での後続の処置サイクルを開始する前に処置を中止することができる。いくつかの態様において、処置期間および処置中止(off-treatment)期間の長さは、同一である。いくつかの態様において、処置期間および処置中止期間の長さは、異なる。いくつかの態様において、処置期間の長さは、処置中止期間よりも長い。いくつかの態様において、処置期間の長さは、処置中止期間よりも短い。
【0070】
いくつかの態様において、組成物および放射線療法での処置期間の長さは、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日であり、および処置中止期間の長さは、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日である。いくつかの態様において、処置期間の長さは5日であり、および処置中止期間の長さは2日である。いくつかの態様において、処置期間の長さは4日であり、および処置休止期間の長さは3日である。いくつかの態様において、処置期間の長さは3日であり、および処置中止期間の長さは4日である。いくつかの態様において、処置期間の長さは2日であり、および処置中止期間の長さは5日である。
【0071】
いくつかの態様において、処置期間および処置中止期間のサイクルは、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、または16週間繰り返される。
【0072】
いくつかの態様において、本開示の組成物および放射線療法は、高脂肪食と共に投与される。いくつかの態様において、高脂肪食は、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%よりも多い1日のカロリーを脂肪から有する食事療法である。いくつかの態様において、本開示の組成物および放射線療法は、低糖質食と共に投与される。いくつかの態様において、低糖質食は、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約5%未満の1日のカロリーを糖質から伴う食事療法である。いくつかの態様において、本開示の組成物および放射線療法は、低タンパク質食と共に投与される。いくつかの態様において、低タンパク質食は、1日のカロリーの約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%未満を全タンパク質から伴う食事療法である。いくつかの態様において、低タンパク質食は、約50 g/日、約40 g/日、約30 g/日、約20 g/日、または約10 g/日未満の全タンパク質量を有する。いくつかの態様において、本開示の組成物および放射線療法は、高脂肪、低糖質、および低タンパク質食と共に投与される。いくつかの態様において、本開示の組成物は、普通食と共に投与される。
【0073】
免疫療法との併用療法
いくつかの態様において、本開示のアミノ酸飢餓療法は、化学療法レジメンと組み合わせて使用することができる。いくつかの態様において、化学療法レジメンは免疫療法である。いくつかの態様において、免疫療法は抗体療法である。いくつかの態様において、抗体療法は、アレムツズマブ、リツキシマブ、イブリツモマブチウキセタン、またはオファツムマブでの処置である。いくつかの態様において、免疫療法はインターフェロンである。いくつかの態様において、インターフェロンはインターフェロンαである。いくつかの態様において、免疫療法は、インターロイキン、例えば、IL-2である。いくつかの態様において、免疫療法は、インターロイキン阻害物質、例えば、IRAK4阻害物質である。
【0074】
いくつかの態様において、免疫療法はがんワクチンである。いくつかの態様において、がんワクチンは予防ワクチンである。いくつかの態様において、がんワクチンは処置ワクチンである。いくつかの態様において、がんワクチンは、HPVワクチン、例えば、Gardisil(商標)、Cervarix、Oncophage、またはSipuleucel-Tである。いくつかの態様において、免疫療法はgp100である。いくつかの態様において、免疫療法は、樹状細胞ベースのワクチン、例えば、Ad.p53 DCである。いくつかの態様において、免疫療法は、toll様受容体モジュレーター、例えば、TLR-7またはTLR-9である。いくつかの態様において、免疫療法は、PD-1、PD-L1、PD-L2、またはCTL4-Aモジュレーター、例えば、ニボルマブである。いくつかの態様において、免疫療法は、IDO阻害物質、例えば、インドキシモドである。いくつかの態様において、免疫療法は、抗PD-1モノクローナル抗体、例えば、MK3475またはニボルマブである。いくつかの態様において、免疫療法は、抗PD-L1モノクローナル抗体、例えば、MEDI-4736またはRG-7446である。いくつかの態様において、免疫療法は、抗PD-L2モノクローナル抗体である。いくつかの態様において、免疫療法は、抗CTL1-4抗体、例えば、イピルムマブ(ipilumumab)である。
【0075】
がん細胞は、がん細胞の増殖のエネルギー的なおよび同化作用の要求の上昇を支援するために、細胞代謝を変化させることができる。変更される代謝の例には、好気的解糖(すなわち、ワールブルグ効果)および非必須アミノ酸に対する高い依存性が含まれる。一炭素代謝は、細胞が単一の炭素を含有する分子を生成して用いることを可能にする、代謝経路の集合を包含する。一炭素単位(すなわち、メチル基)は、食事性葉酸に由来するテトラヒドロ葉酸(THF)によって、使用のために運ばれ、活性化される。細胞は、ヌクレオチド合成、メチル化反応、および還元的代謝を支援するために、一炭素単位を必要とする。がん細胞は、高い増殖率を支援するために一炭素経路に依存しており、一炭素代謝は、がん細胞の増殖にとって非常に重要である。
【0076】
THF依存性の一炭素代謝は、DNAおよびRNA中に組み込まれるヌクレオチドの合成のために炭素を供給する、細胞増殖を支える不可欠な代謝プロセスである。トリプトファンは、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)による代謝を通した、一炭素単位の理論的な供給源である。IDO1を発現するがん細胞において、トリプトファンは、インビトロおよびインビボの両方で、プリンヌクレオチド合成のための真の一炭素供与体である。
【0077】
がん細胞の代謝において、セリンは、一炭素単位の主要な供給源と考えられている。セリンは、解糖中間体である3-ホスホグリセリン酸からのセリン合成経路(SSP)を介した新規合成、または細胞外環境からの取り込みのいずれかによって得られる。いくつかのがん細胞は、細胞のセリン要求を満たすためにSSP酵素発現の増大を示すが、他のがん細胞は、主としてセリンの取り込みに依存する。セリンヒドロイメチルトランスフェラーゼ(serine hydroymethyltransferase)(SHMT1およびSHMT2)は、セリンのグリシンへの変換、およびTHFサイクルに入る一炭素の放出を直接触媒する。
【0078】
アミノ酸であるグリシン、ヒスチジン、およびトリプトファンもまた、潜在的な一炭素供与体である。グリシンは、グリシン開裂系(GCS)を通して一炭素単位を提供することができる。ヒスチジンの異化もまた、一炭素単位を生じることができ、遊離THFプールの減少のために、がん細胞を抗葉酸処置に対してさらに感受性にすることができる。
【0079】
トリプトファンは、必須アミノ酸として、タンパク質合成に不可欠であるが、5-ヒドロキシトリプタミンおよびキヌレニン産生の前駆体でもある。キヌレニン経路において、最初かつ律速の段階は、トリプトファンのホルミル-キヌレニンへの変換である。IDO1、IDO2、およびTDOの3つの酵素が、この反応を触媒することができる。IDO2およびTDOは両方とも、低い発現レベルおよび限定された組織特異性を有し、IDO1が、優勢な形態と考えられる。ホルミル-キヌレニンは、1分子のギ酸の放出を伴って、自発的にキヌレニンを形成する。ギ酸は、THFと直接反応することによって一炭素サイクルに入ることができ、トリプトファンが一炭素供与体として働くことができるのは、この経路を介してである。
【0080】
IDO1活性は、腫瘍微小環境においてトリプトファンを枯渇させて、キヌレニンを増大させ、免疫細胞に対して様々な影響を引き起こす。トリプトファンの枯渇は、腫瘍浸潤T細胞の活性を減少させ、およびキヌレニンは、アリール炭化水素受容体の結合を通して、エフェクターT細胞の増殖を減少させ、免疫抑制性T制御性細胞の分化を支援する。腫瘍微小環境の効果は、腫瘍の増殖に免疫学的に許容性の環境を提供する。キヌレニン経路は、活性酸素種(スーパーオキシド)レベル、一炭素代謝、NAD(P)+の合成、アラニンの合成、およびTCAサイクル中への(α-ケトアジピン酸を介した)炭素の進入を含む、いくつかの代謝出力を有する。
【0081】
以下を含む、その必要がある対象においてがんを処置する方法が、本明細書において開示される:a)薬学的組成物の治療的有効量を、対象に投与する工程であって、薬学的組成物が、少なくとも2つのアミノ酸を実質的に欠いている、工程;およびb)IDO1阻害物質。いくつかの態様において、少なくとも2つのアミノ酸は、セリンおよびグリシンである。
【0082】
いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、インドキシモド(D-1MT;NLG-8189)、4-フェニルイミダゾール(4-PI)、N3-ベンジル置換4-PI、オルト-ヒドロキシ4-PI、ナボキシモド、またはエパカドスタットである。いくつかの態様において、IDO1阻害物質はエパカドスタットである。
【0083】
いくつかの態様において、本開示の組成物およびIDO1阻害物質を、がんを処置するために使用することができる。いくつかの態様において、がんは膵臓がんである。いくつかの態様において、がんは結腸がんである。いくつかの態様において、がんは乳がんである。いくつかの態様において、がんは子宮頸がんである。いくつかの態様において、がんは肺がんである。
【0084】
いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、アミノ酸飢餓療法と組み合わせて、1日に1、2、3、4、または5回投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、アミノ酸飢餓療法と組み合わせて、1日に1回投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、アミノ酸飢餓療法と組み合わせて、1日に2回投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、アミノ酸飢餓療法と組み合わせて、1日に3回投与される。
【0085】
いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、約10 mg~約50 mg、約50 mg~約100mg、約100 mg~約150 mg、約150 mg~約200 mg、約200 mg~約250 mg、約250 mg~約300 mg、約300 mg~約350 mg、約350 mg~約400 mg、約400 mg~約450 mg、または約450 mg~約500 mgの量で投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、約50 mg~約100 mgの量で投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、約100 mg~約150 mgの量で投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、約250 mg~約300 mgの量で投与される。
【0086】
いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、約10 mg、約25 mg、約50 mg、約75 mg、約100 mg、約125 mg、約150 mg、約175 mg、約200 mg、約225 mg、約250 mg、約275 mg、約300 mg、約325 mg、約350 mg、約375 mg、約400 mg、約425 mg、約450 mg、約475 mg、または約500 mgの量で投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、約25 mgの量で投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、約50 mgの量で投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、約100 mgの量で投与される。いくつかの態様において、IDO1阻害物質は、約300 mgの量で投与される。
【0087】
いくつかの態様において、約25 mgのエパカドスタットが、セリンおよびグリシン飢餓療法と組み合わせて、対象に投与される。いくつかの態様において、約50 mgのエパカドスタットが、セリンおよびグリシン飢餓療法と組み合わせて、対象に投与される。いくつかの態様において、約100 mgのエパカドスタットが、セリンおよびグリシン飢餓療法と組み合わせて、対象に投与される。いくつかの態様において、約300 mgのエパカドスタットが、セリンおよびグリシン飢餓療法と組み合わせて、対象に投与される。
【実施例】
【0088】
実施例1:セリンおよびグリシンの欠乏を伴うPHGDH阻害物質は腫瘍細胞株の増殖を妨げることができる
細胞は、外因性セリンを取り込むか、またはセリン合成経路(
図1)を用いて、解糖中間体3-ホスホグリセリン酸(3-PG)からセリンを合成することができる。非必須アミノ酸として、セリンは、環境から取り込まれるかまたはセリン合成経路(SSP)を通じて新たに合成することができる。SSPは、解糖中間体3-ホスホグリセリン酸(3-PG)の3-ホスホヒドロキシピルビン酸(3-PHP)へのNAD+依存性酸化で始まる3段階酵素反応からなる。この第1の反応は、薬理化合物PH755によって標的にされ得る酵素であるホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)によって触媒される。PHGDH反応の過程で生成される3-PHPは次いで、グルタミン酸依存性アミノ基転移反応においてホスホセリンアミノトランスフェラーゼ1(PSAT1)によって3-ホスホセリン(3-PS)に変換される。最後に、ホスホセリンホスファターゼ(PSPH)はが、3-PSの加水分解を触媒して、セリンを生成する。セリンは、ヌクレオチド合成またはグルタチオンを含む多数の代謝経路に関与し、細胞での主要な抗酸化物質である。したがって、セリン利用能は、細胞外環境からそれを枯渇させることによって、またはPH755を用いるSSPの阻害によって標的とすることができる。
【0089】
培養中の細胞の増殖に対するこれらの経路の各々の相対的寄与を評価するために、完全培地(CM)中、セリンおよびグリシンを欠いている(-SG)培地中、PH755(PHGDH阻害物質)または-SG+PH755の組み合わせを有するCM中で増殖させた一連の結腸直腸がん細胞株の増殖を測定した。セリンおよびグリシン飢餓に対する反応は、増殖について外因性セリンおよびグリシンに対して有意な依存性を示したRKO、HT-29、およびSW48細胞から、培地におけるセリンおよびグリシンの欠乏によって影響されなかったDLD-1、LoVo、CACO-2およびMDA-MB-468細胞(PHGDH増幅を保有することが以前に示されている乳がん株)に至るまで、細胞株間で異なっていた(
図2および
図3)。BRAF変異を保有する細胞株(RKO、HT-29、SW1417、CL-34)と比較して、KRAS変異を保有する結腸直腸がん細胞株(HCT-15、HCT116、DLD-1、LoVo、SW480)ではセリンおよびグリシン除去に対してより高い耐性を有する傾向があったが、SW620(KRAS変異体)およびVACO5(BRAF変異体)は、この傾向に対する例外であった(
図2および
図3)。遺伝子変異、MDA-MB-468細胞におけるPHGDH増幅などもまた、外因性セリンの供給に対するがん細胞の依存性に寄与する。完全培地におけるPH755による細胞の処理は、細胞の増殖速度に対して明確な作用を有さず、この濃度では、阻害物質は細胞増殖に対する非特異的阻害作用を有さないことを示した。しかしながら、-SG培地とPH755との組み合わせは、試験した全ての細胞株の増殖を完全に阻害した(
図2および
図3)。
【0090】
実施例2:セリンおよびグリシンの欠乏と組み合わせたPHGDH阻害はDNA合成、生存およびオルガノイド成長を制限する
実施例1で認められたこの増殖の欠如は、いずれかの処理単独と比較して、-SG培地+PH755による48時間インキュベーション後に新たに合成されたDNA内へのBrdU取り込みの大幅な低下を伴った(
図4および
図5)。二重処理状態での、S期にある細胞の低減は、G2/M期での細胞の蓄積(
図5および
図6)およびSubG1細胞の割合の増加を伴い、細胞死の増加を示した(
図7)。切断型カスパーゼ3の出現は、-SG培地中で培養させかつPH755で処理した細胞におけるアポトーシスの誘導を確認した(
図8)。均一に標識したグルコースを用いると、外因性セリンの存在下で増殖させた細胞は、PH755の有無にかかわらず、m+3セリンおよびm+2グリシンの無視できる程度の蓄積によって反映されるように、グルコースをセリンおよびグリシン合成にほとんど転用しなかった(
図9および
図10)。注目すべきことに、これらの細胞は、-SG培地中で増殖させた細胞よりはるかに高い全細胞内セリンおよびグリシンレベルを維持した(
図6)。セリンおよびグリシンを欠乏させると、細胞株は全て、m+3標識セリンおよびm+2標識グリシンの蓄積によって示されるように、デノボセリン合成の明確な増加を示した(
図9および
図10)。この反応はHT-29細胞では弱く、それらの外因性セリンの非存在下での増殖能力の低下と一致した。一方で、PH755による細胞の処理は、完全培地中ならびにセリンおよびグリシン飢餓下の両方で、セリンおよびグリシンのデノボ合成を完全に遮断し(
図9および
図10)、PHGDH活性およびSSPの遮断におけるこの阻害物質の効率性を実証した。
【0091】
PH755の特異性をさらに検証するために、PHGDHの遺伝子欠失の作用を試験した。DLD-1細胞は、セリンおよびグリシン飢餓に応答してPHGDH発現の強力な誘導を示し、これは、HT-29細胞でははるかに低い強度であり、外因性セリンおよびグリシンの非存在下でのこれらの細胞の相対的増殖能と一致した(
図11および
図12)。PHGDHのCRISPR媒介性欠失後のこれらの細胞の増殖(
図11および
図12)は、PH755処理後に認められるもの(
図2)とよく似ており、PHGDHの阻害物質としてのPH755の機能を裏付けた。
【0092】
プラスチック上で2Dで増殖させた細胞は、より生理学的に関連する条件下で増殖させた細胞と比較して異なる代謝要求を示す可能性があり、Vil1-cre
ER;Apc
fl/fl(Apc)またはVil1-cre
ER;Apc
fl/fl;Kras
G12D/+(Apc Kras)マウスに由来する腸腫瘍オルガノイドに対するセリンおよびグリシン欠乏ならびにPH755処理の作用(
図13および
図14)を調べた。Apc変異体腫瘍に由来するオルガノイドは、セリンおよびグリシン欠乏に対してある程度の感受性を示し、これは、Apc/Kras変異体オルガノイドでは明らかではなかった。2D細胞株での観察と一致して、PH755単独による処理は、ApcまたはApc/Krasオルガノイドの成長に影響を与えなかった。しかしながら、セリンおよびグリシン飢餓とPH755処理との組み合わせは、ApcおよびApc/Krasオルガノイド両方の成長を効率的に阻害した(
図13および
図14)。注目すべきことに、成長の実質的な低下が、組み合わせ処理で処理した正常な小腸オルガノイドでも観察されたことから、この作用は、がん由来腸オルガノイドに限定されなかった(
図15)。ヒト細胞での二重処理の作用を検証するために、KRAS状態が異なっている4名の患者由来の結腸直腸がんオルガノイド(C-001:WT、C-004:欠失、R-006:Gly12Asp、およびR-008:Gly13Asp)を試験した。-SGまたはPH755処理単独は、増殖に対して顕著な影響を有さなかったものの、いずれの場合でも、薬物と阻害物質の組み合わせは、KRAS状態にかかわらず、オルガノイド成長を大幅に低減させた(
図16)。
【0093】
実施例3:セリンおよびグリシンの欠乏と組み合わせたPHGDH阻害はプリンおよびGSH合成を阻害する
セリンは、プリン合成での一炭素単位およびグリシンの供給およびグルタチオン生成を通じての酸化還元恒常性の維持を含む、多数の代謝経路に関与する。これらの経路に対するデノボ合成したセリンの寄与は、均一に炭素標識したグルコースの運命を追跡することによって評価することができる(
図17)。セリンおよびグリシン中で増殖させた細胞は、ATPまたはGTP合成でデノボ合成したセリンの使用の証拠をほとんど示さず(
図18);むしろ、リボースに由来する標識(m+5)の大部分は、ペントースリン酸経路を通じて合成された(
図17)。セリンおよびグリシン飢餓下で、これらの条件に最も適応できた細胞(HCT116、DLD1、およびMDA-MB-468)は、m+6~m+9標識プリンを蓄積し、SSPを通じて生じた標識セリンの取り込みと一致した(
図18)。PH755処理によるセリンおよびグリシン飢餓は、ATPおよびGTPの合成を効率的に阻害した(
図18)。グルタチオンは、グルコース由来グリシン(m+2)またはグルタミン酸(m+2)から標識することができる(
図17)が、これらの条件下では、m+2グルタミン酸の発生は、試験した細胞株のほとんどでPH755処理による影響を受けなかった(
図19)。外因性セリンおよびグリシンの除去に応答して検出されたm+2およびm+4標識グルタチオンの割合の増加は、PH755による処理により遮断された反応である、SSP活性および標識グリシンの生成の増加を反映する可能性がある(
図20)。重要なことには、二重処理した細胞がプリンおよびグルタチオンを新たに合成できないことは、早ければ処理の3または6時間後に明らかとなり、この応答が組み合わせ処理の一次作用となり得ることを実証した(
図21)。注目すべきことに、総プリンおよびGSHレベルは、-SG培地で増殖させた細胞と比較して二重処理した細胞では減少せず、これはおそらく、増殖が阻害されたときのこれらの代謝物の消費の欠如を反映する(
図22)。これらの結果は、セリンに依存性でありかつがん細胞の成長にとって重大な意味をもつ代謝経路が、セリンおよびグリシン飢餓とPHGDH阻害物質との組み合わせによって効率的に阻害されることを実証する。
【0094】
実施例4:同時処理した細胞、-SG/PHGDHi処理細胞の代謝レスキュー
セリンおよびグリシンを欠乏しかつPH755で処理した細胞は全て、強力な増殖阻害を示した(
図2、
図13、
図3、
図17、
図18、および
図20)。二重処理細胞へのギ酸(一炭素サイクルを補充するため)またはグリシンのいずれか単独の補充は、増殖を回復させなかったものの、ギ酸およびグリシンの添加は、増殖を効率的にレスキューした(
図23)。この増殖レスキューは、ATPおよびGTP合成の回復(
図24)、および未標識セリンのプールの部分的回復によって達成された(
図25)。標識グリシンを用いて、このセリンのプールが、グリシンおよびギ酸によって供給される一炭素単位、標識セリンを蓄積させる未標識セリンの刺激の添加後により明らかになる反応から生じることが示された(
図26)。これらの結果は、増殖の阻害が、PH755によるデノボセリン合成の阻害の直接作用であり、いずれかのオフターゲット毒性に対する反応ではないことを示す。PH755によって誘導される代謝欠損の特異性は、PHGDHの遺伝子欠失に対する反応の類似性によってさらに裏付けられた(
図27、
図28、および
図29)。
【0095】
実施例5:PHGDHi/-SG処理は一般的なATF-4反応を損なう
PH755の作用は、PHGDHの特異的阻害と一致したが、PH755処理に応答してのセリン合成経路酵素の発現の分析は、細胞株の一部では予想外の反応を明らかにした。セリンおよびグリシン飢餓は、ATF-4の活性化を導くことができ、代謝ストレスに対する一般生存反応を媒介することができる。重要なことには、セリン飢餓は、SSP酵素のATF-4依存的誘導を導き、そのようにして細胞が外因性セリンレベルの低減に適応する能力に寄与する。
【0096】
ATF-4の欠乏は、セリンおよびグリシン飢餓下で細胞が適応しかつ増殖する能力を喪失させた(
図30)。予想通り、セリンおよびグリシン欠乏は、試験した全ての細胞株において3種類全てのSSP酵素の発現の誘導を導いたが、これは、これらの酵素を構成的に過剰発現するMDA-MB-468細胞では強度が低かった(
図31)。しかしながら、4種類の結腸がん株(HT-29、HCT116、CACO2、およびDLD-1)では、セリンおよびグリシン飢餓細胞のPH755によるさらなる処理は、このSSP酵素発現の増加を漸減させた(
図31)が、これはSW48細胞では認められなかった。セリンおよびグリシン飢餓およびPHGDH欠失後の同様の反応は、これがPHGDH活性の減少に対する反応であったことを確認した(
図32)。SSP酵素の活性化の減少は、セリンおよびグリシン飢餓ならびにPH755処理後に認められる増殖阻害と相関し、二重処理した細胞がSSP酵素を誘導しないことは、セリンおよびグリシン飢餓の4~8時間以内に明らかになり(
図33)、これが、増殖停止に対する間接的反応よりむしろPHGDH阻害に対する直接反応であることを示唆する。セリンおよびグリシン飢餓に応答してSSP酵素発現を誘導する能力の喪失は、正準ATF-4標的、ASNSの誘導の欠如によって測定されるように、ATF-4反応を活性化する一般能力の喪失を伴った(
図31および
図32)。これらの結果は、細胞が、いずれかの介入処理単独とは異なり、セリン飢餓とSSP阻害との組み合わせに反応できることを示唆する。
【0097】
実施例6:PHGDHi/-SG処理は全般的タンパク質合成を阻害する
PHGDH活性が、セリンおよびグリシン除去後に誘導されるATF-4反応に影響を与えるやり方を調査するために、ATF-4誘導の原因となる上流の制御因子の活性化のレベルを調べた。アミノ酸飢餓に応答して、無電荷tRNAの蓄積が、キナーゼである一般的制御非抑制性2(General Control Nonderepressible 2:GCN2)の活性化および自己リン酸化をもたらす。GCN2は次いで、真核生物翻訳開始因子2α(eIF2α)をセリン51でリン酸化し、全般的翻訳の一般的な下方制御をもたらすが、ATF-434の翻訳を選択的に誘導する。セリンおよびグリシン除去は、HCT116およびDLD-1細胞においてGCN2およびその標的eIF2αのリン酸化を誘導した(
図34)。興味深いことに、このGCN2およびeIF2αのリン酸化の誘導は、PH755と同時処理した細胞で維持されるかまたはさらにいっそう顕著であり(
図34)、二重処理した細胞におけるATF-4上方制御の欠如が、その上流の制御因子の活性化の欠如を原因とするものではなかったことを実証した。ATF-4タンパク質レベルはまた、ユビキチン依存性プロテアソーム分解によっても制御することができる。しかしながら、プロテアソーム阻害物質MG-132による細胞の処理は、完全培地中で増殖させた細胞におけるATF-4の強い蓄積をもたらしたものの、-SG培地+PH755中で増殖させた細胞では、ATF-4タンパク質レベルまたは標的遺伝子産物ASNSおよびPSATの発現は回復しなかった(
図35)。
【0098】
さらに、遺伝子発現分析は、PHGDH阻害物質の存在にもかかわらず、ATF4がセリンおよびグリシン欠乏の24時間後まで転写レベルで誘導されたことを示した(
図36)。これらのデータは、二重処理した細胞におけるATF-4誘導の欠如が、タンパク質分解の増加または転写の減少を原因としなかったことを示す。予想通り、ATF-4標的遺伝子、ASNSおよびSSP酵素の転写は、セリンおよびグリシン飢餓細胞において強力に上方制御された(
図36および
図37)。興味深いことに、ATF-4標的遺伝子の転写は、-SG培地+PH755中で増殖させたさまざまな細胞株におけるATF-4誘導の程度を反映した。これらの条件下でATF-4のある程度の誘導を維持した(
図38)DLD-1細胞は、PHGDH、ASNS、PSAT、およびPSPHの発現を誘導する能力を保持し(
図36および
図37)、ATF-4のより鈍化した誘導を示した(
図38)HT-29およびHCT116細胞は、これらのATF-4標的遺伝子を転写活性化する能力のより深刻な欠如も示した(
図36および
図37)。
【0099】
PH755処理は、主としてATF-4またはATF-4標的遺伝子の転写に影響を及ぼさなかったが、これらのタンパク質の各々のその後の発現に影響した。これが、この条件で認められるセリンおよびグリシン利用可能性の劇的な減少の結果として生じる一般的な翻訳の阻害を反映したどうかを判定するために、CMまたは-SG培地+PH755中で増殖させた細胞における新たに合成させたポリペプチド内へのピューロマイシン、チロシルtRNA模倣物の取り込みを分析した。興味深いことに、セリン/グリシン除去に応答してピューロマイシン標識ペプチドの量の小幅な減少が観察され、この低下は、PHGDH阻害物質の存在下でより顕著であった(
図39)。二重処理した細胞における翻訳の全般的阻害と一致して、c-MYC、HIF1α、およびp53などの短命なタンパク質の蓄積を促進するプロテアソーム阻害の能力は、-SG+PH755処理細胞において十分に遮断された(
図40)。タンパク質合成の一般阻害を誘導する他の条件(例えば、シクロヘキシミドまたはピューロマイシン処理)、mTORC1は、リン酸化されたS6Kの蓄積によって示されるように、二重処理した細胞において過剰活性化される(
図41)。したがって、これらのアミノ酸の細胞外および細胞内供給の両方の阻害によって惹起されるセリンおよびグリシン利用可能性の欠如(
図11)は、正常な翻訳を妨げ、ATF-4媒介性防御反応の誘導を阻止する。このモデルを支持するように、PH755による処理はERストレスに応答するATF-4標的の誘導を妨げなかった(
図42)ことから、ATF-4反応に対するPHGDH阻害の作用は、セリンおよびグリシン欠乏に特異的であった。さらに、ギ酸およびグリシンの二重処理した細胞への補充、セリン利用可能性のある程度のレベルを回復した処理(
図25)は、ATF-4反応を十分にレスキューした(
図43)。したがって、細胞外セリンの非存在下で、PHGDH活性は、全般的タンパク質合成を維持するのに必須となり、防御的ATF-4反応の誘導を可能にする。
【0100】
実施例7:セリン/グリシンを含まない食餌とPHGDH阻害物質との組み合わせはインビボで良好な忍容性を示す
インビトロでのデータは、セリンおよびグリシン欠乏に対する増殖抑制反応は、PHGDH阻害物質による細胞の処理によって大幅に増強されることを示す。したがって、このアプローチのインビボでの効果を試験した。PH755処置による食餌性セリン/グリシン制限の忍容性を評価するために、腫瘍を有さない免疫適格性C57BL/6Jマウスのコホートにおける種々の処置に対する応答を試験した。-SG食餌に移行したマウスは、試験期間にわたって安定化された体重のわずかな低下を示した(
図44)。PH755単独での処置は、これらのマウスにおいていかなる検出可能な有害反応ももたらさず、対照マウスと比較して体重を減らさなかった(
図44)。しかしながら、PH755および-SG食餌で同時処置したマウスは、活動的な状態を維持したまたでありかつ健常に見えたにもかかわらず、いずれかの処置単独と比較して大幅な体重の減少を示した(
図44)。体重減少はPH755の用量に高応答性であり、用量の調節(75~50 mg/kg)は、試験期間にわたって体重減少を20%未満に制限するのに成功した。
【0101】
セリンは脳の発達および機能において重要であり、ヒトにおけるPHGDH欠損は、小頭症、精神運動発達遅滞、およびてんかん発作などの神経学的異常をもたらすおそれがある。処置の20日後のC57BL/6Jマウスのコホートの脳形態に対する-SG食餌およびPHGDH阻害物質の影響を評価した。梨状葉皮質、尾側間脳、尾側中脳、および吻側小脳のレベルでの4群のマウスの脳からの冠状切片の顕微鏡試験は、試験した切片のいずれにおいても何らかの病理組織学的病変を示さなかった。実際、ヘマトキシリン&エオシン染色した切片は、変性、壊死、または炎症の証拠を有さない正常な組織学的特徴を示す(
図45および
図46)。さらに、脳の重量は、全ての群のマウスで変化しないままであった(
図45)。これらの正常マウスにおける二重処置の毒性の他の徴候を探した。エンドポイントでの血漿ASTおよびALT活性の測定は、-SG食餌およびPH755で処置した群のマウスにおける肝臓毒性のこれらのマーカーの有意な上昇を何ら示さず(
図47)、血漿尿素およびクレアチニンレベルは、二重処理したマウスで正常なままであり、腎臓損傷が存在しなかったことを示唆した(
図48)。マウスにおける二重処置の唯一の明らかな有害作用は体重減少であり、小腸に由来する正常なマウスオルガノイドを用いるインビトロでの研究は、組み合わせ処置がそれらの成長能力を変化させたことを明らかにした(
図18)。セリンおよびグリシン飢餓またはPHGDH阻害単独は、消化管形態に対して検出可能な作用を有さなかったものの、-SG食餌およびPH755で同時処置した動物において腸絨毛の長さの有意な減少(
図49)が確認され、これらのマウスにおいて認められる大幅な体重減少と一致した。しかしながら、これらのマウスは、Ki-67染色によって評価された、陰窩増殖の明らかな異常を示さず(
図50)、陰窩恒常性が相対的に摂動を受けていないことを示唆した。これらの結果は、PHGDH阻害物質の用量の低下がさらなる体重減少を停止させるという観察と一致し、短期間の組み合わせ処置は長期間の損傷を引き起こさないことを示唆する。
【0102】
実施例8:セリン/グリシンを含まない食餌とPHGDHとの組み合わせはインビボで腫瘍成長を妨げる
組み合わせ療法の抗腫瘍効果を調べるために、インビトロで試験されている結腸がん細胞株の2つ、DLD-1およびHCT116、を有する異種移植モデルを用いた。細胞の皮下注射後、腫瘍が現れ始めたときに、マウスを-SGまたは対照食餌に移行し、2~4日後にPH755で処置した。腫瘍を担持していないマウスで認められるように、二重処置したDLD1腫瘍担持マウスは、いずれかの処置単独と比較してより大きな体重減少を示したが、-SG食餌と併せて用いられるPH755の用量の慎重な調整は、実験期間にわたってこれらのマウスの体重減少を20%未満まで限定することができる(
図51)。
【0103】
この増強された体重減少は、HCT116実験において食餌変更とPH755処理との間の時間を2日から4日に増やすことによって回避された(
図51および
図52)。試験のエンドポイントでの循環アミノ酸レベルの分析は、-SG食餌が血漿セリンおよびグリシンレベルの減少をもたらしたという以前の観察を確かめた(
図53および
図54)。PH755によるマウスの処置は、循環セリンおよびグリシンに対するより緩やかな作用を有したのに対して、-SG食餌とPH755との組み合わせは、血漿セリンおよびグリシンレベルを最も効率的に低下させ、絶対値濃度は58 μMセリン(これに対して、対照マウスでは267.7 μM 、-SG食餌のみを与えたマウスでは99.9 μM)および102.3 μMグリシン(これに対して、対照マウスでは367.6 μM、-SG食餌のみを与えたマウスでは143.6 μM)の低さに到達した(
図53および
図54)。DLD-1細胞から生じる腫瘍の成長は、食餌性介入処理またはPH755処理単独によって影響されず(
図55)、インビトロでのこれらの細胞の増殖に対してこれらの処理のいずれも作用がなかったことと一致した(
図2)。しかしながら、食餌とPH755との組み合わせは、これらの腫瘍の成長を強力に抑制した(
図55)。HCT116異種移植腫瘍の成長は、食餌性セリンおよびグリシン制限に対してある程度の感受性を有し、かつPH755で処置したマウスにおいて減少の傾向も示し(
図56)、HCT116腫瘍成長24に対するPH755の作用を示す以前の報告と一致した。一方で、食餌とPH755との組み合わせ処置は、これらの腫瘍の成長をほぼ完全に遮断した(
図56)。
【0104】
興味深いことに、組み合わせ療法で処置されたDLD-1腫瘍における活性カスパーゼ3陽性細胞の数の増加によって反映されるように、二重処置した腫瘍で観察された強力な成長抑制は、細胞死の増加を伴った(
図57)。これらのマウスからの腫瘍におけるセリンおよびグリシンレベルの分析は、血漿からの結果と酷似しており、PH755処置または-SG食餌のいずれかが腫瘍内セリンおよびグリシンレベルを低下させたことを示した(
図58および
図59)が、いずれの場合にも、-SG食餌は、PHGDH阻害物質による処置より腫瘍内セリンおよびグリシンレベルを低下させるのにより効果的であった。HCT116腫瘍は、食餌と薬物との組み合わせを処置したマウスにおいてセリンおよびグリシンのわずかなさらなる低下を示した(
図59)が、DLD1腫瘍では、-SG食餌に応答するセリンの低減は、追加のPH755処置によってさらなる影響を与えなかった(
図58)。それにもかかわらず、二重処置したマウスにおける腫瘍内グリシンのさらなる低減は、SSPによる流動(flux)が二重処置した腫瘍ではより低いこと、およびセリンの低い定常状態レベルの維持は、これらの条件下での成長(およびセリン消費)の減少を反映する可能性があることを示唆する(
図58)。
【0105】
インビトロでのデータは、セリン飢餓およびPHGDH阻害によるセリン利用可能性の完全な阻害が、一炭素代謝の欠損および翻訳の全般的阻害を導き、ATF-4反応を誘導できないことと相関したことを示した。インビボでの食餌性セリン/グリシン飢餓およびPHGDH阻害に対するこれらの反応を調べるために、腫瘍におけるプリンレベルを調べた。インビトロで述べたように(
図25)、二重処置したマウスからの腫瘍における総ATPまたはGTPレベルに相違がないことが認められ(
図60)、二重処置した腫瘍細胞の増殖の減少を反映している可能性があった。メチオニン回路では、SAHからのSAMの再生は一炭素単位を要求する。興味深いことに、-SG食餌マウスからの腫瘍におけるSAM/SAH比の明確な低下が認められ、-SG食餌+PH755でのマウスではさらに低減した(
図61)。これらの結果は、二重処置したマウスに悪化する、-SG食餌でのマウスにおける一炭素利用可能性の欠如と一致する。
【0106】
ATF-4反応を調べるために、DLD-1腫瘍において2つのATF-4標的、PHGDHおよびPSAT1の発現(
図62および
図63)を測定した。これらの腫瘍の免疫組織化学分析は、-SG食餌によるマウスの給餌が、腫瘍においてPSAT1の明確な誘導、そしてより少ない程度のPHGDH、をもたらしたことを明らかにし、インビボでのATF-4反応の誘導を示した。これに対して、PHGDH阻害物質単独でのマウスの処置は、PHGDHまたはPSAT1発現の何らかの変化をもたらさず、セリンおよびグリシンの食餌性制限のみが、インビボでATF-4反応を導くのに十分なセリンおよびグリシン腫瘍内レベルを枯渇させるのに有効であったことを示唆した。PSAT-1およびPHGDHの誘導は、-SG食餌のみを与えたマウスからの腫瘍と比較して、二重処置した腫瘍で同等またはより一層顕著であり、インビボでは、組み合わせ処置は、腫瘍細胞がATF-4反応を誘導する能力を損なうのに十分な利用可能なセリンを低減させなかったことを示した(
図62および
図63)。まとめると、これらのデータは、腫瘍成長の抑制が、翻訳の阻害よりむしろセリン代謝の欠損と相関することを示す。
【0107】
実施例9:セリンおよびグリシンの食餌性制限とPHGDH阻害との組み合わせは、協同して、腸がんの遺伝子モデルにおいて腫瘍量を低下させかつ生存を改善する
図64A:ApcMin/+マウスを80日でCTR食餌(赤線)または-SG食餌(黒線)に移行させ、続いて、84日で9日間毎日100 mg/kg PH755で処置した。処置を停止した後、臨床エンドポイントに到達するまで、マウスをCTR食餌または-SG食餌のいずれかで維持した。対照(点線)または-SG食餌(点線)でのApcMin/+マウスの生存を示すデータと比較して、これらのデータを示す。生存率を食餌の変化から算出した。CTR:n=37;-SG n=35;CTR+PH755:n=12;-SG+PH755 n=12(ns:有意差なし、
*P<0.05;
***P<0.001;Mantel-Cox検定)。
【0108】
図64B。PH755で処置しかつCTR食餌または-SG食餌のいずれかを与えたApcMin/+マウスからの小腸において、総腺腫面積を臨床エンドポイントで測定した。データは平均値±SEMとして提示される。CTR+PH755 n=12;-SG+PH755 n=9。(
****P<0.0001、対応のない両側スチューデントt検定)。
【0109】
図64C。PH755で処置しかつCTR食餌または-SG食餌のいずれかを与えたApcMin/+マウスから、屠殺時に血漿(左パネル)または腸腫瘍(右パネル)を採取した。LC-MS分析を実施してセリンおよびグリシン含有量を評価した。データは平均値±SEMとして提示される。血漿:CTR+PH755 n=12;- SG+PH755 n=10。腫瘍:CTR+PH755 n=10;-SG+PH755 n=8。(
** p<0.01;
***P<0.001、対応のない両側スチューデントt検定)。
【0110】
図64D。Villin-CreER;Apcfl/+;LSL-KrasG12D/+マウスを6~8週齢でタモキシフェンにより誘導し、次いで、誘導の2週後に、正常固形飼料のままとするかまたは-SG食餌に移行した。-SG食餌に移行した14日後、マウスを、100mg/kg PH755で7日間処置しその後2~12日間50mg/kgに移行するか、または50 mg/kg PH755で30日間のいずれかで処置した。薬物処置を停止した後、次いで、人道的エンドポイントに到達するまで、マウスを各食餌で維持した。生存率を誘導時から算出した。CTR+Veh:n=10;CTR+PH755 n=10;-SG+PH755 n=14。(ns:有意差なし、
*P<0.05;
**P<0.01;Mantel-Cox検定)。
【0111】
図64E。固形食餌または-SG食餌を与えかつビヒクルまたはPH755で処置したVillin-CreER;Apcfl/+;LSLKrasG12D/+マウスにおける1ロール当たりの結腸でのH&E染色から、腺腫の総数をスコア化した。データは平均値±SEMとして提示される。CTR+Veh:n=8;CTR+PH755 n=8;-SG+PH755 n=12。(
** p<0.01;
****P<0.0001、対応のない両側スチューデントのt検定)。
【0112】
実施例10:これまでの実施例で用いられた方法
細胞培養
細胞株は全て、通常の品質管理を受け、これらには、マイコプラズマ検出、バリデーションのためのSTRプロファイリングおよび種の特定が含まれた。細胞は、5% CO2の加湿雰囲気中で37℃にて培養された。HT-29、SW48、SW480、SW620、CACO2、HCT116、RKO、VACO5、およびMDA-MB-468細胞は、10% FBSを補充したDMEM中で培養され;DLD-1、HCT-15、およびSW1417細胞は、10% FBSを補充したRPMI-1640培地中で培養され、LoVoおよびCL-34細胞は、10% FBSを補充したDMEM/F-12(Gibco、11320)中で培養された。
【0113】
セリンおよびグリシン欠乏
全てのセリンおよびグリシン欠乏実験で、細胞は、10%透析FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、D-グルコース(5 mM)、ピルビン酸ナトリウム(65 μM)、1×MEMビタミン溶液(Gibco、11120)、L-グルタミン(2 mM)、L-プロリン(0.15 mM)、L-アラニン(0.15 mM)、L-アスパラギン酸(0.15 mM)、L-グルタミン酸(0.15 mM)、およびL-アスパラギン(0.34 mM)を補充したMEM(-SG培地)中で培養された。完全培地(CM)は、0.4 mM L-セリンおよび0.4 mM L-グリシンを補充した前述の培地に相当する。
【0114】
増殖曲線
細胞(細胞株に応じて2×104~3×104細胞/ウェル)を、それらの通常の培地で24ウェルプレート中にプレーティングした。次の日、PBSで洗浄した後、細胞を-SG培地またはCMに移し、DMSOで希釈した10 μM PH755またはDMSO単独で処理した。計数工程では、細胞をトリプシン処理し、PBS-EDTAで懸濁し、CASYモデル TT Cell Counterで計数した。各時点での相対的細胞数を、培地変更前に測定した細胞の数に基づき算出した。ギ酸およびグリシン補充を伴う増殖曲線実験では、HT-29、HCT116、およびDLD-1細胞を24ウェルプレート中に播種した(2×104細胞/ウェル)。ギ酸ナトリウム(1 mM)および/またはグリシン(0.4 mM)を-SG培地+10 μM PH755中に希釈し、培地を2日毎に新しくした。
【0115】
オルガノイド
Vil1-creER;Apcfl/flおよびVil1-creER;Apcfl/fl;KrasG12D/+マウスに由来する腺腫性小腸組織から陰窩を単離した。CRISPR/Cas9技術を用いるApc短縮型変異を保有するApc5オルガノイドの作製およびVillin-CreERT2マウスからの健常な小腸の近位部に由来する正常オルガノイドの単離を実施した。マウスからのがんオルガノイドを、1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液、0.1% BSA、2 mM L-グルタミン、10 mMヘペス、50 ng/mL EGF、100 ng/mLノギン、500 ng/mLスポンジン、1×N-2サプリメント、および1×B-27サプリメント(ThermoFisher 17504044)を補充したAdvanced DMEM/F12で構成された腫瘍オルガノイド培地(CM)中で培養した。-SG培地は、セリンおよびグリシンを含まない前述の培地に相当する。マウスからの正常オルガノイドを、正常オルガノイド培地、100 ng/mL Wnt-3a、1 mM N-アセチル-L-システイン、10 μM Y 27632、および4 mMニコチンアミドを補充した腫瘍オルガノイド培地の改変中で増殖させた。
【0116】
ヒトオルガノイドを、ヒトオルガノイド培地、10 nM FGF-塩基性、100 ng/mL Wnt-3a、1 μMプロスタグランジンE2、4 mMニコチンアミド、20 ng/mL HGF、10 nM FGF-10、10 nMガストリンI、10 μM Y-27632、0.5 μM A 83-01、および5 μM SB 202190を補充した腫瘍オルガノイド培地の第2の改変中で増殖させた。
【0117】
分割工程では、オルガノイドをTrypLEを用いる機械的ピペット操作を通じて収集し、37℃にて10分間インキュベートし、氷冷1×HBSSで3倍体積に希釈し、270gで4℃にて5分間遠心沈降させた。次いで、ペレットを、成長因子を低減させたマトリゲルで再懸濁し、24ウェルプレートにプレーティングした。次いで、マトリゲルを37℃にて15分間インキュベートし、上述したCMを1 mL加えた。翌日、オルガノイドをPBSで洗浄し、培地を10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地と交換し、増殖させた。写真を光学顕微鏡で定期的に撮影し、ImageJソフトウエアを用いてオルガノイド直径を測定した。
【0118】
PHGDH KO細胞の作製
以下のガイドRNA:
を含有するpLentiCRISPRv2ベクターを用いてPHGDHを標的にした。HEK293T細胞を、jetPRIME試薬(Polyplusトランスフェクション)を用いてpsPAX2およびVSV.Gと一緒にこのレンチウイルスプラスミドでトランスフェクトした。24時間インキュベーション後、培地を変え、48時間後に、ウイルス粒子含有培地をろ過し(0.45 mm)、ポリブレン(4 μg/ml、Sigma-Aldrich)と混合した。レンチウイルスを含有する培地を標的細胞と一緒に24時間インキュベートした。次いで、HT-29およびDLD-1細胞をピューロマイシンで3週間選択し、PHGDH発現の減少について分析した。
【0119】
ATF-4 siRNAトランスフェクション
Lullabyトランスフェクション試薬を用いて、細胞をsiRNAでトランスフェクトした。
【0120】
BrdU/7-AAD染色
HCT116およびDLD-1細胞を-SG培地またはCM中で48時間増殖させ、DMSOで希釈した10 μM PH755またはDMSO単独で処理した。ブロモデオキシウリジン(BrdU)陽性細胞のパーセンテージを決定するために、次いで、10 μM BrdUを培養培地にさらに5時間添加し、細胞周期分析では、10 μM BrdUを30分間のみ添加した。次いで、細胞を収集し、固定し、APC BrdU Flowキットを用いてAPC抗BrdU抗体(および細胞周期分析では7-AAD)で染色した。蛍光をFortessaフローサイトメーターでFACSdivaにより取得し、FlowJo(バージョン10.5.2)を用いて分析を実施した。
【0121】
ウエスタンブロット
タンパク質溶解物を、ホスファターゼ阻害物質カクテルおよび完全プロテアーゼ阻害物質を補充したRIPA緩衝液中で処理した。溶解物を、プレキャストNuPAGE 4~12% Bis-Trisタンパク質ゲルを用いて分離し、ニトロセルロース膜に移した。一次抗体とのインキュベーション後、適切な二次抗体を用いてタンパク質を検出した。ウエスタンブロットを、Odyssey CLxを用いてスキャンしたか、またはECL化学発光検出キットを用いて可視化した。
【0122】
使用した一次抗体は以下の通りであった:PHGDH(13428)、ATF-4(11815)、ホスホeIF2α(Ser51)(3398)、ホスホp70S6キナーゼ(Thr389)(9234)、p70S6キナーゼ(9202)、c-Myc(5605)、HIF-1a(14179)、カスパーゼ3(9662)、切断型カスパーゼ3(Asp175)(9661)、β-アクチン(4970);GCN2(sc-374609)、eIF2α(sc-133132)、p53(sc-126)、ビンキュリン(sc-73614);PSAT(ab96136)、PSPH(ab96414)、ホスホGCN2(Thr899)(ab75836);Atlas AntibodiesからASNS(HPA029318);ピューロマイシン(MABE343)。全ての一次抗体を1:1000希釈で希釈した。
【0123】
タンパク質の合成および分解
細胞を-SG培地またはCM中で24時間増殖させ、DMSOで希釈した10 μM PH755またはDMSO単独で処置した。タンパク質合成を評価するために、陰性対照ウェルを除いて、ウエスタンブロット分析のために細胞を収集する10分前に、各ウェルにピューロマイシン(最終濃度:90 μM)を添加した。指示された場合、CM培地中で増殖させた細胞をシクロヘキシミド(10 μg/mL)で最後の5時間処理し、翻訳阻害の対照をもたらした。新たに合成されたタンパク質内へのピューロマイシンの取り込みを、抗ピューロマイシン抗体を用いるウエスタンブロットにより評価した。プロテアソーム阻害に応答する短命タンパク質の蓄積を評価するために、ウエスタンブロット分析のために細胞を収集する前に、10 μM PH755ありの-SG培地もしくはCMまたは10 μM PH755なしの-SG培地もしくはCM中で24時間増殖させた細胞を、プロテアソーム阻害物質 MG-132(10 μM)で最後の6時間処理した。
【0124】
qPCR
HT-29、HCT116、およびDLD-1細胞を、-SG培地またはCM中で6時間または24時間増殖させ、DMSOで希釈した10 μM PH755またはDMSO単独で処理した。DNAのオンカラム消化を実施するRNeasy Miniキットを用いて総RNAを抽出し、High-Capacity cDNA Reverse Transcriptionキットを用いて逆転写した。PrimeTime Gene Expression Master Mixを下記の表1に列記したプライマーと共に用いて、qPCRを実施した。
【0125】
【0126】
QuantStudio 7 FlexリアルタイムPCRシステムを全ての反応で用いた。遺伝子発現をACTB(b-アクチン)ハウスキーパー遺伝子に対して正規化し、Pfaffl法に従って分析し、CM中で6時間増殖させた細胞と比較した相対的な単位として表した。
【0127】
液体クロマトグラフィー-質量分析
HT-29細胞(2.4×105個)、HCT116細胞(1.8×105個)、DLD-1細胞(1.8×105個)、およびMDA-MB-468細胞(2.4×105個)をそれらの通常培地で6ウェルプレートにプレーティングした。細胞計数のために二つ組のプレートを用い、細胞数に基づくLC-MS分析を正規化した。16時間後、細胞をPBSで洗浄し、10 μM PH755を補充したまたは補充していないCMまたは-SG培地に24時間移行した。代謝物抽出の6時間前に、グルコースを10 mM U-[13C]-グルコースに置換したCMまたは-SG培地 +/- 10 μM PH755と培地を交換した。短期間の実験では、代謝物抽出前の3時間または6時間のみ、グルコースを10 mM U-[13C]-グルコースに置換した前述の培地に細胞を移動した。レスキュー実験時のセリンへのグリシン変換の測定では、細胞を、10 μM PH755、1 mMギ酸ナトリウム、および0.4 mMグリシンを補充した-SG培地中で24時間増殖させた。次いで、代謝物抽出前の1時間、この培地を、グリシンを0.4 mM 13C2
15N1-グリシンに置換した適合培地に交換した。
【0128】
試料の半分で、代謝物抽出の1分前に1 mM未標識セリンの刺激を培地に加え、標識セリンを蓄積させた。次いで、細胞をPBSで洗浄し、以下の比50:30:20でのメタノール、アセトニトリル、およびH2Oで構成されている氷冷抽出緩衝液を用いて、代謝物を抽出した。腫瘍試料に対するLC-MS分析では、Precellys 24ホモジナイザーを用いて、組織をホモジナイズした(前述の抽出緩衝液1 mL当たり20~40 mgの組織)。試料を回転させ(16,000g/10分/0℃)、上清を収集し、再度遠心分離した(16,000g/10分/0℃)。次いで、上清をLC-MS分析のために収集した。
【0129】
マウス血漿に対するLC-MS分析では、血漿を同じ抽出緩衝液で20~50倍希釈し、30秒間ボルテックスし、遠心分離した(16,000g/10分/0℃)。次いで、分析のために上清を収集した。血漿中のセリンおよびグリシンの絶対値レベルを、血漿で希釈した13C3
15N2-セリンおよび13C2
15N1-グリシンによる8点検量線(2.5~800 μM)を用いて決定した。LC-MS分析を実施した。
【0130】
インビボでの実験
マウス(3~5匹/ケージ)を自由に食物および水にアクセスできるようにし、7:00に始まり19:00までの12時間の昼夜サイクルで維持した。部屋を55%湿度で21℃で維持した。実験前の少なくとも1週間、マウスを順応させた。次いで、それらを実験群に無作為に割り当てた。この試験で用いられる実験用食餌(対照食餌および-SG食餌)は、「食餌1-対照」および「食餌1-SGフリー」として記載された。簡単に説明すると、対照食餌は、全ての必須アミノ酸、ならびにセリン、グリシン、グルタミン、アルギニン、シスチン、およびチロシンを含有した。-SG食餌は、対照食餌と同じだったが、セリンおよびグリシンが取り除かれており、これは、他のアミノ酸の比例的に増加させたレベルによって補われ、同じ総アミノ酸含有量に到達した。
【0131】
異種移植実験
CD-1雌ヌードマウス(7~9週齢)に、PBSで懸濁した100μlのHCT116細胞(2×106細胞)または100 μlのDLD-1細胞(4×106細胞)の一側皮下注射を受けさせた。
【0132】
腫瘍注入の10日(HCT116異種移植実験)または2日(DLD-1異種移植実験)後に、マウスを実験用食餌(対照または-SG)で飼育した。食餌変更の4日(HCT116異種移植実験)または2日(DLD-1異種移植実験)後に、強制経口投与により、ビヒクル(0.5%メチルセルロース、0.5% Tween-80)またはビヒクルで調製したPH755で1日1回マウスを処置した。PH755の開始投与量は100 mg/kgであり、その後、図の説明文に示したように75 mg/kgまたは50 mg/kgに低下させた。皮下での成長をノギスにより週に2~3回測定し、以下の式:(長さ×幅2)/2を用いて腫瘍体積を算出した。
【0133】
C57BL/6J実験
C57BL/6J雄マウス(14週齢)を、PH755またはそのビヒクルによる処置を開始する2日前に実験用食餌(対照または-SG)で飼育した。マウスをPH755またはそのビヒクルで強制経口投与により1日1回20日間処置した。PH755の開始投与量は75 mg/kgであり、その後、50 mg/kgに低下させ、初回体重の20%未満に体重減少を維持した。
【0134】
免疫組織化学的検査
全ての組織を10%中性緩衝化ホルマリン中に固定し、パラフィン中に包埋した。PHGDHおよびPSAT1染色では、スライドをキシレンでパラフィン除去し、一連の段階的な工業用メタノール変性アルコール溶液および蒸留水を用いて再水和した。抗原賦活化を、pH 6の0.1 Mクエン酸緩衝液を用いてマイクロ波で23分実施した。内在性ペルオキシダーゼのブロッキングを、1.6% H2O2を用いて室温にて10分間実施し、タンパク質ブロッキングを、2.5%正常ウマ血清(MP-7401、Vector)を用いて4℃にて一晩実施した。一次抗体をPHGDH抗体(HPA021241)では1:1000およびPSAT1抗体(PA5-22124)では1:500に1% BSAで希釈し、室温にて1時間インキュベートした。HRPウマ抗ウサギIgGポリマー(MP-7401、Vector)を室温にて30分間インキュベートした。3,3-ジアミノベンジジン(DAB)色素原(SK-4100、Vector)を室温にて10分間インキュベートした。Sakuraのティシュー・テックプリズマR自動染色装置で、スライドをHarrisヘマトキシリンによって対比染色し、脱水し、透徹およびマウントした。PHGDHおよびPSAT1染色強度の定量化では、腫瘍1つ当たり最低3領域をImageJで定量化した。活性カスパーゼ3免疫組織化学的検査をDiscovery Ultra Ventanaプラットフォーム上で実施した。
【0135】
抗原賦活化をVentana Medical SystemsからのCell Conditioning 1(CC1)によって得た。一次抗体(AF835)を1:1250で希釈し、60分間インキュベートした。活性カスパーゼ3染色では、腫瘍1つ当たり最低3領域をQuPathからの陽性細胞検出アルゴリズム(バージョン0.1.2)で定量化した。全てのスライドをZEISS Axio Scan Z1スライドスキャナーでスキャンし、画像をZEISS ZEN 2.6(青版)ソフトウエアにより作製した。腸ロールでは、免疫組織化学をBond Rx Autostainer Leica Bond Intense R染色キットで実施した。スライドをBond Dewaxで72℃にて30分間パラフィン除去し、抗原賦活化をER2で100℃にて20分間達成した。一次抗体(Ki67 SP6、ab16667)を1/100で希釈し、35分間インキュベートした。絨毛の長さの測定では、小腸の同じ領域からの絨毛(マウス1匹当たり少なくとも15個)を、ImageJを用いて陰窩/絨毛境界部から絨毛先端まで測定した。
【0136】
脳のサンプリングおよび病理学検査
脳に対する物理的外傷を避けるために、二酸化炭素窒息を用いてC57BL/6Jマウスを選別した。マウスを直ちに解剖し、有毛皮膚および軟部組織を頭蓋表面から除去した。頭頂から前頭縫合まで切開を実施し、脳実質内へ固定液を迅速に浸透させた。頭部を250 mLの10%中性緩衝化ホルマリン中に浸漬し、2週間固定した。完全固定後、脳を頭蓋骨から取り出し、マウス用ブレインマトリックス(BSMYS001-1)を用いて整えた。梨状葉皮質、尾側間脳、尾側中脳、および吻側小脳のレベルで4つの冠状切片を得た。組織試料にパラフィン包埋のための通常処理を行い、4 μmで薄片を作り、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0137】
脳の病理組織学的検査を有資格の獣医病理学者により実施した。
【0138】
血液生化学的マーカーアッセイ
血漿ALTおよびAST活性をそれぞれ、アラニントランスアミナーゼ活性アッセイキット(およびAST活性アッセイキットを用いて測定した。
【0139】
統計分析
全てのデータを平均値±SEMとして表し、各統計分析を図の説明文に詳述する。データをExcel(バージョン16.16.26)で収集し、全ての統計分析をGraphPad Prism 8(バージョン8.3.1)ソフトウエアを用いて実施した。対応のないスチューデントt検定を実施して、2つの群を相互に比較した。2群間の分散が不等であった場合、Welchの補正を適用した。
【0140】
3群以上を比較するために、Tukeyの多重比較検定による一元配置ANOVAを用いて、統計的有意性を判定した。腫瘍体積および体重の分析では、二元配置ANOVA+Tukeyの事後検定を実施した。0.05を下回るp値を統計的に有意であるとみなした。
【0141】
有意性は以下のように示される:* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001、ns:有意差なし。全ての測定値は別個の試料から取得された。腫瘍サイズはこの分野における標準的なプロトコールに基づいており、代謝試料は分析前に順不同に割り当てられた。マウスは処置に対して無作為に割り当てられ、各マウスのアイデンティティは、測定値を収集したときには匿名にされた。
【0142】
実施例11:インビトロでの膵臓および結腸直腸のがん細胞に対する放射線照射のメタボロミクスへの影響
図65パネルA~パネルDは、インビトロでの膵臓および結腸直腸がん細胞に対する放射線照射のメタボロミクスへの影響を示す。パネルAでは、初代マウス膵臓がん(KPC:Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/-)およびヒト結腸直腸がん(HCT116)細胞を5~10グレイ(Gy)の放射線照射に曝露した。24時間後、代謝物を抽出し、pHILICクロマトグラフィーカラムと連結したThermo Exactive Orbitrap質量分析計を用いるLCMSによって分析した。目的変数なしの主成分分析を、全ての特定された代謝物からのデータを用いて実施した。パネルBは、KPCおよびHCT116細胞での倍率変化およびP値に関して特定された代謝物の分布を示すボルケーノプロット(対照 対 10 Gy放射線照射)を示す。パネルCは、不偏性メタボロミクスを代謝経路分析に供した時に特定された有意に変化した代謝物を示す。主要経路のヒット(dominant pathway hit)を示す。パネルDは、KPC(上部パネル)およびHCT116(下部パネル)細胞を完全培地(Ctr)またはセリンおよびグリシンを欠いている培地(-SG)のいずれかで増殖させ、それぞれ10または5グレイ放射線照射(IR)を照射したことを示す。経時的(時)な細胞数が示される。データは三つ組のウェルの平均であり、かつエラーバーはSDである。
【0143】
実施例12:インビボでの標的放射線療法への応答に対する食餌性アミノ酸制限の作用
図66パネルA~パネルEは、インビボでの標的放射線療法に応答する食餌性アミノ酸制限の作用を示す。パネルAは、放射線照射に対するKPC腫瘍の応答に対するセリンおよびグリシンの食餌性制限の影響を試験するパイロット実験の実験セットアップを図示する模式図である。C57BI6(n=4)マウスの群に2×10
6初代C57BI6 KPC細胞を注射した(皮下、両側性)。腫瘍が形成されたら、マウスを対照またはセリンおよびグリシンを含まない食餌で飼育した。4日間のそのような食餌の後、マウスに麻酔をかけ、Xstrahl SARRP中に位置付けた。高分解能コーンビームCTイメージングを用いて、2 mm集光ビームのx線放射線照射(20 Gy)を各腫瘍に照射した。パネルBおよびパネルCは、放射線療法単独の代謝への影響を評価するために腫瘍組織に対して実施した目的変数なしの主成分分析の結果を示す。インビボで最も有意に変化した代謝物は、インビトロで特定されたものと同じ代謝経路に集中した。パネルDは、免疫組織化学的検査によって切断型カスパーゼ3について染色した代表的な腫瘍横断面を示す。上部パネルは、染色切片(切断型カスパーゼ3を茶色に染色)を示し、下部パネルは、Haloイメージ分析ソフトウエアによって作製された組織学的スコアの擬似カラーマッピング(false color mapping)を示す。パネルEは、Halo画像分析ソフトウエア用いて定量化されるKi67および切断型カスパーゼ3の染色の定量化を示す。n=8腫瘍/群、バーはSEMである。データは、放射線療法との組み合わせでのセリンおよびグリシンを含まない食餌でのマウスから得られた細胞が、他の実験条件より低下した増殖およびアポトーシスを示したことを示す。
【0144】
実施例13:セリン、グリシン、およびプロリンを欠いているサシェ製剤
セリン、グリシン、およびプロリンを欠いている製剤を含有するサシェを調製し、これは0.8 g/kg/日のアミノ酸を含有する。表2は、組成物の成分および量を示す。アミノ酸サシェは、低タンパク質かつ低炭水化物食と併せて対象に投与される。低タンパク質かつ低炭水化物食は、以下の1日当たりの食事摂取をもたらす:1)1711 kcal/日(サシェにより1923 kcal/日);2)約10 gのタンパク質/日;3)約420 mgのプロリン/日;4)約410 mg/セリン/日;5)約230グリシン/日;6)食物のみのキロカロリーの約9%が炭水化物、2%がタンパク質、および89%が脂肪である食事。
【0145】
【0146】
実施例14:がんを処置するための放射線療法の使用
がんを有する第1の対象を短期の放射線療法で処置して、がんを処置する。放射線療法処置を開始する2日前(すなわち、-2日目)に、第1の対象を実質的にセリンおよびグリシン欠いている食事とする。処置の2日前から始めて2処置の4日後まで(すなわち、-2日目から8日目まで)、合計で10日間、アミノ酸枯渇食が投与される。第1の対象は1日に5 Gyで5日間処置される。第1の対象は、8日目の後、または放射線処置の4日後に、正常な通常食に戻る。第1の対象が放射線療法後に化学療法で処置される場合、第1の対象は、化学療法の間、周期的な食事とする。周期的な食事は、化学療法処置期間の間、第1の対象を交互に5日のアミノ酸枯渇食(例えば、月曜日~金曜日)続いて2日の通常食(例えば、土曜日、日曜日)とする。表3は、がんを処置するための短期の放射線療法を示す。
【0147】
【0148】
がんを有する第2の対象を長期の放射線療法で処置して、がんを処置する。放射線療法処置を開始する2日前(すなわち、-2日目)に、第2の対象を実質的にセリンおよびグリシン欠いている食事とする。処置の2日前から初めて処置の間を通じて(すなわち、-2日目から4日目まで)、合計で7日間、アミノ酸枯渇食が投与される。第2の対象は1日に2 Gyで5日間処置される。第2の対象は、放射線処置の追加ラウンドの開始前2日間、正常な通常食に戻る。その後の放射線照射療法サイクルによって、5日間の2 Gyの放射線照射と共に5日のアミノ酸枯渇食、続いて2日の通常食が投与される。このサイクルは、必要に応じて繰り返される。
【0149】
第2の対象が放射線療法後に化学療法によって処置される場合、第2の対象は、化学療法の間、周期的な食事とする。周期的な食事は、化学療法処置期間の間、第2の対象を交互に5日のアミノ酸枯渇食(例えば、月曜日~金曜日)続いて2日の通常食(例えば、土曜日、日曜日)とする。表4は、がんを処置するための長期放射線療法を示す。
【0150】
【0151】
実施例15:IDO1駆動型トリプトファン代謝は膵臓腫瘍および星細胞に対する一炭素単位の供給源である
インビトロおよびインビボでの膵臓がんモデルを用いて、IDO1発現が、高度に状況依存的であり、接着依存的成長ならびに正準活性化因子IFNγによって影響されたことを示した。がん細胞が、膵星細胞によって取り込まれかつ利用されてプリンヌクレオチド合成を支持することができる、トリプトファン由来のギ酸を遊離することも示した。
【0152】
IDO1駆動型トリプトファン代謝の代謝結果を膵管腺癌(PDAC)の状況で評価した。PDAC腫瘍は、極めて高悪性度であり、臨床アウトカムは不良である。特徴として、PDAC腫瘍は、低血管新生、代謝の乱れを示し、複雑な間質を大きな割合で含む。非癌性間質星細胞は、アラニンなどの栄養素の供給により腫瘍細胞代謝を支持することができる。他の腫瘍モデルとは異なり、PDAC担持マウスは、セリン制限に対して非応答性である。
【0153】
公開データの分析は、膵臓がんを含む複数の腫瘍タイプが、高IDO1発現サブセットを有したことを示した。IDO1を、PDACの遺伝子改変マウスモデルにおいて発現させた。結果は、IDO1発現が、標準的なインビトロ細胞培養条件では十分に表されなかったが、JAK/STATシグナル伝達を介してIDO1を制御する、正準活性化因子IFNγによって、または低接着条件での培養によって、誘導できたことを示した。結果はまた、IDO1ががん細胞によって発現された場合、IDO1は、デノボプリンヌクレオチド合成で用いられるトリプトファンからの一炭素単位の生成を促進したことも示した。さらに、トリプトファン由来のギ酸はがん細胞によって遊離された。膵星細胞(腫瘍間質の重要な成分)は、外因性由来のギ酸を捕捉し、ギ酸をデノボヌクレオチド合成内に振り向けた。
【0154】
実験方法
細胞培養:試験で用いられる全ての細胞株を、加湿インキュベーター内で5% CO2で37℃にて培養した。細胞株をPromega GenePrint 10を用いて確立し、Mycoalert(Lonza)を用いてマイコプラズマについて試験した。AsPC-1(雌)、BxPC-3(雌)、CFPAC-1(雄)、HPAF-II(雄)、Panc 10.05(雄)&SW 1990(雄)細胞を、10% FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.2%アムホテリシンB、およびグルタミン(2 mM)を補充したRPMI中で培養した。マウス ImPSCおよびKPC細胞株を、10% FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.2%アムホテリシンB、およびグルタミン(2 mM)を補充したDMEM中で培養した。混合または純粋C57BL/J背景のいずれかを有するPdx1-cre;LSL-KrasG12D/+;LSL-Trp53R172H/+マウスの腫瘍から、KPC株を単離した。KPC-IDO1&KPC-EV細胞株を、PiggyBacトランスポゾンシステムを用いて純粋なC57BL/J KPC細胞から作成した。ImPSC #2および#3株をPdgfratm11(EGFP)Sorマウスから単離した。
【0155】
マウス:ハツカネズミ(Mus musculus)コホートを事前に環境強化したバリア施設中に収容し、通常固形飼料食餌を維持した。各遺伝子型で雄と雌の混合集団を用いた。コホートは混合系統背景であったが、全てのコホートは同腹仔でマッチングを行なった対照で構成され、人道的臨床エンドポイントで殺傷された。混合背景KPC細胞の同種移植では、Crl:CD1-Foxn1nu(CD1ヌード)雌マウスを用いた(7週齢)。純粋C57BL/J KPC細胞の同種移植では、C57BL/J雌マウスを用いた(7週齢)。
【0156】
ImPSC細胞株の抽出:C57BL/Jマウスから抽出した健常な膵臓組織を刻み、Geyの平衡塩類溶液(GBSS)中の0.1% DNase、0.05%コラゲナーゼP、および0.02%プロナーゼで37℃にて20分間消化した。次いで、大きな断片をもはや見えなくなるまで、組織をすりつぶし、100 μmフィルターを通過させ、GBSSで洗浄した。次いで、細胞をペレット化し、0.3% BSAを有する9.5 mL GBSSおよび8 mLナイコデンツ溶液で再懸濁した。細胞懸濁物を0.3% BSAを含有するGBSSの真下に層状にし、1400×gで4℃にて20分間遠心分離した。底部のナイコデンツ溶液の境界面および上部の水溶液から星細胞を収集した。次いで、単離されたPSCをGBSSで洗浄し、10%高品質グレード(characterized FBS)FBS(HyClone)、100 U/mLペニシリン、および100 μg/mLストレプトマイシンを有するDMEMで再懸濁した。細胞をpRetro.Super.shARFレトロウイルスプラスミドで不死化し、ブラストサイジン(4μM)で選択した。
【0157】
下記に詳述するいくらかのわずかな相違を有するImPSC #1と非常に類似したプロトコールを用いて、ImPSC #2および#3株を単離した。膵臓組織をPdgfratm11(EGFP)Sorマウスから抽出し、小刀で刻み、GBSS中の0.1% DNase Iおよび0.05%コラゲナーゼPで37℃にて30分間消化した。次いで、溶液を100 μmフィルターを通過させ、GBSSで洗浄し、ペレット化し、0.3% BSAを含有する6 mL GBSSで再懸濁した。次いで、細胞懸濁物を8 mL Histodenz溶液(GBSS 中に43.75%)と混合し、0.3% BSAを含有するGBSSの真下に層状にし、1400×gで4℃にて20分間遠心分離した。底部のHistodenz溶液の境界面および上部の水溶液から、星細胞を収集した。PSCを3% FBSを含有するPBSで洗浄し、10% FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.2%アムホテリシンB、およびグルタミン(2 mM)を含有するDMEMで再懸濁した。培養を確立した後、GFPを発現する線維芽細胞をFACSを介して単離し、自然発生的に不死化した。
【0158】
GFPを安定に発現するImPSC #1細胞(ImPSC-GFP細胞)をPiggyBacトランスポゾンシステムによって作製した。簡単に説明すると、5×104 ImPSC #1細胞を6ウェルプレートに播種した。播種の24時間後、リポフェクタミン3000を用いて、細胞を1.5μg Super piggyBacトランスポザーゼ発現ベクターおよび0.6 μg PB-GFP PB-CMV-MCS-EF1-GreenPuroでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、並行して処理したピューロマイシン感受性対照細胞が死ぬまで、細胞を5μg/mLピューロマイシンで48時間選択した。
【0159】
KPC-EVおよびKPC-IDO1細胞株の生成:IDO1-RFPまたはRFPのみを安定に発現する純粋C57BL/J KPC細胞(空ベクター対照)をpiggybackシステムを用いて作製した。ヒトIDO1 cDNAを、XbaIおよびEcoRIを用いて、PB-RFP PB-CMV-MCS-EF1-RedPuro cDNAクローニングおよび発現ベクター内にクローニングした。クローニングの成功を挿入物の全配列決定によって確認した。2.5×105純粋C57BL/J KPC細胞を6ウェルプレートに播種した。播種の24時間後、リポフェクタミン3000を用いて、1.5 μg Super piggyBacトランスポザーゼ発現ベクターおよび0.6 μgのPB-RFP PB-CMV-IDO1-EF1-RedPuro(IDO1過剰発現)またはPB-RFP PB-CMV-MCS-EF1-RedPuro(空ベクター対照)のいずれかで、細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、並行して処理したピューロマイシン感受性対照細胞が死ぬまで、細胞を5μg/mLピューロマイシンで48時間選択した。IDO1の高発現体(expresser)を特定するために、細胞をクローンとして増殖させ、免疫ブロッティングによって発現を検証した。
【0160】
低酸素実験:細胞を播種し、正常組織培養条件下で約80%コンフルエントまで48時間増殖させた。次いで、標準的なRIPA溶解プロトコールに従って、溶解前24時間にわたって、37℃にて1% O2、5% CO2、および94% N2で低酸素ガス混合装置により制御された加湿Whitley H35低酸素ステーションに細胞を移した。
【0161】
接着非依存性3D成長実験:1×106細胞を超低接着プレートに48時間播種した。処置のために、細胞を収集し、50×gで5分間遠心分離し、PBSで洗浄した。次いで、細胞を2 mLの処置培地で再懸濁し、表示した処置時間で超低接着プレートに戻した。
【0162】
条件培地実験:8.7×106 HPAF-IIまたはCFPAC-1細胞をそれらの正常成長培地で10cm皿に播種した。トリプトファンを欠いておりかつ記載された濃度の13C11-トリプトファンを補充した、条件付けのための実験用培地を調合した。48時間の培養後、細胞をPBSで洗浄し、条件付け用の培地を加えた。48時間後、条件付け培地を収集し、0.45 μmフィルターを通過させ、細胞を取り出した。条件培地を使用前に-20℃で保管した。
【0163】
同時培養実験:5×105 ImPSC-GFP細胞を単独または1×104 CFPAC-1細胞いずれかと共に6ウェルプレートに播種した。トリプトファンを欠いておりかつ0.4 mM 13C11トリプトファンを補充した実験用培地を調合した。24時間の培養後、細胞をPBSで洗浄し、ヒトIFNγ(1 ng/mL)もしくはビヒクルのみの対照および/またはエパカドスタット(1 μM)もしくはビヒクルのみの対照を含有する培地を加えた。24時間後、細胞をトリプシン処理によって剥離し、PBSで洗浄し、冷たい補充PBS(PBS+3% FBS、5 mMグルコース、MEMアミノ酸、およびMEM NEAA)中で1×107細胞/mLの濃度に再懸濁した。次いで、細胞懸濁物を70 μmメッシュに通過させて単一細胞懸濁物を確実にし、AriaソーターZ6001を用いる蛍光活性化セルソーティング(FACS)に供してGFP陽性細胞を未標識細胞から分離した。結果として生じる細胞懸濁物を300×gで5分間遠心分離し、ペレットを氷冷した溶解溶媒で再懸濁した。FACSから得られた細胞数を用いて、溶解溶媒の体積を2×106細胞/mlに正規化した。続いてのLCMSでの代謝物の単離を下記のように行った。
【0164】
ウエスタンブロッティング:プロテアーゼおよびリン酸阻害物質カクテルを補充したRIPA緩衝液中での溶解によって、タンパク質を全細胞から抽出した。超低接着プレートで増殖させた細胞では、細胞を50×gで5分間の遠心分離によって収集し、PBSで洗浄し、100 μL RIPA溶解緩衝液で再懸濁した。細胞を氷上で10分間溶解したままにしておき、次いでピペッティングによってホモジナイズした。接着細胞では、細胞をPBSで洗浄し、氷上で200 μL RIPA溶解緩衝液中でインサイチューで溶解し、セルスクレーパーを用いて収集し、ピペッティングによってホモジナイズした。組織試料を瞬間凍結し、-80℃で保管した。凍結した試料を溶解前に秤量し、20 mgの最低試料サイズを確実にした。試料をTissueLyser IIを用いて2 mL RIPA溶解緩衝液でホモジナイズした。12,000×gで4℃にて15分間遠心分離することによって、溶解物を清澄にした。上清を収集し、総タンパク質含有量をBCAアッセイによって定量化した。溶解物を総タンパク質含有量によって正規化し、4×Bolt(商標)LDS試料緩衝液(+355mM β-メルカプトエタノール)の添加によりウエスタンブロッティング用に調製し、95℃まで10分間加熱した。Bolt(商標)MOPS SDS Running Bufferランニングバッファーを用いて、溶解物(25 μg)をBolt(商標)4~12% bis-トリスプラスプレキャストゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に移した。総タンパク質染色を実施した場合には、Revert(商標)総タンパク質染色を用いるブロッキング前に、それを行った。Odyssey(登録商標)ブロッキング緩衝液(TBS)を用いて膜を1時間ブロッキングし、一次抗体共に4℃にて一晩インキュベートした。全ての一次抗体を、1:10,000で用いたアクチンを除き、Odyssey(登録商標)ブロッキング緩衝液で1:1000の濃度に希釈した。膜をTBS+1%TWEEN(登録商標)20で3回洗浄し、二次抗体(1:10,000)と共に室温で1時間インキュベートした。Image Studioソフトウエア(バージョン5.2)と共にLI-COR Odyssey(登録商標)Fc Imagingシステムを用いて、蛍光強度を捕捉および定量化した。
【0165】
インビボモデル:LSL-KrasG12D/+、Pdx1-cre;LSL-KrasG12D/+;Trp53fl/+およびPdx1-cre;LSL-KrasG12D/+;LSL-Trp53R172H/+マウスに腫瘍を発生させ、人道的な臨床エンドポイントで殺傷し、腫瘍を分析のために取り出した。健常なcreを発現しない同腹仔からの膵臓組織を対照として用いた。同種移植実験では、純粋C567Bl6/J KPC細胞を一側皮下注射(注射1回当たり1×106細胞)によって純粋C567Bl6/J雌マウス内に移植した。混合背景KPC細胞を一側皮下注射(2×106細胞/側腹部)によってCrl:CD1-Foxn1nu(CD1ヌード)雌マウス内に移植した。マウスが臨床エンドポイントに到達するかまたは腫瘍サイズが300mm3に到達するまで、マウスを毎日モニターした。マウスを3時間絶食させ、次いで、800 μLの120mM 13Cトリプトファンの腹腔内注射を受けさせた。注射の3時間後、マウスを殺傷し、分析のために腫瘍を取り出した。
【0166】
定常状態代謝物測定のためのLCMS:細胞を完全培地で6ウェルプレート内に播種し、約80%コンフルエントまで増殖させた。細胞をPBSで洗浄し、関連実験用培地を記載された時間にわたって加えた。細胞計数のために二つ組ウェルを用いた:代謝物抽出前に、細胞数(2D細胞)またはタンパク質濃度(3D細胞 BCAアッセイ)を用いて溶解溶媒の体積を正規化した(1×106細胞/ml)。2D増殖細胞では、細胞をPBSで速やかに洗浄し、次いで、氷冷した溶解溶媒(メタノール50%、アセトニトリル30%、水20%)を加え、細胞を氷上で剥離した。3D増殖細胞では、細胞を15 mLファルコンチューブに移し、50×gで5分間遠心分離した。上清を取り除き、細胞ペレットをPBSで洗浄し、再び遠心分離した。上清を取り除き、細胞ペレットを氷冷した溶解溶媒で再懸濁した。溶解物を氷上で1.5mlチューブに移し、ボルテックスし、次いで、18,000×gで4℃にて10分間遠心分離した。上清を収集し、LCMS分析のために-80℃で保管した。組織試料を瞬間凍結し、-80℃で保管した。凍結した試料を溶解の前に秤量した。TissueLyser IIを用いて、試料を2 mLの氷冷した溶解溶媒でホモジナイズした。次いで、溶解物を、4℃にて10分間の18,000×gでの遠心分離によってタンパク質を除去し、次いで、当初の組織質量に基づき溶解緩衝液によって10 mg/mLに正規化した。
【0167】
ギ酸分析のためのGCMS:40 μLの試料を20 μLのd2-ギ酸(50 μM、内部標準)、50 μLピリジン、10 μL NaOH(1N)、および5 μLベンジルアルコールに加えた。ボルテックスしている間、誘導体化のために、20 μLのクロロギ酸メチルをこの混合物に加えた。次いで、100 μLメチルターシャリーブチルエーテルおよび200 μL H2Oを加え、続いて試料を10秒間ボルテックスし、最大速度で10分間遠心分離した。次に、無極性相をGCバイアルに移し、蓋をした。標準物質およびブランク試料(水)を同じように調製し、実験用試料と共に分析して、背景を差分し、定量化を検証した。MassHunter Quantitative分析ソフトウエアを用いてギ酸、2-ギ酸、および13Cギ酸のピーク面積を抽出し、処理した。背景シグナルの補正後、ギ酸(136のm/z)および13Cギ酸(137のm/z)のピーク面積をd2-ギ酸(138のm/z)のピーク面積に対して比較することによって、定量化を実施した。
【0168】
Accela 600 LCシステムおよびExactive質量分析計からなるLCMSプラットフォームを用いて、試料分析を実施した。Sequant ZIC-pHILICカラム(4.6 mm×150 mm、3.5 μm)を用いて代謝物を分離した、移動相はA=水中での0.1%(v/v)ギ酸およびB=アセトニトリル中の0.1%(v/v)ギ酸によって混合された。20%のAで始まり30分で80%まで直線的に増加する勾配プログラムを用い、続いて、洗浄(92%のAを5分間)工程および再平衡化(20%のAを10分間)工程を行った。方法の総実行時間は45分であった。LC流路を脱溶媒和し、HESIプローブでイオン化した。Exactive質量分析計を、極性切り替えにより50,000の解像度で70~1,200 m/zの質量範囲のフルスキャンモードで操作した。LCMS生データを、ProteoWizardを用いることによってmzMLに変換し、ピーク抽出および試料アライメントのためにMZMine 2.10にインポートした。関連する代謝物の全ての可能性のある13Cおよび15N同位体m/z値を含む自家製データベースを、LCMSシグナルの割当のために用いた。最後に、ピーク面積を比較定量化で用いた。
【0169】
代謝物の炭素13標識:トリプトファンまたはセリンを欠いておりかつ記載した濃度の13C11-トリプトファン、13C3
15N1-セリン、または13C1-ギ酸を補充した実験用培地を調合した。定常状態代謝物測定と同じ基本プロトコールを用いた。代謝物を上述のように抽出した。
【0170】
結果
PDAC細胞は状況依存的にIDO1を発現する:膵臓がん細胞におけるIDO1の発現をインビトロおよびインビボで調べた。マウス KPCモデルを利用して、IDO1発現をさまざまな状況で評価した(
図67):Pdx1-cre;LSL-Kras
G12D/+;Trp53
fl/+およびPdx1-cre;LSL-Kras
G12D/+;LSL-Trp53
R172H/+マウスからの膵臓腫瘍組織の直接分析は、腫瘍は正常膵臓組織と対比してIDO1発現が増加していたこと、およびある特定の腫瘍が高レベルのIDO1を発現したことを示した(
図67パネルBおよびパネルC)。GEMM腫瘍組織と比較して、正常なインビトロで条件下で培養した腫瘍由来初代KPC細胞は、検出限界以下のIDO1を示した(
図67パネルD)。マウス型のサイトカインIFNγ、IDO1の正準活性化因子の添加は、インビトロでIDO1発現を増加させた。ヒト型のIFNγは、マウス細胞においてIDO1発現に影響しなかった(
図67パネルD)。インビボでの増殖がIDO1発現を回復できたかどうかを評価するために、KPC細胞を皮下同種移植としてCD-1ヌードマウスに注入した。同種移植腫瘍組織におけるIDO1発現の評価は、極めて低いIDO1発現を明らかにした(
図67パネルD)。
【0171】
IDO1発現を促進するIFNγの能力およびIDO1の公知の免疫学的役割を考慮し、免疫適格性宿主におけるIDO1発現の増加をKPC細胞を用いて試験した。純粋C57BL/J背景を有するPdx1-cre;LSL-Kras
G12D/+;およびLSL-Trp53
R172H/+マウスから抽出した初代腫瘍細胞を用い、それらは、正常レシピエントC57BL/Jマウス内に成功裏に生着した。細胞を皮下同種移植として同系免疫適格性マウス内に注入した場合、IDO1発現は、3つの細胞株のうち2つで(インビトロでの培養と比して)腫瘍組織において上昇した(
図67パネルE)。
【0172】
ヒト膵臓がん細胞のパネルにおけるIDO1の発現も調べた。KPC細胞と同様に、IDO1発現は正常培養条件下で非常に低いかまたは検出限界以下であった(
図67パネルF)。IFNγ(ヒト型)の添加は一貫してIDO1発現を増加させた。ヒトがんにおけるIDO1発現を全体的に評価するために、データを代謝遺伝子ラピッドビジュアライザ(metabolic gene rapid visualizer)から抽出した。膵臓では、IDO1は、インビトロで増殖させたがん細胞株と比較して健常な組織において同等の範囲の発現を有した(
図68)。しかしながら、膵臓腫瘍組織は、複数の高いまたは非常に高いIDO1発現腫瘍を有した。この傾向は、さまざまな他の腫瘍、特に、結腸、乳房、および子宮頸部でも観察された。データセットは一貫して、IDO1発現が、健常な組織と比して腫瘍で上昇したが、正常なインビトロ培養条件下で増殖させたがん細胞は、腫瘍関連レベルのIDO1を必ずしも示さなかったことを示した。全体として、これらのデータは、IDO1発現が免疫適格性状況で腫瘍形成時に上方制御されたことを示した。
【0173】
図67はインビボでのIDO1発現を示す。パネルAは、膵管腺癌(PDAC)の遺伝子改変マウスモデル(GEMM)におけるIDO1発現を分析するために用いられる方法を詳述する模式図を示す。Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
fl/+およびPdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+マウスからの腫瘍、およびcreを発現しない同質遺伝子対照マウスからの健常な膵臓組織を溶解した。パネルBは、免疫ブロッティングによる分析後の表示されたタンパク質を示す。パネルCは、定量化された総タンパク質(負荷対照)と比べてのIDO1の蛍光強度を用いて分析した表示されたタンパク質を示す(健常な膵臓 n=5、Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
fl/+腫瘍 n=6、Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+腫瘍 n=5、対応のないt検定、p値を示す、エラーバーは標準偏差である)。パネルDは、マウスIFNγ(1ng/ml)で24時間処置したか、またはCD1ヌードマウスの側腹部に皮下注射して腫瘍を形成させた、KPC A細胞、混合背景Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+マウスの腫瘍から単離された細胞株を示す。細胞および腫瘍溶解物を表示されたタンパク質に対する免疫ブロッティングに供した。パネルEは、純粋C567Bl6/J背景 Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+マウスから単離され、かつマウスIFNγ(1ng/ml)で24時間処置したか、またはC567Bl6/Jマウスの側腹部に皮下注射して腫瘍を形成させた、KPC細胞を示す。細胞および腫瘍溶解物を表示されたタンパク質に対する免疫ブロッティングに供した。パネルFは、表示された細胞株をヒトIFNγ(1 ng/mL)で24時間処置し、細胞溶解物を表示されたタンパク質についてブロットしたことを示す。
【0174】
図68は、マイクロアレイからのIDO1 mRNAの相対量を示すMERAVデータベースから抽出したデータを示す。
【0175】
IDO1発現はインビトロで接着依存性増殖によって制御することができる:IDO1発現は、キヌレニン経路を介するトリプトファンの利用を促進する。この経路(
図69パネルA)の潜在的な代謝相互作用の多様性を考慮して、IDO1発現に対する免疫依存性刺激の効果を調べた。ミトコンドリア代謝は、2種類の方法:(1)スーパーオキシドのミトコンドリア生成および(2)α-ケトアジピン酸を介してのTCA回路へのトリプトファン由来の炭素の流入で、キヌレニン(kynureneine)経路と潜在的に繋がる。どちらもOXPHOSに影響を与えかつスーパーオキシドレベルを潜在的に調節することが予測される、低酸素またはロテノンへのPDAC細胞の曝露は、IDO1発現に対する影響をほとんど有さなかった(
図69パネルBおよびパネルC)。同様に、(OXPHOSを促進する)グルコースのガラクトースでの置換は、IDO1発現を調節しなかった(
図69パネルD)。(培養条件への何らかの他の調整なしでの)2D単層培養から接着依存性増殖への細胞の移行は、BxPC-3、CFPAC-1、およびHPAF-II細胞におけるIDO1発現の増加を引き起こした(
図69パネルE、パネルF、
図70パネルAおよびパネルB)。この観察はCFPAC-1細胞において一致しており、キヌレニン排出によって測定されるキヌレニン経路活性の劇的な増加を伴い、これはIDO1阻害物質エパカドスタットによって除去された(
図69パネルG)。
【0176】
図69は、IDO発現が、3D増殖およびJAK/STATシグナル伝達を介するIFNγによって上方制御されたことを示す。パネルAは、トリプトファンが代謝されるキヌレニン経路を詳述する模式図を示す。表示されたタンパク質を、培養の24時間後に表示した細胞株において免疫ブロッティングによって分析した。パネルBは、正常酸素(20% O
2)または低酸素(1% O
2)いずれかの条件下で培養したタンパク質を示し;パネルCは、ロテノン(1 μM)またはビヒクルのみの対照で処置したタンパク質を示し;かつパネルDは、グルコース(Glc)(10 mM)またはガラクトース(Gal)(10 mM)のいずれかを含有する培地で培養したタンパク質を示す。表示した細胞株を2Dまたは3D条件で24時間培養し、細胞溶解物を表示したタンパク質について免疫ブロットした。パネルEは、2Dまたは3D条件で培養したタンパク質を示す。パネルFは、定量化された、2Dおよび3D条件でのCFPAC-1のIDO1/アクチンの蛍光強度を示す(n=4、対応のあるt検定、p値を示す、エラーバーはS.E.M.である)。パネルGは、2Dまたは3D条件で24時間培養し、かつ培地のキヌレニンをLCMSによって分析する前に16時間エパカドスタット(1μM)またはビヒクルのみの対照で処理したCFPAC-1細胞の結果を示す(1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。パネルHは、2Dまたは3D条件のいずれかで24時間培養し、次にJAKi(1μM)またはビヒクルのみの対照(veh.)および/もしくはヒトIFNγ(1ng/ml)で16時間処理した、CFPAC-1またはHPAF-II細胞を示す。次に、細胞を溶解し、表示したタンパク質を免疫ブロッティングによって分析した。
【0177】
図70では、CFPAC-1またはHPAF-II細胞を、正常組織培養プレート(2D)もしくは超低接着組織培養プレート(3D)で24時間増殖させるか、または2Dで培養し、1ng/ml IFNγで処置した。溶解物を(パネルA)表示したタンパク質についてブロットし、(パネルB)アクチン(負荷対照)に比してのIDO1の蛍光強度を定量化した(n=4、対応のあるt検定、p値を示す、エラーバーはS.E.M.である)。表示した細胞株を2Dまたは3Dのいずれかで24時間増殖させ、(パネルC)MG132(20 μM)もしくはビヒクルのみの対照での16時間の処理後、(パネルD)バフィロマイシンA1(100 nM)もしくはビヒクルのみの対照での表示した時間にわたる処理後、または(パネルE)JAKi(表示した濃度で)、ビヒクルのみの対照、もしくはIFNγ(1 ng/ml)での16時間の処置後、溶解物を表示したタンパク質について免疫ブロットした。
【0178】
接着依存性(AI)増殖刺激IDO1発現はJAK/STATシグナル伝達により制御される:接着依存性(AI)増殖がIDO1発現を上方制御する分子メカニズムを試験した。プロテアソーム阻害物質MG132(
図70パネルC)またはリソソーム阻害物質バフィロマイシン(
図70パネルD)による処理は、IDO1タンパク質レベルに対する作用を有さなかった。データは、AI増殖時に観察されたIDO1レベルの増加は、プロテアソームまたはリソソーム系を介するIDO1分解の変化を原因としなかったことを示した。
【0179】
IFNγは、JAK/STATシグナル伝達カスケードの活性化により遺伝子発現の変化を媒介する。IDO1発現の増加をもたらすJAK/STAT経路の活性化に対するIFNγ非依存性のAI増殖の役割を調べた。(リン酸化による)STATタンパク質の活性化を、低分子JAK阻害物質 I(JAKi)を用いて試験した。結果は、STAT3リン酸化はAI増殖により増加したことを示し(
図69パネルH)、JAK/STAT経路活性化の上方制御を示唆した。このような増加はSTAT1では検出されなかったことから、これはSTAT3に特異的であるように見えた(
図70パネルE)。AI増殖細胞におけるIDO1タンパク質レベルの上方制御をJAKiでの処理によって遮断した(
図69パネルH)。これらのデータは、AI増殖時に、JAK/STAT経路が(IFNγ処理と同様に)活性化されたこと、および前記刺激がIDO1発現を増加させたことを示した。
【0180】
トリプトファンはインビトロでプリン合成に対して一炭素単位を与える:キヌレニン経路によるトリプトファンの代謝の過程で、がん代謝において潜在的に重要な役割を有することが公知である多数の代謝物を形成する(
図69パネルA)。IDO1を発現するがん細胞におけるトリプトファンからのそのような代謝物の生成を調べるために、細胞を
13C
11-トリプトファンの存在下でIFNγと共に培養した。液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)を用いて、キヌレニン経路代謝物内への、ならびにそれを通り越えてヌクレオチド合成およびTCA回路内への標識炭素の取り込みを追跡した。細胞は
13C
11-トリプトファンを容易に取り込み、細胞トリプトファンプールを24時間超にわたって十分に標識された。キヌレニンにおいて高い割合(約95%)の標識化が観察された(
図71)。キヌレニンの下流では、少量の標識化がアラニンにおいて特定されたが、しかしながら、これは総アラニンプールの非常に小さな割合(<1%)であった。トリプトファンは、アラニンまたはα-ケトアジピン酸のいずれかを介してアセチル-coAに代謝することができる。アセチル-coAにおけるトリプトファンからの標識化のある程度の証拠も検出した(
図71)。TCA回路の構成要素またはNAD/HもしくはNADP/Hにおける標識化の証拠は観察されず、PDAC細胞内のこれらの経路に対するトリプトファンの影響が限定的であることを示唆した。
【0181】
トリプトファンからのキヌレニンの生成の過程で、一炭素単位はギ酸として遊離される。このギ酸の潜在的な行き先は、THF回路に進入することである。ここから、トリプトファン由来の炭素は、プリンヌクレオチド合成を含む多数のタンパク質同化経路で用いることができた。トリプトファン由来の炭素がプリンヌクレオチドにおいて観察され(
図71)、トリプトファンがPDAC細胞におけるTHF回路での一炭素単位の正当な供給源であることを示した。一炭素の別のTHF依存的運命は、デノボセリン合成(SHMT1/2を介するグリシンとの組み合わせによる)であり、標識トリプトファンからのセリンの標識化の増加も観察された。
【0182】
特に、これらの細胞を十分な外因性セリン、主要な一炭素供給源と共に増殖させた(培地は、0.08 mMトリプトファンと比較して0.4 mMセリンを含んだ)ことを考慮すると、プリンで認められる標識化の程度は顕著である。ATPプールのおよそ30%およびGTPプールのおよそ40%が、トリプトファン由来の炭素によって標識された。セリンでの標識化ははるかに低い割合(およそ3%)であり、プリン標識化がTHF回路を介して直接的に行われることを示唆した。
【0183】
AI増殖がトリプトファン由来の一炭素単位のプリンヌクレオチド内への取り込みを刺激することが確認され、IFNγ処理細胞で認められるものより程度が低いものの、AI増殖細胞内でのAMP、ADP、ATPおよびGTPにおける標識化の割合の増加が見いだされた(
図72)。標識化はIDO1阻害物質エパカドスタットによる処置によって妨げられた(
図72)。全体として、これらのデータは、IDO1を発現するPDAC細胞がプリンヌクレオチド合成での一炭素単位の重要な供給源としてトリプトファンを利用することができることを明確に示す。
【0184】
図72は、2Dまたは3Dで24時間培養され、次に、未標識(
12C)または
13C
11トリプトファンのいずれかの存在下でエパカドスタット(1μM)またはビヒクルのみの対照と共に24時間処理されたCFPAC-1細胞を示し、表示したヌクレオチドの細胞内含量はLCMSによって分析された(1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。
【0185】
トリプトファンはインビボでプリン合成に一炭素単位を与えることができる:トリプトファンがインビボでPDAC腫瘍におけるプリン合成に一炭素単位を与えることができるかどうかを調べた。自然発症GEMMおよびKPC同種移植腫瘍におけるIDO1発現の高い可変性を考慮し、かつ高IDO1発現腫瘍の状況を正確に再現するために、IDO1を構成的に発現するようにKPC細胞を操作した。細胞を皮下同種移植として同系免疫適格性マウスに埋入した(
図73パネルA)。腫瘍が形成されたら、マウスに
13C
11-トリプトファン溶液の単回腹腔内注射を受けさせ、発明者らは、注射後単一時点でLCMSを用いてトリプトファン由来の炭素の取り込みを評価した。発明者らは、空ベクター(EV)対照に対する、IDO1発現腫瘍組織におけるセリン、ATP、ADP、GMP、およびGDPの標識割合の重大な増加を見出した(
図73パネルB、
図74)。これらの結果は、IDO1発現腫瘍が実際にインビボで、プリンヌクレオチド内にトリプトファン由来の炭素を組み込むことができることを示す。
【0186】
図73は、トリプトファン由来の一炭素単位がインビボ膵臓腫瘍においてヌクレオチド内に組み込まれることを示す。パネルAは、この図での実験アプローチを詳述する模式図を示す。パネルBでは、IDO1または空ベクター対照(EV)を発現する純粋C57BL/J Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+マウスからのKPC細胞をC57BL/Jマウスの側腹部に皮下注射し、腫瘍が形成されたら、腹腔内注射によりマウスに800μLの 120 mM
13C
11トリプトファンを与え、3時間そのままにした。腫瘍組織を切り取り、LCMSによって分析した(合計と比しての主要アイソトポログの画分を示す、EV n=7、IDO1 n=7、対応のないt検定、p値を示す、エラーバーは標準偏差である)。
【0187】
図74は、C57BL/Jマウスの側腹部に皮下注射されたIDO1または空ベクター対照(EV)を発現する純粋C57BL/J Pdx1-cre;Kras
G12D/+;Trp53
R172H/+マウスからのKPC細胞のデータを示し、腫瘍が形成されたら、腹腔内注射によりマウスに800μLの 120mM
13C
11トリプトファンを与え、3時間そのままにした。腫瘍組織を切り取り、表示したタンパク質ついて免疫ブロッティングによって分析した。
【0188】
PDAC細胞はトリプトファン由来のギ酸を排出する:IDO1発現 PDAC細胞がトリプトファンから生成されたギ酸を遊離したかどうかを調べた。
13C
11-トリプトファンでの培養後、IDO1を発現するCFPAC-1およびHPAF-II細胞からの使用済み培地(+IFNγ)において、ガスクロマトグラフィー 質量分析によって、標識ギ酸を特定した(
図75パネルA およびパネルB)。トリプトファン由来のギ酸の遊離は、CFPAC-1細胞においてセリン由来のギ酸よりかなり高く、HPAF-II細胞でも同等であった。セリンは一般に、がん細胞において優勢な一炭素供給源であるとみなされていたこと、および外因性セリンレベルがトリプトファンより高いことから、これらの結果は驚くべきものであった。
【0189】
星細胞はトリプトファン由来のギ酸を取り込み、プリン合成でギ酸を利用する:膵星細胞がPDAC細胞によって遊離されたトリプトファン由来のギ酸を取り込みかつプリンヌクレオチドの合成でそれを利用する能力を調べた。膵星細胞が外因性ギ酸を取り込みかつ利用する能力を直接試験するために、不死化したマウス星細胞(ImPSC)を
13C
1-ギ酸を補充した培地中で培養した。LCMS分析は、星細胞が細胞外ギ酸を消費し、プリン内に1個の炭素を組み入れたことを明らかにした。プリン合成は2個のTHF由来の一炭素を利用し、m+1およびm+2の主なアイソトポログピークが上昇させた(
図76パネルB)。
【0190】
PDAC細胞内で生成されたトリプトファン由来のギ酸を同じように使用できたかどうかを評価するために、以下の2種類の技法を用いた:(1)条件培地への移行、および(2)直接同時培養(
図75パネルC)。条件培地に対して、PDAC細胞を
13C
11-トリプトファンを含有する培地中で増殖させ、条件培地を24時間後に収集した。次に、LCMSによる星細胞の分析の前に、フィルター処理した培地を星細胞の上に移した。IDO1を発現する(+IFNγ)PDAC細胞からの条件培地を与えた星細胞において、プリンヌクレオチドおよびセリンの標識化を検出した(
図75パネルD~パネルG)。条件付け工程時にPDAC細胞をエパカドスタットで処理した場合に、標識化は妨げられた。標識化は、条件付け後(すなわち、星細胞を条件培地で培養した間)にエパカドスタットを加えたときには影響を受けず、星細胞ではなくPDAC細胞におけるIDO1活性が、星細胞のギ酸利用で重大な意味を持っていたことを示した。同じことが、実験をImPSC #2細胞で繰り返したときに観察された(
図76パネルE~パネルG)。
【0191】
この知見をさらに確認するために、直接同時培養アッセイを実施した。CFPAC-1細胞を、GFPを異所的に発現するように操作されたImPSC細胞と共に24時間同時培養した。同時培養培地は
13C
11-トリプトファンおよびIFNγを含有した。次に、ImPSC-GFP細胞をFACSによりPDAC細胞から分離し、LCMS分析に供した。プリンヌクレオチドの標識化は、IFNγの存在下でPDAC細胞と共に同時培養した星細胞において明らかであった(
図75パネルH~パネルK)。この方法では、標識画分は概してより小さく、セリンでの明確な標識化は確認されなかった。ヌクレオチド標識化は、単独で培養した星細胞では認められなかった。重要なことには、エパカドスタットでの処理によりIDO1レベルが低い(-IFNγ)かまたはIDO1が阻害された場合、標識化も低下していた(
図75パネルH~パネルK)。
【0192】
図75は、がん細胞が、トリプトファン由来のギ酸を遊離し、これが膵星細胞によって消費されかつヌクレオチドに組み込まれたことを示す。CFPAC-1(パネルA)またはHPAF-II(パネルB)細胞を3Dで4日間培養し、次いで、未標識(
12C)、
13C
11トリプトファン、または
13C
3
15N
1セリンのいずれかの存在下でIFNγ(1ng/ml)またはビヒクルのみの対照で24時間処理した。ギ酸の培地含量を誘導体化およびGC-MSによって分析した(1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。パネルCは、パネルD~パネルKで用いられる実験アプローチの模式図を示す。CFPAC-1細胞を未標識(
12C)または
13C
11トリプトファンの存在下でビヒクルのみの対照またはヒトIFNγ(1ng/ml)およびエパカドスタット(epac.、1μM)またはビヒクルのみの対照で処理した。条件培地を24時間後に収集し、ImPSCをこの培地中または非条件処理適合培地中で培養した。24時間後、セリン(パネルD)、ATP(パネルE)、ADP(パネルF)、およびAMP(パネルG)の細胞内含量をLCMSによって分析した(合計と比しての主要アイソトポログの画分を示す、1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。ImPSC-GFP細胞を、単培養として2DでまたはCFPAC-1細胞との同時培養で24時間培養した。次に、
13C
11トリプトファンの存在下でビヒクルのみの対照またはヒトIFNγ(1ng/ml)およびエパカドスタット(1μM)またはビヒクルのみの対照で細胞を24時間処理した。次に、細胞をトリプシン処理し、GFP陽性細胞についてFACSを用いて選別し、セリン(パネルH)、ATP(パネルI)、ADP(パネルJ)、およびAMP(パネルK)の細胞内含量をLCMSによって分析した(合計と比しての主要アイソトポログの画分を示す、1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。パネルLは、膵管腺癌(PDAC)細胞および膵星細胞でのトリプトファン由来のギ酸の使用について提唱されるモデルを示す。
【0193】
図76は、ImPSC #1、ImPSC #2、およびImPSC #3細胞でのATP、DP、AMP、およびGTPにおける
13C
1ギ酸の細胞内取り込みを示す。ImPSC #1、ImPSC #2&ImPSC #3細胞を
13C
1ギ酸の存在下で24時間培養し、ギ酸由来の一炭素の全ての可能性のある行き先であるATP(パネルA)、ADP(パネルB)、AMP(パネルC)、およびGTP(パネルD)の細胞内含量をLCMSによって分析した(1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。CFPAC-1細胞を未標識(
12C)または
13C
11トリプトファンの存在下でIFNγ(1ng/ml)および/もしくはエパカドスタット(1μM)ならびに/またはビヒクルのみの対照で処置した。条件培地を24時間後に収集し、ImPSC#2細胞をこの培地中でまたは非条件処理適合培地中で培養した。24時間後、ATP(パネルE)、ADP(パネルF)、およびセリン(パネルG)の細胞内含量をLCMSによって分析した(合計と比しての主要アイソトポログの画分を示す 1ex、三つ組のウェル、エラーバーは標準偏差である)。
【0194】
すい臓がんでの濃縮、GEMモデルでのIDO1の相対的発現を決定した。KPCマウスからの腫瘍は、インビボで健常な組織と比較してIDO1の明確な上昇を示したが、細胞培養中にIDO1発現は存在しなかった。多数のヒトがんのセットからの発現データは、高いIDO1発現が複数の腫瘍で認められたが、細胞培養中では観察されなかったことをさらに表した。
【0195】
正準IDO1活性化因子IFNγ以外に、IDO1発現に対する低酸素、ロテノン処理、またはガラクトースによって引き起こされる代謝摂動の影響を調べた。条件のいずれもIDO1レベルを変化させなかった。標準的な単層培養から接着依存性条件へのPDAC細胞の移動によって、IFNγの程度がより少ないにもかかわらず、IDO1の上方制御が観察された。作用のメカニズムを調べ、JAK/STATシグナル伝達経路を介する接着依存性増殖で制御されたIDO1が観察された。
【0196】
IDO1発現の理解の向上によって、PDAC細胞におけるIDO1依存性トリプトファン代謝の詳細な分析が可能になった。キヌレニン経路は、インビトロでPDAC細胞におけるヌクレオチド合成に対して重大な寄与を行い、24時間にわたってプリンプールのおよそ30%に対して炭素を与えた。IDO1依存性トリプトファン標識化を13C11-トリプトファンの単回注入後の腫瘍セリンおよびプリンプールにおいて検出した。PDAC細胞をトリプトファン由来のギ酸排出について試験した。ある特定のPDAC細胞は、外因性セリンがトリプトファンより4:1でまさっているにもかかわらず、セリン由来のギ酸に対してトリプトファン由来のギ酸の含量を2倍遊離した。星細胞がPDAC細胞によって生成されたトリプトファン由来のギ酸を捕捉してギ酸をヌクレオチド合成に取り入れる強固な能力も観察した。
【0197】
全体として、結果は、IDO1ががんおよび間質細胞において一炭素代謝に影響を与えることができることを示す。IDO1発現腫瘍では、トリプトファンがTHF回路での正当な一炭素供給源であったことを示した。データはまた、トリプトファンがPDACにおいて最も高度に枯渇した間質内栄養素であり得る理由についてのメカニズム論的な説明も提供する。
【0198】
実施例16:細胞増殖およびヌクレオチド合成に対するエパカドスタットの作用
エパカドスタットは抗増殖作用またはセリン飢餓を増強する。KPC細胞(Krasmut p53mut遺伝子改変マウスの膵臓腫瘍に由来する腫瘍細胞)を24ウェルプレート内に播種し、一晩接着させた。細胞をPBSで洗浄し、IDO1阻害物質エパカドスタット(1 μM)を有するまたは有さない全てのアミノ酸を含有する対照培地またはセリンを欠いている適合培地(-セリン)のいずれかを受けさせた。細胞数を24時間毎に5日間記録した。0時点でのプレートを用いて出発細胞数を算出した。
【0199】
図77左パネルは、1)対照+ビヒクル;2)-セリン+ビヒクル;3)対照+エパカドスタット(1 μM);または4)-セリン+エパカドスタット(1 μM)で処理した細胞における5日間にわたる細胞増殖を示す。右パネルは、1)対照+ビヒクル;2)-セリン+ビヒクル;3)対照+エパカドスタット(1 μM);または4)-セリン+エパカドスタット(1 μM)で処理した細胞における0日目と比較した5日目での細胞数の倍率変化を示す。
【0200】
セリン飢餓は、IDO1依存的にヌクレオチド合成で用いられるトリプトファン由来の炭素の量を増加させたことが示された。KPC細胞(Krasmut p53mut遺伝子改変マウスの膵臓腫瘍に由来する腫瘍細胞)を6ウェルプレート内に播種し、一晩接着させた。セリンあり(+)またはセリンなし(-)(+他の全てのアミノ酸)で、IDO1阻害物質エパカドスタット(1 μM)ありまたはなしで、炭素13標識トリプトファンを含有する培地を細胞に与えた。48時間後、代謝物を細胞から抽出し、LCMSによって分析した。プリンヌクレオチド(ATP、ADP、AMP、GDP、GTP)の標識画分(炭素13に由来する)を示す。
【0201】
図78は、1)対照+ビヒクル;2)-セリン+ビヒクル;3)対照+エパカドスタット(1 μM);または4)-セリン+エパカドスタット(1 μM)で処理した細胞におけるAMP、ADP、ATP、GDP、およびGMPの細胞中の炭素13に由来する標識画分を示す。
【0202】
態様
以下の非限定的な態様は、本発明の例証となる例を提供するが、本発明の範囲を限定しない。
態様1. 以下を含む、その必要がある対象においてがんを処置する方法:a)薬学的組成物の治療的有効量を、第1の時間にわたって前記対象に投与する工程であって、前記薬学的組成物が、少なくとも2つのアミノ酸を実質的に欠いている、前記工程;b)第2の時間にわたる、放射線治療;ならびにc)第1の時間および第2の時間の後に、第3の時間待機する工程であって、前記対象が、第3の時間中に、薬学的組成物を投与されることも放射線療法を実施されることもない、前記工程。
態様2.前記がんが直腸がんである、態様1の方法。
態様3.前記がんが乳がんである、態様1の方法。
態様4.前記投与が経口である、態様1~3のいずれか1つの方法。
態様5.前記放射線治療が外部ビーム治療である、態様1~4のいずれか1つの方法。
態様6.前記外部ビーム治療が三次元原体放射線治療(3D-CRT)である、態様5の方法。
態様7.前記外部ビーム治療が強度変調放射線治療(IMRT)である、態様5の方法。
態様8.前記放射線治療が、約5グレイ(Gy)~約50 Gyの放射線を対象に投与することを含む、態様1~7のいずれか1つの方法。
態様9.前記放射線治療が、約5 Gyの放射線を対象に投与することを含む、態様1~8のいずれか1つの方法。
態様10.前記放射線治療が、約50 Gyの放射線を対象に投与することを含む、態様1~8のいずれか1つの方法。
態様11.前記放射線治療が内部ビーム治療である、態様1~4または8~10のいずれか1つの方法。
態様12.前記少なくとも2つのアミノ酸がセリンおよびグリシンである、態様1~11のいずれか1つの方法。
態様13.前記薬学的組成物がさらに、プロリンを実質的に欠いている、態様1~12のいずれか1つの方法。
態様14.前記薬学的組成物がさらに、システインを実質的に欠いている、態様1~13のいずれか1つの方法。
態様15.高脂肪食を対象に投与する工程をさらに含む、態様1~14のいずれか1つの方法。
態様16. 前記高脂肪食が、1日のカロリーの約50%よりも多くを脂肪から有する、態様15の方法。
態様17.低糖質食を対象に投与する工程をさらに含む、態様1~16のいずれか1つの方法。
態様18. 前記低糖質食が、1日のカロリーの約50%未満を糖質から有する、態様17の方法。
態様19.低タンパク質食を対象に投与する工程をさらに含む、態様1~18のいずれか1つの方法。
態様20. 前記低タンパク質食が、1日のカロリーの約15%未満を全タンパク質から有する、態様19の方法。
態様21. 第1の時間および第2の時間が同等である、態様1~20のいずれか1つの方法。
態様22. 第1の時間および第2の時間が5日である、態様1~21のいずれか1つの方法。
態様23. 第1の時間および第2の時間が第3の時間よりも長い、態様1~20のいずれか1つの方法。
態様24. 第3の時間が2日である、態様1~23のいずれか1つの方法。
態様25. 工程a)、b)、およびc)を繰り返すことをさらに含む、態様1~24のいずれか1つの方法。
態様26. 以下を含む、その必要がある対象においてがんを処置する方法:a)薬学的組成物の治療的有効量を、前記対象に投与する工程であって、前記薬学的組成物が、少なくとも2つのアミノ酸を実質的に欠いている、前記工程;およびb)治療的有効量の免疫療法を実施する工程であって、前記免疫療法が1日当たり少なくとも2回実施される、前記工程。
態様27. 前記がんが膵臓がんである、態様26の方法。
態様28. 前記がんが結腸がんである、態様26の方法。
態様29. 前記がんが乳がんである、態様26の方法。
態様30. 前記がんが子宮頸がんである、態様26の方法。
態様31. 前記がんが肺がんである、態様26の方法。
態様32. 前記免疫療法がIDO1阻害物質である、態様26~31のいずれか1つの方法。
態様33. 前記IDO1阻害物質がインドキシモドである、態様32の方法。
態様34. 前記IDO1阻害物質がナボキシモドである、態様32の方法。
態様35. 前記IDO1阻害物質がエパカドスタットである、態様32の方法。
態様36. 前記少なくとも2つのアミノ酸がセリンおよびグリシンである、態様26~35のいずれか1つの方法。
態様37. 前記薬学的組成物が、3つのアミノ酸を実質的に欠いている、態様26~36のいずれか1つの方法。
態様38. 前記3つのアミノ酸がセリン、グリシン、およびプロリンである、態様37の方法。
態様39. 前記3つのアミノ酸がセリン、グリシン、およびシステインである、態様37の方法。
態様40. 前記免疫療法の治療的有効量が約25 mg~約500 mgである、態様26~39のいずれか1つの方法。
態様41. 前記免疫療法の治療的有効量が約25 mgである、態様26~40のいずれか1つの方法。
態様42. 前記免疫療法の治療的有効量が約50 mgである、態様26~40のいずれか1つの方法。
態様43. 前記免疫療法の治療的有効量が約100 mgである、態様26~40のいずれか1つの方法。
態様44. 前記免疫療法の治療的有効量が約300 mgである、態様26~40のいずれか1つの方法。
態様45. 前記免疫療法が1日当たり2回実施される、態様26~44のいずれか1つの方法。
態様46. 前記免疫療法が1日当たり3回実施される、態様26~44のいずれか1つの方法。
態様47. 以下を含む、その必要がある対象においてがんを処置する方法:a)薬学的組成物の治療的有効量を、前記対象に投与する工程であって、前記薬学的組成物が、少なくとも2つのアミノ酸を実質的に欠いている、前記工程;およびb)エパカドスタットの治療的有効量。
態様48. 前記がんが膵臓がんである、態様47の方法。
態様49. 前記がんが結腸がんである、態様47の方法。
態様50. 前記がんが乳がんである、態様47の方法。
態様51. 前記がんが子宮頸がんである、態様47の方法。
態様52. 前記がんが肺がんである、態様47の方法。
態様53. 前記少なくとも2つのアミノ酸がセリンおよびグリシンである、態様47~52のいずれか1つの方法。
態様54. 前記薬学的組成物が、3つのアミノ酸を実質的に欠いている、態様47~53のいずれか1つの方法。
態様55. 前記3つのアミノ酸がセリン、グリシン、およびプロリンである、態様54の方法。
態様56. 前記3つのアミノ酸がセリン、グリシン、およびシステインである、態様54の方法。
態様57. エパカドスタットの治療的有効量が約25 mg~約500 mgである、態様47~56のいずれか1つの方法。
態様58. エパカドスタットの治療的有効量が約25 mgである、態様47~57のいずれか1つの方法。
態様59. エパカドスタットの治療的有効量が約50 mgである、態様47~57のいずれか1つの方法。
態様60. エパカドスタットの治療的有効量が約100 mgである、態様47~57のいずれか1つの方法。
態様61. エパカドスタットの治療的有効量が約300 mgである、態様47~57のいずれか1つの方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】