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特表2024-504262リガーゼ融合タンパク質及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】リガーゼ融合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240124BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N9/00 ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537961
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 CN2021074082
(87)【国際公開番号】W WO2022160156
(87)【国際公開日】2022-08-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516310910
【氏名又は名称】ジーンクアンタム ヘルスケア (スーチョウ) シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】GENEQUANTUM HEALTHCARE (SUZHOU)CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ギャン・チン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ・エルヴイ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ユンポン・ジョン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA50
4H045BA53
4H045BA57
4H045BA60
4H045BA71
4H045BA72
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明はバイオテクノロジーに関する。具体的には、リガーゼ融合タンパク質及びそれを含む固定化リガーゼを提供する。本発明は、前記リガーゼ融合タンパク質又は固定化リガーゼのコンジュゲート調製における用途をも提供する。本発明は、リガーゼ又はリガーゼユニットを用いてコンジュゲートを調製する方法をさらに提供する。
【選択図】 図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガーゼ及びHaloタグを含む、リガーゼ融合タンパク質。
【請求項2】
前記リガーゼはトランスペプチダーゼ、好ましくはソルターゼ、より好ましくはソルターゼAである、請求項1に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【請求項3】
前記ソルターゼAは、配列番号1~26からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【請求項4】
前記ソルターゼAは、部位34、100、105及び136にSNAT、YNAT、WNDT又はVNNSのアミノ酸置換を含み、好ましくは、前記ソルターゼAは、配列番号27のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【請求項5】
前記Haloタグは、配列番号28のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【請求項6】
前記リガーゼは約7.5~約10.0の等電点(pI)を有し、前記Haloタグは約4.5~約5.0の等電点を有し、
前記リガーゼ融合タンパク質のpIは、前記リガーゼのpIよりも約2.0~約4.5pH単位低い、請求項1から5のいずれか1項に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【請求項7】
前記リガーゼはトランスペプチダーゼ、好ましくはソルターゼ、より好ましくはソルターゼAである、請求項6に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【請求項8】
前記ソルターゼAは、配列番号1~12からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【請求項9】
前記ソルターゼAは、部位34、100、105及び136にSNAT、YNAT、WNDT又はVNNSのアミノ酸置換を含み、好ましくは、前記ソルターゼAは、配列番号27のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項8に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【請求項10】
前記Haloタグは、配列番号28のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項6から9のいずれか1項に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【請求項11】
支持体に固定化される請求項1から10のいずれか1項に記載のリガーゼ融合タンパク質を含む、固定化リガーゼ。
【請求項12】
前記支持体は、ハロアルキルリンカー、好ましくはクロロアルキルリンカーを含むことで、前記リガーゼ融合タンパク質がハロアルキルリンカーとHaloタグとの間の共有結合相互作用によって前記支持体に固定化される、請求項11に記載の固定化リガーゼ。
【請求項13】
クロロアルキルリンカーは、式(I-1)の構造を有するクロロアルキル基質から生成され、
【化1】
式中、uは1~20の整数、vは0~20の整数、wは1~19の整数である、請求項12に記載の固定化リガーゼ。
【請求項14】
前記支持体は、式(II)の構造を有し、
【化2】
式中、uは1~20の整数、vは0~20の整数、wは1~19の整数であり、
【化3】
は、樹脂、ビーズ、膜、ゲル、マトリックス、薄膜、プレート、ウェル、チューブ、ガラススライド、又はサーフェスであり、好ましくは樹脂であり、より好ましくはアガロース樹脂、シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂又はセルロース樹脂であり、最も好ましくは高度に架橋されたアガロース樹脂である、請求項13に記載の固定化リガーゼ。
【請求項15】
第1部分及び第2部分を含むコンジュゲートを調製するための方法であって、
(a)第1部分を含むシステム1を用意し、及び第2部分を含むシステム2を用意するステップと、
(b)ステップ(a)のシステム1及びシステム2をリガーゼユニットに接触させ、第1部分と第2部分との間のコンジュゲーション反応を触媒して、前記コンジュゲートを得るステップと、を含み、
前記リガーゼユニットはリガーゼを含み、
前記第1部分及び第2部分は、それぞれ独立して、生体分子、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、受容体、シグナル伝達因子、細胞成長因子、核酸もしくは核酸類似体、小分子化合物、グリカン、PEG部分、放射性核種、サイトカイン、免疫調節剤、トレーサー分子、フルオロフォア、蛍光分子、ペプチド、ポリペプチド、又はペプチド模倣体を含み、
前記第1部分及び第2部分のうちの一方はリガーゼ供与体基質認識モチーフをさらに含み、第1部分及び第2部分のうちの他方はリガーゼ受容体基質認識モチーフを含む、前記方法。
【請求項16】
ステップ(a)のシステム1及びシステム2のうちの少なくとも1つは、1つ又は複数の不純物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(a)のシステム1及びシステム2のうちの少なくとも1つは、収穫された清澄化細胞培養液(HCCF)である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記リガーゼユニットは、遊離リガーゼ、好ましくはトランスペプチダーゼ、より好ましくはソルターゼ、より特に好ましくはソルターゼAを含み、最も好ましくは、前記リガーゼユニットは、請求項1から10のいずれか1項に記載のリガーゼ融合タンパク質を含む、請求項15から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記リガーゼユニットは支持体に固定化されたリガーゼを含み、好ましくは、前記リガーゼは支持体に共有結合で固定化され、前記リガーゼは、好ましくはトランスペプチダーゼ、より好ましくはソルターゼ、より特に好ましくはソルターゼAであり、
最も好ましくは、前記リガーゼユニットは、請求項11~14のいずれか1項に記載の固定化リガーゼを含む、請求項15から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
(1)ステップ(b)の前に、ステップ(a)のシステム1に対して1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、及び/又は、
(2)ステップ(b)の前に、ステップ(a)のシステム2に対して1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、及び/又は、
(3)ステップ(b)で得られたコンジュゲートに対して1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、をさらに含む、請求項15から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記クロマトグラフィーステップは、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びそれらの組合せから独立して選択され、前記イオン交換クロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー及びそれらの組合せから選択され、
好ましくは、前記クロマトグラフィーステップは、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びそれらの組合せから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1部分及び第2部分のうちの少なくとも1つは、抗体又は抗体フラグメントを含み、ステップ(1)~(3)のうちの少なくとも1つは、アフィニティークロマトグラフィーを含み、
好ましくは、前記抗体又は抗体フラグメントは、Fcフラグメントを含み、前記アフィニティークロマトグラフィーは、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1部分又は第2部分はFcフラグメントを含み、
ステップ(1)及び(2)は存在せず、ステップ(3)は、
(3a-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3a-2)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3a-3)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含み、
又は、
ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3b-1)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3b-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含み、
又は、
ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3c-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3c-2)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3c-3)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含み、
又は、
ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3d-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3d-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、
(3d-3)疎水性相互作用クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含み、
又は、
ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(b)の後、ステップ(3)の前にUF/DFを行い、ステップ(3)は、
(3e-1)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3e-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含み、
又は、
ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを含み、ステップ(b)の後、ステップ(3)の前にUF/DFを行い、ステップ(3)は、陽イオン交換クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記アフィニティークロマトグラフィーは結合-溶出モードで実行され、及び/又は、
前記イオン交換クロマトグラフィーは結合-溶出モード又はフロースルーモードで実行され、
好ましくは、
前記陰イオン交換クロマトグラフィーはフロースルーモードで実行され、及び/又は、
前記陽イオン交換クロマトグラフィーは結合-溶出モードで実行される、請求項21から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(b)はバッチモード、半連続モード又は連続モードで実行される、請求項15から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(a)、(b)及び(1)~(3)のうちの少なくとも1つは半連続モード又は連続モードで実行され、
好ましくは、ステップ(a)、(b)及び(1)~(3)は連続モードで実行される、請求項20から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記コンジュゲートは、式(III)の構造を有し、
前記第1部分はTを含み、
前記第2部分は式(IV)のリンカー-ペイロード中間体を含み、
【化4】
式中、
Tは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように場合により修飾される生体分子を含み、
Lは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの他方を含むリンカーを含み、
Pはペイロードを含み、
zは1~20の整数であり、
tは1~20の整数である、請求項15から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
Tは、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、受容体、シグナル伝達因子、細胞成長因子、及び核酸もしくは類似体を含み、及び/又は、
Pは、水素、小分子化合物、好ましくは毒素、グリカン、PEG部分、放射性核種、サイトカイン、免疫調節剤、核酸もしくは類似体、トレーサー分子、フルオロフォア、蛍光分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、抗体、抗体フラグメント、又はタンパク質を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記リガーゼは、ソルターゼ、好ましくはソルターゼAであり、及び/又は、
前記リガーゼ供与体基質認識モチーフは、LPXTGJ、好ましくはLPXTG又はLPETGGであり、及び/又は、
前記リガーゼ受容体基質認識モチーフは、Gであり、ここでGはグリシン(Gly)で、nは3~10の整数であり、
Xは、任意の天然又は非天然アミノ酸であり、
Jは存在しないか、又は1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメントであり、ここで各アミノ酸は独立して任意の天然又は非天然アミノ酸であり、好ましくは、Jは存在しないか又はGであり、ここでmは1~10の整数である、請求項15から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記コンジュゲートは、下記の式(3)、(3’)、(5)及び(5’)から選択される構造を有し、
【化5-1】
【化5-2】
式中、nは3~10の整数であり、
xはOH、NH又はGlyであり、
Toxinは細胞毒素を表し、
好ましくは、前記細胞毒素は、タキサン類、メイタンシノイド類、アウリスタチン類、エポチロン類、コンブレタスタチンA-4ホスフェート、コンブレタスタチンA-4及びその誘導体、インドール-スルホンアミド類、ビンブラスチン等のビンブラスチン類、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンフルニン、ビングリシネート、無水ビンブラスチン、ドラスタチン10及び類似体、ハリコンドリンB、エリブリン、インドール-3-オキソアセタミド、ポドフィロトキシン類、7-ジエチルアミノ-3(2’-ベンゾオキサゾリル)-クマリン(DBC)、ディスコデルモリド、ラウリマライド、カンプトテシン類及びその誘導体、ミトキサントロン、ミトグアゾン、窒素マスタード類、ニトロソ尿素類、アジリジン類、ベンゾドーパ、カルボコン、メトレデパ、ウレデパ、ダイネマイシン、エスペラマイシン、ネオカルチノスタチン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、ブレオマイシン類、アクチノマイシンC、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、デトルビシン、アドリアマイシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、鉄アドリアマイシン、ロドルビシン、ルフォクロモマイシン、ストレプトゾシン、ジノスタチン、ゾルビシン、トリコテセン、T-2毒素、ベラクリンA、バシロクポリンA、アンギジン、ウベニメックス、アザセリン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ジメチル葉酸、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート、エダトレキサート、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、ゲムシタビン、エノシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、フロクスウリジン、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸リュープロレリン、プロテインキナーゼ阻害剤、及びプロテアソーム阻害剤からなる群から選択され、及び/又は前記細胞毒素は、アウリスタチン類、特にMMAE、MMAF又はMMADから選択され、
LkはL-L-Lであり、
とLは、それぞれ独立して、
-CH-、-NH-、-(CO)-、-NH(CO)-、-(CO)NH-、及びC1-4アルキレン基と-CH-、-NH-、-(CO)-、-NH(CO)-、-(CO)NH-のうちの1つの基との組合せからなる群から選択され、
は存在しないか又はC34アルキレン基であり、前記アルキレン基中の1つ又は複数の(-CH-)構造は-O-によって場合により置き換えられ、
、LとLは、それぞれ場合により且つ独立して、-OR及び-NRから選択される1、2又は3個の置換基によって置換され、
とRは、それぞれ独立して、水素、-Cアルキル基、-(CO)-Cアルキル基、及び-S(=O)-Cアルキル基からなる群から選択され、
Yは存在しないか、又は切断可能な配列、スペーサーSp1及びそれらの組合せからなる群から選択され、
前記切断可能な配列は、酵素によって切断可能なアミノ酸配列を含み、前記切断可能な配列は1~10個のアミノ酸を含み、
Sp1は、1~20個のアミノ酸を含むスペーサー配列、PAB及びそれらの組合せからなる群から選択され、Tとzは、それぞれ請求項27に定義されている通りである、請求項15から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
Yは存在せず、前記コンジュゲートは、下記の式(4)、(4’)、(6)及び(6’)から選択される構造を有する、請求項30に記載の方法。
【化6-1】
【化6-2】
【請求項32】
リガーゼユニットをリンカー-ペイロード中間体及びTと接触させ、Tとリンカー-ペイロード中間体との間のコンジュゲーション反応を触媒して、前記コンジュゲートを得ることを含む、コンジュゲートを調製するための方法であって、
【化7】
前記リンカー-ペイロード中間体は、式(IV-1-5)又は(IV-1-5’)の構造を有し、
前記コンジュゲートは、式(5)又は(5’)の構造を有し、
式(IV-1-5)、(IV-1-5’)、(5)及び(5’)は以下に示す通りであり、
【化8-1】
【化8-2】
Tは、リガーゼ供与体基質認識モチーフを有するように場合により修飾される生体分子であり、
nは3~10の整数であり、
Toxinは、請求項30に定義されている通りである、前記方法。
【請求項33】
式(IV-1-5)のリンカー-ペイロード中間体は、式(IV-1-6)の構造を有し、
式(IV-1-5’)のリンカー-ペイロード中間体は、式(IV-1-6’)の構造を有し、
式(5)のコンジュゲートは、式(6)の構造を有し、
式(5’)のコンジュゲートは、式(6’)の構造を有し、
式(IV-1-6)、(IV-1-6’)、(6)及び(6’)は以下に示す通りである、請求項32に記載の方法。
【化9-1】
【化9-2】
【請求項34】
請求項1から10のいずれか1項に記載のリガーゼ融合タンパク質、又は請求項11~14のいずれか1項に記載の固定化リガーゼのコンジュゲート調製における使用であって、
好ましくは、前記コンジュゲートは、請求項15から33のいずれか1項に定義されている通りである、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年1月28日に提出された国際特許出願第PCT/CN2021/074082号の優先権を主張し、その全ての内容が参照によって本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、具体的にはリガーゼ融合タンパク質及びそれを含む固定化リガーゼに関する。本発明は、前記リガーゼ融合タンパク質又は固定化リガーゼのコンジュゲート調製における用途をも提供する。本発明は、リガーゼ又はリガーゼユニットを用いてコンジュゲートを調製する方法をさらに提供する。
【背景技術】
【0003】
高品質のコンジュゲートに対する需要、特に生物科学研究、診断又は治療等の目的のためのバイオコンジュゲートに対する需要が急速に高まっているが、バイオコンジュゲートのハイスループット生産は満足のいくものには程遠いのが現状である。一部の原因は、生体分子が複雑なため、バイオコンジュゲートの高い品質基準に達することが難しいということである。
【0004】
従来のコンジュゲーション方法は化学的なものである。例えば、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の典型的な生産方法では、薬物はリンカーを介して抗体中のリジン又はシステイン残基と化学的にコンジュゲートされる。コンジュゲーションプロセスに移る前に、抗体は上流及び下流の精製プロセスによって調製される。コンジュゲーションステップの後、ADC中の凝集体、溶媒、副生成物及び不純物を除去するために、別の下流精製プロセスが必要である。抗体調製からADC生産までの方法において複数の下流ステップがあるため、コストと時間が大幅に増加するほかに、収率も低下する。また、安全性の観点から、コンジュゲーション反応は化学アイソレータ内で行う必要があるため、該方法のスケールアップが困難である。要するに、複数の上流及び下流精製ステップを含む従来の方法は、時間がかかり、経済的でなく、柔軟性がなく、スケーラビリティに欠ける。
【0005】
ソルターゼ酵素等のリガーゼは、穏やかな条件下で基質特異性が高く且つ効率的な方法でコンジュゲーションを触媒するためのものであり(例えば、WO2015/165413A1、WO2014/177042、及びWO2014/140317)、時間の節約、コストの削減及び浪費の低減が可能である。リガーゼは、多くの利点があるが、数々の課題により、コンジュゲーション反応における工業的応用が依然として制約されている。
【0006】
酵素の低い操作安定性及び低い再利用性等の課題は酵素の固定化によって解決できる。コンジュゲーションに応用されているものとして、臭化シアン活性化アガロースゲル上の固定化ソルターゼA(例えば、Witte et al.,Site-specific protein modification using immobilized sortase in batch and continuous-flow systems,Nat Protoc,(2015),10(3):508-516を参照)、又はニッケル修飾磁性粒子に固定されたHisタグ付きソルターゼA(例えば、Zhao et al.,One-step purification and immobilization of extracellularly expressed sortase A by magnetic particles to develop a robust and recyclable biocatalyst,Sci Rep,(2017),7:6561を参照)がある。
【0007】
しかしながら、上流の触媒反応からの残留酵素汚染物質を除去することは、ほとんどの酵素触媒コンジュゲート、特にバイオコンジュゲートにとって依然として主な懸念事項であり、これは、残留酵素汚染物質(固定化酵素の場合、支持体に非特異的に吸着された遊離酵素が、まだ脱落する可能性がある)の除去が困難であることがあるためである。したがって、費用対効果が高く、安定で、制御可能で、コンジュゲート生成物から容易に除去できるリガーゼが求められている。
【発明の概要】
【0008】
一概括的な態様では、本発明は、リガーゼ及びHaloタグを含む、リガーゼ融合タンパク質を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、リガーゼはトランスペプチダーゼである。いくつかの実施形態において、リガーゼはソルターゼである。いくつかの実施形態において、リガーゼはソルターゼAである。いくつかの好ましい実施形態において、ソルターゼAは、配列番号1~26から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの他の好ましい実施形態において、ソルターゼAは、部位34、100、105及び136にSNAT、YNAT、WNDT又はVNNSのアミノ酸置換を含み、好ましくは、ソルターゼAは、配列番号27のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0010】
一実施形態において、Haloタグは、ハロアルキル基質からハロゲンを除去して残りのアルキル基と共有結合を形成する突然変異のハロアルカンデハロゲナーゼ又はその変異体である。いくつかの実施形態において、Haloタグは、配列番号28のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0011】
好ましい一態様において、本発明は、由来するリガーゼと比較して等電点(pI)が変化したリガーゼ融合タンパク質を提供し、前記リガーゼは塩基性pIを有し、前記Haloタグは酸性pIを有する。いくつかの実施形態において、前記リガーゼは約7.5~約10.0の等電点(pI)を有し、前記Haloタグは約4.5~約5.0の等電点を有し、前記リガーゼ融合タンパク質のpIは、前記リガーゼのpIよりも約2.0~約4.5pH単位低い。
【0012】
別の概括的な態様において、本発明は、支持体に固定化される本発明のリガーゼ融合タンパク質を含む、固定化リガーゼを提供する。
【0013】
本発明は、本発明のリガーゼ融合タンパク質又は固定化リガーゼのコンジュゲート調製における用途をさらに提供する。
【0014】
さらに別の概括的な態様において、本発明は、第1部分及び第2部分を含むコンジュゲートを調製する方法であって、
(a)第1部分を含むシステム1を用意し、及び第2部分を含むシステム2を用意するステップと、
(b)ステップ(a)のシステム1及びシステム2をリガーゼユニットに接触させ、第1部分と第2部分との間のコンジュゲーション反応を触媒して、前記コンジュゲートを得るステップと、を含み、
前記リガーゼユニットはリガーゼを含み、
前記第1部分及び第2部分は、それぞれ独立して、生体分子、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、受容体、シグナル伝達因子、細胞成長因子、核酸もしくは核酸類似体、小分子化合物、グリカン、PEG部分、放射性核種、サイトカイン、免疫調節剤、トレーサー分子、フルオロフォア、蛍光分子、ペプチド、ポリペプチド、又はペプチド模倣体を含み、
前記第1部分及び第2部分のうちの一方はリガーゼ供与体基質認識モチーフをさらに含み、第1部分及び第2部分のうちの他方はリガーゼ受容体基質認識モチーフを含む、前記方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記リガーゼユニットは、遊離リガーゼ、好ましくはトランスペプチダーゼ、特に好ましくはソルターゼ、より特に好ましくはソルターゼAを含み、最も好ましくは、前記リガーゼユニットは本発明のリガーゼ融合タンパク質を含む。
他のいくつかの実施形態において、前記リガーゼユニットは支持体に固定化されたリガーゼを含み、好ましくは、前記リガーゼは支持体に共有結合で固定化され、前記リガーゼは、好ましくはトランスペプチダーゼ、特に好ましくはソルターゼ、より特に好ましくはソルターゼAであり、最も好ましくは、前記リガーゼユニットは本発明の固定化リガーゼを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、ステップ(a)のシステム1及びシステム2のうちの少なくとも1つは、1つ又は複数の不純物を含む。他のいくつかの実施形態において、ステップ(a)のシステム1及びシステム2のうちの少なくとも1つは、収穫された清澄化細胞培養液(HCCF)である。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記方法は、
(1)ステップ(b)の前に、ステップ(a)のシステム1に対して1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、及び/又は、
(2)ステップ(b)の前に、ステップ(a)のシステム2に対して1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、及び/又は、
(3)ステップ(b)で得られたコンジュゲートに対して、
1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、をさらに含む。
【0018】
クロマトグラフィーステップは、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びそれらの組合せからなる群から独立して選択することができる。好ましくは、クロマトグラフィーステップは、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びそれらの組合せから選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1部分及び第2部分のうちの少なくとも1つは、抗体又は抗体フラグメントを含み、ステップ(1)~(3)のうちの少なくとも1つは、アフィニティークロマトグラフィーを含み、好ましくは、抗体又は抗体フラグメントは、Fcフラグメントを含み、アフィニティークロマトグラフィーは、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】スタフィロコッカスワーネリ(Staphylococcus warneri)由来の例示的なSrtA(配列番号3)及びそのSNAT変異体のソルターゼ活性を示す。
図2】精製された(A)Halo-ソルターゼ、(B)His-ソルターゼ及び(C)GB1-ソルターゼの活性を示す。
図3】様々なクロロ樹脂の酵素負荷量を示す。
図4】様々なクロロ樹脂から調製された固定化Halo-ソルターゼの触媒活性(DARとして表される)を示す。
図5】低温下でGB1-ソルターゼ、His-ソルターゼ又はHalo-ソルターゼで触媒して生成させるADC生成物の溶解性を示す。
図6】QSepharoseFF媒体を使用したAEXにおける(A)ADC、(B)Halo-ソルターゼ及び(C)ADC+Halo-ソルターゼのクロマトグラフィープロファイルを示す。[0036]
図7】CaptoSImpAct媒体を使用したCEXにおける(A)ADC及び(B)Halo-ソルターゼのクロマトグラフィープロファイルを示す。
図8】HIC-HPLC分析によるプロセス2の粗コンジュゲート混合物に含まれるコンジュゲートのDAR組成を示す。
図9】プロセス2における各クロマトグラフィーステップの後の、標的ADCを含むサンプル中の残留不純物の量を示す(図中、タンパク質Aとは、タンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのmAb溶出物であり、AEXとはAEXのADCフロースルー液であり、CEXとはCEXのADC溶出物である)。
図10】HIC-HPLC分析によるプロセス1の粗コンジュゲート混合物に含まれるコンジュゲートのDAR組成を示す。
図11】プロセス1における各クロマトグラフィーステップの後の、標的ADCを含むサンプル中の残留不純物の量を示す(図中、タンパク質Aとは、タンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのADC溶出物であり、AEXとはAEXのADCフロースルー液であり、CEXとはCEXのADC溶出物である)。
図12】プロセス3における各クロマトグラフィーステップの後の、標的ADCを含むサンプル中の残留不純物の量を示す(図中、第1タンパク質Aとはタンパク質AアフィニティークロマトグラフィーでのmAb溶出物であり、第2タンパク質Aとはタンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのADC溶出物であり、AEXとはAEXのADCフロースルー液であり、CEXとはCEXのADC溶出物である)。
図13】標的ADCを含むサンプル中の残留Halo-ソルターゼの量を示す(図中、コンジュゲーションとはHalo-ソルターゼカラムのフロースルー液から収集される粗コンジュゲート混合物であり、タンパク質Aとはタンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのADC溶出物であり、AEXとはAEXのADCフロースルー液であり、CEXとはCEXのADC溶出物である)。
図14】リンカー-毒素(リンカー-ペイロード中間体)除去の最適化されたクロマトグラフィープロファイルを示し、(A)はBiomaxのタンパク質A媒体によるものであり、(B)はGEのタンパク質A媒体によるものであり、(C)はGEのCEX媒体によるものである。
図15】従来の方法(従来のADCプロセス)及び本発明の方法(ADCプロセス1、ADCプロセス2、ADCプロセス3及びADCプロセス4)を使用したADC調製のステップフローチャートを示す(図中、タンパク質Aとはタンパク質Aクロマトグラフィーであり、低pHとは低pH処理であり、UF/DFとは限外濾過/ダイアフィルトレーションであり、AEXとは陰イオン交換クロマトグラフィーであり、CEXとは陽イオン交換クロマトグラフィーであり、HICとは疎水性相互作用クロマトグラフィーであり、MabDSとはモノクローナル抗体の下流プロセスである)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般的な定義
別段に定義しない限り、本発明で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。また、タンパク質及び核酸化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学並びに免疫学に関する用語及び実験方法は、当技術分野で広く用いられている用語及び一般的な方法である。本明細書に商品名が記載されている場合、それに対応する商品又はその有効成分を指すことを意図する。本明細書に引用した全ての特許、公開特許出願及び出版物は全て参照によって本出願に組み込まれる。また、本発明をよりよく理解するために、関連する用語の定義と説明を以下に示す。
【0022】
本明細書で使用されるように、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」という表現は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又はそれ以上、100、200、300、400、500、600、700、800、900又はそれ以上、等を意味する。本明細書で使用されるように、反対のことが明示されない限り、「1」及び「1つ」は、「少なくとも1つ」と理解されるべきである。
【0023】
特定の量、濃度、又はその他の値もしくはパラメータが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値、又は好ましい下限値として示されていることは、任意の上限値又は好ましい値と任意の下限値又は好ましい値とを組み合わせた全ての範囲が、明記されているかどうかに関わらず、具体的に開示されていることと同等であると理解すべきである。特に明記しない限り、本明細書で列挙される数値の範囲は、範囲の端点及び該範囲内の全ての整数及び分数(小数)を含むことを意図する。例えば、「iは2から20の整数である」という表現は、iが2から20のいずれかの整数であると理解すべきであり、例えば、iは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であり得る。他の類似表現も同様に理解すべきである。
【0024】
用語「約」及び「およそ」は、濃度、等電点(pI)、pH、温度、又は特定の範囲等の数値変数と組み合わせて使用する場合、一般に、変数の値及び変数の全ての値が、実験誤差の範囲内(例えば、平均値の95%信頼区間内)又は具体値±10%以内、又はより広い範囲内であることを意味する。
【0025】
用語「任意の」又は「任意に」とは、その後に説明される事象が発生する可能性があるが、必ずしも発生するわけではないことを意味し、該表現は、前記事象又は状況が発生する場合又は発生しない場合を含むことを意味する。
【0026】
表現「含む」又は類似の表現「備える」、「含有」及び「有する」等はオープンエンドなものであり、追加の列挙されていない要素、ステップ又は成分を排除しない。表現「…からなる」は、明確に示していない要素、ステップ又は成分をいずれも除外する。表現「実質的に…からなる」は、範囲を、指定の要素、ステップ又は成分、及び保護を請求する主題の重要な特徴及び新規な特徴に実質的な影響を及ぼさない任意に存在する元素、ステップ又は成分に限定することを意味する。表現「含む」は表現「実質的に…からなる」と「…からなる」を包含すると理解すべきである。
【0027】
本明細書で使用されるように、「生体分子」の定義は、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、小さなヌクレオチド、アミノ酸及びその誘導体を包含する。
【0028】
本明細書で使用されるように、「核酸」又は「ポリヌクレオチド」とは、少なくとも2つのヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体がホスボジエステル結合で連結したポリマーを指し、デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)を含む。
【0029】
本明細書で使用されるように、「ベクター」とは、外来性核酸を宿主細胞に導入するための媒体であり、外来性核酸は宿主細胞内で増幅又は発現する。本明細書で使用されるように、「ベクター」の定義は、プラスミド(例えば、線形化プラスミド)、ウイルスベクター、コスミド、ファージベクター、ファージミド、人工染色体(例えば、酵母人工染色体及び哺乳動物人工染色体)等を包含する。本明細書で使用されるように、ベクターが宿主細胞内で発現及び/又は複製できることは、ベクターが宿主細胞内でRNAポリヌクレオチド又はポリペプチドを発現できること、及び/又は、ベクターの複数のコピーを生成できることを意味する。「発現可能」又は「複製可能」のために、ベクターは、プロモーターに動作可能に連結された核酸配列又は要素を含んでもよい。本明細書で使用されるように、核酸配列又は要素に関する「動作可能な連結」とは、これらの核酸配列が機能的に相互に関連していることを意味する。例えば、プロモーターは、ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結して、核酸の転写を調節又は媒介することができる。当業者は、特定の目的に応じて適切なベクターを選択して使用することができる。
【0030】
本明細書で使用されるように、「ペプチド」、「ポリペプチド」又は「タンパク質」とは共有結合した2つ又は複数のアミノ酸を意味する。特に明記しない限り、これらの用語は互換的に使用できる。
【0031】
本明細書で使用されるように、「配列同一性」は本分野で一般的に認識されている意味を有し、2つのポリペプチド間の配列同一性の百分率は、例えば、基本的なローカルアラインメント検索ツール(BLAST)、及び高速適応縮小/閾値処理アルゴリズム(FASTA)(例えば、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994を参照)のような、公的に利用できるアルゴリズムを使用して2つの配列を比較することによって算出することができる。2つのポリペプチド間の同一性を測定する方法は様々であるが、用語「同一性」は、当業者によく知られたものである(Carrillo,H.&Lipman,D.,SIAM J Applied Math 48:1073(1988))。
【0032】
本明細書で使用されるように、用語「変異体」とは、参照タンパク質に比べて、1つ又は複数の残基の置換、欠失、挿入があるタンパク質を意味する。参照タンパク質は、天然資源から分離可能な天然に存在するタンパク質(即ち、野生型タンパク質)、又は操作されたタンパク質であってもよい。本明細書で使用されるように、例えばソルターゼA変異体又はHaloタグ変異体等の変異体の機能又は活性は、それぞれ参照ソルターゼA又はHaloタグの機能又は活性と実質的に類似又は同等又はそれ以上である。
【0033】
本明細書の具体的な文脈において、タンパク質中のアミノ酸の位置は次のように定義される。(i)N-末端から開始し、及び(ii)N末端の1番目のアミノ酸位置を1として指定する。所定位置(例えば部位34)のアミノ酸(例えばSer)は、Ser34と表すことができる。所定のアミノ酸位置(例えば部位272)のアミノ酸(例えばHis)が他のアミノ酸(例えばPhe)に置換されたものは、His272Pheと表すことができる。
【0034】
本明細書で使用されるように、「リガーゼ」とは、2つ又は複数の分子の共有結合を触媒することができる酵素のことである。リガーゼは、リガーゼ供与体基質認識モチーフを含む第1部分とリガーゼ受容体基質認識モチーフを含む第2部分との間のコンジュゲーションを特異的に触媒して、標的コンジュゲートを生成することができる。
【0035】
本明細書で使用されるように、用語「ペプチド転移反応」とは、1つ又は複数のアミノ酸(例えばペプチド)が1つの分子から別の分子に転移する化学反応を指す。トランスペプチダーゼは、供与体基質と受容体基質との間のペプチド転移反応を触媒できる酵素である。在ソルターゼによって触媒される簡略化したペプチド転移反応では、まずソルターゼがリガーゼ供与体基質の認識モチーフ(供与体認識モチーフとも呼ばれ、例えばSrtAが使用される場合のLPXTG)を切断し、チオエステル結合を形成することによって基質-酵素中間体を生成する。次に、リガーゼの受容体基質認識モチーフ(受容体認識モチーフとも呼ばれ、例えばGGG)がチオエステル結合を求核攻撃して酵素を放出し、2つの基質の間に新しいペプチド結合を形成する。ペプチド転移反応では通常、両方がコンジュゲートしてコンジュゲートを形成する。
【0036】
本明細書で使用されるように、用語「コンジュゲーション」は、少なくとも2つの部分(例えば、少なくとも2つの分子又は同一分子の少なくとも2つの末端)の共有結合を意味する。
【0037】
本明細書で使用されるように、「コンジュゲート(conjugate)」は、少なくとも2つの部分(例えば、少なくとも2つの分子又は同一分子の少なくとも2つの末端/側鎖)の共有結合により調製することができる。
【0038】
本明細書で使用されるように、「バイオコンジュゲート」とは、結合された部分の少なくとも1つが生体分子であるコンジュゲートを意味する。バイオコンジュゲートの例としては、ポリマー、脂質、抗体、ペプチド、アプタマー(aptamer)又は小分子リガンドに結合された治療用分子、例えば、siRNAコンジュゲート、ペプチドホルモンコンジュゲート、ペプチド-ペプチドコンジュゲート、ペプチド-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲート及び多重特異性抗体等を含む。
【0039】
用語「標的化分子」とは、特定の標的(例えば受容体、細胞表面タンパク質、サイトカイン等)に対して親和性を有する分子を意味する。標的化分子は、標的送達によりペイロードを生体内の特異部位に送達することができる。標的化分子は、1つ又は複数のターゲットを認識することができる。特異的な標的部位は、標的化分子が認識したターゲットによって定義される。例えば、受容体を標的とする標的化分子は、大量の前記受容体を含む部位に細胞毒素を送達することができる。標的化分子の例としては、抗体、抗体フラグメント、所定抗原の結合タンパク質、抗体模倣体、所定ターゲットに対して親和性を有する足場タンパク質、リガンド等を含むが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「抗体-薬物コンジュゲート(ADC)」とは、ペイロードに共有結合された抗体又は抗体フラグメントを含むコンジュゲートを意味する。
本明細書で使用されるように、リガーゼ(例えばソルターゼ)の「活性」、「酵素活性」及び「触媒活性」という用語は、コンジュゲーション反応を触媒するリガーゼの能力を指し、且つ互換的に使用することができる。本明細書で使用されるように、コンジュゲーション反応、例えば、抗体とペイロードとの間のコンジュゲーション反応におけるソルターゼの触媒活性は、コンジュゲーション効率(コンジュゲーション効率=(コンジュゲート抗体のモル数:全抗体のモル数)×100%)又はDAR(薬物抗体比、即ち、所定抗体の薬物コンジュゲート製剤の平均薬物抗体比)分布として表すことができる。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「抗体(Ab)」とは、少なくとも1つの抗原結合部位を介して抗原に特異的に結合する免疫グロブリン(Ig)分子又はその誘導体を意味する。「従来」又は「完全長」の抗体は、一般に、2つの重鎖(HC)と2つの軽鎖(LC)の4つのポリペプチドからなる。本明細書で使用されるように、「抗体」の定義は、従来の抗体、組換え抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、完全ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、イントラボディ(intrabody)、ダイアボディ(diabody)、ナノ抗体(即ち単一ドメイン抗体、VHHドメイン)及び抗イディオタイプ抗体を含む。「抗体」はまた、任意の免疫グロブリンタイプ(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgA及びIgY)、任意のクラス(例えばIgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)もしくはサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)のメンバー、又はそれらの任意の誘導体を含む。
【0042】
本明細書で使用されるように、抗体の「抗体フラグメント」とは、完全長抗体よりも少ないアミノ酸残基を含む抗体の任意の部分を指し、例えば、抗体の可変構造ドメインの少なくとも一部(例えば1つ又は複数のCDR)を含み且つ完全長抗体の同起源抗原に特異的に結合する抗原結合フラグメント、又は、抗体の重鎖定常領域を含み且つ細胞表面のFc受容体に結合するFcフラグメントである。抗体フラグメントは、化学的又は酵素的処理、化学合成又は組換えDNA技術等、様々な方法によって取得することができる。抗体フラグメントの例としては、Fv(可変領域フラグメント)、scFv(単鎖Fvフラグメント)、dsFv(ジスルフィド結合によって安定化させた可変フラグメント)、scdsFv(単鎖ジスルフィド結合によって安定化させた可変フラグメント)、ダイアボディ、Fdフラグメント(the fragment difficult)、Fab(抗原結合フラグメント)、scFab(単鎖Fab)、Fab’、F(ab’)、Fc(結晶化可能フラグメント)及びそれらの任意の誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用されるように、用語「ペイロード(payload)」は、例えば、リンカーを介して連結された、コンジュゲートに含まれる機能部分を指す。ペイロードの例としては、小分子化合物(小分子薬物とも呼ばれ、例えば、阻害剤及び毒素(細胞毒素等))、放射性核種(例えば、225Ac、211At、212Bi、213Bi、67Ga、123I、124I、125I、131I、111In、177Lu、191mOs、195mPt、186Re、188Re、119Sb、153Sm、99mTc、227Th及び90Y)、グリカン、PEG部分、核酸及び類似体(例えば、干渉RNA)、トレーサー分子(例えば、フルオロフォア及び蛍光分子)、ポリペプチド(例えば、タンパク質タグ、生物活性ペプチド、酵素、抗体及び抗体フラグメント、並びにタンパク質毒素)、及びペプチド模倣体を含むが、これらに限定されない。本明細書で使用されるように、リンカー(例えば、リガーゼ基質認識モチーフを含むリンカー)を含むペイロード及び上述したペイロードは本発明に含まれる。
【0044】
本明細書で使用されるように、用語「天然アミノ酸」は、タンパク質の構成アミノ酸であるアミノ酸を指し、一般的な20種類のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリン)と、あまり一般的ではないセレノシステイン及びピロリジンを含む。
【0045】
本明細書で使用されるように、用語「非天然アミノ酸」は、タンパク質の構成アミノ酸ではないアミノ酸を指す。具体的には、該用語は、上記で定義した天然アミノ酸でないアミノ酸を指す。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語「ペプチド模倣体」とは、特定のペプチドのコンフォメーション及び所望の特徴を模倣する化合物を指す。
【0047】
本明細書で使用されるように、「受容体」は、細胞内又は表面に存在し、特定の物質に結合して細胞内で特定の作用をもたらす構造を指す。受容体は、本明細書に記載のT細胞受容体、B細胞受容体、及びシグナル分子、細胞成長因子とサイトカインの受容体を含み得る。
【0048】
本明細書で使用されるように、「シグナル伝達因子」とは、細胞を横断又は通るシグナル伝達事象において役割を果たす任意の物質を指す。シグナル伝達因子は、シグナル分子(例えば、ステロイドホルモン、レチノイン酸、甲状腺ホルモン、ビタミンD、ペプチドホルモン、神経ペプチド、エイコサノイド、神経伝達物質及びサイトカイン)及びそれらの受容体を含み得るが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用されるように、用語「免疫調節剤」は、免疫系の機能に影響を与えることができる生物学的活性物質を指す。免疫調節剤は、免疫抑制性のもの(例えば免疫抑制剤/免疫抑制性の薬物)又は免疫刺激性のもの(例えば免疫刺激剤(immunostimulant)/免疫賦活剤(immunostimulator))であってもよい。免疫調節剤の例としては、サイトカイン、胸腺ホルモン(例えば、チムリン、チモシン及びチモポエチン)、レンチナン、β-グルカン、イヌリン、レバミゾール、イソプリノシン、IMPDH阻害剤(例えば、アザチオプリン、レフルノミド(leflunomide)、ミコフェノール酸、ミゾリビン(mizoribine)、リバビリン(ribavirin)及びチアゾフリン(tiazofurin))、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス(tacrolimus))、mTOR阻害剤(例えば、シロリムス(sirolimus)、エベロリムス(everolimus))、P38阻害剤、NF-κB阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(bortezomib))、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン(prednisone)、ブデソニド(budesonide)、及びプレドニゾロン(prednisolone))、ヤヌスキナーゼ阻害剤(例えば、トファシチニブ(tofacitinib)、バリシチニブ(baricitinib))、抗サイトカイン抗体、及びT細胞受容体に対する抗体を含み得るが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用されるように、用語「細胞成長因子」は、細胞の成長、癒合、増殖、生存及び分化を刺激できる任意の物質を指す。成長因子の例としては、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子(TGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、奇形癌由来成長因子(TDGF))、インスリン様成長因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、及びエリスロポエチン(EPO)を含み得るが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用されるように、用語「サイトカイン」は、免疫系の細胞から放出され、他の細胞に影響を与える任意の物質を指す。サイトカインの例としては、ケモカイン、リンホカイン、コロニー刺激因子(CSF)、単球走化性タンパク質(MCP)、血管新生因子、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)、成長因子、及び他の細胞にシグナルを伝達できるその他の分泌分子と細胞表面分子を含むが、これらに限定されない。サイトカインは、INFα、INFβ、INFγ、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IP-10/CXCL10、eotaxin/CCL11、MCP-1/CCL2、MIP-1α/CCL4、RANTES/CCL5、TNFα、TNFβ、及び成長因子を含むが、これらに限定されない。
【0052】
小分子化合物とは、医療で一般的に使用される有機分子と同程度の大きさの分子のことである。該用語は、生体高分子(例えば、タンパク質、核酸等)を包含しないが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド等の低分子量のペプチド又はその誘導体を含む。一般に、小分子化合物の分子量は、例えば、約100~約2000Da、約200~約1000Da、約200~約900Da、約200~約800Da、約200~約700Da、約200~約600Da、約200~約500Daであり得る。本明細書で使用されるように、小分子化合物は、薬物と称することもできる。
【0053】
細胞毒素とは、細胞の発現活性、細胞機能を阻害又は阻止し、及び/又は細胞破壊を引き起こす物質である。場合によっては、現在ADCに使用されている細胞毒素は、一般に使われている化学療法薬よりも毒性が強いことがある。細胞毒素の例としては、微小管細胞骨格、DNA、RNA、キネシン媒介のタンパク質輸送、アポトーシス調節のようなターゲットを標的とする薬物を含むが、これらに限定されない。微小管細胞骨格を標的とする薬物は、例えば、微小管安定化剤又は微小管タンパク質重合阻害剤であり得る。微小管安定化剤の例としては、タキサン類を含むが、これに限定されない。微小管タンパク質重合阻害剤の例としては、メイタンシノイド類(maytansinoids)、アウリスタチン類(auristatins)、ビンブラスチン類、コルヒチン類、及びドラスタチン類を含むが、これらに限定されない。DNA標的薬物は、例えば、DNA構造を直接破壊する薬物、又はトポイソメラーゼ阻害剤であり得る。DNA構造を直接破壊する薬物の例としては、DNA二本鎖切断剤、DNAアルキル化剤、DNAインターカレーター(DNAintercalator)を含むが、これらに限定されない。DNA二本鎖切断剤は、例えば、エンジイン系抗生物質であり得、ダイネマイシン(dynemicin)、エスペラマイシン(esperamicin)、ネオカルチノスタチン(neocarzinostatin)、uncialamycin等を含むが、これらに限定されない。DNAアルキル化剤は、例えば、DNAビスアルキル化剤(bis-alkylator)(即ちDNA架橋剤)又はDNAモノアルキル化剤であり得る。DNAアルキル化剤の例としては、ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)二量体、1-(クロロメチル)-2,3-ジヒドロゲン-1H-ベンゾ[e]インドール(CBI)二量体、CBI-PBDヘテロ二量体、ジヒドロインドロベンゾジアゼピン(IGN)二量体、デュオカルマイシン様(duocarmycin-like)化合物等を含むが、これらに限定されない。トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、カンプトテシン類(camptothecins)、アントラサイクリン類(anthracyclines)を含むが、これらに限定されない。RNAを標的とする薬物は、例えば、スプライシングを阻害する薬物であり得、その例としては、プラジエノリド(pladienolide)を含むが、これに限定されない。キネシン媒介のタンパク質輸送を標的とする薬物は、例えば、有糸分裂キネシン阻害剤であり得、キネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤を含むが、これに限定されない。
【0054】
スペーサーは、異なる構造モジュールの間に位置し、構造モジュールを空間的に分離できる構造である。スペーサーの定義は、特定の機能を有するかどうか、又は生体内で切断又は分解され得るかどうかによって限定されない。スペーサーの例としては、アミノ酸及び非アミノ酸構造を含むが、これらに限定されない。そのうち、非アミノ酸構造は、アミノ酸誘導体又は類似体であり得るが、これらに限定されない。「スペーサー配列」とは、スペーサーとなるアミノ酸配列を指し、その例としては、Leu、Gln等の単一のアミノ酸、複数のアミノ酸を含む配列、例えばGA等の2つのアミノ酸を含む配列、又は例えばGGGS、GGGGSGGGGS等を含むが、これらに限定されない。スペーサーの他の例としては、例えば、PAB(p-aminobenzyl,パラアミノベンジル)等の自壊的スペーサーを含む。
【0055】
用語「アルキル基」とは、炭素原子と水素原子からなる直鎖又は分枝飽和脂肪族炭化水素基を意味し、該飽和脂肪族炭化水素基は単結合によって分子の残りの部分に連結されている。アルキル基は、1~20個の炭素原子を含み得、即ちC-C20アルキルであり得、例えば、C-Cアルキル基、C-Cアルキル基、C-Cアルキル基、Cアルキル基、Cアルキル基、C-Cアルキル基である。アルキルの非限定的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、又は1,2-ジメチルブチル基、又はそれらの異性体を含むが、これらに限定されない。二価ラジカルとは、対応する一価ラジカルの自由価電子を持つ炭素原子から水素原子を1つ除去することによって得られた基を意味する。二価ラジカルは、分子の残りの部分に連結されている2つの連結部位を有する。例えば、「アルキレン基」又は「アルキリデン基」とは、直鎖又は分枝鎖の飽和二価炭化水素基を指す。アルキレン基の例としては、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-C-)、プロピレン基(-C-)、ブチレン基(-C-)、ペンチレン基(-C10-)、ヘキシレン基(-C12-)、1-メチルエチレン基(-CH(CH)CH-)、2-メチルエチレン基(-CHCH(CH)-)、メチルプロピレン基、エチルプロピレン基等を含むが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用されるように、1つの基が他の基と組み合わされる場合、化学的に安定な構造が形成されるのであれば、基の連結は直鎖状でも分枝状でもよい。このような組合せによって形成される構造は、該構造内の任意の適切な原子によって、好ましくは指定の化学結合によって分子の他の部分に連結することができる。例えば、C1-4アルキレン基と、-CH-、-NH-、-(CO)-、-NH(CO)-、-(CO)NH-を含む基の1つとを組み合わせると記述する場合、C1-4アルキレン基は上記基と直鎖状連結を形成することができ、例えば、C1-4アルキレン-CH-、C1-4アルキレン-NH-、C1-4アルキレン-(CO)-、C1-4アルキレン-NH(CO)-、C1-4アルキレン-(CO)NH-、-CH-C1-4アルキレン、-NH-C1-4アルキレン、-(CO)-C1-4アルキレン、-NH(CO)-C1-4アルキレン、-(CO)NH-C1-4アルキレンを形成することができる。得られた二価構造は、分子の他の部分にさらに連結することができる。
【0057】
本明細書で使用されるように、用語「等電点(pI)」は、正味表面電荷を持たない分子(例えばタンパク質)の水溶液のpH(水素濃度指数)値であり、pH単位として表される。タンパク質のpIは、例えば、画像化キャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)及びキャピラリー等電点電気泳動(CIEF)等、当分野でよく知られている方法を用いて実験的に測定することができる。異なるpIを持つ異なる生体分子(タンパク質、核酸、多糖類等)は所定のpH値で異なる電荷を持ち得、これにより、イオン交換クロマトグラフィー又は等電点電気泳動等の方法によって分離可能となる。
【0058】
本明細書で使用されるように、「塩基性pI」を持つ分子は、pIが7.0よりも高い分子を指す。本明細書で使用されるように、「酸性pI」を持つ分子は、pIが7.0よりも低い分子を指す。
【0059】
本明細書で使用されるように、「タンパク質タグ」は、目的とする分子の検出、分離、固定化又は捕獲を促進するために、又は目的とする分子の1つ又は複数の特性(例えば発現レベル、溶解性、及び安定性)を改善するために目的とする分子に導入可能なポリペプチドを指す。
【0060】
イオン交換クロマトグラフィー(IEX)は、生体分子の正味表面電荷の差、及びイオン交換体(媒体、樹脂又は固定相とも呼ばれる)に対する親和力の差に基づいて生体分子を分離する、生体分子の精製によく使われている技術である。例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーでは、pIが緩衝液のpHよりも低いタンパク質は、負の正味表面電荷を持ち、且つ正に帯電した陰イオン交換体に結合する。一方、pIが緩衝液のpHよりも高い別のタンパク質は、正の正味表面電荷を持ち、且つ正に帯電した陰イオン交換体に結合しないため、緩衝液とともに媒体を通る。
【0061】
本明細書で使用されるように、用語「支持体」は、反応混合物から固体形態又は半固体形態で分離可能な水不溶性物質を指し、例えば、サーフェス、ゲル、ポリマー、マトリックス、粒子、樹脂、ビーズ又は膜である。
【0062】
用語「清澄化(clarification)」とは、目的とする生体分子を含む系から不溶性不純物を除去することを意味する。「清澄化(clarification)」プロセスは、比濁分析によって監視することができ、例えば、比濁分析濁度単位(NTU)で測定することができる。
【0063】
用語「仕上げ精製ステップ」とは、混合物中に存在する微量の汚染物質及び凝集体をさらに除去するステップをいう。一般に、ADC又は抗体調製のプロセスでは、1つ又は複数の仕上げ精製ステップを用いることができ、仕上げ精製ステップは、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーから選択することができる。
【0064】
本明細書で使用されるように、用語「不純物」及び「汚染物質」とは、標的分子混合物中の望ましくない物質を指し、例えば、細胞、細胞片、宿主細胞タンパク質及びその他のタンパク質、エンドトキシン、媒体成分、脂質、過剰な反応物質(例えば未反応のリンカー-ペイロード中間体(linker-payloadintermediate))、核酸、及びウイルスである。
【0065】
本明細書で使用されるように、用語「ppm(百万分の一)」とは、総重量100万単位あたりの標的分子(例えば標的コンジュゲート)に含まれる汚染物質(例えばHCP又はタンパク質A)の量の単位である。該用語は、標的分子の純度を示す尺度として使用される。
【0066】
用語「限外濾過」又は「UF」は、制御可能な細孔、半透膜を用いて溶解した分子を濃縮又は分級する膜濾過技術を指す。細孔よりもはるかに大きな分子は供給溶液に保持され、膜を通過する液体の体積に正比例して濃縮される。限外濾過膜の孔径は、一般に1~100nmである。
【0067】
用語「ダイアフィルトレーション」又は「DF」とは、限外濾過膜を用いてタンパク質、ペプチド、核酸及びその他の生体分子を含む溶液から、塩又は溶媒を完全に除去、置換又はその濃度を下げる技術を指す。該方法は、分子サイズに基づいて透過性(多孔質)膜フィルターを選択的に使用して、溶液及び懸濁液の成分を分離する。限外濾過とダイアフィルトレーションは組み合わせて使用することができ、UF/DFと呼ばれる。
【0068】
ウイルス不活性化は、安全性を確保するために、多くのバイオ医薬品の精製プロセスで使用されている。温度、pH、放射線、及び特定の化学試薬への暴露を含む種々のウイルス不活化技術が当技術分野で知られている。一般に、ウイルス不活性化は、低pH処理によって行うことができる。Fcフラグメントを含む分子の場合、ウイルス不活性化は、例えばクロマトグラフィー方法ステップ(例えばタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィー)の後に行うことができる。この場合、標的分子を含むプール(pool)はウイルス不活性化に必要なpHに調整され、一定時間維持され(ウイルス不活性化酸性化(VIA)ステップ)、pHと時間の組合せがウイルスの不活性化を引き起こすことは証明されている。VIAプールは、さななる下流プロセスで使用するために、中性に近いpH値に調整される(ウイルス不活性化中和(VIN)ステップ)。
【0069】
ウイルス濾過(ウイルス保持濾過とも呼ばれる)は、多くのバイオ医薬品精製プロセスにおいて一般的なステップである。ウイルス濾過は、UF又はナノ濾過によって行うことができる。低pH又は熱処理等の他の専用のウイルス除去ユニット操作に比べて、ほとんどの場合、ウイルス濾過はより穏やかであるため、製品の品質への潜在的な悪影響が小さくなる。除去するウイルスの大きさに応じて、市販のウイルス濾過製品を使用することができる。
【0070】
本明細書において互換的に使用できる用語「方法ステップ」又は「ユニット操作」とは、精製プロセスにおいて特定の結果を達成するために1つ又は複数の方法又は装置を使用することを意味する。
【0071】
本明細書で使用されるように、用語「連続プロセス」とは、2つ又は複数の方法ステップ(又はユニット操作)を含む標的分子を精製するための方法を指し、1つの方法ステップからの送出液は、中断することなく及び/又は次の方法ステップを実行する前に前の方法ステップからの全ての送出液を収集することなく、直接次の方法ステップに進むようにする。本明細書で説明したように、連続プロセスには、任意の個々の方法ステップにおける流体物質の送入又は送出が不連続又は断続的である方法も含まれる。このようなプロセスは、「半連続」プロセスと呼ばれることがある。
【0072】
リガーゼ融合タンパク質
一態様では、本発明は、リガーゼ及びHaloタグを含む、リガーゼ融合タンパク質を提供する。
【0073】
リガーゼ
本発明のリガーゼは、任意の標的リガーゼであり得、特に、リガーゼ供与体基質認識モチーフを含む第1部分とリガーゼ受容体基質認識モチーフを含む第2部分との間のコンジュゲーションを特異的に触媒して、目的とするコンジュゲートを生成することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、リガーゼはトランスペプチダーゼである。トランスペプチダーゼは、天然に存在するものであっても、操作されたものであってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、リガーゼは、ソルターゼA(SrtA)、ソルターゼB(SrtB)、ソルターゼC(SrtC)、ソルターゼD(SrtD)、ソルターゼE(SrtE)又はソルターゼF(SrtF)等のソルターゼ(sortase)であるが、これらに限定されない。本明細書における「ソルターゼ」又は「ソルターゼ酵素」とは、ペプチド転移反応を触媒するソルターゼ活性を有する酵素を指し、例えば、ソルターゼ酵素スーパーファミリーのクラスA、クラスB、クラスC、クラスD、クラスE及びクラスFのソルターゼを含むが(例えば、Dramsi,et al.,Sorting sortases:a nomenclature proposal for the various sortases of Gram- positive bacteria,Research in Microbiology,(2005),156:289-297;Bradshaw,et al.,Molecular features of the sortase enzyme family,FEBS Journal,(2015),282:2097-2114;Malik and Kim,A comprehensive in silico analysis of sortase superfamily,J Microbiol.,(2019),57(6):431-443;及びEP3647419A1を参照)、これらに限定されない。このような酵素は、SrtA、SrtB、SrtC、SrtD、SrtE又はSrtFと呼ぶことができるが、これらに限定されない。ソルターゼは、天然に存在するものであっても、操作されたものであってもよい。天然に存在するソルターゼは、様々なグラム陽性菌に見られ、例えば、連鎖球菌属(Streptococcus)(例えば、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)と化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes))、ブドウ球菌属(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・アルジェンテウス(Staphylococcus argenteus)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))、バチルス属(Bacillus)(例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis))、及びリステリア属(Listeria)(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))等の任意の菌株、種又は亜種に見られるが、これらに限定されない。1つ又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失又は挿入を有するソルターゼ変異体のような操作されたソルターゼは、タンパク質工学及び化学合成等の当分野で知られている方法によって、その天然の対応物から得ることができる。また、野生型ソルターゼと同一又は類似の機能を有するものであれば、当分野で知られている任意の野生型ソルターゼの他の変異体(例えば1つ又は複数の活性基又はラベルを有するもの)も考慮される。当業者であれば、ソルターゼを容易に同定し、その配列及び他の特徴に基づいて特定のクラスに分類することができる。しかしながら、ソルターゼの定義は、いかなる分類方法又は命名システムにも限定されない。
【0075】
いくつかの具体的な実施形態において、リガーゼは、ソルターゼA(SrtA)である。SrtAは、天然に存在するものであっても、操作されたものであってもよい。SrtAの例としては、例えば米国特許第7,238,489号及び上述のMalik and Kim,2019に記載したものを含み、例えば、連鎖球菌属(例えば、肺炎連鎖球菌と化膿連鎖球菌)、ブドウ球菌属(例えば、スタフィロコッカス・アルジェンテウスと黄色ブドウ球菌)、ストレプトミセス属(Streptomyces)(例えば、ストレプトミセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor))、バチルス属(例えば、炭疽菌)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)(例えば、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum))、及びリステリア属(例えば、リステリア・モノサイトゲネス)等の任意の菌株、種又は亜種を含むが、これらに限定されない。様々なSrtAのアミノ酸配列は、例えば、米国特許第7,238,489号又は公開配列データベース(例えばGenBank及びUniprot)において見出すことができ、その関連する内容が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の実施例に用いられ得る天然に存在するSrtAアミノ酸配列は、Uniprot受託番号Q2FV99、A0A3S0JRJ4、A0A2T4Q430、A0A507SMZ3、A0A1F2JEX6、A0A364UNR7、A0A1J3ZU75、A0A0M2NSU2、A0A432A5V1、A0A1J4HB57、A0A4Q8MXV4、W1W5Z3、A0A2T4KDK7、A0A2K4DQX6、A0A2T4KHW3、A0A380FYB6、A0A2K4C0Y9、A0A4Q9WQB8、A0A121AFU6、A0A1Q8DH59、A0A5B2YTH7、A0A533IYI6、Q4L923、A0A1F1M8Z4、A0A2A1KC84、及びA0A133Q671のタンパク質であり得るが、これらに限定されない。操作されたSrtAは、例えばWO2016/014501等の様々な文献で報告されており、その関連する内容が参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、WO2016/014501に記載されているように、Q2FV99と比較して1つ又は複数の置換(例えばPro94Arg、Aspl60Asn、Aspl65Ala、Lysl90Glu、Lysl96Thr、Glul05Lys及びGlul08Gln)を有する操作されたSrtA、又はQ2FV99と比較してN-末端の59個のアミノ酸が欠失した短縮されたSrtAを考慮に入れることができる。SrtA変異体のアミノ酸配列は、上記の任意の他のアミノ酸配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有することができる。また、野生型SrtAと同一又は類似の機能を有するものであれば、当分野で知られている任意の野生型SrtAの変異体(例えば1つ又は複数の活性基又はラベルを有するもの)も考慮される。
【0076】
いくつかの実施形態において、SrtAは、配列番号1~26(WT)から選択されるアミノ酸配列を含む。他のいくつかの実施形態において、SrtAは、配列番号1~26から選択されるアミノ酸配列を含み、且つ部位34、100、105及び136にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、部位34、100、105及び136のアミノ酸残基は、それぞれSer、Asn、Ala及びThr(即ち[Ser34][Asn100][Ala105][Thr136],SNAT)、Tyr、Asn、Ala及びThr(即ち[Tyr34][Asn100][Ala105][Thr136],YNAT)、Trp、Asn、Asp及びThr(即ち[Trp34][Asn100][Asp105][Thr136],WNDT)、又はVal、Asn、Asn及びSer(即ち[Val34][Asn100][Asn105][Ser136],VNNS)によって置換される。いくつかの具体的な実施形態において、ソルターゼAは、配列番号1のSNAT対応物である配列番号27のアミノ酸配列を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、ソルターゼAは、配列番号1~26から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、ソルターゼAは、配列番号1~26から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、部位34、100、105及び136にSNAT、YNAT、WNDT又はVNNSのアミノ酸置換を含む。
【0079】
別の態様において、本発明は、SrtAを提供し、該SrtAは、配列番号1~26から選択されるアミノ酸配列を含み且つ部位34、100、105及び136にSNAT、YNAT、WNDT又はVNNSのアミノ酸置換を含み、又は前記アミノ酸突然変異体と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の態様において、本発明は、配列番号27のアミノ酸配列又はそれと少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、SrtAを提供する。
【0080】
Haloタグ
Haloタグは、ハロアルキル基質(例えば、ハロアルキル部分-(CH2-30-Xを含む試薬であり、ここでXは、F、Cl、Br、I、特にCl又はBrのようなハロゲンである)からハロゲンを除去し、基質の残りの部分と共有結合を形成する突然変異のハロアルカンデハロゲナーゼ又はその変異体である。突然変異のハロアルカンデハロゲナーゼは、例えば、WO2006/093529及びWO2008/054821に記載されており、その関連する内容が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明に用いられ得る突然変異のハロアルカンデハロゲナーゼは、キサントバクター(Xanthobacter)デハロゲナーゼ(例えばキサントバクターオートトロフィカス(Xanthobacterautotrophicus)デハロゲナーゼ(DhIA))、又はロドコッカス(Rhodococcus)デハロゲナーゼ(例えばロドコッカスロドクロウス(Rhodococcusrhodochrous)デハロゲナーゼ(DhaA))の突然変異体を含み得るが、これらに限定されず、その例としては、WO2008/054821に記載されているように、触媒トライアド残基にPhe/Ala/Gly/Gln/AsnによるHis272の置換又はCysによるAsp106の置換又はその他の置換等、1つ又は複数の置換を含むものが挙げられる。突然変異のハロアルカンデハロゲナーゼがハロアルキル基質と共有結合を形成できればよい。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態において、Haloタグは、配列番号28のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Haloタグは、配列番号28と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0082】
追加の要素及び/又は修飾をさらに含む実施形態
任意に、リガーゼ融合タンパク質は、追加のポリペプチド又はタグ等の1つ又は複数の追加の要素をさらに含んでもよい。好ましくは、リガーゼ融合タンパク質は、実質的に所望の特性を保持する。当業者であれば、融合タンパク質の所望の機能又は特性に応じて適切な要素を選択することができる。このような要素を導入する方法は当分野で知られている。
【0083】
追加のポリペプチドは、所望の特性を有するタンパク質タグであり得る。タンパク質タグの例としては、レポータータンパク質、結合タグ及び溶解性強化タグを含むが、これらに限定されない。レポータータンパク質の例としては、蛍光タンパク(例えば、緑色蛍光タンパク及びその変異体)、AP(塩基性ホスファターゼ)、及びHRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を含むが、これらに限定されない。結合タグは、共有結合又は非共有結合の方式で対応する結合パートナーに効果的に結合することができる。結合タグの例としては、ポリヒスチジンタグ(即ちHisタグであり、例えば、His又はHisタグである)、Fcタグ(免疫グロブリン重鎖定常領域(構造ドメイン3及び4))、カルモジュリンタグ、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、Sタグ(リボ核酸酵素Sタンパク質と相互作用する)、アビジン/ストレプトアビジン/ニュートラアビジンに結合するペプチド(例えば、SBPタグ、Strepタグ及びStrepタグII)、Haloタグ、SNAPタグ、及びCLIPタグ(DNA修復タンパク質O-アルキルグアニン-DNAアルキルトランスフェラーゼの操作された突然変異体)及びその変異体を含むが、これらに限定されない。溶解性強化タグは、組換えタンパク質の一部として発現される場合、一般的に組換えタンパク質の発現レベル及び溶解性を強化することができる。溶解性強化タグの例としては、GB1タグ(連鎖球菌タンパク質GのB1構造ドメイン)、ブドウ球菌タンパク質AのZ構造ドメイン、SUMO(小型ユビキチン関連修飾因子)、チオレドキシン、GST、及びMBPを含むが、これらに限定されない。なお、タンパク質タグの特性は実施形態に対するいかなる制限も構成せず、タンパク質タグは1つ又は複数の特性を有し得ることを理解すべきであり、例えば、レポータータンパク質又は結合タグは溶解性強化タグにもなり得る。
【0084】
追加のポリペプチドは、リンカー、スペーサー又は酵素切断可能な配列(例えばTEVプロテアーゼ認識モチーフ又はトロンビン認識モチーフ)として働くことができる短いペプチドであってもよい。いくつかの実施形態において、当分野で知られている方法でリガーゼとHaloタグとの間に剛性又は柔軟性のリンカーペプチド(例えばポリグリシンストレッチ、(GS)であり、ここでGはグリシンで、Sはセリンであり、nは1~6の整数であり、好ましくは、nは2~5の整数である)を挿入して、融合タンパク質の正常な機能を確保する。いくつかの実施形態において、リンカーペプチドは(GS)である。いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質は、配列番号29のアミノ酸配列を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、タグは、フルオロフォア、放射性核種、蛍光分子、蛍光量子ドット又はナノ金粒子等のトレーサー分子である。いくつかの実施形態において、タグは、ビオチン等の親和性タグである。このようなタグは、融合タンパク質によって触媒される反応を監視し又は融合タンパク質を追跡又は固定化するために用いられ得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質は1つ又は複数の修飾を含み、ここでリガーゼ、Haloタグ及び追加のポリペプチド(該当する場合)は、例えば、1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入によって、又は1つ又は複数の適切な残基における部分もしくは活性基の導入によって独立して修飾され、修飾された融合タンパク質の所望の生物学的活性又は機能が、対応する融合タンパク質の生物学的活性又は機能と実質的に類似すればよい。
【0087】
塩基性pIを有するリガーゼの具体的な実施形態
好ましい一態様において、本発明は、由来するリガーゼと比較してpIが変化したリガーゼ融合タンパク質を提供し、前記リガーゼは塩基性pIを有し、前記Haloタグは酸性pIを有する。塩基性pIを有するリガーゼと酸性pIを有するHaloタグとを融合することによって、pIが変化したリガーゼ融合タンパク質が得られ、特定の状況下で特定の有益な効果が生じる。例えば、前記リガーゼ融合タンパク質は、特定の条件下(例えば、所定pH値における特定の緩衝システム中又はインビボ環境中)のリガーゼと比較して、変化した電荷特性を有し得、それによって、例えば、リガーゼと比較して変化した溶解性、安定性、又は静電相互作用パターン(即ち、荷電物質との静電相互作用を形成する能力)が得られる。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記リガーゼは約7.5~約10.0の等電点(pI)を有し、前記Haloタグは約4.5~約5.0のpIを有し、前記リガーゼ融合タンパク質のpIは、リガーゼのpIよりも約2.0~約4.5pH単位低い。1つ又は複数の追加の要素(例えば、上記で定義された追加のポリペプチド又はラベル又はそれらの組合せ)及び/又は修飾(例えばアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入、又は部分もしくは活性基)を含む実施形態において、好ましくはリガーゼ融合タンパク質とリガーゼとの間の所望のpI差が達成される。いくつかの実施形態において、追加のポリペプチド(該当する場合)は、リガーゼ融合タンパク質の所望のpIの達成に役立つ特定のpIを有し得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質のpIは、リガーゼのpIよりも約2.0~約2.5pH単位低く、例えば、リガーゼのpIよりも約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4又は2.5pH単位低い。いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質のpIは、リガーゼのpIよりも約2.6~約3.0pH単位低く、例えば、リガーゼのpIよりも約2.6、2.7、2.8、2.9又は3.0pH単位低い。いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質のpIは、リガーゼのpIよりも約3.1~約3.5pH単位低く、例えば、リガーゼのpIよりも約3.1、3.2、3.3、3.4又は3.5pH単位低い。いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質のpIは、リガーゼのpIよりも約3.6~約4.0pH単位低く、例えば、リガーゼのpIよりも約3.6、3.7、3.8、3.9又は4.0pH単位低い。いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質のpIは、リガーゼのpIよりも約4.1~約4.5pH単位低く、例えば、リガーゼのpIよりも約4.1、4.2、4.3、4.4、4.5pH単位低い。
【0090】
いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質のpIは約4.5~約6.5であり、例えば、約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4又は6.5である。いくつかの好ましい実施形態において、リガーゼ融合タンパク質のpIは約5.0~約6.0である。
【0091】
いくつかの実施形態において、リガーゼのpIは約7.5~約8.5であり、例えば、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4又は8.5である。いくつかの実施形態において、リガーゼのpIは約8.6~約9.5、例えば、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4又は9.5である。いくつかの実施形態において、リガーゼのpIは約9.6~約10.0であり、例えば、約9.6、9.7、9.8、9.9又は10.0である。
【0092】
いくつかの具体的な実施形態において、融合タンパク質のpIは約5.0~約6.0であり、且つリガーゼのpIは約7.6~約9.7である。
【0093】
いくつかの実施形態において、リガーゼはソルターゼである。前記ソルターゼは、SrtA、SrtB、SrtC、SrtD、SrtE及びSrtFからなる群から選択することができる。
【0094】
いくつかの好ましい実施形態において、前記SrtAは、配列番号1~12(WT)から選択されるアミノ酸配列を含む。他のいくつかの実施形態において、前記SrtAは、配列番号1~12から選択されるアミノ酸配列を含み、且つ部位34、100、105及び136にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、部位34、100、105及び136のアミノ酸残基は、それぞれSer、Asn、Ala及びThr(SNAT)、Tyr、Asn、Ala及びThr(YNAT)、Trp、Asn、Asp及びThr(WNDT)、又はVal、Asn、Asn及びSer(VNNS)によって置換される。これらのSrtAのpIは表1に示される。
【0095】
【表1】
【0096】
いくつかの実施形態において、前記ソルターゼAは、配列番号1~12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記ソルターゼAは、配列番号1~12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、部位34、100、105及び136にSNAT、YNAT、WNDT又はVNNSのアミノ酸置換を含む。
【0098】
具体的な一実施形態において、前記ソルターゼAは、配列番号27のアミノ酸配列を含む。該配列番号27のアミノ酸配列は、配列番号1のSNAT対応物であり、且つ8.508のpIを有する。
【0099】
いくつかの実施形態において、当分野で知られている方法でリガーゼとHaloタグとの間に剛性又は柔軟性のリンカーペプチド(例えばポリグリシンストレッチ、(GS)であり、ここでGはグリシンで、Sはセリンであり、nは1~6の整数であり、好ましくは、nは2~5の整数である)を挿入して、融合タンパク質の正常な機能を確保する。いくつかの実施形態において、リンカーペプチドは(GS)である。いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質は、配列番号29のアミノ酸配列を含む。
【0100】
リガーゼ融合タンパク質を得る方法
リガーゼ、Haloタグ及び追加のポリペプチド(該当する場合)は、任意の方式で融合することができる。いくつかの実施形態において、リガーゼはHaloタグのN-末端に位置する。いくつかの実施形態において、HaloタグはリガーゼのN-末端に位置する。いくつかの実施形態において、当分野で知られている方法でリガーゼとHaloタグとの間に剛性又は柔軟性のリンカーペプチド(例えばポリグリシンストレッチ、(GS)であり、ここでGはグリシンで、Sはセリンであり、nは1~6の整数であり、好ましくは、nは2~5の整数である)を挿入して、融合タンパク質の適切な機能を確保してもよい。いくつかの実施形態において、リンカーペプチドは(GS)である。いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質は、配列番号29のアミノ酸配列を含む。
【0101】
リガーゼ融合タンパク質は、例えば、組換えDNA技術による核酸からの発現、化学合成、酵素触媒カップリング方法又は化学的カップリング方法等、当分野で知られている様々な技術によって得ることができる。いくつかの好ましい実施形態において、リガーゼ融合タンパク質は、核酸によってコードされる組換えタンパク質であり、前記核酸は、リガーゼ及びHaloタグをコードする核酸配列を含む。組換えタンパク質は、例えば、哺乳動物細胞、細菌、酵母細胞、又は昆虫細胞等、好ましくは大腸菌等の細菌のような、適切な宿主細胞において発現及び精製することができる。
【0102】
核酸とベクター
本発明は、本発明のリガーゼ融合タンパク質をコードする核酸をさらに提供し、それは本発明のリガーゼをコードする第1ポリヌクレオチドと、Haloタグをコードする第2ポリヌクレオチドとを含み、ここで前記第1ポリヌクレオチド及び第2ポリヌクレオチドは、プロモーターに操作可能に連結される。いくつかの実施形態において、本発明の核酸は、追加のポリペプチドをコードする第3ポリヌクレオチドをさらに含み、前記追加のポリペプチドはリガーゼ及びHaloタグに操作可能に連結される。追加のポリペプチドの例は、上記の通りである。
【0103】
いくつかの実施形態において、第1ポリヌクレオチドはソルターゼAをコードし、第2ポリヌクレオチドはHaloタグをコードする。いくつかの実施形態において、第1ポリヌクレオチドはソルターゼAをコードし、前記ソルターゼAは配列番号1~26から選択されるアミノ酸配列を有し、且つ第2ポリヌクレオチドはHaloタグをコードし、前記Haloタグは配列番号28のアミノ酸配列を有する。具体的な一実施形態において、第1ポリヌクレオチドはSrtAをコードし、前記SrtAは配列番号27のアミノ酸配列を有し、且つ第2ポリヌクレオチドはHaloタグをコードし、前記Haloタグは配列番号28のアミノ酸配列を有する。別の具体的な実施形態において、前記核酸はリガーゼ融合タンパク質をコードし、前記リガーゼ融合タンパク質は配列番号29のアミノ酸配列を有する。当業者であれば、核酸中の1つ又は複数のヌクレオチドが、本発明の精神に反することなく最適化され得ることが理解される。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明の核酸は組換え核酸として調製され、該組換え核酸は、例えば調節要素、及びタンパク質タグをコードするポリヌクレオチド等、1つ又は複数の追加のポリヌクレオチドをさらに含み得る。このような調節要素は、本発明の融合タンパク質の発現を調節することができ、エンハンサー、インシュレーター、内部リボソーム進入部位(IRES)を含むが、これらに限定されない。本発明の核酸を含む組換え核酸は、当分野で知られている分子クローニング技術、例えば、化学合成、部位特異的突然変異誘発、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術で調製することができる(Sambrook,J.,E.F.Fritsch,and T.Maniatis(1989),Molecular cloning:a laboratory manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照)。
【0105】
いくつかの実施形態において、本発明の核酸をベクター、好ましくは、宿主細胞(例えば、細菌、哺乳動物、酵母又は昆虫細胞)において発現可能な発現ベクターにクローニングする。当業者であれば、リガーゼ融合タンパク質の性質及び使用される宿主細胞に応じて適切な発現ベクターを選択することができる。いくつかの実施形態において、ベクターは、細菌(例えば大腸菌)において発現する細菌発現ベクターである。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、1つ又は複数の選択マーカー遺伝子、例えば、ネオマイシン又はピューロマイシン耐性遺伝子をさらに含み得る。発現後、使用されるタンパク質タグに応じて、当分野で知られている方法で融合タンパク質を精製することができる。当業者であれば、使用する宿主細胞の種類及び精製戦略に応じて、適切な発現ベクター、プロモーター、調節要素及びタンパク質タグを選択することができる。
【0106】
固定化リガーゼ
別の態様において、本発明は、支持体に固定化される本発明のリガーゼ融合タンパク質を含む固定化リガーゼを提供する。
【0107】
支持体は、任意の材料で作られた固体形態又は半固体形態のものであり得る。支持体の非限定的な例としては、樹脂(例えば、アガロース樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシ樹脂又はセルロース樹脂)、ゲル(例えば、アルギン酸ヒドロゲル)、ビーズ/マイクロスフェア/粒子(例えば、ポリスチレンビーズ、磁性粒子)、プレート、ウェル、チューブ、薄膜、膜、マトリックス、及びガラス(例えば、ガラススライド)を含み得るが、これらに限定されない。
【0108】
いくつかの好ましい実施形態において、支持体は樹脂である。いくつかのより好ましい実施形態において、支持体は、アガロース樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂及びセルロース樹脂からなる群から選択される。具体的な一実施形態において、支持体は、高度に架橋されたアガロース樹脂である。
【0109】
吸着、共有結合又は非共有結合、包埋、カプセル化、及び架橋等の酵素固定化の方法は当分野で知られている。固定化後にリガーゼの最大酵素活性を保持でき、且つコンジュゲーション反応後のコンジュゲート生成物中に遊離リガーゼが最小量で存在することが望まれる。好ましくは、支持体の表面は、リガーゼ融合タンパク質が支持体に共有結合で固定化できるよう、1つ又は複数の官能基を含むように修飾される。
【0110】
好ましくは、支持体は、リガーゼ融合タンパク質の反応基(例えば、アミン、チオール基及びカルボキシレート)又はハロアルキル基質中の反応基と共有結合を形成可能な1つ又は複数の化学活性官能基を含むか、又は支持体は、リガーゼ融合タンパク質に含まれる対応する結合タグ/親和性ラベルの1つ又は複数の結合パートナーを含む。化学活性官能基と反応基との間の対応関係、又は結合タグ/親和性ラベルと結合パートナーとの間の対応関係は当分野で知られている。
【0111】
いくつかの実施形態において、支持体は、リガーゼ融合タンパク質上の反応基(例えば、アミン、チオール基及びカルボキシレート)又はハロアルキル基質中の反応基と共有結合を形成可能な化学活性官能基を含む。いくつかの具体的な実施形態において、支持体に含まれる官能基は、シアネートエステル、イソチオシアナート、イソシアネート、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、アミン、カーボネート、エポキシド、マレイミド、ハロアセチル、アジリジン、クロロギ酸エチル、及び脂肪族アルデヒドからなる群から選択される。
【0112】
いくつかの実施形態において、支持体は、エポキシ活性化樹脂、CNBr(臭化シアン)-活性化樹脂、又はNHS-活性化樹脂であり、好ましくはエポキシ活性化樹脂である。いくつかの具体的な実施形態において、支持体は、エポキシ活性化されたアガロース樹脂、好ましくはエポキシ活性化された高度架橋アガロース樹脂である。いくつかの好ましい実施形態において、ハロアルキル基質と反応する前に、エポキシ活性化樹脂を前処理してアミノ基を導入する。いくつかの好ましい実施形態において、エポキシ活性化樹脂の前処理は、アンモニアを使用して実施される。いくつかの好ましい実施形態において、エポキシ活性化樹脂の前処理によりオキシラン環上にアミノ基が導入され、且つオキシラン環の開環によりヒドロキシ基が提供される。このようなヒドロキシ基は、後続の支持体調製工程において任意にエンドキャップされる。具体的な一実施形態において、エポキシ活性化樹脂の前処理によりオキシラン環上にアミノ基が導入され、且つオキシラン環の開環によりヒドロキシ基が提供され、該ヒドロキシ基は、後続の支持体調製工程においてエステル化試薬(例えば、AcO等のアセチル化試薬)によって任意にエステル化される。このように前処理されたエポキシ活性化樹脂は、上記で定義した「エポキシ活性化樹脂」の範囲内である。いくつかの好ましい実施形態において、前記樹脂は、アガロース樹脂(例えば高度架橋アガロース樹脂)又はポリメチルメタクリレート樹脂である。
【0113】
他のいくつかの実施形態において、支持体は、例えば付加のタグ又は親和性ラベルのような、リガーゼ融合タンパク質に含まれる対応する結合タグ/親和性ラベルの1つ又は複数の結合パートナーを含む。反応基間又は結合タグ/親和性ラベルと結合パートナーとの間の対応関係は当分野で知られている。結合タグ/親和性ラベルと対応する結合パートナーの例としては、HisタグとNi2+、ビオチン/SPBタグ/Strepタグ/StrepタグIIとストレプトアビジン/アビジン/ニュートラアビジン、GSTタグとグルタチオン、Fcタグとタンパク質A、カルモジュリンタグとCa2+、MBPとアミロース、Sタグとリボ核酸酵素S-タンパク質、SNAPタグとベンジルグアニン(BG)誘導体、及びCLIPタグとベンジルシトシン(BC)誘導体を含み得るが、これらに限定されない。
【0114】
いくつかの好ましい実施形態において、支持体は、ハロアルキルリンカーを含むことによって、Haloタグとの共有結合相互作用を形成するように官能化される。ハロアルキルリンカーは、支持体に含まれる1つ又は複数の官能基とハロアルキル基質中の1つ又は複数の反応基との共有結合によって支持体に導入されてもよく、このように得られた支持体は、ハロアルキルリンカー修飾支持体とも呼ばれる。ハロアルキルリンカー修飾支持体は、上記で定義した「支持体」の範囲内である。ハロアルキル基質の例としては、例えばUS20060024808A1及びWO2006093529に記載したものを含むが、これらに限定されない。ハロアルキル基質及びそのような支持体の調製方法は、例えば、米国特許第7,429,472号、第7,888,086号及び第8,202,700号、日本特許第4748685号に記載されており、その関連する内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0115】
ハロアルキル基質は、第1級又は第2級ハロ基、好ましくは第1級ハロ基を含むハロアルキル部分を含み得る。ハロアルキル部分中のハロ基は、F、Cl、Br及びIから、好ましくはCl及びBrから選択される。いくつかの実施形態において、ハロアルキル基質は、下記式(I)の構造を有する。
(F1-H1-Lh-(F2-H2(I)
式中、
F1とF2は独立して、支持体に含まれる化学活性官能基と共有結合を形成可能な反応基を含む部分であり、
H1とH2は、ハロC2-30アルキルから独立して選択され、
Lhは、化学結合であるか又はC3-200アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の1つ又は複数の(-CH-)構造は、-O-、-NH-、-(CO)-、-NH(CO)-、及び-(CO)NH-によって任意に置き換えられ、
Lhは、-O-C1-10アルキル基、-NH-C1-10アルキル基、-(CO)-C1-10アルキル基、-NH(CO)-C1-10アルキル基、及び-(CO)NH-C1-10アルキル基から選択される1、2又は3個の置換基によって任意に置換され、
aとbが異なることを条件として、aは0又は1であり、bは0又は1であり、
rは1~100の整数であり、
sは1~100の整数である。
【0116】
いくつかの実施形態において、rは、1~10の整数であり、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。いくつかの実施形態において、sは、1~10の整数であり、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。いくつかの実施形態において、F1又はF2中の反応基は、アミノ基、アミン、チオール基及び活性エステルから選択される。いくつかの実施形態において、活性エステルは、1つ又は複数のカルボン酸ラジカル(例えば、4-ニトロフェノールのような電子欠乏フェノール等の適切なアルコール又はフェノールの炭酸モノエステル中、又は、例えば、NHSエステル又はスルホ-NHSエステル中)、又は、1つ又は複数のスルホン酸ラジカル(例えば、MsO-等のメタンスルホン酸活性エステル中)を含む。具体的な一実施形態において、F1又はF2は
【化1】
である。
【0117】
いくつかの実施形態において、H1とH2は、ハロC2-20アルキル基、好ましくはハロC2-10アルキル基、特にハロCアルキルから独立して選択される。いくつかの具体的な実施形態において、H1又はH2中のアルキル基は、直鎖アルキルである。具体的な一実施形態において、H1又はH2は(CH2-30-X、好ましくは(CH2-20-X、より好ましくは(CH2-10-X、特に(CH-Xであり、ここでXは、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲンである。
【0118】
いくつかの好ましい実施形態において、支持体は、HaloLinkTM樹脂(Promega)である。
【0119】
いくつかのより好ましい実施形態において、支持体は、ハロアルキルリンカーを含み得る樹脂であり、前記ハロアルキルリンカーは、-(CH2-30-Xの構造を含み、ここでXは、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲンである。具体的な一実施形態において、支持体は、ハロアリルリンカー修飾樹脂、好ましくはアガロース樹脂又はポリメチルメタクリレート樹脂、より好ましくは高度架橋アガロース樹脂である。
【0120】
いくつかの具体的な実施形態において、aは1、bは0、rは1、sは1、F1は
【化2】
Lhは
【化3】
H2は(CH2-20-Clであり、前記ハロアルキル基質は、式(I-1)の構造を有するクロロアルキル基質である。
【0121】
【化4】
式中、uは1~20の整数、vは0~20の整数、wは1~19の整数である。
具体的な一実施形態において、uは3、vは2、wは5であり、前記クロロアルキル基質は、下記式(I-1-1)の構造を有する。
【化5】
【0122】
いくつかの実施形態において、支持体は、クロロアルキルリンカー修飾支持体であり、且つ式(II)の構造を有する。
【化6】
式中、uは1~20の整数、vは0~20の整数、wは1~19の整数であり、
【化7】
は支持体を表し、樹脂、ビーズ、膜、ゲル、マトリックス、薄膜、プレート、ウェル、チューブ、ガラススライド又はサーフェスであり、好ましくは樹脂であり、より好ましくはアガロース樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂又はセルロース樹脂であり、最も好ましくは高度架橋アガロース樹脂である。なお、明確にするために、支持体に連結される単一のクロロアルキル-リンカー部分のみについて説明するが、支持体に連結されるこのようなクロロアルキル-リンカー部分が多数存在することを理解すべきである。
【0123】
いくつかの実施形態において、式(II)に示されるクロロアルキルリンカー修飾支持体は、
【化8】
で表される樹脂、ビーズ、膜、ゲル、マトリックス、薄膜、プレート、ウェル、チューブ、ガラススライド又はサーフェスと、式(I-1)のクロロアルキル基質とを使用して調製される。
【0124】
いくつかの実施形態において、式(II)に示されるクロロアルキルリンカー修飾支持体は、前処理されたエポキシ活性化樹脂から調製され、前記エポキシ活性化樹脂は、エポキシ活性化樹脂のオキシラン環上にアミノ基を導入することによって調製され、前処理過程におけるオキシラン環の開環によってヒドロキシ基が提供され、該ヒドロキシ基が後続の支持体調製工程においてAcOで任意にエステル化され、式(II)に示される支持体は、式(II-1)の構造を有する。
【化9】
式中、
サブ構造
【化10】
は、前処理されたエポキシ活性化樹脂を表し、ここで
【化11】
部分はオキシラン環を表し、それはアミノ基と反応して開環し、ヒドロキシ基が得られ、その後ヒドロキシ基がエステル化されてAcO-を形成し、
【化12】
部分は、前処理されたエポキシ活性化樹脂の他の部分を表す。
【0125】
いくつかの実施形態において、固定化リガーゼは下記構造を有する。
【0126】
Support----Linker----HaloTag----Ligase
ここで、
Supportは、支持体(例えば固体支持体)であり、例えば、樹脂、ビーズ、膜、ゲル、マトリックス、薄膜、プレート、ウェル、チューブ、ガラススライド又はサーフェスから選択され、好ましくは樹脂であり、より好ましくはアガロース樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂又はセルロース樹脂であり、最も好ましくは高度架橋アガロース樹脂であり、
Linkerは、支持体に共有結合されるリンカー部分であり、例えば、10~60個の炭素原子の鎖を含み、1つ又は複数のエーテル、エステル、カルバメート及び/又はアミド結合を任意に含み、例えば、式(II-1’)又は(II’)のリンカー部分であり、
【化13】
式中、uは1~20の整数、vは0~20の整数、wは1~19の整数であり、
HaloTagは、Haloタグ(ハロアルカンデハロゲナーゼポリペプチド)であり、リンカーに共有結合され、
Ligaseはリガーゼであり、
ここで1つ又は複数の「----Linker----HaloTag----Ligase」部分は同じ支持体に結合される。
【0127】
いくつかの実施形態において、式(II-1’)のリンカー部分を含む固定化リガーゼは、以下の1)と2)の反応によって得られる。1)1つ又は複数のクロロアルキル基質が支持体と反応して、クロロアルキルリンカー修飾支持体を形成する。2)その後、クロロアルキルリンカー修飾支持体がHaloTag(例えば、リガーゼ融合タンパク質に含まれるHaloタグ)と反応して、前記固定化リガーゼを得る。
【0128】
リガーゼ融合タンパク質と固定化リガーゼの用途
本発明は、本発明のリガーゼ融合タンパク質又は固定化リガーゼのコンジュゲート調製における用途をさらに提供する。コンジュゲートの種類は限定されない。コンジュゲートは、リガーゼ融合タンパク質又は固定化リガーゼを第1部分及び第2部分と接触させて、コンジュゲートさせることによって得ることができ、ここで第1部分及び第2部分のうちの一方はリガーゼ供与体基質認識モチーフを含み、他方はリガーゼ受容体基質認識モチーフを含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートはバイオコンジュゲートである。バイオコンジュゲートの例としては、siRNAコンジュゲート、ペプチド-ホルモンコンジュゲート、ペプチド-ペプチドコンジュゲート、ペプチド-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲート、及び多重特異性抗体を含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、受容体、抗体又は抗体フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲートである。
【0130】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートのpIは、リガーゼ融合タンパク質のpIよりも約1.0~約4.0pH単位高く、例えば、リガーゼ融合タンパク質のpIよりも約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0pH単位高い。いくつかの好ましい実施形態において、コンジュゲートのpIは、リガーゼ融合タンパク質のpIよりも約2.0~約4.0pH単位高い。
【0131】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートのpIは約5.5~約10.5であり、例えば、約5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9又は10.0である。いくつかの好ましい実施形態において、コンジュゲートのpIは約7.5~約10.0である。いくつかの具体的な実施形態において、コンジュゲートのpIは約8.0~約9.0である。
【0132】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートのpIは約5.5~約10.5であり、リガーゼ融合タンパク質のpIは約4.5~約6.5である。いくつかの具体的な実施形態において、コンジュゲートのpIは約8.0~約9.0であり、リガーゼ融合タンパク質のpIは約5.0~約6.0である。
【0133】
いくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質とコンジュゲートは、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)を使用して互いに分離することができる。前記IEXは、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)又はそれらの組合せであり得る。他のいくつかの実施形態において、リガーゼ融合タンパク質とコンジュゲートは、iCIEF又はCIEF等の等電点電気泳動を用いて互いに分離することができる。
【0134】
いくつかの具体的な実施形態において、リガーゼは、ソルターゼ、好ましくはソルターゼAであり、コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲートである。
【0135】
本発明の方法
別の態様において、本発明は、第1部分及び第2部分を含むコンジュゲートを調製するための方法を提供し、該方法は、
(a)第1部分を含むシステム1を用意し、及び第2部分を含むシステム2を用意するステップと、
(b)ステップ(a)のシステム1及びシステム2をリガーゼユニットに接触させ、第1部分と第2部分との間のコンジュゲーション反応を触媒して、前記コンジュゲートを得るステップと、を含み、
前記リガーゼユニットはリガーゼを含み、
前記第1部分及び第2部分は、それぞれ独立して、生体分子、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、受容体、シグナル伝達因子、細胞成長因子、核酸もしくは核酸類似体、小分子化合物、グリカン、PEG部分、放射性核種、サイトカイン、免疫調節剤、トレーサー分子、フルオロフォア、蛍光分子、ペプチド、ポリペプチド、又はペプチド模倣体を含み、
前記第1部分及び第2部分のうちの一方はリガーゼ供与体基質認識モチーフをさらに含み、第1部分及び第2部分のうちの他方はリガーゼ受容体基質認識モチーフを含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、第1部分と第2部分は、リガーゼ供与体基質認識モチーフとリガーゼ受容体基質認識モチーフとのカップリングによって互いに連結される。
【0137】
いくつかの実施形態において、第1部分及び第2部分のうちの少なくとも1つはリンカーを含み、好ましくは、前記第1部分又は第2部分に含まれるリガーゼ認識モチーフ(即ち、リガーゼ供与体基質認識モチーフ又はリガーゼ受容体基質認識モチーフ)はリンカーの一部である。いくつかの実施形態において、前記第1部分又は第2部分は、ペイロード及びリンカーを含み、前記リンカーは、リガーゼ認識モチーフと、ペイロードに連結される1つ又は複数の構造部分とを含み得る。他の実施形態において、前記第1部分又は第2部分は、生体分子及びリンカーを含み、リンカーは、リガーゼ認識モチーフと、生体分子に連結される1つ又は複数の構造部分とを含み得る。さらなる実施形態において、生体分子及び/又はペイロードは、活性基、スペーサー及びラベル等の1つ又は複数の付加の部分を含むように独立して修飾される。
【0138】
コンジュゲートの「第1部分」及び「第2部分」という用語は、本明細書においてコンジュゲートの各部分を指すために使用される。例えば、バイオコンジュゲートの場合、第1部分は、コンジュゲートの生体分子部分であり得、第2部分は、別の機能部分又はコンジュゲートの残りの部分であり得る。「第1」及び「第2」は、単に明確にする目的で異なる部分を指定するために使用され、いかなる制限も構成しないことを理解すべきである。
【0139】
「システム1」及び「システム2」という用語は、単にコンジュゲートすべき部分を含む異なる部分を指定するために使用され、いかなる制限も構成しない。システム1とシステム2は、それぞれ独立して、水性形態、固体形態又は半固体形態等の任意の形態であり得る。好ましくは、システム1及びシステム2のうちの少なくとも1つは、(水)溶液又は流体等の水性形態である。システム1とシステム2は、それぞれ独立して、培養物(例えば、組織培養物、哺乳動物細胞培養物、酵母細胞培養物、細菌細胞培養物及びファージ培養物)、収穫された細胞培養液、抗体を含む溶液、リンカー-ペイロード中間体を含む溶液等から選択することができる。「システム1」と「システム2」は、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは異なっている。
【0140】
リガーゼユニット
リガーゼユニット(ligase unit)は、制限なしに任意のリガーゼを含むことができる。具体的には、2つの部分上の認識モチーフを認識し、2つの部分間のコンジュゲーションを触媒することができる。いくつかの実施形態において、リガーゼはトランスペプチダーゼである。いくつかの実施形態において、リガーゼはソルターゼである。ソルターゼは、SrtA、SrtB、SrtC、SrtD、SrtE、SrtF及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態において、リガーゼは、上述したSrtAである。いくつかの実施形態において、リガーゼは、上述したタンパク質タグ又はラベル等の1つ又は複数の追加の要素を含むか、又は1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は挿入を含むことによって、さらに修飾される。
【0141】
リガーゼは、遊離リガーゼであってもよいし、又は支持体に固定化されていてもよい。好ましくは、リガーゼは支持体に固定化され、これにより、より高い操作安定性と再利用性、より低い酵素汚染、より少ない占有面積及び連続生産を実現することができる。支持体は、任意の材料で作られた固体形態又は半固体形態であり得る。支持体の非限定的な例としては、樹脂(例えば、アガロース樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシ樹脂又はセルロース樹脂)、ゲル(例えばアルギン酸ヒドロゲル)、ビーズ/マイクロスフェア/粒子(例えば、ポリスチレンビーズ、磁性粒子)、プレート、ウェル、チューブ、薄膜(film)、膜(membrane)、マトリックス、及びガラス(例えば、ガラススライド)を含み得るが、これらに限定されない。
【0142】
吸着、共有結合又は非共有結合、包埋、カプセル化、及び架橋等の酵素固定化方法は当分野で知られている。固定化後にリガーゼの最大酵素活性を保持でき、且つコンジュゲーション反応後のコンジュゲート生成物中に遊離リガーゼが最小量で存在することが望まれる。
【0143】
より好ましくは、支持体から脱落する遊離リガーゼの量を減少させるために、リガーゼは支持体に共有結合で固定化される。タンパク質の非特異的共有結合固定化の方法は当分野で知られている。いくつかの実施形態において、支持体は、リガーゼ上の反応基(例えば、アミン、チオール基及びカルボキシレート)と共有結合を形成可能な化学活性官能基を含む。このような官能基は、イソチオシアナート、イソシアネート、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、カーボネート、エポキシド、マレイミド、ハロアセチル、アジリジン、クロロギ酸エチル及び脂肪族アルデヒドからなる群から選択することができる。
【0144】
最も好ましくは、リガーゼは、最大の酵素活性が保持されるように、自己標識タンパク質タグによって支持体に共有結合で固定化される。自己標識タンパク質タグは、その基質と共有結合相互作用を形成することができる。このようなタンパク質タグは、SNAPタグ、CLIPタグ、Haloタグ及びその変異体を含み得るが、これらに限定されない。それに応じて、支持体は、タンパク質タグの対応基質を含み得る。
【0145】
いくつかの具体的な実施形態において、リガーゼユニットは本発明のリガーゼ融合タンパク質を含む。いくつかの具体的な実施形態において、リガーゼユニットは本発明の固定化リガーゼを含む。
【0146】
コンジュゲート
前記方法は、様々なコンジュゲートの調製に使用できる。いくつかの実施形態において、前記コンジュゲートは、上述したバイオコンジュゲートである。
【0147】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、式(III)の構造を有し、第1部分はTを含み、第2部分は式(IV)のリンカー-ペイロード中間体を含み、
【化14】
式中、
Tは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように任意に修飾される生体分子を含み、
Lは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの他方を含むリンカーを含み、
Pはペイロードを含み、
zは1~20の整数であり、
tは1~20の整数である。
【0148】
tは、式(IV)のリンカー-ペイロード中間体を形成するために単一のリンカーにカップリングされるペイロードの数を表す。Zは、単一のTにカップリングされて式(III)の化合物を形成する式(IV)の化合物の数を表す。
【0149】
一実施形態において、zは、1~10、1~8、1~6又は1~4の整数から選択される。別の実施形態において、zは1又は2である。具体的な一実施形態において、zは2である。
【0150】
生体分子
本発明において、生体分子は、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、受容体、シグナル伝達因子、細胞成長因子、及び核酸と類似体からなる群から選択することができる。一実施形態において、Tは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を任意に含むか、又はこのようなモチーフのうちの1つを有するように任意に修飾される。
【0151】
いくつかの実施形態において、Tは、受容体、抗体又は抗体フラグメントを含む分子であり、該分子はリガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように任意に修飾される。別のいくつかの実施形態において、Tは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように任意に修飾される受容体、抗体又は抗体フラグメントである。好ましい一実施形態において、Tは、Fcフラグメント及び抗体の抗原結合フラグメントを含む分子であり、該分子はリガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように任意に修飾される。別のいくつかの実施形態において、Tは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように任意に修飾される可溶性受容体である。
【0152】
いくつかの実施形態において、Tは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように任意に修飾される標的化分子である。標的化分子(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)によって認識されるターゲットは、CD19、CD22、CD25、CD30/TNFRSF8、CD33、CD37、CD44v6、CD56、CD70、CD71、CD74、CD79b、CD117/KIT、CD123、CD138、CD142、CD174、CD227/MUC1、CD352、CLDN18.2、DLL3、ErbB2/HER2、CN33、GPNMB、ENPP3、Nectin-4、EGFRvIII、SLC44A4/AGS-5、CEACAM5、PSMA、TIM1、LY6E、LIV1、Nectin4、SLITRK6、HGFR/cMet、SLAMF7/CS1、EGFR、BCMA、AXL、NaPi2B、GCC、STEAP1、MUC16、メソテリン(Mesothelin)、ETBR、EphA2、5T4、FOLR1、LAMP1、Cadherin6、FGFR2、FGFR3、CA6、CanAg、インテグリンαV、TDGF1、エフリン(Ephrin)A4、Trop2、PTK7、NOTCH3、C4.4A、FLT3を含むが、これらに限定されない。
【0153】
いくつかの実施形態において、標的化分子は、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように任意に修飾される抗ヒトHER2抗体又はその抗原結合フラグメントである。抗ヒトHER2抗体の例としては、ペルツズマブ(Pertuzumab)及びトラスツズマブ(Trastuzumab)を含むが、これらに限定されない。
【0154】
一実施形態において、標的化分子は、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように任意に修飾される抗ヒトTROP2抗体又はその抗原結合フラグメントから選択される1つ又は複数である。具体的な一実施形態において、抗ヒトTROP2抗体は、hrS7(US20140120035)に基づく操作された抗TROP2抗体から選択される1つ又は複数である。別の具体的な実施形態において、抗ヒトTROP2抗体は、MAAA1181a(US20160297890)に基づく操作された抗TROP2抗体から選択される1つ又は複数である。
【0155】
好ましい一実施形態において、抗ヒトHER2又はTROP2抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体フラグメント、及び抗体模倣体からなる群から選択される組換え抗体である。いくつかの実施形態において、抗体模倣体は、scFv、ミニ抗体、二重抗体、ナノ抗体からなる群から選択される。後述するように、式(IV)の化合物にカップリングするために、本発明の標的化分子は、式(V)の化合物中のD1又はD2に連結する修飾部分、即ちリンカー中のリガーゼ受容体又は供与体基質認識モチーフを含む部分を、含んでもよい。このような修飾部分の導入位置は限定されず、例えば、標的化分子が抗体である場合、その導入位置は、抗体重鎖又は軽鎖のC-末端又はN-末端であってもよいが、これらに限定されない。
【0156】
別のいくつかの実施形態において、式(V)の化合物中のDl又はD2にカップリングするための修飾部分は、抗体重鎖又は軽鎖の非末端位置に導入してもよく、その導入は、例えば、化学修飾方法を使用することができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、本発明の標的化分子は、末端修飾を含み得る抗体又はその抗原結合フラグメントである。末端修飾とは、抗体重鎖又は軽鎖のC-末端又はN-末端における修飾を指し、該修飾は、例えばリガーゼ認識モチーフを含む。別のいくつかの実施形態において、末端修飾は、2~100個のアミノ酸のスペーサーSp2をさらに含んでもよく、ここで抗体、Sp2及びリガーゼ認識モチーフは順に連結される。好ましい一実施形態において、Sp2は、2~20個のアミノ酸を含むスペーサー配列である。いくつかの具体的な実施形態において、Sp2スペーサー配列は、GA、GGGS及びGGGGSGGGGSからなる群、特にGAから選択される。
【0158】
好ましい一実施形態において、抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖は、野生型(LC)と、リガーゼ認識モチーフLPXTGを直接導入することによって修飾されるC-末端修飾軽鎖(LCCT)と、短いペプチドスペーサー及びリガーゼ供与体基質認識モチーフLPXTGを導入することによって修飾されるC-末端修飾軽鎖(LCCT)との3つの種類を含む。抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖は、野生型(HC)と、リガーゼ認識モチーフLPXTGを直接導入することによって修飾されるC-末端修飾重鎖(HCCT)と、短いペプチドスペーサー及びリガーゼ供与体基質認識モチーフLPXTGを導入することによって修飾されるC-末端修飾重鎖(HCCT)との3つの種類を含む。Xは、任意の天然又は非天然の単一アミノ酸であり得る。式(IV)の化合物中のzが1又は2である場合、上記重鎖と軽鎖の組合せは、アミノ酸配列表に示すように、8つの好ましい抗体分子を形成することができる。
【0159】
いくつかの好ましい実施形態において、抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖は、野生型(LC)と、リガーゼ認識モチーフGGGを直接導入することによって修飾されるN-末端修飾軽鎖(LCNT)と、導入短いペプチドスペーサー及びリガーゼ受容体基質認識モチーフGGGを導入することによって修飾されるN-末端修飾軽鎖(LCNT)との3つの種類を含む。抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖は、野生型(HC)と、リガーゼ認識モチーフGGGを直接導入することによって修飾されるN-末端修飾重鎖(HCNT)と、短いペプチドスペーサー及びリガーゼ受容体基質認識モチーフGGGを導入することによって修飾されるN-末端修飾重鎖(HCNT)との3つの種類を含む。
【0160】
本発明のコンジュゲートは、ペイロードをさらに含んでもよい。前記ペイロードは本発明で説明した通りである。
【0161】
リンカー
いくつかの実施形態において、前記リンカー、即ち式(III)及び式(V)中のLは、式(V)の化合物であり、
(A1-D1-Y)-Lk-(W-A2-D2(V)
式中、
D1とD2は独立して、リガーゼ受容体又は供与体基質認識モチーフを含む部分であり、
A1とA2は独立して、ペイロードに連結する結合、又はペイロードにカップリング可能な反応基を含む部分を表し、
Lkは化学結合、L-L-L又はL-L-L-L又はL-L-L-L又はLであり、
とLは、それぞれ独立して、
-CH-、-NH-、-(CO)-、-NH(CO)-、-(CO)NH-、及びC1-4アルキレン基と-CH-、-NH-、-(CO)-、-NH(CO)-、-(CO)NH-のうちの1つの基との組合せからなる群から選択され、
は存在しないか又はC7-34アルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の1つ又は複数の(-CH-)構造は-O-によって任意に置き換えられ、
、LとLは、それぞれ任意に且つ独立して、-OR及び-NRから選択される1、2又は3個の置換基によって置換され、
とRは、それぞれ独立して、水素、-C1-6アルキル基、-(CO)-C1-6アルキル基、及び-S(=O)-C1-6アルキル基からなる群から選択され、
は、ペプチド配列(アミド結合は、α-アミノ基とカルボキシル基の縮合反応によって形成される)であり、ここで前記ペプチド配列は、任意に誘導体化されたLys(リジン)(数が1~100)を含むか、又は任意に誘導体化されたCys(システイン)(数が1~100)を含み、
YとWはそれぞれ独立して、存在しないか、又は切断可能な配列、スペーサーSp1及びそれらの組合せからなる群から選択され、
切断可能な配列は、酵素によって切断可能なアミノ酸配列を含み、切断可能な配列は1~10個のアミノ酸を含み、
Sp1は、1~20個のアミノ酸を含むスペーサー配列、PAB及びそれらの組合せからなる群から選択され、
pとqが異なることを条件として、pは0又は1であり、qは0又は1であり、
tは、式(III)に定義されている通りである。
【0162】
いくつかの実施形態において、式(V)のリンカーは、A1又はA2によってペイロードに連結され、D1又はD2と生体分子Tに含まれるリガーゼ受容体基質認識モチーフ又はリガーゼ供与体基質認識モチーフとのカップリングによって生体分子Tに連結される。任意に、生体分子T中のリガーゼ認識モチーフは、例えば組換え方法又は化学修飾方法によって生体分子中に導入される修飾部分の形態で存在する。
【0163】
いくつかの実施形態において、式(V)は、システム1の第1部分に含まれるか、又はシステム2の第2部分に含まれる。
【0164】
いくつかの実施形態において、L、LとLは独立して、-OR及び-NRから選択される1、2又は3個の置換基によって置換される。置換は、例えば、(-CH)、(-CH-)又は
【化15】
構造上に発生し、特に(-CH-)上に発生する。
【0165】
いくつかの実施形態において、LはC34アルキレン基であり、ここでアルキレン基は直鎖又は分枝鎖アルキレン基であり、アルキレン基中の1つ又は複数の(-CH-)構造は-O-によって任意に置き換えられ得、アルキレン基は、-OR及び-NRから選択される1、2又は3個の置換基によって任意に置換される。さらなる実施形態において、Lは、-OR及び-NRから選択される1、2又は3個の置換基によって任意に置換される基から選択され、ここで前記基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、2-メチルプロピレン基、及び2-エチルプロピレン基である。
【0166】
別のいくつかの実施形態において、Lは-(C-O)-C1-4アルキレン基であり、iは2~10の整数である。「-(C-O)-」は、PEGユニットが重合して形成した構造を表し、ここiはPEGユニットの数を表す。別のいくつかの実施形態において、Lは-(C-O)-C1-2アルキレン基である。いくつかの具体的な実施形態において、Lは-(C-O)-C-である。別のいくつかの実施形態において、LはC1-4アルキレン基-(O-Cである。別のいくつかの実施形態において、LはCアルキレン基-(O-Cである。いくつかの具体的な実施形態において、Lは-C-(O-C-である。いくつかの実施形態において、iは、2~10、2~8、2~6、2~4又は4~6から選択される。具体的な一実施形態において、iは4である。
【0167】
の別の実施形態において、リジンのε-アミノ基は、所望のカップリング数に応じて、適切な二官能性架橋剤によってA1又はA2部分にマレイミド官能基を導入するために用いられ得、又は別のリジンのα-カルボキシル基とアミノ結合を形成して分枝鎖を形成するために用いられ得、その後、分枝鎖中のリジンのα-及びε-アミノ基は、適切な二官能性架橋剤によってマレイミド基を導入することができる。このように、主鎖及び/又は分枝鎖側鎖中のリジンの数を増やすことにより、このようなL部分によって導入されるA1又はA2部分の数は1~1000に達することができる。
【0168】
の別の実施形態において、各システインのメルカプト基は、所望のカップリング数に応じて、A1又はA2中のマレイミド官能基と反応するために用いられ得る。A1又はA2はそれによってLkに連結することができる。A1とA2はそれぞれ、ペイロードにカップリング可能な反応基をさらに含む。L中、例えばLの主鎖及び/又は分枝鎖側鎖中のシステインの数を増やすことにより、このようなL部分によって導入されるA1又はA2部分の数は1~1000に達することができる。
【0169】
いくつかの実施形態において、Lは、任意に誘導体化されたリジンである。
【0170】
好ましい一実施形態において、リジンの誘導体化は、次の1)と2)からなる群から選択される。1)カルボキシル基をアミド化し、得られたアミドNHは、C1-6アルキル基によって任意に置換される。2)カルボキシル基及び/又はアミノ基を、1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメント又は1~10個のヌクレオチドを含むヌクレオチドフラグメントに連結させ、ここで前記アミノ酸フラグメントは、好ましくはGlyである。
【0171】
いくつかの実施形態において、YとWはそれぞれ独立して、存在しないか、又は切断可能な配列、スペーサーSpl及びそれらの組合せからなる群から選択される。具体的な一実施形態において、Yは存在しない。別の具体的な実施形態において、Wは存在しない。さらなる具体的な実施形態において、YとWは両方とも存在しない。いくつかの実施形態において、切断可能な配列は、酵素基質として認識でき、且つ酵素によって切断できるアミノ酸配列を含む。いくつかの具体的な実施形態において、切断可能な配列は、細胞のリソソームにおいて酵素的に切断可能である。別のいくつかの具体的な実施形態において、切断可能な配列はプロテアーゼ、特にカテプシンによって切断することができる。さらなる具体的な実施形態において、切断可能な配列はグルタミナーゼによって切断することができる。いくつかの実施形態において、切断可能な配列は、カテプシン制限部位、グルタミナーゼ制限部位及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、切断可能な配列は、Phe-Lys、Val-Cit、Val-Lys、Gly-Phe-Leu-Gly、Ala-Leu-Ala-Leu及びそれらの組合せから選択される。
【0172】
一実施形態において、YとWはそれぞれ独立して、存在しないか、又はスペーサーSplから選択される。別の実施形態において、Sp1は、1~10個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個のアミノ酸を含むスペーサー配列である。具体的な一実施形態において、Sp1はLeuである。別の具体的な実施形態において、Sp1はGlnである。一実施形態において、Sp1はPABである。さらなる実施形態において、YとWは、それぞれ独立して、Phe-Lys-PAB、Val-Cit-PAB及びVal-Lys-PABからなる群から選択される。
【0173】
いくつかの実施形態において、Y及び/又はWに含まれるアミノ酸は、天然又は非天然であり得る。いくつかの具体的な実施形態において、Yは存在しないか、又はアミノ酸フラグメント1である。アミノ酸フラグメント1は、それぞれ独立して同一又は異なる1~30個の天然又は非天然アミノ酸を含む。アミノ酸フラグメント1は、1~10個のアミノ酸を含む切断可能な配列、1~20個のアミノ酸を含むスペーサー配列及びそれらの組合せからなる群から選択される。別の具体的な実施形態において、Wは存在しないか、又はアミノ酸フラグメント2である。アミノ酸フラグメント2は、それぞれ独立して同一又は異なる1~30個の天然又は非天然アミノ酸を含む。アミノ酸フラグメント2は、1~10個のアミノ酸を含む切断可能な配列、1~20個のアミノ酸を含むスペーサー配列及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0174】
いくつかの実施形態において、p=0で、q=1で、式(V)の化合物の構造は下記式(V-1)に示される通りである。
【0175】
D1-Y-Lk-(W-A2)(V-1)
式中、A2、D1、Y、Lk及びWはそれぞれ、式(V)に定義されている通りである。
【0176】
別のいくつかの実施形態において、p=1で、q=0で、式(III)の化合物の構造は下記式(V-2)に示される通りである。
【0177】
(A1-Y)-Lk-W-D2(V-2)
式中、A1、D2、Y、Lk及びWはそれぞれ、式(V)に定義されている通りである。
【0178】
一実施形態において、適切なリンカーは、WO2014177042Aの図13~16から選択されるいずれかのリンカーであり得る。さらなる実施形態において、適切なリンカーは、WO2015165413Aの図7~10から選択されるいずれかのリンカーであり得る。
【0179】
一実施形態において、適切なリンカーは、WO2014177042Aの図1~12から選択されるいずれかのリンカーであり得る。さらなる実施形態において、適切なリンカーは、WO2015165413Aの図3~6から選択されるいずれかのリンカーであり得る。
【0180】
リガーゼ受容体又は供与体基質認識モチーフを含む部分
いくつかの実施形態において、リガーゼはトランスペプチダーゼである。いくつかの実施形態において、リガーゼは、天然トランスペプチダーゼ、非天然トランスペプチダーゼ、上記両者の変異体、及びそれらの組合せからなる群から選択される。非天然トランスペプチダーゼは、天然トランスペプチダーゼを操作することによって得られたものであり得るが、これらに限定されない。
【0181】
いくつかの好ましい実施形態において、リガーゼは、天然ソルターゼ、非天然ソルターゼ、及びそれらの組合せからなる群から選択される。天然ソルターゼの種類は、SrtA、SrtB、SrtC、SrtD、SrtE、SrtF等(例えば、US20110321183A1とEP3647419A1を参照)を含む。異なる分子又は構造フラグメント間の特異的なカップリングを実現するために、リガーゼの種類はリガーゼ認識モチーフに対応する。
【0182】
いくつかの実施形態において、リガーゼ受容体基質認識モチーフは、オリゴマーグリシン、オリゴマーアラニン、及び重合度3~10のオリゴマーグリシン/アラニン混合物からなる群から選択される。いくつかの具体的な実施形態において、リガーゼ受容体基質認識モチーフはGであり、ここでGはグリシン(Gly)であり、nは3~10の整数である。
【0183】
いくつかの実施形態において、リガーゼはSrtAであり、且つ供与体認識モチーフはLPXTGであり得、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、リガーゼはSrtBであり、且つ供与体認識モチーフはNPXTGであり得、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、リガーゼはSrtCであり、且つ供与体認識モチーフはLPXTGであり得、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。他のいくつかの実施形態において、リガーゼはSrtDであり、且つ供与体認識モチーフはLPXTAであり得、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。いくつかのさらなる実施形態において、リガーゼはSrtEであり、且つ供与体認識モチーフはLAXTGであり得、ここでXは任意の天然又は非天然アミノ酸である。他のいくつかの実施形態において、リガーゼはSrtFであり、且つ供与体認識モチーフはLPXTGであり得、ここでXは、A、R、N、D、Q、I、L及びKからなる群から選択される。
【0184】
別の具体的な実施形態において、リガーゼは、黄色ブドウ球菌由来のSrtAである。それに応じて、リガーゼ認識モチーフは、該酵素の典型的な認識モチーフLPXTGであり得る。さらなる具体的な実施形態において、リガーゼ供与体基質認識モチーフはLPXTGJであり、且つリガーゼ受容体基質認識モチーフはGであり、ここでXは、天然又は非天然の任意の単一アミノ酸であり得、Jは存在しないか、又は任意に標識される1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメントである。一実施形態において、Jは存在しない。さらなる実施形態において、Jは1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメントであり、ここで各アミノ酸は独立して任意の天然又は非天然アミノ酸である。別のいくつかの実施形態において、JはGであり、ここでmは1~10の整数である。さらなる具体的な実施形態において、リガーゼ供与体基質認識モチーフはLPETGである。別の具体的な実施形態において、リガーゼ供与体基質認識モチーフはLPETGGである。一実施形態において、リガーゼは、黄色ブドウ球菌由来のSrtBであり、且つ対応する供与体基質認識モチーフはNPQTNであり得る。別の実施形態において、リガーゼは、炭疽菌由来のSrtBであり、且つ対応する供与体基質認識モチーフはNPKTGであり得る。さらなる実施形態において、リガーゼは、化膿連鎖球菌由来のSrtAであり、且つ対応する供与体基質認識モチーフはLPXTGJであり得、ここでJは上記で定義した通りである。別の実施形態において、リガーゼは、ストレプトミセス・セリカラー由来のSrtEであり、且つ対応する供与体基質認識モチーフはLAXTGであり得る。さらなる実施形態において、リガーゼは、ラクトバチルス・プランタラム由来のSrtAであり、且つ対応する供与体基質認識モチーフはLPQTSEQであり得る。リガーゼ認識モチーフは、手動スクリーニングによって最適化されたトランスペプチダーゼの他の斬新な認識配列であってもよい。
【0185】
LPXTGJをGにカップリングすると、LPXTGJ配列中のグリシンの上流のペプチド結合がソルターゼAによって切断され、生じた中間体がGの遊離N端に連結して、新しいペプチド結合を生成する。得られたアミノ酸配列はLPXTGである。配列GとLPXTGJは上記で定義した通りである。
【0186】
いくつかの具体的な実施形態において、リガーゼは、黄色ブドウ球菌由来のSrtA、供与体認識モチーフはLPETGG、受容体認識モチーフはGGGである。
【0187】
反応基を含む部分
いくつかの実施形態において、式(V)中のA1とA2は、それぞれ独立して、アミノ化合物、マレイミド及びその誘導体、チオール化合物、ピリジルジチオール化合物(pyridyldithiol)、ハロ酢酸(haloacetylic acid)、イソシアネート(isocyanate)からなる群から選択される。別のいくつかの実施形態において、A1及びA2中の反応基は、それぞれ独立して、アミノ基、マレイミド基、チオール基、ピリジルジチオ基(pyridyldithio)、ハロアセチル(haloacetyl)、及びイソシアネート基(isocyanate)からなる群から選択される。
【0188】
いくつかの実施形態において、A1とA2は、その中の反応基の構造に応じて、それぞれ独立して、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、又はウレタン結合を介して、マイケル受容体(マイケル付加の受容体分子)に共有結合することができる。具体的な一実施形態において、A1とA2は、それぞれ独立して、任意に誘導体化されたシステインから選択される。
【0189】
別のいくつかの具体的な実施形態において、A1とA2は、それぞれ独立して、任意に誘導体化されたシステインから選択される。いくつかの好ましい実施形態において、システインの誘導体化は、次の1)、2)及び3)からなる群から選択される。1)カルボキシル基をアミド化し、得られたアミドNHは、C1-6アルキル基によって任意に置換される。2)アミノ基のアシル化。3)カルボキシル基及び/又はアミノ基を、1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメント又は1~10個のヌクレオチドを含むヌクレオチドフラグメントに連結させ、ここで前記アミノ酸フラグメントは、好ましくはGlyである。具体的な一実施形態において、システインの誘導体化とは、システインのカルボキシル基のアミド化又はグリシンとの連結を指す。
【0190】
いくつかの実施形態において、A2は
【化16】
であり、ここでxは、水素、OH、NH、1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメント、及び1~10個のヌクレオチドを含むヌクレオチドフラグメントからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、A1は
【化17】
であり、ここでxは、水素、1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメント、及び1~10個のヌクレオチドを含むヌクレオチドフラグメントからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、アミノ基のアシル化とは、システインのアミノ基がC1-6アルキルカルボニル基によって置換されることを指す。
【0191】
いくつかの実施形態において、(V-1)の連結ユニット中のtは1で、D1はGで、A2は
【化18】
であり、式(V-1)の化合物の構造は下記式(V-1-1)に示される通りである。
【化19】
xは、水素、OH、NH、1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメント、及び1~10個のヌクレオチドを含むヌクレオチドフラグメントからなる群から選択され、
Lkは、L-L-Lであり、
、L、L、t、YとWはそれぞれ、式(V)に定義されている通りである。
いくつかの好ましい実施形態において、式(V-1-1)中、xは、OH、NH及びGlyから選択される。
【0192】
いくつかの具体的な実施形態において、式(V-1-1)中、YとWは両方とも存在せず、LkはL-L-Lで、Lは-NH-で、Lは-(CO)-で、Lは-(C-O)-C-で、i=4であり、式(V-1-1)の化合物の構造は下記式(V-1-1-1)に示される通りである。
【化20】
【0193】
いくつかの具体的な実施形態において、式(V-1-1)中、Wは存在せず、YはLで、Lはロイシン(Leu)で、LkはL-L-Lで、Lは-NH-で、Lは-(CO)-で、Lは-(C-O)-C-で、i=4であり、連結ユニットの構造は下記式(V-1-1-2)に示される通りである。
【化21】
【0194】
いくつかのさらなる具体的な実施形態において、式(V-1-1)中、Wは存在せず、YはQで、Qはグルタミン(Gln)で、LkはL-L-Lで、Lは-NH-で、Lは-(CO)-で、Lは-(C-O)-C-で、i=4であり、連結ユニットの構造は下記式(V-1-1-3)に示される通りである。
【化22】
【0195】
いくつかの具体的な実施形態において、式(V-1-1)中、YとWは両方とも存在せず、LkはL-L-Lで、Lは-NH-で、Lは-(CO)-で、Lは-C10-であり、連結ユニットの構造は下記式(V-1-1-4)に示される通りである。
【化23】
【0196】
いくつかのさらなる具体的な実施形態において、式(V-1-1)中、YとWは両方とも存在せず、LkはL-L-Lで、Lは-NH-で、Lは-(CO)-で、Lは1つの-NR基によって置換された-C10-基で、Rは水素で、Rは-(CO)CHであり、連結ユニットの構造は下記式(V-1-1-5)に示される通りである。
【化24】
【0197】
式(V-2)の連結ユニットのいくつかの実施形態において、tが1で、D2がLPXTGで且つA1が
【化25】
である場合、式(V-2)の化合物の構造は下記式(V-2-1)に示される通りである。
【化26】
式中、xは、水素、1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメント、1~10個のヌクレオチドを含むヌクレオチドフラグメントから選択され、
LkはL-L-Lであり、
、L、L、Y及びWはそれぞれ、式(V)に定義されている通りである。
【0198】
一実施形態において、xは水素である。
【0199】
いくつかの実施形態において、A1とA2はそれぞれ独立して、マレイミド官能基である。マレイミド官能基は、適切な二官能性架橋剤によって式(V)の分子に導入される。
【0200】
いくつかの好ましい実施形態において、マレイミド官能基を導入するための二官能性架橋剤は、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(N-succinimidyl 4-(N- maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxylate,SMCC)、SMCCの「長鎖」類似体N-[α-マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル(N-[alpha-maleimidoacetoxy]succinimide ester,AMAS)、N-γ-マレイミドブチリル-オキシスクシンイミドエステル(N-gamma-Maleimidobutyryl- oxys uccinimideester,GMBS)、3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(3-MaleiMidobenzoic acid N-hydroxysucciniMide ester,MBS)、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(6-maleimidohexanoic acid N-hydroxysuccinimide ester,EMCS)、N-スクシンイミジル4-(4-マレイミドフェニル)ブチレート(N-succinimidyl 4-(4-maleimidophenyl) butyrate,SMPB)、スクシンイミジル6-[(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(Succinimidyl 6- [(beta-maleimidopropionamido)hexanoate,SMPH)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(Succinimidyl4-(N-maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxy-(6-amidocaproate),LC-SMCC)、N-スクシンイミジル11-(マレイミド)ウンデカノエート(N-succinimidyl 11-(maleimido)undecanoate,KMUS)、及びN-ヒドロキシスクシンイミド-(ポリエチレングリコールアルコール)(N-hydroxy succinimide-(polyethyleneglycol alcohol),SM(PEG))を含む二官能性架橋剤を含むが、これらに限定されず、ここでnは、2、4、6、8、12又は24個のポリエチレングリコール(PEG)ユニットがあることを表す。二官能性架橋剤と反応した直後にA1又はA2に導入されるマレイミド官能基の例は次の表に列挙される。
【0201】
【表2】
【0202】
いくつかの実施形態において、A1とA2は、それぞれ独立して、mc及びmccから選択される。
【0203】
式(V-1)のリンカーのいくつかの実施形態において、tは1で、D1はGで、Gはグリシンで、A2はmccで、Wは存在せず、LkはLで、Lは任意に誘導体化されたリジンであり、式(V-1)の化合物の構造は下記式(V-1-2)に示される通りである。
【化27】
式中、nは3~10の整数であり、
xは、水素、OH、NH、1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメント、及び1~10個のヌクレオチドを含むヌクレオチドフラグメントからなる群から選択され、
Yは、式(V)に定義されている通りである。
【0204】
具体的な一実施形態において、式(V-1-2)中、Yは存在せず、n=3で、xはOHであり、リンカーの構造は下記(リンカーLU104)に示される通りである。
【化28】
【0205】
ペイロード
本発明において、ペイロードは、水素、小分子化合物(例えば、阻害剤及び毒素(例えば細胞毒素))、グリカン、PEG部分、放射性核種、サイトカイン、免疫調節剤、核酸及び類似体(例えば、干渉RNA)、トレーサー分子(例えば、フルオロフォア及び蛍光分子)、ポリペプチド(例えば、タンパク質タグ、生物活性ペプチド、タンパク質毒素及び酵素)、ペプチド模倣体、抗体及び抗体フラグメントからなる群から選択することができる。
【0206】
いくつかの実施形態において、ペイロードは、小分子化合物、免疫調節剤、核酸及び類似体、トレーサー分子、放射性核種、ペプチド模倣体、グリカン、及びPEG部分からなる群から選択される。
【0207】
いくつかの実施形態において、ペイロードは、生物活性ペプチド、サイトカイン、抗体、抗体フラグメント、及びタンパク質受容体からなる群から選択される。
【0208】
いくつかの実施形態において、ペイロードは、小分子化合物、核酸分子、及びトレーサー分子からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、ペイロードは、小分子化合物から選択される。より好ましい実施形態において、ペイロードは、細胞毒素及びそのフラグメントからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ペイロードは、1つ又は複数の放射性核種である。別のいくつかの実施形態において、ペイロードは、1つ又は複数のサイトカインである。いくつかの実施形態において、ペイロードは、1つ又は複数の免疫調節剤である。
【0209】
いくつかの実施形態において、細胞毒素は、微小管細胞骨格を標的とする薬物からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、タキサン類、メイタンシノイド類、アウリスタチン類、エポチロン類(epothilones)、コンブレタスタチンA-4ホスフェート(combretastatin A-4phosphate)、コンブレタスタチンA-4及びその誘導体、インドール-スルホンアミド類、ビンブラスチン(vinblastine)等のビンブラスチン類、ビンクリスチン(vincristine)、ビンデシン(vindesine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンフルニン(vinflunine)、ビングリシネート(vinglycinate)、無水ビンブラスチン(anhy-drovinblastine)、ドラスタチン(dolastatin)10及び類似体、ハリコンドリン(halichondrin)B及びエリブリン(eribulin)、インドール-3-オキサミド類、ポドフィロトキシン、7-ジエチルアミノ-3(2’-ベンゾオキサゾリル)-クマリン(DBC)、ディスコデルモリド(discodermolide)、ラウリマライド(laulimalide)からなる群から選択される。別のいくつかの実施形態において、細胞毒素は、例えば、カンプトテシン類及びその誘導体、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ミトグアゾン(mitoguazone)等のDNAトポイソメラーゼ阻害剤からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イホスファミド(ifosfamide)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メクロレタミンオキシド塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン(melphalan)、ノベンビチン(novembichin)、フェナメット(phenamet)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード(uracilmustard)等の窒素マスタード類からなる群から選択される。別のいくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、例えば、カルムスチン(carmustine)、フルベンズロン、ホルモテロール(formoterol)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン(nimustine)、ラニムスチン(ranimustine)等のニトロソウレア類(nitrosoureas)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、細胞毒素は、アジリジン類(aziridines)からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン(carboquone)、メトレデパ(meturedepa)、及びウレデパ(uredepa)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、細胞毒素は、抗腫瘍抗生物質類からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、エンジイン抗生物質類からなる群から選択される。いくつかのより好ましい実施形態において、細胞毒素は、ダイネマイシン、エスペラマイシン、ネオカルチノスタチン、及びアクラシノマイシン(aclacinomycin)からなる群から選択される。別のいくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、アクチノマイシン(actinomycin)、アントラマイシン(antramycin)、ブレオマイシン類(bleomycins)、アクチノマイシンC、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)及びカルジノフィリン(cardinophyllin)、アクチノマイシンD、ダウノルビシン(daunorubicin)、デトルビシン(detorubicin)、アドリアマイシン(adriamycin)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン類(mitomycins)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycin)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、ピューロマイシン(puromycin)、鉄アドリアマイシン(ferric adriamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ルフォクロモマイシン(rufocromomycin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)からなる群から選択される。さらなる好ましい実施形態において、細胞毒素は、トリコテセン類(trichothecene)からなる群から選択される。いくつかのより好ましい実施形態において、細胞毒素は、T-2毒素、ベルカリン(verrucarin)A、バシロクポリン(bacillocporin)A、及びアンギジン(anguidine)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、細胞毒素は、抗腫瘍アミノ酸誘導体である。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、ウベニメックス(ubenimex)、アザセリン(azaserine)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(6-diazo-5-oxo-L-norleucine)からなる群から選択される。別のいくつかの実施形態において、細胞毒素は、葉酸類似体からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、ジメチル葉酸、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート(trimetrexate)、及びエダトレキサート(edatrexate)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、細胞毒素は、プリン類似体からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニンからなる群から選択される。さらなる実施形態において、細胞毒素は、ピリミジン類似体から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、アンシタビン(ancitabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、エノシタビン(enocitabine)、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン、カルモフール(carmofur)、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、及びフロクスウリジンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、細胞毒素は、アンドロゲン類から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone propionate)、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトンからなる群から選択される。別のいくつかの実施形態において、細胞毒素は、抗副腎薬からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、ミトタン(mitotane)、及びトリロスタン(trilostane)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、細胞毒素は、抗アンドロゲン類から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、細胞毒素は、フルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、酢酸リュープロレリン(leuprorelin acetate)、及びゴセレリン(goserelin)からなる群から選択される。さらなる実施形態において、細胞毒素は、プロテインキナーゼ阻害剤及びプロテアソーム阻害剤からなる群から選択される。いくつかの具体的な実施形態において、細胞毒素は、ビンブラスチン類、コルヒチン類、タキサン類、アウリスタチン類、及びメイタンシノイド類からなる群から選択される。いくつかの具体的な実施形態において、細胞毒素は、例えば、MMAE(monomethyl auristatin E,モノメチルアウリスタチンE)、MMAF(monomethyl auristatin F,モノメチルアウリスタチンF)、MMAD(monomethyl auristatin D,モノメチルアウリスタチンD)等のアウリスタチン類である。モノメチルアウリスタチン化合物の合成及び構造は、US20060229253に記載されている通りであり、その開示内容の全てが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0210】
ペイロードは、式(V)の化合物中の反応基と反応できる反応基を含み、それによってペイロードは式(V)の化合物に共有結合する。反応基を含まない化合物は、ペイロードを得るために適切に誘導体化する必要がある。いくつかの実施形態において、ペイロード中の反応基はマレイミド(maleimide)であり、又は、マレイミドを含まない化合物は、マレイミド誘導体を得るために、適切な反応に供することができる。例えば、MMAFはmc-MMAF(mcはマレイミドカプロイルである)を得るように誘導体化される。MMAEはmc-Val-Cit-PAB-MMAEを得るように誘導体化される。上記構造中のmcは、mcc(4-(maleimidomethyl)cyclohexane-1-carbonyl,4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボニル)又はマレイミド-R構造によって置き換えられ得、ここでRはC1-20アルキレン基であり、任意に、アルキレン基中の1つ又は複数の(-CH-)構造は-O-によって置き換えられ得る。
【0211】
いくつかの実施形態において、ステップ(a)は、式(V)のリンカーをペイロードと反応させることによってシステム2を得ることを含む。好ましくは、式(V)の化合物は、A1又はA2部分に含まれる反応基を介して、ペイロードに含まれる別の反応基にそれぞれ独立して共有結合され、式(IV)のリンカー-ペイロード中間体を形成する。
【0212】
A1又はA2部分に含まれる反応基は、上記の通りである。
【0213】
いくつかの具体的な実施形態において、式(V)の化合物とペイロードとの間に形成される共有結合は、アミド結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、ペプチド結合、ヒドラゾン結合、エステル結合、エーテル結合、及びウレタン結合からなる群から選択される1つ又は複数である。
【0214】
いくつかの実施形態において、式(V)の化合物のA1又はA2中の反応基は、マレイミド又はマレイミド誘導体であり、ペイロード中の別の反応基は、マイケル受容体である。ペイロードと反応した後、マレイミド又はマレイミド誘導体は、スクシンイミド又はスクシンイミド誘導体に変換する。
【0215】
いくつかの実施形態において、p=0で、q=1であり、式(IV)の中間体は下記式(IV-1)に示される通りである。
D1-Y-Lk-(W-A2-P)(IV-1)。
【0216】
別のいくつかの実施形態において、p=1で、q=0であり、式(IV)の化合物の構造は下記式(IV-2)に示される通りである。
(P-A1-Y)-Lk-W-D2(IV-2)。
【0217】
いくつかの実施形態において、スクシンイミド又はスクシンイミド誘導体を含む式(IV)のリンカー-ペイロード中間体は、「開環」中間体を得るように開環反応に供されてもよい。開環反応は、WO2015165413Aに記載の方法と同様の方法で行うことができる。開環中間体も式(IV)の範囲内に含まれる。
【0218】
いくつかの実施形態において、式(IV)のリンカー-ペイロード中間体中のスクシンイミドの開環反応は、下記式(IV-1-2)に示されるような開環中間体を形成する。式(IV-1-2)は式(IV-1)の範囲に含まれる。
D1-Y-Lk-(W-A2open-P)(IV-1-2)。
【0219】
別のいくつかの実施形態において、スクシンイミド環の開環反応は、式(IV)のリンカー-ペイロード中間体において下記式(IV-2-2)に示される開環中間体を形成する。式(IV-2-2)は式(IV-2)の範囲に含まれる。
(P-A1open-Y)-Lk-W-D2(IV-2-2)
式中、「-A1open-」及び「-A2open-」の構造は、
【化29】
から選択される。
【0220】
リンカー-ペイロード中間体の具体的な実施形態
いくつかの実施形態において、A1とA2は、それぞれ独立して、mc及びmccから選択され、その中に含まれるマレイミド官能基は、ペイロード(P)中のチオール基に連結され、それによって、リンカーとペイロードは、チオスクシンイミド構造(チオスクシンイミド連結,thiosuccinimide linkage)を介して互いに連結される。チオスクシンイミド連結におけるスクシンイミド環は、下記開環したチオスクシンイミド構造を得るように上記開環反応に供されてもよい。
【化30】
【0221】
いくつかの実施形態において、Lの構造は、式(V-1-1)で定義した通りであり、式(IV-1)のリンカー-ペイロード中間体は、式(IV-1-1)の構造を有する。式(IV-1-1)のリンカー-ペイロード中間体は、式(V-1-1)の対応するリンカーとペイロード(P)との反応によって調製してもよい。
【0222】
いくつかの具体的な実施形態において、式(IV-1)において、D1はGで、Gはグリシンで、A2は
【化31】
である。いくつかの実施形態において、LkはLであり、Lは、任意に誘導体化されたリジンである。いくつかの実施形態において、式(IV-2)中のD2はGで、Gはグリシンである。いくつかの実施形態において、リンカー-ペイロード中間体は、下記式(IV-1-1)に示す構造を有する。
【化32】
【0223】
いくつかの好ましい実施形態において、式(IV-1-1)中、YとWは両方とも存在せず、ペイロードはmc(開環)-Toxinであり、リンカー-ペイロード中間体は、下記式(IV-1-2-1)又は式(IV-1-2’-1)に示す構造を有する。
【0224】
【化33】
式中、Toxinは、式(III)で定義される細胞毒素を表し、n、Lk及びxはそれぞれ式(IV-1-1)に定義されている通りである。
【0225】
いくつかのより好ましい実施形態において、式(IV-1-2-1)及び式(IV-1-2’-1)において、細胞毒素はMMAFであり、即ち、ペイロードはmc(開環)-MMAFであり、リンカー-ペイロード中間体は、下記式(IV-1-3)又は式(IV-1-3’)に示す構造を有する。
【0226】
【化34】
式(IV-1-3)及び(IV-1-3’)は異性体であり、式中、
T、n、Lk及びxはそれぞれ、式(IV-1-1)に定義されている通りである。
【0227】
別のいくつかの具体的な実施形態において、式(IV-1-3)及び(IV-1-3’)中、LkはL-L-Lで、Lは-NH-で、Lは-(CO)-で、Lは-(C-O)-C-で、i=4であり、リンカー-ペイロード中間体は、下記式(IV-1-4)と(IV-1-4’)に示す構造を有する。
【0228】
【化35】
式(IV-1-4)と(IV-1-4’)は異性体であり、式中、
nとxはそれぞれ、式(IV-1-1)に定義されている通りである。
【0229】
いくつかの具体的な実施形態において、式(IV-1)中、Wは存在せず、tは1で、ペイロードはToxinで、A2はmccで、LkはLで、Lは任意に誘導体化されたリジンであり、D1はGで、Gはグリシンであり、連結体-ペイロード中間体は、下記式(IV-1-5-1)に示す構造を有する。
【化36】
式中、Toxin、n、Y及びxは上記で定義した通りである。
【0230】
いくつかの実施形態において、リンカー-ペイロード中間体は、下記式(IV-1-5)又は(IV-1-5’)に示す構造を有する。
【0231】
【化37】
式中、Toxin、n、Y及びxは上記で定義した通りである。
【0232】
式(IV-1-5)及び(IV-1-5’)のリンカー-ペイロード中間体は、式(IV-1-5-1)の開環反応によって調製してもよい。
【0233】
いくつかの好ましい実施形態において、Toxinは、メイタンシノイド、好ましくはDM1である。
【0234】
いくつかの具体的な実施形態において、式(IV-1-5)及び(IV-1-5’)中、細胞毒素はDM1であり、Yは存在せず、リンカー-ペイロード中間体は、下記式(IV-1-6)又は(IV-1-6’)に示す構造を有する。式(IV-1-6)は式(IV-1-5)の範囲に含まれ、式(IV-1-6’)は式(IV-1-5’)の範囲に含まれる。
【0235】
【化38】
式中、n及びxは上記で定義した通りである。
【0236】
コンジュゲートの具体的な実施形態
いくつかの実施形態において、tは1であり、コンジュゲートは、下記式(1)、(2)、(2’)、(3)、(3’)、(4)、(4’)、(5)、(5’)、(6)、及び(6’)から選択される構造を有する。
【0237】
いくつかの実施形態において、L-Pの構造は式(V-1-1)で定義した通りであり、式(III)のコンジュゲートは、式(1)の構造を有する。式(1)のコンジュゲートは、式(V-1-1)の対応するリンカー-ペイロード中間体と生体分子(T)とのコンジュゲーション反応によって調製してもよい。
【化39】
式中、nは3~10の整数であり、
xはOH、NH又はGlyであり、
LkはL-L-Lであり、
T、Payload及びzはそれぞれ、式(III)で定義した通りであり、L、L、L、Y及びWはそれぞれ、式(V)に定義されている通りである。
【0238】
いくつかの実施形態において、L-Pの構造は式(IV-1-2-1)又は(IV-1-2’-1)で定義した通りであり、式(III)のコンジュゲートは、下記式(2)及び(2’)から選択される構造を有する。いくつかの具体的な実施形態において、L-Pの構造は式(IV-1-3)又は(IV-1-3’)で定義した通りであり、式(III)のコンジュゲートは、下記式(3)及び(3’)から選択される構造を有する。いくつかのより具体的な実施形態において、L-Pの構造は式(IV-1-4)又は(IV-1-4’)で定義した通りであり、式(III)のコンジュゲートは、下記式(4)及び(4’)から選択される構造を有する。式(4)は式(3)の範囲に含まれ、式(3)は式(2)の範囲に含まれ、式(2)は式(1)の範囲に含まれる。式(4’)は式(3’)の範囲に含まれ、式(3’)は式(2’)の範囲に含まれ、式(2’)は式(1)の範囲に含まれる。
【0239】
いくつかの好ましい実施形態において、YとWは両方とも存在せず、式(1)中のペイロードはmc(開環)-毒素であり、コンジュゲートの構造は下記式(2)又は式(2’)に示される通りである。
【0240】
【化40】
式中、Toxinは式(III)で定義される細胞毒素を表し、T、n、Lk、x及びzはそれぞれ、式(1)に定義されている通りである。
【0241】
いくつかのより好ましい実施形態において、式(2)及び式(2’)中の細胞毒素はMMAFであり、即ち、ペイロードはmc(開環)-MMAFであり、コンジュゲートの構造は、下記式(3)又は式(3’)に示される通りである。
【0242】
【化41】
式(3)及び(3’)は異性体であり、式中、
T、n、Lk、x及びzはそれぞれ、式(1)に定義されている通りである。
【0243】
別のいくつかの具体的な実施形態において、LkはL-L-Lであり、Lは-NH-で、Lは-(CO)-で、Lは-(C-O)-C-で、i=4である。コンジュゲートの構造は下記式(4)及び(4’)に示される通りである。
【0244】
【化42】
式(4)及び(4’)は異性体であり、式中、
T、n、x及びzはそれぞれ、式(1)に定義されている通りである。
【0245】
いくつかの具体的な実施形態において、標的化分子は、抗体ペルツズマブ、hrS7又はMAAA1181aである。
【0246】
いくつかの実施形態において、tは1で、L-Pの構造は式(IV-1-5)又は(IV-1-5’)で定義した通りであり、式(III)のコンジュゲートは、下記式(5)及び(5’)から選択される構造を有する。(5)又は(5’)のコンジュゲートは、式(IV-1-5)又は(IV-1-5’)の対応するリンカー-ペイロード中間体と生体分子(T)とのコンジュゲーション反応によって調製してもよい。いくつかの具体的な実施形態において、式(III)のコンジュゲートは、下記式(6)及び(6’)から選択される構造を有する。(6)又は(6’)のコンジュゲートは、式(IV-1-6)又は(IV-1-6’)の対応するリンカー-ペイロード中間体と生体分子(T)とのコンジュゲーション反応によって調製してもよい。式(6)は式(5)の範囲に含まれ、式(6’)は式(5’)の範囲に含まれる。
【0247】
【化43】
【0248】
いくつかの具体的な実施形態において、Yは存在しない。コンジュゲートの構造は下記式(6)及び(6’)に示される通りである。
【0249】
【化44】
式(6)及び(6’)は異性体である。いくつかの実施形態において、Tは抗ヒトHER2抗体である。別のいくつかの実施形態において、Tは修飾トラスツズマブである。
【0250】
本発明の方法の具体的な実施形態
本発明の方法は、コンジュゲーションステップでリガーゼによって部位特異的に触媒し、リガーゼがコンジュゲートすべき部分上の認識モチーフを特異的に認識するという点で、本分野の従来の化学的カップリング方法と異なる。一方、従来の化学的カップリング反応では、非特異的なカップリングによる望ましくない副生成物を避けるために、カップリング反応の前にコンジュゲートすべき部分を精製することが望まれる。
【0251】
したがって、一態様では、本発明の方法は、コンジュゲーションステップの前にコンジュゲートすべき部分を精製する必要がなく、全体的な操作時間及びステップを減少させるとともに、最終収率を増加させる。それに応じて、いくつかの実施形態において、ステップ(a)のシステム1及び/又はシステム2は、1つ又は複数の不純物をさらに含む。
【0252】
別の態様において、前記方法は、生体分子(例えばタンパク質)等の化学的に不安定な分子を含むコンジュゲートに特に有利である。いくつかの具体的な態様において、前記方法はバイオコンジュゲートの調製に適し、その中の第1部分及び第2部分のうちの少なくとも1つは生体分子を含む。
【0253】
一般に、生体分子の生産方法は、例えば、哺乳動物又は細菌宿主細胞系を用いて、抗体又は抗体フラグメント等の標的タンパク質を生産する細胞培養の方法を伴う。ほとんどの場合、得られた収集物は、細胞及び細胞片を除去するために清澄化され、例えば宿主細胞タンパク質(HCP)、培地成分及び核酸等の不純物を含む収穫された清澄化細胞培養液(HCCF)が得られる。一般的な化学的カップリングに基づく方法において、HCCFは、下流のコンジュゲーション反応に使用する高純度の生体分子を得るように、さらに一連の精製ステップに供される。場合によっては、収穫された収集物は、抽出、清澄化、濃縮を経て標的タンパク質が沈殿し、その後、沈殿物が再溶解してから精製される。本発明の方法におけるリガーゼは、第1部分と第2部分との間のコンジュゲーションを特異的に触媒することができるので、システム1及び/又はシステム2中の不純物は、ステップ(b)のコンジュゲーション効率及び/又は特異性にほとんど影響せず、システム1及びシステム2の高純度は、ステップ(b)の前提条件ではなくなる。いくつかの実施形態において、ステップ(a)のシステム1及びシステム2のうちの少なくとも1つは、収穫された清澄化細胞培養液(HCCF)である。HCCFは、組織培養物、哺乳動物細胞培養物、酵母細胞培養物、細菌細胞培養物、ファージ培養物等から得ることができる。いくつかの実施形態において、HCCF以外の他のサンプルを使用することもできる。
【0254】
別の好ましい態様において、本発明の方法は、生体分子の生産プロセスと柔軟に統合して、該生体分子を含むバイオコンジュゲートを得ることができる。例えば、前記方法は、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントの生産プロセスと容易に統合して、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントを含むバイオコンジュゲートを生産することができる。バイオコンジュゲートは、同じ製造施設で製造することができ、含まれる生体分子と同じ製品サイクル及び類似の全収率を有するとともに、既存の生産施設及びパイプラインは大きく変わらないままであり得る。
【0255】
別のいくつかの実施形態において、前記方法は、
(1)ステップ(b)の前に、ステップ(a)のシステム1に対して1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、及び/又は、
(2)ステップ(b)の前に、ステップ(a)のシステム2に対して1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、及び/又は、
(3)ステップ(b)で得られたコンジュゲートに対して、
1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、をさらに含む。
【0256】
クロマトグラフィーステップは、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びそれらの組合せからなる群から独立して選択することができる。イオン交換クロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードイオン交換クロマトグラフィー及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。いくつかの好ましい実施形態において、イオン交換クロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーの組合せである。いくつかの実施形態において、ステップ(3)におけるクロマトグラフィーステップは、精製ステップとも呼ばれる。精製ステップは、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含み得る。
【0257】
いくつかの実施形態において、第1部分及び第2部分のうちの少なくとも1つは、抗体又は抗体フラグメントを含み、ステップ(1)~(3)のうちの少なくとも1つは、アフィニティークロマトグラフィーを含む。抗体は、従来の抗体、組換え抗体、多重特異性抗体、完全ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、又はナノ抗体であり得る。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgA及びIgY)、任意のクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)、又はそれらの任意の活性誘導体であり得る。抗体フラグメントは、Fvフラグメント、scFvフラグメント、dsFvフラグメント、scdsFvフラグメント、Fdフラグメント、Fabフラグメント、scFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fcフラグメント又はダイアボディ(diabody)であり得る。抗体又は抗体フラグメントの性質に応じて、アフィニティークロマトグラフィーは、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、タンパク質Gアフィニティークロマトグラフィー、タンパク質Lアフィニティークロマトグラフィー(例えばCaptoTMLアフィニティークロマトグラフィー)、KappaSelectアフィニティークロマトグラフィー、LamdaFabSelectアフィニティークロマトグラフィー、又はMabselectTMアフィニティークロマトグラフィーであり得る。いくつかの実施形態において、第1部分及び第2部分のうちの少なくとも1つはFcフラグメントを含み、アフィニティークロマトグラフィーは、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーである。いくつかの実施形態において、第1部分はFcフラグメントを含む。好ましくは、Fcフラグメントは、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から選択されるIgG型抗体のFcフラグメントである。いくつかの具体的な実施形態において、Tは抗体であり、アフィニティークロマトグラフィーは、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーである。当業者であれば、コンジュゲートすべき部分の性質に基づいて適切なアフィニティークロマトグラフィー方法を選択することができる。
【0258】
いくつかの好ましい実施形態において、ステップ(1)、(2)及び(3)におけるクロマトグラフィーステップは、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びそれらの組合せから選択される。
【0259】
いくつかの実施形態において、ステップ(1)及び(2)は存在せず、ステップ(3)は、アフィニティークロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィーの組合せ(プロセス1)である。別のいくつかの実施形態において、ステップ(1)及びステップ(2)のうちの少なくとも1つは、アフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、イオン交換クロマトグラフィー(プロセス2)を含む。いくつかのさらなる実施形態において、ステップ(1)及びステップ(2)のうちの少なくとも1つは、アフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、アフィニティークロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィーの組合せ(プロセス3)を含む。いくつかのさらなる実施形態において、ステップ(1)及びステップ(2)のうちの少なくとも1つは、アフィニティークロマトグラフィー及び/又はイオン交換クロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、アフィニティークロマトグラフィーと、疎水性相互作用クロマトグラフィーと、イオン交換クロマトグラフィーとの組合せ(プロセス4)を含む。
【0260】
いくつかの具体的な実施形態において、ステップ(1)及び(2)は存在せず、ステップ(3)は、
(3a-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3a-2)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3a-3)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含む。
【0261】
別のいくつかの具体的な実施形態において、ステップ(1)及び(2)のうちの少なくとも1つは、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3b-1)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3b-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含む。
【0262】
いくつかのさらなる具体的な実施形態において、ステップ(1)及び(2)のうちの少なくとも1つは、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3c-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3c-2)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3c-3)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含む。
【0263】
いくつかの具体的な実施形態において、第1部分及び/又は第2部分はFcフラグメントを含み、ステップ(1)及び(2)は存在せず、ステップ(3)は、
(3a-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3a-2)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3a-3)陽イオン交換クロマトグラフィーと、を任意の順序で含む。
【0264】
別のいくつかの具体的な実施形態において、第1部分はFcフラグメントを含み、ステップ(1)はタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3b-1)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3b-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含む。
【0265】
いくつかのさらなる具体的な実施形態において、第1部分はFcフラグメントを含み、ステップ(1)はタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3c-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3c-2)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3c-3)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含む。
【0266】
いくつかのさらなる具体的な実施形態において、第2部分はFcフラグメントを含み、ステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3b-1)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3b-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含む。
【0267】
いくつかのさらなる具体的な実施形態において、第2部分はFcフラグメントを含み、ステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3c-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3c-2)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3c-3)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含む。
【0268】
いくつかのさらなる具体的な実施例において、ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3d-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3d-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、
(3d-3)疎水性相互作用クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含む。
【0269】
いくつかの実施形態において、アフィニティークロマトグラフィーは、結合-溶出モードで実行される。別のいくつかの実施形態において、イオン交換クロマトグラフィーは、結合-溶出(bind-and-elute)モード又はフロースルー(flow-through)モードで実行される。
【0270】
いくつかの好ましい実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーは、フロースルーモードで実行される。いくつかの実施形態において、フロースルー精製方法ステップで得られたサンプルは、次の方法ステップに連続的に流れる。別のいくつかの好ましい実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーは、結合-溶出モードで実行される。いくつかの実施形態において、結合-溶出精製方法ステップで得られたサンプルは、次の方法ステップに連続的に流れる。
【0271】
いくつかの実施形態において、ステップ(b)はバッチモード、半連続モード又は連続モードで実行される。別のいくつかの実施形態において、ステップ(a)、(b)及び(1)~(3)のうちの少なくとも1つは、半連続モード又は連続モードで実行され、好ましくは、ステップ(a)、(b)及び(1)~(3)は連続モードで実行される。
【0272】
いくつかの具体的な実施形態において、本発明の方法は連続モードで実行され、前記方法は、
(a’)流体中のシステム1を用意し、流体中のシステム2を用意するステップと、
(b’)システム1及び/又はシステム2を独立してクロマトグラフィーステップに供して、システム1の溶出物及び/又はシステム2の溶出物を得て、システム1の溶出物及び/又はシステム2の溶出物が低下した不純物レベルを有するステップと、
(c’)ステップ(a’)又は(b’)におけるシステム1とシステム2を混合して反応流体を形成し、リガーゼユニットを前記反応流体に適用してTと式(IV)のリンカー-ペイロード中間体とのコンジュゲーション反応を触媒し、粗コンジュゲート混合物を得て、前記粗コンジュゲート混合物が標的コンジュゲート及び1つ又は複数の不純物を含むステップと、
(d’)ステップ(c’)の粗コンジュゲート混合物をクロマトグラフィーステップに供して不純物を除去し、所望の純度を有する標的コンジュゲートを得るステップと、を含み、
ここで、
ステップ(a’)~(d’)を接続することで、サンプルが1つの方法ステップから次の方法ステップへと連続的に流れることができるように流体の相互連通を維持する。
【0273】
本発明の方法は、例えば、発酵、清澄化、クロマトグラフィー、pH調節、ウイルス不活性化、ウイルス濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、無菌濾過、製剤及びそれらの組合せからなる群から選択される追加のステップをさらに含むことによって、特定のコンジュゲートの調製に適合することができる。当業者であれば、前記追加のステップと本発明の方法を組み合わせ、そして特定のコンジュゲートを調製するためのステップ順序を手配することができる。
【0274】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ウイルス不活性化、ウイルス濾過、UF/DF及び/又は製剤のステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、ウイルス不活性化は、例えば、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーの後に、低pH処理によって完了する。ウイルス濾過は、コンジュゲーションステップ、即ちステップ(b)の後又は前に行うことができる。好ましくは、ウイルス濾過は、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップの後に行われる。いくつかの実施形態において、ウイルス濾過は、コンジュゲーションステップの後、例えば、精製ステップの後に行われる(例えば、ADCプロセス1~3)。他のいくつかの実施形態において、ウイルス濾過は、コンジュゲーションステップの前に行われ、例えば、イオン交換クロマトグラフィーの後に行われる(例えば、ADCプロセス4)。いくつかの実施形態において、コンジュゲーションステップの後、ステップ(3)の前にUF/DFを行う(例えば、ADCプロセス3~4)。
【0275】
いくつかの具体的な実施形態において、ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、コンジュゲーションステップの後、ステップ(3)の前にUF/DFを行い、ここでステップ(3)は、
(3e-1)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3e-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含む。
【0276】
別のいくつかの具体的な実施形態において、ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを含み、コンジュゲーションステップの後、ステップ(3)の前にUF/DFを行い、ここでステップ(3)は、陽イオン交換クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む。
【0277】
いくつかの具体的な実施形態において、コンジュゲートはADCであり、前記方法は、図15に示すように、ADCプロセス1、ADCプロセス2、ADCプロセス3及びADCプロセス4を含む。従来のADCプロセスと比較して、本発明の方法はステップがより少ないため、前記方法に必要な操作時間、材料及びスペースが削減される。また、従来のADCプロセスにおいて、コンジュゲーションは通常、ウイルス濾過の後に行われるのに対して、本発明の方法において、コンジュゲーションは、ウイルス濾過の前(プロセス1~3)又は後(プロセス4)にを行うことができ、より柔軟な生産が可能となる。
【0278】
いくつかの実施形態において、本発明は、リガーゼ及びHaloタグを含むリガーゼ融合タンパク質(本発明に記載のリガーゼ融合タンパク質)を提供する。例えば、本発明は、下記1.1~1.10のリガーゼ融合タンパク質を提供する。
【0279】
1.1.前記リガーゼがトランスペプチダーゼ、好ましくはソルターゼである、本発明に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【0280】
1.2.前記リガーゼがソルターゼAである、本発明に記載のリガーゼ融合タンパク質。
【0281】
1.3.前記リガーゼは、ソルターゼ、好ましくはソルターゼAであり、及び/又は、リガーゼ供与体基質認識モチーフは、LPXTGJ、好ましくはLPXTG又はLPETGGであり、及び/又は、リガーゼ受容体基質認識モチーフは、Gであり、ここでGはグリシン(Gly)で、nは3~10の整数であり、Xは、任意の天然又は非天然アミノ酸であり、Jは存在しないか、又は1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメントであり、ここで各アミノ酸は独立して任意の天然又は非天然アミノ酸であり、好ましくは、Jは存在しないか又はGであり、ここでmは1~10の整数である、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0282】
1.4.前記リガーゼは、リガーゼ供与体基質認識モチーフを含む(例えば、末端配列LPXTG又はLPXTGGを含み、ここでXは任意の天然アミノ酸である)第1部分とリガーゼ受容体基質認識モチーフを含む(例えば、GGG等の末端ポリグリシン配列を含む)第2部分との間のコンジュゲーションを触媒して、第1部分と第2部分とのコンジュゲートを生成することができる、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0283】
1.5.前記リガーゼは下記a.~c.から選択されるアミノ酸配列を含む、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
a.配列番号1~26のいずれかのアミノ酸配列。
b.部位34、100、105及び136のアミノ酸残基が任意にそれぞれ、Ser、Asn、Ala及びThr(即ち[Ser34][Asn100][Ala105][Thr136],SNAT)、Tyr、Asn、Ala及びThr(即ち[Tyr34][Asn100][Ala105][Thr136],YNAT)、Trp、Asn、Asp及びThr(即ち[Trp34][Asn100][Asp105][Thr136],WNDT)、又はVal、Asn、Asn及びSer(即ち[Val34][Asn100][Asn105][Ser136],VNNS)によって置換される、配列番号1~26のいずれかのアミノ酸配列。例えば、前記リガーゼは配列番号27のアミノ酸配列(即ち配列番号1のSNAT対応物)を含む。
c.ソルターゼ活性を有し、且つ(a)又は(b)のいずれか1項と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【0284】
1.6.前記Haloタグは、ハロアルキル部分からのハロゲンの脱離を触媒し、脱ハロゲン化アルキル部分と共有結合を形成するポリペプチドである、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0285】
1.7.前記Haloタグは、ハロアルキル部分からのハロゲンの脱離を触媒し、脱ハロゲン化アルキル部分と共有結合を形成し、そして形成された共有結合の加水分解を防ぐために突然変異する細菌ハロアルカンデハロゲナーゼから由来し、例えば、キサントバクターオートトロフィカス又はロドコッカスロドクロウスのハロアルカンデハロゲナーゼから由来し、該ハロアルカンデハロゲナーゼは加水分解に関与する残基が突然変異し、例えば、ロドコッカスロドクロウスデハロゲナーゼのアミノ酸残基272部位に対応するヒスチジン残基が突然変異する、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0286】
1.8.前記Haloタグは、配列番号28のアミノ酸配列、又は、デハロゲナーゼ活性を有し且つ配列番号28と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0287】
1.9.前記リガーゼは約7.5~約10.0の等電点(pI)を有し、前記Haloタグは約4.5~約5.0の等電点を有し、前記リガーゼ融合タンパク質の等電点(pI)は、前記リガーゼの等電点(pI)よりも約2.0~約4.5pH単位低い、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0288】
1.10.配列番号29の配列、又はデハロゲナーゼ活性、ソルターゼ活性を有し且つ配列番号29と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0289】
別のいくつかの実施形態において、本発明は、Haloタグを介して支持体に連結されるリガーゼを含む、固定化リガーゼ(本発明に記載の固定化リガーゼ)を提供する。例えば、前記固定化リガーゼは、リガーゼ及びHaloタグを含むリガーゼ融合タンパク質(例えば、任意の本発明に記載のリガーゼ融合タンパク質)と、表面にハロアルキルリンカー(好ましくはクロロアルキルリンカー)を含む支持体との反応によって固定化され、これにより、前記リガーゼ融合タンパク質がハロアルキルリンカーとHaloタグとの共有結合相互作用によって支持体に固定化される。該固定化リガーゼは、例えば、下記1.1~1.13のものである。
【0290】
1.1.リガーゼ及びHaloタグを含むリガーゼ融合タンパク質とハロアルキルリンカーを含む支持体との反応によって固定化され、前記リガーゼ融合タンパク質は任意の本発明に記載のリガーゼ融合タンパク質である、本発明に記載の固定化リガーゼ。
【0291】
1.2.リガーゼ及びHaloタグを含むリガーゼ融合タンパク質とハロアルキルリンカーを含む支持体との反応によって固定化され、前記ハロアルキルリンカーは、式(I-1-1)又は(I-1)の構造を有するハロアルキル基質から生成され、
【化45】
式中、uは1~20の整数、vは0~20の整数、wは1~19の整数である、任意の前記固定化リガーゼ。
【0292】
1.3.リガーゼ及びHaloタグを含むリガーゼ融合タンパク質とハロアルキルリンカーを含む支持体との反応によって固定化され、例えば、前記支持体は、式(II-1)又は(II)の構造を有し、
【化46】
式中、
【化47】
は支持体であり、例えば、樹脂、ビーズ、膜、ゲル、マトリックス、薄膜、プレート、ウェル、チューブ、ガラススライド又はサーフェスから選択され、好ましくは樹脂であり、より好ましくはアガロース樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂又はセルロース樹脂であり、最も好ましくは高度に架橋されたアガロース樹脂であり、
式中、uは1~20の整数、vは0~20の整数、wは1~19の整数である、任意の前記固定化リガーゼ。
【0293】
[なお、明確にするために、単に支持体に連結される単一のクロロアルキル-リンカー部分について説明するが、支持体に連結されるこのようなクロロアルキル-リンカー部分が多数存在することを理解すべきである。]
【0294】
1.4.下記構造を有し、
Support----Linker----HaloTag----Ligase
ここで、
Supportは、支持体(例えば固体支持体)であり、例えば、樹脂、ビーズ、膜、ゲル、マトリックス、薄膜、プレート、ウェル、チューブ、ガラススライド又はサーフェスから選択され、好ましくは樹脂であり、より好ましくはアガロース樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂又はセルロース樹脂であり、最も好ましくは高度に架橋されたアガロース樹脂であり、
Linkerは、支持体に共有結合されるリンカー部分であり、例えば、10~60個の炭素原子の鎖を含み、1つ又は複数のエーテル、エステル、カルバメート及び/又はアミド結合を任意に含み、例えば、式(II-1’)又は(II’)のリンカー部分であり、
【化48】
式中、uは1~20の整数、vは0~20の整数、wは1~19の整数であり、
HaloTagは、Haloタグ(ハロアルカンデハロゲナーゼポリペプチド)であり、リンカーに共有結合され、
Ligaseはリガーゼポリペプチドであり、
ここで1つ又は複数の「----Linker----HaloTag----Ligase」部分は同じ支持体に結合される、任意の前記固定化リガーゼ。
【0295】
1.5.ソルターゼ、好ましくはソルターゼAであり、及び/又は、リガーゼ供与体基質認識モチーフが、LPXTGJ、好ましくはLPXTG又はLPETGGであり、及び/又は、リガーゼ受容体基質認識モチーフが、Gであり、ここでGはグリシン(Gly)で、nは3~10の整数であり、Xは、任意の天然又は非天然アミノ酸であり、Jは存在しないか、又は1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメントであり、ここで各アミノ酸は独立して任意の天然又は非天然アミノ酸であり、好ましくは、Jは存在しないか又はGであり、ここでmは1~10の整数である、任意の前記固定化リガーゼ。
【0296】
1.6.リガーゼ供与体基質認識モチーフを含む(例えば、末端配列LPXTG又はLPXTGGを含み、ここでXは任意の天然アミノ酸である)第1部分とリガーゼ受容体基質認識モチーフを含む(例えば、GGG等の末端ポリグリシン配列を含む)の第2部分との間のコンジュゲーションを触媒し、前記第1部分と第2部分とのコンジュゲートを生成することができる、任意の前記固定化リガーゼ。
【0297】
1.7.下記a.~c.から選択されるアミノ酸配列を含む、任意の前記固定化リガーゼ。
a.配列番号1~26のいずれかのアミノ酸配列。
b.部位34、100、105及び136のアミノ酸残基が任意にそれぞれ、Ser、Asn、Ala及びThr(即ち[Ser34][Asn100][Ala105][Thr136],SNAT)、Tyr、Asn、Ala及びThr(即ち[Tyr34][Asn100][Ala105][Thr136],YNAT)、Trp、Asn、Asp及びThr(即ち[Trp34][Asn100][Asp105][Thr136],WNDT)、又はVal、Asn、Asn及びSer(即ち[Val34][Asn100][Asn105][Ser136],VNNS)によって置換される、配列番号1~26のいずれかのアミノ酸配列。例えば、リガーゼは配列番号27のアミノ酸配列(即ち配列番号1のSNAT対応物)を含む。
c.ソルターゼ活性を有し、且つ(a)又は(b)のいずれか1項と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【0298】
1.8.前記Haloタグは、ハロアルキル部分からのハロゲンの脱離を触媒し、脱ハロゲン化アルキル部分と共有結合を形成するポリペプチドである、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0299】
1.9.前記Haloタグは、ハロアルキル部分からのハロゲンの脱離を触媒し、脱ハロゲン化アルキル部分と共有結合を形成し、そして形成された共有結合の加水分解を防ぐために突然変異する細菌ハロアルカンデハロゲナーゼから由来し、例えば、キサントバクターオートトロフィカス又はロドコッカスロドクロウスのハロアルカンデハロゲナーゼから由来し、該ハロアルカンデハロゲナーゼは加水分解に関与する残基が突然変異し、例えば、ロドコッカスロドクロウスデハロゲナーゼのアミノ酸残基272部位に対応するヒスチジン残基が突然変異する、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0300】
1.10.前記Haloタグは、配列番号28のアミノ酸配列、又は、デハロゲナーゼ活性を有し且つ配列番号28と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0301】
1.11.約7.5~約10.0の等電点(pI)を有し、前記Haloタグは約4.5~約5.0の等電点を有し、前記リガーゼ融合タンパク質の等電点(pI)は、前記リガーゼの等電点(pI)よりも約2.0~約4.5pH単位低い、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0302】
1.12.配列番号29の配列、又はデハロゲナーゼ活性、ソルターゼ活性を有し且つ配列番号29と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、任意の前記リガーゼ融合タンパク質。
【0303】
1.13.配列番号29の配列、又はデハロゲナーゼ活性、ソルターゼ活性を有し且つ配列番号29と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、リンカーを介して支持体に結合される、任意の前記固定化リガーゼ。
【0304】
別のいくつかの実施形態において、本発明は、第1部分及び第2部分を含むコンジュゲート(例えば、薬物-抗体コンジュゲート)を調製するための方法(本発明に記載の方法)を提供し、ここで前記第1部分及び第2部分のうちの一方はリガーゼ供与体基質認識モチーフを含み、前記第1部分及び第2部分のうちの他方はリガーゼ受容体基質認識モチーフを含み、前記方法は、リガーゼユニットの存在下で第1部分と第2部分を接触させることを含み、ここで前記リガーゼユニットは、固定化リガーゼ、又はリガーゼ及びHaloタグを含むリガーゼ融合タンパク質である。前記方法は、例えば、下記1.1~1.11のものである。
【0305】
1.1.前記リガーゼユニットは、Haloタグを介して支持体に連結されるリガーゼを含む固定化リガーゼであり、例えば、前記固定化リガーゼは、任意の本発明に記載の固定化リガーゼである、本発明に記載の方法。
【0306】
1.2.前記リガーゼユニットは、任意の本発明に記載のリガーゼ融合タンパク質である、本発明に記載の方法。
【0307】
1.3.
(a)第1部分を含むシステム1を用意し、及び第2部分を含むシステム2を用意するステップと、
(b)ステップ(a)のシステム1及びシステム2をリガーゼユニットに接触させ、第1部分と第2部分との間のコンジュゲーション反応を触媒して、コンジュゲートを得るステップと、を含み、
前記第1部分及び第2部分は、それぞれ独立して、生体分子、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、受容体、シグナル伝達因子、細胞成長因子、核酸もしくは核酸類似体、小分子化合物、グリカン、PEG部分、放射性核種、サイトカイン、免疫調節剤、トレーサー分子、フルオロフォア、蛍光分子、ペプチド、ポリペプチド、又はペプチド模倣体を含み、
前記第1部分及び第2部分のうちの一方はリガーゼ供与体基質認識モチーフをさらに含み、前記第1部分及び第2部分のうちの他方はリガーゼ受容体基質認識モチーフを含み、これにより、前記リガーゼユニットは、リガーゼ供与体基質認識モチーフとリガーゼ受容体基質認識モチーフとの間のコンジュゲーションを触媒し、
例えば、ステップ(b)はバッチモード、半連続モード又は連続モードで実行される、任意の前記方法。
【0308】
1.4.
(1)ステップ(b)の前に、ステップ(a)のシステム1に対して1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、及び/又は、
(2)ステップ(b)の前に、ステップ(a)のシステム2に対して1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、及び/又は、
(3)ステップ(b)で得られたコンジュゲートに対して、
1つ又は複数のクロマトグラフィーステップ処理を行って、1つ又は複数の不純物を除去するステップ、をさらに含み、
例えば、クロマトグラフィーステップは、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びそれらの組合せから独立して選択され、イオン交換クロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー及びそれらの組合せから選択され、
好ましくは、前記クロマトグラフィーステップは、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びそれらの組合せから選択され、
例えば、ステップ(a)、(b)及び(1)~(3)のうちの少なくとも1つは半連続モード又は連続モードで実行され、例えば、ステップ(a)、(b)及び(1)~(3)は連続モードで実行され、
例えば、第1部分及び第2部分のうちの少なくとも1つは、抗体又は抗体フラグメントを含み、ステップ(1)~(3)のうちの少なくとも1つは、アフィニティークロマトグラフィーを含み、例えば、ここで抗体又は抗体フラグメントは、Fcフラグメントを含み、アフィニティークロマトグラフィーは、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーであり、
例えば、第1部分又は第2部分はFcフラグメントを含み、
ステップ(1)及び(2)は存在せず、ステップ(3)は、
(3a-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3a-2)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3a-3)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含み、
ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3b-1)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3b-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含み、
又は
ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3c-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3c-2)陰イオン交換クロマトグラフィーと、
(3c-3)陽イオン交換クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含み、
又は
ステップ(1)又はステップ(2)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを含み、ステップ(3)は、
(3d-1)タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーと、
(3d-2)陽イオン交換クロマトグラフィーと、
(3d-3)疎水性相互作用クロマトグラフィーと、のステップを任意の順序で含み、
例えば、アフィニティークロマトグラフィーは結合-溶出モードで実行され、及び/又は、イオン交換クロマトグラフィーは結合-溶出モード又はフロースルーモードで実行され、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーはフロースルーモードで実行され、及び/又は、陽イオン交換クロマトグラフィーは結合-溶出モードで実行される、前記方法。
【0309】
1.5.前記第1部分と第2部分との間の反応に1つ又は複数の不純物が存在する、任意の前記方法。
【0310】
1.6.前記第1部分又は第2部分が、収穫された清澄化細胞培養液(HCCF)に含まれる、任意の前記方法。
【0311】
1.7.前記リガーゼユニットがリガーゼ及びHaloタグを含むリガーゼ融合タンパク質であり、リガーゼユニットとハロアルキルリンカーを含む支持体とを反応させるステップと、第1部分と第2部分との間の反応が実質的に完了した後、形成された固定化リガーゼ、例えば、本発明に記載の任意の固定化リガーゼを除去するステップと、をさらに含む、任意の前記方法。
【0312】
1.8.前記リガーゼユニットが固定化リガーゼ、例えば、任意の本発明に記載の固定化リガーゼであり、第1部分と第2部分との間の反応が実質的に完了した後、固定化リガーゼを除去するステップをさらに含む、任意の前記方法。
【0313】
1.9.前記コンジュゲートは式(III)の構造を有し、前記第1部分はTを含み、前記第2部分は式(IV)のリンカー-ペイロード中間体を含み、
【化49】
式中、
Tは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの一方を有するように任意に修飾される生体分子を含み、
Lは、リガーゼ供与体基質認識モチーフ及びリガーゼ受容体基質認識モチーフのうちの他方を含むリンカーを含み、
Pはペイロードを含み、
zは1~20の整数であり、
tは1~20の整数である、任意の前記方法。
【0314】
1.10.
Tは、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、受容体、シグナル伝達因子、細胞成長因子、及び核酸もしくは類似体を含み、及び/又は、
Pは、水素、小分子化合物(好ましくは毒素)、グリカン、PEG部分、放射性核種、サイトカイン、免疫調節剤、核酸もしくは類似体、トレーサー分子、フルオロフォア、蛍光分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、抗体、抗体フラグメント、又はタンパク質を含む、前記方法。
【0315】
1.11.前記リガーゼは、ソルターゼ、好ましくはソルターゼAであり、及び/又は、リガーゼ供与体基質認識モチーフは、LPXTGJ、好ましくはLPXTG又はLPETGGであり、及び/又は、リガーゼ受容体基質認識モチーフはGであり、ここでGはグリシン(Gly)で、nは3~10の整数であり、
Xは、任意の天然又は非天然アミノ酸であり、
Jは存在しないか、又は1~10個のアミノ酸を含むアミノ酸フラグメントであり、ここで各アミノ酸は独立して任意の天然又は非天然アミノ酸であり、好ましくは、Jは存在しないか又はGであり、ここでmは1~10の整数である、任意の前記方法。
【0316】
有益な効果
一態様では、本発明は、リガーゼ融合タンパク質を提供し、該ガーゼ融合タンパク質は、下記(1)~(3)の有利な特徴のうちの少なくとも1つを有する。
(1)前記リガーゼ融合タンパク質は発現性及び溶解性が高いため、酵素精製のコストが削減される。
(2)前記リガーゼ融合タンパク質は、大量精製が容易で、純度と活性が高く、特に工業的応用に適している。
(3)前記リガーゼ融合タンパク質は、生理学的条件下で固定化しやすく、リガーゼの保管と輸送に役立つだけでなく、最大の酵素活性の維持と生産スケーラビリティの向上にも役たつ。
【0317】
別の態様において、本発明は、前記リガーゼ融合タンパク質を含む固定化リガーゼを提供する。前記固定化リガーゼは、下記(1)~(4)有利な特徴のうちの少なくとも1つを有する。
(1)安定性が高い。
(2)再利用性が高く、反応完了後、固定化リガーゼは、反応系から容易に回収及び分離することができるとともに、酵素活性がほとんど損なわれない。
(3)耐塩基性に優れるため、固定化リガーゼのアルカリ洗浄が可能になる。
(4)酵素負荷量と酵素活性が高く、したがって、遊離リガーゼと比較して、前記固定化リガーゼは、密閉スペース内で高濃度の酵素活性を有するコンジュゲーション反応を触媒することができ、これにより作業スペースと保管スペース、及び試薬コストが削減される。
【0318】
したがって、本発明の固定化リガーゼは、制御可能であり、再利用可能であり、費用対効果が高く、スケールアップしやすく、よって、工業的応用に特に有利である。
【0319】
いくつかの具体的な態様において、前記リガーゼ融合タンパク質は、リガーゼ融合タンパク質が由来するリガーゼと比較して、等電点が変化し、これにより、最終的なコンジュゲート生成物から残留酵素汚染物質を効果的に除去することが可能になる。この特徴は、親和性部分を含まないコンジュゲートの効率的な親和性精製にとって特に重要である。例えば、pIが約8~約9のコンジュゲートについては、pIが約5~約6のリガーゼ融合タンパク質を使用することができ、そしてコンジュゲートとリガーゼ融合タンパク質は、陰イオン交換クロマトグラフィーによって分離することができ、ここでリガーゼ融合タンパク質はクロマトグラフィー媒体に結合するが、コンジュゲートはフロースルーされる。あるいは、陽イオン交換クロマトグラフィーによって分離し、ここでコンジュゲートはクロマトグラフィー媒体に結合するが、リガーゼ融合タンパク質はフロースルーされる。より重要なことは、リガーゼ融合タンパク質のpIが変化したため、存在する可能性のある微量の遊離酵素(例えば、支持体に非特異的に吸着された酵素は触媒過程で脱落することがある)は容易に除去できる。
【0320】
別の態様において、本発明は、本発明のリガーゼ融合タンパク質又は固定化リガーゼを用いてコンジュゲートを調製する方法を提供する。
【0321】
タンパク質部分を含むコンジュゲートを調製するための従来の方法は、コンジュゲーションステップ前のタンパク質の上流及び下流精製と、コンジュゲーションステップ後のコンジュゲーション生成物の下流精製との少なくとも2組の精製プロセスを含み、各組は複数のクロマトグラフィーステップを含む。ADC(抗体-薬物コンジュゲート)の調製について、現在主流のコンジュゲーション技術は化学に基づくものであり、薬物は、リンカーを介して抗体中のリジン又はシステイン残基と化学的にコンジュゲートされる。コンジュゲーションステップの前に、上流及び下流プロセスによって高純度の抗体を調製し、それは純度の低い抗体は予測できない結果をもたらすことがあるからである。例えば、抗体フィードに不純物が含まれる場合、ペイロードとリジン/システインとのコンジュゲーション反応により副生成物が生じることがある。抗体フィード中の不純物は、コンジュゲーションステップの収率を低下させるため、プロセスの生産性に圧力がかかり、投入の追加が必要となり、さらにプロセス全体の複雑さが増大する。コンジュゲーションステップの後に、ADC中の凝集体、溶媒、副生成物及び不純物を除去するために別の下流精製プロセスが必要である。従来の方法における2つの下流ステップは、コストと時間を大幅に増加させるほかに、収率を低下させる。また、安全性の観点から、コンジュゲーション反応は化学アイソレータ内で行う必要があるため、該方法のスケールアップが困難である。要するに、複数の上流及び下流精製ステップを含む従来の方法は、時間がかかり、経済的でなく、柔軟性がなく、スケーラビリティに欠ける。
【0322】
本発明の方法は、以下の技術效果のうちの少なくとも1つを実現する。
【0323】
(1)リガーゼの基質特異性により、前記方法は、原材料からコンジュゲートすべき部分を事前に精製する工程なく行うことができ、これにより全体的な操作時間及びステップが減少し、コスト(例えば、純水又は注射用水、様々な緩衝液試薬、クロマトグラフィー媒体等)が削減され、収率が高まる。
(2)前記方法は、コンジュゲートすべき抗体等の生体分子部分のコンジュゲーション工程と柔軟に統合することができ、つまり、標的コンジュゲートは、含まれる生体分子部分と同じ生産施設で、同じ製品サイクルで生産することができ、全収率が類似し、そして既存の生産施設及びパイプラインは大きく変わらないままであり得る。
(3)前記方法は、特に固定化リガーゼを使用する場合に、工業的ニーズを満たすために容易にスケールアップできる。
(4)製品品質のインプロセス分析の簡素化が達成される。
(5)余剰反応物及び残留酵素汚染物質等、上流の触媒反応での不純物の効果的な除去が実現される。
(6)時間的・空間的経済性の向上等が実現される。
【0324】
上記利点に加えて、本発明の方法は、バイオコンジュゲート調製において従来の方法に対して少なくとも下記(1)~(2)の特別な利点を有する。
(1)凝集体(例えば抗体及びADC凝集体)の形成が最小限に抑えられるため、最終収率が向上するとともに、凝集体除去の作業量が減少する。
(2)バイオコンジュゲートにおけるDAR比及びコンジュゲーション部位は容易に制御できるため、より高い同質性と明確な物理化学的特性を備えるバイオコンジュゲートが生じる。
【0325】
実施例
本発明の目的と技術的解決手段をより明確に説明するために、以下において、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解すべきである。以下の実施例で説明されていない具体的な実験方法は、いずれも従来の実験方法に従って実施される。
【0326】
器具、材料及び試薬
特に明記しない限り、前記器具及び試薬は、市販されているものであってもよいし、又は本分野の従来の方法に従って調製してもよい。
【0327】
MabSelect Sure ProAは、GEから入手し、Q Sepharose FF/Capto S ImpActは、GEから入手する。抗体発現のためのCHO細胞は、Thermo Fisher Scientificから入手する。pcDNA3.3は、Life Technologyから入手する。
【0328】
HIC-HPLCは、Butyl-HICである。移動相Aは、25mM PB、2M(NHSO、pH 7.0である。移動相Bは、25mM PB、pH7.0である。流量は、0.8ml/minである。収集時間は、25分間である。試料注入量は、20μgである。カラム温度は、25℃である。検出波長は、280nmである。サンプル室温度は、8℃である。
【0329】
一般的な方法
抗体生産の一般的な方法
抗体調製の方法は、例えばUS20170112944A1を参照することができ、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる。簡単に説明すれば、抗ヒトHER2抗体トラスツズマブをコードするプラスミド構築物をCHO細胞にトランスフェクトし、抗体軽鎖のC末端は、供与体認識モチーフLPETGGを含むことによって修飾されることで、T-LCCT-HCが得られる。トランスフェクトされたCHO細胞から、トラスツズマブの培養方法を参照して5~10Lの反応器内で培養される高発現の細胞群をスクリーニングする。細胞培養物を遠心分離して、収穫された清澄化細胞培養液(HCCF)を得る。
【0330】
HCCFは、コンジュゲーション反応に使用する抗体フィードとして使用するか(プロセス1)、又はさらに下流処理を経てコンジュゲーション反応に使用する精製抗体を提供することができる(プロセス2と3)。
【0331】
抗体精製の一般的な方法
抗体精製の方法は、例えばUS20170112944A1を参照することができ、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる。簡単に説明すれば、T-LCCT-HCの精製は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー(MabSelect Sure ProA)とSepharose S陽イオン交換クロマトグラフィーの組合せを使用する標準方法で行われ、精製された生成物は、元のトラスツズマブ薬物緩衝液(5mMヒスチジン-HCl、2%トレハロース、0.009%ポリソルベート20、pH6.0)に溶解される。
【0332】
リンカー-ペイロード中間体調製の一般的な方法
リンカー-ペイロード中間体の生産方法は、例えばUS20170112944A1を参照することができ、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる。簡単に説明すれば、該方法は次の通りである。
【0333】
式(V-1-2)の構造を有するリンカー溶液をペイロード溶液とともにインキュベートして、式(IV-1-5-1)の構造を有するリンカー-ペイロード中間体を形成し、それをさらに開環反応させて式(IV-1-5)又は(IV-1-5’)の構造を有する開環リンカー-ペイロード中間体を得る。実施例において、ペイロードはDM1であり、リンカー-ペイロード中間体は、式(IV-1-6)又は(IV-1-6’)の構造を有する。開環リンカー-ペイロード中間体は、HPLCで精製及び分析される。
【0334】
コンジュゲーション反応の一般的な方法
タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーから精製された抗体を使用してADCを生産する方法は、例えばUS20170112944A1を参照することができ、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる。簡単に説明すると、該方法は次の通りである。
【0335】
上述したように、式(IV-1-6)又は(IV-1-6’)の構造を有するリンカー-ペイロード中間体(0.1~50mg/ml)と抗体T-LCCT-HC(1~100mg/ml)を含む緩衝液をそれぞれ調製する。
【0336】
固定化Halo-ソルターゼを容器に所望の量で充填する。固定化Halo-ソルターゼを20mM Tris-HCl、1~3M NaCl(pH6.0~10.0)、0.1~1.0M NaOHで処理する。固定化Halo-ソルターゼを空気浴又は水浴で10~40℃にて約30分間又はそれ以上予熱する。抗体溶液とリンカー-ペイロード中間体溶液を所定の比率(抗体:リンカー-ペイロード中間体=1:1~1:100)で混合し、混合物を得て、その後、混合物を処理された固定化Halo-ソルターゼを含む容器(プルダウン(pull-down)モード)又はHalo-ソルターゼカラム(フロースルーモード)に加える。コンジュゲーション反応を開始し、反応時間は5分間から24時間である。
【0337】
コンジュゲーション反応完了後、反応溶液又は固定化Halo-ソルターゼカラムのフロースルー液を収集し、式(6)又は(6’)の構造を有する標的コンジュゲートを含む粗コンジュゲート混合物を得る。粗コンジュゲート混合物をHIC-HPLCでADCのDARを分析して、反応のコンジュゲーション効率を測定する。
【0338】
タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーの一般的な方法
カラムを20mM Tris、150mM NaCl、pH7.5にて平衡化して、粗コンジュゲート混合物を入れる。所望のオフセット(ベースライン)に達するまで、引き続いて20mM Tris、150mM NaCl、pH7.5にて洗い流す。任意に、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.0にて不純物を洗浄により除去する(洗浄ステップ)。クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、pH3.3~3.7にて所望のADCを溶出する。所望のADCを含む溶出物を収集する。1M Tris-HCl、pH9.0にて溶出物のpHをpH5.0~6.0に調節する。溶出物中の残留不純物、例えばHCP、DNA及びタンパク質A等をELISA又はqPCRで分析する。
【0339】
陰イオン交換クロマトグラフィーの一般的な方法
クロマトグラフィーカラムをQ Sepharose FF媒体で充填する。20~100mM Tris-HCl pH6.5~8.0にてカラムを平衡化し、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーから収集された複合溶出物を入れる。標的ADCを含むフロースルー液を収集する。所望のオフセット(ベースライン)に達するまで、引き続いて20mM Tris-HCl pH6.5~8.0にて洗い流す。20~100mM Tris-HCl、1M NaCl pH6.5~8.0にてクロマトグラフィーカラムを再生する。1M NaOHで30分間定置洗浄(CIP)する。溶出物中の残留不純物、例えばHCP、DNA及びタンパク質A等を分析する。
【0340】
陽イオン交換クロマトグラフィーの一般的な方法
カラムをCapto S ImpAct媒体で充填する。クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.0~6.0にてカラムを平衡化し、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーの溶出物を入れる。所望のオフセット(ベースライン)に達するまで、引き続いてクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.0~6.0にて洗い流す。クエン酸塩-クエン酸ナトリウム緩衝液、100~500mM NaCl、pH5.0~6.0にて標的ADCを溶出する。標的ADCを含む溶出物を収集する。クエン酸塩-クエン酸ナトリウム緩衝液、1M NaCl、pH6.0にてクロマトグラフィーカラムを再生する。1M NaOHで30分間定置洗浄(CIP)する。溶出物中の残留不純物、例えばHCP、DNA及びタンパク質A等を分析する。
【0341】
実施例1 リガーゼ融合タンパク質の調製
1.1 SrtAsのクローニングと精製
SrtA(配列番号1~26から選択されるアミノ酸配列を有するSrtA及びその変異体([Ser34][Asn100][Ala105][Thr136],SNAT。[Tyr34][Asn100][Ala105][Thr136],YNAT。[Trp34][Asn100][Asp105][Thr136],WNDT。[Val34][Asn100][Asn105][Ser136],VNNS)をコードする核酸は、遺伝子合成標準方法及びGibsonアセンブリ技術によってpET-21a(+)発現ベクター中のNdeI及びEcoRIにサブクローニングされる。HisタグをSrtAオープンリーディングフレームのN末端に挿入する。
【0342】
SrtA発現プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に形質転換する。LBに50μg/mlのアンピシリンを加えて37℃でOD600=0.5~0.8になるまで培養し、最終濃度が0.2mMになるまでIPTGを加え、25℃でソルターゼ発現を12時間誘導する。標的細胞を遠心分離によって収集してリーシス緩衝液(50mM Tris pH8.0、300mM NaCl)に再懸濁し、その後、超音波処理によってリーシスし、製造元の指示に従ってNi-NTAアガロース上で上清を精製する。SDS-PAGEによってソルターゼの純度が>90%であると判断される。SrtAの濃度は、吸光係数法で測定されたA280から算出される。
【0343】
1.2 ソルターゼ活性の評価
実施例1.1で調製された組換えSrtAのソルターゼ活性を蛍光分光光度法で測定する。37℃で、0.625μMの精製されたSrtA(又は変異体)を加えることによって、96ウェルプレートにおける反応(全体積100μL、0.085mM Abz-LPETGK-Dnp、18mMトリグリシンの緩衝液A(緩衝液A:5mM CaCl、150mM NaCl、50mM Tris-HCl、pH7.5))を開始する。Abz-LPETGK-Dnpは、2-アミノベンズイミダゾール(Abz)をフルオロフォアとし、2,4-ジニトロフェニル(Dnp)をクエンチャーとする内部クエンチしたペプチドである。ソルターゼがペプチドLPETGKを切断して、DnpとAbzが分離され、ソルターゼの活性を示すためのAbzの蛍光シグナルは検出することができる。1時間後に蛍光シグナルの増加を連続的に収集する(λexc/λem=320nm/420nm、ゲイン=85、Biotek Cytation3プレートリーダー)。
【0344】
例示的な例として、スタフィロコッカスワーネリ(配列番号3)由来のSrtA及びその変異体([Ser34][Asn100][Ala105][Thr136],SNAT)の活性を棒グラフで示す(図1)。結果によると、SNAT変異体SrtAは、その野生型SrtA(配列番号3)よりも活性が約1倍高く、両者ともソルターゼ活性を有する。
【0345】
1.3 本発明のリガーゼ融合タンパク質(Halo-ソルターゼ)のクローニング
本発明のリガーゼ融合タンパク質(Halo-ソルターゼ)をコードする核酸を細菌発現ベクターpET21a又はpET24dにクローニングし、リガーゼ融合タンパク質のそれぞれは、SrtA(配列番号1~26から選択されるアミノ酸配列を有するSrtA及びその変異体([Ser34][Asn100][Ala105][Thr136],SNAT。[Tyr34][Asn100][Ala105][Thr136],YNAT。[Trp34][Asn100][Asp105][Thr136],WNDT。[Val34][Asn100][Asn105][Ser136],VNNS)と、配列番号28のアミノ酸配列を有するHaloタグと、を含む。
【0346】
配列番号29のアミノ酸配列を有するHalo-ソルターゼは、以下の実施例に使用され、該Halo-ソルターゼは、黄色ブドウ球菌由来のSrtA変異体(配列番号27)及びHaloタグ(配列番号28)を含む。
【0347】
1.4 Halo-ソルターゼの精製
Halo-ソルターゼは、大腸菌BL21(DE3)内で発現され、精製され、-80℃、5%~10%のグリセロールに保存される。Hisタグを有するHis-ソルターゼ及びGB1タグを有するGB1-ソルターゼは、比較のために同様の方法で調製される。
【0348】
1.5 Halo-ソルターゼの活性
方法は次の(1)~(4)の通りである。
(1)精製された抗体T-LCCT-HCと式(IV-1-6)又は(IV-1-6’)の構造を有するリンカー-ペイロード中間体とを、コンジュゲーション緩衝液中に最適なモル比(Ab:リンカー-ペイロード中間体=1:1~1:100)で混合する。
(2)実施例1.4で調製されたHalo-ソルターゼ、His-ソルターゼ又はGB1-ソルターゼをそれぞれ、ステップ(1)の混合物と4~40℃で0.5~20時間インキュベートする。
(3)ステップ(2)で得られた生成物を4℃又は-80℃で保存する。
(4)生成物に対して12%SDS-PAGE電気泳動を行って、コンジュゲーション効率を測定する。
【0349】
結果は図2に示すように、Halo-ソルターゼ、GB1-ソルターゼ及びHis-ソルターゼのコンジュゲーション効率は90%を上回る。
【0350】
実施例2 固定化Halo-ソルターゼの調製
2.1 クロロアルキル-リンカー修飾樹脂(Chloro Resin)の調製
クロロ樹脂の調製方法は、例えば、米国特許第7,429,472号、第7,888,086号及び第8,202,700号を参照し、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる。クロロ樹脂の調製に使用する樹脂を表2に示す。
【0351】
【表3】
【0352】
方法は次の(1)~(3)の通りである。
(1)前処理
NHS活性化樹脂(Bestchrom)及びCNBr活性化樹脂(Bestchrom)について、
イソプロピルアルコールで樹脂を濾過し、濾過ケーキをDMFで1回洗浄し、その後、吸引して乾燥させる。DMFを使用して濾過ケーキをフラスコに移して撹拌する。続いて、混合物にエチレンジアミンを加え、10~15時間撹拌する。濾過してDMFで濾過ケーキを洗浄する。その後、液体を切る。
エポキシ活性化樹脂について、
イソプロピルアルコールで樹脂を濾過し、濾過ケーキをHOで1回洗浄し、その後、吸引して乾燥させる。濾過ケーキをフラスコに移して撹拌する。続いて、混合物に25%~28%の濃アンモニア水を加え、体系を40~50℃まで徐々に加熱し、40~50℃で撹拌しながら反応させる。体系の温度を20~30℃に下げ、混合物を濾過する。濾液のpHが約7~8に達するまで、HOで濾過ケーキを洗浄する。続いて、DMFで濾過ケーキを洗浄して液体を切る。
(2)ステップ(1)の濾過ケーキをフラスコに移して撹拌する。続いて、上記式(I-1-1)の構造を含むクロロアルキル基質のDMFとトリエチルアミンを体系に順に加える。撹拌しながら反応させる。続いて、体系を濾過してDMFで濾過ケーキを洗浄し、最後に液体を切る。
(3)ステップ(2)の濾過ケーキをフラスコに移し、撹拌する。続いて、混合物に順にAcOとトリエチルアミンを加える。撹拌しながら反応させる。その後、混合物を濾過してDMFで濾過ケーキを洗浄する。その後、HOで濾過ケーキを洗浄して液体を切る。最後に、20%エタノールを使用して混合物を容器に移して保存する。
【0353】
結果として、式(II-1)の構造を有するクロロ樹脂を得る。
【化50】
式中、
【化51】
は、高度に架橋されたアガロース樹脂又はポリメチルメタクリレート樹脂である。
【0354】
2.2 クロロ樹脂へのHalo-ソルターゼの固定化
方法は次の(1)~(5)の通りである。
(1)実施例1.4で調製された精製Halo-ソルターゼと実施例2.1で調製されたクロロ樹脂を室温で10分間~24時間インキュベートする。
(2)20mM Tris-HCl、150mM NaCl(pH6.0~10.0)を用いて樹脂を3回洗浄する。
(3)固定化Halo-ソルターゼの酵素活性を測定する。
(4)任意に、固定化Halo-ソルターゼでカラムを充填し、Halo-ソルターゼカラムを得る。
(5)ステップ(3)の固定化Halo-ソルターゼ又はステップ(4)のHalo-ソルターゼカラムを、20mM Tris-HCl、1~3M NaCl(pH6.0~10.0)、0.1~1.0M NaOHで洗浄して4℃で保存する。
【0355】
実施例3 クロロ樹脂の特徴付け
方法は次の(1)~(3)の通りである。
(1)試験すべき各クロロ樹脂をそれぞれ250μl取り、過剰量のHalo-ソルターゼを加え、チューブをローターに置き、室温で2時間インキュベートする。
(2)固定化反応の異なる時点(それぞれ15分間、30分間、1時間及び2時間)で、チューブを室温で3000gにて3分間遠心分離して、各クロロ樹脂の上清を1滴採取し、Nanodrop分光光度計を使用して上清中のHalo-ソルターゼの濃度を測定する。
(3)各時点でのHalo-ソルターゼの濃度を算出し、Halo-ソルターゼの初期濃度からそれを差し引き、各時点での固定化Halo-ソルターゼの量を得、クロロ樹脂に固定化されたHalo-ソルターゼの量をコンジュゲーション時間の関数として、曲線を描く。
【0356】
結果を図3に示し、クロロ樹脂に固定化されたHalo-ソルターゼの量は2時間の時点でプラトーに達し、各クロロ樹脂の最大負荷量が示される。
【0357】
実施例4 固定化Halo-ソルターゼの特徴付け
方法は次の(1)~(5)の通りである。
(1)実施例2.2に記載したように、一定量のHalo-ソルターゼをクロロ樹脂に固定化する。
(2)樹脂体積の5~10倍の1×保存緩衝液で固定化酵素を3回洗浄し、毎回3000gで室温にて3分間遠心分離し、固定化酵素樹脂を沈殿させ、コンジュゲーション緩衝液で固定化酵素を再懸濁する。
(3)各固定化酵素樹脂をそれぞれ25μl取り、供与体認識モチーフLPETGGを含む200μlのGFPタンパク質及びリンカー-ペイロード中間体を含む(小分子化合物にカップリングした受容体認識モチーフGGGを含む)小分子反応緩衝液を加え、コンジュゲーション反応を開始する。
(4)コンジュゲーション反応の異なる時点(それぞれ15分間、30分間、1時間及び2時間)で、上清サンプルを採取してHIC-HPLC分析を行う。
(5)HIC-HPLCによってコンジュゲーション効率を測定する。結果を図4に示す(コンジュゲーション活性は、経時的なDARとして表される)。
【0358】
実施例5 低温でHalo-ソルターゼにより触媒されたADC生成物の溶解性
方法は次の(1)~(5)の通りである。
(1)組換えソルターゼタンパク質GB1-ソルターゼ、His-ソルターゼ又はHalo-ソルターゼを使用して、「一般的な方法」に記載の方法でADCサンプルを調製する。
(2)ADCサンプルを氷上に10分間静置する。
(3)ADCサンプルを12000gで5分間遠心分離し、上清を新しいチューブに移す。
(4)ステップ(3)の沈殿に20μlの1×SDSローディング緩衝液を加えて沈殿を溶解し、サンプルのローディング用に5μl採取する。
(5)全てのサンプルを95℃で10min煮て、12%SDS-PAGEゲルにサンプルをロードして分析する。
【0359】
結果を図5に示し、氷上に置かれる時、ほとんどのGB1-ソルターゼにより触媒されたADCは沈殿するが、Halo-ソルターゼ又はHis-ソルターゼにより触媒されたADCは沈殿していない。結果として、Halo-ソルターゼ又はHis-ソルターゼにより触媒されたADCは、GB1-ソルターゼにより触媒されたADCと比較して、寒冷条件下でより安定し、比較的長い保持時間を有するコンジュゲーションプロセス(バイオコンジュゲートの生産では一般的である)において生存する可能性があることが示される。したがって、His-ソルターゼとHalo-ソルターゼは、生成物の溶解性に関してGB1-ソルターゼよりも優れている。
【0360】
実施例6 Halo-ソルターゼとADCの分離
6.1 陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)によるHalo-ソルターゼとADCの分離
方法は次の(1)~(5)の通りである。
(1)Q Sepharose FF媒体でカラムを充填する。
(2)20mM Tris-HCl(pH7.5)でカラムを平衡化し、サンプル(それぞれAのADC、BのHalo-ソルターゼ、及びCのADCとHalo-ソルターゼの混合物である(ADC:Halo-ソルターゼの質量比はそれぞれ約100:1である))をロードする。
(3)ベースライン、溶出液pH及び導電率が安定するまで、20mM Tris-HCl(pH7.5)でカラムを洗い流す。
(4)20mM Tris-HCl、1M NaCl(pH7.5)でカラムを再生する。
(5)1M NaOHで定置洗浄(CIP)する。
【0361】
結果を図6に示し、pH7.5の時、ADCはQFFクロマトグラフィーカラムを通過し(フロースルー[FT]モード)、これは従来のADC&Ab精製方法と一致する。Halo-ソルターゼはQFFクロマトグラフィーカラムに結合し(結合/溶出[B/E]モード)、20mM Tris-HCl、1M NaCl pH7.5にて溶出される。ADCとHalo-ソルターゼの混合物について、ADCはQFFカラムを通過するが、Halo-ソルターゼはQFFカラムに結合し、両者が良好に分離される。
【0362】
6.2 陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によるHalo-ソルターゼとADCの分離
方法は次の(1)~(5)の通りである。
(1)Capto S ImpAct媒体でカラムを充填する。
(2)20mM クエン酸-クエン酸ナトリウム(pH6.2)でカラムを平衡化し、サンプルをロードする(それぞれAのADC、BのHalo-ソルターゼ、CのADCとHalo-ソルターゼの混合物である)。
(3)ベースライン、溶出液pH及び導電率が安定するまで、20mM クエン酸/クエン酸ナトリウム(pH6.2)でカラムを平衡化する。
(4)20mM クエン酸/クエン酸ナトリウム、160mM NaCl、pH6.2にてサンプルを溶出する。
(5)20mM クエン酸/クエン酸ナトリウム、1M NaCl、pH6.2にてカラムを再生し、1M NaOHで定置洗浄(CIP)する。
【0363】
結果を図7に示し、pH6.2の時、ADCはCapto S ImpActカラムに結合し(結合/溶出[B/E]モード)、pH7.5の時、Halo-ソルターゼはCapto S ImpActクロマトグラフィーカラムを通過し(フロースルー[FT]モード)、ADCとHalo-ソルターゼの混合物について、ADCはCapto S ImpActカラムに結合するが、Halo-ソルターゼは通過し、両者は良好に分離される。
【0364】
6.3 反応生成物からのHis-ソルターゼ又はHalo-ソルターゼの除去の比較
His-ソルターゼとHalo-ソルターゼの等電点、及びHis-ソルターゼ又はHalo-ソルターゼと反応生成物ADCを分離するためのクロマトグラフィーモード(AEXとCEX)を表3に示す。His-ソルターゼは8.92の等電点を有し、ADCの等電点(8~9)に近い。His-ソルターゼとADCは両方ともCEXにおける陽イオン交換体に結合し、且つ両方ともAEXにおける陰イオン交換体を通過するため、両者を分離することは困難である。Halo-ソルターゼの等電点は5.7であり、Halo-ソルターゼとADCはAEX又はCEXによって簡単に分離できる。
【0365】
【表4】
【0366】
実施例7 タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーにより精製された抗体を用いるADC調製(プロセス2)
7.1 コンジュゲーション反応
「一般的な方法」に記載の方法に従って、HCCFのタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーから得られたモノクローナル抗体(mAb)(即ち、タンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのmAb溶出物)を使用して標的ADCを調製する。抗体フィード中のHCPの含有量は1000~2000ppmである。コンジュゲーション反応に使用する容器は、実施例2.2で調製されたHalo-ソルターゼカラムである。粗コンジュゲート混合物はHalo-ソルターゼカラムのフロースルー液として収集される。HIC-HPLC分析(図10を参照)によると、調製されたADCのDARは1.83である。コンジュゲーション効率は91.6%である(表4)。
【0367】
【表5】
【0368】
7.2 不純物の除去
7.1で収集された粗コンジュゲート混合物に対して順にAEXとCEXを行い、各ステップの標的ADCを含むサンプル(それぞれAEXのADCフロースルー液及びCEXのADC溶出物である)を収集する。タンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのmAb溶出物、AEXのADCフロースルー液、及びCEXのADC溶出物をELISA及びqPCRで分析し、残留不純物の量を測定する。
【0369】
AEXクロマトグラフィー後、HCP含有量が約1対数(90%)減少したことが観察された。一連のクロマトグラフィー精製を経た後、HCP、DNA及びタンパク質Aのレベルは全て1ppm以下に下がる(図9を参照)。
【0370】
実施例8 HCCFから得られた抗体を用いるADC調製(プロセス1)
8.1 コンジュゲーション反応
「一般的な方法」に記載の方法に従って、抗体フィードとしてHCCFを使用して標的ADCを調製する。抗体フィード中のCHO HCPの含有量は100000~1000000ppmである。
【0371】
コンジュゲーション反応に使用する容器は、実施例2.2で調製されたHalo-ソルターゼカラムである。粗コンジュゲート混合物はHalo-ソルターゼカラムのフロースルー液として収集される。HIC-HPLC分析(図11を参照)によると、調製されたADCのDARは1.81で、コンジュゲーション効率は90.5%である(表5を参照)。
【0372】
【表6】
【0373】
8.2 不純物の検出及び除去
8.1で収集された粗コンジュゲート混合物に対して、順にタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、AEX及びCEXを行い、各ステップのADCを含む溶液(それぞれタンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのADC溶出物、AEXのADCフロースルー液及びCEXのADC溶出物)を収集し、ELISA及びqPCRで分析して残留不純物の量を測定する。
【0374】
AEXクロマトグラフィー後、HCP含有量が80%減少し、DNA含有量が約3対数(99.9%)減少したことが観察された。CEXクロマトグラフィー後、HCP含有量が約93%減少したことが観察された。一連のクロマトグラフィー精製を経た後、DNA及びタンパク質Aの含有量レベルは5ppm以下に下がり、HCPのレベルは40ppm以下に下がる(図11を参照)。
【0375】
本発明のプロセスは、ADCの高速調製、特に小規模、例えば実験室での調製、又は生物活性の研究等の目的でのADCのハイスループット調製に適している。
【0376】
実施例9 タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーにより精製された抗体を用いるADC調製(プロセス3)
9.1 コンジュゲーション反応
「一般的な方法」に記載の方法に従って、HCCFのタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーから得られたモノクローナル抗体(即ち、タンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのmAb溶出物)を使用して標的ADCを調製する。コンジュゲーション反応に使用する容器は、実施例2.2で調製されたHalo-ソルターゼカラムである。粗コンジュゲート混合物はHalo-ソルターゼカラムのフロースルー液として収集される。
【0377】
9.2 不純物の除去
8.2と同様の方法で、9.1で収集された粗コンジュゲート混合物に対して、順にタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、AEX及びCEXを行う。タンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのmAb溶出物、タンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのADC溶出物、AEXのADCフロースルー液、及びCEXのADC溶出物をELISA及びqPCRで分析し、残留不純物の量を測定する。結果として、一連のクロマトグラフィー精製を経た後、HCP及びタンパク質Aのレベルは2ppm以下に下がることが示される(図12を参照)。したがって、2つのタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーステップを用いても、タンパク質Aが浸出する可能性に関して生成物の品質が影響されない。2番目のタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーステップの溶出物中の不純物の含有量が低いことは、この方法ではより高濃度/より複雑なローディングサンプルに耐えられることを示す。したがって、本実施例は、実施例7及び実施例8に記載した方法よりも複雑な精製プロセスの概念的検証として理解してもよい。
【0378】
9.3 残留酵素汚染物質(即ちコンジュゲーション後にHalo-ソルターゼカラムから脱落する酵素)の除去
実施例9.1に記載したように、Halo-ソルターゼカラムのフロースルー液として粗コンジュゲート混合物を収集し、その後、順にタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、AEX及びCEXを行う。粗コンジュゲート混合物、タンパク質AアフィニティークロマトグラフィーのADC溶出物、AEXのADCフロースルー液、及びCEXのADC溶出物に対して、ELISA分析を行って残留酵素汚染物質の量を測定する。
【0379】
図13に示すように、一連のクロマトグラフィー精製の後、残留酵素汚染物質は3対数(99.9%)減少した。特に、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーのみを使用するワンステップ精製に比べて、陰イオン交換クロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーは、最終生成物中の残留酵素の量がさらに約78%減少した。
【0380】
実施例10 リンカー-ペイロード中間体とADCの分離
標的ADCを含む粗コンジュゲート混合物からリンカー-ペイロード中間体を除去する従来の方法は、通常、限外濾過(UF)を含む。しかしながら、限外濾過中に生じるせん断力により、タンパク質分子凝集のリスクが高まる。コンジュゲートしていないタンパク質分子と比較して、ADCの限外濾過時間が長く且つ疎水性が強化されることから、これは、製品ADCから小分子(例えば、リンカー-ペイロード中間体)を除去する場合に特に懸念される。
【0381】
本発明は、リンカー-ペイロード中間体を除去するためのユニット操作(方法ステップ)のいくつかの選択肢を提供する。以下において、クロマトグラフィーステップの実施例を提供する。これらの実施例において、ADCサンプルは、HCCFのタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーから得られた抗体を使用し、又は抗体フィードとしてHCCFを使用して、「一般的な方法」に記載の方法に従って調製される。クロマトグラフィーステップは、「一般的な方法」に記載の方法に従って行われる。
【0382】
10.1 タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー
9.1と同様の方法で標的ADCを調製する。Halo-ソルターゼカラムのフロースルー液として粗コンジュゲート混合物を収集し、その後、異なる供給業者(BiomaxとGE)から提供されるタンパク質Aクロマトグラフィー媒体を使用してタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを行う。GEのタンパク質Aを使用した方法は洗浄ステップを含むが、Biomaxのタンパク質Aを使用した方法は洗浄ステップを含まない。結果を図14に示す。
【0383】
10.2 CEX
9.1と同様の方法で標的ADCを調製する。Halo-ソルターゼカラムのフロースルー液として粗コンジュゲート混合物を収集し、その後、GEにより提供されるCEX媒体を使用してCEXクロマトグラフィーを行う。
【0384】
結果を図14に示す。
【0385】
10.3 タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、AEX及びCEX
7.1と同様の方法で標的ADCを調製する。Halo-ソルターゼカラムのフロースルー液として粗コンジュゲート混合物を収集し、その後、順にタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、AEX及びCEXを行う。各ステップの標的ADCを含むサンプルはRP-HPLCによって分析し、残留リンカー-ペイロード中間体(Linker-Toxin)を測定する。
【0386】
タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー後、リンカー-ペイロード中間体の含有量が4対数超(99.99%超)減少したことが観察された。
【0387】
本発明は、例えばタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、AEX、CEX及びそれらの組合せような、リンカー-ペイロード中間体を除去するための複数の方法を提供する。精製ステップの後、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーション等の追加のステップによってさらなる精製を実現することもできる。したがって、リンカー-ペイロード中間体を完全に除去することができる。
【0388】
配列表
【0389】
【化52-1】
【化52-2】
【化52-3】
【化52-4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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【国際調査報告】