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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】低周波自動校正音響システム
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20240124BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240124BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H04S7/00 310
H04R3/00 320
H04R1/32 320
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541040
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 US2021013586
(87)【国際公開番号】W WO2022154802
(87)【国際公開日】2022-07-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512168283
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウェルティ, トッド エス.
(72)【発明者】
【氏名】シャンク, ケビン
【テーマコード(参考)】
5D162
5D220
【Fターム(参考)】
5D162AA09
5D162DA02
5D162EG03
5D220BA06
(57)【要約】
室内に音を投射するための少なくとも2つの低周波トランスデューサと、第1の聴取位置で多方向から音を受信するための少なくとも2つのマイクロホンを備えた携帯型装置と、を備えるオーディオシステムが提供される。マイクロコントローラは、ユーザ入力に応答して校正コマンドを提供し、マイクロホンアレイが受信した音を示す測定信号を提供するようにプログラムされる。プロセッサは、校正コマンドの受信に応答してテスト信号を提供するようにプログラムされており、各低周波トランスデューサは、テスト信号に応答してテスト音を生成するように適合される。プロセッサは、測定信号を処理して、第1の聴取位置に隣接する第2の聴取位置における音響応答を予測し、各低周波トランスデューサに関連付けられた音響設定を調整して、第1の聴取位置及び第2の聴取位置における音を最適化するようにさらにプログラムされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に音を投射するための少なくとも2つの低周波トランスデューサと、
携帯型装置であって、
少なくとも2つのマイクロホンを備え、第1の聴取位置において前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれによって生成された音を複数の方向から受信するマイクロホンアレイと、
ユーザ入力に応答して校正コマンドを提供し、前記マイクロホンアレイが受信した前記音を示す測定信号を提供するようにプログラムされるマイクロコントローラを備える、前記携帯型装置と、
プロセッサであって、
前記校正コマンドの受信に応答してテスト信号を提供し、そこで、前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれが、前記テスト信号に応答してテスト音を生成するように適合され、
前記測定信号を処理して、前記第1の聴取位置に隣接する第2の聴取位置における音声応答を予測し、
前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに関連付けられた音響設定を調整して、前記第1の聴取位置及び前記第2の聴取位置における音を最適化するようにプログラムされた前記プロセッサと、を含む、オーディオシステム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれが、前記テスト信号に応答して120ヘルツ未満のテスト音を生成するように適合されている、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項3】
前記少なくとも2つのマイクロホンが、
軸上に配置され、第1の方向に配置されて入射音を受信し、軸外からの入射音を減衰させる第1のマイクロホンと、
前記軸上に配置され、前記第1の方向とは反対の第2の方向に配置されて入射音を受信し、軸外からの入射音を減衰させる第2のマイクロホンと、をさらに備える、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記第1の聴取位置と前記第2の聴取位置との間の距離に基づいて、前記第1のマイクロホンと前記第2のマイクロホンのそれぞれで受信される前記音に関連する時間遅延をシフトすることによって、前記第1の聴取位置に隣接する前記第2の聴取位置における前記音声応答を予測するために、前記測定信号を処理するようにさらにプログラムされる、請求項3に記載のオーディオシステム。
【請求項5】
前記マイクロホンアレイが、多方向からの音を受信するために、前記第1のマイクロホンと前記第2のマイクロホンとの間の前記軸上に配置された第3のマイクロホンをさらに備える、請求項3に記載のオーディオシステム。
【請求項6】
前記携帯型装置の前記マイクロコントローラが、
前記第1及び前記第2のマイクロホンによって受信された前記音と、前記第3のマイクロホンによって受信された前記音との間の差に基づいて、結合された音の指向性を決定し、
前記結合された音の指向性に基づいて前記測定信号を提供するようにさらにプログラムされる、請求項5に記載のオーディオシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、
前記測定信号を直交成分に分離し、
前記直交成分を前記第2の聴取位置に外挿するようにさらにプログラムされる、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項8】
前記テスト信号は、所定のサウンドスイープを示す、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、音楽信号を示すオーディオ信号及び調整された前記音響設定を前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに提供するようにさらにプログラムされる、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項10】
前記携帯型装置が、外部からアクセス可能なボタンをさらに備え、前記携帯型装置の前記マイクロコントローラが、ユーザが前記外部からアクセス可能なボタンを押すことに応答して、前記校正コマンドを提供するようにさらにプログラムされる、請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項11】
少なくとも2つの低周波トランスデューサであって、前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれがオーディオ信号の受信に応答して室内に音を投射するように適合されている、前記少なくとも2つの低周波トランスデューサと、
コントローラであって、
校正コマンドの受信に応答して、前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれにテスト信号を提供し、
前記室内の第1の聴取位置で少なくとも2つのマイクロホンによって受信された前記音を示す測定信号を処理して、前記第1の聴取位置に隣接する第2の聴取位置での音の応答を予測し、
前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに関連付けられた音響設定を調整して、前記第1の聴取位置及び前記第2の聴取位置における音を最適化するように構成される、前記コントローラを備える、オーディオシステム。
【請求項12】
前記コントローラが、
前記測定信号を直交成分に分離し、
前記直交成分を前記第2の聴取位置に外挿するようにさらに構成される、請求項11に記載のオーディオシステム。
【請求項13】
前記テスト信号が、所定のサウンドスイープを示す、請求項11に記載のオーディオシステム。
【請求項14】
前記コントローラが、音楽信号を示すオーディオ信号及び前記調整された音響設定を、前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに提供するようにさらに構成される、請求項11に記載のオーディオシステム。
【請求項15】
前記少なくとも2つのマイクロホンに結合され、前記少なくとも2つのマイクロホンによって受信された前記音を示す前記測定信号を提供するように構成される、マイクロコントローラを備える携帯型装置をさらに備え、
前記少なくとも2つのマイクロホンが、
軸上に配置され、第1の方向に配置されて入射音を受信し、軸外からの入射音を減衰させる第1のマイクロホンと、
前記軸上に配置され、前記第1の方向とは反対の第2の方向に配置されて入射音を受信し、軸外からの入射音を減衰させる第2のマイクロホンと、を備える、請求項11に記載のオーディオシステム。
【請求項16】
前記コントローラが、前記第1の聴取位置と前記第2の聴取位置との間の距離に基づいて、前記第1のマイクロホンと前記第2のマイクロホンのそれぞれで受信される前記音に関連する時間遅延をシフトすることによって、前記第1の聴取位置に隣接する前記第2の聴取位置における前記音声応答を予測するために、前記測定信号を処理するようにさらに構成される、請求項15に記載のオーディオシステム。
【請求項17】
多方向からの音を受信するために、前記第1のマイクロホンと前記第2のマイクロホンとの間の前記軸上に配置された第3のマイクロホンをさらに備える、請求項15に記載のオーディオシステム。
【請求項18】
前記携帯型装置の前記マイクロコントローラが、
前記第1及び前記第2のマイクロホンによって受信された前記音と、前記第3のマイクロホンによって受信された前記音との間の差に基づいて、結合された音の指向性を決定し、
前記結合された音の指向性に基づいて前記測定信号を提供するようにさらに構成される、請求項17に記載のオーディオシステム。
【請求項19】
少なくとも2つの低周波トランスデューサであって、前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれがオーディオ信号の受信に応答して室内に音を投射するように適合されている、前記少なくとも2つの低周波トランスデューサと、
携帯型装置であって、
第1の聴取位置で音を受信するように適合された少なくとも3つのマイクロホンと、
ユーザ入力に応答して校正コマンドを提供し、前記少なくとも3つのマイクロホンが受信した前記音を示す測定信号を提供するように構成されるマイクロコントローラと、を備える前記携帯型装置と、
コントローラであって、
前記校正コマンドの受信に応答して、所定のサウンドスイープを示す第1のオーディオ信号を、前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに提供し、
前記測定信号を処理して、前記第1の聴取位置に隣接する第2の聴取位置における音声応答を予測し、
前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに関連付けられた音響設定を調整して、前記第1の聴取位置及び前記第2の聴取位置における音を最適化し、
音楽信号を受信し、
前記音楽信号及び前記調整されたサウンド設定を示す第2のオーディオ信号を、前記少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに提供するように構成される、前記コントローラと、を備えるオーディオシステム。
【請求項20】
前記少なくとも3つのマイクロホンが、
軸上に配置され、第1の方向に配置されて入射音を受信し、軸外からの入射音を減衰させる第1のマイクロホンと、
前記軸上に配置され、前記第1の方向とは反対の第2の方向に配置されて入射音を受信し、軸外からの入射音を減衰させる第2のマイクロホンと、
前記第1のマイクロホンと前記第2のマイクロホンとの間の前記軸上に配置され、多方向からの音を受信する第3のマイクロホンと、を備え、
前記携帯型装置の前記マイクロコントローラが、
前記第1及び前記第2のマイクロホンによって受信された前記音と、前記第3のマイクロホンによって受信された前記音との間の差に基づいて、結合された音の指向性を決定し、
前記結合された音の指向性に基づいて前記測定信号を提供するようにさらに構成される、請求項19に記載のオーディオシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響システムを自動的に校正するためのシステム及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
音響システムは通常、電気信号を音響信号に変換するラウドスピーカを含む。ラウドスピーカは、高周波信号、中周波信号、及び低周波信号などの、ある範囲の音響信号を生成する1つまたは複数のトランスデューサを含み得る。ラウドスピーカの1つのタイプは、低周波信号を生成する低周波トランスデューサを含み得るサブウーファである。
【0003】
音響システムは、家庭のリスニングルーム、ホームシアター、映画館、コンサートホール、車内、レコーディングスタジオなどのさまざまなリスニング環境で音響信号を生成し得る。聴取環境には、ラウドスピーカによって生成された音響信号を人が聞くための複数の聴取位置、例えば、家庭のリスニングルーム内の異なるセクションのソファが含まれる。
【0004】
聴取環境は、聴取位置での低周波、中周波、及び/または高周波信号を含む音響信号に影響を与える場合がある。聴取者が部屋のどこにいるかに応じて、音量はさまざまなトーンで変化する可能性がある。これは、特定のトーンまたは周波数の音量(振幅で測定)が人為的に増減され得るため、家の小さな部屋の低周波数に特に当てはまり得る。低周波数は、音楽、映画、及びその他のほとんどのオーディオエンターテイメントの形態を楽しむために重要である場合がある。ホームシアターの例では、壁、カーテン、家具、調度品などを含む部屋の境界が、音響信号がラウドスピーカから聴取位置に伝わる際に音響信号に影響を与える場合がある。
【0005】
聴取位置で受信された音響信号は測定され得る。音響信号の1つの尺度は、単一周波数、離散的な数の周波数、または周波数範囲での振幅及び/または位相を含む音響信号の側面を測定し得る伝達関数である。伝達関数はさまざまな範囲の周波数を測定し得る。伝達関数の振幅は音量に関係する。一般に、単一周波数または周波数範囲の振幅はデシベル(dB)単位で測定される。振幅偏差は、指定された目標値に対する正または負のデシベル値として表され得る。振幅偏差が複数の周波数で考慮される場合、ターゲット曲線は平坦または任意の形状になり得る。相対振幅応答は、1つまたは複数の周波数における目標値からの1つまたは複数の周波数における振幅偏差の測定値である。聴取位置で測定された振幅値が目標値に近ければ近いほど、振幅応答は良好になる。目標値からの偏差は、音響信号が部屋の境界と相互作用する際に生じる変化を反映している。ピークは目標値からの振幅偏差の増加を表し、ディップは目標値からの振幅偏差の減少を表す。
【0006】
振幅応答のこれらの偏差は、サブウーファで再生される音響信号の周波数、サブウーファの位置、及びリスナーの位置に依存する場合がある。リスナーには、サウンドトラックや映画などの低周波が、記録媒体に記録された状態で聞こえるのではなく、部屋の境界によって歪んだように聞こえる場合がある。したがって、部屋によってサブウーファによって再生される音響信号が変化し、音響システムの低周波性能を含む周波数応答性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
多くの技術は、単一の聴取位置での振幅偏差を低減または除去しようとする。追加の技術では、複数の聴取位置における振幅偏差を低減または除去しようとする。例えば、Harman International Industries Inc.に譲渡されたDevantier et al.の米国特許第7,526,093号では、各サブウーファ位置及び各聴取位置から音響測定を行うことを含む、音場測定アプローチを使用してオーディオシステムを構成するシステムを開示している。複数の異なる聴取位置での振幅偏差を除去することはより困難であり、通常は部屋の異なる場所で複数の音源を使用することに依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,526,093号明細書
【発明の概要】
【0008】
1つの実施形態では、オーディオシステムは、室内及び携帯型装置に音を投射するための少なくとも2つの低周波トランスデューサを備える。携帯型装置は、第1の聴取位置で複数の方向から音を受信するための少なくとも2つのマイクロホンを備えるマイクロホンアレイを含む。マイクロコントローラは、ユーザ入力に応答して校正コマンドを提供し、マイクロホンアレイが受信した音を示す測定信号を提供するようにプログラムされる。プロセッサは、校正コマンドの受信に応答して各低周波トランスデューサにテスト信号を提供するようにプログラムされており、各低周波トランスデューサは、テスト信号に応答してテスト音を生成するように適合される。プロセッサは、測定信号を処理して、第1の聴取位置に隣接する第2の聴取位置における音響応答を予測し、各低周波トランスデューサに関連付けられた音響設定を調整して、第1の聴取位置及び第2の聴取位置における音を最適化するように、さらにプログラムされる。
【0009】
別の実施形態では、オーディオシステムは、少なくとも2つの低周波トランスデューサを備え、少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれは、オーディオ信号の受信に応答して室内に音を投射するように適合される。コントローラは、校正コマンドの受信に応答して、各低周波トランスデューサにテストオーディオ信号を提供するように構成され、室内の第1の聴取位置で少なくとも2つのマイクロホンによって測定された音を示す測定信号を処理して、第1の聴取位置に隣接する第2の聴取位置での音響応答を予測し、少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに関連付けられた音響設定を調整して、第1の聴取位置及び第2の聴取位置における音を最適化する。
【0010】
さらに別の実施形態では、オーディオシステムは、少なくとも2つの低周波トランスデューサ、携帯型装置、及びコントローラを備える。少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれは、オーディオ信号の受信に応答して室内に音を投射するように適合されている。携帯型装置は、第1の聴取位置での音を複数の方向から測定するための少なくとも2つのマイクロホンと、ユーザ入力に応答して校正コマンドを提供し、少なくとも2つのマイクロホンによって測定された音を示す測定信号を提供するようにプログラムされたマイクロコントローラとを含む。コントローラは、校正コマンドの受信に応答して、所定のサウンドスイープを示す第1のオーディオ信号を少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに提供し、測定信号を処理して第1の聴取位置に隣接する第2の聴取位置での音響応答を予測するように構成され、第1の聴取位置に合わせて、少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに関連付けられた音響設定を調整して、第1の聴取位置及び第2の聴取位置における音を最適化する。コントローラは、音楽信号を受信し、音楽信号及び調整された音響設定を示す第2のオーディオ信号を少なくとも2つの低周波トランスデューサのそれぞれに提供するように、さらに構成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】1つまたは複数の実施形態による携帯型測定装置を含むオーディオシステムの上面図である。
図2図1のオーディオシステムの系統図である。
図3図1のオーディオシステムの1つのラウドスピーカによって生成される3軸モードを示す図であり、ラウドスピーカに対する3つの聴取者の位置を示している。
図4A】オーディオシステムの1つのラウドスピーカによって生成され、室内の2つの聴取位置で測定された音の振幅応答を示すグラフであり、2つの聴取位置間では振幅応答に差異はない。
図4B】オーディオシステムの1つのラウドスピーカによって生成され、室内の2つの聴取位置で測定された、等化された音の振幅応答を示すグラフであり、2つの聴取位置間では振幅応答に差異はない。
図5A】オーディオシステムの1つのラウドスピーカによって生成され、室内の2つの聴取位置で測定された音の振幅応答を示すグラフであり、2つの聴取位置間では振幅応答に差異がある。
図5B】オーディオシステムの1つのラウドスピーカによって生成され、室内の2つの聴取位置で測定された、等化された音の振幅応答を示すグラフであり、2つの聴取位置間では振幅応答に差異がある。
図6図1のオーディオシステムの2つのラウドスピーカによって生成される3軸モードを示す図であり、ラウドスピーカに対する3つの聴取者の位置を示している。
図7】室内でのマルチサブウーファ、マルチレシーバーのシナリオを示す図である。
図8図1のオーディオシステムを自動的に校正する方法を示すフローチャートである。
図9図8の方法の一部を実行する、一次マイクロホンアレイを含む図1のオーディオシステムを示す図である。
図10】全方向から聴取位置に到達する音を示す図である。
図11図10の複雑な音場をその直交成分に単純化して示す図である。
図12】新しい聴取位置での応答を予測するための図11の音成分の外挿を示す図である。
図13】2次マイクロホンアレイを示す図である。
図14図13の二次マイクロホンアレイによって測定された音の極プロットのグラフである。
図15図14の極プロットの 3次元モデルを示す図である。
図16図14の複雑な音場をその直交成分に単純化して示す図である。
図17図1のオーディオシステムによって生成される音の振幅応答を示すグラフである。
図17A図17のグラフの一部の拡大図である。
図18図1のオーディオシステムによって生成される予測音の位相応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書中に開示されるが、開示される実施形態は、さまざまな形式及び代替の形式で具現化され得る本開示の単なる例示にすぎないことを理解されたい。図は必ずしも縮尺通りではなく、一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小限に抑えられる場合がある。したがって、本明細書で開示される特定の構造的な詳細及び機能的な詳細は、限定として解釈されず、代表的な原理として解釈されるにすぎない。
【0013】
図1を参照すると、1つまたは複数の実施形態によるオーディオシステムが示されており、全体的に符号100で参照されている。オーディオシステム100は、部屋102などの家庭の聴取環境内に示されている。オーディオシステム100は、1つまたは複数の高周波トランスデューサ、中周波トランスデューサ、及び低周波トランスデューサ(例えば、サブウーファ)を含むサウンドバー104などのラウドスピーカを含む。オーディオシステム100は、コントローラ106及び携帯型測定装置108をさらに含む。オーディオシステム100は、部屋102の別の場所に取り付けられる外部サブウーファ110などの追加のラウドスピーカをさらに含んでもよい。ユーザ112は、第1の聴取位置114、例えばソファの中央の座席で携帯型測定装置108を保持している状態で示されている。ユーザ112の隣には2人の追加の聴取者がおり、1人の聴取者はユーザ112の左側の第2の聴取位置116に座っており、別の聴取者はユーザ112の右側の第3の聴取位置118に座っている。オーディオシステム100は、「ワンクリック」または携帯型測定装置108を起動し、第1の聴取位置114で音響測定を行うためのユーザ112からのコマンドに応答して、サウンドバー104及び外部サブウーファ110によって部屋102内の複数の位置、例えば第1、第2、及び第3の聴取位置114、116、118に投射される音を自動的に校正する。
【0014】
図2を参照すると、サウンドバー104は、デジタル信号プロセッサ(DSP)などのプロセッサ120及びメモリ(図示せず)を含むコントローラ106を含む。サウンドバー104は、1つまたは複数の実施形態によれば、高周波(HF)トランスデューサ122、中周波トランスデューサ123、及び低周波トランスデューサすなわちサブウーファ124を含む。1つまたは複数の実施形態では、サブウーファ124は、約0から120Hzの間の音を提供し、中周波トランスデューサ123は、約120Hzから2kHzの間の音を提供し、高周波(HF)トランスデューサ122は、約2kHzから20kHzの間の音を提供する。サウンドバー104は、他の装置と無線通信するためにコントローラ106に接続されるトランシーバ126、例えば低出力無線周波数(RF)トランシーバをさらに含む。プロセッサ120は、テレビ、メディアプレーヤーなどの音源127からオーディオ信号を受信し、そのオーディオ信号を各サウンドバートランスデューサ122、123、及び124と、任意の追加のトランスデューサ(例えば、外部サブウーファ110のLFトランスデューサ144)のチャネルに分離する。
【0015】
携帯型測定装置108は、小型ハウジング130(例えば、ハンドヘルドリモコン)内に支持されたマイクロホンアレイ128を含む。1つの実施形態によれば、マイクロホンアレイ128は、2つのマイクロホン、すなわち左マイクロホン132及び右マイクロホン134を含む一次アレイである。左右のマイクロホン132、134は、互いに比較的近く、例えば約10cm離れてパッケージされ、指向性センサを提供するために反対方向、例えば左右に配置される。各マイクロホン132、134は、KnowlesのMM20-33366-B116マイクロホンなどの無指向性マイクロホンであってもよい。別の実施形態では、マイクロホンアレイ128は、3つの無指向性マイクロホン、すなわち、左マイクロホン132、右マイクロホン134、及び左マイクロホン132と右マイクロホン134との間の中央に位置する中央マイクロホン136を含む二次アレイである。オーディオシステム100の他の実施形態では、マイクロホンアレイ128と、異なるマイクロホン、例えば1つまたは複数のアコースティックカーディオイドマイクロホンと1つまたは複数の無指向性マイクロホンの組み合わせを含み、左右に向いたローブ、オプションで、前向き及び後ろ向きのローブを有する2 以上のアレイを形成する。
【0016】
携帯型測定装置108は、マイクロコントローラ138と、トランシーバ140(例えば低出力無線周波数(RF)トランシーバ)を含む。トランシーバ140は、サウンドバー104等の他の装置と無線通信するためにマイクロコントローラ138に接続される。携帯型測定装置108は、オーディオシステム100の自動校正シーケンスを開始するためにマイクロコントローラ138と通信する外部からアクセス可能なボタン142をさらに含む。1つまたは複数の実施形態では、携帯型測定装置108の機能の一部またはすべては、スマートフォンまたはタブレットによって提供され得る。例えば、スマートフォンは、マイクロコントローラ138、トランシーバ140、及びボタン142のように、プロセッサ、トランシーバ、及びタッチスクリーン(ボタン)を含んでもよい。
【0017】
外部サブウーファ110は、1つまたは複数の低周波トランスデューサ144及びサブウーファコントローラ146を含む。外部サブウーファ110は、トランシーバ148(例えば、低出力無線周波数(RF)トランシーバ)をさらに含む。トランシーバ148は、サウンドバー104及び携帯型測定装置108等の他の装置と無線通信するために、サブウーファコントローラ146に接続される。他の実施形態では、外部サブウーファ110は有線通信によってサウンドバー104と通信する。
【0018】
コントローラ106は、校正シーケンスを制御するための測定モジュール150を含む。1つまたは複数の実施形態によると、コントローラ106は、各オーディオチャネルまたはトランスデューサのパラメータを調整するための最適化モジュール152をさらに含み、そのようなパラメータは、個々のチャネル遅延、ゲイン、極性、フィルタなどを含む。
【0019】
コントローラ106、マイクロコントローラ138、及びサブウーファコントローラ146はそれぞれ単一のコントローラとして示されるが、それぞれ複数のコントローラを包含してもよく、または、1つまたは複数の他のコントローラ内でソフトウェアコードとして具体化されてもよい。コントローラ106、138、146は全体的に、一連の動作を実行するよう相互に協働する、いずれかの数のマイクロプロセッサ、ASIC、IC、メモリ(例えば、FLASH(登録商標)、ROM、RAM、EPROM、及び/またはEEPROM)、ならびにソフトウェアコードを含む。このようなハードウェア及び/またはソフトウェアは、特定の機能を実行するためにモジュールにグループ化される場合がある。本明細書に説明するコントローラまたは装置の任意の1つ以上は、さまざまなプログラミング言語及び/または技術を使用し、作成されたコンピュータプログラムからコンパイルまたは解釈され得るコンピュータ実行可能命令を含む。一般に、(マイクロプロセッサ等の)プロセッサは、例えばメモリ、コンピュータ可読媒体等から命令を受け取り、命令を実行する。処理ユニットは、ソフトウェアプログラムの命令を実行可能である非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。コンピュータ可読記憶媒体は、電子記憶装置、磁気記憶装置、光学記憶装置、電磁記憶装置、半導体記憶装置、またはそれらの任意の適切な組み合わせであってよいが、これに限定されるものではない。1つまたは複数の実施形態によると、コントローラ106、138、146は、メモリ内に記憶された所定のデータ、すなわち「ルックアップテーブル」をさらに含む。
【0020】
図3を参照すると、小さな部屋でのサブウーファと聴取者の配置、部屋のサイズと形状が、結果として生じる低周波応答に影響を与える。図3は、一端にサウンドバー104がある場合に、部屋102内で定在波がどのように見えるかを示している。サウンドバー104のサブウーファ124は低周波音を生成し、最も低い周波数の定在波のうちの3つが、第1のモード320、第2のモード322、及び第3のモード324として示されており、各モードは、例えば、1組の軸モードに対してそれぞれ30Hz、60Hz、及び90Hzのように、異なる周波数に対応する。図3は、ある瞬間における部屋102の一次元の3軸モードを表す。最大音圧は部屋の境界(すなわち、図2の部屋102の両端)に存在する。音圧が最小値に低下する点は、一般に「ヌル」と呼ばれる。モード減衰がない場合、ヌルでの音圧はゼロに低下する。ただし、実際の部屋のほとんどでは、ヌルでの応答のディップは約-20dBの範囲である。
【0021】
定在波は部屋全体のさまざまな位置でピークとディップを有し、聴取者の位置に応じて大きな振幅偏差が発生する場合がある。したがって、ユーザ112は第1のモード320及び第3のモード324の両方に対してヌル位置にあるため、これらの周波数でサブウーファ124によって生成される音は、本来よりもはるかに小さく聞こえることになる。逆に、ユーザ112は第2のモード322のピークに位置しているため、この周波数でサブウーファ124によって生成される音は、本来よりもはるかに大きく聞こえることになる。第2の聴取位置116及び第3の聴取位置118の聴取者は、いずれのモードに関してもヌル位置に配置されていないため、3つのモードすべてを聞き、より快適で正確な聴取体験を得ることができる。
【0022】
図4Aから図4Bを参照すると、図3の単一のサブウーファシナリオにおける定在波問題に対処する1つのアプローチは、周波数応答を等化することである。図4Aは、1つの実施形態によると、室内の単一のサブウーファ、例えば図3の部屋102内のサブウーファ124によって生成される音響測定の周波数応答を表す3つの曲線404、406、408を有するグラフ400である。第1の曲線404は、第1の聴取位置114で測定された音の周波数応答を表す。第2の曲線406は、第2の聴取位置116で測定された音の周波数応答を表す。第3の曲線408は、第1の曲線404と第2の曲線406の空間平均を表す。図4Aに示すように、第1の曲線404と第2の曲線406は、異なる周波数で同時に上昇及び下降するため、聴取位置間の差異、または座席間の差異はほとんど、またはまったくなく、周波数応答は、各トランスデューサに提供される信号のパラメータにイコライザフィルタを適用することにより、目的の目標値に合わせて等化され得る。
【0023】
図4Bは、第1の聴取位置で測定された音の等化された周波数応答を表す第1の曲線414と、第2の聴取位置で測定された音の等化された周波数応答を表す第2の曲線416と、第1の曲線414と第2の曲線416の空間平均を示す第3の曲線418と、を含むグラフ410である。第1の曲線414、第2の曲線416、及び第3の曲線418は、すべて互いにほぼ平行であり、これは、(図4Aに示すように)聴取位置間に変動がない場合、両方の聴取位置の周波数応答が、サブウーファ124に供給される音響信号を等化することによって改善され得ることを示している。
【0024】
図5A及び図5Bを参照すると、図4A及び図4Bの単純な等化アプローチは、座席ごとに差異がある場合には効果的ではない。図5Aは、別の実施形態によると、室内の単一のサブウーファ、例えば、図3の部屋102内のサブウーファ124によって生成される音響測定の周波数応答を表す、第1の曲線504、第2の曲線506、及び第3の曲線508を有するグラフ500である。第1の曲線504は、第1の聴取位置114で測定された音の周波数応答を表す。第2の曲線506は、第2の聴取位置116で測定された音の周波数応答を表す。第3の曲線508は、第1の曲線504と第2の曲線506の空間平均を表す。空間平均曲線508は、図4Aの空間平均曲線408とほぼ等しい。図5Aに示すように、第1の曲線504と第2の曲線506は、周波数範囲全体にわたって同時に上昇及び下降しないため、聴取位置間に差異が存在する。
【0025】
図5Bは、第1の聴取位置114で測定された音の等化された周波数応答を表す第1の曲線514と、第2の聴取位置116で測定された音の等化された周波数応答を表す第2の曲線516と、第1の曲線514と第2の曲線516の空間平均を示す第3の曲線518と、を含むグラフ510である。空間平均曲線408、508はほぼ互いに等しいが、等化曲線514及び516は互いに発散しており、これは、(図5Aに示すように)聴取位置間に差異がある場合、そのような等化アプローチは効果的ではないことを示している。周波数応答に聴取位置間の差異があるということは、ある位置の音を単純な等化で修正すると、別の位置の音に悪影響を与える場合があることを意味する。
【0026】
図6を参照すると、聴取位置間の音質の差異に対処する別のアプローチは、部屋102内の異なる位置にあるサブウーファが特定の定在波を部分的に打ち消すことができるため、異なる位置にある複数のサブウーファを使用することである。図6は、サウンドバー104のサブウーファ124と外部サブウーファ110の両方が異なる位置から低周波モードを生成する部屋102を示しており、これにより3つのモードのうちの2つ、すなわち第1のモード620と第3のモード624が打ち消されるが、第1の聴取場所114における第2のモード622は打ち消されない。しかしながら、このアプローチは、追加のラウドスピーカ、例えば、外部サブウーファ110を必要とし、部屋102内には依然として、第2及び第3の聴取位置116、118に隣接するヌルが存在する。
【0027】
図7は、室内でのマルチサブウーファ、マルチレシーバーのシナリオの例を示す図である。参照記号Iは、オーディオシステム100へ入力されたオーディオ信号である。室内102における、サウンドバー104のサブウーファ124(スピーカ1)及び外部サブウーファ110(スピーカ2)から2つの受信位置(例えば、第1の聴取位置114及び第2の聴取位置116)への、ラウドスピーカ/部屋の伝達関数は、H11、H12、H21、及びH22によって表され、R及びRは、受信(聴取)位置で得られる伝達関数を表す。各音源には各受信者への伝送路があり、この例では4つの伝達関数が生じる。各ラウドスピーカに送信される信号が、M及びMで表されるように電気的に修正可能であると仮定すると、変更された信号が加算され得る。ここで、Mは周波数に依存する場合と依存しない場合がある複素修正因子である。数学的解の複雑さを説明するために、次の方程式は周波数領域で線形時不変系を解決する。
【0028】
(f)=IH11(f)M(f) + IH21(f)M(f)
(f)=IH12(f)M(f) + IH22(f)M(f) (1)
ここで、すべての伝達関数と修正因子は複素数であると理解される。これは一組の連立一次方程式として認識され、次のように行列形式でよりコンパクトに表すことができる。
【0029】
【数1】
または単に、
HM=R, (3)
ここで、入力 I は 1 であると仮定されている。
【0030】
最適化の一般的な目標は、Rイコール1にすること、つまりすべての受信機の信号が互いに同一になることである。Rは、RとRが両方とも1に等しい目的関数と見なしてもよい。M(オーディオシステムの修正因子)について方程式(3)を解くと、M=H-1、Hの逆数になる。Hは周波数に依存するため、Mの解は各周波数で計算される。ただし、Hの値は、逆数の計算が困難であるか、実装が非現実的である場合がある(一部の周波数における一部のラウドスピーカのゲインが非現実的なほど高いなど)。
【0031】
正確な数学的解を決定することが常に実行可能であるとは限らないため、従来のアプローチでは、誤差が最小の解など、計算可能な最良の解を決定することが試みられてきた。誤差関数は、特定の構成が望ましい解にどの程度近づいているかを定義し、最も低い誤差が最良の解を表す。ただし、この数学的方法論は多量の計算エネルギーを必要とするが、解決できるのは2つのパラメーターの解だけである。より多くのパラメータを調べる音響問題は、解決がますます困難になっている。一部のオーディオシステムでは、リスニングルーム内のさまざまな場所で取得した音響測定を分析することで問題を解決しようとしているが、そのようなアプローチは家庭の聴取環境におけるエンドユーザーにとっては困難な場合がある。
【0032】
図8を参照し、図2に戻ってこれを参照すると、オーディオシステム100を自動的に校正するための方法が、1つまたは複数の実施形態に従って示されており、全体的に符号800を付されている。方法800は、1つまたは複数の実施形態に従って、コントローラ106内に含まれるソフトウェアコードを使用して実装される。本方法はいくつかの順次的なステップにより示されるフローチャートを使用して説明され、1つまたは複数のステップは、省略されてもよく、及び/または1つまたは複数の他の実施形態における別の方式において実行されてもよい。他の実施形態では、ソフトウェアコードは、複数のコントローラ、例えば、コントローラ106及びマイクロコントローラ138に分散される。
【0033】
ステップ802で、ユーザ112は、第1の聴取位置114に着席しながら、携帯型測定装置108のボタン142を押すことによって、校正シーケンスを初期化する。他の実施形態では、校正手順は、音声コマンドに応答して、またはスマートフォンまたはタブレットを使用して信号を送ることによって初期化され得る。携帯型測定装置108のマイクロコントローラ138は、初期化コマンド(CAL)を生成し、トランシーバ140を介して初期化コマンドをサウンドバー104に送信する。
【0034】
ステップ804で、コントローラ106はトランシーバ126を介して初期化コマンドを受信し、プロセッサ120は測定モジュール150を起動して、サウンドスイープ信号をサブウーファ124に提供して音として放射する。1つの実施形態では、サウンドスイープは、振幅が-60から60dBまで変化し、周波数が0から150Hzまで変化する音に対応する。ステップ806で、携帯型測定装置108のマイクロホンアレイ128は、第1のリスニング位置114におけるサウンドスイープを測定し、スイープデータ(MIC)をサウンドバー104に送信する。
【0035】
ステップ808で、コントローラ106は、スイープデータを処理して、他の聴取位置、例えば、第2の聴取位置116及び第3の聴取位置118での応答を予測する。プロセッサ120は、予測された応答を最適化モジュール152に提供し得、この最適化モジュール152は、Devantier et al.の米国特許第7,526,093号に記載されている音場管理アルゴリズムなどの最適化アルゴリズムを使用するが、データをさらに処理するために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。1つまたは複数の実施形態では、コントローラ106は、複数のスイープを実行してステップ804から808を繰り返す、または背景ノイズをサンプリングして、より多くのエネルギーをノイズが多い周波数に与えるように励振を調整するなど、信号対雑音比を高めるために他の技術またはアルゴリズムを使用してもよい。次に、ステップ810で、コントローラ106は、予測された応答に基づいて、音響設定、例えば、時間遅延、ゲイン、極性及びフィルタ係数を含む個々のチャネルごとのパラメータを調整する。
【0036】
図9は、自動校正方法800を実行する、一次マイクロホンアレイを含むオーディオシステム100の1つの実施形態を示す。図9を参照し、図1に戻ってこれを参照すると、マイクロホンアレイ128は、1つまたは複数の実施形態によると、左マイクロホン132及び右マイクロホン134を含む一次アレイである。オーディオシステム100によって提供される音は、部屋102内の表面で反射し、部屋の外側の対応する位置に配置された複数の仮想音源によって提供される音に類似する。部屋102内の第1の聴取位置114における音響応答は、そのような仮想音源に部屋及びクラウドがない場合に生じるものと同様である。ユーザ112が第1の聴取位置114から第2の聴取位置116に移動するとき、ユーザ112は、すぐ左側の虚像に約1メートル、すなわちソファ上の隣接するクッションの中心間の距離に1メートル近づき、すぐ右側の虚像から1メートル離れる。ユーザの真正面または真後ろにある仮想音源の場合、距離の差異は最小限かまったくない。他の方向の仮想音源の場合、仮想音源までの距離に中間の差異が存在する。
【0037】
図9は、指向性マイクロホン132、134を使用してステップ806で左到達音及び右到達音が測定され、聴取位置間の推定距離に基づいてインパルス応答をシフトすることによってステップ808で処理され、その後再結合される方法を示す。ステップ806で、携帯型測定装置108は、一次マイクロホンアレイ128を使用してサウンドスイープを測定する。マイクロホンアレイ128は、左右のマイクロホン132、134が軸A-Aに沿って反対方向に狭い間隔、例えば約10cm離れて配置された指向性マイクロホンとして構成される。図9は、左マイクロホン132によって測定された音を表す左極プロット902と、右マイクロホン134によって測定された音を表す右極プロット904とを含む。図示の実施形態では、左右のマイクロホン132、134はカーディオイドマイクロホンであり、軸外方向から到来する音を減衰させる。
【0038】
ステップ808で、サウンドバー104のコントローラ106はサウンドスイープデータを処理する。プロセッサ120は、各マイクロホン132、134に対する正確な信号遅延成分及びゲイン成分を含む。プロセッサ120は、左リフレクトグラム908及び右リフレクトグラム910によって示されるように、マイクロホンアレイ128の各マイクロホン132、134で受信された音を左到達成分と右到達成分に分解する。サウンドバー104から直接受信された音は、マイクロホンアレイ128のフロントローブ及びリアローブ(図示せず)によって受信され、時間的なずれはない。
【0039】
測定モジュール150は、以下に示す式4及び5に従って、左マイクロホン132で測定された音(Δt)及び右マイクロホン134で測定された音 (Δt)に関連する時間遅延をシフトすることによって、ステップ810において音響設定を調整することによって、異なる聴取位置、例えば第2の聴取位置116及び第3の聴取位置118に存在する音を予測することができる。
【0040】
Δt=+/-d/c (4)
Δt=-/+d/c (5)
ここで、(d)は聴取位置間の距離、例えば、1メートルを表し、(c)は音速を表し、(-)は、マイクロホンと同じ方向の位置(例えば、左マイク132の左側の位置)での音を予測するために使用され、(+)は、マイクロホンと反対方向の位置(例えば、左マイクロホン132の右側の位置)での音を予測するために使用される。例えば、オーディオシステム100は、符号916で参照されるように、左マイクロホン132によって測定された各インパルスからd/cを減算し、符号918で参照されるように、右マイクロホン134によって測定された各インパルスにd/cを加算することによって、第1の聴取位置114の左側を向いている第2の聴取位置116における音を予測する。次に、オーディオシステム100は、符号920で全体的に参照されるように、簡略化されたリフレクトグラムによって表される、シフトされた信号を再結合する。
【0041】
図10から図16は、二次マイクロホンアレイを含むオーディオシステム100の1つの実施形態によって実行される自動校正方法800の一部を示す。マイクロホンアレイ128は、1つまたは複数の実施形態によると、左マイクロホン132、右マイクロホン134、及び中央マイクロホン136を含む二次アレイである。図10から12は、複雑な音場を分解し、その後音を外挿して新しい位置での応答を予測することによって、図8を参照して説明したオーディオシステムを自動的に校正するための方法800の背後にある基本理論を示す。
【0042】
図10を参照すると、空間内の任意の点、例えば、第1の聴取位置114において、収束する矢印によって示されるように、音が全方向から到来する。図11を参照すると、オーディオシステム100は、二次マイクロホンアレイ128を利用して、図10の複雑な音場をその直交成分、すなわち、左音成分1102、右音成分1104、前方音成分1106、後方音成分1108に単純化する。次に、図12を参照すると、オーディオシステム100は、その後、成分に遅延を追加し、成分を合計することによって、音を外挿し、新しい位置での応答を予測する。
【0043】
図13から15は、オーディオシステム100がアレイの指向性を使用して、左方向、右方向、及び前方/後方に指向性成分を分離する方法を示している。図13は、左マイクロホン132、右マイクロホン134、及び中央マイクロホン136を含む二次マイクロホンアレイ128を示す。
【0044】
図14は、各マイクロホンによって測定された音のオーバーレイされた極プロットを示す。極プロットは、左マイクロホン132によって測定された音を表す左極プロット1402、右マイクロホン134によって測定された音を表す右極プロット1404、及び中央マイクロホン136によって測定された音を表す中央極プロット1406を含む。図示の実施形態によると、左右のマイクロホン132、134はカーディオイドマイクロホンであり、軸外方向から到来する音を減衰させる。しかしながら、中央マイクロホン136は全方向の音を測定する無指向性マイクロホンである。中央極プロット1406は、中央マイクロホン136によって生成された音声データから、左マイクロホン132及び右マイクロホン134によって測定された音声データを減算することによって生成される。オーディオシステム100は、マイクロホン132、134、136からの結合された指向性データの合計がゼロになるように、この減算を実行する。
【0045】
図15は、極プロットの3次元(3D)図を示す。3D図は、左極プロット1402を表す左カーディオイド成分1512、右極プロット1404を表す右カーディオイド成分1514、及び中央極プロット1406を表す中央成分1516を含む。
【0046】
図16を参照すると、オーディオシステム100は、ステップ808で、図13から15の複雑な音場をその直交成分、すなわち左音成分1602、右音成分1604、前方音成分1606、後方音成分1608に単純化することによってスイープデータを処理する。次に、オーディオシステム100は、その後、音成分1602、1604、1606、1608を外挿し、成分に遅延を追加し、成分を合計することによって、新しい位置での応答を予測する。
【0047】
図17から18は、自動校正方法800を実行する場合の一次マイクロホンアレイを備えたオーディオシステム100の性能と、二次マイクロホンアレイを備えたオーディオシステム100の性能の比較を示す。図17は、オーディオシステム100の振幅応答を示す4つの曲線1702、1704、1706、及び1708を含むグラフ1700であり、図17Aは、-20から20dB及び50から150Hzの間のグラフ1700の拡大図である。
【0048】
第1の曲線1702は、第1の聴取位置114に存在する実際の音を表す。第2の曲線1704は、図9を参照して上述したように、左マイクロホン132及び右マイクロホン134を含む一次マイクロホンアレイから取得したセンサデータに基づいて、オーディオシステム100によって第2の聴取位置116で予測される音を表す。第3の曲線1706は、図10から16を参照して上述したように、左マイクロホン132、右マイクロホン134、及び中央マイクロホン136を含む二次マイクロホンアレイから取得されたセンサデータに基づいて、オーディオシステム100によって第2の聴取位置116で予測される音を表す。第4の曲線1708は、第2の聴取位置に存在する実際の音を表す。
【0049】
第2の曲線1704(一次アレイ)及び第3の曲線1706(二次アレイ)と第4の曲線1708との比較は、一次アレイの性能よりも二次アレイの性能が向上していることを示している。例えば、85Hzでは、二次曲線1706は実際の音響曲線1708と約2dB異なるのに対し、一次曲線1704は実際の音響曲線と約12dB異なる。同様に、110Hzでは、二次曲線1706は実際の音響曲線1708と約4dB異なるのに対し、一次曲線1704は実際の音響曲線と約14dB異なる。どちらの位置でも、二次アレイは一次アレイに比べて約10dBの改良を提供する。
【0050】
図13の符号1710で示すように、振幅応答は低周波数、例えば25Hz未満で低下する。この低下はマイクロホンの間隔に依存し、これは、大きな波長を持つ音を区別するマイクロホンの能力は、マイクロホン自体に十分な間隔があることに依存するためである。オーディオシステム100は、低下を補償するために、一次システムについてはオクターブ当たり6dBの補正を含み、二次システムについては12dBの補正を含む。
【0051】
図18は、オーディオシステム100の位相応答を示す2つの曲線1802及び1804を含むグラフ1800である。第1の曲線1802は、第2の聴取位置116における実際の音と、一次マイクロホンアレイを使用してオーディオシステム100によって第2の聴取位置116において予測される音との間の差を表す。第2の曲線1804は、第2の聴取位置116における実際の音と、二次マイクロホンアレイを使用してオーディオシステム100によって第2の聴取位置116において予測される音との間の差を表す。第1の曲線1802は、0から150Hzの周波数範囲にわたって大きく変化する。例えば、第1の曲線は85Hzで約200度に等しく、110Hzで約ー200度に等しくなる。一方、第2の曲線1804は、周波数範囲全体にわたってほぼゼロに等しく、これは、二次システムの位相応答が一次システムよりもはるかに優れていることを示している。
【0052】
自動校正方法800は、マイクロホンの3D配置を有する三次マイクロホンアレイ(すなわち、4つのマイクロホン)を使用することによって、左/右以外の方向での同様の音声予測を可能にするように拡張することができる。3D配置は、例えばスタジアムの座席等の、異なる垂直位置に座席を有する部屋102に対応するための、上下を含む、聴取位置の近くの任意の位置での応答を予測し得る。方法800は時間領域アプローチとして説明されているが、同様の計算が周波数領域で実行されてもよい。
【0053】
方法800は、広範な所定のデータに基づく音響環境についていかなる仮定も行わず、また、複雑な部屋モデリングまたは機械学習方法などにも依存しない。むしろ、方法800は、マイクロホンアレイ128によって測定される室内の音場を利用する。したがって、オーディオシステム100は、大規模な設置、例えば多くの初期測定を必要とせず、これによりユーザ112はシステムを校正することができる。
【0054】
例示的な実施形態が上述されているが、これらの実施形態が本開示のすべての可能な形式を説明することは意図されていない。むしろ、本明細書において使用された用語は、限定ではなく説明の用語であり、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われてもよいことが理解されよう。加えて、実施形態を実装する様々な特徴は、更なる実施形態を形成するために組み合わされてもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図17A
図18
【国際調査報告】