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特表2024-504293自動車用タイヤの圧力損失率及び関連事象を検出するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】自動車用タイヤの圧力損失率及び関連事象を検出するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
B60C23/04 160B
B60C23/04 160A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541689
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2021072954
(87)【国際公開番号】W WO2022155009
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/137,929
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(71)【出願人】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉元 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】森 徹平
(72)【発明者】
【氏名】石塚 治也
(72)【発明者】
【氏名】ゲントリー,ミーガン
(72)【発明者】
【氏名】トムプソン,マックスフィールド,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】リベラ,ハンシー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイド,フィリップ
(57)【要約】
【解決手段】 タイヤ状態監視のための、より具体的には膨張圧力のスローリークを検出するためのシステム及び方法が本明細書に開示される。データ取得デバイス(例えば、タイヤ圧力監視システムセンサ)は、自動車に搭載され、少なくともタイヤ膨張圧力に対応するデータサンプルを収集する。収集されたデータサンプルは、例えば、自動車がフリートヤード内にある間、又は、そうでない場合、含有空気温度が周囲温度と効果的に一致する間のみに、分析のために送信されることができる。経過時間は、規定されたサンプリング期間内の第1のデータサンプルから計算され、統計モデルは、経過時間に対する少なくとも膨張圧力に対応するデータサンプルに適用される。タイヤスローリーク事象は、統計モデルからの膨張圧力の評価された減少量に基づいて確認され、出力信号は、確認されたスローリーク事象に対応して選択的に生成される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実施されるタイヤ監視方法(200)であって、
複数のタイヤを有する自動車に搭載された少なくとも1つのデータ取得デバイス(110、112、114)を介して、前記複数のタイヤのうちの少なくとも1つの少なくとも膨張圧力に対応するデータサンプルを収集するステップ(210)と、
規定されたサンプリング期間内の第1のデータサンプルから経過時間を計算するステップ(220)と、
前記経過時間に対する少なくとも膨張圧力に対応する前記データサンプルに統計モデルを適用するステップ(250)と、
前記統計モデルからの前記膨張圧力の評価された減少量に基づいてスローリーク事象を確認するステップ(260)と、
前記複数のタイヤのうちの前記少なくとも1つの確認された前記スローリーク事象に対応する出力信号を選択的に生成するステップ(280)と、を含む、タイヤ監視方法(200)。
【請求項2】
前記統計モデルが、前記規定されたサンプリング期間内のデータサンプルの少なくとも第1の閾値を必要とし(230)、前記第1のデータサンプルからの前記経過時間が第2の閾値を超えなければならない(240)、請求項1に記載のタイヤ監視方法。
【請求項3】
前記自動車の速度が時間の第3の閾値の間ゼロであったと判定される場合にのみ、前記データサンプルが前記統計モデルのために収集される、請求項2に記載のタイヤ監視方法。
【請求項4】
前記データ取得デバイスがフリートヤード監視システム内の1つ以上のデータ収集ユニットの範囲内にある間にのみ、前記データサンプルが収集される、請求項2に記載のタイヤ監視方法。
【請求項5】
複数のタイヤを有する自動車に搭載された前記少なくとも1つのデータ取得デバイスを介して、前記複数のタイヤのうちの前記少なくとも1つの前記少なくとも膨張圧力に対応する前記データサンプルに関連付けられた含有空気温度を収集することと、
前記データサンプルの各々について温度補償された膨張圧力値を生成することと、を更に含み、
前記統計モデルが、前記スローリーク事象を確認するために前記温度補償された膨張圧力値を実装する、請求項4に記載のタイヤ監視方法。
【請求項6】
複数のタイヤを有する自動車に搭載された前記少なくとも1つのデータ取得デバイスを介して、前記複数のタイヤのうちの前記少なくとも1つの前記少なくとも膨張圧力に対応する前記データサンプルに関連付けられた含有空気温度を収集することと、
前記関連付けられた含有空気温度に少なくとも部分的に基づいて、確認されたスローリーク事象に対応する前記出力信号を選択的に生成するかどうかを判定することと、を更に含む、請求項4に記載のタイヤ監視方法。
【請求項7】
閾値に対する前記関連付けられた含有空気温度の時間当たりの変化率に基づいて、確認されたスローリーク事象に対応する前記出力信号を選択的に生成するかどうかを判定することを含む、請求項6に記載のタイヤ監視方法。
【請求項8】
前記スローリーク事象が、第2の規定されたサンプリング期間に関して、前記膨張圧力の前記評価された減少量に対応するメトリックの中央値を考慮して更に確認される、請求項1に記載のタイヤ監視方法。
【請求項9】
前記統計モデルが、前記膨張圧力を含む目標変数と前記経過時間を含む記述変数とを有する線形回帰モデルを含む、請求項1に記載のタイヤ監視方法。
【請求項10】
前記統計モデルが、ランダムフォレストモデルを含む、請求項1に記載のタイヤ監視方法。
【請求項11】
タイヤ監視システム(100)であって、
複数のタイヤを有する自動車に搭載され、前記複数のタイヤのうちの少なくとも1つの少なくとも膨張圧力に対応するデータサンプルを収集するように構成された少なくとも1つのデータ取得デバイス(110、112、114)と、
前記搭載されたデータ取得デバイス(120、140)から収集された前記データサンプルを受信するように構成された少なくとも1つのデータ収集ユニットと、
前記少なくとも1つのデータ収集ユニットにリンクされた処理ユニット(130)と、を備え、前記処理ユニット及び/又は前記少なくとも1つのデータ取得デバイスが、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法における各ステップの実行を指示するように構成されている、タイヤ監視システム(100)。
【請求項12】
前記統計モデルが、前記膨張圧力を含む目標変数と前記経過時間を含む記述変数とを有する線形回帰モデルを含む、請求項11に記載のタイヤ監視システム。
【請求項13】
前記統計モデルが、ランダムフォレストモデルを含む、請求項11に記載のタイヤ監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、車輪付き自動車のタイヤの性能面の定量化に関する。より具体的には、本明細書に開示されるシステム、方法、及び関連アルゴリズムは、自動二輪車、民生用車両(例えば、乗用車及び小型トラック)、商用車及びオフロード(off-road、OTR)車両を含むがこれらに限定されない車輪付き自動車のタイヤのスローリークなどの空気圧力事象の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
内部空気圧力のリークの未検出は、市場にあるいずれのタイヤの最適性能に対しても非常に重要である。このことは、個々の自動車の所有者にも当てはまるが、安全性、性能、及び環境問題などからタイヤの空気が失われることを当然のことながら懸念している重機及び輸送車両の所有者及び管理者には更に重要である。
【0003】
エアリークは、過密スケジュールで業務を遂行する企業にとって、様々な課題をもたらし得る。これらの問題の多くは、ダウンタイム、配送遅延の可能性、場合によっては高価な機器への重大な損害に至るまで多岐にわたる可能性がある。例えば、車両速度、車両荷重、車両経度、及び緯度座標などの運行情報をユーザに通知する機能を含む様々な車両監視システムを含む従来式解決策が市場に多数存在する。しかしながら、従来式解決策は、自動車の各車輪位置からの空気圧リークの問題に具体的かつ正確に対処することができていない。
【0004】
例えば、タイヤ空気圧監視システム(Tire Pressure Monitoring System、TPMS)により得られるタイヤの動作圧力履歴を監視し、スローリークを検出するために同じ自動車に取り付けられたタイヤの各々間の比較分析により各タイヤの内部圧力低下量を更に算出することが従来から知られている。一般に、内部空気圧力及び含有空気温度は比例関係にあると考えられ得ることから、内部空気圧力の変化は外部(周囲)温度及び車両温度の変化に依存すると考えられ得る。対象物の圧力、温度、及び体積の間の既知の関係を適用することにより、温度変動による「補正された」内部圧力値が確認され得る。
【0005】
しかしながら、走行中のタイヤ温度は、関連する動作条件に少なくとも部分的に依存する。通常動作中のTPMSセンサからのタイヤ温度測定値は、例えば、動作条件及び/又は環境条件に応じて、周囲空気の温度に近い温度から約70℃まで変化し得る。温度補償された内部圧力は、依然として導出され得るが、通常、それを考慮しても観測誤差のばらつきが大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内部圧力測定値のばらつきが比較的大きいとき、経時的な減少量を適切に評価することが難しく、したがってスローリークの誤検知又は誤非検知が多発する可能性がある。
【0007】
従来のシステムにおける前述の欠陥を考慮して、本明細書に開示の機械学習手法は、例えばヤード内監視ユニットを使用中のタイヤのスローリークを正確に検出するために実装され得る。
【0008】
一般的に言えば、本明細書に開示されるスローリーク検出システム及び方法の様々な実施形態は、例えば所定のタイヤに関連付けられた内部空気圧力測定値及び含有空気温度(contained air temperature、CAT)測定値を含む、自動車に関連付けられた検出された動作状態及び/又は環境状態を実装することができる。応答は、好ましくは、例えば、タイヤ内に、タイヤ上に、又は他の方法でタイヤに関連付けて取り付けられるタイヤ空気圧力監視システム(TPMS)などのデータ取得システムを使用して直接測定され得る。データ取得システムは、自動車がフリートヤードに駐在している間、好ましくはデータを送信することができるか、又は他の方法でそこから収集された関連データを有することができ、そこでは内部圧力測定値のばらつきが低減される。
【0009】
ランダムフォレスト機械学習方法論が、好ましくは実装され得、本明細書に開示される実施形態においてスローリークの検出を達成し、より詳細には、それぞれの自動車が監視されたフリートヤード環境内で発見される間に発生するスローリークを関連付け、本明細書に開示される方法が、車両におけるスローリーク発生の可能性があることをユーザに容易に警告でき、かつ、仕様に車両のタイヤを合わせるように介入し、最適な性能を提供することができる。
【0010】
本明細書に開示されるタイヤ監視方法の例示的な実施形態は、複数のタイヤを有する自動車に搭載された少なくとも1つのデータ取得デバイスを介して、複数のタイヤのうちの少なくとも1つの少なくとも膨張圧力に対応するデータサンプルを収集することを含む。経過時間は、規定されたサンプリング期間内の第1のデータサンプルから計算され得、統計モデルが、経過時間に対する少なくとも膨張圧力に対応するデータサンプルに対して適用され得る。スローリーク事象は、統計モデルからの膨張圧力の評価された減少量に基づいて確認され得、出力信号は、複数のタイヤのうちの少なくとも1つの確認されたスローリーク事象に対応して選択的に生成され得る。
【0011】
上で参照した実施形態による一例示的な態様では、統計モデルは、規定されたサンプリング期間内のデータサンプルの少なくとも第1の閾値を必要とし得、第1のデータサンプルからの経過時間は第2の閾値を超えなければならない。
【0012】
上で参照した実施形態による別の例示的な態様では、自動車の速度が時間の第3の閾値の間ゼロであったと判定された場合にのみにデータサンプルが統計モデル用に収集される。
【0013】
上で参照した実施形態による別の例示的な態様では、データ取得デバイスがフリートヤード監視システムの1つ以上のデータ収集ユニットの範囲内にある間にのみにデータサンプルが収集される。
【0014】
上で参照した実施形態は、複数のタイヤを有する自動車に搭載された少なくとも1つのデータ取得デバイスを介して、複数のタイヤのうちの少なくとも1つの少なくとも膨張圧力に対応するデータサンプルに関連付けられた含有空気温度を収集することを更に含むことができる。例えば、温度補償された膨張圧力値が、データサンプルの各々に対して生成され得、ここで、統計モデルは、スローリーク事象を確認するために温度補償された膨張圧力値を実装する。別の例では、関連付けられた含有空気温度に少なくとも部分的に基づいて、確認されたスローリーク事象に対応する出力信号を選択的に生成するかどうかが判定され得る。別の例では、閾値に対する関連する含有空気温度の時間当たりの変化率に基づいて、確認されたスローリーク事象に対応する出力信号を選択的に生成するかどうかを判定することができる。
【0015】
上で参照した実施形態による別の例示的な態様では、スローリーク事象は、膨張圧力の評価された減少量に対応するメトリックの中央値を考慮して、第2の規定されたサンプリング期間に関して更に確認され得る。
【0016】
上で参照した実施形態による別の例示的な態様では、統計モデルは、膨張圧力を含む目標変数と経過時間を含む記述変数とを有する線形回帰モデルを含むことができる。追加的に、又は代替的に、統計モデルはランダムフォレストモデルを含み得る。
【0017】
本明細書に開示される別の実施形態では、タイヤ監視システムは、複数のタイヤを有する自動車に搭載され、複数のタイヤのうちの少なくとも1つの少なくとも膨張圧力に対応するデータサンプルを収集するように構成された少なくとも1つのデータ取得デバイスと、例えば、自動車がヤード内にあり、道路上で稼働していないときに、車載データ取得デバイスから収集されたデータサンプルを受信するように構成された少なくとも1つのデータ収集ユニットと、を含む。処理ユニットは、少なくとも1つのデータ収集ユニットにリンクされ、上で参照した方法の実施形態、及び任意選択で上記の関連する例示的な態様のうちの1つ以上に従って動作の実行を指示するように構成される。
【0018】
特に定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に開示される発明は、その趣旨又は本質的な特質から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化されることができ、したがって、様々な実施形態はあらゆる点で例示的であり、限定的ではないと考えられることが望ましい。本明細書で使用されている見出しは便宜上のものであり、法的又は制限的な効果はない。本明細書に記載される実施形態の多くの目的、特徴、及び利点は、添付の図面と併せて以下の開示を読むことにより、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態をより詳細に例解する。
【0020】
図1図1は、本明細書に開示されるタイヤ監視システムの一実施形態を表すブロック図である。
図2A図2aは、それぞれ、収集された時系列データに基づいた、通常の状態及びスローリーク状態の存在を表すグラフ図である。
図2B図2bは、それぞれ、収集された時系列データに基づいた、通常の状態及びスローリーク状態の存在を表すグラフ図である。
図3図3は、本明細書に開示されるシステム/方法の一実施形態による例示的なパターン認識ステップを表すグラフ図である。
図4図4は、本明細書に開示されるシステム/方法の一実施形態による例示的なパターン認識ステップを表すグラフ図である。
図5図5は、本明細書に開示されるシステム/方法の一実施形態による例示的なパターン認識ステップを表すグラフ図である。
図6図6は、本明細書に開示されるシステム/方法の一実施形態による例示的なパターン認識ステップを表すグラフ図である。
図7図7は、本明細書に開示されるシステム/方法の一実施形態による例示的なパターン認識ステップを表すグラフ図である。
図8図8は、経時的な内部空気圧測定値の最良適合のための例示的な傾斜線を表すグラフ図である。
図9図9は、本開示による例示的な規定されたサンプリング期間を表すグラフ図である。
図10図10は、本開示による例示的な規定されたサンプリング期間を表すグラフ図である。
図11A図11aは、真陽性事象検出、偽陰性事象検出、偽陽性事象検出、及び真陰性事象検出に関連する例示的な時系列データをそれぞれ表すグラフ図である。
図11B図11bは、真陽性事象検出、偽陰性事象検出、偽陽性事象検出、及び真陰性事象検出に関連する例示的な時系列データをそれぞれ表すグラフ図である。
図11C図11cは、真陽性事象検出、偽陰性事象検出、偽陽性事象検出、及び真陰性事象検出に関連する例示的な時系列データをそれぞれ表すグラフ図である。
図11D図11dは、真陽性事象検出、偽陰性事象検出、偽陽性事象検出、及び真陰性事象検出に関連する例示的な時系列データをそれぞれ表すグラフ図である。
図12図12は、本明細書に開示されるタイヤ監視方法の一実施形態を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図12を概して参照すると、本発明の様々な例示的な実施形態が、ここで詳細に説明され得る。様々な図が、様々な共通の要素及び特徴を他の実施形態と共有する実施形態を説明することがある場合、同様の要素及び特徴は同じ参照番号を与えられ、その重複する説明は以下で省略されることがある。
【0022】
最初に図1を参照すると、システム100の例示的な実施形態は、データ取得デバイス110を含み、これは車両に搭載され、少なくともデータを取得し、前出のデータを1つ以上の下流コンピューティングデバイス(例えば、リモートサーバ)に送信して、本明細書に開示されるように関連する計算を実行するように構成されている。データ取得デバイスは、例えばタイヤの含有空気温度112及び/又は内部空気圧力114に対応する信号などの未処理の測定信号を収集し、そのような信号を連続的又は選択的に送信するように適切に構成されたスタンドアロンのセンサユニットであってもよい。データ取得デバイスは、1つ以上の分散型センサと通信する車載コンピューティングデバイスを含み得、これは、分散型車両データ収集及び制御システムの一部としてポータブル又はモジュール式であり、あるいは、中央車両データ収集制御システムに対して一体型で提供されてもよい。データ取得デバイスは、プログラムロジックが常駐するプロセッサ及びメモリ(図示せず)を含み得、様々な実施形態では、車両電子制御ユニット(electronic control unit、ECU)又はその構成要素を含み得、又はそうでない場合、例えば恒久的に、本質的にディスクリートであり得、又は車両マウントに対して着脱可能に設けられ得る。
【0023】
一般的に言及すると、本明細書に開示されるシステム100は、1つ以上の車両にわたって分散された多数の構成要素を実装することができ、例えば、必ずしもフリート管理エンティティに関連付けられるわけではないが、更に、通信ネットワークを介して車両モータの各々と機能的に通信する中央サーバネットワーク又は事象駆動型サーバレスプラットフォームを実装することができる。例示的な車両構成要素は、1つ以上のセンサを典型的に含み得、例えば、車体加速度計、ジャイロスコープ、慣性測定ユニット(inertial measurement unit、IMU)、全地球測位システム(global positioning system、GPS)トランスポンダなどの位置センサ、タイヤ圧力監視システム(TPMS)センサ送信機及び関連する搭載受信機、ゲートウェイデバイス、などを例えば、コントローラエリアネットワーク(controller area network、CAN)バスネットワークにリンクされ、それによって信号をローカル処理ユニットに提供するように含み得る。図示された実施形態は、本発明の範囲を特に限定することなく、タイヤに搭載されたTPMSセンサユニット、周囲温度センサ、例えば車両に関連付けられた加速度データを収集するように構成された車速センサ、及びDC電源を例示の目的で含み得る。
【0024】
本明細書に開示されるセンサのうちの1つ以上は、一体化され得るか、又はそうでない場合、構造内で個別かつ分散されているのではなく、所与のモジュール構造内に集合的に配置され得る。例えば、本明細書で言及されるタイヤ搭載型TPMSセンサは、複数のタイヤ固有の条件(例えば、膨張圧力、含有空気温度)の各々に対応する出力信号を生成するように構成され得る。TPMSセンサは、例えば、タイヤの空気キャビティの内部に搭載され得、わずかに高く置かれ得、金属リムによる悪影響を受けないように、金属リムから隔離され得る。
【0025】
様々なバスインターフェース、プロトコル、及び関連ネットワークは、それぞれのデータソースとローカルコンピューティングデバイスとの間の通信に関して当技術分野で周知であり、当業者であれば、そのようなツール及びそれを実装するための手段の広範囲を認識するであろう。
【0026】
様々な実施形態において、本明細書にて開示されるデータ取得デバイス及び同等のデータソース110は、必ずしも車両固有センサ及び/又はゲートウェイデバイスに限定されず、サードパーティエンティティ及び関連ネットワーク、ドライバインターフェースなどのユーザコンピューティングデバイス上に常駐するプログラムアプリケーション、フリート管理インターフェース、並びに本明細書に開示されるアルゴリズム及びモデルに適切であると考えられ得るような、任意の企業デバイス又はログデータの生ストリームの他のプロバイダも含むことができる。
【0027】
再び図1を参照すると、データパイプラインステージ120が提供され得、ここでは、1つ以上のデータソース110から収集されたデータがデータ処理ステージ130に送信される。データ処理ステージ130は、例えば1つ以上のデータベースサービスを含むデータストレージステージ140と更に対話し、ここで、データ処理ステージ130及び/又はデータストレージステージ140は、例えば、それぞれのアプリケーションプログラムインターフェース(Application Program Interface、API)リクエストを介して、外部デバイス150及び/又はネットワークのユーザと選択的に対話する。
【0028】
一実施形態では、例示的なデータパイプラインステージ120は、事象駆動型サーバーレスアーキテクチャを含み得、ここで、1つ以上の事象ハブが、それぞれのソースからの生データのキャプチャを容易にし、そこから正規化されたデータストリームを生成し、更に、取り込んだ事象を関連するデータに適切な時間間隔でデータストレージリソースにコピーするように構成される。正規化及び強化されたデータストリームは、例えば、当技術分野で知られているようなデータレイクプラットフォームを介して、分析処理のために更に提出され得る。当技術分野で知られているデータレイクの非限定的な例としては、Azure Data Lake(登録商標)、Kafka(登録商標)、Hadoop(登録商標)などを含み得る。
【0029】
図1に示される実施形態は、本明細書に開示されるシステム又は方法の範囲を限定するものではなく、代替的実施形態では、1つ以上の圧力損失率モデルが、下流のコンピュータでステージはなく、搭載コンピュータデバイス(例えば、電子制御ユニット)でローカルに実装されてもよい。例えば、モデルは、サーバレベルで経時的に生成及び訓練され得、本明細書に開示される1つ以上のステップ、又は操作のローカル実行のために搭載コンピューティングデバイスにダウンロードされ得る。
【0030】
他の代替的実施形態では、様々なセンサ112、114のうちの1つ以上は、例えば、セルラー通信ネットワークを介して、又は車両のユーザが携行するモバイルコンピューティングデバイス(図示せず)を介して、ローカル車載デバイス又はゲートウェイ構成要素を用いずに下流プラットフォームと通信するように構成され得る。
【0031】
本明細書で使用される「ユーザインターフェース」という用語は、特に明記されていない限り、ユーザデバイスが、本明細書に開示される処理ユニット、サーバ、デバイス、などに対してユーザ対話を容易にする任意の入出力モジュールを含み得、限定されるものではないが、ダウンロードされた、又はそうでない場合、常駐するプログラムアプリケーション、ウェブブラウザ、個々のウェブページ又はホストされるホストされるウェブサイトを集合的に規定するウェブページなどのようなウェブポータル、などを含む。ユーザインターフェースは、パーソナルモバイルコンピューティングデバイスに関して、ボタン及びディスプレイ部分の文脈で更に説明され得、これらは、独立して配置され得るか又はそうでない場合、例えば、タッチスクリーンに対して相互に関連付けられ得、更に音声及び/又は明示的なユーザ対話機能を用いない視覚的な入出力機能を含み得る。
【0032】
車両及びタイヤセンサ112、114、などには、一実施形態において一意の識別子が更に提供されてもよく、その場合、車載デバイスプロセッサは、同じ車両上のそれぞれのセンサから提供される信号を区別することができ、更に特定の実施形態においては、中央処理ユニット及び/又はフリートメンテナンス監督クライアントデバイスは、タイヤ、並びに関連する車両及び/又は複数の車両にわたるタイヤセンサから提供される信号を区別することができる。換言すれば、センサ出力値は、様々な実施形態において、本明細書に開示されるような計算のために、搭載又はリモート/下流のデータストレージ及び実装を目的として、特定のタイヤ、特定の車両、及び/又は特定のタイヤ車両システムと関連付けられてもよい。車載データ取得デバイスは、図1に示されるように、下流処理ステージ130と直接通信することができるか、又は、代替的に、運転手のモバイルデバイス又はトラックに搭載されたコンピューティングデバイスは、車載デバイス出力データを受信して処理し、1つ以上の下流処理ユニットに送信するように構成されてもよい。
【0033】
特定の車両及び/又はタイヤセンサ112、114、などから受信した生の信号は、本明細書に開示される方法による計算の必要に応じて、選択的な検索及びデータパイプラインステージ120を介した送信のために、車載デバイスメモリ、又は車載デバイスプロセッサに機能的にリンクされた同等のローカルデータストレージネットワークに記憶され得る。本明細書で使用されるローカル又は下流「データストレージネットワーク」は、データを保存し、そこからデータを選択的に取得できるように構成された個別の、集中型、又は分散型の論理的及び/又は物理的エンティティを一般に指し、例えば、これに限定されないが、メモリ、ルックアップテーブル、ファイル、レジスタ、データベース、データベースサービス、などを含むことができる。いくつかの実施形態では、様々なセンサ112、114、などからの生データ信号は、車両から下流処理ユニットに実質的にリアルタイムで通信され得る。代替的に、高周波データの連続データ送信における固有の非効率を特に考慮して、データは、例えば、車両から適切な(例えば、セルラー)通信ネットワークを介した処理ユニットへのより効率的な(例えば、周期的な時間ベースの、又は代替的に規定された事象ベースの)送信のためにコンパイル、符号化、及び/又は要約されてもよい。
【0034】
車両データ及び/又はタイヤデータ112、114、などは、通信ネットワークを介して下流処理ユニットに送信されると、例えば、そこに関連付けられたデータベースに格納され得、1つ以上の本明細書に開示されるようなアルゴリズム的モデルを介して処理のために更に処理され得るか、又は、入力として検索可能になり得る。モデルは、プロセッサによる実行を介して少なくとも部分的に実装されることができ、車両データ及び/又はタイヤデータの選択的検索を可能にすることができ、更に処理ユニットに関連付けて保存されているデータベース、ルックアップテーブル、などからの任意の追加のデータ又はアルゴリズムを入力するための電子通信を可能にする。
【0035】
本明細書で使用される「プロセッサ」又は「処理ユニット」又は「処理ステージ」130という用語は、当業者によって理解されることができるように、限定されるものではないが、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ステートマシン、などを含む少なくとも汎用又は特定目的の処理デバイス及び/又はロジックを指すことができる。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のそのような構成の組み合わせとして実装することもできる。
【0036】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック、モジュール、及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はそれらの両方の組み合わせとして実装することができる。ハードウェア及びソフトウェアのこの互換性を明確に例解するために、様々な例解的な構成要素、ブロック、モジュール、及びステップは、概して、それらの機能性に関して上で説明されている。そのような機能性がハードウェアとして実装されるかソフトウェアとして実装されるかは、特定の適用例、及びシステム全体に課される設計上の制約に依存する。説明された機能性は、それぞれの特定の適用例ごとに様々な方式で実装することができるが、そのような実装決定は、本開示の範囲からの逸脱を引き起こすものとして解釈されるべきではない。
【0037】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック及びモジュールは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)若しくは他のプログラマブル論理デバイス、個別ゲート若しくはトランジスタ論理、個別ハードウェア構成要素、又は本明細書に説明される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせなど、機械によって実装又は実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替として、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシン、それらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のそのような構成の組み合わせとして実装することもできる。
【0038】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される方法、プロセス、又はアルゴリズムのステップは、ハードウェアで直接具現化するか、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで具現化するか、又はこれら2つの組み合わせで具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、CD-ROM、又は当該技術分野において既知の任意の他の形態のコンピュータ可読媒体内に常駐することができる。例示的なコンピュータ可読媒体は、プロセッサがメモリ/記憶媒体から情報を読み取り、メモリ/記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合され得る。代替として、媒体は、プロセッサと一体であり得る。プロセッサ及び媒体は、ASIC内に常駐することができる。ASICは、ユーザ端末内に常駐することができる。代替として、プロセッサ及び媒体は、ユーザ端末内の別個の構成要素として常駐することができる。
【0039】
以下、図2図12を参照して、自動車タイヤの性能面を定量化するための、より具体的には、内部空気圧力のスローリーク現象を初期段階で検出するための例示的な方法200が説明され得る。図2bにその一例を示すスローリーク事象は、図2aにその一例を示す自然減圧と比較して内部圧力が急速に低下する現象として規定され得る。内部圧力が非常に低い1つ以上のタイヤを装着したまま自動車が走行し続けると、タイヤへの恒久的損傷のリスクが一般的に高まる。一方で、スローリーク事象が早い段階で特定できれば、タイヤの修理及び交換などの介入を実施することで、そのようなリスクが劇的に軽減され得る。
【0040】
方法200は、データ取得ステージ(ステップ210)において収集された信号で開始し、この方法は、前述したようにタイヤ内又はタイヤ上に取り付けられたタイヤ空気圧監視システム(TPMS)などの従来の車載データ取得デバイスを実装することができ、TPMSは、含有空気温度、周囲温度、膨張圧力、タイヤ識別子、垂直荷重、速度、などのうちの1つ以上に対応する信号を生成することができる。データ取得デバイスは、いくつかの実施形態では、タイヤが異なる道路及び路面上を転がるとデータを収集するように構成され得るが、システムは、自動車が停止している間、又はそうでない場合、フリートヤードに駐車する間に、後続のステップで考慮されるデータのみが収集されるように構成され得る。
【0041】
別の言い方をすれば、処理ユニットにタイヤデータを提供するデータ収集ユニットは、データ取得デバイスと通信する能力が地理的に制限されることがあり、また、特定の自動車がフリートヤードにあるときに、それら自動車からの時間データサンプルのみが収集されるように、フリートヤードに関して場所が固定されることがある。一実施形態では、ヤード内監視ユニットに関連付けられた無線通信ネットワークは、1つ以上の無線ルータを含むことができ、無線ルータは、データ取得デバイスから(例えば、TPMSセンサから直接、又は車載コンピューティングデバイスを介して間接的に)信号を受信し、信号をデコードし、デコードされた信号を下流処理のために転送する。一例示的なデータ送信頻度は、車両がフリートヤードにある間、毎分約2.5回の読み取りであり得る。
【0042】
前述したように、車両動作中のタイヤ膨張圧力データを利用する従来の方法は、関連する温度補償の変動により、偽陽性又は偽陰性となる可能性がある。また、車両がフリートヤードにあるとき、時間に対応して、データが定期的にのみ収集される場合、読み取り値の変動する頻度により、後続の計算にノイズを持ち込むことがあり、少なくとも潜在的に偽陽性又は偽陰性になることがあることも理解され得る。したがって、本明細書にて開示されるデータモデルは、関連する圧力損失事象を正確に識別するために、データをフィルタリングし、時系列データパターンにラベルを付けて認識するための様々な技法を実装することができる。
【0043】
次に図3を参照すると、例示的なデータセットにおいて、所与のタイヤの低温膨張圧力値310は、米国で明らかな膨張事象が発生したとき、第1の時間340から第2の時間350まで徐々に低下することが示されている。第1の時間340では、測定値310は、推奨閾値302と警告閾値304との間に余裕がある。時間進行とともに、測定値310は、第2の時間350のかなり前に、警告閾値304を下回り、臨界閾値306さえも下回り、数時間以上続く漸進的な減少が示すように、関連する温度値320における変動と実質的に調和していない。換言すれば、測定された温度値320は帯域330内で連続的に変動するが、タイヤ膨張圧力において徐々に減少することは明らかに温度の関数ではない。
【0044】
次に図4を参照すると、別の例示的なデータセットが、下向きのスパイクによって中断され、主流の傾向に戻る、膨張圧力値310の別の数日にわたる緩やかな減少を示している。例えば膨張圧力チェックに対応することがあるこの下向きのスパイクにもかかわらず、全体的な傾向は、好ましくは本明細書に開示されるモデルによって識別されるであろうようなスローリーク事象を示している。また、スローリーク事象に対応する時系列データは、多くの場合、タイヤ膨張事象によって(ここで示すように)第1の端及び第2の端でまとめられるが、このことは必ずしもこのようなスローリーク事象全てに当てはまるわけではない。例えば、図5に示されるように、タイヤ膨張圧力測定値310の2つのその後数日にわたる漸進的な低下は、好ましくは、2つの別個の事象としてラベル付けされ得る。
【0045】
図6に示されるような別の例示的なデータセットは、断続的な下向きスパイク(例えば、圧力チェックに対応する)に基づいてスローリーク事象の偽陽性を判定するのではなく、膨張圧力測定値310の全体的な傾向に焦点を当てることの重要性を示している。この場合、圧力測定値の全体的な傾向は横ばいである。一方、図7では、内部圧力測定値310の突然の(すなわち、徐々にではない)低下が、釘又は他の障害物によるパンクなどのタイヤの重大な故障を示している場合があるように、傾向に戻ることなく示されている。このような事象は、いくつかの実施形態では、介入などの警報を生成する目的のスローリーク事象と同等として特徴付けられ得るが、他の実施形態では、図7に見られるようなデータセットが、スローリーク事象とは別に規定されることが好ましくなり得る。
【0046】
図12に戻ると、方法200は、規定されたサンプリング期間にわたってデータサンプルをコンパイルすることによって継続することができる(ステップ220)。一実施形態では、このことは、過去20時間にわたって収集された内部圧力測定値のサブセットを作成することが含まれる。データ取得ゲートを規定するために更なる閾値が設定され、圧力損失率の推定に使用されるデータ量が十分であり、したがってアルゴリズムの結果がノイズの影響を受けにくくなるようになっている。ステップ230では、作成されたサブセット内のサンプルの数が、所定の第1の閾値と比較される。第1の閾値が満たされる場合、ステップ240で、方法は、作成されたサブセット内の第1の観測の時刻と、作成されたサブセット内の最新の観測の時刻との差を計算し、その差を所定の第2の閾値と比較することによって継続する。一例では、必要なサンプル数は5であり、第1のサンプルと最新のサンプルとの間の必要な期間は30分であるが、本開示の範囲内で様々な代替値及び閾値が実装され得る。
【0047】
第1の閾値及び第2の閾値(又はその同等物)が満たされる場合、方法200は、本明細書に開示されるように、統計モデルを適用して圧力損失率に関連する測定項目を判定することによって続行することができる(ステップ250)。以下の例では、目標変数がポンド/平方インチ(psi)単位のタイヤ内部圧力(又は以下で更に詳しく説明するように温度補償された内部圧力)であり、記述変数が経過時間である線形回帰モデルを構築することによって、以下の最小二乗法を使用して、時間当たりの圧力損失率(hourly pressure loss rate、hPLR)が推定され得る。
圧力(psi)=α+βx(経過時間)
【0048】
この文脈では、図8に示されるように、回帰係数βは、規定された時間枠(例えば、20時間)にわたる時間当たりの圧力損失率(hPLR)として推定されるが、圧力損失率自体は、線形回帰モデルを使用して計算される経時的内部圧力に最もよく適合する線360の傾斜であり得る。
【0049】
様々な実施形態(図2には示されていない)では、「補正された」内部圧力値(すなわち、温度補償)が、上で参照した式において、例えば、サンプリングされた温度及び内部圧力値に理想気体の法則を適用することによって得られるように更に利用されることができる。
【0050】
ステップ260において、方法200は、推定メトリクス(例えば、hPLR)を所定の第3の閾値と比較することによって継続し、閾値を超えた場合、スローリーク事象であると判定される。
【0051】
図9に示される実施形態では、現在時刻T1から遡って、規定されたサンプリング期間にわたる新たな測定ごとに個々のhPLR推定値が決定される。各新しい推定に対して、データの各ブロック(例えば、45分)についてhPLR中央値が判定され、この例では、連続する3つの45分のブロックに対して3つの異なる中央値hplr1、hplr2、hplr3が規定される。個々の推定値のそれぞれのブロックの中央値hPLR値が、例えば、-1.0psi未満であると判定される場合、対応するタイヤについてスローリーク事象が判定され得る。図10に更に示すように、推定された各新規hPLR値を用いて、規定されたサンプリングウィンドウ(例えば、20時間)内に収まる限り、個々の過去のhPLR値が再グループ化され得、中央値が計算され、再び閾値(例えば、-1.0psi)と比較される。
【0052】
方法200は、任意選択でステップ270を含むことができ、ここでは、例えば、スローリーク事象の判定の基礎となった値である同じ内部圧力値に対応する温度値の時間当たりの変化率が所定の第4の閾値を超えるなど、温度に基づく測定基準が適用されるという更なる判定に基づいて、判定されたスローリーク事象が抑制又は却下され得る。一例として、対応する期間にわたって20°Fを超える時間当たりの温度変化率(hourly temperature change rate、hTCR)は、判定されたスローリーク事象の抑制又は却下をもたらすことがある。
【0053】
次に図11a~図11dを参照すると、サンプルスローリーク事象及び非事象がランダムフォレストアプローチから示されている。図11aのハイライトされた部分は、適切に検出された実際のスローリーク事象に対応する「真陽性」(true positive、TP)システム出力を表す。図11bのハイライトされた部分は、検出されなかった実際のスローリーク事象に対応する「偽陰性」(false negative、FN)システム出力を表す。図11cのハイライト部分(矢印)は、不適切に検出されたスローリーク事象に対応する「偽陽性」(false positive、FP)システム出力を表しており、ここでは、タイヤ内部圧力傾向に有意な変化がなく、短い上向きスパイクからの下降傾斜がスローリーク事象と相関していた。図11dは、適切に検出された非事象に対応する「真陰性」(true negative、TN)システム出力を表す。
【0054】
本明細書で方法200に対して提供される様々な閾値は単なる例示であり、そのような値は所与の用途に対して経時的に最適化され得ることが理解されよう。
【0055】
上で参照した統計モデルの評価方法論は、機械学習の文脈で分類問題として扱われることができ、次の例では、経時的に評価の精度、再現率、及び正確性を最大化されることができる。この文脈における「精度」は、例えば、アラートがトリガされた場合に、そのアラートが実際の状態に対応する確率に関連することができ、{精度=TP/(TP+FP)}として定量化され得る。この文脈における「再現率」は、例えば、現実的なスローリーク状態が存在する場合に、対応するアラートがトリガされる確率に関連することができ、{リコール=TP/(TP+FN)}として定量化され得る。この文脈における「正確性」は、アラートが正しくトリガされる頻度を示すために、精度及び再現率の両方を考慮することができる。例えば、1台の自動車の1つの車輪位置に対して単一のFPアラートがトリガされた場合、精度及び正確性は0に等しくなる。同じ単一のFPアラートが100個の車輪位置の母集団で発生した場合、精度は依然として0であるが、(99のTN読み取り値があることから)正確性は99%になる。このことは、{正確性=(TP+TN)/母数}として定量化できる。精度及び再現率のメトリクスは実質的に相互にトレードオフであるため、精度及び再現率の平均を取ることでそれらのメトリクスのバランスを取るために、{F1=(精度+再現率)/2}のような追加のスコア(F1)が実装され得る。指数を計算するために、分類問題の正解及び不正解を規定する必要がある。評価例では、抽出した部分時系列の6日に1回でもアラートが発せられた場合、「スローリーク」サンプルに対する答えは正解であった。部分時系列でアラートが発せられなかった場合、「正常」タイヤサンプルに対する答えは正解であった。
【0056】
様々な実施形態において、方法200は、例えば、ユーザインターフェース又は表示ユニットへのアラート又はメッセージの形態など、検出されたスローリーク事象に対応する出力信号を生成すること(ステップ280)を更に含んでもよい。出力信号は、検出されたスローリーク事象に応答してプログラム的に生成され得る。出力信号は、例えば、事象を経時的に記録し、バッチ形式でレポートを配信することなどにより、受信したユーザ要求に応じて生成され得る。出力信号は、自動車制御又はフリート管理制御に対する制御応答又は介入を自動的にトリガするか、そうでない場合、制御応答又は介入を容易にするために更に生成され得る。
【0057】
一実施形態では、システム100からのスローリーク事象出力及び方法200は、提案又は要求される膨張又は交換スケジュールなどのタイヤ介入の将来的タイミングを予測するために更に実装され得る。
【0058】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈がそうでない旨を指示しない限り、以下の用語は、少なくとも、本明細書に明示的に関連する意味をとる。以下で識別される意味は、必ずしも用語を限定するものではなく、単に用語の例解的な例を提供するものである。「a」、「an」、及び「the」の意味は、複数の参照を含み得、「in」の意味は、「in」及び「on」を含み得る。本明細書で使用されるとき、「一実施形態では」という句は、必ずしも同じ実施形態を指すものではないが、指すこともあり得る。
【0059】
本明細書で使用される、とりわけ、「できる(can)」、「かもしれない(might)」、「場合がある(may)」、「など(e.g.)」など、条件付き文言は、具体的に別途記載のない限り、又はさもなければ使用される文脈内で理解されない限り、特定の実施形態が、特定の特徴、要素、及び/又は状態を含むが、他の実施形態は、それらの特定の特徴、要素、及び/又は状態を含まないことを伝えることを概して意図する。したがって、そのような条件付き文言は、特徴、要素、及び/又は状態が、1つ以上の実施形態のために何らかの方式で必要とされることを示唆することを概して意図せず、また、1つ以上の実施形態が、オーサー入力又はプロンプティングを用いて又は用いないで、これらの特徴、要素、及び/又は状態が、何らかの特定の実施形態に含まれるか又はそれにおいて実行されるべきかどうかを決定するための論理を、必ず含むことを示唆することを概して意図しない。
【0060】
本発明の特定の好ましい実施形態は、典型的には、フリート管理システムにより、又はフリート管理システムのために実行される方法、より具体的には自律型車両フリート又は商業用トラック用途のために実行される方法に対して本開示で説明され得るが、本発明は、それに全くもって明示的に限定されるものではなく、本明細書で使用される用語「車両」は、別途記載のない限り、自己推進式であるかどうかにかかわらず、1つ以上のタイヤを含み得る、自動車、トラック、又はそれらいずれかの等価物を指し、したがって、タイヤ内部圧力損失及び可能性のある障害の正確な推定又は予測、交換、若しくは介入を必要とし得る。
【0061】
本明細書で使用するとき、別途記載のない限り、「ユーザ」という用語は、例えば、本明細書に開示される特徴及びステップを提供するためのユーザインターフェースを有するデバイスと関連付けられ得る、ドライバ、搭乗者、メカニック、技術者、フリート管理職員、又は任意の他の人物若しくはエンティティを指し得る。
【0062】
前述の詳細な説明は、例解及び説明の目的のために提供されている。したがって、新規で有用な発明の特定の実施形態を説明してきたが、このような参照が、以下の特許請求の範囲における記載を除いて、本発明の範囲への限定として解釈されることを意図しない。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実施されるタイヤ監視方法(200)であって、
複数のタイヤを有する自動車に搭載された少なくとも1つのデータ取得デバイス(110、112、114)を介して、前記複数のタイヤのうちの少なくとも1つの少なくとも膨張圧力に対応するデータサンプルを収集するステップ(210)と、
規定されたサンプリング期間内の第1のデータサンプルから経過時間を計算するステップ(220)と、
前記規定されたサンプリング期間内のデータサンプルの数が第1の閾値を超え(230)、かつ前記第1のデータサンプルからの前記経過時間が第2の閾値を超えると(240)、前記経過時間に対する少なくとも膨張圧力に対応する前記データサンプルに統計モデルを適用するステップ(250)と、
前記統計モデルからの前記膨張圧力の評価された減少量に基づいてスローリーク事象を確認するステップ(260)と、
前記複数のタイヤのうちの前記少なくとも1つの確認された前記スローリーク事象に対応する出力信号を選択的に生成するステップ(280)と、を含む、タイヤ監視方法(200)。
【請求項2】
前記自動車の速度が時間の第3の閾値の間ゼロであったと判定される場合、又は
前記データ取得デバイスがフリートヤード監視システム内の1つ以上のデータ収集ユニットの範囲内にある間にのみ、前記統計モデルのために前記データサンプルが収集される、請求項1に記載のタイヤ監視方法。
【請求項3】
複数のタイヤを有する自動車に搭載された前記少なくとも1つのデータ取得デバイスを介して、前記複数のタイヤのうちの前記少なくとも1つの前記少なくとも膨張圧力に対応する前記データサンプルに関連付けられた含有空気温度を収集すること、及び
前記データサンプルの各々について温度補償された膨張圧力値を生成することであって、前記統計モデルが前記スローリーク事象を確認するために前記温度補償された膨張圧力値を実装する、生成すること、又は、
閾値に対する前記関連付けられた含有空気温度の時間当たりの変化率に少なくとも部分的に基づいて、確認されたスローリーク事象に対応する前記出力信号を選択的に生成するかどうかを判定すること、を更に含む、請求項2に記載のタイヤ監視方法。
【請求項4】
前記スローリーク事象が、第2の規定されたサンプリング期間に関して、前記膨張圧力の前記評価された減少量に対応するメトリックの中央値を考慮して更に確認され、
確認された前記スローリーク事象に対応する前記出力信号が、提案された膨張、必要な膨張、及び交換スケジュールのうちの1つ以上を含むタイヤ介入事象のタイミングを予測するために実装される、請求項1に記載のタイヤ監視方法。
【請求項5】
タイヤ監視システム(100)であって、
複数のタイヤを有する自動車に搭載され、前記複数のタイヤのうちの少なくとも1つの少なくとも膨張圧力に対応するデータサンプルを収集するように構成された少なくとも1つのデータ取得デバイス(110、112、114)と、
前記搭載されたデータ取得デバイス(120、140)から収集された前記データサンプルを受信するように構成された少なくとも1つのデータ収集ユニットと、
前記少なくとも1つのデータ収集ユニットにリンクされた処理ユニット(130)と、を備え、前記処理ユニット及び/又は前記少なくとも1つのデータ取得デバイスが、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法における各ステップの実行を指示するように構成されている、タイヤ監視システム(100)。

【国際調査報告】