(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ラウロラクタムの精製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 201/16 20060101AFI20240124BHJP
C07D 225/02 20060101ALI20240124BHJP
C07D 201/04 20060101ALI20240124BHJP
C08G 69/14 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C07D201/16
C07D225/02
C07D201/04
C08G69/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543389
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 KR2022001030
(87)【国際公開番号】W WO2022158872
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0007868
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンソク
(72)【発明者】
【氏名】パク ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ナムジン
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB03
4J001EA08
4J001FA03
4J001GA02
4J001JB01
(57)【要約】
本発明は、ラウロラクタムの精製方法に関し、さらに詳しくは、不純物がほとんどない高純度のラウロラクタムが得られる精製方法に関する。
本発明は、ラウロラクタム合成工程の反応生成物からラウロラクタムを精製する方法であって、(S1)前記反応生成物を蒸留して低沸点物質を分離および除去して第1混合固形物を得るステップと、(S2)前記第1混合固形物を良溶媒に溶解させた第1混合溶液に浮遊する不純物を除去するステップと、(S3)前記不純物が除去された第1混合溶液に貧溶媒を添加して、析出した第2混合固形物を得るステップと、(S4)前記第2混合固形物を加熱溶融させた溶融物を蒸発させて気相のラウロラクタムを得た後、結晶化するステップと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウロラクタム合成工程の反応生成物からラウロラクタムを精製する方法であって、
(S1)前記反応生成物を蒸留して低沸点物質を分離および除去して第1混合固形物を得るステップと、
(S2)前記第1混合固形物を良溶媒に溶解させた第1混合溶液に浮遊する不純物を除去するステップと、
(S3)前記不純物が除去された第1混合溶液に貧溶媒を添加して、析出した第2混合固形物を得るステップと、
(S4)前記第2混合固形物を加熱溶融させた溶融物を蒸発させて気相のラウロラクタムを得た後、結晶化するステップと、を含む、ラウロラクタムの精製方法。
【請求項2】
前記(S1)ステップの蒸留は単蒸留装置を用い、蒸留時の温度は90℃~200℃、真空度は-0.1~-1bargである、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項3】
前記(S2)ステップは、前記第1混合固形物:前記良溶媒を1:5~10の重量比で混合する、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項4】
前記(S2)ステップの前記良溶媒の温度は40℃~80℃である、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項5】
前記(S3)ステップは、前記(S2)ステップの良溶媒:前記貧溶媒を1:0.5~2の重量比で混合する、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項6】
前記良溶媒および貧溶媒は混和性であることに特徴を有する、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項7】
前記(S3)ステップは、触媒とラウロラクタムに対する良溶媒の溶解度の差を利用することを特徴とする、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項8】
前記(S3)ステップ以降、前記(S4)ステップより前に
(S3-1)前記第2混合固形物を分離した残余物に貧溶媒を再添加して析出した第2混合固形物を得るステップ、を1回以上繰り返し、第2混合固形物を繰り返し得る、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項9】
前記(S3-1)ステップは1~3回繰り返し行われる、請求項8に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項10】
前記(S3)ステップの前記貧溶媒の温度が50℃~100℃である、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項11】
前記(S4)ステップの加熱は、真空度-0.1barg~-1bargで行われる、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項12】
前記(S4)ステップは
前記溶融物の全量から50%~70%を気化させてラウロラクタムを得る、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項13】
前記良溶媒は、ヒドロキシ基、アミン基およびチオール基からなる群から選択される一つまたは二つ以上の官能基を含有するC1~C4炭化水素有機溶媒である、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項14】
前記貧溶媒は蒸留水または脱イオン水(deionized water)である、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項15】
前記ラウロラクタム合成工程は、塩化シアヌル(TCT)触媒下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応(Bechmann rearrangement)を介して行われ、
前記ベックマン転位反応は、イソプロピルシクロヘキサン(IPCH)を含む溶媒の下で、塩化シアヌル(TCT)触媒を介してシクロドデカノンオキシムをラウロラクタムに合成するものである、請求項1に記載のラウロラクタムの精製方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のラウロラクタムの精製方法により精製された、ラウロラクタム組成物。
【請求項17】
前記ラウロラクタム組成物は、ラウロラクタムの純度が99%以上である、請求項16に記載のラウロラクタム組成物。
【請求項18】
請求項16に記載のラウロラクタム組成物をアニオン開始剤の下でアニオン重合してポリラウロラクタムを製造する、ポリラウロラクタムの製造方法。
【請求項19】
重合されたポリラウロラクタムの重合度が70%以上の、請求項18に記載のポリラウロラクタムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラウロラクタムの精製方法に関し、さらに詳しくは、不純物がほとんどない高純度のラウロラクタムが得られる精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に工業上環状アミド単量体で、例えばラウロラクタムの合成方法は、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応(rearrangement)を通じて合成する。
【0003】
このようなポリアミド系高分子物質はアニオン重合によって合成することができるが、前記ラウロラクタム単量体の純度が重合反応活性に大きな影響を与えるため、単量体の純度は非常に重要な要素である。
【0004】
従来、ベックマン転位反応によって製造されるラウロラクタムの単量体は、反応終了後、溶媒を蒸留して除去した後、固相および/または液相でHeaviesを除去することでラウロラクタムを精製したが、最終ラウロラクタム生成物に有機物およびイオンなど様々な不純物が残留し、アニオン重合反応の活性を急激に低下させる問題が発生している。
【0005】
これにより、ベックマン転位反応後に残留する様々な不純物を簡素化された工程で除去して高純度のラウロラクタムを精製し、ラウロラクタム単量体などのアニオン重合活性を高めることができる方策が求められている。
【0006】
このような方法の一つとして、出願人が既出願した公開特許公報第10-2019-0080535号では、蒸留および蒸発により不純物がある程度除去された単量体を回収する方法を研究した。
【0007】
しかし、前記界面で粘着性のある物質がまだ存在し、再結晶しても単量体のアニオン重合時にアニオン反応サイトを損傷し、重合度を増加させることができなかったり、あるいは転換率が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、合成されたラウロラクタム合成工程の生成物から高純度のラウロラクタムを得ることができる精製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ラウロラクタム合成工程の反応生成物からラウロラクタムを精製する方法であって、(S1)前記反応生成物を蒸留して低沸点物質を分離および除去して第1混合固形物を得るステップと、(S2)前記第1混合固形物を良溶媒に溶解させた第1混合溶液に浮遊する不純物を除去するステップと、(S3)前記不純物が除去された第1混合溶液に貧溶媒を添加して、析出した第2混合固形物を得るステップと、(S4)前記第2混合固形物を加熱溶融させた溶融物を蒸発させて気相のラウロラクタムを得た後、結晶化するステップと、を含む。
【0010】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S1)ステップの蒸留は単蒸留装置を用い、蒸留時の温度は90℃~200℃、真空度は-0.1~-1bargであることができる。
【0011】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S2)ステップは、前記第1混合固形物:前記良溶媒を1:5~10の重量比で混合することができる。
【0012】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S2)ステップの前記良溶媒の温度は40℃~80℃であることができる。
【0013】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S3)ステップは、前記(S2)ステップの良溶媒:前記貧溶媒を1:0.5~2重量比で混合することができる。
【0014】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記良溶媒および貧溶媒は混和性であることができる。
【0015】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S3)ステップは、前記触媒とラウロラクタムに対する良溶媒の溶解度の差を利用することができる。
【0016】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S3)ステップの後、前記(S4)ステップとの前に、(S3-1)前記第2混合固形物を分離した残余物に貧溶媒を再添加して析出した第2混合固形物を得るステップ、を1回以上繰り返して第2混合固形物を繰り返し得ることができる。
【0017】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S3-1)ステップは、1~3回繰り返し行うことができる。
【0018】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S3)ステップの前記貧溶媒の温度は、50℃~100℃であることができる。
【0019】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S4)ステップの加熱は、真空度-0.1barg~-1bargで行うことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記(S4)ステップは、前記溶融物全量から50%~70%を気化させてラウロラクタムを得ることができる。
【0021】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記良溶媒は、ヒドロキシ基、アミン基およびチオール基からなる群から選択される1つまたは2つ以上の官能基を含有するC1~C4炭化水素有機溶媒であることができる。
【0022】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記貧溶媒は、蒸留水または脱イオン水(deionized water)であることができる。
【0023】
本発明の一実施形態によるラウロラクタムの精製方法において、前記ラウロラクタム合成工程は、塩化シアヌル(TCT)触媒の下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応(Bechmann rearrangement)を通じて行われ、前記ベックマン転位反応は、イソプロピルシクロヘキサン(IPCH)を含む溶媒の下で、塩化シアヌル(TCT)触媒を介してシクロドデカノンオキシムをラウロラクタムに合成することであることができる。
【0024】
また、本発明は、前記精製方法で精製されたラウロラクタム組成物である。
【0025】
本発明の一実施形態によるラウロラクタム組成物において、前記ラウロラクタム組成物は、ラウロラクタムの純度が99%以上であることができる。
【0026】
また、本発明は、前記ラウロラクタム組成物をアニオン開始剤の下でアニオン重合してポリラウロラクタムを製造するポリラウロラクタムの製造方法である。
【0027】
本発明の一実施形態によるポリラウロラクタムの製造方法において、前記重合されたポリラウロラクタムの重合度は70%以上であることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によるラウロラクタムの精製方法は、高純度のラウロラクタムを得ることができる。
【0029】
このような精製方法により精製されたラウロラクタムは高い重合度を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書で使用される技術用語および科学用語において、他に定義がなければ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が通常理解している意味を持ち、以下の説明および添付図面において、本発明の要旨を不必要に曖昧にする可能性のある告知機能および構成についての説明は省略する。
【0031】
また、本明細書で使用される単数形は、文脈上特に指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0032】
また、本明細書で特に言及せずに使用される単位は重量を基準とし、一例として%または比の単位は重量%または重量比を意味し、重量%は、特に定義されない限り、全組成物中のいずれかの成分が組成物内で占める重量%を意味する。
【0033】
また、本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内のすべての値、定義される範囲の形と幅から論理的に誘導される増分、二重に限定されたすべての値、および異なる形で限定された数値範囲の上限と下限のすべての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書で特別な定義がない限り、実験誤差または値の丸めにより発生する可能性がある数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0034】
本明細書の用語、「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」または「特徴とする」などの表現と同等の意味を持つ開放型記載であり、さらに列挙されていない要素、材料またはプロセスを排除するものではない。
【0035】
また、本明細書の用語「実質的に」とは、特定の要素、材料、またはプロセスとともに、列挙されていない他の要素、材料、またはプロセスが、本発明の少なくとも1つの基本的で新規な技術思想に許容できないほど顕著な影響を及ぼさない量または程度に存在する可能性があることを意味する。
【0036】
本発明は、ラウロラクタム合成工程の生成物からラウロラクタムを精製する方法であって、(S1)生成物を蒸留して低沸点物質を分離および除去して第1混合固形物を得るステップと、(S2)第1混合固形物を良溶媒に溶解させた第1混合溶液に浮遊する不純物を除去するステップと、(S3)不純物が除去された第1混合溶液に貧溶媒を添加して、析出した第2混合固形物を得るステップと、(S4)第2混合固形物を加熱溶融させた溶融物を蒸発させて気相のラウロラクタムを得た後、結晶化するステップと、を含む。
【0037】
従来、生成物の蒸留および蒸発により不純物がある程度除去された単量体を回収する方法を研究していたが、粘着性のある物質がまだ存在し、再結晶しても単量体のアニオン重合時にアニオン反応サイトを損傷して重合度を増加させることができなかったり、あるいは転換率が低下するという問題があった。
【0038】
本発明の精製方法は、ラウロラクタム合成工程により製造された製品から高純度のラウロラクタムを得ることができ、本発明の製造方法により得られた高純度ラウロラクタムの重合時に高い重合度を持つことができる。
【0039】
本発明において、ラウロラクタム合成工程は、塩化シアヌル(TCT)触媒の下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応(Bechmann rearrangement)を介して行われ、ベックマン転位反応は、イソプロピルシクロヘキサン(IPCH)を含む溶媒の下で、塩化シアヌル(TCT)触媒を介してシクロドデカノンオキシムをラウロラクタムに合成するものであってもよいが、これに限定されない。
【0040】
ベックマン転位反応は70~130℃、好ましくは90~110℃、さらに好ましくは95~100℃の温度で、1~20分、好ましくは5~20分、さらに好ましくは5~15分間進行することができる。前記反応で反応温度が過度に高いと、高分子物質(Heavies)などの副産物が多く発生し、低すぎると反応速度が十分に速くならないため、商業工程に適用することが難しい。また、反応時間が1分未満だと、シクロドデカノンオキシムがラウロラクタムに十分に転位することができず、20分を超えると副反応が過度に発生し、好ましくない。
【0041】
一方、ベックマン転位反応は、ケトオキシムが酸アミドに変わる電位反応を意味し、特に本発明では、前記シクロドデカノンオキシムがラウロラクタムに電位する反応を意味することができる。
【0042】
触媒は塩化シアヌル(TCT、Cyanuric chloride)である。具体的には、シクロドデカノンオキシム100重量部に対して、前記触媒を0.1~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.5~2重量部含有することができる。前記触媒の含有量が低すぎると、ベックマン転位反応を十分に進行することができず、触媒の含有量が過度に高いと、反応終了後に反応生成物に触媒物質が高い含有量で残留するので、精製ステップでこれを効果的に除去することが困難である。
【0043】
より具体的には、前記触媒は塩化シアヌルおよび塩化亜鉛を2:1~1:1重量比、好ましくは1.5:1~1:1重量比、より好ましくは1.3:1~1:1重量比で含むことができる。これにより、ベックマン転位反応に制限される水分含有量による変換率減少現象を抑制してラウロラクタムを効果的に合成することができ、反応終了後、反応生成物に残留する触媒を簡素化された工程だけで容易に除去することができる。
【0044】
前記溶媒としては、例えばイソプロピルシクロヘキサン(IPCH)を含む有機溶媒であることが好ましい。前記溶媒は、非極性が強い特徴により、ベックマン転位反応を利用して、シクロドデカノンオキシムをラウロラクタムに成功裏に製造するために使用することができる。
【0045】
前記IPCHを含む有機溶媒は、シクロドデカノンオキシム100重量部に対して30~50重量部で使用することができる。前記含有範囲に含まれる場合、シクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応が容易で、反応生成物を蒸留して溶媒を容易に除去することができる。
以下、前記の方法で得られた反応生成物を精製して高純度のラウロラクタムを得ることができるステップを詳細に説明する。
具体的には、まず、(S1)反応生成物を蒸留して低沸点物質を分離および除去して第1混合固形物を得るステップを行う。
本発明において、第1混合固形物は、蒸留により低沸点物質が除去された反応生成物を意味することができる。このとき、低沸点物質はIPCHおよびシクロドデカノンであることができる。
【0046】
(S1)ステップの蒸留は、当業界に知られている蒸留装置を通じて行うことができるが、好ましくは単蒸留装置を通じて行うことができる。単蒸留装置を用いた蒸留時、温度および真空度は、分離しようとする低沸点物質の沸点に応じて適切に調節することができるが、好ましくは、温度は90℃~200℃、具体的には120℃~180℃、さらに具体的には140℃~160℃であることができ、真空度は-0.1~-1bargであることができる。前記範囲で、本ステップで除去しようとする低沸点物質の除去率が高くなる。具体的には、溶媒として使用したIPCH(Isopropyl cyclohexane)を効率的に除去できると同時に、ベックマン転位反応で中間ステップの生成物であるシクロドデカノン(Cyclododecanone,CDON)の除去率が高いことができる。
【0047】
次に、(S2)第1混合固形物を良溶媒に溶解させた第1混合溶液に浮遊する不純物を除去するステップ、を行う。
【0048】
本発明において、不純物は、第1混合固形物に含まれる粒子状の触媒であってもよいが、これに限定されず、第1混合溶液によって浮遊し、ラウロラクタム以外の物質を含有することができる。
良溶媒は、C1~C4炭化水素有機溶媒、好ましくは、ヒドロキシ基、アミン基、およびチオール基からなる群から選択される1つまたは2つ以上の官能基を含むC1~C4炭化水素有機溶媒、より好ましくは、ヒドロキシ基を含むC1~C4炭化水素、またはC1~C4アルコールであることができる。
【0049】
前記良溶媒を混合する場合、触媒およびラウロラクタムに対する良溶媒の溶解度の違いを利用して触媒を除去することができる。具体的には、前記触媒は良溶媒に溶解せず、固形粒子として析出するのに対し、ラウロラクタムは良溶媒に対する溶解度が高いため、良溶媒に実質的に全て溶解して析出しない場合がある。その後、粒子として析出した触媒をフィルターで容易に除去することができる。この時、良溶媒を少なすぎる量で注入する場合、一部のラウロラクタムが溶けずに固体で存在し、残留する触媒と共にフィルターから除去され、ラウロラクタムの収率が低下し、良溶媒に溶けなかった一部のラウロラクタムが残留する触媒と凝集してフィルターを通過して残留することがある。逆に、良溶媒を多量に注入する場合、その後の(S3)ステップでラウロラクタムの再結晶化が容易でない場合がある。したがって、a)ステップで合成されたラウロラクタムと前記良溶媒は、1:5~1:10重量比で混合することができ、好ましくは1:5~1:7、より好ましくは1:6~1:7重量比で混合することが望ましい。
【0050】
このとき、良溶媒の温度は40℃~80℃、具体的には50~60℃であることがラウロラクタムの溶解速度において有利である。
【0051】
一方、本発明の明細書において、良溶媒(good solvent)はラウロラクタム(solute)と親和性が高く、これをよく溶かすことができる溶媒を意味し、貧溶媒(poor solvent)はラウロラクタムに対する親和性が低く、これをよく溶かさない溶媒を意味することができる。
続いて、(S3)ステップは、(S2)ステップで不純物が除去された第1混合溶液に貧溶媒を添加して、析出した第2混合固形物を得るステップである。貧溶媒は、良溶媒と混和性のある物質を採用することができ、具体的には蒸留水または脱イオン水(deionized water)であることができる。貧溶媒を混合する場合、ラウロラクタムの良溶媒に対する溶解度および貧溶媒に対する溶解度の差を利用してラウロラクタムを析出させることができる。具体的には、ラウロラクタムは良溶媒に対する溶解度が高く、貧溶媒に対する溶解度が低いという特徴を持ち、(S2)ステップでラウロラクタムが溶解した良溶媒に貧溶媒を混合する場合、良溶媒の濃度が減少するにつれてラウロラクタムに対する溶解度が減少し、その結果、ラウロラクタムが再結晶化して固体として析出することができる。その後、析出した第2混合固形物はフィルターでろ過して得ることができる。
【0052】
良溶媒および貧溶媒は、例えば1:0.5~1:2重量比、好ましくは1:0.8~1:1.5重量比で注入することができる。貧溶媒に対して良溶媒を過剰な含有量で注入する場合、ラウロラクタムの一部が固体として沈殿せず、良溶媒に溶解した状態で存在する可能性があり、精製されたラウロラクタムの収率が低下する可能性があるため、好ましくない。
【0053】
(S3)ステップの貧溶媒の温度は50℃~100℃、具体的には60~70℃であるが、これに限定されない。ただし、前記範囲の温度の貧溶媒を使用する場合、第2混合固形物に残留する塩化物イオンの濃度を減少させ、より純度の高いラウロラクタムが得られる。
【0054】
本発明の一実施形態において、(S3)ステップの後、(S3)ステップとの前に(S3-1)第2混合固形物を分離した残余物に貧溶媒を再添加して析出した第2混合固形物を得るステップをさらに含み、これを1回以上繰り返して第2混合固形物を第1混合溶液から繰り返し得ることができる。このようなステップは、ラウロラクタムの回収率を高め、ラウロラクタムの収率をさらに高めることができる。具体的には、(S3-1)ステップは10回未満、具体的には1~3回繰り返すことが工程効率上好ましい。
次に、(S4)第2混合固形物を加熱溶融させた溶融物を蒸発させて気相のラウロラクタムを得た後、結晶化する工程を行う。
【0055】
(S4)ステップの加熱は、第2混合固形物を溶融できる条件であれば限定されないが、ラウロラクタムの溶解温度以上で行うことができ、具体的には150℃~220℃、さらに具体的には150℃~170℃で行うことができるが、これに限定されない。加熱は、真空度-0.1~-1bargで行うことができる。前記範囲で減圧された状態で加熱する場合、加熱過程で酸素による酸化を防止し、より高純度のラウロラクタムを得ることができる。
(S4)ステップの蒸発は、当業界で知られている蒸発または蒸留装置を介して行うことができ、結晶化は、当業界で知られている結晶化装置を介して行うことができる。
【0056】
具体的には、蒸発は150℃~220℃、具体的には160℃~200℃の温度で行うことができるが、これに限定されず、このとき、真空度は0.1bar未満であれば限定されず、30分~1時間行うことができる。
(S4)ステップで第2混合固形物は完全に溶融した後に蒸発させることが望ましい。もし完全に溶融していない状態で蒸発させる場合、溶融物内に含まれるHeaviesのポッピング(Popping)現象により、高純度のラウロラクタムが得られにくい場合がある。
【0057】
本発明の一実施形態において、(S4)ステップは、溶融物全量から30%~90%、具体的には50%~70%のみを気化させてラウロラクタムを得ることができる。一度に全て気化させた後、結晶化してラウロラクタムを得る場合、Heaviesのポッピング現象が起こり、Heaviesによって汚染されたラウロラクタムを得ることができる。
具体的な一例として、溶融物の全量から50%~70%だけを蒸発させた後、結晶化してラウロラクタムを得た後、残った残余の50%~70%だけを再び蒸発させた後、結晶化してラウロラクタムを得ることができ、この過程を繰り返し行うことができる。
これとは異なり、連続工程の場合、溶融物の全量から50%~70%だけを蒸発および結晶化してラウロラクタムを得られ、気化した分だけ溶融物を連続的に供給し、蒸発および結晶化してラウロラクタムを連続的に得ることができる。
本発明は、前記の精製方法で精製されたラウロラクタムの組成物であり、前記の方法により精製されることにより、不純物がほとんど含まれない高純度のラウロラクタム組成物である。具体的には、本発明のラウロラクタム組成物は、ラウロラクタムの純度が99%、好ましくは99.5%以上で、非常に純度が高い。
また、前記ラウロラクタム組成物は、ベックマン転位反応に使用される触媒をラウロラクタム組成物の総重量に対して3重量%以下、好ましくは2重量%未満、より好ましくは0.1重量%以下含有することができる。前記触媒の含有範囲を超えると、アニオン重合で使用するアニオン開始剤の活性度を著しく低下させるため、重合反応の進行が容易ではない。
【0058】
また、本発明は、このようなラウロラクタム組成物をアニオン開始剤の下でアニオン重合してポリラウロラクタムを製造する製造方法であり、このようなラウロラクタム組成物を使用して重合することにより、重合度が70%以上、さらに好ましくは75%以上の高い重合度を持つことができるポリラウロラクタムを製造することができる。
【0059】
精製されたラウロラクタムおよび任意の新規単量体の重合(共単量体)は、200~350℃で10~60分間行うことができる。具体的には、前記重合反応は、200~300℃、好ましくは220~250℃で10~60分、好ましくは10~50分、より好ましくは20~40分間行うことができる。
【0060】
重合されたポリラウロラクタムは、ラウロラクタムを含有する重合体、例えばコポリアミドまたはポリエーテル・ブロックアミドであることができ、好ましくはポリアミド12(ナイロン12)であることができる。
【0061】
前記アニオン開始剤は、具体的には、NaH、LiH、KHおよびn-BuLiからなる群から選択される1種または2種以上を含むことができる。本発明の一実施形態によるベックマン転位反応に使用される触媒物質は、前記アニオン開始剤の活性を著しく低下させる(killing)ことが知られているが、本発明の一実施形態によるラウロラクタムの製造方法およびこれによるラウロラクタム組成物は、前記触媒物質を非常に効果的に除去するため、前記アニオン開始剤の下でラウロラクタム単量体を高い重合度でアニオン重合することができる。
前記アニオン重合は、バッチ式反応器(batch reactor)または連続式反応器(CSTR、PFRまたはPBR)で行うことができ、好ましくは連続式反応器で行うことができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
100ml丸フラスコにシクロドデカノンオキシム3g、イソプロピルシクロヘキサン(isopropylcyclohexane)12g、塩化シアヌル(cyanuric chloride)0.045gを投入した。そして、加熱マントルを用いて温度を95℃に調節し、200rpm以上で攪拌して反応生成物を製造した。反応完了時間は5分であり、シクロドデカノンオキシムの変換率は99%以上、ラウロラクタムの選択度は99%以上であった。
前記で製造した反応生成物100gを単蒸留装置に注入し、温度150℃、真空度-0.9bargで蒸留してIPCHおよびCDONを単蒸留装置の上部(Top)に除去した。
その後、残留CDON含有量およびLL純度をそれぞれ測定し、下記表1に記載した。残留CDON含有量およびLL純度は、いずれもガスクロマトグラフを利用して測定した。測定機器はHP-6890N、使用したカラムはHP-5 Columnであった。
【0063】
次に、生成した褐色固体に60℃のエタノールを700g注入してフラスコで溶解させた。浮遊している固体(触媒)は0.22μmのフィルターを用いて除去し、エタノールに溶解したラウロラクタム(LL)に60℃の蒸留水700gを注入してLL固体を沈殿させた。析出したLLはフィルターを使用して固体を分離した。固形物が1次分離されたエタノールに溶解されたラウロラクタムに再び蒸留水700gを注入してLL固体を再沈殿させ、このような過程を合計3回繰り返してLL固体を析出させた。
【0064】
その後、残留塩素イオン濃度を測定し、下記表2に記載した。測定器はMITSUBISHI AQF-2100Hであり、使用したカラムはShodex IC anion columnであった。溶出は1mMの炭酸ナトリウム(Na2CO3)と4mMの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の混合溶液を使用した。
【0065】
次に、真空度-0.9bargの加熱器にLL固体を注入した後、155℃で固体を全て完全に溶融させた。その後、Film evaporatorを利用して溶融物の体積60%だけを気化させ、下部(bottom)からHeaviesを除去し、上部(Top)からLLを分離した。その後、残留溶融物の体積の60%だけを気化させて再びHeaviesを除去し、LLを分離した。残留Heavies濃度、無機物(Ash)LLの収得率をそれぞれ測定し、下記表3に記載した。無機物はTGA熱分析により測定した。前記製晶で界面間に粘着性があり、分離されていないものはなかった。
次いで、製造したLLを用いて、100ml丸フラスコにLL50gと触媒をLL:NaH:EBS(ethylene bis stearamide):TEOS(tetraethyl orthosilicate):CO2=100:0.6:0.36:0.15:0.15の重量比で投入し、240℃で30分間アニオン重合反応を行い、PA 12(ポリアミド12)を製造し、PA 12の重合度を下記表4に記載した。
【0066】
(比較例1)
実施例1で製造した反応生成物100gを単蒸留装置に注入し、温度80℃、真空度-0.9bargで蒸留した。残留CDON含量およびLL純度をそれぞれ測定し、下記表1に記載した。
【0067】
次に、真空度-0.9bargの加熱器に固体を注入した後、155℃で固体を全て完全に溶融させた。その後、Film evaporatorを利用して溶融物の体積100%気化させ、下部(bottom)からHeaviesを除去し、上部(Top)からLLを分離した。その後、製造されたLLを利用して、100ml丸フラスコにLL50gと触媒をLL:NaH:EBS(ethylene bis stearamide):TEOS(tetraethyl orthosilicate):CO2=100:0.6:0.36:0.15:0.15の重量比で投入し、240℃で30分間アニオン重合反応を進行してPA 12(ポリアミド12)を製造し、PA 12の重合度を下記表4に記載した。
【0068】
(比較例2)
実施例1で製造した褐色固体に60℃のエタノールを700g注入してフラスコで溶解させた。浮遊している固体(触媒)は0.22μmのフィルターを用いて除去した。その後、残留塩素イオン濃度を測定し、下記表2に記載した。
【0069】
次に、真空度-0.9bargの加熱器に固体を注入した後、155℃で固体を全て完全に溶融させた。その後、Film evaporatorを利用して溶融物の体積100%気化させ、下部(bottom)からHeaviesを除去し、上部(Top)からLLを分離した。その後、製造されたLLを利用して、100ml丸フラスコにLL50gと触媒をLL:NaH:EBS(ethylene bis stearamide):TEOS(tetraethyl orthosilicate):CO2=100:0.6:0.36:0.15:0.15の重量比で投入し、240℃で30分間アニオン重合反応を進行してPA 12(ポリアミド12)を製造し、PA 12の重合度を下記表4に記載した。
【0070】
(比較例3)
実施例1で製造した溶融物を完全に気化させてLLを分離した。続いて、製造したLLを用いて、100ml丸フラスコにLL50gと触媒をLL:NaH:EBS(ethylene bis stearamide):TEOS(tetraethyl orthosilicate):CO2=100:0.6:0.36:0.15:0.15の重量比で投入し、240℃で30分間アニオン重合反応を進行してPA 12(ポリアミド12)を製造し、PA 12の重合度を下記表4に記載した。
【0071】
(比較例4)
実施例1で製造した褐色の固体に60℃のエタノールを700g注入してフラスコで溶解させた。浮遊している固体(触媒)は0.22μmフィルターを用いて除去した。
次に、真空度-0.9bargの加熱器にLL固体を注入した後、155℃で固体を全て完全に溶融させた。その後、Film evaporatorを利用して溶融物の体積60%だけを気化させ、下部(bottom)からHeaviesを除去し、上部(Top)からLLを分離した。その後、残留溶融物の体積60%だけを気化させて再びHeaviesを除去し、LLを分離した。
【0072】
次いで、製造したLLを用いて、100ml丸フラスコにLL50gと触媒をLL:NaH:EBS(ethylene bis stearamide):TEOS(tetraethyl orthosilicate):CO2=100:0.6:0.36:0.15:0.15の重量比で投入し、240℃で30分間アニオン重合反応を行い、PA12(ポリアミド12)を製造し、PA12の重合度を下記表4に記載した。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【表4】
前記表1を参照すると、本発明で単蒸留装置による蒸留時、CDONが除去され、高純度のラウロラクタムを除去できることが確認できた。
【0077】
また、表2を参照すると、エタノールおよび蒸留水の添加により塩素イオンが大量に除去されることが確認できた。
【0078】
さらに、表3から、溶融物を単一工程で完全に気化させるよりも、所定の体積で気化させて複数回気化させる方が、Heaviesおよび無機物除去率が高いことがわかった。
【0079】
さらに、表4を通じて、本発明の精製方法で精製したラウロラクタムを重合する場合、高い重合度で優れた物性を有するポリアミドが得られることを確認することができた。
【0080】
以上のように本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明したが、これは本発明のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。
【国際調査報告】