(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ホーリーバジルの頂部成長部の抽出物、およびそれを含む化粧用組成物または皮膚用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/53 20060101AFI20240124BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240124BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240124BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61K36/53
A61K8/9789
A61P17/00
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543463
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 FR2022050111
(87)【国際公開番号】W WO2022157457
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503028525
【氏名又は名称】ラボラトワール エクスパンシアンス
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー、ルクレール-ビアンフェ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー、ブレディフ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC02
4C083EE11
4C083FF01
4C088AB38
4C088AC02
4C088BA08
4C088CA06
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
本発明は、ホーリーバジル、特にオシマム・サンクタムの頂部成長部の抽出物、該抽出物の調製方法、および該方法により得られる抽出物に関する。本発明はまた、そのような抽出物を含む組成物に関し、該組成物は有利には化粧用組成物、医薬組成物または皮膚用組成物である。本発明はまた、皮膚、粘膜または皮膚付属器の障害または疾患の予防または治療における使用のため、および血管障害の予防または治療における使用のためのそのような組成物またはそのような抽出物にも関する。最後に、本発明は、皮膚、皮膚付属器または粘膜を、それらの状態または外観の改善を目的として美容的にケアする方法に関し、該方法はそのような組成物またはそのような抽出物を投与することからなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーリーバジル、オシマム・サンクタム(Ocimum sanctum)の地上部のポリフェノールが豊富な抽出物であって、乾燥抽出物の総重量に対して少なくとも6重量%のポリフェノールを含み、特に乾燥抽出物の総重量に対して少なくとも5重量%のヒドロキシ桂皮誘導体、および乾燥抽出物の総重量に対して、ルチン当量として表される少なくとも2.5重量%のフラボノイドを含む、前記抽出物。
【請求項2】
乾燥抽出物の総重量に対して少なくとも9重量%、有利には少なくとも11重量%のポリフェノールを含む、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
前記抽出物が、乾燥抽出物の総重量に対して少なくとも7重量%、好ましくは10重量%のヒドロキシ桂皮誘導体を含む、請求項1または2に記載の抽出物。
【請求項4】
前記抽出物が、乾燥抽出物の総重量に対して、ルチン当量として表される少なくとも3.5重量%のフラボノイドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項5】
有利には水中のグリコールまたはグリセロールの割合が30%~90%である、水/グリコールまたは水/グリセロールの二成分混合物から選択される溶媒中で、前記ホーリーバジルの地上部を固体/液体抽出することによって得られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のホーリーバジルの地上部のポリフェノールに富む抽出物を調製する方法であって、有利には水中のグリコールまたは水中のグリセロールの割合が30%~90%である、水/グリコールまたは水/グリセロールの二成分混合物から選択される溶媒中における少なくとも1回の固体/液体抽出の工程を含む、前記方法。
【請求項7】
以下の連続工程:
a)乾燥させたホーリーバジルの地上部を粉砕する工程;
b)水/グリコールまたは水/グリセロールの二成分混合物から選択される溶媒中で前記地上部を抽出する工程;
c)デカンテーションおよび/または遠心分離および/または連続濾過により固相を液相から分離する工程;
d)任意に、工程c)で得られた抽出物を乾燥する工程
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
真空蒸発または脱臭の工程をさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記グリコールが植物由来のグリコール、特にプロパンジオールまたはプロピレングリコール、特に1,3-プロパンジオールである、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載のホーリーバジルの地上部の抽出物、または請求項6~9のいずれか一項に記載の方法により得られる抽出物を有効成分として含み、有利には適切な賦形剤を含む、組成物。
【請求項11】
-皮膚および/または粘膜および/または皮膚付属器の障害または病変、有利には炎症反応、心理的ストレス、不安状態に関連するストレス、化学物質または大気汚染に関連するかまたは関連しないラジカル侵襲に関連するストレス、および/またはUVまたはIRの曝露に関連するストレス等の内因性または外因性のストレスに関連する障害であって、有利には敏感肌、反応性皮膚および/または反応性粘膜、荒れた皮膚、炎症を起こした皮膚、バリアまたは恒常性障害、光感作性皮膚、機械的および/または熱的な侵襲から選択される障害または病変;および/または
-血管障害、好ましくは発赤およびクーペロース;および/または
-有利にはアトピー性皮膚炎、湿疹、不快な腋窩臭の発生、皮膚バリアの弱体化、ざ瘡、乾癬、汗腺膿瘍、毛嚢炎、新生児頭部皮膚炎、ふけ、掻痒、特に頭皮のかゆみ、カンジダ症および細菌性膣炎から選択される微生物叢の不均衡
の予防および/または治療における使用のため、および/または治癒剤としての使用のための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物、または請求項6~9のいずれか一項に記載の方法により得られる抽出物、または請求項10に記載の組成物
【請求項12】
皮膚および/または皮膚付属器および/または粘膜を、それらの状態および/または外観の改善を目的として非治療的に美容ケアする方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物、または請求項6~9のいずれか一項に記載の方法により得られる抽出物、または請求項10に記載の組成物を投与することからなる、前記方法。
【請求項13】
皮膚および/または粘膜の保湿、および/または皮膚バリアの損傷およびその脱水の予防、および/または皮膚の老化の予防を目的とした、請求項12に記載の非治療的な美容的ケアの方法。
【請求項14】
皮膚の硬さ、弾力性もしくは張度の改善、皮膚および粘膜の機械的特性の強化、特に干からびている皮膚、しなびている皮膚、膨張した皮膚および/またはたるんだ皮膚の防止、および/または皮膚の弾力性もしくは硬さの強化および/もしくは回復、または小じわおよびしわの治療を目的とした、請求項12に記載の非治療的な美容的ケアの方法。
【請求項15】
乾燥肌;発赤のある肌;老化した肌の治療および/または予防;肌の色の均一化;皮膚のシミまたは皮膚の老化の低減、特に経時的老化および/または光線による老化の低減における、請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物、または請求項6~9のいずれか一項に記載の方法により得られる抽出物、または請求項10に記載の組成物の非治療的な美容的な使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンホーリーバジルまたはパープルホーリーバジル(オシマム・サンクタム(Ocimum sanctum))の地上部の抽出物を含む組成物に関する。組成物は、有利には化粧用、医薬用または皮膚用である。本発明はまた、ホーリーバジルの地上部の抽出物を抽出する方法、および該方法により得られる抽出物に関する。本発明はまた、皮膚、粘膜または皮膚付属器の障害または病変の予防または治療、および血管障害の予防または治療における使用のためのそのような組成物または抽出物に関する。最後に、本発明は、皮膚、皮膚付属器または粘膜を、それらの状態または外観の改善を目的として美容的にケアする方法であって、そのような組成物またはそのような抽出物を投与することからなる方法に関する。
【0002】
ホーリーバジル
植物の説明
一般に「ホーリーバジル」または「カミメボウキ」として知られているオシマム・サンクタム(またはオシマム・テヌイフロラム)は、シソ科の芳香植物である。オシマム・サンクタムは30~60cmの高さに生長し、毛が生えた茎を有する。品種に応じて、葉は緑色または紫色である。葉は単純であり、葉柄を有し、長さは最大で5cmである。紫がかった小さな花が細長い総状花序に位置する。ホーリーバジルにはグリーンバジルおよびパープルバジルの2つの品種がある。どちらの品種も同様の植物化学組成を有している。
【0003】
ホーリーバジルはアジアで宗教的用途および医薬的用途のために栽培されており、特にアーユルヴェーダ医学では「不老不死の薬」と考えられている。ホーリーバジルの葉は、タイ料理において、また防虫剤としても用いられている。
【0004】
植物化学
オシマム・サンクタムの組成:
タンパク質:174.5g/kg乾燥植物
繊維質:90.7g/kg乾燥植物
灰質(Ash):135.6g/kg乾燥植物
【0005】
多くの分子が、オシマム・サンクタムの水性抽出物およびアルコール抽出物中で同定されている。ポリフェノールは広く存在しており、主な化合物はロスマリン酸である。ウルソール酸、アピゲニン誘導体およびフェノール酸も広く報告されている。
【0006】
糖はキシロースと多糖類とから構成されている。茎および葉にはサポニン、フラボノイド、トリテルペノイドおよびタンニンが含まれている。
【0007】
ミネラル組成は、カリウムが大部分を占めていることを示している(表1を参照)。
【表1】
【発明の概要】
【0008】
本発明の主題は、ポリフェノールが豊富なホーリーバジルの抽出物、特にポリフェノールが豊富なホーリーバジルの地上部の抽出物である。
【0009】
本発明の文脈において、「ホーリーバジル」および「オシマム・サンクタム」という用語は同じ意味を有し、互換的に用いることができる。ホーリーバジルにはグリーンおよびパープルの2種類がある。特に指定のない限り、本発明の目的において、「ホーリーバジル」または「オシマム・サンクタム」は、既存の2つの品種、すなわちグリーン種およびパープル種を指す。
【0010】
本発明の文脈において、オシマム・サンクタムの「地上部」には、葉、茎および花が含まれ、好ましくは葉および茎が含まれる。
【0011】
「ポリフェノールが豊富な抽出物」とは、主にまたは本質的にポリフェノールを含む抽出物を指す。
【0012】
したがって、本発明の抽出物は、乾燥抽出物の総重量に対して少なくとも6重量%のポリフェノール、すなわち液体抽出物1mL当たり少なくとも1.2mgのポリフェノール(没食子酸換算)を含む。有利には、本発明の抽出物は、乾燥抽出物の総重量に対して少なくとも9重量%、より有利には少なくとも11重量%、より有利には少なくとも15重量%のポリフェノールを含む。有利には、本発明の抽出物は、6重量%~17重量%、より有利には9重量%~17重量%、より有利には11重量%~17重量%、より有利には15重量%~17重量%のポリフェノールを含む。百分率は、前記乾燥抽出物(乾燥媒体の添加前)の総重量に対して表され、Folin Ciocalteu法に従って決定される。
【0013】
本発明の目的において、ポリフェノールは、1つ以上のベンゼン環によって担持される少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有する分子である。特に有利には、本発明におけるポリフェノールは、ヒドロキシ桂皮誘導体およびフラボノイドを含むか、またはそれらからなる。
【0014】
有利には、本発明の抽出物は、少なくとも5重量%のヒドロキシ桂皮誘導体、より有利には少なくとも7重量%のヒドロキシ桂皮誘導体、すなわち液体抽出物1mL当たり少なくとも1.0mgのヒドロキシ桂皮誘導体を含む。より有利には、本発明の抽出物は、少なくとも10重量%、より有利には少なくとも15重量%のヒドロキシ桂皮誘導体を含む。有利には、本発明の抽出物は、5重量%~20重量%、より有利には7重量%~20重量%、より有利には10重量%~20重量%、より有利には15重量%~20重量%のヒドロキシ桂皮誘導体を含む。百分率は、前記乾燥抽出物(可能性がある乾燥媒体の添加前)の総重量に対してクロロゲン酸当量として表され、Arnow法に従って決定される。
【0015】
有利には、本発明の抽出物は、前記乾燥抽出物の総重量に対して、ルチン当量として表される少なくとも2.5重量%、より有利には少なくとも3.5重量%のフラボノイドを含む。有利には、本発明の抽出物は、前記乾燥抽出物の総重量に対して、ルチン当量として表される2.5重量%~6重量%、より有利には3.5重量%~6重量%のフラボノイドを含む。フラボノイド含有量は、Loots(AlCl3)法を用いて測定される。
【0016】
特に有利には、本発明の抽出物は、乾燥抽出物の総重量に対して少なくとも6重量%のポリフェノール、すなわち液体抽出物1mL当たり少なくとも1.2mgのポリフェノール(没食子酸換算)を含み、特に、乾燥抽出物の総重量に対して少なくとも5重量%のヒドロキシ桂皮誘導体、および乾燥抽出物の総重量に対して、ルチン当量として表される少なくとも2.5重量%のフラボノイドを含む。
【0017】
本発明の文脈において、ヒドロキシ桂皮誘導体は、その構造中に下記のモチーフを含む分子であり:
【化1】
上記モチーフの水素は他の任意の基で置換され得ることが理解される。本発明の意味の範囲内のヒドロキシ桂皮誘導体には、特にヒドロキシ桂皮酸、エステルおよびグリコシル化誘導体が含まれる。
【0018】
本発明におけるヒドロキシ桂皮誘導体の例としては、シコリ酸、カフェ酸、ロスマリン酸またはカフェリン酸、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0019】
本発明の文脈において、フラボノイドは、その構造中に下記のモチーフを含む分子として定義され:
【化2】
この部分の水素は他の任意の基で置換され得ることが理解される。上記式中の点線は単結合または二重結合を示す。
【0020】
本発明におけるフラボノイドの例としては、アピゲニン、アピゲニン-7-グルクロニドまたはルテオリン-7-グルクロニド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0021】
本発明の目的では、フラボノイドおよびヒドロキシ桂皮誘導体は典型的にはポリフェノールである。
【0022】
特に有利には、本発明の抽出物は、アレルギー誘発性化合物であって本発明の意味ではポリフェノールではなくフェノールであるオイゲノールおよびメチルオイゲノールを本質的に含まない。オイゲノールおよびメチルオイゲノールは、特にその物理化学的特性により、ポリフェノールファミリーには分類されない。実際、これらの化合物はホーリーバジル精油の主成分の一つであり、本発明のポリフェノールとは異なり、蒸気混入可能な化合物である。
【0023】
したがって、有利には、本発明の抽出物は、オイゲノールおよびメチルオイゲノールを含まないか、または50ppm未満のオイゲノールおよび100ppm未満のメチルオイゲノールを含む。
【0024】
有利には、本発明によれば、抽出物の成分は蒸気混入性ではないので、抽出物は精油ではない。
【0025】
本発明の文脈において、有利には、上述したポリフェノールが豊富な抽出物は、水、グリコールまたはグリセロール、およびそれらの混合物から選択される溶媒中で、ホーリーバジルの地上部の固体/液体抽出により得られる。本発明における抽出溶媒は非毒性溶媒であり、より具体的には、有利には水中のグリコールまたはグリセロールの割合が、用いられる溶媒の総体積(水+グリコールまたは水+グリセロール)に対する体積で30%~90%、典型的には50%~80%、より有利には60%~70%である、水/グリコールまたは水/グリセロールの二成分混合物から選択される。特に、抽出溶媒は、水/プロパンジオール、水/プロピレングリコール、水/グリセリン、特に水/プロパンジオール、より具体的には水/1,3-プロパンジオールまたは水/グリセリンの二成分混合物から選択される。
【0026】
有利には、上述したグリコールは植物由来のグリコール、特にプロパンジオールおよび/またはプロピレングリコール、より具体的にはプロパンジオール、特に1,3-プロパンジオールである。
【0027】
有利には、上述したグリセロールは植物由来である。
【0028】
本発明の別の目的は、ポリフェノールが豊富なホーリーバジルの地上部の抽出物を調製する方法であって、特に上記段落で定義したような適切な溶媒混合物中で、当業者に公知のpH、時間および温度の最適条件下で、少なくとも1回の固体/液体抽出の工程を含む方法である。
【0029】
有利には、本発明によれば、ポリフェノールが豊富なホーリーバジルの地上部の抽出物を調製する方法は、以下の連続工程を含む:
a)ホーリーバジルの地上部を粉砕する工程;
b)水、グリコール、グリセロールおよびそれらの混合物から選択される溶媒中で、有利には水/グリコールまたは水/グリセロールの二成分混合物から選択される溶媒中で、最適な時間、pHおよび温度の条件下で粉砕地上部を抽出する工程;
c)デカンテーションおよび/または遠心分離および/または連続濾過により固相を液相から分離する工程;および
d)任意に、工程c)で得られた抽出物を乾燥する工程。
【0030】
特に有利には、本発明によれば、抽出物の調製方法は、典型的には真空蒸発または脱臭により、オイゲノールまたはメチルオイゲノールを除去するか、またはオイゲノールおよびメチルオイゲノール含有量を実質的に減少させる工程を含む。
【0031】
工程a)の植物の粉砕は、当業者に公知の方法により、特にカッターミル、ハンマーミル等を用いて行うことができる。
【0032】
工程b)において、抽出は、好ましくは水/グリコールまたは水/グリセロールの二成分混合物から選択される抽出溶媒の存在下で行われる。有利には、工程b)で用いられる抽出溶媒は、水中のグリコールまたはグリセロールの割合が、用いられる溶媒の総体積(水+グリコールまたは水+グリセロール)に対する体積で30%~90%、典型的には50%~80%、より有利には60%~70%である、水/グリコールまたは水/グリセロールの二成分混合物から選択される。特に、抽出溶媒は、水/プロパンジオール、水/プロピレングリコールまたは水/グリセリン、特に水/プロパンジオール、より具体的には水/1,3-プロパンジオールまたは水/グリセリンの二成分混合物から選択される。
【0033】
有利には、グリコールは植物由来のグリコール、特にプロパンジオールおよび/またはプロピレングリコール、より具体的にはプロパンジオール、特に1,3-プロパンジオールである。有利には、グリセロールは植物由来である。
【0034】
さらに、工程b)の固体/液体抽出は、好ましくは20℃~90℃、特に30℃~80℃、さらに特に30℃~75℃、典型的には60℃の温度で行われる。
【0035】
他の従来技術の方法とは対照的に、抽出期間が短いという利点がある。抽出期間は、有利には30分~4時間、特に1~3時間、有利には約2時間である。
【0036】
工程c)の固相の液相から分離は、当業者に公知の方法、特にデカンテーション、遠心分離および/または連続濾過、好ましくは濾過によって行われる。工程c)中、得られた液相は、有利には、例えば限外濾過および/または滅菌濾過によって精製および濃縮される。工程c)は、液体が完全に透明になり、100CFU/g全細菌以下の程度の微生物学的な清浄になるまで行われる。
【0037】
有利には、本発明のポリフェノールが豊富な抽出物は、当業者に公知の方法により乾燥工程d)によって安定化することができる。
【0038】
工程d)の乾燥は、例えば、マルトデキストリンまたはアカシア繊維(CNIのFibregum(登録商標))等の担体の存在下で行うことができる。担体含有量は、典型的には、液体形態の抽出物で得られる乾燥物質の割合に対する担体の0~80%の範囲の比率で変動する。
【0039】
抽出物を凍結乾燥により乾燥させて、最終粉末を得ることができる。最終粉末は、有利には抽出物からの乾燥物質を30~70重量%を含み、100%の残りが凍結乾燥担体である。より有利には、最終粉末は、50%の抽出乾燥物および50%の凍結乾燥担体を含む。
【0040】
有利には、本発明の方法は工程d)を含まない。したがって、得られた抽出物は抽出溶媒中に保存され、溶媒は静菌/殺菌活性を示すのに十分な量であり、特に溶媒は抽出物および溶媒の総重量に対して50重量%以上の量である。
【0041】
本発明の抽出方法によれば、有利なことに、簡単な実施方法により、単一の主要な抽出工程でポリフェノールが濃縮された抽出物を得ることができる。すなわち、分画におけるような複数の連続的な抽出を行うことなく、濃縮された抽出物を得ることが可能になる。
【0042】
好ましくは、一例として、本発明のポリフェノールが豊富な抽出物は、下記の方法に従って得ることができる:
i.ホーリーバジルの地上部を粉砕し;
ii.10%(w/w)の地上部を1,3-プロパンジオール/水混合物(60/40)またはグリセリン/水混合物(60/40)に溶解し;
iii.60℃で2時間撹拌しながら抽出し;
iv.連続的な濾過工程により精製し;
v.有利には、典型的には真空蒸発または脱臭により、オイゲノールおよびメチルオイゲノールを除去し;かつ
vi.無菌濾過する。
【0043】
以下の説明において、「本発明の抽出物」という表現は、上記で定義した抽出物そのもの、または上記で説明した本発明の方法によって得られる抽出物を指すために用いられる。上記の方法により得られる抽出物は、上記で定義した抽出物そのものと同じ組成を有する。
【0044】
本発明の別の目的は、本発明の抽出物、および水/溶媒比(v/v)50/50~0/100、有利には30/70~10/90、より有利には20/80の水/溶媒混合物を含む組成物であり、前記溶媒は、グリコール、植物性グリセリンおよびそれらの混合物から選択され、好ましくは植物由来のグリコール、かつ好ましくは1,3-プロパンジオールから選択される。
【0045】
有利には、組成物は、該組成物の総重量に対して、0.001~30重量%、有利には0.001~10重量%(組成物の総重量に対する乾燥抽出物の重量として表される)の本発明の抽出物、および70~99.999重量%、有利には90~99.999重量%の水/溶媒混合物を含み、水/溶媒比は50/50~0/100、有利には30/70~10/90、より有利には20/80であり、溶媒はグリコール、植物性グリセリンおよびそれらの混合物から、好ましくは植物由来のグリコールから、好ましくは1,3-プロパンジオールから選択される。本発明のこの態様によれば、溶媒は、本発明の組成物、特に本発明の抽出物の物理的および微生物学的な安定化作用にとっての有効量である。
【0046】
本発明の別の目的は、オシマム・サンクタムの地上部のポリフェノールが豊富な本発明の抽出物を有効成分として含み、任意に適切な賦形剤を含む組成物である。本発明の抽出物は、抽出物そのものに関する上記の段落、および本発明の方法により得られる抽出物に関する上記の段落で定義した通りである。
【0047】
有利には、組成物は、化粧用、医薬用または皮膚用である。前記組成物は、好ましくは外部局所投与用として製剤化される。
【0048】
有利には、本発明の組成物は、該組成物の総重量に対して、0.001~10重量%、典型的には0.01~5重量%の本発明の抽出物を含み、抽出物の重量は乾燥抽出物として表される。
【0049】
本発明の組成物はまた、1種以上の他の活性成分を含んでもよい。
【0050】
本発明の組成物は、局所投与に適した様々な製剤の形態で製剤化することができ、特に、クリーム、エマルジョン、ミルク、軟膏、ローション、油、水溶液、水アルコール溶液、グリコール溶液、粉末、パッチ、スプレー、シャンプー、ワニスまたはその他の外部投与用製品が挙げられる。
【0051】
その性質(化粧的性質、医薬的性質または皮膚科学的性質)に応じて、本発明の組成物は、少なくとも1種の化粧的、薬学的または皮膚科学的に許容可能な賦形剤を含んでもよい。特に、本発明の組成物はまた、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、着色剤、化学フィルターまたは鉱物フィルター、保湿剤、温熱剤等から選択される、当業者に公知の、化粧的、薬学的または皮膚科学的に許容可能な少なくとも1種のアジュバントを含んでもよい。当業者であれば、一般知識を利用して本発明の組成物の配合をどのように適応させるかを知っている。
【0052】
本発明の組成物の最適な投与量および生薬形態は、患者または動物の年齢または体重、全身状態の重症度、処置に対する耐性、観察される副作用、皮膚のタイプ等の、患者または動物に適合した薬理学的、皮膚科学的または美容上の処置を確立する際に一般的に考慮される基準に従って決定することができる。
【0053】
本発明の別の目的は、未熟、正常または成熟/老化を問わず皮膚および/または粘膜(歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)および/または皮膚付属器(毛髪および爪)の障害または病変、有利には炎症反応、酸化反応、内因性または外因性のストレスに関連する障害(心理的ストレス、不安状態に関連するストレス、汚染(特に化学物質または大気汚染)に関連するかまたは関連しないラジカル侵襲に関連するストレス、および/またはUVまたはIR曝露に関連するストレス)、バリアまたは恒常性障害、老化、特に経時的老化および/または光線による老化、光感作性皮膚、および/または機械的または熱的な侵襲の予防および/または治療における使用のための本発明の抽出物または本発明の組成物である。
【0054】
本発明の別の目的は、血管障害、特に発赤およびクーペロース(couperose)の予防および/または治療における使用のための本発明の抽出物または本発明の組成物である。
【0055】
本発明の別の目的は、未熟、正常または成熟/老化を問わず皮膚および/または粘膜(歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)および/または皮膚付属器の微生物叢の不均衡および/または概不均衡に関連する障害の予防および/または治療における使用のための本発明の抽出物または本発明の組成物である。実際、本発明の抽出物は、未熟、正常または成熟/老化を問わず皮膚および/または粘膜(歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)および/または皮膚付属器および/またはそれらの付属器において、機械的侵襲、微生物的侵襲、熱的侵襲およびフリーラジカル侵襲に対する保護活性を有する。本発明の抽出物は微生物叢を防御するように作用し、したがって微生物叢の不均衡を防止するのに役立つ。本発明の抽出物は、皮膚の免疫防御および抗酸化システムの刺激にも役立つ。
【0056】
本発明の別の目的は、未熟、正常または成熟/老化を問わず皮膚および/または粘膜(歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)および/または皮膚付属物(毛髪および爪)の障害または病変、有利には炎症反応、酸化反応、内因性または外因性のストレスに関連する障害(心理的ストレス、不安状態に関連するストレス、汚染(特に化学物質または大気汚染)に関連するかまたは関連しないラジカル侵襲に関連するストレス、および/またはUVまたはIR曝露に関係するストレス)、バリアまたは恒常性障害、老化、特に経時的老化および/または光線による老化、光感作性皮膚、および/または機械的または熱的な侵襲の予防および/または治療のための化粧用組成物、医薬用組成物または皮膚用組成物の製造のための、本発明の抽出物または本発明の組成物の使用である。
【0057】
本発明の別の目的は、血管障害、特に発赤およびクーペロースを予防および/または治療するための医薬用組成物、化粧用組成物または皮膚用組成物の製造のための、本発明の抽出物または本発明の組成物の使用である。
【0058】
本発明の別の目的は、未熟、正常または成熟/老化を問わず皮膚および/または粘膜(歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)および/または皮膚付属器および/またはその付属器の微生物叢の不均衡および/または該不均衡に関連する障害を予防および/または治療するための医薬用組成物、化粧用組成物または皮膚用組成物の製造のための、本発明の抽出物または本発明の組成物の使用である。
【0059】
本発明のさらなる目的は、未熟、正常または成熟/老化を問わず皮膚および/または粘膜(歯肉、歯周炎、生殖器粘膜)および/または皮膚付属器(毛髪および爪)の障害または病変、有利には炎症反応、酸化反応、内因性または外因性のストレスに関連する障害(心理的ストレス、不安状態に関連するストレス、汚染(特に化学物質または大気汚染)に関連するかまたは関連しないラジカル侵襲に関連するストレス、および/またはUVまたはIR曝露に関連するストレス)、バリアまたは恒常性障害、老化、特に経時的老化および/または光線による老化、光感作性皮膚、および/または機械的または熱的な侵襲を予防および/または治療する方法であって、有効量の本発明の抽出物または本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与、特に局所投与することを含む方法である。
【0060】
本発明の別の目的は、血管障害、特に発赤およびクーペロースを予防および/または治療する方法であって、有効量の本発明の抽出物または本発明の組成物を、それを必要とする対象者に投与、特に局所投与することを含む方法である。
【0061】
本発明の別の目的は、未熟、正常または成熟/老化を問わず皮膚および/または粘膜(歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)および/または皮膚付属器、および/またはそれらの付属器の微生物叢の不均衡および/または該不均衡に関連する障害を予防および/または治療するための方法であって、有効量の本発明の抽出物または本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与、特に局所投与することを含む方法である。
【0062】
特に、本発明の組成物または抽出物は、未熟、正常または成熟/老化を問わず皮膚、皮膚付属器(毛髪および爪)および/または粘膜(歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)の炎症反応または刺激性反応、またはバリアまたは恒常性の病状または障害を予防および/または治療することを意図している。
【0063】
有利には、炎症反応または刺激性反応、皮膚バリアまたは恒常性の障害または病状または障害は:ざ瘡、酒さ(rosacea)エリスロクーペロース(erythrocouperose)、血管障害、特に発赤およびクーペロース、おむつ皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触皮膚炎、刺激性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎(新生児頭部皮膚炎)、敏感肌、反応性皮膚、乾燥肌(乾皮症)、乾燥肌、発赤のある肌、皮膚紅斑、老化した肌または光線により老化した肌、光感作性皮膚、色素沈着した肌(黒皮症、炎症後色素沈着・・・)、線状皮膚委縮がある皮膚、日焼け、化学物質、物理的変化(例えば、妊婦のストレス)を生じさせる物質、細菌性物質または真菌性物質による刺激、皮膚の老化、特に光線による老化、化学物質または大気汚染によるラジカル侵襲に関連する障害、および/またはUVまたはIRへの曝露に関連する障害である。
【0064】
有利には、炎症性反応または刺激性反応、粘膜バリアまたは恒常性の障害または病変または障害は、歯肉炎(新生児の過敏性歯肉、喫煙等による衛生上の問題)、および男性または女性の外生殖器球または内生殖器球の炎症である。
【0065】
有利には、炎症性反応、刺激性反応、皮膚付属器のバリアまたは恒常性の障害または病変または障害は、もろい爪(brittle nail)、壊れやすい爪(fragile nail)、弱った毛髪、もろい毛髪、乾燥した毛髪、脱毛症、脂漏性皮膚炎および毛嚢炎皮膚炎である。
【0066】
特に有利には、本発明の組成物または抽出物は、皮膚の老化、特に、例えば日光への曝露または炎症現象に関連する経時的老化および光線による老化に対する抗老化剤として意図されるか、または炎症を起こした皮膚に作用する。
【0067】
好ましい実施形態において、本発明の抽出物は、
-皮膚および/または粘膜および/または皮膚付属器の障害または病変、有利には炎症反応、心理的ストレス、不安状態に関連するストレス、化学物質または大気汚染に関連するかまたは関連しないラジカル侵襲に関連するストレス、および/またはUVまたはIR曝露に関連するストレス等の内因性または外因性のストレスに関連する障害であって、有利には敏感肌、反応性皮膚および/または反応性粘膜、荒れた皮膚、炎症を起こした皮膚、バリアまたは恒常性障害、光感作性皮膚、機械的および/または熱的な侵襲から選択される障害または病変;および/または
-血管障害、好ましくは発赤およびクーペロース;および/または
-有利にはアトピー性皮膚炎、湿疹、不快な腋窩臭の発生、皮膚バリアの弱体化、ざ瘡、乾癬、汗腺膿瘍、毛嚢炎、新生児頭部皮膚炎、ふけ、掻痒、特に頭皮のかゆみ、カンジダ症および細菌性膣炎から選択される微生物叢の不均衡
の予防および/または治療に用いられ、かつ/または治療剤として用いられる。
【0068】
本発明の別の目的は、脱水肌;赤みのある肌;老化した肌;肌の老化の治療および/または予防における、本発明の抽出物または本発明の組成物の化粧品への使用である。
【0069】
本発明の別の目的は、皮膚付属器のケア、特にもろい爪;壊れやすい爪;弱った毛髪;もろい毛髪;および乾燥した毛髪の予防のための、本発明の抽出物または本発明の組成物の化粧品への使用である。
【0070】
本発明はまた、皮膚および/または皮膚付属器および/または粘膜の状態および/または外観の改善を目的とした、それらの美容ケアの方法であって、本発明の組成物または抽出物を投与すること;特に皮膚の硬さ、弾力性もしくは長度を改善し、皮膚および粘膜の機械的特性を強化し、特に干からびている(withered)皮膚、しなびている(limp)皮膚、膨張した(distended)皮膚および/またはたるんだ(sagging)皮膚を防止し、かつ/または皮膚の弾力性もしくは硬さを強化および/または回復し、または小じわおよびしわを治療することからなる方法にも関する。
【0071】
特に、本発明は、皮膚バリアの損傷およびその脱水の予防を目的とした、または皮膚および/または粘膜の保湿を目的とした、皮膚および/または粘膜および/または皮膚付属器の美容ケアの方法であって、本発明の組成物または抽出物を皮膚および/または粘膜および/または皮膚付属器に適用することからなる方法に関する。
【0072】
本発明はまた、老化の予防を目的とした、皮膚および/または皮膚付属器の美容ケアの方法であって、本発明の組成物または抽出物を皮膚および/または皮膚付属器に適用することからなる方法にも関する。
【0073】
本発明はまた、皮膚および/または粘膜を保湿するため、皮膚の弾力性または硬さに作用するため、特に張筋剤または抗しわ剤として敏感肌に作用するための、本発明の組成物または抽出物または組成物の化粧品の使用にも関する。
【0074】
特に、本発明は、脱水肌;赤みのある肌;老化した肌の治療および/または予防;肌の色の均一化;皮膚のシミまたは皮膚の老化の低減、特に経時的老化および/または光線による老化の低減における本発明の組成物または抽出物の美容的な使用に関する。
【0075】
本発明の化粧品の使用および美容ケア方法は、典型的には健康な皮膚または体の健康な部分に対して行われ、治療的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、コルチゾールストレス下でのケラチノサイトによるNO産生の測定を示す。
【
図2】
図2は、汚染物質ストレスにさらされた線維芽細胞の細胞生体エネルギーに対するホーリーバジル抽出物の効果を示し、特に
図2Aは酸素消費に対する効果、
図2BはATP産生に対する効果、
図2Cは乳酸産生に対する効果、および
図2DはNAD/NADH比に対する効果を示す(
*p<0.05;
**p<0.01対未処理対照;
#p<0.05;
##p<0.01対汚染物質)。
【
図3】
図3は、細胞あたりの損傷したミトコンドリアの割合(%)を示す(
###p<0.0001対汚染物質)。
【
図4】
図4は、リソソーム密度(強度/μm
2)を示す(
***p<0.0001対対照;
#p<0.05;
###p<0.0001対汚染物質)。
【
図5】
図5は、マイトファジー(損傷したミトコンドリアと共局在するリソソームの割合)(
***p<0.0001対対照;
###p<0.0001対汚染物質)。
【
図6】
図6は、T0とT40hとの間の線維芽細胞の移動の割合を示す。
【実施例】
【0077】
実施例1:本発明の抽出物
ホーリーバジルの抽出物を下記の方法により得た。
a)粉砕したオシマム・サンクタム(紫色品種)の地上部の10%(w/w)を40/60w/wの水/プロパンジオール混合物に溶解した。
b)60℃で2時間抽出した
c)連続濾過により固体/液体を分離した。
【0078】
このようにして得られたポリフェノールが豊富な液体抽出物は、下記の特性を有していた(分子の重量%/得られた抽出物の乾燥抽出物)。
・乾燥抽出物(2時間、105℃、通風オーブン):1.0%
・総ポリフェノール:11.4%
・フラボノイド:3.6%
・ヒドロキシ桂皮誘導体:7.6%
【0079】
実施例2:本発明の抽出物
ホーリーバジルの抽出物を下記の方法により得た。
a)粉砕したオシマム・サンクタム(緑色品種)の地上部の10%(w/w)を40/60w/wの水/プロパンジオール混合物に溶解した。
b)60℃で3時間抽出した。
c)連続濾過により固体/液体を分離した。
【0080】
このようにして得られたポリフェノールが豊富な液体抽出物は、下記の特性を有していた(分子の重量%/得られた抽出物の乾燥抽出物)。
・乾燥抽出物(2時間、105℃、通風オーブン):1.4%
・総ポリフェノール(Folin Ciocalteu法により測定):16%
・フラボノイド:3.5%
・ヒドロキシ桂皮誘導体:20%。
【0081】
実施例3:本発明の抽出物の生物活性試験
A.抗酸化作用
A.1.抗酸化作用
A.1.1正常なヒトケラチノサイトにおけるH
2
O
2
誘導性のROS産生に対する活性
H2O2誘導性酸化ストレスにさらされたケラチノサイトにより産生されるROS(反応性酸素種)の量を評価することにより、ホーリーバジル抽出物の抗酸化活性を調べた。
【0082】
a.材料および方法
正常なヒトケラチノサイトを、H2DCF-DAプローブの取り込み前に、実施例1に従って得られた6つの濃度(0.00032%~0.01%dm)のホーリーバジル抽出物または抗酸化参照分子:10μMのケルセチンまたは500μMのビタミンCで24時間処理した。
【0083】
次いで、ケラチノサイトを100μMの過酸化水素(H2O2)で20分間刺激した。
【0084】
ROSの産生を、ROSと接触させたプローブにより放出される蛍光を測定することにより評価した。
【0085】
結果を、一元配置分散分析およびその後のTukery検定を用いて統計的に分析した。
【0086】
b.結果
結果を表2にまとめる。ホーリーバジル抽出物は、用量依存的に、H2O2誘導性酸化ストレスに応答したケラチノサイトによるROSの産生を有意に阻害し、したがって抗酸化活性を示した。
【0087】
【0088】
A.1.2.再構築されたヒト表皮におけるUVA誘導性ROS産生に対する活性
UVA照射により誘導される酸化ストレスに対する保護効果を、再構成されたヒト表皮に対するROSアッセイにより調べた。
【0089】
a.材料および方法
再構成されたヒト表皮を、実施例1に従って得られた3%のバジル抽出物を含む配合物またはそのプラセボで24時間前処理した。次いで、表皮に30J/cm2のUVAを照射した。
【0090】
ROSの産生を、ROSと接触させたH2DCF-DAプローブにより放出される蛍光を測定することにより評価した。
【0091】
b.結果
結果を表3にまとめる。3%で配合されたホーリーバジル抽出物は、UVA誘導性ROS生成を阻害し、UVA照射により誘導される酸化ストレスに対する保護効果が実証された。
【0092】
【0093】
1.3.正常なヒトケラチノサイトおよび線維芽細胞におけるメナジオン誘導性ROS産生に対する活性
メナジオン誘導性酸化ストレスにさらされたケラチノサイトまたは線維芽細胞により産生されるROSの量を評価することにより、ホーリーバジル抽出物の抗酸化活性を調べた。
【0094】
a.材料および方法
一方で正常なヒトケラチノサイト、他方で正常なヒト線維芽細胞を、実施例1に従って得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物(dm)または10mMのN-アセチルシステイン(NAC)、抗酸化物質の参照として用いられるROSスカベンジャー分子で24時間処理した。次いで、50μMまたは20μMのメナジオン(2-メチル-1,4-ナフトキノン)の存在下で1時間インキュベートすることにより、酸化ストレスを誘導した。
【0095】
ROSをCellRox(登録商標)プローブで標識し;ROSの量に比例する細胞内蛍光を測定した。
【0096】
結果を、一元配置分散分析法およびそれに続くDunnett’s検定を用いて統計的に分析した。
【0097】
b.結果
結果を表4および5に示す。ホーリーバジル抽出物は、ケラチノサイト(表4)および線維芽細胞(表5)におけるメナジオンストレス誘導性ROS産生を有意に阻害し、その抗酸化活性が確認された。
【0098】
【0099】
【0100】
A.2.脂質過酸化阻害
ROSは脂質過酸化の主要な活性化因子であり、主に細胞膜に結合した多価不飽和脂質を標的とする。ホーリーバジル抽出物の抗脂質過酸化活性を、クメンヒドロペルオキシドにより誘導される酸化ストレスにさらされたケラチノサイトまたは線維芽細胞において調べた。
【0101】
a.材料および方法
一方で正常なヒトケラチノサイト、他方で正常なヒト線維芽細胞を、実施例1に従って得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物、または抗酸化物質の参照である200μMのビタミンEで24時間処理した。次いで、200μMまたは50μMのクメンヒドロペルオキシドの存在下で1時間インキュベートすることにより、酸化ストレスを誘導した。
【0102】
過酸化脂質を、BODIPY(登録商標)581/591 C11で標識することにより明確化し;細胞内の蛍光を測定した。
【0103】
結果を、一元配置分散分析法およびそれに続くTukey検定を用いて統計的に分析した。
【0104】
b.結果
結果を表6および7にまとめる。ホーリーバジル抽出物は、ケラチノサイト(表6)および線維芽細胞(表7)における酸化ストレス誘導性脂質過酸化を有意に阻害し、その抗酸化活性が確認された。
【0105】
【0106】
【0107】
A.3.抗酸化防御への影響
グルタチオン(GSH)は、ROSを中和することができる主要な内因性抗酸化ペプチドである。細胞内のGSHの枯渇は、ミトコンドリア毒性に関連する酸化ストレス誘導性損傷の原因となる。
【0108】
細胞内のグルタチオン貯蔵に対するホーリーバジル抽出物の効果を、メナジオン誘導性酸化ストレスにさらされた線維芽細胞において評価した。
【0109】
a.材料および方法
正常なヒト線維芽細胞を、実施例1に従って得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物、または抗酸化物質の参照である10mMのNACで24時間処理した。次いで、25μMのメナジオンの存在下で4時間インキュベートすることにより、酸化ストレスを誘導した。
【0110】
GSHストックを、蛍光プローブであるモノクロロビマン(Mbi)を用いてモニタリングし;GSHの量に比例する細胞内蛍光を測定した。
【0111】
b.結果
結果を表8にまとめる。ホーリーバジル抽出物は、メナジオン誘導性酸化ストレス下で枯渇した細胞内グルタチオンを、抗酸化参照(10mMのNAC)よりも有意に回復し、抽出物の抗酸化活性が確認された。
【0112】
【0113】
A.4.結論
総合すると、これらの結果は、ホーリーバジル抽出物の抗酸化活性を示すものである。
【0114】
B.抗炎症作用
ホーリーバジル抽出物の抗炎症活性を、PMA誘導性炎症誘導性ストレスに応答してケラチノサイトによって産生されるインターロイキン8(IL8)をアッセイすることによって調べた。
【0115】
a.材料および方法
正常なヒトケラチノサイトを、実施例1に従って得られた0.001%、0.005%または0.01%のホーリーバジル抽出物の乾燥物、または抗炎症の参照である0.1μMのデキサメタゾンの存在下で24時間プレインキュベートした。次いで、細胞を、10μg/mLのPMA(ホルボール-ミリステート-アセテート)の存在下で24時間処理することにより刺激した。
【0116】
処理の終了時に、産生されたIL8を培養上清におけるELISAアッセイによって定量した。
【0117】
結果を、Studentt検定を用いて統計的に分析した。
【0118】
b.結果
結果を表9にまとめる。ホーリーバジル抽出物は、ケラチノサイトにおけるPMA誘導性のIL8産生を有意に阻害し、場合によっては、参照であるデキサメタゾンよりも有意に阻害し;したがって抗炎症活性を示す。
【0119】
【0120】
C.抗老化活性
皮膚の老化は、マトリックス線維、主にコラーゲンおよびエラスチンの質および量の低下を伴う、真皮マトリックスの変化によって特徴付けられる。
【0121】
ホーリーバジルの抗老化活性を、標準条件下、および「炎症老化」または軽度の炎症としても知られる慢性炎症をモデル化した炎症性ストレスの条件下で、真皮マトリックスマーカーの発現および産生を刺激する能力によって評価した。
【0122】
C.1.真皮マトリックスへの影響
真皮マトリックスマーカーの発現に対するホーリーバジル抽出物の効果を、培養中の正常なヒト皮膚線維芽細胞または再構築されたヒト皮膚で評価した。
【0123】
C.1.1正常なヒト線維芽細胞における真皮マトリックスマーカーの遺伝子発現の刺激
a.材料および方法
正常なヒト皮膚線維芽細胞を、実施例1に従って得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物、または陽性アッセイの参照である5ng/mLのTGFβ1の存在下で48時間インキュベートした。
【0124】
コラーゲンI、エラスチン、デルマトポンチン、MMP1(マトリックス-メタロプロテイナーゼ1)の遺伝子発現をリアルタイム定量PCRにより評価した。
【0125】
結果を、一元配置分散分析(ANOVA)およびそれに続くDunnett’s事後検定を用いて統計的に分析した。
【0126】
b.結果
結果を表10にまとめる。ホーリーバジル抽出物は、真皮マトリックスの密度に関与する重要なマーカーであるコラーゲンI、エラスチンおよびデルマトポンチンの遺伝子発現を有意に刺激した。さらに、ホーリーバジル抽出物は、真皮マトリックスの分解に関与する酵素であるMMP1の遺伝子発現を有意に阻害した。
【0127】
これらの結果は、真皮マトリックスの緻密化、したがって老化防止活性を実証するものである。
【0128】
【0129】
C.1.2正常なヒト線維芽細胞における真皮マトリックスマーカーのタンパク質発現の刺激
a.材料および方法
ヒト真皮線維芽細胞を、実施例1に従って得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物、または陽性の参照として用いられる10μMのビタミンCおよび5ng/mLのTGFβの混合物で48時間処理した。
【0130】
コラーゲンIの産生を、免疫蛍光標識および画像分析によって評価した。
【0131】
b.結果
結果を表11にまとめる。ホーリーバジル抽出物は、線維芽細胞におけるコラーゲンI標識を有意に刺激した。この結果は、真皮マトリックスの緻密化に対する抽出物の活性を裏付けるものである。
【0132】
【0133】
C.1.3正常なヒト線維芽細胞における真皮マトリックスマーカーのタンパク質発現の刺激
a.材料および方法
実施例1に従って得られた3%ホーリーバジル抽出物を含有する製剤(クリーム)またはそのプラセボを、再構成されたヒト皮膚の表面に適用した。24時間のインキュベーション後、皮膚への効果に関する目的のマーカーの遺伝子発現をリアルタイム定量PCRにより評価した。
【0134】
b.結果
結果を表12にまとめる。ホーリーバジル抽出物は、再構築された皮膚におけるCLN3およびPXN遺伝子の発現を有意に増大させた。
【0135】
CLN3は、オートファジープロセスの調節に関与するリソソーム/エンドソーム膜貫通タンパク質(セロイド-リポフスチン症ニューロン3)をコードする。オートファジーは、損傷したタンパク質および細胞小器官の分解および再生利用を可能にする細胞内解毒プロセスである。このプロセスは、細胞の機能および恒常性を維持するために不可欠である。オートファジーの刺激は、老化を遅らせ、細胞の寿命を延ばすために興味深いものである。
【0136】
PXNは接着斑分子(パキシリン)をコードし、その発現は加齢に伴い低下するため、抗老化作用の標的となる。パキシリンは細胞とマトリックスとの結合、および線維芽細胞とそのマトリックスとの機械的シグナル伝達において重要な役割を果たすため、加齢に伴いパキシリンが失われると細胞機能が損なわれ、その結果、皮膚の老化が開始または悪化する可能性がある。その発現を誘導すると、加齢に伴うコラーゲンの喪失および真皮の収縮性を回復するのに役立つ可能性がある。
【0137】
【0138】
C.2.炎症老化モデルにおける影響
加齢に伴い、無症状ではあるものの軽度で慢性的な炎症が皮膚組織に発生することがある。これは、生涯にわたり外部ストレスに累積的にさらされた結果である。この炎症は、組織損傷や活性酸素種の生成を引き起こし、皮膚の老化プロセスを加速させ得る炎症性サイトカイン(IL1、IL6、TNF、CRP...)の放出を引き起こす。炎症プロセスに関連するこの皮膚の老化現象は、炎症老化として知られている。
【0139】
ホーリーバジル抽出物を、炎症プロセスを再現するin vitroモデルで評価し;IL1α産生の刺激により表される炎症を、再構成された表皮で誘導した。次いで、これらの再構成された表皮からの馴化培地を線維芽細胞に適用し、表皮によって産生されるIL1αにより変化する真皮マーカーの発現を評価した。
【0140】
a.材料および方法
再構成された表皮を、実施例1に従って得られた3%ホーリーバジル抽出物を含む製剤(クリーム)またはそのプラセボで局所的に処理し、または抗炎症の参照である1μMのデキサメタゾンで全体的に処理した。24時間のプレインキュベーション後、表皮を0.5μg/mLのPMAで刺激し、再度24時間インキュベートした。
【0141】
培養上清を収集し、一方でIL1αアッセイを行い、他方でこれらの上清(馴化培地)を正常なヒト皮膚線維芽細胞の培養物上にプレーティングした。
【0142】
馴化培地の存在下で線維芽細胞を24時間インキュベートした後、リアルタイム定量PCRにより目的のマーカーの発現を評価した。
【0143】
結果を、ANOVAおよびそれに続くTukey検定を用いて統計的に分析した。
【0144】
b.結果
結果を表13および表14に示す。3%で配合されたホーリーバジル抽出物は、再構成された表皮上でPMA誘導性IL1α放出を有意に阻害した(表13)。この効果は、プラセボの効果よりも有意に高かった。
【0145】
PMA刺激された再構成表皮からの線維芽細胞培養物への馴化培地の適用は、炎症マーカーの遺伝子発現、酸化ストレス、および真皮マトリックスの合成および分解の変動を誘導した(表14)。これらの結果は、炎症老化モデルを実証するものである。
【0146】
これらの条件下で、ホーリーバジル抽出物は、サイトカインおよびケモカイン(CXCL1、IL8、IL6、CCL2)、酸化ストレスマーカー(MT1G、SOD2)、マトリックス分解酵素(MMP1、MMP3)およびICAM1の過剰発現を調節した。この抽出物は、マトリックスアセンブリマーカー(HAS2、DPT)の発現も回復した。
【0147】
これらの結果は、ホーリーバジル抽出物が炎症老化プロセスを調節し得ることを示すものである。
【0148】
【0149】
【0150】
D.様々なストレスに対する防御活性
皮膚は毎日、様々な種類の外因性および/または内因性のストレスにさらされており、その機能および質が変化し、最終的には不可逆的なダメージにつながる可能性がある。
【0151】
ホーリーバジル抽出物の保護効果を、様々な外部ストレス(汚染)または内部ストレス(心理的ストレス)を表す様々なモデルにおいて評価した。
【0152】
D.1.心理的ストレスによる皮膚ダメージからの保護
一酸化窒素(NO)は、皮膚の恒常性の調節に関与する反応性種である。この非常に不安定な分子は、メラニン生成、創傷治癒、炎症調節、免疫調節、血管拡張等の生理学的反応および恒常性反応を調節するために、多数の細胞種によって合成および放出される。
【0153】
低レベルのNOは細胞シグナル伝達にとって重要であるが、高レベルのNOの放出は一般に酸化ストレスと関連する。
【0154】
心理的ストレスは、中枢神経系と内分泌系とを結び付ける視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の活性化と、コルチゾール等の内因性グルココルチコイドの増大とを特徴とする。
【0155】
心理的ストレスが皮膚の恒常性に悪影響を及ぼし、免疫反応および炎症反応の変化を引き起こすことが、数多くの研究で報告されている。炎症反応には、NOを含むフリーラジカルの活性化が含まれる。
【0156】
ケラチノサイトをコルチゾールで処理し、誘導されたストレスのバイオマーカーとしてNOを定量して、皮膚に対する心理的ストレス(情緒障害/不安)の影響を再現するモデルでホーリーバジル抽出物を評価した。
【0157】
a.材料および方法
正常ヒト皮膚ケラチノサイトによるNO産生を、実施例1に従って得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物、または1mMのアスコルビン酸(AA)(陽性の参照)の存在下で1μMコルチゾールで処理した後、10分間の連続アンペロメトリーにより測定した。
【0158】
b.結果
結果を
図1に示す。ホーリーバジル抽出物は、コルチゾールストレスによりケラチノサイトで誘導されるNO生成を有意に阻害した。したがって、この抽出物は、皮膚の恒常性に対する感情的/心理的ストレスの悪影響に拮抗する。
【0159】
D.2.DNA損傷に対する保護
大気汚染物質は、皮膚を含む多くの組織に悪影響を及ぼす。汚染物質に繰り返しさらされると、早期老化、色素脱失およびDNA損傷が引き起こされる可能性がある。
【0160】
ホーリーバジル抽出物の保護効果を、汚染物質ストレスによりケラチノサイトに誘導されるDNA損傷(二本鎖切断)について評価した。
【0161】
a.材料および方法
正常なヒト表皮ケラチノサイトを、カンプトテシンに1時間さらす前に、実施例1で得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物、または参照であるニコチンアミドの存在下で24時間プレインキュベートした。カンプトテシンは遺伝毒性化合物であり、DNA二本鎖の切断の誘導に用いられるトポイソメラーゼI阻害剤である。
【0162】
二本鎖の切断を、γH2AXの免疫染色(二本鎖の切断に応答して早期に介入するヒストンH2AXのリン酸化)によって検出し、画像分析によって定量した。
【0163】
結果を、ANOVAおよびそれに続くTukey検定を用いて統計的に分析した。
【0164】
b.結果
結果を表15に示す。ホーリーバジル抽出物は、カンプトテシン処理により誘導される二本鎖DNAの切断を有意に阻害した。したがって、この抽出物は、遺伝毒性汚染物質ストレスに対する保護活性を示す。
【0165】
【0166】
D.3.汚染物質ストレスに対するミトコンドリア機能の保護
都市汚染に対するホーリーバジル抽出物の保護効果を、正常なヒト線維芽細胞において調べた。抽出物の存在下で細胞を都市汚染物質にさらし、細胞の生体エネルギーを、オートファジー/マイトファジーの発生をBBS+テクノロジーを用いて分析した。
【0167】
ミトコンドリア機能の変化は老化プロセスにおいて中心的な役割を果たし;加齢に伴うROS産生の90%はミトコンドリアに由来するものである。
【0168】
環境要因(紫外線、汚染)は細胞機能を低下させ、酸化ストレスを増大させ、早期老化の一因となる可能性がある。
【0169】
細胞内ROSは、主にミトコンドリアの電子伝達鎖の機能不全によって形成される。
【0170】
ミトコンドリアDNAは、最終的に老化プロセスに寄与する以下の現象であるROSに対して特に感受性である:
エネルギー生産の減少、
酸化ストレスの増大、
ミトコンドリアの機能の増大。
【0171】
D.3.1細胞の生体エネルギーの研究
a.材料および方法
正常なヒト皮膚線維芽細胞を、0.1%の都市汚染物質混合物ならびに実施例1で得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物の存在下で120分間インキュベートした。
【0172】
細胞の生体エネルギーを、酸素消費量、ATP産生、細胞外乳酸レベルおよびNAD+/NADH比の多重定量化を含むBBS+(Bioenergetic Balance Screen Plus)法を用いて評価した。
【0173】
結果を、Studentのt検定を用いて統計的に分析した。
【0174】
b.結果
結果を
図2に示す。細胞を都市汚染物質にさらすと、呼吸電子伝達鎖の変化が誘導され、酸素消費量およびATPレベルが低下した。
【0175】
これらの条件下では、ホーリーバジル抽出物は用量依存的に酸素消費速度を増大させ、ATP産生を刺激した。これらの観察結果は、Krebs回路機能およびエネルギー生成の刺激および正常化に対する抽出物の直接的な効果を示すものである。この抽出物は、汚染物質により引き起こされるミトコンドリア呼吸鎖の変化を解決することもできる。最後に、抽出物による乳酸生成の減少は、細胞の生体エネルギーにおける呼吸鎖活性を再び関与させながら、ATP生成への新規解糖の寄与を低下させることを示すものである。
【0176】
ホーリーバジル抽出物は、汚染物質によるストレスによって変化したエネルギーバランスを正常化するのに役立つ。
【0177】
D.3.2オートファジー/マイトファジーの研究
a.材料および方法
正常なヒト皮膚線維芽細胞を、0.1%の都市汚染物質混合物ならびに実施例1で得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物の存在下で120分間インキュベートした。
【0178】
オートファジーとマイトファジーの分析を、リソソームマーカーおよび損傷したミトコンドリアに特異的な色素を介して評価し;損傷したミトコンドリアを、ミトコンドリア膜の損傷が発生したときに発せられ、ミトコンドリア膜に共有結合した蛍光色素の反応により生成される赤色蛍光により視覚化した。リソソーム色素を用いてリソソームを標識し、損傷したミトコンドリアのリソソームへの共局在を評価した。
【0179】
3つのパラメータを分析した:
-細胞あたりの損傷したミトコンドリアの割合;
-細胞あたりのリソソームの密度(オートファジーを表すリソソーム指数);
-損傷したミトコンドリアを含むリソソームの割合(マイトファジーを表すマイトファジー指数)。
【0180】
結果を、Studentのt検定を用いて統計的に分析した。
【0181】
b.結果
結果を
図3、4および5に示す。細胞が都市汚染物質にさらされると、損傷したミトコンドリアの数が増大した。ホーリーバジル抽出物は、損傷したミトコンドリアの数を強力かつ有意に抑制した(
図3)。
【0182】
マクロオートファジー中に、再生利用された損傷したミトコンドリア膜をリソソーム区画に輸送するためにオートファゴソームが形成された。汚染物質のストレスにより、細胞あたりのリソソームの密度が有意に増大し、オートファジープロセスの増大が示された。ホーリーバジル抽出物はリソソーム密度を低下させ、正常化した(
図4)。
【0183】
マイトファジーは、損傷したミトコンドリアのシグナルと共局在するリソソームの割合で表される。汚染により、損傷したミトコンドリアを含むリソソームの頻度が増大し、マイトファジープロセスの増大が実証された。汚染により、いずれもがミトコンドリア膜の損傷を引き起こすミトコンドリアおよび小胞体のストレスを増大させた。ストレス下で観察されるマイトファジーの増大は、損傷したミトコンドリアおよび/または奇形のタンパク質または脂質を細胞が除去しようとしていることに関連する。ホーリーバジル抽出物は、汚染物質ストレス誘導性のマイトファジーを低下させ、正常化した(
図5)。
【0184】
全体として、ホーリーバジル抽出物は、ミトコンドリア損傷に対する汚染の影響を逆転させ、オートファジーおよびマイトファジーのプロセスを正常化した。これらの結果は、外部ストレスに対するミトコンドリアネットワークの保護活性を示すものである。
【0185】
E.治癒促進活動
ホーリーバジル抽出物の治癒促進活性を、スクラッチアッセイモデルにおいて線維芽細胞の遊走を評価することにより調べた。
【0186】
a.材料および方法
正常なヒト皮膚線維芽細胞の集密マット上に機械的なひっかき傷を付けた。「傷跡」を付けた直後に、実施例1で得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物、または陽性コントロールである10-5Mのインスリンを培地に添加し、細胞遊走を細胞核の免疫蛍光標識により経時的にモニターした。移行率を計算した。
【0187】
b.結果
結果を
図6に示す。0.005%のホーリーバジル抽出物は、線維芽細胞の移動を刺激し、抽出物の治癒促進活性を示した。
【0188】
F.保湿作用
ホーリーバジル抽出物の効果を、ケラチノサイトにおけるアクアポリン-3産生を誘導する能力について評価した。
【0189】
水分補給は、皮膚のバリア機能の損傷を防ぐための重要な基準である。アクアポリン-3は、皮膚の水分補給において重要な役割を果たし;この膜貫通タンパク質は、表皮の水分補給を維持するために、水およびグリセロールのケラチノサイトへの輸送に関与している。
【0190】
a.材料および方法
正常なヒト表皮ケラチノサイトを、実施例1で得られた0.001%および0.005%のホーリーバジル抽出物の乾燥物、または陽性の参照であるレチノイン酸の存在下で24時間インキュベートした。アクアポリン-3の発現を免疫染色により評価し、画像分析により定量した。
【0191】
b.結果
結果を表16に示す。0.001%のホーリーバジル抽出物の乾燥物は、ケラチノサイトにおけるアクアポリン-3発現を有意に増大させた。この結果は、抽出物の保湿活性を明らかにするものである。
【0192】
【0193】
G.皮膚微生物叢に対する活性
ホーリーバジル抽出物の効果を、皮膚微生物叢を代表する様々な細菌株について、より具体的にはバイオフィルムを形成する能力について調べた。
【0194】
a.材料および方法
研究された細菌株:
-スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)MFP04;
-スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)MFP03;
-コリネバクテリウム・ゼロシス(Corynebacterium xerosis)CIP100653T/ATCC373;
-ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)0116。
【0195】
a1.細菌の増殖に対する抽出物の影響の研究
実施例1で得られたホーリーバジル抽出物の1:50希釈物が6種の細菌モデルの増殖に及ぼす影響を、マルチウェルインキュベーター/プレートリーダーを用いて、連続撹拌下で24時間(スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・アウレウス)または48時間(ミクロコッカス・ルテウス、コリネバクテリウム・ゼロシス)増殖をモニタリングすることによって調べた。野生型株を参照として、各細菌株の世代時間を測定した。統計的差異を、Mann-Whitney検定を用いて決定した。
【0196】
a2.バイオフィルム形成への影響の研究
各細菌種のバイオフィルム生成を、クリスタルバイオレット染色技術を用いて、マルチウェルプレートで研究した。結果を正規化し、コントロール培地におけるバイオフィルム形成値のパーセンテージとして表した。統計的差異を、Mann-Whitney検定を用いて決定した。
【0197】
b.結果
結果を表17および表18に示す。ホーリーバジル抽出物は、共生する菌株の増殖を大きく変えることなく、病原菌株(スタフィロコッカス・アウレウス)の世代時間を延長した(表17)。
【0198】
さらに、ホーリーバジル抽出部は、研究された他の菌株のバイオフィルム形成能力を変えることなく、スタフィロコッカス・アウレウスのバイオフィルム形成能力を強力かつ有意に変化させた(表18)。
【0199】
これらの結果は、皮膚微生物叢のバランスを維持する抽出物の能力を示すものである。
【0200】
【0201】
【0202】
実施例4:本発明の抽出物の臨床研究
本発明のホーリーバジル抽出物の臨床的な抗老化効果を、生体内臨床研究によって評価した。この目的のために、実施例1に従って得られた3%ホーリーバジル抽出物(以下、活性と称する)を含有する製剤(クリーム)、またはそのプラセボを評価した。
【0203】
A.プロトコル
この研究は二重盲検プラセボ対照研究とした。被験者は、ホーリーバジル抽出物(活性物質)またはプラセボ(包含時にランダム化)を含有するクリームを56日間、1日2回(朝および夕方)適用した。
【0204】
【0205】
募集された被験者に対して定義された対象の基準は下記の通りであった。
・性別:女性
・年齢:40~60歳
・フォトタイプ:I~III
・人種:白人
・しわのある被験者(目尻、額)
・6~0日目に化粧品を使用しない
【0206】
有効性を下記の手法を用いて評価した(D0、D28およびD56で測定)。
・画像解析-トポグラフィー
・生体力学的皮膚特性の測定
・交差偏光写真
【0207】
B.しわに対するアンチエイジング効果の評価
a.目尻のしわに対する結果
D0、D28およびD56でトポグラフィー解析により得られた結果を下記の表に示す。
【0208】
有効成分は、D56で、検出されたしわの面積および長さを有意に減少させ、プラセボと比較して有意な差を示した。
【0209】
【0210】
b.額のしわに対する効果
D0、D28およびD56でトポグラフィー解析により得られた結果を下記の表に示す。
【0211】
全体の領域に関して:有効成分は、D28では全体的に額のしわを有意に改善したが、D56では変化はなかった。プラセボは、D28では有意な変化を引き起こさなかったが、D56では全体的に有意な悪化を引き起こした。全体として、評価したすべての解剖学的パラメータについて、D28およびD56で有効成分に有利な有意な差が見られた。
【0212】
【0213】
d.結論-抗しわ効果
これらの結果から、目尻のしわ(しわの面積および長さの改善)および額のしわ(解剖学的パラメータの改善)に対して、プラセボとは大きく異なる抗しわ効果が示された。
【0214】
C.皮膚の生体力学特性に対するアンチエイジング効果の評価
D0、D28およびD56でCutometryによって得られた結果を下記の表に示す。
【表22】
【0215】
有効成分はD56で弾力性(UrおよびUa)を改善したが、プラセボは顕著な悪化を引き起こした。活性とプラセボとの差は、いずれのパラメータでも活性を支持する有意な差であった。
【0216】
有効成分は、D56でのUr/Uf総弾性力を改善した。悪化を引き起こしたプラセボと比較すると、その差は顕著であった。
【0217】
有効成分は、D28およびD56でのUa/Uf生物学的弾力性を有意に改善した。D56では、悪化を引き起こしたプラセボと比較すると、その差は顕著であった。
【0218】
有効成分は、D56での正味弾力性Ur/Ueを改善した。D56では、悪化を引き起こしたプラセボと比較すると、その差は顕著であった。
【0219】
有効成分は、D28でQ1粘弾性回復を改善し、D56で有意に改善した。D56では、悪化を引き起こしたプラセボと比較すると、その差が顕著であった。
【0220】
有効成分は、D56でQ2弾性回復力を改善した。D56では、悪化を引き起こしたプラセボと比較すると、その差が顕著であった。
【0221】
有効成分は、D28およびD56でQ3粘性回復を有意に改善した。D56では、有意な変動を示さなかったプラセボと比較すると、その差は有意であった。
【0222】
結論-生体力学特性:
有効成分は、プラセボと比較して皮膚の生体力学特性を有意に改善し、皮膚の張性と弾力性を改善した。
【0223】
D.肌色に対するアンチエイジング効果の評価:写真で測定した色および均一性
D0、D28およびD56で画像解析により得られた結果を、下記の表に示す。
【表23】
【0224】
有効成分は、D28およびD56で赤みa*を有意に軽減した。この差は、D28およびD56で同じく赤みが有意に軽減されたプラセボと比較して、D28およびD56で有効成分を支持するものである。
【0225】
有効成分は、D28およびD56でヘモグロビンを減少させた。
【0226】
有効成分は、H76からD56まで肌の色調の均一性を有意に改善した。
【0227】
結論-肌色評価
有効成分は、肌の明るさ、赤み、均一性を有意に改善した。
【0228】
E.臨床試験結果の概要
・しわに対するアンチエイジング効果:
有効成分は、顔の上部のしわ、すなわち目尻のしわや額のしわに対する老化防止効果が機器によって観察された。プラセボと比較して、有効成分を支持する有意な差が時間の経過とともに観察された。
【0229】
・生体力学特性に対するアンチエイジング効果:
有効成分は、検討したパラメータに応じて、D28およびD56で皮膚の張度および弾力性を有意に改善し、有効成分の方がプラセボと比べて有意な差があった。
【0230】
・肌色および均一性への影響:
有効成分は、D56での肌の色調の均一性を改善し、プラセボと比較して有効成分の方が有利な差があった。
【国際調査報告】