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特表2024-504350ウステキヌマブのバイオシミラー製造用細胞株及びその製造方法
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  • 特表-ウステキヌマブのバイオシミラー製造用細胞株及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ウステキヌマブのバイオシミラー製造用細胞株及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240124BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240124BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240124BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N5/071
C07K16/24
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544164
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2021082333
(87)【国際公開番号】W WO2022156060
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202110099804.1
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520451681
【氏名又は名称】江蘇▲筌▼信生物医薬股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】QYUNS THERAPEUTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1310,Building 1,No.907 Yaocheng Avenue,Taizhou,Jiangsu,225300,China
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】徐 正学
(72)【発明者】
【氏名】李 涛
(72)【発明者】
【氏名】陳 寅
(72)【発明者】
【氏名】黄 文俊
(72)【発明者】
【氏名】王 軼
(72)【発明者】
【氏名】喬 懷耀
(72)【発明者】
【氏名】房 敏
(72)【発明者】
【氏名】呉 亦亮
(72)【発明者】
【氏名】張 夢丹
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064BJ12
4B064CA10
4B064CC24
4B064CC30
4B065AA90Y
4B065AB04
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4H045DA02
(57)【要約】
ウステキヌマブのバイオシミラー製造用細胞株及びその製造方法を提供する。具体的には、寄託番号CCTCC NO:C2020232でChina Center for Type Culture Collectionに寄託されているチャイニーズハムスター卵巣細胞S細胞株を提供する。この細胞株は、ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現する。前記ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体は、ウステキヌマブ(Ustekinumab)のバイオシミラーであり、前臨床研究においてウステキヌマブと高い一貫性を示すだけでなく、臨床研究において薬物動態学的な生物学的同等性及び安全性の類似性評価にも合格しており、今までに中国で最初に臨床試験に入り、第I段階の臨床試験を完了した唯一のウステキヌマブのバイオシミラーであり、世界で新薬申請の進行が最も速いウステキヌマブのバイオシミラーの1つでもある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号CCTCC NO:C2020232でChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託されているチャイニーズハムスター卵巣細胞S(CHO-S)細胞株であって、前記CHO-S細胞株は、ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現し、前記完全ヒトモノクローナル抗体の重鎖アミノ酸配列が配列番号1に示され、前記完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖アミノ酸配列が配列番号3に示され、前記CHO-S細胞株は、前記ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現する発現プラスミドを含み、前記発現プラスミドが、配列番号2に示される前記完全ヒトモノクローナル抗体の重鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と、配列番号4に示される前記完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列とを含む、前記CHO-S細胞株。
【請求項2】
発現される前記ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体は、シアリル化成分を実質的に含まない、請求項1に記載のCHO-S細胞株。
【請求項3】
発現される前記ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体は、ウステキヌマブ(Ustekinumab)のバイオシミラーである、請求項1に記載のCHO-S細胞株。
【請求項4】
ウステキヌマブ(Ustekinumab)のバイオシミラーである、請求項1~3のいずれか一項に記載のCHO-S細胞株によって発現される、ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体。
【請求項5】
シアリル化成分を実質的に含まない、請求項4に記載のヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のCHO-S細胞株を培養することにより、請求項4または5に記載のヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を製造することを含む、ウステキヌマブ(Ustekinumab)のバイオシミラーを製造する方法。
【請求項7】
ヌクレオチド配列が配列番号2に示されるDNAと、ヌクレオチド配列が配列番号4に示されるDNAとを含む発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体薬剤の分野に関する。具体的には、本発明は、ウステキヌマブ(Ustekinumab、商品名Stelara(登録商標))のバイオシミラーの製造に使用することができるチャイニーズハムスター卵巣細胞S(CHO-S)細胞株、及び当該CHO-S細胞株を用いてウステキヌマブのバイオシミラーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョンソン・エンド・ジョンソン社が開発したウステキヌマブ(Ustekinumab、商品名Stelara(登録商標))は、ヒトIL-12とIL-23が共有するp40サブユニットを標的とする完全ヒトモノクローナル抗体である。IL-12及びIL-23は、活性化された抗原提示細胞によって発現されるヘテロ二量体サイトカインであり、IL-12はNK細胞を活性化してCD4T細胞のヘルパーT細胞1(Th1)への分化を促進し、IL-23はヘルパーT細胞17(Th17)経路を活性化することができる。IL-12及びIL-23の調節不全は、免疫関連疾患と密接に関連している。ウステキヌマブは、IL-12とIL-23が共有するp40サブユニットの、標的細胞表面のIL-12Rβ1受容体タンパク質への結合をブロッキングし、IL-12及びIL-23によって媒介されるシグナル伝達及びサイトカインカスケードを阻害することにより、乾癬や炎症性腸疾患などの自己免疫疾患の患者に治癒効果を発揮する。Stelara(登録商標)は、2008年にカナダで発売され、その後欧米、日本などでも発売されており、承認された適応症には、乾癬、乾癬性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎などが含まれている。
【0003】
ジョンソン・エンド・ジョンソン社製のウステキヌマブは、SP2/0細胞を発現宿主細胞として使用しているが、当該SP2/0細胞が発現する抗体は、シアル酸修飾の割合が比較的高く、薬剤として人体に入ると一定的な免疫原性のリスクがある。理論的には、ウステキヌマブを発現する宿主細胞を変更すると、免疫原性のリスクが低下する可能性がある。しかし、一般的に異なる種類の宿主細胞で発現する同じモノクローナル抗体は、アミノ酸配列が同じであっても、グリコシル化方法の違いなどにより構造が異なる場合があり、物理化学的性質、生物活性、生体内での代謝挙動などに違いが生じやすく、バイオシミラーと先発薬との類似性が低くなり、類似性評価に合格できない。これがバイオシミラー開発の大きな難点であり、ウステキヌマブの特許が切れようとしているにも関わらず、バイオシミラーに関する情報が少ない重要な理由でもある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、主要な物理的及び化学的パラメータ、生物学的機能などにおいてウステキヌマブと高度に類似したバイオシミラーの製造に使用できる細胞株、及びウステキヌマブのバイオシミラーを製造する方法を提供することを目的としている。
【0005】
具体的には、本発明は以下を含む。
【0006】
1、寄託番号CCTCC NO:C2020232でChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託されているチャイニーズハムスター卵巣細胞S(CHO-S)細胞株であって、前記CHO-S細胞株は、ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現し、前記完全ヒトモノクローナル抗体の重鎖アミノ酸配列が配列番号1に示され、前記完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖アミノ酸配列が配列番号3に示され、前記CHO-S細胞株は、前記ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現する発現プラスミドを含み、前記発現プラスミドが、配列番号2に示される前記完全ヒトモノクローナル抗体の重鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と、配列番号4に示される前記完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列とを含む、前記CHO-S細胞株。
2、発現される前記ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体は、シアリル化成分を実質的に含まない、項1に記載のCHO-S細胞株。
3、発現される前記ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体は、ウステキヌマブ(Ustekinumab)のバイオシミラーである、項1に記載のCHO-S細胞株。
4、ウステキヌマブ(Ustekinumab)のバイオシミラーである、項1~3のいずれか一項に記載のCHO-S細胞株によって発現される、ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体。
5、シアリル化成分を実質的に含まない、項4に記載のヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体。
6、項1~3のいずれか一項に記載のCHO-S細胞株を培養することにより、項4または5に記載のヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を製造することを含む、ウステキヌマブ(Ustekinumab)のバイオシミラーを製造する方法。
7、ヌクレオチド配列が配列番号2に示されるDNAと、ヌクレオチド配列が配列番号4に示されるDNAとを含む発現ベクター。
8、項7に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【0007】
発明の効果
上記のチャイニーズハムスター卵巣細胞S細胞株はCHO-S-4と命名され、寄託番号CCTCC NO:C2020232でChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託された。ウステキヌマブのバイオシミラーは、チャイニーズハムスター卵巣細胞S細胞株を培養して、ヒトL-12とIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現させることによって製造されることができる。このバイオシミラーは、主要な物理的及び化学的パラメーター、生物学的機能などの点で、先発ウステキヌマブと非常に類似している。当該CHO-S細胞株によって発現されるウステキヌマブのバイオシミラー(QX001Sと命名)は、前臨床研究においてウステキヌマブと高い一貫性を示すだけでなく、臨床研究において薬物動態学的な生物学的同等性及び安全性の類似性評価にも合格しており、今までに中国で最初に臨床試験に入り、第I段階の臨床試験を完了した唯一のウステキヌマブのバイオシミラーであり、知る限り、世界で新薬申請の進行が最も速いウステキヌマブのバイオシミラーの1つでもある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ウステキヌマブの重鎖アミノ酸配列及び軽鎖アミノ酸配列である。
図2図2は、QX001S及びウステキヌマブ単回皮下注射1mg/kg群のカニクイザルのインビボでの主な薬物動態パラメータ及び血中薬剤濃度の経時変化を示す図である。
図3図3は、ヒトの体内へのQX001S及びウステキヌマブの単回皮下注射による主な薬物動態パラメータ及び血中薬剤濃度の経時変化、すなわちCmax、AUC0-t及びAUC0-infの幾何平均比の90%信頼区間(CI)を示す図である。
図4図4は、コドン最適化がされたQX001Sの重鎖遺伝子配列である。
図5図5は、コドン最適化がされたQX001Sの軽鎖遺伝子配列である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される「細胞株」という用語は、スクリーニング法またはクローン形成法によって初代培養または細胞系から得られた、特別な特性またはマーカーを有する培養細胞を指す。細胞株の特別な特性またはマーカーは、培養期間を通じて持続する必要がある。細胞株の遺伝物質は変化しない。
【0010】
本明細書で使用される「DNA」という用語は、デオキシヌクレオチドから構成される高分子ポリマーを指す。デオキシリボヌクレオチドは、塩基、デオキシリボース、及びリン酸で構成されている。アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、及びシトシン(C)の4つの塩基がある。分子構造では、2つのポリデオキシヌクレオチド鎖が共通の中心軸の周りに巻き付いて二重らせん構造を形成している。デオキシリボースリン酸鎖はらせん構造の外側にあり、塩基が内側を向いている。2つのデオキシヌクレオチド鎖は逆相補的であり、塩基間の水素結合によって形成される塩基対によって接続され、かなり安定した組み合わせを形成する。DNAは、RNA及びタンパク質の合成に必要な遺伝情報を運び、生物の発育及び正常な機能に不可欠な生体高分子である。
【0011】
本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、クローニングベクターの基本骨格に、目的遺伝子を発現させるために発現要素(プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーターなど)を付加したベクターをいう。
【0012】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一のB細胞クローンによって産生され、特定の抗原性エピトープのみに対する高度に均一な抗体を指す。モノクローナル抗体は通常にハイブリドーマ技術によって調製される。ハイブリドーマ(hybridoma)抗体技術は細胞融合技術に基づいており、特異的抗体を分泌する能力を持つ感作B細胞と無限の生殖能力を持つミエローマ細胞とをB細胞ハイブリドーマに融合させる。この特徴を有する単一のハイブリドーマ細胞を用いて細胞集団を培養することにより、抗原エピトープに対する特異的な抗体、すなわちモノクローナル抗体を調製することができる。
【0013】
本明細書で使用される「ヒト化抗体(humanized antibody)」という用語は、相補性決定領域移植抗体とも呼ばれ、抗体の可変領域部分または抗体全体がヒト抗体遺伝子によってコードされていることを指す。
【0014】
本明細書で使用される「ヒト化モノクローナル抗体」という用語は、詳細に分析された多数の既存のマウス抗体を使用し、抗原に直接接触する抗体断片(相補性決定領域、CDR)を取ってヒト抗体フレームワークに移植し、親和性リモデリングの後、その特異性及びその親和性のほとんどを維持しながら、免疫原性及び毒性の副作用をほとんど取り除いた抗体を指す。
【0015】
本明細書で使用される「完全ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体遺伝子について、トランスジェニックまたはトランスクロモゾーム技術によってヒト抗体をコードする遺伝子のすべてを遺伝子操作された抗体遺伝子欠損動物に移し、動物にヒト抗体を発現させて抗体の完全ヒト化の目的を達成することを指す。ファージディスプレイ技術、トランスジェニックマウス技術、リボソームディスプレイ技術、RNA-ペプチド技術を中心に、完全ヒト化抗体の作製法が複数確立されている。
【0016】
本発明は、CHO-S-4と名付けられたチャイニーズハムスター卵巣細胞S(CHO-S)細胞株に関するものであり、この細胞株はChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託されており、寄託番号はCCTCC NO:C2020232であり、寄託日は2020年12月03日である。
【0017】
特定の実施形態では、チャイニーズハムスター卵巣細胞S(CHO-S)細胞株は、ヒトIL-12/IL-23p40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現し、前記完全ヒトモノクローナル抗体の重鎖アミノ酸配列は、ウステキヌマブの重鎖アミノ酸配列であり、前記完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖アミノ酸配列はウステキヌマブの軽鎖アミノ酸配列である。
【0018】
特定の実施形態では、チャイニーズハムスター卵巣細胞S(CHO-S)細胞株は、ヒトIL-12/IL-23p40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現し、前記完全ヒトモノクローナル抗体の重鎖アミノ酸配列は配列番号1に示され、前記完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖アミノ酸配列は配列番号3に示される。
【0019】
配列番号1
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTTYWLGWVRQMPGKGLDWIGIMSPVDSDIRYSPSFQGQVTMSVDKSITTAYLQWNSLKASDTAMYYCARRRPGQGYFDFWGQGTLVTVSSSSTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0020】
配列番号3
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNIYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0021】
特定の実施形態では、チャイニーズハムスター卵巣細胞S(CHO-S)細胞株は、前記ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現する発現プラスミドを含み、この発現プラスミドは、配列番号2に示される前記完全ヒトモノクローナル抗体の重鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と、配列番号4に示される前記完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列とを含む。
【0022】
配列番号2
GAAGTCCAGCTGGTGCAGTCAGGGGCCGAGGTGAAGAAACCAGGTGAAAGTCTGAAGATCAGCTGTAAAGGCTCTGGATACAGTTTCACCACATATTGGCTGGGATGGGTGCGGCAGATGCCCGGGAAGGGTCTGGATTGGATCGGTATTATGTCCCCCGTGGACAGCGACATCAGATACAGTCCTTCATTTCAGGGCCAGGTCACTATGTCTGTGGACAAGAGTATTACTACCGCTTATCTGCAGTGGAACTCACTGAAAGCCTCCGATACCGCTATGTACTATTGCGCAAGGCGGAGACCCGGCCAGGGATACTTCGACTTTTGGGGGCAGGGCACCCTGGTCACAGTGTCCAGCTCTAGTACTAAGGGGCCTTCCGTGTTTCCACTGGCTCCCTCATCCAAATCCACTAGCGGAGGAACCGCAGCTCTGGGATGTCTGGTGAAGGACTATTTCCCAGAGCCCGTCACAGTGTCATGGAACTCCGGCGCACTGACCAGCGGAGTCCATACATTTCCTGCCGTGCTGCAGAGCTCTGGGCTGTACTCTCTGAGTTCAGTGGTCACAGTGCCATCCAGCTCTCTGGGTACTCAGACCTATATCTGCAACGTGAATCACAAGCCTTCTAATACTAAGGTCGATAAGAGGGTGGAACCAAAGAGTTGTGATAAAACACATACTTGCCCCCCTTGTCCTGCACCAGAGCTGCTGGGGGGTCCAAGCGTGTTCCTGTTTCCACCCAAGCCCAAAGATACCCTGATGATTTCCCGAACACCAGAAGTCACTTGCGTGGTCGTGGACGTGAGCCACGAGGACCCCGAAGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTCGAGGTGCATAATGCTAAGACCAAACCTCGCGAGGAACAGTACAATAGCACATATCGAGTCGTGTCTGTCCTGACTGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGAAAGGAGTATAAGTGCAAAGTGTCTAATAAGGCTCTGCCCGCACCTATCGAGAAAACCATTTCCAAGGCCAAAGGCCAGCCTCGTGAACCACAGGTGTACACACTGCCTCCATCAAGGGATGAGCTGACTAAGAACCAAGTCAGCCTGACCTGTCTGGTGAAAGGCTTCTATCCCTCTGACATCGCTGTGGAGTGGGAAAGTAATGGACAGCCTGAAAACAATTACAAGACAACTCCCCCTGTGCTGGACAGCGATGGCTCTTTCTTTCTGTATTCCAAGCTGACCGTGGACAAAAGCCGGTGGCAGCAGGGAAACGTCTTTTCTTGTAGTGTGATGCATGAGGCCCTGCACAATCATTACACACAGAAGTCACTGTCCCTGAGCCCAGGAAAA
【0023】
配列番号4
GACATCCAGATGACCCAGAGTCCATCCAGCCTGTCTGCTAGTGTGGGAGATAGGGTCACTATCACCTGTCGGGCCTCCCAGGGGATTTCTAGTTGGCTGGCTTGGTATCAGCAGAAGCCAGAGAAAGCACCCAAGTCCCTGATTTATGCCGCTTCATCCCTGCAGAGTGGAGTGCCCTCACGATTCTCAGGCTCCGGAAGCGGGACTGACTTTACACTGACTATCAGCTCTCTGCAGCCTGAAGATTTCGCTACCTACTATTGCCAGCAGTACAACATTTACCCATATACTTTTGGTCAGGGCACCAAACTGGAGATCAAGAGAACAGTGGCAGCCCCCAGCGTCTTCATTTTTCCCCCTTCTGACGAACAGCTGAAATCCGGCACCGCAAGCGTGGTCTGTCTGCTGAACAATTTCTACCCTCGCGAGGCCAAAGTGCAGTGGAAGGTCGATAACGCTCTGCAGTCTGGCAATAGTCAGGAGTCAGTGACAGAACAGGACTCCAAAGATAGCACTTATTCTCTGAGTTCAACCCTGACACTGAGCAAGGCAGACTACGAGAAGCACAAAGTGTATGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGTCTGTCCAGCCCCGTGACAAAGTCTTTTAATAGGGGCGAATGT
【0024】
特定の実施形態では、チャイニーズハムスター卵巣細胞S(CHO-S)細胞株は、ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を発現し、前記完全ヒトモノクローナル抗体は実質的にシアリル化成分を含まない。
【0025】
本発明はまた、先発薬としてのウステキヌマブ(Ustekinumab)と非常に類似している、ウステキヌマブ(Ustekinumab)のバイオシミラー(QX001Sと命名)である、上記CHO-S細胞株により発現されるヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体に関する。
【0026】
具体的には、QX001Sは一次構造、二次構造、及び高次構造がウステキヌマブと類似しており、グリコシル化修飾部位が類似しており、糖除去等電点、酸性ピーク、塩基性ピークなどの電荷不均一性の解析データがすべて類似しており、凝集体と分解生成物の分析データが類似しており、熱安定性が類似しており、抗原IL-12結合活性、抗原IL-12親和性、抗原IL-23結合活性、抗原IL-23親和性、IL-12受容体拮抗活性、IL-23受容体拮抗活性、NK-92 MI細胞活性、マウス脾臓細胞活性、Fc関連受容体親和性、種特異性分析、抗原認識エピトープの一貫性分析などのインビトロ生物学的活性の分析データが類似している。
【0027】
IL-23に誘発されたマウス耳表皮過形成モデルにおける薬力学研究では、QX001S群とウステキヌマブ群は非常に類似した薬力学的一貫性を示すことが示された。カニクイザルに対するインビボでの薬物動態研究は、ウステキヌマブとQX001Sの両方が、カニクイザルの生体内において類似の薬物動態パラメーター及び血中濃度の経時変化を有することを示している。ヒトに対するインビボでの薬物動態研究は、QX001S注射液とウステキヌマブ注射液の薬物動態が生物学的に同等であり、安全性も類似していることを示している。
【0028】
また、本発明は、前記CHO-S細胞株を培養することにより、前記ヒトIL-12とヒトIL-23が共有するp40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体を製造することを含む、ウステキヌマブ(Ustekinumab)のバイオシミラーを製造する方法にも関する。
【0029】
実施例
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されないことを理解すべきである。
【0030】
実施例1:ベクターの構築
ウステキヌマブの重鎖アミノ酸配列(配列番号1)及び軽鎖アミノ酸配列(配列番号3)は、公開情報照会及びペプチド分析によって決定された。(図1
【0031】
ウステキヌマブのバイオシミラーであるQX001Sの重鎖アミノ酸配列及び軽鎖アミノ酸配列は、ウステキヌマブと完全に同じである。
【0032】
ウステキヌマブの重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をテンプレートとして用いて、QX001Sの重鎖及び軽鎖遺伝子配列を設計し、発現プラスミドを構築した。
【0033】
コドン最適化がされたQX001Sの重鎖遺伝子配列は、配列番号2である(図4)。
【0034】
コドン最適化がされたQX001Sの軽鎖遺伝子配列は、配列番号4である(図5)。
【0035】
発現プラスミドは、コドン最適化されたQX001Sの重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子を、既知の分子生物学的方法によってそれぞれのブランク発現ベクターに構築し、上流及び下流の発現制御要素と連結してから、重鎖及びその発現制御要素を消化して軽鎖発現ベクターに連結して、重鎖及び軽鎖が連鎖であるプラスミドを構成するものであり、すなわち、操作された細胞のトランスフェクション及び構築に使用される最終発現プラスミドである。当該最終発現プラスミドには、CHO細胞を用いた操作細胞株の構築に広く使用されているスクリーニングマーカー、すなわち、グルタミン合成酵素(GS)遺伝子のスクリーニングマーカーも含まれており、その後の安定的にトランスフェクトされた細胞のスクリーニングに使用できる。
【0036】
上記で得られた発現プラスミドを用いて一過性発現を行い、発現したQX001Sについてタンパク質配列同定及び活性解析を行い、構築したQX001S発現ベクターの遺伝子配列及び発現されたタンパク質が正しいことを確認した。
【0037】
実施例2:細胞株のスクリーニング
構築したQX001S発現ベクターの遺伝子配列及び発現されたタンパク質が正しいことを確認し、CHO-Sを宿主細胞としてQX001Sの安定発現細胞株を構築した。CHO-S宿主細胞は、ThermoFisher(旧Invitrogen社、カタログ番号A13696-01)から購入し、CHO-STM細胞を蘇らせて培養した。線形化された発現ベクターを宿主細胞にエレクトロポレーションした後、ベクター上の相同性アームを介して宿主細胞のゲノムにランダムに組み込んだ。
【0038】
グルタミン合成酵素をスクリーニングマーカーとして使用し、メチオニンスルホキシイミン(MSX)による高ストレススクリーニングにより、ウステキヌマブと同様の物理化学的特性を持つQX001Sを安定かつ高収率で発現するCHO-S細胞株を得た。
【0039】
1.段階的な増幅、ELISA検出などの操作により、40個の96ウェルプレートで培養した細胞クローンについて、予備スクリーニングによって高収率の細胞プール(混合細胞クローン)を取得し、サブクローニング候補プールの第1ラウンドとして、14の高収率の細胞プールを選択した。
【0040】
2.得られた14の細胞プールはモノクローンではなく、単一の安定した細胞株系を得るためにこれらの細胞をモノクローナル化する必要があった。14の高収率細胞プールを限界希釈法でサブクローニングし、段階的な増幅及びELISA検出により高発現のモノクローンを選別し、合計694の細胞クローンを増幅し、最終的にOD値が最も高い33のクローンを選択し、T25(100μmol/L MSXを含む8mlのCD CHO培地)にスケールアップして懸濁培養した。T25で8日間細胞培養した後に細胞上清を回収し、FortebioでIgG含有量を検出し、QX001SをプロテインAで精製して品質分析をした。
【0041】
3.発現したQX001Sの品質属性がウステキヌマブの品質属性と一致する必要があることを考慮して、上記33のモノクローンについて、分泌されたQX001Sのカルボキシペプチダーゼ処理後の塩基成分は単純で含有量が低いクローンを選択し、クローン4、クローン9、クローン25、及びクローン27を選択した。さらに、4、25、及び27の3つのクローンが発現するQX001Sのペプチドマップ解析をウステキヌマブと比較したところ、4つのサンプルのペプチドマップは基本的に同じであり、ペプチドセグメントに有意な増減は見られなかったことから、上記の3クローンが分泌したQX001Sのアミノ酸配列は正しいことが分かった。
【0042】
4.均一で安定した高収率のQX001S産生細胞株を得るために、上記の4つの候補クローンに対して第2ラウンドのサブクローニングスクリーニングを実施した。クローン25の細胞状態は、第2ラウンドのサブクローニングスクリーニングで要件を満たしていなかった;クローン27は、第2ラウンドのサブクローニング後に得られたクローンの収率が低く、クローン9は予備的な安定性テストで要件を満たしていなかった;上記の3つのクローンは排除された。
【0043】
つまり、品質分析が行われた33のクローンのうち、クローン4という1つのクローンのみがQX001S生産細胞株としての要件を満たした。
【0044】
クローン4のCHO-S細胞株はチャイニーズハムスター卵巣細胞CHO-S-4と命名され、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託されており、寄託番号はCCTCC NO:C2020232であり、寄託日は2020年12月03日である。クローン4のCHO-S細胞株によって発現されるヒトIL-12/IL-23p40サブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体は、QX001Sと名付けられた。
【0045】
実施例3:薬学的類似性研究
上記クローン4のCHO-S細胞株が発現するQX001Sとウステキヌマブとの薬学的類似性を検討し、QX001Sとウステキヌマブの一次構造、二次構造及び高次構造、翻訳後修飾、電荷の不均一性、凝集体と分解生成物、インビトロ生物活性、及び加速安定性などにおける類似点及び相違点を総合的に比較した結果、両者が薬学的研究において非常に類似していることが示された。当該CHO-S細胞株によって発現されるQX001Sは、以下の表1に記載されている78の指標のうち71において、基本的にウステキヌマブと一致している。
【0046】
両者の違いを示す指標は主に翻訳後修飾(5つの指標に違いあり)であり、特に、測定したところ、ウステキヌマブのシアリル化成分の割合は11.87%~25.56%であったのに対し、当該CHO-S細胞株によって発現されるQX001Sは実質的にシアリル化成分を含まなかった。これは、QX001Sがウステキヌマブよりも免疫原性が低い可能性があることを示唆している。
【0047】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0048】
実施例4:マウスに対するインビボでの薬力学試験(前臨床動物レベルの薬効評価)
この実施例では、IL-23によって誘発されたマウス耳表皮過形成モデルにおける耳表皮過形成に対するQX001Sの効果を評価すると同時に、このモデルに対するQX001Sと先発薬であるウステキヌマブ(本試験ではQX001S-DZYと命名、EUで市販されている製品である;ロット番号FJS1W25)との薬力学的効果を比較した。ウステキヌマブとQX001Sの両方が、耳の厚さの減少及び病理学的総合スコアの減少として現れる、rhIL-23誘発性耳皮膚過形成を有意に阻害したことは試験で示された。QX001S群とウステキヌマブ群の薬効の一貫性は非常に類似していた。
【0049】
C57BL/6マウス48匹を6つの群にランダムに分け、各群に8匹ずつとした。マウスの右耳の後ろにブランクビヒクルまたはrhIL-23を8日間連続して皮内注射した。rhIL-23注射の1時間前に、QX001SまたはQX001S-DZYを腹腔内注射により投与した。耳の厚さ及び増加した耳の厚さを、それぞれ0、2、4、6、及び8日目に測定した。8日目に、48匹のマウスの右耳を切除してパラフィン切片を調製し、HE染色を行い、染色後の切片を角化度、表皮の厚さ、真皮の厚さ、及びリンパ球の浸潤の4つの項目(各項目0~4点)で採点し、これら4つの部分の点数を合計して総合的な病理学的スコア(0~16点)とした。
【0050】
実験の結果、QX001S 10mg/kg投与群とQX001S-DZY 10mg/kg投与群を比較したところ、右耳厚、増加した右耳厚、及び総合的な病理学的スコアには有意差はなかった(具体的なデータについて、表2及び表3を参照されたい)。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
実施例5:カニクイザルに対するインビボでの薬物動態試験(前臨床動物レベルの薬物動態評価)
この実施例では、カニクイザルにおけるQX001Sの薬物動態特性を評価し、カニクイザルにおけるQX001Sと先発薬ウステキヌマブ(本試験ではQX001S-DZYと命名)の薬物動態パラメータを比較した。ウステキヌマブとQX001Sの両方が、カニクイザルの体内において類似した薬物動態パラメーター及び血中濃度-経時変化を有することが研究により示されている。
【0054】
この実施例では、36匹のカニクイザルを使用し、各群で6匹ずつとして、6つの群に分け、すなわち、QX001Sの単回皮下注射投与群3群(0.35、1、3mg/kg)、QX001Sの単回静脈ボーラス投与群1群(1mg/kg)、QX001S-DZYの単回皮下注射投与群1群(1mg/kg)、及びQX001Sの反復皮下注射投与群1群(1mg/kg)とした。投与前後の異なる時点ですべての受験動物から血清を静脈内に採取し、血清中のQX001S及びQX001S-DZYの濃度を検証済みのELISA法で検出し、関連する薬物動態パラメーターを非コンパートメントモデルを使用して計算した。
【0055】
薬物動態の結果、QX001SとQX001S-DZY単回皮下注射投与1mg/kg群の主な薬物動態パラメータには有意差は認められず(p>0.05)、両者がカニクイザルのインビボでの薬物動態パラメータ及び血中薬剤濃度の経時変化は類似していた(図2)。
【0056】
免疫原性の結果、QX001S及びQX001S-DZY単回皮下注射投与1mg/kg群のいずれも個体の83%(5/6)に抗薬物抗体が検出され、両者がカニクイザルの体内における免疫原性は類似していた。
【0057】
実施例6:ヒトの体内における薬物動態試験(第I相臨床試験)
QX001S注射液は、世界で初めて臨床研究に入ったウステキヌマブ注射液(Ustekinumab、商品名Stelara(登録商標))のバイオシミラーであり、その第I相臨床試験「中国の健康な男性ボランティアにおけるQX001S注射液とウステキヌマブ注射液(EUで市販されている;生産バッチ番号GDS3IME)の薬物動態の無作為化二重盲検単回投与並行比較試験」は順調に完了し、研究の結果は、事前に設定されたすべての主要及び副次評価項目に達した(国家医薬品臨床試験登録及び情報公開プラットフォーム登録番号CTR20181658)。第I相臨床試験の良好な結果に基づき、乾癬適応症に対するQX001Sの第III相臨床試験の開始に向けて万全の準備を進めている。上記の第I相臨床試験で得られた主な試験結果は次のものを含む。
【0058】
1.薬物動態の生物学的同等性
QX001SとウステキヌマブのCmax、AUC0-t、及びAUC0-infの幾何平均比の90%CIはそれぞれ、100.90%~118.68%、98.71%~115.26%、98.49%~115.81%であり、すべてが80.00%~125.00%の指定された同等性範囲内であり、これは、QX001S注射液とウステキヌマブ注射液の薬物動態が生物学的に同等であることを示している(図3を参照)。
【0059】
2.安全性が類似
本試験で安全性解析集団に入った177人の被験者のうち、合計98人の被験者が228回のTEAEを有し、いずれの被験者もSAEを有しておらず、AEによる離脱もなかった。QX001S群及びウステキヌマブ群における副作用の発生率は、それぞれ42.7%及び42.0%であり、安全性が同様であった。
【0060】
また、本試験の免疫原性解析集団に入った177人の被験者のうち、QX001S群の陽性被験者は11人であり、陽性率は12.4%であり、ウステキヌマブ群の陽性被験者は21人であり、陽性率は23.9%であった。
【0061】
なお、先発薬ウステキヌマブは組換え発現のために宿主細胞としてSP2/0細胞を使用しているのに対し、バイオシミラーQX001Sは組換え発現のために宿主細胞としてCHO-S細胞を使用している。一般的に言えば、異なる宿主細胞で発現する同じモノクローナル抗体は、アミノ酸配列が同じであっても、グリコシル化方法の違いなどにより構造が異なる場合があり、物理化学的性質、生物活性、生体内での代謝挙動などに違いが生じやすく、バイオシミラーと先発薬との一貫性がなく、一貫性評価に合格できない。これがバイオシミラー研究開発の大きな難点であり、ウステキヌマブの特許が切れようとしているにも関わらず、そのバイオシミラーに関する情報が少ない重要な理由でもある。これに対して、本発明のスクリーニングにより得られた特定のCHO-S細胞株が発現するウステキヌマブのバイオシミラーQX001Sは、前臨床研究においてウステキヌマブと高い一貫性を示すだけでなく、臨床研究において薬物動態学的な生物学的同等性及び安全性の類似性評価にも合格しており、今までに中国で最初に臨床試験に入り、第I段階の臨床試験を完了した唯一のウステキヌマブのバイオシミラーであり、知る限り、世界で新薬申請の進行が最も速いウステキヌマブのバイオシミラーの1つでもある。
【0062】
以上、本発明の実施形態について具体例を挙げて説明したが、当業者であれば、本明細書に開示された内容から本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本発明は、他の異なる特定の実施形態によって実施または適用することもでき、本発明の精神から逸脱することなく、異なる観点及び使用に基づいて、本明細書の細部にさまざまな修飾または変更を加えることができる。
【0063】
【表4-1】
【表4-2】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2024504350000001.app
【国際調査報告】