(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ソルチリン活性のモジュレーターとしてのピリジン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 213/75 20060101AFI20240124BHJP
C07D 491/052 20060101ALI20240124BHJP
C07D 491/056 20060101ALI20240124BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20240124BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20240124BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240124BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240124BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240124BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240124BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240124BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240124BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240124BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240124BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240124BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20240124BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C07D213/75
C07D491/052 CSP
C07D491/056
C07D471/04 113
A61K31/436
A61P25/28
A61P35/00
A61P25/04
A61P25/02
A61P3/10
A61P27/02
A61P27/16
A61P9/00
A61P25/16
A61P15/00
A61P11/00
A61P13/08
A61P1/18
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P1/04
A61K31/44
A61K31/4375
A61P43/00 123
A61P43/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544168
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2022051282
(87)【国際公開番号】W WO2022157271
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522369739
【氏名又は名称】インスセンセ アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リトル,ポウル ブリアン
(72)【発明者】
【氏名】カセス-トーマス,マヌエル ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】キョルビー,マス フールサング
(72)【発明者】
【氏名】ニュケーア,アナス
【テーマコード(参考)】
4C050
4C055
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB07
4C050CC18
4C050EE01
4C050FF01
4C050GG04
4C050HH01
4C055AA01
4C055BA03
4C055BA06
4C055BA16
4C055BA53
4C055BB04
4C055BB11
4C055CA01
4C055DA01
4C055FA03
4C055GA10
4C065AA04
4C065BB09
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ07
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP03
4C065QQ04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC17
4C086CB09
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA21
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC06
4C086ZC35
4C086ZC52
(57)【要約】
本発明は、ソルチリン活性のモジュレーターである式(I)の化合物に関する。また本発明は、これらの化合物を含む医薬組成物、および、ソルチリン活性の調節が有益となる医学的状態の治療または予防におけるこれらの化合物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aが、H、-OH、C
1~C
4ヒドロキシアルキル、C
2~C
4アルキル、C
1~C
4ハロアルキル、C
1~C
4アルコキシ、C
1~C
4ハロアルコキシ、およびC
1~C
4アミノアルキルからなる群から選択され;
Bが、H、-OH、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4ハロアルキル、C
1~C
4アルコキシ、およびC
1~C
4ハロアルコキシからなる群から選択され;または、
AおよびBが、それらが各々結合している炭素原子と一緒になって、-OH、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4ハロアルキル、およびC
1~C
4アルコキシ、およびC
1~C
4ハロアルコキシから独立して選択される1もしくは複数の置換基で所望により置換された5員~7員の単環式複素環を形成していてもよく;並びに
R
1が、ハロ、C
1~C
6アルキル、C
2~C
6アルケニル、ハロC
1~C
6アルキル、およびハロC
2~C
6アルケニルからなる群から選択される、
式(I)の化合物、
【化1】
またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
R
1が、ハロ、C
1~C
4アルキル、およびハロC
1~C
4アルキルからなる群から選択され、好ましくはフルオロC
1~C
4アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1がCF
3およびt-ブチルからなる群から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、C
1~C
4ヒドロキシアルキルおよびC
1~C
4アルコキシからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Bが、H、C
1~C
4ハロアルキル、およびC
1~C
4アルキルからなる群から選択され、好ましくはHである、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
AおよびBが、それらが各々結合している炭素原子と一緒になって、C
1~C
4アルキルおよびC
1~C
4ハロアルキルから独立して選択される1または複数の置換基で所望により置換された5員~7員の単環式複素環を形成している、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
AおよびBが、それらが各々結合している炭素原子と一緒になって、C
1~C
4アルキルおよびC
1~C
4ハロアルキルから独立して選択される1または複数の置換基で所望により置換された6員の単環式複素環を形成しており、好ましくは、前記6員の単環式複素環は非置換である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記6員の単環式複素環が酸素原子を含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式(I)の化合物が以下である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物:
2‐({5H,6H,8H‐ピラノ[3,4‐b]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐{[6‐(ヒロドキシメチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
5‐tert‐ブチル‐2‐{[6‐(ヒロドキシメチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}安息香酸;
(RAC) 2‐{[6‐(1‐ヒドロキシエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1S)‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1R)‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐{[6‐(2‐ヒドロキシプロパン‐2‐イル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐{[6‐(2‐ヒドロキシエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
(RAC) 5‐tert‐ブチル‐2‐{[6‐(1‐ヒドロキシエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}安息香酸;
5‐tert‐ブチル‐2‐({6‐[(1R)‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)安息香酸;
5‐tert‐ブチル‐2‐({6‐[(1S)‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)安息香酸;
2‐({2H,3H,4H‐ピラノ[2,3‐b]ピリジン‐7‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({2H,3H‐[1,4]ジオキシノ[2,3‐b]ピリジン‐6‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({5H,7H,8H‐ピラノ[4,3‐b]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐[(5,6,7,8‐テトラヒドロ‐1,6‐ナフチリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
5‐tert‐ブチル‐2‐({5H,6H,8H‐ピラノ[3,4‐b]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)安息香酸;
(RAC) 2‐{[6‐(2,2,2‐トリフルオロ‐1‐ヒドロキシエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1S)‐2,2,2‐トリフルオロ‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1R)‐2,2,2‐トリフルオロ‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
(RAC) 2‐{[6‐(1‐アミノ‐2,2,2‐トリフルオロエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1R)‐1‐アミノ‐2,2,2‐トリフルオロエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1S)‐1‐アミノ‐2,2,2‐トリフルオロエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグ。
【請求項10】
先行請求項のいずれか一項に記載の化合物、並びに製薬上許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項11】
治療に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物、または請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
神経変性障害、がん、疼痛、真性糖尿病、糖尿病性網膜症、循環器疾患、遺伝性の眼の状態、または難聴の治療または予防に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物または請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記神経変性障害が、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、および脊髄損傷から選択される、請求項12に記載の使用に供するための、化合物または医薬組成物。
【請求項14】
前記がんが、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、甲状腺がん、膵がん、膠芽腫、および結腸直腸がんから選択される、請求項12に記載の使用に供するための、化合物または医薬組成物。
【請求項15】
前記難聴が、騒音性難聴、聴器毒性難聴、加齢性難聴、特発性難聴、耳鳴症、および突発性難聴から選択される、請求項12に記載の使用に供するための、化合物または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルチリン活性のモジュレーターである式(I)の化合物に関する。また本発明は、これらの化合物を含む医薬組成物、および、ソルチリン活性の調節が有益となる医学的状態の治療または予防におけるこれらの化合物の使用に関する。このような医学的状態としては、精神疾患、糖尿病、糖尿病に関連した状態、および難聴が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
ソルチリン(SORT1にコードされる)は、vacuolar protein sorting 10 protein(VPS10P)ソーティング受容体ファミリーの1型膜受容体であり、中枢神経系、内耳、および代謝調節に関わる一部の末梢組織で大量に発現されている1,2,3,4(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。ソルチリンは配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、シグナルペプチド、プロペプチド、Vps10pドメイン、10ccドメイン(10CCa+10CCb)、膜貫通領域、および大型の細胞質側末端を含む。ソルチリンの管腔ドメインは6つの潜在的N結合型糖鎖付加部位を有し、一方、細胞質側末端は種々のアダプタータンパク質の動員を可能にする。
【0003】
ソルチリンは、膨大な数のリガンドおよび膜受容体に結合することにより、細胞のシグナル伝達とソーティングにおいて重要であることが知られている機能に関与している。例えば、ソルチリンは、プロニューロトロフィン:神経成長因子の前駆形態(プロNGF)、脳由来神経栄養因子の前駆形態(プロBDNF)、およびニューロトロフィン-3の前駆形態(プロNT3)のそれぞれによるシグナル伝達に関与している。p75NTR(p75ニューロトロフィン受容体)タンパク質との複合体において、ソルチリンは、細胞モデルおよび動物モデルで、プロニューロトロフィンを介したアポトーシス作用を奏する受容体を形成し、変性および細胞死を引き起こすことが報告されている5,6,7(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。
【0004】
過去の研究では、ソルチリンの、糖尿病および肥満などの疾患に関与する細胞のソーティングおよびシグナル伝達における役割が示唆された(非特許文献8)。ソルチリンは、GLUT4の細胞膜への移行を促進し、GLUT4をリソソームにおける分解から救出する(非特許文献9)。ソルチリン値は、これらの疾患に伴う炎症のレベルによって調節されることが示された。炎症誘発性サイトカインであるTNFαは、マウスおよびヒトの培養脂肪細胞において、並びに、インビボでマウスに注射した際、ソルチリンのmRNAレベルとタンパク質レベルを両方減少させる(非特許文献10)。ソルチリンは、サイトカイン分泌にも影響している可能性があり、免疫細胞におけるソルチリンをターゲティングすると、炎症を減弱し、アテローム性動脈硬化症の疾患増悪を低減すると提唱された(非特許文献11)。さらに、特許文献1には、ソルチリンの活性部位に結合することが可能な小分子の様々な足場について記載している。ソルチリンは、グルコース取り込みの制御(非特許文献12)および脂質障害疾患の発症(非特許文献13)に関与している。
【0005】
さらに、血漿ソルチリン値は、冠動脈心疾患または真性糖尿病のいずれかを有する患者を特定するための有力なバイオマーカーとなることが報告された(非特許文献14)。血漿中のソルチリン値の上昇を示したことから、上記状態に罹患していると同定可能な患者は、グルコース値の増大も示し、このことは、ソルチリンが、これらの状態を治療するための治療標的となることを示唆している。上記を鑑みて、神経変性障害、がん、疼痛、真性糖尿病、糖尿病性網膜症、循環器疾患、遺伝性の眼の状態、および難聴などの、ソルチリンの調節が有益である医学的状態の治療および予防に使用できる新規化合物へのアンメ
ットニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0331746号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tauris, J., et al., Proneurotrophin-3 May Induce Sortilin-Dependent Death In Inner Ear Neurons. Eur J Neuroscience (2020), 33(4), pp.622-31.
【非特許文献2】Goettsch, C., et al., Sortilin and Its Multiple Roles in Cardiovascular and Metabolic Diseases. Atherosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology (2017), 38(1), pp. 19-25.
【非特許文献3】Willnow, T.E., et al., Sortilins: new players in lipoprotein metabolism. Current Opinion in Lipidology (2011), 22(2), pp. 79-85.
【非特許文献4】Kjolby, M., et al., Sort1, encoded by the cardiovascular risk locus 1p13.3, is a regulator of hepatic lipoprotein export. Cell Metabolism (2010), 12(3), pp. 213-223.
【非特許文献5】Jansen, P., et al., Roles for the pro-neurotrophin receptor sortilin in neuronal development, aging and brain injury. Nature Neuroscience (2007), 10(11), pp.1449-1457.
【非特許文献6】Tenk, H.K., et al., ProBDNF induces neuronal apoptosis via activation of a receptor complex of p75NTR and sortilin. J Neuroscience (2005), 10(11), pp.1449-1457.
【非特許文献7】Nykjaer, A., et al., Sortilin is essential for proNGF-induced neuronal cell death. Nature (2004), 427(6977), pp.843-848.
【非特許文献8】Huang et al 2013 Mol Biol Cell Oct;24(19):3115-22
【非特許文献9】Pan et al Mol Biol Cell. 2017 Jun 15;28(12):1667-1675
【非特許文献10】Kaddai et al. Diabetologia 52: 932-40, 2009
【非特許文献11】Mortensen et al. J Clin Invest 124(12):5317-22, 2014
【非特許文献12】Shi & Kandror. Developmental Cell 9:99-108, 2005
【非特許文献13】Gao et al. DNA and Cell Biology 36(12):1050-61, 2017
【非特許文献14】Oh et al. Cardiovascular Diabetology 16:92, 2017
【非特許文献15】Skeldal et al(J. Biol. Chem. 2012 Dec 21;287(52):43798-809)
【非特許文献16】Silverman, R. B., The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, 2nd Ed., Elsevier Academic Press (2004), page 498 to 549
【非特許文献17】R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989)
【非特許文献18】T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999)
【非特許文献19】L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994)
【非特許文献20】L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において、本発明は、
Aが、H、-OH、C1~C4ヒドロキシアルキル、C2~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシ、およびC1~C4アミノアルキルからなる群から選択され;
Bが、H、-OH、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、およびC1~C4ハロアルコキシからなる群から選択され;または、
AおよびBが、それらが各々結合している炭素原子と一緒になって、-OH、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、およびC1~C4アルコキシ、およびC1~C4ハロアルコキシから独立して選択される1もしくは複数の置換基で所望により置換された5員~7員の単環式複素環を形成していてもよく;並びに、
R1が、ハロ、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、ハロC1~C6アルキル、およびハロC2~C6アルケニルからなる群から選択される、
式(I)の化合物、
【0009】
【0010】
またはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグを提供する。
【0011】
驚くべきことに、式(I)の化合物は、ソルチリンを阻害またはアンタゴナイズすることから、ソルチリン阻害が有益である状態において有用な可能性があることが分かった。そのような状態としては、神経変性障害、がん、疼痛、真性糖尿病、糖尿病性網膜症、循環器疾患、遺伝性の眼の状態、および難聴が挙げられる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「ソルチリン」という語は、シグナルペプチド、プロペプチド、Vps10pドメイン、10CCドメイン、膜貫通領域、および大型の細胞質側末端を含み、配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、完全長ソルチリン(未成熟ソルチリンとも称される)を指す場合があり、または、上記の語は、Vps10pドメイン、10CCドメイン、膜貫通領域、および大型の細胞質側末端を含み、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する、成熟ソルチリン、もしくは、その天然起源のフラグメント、ホモログ、もしくはバリアントを指す場合がある。「ソルチリン」または「ソルチリン分子」という語は本明細書では同義的に使用されている。ソルチリンは、プロニューロトロフィン分子と相互作用することにより、ソルチリン/プロニューロトロフィン複合体を形成可能であると理解されている。このソルチリン/プロニューロトロフィン複合体は、p75NTR分子と相互作用することにより、ソルチリン、プロニューロトロフィン、およびp75NTRを含む三量体複合体を形成可能である場合もあれば、可能でない場合もある。この三量体複合体は、網膜細胞および神経節細胞におけるアポトーシスの惹起、並びに投射中の軸索の成長円錐退縮の調節などの、有害な生物学的反応に関与している可能性があると理解されている。本明細書で使用される場合、「プロニューロトロフィン」という語は、ニューロトロフィンのより大型の前駆物質であって、タンパク質切断を起こすことで、ニューロトロフィンの成熟型を生じるものを指す。ニューロトロフィンは、ニューロンの生存、発生、および機能を誘導するタンパク質ファミリーであり、一般に増殖因子と称される。プロニューロトロフィンは、生物学的活性を有し、アポトーシスの誘導など、そのニューロトロフィン対応物と比較して明確な役割を有する。プロニューロトロフィンの例としては、プロNGF、プロBDNF、プロNT3、およびプロNT4が挙げられる。プロニューロトロフィンは、シナプス可塑性を調節している可能性もある。成熟ニューロトロフィンがシナプス強度を誘導する一方、その前駆形態では、ニューロトロフィンはシナプスを弱める可能性がある。
【0013】
本発明の化合物は、ソルチリンの阻害剤または拮抗剤とすることができる。本明細書で使用される場合、「ソルチリン拮抗剤」という語は、プロニューロトロフィン(例えば、プロNGF、プロNT3、プロBDNF)に対するソルチリンタンパク質結合に干渉する、それを遮断する、またはその効果を減弱し、ソルチリンと、p75NTRと、プロニューロトロフィンとの間の三量体複合体の形成を防止する物質を指す。「ソルチリン拮抗剤」という語は、高親和性三量体複合体の形成に干渉する物質または薬剤も包含する。後者のシナリオでは、ソルチリンがp75NTRに結合でき(ただしプロNGFには結合できない)、同時に、p75NTRがプロNGFのNGFドメインと結合できることから、三量体複合体が形成される可能性があることが認識されている。しかし、得られる三量体複合体は、その受容体に対する親和性が低くなり、その結果、上記の機構を介してアポトーシスを惹起する能力が著しく低減する可能性がある。非特許文献15では、細胞内ドメイン内にソルチリンがない場合、三量体複合体のアポトーシス機能が消失することが示された。「ソルチリン拮抗剤」という語には、p75NTRと相互作用するソルチリンタンパク質に干渉する、それを遮断する、またはその効果を減弱する、物質または薬剤も包含される。この相互作用は、完全に妨げられる場合もあり、その場合、三量体複合体の形成が妨げられ、あるいは、部分的にしか妨げられない場合もあり、その場合、三量体複合体は形成されるが、生物学的効力が低減され得る。非特許文献15では、ソルチリンとp75NTRとの間の複合体形成が当該受容体の細胞外ドメインにおける接触点を頼りとするものであることと、その相互作用がp75NTRの細胞外の膜近傍の23アミノ酸配列に決定的に依存していることが示された。すなわち、ソルチリン拮抗剤は、この23アミノ酸配列または当該分子内の近位配列に干渉するものである可能性がある。
【0014】
本発明の第1の態様において、R1は、ハロ、C1~C4アルキル、およびハロC1~C4アルキルからなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、R1はフルオロC1~C4アルキルである。
【0015】
本発明の好ましい態様において、R1は、CF3およびt-ブチルからなる群から選択される。
【0016】
本発明の別の好ましい態様において、Aは、C1~C4ヒドロキシアルキルおよびC1~C4アルコキシからなる群から選択される。
【0017】
また好ましくは、Bは、H、C1~C4ハロアルキル、およびC1~C4アルキルからなる群から選択される。より好ましくは、BはHである。
【0018】
本発明の別の好ましい態様では、AおよびBが、それらが各々結合している炭素原子と一緒になって、C1~C4アルキルおよびC1~C4ハロアルキルから独立して選択される1または複数の置換基で所望により置換された5員~7員の単環式複素環を形成している。
【0019】
より好ましくは、AおよびBは、それらが各々結合している炭素原子と一緒になって、
C1~C4アルキルおよびC1~C4ハロアルキルから独立して選択される1または複数の置換基で所望により置換された6員の単環式複素環を形成している。
【0020】
より好ましくは、前記6員の単環式複素環は非置換である。
【0021】
さらにより好ましくは、前記6員の単環式複素環は酸素原子を含む。
【0022】
さらにより好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物であり、
【0023】
【0024】
式中、R1はハロ、C1~C4アルキル、およびハロC1~C4アルキルからなる群から選択される。より好ましくは、R1はフルオロC1~C4アルキルである。最も好ましくは、R1はCF3およびt-ブチルからなる群から選択される。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態において、
AはC1~C4ヒドロキシアルキルおよびC1~C4アルコキシからなる群から選択され;
BはH、C1~C4ハロアルキル、およびC1~C4アルキルからなる群から選択され;または、
AおよびBは、それらが各々結合している炭素原子と一緒になって、C1~C4アルキルおよびC1~C4ハロアルキルから独立して選択される1または複数の置換基で所望により置換された6員の単環式複素環を形成しており;並びに、
R1はハロ、C1~C4アルキル、およびハロC1~C4アルキルからなる群から選択される。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態において、
AはC1~C4ヒドロキシアルキルおよびC1~C4アルコキシからなる群から選択され;
BはHであり;または、
AおよびBは、それらが各々結合している炭素原子と一緒になって、非置換の6員の単環式複素環を形成しており;並びに、
R1はCF3およびt-ブチルからなる群から選択される。
【0027】
本発明の特定の化合物は以下に列挙されるものである。
2‐({5H,6H,8H‐ピラノ[3,4‐b]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐{[6‐(ヒロドキシメチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
5‐tert‐ブチル‐2‐{[6‐(ヒロドキシメチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}安息香酸;
(RAC) 2‐{[6‐(1‐ヒドロキシエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1S)‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1R)‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐{[6‐(2‐ヒドロキシプロパン‐2‐イル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐{[6‐(2‐ヒドロキシエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
(RAC) 5‐tert‐ブチル‐2‐{[6‐(1‐ヒドロキシエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}安息香酸;
5‐tert‐ブチル‐2‐({6‐[(1R)‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)安息香酸;
5‐tert‐ブチル‐2‐({6‐[(1S)‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)安息香酸;
2‐({2H,3H,4H‐ピラノ[2,3‐b]ピリジン‐7‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({2H,3H‐[1,4]ジオキシノ[2,3‐b]ピリジン‐6‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({5H,7H,8H‐ピラノ[4,3‐b]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐[(5,6,7,8‐テトラヒドロ‐1,6‐ナフチリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
5‐tert‐ブチル‐2‐({5H,6H,8H‐ピラノ[3,4‐b]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)安息香酸;
(RAC) 2‐{[6‐(2,2,2‐トリフルオロ‐1‐ヒドロキシエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1S)‐2,2,2‐トリフルオロ‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1R)‐2,2,2‐トリフルオロ‐1‐ヒドロキシエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
(RAC) 2‐{[6‐(1‐アミノ‐2,2,2‐トリフルオロエチル)ピリジン‐2‐イル]カルバモイル}‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1R)‐1‐アミノ‐2,2,2‐トリフルオロエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
2‐({6‐[(1S)‐1‐アミノ‐2,2,2‐トリフルオロエチル]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
または、その製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグ。
【0028】
式(I)の化合物は、神経変性障害、がん、疼痛、真性糖尿病、糖尿病性網膜症、循環器疾患、遺伝性の眼の状態、または難聴の治療または予防での使用が意図される。好ましくは、前記神経変性障害は、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、お
よび脊髄損傷から選択される。好ましくは、前記難聴は、騒音性難聴、聴器毒性難聴、加齢性難聴、特発性難聴、耳鳴症、および突発性難聴から選択される。好ましくは、前記がんは、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、甲状腺がん、膵がん、膠芽腫、および結腸直腸がんから選択される。好ましくは、前記循環器疾患は、アテローム性動脈硬化症、心筋症、心発作、不整脈、および冠動脈疾患から選択される。
【0029】
よって、実施形態において、本発明に係る使用のための化合物は、ソルチリン分子とプロニューロトロフィン分子との間の相互作用を破壊するものであるか、または、ソルチリン分子とp75NTR分子との間の相互作用を破壊するものである場合がある。前記ソルチリン分子は成熟ソルチリンである場合がある。
【0030】
好ましくは、本発明の化合物はソルチリン阻害剤である。本明細書で使用される場合、「ソルチリン阻害剤」という語は、ソルチリンタンパク質に結合することで、ソルチリンタンパク質がプロニューロトロフィンまたはp75NTR分子に結合することを妨げ、前記三量体複合体の形成を妨げる、または、低活性もしくは不活性である三量体複合体の形成をもたらす、化合物を指す。
【0031】
好ましくは、本発明の化合物は、ソルチリン分子とプロニューロトロフィンまたはp75NTR分子との間のタンパク質間相互作用を妨げ、さらに、ソルチリン、プロニューロトロフィン、およびp75NTR受容体の間で通常形成されるアポトーシス性の三量体複合体の形成を妨げる、または、生物活性が低い、もしくは不活性の、もしくは最低限の活性しかない、低親和性の三量体複合体の形成をもたらす。
【0032】
すなわち、本化合物は、ソルチリン、プロニューロトロフィン、またはp75NTR分子に結合し得るものである。その拮抗作用は、タンパク質間相互作用の直接的なブロッキングによるものである場合があり、あるいは、結合部位とは別のこれらのタンパク質の1つの部位に結合した場合の立体障害によるものである可能性がある。
【0033】
本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様に係る化合物、並びに1または複数の製薬上許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0034】
本発明の第3の態様において、治療法に使用するための、本発明の第1の態様に係る化合物、または本発明の第2の態様に係る医薬組成物が提供される。
【0035】
本発明の第4の態様において、神経変性障害、がん、疼痛、真性糖尿病、糖尿病性網膜症、循環器疾患、遺伝性の眼の状態、または難聴の治療または予防に使用するための、本発明の第1の態様に係る化合物、または本発明の第2の態様に係る医薬組成物が提供される。
【0036】
好ましくは、前記神経変性障害は、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、および脊髄損傷から選択される。
【0037】
好ましくは、前記難聴は、騒音性難聴、聴器毒性難聴、加齢性難聴、特発性難聴、耳鳴症、および突発性難聴から選択される。
【0038】
好ましくは、前記がんは、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、甲状腺がん、膵がん、膠芽腫、および結腸直腸がんから選択される。
【0039】
好ましくは、前記循環器疾患は、アテローム性動脈硬化症、心筋症、心発作(hear
d attack)、不整脈、および冠動脈疾患から選択される。
【0040】
本発明の第5の態様において、神経変性障害、がん、疼痛、真性糖尿病、糖尿病性網膜症、循環器疾患、遺伝性の眼の状態、または難聴の治療または予防用医薬の製造のための、本発明の第1の態様に係る化合物の使用が提供される。
【0041】
本発明の第6の態様において、本発明の第1の態様に係る化合物または本発明の第2の態様に係る医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、ソルチリン調節に応答性の疾患または状態を治療または予防するための方法が提供される。
【0042】
本発明の化合物は、該化合物の、同位体標識および/または同位体濃縮された形態を包含する場合がある。本発明の化合物は、本明細書にて、係る化合物を構成する原子のうちの1または複数において、不自然な割合の原子同位体を含有している場合がある。開示される化合物に組み込むことができる同位元素の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、塩素の同位元素が挙げられ、例えば、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15O、17O、32P、35S、18F、36Clなどである。
【0043】
本発明の化合物は、そのまま、または、適切な場合、その薬理学的に許容できる塩(酸付加塩または塩基付加塩)として、使用される場合がある。下記の薬理学的に許容できる付加塩は、当該化合物が形成可能な、治療活性を有する無毒の酸付加塩形態および塩基付加塩形態を含むことが意図される。塩基性の性質を有する化合物は、その塩基形態を適切な酸で処理することで、製薬上許容される酸付加塩に変換することができる。例示的な酸としては、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸などの無機酸;並びに、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、パモン酸、安息香酸、アスコルビン酸などの有機酸などが挙げられる。酸性の性質を有する化合物は、その酸形態を適切な塩基で処理することで、製薬上許容される塩基付加塩に変換することができる。例示的な塩基付加塩形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、並びに、例えば、アンモニア、アルキルアミン、ベンザチン、並びに、例えばアルギニンおよびリジンなどのアミノ酸などの製薬上許容されるアミンとの塩がある。付加塩という語は、本明細書で使用される場合、例えば、水和物、アルコラートなどの、当該化合物およびその塩が形成可能な溶媒和物も含む。
【0044】
本開示の全体を通じて、所与の化学式または名称は、全てのその製薬上許容される塩形態、溶媒和物形態、水和物形態、N-オキシド形態、および/またはプロドラッグ形態も包含するものとする。本発明の化合物は、その化合物式の、あらゆる全ての水和物および/または溶媒和物を包含することを理解されたい。ヒドロキシ基、アミノ基、および同様の基などの特定の官能基は、当該化合物の種々の物理的形態において、水および/または種々の溶媒と、複合体および/または配位化合物を形成すると理解される。よって、上記の式は、それらの種々の水和物および/または溶媒和物を包含し、表していると理解されるべきである。
【0045】
本発明の化合物は互変異性型も包含する。互変異性型は、単結合が隣接する二重結合と入れ替わり、それに随伴して、水素イオンが移動した結果生じる。互変異性型は、同じ実験式および全電荷を有する、異性体的なプロトン化状態である、プロトトロピック互変異性体を包含する。プロトトロピック互変異性体の例としては、ケトン-エノールのペア、アミド-イミド酸のペア、ラクタム-ラクチムのペア、アミド-イミド酸のペア、エナミン-イミンのペア、並びに、水素イオンが複素環系の2つ以上の位置を占有できる環状形態同士、例えば、1Η-イミダゾールと3H-イミダゾール、1Η-1,2,4-トリア
ゾールと、2Η-1,2,4-トリアゾールと、4Η-1,2,4-トリアゾール、1Η-イソインドールと2Η-イソインドール、および1Η-ピラゾールと2H-ピラゾールが挙げられる。互変異性型は、平衡状態とすることもできるし、または、適切な置換によって1つの形態に立体的にロックすることもできる。
【0046】
本明細書に記載の化合物は、不斉性を有する(例えば1または複数の立体中心を有する)場合がある。特に記載がない限り、鏡像異性体およびジアステレオマーなどの全ての立体異性体が意図される。非対称に置換された炭素原子を含有する本発明の化合物が、光学活性体またはラセミ体として単離される場合がある。光学活性出発物質から光学活性体を調製する方法は、当該技術分野において公知であり、ラセミ混合物の分割または立体選択的合成などによる。本明細書に記載の化合物にはオレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体が存在している可能性もあり、そのような安定な異性体は全て本発明に包含される。本発明の化合物のシス型およびトランス型の幾何異性体が記載されているが、異性体の混合物として、または分離された異性体として単離することができる。
【0047】
不斉炭素原子を含有する化合物の場合、本発明は、D型、L型、およびD、L混合物に関し、また、2つ以上の不斉炭素原子が存在する場合、ジアステレオマー体に関する。不斉炭素原子を含有し、且つ、概してラセミ化合物として生じる、本発明の化合物は、公知の方法で、例えば光学活性酸を用いて、分離して光学活性異性体にすることができる。しかし、最初から光学活性出発物質を使用し、対応する光学活性化合物またはジアステレオマー化合物を後に最終産物として得ることも可能である。
【0048】
「プロドラッグ」という語は、生理条件下で、または加溶媒分解によって、本発明の生物活性化合物に変換できる化合物を指す。プロドラッグは、治療を必要とする対象に投与された際は不活性であり得るが、体内において本発明の活性化合物に変換される。典型的に、プロドラッグは体内において例えば血中での加水分解によって急速に変換されて本発明の親化合物を生じる。プロドラッグ化合物は通常、哺乳動物における溶解性、組織適合性、または遅延放出という利点を提供する(非特許文献16参照)。本発明の化合物のプロドラッグは、修飾物が通例の操作または体内において切断されて本発明の親化合物になるように、本発明の化合物に存在するヒドロキシ基、アミノ基、またはメルカプト基などの官能基を修飾することによって、調製することができる。プロドラッグの例としては、限定はされないが、ヒドロキシ官能基の酢酸エステル誘導体、ギ酸エステル誘導体、およびコハク酸エステル誘導体、またはアミノ官能基のフェニルカルバメート誘導体が挙げられる。
【0049】
「治療」という語は、本明細書で使用される場合、指定の障害もしくは状態の予防、またはその障害が確立してからのその改善もしくは解消を含む場合がある。「予防」という語は、指定の障害もしくは状態の未然防止を指す。
【0050】
本明細書に記載の方法は、対象が特定の治療を必要としていると特定されたものである方法を包含する。そのような治療を必要としている対象の特定は、対象の判断によるものであっても医療従事者の判断によるものであってもよく、主観的(例えば、意見)であっても客観的(例えば、検査法または診断法で測定可能)であってもよい。
【0051】
他の態様では、本明細書の方法は、治療投与に対する対象の反応をモニターすることをさらに含む方法を包含する。そのようなモニタリングは、治療レジメンのマーカーまたは指標としての、対象の組織、体液、検体、細胞、タンパク質、化学マーカー、遺伝物質などの、定期的なイメージングまたはサンプリングを含む場合がある。他の方法では、対象は、そのような治療に対する適合性の関連マーカーまたは指標を評価することによって、そのような治療を必要としていると事前スクリーニングまたは特定される。
【0052】
本発明は治療の進行をモニターする方法を提供する。本方法は、疾患またはその症状を治療するために十分な治療量の本明細書における化合物を投与された、本明細書に記載の障害またはその症状に罹患している、またはそれに罹患し易い対象における、診断マーカー(マーカー)(例えば、本明細書における化合物により調節される本明細書に記載の任意の標的または細胞型)のレベルを求める工程、または診断的測定(例えば、スクリーニング、アッセイ)の工程を含む。本方法で求められたマーカーのレベルを、健康な正常対照または他の罹患者における既知のマーカーレベルと比較することで、当該対象の疾病状態を確かめることができる。好ましい実施形態では、対象における第2のマーカーレベルを、第1のレベルの測定時よりも遅い時点で求め、それら2つのレベルを比較することで、疾患の経過や治療法の効力をモニターする。特定の好ましい実施形態では、対象における治療前マーカーレベルを、本発明に係る治療を開始する前に求め;その後、この治療前マーカーレベルを、治療を開始した後の対象におけるマーカーレベルと比較することで、治療の効力を求めることができる。
【0053】
対象におけるマーカーレベルまたはマーカー活性は、少なくとも1回求められる場合がある。マーカーレベルの、例えば、同一患者、別の患者、または健常者から先または後に得られたマーカーレベルの別の測定値との比較は、本発明に係る治療法が所望の効果を奏しているかどうかを判定する際に有用な場合があり、それにより必要に応じた投与量の調整が可能となる。マーカーレベルの測定は、当該技術分野において公知の、または本明細書に記載の、任意の好適なサンプリング/発現アッセイ法を用いて行われる場合がある。好ましくは、まず組織サンプルまたは体液サンプルを対象から採取する。好適なサンプルの例としては、血液サンプル、尿サンプル、組織サンプル、口または頬の細胞サンプル、および毛根を含む毛髪サンプルが挙げられる。他の好適なサンプルは当業者には公知である。サンプル中のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベル(例えば、マーカーレベル)の測定は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を用いて行うことができ、酵素免疫測定法、ELISA、放射標識/アッセイ法、ブロッティング/化学発光法、リアルタイムPCRなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0054】
臨床用途では、本明細書で開示される化合物は、各種投与様式用の医薬組成物(または製剤)へと調製される。本発明の化合物が、生理学的に許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤(すなわち、これらのうちの1つ、2つ、または3つ全て)と一緒に投与される場合があることを理解されたい。本明細書で開示される医薬組成物は、任意の好適な経路で投与することができ、好ましくは経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所投与(点眼投与、頬側投与、および舌下投与を含む)、舌下投与、経皮投与、髄腔内投与、経粘膜投与、または非経口投与(皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、および皮内投与を含む)。他の製剤は、単位剤形(例えば、錠剤および徐放性カプセル剤)として、リポソーム剤として、提示できるものが好都合であり、また、薬学分野において周知の任意の方法によって調製できるものである。医薬製剤は、通常、活性物質またはその製薬上許容される塩を、従来の製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤と混合することにより、調製される。賦形剤の例は、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、微結晶性セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド状二酸化ケイ素などである。このような製剤は、他の薬理活性物質、および安定剤、湿潤剤、乳化剤、香味剤、緩衝剤などの従来の添加剤を含有してもよい。通常、活性化合物の含有量は、製剤の0.1~95重量%であり、非経口用製剤中の0.2~20重量%が好ましく、経口投与用製剤中の1~50重量%がより好ましい。これらの製剤は、造粒、圧縮、マイクロカプセル化、スプレーコーティングなどの公知の方法によるさらなる調製が可能である。これらの製剤は、従来法で、錠剤、カプセル剤、粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、坐剤、または注射剤の剤形に調製されてもよい。活性物質を水または他の好適な溶媒に溶解または懸濁することで、液剤を調製してもよい。
錠剤および粒剤は従来通りのコーティングがなされていてもよい。治療効果のある血漿中濃度を長期間維持するために、本明細書で開示される化合物は徐放製剤に配合されてもよい。
【0055】
特定の化合物の用量レベルおよび投与頻度は、使用される特定の化合物の効力、当該化合物の代謝的安定性および作用の長さ、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与様式および投与時期、排泄速度、薬剤の組み合わせ、治療対象の状態の重症度、並びに治療法を受けている患者を含む、種々の要因に依存して、変更されることとなる。1日用量は、例えば、体重1kg当たり約0.001mg~約100mgの範囲をとってもよく、例えばそれぞれ約0.01mg~約25mgの1回量で1回または複数回投与される。通常、そのような用量は、経口的に与えられるが、非経口投与が選択されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、実施例23の化合物とソルチリンとの間の相互作用を示す、仮想的な結合の描出である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
定義
「所望の」または「所望により」とは、続いて記載される事象または状況が起こる場合があるが、起こる必要はなく、その記述がその事象または状況が起こる場合と起こらない場合を包含することを意味する。
【0058】
「ヘテロ原子」という語は、O、N、またはSを意味する。
【0059】
「C1~C4アルキル」という語は、1~4個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個、または4個の炭素原子を有する、直鎖状、分岐鎖状、または環状もしくは部分環状のアルキル基を表す。「C1~C4アルキル」基が環状部分を含むためには、3~4個の炭素原子から形成されていなければならない。範囲「C1~C4アルキル」の部分については、C1~C4アルキル、C1~C3アルキル、C1~C2アルキル、C1アルキル、C2~C4アルキル、C2~C3アルキル、C2アルキル、C3~C4アルキル、C3アルキル、およびC4アルキルなどの、その全ての部分群が意図される。「C1~C4アルキル」の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、およびシクロプロピルメチルが挙げられる。
【0060】
「C1~C4ヒドロキシアルキル」という語は、-OH基で置換された上記のようなC1~C4アルキルを表す。「C1~C4ヒドロキシアルキル」の例としては、ヒロドキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、および3-ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0061】
「C1~C4アミノアルキル」という語は、-NH2基で置換された上記のようなC1~C4アルキルを表す。
【0062】
「C1~C4ハロアルキル」という語は、好ましくは、F、Cl、Br、およびIであり、より好ましくはFおよびClであり、最も好ましくはFである、ハロゲン原子で置換された、上記のようなC1~C4アルキルを表す。
【0063】
「C1~C6アルキル」という語は、1~6個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する、直鎖状、分岐鎖状、または環状もしくは部分環状のアルキル基を表す。「C1~C6アルキル」基が環状部分を含むためには、3~6個の炭素原子から形成されていなければならない。範囲「C1~C6アルキル」の部分については、C1~C5アルキル、C1~C4アルキル、C1~C3アルキル、C1~C2アルキル、C1アルキル、C2~C6アルキル、C2~C5アルキル、C2~C4アルキル、C2~C3アルキル、C2アルキル、C3~C6アルキル、C3~C5アルキル、C3~C4アルキル、C3アルキル、C4~C6アルキル、C4~C5アルキル、C4アルキル、C5~C6アルキル、C5アルキル、およびC6アルキルなどの、その全ての部分群が意図される。「C1~C6アルキル」の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、並びに直鎖状、分岐鎖状、または環状もしくは部分環状のペンチルおよびヘキシルなどが挙げられる。
【0064】
用語が範囲を示している場合(例えばC1~C6アルキルの定義における「1~6個の炭素原子」)、それぞれの整数、すなわち1、2、3、4、5、および6、が開示されていると見なされる。
【0065】
「C2~C6アルケニル」という語は、少なくとも1つの炭素間二重結合を有し、2~6個の炭素原子を有する、直鎖状、分岐鎖状、または環状もしくは部分環状のアルキル基を表す。上記アルケニル基は3~6個の炭素原子から形成された環を含む場合がある。範囲「C2~C6アルケニル」の部分については、C2~C5アルケニル、C2~C4アルケニル、C2~C3アルケニル、C2アルケニル、C3~C6アルケニル、C3~C5アルケニル、C3~C4アルケニル、C3アルケニル、C4~C6アルケニル、C4~C5アルケニル、C4アルケニル、C5~C6アルケニル、C5アルケニル、およびC6アルケニルなどの、その全ての部分群が意図される。「C2~C6アルケニル」の例としては、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチル-2-プロペニル、2-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2,3-ジメチル-2-ブテニルが挙げられる。「C1~C4アルコキシ」という語は、C1~C4アルキル基が上記の定義の通りであり、酸素原子を介して化合物の残部に結合している、-O-(C1~C4アルキル)を表す。「C1~C4アルコキシ」の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、およびt-ブトキシが挙げられる。
【0066】
「C1~C4ハロアルコキシ」という語は、好ましくは、F、Cl、Br、およびIであり、より好ましくはFおよびClであり、最も好ましくはFである、ハロゲン原子で置換された、上記のようなC1~C4アルコキシを表す。
【0067】
「ハロ」という語は、ハロゲン原子を意味し、好ましくは、F、Cl、Br、およびIであり、より好ましくはFおよびClであり、最も好ましくはFである。
【0068】
「5員~7員の単環式複素環」という語は、5~7個の環原子を有し、少なくとも1個の環原子がヘテロ原子である、非芳香族の単環式環系を表す。
【0069】
「有効量」は、処置された対象に治療効果を与える本発明の化合物の量を指す。治療効果は、客観的な(すなわち、いくつかの検査またはマーカーで測定可能な)ものでもよいし、主観的な(すなわち、対象が効果の兆候を示す、または効果を感じる)ものでもよい。
【0070】
本明細書で使用される場合、「投与」または「投与する」という語は、本明細書で開示される化合物の投与経路を意味する。例示的な投与経路としては、経口投与、眼内投与、静脈内投与、腹腔内投与、動脈内投与、および筋肉内投与が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましい投与経路は、種々の要因、例えば、本明細書で開示される化合物を
含む医薬組成物の成分、潜在的または実際の疾患の部位、および疾患の重症度に依存して変わる可能性がある。
【0071】
「対象」および「患者」という語は、本明細書では同義的に使用されている。前記語は、疾患または障害に罹患している可能性がある、またはそれに罹患し易いが、該疾患または障害を有していても有していなくてもよい、ヒトまたは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。対象はヒトであることが好ましい。
【0072】
本発明の化合物は、その名称または化学構造によって開示されている場合がある。化合物の名称とその関連化学構造との間に矛盾が存在する場合、化学構造が優先される。
【0073】
以下、本発明を下記の非限定例によりさらに説明する。下記の具体例は、単なる例示にすぎず、開示の他の部分を何ら一切限定するものではないと解釈されたい。これ以上の詳しい説明がなくとも、当業者であれば、本明細書における説明に基づいて、本発明を最大限に利用できるものと考えられる。本明細書で引用された全ての参考文献および刊行物は、それらの全体が参照によって本明細書に援用される。
【0074】
本発明の化合物の調製
本明細書で開示される式(I)の化合物は、従来法によって、またはそれと同様に調製することができる。個々の反応工程に適した反応条件は当業者に公知である。式(I)の化合物を調製するために必要な出発物質は市販品であるか、または、当該技術分野において公知の方法で調製してもよい。
【0075】
式(I)の化合物は1または複数の不斉炭素原子を有している場合があり、そのため、光学異性体の形態で、例えば、純粋な鏡像異性体として、または鏡像異性体の混合物として、またはジアステレオマーを含有する混合物として、得られる場合がある。光学異性体混合物の分離による純粋な鏡像異性体の入手は当該技術分野においては周知であり、例えば、光学活性(キラル)酸との塩の分別再結晶によって、またはキラルカラムクロマトグラフィーによる分離によって、達成することができる。
【0076】
本発明の例示的な特定の実験手順を以下に記載する。本方法を実行することで、本発明の化合物を中性分子の形態で、例えば、プロトン化したカルボン酸もしくは遊離塩基として、または、それぞれ塩基付加塩もしくは酸付加塩を含むイオン性分子として、得えることができる。製薬上許容される塩基付加塩または酸付加塩は、酸化合物または塩基化合物から塩基付加塩および酸付加塩を調製するための従来の手順に従い、遊離塩基を好適な有機溶剤中に溶解し、その溶液を塩基または酸で処理することで、得ることができる。付加塩を形成する酸の例は上述のものである。
【0077】
本明細書に記載の合成経路で使用される化学物質としては、例えば、溶媒、試薬、触媒、並びに保護基試薬および脱保護基試薬を挙げることができる。保護基の例としては、t-ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジル、およびトリチル(トリフェニルメチル)がある。下記の方法は、本化合物の合成を最終的に可能にすることを目的として、適切な保護基を付加または除去するための工程を、本明細書で具体的に記載される工程の前後いずれかに追加で含んでもよい。さらに、所望の化合物を得るために、各種合成工程を順序や順番を入れ替えて実行してもよい。該当する化合物の合成において有用な、合成化学変換および保護基方法論(保護および脱保護)は、当該技術分野において公知であり、例えば、非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;および非特許文献20、並びにその後続版に記載のものが挙げられる。
【0078】
以下、本発明を下記の非限定例によりさらに説明する。下記の具体例は、単なる例示にすぎず、開示の他の部分を何ら一切限定するものではないと解釈されたい。これ以上の詳しい説明がなくとも、当業者であれば、本明細書における説明に基づいて、本発明を最大限に利用できるものと考えられる。本明細書で引用された全ての参考文献および刊行物は、それらの全体が参照によって本明細書に援用される。
【0079】
一般合成法1
【0080】
【0081】
スキーム1
一般合成法1では、標準的なアミドカップリング法を用いて、例えば、中間体Aのような化合物と好適な2-アミノピリジン2とを、HATUおよび窒素含有アミン(DIPEAなど)などのカップリング剤の存在下、DMFなどの好適な有機溶剤中、室温で、混合することで、中間体Aに存在する遊離カルボン酸を、適切に置換されたアミノピリジンとカップリングさせて、一般式3の中間体を得る。次に、3から、純粋なギ酸などを用いてtert-ブチルエステル基を脱保護することで、一般式Iの化合物を得ることができる。
【0082】
中間体Aは、スキーム2に示されるように、必要とされる位置化学的な置換パターンにより、一般構造4、5または6の市販化合物から得ることができる。一般構造4の中間体から開始する場合、ジクロロメタンなどの好適な溶媒中で、塩素化試薬(例えば塩化チオニル)により、カルボン酸を活性化することができる。これにより一般構造5の中間体が得られ、それを、tert-ブタノールなどの好適な溶媒中、tert-ブタン酸ナトリウムまたはtert-ブタン酸カリウムなどのtert-ブタノールの金属塩で処理すると、中間体6が得られる。中間体Aに示されるようなカルボン酸一般構造への、メチル置換基のベンジル位酸化は、例えば、例えばN-ブロモスクシンイミドのような臭素化試薬を用いた、官能基選択的な臭素化により一般中間体7を得ることで、達成できる。7の臭化ベンジルから、酸化試薬(例えば、N-メチルモルホリン N-オキシド、(NMO))との反応により、一般構造8のアルデヒド含有中間体を得ることができる。次いで、一般式8の中間体に存在するアルデヒド官能基の、適切な酸化系での、例示としては、例えばt-ブタノールと水の混合物のような好適な溶媒中、亜塩素酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、および2-メチル-2-ブテンの混合物を用いることによる、第2の酸化によって、中間体Aを得ることができる。
【0083】
【0084】
スキーム2
一般合成法2
【0085】
【0086】
スキーム3
一般合成法2では、一般構造9の無水フタル酸を、好適に置換された2-アミノピリジンと反応させ、その後、2種の位置異性体性アミドを、クロマトグラフィーによって、例えば超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を用いることで、分離することで、一般構造Iの所望の化合物を得る。
【実施例】
【0087】
【0088】
スキーム4
中間体1A
2-(tert-ブトキシカルボニル)-4-(トリフルオロメチル)安息香酸
【0089】
【0090】
スキーム4による合成
二塩化オキサリル(3.73g、2.52mL、1.2当量、29.4mmol)を、無水ジクロロメタン(100ml)中の2-メチル-5-(トリフルオロメチル)安息香酸(5.00g、1当量、24.5mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(35.8mg、37.9μL、0.02当量、490μmol)の撹拌懸濁液に、室温、窒素下で加えた。激しい起沸が認められ、10分後、全ての固体が溶解し終わった。2時間後に起沸が止まってから、tert-ブタノール(9.08g、11.7mL、5当量、122mmol)を加え、その後ピリジン(2.32g、2.38mL、1.2当量、29.4mmol)を加えた。得られた溶液を室温で18時間撹拌し、その後35℃で4日間加熱した。大部分のジクロロメタンを真空蒸発させた。この混合物を、TBME(100ml)で希釈し、1M塩酸(50ml)、次いで炭酸水素ナトリウム溶液(50ml)、次いでブライン(25ml)で洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、未精製固体13(5.001g)まで真空蒸発させた。1H NMRはtert-ブチルエステルおよび二量体酸無水物の混合物と一致した。この固体をTBME(100ml)に溶解させ、N,N-ジメチルエチレンジアミン(1.00g)を加えた。30分後、この無水物の対応するエステルおよびカルボン酸への完全な変換が達成された。この溶液を1M塩酸(50ml)、炭酸水素ナトリウム溶液(50ml)、ブライン(25ml)で洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、油になるまで真空蒸発させることで、中間体13(3.31g)を得た。DMSO-d中の1H NMR:(400MHz,DMSO-d6) δ 7.96(d,J=2.1Hz,1H),7.80(dd,J=8.1,2.1Hz,1H),7.55(d,J=8.0Hz,1H),2.56(s,3H),1.55(s,9H)。
【0091】
N-ブロモスクシンイミド(2.46g、1.20当量、13.8mmol)を、クロロホルム(60mL)中のtert-ブチル 2-メチル-5-(トリフルオロメチル)安息香酸エステル13(3.16g、95重量%、1.00当量、11.5mmol)の撹拌溶液に加えた。この混合物を加熱還流し、AIBN(94.7mg、0.05当量、577μmol)を加えた。30分後、薄層クロマトグラフィー(シリカプレート、9/1 ヘキサン/酢酸エチル)により反応の証拠があり、近走する生成物の形成が示された。この混合物を室温まで冷却し、クロロホルムを真空除去した。残渣を無水アセトニトリル(60mL)に再溶解させ、4-メチルモルホリン4-オキシド(2.70g、2.00当量、23.1mmol)を加えた。この混合物を室温で20時間撹拌した。この混合物を、TBME(120ml)で希釈し、1M塩酸(60ml)、次いで1M水酸化ナトリウム溶液(60ml)、次いでブライン(60ml)で洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、真空蒸発させて、油としての中間体15(2.83g)を得た。DMSO-d6中の1H NMRは、推定純度約25%の生成物構造と一致した。この物質はさらなる精製を行わずに次の工程にそのまま用いた。
【0092】
亜塩素酸ナトリウム(467mg、2.00当量、5.16mmol)を、t-ブタノール(4mL)および水(1mL)の混合物中の未精製tert-ブチル 2-ホルミル-5-(トリフルオロメチル)安息香酸エステル(2.83g、25重量%、1.00当量、2.58mmol)、リン酸二水素ナトリウム(310mg、1.00当量、2.58mmol)、および2-メチル-2-ブテン(905mg、1.37mL、5.00当量、12.9mmol)の撹拌溶液に加えた。この反応混合物を室温で18時間撹拌した後、追加の亜塩素酸ナトリウム(467mg、2.00当量、5.16mmol)を加え、撹拌を2時間続け、そこで反応を完了とした。この混合物を酢酸エチル(50ml)で希釈し、1M塩酸(40ml)およびメタ重亜硫酸ナトリウム溶液(10ml)の混合物で洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、真空蒸発させた。残渣を、ジクロロメタン/イソヘキサン(1:2、6ml)中の液体としてローディングした後、イソヘキサン中、99/1=酢酸エチル/酢酸の0~50%グラジエントで溶出するカラムクロマトグラフィー(40g Flash Pureシリカカートリッジ)にかけた。所望の生成物を含有する画分を真空蒸発し、残渣をトルエン(10ml)で共沸させることで、凝固した油として中間体A1を得た(0.638g、2.1mmol、81%、純度95%)。
【0093】
実施例1の調製
2-((5,8-ジヒドロ-6H-ピラノ[3,4-b]ピリジン-2-イル)カルバモイル)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸
【0094】
【0095】
中間体17
Tert‐ブチル 2‐({5H,6H,8H‐ピラノ[3,4‐b]ピリジン‐2‐イル}カルバモイル)‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸エステル
【0096】
【0097】
HATU(72.1mg、0.19mmol、1.1当量)を、ジクロロメタン(1mL)中の2-(tert-ブトキシカルボニル)-4-(トリフルオロメチル)安息香酸(50mg、0.17mmol)、5,8-ジヒドロ-6H-ピラノ[3,4-b]ピリジン-2-アミン(28.5mg、0.19mmol、1当量)、およびジイソプロピルエチルアミン(90μl、0.52mmol、3当量)の混合物に加え、その混合物を室温で16時間撹拌した。
【0098】
ギ酸(2mL)を加え、その混合物を40℃で24時間撹拌した。溶媒を真空蒸発し、残渣をDMSO(1mL)に溶解し、分取HPLC(方法PREP_ACID-AS4A)で精製した。生成物を含有する画分を合わせて凍結乾燥したところ、14mg(0.04mmol、理論値の11%)の表題化合物が得られた。
【0099】
LCMS(方法3:UPLC_AN_BASE、0.836分;M+H=367.2;計算値367.1)
1H NMR(400MHz,DMSO) δ 13.54(s,1H),10.99(s,1H),8.12(d,J=1.9Hz,1H),8.01(d,J=7.8Hz,2H),7.74(d,J=8.0Hz,1H),7.63(d,J=8.4Hz,1H),4.58(s,2H),3.90(t,J=5.6Hz,2H),2.83-2.76(m,2H)。
【0100】
実施例2~23
表1に記載の実施例2~23は一般合成法1および/または一般合成法2に従って調製することができる。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
分析法
LC-MS
方法の情報
方法1:LCMS_SC_BASE、装置:Agilent 1260バイナリポンプ:G1312B、デガッサ;オートサンプラー、ColCom、DAD:Agilent G1315C、210nm、220nm、および220~320nm、PDA 210~320nm、MSD:Agilent LC/MSD G6130B ESI、ポジティブ/ネガティブ 100-1000;カラム:Waters XSelect(登録商標) CSH C18、30×2.1mm、3.5μm、温度:25℃、流速:1mL/分、グラジエント:t0=5%B、t1.6分=98%B、t3分=98%B、ポストタイム:1.4分、溶離液A:10mM炭酸水素アンモニウム水溶液(pH=9.0)、溶離液B:アセトニトリル。
【0106】
方法2:UPLC_SC_BASE、装置:Waters IClass;バイナリポンプ:UPIBSM、SM:UPISMFTN、SO;UPCMA、PDA:UPPDATC、210~320nm、SQD:ACQ-SQD2 ESI;ELSD:ガス圧40psi、ドリフトチューブ温度:50℃;カラム:Waters XSelect(登録商標) CSH C18、50×2.1mm、2.5μm、温度:25℃、流速:0.6mL/分、グラジエント:t0=5%B、t1.3分=98%B、t1.7分=98%B、ポストタイム:0.3分、溶離液A:10mM炭酸水素アンモニウム水溶液(pH=9.5)、溶離液B:アセトニトリル。
【0107】
方法3:UPLC_AN_BASE、装置:Waters IClass;バイナリポンプ:UPIBSM、SM:UPISMFTN、SO;UPCMA、PDA:UPPDATC、210~320nm、SQD:ACQ-SQD2 ESI;ELSD:ガス圧40psi、ドリフトチューブ温度:50℃;カラム:Waters XSelect(登録商標) CSH C18、50×2.1mm、2.5μm、温度:25℃、流速:0.6mL/分、グラジエント:t0=5%B、t2.0分=98%B、t2.7分=98%B、ポストタイム:0.3分、溶離液A:10mM 炭酸水素アンモニウム水溶液(pH=9.5)、溶離液B:アセトニトリル。
【0108】
方法4:PREP_ACID-AS3A、装置:Agilent Technologies G6130B Quadrupole;HPLC装置型:Agilent Technologies 1290分取LC;カラム:Waters XSelect(登録商標) CSH(C18、100×30mm、10μ);流速:55ml/分;カラム温度:室温;溶離液A:0.1%ギ酸水溶液;溶離液B:100%アセトニトリル;線形グラジエント:t=0分10%B、t=2分10%B、t=8.5分50%B、t=10分100%B、t=10分100%B;検出:DAD(220~320nm);検出:MSD(ESIポジティブ/ネガティブ) 質量範囲:100~1000;MSおよびDADに基づいた画分回収。
【0109】
方法5:PREP_ACID-AS4A、装置:Agilent Technologies G6130B Quadrupole;HPLC装置型:Agilent Technologies 1290分取LC;カラム:Waters XSelect(登録商標) CSH(C18、100×30mm、10μ);流速:55ml/分;カラム温度:室温;溶離液A:0.1%ギ酸水溶液;溶離液B:100%アセトニトリル 線形グラジエント:t=0分20%B、t=2分20%B、t=8.5分60%B、t=10分100%B、t=13分100%B;検出:DAD(220~320nm);検出:MSD(ESIポジティブ/ネガティブ) 質量範囲:100~1000;MSおよびDADに基づいた画分回収。
【0110】
1H NMR
Bruker Avance AV-I-400装置またはBruker Avance AV-II-400装置で400MHzの1H-NMRスペクトルを記録した。特に断りがない限り、化学シフト値はテトラメチルシランに対するppm値で表されている。NMRシグナルの多重度ついては以下の略語またはそれらの組み合わせを用いている:br=幅広線、d=二重線、m=多重線、q=四重線、quint=五重線、s=一重線、およびt=三重線。
【0111】
生物学的データ
ニューロテンシンシンチレーション近接アッセイ
例示された本発明の化合物をニューロテンシン(NTS)シンチレーション近接アッセイ(SPA)で試験した。そのIC50データを下記表2に示す。NTSは、13アミノ酸の神経ペプチドであり、ソルチリンのリガンドである。IC50はNTSのソルチリンへの結合を50%阻害するために必要な化合物量の尺度である。IC50値が低いほど、所望の効果を達成するために必要な化合物が少なくなり、その結果、望ましくないオフターゲット効果の確率が減少するものと、当業者に認識される。
【0112】
ヒトソルチリン結合アッセイ
化合物の親和性は、シンチレーション近接アッセイ(SPA)フォーマットを用いて、3H-ニューロテンシンおよび/または125I-ニューロテンシンのヒト完全長ソルチリンへの結合の阻害を測定することにより求めた。
【0113】
ヒトソルチリンSPA結合アッセイは、100mM NaCl、2.0mM CaCl2、0.1%(v:v) BSA、および0.1%(v:v) Tween(登録商標)-20を含有する総体積40μlの50mM HEPES(pH7.4)アッセイ用緩衝液中で行った。種々の濃度の試験化合物を、150nMのC末端ヘキサヒスチジン-ヒト完全長ソルチリン(RDシステムズ社)と一緒に室温で30分間プレインキュベートした。放射性リガンドとして5nMの[3H]-ニューロテンシンまたは0.35nMの[125I]-ニューロテンシンを加えた。非特異的結合は20μMのヒトニューロテンシンの存在下で確認された結合とした。0.1mgのPVT 銅 HISタグイメージングビーズ(パーキンエルマー社)を加え、プレートを400rpm、暗所で1時間撹拌した。このSPAビーズを最低2時間のセトリング時間にかけた後、Hidex(登録商標) Sense 425-301シンチレーションリーダーで45秒の露光時間でプレートを読み取った。8点の異なる化合物濃度(3ディケードをカバー)を用いて試験化合物の濃度-反応評価を行った。アッセイの高コントロールおよび低コントロール(それぞれ0μMおよび20μMのヒトニューロテンシン)を用いて、相対IC50値を、GraphPad Prism 9.0で利用可能なシグモイド濃度-反応(可変傾斜)フィッティングオプションを用いた非線形回帰分析により算出した。化合物の効力の結果は、チェン=プルソフ(Cheng-Prusoff)式(Ki=IC50/(l+(L/Kd)))を用いて、Ki値に変換されたIC50計算値から導かれる阻害定数Ki値(nM)に変換した。ヒトニューロテンシンのKdは飽和結合実験により374nMと決定された(n=2)。
【0114】
【0115】
参考文献
1. Tauris, J., et al., Proneurotrophin-3 May Induce Sortilin-Dependent Death In Inner Ear Neurons. Eur J Neuroscience (2020), 33(4), pp.622-31.
2. Goettsch, C., et al., Sortilin and Its Multiple Roles in Cardiovascular and M
etabolic Diseases. Atherosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology (2017), 38(1), pp. 19-25.
3. Willnow, T.E., et al., Sortilins: new players in lipoprotein metabolism. Current Opinion in Lipidology (2011), 22(2), pp. 79-85.
4. Kjolby, M., et al., Sort1, encoded by the cardiovascular risk locus 1p13.3, is a regulator of hepatic lipoprotein export. Cell Metabolism (2010), 12(3), pp. 213-223.
5. Jansen, P., et al., Roles for the pro-neurotrophin receptor sortilin in neuronal development, aging and brain injury. Nature Neuroscience (2007), 10(11), pp.1449-1457.
6. Tenk, H.K., et al., ProBDNF induces neuronal apoptosis via activation of a receptor complex of p75NTR and sortilin. J Neuroscience (2005), 10(11), pp.1449-1457.
7. Nykjaer, A., et al., Sortilin is essential for proNGF-induced neuronal cell death. Nature (2004), 427(6977), pp.843-848.
【0116】
明細書中で参照された、説明の一部を形成する配列
【0117】
配列番号1(完全長ソルチリン-アイソフォーム1)
1 MERPWGAADG LSRWPHGLGL LLLLQLLPPS TLSQDRLDAP PPPAAPLPRW
51 SGPIGVSWGL RAAAAGGAFP RGGRWRRSAP GEDEECGRVR DFVAKLANNT
101 HQHVFDDLRG SVSLSWVGDS TGVILVLTTF HVPLVIMTFG QSKLYRSEDY
151 GKNFKDITDL INNTFIRTEF GMAIGPENSG KVVLTAEVSG GSRGGRIFRS
201 SDFAKNFVQT DLPFHPLTQM MYSPQNSDYL LALSTENGLW VSKNFGGKWE
251 EIHKAVCLAK WGSDNTIFFT TYANGSCKAD LGALELWRTS DLGKSFKTIG
301 VKIYSFGLGG RFLFASVMAD KDTTRRIHVS TDQGDTWSMA QLPSVGQEQF
351 YSILAANDDM VFMHVDEPGD TGFGTIFTSD DRGIVYSKSL DRHLYTTTGG
401 ETDFTNVTSL RGVYITSVLS EDNSIQTMIT FDQGGRWTHL RKPENSECDA
451 TAKNKNECSL HIHASYSISQ KLNVPMAPLS EPNAVGIVIA HGSVGDAISV
501 MVPDVYISDD GGYSWTKMLE GPHYYTILDS GGIIVAIEHS SRPINVIKFS
551 TDEGQCWQTY TFTRDPIYFT GLASEPGARS MNISIWGFTE SFLTSQWVSY
601 TIDFKDILER NCEEKDYTIW LAHSTDPEDY EDGCILGYKE QFLRLRKSSM
651 CQNGRDYVVT KQPSICLCSL EDFLCDFGYY RPENDSKCVE QPELKGHDLE
701 FCLYGREEHL TTNGYRKIPG DKCQGGVNPV REVKDLKKKC TSNFLSPEKQ
751 NSKSNSVPII LAIVGLMLVT VVAGVLIVKK YVCGGRFLVH RYSVLQQHAE
801 ANGVDGVDAL DTASHTNKSG YHDDSDEDLL E
【0118】
配列番号2(完全長ソルチリン-アイソフォーム2)
1 MERPWGAADG LSRWPHGLGL LLLLQLLPPS TLSQDRLDAP PPPAAPLPRW
51 SGPIGVSWGL RAAAAGGAFP RGGRWRRSAP GEDEECGRVR DFVAKLANNT
101 HQHVFDDLRG SVSLSWVGDS TGVILVLTTF HVPLVIMTFG QSKLYRSEDY
151 GKNFKDITDL INNTFIRTEF GMAIGPENSG KVVLTAEVSG GSRGGRIFRS
201 SDFAKNFVQT DLPFHPLTQM MYSPQNSDYL LALSTENGLW VSKNFGGKWE
251 EIHKAVCLAK WGSDNTIFFT TYANGSCTDL GALELWRTSD LGKSFKTIGV
301 KIYSFGLGGR FLFASVMADK DTTRRIHVST DQGDTWSMAQ LPSVGQEQFY
351 SILAANDDMV FMHVDEPGDT GFGTIFTSDD RGIVYSKSLD RHLYTTTGGE
401 TDFTNVTSLR GVYITSVLSE DNSIQTMITF DQGGRWTHLR KPENSECDAT
451 AKNKNECSLH IHASYSISQK LNVPMAPLSE PNAVGIVIAH GSVGDAISVM
501 VPDVYISDDG GYSWTKMLEG PHYYTILDSG GIIVAIEHSS RPINVIKFST
551 DEGQCWQTYT FTRDPIYFTG LASEPGARSM NISIWGFTES FLTSQWVSYT
601 IDFKDILERN CEEKDYTIWL AHSTDPEDYE DGCILGYKEQ FLRLRKSSVC
651 QNGRDYVVTK QPSICLCSLE DFLCDFGYYR PENDSKCVEQ PELKGHDLEF
701 CLYGREEHLT TNGYRKIPGD KCQGGVNPVR EVKDLKKKCT SNFLSPEKQN
751 SKSNSVPIIL AIVGLMLVTV VAGVLIVKKY VCGGRFLVHR YSVLQQHAEA
801 NGVDGVDALD TASHTNKSGY HDDSDEDLLE
【0119】
配列番号3(成熟ソルチリン)
1 MTFGQSKLYR SEDYGKNFKD ITDLINNTFI RTEFGMAIGP ENSGKVVLTA
51 EVSGGSRGGR IFRSSDFAKN FVQTDLPFHP LTQMMYSPQN SDYLLALSTE
101 NGLWVSKNFG GKWEEIHKAV CLAKWGSDNT IFFTTYANGS CTDLGALELW
151 RTSDLGKSFK TIGVKIYSFG LGGRFLFASV MADKDTTRRI HVSTDQGDTW
201 SMAQLPSVGQ EQFYSILAAN DDMVFMHVDE PGDTGFGTIF TSDDRGIVYS
251 KSLDRHLYTT TGGETDFTNV TSLRGVYITS VLSEDNSIQT MITFDQGGRW
301 THLRKPENSE CDATAKNKNE CSLHIHASYS ISQKLNVPMA PLSEPNAVGI
361 VIAHGSVGDA ISVMVPDVYI SDDGGYSWTK MLEGPHYYTI LDSGGIIVAI
401 EHSSRPINVI KFSTDEGQCW QTYTFTRDPI YFTGLASEPG ARSMNISIWG
451 FTESFLTSQW VSYTIDFKDI LERNCEEKDY TIWLAHSTDP EDYEDGCILG
501 YKEQFLRLRK SSVCQNGRDY VVTKQPSICL CSLEDFLCDF GYYRPENDSK
551 CVEQPELKGH DLEFCLYGRE EHLTTNGYRK IPGDKCQGGV NPVREVKDLK
601 KKCTSNFLSP EKQNSKSNSV PIILAIVGLM LVTVVAGVLI VKKYVCGGRF
651 LVHRYSVLQQ HAEANGVDGV DALDTASHTN KSGYHDDSDE DLLE
【配列表】
【国際調査報告】