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特表2024-504355標的DNA配列及びクローニングベクターを作製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】標的DNA配列及びクローニングベクターを作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240124BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240124BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20240124BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/071
C12P19/34 A
C12N9/16 Z
C12N9/12
C12N15/11 Z
C12N15/70 Z
C12P21/02 C
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544197
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2021111152
(87)【国際公開番号】W WO2022156188
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202110087186.9
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519241381
【氏名又は名称】ナンジン、ジェンスクリプト、バイオテック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANJING GENSCRIPT BIOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】28 Yongxi Road,Jiangning Science Park, Nanjing, Jiangsu 211100 China
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】イェ,ルメン
(72)【発明者】
【氏名】スン,ハイェ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,キアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジュアン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064CA19
4B064CE20
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AB04
4B065AB10
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA60
(57)【要約】
本願は、標的DNA配列及びクローニングベクターを作製するための方法に関する。該方法は、宿主細胞内のDNA構築物を増幅及び抽出するステップ、並びにプロテロメラーゼ-IIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ-DNAエキソヌクレアーゼ触媒作用の3ステップ恒温酵素反応ステップを含み、ここで構築物は、自律的に複製され、(a)1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列;(b)標的DNA配列;並びに(c)標的DNA配列の2つの末端の側翼でのプロテロメラーゼ認識配列を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的DNA配列を作製するための方法であって、
DNA構築物を増幅及び抽出するステップであって、導入されたDNA構築物であって、自律的に複製され、(a)1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列;(b)前記標的DNA配列;並びに(c)前記標的DNA配列の2つの末端の側翼でのプロテロメラーゼ認識配列を含むDNA構築物とともに宿主細胞を培養することによって前記DNA構築物を増幅し、前記増幅されたDNA構築物を前記宿主細胞から抽出することを含むステップと;
第1の切断反応のステップであって、プロテロメラーゼを前記増幅及び抽出されたDNA構築物と接触させることを可能にし、ここで、前記プロテロメラーゼが前記DNA構築物上の前記プロテロメラーゼ認識配列を認識及び切断することにより、第1の切断反応混合物を得ることを含むステップと;
第2の切断反応のステップであって、前記第1の切断反応混合物を1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼと接触させることを可能にし、ここで、前記IIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼが、前記構築物上の前記IIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列を認識及び切断することで、第2の切断反応混合物を得ることを含むステップと;
消化反応のステップであって、前記第2の切断反応混合物を1つ以上のエキソヌクレアーゼと接触させることを可能にすることで、前記標的DNA配列以外の他の配列を消化することを含むステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記プロテロメラーゼが、大腸菌(E.Coli)ファージN15、クレブシエラ(Klebsiella)ファージphi K02、エルシニア(Yersinia)ファージPy54、ハロモナス(Halomonas)ファージphi HAP、ビブリオ(Vibrio)ファージVP882、及びボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)プラスミドlpB31.16、又はそれらの相同体若しくは変異体に由来するプロテロメラーゼから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNA構築物が、2つ以上、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記IIS型制限エンドヌクレアーゼが、以下:BbsI、BsaI、BsmBI、BspQI、BsrDI、EarI、HgaI及びSfaNIの1つ又はいずれかの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記メガヌクレアーゼが、以下:I-SceI、I-CreI、I-DmoI、I-OnuI、I-LtrI、I-PanMI、I-GzeMII、I-HjeI、I-LtrWI及びI-SmaMIのいずれか1つ又はいずれかの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記エキソヌクレアーゼが、T5エキソヌクレアーゼ又はλエキソヌクレアーゼである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記DNA構築物が、複製起点及び選択マーカー遺伝子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の切断反応が完了し、且つ前記第2の切断反応が完了した後、さらなる精製ステップが含まれない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の切断反応のステップが、プロテロメラーゼ活性に適した温度下でサーモスタット的に実施され、前記第2の切断反応のステップが、前記IIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/若しくはメガヌクレアーゼに適した温度下でサーモスタット制御され、並びに/又は前記消化反応のステップが、前記エキソヌクレアーゼに適した温度下でサーモスタット的に実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の切断反応後に前記プロテロメラーゼを不活性化し、前記第2の切断反応後に前記IIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/若しくはメガヌクレアーゼを不活性化し、並びに/又は前記消化反応後に前記エキソヌクレアーゼを不活性化するステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記DNA構築物が、以下:(i)前記1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列を含むクローニングベクターを提供する;並びに(ii)前記プロテロメラーゼ認識配列と連結された前記2つの末端での前記側翼を有する前記標的DNA配列を前記クローニングベクターに挿入することを含む方法を通じて構築される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記クローニングベクターが、プラスミドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記クローニングベクターが、pBR322ベクター、pUCベクター、又はpETベクターに由来する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記宿主細胞が、大腸菌(E.Coli)細胞である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記DNA構築物が、前記標的DNA配列と前記プロテロメラーゼ認識配列との間にさらなる制限エンドヌクレアーゼ認識配列をさらに含み、前記制限エンドヌクレアーゼを消化反応産物と接触させることを可能にすることで、前記さらなる制限エンドヌクレアーゼ認識配列を認識及び切断し、それにより、前記消化反応のステップ後、平滑末端又は付着末端を有する二本鎖標的DNA断片を調製するステップをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記DNA構築物が、前記標的DNA配列と前記プロテロメラーゼ認識配列との間にさらなるニッキング酵素認識配列をさらに含み、ニッキング酵素を消化反応産物と接触させることを可能にすることで、前記さらなるニッキング酵素認識配列を認識及び切断し、それにより、前記消化反応のステップ後、2つの末端が末端閉鎖二本鎖DNAであり、中間体が一本鎖DNAであるDNA配列を調製するステップをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
標的タンパク質を発現させるための方法であって、
請求項1~16のいずれか一項に記載の標的DNA配列であって、前記標的タンパク質をコードするDNA配列を含む標的DNA配列を作製するための方法を実行することと;
前記得られた標的DNA配列を原核細胞又は真核細胞に導入することと;
前記原核細胞又は前記真核細胞をタンパク質発現に適した条件下でインキュベートすることと、
を含む、方法。
【請求項18】
標的DNA配列を標的ゲノムの標的組み込み部位に組み込むための方法であって、
請求項1~16のいずれか一項に記載の標的DNA配列であって、前記標的組み込み部位の2つの末端での相同性アーム配列及び中間の標的ノックイン断片を含む標的DNA配列を作製するための方法を実行することと;
前記得られた標的DNA配列、Cas9タンパク質及び前記標的DNA配列に基づいて設計されたsgRNAを一緒に原核細胞又は真核細胞に導入することと;
前記原核細胞又は前記真核細胞をインキュベートすることにより、前記標的DNA配列を前記標的ゲノムに組み込むことと、
を含む、方法。
【請求項19】
自律的複製ベクターであり、且つ(a)1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列、並びに(b)複数のクローニング部位を含む、クローニングベクター。
【請求項20】
pBR322ベクター、pUCベクター、又はpETベクターに由来する、請求項19に記載のクローニングベクター。
【請求項21】
2つ以上、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列を含む、請求項19又は20に記載のクローニングベクター。
【請求項22】
前記IIS型制限エンドヌクレアーゼ認識配列が、以下:BbsI、BsaI、BsmBI、BspQI、BsrDI、EarI、HgaI及びSfaNIの認識配列のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせから選択される、請求項19~21のいずれか一項に記載のクローニングベクター。
【請求項23】
前記メガヌクレアーゼ認識配列が、以下:I-SceI、I-CreI、I-DmoI、I-OnuI、I-LtrI、I-PanMI、I-GzeMII、I-HjeI、I-LtrWI及びI-SmaMIの認識配列のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせから選択される、請求項19~22のいずれか一項に記載のクローニングベクター。
【請求項24】
複製起点及び前記選択マーカー遺伝子を含む、請求項19~23のいずれか一項に記載のクローニングベクター。
【請求項25】
ラクトースオペロン配列、前記複数のクローニング部位を含むβガラクトシダーゼをコードする遺伝子配列、及び3つ以上のBspQI認識配列及び/又は2つ以上のI-sceI認識配列を含む、請求項19~24のいずれか一項に記載のクローニングベクター。
【請求項26】
前記pUCベクターに由来する、請求項25に記載のクローニングベクター。
【請求項27】
pUC57ベクターに由来する、請求項26に記載のクローニングベクター。
【請求項28】
以下:(i)前記BspQI認識配列が前記pUC57ベクターの1554位塩基及び2539位塩基の後に付加され、前記I-sceI認識配列が1501位塩基及び2479位塩基の後に付加される;並びに(ii)前記pUC57ベクターの1397位塩基のGがCに突然変異され、2136位塩基及び2137位塩基のATがGCに突然変異される、前記pUC57ベクター上での再構築を実施することによって構築される、請求項26又は27に記載のクローニングベクター。
【請求項29】
自身のヌクレオチド配列が、配列番号1で示されるような配列を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載のクローニングベクター。
【請求項30】
標的DNA配列を作製するためのキットであって、請求項19~29のいずれか一項に記載のクローニングベクター、プロテロメラーゼ、1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ、並びに1つ以上のエキソヌクレアーゼを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物工学の分野、特に、標的DNA配列及びクローニングベクターを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子編集に基づく遺伝子療法及び細胞療法は、30年を超える開発を経て、十分に開発された。特に、ヌクレアーゼ(亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、TALヌクレアーゼ及びCRISPRヌクレアーゼ)に基づく正確な遺伝子編集及びウイルスに依存しない送達モードのおかげで、ウイルスに依存しない、より安全でより効率的な遺伝子療法が可能になっている。初期段階では、遺伝子欠損型の遺伝性疾患の補償を実施するような治療における標的タンパク質遺伝子の送達及び発現のため、プラスミドが使用される。また、大きい断片の遺伝子が相同組換えに基づいてノックインされるとき、プラスミド又は線状化プラスミド断片は、編集鋳型として使用される。診療では、遺伝子編集におけるプラスミドの適用は、多くの欠点及び潜在的リスクを有することが判明している:1)非標的断片の冗長なベクター骨格配列を含むことに起因した、インビボ又は免疫細胞送達中の二本鎖DNAに基づく細胞傷害性の増加;2)プラスミド上の冗長な骨格配列は、主に複製起点部位及び抗生物質耐性遺伝子であり、これらの遺伝子は、遺伝子療法に使用されるとき、ヒトの正常な微生物叢によって汚染される可能性があるだけでなく、細菌源を有する配列は、一般にCpGアイランドを含み、プラスミド複製プロセスにおいてメチル化される傾向があり、適用中に強力な免疫原性をもたらす;並びに3)相同組換え修復の間、PCR増幅法に基づいて調製された平滑末端二本鎖DNAが、非相同組換え修復末端結合をもたらす可能性がある修復鋳型として採用されることで、相同性アームの反復領域を含む編集配列をもたらし、元の設計を損なう。
【0003】
上記問題を解決することを目標に、二重酵素消化モードで標的断片をプラスミドから分離することを試みる研究が行われている。しかし、該方法は、大規模断片分離及び精製に対して実現困難であり、アガロースゲル電気泳動を通じて小規模精製を実施可能であるに過ぎない。さらに、該方法では、DNA断片に対してDNA色素に応じて発色を呈し、埋め込まれたDNA色素が完全に除去され得るか又は否かについても、検証するのが困難な課題である。2016年、Slavcevらが標的断片の二本鎖DNAの発酵技術により、細菌に基づいてインビボ組換えが実現されることを報告したが、その結果は、不完全な組換え効率に起因し、葉状体の溶解後に精製された産物が、細菌ゲノム及び元のプラスミドなどのDNA不純物の汚染を有することになり、高純度の最終産物もアガロースゲル電気泳動に応じて分離されることを示している。即ち、該方法は、スケールアップが困難であることや、工業生産における有毒なDNA色素といった上記の問題をやはり有する。
【0004】
標的断片を直接的に入手するという別の試みは、大量の二本鎖DNAを、PCR増幅を通じて調製することである。しかし、PCRによって使用されるDNAポリメラーゼは、細菌体におけるDNA複製系の場合よりも配列忠実度で劣る。大規模調製の間、大量の高忠実度DNAポリメラーゼを購入するための費用は非常に高い。大きい断片が増幅されるとき、PCRの収量はやや減少し、非全長断片の汚染が生じる可能性がある。決定的問題は、ミリグラムレベルの二本鎖DNA純粋産物が求められるとき、大量のPCRを実施し、数百又はさらに数千のPCR反応産物をまとめて収集する必要があり、GMP標準に合致することが困難であることである。その問題を解決するため、英国のTouchlight Genetics社は、ローリングサークル増幅(RCA)に基づく、二本鎖DNAのインビトロ温度制御インデックス増幅法(in-vitro thermostatic index amplification method)を開発した。しかし、標的産物が遺伝子ノックインのための鋳型として使用されるとき、インビトロ複製の方法は、細菌体におけるDNA複製の誤り訂正機構の欠損に起因し、DNA配列の突然変異を増加させるリスクを有することになる。特に、標的配列が極めて高い割合のGC配列、ヘアピン構造及び反復配列を含むとき、一般に高難易度(high-difficulty)配列領域内で欠損が生じることがない、DNAポリメラーゼに基づくインビトロ複製によって保証することは困難である。さらに、全体的なインビトロ複製プロセスは、インデックス複製であり、且つランダムであり、反応が完了した後、標的配列単量体が化合物から切断及び放出されるとき、産物は、不完全断片産物と混合され、除去することが困難な不純物を有することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
標的DNA配列を調製するための単純な効率的方法がいまだ求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、標的DNA配列及びクローニングベクターを作製するための方法を提供する。該方法及びクローニングベクターは、作製予定の標的DNA配列に対する特別な制限を有せず、それ故、様々なDNA配列に適した一般的な方法及びクローニングベクターが存在する。さらに、該方法及びクローニングベクターは、高純度の標的DNA配列を大規模に効率的に作製するように構成され得る。該方法では、プロテロメラーゼ認識配列並びにIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列を含むDNA構築物が使用され、DNA構築体は、細胞内ベクター増幅プロセスを通じて(例えば、プラスミド形質転換及び抽出方法を通じて)大規模に作製され、次に高純度の標的DNA断片は、プロテロメラーゼ-IIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ-DNAエキソヌクレアーゼの恒温酵素反応の3つのステップを通じて得ることができる。最終産物は、アルコール(例えば、エタノール)沈殿濃縮を施すことができ、大規模に調製することが容易である。全体的な調製及び精製プロセスは、DNA色素を含まない。最終産物は、宿主細胞によるインビボ複製に由来し、配列は、正確さが高く、配列のエラー、欠失又は突然変異は、標的配列内に高難易度(high-difficulty)配列を含むことに起因し、回避される。
【0007】
クローニングベクター
本願は、標的DNA配列を作製する、又は下記のDNA構築物を構築するように構成された一般的なクローニングベクターを提供する。一般的なクローニングベクターは、自律的複製ベクターであり、(a)1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列、並びに(b)複数のクローニング部位を含む。
【0008】
いくつかの実装形態では、クローニングベクターは、プラスミド、コスミド、ファージ又はウイルス(例えば、レトロウイルス(retrovirus)、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus)、レンチウイルス(lentivirus)、ラブドウイルス(rhabdovirus)及びアデノウイルス(adenovirus))から選択される。クローニングベクターは、複製起点を含んでもよい。クローニングベクターは、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ認識部位又は外来DNA配列(例えば、プロテロメラーゼ認識配列と連結された側翼(lateral wing)を有する標的DNA配列)、及び/若しくはクローニングベクターによって形質転換された細胞を認識し、選択するように構成された選択マーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子及びccdB遺伝子)を挿入するように構成された複数のクローニング部位を含んでもよい。
【0009】
いくつかの実装形態では、クローニングベクターは、2つ以上、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列を含む。いくつかの実施形態では、クローニングベクターは、3つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又は2つ以上のメガヌクレアーゼ認識配列を含む。1つの具体的な実施形態では、クローニングベクターは、5つのIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又は2つのメガヌクレアーゼ認識配列を含む。
【0010】
本明細書で用いられるIIS型制限エンドヌクレアーゼは、限定はされないが、AlwI、BccI、BsmAl、EarI、MlyI、PleI、BmrI、BsaI、BsmBl、FauI、HpyAV、MnlI、SapI、BbsI、BciVI、HphI、MboII、BfuaI、BspMI、SfaNI、HgaI、BbvI、EciI、FokI、BceAI、BsmFI、BtgZI、BpmI、BpuEI、BsgI、AclWI、Alw26I、Bst6I、BsrDI、BstMAI、Eaml1041、Ksp632I、PpsI、SchI、BfiI、Bso31I、BspTNI、BspQI、Eco31I、Esp3I、FauI、SmuI、BfuI、BpiI、BpuAI、BstV2I、AsuHPI、Acc36I、LweI、AarI、BseMII、TspDTI、TspGWI、BseXI、BstVlI、Eco57I、Eco57MI、GsuI、PsrI又はMmeIを含む。いくつかの実装形態では、IIS型制限エンドヌクレアーゼは、以下:BbsI、BsaI、BsmBI、BspQI、BsrDI、EarI、HgaI及びSfaNIの1つ又はいずれかの組み合わせから選択される。IIS型制限エンドヌクレアーゼを調製し、使用するための方法は、従来法であり、多数のIIS型制限エンドヌクレアーゼが、商業的に入手可能である。「IIS型制限エンドヌクレアーゼ認識配列」は、対応するIIS型制限エンドヌクレアーゼによって認識され、切断され得る配列であり、特異的な使用されるIIS型制限エンドヌクレアーゼに応じて決定され、当該技術分野で公知である。一実施形態では、IIS型制限エンドヌクレアーゼは、GCTCTTCの認識配列を有するBspQIを含む。
【0011】
本明細書で用いられる「メガヌクレアーゼ」という用語は、二本鎖DNA標的配列の12bpより大きい希少なニックを有するエンドヌクレアーゼサブタイプである。メガヌクレアーゼは、一般に二量体酵素であり、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)とも呼ばれ、配列及び構造モチーフに応じて、5つのファミリー:LAGLIDADG、GIY-YIG、HNH、His-Cysボックス及びTO-(D/E)XKに分割可能である。構造データは、各ファミリーの少なくとも1つのメンバーとして利用可能である。いくつかの実装形態では、メガヌクレアーゼは、以下:I-SceI、I-CreI、I-DmoI、I-OnuI、I-LtrI、I-PanMI、I-GzeMII、I-HjeI、I-LtrWI及びI-SmaMIのいずれか1つ又はいずれかの組み合わせから選択される。メガヌクレアーゼを調製し、使用するための方法は、従来法であり、多数のメガヌクレアーゼが、商業的に入手可能である。「メガヌクレアーゼ認識配列」は、対応するメガヌクレアーゼによって認識され、切断され得る配列であり、特異的な使用されるメガヌクレアーゼに応じて決定され、当該技術分野で公知である。一実施形態では、メガヌクレアーゼは、TAGGGATAACAGGGTAATの認識配列を有するI-SceIを含む。
【0012】
いくつかの実装形態では、クローニングベクター内のIIS型制限エンドヌクレアーゼ認識配列は、以下:BbsI、BsaI、BsmBI、BspQI、BsrDI、EarI、HgaI及びSfaNIの認識配列のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせから選択される。
【0013】
いくつかの実装形態では、クローニングベクター内のメガヌクレアーゼ認識配列は、以下:I-SceI、I-CreI、I-DmoI、I-OnuI、I-LtrI、I-PanMI、I-GzeMII、I-HjeI、I-LtrWI及びI-SmaMIの認識配列のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせから選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、クローニングベクターは、複製起点及び選択マーカー遺伝子を含む。選択マーカー遺伝子は、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子及びネオマイシン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子又はccdB遺伝子から選択されてもよい。いくつかの実装形態では、クローニングベクターは、ラクトースオペロン配列、複数のクローニング部位を含むβガラクトシダーゼをコードする遺伝子、及び3つ以上のBspQI認識配列及び/又は2つ以上のI-sceI認識配列を含む。いくつかの実施形態では、ラクトースオペロン配列は、lacプロモーター及びlac作動遺伝子を含む。
【0015】
クローニングベクターは、中/高コピークローニングベクターであってもよい。いくつかの実装形態では、本願のDNA構築物を構築するように構成されたクローニングベクターは、pBR322ベクター、pUCベクター、又はpETベクターに由来する。いくつかの好ましい実施形態では、本願のDNA構築物を構築するように構成されたクローニングベクターは、pUC57ベクターなどのpUCベクターに由来する。いくつかの実装形態では、pUCベクターは、配列番号12で示されるような配列を含み、又は配列番号12で示されるような配列である。
【0016】
本明細書で用いられる「~に由来する」という用語は、~から再構築される、即ち、クローニングベクターが、クローニングベクターの由来元である初期ベクター(pBR322ベクター、pUCベクター、又はpETベクターなど)を再構築することによって得られることを指す。一方で、再構築は、(i)1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/若しくはメガヌクレアーゼ認識配列が、pBR322ベクター、pUCベクター、若しくはpETベクターなどの初期ベクター上に挿入されること;(ii)pBR322ベクター、pUCベクター、若しくはpETベクターなどの初期ベクター上で突然変異が実施されることで、1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/若しくはメガヌクレアーゼ認識配列が作製されること、又は(i)及び(ii)の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実装形態では、DNA構築物又はクローニングベクター上のIIS型制限エンドヌクレアーゼの認識部位をより多くし、酵素消化を受ける骨格断片をより小さくするため、さらなるIIS型制限エンドヌクレアーゼ認識配列が、コドンの同義突然変異を通じて、複製起点部位及び抗生物質耐性遺伝子配列に付加され得る。
【0017】
いくつかの実装形態では、クローニングベクターは、以下:(i)BspQI認識配列がpUC57ベクターの1554位塩基及び2539位塩基の後に付加され、且つI-sceI認識配列が1501位塩基及び2479位塩基の後に付加される;並びに(ii)pUC57ベクターの1397位塩基のGがCに突然変異され、且つ2136位塩基及び2137位塩基のATがGCに突然変異される、といったpUC57ベクター上での再構築を実施することによって構築される。いくつかの実装形態では、pUCベクターは、配列番号12で示されるような配列を含む、又は配列番号12で示されるような配列である。
【0018】
いくつかの実装形態では、クローニングベクターのヌクレオチド配列は、配列番号1で示されるような配列を含む、又は配列番号1で示されるような配列である。
【0019】
DNA構築物
本願は、下記の標的DNA配列を作製するための方法において使用されるDNA構築物をさらに提供する。DNA構築物は、自律的に複製され、(a)1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列;(b)標的DNA配列;並びに(c)標的DNA配列の2つの末端の側翼でのプロテロメラーゼ認識配列を含む。DNA構築物は、(i)1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列を含むクローニングベクターを提供する;並びに(ii)プロテロメラーゼ認識配列と連結された2つの末端での側翼を有する標的DNA配列をクローニングベクターに挿入することを含む方法を通じて構築されてもよい。いくつかの実装形態では、DNA構築物は、上記の通り、プロテロメラーゼ認識配列と連結された2つの末端での側翼を有する標的DNA配列をクローニングベクターの複数のクローニング部位に挿入することによって調製される。
【0020】
本明細書中の「DNA構築物」は、宿主細胞又はバイオソームに導入されるべきDNA断片の手作業で構築された産物を指す。本明細書中のDNA構築物は、自律的に複製される、即ち、それは、複製起点(ori)などの、原核生物又は真核生物宿主細胞内のDNA構築物の自律的複製を支持する配列を含んでもよい。
【0021】
いくつかの実装形態では、DNA構築物は、2つ以上、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のエンドヌクレアーゼ認識配列を含む。
【0022】
いくつかの実装形態では、DNA構築物は、複製起点部位及び選択マーカー遺伝子をさらに含む。
【0023】
いくつかの実装形態では、標的DNA配列は、2つの末端でプロテロメラーゼ認識配列に直接的に隣接する、即ち、2つの末端での標的DNA配列とプロテロメラーゼ認識配列との間に他の配列が存在しない。
【0024】
いくつかの実装形態では、2つの末端での標的DNA配列とプロテロメラーゼ認識配列との間に、エンドヌクレアーゼ認識部位及びニッキング酵素認識部位などの他の配列がさらに存在する。
【0025】
標的DNA配列の2つの末端での2つのプロテロメラーゼ認識配列は、直接的重複又は逆位重複を受けてもよい。
【0026】
本明細書で用いられる「プロテロメラーゼ」という用語は、プロテロメラーゼ認識配列を認識及び切断し、プロテロメラーゼ認識配列を含むDNAと再連結されることで、閉鎖二本鎖DNAを作製することができる酵素を指す。プロテロメラーゼは、一般にファージ中に見出され、例えば、限定はされないが、大腸菌(E.Coli)ファージN15(即ち、プロテロメラーゼTelN)、クレブシエラ(Klebsiella)ファージphi K02、エルシニア(Yersinia)ファージPy54、ハロモナス(Halomonas)ファージphi HAP、ビブリオ(Vibrio)ファージVP882、及びボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)プラスミドlpB31.16に由来するプロテロメラーゼである。いくつかの実装形態では、プロテロメラーゼは、大腸菌(E.Coli)ファージN15、クレブシエラ(Klebsiella)ファージphi K02、エルシニア(Yersinia)ファージPy54、ハロモナス(Halomonas)ファージphi HAP、ビブリオ(Vibrio)ファージVP882、及びボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)プラスミドlpB31.16、又はそれらの相同体若しくは変異体に由来するプロテロメラーゼから選択される。いくつかの実装形態では、プロテロメラーゼは、大腸菌(E.Coli)ファージN15、又はその相同体若しくは変異体に由来するプロテロメラーゼ(TelN)である。相同体は、一般に、プロテロメラーゼの機能的相同体であり、そのアミノ酸配列は、プロテロメラーゼの天然アミノ酸配列と少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は98%の同一性を有してもよい。変異体は、プロテロメラーゼの天然アミノ酸配列に対する切断、挿入、置換及び/又は欠失、例えば、1つ以上のアミノ酸の切断、挿入、置換及び/又は欠失を含んでもよい。プロテロメラーゼを調製し、使用するための方法は、従来法であり、多数のプロテロメラーゼが、商業的に入手可能である。
【0027】
本明細書で用いられる「プロテロメラーゼ認識配列」という用語は、プロテロメラーゼによって認識され得るDNA配列であり、特異的な使用されるプロテロメラーゼに応じて決定され、当該技術分野で公知である。いくつかの実装形態では、プロテロメラーゼ認識配列は、大腸菌(E.Coli)ファージN15、クレブシエラ(Klebsiella)ファージphi K02、エルシニア(Yersinia)ファージPy54、ハロモナス(Halomonas)ファージphi HAP、ビブリオ(Vibrio)ファージVP882、及びボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)lpB31.16に由来するプロテロメラーゼ認識配列から選択される。いくつかの実装形態では、プロテロメラーゼ認識配列は、大腸菌(E.Coli)ファージN15に由来する。いくつかの実装形態では、プロテロメラーゼ認識配列は、配列番号2を含む、又はそれから構成される。
【0028】
標的DNA配列を作製するための方法
本願は、標的DNA配列を作製するための方法を提供する。「作製する」という用語は、増幅、クローニング及び複製などの用語と互換可能に用いることができる。該方法は、本願のDNA構築物を宿主細胞内で増幅及び抽出するステップ、プロテロメラーゼ-IIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ-DNAエキソヌクレアーゼ触媒作用の3ステップ恒温酵素反応ステップ(即ち、第1の切断反応-第2の切断反応-消化反応)、並びに任意選択的な回収ステップを含む。
【0029】
いくつかの実装形態では、標的DNA配列を作製するための方法は、
導入されたDNA構築物であって、自律的に複製され、(a)1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列;(b)標的DNA配列;並びに(c)標的DNA配列の2つの末端の側翼でのプロテロメラーゼ認識配列を含むDNA構築物とともに宿主細胞を培養することによってDNA構築物を増幅し、増幅されたDNA構築物を宿主細胞から抽出することと;
プロテロメラーゼを増幅及び抽出されたDNA構築物と接触させることを可能にし、ここで、プロテロメラーゼがDNA構築物上のプロテロメラーゼ認識配列を認識及び切断することにより、第1の切断反応混合物を得ることと;
第1の切断反応混合物を1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼと接触させることを可能にし、ここで、IIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼが、構築物上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列を認識及び切断することで、第2の切断反応混合物を得ることと;
第2の切断反応混合物を1つ以上のエキソヌクレアーゼと接触させることを可能にすることで、標的DNA配列以外の他の配列を消化することと、
を含む。
【0030】
1.DNA構築物を増幅及び抽出するステップ
本願に従う標的DNA配列を作製するための方法は、本願のDNA構築物を増幅及び抽出するステップを含み、ここでDNA構築物の増幅は、宿主細胞内で実施される。
【0031】
いくつかの実装形態では、DNA構築物を増幅及び抽出するステップは、導入されたDNA構築物とともに宿主細胞を培養することによってDNA構築物を増幅し、増幅されたDNA構築物を宿主細胞から抽出することを含む。いくつかの実装形態では、DNA構築物を増幅及び抽出するステップは、当該技術分野で公知である宿主細胞のプラスミドを利用することによって増幅及び抽出することである。
【0032】
本明細書で用いられる「宿主細胞」という用語は、ベクター又は構築物に導入されるように変換され、内在するベクター又は構築物の複製を支持する能力がある任意の細胞を包含する。宿主細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌(E.Coli)細胞などの細菌細胞)又は真核細胞(例えば、酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞又は哺乳動物細胞)であってもよい。
【0033】
DNA構築物は、当該技術分野で公知の任意の方法によって宿主細胞に導入され得る。該方法は、限定はされないが、DNA構築物が、化学的形質転換又はエレクトロポレーション形質転換を通じて、限定はされないが、Top10化学的コンピテント細胞(Invitrogen(商標)、製品カタログ番号:C404010)、DH5α化学的コンピテント細胞(Invitrogen(商標)、製品カタログ番号:18265017)、及びDH10B化学的コンピテント細胞(Invitrogen(商標)、製品カタログ番号:12331013)を含む、大腸菌(E.Coli)コンピテント細胞などの適切なコンピテント細胞に侵入することを可能にすることを含む。
【0034】
宿主細胞内でのDNA構築物の増幅は、宿主細胞をDNA構築物の増幅に適した条件下で培養することによって実施される。いくつかの実施形態では、DNA構築物は、クローニングベクターが大腸菌(E.Coli)細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされた後、好適な液体培地(例えば、耐性遺伝子を含有するLB培地)中で発酵され、培養される。また、DNAベクターは、発酵され、蓄積された宿主細胞内で増幅される。
【0035】
増幅されたDNA構築物の抽出は、限定はされないが、アルカリ溶解法の使用、又は市販のプラスミド抽出キット(例えば、QIAprep Spin Miniprepキット、Qiagen)の使用を含む、当該技術分野で公知の抽出方法を通じて実施することができる。
【0036】
2.第1の切断反応
本願に従う標的DNA配列を作製するための方法は、DNA構築物を増幅及び抽出する上記ステップ後の、第1の切断反応のステップをさらに含む。第1の切断反応のステップは、プロテロメラーゼを増幅及び抽出されたDNA構築物と接触させることを可能にすることを含んでもよく、ここでプロテロメラーゼは、DNA構築物上のプロテロメラーゼ認識配列を認識及び切断することで、第1の切断反応混合物が得られる。
【0037】
第1の切断反応は、プロテロメラーゼ活性にとって適切な温度下での恒温反応であってもよい。適切な温度は、当該技術分野で公知であり、例えば、20~40℃、例えば、25~35℃、及び例えば、30℃であってもよい。第1の切断反応のための時間は、10分~24時間、例えば、30分~12時間、例えば、40分、50分、1時間、2時間、又は4時間であってもよい。
【0038】
いくつかの実装形態では、標的DNA配列を作製するための方法は、第1の切断反応後にプロテロメラーゼを不活性化するステップを含む。不活性化するステップは、プロテロメラーゼがその不活性化温度より高い(例えば、60℃より高い、70℃より高い、及び例えば、75℃)ように加熱し、その温度を好適な時間(例えば、2分~1時間、例えば、5分、10分、又は20分)維持することを含んでもよい。
【0039】
3.第2の切断反応
本願に従う標的DNA配列を作製するための方法は、第1の切断反応の上記ステップ後に第2の切断反応のステップをさらに含む。第2の切断反応は、第1の切断反応混合物を1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼと接触させることを可能にすることを含んでもよく、ここでIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼは、構築物上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ認識配列を認識及び切断することで、第2の切断反応混合物が得られる。
【0040】
第2の切断反応は、使用されるIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼにとって適切な温度下での恒温反応であってもよい。適切な温度は、当該技術分野で公知であり、例えば、20~55℃、例えば、30~50℃、及び例えば、37℃であってもよい。第2の切断反応のための時間は、10分~24時間、例えば、30分~12時間、例えば、40分、50分、1時間、2時間、又は4時間であってもよい。
【0041】
いくつかの実装形態では、標的DNA配列を作製するための方法は、第2の切断反応後にIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼを不活性化するステップを含む。不活性化するステップは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼがその不活性化温度より高い(例えば、60℃より高い、65℃より高い、及び例えば、65℃又は70℃)ように加熱し、その温度を特定の時間(例えば、2分~1時間、例えば、10分、20分、又は25分)維持することを含んでもよい。
【0042】
4.消化反応
本願に従う標的DNA配列を作製するための方法は、第2の切断反応の上記ステップ後の消化反応のステップをさらに含む。消化反応のステップは、第2の切断反応混合物を1つ以上のエキソヌクレアーゼと接触させることを可能にすることで、標的DNA配列以外の他の配列を消化する、及び好ましくは、標的DNA配列以外の全ての他のヌクレオチド配列を消化することを含む。
【0043】
エキソヌクレアーゼは、限定はされないが、ファージT5エキソヌクレアーゼ(ファージT5遺伝子D15産物)、ファージλエキソヌクレアーゼ、RacプロファージのRecE、大腸菌(E.Coli)に由来するエキソヌクレアーゼVIII、及びファージT7エキソヌクレアーゼ(ファージT7遺伝子6産物)を含む、当該技術分野で公知の任意のエキソヌクレアーゼであってもよい。本開示のいくつかの実装形態では、エキソヌクレアーゼは、T5エキソヌクレアーゼ又はλエキソヌクレアーゼである。エキソヌクレアーゼを調製し、使用するための方法は、従来法であり、多数のエキソヌクレアーゼが、商業的に入手可能である。
【0044】
消化反応は、使用されるエキソヌクレアーゼにとって適切な温度下での恒温反応であってもよい。適切な温度は、当該技術分野で公知であり、例えば、20~55℃、例えば、30~50℃、及び例えば、37℃であってもよい。消化反応のための時間は、10分~24時間、例えば、30分~12時間、例えば、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間又は6時間であってもよい。
【0045】
いくつかの実装形態では、標的DNA配列を作製するための方法は、消化反応の後にエキソヌクレアーゼを不活性化するステップを含む。不活性化するステップは、エキソヌクレアーゼをその不活性化温度より高い(例えば、60℃より高い、65℃より高い、及び例えば、70℃、75℃又は80℃)ように加熱し、その温度を特定の時間(例えば、2分~1時間、例えば、5分、10分、又は20分)維持することを含んでもよい。
【0046】
さらなる精製ステップは、第1の切断反応が完了し且つ第2の切断反応が完了した後には含まれない。本願に従う全ての酵素消化反応が、プロテロメラーゼを利用する第1の切断反応、並びにIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼを利用する第2の切断反応を、標的DNA配列を切断することを伴わない条件で含むことは、当業者によって理解され得る。
【0047】
いくつかの実装形態では、標的DNA配列を作製するための方法は、消化反応の上記ステップに後に、任意選択的な標的DNA配列回収ステップをさらに含んでもよい。回収ステップは、以下:消化ステップにおける産物を、フェノール・クロロホルム抽出及びDNA吸着遠心カラム(DNA adsorption centrifugal column)、イソプロパノール/エタノール沈殿によって回収する、又は反応系におけるプロテアーゼ及び塩を、高性能液体クロマトグラフィーによって支持される分子ふるいクロマトグラフィーによって除去する、といったいずれか1つ又はいずれかの組み合わせを通じて実施されてもよい。得られた標的DNA配列が哺乳動物細胞又は動物実験に使用されるとき、内毒素除去及び/又は無菌濾過処理がさらに実施されてもよい。
【0048】
消化反応の産物は、閉鎖線形二本鎖DNAである。いくつかの実装形態では、本願に従う標的DNA配列を作製するための方法によって作製される標的DNA配列は、閉鎖線形二本鎖DNAである。
【0049】
本願に従う標的DNA配列を作製するための方法は、精製ステップを全く伴わない場合に、標的DNA配列の高純度(例えば、産物純度が100%である)作製を実現し得る。いくつかの実装形態では、標的DNA配列を作製するための方法は、標的DNA配列を精製するステップを全く含まない、例えば、消化反応後に標的DNA配列を精製するステップを含まない、第2の切断反応後に産物のDNA配列を精製するステップを含まない、及び/又は第1の切断反応後に産物のDNA配列を精製するステップを含まない。いくつかの実装形態では、本願に従う標的DNA配列を作製するための方法によって作製される標的DNA配列の純度は、95%超、98%超、99%超である、又は100%である。
【0050】
本願に従う標的DNA配列を作製するための方法により、標的DNA配列を大規模に作製することができる。いくつかの実装形態では、導入されたDNA構築物を有する宿主細胞の発酵培養系は、最大で1L又はそれ以上、例えば、5L若しくは10L又はそれ以上であってもよい。いくつかの実装形態では、増幅されたDNA構築物の抽出については、増幅されたDNA構築物を、1L若しくはそれ以上、5L若しくはそれ以上又は10L若しくはそれ以上である発酵培養系から抽出することであってもよい。いくつかの実装形態では、作製された標的DNA配列は、最大で1mg若しくはそれ以上、5mg若しくはそれ以上、又は10mg若しくはそれ以上である。
【0051】
5.いくつかの他の実装形態
いくつかの実装形態では、本願のDNA構築物は、標的DNA配列とプロテロメラーゼ認識配列との間にさらなる制限エンドヌクレアーゼ認識配列をさらに含み、本願に従う標的DNA配列を作製するための方法は、消化反応のステップ(即ち、「第2の切断反応混合物を1つ以上のエキソヌクレアーゼと接触させることを可能にすることで、標的DNA配列以外の他の配列を消化する」ステップ)後、制限エンドヌクレアーゼを消化反応産物(即ち、閉鎖線形二本鎖DNA)と接触させることを可能にすることで、さらなる制限エンドヌクレアーゼ認識配列を認識及び切断し、それにより、閉鎖線形二本鎖DNAの2つの末端を除去することで、2つの閉鎖していない末端を有する(平滑末端又は付着末端を有する)二本鎖標的DNA断片を調製するステップをさらに含む。
【0052】
いくつかの実装形態では、本願のDNA構築物は、標的DNA配列とプロテロメラーゼ認識配列との間にさらなるニッキング酵素認識配列をさらに含有し、本願に従う標的DNA配列を作製するための方法は、消化反応のステップ(即ち、「第2の切断反応混合物を1つ以上のエキソヌクレアーゼと接触させることを可能にすることで、標的DNA配列以外の他の配列を消化する」ステップ)後、ニッキング酵素を消化反応産物(即ち、閉鎖線形二本鎖DNA)と接触させることを可能にすることで、さらなるニッキング酵素認識配列を認識及び切断し、それにより、二本鎖DNAの陽性センス鎖及びアンチセンス鎖内の1本の鎖を除去することで、2つの末端が共有結合閉鎖構造であり、局所が二本鎖DNAであり、且つ中間の標的断片領域が一本鎖DNAである、DNA配列を形成するステップをさらに含む。
【0053】
本明細書で用いられる「ニッキング酵素」という用語は、限定はされないが、Nb.BbvCI、Nb.BsmI、Nb.BsrDI、Nb.BssSI、Nb.BtsI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nt.BsmAI、Nt.BspQI、Nt.BstNBI及びNt.CviPIを含む。ニッキング酵素を調製し、使用するための方法は、従来法であり、多数のニッキング酵素が商業的に入手される(例えば、New England BioLabs)。「ニッキング酵素認識配列」は、対応するニッキング酵素によって認識され、切断され得る配列であり、特異的な使用されるニッキング酵素に応じて決定され、当該技術分野で公知である。
【0054】
本願に従う標的DNA配列を作製するための方法によって作製される標的DNA配列は、化学的又は物理的送達法を通じて細胞又は動物身体に移入され、外因性遺伝子の一過性発現を実施する、又は外因性DNA配列をゲノムに組み込むことができる。
【0055】
いくつかの実装形態では、本願に従う標的DNA配列を作製するための方法によって作製される標的DNA配列は、タンパク質の発現に使用されるようにタンパク質コード配列を含んでもよい。例えば、標的DNA配列は、プロモーター、標的遺伝子及びポリ(A)テールを含む。
【0056】
したがって、本願は、標的タンパク質を発現するための方法をさらに提供する。該方法は、
本願に従う標的DNA配列を作製するための方法であって、標的DNA配列が標的タンパク質をコードするDNA配列を含む、方法を実行することと;
得られた標的DNA配列を原核細胞又は真核細胞に導入することと;
原核細胞又は真核細胞をタンパク質発現に適した条件下でインキュベートすることと、
を含む。
【0057】
いくつかの実装形態では、本願に従う標的DNA配列を作製するための方法によって作製される標的DNA配列は、標的ゲノムの遺伝子再構築、例えば、CRISPRに基づく遺伝子再構築のために使用することができる。
【0058】
したがって、本願は、標的DNA配列を標的ゲノムの標的組み込み部位に組み込むための方法をさらに提供する。該方法は、
本願に従う標的DNA配列を作製するための方法であって、標的DNA配列が標的組み込み部位の2つの末端での相同性アーム配列及び中間の標的ノックイン断片を含む、方法を実行することと;
得られた標的DNA配列、Cas9タンパク質及び標的DNA配列に基づいて設計されたsgRNAを一緒に原核細胞又は真核細胞に導入することと;
原核細胞又は真核細胞をインキュベートすることで、標的DNA配列を標的ゲノムに組み込むことと、
を含む。
【0059】
最適なsgRNA配列は、既存のsgRNA設計ウェブサイト、例えば:https://www.genscript.com/gRNA-design-tool.htmlを通じて、標的DNA配列に基づいて設計される。
【0060】
標的組み込み部位の2つの末端での相同性アーム配列は、標的組み込み遺伝子部位の2つの末端での、約300bp、約310bp、約320bp、約330bp及び約350bpの配列であってもよい。例えば、標的組み込み遺伝子は、TRAC遺伝子又はRAB11a遺伝子であり、標的組み込み部位の2つの末端での相同性アーム配列は、TRAC遺伝子又はRAB11a遺伝子の左末端及び右末端での約300bpの配列である。
【0061】
標的DNA配列を本願に従う標的ゲノムの標的組み込み部位に組み込むための方法により、標的ゲノム内の組み込まれた標的DNA配列の、例えば、7日又はそれ以上にわたって安定に発現される、安定な連続的発現を実現することができる。
【0062】
キット
本願は、標的DNA配列を作製するためのキットであって、本願に従う標的DNA配列を作製するための方法を実行するように構成される、キットをさらに提供する。キットは、クローニングベクター、プロテロメラーゼ、1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び/又はメガヌクレアーゼ、並びに1つ以上のエキソヌクレアーゼを含む。キットは、本願に従う方法を記録している操作説明書をさらに含んでもよい。
【0063】
本願によって提供される標的DNA配列を作製するための方法は、標的DNA配列を産業的に大規模生産することに適する。いくつかの実装形態では、標的DNA配列を作製するための方法は、1L若しくはそれ以上、5L若しくはそれ以上、10L若しくはそれ以上又は20L若しくはそれ以上の発酵タンク内で実施される。
【0064】
本願に従う方法は、以下の有益な効果:
I.本願に従う方法は、任意の配列について単純で一般的であり、各配列に特化して設計する必要がなく、全ての配列のいずれであっても異なる調製技術を用いる必要がない
II.本願に従う方法の決定的な原料が大規模に抽出されたプラスミドであり、各ステップにおける酵素消化反応がサーモスタット的に実施されることから、規模拡大が容易である
III.本願に従う方法のために選択される酵素は、反応条件についての非常に高い互換性を有し、次のステップにおける酵素消化反応系が、酵素消化反応の各ステップ後の酵素消化産物を精製することなく調製される一方で、酵素消化系は、酵素消化の第1ステップにおいて確立され得る。後の酵素消化反応の各ステップに関して、以前のステップにおいて反応した酵素のみが不活性化される必要があり、次に新たな酵素が反応のための反応系に添加される
IV.本願に従う方法は、電気泳動又は高性能液体クロマトグラフィーに基づくDNA断片分離に応じてストライプ状のDNA選別を全く行うことなく、大量の高純度標的DNA配列を調製することが可能であり、また、遺伝子編集の鋳型を経済的且つ効率的に調製し、大規模にコンプライアンスモードで正確な編集を行うのに非常に適する
V.本願に従う方法は、特に、標的DNA配列を産業的に大規模生産するように構成されるとき、品質管理を実現するのが容易であり、GMP生産に適する
を実現する。
【0065】
本発明は、以下の図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本願の一実施形態における、一般的な構築物の機能エレメント及び制限エンドヌクレアーゼの酵素消化部位レイアウトを示す。
図2】本願の1つの実装形態の標的DNA配列の作製フローを示す。
図3】本願の一実施形態における、アガロースゲル電気泳動を通じて二本鎖DNAの中間産物及び最終産物を検出した結果を示す。レーンMは、3000bpの二本鎖DNAマーカーであり、レーン1は、TelN酵素消化を受けた精製された調製ベクターの産物であり、レーン2は、I-sceI酵素消化を受けたレーン1産物の産物であり、そしてレーン3は、λエキソヌクレアーゼによって消化されたレーン2産物の産物である。
図4】本願の一実施形態における、Agilent Bioanalyzer 2100を通じての最終産物の標的配列1の純度検証を示す。
図5】本願の一実施形態における、アガロースゲル電気泳動を通じて二本鎖DNAの中間産物及び最終産物を検出した結果を示す。レーンMは、3000bpの二本鎖DNAマーカーであり、レーン1は、TelN酵素消化を受けた精製された調製ベクターの産物であり、レーン2は、BspQI酵素消化を受けたレーン1産物の産物であり、そしてレーン3は、λエキソヌクレアーゼによって消化されたレーン2産物の産物である。
図6】本願の一実施形態における、Agilent Bioanalyzer 2100を通じての最終産物の標的配列2の純度検証を示す。
図7】本願の一実施形態における、本願の方法に従って調製された標的配列2のエレクトロポレーション後の細胞生存率の検出を示す。
図8】本願の一実施形態における、本願の方法に従って調製された標的配列2のエレクトロポレーション後48時間の細胞の緑色蛍光タンパク質発現の検出を示す。
図9】本願の一実施形態における、本願の方法に従って調製された標的配列2のエレクトロポレーション後の細胞生存率の検出を示す。
図10】本願の一実施形態における、本願の方法に従って調製された標的配列2のエレクトロポレーション後7日の細胞の緑色蛍光タンパク質発現の検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
特に指定されない限り、本発明で使用される科学技術用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されている意味を有する。
【0068】
本開示における技術的解決は、添付の図面及び実施形態を参照して、さらに詳述される。特に指定されない限り、下記の実施例における方法及び材料は、市販されている従来製品である。本開示が属する当業者は、下記の方法及び材料があくまで例示的であり、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきでないことを理解するであろう。
【実施例
【0069】
実施例1:一般的な構築物の設計及び構築
pUC57カナマイシン耐性ベクターを、再構築ベクターとして選択する。図1に示す通り、BspQI酵素消化認識部位が最初に714位塩基に限って存在することに基づき、2つのBspQI酵素消化認識部位(配列:GCTCTTC)を、機能エレメント間の1554位塩基及び2539位塩基の後にそれぞれ付加する。最初に存在しない2つのメガヌクレアーゼI-sceI酵素消化認識配列(配列:TAGGGATAACAGGGTAAT)を1501位A塩基及び2479位A塩基の後にノックインする。さらに、1397位塩基で、点突然変異を通じてGをCに改変することで、コドンの同義突然変異を実現し、このようにして、1つのBspQI酵素消化認識部位を、oriの機能における変化が生じないことを確認する状況下で、そのコード遺伝子上に付加する。同様に、同義突然変異(ATからGC)を通じて、2136位及び2137位で塩基ATがGCに突然変異され、1つのBspQI酵素消化認識部位を、カナマイシン耐性遺伝子のコード遺伝子に付加する。上記の配列挿入及び点突然変異はいずれも、Nanjing GenScript Biotech Corp.を通じた、pUC57-KanRプラスミドベクター(Nanjing GenScript Biotech Corp.、配列情報は:https://www.addgene.org/vector-database/6258/、配列番号12を参照されたい)に基づく部位特異的突然変異サービスに従い、図1に示すような一般的な調製構築物が得られる。一般的な構築物の機能エレメントは、左から右へ、lacプロモーター、lac作動遺伝子、及び複数のクローニング部位(MSC)を含むβガラクトシダーゼをコードする遺伝子lacZα;プラスミド複製起点部位配列ori、カナマイシン耐性遺伝子KanR、並びに付加されたBspQI認識配列GCTCTTC及びI-sceI酵素消化認識配列TAGGGATAACAGGGTAATを含む、pUC57-KanRベクターのブルーホワイトスポットスクリーニングのための既存のラクトースオペロン配列を含む。一般的な構築物の設計された配列は、配列番号1に示す通りである。
【0070】
実施例2:GFP遺伝子をRAB11a遺伝子にノックインするように構成された標的配列1
2.1 標的配列1の設計
GFP配列部位の2つの末端でのノックイン配列は、ヒトゲノムRAB11a(Ras関連タンパク質Rab-11A)遺伝子ノックイン部位の左側及び右側それぞれの、配列番号4及び配列番号5でそれぞれ示される、300bpの(RAB11a相同性アーム配列としての)配列から選択する。設計された標的配列1の元の配列(1356bpの安定な二本鎖DNA)は、配列番号3に示す通りであり、大腸菌(E.Coli)ファージN15に由来するプロテロメラーゼTelN認識配列TATCAGCACACAATTGCCCATTATACGCGCGTATAATGGACTATTGTGTGCTGATA(配列番号2)を、標的DNA配列1の2つの末端に付加する。2つの末端にプロテロメラーゼTelN酵素認識配列を付加した後の標的配列1の配列は、配列番号6に示す通りである。設計された末端配列は、Nanjing GenScript Biotech Corp.(https://www.genscript.com.cn/gene_synthesis.html)によって完全配列の遺伝子合成を施す。
【0071】
2.2 DNA構築物の調製及び大規模プラスミドの調製
ステップ2.1で合成された、2つの末端にTelN酵素認識配列を付加した標的配列1(配列番号6)を、T4リガーゼ(Thermo Scientific(商標)、製品カタログ番号:EL0011)による、制限エンドヌクレアーゼEcoRV(New England BioLabs、カタログ番号R3195L)を通じての単一の酵素消化の線状化を受けた一般的なベクターpUC57-Kan-V6(実施形態1で調製した一般的なベクター)の酵素消化部位にフラットに結合する。結合産物を、エレクトロポレーション法を通じて大腸菌(E.Coli)コンピテント細胞に変換し、形質転換された大腸菌(E.Coli)を、カナマイシンを有するLBプレート培地上にコーティングし、37℃の温度に置き、一晩培養する。翌日、10の単一コロニーを採取し、50μg/mlのカナマイシンを含有する3mLのLB液体培地上で液体培養を行い、プラスミド抽出を行う。各プラスミドを、サンガー配列決定手段を通じて同定し、配列が全体的に正確であるプラスミドを決定する。プラスミド抽出及び配列決定は、Nanjing GenScript Biotech Corp.(https://www.genscript.com.cn/custom-plasmid-preparation.html)によって完了する。正確な配列を有するプラスミドを含有する採取した大腸菌(E.Coli)株を画線し、保存する。保存した大腸菌(E.Coli)株を接種してシード溶液を調製し(OD値が約0.8)、次にシード溶液を1Lの大腸菌(E.Coli)培養系に1%接種することで、10Lの大規模プラスミド抽出を実施する。
【0072】
2.3 標的配列1を含む安定な二本鎖DNAの調製
大規模抽出を受けた調製プラスミドベクターに、3ステップ恒温酵素消化反応を施すことで、標的配列1を含む線状閉鎖二本鎖DNAを得る。ステップI、0.8mgの調製した環状ベクターを、2つの末端が閉鎖されていて、それぞれが標的配列1及びベクター骨格を含む2つの二本鎖DNA線状断片に、TelN酵素(New England BioLabs、カタログ番号M0651S、5U/μLの酵素1μLを300fmolずつのTelN認識部位に添加する)によって切断し、30℃で1時間にわたってインキュベーションを実施し、次に75℃で10分間にわたって加熱を施すことで、TelN酵素を不活性化する。反応が完了した後、反応が完全に実施されているか又は否か、即ち、調製ベクターが超らせん状環状プラスミドから2つの線状化二本鎖DNAに完全に改変されているかを、アガロース電気泳動法によって検出するが、ストライプ位置は、それぞれ標的断片及び調製ベクターの骨格サイズ(約2.6kb)である必要がある。ステップII、標的配列1は、BspQI認識配列GCTCTTCを含み、I-sceI酵素認識配列を含まない標的配列1を有するI-sceI酵素を採用し、標的配列1を、変化しない状態で作製する一方、ベクターの骨格配列を、I-sceI酵素(New England BioLabs、カタログ番号R0694L)によって、二本鎖を含む複数の壊れたDNA断片に切断することになる。反応条件は、反応が37℃で1時間実施され、次に不活性化が実施される場合である。反応が完了した後、反応が完全に実施されているか又は否かを、アガロース電気泳動法によって検出する。ステップIII、断片化されたベクターの骨格DNA断片を、DNAエキソヌクレアーゼによって完全に消化する。ステップIIにおける反応後、エキソヌクレアーゼ、即ち、λエキソヌクレアーゼ(New England BioLabs、カタログ番号M0262L)又はT5エキソヌクレアーゼ(New England BioLabs、カタログ番号M0663L)を、反応系に添加し、37℃で2時間反応させ、次に熱失活を施す。具体的な反応条件については、以下の表1~表3を参照されたい。反応後、標的産物の純度を、アガロースゲル電気泳動によって検出するが、産物は、ストライプ状の標的のみを有する単一産物である(図3を参照)。最終産物、即ち、安定な二本鎖標的配列1に対し、Agilent Bioanalyzer 2100を通じて純度検証を行う。100%の純度を有し、標的断片のみを含むDNA純粋産物(図4を参照)は、さらなるDNA分子断片の選別又は精製ステップを全く行わない条件で、得ることができる。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
図3に示す通り、レーンMは、3000bpの二本鎖DNAマーカーである。レーン1は、TelN酵素消化を受けた精製された調製ベクターの産物であり、ここで産物は、1kbのストライプ状の標的二本鎖DNA及び2kbのベクター骨格二本鎖DNAを含む。レーン2は、レーン1産物がI-sceI酵素消化を受けた後の産物であり、ここで産物は、2つの断片に切断された1kbのストライプ状の標的二本鎖DNA及びベクター骨格二本鎖DNAを含む。レーン3は、レーン2産物がラムダExoエキソヌクレアーゼによって消化された後の産物であり、最終産物は、1kbのストライプ状の標的二本鎖DNAのみを有する。
【0077】
図4に示す通り、最終産物は、Agilent Bioanalyzerキャピラリー電気泳動及びDNA12000検出チップを通じて純度検出を受ける。50bpのピーク及び17,000bpのピークは、チップ検出の内部参照ピークであり、標的配列の材料ピークは、全検出範囲内に限って存在し、純度は100%である。
【0078】
2.4 標的配列1を含む安定な二本鎖DNAの最終精製
上記の反応産物は、フェノール・クロロホルム抽出(Invitrogen(商標)、製品カタログ番号:15593031)、及び特殊な材料で作られたDNA吸着遠心カラム(QIAGEN-tip 100、Qiagen、製品カタログ番号:10043)によって回収してもよく、次に標的配列のみを含むDNA分子を、イソプロパノール(Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.、シリアル番号80109218)/エタノール(Sinopharm Chemical Reagent Corporation、シリアル番号10009257)沈殿によって回収する。実施形態で採用されたイソプロパノール/エタノール沈殿方法は、次の具体的ステップを含む:1)0.7倍体積の正常温度のイソプロパノールを加え(例えば、0.7mlのイソプロパノールを1mlの濃縮予定の安定な二本鎖DNAに加え)、均一に混合し、次に遠心分離を、12,000~14,000rpm、4℃で10分間実施し、上清を慎重に吸収することで、沈殿物の接触を回避する;2)1mlの正常な温度の70%エタノール溶液を添加し、プラスミド沈殿物を緩やかに懸濁して十分な洗浄を行い、遠心分離を、12,000~14,000rpm、4℃で5~10分間実施し、上清を慎重に吸収することで、沈殿物の接触を回避する;3)遠心分離を、5,000~10,000rpm、4℃で5~10秒間実施し、残留液体を、20μL又は200μLのピペッターによって完全且つ慎重に吸収することで、沈殿物の接触を回避する;及び4)透明な液体(乾燥は、一般に液体が完全に吸収された後の1分以内に終了し得る)が裸眼で認められなかった後、適切な体積を有する溶液(例えば、溶液V、10mMのトリス-Cl pH8.5又はミリQレベルの純水)を添加し、DNAを溶解させる。
【0079】
標的配列を含む0.8mgの精製された調製ベクターを実施形態で採用し、ここで標的配列の長さは、調製ベクター全体の35%を占める、即ち、理論上の安定な二本鎖DNA産物は、0.28mgである必要がある。イソプロパノール沈殿及び精製後、得られた純粋産物の標的配列のみを含む安定な二本鎖DNAは、O.D.260紫外線吸収測定(Nanodrop One,ThermoFisher)によると0.18mgであり、生産性は、64.73%である。反応系を増幅することにより、標的配列を含む4.5mgの精製された調製ベクターが同時に得られることで、1mgの最終産物が同時に得られることを保証する。1mg以上のプラスミドを、高性能液体クロマトグラフィー(AKTA Explorer 100,Cytiva)によって支持された分子ふるいクロマトグラフィー(クロマトグラフィーカラム充填剤:セファロース6 Fast Flow,Cytiva)を通じて精製することで、反応系におけるプロテアーゼ及び塩を除去する。
【0080】
実施例3:CMVプロモーターを有するGFPの遺伝子編集鋳型をTRAC遺伝子にノックインするように構成された標的配列2
3.1 標的配列2の設計
CMVプロモーターを有する、GFP配列部位の2つの末端でのノックイン配列は、ヒトゲノムTRAC(T細胞受容体α鎖コード遺伝子)遺伝子ノックイン部位の左側及び右側それぞれの、配列番号7及び配列番号8でそれぞれ示される、300bpの(TRACの左及び右の相同性アーム配列としての)配列から選択する。標的配列2の元の配列(1885bpの安定な二本鎖DNA)は、配列番号9に示す通りであり、大腸菌(E.Coli)ファージN15由来のプロテロメラーゼTelN認識配列TATCAGCACACAATTGCCCATTATACGCGCGTATAATGGACTATTGTGTGCTGATA(配列番号2)を、標的DNA配列2の2つの末端に付加する。2つの末端の後の標的配列2の配列に、配列番号10で示すようなプロテロメラーゼTelN酵素認識配列を付加する。設計された末端配列は、Nanjing GenScript Biotech Corp.(https://www.genscript.com.cn/gene_synthesis.html)によって完全配列の遺伝子合成を受ける。
【0081】
3.2 DNA構築物の調製及び大規模プラスミドの調製
実施形態2と同様、TelN酵素認識配列を付加した2つの末端を有する、3.1において合成された標的配列2を、T4リガーゼ(Thermo Scientific(商標)、製品カタログ番号:EL0011)による制限エンドヌクレアーゼEcoRV(New England BioLabs、カタログ番号R3195L)を通じた単一の酵素消化・線状化を受けた、pUC57-Kan-V6(実施形態1で調製された一般的なベクター)にフラットに結合する。結合産物を、大腸菌(E.Coli)コンピテント細胞に変換し、形質転換された大腸菌(E.Coli)を、LBプレート培地上でカナマイシンでコーティングし、37℃の温度下に置いて、一晩培養する。翌日、10の単一コロニーを採取し、50μg/mlのカナマイシンを含有するLB液体培地3mL上で液体培養を行い、プラスミド抽出を行う。プラスミド抽出は、Nanjing GenScript Biotech Corp.(https://www.genscript.com.cn/custom-plasmid-preparation.html)によって完了する。各プラスミドを、配列決定手段を通じて同定し、配列が全体的に正確であるプラスミドを決定する。正確な配列を有するプラスミドを含有する大腸菌(E.Coli)株を画線し、保存する。シード溶液を調製し、シード溶液を1Lの大腸菌(E.Coli)培養系に接種することによって、10Lの大規模プラスミド抽出を実施する。
【0082】
3.3 標的配列2を含む安定な二本鎖DNAの調製
実施形態2.3における操作ステップと同様、大規模抽出を受けた調製プラスミドベクターに3ステップ恒温酵素消化反応を施すことで、標的配列を含む閉鎖二本鎖DNAを得る。ステップI、実施形態3.2で得られた環状の調製ベクターを、2つの末端が閉鎖されていて、それぞれが標的配列2及びベクター骨格を含む2つの二本鎖DNA線状断片に、TelN酵素(New England BioLabs、カタログ番号M0651S、5U/μLの酵素1μLを300fmolずつのTelN認識部位に添加する)によって切断するが、具体的な反応条件については、表4を参照されたい。反応が完了した後、反応が完全に実施されているか又は否かを、アガロース電気泳動法によって検出する。ステップII、標的配列2は、実施形態Iで使用したI-sceIによる酵素消化を施してもよい。しかし、標的配列は、BspQI認識配列を含まず、酵素消化のため、一般的なベクター上により多くの酵素消化部位を有するBspQIを採用してもよく、標的断片は、変化しない状態で作製する一方で、ベクター骨格配列を、二本鎖を含む複数の壊れたDNA断片に切断することになるが、具体的な反応条件については、表5を参照されたい。反応が完了した後、反応が完全に実施されているか又は否かを、アガロース電気泳動法によって検出する。ステップIII、断片化されたベクター骨格DNA断片を、DNAエキソヌクレアーゼによって完全に消化する。ステップIIにおける反応後、λエキソヌクレアーゼ(New England BioLabs、カタログ番号M0262L)又はT5エキソヌクレアーゼ(New England BioLabs、カタログ番号M0663L)を、反応系に添加し、37℃で2時間反応させ、次に熱失活を施す。具体的な反応条件については、表6を参照されたい。標的産物の純度を、アガロースゲル電気泳動によって検出するが、産物は、ストライプ状の標的のみを有する単一産物である(図5を参照)。最終産物、即ち、安定な二本鎖標的配列2に対し、Agilent Bioanalyzer 2100を通じて純度検証を行う。図6に示す通り、50bpのピーク及び17,000bpのピークは、チップ検出の内部参照ピークであり、標的配列の材料ピークは、全検出範囲内に限って存在し、純度は100%である。100%の純度を有し、標的断片のみを含むDNA純粋産物は、さらなるDNA分子断片の選別又は精製ステップを全く行わない条件で、得ることができる。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
図5に示す通り、レーンMは、3000bpの二本鎖DNAマーカーである。レーン1は、TelN酵素消化を受けた精製された調製ベクターの産物であり、ここで産物は、1.8kbのストライプ状の標的二本鎖DNA及び2kbのベクター骨格二本鎖DNAを含む。レーン2は、レーン1産物がBspQI酵素消化を受けた後の産物であり、ここで産物は、5つの断片に切断された1.8kbのストライプ状の標的二本鎖DNA及びベクター骨格二本鎖DNAを含む。レーン3は、レーン2産物がλエキソヌクレアーゼによって消化された後の産物であり、最終産物は、1.8kbのストライプ状の標的二本鎖DNAのみを有する。
【0087】
図6に示す通り、最終産物は、Agilent Bioanalyzerキャピラリー電気泳動及びDNA12000検出チップを通じて純度検出を受ける。50bpのピーク及び17,000bpのピークは、チップ検出の内部参照ピークであり、標的配列の材料ピークは、全検出範囲内に限って存在し、純度は100%である。
【0088】
3.4 標的配列2を含む安定な二本鎖DNAの最終精製
上記の反応産物は、フェノール・クロロホルム抽出(Invitrogen(商標)、製品カタログ番号:15593031)、及び特殊な材料で作られたDNA吸着遠心カラム(QIAGEN-tip 100,Qiagen、製品カタログ番号:10043)によって回収してもよく、次にイソプロパノール(Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.、シリアル番号80109218)/エタノール(Sinopharm Chemical Reagent Corporation、シリアル番号10009257)沈殿を実施する。実施形態で採用されたイソプロパノール/エタノール沈殿方法は、次の具体的ステップを含む:1)0.7倍体積の正常温度のイソプロパノールを加え(例えば、0.7mlのイソプロパノールを1mlの濃縮予定の安定な二本鎖DNAに加え)、均一に混合し、次に遠心分離を、12,000~14,000rpm、4℃で10分間実施し、上清を慎重に吸収することで、沈殿物の接触を回避する;2)1mlの正常な温度の70%エタノール溶液を添加し、プラスミド沈殿物を緩やかに懸濁して十分な洗浄を行い、遠心分離を、12,000~14,000rpm、4℃で5~10分間実施し、上清を慎重に吸収することで、沈殿物の接触を回避する;3)遠心分離を、5,000~10,000rpm、4℃で5~10秒間実施し、残留液体を、20μL又は200μLのピペッターによって完全且つ慎重に吸収することで、沈殿物の接触を回避する;及び4)透明な液体(乾燥は、一般に液体が完全に吸収された後の1分以内に終了し得る)が裸眼で認められなかった後、適切な体積を有する溶液(例えば、溶液V、10mMのトリス-Cl pH8.5又はミリQレベルの純水)を添加し、DNAを溶解させる。
【0089】
標的配列を含む1.2mgの精製された調製ベクターを実施形態で採用し、ここで標的配列の長さは、調製ベクター全体の42.5%を占める、即ち、理論上の安定な二本鎖DNA産物は、0.51mgである必要がある。イソプロパノール調製及び精製後、得られた純粋産物の標的配列のみを含む安定な二本鎖DNAは、O.D.260紫外線吸収測定(Nanodrop One,ThermoFisher)によると0.26mgであり、生産性は、50.98%である。反応系を増幅することにより、標的配列を含む4.62mgの精製された調製ベクターが同時に得られることで、1mgの最終産物が同時に得られることを保証する。1mg以上のプラスミドを、高性能液体クロマトグラフィー(AKTA Explorer 100,Cytiva)によって支持された分子ふるいクロマトグラフィー(クロマトグラフィーカラム充填剤:セファロース6 Fast Flow,Cytiva)を通じて精製することで、反応系におけるプロテアーゼ及び塩を除去する。
【0090】
実施例4:緑色蛍光タンパク質の発現のための実施例3で調製された標的配列2のHEK293T細胞株へのエレクトロポレーション
4.1 HEK293T哺乳動物細胞株の培養及び調製:培地(DMEM低グルコース、Gibco(商標)、カタログ番号:11885084)を、4℃の冷蔵庫から取り出し、室温の超クリーンベンチに配置する。HEK293T細胞(ATCC(登録商標)CRL-3216(商標))凍結チューブを、手で保持し、37℃で振盪させ、解凍する。1mLの細胞凍結培地を5mLの培地に添加し、DMSOを除去し、遠心分離を実施し、次に上清を廃棄する。5mLの新しい培地を添加し、培養を6cmのプレート内で実施し、1×10^6細胞/ボトルを10cmの培養皿に添加し、48時間培養する。
【0091】
4.2 DNAのHEK293T細胞株へのエレクトロポレーション
1.細胞計数が1.96×10^6/mLであり、全体が5mLである。
2.10μLのエレクトロポレーション液体+緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする1μg/μLの標的配列2又は実施形態3.2で抽出された2μLのプラスミドサンプル
3.ステップ1で得られた1mLの細胞を取得し、低速で遠心分離し、上清を廃棄し、次に10μLのエレクトロポレーション液体を添加し、再懸濁する。
4.ステップ2における標的配列2又はプラスミドサンプル及びステップ3における細胞を、室温で10分間インキュベートする。
5.ステップ4においてインキュベートしたサンプル及び細胞を均一に混合し、次に室温で10分間インキュベートする。
6.Celetrix CTX-1500 LEエレクトロポレーターを、420Vの電位でのエレクトロポレーションに採用し、3つの群の各サンプルについて試験する。
7.細胞を培養皿で培養する。
8.細胞を48時間培養した後、生細胞の割合及び緑色蛍光タンパク質の発現を伴う細胞集団の割合を観察するため、フローサイトメーター(CytoFLEX,BECKMAN COULTER)を使用する。
【0092】
4.3 試験結果
図7に示す通り、生存率検出について、正常形態を有する細胞集団を、フローサイトメーターを通じて選択することによって計数及び決定し、2μgの安定な二本鎖DNA標的配列2のエレクトロポレーションによる細胞サンプルにおける生存率は、2μgのプラスミドのエレクトロポレーションの場合及びDNAのエレクトロポレーションを全く伴わないブランク対照群の場合に近い。
【0093】
図8に示す通り、緑色蛍光タンパク質の発現レベル検出では、フローサイトメーターを通じて同定された生細胞集団内での緑色蛍光タンパク質陽性で発現された細胞を選択し、百分率を計数する。2μgの安定な二本鎖DNAのエレクトロポレーションによる細胞サンプルにおけるGFP発現率平均値は18.21%であり、2μgのプラスミドのエレクトロポレーションにおけるGFP発現率平均値は35.70%である一方で、DNAのエレクトロポレーションを全く伴わないブランク対照群におけるGFP発現率平均値は0.36%である。それは、導入された安定な二本鎖DNAが細胞内で発現され得ることを示す。2μgのプラスミドのエレクトロポレーションによるHEK293細胞のGFP発現率は、2μgの安定な二本鎖DNAのエレクトロポレーションによる同細胞の場合の2倍であるが、プラスミドが細胞質に侵入し、一過性トランスフェクション発現を受けることがその超らせん構造故により容易であることから、これはあり得る。
【0094】
実施例5:GFP発現遺伝子のゲノム固定点ノックインのための実施例3で調製された標的配列2及びCRISPR-Cas9 RNP化合物の双方のHEK293T細胞株へのエレクトロポレーション
5.1 HEK293T哺乳動物細胞株の培養及び調製:HEK293T細胞は、実施形態4.1の場合と同じ方法を通じて再生する。
【0095】
5.2 DNAのHEK293T細胞株へのエレクトロポレーション
1.細胞計数が1.96×10^6/mLであり、全体が5mLである。
2.10μLのエレクトロポレーション液体+緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする1μg/μLの安定な二本鎖DNA標的配列2又は実施形態3.2で抽出された2μLのプラスミドサンプル;及び0.5μLの50ピコモルのCas9タンパク質(GenCrispr Cas9-N-NLSヌクレアーゼ、GenScript、カタログ番号Z03388)+1μLの200ピコモルのsgRNA(標的DNA配列に基づいて設計ウェブサイトhttps://www.genscript.com/gRNA-design-tool.htmlにおいて設計された後の配列:AGAGUCUCUCAGCUGGUACAguuuuagagcuaGAAAuagcaaguuaaaauaaggcuaguccguuaucaacuugaaaaaguggcaccgagucggugcuuuuの配列番号11であって、Nanjing Genscriptによって合成される)(遺伝子ノックイン実験群)を加え、室温で10分間インキュベートするが、Cas9タンパク質及びsgRNAを添加しない場合をブランク対照群とする。
3.ステップ1で得られた1mLの細胞を取得し、低速で遠心分離し、上清を廃棄し、次に10μLのエレクトロポレーション液体を添加して再懸濁し、次にインキュベーションを室温で10分間実施する。
4.2及び3を均一に混合し、次にインキュベーションを室温で10分間実施し、次に混合物をエレクトロポレーションカップに移す。
5.Celetrix CTX-1500 LEエレクトロポレーターを、420Vの電位でのエレクトロポレーションに採用し、3つの群の各サンプルについて試験する。
6.細胞を培養皿で培養する。
7.細胞を7日間培養した後、生細胞の割合及び緑色蛍光タンパク質の発現を伴う細胞集団の割合を観察するため、フローサイトメーターを使用する。
【0096】
5.3 試験結果
図9に示す通り、生存率検出について、正常形態を有する細胞集団を、フローサイトメーターを通じて選択することによって計数及び決定し、Cas9タンパク質及びsgRNA化合物(RNP、リボ核タンパク質)を添加するか又は否かにかかわらず、2μgの安定な二本鎖DNAのエレクトロポレーションによる細胞サンプルにおける生存率は、2μgのプラスミドのエレクトロポレーションの場合及びDNAのエレクトロポレーションを全く伴わないブランク対照群の場合に近い。
【0097】
緑色蛍光タンパク質の発現レベル検出では、フローサイトメーターを通じて同定された生細胞集団内での緑色蛍光タンパク質陽性で発現された細胞を選択し、百分率を計数する。図10に示す通り、Cas9タンパク質及びsgRNA化合物(RNP)を添加するか否かにかかわらず、DNAのエレクトロポレーションを全く伴わないブランク対照群におけるGFP発現率平均値は、0にほぼ等しい。2μgのプラスミドのエレクトロポレーションにおけるGFP発現率平均値は、非常に近く、それぞれ5.51%及び5.91%であり、それは、Cas9及びsgRNA RNP化合物が添加された実験群が、HEK293T細胞ゲノム上でGFP遺伝子断片のノックインを大規模には受けず、且つプラスミド鋳型の残留に起因するGFPのバックグラウンド発現を受けることを示す。2μgの安定な二本鎖DNAのエレクトロポレーションによる細胞サンプルにおけるGFP発現率平均値は、それぞれ13.35%及び4.92%である。安定な二本鎖DNAのGFP発現は、HEK293T細胞株へのエレクトロポレーションを受けてから7日後、RNPを伴わない対照群と比較して、やはり13.35%である。それは、遺伝子編集に基づくGFPコード遺伝子のノックインが生じ、且つ安定な二本鎖DNAが、CRISPR媒介に基づく固定点ノックインにとってより有利であり、プラスミドの場合より低い鋳型の残留を有することを示す。(緑色蛍光タンパク質の発現バックグラウンドは、プラスミドの場合よりやや低いが、CRISPR媒介に基づく固定点ノックインは、有意に改善され得る。)
【0098】
本発明の実装形態は、上記実施形態に記載の場合に限定されない。本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、当業者は、本発明に対し、形態及び詳細において様々な修飾及び改善を行うことができ、これらは本発明の保護範囲内に入るとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】