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特表2024-504365組換えウイルスベクター力価を増加させる微小管不安定化剤添加剤
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  • 特表-組換えウイルスベクター力価を増加させる微小管不安定化剤添加剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】組換えウイルスベクター力価を増加させる微小管不安定化剤添加剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240124BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C12N7/01
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544293
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 US2022013310
(87)【国際公開番号】W WO2022159702
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】63/140,705
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398050098
【氏名又は名称】バイオジェン・エムエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biogen MA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ドブロウスキー, テレンス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ワン-ユアンジェン シュープ, ジェニー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029BB13
4B029CC01
4B029DA01
4B029DA03
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB04
4B065BD25
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、本明細書に記載の少なくとも1つの微小管不安定化剤を使用して、組換えウイルスベクター、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を産生するための方法及び組成物に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を産生する方法であって、
(a)培地中で、
(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側に逆位末端配列(ITR)が隣接する前記少なくとも1つのペイロード、
(ii)少なくとも1つのRepポリペプチド、
(iii)少なくとも1つのCapポリペプチド、及び
(vii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチド、をコードする1つ以上のベクターで宿主細胞をトランスフェクトすることと、
(b)少なくとも1つの微小管不安定化剤を前記培地に添加することと、
(c)前記宿主細胞を、前記複数のrAAV粒子の産生に好適な条件下で培養することと、を含み、
それによって、前記複数のrAAV粒子を産生する、前記方法。
【請求項2】
前記微小管不安定化剤が、G2/M阻害剤を含むか、またはG2/M阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微小管不安定化剤が、コルセミド、コルヒチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはそれらの組み合わせ、誘導体、もしくは塩を含むか、またはそれらである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記微小管不安定化剤が、前記1つ以上のベクターでの前記宿主細胞のトランスフェクションの前に前記培地に添加される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記微小管不安定化剤が、前記1つ以上のベクターと実質的に同時に前記培地に添加される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記微小管不安定化剤が、前記1つ以上のベクターでの前記宿主細胞のトランスフェクションの後に前記培地に添加される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記微小管不安定化剤が、トランスフェクションの約24時間~約1分前に前記培地に添加される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記微小管不安定化剤が、トランスフェクションの約24時間~約1分後に前記培地に添加される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のrAAV粒子が、より高い力価で産生される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記より高い力価が、同じ条件下かつ同じ培地中であるが、微小管不安定化剤なしで産生されるrAAV粒子と比較してである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記より高い力価が、約1倍高い力価~約6倍高い力価を含むか、または約1倍高い力価~約6倍高い力価である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上のベクターが、
(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する前記少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクターと、
(ii)少なくとも1つのRepポリペプチド及び少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする第2のベクターと、
(iii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードする第3のベクターと、を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上のベクターが、
(i)少なくとも1つのCapポリペプチド及び少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する前記少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクターと、
(ii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチド及び少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする第2のベクターと、を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのヘルパーポリペプチドが、E1ポリペプチド、E2Aポリペプチド、E4orf6ポリペプチド、またはVA RNAポリペプチドのうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記宿主細胞が、接着細胞を含むか、または接着細胞である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記宿主細胞が、浮遊細胞を含むか、または浮遊細胞である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞を含むか、または哺乳動物細胞である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳動物細胞が、HEK293細胞、CHO-K細胞、HeLa細胞、もしくはそれらの変異体を含むか、またはそれである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記宿主細胞が、E1ポリペプチドを含むか、またはE1ポリペプチドを発現する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上のベクターが、ポリエチレンイミン(PEI)の存在下で前記宿主細胞にトランスフェクトされる、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側に逆位末端配列(ITR)が隣接する前記少なくとも1つのペイロード、
(ii)少なくとも1つのRepポリペプチド、
(iii)少なくとも1つのCapポリペプチド、及び
(vii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードする1つ以上のベクターと、
微小管不安定化剤と、を含む反応混合物。
【請求項22】
前記1つ以上のベクターが、
(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する前記少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクターと、
(ii)1つの少なくとも1つのRepポリペプチド及び少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする第2のベクターと、
(iii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードする第3のベクターと、を含む、請求項21に記載の反応混合物。
【請求項23】
前記1つ以上のベクターが、
(i)少なくとも1つのCapポリペプチド及び少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する前記少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクターと、
(ii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチド及び少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする第2のベクターと、を含む、請求項21に記載の反応混合物。
【請求項24】
複数の宿主細胞、及び請求項21~23のいずれか1項に記載の反応混合物を含む、培養物。
【請求項25】
請求項24に記載の培養物を含む、バイオリアクタ。
【請求項26】
前記バイオリアクタが、連続流バイオリアクタ、バッチプロセスバイオリアクタ、灌流バイオリアクタ、もしくはフェドバッチバイオリアクタを含むか、またはそれである、請求項25に記載のバイオリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月22日に出願された米国仮特許出願第63/140,705号の利益を主張し、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
組換えウイルスベクター媒介遺伝子療法は、急速に発展している治療分野である。例えば、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、AAVゲノムの内部部分を全体的または部分的に欠失させ、ベクター内の逆位末端配列(ITR)間に目的の異種核酸を挿入することによって操作される。ITRは、そのようなベクターにおいて機能的なままであり、それによって、AAVカプシド内に封入されたペイロードをコードするrAAV粒子の複製及びパッケージングを可能にする。遺伝子治療としての組換えウイルスベクター(例えば、rAAV)の開発における主な課題は、臨床応用に必要な組換えウイルスベクター粒子の量及び質をもたらす製造技術である。
【0003】
したがって、組換えウイルスベクター(例えば、rAAV)を製造するための改善された方法及び組成物の必要性が依然として存在する。特に、遺伝子治療産物のための組換えウイルスベクター(例えば、rAAV)の高ウイルス力価を効率的に産生するために使用することができる方法及び組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、とりわけ、少なくとも1つの微小管不安定化剤を使用する複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子)を産生するための方法、組成物、及びシステムを包含する。微小管は、チューブリンのポリマーであり、細胞分裂中に重複した染色体を分離する紡錘体の主成分である。微小管が、例えば、少なくとも1つの微小管不安定化剤の使用によって不安定化される場合、細胞は、娘細胞に分裂することができない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微小管不安定化剤は、宿主細胞(例えば、HEK293細胞、CHO-K細胞、HeLa細胞、またはそれらの変異体)の細胞周期を停止させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微小管不安定化剤は、G2/M阻害剤(例えば、コルセミド、コルヒチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはそれらの組み合わせ、誘導体、もしくは塩)を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微小管不安定化剤は、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチンもしくはビンクリスチン、またはそれらの組み合わせ、誘導体、もしくは塩)を含むか、もしくはそれである。
【0005】
本明細書に記載の少なくとも1つの微小管不安定化剤を使用して産生される複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)は、1つ以上の改善された特徴を有することができる。そのような改善された特徴には、例えば、同じ条件下でかつ同じ培地中で産生されるが、本明細書に記載される少なくとも1つの微小管不安定化剤なしで産生される、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)の、例えば、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)と比較して、より高い力価(例えば、ゲノム力価)が含まれ得るが、これらに限定されない。そのような改善された特徴は、限定されないが、改善された産生物の効力及びempty/full比等の改善された産生物の品質を含むことができ、したがって、例えば、同じ条件下でかつ同じ培地中で産生されるが、本明細書に記載される少なくとも1つの微小管不安定化剤なしで産生される、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)と比較して、産生物精製プロセスに利益をもたらし、全体的な収率を増加させることができる。
【0006】
一態様では、本開示は、複数の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を産生する方法であって、(a)培地中で、(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側に逆位末端配列(ITR)が隣接する少なくとも1つのペイロード、(ii)少なくとも1つのRepポリペプチド、(iii)少なくとも1つのCapポリペプチド、及び(vii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチド、をコードする1つ以上のベクターで宿主細胞をトランスフェクトすることと、(b)少なくとも1つの微小管不安定化剤を培地に添加することと、(c)宿主細胞を、複数のAAV粒子の産生に好適な条件下で培養することと、を含み、それによって、複数のrAAV粒子を産生する、方法を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、G2/M阻害剤を含むか、またはG2/M阻害剤である。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、コルセミド、コルヒチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはそれらの組み合わせ、誘導体、もしくは塩を含むか、またはそれである。
【0008】
いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、1つ以上のベクターでの宿主細胞のトランスフェクションの前に培地に添加される。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、1つ以上のベクターと実質的に同時に培地に添加される。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、1つ以上のベクターでの宿主細胞のトランスフェクションの後に培地に添加される。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、トランスフェクションの約24時間~約1分前に培地に添加される。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、トランスフェクションの約24時間~約1分後に培地に添加される。
【0009】
いくつかの実施形態では、複数のrAAV粒子は、より高い力価で産生される。いくつかの実施形態では、より高い力価は、rAAV粒子と比較して、同じ条件下かつ同じ培地中で産生されるが、微小管不安定化剤なしで産生される。いくつかの実施形態では、より高い力価は、約1倍高い力価~約6倍高い力価を含むか、またはそれである。
【0010】
いくつかの実施形態では、1つ以上のベクターは、(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクター、(ii)少なくとも1つのRepポリペプチド及び少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする第2のベクター、ならびに(iii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードする第3のベクターを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、1つ以上のベクターは、(i)少なくとも1つのCapポリペプチド及び少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクター、及び(ii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチド及び少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする第2のベクターを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのヘルパーポリペプチドは、E1ポリペプチド、E2Aポリペプチド、E4orf6ポリペプチド、またはVA RNAポリペプチドのうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は接着細胞を含むか、接着細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は浮遊細胞を含むか、または浮遊細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞を含むか、または哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、HEK293細胞、CHO-K細胞、HeLa細胞、またはそれらの変異体を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、E1ポリペプチドを含むかまたは発現する。
【0014】
いくつかの実施形態では、1つ以上のベクターは、ポリエチレンイミン(PEI)の存在下で宿主細胞にトランスフェクトされる。
【0015】
別の態様では、本開示は、(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側に逆位末端配列(ITR)が隣接する少なくとも1つのペイロード、(ii)少なくとも1つのRepポリペプチド、(iii)少なくとも1つのCapポリペプチド、及び(vii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードする1つ以上のベクターと、微小管不安定化剤と、を含む反応混合物を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、1つ以上のベクターは、(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクターと、(ii)1つの少なくとも1つのRepポリペプチド及び少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする第2のベクターと、(iii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードする第3のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のベクターは、(i)少なくとも1つのCapポリペプチド及び少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクターと、(ii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチド及び少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする第2のベクターとを含む。
【0017】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の任意の態様または実施形態の複数の宿主細胞と反応混合物とを含む培養物を提供する。
【0018】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の任意の態様または実施形態の培養物を含むバイオリアクタを提供する。いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、連続流バイオリアクタ、バッチプロセスバイオリアクタ、灌流バイオリアクタ、またはフェドバッチバイオリアクタを含むか、またはそれである。
【0019】
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下の詳細な記載において明らかである。しかしながら、本開示の実施形態を示しながら、詳細な記載が、限定ではなく、例示としてのみ、与えられることが理解されるべきである。本開示の範囲内での様々な変更及び修正は、詳細な記載から当業者には明らかになるであろう。
【0020】
以下に説明する図は、一緒に図面を構成するものであり、例示目的のみのためのものであり、限定のためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】いずれかの側に逆位末端配列(ITR)が隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いた浮遊HEK293細胞の一過性トランスフェクション、ならびに細胞周期停止剤(アフィジコリン、カフェイン、コルセミド、コルヒチン、フラボピリドール、ヒドロキシウレア、チミジン、トリコスタチンA、及び硫酸ビンブラスチン)の添加後の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子の力価(例えば、ゲノム力価)における倍率変化の添加を示すグラフ。細胞周期停止剤を、トランスフェクションの24時間前(tfxの24時間前)にまたはトランスフェクションの0.5時間後(tfx時)に添加した。
図2A】細胞周期停止剤(アフィジコリン、カフェイン、コルセミド、コルヒチン、フラボピリドール、ヒドロキシウレア、チミジン、トリコスタチンA、及び硫酸ビンブラスチン)の添加後24時間の浮遊HEK293細胞培養物の細胞周期期(トランスフェクトされていない)の蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析(図2A)、ならびにG2/M期におけるコルセミドによる懸濁液HEK293細胞培養物の細胞周期停止(図2B)を示すグラフ。
図2B】細胞周期停止剤(アフィジコリン、カフェイン、コルセミド、コルヒチン、フラボピリドール、ヒドロキシウレア、チミジン、トリコスタチンA、及び硫酸ビンブラスチン)の添加後24時間の浮遊HEK293細胞培養物の細胞周期期(トランスフェクトされていない)の蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析(図2A)、ならびにG2/M期におけるコルセミドによる懸濁液HEK293細胞培養物の細胞周期停止(図2B)を示すグラフ。
図3A】いずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いた浮遊HEK293細胞の一過性トランスフェクション、ならびにトランスフェクション後0.5時間での、本明細書の実施例1の表1に示される1X及び2X濃度(図3A)ならびに2X及び5X濃度(図3B)での微小管不安定化剤(コルセミド、コルヒチン、硫酸ビンブラスチン、及び硫酸ビンクリスチン)の添加後のrAAV粒子の力価における倍率変化を示すグラフ。
図3B】いずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いた浮遊HEK293細胞の一過性トランスフェクション、ならびにトランスフェクション後0.5時間での、本明細書の実施例1の表1に示される1X及び2X濃度(図3A)ならびに2X及び5X濃度(図3B)での微小管不安定化剤(コルセミド、コルヒチン、硫酸ビンブラスチン、及び硫酸ビンクリスチン)の添加後のrAAV粒子の力価における倍率変化を示すグラフ。
図4】いずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いた浮遊HEK293細胞の一過性トランスフェクション周りの異なる時点(トランスフェクション前3時間、2時間、及び1時間、ならびにトランスフェクション後0.5時間、2時間、及び3時間)に、微小管不安定化剤(コルセミド、コルヒチン、及び硫酸ビンブラスチン)を添加したときのrAAV粒子の力価の倍率変化を示すグラフ。
図5】いずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いたHEK293細胞の一過性トランスフェクション、トランスフェクション後0.5時間での微小管不安定化剤コルセミド(0.4μM濃度)またはコルヒチン(5μM濃度)の添加、ならびに3リットルのバイオリアクタ内での7日間の培養後のrAAV粒子の力価における倍率変化を示すグラフ。
図6】いずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いた接着HEK293細胞の一過性トランスフェクション、ならびにトランスフェクション後3時間にかつ本明細書の実施例1の表1に示される異なる濃度での微小管不安定化剤(コルセミド、コルヒチン、硫酸ビンブラスチン、及び硫酸ビンクリスチン)の添加後のrAAV粒子の力価の倍率変化を示すグラフ。
図7】いずれかの側にITRが隣接する異なるペイロード(ペイロードA~C)、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いた浮遊HEK293細胞の一過性トランスフェクション、ならびにトランスフェクション後0.5時間でのコルセミドの添加後のrAAV粒子の力価の倍率変化、を示すグラフ。約0.005μM~約4μMのコルセミドの用量応答曲線が、ペイロードA及びペイロードBをコードするプラスミドについて生成された。約0.4μMのコルセミドの濃度を、ペイロードCをコードするプラスミドに使用した。
図8A】いずれかの側にITRが隣接するペイロードA、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いたHEK293細胞の一過性トランスフェクション、トランスフェクション後0.5時間でのコルセミドの添加、ならびに製造スケールのためのバッチバイオリアクタ(図8A)またはフェドバッチバイオリアクタ(図8B~C)内での培養後のrAAV粒子の力価の倍率変化を示すグラフ。
図8B】いずれかの側にITRが隣接するペイロードA、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いたHEK293細胞の一過性トランスフェクション、トランスフェクション後0.5時間でのコルセミドの添加、ならびに製造スケールのためのバッチバイオリアクタ(図8A)またはフェドバッチバイオリアクタ(図8B~C)内での培養後のrAAV粒子の力価の倍率変化を示すグラフ。
図8C】いずれかの側にITRが隣接するペイロードA、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドを用いたHEK293細胞の一過性トランスフェクション、トランスフェクション後0.5時間でのコルセミドの添加、ならびに製造スケールのためのバッチバイオリアクタ(図8A)またはフェドバッチバイオリアクタ(図8B~C)内での培養後のrAAV粒子の力価の倍率変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本開示がより容易に理解されるために、ある特定の用語を、最初に、以下に定義する。以下の用語及び他の用語の更なる定義は、本明細書全体にわたって記載される。本開示の背景を説明し、その実施に関する更なる詳細を提供するために、本明細書で参照される刊行物及び他の参照資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本出願では、文脈から別途明確でない限り、(i)「a」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解され得る、(ii)「または」という用語は、「及び/または」を意味すると理解され得る、及び(iii)範囲が提供される場合、エンドポイントが含まれる。
【0024】
約またはおよそ:本明細書で使用される場合、数値に関する「約」または「およそ」という用語は、別段に明記されていない限り、または文脈から明らかでない限り(そのような数値が可能な値の0%未満または100%を超える場合を除いて)、一般に、数値のいずれかの方向(それよりも多いまたはそれ未満)で5%、10%、15%、または20%の範囲内に入る数値を含むと解釈される。
【0025】
アデノ随伴ウイルス(AAV):本明細書で使用される場合、「アデノ随伴ウイルス」及び「AAV」という用語は、パルボウイルス科ファミリー及びデペンドパルボウイルス属のウイルス粒子の全体または一部を指す。AAVは、小さい複製欠損ノンエンベロープウイルスである。AAVは、AAV血清型1、AAV血清型2、AAV血清型3(血清型3A及び3Bを含む)、AAV血清型4、AAV血清型5、AAV血清型6、AAV血清型7、AAV血清型8、AAV血清型9、AAV血清型10、AAV血清型11、AAV血清型12、AAV血清型13、AAV血清型rh10、AAV血清型rh74、HSC1~17シリーズからのAAV、CBr、CLvまたはCLgシリーズからのAAV、ヘビAAV、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、及び前述のいずれかの任意の変異体を含み得るが、これらに限定されない。AAVはまた、野生型AAV血清型の1つ以上の特性に影響を及ぼすCapポリペプチド(複数可)内の1つ以上の挿入、欠失及び/または置換を含む、野生型AAVの操作されたバージョンまたはキメラバージョンを含んでもよく、これには、中和抗体(例えば、AAV-DJ、AAV-PHP.B、AAV-PHP.N、AAV.CAP-B1~AAV.CAP-B25及びこれらの変異体)の向性及び回避が含まれるが、これらに限定されない。野生型AAVは複製欠損であり、複製するためにヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペス、またはワクシニアウイルス)による細胞の同時感染、またはヘルパーウイルス遺伝子の補充を必要とする。
【0026】
薬剤:「薬剤」という用語は、本明細書で使用される例えば、低分子、ポリペプチド、核酸、糖、脂質、金属、またはそれらの組み合わせもしくは複合体を含む任意の化学クラスの化合物またはエンティティを指す。適切な状況下では、当業者には文脈から明らかであろうが、この用語は、細胞または生物、またはその分画、抽出物、または成分であるか、またはそれを含むエンティティを指すように利用され得る。代替的または追加的に、文脈が明らかにするように、この用語は、天然物が自然界で見出される及び/または天然物から得られるという点で天然物を指すように使用され得る。いくつかの例では、更に文脈から明らかであるように、この用語は、人の手の作用によって設計、操作、及び/または産生されるという点で人工的である、及び/または自然界に見出されない1つ以上のエンティティを指すように使用され得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、単離された形態または純粋な形態で利用されてもよく、いくつかの実施形態では、薬剤は、粗製形態で利用されてもよい。いくつかの実施形態では、可能性がある薬剤は、例えば、それらの中の活性薬剤を識別または特徴付けるようにスクリーニングされ得るコレクションまたはライブラリとして提供され得る。
【0027】
バイオリアクタ:「バイオリアクタ」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞培養物(例えば、哺乳動物細胞培養物)の増殖に使用される任意の容器を指す。バイオリアクタは、細胞培養物(例えば、哺乳動物細胞培養物)の培養に有用である限り、任意のサイズ及び/または任意の形状であってもよい。
【0028】
Capポリペプチド:本明細書で使用される場合、「Capポリペプチド」という用語は、機能的なAAVキャプシドを形成し、それが次にDNAをパッケージ化し、標的細胞を感染させ得る構造タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、カプシドポリペプチドは、VP1、VP2及び/またはVP3を含む。いくつかの実施形態では、Capポリペプチドは、全てのAAVカプシドサブユニット(例えば、VP1、VP2及びVP3)を含むが、機能的カプシドが産生される限り、全てのカプシドサブユニット未満が存在してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のCapポリペプチドをコードする核酸配列が、単一のベクター(例えば、プラスミド)上に存在する。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、AAVrh74、AAV-HSC1~17、AAV-CBr、AAV-CLv、AAV-CLg、AAV-DJ、AAV-PHP.B、AAV-PHP.N、またはAAV.CAP-B1~AAV.CAP-B25、または前述のいずれかの変異体を含む。AAVカプシド遺伝子及びタンパク質は、例えば、Knipe et al.,FIELDS VIROLOGY, Volume 1,(6th ed.,Lippincott-Raven Publishers)を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
細胞密度:本明細書で使用される場合、「細胞密度」という用語は、所与の体積の培地に存在する細胞の数または所与の表面積に存在する細胞の数を指す。例えば、細胞密度は、培地の生存可能な細胞(vc)/mlまたはvc/cmとして表され得る。
【0030】
含む:1つ以上の命名された要素またはステップを「含む(comprising)」または「含む(including)」として本明細書に記載される組成物または方法は、オープンエンドであり、命名された要素またはステップが必須であるが、他の要素またはステップが組成物または方法の範囲内に追加されてもよいことを意味する。冗長性を回避するために、1つ以上の命名された要素またはステップを「含む(comprising)」(または「含む(comprises)」)として記載される任意の組成物または方法はまた、同じ命名された要素またはステップ「から本質的になる(consisting)」(または「から本質的になる(consists)」)、対応する、より限定された組成物または方法も記載し、すなわち、組成物または方法が、命名された本質的な要素またはステップを含み、また、組成物または方法の基本的な及び新規の特徴(複数可)に実質的に影響を与えない追加の要素またはステップを含んでもよいことを意味するも理解される。また、1つ以上の命名された要素またはステップを「含む」または「本質的にからなる」として本明細書に記載される任意の組成物または方法は、任意の他の命名されていない要素またはステップの除外に対して、命名された要素またはステップ「からなる(consisting of)」(または「からなる(consists of)」)、対応する、より限定された、及びクローズドエンドの組成物または方法も記載することも理解される。本明細書に開示される任意の組成物または方法では、任意の命名された必須要素またはステップの既知のまたは開示された等価物が、その要素またはステップと置き換えられ得る。
【0031】
培養物:本明細書で使用される場合、「培養物」及び「細胞培養物」という用語は、細胞集団の生存及び/または増幅に好適な条件下で培地中に浮遊するか、または培地によって覆われる細胞集団(例えば、真核細胞集団)を指す。当業者には明らかであろうように、これらの用語はまた、細胞集団及び培地を含む組み合わせを指し得る。
【0032】
誘導体:本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、参照物質の構造類似体を指す。すなわち、「誘導体」は、コアまたはコンセンサス構造を共有する等、参照物質と有意な構造的類似性を示すが、ある特定の別個の様式でまた異なる物質である。いくつかの実施形態では、誘導体は、化学操作によって参照物質から生成され得る物質である。いくつかの実施形態では、誘導体は、参照物質を生成する合成プロセスと実質的に同様の(例えば、複数のステップを共有する)合成プロセスの実行を通して生成され得る物質である。
【0033】
断片:本明細書で使用される場合、「断片」という用語は、全体の別個の部分を含むが、全体の構造に見出される1つ以上の部分を欠く構造を指す。いくつかの実施形態では、断片は、そのような別個の部分からなる。いくつかの実施形態では、断片は、全体に見られる特徴的な構造要素または部分からなるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド断片は、全ヌクレオチドに見られる少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、またはそれよりも多くのモノマー単位(例えば、核酸)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド断片は、全ヌクレオチドに見られるモノマー単位(例えば、残基)の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、25%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多くを含むか、またはそれらからなる。全体の材料またはエンティティは、いくつかの実施形態では、全体の「親」と称されてもよい。
【0034】
遺伝子:本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、産物(例えば、RNA産物及び/またはポリペプチド産物)をコードするDNA配列を指す。いくつかの実施形態では、遺伝子は、特定の産物をコードするコード配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子は、非コード配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子は、コード(例えば、エキソニック)配列及び非コード(例えば、イントロン)配列の両方を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子は、1つ以上の調節エレメント、例えば、遺伝子発現の1つ以上の態様(例えば、誘導性遺伝子発現)を制御するか、またはそれに影響する調節エレメントを含む。
【0035】
ヘルパーポリペプチド:本明細書で使用される場合、「ヘルパーポリペプチド」という用語は、ヘルパーアデノウイルス(例えば、Ad5ヘルパーウイルス、例えば、野生型または組換え操作されたAd5ヘルパーウイルス)に由来する機能的rAAV粒子を生成するのに必要なポリペプチドを指す。ヘルパーポリペプチドは、E1Aポリペプチド、E1Bポリペプチド、E2Aポリペプチド、E4orf6ポリペプチド、VA RNAポリペプチド、及び上記のいずれかの任意の変異体または断片を含み得る。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするベクターは、E1相補細胞株(例えば、HEK293)にトランスフェクトされる。Ad5ヘルパーポリペプチドのヌクレオチド配列は、アデノウイルス5ゲノムに由来し得る(GenBank受託番号AY601635)。
【0036】
宿主細胞:本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、外因性DNA(組換え型またはそれ以外)が導入された細胞を指す。当業者は、本開示を読むと、そのような用語が特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことを理解するであろう。突然変異または環境的影響のいずれかに起因して、後世においてある特定の改変が起こる場合があるため、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に依然として含まれる。宿主細胞は、外因性核酸配列(例えば、組換え核酸配列)を発現するのに好適な任意の生命界(Kingdom of life)から選択される原核細胞及び真核細胞を含み得る。
【0037】
例示的な宿主細胞としては、限定されないが、原核生物及び真核生物(例えば、単一細胞または多細胞)、細菌細胞(例えば、E.coli、バチルス属、またはストレプトマイセス属の株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、またはP.methanolica)、植物細胞、昆虫細胞SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、またはトリコプルシアni)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、ならびに細胞融合物(例えば、ハイブリドーマまたはクアドローマ)が挙げられる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、CHO(例えば、CHO-K、CHO-DXB11、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293(例えば、HEK293T、HEK293F、HEK293FT、HEK293FTM、HEK293SG、HEK293H、HEK293E、HEK293A、またはHEK293別の変異体))、293EBNA、MSR293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC5、Colo205、HB8065、HL-60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(上皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127、SP2/0、NS-0、MMT060562、Sertoli、BRL3A細胞、HT1080、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、または前述の細胞に由来する細胞株から選択される真核細胞である。本明細書に記載される方法、組成物、及び系で使用される宿主細胞は、接着細胞または浮遊細胞を含んでもよく、または接着細胞または浮遊細胞であってもよい。
【0038】
「改善する」、「増加する」、「阻害する」、または「低減する」:本明細書で使用される場合、「改善する」、「増加する」、「阻害する」、「減少する」、またはそれらの文法的等価物という用語は、ベースラインまたは他の参照測定値に対して相対的な値を示す。いくつかの実施形態では、適切な参照測定は、特定の薬剤または治療の存在なし(例えば、その前及び/または後)、または適切な比較可能な参照薬剤の存在下での他の比較可能な条件下での特定のシステム(例えば、単一の試料、例えば、培地)における測定であってもよく、またはそれを含んでもよい。いくつかの実施形態では、適切な基準測定値は、関連する薬剤または治療法の存在下で、特定の方法で応答することが既知であるまたは予想される同等のシステムにおける測定値であり得るか、またはそれを含み得る。
【0039】
培地:本明細書で使用される場合、「培地」、「培養培地」、及び「増殖培地」という用語は、細胞(例えば、増殖細胞、例えば、哺乳動物細胞)を養うための栄養素を含む溶液を指す。典型的には、これらの溶液は、必須及び非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、及び/または生存及び/または最小増殖のために細胞によって必要とされる微量元素を提供する。溶液はまた、ホルモン及び増殖因子等の、最低速度を上回る生存及び/または増幅を増強する成分を含むことができる。溶液は、細胞の生存及び/または増殖に最適な1つ以上の塩のpH及び濃度に配合され得る。例えば、培地は、「規定培地」または「化学的規定培地」、例えば、タンパク質、加水分解物、または未知の組成物の成分を含まない無血清培地であり得る。規定培地は、動物由来の成分を含まず、全ての成分は既知の化学構造を有する。当業者は、規定培地が、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、及び/または他のシグナル伝達分子を含むが、それらに限定されない組換えポリペプチドを含み得ることを理解する。
【0040】
微小管不安定化剤:本明細書で使用される場合、「微小管不安定化剤」という用語は、微小管ポリマー及び/または微小管重合の安定性を直接的または間接的に妨げ、それによって微小管の生理学的機能を阻害する任意の薬剤を指す。微小管は、チューブリンのポリマーであり、細胞分裂中に重複染色体を分離する紡錘体の主成分である。微小管が微小管不安定化剤等によって不安定化される場合、細胞は娘細胞に分裂することができない。微小管不安定化剤は、微小管を脱分極させること、紡錘繊維形成を不活性化すること、チューブリンを結合させることにより微小管の重合を遮断すること、チューブリンを結合させることにより微小管を脱分極させること及び自己会合を誘導させること、及び/またはチューブリン形成を阻害すること等によって、細胞の細胞周期を停止させることができる。微小管不安定化剤は、細胞周期停止剤、例えば、本明細書に記載される細胞周期停止剤を含むか、またはそれであり得る。微小管不安定化剤は、G2/M阻害剤を含むか、またはそれであり得る。微小管不安定化剤は、コルセミドまたはその誘導体もしくは塩を含むか、またはそれであり得る。微小管不安定化剤は、コルヒチンまたはその誘導体もしくは塩を含むか、またはそれであり得る。微小管不安定化剤は、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチンもしくはビンクリスチン、またはその誘導体もしくは塩)を含むか、もしくはそれであり得る。微小管不安定化剤は、ビンブラスチンまたはその誘導体もしくは塩を含むか、またはそれであり得る。微小管不安定化剤は、ビンクリスチンまたはその誘導体もしくは塩を含むか、またはそれであり得る。
【0041】
核酸:本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、その任意のヌクレオチド及び類似体またはポリマーを含む。「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、リボヌクレオチド(RNA)、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、またはそれらの組み合わせのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語は、分子の一次構造を指し、したがって、二本鎖及び一本鎖DNA、ならびに二本鎖及び一本鎖RNAを含む。これらの用語は、等価物として、ヌクレオチド類似体から作製されるRNAまたはDNAのいずれかの類似体、ならびにメチル化、保護化、及び/またはキャップされたヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含むが、それらに限定されない、修飾ポリヌクレオチドを含む。これらの用語は、ポリリボヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチド(RNA)及びポリデオキシリボヌクレオチドまたはオリゴデオキシリボヌクレオチド(DNA);核酸塩基及び/または修飾核酸塩基のN-グリコシドまたはC-グリコシドに由来するRNAまたはDNA;糖及び/または修飾糖に由来する核酸;ならびにリン酸架橋及び/または修飾リン原子架橋(「ヌクレオチド間結合」とも称される)に由来する核酸を包含する。この用語は、核酸塩基、修飾核酸塩基、糖、修飾糖、リン酸橋、または修飾リン原子橋の任意の組み合わせを含有する核酸を包含する。例としては、リボース部分及び/またはデオキシリボース部分、ならびに修飾リボース部分及び/またはデオキシリボース部分を含む核酸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、接頭辞のポリ-は、約2~約10,000、約2~約50,000、または約2~約100,000個のヌクレオチドモノマー単位を含む核酸を指す。いくつかの実施形態では、接頭辞のオリゴ-は、約2~約200個のヌクレオチドモノマー単位を含有する核酸を指す。本明細書に記載される方法及び組成物によれば、いくつかの実施形態では、RNAは、マイクロRNA(miRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、mRNA、snRNA、CRISPR/CasガイドRNA(gRNA)、及び/またはそれらの前駆体を含むか、またはそれらである。
【0042】
ペイロード:本明細書で使用される場合、「ペイロード」という用語は、ベクターによる送達のための任意の目的のエンティティを指す。例えば、ペイロードは、細胞、器官、生物、及び/または生体組織(例えば、細胞を含む)に導入されることが所望されてもよい。いくつかの実施形態では、ペイロード配列は、本明細書に記載されるウイルスベクターによる送達のための異種核酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、ペイロード配列は、コード領域、遺伝子調節エレメント、及び転写ターミネーターのうちの1つ以上を含む。遺伝子調節エレメントの非限定的な例としては、プロモーター、転写活性化因子、エンハンサー、及びポリアデニル化シグナルが挙げられる。いくつかの実施形態では、ペイロード配列は、コード領域が遺伝子調節エレメントと転写ターミネーターとの間にあるように互いに対して配置された、コード領域、遺伝子調節エレメント、及び転写ターミネーターを含む。いくつかの実施形態では、コード領域は、遺伝子産物をコードする。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、RNAである。いくつかの実施形態では、コード領域は、調節RNA(例えば、miRNA、siRNA、shRNA、mRNA、snRNA、CRISPR/CasガイドRNA(gRNA)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはそれらの前駆体)をコードする。いくつかの実施形態では、コード領域は、ポリペプチド(例えば、酵素または抗体)をコードする。いくつかの実施形態では、コード領域は、少なくとも1つの遺伝子産物(例えば、2、3、4、5、6、7、またはそれよりも多い遺伝子産物)をコードする。当業者は、ペイロードが任意の異種タンパク質または目的の核酸から選択され得ることを認識するであろう。本明細書で使用される場合、「コードする(encode)」または「コードする(encodes)」は、の発現を方向付けるか、または処理されることを意味する。例えば、核酸は、そのポリペプチドの発現を方向付けることによってポリペプチドをコードすることができる。別の例としては、核酸前駆体(例えば、pri-miRNAまたはpre-miRNA)は、それが更なる処理されたバージョンに処理される場合に、核酸(例えば、成熟miRNA)の更なる処理されたバージョンをコードすることができる。
【0043】
ポリペプチド:「ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも3つのアミノ酸のポリマーを指す。当業者は、「ポリペプチド」という用語が、本明細書に列挙される完全な配列を有するポリペプチドだけを包含するのではなく、そのような完全なポリペプチドの機能的断片(例えば、少なくとも1つの活性を保持する断片)を表すポリペプチドを包含するように十分に一般的であることが意図されていることを理解するであろう。更に、当業者は、タンパク質配列が一般に、活性を破壊することなくいくつかの置換を許容することを理解する。したがって、同じクラスの別のポリペプチドとともに、活性を保持し、少なくとも約30%~約40%の全体的な配列同一性を、多くの場合、約50%、60%、70%、または80%超を共有し、更に通常は、はるかに高い同一性の少なくとも1つの領域を含んで、多くの場合、1つ以上の高度に保存された領域において、90%または95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多くを含み、通常、少なくとも3個のアミノ酸~4個のアミノ酸を、多くの場合、最大20個のアミノ酸またはそれよりも多くを包含する任意のポリペプチドは、本明細書で使用される場合は「ポリペプチド」という用語内に包含される。ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはその両方を含有してもよい。ポリペプチドは、当該技術分野で既知である様々なアミノ酸修飾または類似体のいずれかを含有してもよい。有用な修飾は、例えば、末端アセチル化、アミド化、及び/またはメチル化を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、またはそれらの組み合わせを含む。「ペプチド」という用語は、一般に、約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、20アミノ酸未満、または10アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドを指すように使用される。
【0044】
組換えAAV(rAAV)粒子:本明細書で使用される「組換えAAV粒子」または「rAAV粒子」は、ベクター内の逆位末端配列(ITR)が両側に隣接する少なくとも1つのペイロードをカプセル化するAAVタンパク質シェルを含む感染性複製欠損ウイルス粒子を指す。rAAV粒子は、本明細書に記載される好適な宿主細胞(例えば、HEK293細胞、CHO-K細胞、HeLa細胞、またはそれらの変異体)において産生され得る。例えば、宿主細胞は、宿主細胞がrAAV粒子のパッケージングに必要なRepポリペプチド、Capポリペプチド及びヘルパーポリペプチドを産生することができるように、少なくとも1つのペイロード、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする1つ以上のベクターでトランスフェクトされる。本明細書に記載されるrAAV粒子は、後続の遺伝子送達のために使用されてもよい。
【0045】
Repポリペプチド:「Repポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、AAV粒子の産生のためのAAV複製を媒介するAAV非構造タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、Repポリペプチドは、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、AAVrh74、AAV-HSC1-17、AAV-CBr、AAV-CLv、AAV-CLg、AAV-DJ、AAV-PHP.B、AAV-PHP.N、もしくはAAV.CAP-B1~AAV.CAP-B25Capポリペプチド、または上記のいずれかの変異体を含む。AAV複製遺伝子及びタンパク質は、例えば、Knipe et al.,FIELDS VIROLOGY, Volume 1,(6th ed.,Lippincott-Raven Publishers)を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、関心のある特徴または特性の全範囲もしくはほぼ全範囲または全程度もしくはほぼ全程度を示す定性的条件を指す。したがって、「実質的に」という用語は、本明細書では、多くの生物学的及び/または化学的効果に固有の絶対性の可能性がある欠如を捕捉するように使用される。
【0047】
力価:本明細書で使用される場合、「力価」という用語は、所与の体積におけるウイルスの量を指す。例えば、力価は、所与の体積当たりのウイルスゲノムコピー(vg)または所与の体積当たりのプラーク形成単位(pfu)として表すことができる。いくつかの実施形態では、力価は、所与の体積当たりのカプシドの数として表すことができる。
【0048】
トランスフェクション:本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」という用語は、真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)等の、DNAまたはRNA(例えば、mRNA)等の核酸配列の細胞内への導入を指す。例えば、トランスフェクションは、ベクターベースのトランスフェクション、ウイルスベースのトランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション(例えば、カチオン性脂質及び/またはリポソームを有する)、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子ベースのトランスフェクション、及び/またはカチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミンまたはDEAE-デキストラン)に基づくトランスフェクションを含み得る。
【0049】
ベクター:本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を、例えば、細胞(例えば、本明細書に記載される宿主細胞)、組織、及び/または生物に輸送することができる核酸分子を指す。非限定的な例としては、1つのタイプのベクターは、付加的DNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る「ウイルスベクター」である。別のタイプのベクターは、付加的DNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、複製の細菌起源を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。更に、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を方向付けることができる。そのようなベクターは、「発現ベクター」と称される。
【0050】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション及び/またはリポフェクション)には、標準的な技術が使用される。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように実行されてもよい。前述の技術及び手順は一般に、当該技術分野において周知である従来の方法に従って、かつ本明細書全体を通して引用され、考察される、一般的かつより具体的な様々な参考文献に記載されるように実行されてもよい(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
[発明を実施するための形態]
【0051】
本開示は、とりわけ、複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子)を産生するための方法、組成物、及びシステムを提供する。一般に、本明細書に記載される方法を使用して産生されるrAAV粒子は、当該技術分野で既知である、または本明細書に記載される任意のAAV血清型であり得る。
【0052】
本開示は、少なくとも1つの微小管不安定化剤の使用が、驚くべきことに、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)の産生の改善をもたらすという発見に部分的に基づいている。正常な細胞副産物である宿主細胞の一過性トランスフェクションによるタンパク質の産生とは対照的に、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)の産生は、組換えウイルスベクターと宿主細胞との間の関係に起因するより大きい複雑さにおいて課題を提起する(例えば、Walsh et al.(2013)Cold Spring Harb Perspect Biol.2013 5(1),a012351を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。組換えウイルスベクターは、生殖のための細胞機構に依存するが、宿主細胞は、外来粒子としての組換えウイルスベクターに対する防御機構を有する。更に、組換えウイルスベクターは、宿主細胞の防御を阻害する機構を有する。例えば、Repポリペプチド及びCapポリペプチドは、宿主細胞に対して毒性であり得る。
【0053】
これらの課題にもかかわらず、本開示は、とりわけ、組換えウイルスベクター粒子の高い力価(例えば、ゲノム力価)を効率的に生成する少なくとも1つの微小管不安定化剤を使用する組換えウイルスベクター(例えば、rAAV)産生プロセス(例えば、大規模製造プロセス)を提供する。いくつかの実施形態では、より高い力価の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)は、同じ条件下及び同じ培地中で、かつ少なくとも1つの微小管不安定化剤なしで、産生される組換えウイルスベクター粒子に対するものである。
【0054】
いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)のより高い力価(例えば、ゲノム力価)は、例えば、同じ条件下及び同じ培地中で、かつ微小管不安定化剤なしで、産生される組換えウイルスベクター粒子と比較して、少なくとも約1倍高い力価、例えば、約1倍高い力価~約10倍高い力価、約2倍高い力価~約3倍高い力価、約3倍高い力価~約4倍高い力価、約1倍高い力価~約5倍高い力価、約3倍高い力価~約4倍高い力価、約4倍高い力価~約5倍高い力価、約2倍高い力価~約4倍高い力価、約1倍高い力価~約2倍高い力価、または約1倍高い力価~約4倍高い力価、例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、または約10倍高い力価である。
【0055】
いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)のより高い力価(例えば、ゲノム力価)は、例えば、バイオリアクタ(例えば、バッチバイオリアクタまたはフェドバッチバイオリアクタ、例えば、製造スケール(例えば、約250リットル体積))内で培養されるときに、約1.0×10vg/mlよりも大きく、例えば、約1.0×10vg/ml~約1.0×1012vg/ml、例えば、約1.0×10vg/ml~約1.0×1011vg/ml、約1.0×1010vg/ml~約1.0×1012vg/ml、約1.0×1010vg/ml~約1.0×1011vg/ml、約5.0×10vg/ml~約1.0×1012vg/ml、約5.0×10vg/ml~約1.0×1011vg/ml、約5.0×1010vg/ml~約1.0×1012vg/ml、約1.0×10vg/ml~約5.0×1011vg/ml、または約1.0×1010vg/ml~約5.0×1011vg/mlである。
【0056】
微小管不安定化剤
本開示は、とりわけ、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するための微小管不安定化剤を提供する。微小管は、チューブリンのポリマーであり、細胞分裂中に重複染色体を分離する紡錘体の主成分である。多くの形態の微小管不安定化剤は、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するための、本明細書に記載される方法、組成物、及びシステムで使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される微小管不安定化剤は、微小管を脱分極し、紡錘繊維の形成を不活性化し、チューブリンを結合することにより微小管の重合をブロックし、チューブリンの自己会合を誘導し、及び/またはチューブリンの形成を阻害する。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、コルセミド、コルヒチン、ビンブラスチン、またはビンクリスチン、またはそれらの誘導体もしくは塩のうちの1つ、2つ、3つ、またはそれよりも多く(例えば、全て)を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、コルセミドまたはその誘導体もしくは塩を含むか、またはそれである。コルセミド(デメコルシン、N-メチル-N-デアセチル-コルヒチン、及びN-デアセチル-N-メチルコルヒチンとしても知られる)は、以下の一般式を有する:
【化1】
【0058】
いくつかの実施形態では、コルセミドまたはその誘導体もしくは塩は、本明細書に記載される宿主細胞の細胞周期を停止させる。いくつかの実施形態では、コルセミドまたはその誘導体もしくは塩は、微小管を脱分極し、及び/または紡錘繊維形成を不活性化する。いくつかの実施形態では、コルセミドまたはその誘導体もしくは塩は、G2/M期に本明細書に記載される宿主細胞の細胞周期を停止させる。いくつかの実施形態では、コルセミドまたはその誘導体もしくは塩は、G2/M阻害剤を含むか、またはそれである。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される微小管不安定化剤(例えば、コルセミドまたはその誘導体もしくは塩)は、約0.1μM~約3.0μM、約0.2μM~約2.5μM、約0.3μM~約2.0μM、約0.4μM~約1.5μM、約0.1μM~約1.0μM、約0.2μM~約1.4μM、約0.3μM~約1.8μM、約0.4μM~約1.2μM、または約0.1μM~約1.4μM、例えば、約0.1μM、約0.2μM、約0.3μM、約0.4μM、約0.5μM、約0.6μM、約0.7μM、約0.8μM、約0.9μM、約1μM、約1.1μM、約1.2μM、約1.3μM、約1.4μM、約1.5μM、約1.6μM、約1.7μM、約1.8μM、約1.9μM、約2.0μM、約2.1μM、約2.2μM、約2.3μM、約2.4μM、約2.5μM、約2.6μM、約2.7μM、約2.8μM、約2.9μM、または約3.0μMの濃度で本明細書に記載される宿主細胞を含む培地に添加される。
【0060】
いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、コルヒチンまたはその誘導体もしくは塩を含むか、またはそれである。コルヒチン((S)-N-(5,6,7,9-テトラヒドロ-1,2,3,10-テトラメトキシ-9-オキソベンゾ[a]ヘプタレン-7-イル)アセトアミドとしても知られる)は、以下の一般式を有する:
【化2】
【0061】
いくつかの実施形態では、コルヒチンまたはその誘導体もしくは塩は、本明細書に記載される宿主細胞の細胞周期を停止させる。いくつかの実施形態では、コルヒチンまたはその誘導体もしくは塩は、チューブリンに結合することによって細管の重合をブロックする。いくつかの実施形態では、コルヒチンまたはその誘導体または塩は、本明細書に記載される宿主細胞の細胞周期をG2/M期で停止させる。いくつかの実施形態では、コルヒチンまたはその誘導体もしくは塩は、G2/M阻害剤を含むか、またはそれである。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される微小管不安定化剤(例えば、コルヒチンまたはその誘導体もしくは塩)は、約1μM~約25μM、約2μM~約20μM、約3μM~約15μM、約4μM~約10μM、または約5μM~約15μM、約1μM~約8μM、約2μM~約14μM、約3μM~約12μM、約4μM~約22μM、または約5μM~約25μM、例えば、約1μM、約1.5μM、約2μM、約2.5μM、約3.0μM、約3.5μM、約4.0μM、約4.5μM、約5.0μM、約5.5μM、約6.0μM、約6.5μM、約7.0μM、約7.5μM、約8.0μM、約8.5μM、約9.0μM、約9.5μM、約10μM、約11μM、約12μM、約13μM、約14μM、約15μM、約16μM、約17μM、約18μM、約19μM、約20μM、約21μM、約22μM、約23μM、約24μM、または約25μMの濃度で本明細書に記載される宿主細胞を含む培地に添加される。
【0063】
いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチンもしくはビンクリスチン、またはその誘導体もしくは塩)を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、ビンブラスチンまたはその誘導体もしくは塩を含むか、またはそれである。ある特定の実施形態では、微小管不安定化剤は、硫酸ビンブラスチンを含むか、またはそれである。ビンブラスチン(ビンカロイコブラスチンとしても知られる)は、以下の一般式を有する:
【化3】
【0064】
いくつかの実施形態では、ビンブラスチンまたはその誘導体もしくは塩は、本明細書に記載される宿主細胞の細胞周期を停止させる。いくつかの実施形態では、ビンブラスチンまたはその誘導体もしくは塩は、チューブリンを結合させることによって微小管を脱分極し、及び/または自己会合を誘導する。いくつかの実施形態では、ビンブラスチンまたはその誘導体もしくは塩は、本明細書に記載される宿主細胞の細胞周期をG2/M期で停止させる。いくつかの実施形態では、ビンブラスチンまたはその誘導体もしくは塩は、G2/M阻害剤を含むか、またはそれである。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される微小管不安定化剤(例えば、ビンブラスチンまたはその誘導体もしくは塩)は、約0.2μM~約10μM、約0.4μM~約2.0μM、約0.6μM~約4.0μM、約0.8μM~約6.0μM、約1.0μM~約8.0μM、約0.4μM~約7.0μM、約0.6μM~約6.0μM、約0.8μM~約5.0μM、または約1.0μM~約3.0μM、例えば、約0.2μM、約0.3μM、約0.4μM、約0.5μM、約0.6μM、約0.7μM、約0.8μM、約0.9μM、約1μM、約1.1μM、約1.2μM、約1.3μM、約1.4μM、約1.5μM、約1.6μM、約1.7μM、約1.8μM、約1.9μM、約2.0μM、約2.1μM、約2.2μM、約2.3μM、約2.4μM、約2.5μM、約2.6μM、約2.7μM、約2.8μM、約2.9μM、約3.0μM、約3.5μM、約4.0μM、約4.5μM、約5.0μM、約5.5μM、約6.0μM、約6.5μM、約7.0μM、約7.5μM、約8.0μM、約8.5μM、約9.0μM、約9.5μM、または約10μMの濃度で本明細書に記載される宿主細胞を含む培地に添加される。
【0066】
いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、ビンクリスチンまたはその誘導体もしくは塩を含むか、またはそれである。ある特定の実施形態では、微小管不安定化剤は、硫酸ビンクリスチンを含むか、またはそれである。ビンクリスチン(ロイロクリスチンとしても知られる)は、以下の一般式を有する:
【化4】
【0067】
いくつかの実施形態では、ビンクリスチンまたはその誘導体もしくは塩は、本明細書に記載される宿主細胞の細胞周期を停止させる。いくつかの実施形態では、ビンクリスチンまたはその誘導体もしくは塩は、チューブリンの形成を阻害する。いくつかの実施形態では、ビンクリスチンまたはその誘導体または塩は、本明細書に記載の宿主細胞の細胞周期をG2/M期で停止させる。いくつかの実施形態では、ビンクリスチンまたはその誘導体もしくは塩は、G2/M阻害剤を含むか、またはそれである。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微小管不安定化剤(例えば、ビンクリスチンまたはその誘導体もしくは塩)は、約0.2μM~約10μM、約0.4μM~約2.0μM、約0.6μM~約4.0μM、約0.8μM~約6.0μM、約1.0μM~約8.0μM、約0.4μM~約7.0μM、約0.6μM~約6.0μM、約0.8μM~約5.0μM、または約1.0μM~約3.0μM、例えば、約0.2μM、約0.3μM、約0.4μM、約0.5μM、約0.6μM、約0.7μM、約0.8μM、約0.9μM、約1μM、約1.1μM、約1.2μM、約1.3μM、約1.4μM、約1.5μM、約1.6μM、約1.7μM、約1.8μM、約1.9μM、約2.0μM、約2.1μM、約2.2μM、約2.3μM、約2.4μM、約2.5μM、約2.6μM、約2.7μM、約2.8μM、約2.9μM、約3.0μM、約3.5μM、約4.0μM、約4.5μM、約5.0μM、約5.5μM、約6.0μM、約6.5μM、約7.0μM、約7.5μM、約8.0μM、約8.5μM、約9.0μM、約9.5μM、または約10μMの濃度で本明細書に記載される宿主細胞を含む培地に添加される。
【0069】
いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤を、本明細書に記載される1つ以上のベクターと実質的に同時に宿主細胞を含む培地に添加される。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、トランスフェクションの1分以内に、例えば、約55秒、約50秒、約45秒、秒、約40秒、約35秒、約30秒、約25秒、約20秒、約15秒、約10秒、約5秒以内に、またはそれ未満トランスフェクションの前または後に、宿主細胞を含む培地に添加される。
【0070】
いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、本明細書に記載される1つ以上のベクターでのトランスフェクションの前に、宿主細胞を含む培地に添加される。いくつかの実施形態では、抗酸化剤は、調製中に、すなわち、培地が宿主細胞と接触する前に、培地に添加される。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、トランスフェクションの約24時間~約1分、約12時間~約20分、約6時間~約10分、約4時間~約30分、約2時間~約15分、約1時間~約10分、約50分~約15分、約45分~約20分、約50分~約20分、または約35分~約15分前に、例えば、約24時間、約23時間、約22時間、約21時間、約20時間、約19時間、約18時間、約17時間、約16時間、約15時間、約14時間、約13時間、約12時間、約11時間、約10時間、約9時間、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約50分、約40分、約30分、約20分、約10分、約5分、約4分、約3分、約2分、または約1分前に添加される。
【0071】
いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、本明細書に記載される1つ以上のベクターでのトランスフェクションの後に、宿主細胞を含む培地に添加される。いくつかの実施形態では、微小管不安定化剤は、トランスフェクションの約24時間~約1分、約12時間~約20分、約6時間~約10分、約4時間~約30分、約2時間~約15分、約1時間~約10分、約50分~約15分、約45分~約20分、約50分~約20分、または約35分~約15分後に、例えば、約24時間、約23時間、約22時間、約21時間、約20時間、約19時間、約18時間、約17時間、約16時間、約15時間、約14時間、約13時間、約12時間、約11時間、約10時間、約9時間、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約50分、約40分、約30分、約20分、約10分、約5分、約4分、約3分、約2分、または約1分後に添加される。
【0072】
トランスフェクション
本開示は、とりわけ、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するための、本明細書に記載される1つ以上のベクターによる宿主細胞のトランスフェクションのための方法を提供する。宿主細胞(例えば、HEK293細胞、CHO-K細胞、HeLa細胞、またはそれらの変異体等の哺乳動物細胞)は、(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側に逆位末端配列(ITR)が隣接する少なくとも1つのペイロード(例えば、本明細書に記載される阻害核酸またはポリペプチド)、(ii)少なくとも1つのRepポリペプチド、(iii)少なくとも1つのCapポリペプチド、及び(vii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードする1つ以上のベクターでトランスフェクトされ得る。いくつかの実施形態では、トランスフェクションは、一過性トランスフェクションを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、トランスフェクションは、安定したトランスフェクションを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載される2つまたは3つのベクターでトランスフェクションされる。
【0073】
トランスフェクションは、1つ以上の外因性核酸を宿主細胞(例えば、HEK293細胞、CHO-K細胞、HeLa細胞、またはそれらの変異体等の哺乳動物細胞)に導入するための当業者に既知の任意の方法を含み得る。例えば、トランスフェクションは、限定されないが、ベクターベースのトランスフェクション(例えば、プラスミドベースのトランスフェクション)、ウイルスベースのトランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション(例えば、1つ以上のカチオン性脂質及び/またはリポソームとともに)、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子ベースのトランスフェクション、カチオン性ポリマー(例えば、DEAE-デキストラン及び/またはポリエチレンイミン)に基づくトランスフェクション、または前述のいずれかの組み合わせを含み得る。様々なトランスフェクション技術は、当業者に一般に知られている(例えば、Graham et al.(1973)Virology,52:456;Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories;New York、Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、及びChu et al.(1981)Gene 13:197を参照されたく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0074】
いくつかの実施形態では、宿主細胞(例えば、HEK293細胞、CHO-K細胞、HeLa細胞、またはそれらの変異体等の哺乳動物細胞)は、トランスフェクション試薬でトランスフェクションされる。いくつかの実施形態では、トランスフェクション試薬は、ポリマーを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、トランスフェクション試薬は、ポリエチレンイミン(PEI)、リン酸カルシウム、細胞膜(例えば、リポソームまたはミセル)を横断することができる脂質、ナノ粒子、またはそれらの組み合わせを含むか、またはそれである。ある特定の実施形態では、トランスフェクション試薬は、PEIを含むか、またはそれである。
【0075】
宿主細胞
本開示は、とりわけ、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するための宿主細胞を提供する。宿主細胞は、本明細書に記載される少なくとも1つのベクターでトランスフェクションされた元の細胞の子孫細胞を含む。親細胞の子孫細胞は、天然、偶発的、及び/または意図的な変異のために、親細胞と形態またはゲノム含有量で実質的に同一ではあり得ない。
【0076】
組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生する宿主細胞の1つ以上の成分は、少なくとも1つのベクター上にトランスで提供され得る。安定した宿主細胞は、当業者に既知の方法を使用して組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生する少なくとも1つのポリペプチドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、安定した宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下で少なくとも1つのポリペプチドを含む。他の実施形態では、安定した宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下で少なくとも1つのポリペプチドを含む。例えば、安定した宿主細胞(例えば、HEK293細胞またはその変異体)は、構成的プロモーターの制御下でE1ヘルパーポリペプチドをコードする核酸を含み得る。他の安定な宿主細胞は、ルーチン方法を使用して当業者によって生成され得る。
【0077】
例示的な宿主細胞としては、限定されないが、原核生物または真核生物(単一または多細胞)、細菌細胞(例えば、E.coli、バチルス属、またはストレプトマイセス属の株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、またはP.methanolica)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、またはトリコプルシアni)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または細胞融合物(例えば、ハイブリドーマまたはクアドローマ)が挙げられる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、ヒト細胞、サル細胞、類人猿細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、またはマウス細胞を含むか、またはそれである。
【0078】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、腎臓細胞(例えば、HEK293、293EBNA、MSR293、MDCK、HaK、BHK、またはそれらの変異体)を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、HEK293細胞またはその変異体を含むか、またはそれである。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、HEK293T、HEK293F、HEK293FT、HEK293FTM、HEK293SG、HEK293H、HEK293E、HEK293A、もしくはそれらの変異体を含むか、またはそれである(例えば、Yuan et al.Biomed Pharmacol J 2018;11(2)を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ある特定の実施形態では、HEK293細胞またはその変異体は、E1ポリペプチドを含むか、または発現する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞(例えば、CHO Kl、DXB-11CHO、Veggie-CHO、またはその変異体)を含むか、またはそれである。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、HeLa細胞またはその変異体を含むか、またはそれである。
【0079】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、COS細胞(例えば、COS-7またはその変異体)を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、網膜細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ベロ細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、CV1細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、HepG2細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、WI38細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、MRC5細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Colo205細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、HB8065細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、HL-60細胞(例えば、BHK21またはその変異体)を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Jurkat細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Daudi細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、A431表皮細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、CV-1細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、U937細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、3T3細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞はL細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、C127細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、SP2/0宿主細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、NS-0細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、MMT060562細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、セルトリ細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、BRL3A細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、HT1080細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、骨髄腫細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、腫瘍細胞を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載される任意の細胞に由来する細胞株または変異体を含むか、またはそれである。
【0080】
いくつかの実施形態では、トランスフェクションの前に、宿主細胞(例えば、接着宿主細胞または浮遊宿主細胞)は、ある特定の密度で播種される。「播種」という用語は、本明細書で使用される場合、容器(例えば、バイオリアクタまたは培養フラスコ)に細胞培養物を提供するプロセスを指す。例えば、細胞培養物を提供するプロセスは、宿主細胞をバイオリアクタまたは他の容器に提供する前に、別のバイオリアクタまたは容器内での宿主細胞の増殖を含み得る。宿主細胞は、バイオリアクタまたは容器に提供する直前に凍結及び解凍され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は接着細胞を含むか、接着細胞である。いくつかの実施形態では、培養物中の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、またはそれよりも多くの宿主細胞が、接着細胞である。
【0082】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は浮遊細胞を含むか、または浮遊細胞である。いくつかの実施形態では、培養物中の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、またはそれよりも多くの宿主細胞が、浮遊細胞である。
【0083】
ベクター
本開示は、とりわけ、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するためのベクターを提供する。多くの形態のベクターは、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するための本明細書に記載される方法、組成物、及びシステムで使用され得る。組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するためのベクターの非限定的な例には、プラスミド、バクテリオファージベクター、コスミド、ファージミド、及び人工染色体が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのペイロードのいずれかの側に逆位末端配列(ITR)が隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする(例えば、本明細書に記載される阻害核酸またはポリペプチドの発現のために)。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードする。
【0085】
いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのRepポリペプチド及び少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのCapポリペプチド及び少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのヘルパーポリペプチド及び少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのヘルパーポリペプチド及び少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのRepポリペプチド及び少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのヘルパーポリペプチド及び少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、宿主細胞を少なくとも3つのベクターでトランスフェクションすることを含む。いくつかの実施形態では、3つのベクターは、(i)少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクターと、(ii)少なくとも1つのRepポリペプチド及び少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする第2のベクターと、(iii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードする第3のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、宿主細胞を少なくとも2つのベクターでトランスフェクションすることを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのベクターは、(i)少なくとも1つのCapポリペプチド及び少なくとも1つのペイロードのいずれかの側にITRが隣接する少なくとも1つのペイロードをコードする第1のベクターと、(ii)少なくとも1つのヘルパーポリペプチド及び少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする第2のベクターとを含む。
【0087】
ベクターは、ベクターでトランスフェクションされた細胞における転写、翻訳、及び/または発現を可能にする様式で、本明細書に記載される任意のペイロードまたencoding at least one Cap polypeptide and at least one payload flanked bはポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結された従来の制御エレメントを含み得る。発現制御配列は、転写配列、開始配列、終結配列、プロモーター配列、及び/またはエンハンサー配列;スプライシングシグナル及び/またはポリアデニル化(polyA)シグナル等の効率的なRNAプロセシングシグナル(例えば、ウサギβグロビンpolyAシグナル);細胞質mRNAを安定させる配列;翻訳効率を高める配列(例えば、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに所望により、コードされた産物の分泌を高める配列を含むが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも1つのウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)等の他の調節エレメントを含む。
【0088】
天然、構成的、誘導性、及び/または組織特異的であるプロモーターを含むいくつかの発現制御配列は、当該技術分野で既知であり、本明細書に記載されるベクターに含まれ得る。構成的プロモーターの例としては、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(例えば、RSVエンハンサーを更に含む)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(例えば、CMVエンハンサーを更に含む)、SV40プロモーター、及びジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外因的に供給される化合物、温度等の環境因子、または特定の生理学的状態(例えば、急性期、細胞の特定の分化状態、または複製細胞のみ)の存在によって調節され得る。誘導性プロモーター及び誘導系は、Invitrogen、Clontech及びAriadを含むがこれらに限定されない、様々な商業的供給源から入手可能である。多くの他の系が、記載されており、当業者によって容易に選択され得る。外因的に供給されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系、エクジソン昆虫プロモーター、テトラサイクリン抑制系、テトラサイクリン誘導系、RU486誘導系、及びラパマイシン誘導系が挙げられる。有用であり得る更に他のタイプの誘導性プロモーターは、温度、急性期、細胞の特定の分化状態等の特定の生理学的状態、または複製細胞のみによって調節される。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意のペイロードまたはポリペプチドをコードする核酸のための天然プロモーターまたはその断片を使用してもよい。エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位、またはコザックコンセンサス配列等の他の天然発現制御エレメントがまた、天然発現を模倣するように使用されてもよい。
【0091】
少なくとも1つのペイロードをコードするベクター
本開示は、とりわけ、少なくとも1つのペイロードをコードするベクター(例えば、プラスミド)を提供する。ペイロード配列は、一般に、細胞、組織、器官、または生物に導入される対象の配列である。rAAVベクターは、シス作用性5’及び3’逆位末端配列(ITR)配列を含む(例えば、B.J.Carter,in“Handbook of Parvoviruses,”ed.,P.Tijsser,CRC Press,pp.155-168(1990)を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0092】
本明細書で使用される場合、「5’」及び「3’」という用語は、核酸配列の2つ以上のセグメント間の空間関係または方向性を規定する相対的な用語である。したがって、核酸の3’は、別のセグメントの下流にある核酸のセグメントを示し、5’は、別のセグメントの上流にある核酸のセグメントを示す。例えば、3’は、セグメントが核酸配列の3’半分にあるか、または核酸配列の3’末端にさえあることを示し得る。同様に、5’は、セグメントが核酸配列の5’半分にあるか、または核酸配列の5’末端にさえあることを示し得る。別段の指示がない限り、核酸の方向性は、5’から3’の翻訳方向にある。
【0093】
ITR配列は、典型的には、約115~145ntの長さである。いくつかの実施形態では、5’ITRまたは3’ITR核酸配列の一方または両方は、既知のITR核酸配列、例えば、AAV2ゲノムからの145ntの野生型5’及び3’ITRに対しての挿入、欠失及び/または置換を介して修飾される。ITR核酸配列の修飾は、当業者に既知である(例えば、Sambrook et al,“Molecular Cloning.A Laboratory Manual”,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989)、及びK.Fisher et al.,J Virol.,70:520 532(1996)を参照されたく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。AAV ITR配列は、哺乳動物AAV型、例えば、AAV2ゲノムを含む任意の既知のAAVから得てもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、ペイロードは、治療目的の異種核酸、例えば、miRNA、siRNA、shRNA、mRNA、snRNA、CRISPR/CasガイドRNA(gRNA)、またはその前駆体を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、治療目的の異種タンパク質、例えば、酵素、サイトカイン、抗体、受容体、融合タンパク質、またはキメラポリペプチドを含むか、またはそれである。
【0095】
いくつかの実施形態では、ペイロードは、発現ポリペプチドの分泌のための分泌シグナル配列に連結される。当業者は、ペイロードが目的の任意の異種ポリペプチドまたは核酸から選択され得ることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、ペイロード配列は、1つ以上のアプタマー結合ドメインまたはポリペプチド結合ドメイン(例えば、転写因子結合ドメイン)を含む。ベクターはまた、典型的には、細胞または組織におけるペイロードの発現または量を調節する他の調節要素(例えば、プロモーター、イントロン、及び/またはエンハンサー)を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、ペイロード配列は、任意の長さ、例えば、約2ヌクレオチド~約10,000ヌクレオチドの長さ、またはそれらの間の任意の整数値であり得る。いくつかの実施形態では、ペイロードをコードする核酸配列は、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも75ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも150ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも250ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも350ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも450ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも550ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも650ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも750ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも850ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも950ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1100ヌクレオチド、少なくとも1200ヌクレオチド、少なくとも1300ヌクレオチド、少なくとも1400ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1600ヌクレオチド、少なくとも1700ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2500ヌクレオチド、少なくとも3000ヌクレオチド、少なくとも4000ヌクレオチド、少なくとも5000ヌクレオチド、少なくとも6000ヌクレオチド、少なくとも7000ヌクレオチド、少なくとも8000ヌクレオチド、または9000ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ペイロードをコードする核酸配列は、約50~500ヌクレオチドの長さ、約100~1,000ヌクレオチドの長さ、約250~2,000ヌクレオチドの長さ、約150~3,000ヌクレオチドの長さ、約500~6,000ヌクレオチドの長さ、約700~7,000ヌクレオチドの長さ、約1,000~8,000ヌクレオチドの長さ、または約2,000~5,000ヌクレオチドの長さを含む。
【0097】
対象の例示的なペイロードは、タンパク質の発現を阻害する少なくとも1つの阻害性核酸(例えば、少なくとも1つのmiRNA、siRNA、shRNA、gRNA、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、タンパク質の発現を阻害する少なくとも1つのmiRNAをコードする1つ以上の核酸を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質をコードする標的核酸配列は、野生型核酸配列、またはその変異体もしくは変異体を含むか、もしくはそれである。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、mRNA配列を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、標的mRNA配列は、ヒトmRNAを含むか、またはそれである。
【0098】
いくつかの実施形態では、ペイロードは、治療目的でポリペプチドを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、ベクターは、治療目的でポリペプチドをコードする核酸配列を対象(例えば、ヒト)のゲノムへの挿入のための、例えば、対象におけるポリペプチドの長期発現のための1つ以上の核酸を含む。いくつかの実施形態では、対象は、対応する野生型遺伝子を有する対象と比較して、ポリペプチドの発現の低下を有する。いくつかの実施形態では、対象は、対応する野生型遺伝子を有する対象と比較して、変異型ポリペプチドを有する。いくつかの実施形態では、対象は、対応する野生型遺伝子を有する対象と比較して、機能不全ポリペプチドを有する。
【0099】
少なくとも1つのRepポリペプチドをコードするベクター
本開示は、とりわけ、少なくとも1つのRepポリペプチドをコードするベクター(例えば、プラスミド)を提供する。Repポリペプチドは、ウイルスDNA複製、複製中間体の分解、及び一本鎖ゲノムの生成に関与する。いくつかの実施形態では、ベクターは、Rep78、Rep68、Rep52、もしくはRep40のうちの1つ、2つ、3つ、またはそれよりも多く(例えば、全て)をコードする核酸配列、またはそれらの変異体を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、Repポリペプチドは、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、AAVrh74、AAV-HSC1-17、AAV-CBr、AAV-CLv、AAV-CLg、AAV-DJ、AAV-PHP.B、AAV-PHP.N、もしくはAAV.CAP-B1~AAV.CAP-B25血清型、または上記のいずれかの変異体に由来する核酸配列を含む。例えば、Repポリペプチドをコードする核酸配列は、AAV1受託番号NC_002077またはAF063497、AAV2受託番号NC_001401、AAV3A受託番号NC_001729、AAV3B受託番号NC_001863、AAV4受託番号NC_001829、AAV5受託番号Y18065もしくはAF085716、受託番号AAV6NC_001862、鳥類AAV ATCC VR-865AY186198、AY629583、もしくはNC_004828、鳥類AAV株DA-1NC_006263、AY629583、またはウシAAV NC_005889、AY388617を含むが、これらに限定されない既知のAAVゲノム配列に由来し得る。
【0101】
特定の実施形態では、Repポリペプチドをコードする核酸配列は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,906,111号、同第6,759,237号、同第7,105,345号、同第7,186,552号、同第9,163,260号、同第9,567,607号、同第4,797,368号、同第5,139,941号、同第5,252,479号、同第6,261,834号、同第7,718,424号、同第8,507,267号、同第8,846,389号、同第6,984,517号、同第7,479,554号、同第6,156,303号、同第8,906,675号、同第7,198,951号、同第10,041,090号、同第9,790,472号、同第10,308,958号、同第10,526,617号、同第7,282,199号、同第7,790,449号、同第8,962,332号、同第9,587,250号、同第10,590,435号、同第10,265,417号、同第10,485,883号、同第7,588,772号、同第8,067,01号、同第8,574,583号、同第8,906,387号、同第8,734,809号、同第9,284,357号、同第10,035,825号、同第8,628,966号、同第8,927,514号、同第9,623,120号、同第9,777,291号、同第9,783,825号、同第9,803,218号、同第9,834,789号、同第9,839,696号、同第9,585,971号、もしくは同第10,519,198号、米国公開特許第2017/0166926号、同第2019/0015527号、同第2019/0054188号、もしくは同第2020/0080109号、または国際特許出願第WO2018/160582号、同第WO2020/028751号、もしくは同第WO2020/068990号に記載されるAAVゲノム配列またはその変異体に由来する。
【0102】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、AAVrh74、AAV-HSC1~17、AAV-CBr、AAV-CLv、AAV-CLg、AAV-DJ、AAV-PHP.B、AAV-PHP.N、もしくはAAV.CAP-B1~AAV.CAP-B25、または前述のいずれかの変異体は、少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターは、p5及び/またはp19プロモーターを含む。
【0103】
少なくとも1つのCapポリペプチドをコードするベクター
本開示は、とりわけ、少なくとも1つのCapポリペプチドをコードするベクター(例えば、プラスミド)を提供する。Capポリペプチド(例えば、VP1、VP2、及びVP3)は、カプシドを形成する構造ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ベクターは、VP1、VP2、及びVP3のうちの1つ、2つ、または3つをコードする核酸配列を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、AAVrh74、AAV-HSC1~17、AAV-CBr、AAV-CLv、AAV-CLg、AAV-DJ、AAV-PHP.B、AAV-PHP.N、もしくはAAV.CAP-B1~AAV.CAP-B25血清型、または前述のいずれかの変異体に由来する核酸配列を含む。例えば、Capポリペプチドをコードする核酸配列は、AAV1受託番号NC_002077またはAF063497、AAV2受託番号NC_001401、AAV3A受託番号NC_001729、AAV3B受託番号NC_001863、AAV4受託番号NC_001829、AAV5受託番号Y18065またはAF085716、受託番号AAV6NC_001862、鳥類AAV ATCC VR-865AY186198、AY629583、またはNC_004828、鳥類AAV株DA-1NC_006263、AY629583、またはウシAAV NC_005889、AY388617を含むが、これらに限定されない既知のAAVゲノム配列に由来し得る。
【0105】
ある特定の実施形態では、Capポリペプチドをコードする核酸配列は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,906,111号、同第6,759,237号、同第7,105,345号、同第7,186,552号、同第9,163,260号、同第9,567,607号、同第4,797,368号、同第5,139,941号、同第5,252,479号、同第6,261,834号、同第7,718,424号、同第8,507,267号、同第8,846,389号、同第6,984,517号、同第7,479,554号、同第6,156,303号、同第8,906,675号、同第7,198,951号、同第10,041,090号、同第9,790,472号、同第10,308,958号、同第10,526,617号、同第7,282,199号、同第7,790,449号、同第8,962,332号、同第9,587,250号、同第10,590,435号、同第10,265,417号、同第10,485,883号、同第7,588,772号、同第8,067,01号、同第8,574,583号、同第8,906,387号、同第8,734,809号、同第9,284,357号、同第10,035,825号、同第8,628,966号、同第8,927,514号、同第9,623,120号、同第9,777,291号、同第9,783,825号、同第9,803,218号、同第9,834,789号、同第9,839,696号、同第9,585,971号、もしくは同第10,519,198号、米国公開特許第2017/0166926号、同第2019/0015527号、同第2019/0054188号、もしくは同第2020/0080109号、または国際特許出願第WO2018/160582号、同第WO2020/028751号、もしくは同第WO2020/068990号に記載されるAAVゲノム配列またはその変異体に由来する。
【0106】
いくつかの実施形態では、カプシドは、修飾カプシドタンパク質(例えば、修飾VP3領域を含むカプシド)を含むか、またはそれである。修飾カプシドタンパク質を産生する方法は、当該技術分野で既知である(例えば、US20130310443を参照されたく、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、修飾カプシドタンパク質は、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露アミノ酸(例えば、表面曝露チロシン)に対応する位置に少なくとも1つの非天然アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、修飾カプシドタンパク質は、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露チロシンアミノ酸に対応する位置に非チロシンアミノ酸(例えば、フェニルアラニン)、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露されたトレオニンアミノ酸に対応する位置に非トレオニンアミノ酸(例えば、バリン)、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露リジンアミノ酸に対応する位置に非リジンアミノ酸(例えば、グルタミン酸)、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露セリンアミノ酸に対応する位置に非セリンアミノ酸(例えば、バリン)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、修飾カプシドタンパク質は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多いアミノ酸置換を含むか、またはそれを有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、AAVrh74、AAV-HSC1~17、AAV-CBr、AAV-CLv、AAV-CLg、AAV-DJ、AAV-PHP.B、AAV-PHP.N、もしくはAAV.CAP-B1~AAV.CAP-B25、または前述のいずれかの変異体は、少なくとも1つのRepポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、p40プロモーターは、少なくとも1つのCapポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。
【0108】
少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするベクター
本開示は、とりわけ、少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするベクター(例えば、プラスミド)を提供する。AAVは、ヘルパー依存性DNAパルボウイルスであり、これは、デペンドウイルス属に属する。組換えAAVの産生は、関連ウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペス、もしくはワクシニアウイルス)またはウイルスゲノム複製のための構造タンパク質及びタンパク質等のヘルパーポリペプチドをコードするヘルパーベクターとの同時感染を必要とする。
【0109】
少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするベクターは、AAVが複製に依存する非AAV由来のウイルス及び/または細胞機能のためのヌクレオチド配列を含むことができ、これには、遺伝子転写の活性化、段階特異的mRNAスプライシング、DNA複製、少なくとも1つのCapポリペプチドの合成、及び/またはカプシドアセンブリが含まれ得るが、これらに限定されない。ウイルスベースのヘルパーポリペプチドは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、またはそれらの組み合わせ等の任意の既知のヘルパーウイルスに由来し得る。したがって、少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするベクター(例えば、プラスミド)は、rAAVベクターのカプシドポリペプチドへのパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能を含み得る。いくつかの実施形態では、ヘルパーポリペプチドは、Ad5ヘルパーポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、Ad5ヘルパーポリペプチドの核酸配列は、アデノウイルス5ゲノム(GenBank受託番号AY601635)に由来する。いくつかの実施形態では、ヘルパーポリペプチドは、Ad2ヘルパーポリペプチドを含む。
【0110】
ヘルパーポリペプチド(例えば、Ad5またはAd2ヘルパーポリペプチド)は、E1、E2A、E4orf6、またはVA RNAのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、またはそれよりも多く(例えば、全て)を含み得る。いくつかの実施形態では、E1は、E1a及び/またはE1bを含む。いくつかの実施形態では、E2A及びVA RNAの一方または両方は、AAV mRNA翻訳の安定性及び/または効率性を、例えば、cap遺伝子転写産物について増加させる。いくつかの実施形態では、E4orf6は、DNA複製を促進する。いくつかの実施形態では、E1aは、トランスアクチベーター(例えば、少なくとも1つのAd遺伝子、AAVrep遺伝子、及び/またはAAVcap遺伝子の活性を調節する)を含む。いくつかの実施形態では、E1bは、ウイルスmRNA輸送を含む。ヘルパーポリペプチドは、Coura and Nardi,Genetics and Molecular Biology,31(1):1-11(2008)に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0111】
培養
本開示は、とりわけ、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するための、本明細書に記載される宿主細胞を培養するための方法を提供する。多種多様な増殖培地(例えば、哺乳動物の増殖培地)は、複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するための本明細書に記載される方法、組成物、及び系で使用され得る。宿主細胞は、培地成分が既知であり、制御されている様々な化学的に規定された培地中で増殖され得る。細胞はまた、全ての培地成分が知られていない、及び/または制御されていない複合培地中で増殖されてもよい。
【0112】
宿主細胞の培養物は、培養される特定の宿主細胞型に好適な任意の培地中で調製され得る。宿主細胞培地の例示的な成分としては、無機塩、炭水化物(例えば、グルコース、ガラクトース、マルトース、またはフルクトース等の糖)、アミノ酸、ビタミン(例えば、B群ビタミン(例えば、B12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミン、またはビオチン)、脂肪酸(例えば、コレステロールまたはステロイド)、タンパク質(例えば、アルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチン、またはフェツイン)、血清(例えば、アルブミン、成長因子、または成長阻害剤、例えば、ウシ胎児血清、新生仔牛血清、またはウマ血清)、微量元素(例えば、亜鉛、銅、セレン、またはトリカルボン酸中間体)、加水分解物(例えば、植物源または動物源に由来する)、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
市販の培地は、本明細書に記載される宿主細胞を培養するために使用され得る。例示的な培地としては、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM、Sigma)、FreeStyle(商標)F17 Expression Medium(ThermoFisher)、DMEM/F12培地(Invitrogen)、CD OptiCHO(商標)培地(Invitrogen)、CD EfficientFeed(商標)培地(Invitrogen)、Cell Boost(HyClone(商標))培地(GE Life Sciences)、BalanCD(商標)CHO Feed(Irvine Scientific)、BD Recharge(商標)(Becton Dickinson)、Cellvento Feed(商標)(EMD Millipore)、Ex-cell CHOZN Feed(商標)(Sigma-Aldrich)、CHO Feed Bioreactor Supplement(Sigma-Aldrich)、SheffCHO(商標)(Kerry)、Zap-CHO(商標)(Invitria)、ActiCHO(商標)(PAA/GE Healthcare)、Minimal Essential Medium(Sigma)、またはRPMI-1640(Sigma)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
培地は、必要に応じて、ホルモン及び/または他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、またはリン酸ナトリウム)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオシド(例えば、アデノシンまたはチミジン)、抗生物質(例えば、カナマイシン、ピューロマイシン、ネオマイシン、ハイグロマイシン、ブラスチジン、ゲンタマイシン、Gr18、またはゼオシン)、微量元素、脂質(例えば、リノール酸または他の脂肪酸)、またはグルコースまたは等価のエネルギー源で補充され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される宿主細胞を培養するための培地は、グルタミンまたはグルタミンジペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される宿主細胞を培養するための培地は、界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、培地は、無血清培地、無タンパク質培地、または化学的に規定された培地を含むか、またはそれである。任意の他の必要な補充物がまた、当業者に既知である適切な濃度で含まれ得る。
【0115】
本明細書に記載される宿主細胞の培養後、複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)が、培養培地から回収され得る。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)は、宿主細胞を溶解し、例えば、遠心分離後に、組換えウイルスベクター粒子を溶解物から回収することによって回収される。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)は、培養上清から回収される。いくつかの実施形態では、宿主細胞のための溶解溶液は、化学試薬、例えば、洗剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、エチルトリメチルアンモニウムブロミド、Triton(登録商標) X-100、胆汁塩(例えば、コレート)または両性イオン界面活性剤(例えば、CHAPS)を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、宿主細胞のための溶解溶液は、塩(例えば、NaCl)及び高pH(例えば、約7を超えるpH)を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)は、クロマトグラフィー(例えば、親和性クロマトグラフィーもしくはイオン交換クロマトグラフィー(例えば、カチオン交換クロマトグラフィー))または濾過(例えば、UF/DF濾過)等の精製方法を使用して精製される。
【0117】
本明細書に記載される宿主細胞は、細胞培養容器またはバイオリアクタ内で培養され得る。細胞培養容器は、細胞培養皿、プレート、またはフラスコを含み得る。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、接着細胞を培養するために使用される。他の実施形態では、細胞培養容器は、浮遊細胞を培養するために使用される。例示的な細胞培養容器としては、35mm、60mm、100mm、または150mmの皿;マルチウェルプレート(例えば、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、または96ウェルプレート);フラスコ(例えば、Tフラスコ、例えば、T-25フラスコ、T-75フラスコ、またはT-160フラスコ);またはシェーカーフラスコが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される宿主細胞は、バイオリアクタ内で培養される。いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、接着細胞を培養するために使用される。他の実施形態では、バイオリアクタは、浮遊細胞を培養するために使用される。いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、連続流バッチバイオリアクタを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、灌流バイオリアクタを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、バッチプロセスバイオリアクタを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、フェドバッチバイオリアクタを含むか、またはそれである。例示的なバイオリアクタは、固定床バイオリアクタ、例えば、iCELLisバイオリアクタである。バイオリアクタは、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するのに十分な条件下に維持され得る。培養条件は、組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)の収率、純度、及び/または構造を最適化するように調節され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)は、宿主細胞(例えば、浮遊宿主細胞または接着宿主細胞)を含む大規模調製物中に産生される。いくつかの実施形態では、複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)の大規模調製物が、バイオリアクタ内で産生される。いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、少なくとも約1リットルの培地、例えば、約1リットル~約2,000リットル、約1,000リットル~約2,000リットル、約500リットル~約1,500リットル、約250リットル~約1,250リットル、約1,500リットル~約2,000リットル、約1,000リットル~約1,500リットル、約500リットル~約1,750リットル、約250リットル~約1,500リットル、約1,500リットル~約2,000リットル、約10リットル~約800リットル、約25リットル~約500リットル、約2リットル~約300リットル、約100リットル~約400リットル、約50リットル~約600リットル、約15リットル~約800リットル、約80リットル~約500リットル、約20リットル~約300リットル、約100リットル~約400リットル、または約50リットル~約600リットルの培地、例えば、少なくとも約2リットル、約3リットル、約4リットル、約5リットル、約10リットル、約15リットル、約20リットル、約25リットル、約30リットル、約35リットル、約40リットル、約45リットル、約50リットル、約55リットル、約60リットル、約65リットル、約70リットル、約75リットル、約80リットル、約85リットル、約90リットル、約100リットル、約125リットル、約150リットル、約175リットル、約200リットル、約225リットル、約250リットル、約275リットル、約300リットル、約350リットル、約400リットル、約450リットル、約500リットル、約550リットル、約575リットル、600リットル、約625リットル、約650リットル、約675リットル、約700リットル、約725リットル、約750リットル、約775リットル、約800リットル、約850リットル、約900リットル、約950リットル、または約1,000リットルの培地を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、本明細書に記載される宿主細胞の増殖を促進する条件下、例えば、宿主細胞の増殖を許容する温度(例えば、約37℃)及びガス濃度(例えば、5%~10%CO)に維持される。例えば、バイオリアクタは、栄養素及び/または炭素源の供給、好適なガス(例えば、酸素)の注入、発酵もしくは細胞培養培地の入口及び出口の流れ、気相及び液相の分離、温度の維持、酸素及びCOレベルの維持、pHレベルの維持、攪拌(agitation)(例えば、攪拌(stirring))、洗浄、及び/または滅菌のうちの1つ以上を実行し得る。
【0121】
例示的なバイオリアクタユニットは、ユニット内に複数の反応器を含み得、例えば、ユニットは、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100個、またはそれよりも多いバイオリアクタを含有し得る。任意の好適なバイオリアクタの直径及び/または形状が使用され得る。いくつかの実施形態では、好適な反応器は、円形、例えば、円筒形であり得る。いくつかの実施形態では、好適な反応器は、正方形、例えば、長方形であり得る。
【0122】
組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を産生するための前述の方法は、限定することを意味するものではなく、他の好適な方法は、当業者には明白であろう。
【0123】
組換えウイルスベクター
本開示は、とりわけ、組換えウイルスベクター粒子(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子)を産生するための方法、組成物、及び系を提供する。組換えウイルスベクターは、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)に遺伝子を挿入するために広く使用されるようになっている。多くの形態のウイルスベクターを使用して、細胞、組織、または生物にペイロード(例えば、本明細書に記載のペイロード)を送達することができる。
【0124】
組換えウイルスベクターの非限定的な例としては、限定されないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、またはラウス肉腫ウイルス)、アデノウイルス、SV40型ウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、またはポリオウイルスが挙げられる。
【0125】
いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクターは、レトロウイルスベクターを含むか、またはそれである。レトロウイルスは、ウイルス科のレトロウイルス科に属するエンベロープウイルスである。複製欠損レトロウイルスの産生のためのプロトコルは、当該技術分野で既知である(例えば、Kriegler,M.,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,W.H.Freeman Co.,New York(1990)及びMurry,E.J.,Methods in Molecular Biology,Vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,N.J.(1991)を参照されたく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかのレトロウイルス系が当該技術分野で既知である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,994,136号、同第6,165,782号、及び同第6,428,953号を参照されたく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、レトロウイルスは、レトロウイルス科のレンチウイルスを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV-1またはHIV-2)、サル免疫不全ウイルス(S1V)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血(EIA)、またはビスナウイルスを含むか、またはそれである。
【0126】
いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクターは、アデノウイルスベクターを含むか、またはアデノウイルスベクターである。アデノウイルスベクターは、任意の起源、サブグループ、サブタイプ、血清型、またはそれらの混合物由来であり得る。例えば、アデノウイルスは、サブグループA(例えば、血清型12、18、または31)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34、35、または50)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5、または6)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22~30、32、33、36~39、または42~48)、サブグループE(例えば、血清型4)、サブグループF(例えば、血清型40または41)、未分類の血清群(例えば、血清型49または51)、または任意の他のアデノウイルス血清型のものであり得る。アデノウイルス血清型1~51は、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,Va.)から入手可能である。
【0127】
非グループCアデノウイルス、更に非ヒトアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルスベクターを調製するように使用され得る。非群Cアデノウイルスベクター、非群Cアデノウイルスベクターの作製方法、及び非群Cアデノウイルスベクターの使用方法は、例えば、米国特許第5,801,030号、同第5,837,511号、及び同第5,849,561号、ならびに国際特許出願第WO97/12986号及び同第WO98/53087号に開示されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。アデノウイルスベクターの更なる例は、米国特許公開第20150093831号、同第20140248305号、同第20120283318号、同第20100008889号、同第20090175897号及び同第20090088398号に見出され得、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0128】
いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクターは、アルファウイルスを含むか、またはそれである。例示的なアルファウイルスには、シンドビスウイルス、オーラウイルス、ババンキウイルス、バーマフォレストウイルス、ベバルウイルス、カバスウイルス、チクングニアウイルス、東部馬脳炎ウイルス、エバーグレーズウイルス、フォートモーガンウイルス、ゲタウイルス、ハイランドJウイルス、キジラガッチウイルス、マヤロウイルス、Me Triウイルス、ミデルバーグウイルス、モッソダスペドラスウイルス、ムカンボウイルス、ヌドゥムウイルス、オニョンニョンウイルス、ピクサナウイルス、リオネグロウイルス、ロスリバーウイルス、サケ膵臓病ウイルス、セムリキフォレストウイルス、ミナミゾウアザラシウイルス、トナテウイルス、トロカラウイルス、Unaウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、西部馬脳炎ウイルス、及びワタロアウイルスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、そのようなウイルスのゲノムは、宿主細胞細胞質内で翻訳され得る非構造タンパク質(例えば、レプリコン)及び構造タンパク質(例えば、カプシド及びエンベロープ)をコードする。ロスリバーウイルス、シンドビスウイルス、セムリキフォレストウイルス(SFV)、及びベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEEV)は全て、導入遺伝子送達のためのウイルストランスファーベクターを開発するために使用されている。偽型ウイルスは、アルファウイルスエンベロープ糖タンパク質及びレトロウイルスカプシドを組み合わせることによって形成され得る。アルファウイルスベクターの例は、米国公開第20150050243号、同第20090305344号、及び同第20060177819号に見出され得、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0129】
いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクターは、AAVベクターを含むか、またはそれである。AAV系は、一般に、当該技術分野で周知である(例えば、Kelleher and Vos,Biotechniques,17(6):1110-17(1994)、Cotten et al.,P.N.A.S.U.S.A.,89(13):6094-98(1992)、Curiel,Nat Immun,13(2-3):141-64(1994)、Muzyczka,Curr Top Microbiol Immunol,158:97-129(1992)、及びAsokan A,et al.,Mol.Ther.,20(4):699-708(2012)を参照されたく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。AAVベクターを生成及び使用するための方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,139,941号及び同第4,797,368号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0130】
一般に、本明細書に記載される方法、組成物、及び系での使用のためのAAVベクターは、任意のAAV血清型のものであり得る。AAV血清型は、一般に、異なる組織に感染する異なる屈性を有する。いくつかの実施形態では、AAV血清型は、屈性に基づいて選択される。いくつかのAAV血清型は、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、AAVrh74、AAV-HSC1-17、AAV-CBr、AAV-CLv、AAV-CLg、AAV-DJ、AAV-PHP.B、AAV-PHP.N、またはAAV.CAP-B1~AAV.CAP-B25、ならびにその変異体またはハイブリッドを含んで特徴付けられている。例えば、いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/8またはAAV2/9ベクター(例えば、AAV2 ITRを有するAAV6、AAV8またはAAV9血清型)を含むか、またはそれである。
【0131】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,906,111号、同第6,759,237号、同第7,105,345号、同第7,186,552号、同第9,163,260号、同第9,567,607号、同第4,797,368号、同第5,139,941号、同第5,252,479号、同第6,261,834号、同第7,718,424号、同第8,507,267号、同第8,846,389号、同第6,984,517号、同第7,479,554号、同第6,156,303号、同第8,906,675号、同第7,198,951号、同第10,041,090号、同第9,790,472号、同第10,308,958号、同第10,526,617号、同第7,282,199号、同第7,790,449号、同第8,962,332号、同第9,587,250号、同第10,590,435号、同第10,265,417号、同第10,485,883号、同第7,588,772号、同第8,067,01号、同第8,574,583号、同第8,906,387号、同第8,734,809号、同第9,284,357号、同第10,035,825号、同第8,628,966号、同第8,927,514号、同第9,623,120号、同第9,777,291号、同第9,783,825号、同第9,803,218号、同第9,834,789号、同第9,839,696号、同第9,585,971号、もしくは同第10,519,198号、米国特許公開第2017/0166926号、同第2019/0015527号、同第2019/0054188号、もしくは同第2020/0080109号、または国際特許出願第WO2018/160582号、同第WO2020/028751号、もしくは同第WO2020/068990に記載されるAAVゲノム配列またはその変異体に由来する。
【0132】
いくつかの実施形態では、AAV血清型は、AAV9配列に変異を有するか、またはそれを含む(例えば、N Pulicherla et al.Molecular Therapy19(6):1070-1078(2011)に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。AAV9血清型には、AAV9.68、AAV9.9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、及びAAV9.84が含まれ得るが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、AAV9変異体は、AAVhu68またはその変異体を含むか、またはそれである(例えば、WO2018/160585に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。他のAAVベクターは、例えば、Sharma et al.,Brain Res Bull.2010 Feb 15;81(2-3):273に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0133】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、天然に存在するAAVを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、修飾AAVまたは天然に存在するAAVの変異体である。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、遺伝子療法のための1つ以上の特性を改善するAAV配列に修飾を導入するために、指向性進化、例えば、DNAシャッフリング、ペプチド挿入、またはランダム変異誘発によって生成され得る。いくつかの実施形態では、そのような修飾は、抗体を中和することによって免疫応答または認識を回避または低減する及び/またはより効率的及び/または標的形質導入を可能にする(例えば、Asuri et al.,Molecular Therapy 20.2(2012):329-338を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。AAVベクターを操作する指向性進化を使用する方法は、例えば、米国特許第8,632,764号に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、修飾AAVは、特定の屈性を含むように修飾される。
【0134】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、例えば、大きいペイロード(例えば、約5kbを超えるペイロード)の送達のために、及び/または単一のAAVベクターの投与に関連する安全性の懸念に対処するために、デュアルまたはトリプルAAVベクターであってもよい。いくつかの実施形態では、デュアルAAVベクターは、2つの別個のAAVベクターを含んでもよく、各々は、目的の大きいペイロードの全配列の断片を含み、組み換えられるときには、断片は、目的の大きいペイロードの全配列またはその機能部分を形成する。いくつかの実施形態では、トリプルAAVベクターは、各々が目的の大きいペイロードの配列の断片を含む3つの別個のAAVベクターを含んでもよく、組み換えられるときには、断片は、目的の大きいペイロードの全配列またはその機能部分を形成する。
【0135】
複数のAAV(例えば、デュアルまたはトリプルAAVベクター)は、同じ細胞内に送達されかつ共形質導入され得、目的のペイロードの断片は、組み換えられて、目的のペイロード全体の単一のmRNA転写物を生成する。いくつかの実施形態では、断片化ペイロードは、非重複配列を含む。いくつかの実施形態では、断片化ペイロードは、指定された重複配列を含む。いくつかの実施形態では、デュアルまたはトリプルトランスフェクションのための複数のAAVベクターは、同じタイプのAAVベクター(例えば、同じ血清型及び/または同じ構築物)であってもよい。いくつかの実施形態では、デュアルまたはトリプルの複数のAAVベクターは、異なるタイプのAAVベクター(例えば、異なる血清型または異なる構築物)であってもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、一本鎖(single-stranded、ss)または自己相補性(self-complementary、sc)AAV核酸ベクターを含む。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、発現構築物と、発現構築物に隣接するITR配列(例えば、野生型ITR配列または操作されたITR配列)を含む1つ以上の領域とを含む。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、ウイルスカプシドによってカプシド化される。いくつかの実施形態では、ウイルスカプシドは、60個のカプシドタンパク質サブユニットを含む。いくつかの実施形態では、ウイルスカプシドは、VP1、VP2、及びVP3を含む。いくつかの実施形態では、VP1、VP2、及びVP3サブユニットは、約1:1:10の比で、それぞれ存在する。
【0137】
AAVベクターのITR配列は、任意のAAV血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh10、AAVrh74、AAV-HSC1-17、AAV-CBr、AAV-CLv、AAV-CLg、AAV-DJ、AAV-PHP.B、AAV-PHP.N、またはAAV.CAP-B1~AAV.CAP-B25、ならびにその変異体またはハイブリッド)に由来し得る。いくつかの実施形態では、ITR配列は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,906,111号、同第6,759,237号、同第7,105,345号、同第7,186,552号、同第9,163,260号、同第9,567,607号、同第4,797,368号、同第5,139,941号、同第5,252,479号、同第6,261,834号、同第7,718,424号、同第8,507,267号、同第8,846,389号、同第6,984,517号、同第7,479,554号、同第6,156,303号、同第8,906,675号、同第7,198,951号、同第10,041,090号、同第9,790,472号、同第10,308,958号、同第10,526,617号、同第7,282,199号、同第7,790,449号、同第8,962,332号、同第9,587,250号、同第10,590,435号、同第10,265,417号、同第10,485,883号、同第7,588,772号、同第8,067,01号、同第8,574,583号、同第8,906,387号、同第8,734,809号、同第9,284,357号、同第10,035,825号、同第8,628,966号、同第8,927,514号、同第9,623,120号、同第9,777,291号、同第9,783,825号、同第9,803,218号、同第9,834,789号、同第9,839,696号、同第9,585,971号、もしくは同第10,519,198号、米国特許公開第2017/0166926号、同第2019/0015527号、同第2019/0054188号、もしくは同第2020/0080109号、または国際特許出願第WO2018/160582号、同第WO2020/028751号、もしくは同第WO2020/068990に記載される1つ以上の他の血清型に由来する。
【0138】
ITR配列及びITR配列を含有するプラスミドは、当該技術分野で既知であり、市販されている(例えば、Vector Biolabs,Philadelphia,PA;Cellbiolabs,San Diego,CA;Agilent Technologies,Santa Clara,Ca;及びAddgene,Cambridge,MAから入手可能な製品及びサービス、Kessler et al..PNAS.1996 Nov 26;93(24):14082-7;Machida.Methods in Molecular Medicine(商標).Viral Vectors for Gene Therapy Methods and Protocols.10.1385/1-59259-304-6:201(著作権)Humana Press Inc.2003.Chapter 10.Targeted Integration by Adeno-Associated Virus、ならびに米国特許第5,139,941号及び同第5,962,313号を参照されたく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0139】
AAVベクターは、AAV9.68、AAV1、AAV10、AAV106.1/hu.37、AAV11、AAV114.3/hu.40、AAV12、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.1/hu.43、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV16.12/hu.11、AAV16.3、AAV16.8/hu.10、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV1-7/rh.48、AAV1-8/rh.49、AAV2、AAV2.5T、AAV2-15/rh.62、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV2-3/rh.61、AAV24.1、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV27.3、AAV29.3/bb.l、AAV29.5/bb.2、AAV2G9、AAV-2-pre-miRNA-101、AAV3、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-11/rh.53、AAV3-3、AAV33.12/hu.l7、AAV33.4/hu.l5、AAV33.8/hu.l6、AAV3-9/rh.52、AAV3a、AAV3b、AAV4、AAV4-19/rh.55、AAV42.12、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-lb、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV4-4、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV4-8/r11.64、AAV4-8/rh.64、AAV4-9/rh.54、AAV5、AAV52.1/hu.20、AAV52/hu.19、AAV5-22/rh.58、AAV5-3/rh.57、AAV54.1/hu.21、AAV54.2/hu.22、AAV54.4R/hu.27、AAV54.5/hu.23、AAV54.7/hu.24、AAV58.2/hu.25、AAV6、AAV6.1、AAV6.1.2、AAV6.2、AAV7、AAV7.2、AAV7.3/hu.7、AAV8、AAV-8b、AAV-8h、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.84、AAV9.9、AAVA3.3、AAVA3.4、AAVA3.5、AAV A3.7、AAV-b、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVCy.5R1、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVcy.6、AAV-DJ、AAV-DJ8、AAVF3、AAVF5、AAV-h、AAVH-1/hu.l、AAVH2、AAVH-5/hu.3、AAVH6、AAVhE1.1、AAVhER1.14、AAVhEr1.16、AAVhEr1.18、AAVhER1.23、AAVhEr1.35、AAVhEr1.36、AAVhEr1.5、AAVhEr1.7、AAVhEr1.8、AAVhEr2.16、AAVhEr2.29、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhEr2.4、AAVhEr3.1、AAVhu.1、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.12、AAVhu.13、AAVhu.14/9、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.19、AAVhu.2、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.3、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.4、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44R1、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48R1、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.5、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.53、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.6、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVhu.7、AAVhu.8、AAVhu.9、AAVhu.t19、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVLG-9/hu.39、AAV-LK01、AAV-LK02、AAVLK03、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAVN721-8/rh.43、AAV-PAEC、AAV-PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAVpi.1、AAVpi.2、AAVpi.3、AAVrh.10、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.2、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.2R、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.43、AAVrh.44、AAVrh.45、AAVrh.46、AAVrh.47、AAVrh.48、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.50、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.55、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.59、AAVrh.60、AAVrh.61、AAVrh.62、AAVrh.64、AAVrh.64R1、AAVrh.64R2、AAVrh.65、AAVrh.67、AAVrh.68、AAVrh.69、AAVrh.70、AAVrh.72、AAVrh.73、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh8R、AAVrh8R A586R変異体、AAVrh8R R533A変異体、BAAV、B P61 AAV、B P62 AAV、B P63 AAV、ウシAAV、ヤギAAV、Japanese AAV10、true type AAV(ttAAV)、UPENN AAV10、AAV-LK16、AAAV、AAV Shuffle100-1、AAV Shuffle100-2、AAV Shuffle100-3、AAV Shuffle100-7、AAV Shuffle10-2、AAV Shuffle10-6、AAV Shuffle10-8、AAV SM100-10、AAV SM100-3、AAV SM10-1、AAV SM10-2、及びAAV SM10-8を含むが、これらに限定されない任意の以下の血清型もしくはその変異体から選択される血清型を含み得るか、またはそれに基づき得る。
【0140】
AAV血清型は、任意の数の種由来であり得る。例えば、AAVは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,238,800号に記載される鳥類AAV(AAAV)であってもよく、またはそれを含んでもよい。AAV血清型は、例えば、各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,193,769号または同第7,427,396号に記載されるウシAAV(BAAV)であってもよく、またはそれを含んでもよい。AAVは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7427396号に記載されるヤギAAVであってもよく、またはそれを含んでもよい。AAV血清型はまた、前述のいずれかの変異体またはハイブリッドであってもよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、AAVは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPulicherla et al.(Molecular Therapy 19(6):1070-1078(2011)に記載されるアミノ酸390~627(VP1番号付け)における変異体を有するAAV9カプシドライブラリから生成される血清型であり得るか、またはそれを含み得る。AAV血清型(対応するヌクレオチド及びアミノ酸置換を有する)としては、AAV9.1(G1594C;D532H),AAV6.2(T1418A及びT1436X;V473D及びI479K),AAV9.3(T1238A;F413Y),AAV9.4(T1250C及びA1617T;F417S),AAV9.5(A1235G,A1314T,A1642G,C1760T;Q412R,T548A,A587V),AAV9.6(T1231A;F411I),AAV9.9(G1203A,G1785T;W595C),AAV9.10(A1500G,T1676C;M559T),AAV9.11(A1425T,A1702C,A1769T;T568P,Q590L),AAV9.13(A1369C,A1720T;N457H,T574S),AAV9.14(T1340A,T1362C,T1560C,G1713A;L447H),AAV9.16(A1775T;Q592L),AAV9.24(T1507C,T1521G;W503R),AAV9.26(A1337G,A1769C;Y446C,Q590P),AAV9.33(A1667C;D556A),AAV9.34(A1534G,C1794T;N512D),AAV9.35(A1289T,T1450A,C1494T,A1515T,C1794A,G1816A;Q430L,Y484N,N98K,V606I),AAV9.40(A1694T,E565V),AAV9.41(A1348T,T1362C;T450S),AAV9.44(A1684C,A1701T,A1737G;N562H,K567N),AAV9.45(A1492T,C1804T;N498Y,L602F),AAV9.46(G1441C,T1525C,T1549G;G481R,W509R,L517V),9.47(G1241A,G1358A,A1669G,C1745T;S414N,G453D,K557E,T582I),AAV9.48(C1445T,A1736T;P482L,Q579L),AAV9.50(A1638T,C1683T,T1805A;Q546H,L602H),AAV9.53(G1301A,A1405C,C1664T,G1811T;R134Q,S469R,A555V,G604V),AAV9.54(CI531A,T1609A;L511I,L537M),AAV9.55(T1605A;F535L),AAV9.58(C1475T,C1579A;T492I,H527N),AAV.59(T1336C;Y446H),AAV9.61(A1493T;N498I),AAV9.64(C1531A,A1617T;L511I),AAV9.65(C1335T,T1530C,C1568A;A523D),AAV9.68(C1510A;P504T),AAV9.80(G1441A,;G481R)AAV9.83(C1402A,A1500T;P468T,E500D),AAV9.87(T1464C,T1468C;S490P),AAV9.90(A1196T;Y399F),AAV9.91(T1316G,A1583T,C1782G,T1806C;L439R,K528I),AAV9.93(A1273G,A1421G,A1638C,C1712T,G1732A,A1744T,A1832T;S425G,Q474R,Q546H,P571L,G578R,T582S,D611V),AAV9.94(A1675T;M559L),ならびにAAV9.95(T1605A;F535L)が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、修飾カプシドタンパク質(例えば、修飾VP3領域を含むカプシドタンパク質)を含むカプシドを含む。修飾カプシドタンパク質を産生する方法は、当該技術分野で既知である(例えば、US20130310443を参照されたく、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露アミノ酸(例えば、表面曝露チロシン)に対応する位置に少なくとも1つの非天然アミノ酸置換を含む修飾カプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露チロシンアミノ酸に対応する位置に非チロシンアミノ酸(例えば、フェニルアラニン)、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露トレオニンアミノ酸に対応する位置に非トレオニンアミノ酸(例えば、バリン)、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露リジンアミノ酸に対応する位置に非リジンアミノ酸(例えば、グルタミン酸)、野生型カプシドタンパク質中の表面曝露セリンアミノ酸に対応する位置に非セリンアミノ酸(例えば、バリン)、またはそれらの組み合わせを含む修飾カプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多いアミノ酸置換を有する修飾カプシドタンパク質を含むカプシドを含む。
【0143】
対象への送達に好適なAAVウイルスベクターを生成及び単離するための追加の方法は、例えば、米国特許第7,790,449号、米国特許第7,282,199号、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、及び米国特許第7,588,772号に記載されており、これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0144】
組成物
本開示は、とりわけ、本明細書に記載される方法によって形成される複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される成分(例えば、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤)を含む医薬組成物を含む。そのような医薬組成物は、とりわけ、インビボまたはエクスビボでの対象への投与に有用である。
【0145】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、ヒトまたは動物対象への投与に好適なrAAV粒子を含む組成物を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体とともに製剤化される活性剤を含む。いくつかの実施形態では、活性剤は、治療レジメンにおける投与に適切な単位用量で存在する。いくつかの実施形態では、治療レジメンは、それを必要とする対象または集団に投与されたときに(例えば、統計的に有意な確率によって)所望の治療効果を達成するように決定されたスケジュールに従って投与される1つ以上の用量を含む。医薬組成物は、固体形態または液体形態での投与のために特別に製剤化され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、滅菌溶液または懸濁液として、例えば、徐放性製剤中で製剤化される。本開示の医薬組成物は、注射または注入(例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射または注入)によって投与するために製剤化され得る。例えば、組成物は、網膜、網膜下、硝子体内、脈絡膜上、脊髄内、大槽内、またはくも膜下腔内注射または注入による投与のために製剤化され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ヒト対象への投与が意図され、ヒト対象への投与に好適である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、実質的に汚染物質を含まない(例えば、滅菌され、実質的に発熱物質を含まない)。医薬組成物の製剤には、限定されないが、経口投与のための製剤、例えば、ドレンチ(水性または非水性溶液または懸濁液)、錠剤(例えば、頬側、舌下、及び全身吸収を標的とする)、ボーラス、粉末、顆粒、舌に塗布するためのペースト、局所塗布、例えば、クリーム、軟膏、または皮膚、肺、または口腔に塗布される制御放出パッチまたはスプレー、例えば、ペッサリー、クリーム、または発泡体として、膣内または直腸内に、例えば、舌下、眼内、経皮、または鼻、肺、及び他の粘膜表面に塗布するための製剤が含まれ得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、医薬組成物はまた、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含有する。そのような賦形剤は、任意の薬学的薬剤、例えば、それ自体が組成物を受ける個体に有害な免疫応答を誘導せず、過度の毒性なしに投与され得る薬学的薬剤を含む。薬学的に許容される賦形剤には、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノール等の液体を含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩はまた、例えば、塩酸塩、水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩をその中に含んでもよい。更に、湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝物質等の補助剤は、そのようなビヒクルに存在し得る。
【0147】
医薬組成物は、塩として提供され得、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、またはコハク酸を含むが、これらに限定されない多くの酸とともに形成され得る。塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水性または他のプロトン性溶媒により可溶性である傾向がある。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥粉末であってもよい。
【0148】
医薬組成物は、溶媒(水性または非水性)、溶液(水性または非水性)、エマルジョン(例えば、水中油または油中水)、懸濁液、シロップ、エリキシル剤、分散及び懸濁培地、コーティング、ならびに等張及び吸収促進または遅延剤を含み得、医薬品投与またはインビボ接触もしくは送達と適合する。水性及び非水性溶媒、溶液、及び懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含み得る。そのような薬学的に許容される担体としては、錠剤(コーティングされているかまたはコーティングされていない)、カプセル剤(硬質または軟質)、マイクロビーズ、粉末、顆粒、及び結晶が挙げられる。また、補助的な活性化合物(例えば、防腐剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び抗真菌剤)がまた、組成物に組み入れられ得る。
【0149】
医薬組成物は、本明細書に記載される、または当業者に既知の特定の投与または送達経路と適合するように製剤化され得る。したがって、医薬組成物は、様々な経路による投与に好適な担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
【0150】
非経口投与に好適な組成物は、活性化合物の水性及び非水性溶液、懸濁液またはエマルジョンを含むことができ、これらの調製物は、典型的には、無菌であり、意図されたレシピエントの血液と等張であり得る。非限定的な例示的な例としては、水、緩衝食塩水、ハンクス溶液、リンゲル溶液、デキストロース、フルクトース、エタノール、動物油、植物油、または合成油が挙げられる。水性注入懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン等の懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。加えて、懸濁液は、適切な油注入懸濁液として調製されてもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。任意選択的に、懸濁液はまた、好適な安定剤、または高度に濃縮された溶液の調製を可能にするように薬剤の溶解度を増加させる薬剤を含有し得る。
【0151】
共溶媒及びアジュバントが、配合物に添加されてもよい。共溶媒の非限定的な例としては、ヒドロキシル基または他の極性基、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル等のグリコール;グリセロール;ポリオキシエチレンアルコール及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルが含まれる。アジュバントとして、例えば、大豆レシチン及びオレイン酸等の界面活性剤、ソルビタントリオレイン酸塩等のソルビタンエステル、ならびにポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0152】
医薬組成物が調製された後に、それらは適切な容器に入れられ、処置のために標識され得る。そのような標識化は、投与量、投与頻度、及び投与方法を含み得る。
【0153】
本開示の組成物、方法及び使用に適切な医薬組成物及び送達系は、当該技術分野で既知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy.21st Edition.Philadelphia,PA.Lippincott Williams&Wilkins,2005参照)。
【0154】
投与
本開示は、とりわけ、本明細書に記載される方法によって形成される複数のrAAV粒子を含む組成物(例えば、医薬組成物)を投与する方法を提供する。本明細書に記載される方法で産生される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、薬学的組成物)は、任意の疾患または障害、例えば、本明細書に記載される疾患または障害に罹患しているか、またはその影響を受けやすい対象を治療するように使用され得る。投与経路及び/または投与様式は、所望の結果に応じて変化し得る。当業者(例えば、医師)は、投与レジメンが所望の応答、例えば、治療応答を提供するように調整され得ることを認識している。投与方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、非経口、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、脳内、膣内、経皮、直腸、吸入によるもの、または局所、具体的には耳、鼻、眼、もしくは皮膚に対するものを含むが、これらに限定されない。投与方法は、施術者の裁量に委ねられる。
【0155】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物を対象に投与することを指す。投与は、任意の適切な経路によるものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、局所または全身投与(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト、例えば、患者への)であり得る。本開示の組成物は、任意の経路による注射または注入によって投与され得る。例えば、組成物は、網膜、網膜下、硝子体内、脈絡膜上、脊髄内、大槽内、またはくも膜下腔内注射もしくは注入によって投与され得る。追加の例示的な投与経路には、気管支(例えば、気管支滴下)、口腔、経腸、経皮、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、くも膜下腔内、静脈内、脳室内、粘膜、鼻腔、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(例えば、気管内滴下)、経皮、膣、及び硝子体が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0156】
例えば、組成物は、網膜、網膜下、硝子体内、または脈絡膜上注射または注入によって投与され得る。追加の例示的な投与経路には、気管支(例えば、気管支滴下)、口腔、経腸、皮膚間、動脈内、大槽内(intracisterna magna、ICM)、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、実質内(例えば、視床内)、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、粘膜、鼻腔、経口、直腸、脊髄内、脊髄軟膜下、皮下、舌下、局所、気管(例えば、気管内滴下)、経皮、膣、及び硝子体内投与が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0157】
本明細書に開示される方法及び使用は、全身的、領域的もしくは局所的に、または、例えば、注射または注入による任意の経路による送達及び投与を含む。本明細書に記載される方法によって形成される複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、任意の経路による注射または注入によって投与され得る。例えば、組成物は、網膜、網膜下、硝子体内、脈絡膜上、脊髄内、大槽内、またはくも膜下腔内注射もしくは注入によって投与され得る。
【0158】
インビボでの医薬組成物の送達は、一般に、従来の注射器を使用した注射によって達成することができるが、対流増強送達等の他の送達方法も使用され得る。例えば、組成物は、皮下、表皮内、皮内、髄腔内、眼窩内、粘膜内、腹腔内、静脈内、胸膜内、動脈内、経口、肝臓内、門脈を介して、または筋肉内に送達され得る。他の投与様式としては、経口及び肺投与、坐剤、ならびに経皮適用が挙げられる。ある特定の疾患または障害を有する患者の治療を専門とする臨床医は、本明細書に記載されるベクターの投与のための最適な経路を決定し得る。
【0159】
本開示は、本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)を細胞、組織、または動物に導入するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのような方法は、細胞、組織、または動物を、少なくとも1つのペイロードが細胞、組織、または動物において発現されるまたは存在するように、本明細書に記載されるrAAV粒子を含む組成物と接触させることを含む。
【0160】
本開示はまた、本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)を対象に投与するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのような方法は、少なくとも1つのペイロードが対象において(例えば、対象の細胞または組織において)発現されるまたは存在するように、対象(例えば、哺乳動物)に、本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つのペイロードが対象において発現されるまたは存在するように、対象(例えば、哺乳動物)の細胞に、本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供することを含む。
【0161】
本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、十分なまたは有効な量で、それを必要とする対象に投与され得る。用量は、治療が方向付けられる疾患の種類、発症、進行、重症度、頻度、持続期間、または確率、所望の臨床エンドポイント、以前のまたは同時の治療、対象の一般的な健康状態、年齢、性別、人種または免疫学的能力、及び当業者には理解されるであろう他の因子によって変化し、依存し得る。用量、数、頻度、または持続時間は、任意の有害な副作用、合併症、または対象の処置及び状態の他の危険因子によって示されるように、比例的に増加または低減され得る。当業者は、治療的または予防的利益を提供するのに十分な量を提供するのに必要な用量及びタイミングに影響し得る因子を理解するであろう。
【0162】
治療効果を達成する用量は、投与経路、治療効果を達成するのに必要なペイロードまたはペイロード発現のレベル、治療される特異的疾患、任意の宿主免疫応答、及びペイロードまたはペイロード発現の安定性を含むがこれらに限定されない、いくつかの因子に基づいて変化する。当業者は、前述の因子、ならびに他の因子に基づいて、特定の疾患または障害を有する患者を治療するための用量範囲を決定することができる。
【0163】
有効量または十分な量は、単回投与で提供され得(るが、必要ではなく)、複数回投与を必要とし得、単独でまたは別の組成物と組み合わせて投与され得る(が、必要ではない)。例えば、量は、治療される疾患の対象、種類、状態、及び重症度、または治療の副作用(もしあれば)の必要性によって示されるように、比例的に増加されてもよい。有効とみなされる量はまた、別の治療、治療レジメン、またはプロトコルの使用の低減をもたらす量を含む。
【0164】
したがって、医薬組成物は、意図された治療目的を達成するのに有効な量のrAAV粒子を含む組成物を含む。治療有効量を決定することは、本明細書に提供される技術及びガイダンスを使用して、当業者が十分対応できる能力の範囲内にある。治療用量は、とりわけ、対象の年齢及び全身状態、疾患または障害の重症度、ならびに対象におけるペイロード量または発現に依存し得る。したがって、ヒトにおける治療有効量は、rAAVベースの治療に対する個々の患者の応答に基づいて医師によって決定され得る比較的広い範囲内にあるであろう。医薬組成物は、遺伝子及びまたは細胞ベースの療法によって、または患者もしくはドナーの細胞のエクスビボ修飾によって、インビボで本明細書に記載されるペイロードの産生を可能にするように、対象に送達されてもよい。
【0165】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、対象に1日1回、毎週1回、2、3、もしくは4週間毎に、または更にはより長い間隔でさえも、投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、(i)1日1回、毎週、2、3、もしくは4週間毎の初期投与、または更により長い間隔でさえも、続いての(ii)例えば、1、2、3、4、5、6、8、もしくは10ヶ月、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10年の非投与期間、を含む投与レジメンに従って投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、(i)最長2、4、または6週間以下の初期期間中に1回以上、(ii)例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年の無投与期間、の後に、投与されてもよい。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載される組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)による治療の前及び/または後に監視される。
【0166】
使用
本開示は、とりわけ、本明細書に記載される遺伝子治療を細胞または組織に送達する方法を提供する。
【0167】
本開示はまた、本明細書に記載される複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)で対象を治療する方法を提供する。本明細書で使用される「対象」という用語は、生物、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、霊長類、実験動物、マウス、ラット、ハムスター、カワウソ、ネコ、イヌ)を指す。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、成人、青年、または小児対象である。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に提供されるように治療され得る疾患、障害または状態、例えば、疾患、障害または状態、例えば、神経学的疾患もしくは障害、または本明細書に列挙されるがんもしくは腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態に感受性であり、いくつかの実施形態では、感受性のある対象は、疾患、障害、または状態を発症するリスクが増加する傾向がある、及び/または増加している(参照対象または集団において観察される平均リスクと比較して)ことが示される。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害または状態の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、対象は、特定の症状(例えば、疾患の臨床的症状)、または疾患、障害、もしくは状態の特徴を示さない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の任意の症状または特徴を示さない。いくつかの実施形態では、哺乳動物対象は患者である。いくつかの実施形態では、対象は、診断及び/または治療が投与される及び/または投与されている個体である。
【0168】
いくつかの実施形態では、本発明の方法及びキットは、遺伝子治療の評価及び/または監視のために使用され得る。本明細書で使用される「遺伝子療法」という用語は、そのような療法が求められる障害または状態を治療または予防するための特定のゲノムDNA配列の挿入または欠失を指す。いくつかの実施形態では、ゲノムDNA配列の挿入または欠失は、特定の細胞(例えば、標的細胞)において行われる。標的細胞は、哺乳動物由来であってもよく、及び/または哺乳動物対象における細胞であってもよい。哺乳動物には、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、またはラマが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、異種DNAは、標的細胞に移行される。異種DNAは、異種DNAが発現され、それによってコードされる治療産物が産生されるような方法で、選択された標的細胞に導入されてもよい。追加的または代替的に、異種DNAは、治療産物をコードするDNAの発現を何らかの方法で媒介し得るか、または何らかの方法で治療産物の発現を直接的にまたは間接的に媒介または調節するペプチドまたはRNA等の産物をコードし得る。遺伝子治療はまた、欠陥遺伝子を置き換えるか、または哺乳動物もしくはそれが導入されている細胞によって産生された遺伝子産物を補充する遺伝子産物をコードする核酸を送達するために使用され得る。治療産物をコードする異種DNAは、産物またはその発現を高める、またはそれ以外の場合には変更するために、罹患した宿主の細胞への導入の前に修飾されてもよい。遺伝子治療はまた、阻害剤もしくはリプレッサーまたは遺伝子発現の他の調節因子の送達に関与してもよい。そのような阻害剤もしくは抑制剤、または他の調節剤は、ポリペプチド、ペプチド、または核酸(例えば、DNAもしくはRNA)であり得る。遺伝子治療は、インビボまたはエクスビボ技術を含み得る。いくつかの実施形態では、ウイルス及び非ウイルスベースの遺伝子導入方法は、目的のポリペプチドをコードする核酸を導入するか、または治療用核酸を哺乳動物の細胞または標的組織に導入するように使用され得る。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、及びリポソーム等の送達ビヒクルと複合体を形成した核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有するDNA及びRNAウイルスを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、遺伝子治療は、本明細書に記載される複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)の投与を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子治療を評価及び/または監視するための試料は、遺伝子治療の開始前に得られ得る。いくつかの実施形態では、試料は、第1の遺伝子療法治療または投与の後に得られる。いくつかの実施形態では、試料は、遺伝子治療の終了後に得られる。いくつかの実施形態では、試料は、遺伝子治療が実行される前、最中、または後の、特定の時点、間隔、または任意の他の時間メトリックで得られる。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、疾患、障害、または状態に罹患しているか、またはそのリスクにある対象に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、1つ以上の追加の治療薬と併用して対象に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複数の組換えウイルスベクター粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、エクスビボで臓器、組織、または細胞と接触される。臓器、組織、または細胞は、対象に導入され得、そうでなければレシピエントの免疫系によって引き起こされるであろう損傷から保護され得る。
【0171】
参照による組み込み
GenBank受託番号を含む、本明細書で言及される全ての刊行物、特許明細書、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。更に、材料、方法、及び実施例は例示に過ぎず、限定するように意図されていない。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似するまたは同等の方法及び材料は、本開示の実施または試験で使用され得るが、好適な方法及び材料が本明細書に記載されている。
【実施例
【0172】
以下の実施例は、当業者に本発明をどのように作製及び使用するかの完全なる開示及び説明を提供するように提示され、本発明者が自身の発明とみなすものの範囲を限定するようには意図されておらず、以下の実験が全てまたは唯一の実行される実験であると表すようにも意図されてもいない。
【0173】
実施例1:微小管不安定化剤を使用したrAAVの産生
本実施例は、HEK293細胞の一過性トランスフェクションによる組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子の力価(例えば、ゲノム力価)に対する微小管不安定化剤の効果を示す。
【0174】
様々な細胞周期停止剤(アフィジコリン、カフェイン、コルセミド、コルヒチン、フラボピリドール、ヒドロキシ尿素、チミジン、トリコスタチンA、及び硫酸ビンブラスチン)を、rAAV粒子の産生に対する効果についてスクリーニングした。細胞周期停止剤は、Santa Cruz Biotechnology(SCBT)またはSigmaから入手した。アフィジコリン、コルセミド、フラボピリドール、及びトリコスタチンAをジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させた後、細胞培養培地中で希釈した。カフェイン、コルヒチン、ヒドロキシ尿素、チミジン、及び硫酸ビンブラスチンを細胞培養培地に直接溶解して、ワーキングストックを生成した。
【0175】
rAAV産生への細胞周期停止剤の添加を、いずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドによる浮遊HEK293宿主細胞の一過性トランスフェクションを用いて評価した。HEK293宿主細胞を、約5.0×10vc/ml~約5.0×10vc/mlで播種し、細胞培養培地中で4~96時間増殖させた。次いで、ポリエチレンイミン(PEI)トランスフェクション試薬及びプラスミドDNAの複合体化を、5~120分間行った。次いで、トランスフェクション複合体を希釈し、細胞培養物に添加した。
【0176】
トランスフェクション前24時間(tfxの24時間前)及びトランスフェクション後0.5時間(tfx時)での細胞周期停止剤(アフィジコリン、カフェイン、コルセミド、コルヒチン、フラボピリドール、ヒドロキシ尿素、チミジン、トリコスタチンA、及び硫酸ビンブラスチン)の添加を、振とうフラスコ内で評価した。細胞周期停止剤のトランスフェクション後0.5時間での添加を、達成されたAAV力価の倍数変化に基づいて全ての実験のための添加時間として選択した(図1)。微小管不安定化剤(コルセミド、コルヒチン、及び硫酸ビンブラスチン)の使用により、トランスフェクション0.5時間後の対照力価と比較して、力価が約2倍高い力価~約3倍高い力価の改善がもたらされた。
【0177】
非トランスフェクションの浮遊HEK293培養物の細胞周期期を、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用して評価した。浮遊HEK293培養物を、DNAに結合するヨウ化プロピジウム(PI)を用いてFACS分析のためにサンプリングする前に、周期停止剤(アフィジコリン、カフェイン、コルセミド、コルヒチン、フラボピリドール、ヒドロキシ尿素、チミジン、トリコスタチンA、及び硫酸ビンブラスチン)を用いて振とうフラスコで24時間増殖させた。光強度は、細胞相の尺度である、細胞内に存在するDNAの相対量を示す。前方散乱は細胞のαサイズを示し、側方散乱は細胞内成分のαサイズを示す。PIの蛍光を、493nmの励起及び646nmの発光を使用して測定した。微小管不安定化剤(コルセミド、コルヒチン、及び硫酸ビンブラスチン)の使用は、G2期の非トランスフェクション浮遊HEK293細胞の培養における細胞同期をもたらした(図2A)。G2/M期のコルセミドによる浮遊HEK293細胞培養物の細胞周期停止を、図2Bに示す。
【0178】
微小管不安定化剤の異なる濃度のrAAV粒子力価における倍数変化に対する影響が決定された。コルセミド、コルヒチン、及び硫酸ビンブラスチンを、硫酸ビンクリスチンへの添加でクリーニングし、これは、硫酸ビンブラスチンと同様の作用機序に基づいてスクリーニングに含めた。トランスフェクション後0.5時間で振とうフラスコ内でスクリーニングした各微小管不安定化剤の濃度を、表1に示す。
【表1】
【0179】
いずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドでの浮遊HEK293細胞の一過性トランスフェクション、ならびに微小管不安定化剤(コルセミド、コルヒチン、硫酸ビンブラスチン、及び硫酸ビンクリスチン)の添加の後のrAAV粒子力価の倍率変化を、トランスフェクション後0.5時間での1倍及び2倍の濃度(図3A)、ならびに2倍及び5倍の濃度(図3B)で比較した。微小管不安定化剤についての2倍の濃度が、最も有効であった。
【0180】
微小管不安定化剤の添加時間のrAAV粒子力価における倍率変化に対する影響をまた、測定した。微小管不安定化剤(コルセミド、コルヒチン、及び硫酸ビンブラスチン)を、振とうフラスコ内のいずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドでの浮遊HEK293細胞の一過性トランスフェクション周りの2.5倍の濃度で異なる時点(トランスフェクション前3時間、2時間、及び1時間、ならびにトランスフェクション後0.5時間、2時間、及び3時間)で添加した。トランスフェクション0.5時間後での添加を、約3倍以上のrAAV粒子力価での倍数変化における増加に基づいて、将来の実験のために選択した(図4)。
【0181】
rAAV粒子力価を増加させる微小管不安定化剤(コルセミド及びコルヒチン)の使用のスケーラビリティを、バイオリアクタ内で評価した。浮遊HEK293細胞を、いずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドで一過的にトランスフェクションし、微小管不安定化剤のコルセミド(0.4μMの2倍の濃度)またはコルヒチン(5μMの2倍の濃度)を、トランスフェクション後0.5時間に添加し、HEK293細胞を、サンプリング前7日間、3リットルのバイオリアクタ内で培養した。約3倍以上のrAAV粒子力価の倍率変化が、バイオリアクタ内で、コルセミド及びコルヒチンの両方について得られた(図5)。
【0182】
Tフラスコ内の接着HEK293細胞のrAAV粒子力価の倍率変化に対する微小管不安定化剤(コルセミド、コルヒチン、硫酸ビンブラスチン、及び硫酸ビンクリスチン)の影響をまた、決定した。HEK293細胞を、いずれかの側にITRが隣接するペイロードC、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドで一過的にトランスフェクトし、微小管不安定化剤を、トランスフェクション後3時間添加し、試料を、トランスフェクション後3日で採取した。表1に示される微小管不安定化剤の異なる濃度を評価した。約1倍~約1.7倍のrAAV粒子力価における倍率変化を、全ての微小管不安定化剤について、1倍の濃度で得た(図6)。
【0183】
コルセミドの添加後の異なるペイロードによるrAAV粒子の力価の改善がまた、決定された。浮遊HEK293細胞を、いずれかの側にITRが隣接する異なるペイロード(A~C)、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドで一過的にトランスフェクトし、ならびに微小管不安定化剤を、トランスフェクション後0.5時間で添加した。約0.005μM~約4μMのコルセミドの用量応答曲線を、ペイロードA及びペイロードBをコードするプラスミドについて生成した。約0.4μMのコルセミドの濃度を、ペイロードCをコードするプラスミドについて使用した。約3倍~約4倍のrAAV粒子力価の倍率変化が、全てのペイロードについて得られた(図7)。
【0184】
rAAVの産生のための微小管不安定化剤(コルセミド及びコルヒチン)のスケーラビリティをまた、バッチバイオリアクタ及び製造スケールのためのより大きい体積のフェドバッチバイオリアクタで評価した。浮遊HEK293細胞を、いずれかの側にITRが隣接する異なるペイロードA、少なくとも1つのRepポリペプチド、少なくとも1つのCapポリペプチド、及び少なくとも1つのヘルパーポリペプチドをコードするプラスミドで一過的にトランスフェクトし、コルセミドを、トランスフェクション後0 . 5時間で添加し、細胞を、3リットルのバッチバイオリアクタまたは250リットルの供給バイオリアクタ内で、例えば、サンプリングの数日前の一定期間培養した。コルセミドの添加により、対照と比較して、3リットルのバッチバイオリアクタ(図8A)及び250リットルの供給バイオリアクタ(図8B~8C)の両方でrAAV粒子力価の増加がもたらされた。
【0185】
本明細書で提供されるこれらの結果は、様々な微小管不安定化剤の使用が、微小管不安定化剤なしで、同じ条件下及び同じ培地中で産生されるrAAV粒子と比較して、より高い力価(例えば、ゲノム力価)のrAAV粒子をもたらしたことを示す。したがって、本開示は、製造スケールで利用され得る高力価の組換えウイルスベクター粒子を効率的に生成する微小管不安定化剤を使用するrAAV産生プロセスを提供する。
【0186】
均等物
本開示に対する様々な変更、修正、及び改善は、当業者には容易に想起されるであろうことを、当業者は理解するであろう。そのような変更、修正、及び改善は、本開示の一部であるように意図され、かつ本発明の趣旨及び範囲内であることが意図される。したがって、前述の記載及び図面は、後続の特許請求の範囲によって更に詳細に記載されている場合には、単なる例としてのものであり、本開示に記載されている任意の発明である。
【0187】
当業者は、本明細書に記載のアッセイまたは他のプロセスで得られた値に起因する偏差または誤差の典型的な基準を理解するであろう。本発明の背景を記載し、その実施に関する更なる詳細を提供する、本明細書で参照される刊行物、ウェブサイト、及び他の参照資料は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
【国際調査報告】