(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】原子炉内可動要素の位置指示のための装置、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
G21C 17/10 20060101AFI20240124BHJP
G21C 7/16 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G21C17/10 710
G21C7/16 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544304
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022070305
(87)【国際公開番号】W WO2022165474
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ、ティモシー、エス
(72)【発明者】
【氏名】ツワルガ、スティーブン、イー
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA05
2G075BA03
2G075CA39
2G075DA20
2G075EA08
2G075FA07
2G075GA27
(57)【要約】
放射線環境下の原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視する装置、システム、および方法を開示する。格納容器構造体の外部に配置されるデータ処理ユニットは、プロセッサと、実行可能な命令を記憶するメモリとを含む。原子炉容器は、当該制御棒に近接する複数の制御棒と、複数の制御棒位置指示コイルからなるコイルスタックとを含む。格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネットは、アナログマルチプレクサおよび通信回路を含む。プロセッサは、命令を実行して、アナログマルチプレクサを介して制御棒位置指示コイルを選択し、制御棒位置指示コイルからの信号をアナログマルチプレクサを介して引き渡し、アナログマルチプレクサからの信号を通信回路を介して受信し、受信した信号に基づいて制御棒の位置を突き止める。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視する方法であって、
(a)格納容器構造体の外部に配置されたプロセッサによって、当該格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネット内に配置されたアナログマルチプレクサを介して、当該原子炉容器内に配置された制御棒に近接して配置されコイルスタック内に配置された制御棒位置指示コイルを選択するステップと、
(b)当該制御棒位置指示コイルからの信号を当該アナログマルチプレクサを介して引き渡すステップと、
(c)当該プロセッサによって、当該アナログマルチプレクサからの信号を、当該格納容器構造体内の当該原子炉容器蓋体に取り付けられた当該データキャビネット内に配置された通信回路を介して受信するステップと、
(d)当該プロセッサによって、当該受信した信号に基づいて当該制御棒の位置を突き止めるステップとを含む方法。
【請求項2】
前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがあるかを判断するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
請求項2の方法であって、
前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがある場合、前記プロセッサによって前記コイルスタック内の新たな制御棒位置指示コイルを選択するステップをさらに含み、
前記コイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2の方法であって、
前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがもはやない場合、前記プロセッサによって新たなコイルスタックを選択し、
当該新たなコイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記原子炉容器内のすべてのコイルスタックについて前記ステップ(a)~(d)を際限なく繰り返すことをさらに含む、請求項4の方法。
【請求項6】
前記信号は電圧であり、当該電圧信号を受動的A/Cピーク検出整流回路によって整流するステップをさらに含み、当該受動的A/Cピーク検出整流回路は前記格納容器構造体内に配置されている、請求項1の方法。
【請求項7】
前記通信回路内の追加のアナログマルチプレクサを介して信号の経路指定を行うステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項8】
放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視する装置であって、当該装置は、
実行可能な命令を記憶するメモリに結合されたプロセッサであって、格納容器構造体の外部に配置されるプロセッサと、
当該格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネット内に配置されたアナログマルチプレクサと、
当該アナログマルチプレクサおよび当該プロセッサに結合された通信回路とを含み、
当該実行可能な命令が当該プロセッサにより実行されると、当該プロセッサに、
(a)当該アナログマルチプレクサを介して、当該原子炉容器内に配置された制御棒に近接して配置されたコイルスタック内に配置された制御棒位置指示コイルを選択し、
(b)当該制御棒位置指示コイルからの信号を当該アナログマルチプレクサを介して引き渡し、
(c)当該アナログマルチプレクサからの信号を当該通信回路を介して受信し、
(d)当該受信した信号に基づいて当該制御棒の位置を突き止めることを行わせる装置。
【請求項9】
前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがあるかを判断させる、請求項8の装置。
【請求項10】
請求項9の装置であって、前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、
前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがある場合、前記プロセッサによって前記コイルスタック内の新たな制御棒位置指示コイルを選択し、
前記コイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを行わせる装置。
【請求項11】
請求項9の装置であって、前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、
前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがもはやない場合、新たなコイルスタックを選択し、
当該新たなコイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを行わせる装置。
【請求項12】
前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記原子炉容器内のすべてのコイルスタックについて前記ステップ(a)~(d)を際限なく繰り返させる、請求項11の装置。
【請求項13】
前記信号は電圧であり、当該電圧信号を整流するための受動的A/Cピーク検出整流回路をさらに含み、当該受動的A/Cピーク検出整流回路は前記格納容器構造体内に配置されている、請求項8の装置。
【請求項14】
前記通信回路は、前記通信回路を介して前記プロセッサへの信号の経路指定を行うアナログマルチプレクサをさらに含む、請求項8の装置。
【請求項15】
放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視するシステムであって、当該システムは、
格納容器構造体の外部に配置されたデータ処理ユニットであって、実行可能な命令を記憶するメモリに結合されたプロセッサを備えるデータ処理ユニットと、
当該格納容器構造体内に配置された原子炉容器と、
当該原子炉容器内に配置された複数の制御棒と、
複数の制御棒位置指示コイルを備えるコイルスタックであって、当該原子炉容器内に配置された当該制御棒に近接して配置されたコイルスタックと、
当該格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネットとを含み、当該データキャビネットは、
アナログマルチプレクサと、
当該アナログマルチプレクサおよび当該プロセッサに結合された通信回路とを含み、
当該実行可能な命令が当該プロセッサにより実行されると、当該プロセッサに、
(a)当該アナログマルチプレクサを介して、コイルスタック内に配置された制御棒位置指示コイルを選択し、
(b)当該制御棒位置指示コイルからの信号を当該アナログマルチプレクサを介して引き渡し、
(c)当該アナログマルチプレクサからの信号を当該通信回路を介して受信し、
(d)当該受信した信号に基づいて当該制御棒の位置を突き止めることを行わせるシステム。
【請求項16】
前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがあるかを判断させる、請求項15のシステム。
【請求項17】
請求項16のシステムであって、前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、
前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがある場合、前記コイルスタック内の新たな制御棒位置指示コイルを選択し、
前記コイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを行わせるシステム。
【請求項18】
請求項16のシステムであって、前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、
前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがもはやない場合、新たなコイルスタックを選択し、
当該新たなコイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを行わせるシステム。
【請求項19】
前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記原子炉容器内のすべてのコイルスタックについて前記ステップ(a)~(d)を際限なく繰り返させる、請求項18のシステム。
【請求項20】
前記信号は電圧であり、当該電圧信号を整流するための受動的A/Cピーク検出整流回路をさらに含み、当該受動的A/Cピーク検出整流回路は前記格納容器構造体内に配置されている、請求項15のシステム。
【請求項21】
前記通信回路は、前記通信回路を介して前記プロセッサへの信号の経路指定を行うアナログマルチプレクサをさらに含む、請求項15のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、参照によりその全てが本願に組み込まれる2021年1月22日に出願された「NUCLEAR MOVABLE ELEMENT POSITION INDICATION APPARATUS, SYSTEM, AND METHOD」と題する米国特許出願第17/155,807号の利益および優先権を主張する。
【0002】
本開示は、原子炉容器内の可動要素の位置を監視するシステムに関し、具体的には、原子炉容器内の制御棒の位置を監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
原子炉容器8内の制御棒などの可動要素の機械的な移動(挿入、引き抜き)とそれに伴う位置の監視は、原子炉の運転において必要な機能である。この機能を果たす各計器は、通常、電源ケーブル17と、計器から処理ユニットに信号を返信するための1本または2本の位置指示ケーブルで終端し、アナログ式棒位置指示(ARPI)システムが格納容器構造体の外部に配置され、デジタル式棒位置指示(DRPI)システムが原子炉容器蓋体12からかなり離れた格納容器構造体内のデータキャビネットに配置される。本願で使用する計器という用語には、センサや検知装置も含まれる。
図1および
図2に示すような既知の棒位置指示ケーブルシステムは、典型的には、原子炉容器蓋体12の頂部および原子炉キャビティ壁14のプール側に配置されたマルチピンコネクタ切断点10を含む。容器蓋体12とキャビティ壁14の間にも、追加の切断点10を配置することができる。マルチピンコネクタ切断点10は、相互接続ケーブルの各区間16をそれぞれに対応する検知装置18から切り離すことで、原子炉容器8を燃料交換のために分解できるようにする。典型的な原子炉容器8は、このようなケーブル組立体を100体以上のオーダーで備えている。
【0004】
ケーブル区間16の取り外しと設置は、一般に、燃料交換のための運転停止の「クリティカルパス」スケジュールの一環であり、一般に、作業を完了するためには、燃料交換のための運転停止の初期段階と最終段階において、特別な訓練を受けた技術者チームによる作業が必要である。通常、このような作業には1回の交替勤務の全体が費やされる。信号ケーブル区間16の取り扱いを総計すると、30日の停止期間のうち丸一日を占めることもある。ケーブルを切り離すのにも追加の時間を要するが、モード3でARPIシステムの点検と較正を行う際に、較正と浸漬に最大12時間を要することのほうがコストが高い。クリティカルパス時間損失の1時間当たりのコストが高いため、訓練された作業員のコストを別にしても、この1日の期間のために、燃料交換のための運転停止1回当たりのコストが非常に高くなる。
【0005】
また、信号ケーブルを繰り返し取り扱うことで損傷の可能性が高まり、ケーブルおよび/または関連ハードウェアを修理および/または交換する必要性が生じる。さらに、信号ケーブルの取り扱いは、原子炉容器上方の放射線区域で行わなければならない。この範疇の作業をなくせば、それに伴う放射線被曝がなくなる。
【0006】
ARPIシステムを具備するある特定の原子力発電所では、システムに関する多くの問題(ドリフト、混信、多数の単一点障害)が発生し、ARPIシステムの保守に1運転サイクル当たり数百時間を費やしている。ARPIシステムは、起動時に最大12~18時間にわたってクリティカルパスとなる。DRPIシステムを導入すればARPIシステムのほとんどの問題を解決できるが、DRPIシステムをアップグレードするための安価な方法はない。
【0007】
棒位置指示(RPI)を具備するほぼすべての原子力発電所では、運転停止のたびにケーブルの取り外しと接続が行われるため、ケーブル接続に関する問題が数多く発生する。ケーブルの再接続後に、ケーブルの有効性を確認する試験を行わなければならず、時間を要する。また、試験によってケーブルが摩耗し、20~25年ごとにケーブルを交換する必要が生じる。複雑なシステムや数多くの問題のトラブルシューティングに、特定分野の専門家(SME)が必要となる。
【0008】
現在、DRPIシステムの電子機器は、格納容器内の原子炉容器蓋体12から平均約100~125フィート離れており、運転停止のたびにケーブルを外して再接続しなければならず、時間と労力がかかり、再接続時にエラーが発生する可能性がある。現在、稼働中の原子炉には29~61本、次世代原子炉には69本の棒がある。
【0009】
したがって、制御棒の位置やその他の原子炉の状態を監視するための原子炉棒位置指示システムには、改善の余地がある。
【発明の概要】
【0010】
一態様において、本開示は、放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視する方法を提供する。当該方法は、(a)格納容器構造体の外部に配置されたプロセッサによって、当該格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネット内に配置されたアナログマルチプレクサを介して、当該原子炉容器内に配置された制御棒に近接して配置されたコイルスタック内に配置された制御棒位置指示コイルを選択するステップと、(b)当該制御棒位置指示コイルからの信号を当該アナログマルチプレクサを介して引き渡すステップと、(c)当該プロセッサによって、当該アナログマルチプレクサからの信号を、当該格納容器構造体内の当該原子炉容器蓋体に取り付けられた当該データキャビネット内に配置された通信回路を介して受信するステップと、(d)当該プロセッサによって、当該受信した信号に基づいて当該制御棒の位置を突き止めるステップとを含む。
【0011】
別の態様において、本開示は、放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視する装置を提供する。当該装置は、実行可能な命令を記憶するメモリに結合されたプロセッサであって、格納容器構造体の外部に配置されるプロセッサと、当該格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネット内に配置されたアナログマルチプレクサと、当該アナログマルチプレクサおよび当該プロセッサに結合された通信回路とを含む。当該実行可能な命令が当該プロセッサにより実行されると、当該プロセッサに、(a)当該アナログマルチプレクサを介して、当該原子炉容器内に配置された制御棒に近接して配置されたコイルスタック内に配置された制御棒位置指示コイルを選択し、(b)当該制御棒位置指示コイルからの信号を当該アナログマルチプレクサを介して引き渡し、(c)当該アナログマルチプレクサからの信号を当該通信回路を介して受信し、(d)当該受信した信号に基づいて当該制御棒の位置を突き止めることを行わせる。
【0012】
さらに別の態様において、本開示は、放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視するシステムを提供する。当該システムは、格納容器構造体の外部に配置されたデータ処理ユニットであって、実行可能な命令を記憶するメモリに結合されたプロセッサを備えるデータ処理ユニットと、当該格納容器構造体内に配置された原子炉容器と、当該原子炉容器内に配置された複数の制御棒と、複数の制御棒位置指示コイルを備えるコイルスタックであって、当該原子炉容器内に配置された当該制御棒に近接して配置されたコイルスタックと、当該格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネットとを含む。当該データキャビネットは、アナログマルチプレクサと、当該アナログマルチプレクサおよび当該プロセッサに結合された通信回路とを含む。当該実行可能な命令が当該プロセッサにより実行されると、(a)当該アナログマルチプレクサを介して、コイルスタック内に配置された制御棒位置指示コイルを選択し、(b)当該制御棒位置指示コイルからの信号を当該アナログマルチプレクサを介して引き渡し、(c)当該アナログマルチプレクサからの信号を当該通信回路を介して受信し、(d)当該受信した信号に基づいて当該制御棒の位置を突き止めることを行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本願に記載する実施形態の様々な特徴とその利点を、下記の添付図面を参照して以下に説明する。
【0014】
【
図1】原子炉容器の状態を監視するための公知のシステムの概略図である。
【0015】
【
図2】
図1に示すシステムの一部のより詳細な概略図である。
【0016】
【
図3】本開示の少なくとも1つの態様による、原子炉容器内の可動要素の位置を監視するための高レベルのシステムを示す。
【0017】
【
図4】本開示の少なくとも1つの態様による、
図3に示す原子炉容器内の可動要素の位置を監視するためのシステムの電気回路のブロック図である。
【0018】
図5A~5Cは、本開示の少なくとも1つの態様による、高レベルのマルチプレクサシステムの数枚に分割した部分図である。
【0019】
【
図5A】本開示の少なくとも1つの態様による、格納容器構造体内に配置されたマルチプレクサ回路を示す。
【0020】
【
図5B】本開示の少なくとも1つの態様による、
図5Aに示されるマルチプレクサ回路に結合された通信回路であって、格納容器構造体内に配置された通信回路を示す。
【0021】
【
図5C】本開示の少なくとも1つの態様による、
図5Bに示される通信回路に結合されたコンピュータ回路であって、格納容器構造体の外部に配置されたコンピュータ回路を示す。
【0022】
【
図6】本開示の少なくとも1つの態様による、コイル電圧を整流する整流回路を示す。
【0023】
【
図7】本開示の少なくとも1つの態様による、放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視する方法を示す。
【0024】
同一の参照符号は、いくつかの図面を通して対応する部品を指している。本願に記載された実施例は、本発明の様々な実施形態の一形態を示すものであり、かかる例示は、いかなる様式においても本発明の範囲を限定的に解釈するものでないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願の出願人は以下の米国特許を所有しており、それぞれの開示は参照によりその全体が本願に組み込まれる。
・ 2016年1月15日に出願された「NUCLEAR CONTROL ROD POSITION INDICATION SYSTEM」と題する米国特許第10,020,081号、
・ 2009年10月13日に出願された「WIRELESS TRANSMISSION OF NUCLEAR INSTRUMENTATION SIGNALS」と題する米国特許第8,599,987号、
・ 1973年1月3日に出願された「POSITION INDICATION SYSTEM」と題する米国特許第3,893,090号、および
・ 1973年1月3日に出願された「POSITION INDICATION SYSTEM」と題する米国特許第3,846,771号。
【0026】
以下で、本開示の実施例を示す添付図面を参照しながら、本開示をより詳しく説明する。ただし、本開示は多くの異なる形態で実施することができ、本願に示す実施例に限定されると解釈するべきではない。これらの実施例はむしろ、詳細さと完全性を期して提供するものであり、それにより当業者には本開示の範囲が十分に伝わるであろう。同じ参照番号は、本願を通して同じ構成要素を指している。
【0027】
図3は、本開示の少なくとも1つの態様による、原子炉容器8内の可動要素の位置を監視するための高レベルのシステム100を示す。このシステム100は、格納容器構造体内の原子炉容器蓋体12に取り付けられたデータキャビネットA、B内に配置された電子計測回路を含む。データキャビネットA、B内に配置された電子回路は、原子炉容器8内の可動要素の位置を監視するように構成されたセンサによって生成された信号を読み取る。
図3に示す態様では、システム100は、原子炉容器8内に配置された制御棒102、104の位置を監視するように構成されている。
【0028】
図3に示すシステム100は、核反応時に制御棒102、104が出し入れされる炉心を収容する原子炉容器8を含んでいる。制御棒102、104は、典型的な構成として、スパイダ形クラスタ集合体にひとまとめに連結され、駆動軸によって炉心に出し入れされる。当該駆動軸は、制御棒駆動機構により作動されると、圧力ハウジング内をステップ状に移動する。炉心に対する制御棒102、104の位置はコイルスタック106、108によって突き止められ、各コイルスタックは複数の制御棒位置指示コイル110、112を備える。開示を簡潔かつ明瞭にするため、
図3には、制御棒102、104ごとに単一のコイルスタック106、108のみを示している。実際の実施形態では、冗長性を持たせるため、制御棒102、104ごとにコイルスタックは交互に配置されたAコイルとBコイルからなる。
【0029】
したがって、
図3に概略を示すシステム100のようなデジタル式棒位置指示システムは、各制御棒102、104向けにそれぞれコイルスタック106、108と、データキャビネットA、Bからの信号を受信するデジタル式棒位置指示データ処理ユニット114とを含む。データ処理ユニット114は、コイルスタック106、108から受信した信号を処理して、制御棒102、104の位置を突き止める。各コイルスタック106、108は、制御棒位置指示コイル110、112の独立したチャンネルを含み、かかるチャンネルは圧力ハウジング上に配置されている。各チャンネルは、最大24個の制御棒位置指示コイル110、112を含むことができる。制御棒位置指示コイル110、112はインターリーブされ、例えば3.75インチ(9.53cm)の間隔(6ステップ)で配置される。各制御棒102、104の各コイルスタック106、108向けのデジタル式棒位置指示電子機器が、原子炉容器蓋体12に取り付けられた冗長な一対のデータキャビネットA、Bに配置されている。
【0030】
制御棒102、104の位置を独立に検証することが意図されてはいるが、デジタル式棒位置指示システムは、例えば、両方のチャンネルが機能する場合は±3.75インチ(9.53cm、6ステップ)以内の精度があり、単一のチャンネルを使用する場合は±7.5インチ(19.1cm、12ステップ)以内の精度があると考えられる。従来型アナログ式制御棒位置指示システムは、従来型デジタル式制御棒位置指示システムとは対照的に、電気コイルスタック線形可変差動変圧器の交流出力電圧の振幅に基づいて制御棒の位置を突き止める。適切に較正されたアナログ式制御棒位置指示システムの総合精度は、例えば、±7.2インチ(18.3cm)(12ステップ)と考えられる。従来型アナログ式およびデジタル式制御棒位置指示システムのいずれも、制御棒102、104の実際の位置を突き止める能力はない。DRPIシステムでは、DRPIが各グレイコードに移行するときに、制御棒102、104の位置がわかる。
【0031】
本願で使用する「制御棒」という用語は、一般的に、軸方向位置情報が個別に保たれる1つのユニットを意味し、例えば、スパイダ形クラスタ集合体に物理的に連結された一群の制御棒102、104がこれに該当する。制御棒102、104の数は、プラントの設計によって異なる。例えば、典型的な4ループ加圧水型原子炉は53本の制御棒102、104を有する。各制御棒102、104は、1つ以上のチャンネルを有する独自の制御棒位置指示コイルセット110、112を必要とし、デジタルシステムの場合、各チャンネルに付随するデジタル式制御棒位置指示電子機器をさらに必要とする。したがって、典型的な4ループ加圧水型原子炉のデジタル式制御棒位置指示システムは、全体で、それぞれが2系統の独立したチャンネルを有する53個のコイルスタックと、106台のデジタル式制御棒位置指示電子機器とを含む。
【0032】
各制御棒102、104の位置を監視するように構成された各制御棒位置指示コイル110、112によって生成された電圧は、多数のワイヤ116、118、120、122を備えるケーブルによって伝送される。これらの電圧は、数層のマルチプレクサを介して引き渡され、冗長性を無視するときは単一ワイヤ124、126によって、冗長性を求めるときは2本のワイヤによって、格納容器構造体の外部に伝送される。現役の原子炉は29~61本の制御棒102、104を含み、次世代原子炉は最大69本の制御棒102、104を含む。各制御棒102、104に対し、複数の制御棒位置指示コイル110、112が積み重ねられている。
【0033】
図4は、本開示の少なくとも1つの態様による、
図3に示す原子炉容器内の可動要素の位置を監視するためのシステム100のデータ処理ユニット114のブロック図である。データ処理ユニット114は、ソフトウェア命令132がインストールされたメモリ130に結合されたロジックプロセッサ128、アナログ入力回路134、およびデジタル出力回路136を含んでいる。デジタル出力回路136は、各データキャビネットA、Bのアナログマルチプレクサ138、140を制御する。それぞれの制御棒位置指示コイル110、112(
図3)は、独自の2進デジタル制御番号を持つ。デジタル出力回路136が新しいアドレスに切り替わると、アナログ入力回路134が電圧を読み取る。これは、1つのコイルスタック106内のすべての制御棒位置指示コイル110と、別のコイルスタック108内のすべての制御棒位置指示コイル112が読み取られるまで繰り返される。このデータにより、原子力発電所内のすべての制御棒102、104(
図3)の位置を突き止めることができる。このプロセスは無限にループする。ただし、このループは、例えば制御棒102、104の落下試験に有用な単一コイルの監視を含む任意の組み合わせに変更することができる。
【0034】
図3および
図4を参照すると、一態様において、本開示によるシステム100は、原子炉容器8内の制御棒102、104の位置を監視するように構成されている。一態様では、原子炉容器8の制御棒102、104の位置を監視するためのシステム100は、格納容器構造体内の原子炉容器蓋体12に直接取り付けられたデータキャビネットA、B内に配置された電子回路を含む。運転停止時に、制御棒位置指示コイル110、112につながる多数のワイヤ116、118、120、122からなる太いケーブルを切り離す必要がなくなるため、ケーブルとコネクタの摩耗が減り、ケーブル再接続後にケーブルを検証するための試験を行う必要がなくなるため、時間と放射線量の節減になる。
【0035】
一態様では、本システム100において、DRPIシステムの従来型データキャビネットA、Bを最新の電子設計に置き換える。これにより、格納容器構造体の外部に位置するデータ処理ユニット114にプログラム可能なソフトウェア132を備えるだけで、あらゆる指示および追加機能が可能になり、システム100の柔軟性を高めることができる。従来型DPRIシステムは、電気的/電子的ハードウェアのみを用いる方法により、制御棒102、104の位置を突き止めている。このハードウェアは、制御棒位置指示コイル110、112の電圧を読み取り、ハードウェアのみによって各制御棒102、104の位置を突き止め、そのデータを表示システムに送信する。一方、本開示の少なくとも1つの態様によるシステム100は、制御棒位置指示コイル110、112の電圧をすべて読み込み、データ処理ユニット114内のコンピュータ/プロセッサ128に直接入力するように構成され、当該プロセッサ内では、ソフトウェア132の命令をプロセッサによって実行することにより、制御棒102、104の位置を突き止め、他の全てのDRPI機能を実行する。
【0036】
本開示の少なくとも1つの態様によるシステム100には、多数の利点がある。例えば、コイルスタック106内の1つの制御棒位置指示コイル110の抵抗が、物理的磨耗などのために、コイルスタック106内の他の制御棒位置指示コイル110または接続部よりも経時的に増大するように見える場合、プロセッサ128は、ソフトウェア132の命令を実行することにより、予期せぬ異常読取値を調整することができるが、既存のハードウェアのみに基づくDRPIシステムでは、制御棒102、104位置の読取値を調整することができない。
【0037】
さらに、本開示の少なくとも1つの態様によるシステム100において、データキャビネットA、Bは、原子炉容器蓋体12の頂部に取り付けられる。このシステム100は、物理的なスペースの制約や、高い放射線レベルでの動作など、いくつかの課題を克服している。データキャビネットA、Bおよびその関連の電子回路を原子炉容器蓋体12の頂部に配置することにより、運転停止時に、制御棒位置指示コイル110、112につながる多数のワイヤ116、118、120、122からなるDRPIスタックケーブルを切り離す必要がなくなる。これにより、原子力発電所の運転者は、貴重な運転停止時間と費用を節約し、信頼性を高めることができる。
【0038】
強い放射線環境下であることから、データキャビネットA、B内に配置された例えばマルチプレクサやその他の能動的または受動的な電子部品などの電子回路には、放射線耐性の電子部品が含まれ、かかる部品は、電子回路に要求される放射線や寿命の要件を満たすために放射線遮蔽を必要とする可能性がある。市販の能動的な電子部品は、妥当な水準の遮蔽を施したとしても、原子炉容器蓋体12の頂部での使用には耐えられないことが、放射線試験により判明している。コンデンサ、ダイオード、抵抗器などの受動的な電気部品の中には、遮蔽を追加しなくても、必要なレベルの放射線耐性を有するものがある。したがって、データキャビネットA、B内に配置される電子回路は、放射線耐性を有するマルチプレクサやその他の能動的部品を採用している。
【0039】
[電子マルチプレクサの構成]
図5A~5Cは、本開示の少なくとも1つの態様による、数枚にわたる部分図に分割された高レベルのマルチプレクサシステム200を示す。
図5Aは、格納容器構造体内に配置されたマルチプレクサ回路202を示す。
図5Bは、
図5Aに示すマルチプレクサ回路202に結合された通信回路204を示し、当該通信回路204は、当該格納容器構造体内に配置されている。
図5Cは、
図5Bに示す通信回路202に結合されたデータ取得コンピュータシステムを含むデータ処理ユニット114を示し、当該データ処理ユニット114は、当該格納容器構造体の外部に位置する。マルチプレクサ回路202は、
図4に示すアナログマルチプレクサ138、140の詳細な実施形態である。通信回路204は、
図3および
図4に示すデータキャビネットA、Bに収納されている。処理ユニットは、
図3および
図4にも示されている。一態様において、高レベルのマルチプレクサシステム200には、冗長な部品のための冗長な制御手段を含めてよいことを理解されたい。別の態様において、高レベルのマルチプレクサシステム200は、例えば
図5A~5Cに示すように、一次部品および冗長部品向けに単一の制御手段を含んでもよい。
【0040】
図5Aに示すマルチプレクサ回路202および
図5Bに示す通信回路204は、格納容器構造体内の原子炉容器蓋体12(
図1、
図3)の頂部に配置されたデータキャビネットA、B内に配置されている。これらの回路202、204はいずれも、放射線遮蔽と、構造に基づいて放射線耐性が例えば75kradから125krad超の総電離線量(TID)まで高められた能動的部品を含む。
【0041】
マルチプレクサ回路202は、単一の出力になるようにすべてのコイル電圧を読み取り、システム全体を高速で読み取るために使用される。マルチプレクサ回路202は、第1のアナログマルチプレクサ222と第2のアナログマルチプレクサ224とからなる。第1および第2のアナログマルチプレクサ222、224の各々は、例えば、放射線耐性の32対1チャネルのマルチプレクサでよい。放射線耐性を有する32対1チャネルのマルチプレクサ集積回路の一例を、ルネサス/インターシル社が製造している。
【0042】
アナログコイル電圧は格納容器構造体の外部で長い距離にわたって送信されるが、アナログコイル電圧の送信が長距離にわたることを緩和するためにいくつかの条件がある。すべてのコイル電圧は1本のワイヤで伝送される(A/Bコイルと冗長部品は度外視)。任意の接触抵抗、ワイヤ抵抗、その他の経時変化する抵抗は、システム200全体にわたってコイル電圧に等しく影響する。データ取得システムが読み取る実際のコイル電圧は問題にならない。各DRPIスタック内の他のすべてのコイル電圧に対するパーセンテージのみが問題となる。例えば、通常予想される条件下で、棒ありの電圧が1.60V、棒なしの電圧が1.15Vの場合、システムはコイル間の差分電圧0.45Vを読み取る。追加的なワイヤ抵抗が原因で、棒ありの電圧が1.20V、棒なしの電圧が0.75Vと読み取られる場合でも、システムは両者間の差分電圧を検知できる。
【0043】
抵抗が増加すれば分解能が低下することがあるが、抵抗が開回路に近づかない限り、システム200は差分電圧を適切に読み取る。そのような飛躍的な抵抗値の変化は、設置や接続の障害の結果として、いかなるシステムや設計でも起こりうることである。
【0044】
原子力発電所内のすべてのワイヤやケーブルは、ある程度のノイズにさらされる可能性がある。情報が微弱な電圧や電流でやり取りされるため、アナログ信号は一般的にノイズの影響を受けやすいが、デジタル信号はビット論理に基づいて情報送信が行われる。低電圧のアナログ送信では、ノイズによる10mVの変化はシステムに飛躍的な変動をもたらす。しかし、システム200では、棒ありの状態と棒なしの状態の電圧差が大きいため、そのような影響は受けない。送信される信号はアナログであるが、情報は2つの状態(棒あり/棒なし)しかないため、0.45Vのデジタル信号によく似ている。
【0045】
マルチプレクサシステム200は、インターフェース回路(図示せず)、マルチプレクサ回路202、通信回路204、および交流変圧器(図示せず)を含み、それらは格納容器構造体内に配置されている。データ処理ユニット114は、格納容器構造体の外部に配置されたアナログ入力回路134およびデジタル出力回路136を含む。一態様では、回路をモジュール方式で実装することにより、金属筐体を変更して幾つかのサイズや配置に対応することが可能である。
【0046】
[インターフェース回路]
インターフェース回路はいくつかの機能を果たす。インターフェース回路は、各DRPIコイルに接続するためのコネクタを含んでいる。一態様では、各インターフェース回路は、例えば4つのDRPIスタックに接続するように構成することができる。この4という数は、サイズ、モジュール適合性、および内部配線コネクタを考慮して選んだものである。しかし、当業者であれば、各インターフェース回路は、任意の数(例えば1~3または5以上)のDRPIスタックに接続するように構成できることを理解するであろう。インターフェース回路は、各コイルに直列接続する必要のある5Ωの抵抗器を含んでいる。1コイルスタック当たり21個のコイルを含む実施形態では、1コイルスタック当たり21個の抵抗器があり、したがって、1インターフェースカード当たり84個の抵抗器がある。
【0047】
コネクタが含まれており、コイルに必要な6VACがインターフェース回路(約40アンペア)に直接供給される。また、すべてのコイル位置電圧をインターフェース回路からマルチプレクサ回路202に送信する2つのコネクタ(低電圧/低電流)も含まれている。
【0048】
[マルチプレクサ回路]
次に
図5Aを参照すると、一態様において、マルチプレクサ回路202は、各DRPIコイルスタックから受信したすべてのコイル電圧を多重化し、
図5Bに示す通信回路204に送信する。インターフェース回路と同様に、一態様において、各マルチプレクサ回路202は4つのDRPIコイルスタックを扱う。各インターフェース回路はマルチプレクサ回路202に接続され、並列接続された4つのDRPIコイルスタックのすべてのコイル電圧が引き渡される。この接続は、放射線耐性のあるリボンケーブルまたは他の放射線耐性のあるワイヤを基板のコネクタにつなぐことによって形成される。
【0049】
図5Aを引き続き参照すると、マルチプレクサ回路202への入力は、21個のコイル210、212、214からの入力A/C電圧である。受信した各コイル電圧210、212、214が、それぞれ、21個の個別のA/Cピーク検出整流器216、218、220に印加される。開示を簡潔かつ明瞭にするために、コイル電圧214は、コイル3~21からの個々のコイル電圧入力を表し、各コイル電圧は、それぞれ個々のA/Cピーク検出整流器220に印加される。耐放射線性の点で堅牢であるために、
図5Aに示される例では、A/Cピーク検出整流器216、218、220は受動的部品を用いて実装される。受動的A/Cピーク検出整流器216、218、220の一例を
図6に示す。
【0050】
ここで
図5Aに戻ると、各コイル電圧210、212、214は、50Hzまたは60Hzの交流電圧からそのピーク直流電圧に整流される。格納容器構造体の外にあるデータ収集システムは交流電圧を読み取ることができるが、サンプリング速度が速いため、ピーク電圧を安定して読み取れない可能性がある。したがって、コイル電圧210、212、214によって、交流電圧はそのピーク直流値に整流される。
図6も参照すると、受動的A/Cピーク検出整流回路300の一例は、受動的A/Cピーク検出整流器216、218、220を代表するものである。受動的A/Cピーク検出整流回路300は、ダイオードD1-1、適切なサイズのコンデンサC1、および抵抗器C1を含む。オペアンプベースの整流回路など、他の整流回路を採用してもよいことは理解されよう。しかし、実行可能な選択肢とするためには、そのようなオペアンプベースの整流回路は放射線耐性でなければならない。簡素な受動的A/Cピーク検出整流回路300は、原子炉容器蓋体12(
図1および
図3)の頂部に存在する高放射線環境下で十分な性能を発揮することができる。
【0051】
主に
図5Aを参照し、
図5Bも参照すると、各コイル電圧210、212、214が整流されると、32チャンネルのアナログマルチプレクサ222、224に供給される。各コイルスタックには、それぞれ独自のマルチプレクサがある。21個のコイル電圧210、212、214はすべて、対応するアナログマルチプレクサ222、224の最初の21チャンネルに配線される。各コイルスタックアナログマルチプレクサ222、224の出力226、230が、マルチプレクサ回路202から通信回路204(
図5B)に供給される。例えば、Card#1出力と表示されたマルチプレクサ回路202の出力226は、通信回路204のCard#1入力232に供給される。各アナログマルチプレクサ222、224のセレクタビットは、通信回路204のMux Sel#1入力244から送信され、マルチプレクサ回路202のマルチプレクサ選択入力228で受信される。
図5Aに示される例では、5つのセレクタビットA0、A1、A2、A3、A4を使用して、アナログマルチプレクサ222、224への入力として、21個のコイル電圧210、212、214のうちの1つを選択する。
【0052】
各マルチプレクサ回路202は4つのDRPIスタックを扱うことができるため、マルチプレクサ回路202には合計8つのマルチプレクサが含まれることになる。各コイルスタックには、独自のアナログマルチプレクサ222と、隔離された冗長なマルチプレクサ224がある。また、各コイル電圧210、212、214向けに冗長な整流回路216、218、220(
図6のA/Cピーク検出整流回路300も参照)を含み、合計168個の整流回路を含んでいる。
【0053】
一態様において、マルチプレクサ22、224は、低線量率向けの定格総電離線量(TID)75kradのルネサス/インターシル社製の放射線耐性のマルチプレクサ(部品番号ISL71831SEH)であってよい。別の適切な放射線耐性のアナログマルチプレクサ222、224は、ルネサス/インターシル社の放射線耐性のマルチプレクサ(部品番号ISL71841SEH)であり、その追加機能の中で定格TIDは100kradとされている。アナログマルチプレクサ222、224は、任意の適切な放射線耐性のマルチプレクサを使用して実装することができ、本開示で説明する特定の構成部品は、非限定的な例を示していることを理解されたい。
【0054】
[通信カード]
ここで主に
図5Bを参照し、さらに
図5Aおよび
図5Cを参照すると、通信回路204は、マルチプレクサ回路202と、格納容器構造体の外部に位置するデータ処理ユニット114との間のインターフェースである。マルチプレクサ回路202のアナログマルチプレクサ222、224を制御するすべてのデジタル出力は、通信回路204で受信されてからマルチプレクサ回路202に分配される。
【0055】
引き続き
図5A~Cを参照すると、通信回路204は、3つの32チャンネルのアナログマルチプレクサ246、248、250を含んでいる。アナログマルチプレクサ246、248のうちの2つが、マルチプレクサ222(
図5A)などの各DRPIスタックのマルチプレクサからの出力電圧を受信する。したがって、64個のアナログマルチプレクサからの出力を2つに減らすことができる。第3のアナログマルチプレクサ250は、他の2つのアナログマルチプレクサ246、248からの出力を1つの出力254に減らし、この出力は、格納容器構造体の外部にあるデータ処理ユニット114のアナログ電圧入力1に供給される。第3のアナログマルチプレクサ250は、32個の入力チャンネルのうち2個しか使用させないが、簡素化と部品の入手しやすさのため、他と同じ集積回路を使用する。
【0056】
通信回路204上の第1および第2のアナログマルチプレクサ246、248のセレクタビットA0、A1、A2、A3、A4は、データ処理ユニット114から送信し、Mux Sel#2入力252で受信する。マルチプレクサ回路202上のアナログマルチプレクサ222、224のアナログマルチプレクサ選択ビットA0、A1、A2、A3、A4は、データ処理ユニット114から送信し、Mux Sel#1入力256で受信する。
【0057】
[データ取得コンピュータシステム]
ここで主に
図5Cを参照し、さらに
図3、
図5A、および
図5Bを参照すると、データ処理ユニット114は格納容器構造体の外部に配置されている。データ処理ユニット114は、メモリ130に結合されたプロセッサ128を含んでおり、メモリ130は、コイル電圧210、212、214に基づいて制御棒102、104の位置を計算するための実行可能なソフトウェア命令132も含んでいる。ソフトウェア命令132により、マルチプレクサ回路202内のアナログマルチプレクサ222、224の選択、および通信回路204内のアナログマルチプレクサ246、248、250の選択を、プロセッサ128によって制御することもできる。
【0058】
[データキャビネットの配置と設計]
次に
図3~5Cを参照すると、変圧器、インターフェース、マルチプレクサ回路202、および通信回路204を含む2つのデータキャビネットA、Bが、原子炉容器蓋体12に取り付けられている。一態様では、インターフェース回路、マルチプレクサ回路202、通信回路204など、データキャビネットA、B内に配置された個々の回路は、データキャビネットA、Bの筐体内でシングルスタックまたはダブルスタックに構成できるようにモジュール化されている。これにより、同じ電子機器を使用しながらも、用途に応じてデータキャビネットA、Bの筐体を異なるサイズにすることができる。
【0059】
図7は、本開示の少なくとも1つの態様による、放射線環境下にある原子炉容器8内に配置された制御棒の位置を監視する方法400を示す。この方法400は、
図3~6に示すハードウェア構成で実施される。各コイルスタック106、108の各制御棒位置指示コイル110、112には交流電圧が印加される。この方法400によれば、格納容器構造体の外部に位置するプロセッサ128は、格納容器構造体の内部の原子炉容器蓋体12に取り付けられたデータキャビネットA内に置かれたアナログマルチプレクサ138を介して、コイルスタック106に配置された制御棒位置指示コイル110を選択する(402)。コイルスタック106は、原子炉容器8内に配置された制御棒102に近接して配置されている。制御棒位置指示コイル110からの信号は、アナログマルチプレクサ138を介して引き渡される(404)。アナログマルチプレクサ138からの信号は、通信回路204を介してプロセッサ128によって受信される(406)。プロセッサ128は、受信した信号に基づいて制御棒102の位置を突き止める(408)。
【0060】
さらに
図7を参照すると、この方法400に従って、プロセッサ128は、コイルスタック106内に別の制御棒位置指示コイル110があるかを判断する(410)。コイルスタック106内に別の制御棒位置指示コイル110がある場合、この方法400は「はい」の分岐に沿って進み、プロセッサ128は、コイルスタック106内の次の制御棒位置指示コイル110に移行し(412)、コイルスタック106内のすべての制御棒位置指示コイル110が選択され、読み取られるまで、選択402、引き渡し(passing)404、送信406、および決定408の機能を繰り返す。コイルスタック106内に別の制御棒位置指示コイル110がもはやない場合、この方法400は「いいえ」の分岐に沿って進み、プロセッサ128は、次のコイルスタック108に移行し(414)、コイルスタック106内のすべての制御棒位置指示コイル110が選択され、読み取られるまで、選択402、引き渡し404、送信406、および決定408の機能を繰り返す。
【0061】
一態様において、原子炉容器8内のすべてのコイルスタック106、108のすべてのコイル110、112をサンプリングするように、この方法400を際限なく繰り返すことができる。他の態様において、この方法400は、単一コイルの監視を含むコイルスタック106、108内の任意の組み合わせのコイル110、112をサンプリングするように変更することができ、それは、例えば制御棒102、104の落下試験に有用である。前述のように、コイルスタック106、108ごとに最大21個の制御棒位置指示コイル110、112が存在する可能性があり、原子炉容器8内には最大69本の制御棒102、104が存在する可能性がある。
【0062】
一態様では、この方法400は、信号を電圧とし、選択された制御棒位置指示コイル110、112から電圧信号を読み取るステップを含む。この方法400は、制御棒位置指示コイル100、112の各々から読み取られた電圧を整流するステップをさらに含む。この方法400によれば、プロセッサ128は、受信された電圧信号に基づいて制御棒102の位置を突き止める(408)が、他の態様では、プロセッサ128は、受信された整流済みの電圧信号に基づいて制御棒102の位置を突き止める。
【0063】
他の態様では、信号は、各コイルスタック106、108内の制御棒位置指示コイル110、112に関連する抵抗、電流、または他の電気パラメータであってもよい。したがって、この方法400は、各コイルスタック106、108内の制御棒位置指示コイル110、112に関連する抵抗、電流、または他の電気的パラメータを読み取るステップを含み、プロセッサ128が、各コイルスタック106、108内の制御棒位置指示コイル110、112に関連する受信した抵抗、電流、または他の電気的パラメータ、およびそれらの組み合わせに基づいて、制御棒の位置を突き止める。
【0064】
この方法400は、格納容器構造体の内部に位置する通信回路204内の追加のアナログマルチプレクサを介して信号の経路指定(routing)を行うステップをさらに含み、それにより、アナログマルチプレクサ138、140を格納容器構造体の外部に位置するデータ処理ユニット114と連携させる。
【実施例】
【0065】
本願に記載された主題の様々な態様を、以下の実施例にて記載する。
【0066】
[実施例1]放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視する方法であって、(a)格納容器構造体の外部に配置されたプロセッサによって、当該格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネット内に配置されたアナログマルチプレクサを介して、当該原子炉容器内に配置された当該制御棒に近接して配置されたコイルスタック内に配置された制御棒位置指示コイルを選択するステップと、(b)当該制御棒位置指示コイルからの信号を当該アナログマルチプレクサを介して引き渡すステップと、(c)当該プロセッサによって、当該アナログマルチプレクサからの信号を、当該格納容器構造体内の当該原子炉容器蓋体に取り付けられた当該データキャビネット内に配置された通信回路を介して受信するステップと、(d)当該プロセッサによって、当該受信した信号に基づいて当該制御棒の位置を突き止めるステップとを含む方法。
【0067】
[実施例2]前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがあるかを判断するステップをさらに含む、実施例1の方法。
【0068】
[実施例3]実施例2の方法であって、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがある場合、前記プロセッサによって前記コイルスタック内の新たな制御棒位置指示コイルを選択するステップをさらに含み、前記コイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを特徴とする方法。
【0069】
[実施例4]実施例2~3のいずれか1つ以上に記載の方法であって、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがもはやない場合、前記プロセッサによって新たなコイルスタックを選択するステップをさらに含み、当該新たなコイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを特徴とする方法。
【0070】
[実施例5]前記原子炉容器内のすべてのコイルスタックについて前記ステップ(a)~(d)を際限なく繰り返すことをさらに含む、実施例4の方法。
【0071】
[実施例6]実施例1~5のいずれか1つ以上に記載の方法であって、前記信号は電圧であり、当該電圧信号を受動的A/Cピーク検出整流回路によって整流するステップをさらに含み、当該受動的A/Cピーク検出整流回路は前記格納容器構造体内に配置されている方法。
【0072】
[実施例7]前記通信回路内の追加のアナログマルチプレクサを介して信号の経路制御を行うステップをさらに含む、実施例1~6のいずれか1つ以上に記載の方法。
【0073】
[実施例8]放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視する装置であって、当該装置は、実行可能な命令を記憶するメモリに結合されたプロセッサであって、格納容器構造体の外部に配置されたプロセッサと、当該格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネット内に配置されたアナログマルチプレクサと、当該アナログマルチプレクサおよび当該プロセッサに結合された通信回路とを含み、当該実行可能な命令が当該プロセッサにより実行されると、当該プロセッサに、(a)当該アナログマルチプレクサを介して、当該原子炉容器内に配置された制御棒に近接して配置されたコイルスタック内に配置された制御棒位置指示コイルを選択し、(b)当該制御棒位置指示コイルからの信号を当該アナログマルチプレクサを介して引き渡し、(c)当該アナログマルチプレクサからの信号を当該通信回路を介して受信し、(d)当該受信した信号に基づいて当該制御棒の位置を突き止めることを行わせする装置。
【0074】
[実施例9]前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがあるかを判断させる、実施例8の装置。
【0075】
[実施例10]実施例9の装置であって、前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがある場合、前記コイルスタック内の新たな制御棒位置指示コイルを選択し、前記コイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを行わせる装置。
【0076】
[実施例11]実施例9~10のいずれか1つ以上に記載の装置であって、前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがもはやない場合、新たなコイルスタックを選択し、当該新たなコイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返させることを行わせる装置。
【0077】
[実施例12]前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記原子炉容器内のすべてのコイルスタックについて前記ステップ(a)~(d)を際限なく繰り返させる、実施例11の装置。
【0078】
[実施例13]実施例8~12のいずれか1つ以上に記載の装置であって、前記信号は電圧であり、当該電圧信号を整流するための受動的A/Cピーク検出整流回路をさらに含み、当該受動的A/Cピーク検出整流回路は前記格納容器構造体内に配置されている装置。
【0079】
[実施例14]前記通信回路は、前記通信回路を介して前記プロセッサへの信号の経路指定を行うアナログマルチプレクサをさらに含む、実施例8~13のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0080】
[実施例15]放射線環境下にある原子炉容器内に配置された制御棒の位置を監視するためのシステムであって、格納容器構造体の外部に配置されたデータ処理ユニットであって、実行可能な命令を記憶するメモリに結合されたプロセッサを備えるデータ処理ユニットと、当該格納容器構造体内に配置された原子炉容器と、当該原子炉容器内に配置された複数の制御棒と、複数の制御棒位置指示コイルを備えるコイルスタックであって、当該原子炉容器内に配置された当該制御棒に近接して配置されたコイルスタックと、当該格納容器構造体内の原子炉容器蓋体に取り付けられたデータキャビネットとを含み、当該データキャビネットは、アナログマルチプレクサと、当該アナログマルチプレクサおよび当該プロセッサに結合された通信回路とを含み、当該実行可能な命令が当該プロセッサにより実行されると、当該プロセッサに、(a)当該アナログマルチプレクサを介して、当該コイルスタック内に配置された制御棒位置指示コイルを選択し、(b)当該制御棒位置指示コイルからの信号を当該アナログマルチプレクサを介して引き渡し、(c)当該アナログマルチプレクサからの信号を当該通信回路を介して受信し、(d)当該受信した信号に基づいて当該制御棒の位置を突き止めることを行わせるシステム。
【0081】
[実施例16]前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサは、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがあるかを判断させる、実施例15のシステム。
【0082】
[実施例17]実施例16のシステムであって、前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがある場合、前記コイルスタック内の新たな制御棒位置指示コイルを選択し、前記コイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを行わせるシステム。
【0083】
[実施例18]実施例16~17のいずれか1つ以上に記載のシステムであって、前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記コイルスタック内に別の制御棒位置指示コイルがもはやない場合、新たなコイルスタックを選択し、当該新たなコイルスタック内のすべての制御棒位置指示コイルについて前記ステップ(b)~(d)を繰り返すことを行わせるシステム。
【0084】
[実施例19]前記実行可能な命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに、前記原子炉容器内のすべてのコイルスタックについて前記ステップ(a)~(d)を際限なく繰り返させる、実施例18のシステム。
【0085】
[実施例20]実施例15~19のいずれか1つ以上に記載のシステムであって、前記信号が電圧であり、当該電圧信号を整流するための受動的A/Cピーク検出整流回路をさらに含み、当該受動的A/Cピーク検出整流回路は前記格納容器構造体内に配置されているシステム。
【0086】
[実施例21]前記通信回路は、前記通信回路を介して前記プロセッサへの信号の経路指定を行うアナログマルチプレクサをさらに含む、実施例15~20のいずれか1つ以上に記載のシステム。
【0087】
本開示の特定の態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の配置構成は説明目的だけのものであり、本開示の範囲を何ら制約せず、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。
【0088】
通常、本願において、特に添付の特許請求の範囲(例えば添付の特許請求の範囲の本体部)において使用される用語は、一般に「非限定的(open)」な用語として意図されているということが、当業者であればわかるだろう(例えば、用語「含めて(including)」は「含めるがそれに限定しない」と解釈し、用語「有する(having)」は「少なくとも~を有する」と解釈し、用語「含む(includes)」は「含むがそれに限定しない」と解釈すべきである等)。さらに当業者は、請求項で導入される記載事項の数が具体的であることが意図される場合、そのような意図は当該請求項において明示的に記載されるものであり、かかる記載がない場合、かかる意図は存在しないものと理解するであろう。例えば、理解の一助として、添付の特許請求の範囲は、請求項の記載事項の導入のために、「少なくとも1つ(at least one)」および「1つ以上(one or more)」という導入句を使用する場合がある。しかしながら、そのような句の使用は、「a」または「an」という不定冠詞によって請求項の記載を導入した場合に、たとえ同一の請求項内に「1つ以上の」または「少なくとも1つの」といった導入句と「a」または「an」といった不定冠詞が共に含まれる場合であっても、かかる導入された請求項の記載を含むいかなる特定の請求項も、かかる記載事項を1つだけ含む請求項に限定されることが示唆される、と解釈すべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、通常、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈すべきである)。同じことが、定冠詞を用いて請求項の記載を導入する場合にも当てはまる。
【0089】
また、請求項で導入される記載事項の具体的な数が明示的に記載されている場合でも、そのような記載は、少なくとも当該記載された数であるとの意味に一般的に解釈すべきであることが、当業者には理解されよう(例えば、他の修飾語を伴わずに「2つの記載事項(two recitations)」が記載されている場合、一般的に少なくとも2つの記載事項、または2つ以上の記載事項を意味する)。さらに、「A、B、およびCなどの少なくとも1つ」に類似する慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、ならびに/またはAとBとCのすべてなどを有するシステムを含むが、それらに限定されない)。また、「A、B、またはCなどの少なくとも1つ」に類似する慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、ならびに/またはAとBとCのすべてなどを有するシステムを含むが、それらに限定されない)。一般的に、2つ以上の選択的な用語を表す選言的な語および/または句は、明細書、特許請求の範囲、または図面のどこにあっても、文脈上他の意味に解釈する場合を除き、当該用語のうちの1つ、当該用語のいずれか、または当該用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることも、当業者には理解されよう。例えば、句「AまたはB」は、一般的に「A」、「B」、または「AおよびB」の可能性を含むものと理解されよう。
【0090】
添付の特許請求の範囲に関して、当業者であれば、そこに記載された動作は一般的に任意の順序で実行され得ることを理解するであろう。また、様々な動作のフロー図はシーケンスで示されているが、様々な動作は、図示されている順序とは別の順序で実行されてもよいし、同時に実行されてもよいことが理解されよう。そのような代替の順序付けの例として、文脈上他の意味に解釈すべき場合を除き、重複、割り込み、中断、再順序付け、増加的、予備的、追加的、同時、逆、またはその他の順序付けを含んでもよい。さらに、「~に応答する(responsive to)」、「~に関連する(related to)」といった用語や他の過去時制の形容詞は、文脈上他の意味に解釈する場合を除き、一般にかかる変化形を除外するように意図するものではない。
【0091】
「一態様(one aspect)」、「ある態様(an aspect)」、「ある実施例(an exemplification)」、「一実施例(one exemplification)」などへの参照は、その態様に関連して記載される特定の特徴物、構造物、または特性が少なくとも1つの態様に含まれることを意味することは、特記に値する。したがって、本願の全体を通じて様々な箇所に見られる句「一態様では(in one aspect)」、「ある態様では(in an aspect)」、「ある実施例では(in an exemplification)」、および「一実施例では(in one exemplification)」は、必ずしも全てが同じ態様を指すものではない。さらに、特定の特徴物、構造、または特性は、1つ以上の態様において任意の適当な様式で組み合わせることができる。
【0092】
本願で参照され、かつ/または任意の出願データシートに列挙される任意の特許出願、特許、非特許刊行物、または他の開示資料は、組み込まれる資料が本願と矛盾しない範囲で、参照により本願に組み込まれる。そのため、必要な範囲において、本願に明瞭に記載された開示内容は、それと矛盾のある、参照により本願に組み込まれた資料に優先するものとする。既存の定義、見解、または本願に記載されたその他の開示内容と矛盾する任意の内容またはその一部は、参照により本願に組み込まれるが、組み込まれる内容と既存の開示内容との間に矛盾が生じない範囲においてのみ組み込まれるものとする。
【0093】
「含む、備える(comprise)」の語およびその派生語(「comprises」、「comprising」など)、「有する(have)」の語およびその派生語(「has」、「having」など)、「含む(include)」の語およびその派生語(「includes」、「including」など)、「包有する(contain)」の語およびその派生語(「contains」、「containing」など)は、非限定的な連結動詞である。すなわち、1つ以上の要素を「備えている」、「有する」、「含む」、または「包有する」システムは、当該1つ以上の要素を有しているが、当該1つ以上の要素のみを有することに限定されるものではない。同様に、1つ以上の特徴物を「備えている」、「有する」、「含む」、または「包有する」システム、装置、または機器の要素は、当該1つ以上の特徴物を有しているが、当該1つ以上の特徴物のみを有することに限定されるものではない。
【0094】
要約すると、本願に記載された概念を採用することによって得られる多くの利点を記載してきた。1つ以上の形態に関する上述の記載は、例示と説明の目的で提示したものであり、開示された正確な形態を網羅的または限定的に示すことを意図するものではない。上記の教示に照らして、改修または変形が可能である。当該1つ以上の形態は、原理および実際の応用について例示し、それによって、様々な形態を様々な改修例と共に、想到される特定の用途に適するものとして当業者が利用できるようにするために、選択し、説明したものである。本願と共に提示される特許請求の範囲によって、全体的な範囲が定義されることを意図している。
【国際調査報告】